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特表2024-529307線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合する放射性トレーサーおよび治療薬
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  • 特表-線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合する放射性トレーサーおよび治療薬 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合する放射性トレーサーおよび治療薬
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/12 20060101AFI20240730BHJP
   C07K 5/12 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 31/695 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 49/10 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240730BHJP
   C07F 5/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C07F7/12 F CSP
C07K5/12
A61K31/695
A61K49/10
A61P29/00
A61P9/10
A61P43/00 105
A61P17/02
C07F5/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500469
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-06
(86)【国際出願番号】 US2022073544
(87)【国際公開番号】W WO2023283627
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】2109922.1
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519249930
【氏名又は名称】ブルー アース ダイアグノスティックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】ラーマン,サビター
(72)【発明者】
【氏名】ベジョー,ロマン
(72)【発明者】
【氏名】リャン,グヤン
(72)【発明者】
【氏名】ハジ,アブドゥル・カリム
(72)【発明者】
【氏名】バーネス,コリン
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
4H045
4H048
4H049
【Fターム(参考)】
4C085HH07
4C085JJ01
4C085KA28
4C085KB39
4C085KB56
4C085LL18
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA44
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA45
4C086ZA89
4C086ZB11
4C086ZB21
4C086ZB26
4H045BA31
4H045BA71
4H045BA72
4H045EA20
4H045EA22
4H045EA23
4H045EA28
4H045EA50
4H045FA20
4H045GA05
4H045GA10
4H045GA15
4H045GA21
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB28
4H048VA11
4H048VA20
4H048VA30
4H048VA32
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ60
4H049VR23
4H049VR31
4H049VU07
(57)【要約】
本発明は、単一分子内に、2つの別個の部分:(a)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができる1つまたは複数のリガンド、および(b)ケイ素原子とフッ素原子との間に共有結合を含むフッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分を含むリガンド-SIFAコンジュゲートに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一分子内に、2つの別個の部分:
(a)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができる1つまたは複数のリガンド、および
(b)ケイ素とフッ素原子との間に共有結合を含むフッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分であって、SIFAが、18Fで任意選択で標識されている、SIFA部分
を含むリガンド-SIFAコンジュゲート、またはその薬学的にもしくは診断上許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項2】
(c)キレート化された非放射性または放射性カチオンを任意選択で含有する1つまたは複数のキレート部分
をさらに含む、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができる1つまたは複数のリガンドが、各々独立して、任意選択で置換されたピロリジニル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、フタラジニル、キナゾリニル、シンノリニルおよびナフチリジニルから選択される1つまたは複数の複素環式基を含む、請求項1または2に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
式(4)、(4a)または(4b):
【化1】
[式中、X、XおよびXは、二価の連結基を表し、ここで、X、XおよびXは、それらが付着している基と一緒になって、1つまたは複数のアミド結合を含み、
FAPは、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができるリガンドを表し、
Lは、任意選択で置換されたリンカー基であり、
SIFAは、ケイ素とフッ素原子との間に共有結合を含むフッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分を表し、
CMは、キレート化された非放射性または放射性カチオンを任意選択で含有するキレート部分を表す]
のコンジュゲート、またはその塩である、請求項2に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
が、1つまたは複数のアミド結合を含む任意選択で置換された10~20個の原子のリンカーであり、ここで、任意選択の置換基が、-X-FAP、COHおよびCHOHから選択され、
が、1つまたは複数のアミド結合を含む任意選択で置換された1~5個の原子のリンカーであり、ここで、式(4)または(4b)の化合物においては、Xがまた、-NH-であるかまたは結合を表してもよく、
が、1つまたは複数のアミド結合を含む任意選択で置換された10~20個の原子のリンカーであり、ここで、任意選択の置換基が、COHおよびCHOHから選択される、請求項4に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
フッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分が、式(3):
【化2】
[式中、R1SおよびR2Sは、独立して、直鎖状、分枝状または環状のC~C10アルキル基であり、
3Sは、1つもしくは複数の芳香族および/もしくは脂肪族単位ならびに/またはOおよびSから選択される最大3個のヘテロ原子を含むC~C20炭化水素基であり、
SIFA部分は、
【化3】
の印を付けられた結合を介してコンジュゲートの残部に付着している]によって表される構造を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
フッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分が、式(3a):
【化4】
[式中、t-Buは、tert-ブチル基を示す]によって表される構造を含む、請求項6に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
キレート部分が、
(i)8から20個の環原子を有し、そのうち2個以上が、酸素原子および窒素原子から選択されるヘテロ原子である、大環状環構造、
(ii)8から20個の主鎖原子を有し、そのうち2個以上が、酸素原子および窒素原子から選択されるヘテロ原子である、非環状の開鎖キレート構造、または
(iii)第四級炭素原子を含有する分枝状キレート構造
の少なくとも1つを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
キレート部分が、ビス(カルボキシメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン(CBTE2a)、シクロヘキシル-1,2-ジアミン四酢酸(CDTA)、4-(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカ-1-イル)-メチル安息香酸(CPTA)、N’-[5-[アセチル(ヒドロキシ)アミノ]ペンチル]-N-[5-[[4-[5-アミノペンチル-(ヒドロキシ)アミノ]-4-オキソブタノイル]アミノ]ペンチル]-N-ヒドロキシブタンジアミド(DFO)、4,11-ビス(カルボキシメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン(DO2A)1,4,7,10-テトラシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(DOTA)、α-(2-カルボキシエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTAGA)、1,4,7,10テトラアザシクロドデカンN,N’,N’’,N’’’1,4,7,10-テトラ(メチレン)ホスホン酸(DOTMP)、N,N’-ジピリドキシルエチレンジアミン-N,N’-ジアセテート-5,5’-ビス(ホスフェート)(DPDP)、ジエチレントリアミンN,N’,N’’ペンタ(メチレン)ホスホン酸(DTMP)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン-N,N’-四酢酸(EDTA)、エチレングリコール-O,O-ビス(2-アミノエチル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)、N,N-ビス(ヒドロキシベンジル)-エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(HBED)、ヒドロキシエチルジアミン三酢酸(HEDTA)、1-(p-ニトロベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-4,7,10-トリアセテート(HP-DOA3)、6-ヒドラジニル-N-メチルピリジン-3-カルボキサミド(HYNIC)、Me-3,2-HOPOと略称されるテトラ3-ヒドロキシ-N-メチル-2-ピリジノンキレーター(4-((4-(3-(ビス(2-(3-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-4-カルボキサミド)エチル)アミノ)-2-((ビス(2-(3-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-4-カルボキサミド)エチル)アミノ)メチル)プロピル)フェニル)アミノ)-4-オキソブタン酸)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1-コハク酸-4,7-二酢酸(NODASA)、1-(1-カルボキシ-3-カルボキシプロピル)-4,7-(カルボオキシ)-1,4,7-トリアザシクロノナン(NODAGA)、1,4,7-トリアザシクロノナン三酢酸(NOTA)、4,11-ビス(カルボキシメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン(TE2A)、1,4,8,11-テトラアザシクロドデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)、トリス(ヒドロキシピリジノン)(THP)、テルピリジン-ビス(メチレンアミン四酢酸(TMT)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリス[メチレン(2-カルボキシエチル)ホスフィン酸](TRAP)、1,4,7,10-テトラアザシクロトリデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(TRITA)、3-[[4,7-ビス[[2-カルボキシエチル(ヒドロキシ)ホスホリル]メチル]-1,4,7-トリアゾナン-1-イル]メチル-ヒドロキシ-ホスホリル]プロパン酸、およびトリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)から選択される、請求項8に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
キレート部分が、1,4,7,10-テトラシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(DOTA)、α-(2-カルボキシエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTAGA)または1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリス[メチレン(2-カルボキシエチル)ホスフィン酸](TRAP)である、請求項9に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
キレート部分が、43Sc、44Sc、47Sc、61Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、90Y、111In、149Tb、152Tb、155Tb、161Tb、166Ho、177Lu、186Re、188Re、212Pb、212Bi、213Bi、225Ac、および227Thのカチオンから選択されるキレート化されたカチオンまたは18Fを含むカチオン性分子を含有する、請求項9または請求項10に記載のコンジュゲート。
【請求項12】
SIFAのフッ素原子が、18Fである、請求項1から11のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
FAP結合部分が、置換ピロリジン環を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項14】
FAP結合部分が、式(2):
【化5】
[式中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、H、OH、B(OH)、COH、CN、ハロ、C1~6アルキルおよび-O-C1~6アルキルから独立して選択され、
およびR10は、独立して、HまたはC1~6アルキルである]を有する部分を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項15】
式(2a):
【化6】
[式中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、H、OH、B(OH)、COH、CN、ハロ、C1~6アルキルおよび-O-C1~6アルキルから独立して選択され、
およびR10は、独立して、HまたはC1~6アルキルであり、
nは、0から3であり、
Xは、5~10員のN含有単環式または二環式複素環であり、前記複素環は、O、NおよびSから選択される1、2または3個のヘテロ原子を任意選択でさらに含み、C1~6アルキル、-O-C1~6アルキル、-S-C1~6アルキルおよび-NR2021から選択される1つから3つの置換基で任意選択で置換されており、ここで、R20およびR21は、HおよびC1~6アルキルから独立して選択される]を有する部分を含む、請求項13に記載のコンジュゲート。
【請求項16】
nが、0である、請求項15に記載のコンジュゲート。
【請求項17】
Xが、
【化7】
から選択される、請求項15または16に記載のコンジュゲート。
【請求項18】
請求項14から17のいずれか一項に記載の、
およびRが、Fであり、
が、CNであり、
、R、R、R、R、RおよびR10が、Hである、コンジュゲート。
【請求項19】
FAP結合部分が、
【化8-1】
【化8-2】
[式中、mは、0から10である]からなる群から選択される部分を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項20】
FAP結合部分が、環状ペプチドを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項21】
FAP結合部分が、
【化9】
からなる群から選択される部分を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項22】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
からなる群から選択される、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか一項に記載の1種または複数のコンジュゲートまたは化合物を含むまたはそれからなる医薬または診断用組成物。
【請求項24】
医学における使用のための、請求項1から23のいずれか一項に記載のコンジュゲート、化合物または組成物。
【請求項25】
がん診断またはイメージング剤としての使用のための、請求項1から24のいずれか一項に記載のコンジュゲート、化合物または組成物。
【請求項26】
がんをイメージングおよび/または診断する方法であって、請求項1から25のいずれか一項に記載のコンジュゲート、化合物または組成物を、それを必要とする患者に投与するステップを含む方法。
【請求項27】
がんの処置における使用のための、請求項1から24のいずれか一項に記載のコンジュゲート、化合物または組成物。
【請求項28】
がん、慢性炎症、アテローム性動脈硬化症、線維症、組織リモデリングおよびケロイド障害の診断または処置における使用のための、請求項1から25のいずれか一項に記載のコンジュゲート、化合物または組成物。
【請求項29】
がんが、乳がん、膵臓がん、小腸がん、結腸がん、直腸がん、肺がん、頭頸部がん、卵巣がん、肝細胞癌、食道がん、下咽頭がん、鼻咽頭がん、喉頭がん、骨髄腫細胞、膀胱がん、胆管細胞癌、腎明細胞癌、神経内分泌腫瘍、腫瘍原性骨軟化症、肉腫、CUP(原発不明癌)、胸腺癌、類腱腫、神経膠腫、星細胞腫、子宮頸癌および前立腺がんからなる群から選択される、請求項28に記載の使用のためのコンジュゲート、化合物または組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療上および/または診断上有用な化合物、特に、様々ながんの処置および/または診断を含む、FAP発現の上昇に関連する多様な治療および/または診断分野において有用である化合物に関する。好適には、本発明は、単一分子内に、(a)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができる1つまたは複数のリガンド、および(b)ケイ素とフッ素原子との間に共有結合を含み、18Fによる19Fの同位体交換によって18Fで標識され得るまたは18Fで標識されたフッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分を含むリガンド-SIFAコンジュゲート(すなわち、化合物)に関する。
【背景技術】
【0002】
線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)
線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)は、腫瘍間質におけるその発現の増大で最もよく知られている。この非定型セリンプロテアーゼは、ジペプチジルペプチダーゼおよびエンドペプチダーゼ活性の両方を有し、基質をプロリン後結合において切断する。FAP発現は、非疾患成体器官においては検出することが困難であるが、肝線維症、肺線維症、アテローム性動脈硬化症、関節炎、腫瘍および胚組織を含む組織リモデリング部位においては大幅に上方調節される。FAPは、発生、組織修復、および上皮発癌中の線維芽細胞成長または上皮-間葉相互作用の制御に関与すると考えられる。FAP発現は、すべてのヒト癌の90%超の活性化間質線維芽細胞において見られる。間質線維芽細胞は、癌の発生、成長および転移において重要な役割を果たす。FAPは、その制限された発現パターンおよび二重酵素活性に起因して、特有の治療標的として浮上しており、主にがん処置におけるFAP標的化のいくつかの手法が現在試験されている(Rui L.ら、Cancer Biology & Therapy、2012年、13:3、123~129)。
【0003】
18F標識
18F標識は、周知の放射性標識技法であり、例えば、陽電子放出断層撮影(PET)イメージングのために、前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的とするコンジュゲートにおいて使用されている。18F標識を導入するための魅力的な手法は、フッ化ケイ素アクセプター(SIFA)の使用である。フッ化ケイ素アクセプターは、例えば、Lindnerら、Bioconjugate Chemistry 25、738~749(2014年)に記載されている。ケイ素-フッ化物結合を保存するために、フッ化ケイ素アクセプターの使用は、シリコン(silicone)原子の周りの立体的にかさ高い基の必要性を生じさせる。このことがひいては、フッ化ケイ素アクセプターを高度に疎水性にする。PSMAへの結合に関して、フッ化シリコンアクセプターによって提供される疎水性部分は、Zhangら、Journal of the American Chemical Society 132、12711~12716(2010年)に記載されたPSMAの疎水性ポケットとの放射性診断用または治療用化合物の相互作用を確立する目的で活用され得る。しかし、結合の前に、分子に導入されるより高度な親油性は、好適なin vivoでの生体内分布、すなわち、非標的組織における低い非特異的結合を有する放射性医薬品の開発に関して深刻な問題をもたらす。
【0004】
WO2019/020831およびWO2020/157184は、リガンド-SIFA-キレーターコンジュゲートを開示している。WO2019/083990、WO2019/154886、WO2018/111989、WO2021/005131およびWO2021/005125は、FAPリガンドを含む化合物を開示している。
【発明の概要】
【0005】
ヒト組織におけるFAP発現の上昇に関連する疾患の存在を特定し得るイメージング剤が必要とされている。そのような疾患は、がん、慢性炎症、アテローム性動脈硬化症、線維症、組織リモデリングおよびケロイド障害を含み得る。
【0006】
本発明は、ケイ素-フッ素含有部分を含有し、有利なin vivo特性によって特徴付けられるFAP標的化放射性診断薬および/または放射性治療薬を提供しようとするものである。
【0007】
さらに、本発明は、FAP発現の上昇に関連する医学的適応症のための改善された放射性治療薬および/または放射性診断薬を提供しようとするものである。
さらに、本発明は、ケイ素-フッ素含有部分を含有し、有利なin vivo特性によって特徴付けられるFAP標的化およびPSMA標的化の組合せの放射性診断薬および/または放射性治療薬を提供しようとするものである。
【0008】
さらに、本発明は、FAP発現の上昇および前立腺特異的膜抗原(PSMA)発現の上昇に関連する医学的適応症のための改善された放射性治療薬および/または放射性診断薬を提供しようとするものである。
【0009】
発明の概要
本発明の第1の態様によれば、単一分子内に、2つの別個の部分:
(a)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができる1つまたは複数のリガンド、および
(b)ケイ素とフッ素原子との間に共有結合を含むフッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分であって、SIFAが、18Fで任意選択で標識されている、SIFA部分
を含むリガンド-SIFAコンジュゲート、またはその薬学的にもしくは診断上許容される塩もしくは溶媒和物が提供され、
これらのコンジュゲートは、併せて本明細書では「本発明のコンジュゲート」または「本発明の一部の実施形態のコンジュゲート」と称され、これらのコンジュゲートはまた、追加の部分を任意選択で含んでもよい。
【0010】
好適には、本発明のコンジュゲートは、単一分子内に、(a)前記1つまたは複数のFAPリガンドおよび(b)前記SIFA部分の両方を含む、単一の化学的構成体を含む。
好適には、本発明のコンジュゲート中のSIFA部分は、18F標識で任意選択で放射性標識されていてもよい。18F放射性標識は、当業者に周知の技法によって、例えば、PCT/EP2020/052268に開示されたとおり、SIFA部分の同位体19F-18F交換によってSIFA部分に導入されてもよい。好ましくは、本発明のコンジュゲートは、18Fで放射性標識されたSIFA部分を含む。好適には、SIFA部分に18F放射性標識を含めることは、本発明のコンジュゲートが、例えば、PETイメージングにおいて、放射性診断用トレーサーとして使用されることを可能にする。
【0011】
「薬学的にまたは診断上許容される塩または溶媒和物」という用語は、本明細書に記載された塩および溶媒和物を含む。
一部の実施形態では、本発明のコンジュゲートは、(c)1つまたは複数のキレート部分(CM)をさらに含んでもよい。存在する場合、前記1つまたは複数のキレート部分(CM)は、キレート化された非放射性カチオンまたは放射性カチオンを任意選択で含有してもよい。本発明の好ましいコンジュゲートは、本明細書で特定されるキレート化された非放射性カチオンまたは放射性カチオンを含有する前記(c)1つまたは複数のキレート部分(CM)をさらに含む。
【0012】
一部の実施形態では、本発明のコンジュゲートは、(d)前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合することができる1つまたは複数のリガンドをさらに含んでもよい。
好適には、部分(a)および(b)、ならびに存在する場合、(c)および(d)は、各々、本発明のコンジュゲートの単一分子内の別個の部分を表す。
【0013】
したがって、本発明のコンジュゲートは、単一分子内に、2つの別個の部分(a)および(b)を含み、(a)が、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができる1つまたは複数のリガンドであり、(b)が、ケイ素とフッ素原子との間に共有結合を含むフッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分であって、SIFAが、18Fで任意選択で標識されている、SIFA部分である、リガンド-SIFAコンジュゲートであって、前記単一分子内に、
(c)キレート化された非放射性カチオンまたは放射性カチオンを任意選択で含有する1つまたは複数のキレート部分(CM)、または
(d)前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合することができる1つまたは複数のリガンド、または
(e)(c)前記1つまたは複数のキレート部分(CM)および(d)前記1つまたは複数のPSMAリガンドの両方の組合せ
を任意選択で含むリガンド-SIFAコンジュゲート、またはその薬学的にもしくは診断上許容される塩もしくは溶媒和物を含む。
【0014】
したがって、本発明のコンジュゲートは、以下を含む。
単一分子内に、2つの別個の部分:
(a)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができる1つまたは複数のリガンド、および
(b)ケイ素とフッ素原子との間に共有結合を含むフッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分であって、SIFAが、18Fで任意選択で標識されている、SIFA部分
を含むリガンド-SIFAコンジュゲート、またはその薬学的にもしくは診断上許容される塩もしくは溶媒和物。
【0015】
単一分子内に、3つの別個の部分:
(a)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができる1つまたは複数のリガンド、
(b)ケイ素とフッ素原子との間に共有結合を含むフッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分であって、SIFAが、18Fで任意選択で標識されている、SIFA部分、および
(c)キレート化された非放射性または放射性カチオンを任意選択で含有する1つまたは複数のキレート部分(CM)
を含むリガンド-SIFAコンジュゲート、またはその薬学的にもしくは診断上許容される塩もしくは溶媒和物。
【0016】
単一分子内に、3つの別個の部分:
(a)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができる1つまたは複数のリガンド、
(b)ケイ素とフッ素原子との間に共有結合を含むフッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分であって、SIFAが、18Fで任意選択で標識されている、SIFA部分、および
(d)前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合することができる1つまたは複数のリガンド
を含むリガンド-SIFAコンジュゲート、またはその薬学的にもしくは診断上許容される塩もしくは溶媒和物。
【0017】
単一分子内に、4つの別個の部分:
(a)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができる1つまたは複数のリガンド、
(b)ケイ素とフッ素原子との間に共有結合を含むフッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分であって、SIFAが、18Fで任意選択で標識されている、SIFA部分、
(c)キレート化された非放射性または放射性カチオンを任意選択で含有する1つまたは複数のキレート部分(CM)、および
(d)前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合することができる1つまたは複数のリガンド
を含むリガンド-SIFAコンジュゲート、またはその薬学的にもしくは診断上許容される塩もしくは溶媒和物。
【0018】
好適には、単一分子内に、本明細書で特定されるFAP、SIFAおよびPSMA;FAP、SIFAおよびCM;ならびにFAP、SIFA、PSMAおよびCMから選択される3つ以上の別個の部分を含む本発明のコンジュゲートは、各々独立して、単一分子内に、本明細書で特定されるFAPおよびSIFAから選択される2つの別個の部分を含む本発明のコンジュゲートから調製されてもよい。したがって、単一分子内に、本明細書で特定されるFAPおよびSIFAから選択される2つの別個の部分を含む本発明のコンジュゲートは、単一分子内に、本明細書で特定されるFAP、SIFAおよびPSMA;FAP、SIFAおよびCM;ならびにFAP、SIFA、PSMAおよびCMから選択される3つ以上の別個の部分を含む本発明のコンジュゲートの合成のための中間体とみなされ得る。
【0019】
好適には、本発明のコンジュゲートが2つ以上のFAPリガンドを含む場合、各FAPリガンドは、同じであっても異なっていてもよい。
好適には、本発明のコンジュゲート中の前記FAPリガンドは、各々独立して、1つまたは複数の4~12員の複素環式基を含み、この複素環式基は、少なくとも1個の窒素原子を含有し、窒素、酸素または硫黄から選択される1個または複数のさらなるヘテロ原子を任意選択で含有する。好適には、本明細書で特定される前記4~12員の複素環式基の各々は、完全に芳香族の、部分的に芳香族の、または非芳香族の性質であってもよい環系を表す。したがって、各FAPリガンドが含んでもよい「4~12員の複素環式基」という用語は、任意選択で置換されたアゼチジニル、ピロリジニル、ピロリニル、ピロリル、ピラゾリル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、インドリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、オキサトリアゾリル、チアトリアゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、モルホリニル、ピリミジニル、プリニル、ピリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、キノリニル、ジヒドロキノリニル、テトラヒドロキノリニル、デカヒドロキノリニル、イソキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、デカヒドロイソキノリニル、キノルジニル(quinolzinyl)、キノキサリニル、フタラジニル、キナゾリニル、シンノリニル、ナフチリジニル、ピリドピリミジニル、ピリドピラジニル、およびプテリジニルなどの基を含む。
【0020】
好適には、各FAPリガンドが含んでもよい本明細書で特定される前記4~12員の複素環式基は、1つまたは複数の任意選択の置換基で任意選択で置換されていてもよい。好ましい任意選択の1つまたは複数の置換基は、ハロ、シアノ、OH、B(OH)、COH、C1~6アルキル、-O-C1~6アルキル、S-C1~6アルキルおよび任意選択で置換されたアミノを含む。非常に好ましい1つまたは複数の任意選択の置換基は、ハロ、特にフルオロ、およびシアノから選択される。
【0021】
好適には、本発明のコンジュゲート中の各FAPリガンドは、独立して、本明細書で特定される1つまたは複数の4~12員の複素環式基を含み、この複素環式基は、1個または複数の窒素原子のみをヘテロ原子として含有する。
【0022】
好適には、本発明のコンジュゲート中の各FAPリガンドは、独立して、本明細書で特定される1つまたは複数の4~12員の複素環式基を含み、この基は、少なくとも1個の窒素原子を含有し、1個または複数のさらなる窒素原子を任意選択で含有する。
【0023】
好適には、本発明のコンジュゲート中の各FAPリガンドは、独立して、1つまたは複数の5~10員の複素環式基を含み、この基は、少なくとも1個の窒素原子を含有し、1個または複数のさらなる窒素原子を任意選択で含有する。
【0024】
好適には、本発明のコンジュゲート中の各FAPリガンドは、独立して、本明細書で特定される1つまたは複数の5または10員の複素環式基を含み、この基は、少なくとも1個の窒素原子を含有し、1個または複数のさらなる窒素原子を任意選択で含有する。
【0025】
好ましくは、前記1つまたは複数の5~10員の複素環式基、この基は、少なくとも1個の窒素原子を含有し、1個または複数のさらなる窒素原子を任意選択で含有し、窒素のみをヘテロ原子として含む。
【0026】
好適には、本発明のコンジュゲート中の各FAPリガンドは、独立して、任意選択で置換されたピロリジニル、ピロリニル、ピロリル、ピラゾリル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、インドリル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリミジニル、プリニル、ピリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、キノリニル、ジヒドロキノリニル、テトラヒドロキノリニル、デカヒドロキノリニル、イソキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、デカヒドロイソキノリニル、キノルジニル、キノキサリニル、フタラジニル、キナゾリニル、シンノリニル、ナフチリジニル、ピリドピリミジニル、ピリドピラジニル、およびプテリジニルから選択される1つまたは複数の複素環式基を含む。
【0027】
好適には、本発明のコンジュゲート中の各FAPリガンドは、独立して、任意選択で置換されたピロリジニル、ピロリニル、ピロリル、ピラゾリル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、キノリニル、ジヒドロキノリニル、テトラヒドロキノリニル、デカヒドロキノリニル、イソキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、デカヒドロイソキノリニル、キノルジニル、キノキサリニル、フタラジニル、キナゾリニル、シンノリニル、ナフチリジニル、ピリドピリミジニル、ピリドピラジニル、およびプテリジニルから選択される1つまたは複数の複素環式基を含む。
【0028】
好適には、本発明のコンジュゲート中の各FAPリガンドは、独立して、任意選択で置換されたピロリジニル、ピロリニル、ピロリル、キノリニル、ジヒドロキノリニル、テトラヒドロキノリニル、デカヒドロキノリニル、イソキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、デカヒドロイソキノリニル、キノキサリニル、フタラジニル、キナゾリニル、シンノリニル、およびナフチリジニルから選択される1つまたは複数の複素環式基を含む。
【0029】
好ましくは、本発明のコンジュゲート中の各FAPリガンドは、独立して、任意選択で置換されたピロリジニル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、フタラジニル、キナゾリニル、シンノリニルおよびナフチリジニル、特に任意選択で置換されたピロリジニル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニルから選択される1つまたは複数の複素環式基を含む。
【0030】
本発明のコンジュゲート中のフッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分は、典型的には、本質的にC~C20ヒドロカルビル基を含み、このヒドロカルビル基は、1つまたは複数のフッ化ケイ素官能基によって置換されており、このフッ化ケイ素官能基は、1個または複数のフッ素原子と共有結合したケイ素原子を含む。例示的なSIFA部分は、本明細書で特定される。
【0031】
好適には、本明細書で特定される前記SIFA部分の本質的にC~C20ヒドロカルビル基は、C~C10の本質的にヒドロカルビル基、好ましくはアリール基を含むC~C10の本質的にヒドロカルビル基、より好ましくはフェニル環を含むC~C10の本質的にヒドロカルビル基を含む。
【0032】
好適には、本明細書に定義されたSIFA部分の本質的にC~C20、特にC~C10ヒドロカルビル部分の1つまたは複数のフッ化ケイ素官能基置換基の各々は、1個または複数のフッ素原子と共有結合し、かつ1つまたは複数のC~C10の本質的にヒドロカルビル基と共有結合したケイ素原子を含む。好適には、1つまたは複数のフッ化ケイ素官能基置換基は、単一のフッ素原子と共有結合し、かつ2つのC~C10の本質的にヒドロカルビル基と共有結合したケイ素原子を含む。好適には、1つまたは複数のフッ化ケイ素官能基置換基は、単一のフッ素原子と共有結合し、かつ2つのC~C10アルキル基と共有結合したケイ素原子を含み、これらのC~C10アルキル基は、同じであっても異なっていてもよい。
【0033】
本発明のコンジュゲート中の好ましいSIFA部分は、本明細書で特定される1つまたは複数のフッ化ケイ素官能基によって置換されたフェニル基、特に前記フェニル基が、本明細書で特定されるフッ化ケイ素官能基によってパラ置換されている場合を含む。本発明のコンジュゲート中の非常に好ましいSIFA部分は、単一のフッ素原子と共有結合し、かつ2つのC~C10アルキル基と共有結合したケイ素原子を含むフッ化ケイ素官能基によってパラ置換されたフェニル基を含み、これらのC~C10アルキル基は、同じであっても異なっていてもよい。
【0034】
一部の実施形態では、本発明のコンジュゲートは、(c)1つまたは複数の任意選択のキレート部分(CM)を含んでもよい。好適には、本発明のコンジュゲートが2つ以上のキレート部分(CM)を含む場合、各CMは、同じであっても異なっていてもよい。
【0035】
本発明のコンジュゲート中に存在してもよい例示的なキレート部分は、本明細書で特定される。好ましくは、本発明のコンジュゲートが1つまたは複数の前記任意選択のキレート部分(CM)を含む場合、前記1つまたは複数のキレート部分の各々は、TRAP、DOTAおよびDOTAGA、特にDOTAおよびDOTAGAから独立して選択される。
【0036】
好適には、1つまたは複数の任意選択のキレート部分(CM)は、各々独立して、本明細書で特定される放射性カチオンまたは非放射性カチオン、好ましくは放射性金属または非放射性金属カチオンを含んでもよい。好ましくは、1つまたは複数のキレート部分が放射性または非放射性カチオンを含む場合、カチオンは、Ga、Cu、Lu、YおよびAcカチオン、特に68Ga、64Cu、177Lu、90Yおよび225Acカチオンから選択される。一部の好ましい実施形態では、放射性または非放射性カチオンは、インジウム、テクネチウム、ガリウム、ガドリニウム、銅、ルテチウム、またはレニウムのカチオンである。一部の好ましい実施形態では、放射性または非放射性カチオンは、111In、99mTc、64Cu、67Cu、67Gaまたは68Gaである。一部の実施形態では、1つまたは複数の任意選択のキレート部分(CM)は、放射性元素と結合するカチオンを含んでもよい。一部の実施形態では、1つまたは複数の任意選択のキレート部分(CM)は、18Fと結合するカチオンを含んでもよい。一部の実施形態では、1つまたは複数の任意選択のキレート部分(CM)は、Al18またはSc18を含んでもよい。好適には、1つまたは複数のキレート部分(CM)は、放射性トレーサーとしての診断薬における使用のために、放射性カチオン、例えば68Gaまたは64Cuで標識されていてもよい。あるいは、1つまたは複数のキレート部分は、治療用同位体、例えば177Lu、90Yまたは225Acで標識されていてもよい。
【0037】
本発明の一部の実施形態については、コンジュゲートは、18Fを含み、本発明の一部の実施形態については、コンジュゲートは、1種または複数の他の放射性同位体(例えば、キレート部分に関連する)を含む。本発明の一部の実施形態では、コンジュゲートは、18Fおよび1種または複数の他の放射性同位体の両方を含む。
【0038】
したがって、18Fで放射性標識されたSIFA部分および適切な放射性カチオンを含む1つまたは複数のキレート部分(CM)を含む本発明のコンジュゲートは、本発明のコンジュゲートが、診断用および治療用の放射性医薬品用途の橋渡しをする「ペア」トレーサーとして用いられることを可能にする。
【0039】
一部の実施形態では、本発明のコンジュゲートは、(d)1つまたは複数の任意選択のPSMAリガンドを含む。好適には、本発明のコンジュゲートが2つ以上のPSMAリガンドを含む場合、各PSMAリガンドは、同じであっても異なっていてもよい。
【0040】
本発明のコンジュゲート中に任意選択で存在してもよい例示的なPSMAリガンドは、本明細書で特定され、かつ/またはWO2019/020831、WO2020/157177およびWO2020/157184に開示されている。
【0041】
好適には、存在する場合、1つまたは複数の任意選択のPSMAリガンド(d)は、本明細書で特定される式PSMA1、PSMA2、PSMA3、PSMA4およびPSMA5によって表される構造から各々独立して選択される。
【0042】
好適には、本発明のコンジュゲートは、式I
【0043】
【化1】
【0044】
のコンジュゲート、またはその薬学的にもしくは診断上許容される塩もしくは溶媒和物[式中、
(i)各FAPは、独立して、本明細書で特定される線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができるリガンドを表し、
(ii)Lは、本明細書で特定される任意選択で置換されたリンカー基を表し、
(iii)SIFAは、本明細書で特定されるケイ素とフッ素原子との間に共有結合を含むフッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分であって、SIFAが、18Fで任意選択で標識されている、SIFA部分を表し、
(iv)各CMは、独立して、本明細書で特定されるキレート化された非放射性カチオンまたは放射性カチオンを任意選択で含有するキレート部分を表し、
(v)各PSMAは、独立して、本明細書で特定される前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合することができるリガンドを表し、
aは、1から3の整数であり、bは、0から2の整数であり、cは、0から2の整数である]によって代表され得る。
【0045】
好適には、式(I)の化合物中の各FAPリガンドは、同じであっても異なっていてもよく、好ましくは、各FAPリガンドは、同一である。
好適には、存在する場合、式(I)の化合物中の各CMは、同じであっても異なっていてもよく、好ましくは、各CMは、同一である。
【0046】
好適には、存在する場合、式(I)の化合物中の各PSMAリガンドは、同じであっても異なっていてもよく、好ましくは、各PSMAリガンドは、同一である。
好適には、式(I)、および本明細書の以下で特定される式(IA)、(IB)、(IC)、(ID)、(IE)、(IF)、(IG)のコンジュゲート中の任意選択で置換されたリンカー基であるLは、(a)前記1つまたは複数のFAPリガンドの各々と、(b)前記フッ化ケイ素アクセプター(SIFA)と、(c)存在する場合、前記1つまたは複数の任意選択のキレート部分(CM)の各々と、および(d)存在する場合、前記1つまたは複数の任意選択のPSMAリガンド(d)の各々と、別個の共有結合を形成することができる多価の有機リンカー基を表す。好適には、前記1つまたは複数のFAPリガンド、前記SIFA、存在する場合、前記1つまたは複数の任意選択のCM、および存在する場合、前記1つまたは複数の任意選択のPSMAリガンドの各々は、各々独立して、Lと共有結合している。
【0047】
好適には、前記1つまたは複数のFAPリガンド、前記SIFA、存在する場合、前記1つまたは複数の任意選択のCM、および存在する場合、前記1つまたは複数の任意選択のPSMAリガンドの各々は、各々独立して、リンカー基Lの共通の原子と(すなわち、同じ位置において)共有結合していてもよい。好適には、前記1つまたは複数のFAPリガンド、前記SIFA、存在する場合、前記1つまたは複数の任意選択のCM、および存在する場合、前記1つまたは複数の任意選択のPSMAリガンドの各々は、各々独立して、リンカー基Lの1個または複数の異なる原子(すなわち、1つまたは複数の異なる位置)において共有結合していてもよい。好ましくは、前記1つまたは複数のFAPリガンド、前記SIFA、存在する場合、前記1つまたは複数の任意選択のCM、および存在する場合、前記1つまたは複数の任意選択のPSMAリガンドの各々は、各々独立して、リンカー基Lの1つまたは複数の異なる位置において共有結合している。
【0048】
好適には、式(I)、および本明細書の以下で特定される式(IA)、(IB)、(IC)、(ID)、(IE)、(IF)、(IG)のコンジュゲート中のLは、オリゴアミド、オリゴエーテル、オリゴチオエーテル、オリゴエステル、オリゴチオエステル、オリゴ尿素、オリゴ(エーテル-アミド)、オリゴ(チオエーテル-アミド、オリゴ(チオエステル-アミド)、オリゴ(尿素-アミド)、オリゴ(チオエーテル-エステル)、オリゴ(チオエーテル-チオエステル)、オリゴ(チオエーテル尿素)、オリゴ(エステル-チオエステル)、オリゴ(エステル-尿素)、オリゴ(チオエステル-尿素)から選択される構造を含む任意選択で置換された多価の連結基を表す。
【0049】
好ましくは、式(I)、および本明細書の以下で特定される式(IA)、(IB)、(IC)、(ID)、(IE)、(IF)、(IG)のコンジュゲート中のLは、オリゴアミドおよびオリゴ(エステル-アミド)から選択される構造を有する任意選択で置換された多価の連結基を表す。
【0050】
好適には、多価の連結基の任意選択の置換基は、-OH、-OCH、-COOH、-COOCH、-NH、および-NHC(NH)NHから選択されてもよい。
オリゴアミド、オリゴエーテル、オリゴチオエーテル、オリゴエステル、オリゴチオエステル、オリゴ尿素、オリゴ(エーテル-アミド)、オリゴ(チオエーテル-アミド)、オリゴ(エステル-アミド)、オリゴ(チオエステル-アミド)、オリゴ(尿素-アミド)、オリゴ(エーテル-チオエーテル)、オリゴ(エーテル-エステル)、オリゴ(エーテル-チオエステル)、オリゴ(エーテル-尿素)、オリゴ(チオエーテル-エステル)、オリゴ(チオエーテル-チオエステル)、オリゴ(チオエーテル-尿素)、オリゴ(エステル-チオエステル)、オリゴ(エステル-尿素)、およびオリゴ(チオエステル-尿素)において使用される「オリゴ」という用語は、好ましくは、2から20個、より好ましくは2から10個のサブユニットが、同用語において指定されたタイプの結合によって連結された基を指すと理解されるべきである。当業者によって理解されるとおり、2つの異なるタイプの結合が括弧内に示されている場合、両方のタイプの結合が関係する基に含有される(例えば、「オリゴ(エステル-アミド)」には、エステル結合およびアミド結合が含有される)。
【0051】
リンカー基は、任意選択で置換されたオリゴアミドおよびオリゴ(エステル-アミド)から選択される構造を有し、その骨格内に、合計1つから5つ、より好ましくは合計1つから3つ、最も好ましくは合計1つまたは2つのアミドおよび/またはエステル結合、好ましくはアミド結合を含むことが好ましい。
【0052】
したがって、オリゴアミドという用語は、NHCOまたはCONHから選択される基で中断されたCHまたはCHR基の鎖を有する部分を含む。R部分の各出現は、例えば、-OH、-OCH、-COOH、-COOCH、-NH、および-NHC(NH)NHから選択される任意選択の置換基である。
【0053】
好適には、前記(a)1つまたは複数のFAPリガンド、前記(b)SIFA、存在する場合、前記(c)1つまたは複数の任意選択のCM、および存在する場合、前記(d)1つまたは複数の任意選択のPSMAは、各々独立して、官能基、例えば、エーテル基、エステル基、チオエステル基、チオエーテル基、アミド基、カルバメート基の一部を形成する共有結合によってリンカー基(L)と共有結合していてもよい。
【0054】
式Iの好ましいコンジュゲートは、
(i)各FAPリガンドが、独立して、本明細書で特定される1つまたは複数の4~12員の複素環式基を含み、この複素環式基が、少なくとも1個の窒素原子を含有し、窒素、酸素または硫黄から選択される1個または複数のさらなるヘテロ原子を任意選択で含有し、
(ii)Lが、本明細書で特定される任意選択で置換されたリンカー基を表し、
(iii)SIFAが、本質的にC~C20ヒドロカルビル基を含み、このヒドロカルビル基が、本明細書で特定される1つまたは複数のフッ化ケイ素官能基によって置換されており、このフッ化ケイ素基が、1個または複数のフッ素原子と共有結合したケイ素原子を含み、このSIFA部分が、18Fで任意選択で標識されており、
(iv)CM、(v)PSMA、a、bおよびcが、各々、式Iの化合物について定義されたとおりである、コンジュゲートを含む。
【0055】
式Iのより好ましいコンジュゲートは、
(i)各FAPリガンドが、独立して、本明細書で特定される1つまたは複数の5または10員の複素環式基を含み、この複素環式基が、少なくとも1個の窒素原子を含有し、1個または複数のさらなる窒素原子を任意選択で含有し、前記1つまたは複数の複素環式基の各々が、窒素ヘテロ原子のみを含み、
(ii)Lが、本明細書で特定される任意選択で置換されたリンカー基を表し、
(iii)SIFAが、アリール基を含むC~C10の本質的にヒドロカルビル基を含み、このアリール基が、本明細書で特定される1つまたは複数のフッ化ケイ素官能基によって置換されており、このフッ化ケイ素基が、1個または複数のフッ素原子と共有結合したケイ素原子を含み、このSIFA部分が、18Fで任意選択で標識されており、
(iv)CM、(v)PSMA、a、bおよびcが、各々、式Iのコンジュゲートについて定義されたとおりである、コンジュゲートを含む。
【0056】
式Iのさらにより好ましいコンジュゲートは、
(i)各FAPリガンドが、独立して、任意選択で置換されたピロリジニル、ピロリニル、ピロリル、キノリニル、ジヒドロキノリニル、テトラヒドロキノリニル、デカヒドロキノリニル、イソキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、デカヒドロイソキノリニル、キノキサリニル、フタラジニル、キナゾリニル、シンノリニル、およびナフチリジニルから選択される1つまたは複数の複素環式基を含み、
(ii)Lが、本明細書で特定される任意選択で置換されたリンカー基を表し、
(iii)SIFAが、フェニル基を含むC~C10の本質的にヒドロカルビル基を含み、このフェニル基が、本明細書で特定される1つまたは複数のフッ化ケイ素官能基によって置換され、好ましくはパラ置換されており、このフッ化ケイ素基が、1個または複数のフッ素原子と共有結合し、かつ1つまたは複数のC~C10の本質的にヒドロカルビル基と共有結合したケイ素原子を含み、このSIFA部分が、18Fで任意選択で標識されており、
(iv)CM、(v)PSMA、a、bおよびcが、各々、式Iのコンジュゲートについて定義されたとおりである、コンジュゲートを含む。
【0057】
式Iのさらにより好ましいコンジュゲートは、
(i)各FAPリガンドが、独立して、任意選択で置換されたピロリジニル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、フタラジニル、キナゾリニル、シンノリニルおよびナフチリジニルから選択される1つまたは複数の複素環式基を含み、
(ii)Lが、本明細書で特定される任意選択で置換されたリンカー基を表し、
(iii)SIFAが、フェニル基を含むC~C10の本質的にヒドロカルビル基を含み、このフェニル基が、単一のフッ素原子と共有結合し、かつ2つのC~C10アルキル基と共有結合したケイ素原子を含むフッ化ケイ素官能基によってパラ置換されており、このSIFA部分が、18Fで任意選択で標識されており、
(iv)CM、(v)PSMA、a、bおよびcが、各々、式Iのコンジュゲートについて定義されたとおりである、コンジュゲートを含む。
【0058】
式Iのさらにより好ましいコンジュゲートは、
(i)各FAPリガンドが、独立して、任意選択で置換されたピロリジニル、キノリニル、イソキノリニル、およびキナゾリニルから選択される1つまたは複数の複素環式基を含み、
(ii)Lが、本明細書で特定される任意選択で置換されたリンカー基を表し、
(iii)SIFAが、フェニル基を含むC~C10の本質的にヒドロカルビル基を含み、このフェニル基が、単一のフッ素原子と共有結合し、かつ2つのC~C10アルキル基と共有結合したケイ素原子を含むフッ化ケイ素官能基によってパラ置換されており、このSIFA部分が、18Fで任意選択で標識されており、
(iv)CM、(v)PSMA、a、bおよびcが、各々、式Iのコンジュゲートについて定義されたとおりである、コンジュゲートを含む。
【0059】
式Iのコンジュゲート、および同様に本明細書で特定される式IAからIGのコンジュゲートにおいて、前記1つまたは複数のFAPリガンド、前記SIFA、存在する場合、前記1つまたは複数の任意選択のCM、および存在する場合、前記1つまたは複数の任意選択のPSMAリガンドの各々は、各々独立して、リンカー基Lの共通の原子(すなわち、同じ位置)と共有結合していてもよく、または各々独立して、リンカー基Lの1個または複数の異なる原子(すなわち、1つまたは複数の異なる位置)において共有結合していてもよいことが認識されよう。
【0060】
好ましい実施形態では、本発明のコンジュゲートは、aが、1または2であり、bが、0であり、cが、0である、式Iのコンジュゲートを含み、式IAおよびIB:
【0061】
【化2】
【0062】
[式中、存在する場合、FAPおよびFAPは、各々独立して、式Iのコンジュゲートについて定義されたFAPリガンドを表し、SIFAおよびLは、各々、式Iのコンジュゲートについて定義されたとおりである]のコンジュゲート、またはその薬学的にもしくは診断上許容される塩もしくは溶媒和物を含む。
【0063】
式IAおよびIBの好ましいコンジュゲートは、
(i)存在する場合、FAPおよびFAPが、各々独立して、本明細書で特定される式Iの好ましいコンジュゲートについて定義されたFAPリガンドを表し、
(iii)Lが、本明細書で特定される任意選択で置換されたリンカー基を表し、
(iii)SIFAが、本明細書で特定される式Iの好ましいコンジュゲートについて定義されたとおりである、コンジュゲートを含む。
【0064】
好適には、式IAおよびIBの非常に好ましいコンジュゲートは、
(i)存在する場合、FAPおよびFAPが、各々独立して、任意選択で置換されたピロリジニル、キノリニル、イソキノリニル、およびキナゾリニルから選択される1つまたは複数の複素環式基を含むFAPリガンドを表し、
(ii)Lが、式Iのコンジュゲートについて定義された任意選択で置換されたリンカー基を表し、
(iii)SIFAが、フェニル基を含むC~C10の本質的にヒドロカルビル基を含み、このフェニル基が、単一のフッ素原子と共有結合し、かつ2つのC~C10アルキル基と共有結合したケイ素原子を含むフッ化ケイ素官能基によってパラ置換されており、このSIFA部分が、18Fで任意選択で標識されている、コンジュゲートを含む。
【0065】
代替的な好ましい実施形態では、本発明のコンジュゲートは、aが、1または2であり、bが、1であり、cが、0である、式Iのコンジュゲートを含み、式ICおよびID:
【0066】
【化3】
【0067】
[式中、存在する場合、FAPおよびFAP、SIFAならびにLは、式IAおよびIBのコンジュゲートについて定義されたとおりであり、CMは、式(I)のコンジュゲートについて定義されたとおりである]のコンジュゲート、またはその薬学的にもしくは診断上許容される塩もしくは溶媒和物を含む。
【0068】
式ICおよびIDの好ましいコンジュゲートは、CMが、TRAP、DOTAおよびDOTAGAから選択され、このCMが、本明細書で特定される放射性金属カチオンまたは非放射性カチオンで任意選択で置換され、特に68Ga、64Cu、177Lu、90Yまたは225Acカチオンで任意選択で置換されている、コンジュゲートを含む。
【0069】
式ICおよびIDのより好ましいコンジュゲートは、
(i)存在する場合、FAPおよびFAPが、各々独立して、本明細書で特定される式IAおよびIBの好ましいコンジュゲートについて定義されたFAPリガンドを表し、
(ii)SIFAが、本明細書で特定される式IAの好ましいコンジュゲートについて定義されたとおりであり、
(iii)Lが、式Iのコンジュゲートについて定義された任意選択で置換されたリンカー基を表し、
(iv)CMが、TRAP、DOTAおよびDOTAGAから選択され、このCMが、本明細書で特定される放射性金属カチオンまたは非放射性カチオンで任意選択で置換され、特に68Ga、64Cu、177Lu、90Yまたは225Acカチオンで任意選択で置換されている、コンジュゲートを含む。
【0070】
好適には、式ICおよびIDの非常に好ましいコンジュゲートは、
(i)存在する場合、FAPおよびFAPが、各々独立して、任意選択で置換されたピロリジニル、キノリニル、イソキノリニル、およびキナゾリニルから選択される1つまたは複数の複素環式基を含むFAPリガンドを表し、
(ii)Lが、本明細書で特定される任意選択で置換されたリンカー基を表し、
(iii)SIFAが、フェニル基を含むC~C10の本質的にヒドロカルビル基を含み、このフェニル基が、単一のフッ素原子と共有結合し、かつ2つのC~C10アルキル基と共有結合したケイ素原子を含むフッ化ケイ素官能基によってパラ置換されており、このSIFA部分が、18Fで任意選択で標識されており、
(iv)CMが、TRAP、DOTAおよびDOTAGAから選択され、このCMが、本明細書で特定される放射性金属カチオンまたは非放射性カチオンで任意選択で置換され、特に68Ga、64Cu、177Lu、90Yまたは225Acカチオンで任意選択で置換されている、コンジュゲートを含む。
【0071】
さらなる代替的な好ましい実施形態では、本発明のコンジュゲートは、aが、1であり、bが、1であり、cが、1である、式Iのコンジュゲートを含み、式IE:
【0072】
【化4】
【0073】
[式中、FAP、SIFA、CMおよびLは、各々、式ICのコンジュゲートについて定義されたとおりであり、PSMAは、式Iの化合物について定義されたとおりである]のコンジュゲート、またはその薬学的にもしくは診断上許容される塩もしくは溶媒和物を含む。
【0074】
式IEの好ましいコンジュゲートは、PSMAが、本明細書で特定される式PSMA1、PSMA2、PSMA3、PSMA4およびPSMA5によって表される構造から選択される、コンジュゲートを含む。
【0075】
式IEのより好ましいコンジュゲートは、PSMAが、本明細書で特定される式PSMA1、PSMA2、PSMA3、PSMA4およびPSMA5によって表される構造から選択され、CMが、TRAP、DOTAおよびDOTAGAから選択され、このCMが、本明細書で特定される放射性金属カチオンまたは非放射性カチオン、特に68Ga、64Cu、177Lu、90Yまたは225Acカチオンで任意選択で置換されている、コンジュゲートを含む。
【0076】
式IEのさらにより好ましいコンジュゲートは、
(i)FAPが、独立して、本明細書で特定される式ICの好ましいコンジュゲートについて定義されたFAPリガンドを表し、
(iii)Lが、本明細書で特定される任意選択で置換されたリンカー基を表し、
(iii)SIFAが、本明細書で特定される式ICの好ましいコンジュゲートについて定義されたとおりであり、
(iv)PSMAが、本明細書で特定される式PSMA1、PSMA2、PSMA3、PSMA4およびPSMA5によって表される構造から選択され、
(v)CMが、TRAP、DOTAおよびDOTAGAから選択され、このCMが、本明細書で特定される放射性金属カチオンまたは非放射性カチオン、特に68Ga、64Cu、177Lu、90Yまたは225Acカチオンで任意選択で置換されている、コンジュゲートを含む。
【0077】
好適には、式IEの非常に好ましいコンジュゲートは、
(i)FAPが、独立して、任意選択で置換されたピロリジニル、キノリニル、イソキノリニル、およびキナゾリニルから選択される1つまたは複数の複素環式基を含むFAPリガンドを表し、
(ii)Lが、本明細書で特定される任意選択で置換されたリンカー基を表し、
(iii)SIFAが、フェニル基を含むC~C10の本質的にヒドロカルビル基を含み、このフェニル基が、単一のフッ素原子と共有結合し、かつ2つのC~C10アルキル基と共有結合したケイ素原子を含むフッ化ケイ素官能基によってパラ置換されており、このSIFA部分が、18Fで任意選択で標識されており、
(iv)PSMAが、本明細書で特定される式PSMA1、PSMA2、PSMA3、PSMA4およびPSMA5によって表される構造から選択され、
(v)CMが、TRAP、DOTAおよびDOTAGAから選択され、このCMが、本明細書で特定される放射性金属カチオンまたは非放射性カチオンで任意選択で置換され、特に68Ga、64Cu、177Lu、90Yまたは225Acカチオンで任意選択で置換されている、コンジュゲートを含む。
【0078】
さらなる代替的な実施形態では、本発明の代替的な好ましいコンジュゲートは、aが、1または2であり、bが、0であり、cが、1である、式Iのコンジュゲートを含み、式IFおよびIG:
【0079】
【化5】
【0080】
[式中、存在する場合、FAPおよびFAP、SIFAならびにLは、式IAおよびIBのコンジュゲートについて定義されたとおりであり、PSMAは、式IEのコンジュゲートについて定義されたとおりである]のコンジュゲート、またはその薬学的にもしくは診断上許容される塩もしくは溶媒和物を含む。
【0081】
式IFおよびIGの好ましいコンジュゲートは、
(i)存在する場合、FAPおよびFAPが、各々独立して、本明細書で特定される式IAおよびIBの好ましいコンジュゲートについて定義されたFAPリガンドを表し、
(iii)Lが、本明細書で特定される任意選択で置換されたリンカー基を表し、
(iii)SIFAが、本明細書で特定される式IAおよびIBの好ましいコンジュゲートについて定義されたとおりであり、
(iv)PSMAが、本明細書で特定される式PSMA1、PSMA2、PSMA3、PSMA4およびPSMA5によって表される構造から選択される、コンジュゲートを含む。
【0082】
好適には、式IFおよびIGの非常に好ましいコンジュゲートは、
(i)存在する場合、FAPおよびFAPが、各々独立して、任意選択で置換されたピロリジニル、キノリニル、イソキノリニル、およびキナゾリニルから選択される1つまたは複数の複素環式基を含むFAPリガンドを表し、
(ii)Lが、本明細書で特定される任意選択で置換されたリンカー基を表し、
(iii)SIFAが、フェニル基を含むC~C10の本質的にヒドロカルビル基を含み、このフェニル基が、単一のフッ素原子と共有結合し、かつ2つのC~C10アルキル基と共有結合したケイ素原子を含むフッ化ケイ素官能基によってパラ置換されており、このSIFA部分が、18Fで任意選択で標識されており、
(iv)PSMAが、本明細書で特定される式PSMA1、PSMA2、PSMA3、PSMA4およびPSMA5によって表される構造から選択される、コンジュゲートを含む。
【0083】
本発明の非常に好ましいコンジュゲートは、式IA、IB、ICおよびIDのコンジュゲートによって代表される、aが、1または2であり、bが、0または1であり、cが、0である、式Iのコンジュゲートを含む。本発明の特に好ましいコンジュゲートは、式ICのコンジュゲートによって代表される、aが、1であり、bが、1であり、cが、0である、式Iのコンジュゲートを含む。
【0084】
本発明のコンジュゲートは、式IA、IC、IEおよびIFのコンジュゲートによって例示される単一のFAPリガンド、式IB、IDおよびIGのコンジュゲートによって例示される2つのFAPリガンド、または3つ以上のFAPリガンドを含んでもよい。コンジュゲートが2つ以上のFAPリガンドを含む場合、前記FAPリガンドの各々は、同じであっても異なっていてもよく、好ましくは、前記FAPリガンドの各々は、同一である。したがって、式IB、ICおよびIGのコンジュゲートにおいて、FAPは、好ましくは、FAPと同じである。
【0085】
本発明の一部の実施形態では、式IE、IFおよびIGのコンジュゲートによって例示されるとおり、コンジュゲートは、FAPに結合することができる1つまたは複数のリガンドに加えて、PSMAに結合することができる1つまたは複数のリガンドを含んでもよい。そのようなコンジュゲートは、FAP発現の上昇および前立腺特異的膜抗原(PSMA)発現の上昇に関連する医学的適応症のための「二重の」放射性治療薬および/または放射性診断薬として有用である。
【0086】
本発明のさらなる態様によれば、下記に例示される本発明のコンジュゲートを調製するためのプロセスが提供される。
次のプロセスは、本発明のコンジュゲートを得るために採用され得る一般的合成手順を例示する。
【0087】
式IAおよびIBのコンジュゲートによって例示される、単一分子内に、2つの別個の部分:(a)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができる1つまたは複数のリガンド、および(b)ケイ素とフッ素原子との間に共有結合を含むフッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分を含む本発明のコンジュゲートは、(a)前記1つまたは複数のFAPリガンドおよび(b)前記SIFA部分の各々を共通のリンカー基Lとカップリングさせて、単一分子を形成することによって調製されてもよい。
【0088】
式ICおよびIDのコンジュゲートによって例示される、単一分子内に、3つの別個の部分:(a)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができる1つまたは複数のリガンド、(b)ケイ素とフッ素原子との間に共有結合を含むフッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分、および(c)キレート化された非放射性カチオンまたは放射性カチオンを任意選択で含有する1つまたは複数のキレート部分(CM)を含む本発明のコンジュゲートは、(a)前記1つまたは複数のFAPリガンド、(b)前記SIFA部分および(c)前記1つまたは複数のキレート部分(CM)の各々を共通のリンカー基Lとカップリングさせて、単一分子を形成することによって調製されてもよい。
【0089】
式IFおよびIGのコンジュゲートによって例示される、単一分子内に、3つの別個の部分:(a)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができる1つまたは複数のリガンド、(b)ケイ素とフッ素原子との間に共有結合を含むフッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分、および(d)前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合することができる1つまたは複数のリガンドを含む本発明のコンジュゲートは、(a)前記1つまたは複数のFAPリガンド、(b)前記SIFA部分および(d)前記1つまたは複数のPSMAリガンドの各々を共通のリンカー基Lとカップリングさせて、単一分子を形成することによって調製されてもよい。
【0090】
式IEのコンジュゲートによって例示される、単一分子内に、4つの別個の部分:(a)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができる1つまたは複数のリガンド、(b)ケイ素とフッ素原子との間に共有結合を含むフッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分、(c)キレート化された非放射性または放射性カチオンを任意選択で含有する1つまたは複数のキレート部分(CM)、および(d)前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合することができる1つまたは複数のリガンドを含む本発明のコンジュゲートは、(a)前記1つまたは複数のFAPリガンド、(b)前記SIFA部分の各々を共通のリンカー基と、(c)前記1つまたは複数のキレート部分(CM)および(d)前記1つまたは複数のPSMAリガンドを共通のリンカー基Lとカップリングさせて、単一分子を形成することによって調製されてもよい。
【0091】
本発明のコンジュゲートを調製するための好ましいプロセスは、共通のリンカー基Lと共有結合した本明細書で特定されるFAPリガンドを含むコンジュゲート前駆体化合物を用意するステップと、その後、(b)前記SIFA部分、(c)前記1つまたは複数の任意選択のキレート部分(CM)、前記1つまたは複数の任意選択のPSMAリガンド、および前記1つまたは複数のさらなる任意選択の追加のFAPリガンドをリンカー基コンジュゲート前駆体化合物とカップリングさせるステップとを含む。
【0092】
前記1つまたは複数のFAPリガンドおよび前記SIFA部分、ならびに存在する場合、前記1つまたは複数の任意選択のCM部分および/または前記1つまたは複数の任意選択のPSMAリガンドとリンカー基とのカップリング反応は、当業者に周知である従来の結合形成技法、例えば、従来のアミド、エステル、エーテル、チオエーテル、チオエステル結合形成技法の使用によって達成されてもよい。用いられ得る典型的な手順は、本明細書に記載されたものを含む。さらに、前記1つまたは複数のFAPリガンドおよび前記SIFA部分、ならびに存在する場合、前記任意選択の1つまたは複数のCM部分および/または前記任意選択の1つまたは複数のPSMAリガンドとリンカー基とのカップリング反応は、いかなる順序で実施されてもよいことが認識されよう。本発明のコンジュゲートは、従来の技法、例えば、結晶化、カラムクロマトグラフィーおよびHPLCを含むクロマトグラフィーを使用して、その反応混合物から単離されてもよい。
【0093】
本発明のコンジュゲートは、動物またはヒト対象における様々ながんの処置および/または診断を含む、FAP発現の上昇に関連する多様な治療および/または診断分野において有用である。好適には、本発明のコンジュゲートの治療上および/または診断上有効な量が動物またはヒト対象に投与される。
【0094】
本発明のコンジュゲートは、ヒト組織におけるFAP発現の上昇に関連する医学的適応症の処置または診断において有用であり得る。本発明のコンジュゲートは、がんの処置または診断において有用であり得る。
【0095】
本発明のコンジュゲートは、動物またはヒト対象における線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の過剰発現によって特徴付けられる疾患の診断または処置において有用であり得る。線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の過剰発現によって特徴付けられる疾患は、がん、慢性炎症、アテローム性動脈硬化症、線維症、組織リモデリングおよびケロイド障害からなる群から選択されてもよい。がんは、乳がん、膵臓がん、小腸がん、結腸がん、直腸がん、肺がん、頭頸部がん、卵巣がん、肝細胞癌、食道がん、下咽頭がん、鼻咽頭がん、喉頭がん、骨髄腫細胞、膀胱がん、胆管細胞癌、腎明細胞癌、神経内分泌腫瘍、腫瘍原性骨軟化症、肉腫、CUP(原発不明癌)、胸腺癌、類腱腫、神経膠腫、星細胞腫、子宮頸癌および前立腺がんからなる群から選択されてもよい。したがって、FAP結合部分(すなわち、FAPリガンド)を有する本発明のコンジュゲートは、FAP発現を有するがんの診断、イメージングまたは処置において使用され得る。
【0096】
好適には、本発明のコンジュゲートが前記任意選択の(d)1つまたは複数のPSMAリガンドをさらに含む場合、本発明の前記コンジュゲートは、動物またはヒト対象における線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の過剰発現、またはPSMAの過剰発現、またはFAPおよびPSMAの両方の過剰発現によって特徴付けられる疾患の診断または処置において有用であり得る。PSMAの過剰発現によって特徴付けられる疾患は、前立腺がんを含むだけではない。PSMA発現を実証することが知られている非前立腺がんは、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、および腎細胞癌を含む。したがって、PSMA結合部分(すなわち、PSMAリガンド)を有する本明細書で特定される本発明の任意のコンジュゲートは、PSMA発現を有するがんの診断、イメージングまたは処置において使用され得る。
【0097】
本発明のコンジュゲートは、(i)より小さい原発腫瘍を検出することにより、より早期の診断を可能にすること、(ii)より小さい転移を検出することにより、腫瘍病期のより良好な評価を利用可能にすること、(iii)正確な術中誘導を実現し、腫瘍組織の外科的完全切除を容易にすること、(iv)炎症と腫瘍組織とのより良好な識別を実現すること、(v)腫瘍を有する患者のより正確な病期分類を実現すること、(vi)抗腫瘍治療後の腫瘍病変のより良好な追跡調査を実現することにおいて、ならびに(vii)診断および治療のためのセラノスティック剤(theranostic agent)として、有用であり得る。さらに、本発明のコンジュゲートは、非悪性疾患、例えば慢性炎症、アテローム性動脈硬化症、線維症、組織リモデリングおよびケロイド障害の診断および処置のために使用され得る。
【0098】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に開示された本発明の1種または複数のコンジュゲートを含むまたはそれからなる医薬組成物を提供する。好適には、医薬組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤を含んでもよい。
【0099】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に開示された本発明の1種または複数のコンジュゲートを含むまたはそれからなる診断用組成物を提供する。好適には、診断用組成物は、診断上許容される担体、賦形剤および/または希釈剤を含んでもよい。
【0100】
さらなる態様では、本発明は、医学における使用のための、本発明の前記1種または複数のコンジュゲート、または本発明の前記コンジュゲートを含む組成物、特に医薬もしくは診断用組成物を提供する。
【0101】
医学における好ましい使用は、核医学、例えば疾患組織における好ましくはFAPの過剰発現に関連する疾患の核診断イメージングおよび/もしくは病期分類(核分子イメージングとも名付けられる)、ならびに/または標的化放射線治療におけるものである。
【0102】
本発明のコンジュゲートが前記任意選択の(d)1つまたは複数のPSMAリガンドをさらに含む場合、医学における前記好ましい使用はさらに、疾患組織における好ましくはFAPおよび/またはPSMAの過剰発現に関連する疾患の核診断イメージングおよび/もしくは病期分類、ならびに/または標的化放射線治療に及び得ることが認識されよう。したがって、本発明のそのようなコンジュゲートは、疾患組織における好ましくはFAPおよびPSMAの両方の過剰発現に関連する疾患の診断イメージングおよび/もしくは病期分類の組合せ、ならびに/または標的化放射線治療の組合せに有用である。
【0103】
さらなる態様では、本発明は、動物またはヒト対象におけるがんの処置における使用のための、本明細書に定義された本発明の前記1種または複数のコンジュゲート、または本明細書に定義された本発明の前記コンジュゲートを含む組成物を提供する。
【0104】
さらなる態様では、本発明は、動物またはヒト対象におけるFAPの過剰発現によって特徴付けられる疾患の処置における使用のための、特にFAPの過剰発現によって特徴付けられる動物またはヒト対象におけるがんの処置における使用のための、本明細書に定義された本発明の前記1種または複数のコンジュゲート、または本明細書に定義された本発明の前記コンジュゲートを含む組成物を提供する。
【0105】
さらなる態様では、本発明は、動物またはヒト対象におけるFAPの過剰発現、またはPSMAの過剰発現、またはFAPおよびPSMAの両方の過剰発現によって特徴付けられる疾患の処置における使用のための、特にFAPおよびPSMAの両方の過剰発現によって特徴付けられる動物またはヒト対象におけるがんの処置における使用のための、前記任意選択の(d)1つまたは複数のPSMAリガンドを含む本明細書に定義された本発明の前記1種または複数のコンジュゲート、または本発明の前記コンジュゲートを含む組成物を提供する。
【0106】
さらなる態様では、本発明は、動物またはヒト対象における診断またはイメージング剤としての使用のための、特にFAPの過剰発現に関連する疾患、好ましくはがんの診断またはイメージング剤としての使用のための、本明細書に定義された本発明の前記1種または複数のコンジュゲート、または本発明の前記コンジュゲートを含む組成物を提供する。
【0107】
さらなる態様では、本発明は、動物またはヒト対象における診断またはイメージング剤としての使用のための、特にFAPの過剰発現および/またはPSMAの過剰発現に関連する疾患、好ましくはがんの診断またはイメージング剤としての使用のための、前記任意選択の(d)1つまたは複数のPSMAリガンドを含む本明細書に定義された本発明の前記1種または複数のコンジュゲート、または本明細書に定義された本発明の前記コンジュゲートを含む組成物を提供する。
【0108】
好適には、さらなる態様では、本発明は、がん診断またはイメージング剤としての使用のための、本明細書に定義された本発明の前記1種または複数のコンジュゲート、または本発明の前記コンジュゲートを含む組成物を提供する。
【0109】
好ましい適応は、FAPの過剰発現に関連するがんの検出または病期分類であり、前立腺がんが、特に好ましい適応症である。
好適には、さらなる態様では、本発明は、外科手術もしくは治療によってヒトもしくは動物の身体を処置するための方法またはヒトもしくは動物の身体に対して実施される診断方法であって、本明細書に定義された本発明の前記1種または複数のコンジュゲート、または本明細書に定義された本発明の前記コンジュゲートを含む組成物の治療上または診断上有効な量を、ヒトまたは動物対象に投与するステップを含む方法を提供する。好適には、処置のための方法は、がんのものである。
【0110】
定義
次の定義は、限定ではなく例示の目的で提供される。
「FAPリガンド」とは、哺乳動物、特にヒトの組織において発現される線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができる1つまたは複数の官能基、例えば、有機官能基を含む化学的部分を意味する。本発明のコンジュゲートの例示的なFAPリガンドは、本明細書で特定される。
【0111】
「SIFA部分」とは、ケイ素とフッ素原子との間に共有結合を含み、18Fで任意選択で標識されたフッ化ケイ素アクセプター部分を意味する。本発明のコンジュゲートの例示的なSIFA部分は、本明細書で特定される。
【0112】
「キレート部分」(CM)は、とりわけ、(i)8から20個の環原子を有し、そのうち2個以上が、酸素原子および窒素原子から選択されるヘテロ原子である、大環状環構造、(ii)8から20個の主鎖原子を有し、そのうち2個以上が、酸素原子および窒素原子から選択されるヘテロ原子である、非環状の開鎖キレート構造、(iii)第四級炭素原子を含有する分枝状キレート構造を含む。本発明のコンジュゲートの例示的なキレート部分は、本明細書で特定される。
【0113】
「PSMAリガンド」とは、哺乳動物、特にヒトの組織において発現される前立腺特異的膜抗原に結合することができる1つまたは複数の官能基、例えば、有機官能基を含む化学的部分を意味する。本発明のコンジュゲート中の例示的なPSMAリガンドは、本明細書で特定され、かつ/またはWO2019/020831、WO2020/157177およびWO2020/157184に開示されている。
【0114】
「ヒドロカルビル」とは、炭素および水素原子を含有し、炭素原子を介して分子の残りと結合した基またはラジカルを意味する。これは、基の本質的に炭化水素の性質および特性を変更しないことを条件として、ヘテロ原子、すなわち、炭素および水素以外の原子を含有してもよい。好ましいヒドロカルビル基およびラジカルは、水素および炭素のみを含む。好適には、ヒドロカルビルという用語は、脂肪族および芳香族基およびラジカルを包摂する。好ましいヒドロカルビル基は、脂肪族基およびラジカル、例えばアルキル、アルキレン、アルケニル基およびラジカルを含む。
【0115】
「アルキル」とは、二重または三重結合を含有しない一価のヒドロカルビル基を指す。アルキル基は、直鎖状、分枝状、環状、非環状、および/または部分環状/非環状であってもよい。アルキル基は、1つまたは複数の置換基で任意選択で置換されていてもよい。好適には、C~C10アルキル基という用語は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルおよびデシルを網羅する。好ましいアルキル基は、非環状アルキル基である。
【0116】
「アリール」とは、6~10員の炭素環式芳香族基、例えばフェニルおよびナフチルを指す。本明細書で特定される各「アリール」基は、ハロ、シアノ、ニトロ、C~Cアルキル、C(O)R21、C(O)OR22、C(O)NR2324、NR2526から選択される1つまたは複数の置換基で任意選択で置換されていてもよく、ここで、R21、R22、R23、R24、R25およびR26は、各々独立して、水素またはC~Cアルキルを表す。
【0117】
「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを指す。
「含む」または任意の同源語は、記述された特徴、ステップまたは整数または成分の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、ステップ、整数、成分またはそれらの群の存在または追加を排除するものではなく、「からなる」および「から本質的になる」という表現または同源語は、「含む」または同源語の範囲内に包摂される場合があり、ここで、「から本質的になる」は、化合物、組成物の特性またはそれが言及する他の特徴に実質的に影響を及ぼさない物質を含むことを許容する。
【0118】
本発明のコンジュゲートは、互変異性を示してもよい。本発明のコンジュゲートのすべての互変異性形態が、本発明の範囲内に含まれる。
本発明のコンジュゲートはまた、1個または複数の不斉炭素原子を含有してもよく、光学および/またはジアステレオ異性(diastereoisomerim)を示してもよい。ジアステレオ異性体は、従来の技法によって、例えば、分別結晶化またはクロマトグラフィーによって分離されてもよい。様々な立体異性体は、従来の技法、例えば、分別結晶化および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、ラセミ混合物または他の混合物を分離することによって単離されてもよい。すべての立体異性体が、本発明のコンジュゲートの範囲内に含まれる。
【0119】
さらに、本明細書に定められた任意の数量、範囲および比の上限および下限は、独立して組み合わされてもよく、「おおよそ」当該数量、範囲または比の限界を含むことが理解される。
【0120】
また、本発明の各態様、例えば、本発明のコンジュゲートのあらゆる特徴は、本発明の他のあらゆる前記態様の好ましい特徴を表すと考えられ得ることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0121】
図1】放射性合成の最後における実施例11([18F]-Ga-(S,R,R)-SiFA-FAP-1)の品質管理を示す図である。
図2】U87-MG腫瘍担持マウスの実施例11([18F]-Ga-(S,R,R)-SiFA-FAP-1)のPETイメージング取り込み(表2)を示す図である。マウスに[18F]-Ga-(S,R,R)-SiFA-FAP-1(8±1.5MBq)を注射し、放射性トレーサー投与の60分後にイメージングした。筋肉および腫瘍における放射性トレーサーの平均取り込み(%ID/cm)、平均値±SDが示されている(n=3)。放射性トレーサーの取り込みは、筋肉と比較して腫瘍において4倍超高かった。
図3】U87-MG腫瘍担持マウスにおける実施例11([18F]-Ga-(S,R,R)-SiFA-FAP-1)の生体内分布(表3aおよび3b)を示す図である。マウスに実施例11([18F]-Ga-(S,R,R)-SiFA-FAP-1)(8±1.5MBq)を注射した。放射性トレーサー注射の80分後に、組織中の放射能をγ計数によって測定した。放射性トレーサーの生体内分布(%ID/g)、平均値±SDが示されている(n=4)。生体内分布分析は、筋肉と比較して腫瘍において8倍高い放射性トレーサーの取り込みを実証した。
【発明を実施するための形態】
【0122】
発明の詳細な説明
特に、本発明は、式(1)、(1a)または(1b):
【0123】
【化6】
【0124】
のコンジュゲート、またはその薬学的にもしくは診断上許容される塩もしくは溶媒和物に関し、式中、
FAPは、本明細書に定義された線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができるリガンドを表し、
Lは、本明細書に定義された任意選択で置換された多価のリンカー基であり、
式1aおよび1bのコンジュゲート中のQおよびQは、同じであっても異なっていてもよい任意選択で置換されたリンカー基であり、
SIFAは、ケイ素とフッ素原子との間に共有結合を含むフッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分であって、SIFAが、18Fを任意選択で含む、SIFA部分を表し、
CMは、本明細書に定義されたキレート化された非放射性または放射性カチオンを任意選択で含有するキレート部分を表す。
【0125】
本発明のコンジュゲートは、単一のFAPリガンド(すなわち、式(1)のコンジュゲート)、2つのFAPリガンド(すなわち、式(1a)もしくは(1b))または3つ以上のFAPリガンドを含んでもよく、これらは、同じであっても異なっていてもよい。
【0126】
本発明の一部の実施形態では、コンジュゲートは、FAPに結合することができる1つまたは複数のリガンドに加えて、PSMAに結合することができる1つまたは複数のリガンドを含んでもよい。
【0127】
式1aおよび1bのコンジュゲート中の集合的にQ-L-Qは、一緒になって、本明細書に定義された多価のリンカー基を表すことが理解される。
コンジュゲートは、式(4)、(4a)または(4b):
【0128】
【化7】
【0129】
のコンジュゲート、またはその薬学的にもしくは診断上許容される塩もしくは溶媒和物[式中、X、XおよびXは、二価の連結基を表し、ここで、X、XおよびXは、それらが付着している基と一緒になって、1つまたは複数のアミド結合を含む]であってもよい。
【0130】
は、1つまたは複数のアミド結合を含む任意選択で置換された5~30個の原子のリンカーであってもよい。Xは、1つまたは複数のアミド結合を含む任意選択で置換された5~30個の原子のリンカーであってもよく、ここで、任意選択の置換基は、-X-FAP、COHおよびCHOHから選択される。Xは、1つまたは複数のアミド結合を含む任意選択で置換された10~20個の原子のリンカーであってもよい。Xは、1つまたは複数のアミド結合を含む任意選択で置換された10~20個の原子のリンカーであってもよく、ここで、任意選択の置換基は、-X-FAP、COHおよびCHOHから選択される。
【0131】
は、1つまたは複数のアミド結合を含む任意選択で置換された1~30個の原子のリンカーであってもよい。Xは、1つまたは複数のアミド結合を含む任意選択で置換された1~10個の原子のリンカーであってもよい。Xは、1つまたは複数のアミド結合を含む任意選択で置換された1~5個の原子のリンカーであってもよい。式(4)または(4b)の化合物においては、Xはまた、-NH-であるかまたは結合を表してもよい。
【0132】
は、1つまたは複数のアミド結合を含む任意選択で置換された5~30個の原子のリンカーであってもよい。Xは、1つまたは複数のアミド結合を含む任意選択で置換された5~30個の原子のリンカーであってもよく、ここで、任意選択の置換基は、COHおよびCHOHから選択される。Xは、1つまたは複数のアミド結合を含む任意選択で置換された10~20個の原子のリンカーであってもよい。Xは、1つまたは複数のアミド結合を含む任意選択で置換された10~20個の原子のリンカーであってもよく、ここで、任意選択の置換基は、COHおよびCHOHから選択される。
【0133】
は、式:
-[(CR1112(NHCO)(CONH)
[式中、各繰り返し単位内で独立して、
nは、1から10であり、
mは、0または1であり、
pは、0または1であり、ここで、mおよびpは、両方が1であることはなく、
qは、1から8であり、
11およびR12は、各出現において、H、COHおよびCHOHから独立して選択され、
ここで、R11およびR12の1回の出現は、-X-FAPであってもよい]の基であってもよい。
【0134】
は、式:
-[(CR1112(NHCO)(CONH)
[式中、各繰り返し単位内で独立して、
nは、1から10であり、
mは、0または1であり、
pは、0または1であり、ここで、mおよびpは、両方が1であることはなく、
qは、1から8であり、
11およびR12は、各出現において、H、COHおよびCHOHから独立して選択され、
ここで、R11およびR12の1回の出現は、-X-FAPであってもよい]の基であってもよい。
【0135】
は、式:
-[(CR1112(NHCO)(CONH)
[式中、各繰り返し単位内で独立して、
nは、1から10であり、
mは、0または1であり、
pは、0または1であり、ここで、mおよびpは、両方が1であることはなく、
qは、1から8であり、
11およびR12は、各出現において、H、COHおよびCHOHから独立して選択される]の基であってもよい。
【0136】
各繰り返し単位内で独立して、nは、1~10であり得る。nは、1~5であり得る。nは、1~3であり得る。nは、1であり得る。nは、2であり得る。nは、3であり得る。nは、4であり得る。nは、5であり得る。nは、6であり得る。nは、7であり得る。nは、8であり得る。nは、9であり得る。nは、10であり得る。
【0137】
各繰り返し単位内で独立して、mは、0であり得、pは、1であり得る。mは、1であり得、pは、0であり得る。mおよびpは、両方が0であり得る。
qは、1~8であり得る。qは、1~5であり得る。qは、1~3であり得る。qは、1であり得る。qは、2であり得る。qは、3であり得る。qは、4であり得る。qは、5であり得る。qは、6であり得る。qは、7であり得る。qは、8であり得る。
【0138】
は、
-R13-NH-C(O)-R14-C(O)-NH-R15-NH-C(O)-、および
-R13-NH-C(O)-R14-NH-C(O)-R15-NH-C(O)-R16-NH-C(O)-
[式中、R13、R14、R15およびR16は、独立して、C1~10アルキルであり、これらのアルキル基は、各々、-H、-OH、-OCH、-CHOH、-COH、-COCH、-NH、-CHNHおよび-NHC(NH)NHから独立して選択される1つまたは複数の置換基によって置換されていてもよく、ここで、R13、R14、R15およびR16の1つは、-X-FAPで置換されていてもよい]から選択され得る。
【0139】
は、
-CH(COOH)-R17-NH-C(O)-R18-C(O)-NH-R19-CH(COOH)-NH-C(O)-、および
-CH(COOH)-R17-NH-C(O)-R18-NH-C(O)-R19-NH-C(O)-CH(CHOH)-NH-C(O)-
[式中、R17、R18およびR19は、独立して、C1~6アルキルである]から選択され得る。
【0140】
は、
-R13-NH-C(O)-R14-C(O)-NH-R15-NH-C(O)-、および
-R13-NH-C(O)-R14-NH-C(O)-R15-NH-C(O)-R16-NH-C(O)-
[式中、R13、R14、R15およびR16は、独立して、C1~10アルキルであり、これらのアルキル基は、各々、-H、-OH、-OCH、-CHOH、-COH、-COCH、-NH、-CHNHおよび-NHC(NH)NHから独立して選択される1つまたは複数の置換基によって置換されていてもよく、ここで、R13、R14、R15およびR16の1つは、-X-FAPで置換されていてもよい]から選択され得る。
【0141】
は、-NH-、-NH-C(O)-、-NH-C(O)-CH-、-NH-C(O)-CHCH-または-NH-C(O)-CHCH-CH(COOH)-であり得、これらの各々は、-X-FAPで置換されていてもよい。式(4)または(4b)の化合物においては、Xは、結合であり得る。
【0142】
は、
-CH(COOH)-R17-NH-C(O)-R18-C(O)-NH-R19-CH(COOH)-NH-C(O)-、および
-CH(COOH)-R17-NH-C(O)-R18-NH-C(O)-R19-NH-C(O)-CH(CHOH)-NH-C(O)-
[式中、R17、R18およびR19は、独立して、C1~6アルキルである]から選択され得る。
【0143】
コンジュゲートは、式(5)、(5a)、(5b)、(5c)または(5d):
【0144】
【化8】
【0145】
のコンジュゲート、またはその塩[式中、FAPは、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができるリガンドを表し、SIFAは、フッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分を表し、CMは、キレート部分を表し、FAPおよびCMを連結するリンカーは、任意の利用可能な位置において-X-FAPで任意選択で置換されていてもよい]であってもよい。
【0146】
コンジュゲートは、式(5)、(5a)、(5b)、(5c)または(5d):
【0147】
【化9】
【0148】
のコンジュゲート、またはその塩[式中、FAPは、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができるリガンドを表し、SIFAは、フッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分を表し、CMは、キレート部分を表す]であってもよい。
【0149】
FAPリガンド
本発明のコンジュゲートにおいて、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができるリガンドは、FAPに結合することができる部分を含む官能基であり得る。線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができるリガンドは、置換ピロリジン環を含み得る。線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができるリガンドは、CNおよび任意選択で1個または複数のF原子で置換されたピロリジン環を含み得る。
【0150】
化合物は、コンジュゲート1つ当たり複数のFAP結合ドメインを含んでもよい。したがって、化合物は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができる2つ以上のリガンドを含んでもよい。
【0151】
線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができるリガンドは、式(2):
【0152】
【化10】
【0153】
[式中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、H、OH、B(OH)、COH、CN、ハロ、C1~6アルキルおよび-O-C1~6アルキルから独立して選択され、
およびR10は、独立して、HまたはC1~6アルキルである]を有する部分を含み得る。
【0154】
線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができるリガンドは、式(2a):
【0155】
【化11】
【0156】
[式中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、H、OH、B(OH)、COH、CN、ハロ、C1~6アルキルおよび-O-C1~6アルキルから独立して選択され、
およびR10は、独立して、HまたはC1~6アルキルであり、
nは、0から3であり、
Xは、5~10員のN含有単環式または二環式複素環であり、この複素環は、O、NおよびSから選択される1、2または3個のヘテロ原子を任意選択でさらに含み、C1~6アルキル、-O-C1~6アルキル、-S-C1~6アルキルおよび-NR2021から選択される1つから3つの置換基で任意選択で置換されており、ここで、R20およびR21は、HおよびC1~6アルキルから独立して選択される]を有する部分を含み得る。
【0157】
式(2)または(2a)を有する部分を含むコンジュゲートにおいて、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、H、CN、およびFから独立して選択され得る。Rは、H、CNまたはFであり得る。Rは、H、CNまたはFであり得る。Rは、H、CNまたはFであり得る。Rは、H、CNまたはFであり得る。Rは、H、CNまたはFであり得る。Rは、H、CNまたはFであり得る。Rは、H、CNまたはFであり得る。Rは、H、CNまたはFであり得る。特定の化合物は、RおよびRの一方が、CNであり、他方が、Hであり、RおよびRが、HまたはFであり、R、R、RおよびRが、Hであるものを含む。
【0158】
式(2)または(2a)を有する部分を含むコンジュゲートにおいて、RおよびR10は、独立して、HまたはC1~6アルキルであり得る。RおよびR10は、独立して、Hまたはメチルであり得る。
【0159】
式(2a)を有する部分を含むコンジュゲートにおいて、nは、0から3であり得る。nは、0であり得る。nは、1であり得る。nは、2であり得る。nは、3であり得る。
式(2a)を有する部分を含むコンジュゲートにおいて、Xは、
【0160】
【化12】
【0161】
から選択され得る。
特定のコンジュゲートは、
【0162】
【化13-1】
【0163】
【化13-2】
【0164】
[式中、mは、0から10である]からなる群から選択される部分を含んでもよい。
本発明のコンジュゲートにおいて、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができるリガンドは、環状ペプチド部分を含んでもよい。リガンドは、WO2021/005125またはWO2021/005131に記載された環状ペプチド部分を含んでもよい。
【0165】
特定のコンジュゲートは、
【0166】
【化14】
【0167】
からなる群から選択される部分を含んでもよい。
PSMAリガンド
本発明の一部の実施形態は、WO2019/020831に開示されたPSMAリガンドを含む。本発明の一部の実施形態では、前立腺特異的膜抗原に結合することができる1つまたは複数のリガンド(PSMAリガンド)は、次の式PSMA1:
【0168】
【化15】
【0169】
によって表される構造を含み、
式中、mは、2から6の整数、好ましくは2から4、より好ましくは2であり、nは、2から6の整数、好ましくは2から4、より好ましくは2または3であり、R1Lは、CH、NHまたはO、好ましくはNHであり、R3Lは、CH、NHまたはO、好ましくはNHであり、R2Lは、CまたはP(OH)、好ましくはCであり、リガンドは、
【0170】
【化16】
【0171】
の印を付けられた結合を介してコンジュゲートの残部に付着している。
本発明の一部の実施形態では、前立腺特異的膜抗原に結合することができる1つまたは複数のリガンド(PSMAリガンド)は、次の式PSMA2:
【0172】
【化17】
【0173】
によって表される構造を含み、式中、nは、2から6の整数であり、リガンドは、
【0174】
【化18】
【0175】
の印を付けられた結合を介してコンジュゲートの残部に付着している。
本発明の一部の実施形態では、前立腺特異的膜抗原に結合することができる1つまたは複数のリガンド(PSMAリガンド)は、次の式PSMA3:
【0176】
【化19】
【0177】
によって表される構造を含む。
本発明の一部の実施形態では、前立腺特異的膜抗原に結合することができる1つまたは複数のリガンド(PSMAリガンド)は、次の式PSMA4:
【0178】
【化20】
【0179】
によって表される構造を含む。
本発明の一部の実施形態では、前立腺特異的膜抗原に結合することができる1つまたは複数のリガンド(PSMAリガンド)は、次の式PSMA5:
【0180】
【化21】
【0181】
によって表される構造を含む。
本発明のコンジュゲートは、ケイ素とフッ素原子との間に共有結合を含むフッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分を含む。SIFA部分において、フッ素原子は、Fの任意の公知の同位体またはそれらの任意の組合せであり得る。特に、SIFA部分のフッ素原子は、19Fまたは18Fであってもよい。診断イメージングおよび治療については、SIFA部分のフッ素原子は、18Fであってもよい。18Fは、19Fとの同位体交換によって導入され得る。
【0182】
疾患関連標的分子に結合することができるある特定のリガンドは、環状ペプチドであってもよいが、そのような環状ペプチドは、さらなるキレート部分がなければ疎水性SIFA部分の問題が解決されないことから、本明細書で想定されるキレート基ではない。したがって、本発明の化合物は、疾患関連標的分子に結合することができるリガンドに加えて、親水性キレート基を必要とする。親水性キレート基は、SIFA部分の存在によって引き起こされる化合物の疎水性を低減するために必要とされる。
【0183】
SIFA部分
フッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分は、式(3):
【0184】
【化22】
【0185】
によって表される構造を含んでもよく、
式中、Fは、19Fおよび18Fの両方を包含すると理解され、R1SおよびR2Sは、独立して、直鎖状、分枝状または環状のC~C10アルキル基であり、好ましくは、R1SおよびR2Sは、イソプロピルおよびtert-ブチルから選択され、より好ましくは、R1SおよびR2Sは、tert-ブチルであり、R3Sは、1つもしくは複数の芳香族および1つもしくは複数の脂肪族単位ならびに/またはOおよびSから選択される最大3個のヘテロ原子を含んでもよいC~C20炭化水素基であり、好ましくは、R3Sは、芳香族環を含み、1つまたは複数の脂肪族単位を含んでもよいC~C10炭化水素基であり、より好ましくは、R3Sは、フェニル環であり、最も好ましくは、R3Sは、Si含有置換基と
【0186】
【化23】
【0187】
の印を付けられた結合とがパラ位にあるフェニル環であり、SIFA部分は、
【0188】
【化24】
【0189】
の印を付けられた結合を介してコンジュゲートの残部に付着している。
フッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分は、式(3):
【0190】
【化25】
【0191】
によって表される構造を含んでもよく、
式中、Fは、19Fおよび18Fの両方を包含すると理解され、R1SおよびR2Sは、独立して、直鎖状、分枝状または環状のC~C10アルキル基であり、R3Sは、1つもしくは複数の芳香族および/もしくは脂肪族単位ならびに/またはOおよびSから選択される最大3個のヘテロ原子を含むC~C20炭化水素基であり、
SIFA部分は、
【0192】
【化26】
【0193】
の印を付けられた結合を介してコンジュゲートの残部に付着している。
式(3)のSIFA部分を含むコンジュゲートにおいて、R1SおよびR2Sは、直鎖状もしくは分枝状のC1~6アルキル基またはC3~6シクロアルキル基から独立して選択され得る。R1SおよびR2Sは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、sec-ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルから独立して選択され得る。R1SおよびR2Sは、メチルであり得る。R1SおよびR2Sは、イソプロピルであり得る。R1SおよびR2Sは、t-ブチルであり得る。R1Sは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、sec-ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルから選択され得る。R1Sは、メチルであり得る。R1Sは、イソプロピルであり得る。R1Sは、t-ブチルであり得る。R2Sは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、sec-ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルから選択され得る。R2Sは、メチルであり得る。R2Sは、イソプロピルであり得る。R2Sは、t-ブチルであり得る。
【0194】
式(3)のSIFA部分を含むコンジュゲートにおいて、R3Sは、1つもしくは複数の芳香族および/もしくは脂肪族単位ならびに/またはOおよびSから選択される最大3個のヘテロ原子を含むC~C20炭化水素基である。R3Sは、フェニル環であってもよい。R3Sは、
【0195】
【化27】
【0196】
であってもよい。
フッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分は、式(3a)または(3b):
【0197】
【化28】
【0198】
[式中、t-Buは、tert-ブチル基を示し、Fは、19Fおよび18Fの両方を包含すると理解される]によって表される構造を含んでもよい。
キレート部分
本明細書のコンジュゲートにおいて、好ましいキレート部分(CM)は、次の(i)、(ii)または(iii)の少なくとも1つを含む:
(i)8から20個の環原子を有し、そのうち2個以上、より好ましくは3個以上が、酸素原子または窒素原子から選択される、大環状環構造。好ましくは、6個以下の環原子が、酸素原子または窒素原子から選択される。3または4個の環原子が、窒素原子または酸素原子であることが特に好ましい。酸素および窒素原子のうち、窒素原子が優先される。大環状環構造と組み合わせて、好ましいキレート基は、2つ以上、例えば2つから6つ、好ましくは2つから4つのカルボキシル基および/またはヒドロキシル基を含んでもよい。カルボキシル基およびヒドロキシル基のうち、カルボキシル基が優先される。
(ii)8から20個の主鎖(骨格)原子を有し、そのうち2個以上、より好ましくは3個以上が、酸素原子または窒素原子から選択されるヘテロ原子である、非環状の開鎖キレート構造。好ましくは、6個以下の骨格原子が、酸素原子または窒素原子から選択される。酸素および窒素原子のうち、窒素原子が優先される。より好ましくは、開鎖キレート構造は、酸素原子または窒素原子から選択される2個以上、より好ましくは3個以上のヘテロ原子、ならびに2つ以上、例えば2つから6つ、好ましくは2つから4つのカルボキシル基および/またはヒドロキシル基の組合せを含む構造である。カルボキシル基およびヒドロキシル基のうち、カルボキシル基が優先される。
(iii)第四級炭素原子を含有する分枝状キレート構造。好ましくは、第四級炭素原子は、コンジュゲートの残部に加えて、3つの同一のキレート基で置換されている。置換キレート基は、アミドを含み得る。置換キレート基は、芳香族基を含み得る。置換キレート基は、ヒドロキシピリジノンを含み得る。
【0199】
キレート部分は、
(i)8から20個の環原子を有し、そのうち2個以上が、酸素原子および窒素原子から選択されるヘテロ原子である、大環状環構造、
(ii)8から20個の主鎖原子を有し、そのうち2個以上が、酸素原子および窒素原子から選択されるヘテロ原子である、非環状の開鎖キレート構造、または
(iii)第四級炭素原子を含有する分枝状キレート構造
の少なくとも1つを含んでもよい。
【0200】
キレート部分(CM)は、ビス(カルボキシメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン(CBTE2a)、シクロヘキシル-1,2-ジアミン四酢酸(CDTA)、4-(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカ-1-イル)-メチル安息香酸(CPTA)、N’-[5-[アセチル(ヒドロキシ)アミノ]ペンチル]-N-[5-[[4-[5-アミノペンチル-(ヒドロキシ)アミノ]-4-オキソブタノイル]アミノ]ペンチル]-N-ヒドロキシブタンジアミド(DFO)、4,11-ビス(カルボキシメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン(DO2A)、1,4,7,10-テトラシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(DOTA)、α-(2-カルボキシエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTAGA)、1,4,7,10テトラアザシクロドデカンN,N’,N’’,N’’’1,4,7,10-テトラ(メチレン)ホスホン酸(DOTMP)、N,N’-ジピリドキシルエチレンジアミン-N,N’-ジアセテート-5,5’-ビス(ホスフェート(phosphat))(DPDP)、ジエチレントリアミンN,N’,N’’ペンタ(メチレン)ホスホン酸(DTMP)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン-N,N’-四酢酸(EDTA)、エチレングリコール-O,O-ビス(2-アミノエチル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)、N,N-ビス(ヒドロキシベンジル)-エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(HBED)、ヒドロキシエチルジアミン三酢酸(HEDTA)、1-(p-ニトロベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-4,7,10-トリアセテート(HP-DOA3)、6-ヒドラジニル-N-メチルピリジン-3-カルボキサミド(HYNIC)、Me-3,2-HOPOと略称されるテトラ3-ヒドロキシ-N-メチル-2-ピリジノンキレーター(4-((4-(3-(ビス(2-(3-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-4-カルボキサミド)エチル)アミノ)-2-((ビス(2-(3-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-4-カルボキサミド)エチル)アミノ)メチル)プロピル)フェニル)アミノ)-4-オキソブタン酸)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1-コハク酸-4,7-二酢酸(NODASA)、1-(1-カルボキシ-3-カルボキシプロピル)-4,7-(カルボオキシ)-1,4,7-トリアザシクロノナン(NODAGA)、1,4,7-トリアザシクロノナン三酢酸(NOTA)、4,11-ビス(カルボキシメチル)-1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン(TE2A)、1,4,8,11-テトラアザシクロドデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)、トリス(ヒドロキシピリジノン)(THP)、テルピリジン-ビス(メチレンアミン四酢酸(TMT)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリス[メチレン(2-カルボキシエチル)ホスフィン酸](TRAP)、1,4,7,10-テトラアザシクロトリデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(TRITA)、3-[[4,7-ビス[[2-カルボキシエチル(ヒドロキシ)ホスホリル]メチル]-1,4,7-トリアゾナン-1-イル]メチル-ヒドロキシ-ホスホリル]プロパン酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、および1,4-ビス(カルボキシメチル)-6-[ビス(カルボキシメチル)]アミノ-6-メチルペルヒドロ-1,4-ジアゼピン(AAZTA)から選択されてもよい。
【0201】
特定のキレート部分(CM)は、下記に示される:
【0202】
【化29】
【0203】
特定のキレート部分(CM)は、
【0204】
【化30-1】
【0205】
【化30-2】
【0206】
【化30-3】
【0207】
を含む。
特定のキレート部分(CM)は、
【0208】
【化31】
【0209】
を含む。
上記の例示的なキレート剤のうち、TRAP、DOTAおよびDOTAGAから選択されるキレート部分が特に優先される。
【0210】
キレート部分(CM)は、1,4,7,10-テトラシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(DOTA):
【0211】
【化32】
【0212】
またはα-(2-カルボキシエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTAGA):
【0213】
【化33】
【0214】
であってもよい。
キレート部分(CM)は、
【0215】
【化34】
【0216】
[式中、Mは、キレート化された金属カチオンを表す]から選択されてもよい。
金属またはカチオンキレート大環状および非環状化合物は、当技術分野で周知であり、いくつかの製造業者から入手可能である。本発明によるキレート部分は特に限定されないが、多数の部分が当業者によって既製の様式ですぐに使用され得ることが理解される。
【0217】
キレート部分は、放射性であっても非放射性であってもよいキレート化されたカチオン、好ましくは放射性であっても非放射性であってもよいキレート化された金属カチオンを含んでもよい。キレート部分は、放射性であるキレート化されたカチオンを含んでもよい。キレート部分は、非放射性であるキレート化されたカチオンを含んでもよい。
【0218】
CMは、そのカルボキシル基の1つによりアミド結合を介してコンジュゲートの残部と結合したDOTAおよびDOTAGAから選択されるキレート部分を表すことが特に好ましい。
【0219】
キレート基によってキレートされ得るカチオンの好ましい例は、Sc、Cr、Mn、Co、Fe、Ni、Cu、Ga、Zr、Y、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Te、Pr、Pm、Tb、Sm、Gd、Tb、Ho、Dy、Er、Yb、Tm、Lu、Re、Pt、Hg、Au、Pb、Bi、Ra、Ac、Thの放射性または非放射性カチオンであり、より好ましくはSc、Cu、Ga、Y、In、Tb、Ho、Lu、Re、Pb、Bi、Ac、ThおよびErのカチオンである。カチオンは、Gaであってもよい。カチオンは、Luであってもよい。
【0220】
キレート部分は、43Sc、44Sc、47Sc、51Cr、52mMn、58Co、52Fe、56Ni、57Ni、61Cu、62Cu、64Cu、67Cu、66Ga、67Ga、68Ga、89Zr、90Y、89Y、<Tc、99mTc、97Ru、105Rh、109Pd、111Ag、110mIn、111In、113mIn、114mIn、117mSn、121Sn、127Te、142Pr、143Pr、149Pm、151Pm、149Tb、152Tb、155Tb、161Tb、153Sm、157Gd、161Tb、166Ho、165Dy、169Er、169Yb、175Yb、172Tm、177Lu、186Re、188Re、191Pt、197Hg、198Au、199Au、212Pb、203Pb、211At、212Bi、213Bi、223Ra、225Ac、227Thのカチオンから選択されるキレート化されたカチオンもしくはカチオン種、18Fもしくは211Atを含むカチオン性分子、または18F-[AlF]2+などのカチオン;より好ましくは44Sc、47Sc、61Cu、64Cu、67Cu、68Ga、90Y、111In、161Tb、166Ho、177Lu、188Re、212Pb、212Bi、213Bi、225Ac、および227Thのカチオンまたは18Fを含むカチオン性分子を含有してもよい。
【0221】
キレート部分は、43Sc、44Sc、47Sc、61Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、90Y、111In、149Tb、152Tb、155Tb、161Tb、166Ho、177Lu、186Re、188Re、212Pb、212Bi、213Bi、225Ac、および227Thのカチオンから選択されるキレート化されたカチオンまたは18Fを含むカチオン性分子を含有してもよい。キレート部分は、68Gaまたは177Luのカチオンから選択されるキレート化されたカチオンを含有してもよい。キレート部分は、キレート化された68Gaカチオンを含有してもよい。キレート部分は、キレート化された177Luカチオンを含有してもよい。Mは、43Sc、44Sc、47Sc、61Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、90Y、111In、149Tb、152Tb、155Tb、161Tb、166Ho、177Lu、186Re、188Re、212Pb、212Bi、213Bi、225Ac、および227Thのカチオンから選択されてもよい。Mは、68Ga、64Cu、177Lu、90Yおよび225Acのカチオンから選択されてもよい。Mは、68Gaおよび177Luのカチオンから選択されてもよい。Mは、キレート化された68Gaカチオンであってもよい。Mは、キレート化された177Luカチオンであってもよい。Mは、キレート化された64Cuカチオンであってもよい。Mは、キレート化された90Yカチオンであってもよい。Mは、キレート化された225Acカチオンであってもよい。
【0222】
本明細書の化合物において、キレート部分のキレート化された非放射性または放射性カチオンは、1つまたは複数のCOO基にキレートされていてもよい。キレート部分のキレート化された非放射性または放射性カチオンは、1個または複数のN原子にキレートされていてもよい。キレート部分のキレート化された非放射性または放射性カチオンは、1個もしくは複数のN原子または1つもしくは複数のCOO基にキレートされていてもよい。キレート部分のキレート化された非放射性または放射性カチオンは、1個または複数のN原子および1つまたは複数のCOO基にキレートされていてもよい。本明細書で提供される構造において、キレート化された非放射性または放射性カチオンが示されている場合、それらがキレートされている基は、代表的に示されているにすぎない。例えば、下記に示されるキレート部分を含む化合物の開示は、Ga3+カチオンとコンジュゲート全体との間で化学的に可能であるすべての複合体またはキレート形式をその範囲内に含む:
【0223】
【化35】
【0224】
本発明の主要な態様は、単一分子内における、フッ化ケイ素アクセプターおよびキレート基(キレーター)またはキレートの組合せである。これらの2つの構造要素、すなわち、SIFAおよびキレーターは、空間的近接を示す。好ましくは、2つの要素の2個の原子間の最短距離は、25Å以下、より好ましくは20Å未満、さらにより好ましくは15Å未満である。あるいはまたは加えて、25個以下の共有結合、好ましくは20個以下の化学結合、さらにより好ましくは15個以下の化学結合が、SIFA部分の原子とキレーターの原子とを分離することが好ましい。
【0225】
好適には、カチオンは、放射性または非放射性カチオンである。これは、好ましくは放射性または非放射性金属カチオン、より好ましくは放射性金属カチオンである。例は、さらに下記に示される。
【0226】
結果として、SIFA部分およびキレート基の両方において放射性標識されたコンジュゲート、2つの側部の一方のみにおいて放射性標識された分子、ならびに全く放射性標識されていない分子が、第1の態様の用語に該当する。最後の場合、キレート基は、冷(非放射性)イオンの複合体であってもよく、またはいかなるイオンも欠いていてもよい。
【0227】
DOTAGAまたはDOTAなどであるがこれらに限定されない親水性キレーターの近くにおけるフッ化シリコン(silicone fluoride)アクセプターの配置は、放射性治療用または診断用化合物の全体的な疎水性を、化合物をin vivo投与に好適にする範囲に移行させる程度まで、SIFA部分の親油性を効率的に遮蔽または相殺し得る。
【0228】
加えて、キレーターの使用および18F-フッ化物によるSIFAにおける同位体交換の組合せはまた、施設内にサイクロトロンを有するセンターまたはサイクロトロンセンターからの出荷によって18F-フッ化物を得るセンターにおいて[18F][natイオン]トレーサーとして使用され得る「ペア」診断用トレーサーを生じさせる一方で、18F-フッ化物を利用できないが、放射性同位体ジェネレーター、例えばGe-68/Ga-68ジェネレーターを利用できるセンターにおいては、対応するバージョン、例えば、[natF][68Ga]トレーサーが使用され得る。
【0229】
重要なことに、いずれの場合も、化学的に同一の放射性医薬品が注射され、したがって、in vivo挙動の相違は予想されない。現在、化学的相違に起因して、ある施設における患者コホートによって提供される18F標識化合物の臨床データは、別の施設における別の群によって提供される68Ga-類似体の臨床データと直接比較されることが可能でないが、本発明による放射性医薬品および/または診断薬は、直接比較されることが可能であり、したがって、そのようなデータ(例えば、F-18を用いて作業する欧州にあるセンターおよびGa-68を用いて作業するインドにある別のセンターからのデータ)を関連付けることを可能にする。さらに、好適に選択された場合、キレートはまた、治療用同位体、例えばベータ放出同位体Lu-177、Y-90、またはアルファ放出同位体Ac-225での標識のために使用されることにより、診断用([18F][natLu]トレーサー)および治療用の放射性医薬品([natF][177Lu]の橋渡しをする「ペア」トレーサーの概念を拡大することを可能にし得る。
【0230】
本明細書に開示された本発明の1種または複数のコンジュゲートを含むまたはそれからなる医薬イメージング組成物もまた提供される。
本明細書に開示された本発明の1種または複数のコンジュゲートを含むまたはそれからなる診断用組成物もまた提供される。
【0231】
本明細書に開示された本発明の1種または複数のコンジュゲートを含むまたはそれからなる治療用組成物もまた提供される。
医薬組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤をさらに含んでもよい。好適な医薬担体、賦形剤および/または希釈剤の例は、当技術分野で周知であり、リン酸緩衝生理食塩溶液、水、エマルション、例えば油/水エマルション、様々なタイプの湿潤剤、滅菌溶液等を含む。そのような担体を含む組成物は、周知の従来の方法によって製剤化され得る。これらの医薬組成物は、好適な用量で対象に投与され得る。好適な組成物の投与は、異なる方式で、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所、皮内、鼻腔内または気管支内投与によって実施されてもよい。前記投与は、例えば、膵臓中の部位へのまたは脳動脈中もしくは直接脳組織中への、注射および/または送達によって行われることが特に好ましい。組成物はまた、例えば、膵臓または脳のような外部または内部の標的部位への微粒子銃送達によって、標的部位に直接投与されてもよい。投薬レジメンは、担当医および臨床学的因子によって決定される。医学技術分野で周知であるとおり、いずれか1人の患者に対する投薬量は、患者のサイズ、体表面積、年齢、投与されるべき特定の化合物、性別、投与の時間および経路、全般的な健康状態、ならびに同時に投与される他の薬物を含む、多くの因子に依存する。医薬活性物質は、1用量当たり0.1ngから10mg/kg体重の間であり得る有効治療量で存在してもよいが、特に前述の因子を考慮して、この例示的な範囲を下回るまたは上回る用量が想定される。
【0232】
診断医学における使用のための、本明細書に開示された本発明の1種または複数のコンジュゲート、化合物または組成物もまた提供される。
本発明のコンジュゲートは、ヒト組織におけるFAP発現の上昇に関連する医学的適応症の処置または診断において有用であり得る。本発明のコンジュゲートは、がんの処置または診断において有用であり得る。本発明のコンジュゲートは、(i)より小さい原発腫瘍を検出することにより、より早期の診断を可能にすること、(ii)より小さい転移を検出することにより、腫瘍病期のより良好な評価を利用可能にすること、(iii)正確な術中誘導を実現し、腫瘍組織の外科的完全切除を容易にすること、(iv)炎症と腫瘍組織とのより良好な識別を実現すること、(v)腫瘍を有する患者のより正確な病期分類を実現すること、(vi)抗腫瘍治療後の腫瘍病変のより良好な追跡調査を実現することにおいて、ならびに(vii)診断および治療のためのセラノスティック剤として、有用であり得る。さらに、分子は、非悪性疾患、例えば慢性炎症、アテローム性動脈硬化症、線維症、組織リモデリングおよびケロイド障害の診断および処置のために使用され得る。
【0233】
本発明のコンジュゲートは、動物またはヒト対象における線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の過剰発現によって特徴付けられる疾患の診断または処置における使用のためのものであり得る。線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の過剰発現によって特徴付けられる疾患は、がん、慢性炎症、アテローム性動脈硬化症、線維症、組織リモデリングおよびケロイド障害からなる群から選択されてもよい。がんは、乳がん、膵臓がん、小腸がん、結腸がん、直腸がん、肺がん、頭頸部がん、卵巣がん、肝細胞癌、食道がん、下咽頭がん、鼻咽頭がん、喉頭がん、骨髄腫細胞、膀胱がん、胆管細胞癌、腎明細胞癌、神経内分泌腫瘍、腫瘍原性骨軟化症、肉腫、CUP(原発不明癌)、胸腺癌、類腱腫、神経膠腫、星細胞腫、子宮頸癌および前立腺がんからなる群から選択されてもよい。
【0234】
医学における好ましい使用は、核医学、例えば疾患組織におけるFAPの過剰発現に関連する疾患の核診断イメージング(核分子イメージングとも名付けられる)、および/または標的化放射線治療におけるものである。
【0235】
がんを診断および/または病期分類する方法における使用のための、本明細書に定義された本発明のコンジュゲート、化合物または組成物もまた提供される。
本明細書に記載されたコンジュゲートまたは化合物のいずれかの使用に関する「処置」という用語は、化合物が、当該疾患または障害に罹患している、または罹患するリスクがある、または潜在的に罹患するリスクがある対象に投与される、任意の形態の介入を表すために使用される。したがって、「処置」という用語は、予防的(防止的)処置および疾患または障害の測定可能または検出可能な症状が現れている場合における処置の両方を網羅する。
【0236】
(例えば、疾患または状態を処置する方法に関する)「有効治療量」という用語は、所望の治療効果を生じるのに有効である化合物の量を指す。
「アルキル」、「炭化水素」および「シクロアルキル」などの用語は、すべて、別段の指示がない限り、(例えば、IUPAC Gold Bookに定義された)その従来の意味で使用される。任意の基に付された「任意選択で置換された」とは、前記基が、所望の場合、同じであっても異なっていてもよい1つまたは複数の置換基で置換されていてもよいことを意味する。
【0237】
記載された化合物のいずれかがキラル中心を有する限り、本発明は、ラセミ体または分割されたエナンチオマーのいずれの形態であるかを問わず、そのような化合物のすべての光学異性体に及ぶ。本明細書に記載された発明は、いかなる方法であれそのように調製された、開示された化合物のいずれかのすべての結晶形、溶媒和物および水和物に関する。本明細書に開示された化合物のいずれかがカルボキシレートまたはアミノ基などの酸性または塩基性中心を有する限り、前記化合物のすべての塩形態が本明細書に含まれる。薬学的使用の場合、塩は、薬学的に許容される塩であるとみなされるべきである。
【0238】
挙げられ得る塩または薬学的に許容される塩は、酸付加塩および塩基付加塩ならびにキレート化された非放射性または放射性カチオンの存在に起因して生じる塩形態を含む。そのような塩は、従来の手段によって、例えば、化合物の遊離酸または遊離塩基形態を1当量以上の適切な酸または塩基と、任意選択で溶媒中、または塩が不溶性である媒体中で反応させ、続いて、標準的な技法を使用して(例えば、真空中で、凍結乾燥によってまたは濾過によって)前記溶媒、または前記媒体を除去することによって形成されてもよい。塩はまた、例えば、好適なイオン交換樹脂を使用して、塩の形態の化合物の対イオンを別の対イオンと交換することによって調製されてもよい。
【0239】
本明細書の上記に記載された好適なキレート化された非放射性または放射性カチオンにさらに加えて、薬学的に許容される塩のさらなる例は、鉱酸および有機酸に由来する酸付加塩、ならびにナトリウム、マグネシウム、カリウムおよびカルシウムなどの金属に由来する塩を含む。
【0240】
酸付加塩の例は、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アリールスルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸)、アスコルビン酸(例えば、L-アスコルビン酸)、L-アスパラギン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ブタン酸、(+)ショウノウ酸、カンファー-スルホン酸、(+)-(1S)-カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸(例えば、D-グルコン酸)、グルクロン酸(例えば、D-グルクロン酸)、グルタミン酸(例えば、L-グルタミン酸)、α-オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、イセチオン酸、乳酸(例えば、(+)-L-乳酸および(±)-DL-乳酸)、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸(例えば、(-)-L-リンゴ酸)、マロン酸、(±)-DL-マンデル酸、メタリン酸、メタンスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロト酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、L-ピログルタミン酸、サリチル酸、4-アミノ-サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸(例えば、(+)-L-酒石酸)、チオシアン酸、ウンデシレン酸および吉草酸により形成される酸付加塩を含む。
【0241】
コンジュゲートまたは化合物およびその塩の任意の溶媒和物もまた包含される。好ましい溶媒和物は、非毒性の薬学的に許容される溶媒(下記で溶媒和溶媒と称される)の分子を本発明の化合物の固体状態の構造(例えば、結晶構造)に組み込むことによって形成される溶媒和物である。そのような溶媒の例は、水、アルコール(例えばエタノール、イソプロパノールおよびブタノール)およびジメチルスルホキシドを含み得る。溶媒和物は、本発明の化合物を、溶媒和溶媒を含有する溶媒または溶媒の混合物で再結晶化することによって調製され得る。任意の所与の事例において溶媒和物が形成されたか否かは、化合物の結晶を、熱重量分析(TGA)、示差走査熱量測定(DSC)およびX線結晶構造解析などの周知の標準的な技法を使用する分析に供することによって決定され得る。
【0242】
溶媒和物は、化学量論的または非化学量論的溶媒和物であり得る。特定の溶媒和物は、水和物であってもよく、水和物の例は、半水和物、一水和物および二水和物を含む。溶媒和物およびそれらを作製し、特徴付けるために使用される方法についてのより詳細な考察については、Brynら、Solid-State Chemistry of Drugs、第2版、West Lafayette、IN、米国のSSCI,Incにより出版、1999年、ISBN0-967-06710-3を参照されたい。
【0243】
本発明のコンジュゲートは、1つまたは複数の同位体置換を含有してもよく、特定の元素への言及は、その元素のすべての同位体をその範囲内に含む。例えば、水素への言及は、H、H(D)、およびH(T)をその範囲内に含む。同様に、炭素および酸素への言及は、それぞれ12C、13Cおよび14Cならびに16Oおよび18Oをその範囲内に含む。類似の様式で、特定の官能基への言及はまた、文脈上別段の指示がない限り、同位体変形物をその範囲内に含む。例えば、エチル基などのアルキル基またはメトキシ基などのアルコキシ基への言及はまた、例えば、5個すべての水素原子が重水素同位体形態であるエチル基(ペルジュウテロエチル基)または3個すべての水素原子が重水素同位体形態であるメトキシ基(トリジュウテロメトキシ基)のように、基中の水素原子の1個または複数が重水素またはトリチウム同位体の形態である変形物を網羅する。同位体は、放射性であっても非放射性であってもよい。
【0244】
選択された実施形態
本発明の一部の実施形態は、以下を含む:
1.単一分子内に、2つの別個の部分(a)および(b)を含み、(a)が、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができる1つまたは複数のリガンドであり、(b)が、ケイ素とフッ素原子との間に共有結合を含むフッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分であって、SIFAが、18Fで任意選択で標識されている、SIFA部分である、リガンド-SIFAコンジュゲートであって、前記単一分子内に、(c)キレート化された非放射性カチオンまたは放射性カチオンを任意選択で含有する1つまたは複数のキレート部分(CM)、または(d)前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合することができる1つまたは複数のリガンド、または(e)(c)前記1つまたは複数のキレート部分(CM)および(d)前記1つまたは複数のPSMAリガンドの両方の組合せを任意選択で含むリガンド-SIFAコンジュゲート、またはその薬学的にもしくは診断上許容される塩もしくは溶媒和物。
【0245】
2.単一分子内に、2つの別個の部分:(a)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができる1つまたは複数のリガンド、および(b)ケイ素とフッ素原子との間に共有結合を含むフッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分であって、SIFAが、18Fで任意選択で標識されている、SIFA部分を含む、実施形態1に記載のリガンド-SIFAコンジュゲート、またはその薬学的にもしくは診断上許容される塩もしくは溶媒和物。
【0246】
3.単一分子内に、3つの別個の部分:(a)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができる1つまたは複数のリガンド、(b)ケイ素とフッ素原子との間に共有結合を含むフッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分であって、SIFAが、18Fで任意選択で標識されている、SIFA部分、および(c)キレート化された非放射性または放射性カチオンを任意選択で含有する1つまたは複数のキレート部分(CM)を含む、実施形態1に記載のリガンド-SIFAコンジュゲート、またはその薬学的にもしくは診断上許容される塩もしくは溶媒和物。
【0247】
4.単一分子内に、3つの別個の部分:(a)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができる1つまたは複数のリガンド、(b)ケイ素とフッ素原子との間に共有結合を含むフッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分であって、SIFAが、18Fで任意選択で標識されている、SIFA部分、および(d)前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合することができる1つまたは複数のリガンドを含む、実施形態1に記載のリガンド-SIFAコンジュゲート、またはその薬学的にもしくは診断上許容される塩もしくは溶媒和物。
【0248】
5.単一分子内に、4つの別個の部分:(a)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合することができる1つまたは複数のリガンド、(b)ケイ素とフッ素原子との間に共有結合を含むフッ化ケイ素アクセプター(SIFA)部分であって、SIFAが、18Fで任意選択で標識されている、SIFA部分、(c)キレート化された非放射性または放射性カチオンを任意選択で含有する1つまたは複数のキレート部分(CM)、および(d)前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合することができる1つまたは複数のリガンドを含む、実施形態1に記載のリガンド-SIFAコンジュゲート、またはその薬学的にもしくは診断上許容される塩もしくは溶媒和物。
【0249】
6.1つまたは複数のFAPリガンドが、請求項3、および13から21のいずれか一項に定義されたとおりである、実施形態1から5に記載のリガンド-SIFAコンジュゲート。
【0250】
7.SIFA部分が、請求項6、7および12のいずれか一項に定義されたとおりである、実施形態1から6に記載のリガンド-SIFAコンジュゲート。
8.1つまたは複数のキレート部分(CM)が、請求項8、9、10および11のいずれか一項に定義されたとおりである、実施形態1、3、5、6および7に記載のリガンド-SIFAコンジュゲート。
【0251】
9.1つまたは複数のPSMAリガンドが、本明細書で特定される式PSMA1、PSMA2、PSMA3、PSMA4およびPSMA5の構造から選択される、実施形態1、4、5、6、7および8に記載のリガンド-SIFAコンジュゲート。
【0252】
10.実施形態1から9のいずれか1つに記載の1種または複数のコンジュゲートまたは化合物を含むまたはそれからなる医薬または診断用組成物。
11.医学における使用のための、実施形態1から10のいずれか1つに記載のリガンド-SIFAコンジュゲート。
【0253】
12.がん診断またはイメージング剤としての使用のための、実施形態1から10のいずれか1つに記載のリガンド-SIFAコンジュゲート。
13.がんをイメージングおよび/または診断する方法であって、実施形態1から10のいずれか1つに記載のリガンド-SIFAコンジュゲートを、それを必要とする患者に投与するステップを含む方法。
【0254】
14.がんの処置における使用のための、実施形態1から10のいずれか1つに記載のリガンド-SIFAコンジュゲート。
15.がん、慢性炎症、アテローム性動脈硬化症、線維症、組織リモデリングおよびケロイド障害の診断または処置における使用のための、実施形態1から10のいずれか1つに記載のリガンド-SIFAコンジュゲート。
【0255】
16.乳がん、膵臓がん、小腸がん、結腸がん、直腸がん、肺がん、頭頸部がん、卵巣がん、肝細胞癌、食道がん、下咽頭がん、鼻咽頭がん、喉頭がん、骨髄腫細胞、膀胱がん、胆管細胞癌、腎明細胞癌、神経内分泌腫瘍、腫瘍原性骨軟化症、肉腫、CUP(原発不明癌)、胸腺癌、類腱腫、神経膠腫、星細胞腫、子宮頸癌および前立腺がんからなる群から選択されるがんの診断または処置における使用のための、実施形態1から10のいずれか1つに記載のリガンド-SIFAコンジュゲート。
【0256】
本発明の非常に好ましいコンジュゲートは、下記の表1に示される実施例1から13aのコンジュゲートを含む。
【実施例
【0257】
実施例および調製
次の非制限的な実施例は、本発明を例示するものである。本発明の一部の実施形態のコンジュゲートの合成およびそれにおける使用のための中間体の合成は、次の非限定的な実施例および調製によって例示される。
【0258】
本発明のコンジュゲートの実施例は、下記の表1に示されるものを含む。本発明のコンジュゲートは、表1に示される実施例1から13aのいずれか1つから選択されてもよい。
【0259】
【表1-1】
【0260】
【表1-2】
【0261】
【表1-3】
【0262】
【表1-4】
【0263】
【表1-5】
【0264】
【表1-6】
【0265】
【表1-7】
【0266】
【表1-8】
【0267】
【表1-9】
【0268】
【表1-10】
【0269】
一般的方法
本発明のある特定のコンジュゲートは、下記の一般的スキームに従って調製されてもよく、ここで、FAPは、FAP結合部分を含み、PSMAは、PSMA結合部分を含み、Lは、リンカー部分を表し、SIFAは、SIFA含有部分を表し、CMは、キレート部分を含み、CM(M)は、キレート化された金属カチオンを有するキレート部分を含む。
【0270】
【化36】
【0271】
材料および方法
調製経路が含まれない場合、関連する中間体は市販されている。別段の記述がない限り、商用グレードの試薬をさらに精製することなく利用した。化合物の純度はHPLCによって決定し、別段の記述がない限り、すべての最終標的化合物が、95%超の純度を有した。プロトン核磁気共鳴(H NMR)スペクトルは、400MHzで動作するVarian400分光計において指定された重水素化溶媒中で記録した。質量スペクトルは、Shimadzu LCMS2020をNシリーズDUIS(ESI)システムとともに使用することによって、ポジティブ-ネガティブ切り替えを使用して決定した。HPLCスペクトルは、Agilent1200シリーズを使用することによって決定した。
【0272】
室温は、20から25℃を含む。
フッ化ケイ素アクセプター試薬(SiFA-BA)の合成
本明細書で使用されたフッ化ケイ素アクセプター試薬は、4-(ジ-tert-ブチルフルオロシリル)安息香酸(SiFA-BA)であった:
【0273】
【化37】
【0274】
SiFA-BAは、下記のスキームに描写されるとおり、既に公開された手順(L.Iovkovaら、Chem.Eur.J.2009年、15、2140~2147)に従って合成した。すべての反応は、乾燥させた反応容器においてアルゴン下で真空ガスマニホールドを使用して行った。
【0275】
【化38】
【0276】
SiFA-BAの合成:a)TBDMSCl、イミダゾール(DMF);b)tBuLi、ジ-tert-ブチルジフルオロシラン(THF);c)HCl(MeOH);d)クロロクロム酸ピリジニウム(DCM);e)KMnO(DCM、tert-ブタノール、NaHPO緩衝液)。
【0277】
実施例1および実施例2のコンジュゲートの合成
表1に詳細に示された実施例1および実施例2の本発明のコンジュゲートを得るための例示的な合成手順が下記のスキームに示されている。
【0278】
【化39】
【0279】
中間体の合成
調製1
6-ヒドロキシキノリン-4-カルボン酸(2)
封管中の6-メトキシキノリン-4-カルボン酸(5g、0.0246mol;BLD-pharma)およびHBr溶液(水中48%、75ml)を、激しく撹拌しながら140℃に4時間加熱した。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)分析によってモニタリングした。完了後、反応混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮した。残渣を水(20ml)に溶解し、得られた溶液を4N水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を使用して塩基性化した(pH=7.5)。形成された沈殿物を濾過によって除去し、濾液を減圧下で濃縮乾固した。残渣をメタノール(20ml×3およびジエチルエーテル(20ml)で摩砕した。得られたスラリーをアセトニトリル(20ml)および水(60ml)に溶解した。得られた混合物を凍結乾燥して、表題化合物を明褐色固体として得た(収量:4.0g、86%)。表題化合物をLC-MSおよびH NMR分析によって特徴付けた。LC-MS、C10NO計算値189.04;観測値190.25[M+H]1H NMR (400 MHz, DMSO): δ 8.46 (d, J= 4.0 Hz, 1H), 8.10 (s, 1H), 7.70 (d, J= 9.2 Hz, 1H), 7.32 (d, J= 4.0 Hz, 1H), 7.17-7.14 (m, 1H)。
【0280】
調製2
(S)-N-(2-(2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)-6-ヒドロキシキノリン-4-カルボキサミド(4)
N,N-ジイソプロピルエチルアミン(3.5ml、0.0198mol)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(4.0g、0.264mol;Spectrochem)および2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム(6.0g、0.0158mol;Spectrochem)を、乾燥N,N-ジメチルホルムアミド(DMF、50ml)中の調製1の表題化合物(2.5g、0.0132mol)および(S)-1-グリシルピロリジン-2-カルボニトリル(3.0g、0.0198mol、BLD-pharma)の撹拌溶液に窒素下で添加した。得られた混合物を室温で16時間撹拌した。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)分析によってモニタリングした。反応の完了後、水(30ml)を添加し、得られた混合物を酢酸エチル(50ml×2)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗化合物をジクロロメタン中5%メタノールを使用してシリカゲル(230~400シリカ)カラムクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を黄色固体として得た(収量:1.9g、45%)。表題化合物をLC-MS分析によって特徴付けた。LC-MS、C1716計算値324.12;観測値325.30[M+H]
【0281】
調製3
tert-ブチル-(S)-(3-((4-((2-(2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)カルバモイル)キノリン-6-イル)オキシ)プロピル)カルバメート(6)
tert-ブチル(3-ブロモプロピル)カルバメート(0.87g、0.0037mol)を、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF、10ml)中の調製2の表題化合物(1g、0.0031mol)および炭酸カリウム(0.51g、0.0037mol)の溶液に窒素下で少しずつ添加した。得られた混合物を60℃で16時間撹拌した。反応の進行をTLC分析によってモニタリングした。完了後、反応混合物を水(50ml)で希釈し、酢酸エチル(30ml×3)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶液を濾過し、濾液を減圧下で濃縮して、明褐色の粗化合物を得た。粗化合物をジクロロメタン中0~5%メタノールで溶出してシリカゲル(230~400メッシュ)によって精製して、表題化合物を黄色固体として得た(収量:0.75g、50%)。表題化合物をLC-MSおよびH NMR分析によって特徴付けた。LC-MS、C2531計算値481.23;観測値482.40[M+H]1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.79 (d, J= 4.4 Hz, 1H), 7.99 (d, J= 9.2 Hz, 1H), 7.62 (bs, 1H), 7.51 (d, J= 4.0 Hz, 1H), 7.38-7.35 (m, 1H), 7.30 (bs, 1H), 5.17 (bs, 1H), 4.80 (bs, 1H), 4.46-4.40 (m, 1H), 4.31-4.27 (m, 1H), 4.17 (m, 2H), 3.73 (bs, 1H), 3.58-3.54 (m, 1H), 3.38-3.37 (m, 2H), 2.37-2.26 (m, 4H), 2.05 (bs, 2H), 1.44 (s, 9H)。
【0282】
調製4
(S)-6-(3-アミノプロポキシ)-N-(2-(2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)キノリン-4-カルボキサミド(7)
トリフルオロ酢酸(0.25ml、0.0032mol)を、ジクロロメタン(7.5ml)中の調製3の表題化合物(0.75g、0.0016mol)の溶液に窒素下で添加した。得られた混合物を室温で16時間撹拌した。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)分析によってモニタリングした。次いで、反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を新たなジクロロメタンと共蒸留した(3回)。最後に、得られた残渣をまずジエチルエーテル(10ml)で、次いでn-ペンタン(10ml)で摩砕し、次いで、真空下で乾燥させて、表題化合物を明褐色固体として定量的収率で得た。粗表題化合物をさらに精製することなく使用した。表題化合物をLC-MSおよびH NMR分析によって特徴付けた。LC-MS、C2023計算値381.18;観測値382.35[M+H]1H NMR (400 MHz, DMSO): δ 9.09 (d, J= 5.2 Hz, 1H), 8.84 (d, J= 4.0 Hz, 1H), 8.02 (d, J= 9.2 Hz, 1H), 7.96-7.87 (m, 4H), 7.56-7.49 (m, 2H), 4.82 (d, J= 4.0 Hz, 1H), 4.23 (s, 4H), 3.74 (bs, 1H), 3.59-3.53 (m, 1H), 3.04-3.03 (m, 2H), 2.23-2.09 (m, 5H)。
【0283】
調製5
(9H-フルオレン-9-イル)メチル((R)-1-((3-((4-((2-((S)-2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)カルバモイル)キノリン-6-イル)オキシ)プロピル)アミノ)-3-((1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシリデン)エチル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)カルバメート(8)
2,4,6-コリジン(1.65mL、12.30mmol)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(0.51g、3.674mmol)および2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレート(1.18g、3.674mmol)を、乾燥N,N-ジメチルホルムアミド(DMF、14ml)中の調製4の表題化合物(0.7g、1.84mmol)およびN-アルファ-(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル)-N-ベータ-[(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキサ-1-イリデン)エチル]-D-2,3-ジアミノプロピオン酸(0.99g、2.02mmol、ACT-China)の撹拌溶液に窒素下で添加した。得られた混合物を室温で16時間撹拌した。反応の進行をTLC分析によってモニタリングした。反応の完了後、水(30ml)を添加し、得られた混合物を酢酸エチル(50ml×2)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗表題化合物をジクロロメタン中5%メタノールを使用してシリカゲル(230~400シリカ)カラムクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を灰白色固体として得た(収量:0.90g、51%)。表題化合物をLC-MS分析によって特徴付けた。LC-MS、C4851計算値853.38;観測値854.50[M+H]
【0284】
調製6
(9H-フルオレン-9-イル)メチル-((R)-3-アミノ-1-((3-((4-((2-((S)-2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)カルバモイル)キノリン-6-イル)オキシ)プロピル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)カルバメート(9)
ヒドラジン水和物(25%、1.3ml)を、エタノール(25ml)中の調製5の表題化合物(2.6g、0.0027mol)の撹拌溶液に添加し、得られた混合物を室温で2時間撹拌した。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)分析によってモニタリングした。反応の完了後、水(20ml)を添加し、得られた混合物をジクロロメタン(100ml×3)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗表題化合物をジクロロメタン中10%メタノールを使用してシリカゲル(230~400シリカ)カラムクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を灰白色固体として得た(収量:1.50g、78%)。表題化合物をLC-MSおよびH NMR分析によって特徴付けた。LC-MS、C3839計算値689.30;観測値690.45[M+H]1H NMR (400 MHz, DMSO): δ 9.03 (t, J= 5.6 Hz, 1H), 8.81 (d, J= 4.4 Hz, 1H), 8.12 (bs, 1H), 7.97 (d, J= 8.8 Hz, 1H), 7.89-7.88 (m, 3H), 7.68 (d, J= 7.6 Hz, 2H), 7.51 (d, J= 4.4 Hz, 1H), 7.46-7.39 (m, 3H), 7.32 (t, J= 7.2 Hz, 3H), 4.83-4.81 (m, 1H), 4.30-4.17 (m, 8H), 3.72 (bs, 4H), 3.57-3.51 (m, 1H), 3.06-2.99 (m, 2H), 2.22-2.16 (m, 2H), 2.09-2.05 (m, 2H), 1.97-1.94 (m, 3H)。
【0285】
調製7
(9H-フルオレン-9-イル)メチル-((R)-1-((3-((4-((2-((S)-2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)カルバモイル)キノリン-6-イル)オキシ)プロピル)アミノ)-3-(4-(ジ-tert-ブチルフルオロシリル)ベンズアミド)-1-オキソプロパン-2-イル)カルバメート(10)
N,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.8ml、9.79mmol)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(0.44g、3.27mmol)および2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレート(1.0g、3.27mmol)を、乾燥N,N-ジメチルホルムアミド(DMF、15ml)中の調製6の表題化合物(1.5g、2.18mmol)および4-(ジ-tert-ブチルフルオロシリル)安息香酸(0.92g、3.27mmol)の撹拌溶液に窒素下で添加した。得られた混合物を室温で24時間撹拌し、反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)分析によってモニタリングした。反応の完了後、水(100ml)を添加し、得られた混合物を酢酸エチル(300ml×2)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗表題化合物をジクロロメタン中1~10%メタノールを使用してシリカゲル(230~400シリカ)カラムクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を灰白色固体として得た(収量:1.2g、60%)。表題化合物をLC-MS分析によって特徴付けた。LC-MS、C5360FNS計算値953.43;観測値954.65[M+H]
【0286】
調製8
6-(3-((R)-2-アミノ-3-(4-(ジ-tert-ブチルフルオロシリル)ベンズアミド)プロパンアミド)プロポキシ)-N-(2-((S)-2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)キノリン-4-カルボキサミド(11)(実施例12)
N,N-ジメチルホルムアミド(DMF、1ml)中のピペリジン(0.15ml、1.51mmol)の溶液を、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF、12ml)中の調製7の表題化合物(1.2g、1.26mmol)の撹拌溶液に滴下添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、反応をTLC分析によってモニタリングした。反応の完了後、水(100ml)を添加し、得られた混合物を酢酸エチル(70ml×3)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗表題化合物をジクロロメタン中5~12%メタノールを使用してシリカゲル(230~400シリカ)カラムクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を灰白色固体として得た(収量:0.90g、98%)。表題化合物をLC-MSおよびH NMR分析によって特徴付けた。LC-MS、C3850FNSi計算値731.36;観測値:732.45[M+H]1H NMR (400 MHz, DMSO): δ 9.06 (t, J= 6.0 Hz, 1H), 8.81-8.77 (m, 2H), 8.26 (t, J= 4.8 Hz, 1H), 8.03-7.95 (m, 3H), 7.87 (bs, 1H), 7.67 (d, J= 7.6 Hz, 2H), 7.51 (d, J= 4.4 Hz, 1H), 7.45 (d, J= 8.8 Hz, 1H), 6.01 (bs, 2H), 4.84 (bs, 1H), 4.60 (bs, 1H), 4.25-4.16 (m, 4H), 3.74 (bs, 1H), 3.57-3.37 (m, 1H), 3.17-3.14 (m, 2H), 3.13-3.08 (m, 2H), 3.06-3.02 (m, 1H), 2.50 (s, 8H), 2.30-1.94 (m, 6H), 1.30-1.14 (m, 1H), 1.08 (s, 18 H)。
【0287】
調製9
トリ-tert-ブチル2,2’,2’’-(10-((R)-1-(tert-ブトキシ)-5-(((R)-1-((3-((4-((2-((S)-2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)カルバモイル)キノリン-6-イル)オキシ)プロピル)アミノ)-3-(4-(ジ-tert-ブチルフルオロシリル)ベンズアミド)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-1,5-ジオキソペンタン-2-イル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)トリアセテート(12)
N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.70ml、3.69mmol)を、ジクロロメタン(18ml)中の調製8の表題化合物(0.90g、1.23mmol)および5-(tert-ブトキシ)-5-オキソ-4-(4,7,10-トリス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)ペンタン酸(0.86g、1.23mmol、Argonix Reagents & Intermediates)の撹拌溶液に窒素下で添加した。これに続いて、1-プロパンホスホン酸無水物溶液(酢酸エチル中50%、1.2ml、3.69mmol)を添加した。得られた混合物を室温で3時間撹拌し、反応をTLC分析によってモニタリングした。反応の完了後、水(50ml)を添加し、得られた混合物をジクロロメタン(100mL×3)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗表題化合物をジクロロメタン中5~14%メタノールを使用してシリカゲル(230~400シリカ)カラムクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を灰白色固体として得た(収量:1.0g、57%)。生成物(12)をさらに特徴付けることなく次のステップに進めた。
【0288】
実施例1および2のコンジュゲートの合成
調製10-実施例1の化合物
2,2’,2’’-(10-((R)-1-カルボキシ-4-(((R)-1-((3-((4-((2-((S)-2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)カルバモイル)キノリン-6-イル)オキシ)プロピル)アミノ)-3-(4-(ジ-tert-ブチルフルオロシリル)ベンズアミド)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-4-オキソブチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)三酢酸(13)
トリフルオロ酢酸:トリイソプロピルシラン:水(95:2.5:2.5、15ml)中の調製9の表題化合物(1.0g、0.71mmol)の溶液を室温で16時間窒素下で撹拌した。反応の進行をLC-MS分析によってモニタリングした。反応の完了後、反応混合物を減圧下で濃縮して、粘着性液体残渣を得た。残渣をメチルtert-ブチルエーテル(10ml×3回)に続いて、n-ペンタン(10ml)で摩砕して、固体を生成した。固体を真空下で乾燥させて、粗表題化合物を灰白色固体として得た(収量:0.83g、99%)。粗表題化合物(70mg)を逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(移動相A:水中0.1%ギ酸;および移動相B:アセトニトリル-カラム:Inertsil ODS3V 250×20mm、5.0μm)によって精製して、表題化合物20mgを淡黄色固体として生成した。LC-MS、C5780FN1114Si計算値1189.56;観測値1188.35[M-H]1H NMR (400 MHz, DMSO): δ 11.80 (bs, 4H), 9.03 (bs, 1H), 8.80 (s, 1H), 8.47-8.33 (m, 2H), 8.14 (bs, 1H), 7.96-7.85 (m, 4H), 7.64-7.62 (m, 2H), 7.51-7.44 (m, 1H), 4.83 (bs, 1H), 4.44 (bs, 2H), 4.21-4.16 (m, 4H), 3.72 (bs, 1H), 3.53-3.40 (m, 10H), 3.10-2.80 (m, 13H), 2.33-1.71 (m, 14H), 1.02 (s, 18H).高速液体クロマトグラフィー(HPLC):10.361分、98.46%、(カラム:Inertsil ODS 3V-C18 4.6×250mm、5μm、移動相A:水中0.1%ギ酸;移動相B:アセトニトリル)。
【0289】
調製11-実施例2の化合物
2-(16-((R)-1-カルボキシ-4-(((R)-1-((3-((4-((2-((S)-2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)カルバモイル)キノリン-6-イル)オキシ)プロピル)アミノ)-3-(4-(ジ-tert-ブチルフルオロシリル)ベンズアミド)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-4-オキソブチル)-3,6-ジオキソ-4,5-ジオキサ-1,8,11,16-テトラアザビシクロ[6.5.5]オクタデカン-11-イル)酢酸ガリウム(I)(14、Ga-(S,R,R)-SiFA-FAP-1)
硝酸ガリウム(III)(0.236g、0.925mmol)を、tert-ブタノール:水(3:1、20ml)中の調製10の表題化合物(0.55g、0.462mmol)の撹拌溶液に窒素下で添加し、得られた混合物を75℃で3時間加熱した。反応の進行をLC-MS分析によってモニタリングした。完了後、反応物を室温に冷却し、水(20ml)を添加した。得られた混合物をマイクロフィルターを通して濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をメチルtert-ブチルエーテル(5×3ml)およびジエチルエーテル(10ml)で摩砕して、粘着性固体を生成し、これを真空下で乾燥させて、粗表題化合物を淡黄色固体として得た。粗表題化合物を逆相HPLC(移動相A:水中0.1%ギ酸;および移動相B:アセトニトリル-カラム:Inertsil ODS3V 250×20mm、5μm)によって精製して、表題化合物を灰白色固体として生成した(収量:78mg、13.4%)。LC-MS、C5777FGaN1114Si計算値1255.47;観測値1254.40[M-H]1H NMR (400 MHz, DMSO): δ 9.03 (bs, 1H), 8.80 (d, J= 4.0 Hz, 1H), 8.59 (bs, 1H), 8.12 (bs, 2H), 7.97-7.85 (m, 4H), 7.67 (d, J= 7.6 Hz, 2H), 7.51 (d, J= 4.4 Hz, 1H), 7.46-7.44 (m, 1H), 4.84 (d, J= 4.8 Hz, 1H), 4.56 (bs, 1H), 4.47 (bs, 1H), 4.21-4.16 (m, 4H), 3.75 (bs, 1H), 3.56-3.41 (m, 14H), 3.20-2.70 (m, 16H), 2.17 (bs, 1H), 2.07 (bs, 1H), 1.95 (bs, 2H), 1.07 (s, 18H)。
【0290】
実施例3および実施例4のコンジュゲートの合成
表1に詳細に示された実施例3および実施例4のコンジュゲートを得るための例示的な合成手順が下記のスキームに示されている。
【0291】
【化40】
【0292】
中間体の合成
調製1
4-ヒドロキシキナゾリン-6-イルアセテート(2)
キナゾリン-4,6-ジオール(5g、30.86mmol;Combi-blocks)、無水酢酸(46.6mL、49.38mmol;Spectrochem)およびピリジン(8mL;Spectrochem)の混合物を100℃で2時間窒素下で加熱した。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)分析(ジクロロメタン中5%メタノール)によってモニタリングした。完了後、反応物を室温に冷却し、反応混合物を砕いた氷(50mL)に注いだ。これにより、淡黄色の沈殿が生じた。固体を濾取し、新たな氷冷水(200mL)で洗浄し、真空下で乾燥させて、所望の化合物を淡黄色固体として得た。表題化合物をLC-MSおよびH NMR分析によって特徴付けた。収量:6.3g(100%)。LC-MS C10計算値204.05;観測値205.25[M+H]1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 10.74 (bs, 1H), 8.06-8.02 (m, 2H), 7.80 (d, J=8.8 Hz, 1H), 7.55 (d, J=8.4 Hz, 1H), 2.37 (s, 3H)。
【0293】
調製2
4-クロロキナゾリン-6-イルアセテート(3)
4-ヒドロキシキナゾリン-6-イルアセテート(6.3g、30.86mmol)および塩化チオニル(43.05g、26.25mL、361.8mmol;Spectrochem)の混合物に、触媒量の乾燥N,N-ジメチルホルムアミド(DMF、0.3mL)を窒素下で添加した。得られた混合物を90℃で3時間加熱した。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)分析(ジクロロメタン中5%メタノール)によってモニタリングした。完了後、反応物を室温に冷却し、反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣をトルエン(50mL)と共沸させ、真空下で乾燥させて、所望の化合物を淡黄色固体として得た。表題化合物をLC-MSおよびH NMR分析によって特徴付けた。収量:6.8g(100%)。LC-MS、C10ClN計算値222.02;観測値223.15[M+H]1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.08 (s, 1H), 8.17 (d, J=9.2 Hz, 1H), 8.04 (s, 1H), 7.76 (d, J=9.2 Hz, 1H), 2.42 (s, 3H)。
【0294】
調製3
4-クロロキナゾリン-6-オール(4)
4-クロロキナゾリン-6-イルアセテート(19g、85.30mmol)およびアンモニア(メタノール中7N;400mL;Hychem laboratories)の混合物を室温で1時間撹拌した。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)分析(ジクロロメタン中5%メタノール)によってモニタリングした。完了後、反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣をジエチルエーテル(10mL)で摩砕し、真空下で乾燥させて、所望の化合物を暗褐色固体として得た。これをさらに精製することなく次のステップに持ち込んだ。表題化合物をLC-MS分析によって特徴付けた。収量:13.3g(86.6%)。LC-MS CClNO計算値180.01;観測値:181.20[M+H]
【0295】
調製4
メチル6-ヒドロキシキナゾリン-4-カルボキシレート(5)
乾燥メタノール(200mL)中の4-クロロキナゾリン-6-オール(13.3g、73.6mmol)、トリエチルアミン(30.6mL、220.9mmol;Spectrochem)の撹拌溶液を室温で20分間窒素でパージした。これに、PdCldppf(5.3g、7.36mmol;Chempure)を添加し、得られた混合物を60℃でCO圧力(5kg)下で加熱した。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)分析(ジクロロメタン中5%メタノール)によってモニタリングした。完了後、反応混合物を室温に冷却し、セライト床を通して濾過した。濾液を減圧下で濃縮して、粗化合物を得た。粗製物をn-ヘキサン中10~50%酢酸エチルを使用してシリカゲル(100~200)カラムクロマトグラフィーに供して、所望の化合物を淡黄色固体として得た。表題化合物をLC-MSおよびH NMR分析によって特徴付けた。収量:8.6g(57.3%)。LC-MS C10計算値204.05;観測値205.25[M+H]1H NMR (400 MHz, DMSO): δ 10.76 (s, 1H), 9.21 (s, 1H), 8.01 (d, J=9.2 Hz, 1H), 7.72 (s, 1H), 7.66 (d, J=9.2 Hz, 1H), 4.02 (s, 3H)。
【0296】
調製5
6-ヒドロキシキナゾリン-4-カルボン酸(6)
テトラヒドロフラン:メタノール:水(6:1:0.5;75mL)中のメチル6-ヒドロキシキナゾリン-4-カルボキシレート(8.6g、42.1mmol)の撹拌溶液に、水酸化ナトリウム(4.2g、105.3mmol)を添加し、混合物を室温で2時間撹拌した。反応の進行をTLC分析(ジクロロメタン中5%メタノール)によってモニタリングした。完了後、反応混合物を減圧下で3分の1の体積に濃縮した。濃塩酸(HCl)を使用して、溶液のpHを7に調整した。最初に形成された固体を濾過によって除去し、濾液を濃HClを使用してpH=1にさらに酸性化した。形成された黄色固体を濾取し、新たな水で洗浄し、真空下で乾燥させて、所望の化合物を淡黄色固体として得た。表題化合物をLC-MSおよびH NMR分析によって特徴付けた。収量:5.3g(66.6%)。LC-MS C計算値190.04;観測値191.20[M+H]1H NMR (400 MHz, DMSO): δ 14.12 (bs, 1H), 10.69 (s, 1H), 9.19 (s, 1H), 7.99 (d, J=9.2 Hz, 1H), 7.72 (s, 1H), 7.64 (d, J=9.6 Hz, 1H)。
【0297】
調製6
(S)-N-(2-(2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)-6-ヒドロキシキナゾリン-4-カルボキサミド(8)
乾燥N,N-ジメチルホルムアミド(DMF、70mL)中のHBTU(9.09g、24.0mmol;Spectrochem)の撹拌溶液に、6-ヒドロキシキナゾリン-4-カルボン酸(3.8g、20.0mmol)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt、6.1g、40.0mmol;Spectrochem)およびジイソプロピルエチルアミン(8.9mL、50.0mmol;Spectrochem)を添加した。これに続いて、(S)-1-グリシルピロリジン-2-カルボニトリル(4.8g、30.0mmol)を添加し、得られた混合物を室温で16時間撹拌した。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)分析(ジクロロメタン中10%メタノール)によってモニタリングした。反応の完了後、水(100mL)を添加し、混合物を酢酸エチル(500mL×3)で抽出した。合わせた有機層をブライン(200mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、粗化合物をジクロロメタン中5~10%メタノールを使用してシリカゲル(230~400)カラムクロマトグラフィーに供して、所望の化合物を淡黄色固体として得た。表題化合物をLC-MS分析によって特徴付けた。収量:3.2g(49.0%)。LC-MS C1615計算値325.12;観測値326.05[M+H]
【0298】
調製7
tert-ブチル(S)-(3-((4-((2-(2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)カルバモイル)キナゾリン-6-イル)オキシ)プロピル)カルバメート(10)
窒素下の乾燥DMF(32mL)中の(S)-N-(2-(2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)-6-ヒドロキシキナゾリン-4-カルボキサミド(3.2g、9.8mmol)の溶液に、KCO(1.6g、11.81mmol;Spectrochem)およびtert-ブチル(3-ブロモプロピル)カルバメート(2.8g、11.81mmol;BLD-pharma)を添加した。得られた混合物を60℃で24時間撹拌した。反応の進行をTLC分析(ジクロロメタン中10%メタノール)によってモニタリングした。完了後、反応物を室温に冷却し、水(100mL)を添加した。得られた混合物を酢酸エチル(200mL×3)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶液を濾過し、減圧下で濃縮した。粗化合物をジクロロメタン中5~6%メタノールを使用してフラッシュシリカゲル(230~400)カラムクロマトグラフィーによって精製して、所望の化合物を淡黄色固体として得た。所望の化合物をLC-MSおよびH NMR分析によって特徴付けた。収量:3.4g(72.0%)。LC-MS C2430計算値482.23;観測値481.15[M-H]1H NMR (400 MHz, DMSO): δ 9.30-9.28 (m, 2H), 8.44 (s, 1H), 8.03 (d, J=9.6 Hz, 1H), 7.73 (d, J=8.8 Hz, 1H), 6.96 (s, 1H), 4.83 (bs, 1H), 4.25 (d, J=5.2 Hz, 2H), 4.15 (s, 2H), 3.74 (bs, 1H), 3.58-3.54 (m, 1H), 3.14 (d, J=5.6 Hz, 2H), 2.19-2.07 (m, 4H), 1.95-1.92 (m, 2H), 1.37 (s, 9 H)。
【0299】
調製8
(S)-6-(3-アミノプロポキシ)-N-(2-(2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)キナゾリン-4-カルボキサミド(11)
不活性雰囲気下のジクロロメタン(DCM、34mL)中のtert-ブチル(S)-(3-((4-((2-(2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)カルバモイル)キナゾリン-6-イル)オキシ)プロピル)カルバメート(3.4g、7.0mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(trifluoracetic acid)(2.1mL、28.2mmol;Spectrochem)を添加した。得られた混合物を室温で24時間撹拌した。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)分析(ジクロロメタン中15%メタノール)によってモニタリングした。完了後、反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を新たなジクロロメタン(20mL×3)と共蒸留した。最後に、残渣をジエチルエーテル(20mL)で摩砕し、真空下で乾燥させて、所望の化合物を明褐色固体として定量的収率で得た。粗化合物をさらに精製することなく次のステップに持ち込んだ。所望の化合物をLC-MS分析によって特徴付けた。LC-MS C1922計算値382.18;観測値383.35[M+H]
【0300】
調製9
(9H-フルオレン-9-イル)メチル((R)-1-((3-((4-((2-((S)-2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)カルバモイル)キナゾリン-6-イル)オキシ)プロピル)アミノ)-3-((1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシリデン)エチル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)カルバメート(12)
乾燥N,N-ジメチルホルムアミド(DMF、20mL)中の(S)-6-(3-アミノプロポキシ)-N-(2-(2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)キナゾリン-4-カルボキサミド(1.8g、4.71mmol)およびFmoc-(n-ベータ-1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキサ-1-イリデン)エチル)-l-アルファ,ベータ-ジアミノプロピオン酸(2.5g、5.1mmol;Argonix Reagents & Intermediates)の撹拌溶液に、2,4,6-コリジン(4.2mL、31.4mmol;Spectrochem)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt、1.2g、9.4mmol;Spectrochem)および2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレート(TBTU、3.0g、9.4mmol;Spectrochem)を窒素下で添加した。得られた混合物を室温で16時間撹拌した。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)分析(ジクロロメタン中15%メタノール)によってモニタリングした。反応の完了後、氷冷水(100mL)を添加し、得られた混合物を酢酸エチル(200mL×3)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗化合物をジクロロメタン中5~10%メタノールを使用してシリカゲル(230~400シリカ)カラムクロマトグラフィーによって精製して、所望の化合物を灰白色固体として得た。所望の化合物をLC-MSおよびH NMR分析によって特徴付けた。収量:1.3g(30%)。LC-MS C4750計算値854.38;観測値855.65[M+H]1H NMR (400 MHz, DMSO): δ 13.48 (d, J=7.6 Hz, 1H), 9.27 (s, 1H), 8.55-8.46 (m, 2H), 7.99 (d, J=8.8 Hz, 1H), 7.86 (d, J=7.6 Hz, 2H), 7.71-7.62 (m, 4H), 7.40-7.37 (m, 2H), 7.30-7.28 (m, 2H), 4.81 (bs, 1H), 4.58 (bs, 1H), 4.28-4.18 (m, 8H), 3.71 (bs, 1H), 3.53-3.51 (m, 1H), 3.37 (bs, 1H), 2.46 (s, 3H), 2.22-1.98 (m, 11H), 1.09 (t, J=6.4 Hz, 2H), 0.91 (s, 6H)。
【0301】
調製10
(9H-フルオレン-9-イル)メチル((R)-3-アミノ-1-((3-((4-((2-((S)-2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)カルバモイル)キナゾリン-6-イル)オキシ)プロピル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)カルバメート(13)
エタノール(6mL)中の(9H-フルオレン-9-イル)メチル((R)-1-((3-((4-((2-((S)-2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)カルバモイル)キナゾリン-6-イル)オキシ)プロピル)アミノ)-3-((1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシリデン)エチル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)カルバメート(0.62g、0.65mmol)の撹拌溶液に、ヒドラジン水和物(25%、0.3mL;Spectrochem)を添加した。得られた混合物を室温で2時間撹拌した。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)分析(ジクロロメタン中15%メタノール)によってモニタリングした。反応の完了後、水(30mL)を添加し、得られた混合物をジクロロメタン(100mL×3)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗化合物をジクロロメタン中5~10%メタノールを使用してシリカゲル(100~200シリカ)カラムクロマトグラフィーによって精製して、所望の化合物を灰白色固体として得た。所望の化合物をLC-MSおよびH NMR分析によって特徴付けた。収量:0.42g(100%)。LC-MS C3738計算値690.29;観測値691.50[M+H]1H NMR (400 MHz, ): δ 9.29-9.27 (m, 2H), 8.45 (s, 1H), 8.11 (bs, 1H), 8.01 (d, J=8.8 Hz, 1H), 7.87 (d, J=7.2 Hz, 2H), 7.73-7.66 (m, 3H), 7.40-7.31 (m, 4H), 4.82 (bs, 1H), 4.27-4.17 (m, 8H), 3.72 (bs, 1H), 3.53-3.52 (m, 1H), 3.29-3.27 (m, 4H), 3.02 (bs, 1H), 2.17-1.91 (m, 6H), 1.09 (t, J=6.0 Hz, 2H)。
【0302】
調製11
(9H-フルオレン-9-イル)メチル((R)-1-((3-((4-((2-((S)-2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)カルバモイル)キナゾリン-6-イル)オキシ)プロピル)アミノ)-3-(4-(ジ-tert-ブチルフルオロシリル)ベンズアミド)-1-オキソプロパン-2-イル)カルバメート(14)(実施例13)
乾燥N,N-ジメチルホルムアミド(DMF、5mL)中の(9H-フルオレン-9-イル)メチル((R)-3-アミノ-1-((3-((4-((2-((S)-2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)カルバモイル)キナゾリン-6-イル)オキシ)プロピル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)カルバメート(0.42g、0.61mmol)および4-(ジ-tert-ブチルフルオロシリル)安息香酸(SiFA-BA、0.25g、0.89mmol)の撹拌溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、0.72mL、4.0mmol;Spectrochem)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(0.122g、0.9mmol;Spectrochem)および2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレート(TBTU、0.28g、0.9mmol;Spectrochem)を窒素下で添加した。得られた混合物を室温で16時間撹拌した。反応の進行をTLC分析(ジクロロメタン中10%メタノール)によってモニタリングした。反応の完了後、水(30mL)を添加し、得られた混合物を酢酸エチル(100mL×2)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗化合物をジクロロメタン中1~10%メタノールを使用してシリカゲル(230~400シリカ)カラムクロマトグラフィーによって精製して、所望の化合物を灰白色固体として得た。所望の化合物をLC-MS分析によって特徴付けた。収量:0.4g(70%)。LC-MS C5259FNSi計算値954.43;観測値955.65[M+H]
【0303】
調製12
6-(3-((R)-2-アミノ-3-(4-(ジ-tert-ブチルフルオロシリル)ベンズアミド)プロパンアミド)プロポキシ)-N-(2-((S)-2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)キナゾリン-4-カルボキサミド(15)
ジメチルホルムアミド(DMF、3mL)中の(9H-フルオレン-9-イル)メチル((R)-1-((3-((4-((2-((S)-2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)カルバモイル)キナゾリン-6-イル)オキシ)プロピル)アミノ)-3-(4-(ジ-tert-ブチルフルオロシリル)ベンズアミド)-1-オキソプロパン-2-イル)カルバメート(0.4g、0.41mmol)の撹拌溶液に、N,N-ジメチルホルムアミド(1mL)中のピペリジン(0.04mL、0.50mmol;Spectrochem)の溶液を滴下添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌した。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)分析(ジクロロメタン中15%メタノール)によってモニタリングした。反応の完了後、水(50mL)を添加し、得られた混合物を酢酸エチル(70mL×3)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗化合物をジクロロメタン中5~12%メタノールを使用してシリカゲル(230~400シリカ)カラムクロマトグラフィーによって精製して、所望の化合物を灰白色固体として得た。所望の化合物をLC-MSおよびH NMR分析によって特徴付けた。収量:0.22g(73%)。LC-MS C3749FNSi計算値732.36;観測値733.65[M+H]1H NMR (400 MHz, DMSO): δ 9.31-9.26 (m, 2H), 8.84 (bs, 1H), 8.45 (s, 1H), 8.30 (s, 1H), 8.01 (d, J=7.6 Hz, 3H), 7.74-7.64 (m, 3H), 7.10 (bs, 3H), 4.82 (bs, 1H), 4.66 (bs, 1H), 4.25-4.13 (m, 4H), 3.73 (bs, 1H), 3.53-3.52 (m, 1H), 3.35-3.09 (m, 3H), 2.50-2.07 (m, 6H), 1.23 (s, 18H)。
【0304】
調製13
トリ-tert-ブチル2,2’,2’’-(10-((R)-1-(tert-ブトキシ)-5-(((R)-1-((3-((4-((2-((S)-2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)カルバモイル)キナゾリン-6-イル)オキシ)プロピル)アミノ)-3-(4-(ジ-tert-ブチルフルオロシリル)ベンズアミド)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-1,5-ジオキソペンタン-2-イル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)トリアセテート(16)
ジクロロメタン(4mL)中の6-(3-((R)-2-アミノ-3-(4-(ジ-tert-ブチルフルオロシリル)ベンズアミド)プロパンアミド)プロポキシ)-N-(2-((S)-2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)キナゾリン-4-カルボキサミド(0.22g、0.30mmol)および1,4,7,10-テトラアザシクロドセカン,1-(グルタル酸)-4,7,10-三酢酸(DOTAGA(tBu)、0.21g、0.30mmol;Argonix Reagents & Intermediates)の撹拌溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、0.16mL、0.90mmol;Spectrochem)を窒素下で添加した。これに続いて、1-プロパンホスホン酸無水物(酢酸エチル中50%、0.28mL、0.90mmol:Spectrochem)を添加した。得られた混合物を室温で3時間撹拌した。反応の進行をTLC分析(ジクロロメタン中15%メタノール)によってモニタリングした。反応の完了後、水(30mL)を添加し、得られた混合物をジクロロメタン(50mL×3)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗化合物をジクロロメタン中10~15%メタノールを使用してシリカゲル(230~400シリカ)カラムクロマトグラフィーによって精製して、所望の化合物を灰白色固体として得た。所望の化合物をLC-MSおよびH NMR分析によって特徴付けた。収量:0.29g(69.0%)。LC-MS C72111FN1214Si計算値1414.81;観測値1413.85[M-H]1H NMR (400 MHz, DMSO): δ 9.31-9.28 (m, 2H), 8.56-8.47 (m, 2H), 8.16 (bs, 1H), 8.09 (bs, 1H), 8.02-7.90 (m, 3H), 7.73-7.63 (m, 3H), 4.81 (bs, 1H), 4.47 (bs, 1H), 4.24-4.13 (m, 5H), 3.72 (bs, 1H), 3.54-3.52 (m, 2H), 3.30 (bs, 3H), 3.16 (d, J=5.2 Hz, 2H), 3.03-3.00 (m, 5H), 2.85-2.70 (m, 4H), 2.33-1.83 (m, 21H), 1.40 (s, 36H), 1.08 (s, 18H)。
【0305】
実施例3および4のコンジュゲートの合成
調製14-実施例3の化合物
2,2’,2’’-(10-((R)-1-カルボキシ-4-(((R)-1-((3-((4-((2-((S)-2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)カルバモイル)キナゾリン-6-イル)オキシ)プロピル)アミノ)-3-(4-(ジ-tert-ブチルフルオロシリル)ベンズアミド)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-4-オキソブチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)三酢酸(17)
トリフルオロ酢酸(TFA):トリイソプロピルシラン(TIS):水(95:2.5:2.5、22mL;Spectrochem)中のトリ-tert-ブチル2,2’,2’’-(10-((R)-1-(tert-ブトキシ)-5-(((R)-1-((3-((4-((2-((S)-2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)カルバモイル)キナゾリン-6-イル)オキシ)プロピル)アミノ)-3-(4-(ジ-tert-ブチルフルオロシリル)ベンズアミド)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-1,5-ジオキソペンタン-2-イル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)トリアセテート(0.29g、0.20mmol)の溶液を室温で36時間窒素下で撹拌した。反応の進行をLC-MS分析によってモニタリングした。反応の完了後、反応混合物を減圧下で濃縮して、粘着性液体を得た。残渣をメチルtert-ブチルエーテル(20mL×3)に続いて、n-ペンタン(10mL)で摩砕することにより、固体の形成が生じた。固体を真空下で乾燥させて、所望の化合物を明褐色固体として得た。所望の化合物をLC-MS分析によって特徴付けた。収量:0.19g(77.8%、粗製)。LC-MS C5679FN1214Si計算値1191.56;観測値1189.70[M-H]
【0306】
調製15-実施例4の化合物
2-(16-((R)-1-カルボキシ-4-(((R)-1-((3-((4-((2-((S)-2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)カルバモイル)キナゾリン-6-イル)オキシ)プロピル)アミノ)-3-(4-(ジ-tert-ブチルフルオロシリル)ベンズアミド)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-4-オキソブチル)-3,6-ジオキソ-4,5-ジオキサ-1,8,11,16-テトラアザビシクロ[6.5.5]オクタデカン-11-イル)酢酸ガリウム(I)(18、Ga-(S,R,R)-SiFA-FAP-2)
窒素下のtert-ブタノール:水(3:1、7.3mL)中の2,2’,2’’-(10-((R)-1-カルボキシ-4-(((R)-1-((3-((4-((2-((S)-2-シアノピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)カルバモイル)キナゾリン-6-イル)オキシ)プロピル)アミノ)-3-(4-(ジ-tert-ブチルフルオロシリル)ベンズアミド)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-4-オキソブチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)三酢酸(粗製、0.19g、0.16mmol)の撹拌溶液に、硝酸ガリウム(III)(0.082g、0.32mmol;Sigma Aldrich)を添加し、得られた混合物を75℃で3時間加熱した。反応の進行をLC-MS分析によってモニタリングした。完了後、反応物を室温に冷却し、水(10mL)を添加した。得られた混合物をマイクロフィルターを通して濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をメチルtert-ブチルエーテル(10mL×3)およびジエチルエーテル(10mL)で摩砕した。粘着性残渣を高真空下で乾燥させて、淡黄色固体を得た。粗化合物を逆相HPLC;移動相A:A:水中0.1%ギ酸および移動相B:アセトニトリル;カラム:Waters XBridge Prep C18 250×19mm、5μmによって精製して、所望の化合物を灰白色固体として得た。収量:13mg(6.5%)。LC-MS C5676FGaN1214Si計算値1256.46;観測値1257.80[M+H]1H NMR (400 MHz, DMSO): δ 9.33-9.27 (m, 2H), 8.61 (m, 1H), 8.46 (bs, 1H), 8.16 (bs, 2H), 8.02-7.91 (m, 3H), 7.75-7.65 (m, 3H), 4.84 (bs, 1H), 4.57 (bs, 1H), 4.45 (bs, 1H), 4.25-4.17 (m, 4H), 3.73 (bs, 1H), 3.48 (m, 4H), 3.30-2.70 (m, 23H), 2.18-1.83 (m, 11H), 1.02 (s, 18H);HPLC:7.730分;90.6%、カラム:XBridge C18 250×4.6、5μm、移動相A:HO中0.1%ギ酸;移動相B:アセトニトリル。
【0307】
実施例5から10のコンジュゲートの合成
実施例5から10のコンジュゲートは、下記のスキームに従って調製されてもよい。
【0308】
【化41】
【0309】
上記のステップ1~5は、公開された方法(WO2019/020831)に従って実行され得る:
ステップ1:a)20%ピペリジン、(DMF);b)(tBuO)EuE(OtBu)、HOBt、TBTU、DIPEA、(DMF);ステップ2:a)2%ヒドラジン(DMF);b)無水コハク酸、DIPEA、(DMF);c)Fmoc-D-Lys-OAll-HCl、HOBt、TBTU、DIPEA、(DMF);ステップ3:a)20%ピペリジン、(DMF);b)Fmoc-D-Dap(Dde)-OH、HOBt、TBTU、DIPEA、(DMF);c)イミダゾール、ヒドロキシルアミン塩酸塩、(NMP、DMF);ステップ4:a)SIFA-BA(WO2019/020831)、HOBt、TBTU、DIPEA(DMF);b)20%ピペリジン、(DMF);ステップ5:DOTAGA無水物、DIPEA、(DMF)。
【0310】
実施例5
【0311】
【化42】
【0312】
実施例6
【0313】
【化43】
【0314】
実施例7
(S)-1-(2-アミノアセチル)-4,4-ジフルオロピロリジン-2-カルボニトリルの合成(上記のステップ6)は、Jansenら(ACS Med.Chem.Lett.2013年、4、491~496)によって記載された方法に従って実行する。
【0315】
【化44】
【0316】
【化45】
【0317】
ステップ6:a)HATU、DIPEA、(DMF);b)切断:TFA TIS、水;c)最終脱保護:TFA。
実施例8および8a
【0318】
【化46】
【0319】
実施例9および10
【0320】
【化47】
【0321】
(S)-1-(2-アミノアセチル)-4,4-ジフルオロピロリジン-2-カルボニトリルの合成(ステップ6)は、Jansenら(ACS Med.Chem.Lett.2013年、4、491~496)によって記載された方法に従って実行する。
【0322】
【化48】
【0323】
放射性標識
一般的情報
担体無添加のフッ素18は、Curium Pharmaが、97%超濃縮[18O]HOターゲット(Bruce Technology)2.8mLにPETtraceサイクロトロン(16MeV陽子線、GE healthcare)で照射することによる[18O(p,n)18F]核反応により生成した。放射性インスタント薄層クロマトグラフィー(放射性ITLC)分析は、mini GITA Dual放射性TLC機器(Elysia-Raytest)において、NaCO 0.1M水溶液で4分間溶出してシリカゲル含浸クロマトグラフィーペーパー(Varian Inc.)を使用して測定した。分析用HPLC測定は、Flo-one A500 Radiomatic検出器(Packard、Canberra、オーストラリア)と組み合わされたAgilent HPシリーズ1100(Hewlett Packard、Les Ulis、フランス)からなるシステムにおいて実施した。分離は、C-18カラム(Kinetex(登録商標)EVO C18、5μm、4.6×150mm、100Å、ガードカラムを装着)において、次の溶媒条件:0.1%のトリフルオロ酢酸を含有する水(溶媒A)および0.1%のトリフルオロ酢酸を含有するアセトニトリル(溶媒B);0から10分:1mL/分の流速で99%~0%Aの勾配溶離を使用して行い、λ=254および214nmであった。無水K[18F]F-K222-炭酸塩複合体の調製は、SynChrom R&D EVOI合成モジュール(Raytest)を使用して実施した。Oasis HLB Plus LPカートリッジ(60μm)、Sep-Pak(登録商標)Light Accell Plus QMA炭酸イオンカートリッジ(46mg、45μm)およびSep-Pak(登録商標)light C18 Plusカートリッジ(130mg、55~105μm)は、Watersから購入した。すべての放射性標識化合物は、TLCまたは分析用HPLCによって標準非放射性材料と比較され、重大な紫外線吸収性の化学的および放射化学的不純物を含有しないはずであった。
【0324】
実施例11([ 18 F]-Ga-(S,R,R)-SiFA-FAP-1)の放射性合成
SynChrom R&D EVOI合成モジュールにおいて、[18O]HO中の[18F]Fの水溶液(12時間16分で2.67GBq)を、脱イオン水(10mL)および空気(10mL)で予備状態調節されたアニオン交換樹脂(Sep-Pak(登録商標)Light Accell Plus QMA炭酸イオンカートリッジ46mg)に通した。次いで、水(200μL)およびアセトニトリル(700μL)の混合物中の炭酸カリウム(2.8mg)およびKryptofix(K222、21mg)の溶液をカートリッジに通して、反応器に放射能を溶出した。30秒間のヘリウムバブリングの後、混合物の共沸乾燥を100℃で3分間真空およびヘリウム流下で実施した。30℃に冷却した後、アセトニトリル(1mL)を反応器に添加した。30秒間のヘリウムバブリングの後、反応混合物を110℃で3分間真空およびヘリウム流下で蒸発乾固した。30℃に冷却した後、無水DMSO(500μL)中の実施例2の化合物(66μg、52nmol)および酢酸(9μL)の新たに調製された溶液を乾燥した反応器に添加した。溶液を10秒間撹拌し、マグネチックスターラーを含有する閉鎖したガラスバイアル中に移した。次いで、反応混合物を室温で10分間撹拌し、水(20mL)で希釈し、Oasis HLB Plusカートリッジに通した。これを水(10mL)で洗浄し、空気(20mL)で乾燥させ、無水エタノール(2mL)および空気(3mL)を使用して放射能をカートリッジから回収した。真空下で蒸発させた後、最終生成物を生理食塩水(0.9%NaCl、0.5mL)中で製剤化した。総合成時間:61分。崩壊補正放射化学的収率:57%。放射性合成の最後に、放射性トレーサーの放射化学的純度を、分析用放射性RP-HPLC測定を使用して確認した(99%超、図1)。
【0325】
生物学的活性
in vitroでの結合親和性およびin vivoでの生体内分布に関する研究を実行した。
【0326】
in vivoでのPETイメージングおよび生体内分布
ヒト神経膠芽腫U87-MG細胞株をATCCから購入した。細胞をEMEM(2mM L-グルタミン、10%ウシ胎仔血清および0.1mM NEAAを補充)中で37℃で加湿雰囲気(5%CO2、95%空気)において培養した。
【0327】
すべての動物実験は、Federation for Laboratory Animal Science Associationsのガイドラインに従って実行した。健康な雌のスイスヌード(Crl:NU(Ico)-Foxn1nu)マウス(5~6週齢)をCharles Riverから購入した。マウスに腫瘍細胞接種の24~72時間前に照射し(全身照射、2Gy/マウス)、次いで、U87-MG細胞(RPMI1640 200μL中1×10個)を右肩脇腹に皮下注射した。
【0328】
各々右脇腹に皮下U87-MG腫瘍を担持する雌のスイスヌード(Crl:NU(Ico)-Foxn1nu)マウス(n=4)に、実施例11の放射性標識化合物([18F]-Ga-(S,R,R)-SiFA-FAP-1)(8±1.5MBq、マウス1匹当たり100μL)を、(U87-MG細胞を接種した約3週間後に)尾静脈に静脈内投与した。放射性トレーサー投与の60分後に、小動物PETスキャナー(eXploreVISTA、GE)を使用して、麻酔(2%イソフルラン)下で静的PETイメージングを実施した(n=3)。全身PET撮像を2つのベッド位置にわたって20分間実施した。関心領域を作成し、組織における放射性トレーサーの取り込みを関心領域体積当たりの注射用量%(%ID/cm)として計算した。PETイメージングの直後に、マウス(n=4)を屠殺し、選択された組織(血液、腫瘍、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、膵臓、腸、骨、筋肉、尾)を採取し、秤量した。収集されたサンプル中の放射能を、γ計数(Packard)を使用して決定した。放射性トレーサーの取り込みを組織1グラム当たりの注射用量%(%ID/g)として計算した。
【0329】
結果
実施例11の放射性標識化合物([18F]-Ga-(S,R,R)-SiFA-FAP-1)の腫瘍への取り込みを、PETイメージング(表2、図2)および切除された組織をγ計数することによる生体内分布分析(表3aおよび3b、図3)の両方を使用して観測した。PETイメージングは、筋肉と比較して腫瘍において4倍以上高い放射性トレーサーの取り込みを実証した(表2、図2)。生体内分布分析は、筋肉と比較して腫瘍において8倍高い放射性トレーサーの取り込みを実証した(表3aおよび3b、図3)。
【0330】
【表2】
【0331】
【表3a】
【0332】
【表3b】
【0333】
in vitroでのFAP結合親和性
非放射性標識化合物実施例2(Ga-(S,R,R)-SiFA-FAP-1)および実施例1((S,R,R)-SiFA-FAP-1)の結合親和性を、グレーティング結合干渉法(GCI)およびwaveRAPID反応速度アッセイ(Kartal Oら、SLAS Discov.2021年9月;26(8):995~1003)を使用してin vitroで評価した。
【0334】
化合物の標的結合を評価するために、FAPをストレプトアビジンセンサーチップに固定化した。簡潔に言えば、ストレプトアビジンチップをホウ酸緩衝液で状態調節し、EDC-NHS溶液で活性化した。アミン反応性センサーチップ(NeutrAvidinセンサーチップ)上の表面とのアミンカップリングにより固定化を達成し、未使用のアミン反応性基をエタノールアミンで不活性化した。ビオチン化FAPのNeutrAvidin捕捉によりFAPを固定化し、残りのNeutrAvidinをビオシチンでクエンチした。固定化されたFAPへの化合物の結合を、1×PBS pH7.4、1mM DTT、0.005%Tween、2%DMSO中の異なる濃度の各化合物を使用して、waveRAPID反応速度アッセイを使用して評価した。FAPに対する結合親和性をKとして報告した。
【0335】
結果
両方の化合物についての結合親和性は、pM範囲内であった(表4)。
【0336】
【表4】
図1
図2
図3
【国際調査報告】