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特表2024-529310耐食性を有する高性能なネオジム鉄ボロン焼結磁石及びその製造方法並びに用途
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  • 特表-耐食性を有する高性能なネオジム鉄ボロン焼結磁石及びその製造方法並びに用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】耐食性を有する高性能なネオジム鉄ボロン焼結磁石及びその製造方法並びに用途
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/057 20060101AFI20240730BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20240730BHJP
   B22F 9/04 20060101ALI20240730BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240730BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20240730BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20240730BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H01F1/057 170
H01F41/02 G
B22F9/04 D
B22F9/04 E
B22F1/00 Y
B22F3/00 F
C22C33/02 J
C22C38/00 303D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500588
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 CN2022104307
(87)【国際公開番号】W WO2023280259
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】202110774881.2
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522310502
【氏名又は名称】烟台正海磁性材料股▲フン▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523247027
【氏名又は名称】江華正海五礦新材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】李志強
(72)【発明者】
【氏名】姜雲瑛
(72)【発明者】
【氏名】劉磊
(72)【発明者】
【氏名】安仲▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】董▲ユ▼昊
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5E040
5E062
【Fターム(参考)】
4K017AA04
4K017BA06
4K017BB06
4K017BB12
4K017BB13
4K017BB18
4K017CA07
4K017DA04
4K017EA08
4K018AA27
4K018BA18
4K018CA04
4K018CA11
4K018CA16
4K018DA21
4K018DA30
4K018FA08
4K018KA45
5E040AA04
5E040AA19
5E040BD01
5E040CA01
5E040HB09
5E040HB11
5E040HB15
5E040HB17
5E040NN01
5E040NN06
5E040NN18
5E062CD04
5E062CE04
5E062CG02
5E062CG05
(57)【要約】
本発明は、耐食性を有する高性能なネオジム鉄ボロン焼結磁石及びその製造方法並びに用途を提供する。本発明のネオジム鉄ボロン焼結磁石は、ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物を製粉し、成形し、焼結して製造され、上記ネオジム鉄ボロン焼結磁石は、含有量が28.5 wt%以上且つ32.5 wt%以下のR、含有量が0.88 wt%以上且つ0.94 wt%以下のB、含有量が0.1 wt%以上且つ0.3 wt%以下のGa、含有量が1.0 wt%以上且つ3.0 wt%以下のCo、含有量が400 ppm以上且つ1000 ppm以下のOを含む。本発明は、酸素添加操作を行うことにより、保磁力の低下を抑制し、且つ保磁力を向上させるネオジム鉄ボロン焼結磁石を得ることができると共に、磁石の耐食性を改善することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物を不活性雰囲気の保護で製粉し、成形し、焼結して製造されるネオジム鉄ボロン焼結磁石であって、
前記ネオジム鉄ボロン焼結磁石は、
含有量が28.5wt%以上且つ32.5wt%以下のR、
含有量が0.88wt%以上且つ0.94wt%以下のB、
含有量が0.1wt%以上且つ0.3wt%以下のGa、
含有量が1.0wt%以上且つ3.0wt%以下のCo、及び
含有量が400ppm以上且つ1000ppm以下のOを含み、
残部がFe及び不可避的不純物である、
ことを特徴とするネオジム鉄ボロン焼結磁石。
【請求項2】
前記Rは、ネオジム(Nd)、又はネオジム(Nd)と下記希土類元素、即ち、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、スカンジウム(Sc)及びイットリウム(Y)等の希土類元素から選ばれる少なくとも1種である、
ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム鉄ボロン焼結磁石。
【請求項3】
前記ネオジム鉄ボロン焼結磁石において、B、Ga、Oが、0.25×(0.98-[B])+0.1×(0.5-[Ga])<[O]の関係を有し、
そのうち、[B]、[Ga]、[O]は、それぞれB、Ga、Oのネオジム鉄ボロン焼結磁石における質量百分率を表し、
好ましくは、前記不純物の含有量が0wt%以上且つ2.0wt%以下であり、好ましくは、0.1wt%以上且つ0.8wt%以下である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のネオジム鉄ボロン焼結磁石。
【請求項4】
前記ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物は、200ppm以下のOを含み、好ましくは、前記ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物は、必要化学量論量のR、B、Ga、Co、Fe等の元素を更に含む、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のネオジム鉄ボロン焼結磁石。
【請求項5】
前記ネオジム鉄ボロン焼結磁石は、R2Fe14B主相、Rリッチ相及びBリッチ相を含み、
好ましくは、前記ネオジム鉄ボロン焼結磁石は、図1に示す面心立方(fcc)構造を含む、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載のネオジム鉄ボロン焼結磁石。
【請求項6】
前記ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物を製粉し、成形し、焼結して、ネオジム鉄ボロン焼結磁石を製造することを含むネオジム鉄ボロン焼結磁石の製造方法であって、
好ましくは、前記ネオジム鉄ボロン焼結磁石の製造方法は、具体的には、
(1)前記ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物を準備するステップと、
(2)前記ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物を製粉工程によって微粉末にするステップと、
(3)前記微粉末を外部磁場の作用で、不活性ガス雰囲気でプレス成形して成形体を製造するステップと、
(4)前記成形体を焼結工程により、前記ネオジム鉄ボロン焼結磁石を得るステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載のネオジム鉄ボロン焼結磁石の製造方法。
【請求項7】
ステップ(2)において、前記製粉工程で製造された微粉末の平均粒径SMDは1μm~10μmであり、
好ましくは、ステップ(2)において、前記製粉工程は、酸素添加操作を更に含み、
好ましくは、前記酸素添加操作ステップは、製粉工程において酸素含有混合ガスを通気するステップであり、好ましくは、前記混合ガスにおける酸素の体積分率は、0.1%~30%であり、好ましくは4%~16%であり、好ましくは、前記混合ガスは、窒素ガス又は不活性ガスと圧縮空気であり、そのうち、混合ガスに占する圧縮空気の体積分率は、好ましくは、20%~80%であり、好ましくは、前記不活性ガスは、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガスから選ばれる何れか一種であり、
好ましくは、前記製粉工程は、水素破砕と研磨を含み、
好ましくは、前記酸素添加操作は、水素破砕、研磨又は研磨後の何れかの段階で行うことができる、
ことを特徴とする請求項6に記載のネオジム鉄ボロン焼結磁石の製造方法。
【請求項8】
ステップ(3)において、前記微粉末を2T配向場で配向し、プレス成形し、好ましくは、15KOeの配向場であり、
好ましくは、ステップ(3)において、プレス成形前、前記微粉末に潤滑剤を添加し、潤滑剤の添加量が微粉末の総重量の0wt%~1wt%を占める、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載のネオジム鉄ボロン焼結磁石の製造方法。
【請求項9】
ステップ(4)において、前記焼結工程は、高温焼結、冷却、第一時効工程、冷却、第二時効工程、及び冷却を含み、
好ましくは、前記高温焼結は、1000℃~1100℃の高温焼結温度、4h~10hの高温焼結時間を含み、
好ましくは、前記第一時効工程は、600℃~750℃の処理温度、4h~10hの処理時間を含み、
好ましくは、前記第二時効工程は、500℃~650℃の処理温度、4h~10hの処理時間を含み、
好ましくは、焼結工程における冷却とは、80℃以下まで冷却することを指し、好ましくは、前記冷却は、真空冷却、アルゴンガス充填徐冷、送風機冷却等から選ばれる何れか一種であり、
好ましくは、前記焼結工程は、不活性雰囲気で行われる、
ことを特徴とする請求項6~8の何れか一項に記載のネオジム鉄ボロン焼結磁石の製造方法。
【請求項10】
風力発電、自動車、家電、モーター、コンシューマーエレクトロニクス、及び医療機器等の分野における請求項1~5の何れか一項に記載のネオジム鉄ボロン焼結磁石の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年7月8日に中国国家知識産権局に提出された、特許出願番号が202110774881.2であり、発明名称が「耐食性を有する高性能なネオジム鉄ボロン焼結磁石及びその製造方法並びに用途」である先行出願の優先権を主張する。上記先行出願は全体として援用により本願に組み込まれている。
【0002】
本発明は、耐食性を有する高性能なネオジム鉄ボロン焼結磁石及びその製造方法並びに用途に関し、希土類永久磁石材料の分野に属する。
【背景技術】
【0003】
希土類永久磁石材料は、現代の経済と科学技術に不可欠な支柱材料となっている。そのうち、ネオジム鉄ボロン焼結永久磁石は、現在、風力発電、自動車、家電、モーター、コンシューマーエレクトロニクス、及び医療機器等の分野で広く利用されている。ネオジム鉄ボロン焼結磁石は、主にR2Fe14B主相、Rリッチ相、Bリッチ相からなる。R2Fe14B主相が高飽和磁化と異方性磁場を有する強磁性材料であり、ネオジム鉄ボロン焼結磁石の磁気特性を構成する基礎となる。従来技術のネオジム鉄ボロン焼結磁石は、粒界にBリッチ相(Nd1.1Fe4B4化合物)が形成することが多く、ネオジム鉄ボロン焼結磁石の残留磁束密度Brと保磁力Hcjの低下を招いた。
【0004】
近年、ネオジム鉄ボロン永久磁石の製造業者においても、安定した量産を実現するため、低B配合及びその関連技術の研究が精力的に進められている。そのうち、特許文献CN105074837Bには、Bの含有量が0.86質量%以上且つ0.90質量%以下であるが、Gaの含有量が0.4質量%以上且つ0.6質量%以下であるネオジム鉄ボロン焼結磁石が開示されている。特許文献CN105960690Bには、Gaの含有量が0.3%~0.8%、Bの含有量が0.93%~1.0%、Tiの含有量が0.15%~0.28%を必要とするネオジム鉄ボロン焼結磁石が開示され、合金粉末を準備する工程には、Tiの水素化物粉末を準備する工程を含み、合金粉末とTiの水素化物の粉末とを混合して粉末を製造する。特許文献CN106716571Bには、ネオジム鉄ボロン永久磁石の製造方法が開示され、Cu、Gaの含有量が何れも≧0.2%であり、Nb及び/又はZrの含有量が≦0.1%であり、Bの含有量が0.85%~0.93%であることを必要とし、熱処理工程には、磁石原料を730℃以上且つ1020℃以下に加熱し、300℃まで冷却した後、440℃以上且つ550℃以下に再加熱して、低温段処理するステップを含む。
【0005】
前記技術案は、ネオジム鉄ボロン焼結磁石内のB濃度を減少させ、主相結晶粒の割合を減少させ、粒界を厚くするなどの手段により、ネオジム鉄ボロン焼結磁石の保磁力を向上させるように目指すが、低B系ネオジム鉄ボロン焼結磁石内の粒界が厚くなる現象が依然として存在する。且つ、粒界相が比較的厚いため、磁石におけるNdとFeが酸化されやすく、磁石の耐食性が低下する。従って、ネオジム鉄ボロン焼結磁石の磁気特性、耐食性を更に向上させ、且つコストを低減させること等が強く望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来技術に存在する問題を改善するために、本発明は、ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物を不活性雰囲気で製粉し、成形し、焼結して製造されるネオジム鉄ボロン焼結磁石を提供する。
【0007】
本発明の実施形態によれば、上記ネオジム鉄ボロン焼結磁石は、
含有量が28.5 wt%以上且つ32.5 wt%以下のR、
含有量が0.88 wt%以上且つ0.94 wt%以下のB、
含有量が0.1 wt%以上且つ0.3 wt%以下のGa、
含有量が1.0 wt%以上且つ3.0 wt%以下のCo、及び
含有量が400 ppm以上且つ1000 ppm以下のOを含み、
残部がFe及び不可避的不純物である。
【0008】
好ましくは、上記Rは、ネオジム(Nd)、又はネオジム(Nd)と下記希土類元素、即ち、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、スカンジウム(Sc)及びイットリウム(Y)等の希土類元素から選ばれる少なくとも1種である。
【0009】
本発明の実施形態によれば、上記ネオジム鉄ボロン焼結磁石は、B、Ga、Oが0.25×(0.98-[B])+0.1×(0.5-[Ga])<[O]の関係を有し、
そのうち、[B]、[Ga]、[O]は、それぞれB、Ga、Oのネオジム鉄ボロン焼結磁石における質量百分率を表す。
【0010】
本発明の実施形態によれば、上記不可避的不純物の含有量が、0 wt%以上且つ2.0 wt%以下であり、好ましくは、0.1 wt%以上且つ0.8 wt%以下である。
【0011】
本発明の実施形態によれば、上記ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物において、200 ppm以下のOを含む。好ましくは、上記ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物に、必要化学量論量のR、B、Ga、Co、Fe等の元素を更に含む。
【0012】
本発明の実施形態によれば、上記ネオジム鉄ボロン焼結磁石は、R2Fe14B主相、Rリッチ相及びBリッチ相を含む。
【0013】
本発明の実施形態によれば、上記ネオジム鉄ボロン焼結磁石は、図1に示す面心立方(fcc)構造を含む。発明者らは、Rの含有量がネオジム鉄ボロン焼結磁石の主相結晶粒及び粒界相の組織構造を決定し、磁石性能に非常に重要な役割を果たすことを見出した。Rの含有量が≦29 wt%以下である場合、溶解製錬時の合金液の冷却過程でα-Fe相が析出しやすく、α-Fe相の存在は、ネオジム鉄ボロン焼結磁石の残留磁気及び保磁力の顕著な低下を招き、Rの含有量の増加に伴い、磁石のBrが次第に低下し、Hcjが次第に向上し、Rの含有量≧33 wt%である場合、粒界相の厚さが増大し、欠陥及び不純物量が多くなり、磁石性能が大幅に低下する。
【0014】
Bの主な役割は、Nd2T14Bの主相を形成することであり、Bの含有量の変化は、ネオジム鉄ボロン焼結磁石の残留磁気及び保磁力に顕著な影響を与えないが、Bの含有量が多い場合(例えば≧0.94 wt%)、Bリッチ相が磁石粒界に形成されやすく、Bリッチ相が非強磁性であるため、その存在は磁石の磁気特性を大きく低下させる。
【0015】
Gaの含有量が少ないほど、主相粒子におけるGaの含有量が減少し、且つ主相粒子におけるGaの原子数濃度が少ないほど、R6Fe13Ga相が粒界に生成しにくくなる。その結果、磁気特性、特にHcjが低下しやすくなる。
【0016】
発明者らは、Bの含有量が0.94 wt%以下のネオジム鉄ボロン焼結磁石において、酸素含有量を400 ppm以上且つ1000 ppm以下に制御することにより、磁石の耐食性を改善することができることを見出した。磁石におけるNdの量が一定である場合、適切な酸素含有量は、ネオジム鉄ボロン焼結磁石の組織及び特性に有利であり、酸素含有量が多すぎると(例えば≧1000 ppm)、磁石における正味希土類元素の含有量がある臨界値まで低下し、その結果、Ndリッチ相が消失し、焼結時に磁石が緻密化できなくなったり、そのNd2T14B主相が破壊されてα-Fe相が出現したりすることがあり、従って、酸素含有量が多すぎると、磁石のHcjが低下する。
【0017】
発明者らは、Coの添加はネオジム鉄ボロン焼結磁石のキュリー温度を上昇させ、磁石の温度係数を改善するのに有効であり、ネオジム鉄ボロン焼結磁石の高温条件での応用に大きなプラスの効果があることを見出した。しかし、Co元素は戦略資源に属し、将来的に高価になる傾向があり、且つCo元素の過剰添加(例えば≧3.0 wt%)もネオジム鉄ボロン焼結磁石の靭性を低下させ、その脆性を増大させ、磁石製品の加工には適していない。
【0018】
本発明は、上記ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物を製粉し、成形し、焼結して上記ネオジム鉄ボロン焼結磁石を製造することを含む上記ネオジム鉄ボロン焼結磁石の製造方法を更に提供する。
【0019】
本発明のネオジム鉄ボロン焼結磁石の製造方法の実施形態によれば、上記製造方法は、具体的には、
(1)上記ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物を準備するステップと、
(2)上記ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物を製粉工程によって微粉末にするステップと、
(3)上記微粉末を外部磁場の作用で不活性ガス雰囲気でプレス成形して成形体を製造するステップと、
(4)上記成形体を焼結工程により、上記ネオジム鉄ボロン焼結磁石を得るステップと、を含む。
【0020】
本発明の実施形態によれば、上記ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物は、上述のように定義される。好ましくは、上記ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物は、当業者に通常使用されるネオジム鉄ボロン急結シートであってもよく、例えば、上記急結シートは、真空又は不活性ガス雰囲気で、上記ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物を溶融して成分が均一で安定した合金溶液を得て、且つ合金溶液を急冷ロールに鋳込んで形成される急結プロセスにより製造される。例えば、鋳込温度は、1300℃~1600℃であり、より好ましくは、1400℃~1500℃である。急冷ロールの回転数は、好ましくは、20 r/min~60 r/min、より好ましくは、30 r/min~50 r/minである。好ましくは、急冷ロールの内部には、冷却液、例えば冷却水が通す。
【0021】
本発明の実施形態によれば、ステップ(2)において、上記製粉工程で製造される微粉末の平均粒径SMDは、1 μm~10 μm、好ましくは1 μm~9 μm、2 μm~5 μm、6 μm~8 μmであり、例示的には2.8 μmである。好ましくは、上記微粉末の平均粒径は、乾式分散によるレーザー回折法により測定される。
【0022】
本発明の実施形態によれば、ステップ(2)において、上記製粉工程は、更に酸素添加操作を含む。
【0023】
好ましくは、上記酸素添加操作ステップは、製粉工程において酸素含有混合ガスを通気する。好ましくは、上記混合ガスにおける酸素ガスの体積分率は、0.1%~30%であり、好ましくは、4%~16%である。
【0024】
好ましくは、上記混合ガスは、窒素ガス又は不活性ガスと圧縮空気であり、そのうち、混合ガスに占する圧縮空気の体積分率は、好ましくは20%~80%である。好ましくは、上記不活性ガスは、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガスから選ばれる何れか一種である。
【0025】
好ましくは、上記製粉工程は、水素破砕と研磨を含む。
【0026】
好ましくは、水素破砕後、上記ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物(好ましくは急結シート)を爆裂させて粗粉末を得て、当該粗粉末の平均粒径が50 μm~150 μmであり、好ましくは100 μmである。
【0027】
好ましくは、水素破砕の真空度は10-2 Paである。好ましくは、水素破砕の場合、高純度水素(99.999%)を使用し、且つ水素圧が105 Pa程度に達する。好ましくは、水素破砕後且つ研磨前、脱水素処理を行う必要がある。
【0028】
好ましくは、上記酸素添加操作は、水素破砕、研磨又は研磨後の何れかの段階で行うことができる。
【0029】
例示的には、上記酸素添加操作は、水素破砕段階で行われる。
【0030】
例えば、粗粉末を水素破砕させて脱水素した後、酸素含有混合ガスを通気して酸素を添加し、粗粉末を回収する。
【0031】
好ましくは、酸素の供給が終了した後、ガス冷却、回収を行う。例示的に、上記酸素添加操作は、研磨段階で行われ、上記酸素含有混合ガスを通気して研磨を行う。更に、上記研磨は、中研磨とジェットマイクロミリングを更に含む。例えば、中研磨はボールミルを用いて研磨を行い、例えば30メッシュのふるいにかけて研磨を行う。例えば、ジェットマイクロミリングの場合、気流流速は1 MHz以上且つ2 MHz以下である。
【0032】
例示的に、上記酸素添加操作が研磨後の段階で行われ、微粉末貯蔵タンクに上記酸素含有混合ガスを充填する。
【0033】
本発明の実施形態によれば、ステップ(3)において、上記微粉末を、不活性ガス雰囲気で、2 T配向場で、配向させてプレス成形し、好ましくは15 KOeの磁場である。
【0034】
好ましくは、ステップ(3)において、プレス成形前に潤滑剤を上記微粉末に添加し、潤滑剤の添加量が微粉末の全重量の0 wt%~1 wt%、好ましくは0.2 wt%を占する。好ましくは、本発明における潤滑剤としては、特に限定されるものではなく、当該技術分野において通常の潤滑剤を使用することができる。
【0035】
本発明の実施形態によれば、ステップ(4)において、上記焼結工程は、高温焼結、冷却、第一時効工程、冷却、第二時効工程、冷却を含む。
【0036】
好ましくは、上記高温焼結は、1000℃~1100℃の高温焼結温度、4 h~10 hの高温焼結時間を含む。好ましくは、上記高温焼結温度は1020℃~1080℃であり、例示的には1050℃である。好ましくは、上記高温焼結温度は、4 h~10 h、例示的には4 h、5 h、6 h、7 h、8 h、9 h、10 hである。
【0037】
好ましくは、上記第一時効工程は、600℃~750℃、好ましくは630℃~700℃、650℃~670℃の処理温度、4 h~10 h、例示的には4 h、5 h、6 h、7 h、8 h、9 h、10 hの処理時間を含む。
【0038】
好ましくは、上記第二時効工程は、500℃~650℃、好ましくは530℃~600℃、560℃~580℃の処理時間、4 h~10 h、例示的に4 h、5 h、6 h、7 h、8 h、9 h、10 hの処理時間を含む。
【0039】
好ましくは、焼結工程における冷却とは、80℃以下まで冷却することを指す。好ましくは、上記冷却は、真空冷却、アルゴンガス充填徐冷、送風機冷却等から選ばれる何れか一種である。上記冷却は、任意の冷却速度で行うことができ、徐冷(例えば、≦10℃/min)又は急冷(例えば、≧40℃/min)の何れかを選んでもよい。
【0040】
好ましくは、上記焼結工程は、不活性雰囲気で行われる。
【0041】
本発明は、上記方法により製造され、上述した意味と含有量を有するネオジム鉄ボロン焼結磁石を更に提供する。上記ネオジム鉄ボロン焼結磁石は、図1に示す面心立方(fcc)構造を有する。
【0042】
本発明は、風力発電、自動車、家電、モーター、コンシューマーエレクトロニクス、及び医療機器等の分野における前記ネオジム鉄ボロン焼結磁石の応用を更に提供する。
【発明の効果】
【0043】
発明者らは、本発明のネオジム鉄ボロン焼結磁石において、粒界内の一部のNdが酸素と結合して比較的安定な酸化ネオジムを生成し、酸化ネオジムが結晶粒の異常成長を阻害する役割を果たし、同時に、酸素はNdリッチ相に進入した後、その両六方最密充填(dhcp)構造を図1に示す面心立方(fcc)構造に変換させ、fcc構造の液態相のNdリッチ相とNd2T14B主相結晶粒の濡れ角が小さくなり、これらの間の濡れ性が増加し、Ndリッチ相が粒界に沿ってより均一に分布するのに寄与する見出した。本発明のネオジム鉄ボロン焼結磁石は、ボロンリッチ相を含まず、粒界が比較的厚く、且つ結晶粒の異常成長を抑制できるため、重希土類金属又は合金の使用量を節約することを前提とし、酸素添加操作を行うことにより、保磁力の低下を抑制し、且つ保磁力を向上させるネオジム鉄ボロン焼結磁石を得ることができると共に、磁石の耐食性を改善することができる。
【0044】
且つ、本発明の焼結工程に二段時効プロセスを使用することにより、酸化状態のNdを結晶粒界に更に規則的に分布させることができ、且つ磁石の保磁力を低下させることなく、磁石の耐食性能を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明に係るネオジム鉄ボロン焼結磁石における面心立方(fcc)の構成模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、具体的な実施例に合わせ、本発明の技術案を更に詳しく説明する。下記の実施例は、単に本発明を例示的に説明して解釈するものに過ぎず、本発明の請求範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解すべきである。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、何れも本発明による保護範囲に含まれる。
【0047】
特に説明のない限り、下記の実施例に使用される原料及び試薬は何れも市販品であり、又は既知の方法によって製造することができる。
【0048】
本発明の製粉段階では、研磨後の微粉末の粒度は、1 μm以上且つ10 μm以下であり、より好ましくは2 μm以上且つ5 μm以下である。本発明の実施例における微粉末の粒度は、何れも乾式分散によるレーザー回折法により測定される。
【0049】
ネオジム鉄ボロン焼結磁石の磁気特性、酸素含有量、重量減少特性の測定方法は以下の通りである。
【0050】
磁気特性:φ10 mm*10 mmサンプルカラムを製造し、各サンプルカラムの磁気特性をNIM62000 B-Hトレーサーで測定し、残留磁気Br、固有保磁力HcjとHk/Hcjを含む。そのうち、Hk/Hcjは磁石の固有減磁曲線の角形度を表し、一般的に減磁曲線において0.9 Br又は0.8 Brに対応する磁場を曲げ点磁場Hkと呼ばれ、ニーポイント保磁力とも呼ばれ、Hkが大きいほど、磁石の固有減磁曲線の角型比が優れていることを意味する。
【0051】
酸素含有量:サンプルの製造:サンプルを機械的衝撃により1 mm~2 mm程度の粒子に粉砕し、酸素窒素計により各サンプルカラムの酸素含有量を測定し、サンプルが上記焼結磁石型サンプルカラムの場合、サンプルの表層シースを除去して内部磁石を得てサンプルを製造する。
【0052】
PCT重量減少性能:高圧加速寿命測定設備(PCT試験槽)により、121℃、100% RH、2.0 Bar、96 hの実験条件で、天秤で各サンプルカラムの平均損失値を測定する。
[実施例1と比較例A~E]
実施例1及び比較例A~Eのネオジム鉄ボロン焼結磁石を、表1の成分配合と表2のプロセス条件に従って製造した。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
具体的な製造過程は、以下の通りである。
【0056】
(1)ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物を準備し、真空誘導溶解炉を使用し、上記[表1]の原料に従って準備して得られたネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物をるつぼに入れ、且つ真空又は不活性ガス(典型的にはアルゴンガス)雰囲気で1480℃に加熱して溶鋼にし、溶融した溶鋼を急冷ロールに鋳込んで急速に冷却し、ロール面に核を形成し、結晶し、且つ徐々に成長し、ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物の合金急結シートを形成した。急冷ロールの回転数は20 r/min以上且つ60 r/min以下であり、より好ましくは、回転数の範囲は30 r/min以上且つ50 r/min以下であり、急冷ロール内には冷却水が通した。
【0057】
前記急結シートを取り、測定した結果、酸素含有量が109 ppmであった。
【0058】
(2)製粉:ステップ(1)で得られた合金急結シートを水素破砕(HD)処理して粗粉末を得た。
【0059】
HD粉を回収する際、まずHD粉を回収ボックスに吊り込み、5000±200 L/hの流量の窒素ガス(又はアルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガス)で回収ボックスを30 min置換し、6 h冷却してから冷却装置に引き出し、-0.01 MPaまで真空引きし、体積比3:2の窒素ガスと圧縮空気との混合ガスを100±5 kPaで充填し、1 h冷却してから窒素ガスを1気圧まで充填し、そして、送風機温度を50℃以下まで冷却してから、回収ボックスで回収し、酸素添加操作を完了した。そして、中研磨、ジェットミリング等の研磨を順次行い、最終的に平均粒径SMDが2.8 μmの微粉末を製造した。
【0060】
(3)プレス成形:ステップ(2)で最終的に得られた微粉末に0.2 wt%の潤滑剤を添加し、ミキサーで2 h混合した後、プレス機のチャンバーに注ぎ、2.5 Tの印加磁場(例えば15 Koeの磁場)の作用で不活性ガス雰囲気で、配向させて、プレス成形した。
【0061】
(4)焼結:ステップ(3)でプレスした成形体をAr雰囲気での真空焼結炉で、それぞれ[表2]の焼結温度に従って焼結し、そして送風機を80℃以下まで急速に冷却して、焼結ネオジム鉄ボロン焼結磁石を製造した。そして、[表2]の第一時効温度と第二時効温度に従って、第一時効工程を行った後、80℃以下まで冷却し、再び第二時効工程を行い、80℃以下まで冷却し、焼結工程を完了し、焼結磁石を得た。
【0062】
実施例1と比較例A~Eで得られたネオジム鉄ボロン焼結磁石の磁気特性、酸素含有量、重量減少特性を測定し、測定結果を表3にまとめる。
【0063】
【表3】
【0064】
測定結果に示すように、本発明の実施例1の製品は、Br=1.397 T、Hcj=1440 kA/m、Hk/Hcj≧0.95、且つPCT平均損失値が僅か0.28 mg/cm2であり、優れた磁気特性、及び耐食性が得られた。
[実施例2~6と比較例F]
【0065】
【表4】
【0066】
[表4]の原料成分の配合比率に基づき、ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物合金を製造し、実施例1の製造過程を参照し、実施例2~6と比較例Fのネオジム鉄ボロン焼結磁石を製造した。異なる点は、焼結温度を1045℃に設定し、第一時効温度が720℃であり、第二時効温度が640℃であり、且つ実施例2~6の酸素添加操作を製粉工程の異なる段階で行うことであり、具体的には以下の通りである。
【0067】
実施例2:HD粗粉末を回収する際、まずHD粗粉末を回収ボックスに吊り込み、5000±200 L/hの流量の窒素ガス(又はアルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガス)で回収ボックスを30 min置換し、6 h冷却した後、冷却装置に引き込み、-0.01 MPaまで真空引きし、窒素ガスと圧縮空気との混合ガスを100±5 kPa、1:1の比率で充填し、1 h冷却した後、窒素ガスを1気圧まで充填し、そして、送風機温度を50℃以下まで冷却した後、回収ボックスで回収し、酸素添加操作を完了した。
【0068】
実施例3:中研磨段階で、30メッシュのふるいにかけて、中研磨のチャンバーに体積比10±1%の酸素が含まれる窒素酸素混合ガス雰囲気で研磨を行い、酸素添加操作を完了した。
【0069】
実施例4:ジェットミリング段階で、ジェットミルのチャンバーに体積比12±1%の酸素が含まれる窒素酸素混合ガス雰囲気で研磨を行い、酸素添加操作を完了した。
【0070】
実施例5:ジェットミリング段階で、ジェットミルの配管を調整し、そのうちの1本の研磨窒素ガス配管を1±0.1%の窒素酸素混合ガス配管に変更し、研磨を行い、酸素添加操作を完了した。
【0071】
実施例6:ジェットミリング後の粉末ミックス段階で、ジェットミルの粉末貯蔵タンク内でガス置換を行い、体積比13±1%の窒素酸素混合ガスを充填し、酸素添加操作を完了した。
【0072】
比較例F:製粉工程において酸素添加操作が行われず、HD粗粉末の回収、研磨(中研磨、ジェットミリング、混合等を含む)は何れも窒素雰囲気で行われた。
【0073】
実施例2~6と比較例Fで、最終的に平均粒径SMDが2.8 μmの微粉末が製造された。
【0074】
実施例2~6、比較例Fで得られたネオジム鉄ボロン焼結磁石の磁気特性、酸素含有量、重量減少特性を測定し、測定結果を表5にまとめる。
【0075】
【表5】
【0076】
その結果、本発明の実施例の焼結磁石は、酸素含有量を400 ppm以上且つ1000 ppm以下に制御し、Br、Hcj、Hk/Hcjの磁気特性レベルが同等であり、PCT重量減少の損失が<2.0%であり、耐食性に優れ、一方、従来の製粉工程を使用した比較例Fでは、製粉工程における酸素添加操作が行われず、酸素含有量が僅か328 ppmであるため、PCT重量減少の損失が6.51%と高く、磁石の耐食性が劣っている。
【0077】
以上は、本発明の実施形態の例示的な説明に過ぎず、いかなる形においても本発明の請求範囲を限定することを意図するものではない。当業者であれば、本発明の精神及び教示から逸脱することなく、本発明の技術案に修正、等価な変更、修正を行うことができ、そのような修正、等価な変更及び修正は何れも依然として本発明の保護の範囲内に含まれる。

図1
【手続補正書】
【提出日】2024-01-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物を不活性雰囲気の保護で製粉し、成形し、焼結して製造されるネオジム鉄ボロン焼結磁石であって、
前記ネオジム鉄ボロン焼結磁石は、
含有量が28.5wt%以上且つ32.5wt%以下のR、
含有量が0.88wt%以上且つ0.94wt%以下のB、
含有量が0.1wt%以上且つ0.3wt%以下のGa、
含有量が1.0wt%以上且つ3.0wt%以下のCo、及び
含有量が400ppm以上且つ1000ppm以下のOを含み、
残部がFe及び不可避的不純物である、
ことを特徴とするネオジム鉄ボロン焼結磁石。
【請求項2】
前記Rは、ネオジム(Nd)、又はネオジム(Nd)と下記希土類元素、即ち、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、スカンジウム(Sc)及びイットリウム(Y)等の希土類元素から選ばれる少なくとも1種である、
ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム鉄ボロン焼結磁石。
【請求項3】
前記ネオジム鉄ボロン焼結磁石において、B、Ga、Oが、0.25×(0.98-[B])+0.1×(0.5-[Ga])<[O]の関係を有し、
そのうち、[B]、[Ga]、[O]は、それぞれB、Ga、Oのネオジム鉄ボロン焼結磁石における質量百分率を表し、
好ましくは、前記不純物の含有量が0wt%以上且つ2.0wt%以下であり、好ましくは、0.1wt%以上且つ0.8wt%以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム鉄ボロン焼結磁石。
【請求項4】
前記ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物は、200ppm以下のOを含み、好ましくは、前記ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物は、必要化学量論量のR、B、Ga、Co、Fe等の元素を更に含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム鉄ボロン焼結磁石。
【請求項5】
前記ネオジム鉄ボロン焼結磁石は、R2Fe14B主相、Rリッチ相及びBリッチ相を含み、
好ましくは、前記ネオジム鉄ボロン焼結磁石は、図1に示す面心立方(fcc)構造を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム鉄ボロン焼結磁石。
【請求項6】
前記ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物を製粉し、成形し、焼結して、ネオジム鉄ボロン焼結磁石を製造することを含むネオジム鉄ボロン焼結磁石の製造方法であって、
好ましくは、前記ネオジム鉄ボロン焼結磁石の製造方法は、具体的には、
(1)前記ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物を準備するステップと、
(2)前記ネオジム鉄ボロン焼結磁石組成物を製粉工程によって微粉末にするステップと、
(3)前記微粉末を外部磁場の作用で、不活性ガス雰囲気でプレス成形して成形体を製造するステップと、
(4)前記成形体を焼結工程により、前記ネオジム鉄ボロン焼結磁石を得るステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム鉄ボロン焼結磁石の製造方法。
【請求項7】
ステップ(2)において、前記製粉工程で製造された微粉末の平均粒径SMDは1μm~10μmであり、
好ましくは、ステップ(2)において、前記製粉工程は、酸素添加操作を更に含み、
好ましくは、前記酸素添加操作ステップは、製粉工程において酸素含有混合ガスを通気するステップであり、好ましくは、前記混合ガスにおける酸素の体積分率は、0.1%~30%であり、好ましくは4%~16%であり、好ましくは、前記混合ガスは、窒素ガス又は不活性ガスと圧縮空気であり、そのうち、混合ガスに占する圧縮空気の体積分率は、好ましくは、20%~80%であり、好ましくは、前記不活性ガスは、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガスから選ばれる何れか一種であり、
好ましくは、前記製粉工程は、水素破砕と研磨を含み、
好ましくは、前記酸素添加操作は、水素破砕、研磨又は研磨後の何れかの段階で行うことができる、
ことを特徴とする請求項6に記載のネオジム鉄ボロン焼結磁石の製造方法。
【請求項8】
ステップ(3)において、前記微粉末を2T配向場で配向し、プレス成形し、好ましくは、15KOeの配向場であり、
好ましくは、ステップ(3)において、プレス成形前、前記微粉末に潤滑剤を添加し、潤滑剤の添加量が微粉末の総重量の0wt%~1wt%を占める、
ことを特徴とする請求項6に記載のネオジム鉄ボロン焼結磁石の製造方法。
【請求項9】
ステップ(4)において、前記焼結工程は、高温焼結、冷却、第一時効工程、冷却、第二時効工程、及び冷却を含み、
好ましくは、前記高温焼結は、1000℃~1100℃の高温焼結温度、4h~10hの高温焼結時間を含み、
好ましくは、前記第一時効工程は、600℃~750℃の処理温度、4h~10hの処理時間を含み、
好ましくは、前記第二時効工程は、500℃~650℃の処理温度、4h~10hの処理時間を含み、
好ましくは、焼結工程における冷却とは、80℃以下まで冷却することを指し、好ましくは、前記冷却は、真空冷却、アルゴンガス充填徐冷、送風機冷却等から選ばれる何れか一種であり、
好ましくは、前記焼結工程は、不活性雰囲気で行われる、
ことを特徴とする請求項6に記載のネオジム鉄ボロン焼結磁石の製造方法。
【請求項10】
風力発電、自動車、家電、モーター、コンシューマーエレクトロニクス、及び医療機器等の分野における請求項1に記載のネオジム鉄ボロン焼結磁石の応用。
【国際調査報告】