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特表2024-529325疾患を治療するための組成物及び方法II
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】疾患を治療するための組成物及び方法II
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20240730BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20240730BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 9/14 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 31/606 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 31/52 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240730BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20240730BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20240730BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALN20240730BHJP
【FI】
C12N1/20 E
A61K9/20 ZNA
A61K9/48
A61K9/14
A61K9/19
A61P1/00
A61P1/04
A61P29/00
A61K35/74
A61P37/02
A61P11/06
A61P37/08
A61P1/16
A61P3/06
A61P17/00
A61P9/14
A61K31/606
A61K31/52
A61K39/395 U
A61K35/74 G
A61K35/74 D
A23L33/135
C12N1/20 C
G01N33/68
C12Q1/6851 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501261
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 AU2022050726
(87)【国際公開番号】W WO2023283681
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】2021902122
(32)【優先日】2021-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2021902960
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2022900261
(32)【優先日】2022-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Witepsol
(71)【出願人】
【識別番号】520494851
【氏名又は名称】マイクローバ アイピー ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROBA IP PTY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】クイヴ, パライク オー
(72)【発明者】
【氏名】クラーズ, ルッツ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B018
4B063
4B065
4C076
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA26
2G045CB04
2G045CB21
2G045DA13
2G045DA14
2G045DA36
4B018MD85
4B018ME14
4B063QA13
4B063QQ06
4B063QQ52
4B063QQ54
4B063QR08
4B063QR62
4B063QS32
4B063QX02
4B065AA01X
4B065AC14
4B065BA22
4B065CA41
4B065CA44
4C076AA29
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA49
4C076AA53
4C076AA95
4C076BB01
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C076GG05
4C076GG06
4C076GG09
4C085AA14
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB07
4C086DA17
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA44
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA68
4C086ZA75
4C086ZA89
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZC33
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC54
4C087MA02
4C087MA35
4C087MA37
4C087MA43
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA44
4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZA68
4C087ZA75
4C087ZA89
4C087ZB07
4C087ZB11
4C087ZB13
4C087ZC33
4C087ZC75
(57)【要約】
疾患の治療又は予防のための、細菌株を含む治療組成物及び方法が開示される。より詳細には、ヒト消化管から単離された細菌株を含む組成物、並びに炎症性及び自己免疫障害の治療又は予防におけるそれらの使用が開示される。また、治療上重要な新規の細菌株及び単離された集団も開示される。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号V21/014432、V21/014433、若しくはV21/014434のうちのいずれか1つの下に寄託されたAlistipes shahii株又はその誘導体の細胞。
【請求項2】
前記細胞が、少なくとも部分的に単離されている、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
受託番号V21/014432、V21/014433、若しくはV21/014434のうちのいずれか1つの下に寄託されたAlistipes shahii株又はその誘導体の生物学的に純粋な培養物。
【請求項4】
請求項1若しくは請求項2に記載の細胞、又は請求項3に記載の培養物を含む、組成物。
【請求項5】
配列番号1~3若しくは44のうちのいずれか1つと少なくとも約99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、若しくは99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は配列番号1~3若しくは44のうちのいずれか1つのいずれか1つで表される16S rRNA遺伝子配列を有する細菌株を含む、組成物。
【請求項6】
薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体をさらに含む、請求項4又は請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに、Alistipes shahii種の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する細菌株を含む、医薬組成物。
【請求項8】
薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに、A.timonensis及びA.sp000434235のMRCAの系統発生的子孫である細菌株を含む、医薬組成物。
【請求項9】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード35260で定義される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記細菌株が、少なくとも部分的に単離されている、請求項5~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記細菌株が、生存可能であるか、又は生存不可能である、請求項4~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、乾燥形態である、請求項4~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、カプセル、錠剤、丸剤、トローチ、ロゼンジ、粉末、又は顆粒に製剤化される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせによって乾燥される、請求項12又は請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、腸に送達されるために製剤化される、請求項4~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
プレバイオティクスをさらに含む、請求項4~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
1つ以上の追加の細菌株をさらに含む、請求項4~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記1つ以上の追加の細菌株が、少なくとも部分的に単離されている、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、Clostridium属の細菌を含まない、請求項4~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記細菌株が、細胞内のシグナル伝達及び転写活性化因子3(STAT3)を減衰させるか、又は障害する薬剤を産生する、請求項1~19のいずれか一項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項21】
前記薬剤が、小分子、ペプチド、又はヌクレオチドである、請求項20に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項22】
前記薬剤が、前記細菌によって放出される、請求項20又は請求項21に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項23】
前記薬剤が、STAT3、JAK2、TYK、又はIL-23のうちのいずれか1つに特異的に結合する、請求項20~22のいずれか一項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項24】
前記細菌株が、酪酸塩、酢酸塩、エタノール、及びフマル酸塩から選択される1つ以上の代謝物を産生する、請求項1~23のいずれか一項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項25】
前記細菌株が、A.shahii種である、請求項1~24のいずれか一項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項26】
請求項4~25のいずれか一項に記載の組成物を含む、食品又は飲料製品。
【請求項27】
対象における腸障壁機能を回復又は改善する方法であって、前記対象に、Alistipes属の細菌株を投与して、それによって腸障壁機能を回復又は改善することを含む、方法。
【請求項28】
前記細菌株が、A.timonensis及びA.sp000434235のMRCAの系統発生的子孫である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード35260で定義される、請求項28に記載の製品。
【請求項30】
前記細菌株が、A.shahii種である、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
腸障壁機能を回復又は改善することが、(i)ムチンの質及び/若しくは量の増加、(ii)タイトジャンクションタンパク質の完全性の改善、(iii)管腔内容物の全身循環への移行の低減、又は(iv)腸潰瘍及び/若しくは腸創傷の低減のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記管腔内容物が、リポ多糖(LPS)を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
腸障壁機能障害の回復又は改善が、前記対象における全身性炎症の低減をもたらす、請求項27~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記対象由来の試料中の炎症性サイトカイン(例えば、IL-1β、IL-8、IL-6、及びTNF)のレベルが所定の閾値を上回るとき、全身性炎症が前記対象において特定される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
対象における粘膜治癒を誘導又は増強する方法であって、前記対象に、上皮細胞の遊走及び/又は増殖を誘導するのに十分な量のAlistipes属の細菌株を投与して、それによって前記対象における粘膜治癒を誘導することを含む、方法。
【請求項36】
前記細菌株が、A.timonensis及びA.sp000434235のMRCAの系統発生的子孫である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード35260で定義される、請求項36に記載の製品。
【請求項38】
前記細菌株が、A.shahii種である、請求項35~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
粘膜治癒が、1つ以上の糞便マーカー又は血清マーカーを使用して測定される、請求項35~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
1つ以上の糞便マーカーが、カルプロテクチン、ラクトフェリン、メタロプロテイナーゼ(MMP)-9、及びリポカリン-2を含む群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
粘膜治癒が、内視鏡スコアを使用して測定される、請求項35~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
対象における炎症を低減する方法であって、前記対象に、治療有効量のAlistipes属の細菌株を投与して、それによって前記対象における炎症を低減することを含む、方法。
【請求項43】
細菌種が、A.timonensis及びA.sp000434235のMRCAの系統発生的子孫である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード35260で定義される、請求項43に記載の製品。
【請求項45】
前記細菌株が、A.shahii種である、請求項42~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記炎症が、腸内環境に対して局所的であるか、又は全身性炎症である、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記細菌株が、NFκB経路を(例えば、NFκBを低減又は阻害することによって)減衰させる、請求項42~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
標的細胞におけるSTAT3シグナル伝達の活性化を遮断するか、又は別の様式で阻害する方法であって、前記標的細胞を、Alistipes属の細菌細胞調製物の少なくとも可溶性成分と接触させて、前記標的細胞における前記STAT3シグナル伝達の活性化を遮断するか、又は別の様式で阻害することを含む、方法。
【請求項49】
前記細菌株が、A.timonensis及びA.sp000434235のMRCAの系統発生的子孫である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード35260で定義される、請求項49に記載の製品。
前記細菌株が、A.shahii種である、請求項48~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記標的細胞が、レポーター細胞(例えば、HEK細胞)、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、上皮細胞、及び内皮細胞を含む群から選択される、請求項48~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記細菌細胞調製物が、細菌細胞培養物を含む、請求項48~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記可溶性成分が、前記細菌細胞培養物の上清を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記可溶性成分が、細菌細胞を実質的に枯渇させる、請求項48~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記細菌細胞調製物が、細菌細胞ペレットを含む、請求項48~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記可溶性成分が、溶解細胞の可溶性画分を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記可溶性画分が、遠心分離によって不溶性細胞画分から実質的に分離される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記方法が、インビトロで実施される、請求項48~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
対象の腸内環境におけるSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害する方法であって、前記対象に、Alistipes属の細菌株を投与して、前記対象の前記腸内環境におけるSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害することを含む、方法。
【請求項60】
前記細菌株が、A.timonensis及びA.sp000434235のMRCAの系統発生的子孫である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード35260で定義される、請求項60に記載の製品。
【請求項62】
前記細菌株が、A.shahii種である、請求項59~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記細胞が、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、上皮細胞、又は内皮細胞である、請求項59~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記細胞が、上皮細胞であり、前記細菌株又は分子が、前記対象におけるIL-22の産生を増加させる、請求項59~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記細菌株が、STAT3の直接阻害剤又は間接阻害剤である分子を産生する、請求項59~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記細菌株が、IL-23ポリペプチド、JAK2ポリペプチド、TYK2ポリペプチド、又はSTAT3ポリペプチドのうちの少なくとも1つを直接阻害する分子を産生する、請求項59~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記細菌株が、以下の代謝物:酪酸塩、酢酸塩、エタノール、及びフマル酸塩のうちの1つ以上を産生する、請求項27~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記細菌株が、前記A.shahii種の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は前記細菌株が、A.shahiiの細菌株の16S rRNA遺伝子配列を有する場合である、請求項27~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記細菌株が、配列番号1~3若しくは44のうちのいずれか1つと少なくとも約97.5%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は前記細菌株が、配列番号1~3若しくは44のうちのいずれか1つで表される16S rRNA遺伝子配列を有する場合である、請求項27~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記細菌株が、受託番号V21/014432、V21/014433、若しくはV21/014434のうちのいずれか1つの下に寄託された前記A.shahii株、又はその誘導体である、請求項27~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記細菌株が、少なくとも部分的に単離されている、請求項27~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記細菌株が、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤をさらに含む、医薬組成物として製剤化される、請求項27~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記組成物が、乾燥形態である、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記乾燥形態が、粒子、顆粒、及び粉末を含む群から選択される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記組成物が、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせによって乾燥される、請求項73又は請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記医薬組成物が、経口投与のために製剤化される、請求項72~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
対象における炎症性又は自己免疫障害を治療又は予防する方法であって、前記対象に、有効量の前記Alistipes属の細菌株を投与して、それによって前記炎症性又は自己免疫障害を治療又は予防することを含む、方法。
【請求項78】
前記細菌株が、A.timonensis及びA.sp000434235のMRCAの系統発生的子孫である、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード35260で定義される、請求項78に記載の製品。
【請求項80】
前記細菌株が、A.shahii種である、請求項77~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記炎症性又は自己免疫障害が、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など)、喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など)、脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など)、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、シェーグレン症候群、及び血管炎を含む群から選択される、請求項77~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記炎症性又は自己免疫障害が、炎症性腸疾患(IBD)である、請求項77~81に記載の方法。
【請求項83】
前記細菌株が、対象に投与されるとき、前記対象の少なくとも1つの細胞におけるSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害する、請求項77~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記細胞が、上皮細胞、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、又は内皮細胞である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記細菌株が、酪酸塩、酢酸塩、エタノール、及びフマル酸塩を含む群から選択される1つ以上の代謝物を産生する、請求項77~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記細菌株が、Alistipes属の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%同一である16S rRNA配列を有する、請求項77~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記細菌株が、配列番号1~3、7、8、若しくは44のうちのいずれか1つと少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は前記細菌株が、配列番号1~3、7、8、若しくは44のうちのいずれか1つで表される16S rRNA遺伝子配列を有する場合である、請求項77~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記細菌株が、少なくとも部分的に単離されている、請求項77~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記細菌株が、薬学的に許容される担体、希釈剤、及び/又は賦形剤とともに、医薬組成物として製剤化される、請求項77~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記組成物が、乾燥形態である、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記乾燥形態が、粒子、顆粒、及び粉末を含む群から選択される、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記組成物が、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせによって乾燥される、請求項90又は請求項91に記載の方法。
【請求項93】
抗炎症剤が、前記対象に同時投与される、請求項77~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記抗炎症剤が、5-アミノサリチル酸塩、コルチコステロイド、アザチオプリン、インフリキシマブ、及びアダリムマブを含む群から選択される、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
治療することが、前記組成物を前記対象に投与する前に、前記対象がA.shahii腸内細菌を欠損していると特定することを含む、請求項27~94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記対象における前記欠損を特定することが、16S rRNA配列決定及び/又は全ゲノム配列決定による、前記対象の糞便中のA.shahii菌の測定を含む、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記細菌株が、生きているか、又は死滅している、請求項27~96のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項98】
プレバイオティクスをさらに含む、請求項27~97のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項99】
1つ以上の追加の細菌株をさらに含む、請求項27~98のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項100】
前記対象が、哺乳動物対象である、請求項27~99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記対象が、ヒト対象である、請求項27~101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
治療法で使用するための、Alistipes属の細菌株を含む、組成物。
【請求項103】
治療法で使用するための、Alistipes shahiiの細菌株を含む、組成物。
【請求項104】
炎症性又は自己免疫障害の治療又は予防における使用のための、Alistipes属の細菌株を含む、組成物。
【請求項105】
炎症性又は自己免疫障害の治療又は予防における使用のための、Alistipes shahiiの細菌株を含む、組成物。
【請求項106】
前記細菌株が、A.timonensis及びA.sp000434235のMRCAの系統発生的子孫である、請求項102~105のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項107】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード35260で定義される、請求項106に記載の製品。
【請求項108】
炎症性又は自己免疫障害の治療のための医薬品の製造におけるAlistipes属の細菌株の使用。
【請求項109】
前記細菌株が、A.timonensis及びA.sp000434235のMRCAの系統発生的子孫である、請求項108に記載の使用。
【請求項110】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード35260で定義される、請求項109に記載の製品。
【請求項111】
炎症性又は自己免疫障害の治療のための医薬品の製造におけるA.shahiiの細菌株の使用。
【請求項112】
前記炎症性又は自己免疫障害が、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など)、喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など)、脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など)、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、シェーグレン症候群、及び血管炎から選択される、請求項102~111のいずれか一項に記載の組成物又は使用。
【請求項113】
前記炎症性又は自己免疫障害が、炎症性腸疾患(例えば、クローン病又は潰瘍性大腸炎)である、請求項102~112のいずれか一項に記載の組成物又は使用。
【請求項114】
前記細菌株が、受託番号V21/014432、V21/014433、若しくはV21/014434のうちのいずれか1つの下に寄託された前記A.shahii株、又はその誘導体である、請求項102~115のいずれか一項に記載の組成物又は使用。
【請求項115】
炎症性又は自己免疫障害を治療する際に使用するための組成物であって、前記Alistipes属の細菌株、及び抗炎症剤を含む、組成物。
【請求項116】
前記細菌株が、A.timonensis及びA.sp000434235のMRCAの系統発生的子孫である、請求項115に記載の組成物。
【請求項117】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード35260で定義される、請求項116に記載の製品。
【請求項118】
前記細菌株が、前記A.shahii種である、請求項115~117のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項119】
前記抗炎症剤が、5-アミノサリチル酸塩、コルチコステロイド、アザチオプリン、インフリキシマブ、及びアダリムマブを含む群から選択される、請求項115~118のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項120】
炎症性又は自己免疫障害を治療する際に使用するための組成物であって、前記Alistipes属の細菌株、及び栄養補助食品を含む、組成物。
【請求項121】
前記細菌株が、A.timonensis及びA.sp000434235のMRCAの系統発生的子孫である、請求項120に記載の組成物。
【請求項122】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード35260で定義される、請求項121に記載の製品。
【請求項123】
前記細菌株が、前記A.shahii種である、請求項121~122のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項124】
対象における健康を改善又は維持する方法であって、前記対象に、A.shahiiの細菌株を含む組成物を投与して、それによって前記対象における健康を維持又は改善することを含む、方法。
【請求項125】
前記対象に栄養補助食品を投与することをさらに含む、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
前記Alistipes属の細菌株、及び栄養補助食品を含む、食用又は飲用製品。
【請求項127】
前記細菌株が、A.timonensis及びA.sp000434235のMRCAの系統発生的子孫である、請求項126に記載の製品。
【請求項128】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード35260で定義される、請求項127に記載の製品。
【請求項129】
前記細菌株が、前記A.shahii種である、請求項126~128のいずれか一項に記載の製品。
【請求項130】
前記栄養補助食品が、プレバイオティクスである、請求項126~129のいずれか一項に記載の製品。
【請求項131】
受託番号V21/019213若しくはV21/019214の下に寄託されたC.sana株又はその誘導体の細胞。
【請求項132】
前記細胞が、少なくとも部分的に単離されている、請求項131に記載の細胞。
【請求項133】
受託番号V21/019213若しくはV21/019214の下に寄託されたC.sana株又はその誘導体の生物学的に純粋な培養物。
【請求項134】
請求項131若しくは請求項132に記載の細胞、又は請求項133に記載の培養物を含む、組成物。
【請求項135】
少なくとも約97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%、配列番号11~18のうちのいずれか1つである16S rRNA配列を有するか、又は配列番号11~18で表される1つ以上の16S rRNA遺伝子配列を有する細菌株を含む、組成物。
【請求項136】
薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体をさらに含む、請求項134又は請求項135に記載の組成物。
【請求項137】
薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに、C.sana種の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する細菌株を含む、医薬組成物。
【請求項138】
薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに、C.sana及びC.sp002437735のMRCAの系統発生的子孫である細菌株を含む、医薬組成物。
【請求項139】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23867で定義される、請求項138に記載の医薬組成物。
【請求項140】
前記細菌株が、少なくとも部分的に単離されている、請求項135~139のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項141】
前記細菌株が、生きているか、又は死滅している、請求項134~140のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項142】
前記組成物が、乾燥形態である、請求項134~141のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項143】
前記組成物が、カプセル、錠剤、丸剤、トローチ、ロゼンジ、粉末、又は顆粒に製剤化される、請求項142に記載の組成物。
【請求項144】
前記組成物が、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせによって乾燥される、請求項142又は請求項143に記載の組成物。
【請求項145】
前記組成物が、腸に送達されるために製剤化される、請求項134~144のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項146】
プレバイオティクスをさらに含む、請求項134~145のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項147】
1つ以上の追加の細菌株をさらに含む、請求項134~146のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項148】
前記1つ以上の追加の細菌株が、少なくとも部分的に単離されている、請求項147に記載の組成物。
【請求項149】
前記組成物が、Clostridium属の細菌を含まない、請求項134~148のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項150】
前記細菌株が、細胞内のシグナル伝達及び転写活性化因子3(STAT3)を減衰させるか、又は障害する薬剤を産生する、請求項131~149のいずれか一項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項151】
前記薬剤が、小分子、ペプチド、又はヌクレオチドである、請求項150に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項152】
前記薬剤が、前記細菌によって放出される、請求項150又は請求項151に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項153】
前記薬剤が、STAT3、JAK2、TYK、又はIL-23のうちのいずれか1つに特異的に結合する、請求項150~152のいずれか一項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項154】
前記細菌株が、酪酸塩、酢酸塩、エタノール、及びフマル酸塩から選択される1つ以上の代謝物を産生する、請求項131~153のいずれか一項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項155】
前記細菌株が、C.sana種である、請求項131~154のいずれか一項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項156】
請求項134~155のいずれか一項に記載の組成物を含む、食品又は飲料製品。
【請求項157】
対象における腸障壁機能を回復又は改善する方法であって、前記対象に、Colonithrix属の細菌株を投与して、それによって腸障壁機能を回復又は改善することを含む、方法。
【請求項158】
前記細菌株が、C.sana及びC sp002437735のMRCAの系統発生的子孫である、請求項157に記載の方法。
【請求項159】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23679で定義される、請求項158に記載の方法。
【請求項160】
前記細菌株が、C.sana種である、請求項157~159のいずれか一項に記載の方法。
【請求項161】
腸障壁機能を回復又は改善することが、(i)ムチンの質及び/若しくは量の増加、(ii)タイトジャンクションタンパク質の完全性の改善、(iii)管腔内容物の全身循環への移行の低減、又は(iv)腸潰瘍及び/若しくは腸創傷の低減のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項157~160のいずれか一項に記載の方法。
【請求項162】
前記管腔内容物が、リポ多糖(LPS)を含む、請求項161に記載の方法。
【請求項163】
腸障壁機能障害の回復又は改善が、前記対象における全身性炎症の低減をもたらす、請求項157~162のいずれか一項に記載の方法。
【請求項164】
前記対象由来の試料中の炎症性サイトカイン(例えば、IL-1β、IL-8、IL-6、及びTNF)のレベルが所定の閾値を上回るとき、全身性炎症が前記対象において特定される、請求項163に記載の方法。
【請求項165】
対象における粘膜治癒を誘導又は増強する方法であって、前記対象に、上皮細胞の遊走及び/又は増殖を誘導するのに十分な量のColonithrix属の細菌株を投与して、それによって前記対象における粘膜治癒を誘導することを含む、方法。
【請求項166】
前記細菌株が、C.sana及びC.sp002437735のMRCAの系統発生的子孫である、請求項165に記載の方法。
【請求項167】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23879で定義される、請求項166に記載の方法。
【請求項168】
前記細菌株が、C.sana種である、請求項165~167のいずれか一項に記載の方法。
【請求項169】
粘膜治癒が、1つ以上の糞便マーカー又は血清マーカーを使用して測定される、請求項165~168のいずれか一項に記載の方法。
【請求項170】
1つ以上の糞便マーカーが、カルプロテクチン、ラクトフェリン、メタロプロテイナーゼ(MMP)-9、及びリポカリン-2を含む群から選択される、請求項169に記載の方法。
【請求項171】
粘膜治癒が、内視鏡スコアを使用して測定される、請求項165~170のいずれか一項に記載の方法。
【請求項172】
対象における炎症を低減する方法であって、前記対象に、治療有効量のColonithrix属の細菌株を投与して、それによって前記対象における炎症を低減することを含む、方法。
【請求項173】
前記細菌種が、C.sana及びC.sp002437735のMRCAの系統発生的子孫である、請求項172に記載の方法。
【請求項174】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23879で定義される、請求項173に記載の方法。
【請求項175】
前記細菌株が、C.sana種である、請求項172~174のいずれか一項に記載の方法。
【請求項176】
前記炎症が、腸内環境に対して局所的であるか、又は全身性炎症である、請求項172~175のいずれか一項に記載の方法。
【請求項177】
前記細菌株が、NFκB経路を(例えば、NFκBを低減又は阻害することによって)減衰させる、請求項172~176のいずれか一項に記載の方法。
【請求項178】
標的細胞におけるSTAT3シグナル伝達の活性化を遮断するか、又は別の様式で阻害する方法であって、前記標的細胞を、Colonithrix属の細菌細胞調製物の少なくとも可溶性成分と接触させて、前記標的細胞における前記STAT3シグナル伝達の活性化を遮断するか、又は別の様式で阻害することを含む、方法。
【請求項179】
前記細菌株が、C.sana及びC.sp002437735のMRCAの系統発生的子孫である、請求項178に記載の方法。
【請求項180】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23879で定義される、請求項179に記載の方法。
前記細菌株が、C.sana種である、請求項178~180のいずれか一項に記載の方法。
【請求項181】
前記標的細胞が、レポーター細胞(例えば、HEK細胞)、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、上皮細胞、及び内皮細胞を含む群から選択される、請求項178~180のいずれか一項に記載の方法。
【請求項182】
前記細菌細胞調製物が、細菌細胞培養物を含む、請求項178~181のいずれか一項に記載の方法。
【請求項183】
前記可溶性成分が、前記細菌細胞培養物の上清を含む、請求項182に記載の方法。
【請求項184】
前記可溶性成分が、細菌細胞を実質的に枯渇させる、請求項178~183のいずれか一項に記載の方法。
【請求項185】
前記細菌細胞調製物が、細菌細胞ペレットを含む、請求項178~184のいずれか一項に記載の方法。
【請求項186】
前記可溶性成分が、溶解細胞の可溶性画分を含む、請求項185に記載の方法。
【請求項187】
前記可溶性画分が、遠心分離によって不溶性細胞画分から実質的に分離される、請求項186に記載の方法。
【請求項188】
前記方法が、インビトロで実施される、請求項178~187のいずれか一項に記載の方法。
【請求項189】
対象の腸内環境におけるSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害する方法であって、前記対象に、Colonithrix属の細菌株を投与して、前記対象の前記腸内環境におけるSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害することを含む、方法。
【請求項190】
前記細菌株が、C.sana及びC.sp002437735のMRCAの系統発生的子孫である、請求項189に記載の方法。
【請求項191】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23879で定義される、請求項190に記載の方法。
【請求項192】
前記細菌株が、C.sana種である、請求項189~191のいずれか一項に記載の方法。
【請求項193】
前記細胞が、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、上皮細胞、又は内皮細胞である、請求項189~192のいずれか一項に記載の方法。
【請求項194】
前記細胞が、上皮細胞であり、前記細菌株又は分子が、前記対象におけるIL-22の産生を増加させる、請求項189~193のいずれか一項に記載の方法。
【請求項195】
前記細菌株が、STAT3の直接阻害剤又は間接阻害剤である分子を産生する、請求項189~194のいずれか一項に記載の方法。
【請求項196】
前記細菌株が、IL-23ポリペプチド、JAK2ポリペプチド、TYK2ポリペプチド、又はSTAT3ポリペプチドのうちの少なくとも1つを直接阻害する分子を産生する、請求項189~195のいずれか一項に記載の方法。
【請求項197】
前記細菌株が、以下の代謝物:酪酸塩、酢酸塩、エタノール、及びフマル酸塩のうちの1つ以上を産生する、請求項157~196のいずれか一項に記載の方法。
【請求項198】
前記細菌株が、前記C.sana種の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は前記細菌株が、C.sanaの細菌株の16S rRNA遺伝子配列を有する場合である、請求項157~197のいずれか一項に記載の方法。
【請求項199】
前記細菌株が、配列番号11~18のうちのいずれか1つと少なくとも約97.5%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は前記細菌株が、配列番号11~18のうちのいずれか1つ以上で表される16S rRNA遺伝子配列を有する場合である、請求項157~198のいずれか一項に記載の方法。
【請求項200】
前記細菌株が、受託番号V21/019213若しくはV21/019214の下に寄託された前記C.sana株、又はその誘導体である、請求項157~199のいずれか一項に記載の方法。
【請求項201】
前記細菌株が、少なくとも部分的に単離されている、請求項157~200のいずれか一項に記載の方法。
【請求項202】
前記細菌株が、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤をさらに含む、医薬組成物として製剤化される、請求項157~201のいずれか一項に記載の方法。
【請求項203】
前記組成物が、乾燥形態である、請求項202に記載の方法。
【請求項204】
前記乾燥形態が、粒子、顆粒、及び粉末を含む群から選択される、請求項203に記載の方法。
【請求項205】
前記組成物が、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせによって乾燥される、請求項203又は請求項204に記載の方法。
【請求項206】
前記医薬組成物が、経口投与のために製剤化される、請求項202~205のいずれか一項に記載の方法。
【請求項207】
対象における炎症性又は自己免疫障害を治療又は予防する方法であって、前記対象に、有効量の前記Colonithrix属の細菌株を投与して、それによって前記炎症性又は自己免疫障害を治療又は予防することを含む、方法。
【請求項208】
前記細菌株が、C.sana及びC.sp002437735のMRCAの系統発生的子孫である、請求項207に記載の方法。
【請求項209】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23879で定義される、請求項208に記載の方法。
【請求項210】
前記細菌株が、C.sana種である、請求項207~209のいずれか一項に記載の方法。
【請求項211】
前記炎症性又は自己免疫障害が、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など)、喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など)、脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など)、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、シェーグレン症候群、及び血管炎を含む群から選択される、請求項207~210のいずれか一項に記載の方法。
【請求項212】
前記炎症性又は自己免疫障害が、炎症性腸疾患(IBD)である、請求項207~211に記載の方法。
【請求項213】
前記細菌株が、前記対象に投与されるとき、前記対象の少なくとも1つの細胞におけるSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害する、請求項207~212のいずれか一項に記載の方法。
【請求項214】
前記細胞が、上皮細胞、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、又は内皮細胞である、請求項213に記載の方法。
【請求項215】
前記細菌株が、酪酸塩、酢酸塩、エタノール、及びフマル酸塩を含む群から選択される1つ以上の代謝物を産生する、請求項207~214のいずれか一項に記載の方法。
【請求項216】
前記細菌株が、Colonithrix属の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%同一である16S rRNA配列を有する、請求項207~215のいずれか一項に記載の方法。
【請求項217】
前記細菌株が、配列番号11~18のうちのいずれか1つと少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は前記細菌株が、配列番号11~18で表される1つ以上の16S rRNA遺伝子配列を有する場合である、請求項207~216のいずれか一項に記載の方法。
【請求項218】
前記細菌株が、少なくとも部分的に単離されている、請求項207~217のいずれか一項に記載の方法。
【請求項219】
前記細菌株が、薬学的に許容される担体、希釈剤、及び/又は賦形剤とともに、医薬組成物として製剤化される、請求項207~218のいずれか一項に記載の方法。
【請求項220】
前記組成物が、乾燥形態である、請求項219に記載の方法。
【請求項221】
前記乾燥形態が、粒子、顆粒、及び粉末を含む群から選択される、請求項220に記載の方法。
【請求項222】
前記組成物が、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせによって乾燥される、請求項220又は請求項221に記載の方法。
【請求項223】
抗炎症剤が、前記対象に同時投与される、請求項207~222のいずれか一項に記載の方法。
【請求項224】
前記抗炎症剤が、5-アミノサリチル酸塩、コルチコステロイド、アザチオプリン、インフリキシマブ、及びアダリムマブを含む群から選択される、請求項223に記載の方法。
【請求項225】
治療することが、前記組成物を前記対象に投与する前に、前記対象がC.sana腸内細菌を欠損していると特定することを含む、請求項157~224のいずれか一項に記載の方法。
【請求項226】
前記対象における前記欠損を特定することが、16S rRNA配列決定及び/又は全ゲノム配列決定による、前記対象の糞便中のC.sana菌の測定を含む、請求項225に記載の方法。
【請求項227】
前記細菌株が、生きているか、又は死滅している、請求項157~226のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項228】
プレバイオティクスをさらに含む、請求項157~227のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項229】
1つ以上の追加の細菌株をさらに含む、請求項157~228のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項230】
前記対象が、哺乳動物対象である、請求項157~229のいずれか一項に記載の方法。
【請求項231】
前記対象が、ヒト対象である、請求項157~1230のいずれか一項に記載の方法。
【請求項232】
治療法で使用するための、Colonithrix属の細菌株を含む、組成物。
【請求項233】
治療法で使用するための、C.sanaの細菌株を含む、組成物。
【請求項234】
炎症性又は自己免疫障害の治療又は予防における使用のための、Colonithrix属の細菌株を含む、組成物。
【請求項235】
炎症性又は自己免疫障害の治療又は予防における使用のための、C.sanaの細菌株を含む、組成物。
【請求項236】
前記細菌株が、C.sana及びC.sp002437735のMRCAの系統発生的子孫である、請求項232~235のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項237】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23879で定義される、請求項236に記載の組成物。
【請求項238】
炎症性又は自己免疫障害の治療のための医薬品の製造におけるColonithrix属の細菌株の使用。
【請求項239】
前記細菌株が、C.sana及びC.sp0022437735のMRCAの系統発生的子孫である、請求項238に記載の使用。
【請求項240】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23879で定義される、請求項239に記載の使用。
【請求項241】
炎症性又は自己免疫障害の治療のための医薬品の製造におけるC.sanaの細菌株の使用。
【請求項242】
前記炎症性又は自己免疫障害が、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など)、喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など)、脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など)、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、シェーグレン症候群、及び血管炎から選択される、請求項232~241のいずれか一項に記載の組成物又は使用。
【請求項243】
前記炎症性又は自己免疫障害が、炎症性腸疾患(例えば、クローン病又は潰瘍性大腸炎)である、請求項232~242のいずれか一項に記載の組成物又は使用。
【請求項244】
前記細菌株が、受託番号V21/019213若しくはV21/019214の下に寄託された前記C.sana株、又はその誘導体である、請求項232~245のいずれか一項に記載の組成物又は使用。
【請求項245】
炎症性又は自己免疫障害を治療する際に使用するための組成物であって、前記Colonithrix属の細菌株、及び抗炎症剤を含む、組成物。
【請求項246】
前記細菌株が、C.sana及びC.sp002437735のMRCAの系統発生的子孫である、請求項245に記載の組成物。
【請求項247】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23879で定義される、請求項246に記載の組成物。
【請求項248】
前記細菌株が、C.sana種である、請求項245~247のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項249】
前記抗炎症剤が、5-アミノサリチル酸塩、コルチコステロイド、アザチオプリン、インフリキシマブ、及びアダリムマブを含む群から選択される、請求項245~248のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項250】
炎症性又は自己免疫障害を治療する際に使用するための組成物であって、前記Colonithrix属の細菌株、及び栄養補助食品を含む、組成物。
【請求項251】
前記細菌株が、C.sana及びC.sp002437735のMRCAの系統発生的子孫である、請求項250に記載の組成物。
【請求項252】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23879で定義される、請求項251に記載の組成物。
【請求項253】
前記細菌株が、C.sana種である、請求項251又は請求項252に記載の組成物。
【請求項254】
対象における健康を改善又は維持する方法であって、前記対象に、C.sanaの細菌株を含む組成物を投与して、それによって前記対象における健康を維持又は改善することを含む、方法。
【請求項255】
前記対象に栄養補助食品を投与することをさらに含む、請求項254に記載の方法。
【請求項256】
前記Colonithrix属の細菌株、及び栄養補助食品を含む、食用又は飲用製品。
【請求項257】
前記細菌株が、C.sana及びC.sp002437735のMRCAの系統発生的子孫である、請求項256に記載の製品。
【請求項258】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23879で定義される、請求項257に記載の製品。
【請求項259】
前記細菌株が、C.sana種である、請求項256~258のいずれか一項に記載の製品。
【請求項260】
前記栄養補助食品が、プレバイオティクスである、請求項256~259のいずれか一項に記載の製品。
【請求項261】
受託番号V21/011520の下に寄託されたGemmiger formicilis株又はその誘導体の細胞。
【請求項262】
前記細胞が、少なくとも部分的に単離されている、請求項261に記載の細胞。
【請求項263】
受託番号V21/011520の下に寄託されたGemmiger formicilis株又はその誘導体の生物学的に純粋な培養物。
【請求項264】
請求項261若しくは請求項262に記載の細胞、又は請求項263に記載の培養物を含む、組成物。
【請求項265】
配列番号27若しくは配列番号45~47のうちの1つ以上と少なくとも約97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、若しくは99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は配列番号27若しくは配列番号45~47のうちの1つ以上で表される16S rRNA遺伝子配列を有する細菌株を含む、組成物。
【請求項266】
薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体をさらに含む、請求項264又は請求項265に記載の組成物。
【請求項267】
薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに、Gemmiger formicilis種の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する細菌株を含む、医薬組成物。
【請求項268】
薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに、G.variabile及びG.sp002306375のMRCAの系統発生的子孫である細菌株を含む、医薬組成物。
【請求項269】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23818で定義される、請求項268に記載の医薬組成物。
【請求項270】
前記細菌株が、少なくとも部分的に単離されている、請求項265~269のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項271】
前記細菌株が、生きているか、又は死滅している、請求項264~270のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項272】
前記組成物が、乾燥形態である、請求項264~271のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項273】
前記組成物が、カプセル、錠剤、丸剤、トローチ、ロゼンジ、粉末、又は顆粒に製剤化される、請求項272に記載の組成物。
【請求項274】
前記組成物が、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせによって乾燥される、請求項272又は請求項273に記載の組成物。
【請求項275】
前記組成物が、腸に送達されるために製剤化される、請求項274~274のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項276】
プレバイオティクスをさらに含む、請求項274~275のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項277】
1つ以上の追加の細菌株をさらに含む、請求項274~276のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項278】
前記1つ以上の追加の細菌株が、少なくとも部分的に単離されている、請求項277に記載の組成物。
【請求項279】
前記組成物が、Clostridium属の細菌を含まない、請求項264~278のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項280】
前記細菌株が、細胞内のシグナル伝達及び転写活性化因子3(STAT3)を減衰させるか、又は障害する薬剤を産生する、請求項261~279のいずれか一項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項281】
前記薬剤が、小分子、ペプチド、又はヌクレオチドである、請求項280に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項282】
前記薬剤が、前記細菌によって放出される、請求項280又は請求項281に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項283】
前記薬剤が、STAT3、JAK2、TYK、又はIL-23のうちのいずれか1つに特異的に結合する、請求項280~282のいずれか一項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項284】
前記細菌株が、酪酸塩、酢酸塩、エタノール、及びフマル酸塩から選択される1つ以上の代謝物を産生する、請求項261~283のいずれか一項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項285】
前記細菌株が、G.formicilis種である、請求項261~284のいずれか一項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項286】
請求項264~285のいずれか一項に記載の組成物を含む、食品又は飲料製品。
【請求項287】
対象における腸障壁機能を回復又は改善する方法であって、前記対象に、Gemmiger属の細菌株を投与して、それによって腸障壁機能を回復又は改善することを含む、方法。
【請求項288】
前記細菌株が、G.variabile及びG.sp002306375のMRCAの系統発生的子孫である、請求項287に記載の方法。
【請求項289】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23818で定義される、請求項28に記載の方法。
【請求項290】
前記細菌株が、G.formicilis種である、請求項287~289のいずれか一項に記載の方法。
【請求項291】
腸障壁機能を回復又は改善することが、(i)ムチンの質及び/若しくは量の増加、(ii)タイトジャンクションタンパク質の完全性の改善、(iii)管腔内容物の全身循環への移行の低減、又は(iv)腸潰瘍及び/若しくは腸創傷の低減のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項287~290のいずれか一項に記載の方法。
【請求項292】
前記管腔内容物が、リポ多糖(LPS)を含む、請求項291に記載の方法。
【請求項293】
腸障壁機能障害の記回復又は改善が、前記対象における全身性炎症の低減をもたらす、請求項287~292のいずれか一項に記載の方法。
【請求項294】
前記対象由来の試料中の炎症性サイトカイン(例えば、IL-1β、IL-8、IL-6、及びTNF)のレベルが所定の閾値を上回るとき、全身性炎症が前記対象において特定される、請求項293に記載の方法。
【請求項295】
対象における粘膜治癒を誘導又は増強する方法であって、前記対象に、上皮細胞の遊走及び/又は増殖を誘導するのに十分な量のGemmiger属の細菌株を投与して、それによって前記対象における粘膜治癒を誘導することを含む、方法。
【請求項296】
前記細菌株が、G.variabile及びG.sp002306375のMRCAの系統発生的子孫である、請求項295に記載の方法。
【請求項297】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23818で定義される、請求項296に記載の方法。
【請求項298】
前記細菌株が、G.formicilis種である、請求項295~297のいずれか一項に記載の方法。
【請求項299】
粘膜治癒が、1つ以上の糞便マーカー又は血清マーカーを使用して測定される、請求項295~298のいずれか一項に記載の方法。
【請求項300】
1つ以上の糞便マーカーが、カルプロテクチン、ラクトフェリン、メタロプロテイナーゼ(MMP)-9、及びリポカリン-2を含む群から選択される、請求項299に記載の方法。
【請求項301】
粘膜治癒が、内視鏡スコアを使用して測定される、請求項295~300のいずれか一項に記載の方法。
【請求項302】
対象における炎症を低減する方法であって、前記対象に、治療有効量のGemmiger属の細菌株を投与して、それによって前記対象における炎症を低減することを含む、方法。
【請求項303】
前記細菌種が、G.variabile及びG.sp002306375のMRCAの系統発生的子孫である、請求項302に記載の方法。
【請求項304】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23818で定義される、請求項303に記載の方法。
【請求項305】
前記細菌株が、G.formicilis種である、請求項302~304のいずれか一項に記載の方法。
【請求項306】
前記炎症が、腸内環境に対して局所的であるか、又は全身性炎症である、請求項302~305のいずれか一項に記載の方法。
【請求項307】
前記細菌株が、NFκB経路を(例えば、NFκBを低減又は阻害することによって)減衰させる、請求項302~306のいずれか一項に記載の方法。
【請求項308】
標的細胞におけるSTAT3シグナル伝達の活性化を遮断するか、又は別の様式で阻害する方法であって、前記標的細胞を、Gemmiger属の細菌細胞調製物の少なくとも可溶性成分と接触させて、前記標的細胞における前記STAT3シグナル伝達の活性化を遮断するか、又は別の様式で阻害することを含む、方法。
【請求項309】
前記細菌株が、G.variabile及びG.sp002306375のMRCAの系統発生的子孫である、請求項308に記載の方法。
【請求項310】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23818で定義される、請求項309に記載の方法。
前記細菌株が、G.formicilis種である、請求項308~310のいずれか一項に記載の方法。
【請求項311】
前記標的細胞が、レポーター細胞(例えば、HEK細胞)、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、上皮細胞、及び内皮細胞を含む群から選択される、請求項308~310のいずれか一項に記載の方法。
【請求項312】
前記細菌細胞調製物が、細菌細胞培養物を含む、請求項308~311のいずれか一項に記載の方法。
【請求項313】
前記可溶性成分が、前記細菌細胞培養物の上清を含む、請求項312に記載の方法。
【請求項314】
前記可溶性成分が、細菌細胞を実質的に枯渇させる、請求項308~313のいずれか一項に記載の方法。
【請求項315】
前記細菌細胞調製物が、細菌細胞ペレットを含む、請求項308~314のいずれか一項に記載の方法。
【請求項316】
前記可溶性成分が、溶解細胞の可溶性画分を含む、請求項315に記載の方法。
【請求項317】
前記可溶性画分が、遠心分離によって不溶性細胞画分から実質的に分離される、請求項316に記載の方法。
【請求項318】
前記方法が、インビトロで実施される、請求項308~317のいずれか一項に記載の方法。
【請求項319】
対象の腸内環境におけるSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害する方法であって、前記対象に、Gemmiger属の細菌株を投与して、前記対象の前記腸内環境におけるSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害することを含む、方法。
【請求項320】
前記細菌株が、G.variabile及びG.sp002306375のMRCAの系統発生的子孫である、請求項319に記載の方法。
【請求項321】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23818で定義される、請求項320に記載の方法。
【請求項322】
前記細菌株が、G.formicilis種である、請求項319~321のいずれか一項に記載の方法。
【請求項323】
前記細胞が、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、上皮細胞、又は内皮細胞である、請求項319~322のいずれか一項に記載の方法。
【請求項324】
前記細胞が、上皮細胞であり、前記細菌株又は分子が、前記対象におけるIL-22の産生を増加させる、請求項319~323のいずれか一項に記載の方法。
【請求項325】
前記細菌株が、STAT3の直接阻害剤又は間接阻害剤である分子を産生する、請求項319~324のいずれか一項に記載の方法。
【請求項326】
前記細菌株が、IL-23ポリペプチド、JAK2ポリペプチド、TYK2ポリペプチド、又はSTAT3ポリペプチドのうちの少なくとも1つを直接阻害する分子を産生する、請求項319~325のいずれか一項に記載の方法。
【請求項327】
前記細菌株が、以下の代謝物:酪酸塩、酢酸塩、エタノール、及びフマル酸塩のうちの1つ以上を産生する、請求項287~326のいずれか一項に記載の方法。
【請求項328】
前記細菌株が、前記G.formicilis種の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は前記細菌株が、G.formicilisの細菌株の16S rRNA遺伝子配列を有する場合である、請求項287~327のいずれか一項に記載の方法。
【請求項329】
前記細菌株が、配列番号27若しくは配列番号45~47のうちの1つ以上と少なくとも約97.5%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は前記細菌株が、配列番号45~47のうちの1つ以上で表される16S rRNA遺伝子配列を有する場合である、請求項287~328のいずれか一項に記載の方法。
【請求項330】
前記細菌株が、受託番号V21/011520の下に寄託された前記G.formicilis株、又はその誘導体である、請求項287~329のいずれか一項に記載の方法。
【請求項331】
前記細菌株が、少なくとも部分的に単離されている、請求項287~330のいずれか一項に記載の方法。
【請求項332】
前記細菌株が、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤をさらに含む、医薬組成物として製剤化される、請求項287~331のいずれか一項に記載の方法。
【請求項333】
前記組成物が、乾燥形態である、請求項332に記載の方法。
【請求項334】
前記乾燥形態が、粒子、顆粒、及び粉末を含む群から選択される、請求項333に記載の方法。
【請求項335】
前記組成物が、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせによって乾燥される、請求項333又は請求項334に記載の方法。
【請求項336】
前記医薬組成物が、経口投与のために製剤化される、請求項332~335のいずれか一項に記載の方法。
【請求項337】
対象における炎症性又は自己免疫障害を治療又は予防する方法であって、前記対象に、有効量の前記Gemmiger属の細菌株を投与して、それによって前記炎症性又は自己免疫障害を治療又は予防することを含む、方法。
【請求項338】
前記細菌株が、G.variabile及びG.sp002306375のMRCAの系統発生的子孫である、請求項337に記載の方法。
【請求項339】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23818で定義される、請求項338に記載の方法。
【請求項340】
前記細菌株が、G.formicilis種である、請求項337~339のいずれか一項に記載の方法。
【請求項341】
前記炎症性又は自己免疫障害が、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など)、喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など)、脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など)、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、シェーグレン症候群、及び血管炎を含む群から選択される、請求項337~340のいずれか一項に記載の方法。
【請求項342】
前記炎症性又は自己免疫障害が、炎症性腸疾患(IBD)である、請求項337~341に記載の方法。
【請求項343】
前記細菌株が、前記対象に投与されるとき、前記対象の少なくとも1つの細胞におけるSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害する、請求項37~342のいずれか一項に記載の方法。
【請求項344】
前記細胞が、上皮細胞、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、又は内皮細胞である、請求項343に記載の方法。
【請求項345】
前記細菌株が、酪酸塩、酢酸塩、エタノール、及びフマル酸塩を含む群から選択される1つ以上の代謝物を産生する、請求項337~344のいずれか一項に記載の方法。
【請求項346】
前記細菌株が、Gemmiger属の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%同一である16S rRNA配列を有する、請求項337~345のいずれか一項に記載の方法。
【請求項347】
前記細菌株が、配列番号27若しくは配列番号45~47のうちの1つ以上と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は前記細菌株が、配列番号27若しくは45~47のうちの1つ以上で表される16S rRNA遺伝子配列を有する場合である、請求項337~346のいずれか一項に記載の方法。
【請求項348】
前記細菌株が、少なくとも部分的に単離されている、請求項337~347のいずれか一項に記載の方法。
【請求項349】
前記細菌株が、薬学的に許容される担体、希釈剤、及び/又は賦形剤とともに、医薬組成物として製剤化される、請求項337~348のいずれか一項に記載の方法。
【請求項350】
前記組成物が、乾燥形態である、請求項349に記載の方法。
【請求項351】
前記乾燥形態が、粒子、顆粒、及び粉末を含む群から選択される、請求項350に記載の方法。
【請求項352】
前記組成物が、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせによって乾燥される、請求項350又は請求項351に記載の方法。
【請求項353】
抗炎症剤が、前記対象に同時投与される、請求項337~352のいずれか一項に記載の方法。
【請求項354】
前記抗炎症剤が、5-アミノサリチル酸塩、コルチコステロイド、アザチオプリン、インフリキシマブ、及びアダリムマブを含む群から選択される、請求項353に記載の方法。
【請求項355】
治療することが、前記組成物を前記対象に投与する前に、前記対象がG.formicilis腸内細菌を欠損していると特定することを含む、請求項287~354のいずれか一項に記載の方法。
【請求項356】
前記対象における前記欠損を特定することが、16S rRNA配列決定及び/又は全ゲノム配列決定による、前記対象の糞便中のG.formicilis菌の測定を含む、請求項355に記載の方法。
【請求項357】
前記細菌株が、生きているか、又は死滅している、請求項287~356のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項358】
プレバイオティクスをさらに含む、請求項287~357のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項359】
1つ以上の追加の細菌株をさらに含む、請求項287~358のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項360】
前記対象が、哺乳動物対象である、請求項287~359のいずれか一項に記載の方法。
【請求項361】
前記対象が、ヒト対象である、請求項287~360のいずれか一項に記載の方法。
【請求項362】
治療法で使用するための、Gemmiger属の細菌株を含む、組成物。
【請求項363】
治療法で使用するための、Gemmiger formicilisの細菌株を含む、組成物。
【請求項364】
炎症性又は自己免疫障害の治療又は予防における使用のための、Gemmiger属の細菌株を含む、組成物。
【請求項365】
炎症性又は自己免疫障害の治療又は予防における使用のための、Gemmiger formicilisの細菌株を含む、組成物。
【請求項366】
前記細菌株が、G.variabile及びG.sp002306375のMRCAの系統発生的子孫である、請求項362~365のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項367】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23818で定義される、請求項366に記載の組成物。
【請求項368】
炎症性又は自己免疫障害の治療のための医薬品の製造におけるGemmiger属の細菌株の使用。
【請求項369】
前記細菌株が、G.variabile及びG.sp002306375のMRCAの系統発生的子孫である、請求項368に記載の使用。
【請求項370】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23818で定義される、請求項369に記載の使用。
【請求項371】
炎症性又は自己免疫障害の治療のための医薬品の製造におけるG.formicilisの細菌株の使用。
【請求項372】
前記炎症性又は自己免疫障害が、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など)、喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など)、脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など)、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、シェーグレン症候群、及び血管炎から選択される、請求項362~371のいずれか一項に記載の組成物又は使用。
【請求項373】
前記炎症性又は自己免疫障害が、炎症性腸疾患(例えば、クローン病又は潰瘍性大腸炎)である、請求項362~372のいずれか一項に記載の組成物又は使用。
【請求項374】
前記細菌株が、受託番号V21/011520の下に寄託された前記G.formicilis株、又はその誘導体である、請求項362~375のいずれか一項に記載の組成物又は使用。
【請求項375】
炎症性又は自己免疫障害を治療する際に使用するための組成物であって、前記Gemmiger属の細菌株、及び抗炎症剤を含む、組成物。
【請求項376】
前記細菌株が、G.variabile及びG.sp002306375のMRCAの系統発生的子孫である、請求項375に記載の組成物。
【請求項377】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23818で定義される、請求項376に記載の組成物。
【請求項378】
前記細菌株が、G.formicilis種である、請求項375~377のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項379】
前記抗炎症剤が、5-アミノサリチル酸塩、コルチコステロイド、アザチオプリン、インフリキシマブ、及びアダリムマブを含む群から選択される、請求項375~378のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項380】
炎症性又は自己免疫障害を治療する際に使用するための組成物であって、前記Gemmiger属の細菌株、及び栄養補助食品を含む、組成物。
【請求項381】
前記細菌株が、G.variabile及びG.sp002306375のMRCAの系統発生的子孫である、請求項380に記載の組成物。
【請求項382】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23818で定義される、請求項381に記載の組成物。
【請求項383】
前記細菌株が、G.formicilis種である、請求項380~382のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項384】
対象における健康を改善又は維持する方法であって、前記対象に、G.formicilisの細菌株を含む組成物を投与して、それによって前記対象における健康を維持又は改善することを含む、方法。
【請求項385】
前記対象に栄養補助食品を投与することをさらに含む、請求項384に記載の方法。
【請求項386】
前記Gemmiger属の細菌株、及び栄養補助食品を含む、食用又は飲用製品。
【請求項387】
前記細菌株が、G.variabile及びG.sp002306375のMRCAの系統発生的子孫である、請求項386に記載の製品。
【請求項388】
前記MRCAが、ゲノム分類データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23818で定義される、請求項387に記載の製品。
【請求項389】
前記細菌株が、G.formicilis種である、請求項386~388のいずれか一項に記載の製品。
【請求項390】
前記栄養補助食品が、プレバイオティクスである、請求項386~389のいずれか一項に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年7月10日に出願された「疾患を治療するための組成物及び方法」と題されたオーストラリア仮出願第2021/902122号、2021年9月13日に出願された「疾患を治療するための組成物及び方法」と題されたオーストラリア仮出願第2021/902960号、及び2022年2月9日に出願された「疾患を治療するための組成物及び方法」と題されたオーストラリア仮出願第2022/900261号の優先権を主張し、それらの内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、細菌株及び疾患の治療又は予防のための細菌株を含む治療組成物及び方法の分野に関する。より詳細には、本発明は、ヒト消化管から単離された細菌株を含む組成物、及び炎症性及び自己免疫障害の治療又は予防におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒト腸内微生物叢は、Firmicutes、Bacteroidetes、Proteobacteria、Fusobacteria、及びVerrucomicrobiaを含むいくつかの細菌門に属する500~1000以上の異なる系統型を含む。2つの主要門、Bacteroidetes及びFirmicutesは、概して、腸内微生物叢の90%以上を占める(Arumugam et al.,2011)。ヒトの腸の細菌コロニー形成から生じる共生関係は、代謝、構造、防御、その他の有益な機能を多種多様に生み出している。腸内細菌は消化管(GI)に沿った消化の重要な調節因子であり、胆汁酸、脂質、アミノ酸、ビタミン、短鎖脂肪酸(SCFA)を含む多くの栄養及び代謝物の抽出、合成、及び吸収において共生細菌が重要な役割を果たしている。最近では、自然免疫細胞及び適応免疫細胞の発生、ホメオスタシス、及び機能の調節における腸内微生物叢及びその産物の免疫学的重要性が認識されている(Brestoff and Atris,2013)。
【0004】
消化管微生物叢が宿主の腸粘膜免疫及び炎症に対する素因を調節することがますます認識されており(Geva-Zatorsky et al.,2017;Kabat et al.,2014)、新規治療介入の新たな道を開く。
【0005】
炎症性腸疾患(IBD)を含む多くの炎症性及び自己免疫障害において微生物叢組成の劇的な変化が報告されている。ある種の細菌株が動物の腸に及ぼす潜在的な正の効果を認識して、種々の疾患の治療に使用するために種々の株が提案されている。Lactobacillus及びBifidobacterium株を含む特定の株は、種々の腸管外炎症性及び自己免疫障害の治療に使用することが提案されている(Goldin & Gorbach,2008;Azad et al.,2013を参照)。しかし、特定の細菌株が消化管及び全身に局所的に及ぼす正確な影響は解明されていない。その結果、ヒト消化管における異なる疾患と異なる細菌株との関係は、まだ明確に解明されていない。
【0006】
IBD(クローン病(CD)と潰瘍性大腸炎(UC)の2つの主要な疾患サブタイプを含む)は、消化管の発作性及び障害性炎症を特徴とする。2017年には、世界で680万人がIBDに罹患し、米国とヨーロッパで有病率が最も高いと推定されている(GBD 2017;炎症性腸疾患共同研究者、2019)。患者の最大20%が16歳以前に診断され、小児発症IBD(PIBD)は、成長及び心理社会的発達に悪影響を及ぼすより複雑で侵攻性の疾患と関連している。
【0007】
現在のところIBDの治癒はなく、長期の臨床管理には優れた安全性プロファイルを有する有効な治療薬が必要である。しかし、既存の治療法は一連の欠損を示し、寛解は一般に短い。さらに、IBD治療薬は、早期発症とより侵攻性の疾患が重なり、進行性の腸障害及び手術の必要性をもたらす場合には効果がない。患者の生活の質を改善し、長期間にわたって寛解を維持し、手術を減らし、個人及び公衆衛生コストを削減するために、より効果的で安全な治療法を開発することが緊急に必要である。
【0008】
IBDに対する既存の治療は、強い有害作用、低いコンプライアンス(平均不遵守率50%(Chan et al.,2017参照))、及び高い費用を伴う最適ではない。さらに、長期間の無病寛解を維持する有効な解決法はない。メサルミンは、軽度から中等度の潰瘍性大腸炎の再燃及び寛解維持に最も広く使用されている第一選択薬の1つであり、奏効率は40~70%であり、寛解率は15~20%である(Karagozian & Burakoff,2007)。
【0009】
炎症性及び自己免疫障害を治療する新たな方法に対する当技術分野の要件がある。腸内細菌を用いた新しい治療法を開発するためには、腸内細菌の潜在的な影響を特徴付ける必要もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、部分的には、Alistipes shahii、Gemmiger formicilis、及びColonithrix sanaを含む、いくつかの細菌株を特定する発明者が、腸障壁機能を増強又は改善することに基づいている。この考察に基づいて、これらの種及び密接に関連する種の株は、後述するように、炎症性及び自己免疫障害を治療及び予防のための治療用途に特に適していることが提唱されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、炎症性及び自己免疫障害を治療及び予防するために使用することができる、Alistipes shahii、Gemmiger formicilis、及びColonithrix sanaから選択される種の生存可能な細菌株を含む新たな組成物を開発した。
【0012】
したがって、一態様において、本発明は、受託番号V21/014432、V21/014433、若しくはV21/014434のうちのいずれか1つの下に寄託されたAlistipes shahii株又はその誘導体の細胞を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態において、細胞は、少なくとも部分的に単離される。
【0014】
別の態様において、本発明は、受託番号V21/014432、V21/014433、若しくはV21/014434のうちのいずれか1つの下に寄託されたAlistipes shahii株又はその誘導体の生物学的に純粋な培養物を提供する。
【0015】
別の態様において、本発明は、上述のように、又は本明細書の他の箇所で記載されるように、細胞又は培養物を含む組成物を提供する。
【0016】
さらに別の態様において、本発明は、配列番号1~3若しくは44のうちのいずれか1つと少なくとも約97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、若しくは99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は配列番号1~3若しくは44のうちのいずれか1つで表される16S rRNA配列を有する細菌株を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、細菌株は、ゲノム中に16S rRNA配列の2つ以上のコピー(例えば、2つのコピー、3つのコピー、4つのコピー、5つのコピー、6つのコピー、7つのコピー、8つのコピー)を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、組成物は、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体をさらに含む。
【0018】
さらに別の態様において、本発明は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに、Alistipes shahiiの細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する細菌株を含む医薬組成物を提供する。
【0019】
関連する態様において、本発明は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに、A.timonensis及びA.shahiiの最近の共通祖先(MRCA)の系統発生的子孫である有効量の細菌株を含む医薬組成物を提供する。好適には、MRCAは、ゲノム分類学データベース(GTDB)からのbac120系統樹のノード35262で定義される。いくつかの実施形態において、系統樹は、GTDBのリリース89によって作成されるが、任意のその後のリリースは、適用可能な結果を等しく与えると考えられる。このタイプのいくつかの好ましい実施形態において、細菌株は、A.shahii種である。
【0020】
典型的には、細菌株は、少なくとも部分的に単離される。
【0021】
いくつかの実施形態において、細菌株は、生きている。いくつかの代替実施形態において、細菌株は、死滅している。
【0022】
いくつかの実施形態において、組成物は、プレバイオティクスをさらに含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、組成物は、乾燥形態で製剤化される。典型的には、組成物は、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせから選択される技術を使用して乾燥される。
【0024】
いくつかの実施形態において、組成物は、経口投与用に製剤化される。
【0025】
いくつかの実施形態において、細菌株は、細胞内のシグナル伝達及び転写活性化因子3(STAT3)のシグナル伝達を減衰させるか、又は障害する薬剤を産生する。
【0026】
このタイプのいくつかの実施形態において、薬剤は、小分子、ペプチド、又はヌクレオチドである。典型的には、薬剤は、細菌株によって放出される。
【0027】
いくつかの実施形態において、薬剤は、STAT3、JAK2、TYK2、又はIL-23のいずれか1つに特異的に結合する。
【0028】
いくつかの実施形態において、A.shahiiは、デンプン、グルコース、フルクトース、グルコン酸塩、ラクトース、トレハロース、及びラクトアルデヒドを炭素源として含むか、又はそれらからなる群から選択される1つ以上の薬剤を代謝する。
【0029】
別の態様において、本発明は、対象における腸障壁機能を回復又は改善する方法を提供し、この方法は、対象に、A.shahii種の細菌株を投与して、それによって腸障壁機能を回復又は改善することを含む。
【0030】
いくつかの好ましい実施形態において、腸障壁機能の回復又は改善は、(i)ムチンの質及び/若しくは量の増加、(ii)タイトジャンクションタンパク質の完全性の改善、(iii)管腔内容物の全身循環への移行の低減、又は(iv)腸潰瘍及び/若しくは腸創傷の低減のうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0031】
いくつかの実施形態において、管腔内容物は、リポ多糖類(LPS)を含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、腸障壁機能の回復又は改善は、対象における全身性炎症の減少をもたらす。このタイプのいくつかの実施形態において、全身性炎症は、健常対象における炎症性サイトカインのレベルと比較して、対象における炎症性サイトカイン(例えば、IL-1βIL-8、IL-6、及びTNF)のレベルの上昇を特徴とする。
【0033】
さらに別の態様において、本発明は、対象における腸障壁機能を維持する方法を提供し、この方法は、対象に、A.shahii種の細菌株を投与して、それによって対象における腸障壁機能を維持することを含む。
【0034】
さらに別の態様において、本発明は、対象における炎症を軽減する方法を提供し、この方法は、対象に、A.shahii株の細菌株を投与して、それによって対象における炎症を低減することを含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、炎症は、腸内環境に対して局所的であるか、又は全身性炎症である。
【0036】
別の態様において、本発明は、対象における粘膜治癒を誘導又は増強する方法を提供し、この方法は、対象に、上皮細胞の遊走、増殖、及び/又は分化を誘導するのに十分な量の、A.shahii種の細菌株を投与して、それによって対象における粘膜治癒を誘導することを含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、対象における粘膜治癒は、1つ以上の糞便マーカー又は血清マーカーを用いて測定することができる。例示的な例として、カルプロテクチン、ラクトフェリン、メタロプロテイナーゼ(MMP)-9、及びリポカリン-2を含む群から1つ以上の糞便マーカーを選択することができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、細菌株は、NFκB経路を弱めることによって炎症を減少させる。このタイプのいくつかの実施形態において、細菌株は、NFκB、TNF、IFN-γ、IL-1β、IL-8、及びMCP-1を含む群から選択される1つ以上の転写因子、サイトカイン、又はケモカインの産生を阻害する。
【0039】
さらに別の態様において、本発明は、標的細胞におけるSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害する方法を提供し、この方法は、細胞を、A.shahiiの細菌細胞調製物の少なくとも可溶性成分と接触させて、細胞におけるSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害することを含む。典型的には、この態様の方法は、インビトロで実施される。
【0040】
いくつかの実施形態において、標的細胞は、レポーター細胞(例えば、HEK細胞)、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、上皮細胞、又は内皮細胞から選択される。いくつかの実施形態において、標的細胞は、哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞である。
【0041】
いくつかの実施形態において、細菌細胞調製物は、細菌細胞培養物である。したがって、可溶性成分は、細菌細胞培養物(例えば、細胞培養上清)の可溶性画分を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になることができる。可溶性成分は、細菌細胞培養物のいくつかの不溶性成分をさらに含むことができる。例えば、可溶性成分は、実質的にすべての細菌培養物を含み得る。好ましくは、可溶性成分は、細菌細胞を実質的に枯渇させる。
【0042】
いくつかの代替実施形態において、細菌細胞調製物は、細菌細胞溶解物である。このタイプの例示的実施形態において、可溶性成分は、細胞溶解物の可溶性画分に関することができる。可溶性画分は、遠心分離によるものを含め、任意の方法によって適切に達成することができる。
【0043】
なおもさらに別の態様において、本発明は、細胞内のSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害する方法を提供し、この方法は、対象に、A.shahii種の細菌株を投与して、それによって細胞内のSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害することを含む。典型的には、この態様の方法は、インビボで実施される。
【0044】
いくつかの実施形態において、細胞は、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)又は上皮細胞である。
【0045】
いくつかの実施形態において、細胞は上皮細胞であり、細菌株又は細菌株によって産生された代謝物は、対象におけるIL-22の産生を増加させる。
【0046】
いくつかの実施形態において、細菌株は、STAT3の直接阻害剤又は間接阻害剤である分子を産生する。例えば、細菌株は、IL-23ポリペプチド、JAK2ポリペプチド、TYK2ポリペプチド、又はSTAT3ポリペプチドのうちの少なくとも1つを直接阻害する代謝物を産生し得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、上記及び本明細書の他の箇所に記載される方法で使用される細菌株は、酪酸塩、酢酸塩、エタノール、及びフマル酸塩から選択される1つ以上の代謝物を産生する。
【0048】
いくつかの実施形態において、細菌株は、A.shahiiの細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約97.5%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%同一である16S rRNA配列を有する。
【0049】
いくつかの代替実施形態において、細菌株は、配列番号1~3若しくは44のうちのいずれか1つと少なくとも約97.5%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、若しくは99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は細菌株は、配列番号1~3若しくは44のうちのいずれか1つで表される16S rRNA遺伝子配列を有する場合である。いくつかの実施形態において、細菌株は、配列番号1~3又は44のうちのいずれか1つに記載される16S rRNA配列から独立して選択された2つ以上のコピー(例えば、2つのコピー、3つのコピー、4つのコピー、5つのコピー、6つのコピー、7つのコピー、8つのコピー)を含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、細菌株は、受託番号V21/014432、V21/014433、若しくはV21/014434のうちのいずれか1つの下に寄託されたA.shahii株、又はその誘導体である。
【0051】
好ましくは、細菌株は、少なくとも部分的に単離される。
【0052】
いくつかの実施形態において、細菌株は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤をさらに含む、医薬組成物として製剤化される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、乾燥組成物である。いくつかの実施形態において、乾燥組成物は、粒子、顆粒、及び粉末からなる群から選択される。例示的な例として、医薬組成物は、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥され得るか、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、経口投与用に製剤化される。
【0054】
なおもさらに他の態様において、本発明は、対象における炎症性又は自己免疫障害を治療する方法を提供し、この方法は、対象に、有効量のA.shahiiの細菌株を投与して、それによって炎症性又は自己免疫障害を治療又は予防することを含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、炎症性又は自己免疫障害は、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など)、喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など)、脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など)、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、シェーグレン症候群、及び血管炎を含む群から選択される。好ましくは、炎症性又は自己免疫障害は炎症性腸疾患(IBD)である。
【0056】
いくつかの実施形態において、細菌株は、対象の少なくとも1つの細胞におけるSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害する。典型的には、細胞は、上皮細胞、内皮細胞、又は免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)である。
【0057】
いくつかの実施形態において、細菌株は、A.shahiiの細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。
【0058】
あるいは、いくつかの実施形態において、細菌株は、配列番号1~4若しくは44のうちのいずれか1つと少なくとも約98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、若しくは99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は細菌株は、配列番号1~3若しくは44のうちのいずれか1つで表される16S rRNA遺伝子配列を有する場合である。
【0059】
好ましくは、細菌株は、少なくとも部分的に単離される。
【0060】
いくつかの実施形態において、細菌株は、薬学的に許容される担体、希釈剤、及び/又は賦形剤とともに、医薬組成物として製剤化される。いくつかの実施形態において、組成物は、粒子、顆粒、及び粉末からなる群から選択される乾燥組成物である。例えば、組成物は、凍結乾燥され得る。あるいは、組成物は、スプレー乾燥、流動層乾燥、又は真空乾燥され得る。
【0061】
いくつかの実施形態において、組成物は、経口投与用に製剤化される。
【0062】
一態様において、本発明は、治療法で使用するための、Alistipes属の細菌株を含む組成物を提供する。
【0063】
別の態様において、本発明は、治療法で使用するための、A.shahiiの細菌株を含む組成物を提供する。同じ実施形態のうちのいくつか及びいくつかの他の実施形態において、細菌株は、A.shahiiの細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。
【0064】
あるいは、細菌株は、配列番号1~3若しくは44のうちのいずれか1つと少なくとも約98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、若しくは99.9%同一である16S rRNA配列を有し得るか、又は細菌株は、配列番号1~3若しくは44のうちのいずれか1つで表される16S rRNA遺伝子配列を有する場合である。
【0065】
さらに別の態様において、本発明は、炎症性又は自己免疫障害の治療又は予防に使用するための、Alistipes属の細菌株を含む組成物を提供する。
【0066】
なおもさらに別の態様において、本発明は、炎症性又は自己免疫障害の治療又は予防に使用するための、A.shahiiの細菌株を含む組成物を提供する。
【0067】
いくつかの実施形態において、細菌株は、受託番号V21/014432、V21/014433、若しくはV21/014434のうちのいずれか1つの下に寄託されたA.shahii株、又はその誘導体である。
【0068】
いくつかの実施形態において、炎症性又は自己免疫障害は、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など)、喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など)、関節炎(関節リウマチ、変形性関節炎、乾癬性関節炎、又は若年性特発性関節炎など)、脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など)、強直性脊椎炎、乾癬、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、シェーグレン症候群、及び1型糖尿病から選択される。いくつかの好ましい実施形態において、炎症性又は自己免疫障害は炎症性腸疾患(IBD)である。
【0069】
一態様において、本発明は、炎症性又は自己免疫障害を治療する際に使用するための組成物を提供し、この組成物は、A.shahiiの細菌株及び補助的な治療剤を含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、補助的治療剤は、抗炎症剤である。例示的な例として、抗炎症剤は、5-アミノサリチル酸塩、コルチコステロイド、アザチオプリン、又はそれらの組み合わせを含む群から選択される。いくつかの他の実施形態において、補助的治療は、抗体(例えば、モノクローナル抗体)である。例示的な例として、抗体は、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブペゴル、ナタリズマブ、及びベドリズマブから選択され得る。
【0071】
別の態様において、本発明は、炎症性又は自己免疫障害を治療する際に使用するための組成物を提供し、この組成物は、A.shahiiの細菌株及び栄養補助食品を含む。このタイプの実施形態において、栄養補助食品は、細菌染色の生着を改善する。
【0072】
別の態様において、本発明は、受託番号V21/019213若しくはV21/019214の下に寄託されたC.sana株又はその誘導体の細胞を提供する。
【0073】
いくつかの実施形態において、細胞は、少なくとも部分的に単離される。
【0074】
別の態様において、本発明は、受託番号V21/019213若しくはV21/019214の下に寄託されたC.sana株又はその誘導体の生物学的に純粋な培養物を提供する。
【0075】
別の態様において、本発明は、上述のように、又は本明細書の他の箇所で記載されるように、細胞又は培養物を含む組成物を提供する。
【0076】
さらに別の態様において、本発明は、配列番号11~18のうちのいずれか1つと少なくとも約97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、若しくは99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は配列番号11~18のうちのいずれか1つで表される16S rRNA配列を有する細菌株を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、細菌株は、ゲノム中に16S rRNA配列の2つ以上のコピー(例えば、2つのコピー、3つのコピー、4つのコピー、5つのコピー、6つのコピー、7つのコピー、8つのコピー)を含む。例えば、細菌株は、そのゲノム内に16S rRNA配列の4つのコピー(例えば、配列番号11~14の各々、又は配列番号15~18の各々)を含んでよい。
【0077】
いくつかの実施形態において、組成物は、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体をさらに含む。
【0078】
さらに別の態様において、本発明は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに、C.sanaの細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する細菌株を含む医薬組成物を提供する。
【0079】
関連する態様において、本発明は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに、C.sana及びC.sp002437735の最近の共通祖先(MRCA)の系統発生的子孫である有効量の細菌株を含む医薬組成物を提供する。好適には、MRCAは、ゲノム分類学データベース(GTDB)からのbac120系統樹のノード23879で定義される。いくつかの実施形態において、系統樹は、GTDBのリリース89によって作成されるが、任意のその後のリリースは、適用可能な結果を等しく与えると考えられる。このタイプのいくつかの好ましい実施形態において、細菌株は、C.sanaである。
【0080】
典型的には、細菌株は、少なくとも部分的に単離される。
【0081】
いくつかの実施形態において、細菌株は、生きている。いくつかの代替実施形態において、細菌株は、死滅している。
【0082】
いくつかの実施形態において、組成物は、プレバイオティクスをさらに含む。
【0083】
いくつかの実施形態において、組成物は、乾燥形態で製剤化される。典型的には、組成物は、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせから選択される技術を使用して乾燥される。
【0084】
いくつかの実施形態において、組成物は、経口投与用に製剤化される。
【0085】
いくつかの実施形態において、細菌株は、細胞内のシグナル伝達及び転写活性化因子3(STAT3)のシグナル伝達を減衰させるか、又は障害する薬剤を産生する。
【0086】
このタイプのいくつかの実施形態において、薬剤は、小分子、ペプチド、又はヌクレオチドである。典型的には、薬剤は、細菌株によって放出される。
【0087】
いくつかの実施形態において、薬剤は、STAT3、JAK2、TYK2、又はIL-23のいずれか1つに特異的に結合する。
【0088】
いくつかの実施形態において、C.sanaは、デンプン、グルコース、フルクトース、グルコン酸塩、ラクトース、トレハロース、及びラクトアルデヒドを炭素源として含むか、又はそれらからなる群から選択される1つ以上の薬剤を代謝する。
【0089】
別の態様において、本発明は、対象における腸障壁機能を回復又は改善する方法を提供し、この方法は、対象に、C.sana種の細菌株を投与して、それによって腸障壁機能を回復又は改善することを含む。
【0090】
いくつかの好ましい実施形態において、腸障壁機能の回復又は改善は、(i)ムチンの質及び/若しくは量の増加、(ii)タイトジャンクションタンパク質の完全性の改善、(iii)管腔内容物の全身循環への移行の低減、又は(iv)腸潰瘍及び/若しくは腸創傷の低減のうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0091】
いくつかの実施形態において、管腔内容物は、リポ多糖類(LPS)を含む。
【0092】
いくつかの実施形態において、腸障壁機能の回復又は改善は、対象における全身性炎症の減少をもたらす。このタイプのいくつかの実施形態において、全身性炎症は、健常対象における炎症性サイトカインのレベルと比較して、対象における炎症性サイトカイン(例えば、IL-1βIL-8、IL-6、及びTNF)のレベルの上昇を特徴とする。
【0093】
さらに別の態様において、本発明は、対象における腸障壁機能を維持する方法を提供し、この方法は、対象に、C.sana種の細菌株を投与して、それによって対象における腸障壁機能を維持することを含む。
【0094】
さらに別の態様において、本発明は、対象における炎症を軽減する方法を提供し、この方法は、対象に、C.sana株の細菌株を投与して、それによって対象における炎症を低減することを含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、炎症は、腸内環境に対して局所的であるか、又は全身性炎症である。
【0096】
別の態様において、本発明は、対象における粘膜治癒を誘導又は増強する方法を提供し、この方法は、対象に、上皮細胞の遊走、増殖、及び/又は分化を誘導するのに十分な量の、C.sana種の細菌株を投与して、それによって対象における粘膜治癒を誘導することを含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、対象における粘膜治癒は、1つ以上の糞便マーカー又は血清マーカーを用いて測定することができる。例示的な例として、カルプロテクチン、ラクトフェリン、メタロプロテイナーゼ(MMP)-9、及びリポカリン-2を含む群から1つ以上の糞便マーカーを選択することができる。
【0098】
いくつかの実施形態において、細菌株は、NFκB経路を弱めることによって炎症を減少させる。このタイプのいくつかの実施形態において、細菌株は、NFκB、TNF、IFN-γ、IL-1β、IL-8、及びMCP-1を含む群から選択される1つ以上の転写因子、サイトカイン、又はケモカインの産生を阻害する。
【0099】
さらに別の態様において、本発明は、標的細胞におけるSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害する方法を提供し、この方法は、細胞を、C.sanaの細菌細胞調製物の少なくとも可溶性成分と接触させて、細胞におけるSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害することを含む。典型的には、この態様の方法は、インビトロで実施される。
【0100】
いくつかの実施形態において、標的細胞は、レポーター細胞(例えば、HEK細胞)、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、上皮細胞、又は内皮細胞から選択される。いくつかの実施形態において、標的細胞は、哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞である。
【0101】
いくつかの実施形態において、細菌細胞調製物は、細菌細胞培養物である。したがって、可溶性成分は、細菌細胞培養物(例えば、細胞培養上清)の可溶性画分を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になることができる。可溶性成分は、細菌細胞培養物のいくつかの不溶性成分をさらに含むことができる。例えば、可溶性成分は、実質的にすべての細菌培養物を含み得る。好ましくは、可溶性成分は、細菌細胞を実質的に枯渇させる。
【0102】
いくつかの代替実施形態において、細菌細胞調製物は、細菌細胞溶解物である。このタイプの例示的実施形態において、可溶性成分は、細胞溶解物の可溶性画分に関することができる。可溶性画分は、遠心分離によるものを含め、任意の方法によって適切に達成することができる。
【0103】
なおもさらに別の態様において、本発明は、細胞内のSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害する方法を提供し、この方法は、対象に、C.sana種の細菌株を投与して、それによって細胞内のSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害することを含む。典型的には、この態様の方法は、インビボで実施される。
【0104】
いくつかの実施形態において、細胞は、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)又は上皮細胞である。
【0105】
いくつかの実施形態において、細胞は上皮細胞であり、細菌株又は細菌株によって産生された代謝物は、対象におけるIL-22の産生を増加させる。
【0106】
いくつかの実施形態において、細菌株は、STAT3の直接阻害剤又は間接阻害剤である分子を産生する。例えば、細菌株は、IL-23ポリペプチド、JAK2ポリペプチド、TYK2ポリペプチド、又はSTAT3ポリペプチドのうちの少なくとも1つを直接阻害する代謝物を産生し得る。
【0107】
いくつかの実施形態において、上記及び本明細書の他の箇所に記載される方法で使用される細菌株は、酪酸塩、酢酸塩、エタノール、及びフマル酸塩から選択される1つ以上の代謝物を産生する。
【0108】
いくつかの実施形態において、細菌株は、C.sanaの細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約97.5%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%同一である16S rRNA配列を有する。
【0109】
いくつかの代替実施形態において、細菌株は、配列番号11~18のうちのいずれか1つと少なくとも約97.5%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は配列番号11~18のうちのいずれか1つで表される16S rRNA配列を有する。いくつかの実施形態において、細菌株は、ゲノム中に16S rRNA配列の2つ以上のコピー(例えば、2つのコピー、3つのコピー、4つのコピー、5つのコピー、6つのコピー、7つのコピー、8つのコピー)を含む。例えば、細菌株は、そのゲノム内に16S rRNA配列の4つのコピー(例えば、配列番号11~14の各々、又は配列番号15~18の各々)を含んでよい。
【0110】
いくつかの実施形態において、細菌株は、受託番号V21/019213若しくはV21/019214の下に寄託されたC.sana株、又はその誘導体である。
【0111】
好ましくは、細菌株は、少なくとも部分的に単離される。
【0112】
いくつかの実施形態において、細菌株は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤をさらに含む、医薬組成物として製剤化される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、乾燥組成物である。いくつかの実施形態において、乾燥組成物は、粒子、顆粒、及び粉末からなる群から選択される。例示的な例として、医薬組成物は、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥され得るか、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0113】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、経口投与用に製剤化される。
【0114】
なおもさらに他の態様において、本発明は、対象における炎症性又は自己免疫障害を治療する方法を提供し、この方法は、対象に、有効量のC.sanaの細菌株を投与して、それによって炎症性又は自己免疫障害を治療又は予防することを含む。
【0115】
いくつかの実施形態において、炎症性又は自己免疫障害は、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など)、喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など)、脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など)、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、シェーグレン症候群、及び血管炎を含む群から選択される。好ましくは、炎症性又は自己免疫障害は炎症性腸疾患(IBD)である。
【0116】
いくつかの実施形態において、細菌株は、対象の少なくとも1つの細胞におけるSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害する。典型的には、細胞は、上皮細胞、内皮細胞、又は免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)である。
【0117】
いくつかの実施形態において、細菌株は、C.sana属の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%同一である16S rRNA配列を有する。
【0118】
あるいは、いくつかの実施形態において、細菌株は、配列番号11~18のうちのいずれか1つと少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は配列番号11~18のうちのいずれか1つで表される16S rRNA配列を有する。いくつかの実施形態において、細菌株は、ゲノム中に16S rRNA配列の2つ以上のコピー(例えば、2つのコピー、3つのコピー、4つのコピー、5つのコピー、6つのコピー、7つのコピー、8つのコピー)を含む。例えば、細菌株は、そのゲノム内に16S rRNA配列の4つのコピー(例えば、配列番号11~14の各々、又は配列番号15~18の各々)を含んでよい。
【0119】
好ましくは、細菌株は、少なくとも部分的に単離される。
【0120】
いくつかの実施形態において、細菌株は、薬学的に許容される担体、希釈剤、及び/又は賦形剤とともに、医薬組成物として製剤化される。いくつかの実施形態において、組成物は、粒子、顆粒、及び粉末からなる群から選択される乾燥組成物である。例えば、組成物は、凍結乾燥され得る。あるいは、組成物は、スプレー乾燥、流動層乾燥、又は真空乾燥され得る。
【0121】
いくつかの実施形態において、組成物は、経口投与用に製剤化される。
【0122】
一態様において、本発明は、治療法で使用するための、C.sana属の細菌株を含む組成物を提供する。
【0123】
別の態様において、本発明は、治療法で使用するための、C.sanaの細菌株を含む組成物を提供する。
【0124】
さらに別の態様において、本発明は、炎症性又は自己免疫障害の治療又は予防に使用するための、C.sana属の細菌株を含む組成物を提供する。
【0125】
なおもさらに別の態様において、本発明は、炎症性又は自己免疫障害の治療又は予防に使用するための、C.sanaの細菌株を含む組成物を提供する。
【0126】
いくつかの実施形態において、細菌株は、受託番号V21/019213若しくはV21/019214の下に寄託されたC.sana株、又はその誘導体である。
【0127】
いくつかの実施形態において、炎症性又は自己免疫障害は、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など)、喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など)、関節炎(関節リウマチ、変形性関節炎、乾癬性関節炎、又は若年性特発性関節炎など)、脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など)、強直性脊椎炎、乾癬、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、シェーグレン症候群、及び1型糖尿病から選択される。いくつかの好ましい実施形態において、炎症性又は自己免疫障害は炎症性腸疾患(IBD)である。
【0128】
一態様において、本発明は、炎症性又は自己免疫障害を治療する際に使用するための組成物を提供し、この組成物は、C.sanaの細菌株及び抗炎症剤を含む。
【0129】
いくつかの実施形態において、抗炎症剤は、5-アミノサリチル酸塩、コルチコステロイド、アザチオプリン、インフリキシマブ、及びアダリムマブを含む群から選択される。
【0130】
別の態様において、本発明は、炎症性又は自己免疫障害を治療する際に使用するための組成物を提供し、この組成物は、C.sanaの細菌株及び栄養補助食品を含む。このタイプの実施形態において、栄養補助食品は、細菌染色の生着を改善する。
【0131】
なおもさらに別の態様において、したがって、一態様において、本発明は、受託番号V21/011520の下に寄託されたGemmiger formicilis株又はその誘導体の細胞を提供する。
【0132】
いくつかの実施形態において、細胞は、少なくとも部分的に単離される。
【0133】
別の態様において、本発明は、受託番号V21/011520の下に寄託されたGemmiger formicilis株又はその誘導体の生物学的に純粋な培養物を提供する。
【0134】
別の態様において、本発明は、上述のように、又は本明細書の他の箇所で記載されるように、細胞又は培養物を含む組成物を提供する。
【0135】
さらに別の態様において、本発明は、配列番号27若しくは配列番号45~47のうちの1つ以上と少なくとも約97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、若しくは99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は配列番号27若しくは配列番号45~47のうちの1つ以上で表される16S rRNA配列を有する細菌株を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、細菌株は、ゲノム中に16S rRNA配列の2つ以上のコピー(例えば、2つのコピー、3つのコピー、4つのコピー、5つのコピー、6つのコピー、7つのコピー、8つのコピー)を含む。
【0136】
いくつかの実施形態において、組成物は、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体をさらに含む。
【0137】
さらに別の態様において、本発明は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに、Gemmiger formicilisの細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する細菌株を含む医薬組成物を提供する。
【0138】
関連する態様において、本発明は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに、G.variabile及びG.sp002306375の最近の共通祖先(MRCA)の系統発生的子孫である有効量の細菌株を含む医薬組成物を提供する。好適には、MRCAは、ゲノム分類学データベース(GTDB)からのbac120系統樹のノード23818で定義される。いくつかの実施形態において、系統樹は、GTDBのリリース89によって作成されるが、任意のその後のリリースは、適用可能な結果を等しく与えると考えられる。このタイプのいくつかの好ましい実施形態において、細菌株は、G.formicilisである。
【0139】
典型的には、細菌株は、少なくとも部分的に単離される。
【0140】
いくつかの実施形態において、細菌株は、生きている。いくつかの代替実施形態において、細菌株は、死滅している。
【0141】
いくつかの実施形態において、組成物は、プレバイオティクスをさらに含む。
【0142】
いくつかの実施形態において、組成物は、乾燥形態で製剤化される。典型的には、組成物は、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせから選択される技術を使用して乾燥される。
【0143】
いくつかの実施形態において、組成物は、経口投与用に製剤化される。
【0144】
いくつかの実施形態において、細菌株は、細胞内のシグナル伝達及び転写活性化因子3(STAT3)のシグナル伝達を減衰させるか、又は障害する薬剤を産生する。
【0145】
このタイプのいくつかの実施形態において、薬剤は、小分子、ペプチド、又はヌクレオチドである。典型的には、薬剤は、細菌株によって放出される。
【0146】
いくつかの実施形態において、薬剤は、STAT3、JAK2、TYK2、又はIL-23のうちのいずれか1つに特異的に結合する。
【0147】
いくつかの実施形態において、G.formicilisは、デンプン、グルコース、フルクトース、グルコン酸塩、ラクトース、トレハロース、及びラクトアルデヒドを炭素源として含むか、又はそれらからなる群から選択される1つ以上の薬剤を代謝する。
【0148】
別の態様において、本発明は、対象における腸障壁機能を回復又は改善する方法を提供し、この方法は、対象に、G.formicilisの細菌株を投与して、それによって腸障壁機能を回復又は改善することを含む。
【0149】
いくつかの好ましい実施形態において、腸障壁機能の回復又は改善は、(i)ムチンの質及び/若しくは量の増加、(ii)タイトジャンクションタンパク質の完全性の改善、(iii)管腔内容物の全身循環への移行の低減、又は(iv)腸潰瘍及び/若しくは腸創傷の低減のうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0150】
いくつかの実施形態において、管腔内容物は、リポ多糖類(LPS)を含む。
【0151】
いくつかの実施形態において、腸障壁機能の回復又は改善は、対象における全身性炎症の減少をもたらす。このタイプのいくつかの実施形態において、全身性炎症は、健常対象における炎症性サイトカインのレベルと比較して、対象における炎症性サイトカイン(例えば、IL-1βIL-8、IL-6、及びTNF)のレベルの上昇を特徴とする。
【0152】
さらに別の態様において、本発明は、対象における腸障壁機能を維持する方法を提供し、この方法は、対象に、G.formicilis種の細菌株を投与して、それによって対象における腸障壁機能を維持することを含む。
【0153】
さらに別の態様において、本発明は、対象における炎症を軽減する方法を提供し、この方法は、対象に、G.formicilis株の細菌株を投与して、それによって対象における炎症を低減することを含む。
【0154】
いくつかの実施形態において、炎症は、腸内環境に対して局所的であるか、又は全身性炎症である。
【0155】
別の態様において、本発明は、対象における粘膜治癒を誘導又は増強する方法を提供し、この方法は、対象に、上皮細胞の遊走、増殖、及び/又は分化を誘導するのに十分な量の、G.formicilis種の細菌株を投与して、それによって対象における粘膜治癒を誘導することを含む。
【0156】
いくつかの実施形態において、対象における粘膜治癒は、1つ以上の糞便マーカー又は血清マーカーを用いて測定することができる。例示的な例として、カルプロテクチン、ラクトフェリン、メタロプロテイナーゼ(MMP)-9、及びリポカリン-2を含む群から1つ以上の糞便マーカーを選択することができる。
【0157】
いくつかの実施形態において、細菌株は、NFκB経路を弱めることによって炎症を減少させる。このタイプのいくつかの実施形態において、細菌株は、NFκB、TNF、IFN-γ、IL-1β、IL-8、及びMCP-1を含む群から選択される1つ以上の転写因子、サイトカイン、又はケモカインの産生を阻害する。
【0158】
さらに別の態様において、本発明は、標的細胞におけるSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害する方法を提供し、この方法は、細胞を、G.formicilisの細菌細胞調製物の少なくとも可溶性成分と接触させて、細胞におけるSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害することを含む。典型的には、この態様の方法は、インビトロで実施される。
【0159】
いくつかの実施形態において、標的細胞は、レポーター細胞(例えば、HEK細胞)、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、上皮細胞、又は内皮細胞から選択される。いくつかの実施形態において、標的細胞は、哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞である。
【0160】
いくつかの実施形態において、細菌細胞調製物は、細菌細胞培養物である。したがって、可溶性成分は、細菌細胞培養物(例えば、細胞培養上清)の可溶性画分を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になることができる。可溶性成分は、細菌細胞培養物のいくつかの不溶性成分をさらに含むことができる。例えば、可溶性成分は、実質的にすべての細菌培養物を含み得る。好ましくは、可溶性成分は、細菌細胞を実質的に枯渇させる。
【0161】
いくつかの代替実施形態において、細菌細胞調製物は、細菌細胞溶解物である。このタイプの例示的実施形態において、可溶性成分は、細胞溶解物の可溶性画分に関することができる。可溶性画分は、遠心分離によるものを含め、任意の方法によって適切に達成することができる。
【0162】
なおもさらに別の態様において、本発明は、細胞内のSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害する方法を提供し、この方法は、対象に、G.formicilis種の細菌株を投与して、それによって細胞内のSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害することを含む。典型的には、この態様の方法は、インビボで実施される。
【0163】
いくつかの実施形態において、細胞は、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)又は上皮細胞である。
【0164】
いくつかの実施形態において、細胞は上皮細胞であり、細菌株又は細菌株によって産生された代謝物は、対象におけるIL-22の産生を増加させる。
【0165】
いくつかの実施形態において、細菌株は、STAT3の直接阻害剤又は間接阻害剤である分子を産生する。例えば、細菌株は、IL-23ポリペプチド、JAK2ポリペプチド、TYK2ポリペプチド、又はSTAT3ポリペプチドのうちの少なくとも1つを直接阻害する代謝物を産生し得る。
【0166】
いくつかの実施形態において、上記及び本明細書の他の箇所に記載される方法で使用される細菌株は、酪酸塩、酢酸塩、エタノール、及びフマル酸塩から選択される1つ以上の代謝物を産生する。
【0167】
いくつかの実施形態において、細菌株は、G.formicilisの細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約97.5%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%同一である16S rRNA配列を有する。
【0168】
いくつかの代替実施形態において、細菌株は、配列番号27若しくは配列番号45~47のうちの1つ以上と少なくとも約97.5%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は細菌株が、配列番号27若しくは配列番号45~47のうちの1つ以上で表される16S rRNA遺伝子配列を有する場合である。いくつかの実施形態において、細菌株は、配列番号27又は配列番号45~47のうちの1つ以上に記載の16S rRNA配列から独立して選択された2つ以上のコピー(例えば、2つのコピー、3つのコピー、4つのコピー、5つのコピー、6つのコピー、7つのコピー、8つのコピー)を含む。
【0169】
いくつかの実施形態において、細菌株は、受託番号V21/011520の下に寄託されたG.formicilis株、又はその誘導体である。
【0170】
好ましくは、細菌株は、少なくとも部分的に単離される。
【0171】
いくつかの実施形態において、細菌株は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤をさらに含む、医薬組成物として製剤化される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、乾燥組成物である。いくつかの実施形態において、乾燥組成物は、粒子、顆粒、及び粉末からなる群から選択される。例示的な例として、医薬組成物は、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥され得るか、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0172】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、経口投与用に製剤化される。
【0173】
なおもさらに別の態様において、本発明は、細胞内のSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害する方法を提供し、この方法は、対象に、Gemmiger sp.MD158種の細菌株を投与して、それによって細胞内のSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害することを含む。典型的には、この態様の方法は、インビボで実施される。
【0174】
なおもさらに他の態様において、本発明は、対象における炎症性又は自己免疫障害を治療する方法を提供し、この方法は、対象に、有効量のG.formicilisの細菌株を投与して、それによって炎症性又は自己免疫障害を治療又は予防することを含む。
【0175】
いくつかの実施形態において、炎症性又は自己免疫障害は、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など)、喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など)、脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など)、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、シェーグレン症候群、及び血管炎を含む群から選択される。好ましくは、炎症性又は自己免疫障害は炎症性腸疾患(IBD)である。
【0176】
いくつかの実施形態において、細菌株は、対象の少なくとも1つの細胞におけるSTAT3シグナル伝達を遮断するか、又は別の様式で阻害する。典型的には、細胞は、上皮細胞、内皮細胞、又は免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)である。
【0177】
いくつかの実施形態において、細菌株は、Gemmiger属の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%同一である16S rRNA配列を有する。
【0178】
あるいは、いくつかの実施形態において、細菌株は、配列番号27若しくは配列番号45~47のうちの1つ以上と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は細菌株が、配列番号27若しくは配列番号45~47のうちの1つ以上で表される16S rRNA遺伝子配列を有する場合である。
【0179】
好ましくは、細菌株は、少なくとも部分的に単離される。
【0180】
いくつかの実施形態において、細菌株は、薬学的に許容される担体、希釈剤、及び/又は賦形剤とともに、医薬組成物として製剤化される。いくつかの実施形態において、組成物は、粒子、顆粒、及び粉末からなる群から選択される乾燥組成物である。例えば、組成物は、凍結乾燥され得る。あるいは、組成物は、スプレー乾燥、流動層乾燥、又は真空乾燥され得る。
【0181】
いくつかの実施形態において、組成物は、経口投与用に製剤化される。
【0182】
一態様において、本発明は、治療法で使用するための、Gemmiger属の細菌株を含む組成物を提供する。
【0183】
別の態様において、本発明は、治療法で使用するための、G.formicilisの細菌株を含む組成物を提供する。
【0184】
別の態様において、本発明は、治療法で使用するための、Gemmiger sp.MD158の細菌株を含む組成物を提供する。
【0185】
さらに別の態様において、本発明は、炎症性又は自己免疫障害の治療又は予防に使用するための、Gemmiger属の細菌株を含む組成物を提供する。
【0186】
なおもさらに別の態様において、本発明は、炎症性又は自己免疫障害の治療又は予防に使用するための、G.formicilisの細菌株を含む組成物を提供する。
【0187】
いくつかの実施形態において、細菌株は、受託番号V21/011520の下に寄託されたG.formicilis株、又はその誘導体である。
【0188】
いくつかの実施形態において、細菌株は、配列番号34~38のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、又はすべてに示される配列を含むゲノム配列を有するGemmiger sp.MD158株である。
【0189】
いくつかの実施形態において、炎症性又は自己免疫障害は、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など)、喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など)、関節炎(関節リウマチ、変形性関節炎、乾癬性関節炎、又は若年性特発性関節炎など)、脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など)、強直性脊椎炎、乾癬、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、シェーグレン症候群、及び1型糖尿病から選択される。いくつかの好ましい実施形態において、炎症性又は自己免疫障害は炎症性腸疾患(IBD)である。
【0190】
一態様において、本発明は、炎症性又は自己免疫障害を治療する際に使用するための組成物を提供し、この組成物は、G.formicilisの細菌株及び抗炎症剤を含む。
【0191】
いくつかの実施形態において、抗炎症剤は、5-アミノサリチル酸塩、コルチコステロイド、アザチオプリン、インフリキシマブ、及びアダリムマブを含む群から選択される。
【0192】
別の態様において、本発明は、炎症性又は自己免疫障害を治療する際に使用するための組成物を提供し、この組成物は、Gemmiger種の細菌株及び栄養補助食品を含む。このタイプの実施形態において、栄養補助食品は、細菌染色の生着を改善する。このタイプのいくつかの実施形態において、G.formicilis種の細菌株。いくつかの他の実施形態において、細菌株は、Gemmiger sp.MD158種である。
【0193】
いくつかの関連する態様において、上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載される技術は、細菌種、及びそれらをプロバイオティクスの形態で含む組成物を提供する。好ましくは、このようなプロバイオティクスは、腸内微生物生態学を改善し、微生物異常症の症状を緩和し、健康を促進し、及び/又は炎症性及び/又は自己免疫障害を治療及び/又は予防するのに効果的である。
【0194】
以下の図は、本明細書の一部を構成し、本開示の特定の態様をさらに示すために含まれる。本開示は、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図の1つ以上を参照することによって、より良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0195】
図1】A.shahiiの系統発生近傍に焦点を当てた、GTDB種を代表する系統樹(r89、Parks et al.2018に記載の方法)を示す。高い安定性(ブートストラップ値>90%)を有する健康関連種A.shahiiの最近の共通祖先ノードが強調表示されている。
【0196】
図2-1】Alistipes属の細菌と代表的な炎症性及び/又は自己免疫障害との間の関連性のグラフ表示を提供する。(A)6,020人の対象の高解像度腸メタゲノムデータを使用して、A.shahii、A.finegoldii、A.senegalensis、A.onderdonkii、及びA.sp000434235を、健常なヒト(暗色バー)において蔓延しているが、クローン病及び潰瘍性大腸炎(ストライプバー)において枯渇していると特定した。(B)これらの観察は、Harvardによって以前に発表された独立したIBDコホートにおいて検証された(Franzosa et al.,2019)、(C)A.shahii、(D)A.finegoldii、並びに(E)A.senegalensisが、炎症性及び自己免疫障害(ストライプバー)の範囲において有意に蔓延していない(P<0.05、フィッシャーの正確確率検定)。
図2-2】Alistipes属の細菌と代表的な炎症性及び/又は自己免疫障害との間の関連性のグラフ表示を提供する。(A)6,020人の対象の高解像度腸メタゲノムデータを使用して、A.shahii、A.finegoldii、A.senegalensis、A.onderdonkii、及びA.sp000434235を、健常なヒト(暗色バー)において蔓延しているが、クローン病及び潰瘍性大腸炎(ストライプバー)において枯渇していると特定した。(B)これらの観察は、Harvardによって以前に発表された独立したIBDコホートにおいて検証された(Franzosa et al.,2019)、(C)A.shahii、(D)A.finegoldii、並びに(E)A.senegalensisが、炎症性及び自己免疫障害(ストライプバー)の範囲において有意に蔓延していない(P<0.05、フィッシャーの正確確率検定)。
図2-3】Alistipes属の細菌と代表的な炎症性及び/又は自己免疫障害との間の関連性のグラフ表示を提供する。(A)6,020人の対象の高解像度腸メタゲノムデータを使用して、A.shahii、A.finegoldii、A.senegalensis、A.onderdonkii、及びA.sp000434235を、健常なヒト(暗色バー)において蔓延しているが、クローン病及び潰瘍性大腸炎(ストライプバー)において枯渇していると特定した。(B)これらの観察は、Harvardによって以前に発表された独立したIBDコホートにおいて検証された(Franzosa et al.,2019)、(C)A.shahii、(D)A.finegoldii、並びに(E)A.senegalensisが、炎症性及び自己免疫障害(ストライプバー)の範囲において有意に蔓延していない(P<0.05、フィッシャーの正確確率検定)。
【0197】
図3】A.shahii株の形態及び系統発生のグラフ表示を提供する。(A)細胞形態を示すA.shahii MH21-1単離株のグラム染色。(B)高品質参照ゲノム(GTDB r89)からの120の細菌特異的シングルコピーマーカー遺伝子のアラインメントで構築されたゲノムツリー。チップには、NCBI生物種名及びNCBI GenBank IDがラベル付けされている。分岐群は、GTDB r89分類法でラベル付けされている。ノンパラメトリックブートストラップ値は、1000回の反復から計算した。
【0198】
図4】A.shahiiが、ナイーブC57Bl/6マウスにおける健常な腸機能に影響を及ぼさないというグラフィック表示を提供する。(A)ナイーブC57Bl/6マウスに対するA.shahii MH21-1の影響を評価するために使用されたモデルの概要。(B)A.shahii MH21-1による治療は、ナイーブ動物の体重にほとんど影響を及ぼさない。(C)~(D)A.shahii MH21-1による治療は、ナイーブ動物のビヒクル治療対照と比較して、結腸の長さ又は結腸の重量/長さ比に影響を及ぼさない。(E)~(G)A.shahii MH21-1による治療は、ナイーブ動物のビヒクル治療対照と比較して、上皮損傷、炎症、過剰血管新生に影響を及ぼさない。(H)A.shahii MH21-1による治療は、ナイーブ動物のビヒクル治療対照と比較して、腸組織学に影響を及ぼさない。すべてのデータは、平均及び標準偏差として報告された。ns、有意でない。
【0199】
図5】A.shahiiが腸障壁機能を回復させるというグラフィック表示を提供する。(A)A.shahiiの治療効果を評価するために使用されたDSSモデルの概要。(B)健常マウス及びDSS治療マウスの体重に対するビヒクル、プレドニゾン及びA.shahiiの毎日の治療の効果。全投与群をDSS+ビヒクル群と比較した。有意性は、二元配置AnovaをTukeyの多重比較検定と一緒に用いて決定した。(C)ビヒクル、プレドニゾン、又はA.shahiiで治療したC57Bl/6マウスの代表的な腸組織画像。(D)DSS治療は、プレドニゾン、F.prausnitzii A2-165及びA.shahiiによる治療によって改善される組織病理学的スコアの増加をもたらす。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。全群をDSS+ビヒクル群と比較し、一元配置AnovaをDunnettの多重比較検定と一緒に用いて有意性を決定した。(E)DSS治療は、プレドニゾン又はA.shahiiによる治療によって改善される上皮損傷の増加をもたらす。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。Kruskal-Wallis検定を、Dunnの多重比較補正と一緒に用いて、全群をDSS+ビヒクル群と比較した。(F)DSS治療は、プレドニゾン又はA.shahiiによる治療によって改善される杯細胞の有意な減少をもたらす。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。Kruskal-Wallis検定を、にDunnの多重比較補正と一緒に用いて、全群をDSS+ビヒクル群と比較した。(G)DSS治療は、A.shahiiによる治療によって改善される上皮内リンパ球の有意な減少をもたらす。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。Kruskal-Wallis検定を、Dunnの多重比較補正と一緒に用いて、全群をDSS+ビヒクル群と比較した。(H)A.shahiiの治療効果を評価するために使用されたSKGモデルの概要。(I)Curdlan治療は、抗IL-23抗体及びA.shahiiによる治療によって改善される組織病理学的スコアの増加をもたらす。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。Anovaを、Dunnettの多重比較検定と一緒に用いて、全群をcurdlan+ビヒクル群と比較した。(J)~(M)Curdlan治療は、A.shahiiによる治療によって改善されるIL-23、IL-12p70、IL-6及びGM-CSFの増加をもたらす。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。IL-23、IL-12p70及びGM-CSFについて、Kruskal-Wallis検定を、Dunnの多重比較補正と一緒に用いて、全群をDSS+ビヒクル群と比較した。IL-6について、Anovaを、Dunnettの多重比較検定と一緒に用いて、全群をcurdlan+ビヒクル群と比較した。すべてのデータについて、ns:有意でない;*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001、****、p<0.0001。
【0200】
図6】インビトロでSTAT3を抑制するA.shahiiのグラフィック表示を提供する。(A)~(C)STAT3シグナル伝達は、HEKBlue IL23レポーター細胞を、A.shahii株MH21-1(t検定、n=9、****p<0.0001;***p=0.0004)、A.shahii MH21-3及びA.shahii MH21-6の無細胞上清生又は<3KDa分画培養上清で処理すると阻害される。(D)A.shahii培養上清をサイズ分画し、37℃又は97℃で熱処理した後、HEKBlue IL-23レポーター細胞株を使用して試験した。熱処理後、すべての画分は、STAT3シグナル伝達を抑制することができた(t検定、n=9;****p<0.0001;*p=0.0362;****p<0.0001)。(E)PYG中で増殖したA.shahii MH21-1由来の無細胞上清は、強力なSTAT3抑制活性を示すが、WCB又はMCM中で増殖した場合、有意な活性を示さない(一元配置ANOVA、n=9;ns p=0.4896、及び0.7489;***p<0.0001及び<0.0001、ns p=0.3677及び0.4524)。(F)STAT3シグナル伝達は、HEKBlue IL-6レポーター細胞を、A.shahii株MH21-2及びA.shahii株MH21-3の無細胞上清生又は<3KDa分画培養上清で処理すると阻害される(t検定、****p<0.0001)。
【0201】
図7-1】A.shahiiがヒト腸上皮細胞の遊走を促進することを示すグラフィック表示を提供する。(A)Transwell遊走アッセイを用いて、A.shahii由来の滅菌培養上清抽出物がHCT116結腸がん細胞の遊走に及ぼす効果を研究した。血清欠乏状態(0.5% FBS)では、A.shahii 1×抽出物をチャンバの底部に添加すると、TYG-M培地抽出物対照と比較して、HCT116細胞の基底外側への移動が有意に増加した。(TYG-M、未処理n=6個の技術的反復;A.shahii n=4個の技術的反復、各3個の生物学的複製物;対応のないt検定、両側P=0.0047)。(B)細胞遊走のための第2の読み出しとして、Incucyteスクラッチ創傷アッセイを実施した。HCT116細胞単層をスクラッチした後、相対創傷コンフルエンスを2時間ごとに測定した。スクラッチの90時間後、A.shahii MH21-1由来の0.6×抽出物中でインキュベートされた血清欠乏HCT116細胞は、TYG-M培地抽出物で処理された細胞と比較して、有意に高い創傷コンフルエンスを示した。(TYG-M、未処理n=16個の技術的反復;A.shahii n=16個の技術的反復、各3個の生物学的複製物);対応のないt検定、両側p=0.0069)。(C)T84細胞単層にわたるTEERを、障壁破壊因子IFN-γによる48時間の基底外側処理中及び後に評価した。A.shahii細胞を含まない培養上清で頂端処理したT84細胞は、TEERによって評価されるより高いTEER値(Ohms)によって示されるように、PYG培地対照と比較して、48時間の処理後に、IFN-γが障壁完全性の喪失に対する変化を誘導した後、より速い回復改善を示す(各条件n=4個の複製物)。(D)A.shahii細胞を含まない培養上清で頂端処理したT84細胞は、TEERによって評価されるように、PYG培地対照と比較して、9日間の処理後のTEERにおける障壁完全性の媒介的喪失に対するIFN-γ誘導変化の7日後に有意に高いTEER改善を示す(各条件n=4個の複製物)。試料を比較し、統計的有意性は、対応のないt検定を使用して決定した。****p<0.0001。(E)T84細胞単層にわたるTEERを、障壁破壊因子IFN-γによる48時間の基底外側処理中及び後に評価した。A.shahii細胞を含まない培養上清で頂端処理したT84細胞は、TEERによって評価されるように、PYG培地対照と比較して、48時間の処理後の障壁完全性の喪失に対するIFN-γ誘導変化からのより速い回復を示す。すべての試料を未処理細胞に対して正規化し、対照と比較したTEERのパーセンテージ差を提示した。(F)A.shahii細胞を含まない培養上清で頂端処理したT84細胞は、TEERによって評価されるように、PYG培地対照と比較して、9日間の処理後のTEERにおける障壁完全性に対するIFN-γ誘導変化の7日後に有意に高いTEER改善を示す。すべての試料を、未処理細胞に対して正規化した。試料は、対応のないt検定を使用して比較した。**** p<0.0001。(G)A.shahii MH21-6を単離するために使用されたゲーティング戦略の概要。
図7-2】A.shahiiがヒト腸上皮細胞の遊走を促進することを示すグラフィック表示を提供する。(A)Transwell遊走アッセイを用いて、A.shahii由来の滅菌培養上清抽出物がHCT116結腸がん細胞の遊走に及ぼす効果を研究した。血清欠乏状態(0.5% FBS)では、A.shahii 1×抽出物をチャンバの底部に添加すると、TYG-M培地抽出物対照と比較して、HCT116細胞の基底外側への移動が有意に増加した。(TYG-M、未処理n=6個の技術的反復;A.shahii n=4個の技術的反復、各3個の生物学的複製物;対応のないt検定、両側P=0.0047)。(B)細胞遊走のための第2の読み出しとして、Incucyteスクラッチ創傷アッセイを実施した。HCT116細胞単層をスクラッチした後、相対創傷コンフルエンスを2時間ごとに測定した。スクラッチの90時間後、A.shahii MH21-1由来の0.6×抽出物中でインキュベートされた血清欠乏HCT116細胞は、TYG-M培地抽出物で処理された細胞と比較して、有意に高い創傷コンフルエンスを示した。(TYG-M、未処理n=16個の技術的反復;A.shahii n=16個の技術的反復、各3個の生物学的複製物);対応のないt検定、両側p=0.0069)。(C)T84細胞単層にわたるTEERを、障壁破壊因子IFN-γによる48時間の基底外側処理中及び後に評価した。A.shahii細胞を含まない培養上清で頂端処理したT84細胞は、TEERによって評価されるより高いTEER値(Ohms)によって示されるように、PYG培地対照と比較して、48時間の処理後に、IFN-γが障壁完全性の喪失に対する変化を誘導した後、より速い回復改善を示す(各条件n=4個の複製物)。(D)A.shahii細胞を含まない培養上清で頂端処理したT84細胞は、TEERによって評価されるように、PYG培地対照と比較して、9日間の処理後のTEERにおける障壁完全性の媒介的喪失に対するIFN-γ誘導変化の7日後に有意に高いTEER改善を示す(各条件n=4個の複製物)。試料を比較し、統計的有意性は、対応のないt検定を使用して決定した。****p<0.0001。(E)T84細胞単層にわたるTEERを、障壁破壊因子IFN-γによる48時間の基底外側処理中及び後に評価した。A.shahii細胞を含まない培養上清で頂端処理したT84細胞は、TEERによって評価されるように、PYG培地対照と比較して、48時間の処理後の障壁完全性の喪失に対するIFN-γ誘導変化からのより速い回復を示す。すべての試料を未処理細胞に対して正規化し、対照と比較したTEERのパーセンテージ差を提示した。(F)A.shahii細胞を含まない培養上清で頂端処理したT84細胞は、TEERによって評価されるように、PYG培地対照と比較して、9日間の処理後のTEERにおける障壁完全性に対するIFN-γ誘導変化の7日後に有意に高いTEER改善を示す。すべての試料を、未処理細胞に対して正規化した。試料は、対応のないt検定を使用して比較した。**** p<0.0001。(G)A.shahii MH21-6を単離するために使用されたゲーティング戦略の概要。
【0202】
図8】Colonithrix種が、健常対照と比較して、炎症性及び自己免疫疾患を有するヒトの腸内微生物叢において有意に蔓延していないというグラフィック表示を提供する。6,020人の対象の高解像度腸メタゲノムデータを使用する。
【0203】
図9】C.sana株の系統発生及び形態のグラフィック表示を提供する。(A)形態を示すC.sana単離株のグラム染色。(B)高品質参照ゲノム(GTDB r89、Parks et al.,2018に記載されている方法)からの120の細菌特異的シングルコピーマーカー遺伝子のアラインメントで構築されたゲノムツリー。チップには、NCBI生物種名及びNCBI GenBank IDがラベル付けされている。分岐群は、GTDB r89分類法でラベル付けされている。ノンパラメトリックブートストラップ値は、1000回の反復から計算した。このツリーは、C.sana属(すなわち、ノード23879の周り)の系統発生近傍に焦点を当てている。健康関連C.sana種の高い安定性(ブートストラップ値>90%)を有する祖先ノードは、Colonithrix属の最近の共通祖先までラベル付けされる。
【0204】
図10】C.sanaが腸障壁機能を回復させるというグラフィック表示を提供する。(A)Colonithrix種の治療効果を評価するために使用されたDSSモデルの概要。(B)DSS処理は、C.sana MH35-1及びC.sana MH35-2による処理によって改善される組織病理学的スコアの増加をもたらす。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。全群をDSS+ビヒクル群と比較し、Welchの補正を伴う対応のないt検定を用いて有意性を決定した。(C)DSS処理は、C.sana MH35-1及びC.sana MH35-2による処理によって改善される上皮損傷の増加をもたらす。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。全群を、Kruskal-Wallisを使用して、DSS+ビヒクル群と比較した。すべてのデータについて、ns:有意でない;*、p<0.05。
【0205】
図11】インビトロでSTAT3活性化を抑制するC.sanaのグラフィック表示を提供する。STAT3シグナル伝達は、HEKBlue IL23レポーター細胞株を、(A)C.sana MH35-1及び(B)C.sana MH35-2の無細胞上清生で処理するか、又は<3KDaで濾過すると阻害される(t検定、n=9、A ****p<0.0001;B ****p<0.0001)。
【0206】
図12】インビトロでIL-6媒介STAT3活性化を抑制するC.sanaのグラフィック表示を提供する。(A~B)STAT3シグナル伝達は、HEKBlue IL-6レポーター細胞を、10% v/vでC.sana MH35-1(A)及びC.sana MH35-2(B)の無細胞上清生又は<3KDa分画培養上清で処理すると阻害される(対応のないt検定、n=18、****p<0.0001)。(C)STAT3シグナル伝達は、HEKBlue IL-6レポーター細胞を、C.sana MH35-1及びC.sana MH35-2の1×抽出物で処理すると阻害される(対応のないt検定、n=24、****p<0.0001)。
【0207】
図13】C.sanaがヒト腸上皮細胞の遊走を促進することを示すグラフィック表示を提供する。(A)Transwell遊走アッセイを用いて、C.sana MH35-1及びC.sana MH35-2由来の滅菌培養上清抽出物がHCT116結腸がん細胞の遊走に及ぼす効果を研究した。血清欠乏状態(0.5% FBS)では、未処理のHCT116細胞及び0.5×細菌培地抽出物で処理した細胞は、Transwellチャンバの基底外側への同等のバックグラウンドレベルの遊走を示した。チャンバの底部に0.5×C.sana MH35-1及びC.sana MH35-2抽出物を添加することは、培地対照と比較して、HCT116細胞の基底外側への移動を有意に増加させた(未処理n=6個の技術的反復;培地対照n=6個の技術的反復;C.sana MH35-1 n=4個の技術的反復(各2個の生物学的複製物);C.sana MH35-2 n=4個の技術的反復(各3個の生物学的複製物);対応のないt検定、両側 C.sana MH35-1については***P=0.0003、C.sana MH35-2については***P=0.0009)。(B)細胞遊走についての第2の読み出しとして、Incucyteスクラッチ創傷アッセイを実施した。HCT116細胞単層をスクラッチした後、相対創傷コンフルエンスを2時間ごとに測定した。未処理のn=18個の技術的反復;培地対照n=18個の技術的反復;C.sana MH35-1 n=36個の技術的反復(2個の生物学的複製物);C.sana MH35-2 n=36個の技術的反復(3個の生物学的複製物)。スクラッチの24時間後、C.sana MH35-1及びC.sana MH35-2由来の0.5×抽出物中でインキュベートされた血清欠乏HCT116細胞は、細菌培地抽出物で処理された細胞と比較して、有意に高い創傷コンフルエンスを示した。対応のないt検定***P=0.0008(C.sana MH35-1)及び***P=0.0004(C.sana MH35-2)。
【0208】
図14-1】Gemmiger種が、健常対照と比較して、炎症性及び自己免疫疾患を有するヒトの腸内微生物叢において有意に蔓延していないというグラフィック表示を提供する。6,020人の対象の高解像度腸メタゲノムデータを用いて、(A)Gemmiger formicilis、(B)Gemmiger種_C、(C)Gemmiger種_A、及び(D)Gemmiger sp003476825が、健常なヒト(暗色バー)において蔓延しているが、一連の炎症性及び自己免疫障害(ストライプバー)において枯渇していると特定した。(E)IBDでは、潰瘍性大腸炎及びクローン病の両方の主なサブタイプを含め、最も強い効果が観察された。(F)これらの観察は、Harvardによって以前に発表された独立したIBDコホートにおいて検証された。示された関連性はすべて、P<0.05(フィッシャーの正確確率検定)である。
図14-2】Gemmiger種が、健常対照と比較して、炎症性及び自己免疫疾患を有するヒトの腸内微生物叢において有意に蔓延していないというグラフィック表示を提供する。6,020人の対象の高解像度腸メタゲノムデータを用いて、(A)Gemmiger formicilis、(B)Gemmiger種_C、(C)Gemmiger種_A、及び(D)Gemmiger sp003476825が、健常なヒト(暗色バー)において蔓延しているが、一連の炎症性及び自己免疫障害(ストライプバー)において枯渇していると特定した。(E)IBDでは、潰瘍性大腸炎及びクローン病の両方の主なサブタイプを含め、最も強い効果が観察された。(F)これらの観察は、Harvardによって以前に発表された独立したIBDコホートにおいて検証された。示された関連性はすべて、P<0.05(フィッシャーの正確確率検定)である。
【0209】
図15】G.formicilis株の系統発生及び形態のグラフィック表示を提供する。(A)形態を示すG.formicilis MH32-1単離株のグラム染色。(B)上パネル、プレート上のG.formicilis MH32-2の写真、TY培地上で48時間後に丸い全体的に隆起したコロニーを示す。下パネル、形態を示すG.formicilis MH32-2単離株のグラム染色。(C)高品質参照ゲノム(GTDB r89)からの120の細菌特異的シングルコピーマーカー遺伝子のアラインメントで構築されたゲノムツリー。チップには、NCBI生物種名及びNCBI GenBank IDがラベル付けされている。分岐群は、GTDB r89分類法でラベル付けされている。ノンパラメトリックブートストラップ値は、1000回の反復から計算した。(D)Gemmiger属の系統発生近傍(ノード23818の周囲)に焦点を当てた、GTDB種を代表するツリー(r89、Parks et al.2018に記載の方法)。健康関連G.variabile種の高い安定性(ブートストラップ値>90%)を有する祖先ノードは、Gemmiger属の最近の共通祖先までラベル付けされる。
【0210】
図16】G.formicilisが、ナイーブC57Bl/6マウスにおける健常な腸機能に影響を及ぼさないというグラフィック表示を提供する。(A)ナイーブC57Bl/6マウスに対するG.formicilis MH32-1の影響を評価するために用いたモデルの概要。(B)MH32-1による治療は、ナイーブ動物の体重にほとんど影響を及ぼさない。(C)~(D)MH32-1による治療は、ナイーブ動物のビヒクル治療対照と比較して、結腸の長さ又は結腸の重量/長さ比に影響を及ぼさない。(E)~(F)G.formicilis MH32-1による治療は、ナイーブ動物のビヒクル治療対照と比較して、上皮損傷又は過剰血管新生に影響を及ぼさない。(G)G.formicilis MH32-1による治療は、ナイーブ動物のビヒクル治療対照と比較して、腸組織学に影響を及ぼさない。すべてのデータは、平均及び標準偏差として報告された。ns、有意でない;*p<0.05。
【0211】
図17】G.formicilisが腸障壁機能を回復させるというグラフィック表示を提供する。(A)G.formicilis MH32-1の治療効果を評価するために使用されたDSSモデルの概要。(B)健常マウス及びDSS治療マウスにおけるビヒクル、プレドニゾン及びG.formicilis MH32-1の毎日の治療の効果。全投与群をDSS+ビヒクル群と比較した。有意性は、二元配置Anovaを、Tukeyの多重比較検定と一緒に用いて決定した。(C)1日目、2日目及び6日目に評価した大腸炎の内視鏡的評価。各群を、各個々の日にDSS+ビヒクル群と、必要に応じてKruskal-Wallis検定をDunnの多重比較補正(1日目)と一緒に、又は一元配置AnovaをDunnettの多重比較補正と一緒に(2日目、6日目)用いて、比較した。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。(D)DSS治療は、プレドニゾンではなく、F.prausnitzii A2-165及びG.formicilis MH32-1によって改善される結腸の長さの低減をもたらす。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。全群をDSS+ビヒクル群と比較し、一元配置AnovaをDunnettの多重比較検定と一緒に用いて有意性を決定した。(E)ビヒクル、プレドニゾン、又はG.formicilis MH32-1で治療したC57Bl/6マウスの代表的な腸組織画像。(F)DSS治療は、プレドニゾン、F.prausnitzii A2-165及びG.formicilis MH32-1による治療によって改善される組織病理学的スコアの増加をもたらす。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。全群をDSS+ビヒクル群と比較し、多重比較のためにDunnett検定を用いて一元配置Anovaを用いて有意性を決定した。(G)DSS治療は、プレドニゾン又はG.formicilis MH32-1による治療によって改善される上皮損傷の増加をもたらす。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。Kruskal-Wallis検定を用い、多重比較のためにDunnの補正を用いて、全群をDSS+ビヒクル群と比較した。(H)ビヒクル、プレドニゾン、F.prausnitzii又はG.formicilis MH32-1で治療したC57Bl/6マウスの糞便中のリポカリン-2濃度。有意性は、多重比較のためにDunnett検定を用いた一元配置Anovaを用いて決定した。(I)G.formicilis MH32-1の治療効果を評価するために使用されたSKGモデルの概要。(J)Curdlan治療は、抗IL-23抗体及びG.formicilis MH32-1による治療によって改善される組織病理学的スコアの増加をもたらす。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。Anovaを用い、多重比較のためにDunnettの検定を用いて、全群をcurdlan+ビヒクル群と比較した。すべてのデータについて、ns:有意でない;*、p<0.05;**、p<0.01;****、p<0.0001。
【0212】
図18-1】インビトロでSTAT3活性化を抑制するG.formicilisのグラフィック表示を提供する。(A)STAT3シグナル伝達は、HEKBlue IL23レポーター細胞株を、G.formicilis MH32-1の無細胞上清生で処理するか、又は<3KDaに濾過すると阻害される(t検定、n=9、p<0.0001、p=0.0001)。(B)G.formicilis MH32-1の無細胞上清をサイズ分画し、37℃又は97℃で熱処理し、次いで、HEKBlue IL-23レポーター細胞株を試験した。熱処理後も、すべての画分は依然としてSTAT3シグナル伝達を阻害することができる(t検定、n=9;p=0.0421、p<0.0001、p=0.0009)。(C)G.formicilis MH32-1の無細胞上清をサイズ分画し、37℃で30分間プロテイナーゼKで処理し、次いで、HEKBlue IL-23レポーター細胞株を試験した。プロテイナーゼK処理後も、すべての画分は依然としてSTAT3シグナル伝達を阻害することができる(t検定、n=9;p<0.0001、p<0.0001)。(D)TY中で増殖したMH32-1由来の無細胞上清は、強力なSTAT3抑制活性を示すが、PYG、WCB及びMCM中で増殖した場合、最小の活性を示す(t検定、n=9;p<0.0001、p=0.0027、p=0.0203、p=0.0114)。(E~F)STAT3シグナル伝達は、HEKBlue IL23レポーター細胞株を、G.formicilis MH32-2及びG.formicilis ATCC 27749の無細胞上清生で処理するか、又は<3KDaに濾過すると阻害される(t検定、n=9、p<0.0001、p=0.0001)。(G)STAT3シグナル伝達は、HEKBlue IL23レポーター細胞株を、無細胞上清生で処理するか、又はGemmiger sp.MD158で<3KDaに濾過すると阻害される(対応のないt検定を使用し、試料を比較した)。***、p<0.001;****、p<0.0001)。(H)PBMCは、G.formicilis MH32-1の無細胞上清で前処理され、次いで、TY培地対照と比較してPIMで刺激された場合、IL-6の分泌の減少を示す。正規分布データを、Sidakの多重比較検定を用いた通常の一元配置Anovaを使用して分析した(n=処理当たり7、ns=有意でない;*=p<0.05;***=p<0.001;****=p<0.0001)。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。(I)G.formicilis MH32-1は、TY培地対照と比較して、LPS刺激T84腸上皮細胞からのIL-6分泌を有意に抑制する。抑制活性は、G.formicilis培養上清の<3kDa画分においても保持される。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。T検定****p<0.0001。(J)STAT3シグナル伝達は、HEKBlue IL-6レポーター細胞株を、G.formicilis MH32-1の<3KDa濾過した無細胞上清で処理すると阻害される(t検定、n=9;***p<0.0009)。
図18-2】インビトロでSTAT3活性化を抑制するG.formicilisのグラフィック表示を提供する。(A)STAT3シグナル伝達は、HEKBlue IL23レポーター細胞株を、G.formicilis MH32-1の無細胞上清生で処理するか、又は<3KDaに濾過すると阻害される(t検定、n=9、p<0.0001、p=0.0001)。(B)G.formicilis MH32-1の無細胞上清をサイズ分画し、37℃又は97℃で熱処理し、次いで、HEKBlue IL-23レポーター細胞株を試験した。熱処理後も、すべての画分は依然としてSTAT3シグナル伝達を阻害することができる(t検定、n=9;p=0.0421、p<0.0001、p=0.0009)。(C)G.formicilis MH32-1の無細胞上清をサイズ分画し、37℃で30分間プロテイナーゼKで処理し、次いで、HEKBlue IL-23レポーター細胞株を試験した。プロテイナーゼK処理後も、すべての画分は依然としてSTAT3シグナル伝達を阻害することができる(t検定、n=9;p<0.0001、p<0.0001)。(D)TY中で増殖したMH32-1由来の無細胞上清は、強力なSTAT3抑制活性を示すが、PYG、WCB及びMCM中で増殖した場合、最小の活性を示す(t検定、n=9;p<0.0001、p=0.0027、p=0.0203、p=0.0114)。(E~F)STAT3シグナル伝達は、HEKBlue IL23レポーター細胞株を、G.formicilis MH32-2及びG.formicilis ATCC 27749の無細胞上清生で処理するか、又は<3KDaに濾過すると阻害される(t検定、n=9、p<0.0001、p=0.0001)。(G)STAT3シグナル伝達は、HEKBlue IL23レポーター細胞株を、無細胞上清生で処理するか、又はGemmiger sp.MD158で<3KDaに濾過すると阻害される(対応のないt検定を使用し、試料を比較した)。***、p<0.001;****、p<0.0001)。(H)PBMCは、G.formicilis MH32-1の無細胞上清で前処理され、次いで、TY培地対照と比較してPIMで刺激された場合、IL-6の分泌の減少を示す。正規分布データを、Sidakの多重比較検定を用いた通常の一元配置Anovaを使用して分析した(n=処理当たり7、ns=有意でない;*=p<0.05;***=p<0.001;****=p<0.0001)。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。(I)G.formicilis MH32-1は、TY培地対照と比較して、LPS刺激T84腸上皮細胞からのIL-6分泌を有意に抑制する。抑制活性は、G.formicilis培養上清の<3kDa画分においても保持される。すべてのデータは平均値と標準偏差で表示されている。T検定****p<0.0001。(J)STAT3シグナル伝達は、HEKBlue IL-6レポーター細胞株を、G.formicilis MH32-1の<3KDa濾過した無細胞上清で処理すると阻害される(t検定、n=9;***p<0.0009)。
【0213】
図19】G.formicilisがヒト腸上皮細胞の遊走を促進することを示すグラフィック表示を提供する。(A)Transwell遊走アッセイを用いて、G.formicilis MH32-1由来の滅菌培養上清抽出物がHCT116結腸がん細胞の遊走に及ぼす効果を研究した。血清欠乏状態(0.5% FBS)では、未処理のHCT116細胞及びTY培地抽出物で処理した細胞は、Transwellチャンバの基底外側への同等のバックグラウンドレベルの遊走を示した。G.formicilis MH32-1抽出物をチャンバの底部に添加することは、TY対照と比較して、HCT116細胞の基底外側への移動を有意に増加させた(TY、C n=6個の技術的重複物;MH32-1 n=4個の技術的重複物(各3個の生物学的重複物);Dunnettの多重比較検定****P<0.0001)。(B)Transwell(登録商標)遊走実験の10×倍率での代表的な明視野画像。画像サイズは、570μm×570μmである。(C)細胞遊走についての第2の読み出しとして、Incucyteスクラッチ創傷アッセイを実施した。HCT116細胞単層をスクラッチした後、相対創傷コンフルエンスを2時間ごとに測定した。TY、C n=27個の技術的反復;G.formicilis MH32-1 n=18個の技術的反復(各3個の生物学的複製物)。(D)スクラッチの18時間後、G.formicilis MH32-1由来の0.3×抽出物中でインキュベートされた血清欠乏HCT116細胞は、TY培地抽出物で処理された細胞と比較して、有意に高い創傷コンフルエンスを示した。TY、C n=27個の技術的反復;G.formicilis MH32-1 n=18個の技術的反復(各3個の生物学的複製物);対応のないt検定 **p=0.0028。
【0214】
図20】G.formicilisが腸障壁完全性を回復することを示すグラフィック表示を提供する。Maestro Proシステムを使用して経上皮電気抵抗(TEER)を通して評価される、IFN-γで刺激されたT84細胞に対するG.formicilis MH32-1及びビヒクル対象による治療の効果。T84細胞を96ウェルのCytoView-Zプレート中で単層として増殖させ、安定したTEER値が確立されると、IFNg(100ng/mL)で刺激した。72時間後、細胞を洗浄し、培地を新鮮な培地のみで置き換えるか、又は1×G.formicilis MH32-1抽出物若しくはビヒクル対照を補充した。処理後45時間で、TEER測定値を記録し、対照(未処理のT84細胞)と比較したTEER値のパーセンテージ差を、平均±標準偏差としてヒストグラムに視覚化した。統計的有意性は対応のないt検定によって決定した。**p<0.01;****p<0.0001。(B)Gemmiger sp.MD158を単離するために使用されたゲーティング戦略の概要。
【表1-1】
【表1-2】
【発明を実施するための形態】
【0215】
1.定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実施又は試験において、本明細書に記載されたものと類似又は同等の任意の方法及び材料を使用することができるが、好ましい方法及び材料が記載される。本発明の目的のために、以下の用語を以下に定義する。
【0216】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、冠詞の文法的対象物の1つ又は複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素」は、1つの要素又は複数の要素を意味する。
【0217】
本明細書中で使用される用語「約」は、この技術分野の当業者に容易に知られている各値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における値又はパラメータの「約」への言及は、その値又はパラメータそれ自体に向けられる実施形態を含む(及び説明する)。
【0218】
本明細書中で使用される「投与する」という用語は、所望の部位で薬剤の少なくとも部分的な送達をもたらす方法又は経路によって、本明細書中に開示されるような薬剤(例えば、細菌)を対象中に配置することを指す。本明細書に開示された化合物を含む組成物は、対象において有効な生物学的活性又は治療効果をもたらす任意の適切な経路によって投与することができる。いくつかの実施形態において、投与は、身体活動(例えば、注射、摂取の行為、適用の行為、及び/又は送達装置又は機械の操作)を含む。そのような活動は、(例えば、医療専門家及び/又は治療される対象によって)実施され得る。
【0219】
具体的には、本明細書中で使用される「投与する」及び「投与」は、ある人が、別の人に、生きた細菌、死滅した細菌、細菌に由来する使用済み媒体、細菌の細胞ペレット、細菌によって産生された精製代謝物、細菌によって産生された精製タンパク質、プレバイオティクス、小分子、又はそれらの組み合わせを、ある方法で及び/又は第二の人から受け取った指示とは独立して、若しくはそれとは異なって、ある目的のために消費するように指示する実施形態を包含する。実施形態の非限定的な例には、ある人が、別の人に、生きた細菌、死滅した細菌、細菌に由来する使用済み媒体、細菌の細胞ペレット、細菌によって産生された精製代謝物、細菌によって産生された精製タンパク質、プレバイオティクス、小分子、又はそれらの組み合わせを、特定の方法で及び/又は第二の人から受け取った指示とは独立して、若しくはそれとは異なって、ある目的のために消費するように指示する状況、あるいは医師が患者に一連の行動及び/又は治療を処方する場合、親が未成年のユーザー(子供など)にそのような製品を摂取するよう命令する場合、トレーナーがユーザー(スポーツ選手など)に特定の行動及び/又は治療方針の指示に従うようにアドバイスする場合、又は製造業者、流通業者、又はマーケティング担当者が、例えば、製品の販売又はマーケティングに関連して提供される梱包又は他の材料への広告又はラベル表示を通じて、エンドユーザーに使用条件を推奨する場合を含む。いくつかの実施形態において、開示された組成物は、経口、静脈内、筋肉内、くも膜下、皮下、舌下、口腔内、直腸、膣内、眼経路、光学経路、経鼻、吸入、噴霧、皮膚、経皮、又はそれらの組み合わせによって投与することができ、薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とともに送達するために製剤化することができる。注目すべきことに、開示された組成物は、生体異形成及びその続発症を改善するための治療のための複数の製剤及び送達モードを包含するが、プロバイオティクスのような生きた生物学的治療製品は、典型的には、静脈内、筋肉内、又は腹腔内に投与されないことに留意されたい。これらの送達様式は、細菌代謝の小分子産物のために保有する可能性がある。
【0220】
用語「同時の投与」又は「同時に投与する」又は「同時投与」などは、2つ以上の活性を含む単一組成物の投与、又は各活性の別々の組成物としての投与、及び/又は、有効な結果が、すべてのそのような活性剤が単一組成物として投与されたときに得られるものと同等であるのに十分な時間内に、同時(contemporaneously)又は同時(simultaneously)又は連続的に、別々の経路によって送達されることを指す。「同時に」とは、活性剤が実質的に同時に、望ましくは同じ製剤中に一緒に投与されることを意味する。「同時的に」とは、活性剤が、時間的に密接に投与されることを意味し、例えば、ある物質は、約1分以内から約1日以内に、次の前後に投与される。どんな同時期でも有用である。しかし、同時に投与されない場合には、薬剤は、約1分以内から約8時間以内に、適切には約1時間以内から約4時間以内に投与されることが多い。同時に投与される場合、薬剤は、対象の同じ部位で適切に投与される。用語「同一部位」は正確な位置を含むが、約0.5~約15センチメートル以内、好ましくは約0.5~約5センチメートル以内であり得る。本明細書中で使用される用語「別々に」は、薬剤が、例えば、約1日から数週間又は数ヵ月の間隔で投与されることを意味する。活性剤は、いずれかの順序で投与することができる。本明細書中で使用される用語「連続的に」は、例えば、分、時間、日又は週の間隔で、薬剤が連続して投与されることを意味する。適切であれば、活性剤は、規則的な繰り返しサイクルで投与することができる。
【0221】
用語「薬剤」は、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を誘導する化合物を含む。この用語はまた、本明細書に具体的に記載された化合物の薬学的に許容される薬理学的に活性な成分を包含し、これには、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物、アナログなどが含まれるが、これらに限定されない。上記の用語を使用する場合、これは、活性剤自体だけでなく、薬学的に許容される薬理学的に活性な塩、エステル、アミド、プロドラッグ、代謝物、アナログなどを含むことを理解されたい。「薬剤」という用語は、狭義に解釈されるべきではなく、小分子、ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質などのタンパク質性分子とそれらを含む組成物、並びにRNA、DNA及び模倣物とそれらの化学的アナログ、並びに細胞薬剤に及ぶ。用語「薬剤」は、本明細書で言及されるポリペプチド、並びにそのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを産生及び分泌することができる細胞を含む。したがって、用語「薬剤」は、ウイルス又は非ウイルスベクターのようなベクター、発現ベクター及び一連の細胞における発現及び分泌のためのプラスミドを含む核酸構築物に及ぶ。
【0222】
バイオマーカーの「量」又は「レベル」は、試料中の検出可能なレベルである。これらは、当業者に公知の方法によって測定することができ、本明細書にも開示する。評価されたバイオマーカーの発現レベル又は量を用いて、治療に対する反応を決定することができる。
【0223】
本明細書中で使用される「及び/又は」は、関連するリストされた項目の1つ以上の任意の可能な組み合わせ、及び代替(又は)で解釈される場合の組み合わせの欠如を指し、それらを包含する。
【0224】
用語「嫌気性」は、増殖に酸素を必要としないことを意味する。嫌気性菌株は、偏性嫌気性菌(すなわち、酸素の存在によって害を受ける菌株)、好気性嫌気性菌(すなわち、増殖に酸素を使用できないが、その存在に耐える菌株)、通性嫌気性菌(すなわち、酸素なしで増殖できるが、存在すれば酸素を使用することができる菌株)を含む。
【0225】
「嫌気的条件」とは、発酵媒体中の酸素濃度が、微生物が末端電子受容体として使用するには低すぎる条件と定義される。「嫌気的条件」は、さらに、3mmol/L/時未満、好ましくは2.5mmol/L/時未満、より好ましくは2mmol/L/時未満、最も好ましくは1.5mmol/L/時未満の速度で、培地に酸素を全く又は少量添加しない条件として定義することができる。「嫌気性条件」とは、特に完全に酸素を含まない(=0mmol/L/h酸素)又は少量の酸素を例えば<0.5から<1mmol/L/hの速度で培地に添加することを意味する。「嫌気的代謝」とは、NADHに含まれる電子の最終的な受容体ではない生化学的過程をいう。嫌気的代謝は、酸素以外の化合物が最終電子受容体となる嫌気的呼吸と、NADHからの電子を利用して発酵経路を介して還元産物を生成する基質レベルのリン酸化に分けられる。
【0226】
用語「炭素源」は、一般に、微生物の成長を維持するのに適した基質又は化合物を指す。炭素源は、ポリマー、炭水化物、アルコール、酸、アルデヒド、ケトン、アミノ酸、ペプチドなどを含むが、これらに限定されない、様々な形態であり得る。例えば、これらは、単糖類(グルコース、フルクトース、キシロースなど)、オリゴ糖類(すなわち、スクロース、ラクトース)、多糖類(すなわち、デンプン、セルロース、ヘミセルロース)、リグノセルロース材料、脂肪酸(すなわち、コハク酸塩、乳酸塩、酢酸塩)、グリセロールなど、又はそれらの混合物を含み得る。炭素源は、グルコース又はセルロースのような光合成の生成物であり得る。
【0227】
炭素源として使用される単糖類は、セルロース、デンプン及びペクチンの酸又は酵素加水分解物のような多糖類の加水分解の生成物であり得る。「エネルギー源」という用語は、化学有機栄養代謝において、炭素源は、異化の間の電子供与体として、及び細胞成長の間の炭素源として使用されるので、ここでは炭素源と交換可能に使用され得る。
【0228】
本明細書全体を通して、文脈上別の意味がない限り、「含む」、「含んでいる」、及び「含むこと」という用語は、記載されたステップ、要素、又はステップ若しくは要素のグループを包含するが、他のステップ若しくは要素、又はステップ若しくは要素のグループ、又は要素のグループの除外を意味するものと理解されるであろう。したがって、用語「含む」などの使用は、リストされた要素が必要又は必須であるが、他の要素は任意であり、存在しても存在していなくてもよいことを示す。「からなる」とは、語句「からなる」に続くものを含むことを意味し、これらに限定される。したがって、「からなる」という語句は、リストされた要素が必須又は必須であり、他の要素が存在しないことを示す。「から本質的になる」とは、語句の後に列挙されている要素を含み、列挙されている要素について開示に明記されている活動又は行動に干渉したり寄与したりしない他の要素に限定されることを意味する。したがって、「から本質的になる」という語句は、リストされた要素が必要又は必須であることを示し、他の要素は任意であり、リストされた要素の活動又は作用に影響を与えるか否かに応じて存在し得るか否かを示し得る。
【0229】
本明細書中で使用される「培養する」、「培養」などは、細胞の集団(又は単一の細胞)がインビトロで細胞の成長又は維持を支持することが示された条件下でインキュベートされるインビトロで使用される一組の手順を指す。当該分野は、広範なフォーマット、媒体、温度範囲、ガス濃度などを認識する。これらは培養系で定義する必要がある。パラメータは、選択されたフォーマット、及び本明細書に開示された方法を実施する個人の特定のニーズに基づいて変化するであろう。しかし、培養パラメータの決定は、本質的にルーチンであることが認識されている。
【0230】
用語「低下する」、「減少する」、「低下」、「減少」、「阻害」、「抑制」、「減衰」などは、すべて、本明細書において、統計的に有意な量だけ減少を意味するために使用される。いくつかの実施形態において、これらの用語は、典型的には、参照レベル(例えば、所与の治療又は薬剤の不存在)と比較して少なくとも10%の減少を意味し、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%の減少を含むことができる。少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又はそれ以上の低下を含むことができる。本明細書中で使用される場合、「減少」、「抑制」、及び「阻害」は、参照レベルと比較して完全な阻害又は低減を必要としない。「完全阻害」等は、基準レベルと比較して100%の阻害である。減少は、好ましくは、正常範囲内(例えば、所与の障害を有さない個体について)として容認されるレベルまで下げることができる。
【0231】
用語「増加した」、「増加」、「増強」、又は「活性化」は、すべて、統計的に有意な量だけ増加することを意味するために、本明細書で使用される。いくつかの実施形態において、用語「増加した」、「増加」、「増強」、又は「活性化」は、参照レベル(例えば、所与の治療又は薬剤の不存在)と比較して少なくとも10%の増加を意味し得、例えば、参照レベルと比較して、少なくとも約10%、例えば、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の増加、若しくは最大100%(を含む)の増加、又は参照レベルと比較して、10~100%の増加、又は参照レベルと比較して、少なくとも約2倍、若しくは少なくとも約3倍、若しくは少なくとも約3倍、若しくは少なくとも約4倍、若しくは少なくとも約5倍、若しくは少なくとも約10倍の増加、又は2倍~10倍以上のいずれかの増加を含み得る。マーカー又は症状に関連して、「増加」は、そのようなレベルにおける統計的に有意な増加である。
【0232】
本明細書中で使用される「単離された」なる用語は、(1)最初に製造されたときに関連した成分の少なくとも一部から分離された(ヒトの便のような自然界であるか、又は人工増殖培地からなるペトリプレートのような実験環境であるかを問わない)、及び/又は(2)ヒトの手で製造、調製、精製、及び/又は製造された細菌又は他の実体又は物質を包含する。単離された細菌、タンパク質、代謝物、又はそれらの組み合わせは、それらが最初に結合した他の成分の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又はそれ以上から分離することができる。いくつかの実施形態において、単離された細菌、タンパク質、代謝物、又はそれらの組み合わせは、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約99%を超える純度を有する。本明細書中で使用される場合、物質は、他の成分(他の細菌種など)を実質的に含まない場合、「純粋」である。用語「精製する」、「精製すること」、及び「精製された」とは、最初に生産又は生成されたとき(例えば、天然の場合若しくは実験環境の場合)、あるいは最初に生産された後のいずれかの時点で、細菌培養の当業者により認識されるように、又は関連する技術(例えば、化学)の少なくとも一部から分離された細菌又は他の物質を指す。細菌又は細菌集団は、それが生産時又は生産後に、例えば細菌又は細菌集団を含む材料又は環境から単離され、精製された細菌又は細菌集団は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又は約90%以上の他の物質を含有することができ、さらに「単離された」とみなされ得る。いくつかの実施形態において、精製された細菌及び細菌集団は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約99%を超える純度を有する。本明細書中に提供される細菌組成物の場合、組成物中に存在する1つ以上の細菌型は、細菌型を含む材料又は環境中で産生及び/又は存在する1つ以上の他の細菌から独立して精製することができる。いくつかの実施形態において、細菌又は細菌集団は、それが細菌の単一の株を含む場合、「単離される」。いくつかの実施形態において、そのような単離された細菌は、他の単離された細菌(例えば、単離された細菌の定義されたコムソーシアム)と混和又は投与することができる。細菌組成物及びその細菌成分は、一般に残留生息場所産物から精製される。
【0233】
本明細書中で使用される用語「ゲノム」は、微生物の遺伝子(コード核酸配列)及び非コード核酸配列を含むDNAを含み、したがって、例えば、微生物のコード及び非コードDNAへの核酸の導入を含む。
【0234】
用語「グラム変数」は、グラム株試験において陽性結果及び/又は陰性結果を与えること(すなわち、クリスタルバイオレット染色試薬の色を保持すること)を意味する。細菌によるクリスタルバイオレット染色の保持は、細菌細胞壁のペプチドグリカン層の厚さと関連している。グラム陽性菌はペプチドグリカン層が厚い。グラム染色は、微生物学の分野における細菌株の分類を助けるために一般的に用いられている。
【0235】
本明細書中で使用される場合、用語「腸」は、消化管としても知られるヒト消化管を指すと理解される。腸には、口腔、咽頭、食道、胃、小腸(十二指腸、空腸、回腸)、大腸(盲腸及び結腸)及び直腸が含まれる。消化管全体は様々な種類の微生物によってコロニーを形成することができるが、腸内の微生物叢の大部分は、種数と生物体量の両面から、小腸(小腸と大腸)に存在する。
【0236】
用語「マーカー」、「バイオマーカー」などは、生物学的システムの生理学的状態の指標として測定することができる任意の化合物を指す。マーカーは、アミノ酸配列、核酸配列及びその断片を含むバイオマーカーであり得る。例示的なバイオマーカーとしては、サイトカイン、ケモカイン、増殖及び血管新生因子、転移関連分子、がん抗原、アポトーシス関連タンパク質、酵素、プロテアーゼ、接着分子、細胞シグナル伝達分子及びホルモンが挙げられるが、これらに限定されない。マーカーはまた、いくつかの実施形態において、生物学的システムにおいて有意に代謝されない糖であってもよい。糖は、例えば、マンニトール、ラクツロース、スクロース、スクラロース、及び上記のいずれかの組み合わせであり得る。
【0237】
「測定する」又は「測定」とは、試料中の所与の物質の存在、非存在、量又は量(有効量であり得る)を評価すること(そのような物質の定性的又は定量的濃度レベルの導出を含む)、又は別の様式で対象の臨床パラメータの値又は分類を評価することを意味する。あるいは、用語「アッセイする」、「検出する」又は「検出」は、本明細書に記載されるすべての測定又は測定を指すために使用されてもよい。
【0238】
本明細書中で使用される用語「粘膜治癒」は、障害された粘膜層を示す1つ以上の特徴の改善を意味する。このような特徴は、通常、結腸内視鏡検査によって決定され、限定されるものではないが、紅斑、血管パターンの喪失、脆弱性、出血、びらん及び潰瘍が挙げられる。状況によっては、粘膜治癒とは、粘膜層の障害を特徴付ける有害作用の完全な改善を指す。あるいは、粘膜治癒は、障害された粘膜層を特徴付ける1つ以上の負の効果の減少又は改善を指すことができる。
【0239】
本明細書中で使用される用語「医薬組成物」とは、薬学的に許容される担体(例えば、製薬業界で一般的に使用される担体)と組み合わせた活性剤を指す。「薬学的に許容される」という語句は、本明細書では、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症なしに、合理的な利益/リスク比に見合ったヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適した、化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指す。いずれかの態様のいくつかの実施形態において、薬学的に許容される担体は、水以外の担体であり得る。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される担体の任意の態様は、クリーム、エマルジョン、ゲル、リポソーム、ナノ粒子、及び/又は軟膏であり得る。いずれかの態様のいくつかの実施形態において、薬学的に許容される担体は、人工又は操作された担体(例えば、活性成分が天然又は天然に存在しないことが見出されるであろう担体)であり得る。
【0240】
用語「系統樹」とは、定義された系統発生的再構成アルゴリズムのセット(例えば、節約、最尤、又はBayesian)を用いて生成される、ある遺伝子配列の別の配列に対する進化的関係のグラフィック表示を指す。系統樹中のノードは異なる祖先配列を表し、どのノードの信頼性も、枝の不確実性を測定するブートストラップ又はBayesianの事後確率によって与えられる。
【0241】
いくつかの実施形態において、用語「株」とは、系統樹の末端葉を指し、特定の遺伝子配列によって定義される。特定の遺伝子配列は、GTDB-tk(Chaumeil et al.,2020)又は当技術分野で公知の他のツールを使用してゲノムアセンブリから抽出された120個のユビキタスシングルコピータンパク質(Parks et al.,2018)の連結アラインメントであり得る。
【0242】
用語「クレード」とは、系統樹における安定ノードの下流の系統樹のメンバーのセット(ブートストラップ値>90%)を指す。クレードは、共通の祖先の系統発生上のすべての子孫を表す関連した生物のグループである。クレードは、系統樹における一連の末端葉を含み、これは別個の単系統進化単位である。
【0243】
本明細書中で使用される「プレバイオティクス」とは、宿主に利益を与える(又は与えない)ことができる、消化管微生物叢中の組成及び/又は活性の両方において、特異的変化を可能にする成分を意味すると理解される。好ましいプレバイオティクスは、プロバイオティック組成物の成長又はその有益な機能を促進するが、病原体の成長又は病原性に関連する遺伝子(例えば、毒素)を促進しないものであろう。
【0244】
本明細書中で使用される「プロバイオティック」とは、現在、WHOによって定義されるように、「適切な量で投与された場合、宿主に健康上の利益を与える生きた微生物」を意味すると理解される。
【0245】
用語「種」は、97%を超える16SリボソームRNA(rRNA)配列相同性及び70%を超えるゲノムハイブリダイゼーションを有し、明確な単位として認識されるように他のすべての生物と十分に異なる、密接に関連する生物の集合として定義される。種及び他の系統発生的特定は、微生物学の当業者に公知の分類に従う。
【0246】
本明細書中で使用される場合、「対象」は、ヒト又は動物を意味する。通常、動物は霊長類、げっ歯類、家畜又は狩猟動物のような脊椎動物である。霊長類には、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、及びマカク(例えば、アカゲザル)が含まれる。げっ歯類には、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ、ハムスターが含まれる。家畜及び狩猟動物には、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ種(例えば、家猫)、イヌ種(例えば、イヌ、キツネ、オオカミ)、トリ種(例えば、ニワトリ、エム、ダチョウ)、及び魚(例えば、マス、ナマズ、及びサケ)が含まれる。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物(例えば、霊長類(例えば、ヒト))である。用語「個体」、「患者」及び「対象」は、本明細書において互換的に使用される。
【0247】
好ましくは、対象は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ又はウシであり得るが、これらに限定されるものではない。ヒト以外の哺乳動物は、炎症性及び自己免疫障害の動物モデル(例えば、腸障壁機能のモデル)を表す対象として有利に使用することができる。対象は、男性であっても女性であってもよい。
【0248】
本明細書中で使用される用語「治療する」、「治療」、「治療すること」などは、対象が、疾患又は障害(例えば、炎症性又は自己免疫障害)に関連する状態の進行又は重症度を逆行させ、軽減し、軽減し、抑制し、減速し、又は停止することである治療処置を指す。用語「治療」は、炎症性又は自己免疫障害に関連する状態、疾患又は障害の少なくとも1つの有害作用又は症状を低減又は軽減することを含む。1つ以上の症状又は臨床マーカーが低下すれば、治療は一般に「有効」である。あるいは、疾患の進行が減少又は停止した場合、治療は「効果的」である。すなわち、「治療」には、症状又はマーカーの改善だけでなく、治療を行わない場合に予想されるものと比較して、症状の進行又は悪化を停止又は少なくとも遅らせることも含まれる。有益な又は望ましい臨床結果としては、1つ以上の症状の軽減、疾患の進展の縮小、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患の進行の遅延又は遅延、疾患状態の改善又は緩和、寛解(部分的又は全体的であるか否かを問わない)、及び/又は死亡率の低下が挙げられるが、これらに限定されない。疾患の「治療」という用語には、疾患の症状又は副作用の緩和(緩和治療を含む)を提供することも含まれる。治療が効果的であると考えられる障害(すなわち、疾患の完全な回復又は欠如)を治癒させる必要はない。
【0249】
いくつかの実施形態において、配列決定は、「16SリボソームRNA配列決定」、16S rDNA配列決定」又は「16S rRNA配列決定」とも称され得る16S rRNA遺伝子配列決定を含む。16S rRNA遺伝子の配列決定は、異なる細菌種間で高度に保存されているが、真核生物には存在しないので、遺伝学的研究に用いることができる。高度に保存された領域に加えて、16S rRNA遺伝子は種間で異なる9つの超可変領域(V1~V9)も含む。16S rRNA遺伝子配列決定は、典型的には、16S rRNA遺伝子の保存された領域に結合する複数のユニバーサルプライマーを使用し、細菌16S rRNA遺伝子領域(超可変領域を含む)をPCT増幅し、増幅した16S rRNA遺伝子を、本明細書に記載されるような次世代配列決定技術(例えば、米国特許第5,654,418号、第6,344,316号、及び第8,889,358号、並びに米国特許公開第2013/157,265及び同第2018/195,111号参照。これらは各々、参照によりそれら全体が組み込まれる)で配列決定することを含む。
【0250】
本明細書に記載される各実施形態は、特に断らない限り、各実施形態及び各実施形態に準用される。
【0251】
2.細菌株-Alistipes種
本発明の組成物は、Alistipes属の細菌株を含む。これらの例は、この属の細菌が腸障壁機能の障害に関連する疾患の治療又は予防に有用であることを示す。好ましい細菌株は、A.shahii種である。
【0252】
Alistipesは、Clostridiaクラスの細菌の属である。科学的分類は以下の通りである:細菌(界)、Bacteroidetes(門)、Bacteroidia(類)、Bacteroidales(目)、Rikenellaceae(科)、Alistipes(属)。Alistipes属内の細菌は、短桿状のグラム陰性の非運動性細菌であり、偏性嫌気性菌である。これらの基準は、細菌株の系統分類に情報を提供することができるため、重要である。
【0253】
A.shahiiは、典型的には、約0.5mm~1.0mmの円形コロニーで増殖し、ウサギ血液寒天上で増殖すると、色素産生及び非蛍光性である。
【0254】
A.shahii種は、Song et el.,2006に初めて記載された。A.shahii型株WAL 8301(=ATCC BAA-1179)を、ヒト虫垂組織から単離した(Song et al.,2006)。A.shahii型株ATCC 27749の16S rRNA遺伝子配列のGenBank受託番号は、NR_104846である。
【0255】
Alistipes属及びA.shahii種の幅は、Parks et al.,2018に記載されているような分類学的分類システムであるゲノム分類データベース(Genome Taxonomy Database)参照ツリーによって定義される通りであり得る。
【0256】
受託番号V21/014432(すなわち、A.shahii MH21-1)の下に寄託されたA.shahii細菌は、実施例で試験され、本発明の好ましい株のうちの1つである。A.shahii株MH21-1は、Microba IP Pty Ltd(388 Queen Street,Brisbane,Queensland 4000,Australia)により、2021年7月22日に「Alistipes shahii MH21-1」として、国際寄託機関国立測定研究所(NMI、1/153 Bertie Street,Port Melbourne,Victoria,3207,Australia)に寄託され、受託番号V21/014432が割り当てられた。
【0257】
試験したA.shahii MH21-1株についての例示的な16S rRNA配列は、配列番号1に記載されている。A.shahii種の細菌株は、そのゲノム内に単一の16S rRNA配列を含んでもよく、あるいは、そのゲノム内に2つ以上の16S rRNA配列を含んでもよい(例えば、2つのコピー、3つのコピー、4つのコピー、5つのコピー、6つのコピー、7つのコピー、8つのコピー、又は8つより多くのコピー)。いくつかの実施形態において、細菌株は、当技術分野で公知の任意の方法によって、その株が配列番号1に対応する16S rRNA配列を含むかどうかを判定することによって、A.shahii MH21-1株であると特定されてもよい。A.shahii MH211-1株の染色体配列は、配列番号4に提供される。この配列は、Illumina NovSeq6000プラットフォームを使用して生成した。
【0258】
MH21-1株と密接に関連する細菌株も、腸障壁機能の回復に有益な効果を介して、炎症性及び自己免疫障害の治療又は予防に有効であることが実施例において示されている。
【0259】
例えば、受託番号V21/014433(すなわち、A.shahii MH23-2)の下に寄託されたA.shahii細菌は、実施例で試験され、本発明の好ましい株のうちのもう1つである。試験したA.shahii MH212株の例示的な16S rRNA配列は、配列番号2に記載されている。いくつかの実施形態において、細菌株は、当技術分野で公知の任意の方法によって、その株が配列番号2に対応する16S rRNA配列を含むかどうかを判定することによって、A.shahii MH21-2株であると特定されてもよい。A.shahii株MH21-2は、Microba IP Pty Ltd(388 Queen Street,Brisbane,QLD 4000,Australia)により、2021年7月22日に「Alistipes shahii MH21-2」として、国際寄託機関国立測定研究所(NMI、1/153 Bertie Street,Port Melbourne,Victoria,3207,Australia)に寄託され、受託番号V21/014433が割り当てられた。A.shahii株MH21-2のゲノムは、配列番号5に示される配列を有する染色体を含む。
【0260】
例えば、受託番号V21/014434(すなわち、A.shahii MH23-3)の下に寄託されたA.shahii細菌は、実施例で試験され、本発明の好ましい株のうちのもう1つである。試験したA.shahii MH21-3株の例示的な16S rRNA配列は、配列番号3に記載されている。いくつかの実施形態において、細菌株は、当技術分野で公知の任意の方法によって、その株が配列番号3に対応する16S rRNA配列を含むかどうかを判定することによって、A.shahii MH21-3株であると特定されてもよい。A.shahii株MH21-3は、Microba IP Pty Ltd(388 Queen Street,Brisbane,QLD 4000,Australia)により、2021年7月22日に「Alistipes shahii MH21-3」として、国際寄託機関国立測定研究所(NMI、1/153 Bertie Street,Port Melbourne,Victoria,3207,Australia)に寄託され、受託番号V21/014434が割り当てられた。A.shahii株MH21-3のゲノムは、配列番号6に示される配列を有する染色体を含む。
【0261】
実施例で試験したA.shahii MH21-6株の例示的な16S rRNA配列は、配列番号44に記載されている。いくつかの実施形態において、細菌株は、当技術分野で公知の任意の方法によって、その株が配列番号44に対応する16S rRNA配列を含むかどうかを判定することによって、A.shahii MH21-6株であると特定されてもよい。A.shahii株MH21-6のゲノムは、配列番号38~43のうちの1つ以上に示される配列を有する染色体を含む。
【0262】
ある実施形態において、本発明の細菌株は、A.shahiiの細菌株の16S rRNA配列と少なくとも97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。好ましくは、本発明の細菌株は、配列番号1~3及び44のうちのいずれか1つと少なくとも97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。いくつかの好ましいにおいて、本発明の細菌株は、配列番号1~3及び44のうちの1つ以上で表される16S rRNA配列を有する。
【0263】
細菌株のゲノムは、配列番号1~3及び44のうちのいずれか1つに示される16S rRNA配列を含み得る。
【0264】
ある実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号4と配列同一性を有する染色体を有する。好ましい実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号4の少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)にわたって配列番号4に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも92%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、又は100%の配列同一性)を有する染色体を有する。例えば、本発明の細菌株は、配列番号4の70%にわたって配列番号4に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号4の80%にわたって配列番号4に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号4の90%にわたって配列番号4に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号4の100%にわたって配列番号4に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号4の70%にわたって配列番号4に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号4の80%にわたって配列番号4に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号4の90%にわたって配列番号4に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号4の100%にわたって配列番号4に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号4の70%にわたって配列番号4に対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号4の80%にわたって配列番号4に対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号4の90%にわたって配列番号4に対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号4の100%にわたって配列番号4に対して少なくとも98%の配列同一性を有する染色体を有し得る。本発明の特に好ましい株は、受託番号V21/014432の下に寄託されたA.shahii株である。これは、実施例に示したDSSマウスモデルで試験した例示的なMH21-1株であり、疾患を治療するために有効であることが示されている。したがって、本発明は、受託番号V21/014432の下に寄託されたA.shahii株又はその誘導体の単離された細胞などの細胞を提供する。本発明はまた、受託番号V21/014432の下に寄託されたA.shahii株又はその誘導体の細胞を含む組成物を提供する。本発明はまた、受託番号V21/014432の下に寄託されたA.shahii MH21-1株の生物学的に純粋な培養物を提供する。
【0265】
ある実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号5と配列同一性を有する染色体を有する。好ましい実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号5の少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)にわたって配列番号5に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも92%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、又は100%の配列同一性)を有する染色体を有する。例えば、本発明の細菌株は、配列番号5の70%にわたって配列番号5に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号5の80%にわたって配列番号5に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号5の90%にわたって配列番号5に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号5の100%にわたって配列番号5に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号5の70%にわたって配列番号5に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号5の80%にわたって配列番号5に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号5の90%にわたって配列番号5に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号5の100%にわたって配列番号5に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号5の70%にわたって配列番号5に対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号5の80%にわたって配列番号5に対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号5の90%にわたって配列番号5に対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号5の100%にわたって配列番号5に対して少なくとも98%の配列同一性を有する染色体を有し得る。本発明の特に好ましい株は、受託番号V21/014433の下に寄託されたA.shahii株である。これは、実施例に示したDSSマウスモデルで試験した例示的なMH21-2株であり、疾患を治療するために有効であることが示されている。したがって、本発明は、受託番号V21/014433の下に寄託されたA.shahii株又はその誘導体の単離された細胞などの細胞を提供する。本発明はまた、受託番号V21/014433の下に寄託されたA.shahii株又はその誘導体の細胞を含む組成物を提供する。本発明はまた、受託番号V21/01443の下に寄託されたA.shahii MH21-2株の生物学的に純粋な培養物を提供する。
【0266】
ある実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号6と配列同一性を有する染色体を有する。好ましい実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号6の少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)にわたって配列番号6に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも92%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、又は100%の配列同一性)を有する染色体を有する。例えば、本発明の細菌株は、配列番号6の70%にわたって配列番号6に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号6の80%にわたって配列番号6に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号6の90%にわたって配列番号6に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号6の100%にわたって配列番号6に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号6の70%にわたって配列番号6に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号6の80%にわたって配列番号6に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号6の90%にわたって配列番号6に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号6の100%にわたって配列番号6に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号6の70%にわたって配列番号6に対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号6の80%にわたって配列番号6に対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号6の90%にわたって配列番号6に対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号6の100%にわたって配列番号6に対して少なくとも98%の配列同一性を有する染色体を有し得る。本発明の特に好ましい株は、受託番号V21/014434の下に寄託されたA.shahii株である。これは、実施例に示したDSSマウスモデルで試験した例示的なMH21-3株であり、疾患を治療するために有効であることが示されている。したがって、本発明は、受託番号V21/014434の下に寄託されたA.shahii株又はその誘導体の単離された細胞などの細胞を提供する。本発明はまた、受託番号V21/014434の下に寄託されたA.shahii株又はその誘導体の細胞を含む組成物を提供する。本発明はまた、受託番号V21/01444の下に寄託されたA.shahii MH21-3株の生物学的に純粋な培養物を提供する。
【0267】
ある実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号38~43のうちの1つ以上と配列同一性を有する染色体を有する。好ましい実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号38~43のうちの1つ以上の少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)にわたって配列番号38~43のうちの1つ以上に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも92%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、又は100%の配列同一性)を有する染色体を有する。例えば、本発明の細菌株は、配列番号38~43のうちの1つ以上の70%にわたって配列番号38~43のうちの1つ以上に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号38~43のうちの1つ以上の80%にわたって配列番号38~43のうちの1つ以上に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号38~43のうちの1つ以上の90%にわたって配列番号38~43のうちの1つ以上に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号38~43のうちの1つ以上の100%にわたって配列番号38~43のうちの1つ以上に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号38~43のうちの1つ以上の70%にわたって配列番号38~43のうちの1つ以上に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号38~43のうちの1つ以上の80%にわたって配列番号38~43のうちの1つ以上に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号38~43のうちの1つ以上の90%にわたって配列番号38~43のうちの1つ以上に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号38~43のうちの1つ以上の100%にわたって配列番号38~43のうちの1つ以上に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号38~43のうちの1つ以上の70%にわたって配列番号38~43のうちの1つ以上に対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号38~43のうちの1つ以上の80%にわたって配列番号38~43のうちの1つ以上に対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号38~43のうちの1つ以上の90%にわたって配列番号38~43のうちの1つ以上に対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号38~43のうちの1つ以上の100%にわたって配列番号38~43のうちの1つ以上に対して少なくとも98%の配列同一性を有する染色体を有し得る。このタイプの好ましい実施形態において、細菌株は、配列番号38~43の各々にわたって記載された配列同一性を有する。
【0268】
受託番号V21/014432、V21/014433、又はV21/014434のうちのいずれか1つの下に寄託された株の誘導体は、娘株(子孫)又は元の株から培養された(サブクローニングされた)株であり得る。本発明の株の誘導体は、生物学的活性を消すことなく、例えば、遺伝子レベルで修飾され得る。特に、本発明の誘導体株は、治療的に活性である。誘導体株は、それが由来する元のV21/014432、V21/014433、又はV21/014434株と同等の活性を有する。具体的には、誘導体株は、実施例に示されるように、少なくとも1つの疾患モデル(例えば、大腸炎)において同等の効果を引き出し、これは、実施例に記載の培養及び投与プロトコールを使用することによって特定され得る。V21/014432、V21/014433、又はV21/014434株のうちのいずれか1つの誘導体は、概して、それぞれV21/014432、V21/014433、又はV21/014434株の生物型である。
【0269】
受託番号V21/014432の下に寄託されたA.shahii株の細胞への言及には、受託番号V21/014432、V21/014433、又はV21/014434のうちのいずれか1つの下に寄託された株と同じ安全性及び治療有効性特性を有する任意の細胞が含まれ、そのような細胞は、本発明によって包含される。
【0270】
2.1 細菌の生物型
受託番号V21/014432、V21/014433、又はV21/014434のうちのいずれか1つの下に寄託された細菌の生物型である細菌株もまた、炎症性及び自己免疫障害を治療又は予防するために有効であることが期待される。生物型は、生理学的及び生化学的特性が同一又は非常に類似している、密接に関連した株である。
【0271】
受託番号V21/014432、V21/014433、又はV21/014434のうちのいずれか1つの下に寄託された細菌の生物型であり、本発明での使用に適した株は、受託番号V21/014432、V21/014433、又はV21/014434のうちのいずれか1つの下に寄託された細菌の他のヌクレオチド配列を配列決定することによって特定することができる。例えば、実質的に全ゲノムを配列決定することができ、本発明の生物型株は、その全ゲノムの少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、90%、95%又は99%、又はその全ゲノムにわたって)にわたって、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は99.9%の配列同一性を有することができる。生物型株を特定するのに用いるのに適した他の配列としては、hsp60又はBOX、ERIC、(GTG)5、又はREPなどの反復配列が挙げられる(Masco et al.,2003;Kim et al.,2019)。生物型株は、受託番号V21/014432、V21/014433、又はV21/014434のうちのいずれか1つの下に寄託された細菌の対応する配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は99.9%の配列同一性を有する配列を有することができる。
【0272】
あるいは、受託番号V21/014432、V21/014433、又はV21/014434のうちのいずれか1つの下に寄託された細菌の生物型である株、並びに例えば、蛍光増幅断片長多型(FAFLP)及び反復DNAエレメント(rep)-PCRフィンガープリンティング、又はタンパク質プロファイリング、又は部分16S若しくは23S rRNA配列決定を使用することによる制限断片分析及び/又はPCR分析。いくつかの好ましい実施形態において、そのような技術を使用して、他の適切なA.shahii株を特定することができる。
【0273】
ある実施形態において、受託番号V21/014432、V21/014433、又はV21/014434のうちのいずれか1つの下に寄託された細菌の生物型であり、本発明での使用に適している株は、例えば、Sau3AI制限酵素(例示的な方法及びガイダンスについては、例えば、Srutkova et al.,2011を参照)を使用する場合、増幅リボソームDNA制限分析(ARDRA)によって分析したときに、受託番号V21/014432、V21/014433、又はV21/014434のうちのいずれか1つの下に寄託された細菌と同じパターンを提供する株である。あるいは、生物型株は、受託番号V21/014432、V21/014433、又はV21/014434のうちのいずれか1つの下に寄託された細菌と同じ炭水化物発酵パターンを有する株として特定される。
【0274】
いくつかの実施形態において、本発明において有用な細菌株は、細菌株による代謝物の産生及び消費を日常的にプロファイリングすることによって特定することができる。上記及び本明細書の他の箇所に記載の細菌株は、酢酸塩、酪酸塩、エタノール及びフマル酸塩の産生に影響することが予測される。したがって、いくつかの実施形態において、本発明の細菌株は、代謝物酢酸塩、エタノール、酪酸塩、及びフマル酸塩のうちの1種以上のインビボでの産生を誘導する。さらに、いくつかの実施形態において、本発明の細菌株は酪酸塩を産生しない。
【0275】
受託番号V21/014432、V21/014433、又はV21/014434の下に寄託された細菌の生物型などの、本発明の組成及び方法において有用な他のAlistipes株は、実施例に記載されたアッセイを含め、任意の適切な方法又は戦略を用いて特定することができる。例えば、本発明で使用する株は、嫌気性TY又はPYG培地中で培養すること、及び/又はDSS誘導腸障壁機能モデルに細菌を投与し、次いで実施例に記載されているようにサイトカイン/ケモカインレベルを評価することによって特定することができる。特に、受託番号V21/014432、V21/014433、又はV21/014434の下に寄託された細菌に対して、同様の増殖パターン、代謝型及び/又は表面抗原を有する細菌株が、本発明において有用であり得る。有用な株は、V21/014432、V21/014433、又はV21/014434株と同等の免疫調節活性を有する。特に、生物型株は宿主の腸機能に対して同等の効果を引き起こす。さらに、生物型は、疾患モデル(例えば、大腸炎、喘息、関節炎、多発性硬化症及びブドウ膜炎疾患モデル)において同様の効果を有し、サイトカイン/ケモカインレベルに対する同等の効果を、実施例に示された効果と同等の効果を有し、実施例に記載された培養及び投与プロトコールを使用することによって特定され得ることが期待される。
【0276】
いくつかの実施形態において、細菌株は、A.finegoldii種であり得る。A.finegoldii種は、Rautio et al.,2003に初めて記載された。A.shahii型株CCUG 406020(T)(=AHN2437)を、小児由来のヒト虫垂組織から単離した(Rautio et al.,2003)。A.finegoldii型株AHN 2437の16S rRNA遺伝子配列のGenBank受託番号は、NR_043064である。
【0277】
試験したA.finegoldii株の例示的な16S rRNA配列は、配列番号7に記載されている。A.finegoldii種の細菌株は、そのゲノム内に単一の16S rRNA配列を含んでもよく、あるいは、そのゲノム内に2つ以上の16S rRNA配列を含んでもよい(例えば、2つのコピー、3つのコピー、4つのコピー、5つのコピー、6つのコピー、7つのコピー、8つのコピー、又は8つより多くのコピー)。いくつかの実施形態において、細菌株は、当技術分野で公知の任意の方法によって、その株が配列番号7に対応する16S rRNA配列を含むかどうかを判定することによって、A.finegoldii株であると特定されてもよい。A.finegoldii株の染色体配列は、配列番号9に提供される。この配列は、A.finegoldii株DSM 17242に関連するNCBI Genbank受託番号CP003274から入手した。
【0278】
A.finegoldii種の細菌株及びA.finegoldii株に密接に関連する細菌株は、腸障壁機能の回復に対するそれらの有益な効果を通じて、炎症性及び自己免疫障害(例えば、IBD)を治療又は予防するために有効であると考えられる。
【0279】
A.onderdonkii種は、Song et el.,2006に初めて記載された。A.onderdonkii型株WAL 8169(=ATCC BAA-1178)を、ヒト虫垂組織から単離した(Song et al.,2006)。A.onderdonkii型株WAL 8169の16S rRNA遺伝子配列のGenBank受託番号は、NR_043318.1である。
【0280】
A.shahii onderdonkii種の幅は、Parks et al.,2018に記載されているような分類学的分類システムであるゲノム分類データベース参照ツリーによって定義される通りであり得る。
【0281】
配列番号8に記載されているA.onderdonkii株の例示的な16S rRNA配列。A.shahii種の細菌株は、そのゲノム内に単一の16S rRNA配列を含んでもよく、あるいは、そのゲノム内に2つ以上の16S rRNA配列を含んでもよい(例えば、2つのコピー、3つのコピー、4つのコピー、5つのコピー、6つのコピー、7つのコピー、8つのコピー、又は8つより多くのコピー)。いくつかの実施形態において、細菌株は、当技術分野で公知の任意の方法によって、その株が配列番号8に高度に対応する16S rRNA配列を含むかどうかを判定することによって、A.onderdonkii株であると特定されてもよい。A.onderdonkii株の染色体配列は、配列番号10に提供される。この配列は、A.onderdonkii株WAL 8169に関連するNCBI Genbank受託番号NR_043318.1から入手した。
【0282】
A.onderdonkii種の細菌株及びA.onderdonkii株に密接に関連する細菌株は、腸障壁機能の回復に対するそれらの有益な効果を通じて、炎症性及び自己免疫障害(例えば、IBD)を治療又は予防するために有効であると考えられる。
【0283】
2.2 細菌菌株の生存率。
好ましい実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は生存可能である。好ましい実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は生存可能であり、腸に部分的又は全体的にコロニーを形成することができる。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は生きている。一例として、本発明の組成物中の細菌株は加熱殺菌されていない。本発明の細菌は、例えば、生存不可能な細菌が代謝物を生成することができず、免疫系と異なる様式で相互作用することができないために、生存不可能な細菌によって示されないであろう免疫調節作用を有することができる。生きている細菌の細胞表面もまた、死滅した細菌、特に熱殺菌した細菌とは大きく異なっているようである。
【0284】
いくつかの代替実施形態において、その細菌は生存できない。例えば、いくつかの実施形態において、細菌は熱殺菌される。
【0285】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明で使用するための細菌株は、天然に存在する。例えば、細菌株は哺乳類の消化管から単離されている。
【0286】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明で使用するための細菌株は、遺伝子操作されていない。例えば、細菌株は組換えDNAで形質転換されていない。
【0287】
3.組成物-Alistipes種
本明細書に提供される組成物は、上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載された細菌株又は株を含み、それらからなり、又は本質的に治療有効量からなる組成物である。いくつかの実施形態において、組成物中の細菌は、菌株、種、操作的分類単位(OTU)、全ゲノム配列、16S rRNA配列、又は異なるタイプの細菌を定義するための当技術分野で公知の他の方法によって特定することができる。
【0288】
3.1 最新の共通祖先(MRCA)
いくつかの実施形態において、組成物は、A.timonensis及びA.sp000434235のMRCAの系統発生的子孫である有効量の細菌株を含む(図3bを参照)。好ましくは、系統発生的分類は、GTDB(Parks et al.,2018)によって定義される通りである。いくつかの実施形態において、系統発生的分類は、GTDBのリリース89(r89)で定義される通りである。
【0289】
いくつかの実施形態において、細菌株がA.timonensis及びA.sp000434235のMRCAの子孫であるかどうかの判定は、当技術分野で公知の系統発生的グループ化手順を使用して実施することができる。いくつかの実施形態において、A.timonensis及びA.sp000434235を有する根付いた系統樹、並びに目的の第3のタクソン(例えば、分類されるタクソン)を使用してもよく、目的のタクソンが本発明の組成物に有用であるかどうかを判定するために、以下の分析パッケージが適用される:系統発生学及び進化の分析(「ape」;https://cran.r-project.org/web/packages/ape/index)及び比較生物学のための系統発生学的ツール(「phytools」;http://cran.r-project.org/web/packages/phytools/index.html)。類人猿も系統学もR言語で書かれたパッケージであり、分子進化と系統発生の研究に使われている。類人猿及び系統ツールパッケージは、系統発生的及び進化的分析のための方法を提供し、それらの使用は当業者に知られている。いくつかの実施形態では、以下のスクリプトを使用することができる。
library(“ape”)
library(“phytools”)
input.tree=read.tree(file=”tree_file”)
alistip c(“s__Alistipes sp900083545”,“s__Alistipes sp000434235”)
alistip.node=getMRCA(input.tree,alistip)
alistip.tree=extract.clade(input.tree,alisip.node)
print(alistip.tree$tip.label)
【0290】
いくつかの実施形態において、スクリプトが実行された後、対象のタクソンが印刷リスト内にある場合、それは、2つの種のMRCAの子孫である。
【0291】
他の実施形態において、異なる分析パッケージを使用し、異なるプログラミング言語に基づく方法を含め、当技術分野で公知の異なる系統発生的グループ化方法を用いて、細菌株がA.timonensis及びA.sp000434235のMRCAの子孫であるかどうかを判定することができる(図3Bを参照)。
【0292】
いくつかの他の実施形態において、細菌株は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに、A.timonensis及びA.sp000434235のMRCAの系統発生的子孫である。好適には、MRCAは、GTDBからのbac120系統樹のノード35260で定義される。いくつかの実施形態において、系統樹は、GTDBのリリース89によって作成されるが、任意の適切なその後のリリースは、適用可能な結果を等しく与えると考えられる。
【0293】
いくつかの他の実施形態において、細菌株は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに、A.timonensis及びA.finegoldiiのMRCAの系統発生的子孫である。好適には、MRCAは、GTDBからのbac120系統樹のノード35261で定義される。いくつかの実施形態において、系統樹は、GTDBのリリース89によって作成されるが、任意の好適なその後のリリースは、適用可能な結果を等しく与えると考えられる。
【0294】
いくつかの他の実施形態において、細菌株は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに、A.timonensis及びA.shahiiのMRCAの系統発生的子孫である。好適には、MRCAは、GTDBからのbac120系統樹のノード35261で定義される。いくつかの実施形態において、系統樹は、GTDBのリリース89によって作成されるが、任意の好適なその後のリリースは、適用可能な結果を等しく与えると考えられる。
【0295】
いくつかの好ましい実施形態において、細菌株は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに、A.shahii及びA.finegoldiiのMRCAの系統発生的子孫である。好適には、MRCAは、GTDBからのbac120系統樹のノードで定義される。いくつかの実施形態において、系統樹は、GTDBのリリース89によって作成されるが、任意の好適なその後のリリースは、適用可能な結果を等しく与えると考えられる。
【0296】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、A.senegalensis種のいずれの細菌も実質的に含まない。いくつかの実施形態において、細菌株は、A.senegalensis種ではない。
【0297】
3.2 16S rRNA配列の同一性。
いくつかの実施形態において、16S rRNA配列は、分類すべき細菌種について得られ、又は決定される。このクエリー16S rRNA配列は、Alistipes属のメンバーとして既に分類されている細菌種由来の16S rRNA配列と比較される。いくつかの実施形態において、クエリー16S rRNA配列は、配列番号1に示される16S rRNA配列と比較される。いくつかの実施形態において、クエリー16S rRNA配列は、Alistipes属のメンバーとして既に分類されている細菌種についてのすべての既知の16S rRNA配列と比較される。他の実施形態において、クエリー16S rRNA配列は、Alistipes属のメンバーとして既に分類されている細菌種についてのすべての既知の16S rRNA配列のサブセットと比較される。クエリーシーケンスと比較シーケンスとの間のパーセント同一性を決定する。クエリー配列のパーセント同一性が定義された閾値を超えていると判定された場合、分類される細菌種は、Alistipes属のメンバーとして分類される。
【0298】
いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、95%である。いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、97.5%である。いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、99.0%である。いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、94.5%、94.6%、94.7%、94.8%、94.9%、95.0%、95.1%、95.2%、95.3%、95.4%、95.5%、95.6%、95.7%、95.8%、95.9%、96.0%、96.1%、96.2%、96.3%、96.4%、96.5%、96.6%、96.7%、96.8%、96.9%、97.0%、97.1%、97.2%、97.3%、97.4%、97.5%、97.6%、97.7%、97.8%、97.9%、98.0%、98.1%、98.2%、98.3%、98.4%、98.5%、98.6%、98.7%、98.8%、98.9%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%.99.6%、99.7%、99.8%、99.9%又は100%である。
【0299】
いくつかの実施形態において、16S rRNA配列は、分類すべき細菌種について得られ、又は決定される。このクエリー16S rRNA配列は、Rikenellaceae科のメンバーとして既に分類されている細菌種由来の16S rRNA配列(配列番号1~3のうちのいずれか1つに示されるものを含む)と比較される。いくつかの実施形態において、クエリー16S rRNA配列は、Rikenellaceae科のメンバーとして既に分類されている細菌種についてのすべての既知の16S rRNA配列と比較される。他の実施形態において、クエリー16S rRNA配列は、Rikenellaceae科のメンバーとして既に分類されている細菌種についてのすべての既知の16S rRNA配列のサブセットと比較される。クエリーシーケンスと比較シーケンスとの間のパーセント同一性を決定する。クエリー配列のパーセント同一性が定義された閾値を超えていると判定された場合、分類される細菌種は、その科のメンバーとして分類される。
【0300】
いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、95%である。いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、98.7%である。いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、94.8%である。いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、94.5%、94.6%、94.7%、94.8%、94.9%、95.0%、95.1%、95.2%、95.3%、95.4%、95.5%、95.6%、95.7%、95.8%、95.9%、96.0%、96.1%、96.2%、96.3%、96.4%、96.5%、96.6%、96.7%、96.8%、96.9%、97.0%、97.1%、97.2%、97.3%、97.4%、97.5%、97.6%、97.7%、97.8%、97.9%、98.0%、98.1%、98.2%、98.3%、98.4%、98.5%、98.6%、98.7%、98.8%、98.9%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%.99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、又は100%である。
【0301】
いくつかの実施形態において、組成物は、上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載されるA.shahiiの少なくとも部分的に単離された細菌株を含む。
【0302】
ある実施形態において、本発明の細菌株は、A.shahiiの細菌株の16S rRNA配列と少なくとも97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。好ましくは、本発明の細菌株は、配列番号1~3のいずれか1つと少なくとも97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。いくつかの好ましいにおいて、本発明の細菌株は、配列番号1~3のうちのいずれか1つで表される16S rRNA配列を有する。
【0303】
細菌株のゲノムは、配列番号1~3のうちのいずれか1つに示される16S rRNA配列を含み得る。
【0304】
3.3ゲノム配列同一性。
ある実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号4~6のうちのいずれか1つに対して配列同一性を有する染色体を有する。好ましい実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号4~6の少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)にわたって配列番号4~6のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも92%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、又は100%の配列同一性)を有する染色体を有する。例えば、本発明の細菌株は、配列番号4~6の70%にわたって配列番号4~6のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号4~6の80%にわたって配列番号4~6のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号4~6の90%にわたって配列番号4~6のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号4~6の100%にわたって配列番号4~6のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号4~6の70%にわたって配列番号4~6のいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号4~6の80%にわたって配列番号4~6のいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号4~6の90%にわたって配列番号4~6のいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号4~6の100%にわたって配列番号4~6のいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号4~6の70%にわたって配列番号4~6のいずれか1つに対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号4~6の80%にわたって配列番号4~6のいずれか1つに対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号4~6の90%にわたって配列番号4~6のいずれか1つに対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号4~6の100%にわたって配列番号4~6のいずれか1つに対して少なくとも98%の配列同一性を有する染色体を有することができる。本発明の特に好ましい株は、受託番号V21/014432の下に寄託されたA.shahii株である。これは、実施例に示したDSSマウスモデルで試験した例示的なA.shahii MH21-1株であり、疾患を治療するために有効であることが示されている。したがって、本発明は、受託番号V21/014432の下に寄託されたA.shahii株又はその誘導体の単離された細胞などの細胞を提供する。本発明はまた、受託番号V21/014432の下に寄託されたA.shahii株又はその誘導体の細胞を含む組成物を提供する。本発明はまた、受託番号V21/014432の下に寄託されたA.shahii MH21-1株の生物学的に純粋な培養物を提供する。
【0305】
本発明はまた、受託番号V21/014433の下に寄託されたA.shahii株又はその誘導体の細胞を含む組成物を提供する。本発明はまた、受託番号V21/014433の下に寄託されたA.shahii MH21-1株の生物学的に純粋な培養物を提供する。
【0306】
本発明はまた、受託番号V21/014434の下に寄託されたA.shahii株又はその誘導体の細胞を含む組成物を提供する。本発明はまた、受託番号V21/014434の下に寄託されたA.shahii MH21-1株の生物学的に純粋な培養物を提供する。
【0307】
ある実施形態において、本発明の組成物は、A.finegoldiiの少なくとも部分的に精製された株を含む。いくつかの実施形態において、A.finegoldiiの株は、配列番号9と配列同一性を有する染色体を有する。好ましい実施形態において、A.finegoldiiの細菌株は、配列番号9の少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)にわたって配列番号9に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも92%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、又は100%の配列同一性)を有する染色体を有する。例えば、A.finegoldiiの細菌株は、配列番号9の70%にわたって配列番号9に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号9の80%にわたって配列番号9に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号9の90%にわたって配列番号9に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号5の100%にわたって配列番号9に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号9の70%にわたって配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号9の80%にわたって配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号9の90%にわたって配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号9の100%にわたって配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号9の70%にわたって配列番号9に対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号9の80%にわたって配列番号9に対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号9の90%にわたって配列番号9に対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号9の100%にわたって配列番号9に対して少なくとも98%の配列同一性を有する染色体を有し得る。
【0308】
ある実施形態において、本発明の組成物は、A.onderdonkiiの少なくとも部分的に精製された株を含む。いくつかの実施形態において、A.onderdonkiiの株は、配列番号10と配列同一性を有する染色体を有する。好ましい実施形態において、A.onderdonkiiの細菌株は、配列番号10の少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)にわたって配列番号10に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも92%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、又は100%の配列同一性)を有する染色体を有する。例えば、A.onderdonkiiの細菌株は、配列番号10の70%にわたって配列番号10に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号10の80%にわたって配列番号10に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号10の90%にわたって配列番号10に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号10の100%にわたって配列番号10に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号10の70%にわたって配列番号10に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号10の80%にわたって配列番号10に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号10の90%にわたって配列番号10に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号10の100%にわたって配列番号10に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号10の70%にわたって配列番号10に対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号10の80%にわたって配列番号10に対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号10の90%にわたって配列番号10に対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号10の100%にわたって配列番号10に対して少なくとも98%の配列同一性を有する染色体を有し得る。
【0309】
4.細菌株-Colonithrix sana
本発明の組成物は、Colonithrix属の細菌株を含む。これらの例は、この属の細菌が腸障壁機能の障害に関連する疾患の治療又は予防に有用であることを示す。好ましい細菌株は、Colonithrix sana種である。
【0310】
Colonithrixは、Clostridiaクラスの細菌の属である。科学的分類は以下の通りである:細菌(界)、Firmicutes_A(門)、Clostridia(類)、Oscillospirales(目)、Oscillospiraceae(科)、Colonithrix(属)。Colonithrix属内の細菌は、グラム陰性~グラム可変性の非運動性細菌であり、長くて薄い桿状の形をしており、偏性嫌気性菌である。これらの基準は、細菌株の系統分類に情報を提供することができるため、重要である。例えば、細菌種C.sanaは、特にこれらの基準に基づいて、ER及び/又はRuminococcaceae属に属するものとして以前に分類されている。
【0311】
Colonithrix属及びC.sana種の幅は、Parks et al.,2018に記載されているような分類学的分類システムであるゲノム分類データベース参照ツリーによって定義される通りである。
【0312】
受託番号V21/019213(すなわち、C.sana MH35-1)の下に寄託されたC.sana細菌は、実施例で試験され、本発明の好ましい株のうちの1つである。C.sana株MH35-1及びMH35-2は、Microba IP Pty Ltd(388 Queen Street,Brisbane,QLD 4000,Australia)により、2021年9月28日に「Colonithrix sana MH35-1」及び「Colonithrix sana MH35-2」として、国際寄託機関国立測定研究所(NMI、1/153 Bertie Street,Port Melbourne,Victoria,3207,Australia)に寄託され、それぞれ受託番号V21/019213及びV21/019214が割り当てられた。
【0313】
試験したC.sana MH35-1株の例示的な16S rRNA配列は、配列番号11~14のうちのいずれか1つに示されている。種の細菌株は、そのゲノム内に単一の16S rRNA配列を含んでもよく、あるいは、そのゲノム内に2つ以上の16S rRNA配列を含んでもよい(例えば、2つのコピー、3つのコピー、4つのコピー、5つのコピー、6つのコピー、7つのコピー、8つのコピー、又は8つより多くのコピー)。いくつかの好ましい実施形態において、C.sana種の細菌株は、そのゲノム内に16S rRNA配列の4つのコピーを含む。いくつかの実施形態において、細菌株は、当技術分野で公知の任意の方法によって、その株が配列番号11~14のうちのいずれか1つに対応する16S rRNA配列を含むかどうかを判定することによって、C.sana MH35-1株であると特定されてもよい。C.sana MH35-1株の染色体配列は、配列番号19~22のうちの1つ以上に提供される。いくつかの実施形態において、C.sana MH35-1株の染色体配列は、配列番号19~22に示される配列の各々を含む。これらの配列は、Illumina NovSeq6000プラットフォームを使用して生成した。
【0314】
試験したC.sana MH35-2株の例示的な16S rRNA配列は、配列番号15~18のうちのいずれか1つに示される。種の細菌株は、そのゲノム内に単一の16S rRNA配列を含んでもよく、あるいは、そのゲノム内に2つ以上の16S rRNA配列を含んでもよい(例えば、2つのコピー、3つのコピー、4つのコピー、5つのコピー、6つのコピー、7つのコピー、8つのコピー、又は8つより多くのコピー)。いくつかの好ましい実施形態において、C.sana種の細菌株は、そのゲノム内に16S rRNA配列の4つのコピーを含む。いくつかの実施形態において、細菌株は、当技術分野で公知の任意の方法によって、その株が配列番号15~18のうちのいずれか1つに対応する16S rRNA配列を含むかどうかを判定することによって、C.sana MH35-2株であると特定されてもよい。C.sana MH35-1株の染色体配列は、配列番号23~26のうちの1つ以上に提供される。いくつかの実施形態において、C.sana MH35-2株の染色体配列は、配列番号23~26に示される配列の各々を含む。これらの配列は、Illumina NovSeq6000プラットフォームを使用して生成した。
【0315】
C.sana株MH35-1及びMH35-2に密接に関連する細菌株はまた、腸障壁機能の回復に対するそれらの有益な効果を通じて、炎症性及び自己免疫障害を治療又は予防するために有効であると考えられる。
【0316】
ある実施形態において、本発明の細菌株は、C.sanaの細菌株の16S rRNA配列と少なくとも97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。好ましくは、本発明の細菌株は、配列番号11~18のいずれか1つと少なくとも97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号11~18のうちのいずれか1つで表される16S rRNA配列を有する。同じ好ましい実施形態のうちのいくつかにおいて、本発明の細菌株は、配列番号11~14のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、又はすべてで表される16S rRNA配列の4つのコピーを有する。いくつかの他の好ましい実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号15~18のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、又はすべてで表される16S rRNA配列の4つのコピーを有する。
【0317】
細菌株のゲノムは、配列番号11~14に示される16S rRNA配列の各々を含み得る。あるいは、細菌株のゲノムは、配列番号15~18に示される16S rRNA配列の各々を含み得る。
【0318】
ある実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つに対して配列同一性を有する染色体を有する。好ましい実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つの少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)にわたって配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも92%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、又は100%の配列同一性)を有する染色体を有する。例えば、本発明の細菌株は、配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つの70%にわたって配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つの80%にわたって配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つの90%にわたって配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つの100%にわたって配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つの70%にわたって配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つの80%にわたって配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つの90%にわたって配列番号15~18のうちのいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つの100%にわたって配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つの70%にわたって配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つに対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つの80%にわたって配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つに対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つの90%にわたって配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つに対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つの100%にわたって配列番号19~22又は23~26のうちのいずれか1つに対して少なくとも98%の配列同一性を有する染色体を有することができる。本発明の特に好ましい株は、受託番号V21/019213及び/又はV21/019214の下に寄託されたC.sana株である。これは、実施例に示したDSSマウスモデルで試験した例示的なC.sana MH35-1及びC.sana MH35-2株であり、疾患を治療するために有効であることが示されている。したがって、本発明は、受託番号V21/019213及び/若しくはV21/019214の下に寄託されたC.sana株又はその誘導体の単離された細胞などの細胞を提供する。本発明はまた、受託番号V21/019213及び/又はV21/019214の下に寄託されたC.sana株又はその誘導体の細胞を含む組成物を提供する。本発明はまた、それぞれ受託番号V21/019213及びV21/019214の下に寄託されたC.sana MH35-1及びMH35-2株の生物学的に純粋な培養物を提供する。
【0319】
受託番号V21/019213又はV21/019214の下に寄託された株の誘導体は、娘株(子孫)又は元の株から培養された(サブクローニングされた)株であり得る。本発明の株の誘導体は、生物学的活性を消すことなく、例えば、遺伝子レベルで修飾され得る。特に、本発明の誘導体株は、治療的に活性である。誘導体株は、それが由来する元のV21/019213又はV21/019214株と同等の活性を有する。具体的には、誘導体株は、実施例に示されるように、少なくとも1つの疾患モデル(例えば、大腸炎)において同等の効果を引き出し、これは、実施例に記載の培養及び投与プロトコールを使用することによって特定され得る。V21/019213又はV21/019214株のうちのいずれか1つの誘導体は、概して、それぞれV21/019213及びV21/019214株の生物型である。
【0320】
受託番号V21/019213又はV21/019214の下に寄託されたC.sana株の細胞への言及には、受託番号V21/019213又はV21/019214の下に寄託された株と同じ安全性及び治療有効性特性を有する任意の細胞が含まれ、そのような細胞は、本発明によって包含される。
【0321】
4.1 細菌の生物型
受託番号V21/019213又はV21/019214の下に寄託された細菌の生物型である細菌株もまた、炎症性及び自己免疫障害を治療又は予防するために有効であることが期待される。生物型は、生理学的及び生化学的特性が同一又は非常に類似している、密接に関連した株である。
【0322】
受託番号V21/019213又はV21/019214の下に寄託された細菌の生物型であり、本発明での使用に適した株は、受託番号V21/019213又はV21/019214の下に寄託された細菌の他のヌクレオチド配列を配列決定することによって特定することができる。例えば、実質的に全ゲノムを配列決定することができ、本発明の生物型株は、その全ゲノムの少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、90%、95%又は99%、又はその全ゲノムにわたって)にわたって、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は99.9%の配列同一性を有することができる。生物型株を特定するのに用いるのに適した他の配列としては、hsp60又はBOX、ERIC、(GTG)5、又はREPなどの反復配列が挙げられる(Masco et al.,2003;Kim et al.,2019)。生物型株は、受託番号V21/019213又はV21/019214の下に寄託された細菌の対応する配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は99.9%の配列同一性を有する配列を有することができる。
【0323】
あるいは、受託番号V21/019213又はV21/019214の下に寄託された細菌の生物型である株、並びに例えば、蛍光増幅断片長多型(FAFLP)及び反復DNAエレメント(rep)-PCRフィンガープリンティング、又はタンパク質プロファイリング、又は部分16S若しくは23S rRNA配列決定を使用することによる制限断片分析及び/又はPCR分析。いくつかの好ましい実施形態において、そのような技術を使用して、他の適切なC.sana株を特定することができる。
【0324】
ある実施形態において、受託番号V21/019213又はV21/019214の下に寄託された細菌の生物型であり、本発明での使用に適している株は、例えば、Sau3AI制限酵素(例示的な方法及びガイダンスについては、例えば、Srutkova et al.,2011を参照)を使用する場合、増幅リボソームDNA制限分析(ARDRA)によって分析したときに、受託番号V21/019213又はV21/019214の下に寄託された細菌と同じパターンを提供する株である。あるいは、生物型株は、受託番号V21/019213又はV21/019214の下に寄託された細菌と同じ炭水化物発酵パターンを有する株として特定される。
【0325】
いくつかの実施形態において、本発明において有用な細菌株は、細菌株による代謝物の産生及び消費を日常的にプロファイリングすることによって特定することができる。上記及び本明細書の他の箇所に記載の細菌株は、酢酸塩、酪酸塩、エタノール及びフマル酸塩の産生に影響することが予測される。したがって、いくつかの実施形態において、本発明の細菌株は、代謝物酢酸塩、エタノール、酪酸塩、及びフマル酸塩のうちの1種以上のインビボでの産生を誘導する。さらに、いくつかの実施形態において、本発明の細菌株は酪酸塩を産生しない。
【0326】
受託番号V21/019213及び/又はV21/019214の下に寄託された細菌の生物型などの、本発明の組成物及び方法において有用な他のColonithrix株は、実施例に記載されたアッセイを含め、任意の適切な方法又は戦略を用いて特定することができる。例えば、本発明で使用する株は、嫌気性TY又はPYG培地中で培養すること、及び/又はDSS誘導腸障壁機能モデルに細菌を投与し、次いで実施例に記載されているようにサイトカイン/ケモカインレベルを評価することによって特定することができる。特に、受託番号V21/019213及び/又はV21/019214の下に寄託された細菌に対して、同様の増殖パターン、代謝型及び/又は表面抗原を有する細菌株が、本発明において有用であり得る。有用な株は、V21/019213及び/又はV21/019214株と同等の免疫調節活性を有する。特に、生物型株は宿主の腸機能に対して同等の効果を引き起こす。さらに、生物型は、疾患モデル(例えば、大腸炎、喘息、関節炎、多発性硬化症及びブドウ膜炎疾患モデル)において同様の効果を有し、サイトカイン/ケモカインレベルに対する同等の効果を、実施例に示された効果と同等の効果を有し、実施例に記載された培養及び投与プロトコールを使用することによって特定され得ることが期待される。
【0327】
4.2 細菌菌株の生存率。
好ましい実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は生存可能である。好ましい実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は生存可能であり、腸に部分的又は全体的にコロニーを形成することができる。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は生きている。一例として、本発明の組成物中の細菌株は加熱殺菌されていない。本発明の細菌は、例えば、生存不可能な細菌が代謝物を生成することができず、免疫系と異なる様式で相互作用することができないために、生存不可能な細菌によって示されないであろう免疫調節作用を有することができる。生きている細菌の細胞表面もまた、死滅した細菌、特に熱殺菌した細菌とは大きく異なっているようである。
【0328】
いくつかの代替実施形態において、その細菌は生存できない。例えば、いくつかの実施形態において、細菌は熱殺菌される。
【0329】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明で使用するための細菌株は、天然に存在する。例えば、細菌株は哺乳類の消化管から単離されている。
【0330】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明で使用するための細菌株は、遺伝子操作されていない。例えば、細菌株は組換えDNAで形質転換されていない。
【0331】
5.組成物-Colonithrix種
本明細書に提供される組成物は、上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載された細菌株又は株を含み、それらからなり、又は本質的に治療有効量からなる組成物である。いくつかの実施形態において、組成物中の細菌は、菌株、種、操作的分類単位(OTU)、全ゲノム配列、16S rRNA配列、又は異なるタイプの細菌を定義するための当技術分野で公知の他の方法によって特定することができる。
【0332】
5.1 最新の共通祖先(MRCA)
いくつかの実施形態において、組成物は、C.sp003522105及びC.sp002437735のMRCAの系統発生的子孫である有効量の細菌株を含む(図8を参照)。好ましくは、系統発生的分類は、GTDB(Parks et al.,2018)によって定義される通りである。いくつかの実施形態において、系統発生的分類は、GTDBのリリース89(r89)で定義される通りである。
【0333】
いくつかの実施形態において、細菌株がC.sp003522105及びC.sp002437735のMRCAの子孫であるかどうかの判定は、当技術分野で公知の系統発生的グループ化手順を使用して実施することができる。いくつかの実施形態において、C.sp003522105、C.sp002437735を有する根付いた系統樹、並びに目的の第3のタクソン(例えば、分類されるタクソン)を使用してもよく、目的のタクソンが本発明の組成物に有用であるかどうかを判定するために、以下の分析パッケージが適用される:系統発生学及び進化の分析(ape:https://cran.r-project.org/web/packages/ape/index.html)及び比較生物学のための系統発生学的ツール(「phytools」;http://cran.r-project.org/web/packages/phytools/index.html)。類人猿も系統学もR言語で書かれたパッケージであり、分子進化と系統発生の研究に使われている。類人猿及び系統ツールパッケージは、系統発生的及び進化的分析のための方法を提供し、それらの使用は当業者に知られている。いくつかの実施形態では、以下のスクリプトを使用することができる。
library(“ape”)
library(“phytools”)
input.tree=read.tree(file=”tree_file”)
colonithrix=c(“s__C.sp003522105”,“s__C.sp002437735”))
colonithrix.node=getMRCA(input.tree,colonithrix)
colonithrix.tree=extract.clade(input.tree,colonithrix.node)
print(colonithrix.tree$tip.label)
【0334】
いくつかの実施形態において、スクリプトが実行された後、対象のタクソンが印刷リスト内にある場合、それは、2つの種のMRCAの子孫である。
【0335】
他の実施形態において、異なる分析パッケージを使用し、異なるプログラミング言語に基づく方法を含め、当技術分野で公知の異なる系統発生的グループ化方法を用いて、細菌株がC.sp003522105及びC.sp002437735のMRCAの子孫であるかどうかを判定することができる(図8を参照)。
【0336】
いくつかの他の実施形態において、細菌株は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに、C.sp003522105及びC.sp002437735のMRCAの系統発生的子孫である。好適には、MRCAは、GTDBからのbac120系統樹のノード23879で定義される。いくつかの実施形態において、系統樹は、GTDBのリリース89によって作成されるが、任意の好適なその後のリリースは、適用可能な結果を等しく与えると考えられる。
【0337】
いくつかの他の実施形態において、細菌株は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに、C.sp003522105及びC.sp002437735のMRCAの系統発生的子孫である。好適には、MRCAは、GTDBからのbac120系統樹のノード23820で定義される。いくつかの実施形態において、系統樹は、GTDBのリリース89によって作成されるが、任意の好適なその後のリリースは、適用可能な結果を等しく与えると考えられる。
【0338】
他の実施形態において、細菌種は、その種が、Oscillospiraceae科のメンバーとして既に特定されている種由来の16S rRNA配列に対して配列同一性を有する16S rRNA配列を有する場合、Oscillospiraceae科のメンバーである。いくつかの実施形態において、細菌種がOscillospiraceae科のメンバーであるかどうかの特定は、Yarza et al.,2014,Nature Reviews Microbiology 12:635-645及びStackebrandt,E.&Ebers,J.,2006,Microbiol.Today 8:6-9(これらは参照により本明細書に組み込まれる)に記載される方法を使用して実施される。
【0339】
5.2 16S rRNA配列同一性
いくつかの実施形態において、16S rRNA配列は、分類すべき細菌種について得られ、又は決定される。このクエリー16S rRNA配列は、Colonithrix属のメンバーとして既に分類されている細菌種由来の16S rRNA配列と比較される。いくつかの実施形態において、クエリー16S rRNA配列は、配列番号11~18のいずれか1つに記載の16S rRNA配列と比較される。いくつかの実施形態において、クエリー16S rRNA配列は、Colonithrix属のメンバーとして既に分類されている細菌種についてのすべての既知の16S rRNA配列と比較される。他の実施形態において、クエリー16S rRNA配列は、Colonithrix属のメンバーとして既に分類されている細菌種についてのすべての既知の16S rRNA配列のサブセットと比較される。クエリーシーケンスと比較シーケンスとの間のパーセント同一性を決定する。クエリー配列のパーセント同一性が定義された閾値を超えていると判定された場合、分類される細菌種は、Colonithrix属のメンバーとして分類される。
【0340】
いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、95%である。いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、97.5%である。いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、99.0%である。いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、94.5%、94.6%、94.7%、94.8%、94.9%、95.0%、95.1%、95.2%、95.3%、95.4%、95.5%、95.6%、95.7%、95.8%、95.9%、96.0%、96.1%、96.2%、96.3%、96.4%、96.5%、96.6%、96.7%、96.8%、96.9%、97.0%、97.1%、97.2%、97.3%、97.4%、97.5%、97.6%、97.7%、97.8%、97.9%、98.0%、98.1%、98.2%、98.3%、98.4%、98.5%、98.6%、98.7%、98.8%、98.9%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%.99.6%、99.7%、99.8%、99.9%又は100%である。
【0341】
いくつかの実施形態において、16S rRNA配列は、分類すべき細菌種について得られ、又は決定される。このクエリー16S rRNA配列は、Oscillospiraceae科のメンバーとして既に分類されている細菌種由来の16S rRNA配列と比較された。いくつかの実施形態において、クエリー16S rRNA配列は、Oscillospiraceae科のメンバーとして既に分類されている細菌種についてのすべての既知の16S rRNA配列と比較される。他の実施形態において、クエリー16S rRNA配列は、Oscillospiraceae科のメンバーとして既に分類されている細菌種についてのすべての既知の16S rRNA配列のサブセットと比較される。クエリーシーケンスと比較シーケンスとの間のパーセント同一性を決定する。クエリー配列のパーセント同一性が定義された閾値を超えていると判定された場合、分類される細菌種は、Oscillospiraceae科のメンバーとして分類される。
【0342】
いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、95%である。いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、98.7%である。いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、94.8%である。いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、94.5%、94.6%、94.7%、94.8%、94.9%、95.0%、95.1%、95.2%、95.3%、95.4%、95.5%、95.6%、95.7%、95.8%、95.9%、96.0%、96.1%、96.2%、96.3%、96.4%、96.5%、96.6%、96.7%、96.8%、96.9%、97.0%、97.1%、97.2%、97.3%、97.4%、97.5%、97.6%、97.7%、97.8%、97.9%、98.0%、98.1%、98.2%、98.3%、98.4%、98.5%、98.6%、98.7%、98.8%、98.9%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%.99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、又は100%である。
【0343】
6.細菌株-Gemmiger種
本発明の組成物は、Gemmiger属の細菌株を含む。これらの例は、この属の細菌が腸障壁機能の障害に関連する疾患の治療又は予防に有用であることを示す。好ましい細菌株のうちのいくつかは、G.formicilis種である。
【0344】
Gemmigerは、Clostridiaクラスの細菌の属である。科学的分類は以下の通りである:細菌(界)、Firmicutes(門)、Clostridia(類)、Clostridiales(目)、Ruminococcaceae(科)、Gemmiger(属)。Gemmiger属内の細菌は、グラム陰性~グラム可変性の非運動性細菌であり、「出芽」形状を有し、偏性嫌気性菌である。これらの基準は、細菌株の系統分類に情報を提供することができるため、重要である。例えば、細菌種G.formicilisは、特にこれらの基準に基づいて、以前にSubdoligranulum属に属するものとして分類されている。
【0345】
G.formicilis株(以前はSubdoligranulum formicilisとして特徴付けられていた)は、Gossling and Moore,1975に記載されている。G.formicilis型株Virginia Polytechnic Institute株X2-56(=ATCC 27749)をヒト糞便から単離した(Gossling and Moore,1975)。G.formicilis型株ATCC 27749の16S rRNA遺伝子配列のGenBank受託番号は、NR_104846である。
【0346】
Gemmiger属及びG.formicilis種の幅は、Parks et al.,2018に記載されているような分類学的分類システムであるゲノム分類データベース参照ツリーによって定義される通りである。
【0347】
受託番号V21/011520(すなわち、G.formicilis MH32-1)の下に寄託されたG.formicilis細菌は、実施例で試験され、本発明の好ましい株のうちの1つである。G.formicilis株MH32-1は、Microba IP Pty Ltd(388 Queen Street,Brisbane,QLD 4000,Australia)により、2021年6月11日に「Gemmiger formicilis MH32-1」として、国際寄託機関国立測定研究所(NMI、1/153 Bertie Street,Port Melbourne,Victoria,3207,Australia)に寄託され、受託番号V21/011520が割り当てられた。
【0348】
試験したMH321株の例示的な16S rRNA配列は、配列番号27に示されている。G.formicilis種の細菌株は、そのゲノム内に単一の16S rRNA配列を含んでもよく、あるいは、そのゲノム内に2つ以上の16S rRNA配列を含んでもよい(例えば、2つのコピー、3つのコピー、4つのコピー、5つのコピー、6つのコピー、7つのコピー、8つのコピー、又は8つより多くのコピー)。いくつかの実施形態において、細菌株は、当技術分野で公知の任意の方法によって、その株が配列番号27に対応する16S rRNA配列を含むかどうかを判定することによって、G.formicilis MH32-1株であると特定されてもよい。MH32-1株の染色体配列は、配列番号28に提供される。この配列は、Illumina NovSeq6000プラットフォームを使用して生成した。
【0349】
G.formicilis株MH32-1及び/又はG.formicilis MH32-2に密接に関連する細菌株はまた、腸障壁機能の回復に対するそれらの有益な効果を通じて、炎症性及び自己免疫障害を治療又は予防するために有効であると考えられる。
【0350】
ある実施形態において、本発明の細菌株は、G.formicilisの細菌株の16S rRNA配列と少なくとも97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。好ましくは、本発明の細菌株は、配列番号27又は配列番号45~47のうちの1つ以上と少なくとも97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。いくつかの好ましいにおいて、本発明の細菌株は、配列番号27又は配列番号45~47のうちの1つ以上で表される16S rRNA配列を有する。
【0351】
細菌株のゲノムは、配列番号27に示される16S rRNA配列を含み得る。あるいは、細菌株のゲノムは、配列番号45~47のうちの1つ以上に示される16S rRNA配列を含み得る。
【0352】
ある実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号28と配列同一性を有する染色体を有する。好ましい実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号28の少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)にわたって配列番号28に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも92%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、又は100%の配列同一性)を有する染色体を有する。例えば、本発明の細菌株は、配列番号28の70%にわたって配列番号28に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号28の80%にわたって配列番号28に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号28の90%にわたって配列番号28に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号28の100%にわたって配列番号28に対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号28の70%にわたって配列番号28に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号28の80%にわたって配列番号28に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号28の90%にわたって配列番号28に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号28の100%にわたって配列番号28に対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号28の70%にわたって配列番号28に対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号28の80%にわたって配列番号28に対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号28の90%にわたって配列番号28に対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号28の100%にわたって配列番号28に対して少なくとも98%の配列同一性を有する染色体を有し得る。本発明の特に好ましい株は、受託番号V21/011520の下に寄託されたG.formicilis株である。これは、実施例に示したDSSマウスモデルで試験した例示的なG.formicilis MH32-1株であり、疾患を治療するために有効であることが示されている。したがって、本発明は、受託番号V21/011520の下に寄託されたG.formicilis株又はその誘導体の単離された細胞などの細胞を提供する。本発明はまた、受託番号V21/011520の下に寄託されたG.formicilis株又はその誘導体の細胞を含む組成物を提供する。本発明はまた、受託番号V21/011520の下に寄託されたG.formicilis MH32-1株の生物学的に純粋な培養物を提供する。
【0353】
ある実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号29~33のうちのいずれか1つに対して配列同一性を有する染色体を有する。好ましい実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号29~33のうちのいずれか1つの少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)にわたって配列番号29~33のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも92%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、又は100%の配列同一性)を有する染色体を有する。例えば、本発明の細菌株は、配列番号29~33のうちのいずれか1つの70%にわたって配列番号29~33のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号29~33のうちのいずれか1つの80%にわたって配列番号29~33のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号29~33のうちのいずれか1つの90%にわたって配列番号29~33のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号29~33のうちのいずれか1つの100%にわたって配列番号29~33のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号29~33のうちのいずれか1つの70%にわたって配列番号29~33のうちのいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号29~33のうちのいずれか1つの80%にわたって配列番号29~33のうちのいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号29~33のうちのいずれか1つの90%にわたって配列番号29~33のうちのいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号29~33のうちのいずれか1つの100%にわたって配列番号29~33のうちのいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号29~33のうちのいずれか1つの70%にわたって配列番号29~33のうちのいずれか1つに対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号29~33のうちのいずれか1つの80%にわたって配列番号29~33のうちのいずれか1つに対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号29~33のうちのいずれか1つの90%にわたって配列番号29~33のうちのいずれか1つに対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号29~33のうちのいずれか1つの100%にわたって配列番号29~33のうちのいずれか1つに対して少なくとも98%の配列同一性を有する染色体を有することができる。
【0354】
ある実施形態において、本発明の細菌株は、Gemmiger sp.MD158の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。好ましくは、本発明の細菌株は、配列番号48と少なくとも97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。いくつかの好ましいにおいて、本発明の細菌株は、配列番号48で表される16S rRNA配列を有する。
【0355】
細菌株のゲノムは、配列番号48に示される16S rRNA配列を含み得る。
【0356】
いくつかの他の実施形態において、本発明の細菌株は、Gemmiger sp.MD158種の細菌株である。一例として、細菌株は、配列番号34~38のうちのいずれか1つに対して配列同一性を有する染色体を有し得る。好ましい実施形態において、本発明の細菌株は、配列番号34~38のうちのいずれか1つの少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)にわたって配列番号29~33のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも92%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、又は100%の配列同一性)を有する染色体を有する。例えば、本発明の細菌株は、配列番号34~38のうちのいずれか1つの70%にわたって配列番号34~38のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号34~38のうちのいずれか1つの80%にわたって配列番号34~38のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号34~38のうちのいずれか1つの90%にわたって配列番号34~38のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号29~33のうちのいずれか1つの100%にわたって配列番号34~38のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号34~38のうちのいずれか1つの70%にわたって配列番号34~38のうちのいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号34~38のうちのいずれか1つの80%にわたって配列番号34~38のうちのいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号34~38のうちのいずれか1つの90%にわたって配列番号34~38のうちのいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号34~38のうちのいずれか1つの100%にわたって配列番号34~38のうちのいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号34~38のうちのいずれか1つの70%にわたって配列番号34~38のうちのいずれか1つに対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号34~38のうちのいずれか1つの80%にわたって配列番号34~38のうちのいずれか1つに対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号34~38のうちのいずれか1つの90%にわたって配列番号34~38のうちのいずれか1つに対して少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号34~38のうちのいずれか1つの100%にわたって配列番号34~38のうちのいずれか1つに対して少なくとも98%の配列同一性を有する染色体を有することができる。
【0357】
受託番号V21/011520の下に寄託された株の誘導体は、娘株(子孫)又は元の株から培養された(サブクローニングされた)株であり得る。本発明の株の誘導体は、生物学的活性を消すことなく、例えば、遺伝子レベルで修飾され得る。特に、本発明の誘導体株は、治療的に活性である。誘導体株は、それが由来する元のV21/011520株と同等の活性を有する。具体的には、誘導体株は、実施例に示されるように、少なくとも1つの疾患モデル(例えば、大腸炎)において同等の効果を引き出し、これは、実施例に記載の培養及び投与プロトコールを使用することによって特定され得る。V21/011520株のうちのいずれか1つの誘導体は、概して、それぞれV21/011520株の生物型である。
【0358】
受託番号V21/011520の下に寄託されたG.formicilis株の細胞への言及には、受託番号V21/011520の下に寄託された株と同じ安全性及び治療有効性特性を有する任意の細胞が含まれ、そのような細胞は、本発明によって包含される。
【0359】
6.1 細菌の生物型
受託番号V21/011520の下に寄託された細菌の生物型である細菌株もまた、炎症性及び自己免疫障害を治療又は予防するために有効であることが期待される。生物型は、生理学的及び生化学的特性が同一又は非常に類似している、密接に関連した株である。
【0360】
受託番号V21/011520の下に寄託された細菌の生物型であり、本発明での使用に適した株は、受託番号V21/011520の下に寄託された細菌の他のヌクレオチド配列を配列決定することによって特定することができる。例えば、実質的に全ゲノムを配列決定することができ、本発明の生物型株は、その全ゲノムの少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、90%、95%又は99%、又はその全ゲノムにわたって)にわたって、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は99.9%の配列同一性を有することができる。生物型株を特定するのに用いるのに適した他の配列としては、hsp60又はBOX、ERIC、(GTG)5、又はREPなどの反復配列が挙げられる(Masco et al.,2003;Kim et al.,2019)。生物型株は、受託番号V21/011520の下に寄託された細菌の対応する配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は99.9%の配列同一性を有する配列を有することができる。
【0361】
あるいは、受託番号V21/011520の下に寄託された細菌の生物型である株、並びに例えば、蛍光増幅断片長多型(FAFLP)及び反復DNAエレメント(rep)-PCRフィンガープリンティング、又はタンパク質プロファイリング、又は部分16S若しくは23S rRNA配列決定を使用することによる制限断片分析及び/又はPCR分析。いくつかの好ましい実施形態において、そのような技術を使用して、他の適切なG.formicilis株を特定することができる。
【0362】
ある実施形態において、受託番号V21/011520の下に寄託された細菌の生物型であり、本発明での使用に適している株は、例えば、Sau3AI制限酵素(例示的な方法及びガイダンスについては、例えば、Srutkova et al.,2011を参照)を使用する場合、増幅リボソームDNA制限分析(ARDRA)によって分析したときに、受託番号V21/011520の下に寄託された細菌と同じパターンを提供する株である。あるいは、生物型株は、受託番号V21/011520の下に寄託された細菌と同じ炭水化物発酵パターンを有する株として特定される。
【0363】
いくつかの実施形態において、本発明において有用な細菌株は、細菌株による代謝物の産生及び消費を日常的にプロファイリングすることによって特定することができる。上記及び本明細書の他の箇所に記載の細菌株は、酢酸塩、酪酸塩、エタノール及びフマル酸塩の産生に影響することが予測される。したがって、いくつかの実施形態において、本発明の細菌株は、代謝物酢酸塩、エタノール、酪酸塩、及びフマル酸塩のうちの1種以上のインビボでの産生を誘導する。さらに、いくつかの実施形態において、本発明の細菌株は酪酸塩を産生しない。
【0364】
受託番号V21/011520の下に寄託された細菌の生物型などの、本発明の組成物及び方法において有用な他のGemmiger株は、実施例に記載されたアッセイを含め、任意の適切な方法又は戦略を用いて特定することができる。例えば、本発明で使用する株は、嫌気性TY又はPYG培地中で培養すること、及び/又はDSS誘導腸障壁機能モデルに細菌を投与し、次いで実施例に記載されているようにサイトカイン/ケモカインレベルを評価することによって特定することができる。特に、受託番号V21/011520の下に寄託された細菌に対して、同様の増殖パターン、代謝型及び/又は表面抗原を有する細菌株が、本発明において有用であり得る。有用な株は、V21/011520株と同等の免疫調節活性を有する。特に、生物型株は宿主の腸機能に対して同等の効果を引き起こす。さらに、生物型は、疾患モデル(例えば、大腸炎、喘息、関節炎、多発性硬化症及びブドウ膜炎疾患モデル)において同様の効果を有し、サイトカイン/ケモカインレベルに対する同等の効果を、実施例に示された効果と同等の効果を有し、実施例に記載された培養及び投与プロトコールを使用することによって特定され得ることが期待される。
【0365】
細菌株の生存性。
好ましい実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は生存可能である。好ましい実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は生存可能であり、腸に部分的又は全体的にコロニーを形成することができる。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は生きている。一例として、本発明の組成物中の細菌株は加熱殺菌されていない。本発明の細菌は、例えば、生存不可能な細菌が代謝物を生成することができず、免疫系と異なる様式で相互作用することができないために、生存不可能な細菌によって示されないであろう免疫調節作用を有することができる。生きている細菌の細胞表面もまた、死滅した細菌、特に熱殺菌した細菌とは大きく異なっているようである。
【0366】
いくつかの代替実施形態において、その細菌は生存できない。例えば、いくつかの実施形態において、細菌は熱殺菌される。
【0367】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明で使用するための細菌株は、天然に存在する。例えば、細菌株は哺乳類の消化管から単離されている。
【0368】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明で使用するための細菌株は、遺伝子操作されていない。例えば、細菌株は組換えDNAで形質転換されていない。
【0369】
7.組成物-Gemmiger種
本明細書に提供される組成物は、上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載された細菌株又は株を含み、それらからなり、又は本質的に治療有効量からなる組成物である。いくつかの実施形態において、組成物中の細菌は、菌株、種、操作的分類単位(OTU)、全ゲノム配列、16S rRNA配列、又は異なるタイプの細菌を定義するための当技術分野で公知の他の方法によって特定することができる。
【0370】
7.1 最新の共通祖先(MRCA)
いくつかの実施形態において、組成物は、G.variabile及びG.sp002306375のMRCAの系統発生的子孫である有効量の細菌株を含む(図15を参照)。好ましくは、系統発生的分類は、GTDB(Parks et al.,2018)によって定義される通りである。いくつかの実施形態において、系統発生的分類は、GTDBのリリース89(r89)で定義される通りである。
【0371】
いくつかの実施形態において、細菌株がG.variabile及びG.sp002306375のMRCAの子孫であるかどうかの判定は、当技術分野で公知の系統発生的グループ化手順を使用して実施することができる。いくつかの実施形態において、G.variabile、G.sp002306375を有する根付いた系統樹、並びに目的の第3のタクソン(例えば、分類されるタクソン)を使用してもよく、目的のタクソンが本発明の組成物に有用であるかどうかを判定するために、以下の分析パッケージが適用される:系統発生学及び進化の分析(「ape」;https://cran.r-project.org/web/packages/ape/index.html)及び比較生物学のための系統発生学的ツール(「phytools」;)。類人猿も系統学もR言語で書かれたパッケージであり、分子進化と系統発生の研究に使われている。類人猿及び系統ツールパッケージは、系統発生的及び進化的分析のための方法を提供し、それらの使用は当業者に知られている。いくつかの実施形態では、以下のスクリプトを使用することができる。
library(“ape”)
library(“phytools”)
input.tree=read.tree(file=”tree_file”)
gemmi c(“s__Gemmiger sp900554145”,“s__Gemmiger sp004555405”)
gemmi.node=getMRCA(input.tree,gemmi)
gemmi.tree=extract.clade(input.tree,gemmi.node)
print(gemmi.tree$tip.label)
【0372】
いくつかの実施形態において、スクリプトが実行された後、対象のタクソンが印刷リスト内にある場合、それは、2つの種のMRCAの子孫である。
【0373】
他の実施形態において、異なる分析パッケージを使用し、異なるプログラミング言語に基づく方法を含め、当技術分野で公知の異なる系統発生的グループ化方法を用いて、細菌株がG.variabile及びG.sp002306375のMRCAの子孫であるかどうかを判定することができる(図15B、Cを参照)。
【0374】
いくつかの他の実施形態において、細菌株は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに、G.variabile及びG.sp003476825のMRCAの系統発生的子孫である。好適には、MRCAは、GTDBからのbac120系統樹のノード23819で定義される。いくつかの実施形態において、系統樹は、GTDBのリリース89によって作成されるが、任意の好適なその後のリリースは、適用可能な結果を等しく与えると考えられる。
【0375】
いくつかの他の実施形態において、細菌株は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに、G.variabile及びG.formicilisのMRCAの系統発生的子孫である。好適には、MRCAは、GTDBからのbac120系統樹のノード23820で定義される。いくつかの実施形態において、系統樹は、GTDBのリリース89によって作成されるが、任意の好適なその後のリリースは、適用可能な結果を等しく与えると考えられる。
【0376】
他の実施形態において、細菌種は、その種が、Ruminococcaceae科のメンバーとして既に特定されている種由来の16S rRNA配列に対して配列同一性を有する16S rRNA配列を有する場合、Ruminococcaceae科のメンバーである。いくつかの実施形態において、細菌種がRuminococcaceae科のメンバーであるかどうかの特定は、Yarza et al.,2014,Nature Reviews Microbiology 12:635-645及びStackebrandt,E.&Ebers,J.,2006,Microbiol.Today 8:6-9(これらは参照により本明細書に組み込まれる)に記載される方法を使用して実施される。
【0377】
7.2 16S rRNA配列の同一性
いくつかの実施形態において、16S rRNA配列は、分類すべき細菌種について得られ、又は決定される。このクエリー16S rRNA配列は、Gemmiger属のメンバーとして既に分類されている細菌種由来の16S rRNA配列と比較される。いくつかの実施形態において、クエリー16S rRNA配列は、配列番号27に示される16S rRNA配列と比較される。いくつかの実施形態において、クエリー16S rRNA配列は、Gemmiger属のメンバーとして既に分類されている細菌種についてのすべての既知の16S rRNA配列と比較される。他の実施形態において、クエリー16S rRNA配列は、Gemmiger属のメンバーとして既に分類されている細菌種についてのすべての既知の16S rRNA配列のサブセットと比較される。クエリーシーケンスと比較シーケンスとの間のパーセント同一性を決定する。クエリー配列のパーセント同一性が定義された閾値を超えていると判定された場合、分類される細菌種は、Gemmiger属のメンバーとして分類される。
【0378】
いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、95%である。いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、97.5%である。いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、99.0%である。いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、94.5%、94.6%、94.7%、94.8%、94.9%、95.0%、95.1%、95.2%、95.3%、95.4%、95.5%、95.6%、95.7%、95.8%、95.9%、96.0%、96.1%、96.2%、96.3%、96.4%、96.5%、96.6%、96.7%、96.8%、96.9%、97.0%、97.1%、97.2%、97.3%、97.4%、97.5%、97.6%、97.7%、97.8%、97.9%、98.0%、98.1%、98.2%、98.3%、98.4%、98.5%、98.6%、98.7%、98.8%、98.9%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%.99.6%、99.7%、99.8%、99.9%又は100%である。
【0379】
いくつかの実施形態において、16S rRNA配列は、分類すべき細菌種について得られ、又は決定される。このクエリー16S rRNA配列を、Ruminococcaceae科のメンバーとして既に分類されている細菌種由来の16S rRNA配列と比較した。いくつかの実施形態において、クエリー16S rRNA配列は、Ruminococcaceae科のメンバーとして既に分類されている細菌種についてのすべての既知の16S rRNA配列と比較される。他の実施形態において、クエリー16S rRNA配列は、Ruminococcaceae科のメンバーとして既に分類されている細菌種についてのすべての既知の16S rRNA配列のサブセットと比較される。クエリーシーケンスと比較シーケンスとの間のパーセント同一性を決定する。もしクエリー配列のパーセント特定が定義された閾値を超えていると決定されるなら、分類される細菌種はRuminococcaceae科のメンバーとして分類される。
【0380】
いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、95%である。いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、98.7%である。いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、94.8%である。いくつかの実施形態において、閾値配列同一性は、94.5%、94.6%、94.7%、94.8%、94.9%、95.0%、95.1%、95.2%、95.3%、95.4%、95.5%、95.6%、95.7%、95.8%、95.9%、96.0%、96.1%、96.2%、96.3%、96.4%、96.5%、96.6%、96.7%、96.8%、96.9%、97.0%、97.1%、97.2%、97.3%、97.4%、97.5%、97.6%、97.7%、97.8%、97.9%、98.0%、98.1%、98.2%、98.3%、98.4%、98.5%、98.6%、98.7%、98.8%、98.9%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%.99.6%、99.7%、99.8%、99.9%又は100%である。
【0381】
8.細菌株の機能的特徴
腸障壁調節不全は、全身性炎症に至る典型的な経路である。実施例で示されるように、本発明の細菌株、及び該株を含む組成物は、腸障壁機能を増強するのに有効である。
【0382】
対象の全身性炎症を引き起こす腸障壁調節不全によって媒介されるすべての炎症性又は自己免疫障害は、上述の細菌株及び/又は本明細書の他の箇所での治療に適用可能である。
【0383】
8.1 腸障壁機能。
腸障壁(消化管障壁としても知られる)機能は、外界との粘膜界面での輸送及び宿主防御機構を調節する。細胞内外の流れは膜ポンプ、イオンチャネル、タイトジャンクションによって厳密に制御されており、生理学的必要性に対する透過性を調節している。
【0384】
リポ多糖類(LPS)及び他の炎症性化合物のような異物(すなわち、非宿主)物質の腸管内側から循環系への転位は、上皮障壁によって阻害される。この上皮障壁の機能の1つはタイトジャンクションである。タイトジャンクション、又は閉鎖帯は、2つの上皮細胞の密接に関連した領域であり、その膜が互いに結合して、液体に対する実質的に不透過性の障壁を形成し、それによって、血管系を消化管の内腔から分離する。いずれのレベルでも障害がみられるが、特に透過性の亢進による細菌の転座や、上皮とT細胞の相互作用の障害による口腔寛容の崩壊は、炎症や組織損傷を引き起こす可能性がある。このように、タイトジャンクション障壁機能の低下は、LPSのような望ましくない物質の腸管腔から循環系への移行を増加させることが示されている。
【0385】
本発明は、対象における腸障壁機能を回復又は改善する方法を提供し、この方法は、上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載されるような細菌株を含む組成物を対象に投与して、それによって対象における腸障壁機能を回復又は改善することを含む。いくつかの特定の実施形態では、本発明は、対象における腸障壁機能を回復又は改善する方法を提供し、この方法は、A.shahii、C.sana、及びG.formicilisのうちの1つ以上の細菌株を含む組成物を対象に投与して、それによって対象における腸障壁機能を回復又は改善することを含む。本明細書で使用されるように、腸障壁完全性とは腸障壁機能の尺度を指す。高い腸障壁完全性は、腸又は腸管の透過性の欠如と関連する可能性があり、高いレベルの腸透過性は、低い腸障壁完全性を示す。関連する実施形態では、本発明はまた、健常な又は正常な腸障壁機能を維持する方法を提供する。このような方法は、腸障壁調節不全のリスクが高いと考えられる対象(例えば、IBDの寛解期の対象)を予防するために用いることができる。いくつかの実施形態において、組成物は、A.shahiiの細菌株を含む。いくつかの他の実施形態において、組成物は、C.sanaの細菌株を含む。さらにいくつかの他の実施形態において、組成物は、G.formicilisの細菌株を含む。
【0386】
いくつかの実施形態において、試料(及び、特に生物学的試料)において測定された少なくとも1つのバイオマーカーは、変化、特に、対象の腸障壁完全性における改良を評価するために使用される。
【0387】
本明細書に提供される方法及び用途のいくつかの実施形態において、A.shahiiの細菌株を含む組成物は、対象由来の試料中の腸障壁完全性の1つ以上のバイオマーカーのレベルを増加又は低下させ得る。
【0388】
本明細書に提供される方法及び用途のいくつかの実施形態において、C.sanaの細菌株を含む組成物は、対象由来の試料中の腸障壁完全性の1つ以上のバイオマーカーのレベルを増加又は低下させ得る。
【0389】
さらに、本明細書に提供される方法及び用途のいくつかの実施形態において、G.formicilisの細菌株を含む組成物は、対象由来の試料中の腸障壁完全性の1つ以上のバイオマーカーのレベルを増加又は低下させ得る。
【0390】
いくつかの実施形態において、特定のバイオマーカーに依存して、マーカーのレベルの増加又は減少のいずれかは、腸障壁完全性の増加及び/又は腸透過性の減少を示す。いくつかの実施形態において、バイオマーカーは、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、血管新生因子、酵素、プロテアーゼ、接着分子、細胞シグナル伝達分子、ホルモン又は糖から選択される。いくつかの実施形態において、バイオマーカーは、サイトカインを含む。いくつかの実施形態において、マーカーは、ケモカインを含む。いくつかの実施形態において、マーカーは、成長因子を含む。いくつかの実施形態において、マーカーは、血管新生因子を含む。いくつかの実施形態において、マーカーは、酵素を含む。いくつかの実施形態において、マーカーは、プロテアーゼを含む。いくつかの実施形態において、マーカーは、接着分子を含む。いくつかの実施形態において、マーカーは、細胞シグナル伝達分子を含む。いくつかの実施形態において、マーカーは、ホルモンを含む。いくつかの実施形態において、マーカーは、糖を含む。
【0391】
この明細書は、腸管透過性のバイオマーカーのためのアッセイを提供する。血液(血漿、又は血清)又は組織などの対象由来の生物学的試料を用いて、LPS、リポ多糖結合タンパク質(LPSBP)、腸脂肪酸結合タンパク質(IFABP)、ゾヌリン、細菌及び/又は16S rRNAの1つ以上を含む任意の適切なバイオマーカーのレベルを測定することができるが、これらのマーカーに限定されない。LPS、I-FABP及びゾヌリンは、酵素免疫測定法(「ELISA」)によって測定することができる。ELISAのための技術及びキットは、当業者に周知である。いくつかの実施形態において、血液、血清、唾液、尿及び/又は血漿中の対照と比較した場合、上昇したLPS、I-FABP及び/又はゾヌリンが、腸管透過性の増加、したがって、より低い腸障壁完全性のインジケーターとして使用される。
【0392】
LPSBPは、ELISAによっても測定することができる。いくつかの実施形態において、対照と比較した場合、LPSBPの有意な変化は、より高いか又はより低いかのいずれかで、腸管透過性の増加の指標として使用することができ、腸障壁完全性の低下を確認することができる。
【0393】
いくつかの実施形態において、細菌16S rRNAの増加は、腸管透過性の増加、したがって、腸障壁完全性の減少の指標として使用される。細菌16S rRNAは、標準的な核酸単離プロトコールを用いて、血液、血清、臓器組織又は尿から精製され得る。これらは、例えば、市販されている。単離された核酸は、細菌16S rRNA配列に特異的なプライマーを用いたqPCR増幅、又は細菌16S rRNAに特異的なプライマーを用いた増幅、及び得られたアンプリコンの配列決定によって検出することができる。
【0394】
腸上皮細胞によって発現され、腸管透過性を調節するタイトジャンクションタンパク質は、腸管透過性のバイオマーカーとしても使用され得る。いくつかの実施形態において、タイトジャンクションタンパク質は、腸管透過性及び腸障壁完全性の変化を決定するためにアッセイされる。いくつかの実施形態において、測定されるタンパク質は、クローディン、オクルディン、ZO-1、及びE-カドヘリン(接着結合)タンパク質を含み得るが、これらに限定されない。他のタイトジャンクションタンパク質もアッセイすることができる。いくつかの実施形態において、タイトジャンクションタンパク質は、免疫組織化学的染色を用いて測定される。いくつかの実施形態において、タイトジャンクションタンパク質は、ELISAを用いて測定される。
【0395】
いくつかの実施形態において、血漿シトルリンをアッセイして、腸管透過性及び腸障壁完全性の変化を決定する。血漿シトルリン濃度の低下は、上皮細胞量の減少に相当し、腸の障壁透過性の増加を示している。
【0396】
いくつかの実施形態において、本方法は、スクラロースのような不溶性糖の経口投与、1つ以上の規定された時間後の尿又は血液のような体液の収集、及び標準的な臨床分析技術を介した体液中に含まれる不溶性糖の測定を含む。不溶性糖には、マンニトール、ラクツロース、スクロース、スクラロース及び上記のいずれかの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0397】
いくつかの実施形態において、腸障壁完全性は、in vitroアッセイを用いて測定される。腸障壁機能を測定するのに特に好ましいin vitroアッセイは、経上皮電気抵抗(TEER)によるものである。このようなアッセイは、この分野で周知である(例えば、Srinivasan,2015;Lea,2015)。
【0398】
8.2 粘膜治癒
粘膜治癒は、炎症性及び自己免疫障害における治療効果を評価するための重要なエンドポイントとなっている。IBD(例えば、CD及びUC)臨床試験で現在使用されている完全な粘膜治癒の定義は、「すべての炎症性及び潰瘍性病変が完全に存在しない」ことであるが、この定義は妥当性の確認を欠き、粘膜の改善及び粘膜治癒の悪性度分類を含まない。
【0399】
粘膜治癒は、主に腸炎の内視鏡的評価によって定義される。内視鏡検査における粘膜治癒の有無を評価するために、種々の内視鏡スコアリングシステムが開発されている。これらの指標は、粘膜治癒のかなり限られたエンドポイントを満たさず、それによってすべての粘膜潰瘍の完全な消失が達成されない場合でも、内視鏡的病変の改善を決定することを可能にする。1987年に導入された臨床的Mayoスコアの内視鏡的要素は、現在、臨床現場で最も使用されている粘膜層のスコアである(Schroeder et al.,1987参照)。これには、紅斑、血管パターンの消失、脆弱性、出血、びらん及び潰瘍が含まれ、0~3の範囲である。粘膜治癒は、古典的には0(正常粘膜)又は1(粘膜紅斑、血管パターンの減少、軽度の脆弱性)のスコアであると考えられている(D’Haens,2007)。
【0400】
いくつかの他の実施形態において、粘膜治癒は、患者が軟性S状結腸鏡検査によって評価される内視鏡サブスコアが0又は1であると判定されたときに生じたと判定される。特定のそのような実施形態において、粘膜治癒を経験する患者は、内視鏡サブスコアが0であると決定される。
【0401】
コルチコステロイド及びアミノサリチル酸はいずれも数十年間使用されており、粘膜層を修復するために最も一般的に処方される薬物の1つである(例、UC患者)(Carvalho and Cotter,2017)。それらが粘膜炎症を低減するメカニズムには、核因子(NF)-kB発現及び炎症性サイトカイン(上皮細胞株の細胞遊走及び増殖を直接調節する)を制御することが含まれる。抗TNF薬(例、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムアブ)は、粘膜損傷のいくつかの段階で作用し、粘膜固有層内の炎症性浸潤及びT細胞増殖を制限し(Baert,1999)、メタロプロテイナーゼ及び炎症誘発性分子の発現を下方制御する(Baert,1999)。それらはまた、腸管透過性及び粘膜分泌を増強し、線維芽細胞を活性化し、上皮再生を維持することによって、粘膜の保護能力を回復させ、再生過程に作用する(Suenaert,2002)。
【0402】
粘膜治癒を評価する他の尺度は、バイオマーカーC反応性タンパク質及びカルプロテクチンの測定を含む、当技術分野で周知である。粘膜治癒の評価のためにin vitroバイオマーカーアッセイを使用する利点は、そのようなアッセイが、典型的には、対象に対してはるかに低い侵襲性であることである。組織病理学は、炎症の別の尺度であり、粘膜治癒に特に有益であると引用されている。
【0403】
8.3 STAT3シグナル伝達経路
サイトカイン経路は、炎症及び免疫の多くの態様を含む、広範な生物学的機能を媒介する。JAK1、JAK2、JAK3及びチロシンキナーゼ2(TYK2)を含むJanusキナーゼ(JAK)は、I型及びII型サイトカイン受容体と会合し、サイトカインシグナル伝達を調節する細胞質チロシンキナーゼである。同族受容体とのサイトカインの結合は、受容体関連JAKの活性化を引き起こし、これは、JAKが媒介するシグナル伝達及び転写活性化因子(STAT)タンパク質のチロシンリン酸化、及び最終的には特定の遺伝子セットの転写活性化をもたらす(Schindler et al.,2007,J.Biol.Chem.282:20059-63)。サイトカインレセプターは、典型的にはヘテロ二量体として機能し、その結果、2種類以上のJAKキナーゼが、通常、サイトカインレセプター複合体と会合する。様々なサイトカイン受容体複合体に関連する特異的JAKは、多くの場合、遺伝学的研究によって決定され、他の実験的証拠によって裏付けられている。
【0404】
STAT3は、IBDを含むいくつかの自己免疫及び炎症性障害の活性化において重要な役割を果たしている。本発明の細菌株は、IL-23媒介STAT3活性化を有意に抑制する。したがって、本発明は、対象におけるSTAT3シグナル伝達(すなわち、IL-23媒介STAT3シグナル伝達)を抑制するか、又は別の様式で阻害する方法を提供し、この方法は、上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載された細菌株を含む組成物を対象に投与することを含む。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載される細菌株は、直接的又は間接的にSTAT3活性を抑制する。いくつかの実施形態において、A.shahii株は、STAT3ポリペプチドに直接結合する生物活性分子を産生する。いくつかの代替実施形態において、細菌株は、例えば、IL-23媒介STAT3シグナル伝達経路におけるSTAT3の上流の分子に結合することによって、又はSTAT3活性を調節する分子に結合することによって(例えば、ユビキチン化)、STAT3活性化の間接阻害剤である。例示的な例として、生物活性剤は、IL-23媒介STAT3シグナル伝達経路を抑制するために、IL23、JAK2、又はTYK2のいずれか1つに直接結合又は拮抗し得る。
【0405】
8.4 Th17炎症反応
本発明のいくつかの細菌組成物は、Th17炎症反応を減少させるのに有効である。特に、上述の組成物及び本明細書の他の箇所での処理は、Th17経路サイトカイン(TNF、IL-22、IL-21、及びIL-17を含む)を調節し、Th17経路によって媒介される状態の動物モデルにおいて臨床的改善をもたらすことができる。したがって、本発明の組成物は、炎症性及び自己免疫障害を治療又は予防するために、及びいくつかの実施形態において、Th17によって媒介される疾患又は状態に有用であり得る。特に、本発明の組成物は、Th17炎症反応の上昇を減少又は予防するのに有用であり得る。
【0406】
Th17細胞は、他のサイトカインの中で、IL17A、IL17F、IL-21及びIL-22を産生するTヘルパー細胞のサブセットである。Th17細胞分化は、IL-23によって駆動され得る。これらのサイトカイン及びその他は、多くの炎症性及び自己免疫障害に寄与し、それに基礎をなす十分に確立された炎症性シグナル伝達経路であるTh17経路の重要な部分を形成する(例えば、Ye,2015;Fabro,2015;Yin,2014;Cheluvappa,2014;Schieck,2014;Balato,2014に記載される)。Th17によって媒介されるいくつかの疾患は、Th17経路を抑制することによって改善又は軽減することができ、これは、Th17細胞の分化の低下、又はそれらの活性の低下、又はTh17経路サイトカインのレベルの低下を介している可能性がある。Th17経路によって媒介される疾患は、IL-17A、IL-17F、IL-21、IL-22、IL-26、IL-9のようなTh17細胞によって産生されるサイトカインのレベルの増加によって特徴付けられ得る(Monteleone,2011にレビューされた)。Th17経路によって媒介される疾患は、STAT3又はIL-23受容体のようなTh17関連遺伝子の発現増加によって特徴付けられる可能性がある。Th17経路によって媒介される疾患は、Th17細胞レベルの増加と関連している可能性がある。
【0407】
IL-17は、T細胞活性化を好中球の活性化及び動員に関連付ける重要なサイトカインであり、したがってIL-17は、先天性免疫において中心的な役割を果たす。しかしながら、好中球活性化におけるその役割のために、炎症性腸疾患、乾癬、及び関節リウマチなどの炎症性自己免疫疾患に寄与し得る。本明細書中で使用されるIL-17は、IL-17A、IL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E、及びIL-17Fを含むIL-17ファミリーの任意のメンバーを指すことができる。IL-17を介する疾患及び状態は、IL-17の高発現及び/又は疾患又は状態に罹患した組織におけるIL-17陽性細胞の蓄積、又は存在を特徴とする。同様に、IL-17媒介疾患及び状態は、IL-17レベルの上昇又はIL-17レベルの上昇によって悪化し、IL-17レベルの低下又はIL-17レベルの低下によって軽減される疾患及び状態である。IL-17の炎症反応は局所的又は全身的である。
【0408】
Th17経路によって媒介され得る疾患及び状態の例としては、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎など)、多発性硬化症、関節炎、変形性関節症、乾癬性関節炎及び若年性特発性関節炎など)、視神経脊髄炎(Devic病)、強直性脊椎炎、関節炎、乾癬、全身性エリテマトーデス、セリアック病、喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など)、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPDなど)、がん(乳がん、結腸がん、肺がん又は卵巣がんなど)、ブドウ膜炎、強膜炎、血管炎、ベーチェット病、アテローム性動脈硬化症、アトピー性皮膚炎、肺気腫、歯周炎、アレルギー性鼻炎、及び同種移植片拒絶などが挙げられるが、これらに限定されない。したがって、いくつかの態様において、本発明は、上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載される組成物を投与することによって、これらの状態又は疾患の1つ以上を治療又は予防する方法を提供する。さらなる好ましい実施形態において、これらの状態又は疾患は、STAT3シグナル伝達経路によって媒介される。さらなる好ましい実施形態において、これらの状態又は疾患は、Th17経路を介して媒介される。
【0409】
ある実施形態において、本発明は、本発明の方法組成物を、Th17経路によって媒介される疾患又は状態の治療又は予防におけるTh17細胞分化を減少させる方法において使用するためのものである。ある実施形態において、本発明の組成物は、炎症性又は自己免疫障害の治療又は予防に使用するためであり、ここで、該治療又は予防は、Th17炎症反応の上昇を減少又は予防することによって達成される。ある実施形態において、本発明の組成物は、炎症性又は自己免疫障害を有する患者を治療するために使用され、患者は、IL-17レベルの上昇又はTh17細胞の上昇を有するか、又はTh17炎症反応を示す。ある実施形態において、患者は、慢性炎症性又は自己免疫性の障害又は状態と診断されていてもよく、又は本発明の組成物は、炎症性又は自己免疫性の障害又は状態を、慢性炎症性又は自己免疫性の障害又は状態に進展させるのを予防するために使用されてもよい。ある実施形態において、疾患又は状態は、TNF阻害剤による治療に反応しないことができる。本発明のこれらの用途は、前項に列挙された特定の疾患又は状態のいずれにも適用することができる。
【0410】
Th17経路はしばしば慢性炎症性及び自己免疫障害と関連しているので、本発明の組成物は、上記のような慢性疾患又は状態を治療又は予防するために特に有用であり得る。ある実施形態において、組成物は、慢性疾患の患者に使用される。ある実施形態において、組成物は、慢性疾患の発症を予防するために使用される。
【0411】
本発明の組成物は、Th17経路によって媒介される疾患及び状態を治療するため、及びTh17炎症応答を対処するために有用であり得、したがって、本発明の組成物は、慢性疾患を治療又は予防するため、他の治療(TNF阻害剤による治療など)に応答しなかった患者における疾患を治療又は予防するため、及び/又はTh17細胞に関連する組織損傷及び症状を治療又は予防するために特に有用であり得る。例えば、IL-17は、軟骨及び骨組織におけるマトリックス破壊を活性化することが知られており、IL-17は、軟骨細胞及び骨芽細胞におけるマトリックス生成に対して阻害効果を有するので、本発明の組成物は、骨びらん又は軟骨損傷を治療又は予防するのに有用であり得る。
【0412】
ある実施形態において、本発明の組成物による処理は、IL-17レベル、特にIL-17Aレベルの低下又は上昇の予防を提供する。ある実施形態において、本発明の組成物による処理は、IFN-γ又はIL-6レベルの低下又は上昇の予防を提供する。これらのサイトカインレベルの上昇のそのような低下又は予防は、炎症性及び自己免疫性の障害及び状態、特にTh17経路によって媒介される障害及び状態を治療又は予防するのに有用であり得る。
【0413】
8.5 Th1炎症反応
CD4T細胞は炎症性疾患/障害の病因に重要な役割を果たしており、多くのCD4T細胞のサブセットが慢性腸炎を持続させるドライバーとして特定されている(Imam et al.,2018参照)。例えば、ヘルパーT1型(Th1)細胞はIBD患者の腸管に蓄積し、疾患と直接関連している。インターフェロン-γ(IFN-γ)はTh1細胞によって産生される定義サイトカインである。腸炎症の間、TNFと組み合わせたIFN-γは、腸上皮細胞β-カテニンシグナリングを駆動し、それらの分化及び増殖を制限することが提唱されている(Imam et al.,2018)。
【0414】
9.治療方法
いくつかの実施形態において、本発明は、対象における炎症性又は自己免疫障害を治療又は予防する方法を提供し、その方法は、上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載されるような細菌株を対象に投与することを含む。
【0415】
適宜、炎症性又は自己免疫障害は、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など)、喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など)、関節炎(関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎、又は若年性特発性関節炎など)、脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など)、強直性脊椎炎、乾癬、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、シェーグレン症候群、血管炎、及び1型糖尿病を含む群から選択される。
【0416】
9.1 炎症性腸疾患(IBD)
実施例は、本発明の組成物が腸障壁機能に対して有益な回復効果を有し、またそれらが抗炎症特性を有し、したがってそれらがIBDの治療に有用であり得ることを実証する。
【0417】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、炎症性腸疾患を治療又は予防する方法において使用するための、Alistipes属の細菌株を含む組成物を提供する。本発明者らは、Alistipes株による治療が、マウス疾患モデルにおいて大腸炎の重症度を低減することを特定した。したがって、本発明の組成物は、炎症性疾患の治療に有用であり得る。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、IBDの治療又は予防に使用される。いくつかの実施形態において、本発明は、潰瘍性大腸炎を治療又は予防する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、クローン病を治療又は予防する方法を提供する。ある実施形態において、本発明は、IBDの治療、特に大腸炎及び潰瘍性大腸炎の治療における潰瘍形成及び/又は出血を治療又は予防する方法を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、対象におけるIBDを治療又は予防する方法を提供し、この方法は、A.shahii種の細菌株を含む組成物を対象に投与することを含む。さらなる好ましい実施形態において、本発明は、対象における大腸炎(特に潰瘍性大腸炎)を治療又は予防する方法を提供し、この方法は、A.shahii種の細菌株を含む組成物を対象に投与することを含む。さらなる好ましい実施形態において、本発明は、潰瘍形成及び/又は出血を含む、大腸炎(特に潰瘍性大腸炎)の少なくとも1つの副作用を低減する方法を提供した。
【0418】
追加として、いくつかの実施形態において、本発明は、炎症性腸疾患を治療又は予防する方法において使用するための、Colonithrix属の細菌株を含む組成物を提供する。本発明者らは、Colonithrix株による治療が、マウス疾患モデルにおいて大腸炎の重症度を低減することを特定した。したがって、本発明の組成物は、炎症性疾患の治療に有用であり得る。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、IBDの治療又は予防に使用される。いくつかの実施形態において、本発明は、潰瘍性大腸炎を治療又は予防する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、クローン病を治療又は予防する方法を提供する。ある実施形態において、本発明は、IBDの治療、特に大腸炎及び潰瘍性大腸炎の治療における潰瘍形成及び/又は出血を治療又は予防する方法を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、対象におけるIBDを治療又は予防する方法を提供し、この方法は、C.sana種の細菌株を含む組成物を対象に投与することを含む。さらなる好ましい実施形態において、本発明は、対象における大腸炎(特に潰瘍性大腸炎)を治療又は予防する方法を提供し、この方法は、C.sana種の細菌株を含む組成物を対象に投与することを含む。さらなる好ましい実施形態において、本発明は、潰瘍形成及び/又は出血を含む、大腸炎(特に潰瘍性大腸炎)の少なくとも1つの副作用を低減する方法を提供した。
【0419】
さらに、いくつかの実施形態において、本発明は、炎症性腸疾患を治療又は予防する方法において使用するための、Gemmiger属の細菌株を含む組成物を提供する。本発明者らは、Gemmiger株による治療が、マウス疾患モデルにおいて大腸炎の重症度を低減することを特定した。したがって、本発明の組成物は、炎症性疾患の治療に有用であり得る。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、IBDの治療又は予防に使用される。いくつかの実施形態において、本発明は、潰瘍性大腸炎を治療又は予防する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、クローン病を治療又は予防する方法を提供する。ある実施形態において、本発明は、IBDの治療、特に大腸炎及び潰瘍性大腸炎の治療における潰瘍形成及び/又は出血を治療又は予防する方法を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、対象におけるIBDを治療又は予防する方法を提供し、この方法は、G.formicilis種の細菌株を含む組成物を対象に投与することを含む。さらなる好ましい実施形態において、本発明は、対象における大腸炎(特に潰瘍性大腸炎)を治療又は予防する方法を提供し、この方法は、G.formicilis種の細菌株を含む組成物を対象に投与することを含む。さらなる好ましい実施形態において、本発明は、潰瘍形成及び/又は出血を含む、大腸炎(特に潰瘍性大腸炎)の少なくとも1つの副作用を低減する方法を提供した。
【0420】
IBDは、複数の環境因子及び遺伝因子によって引き起こされる複雑な疾患である。IBDの発症に寄与する因子には、食事、微生物叢、腸管透過性、腸感染に対する炎症反応の増加に対する遺伝的感受性などがある。炎症性腸疾患の症状には、腹痛、嘔吐、下痢、直腸出血、骨盤部の激しい内痙攣/筋痙攣、体重減少及び貧血がある。ある実施形態において、組成物は、IBDに関連する1つ以上の症状を低減するために使用される。ある実施形態において、本発明の組成物は、IBDの1つ以上の症状を予防するために使用される。
【0421】
IBDは、心血管疾患、神経心理学的障害、及びメタボリックシンドロームのような他の疾患又は状態を伴うことがある。ある実施形態において、本発明の組成物は、IBDに伴う1つ以上の疾患又は状態の治療又は予防に使用される。
【0422】
IBDは一般に生検又は結腸鏡検査によって診断される。糞便中のカルプロテクチンの測定は、IBDの予備的診断に有用である。IBDの診断のための他の臨床検査には、全血球数、赤血球沈降速度、包括的代謝パネル、便潜血検査又はC反応性蛋白検査がある。典型的には、臨床検査と生検/結腸鏡検査を組み合わせてIBDの診断を確定する。ある実施形態において、本発明の組成物は、IBDと診断された対象において使用される。
【0423】
ある実施形態において、IBDはクローン病及び/又は潰瘍性大腸炎である。広く上述されるように、いくつかの炎症性サイトカインは、限定されるものではないが、STAT3シグナル伝達及びNFκBシグナル伝達経路媒介サイトカイン(例えば、IL-17、TNF、IL-21、IL-22)を含む、クローン病及び潰瘍性大腸炎患者の炎症性筋膜においてアップレギュレートされることが、研究によって示されている。したがって、STAT3シグナル伝達経路を介したサイトカイン活性及び/又はNFκBシグナル伝達経路を介したサイトカインの阻害は、クローン病及び潰瘍性大腸炎の治療に有用である可能性がある。ある実施形態において、本発明の組成物は、クローン病及び/又は潰瘍性大腸炎の治療又は予防に使用される。
【0424】
クローン病及び潰瘍性大腸炎は、遺伝的危険因子、食事、喫煙及びアルコール摂取のような他の生活様式因子、及びマイクロバイオーム組成を含む、一連の考えられる原因を伴う複雑な疾患である。クローン病は消化管のどこにでも発症するが、潰瘍性大腸炎は大腸と結腸によくみられる。
【0425】
IBDの消化管症状は軽度から重度までの幅があり、腹痛、下痢、便血、回腸炎、便通増加、鼓腸の増加、腸管狭窄、嘔吐、肛門周囲の不快感などがある。本発明の組成物は、クローン病及び/又は潰瘍性大腸炎の1つ以上の消化管症状の予防の治療に使用することができる。
【0426】
クローン病及び潰瘍性大腸炎の全身症状には、思春期の発育不良、食欲減退、発熱及び体重減少などの成長障害がある。クローン病の腸管外の特徴には、ブドウ膜炎、光子虫症、上強膜炎、胆石、血清陰性脊椎関節症、関節炎、関節炎、癒着、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、深部静脈血栓症、肺塞栓症、自己免疫性溶血性貧血、ばち状化及び骨粗鬆症がある。腸管外の特徴は、消化管外で発現するクローン病及び/又は潰瘍性大腸炎に関連する追加の状態である。クローン病患者はまた、痙攣、脳卒中、ミオパシー、末梢神経障害、頭痛及び抑うつのような神経学的合併症に対する感受性の増加を示す。ある実施形態において、本発明の組成物は、クローン病及び/又は潰瘍性大腸炎の1つ以上の全身症状の治療又は予防に使用される。ある実施形態において、本発明の組成物は、クローン病及び/又は潰瘍性大腸炎の1つ以上の腸外特徴の治療又は予防に使用される。
【0427】
クローン病及び潰瘍性大腸炎の診断には、通常、胃鏡検査及び/又は大腸内視鏡検査及び/又は生検、典型的には回腸の生検、放射線学的検査、全血球数、C反応性蛋白検査及び赤血球沈降速度などの複数の検査及び外科的処置を実施することが含まれる。ある実施形態において、本発明の組成物は、クローン病又は潰瘍性大腸炎と診断された対象に使用するためのものである。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、クローン病又は潰瘍性大腸炎と診断された対象の治療に使用される。
【0428】
クローン病及び潰瘍性大腸炎は、罹患した消化管の領域の範囲によって分類される(Gasche et al.,2000)。回腸及び結腸の両方のクローン病は、回腸結腸クローン病として分類される。いくつかの実施形態において、組成物は、回腸結腸クローン症の治療又は予防に使用するためのものである。いくつかの実施形態において、組成物は、回腸だけが罹患している場合、回腸結腸クローン病/クローン回腸炎と診断された対象に使用するためのものである。クローン結腸炎は、結腸だけが侵されている場合に分類される。ある実施形態において、組成物は、クローン回腸炎の治療又は予防に使用される。いくつかの実施形態において、組成物は、クローン病回腸炎と診断された対象において使用される。ある実施形態において、組成物は、クローン結腸炎の治療又は予防に使用される。いくつかの実施形態において、組成物は、クローン病大腸炎と診断された対象において使用される。
【0429】
クローン病及び潰瘍性大腸炎は、プレドニゾンなどのコルチコステロイド、アザチオプリンなどの免疫抑制薬、又はインフリキシマブ、アダリムマブ、及びゴリムマブ、ベドリズマブ及びエトロリズマブなどの生物学的製剤などの多くの治療薬で治療することができる。ある実施形態において、本発明の組成物は、クローン病又は潰瘍性大腸炎の治療又は予防に、上記のものを含むがこれらに限定されない、さらなる治療剤と組み合わせて使用するためのものである。ある実施形態において、さらなる治療剤は、クローン病及び/又は潰瘍性大腸炎の治療又は予防に使用される。
【0430】
9.2 自己免疫障害
ヒトでは、1型糖尿病(T1D)(Bosi,2006)のような多くの自己免疫障害の臨床的発症前に腸管炎症の徴候が検出される。同様に、糖尿病抵抗性ラットと比較して、糖尿病傾向ラットにおける膵島炎発症前に腸透過性の亢進が現れる(Meddings,1999;Neu,2005)。これらの知見は、腸障壁完全性の破壊とそれに続く抗原輸送の増加及び低グレード腸炎症の発生がT1Dの発症に先行し、糖尿病誘発性代謝変化(すなわち、高血糖)に続発するのではなく、その病因に直接関連していることを示している。消化管障壁は、管腔内容物と人体との接触を避けるための基本的なゲートキーパーである。障壁は粘液層と腸上皮障壁(IEB)から構成され、両者は腸管内腔から腸組織及び全身循環への共生細菌、病原体、及び食物抗原の通過を防ぐために極めて重要である。IEBは、タイトジャンクション接着分子(JAM)、トリセルリン、及びアングリンからなる複雑な接合系によって一緒に保持された上皮細胞の単一層であり、それらの間の相互作用及び細胞内足場タンパク質、すなわち、タイトジャンクション完全性を維持し、傍細胞輸送を制御するためには、密着結合タンパク質(ZO)との相互作用が基本である。IEBのT1D変化の患者及びラットモデルにおいて、腸の炎症に関連して報告されている(Meddings,1999;Sapone,2006)。さらに、抗菌ペプチド及びムチンのような免疫調節分子を含む重要な腸障壁である腸粘液層の重要性が最近報告されている(Sorini et al.,2019参照)。
【0431】
いくつかの実施形態において、A.shahii種由来の細菌株は、アレルギー性喘息又は好中球性喘息などの喘息の治療又は予防において治療的利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象における喘息の治療又は予防に使用するためのものである。ある実施形態において、本発明は、喘息の治療又は予防に使用するための、A.shahii種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0432】
いくつかの実施形態において、A.shahii種由来の細菌株は、GVHDの治療又は予防において治療上の利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象におけるGVHDの治療又は予防に使用するためのものである。好ましい実施形態において、本発明は、GVHDの治療又は予防に使用するための、A.shahii種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0433】
いくつかの実施形態において、A.shahii種由来の細菌株は、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎、又は若年性特発性関節炎などの関節炎の治療又は予防において治療上の利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象における関節炎の治療又は予防に使用するためのものである。ある実施形態において、本発明は、喘息の治療又は予防に使用するための、A.shahii種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0434】
いくつかの実施形態において、A.shahii種由来の細菌株は、多発性硬化症の治療又は予防において治療上の利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象における多発性硬化症の治療又は予防に使用するためのものである。ある実施形態において、本発明は、多発性硬化症の治療又は予防に使用するための、A.shahii種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0435】
いくつかの実施形態において、A.shahii種由来の細菌株は、乾癬の治療又は予防において治療上の利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象における乾癬の治療又は予防に使用するためのものである。ある実施形態において、本発明は、乾癬の治療又は予防に使用するための、A.shahii種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0436】
いくつかの実施形態において、A.shahii種由来の細菌株は、全身性エリテマトーデス(SLE)の治療又は予防において治療上の利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象におけるSLEの治療又は予防に使用するためのものである。ある実施形態において、本発明は、SLEの治療又は予防に使用するための、A.shahii種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0437】
いくつかの実施形態において、A.shahii種由来の細菌株は、同種移植片拒絶の治療又は予防において治療上の利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象における同種移植片拒絶の治療又は予防に使用される。ある実施形態において、本発明は、同種移植片拒絶の治療又は予防に使用するための、A.shahii種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0438】
いくつかの実施形態において、C.sana種由来の細菌株は、アレルギー性喘息又は好中球性喘息などの喘息の治療又は予防において治療的利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象における喘息の治療又は予防に使用するためのものである。ある実施形態において、本発明は、喘息の治療又は予防に使用するための、C.sana種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0439】
いくつかの実施形態において、C.sana種由来の細菌株は、GVHDの治療又は予防において治療上の利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象におけるGVHDの治療又は予防に使用するためのものである。好ましい実施形態において、本発明は、GVHDの治療又は予防に使用するための、C.sana種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0440】
いくつかの実施形態において、C.sana種由来の細菌株は、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎、又は若年性特発性関節炎などの関節炎の治療又は予防において治療上の利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象における関節炎の治療又は予防に使用するためのものである。ある実施形態において、本発明は、喘息の治療又は予防に使用するための、C.sana種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0441】
いくつかの実施形態において、C.sana種由来の細菌株は、多発性硬化症の治療又は予防において治療上の利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象における多発性硬化症の治療又は予防に使用するためのものである。ある実施形態において、本発明は、多発性硬化症の治療又は予防に使用するための、C.sana種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0442】
いくつかの実施形態において、C.sana種由来の細菌株は、乾癬の治療又は予防において治療上の利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象における乾癬の治療又は予防に使用するためのものである。ある実施形態において、本発明は、乾癬の治療又は予防に使用するための、C.sana種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0443】
いくつかの実施形態において、C.sana種由来の細菌株は、全身性エリテマトーデス(SLE)の治療又は予防において治療上の利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象におけるSLEの治療又は予防に使用するためのものである。ある実施形態において、本発明は、SLEの治療又は予防に使用するための、C.sana種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0444】
いくつかの実施形態において、C.sana種由来の細菌株は、同種移植片拒絶の治療又は予防において治療上の利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象における同種移植片拒絶の治療又は予防に使用される。ある実施形態において、本発明は、同種移植片拒絶の治療又は予防に使用するための、C.sana種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0445】
いくつかの実施形態において、G.formicilis種由来の細菌株は、アレルギー性喘息又は好中球性喘息などの喘息の治療又は予防において治療的利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象における喘息の治療又は予防に使用するためのものである。ある実施形態において、本発明は、喘息の治療又は予防に使用するための、G.formicilis種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0446】
いくつかの実施形態において、G.formicilis種由来の細菌株は、GVHDの治療又は予防において治療上の利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象におけるGVHDの治療又は予防に使用するためのものである。好ましい実施形態において、本発明は、GVHDの治療又は予防に使用するための、G.formicilis種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0447】
いくつかの実施形態において、G.formicilis種由来の細菌株は、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎、又は若年性特発性関節炎などの関節炎の治療又は予防において治療上の利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象における関節炎の治療又は予防に使用するためのものである。ある実施形態において、本発明は、関節炎の治療又は予防に使用するための、G.formicilis種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0448】
いくつかの実施形態において、G.formicilis種由来の細菌株は、多発性硬化症の治療又は予防において治療上の利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象における多発性硬化症の治療又は予防に使用するためのものである。ある実施形態において、本発明は、多発性硬化症の治療又は予防に使用するための、G.formicilis種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0449】
いくつかの実施形態において、G.formicilis種由来の細菌株は、乾癬の治療又は予防において治療上の利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象における乾癬の治療又は予防に使用するためのものである。ある実施形態において、本発明は、乾癬の治療又は予防に使用するための、G.formicilis種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0450】
いくつかの実施形態において、G.formicilis種由来の細菌株は、全身性エリテマトーデス(SLE)の治療又は予防において治療上の利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象におけるSLEの治療又は予防に使用するためのものである。ある実施形態において、本発明は、SLEの治療又は予防に使用するための、G.formicilis種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0451】
いくつかの実施形態において、G.formicilis種由来の細菌株は、同種移植片拒絶の治療又は予防において治療上の利益を提供し得る。ある実施形態において、本発明の組成物は、対象における同種移植片拒絶の治療又は予防に使用される。ある実施形態において、本発明は、同種移植片拒絶の治療又は予防に使用するための、G.formicilis種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0452】
10.製剤
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、40未満の異なる細菌株を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、30未満の異なる細菌株を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、20未満の異なる細菌株を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、10未満の異なる細菌株を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、5未満の異なる細菌株を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、3未満の異なる細菌株を含む。いくつかの好ましい実施形態において、組成物は、単一の細菌株を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、Clostridium属の細菌を含まない。同じ実施形態のうちのいくつか及びいくつかの他の実施形態において、組成物は、Alistipes senegalensis種の細菌を含まない。
【0453】
本発明の組成物は、細菌(すなわち、生きた細菌及び/又は死滅した細菌)を含む。本発明の好ましい実施形態において、組成物は、凍結乾燥形態で製剤化される。本発明の組成物は、本発明の細菌株を含む顆粒又はゼラチンカプセル、例えば硬ゼラチンカプセルを含み得る。好ましくは、本発明の組成物は凍結乾燥細菌を含む。細菌の凍結乾燥は確立された手順であり、関連するガイダンスは参考文献(Miyamoto-Shinohara,2008;and Day & Stacey,2007)に記載されている。
【0454】
本発明の組成物は、生きた活性細菌培養物を含み得る。実施例は、本発明の細菌の培養が治療的に有効であることを示す。
【0455】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は、不活化されていない、例えば、熱不活化されていない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は殺されていない、例えば、加熱殺されていない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は、減衰されていない、例えば、熱減衰されていない。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は、殺されておらず、不活化されておらず、及び/又は弱毒化されていない。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は生きている。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は生存可能である。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は、腸に部分的又は全体的にコロニーを形成することができる。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物中の細菌株は生存可能であり、腸に部分的又は全体的にコロニーを形成することができる。
【0456】
いくつかの実施形態において、組成物は、殺された生細菌株及び細菌株の混合物を含む。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、腸への細菌株の送達を可能にするようにカプセル化される。カプセル化は、例えば、圧力、酵素活性、又は物理的崩壊などの化学的又は物理的刺激を用いて破壊することにより、組成物を、標的位置での送達まで、劣化から保護するが、これは、pHの変化によって引き起こされ得る。任意の適切なカプセル化方法を使用することができる。例示的なカプセル化技術には、多孔質マトリックス内への封入、固体キャリア表面への取り付け又は吸着、凝集又は架橋剤による自己凝集、及び微孔性膜又はマイクロカプセルの後ろの機械的封じ込めが含まれる。本発明の組成物の調製に有用であり得るカプセル化に関するガイダンスは、当該分野で広く入手可能である(例えば、Mitropoulou,2013;and Kailasapathy,2002)。
【0457】
組成物は経口投与することができ、錠剤、カプセル又は粉末の形態であってもよい。Alistipes属の細菌は偏性嫌気性菌であるため、被包製品が好ましい。
【0458】
本発明の組成物は、本発明の細菌株の治療有効量を含む。治療有効量の細菌株は、患者に有益な効果を発揮するのに十分である。治療有効量の細菌株は、患者の腸への送達及び/又は部分的若しくは完全なコロニー形成をもたらすのに十分であり得る。
【0459】
細菌の適切な1日用量は、例えば、成人ヒトでは、約1×10~約1×1011コロニー形成単位(CFU);例えば、約1×10~約1×1010CFU;別の例では、約1×10~約1×1010CFU;別の例では、約1×10~約1×1011CFU;別の例では、約1×10~約1×1010CFU;別の例では、約1×10~約1×1011CFUであり得る。
【0460】
ある実施形態において、細菌の用量は、1日当たり少なくとも10細胞、例えば、1日当たり少なくとも1010、少なくとも1011、又は少なくとも1012細胞である。
【0461】
ある実施形態において、組成物の用量は、組成物の重量に関して、約1×10~約1×1011コロニー形成単位(CFU)/gの量の細菌株を含み得る。用量は、成人に適していてもよい。例えば、組成物は、約1×10~約1×1011CFU/g;例えば、約1×10~約1×1010CFU/g;別の例では、約1×10~約1×1010CFU/g;別の例では、約1×10~約1×1011CFU/g;別の例では、約1×10~約1×1010CFU/g;別の例では、約1×10~約1×1011CFU/g、約1×10~約1×1010CFU/gを含み得る。例えば、約1×10~約1×1010CFU/g。用量は、例えば、最大1g、3g、5g、及び10g又はそれ以上であり得る。
【0462】
いくつかの実施形態において、上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載された組成物は、組成物の重量に関して、1グラム当たり約1×10~約1×1011コロニー形成単位の細菌株の量を含み、それからなり、又は本質的にそれからなる。
【0463】
いくつかの実施形態において、上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載された組成物は、500mg~1000mg、600mg~900mg、700mg~800mg、500mg~750mg、又は750mg~1000mgの用量で細菌株を含む。ある実施形態において、本発明は、上記医薬組成物を提供し、該医薬組成物中の凍結乾燥細菌が、500mg~1000mg、600mg~900mg、700mg~800mg、500mg~750mg、又は750mg~1000mgの用量で投与される。
【0464】
組成物はプロバイオティックとして処方することができる。プロバイオティックとは、FAO/WHOによって、適切な量で投与された場合に宿主に健康上の利益をもたらす生きた微生物と定義されている。
【0465】
典型的には、本発明の組成物のようなプロバイオティックは、必要に応じて、少なくとも1つの適切なプレバイオティクス化合物と組み合わされる。プレバイオティクス化合物は、通常、上部消化管で分解又は吸収されない、オリゴ糖又は多糖、又は糖アルコールなどの非消化性炭水化物である。既知のプレバイオティクスには、イヌリン及びトランスガラクトオリゴ糖のような市販製品が含まれる。
【0466】
他のプレバイオティクス化合物(例えば、ビタミンC)は、酸素スカベンジャーとして、及びインビボでの送達及び/又は部分的又は全コロニー形成及び生存を改善するために含まれ得る。あるいは、本発明のプロバイオティック組成物は、牛乳又は乳清ベースの発酵乳製品のような食品又は栄養製品として、又は医薬製品として経口投与することができる。
【0467】
ある実施形態において、本発明のプロバイオティック組成物は、総重量組成物に対して約1~約30重量%(例えば、5~20重量%)の量のプレバイオティクス化合物を含む。既知のプレバイオティクスには、イヌリン及びトランスガラクトオリゴ糖のような市販製品が含まれる。
【0468】
いくつかの実施形態において、プレバイオティクスは、フルクトオリゴ糖(又はFOS)、短鎖フルクトオリゴ糖、イヌリン、イソマルトリゴサッカライド、ペクチン、キシロオリゴ糖(又はXOS)、キトサノリゴ糖(又はCOS)、β-グルカン、アラブルガム変性及び耐性澱粉、ポリデキストロース、タガトース、アカシア繊維、キャロブ、オーツ、及びシトラス繊維を含む、又はそれらからなる群から選択される炭水化物である。一態様では、プレバイオティクスは短鎖フルクトオリゴ糖である。短鎖FOSは消化可能な炭水化物ではない。通常、ビート糖の変換によって得られ、3つのグルコース分子が結合した糖分子を含む。
【0469】
本発明の組成物は、薬学的に許容される賦形剤又は担体、例えば、薬学的賦形剤のハンドブックに記載されているものを含んでもよい。治療的使用のための許容可能な担体又は希釈剤は、医薬分野で周知であり、例えば、レミントンの医薬科学に記載されている。適切な担体の例としては、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールなどが挙げられる。適切な希釈剤の例としては、エタノール、グリセロール及び水が挙げられる。薬学的担体、賦形剤又は希釈剤の選択は、意図された投与経路及び標準的な薬学的実践に関して選択することができる。医薬組成物は、担体、賦形剤又は希釈剤として、又はそれに加えて、1つ以上の適切な結合剤、潤滑剤、懸濁剤、コーティング剤、及び/又は可溶化剤を含んでもよい。適切な結合剤の例としては、デンプン、ゼラチン、グルコースのような天然糖、無水乳糖、遊離流ラクトース、β-ラクトース、トウモロコシ甘味料、アラビアゴム、トラガカントゴム又はアルギン酸ナトリウムのような天然及び合成ゴム、カルボキシメチルセルロース及びポリエチレングリコールが挙げられる。適切な潤滑剤の例としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。保存剤、安定剤、染料、さらには香味剤も医薬組成物中に提供することができる。保存剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、システイン及び4-ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられる。例えば、いくつかの実施形態において、保存剤は、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及び4-ヒドロキシ安息香酸のエステルから選択される。酸化防止剤及び懸濁剤もまた使用され得る。適切な担体のさらなる例は糖である。適切な保存剤のさらなる例はシステインである。
【0470】
本発明の組成物は食品として処方することができる。例えば、食品は、栄養補助食品のような本発明の治療効果に加えて、栄養学的利益を提供することができる。同様に、食品は、本発明の組成物の味を高めるために、又は医薬組成物よりもむしろ一般的な食品物品により類似することにより、組成物を消費するのにより魅力的にするために製剤化することができる。ある実施形態において、本発明の組成物は、ミルクベースの製品として処方される。用語「ミルクベースの製品」とは、様々な脂肪含有量を有する液体又は半固体のミルクベース又はホエーベースの製品を意味する。乳ベースの製品は、例えば、ウシの乳、ヤギの乳、ヒツジの乳、脱脂乳、全乳、粉ミルクと加工されていない乳清から組換えられた乳、又はヨーグルト、凝乳、凝乳、酸味牛乳、酸味のある全乳、バターミルク及び他の酸味牛乳製品のような加工製品であり得る。あるいは、牛乳は、例えば、大豆乳、オートミルク、アーモンドミルク、ココナッツミルク、又はマカダミアミルクを含む、植物ベースの牛乳であってもよい。もう1つの重要なグループには、乳清飲料、発酵乳、濃縮乳、乳児又は乳児乳、フレーバーミルク、アイスクリームなどのミルク飲料、甘味料などのミルク含有食品が含まれる。
【0471】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示された組成物は、Alistipes属の1つ以上の細菌株を含み、他のいかなる種由来の細菌も含まないか、又は最低限若しくは生物学的に無関係な量の別の種由来の細菌のみを含む。したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、Alistipes属(例えば、Alistipes shahii)の1つ以上の細菌株を含む組成物を提供し、治療に使用するために、他のいかなる種由来の細菌も含まないか、又は最低限若しくは生物学的に無関係な量の別の種由来の細菌のみを含む。
【0472】
いくつかの実施形態において、組成物は、Alistipes属の1つ以上の細菌株を含み、他のいかなる属由来の細菌も含まないか、又は最低限若しくは生物学的に無関係な量の別の属由来の細菌のみを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、Alistipes属(例えば、Alistipes shahii)の1つ以上の細菌株を含み、他のいかなる属由来の細菌も含まないか、又は最低限若しくは生物学的に無関係な量の別の属由来の細菌のみを含む。
【0473】
ある実施形態において、本明細書に開示される組成物は、単一の細菌種を含み、他のいかなる細菌種も含まない。ある実施形態において、本明細書に開示される組成物は、単一の細菌株を含み、他の細菌株を含まない。例えば、本発明の組成物は、A.shahii株の細菌のみを含むことができる。そのような組成物は、de minimisのみを含んでもよく、又は生物学的に無関係な量の他の細菌株又は種を含んでもよい。このような組成物は、他の種の生物を実質的に含まない培養物であってもよい。いくつかの実施形態において、そのような組成物は、乾燥形態であってもよく、他の種の生物を実質的に含まない。
【0474】
いくつかの実施形態において、本発明は、Alistipes属の単一の細菌株を含み、治療で使用するために、任意の他の株由来の細菌を含まないか、又は最低限若しくは別の株由来の細菌のみを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、Alistipes shahii種(例えば、Alistipes shahii MH21-1、Alistipes shahii MH21-2、又はAlistipes shahii MH21-3)の単一の細菌株を含み、治療に使用するために、他のいかなる種由来の細菌も含まないか、又は最低限若しくは生物学的に無関係な量の別の種由来の細菌のみを含む。
【0475】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示された組成物は、Colonithrix属の1つ以上の細菌株を含み、他のいかなる種由来の細菌も含まないか、又は最低限若しくは生物学的に無関係な量の別の種由来の細菌のみを含む。したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、Colonithrix属(例えば、C.sana)の1つ以上の細菌株を含む組成物を提供し、治療に使用するために、他のいかなる種由来の細菌も含まないか、又は最低限若しくは生物学的に無関係な量の別の種由来の細菌のみを含む。
【0476】
いくつかの実施形態において、組成物は、Colonithrix属の1つ以上の細菌株を含み、他のいかなる属由来の細菌も含まないか、又は最低限若しくは生物学的に無関係な量の別の属由来の細菌のみを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、Colonithrix属の1つ以上の細菌株を含み、他のいかなる属由来の細菌も含まないか、又は最低限若しくは生物学的に無関係な量の別の属由来の細菌のみを含む。
【0477】
ある実施形態において、本明細書に開示される組成物は、単一の細菌種を含み、他のいかなる細菌種も含まない。ある実施形態において、本明細書に開示される組成物は、単一の細菌株を含み、他の細菌株を含まない。例えば、本発明の組成物は、C.sana株の細菌のみを含むことができる。そのような組成物は、de minimisのみを含んでもよく、又は生物学的に無関係な量の他の細菌株又は種を含んでもよい。このような組成物は、他の種の生物を実質的に含まない培養物であってもよい。いくつかの実施形態において、そのような組成物は、乾燥形態であってもよく、他の種の生物を実質的に含まない。
【0478】
いくつかの実施形態において、本発明は、Colonithrix属の単一の細菌株を含み、治療に使用するために、他のいかなる株由来の細菌も含まないか、又は最低限若しくは生物学的に無関係な量の別の株由来の細菌のみを含む、組成物を提供する。
【0479】
いくつかの実施形態において、本発明は、Colonithrix sana種(例えば、C.sana MH35-1又はC.sana MH35-2)の単一の細菌株を含み、治療に使用するために、他のいかなる株由来の細菌も含まないか、又は最低限若しくは生物学的に無関係な量の別の株由来の細菌のみを含む、組成物を提供する。
【0480】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示された組成物は、Gemmiger属の1つ以上の細菌株を含み、他のいかなる種由来の細菌も含まないか、又は最低限若しくは生物学的に無関係な量の別の種由来の細菌のみを含む。したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、Gemmiger属(例えば、Gemmiger formicilis)の1つ以上の細菌株を含む組成物を提供し、治療に使用するために、他のいかなる種由来の細菌も含まないか、又は最低限若しくは生物学的に無関係な量の別の種由来の細菌のみを含む。
【0481】
いくつかの実施形態において、組成物は、Gemmiger属の1つ以上の細菌株を含み、他のいかなる属由来の細菌も含まないか、又は最低限若しくは生物学的に無関係な量の別の属由来の細菌のみを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、Gemmiger属(例えば、Gemmiger formicilis)の1つ以上の細菌株を含み、他のいかなる属由来の細菌も含まないか、又は最低限若しくは生物学的に無関係な量の別の属由来の細菌のみを含む。
【0482】
ある実施形態において、本明細書に開示される組成物は、単一の細菌種を含み、他のいかなる細菌種も含まない。ある実施形態において、本明細書に開示される組成物は、単一の細菌株を含み、他の細菌株を含まない。例えば、本発明の組成物は、G.formicilis株の細菌のみを含むことができる。そのような組成物は、de minimisのみを含んでもよく、又は生物学的に無関係な量の他の細菌株又は種を含んでもよい。このような組成物は、他の種の生物を実質的に含まない培養物であってもよい。いくつかの実施形態において、そのような組成物は、乾燥形態であってもよく、他の種の生物を実質的に含まない。
【0483】
いくつかの実施形態において、本発明は、Gemmiger属の単一の細菌株を含み、治療で使用するために、任意の他の株由来の細菌を含まないか、又は最低限若しくは別の株由来の細菌のみを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、Gemmiger種(例えば、Gemmiger formicilis MH32-1)の単一の細菌株を含み、治療に使用するために、他のいかなる種由来の細菌も含まないか、又は最低限若しくは生物学的に無関係な量の別の種由来の細菌のみを含む。
【0484】
ある実施形態において、本発明の組成物は、単一の細菌株又は種を含み、他の細菌株又は種を含まない。そのような組成物は、de minimisのみを含んでもよく、又は生物学的に無関係な量の他の細菌株又は種を含んでもよい。このような組成物は、他の種の生物を実質的に含まない培養物であってもよい。
【0485】
ある実施形態において、本発明の組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16の細菌株又は種からなる。ある実施形態において、組成物は、1~10個、好ましくは1~5個の細菌株又は種からなる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、同一種内からの2つ以上の株(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40又は45株を超える)を含み、任意選択的に、任意の他の種由来の細菌を含まない。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、同一種内からの50株未満(例えば、45、40、35、30、25、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4又は3株未満)を含み、任意選択的に、任意の他の種由来の細菌を含まない。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、同一種内由来の1-40、1-30、1-20、1-19、1-18、1-15、1-10、1-9、1-8、1-7、1-6、1-5、1-4、1-3、1-2、2-50、2-40、2-30、2-20、2-15、2-10、2-5、6-30、6-15、16-25、又は31-50株を含み、任意に、他の種由来の細菌を含まない。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、同一属内からの複数の種(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20、23、25、30、35又は40種を超える)を含み、任意に、他の属からの細菌を含まない。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、同じ属内からの50種未満(例えば、50、45、40、35、30、25、20、15、12、10、8、7、6、5、4又は3種未満)を含み、任意に、他の属からの細菌を含まない。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、同一属内の1-50、1-40、1-30、1-20、1-15、1-10、1-9、1-8、1-7、1-6、1-5、1-4、1-3、1-2、2-50、2-40、2-30、2-20、2-15、2-10、2-5、6-30、6-15、16-25、又は31-50種を含む。本発明は、上記のいずれかの組み合わせを含む。
【0486】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、2つ以上の細菌株又は種を含む。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、同一種内からの複数の株(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40又は45株を超える)を含み、任意選択的に、任意の他の種由来の細菌を含まない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、同じ種内からの50株未満(例えば、45、40、35、30、25、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4又は3株未満)を含み、任意に、他の種由来の細菌を含まない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、1-40、1-30、1-20、1-19、1-18、1-15、1-10、1-9、1-8、1-7、1-6、1-5、1-4、1-3、1-2、2-50、2-40、2-30、2-20、2-15、2-10、2-5、6-30、6-15、16-25、又は31-50株を含む。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、同一属内に由来する複数の種(例えば、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、12種、15種、17種、20種、23種、25種、30種、35種、又は40種)を含み、任意に、他の属由来の細菌を含まない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、同じ属内からの50未満の種(例えば、50、45、40、35、30、25、20、15、12、10、8、7、6、5、4又は3種未満)を含み、任意に、他の属からの細菌を含まない。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、同一属内の1-50、1-40、1-30、1-20、1-15、1-10、1-9、1-8、1-7、1-6、1-5、1-4、1-3、1-2、2-50、2-40、2-30、2-20、2-15、2-10、2-5、6-30、6-15、16-25、又は31-50株を含み、任意に、他の属由来の細菌を含まない。本発明は、上記のいずれかの組み合わせを含む。
【0487】
ある実施形態において、本発明の医薬組成物は、1-50、1-40、1-30、1-20、1-19、1-18、1-17、1-16、1-15、1-14、1-13、1-12、1-11、1-10、1-9、1-8、1-7、1-6、1-5、1-4、1-3又は2種類の異なる細菌株の間のような、1-50個の異なる細菌株を含む。ある実施形態において、本発明の医薬組成物は、1-50、1-40、1-30、1-20、1-19、1-18、1-17、1-16、1-15、1-14、1-13、1-12、1-11、1-10、1-9、1-8、1-7、1-6、1-5、1-4、1-3又は2種類の異なる細菌株の間のような、1-50個の異なる細菌株を含む。
【0488】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、追加として、受託番号V21/014432、V21/014433、及び/又はV21/014434の下にNMI(Australia)において寄託された株と同じ安全性及び治療効力特性を有する細菌株を含む。
【0489】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、追加として、受託番号V21/019213及び/又はV21/019214の下にNMI(Australia)において寄託された株と同じ安全性及び治療効力特性を有する細菌株を含む。
【0490】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、追加として、受託番号V21/011520の下にNMI(Australia)において寄託された株と同じ安全性及び治療効力特性を有する細菌株を含む。
【0491】
本発明の組成物が2つ以上の細菌株、種又は属を含むいくつかの実施形態において、個々の細菌株、種又は属は、分離、同時又は連続投与のためであり得る。例えば、組成物は、2つ以上の細菌株、種又は属のすべてを含んでもよく、又は細菌株、種又は属は、別々に貯蔵されてもよく、別々に、同時に又は連続的に投与されてもよい。いくつかの実施形態において、2つ以上の細菌株、種又は属は、別々に貯蔵されるが、使用前に一緒に混合される。
【0492】
好ましくは、本明細書に開示された組成物は、本発明の細菌株による腸管への送達、及び/又は部分的又は完全なコロニー形成を可能にするために、消化管(GI)に投与されるべきである。言い換えれば、細菌は消化管の一部又は全部にコロニーを形成する可能性があり、このようなコロニー形成は一過性又は永続的である可能性がある。より具体的には、「腸の全コロニー形成」という語句は、細菌が腸のすべての部分(すなわち、小腸、大腸及び直腸)にコロニー形成したことを意味する。さらに、又は代替的に、用語「全コロニー形成」は、細菌が腸の一部又は全部に永久的に生着することを意味する。
【0493】
同様に、「腸の部分的コロニー形成」という語句は、細菌が腸の一部ではあるがすべてではない部分にコロニー形成したことを意味する。さらに、又は代替的に、用語「部分的コロニー形成」は、細菌が腸の一部又は全部に一時的に生着することを意味する。
【0494】
細菌の生着の一過性は、投与間隔の終了後に本発明の細菌株の存在量を定期的に(例えば、毎日又は毎週)評価して、休薬期間、すなわち、投与間隔の終了から本発明の細菌株の検出可能なレベルが存在しないまでの間の期間を決定することによって(例えば、糞便試料中で)決定することができる。いくつかの実施形態において、ウォッシュアウト期間は、14日以内、12日以内、10日以内、7日以内、4日以内、3日以内、2日以内、又は1日以内である。
【0495】
いくつかの実施形態において、上記又は本明細書の他の箇所に記載された細菌は、大腸内で一時的に生着する。
【0496】
いくつかの実施形態において、本発明の細菌株は、ヒト成人糞便から得られる。本発明の組成物が2つ以上の細菌株を含むいくつかの実施形態において、細菌株のすべては、ヒト成人糞便から得られるか、又は他の細菌株が存在する場合、それらは、最小量のみ存在する。細菌は、これらのヒト成人糞便から得られ、本発明の組成物に使用された後に培養され得る。
【0497】
いくつかの実施形態において、1つ以上のAlistipes細菌株は、本発明の組成物中の唯一の治療活性剤である。いくつかの実施形態において、組成物中の細菌株は、本発明の組成物中の唯一の治療活性剤である。
【0498】
本発明に従って使用するための組成物は、市販承認を必要とする場合もあれば、必要としない場合もある。
【0499】
ある実施形態において、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、該細菌株は乾燥形態である。場合によっては、投与前に細菌株を再構成する。場合によっては、溶解は、本明細書に記載される希釈剤の使用による。ある実施形態において、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、該細菌株は、スプレー乾燥される。ある実施形態において、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、細菌株は、凍結乾燥又はスプレー乾燥され、生きている。ある実施形態において、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、細菌株は、凍結乾燥又はスプレー乾燥され、生存可能である。ある実施形態において、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、細菌株は凍結乾燥又はスプレー乾燥され、腸に部分的又は全体的にコロニー形成することができる。ある実施形態において、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、細菌株は乾燥(例えば、凍結乾燥又はスプレー乾燥)され、生存可能であり、腸を部分的又は全体的にコロニー形成することができる。いくつかの同じ実施形態及びいくつかの代替実施形態において、細菌株は腸に一時的にコロニー形成する。
【0500】
場合によっては、凍結乾燥菌株又はスプレー乾燥菌株を投与前に再構成する。場合によっては、溶解は、本明細書に記載される希釈剤の使用による。
【0501】
本発明の組成物は、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体を含むことができる。
【0502】
ある実施形態において、本発明は、本発明の細菌株と、薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤とを含む医薬組成物を提供し、ここで、細菌株は、それを必要とする対象に投与された場合に、炎症性又は自己免疫障害を治療又は予防するのに十分な量である。いくつかの好ましい実施形態において、炎症性又は自己免疫障害は、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など)、喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など)、関節炎(関節リウマチ、変形性関節炎、乾癬性関節炎、又は若年性特発性関節炎など)、脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など)、強直性脊椎炎、乾癬、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、シェーグレン症候群、血管炎、及び1型糖尿病を含む群から選択される。
【0503】
ある実施形態において、本発明は、本発明の細菌株と、薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤とを含む医薬組成物を提供し、ここで、細菌株は、STAT3シグナル伝達経路によって媒介される炎症性又は自己免疫障害を治療又は予防するのに十分な量である。好ましい実施形態において、該障害は、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など)、喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など)、関節炎(関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎、又は若年性特発性関節炎など)、脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など)、強直性脊椎炎、乾癬、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、シェーグレン症候群、血管炎、及び1型糖尿病からなる群から選択される。
【0504】
ある実施形態において、本発明は、上記医薬組成物を提供し、ここで、細菌株の量は、組成物の重量に関して、1グラム当たり約1×10~約1×1011コロニー形成単位(CFU)である。
【0505】
ある実施形態において、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、組成物は、最大1g、3g、5g若しくは10g又はそれ以上の用量で投与される。
【0506】
ある実施形態において、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、組成物は、経口、直腸、皮下、鼻、口腔、及び舌下からなる群から選択される方法によって投与される。
【0507】
ある実施形態において、本発明は、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール及びソルビトールからなる群から選択される担体を含む、上述の医薬組成物を提供する。
【0508】
ある実施形態において、本発明は、エタノール、グリセロール及び水からなる群から選択される希釈剤を含む、上述の医薬組成物を提供する。
【0509】
ある実施形態において、本発明は、デンプン、ゼラチン、グルコース、無水乳糖、遊離流ラクトース、β-ラクトース、コーン甘味料、アカシア、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及び塩化ナトリウムからなる群から選択される賦形剤を含む、上記医薬組成物を提供する。
【0510】
ある実施形態において、本発明は、保存剤、酸化防止剤及び安定剤の少なくとも1つをさらに含む、上記医薬組成物を提供する。
【0511】
ある実施形態において、本発明は、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及び4-ヒドロキシ安息香酸のエステルからなる群から選択される保存剤を含む、上記医薬組成物を提供する。
【0512】
ある実施形態において、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、該細菌株は乾燥形態(例えば、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動床乾燥など)である。
【0513】
ある実施形態において、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、この組成物が約4℃又は約25℃で密封容器に貯蔵され、容器が50%の相対湿度を有する雰囲気中に置かれる場合、コロニー形成単位で測定した場合、細菌株の少なくとも80%が、少なくとも約1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、1年、1.5年、2年、2.5年又は3年の期間後に残る。
【0514】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、本明細書に記載される組成物を含む密封容器内に提供される。いくつかの実施形態において、密封容器は、小袋又は瓶である。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、本明細書に記載される組成物を含む注射器で提供される。
【0515】
本発明の組成物は、いくつかの実施形態において、薬学的製剤として提供され得る。例えば、組成物は、錠剤又はカプセルとして提供することができる。いくつかの実施形態において、カプセルは、ゼラチンカプセル(「ゲル-キャップ」)である。カプセルは硬質カプセルでも軟質カプセルでもよい。いくつかの実施形態において、製剤は軟質カプセルである。ソフトカプセルは、カプセルシェルに存在する例えばグリセロール、ソルビトール、マルチトール及びポリエチレングリコールのような軟化剤の添加により、ある種の弾力性及び柔軟性を有するカプセルである。軟質カプセルは、例えば、ゼラチン又はデンプンに基づいて製造することができる。ゼラチンベースの軟質カプセルは、様々な供給者から市販されている。例えば、経口又は直腸内などの投与方法に応じて、軟カプセルは、様々な形状を有することができ、例えば、丸い、卵形、長円形、又は魚雷形であってもよい。軟質カプセルは、例えば、シェーラー法、アコーゲル法、又は液滴又はブロー法などの従来の方法によって製造することができる。
【0516】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、経口投与される。経口投与では飲み込んで消化管に入ることがある。
【0517】
経口投与に適した医薬製剤には、固体プラグ、固体微粒子、半固体及び液体(多相又は分散系を含む);多粒子、液体(例えば、水溶液)、エマルジョン又は粉末を含有する軟又は硬カプセル;エマルジョン又は粉末;ロゼンジ(液体充填を含む);チュー;ゲル;高速分散剤形;フィルム;胚珠;スプレー;及び頬粘膜/粘膜接着性パッチが含まれる。
【0518】
いくつかの実施形態において、薬学的製剤は、腸溶性製剤、すなわち、経口投与による本発明の組成物の腸への送達に適した(例えば、胃のpHに抵抗性の)胃耐性製剤である。腸溶性製剤は、細菌又は組成物の他の成分が酸感受性(例えば、胃の条件下で分解されやすい)の場合に特に有用であり得る。
【0519】
いくつかの実施形態において、腸溶性製剤は腸溶性コーティングを含む。いくつかの実施形態において、製剤は、腸溶性被覆投与形態である。例えば、製剤は腸溶性錠剤又は腸溶性カプセルなどであってもよい。腸溶性コーティングは、従来の腸溶性コーティング、例えば、経口送達のための錠剤、カプセルなどのための従来のコーティングであってもよい。製剤は、例えば腸溶性ポリマー(例えば、酸不溶性ポリマー)の薄膜層などのフィルムコーティングを含んでもよい。
【0520】
いくつかの実施形態において、腸溶性製剤は、腸溶性コーティングを必要とせずに、本質的に腸溶性であり、例えば、胃溶性である。したがって、いくつかの実施形態において、製剤は、腸溶性コーティングを含まない腸溶性製剤である。いくつかの実施形態において、製剤は、熱ゲル化材料から作製されたカプセルである。いくつかの実施形態において、熱ゲル化材料は、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のようなセルロース材料である。いくつかの実施形態において、カプセルは、フィルム形成ポリマーを含まないシェルを含む。いくつかの実施形態において、カプセルは、シェルを含み、シェルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含み、(米国特許公開第2016/0067188号に記載されているように)フィルム形成ポリマーを含まない。いくつかの実施形態において、製剤は、本質的に腸内カプセル(例えば、CapsugelからのVCAPS(登録商標))である。
【0521】
いくつかの実施形態において、組成物は、A.shahiiの細菌株を含むプロバイオティック又は医療食品である。細菌は、例えば、プロバイオティックとして、カプセル、錠剤、カプレット、丸剤、トローチ、ロゼンジ、パワー、及び/又は顆粒として投与することができる。この株はまた、栄養補助食品、従来の食品、医療食品、又は薬物として処方することもできる。細菌はまた、糞便移植の一部として、又は座薬を介して投与することもできる。いくつかの実施形態において、組成物は、本明細書にさらに記載されるように、腸に送達されるために製剤化される。いくつかの実施形態において、組成物は、プレバイオティクスをさらに含む。
【0522】
追加薬剤との同時投与
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法は、さらに、第2の物質及び/又は治療を(例えば、治療の一部として)対象に同時投与することを含むことができる。併用療法は、使用される場合、特定の適応に合わせて調整される。例えば、炎症性障害(例えば、炎症性腸疾患)を治療するためにA.shahii種の株を投与する場合、炎症性障害の臨床治療のために承認された当該分野で公知の抗炎症剤又は治療法と組み合わせて投与することができる。他の適応症は、同様に、例えば、本明細書に記載されているようなA.shahii種の株を、当該分野で公知の、又はそれらの適応症の臨床治療のために承認された薬剤と組み合わせて治療することができる。
【0523】
同様に、炎症性障害(例えば、炎症性腸疾患)を治療するためにC.sana種の株を投与する場合、当該分野で公知の、又は炎症性障害の臨床治療のために承認された抗炎症剤又は治療法と組み合わせて投与することができる。他の適応症は、同様に、例えば、本明細書に記載されているようなC.sana種の株を、当該分野で公知の、又はそれらの適応症の臨床治療のために承認された薬剤と組み合わせて治療することができる。
【0524】
同様に、炎症性障害(例えば、炎症性腸疾患)を治療するためにG.formicilis種の株を投与する場合、当該分野で公知の、又は炎症性障害の臨床治療のために承認された抗炎症剤又は治療法と組み合わせて投与することができる。他の適応症は、同様に、例えば、本明細書に記載されているようなG.formicilis種の株を、当該分野で公知の、又はそれらの適応症の臨床治療のために承認された薬剤と組み合わせて治療することができる。
【0525】
炎症性腸疾患の治療に用いることができる適切な抗炎症剤は、必ずしも限定されるものではないが、5-アミノサリチウム酸塩、コルチコステロイド、アザチオプリン、インフリキシマブ、及びアダリムマブを含む群を含む。
【0526】
本発明は、抗炎症剤をさらに含む、上述の組成物も含む。このような組成物は、任意に、単一の組成物の形態であってもよく、又は代替的に、2つ以上の別々の組成物の形態であってもよい。
【0527】
11.スクリーニング方法
本発明はまた、本発明の方法での使用に適した細菌株を特定する方法を含む。このような方法は、典型的には、特定の機能的活性を有する細菌株のスクリーニングを含む。適切なアッセイには、下記の実施例に記載されるものが含まれるが、腸障壁機能、粘膜治癒、NF-κB活性化の調節、又はSTAT3シグナル伝達の調節を測定するための任意のアッセイは、適用可能なものと同様である。
【0528】
いくつかの実施形態において、スクリーニング方法は、Alistipesの細菌株がSTAT3シグナル伝達経路を調節する能力を特定する。例示的な例として、本発明は、標的細胞におけるSTAT3シグナル伝達の活性化を遮断するか、又は別の様式で阻害する方法を提供し、この方法は、標的細胞を、Alistipes shahii種の細菌細胞調製物の少なくとも可溶性成分と接触させて、標的細胞におけるSTAT3シグナル伝達の活性化を遮断するか、又は別の様式で阻害することを含む。
【0529】
いくつかの実施形態において、スクリーニング方法は、Colonithrixの細菌株がSTAT3シグナル伝達経路を調節する能力を特定する。例示的な例として、本発明は、標的細胞におけるSTAT3シグナル伝達の活性化を遮断するか、又は別の様式で阻害する方法を提供し、この方法は、標的細胞を、C.sana種の細菌細胞調製物の少なくとも可溶性成分と接触させて、標的細胞におけるSTAT3シグナル伝達の活性化を遮断するか、又は別の様式で阻害することを含む。
【0530】
いくつかの実施形態において、スクリーニング方法は、Gemmigerの細菌株がSTAT3シグナル伝達経路を調節する能力を特定する。例示的な例として、本発明は、標的細胞におけるSTAT3シグナル伝達の活性化を遮断するか、又は別の様式で阻害する方法を提供し、この方法は、標的細胞を、G.formicilis種の細菌細胞調製物の少なくとも可溶性成分と接触させて、標的細胞におけるSTAT3シグナル伝達の活性化を遮断するか、又は別の様式で阻害することを含む。
【0531】
このタイプのいくつかの実施形態において、標的細胞は、機能性レポーター細胞(例えば、HEK細胞)、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、上皮細胞、及び内皮細胞についての細菌株のスクリーニングを含む群から選択される。
【0532】
いくつかの実施形態において、細菌細胞調製物は、細菌細胞培養物を含む。好ましくは、可溶性成分は、細菌細胞培養物の上清を含み得る。このタイプのいくつかの実施形態において、可溶性成分は、細菌細胞を実質的に枯渇させる。
【0533】
いくつかの代替実施形態において、細菌細胞調製物は、細菌細胞ペレットを含む。好ましくは、細胞ペレットの細菌細胞は、当該分野で公知の任意の手段によって溶解される。細胞溶解後、細胞溶解物可溶性画分が不溶性画分から分離されることが典型的である。細胞溶解物は、スクリーニングアッセイ中である前にさらなる処理を受けることができる。(例えば、緩衝液中で希釈された)又は処理試薬に曝された。
【0534】
12.投与様式
好ましくは、本発明の組成物は、本発明の細菌株とともに腸への送達を可能にするために、消化管に投与されるべきである。好ましくは、本発明の組成物は、本発明の細菌株とともに腸への送達を可能にするために、消化管に投与されるように製剤化される。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、本発明の細菌株による腸管の送達及び部分的又は完全なコロニー形成を可能にするために、消化管に投与されるように製剤化される。
【0535】
ある実施形態において、本発明の組成物は、発泡体として、スプレー又はゲルとして投与され得る。
【0536】
ある実施形態において、本発明の組成物は、座薬、例えば、テオブロマ油(ココアバター)、合成硬脂肪(例えば、suppocire(登録商標)、WITEPSOL)、グリセロゼラチン、ポリエチレングリコール、又は石鹸グリセリン組成物の形態で投与することができる。
【0537】
ある実施形態において、本発明の組成物は、経鼻胃管、経口胃管、胃管、空腸瘻管、空腸瘻管(J-チューブ)、経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)、又は胃、空腸及び他の適切なアクセスポートへのアクセスを提供する胸壁ポートなどのポートなどの管を介して消化管に投与される。
【0538】
本発明の組成物は、1回投与することができ、又は治療レジメンの一部として連続的に投与することができる。ある実施形態において、本発明の組成物は、毎日(1回又は数回)投与される。ある実施形態において、本明細書に開示される組成物は、少なくとも1週間、2週間、1ヵ月、2ヵ月、6ヵ月、又は1年間のような延長された期間、毎日、2日ごと、又は週ごとなどの定期的に投与される。
【0539】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、7日間、14日間、16日間、21日間、又は28日間、又は7日以内、14日間、16日間、21日間、又は28日間投与される。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、16日間投与される。
【0540】
本発明のある実施形態において、本発明による治療は、患者の腸内微生物叢の評価を伴う。本発明の株との送達及び/又は部分的若しくは完全なコロニー形成が達成されず、それにより有効性が観察されない場合、治療を繰り返すことができるか、又は送達及び/又は部分的若しくは完全なコロニー形成が成功し、有効性が観察された場合に治療を中止することができる。
【0541】
ある実施形態において、本発明の組成物は、子宮内及び/又は出生後にその子供において発生する炎症性又は自己免疫障害(本明細書に開示されているものなど)を予防するために、妊娠動物、例えばヒトなどの哺乳動物に投与することができる。
【0542】
本発明の組成物は、腸障壁機能の調節不全によって媒介される疾患又は状態と診断された、あるいは腸障壁機能障害によって媒介される疾患又は状態、STAT3シグナル伝達経路によって媒介される疾患又は状態のリスクがあると特定された、あるいはSTAT3シグナル伝達経路によって媒介される疾患若しくは状態、又は炎症性若しくは自己免疫障害(本明細書に開示されるものなど)のリスクがあると特定された患者に投与することができる。本組成物はまた、健康な患者においてSTAT3シグナル伝達経路によって媒介される疾患又は状態の発現を予防するための予防手段として投与することもできる。
【0543】
本明細書に開示された組成物は、炎症性又は自己免疫障害、特に微生物叢-腸軸によって媒介される炎症性又は自己免疫障害と診断された患者、又は炎症性又は自己免疫障害、特に微生物叢-腸軸によって媒介される炎症性又は自己免疫障害のリスクがあると特定された患者に投与することができる。組成物はまた、健康な患者において、炎症性又は自己免疫障害、特に微生物叢-腸軸によって媒介される炎症性又は自己免疫障害の発現を予防するための予防手段として投与することもできる。
【0544】
本発明の組成物は、異常な腸内微生物叢を有すると特定された患者に投与することができる。例えば、患者は、Alistipes属の細菌、特にA.shahiiによるコロニー形成が低減又は欠如している可能性がある。代替的に、又は加えて、患者は、Colonithrix属、特にC.sanaの細菌によるコロニー形成が低減又は欠如している可能性がある。代替的に、又は加えて、患者は、Gemmiger属、特にG.formicilisの細菌によるコロニー形成の低減又は欠如している可能性がある。
【0545】
本発明の組成物は、栄養補助食品のような食品として投与することができる。
【0546】
一般に、本発明の組成物は、ヒト疾患の予防又は治療のためであるが、家禽、ブタ、ネコ、イヌ、ウマ又はウサギのような単胃哺乳動物を含む動物を治療するために使用することができる。本発明の組成物は、動物の成長及び能力を高めるのに有用であり得る。動物に投与する場合には、強制経口投与することができる。
【0547】
いくつかの実施形態において、組成物が投与される対象は、成人である。いくつかの実施形態において、組成物が投与される対象は、乳児ヒトである。
【0548】
13.培養方法
本発明で使用するための細菌株は、例えば、McSweeney,2005において教示されるような参考文献に詳述されているように、標準的な微生物学的技術を用いて培養することができる。
【0549】
培養に使用される固体又は液体培地は、例えば、TY又はPYG培地から選択され得る。
【0550】
本発明とともに使用するのに適した例示的な媒体処方は、表1に提供されるものを含む。
【表2】
【0551】
本発明を容易に理解し、実用的に実施するために、以下の非限定的な実験例により、特定の好ましい実施形態を説明する。
【実施例1】
【0552】
実施例1
Alistipesと健康、IBD及び他の疾患との関連。
炎症性腸疾患は、健常腸と比較した場合、IBD腸における特定の腸内細菌の有病率及び存在量の両方が有意に減少するミクロソームの構造-機能変化によって特徴付けられる。いくつかの研究により、これらの細菌がIBDの病因を調節する可能性があることが示されているが(Mallone et al.,2011;and Sokol et al.,2008)、これらの細菌を用いて新しい治療法を開発する上での主要な障害は、低解像度16S rRNAに基づくプロファイリングが、低い分類学的レベル(すなわち、属、種、株)で健常及びIBD関連株を正確に識別するのに十分な解像度を提供しないことである。
【0553】
発明者らは、6,020人の成人の高解像度の糞便腸メタゲノムデータ及び関連する宿主メタデータを含むMicroba Disease Database(MDD)を使用して、炎症性及び自己免疫疾患におけるAlistipes「クレードA」(図1に示されるように)の種の有病率を研究した。メタゲノム配列リードは、Microba Community Profiler(MCP)を使用して分析した(Parks et al.,2021)。
【0554】
少なくとも5つのAlistipesクレードA種が、MDD試料の10%超で検出された:A.shahii、A.finegoldii、A.senegalensis、A.onderdonkii及び未培養種A.sp000434235。
【0555】
本発明者らは、4つの検出されたAlistipesクレードA種が健常なヒトにおいて蔓延しているが、炎症性及び自己免疫疾患においてはめったに検出されないことを見出した(図2A~E)。IBDでは、潰瘍性大腸炎及びクローン病の両方の主なサブタイプを含め、最も強い効果が観察された(以下、図2及び表2)。5つのAlistipes種(A.shahii、A.finegoldii、A.onderdonkii、A.senagalensis、及びA.sp000434235)はすべて、健常なものと比較して、IBDで有意に蔓延していなかった(図2A、表2)。IBDの最も強い低減が、A.shahiiについて観察された(図2A、表2)。これらの観察は、Franzosa et al.,(2018)(図2B、表2)によって以前に発表された独立したIBDコホートにおいて検証された。
【0556】
A.shahii、A.finegoldii及びA.senegalensisは、健常対照と比較して、一連の炎症性及び自己免疫状態において有意に低い有病率であった(図2C~E及び表3)。
【表3】
【表4】
【0557】
A.shahiiの単離及びゲノムスケール分析
健康におけるA.shahiiの役割、及びIBD A.shahii MH21-1、MH21-2及びMH21-3株の病因を、健常ヒトドナーから単離した。A.shahiiは、As_v1及びPYG培地上で良好に成長し、典型的には、グラム陰性染色短桿として観察された(図3A)。
【0558】
NCBI及びA.shahii MH21-1、MH21-2、及びMH21-3からの高品質GenBank及びRefSeqゲノムを使用したAlistipes属の系統発生再構築は、いくつかの未培養種に近いAlistipes shahiiクレード内に高い信頼性で配置された単離株を明らかにした(図3B)。A.shahii MH21-1、MH21-2、及びMH21-3は糖発酵槽であり、デンプン、グルコース、グルコン酸塩、ラクトース、メリビオース、及びガラクトースを炭素源として利用することが予測される。トリプトファン、アスパラギン酸塩、システイン、及びチロシンを除くほとんどのアミノ酸について、完全な、又はほぼ完全な生合成経路が特定された。アミノ酸の取り込み及び発酵のためのいくつかの経路(Ala、Try、Asp、Cys、Glu、Gln、His、及びMet)も特定されたが、一次エネルギー源ではない可能性が高い。A.shahii単離株の代謝モデリングは、グルコース及び他のヘキソース糖を摂取した場合、発酵の一次副産物は、酢酸塩及びプロピオン酸塩であることを明らかにした。酢酸塩は、A.shahii MH21-1、MH21-2、及びMH21-3単離株による発酵の主な副産物であると予測される。MH21-1の生合成能を、それぞれAntiSmash v5.0及びdeepBGCを使用して、十分に特徴付けられた推定生合成遺伝子クラスター(BGC)を検索することによって評価した。AntiSmashは、いかなるBGCも特定しなかったが、DeepBGCは、>1のコード領域及び>0.75のdeepBGCスコアを有する3つの未分類BGCを特定し、2つは抗菌生成物を産生すると予測された。
【0559】
A.shahiiは腸障壁機能を増強する。
健常腸におけるA.shahiiの役割を評価するために、ナイーブC57Bl/6 SPFマウスをA.shahii MH21-1で8日間治療した(図4A)。この治療期間中、罹患率はなく、ビヒクル対照と比較して、一般的な外観、挙動、姿勢、可動性及び神経学的挙動の変化は観察されなかった。同様に、A.shahii MH21-1治療群では、ビヒクル対照群と比較して体重に有意な変化は認められず、結腸の長さ及び重量/長さ比も影響を受けなかった(図4B~D)。A.shahii MH21-1は、上皮損傷、炎症、及び過剰血管新生を単独で評価することによって、又は総合的な組織病理学的スコアとして測定した場合、ビヒクルと比較して、結腸に顕著な組織学的変化をもたらさなかった(図4E~H)。
【0560】
上記のビッグデータアプローチを使用して、炎症性及び自己免疫疾患(例えば、IBD)のための新規の生きたバイオ治療薬候補を特定することができると仮定された。したがって、発明者らは、DSS誘導性マウス大腸炎の急性モデル(図5A)が、上皮損傷及び修復の十分に文書化されたモデルであるため、このモデルにおけるA.shahii MH21-1の治療有効性を試験した。DSS治療は、ビヒクル対照と比較して有意な疾患活性をもたらした。体重の顕著な低減が認められ(図5B)、これは大腸炎の正確かつ信頼できる指標であることが示されている(Britto et al.,2019)。予想通り、プレドニゾンは、DSS誘導性体重減少を悪化させたが(Yamamoto et al.,2013)、DSS誘導性体重減少は、A.shahii MH21-1又はF.prausnitzii A2-165による治療によって改善した(図5B)。
【0561】
DSS治療マウスの組織学的分析は、クリプト喪失、上皮びらん及び潰瘍化を特徴とする顕著な腸損傷を明らかにした。特に、A.shahii MH21-1による治療は、組織病理学的治癒(図5D)及び上皮損傷(図5E)の改善によって証明されるように、クリプト再形成及び再上皮化(図5C)を特徴とする病理学の顕著な改善をもたらした。A.shahii MH21-1による治療はまた、ビヒクル治療対照と比較して、杯細胞及び上皮内リンパ球の顕著な増加をもたらした(図5F~G)。予想通り、プレドニゾンはまた、疾患病理学の顕著な改善をもたらした。
【0562】
IL-23-Th17細胞免疫軸は、IBDの病因の中心であり、検証された治療標的である(Martin,et al.,2017)。腸障壁機能のDSSモデルは、Th1分極免疫によって主に裏打ちされるため(Marks et al.,2015)、マウスSKGモデルにおけるA.shahii MH21-1の治療有効性も試験した(図5H)。SKGマウスは、ZAP-70遺伝子の変異を有し、IL-23駆動性クローン病様回腸炎を、カードラン治療による疾患開始後に発症する(図4I、(Liu et al.,2019))。ビヒクル治療されたマウスの組織学的分析は、カードラン治療の7日後に炎症性細胞の浸潤及び肉芽腫形成を特徴とする顕著な腸損傷を明らかにした。予想通り、抗IL-23モノクローナル抗体による治療は、組織学的損傷の顕著な低減をもたらした。A.shahii MH21-1による治療はまた、組織病理学的スコアの改善によって証明されるように、病理学の顕著な改善をもたらした(図5I)。同様に、A.shahii MH21-1による治療はまた、IL-23、IL-12(IL-12p70)、IL-6及びGM-CSFを含む、疾患の発症機序の中心となるサイトカインの産生の顕著な低減をもたらした(図5J~M)。
【0563】
まとめると、これらのデータにより、A.shahii MH21-1は、ナイーブマウス、DSS治療されたマウス又はSKGマウスにおいていかなる悪影響も引き起こさず、A.shahii MH21-1は、DSS治療マウス及びSKGマウスにおいて腸障壁機能を増強し、粘膜治癒を促進することが明らかにされた。
【0564】
A.shahiiは、インビトロでSTAT3活性化を抑制する。
DSS治療動物において観察された組織学的炎症及び再上皮化に対する劇的な影響を考慮して、本発明者らは、次に、A.shahiiがIBD関連免疫経路を調節する能力を調べた。IL-23駆動性免疫応答はIBDの病因の中心であり、臨床的に認識された標的である(Friedrich et al.,2019、Yang et al.,2017)。したがって、A.shahii MH21-1がSTAT3のIL-23媒介活性化を抑制する能力を、HEK-BLUE(商標)IL-23レポーター細胞株を使用して調べた。HEK-BLUE(商標)IL-23レポーター細胞株は、IL-23刺激に応答するSTAT3誘導性SEAPレポーターを有する。予想されるように、IL-23を介したSTAT3の活性化は、トファシチニブによって予防することができた(図5A)。驚くべきことに、A.shahii MH21-1、A.shahii MH21-3及びA.shahii MH21-6(それぞれAs_v1、PYG及びTY培地中で増殖)から調製された無細胞培養上清及び<3kDaの濾過分画は、SEAPレポーター活性を抑制した(図6A~C)。A.shahii培養上清による治療後に細胞毒性効果は観察されなかった。さらに、サイズ分画及び熱処理によるCSの生化学的特徴を分析した。このアプローチにより、A.shahii MH21-1<3kDa画分のSTAT3抑制活性は、熱処理による影響を受けないことが判明した(図6D)。
【0565】
最後に、IL-23を介したSTAT3の活性化に対する増殖培地依存性効果の影響を分析した。PYG培地で増殖させた株から調製したCSは、強力なSTAT3抑制活性を示した。興味深いことに、株をWilkins-Chalgrenブロス又はMCM中で増殖させた場合、STAT3抑制活性は認められなかった(図6E)。これは、以前の報告(例えば、Giri et al.,2019、Schreiner et al.,2019)と一致しており、免疫調節活性A.shahii MH21-1が栄養因子によって影響されることを示唆している。
【0566】
A.shahiiは、IL-6を介したSTAT3の活性化を抑制する。
炎症促進性サイトカインIL-6のレベルの上昇及びその受容体IL-6Rを介したシグナル伝達は、IBDの病因と関連している。特に、IL-6は、免疫細胞に対するその炎症促進効果及び抗アポトーシス効果に起因して、腸内の慢性炎症に寄与する。これらの効果は、MAPK/ERK及び他の下流キナーゼの活性化と組み合わせてJAKキナーゼ活性化及びSTAT3二量体化を引き起こすIL-6受容体結合によって媒介される。ここで、発明者らは、A.shahii MH21-2及びA.shahii MH21-3が、HEK-Blue(商標)IL-6レポーター細胞株を使用してSTAT3のIL-6媒介活性を抑制することができるかどうかを調べた。HEK-Blue(商標)IL-6レポーター細胞株は、ヒトIL-6受容体を構成的に発現し、IL-6の受容体への結合は、STAT3応答性SEAPレポーターの発現を引き起こす。トファシチニブを対照として使用し、予想通り、IL-6を介したSTAT3の活性化は、トファシチニブによって完全に予防された(図6F)。これらのデータは、A.shahii MH21-2及びA.shahii MH21-3生培養上清及びその<3kDa濾過画分が、SEAPレポーター活性を顕著に抑制することを明確に示す。ATPアッセイを使用して評価すると、HEK細胞生存率に中程度の影響(培地対照と比較しておよそ17%低減(範囲14~21%低減))が認められた。
【0567】
A.shahiiは、ヒト腸上皮細胞の遊走を促進する。
IBDでは、消化管障壁の損傷が一般的に発生する。腸上皮細胞の急速な遊走は、恒常性を再確立するための創傷治癒プロセスの重要な構成要素である。A.shahiiに由来する生体活性物質が腸上皮細胞の運動性に影響を及ぼすことができるかどうかを調べるために、TRANSWELL(登録商標)遊走アッセイを用いた。HCT116細胞をTRANSWELL(登録商標)チャンバ内に頂端播種し、A.shahii抽出物がチャンバの基底外側への遊走を促進する能力を評価した。A.shahii MH21-1は、TYG-M培地抽出物対照と比較して、HCT116細胞の基底外側への遊走を顕著に促進した(図7A)。A.shahiiの遊走促進作用は、IncuCyteスクラッチ創傷アッセイを使用してさらに確認された。スクラッチ創傷の誘導後90時間で、HCT116細胞は、TYG-M培地抽出物対照で処理した対照細胞と比較して、A.shahii MH21-1からの抽出物の存在下での創傷閉鎖の加速速度を示した(図7B)。
【0568】
A.shahiiは、効果的な腸障壁完全性をサポートする。
腸上皮細胞は、宿主組織を腸内微生物及び管腔内容物から分離する物理的及び生化学的障壁を形成する(Peterson et al.,2014)。腸障壁機能の障害は、IBD(Vanuytsel et al.,2021)を含むいくつかの疾患の病因に関係しており、疾患の転帰を改善するための治療標的として提案されている(Sommer et al.,2021)。腸上皮細胞障壁の完全性は、経上皮電気抵抗(TEER)と呼ばれる簡単な非侵襲的方法を用いて評価することができる。TEERアッセイでは、電流が上皮細胞層を横切って印加され、抵抗が測定される。TEER値の低下は、障壁の低下を示している。A.shahiiが障壁機能を調節する能力を評価するために、障壁完全性がIFN-γで破壊される前及び後に、A.shahii MH21-1培養上清とともに、又はそれなしで培養したT84腸上皮細胞単層中でTEERを監視した。IFN-γとの48時間のインキュベーションの後、T84細胞においてTEERの90%の低下が観察され、障壁透過性の増加を示した(図7C、E)。A.shahii MH21-1培養上清による処理は、このTEERの低下を予防することができなかった。しかしながら、破壊因子を除去した後、細菌培地PYG単独で処理した細胞と比較して、A.shahii MH21-1培養上清の存在下でT84細胞において、障壁完全性のより速い回復を示すTEERのより速い増加が観察された(図7C、E)。IFN-γを除去した1週間後、A.shahii MH21-1処理細胞のTEERは、IFNγ処理を受けたことがない細胞に相当したが、細菌培地のみで処理した細胞では、依然として約60%低減したTEERを示した(図7D、F)。
【0569】
本発明者らは、A.shahiiが治療効果に寄与する代謝物を産生するという認識に至った。PYG培地対照と比較して2倍以上増加した無細胞培養上清中の34種類の代謝物(レベル1又は2aに分類)を特定した(表4)。これらには、とりわけ、炎症、免疫細胞浸潤、酸化ストレス及び障壁機能を調節することが以前に示された代謝物(例えば、ウロカン酸、アロプリノール、N-アセチル-システイン、オルニチン、及びプロピオニルカルニチン)が含まれた(Albert et al.,2010、Schlesinger et al.,2020、Shirazi et al.,2021、You et al.,2009、Qi et al.,2019、及びScioli et al.,2014を参照)。
【表5-1】
【表5-2】
【0570】
材料と方法
細菌株、培養条件及び分析。
糞便試料を、胃腸障害の病歴のない健康なヒト成人から採取し、容量当たり等しい重量の無菌酸素遊離グリセロール溶液と混合した(McSweeney,2005)。供血者は糞便試料採取の3ヵ月前に抗生物質を摂取していなかった。A.shahii及びFaecalibacterium prausnitziiを、無酸素雰囲気(85% N:10% CO:5% H)雰囲気のCoyビニル嫌気性チャンバで日常的に処理した。A.shahiiをAs_v1又はPYG培地中で日常的に培養し、F.prausnitziiをTY培地中で培養した。全単離株を、3mLの活発に増殖している培養物を等量のグリセロール溶液と混合し(McSweeney,2005)、-80℃で保存することによって貯蔵した。
【0571】
A.shahiiの単離。
A.shahii株MH21-1は、A.shahiiが0.24%の相対存在量で存在するドナー糞便試料をM4ブロスに接種することによって産生された。その後、濃縮培養物をBacteroides胆汁エスクリン寒天上に配置し、その後の増殖コロニーをSchaedlerブロスに採取した。このアプローチにより、単離株を特定し、全ゲノム配列決定後にA.shahii MH21-1と称した。A.shahii株MH21-2及びMH21-3は、1.16%の相対存在量でA.shahiiを有するドナー糞便試料から産生された。簡潔に述べると、ドナー糞便試料から調製した7×10細胞/mlの微生物細胞懸濁液100μlを洗浄し、次いで、嫌気性緩衝希釈液(各38ml/Lの塩溶液2及び3(McSweeney et al.,2005)、1ml.L-1の0.1%(w/v)レサズリン溶液、1g/LのL-システイン)中で10倍希釈した。製造業者の指示(Thermo Fisher Scientific)にしたがって、細胞をSyto-9及びヨウ化プロピジウムで染色し、次いで、100細胞/mlに段階希釈した。微生物細胞は、Namocell Hana単一細胞ディスペンサーを使用して(ゲーティングパラメータは次のように設定された:FSCL=20、SSCLは開放したまま、FITCL=5)、10% v/vの糞便水を補充したM2GSC培地を含む96ウェルプレートに分注した。A.shahiiを90%含む濃縮物を特定し、その後、As_v1培地上でストリーキングした。その後、異なる形態を有する別個のコロニーを、As_v1培地上で繰り返しストリーキングすることによって精製した。このアプローチにより、A.shahii MH21-2及びMH21-3と呼ばれる2つの単離株を、全ゲノム配列決定によって特定した。
【0572】
A.shahii MH21-6を単離するために、1mLの糞便ストック試料をさらに3mLの30%グリセロール溶液と混合し、約3.5mmのガラスビーズ(Daintree Scientific)で2分間ボルテックスして、糞便デブリから細菌を解離した。解離した細菌のアリコートを、必要に応じて後で処理するために-80℃で貯蔵した。細菌細胞を、製造業者の指示にしたがって、100μmのノズル及び小粒子検出器を有するBD FACSAria(商標)融合フローサイトメーターを使用して選別した。システムを20psiで加圧し、0.2μmの濾過PBSを使用して閾値が設定された散乱で事象を引き起こし、ノイズフロアからのいくつかの事象を可能にした。細菌細胞を選別するために、アリコートを40μmフィルターを通して濾過し、その後、0.2μm濾過嫌気性緩衝希釈液(すなわち、各38ml/Lの塩溶液2及び3(McSweeney et al.,2005)を使用して、濾液の10~3希釈液を調製した。希釈した濾液を流して希釈を決定し、毎秒500~1200事象をもたらした。標的を散乱でゲーティングし、二重項を除外した(ゲーティング戦略を図7Gに示す)。単一細胞をTY寒天プレート上に沈着させ、37℃で最長3週間インキュベートした。TYブロス中での増殖後、全ゲノム配列決定によって単離株を特定した。このアプローチによって、A.shahiiに属する単離株を暫定的に特定した。単離株を、TY寒天上に単一コロニーを繰り返しストリーキングすることによって精製した。最終精製単離株をグリセロール貯蔵し、全ゲノム配列決定のために提出し、このアプローチによって、A.shahii MH21-6と呼ばれる単離株を産生した。
【0573】
代謝的再構成。
タンパク質コード配列を予測し、富化M(バージョン0.5.2)の注釈関数を用いて注釈を付けた。簡単に説明すると、富化Mは、-pメタモードでプロジガル(バージョン2.6.3)を使用してタンパク質コード配列を特定する。次に、DIAMOND(バージョン2.0.4)を用いてUniRef100データベース(2020年11月ダウンロード)に対してアミノ酸配列を検索し、E.C.,TCDB及びeggnog分類をUniRefで配布されたidmappingファイルから継承した。Pfam(リリース33.0)、tigrfam(リリース15.0)、及びdbcan2(ダウンロード2019年9月)に対するHmmer hmmsearch(バージョン3.1b2)を用いて、それぞれ機能ドメイン、主要代謝マーカー、及び炭水化物活性化(CAZy)酵素を注釈した。代謝経路は、手動で定義された代謝経路の定義に対して注釈とそのゲノム位置を評価する富化Mにおける分類機能を用いて特定した。ある経路は、必要なタンパク質の80%以上をコードし、必要なすべてのシンテニーチェックを通過する場合、ゲノム中に存在すると考えられる。その後、これらの自動的に予測された経路を手動で評価した。さらに、gutSMASH(バージョン1.0.0)を腸内微生物によってコードされる共通の生合成経路を特定するために適用した。
【0574】
系統樹
ゲノムツリーは、Alistipes属(NCBIリリース89)及び4つのMH21単離株の中で、checkM分析から≧90%完全かつ≦5%汚染と定義される高品質ゲノムから構築した。各ゲノムについて、gtdbtk特定を用いて、各ゲノムから122の細菌特異的保存マーカー遺伝子セットを抽出した。これらの遺伝子は、HMMをプロファイルするように整列させ、gtdbtk整列と1つの整列に連結し、そして最大尤度系統樹は、gtdbtk推論を用いたFastTree(バージョン2.1.10)を用いた整列から構築した。1000回の反復からGenomeTreetk(v0.1.6)を用いてノンパラメトリックブートストラップ値を推定した。
【0575】
動物実験のための細菌株の調製。
A.shahii及びF.prausnitzii株を、それぞれAs_v1及びTY培地中で初期固定相まで増殖させた。個々の培養物の細胞密度は、Helber Counting Chamberを用いて計算した。細菌強制経口投与溶液を調製するために、個々の培養物を、5,000gの滅菌重鉱油層下で10分間遠心分離し、次いで、無細胞上清を捨てた。細胞ペレットを、1.5mLの滅菌嫌気性緩衝希釈剤(各38mL/Lの塩溶液2及び3(McSweeney et al.,2005)、1mL/Lの0.1%(w/v)レサズリン溶液、1g/L-システイン)中で洗浄し、次いで、再度遠心分離した。最後に、洗浄した細胞ペレットを、ハーフ強度グリセロール溶液(無酸素緩衝希釈液中の15%v/vグリセロール溶液)に再懸濁し、最終濃度1×10細胞/mLにし、必要になるまでアリコートし、-80℃で凍結した。細胞調製物の生存性は、単一アリコートを解凍し、寒天プレート上でストリーキングすることによって確認した。全ゲノム配列決定により、個々の株調製物の同一性及び純度を確認した。
【0576】
DSS誘発腸障壁機能障害の急性モデル。
動物資源センター(オーストラリア西部)から購入した6週齢のC57BL/6雌マウスを無作為化し、実験前7日間共飼育した。腸障壁機能障害を誘発するために、マウスに3%DSSを飲料水中で6日間自由摂取させた。ナイーブ同齢対照マウスを処理し、DSSを含まない飲料水を与えた。すべての処理は、DSSの供給の1日前に開始し、すべてのマウスは最終DSS処理の2日後に犠牲にした。処理のために、マウスをイソフルオランで麻酔し、200μlの細菌調製物又はビヒクル対照で経口強制経口投与した。プレドニゾン(2mg/kg)を腹腔内注射による麻酔後に投与した。体重及び便の硬さを毎日記録した。糞便試料を毎日採取した。屠殺後、結腸、肝臓及び脾臓を分析のために採取した。心穿刺にて採血した。
【0577】
内視鏡的及び組織学的スコアリング。
動物を小動物消化管内視鏡(Karl Storz Endoskope,Tuttlingen,Germany)を用いて1、2、6日目に検査し、結腸粘膜炎症の程度を評価した(Marks et al.,2015;and Liu et al.,2019)。簡単に説明すると、マウスをイソフルランで麻酔し、結腸鏡を直腸から挿入した。高解像度ビデオで撮影した画像を盲検下で検査し、病変の有無及び範囲を評価した(表5)。組織学的スコアリングは、本質的に、当該分野において既に記載された通りに実施された(Marks et al.,2015)。簡単に説明すると、試料を4%ホルマリン中で固定し、パラフィン包埋し、切片化した。組織切片をヘマトキシリン及びエオシン染色して疾患病理を評価し、アルシアンブルー染色してムチン産生を評価した。スライドを、Aperioデジタルイメージングシステム(Leica Biosystems,Nuβloch,Germany)を用いてイメージングした。大腸炎の重症度をグレード化するために、組織切片における炎症及び上皮損傷の程度を、確立されたスコアリングシステムを用いて半定量的にグレード化した(表6)。その後、試料を無作為化し、訓練を受けた消化管病理医が盲検下でスコア化した。
【表6】
【表7】
【0578】
マウス回腸炎のSKGモデル。
5週齢のSKG雌マウス(n=3匹の雄;n=3匹の雌)を無作為化し、次いで、実験前に3週間、ともに飼育した。疾患を誘導するために、マウスにカードラン(1,3-β-グルカン、1マウス当たり3mg)を腹腔内(i.p.)投与した。ナイーブ同齢対照マウスは、生理食塩水をi.p.投与したことを除いて同様に処理した。すべての治療は、カードランの投与前に開始し、すべてのマウスはカードラン治療の7日後に屠殺した。細菌治療のために、マウスに、200μlの細菌調製物又はビヒクル対照を、カードラン投与の2日前に開始して経口強制経口投与した。抗マウスIL-23 p19モノクローナル抗体(Thermo Fisher、1マウス当たり30μg)を、カードラン投与の1日前に、i.p.注射によって投与した。糞便試料を毎日採取した。体重を、-2日目、0日目及び7日目に測定した。屠殺後、分析のために結腸、遠位小腸、腸間膜リンパ節及び脾臓を採取した。心穿刺にて採血した。
【0579】
臨床的及び組織学的スコアリング。
組織学的スコアリングは、本質的に、Benham et al.,(2014)によって記載されているように実施した。簡単に説明すると、試料を4%ホルマリン中で固定し、パラフィン包埋し、切片化した。組織切片をヘマトキシリン及びエオシン染色して疾患病理を評価し、杯細胞評価のためにアルシアンブルーで染色した。スライドは、Olympus VS120スライドスキャナー(Olympus Corporation,Tokyo,Japan)を使用して画像化した。回腸炎の重症度をグレード化するために、組織切片における炎症及び上皮損傷の程度を、確立されたスコアリングシステムを用いて半定量的にグレード化した(表7を参照、Benham et al.,(2014))。次いで、試料を無作為化し、その後、訓練を受けた独立病理医が盲検下でスコアリングした。
【0580】
血清中に存在するサイトカインを特徴付けるために、マウスをCO窒息によって安楽死させ、その後、心臓出血によって血液を採取し、遠心分離によって血清を単離した。血清試料を-80℃で貯蔵した。これらの血清試料をその後解凍し、LEGENDplexマウス炎症パネル(13-plex)(BioLegend、カタログ740446)で使用して、サイトカイン産生への影響(IL-23、IL-1α、IFN-γ、TNF、MCP-1、IL-12p70、IL-1β、IL-10、IL-6、IL-27、IL-17A、IFN-β、GM-CSF)を判定した。血清試料を2倍に希釈し、次いで、特定の分析物に対する抗体にコンジュゲートした捕獲ビーズとともにインキュベートした。洗浄後、ビオチン化検出抗体混合物を添加して、「捕獲ビーズ-分析物-検出抗体」サンドイッチを作製する。ストレプトアビジン-フィコエリトリン(SA-PE)を加えて、ビオチン化検出抗体に結合させる。最終洗浄後、混合物をフローサイトメトリーにより分析し、ここで、ビーズは、サイズ及び内部蛍光強度によって識別される。サイトカイン濃度は、PE蛍光により決定し、BioLegendのLEGENDplexデータ分析ソフトウェアを用いて、既知のサイトカイン濃度の標準曲線と比較する。ビーズの独特のサイズ及び蛍光特性により、13のサイトカインの同時測定が可能となる。
【表8】
【0581】
STAT3抑制活性の特性評価。
A.shahii MH21-1及びMH21-3のSTAT3抑制活性を評価するために、3つの独立したコロニーを接種し、初期固定相まで増殖させた。次いで、各々の種培養ブロスを用いて、3つの生物学的複製物から6つの技術的反復を生成する2つの技術的反復を接種した。技術的反復を、初期固定相まで増殖させ、次いで、前述のように、無細胞培養上清を回収した(Giri et al.,2019)。培養上清を、製造業者(Merck Millipore)の指示に従って、3kDaのCENTRICON(登録商標)カラムに通すことによってサイズ分画した。アッセイのためにA.shahii MH21-6上清試料を調製するために、単一のコロニーから種培養を確立し、初期固定相まで増殖させた。次いで、種培養ブロスを使用して、2つの技術的反復を接種した。技術的反復を、初期固定相まで増殖させ、次いで、前述のように、無細胞培養上清を回収した(Giri et al.,2019)。培養上清を、製造業者(Merck Millipore)の指示に従って、3kDaのCENTRICON(登録商標)カラムに通すことによってサイズ分画した。
【0582】
STAT3活性は、HEK Blue IL-23細胞株(Invivogen)を用いて評価した。簡単に説明すると、アッセイ開始の24時間前に、1ウェル当たり50,000個の細胞を96ウェルプレートに3回播種した。細菌上清又は滅菌細菌培地を、最終濃度10%、25%又は50%v/vで、組換えヒトIL-23(rhIL-23、R&Dシステム)と5ng/mLで混合した。次いで、この混合物を細胞に直接添加し、37℃で6時間インキュベートした。STAT3活性化を抑制する上清の能力を、Janusキナーゼ阻害剤トファシチニブ(10μM)と比較した。STAT3が調節するSEAPレポーター活性は、製造業者(Invivogen)が推奨するQuanti Blue溶液を用いて評価した。結果は、少なくとも3つの独立した実験の平均値である。細胞毒性は、MTTアッセイを用いて評価した。簡単に説明すると、MTT試薬を、最終濃度1.2mMで細胞に添加した。細胞を37℃で4時間インキュベートし、次いでDMSOで固定した。細胞毒性は、製造業者(Invitrogen,Thermo Fisher,Australia)により推奨されているように、540nmで吸光度を測定することにより評価した。
【0583】
STAT3活性は、HEK Blue IL-6細胞株(Invivogen)を用いて評価した。簡単に説明すると、アッセイ開始の24時間前に、1ウェル当たり50,000個の細胞を96ウェルプレートに3回播種した。細菌上清又は滅菌細菌培地を、60分間の前処理のために10% v/vの最終濃度で細胞に添加した。次いで、組換えヒトIL6(R&D systems)を2ng/mLの最終濃度で添加し、細胞を37℃で24時間インキュベートした。上清がIL-6を介したSTAT3の活性化を抑制する能力を、Janusキナーゼ阻害剤トファシチニブ(10μM)と比較した。24時間後、STAT3調節SEAPレポーター活性を、製造業者(Invivogen)によって推奨されるようにQuanti Blue溶液を使用して評価した。結果は、3つの独立した実験の平均値である。細胞毒性を、製造業者によって推奨されるようにCellTiter-Glo(登録商標)2.0細胞生存率アッセイ(Promega,Australia)を使用し評価した。
【0584】
細胞遊走アッセイ。
IncuCyte(登録商標)生細胞イメージングシステム(Essen BioScience)及びTranswell遊走アッセイを使用して、A.shahii由来の滅菌培養上清抽出物への曝露中のHCT116細胞の遊走を評価した。これらの細菌抽出物は、Colosimo et al.,(2019)によって以前に記載されているように、本質的にAmberlite XAD-7樹脂を使用して調製した。簡単に説明すると、単一のコロニーを接種し、初期固定相まで増殖させた。この「種培養」ブロスを使用して600mlのブロスを接種し、培養物を初期固定相までインキュベートした。培養上清を、4000gで30分間遠心分離し、次いで、製造業者の指示(Sartorius Vivaflow(登録商標)50限外濾過ユニット3kDa MWCO PES)にしたがって、無細胞上清を3kDaのフィルターに通すことによって調製した。活性化Amberlite XAD-7樹脂を、400mLの3kDa濾過した無細胞上清(10% w/v)に添加し、スラリーを4℃で一晩穏やかに振盪した。樹脂を採取し、400mLの脱イオン水で洗浄し、次いで、120mLの100%メタノールと混合した。穏やかに振盪しながら2時間インキュベーションした後、メタノール溶出物を採取した。前述のように、120mLの100%メタノール中の第2の溶出を行い、2つの溶出を最終的に組み合わせ、回転式蒸発器を使用して真空下で乾燥させた。抽出物を100% DMSO(以後1000Xと称する)中で完全に再懸濁し、-20℃で貯蔵した。
【0585】
ヒトHCT116腸上皮細胞を、10% FBS及び1% Pen/Strepを補充したMcCoys 5a培地中に維持した。IncuCyte(登録商標)スクラッチ創傷アッセイの場合、3.5×10個のHCT116細胞を、ポリ-L-オルニチンコーティングしたIncuCyte(登録商標)ImageLock 96ウェルプレート(Essen BioScience)にプレーティングした。24時間後、IncuCyte(登録商標)WoundMakerツールを使用して、ほぼコンフルエントな細胞単層に均一なスクラッチ創傷を誘導した。細胞をDPBSで2回洗浄し、次いで、200μLの0.5% FBS McCoys 5a培地中のA.shahiiからの0.6倍抽出物を添加した。未接種の細菌培地(1%)が、陰性対照の役割を果たした。刺激剤を添加した直後に、プレートをIncuCyte(登録商標)システムに移し、90時間にわたって2時間ごとに各ウェルをイメージングすることによって、細胞遊走を監視した。統合分析ソフトウェアを使用して、データ分析を実施した。
【0586】
TRANSWELL(登録商標)アッセイを介して細胞遊走を評価するために、3.5×10個のHCT116細胞を、24ウェルプレート(8μmの孔径、Corning Costar)中のTC処理ポリカーボネート膜を有する6.5mmインサートの上部コンパートメント内の100μLの10% FBS培養培地に播種した。600μLの10% FBS培養培地を、下部コンパートメントに添加した。細胞を24時間沈降させた。DPBS洗浄後、100μL及び600μLの0.5% FBS培地を、それぞれ、上部コンパートメント及び下部コンパートメントに添加した。次いで、A.shahiiからの1倍濃縮抽出物を、下部コンパートメントに添加した。16時間後、細胞をDPBSで洗浄し、膜の上部に取り付けられた細胞を綿棒で慎重に除去した。次いで、膜の底部上の遊走細胞を、70%エタノール中で10分間固定し、続いて0.25%結晶バイオレット中で5分間染色した。TRANSWELL(登録商標)インサートを水で洗浄し、乾燥させ、ガラススライド上の水中の50%グリセロールとともに膜を載置し、直ちにイメージングした。TRANSWELL(登録商標)実験を、生物学的及び技術的三重複で実施し、各複製物について、膜の2つの代表的な画像を10倍の倍率で撮影した。遊走細胞の数を、ImageJを使用して自動的にカウントし、平均細胞数を表示した。細胞遊走の程度を、3つの生物学的複製物及び3つの技術的反復からのウェル当たり2つの顕微鏡視野における遊走細胞の平均数として表した。
【0587】
TEER(Trans-Epithelial Electrical Resistance)を用いた上皮バリア完全性アッセイ。
A.shahiiが障壁完全性を調節する能力を、T84腸上皮細胞のコンフルエントな単層を横切る経上皮電気抵抗を測定することによって評価した。T84細胞をCellBank Australiaから購入し、5%ウシ胎児血清及び1%ペニシリン-ストレプトマイシンを補充したダルベッコ変法イーグル培地混合物12(DMEM/F12;ThermoFisher Scientific,Waltham,MA,USA)中で培養した。T84細胞を、400μLの温かいT84培地中でウェル当たり60.000細胞の密度で0.4μmの孔径を有する24ウェルMillicellポリカーボネート細胞培養インサート(Merck Millipore、PSHT010R5)に播種し、24mLの培地を単一ウェルフィーダートレイに添加した。両コンパートメントの培地交換を2日ごとに行った。培養7日後、細胞培養インサートを有するプレートアセンブリの上部をフィーダートレイから24ウェルレシーバートレイ(Merck Millipore、PSMW010R5)に移し、各ウェルに800μL培地を含有させた。次に、各ウェルのTEER値を、Millicell ERS-2ボルトメータを用いて毎日測定した。実験は、すべてのウェルの細胞が1500Ωを超える安定したTEER値に達した時点で開始した。トファシチニブ(75μM)を、障壁機能の回復を加速することが知られている対照として使用した(Sayoc-Becerra et al.,2020)。予防モデルにおいて、T84細胞を、3KDa濾過MH21細菌上清及び3KDa濾過細菌培地(PYG)を陰性対照として用いて前処理した。両方を、T84培地中で10%に希釈し、頂端コンパートメントに添加した。前処理の1時間後、A.shahii MH21-1上清による頂端処理に加えて、障壁完全性を破壊するために、IFN-γ(50ng/mL)を基底外側に添加した。48時間後、すべてのウェルを温かいPBSで十分に洗浄し、破壊因子IFN-γを除去した。以後、頂端チャンバにおけるA.shahii MH21-1上清及び対照処理、並びに基底外側チャンバにおけるT84培地を24時間ごとに更新し、TEER値を毎日重複して測定した。2つの生物学的複製物から反復測定で得られたデータは、各々、原TEER値(Ω)として又は未処理T84細胞と比較したTEER値のパーセンテージ差として提示された。統計的有意性は対応のないt検定によって決定した。
【0588】
A.shahiiのメタボロミック分析
A.shahiiによって産生された代謝物を評価するために、6つの独立したコロニーを接種し、初期固定相まで増殖させた。次いで、各種培養ブロスを用いて、6つの生物学的複製物から12の技術的反復を生成するYG/Vの2技術的反復を接種した。技術的反復を、初期固定相まで増殖させ、次いで、無細胞培養上清を、嫌気性チャンバ中で12,550gで3分間遠心分離した後に回収した。培養上清をドライアイス上でスナップ凍結させ、試験まで-80℃で貯蔵した。
【0589】
試料分析は、以下のようにMS-Omics(デンマーク)によって実施された。Thermo Q Exactive HF MSに結合したThermo Scientific Vanquish LCを使用して分析を実施した。エレクトロスプレーイオン化界面を、イオン化源として使用した。分析は負及び正イオン化モードで行った。UPLCは、Catalinら(UPLC/MS Monitoring of Water-Soluble Vitamin Bs in Cell Culture Media in Minutes,Water Application note 2011,720004042en)によって記載されたプロトコールのわずかに改変されたバージョンを用いて実施した。化合物検出器3.1(Thermo Scientific)を用いてピーク面積を抽出した。化合物の特定を4つのレベルで行った。レベル1:保持時間による特定(自社の標準品と比較)、正確な質量(容認された偏差3ppm)、及びMS/MSスペクトル、レベル2a:保持時間による特定(自社の標準品と比較)、正確な質量(容認された偏差3ppm)。レベル2b:正確な質量による特定(容認された偏差3ppm)、MS/MSスペクトル、レベル3:正確な質量のみによる特定(容認された偏差3ppm)。
【0590】
実施例2
Colonithrixと健康、IBD及び他の疾患との関連。
炎症性腸疾患は、健常腸と比較した場合、IBD腸における特定の腸内細菌の有病率及び存在量の両方が有意に減少するミクロソームの構造-機能変化によって特徴付けられる。いくつかの研究により、これらの細菌がIBDの病因を調節する可能性があることが示されているが(Mallone et al.,2011;and Sokol et al.,2008)、これらの細菌を用いて新しい治療法を開発する上での主要な障害は、低解像度16S rRNAに基づくプロファイリングが、低い分類学的レベル(すなわち、属、種、株)で健常及びIBD関連株を正確に識別するのに十分な解像度を提供しないことである。
【0591】
発明者らは、6,020人の成人の高解像度の糞便腸メタゲノムデータ及び関連する宿主メタデータを含むMicroba Disease Database(MDD)を使用して、炎症性及び自己免疫疾患におけるColonithrix種の有病率を研究した。メタゲノム配列リードは、Microba Community Profiler(MCP)を使用して分析した(Parks et al.,2021)。
【0592】
3つのColonithrix種が、MDDの2つより多くの個体で検出された:C.sana、及び未培養種C.sp900317525及びC.sp003522105。
【0593】
本発明者らは、Colonithrix種が健常なヒトにおいて蔓延しているが、炎症性及び自己免疫疾患においてはめったに検出されないことを見出した(図7A~D)。IBDでは、潰瘍性大腸炎及びクローン病の両方の主なサブタイプを含め、最も強い効果が観察された(以下、図8及び表8)。Colonithrix属は、健常個体と比較してIBDで顕著に少ない有病率であった(P=7.3E-17、FDR=8.77E-15)。したがって、3つのColonithrix種(C.sana、C.sp900317525、C.sp003522105)すべてが、健常者と比較して、IBDで顕著に少ない有病率であった(図8、表8)。IBDの最も強い低減は、C.sanaについて観察された(図8、表8)。これらの観察は、Harvard((Franzosa et al.,2018)、図8、表8)によって以前に発表された独立したIBDコホートにおいて検証された。
【表9】
【0594】
C.sanaの単離及びゲノムスケール分析
健康及びIBDの病因におけるC.sanaの役割をよりよく理解するために、C.sana MH35-1及びC.sana MH35-2と呼ばれる2つの新しい単離株を、健常ヒトドナーから単離した。単離は、限界希釈濃縮を生成し、次いで単一のコロニーについてプレーティングすることによって行われた。C.sana MH35-1及びC.sana MH35-2を、TY及びPYGベースの培地で増殖させ、典型的には、グラム可変染色の長くて薄い桿状細胞として観察されたが(図9A)、古い培養物では細胞形態が顕著により異質であった。NCBI及びC.sana MH35-1及びC.sana MH35-2からの高品質GenBank及びRefSeqゲノムを使用したER4属の系統発生再構築は、C.sanaクレード内、いくつかの未培養種の近く(図9B)、並びにCAG-83及びOscillibacter属の近くに、高い信頼性で配置された単離株を明らかにした。C.sana MH35-1及びC.sana MH35-2は、アミノ酸発酵槽である可能性が高いが、グルコースを利用することが予測される。アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ロイシン、プロリン及びセリンについて、完全な、又はほぼ完全な生合成経路が特定された。アミノ酸(アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、システイン及びロイシン)の取り込み及び発酵のためのいくつかの経路が特定された。C.sana MH35-1及びC.sana MH35-2単離株の代謝モデリングは、グルコース及びアミノ酸を供給された場合、発酵の一次副産物が酢酸塩及びアンモニアであることを明らかにした。AntiSmashは、公的データベース中のBGCに近い相同性を有しない両方の株においてRiPPランチペプチドBGCを特定した。
【0595】
C.sanaは腸障壁機能を増強する
上記のビッグデータアプローチを使用して、炎症性及び自己免疫疾患(例えば、IBD)のための新規の生きたバイオ治療薬候補を特定することができると仮定された。したがって、発明者らは、DSS誘導性マウス大腸炎の急性モデル(図10A)が、上皮損傷及び修復の十分に文書化されたモデルであるため、このモデルにおけるC.sana MH35-1及びC.sana MH35-2の治療有効性を試験した。DSS治療は、ビヒクル対照と比較して有意な疾患活性をもたらした。DSS治療マウスの組織学的分析は、クリプト喪失、上皮びらん及び潰瘍化を特徴とする顕著な腸損傷を明らかにした。特に、C.sana MH35-1及びC.sana MH352による治療は、組織病理学的治癒の改善(図10B)及び上皮損傷の低減(図10C)によって証明されるように、病理学の顕著な改善をもたらした。プレドニゾンもF.prausnitzii A2-165も、組織病理学的治癒又は上皮傷害に顕著な影響を及ぼさなかった(図10B~C)。まとめると、これらのデータにより、C.sana MH35-1及びC.sana MH35-2が、DSS治療C57Bl/6マウスにおいて粘膜治癒を促進したことが明らかになった。
【0596】
C.sanaはインビトロでSTAT3のIL-23を介した活性化を抑制する
DSS治療動物において観察される組織学的炎症及び再上皮化に対する劇的な効果を考慮して、発明者らは、次に、C.sana MH35-1及びC.sana MH35-2がIBD関連免疫経路を調節する能力を調べた。IL-23駆動性免疫応答はIBDの病因の中心であり、臨床的に認識された標的である(Friedrich et al.,2019、Yang et al.,2017)。本発明者らは、HEK-Blue(商標)IL-23レポーター細胞株を使用して、C.sana MH35-1及びC.sana MH35-2がIL-23を介したSTAT3の活性化を抑制する能力を調べた。HEK-Blue(商標)IL-23レポーター細胞株は、IL-23刺激に応答するSTAT3誘導性SEAPレポーターを有する。予想されるように、IL-23を介したSTAT3の活性化は、トファシチニブによって抑制された(図11A-B)。PYGM培地で増殖させたC.sana MH35-1及びC.sana MH35-2から調製した無細胞培養上清は、SEAPレポーター活性を抑制した(図11A~B)。特に、C.sana MH35-1及びC.sana MH35-2培養上清による処理後、細胞形態の変化は観察されず、上清が毒性でないことを示唆した。
【0597】
C.sanaはIL-6を介したSTAT3の活性化を抑制する。
炎症促進性サイトカインIL-6のレベルの上昇及びその受容体IL-6Rを介したシグナル伝達は、IBDの病因と関連している。特に、IL-6は、免疫細胞に対するその炎症促進効果及び抗アポトーシス効果に起因して、腸内の慢性炎症に寄与する。これらの効果は、MAPK/ERK及び他の下流キナーゼの活性化と組み合わせてJAKキナーゼ活性化及びSTAT3二量体化を引き起こすIL-6受容体結合によって媒介される。ここで、発明者らは、C.sana MH35-1及びC.sana MH35-2が、HEK-Blue(商標)IL-6レポーター細胞株を使用してIL-6を介したSTAT3の活性化を抑制することができるかどうかを調べた。HEK-Blue(商標)IL-6レポーター細胞株は、ヒトIL-6受容体を構成的に発現し、IL-6の受容体への結合は、STAT3応答性SEAPレポーターの発現を引き起こす。トファシチニブを対照として使用し、予想通り、IL-6を介したSTAT3の活性化は、トファシチニブによって完全に予防された(図12A、B)。C.sana MH35-1及びC.sana MH35-2生培養上清及びその<3kDa濾過画分が、SEAPレポーター活性を顕著に抑制することが示された(図12A、B)。さらに、C.sana MH35-1及びC.sana MH35-2の両方からの<3kDa濾過培養上清アンバーライト抽出物は、SEAPレポーター活性をほぼ65%抑制した(図12C)。両方の実験では、ATPアッセイを使用して評価した場合、HEK細胞生存率に最小限の効果(≦9%の低減)が認められた。
【0598】
C.sanaはヒト腸上皮細胞遊走を促進する。
IBDでは、消化管障壁の損傷が一般的に発生する。腸上皮細胞の急速な遊走は、恒常性を再確立するための創傷治癒プロセスの重要な構成要素である。C.sanaに由来する生体活性物質が腸上皮細胞の運動性に影響を及ぼすことができるかどうかを調べるために、TRANSWELL(登録商標)遊走アッセイを用いた。HCT116細胞をTRANSWELL(登録商標)チャンバ内に頂端播種し、C.sana MH35-1及びC.sana MH35-2抽出物がチャンバの基底外側への遊走を促進する能力を評価した。未処理の細胞は、膜の基底外側への遊走の基礎レベルを有し、これは、PYGM培地による処理によって影響されなかった(図12A)。C.sana MH35-1及びC.sana MH35-2は、HCT116細胞の基底外側への遊走を顕著に促進した(図13A)。C.sanaの遊走促進作用は、IncuCyteスクラッチ創傷アッセイを用いてさらに確認された。スクラッチ創傷の誘導後72時間以内に、HCT116細胞は、PYGM培地で処理した対照細胞と比較して、C.sana MH35-1及びC.sana MH35-2からの抽出物の存在下で創傷閉鎖の加速速度を示した(図13B、C)。
【0599】
材料と方法
細菌株、培養条件及び分析。
糞便試料を、胃腸障害の病歴のない健康なヒト成人から採取し、容量当たり等しい重量の無菌酸素遊離グリセロール溶液と混合した(McSweeney,2005)。供血者は糞便試料採取の3ヵ月前に抗生物質を摂取していなかった。C.sana及びFaecalibacterium prausnitziiを、無酸素雰囲気(85% N:10% CO:5% H)雰囲気のCoyビニル嫌気性チャンバで日常的に処理した。C.sanaは、改変PYG培地(PYGM、表1)で日常的に培養したが、F.prausnitziiをTY培地で培養した(表1)。全単離株を、3mLの活発に増殖している培養物を等量のグリセロール溶液と混合し(McSweeney,2005)、-80℃で保存することによって貯蔵した。
【0600】
C.sanaの単離。
C.sanaが1.2%の相対的存在量で存在するドナーの糞便試料をカスタムブロス(表1)に接種し、次いで段階的に限界希釈することによって、C.sanaの単離株を産生した。限界希釈培養シリーズを配列決定し、6.6%の相対的存在量でC.sanaを有する低多様性濃縮培養物を特定し、コロニーを回収し、その後、TY培地上に配列した。配列した単離株を、種特異的プライマーを使用してPCRによってスクリーニングし、2つの推定C.sana単離株を特定し、その後精製した。このアプローチにより、長くて薄い桿体細胞形態を有するグラム生存率染色単離株を特定し、全ゲノム配列決定後にC.sana MH35-1及びC.sana MH35-2と称した。
【0601】
代謝的再構成。
タンパク質コード配列を予測し、富化M(バージョン0.6.2)の注釈関数を用いて注釈を付けた。簡単に説明すると、富化Mは、-pメタモードでプロジガル(バージョン2.6.3)を使用してタンパク質コード配列を特定する。次に、DIAMOND(バージョン2.0.4)を用いてUniRef100データベース(2020年11月ダウンロード)に対してアミノ酸配列を検索し、E.C.,TCDB及びeggnog分類をUniRefで配布されたidmappingファイルから継承した。Pfam(リリース33.0)、tigrfam(リリース15.0)、及びdbcan2(ダウンロード2019年9月)に対するHmmer hmmsearch(バージョン3.1b2)を用いて、それぞれ機能ドメイン、主要代謝マーカー、及び炭水化物活性化(CAZy)酵素を注釈した。代謝経路は、手動で定義された代謝経路の定義に対して注釈とそのゲノム位置を評価する富化Mにおける分類機能を用いて特定した。ある経路は、必要なタンパク質の80%以上をコードし、必要なすべてのシンテニーチェックを通過する場合、ゲノム中に存在すると考えられる。その後、これらの自動的に予測された経路を手動で評価した。さらに、gutSMASH(バージョン1.0.0)を腸内微生物によってコードされる共通の生合成経路を特定するために適用した。
【0602】
系統樹。
ゲノムツリーは、Colonithrix属(NCBIリリース89)及び2つのC.sana MH35単離株の中で、checkM分析から≧90%完全かつ≦5%汚染と定義される高品質ゲノムから構築した。各ゲノムについて、gtdbtk特定を用いて、各ゲノムから122の細菌特異的保存マーカー遺伝子セットを抽出した。これらの遺伝子は、HMMをプロファイルするように整列させ、gtdbtk整列と1つの整列に連結し、そして最大尤度系統樹は、gtdbtk推論を用いたFastTree(バージョン2.1.10)を用いた整列から構築した。1000回の反復からGenomeTreetk(v0.1.6)を用いてノンパラメトリックブートストラップ値を推定した。
【0603】
動物実験のための細菌株の調製。
C.sana及びF.prausnitzii株を、それぞれ初期固定相PYGM及びTY培地まで増殖させた。個々の培養物の細胞密度は、Helber Counting Chamberを用いて計算した。細菌強制経口投与溶液を調製するために、個々の培養物を、5,000gの滅菌重鉱油層下で10分間遠心分離し、次いで、無細胞上清を捨てた。細胞ペレットを、1.5mLの滅菌嫌気性緩衝希釈剤(各38mL/Lの塩溶液2及び3(McSweeney et al.,2005)、1mL/Lの0.1%(w/v)レサズリン溶液、1g/L-システイン)中で洗浄し、次いで、再度遠心分離した。最後に、洗浄した細胞ペレットを、ハーフ強度グリセロール溶液(無酸素緩衝希釈液中の15%v/vグリセロール溶液)に再懸濁し、最終濃度1×10細胞/mLにし、必要になるまでアリコートし、-80℃で凍結した。細胞調製物の生存性は、単一アリコートを解凍し、寒天プレート上でストリーキングすることによって確認した。全ゲノム配列決定により、個々の株調製物の同一性及び純度を確認した。
【0604】
DSS誘発腸障壁機能障害の急性モデル。
動物資源センター(オーストラリア西部)から購入した6週齢のC57BL/6雌マウスを無作為化し、実験前7日間共飼育した。腸障壁機能障害を誘発するために、マウスに3%DSSを飲料水中で6日間自由摂取させた。ナイーブ同齢対照マウスを処理し、DSSを含まない飲料水を与えた。すべての処理は、DSSの供給の1日前に開始し、すべてのマウスは最終DSS処理の2日後に犠牲にした。処理のために、マウスをイソフルオランで麻酔し、200μlの細菌調製物又はビヒクル対照で経口強制経口投与した。プレドニゾン(2mg/kg)を腹腔内注射による麻酔後に投与した。体重及び便の硬さを毎日記録した。糞便試料を毎日採取した。屠殺後、結腸、肝臓及び脾臓を分析のために採取した。心穿刺にて採血した。
【0605】
内視鏡的及び組織学的スコアリング。
動物を小動物消化管内視鏡(Karl Storz Endoskope,Tuttlingen,Germany)を用いて1、2、6日目に検査し、結腸粘膜炎症の程度を評価した(Marks et al.,2015;and Liu et al.,2019)。簡単に説明すると、マウスをイソフルランで麻酔し、結腸鏡を直腸から挿入した。高解像度ビデオで撮影した画像を盲検下で検査し、病変の有無及び範囲を評価した(表5)。組織学的スコアリングは、本質的に、当該分野において既に記載された通りに実施された(Marks et al.,2015)。簡単に説明すると、試料を4%ホルマリン中で固定し、パラフィン包埋し、切片化した。組織切片をヘマトキシリン及びエオシン染色して疾患病理を評価し、アルシアンブルー染色してムチン産生を評価した。スライドを、Aperioデジタルイメージングシステム(Leica Biosystems,Nuβloch,Germany)を用いてイメージングした。大腸炎の重症度をグレード化するために、組織切片における炎症及び上皮損傷の程度を、確立されたスコアリングシステムを用いて半定量的にグレード化した(表6)。その後、試料を無作為化し、訓練を受けた消化管病理医が盲検下でスコア化した。
【0606】
STAT3抑制活性の特性評価。
STAT3抑制活性を評価するために、C.sana MH35-1及びC.sana MH35-2の3つの独立したコロニーを接種し、初期固定相まで増殖させた。次いで、各々の種培養ブロスを用いて、3つの生物学的複製物から6つの技術的反復を生成する2つの技術的反復を接種した。技術的反復を、初期固定相まで増殖させ、次いで、前述のように、無細胞培養上清を回収した(Giri et al.,2019)。培養上清を、製造業者(Merck Millipore)の指示に従って、3kDaのCENTRICON(登録商標)カラムに通すことによってサイズ分画した。
【0607】
STAT3活性は、HEK Blue IL-23細胞株(Invivogen)を用いて評価した。簡単に説明すると、アッセイ開始の24時間前に、1ウェル当たり50,000個の細胞を96ウェルプレートに3回播種した。細菌上清又は滅菌細菌培地を、5ng/mLの最終濃度で、組換えヒトIL-23(rhIL-23、R&D systems)と25% v/vの最終濃度で混合した。次いで、この混合物を細胞に直接添加し、37℃で6時間インキュベートした。STAT3活性化を抑制する上清の能力を、Janusキナーゼ阻害剤トファシチニブ(10μM)と比較した。STAT3が調節するSEAPレポーター活性は、製造業者(Invivogen)が推奨するQuanti Blue溶液を用いて評価した。結果は、少なくとも3つの独立した実験の平均値である。細胞毒性はMTTアッセイを用いて評価した。簡単に説明すると、MTTを最終濃度1.2mMで細胞に添加した。細胞を37℃で4時間インキュベートし、次いでDMSOで固定した。細胞毒性は、製造業者(Invitrogen,Thermo Fisher,Australia)により推奨されているように、540nmで吸光度を測定することにより評価した。
【0608】
サイトカイン産生アッセイ。
5×10個のT84細胞を96ウェルプレートに三重複で播種し、一晩定着させた。生又は<3kDa濾過細菌培養上清(25% v/v)又は培地対照を、T84細胞に添加した。細菌培養上清による90分間の処理後、細胞をLPS(100μg/ml)で刺激した。6時間後、IL-6評価のためにT84培養上清を採取した。IL-6は、標準プロトコールに従って、InvivoGenのHEK-blue細胞レポーターシステムを使用して測定した。ELISAアッセイについて、1×10細胞/ウェルのHCT116細胞を、96ウェルプレートに重複で播種した。HCT116細胞を、必要に応じて、IL1β(10ng)及びインドール-3-カルビノール(5μM)又は培養上清(10% v/v)で処理し、37℃で16時間インキュベートした。次いで、細胞上清を採取し、製造業者の指示に従って、IL-8ヒト非コーティングELISAキットを使用して分析した。
【0609】
細胞遊走アッセイ。
Transwell遊走アッセイを使用して、C.sana MH35-1及びC.sana MH35-2培養上清抽出物への曝露中のHCT116細胞の遊走を評価した。これらの細菌抽出物は、本質的に、Colosimo et alによって以前に記載されているように、Amberlite XAD-7樹脂を使用して調製した。簡単に説明すると、単一のコロニーを接種し、初期固定相まで増殖させた。この「種培養」ブロスを使用して600mLのPYGMブロスを接種し、培養物を初期固定相までインキュベートした。培養上清を、4000gで30分間遠心分離し、次いで、製造業者の指示(Sartorius Vivaflow(登録商標)50限外濾過ユニット3kDa MWCO PES)にしたがって、無細胞上清を3kDaのフィルターに通すことによって調製した。活性化Amberlite XAD-7樹脂を、400mLの3kDa濾過した無細胞上清(10% w/v)に添加し、スラリーを4℃で一晩穏やかに振盪した。樹脂を採取し、400mLの脱イオン水で洗浄し、次いで、120mLの100%メタノールと混合した。穏やかに振盪しながら2時間インキュベーションした後、メタノール溶出物を採取した。前述のように、120mLの100%メタノール中の第2の溶出を行い、2つの溶出を最終的に組み合わせ、回転式蒸発器を使用して真空下で乾燥させた。抽出物を100% DMSO(以後1000Xと称する)中で完全に再懸濁し、-20℃で貯蔵した。
【0610】
ヒトHCT116腸上皮細胞を、10% FBS及び1% Pen/Strepを補充したMcCoys 5a培地中に維持した。IncuCyte(登録商標)スクラッチ創傷アッセイの場合、3.5×10個のHCT116細胞を、24ウェルプレート(8μmの孔径、Corning Costar)中のTC処理ポリカーボネート膜を有する6.5mmインサートの上部コンパートメント内の100μLの10% FBS培養培地に播種した。600μLの10% FBS培養培地を、下部コンパートメントに添加した。細胞を24時間沈降させた。DPBS洗浄後、100μL及び600μLの0.5% FBS培地を、それぞれ、上部コンパートメント及び下部コンパートメントに添加した。次いで、C.sana MH35-1及びC.sana MH35-2からの0.5倍濃縮抽出物を、下部コンパートメントに添加した。16時間後、細胞をDPBSで洗浄し、膜の上部に取り付けられた細胞を綿棒で慎重に除去した。次いで、膜の底部上の遊走細胞を、70%エタノール中で10分間固定し、続いて0.25%結晶バイオレット中で5分間染色した。Transwellインサートを水で洗浄し、乾燥させ、ガラススライド上の水中の50%グリセロールとともに膜を載置し、直ちにイメージングした。Transwell実験を、生物学的及び技術的三重複で実施し、各複製について、膜の2つの代表的な画像を10倍の倍率で撮影した。遊走細胞の数を、ImageJを使用して自動的にカウントし、平均細胞数を表示した。細胞遊走の程度を、3つの生物学的複製及び3つの技術的反復からのウェル当たり2つの顕微鏡視野における遊走細胞の平均数として表した。
【0611】
IncuCyteスクラッチ創傷アッセイを介して遊走を評価するために、3.5×10個のHCT116細胞を、ポリ-L-オルニチンでコーティングしたIncucyte(登録商標)ImageLock 96ウェルプレート(Essen BioScience)にプレーティングした。24時間後、Incucyte(登録商標)WoundMakerツールを使用して、ほぼコンフルエントな細胞単層に均一なスクラッチ創傷を誘導した。細胞をDPBSで2回洗浄し、次いで、200μLの0.5% FBS McCoys 5a培地中のC.sana MH35-1及びC.sana MH35-2由来の0.5倍抽出物を添加した。細胞を、陰性対照として未接種の細菌培地からの0.5倍濃縮抽出物でも処理した。刺激剤を添加した直後に、プレートをIncuCyteシステムに移し、72時間にわたって2時間ごとに各ウェルをイメージングすることによって、細胞遊走を監視した。統合分析ソフトウェアを使用して、データ分析を実施した。
【0612】
実施例3
Gemmigerと健康、IBD及び他の疾患との関連。
炎症性腸疾患は、健常腸と比較した場合、IBD腸における特定の腸内細菌の有病率及び存在量の両方が有意に減少するミクロソームの構造-機能変化によって特徴付けられる。いくつかの研究により、これらの細菌がIBDの病因を調節する可能性があることが示されているが(Mallone et al.,2011;and Sokol et al.,2008)、これらの細菌を用いて新しい治療法を開発する上での主要な障害は、低解像度16S rRNAに基づくプロファイリングが、低い分類学的レベル(すなわち、属、種、株)で健常及びIBD関連株を正確に識別するのに十分な解像度を提供しないことである。
【0613】
発明者らは、6,020人の成人の高解像度の糞便腸メタゲノムデータ及び関連する宿主メタデータを含むMicroba Disease Database(MDD)を使用して、炎症性及び自己免疫疾患におけるGemmiger種の有病率を研究した。メタゲノム配列リードは、Microba Community Profiler(MCP)を使用して分析した(Parks et al.,2021)。
【0614】
5つのGemmiger種が、MDDの2つより多くの個体で検出された:G.formicilis、未培養種G.sp003476825、及びメタゲノムアセンブルゲノム(MAG)へのメタゲノム読み取りのアセンブリを通じてMicrobaによって発見された3つの未培養種(Parks et al.,2021)(G.種_A、G.種_B、及びG.種_C)。
【0615】
本発明者らは、Gemmiger種が健常なヒトにおいて蔓延しているが、炎症性及び自己免疫疾患においてはめったに検出されないことを見出した(図14A~D)。IBDでは、潰瘍性大腸炎及びクローン病の両方の主なサブタイプを含め、最も強い効果が観察された(以下、図14E及び表9)。Gemmiger属は、健常個体と比較してIBDで顕著に少ない有病率であった(P=1.3e-10、FDR=1.9e-09)。したがって、30の5つのGemmiger種(G.formicilis、G.種_A、G.種_B、G.種_C、及びG.sp003476825)はすべて、健常なものと比較して、IBDで顕著に少ない有病率であった(図14E、表9)。IBDの最も強い低減は、G.formicilisについて観察された(図14E、表9)。これらの観察は、Harvard((Franzosa et al.,2018)、図14F、表9)によって以前に発表された独立したIBDコホートにおいて検証された。
【表10】
【0616】
G.formicilisの単離及びゲノムスケール分析
健康及びIBDの病因におけるG.formicilisの役割をよりよく理解するために、G.formicilis MH32-1と呼ばれる新しい単離株を健常ヒトドナーから単離した。単離は、限界希釈濃縮を生成し、次いで単一のコロニーについてプレーティングすることによって行われた。G.formicilis MH32-1を、TY及びPYG培地上で良好に増殖した極めて酸素感受性の株として特定した。典型的には、特徴的な「出芽」形態を有するグラム陰性染色コッカス様細胞として観察された(Gossling&Moore 1975)、図15A)。第2の単離株、G.formicilis MH32-2を、Microba Faecal Biobankにアーカイブされた糞便試料から単離した。6.48%の相対存在量のG.formicilisを有する糞便ドナー試料を段階希釈し、TY培地にプレーティングした。psMGSによる分析は、1.35%の相対存在量でG.formicilisを有する単一のプレートを明らかにした。その後、個々のコロニーを採取し、カスタムG.formicilisプライマーを使用してスクリーニングした。このプロセスによって、その後、無菌単離株を産生した。G.formicilis MH32-2は、TYで48時間後に全縁を有する隆起したクリーミーな白色/乳白色のコロニーを形成した(図15B、上パネル)。さらなる分析は、G.formicilis MH32-2細胞が、しばしば対として、又は時折短鎖として存在した、グラム可変の球形/卵様細胞を形成したことを明らかにした(図15B、下パネル)。
【0617】
NCBI及びMH32-1からの高品質のGenBank及びRefSeqゲノムを使用したGemmiger属の系統発生再構築により、G.formicilisのいくつかの未培養種の次、G.variabileの近く、及びいくつかの未培養種の近くに配置された単離株を明らかにした。(図15C、D)。G.formicilis MH32-1は、糖発酵槽であり、デンプン、グルコース、フルクトース、グルコン酸塩、ラクトース、トレハロース、及びラクトアルデヒドを炭素源として利用することが予測される。トリプトファン、フェニルアラニン、セリン、及びチロシンを除くすべてのアミノ酸について、完全な、又はほぼ完全な生合成経路が特定された。アミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、メチオニン、セリン、及びスレオニン)の取り込み及び発酵のためのいくつかの経路も特定されたが、一次エネルギー源ではない可能性が高い。G.formicilis MH32-1単離株の代謝モデリングは、グルコース及び他のヘキソース糖を摂取した場合、発酵の一次副産物は、酪酸塩、酢酸塩、エタノール、及びフマル酸塩であることを明らかにした。乳酸塩を産生する経路もまた、G.formicilis MH32-1単離株によってコードされるが、代謝モデリングは、これらを主な発酵副産物として予測しなかった。G.formicilis MH32-1の生合成能を、それぞれAntiSmash v5.0及びdeepBGCを使用して、十分に特徴付けられた推定生合成遺伝子クラスター(BGC)を検索することによって評価した。AntiSmashは、公的データベース中のBGCに近い相同性を有しない単一のRiPPサクチペプチドBGCを特定した。DeepBGCは、同じサクチペプチドRiPPと、>1のコード領域及び>0.75のdeepBGCスコアを有するさらに8つの推定BGCを特定し、すべて抗菌性として注釈を付けた。
【0618】
G.formicilis MH32-1は腸障壁機能を増強する
健常腸におけるG.formicilisの役割を評価するために、ナイーブC57Bl/6 SPFマウスをG.formicilis MH32-1で8日間治療した(図16A)。この治療期間中、罹患率はなく、一般的な外観、挙動、姿勢、可動性及び神経学的挙動の変化は観察されなかった。同様に、G.formicilis MH32-1治療群では、ビヒクル対照群と比較して体重に顕著な変化は認められず、結腸の長さ及び重量/長さ比も影響を受けなかった(図16B~D)。G.formicilis MH32-1は、上皮損傷及び過剰血管新生を単独で評価することによって、又は総合的な組織病理学的スコアとして測定した場合、ビヒクルと比較して、結腸に顕著な組織学的変化をもたらさなかった(図16E~G)。
【0619】
上記のビッグデータアプローチを使用して、炎症性及び自己免疫疾患(例えば、IBD)のための新規の生きたバイオ治療薬候補を特定することができると仮定された。したがって、発明者らは、DSS誘導性マウス大腸炎の急性モデル(図17A)が、上皮損傷及び修復の十分に文書化されたモデルであるため、このモデルにおけるG.formicilis MH32-1の治療有効性を試験した。DSS治療は、ビヒクル対照と比較して有意な疾患活性をもたらした。体重の顕著な低減が認められ(図17B)、これは大腸炎の正確かつ信頼できる指標であることが示されている(Britto et al.,2019)。予想通り、プレドニゾンは、DSS誘導性体重減少を悪化させたが(Yamamoto et al.,2013)、DSS誘導性体重減少は、G.formicilis MH32-1又はF.prausnitzii A2-165による治療によって改善した(図17B)。内視鏡分析は、プレドニゾン以外のF.prausnitzii A2-165及びG.formicilisによるすべての治療群における疾患活性の進行性の増加を明らかにし、ビヒクル治療群と比較して6日目での疾患活性の低下をもたらした(図17C)。
【0620】
結腸の分析は、DSS治療後の顕著な短縮を明らかにした(図17D)。プレドニゾン以外のF.prausnitzii A2-165及びG.formicilis MH32-1による治療は、結腸短縮の顕著な低減をもたらした(図17D)。DSS治療マウスの組織学的分析は、クリプト喪失及び上皮びらんを特徴とする顕著な腸損傷を明らかにした。特に、G.formicilis MH32-1による治療は、組織病理学的治癒(図17F)及び上皮損傷(図17G)の改善によって証明されるように、クリプト再形成及び再上皮化(図17E)を特徴とする病理学の顕著な改善をもたらした。これと一致して、G.formicilis MH32-1による治療は、糞便中のリポカリン-2によって判定されるように、腸内炎症の減少をもたらした(図17H(McSweeney et al.,2005))。予想通り、プレドニゾン及びF.prausnitzii A2-165はまた、疾患病理学の顕著な改善をもたらした。
【0621】
IL-23-Th17細胞免疫軸は、IBDの病因の中心であり、検証された治療標的である(Martin,et al.,2017)。腸障壁機能のDSSモデルは、Th1分極免疫によって主に裏打ちされるため(Marks et al.,2015)、マウスSKGモデルにおけるG.formicilis MH32-1の治療有効性も試験した。SKGマウスは、ZAP-70遺伝子の変異を有し、IL-23駆動性クローン病様回腸炎及び自己免疫炎症性関節炎を、カードラン治療による疾患開始後に発症する(図17I(Liu et al.,2019))。ビヒクル治療されたマウスの組織学的分析は、カードラン治療の7日後に炎症性細胞の浸潤及び肉芽腫形成を特徴とする顕著な腸損傷を明らかにした。予想通り、抗IL-23モノクローナル抗体による治療は、組織学的損傷の顕著な低減をもたらした。G.formicilis MH321による治療はまた、組織病理学的スコアの改善によって証明されるように、病理学の顕著な改善をもたらした(図17J)。
【0622】
まとめると、これらのデータにより、G.formicilis MH32-1は、DSS治療されたマウス又はナイーブマウスにおいていかなる悪影響も引き起こさず、G.formicilis MH32-1は、DSS治療マウス及びSKGマウスにおいて腸障壁機能を増強し、粘膜治癒を促進することが明らかにされた。
【0623】
G.formicilisは、インビトロでSTAT3活性化を抑制する。
DSS治療動物において観察された組織学的炎症及び再上皮化に対する劇的な影響を考慮して、本発明者らは、次に、G.formicilisがIBD関連免疫経路を調節する能力を調べた。IL-23駆動性免疫応答はIBDの病因の中心であり、臨床的に認識された標的である(Friedrich et al.,2019、Yang et al.,2017)。本発明者らは、G.formicilis MH32-1がIL-23を介したSTAT3の活性化を抑制する能力を、HEK-Blue(商標)IL-23レポーター細胞株を使用して調べた。HEK-Blue(商標)IL-23レポーター細胞株は、IL-23刺激に応答するSTAT3誘導性SEAPレポーターを有する。予想されるように、IL-23を介したSTAT3の活性化は、トファシチニブによって予防することができた(図18A)。興味深いことに、TY培地で増殖させたG.formicilis MH32-1から調製した無細胞培養上清は、SEAPレポーター活性を抑制した(図18A)。さらなる分析により、G.formicilisのSTAT3抑制活性が<3kDa画分と関連付けられたことが明らかになった(図18A)。特に、G.formicilis培養上清による処理後、細胞毒性効果は観察されなかった。CSの生化学的特性を、熱及びプロテイナーゼK処理によって評価した。このアプローチによって、G.formicilisのSTAT3抑制活性が、熱又はプロテアーゼKの影響を受けないと判定された(図18B~C)。
【0624】
最後に、本発明者らは、IL-23を介したSTAT3の活性化に対する増殖培地依存性効果の影響を調べた。TY又はPYG培地で増殖させた菌株から調製したCSは、強力なSTAT3抑制活性を示した。興味深いことに、株をWilkins-Chalgren培地及びMCM培地中で増殖させた場合、最小のSTAT3抑制活性が認められた(図18D)。これは、以前の報告(例えば、Giri et al.,2019、Schreiner et al.,2019)と一致しており、免疫調節活性G.formicilis MH321が栄養因子によって影響されることを示唆している。
【0625】
IL-23抑制活性が種としてのG.formicilisの特徴であることを実証するために、2つの追加のG.formicilis株を分析した。G.formicilis MH32-2培養上清がIL-23を介したSTAT3の活性化を抑制する能力を、HEK-Blue IL-23レポーター細胞株を使用した評価した。HEK Blue IL-23細胞株は、IL-23によって発現が誘導されるSTAT3応答性SEAPレポーターを含む。汎JAK阻害剤であるトファシチニブによる処理は、IL-23を介したSEAP発現を阻害する。TY培地による処理は、IL-23を介したSTAT3の活性化の適度な抑制をもたらした(図18E)。本発明者らはまた、培養上清及び<3kDa上清画分がSTAT3活性を調節する能力を調査した。<3kDa画分を分析して、STAT3活性が低分子量の生体活性によるものであるかどうかを判定し、これは、薬物開発により適している。G.formicilis MH32-2培養上清は、IL-23を介したSTAT3活性化を抑制した(図18E)。特に、G.formicilis MH32-2<3kDa画分は、IL-23を介したSTAT3の活性化を、無細胞培養上清と同様の程度まで抑制した(図18E)。MH32-1の<3kDa培養上清画分はまた、HEKレポーター細胞におけるIL-6により誘導されたSTAT3の活性化を顕著に抑制することができた(p=0.0009)(図18J)。両方の実験中、上清の細胞毒性効果は検出されなかった。
【0626】
加えて、G.formicilis型染色(ATCC 27749)は、IL-23を介したSTAT3の活性化を抑制し、この活性がG.formicilis種を代表するものであったというさらなる証拠を提供した。抑制活性は、上清画分において検出され、それが分泌された生体活性物質によって媒介されたことを示唆した(図18F)。さらに、生体活性物質は、抑制活性が<3kDa画分で検出されたため、低分子量である可能性が高い。
【0627】
次に、本発明者らは、Gemmiger sp.MD158培養上清がIL-23を介したSTAT3の活性化を抑制する能力を、HEK Blue IL-23レポーター細胞株を使用して調べた。トファシチニブによる処理は、IL-23を介したSEAPの発現を阻害した。TY培地による処理は、IL-23を介したSTAT3の活性化の適度な抑制をもたらした(図18G)。我々は、培養上清及び<3kDa上清画分がSTAT3活性を調節する能力を調べた。本発明者らは、低分子量の生体活性物質が薬物開発により適していると考えたため、<3kDa画分を調べた。Gemmiger sp.MD158培養上清は、IL-23を介したSTAT3の活性化を抑制した(図18G)。特に、G.Gemmiger sp.MD158<3kDa画分は、IL-23を介したSTAT3の活性化を、無細胞培養上清と同様の程度まで抑制した(図18G)。実験中、上清の細胞毒性効果は検出されなかった。
【0628】
培養上清の免疫調節能力を考慮すると、本発明者らは、G.formicilisによって産生される生体活性物質が、末梢免疫細胞(PBMC)に直接影響を及ぼし得ることを認識した。したがって、炎症促進性サイトカインIL-6のレベルの上昇及びその受容体IL-6Rを介したシグナル伝達がIBDの病因と関連付けられるため、G.formicilis MH32-1培養上清のIL-6産生に対する効果を調べた。特に、IL-6は、免疫細胞に対するその炎症促進効果及び抗アポトーシス効果に起因して、腸内の慢性炎症に寄与する。これらの効果は、MAPK/ERK及び他の下流キナーゼの活性化と組み合わせてJAKキナーゼ活性化及びSTAT3二量体化を引き起こすIL-6受容体結合によって媒介される。PIMによるPBMCの処理は、IL-6の産生を誘導し、この誘導は、TY培地による前処理の影響を受けなかった(図18H)。G.formicilis MH32-1培養上清を用いた前処理は、TY前処理対照と比較して、PIMにより刺激されたIL-6の分泌を抑制した(図18H)。G.formicilis MH32-1培養上清又は<3kDa培養上清画分によるT84腸上皮細胞の前処理は、LPSを介したIL-6の分泌を抑制した(図18I)。まとめると、これらのデータは、G.formicilisが先天性及び適応性免疫細胞駆動応答において重要な役割を有する重要なサイトカインを調節することができることを示す。
【0629】
G.formicilisはヒト腸上皮細胞の遊走を促進する。
IBDでは、消化管障壁の損傷が一般的に発生する。腸上皮細胞の急速な遊走は、恒常性を再確立するための創傷治癒プロセスの重要な構成要素である。G.formicilisに由来する生体活性物質が腸上皮細胞の運動性に影響を及ぼすことができるかどうかを調べるために、TRANSWELL(登録商標)遊走アッセイを用いた。HCT116細胞をTRANSWELL(登録商標)チャンバ内に頂端播種し、G.formicilis抽出物がチャンバの基底外側への遊走を促進する能力を評価した。未処理の細胞は、膜の基底外側への遊走の基礎レベルを有し、これは、TY培地による処理によって影響されなかった(図19A~B)。G.formicilis MH32-1は、HCT116細胞の基底外側への遊走を顕著に促進した(図19A~B)。G.formicilisの遊走促進作用は、IncuCyteスクラッチ創傷アッセイを用いてさらに確認された。スクラッチ創傷の誘導後18時間で、HCT116細胞は、TY培地で処理した対照細胞と比較して、G.formicilis MH32-1からの抽出物の存在下での創傷閉鎖の加速速度を示した(図19C~D)。
【0630】
G.formicilisは効果的な腸障壁機能をサポートする
腸上皮細胞は、宿主組織を腸内微生物及び管腔内容物から分離する物理的及び生化学的障壁を形成する(Peterson et al.,2014)。腸障壁機能の障害は、IBD(Vanuytsel et al.,2021)を含む炎症性及び自己免疫疾患の病因に関係しており、疾患の転帰を改善するための治療標的として提案されている(Sommer et al.,2021)。
【0631】
本発明者らは、経上皮電気抵抗(TEER)と呼ばれる非侵襲的方法を使用して、腸上皮細胞障壁の完全性を評価した。このアッセイでは、電流が上皮細胞層を横切って印加され、抵抗が記録される。TEER値の低下は、障壁の低下を示している。TEER測定は、単培養細胞層におけるバリア完全性の非侵襲的測定のための「ゴールドスタンダード」を構成する。
【0632】
G.formicilisがT84上皮細胞を使用して障壁機能を調節する能力を判定した。このモデルでは、IFN-γは、障壁機能に悪影響を及ぼすことが知られており、したがって、疾患状態をシミュレートするために利用された。IFN-γ曝露は、障壁完全性の低減を示す、記録されたTEER値の顕著な低下をもたらした。G.formicilis MH32-1由来の<3kDa分画培養上清による処理は、YG/V培地対照と比較して、IFN-γを介したTEERの低減を顕著に軽減し(図20A)、したがって、G.formicilisは、障壁完全性の回復を促進し得る。
【0633】
材料と方法
細菌株、培養条件及び分析。
糞便試料を、胃腸障害の病歴のない健康なヒト成人から採取し、容量当たり等しい重量の無菌酸素遊離グリセロール溶液と混合した(McSweeney,2005)。供血者は糞便試料採取の3ヵ月前に抗生物質を摂取していなかった。G.formicilis及びFaecalibacterium prausnitziiを、無酸素雰囲気(85% N:10% CO:5% H)雰囲気のCoyビニル嫌気性チャンバで日常的に処理した。G.formicilisをTY又はPYG培地中で日常的に培養し、F.prausnitziiをTY培地中で培養した。全単離株を、3mLの活発に増殖している培養物を等量のグリセロール溶液と混合し(McSweeney,2005)、-80℃で保存することによって貯蔵した。
【0634】
G.formicilis MH32-1の単離。
G.formicilisが2.48%の相対的存在量で存在するドナーの糞便試料をTY培地に接種し、次いで段階的に限界希釈することによって、G.formicilisの単離株を産生した。コロニーをTY培地上で回収し、次いで、非常に酸素感受性の単離株を特定するために、本質的に前述のようにスクリーニングした。ここで、個々のコロニーは、嫌気性チャンバ内の2つのTY寒天プレートにわたるレプリカプレートであった。その後、1つのプレートを嫌気性チャンバから取り出し、大気条件に1時間曝露した。次いで、プレートを嫌気性チャンバに戻し、両方のプレートを37℃でインキュベートした。非常に酸素感受性の単離株は、大気条件に1時間曝露した後に成長しなかったことによって特定された。単一の単離株をTY寒天上でストリーキングすることによって精製し、G.formicilis MH32-1を全ゲノム配列決定によって特定した。
【0635】
G.formicilis MH32-2の単離。
G.formicilisが6.48%の相対存在量で存在するドナー便試料BBD6936(実験データ/Faecal Biobankデータを参照)を段階希釈し、TY培地上にプレーティングした。5日間の増殖後、プレートを調べ、>50コロニーを有するプレートを6つの等しい部分に分割した。各プレート上の培養可能な微生物多様性を、プレートスクレイプメタゲノムシーケンシング(psMGS)によって評価した。簡潔に説明すると、少なくとも2つの部分のコロニーを、独立して、プレートから削り取って無菌嫌気性希釈剤に入れ、DNAを抽出し、メタゲノムシーケンシングのために提出した。Microba分析パイプラインを使用して配列データを分析し、各切片の多様性を評価した。その後、単一コロニーをTY寒天上に配列し、増殖するまで37℃でインキュベートした。DNAを個々のパッチから抽出し、カスタムG.formicilisターゲティングプライマー(フォワードプライマーP5′-CGCGCAGTCGAACGCAATGTTCGTGAC C-3′、リバースプライマーP 5′-GGCACAGCGCACTGGAGATGAAGCGC-3′)を使用して、qPCRによって分析した。このアプローチにより、単一の候補G.formicilis単離株を特定し、TY寒天上にストリーキングした。単一のコロニーを選択し、TY寒天上にストリーキングし、このプロセスをもう一度繰り返した。最終単離株の同一性及び純度を、全ゲノム配列決定及び顕微鏡検査によって評価した。無菌単離株は、特徴的なダンベル形態を有するグラム可変染色球形単離株であると判定され、全ゲノム配列決定後にG.formicilis MH32-2と称された。
【0636】
G.formicilis MH32-2を、当該分野における標準プロトコールを使用して、顕微鏡検査によって調べた。簡潔に説明すると、ブロス培養物(通常0.2mL)を遠心分離し、細胞ペレットを3~6μLのPBS中に再懸濁した。細胞ペレットをスライドガラス上に移し、1μLのループを塗り付けた後、空気乾燥させるか、又は熱固定した。乾燥した/熱固定したスミアをクリスタルバイオレット染色試薬に30秒間浸し、次いで、スライドを水道水の間接流で洗浄して、結合していない染色を除去した。次に、スライドをグラムのヨウ素に30秒間浸し、スライドを再度水道水の間接流で洗浄して、結合していない汚れを除去した。次に、スライドを脱色剤に浸し、次いで直ちに水道水で洗浄した。最後に、スライドをサフラニンに30秒間浸し、次いで、水がきれいになるまで、スライドを水道水の間接流中で洗浄した。スライドを空気乾燥させ、次いで明視野顕微鏡を使用して油浸漬下で細胞を可視化した。
【0637】
Gemmiger sp.MD158の単離
Gemmiger sp.MD158を単離するために、1mLの糞便ストック試料をさらに3mLの30%グリセロール溶液と混合し、約3.5mmのガラスビーズ(Daintree Scientific)で2分間ボルテックスして、糞便デブリから細菌を解離した。解離した細菌のアリコートを、必要に応じて後で処理するために-80℃で貯蔵した。細菌細胞を、製造業者の指示にしたがって、100μmのノズル及び小粒子検出器を有するBD FACSAria(商標)融合フローサイトメーターを使用して選別した。システムを20psiで加圧し、0.2μmの濾過PBSを使用して閾値が設定された散乱で事象を引き起こし、ノイズフロアからのいくつかの事象を可能にした。細菌細胞を選別するために、アリコートを40μmフィルターを通して濾過し、その後、0.2μm濾過嫌気性緩衝希釈液(すなわち、各38ml/Lの塩溶液2及び3(McSweeney et al.,2005)を使用して、濾液の10-3希釈液を調製した。希釈した濾液を流して希釈を決定し、毎秒500~1200事象をもたらした。標的を散乱でゲーティングし、二重項を除外した(ゲーティング戦略を図20Bに示す)。単一細胞をTY寒天プレート上に沈着させ、37℃で最長3週間インキュベートした。TYブロス中での増殖後、全ゲノム配列決定によって単離株を特定した。このアプローチによって、Gemmiger sp.に属する単離株を暫定的に特定した。最終精製単離株をグリセロール貯蔵し、全ゲノム配列決定のために提出し、このアプローチによって、Gemmiger sp.MD158と呼ばれる単離株を産生した。
【0638】
代謝的再構成。
タンパク質コード配列を予測し、富化M(バージョン0.5.2)の注釈関数を用いて注釈を付けた。簡単に説明すると、富化Mは、-pメタモードでプロジガル(バージョン2.6.3)を使用してタンパク質コード配列を特定する。次に、DIAMOND(バージョン2.0.4)を用いてUniRef100データベース(2020年11月ダウンロード)に対してアミノ酸配列を検索し、E.C.,TCDB及びeggnog分類をUniRefで配布されたidmappingファイルから継承した。Pfam(リリース33.0)、tigrfam(リリース15.0)、及びdbcan2(ダウンロード2019年9月)に対するHmmer hmmsearch(バージョン3.1b2)を用いて、それぞれ機能ドメイン、主要代謝マーカー、及び炭水化物活性化(CAZy)酵素を注釈した。代謝経路は、手動で定義された代謝経路の定義に対して注釈とそのゲノム位置を評価する富化Mにおける分類機能を用いて特定した。ある経路は、必要なタンパク質の80%以上をコードし、必要なすべてのシンテニーチェックを通過する場合、ゲノム中に存在すると考えられる。その後、これらの自動的に予測された経路を手動で評価した。さらに、gutSMASH(バージョン1.0.0)を腸内微生物によってコードされる共通の生合成経路を特定するために適用した。
【0639】
系統樹
ゲノムツリーは、Gemmiger属(NCBIリリース89)及び4つのMH32単離株の中で、checkM分析から≧90%完全かつ≦5%汚染と定義される高品質ゲノムから構築した。各ゲノムについて、gtdbtk特定を用いて、各ゲノムから122の細菌特異的保存マーカー遺伝子セットを抽出した。これらの遺伝子は、HMMをプロファイルするように整列させ、gtdbtk整列と1つの整列に連結し、そして最大尤度系統樹は、gtdbtk推論を用いたFastTree(バージョン2.1.10)を用いた整列から構築した。1000回の反復からGenomeTreetk(v0.1.6)を用いてノンパラメトリックブートストラップ値を推定した。
【0640】
動物実験のための細菌株の調製。
G.formicilis及びF.prausnitzii株をTY培地中で初期固定相まで増殖させた。個々の培養物の細胞密度は、Helber Counting Chamberを用いて計算した。細菌強制経口投与溶液を調製するために、個々の培養物を、5,000gの滅菌重鉱油層下で10分間遠心分離し、次いで、無細胞上清を捨てた。細胞ペレットを、1.5mLの滅菌嫌気性緩衝希釈剤(各38mL/Lの塩溶液2及び3(McSweeney et al.,2005)、1mL/Lの0.1%(w/v)レサズリン溶液、1g/L-システイン)中で洗浄し、次いで、再度遠心分離した。最後に、洗浄した細胞ペレットを、ハーフ強度グリセロール溶液(無酸素緩衝希釈液中の15%v/vグリセロール溶液)に再懸濁し、最終濃度1×10細胞/mLにし、必要になるまでアリコートし、-80℃で凍結した。細胞調製物の生存性は、単一アリコートを解凍し、寒天プレート上でストリーキングすることによって確認した。全ゲノム配列決定により、個々の株調製物の同一性及び純度を確認した。
【0641】
DSS誘発腸障壁機能障害の急性モデル。
動物資源センター(オーストラリア西部)から購入した6週齢のC57BL/6雌マウスを無作為化し、実験前7日間共飼育した。腸障壁機能障害を誘発するために、マウスに3%DSSを飲料水中で6日間自由摂取させた。ナイーブ同齢対照マウスを処理し、DSSを含まない飲料水を与えた。すべての処理は、DSSの供給の1日前に開始し、すべてのマウスは最終DSS処理の2日後に犠牲にした。処理のために、マウスをイソフルオランで麻酔し、200μlの細菌調製物又はビヒクル対照で経口強制経口投与した。プレドニゾン(2mg/kg)を腹腔内注射による麻酔後に投与した。体重及び便の硬さを毎日記録した。糞便試料を毎日採取した。屠殺後、結腸、肝臓及び脾臓を分析のために採取した。心穿刺にて採血した。
【0642】
内視鏡的及び組織学的スコアリング。
動物を小動物消化管内視鏡(Karl Storz Endoskope,Tuttlingen,Germany)を用いて1、2、6日目に検査し、結腸粘膜炎症の程度を評価した(Marks et al.,2015;and Liu et al.,2019)。簡単に説明すると、マウスをイソフルランで麻酔し、結腸鏡を直腸から挿入した。高解像度ビデオで撮影した画像を盲検下で検査し、病変の有無及び範囲を評価した(表5)。組織学的スコアリングは、本質的に、当該分野において既に記載された通りに実施された(Marks et al.,2015)。簡単に説明すると、試料を4%ホルマリン中で固定し、パラフィン包埋し、切片化した。組織切片をヘマトキシリン及びエオシン染色して疾患病理を評価し、アルシアンブルー染色してムチン産生を評価した。スライドを、Aperioデジタルイメージングシステム(Leica Biosystems,Nuβloch,Germany)を用いてイメージングした。大腸炎の重症度をグレード化するために、組織切片における炎症及び上皮損傷の程度を、確立されたスコアリングシステムを用いて半定量的にグレード化した(表6)。その後、試料を無作為化し、訓練を受けた消化管病理医が盲検下でスコア化した。
【0643】
STAT3抑制活性の特性評価。
G.formicilisのSTAT3抑制活性を評価するために、3つの独立したコロニーを接種し、初期固定相まで増殖させた。次いで、各々の種培養ブロスを用いて、3つの生物学的複製物から6つの技術的反復を生成する2つの技術的反復を接種した。技術的反復を、初期固定相まで増殖させ、次いで、前述のように、無細胞培養上清を回収した(Giri et al.,2019)。培養上清を、製造業者(Merck Millipore)の指示に従って、3kDaのCENTRICON(登録商標)カラムに通すことによってサイズ分画した。アッセイのためにGemmiger sp.MD158上清試料を調製するために、種培養を確立し、初期固定相まで増殖させた。次いで、種培養ブロスを使用して、2つの技術的反復を接種した。技術的反復を、初期固定相まで増殖させ、次いで、前述のように、無細胞培養上清を回収した(Giri et al.,2019)。培養上清を、製造業者(Merck Millipore)の指示に従って、3kDaのCENTRICON(登録商標)カラムに通すことによってサイズ分画した。
【0644】
STAT3活性は、HEK Blue IL-23細胞株(Invivogen)を用いて評価した。簡単に説明すると、アッセイ開始の24時間前に、1ウェル当たり50,000個の細胞を96ウェルプレートに3回播種した。細菌上清又は滅菌細菌培地を、最終濃度10%、25%又は50%v/vで、組換えヒトIL23(rhIL-23、R&Dシステム)と5ng/mLで混合した。次いで、この混合物を細胞に直接添加し、37℃で6時間インキュベートした。STAT3活性化を抑制する上清の能力を、Janusキナーゼ阻害剤トファシチニブ(10μM)と比較した。STAT3が調節するSEAPレポーター活性は、製造業者(Invivogen)が推奨するQuanti Blue溶液を用いて評価した。結果は、少なくとも3つの独立した実験の平均値である。細胞毒性はMTTアッセイを用いて評価した。簡単に説明すると、MTTを最終濃度1.2mMで細胞に添加した。細胞を37℃で4時間インキュベートし、次いでDMSOで固定した。細胞毒性は、製造業者(Invitrogen,Thermo Fisher,Australia)により推奨されているように、540nmで吸光度を測定することにより評価した。
【0645】
サイトカイン産生アッセイ。
5×104個のT84細胞を96ウェルプレートに三重複で播種し、一晩定着させた。生又は<3kDa濾過細菌培養上清(25% v/v)又は培地対照を、T84細胞に添加した。細菌培養上清による90分間の処理後、細胞をLPS(100μg/ml)で刺激した。6時間後、IL-6評価のためにT84培養上清を採取した。IL-6は、標準プロトコールに従って、InvivoGenのHEK-blue細胞レポーターシステムを使用して測定した。
【0646】
PBMCを、以前に記載されているように抽出した(Mallone et al.,2011)。簡潔に説明すると、Ficoll/Lymphoprep勾配(Stemcell)を使用して血液試料からPBMCを単離し、80℃で凍結し、液体窒素中で貯蔵した。実験のために、250,000個のPBMC/ウェルを24ウェルプレートに播種した。PBMCを、PMA/オノマイシン/モネンシン(それぞれ、40ng/mL、1mg/mL、及び2mg/mL)により37℃で4時間刺激した。未処理の対照を、陰性対照として使用した。示される場合、PBMCを、最終濃度10% v/vの細菌上清又は細菌培地対照により37℃で30分間前処理した。PBMC培養上清中に存在するIL-6を特徴付けるために、上述のように刺激したPBMCからの細胞培養培地上清を採取し、-80℃で貯蔵した。その後、これらの上清を解凍し、サイトカイン産生への影響を判定するために使用した。
【0647】
細胞遊走アッセイ。
IncuCyte(登録商標)生細胞イメージングシステム(Essen BioScience)及びTranswell遊走アッセイを使用して、G.formicilis由来の滅菌培養上清への曝露中のHCT116細胞の遊走を評価した。ヒトHCT116腸上皮細胞を、10% FBS及び1% Pen/Strepを補充したMcCoys 5a培地中に維持した。IncuCyte(登録商標)スクラッチ創傷アッセイの場合、3.5×10個のHCT116細胞を、ポリ-L-オルニチンコーティングしたIncuCyte(登録商標)ImageLock 96ウェルプレート(Essen BioScience)にプレーティングした。24時間後、IncuCyte(登録商標)WoundMakerツールを使用して、ほぼコンフルエントな細胞単層に均一なスクラッチ創傷を誘導した。細胞をDPBSで2回洗浄し、次いで、200μLの0.5% FBS McCoys 5a培地中の1%(v/v)のG.formicilisからの固定相培養上清を添加した。未接種の細菌培地(1%)が、陰性対照の役割を果たした。刺激剤を添加した直後に、プレートをIncuCyte(登録商標)システムに移し、72時間にわたって2時間ごとに各ウェルをイメージングすることによって、細胞遊走を監視した。統合分析ソフトウェアを使用して、データ分析を実施した。
【0648】
TRANSWELL(登録商標)アッセイを介して細胞遊走を評価するために、3.5×10個のHCT116細胞を、24ウェルプレート(8μmの孔径、Corning Costar)中のTC処理ポリカーボネート膜を有する6.5mmインサートの上部コンパートメント内の100μLの10% FBS培養培地に播種した。600μLの10% FBS培養培地を、下部コンパートメントに添加した。細胞を24時間沈降させた。DPBS洗浄後、100μL及び600μLの0.5% FBS培地を、それぞれ、上部コンパートメント及び下部コンパートメントに添加した。次いで、G.formicilisからの0.4倍濃縮抽出物を、下部コンパートメントに添加した。これらの細菌抽出物は、以前に記載されているように、Amberlite XAD-7樹脂を使用して調製した。16時間後、細胞をDPBSで洗浄し、膜の上部に取り付けられた細胞を綿棒で慎重に除去した。次いで、膜の底部上の遊走細胞を、70%エタノール中で10分間固定し、続いて0.25%結晶バイオレット中で5分間染色した。TRANSWELL(登録商標)インサートを水で洗浄し、乾燥させ、ガラススライド上の水中の50%グリセロールとともに膜を載置し、直ちにイメージングした。TRANSWELL(登録商標)実験を、生物学的及び技術的三重複で実施し、各複製物について、膜の2つの代表的な画像を10倍の倍率で撮影した。遊走細胞の数を、ImageJを使用して自動的にカウントし、平均細胞数を表示した。細胞遊走の程度を、3つの生物学的複製物及び3つの技術的反復からのウェル当たり2つの顕微鏡視野における遊走細胞の平均数として表した。
【0649】
TEER(Trans-Epithelial Electrical Resistance)を用いた上皮バリア完全性アッセイ
G.formicilisが障壁完全性の喪失を予防する能力を、Maestro Proシステムを使用して、T84腸上皮細胞のコンフルエントな単層を横切る経上皮電気抵抗を測定することによって評価した。T84細胞をCellBank Australiaから購入し、5%ウシ胎児血清及び1%ペニシリン-ストレプトマイシンを補充したダルベッコ変法イーグル培地栄養素混合物12(DMEM/F12;ThermoFisher Scientific,Waltham,MA,USA)中で培養した。T84細胞を合計0.2mL/ウェルで0.1×10細胞の密度で96ウェルCytoView-Zプレートに播種し、37℃、5% COでMaestro Proシステム(Axion BioSystems,Atlanta,GA,USA)内でインキュベートした。一貫した湿度を維持するために、滅菌水をウェルを囲むコンパートメントに添加した。安定したTEER測定値が確立されると(播種後およそ100時間)、細胞を組換えヒトIFN-γ(100ng/mL;R&D systems,Minneapolis,MN,USA)で刺激した。刺激後72時間で、細胞をdPBS(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA,USA)で洗浄し、培地をDMEM/F12のみで置き換えたか、又は1×YG/V培地対照若しくは前述のようにAmberlite XAD-7樹脂を使用して調製した1×G.formicilis細菌抽出物を補充したDMEM/F12で置き換えた。処理後45時間で、TEER測定値を記録し、対照(未処理のT84細胞)と比較したTEER値のパーセンテージ差を、平均±標準偏差としてヒストグラムに視覚化した。統計的有意性は対応のないt検定によって決定した。
【0650】
本明細書に引用されるすべての特許、特許出願、及び刊行物の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0651】
本明細書における引用は、そのような引用が本出願に対する「先行技術」として利用可能であることを認めるものと解釈されるべきではない。
【0652】
本明細書を通して、本発明を任意の1つの実施形態又は特徴の特定の集合に限定することなく、本発明の好ましい実施形態を説明することが目的であった。したがって、当業者は、本開示に照らして、本発明の範囲から逸脱することなく、例示された特定の実施形態において種々の修正及び変更を行うことができることを理解するであろう。このような変更及び変更はすべて、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。
【0653】
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図1
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図2-2】
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図3
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図7-2】
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図19
図20
【配列表】
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【国際調査報告】