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特表2024-529328ウイルス粒子をアッセイするためのオンラインネイティブ質量分析方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ウイルス粒子をアッセイするためのオンラインネイティブ質量分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20240730BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20240730BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20240730BHJP
   G01N 30/00 20060101ALI20240730BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20240730BHJP
   H01J 49/16 20060101ALI20240730BHJP
   H01J 49/00 20060101ALI20240730BHJP
   H01J 49/04 20060101ALI20240730BHJP
   C07K 14/015 20060101ALN20240730BHJP
   C12N 7/01 20060101ALN20240730BHJP
   C07K 1/18 20060101ALN20240730BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
G01N27/62 V
G01N27/62 X
G01N30/72 C
G01N30/88 J
G01N30/00 B
G01N33/68
H01J49/16 500
H01J49/00 310
H01J49/00 360
H01J49/04 450
C07K14/015
C12N7/01
C07K1/18
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501504
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 US2022036725
(87)【国際公開番号】W WO2023287724
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】63/220,654
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/352,754
(32)【優先日】2022-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトリア・コタム
(72)【発明者】
【氏名】シュンハイ・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ニン・リー
【テーマコード(参考)】
2G041
2G045
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA05
2G041EA04
2G041FA10
2G041FA11
2G041FA12
2G041GA01
2G041GA06
2G041HA01
2G045CB30
2G045DA36
2G045FB06
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065BD09
4B065BD12
4B065BD14
4B065CA24
4B065CA46
4H045AA30
4H045AA50
4H045CA01
4H045DA50
4H045EA50
(57)【要約】
ウイルス粒子の試料中のウイルスカプシド成分の相対存在量を決定するための方法が開示される。実施形態では、アデノ随伴ウイルスの空カプシド、部分的完全カプシド、及び完全カプシド(例えば、異種核酸分子を含む)の相対存在量を決定するための方法が開示される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種核酸分子を含む組換えウイルス粒子の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量を決定するための方法であって、
(a)前記ウイルス粒子の試料をオンラインネイティブ液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)システムに導入することであって、前記LC-MSシステムが、エレクトロスプレーイオン化エミッタ、質量分析計、及びガス入口ポートと流体連通する液体クロマトグラフィーカラムを備える、導入することと、
(b)前記液体クロマトグラフィーカラムを介して、前記ウイルス粒子の試料中の前記ウイルスカプシド成分を分離することと、
(c)前記ウイルスカプシド成分に質量スペクトル分析を受けさせる前に、前記ガス入口ポートを介して前記ウイルスカプシド成分を電荷低減剤と接触させることと、
(d)質量スペクトル分析を介して前記試料中のウイルスカプシド成分の未加工分画量を同定して、前記ウイルス粒子の試料中の2つ以上のインタクトなウイルスカプシド成分の各々の相対存在量を決定することと、を含む、方法。
【請求項2】
ウイルス粒子の試料が、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記AAV粒子が、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV-DJ、AAV-DJ/8、AAV-Rh10、AAV-retro、AAV-PHP.B、AAV8-PHP.eB、又はAAV-PHP.Sの粒子である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記AAV粒子が、血清型AAV1、AAV5、又はAAV8の粒子である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ウイルスカプシド成分が、空ウイルスカプシド及び完全ウイルスカプシドを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ウイルスカプシド成分が、部分的完全ウイルスカプシドを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記液体クロマトグラフィーカラムが、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラムである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記電荷低減剤が、イソプロパノール又はトリエチルアミンである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ウイルスカプシド成分が、窒素ガス中で前記電荷低減剤と接触される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記エレクトロスプレーイオン化エミッタが、8つのノズルを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記質量分析計が、電荷検出質量分析計である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
異種核酸分子を含む組換えウイルス粒子の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量を決定するための方法であって、
(a)前記ウイルス粒子の試料にオンラインネイティブエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)を受けさせて、ウイルスカプシド成分の未加工分画量を同定することであって、前記試料が、ネイティブESI-MSの前にクロマトグラフィー分離及び電荷低減剤を受ける、同定することと、
(b)前記ウイルス粒子の試料中の前記インタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量を決定すること、を含む、方法。
【請求項13】
前記ウイルスカプシド成分が、空ウイルスカプシド及び完全ウイルスカプシドを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ウイルスカプシド成分が、部分的完全ウイルスカプシドを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ウイルス粒子の試料が、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記AAV粒子が、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV-DJ、AAV-DJ/8、AAV-Rh10、AAV-retro、AAV-PHP.B、AAV8-PHP.eB、又はAAV-PHP.Sの粒子である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記AAV粒子が、血清型AAV1、AAV5、又はAAV8の粒子である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記クロマトグラフィー分離が、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラムを使用して実施される、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記電荷低減剤が、イソプロパノール又はトリエチルアミンである、請求項12~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記試料が、≦1000ngのウイルスカプシド成分を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記試料が、≦500ngのウイルスカプシド成分を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記試料が、≦100ngのウイルスカプシド成分を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記試料が、≦50ngのウイルスカプシド成分を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記試料が、≦10ngのウイルスカプシド成分を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記試料が、約5ngのウイルスカプシド成分を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記試料中のウイルスカプシド成分の濃度が、1μg/mL~200μg/mLである、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記試料中のウイルスカプシド成分の濃度が、100μg/mL未満である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記試料中のウイルスカプシド成分の濃度が、50μg/mL未満である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記試料中のウイルスカプシド成分の濃度が、10μg/mL未満である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記試料中のウイルスカプシド成分の濃度が、5μg/mL未満である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記試料中のウイルスカプシド成分の濃度が、約1μg/mLである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ウイルス粒子の組成物を精製する方法であって、前記方法が、アニオン交換濃縮工程と、前記組成物の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の決定と、を含み、インタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の前記決定が、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法を含む、方法。
【請求項33】
ある期間にわたってウイルス粒子の試料の安定性を監視する方法であって、前記方法が、アニオン交換濃縮工程と、前記ウイルス粒子の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の決定と、を含み、インタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の前記決定が、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法を含み、前記インタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量が、初期時点で決定され、前記初期時点後の1つ以上の時点で再び決定される、方法。
【請求項34】
前記初期時点での相対存在量と比較した、前記1つ以上の時点での前記インタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の変化が、前記期間中の前記ウイルス粒子の試料の安定性を示す、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ウイルス粒子の試料が、前記期間中に指定条件下で貯蔵される、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
前記指定条件が、湿度条件及び/又は温度条件を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記指定条件が、撹拌条件及び/又は1つ以上の凍結/解凍サイクルを含む、請求項35又は36に記載の方法。
【請求項38】
インタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の前記決定が、前記アニオン交換濃縮工程の前に実施される、請求項32~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
インタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の前記決定が、前記アニオン交換濃縮工程の後に実施される、請求項32~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
インタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の前記決定が、前記アニオン交換濃縮工程の前及び前記アニオン交換濃縮工程の後に実施される、請求項32~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記アニオン交換濃縮工程が、アニオン交換クロマトグラフィーカラムを使用して実施される、請求項32~40のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オンラインネイティブ質量分析を使用する、完全、部分、及び空ウイルスカプシド(例えば、AAVカプシド)の定量的決定のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、治療用遺伝子送達のための主要なプラットフォームであり、複数のFDAが承認したAAVベースの治療法が現在市場にあり、250を超える候補が臨床試験を受けている。このクラスの治療法のペースの速い開発は、安全性及び有効性を確保するために、並びに製造及びプロセス開発を支援するために、製品の品質を効率的に監視することが可能である堅調な分析方法を強く要求している。
【0003】
分析超遠心分離(AUC)は、溶液中の高分子の定量分析のための広く使用されている方法である。AUCは、広範囲の溶媒における、かつ広範囲の溶質濃度にわたる生体高分子の研究のために広範な用途を有する。沈降速度分析超遠心分離(SV-AUC)では、高遠心力場での溶質の移動は、高分子のサイズ、形状、及び相互作用を定義するために、流体力学的理論を使用して解釈される。沈降平衡は、低遠心力場における平衡濃度勾配が、分子質量、集合化学量論、会合定数、及び溶液非理想的性を定義するために分析される、熱力学的方法である。SV-AUCを使用して、試料の均質性を決定し、溶液中に存在する種の性質の詳細な像を提供することができる(Cole et al.,Methods Cell Biol.,84:143-179,2008)。
【0004】
AAV分析との関連で、SV-AUCは、異なる血清型のAAVの分析のために高い分解能及び広範な適用性を提供するため、最先端の方法とみなされる(Khasa et al.,Molecular Therapy:Methods and Clinical Development,21:585-591,2021)。しかしながら、SV-AUCは、時間がかかり(例えば、>約5時間)、500μLの範囲内の試料サイズを必要とし得る。したがって、ウイルス粒子の低い力価及びプロセス内試料分析に適している、高感度で迅速な分析方法の必要性が残っている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、完全、部分、及び空ウイルスカプシド(例えば、AAVカプシド)の迅速かつ定量的な評価を提供する、オンラインネイティブ質量分析(MS)方法を提供する。これらの方法は、カプシド検出のために高感度であり(LOD≒1μg/mL)、低い力価及びプロセス内試料に適したものになる。
【0006】
一態様では、本開示は、異種核酸分子を含む組換えウイルス粒子の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量を決定するための方法を提供し、本方法は、(a)ウイルス粒子の試料をオンラインネイティブ液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)システムに導入することであって、LC-MSシステムが、エレクトロスプレーイオン化エミッタ、質量分析計、及びガス入口ポートと流体連通する液体クロマトグラフィーカラムを備える、導入することと、(b)液体クロマトグラフィーカラムを介して、ウイルス粒子の試料中のウイルスカプシド成分を分離することと、(c)ウイルスカプシド成分に質量スペクトル分析を受けさせる前に、ガス入口ポートを介してウイルスカプシド成分を電荷低減剤と接触させることと、(d)質量スペクトル分析を介して試料中のウイルスカプシド成分の未加工分画量を同定して、ウイルス粒子の試料中の2つ以上のインタクトなウイルスカプシド成分の各々の相対存在量を決定することと、を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、ウイルス粒子の試料は、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を含む。場合によっては、AAV粒子は、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV-DJ、AAV-DJ/8、AAV-Rh10、AAV-retro、AAV-PHP.B、AAV8-PHP.eB、又はAAV-PHP.Sの粒子である。場合によっては、AAV粒子は、血清型AAV1、AAV5、又はAAV8の粒子である。
【0008】
いくつかの実施形態では、ウイルスカプシド成分は、空ウイルスカプシド及び完全ウイルスカプシドを含む。いくつかの実施形態では、ウイルスカプシド成分は、部分的完全ウイルスカプシドを更に含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、液体クロマトグラフィーカラムは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラムである。
【0010】
いくつかの実施形態では、電荷低減剤は、イソプロパノール又はトリエチルアミンである。場合によっては、電荷低減剤は、イソプロパノール及びトリエチルアミンの組み合わせを含む。場合によっては、ウイルスカプシド成分は、窒素ガス(例えば、脱溶媒和ガス)中で電荷低減剤と接触される。
【0011】
いくつかの実施形態では、エレクトロスプレーイオン化エミッタは、8つのノズルを含む。いくつかの実施形態では、質量分析計は、電荷検出質量分析計である。
【0012】
一態様では、本開示は、異種核酸分子を含む組換えウイルス粒子の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量を決定するための方法を提供し、本方法は、(a)ウイルス粒子の試料にオンラインネイティブエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)を受けさせて、ウイルスカプシド成分の未加工分画量を同定することであって、試料が、ネイティブESI-MSの前にクロマトグラフィー分離及び電荷低減剤を受ける、同定することと、(b)ウイルス粒子の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量を決定すること、を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、ウイルスカプシド成分は、空ウイルスカプシド及び完全ウイルスカプシドを含む。いくつかの実施形態では、ウイルスカプシド成分は、部分的完全ウイルスカプシドを更に含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、ウイルス粒子の試料は、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を含む。場合によっては、AAV粒子は、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV-DJ、AAV-DJ/8、AAV-Rh10、AAV-retro、AAV-PHP.B、AAV8-PHP.eB、又はAAV-PHP.Sの粒子である。場合によっては、AAV粒子は、血清型AAV1、AAV5、又はAAV8の粒子である。
【0015】
いくつかの実施形態では、クロマトグラフィー分離は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラムを使用して実施される。
【0016】
いくつかの実施形態では、電荷低減剤は、イソプロパノール又はトリエチルアミンである。場合によっては、電荷低減剤は、イソプロパノール及びトリエチルアミンの組み合わせである。
【0017】
上記又は本明細書で考察される方法のうちのいずれかでは、試料は、≦1000ngのウイルスカプシド成分を含み得る。場合によっては、試料は、≦500ngのウイルスカプシド成分を含む。場合によっては、試料は、≦100ngのウイルスカプシド成分を含む。場合によっては、試料は、≦50ngのウイルスカプシド成分を含む。場合によっては、試料は、≦10ngのウイルスカプシド成分を含む。場合によっては、試料は、約5ngのウイルスカプシド成分を含む。
【0018】
上記又は本明細書で考察される方法のうちのいずれかでは、試料中のウイルスカプシド成分の濃度は、1μg/mL~200μg/mLであり得る。場合によっては、試料中のウイルスカプシド成分の濃度は、100μg/mL未満である。場合によっては、試料中のウイルスカプシド成分の濃度は、50μg/mL未満である。場合によっては、試料中のウイルスカプシド成分の濃度は、10μg/mL未満である。場合によっては、試料中のウイルスカプシド成分の濃度は、5μg/mL未満である。場合によっては、試料中のウイルスカプシド成分の濃度は、約1μg/mLである。
【0019】
一態様では、本開示は、ウイルス粒子の組成物を精製する方法を提供し、本方法は、アニオン交換濃縮工程と、組成物の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の決定と、を含み、インタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の決定は、上記又は本明細書で考察される方法を含む。
【0020】
一態様では、本開示は、ある期間にわたってウイルス粒子の試料の安定性を監視する方法を提供し、本方法は、アニオン交換濃縮工程と、ウイルス粒子の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の決定と、を含み、インタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の決定は、上記及び本明細書で考察される方法を含み、インタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量は、初期時点で決定され、初期時点後の1つ以上の時点で再び決定される。
【0021】
安定性監視方法のいくつかの実施形態では、初期時点での相対存在量と比較した、1つ以上の時点でのインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の変化は、当該期間中のウイルス粒子の試料の安定性を示す。場合によっては、ウイルス粒子の試料は、当該期間中に指定条件下で貯蔵される。場合によっては、指定条件は、湿度条件及び/又は温度条件を含む。場合によっては、指定条件は、撹拌条件及び/又は1つ以上の凍結/解凍サイクルを含む(又は更に含む)。
【0022】
いくつかの実施形態では、インタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の決定は、アニオン交換濃縮工程の前に実施される。いくつかの実施形態では、インタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の決定は、アニオン交換濃縮工程の後に実施される。いくつかの実施形態では、インタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の決定は、アニオン交換濃縮工程の前及びアニオン交換濃縮工程の後に実施される。場合によっては、アニオン交換濃縮工程は、アニオン交換クロマトグラフィーカラムを使用して実施される。
【0023】
様々な実施形態では、上記又は本明細書で考察される実施形態の特徴又は構成要素のうちのいずれかが、組み合わせられてもよく、そのような組み合わせは、本開示の範囲内に包含される。上記又は本明細書で考察される任意の具体的な値は、範囲の上限及び下限を表す値を有する範囲を列挙するように、上記又は本明細書で考察される別の関連する値と組み合わせられてもよく、そのような範囲は、本開示の範囲内に包含される。
【0024】
他の実施形態は、後に続く発明を実施するための形態の検討から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】異種核酸分子(例えば、治療用遺伝子)を含むAAVカプシド(図1A)、空カプシド、部分的完全カプシド、及び完全カプシド(図1B)、並びに広範囲の理論的カプシド化学量論を生じさせる3つのウイルスタンパク質(VP1、VP2、及びVP3)の60個のコピーから構成されるAAVカプシド(図1C)を図示する。
図1B】異種核酸分子(例えば、治療用遺伝子)を含むAAVカプシド(図1A)、空カプシド、部分的完全カプシド、及び完全カプシド(図1B)、並びに広範囲の理論的カプシド化学量論を生じさせる3つのウイルスタンパク質(VP1、VP2、及びVP3)の60個のコピーから構成されるAAVカプシド(図1C)を図示する。
図1C】異種核酸分子(例えば、治療用遺伝子)を含むAAVカプシド(図1A)、空カプシド、部分的完全カプシド、及び完全カプシド(図1B)、並びに広範囲の理論的カプシド化学量論を生じさせる3つのウイルスタンパク質(VP1、VP2、及びVP3)の60個のコピーから構成されるAAVカプシド(図1C)を図示する。
図2】スプリッタ104に結合された液体クロマトグラフィーカラム102(例えば、SECカラム)を備え、これが順に、ガス入口ポート108及び質量分析計110(例えば、Orbitrap(商標)UHMR)に結合されている微細加工モノリシックマルチノズル(M3)エレクトロスプレーイオン化エミッタ106に結合されている、本開示の実施形態による例示的なLC-MSシステム100を図示する。
図3図2の液体クロマトグラフィーカラムを介した塩からのAAVカプシド成分の分離を図示するクロマトグラム、並びに空ウイルスカプシド及び完全ウイルスカプシドの相対存在量を示す質量スペクトルを示す。質量スペクトルは、質量スペクトル分析前に、AAVカプシド含有試料に電荷低減剤(例えば、イソプロパノール中の0.01%トリエチルアミン)を適用して(下)、及び適用せずに(上)取得された差異を図示する。電荷低減は、AAVカプシド成分の分解能を改善した。
図4A】様々なAAV血清型(AAV1、AAV5、及びAAV8)の質量スペクトル(図4A)、及び同じAAV血清型の対応するSV-AUCデータ(図4B)を示す。質量スペクトルは、本開示の方法が、様々なAAV血清型にわたってSV-AUCデータと一致する結果を生じることを示す。
図4B】様々なAAV血清型(AAV1、AAV5、及びAAV8)の質量スペクトル(図4A)、及び同じAAV血清型の対応するSV-AUCデータ(図4B)を示す。質量スペクトルは、本開示の方法が、様々なAAV血清型にわたってSV-AUCデータと一致する結果を生じることを示す。
図5A】様々な量の空カプシドAAV材料を本開示のLC-MSシステムに注入することから生じた質量スペクトル(図5A)、及び質量スペクトル応答と注入量との間の相関(図5B)を示す。これらの結果は、本開示の方法が、ウイルスカプシド材料(例えば、AAVカプシド)の検出に高感度であり、本方法をプロセス内試料監視によく適したものにすることを実証する。
図5B】様々な量の空カプシドAAV材料を本開示のLC-MSシステムに注入することから生じた質量スペクトル(図5A)、及び質量スペクトル応答と注入量との間の相関(図5B)を示す。これらの結果は、本開示の方法が、ウイルスカプシド材料(例えば、AAVカプシド)の検出に高感度であり、本方法をプロセス内試料監視によく適したものにすることを実証する。
図6】空ウイルスカプシドに対する完全ウイルスカプシドの濃縮のためのアニオン交換(AEX)カラムを含む、ウイルスカプシドのための例示的な精製プロセスを図示し、AEX濃縮前及びAEX濃縮後の測定値に対応する質量スペクトルを示す。
図7A】本開示のLC-MSシステムへの空:完全AAVカプシドの様々な比の導入から生じた質量スペクトル(図7A)、及び既知のSV-AUCデータと質量スペクトルから取得されたカプシド成分の測定された割合との間の相関(図7B)を示す。図7Bに示されるように、測定されたMSデータと既知のSV-AUCデータとの間の相関は良好である。
図7B】本開示のLC-MSシステムへの空:完全AAVカプシドの様々な比の導入から生じた質量スペクトル(図7A)、及び既知のSV-AUCデータと質量スペクトルから取得されたカプシド成分の測定された割合との間の相関(図7B)を示す。図7Bに示されるように、測定されたMSデータと既知のSV-AUCデータとの間の相関は良好である。
図8】カプシド安定性の変化が熱応力後に監視される、本開示のアッセイ技法を採用することによって生成された例示的な結果を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を記載する前に、記載される特定の方法及び実験条件が変化し得るため、本発明は、そのような方法及び条件に限定されないことを理解されたい。本発明の範囲が添付の特許請求の範囲のみによって限定されるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを記載する目的のためであり、限定的であることを意図していないことも理解されたい。
【0027】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、特定の言及される数値に関して使用されると、値が言及される値から1%以下だけ変化し得ることを意味する。例えば、本明細書で使用される場合、「約100」という表現には、99及び101、並びにその間の全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)が含まれる。
【0028】
本明細書で使用される場合、「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含む(including)」という用語は、非限定的であるように意図され、それぞれ、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprising)」を意味すると理解される。
【0029】
本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の方法及び材料を本発明の実践又は試験に使用することができるが、好ましい方法及び材料をこれから記載する。本明細書で言及される全ての特許、出願、及び非特許刊行物は、参照によりそれらの全体で本明細書に組み込まれる。
【0030】
選択された略語
MS:質量分析
rAAV:組換えAAV粒子又はカプシド
AAV:アデノ随伴ウイルス
LC:液体クロマトグラフィー
SEC:サイズ排除クロマトグラフィー
ESI:エレクトロスプレーイオン化
SV-AUC:沈降速度分析超遠心分離
AEX-アニオン交換クロマトグラフィー
【0031】
定義
「インタクトなウイルスカプシド成分」とは、インタクトであり(すなわち、それらの構成要素部分(例えば、異なるウイルスタンパク質)に変性又は別様に分解若しくは崩壊されていない)、ウイルスカプシドの構造特性(例えば、AAVカプシドの20面体立体構造)を保持する、ウイルスカプシド(例えば、空ウイルスカプシド、部分的完全ウイルスカプシド、及び/又は完全ウイルスカプシド)を指す。
【0032】
「空ウイルスカプシド」又は「空カプシド」という用語は、図1Bに図示されるように、異種核酸分子(例えば、治療用遺伝子)を含まないカプシドを指す。
【0033】
「部分的完全ウイルスカプシド」又は「部分的完全カプシド」という用語は、図1Bに図示されるように、異種核酸分子(例えば、治療用遺伝子)の一部のみを含むカプシドを指す。
【0034】
「完全ウイルスカプシド」又は「完全カプシド」という用語は、図1Bに図示されるように、完全異種核酸分子(例えば、治療用遺伝子)を含むカプシドを指す。
【0035】
本明細書で使用される場合の「試料」という用語は、例えば、分離及び分析を含む、本発明の方法による操作を受ける、少なくとも1つのウイルスカプシド成分(すなわち、空カプシド、部分的完全カプシド、及び/又は完全カプシド)を含むウイルス粒子(例えば、AAV粒子)の混合物を指す。
【0036】
「分析」又は「分析すること」という用語は、互換的に使用され、目的のウイルス粒子(例えば、AAVカプシド)を分離、検出、単離、精製、及び/又は特性評価する様々な方法のうちのいずれかを指す。例としては、質量分析、例えば、ESI-MS、液体クロマトグラフィー、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書で使用される場合の「接触させること」は、溶液相又は固相中の少なくとも2つの物質を一緒にすること、例えば、クロマトグラフィー材料の固定相を、ウイルス粒子を含む試料などの試料と接触させることを含む。
【0038】
本明細書で使用される場合の「インタクト質量分析」は、ウイルス粒子がインタクトな粒子として特性評価される、実験を含む。インタクト質量分析は、試料調製を最小限に低減することができる。
【0039】
本明細書で使用される場合、「液体クロマトグラフィー」という用語は、液体によって運ばれる化学混合物が、固定液相又は固体相の周囲又は上を流動する際の化学物質の微分分布の結果として成分に分離され得る、プロセスを指す。液体クロマトグラフィーの非限定的な例としては、逆相液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、及び疎水性クロマトグラフィーが挙げられる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「質量分析計」という用語は、具体的な分子種を検出し、それらの質量を正確に測定することが可能な装置を指す。本用語は、ウイルス粒子(例えば、AAVタンパク質)が検出及び/又は特性評価のために溶出され得る、任意の分子検出器を含むように意図され得る。質量分析計は、3つの主要な部分:イオン源、質量分析器、及び検出器からなる。イオン源の役割は、気相イオンを生成することである。分析物原子、分子、又はクラスターを、気相中に移送し、(エレクトロスプレーイオン化の場合のように)同時にイオン化することができる。イオン源の選択は、用途に依存する。本明細書で使用される場合、「エレクトロスプレーイオン化」又は「ESI」という用語は、溶液中のカチオン又はアニオンのいずれかが、溶液を含むエレクトロスプレーエミッタ針の先端と対電極との間に電位差を印加することから生じる、高帯電液滴の流れの大気圧での形成及び脱溶媒和を介して気相に移送される、スプレーイオン化のプロセスを指す。溶液中の電解質イオンからの気相イオンの産生には、3つの主要なステップがある。これらは、(a)ES注入先端での帯電液滴の産生、(b)気相イオンを産生することが可能な小さな高帯電液滴につながる、溶媒蒸発による帯電液滴の収縮、及び繰り返しの液滴崩壊、並びに(c)気相イオンが非常に小さい高帯電液滴から産生される機構である。段階(a)~(c)は一般的に、装置の大気圧領域で生じる。
【0041】
本明細書で使用される場合、「エレクトロスプレーイオン化源」という用語は、ウイルス粒子の質量分析に使用される質量分析計と適合性があり得るエレクトロスプレーイオン化システムを指す。
【0042】
ネイティブMSは、生物学的分析物が非変性溶媒から噴霧される、エレクトロスプレーイオン化に基づく特定のアプローチである。これは、大きな生体分子及びその複合体などの生体分子が、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)のプロセスを介して、凝縮液相における三次元の機能的存在から気相に移送され得る、プロセスとして定義される。
【0043】
本明細書で使用される場合の「ナノエレクトロスプレー」又は「ナノスプレー」という用語は、しばしば、外部溶媒送達の使用を伴わない、非常に低い溶媒流量、典型的には、毎分数百ナノリットル以下の試料溶液におけるエレクトロスプレーイオン化を指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、「質量分析器」とは、種、すなわち、原子、分子、又はクラスターを、それらの質量に従って分離することができる装置を指す。高速タンパク質シークエンシングに採用され得る質量分析器の非限定的な例は、飛行時間(TOF)、磁気/電気セクタ、四重極質量フィルタ(Q)、四重極イオントラップ(QIT)、オービトラップ、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)、また、加速器質量分析(AMS)の技法である。
【0045】
本明細書で使用される場合、「質量対電荷比」又は「m/z」が、統一原子質量単位のイオンの質量を(符号に関係なく)その電荷数で除算することによって形成される無次元量を示すために使用される。一般に、空、部分的完全、及び完全AAVカプシドは、ネイティブm/zスペクトルを使用して、m/z範囲及び相対存在量の差異から試料中のAAVカプシド成分の分画組成を直接解釈することができるように、ネイティブESI中に類似数の電荷を保有する。
【0046】
本明細書で使用される場合、「四重極オービトラップハイブリッド質量分析器」という用語は、四重極質量分析器をオービラップ質量分析器に結合することによって作製されたハイブリッドシステムを指す。四重極オービトラップハイブリッド質量分析計を使用する時間的タンデム実験は、四重極質量分析計からの選択された狭いm/z範囲内のイオンを除く全てのイオンの放出から始まる。選択されたイオンは、オービトラップに挿入され、最も頻繁に低エネルギーCIDによって断片化され得る。トラップのm/z許容範囲内の断片は、トラップ内に残留するべきであり、MS-MSスペクトルを取得することができる。
【0047】
「アデノ随伴ウイルス」又は「AAV」は、非エンベロープで約4.7kbのゲノムである、一本鎖DNAを有する非病原性パルボウイルスであり、20面体立体構造を有する。AAVは、アデノウイルス調製物の汚染物質として1965年に最初に発見された。AAVは、ディペンドウイルス属及びパルボウイルス科に属し、複製のためにヘルペスウイルス又はアデノウイルスのいずれかからのヘルパー機能を必要とする。ヘルパーウイルスの非存在下では、AAVは、19q13.4位でヒト19番染色体に統合することによって、潜伏を設定することができる。AAVゲノムは、2つのAAV遺伝子Rep及びCapの各々に1つずつ、2つのオープンリーディングフレーム(ORF)からなる。AAV DNA末端は、145bpの逆位末端反復(ITR)を有し、125個の末端塩基は、パリンドロームであり、特徴的なT字型ヘアピン構造につながる。
【0048】
本明細書で使用される場合の「ポリヌクレオチド」又は「核酸」という用語は、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのいずれかである、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。したがって、本用語には、一本鎖、二本鎖又は多重鎖DNA若しくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、又はプリン塩基及びピリミジン塩基、若しくは他の天然、化学あるいは生化学的修飾、非天然、若しくは誘導体化ヌクレオチド塩基を含む、ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。核酸の骨格は、糖及びリン酸基(典型的にはRNA又はDNAで見出され得る)、又は修飾若しくは置換された糖若しくはリン酸基を含むことができる。
【0049】
「組換えウイルス粒子」とは、少なくとも1つのウイルスヌクレオチド配列に隣接し得る1つ以上の異種配列(例えば、ウイルス起源ではない核酸配列)を含む、ウイルス粒子を指す。
【0050】
「組換えAAV粒子」とは、少なくとも1つ、例えば、2つのAAV逆位末端反復配列(ITR)に隣接し得る、1つ以上の異種配列(例えば、AAV起源ではない核酸配列)を含む、アデノ随伴ウイルス粒子を指す。そのようなrAAV粒子は、好適なヘルパーウイルスに感染しており(又は好適なヘルパー機能を発現しており)、AAV rep及びcap遺伝子産物(すなわち、AAV Rep及びCapタンパク質)を発現している宿主細胞に存在する場合に複製及びパッケージ化され得る。
【0051】
「ウイルス粒子」とは、少なくとも1つのウイルスカプシドタンパク質及びカプシド封入ウイルスゲノムから構成されるウイルス粒子を指す。
【0052】
「異種」とは、実体が比較されるか、又は導入されるか、若しくは組み込まれる、残りの実体と遺伝子型的に明確に異なる実体に由来することを意味する。例えば、遺伝子操作技法によって異なる細胞型に導入される核酸は、異種核酸である(発現されると、異種ポリペプチドをコードすることができる)。同様に、ウイルス粒子に組み込まれる細胞配列(例えば、遺伝子又はその一部)は、ウイルス粒子に関する異種ヌクレオチド配列である。
【0053】
「逆位末端反復」又は「ITR」配列は、反対の配向にあるウイルスゲノムの末端で見出される比較的短い配列である。「AAV逆位末端反復(ITR)」配列は、一本鎖AAVゲノムの両方の末端に存在する約145ヌクレオチド配列である。
【0054】
概要
本開示は、ウイルス粒子(例えば、AAV粒子)の試料のウイルスカプシド成分(例えば、完全カプシド、部分的完全カプシド、及び空のカプシド)の高感度で迅速な定量的特性評価を提供する、オンラインクロマトグラフィー及びネイティブ質量分析(MS)方法、並びにそのような分析技法を採用する精製方法を提供する。AAV粒子の試料のウイルスカプシド成分などのウイルス粒子組成物のウイルスカプシド成分の完全な特性評価は、製品の品質及び一貫性を確保して、組成物の安全性及び有効性を維持するために必要である。
【0055】
組換えウイルスベクター組成物(例えば、AAVベクター組成物)は、様々な産生、精製、及び貯蔵条件から生じる様々なレベルの完全、部分的完全、及び空カプシドを含むことができる。しかしながら、ウイルスタンパク質化学量論の変動、及び異種核酸物質の含有量の変動、並びに低試料濃度から生じる高い質量不均一性は、そのような試料の従来的なインタクト質量分析を困難にする。本方法は、試料希釈を制限することによって(例えば、低流量要件によって)、(試料安定性を維持するために)高速オンライン脱塩を提供することによって、及びウイルス粒子種(例えば、AAVカプシド)の分解能を改善するために電荷低減を提供することによって、これらの問題に対処する。
【0056】
インタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量を決定するための方法
本開示の態様は、異種核酸分子を含む組換えウイルス粒子の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量を決定するための方法を対象とする。
【0057】
場合によっては、本方法は、(a)ウイルス粒子の試料をオンラインネイティブ液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)システムに導入することであって、LC-MSシステムが、エレクトロスプレーイオン化エミッタ、質量分析計、及びガス入口ポートと流体連通する液体クロマトグラフィーカラムを備える、導入することと、(b)液体クロマトグラフィーカラムを介して、ウイルス粒子の試料中のウイルスカプシド成分を分離することと、(c)ウイルスカプシド成分に質量スペクトル分析を受けさせる前に、ガス入口ポートを介してウイルスカプシド成分を電荷低減剤と接触させることと、(d)質量スペクトル分析を介して試料中のウイルスカプシド成分の未加工分画量を同定することと、(e)補正係数をウイルスカプシド成分の未加工分画量に適用し、ウイルスカプシド成分の補正分画量を同定し、それによって、ウイルス粒子の試料中の2つ以上のインタクトなウイルスカプシド成分の各々の相対存在量を決定することと、を含み、補正計数は、参照標準にオンラインネイティブLC-MSシステムを受けさせ、参照標準中の標準ウイルスカプシド成分の分画量を同定し、沈降速度分析超遠心分離(SV-AUC)によって決定される、標準ウイルスカプシド成分の既知の分画量に対して標準ウイルスカプシド成分の同定された分画量を比較することによって、事前決定される。
【0058】
場合によっては、本方法は、(a)ウイルス粒子の試料にオンラインネイティブエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)を受けさせて、ウイルスカプシド成分の未加工分画量を同定することであって、試料が、ネイティブESI-MSの前にクロマトグラフィー分離及び電荷低減剤を受ける、同定することと、(b)補正係数をウイルスカプシド成分の未加工分画量に適用し、ウイルスカプシド成分の補正分画量を同定し、それによって、ウイルス粒子の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量を決定することと、を含み、補正計数は、参照標準にオンラインネイティブESI-MSを受けさせ、参照標準中の標準ウイルスカプシド成分の分画量を同定し、沈降速度分析超遠心分離(SV-AUC)によって決定される、標準ウイルスカプシド成分の既知の分画量に対して標準ウイルスカプシド成分の同定された分画量を比較することによって、事前決定される。
【0059】
本方法の様々な実施形態では、ウイルスカプシド成分は、空ウイルスカプシド及び完全ウイルスカプシドを含み、空ウイルスカプシドの補正分画量及び完全ウイルスカプシドの補正分画量が同定される。場合によっては、ウイルスカプシド成分は、部分的完全ウイルスカプシドを更に含み、部分的完全ウイルスカプシドの補正分画量が同定される。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法を使用して、組換えウイルス粒子(例えば、AAV粒子)の試料中の空ウイルスカプシド、部分的完全ウイルスカプシド、及び完全ウイルスカプシドの相対存在量を同定することができる。
【0060】
本明細書で開示される方法では、LC-MSシステムは、図2に図示される概略図によって例示される。図2に示される実施例では、LC-MSシステム100は、ウイルス粒子の試料が、試料のウイルスカプシド成分を相互から、及び試料中に存在し得る任意の不純物(例えば、塩)から分離するために、例えば、10μL/分の流量で導入される、液体クロマトグラフィーカラム102(例えば、1mm内径×50mm SECカラム)を含む。次いで、分離された成分は、例えば、5μL/分の流量で、スプリッタ104を通して、エレクトロスプレーイオン化エミッタ106の中へ通過する。ESIエミッタ106は、ガス入口ポート108に結合され、それを通して、修飾脱溶媒和ガス(例えば、イソプロパノール中のトリエチルアミンなどの電荷低減剤(「修飾剤」)で修飾された窒素)が、質量分析計110(例えば、Orbitrap(商標)UHMR質量分析計)における質量スペクトル分析の前に試料に接触する。
【0061】
本明細書で考察される様々な方法では、試料の質量スペクトル分析は、カプシドに含まれる異種核酸分子の含有量に基づいて質量によって分離される、ウイルス粒子の試料のウイルスカプシド成分の相対存在量を示す質量スペクトルを生じさせる。理解されるように、完全カプシド(完全な異種核酸分子を含む)の質量は、部分的完全カプシド(異種核酸分子の一部のみを含む)の質量よりも大きく、これは順に、空カプシド(異種核酸分子のいずれも含まない)の質量よりも大きい。カプシドのウイルスタンパク質の化学量論的変動(例えば、図1C)を考慮すると、試料の質量分析から生成された質量スペクトルは、試料中のウイルスカプシド成分の各々を表す広範なピークを含み得る。
【0062】
ウイルス粒子
ある特定の態様では、ウイルス粒子は、AAV粒子であり、開示される方法を使用して、AAV粒子の試料中のウイルスカプシド成分の相対存在量を決定することができる。AAV粒子は、組換えAAV(rAAV)粒子であり得る。rAAV粒子は、異種導入遺伝子又は異種核酸分子をコードするAAVベクターを含む。
【0063】
ある特定の態様では、AAV粒子は、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV4カプシド、AAV5カプシド、AAV6カプシド、AAV7カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8カプシド、AAV9カプシド、AAV10カプシド、AAV11カプシド、AAV12カプシド、又はそのバリアントを含む。ある特定の態様では、AAV粒子は、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV-DJ、AAV-DJ/8、AAV-Rh10、AAV-retro、AAV-PHP.B、AAV8-PHP.eB、又はAAV-PHP.Sの粒子である。いくつかの実施形態では、AAV粒子は、血清型AAV1、AAV5、又はAAV8の粒子である。
【0064】
AAVは、本開示のためのモデルウイルス粒子であったが、開示される方法は、様々なウイルス、例えば、ウイルス科、亜科、及び属を特性評価するために適用され得ることが企図される。本開示の方法は、例えば、ウイルス粒子を特性評価して、ウイルス粒子の組成物の産生、精製、又は貯蔵中に、そのような組成物中のウイルスカプシド成分の相対存在量を監視又は検出するために使用され得る。
【0065】
例示的な実施形態では、ウイルス粒子は、アデノウイルス科、パルボウイルス科、レトロウイルス科、バキュロウイルス科、及びヘルペスウイルス科からなる群から選択されるウイルス科に属する。
【0066】
ある特定の態様では、ウイルス粒子は、アタデノウイルス、アビアデノウイルス、イクタデノウイルス、マスタデノウイルス、シアデノウイルス、アンビデンソウイルス、ブレビデンソウイルス、ヘパンデンソウイルス、イテラデンソウイルス、ペンスチルデンソウイルス、アムドパルボウイルス、アベパルボウイルス、ボカパルボウイルス、コピパルボウイルス、ディペンドパルボウイルス、エリスロパルボウイルス、プロトパルボウイルス、テトラパルボウイルス、アルファレトロウイルス、ベータレトロウイルス、デルタレトロウイルス、イプシロンレトロウイルス、ガマレトロウイルス、レンチウイルス、スプマウイルス、アルファバキュロウイルス、ベータキュロウイルス、デルタバキュロウイルス、ガンマバキュロウイルス、イルトウイルス、マルディウイルス、単純ウイルス、バリセロウイルス、サイトメガロウイルス、ムロメガロウイルス、プロボシウイルス、ロゼロウイルス、リンフォクリプトウイルス、マカウイルス、ペルカウイルス、及びラジノウイルスからなる群から選択されるウイルス属に属する。
【0067】
ある特定の態様では、レトロウイルス科は、モロニーマウス肉腫ウイルス(MoMSV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、ネコ白血病ウイルス(FLV)、スプマウイルス、フレンドウイルス、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、ヒトT細胞白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ免疫不全ウイルス(EIV)、ビスナ・マエディウイルス、ヤギ関節炎脳炎ウイルス、ウマ感染性貧血ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、又はサル免疫不全ウイルス(SIV)である。
【0068】
いくつかの態様では、ウイルス粒子(例えば、AAV粒子)は、異種核酸分子(例えば、治療用遺伝子)を含む。いくつかの態様では、異種核酸分子は、プロモーターに動作可能に連結される。例示的なプロモーターとしては、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター及びCK6プロモーター、トランスサイレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータ-アクチン/ウサギベータ-グロビンプロモーター、並びに伸長因子1-アルファプロモーター(EF1-アルファ)プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、プロモーターは、ヒトベータ-グルクロニダーゼプロモーター、又はニワトリベータ-アクチン(CBA)プロモーターに連結されたサイトメガロウイルスエンハンサーを含む。プロモーターは、構成的、誘導性、又は抑制性プロモーターであり得る。いくつかの態様では、本発明は、CBAプロモーターに動作可能に連結された本開示の異種導入遺伝子をコードする核酸を含む、組換えベクターを提供する。場合によっては、導入遺伝子のための天然プロモーター又はその断片が使用される。天然プロモーターは、導入遺伝子の発現が天然発現を模倣するべきであることが所望されるときに使用され得る。天然プロモーターは、導入遺伝子の発現が、時間的若しくは発生的に、又は組織特異的な様式で、又は具体的な転写刺激に応答して調節されなければならないときに使用され得る。更なる態様では、エンハンサー要素、ポリアデニル化部位、又はコザックコンセンサス配列などの他の天然発現制御要素もまた、天然発現を模倣するために使用され得る。
【0069】
オンラインネイティブ液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)システム
いくつかの例示的な実施形態では、本方法は、ウイルス粒子に液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)を受けさせることを含む。当技術分野で公知であるように、LC/MSは、イオンの物理的分離のための液体クロマトグラフィー、及びイオンからの質量スペクトルデータの生成のための質量分析を利用する。そのような質量スペクトルデータは、例えば、分子量又は構造、質量、量、純度などによる粒子の同定を決定するために使用され得る。これらのデータは、時間(例えば、保持時間)と比べた信号強度(例えば、存在量)、又は質量対電荷比と比べた相対存在量などの検出されたイオンの特性を表し得る。図2に図示される例示的なLC-MSシステムを使用して、ウイルス粒子の試料中のウイルスカプシド成分の相対存在量を決定することができる。しかしながら、図示される例示的なシステムに対する修正もまた、インタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量を決定するために採用することができる。
【0070】
液体クロマトグラフィーカラム102の非限定的な例としては、逆相液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、親水性相互作用クロマトグラフィー、及び疎水性クロマトグラフィーが挙げられる。HPLCを含む液体クロマトグラフィーを使用して、ウイルス粒子の試料の成分を分離することができる。
【0071】
様々な実施形態では、カラム温度は、クロマトグラフィー実行の全体を通して一定の温度で維持することができる。特に、カラム温度は、周囲室温(すなわち、約23~25℃)で維持される。いくつかの実施形態では、カラムは、約22℃~約28℃の範囲内の温度で維持される。いくつかの実施形態では、カラムは、約23℃~約27℃の範囲内の温度で維持される。いくつかの実施形態では、カラムは、約24℃±1℃~約26℃±1℃の範囲内の温度で維持される。場合によっては、カラム温度は、約22℃~約26℃の範囲内で維持される。場合によっては、カラムは、22℃、22.5℃、23℃、23.5℃、24℃、24.5℃、25℃、25.5℃、26℃、26.5℃、27℃、27.5℃、若しくは28℃の温度、又はおよそその温度で維持される。いくつかの実施形態では、温度は、市販のカラムヒーターを使用して維持される。いくつかの実施形態では、温度は、(カラムヒーターを使用することなく)周囲室温である。
【0072】
いくつかの実施形態では、LC分析は、ネイティブ質量分析システムと流体連通するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラムを含む。様々な実施形態では、LC分析は、当技術分野で公知であるように実施することができるが、アニオン交換カラムの使用は、部分的完全カプシドと完全カプシドとの間の分解能の低減につながり得ることに注目すべきである。カラムは、ウイルス粒子とともに使用するために好適である。一実施形態では、SECカラムは、Waters BEH(登録商標)SECカラム(1×50mm)である。
【0073】
SECなどのカラムは、質量分析計への流量を調整することができる分析フロースプリッタ104を介して質量分析計と流体連通している。
【0074】
いくつかの実施形態では、移動相は、水性移動相である。いくつかの実施形態では、移動相は、酢酸アンモニウムを含有する水性塩緩衝液である。いくつかの実施形態では、定組成溶出(例えば、実行の全体を通して維持される一定の緩衝組成物)が採用される。例示的な実施形態では、タンパク質を溶出するために使用される移動相は、質量分析計と適合性がある移動相である。緩衝液の勾配を使用することができ、例えば、2つの緩衝液が使用される場合、第1の緩衝液の濃度又は割合が減少し得る一方で、第2の緩衝液の濃度又は割合は、クロマトグラフィー実行にわたって増加する。例えば、第1の緩衝液の割合は、クロマトグラフィー実行にわたって、約100%、約99%、約95%、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約50%、約45%、又は約40%から、約0%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、又は約40%まで減少し得る。別の実施例として、第2の緩衝液の割合は、同じ実行にわたって約0%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、又は約40%から、約100%、約99%、約95%、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約50%、約45%、又は約40%まで増加し得る。ある特定の態様では、クロマトグラフィーにおける移動相Aの割合は、経時的に増加する。任意選択的に、第1及び第2の緩衝液の濃度又は割合は、クロマトグラフィー実行の終了時にその開始値に戻ることができる。割合は、線形勾配として、又は非線形(例えば、段階的)様式で徐々に変化し得る。例えば、勾配は、多相性、例えば、二相性、三相性などであり得る。
【0075】
いくつかの例示的な実施形態では、移動相は、約0.1μL/分~約100μL/分の液体クロマトグラフィーカラムを通した流量を有することができる。場合によっては、流量は、約0.5μL/分、約1μL/分、約1.5μL/分、約2μL/分、約2.5μL/分、約3μL/分、約3.5μL/分、約4μL/分、約4.5μL/分、約5μL/分、約5.5μL/分、約6μL/分、約6.5μL/分、約7μL/分、約7.5μL/分、約8μL/分、約8.5μL/分、約9μL/分、約9.5μL/分、約10μL/分、約10.5μL/分、約11μL/分、約11.5μL/分、約12μL/分、約12.5μL/分、約13μL/分、約13.5μL/分、約14μL/分、約14.5μL/分、約15μL/分、約15.5μL/分、約16μL/分、約16.5μL/分、約17μL/分、約17.5μL/分、約18μL/分、約18.5μL/分、約19μL/分、約19.5μL/分、約20μL/分、約25μL/分、約30μL/分、約35μL/分、約40μL/分、約45μL/分、約50μL/分、約75μL/分、又は約100μL/分である。場合によっては、流量は、10μL/分である。
【0076】
いくつかの態様では、質量分析(例えば、本明細書に記載されるLC-MSで使用される)は、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)を指し得る。ESI-MSは、電気エネルギーを使用して、質量分析を使用して溶液に由来するイオンを分析する技法として、当技術分野で公知である。溶液中又は気相中でイオン化される中性種を含むイオン種は、帯電液滴のエアロゾル中の分散によって溶液から気相に移送される。その後、溶媒蒸発が、帯電液滴のサイズを縮小するために行われる。次いで、溶液が接地に対する電圧を有する細い毛細管を通過するにつれて、試料イオンが帯電液滴から放出される。例えば、周辺ESIチャンバの壁は、試料を揮発性酸及び有機溶媒と混合し、高電圧で充電された導電性針を通してそれを注入することによって実施される。針端部から噴霧(又は放出)される帯電液滴は、質量分析計の中に指向され、飛行するにつれて熱及び真空によって乾燥させられる。液滴が乾燥した後、残りの帯電分子は、電磁レンズによって質量検出器の中に指向され、質量分析される。一態様では、溶出された試料は、毛細管からエレクトロスプレーノズルの中に直接堆積され、例えば、毛細管は、試料ローダとして機能する。別の態様では、毛細管自体は、抽出装置及びエレクトロスプレーノズルの両方として機能する。
【0077】
いくつかの例示的な実施形態では、エレクトロスプレーイオン化エミッタ108は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つのエミッタノズル、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又は8つのエミッタノズルなどの複数のエミッタノズルを備える。いくつかの例示的な実施形態では、エレクトロスプレーイオン化エミッタ108は、8つのエミッタノズルを含む、Newomics(Berkeley,CA)からのM3エミッタである。
【0078】
いくつかの例示的な実施形態では、他のイオン化モード、例えば、ターボスプレーイオン化質量分析、ナノスプレーイオン化質量分析、サーモスプレーイオン化質量分析、音波スプレーイオン化質量分析、SELDI-MS及びMALDI-MSが使用される。一般に、(ESI-MSのような)これらの方法の利点は、試料の「ジャストインタイム」精製及びイオン化環境への直接導入を可能にすることである。様々なイオン化及び検出モードが、使用される脱着溶液の性質に独自の制約を導入することに留意することが重要であり、脱着溶液が両方に適合することが重要である。例えば、多くの用途における試料マトリクスは、低いイオン強度を有するか、又は特定のpH範囲内などで存在しなければならない。ESIでは、試料中の塩は、イオン化を低下させることによって、又はノズルを詰まらせることによって、検出を妨げ得る。この問題は、低塩で分析物を提示することによって、及び/又は揮発性塩の使用によって対処することができる。MALDIの場合、分析物は、標的上のスポッティング及び採用されるイオン化マトリックスに適合する溶媒中にあるべきである。
【0079】
いくつかの例示的な実施形態では、質量スペクトル分析の前に、ガス入口ポート108を介して修飾脱溶媒和ガス(例えば、窒素)を導入して、試料に接触させることができる。様々な実施形態では、修飾剤は、少なくとも1つの有機溶媒及び塩基を含む。有機溶媒の非限定的な例としては、アセトニトリル、プロパノール、イソプロパノール、水、及びメタノールが挙げられる。塩基の非限定的な例としては、アンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、及びピペリジンが挙げられる。いくつかの例示的な実施形態では、修飾剤は、イソプロパノール中のトリエチルアミンである。
【0080】
いくつかの例示的な実施形態では、エレクトロスプレーイオン化源は、約1μL/分~約20μL/分の溶媒流量を有するエレクトロスプレーを提供する。様々な実施形態では、ESIエミッタ内への流量は、約1μL/分、約2μL/分、約3μL/分、約4μL/分、約5μL/分、約6μL/分、約7μL/分、約8μL/分、約9μL/分、約10μL/分、約11μL/分、約12μL/分、約13μL/分、約14μL/分、約15μL/分、約16μL/分、約17μL/分、約18μL/分、約19μL/分、又は約20μL/分である。
【0081】
ネイティブ質量分析計は、ネイティブESI質量分析システムであり得る。いくつかの例示的な実施形態では、質量分析計110は、四重極オービトラップハイブリッド質量分析計であり得る。四重極オービトラップハイブリッド質量分析計は、Q Exactive(商標)Focus Hybrid Quadrupole-Orbitrap(商標)質量分析計、Q Exactive(商標)Plus Hybrid Quadrupole-Orbitrap(商標)質量分析計、Q Exactive(商標)BioPharmaプラットフォーム、Q Exactive(商標)UHMR Hybrid Quadrupole-Orbitrap(商標)質量分析計、Q Exactive(商標)HF Hybrid Quadrupole-Orbitrap(商標)質量分析計、Q Exactive(商標)HF-X Hybrid Quadrupole-Orbitrap(商標)質量分析計、及びQ Exactive(商標)Hybrid Quadrupole-Orbitrap(商標)質量分析計であり得る。いくつかの例示的な実施形態では、質量分析システムは、Thermo Exactive EMR質量分析計である。質量分析システムはまた、紫外線光検出器を含むこともできる。
【0082】
限定されないが、飛行時間(TOF)分析器、四重極質量フィルタ、四重極TOF(QTOF)、及びイオントラップ(例えば、フーリエ変換ベースの質量分析計又はオービトラップ)を含む、LC/MSに好適な様々な質量分析器が当技術分野で公知である。オービトラップでは、接地電位におけるバレル様外側電極及びスピンドル様中央電極が、遠心力及び静電力のバランスによって限定される、中心軸に沿った振動で中央電極の周囲を楕円形に回転する軌道でイオンを捕捉するために使用される。そのような機器の使用は、フーリエ変換動作を採用して、イメージ電流の検出からの時間ドメイン信号(例えば、周波数)を高分解能質量測定値に変換する。
【0083】
ウイルス粒子の組成物を精製する方法
ウイルス粒子の組成物を生成する方法も提供される。いくつかの態様では、本方法は、クロマトグラフィー濃縮工程(例えば、アニオン交換濃縮工程)と、組成物の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の決定と、を含み、インタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の決定は、上記で考察される方法のうちのいずれか1つを含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、組成物の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の決定は、クロマトグラフィー濃縮工程(例えば、AEXクロマトグラフィー)の前に実施される。いくつかの実施形態では、インタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の決定は、クロマトグラフィー濃縮工程(例えば、AEXクロマトグラフィー)の後に実施される。いくつかの実施形態では、インタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の決定は、クロマトグラフィー濃縮工程(例えば、AEXクロマトグラフィー)の前、及びクロマトグラフィー濃縮工程(例えば、AEXクロマトグラフィー)の後に実施される。場合によっては、クロマトグラフィー濃縮工程は、アニオン交換クロマトグラフィーカラムを使用して実施されるアニオン交換濃縮工程である。
【0085】
ウイルス粒子の安定性を監視する方法
ある期間にわたってウイルス粒子の試料の安定性を監視する方法も提供される。いくつかの態様では、本方法は、クロマトグラフィー濃縮工程(例えば、アニオン交換濃縮工程)と、初期時点(t0)、及び初期時点後(例えば、数日、数週間、又は数ヶ月後)の1つ以上の時点でのウイルス粒子の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の決定と、を含む。
【0086】
初期時点での相対存在量と比較した、1つ以上の時点でのインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の変化は、当該期間中のウイルス粒子の試料の安定性を示す。例えば、指定条件下でのある期間にわたる完全ウイルスカプシドの相対存在量の低減は、評価期間中(すなわち、t0から、ウイルスカプシド成分の相対存在量が再び決定される以降の時点まで)のそのような指定条件下でのウイルス粒子の試料の相対安定性の指示を提供する。場合によっては、ウイルス粒子の試料は、当該期間中に指定条件下で貯蔵される。場合によっては、指定条件は、湿度条件(例えば、60%又は75%相対湿度)及び/又は温度条件(例えば、0℃、2~5℃、15℃、25℃、45℃)を含む。場合によっては、指定条件は、撹拌条件(例えば、30~90分の期間にわたるオービタルシェーカー上の撹拌)及び/又は1つ以上の凍結/解凍サイクルを含む(又は更に含む)。これらの条件は、実世界又は加速条件下でウイルスカプシド試料の安定性を監視して、試料の安定性を監視又は特性評価するように選択され得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、ウイルス粒子の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の決定は、クロマトグラフィー濃縮工程(例えば、AEXクロマトグラフィー)の前に実施される。いくつかの実施形態では、インタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の決定は、クロマトグラフィー濃縮工程(例えば、AEXクロマトグラフィー)の後に実施される。いくつかの実施形態では、インタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の決定は、クロマトグラフィー濃縮工程(例えば、AEXクロマトグラフィー)の前、及びクロマトグラフィー濃縮工程(例えば、AEXクロマトグラフィー)の後に実施される。場合によっては、クロマトグラフィー濃縮工程は、アニオン交換クロマトグラフィーカラムを使用して実施されるアニオン交換濃縮工程である。
【実施例
【0088】
以下の実施例は、本発明の方法及び組成物をどのように作製し使用するかという完全な開示及び説明を当業者に提供するように記載され、発明者がその発明とみなすものの範囲を限定することを意図していない。使用される数字(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力がなされているが、いくらかの実験誤差及び偏差を考慮に入れるべきである。別段の指示がない限り、部は重量部、分子量は平均分子量、温度は摂氏、圧力は大気圧又は大気圧付近である。
【0089】
実施例1:AAV粒子の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量の決定
AAVストック溶液又はプロセス内試料のアリコートを-80℃で貯蔵し、分析の直前に1:2~1:10において水中で希釈した。低流量条件のために適合されたネイティブLC-MSプラットフォーム上で10μL/分における150mM酢酸アンモニウムの定組成溶出とともにWaters BEH200 SECガードカラム(1×50mm)を使用して、、オンラインネイティブ脱塩SEC-MSを実施した(図2を参照)。次いで、得られたAAV溶離液が、IPA修飾脱溶媒和ガス(2L/分、窒素)中の0.01%(v/v)TEAを使用したフロントエンド電荷低減を受け、続いて、高質量イオンの透過のために最適化されたOrbitrap Q-Exactive UHMR機器を使用したネイティブMS分析を受けた(図2を参照)。
【0090】
電荷検出質量分析(CD-MS)研究は、空、部分、及び完全AAVカプシドが、ネイティブESI中に類似数の電荷を保有することを明らかにした。したがって、ネイティブm/zスペクトルを使用して、AAVカプシド粒子の分画組成を、それらのm/z範囲(すなわち、zが一定であるときのm/z質量)及び相対存在量の差異から直接解釈することができる。本方法では、統合脱塩SEC-MSプラットフォームを使用して、オンライン緩衝液交換及び10分/試料の総分析時間を達成することによって、ネイティブAAV分析を改善した(図3を参照)。加えて、脱溶媒和ガスの修飾を介した電荷低減は、定量化の改善のためにAAVカプシド粒子のスペクトル分解能を増強した(図3を参照)。試料希釈を制限し、かつ6E+10カプシド/mLほどの低い力価を有するAAVカプシド材料の敏感な検出を容易にするために、低流量条件(10μl/分)を使用して、本方法を実施した(図5Aを参照)。本方法は、全カプシド材料のAEX濃縮の前後に収集されたプロセス内試料を監視することに適していることが証明された(図6を参照)。上記で考察される方法を使用して、図8に示されるように、45日の期間にわたって37℃で貯蔵された試料中のウイルスカプシド成分(AAV1及びAAV8)の相対存在量を監視した。
【0091】
本発明は、本明細書に記載される具体的な実施形態によって範囲を限定されるものではない。実際には、本明細書に記載されるものに加えて本発明の様々な修正が、前述の記載から当業者に明らかとなるであろう。そのような修正は、添付される特許請求の範囲内にあることを意図している。
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図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
【国際調査報告】