(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】電子照射スクラブ洗浄のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
H05H 1/24 20060101AFI20240730BHJP
B01J 19/08 20060101ALI20240730BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20240730BHJP
B01D 53/76 20060101ALI20240730BHJP
B01D 53/92 20060101ALI20240730BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20240730BHJP
【FI】
H05H1/24 ZAB
B01J19/08 C
B01D53/62
B01D53/76
B01D53/92 240
B01D53/92 320
C01B32/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501516
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2022069018
(87)【国際公開番号】W WO2023285299
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518113063
【氏名又は名称】ダフネ テクノロジー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイカン,ジュアン マリオ
(72)【発明者】
【氏名】ラムゼイ,ウィリアム ジャミーソン
(72)【発明者】
【氏名】ノイマイア,ドミニク
【テーマコード(参考)】
2G084
4D002
4G075
4G146
【Fターム(参考)】
2G084AA18
2G084CC08
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4D002AA09
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4G146AA01
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4G146DA16
(57)【要約】
誘電体バリア放電装置ならびに対応するシステムおよび方法が提供される。本装置は、少なくとも1つのアノードおよび少なくとも1つのカソードを提供するように使用時に配置された少なくとも2つの電極であって、少なくとも2つの電極が、使用時に流体が電極間に存在することを可能にするように分離され、電極のうちの少なくとも1つが、その電極の少なくとも一部に接続された誘電体部分を有する、少なくとも2つの電極と、少なくとも2つの電極のうちの少なくとも1つおよび/または誘電体部分に接続されたサブマクロ構造体と、少なくとも2つの電極の各々に接続され、電極間に電場を確立するように使用時に配置された駆動回路であって、電極間の電場の存在に応答して、サブマクロ構造体が、電子を電界放出するように配置され、誘電体部分と少なくとも2つの電極のうちの1つとの間に放電が確立可能であり、駆動回路が、使用時に流体に有効電力を供給するようにさらに配置される、駆動回路と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体バリア放電装置であって、
少なくとも1つのアノードおよび少なくとも1つのカソードを提供するように使用時に配置された少なくとも2つの電極であって、前記少なくとも2つの電極が、使用時に流体が前記電極間に存在することを可能にするように分離され、前記電極のうちの少なくとも1つが、その電極の少なくとも一部に接続された誘電体部分を有する、少なくとも2つの電極と、
前記少なくとも2つの電極のうちの少なくとも1つおよび/または前記誘電体部分に接続されたサブマクロ構造体と、
前記少なくとも2つの電極の各々に接続され、前記電極間に電場を確立するように使用時に配置された駆動回路であって、前記電極間の前記電場の存在に応答して、前記サブマクロ構造体が、電子を電界放出するように配置され、前記誘電体部分と前記少なくとも2つの電極のうちの1つとの間に放電が確立可能であり、前記駆動回路が、使用時に前記流体に有効電力を供給するようにさらに配置される、駆動回路と、
を備える、装置。
【請求項2】
前記駆動回路は、バイポーラ電圧パルスのパルス列を、前記パルス列内の限られた数のパルスで印加することによって、前記流体に有効電力を供給するように使用時に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、バイポーラ電圧パルスのパルス列を、前記パルス列内の1~5個のパルスで印加することによって、前記流体に有効電力を供給するように使用時に配置される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記駆動回路は、使用時に前記少なくとも2つの電極にわたって接続された電源と、前記電源と前記少なくとも2つの電極のうちの少なくとも1つとの間に接続されたインダクタンスであって、それによって使用時に共振タンクを確立するインダクタンスとを備え、電力は、使用時にパルス列で、かつパルス列中にのみ前記タンクに供給され、各パルス列のパルス周波数は、使用時に前記タンクの共振周波数に調整可能であり、各パルス列によって供給される電力は、前記タンクを充電し、放電点火が発生する閾値に前記タンクを維持し、パルス列ごとの放電点火事象は、最大回数が発生した後に各パルス列が前記共振タンクに電力を伝達することを禁止するように使用時に配置される前記駆動回路に基づいて、前記最大回数に制限される、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
放電点火事象の前記最大回数は、1~5回の事象である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記駆動回路は、変圧器をさらに備え、前記変圧器の二次巻線は前記共振タンクの一部を形成し、前記変圧器は昇圧変圧器である、請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
前記駆動回路は、使用時に、各パルスの後に前記一次変圧器巻線を短絡するように配置される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記インダクタンスの少なくとも一部は、前記変圧器によって提供される、請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
前記インダクタンスの少なくとも一部は、インダクタによって提供される、請求項6~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記駆動回路は、各パルスの後に前記タンクからの電力放電を受け入れて蓄積するよう
に使用時に配置された、前記電源にわたって接続された蓄電デバイスをさらに備える、請求項2~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記サブマクロ構造体は、前記電極のうちの少なくとも1つに電気的に接続される、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記サブマクロ構造体が電気的に接続される各電極は、カソードを提供するように使用時に配置される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
ガスから二酸化炭素を除去するための装置であって、前記装置は、
第1の電極および第2の電極であって、アノードおよびカソードを提供するように使用時に配置される、第1の電極および第2の電極と、
前記第1の電極に接続された誘電体部分と、前記第1もしくは第2の電極または前記誘電体部分に接続されたサブマクロ構造体であって、前記電極間の電場の存在に応答して、前記構造体が、電子を電界放出するように配置され、前記誘電体と前記第2の電極との間に放電が確立可能である、サブマクロ構造体と、
前記第1の電極および前記第2の電極に接続され、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電場を確立するように使用時に配置された駆動回路であって、前記電極間の前記電場の存在に応答して、前記サブマクロ構造体が、電子を電界放出するように配置され、前記誘電体部分と前記少なくとも2つの電極のうちの1つとの間に放電が確立可能であり、前記駆動回路が、使用時に前記電極間に存在する流体に有効電力を供給するようにさらに配置される、駆動回路と、
前記電極に結合されたハウジングであって、前記構造体および前記誘電体部分が各々スクラブ洗浄されるガスを含む容器内に延在するように前記電極が前記ハウジング上に位置し、前記容器の内部が前記電子および放電に曝されることができるようにする、ハウジングと、
を備える、装置。
【請求項14】
前記駆動回路は、バイポーラ電圧パルスのパルス列を、前記パルス列内の限られた数のパルスで印加することによって、前記流体に有効電力を供給するように使用時に配置される、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記駆動回路は、バイポーラ電圧パルスのパルス列を、前記パルス列内の1~5個のパルスで印加することによって、前記流体に有効電力を供給するように使用時に配置される、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記第1の電極は、前記アノードを提供するように使用時に配置される、請求項13~15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記第2の電極は、前記カソードを提供するように使用時に配置される、請求項13~16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記サブマクロ構造体は、前記電極のうちの1つに電気的に接続される、請求項13~17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記サブマクロ構造体は、前記第2の電極に電気的に接続される、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記誘電体部分は、前記誘電体部分が接続される各電極の表面の少なくとも一部の上のコーティングである、請求項1~19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記誘電体部分は、雲母、溶融シリカ、石英、アルミナ、チタニア、チタン酸バリウム、溶融シリカ、ケイ酸チタニア、窒化ケイ素、酸化ハフニウム、またはセラミックのうちの1つまたは複数である、請求項1~20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記サブマクロ構造体は、ナノ構造体であり、好ましくは、前記ナノ構造体は、少なくとも1,000の長さ対幅のアスペクト比を有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記サブマクロ構造体は、微細構造体であり、好ましくは、前記微細構造体は、少なくとも5の長さ対幅のアスペクト比を有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記電極は、摂氏20度(℃)~500℃、好ましくは100℃~400℃、例えば150℃であるように配置される、請求項1~23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記駆動回路は、前記少なくとも1つの電極に電圧パルスを供給するように使用時に配置される、請求項1~24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記駆動回路は、
1ナノ秒(ns)~1ミリ秒(ms)の持続時間と、
100ヘルツ(Hz)~10MHzの繰り返し周期性であって、パルスの前記繰り返しが、好ましくは、50%未満のデューティサイクルを有するパルス列を形成する、繰り返し周期性と、
のうちの少なくとも1つを有する電圧パルスを供給するように使用時に配置される、
請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記駆動回路は、前記少なくとも2つの電極に電圧を供給して、前記電圧が閾値を超えるときに発生する放電に起因して前記少なくとも2つの電極に流れる電流に起因する対応する有効電力を供給するように使用時に配置されることによって、使用時に前記電極間に存在する前記流体に有効電力を供給するように配置される、請求項1~26のいずれか一項に記載の装置。
【請求項28】
ガスから二酸化炭素を除去するためのシステムであって、前記システムは、
請求項1~27のいずれか一項に記載の装置であって、使用時に電極間にガスが存在することを可能にするように分離された前記電極を備える、装置と、
前記装置に接続され、ガスが前記電極間を通過するように前記装置に前記ガスを供給するように使用時に配置された導管と、を備え、
前記電極間に電場が確立可能であり、前記電場は、使用時に前記ガスが曝される前記電極間に放電を引き起こすように構成される、
システム。
【請求項29】
エンジンをさらに備え、前記エンジンは前記導管に接続され、前記導管は、前記エンジンから前記装置にガスを通過させるように使用時に配置される、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
ガスから二酸化炭素を除去する方法であって、前記方法は、
誘電体部分が接続される第1の電極と、第2の電極との間に電場を確立することであって、サブマクロ構造体が、前記第1の電極、第2の電極、または誘電体部分に接続され、前記電場が、前記サブマクロ構造体に電子を電界放出させ、前記誘電体と前記第2の電極
との間に放電を発生させる、確立することと、
スクラブ洗浄されるガスを前記放電および電子に曝すことと、
前記放電および電子への暴露時に前記ガスに有効電力を供給することと、
を含む、方法。
【請求項31】
バイポーラ電圧パルスのパルス列を、前記パルス列内の限られた数のパルスで印加することによって、有効電力が前記流体に供給される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
バイポーラ電圧パルスのパルス列を、前記パルス列内の1~5個のパルスで印加することによって、有効電力が前記流体に供給される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記有効電力は、閾値を超える前記電界強度を維持することによって供給される、請求項30~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
ガスから二酸化炭素を除去する際に使用するための放電。
【請求項35】
前記放電は、バリア放電である、請求項34に記載の放電。
【請求項36】
前記放電は、誘電体バリア放電である、番号が付された請求項34または35に記載の放電。
【請求項37】
前記ガスは、排ガスである、請求項34~36のいずれか一項に記載の放電。
【請求項38】
ガスから二酸化炭素を除去する使用のためのバリア放電。
【請求項39】
ガスから二酸化炭素を除去する際に使用するための誘電体バリア放電。
【請求項40】
ガスから二酸化炭素を除去する際の放電の使用。
【請求項41】
前記放電は、バリア放電である、請求項40に記載の使用。
【請求項42】
前記放電は、誘電体バリア放電である、請求項40または41に記載の使用。
【請求項43】
前記ガスは、排ガスである、請求項4040~42のいずれか一項に記載の使用。
【請求項44】
ガスから二酸化炭素を除去する際のバリア放電の使用。
【請求項45】
ガスから二酸化炭素を除去する際の誘電体バリア放電の使用。
【請求項46】
放電を用いてガスから二酸化炭素を除去する方法。
【請求項47】
前記放電は、バリア放電である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記放電は、誘電体バリア放電である、請求項46または47に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子および放電への暴露によるガスまたは空気の成分の捕捉および/または利用の方法、ならびにそのための装置に関する。典型的には、これは、電力管理、サブマクロスケール構造体および誘電体材料の使用を通じて達成される。
【背景技術】
【0002】
温室効果ガス排出によって引き起こされる地球温暖化は、特に増え続ける地球規模のエネルギー需要に起因して、人類にとって大きな課題となっている。産業およびエネルギー部門からの温室効果ガス排出源の大幅な削減(脱炭素化)は、2050年までに、温室効果ガス排出量を正味ゼロとする気候中立になるという欧州連合の野心的な目標に到達するために重要である。
【0003】
残念なことに、国際エネルギー機関によって示されるように、工業プロセスからの温室効果ガス排出量は、プロセス自体に不可欠な化学的または物理的反応に起因するため、削減することが困難であり得る。気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)(IPCC)の第5次評価報告書に引用されたモデルの半分以上は、産業革命前からの温暖化を摂氏2度以内に留めるという目標のために炭素回収を必要とした。炭素回収のないモデルでは、排出量削減コストは138パーセント増加した。
【0004】
各国がそのエネルギーポートフォリオを多様化しても、化石燃料は、数十年にわたって世界のエネルギー需要のほとんどを満たすと予測されている。これに関連して、炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)技術は、エネルギー集約型産業における温室効果ガス排出量を大幅に削減する可能性があるため、ますます注目を集めている。
【0005】
CCUSは、大気中のCO2の量を削減するために、空気および/または点源(特に、電力、化学、セメント、および鉄鋼セクター内の工業資源)からの二酸化炭素(CO2、CO2)排出を捕捉することを目的とした重要な技術のセットである。CCUSは、2つのカテゴリ、すなわち、炭素捕捉および貯蔵(CCS)技術と、炭素捕捉および利用(CCU)技術とに分けることができる。
【0006】
CCSプロセスは、二酸化炭素を捕捉し、これにより、3つの方法(燃焼前捕捉、燃焼後捕捉、およびオキシ燃料燃焼)のうちの1つによって他のガスからの二酸化炭素の分離を可能にする。次いで、捕捉されたCO2は、その最終的な長期貯蔵(すなわち、地質学的貯蔵または海洋貯蔵)のために適切な場所に輸送される。
【0007】
しかし、CCS技術では、重大な問題、すなわち、その長期貯蔵場所からのCO2の漏出に直面しており、いくつかのCCSプロジェクトがこれらの問題を具体化している。潜水艦または地下の貯蔵安全性についての長期予測には、一般的な困難および不確実性がある。
【0008】
CCUは、CCUがCO2の永続的な地質学的貯蔵を目的とせず、結果としてもたらさないという点で、CCSとは異なる。代わりに、CCUは、生産プロセスのカーボンニュートラル性を保持しながら、捕捉された二酸化炭素を、プラスチック、コンクリートまたはバイオ燃料などのより価値のある物質または生成物に変換することを目的とする。
【0009】
したがって、CO2を地下に埋める代わりに、CO2を原材料として、循環的に、化石
燃料の代替品として使用することができるというCCUの概念はCCSよりも魅力的である。しかし、捕捉されたCO2を変換する既存の技術は、CO2の非反応性によって制限され、CO2は、高い活性化エネルギーを有する比較的安定した分子である。
【0010】
「グリーン」水素とともに供給原料として捕捉されたCO2を使用すると、メタノール(バイオ燃料)を生成することができることが実証されているが、この経路は、CCS経路よりも10~25倍高い電力消費をもたらす。これは、主に、電気分解を介して水素を生成するために必要とされる電力に起因し、それに関連して電力ミックスの非常に低い炭素集約度の厳密な要件が伴う。同様に、捕捉されたCO2を用いて化学物質を作製するという特定の目的のために栽培および加工されたバイオマスの使用は、メタノール合成およびCCS経路によって必要とされるよりもそれぞれ約40~400倍高い土地容量を必要とし、それに関連して他の使用と対立するリスクが伴う。
【0011】
したがって、CO2を変換するために(電気的に)エネルギー効率が良く、最小限の空間要件を有するCCUに対する技術的必要性が依然として存在する。
【0012】
化石燃料燃焼施設(発電所など)からの排出物の処理に使用される既存のエネルギー効率の良い技術は、電子ビーム排ガス処理(EBFGT)である。EBFGTは、アンモニア(NH3、NH3)を用いて農業用肥料として使用可能な無害の硫酸硝酸アンモニウムに変換することによって、低いエネルギーコストで排煙(すなわち、排気スタックを通過するガス)から硫黄酸化物(SOx、SOx)および窒素酸化物(NOx、NOx)を除去することを可能にする。この技術は、高エネルギー電子が窒素、水および酸素に衝撃を与えて、硫黄酸化物および窒素酸化物と反応して硫酸および硝酸を形成する強力な試薬を生成する電子ビーム反応器を通過する加湿された煙道ガスを含む。
【0013】
EBFGTでは、電子ビーム反応器は、電子ビーム加速器のバンク、具体的には、カソードハウジングが真空ハウジング内に位置する二重グリッド四極電極ガンによって形成される。自由電子は、圧力が大気圧よりも約12桁低い超清浄環境(超高真空と呼ばれる)で生成される。次いで、電子は加速され、汚染ガスが流れている煙道スタックから超高真空環境を分離するアルミニウムまたはチタン膜を通って送られる。アルミニウム膜を通過した電子は、ガス分子と衝突し、汚染物質を除去する化学連鎖反応を開始する。
【0014】
しかし、膜に入射する電子の数と比較して、金属膜から放出される電子の割合は非常に低い。これは、エネルギーが膜内で熱に変換されることによってエネルギーが浪費されることにより、プロセスを非効率的にする。加えて、このようなEBFGTシステムの実装は、電子加速器の設置に起因して非常に大きな資本コストを必要とする。電子加速器はまた、頻繁な保守および極度の安全要件を必要とし、これは、反応器が設置される場所において望ましくないか、または不可能である。さらに、冗長目的のために複数の加速器を実装しなければならない。
【0015】
超高真空の必要性により、費用が増大し、加速器の故障の一因となり得る。加えて、この技術をモバイル用途に使用することは、少なくともX線放出および電離放射線から保護するために必要とされる放射線遮蔽体が重いため、望ましくない。
【0016】
したがって、上記の状況に鑑みて、CO2含有量を低減するための実用的な手段、およびガスの成分(CO2など)を有利に変換することができる対応する装置が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0017】
第1の態様によれば、ガスからCO2を除去する際に使用するための放電が提供される
。放電中に生成された高エネルギー電子は、CO2を含むガスからCO2を除去することが見出されている。真空または電子ビームを必要とせずに放電を提供することができ、これによりガス中のCO2の量を低減することが可能になることを本発明者らは見出したため、これにより、既知の技術よりもガスからCO2を除去することができる単純化されたプロセスが提供される。このプロセスは、処理された後のガス中に存在するCO2の量を減少させる。
【0018】
「放電」という用語は、プラズマ発生放電などの何らかの形の電気放電を意味することを意図している。典型的には、これは、ガスなどの媒体を介して印加された電場における電気の放出および伝達を意味する。典型的には、ある位置から別の位置へ、または2点間を通るフィラメントの形の電子の流れが、これを達成する。電子の流れは、典型的には、フィラメントの形の電子の過渡的な流れである。これは、放電中のマイクロ放電/フィラメント内の電子の流れが、個々の放電点火事象あたり短い時間だけ続くことを意味することを意図している。当然のことながら、好適な条件が維持される場合、経時的に多くのフィラメントがあり得る。放電は、ガスを通して印加された電場における電気の伝達を可能にする。
【0019】
放電は、CO2を1つまたは複数の他の物質に変換することによってCO2を除去する際に使用するためのものであり得る。これは、同じ手段によるCO2の捕捉および利用を可能にし、同時に、したがって、CO2を貯蔵する必要性を回避する。
【0020】
パルス、コロナ、電子ビーム、高周波、マイクロ波、紫外光放射放電、ブラシ、電気グロー、電気アーク、静電、部分放電、ストリーマ、真空アーク、タウンゼント、電子の電界放出、またはガス中の放電、リーダー(またはスパーク)、セントエルモの火、または雷などの任意の形態の放電が、ガスからCO2を除去するのに好適であり得る。しかし、典型的には、放電はバリア放電であってもよい。本発明者らは、バリア放電を使用して、ガス中のCO2含有量を低減することができ、それによって、バリア放電を使用して、空気および/または点源(排気ガスなど)からCO2を低減することが可能になることを見出した。誘電体の存在は、アークまたはスパーク(すなわち、電極間に持続電流を発生させる放電)を発生させない。代わりに、それは、マイクロ放電のみ発生させ、これは、典型的には、マイクロ秒の間のみ持続する。これは、CO2が分解され得る化学反応経路に寄与するのに必要なエネルギーおよび成分を提供すると同時に、持続的な放電を提供するのに必要な電力量を制限する。
【0021】
典型的には、放電は誘電体バリア放電である。誘電体バリア放電を使用する場合、スパークの発生が少ないため、放電はより制御可能であり、放電によって引き起こされる摩耗および損傷が少ないことを意味する。
【0022】
ガスは、任意の供給源からの任意のガスであってもよく、または単に空気などの局所的に利用可能なガスであってもよいが、ガスは、排ガスであってもよい。追加的または代替的に、ガスは、CO2を含むガスであってもよい。これにより、放電を使用して、例えば船舶および他の車両、発電所、ならびに焼却炉における燃焼機関からの空気および煙道排出物などの排気ガス中のCO2を低減することが可能になる。
【0023】
第2の態様によれば、ガスからCO2を除去する際に使用するためのバリア放電が提供される。
【0024】
第3の態様によれば、ガスからCO2を除去する際に使用するための誘電体バリア放電が提供される。
【0025】
第4の態様によれば、ガスからCO2を除去する際の放電の使用が提供される。
【0026】
典型的には、放電は、CO2を1つまたは複数の他の物質に変換することなどによって、ガスからCO2を除去することができる。
【0027】
任意の形態の放電を使用することができるが、典型的には、放電はバリア放電であり得る。例えば、放電は誘電体バリア放電であってもよい。
【0028】
ガスは、任意の局所的、遠隔的、周囲的、環境的、または人工的な供給源からの空気またはガスであってもよい。典型的には、ガスは排ガスであってもよい。追加的または代替的に、ガスは、エンジンからのガスであってもよい。
【0029】
第5の態様によれば、少なくとも1つのアノードおよび少なくとも1つのカソードを提供するように使用時に配置された少なくとも2つの電極であって、少なくとも2つの電極が、使用時に流体が電極間に存在することを可能にするように分離され、電極のうちの少なくとも1つが、その電極の少なくとも一部に接続された誘電体部分を有する、少なくとも2つの電極と、少なくとも2つの電極のうちの少なくとも1つおよび/または誘電体部分に接続されたサブマクロ構造体と、少なくとも2つの電極の各々に接続され、電極間に電場を確立するように使用時に配置された駆動回路であって、電極間の電場の存在に応答して、サブマクロ構造体が、電子を電界放出するように配置され、誘電体部分と少なくとも2つの電極のうちの1つとの間に放電が確立可能であり、駆動回路が、使用時に流体に有効電力を供給するようにさらに配置される、駆動回路と、を含む、誘電体バリア放電装置が提供される。
【0030】
電極または誘電体部分へのサブマクロ構造体の適用は、サブマクロ構造体内の秩序を維持する必要があることや、電極または誘電体部分の表面にサブマクロ構造体を取り付けることが困難であるため、技術的に困難なプロセスである。加えて、サブマクロ構造体を使用することは、サブマクロ構造体の端部における電界強度が、電場が広がるより大きい面積を典型的に有する(例えば)電極上より高いため、電界強度の均一性の差を生じさせる、「プレートツーポイント(plate to point)」サブマクロ構造体を実装する。しかし、本発明者らは、誘電体バリア放電装置においてサブマクロ構造体を使用することが、サブマクロ構造体と誘電体部分が組み合わせて使用されないときよりも少ない電力が使用されることを可能にすることを見出した。これは、使用時に、アノードとカソードとの間に電場が確立されると、サブマクロ構造体電界が電子を放出するためである。電界放出により、アノードとカソードとの間のギャップは電子の密度が上昇する。これは、化学反応を開始するためにより多くの電子が存在するため、電力を節約する。これは、物理的用途で使用されるときに、典型的には、古典的プロセスと量子プロセスとが互いに分離された状態に保たれるとき、放電の古典的な静電現象と、電界放出の形態のトンネリングの量子現象とを組み合わせることによって達成される。駆動回路は、電極および誘電体部分(誘電体バリア放電、DBD、デバイスなどにおける)への有効電力を最大化することによって、エネルギー効率をさらに高める。
【0031】
したがって、全体的に、サブマクロ構造体を実装する電極設定のための駆動回路と誘電体部分の配置との組み合わせは、ガスからのCO2の除去を実行可能にするのに十分なエネルギー効率を可能にする。さらに、この組み合わせはCO2を他の物質に変換するため、この態様による装置は、CCUに関して上述した環境上の利点を提供する炭素捕捉および利用のための能力を提供する。
【0032】
「有効電力」という語句は、印加される電圧の期間(例えば、T0)にわたって平均化された、電極に供給される瞬時電力(p(t))を意味することを意図しており、この期
間は、典型的には、励振の開始または電源窓の開始から次の電源窓の開始までの期間である。有効電力(P)は次のように計算することができる。
【数1】
ここで、「t」は時間であり、「t0」は励振の開始または電源窓の開始における時間である。
【0033】
したがって、有効電力は、使用時に電極間に存在する流体中の高エネルギー電子の発生率を意味すると考えることもできる。これは、(例えば、駆動回路からの)電気エネルギーの(例えば、使用中の電極間の流体中の)化学エネルギーへの変換を提供する。この変換は、回路、電極、誘電体における損失および/または流体の加熱などのいくつかの要因による損失を引き起こす可能性がある。このような損失は、典型的には望ましくないが、このプロセスにおいて不可避であり得る。したがって、損失は、高エネルギー電子の最大生成速度を有するように最小化され得る。
【0034】
サブマクロ構造体が電極または誘電体部分の少なくとも1つに接続されるということは、少なくとも1つのサブマクロ構造体が少なくとも1つの電極または誘電体に接続されることを意味することを意図している。これは、2つ以上の電極および/または誘電体部分が、それらに接続された1つまたは複数のサブマクロ構造体を有することができることを意味する。当然のことながら、複数のサブマクロ構造体があり、各サブマクロ構造体が電極または誘電体部分のうちの1つに接続されてもよく、例えば、すべてのサブマクロ構造体が、単一の電極のみもしくは誘電体部分のみ、または1つもしくは複数の電極および/もしくはそれに接続された1つもしくは複数のサブマクロ構造体を有する誘電体部分に接続される。サブマクロ構造体が電極または誘電体部分に接続されるとき、そのサブマクロ構造体は、そのそれぞれの電極または誘電体部分にのみ接続され、別の電極または誘電体部分(電極に接続されるとき)にも接続されないことが意図される。
【0035】
流体は、典型的には気体であるが、液体などの別のタイプの流体であってもよい。
【0036】
駆動回路によって供給される有効電力は、駆動回路がある量の有効電力を流体に供給するように配置され得るように、(所定の)量の有効電力であってもよい。これは、固定量の有効電力であり得るが、これは、典型的には、流体に伝達され、それによって、駆動回路から引き出される瞬時および/または有効電力の量の変動および変化により、有用ではない。これは、流体の内容、温度、および/または流量などの流体の条件のわずかな変化に起因し得る。したがって、典型的には、有効電力の量は、駆動回路が調整可能な量の有効電力を流体に供給するように配置され得るように、調整可能な(可変または修正可能であることを意味することを意図する)量の有効電力である。
【0037】
サブマクロ構造体は、メゾ構造体などの任意のサブマクロ構造体であり得る。典型的には、サブマクロ構造体は、微細構造体またはそれより小さくてもよい。例えば、サブマクロ構造体は、炭素、シリコン、酸化チタンもしくは酸化マンガンのナノワイヤ、ナノチューブもしくはナノホーン、またはステンレス鋼、アルミニウムもしくはチタンのマイクロニードルであり得る。
【0038】
サブマクロ構造体は、カーボンナノチューブ(CNT)またはマイクロニードルであっ
てもよい。CNTおよびマイクロニードルは、電場に曝されたときに、電子の非常に良好な電界エミッタであることが見出されている。これは、これらのサブマクロ構造体が、それらの非常に高いアスペクト比(典型的には50~200ナノメートル、nmの直径対1~2ミリメートル、mmの長さ、すなわち5,000~40,000のアスペクト比)およびそれらの低い仕事関数(典型的には約4電子ボルト、eV)のため、比較的低い印加電圧で多数の電子を生成することができるためである。高いアスペクト比は、低い印加電圧で達成可能な、ミクロンとも呼ばれる1マイクロメートルあたり数ボルト(V/μm)の、サブマクロ構造体の先端における大きな電場増強を引き起こす。このようなサブマクロ構造体からの電界放出に必要な最小電界強度は、一般的に約30V/μmである。これは、サブマクロ構造体の長さ、サブマクロ構造体の直径、電場を生成するために使用される電極間の距離、および電場を確立するために使用される印加電圧のうちの1つまたは複数を変化させることによって達成することができる。(個々の)サブマクロ構造体のアレイが使用される場合、サブマクロ構造体は互いに遮蔽する傾向があるため、アレイの密度を変化させて電界強度を変化させることもできる。
【0039】
サブマクロ構造体は、多層CNT(MWNT)または金属単層CNT(金属SWNT)であり得る。
【0040】
駆動回路は、バイポーラ電圧パルスのパルス列を、パルス列内の限られた数のパルスで印加することによって、流体に有効電力を供給するように使用時に配置されてもよい。これは、DBDデバイスが、電流ストレスを大幅に低減しながら高い電圧スルーレートで励起されることを可能にし、これは、パワーエレクトロニクスによって処理されるピーク電力を低下させる。
【0041】
さらに、駆動回路は、バイポーラ電圧パルスのパルス列を、パルス列内の1~5個のパルスで印加することによって、流体に有効電力を供給するように使用時に配置されてもよい。パルスの繰り返し周波数は、パワーエレクトロニクスの最大動作温度によって制限され得る。一般に、パルス電力変換器の設計は、遅い熱応答を利用する。これは、従来のパルスシステムにおいて高いパルス繰り返し周波数が使用された場合、散逸されたピーク電力が、パワーエレクトロニクスのより安全な動作温度内に留まるには大きすぎることを意味する。これは、単一のパルス列から生成される放電点火事象の最大回数を制限し、次いで、次のパルス列の前に冷却が発生することを可能にする期間を有することによって低減される。放電点火事象の回数が1~5回に制限される、いくつかの連続したバイポーラ電圧パルスのパルス列を実装することによって、パルス列内のパルスの数を対応する数または同様の数に制限することによって、約90%以上の効率など、非常に高い効率でエネルギー伝達を提供しながら、これが達成される。
【0042】
駆動回路によって供給される有効電力は、電界強度を閾値より高く維持するように使用時に配置された駆動回路によって供給されてもよい。この閾値は、放電点火が発生し得る閾値であってもよい。このような放電を提供することによって、これは、流体と相互作用する高エネルギー電子の生成によって、流体への有効電力の伝達を引き起こすことが可能であり、流体または流体の成分の分解を可能にする。
【0043】
駆動回路は、何らかの形態のDC電源から、設定された量で電力の一定の供給を提供することによって、または所定の周波数における正弦波形での電力の一定のAC電源または連続的な供給を提供することなどによって、任意の好適な手段を通じて、有効電力を供給することができる。典型的には、駆動回路は、使用時に少なくとも2つの電極にわたって接続された電源と、電源と少なくとも2つの電極のうちの少なくとも1つとの間に接続されたインダクタンスであって、それによって使用時に共振タンクを確立するインダクタンスとをさらに含むことができ、電力は、使用時にパルス列で、かつパルス列中にのみタン
クに供給され、各パルス列のパルス周波数は、使用時にタンクの共振周波数に調整可能であり、各パルス列によって供給される電力は、タンクを充電し、放電点火が発生する閾値にタンクを維持し、パルス列ごとの放電点火事象は、最大回数が発生した後に各パルス列が共振タンクに電力を伝達することを禁止するように使用時に配置される駆動回路に基づいて、最大回数に制限される。
【0044】
電力のパルス列を共振タンクに供給することによって、各パルス列の持続時間にわたって、共振タンクの「充電」とも呼ばれる、共振タンクに蓄積されるエネルギーの量が増加する。誘電体バリア放電は、ギャップにかかる電位差が閾値(Vth)に達したときに誘電体放電ギャップにわたって発生する。パルス列のパルス周波数(個々のパルス間の期間またはパルス列内のパルスのサイクル期間の逆数を意味することを意図している)をタンクの共振周波数に調整することによって、充電プロセスは、電位差の振幅の急速な増加を引き起こす。これにより、例えば10サイクル未満で電位差振幅が閾値まで増加し、誘電体バリア放電が発生する閾値(「点火閾値」とも呼ばれ得る)に到達する。
【0045】
本明細書に記載の態様のデバイスを使用することによって、電流印加ストレスに対する制限が提供される。電流印加ストレスに対する制限は、駆動回路における電力損失の低減をもたらす共振タンク電圧利得によって、パルス列中にいくつかのサイクル(すなわち、個々のパルス)にわたって生じる閾値に対する電位差の増大によって、このようなデバイスを使用して達成される。従来のマルチパルスシステムでは、プラズマ放電は、単一パルスの使用によって提供され、高昇圧変圧器を必要とし、より高い電流をもたらし、それによって、例えば、一次巻線側にかかる電流印加ストレスを上昇させる。
【0046】
さらに、電源は、過電流検出を必要とすることなく短絡から保護される。これは、電源の出力端子が、例えば、誘電体バリアにおける短絡故障により短絡した場合に、電流を制限するのに十分なインピーダンスを提供する共振タンクのインダクタンスによるものである。
【0047】
加えて、放電点火事象の回数を制限することによって、単に熱への、またはより反応性の低い種の生成へのエネルギーの散逸が低減される。実際に、本発明者らは、共振ACと制限されたパルス励起とのこのようなハイブリッドを実装することによって、高い電力変換効率も有しながら、効果的な汚染物質低減が提供可能であることを見出した。
【0048】
したがって、全体として、一態様によるデバイスでは、高い効率を有する誘電体バリア放電デバイスへの電力伝達が(共鳴効果により)達成されると同時に、回路構成要素を保護するために、電流印加ストレスを制限し、短絡から保護する。
【0049】
典型的には、1つのパルス列の終了時間と次のパルス列の開始との間に時間差がある。換言すれば、典型的には、1つのパルス列の終了と次のパルス列の開始との間に、パルスがない期間がある場合があり、これは、1つのパルス列が次のパルス列から区別されることを可能にし、連続したパルス列間の任意の同時部分または重複を回避する。
【0050】
誘電体放電ギャップは、誘電体放電デバイスの電極間のギャップであることが意図される。これは、典型的には、ギャップによる静電容量を提供し、さらなる静電容量が誘電体によって提供される。当然のことながら、この態様による駆動回路が放電ギャップにわたって接続されるとき、このギャップの縁部/側部は電極によって提供されるため、駆動回路が電極に電流を供給し、電極間の電位差を確立することを可能にするように、駆動回路が少なくとも電極に接続される(すなわち、電気的に接続される)ことが意図される。様々な例では、駆動回路は、駆動回路および誘電体放電ギャップを含む閉回路を形成する電極に接続されたワイヤまたはケーブルに接続されることによって、誘電体放電ギャップに
わたってさらに接続され得る。
【0051】
共振タンクによって供給される電力のサイクル期間は、電流および/または電圧が、周波数によって決定されるような単一の発振サイクル(のみ)を通過するのにかかる期間を指すことが意図される。換言すれば、これは、電流および/または電圧が単一の波長(のみ)を通過するのにかかる時間であることが意図される。
【0052】
誘電体放電ギャップにおける誘電体の存在は、典型的には、アークまたはスパーク(すなわち、電極間に持続電流を発生させる放電)を発生させない。代わりに、それは、典型的には、マイクロ放電のみ発生させ、これは、典型的には、マイクロ秒の間のみ持続する。これは、放電が通過する媒体中の化合物を分解するための化学反応経路に寄与するのに必要なエネルギーおよび成分を提供すると同時に、持続的な放電を提供するのに必要な電力量を制限する。
【0053】
本明細書に記載の態様による駆動回路によって放電が引き起こされるプロセスは、点火閾値に達する前に発生する放電が最初に存在しないと考えることができる。これは、(電極間などの)放電ギャップ内のガスがイオン化されておらず、放電がなく、特に関連して、電力がガスに供給されないことを意味する。しかし、閾値に達すると、放電が発生する。これは、(放電ギャップの側面を画定する電極の表面上の何らかの形のサブマクロ構造体など)単一の点から、無数の過渡的なフィラメント(各々がマイクロ放電を表す)が形成されることをもたらす。各フィラメントの寿命(すなわち、それぞれのフィラメントが存在する期間)は、数十ナノ秒のオーダーである。放電ギャップ内に高エネルギー電子が形成され、ギャップ内の媒体に電力が供給されることを可能にするのは、これらの過渡的なマイクロ放電の寿命の間だけである。生成された高エネルギー電子によって供給される電力は、化学反応を開始するのに十分な量のエネルギーレベルであるため、汚染物質の分解を開始することができる。
【0054】
放電ギャップを電圧閾値に無期限に維持することは、DBDデバイスの誘電体放電ギャップの電極および誘電体バリアの表面上に電荷蓄積を引き起こす。これは、パルスの使用によって回避することができる。パルスは、パルスによって提供される交番極性により、放電ギャップにおける瞬時電圧が点火閾値に維持される時間量を数マイクロ秒程度の期間に制限するものと考えることができる。これは、過渡的なフィラメントが、この期間の間にのみ生成され得ることを意味する。したがって、マイクロ放電が発生し得る期間は、放電ギャップにおける瞬時電圧が点火閾値に維持される時間量に制限されると考えることができ、それらの過渡的なフィラメントの総和は、「マクロ放電」または「放電事象」であると見なされ得る。
【0055】
前の4つの段落を考慮して、「放電点火事象」という用語は、したがって、マクロ放電または放電事象の開始、または言い換えれば、閾値に達したときである、過渡的なフィラメントの形のマイクロ放電が発生することができる期間の開始であることが意図される。この閾値は、典型的には、例えば電極/誘電体層とギャップを画定する電極との間の電位差(例えばΔV)の形の、誘電体放電ギャップにおける電圧閾値などの電圧閾値である。
【0056】
使用時にタンクの共振周波数(「共鳴周波数」と呼ぶこともできる)に調整可能なパルス列のパルス周波数は、パルス周波数が、共振周波数と見なすことができるいくつかの周波数のうちの1つまたは複数に調整され得ることを意味することが意図される。これらは、理論上の共振周波数(すなわち、現実世界の影響を考慮しないときに共振周波数であるとして計算される周波数)、または、配線および/もしくは他の構成要素におけるインダクタンスおよび/もしくは抵抗、減衰、もしくはインピーダンスのうちの1つもしくは複数を含み得る現実世界の影響を考慮する周波数などの、実際に適用可能な共振周波数を含
む。したがって、以下でさらに詳述するように、ゼロ電圧スイッチング周波数である。
【0057】
放電点火事象の最大回数は、典型的には、1回の事象(のみ)、2回の事象、または3回の事象を含む、1~3回の事象など、1~5回の事象であってもよい。非常に少ない放電点火事象に制限することによって、本発明者らは、これが汚染物質の最もエネルギー効率的で効果的な分解をもたらすことを見出した。これは、放電ギャップ内の媒体への伝達を制限し、それによって、媒体内の化合物の分解を引き起こすように、より高い割合のエネルギーを方向付ける、放電点火事象により発生する、エネルギー伝達によるものである。
【0058】
駆動回路は、タンクと通信し、使用時に、各パルス列中にタンクに供給される電力の位相シフトを(監視することなどによって)識別するように配置された位相計をさらに含むことができ、位相シフトは放電点火事象の発生に対応し、駆動回路は、使用時に、各それぞれの放電点火事象以来のそれぞれのパルス列内のパルスの数に基づいて、放電点火事象の最大回数がいつ発生したかを決定するようにさらに配置され得る。
【0059】
本発明者らは、このような位相シフトが、放電の開始を表し、したがって、その時点から発生する放電点火事象の回数を(その時点以降のパルス列内のパルスの数をカウントするか、またはそれを認識することなどによって)識別することが可能であることを見出した。これは、放電点火事象の最大回数に達したときを判定して、さらなる放電点火事象の発生を停止することが可能であることを意味する。例えば、共振タンクへの入力における電圧-電流位相シフト(Hブリッジ端子において測定される電圧-電流位相シフトなどであり、Hブリッジの関連性は以下でさらに詳述する)を監視することによって、最初の放電点火事象が検出され得る。共振タンクの充電中(例えば、急速な電圧上昇)、典型的にはゼロに近い位相シフト(共鳴で励起される)がある。しかし、放電点火事象の一部としてプラズマが点火されると、典型的には、「点火された」放電ギャップによって印加される静電容量の増加のため、共鳴周波数のシフトがある。監視されるとき、この共鳴周波数シフトは、位相シフトを監視することによって直ちに検出され得る。
【0060】
上述のような位相計(例えば、位相検出ユニット)は、コントローラ、プロセッサ、マイクロプロセッサもしくはマイクロコントローラ、または少なくとも2つの信号の位相を監視することができる別のこのようなデバイスによって提供されてもよい。
【0061】
位相監視または位相計の使用に加えて、またはその代わりに、各パルス列は、事前調整または最適化されたパルス数(すなわち、パルス列内のパルスの数)を有することができる。典型的には、共振タンクを充電するためにいくつのパルスが必要とされるかを計算またはモデル化することが可能であり、典型的には、1パルスあたり単一の放電点火事象(のみ)があるか、または少なくとも、1パルスあたりいくつの放電点火事象が引き起こされるかを計算することが可能である。これにより、パルス列内のパルスの数を、少なくとも所望の放電点火事象の最大回数とタンクを充電するのに必要なパルスの数との和に設定することが可能になる。このような手法が使用される場合、当然のことながら、パルスが共振タンクを放電するために使用されるときなど、それぞれのパルス列に含まれるさらなるパルスがあり得る。これらはまた、この手法が使用される場合、パルス列ごとにいくつのパルスが必要とされるかの計算に含まれてもよい。
【0062】
換言すれば、この位相差は、誘電体バリア放電の発生の始まりを検出するために使用することもできる。これを検出することは、パルス列が、エネルギーを提供することから、例えば、定義された回数の放電点火事象後のエネルギー回収に移行するときに、それが識別されることを可能にすることができる。また上述したように、放電ギャップにおける誘電体バリア放電の発生は、実効静電容量を増加させる。この結果、共鳴周波数が低下し、
したがって、所与の駆動周波数(パルス列のパルス周波数など)に対する測定可能な位相差が増大する。これを考慮すると、駆動回路の位相計およびコントローラは、互いに同じ構成要素であってもよいことが分かる。あるいは、コントローラおよび位相計は、互いに通信してもよく、またはコントローラは、位相計がコントローラの構成要素であるなど、位相計を組み込んでもよい。
【0063】
駆動回路は、変圧器をさらに含むことができ、その二次巻線が共振タンクの一部を形成し、変圧器は昇圧変圧器である。これは、電圧入力レベルを上昇させることによって、誘電体バリア放電電圧レベル(すなわち、Vth)を達成するために共振タンクにおいて必要とされる最小電圧利得を低下させる。加えて、変圧器の使用は、接地電流(DBDデバイスの電極と任意の周囲の金属製ハウジングとの間の寄生容量に流れる電流)を低減させ、それによって、EMIを低減させる。変圧器は、二次巻線の代わりに共振タンクの一部を形成する一次巻線を有する回路内に位置することができるが、二次巻線が共振タンクの一部を形成する配置では、変圧器のキロ-ボルト-アンペア(kVA)定格を低減することができる。このような場合、DBDデバイスの無効電力が補償され得る。
【0064】
駆動回路は、各パルスの後に一次変圧器巻線を短絡するように配置され得る。これは、共振タンクを構成する構成要素により発生し得るリンギングを低減する。インバータが使用されるとき、変圧器の一次巻線の短絡は、インバータのローサイドまたはハイサイドでスイッチングすることによって使用時に達成され得る。これにより、回路内にさらなる構成要素を含む必要がなくなり、それによって、構成要素数が制限される。
【0065】
共振タンクのインダクタンスは、1つまたは複数の構成要素によって提供または寄与されてもよく、回路内の構成要素間の配線またはケーブルにおけるインダクタンスによって提供されてもよい。インダクタンスの少なくとも一部(インダクタンスの一部または全部など)は、変圧器によって提供されてもよい。これは、変圧器の典型的に望ましくない特性を使用し、その特性が回路の機能への寄与として使用されることを可能にする。変圧器によって提供される任意のインダクタンスは、変圧器の漏れインダクタンス(浮遊インダクタンスとも呼ばれる)であり得る。いくつかの状況では、これは、共振タンクが特定の構成要素としてインダクタも含む必要がないことを可能にすることができる。
【0066】
インダクタンスを提供する変圧器に加えて、またはその代わりに、インダクタンスの少なくとも一部(インダクタンスの一部または全部など)は、インダクタによって提供されてもよい。これは、使用されるインダクタンスを提供するように設計された構成要素を提供し、それによって回路を最適化する。インダクタンスがインダクタおよび変圧器によって部分的または全体的に提供される状況では、それぞれが電源と誘電体放電ギャップとの間のインダクタンスに寄与し、それによって、共振タンクのインダクタンスに寄与する。
【0067】
駆動回路は、各パルス列の後にタンクからの電力放電(すなわち、排出された電力)を受け入れて蓄積するように使用時に配置された、電源にわたって接続された蓄電デバイスをさらに含むことができる。これは、共振タンク内のエネルギーが散逸することにより失われるであろう回路内の電力を蓄積/回収するための手段を提供する。これは、パルス列間のエネルギー損失を低減し、蓄積されたエネルギーが次の高電圧パルス列を形成するのに寄与することを可能にする。これはエネルギーを節約し、したがって回路をより効率的にする。
【0068】
エネルギーまたは電力の回生は、受動的または能動的手段によって達成することができる。典型的には、駆動回路が、使用時に、放電点火事象の最大回数が発生した後にパルス列(内のパルス)の位相を180度(°)シフトするように典型的に配置されることなど、能動的手段が使用される。この機構を実装することによって、疎結合空芯変圧器の使用
によるなど、エネルギー回収のための受動的手段(および潜在的に任意の他の能動的手段)が可能ではないときに、エネルギー回収を達成することができる。これは、したがって、エネルギー回収から達成可能な効率利得がさらに達成されることを可能にする。位相シフトは、共振タンクを閾値まで充電するためにパルス列で使用されるパルスの数と同じ数のパルスに対して行われてもよいが、異なる数のパルスに対して位相シフトを適用することも可能である。これは、共振タンクを充電および放電するときに同様の電力の流れを維持する。
【0069】
サブマクロ構造体は、電極のうちの少なくとも1つに電気的に接続されてもよい。追加的または代替的に、このサブマクロ構造体または各サブマクロ構造体が電気的に接続されるこの電極または各電極は、使用時にカソードを提供するように配置されてもよい。
【0070】
第6の態様によれば、ガスから二酸化炭素を除去するための(すなわち、除去するのに適した)装置が提供され、本装置は、第1の電極および第2の電極であって、アノードおよびカソードを提供するように使用時に配置される、第1の電極および第2の電極と、第1の電極に接続された誘電体部分と、第1もしくは第2の電極または誘電体部分に接続されたサブマクロ構造体であって、電極間の電場の存在に応答して、サブマクロ構造体が、電子を電界放出するように配置され、誘電体と第2の電極との間に放電が確立可能である、サブマクロ構造体と、第1の電極および第2の電極に接続され、第1の電極と第2の電極との間に電場を確立するように使用時に配置された駆動回路であって、電極間の電場の存在に応答して、サブマクロ構造体が、電子を電界放出するように配置され、誘電体部分と少なくとも2つの電極のうちの1つとの間に放電が確立可能であり、駆動回路が、使用時に電極間に存在する流体(ガスなど)に有効電力を供給するようにさらに配置される、駆動回路と、電極に結合されたハウジングであって、サブマクロ構造体および誘電体部分が各々スクラブ洗浄されるガスを含む容器内に延在するように電極がハウジング上に位置し、前記容器の内部が前記電子および放電に曝されることができるようにする、ハウジングと、を含む。
【0071】
誘電体部分、サブマクロ構造体および駆動回路の使用は、ガスからCO2を除去することを可能にしながら、放電を確立するのに必要な電力および電圧を低下させる相乗効果を提供する。加えて、誘電体部分を使用することは、スパークの量を低減し、それによって放電によって引き起こされる摩耗および損傷の量を低減することによって、放電がより制御可能になることを可能にする。サブマクロ構造体が誘電体部分なしで使用された場合、これが典型的には装置の他の部分よりもスパークによる損傷を受けやすいため、より大量のスパークがサブマクロ構造体の有用性を制限することになる。逆に、誘電体がサブマクロ構造体なしで使用された場合、CO2分解を開始するための電子の密度はより低くなり、したがって、同じ還元効率を達成するためにより高いエネルギーを必要とする。加えて、駆動回路の使用は、電力浪費を低減し、したがって、全体的効率を増加させる。したがって、誘電体、サブマクロ構造体、および駆動回路を使用することの複合効果は、それぞれを独立して使用することによってもたらされる便益よりも大きい便益を有する。
【0072】
この態様で提供される有効電力は、先の態様に関連して上述したのと同じ方法で提供することができる。例えば、駆動回路は、バイポーラ電圧パルスのパルス列を、パルス列内の限られた数のパルスで印加することによって、流体に有効電力を供給するように使用時に配置されてもよい。さらに、駆動回路は、バイポーラ電圧パルスのパルス列を、パルス列内の1~5個のパルスで印加することによって、流体に有効電力を供給するように使用時に配置されてもよい。
【0073】
ハウジングは、ハウジング内のガスからのCO2の除去を可能にするように配置され得ることが意図される。これは、サブマクロ構造体および誘電体部分が各々容器内に延在す
るように、電極がハウジング上に位置することによって達成され得る。
【0074】
第1の電極は、アノード(または、2つよりも多い電極があるときなど、2つ以上のアノードがある場合にはアノード)を提供するように使用時に配置されてもよい。追加的または代替的に、第2の電極は、カソード(または、2つよりも多い電極があるときなど、2つ以上のカソードがある場合にはカソード)を提供するように使用時に配置されてもよい。
【0075】
サブマクロ構造体は、電極のうちの1つに電気的に接続されてもよい。典型的には、サブマクロ構造体は、第2の電極に電気的に接続される。
【0076】
電極は、それらの間に電場が確立されることを可能にする電極を提供するのに任意の好適な材料であり得る。典型的には、電極は、導電性金属から作製され得る。
【0077】
誘電体部分が第1の電極に接続され、サブマクロ構造体が第2の電極に接続されることにより、誘電体部分およびサブマクロ構造体のそれぞれの電極への適用を独立させることができる。これは、電極に誘電体部分を適用するためのプロセスおよび電極にサブマクロ構造体を適用するためのプロセスがそれぞれサブマクロ構造体または誘電体を損傷する可能性を回避する。したがって、これにより、装置の製造プロセスが簡略化され、製造時の故障率が低減される。
【0078】
以下の特徴は、任意の態様に適用可能であり得る。
【0079】
誘電体部分は、それが接続される電極または各電極の少なくとも一部を覆う形態を提供することができる。典型的には、誘電体部分は、誘電体部分が接続される電極または各電極の表面の少なくとも一部の上のコーティングである。例えば、誘電体部分は、それが接続される電極または各電極の表面全体をコーティングすることができる。
【0080】
誘電体部分は、約2mmなど、約0.1mm~10mmの厚さを有することができる。
【0081】
誘電体部分が少なくとも1つの電極に接続されることによって、本発明者らは、誘電体部分が接続される各電極が、互いの誘電体部分および電極から独立して誘電体部分に接続されることを意味することを意図する。これは、複数の誘電体部分があり得ることを意味する。各誘電体部分は、単一の電極のみに接続されてもよい。
【0082】
誘電体部分は、雲母、石英、溶融シリカ、アルミナ、チタニア、チタン酸バリウム、溶融シリカ、ケイ酸チタニア、窒化ケイ素、酸化ハフニウム、またはセラミックのうちの1つまたは複数であってもよい。この場合の「1または複数の」という語句は、2つ以上の指定された材料の2つ以上が使用されるとき、これらの材料の2つ以上の組み合わせを意味することを意図している。
【0083】
典型的には、誘電体部分は石英である。これは、この材料としての石英が容易に入手可能であり、低コストであり、大量に処理することができ、熱応力に対する高い耐性を有することができるためである。あるいは、誘電体部分は雲母であってもよい。雲母は、ガラスなどの他の誘電体材料よりもわずかに高い誘電率を有するため有益である。
【0084】
上述のように、サブマクロ構造体は、適切なサイズのサブマクロ構造体の任意の形態であってもよい。典型的に、サブマクロ構造体は、ナノ構造体であってもよい。
【0085】
ナノ構造体は、少なくとも1,000(すなわち、1,000対1)の長さ対幅のアス
ペクト比を有し得る。少なくとも1,000のアスペクト比を有するナノ構造体は、より低いアスペクト比を有するものよりも効率的な電界放出を提供する。アスペクト比は、少なくとも5,000または少なくとも10,000であってもよい。アスペクト比を増加させると、電界放出の効率がさらに増加することが見出されている。
【0086】
ナノ構造体の代替として、サブマクロ構造体は、微細構造体であってもよい。典型的には、微細構造体は、アスペクト比または少なくとも8、9、もしくは10など、少なくとも5(すなわち、5対1)の長さ対幅のアスペクト比を有することができる。微細構造体は、典型的には、CNTなどのナノ構造体ほど効率的に電界放出しない。しかし、マイクロワイヤなどの微細構造体を使用すると、垂直に整列した微細構造体の大きなアレイを工業的規模で容易に製造することができるため、装置の製造が簡単になる。
【0087】
この装置は、各サブマクロ構造体が形成されるか、または位置する基板をさらに含むことができる。基板は導電性であってもよい。
【0088】
基板は、カソードに含まれてもよく、またはカソードに電気的に接続されてもよい。
【0089】
基板は、シリコンおよび金属の一方または両方を含むことができる。シリコンは、高濃度にドープされた導電性シリコンであってもよい。シリコンは、少なくとも前記サブマクロ構造体が形成または位置する側がアルミニウムでコーティングされてもよい。金属は、チタン、および/またはチタン合金、および/またはアルミニウム、および/またはアルミニウム合金、および/または銅、および/または銅合金を含むことができる。金属は研磨されてもよい。
【0090】
サブマクロ構造体は、最大4eVなど、1つまたは複数の低仕事関数材料でコーティングされ得る。これは、サブマクロ構造体の電界放出を改善する。代替的または追加的に、サブマクロ構造体は、電子輸送増強材料または導電性増強材料でドープされてもよい。これは、電界放出をより効率的にする。例えば、III族(アクセプタ)またはV族(ドナー)原子(例えば、リンまたはホウ素)がシリコンナノ構造体に使用され得る。
【0091】
サブマクロ構造体は、4eV以下の仕事関数を有する材料で少なくとも部分的にコーティングされてもよい。前記材料は、セシウムまたはハフニウムであってもよい。
【0092】
コーティング材料は、少なくとも400℃の融点を有することができる。
【0093】
サブマクロ構造体は、触媒コーティングで少なくとも部分的にコーティングされてもよい。前記触媒コーティングは、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銀、金、酸化バナジウム、酸化亜鉛、二酸化チタンおよび三酸化タングステンのうちの1つまたは複数であってもよい。前記触媒は、二酸化チタンなどの安定化コーティング上に適用されてもよい。
【0094】
サブマクロ構造体は、(個々の)サブマクロ構造体のアレイであってもよい。アレイは、1つまたは複数のコーティングされていないサブマクロ構造体、4eV未満の仕事関数を有する材料で少なくとも部分的にコーティングされた1つまたは複数のサブマクロ構造体、および触媒コーティングで少なくとも部分的にコーティングされた1つまたは複数のサブマクロ構造体のうちの少なくとも2つの組み合わせを含むことができる。
【0095】
サブマクロ構造体は、中空であってもよい。サブマクロ構造体が中空であるとき、サブマクロ構造体の内部は、補剛材料で少なくとも部分的に充填され得る。補剛材料は、チタン、鉄または銅などの遷移金属を含むことができる。補剛材料は、サブマクロ構造体が形
成され得る基板の材料を含むことができる。基板は、チタンを含むことができる。補剛材料は、炭化チタンを含むことができる。
【0096】
サブマクロ構造体は、電子輸送増強材料または導電性増強材料でドープされてもよい。
【0097】
いくつかの例では、電極は、20℃~500℃であるように使用時に配置される。他の例では、電極は、150℃など、100℃~400℃であるように使用時に配置される。これらの温度は、装置が最適に動作することを可能にする。150℃の温度は、典型的には、CO2を分解するための化学的経路が最適化されると同時に、装置の構成要素の材料分解を最小限にする温度と考えられる。
【0098】
サブマクロ構造体を形成するため、またはサブマクロ構造体をコーティングするためのいずれかで二酸化チタンが使用される場合、サブマクロ構造体の温度は(自己修復のための意図的な加熱によるか、または高温排気ガスへの暴露の結果としてなど、いかなる理由であっても)、600℃未満に保たれるべきである。これは、この温度を超えると、二酸化チタンがアナターゼ構造からルチル構造に変化するためであり、これは望ましくない。
【0099】
駆動回路は、前記少なくとも1つの電極に電圧パルスを供給するように使用時に配置されてもよい。電圧パルスは、電極間のガスのイオン化を増加させ、それによって、ガスからCO2を除去するプロセスを加速する。
【0100】
駆動回路は、1ナノ秒(ns)~1ミリ秒(ms)の持続時間と、100ヘルツ(Hz)~10MHzの繰り返し周期性であって、パルス繰り返しが、好ましくは、50%未満のデューティサイクルを有するパルス列を形成する、繰り返し周期性とのうちの少なくとも1つを有する電圧パルスを供給するように使用時に配置されてもよい。
【0101】
駆動回路は、電源とタンクとの間にインバータをさらに含むことができ、インバータは、使用時に、電源からタンクへの電力の供給を調節するように配置される。これは、共振タンクに供給される電力の特徴および特性が、駆動回路への任意の入力によってではなく駆動回路内の構成要素によって決定されることを可能にする。これは、これが駆動回路入力において供給される電力によって決定される場合よりも、行われるべき大量のカスタマイズおよび変更を提供する。
【0102】
インバータは、任意の好適な種類のインバータであってもよい。典型的には、インバータはHブリッジまたはハーフブリッジである。これは、各パルス列の終わりにタンクに蓄積されたエネルギーの受動的および/または能動的回生を達成するために、インバータからの出力に対する直接かつ容易な制御も可能にしながら、インバータ機能を提供するための単純な機構を提供する。
【0103】
Hブリッジまたはハーフブリッジが使用されるとき、ブリッジインバータで使用されるスイッチは、機械式スイッチまたはパワートランジスタスイッチなどの任意の好適なスイッチであってもよい。典型的には、インバータの各スイッチは、シリコンまたは炭化ケイ素(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ、MOSFET)スイッチ、シリコン絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)スイッチ、または窒化ガリウムパワートランジスタ(FET)スイッチであってもよい。シリコンMOSFETスイッチは、典型的には、約650Vの阻止電圧を有し、炭化ケイ素(SiC)MOSFETスイッチは、典型的には、約1.2kVの阻止電圧を有し、シリコンIGBTスイッチは、典型的には、約650Vまたは約1.2kVの阻止電圧を有し、窒化ガリウムFETスイッチは、典型的には、約650Vの阻止電圧を有する。直列に接続されたいくつかの低電圧デバイスを有するマルチレベルブリッジレッグを使用して、(より)高い阻止電圧ブリッジレッグを達成
することも可能である。しかし、典型的には、電圧がスイッチ間で均等に共有されることを確実にするための機構が必要とされ、これにより、複雑であまり丈夫でないものになる。これは、一態様による駆動回路に2レベルHブリッジが典型的に使用される理由である。インバータにおいて上記のスイッチを使用することにより、構成要素を単純に保つことも可能になる。SiCおよびGaNなどのワイドバンドギャップ(WBG)半導体が、Siベースのパワー半導体よりも優れた性能のために典型的に使用される。
【0104】
共振タンクに供給されるパルス周波数(パルス列として提供される場合の電圧波形の周波数など)は、正確には、1次高調波の周波数(すなわち、基本周波数または固有周波数)などのタンクの共鳴周波数、または共鳴周波数の範囲内などの共鳴周波数付近であってもよい。より高次の高調波が使用される場合、典型的には低域通過特徴を有する共振タンクにより、1次高調波よりも高次の高調波が減衰されるか、または弱められる。これは、励起が典型的には方形波形で提供されても、誘電体放電ギャップにかかる結果として生じる電流および電圧がほぼ完全に正弦波である理由である。
【0105】
Hブリッジまたはハーフブリッジインバータなど、スイッチを使用するインバータが使用されるとき、各パルス列のパルス周波数は、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)周波数であり得る。これは、典型的には、タンクの正確な共鳴周波数よりもわずかに高く、例えば、正確な共鳴周波数よりも約5%~約10%高く、駆動回路の品質(Q)係数に応じて約10%以下である。これは、スイッチングによって引き起こされる損失を低減し、スイッチングによって引き起こされる電磁干渉(EMI)を低減し、それによって、インバータをより効率的にし、インバータによって生成されるノイズを低減する。
【0106】
駆動回路は、変圧器をさらに含むことができ、その二次巻線が共振タンクの一部を形成し、変圧器は昇圧変圧器である。これは、電圧入力レベルを上昇させることによって、誘電体バリア放電電圧レベル(すなわち、Vth)を達成するために共振タンクにおいて必要とされる最小電圧利得を低下させる。加えて、変圧器の使用は、接地電流(電極と任意の周囲の金属製ハウジングとの間の寄生容量に流れる電流)を低減させ、それによって、EMIを低減させる。変圧器は、二次巻線の代わりに共振タンクの一部を形成する一次巻線を有する駆動回路内に位置することができるが、二次巻線が共振タンクの一部を形成する配置では、変圧器のキロ-ボルト-アンペア(kVA)定格を低減することができる。このような場合、電極および誘電体部分によって画定される誘電体バリア(DBD)デバイスの無効電力が補償され得る。
【0107】
変圧器が使用される場合、駆動回路は、使用時に、各パルス列の後に一次変圧器巻線を短絡するように配置され得る。エネルギーがタンクから回収/回生されているとき、一次巻線の短絡は、典型的には、それぞれのパルス列が経過した後など、エネルギーが回収された後に適用される。一次巻線を短絡させることは、共振タンクを構成する構成要素により発生し得るリンギングを低減する。インバータが使用されるとき、変圧器の一次巻線の短絡は、インバータのローサイドまたはハイサイドでスイッチングすることによって使用時に達成され得る。これにより、駆動回路内にさらなる構成要素を含む必要がなくなり、それによって、構成要素数が制限される。
【0108】
共振タンクのインダクタンスは、1つまたは複数の構成要素によって提供または寄与されてもよく、駆動回路内の構成要素間の配線またはケーブルにおけるインダクタンスによって提供されてもよい。インダクタンスの少なくとも一部(インダクタンスの一部または全部など)は、変圧器によって提供されてもよい。これは、変圧器の典型的に望ましくない特性を使用し、その特性が駆動回路の機能への寄与として使用されることを可能にする。変圧器によって提供される任意のインダクタンスは、変圧器の漏れインダクタンス(浮遊インダクタンスとも呼ばれる)であり得る。いくつかの状況では、これは、共振タンク
が特定の構成要素としてインダクタも含む必要がないことを可能にすることができる。
【0109】
以下でより詳細に説明するように、変圧器は空芯変圧器であってもよい。空芯変圧器が使用されるとき、これは、巻線間に最大60%の磁気結合を有し得る。巻線間に60%の磁気結合を有する空芯変圧器などの空芯変圧器の使用は、変圧器によって提供されることが可能なインダクタンスを高め、共振タンクが任意のさらなるインダクタンスを有する必要性を低減する。さらに、空心変圧器を使用する場合、共鳴インダクタンス、したがって共振タンクの共振周波数は、一次巻線(送信コイルとも呼ばれる)と二次巻線(受信コイルとも呼ばれる)との間の距離を調整することによって調整され得る。これは、既存のシステムにおいて実行されることが知られているように、回路内に追加のコンデンサを配置する必要性を減少させ、それによって構成要素数を減少させる。これは、空芯変圧器を使用するときに発生する平面誘導電力伝達によって達成可能である。空芯変圧器を実装することを可能にする他の配置も可能である。
【0110】
空芯変圧器巻線は、他の変圧器(すなわち、非空芯またはソリッドコア変圧器)と比較して低い結合を有する。これは、電圧が一次側から印加されないとき(すべてのスイッチがオフであり、ボディダイオードが導通していないときなど)、変圧器の二次(すなわち、高電圧)側が自由に振動することを可能にする。上記で詳述した能動的エネルギー回収のための手段(すなわち、いくつかのパルスの180°位相シフト)は、これらの振動を除去し、空芯変圧器が使用されるときの電力損失を回避する。
【0111】
変圧器は、例えば約1:5など、約1:1~約1:10の、一次変圧器巻線と二次変圧器巻線の昇圧比を有することができる。この配置を適用することによって、既知のシステムでは一般的に成り立たない以下の式が成り立つ。
【数2】
ここで、Vdc-はDCリンク電源によって供給される電圧であり、nは変圧器の巻数比(すなわち、一次巻線の数を二次巻線の数で割ったものに対応するN1/N2)であり、VthはDBDデバイスの点火電圧または放電閾値である。次の段落で説明するように、これは利得の必要性を低減する。
【0112】
約20kVのDBDデバイスにおける誘電体バリア放電点火電圧閾値の場合、これは、駆動回路への入力電圧が約800Vであるとき、約1:5の昇圧比のために約5倍の最小共振タンク電圧利得が必要とされることを意味する。これは、変圧器昇圧と共振タンク電圧利得との間の最適化されたバランスを達成し、要求される放電電圧レベルを達成するために高昇圧変圧器(1:20以上)に主に依存する従来のパルス電力および共振コンバータシステムと比較して、駆動回路の電流ストレスを大幅に低減する。
【0113】
放電閾値に達するまで、共振タンク内の減衰は最小である。これは、充電中に共振タンクに負荷(放電ギャップ内の媒体への電力伝達など)がないためである。既知の共振システムと比較して、このようなシステムでは、負荷を発生させる連続的または長期の放電があるため、典型的には常に負荷がある。
【0114】
本明細書に記載の態様による駆動回路の共振タンクへの負荷の欠如は、既知のシステムと比較して非常に高い電圧利得(50よりも大きいQ値を有する利得など)をもたらす。既知のシステムとは異なり、共振タンクの達成可能な電圧利得は、負荷に依存しない(述
べたように、典型的には、誘電体放電が発生するときにガスに伝達される電力に対応する)。代わりに、それは、共振タンクの寄生抵抗(磁性体および電極の抵抗によって生成される寄生抵抗など)(のみ)に依存する。
【0115】
さらに、負荷の欠如により、これは、より急速な充電を可能にし、パルス列のパルス周波数がタンクの真の共鳴周波数(典型的には実際に存在する減衰効果を考慮しない理論的な共鳴周波数など)に可能な限り近くなることを可能にする。これは、減衰の量が非常に小さいため、パルス周波数が設定されるときに減衰を最小限に考慮する必要があるためである。これは、エネルギー伝達能力を高め、駆動回路をより効率的にする。
【0116】
変圧器がある場合、変圧器の昇圧巻数比に必要な寸法(すなわち、変圧器の昇圧巻数比に対して設定される仕様)も、共振タンクの寄生抵抗にのみ依存する。同様に考慮すべき負荷がある場合には、変圧器の昇圧巻数比の寸法もまた、これを考慮する必要がある。これは、変圧器からの損失が最小限に保たれることを可能にし、それによって、負荷が考慮される必要があるときと比較して、駆動回路の効率に対する変圧器を使用する影響を低減する。
【0117】
インダクタンスを提供する変圧器の代わりに、またはそれに加えて、インダクタンスの少なくとも一部(インダクタンスの一部または全部など)は、インダクタによって提供されてもよい。これは、使用されるインダクタンスを提供するように設計された構成要素を提供し、それによって駆動回路を最適化する。インダクタンスがインダクタおよび変圧器によって部分的または全体的に提供される状況では、それぞれが電源と誘電体放電ギャップとの間のインダクタンスに寄与し、それによって、共振タンクのインダクタンスに寄与する。
【0118】
別個の変圧器およびインダクタが提供されるとき、駆動回路のいくつかの可能な配置がある。1つの配置は、インダクタが共振タンクへの入力(インバータの出力など)に接続されることであり、これは次に、変圧器の一次巻線に接続され、変圧器の二次巻線は次いで、誘電体放電ギャップにわたって接続される。さらなる配置は、共振タンクへの入力が変圧器の一次巻線に接続されることであり、二次巻線は、誘電体放電ギャップと直列に接続されたインダクタに接続される。これらの配置の各々では、変圧器の漏れまたは浮遊インダクタンスは、共振タンクの共鳴インダクタンス値(すなわち、インダクタンス)に寄与する。当然のことながら、共振タンクが変圧器の後に配置される場合、誘電体放電デバイスの発振無効電力が変圧器を通過しないため、変圧器のkVA定格は低減される。
【0119】
別の配置は、共振タンクへの入力が変圧器の一次巻線に接続されることであり、変圧器の二次巻線は、誘電体放電ギャップにわたって接続される。この配置では、別個のインダクタ構成要素が提供されないため、変圧器の漏れインダクタンスまたは浮遊インダクタンスは、所望の共鳴周波数で誘電体放電ギャップにかかる負荷を補償するのに十分な大きさである必要がある。これは、以下でより詳細に言及するように、空芯変圧器(すなわち、磁心を有さない)の場合のように巻線間に非常に低い結合を有する変圧器によって達成され得る。
【0120】
駆動回路は、各パルス列の後にタンクからの電力放電(すなわち、排出された電力)を受け入れて蓄積するように使用時に配置された、電源にわたって接続された蓄電デバイスをさらに含むことができる。これは、共振タンク内のエネルギーが散逸することにより失われるであろう駆動回路内の電力を蓄積するための手段を提供する。これは、パルス列間のエネルギー損失を低減し、蓄積されたエネルギーが次の高電圧パルス列を形成するのに寄与することを可能にする。これは、エネルギーを節約し、したがって、駆動回路をより効率的にする。
【0121】
駆動回路は、少なくとも2つの電極に電圧を供給して、電圧が閾値を超えるときに発生する放電に起因して少なくとも2つの電極に流れる電流に起因する対応する有効電力を供給することによって、使用時に電極間に存在する流体に(調整可能な量などの量の)有効電力を供給するように配置されてもよい。閾値は、放電点火閾値であってもよい。
【0122】
第7の態様によれば、ガスから二酸化炭素を除去するためのシステムが提供され、本システムは、本明細書に記載の一態様による装置であって、使用時に電極間にガスが存在することを可能にするように分離された電極を含む、装置と、装置に接続され、ガスが電極間を通過するように装置にガスを供給するように使用時に配置された導管と、を含み、電極間に電場が確立可能であり、電場が、使用時にガスが曝される電極間に放電を引き起こすように構成される。これにより、ガスを洗浄して、ガス中に存在する二酸化炭素の量を低減することができる。
【0123】
本システムは、エンジンをさらに含むことができ、エンジンは導管に接続されてもよく、導管はエンジンから装置にガスを通過させるように使用時に配置される。
【0124】
第8の態様によれば、ガスから二酸化炭素を除去する方法が提供され、本方法は、誘電体部分が接続される第1の電極と、第2の電極との間に電場を確立することであって、サブマクロ構造体が、第1の電極、第2の電極、または誘電体部分に接続され、電場が、サブマクロ構造体に電子を電界放出させ、誘電体と第2の電極との間に放電を発生させる、確立することと、スクラブ洗浄されるガスを放電および電子に曝すことと、放電および電子への暴露時にガスに有効電力を供給することと、を含む。
【0125】
この態様の方法は、本明細書で開示される任意の態様の装置の任意の特徴または特徴の組み合わせを組み込むことができる。例えば、供給される有効電力は、調整可能な量の有効電力などの有効電力の量であってもよく、有効電力は、バイポーラ電圧パルスのパルス列を、パルス列内の限られた数のパルスで印加することによって、流体に供給されてもよく、および/または有効電力は、バイポーラ電圧パルスのパルス列を、パルス列内の1~5個のパルスで印加することによって、流体に供給されてもよい。
【0126】
第8の態様による方法では、有効電力は、閾値を超える電界強度を維持することによって供給されてもよい。
【0127】
本方法は、サブマクロ構造体を自由電子に曝して、CNTからの刺激された電子電界放出を誘導することをさらに含むことができる。自由電子は、電界放出または刺激された電界放出によって追加の電子源から放出されてもよい。追加の電子源は、別のナノ構造体であってもよい。
【0128】
本方法は、電圧パルスをサブマクロ構造体に供給することをさらに含むことができる。パルスは、前記ガスの破壊電圧よりも低い大きさを有することができる。
【0129】
サブマクロ構造体は、80キロパスカル(kPa)以上の絶対圧力の環境で前記電子ビームを生成するように配置されてもよい。
【0130】
電圧パルスは、100ボルト(V)~100kVの絶対振幅を有することができる。電圧パルスは、1ns~1msの持続時間を有することができる。電圧パルスは、周期的に繰り返されてもよい。この繰り返しは、100Hz~500kHzの周波数で生じ得る。パルス繰り返しは、50%未満のデューティサイクルを有するパルス列を形成することができる。
【0131】
本方法は、電界放出中にサブマクロ構造体を加熱することをさらに含むことができる。サブマクロ構造体は、20℃~500℃に加熱されてもよい。あるいは、サブマクロ構造体は、150℃など、100℃~400℃に加熱されてもよい。
【0132】
第9の態様によれば、放電を用いてガスからCO2を除去する方法が提供される。ガスからCO2を除去する方法では、放電はバリア放電であってもよい。
【0133】
例示的な装置および方法が、添付の図面を参照して本明細書で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【
図1B】電子照射および放電CO2除去技術の原理を概略的に示す図である。
【
図2】垂直断面で示す例示的なより大規模な配置を概略的に示す図である。
【
図2A】
図2による例示的な配置の水平断面を示す図である。
【
図2B】
図2による別の例示的な配置の水平断面を示す図である。
【
図2C】代替の例示的な配置の水平断面を示す図である。
【
図2Ai】
図2Aに示す配置の複数のバージョンを含む例の水平断面を示す図である。
【
図3】例示的な階段状の電位配置を概略的に示す図である。
【
図5】例示的な駆動回路に印加される電圧、電流、および電力の例示的なプロットを示す図である。
【
図6】印加されたギャップ電圧を出力電圧と比較する時間に対する電圧の例示的なプロットと、時間に対する出力電流の拡大部分を有する対応するプロットとを示す図である。
【
図7】例示的なパルス列中の経時的な電圧および電流のさらなる例示的なプロットを示す図である。
【
図8】例示的なCO2除去装置とともに使用される例示的な駆動回路を示す図である。
【
図9】例示的なCO2除去装置とともに使用されるさらなる例示的な駆動回路を示す図である。
【
図10】例示的な回路を動作させる例示的な方法を示す図である。
【
図11】経時的なスイッチングシーケンスおよび経時的な結果として生じる電圧の例示的なプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0135】
本発明者らは、ガスから汚染物質分子を除去するために、多数の高エネルギー電子、原子およびフリーラジカルを発生させる方法を開発した。これは、粒子状物質、SOx、NOx、CO2、水銀(Hg)、揮発性有機化合物(VOC)および炭化水素(HC)を含むがこれらに限定されない汚染物質分子をガスから除去することが見出されている放電技術を使用して達成される。
【0136】
概要として、ガスからCO2を除去する電子照射に適した装置および方法が開発されている。有害/汚染ガス(CO2など)を含むガス流が装置内に導入される。この装置には、複数の電極(典型的には、カソード電極とアノード電極の対)が設けられている。電極は、ガス空間および誘電体バリアによって分離される。
【0137】
アノードおよびカソードが本明細書で言及される場合、他の介在電極を伴わずに空気またはガス間隙にわたって相互に対向する2つの電極が言及され、アノードは、2つのうち
のより正の電位における電極として定義される。
【0138】
様々な例では、装置は、駆動回路によって提供される、電極対に接続された高電圧パルス電源を含む。これは、ガスが電極対の間を通過するとき、ガスが瞬間的にイオン化されて、高エネルギー電子、原子、およびフリーラジカルを形成することを意味する。ガス流が装置の端部のガス入口から導入され、この放電反応ゾーン(すなわち、電極対の間)を通過するとき、ガス中に存在するCO2の一部は、炭素(C)および酸素(O2、O2)に変換される。これは、電極間に確立された電場によって達成可能である。
【0139】
電極対の間を通過すると、ガス流は、装置の反対側の端部に設けられた出口を通ってガス入口に排出される。装置後のガスの組成は、元のCO2および炭素の一部を含む。
【0140】
放電を使用する際に、高電圧交流電流が、典型的には、ガス空間および誘電体バリアまたは絶縁体によって分離される電極に印加される。他のタイプの放電装置としては、パルス、コロナ、および電子ビーム放電、ならびに高周波、マイクロ波、および紫外光放射源が挙げられるが、これらに限定されない。利用可能な放電デバイスのうち、少なくともバリア放電およびいくつかの他の指定されたエネルギー源は、以前には、空気およびCO2の点源(エンジンおよび工業プラントからの煙道または排気ガスなど)からCO2を除去するために使用されることが知られていない。これらの放電形態がこれらの用途において有用であることは、驚くべきことであり、予想外である。
【0141】
誘電体バリアを使用すると、CO2を炭素と酸素に変換するのに十分なエネルギーを供給することができる。誘電体材料は、カソードおよびアノードのいずれかまたは両方の表面全体にわたって適用される。様々な例では、誘電体部分は、誘電体材料として石英を使用する。
【0142】
バリア放電から生成される高エネルギー電子の数を増大させるために、電子の効率的な電界エミッタである材料が、様々な例において使用される。電界放出のプロセスは、材料の表面に大きな電場を印加することを含み、それによって、十分に高い電場で、電子が量子トンネリングによって材料の表面から脱出することができる点まで真空バリアが低減される。これは、放電を可能にするために提供される電場により、これらの例による装置を使用して可能である。
【0143】
効率的な電界エミッタの例として、マイクロニードルおよびCNTは、電場に曝されたときに、電子の非常に良好な電界エミッタであることが見出されている。マイクロニードル、CNT、および他の材料は、それらの非常に高いアスペクト比(CNTの場合、典型的には、約50~200nmの直径、約1~2mmの長さ、すなわち、5,000~40,000アスペクト比)およびそれらの低い仕事関数(典型的には、CNTの場合、約4eV)のため、比較的低い印加電圧で多数の電子を生成することができる。
【0144】
高いアスペクト比は、マイクロニードルおよびCNTの先端で大きな電場増強を引き起こし、低い印加電圧で数V/μmが達成可能である。マイクロニードルまたはCNTからの電界放出に必要な最小電界強度は、一般的に約30V/μmである。これは、マイクロニードルまたはCNTの長さまたは直径、電場を生成するために使用される電極間の距離、および印加電圧のうちの1つまたは複数を変化させることによって達成することができる。マイクロニードルまたはCNTのアレイが使用される場合、マイクロニードルおよびCNTは互いに遮蔽する傾向があるため、アレイの密度を変化させて電界強度を変化させることもできる。
【0145】
マイクロニードルおよびCNTによって放出される電子の数をさらに増加させるために
、本明細書では刺激された電子電界放出と呼ばれる技術が開発されている。この技術は、高エネルギー電子衝撃によるマイクロニードルまたはCNTの刺激を含む。このプロセスは、バルク材料における二次電子放出のプロセスと同様であり、表面に衝突する高エネルギー電子が、表面に近い(表面から約10nmまでの)大量の束縛電子を材料から逃がす。
【0146】
刺激された電子電界放出は、マイクロニードルまたはCNTのアレイにおいて、部分的には、金属などのバルク材料と比較した場合のそれらの大きな表面積および低密度に起因して、大幅に増強される。ナノチューブアレイを通って移動する高エネルギー電子は、アレイの密度が比較的低く、電子が散乱することができる表面の数が比較的多いため、バルク材料を通って散乱する電子と比較してより長い距離を移動する。このより深い浸透は、より多くの電子の放出をもたらす。
【0147】
電子電界放出および刺激された電子電界放出は、真空中のマイクロニードルおよびCNTにおいて非常に効率的なプロセスであるが、より高い圧力では効率が低くなる。例えば、排気ガスは、典型的には、大気圧よりも少し高い絶対圧力、例えば105kPaであり、例えば約87kPa~140kPaの範囲内の変動を伴う。この放出効率の低下は、おそらく、マイクロニードルまたはCNTの自由先端の前に形成される高密度の荷電粒子によって引き起こされる電場の低下によるものである。高圧環境(例えば、大気圧付近、例えば80~150kPa)においてナノチューブにおける電子生成の瞬間効率を維持するために使用することができる技術は、マイクロニードルまたはCNTに一連の電圧パルスを印加することである。
【0148】
放電と組み合わせて、電界放出によって1つもしくは複数のマイクロニードルまたはCNTから放出された電子を使用して、例えば、船舶および他の車両、発電所、ならびに焼却炉における燃焼機関からの空気などのガスおよび煙道排出物をスクラブ洗浄することが本明細書で提案される。したがって、いくつかの例によれば、マイクロニードルまたはCNTの1つまたは複数のアレイがこの目的のために提供される。様々な例では、本装置は、以下に説明するように、電界放出および刺激された電界放出によってマイクロニードルまたはCNTから電子を放出させるように配置される。
【0149】
図1Aは、例示的なスクラブ洗浄方法100のフローチャートである。S110では、サブマクロ特徴および誘電体部分が電場に曝され、サブマクロ特徴からの電子の電界放出および誘電体と対向電極との間の放電をもたらす。S120では、ガスからCO2などの成分を除去するために、ガスがこれらの電子に曝される。
【0150】
図1Bは、この電子照射および放電スクラブ洗浄技術の原理を概略的に示す。アノード110とカソード120の2つの電極が対向するように位置する。この例では、誘電体部分125がアノード上に位置する。この誘電体部分は、アノードの表面全体にコーティングを提供する。
【0151】
図1Bの例は、アノード110とカソード120との間に位置するサブマクロ特徴130も含む。この例では、サブマクロはカソードに電気的に接続される。
【0152】
サブマクロ特徴130は、アノード110とカソード120との間に電位差が確立されたときに、それらの間の電場の存在に応答して電子(e-、e-)を電界放出する。アノードとカソードとの間の電場はまた、誘電体部分125とカソード120との間に(誘電体バリア放電の形態の)放電を引き起こす。
【0153】
容器の内部が電界放出された電子および放電に曝され得るように、スクラブ洗浄される
ガス(g)を含む容器140の近傍に誘電体部分125およびサブマクロ特徴130を配置するために、電極はハウジングに結合されている。
【0154】
図1Bの例を使用すると、容器140内のガス中のCO2を低減することができる。CO2の炭素および酸素への変換において、主要な化学反応およびこれらの反応を生じさせるのに必要なエネルギー(電子ボルト、eV)は、以下の通りである。
【0155】
(1)CO2+e-→CO+1/2O2(2.94eV)
(2)CO+e-→C+1/2O2(11.11eV)
表記「-」は、関連する実体が負電荷を有することを示す。
【0156】
コンパクトな配置のために、アノード110および/またはカソード120は、容器の内部に取り付けることができ、誘電体部分125、サブマクロ特徴130、およびカソードの表面の各々がガス内に延在し、放電および電子がその断面を横断するようにする。しかし、多くの他の配置が想定され得る。例えば、誘電体部分ならびに/またはサブマクロ特徴およびカソードの表面は、電子のアクセスを可能にする容器側の窓(開口)と、放電が開始/終了することができる表面とを有する容器の外側であるが容器に近接して位置することができる。このような配置は、例えば、ガス導管の既存の煙突への装置の後付けをより容易にするために、または装置の誘電体部分および/またはサブマクロ特徴部分のメンテナンスを容易にするために選択され得る。カソードおよびハウジングは、同じ場所に位置する必要はない。
【0157】
サブマクロ特徴130の電界放出率は、アノードとカソードとの間に印加される電圧の電圧パルス周波数を調整することによって、および/または、高エネルギー電子/イオン衝撃でサブマクロ特徴を刺激することによって、改善することができる。
【0158】
工業環境などでは、個々のサブマクロ特徴ではなくサブマクロ特徴のアレイを使用することがより実用的であり得る。アノード-誘電体-カソード-サブマクロ特徴装置の複数のセットを提供することも有益であり得る。
図2は、ガス導管を通る断面で示されたこのようなより大規模な配置を示す。配置は、アノード-誘電体-カソード-単一のサブマクロ特徴の複数のセットが使用されること、またはアノード-誘電体-カソード-サブマクロ特徴アレイの単一のセットがあることも想定され得る。
図2は、例示的な例として6つのサブマクロ特徴アレイを示す。他の例では、他の数のアレイが使用される。
【0159】
図2では、サブマクロ特徴のアレイ230が、アノード210に対向するカソードとして機能する導電性基板220上に設けられる。アノードはすべて、電源250の正端子に電気的に接続され、カソードは、その負端子に電気的に接続される。アノードはまた、誘電体部分215でコーティングされる。
【0160】
電極間を通過するガス(g)は、アノード210とカソード220との間を上昇し、したがって、誘電体部分215とカソード220との間の放電、およびサブマクロ特徴アレイ230によって電界放出された電子に曝される。各サブマクロ特徴アレイの、その対応する誘電体部分からの分離は、例えば、約0.5~1cmであり得る。
【0161】
電源250が、カソードに電圧パルスを送るように動作する電圧制御電源であり、カソードがサブマクロ特徴に電気的に接続されている場合、サブマクロ特徴アレイ230からの電子放出率を増加させることができる。このような電圧パルスは、100V~100kVの絶対振幅を適切に有することができ、例えば、30kVは、約1気圧の絶対圧力までのガス混合物に対して良好に機能する。パルス電圧は、ガス混合物の絶縁破壊電圧(誘電体部分215によって確立され得る放電とは無関係に電気アークを引き起こすのに必要な
電圧)より低くなければならない。この最大電圧は、特定のガス混合物および圧力についてパッシェンの法則を用いて計算することができる。パルスは、1ns~1ms、例えば200μsの持続時間を有することができる。一連の電圧パルスが使用される。例えば100Hz~10MHz、例えば1kHzの周波数を有する周期的な電圧パルス列を使用することができる。好適には、50%未満のデューティサイクルを使用することができる。最適なパルスパラメータは、装置の幾何学的形状、ならびにガス速度および組成に依存する。
【0162】
上述したように、
図2は、煙道、排気部、または煙突が通される通路などのガス導管の断面を示す。これは、
図2Aおよび
図2Bに示すようなアノードおよびカソードの2つの配置に対応することができ、
図2Aおよび
図2Bは、円形断面のガス導管内に実装されるような2つの配置の水平断面をそれぞれ示す。同様の装置は、他の形状、例えば正方形または矩形の断面を有するガス導管に使用することができる。参照番号で別途示される場合を除いて、
図2Aおよび
図2Bでは、点線はアノードを示し、実線(すなわち、非破線または全線)はカソードアレイ配置を示す。
【0163】
図2Aに示す例によれば、ガス導管240内には、(外側から内側に)アノードおよび中央カソードが同心円状に配置される。
【0164】
図2Bの配置によれば、ガス導管240内には、(左から右へ)カソード、アノード、背中合わせのカソード対、アノード、背中合わせのカソード対、アノード、カソードの略平坦なプレートが配置される。プレートは、図示するように煙突を横切って延在するように様々な幅であり得る。これは、プレート間を通過するガスの体積を最大にする。あるいは、製造を容易にするために、プレートはすべて実質的に同じ幅であり得る。
【0165】
わずかに異なる配置が
図2Cに示されている。この場合、容器壁は(金属であることなどにより)導電性であり、アノードとして機能する。例えば、容器壁は、点線で示されるアノードと電気的に接触し得る。したがって、左から右へ、電極は、容器壁アノード、背中合わせのカソード対、アノード、背中合わせのカソード対、アノード、背中合わせのカソード対、アノード、背中合わせのカソード対、容器壁アノードである。容器壁、および任意に他のアノードは、すべて接地され、カソードは負電位に保持され得る。この場合、正方形断面の容器が示されているが、容器壁を電極として使用する原理は、他の断面形状にも適用することができる。
【0166】
図2~
図2Cに示す配置の種類を排気煙突に典型的なサイズまで拡大すると、1平方メートル(m2)の断面のガス導管は、例えば、約2センチメートル(cm)のピッチで断面にわたって繰り返されるサブマクロアレイ対を有することができる。必要なアレイの数は、したがって、100のオーダーである。いずれの場合も、アノードの各々は、当然ながら、その上に誘電体部分を有する。
【0167】
図2および
図2Bに示す配置はすべて、背中合わせのカソード対を含む。
図2に示すように、一対のカソードの各々は、電圧源250への別個の電気接続を有することができる。各対のカソードが互いに電気的に接続される場合、各対に対して単一の電気接続を使用することができる。あるいは、背中合わせの各カソード対の代わりに、単一のカソードを、その両側に位置するサブマクロ特徴アレイとともに使用することができる。
【0168】
アノードは金属メッシュであり得る。アノードが金属メッシュである場合、メッシュ構造を維持するために、誘電体部分がメッシュ上にコーティングされる。換言すれば、誘電体コーティングには、メッシュ内の開口と整列する開口が設けられる。
【0169】
各アノードがメッシュによって提供される場合、
図2に示すような最も左のアレイ230aによって電界放出されるいくつかの電子は、アノード210abを通過し、次のアレイ230bにおいて刺激された電界放出を引き起こすことに進むことができる。この効果は、カソードの電位が階段状である場合、すなわち(
図2に示す例を使用して)最も左のカソード220aが最も低い電位であり、次のカソード220bがわずかに高い電位である(しかし、最も左のアノード210abよりも依然として低い)場合に高められる。このような電位ステッピングは、電極間に適切に定格された抵抗器(図示せず)を配置することによって達成することができる。
【0170】
この例では、第2のカソード220bは、最も左のカソード220aよりも高い電位にあるが、カソード220aおよび220bの両方よりも高い電位にあるアノード210abが、2つのカソードを分離するため、第2のカソード220bは依然として、アノードではなくカソードと呼ばれる。これは、アノードおよびカソードが本明細書で言及される場合、他の介在電極を伴わずに空気/ガス間隙にわたって相互に対向する2つの電極が言及され、アノードは、2つのうちのより正の電位における電極として定義されるという上記の記述と一致する。
【0171】
一例として、最も左のカソード220aは、(例えば、0.0Vで)接地された最も左のアノード210abに対して-1.3kVであり得、次のカソード220bは-1.0kVであり得る。最も左のカソード220aから来る電子は、アノードメッシュ210abにおいて1.3keVのエネルギーを有し、次のカソード220bに到達するのに1keVしか必要としない。この階段状パターンは、配置の3つのカソード-アノード-カソードセルにわたって繰り返され得る。
【0172】
図2に示す例などのいくつかの例では、カソードおよびアノードは、それらの間に誘電体材料(各アノード上にコーティングされるなど)を有して互いに対向する平板である。これらの例では、プレートは、粒子状物質による目詰まりを防止するために、直立した(垂直のような)位置に取り付けることができる。プレートの列は、プレートの平面が、プレートが位置するケーシング内の煙道ガスの流れ方向に平行になることができるように、機械的構造によって支持され、ケーシングの上部から絶縁体によって吊り下げられる。このように、装置にわたる圧力低下を最小にして、最大量の煙道ガスが放電によって処理される。いくつかの例では、複数のプレートの列は、一方が他方の上になるように機械的にともに締結されて、実質的にケーシングの上部から底部に達するスタックを形成する。
【0173】
平板カソードおよびアノード構成は、いくつかの例では好ましい配置であり得るが、種々の配置も可能である。このような配置は、円筒形カソード電極と、平板アノード電極と、円筒形アノード電極の中央に中心を有する円筒形カソード電極とを含む。これらの例示的な配置では、カソード電極およびアノード電極は、同一の構造(例えば、一方の電極セットは、その上に1つまたは複数のサブマクロ構造体を有し、他方の電極セットは、その上に誘電体部分を有する)を有してもよく、一方が電源に配線され、他方が接地に配線される点のみが異なる。これらの例では、動作時に、高電圧電極と接地電極とが行全体に沿って交互になり、端部に接地電極を有する。これにより、電極間に高い電圧勾配が存在することが可能になる。
【0174】
いくつかの例では、
図2Aに示す配置などの同軸管型反応器配置が使用される。同軸管型反応器配置を使用する例では、1つの電極が導電性管によって提供され、中心電極が導電性管の中心長手方向軸に沿って内側に固定され、誘電体材料が管内でそれらの間に配置される。様々な例では、管は、
図2Aiに示すような管束に配置される。
【0175】
図2Aiは、管800の束が配置されたガス導管240を示し、各束は、
図2Aに示す
配置に対応する電極の配置、すなわち、中央カソードの周りに同軸に配置されたアノードを有する。
【0176】
複数の管または管束がある場合、互いの上に積み重ねられ、かつ並んで積み重ねられる実際の束の数は、装置が使用されるシステムの要件に応じて行われる工学的決定である。このような例では、複数の同軸電極管が、典型的には矩形構造を用いて互いに離間した関係で固定される。様々な例は、管の中心長手方向軸に沿って同軸電極の内側に固定されたワイヤ電極を含む。「ワイヤ」という用語が使用されているが、これらの電極は、代わりに、ロッド、または管の内径よりも小さい他の形状の材料であってもよい。
【0177】
同軸反応器は、平板電極に対して誘電体バリア放電の性能を改善した。これは、平板反応器よりも同軸反応器において放電領域全体内でバリア放電を確立することが、一般的に容易であるからである。加えて、平板反応器の上部と底部との間の温度勾配は、しばしば、不均一な反応をもたらし、これは反応器効率を低下させる。これは、平板反応器では、放電によってプレートの上部が底部よりも熱くなり、中央部が側部よりも熱くなるためである。一方、同軸反応器は、温度および電力要件が特定の反応器形状の閾値に達するとすぐに、管全体にわたってより均一に「着火する」(すなわち、放電を発生させる)傾向がある。これは、反応をより均一にする。この結果、より多くのガスがバリア放電に曝され、より多くのガスが処理されることを意味する。
【0178】
上述したように、
図2は、メッシュアノードを使用する例を示す。メッシュアノードを使用する代わりに、
図3に示すような階段状の電位配置を使用することもできる。サブマクロ特徴アレイは、各アレイが、最後のアレイよりもわずかに高い電位の電極を形成する基板上に位置する、二重ジグザグ構成で配置される。これは、抵抗器と交互に直列に接続された電極によって達成される。アレイ330Aは電子を電界放出し、そのうちのいくつかはアレイ330Bに衝突する。その結果、アレイ330Bは、刺激された電界放出によって電子を放出し、そのうちのいくつかは、アレイ330Cに衝突し、矢印によって示されるように、アレイ330Gに至るまでアルファベット順に続く。各アレイによって放出された電子の一部は、次に高い電位を有するアレイだけでなく、他のアレイにも衝突する可能性が高く、各自由電子がとる経路は、すべての電極の組み合わせによって生成される、自由電子が通過する電場に依存する。
【0179】
図3に示す配置では、すべての電極が誘電体部分でコーティングされている例がある。このような例では、サブマクロ特徴アレイは、それぞれの誘電体部分上に位置することができる。
図3の配置を使用する他の例では、サブマクロ特徴アレイ330B、330D、330F、および330Hが位置する電極などの1つおきの電極が、誘電体部分でコーティングされる。これらの例では、誘電体部分でコーティングされた電極上で、CNTアレイは、それぞれの誘電体部分上に位置することができる。誘電体部分を含む様々な例は、放電が電極間を通過することを可能にする一方、また、サブマクロ特徴アレイからの電界放出を可能にする。
【0180】
装置を通過する前に、ガスは前処理され得る。例えば、ガスは、粒子状物質を除去するために静電集塵器を通過することができる。ガスはまた、例えば、熱交換器を使用して、またはそれを通して冷水または別の液体もしくは溶液を噴霧もしくは霧化することによって、冷却されてもよい。
【0181】
ガスが装置を通過した後、ガスはさらなる処理を受けてもよい。例えば、ガスは、収集デバイスを通過して、CO2から変換された粒子などのガス流に同伴された粒子を収集することができる。これらの粒子は、典型的には、粒子フィルタ内に捕捉される炭素を含む。粒子フィルタは、典型的には、静電集塵器(「ESP」とも呼ばれる)またはサイクロ
ンフィルタなどの標準的な粒子フィルタである。CO2変換プロセスの他の出力成分は酸素であるため、これは、典型的には、捕捉されることなく、またはさらに処理されることなく、装置から出ることが可能である。
【0182】
サブマクロ構造体(マイクロニードル、CNT、または上述した他の構造体など)は、電界放出率を改善するために、全体的にまたは部分的に、例えばそれらの自由端に、低仕事関数コーティング、例えばセシウムまたはハフニウムでコーティングすることができる。
【0183】
代替的または追加的に、サブマクロ構造体は、電界放出効率を改善するために、電子輸送増強材料または導電性増強材料でドープすることができる。例えば、窒素によるドーピングは、半導体CNTにおいて金属挙動を引き起こす。
【0184】
CNTの製造に特有の問題として、これは典型的には、金属タイプと半導体タイプとの混合物になる傾向がある単層CNT(SWNT)と、多層CNT(MWNT)との混合物の生成をもたらす。MWNTおよび金属SWNTは、半導体SWNTよりも良好な導電体であるため、後者に対して前者のタイプのCNTのいずれかまたは両方の高い割合を支持する製造プロセスが好ましい。
【0185】
半導体SWNTにおける電界放出は、金属SWNTと同じ物理的プロセスに従うが、ナノチューブを通る電気伝導はそれほど効率的ではなく、帯電および真空(または表面)バリアの増加をもたらし、電界放出効率を低下させ得る。しかし、例えば、より高い印加電圧を使用すること、および/またはCNT上にレーザを照射することによって、システムをさらに励起することによって、効率を改善することが可能であり得る。
【0186】
サブマクロ構造体アレイは、曝されたままにされると、粉塵で詰まる可能性がある。アレイが図示されるようにガスと直接接触している場合、それらのアレイはまた、いかなるガス事前調整によっても成功裏に除去されないいかなる小さい微粒子でも詰まる可能性がある。例えば、アンモニアが添加される場合、硫酸アンモニウム硝酸塩粒子もまた、アレイ表面をコーティングすることができる(粒子は、概して、アレイに浸透して詰まらせるには大きすぎる)。サブマクロ構造体はまた、ガスのイオン化に起因して動作中に発生し得る放電および短絡によって損傷を受ける可能性がある。加速されたイオンとの衝突に起因して、サブマクロ構造体への損傷も生じ得る。これらの理由のすべてのために、高圧環境(例えば、大気圧付近、例えば、80~150kPa)におけるサブマクロ構造体アレイの電界放出性能は、経時的に減少する傾向がある。典型的には(ほぼ)真空中でCNTを使用する以前の放出システムでは遭遇しなかったこれらの問題のすべては、アレイを例えば不活性ガス中で約600~800℃に1~3時間加熱することによって解決することができる。これは、サブマクロ構造体をアニールし、破壊された結合を修復し、元の形状を回復させる。表面の粉塵は燃焼し、吸着されたガスは脱着される。
【0187】
様々な例では、アレイは、使用中に加熱されて、連続焼鈍をさらに引き起こし、固着係数を低減させ、微粒子堆積を制限する。いくつかの例では、このような加熱は、アレイ基板の背面に取り付けられた加熱要素によって行われる。代替例では、基板自体のオーム加熱が使用される。
【0188】
例示的なオーム加熱配置は、サブマクロ構造体が位置する基板を加熱するために使用される電流制御電源を含む。電流制御電源および電圧制御電源は、両方とも、基板(カソード)を通って接地され得る。
【0189】
低仕事関数コーティングが使用される場合、高い融点を有するコーティングが好ましい
。例えば、400℃を超える融点を有するコーティング、例えば2231℃の融点を有するハフニウムを含むコーティングが好適である。これは、CNTなどのサブマクロ構造体が、上述のように加熱することによって自己修復することを可能にし、また、高温の排気ガスに曝されたときでもコーティングが無傷のままであることを確実にする。
【0190】
本明細書に記載の様々な例では、装置は、20℃~400℃、典型的には約150℃の温度に維持することができる。
【0191】
裸のサブマクロ構造体、および/または低仕事関数コーティングを有するサブマクロ構造体、および/または触媒コーティングを有するサブマクロ構造体を組み合わせたシステムを使用して、最適な性能を達成することができる。例示的な触媒コーティング材料としては、酸化バナジウム(V2O5)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マンガン(MnO2)、および三酸化タングステン(WO3)が挙げられる。これらの材料は、例えば、サブマクロ構造体上に直接、または二酸化チタン(TiO2)コーティング上にコーティングすることができる。二酸化チタンは、触媒に強力な機械的支持および熱安定性を与えることが知られている。このような触媒の他の組み合わせも使用され得る。例えば、V2O5-WO3/TiO2。これを実施するために、まずTiO2をナノチューブ上に蒸着させ、次いでV2O5およびWO3を堆積させることができる。
【0192】
サブマクロ構造体は、中空であるとき、それらをより剛性にするために、および/またはそれらが基板表面により強力に結合するように、補剛材料で完全または部分的に充填され得る。これは、それらを損傷に対してより耐性にする。例えば、チタン、鉄または銅などの遷移金属充填剤が使用され得る。好適には、充填材料は、基板材料および/または基板材料と炭素との組み合わせ(例えば、基板材料の炭化物)であってもよい。チタン基板に接合されたサブマクロ構造体は、炭化チタンで充填されて、非常に良好に接合されたサブマクロ構造体を生成することができる。
【0193】
CNTの代替として、または同じ目的のために加えて、カーボンナノホーン、シリコンナノワイヤ、二酸化チタンナノチューブ、または二酸化チタンナノワイヤなど、電子を電界放出するナノ構造体または微細構造体などの他のタイプのサブマクロ構造体が使用され得る。高アスペクト比ナノ構造体は、より効率的な電界放出を提供し、例えば、少なくとも1,000のアスペクト比を有するナノ構造体が使用され得る。ナノワイヤを使用することの利点は、垂直に整列したナノワイヤの大きなアレイが工業的規模で容易に製造できることである。これらの例は、CNTほど効率的に電界放出しないが、それらの電界放出は、上述したような低仕事関数材料でコーティングすることによって改善することができる。代替的または追加的に、電界放出は、電子輸送増強材料または導電性増強材料でドーピングすることによって、より効率的にすることができる。例えば、III族(アクセプタ)またはV族(ドナー)原子(例えば、リンまたはホウ素)がシリコンナノ構造体に使用され得る。
【0194】
ナノ構造体を形成するか、またはそれらをコーティングするかのいずれかのために二酸化チタンが使用される場合、ナノ構造体の温度(高温の排気ガスへの暴露または上述したような自己修復のための意図的な加熱のいずれかの結果として)は、600℃未満に維持されるべきである。この温度を超えると、二酸化チタンはアナターゼ構造からルチル構造に変化する。
【0195】
図4は、ガス導管内の上述のタイプの装置の例示的な配置600を概略的に示す。サブマクロ構造体アレイ610のスタックは、ガス流gの経路に沿って粒子集塵器/収集器620と交互になっている。例えば、4つの粒子集塵器/収集器と交互になる4つのサブマクロ構造体アレイスタックがあり得る。粒子pは、煙突からホッパーに向かって方向付け
られる。この配置を使用する例では、誘電体部分が電極上にコーティングされて、放電を発生させる。
【0196】
サブマクロ構造体アレイは、例えば、幅1m、高さ0.2mのプレート上に形成され得る。それらは、例えば0.3mだけ垂直に分離され得る。したがって、
図4に示すクアッドモジュールの例では、装置600の全高は2mとなる。各サブマクロ構造体アレイスタック610は、例えば、
図2Cに示すように、例えば49個の背中合わせの対で配置された、50個のサブマクロ構造体アレイ対に加えて、左縁部および右縁部の各々における単一のアレイを含むことができる。
【0197】
図1Bに示す装置を実装するデバイスが提供する誘電体バリア放電(DBD)デバイスを使用するとき、本発明者らは、ウェーブレット型波形に類似する、変動振幅を伴う高周波正弦波形を実装するプロセスを開発した。様々な例では、ウェーブレットは、静電容量を提供するDBDデバイスと直列にインダクタを接続することによって生成される。これは、共鳴周波数で励起されることが可能な、直列共振タンクとも呼ばれる直列共鳴回路を形成する。バイポーラ電圧パルスを使用していくつかのサイクルにわたって繰り返し共鳴周波数で励起されるとき、これは、DBDデバイスが、電流ストレスを大幅に低減しながら高い電圧スルーレートで励起されることを可能にし、これは、パワーエレクトロニクスによって処理されるピーク電力を低下させる。したがって、共振タンクにおいて達成される電圧利得は、電圧利得を提供するために高い巻数比を有するパルス変圧器を使用する代わりに、DBDデバイスのための高い点火電圧レベルを提供する。したがって、共振タンクの関連する特性は、達成可能な電圧利得およびDBDデバイスの無効電力を補償する能力である。
【0198】
パルスは、いくつかの機構を通って供給され得るが、本発明者らは、いくつかの連続したバイポーラ電圧パルスを印加してパルス列を形成することが、より高いパルス繰り返し周波数が印加されることを可能にし、したがって、電力伝達の能力が、単一パルスを使用するシステムよりも大幅に増加させられることを見出した。一例として、このプロセスを適用することによって、パルス繰り返し周波数は、このようなシステムよりも少なくとも10倍増加させることができる。これは、以下でより詳細に説明するように、炭化ケイ素半導体技術の使用と組み合わせて達成可能である。
【0199】
パルスの繰り返し周波数は、パワーエレクトロニクスの最大動作温度によって制限される。一般に、パルス電力変換器の設計は、遅い熱応答を利用する。これは、従来のパルスシステムにおいて高いパルス繰り返し周波数が使用された場合、散逸されたピーク電力が、パワーエレクトロニクスのより安全な動作温度内に留まるには大きすぎることを意味する。これは、本明細書で説明する例では、後述するパルス列変調を使用することによって回避される。加えて、これは、単一のパルス列から生成される放電点火事象の最大回数を制限し、次いで、次のパルス列の前に冷却が発生することを可能にする期間を有することによって回避される。
【0200】
本明細書に記載の例に関連して説明するように、いくつかの連続したバイポーラ電圧パルスのパルス列を実装することによって、放電点火事象の回数が1~5回に制限される場合でも、約90%以上の効率など、非常に高い効率でエネルギー伝達を提供しながら、これが達成される。
【0201】
図5に示すように、連続したバイポーラ電圧パルスの使用は、DBDデバイスにおいて誘導される3つの動作モードを生成する。
図5の0マイクロ秒(μs)と時間Aとの間に発生する第1のモードは、共鳴回路の充電である。これにより、DBDデバイス内の電極間の電位差が増大する。上述したように、これは、共振タンクの共振周波数で連続したバ
イポーラ電圧パルスを印加することによって達成される。
【0202】
図5に示すプロットでは、これは、電圧および電流の両方に対して振幅が着実に増加する、一貫した周波数における正弦波であることが分かる。この結果、整流された正弦波(矩形電圧と正弦波インダクタ電流との乗算として)の瞬時電力レベルは、振幅が着実に増加する。
図5に示す例におけるモードの持続時間は、約2.5電圧サイクル、2.5電流サイクル、および5電力サイクルである(1電力サイクルは、ゼロからピークへの移行およびゼロへの戻りである)。この例では、電流波形は電圧波形より約90°進んでいる。
【0203】
第2のモードは、
図5の例示的なプロットにおける時間Aと時間Bとの間に行われる。このモードは、電圧が、DBDの電極間に誘電体バリア放電を引き起こす点火または絶縁破壊電圧(Vth)に達したときに到達される。これは、電力をプラズマに供給し、最も効率的な汚染物質低減のために、数回の放電サイクルしか持続しないはずである。このモードの間、電圧振幅は、共振周波数での共振タンクの連続励起により、Vthレベルよりも高いままである。プロットでは、電圧および電流は、一貫した周波数を有する正弦波で継続することが分かる。波の振幅は、この期間の持続時間にわたってわずかに変化する(モードの持続時間のほぼ中間点まで増加し、その後減少し始める)。
【0204】
図5に示す例は、約3.0ナノファラド(nF)の静電容量を有するDBDデバイスに基づいている。電圧のピークは、約±24キロボルト(正負24kV)であり、電流は±80アンペア(A)である。他の例では、静電容量は約1.0nFであるが、約45.0nF以上であってもよい。
【0205】
電圧および電流振幅パターンは、整流された正弦波であり続ける瞬時電力に対して同じである。ピーク瞬時電力は、
図5に示す例では約180キロワット(kW)である。
【0206】
第2のモードの持続時間は、約1.5電圧サイクル、約1.5電流サイクル、および約3電力サイクルである。
【0207】
第1および第2のモードの間、共振タンクは、電力が供給されることによって励起される。第3のモードの間、励起は停止され、共振タンクは排出することによって放電する。いくつかの例では、タンクは、タンクからエネルギーを回収することによって能動的に放電される。受動的放電も可能である。
【0208】
励起が停止され、放電経路が提供されることにより、第3のモードでは、電圧、電流、および電力は、ゼロまで低減する。
図5の例示的なプロットでは、時間B以降の第3のモードが示されている。電圧および電流は、第1および第2のモードと同様に、一貫した周波数を有する正弦波形に従う。電力は、整流された正弦波であり続ける。電圧および電流の振幅は、電圧について約2.5サイクルおよび電流について約2.5サイクルの期間にわたってゼロに向かって減少する。
【0209】
図5に示す電力プロットは、共振タンクが受動的に放電される例と一致する。これは、瞬時電力が整流された正弦波になるように反転されているが、ピークが第1および第2のモードのように正の値ではなく負の値であることで分かる。電力の振幅は、約5サイクルにわたってゼロまで減少する。
【0210】
3つのモードは、共振タンクの励起によって実施されるパルス列の形態でのウェーブレットパルス電力プロセスを形成する。このプロセスを使用して達成される電力伝達の持続時間は、この励起パルス列が共振タンクに供給される時間の長さによって決定される。これは、パルス列が実装される回路によって決定される励起パルス列の1つのパラメータに
すぎない。
図8および
図9は、1つまたは複数のパルス列を実装するために使用されることが可能な例示的な回路を示す。
【0211】
共振タンクに印加される励起の一例を以下の
図7に示す。
図7から分かるように、様々な例では、励起は、方形波電圧波形の形をとり、この波形は、一緒にパルス列を形成する複数の連続した個々のパルスを含む。これは、共振タンク内に正弦波電流(
図7に示す電流波形)を誘導し、
図5に示すDBDデバイスにおける波形を提供する。
【0212】
図7は誘電体バリア放電閾値を示していないか、または詳細は第1、第2、および第3のモードを分離するマーキングを含んでいるが、この図では、第3のモードがどこで始まるかを見ることができる。
図7の時間Dでは、電圧波形は、波形の他のピークよりも短い持続時間を有する最大正値においてピークを有することが分かる。これは、第2モードから第3モードへの移行により発生する。この時点で、励起は停止され、これは、電圧がもはや共振タンクおよびDBDデバイスに能動的に供給されないことを意味する。
【0213】
能動的または受動的エネルギー回収が使用されるかなど、その段階で行われる措置に応じて、これにより、電圧波形における位相シフトが引き起こされる。
図7を生成するために使用されるシミュレーションでは、受動的エネルギー回収が使用され、したがって、印加された波形の変化は、Hブリッジダイオード内の電流のフリーホイーリングによって引き起こされる。いくつかの例で適用される代替の能動的エネルギー回収手段は、180度の位相シフトであり、電力が供給される代わりに排出される。これらのプロセスについては、Hブリッジを提供する例示的なインバータとともに以下でより詳細に説明する。
【0214】
様々な例では、本明細書で開示される態様による例における第3のモードへの移行は、放電点火事象の最大回数後に適用される。いくつかの例は、放電点火事象の最大回数を、1回の放電点火事象のみ、または最大約5回の放電点火事象に制限する。1つの放電点火事象のみが最大回数として使用されるとき、またはより大きい最大回数での最後の放電点火事象の後、第3のモードは、放電点火事象の最大回数が発生したすぐ後(直後など)に移行される。
【0215】
このデバイスに印加された例示的な励起がどのように放電に変換されるかに関して、これは、
図6に示すプロットによって実証される。これは、上のプロットおよび下のプロットを示す。上のプロットは時間に対する電圧のプロットであり、下のプロットは時間に対する電流のプロットである。
【0216】
図6の上のプロットは、実線および破線を示す。実線は、時間ゼロで最小である正弦波の形である。この例では、この線は、DBDデバイスにわたって印加される電圧に対応する。破線は、最大および最小ピークが平坦域に切り取られた正弦波の形である。印加電圧曲線と同様に、これは時間ゼロで最小であり、この例では、放電ギャップにかかる電圧に相当する。
【0217】
ギャップ電圧の振幅は、印加電圧振幅よりも小さい。印加電圧が正に移行すると、ギャップ電圧は増加する。印加電圧の約8分の1サイクルの後、ギャップ電圧は正になる。前記サイクルの2番目の8分の1の終わりの直前に、ギャップ電圧の振幅は閾値に達する。
図6では、これは時間αで発生する。この平坦域は、
図6の時間γにおいて印加電圧が最大値に達するまで維持される。時間γでは、プロセスはそれ自体を繰り返すが、極性は反転され、印加電圧が継続する限り、正方向および負方向の移動の間で切り替わり続ける。
【0218】
上述した第1、第2および第3のモードと比較して、ギャップ電圧の上昇は、例えば、第2のモード中の電圧の最初の低下後の第2のモード中の電圧の上昇に対応する。このこ
とから、放電はこの期間中に発生する可能性があり、したがって、ギャップ電圧曲線における平坦域は、閾値電圧に達したことによるものであることが理解され得る。
【0219】
図6の電流プロットは、ギャップ電圧によって誘起されたギャップにおける電流を示す。時間ゼロでは、これはほぼゼロの振幅を有する。これは正弦波の形で増加する。ギャップ電圧が閾値電圧に達しない場合(
図6のプロットが第1または第3のモード中の電圧および電流を表す場合など)、
図6の電流プロット内の破線によって示すように、正弦波は中断されずに進む。しかし、時間αでは、閾値電圧に達したことにより、点火が発生する。これにより、放電ギャップ内の媒体がイオン化され、放電が開始される。
【0220】
時間αから、ギャップ電流は、急速に増加し、印加電圧のゼロクロス点に相当する時間βでピークとなる。時間αは、印加電圧サイクルの4分の1サイクルのほぼ終わりにあるため、これは、電流曲線のサイクルに対して非常に短い期間である。時間βから、電流は、正弦波状に減少して時間γでゼロになり、この時点で、その元の形および振幅範囲に戻る。このサイクルは、ギャップ電圧および印加電圧と並行して継続する。
【0221】
このことから分かるように、電流の振幅は単純に増幅されたレベルまで増加する。
【0222】
図6の主電流プロットは、時間αと時間γとの間の連続曲線を示す。上述のように、これは放電が発生する時間である。したがって、この期間は、マクロ放電期間であると考えることができ、時間αは、放電点火事象が発生するときである。しかし、
図6の電流プロットの拡大部分で示すように、電流曲線は、連続的な形を有していない。代わりに、曲線は、多くの電流スパイクで構成されており、それらが非常に接近しているため、曲線が連続的に見える。各スパイクは、電極のうちの1つの上の単一の点から(
図2に示す電極120上のサブマクロ特徴130などから)開始される、マイクロ放電または過渡的なフィラメントを表す。フィラメントが放電ギャップを横切る電流経路を提供するため、電流スパイクを引き起こすのは、これらのフィラメントの各々が対向する電極(
図2に示すように、当然のことながら、1つの電極110はその上に誘電体層125を有する)の間に提供する接続である。これらのマイクロ放電がギャップ内の媒体をイオン化し、高エネルギー電子を媒体内に通過させることにより、例えば媒体内の汚染物質を分解する化学反応を促進させるのに十分なエネルギーが存在する。
【0223】
パルス列を生成することが可能な例示的な駆動回路を参照すると、誘電体バリア放電を提供するのに適した例示的なシステムの回路図が、
図8および
図9の各々において1で概ね示されている。このシステムは、DBD反応器とも呼ばれ、
図1Bに示す装置に対応するDBDデバイス10を含む。
【0224】
DBD反応器10は、
図8および
図9の各々にモデルで表されている。このモデルは、使用時にVthの電圧を供給する電力入力(電源とも呼ばれる)を有するダイオードブリッジである。DBDデバイスの電極は、ダイオードブリッジにわたって接続されているものとして、このモデルに示されている。
【0225】
電極(具体的には、「誘電体放電ギャップ」と呼ばれることがある電極間のギャップ)および電極のうちの1つに取り付けられた誘電体バリアは、
図8および
図9においてコンデンサ12によって表されている。これは、回路として表されるときにギャップおよび誘電体バリアがシステムに提供する電気的機能性が静電容量であるためである。
【0226】
誘電体放電ギャップによって提供される静電容量は、ダイオードブリッジにわたって直接接続されるように示されている。誘電体バリア自体によって提供される静電容量は、ギャップによって提供される静電容量と並列にダイオードブリッジの一端に接続されるよう
に示されている。誘電体バリアによって提供される静電容量の他端は、ダイオードブリッジに接続されていない。これは、代わりに、電極間のギャップにわたって誘電体バリア放電を駆動するように配置された駆動回路に接続される。
【0227】
図8および
図9のモデルによって表されているが、DBDデバイス10の静電容量は、誘電体放電ギャップ内の媒体(典型的には空気などのガス)の静電容量によって主に決定される。これは、典型的には、媒体の誘電率が約1であり、誘電材料が約3~6(約1kHzで摂氏約20度で測定した場合)など、1よりも著しく高いためである。媒体と誘電体とが直列に接続されているため、支配的であるのはより小さい静電容量であり、したがって、これらの比誘電率により、DBDデバイスの実効静電容量は媒体によって支配される。
【0228】
さらに、ギャップ内の媒体の静電容量からの寄与は、ほぼ一定であり、ギャップ内の媒体の組成の温度に依存しない。したがって、以下でより詳細に説明するように、本明細書で開示される態様による例で使用されるパルス列は、この静電容量に対して最小の変化が生じる程度まで放電点火事象の回数を制限するため、この「エアギャップ」静電容量はほぼ一定である。しかし、同じことは、既知の共振システムについては言えない。これは、媒体の静電容量のシフトを引き起こす放電の拡張された性質によるか、または表面誘電体バリア放電デバイスが使用される場合のように、媒体が異なる性質のものであるかのいずれかである。
【0229】
駆動回路は、
図8および
図9にそれぞれ20および20”で示されている。駆動回路は、インバータ30に接続された電源22を有する。これらの図の例では、電源はDC電源によって提供される。これは、図示の例では、DCリンク電圧源Vdc-である。
【0230】
図8に示す例では、インバータ30は、そのインバータにわたって接続された回路ループを有する。この回路ループは、誘電体放電ギャップおよび誘電体バリアによって提供される静電容量にわたって直列に接続するDBDデバイス10の電極への接続を有する。これにより、インバータにわたって接続された回路ループが閉じられる。
【0231】
図9に示す例では、インバータ30は、そのインバータにわたって接続された変圧器50を有する。この配置では、インバータにわたって接続されるのは変圧器の一次側52である。変圧器の二次側54は、誘電体放電ギャップおよび誘電体バリアによって提供される静電容量にわたって直列に接続するDBDデバイス10の電極への接続を有する。
【0232】
図8および
図9の各々の例におけるDBDデバイス10の静電容量にわたる接続、ならびにこの静電容量にわたって接続する能力により、駆動回路20が、DBDデバイスとは別個の回路、いくつかの例では分離可能な回路となる。
【0233】
図8に示す例では、駆動回路20が上述のようにDBDデバイス10に接続されるとき、共振タンク40が、インバータ30と、誘電体放電ギャップおよび誘電体バリアによって提供されるコンデンサ12との間に形成される。共振タンクのインダクタンスは、この例では、静電容量と直列に接続されたインダクタ42によって提供される。いくらかのインダクタンスは、共振タンクの配線によっても提供される。インバータは、共振タンクのための電源を提供する。
【0234】
図9に示す例では、駆動回路20”が上述のようにDBDデバイス10に接続されるとき、共振タンク40が、変圧器50と、誘電体放電ギャップおよび誘電体バリアによって提供される静電容量12との間に形成される。共振タンクのインダクタンスは、変圧器の二次側54と直列に接続されたインダクタ42と、参照番号56のインダクタLσによっ
て
図9に表された変圧器の浮遊/漏れインダクタンスと組み合わされた静電容量とによって提供される。これは、インバータ30からの出力と変圧器の一次側52への入力との間で変圧器と直列に接続されているものとして
図9に示されている。
【0235】
図9の例に示す変圧器50はまた、変圧器の一次側52と並列に接続された、参照番号58のインダクタLmによって図に表される磁化誘導を有する。
【0236】
変圧器50の巻数比に基づいて電圧および電流のステップ変化を提供することに加えて、変圧器はまた、ガルバニック絶縁を提供する。これは、インバータ30から共振タンクまでの変圧器にわたる電磁干渉を抑制する。従来の磁心変圧器は、様々な例で使用することができる。他の例では、空芯変圧器(ACT)を使用することができる。通常の(すなわち、磁心)変圧器と比較して、ACTは、巻線間に非常に低い結合(磁心変圧器では典型的である98%ではなく40%など)を有することができる。これは、通常の変圧器よりも高い漏れインダクタンスをもたらす。しかし、これは、駆動回路のためのいくつかの望ましい機能、すなわち、(変圧器がノイズバリアを提供するため)安全およびEMI抑制のためのガルバニック絶縁、(以下でより詳細に説明するような)電圧昇圧および共鳴インダクタンスが、全体として単一の構成要素に組み込まれることを可能にするため、いくつかの例では望ましい。これらの機能は、通常の変圧器によって提供されることも可能であるが、いくつかの例ではより少ない程度である。
【0237】
インバータ30をより詳細に参照すると、
図8および
図9に示す例では、インバータはHブリッジによって提供される。Hブリッジは、2つのハイサイドスイッチS1+およびS2+と、2つのローサイドスイッチS1-およびS2-とを提供する4つのスイッチ32を有する。
図5に示す例では、インバータはハーフブリッジによって提供される。これは、2つのスイッチ32および2つのコンデンサ34を有し、スイッチは、1つのハイサイドスイッチS1+および1つのローサイドスイッチS1-を提供する。
【0238】
インバータ30のスイッチ32は、
図8および
図9に示す例では、トランジスタによって提供される。これらの図に示す例では、これらは炭化ケイ素MOSFETである。他の例では、各スイッチは、n型MOSFET、シリコンMOSFETなどのMOSFET、またはシリコンIGBTなどの絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、接合型電界効果トランジスタ(IFET)、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)、もしくは窒化ガリウム(GaN)HEMTなどの高電子移動度トランジスタ(HEMT)などの他の種類の電子スイッチによって提供することができる。
【0239】
図8および
図9に示す例では、コンデンサ24は、インバータ30および電圧源22と並列に接続される。これにより、駆動回路20にDCリンク静電容量が提供される。他の例では、この静電容量は、ハーフブリッジインバータのコンデンサによって提供される。
【0240】
図10に示すように、システムは、共振タンクに電気パルス列を提供し、パルス列の後に共振タンクへの電力伝達を禁止するために使用される。さらなるパルス列が提供される前にパルス列を修正し、放電点火事象の後に共振タンクからエネルギーを回収し、エネルギーを蓄積するために、電力特性を変調するステップもある。エネルギー回収がこのプロセスに含まれない例があるが、典型的には、エネルギー回収がこのプロセスに含まれる。しかし、電力特性を変調するステップは任意である。プロセスの詳細については、電力変調およびエネルギー回収プロセスのさらなる詳細とともに、以下でより詳細に説明する。
【0241】
システム1の使用中、DBDデバイス10に供給される電力は、少なくとも誘電体バリア放電電圧レベル(Vth)に達する必要がある。これは、放電ギャップにわたって誘電体バリア放電を刺激するために必要である。DBDデバイスのための
図8および
図9に示
すモデル回路は、Vthに達したときにギャップにわたって電力および電圧クランプを受け入れるデバイスの能力を示す。これらの図に示すDBD電圧源によって吸収される電力は、Vthと(ダイオードが導通しているときに)共振タンクに印加される電流との積によって与えられる。したがって、ギャップにかかる電圧がVthを超えると、DBDデバイスのモデル回路内の対応するダイオード対が導通し、電力が図に示す(モデル)Vth電圧源に伝達され、プラズマへの電力伝達を表す。このモデルでは、誘電体バリア放電が発生するたびに、ギャップにかかる電圧がVthにクランプされる。
【0242】
誘電体バリア放電電圧を供給する電力は、パルス列として駆動回路20によって供給される。パルス列によって提供される電力は、約800VのレベルでDCリンク電圧源22から引き出される。これは、インバータ30に供給される。他の例では、DCリンク電圧源によって提供される電圧は、炭化ケイ素MOSFETを使用するとき、最大900Vであり、1.7kV定格の炭化ケイ素トランジスタを使用するとき、1.2kV~1.3kVなど、より高くてもよい。
【0243】
パルス列を開始するために、
図4に示す例のシステムを使用するとき、電力がDCリンク電圧源22から引き出されると、Hブリッジは、共振タンク40を励起するために使用される。この例では、これは、(
図5に関連して上述したように)パルス列の最初の2つのモードの持続時間にわたって100%のデューティサイクルの方形波電圧を出力するHブリッジによって達成される。
【0244】
Hブリッジのスイッチ32は、タンクの共鳴周波数で共振タンク40を励起するように調整されたスイッチング周波数で出力を提供するように配置される。これにより、有効電力のみがHブリッジによって処理される。スイッチング損失を最小化するために、共鳴周波数よりわずかに高い周波数での動作が、スイッチのZVSを達成するために実現可能である。
【0245】
図5に関連して上述したように、共振タンク40の励起は、共振タンク40内の電圧レベルがVthに達すると、誘電体バリア放電を引き起こす。これにより、DBDデバイス10内の電極間のプラズマに電力が伝達される。
【0246】
パルス列の第2のモードが終了されるとき、スイッチ32はオフにされる。
図8および
図9に示す例のようにトランジスタを使用するとき、これは、アクティブのままにされるトランジスタボディダイオード(または外部の逆並列ダイオード)とは別にトランジスタをオフにするか、または共振タンク40に蓄積された残りのエネルギーをそれぞれ受動的または能動的に回収するためにインバータ30にかかるブリッジ電圧(vFB)が180°位相シフトされることによって達成される。
【0247】
回収されたエネルギーは、DCリンクコンデンサ24に伝達される。これは、前の段落で説明した受動的または能動的回収による電力の流れの逆転によって達成される。これにより、このエネルギーは次のパルス列に使用されるエネルギーに寄与することができる。
【0248】
受動的電力回収は、上述したように、第2のモードの終了時(すなわち、誘電体バリア放電が終了されるとき)にインバータ30内のトランジスタが単にオフに切り替えられることによって達成される。Hブリッジまたはハーフブリッジにおける回路の配置により、これは、トランジスタを通るすべての回路経路を除去し、トランジスタボディダイオード(
図8および
図9に示すように、トランジスタにわたって接続を提供する)を通る経路を残す。
図8および
図9に示すように、ダイオードに対してインバータにわたる共振タンクの接続により、トランジスタがオフに切り替えられたときに、エネルギーがダイオードを通ってDCリンクコンデンサ24、34に流れることが可能になる。
【0249】
代わりに、トランジスタを利用して、第2のモードにおける出力の位相からインバータ30の出力において180°の位相シフトを提供することによって、能動的電力回収が達成される。受動的電力回収中に発生するように、エネルギーがDCリンクコンデンサ24、34に流れることを可能にする代わりに、これは、エネルギーをDCリンクコンデンサに駆動する。
【0250】
共振タンクの品質係数(Q)は、共鳴周波数におけるブリッジ電圧に対する誘電体放電ギャップ(vdbd)にかかる電圧の電圧利得(すなわち、Q=vdbd/vFB)に等しい(変圧器または単位巻数比ない場合、品質係数はQ=vdbd/(vFB/n)となり、ここで、nは変圧器の巻数比であり、変圧器を使用する場合の総利得もまた、変圧器の昇圧と共鳴利得とから決定される)。共振タンクの有効電圧利得は、磁気構成要素の等価直列抵抗(ESR)と、回路に減衰を与えるDBDデバイスの電極を接続するワイヤとによって課される電力損失によって決定される。共振変換器を使用する既知のシステムとは異なり、本明細書で開示される態様による例では、共振タンクの充電中に放電が発生しないため、有効電圧利得は、プラズマに供給されている実際の電力によって決定されない。このため、40よりも大きいQの実際の値は、昇圧変圧器を明示的に必要とすることなく、800VのDCリンク入力電圧から30kVを超える誘電体バリア放電電圧を可能にする。
【0251】
したがって、DBDデバイスにおける放電点火事象の開始によって電力が吸収されると、より低い電圧利得が、これが引き起こす減衰およびQ値シフトによる自己消光効果を引き起こし得ることが理解され得る。しかし、各パルス列から少数回の放電点火事象(1~約5回の放電点火事象など)のみが求められ、共振タンク内に十分な運動量(放電によって吸収されるエネルギーよりもはるかに大きい蓄積エネルギー)があるため、これは、本明細書に開示される態様による例に対していかなる実用的な課題も課さない。一方、既知の共振変換器は、プラズマによる連続的な電力吸収から生じる比較的低い電圧利得のために構成され、したがって、高い昇圧変圧器の巻数比を必要とし、高い昇圧変圧器の巻数比で設計される。
【0252】
誘電体放電ギャップにかかる電圧は、誘電体放電ギャップの静電容量によって決定される。これは、誘電体の静電容量およびギャップ自体の静電容量から構成される。
図8および
図9の例では、誘電体の静電容量(Cdiel)は、典型的に、ギャップの静電容量(Cgap)よりもはるかに大きい。例えば、Cdielは、典型的に、Cgapよりも少なくとも10倍大きい。これはまた、少なくとも10の、誘電体(Vdiel)にかかる電圧と比較したギャップにかかる電圧(Vgap)の電圧比を与える。
【0253】
図9に示す例の駆動回路20”を使用するとき、
図8に示す例の駆動回路20に適用することができるものと同じプロセスを使用することができる。
【0254】
DCリンク電源によって供給される電力は、パルス列繰り返し間隔にわたって平均化された、駆動回路に供給される電力である。共振タンク充電中にDCリンクコンデンサと共振タンクとの間で交換されるエネルギー、誘電体バリア放電中の電力伝達、および共振タンク放電は、典型的には、DCリンクコンデンサにかかる電圧リップルを引き起こす。誘電体バリア放電によって電力がプラズマに伝達される間隔もまた、DCリンク電圧リップルに寄与する。
【0255】
図9に示す例では、変圧器50は、約1:1~1:10の間の昇圧比を提供する。従来のパルス電力回路の昇圧比(上述した例示的な昇圧比)よりも低いこの昇圧比により、変圧器の一次側52を通過する電流が制限されることが可能になる。1:1の比が使用され
るとき、これは、1:10の昇圧比などのより高い昇圧比が使用されるときに、ガルバニック絶縁および電圧の昇圧を提供する代わりに、ガルバニック絶縁のみを提供する。
【0256】
図9の駆動回路20”で使用されるインダクタ42は、変圧器50の一次側または二次側のいずれかに位置することができる。しかし、上述したように、インダクタを二次側(したがって、高電圧側)に位置することによって、変圧器のkVA定格を低減することができる。次いで、DBDデバイス10の無効電力を直接補償することができる。このような無効負荷整合条件下では、有効電力のみが変圧器によって処理される。
【0257】
変圧器50によって課されるガルバニック絶縁は、DBDデバイス10の電極と任意の周囲の金属製ハウジングとの間の寄生容量に流れる電流である接地電流を低減する。これは、電磁適合性(EMC)限界を満たすのに役立つ。
【0258】
各ウェーブレットパルス列の持続時間は、誘電体バリア放電点火事象の回数を決定する。
図11から分かるように、所与のVdcに対して、励起期間の数np(すなわち、周波数サイクル)は、ウェーブレットパルス列の有効持続時間と、共振タンク内でVthに達した後の誘電体バリア放電点火事象の数とを定義する。したがって、これは、パルス列ごとにプラズマに伝達されるエネルギーの量を決定する。
【0259】
有効電力は、ブリッジレッグスイッチング周波数を共鳴周波数から離すことによって調整される。これは、スイッチング周波数を共鳴周波数より高くするか、またはスイッチング周波数を共鳴周波数より低くすることによって達成され得る。これは、vFBとブリッジ電流i-FBとの間の位相シフトを引き起こし、したがって、DBD反応器に伝達される有効電力が低下する。
【0260】
この手法をとることによって、高電圧利得が低下し、無効電力の処理が増加する。高電圧利得を維持し、無効電力の処理を最小限に抑えるために、代わりに、本開示の態様によれば、インバータ30は、使用時に共鳴周波数に近い励起を提供するように配置することができる。これは、vFBとiFBとの間の位相シフトをゼロ近くに保つことによって達成される。平均電力は、ウェーブレットパルス列の繰り返し周波数(すなわち、共振タンクを励起して誘電体バリア放電を引き起こすためにウェーブレットパルス列がどの程度頻繁に使用されるか)を変化させることによって調整される。これにより、共振タンクが常にその共鳴で動作され、したがって無効電力の処理がほとんどまたは全くないため、非常に高い部分負荷効率が達成されることが可能となる。
【0261】
上述したように、パルス列の長さは可変である。単一の持続時間のパルス列を
図11に見ることができる。
図11に示すパルス列は、2~4回の放電点火事象を発生させるため、本明細書に開示される態様による例とともに使用することができるものなどの短いパルス列であるが、後述するようにさらなるスイッチングを追加することによって長くすることができる。
【0262】
図11では、各パルス列は、
図8または
図9に示すような例示的な駆動回路によって生成される。
図11に示す2つのプロットのうち、1つのプロットは、Hブリッジインバータ30内のスイッチ32の状態を示す。これらは、オフ状態(「0」状態)またはオン状態(「1」状態)のいずれかである。これらのスイッチを対で動作させることによって、
図11の下のプロットに示す波形パターンがDBDデバイスにおいて生成可能である。
【0263】
スイッチ対は、S2-スイッチと対になったS1+スイッチと、S2+スイッチと対になったS1-スイッチである。パルス列の最初の2つのモードの間、各対のスイッチ(すなわち、それぞれの対内の2つのスイッチ)は同相で動作され、各スイッチを対の他方の
スイッチと同じ状態にする。パルス列の最初の2つのモードでは、対は位相がずれて動作され、これは、一方の対のスイッチが一方の状態にあるとき、他方の対のスイッチが他方の状態にあることを意味する。
【0264】
従来のインバータと同様に、スイッチS1-+とS1-との間には、一方の状態から反対の状態に切り替えられる「デッドタイム」または「インターロック時間」がある。このデッドタイムは、両スイッチがオフにされる期間である。この期間は典型的には数百ナノ秒である。この期間は、DCリンク電源が偶発的に短絡されることを回避するための安全間隔として提供され、何故ならこの短絡がシステム内に壊滅的な故障を引き起こすためである。
【0265】
スイッチ対S1+およびS2-をオン状態にし、スイッチ対S1-およびS2+をオフ状態にすることによって、これにより、正の電圧上昇が引き起こされる。状態を反転させることによって、すなわちスイッチ対S1+およびS2--をオフ状態にし、スイッチ対S1-およびS2+をオン状態にすることによって、これにより、負の電圧上昇が引き起こされる。この配置を交互にすることによって、
図11の下のプロットに示すような正弦波形が生成され、波形の周波数が、各スイッチ対がオン状態およびオフ状態にある時間の長さによって決定される。
【0266】
図11では、各スイッチ対は、7つのオンオフサイクルで動作され、S1+およびS2-対は、オン状態になる第1の対である。これは、約1.75サイクルの間、約40μsの持続時間および少なくともVthの電圧を有するパルス列を生成する。スイッチ対のオンオフサイクルが停止されると、電圧が0Vに戻るまでパルス列の第3のモードが生じる。これは、より長いパルス列よりも少量のエネルギーをプラズマに伝達する。予想されるように、これは、パルス列よりも少なくともVthの電圧振幅を有するより長い期間を有するより長いパルス列によるものである。
【0267】
駆動回路1を上述のように動作させることによって、放電期間中(すなわち、パルス列がDBDデバイス内の電圧を、放電閾値を超えるピークにさせる期間中)、電圧が閾値を超えるときにDBDデバイス内の有効電力が供給される。この閾値は、電圧が放電閾値を超えるピークを有することを可能にし、したがって放電が発生することを可能にする。この期間は、DBDデバイスを通過するガスの内容物を変換させるための放電要件に応じて、長さが変動してもよい。
【0268】
本出願が方法または手順のステップを特定の順序で列挙した場合、いくつかのステップが実行される順序を変更することが可能であるか、または特定の状況では好都合でさえあり得、本明細書に記載される方法または手順の請求項の特定のステップは、このような順序特異性が請求項に明示的に記載されない限り、順序特異的であると解釈されないことが意図される。すなわち、動作/ステップは、別段の指定がない限り、任意の順序で実行されてもよく、実施形態は、本明細書に開示されるものよりも多くのまたは少ない動作/ステップを含んでもよい。特定の動作/ステップを、別の動作の前に、別の動作と同時に、または別の動作の後に実行または実施することが、説明された実施形態に従うことがさらに企図される。
【国際調査報告】