(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】一本鎖可変断片(scFv)修飾脂質ナノ粒子組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 9/51 20060101AFI20240730BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240730BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240730BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240730BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A61K9/51
A61P35/00
A61K31/7088
A61K47/18
A61K31/573
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501751
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 US2022036930
(87)【国際公開番号】W WO2023287861
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520068043
【氏名又は名称】ジェネレーション バイオ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】サマヨア, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】シルバー, ナサニエル
(72)【発明者】
【氏名】リー, プルーデンス ユイ トゥン
(72)【発明者】
【氏名】トイ, ランドール ニュートン
(72)【発明者】
【氏名】ノルティング, バート
(72)【発明者】
【氏名】オーントンパン, ラリータ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076DD51
4C076EE41
4C076EE59
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA13
4C086ZB26
(57)【要約】
脂質ナノ粒子(LNP)及び治療用核酸(TNA)[LNPは、LNPに連結された一本鎖可変断片(scFv)を含む]、及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物が、本明細書に提供される。scFvは、細胞の表面に存在する抗原に結合することができ、有利には、受容体を発現する細胞又は組織のみを標的とするLNP組成物を提供する。本明細書に記載のLNP組成物は、有利なことに、粒径及び安定性への影響が最小限である効率的な共有結合によるコンジュゲーションを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質ナノ粒子(LNP)、治療用核酸(TNA)、及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物であって、前記LNPが、前記LNPに連結された一本鎖可変断片(scFv)を含み、前記scFvが、細胞の表面に存在する抗原を対象とする、薬学的組成物。
【請求項2】
前記scFVが、前記LNPに共有結合により連結される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記scFVが、前記LNPに化学的にコンジュゲートされている、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記scFVが、切断不可能なリンカーを介して前記LNPに化学的にコンジュゲートされている、請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記切断不可能なリンカーが、マレイミド含有リンカーである、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記scFVが、切断可能なリンカーを介して前記LNPに化学的にコンジュゲートされている、請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記切断可能なリンカーが、ピリジルジスルフィド(PDS)含有リンカーである、請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記scFvが、トランスグルタミナーゼ媒介性コンジュゲーションを介して前記LNPに連結される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記抗原が、腫瘍関連抗原(TAA)又は腫瘍特異的抗原(TSA)であり、任意選択的に、前記抗原が、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)である、請求項1~8のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記scFvが二価である、請求項1~9のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記LNPが、前記細胞内に内在化されることが可能である、請求項1~10のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記scFVが、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、又は配列番号2に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列類似性を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記scFVが、配列番号3のアミノ酸配列を含むか、又は配列番号3に示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列類似性を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記LNPが、カチオン性脂質、ステロール又はその誘導体、非カチオン性脂質、及びPEG化脂質からなる群から選択される脂質を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記TNAが、前記LNP中に封入される、請求項1~14のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記TNAが、ミニ遺伝子、プラスミド、ミニサークル、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、リボザイム、閉端(ceDNA)、ミニストリング、doggybone(商標)、プロテロメア閉端DNA、又はダンベル直鎖DNA、ダイサー基質dsRNA、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、非対称干渉RNA(aiRNA)、マイクロRNA(miRNA)、mRNA、tRNA、rRNA、DNAウイルスベクター、ウイルスRNAベクター、非ウイルスベクター及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記TNAが、ceDNAである、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記ceDNAが、直鎖状二重鎖DNAである、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記TNAが、mRNAである、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
前記TNAが、siRNAである、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
前記TNAが、プラスミドである、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
対象に投与される、請求項1~21のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
前記対象が、TNAで封入されたLNPによる治療を必要とするヒト患者である、請求項22に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
前記scFvが対象とする前記細胞表面抗原を発現する細胞を標的とする、請求項1~23のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
腫瘍細胞を標的とする、請求項1~24のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
肝臓細胞を標的とする、請求項1~24のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
肝臓内の肝細胞に標的とする、請求項1~24のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
前記カチオン性脂質が、式(I)によって表されるか、
【化61】
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、
R
1及びR
1’が、それぞれ独立して、任意選択的に置換された直鎖又は分岐鎖C
1~3アルキレンであり、
R
2及びR
2’が、それぞれ独立して、任意選択的に置換された直鎖又は分岐鎖C
1~6アルキレンであり、
R
3及びR
3’が、それぞれ独立して、任意選択的に置換された直鎖又は分岐鎖C
1~6アルキルであるか、
又は代替的に、R
2が、任意選択的に置換された分岐鎖C
1~6アルキレンである場合、R
2及びR
3が、それらの介在するN原子と一緒になって、4員~8員のヘテロシクリルを形成するか、
又は代替的に、R
2’が、任意選択的に置換された分岐鎖C
1~6アルキレンである場合、R
2’及びR
3’が、それらの介在するN原子と一緒になって、4員~8員のヘテロシクリルを形成し、
R
4及びR
4’が、それぞれ独立して、-CR
a、-C(R
a)
2CR
a、又は-[C(R
a)
2]
2CR
aであり、
R
aが、各出現に対して、独立してH又はC
1~3アルキルであるか、
又は代替的に、R
4が、-C(R
a)
2CR
a、又は-[C(R
a)
2]
2CR
aである場合、かつR
aがC
1~3アルキルである場合、R
3及びR
4が、それらの介在するN原子と一緒になって、4員~8員のヘテロシクリルを形成するか、
又は代替的に、R
4’が、-C(R
a)
2CR
a、又は-[C(R
a)
2]
2CR
aである場合、かつR
aがC
1~3アルキルである場合、R
3’及びR
4’が、それらの介在するN原子と一緒になって、4員~8員のヘテロシクリルを形成し、
R
5及びR
5’が、それぞれ独立して、水素、C
1~20アルキレン又はC
2~20アルケニレンであり、
R
6及びR
6’が、各出現に対して、独立してC
1~20アルキレン、C
3~20シクロアルキレン、又はC
2~20アルケニレンであり、
m及びnが、それぞれ独立して、1、2、3、4、及び5から選択される整数である、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
前記カチオン性脂質が、式(II)によって表されるか、
【化62】
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、
aが、1~20の範囲の整数であり、
bが、2~10の範囲の整数であり、
R
1が、存在しないか、又は(C
2~C
20)アルケニル、-C(O)O(C
2~C
20)アルキル、及び(C
2~C
20)アルキルで置換されたシクロプロピルから選択され、
R
2が、(C
2~C
20)アルキルである、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
前記脂質が、式(V)によって表されるか、
【化63】
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、
R
1及びR
1’が、それぞれ独立して、R
aから選択される1つ以上の基で任意選択的に置換された(C
1~C
6)アルキレンであり、
R
2及びR
2’が、それぞれ独立して、(C
1~C
2)アルキレンであり、
R
3及びR
3’が、それぞれ独立して、R
bから選択される1つ以上の基で任意選択的に置換された(C
1~C
6)アルキルであり、
又は代替的に、R
2及びR
3並びに/又はR
2’及びR
3’は、それらの介在するN原子と一緒になって、4員~7員のヘテロシクリルを形成し、
R
4及びR
4’が、それぞれ、-C(O)O-によって中断された(C
2~C
6)アルキレンであり、
R
5及びR
5’が、それぞれ独立して、(C
2~C
30)アルキル又は(C
2~C
30)アルケニルであり、これらのそれぞれが、任意選択的に-C(O)O-又は(C
3~C
6)シクロアルキルで中断され、
R
a及びR
bが、それぞれハロ又はシアノである、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
前記カチオン性脂質が、式(XV)によって表されるか、
【化64】
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、
R’が、存在しないか、水素、又はC
1~C
6アルキルであり、但し、R’が水素又はC
1~C
6アルキルである場合、R’、R
1、及びR
2が全て結合している窒素原子が、プロトン化されており、
R
1及びR
2が、それぞれ独立して、水素、C
1~C
6アルキル、又はC
2~C
6アルケニルであり、
R
3が、C
1~C
12アルキレン又はC
2~C
12アルケニレンであり、
R
4が、C
1~C
16非分岐アルキル、C
2~C
16非分岐アルケニル、又は
【化65】
であり、式中、
R
4a及びR
4bが、それぞれ独立して、C
1~C
16非分岐アルキル又はC
2~C
16非分岐アルケニルであり、
R
5が、存在しないか、C
1~C
8アルキレン、又はC
2~C
8アルケニレンであり、
R
6a及びR
6bが、それぞれ独立して、C
7~C
16アルキル又はC
7~C
16アルケニルであり、但し、R
6a及びR
6b中の合わせた場合の炭素原子の総数が、15より大きく、
X
1及びX
2が、それぞれ独立して、-OC(=O)-、-SC(=O)-、-OC(=S)-、-C(=O)O-、
-C(=O)S-、-S-S-、-C(R
a)=N-、-N=C(R
a)-、-C(R
a)=NO-、-O-N=C(R
a)-、-C(=O)NR
a-、
-NR
aC(=O)-、-NR
aC(=O)NR
a-、-OC(=O)O-、-OSi(R
a)
2O-、-C(=O)(CR
a
2)C(=O)O-、又はOC(=O)(CR
a
2)C(=O)-であり、式中、
R
aが、各出現に対して、独立して、水素又はC
1~C
6アルキルであり、
nが、1、2、3、4、5、及び6から選択される整数である、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
前記カチオン性脂質が、式(XX)によって表されるか、
【化66】
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、
R’が、存在しないか、水素、又はC
1~C
3アルキルであり、但し、R’が水素又はC
1~C
3アルキルである場合、R’、R
1、及びR
2が全て結合している窒素原子が、プロトン化されており、
R
1及びR
2が、それぞれ独立して、水素又はC
1~C
3アルキルであり、
R
3が、C
3~C
10アルキレン又はC
3~C
10アルケニレンであり、
R
4が、C
1~C
16非分岐アルキル、C
2~C
16非分岐アルケニル、又は
【化67】
であり、式中、
R
4a及びR
4bが、それぞれ独立して、C
1~C
16非分岐アルキル又はC
2~C
16非分岐アルケニルであり、
R
5が、存在しないか、C
1~C
6アルキレン、又はC
2~C
6アルケニレンであり、
R
6a及びR
6bが、それぞれ独立して、C
7~C
14アルキル又はC
7~C
14アルケニルであり、
Xが、-OC(=O)-、-SC(=O)-、-OC(=S)-、-C(=O)O-、-C(=O)S-、-S-S-、-C(R
a)=N-、
-N=C(R
a)-、-C(R
a)=NO-、-O-N=C(R
a)-、-C(=O)NR
a-、-NR
aC(=O)-、-NR
aC(=O)NR
a-、
-OC(=O)O-、-OSi(R
a)
2O-、-C(=O)(CR
a
2)C(=O)O-、又はOC(=O)(CR
a
2)C(=O)-であり、式中、
R
aが、各出現に対して、独立して、水素又はC
1~C
6アルキルであり、
nが、1、2、3、4、5、及び6から選択される整数である、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項33】
前記カチオン性脂質が、表2、表5、表6、表7、又は表8のいずれかの脂質から選択される、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項34】
前記カチオン性脂質が、以下の構造を有する脂質、
【化68】
又はその薬学的に許容される塩である、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項35】
前記カチオン性脂質が、以下の構造を有するMC3(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル-4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA又はMC3)であるか、
【化69】
又はその薬学的に許容される塩である、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項36】
前記ステロール又はその誘導体が、コレステロール又はベータ-シトステロールである、請求項28~35のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項37】
前記非カチオン性脂質が、ジステアロイル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン(DSPE)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン 4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、モノメチル-ホスファチジルエタノールアミン(例えば16-O-モノメチルPE)、ジメチル-ホスファチジルエタノールアミン(例えば16-O-ジメチルPE)、18-1-trans PE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジエタノールアミン(SOPE)、水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、スフィンゴミエリン(SM)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジエルコイルホスファチジルコリン(DEPC)、パルミトイルオレイオールホスファチジルグリセロール(POPG)、ジエライドイル-ホスファチジルエタノールアミン(DEPE)、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DLPE);1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPHyPE);レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾレシチン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、卵スフィンゴミエリン(ESM)、セファリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、リン酸ジセチル、リゾホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項37に記載の薬学的組成物。
【請求項38】
前記非カチオン性脂質が、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、及びジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)からなる群から選択される、請求項37に記載の薬学的組成物。
【請求項39】
前記PEG化脂質が、PEG-ジラウリルオキシプロピル;PEG-ジミリスチルオキシプロピル;PEG-ジパルミチルオキシプロピル、PEG-ジステアリルオキシプロピル;l-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(DMG-PEG);PEG-ジラウリルグリセロール;PEG-ジパルミトイルグリセロール;PEG-ジステリルグリセロール;PEG-ジラウリルグリカミド;PEG-ジミリスチルグリカミド;PEG-ジパルミトイルグリカミド;PEG-ジステリルグリカミド;(l-[8’-(コレスタ-5-エン-3[ベータ]-オキシ)カルボキサミド-3’,6’-ジオキサオクタニル]カルバモイル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)(PEG-コレステロール);3,4-ジテトラデカオキシルベンジル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)エーテル(PEG-DMB)、及びl,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)(DSPE-PEG)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-ポリ(エチレングリコール)-ヒドロキシル(DSPE-PEG-OH)からなる群から選択される、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項40】
前記PEG化脂質が、DMG-PEG、DSPE-PEG、DSPE-PEG-OH、又はそれらの組み合わせである、請求項39に記載の薬学的組成物。
【請求項41】
前記少なくとも1つのPEG化脂質が、DMG-PEG2000、DSPE-PEG2000、DSPE-PEG2000-OH、DMG-PEG5000、DSPE-PEG5000、DSPE-PEG5000-OH、又はそれらの組み合わせである、請求項39又は40に記載の薬学的組成物。
【請求項42】
前記scFvが、前記LNPのPEG化脂質に化学的にコンジュゲートされるか又は共有結合により連結され、PEG化脂質コンジュゲートを形成する、請求項14又は39~41のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項43】
前記scFvが化学的にコンジュゲートされるか又は共有結合により連結される前記PEG化脂質がDSPE-PEGである、請求項42に記載の薬学的組成物。
【請求項44】
前記scFvが化学的にコンジュゲートされるか又は共有結合により連結される前記PEG化脂質がDSPE-PEG2000である、請求項43に記載の薬学的組成物。
【請求項45】
前記scFvが化学的にコンジュゲートされるか又は共有結合により連結される前記PEG化脂質がDSPE-PEG5000である、請求項43に記載の薬学的組成物。
【請求項46】
前記カチオン性脂質が、約30%~約80%のモル百分率で存在する、請求項28~35のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項47】
前記ステロールが、約20%~約50%のモル百分率で存在する、請求項36に記載の薬学的組成物。
【請求項48】
前記非カチオン性脂質が、約2%~約20%のモル百分率で存在する、請求項37~38のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項49】
前記少なくとも1つのPEG化脂質が、約2.1%~約10%のモル百分率で存在する、請求項39~45のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項50】
前記scFvが、約0.02μg/μgのTNA~約0.1μg/μgのTNAの総量で存在する、請求項1~49のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項51】
パルミチン酸デキサメタゾンを更に含む、請求項1~50のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項52】
前記LNPが、約10:1~約40:1の全脂質のTNAに対する比を有する、請求項1~51のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項53】
前記LNPが、約40nm~約120nmの範囲の直径を有する、請求項1~52のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項54】
前記ナノ粒子が、約100nm未満の直径を有する、請求項1~53のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項55】
前記ナノ粒子が、約60nm~約80nmの直径を有する、請求項1~54のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項56】
前記ceDNAが発現カセットを含み、前記発現カセットがプロモーター配列及び導入遺伝子を含む、請求項16~55のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項57】
前記発現カセットが、ポリアデニル化配列を含む、請求項56に記載の薬学的組成物。
【請求項58】
前記ceDNAが、前記発現カセットの5’又は3’末端のいずれかに隣接する少なくとも1つの逆位末端反復(ITR)を含む、請求項16~57のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項59】
前記発現カセットが、2つのITRに隣接し、前記2つのITRが、1つの5’ITR及び1つの3’ITRを含む、請求項58に記載の薬学的組成物。
【請求項60】
前記発現カセットが、3’末端でITR(3’ITR)に連結される、請求項58に記載の薬学的組成物。
【請求項61】
前記発現カセットが、5’末端でITR(5’ITR)に連結される、請求項58又は60に記載の薬学的組成物。
【請求項62】
前記少なくとも1つのITRが、AAV血清型に由来するITR、ガチョウウイルスのITRに由来するITR、B19ウイルスITRに由来するITR、又はパルボウイルスに由来する野生型ITRである、請求項58~61のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項63】
前記AAV血清型が、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11及びAAV12からなる群から選択される、請求項62に記載の薬学的組成物。
【請求項64】
前記5’ITR及び前記3’ITRのうちの少なくとも1つが、野生型AAV ITRである、請求項59~63のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項65】
前記5’ITR及び前記3’ITRのうちの少なくとも1つが、修飾型又は変異型ITRである、請求項59~63のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項66】
前記5’ITR及び前記3’ITRが、対称である、請求項59~65のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項67】
前記5’ITR及び前記3’ITRが、非対称である、請求項59~65のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項68】
前記ceDNAが、5’ITRと前記発現カセットとの間にスペーサー配列を更に含む、請求項59~67のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項69】
前記ceDNAが、3’ITRと前記発現カセットとの間にスペーサー配列を更に含む、請求項59~68のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項70】
前記スペーサー配列が、長さが少なくとも5塩基対の長さである、請求項68又は請求項69に記載の薬学的組成物。
【請求項71】
前記ceDNAが、ニック又はギャップを有する、請求項16~70のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項72】
前記ceDNAが、CELiD、DNAベースのミニサークル、MIDGE、ミニストリングDNA、発現カセットの5’及び3’末端にITRの2つのヘアピン構造を含むダンベル型の直鎖状二重鎖閉端DNA、又はdoggybone(商標)DNAである、請求項16~71のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項73】
対象のがんを治療する方法であって、有効量の請求項1~72のいずれか一項に記載の薬学的組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項74】
前記対象が、ヒトである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
対象の腫瘍に治療用核酸(TNA)を送達するか又は前記TNAの濃度を増加させる方法であって、有効量の請求項1~72のいずれか一項に記載の薬学的組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項76】
対象の肝臓に治療用核酸(TNA)を送達するか又は前記TNAの濃度を増加させる方法であって、有効量の請求項1~72のいずれか一項に記載の薬学的組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2021年7月13日に出願された米国仮出願第63/221,290号に対する優先権を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
イオン化可能な脂質ナノ粒子(LNP)は、RNA治療薬の全身送達に広く使用されてきた。C12-200、cKK-E12、及びDLin-MC3-DMAなどの様々な種類のイオン化可能な脂質材料が、LNP製剤について以前に報告されており、0.002mgのsiRNA/kgの投与レベルでの肝臓における効率的な遺伝子サイレンシングが実証されている(Dong,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.111,3955-3960(2014))。標的化リガンドの包含は、mRNA-LNPの送達及び治療効率を増強することが示されているが、標的化部分を結合することは、LNP系を製造するプロセスに複雑さ、コスト、及び規制上の困難さを加え得ることが認識されている(Cheng et al.,Science.2012 Nov 16;338(6109):903-10)。加えて、いくつかの標的化リガンドの標的化特異性は、脂質ナノ粒子が生体液に曝露され、媒体中のタンパク質との相互作用及びその結果としてのタンパク質コロナの形成が起こる場合に、消失し得ることが実証されている(Salvati et al.,Nat Nanotechnol.2013 Feb;8(2):137-43)。したがって、可能性のある臨床的利益と、標的化RNA-LNP製造の複雑さ及びコストとの間にトレードオフが存在する。
【0003】
抗体は、罹患細胞の表面でのみ発現されるか、又は健常細胞と比較してこれらの細胞上で高度に過剰発現される特異的抗原を標的化することによって機能する。これらの抗原は、標的罹患細胞の表面に単独で又は豊富に存在するので、抗体は、ナノ粒子及びそれらのカーゴ(例えば、治療剤)を身体を通して運搬し、選択的送達/標的化を可能にするために概念的に利用することができる。このアプローチは1980年代に最初に調査されたが、抗体で装飾されたナノ粒子を生成及び評価するための不十分な方法などのかなりの制限があり、この領域での著しい進歩を妨げた。過去数十年にわたる抗体発現技法とナノ粒子設計の両方の進歩により、ナノ粒子-抗体コンジュゲートのより完全な探索が可能になり、この分野の急速な拡大をもたらした。初期の開発は、主にそれらの生成と修飾の両方に関する利用可能な情報の豊富さに起因して、標的化リガンドとして完全抗体を使用することにほぼ完全に焦点を当てた。しかしながら、完全抗体リガンドの使用に関連するいくつかの問題、例えば、免疫原性、迅速な排除、低い安定性、及び予想される有効性よりも低いことが明らかになった。
【0004】
抗体のモジュール性は、構造的にも機能的にも、分子クローニング、抗体操作、更には酵素的方法によって、断片抗原結合(Fab)、一本鎖可変断片(scFv)、単一ドメイン抗体、及び結晶化可能断片(Fc)ドメインなどのより小さな抗原結合断片の生成を可能にする。抗体の抗原結合断片は、従来のmAbの欠点、例えば、固形腫瘍への不十分な浸透及び免疫系のFc媒介性バイスタンダー活性化を克服するかなりの可能性を有する。抗体断片は、それ自体で使用されるか、又は他の分子に連結され、二特異性分子、多重特異性分子、多量体分子、又は多機能性分子についての多数の可能性を生じ、種々の生物学的効果を達成することができる。抗体断片は、従来の抗体の使用に対していくつかの利点を提供することができる。例えば、それらは、一般に、微生物発現系を使用して容易に産生することができ、それにより、より速い培養、より高い収率、及びより低い産生コストがもたらされる(Fernandes JC,Drug Discov Today.2018 Dec;23(12):1996-2002)。それらの小さいサイズは、挑戦的な潜在性エピトープへのアクセス、及び腫瘍浸透を可能にし、それらは、低減された免疫原性を有し、Fcの欠如は、免疫系のバイスタンダー活性化を制限する(Kholodenko et al.Curr Med Chem.2019;26(3):396-426)。一方、それらのより小さいサイズは、より速い腎排泄をもたらし、これは、より高い用量及び/又はより頻繁な投薬レジメンインビボを必要とし得る。
【0005】
LNPはインビボ送達に有利であることが示されているが、肝臓肝細胞以外のRNA治療薬の全身送達は依然として非常に困難である。これらの比較的大きなサイズのLNPは、いくつかの機構によって肝臓適応症の治療指数を低下させる:(1)より大きなLNPは、肝類類洞に並ぶ内皮細胞の窓を効率的に迂回することができず、標的細胞(肝細胞)へのアクセスを妨げる、(2)より大きなLNPは、いくつかの異なる受容体(例えば、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)、低密度リポタンパク質(LDL)受容体)によるクラスリン媒介性エンドサイトーシスを介して、肝細胞によって効率的に内在化されることができない、また、(3)特定の閾値サイズを超えるLNPは、細網内皮系の細胞によって優先的に取り込まれる傾向があり、これにより用量を制限する免疫応答を引き起こし得る。これらの進歩にもかかわらず、より大きな剛性のポリヌクレオチドカーゴ(例えば、二本鎖直鎖DNA、プラスミドDNA、閉末端二本鎖DNA(ceDNA))のLNP媒介性送達は、より小さな及び/又は可撓性のカーゴ(例えば、siRNA)に対して、更なる課題を提示する。そのような課題の1つは、大きな剛性のカーゴが封入される場合に得られるLNPのサイズを伴う。
LNP標的化核酸治療薬の可能性を完全に実現するために、効率的なインビボ送達系が必要とされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Dong,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.111,3955-3960(2014)
【非特許文献2】Cheng et al.,Science.2012 Nov 16;338(6109):903-10
【非特許文献3】Salvati et al.,Nat Nanotechnol.2013 Feb;8(2):137-43
【非特許文献4】Fernandes JC,Drug Discov Today.2018 Dec;23(12):1996-2002
【非特許文献5】Kholodenko et al.Curr Med Chem.2019;26(3):396-426
【発明の概要】
【0007】
本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)、治療用核酸(TNA)、及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物であって、LNPが、LNPに連結された一本鎖可変断片(scFv)を含み、scFvが、細胞(例えば、腫瘍細胞)の表面に存在する抗原を対象とする、薬学的組成物を提供する。本明細書に記載のLNP組成物は、有利なことに、粒径及び安定性への影響が最小限である効率的な共有結合によるコンジュゲーションを提供する。LNPへのscFvのマレイミドコンジュゲーションが、他のチオールベースの架橋方法と共にLNPへの強固なコンジュゲーションをもたらし、重要なことに、LNPのサイズ及び完全性を維持したことは、本開示の知見である。
【0008】
第1の態様によれば、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)、治療用核酸(TNA)、及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物であって、LNPが、LNPに連結された一本鎖可変断片(scFv)を含み、scFvが、細胞の表面に存在する抗原を対象とする、薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態では、scFVは、LNPに共有結合により連結される。いくつかの実施形態では、scFVは、LNPに化学的にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、scFVは、切断不可能なリンカーを介してLNPに化学的にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、切断不可能なリンカーは、マレイミド含有リンカーである。いくつかの実施形態では、scFVは、切断可能なリンカーを介してLNPに化学的にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、切断可能なリンカーは、ピリジルジスルフィド(PDS)含有リンカーである。いくつかの実施形態では、scFvは、トランスグルタミナーゼ媒介性コンジュゲーションを介してLNPに連結される。上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)又は腫瘍特異的抗原(TSA)である。更なる実施形態では、抗原はヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)である。上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、scFvは二価である。上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、LNPは、細胞内に内在化されることが可能である。上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、scFVは、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、又は配列番号2に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列類似性を有する。上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、scFVは、配列番号3のアミノ酸配列を含むか、又は配列番号3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列類似性を有する。上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、LNPは、カチオン性脂質、ステロール又はその誘導体、非カチオン性脂質、及びPEG化脂質からなる群から選択される脂質を含む。上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、TNAは、LNPに封入されている。上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、TNAは、ミニ遺伝子、プラスミド、ミニサークル、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、リボザイム、閉端(ceDNA)、ミニストリング、doggybone(商標)、プロテロメア閉端DNA、又はダンベル直鎖DNA、ダイサー基質dsRNA、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、非対称干渉RNA(aiRNA)、マイクロRNA(miRNA)、mRNA、tRNA、rRNA、DNAウイルスベクター、ウイルスRNAベクター、非ウイルスベクター、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、TNAは、ceDNAである。いくつかの実施形態では、ceDNAは、直鎖状二重鎖DNAである。いくつかの実施形態では、TNAは、mRNAである。いくつかの実施形態では、TNAは、siRNAである。いくつかの実施形態では、TNAは、プラスミドである。上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、薬学的組成物は、対象に投与される。いくつかの実施形態では、対象は、TNAで封入されたLNPによる治療を必要とするヒト患者である。上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、組成物は、scFvが対象とする細胞表面抗原を発現する細胞を標的とする。上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、組成物は、腫瘍細胞を標的とする。上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、組成物は、肝臓細胞を標的とする。上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、組成物は、肝臓内の肝細胞を標的とする。
【0009】
上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、式(I)によって表される:
【0010】
【化1】
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、
R
1及びR
1’が、それぞれ独立して、任意選択的に置換された直鎖又は分岐鎖C
1~3アルキレンであり、
R
2及びR
2’が、それぞれ独立して、任意選択的に置換された直鎖又は分岐鎖C
1~6アルキレンであり、
R
3及びR
3’が、それぞれ独立して、任意選択的に置換された直鎖又は分岐鎖C
1~6アルキルであるか、
又は代替的に、R
2が、任意選択的に置換された分岐鎖C
1~6アルキレンである場合、R
2及びR
3が、それらの介在するN原子と一緒になって、4員~8員のヘテロシクリルを形成するか、
又は代替的に、R
2’が、任意選択的に置換された分岐鎖C
1~6アルキレンである場合、R
2’及びR
3’が、それらの介在するN原子と一緒になって、4員~8員のヘテロシクリルを形成し、
R
4及びR
4’が、それぞれ独立して、-CR
a、-C(R
a)
2CR
a、又は-[C(R
a)
2]
2CR
aであり、
R
aが、各出現に対して、独立してH又はC
1~3アルキルであるか、
又は代替的に、R
4が、-C(R
a)
2CR
a、又は-[C(R
a)
2]
2CR
aである場合、かつR
aがC
1~3アルキルである場合、R
3及びR
4が、それらの介在するN原子と一緒になって、4員~8員のヘテロシクリルを形成するか、
又は代替的に、R
4’が、-C(R
a)
2CR
a、又は-[C(R
a)
2]
2CR
aである場合、かつR
aがC
1~3アルキルである場合、R
3’及びR
4’が、それらの介在するN原子と一緒になって、4員~8員のヘテロシクリルを形成し、
R
5及びR
5’が、それぞれ独立して、水素、C
1~20アルキレン又はC
2~20アルケニレンであり、
R
6及びR
6’が、各出現に対して、独立してC
1~20アルキレン、C
3~20シクロアルキレン、又はC
2~20アルケニレンであり、
m及びnが、それぞれ独立して、1、2、3、4、及び5から選択される整数である。
【0011】
上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、式(II)によって表される:
【0012】
【化2】
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、
aが、1~20の範囲の整数であり、
bが、2~10の範囲の整数であり、
R
1が、存在しないか、又は(C
2~C
20)アルケニル、-C(O)O(C
2~C
20)アルキル、及び(C
2~C
20)アルキルで置換されたシクロプロピルから選択され、
R
2が、(C
2~C
20)アルキルである。
【0013】
上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、脂質は、式(V)によって表される:
【0014】
【化3】
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、
R
1及びR
1’が、それぞれ独立して、R
aから選択される1つ以上の基で任意選択的に置換された(C
1~C
6)アルキレンであり、
R
2及びR
2’が、それぞれ独立して、(C
1~C
2)アルキレンであり、
R
3及びR
3’が、それぞれ独立して、R
bから選択される1つ以上の基で任意選択的に置換された(C
1~C
6)アルキルであり、
又は代替的に、R
2及びR
3並びに/又はR
2’及びR
3’は、それらの介在するN原子と一緒になって、4員~7員のヘテロシクリルを形成し、
R
4及びR
4’が、それぞれ、-C(O)O-によって中断された(C
2~C
6)アルキレンであり、
R
5及びR
5’が、それぞれ独立して、(C
2~C
30)アルキル又は(C
2~C
30)アルケニルであり、これらのそれぞれが、任意選択的に-C(O)O-又は(C
3~C
6)シクロアルキルで中断され、
R
a及びR
bが、それぞれハロ又はシアノである。
【0015】
上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、式(XV)によって表される:
【0016】
【化4】
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、
R’が、存在しないか、水素、又はC
1~C
6アルキルであり、但し、R’が水素又はC
1~C
6アルキルである場合、R’、R
1、及びR
2が全て結合している窒素原子が、プロトン化されており、
R
1及びR
2が、それぞれ独立して、水素、C
1~C
6アルキル、又はC
2~C
6アルケニルであり、
R
3が、C
1~C
12アルキレン又はC
2~C
12アルケニレンであり、
R
4が、C
1~C
16非分岐アルキル、C
2~C
16非分岐アルケニル、又は
【0017】
【化5】
であり、式中、
R
4a及びR
4bが、それぞれ独立して、C
1~C
16非分岐アルキル又はC
2~C
16非分岐アルケニルであり、
R
5が、存在しないか、C
1~C
8アルキレン、又はC
2~C
8アルケニレンであり、
R
6a及びR
6bが、それぞれ独立して、C
7~C
16アルキル又はC
7~C
16アルケニルであり、但し、R
6a及びR
6b中の合わせた場合の炭素原子の総数が、15より大きく、
X
1及びX
2が、それぞれ独立して、-OC(=O)-、-SC(=O)-、-OC(=S)-、-C(=O)O-、
-C(=O)S-、-S-S-、-C(R
a)=N-、-N=C(R
a)-、-C(R
a)=NO-、-O-N=C(R
a)-、-C(=O)NR
a-、
-NR
aC(=O)-、-NR
aC(=O)NR
a-、-OC(=O)O-、-OSi(R
a)
2O-、-C(=O)(CR
a
2)C(=O)O-、又はOC(=O)(CR
a
2)C(=O)-であり、式中、
R
aが、各出現に対して、独立して、水素又はC
1~C
6アルキルであり、
nが、1、2、3、4、5、及び6から選択される整数である。
【0018】
上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、式(XX)によって表される:
【0019】
【化6】
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、
R’が、存在しないか、水素、又はC
1~C
3アルキルであり、但し、R’が水素又はC
1~C
3アルキルである場合、R’、R
1、及びR
2が全て結合している窒素原子が、プロトン化されており、
R
1及びR
2が、それぞれ独立して、水素又はC
1~C
3アルキルであり、
R
3が、C
3~C
10アルキレン又はC
3~C
10アルケニレンであり、
R
4が、C
1~C
16非分岐アルキル、C
2~C
16非分岐アルケニル、又は
【0020】
【化7】
であり、式中、
R
4a及びR
4bが、それぞれ独立して、C
1~C
16非分岐アルキル又はC
2~C
16非分岐アルケニルであり、
R
5が、存在しないか、C
1~C
6アルキレン、又はC
2~C
6アルケニレンであり、
R
6a及びR
6bが、それぞれ独立して、C
7~C
14アルキル又はC
7~C
14アルケニルであり、
Xが、-OC(=O)-、-SC(=O)-、-OC(=S)-、-C(=O)O-、-C(=O)S-、-S-S-、-C(R
a)=N-、
-N=C(R
a)-、-C(R
a)=NO-、-O-N=C(R
a)-、-C(=O)NR
a-、-NR
aC(=O)-、-NR
aC(=O)NR
a-、
-OC(=O)O-、-OSi(R
a)
2O-、-C(=O)(CR
a
2)C(=O)O-、又はOC(=O)(CR
a
2)C(=O)-であり、式中、
R
aが、各出現に対して、独立して、水素又はC
1~C
6アルキルであり、
nが、1、2、3、4、5、及び6から選択される整数である。
【0021】
上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、表2、表5、表6、表7、又は表8のいずれかの脂質から選択される。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、以下の構造を有する脂質:
【0022】
【化8】
又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、以下の構造を有するMC3(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル-4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA又はMC3):
【0023】
【0024】
上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、ステロール又はその誘導体は、コレステロール又はベータ-シトステロールである。いくつかの実施形態では、非カチオン性脂質は、ジステアロイル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン(DSPE)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、モノメチル-ホスファチジルエタノールアミン(例えば、16-O-モノメチルPE)、ジメチル-ホスファチジルエタノールアミン(例えば、16-O-ジメチルPE)、18-1-trans PE,1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジエタノールアミン(18-1-trans PE,1-stearoyl-2-oleoyl-phosphatidyethanolamine)(SOPE)、水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、スフィンゴミエリン(SM)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジエルコイルホスファチジルコリン(DEPC)、パルミトイルオレイオールホスファチジルグリセロール(POPG)、ジエライドイル-ホスファチジルエタノールアミン(DEPE)、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DLPE);1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPHyPE);レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾレシチン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、卵スフィンゴミエリン(ESM)、セファリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、リン酸ジセチル、リゾホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、非カチオン性脂質は、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、及びジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、PEG化脂質は、PEG-ジラウリルオキシプロピル;PEG-ジミリスチルオキシプロピル;PEG-ジパルミチルオキシプロピル、PEG-ジステアリルオキシプロピル;l-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(DMG-PEG);PEG-ジラウリルグリセロール;PEG-ジパルミトイルグリセロール;PEG-ジステリルグリセロール;PEG-ジラウリルグリカミド;PEG-ジミリスチルグリカミド;PEG-ジパルミトイルグリカミド;PEG-ジステリルグリカミド;(l-[8’-(コレスタ-5-エン-3[ベータ]-オキシ)カルボキサミド-3’,6’-ジオキサオクタニル]カルバモイル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)(PEG-コレステロール);3,4-ジテトラデカオキシルベンジル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)エーテル(PEG-DMB)、及び1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)(DSPE-PEG)、及び1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-ポリ(エチレングリコール)-ヒドロキシル(DSPE-PEG-OH)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、PEG化脂質は、DMG-PEG、DSPE-PEG、DSPE-PEG-OH、又はそれらの組み合わせである。上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、少なくとも1つのPEG化脂質は、DMG-PEG2000、DSPE-PEG2000、DSPE-PEG2000-OH、DMG-PEG5000、DSPE-PEG5000、DSPE-PEG5000-OH、又はそれらの組み合わせである。上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、scFvは、LNPのPEG化脂質に化学的にコンジュゲートされるか又は共有結合により連結され、PEG化脂質コンジュゲートを形成する。上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、scFvが化学的にコンジュゲートされるか又は共有結合により連結されるPEG化脂質は、DSPE-PEGである。いくつかの実施形態では、scFvが化学的にコンジュゲートされるか又は共有結合により連結されるPEG化脂質は、DSPE-PEG2000である。いくつかの実施形態では、scFvが化学的にコンジュゲートされるか又は共有結合により連結されるPEG化脂質は、DSPE-PEG5000である。上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、約30%~約80%のモル百分率で存在する。いくつかの実施形態では、ステロールは、約20%~約50%のモル百分率で存在する。上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、非カチオン性脂質は、約2%~約20%のモル百分率で存在する。上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、少なくとも1つのPEG化脂質は、約2.1%~約10%のモル百分率で存在する。
【0025】
上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、scFvは、約0.02μg/μgのTNA~約0.1μg/μgのTNAの総量で存在する。
【0026】
上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、薬学的組成物は、パルミチン酸デキサメタゾンを更に含む。
【0027】
上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、LNPは、約10:1~約40:1の全脂質のTNAに対する比を有する。
【0028】
上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、
LNPは、約40nm~約120nmの範囲の直径を有する。
【0029】
上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、ナノ粒子は、約100nm未満の直径を有する。
【0030】
上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、
ナノ粒子は、約60nm~約80nmの直径を有する。
【0031】
上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、ceDNAは発現カセットを含み、発現カセットはプロモーター配列及び導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、発現カセットは、ポリアデニル化配列を含む。上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、ceDNAは、発現カセットの5’又は3’末端のいずれかに隣接する少なくとも1つの逆位末端反復(ITR)を含む。いくつかの実施形態では、発現カセットは、2つのITRに隣接し、2つのITRは、1つの5’ITR及び1つの3’ITRを含む。いくつかの実施形態では、発現カセットは、3’末端でITR(3’ITR)に連結される。上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、発現カセットは、5’末端でITR(5’ITR)に連結される。
【0032】
上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、少なくとも1つのITRは、AAV血清型に由来するITR、ガチョウウイルスのITRに由来するITR、B19ウイルスITRに由来するITR、又はパルボウイルスに由来する野生型ITRである。いくつかの実施形態では、当該AAV血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11及びAAV12からなる群から選択される。
【0033】
上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、5’ITR及び3’ITRのうちの少なくとも1つは、野生型AAV ITRである。
【0034】
上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、5’ITR及び3’ITRのうちの少なくとも1つは、修飾型ITR又は変異型ITRである。
【0035】
上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、5’ITR及び3’ITRは対称である。
【0036】
上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、5’ITR及び3’ITRは非対称である。
【0037】
上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、ceDNAは、5’ITRと発現カセットとの間にスペーサー配列を更に含む。
【0038】
上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、ceDNAは、3’ITRと発現カセットとの間にスペーサー配列を更に含む。上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、スペーサー配列は、長さが少なくとも5塩基対の長さである。
【0039】
上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、ceDNAは、ニック又はギャップを有する。
【0040】
上記の態様及び実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、ceDNAは、CELiD、DNAベースのミニサークル、MIDGE、ミニストリングDNA、発現カセットの5’及び3’末端にITRの2つのヘアピン構造を含むダンベル型の直鎖状二重鎖閉端DNA、又はdoggybone(商標)DNAである。
【0041】
いくつかの態様では、本開示は、対象におけるがんを治療する方法であって、本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれか1つの有効量の薬学的組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0042】
いくつかの態様では、本開示は、対象における腫瘍に治療用核酸(TNA)を送達するか、又は対象における腫瘍にTNAの濃度を増加させる方法であって、本明細書の態様及び実施形態のうちのいずれか1つの有効量の薬学的組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0043】
いくつかの態様では、本開示は、対象の肝臓に治療用核酸(TNA)を送達するか、又は対象の肝臓にTNAの濃度を増加させる方法であって、本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれか1つの有効量の薬学的組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、LNPは、細胞内に内在化される。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、LNPは、カチオン性脂質、ステロール又はその誘導体、非カチオン性脂質、又はPEG化脂質を含む。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、TNAは、脂質中に封入される。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、TNAは、ミニ遺伝子、プラスミド、ミニサークル、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、リボザイム、閉端(ceDNA)、ミニストリング、doggybone(商標)、プロテロメア閉端DNA、又はダンベル直鎖DNA、ダイサー基質dsRNA、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、非対称干渉RNA(aiRNA)、マイクロRNA(miRNA)、mRNA、tRNA、rRNA、DNAウイルスベクター、ウイルスRNAベクター、非ウイルスベクター及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態によれば、TNAは、ceDNAである。いくつかの実施形態によれば、ceDNAは、直鎖状二重鎖DNAである。いくつかの実施形態によれば、TNAは、mRNAである。いくつかの実施形態によれば、TNAは、siRNAである。いくつかの実施形態によれば、TNAは、プラスミドである。
【0045】
いくつかの実施形態によれば、LNPは、PEG化脂質を含み、PEG化脂質は、scFv(scFvポリペプチド)をコードするアミノ酸配列に連結される。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、薬学的組成物は、対象に投与される。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、対象は、TNAで封入されたLNPによる治療を必要とするヒト患者である。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、組成物は、LNP中のscFvの抗原標的への結合を介して、標的抗原を発現する細胞又は組織を標的とする。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、組成物は腫瘍細胞を標的とする。いくつかの実施形態によれば、腫瘍は固形腫瘍である。いくつかの実施形態によれば、腫瘍は血液腫瘍である。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、組成物は肝臓細胞を標的とする。
【0046】
上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、カチオン性脂質は、式(I)によって表される:
【0047】
【化10】
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、
R
1及びR
1’が、それぞれ独立して、任意選択的に置換された直鎖又は分岐鎖C
1~3アルキレンであり、
R
2及びR
2’が、それぞれ独立して、任意選択的に置換された直鎖又は分岐鎖C
1~6アルキレンであり、
R
3及びR
3’が、それぞれ独立して、任意選択的に置換された直鎖又は分岐鎖C
1~6アルキルであるか、
又は代替的に、R
2が、任意選択的に置換された分岐鎖C
1~6アルキレンである場合、R
2及びR
3が、それらの介在するN原子と一緒になって、4員~8員のヘテロシクリルを形成するか、
又は代替的に、R
2’が、任意選択的に置換された分岐鎖C
1~6アルキレンである場合、R
2’及びR
3’が、それらの介在するN原子と一緒になって、4員~8員のヘテロシクリルを形成し、
R
4及びR
4’が、それぞれ独立して、-CR
a、-C(R
a)
2CR
a、又は-[C(R
a)
2]
2CR
aであり、
R
aが、各出現に対して、独立してH又はC
1~3アルキルであるか、
又は代替的に、R
4が、-C(R
a)
2CR
a、又は-[C(R
a)
2]
2CR
aである場合、かつR
aがC
1~3アルキルである場合、R
3及びR
4が、それらの介在するN原子と一緒になって、4員~8員のヘテロシクリルを形成するか、
又は代替的に、R
4’が、-C(R
a)
2CR
a、又は-[C(R
a)
2]
2CR
aである場合、かつR
aがC
1~3アルキルである場合、R
3’及びR
4’が、それらの介在するN原子と一緒になって、4員~8員のヘテロシクリルを形成し、
R
5及びR
5’が、それぞれ独立して、水素、C
1~20アルキレン又はC
2~20アルケニレンであり、
R
6及びR
6’が、各出現に対して、独立してC
1~20アルキレン、C
3~20シクロアルキレン、又はC
2~20アルケニレンであり、
m及びnが、それぞれ独立して、1、2、3、4、及び5から選択される整数である。
【0048】
上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、カチオン性脂質は、式(II)によって表される:
【0049】
【化11】
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、
aが、1~20の範囲の整数であり、
bが、2~10の範囲の整数であり、
R
1が、存在しないか、又は(C
2~C
20)アルケニル、-C(O)O(C
2~C
20)アルキル、及び(C
2~C
20)アルキルで置換されたシクロプロピルから選択され、
R
2が、(C
2~C
20)アルキルである。
【0050】
上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、脂質は、式(V)によって表される:
【0051】
【化12】
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、
R
1及びR
1’が、それぞれ独立して、R
aから選択される1つ以上の基で任意選択的に置換された(C
1~C
6)アルキレンであり、
R
2及びR
2’が、それぞれ独立して、(C
1~C
2)アルキレンであり、
R
3及びR
3’が、それぞれ独立して、R
bから選択される1つ以上の基で任意選択的に置換された(C
1~C
6)アルキルであり、
又は代替的に、R
2及びR
3並びに/又はR
2’及びR
3’は、それらの介在するN原子と一緒になって、4員~7員のヘテロシクリルを形成し、
R
4及びR
4’が、それぞれ、-C(O)O-によって中断された(C
2~C
6)アルキレンであり、
R
5及びR
5’が、それぞれ独立して、(C
2~C
30)アルキル又は(C
2~C
30)アルケニルであり、これらのそれぞれが、任意選択的に-C(O)O-又は(C
3~C
6)シクロアルキルで中断され、
R
a及びR
bが、それぞれハロ又はシアノである。
【0052】
上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、カチオン性脂質は、式(XV)によって表される:
【0053】
【化13】
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、
R’が、存在しないか、水素、又はC
1~C
6アルキルであり、但し、R’が水素又はC
1~C
6アルキルである場合、R’、R
1、及びR
2が全て結合している窒素原子が、プロトン化されており、
R
1及びR
2が、それぞれ独立して、水素、C
1~C
6アルキル、又はC
2~C
6アルケニルであり、
R
3が、C
1~C
12アルキレン又はC
2~C
12アルケニレンであり、
R
4が、C
1~C
16非分岐アルキル、C
2~C
16非分岐アルケニル、又は
【0054】
【化14】
であり、式中、
R
4a及びR
4bが、それぞれ独立して、C
1~C
16非分岐アルキル又はC
2~C
16非分岐アルケニルであり、
R
5が、存在しないか、C
1~C
8アルキレン、又はC
2~C
8アルケニレンであり、
R
6a及びR
6bが、それぞれ独立して、C
7~C
16アルキル又はC
7~C
16アルケニルであり、但し、R
6a及びR
6b中の合わせた場合の炭素原子の総数が、15より大きく、
X
1及びX
2が、それぞれ独立して、-OC(=O)-、-SC(=O)-、-OC(=S)-、-C(=O)O-、
-C(=O)S-、-S-S-、-C(R
a)=N-、-N=C(R
a)-、-C(R
a)=NO-、-O-N=C(R
a)-、-C(=O)NR
a-、
-NR
aC(=O)-、-NR
aC(=O)NR
a-、-OC(=O)O-、-OSi(R
a)
2O-、-C(=O)(CR
a
2)C(=O)O-、又はOC(=O)(CR
a
2)C(=O)-であり、式中、
R
aが、各出現に対して、独立して、水素又はC
1~C
6アルキルであり、
nが、1、2、3、4、5、及び6から選択される整数である。
【0055】
上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、カチオン性脂質は、式(XX)によって表される:
【0056】
【化15】
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、
R’が、存在しないか、水素、又はC
1~C
3アルキルであり、但し、R’が水素又はC
1~C
3アルキルである場合、R’、R
1、及びR
2が全て結合している窒素原子が、プロトン化されており、
R
1及びR
2が、それぞれ独立して、水素又はC
1~C
3アルキルであり、
R
3が、C
3~C
10アルキレン又はC
3~C
10アルケニレンであり、
R
4が、C
1~C
16非分岐アルキル、C
2~C
16非分岐アルケニル、又は
【0057】
【化16】
であり、式中、
R
4a及びR
4bが、それぞれ独立して、C
1~C
16非分岐アルキル又はC
2~C
16非分岐アルケニルであり、
R
5が、存在しないか、C
1~C
6アルキレン、又はC
2~C
6アルケニレンであり、
R
6a及びR
6bが、それぞれ独立して、C
7~C
14アルキル又はC
7~C
14アルケニルであり、
Xが、-OC(=O)-、-SC(=O)-、-OC(=S)-、-C(=O)O-、-C(=O)S-、-S-S-、-C(R
a)=N-、
-N=C(R
a)-、-C(R
a)=NO-、-O-N=C(R
a)-、-C(=O)NR
a-、-NR
aC(=O)-、-NR
aC(=O)NR
a-、
-OC(=O)O-、-OSi(R
a)
2O-、-C(=O)(CR
a
2)C(=O)O-、又はOC(=O)(CR
a
2)C(=O)-であり、式中、
R
aが、各出現に対して、独立して、水素又はC
1~C
6アルキルであり、
nが、1、2、3、4、5、及び6から選択される整数である。
【0058】
上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、カチオン性脂質は、表2、表5、表6、表7、又は表8のいずれかの脂質から選択される。
【0059】
上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、カチオン性脂質は、以下の構造を有する脂質、
【0060】
【0061】
上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、カチオン性脂質は、以下の構造を有するMC3(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル-4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA若しくはMC3)、
【0062】
【0063】
上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ステロール又はその誘導体は、コレステロール又はベータ-シトステロールである。いくつかの実施形態によれば、非カチオン性脂質は、ジステアロイル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン(distearoyl-sn-glycero-phosphoethanolamine、DSPE)、ジステアロイルホスファチジルコリン(distearoylphosphatidylcholine、DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(dioleoylphosphatidylcholine、DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(dipalmitoylphosphatidylcholine、DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(dioleoylphosphatidylglycerol、DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(dipalmitoylphosphatidylglycerol、DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(dioleoyl-phosphatidylethanolamine、DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(palmitoyloleoylphosphatidylcholine、POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(palmitoyloleoylphosphatidylethanolamine、POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(dipalmitoyl phosphatidyl ethanolamine、DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(dimyristoylphosphoethanolamine、DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(distearoyl-phosphatidyl-ethanolamine、DSPE)、モノメチル-ホスファチジルエタノールアミン(例えば16-O-モノメチルPE)、ジメチル-ホスファチジルエタノールアミン(例えば16-O-ジメチルPE)、18-1-trans PE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジエタノールアミン(1-stearoyl-2-oleoyl-phosphatidyethanolamine、SOPE)、水素化大豆ホスファチジルコリン(hydrogenated soy phosphatidylcholine、HSPC)、卵ホスファチジルコリン(egg phosphatidylcholine、EPC)、ジオレオイルホスファチジルセリン(dioleoylphosphatidylserine、DOPS)、スフィンゴミエリン(sphingomyelin、SM)、ジミリストイルホスファチジルコリン(dimyristoyl phosphatidylcholine、DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(dimyristoyl phosphatidylglycerol、DMPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(distearoylphosphatidylglycerol、DSPG)、ジエルコイルホスファチジルコリン(dierucoylphosphatidylcholine、DEPC)、パルミトイルオレイオールホスファチジルグリセロール(palmitoyloleyolphosphatidylglycerol、POPG)、ジエライドイル-ホスファチジルエタノールアミン(dielaidoyl-phosphatidylethanolamine、DEPE)、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(1,2-dilauroyl-sn-glycero-3 -pho sphoethanolamine、DLPE);1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPHyPE);レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾレシチン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、卵スフィンゴミエリン(ESM)、セファリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、リン酸ジセチル、リゾホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。いくつかの実施形態によれば、非カチオン性脂質は、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、及びジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)からなる群から選択される。いくつかの実施形態によれば、PEG化脂質は、PEG-ジラウリルオキシプロピル;PEG-ジミリスチルオキシプロピル;PEG-ジパルミチルオキシプロピル、PEG-ジステアリルオキシプロピル;l-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(DMG-PEG);PEG-ジラウリルグリセロール;PEG-ジパルミトイルグリセロール;PEG-ジステリルグリセロール;PEG-ジラウリルグリカミド;PEG-ジミリスチルグリカミド;PEG-ジパルミトイルグリカミド;PEG-ジステリルグリカミド;(l-[8’-(コレスタ-5-エン-3[ベータ]-オキシ)カルボキサミド-3’,6’-ジオキサオクタニル]カルバモイル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)(PEG-コレステロール);3,4-ジテトラデカオキシルベンジル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)エーテル(PEG-DMB)、及びl,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)(DSPE-PEG)、及び1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-ポリ(エチレングリコール)-ヒドロキシル(DSPE-PEG-OH)からなる群から選択される。いくつかの実施形態によれば、PEG化脂質は、DMG-PEG、DSPE-PEG、DSPE-PEG-OH、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのPEG化脂質は、DMG-PEG2000、DSPE-PEG2000、DSPE-PEG2000-OH、又はそれらの組み合わせである。
【0064】
上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、scFvは、LNPのPEG化脂質に化学的にコンジュゲートされるか又は共有結合により連結され、PEG化脂質コンジュゲートを形成する。いくつかの実施形態によれば、scFvが化学的にコンジュゲートされるか又は共有結合により連結されるPEG化脂質は、DSPE-PEGである。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、scFvは、切断不可能なリンカーを介してLNPに共有結合により連結される。いくつかの実施形態によれば、切断不可能なリンカーは、マレイミド含有リンカーである。
【0065】
上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、scFvは、切断可能なリンカーを介してLNPに共有結合により連結される。
【0066】
上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、scFvは、ピリジルジスルフィド(PDS)含有リンカーを介してLNPに共有結合により連結される。
【0067】
上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、カチオン性脂質は、約30%~約80%のモル百分率で存在する。いくつかの実施形態によれば、ステロールは、約20%~約50%のモル百分率で存在する。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、非カチオン性脂質は、約2%~約20%のモル百分率で存在する。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのPEG化脂質は、約2.1%~約10%のモル百分率で存在する。いくつかの実施形態によれば、scFvポリペプチドは、約0.02μg/μgのTNA~約0.1μg/μgのTNAの総量で存在する。
【0068】
上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、薬学的組成物は、パルミチン酸デキサメタゾンを更に含む。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、LNPは、約10:1~約40:1の全脂質のTNAに対する比を有する。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、LNPは、約40nm~約120nmの範囲の直径を有する。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ナノ粒子は、約100nm未満の直径を有する。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ナノ粒子は、約60nm~約80nmの直径を有する。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ceDNAは、発現カセットを含み、発現カセットは、プロモーター配列及び導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態によれば、発現カセットはポリアデニル化配列を含む。
【0069】
上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ceDNAは、発現カセットの5’又は3’末端のいずれかに隣接する少なくとも1つの逆位末端反復(ITR)を含む。いくつかの実施形態によれば、発現カセットは、2つのITRに隣接し、2つのITRは、1つの5’ITR及び1つの3’ITRを含む。いくつかの実施形態によれば、発現カセットは、3’末端でITR(3’ITR)に連結される。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、発現カセットは、5’末端でITR(5’ITR)に連結される。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのITRは、AAV血清型に由来するか、ガチョウウイルスのITRに由来するか、B19ウイルスITRに由来するITR、又はパルボウイルスに由来する野生型ITRである。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、AAV血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11及びAAV12から選択される。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、5’ITR及び3’ITRのうちの少なくとも1つは、野生型AAV ITRである。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、5’ITR及び3’ITRのうちの少なくとも1つは、修飾型ITR又は変異型ITRである。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、5’ITR及び3’ITRは対称である。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、5’ITR及び3’ITRは非対称である。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ceDNAは、5’ITRと発現カセットとの間にスペーサー配列を更に含む。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ceDNAは、3’ITRと発現カセットとの間にスペーサー配列を更に含む。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、スペーサー配列は、長さが少なくとも5塩基対の長さである。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ceDNAは、ニック又はギャップを有する。上記の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ceDNAは、CELiD、DNAベースのミニサークル、MIDGE、ミニストリングDNA、発現カセットの5’及び3’末端にITRの2つのヘアピン構造を含むダンベル型の直鎖状二重鎖閉端DNA、又はdoggybone(商標)DNAである。
【0070】
別の態様によれば、本開示は、治療する方法を特徴とし、例えば
【0071】
別の態様によれば、本開示は、対象の腫瘍に治療用核酸(TNA)を送達するか、又は対象の腫瘍にTNAの濃度を増加させる方法であって、本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれか1つの有効量の薬学的組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
上記に簡単に要約され、以下により詳細に論じられる本開示の実施形態は、添付の図面に描かれた本開示の例示的な実施形態を参照することによって理解することができる。しかしながら、添付の図面は、本開示の典型的な実施形態のみを示し、したがって、本開示は他の等しく有効な実施形態を認めることができるため、範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【
図1】
図1A~
図1Fは、トラスツズマブ由来α-HER2 scFvが、明確なHER2二特異的な膜標的化及び内在化をインビトロで示したことを示す。Alexa-fluor 488-(AF488)標識抗HER2 scFvを使用して、SkBR3(
図1A)及びSkOV3(
図1B)Her2発現(HER2+)細胞株においてHER2受容体結合を示したが、HER2受容体を発現しない(HER2-)、MCF7細胞(
図1C)ではHer2受容体結合を示さなかった。第2の免疫蛍光標識(pHrhodo)を使用して、リガンドの内在化を実証した。
図1D~1Fに示されるように、HER2受容体を発現するSkBR3及びSkOV3細胞は、リガンド内在化を示したが(
図1D及び
図1E)、MCF7 HER2細胞株は示さなかった(
図1F)。
【
図2A】チオールベースの架橋を使用するコンジュゲーションの例示的な一次経路の概略図を示す。
【
図2B】チオールベースの架橋を使用するコンジュゲーションの例示的な一次経路の概略図を示す。
【
図3A】scFv-LNPコンジュゲーションプロセスが優れたコンジュゲーション収率及びLNP粒子安定性を実証したことを示す。最初のTCEP還元、新鮮なMAL-LNP(マレイミドコンジュゲートLNP)調製、0.5%MAL-PEG2K、scFvを含めたコンジュゲーションプロセスの結果:0.5、0.25、0.1、及び0.05の等モル当量を
図3Aに示す。次に、PEG鎖長をPEG5Kまで増加させ、透析ステップを行って、粒径及び安定性を破壊することなく未反応のscFvを除去した。結果を
図3Bに示す。
【
図3B】scFv-LNPコンジュゲーションプロセスが優れたコンジュゲーション収率及びLNP粒子安定性を実証したことを示す。最初のTCEP還元、新鮮なMAL-LNP(マレイミドコンジュゲートLNP)調製、0.5%MAL-PEG2K、scFvを含めたコンジュゲーションプロセスの結果:0.5、0.25、0.1、及び0.05の等モル当量を
図3Aに示す。次に、PEG鎖長をPEG5Kまで増加させ、透析ステップを行って、粒径及び安定性を破壊することなく未反応のscFvを除去した。結果を
図3Bに示す。
【
図4A】LNPサイズ及び封入効率が、コンジュゲーションプロセスによるscFvコンジュゲーション後(±10nm)に維持されたことを示すグラフである。
【
図4B】LNPサイズ及び封入効率が、コンジュゲーションプロセスによるscFvコンジュゲーション後(±10nm)に維持されたことを示すグラフである。
【
図5】マレイミドコンジュゲーションプロセスが強固なコンジュゲーションをもたらしたことを示す。
【
図6A】0.5%DSPE対照LNP(
図6B)ではなく、Tras-scFvコンジュゲートLNP(
図6A)のみがHER2結合を示したことを示すグラフであり、それによってLNP上のリガンド機能が確認された。
【
図6B】0.5%DSPE対照LNP(
図6B)ではなく、Tras-scFvコンジュゲートLNP(
図6A)のみがHER2結合を示したことを示すグラフであり、それによってLNP上のリガンド機能が確認された。
【
図7】マレイミドコンジュゲートLNP(MAL-LNP)が、Her2特異的な増強された細胞取り込みを実証したことを示し、具体的には、コンジュゲートTras-scFv Lipid A LNP(mCherry)の取り込みがHER2によって媒介されたことを実証している。
【
図8A】LNP表面のリガンド提示が生物活性に有意に影響を及ぼしたことを示す。
図8Aのグラフは、細胞生存率に対して正規化した、PEG鎖長が2000 Da(PEG2K)又は5000 Da(PEG5K)のいずれかであったマレイミドコンジュゲートLNPにおけるLNP取り込み(mCherry)を比較する。
図8Aに示すように、PEG5Kを有するマレイミドコンジュゲートLNPは、LNPの細胞取り込みによって評価したところ、より大きな生物活性を示した。
図8Bのグラフは、(PEG5Kにコンジュゲートした)マレイミド濃度が0.5%~1.25%に増加するにつれて、LNP取り込み(mCherry)の用量依存的減少が観察されたことを示す。
【
図8B】LNP表面のリガンド提示が生物活性に有意に影響を及ぼしたことを示す。
図8Aのグラフは、細胞生存率に対して正規化した、PEG鎖長が2000 Da(PEG2K)又は5000 Da(PEG5K)のいずれかであったマレイミドコンジュゲートLNPにおけるLNP取り込み(mCherry)を比較する。
図8Aに示すように、PEG5Kを有するマレイミドコンジュゲートLNPは、LNPの細胞取り込みによって評価したところ、より大きな生物活性を示した。
図8Bのグラフは、(PEG5Kにコンジュゲートした)マレイミド濃度が0.5%~1.25%に増加するにつれて、LNP取り込み(mCherry)の用量依存的減少が観察されたことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本開示は、治療用核酸(TNA)を含む脂質ナノ粒子(LNP)組成物(例えば、薬学的組成物)であって、LNPが、LNPに連結された一本鎖可変断片(scFv)を含み、scFvが、細胞(例えば、腫瘍細胞)の表面に存在する抗原を対象とする、脂質ナノ粒子組成物を提供する。任意のscFvがLNPに連結され得、scFvが対象とする抗原を発現する任意の細胞又は組織を標的とするのに有用であることは、本開示の有利な特徴である。本明細書に記載のLNP組成物は、有利なことに、粒径及び安定性への影響が最小限である効率的な共有結合によるコンジュゲーションを提供する。
【0074】
一態様によれば、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)、治療用核酸(TNA)、及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物であって、LNPが、LNPに連結された一本鎖可変断片(scFv)を含み、scFvが、細胞の表面に存在する抗原を対象とする、薬学的組成物を提供する。LNPへのscFvのマレイミドコンジュゲーションが、LNPへの強固なコンジュゲーションをもたらし、重要なことに、LNPのサイズ及び完全性を維持したことは、本開示の知見である。いくつかの実施形態によれば、scFVは、LNPに共有結合により連結される。本明細書で使用される場合、「共有結合」という用語は、原子間の電子対の共有を伴う化学結合を指す。いくつかの実施形態によれば、scFVは、LNPに化学的にコンジュゲートされる。本明細書で使用される場合、コンジュゲーション化学又はシステムを指す場合の「コンジュゲーション」という用語は、複数の原子からの非局在化電子を有するp軌道を重複させる系を指す。いくつかの実施形態によれば、scFVは、切断不可能なリンカーを介してLNPに化学的にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態によれば、切断不可能なリンカーは、マレイミド含有リンカーである。いくつかの実施形態によれば、scFVは、切断可能なリンカーを介してLNPに化学的にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態によれば、切断可能なリンカーは、ピリジルジスルフィド(PDS)含有リンカーである。いくつかの実施形態によれば、scFVは、トランスグルタミナーゼ媒介性コンジュゲーションを介してLNPに連結される。本明細書で使用される場合、「トランスグルタミナーゼ媒介性コンジュゲーション」は、微生物トランスグルタミナーゼ(MTGase)によって媒介される、本明細書で定義されるコンジュゲーションを指す。MTGaseは、リンカー内の第一級アミンと、抗体又は一本鎖可変断片(scFv)の特異的グルタミン残基の側鎖、例えば、脱グリコシル化キメラ、ヒト化IgG1及びヒトIgG1内のグルタミン295との間の部位特異的修飾(すなわち、ペプチド転移)を触媒する(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Anami Y.,Tsuchikama K.(2020)Transglutaminase-Mediated Conjugations.In:Tumey L.(eds)Antibody-Drug Conjugates.Methods in Molecular Biology,vol 2078.Humana,New York,NY.を参照されたい)。この方法は、アスパラギン297の突然変異、グルタミン含有ペプチドタグの挿入、及び分岐リンカーの使用によって実施することができる。そのような修飾は、コンジュゲーションプロセスを容易にし、コンジュゲーション部位及び薬物対抗体比(DAR)を調整する際に柔軟性をもたらす(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Yasuaki Anami and Kyoji Tsuchikama「Transglutaminase-Mediated Conjugations」in Methods in Molecular Biology,Antibody Drug Conjugates (2020))。いくつかの実施形態では、コンジュゲーションは、グルタミン含有ペプチドタグの挿入及び/又は分岐リンカーの使用によって増強することができる。一実施形態では、グルタミン含有ペプチドタグは、LLQGA(Leu-Leu-Gln-Glu-Ala又は配列番号4)である。いくつかの実施形態では、グルタミン含有ペプチドタグは、配列番号4を含む。いくつかの実施形態では、グルタミン含有ペプチドタグは、配列番号4からなる。
【0075】
更なる利点として、本明細書に記載のLNPは、治療用核酸のより効率的な送達、より良好な忍容性及び改善された安全性プロファイルを提供する。本明細書中に記載する治療用核酸脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、ウイルスカプシド内の空間によって課されるパッケージングの制約がないため、理論的には、治療用核酸脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)の唯一のサイズ制限は、宿主細胞のDNA複製効率に存在する。本明細書に記載及び例示されるように、いくつかの実施形態によれば、治療用核酸は、二本鎖DNA(例えば、ceDNA)のような治療用核酸(TNA)である。本明細書に記載及び例示されるように、いくつかの実施形態によれば、治療用核酸は、ceDNAである。これも本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態によれば、治療用核酸は、mRNAである。
【0076】
I.定義
本明細書で別途定義されない限り、本出願に関連して使用される科学的及び技術的用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。本開示は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、及び試薬などに限定されず、そのようなものとして変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、単に特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲を限定することを意図されない。免疫学及び分子生物学における一般用語の定義は、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy,19th Edition,Merck Sharp & Dohme Corp.により発行,2011(ISBN 978-0-911910-19-3)、Robert S.Porter et al.(eds.),Fields Virology,6th Edition,published by Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,PA,USA(2013),Knipe,D.M.and Howley,P.M.(ed.),The Encyclopedia of Molecular Cell Biology and Molecular Medicine,published by Blackwell Science Ltd.,1999-2012 (ISBN 9783527600908)、及びRobert A.Meyers(編),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference,VCH Publishers,Inc.により発行,1995(ISBN 1-56081-569-8)、Immunology by Werner Luttmann,Elsevierにより発行,2006、Janeway’s Immunobiology,Kenneth Murphy,Allan Mowat,Casey Weaver(編),Taylor & Francis Limited,2014(ISBN 0815345305,9780815345305)、Lewin’s Genes XI,Jones & Bartlett Publishersにより発行,2014(ISBN-1449659055)、Michael Richard Green and Joseph Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,USA(2012)(ISBN 1936113414)、Davis et al.Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier Science Publishing,Inc.,New York,USA (2012)(ISBN 044460149X)、Laboratory Methods in Enzymology:DNA,Jon Lorsch(編)Elsevier,2013(ISBN 0124199542)、Current Protocols in Molecular Biology(CPMB),Frederick M.Ausubel(編),John Wiley and Sons,2014(ISBN047150338X,9780471503385)、Current Protocols in Protein Science(CPPS),John E.Coligan(編),John Wiley and Sons,Inc.,2005、及びCurrent Protocols in Immunology(CPI)(John E.Coligan,ADA M Kruisbeek,David H Margulies,Ethan M Shevach,Warren Strobe,(編)John Wiley and Sons,Inc.,2003(ISBN0471142735,9780471142737)に見出すことができ、これらの内容は全て、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0077】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が別途明らかに示さない限り、複数の指示対象を含む。
【0078】
略語「例えば(e.g.)」は、ラテン語のexempli gratiaに由来し、本明細書では非限定例を示すように使用される。したがって、略語「例えば(e.g.)」は、「例えば(for example)」と同義である。
【0079】
代替案(例えば、「又は」)の使用は、代替案のいずれか一方、両方、又はそれらの任意の組み合わせを意味すると理解されたい。
【0080】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、量、時間的持続時間などの測定可能な値を指す場合、開示された方法を実施するのに適切であるように指定の値から±20%又は±10%、より好ましくは±5%、更により好ましくは±1%、更により好ましくは±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0081】
本明細書で使用される場合、任意の濃度範囲、百分率範囲、比率範囲、又は整数範囲は、別途明記しない限り、列挙された範囲内の任意の整数の値、及び適切な場合にはその端数(整数の10分の1及び100分の1など)を含むと理解されるべきである。
【0082】
本明細書で使用される場合、「含む(comprise)」、「含む(comprising)」、及び「含む(comprises)」、及び「含む(comprised of)」は、「含む(include)」、「含む(including)」、「含む(includes)」、又は「含有する(contain)」、「含有する(containing)」、「含有する(contains)」という用語と同義であることを意味し、例えば、構成成分に続くものの存在を指定する包括的又はオープンエンドの用語であり、当該技術分野において既知であるか、又はそこに開示されている、追加の、引用されていない構成成分、特徴、エレメント、メンバー、ステップの存在を除外又は排除しない。
【0083】
「からなる」という用語は、実施形態の説明において列挙されていないいずれのエレメントも除いた、本明細書に記載される組成物、方法、プロセス、及びそれらのそれぞれの構成成分を指す。
【0084】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という用語は、所与の実施形態に必要なエレメントを指す。この用語は、本開示のその実施形態の基本的及び新規又は機能的な特徴に実質的に影響を及ぼさない追加の要素の存在を許容する。
【0085】
本明細書で使用される場合、「など」、「例えば」などの用語は、例示的な実施形態を指すことを意図しており、本開示の範囲を限定するものではない。
【0086】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様又は同等の方法及び材料を、本開示の試験のための実施において使用することができるが、好適な材料及び方法は、本明細書に記載される。
【0087】
本明細書で使用される場合、「投与」、「投与する」という用語及びその変形語は、組成物又は薬剤(例えば、核酸、特にceDNA)を対象に導入することを指し、1つ以上の組成物又は薬剤の同時かつ連続的な導入を含む。「投与」は、例えば、治療、薬物動態、診断、研究、プラセボ、及び実験方法を指し得る。「投与」は、インビトロ及びエクスビボ治療も包含する。組成物又は薬剤の対象への導入は、経口、肺、鼻腔内、非経口(静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下)、直腸、リンパ管内、腫瘍内、又は局所を含む任意の好適な経路による。投与には、自己管理及び他者による投与が含まれる。投与は、任意の好適な経路によって実行され得る。好適な投与経路は、組成物又は薬剤がその意図された機能を遂行することを可能にする。例えば、好適な経路が静脈内である場合、組成物は、組成物又は薬剤を対象の静脈に導入することによって投与される。
【0088】
「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書の他の箇所に更に記載されるように、任意の天然に存在する、組換え、修飾又は操作された免疫グロブリン若しくは免疫グロブリン様構造又はその抗原結合断片若しくは部分、又はその誘導体を包含する。したがって、この用語は、標的抗原に特異的に結合する免疫グロブリン分子を指し、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、及び二特異性抗体を含む。インタクトな抗体は、一般に、少なくとも2つの全長重鎖及び2つの全長軽鎖を含むが、いくつかの事例では、重鎖のみを含み得るラクダ科動物において天然に存在する抗体など、より少ない鎖を含み得る。抗体は、単一の供給源のみに由来し得るか、又は「キメラ」であり得、すなわち、抗体の異なる部分は、2つの異なる抗体に由来し得る。抗体、又はその抗原結合部分は、組換えDNA技法によって、又はインタクトな抗体の酵素的若しくは化学的切断によって、ハイブリドーマにおいて産生され得る。抗体という用語は、本明細書で使用される場合、モノクローナル抗体、二特異性抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書では「抗体模倣物」と呼ばれることもある)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体融合体(本明細書では「抗体コンジュゲート」と呼ばれることもある)をそれぞれ含む。
【0089】
抗体の「抗原結合部分」又は「抗原結合断片」という用語は、本明細書で使用される場合、抗原(例えば、TGFβ1)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1以上の断片を指すことを意味する。抗原結合部分としては、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、任意の天然に存在する、酵素的に入手可能な、合成の、又は遺伝子操作されたポリペプチド又は糖タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗体の抗原結合部分は、例えば、任意の好適な標準的技法、例えば、タンパク質分解消化又は抗体可変ドメイン及び任意選択的に定常ドメインをコードするDNAの操作及び発現を伴う組換え遺伝子操作技法を使用して、完全抗体分子から誘導され得る。抗原結合部分の非限定的な例としては、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片、(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインからなるFv断片;(v)一本鎖Fv(scFv)分子(例えば、Bird et al.(1988)SCIENCE 242:423-426、及びHuston et al.(1988)PROC.NAT’L.ACAD.SCI.USA85:5879-5883を参照されたい)、(vi)dAb断片(例えば、Ward et al.(1989)NATURE 341:544-546)、並びに(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば、単離された相補性決定領域(CDR))が挙げられる。ダイアボディ等の他の形態の一本鎖抗体もまた、包含される。抗体の抗原結合部分という用語は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体定常ドメイン1(CH1)、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体軽鎖定常ドメイン(CL)及びリンカーを含み、当該抗体ドメイン及び当該リンカーがN末端からC末端方向に以下の順序:a)VH-CH1-リンカー-VL-CL、b)VL-CL-リンカー-VH-CH1、c)VH-CL-リンカー-VL-CH1又はd)VL-CH1-リンカー-VH-CLのうちの1つを有し、当該リンカーが少なくとも30アミノ酸、好ましくは32~50アミノ酸のポリペプチドである、「scFab」としても知られる「単鎖Fab断片」を含む。
【0090】
本明細書中で使用される場合、「一本鎖可変断片」又は「scFv」という用語は、VH::VLヘテロ二量体を形成するために共有結合により連結された免疫グロブリンの重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。重鎖(VH)及び軽鎖(VL)は、直接結合するか、又はVHのN末端をVLのC末端と、若しくはVHのC末端をVLのN末端と接続するペプチドコードリンカー(例えば、10、15、20、25アミノ酸)によって結合する。リンカーは、通常、柔軟性のためにグリシンが豊富であり、溶解性のためにセリン又はスレオニンが豊富である。定常領域の除去及びリンカーの導入にもかかわらず、scFvタンパク質は、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。一本鎖Fvポリペプチド抗体は、Huston,et al.(Proc.Nat.Acad.Sci.USA,85:5879-5883,1988)によって記載されているように、VH及びVLコード配列を含む核酸から発現させることができる。米国特許第5,091,513号、同第5,132,405号及び同第4,956,778号;並びに米国特許出願公開第20050196754号及び同第20050196754号も参照されたい。いくつかの実施形態によれば、Fab’に由来するscFvが使用されてもよい(抗体からの代わりに、例えば、Fabライブラリーから得られた)。一実施形態において、scFvは、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)に結合する。
【0091】
本明細書で使用される場合、「抗原」という用語は、免疫応答を引き起こす分子を指すことを意味する。この免疫応答は、抗体産生、又は特定の免疫学的にコンピテントな細胞の活性化のいずれか、又はその両方を含み得る。当業者は、実質的に全てのタンパク質又はペプチドを含む任意の高分子が抗原として機能し得ることを理解するであろう。更に、抗原は、組換えDNA又はゲノムDNAに由来し得る。当業者は、免疫応答を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列又は部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNAが、したがって、その用語が本明細書で使用される場合、「抗原」をコードすることを理解するであろう。更に、当業者は、抗原が遺伝子の全長ヌクレオチド配列によってのみコードされる必要はないことを理解するであろう。更に、当業者は、抗原が「遺伝子」によってコードされる必要が全くないことを理解するであろう。抗原は、生成、合成され得るか、又は生物試料に由来し得る。そのような生物試料としては、組織試料、腫瘍試料、細胞又は生体液が挙げられ得るが、これらに限定されない。一実施形態では、抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)又は腫瘍特異的抗原(TSA)である。一実施形態では、TAA又はTSAは、グリオーマ関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、チログルビリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼリバーストランスクリプターゼ、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異的抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、HER2/neu、サバイビン及びテロメラーゼ、前立腺癌腫腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン増殖因子(IGF)、IGF-II、IGF-I受容体及びメソテリン、EphA2、HER2、GD2、グリピカン-3、5T4、8H9、αvβ6インテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CA9、CD19、CD20、CD22、カッパ軽鎖、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、ERBB3、ERBB4、ErbB3/4、FAP、FAR、FBP、胎児AchR、葉酸受容体a、GD2、GD3、HLA-AI MAGE A1、HLA-A2、IL11Ra、IL13Ra2、KDR、Lambda、Lewis-Y、MCSP、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSC1、PSMA、ROR1、SURVIVIN、TAG72、TEM1、TEM8、VEGRR2、HMW-MAA及びVEGF受容体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、TAA又はTSAは、フィブロネクチン、テネイシン、又は腫瘍の壊死領域の癌胎児性変異体などの腫瘍の細胞外マトリックス内に存在する抗原である。いくつかの実施形態では、TAA又はTSAは、腫瘍細胞において発現又は過剰発現される任意の膜タンパク質又はバイオマーカーであり、インテグリン(例えば、インテグリンαvβ3、α5β1)、EGF受容体ファミリー(例えば、EGFR2、Erbb2/HER2/neu、Erbb3、Erbb4)、プロテオグリカン(例えば、ヘパラン硫酸プロテオグリカン)、ジシアロガングリオシド(例えば、GD2、GD3)、B7-H3(aka CD276)、がん抗原125(CA-125)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、血管内皮増殖因子受容体1及び2(VEGFR-1、VEGFR-2)、CD52、癌胎児性抗原(CEA)、腫瘍関連糖タンパク質(例えば、TAG-72)、分化抗原群19(CD19)、CD20、CD22、CD30、CD33、CD40、CD44、CD74、CD152、ムチン1(MUC1)、腫瘍壊死因子受容体(例えば、TRAIL-R2)、インスリン様増殖因子受容体、葉酸受容体a、膜貫通糖タンパク質NMB(GPNMB)、C-Cケモカイン抗原受容体(例えば、CCR4)、前立腺特異的膜受容体(PSMA)、受容体d’origine nantais(RON)受容体、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)、並びに他の腫瘍特異的受容体又は抗原が挙げられるが、これらに限定されない、腫瘍細胞において発現又は過剰発現される任意の膜タンパク質又はバイオマーカーである。
【0092】
一実施形態では、抗原は、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)である。
【0093】
本明細書で使用される場合、「抗治療用核酸免疫応答」、「抗転移ベクター免疫応答」、「治療用核酸に対する免疫応答」、「転移ベクターに対する免疫応答」などの句は、その起源がウイルス性又は非ウイルス性の治療用核酸に対する任意の望ましくない免疫応答を指すことを意味する。いくつかの実施形態では、望ましくない免疫応答は、ウイルス転移ベクター自体に対する抗原特異的免疫応答である。いくつかの実施形態では、免疫応答は、二本鎖DNA、一本鎖RNA、又は二本鎖RNAであり得る転移ベクターに特異的である。他の実施形態では、免疫応答は、転移ベクターの配列に特異的である。他の実施形態では、免疫応答は、転移ベクターのCpG含有量に特異的である。
【0094】
本明細書で使用される場合、「水溶液」という用語は、全体又は一部に水を含む組成物を指すことを意味する。
【0095】
本明細書で使用される場合、「塩基」には、プリン及びピリミジンが含まれ、それらには、天然化合物のアデニン、チミン、グアニン、シトシン、ウラシル、イノシン、及び天然類似体、並びにプリン及びピリミジンの合成誘導体が更に含まれ、それらには、アミン、アルコール、チオール、カルボキシレート、及びアルキルハライドなどであるがこれらに限定されない新しい反応基を配置する修飾が含まれるが、これらに限定されない。
【0096】
本明細書で使用される場合、「担体」と及び「賦形剤」という用語は、任意かつ全ての溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイドなどを含むことを意味する。薬学的に活性な物質に対するそのような媒質及び薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。補充的活性成分を組成物に組み込むこともできる。「薬学的に許容される」という語句は、宿主に投与された場合に、毒性反応、アレルギー性反応、又は同様の不都合な反応を生じない分子実体及び組成物を指す。
【0097】
本明細書で使用される場合、「ceDNA」という用語は、合成又はその他の非ウイルス遺伝子導入のためのカプシド不含閉端直鎖状二本鎖(double stranded、ds)二重鎖DNAを指すことを意味する。いくつかの実施形態によれば、ceDNAは、閉端直鎖状二重鎖(closed-ended linear duplex、CELiD)CELiD DNAである。いくつかの実施形態によれば、ceDNAは、DNAベースのミニサークルである。いくつかの実施形態によれば、ceDNAは、最小限の免疫学的に定義された遺伝子発現(minimalistic immunological-defined gene expression、MIDGE)ベクターである。いくつかの実施形態によれば、ceDNAは、ミニスタリングDNAである。いくつかの実施形態によれば、ceDNAは、発現カセットの5’及び3’末端にITRの2つのヘアピン構造を含むダンベル型の直鎖状二重鎖閉端DNAである。いくつかの実施形態によれば、ceDNAは、doggybone(商標)DNAである。ceDNAの詳細な説明は、2017年3月3日に出願された国際特許出願PCT/US2017/020828号に記載されており、その全体の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。細胞ベースの方法を使用して様々な逆位末端反復(inverted terminal repeat、ITR)配列及び構成を含むceDNAの産生のための特定の方法は、2018年9月7日に出願された国際特許出願第US18/49996号及び2018年12月6日に出願された同第US2018/064242号の実施例1に記載されており、その各々は、その全体の参照により本明細書に組み込まれる。様々なITR配列及び構成を含む合成ceDNAベクターの産生のための特定の方法は、例えば、2019年1月18日に出願された国際出願第PCT/US2019/14122号に記載されており、その全容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0098】
本明細書で使用される場合、「閉端DNAベクター」という用語は、少なくとも1つの共有結合性閉端を有し、ベクターの少なくとも一部が分子内二重鎖構造を有する、カプシド不含DNAベクターを指す。
【0099】
本明細書で使用される場合、「ceDNAベクター」及び「ceDNA」という用語は、交換可能に使用され、少なくとも1つの末端パリンドロームを含む閉端DNAベクターを指す。いくつかの実施形態では、ceDNAは、2つの共有結合性閉端を含む。
【0100】
本明細書で使用される場合、「ceDNA-バクミド」という用語は、E.coliにおいてプラスミドとして伝播することができる分子間二重鎖としてceDNAゲノムを含み、それによりバキュロウイルスのシャトルベクターとして作動し得る、感染性バキュロウイルスゲノムを指すことを意味する。
【0101】
本明細書で使用される場合、「ceDNA-バキュロウイルス」という用語は、バキュロウイルスゲノム内の分子間二重鎖としてceDNAゲノムを含むバキュロウイルスを指すことを意味する。
【0102】
本明細書で使用される場合、「ceDNA-バキュロウイルス感染昆虫細胞」及び「ceDNA-BIIC」という用語は、交換可能に使用され、ceDNA-バキュロウイルスに感染した無脊椎動物宿主細胞(昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)が挙げられるが、これに限定されない)を指すことを意味する。
【0103】
本明細書で使用される場合、「ceDNAゲノム」という用語は、少なくとも1つの逆位末端反復(ITR)領域を更に組み込む発現カセットを指すことを意味する。ceDNAゲノムは、1つ以上のスペーサー領域を更に含み得る。いくつかの実施形態では、ceDNAゲノムは、DNAの分子間二重鎖ポリヌクレオチドとして、プラスミド又はウイルスゲノムに組み込まれる。
【0104】
本明細書で使用される場合、「DNA調節配列」、「制御エレメント」、及び「調節エレメント」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター、タンパク質分解シグナルなどの転写及び翻訳制御配列を指すことを意味し、これらは非コード配列(例えば、DNA標的化RNA)又はコード配列(例えば、部位特異的修飾ポリペプチド若しくはCas9/Csn1ポリペプチド)の転写を提供及び/若しくは調節し、かつ/又はコードされたポリペプチドの翻訳を調節する。
【0105】
本明細書で使用される場合、「末端反復」又は「TR」という用語は、少なくとも1つの最小限必要な複製起源、及びパリンドロームヘアピン構造を含む領域を含む、任意のウイルス又は非ウイルス末端配列又は合成配列を含む。Rep結合配列(「RBS」又はRep結合エレメント(RBE)とも称される)及び末端分解部位(「TRS」)は、一緒にAAVの「最小限必要な複製起源」を構成し、したがって、TRは、少なくとも1つのRBS及び少なくとも1つのTRSを含む。ポリヌクレオチド配列の所与のストレッチ内で互いの逆相補体であるTRは、典型的に、各々「逆位末端反復」又は「ITR」と称される。ウイルスの文脈において、ITRは、複製、ウイルス粒子及びDNAのパッケージング、DNAの組み込み、並びにゲノム及びプロウイルスのレスキューを媒介するのに重要な役割を果たす。全長にわたって逆相補体(パリンドローム)ではないTRは、依然としてITRの従来の機能を遂行することができ、したがって、ITRという用語は、宿主細胞内の複製を媒介することができるウイルス又は非ウイルスAAVベクター中のTRを指すために使用される。複合AAVベクター構成中、3つ以上のITR又は非対称ITR対が存在し得ることは、当業者によって理解されるであろう。
【0106】
「ITR」は、1つ以上の望ましい機能的配列(例えば、パリンドローム配列、RBS)を含むオリゴヌクレオチドのセットを使用して人工的に合成することができる。ITR配列は、AAV ITR、人工の非AAV ITR、又はウイルス性AAV ITRに物理的に由来するITR(例えば、ウイルスゲノムから除去されたITR断片)であり得る。例えば、ITRは、パルボウイルス及びディペンドウイルス(例えば、イヌパルボウイルス、ウシパルボウイルス、マウスパルボウイルス、ブタパルボウイルス、ヒトパルボウイルスB-19)を包含するParvoviridae科に由来し得るか、又はSV40複製の起源として役立つSV40ヘアピンは、切断、置換、欠失、挿入、及び/若しくは付加によって更に修飾され得る、ITRとして使用され得る。Parvoviridae科ウイルスは、2つの亜科:脊椎動物に感染するParvovirinae及び無脊椎動物に感染するDensovirinaeからなる。ディペンドパルボウイルスは、ヒト、霊長類、ウシ、イヌ、ウマ、及びヒツジ種を含むが、これらに限定されない脊椎動物宿主における複製が可能である、アデノ随伴ウイルス(AAV)のウイルスファミリーを含む。典型的には、ITR配列は、野生型、「doggy bone」及び「ダンベル型」、対称型又は非対称型ITR配向の構成で、AAVだけでなく、パルボウイルス、レンチウイルス、ガチョウウイルス、B19に由来することができる。ITRは典型的にはAAVベクターの5’及び3’末端の両方に存在するが、ITRは直鎖状ベクターの一方の末端にのみ存在することができる。例えば、ITRは、5’末端にのみ存在することができる。他のいくつかのケースでは、ITRは合成AAVベクターの3’末端にのみ存在することができる。本明細書では便宜上、合成AAVベクター中の発現カセットに対して5’(その上流)に位置するITRは、「5’ITR」又は「左ITR」と称され、ベクター又は合成AAV中の発現カセットに対して3’(その下流)に位置するITRは、「3’ITR」又は「右ITR」と称される。
【0107】
本明細書で使用される場合、「野生型ITR」又は「WT-ITR」は、例えば、Rep結合活性及びRepニッキング能力を維持する、AAVゲノム又は他のディペンドウイルスにおける天然に存在するITR配列の配列を指す。任意のAAV血清型からのWT-ITRのヌクレオチド配列は、遺伝コード又はドリフトの縮重に起因して天然に存在する正準配列とわずかに異なる場合があり、したがって本明細書における使用のために包含されるWT-ITR配列は、天然に存在する変化(例えば、複製エラー)の結果としてWT-ITR配列を含む。
【0108】
本明細書で使用される場合、「実質的に対称なWT-ITR」又は「実質的に対称なWT-ITR対」という用語は、全長にわたって逆相補配列を有する両野生型ITRである合成AAVベクター内の一対のWT-ITRを指す。例えば、変化が配列の物理的及び機能的特性並びに全体的な三次元構造(二次元及び三次元構造体)に影響を及ぼさない限り、天然に存在する正準配列から逸脱する1つ以上のヌクレオチドを有する場合でも、ITRが野生型の配列であるとみなすことができる。いくつかの態様では、逸脱するヌクレオチドは、保存的配列変化を表す。非限定的な一例として、配列は、正準配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性(例えば、デフォルト設定でBLASTを使用して測定される場合)を有し、またそれらの三次元構造が幾何学的空間で同じ形状になるように、他のWT-ITRに対して対称な三次元空間構成を有する。実質的に対称なWT-ITRは、三次元空間で同じA、C-C’、及びB-B’ループを有する。実質的に対称なWT-ITRは、適切なRepタンパク質と対合する操作可能なRep結合部位(RBE又はRBE’)及び末端分離部位(trs)を有することを決定することによって、WTとして機能的に確認することができる。任意選択的に、許容条件下での導入遺伝子発現を含む他の機能を試験することができる。
【0109】
本明細書で使用される場合、「修飾型ITR」又は「mod-ITR」又は「変異型ITR」の語句は、交換可能に使用され、同じ血清型からのWT-ITRと比較して、少なくとも1つ以上のヌクレオチドに変異を有するITRを指す。変異は、同じ血清型のWT-ITRの三次元空間構成と比較して、ITRのA、C、C’、B、B’領域のうちの1つ以上の変化をもたらし得、三次元空間構成(すなわち、幾何学的空間におけるその三次元構造)の変化をもたらし得る。
【0110】
本明細書で使用される場合、「非対称ITR対」とも称される「非対称ITR」という用語は、全長にわたって逆相補ではない一本鎖合成AAVゲノム内のITRの対を指す。非限定的な一例として、非対称ITR対は、それらの三次元構造が、幾何学的空間において異なる形状であるように、それらの同族ITRに対して対称の三次元空間構成を有しない。言い換えると、非対称のITR対は、全体的な幾何学的構造が異なり、すなわち、三次元空間でのそれらのA、C-C’、及びB-B’ループの構成が異なる(例えば、同族ITRと比較して、1つのITRは、短いC-C’アーム及び/又は短いB-B’アームを有し得る)。2つのITR間の配列の相違は、1つ以上のヌクレオチド付加、欠失、切断、又は点変異に起因し得る。一実施形態では、非対称ITR対の一方のITRは、野生型AAV ITR配列であってもよく、他方のITRは、本明細書で定義される修飾型ITR(例えば、非野生型又は合成ITR配列)であってもよい。別の実施形態では、非対称ITR対のどちらのITRも野生型AAV配列ではなく、2つのITRは、幾何学的空間において異なる形状(すなわち、異なる全体的な幾何学的構造)を有する修飾型ITRである。いくつかの実施形態では、非対称ITR対の一方のmod-ITRは、短いC-C’アームを有することができ、他方のITRは、それらが同族の非対称mod-ITRと比較して、異なる三次元空間構成を有するように異なる修飾(例えば、単一アーム、又は短いB-B’アームなど)を有し得る。
【0111】
本明細書で使用される場合、「対称ITR」という用語は、野生型又は変異型(例えば、野生型に対して修飾型)ディペンドウイルスITR配列であり、かつそれらの全長にわたって逆相補である、一本鎖AAVゲノム内の一対のITRを指す。非限定的な一例において、両ITRは、AAV2からの野生型ITR配列である。別の例では、いずれのITRも野生型ITR AAV2配列ではなく(すなわち、それらは、修飾型ITRであり、変異型ITRとも称される)、ヌクレオチドの付加、欠失、置換、切断、又は点変異に起因して、野生型ITRとは配列が異なり得る。本明細書では便宜上、合成AAVベクター中の発現カセットに対して5’(その上流)に位置するITRは、「5’ITR」又は「左ITR」と称され、合成AAVベクター中の発現カセットに対して3’(その下流)に位置するITRは、「3’ITR」又は「右ITR」と称される。
【0112】
本明細書で使用される場合、「実質的に対称な修飾型ITR」又は「実質的に対称なmod-ITR対」という用語は、両方がそれらの全長にわたって逆相補配列を有する合成AAV内の一対の修飾型ITRを指す。例えば、修飾型ITRは、変化が特性及び全体的な形状に影響を及ぼさない限り、逆相補配列から逸脱するいくつかのヌクレオチド配列がある場合でも、実質的に対称とみなすことができる。非限定的な一例として、配列は、正準配列に対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性(デフォルト設定でBLASTを使用して測定される)を有し、またそれらの三次元構造が幾何学的空間で同じ形状になるように、それらの同族の修飾型ITRに対して対称な三次元空間構成を有する。言い換えると、実質的に対称な修飾型ITR対は、三次元空間に構成された同じA、C-C’、及びB-B’ループを有する。いくつかの実施形態では、mod-ITR対からのITRは、異なる逆相補ヌクレオチド配列を有し得るが、依然として同じ対称な三次元空間構成を有し得る。すなわち、両方のITRは、同じ全体的な三次元形状をもたらす変異を有する。例えば、mod-ITR対の1つのITR(例えば、5’ITR)は、1つの血清型に由来してもよく、他方のITR(例えば、3’ITR)は、異なる血清型に由来していてもよいが、両方が同じ対応する変異を有していてもよく(例えば、5’ITRがC領域に欠失を有する場合、異なる血清型の同族の修飾型3’ITRは、C’領域の対応する位置に欠失を有する)、それにより修飾型ITR対が同じ対称な三次元空間構成を有する。そのような実施形態では、修飾型ITR対の各ITRは、AAV2及びAAV6の組み合わせなどの異なる血清型(例えば、AAV1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12)に由来し得、1つのITRの修飾は、異なる血清型の同族のITRの対応する位置に反映される。一実施形態では、実質的に対称な修飾型ITR対は、ITR間のヌクレオチド配列の相違が特性又は全体的な形状に影響を及ぼさず、それらが三次元空間で実質的に同じ形状を有する限り、一対の修飾型ITR(modified ITR、mod-ITR)を指す。非限定的な例として、mod-ITRは、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)又はデフォルト設定のBLASTNなどの当該技術分野において周知の標準的な手段によって決定される、正準mod-ITRに対して少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有し、またそれらの三次元構造が幾何学的空間で同じ形状になるように、対称な三次元空間構成を有する。実質的に対称なmod-ITR対は、三次元空間で同じA、C-C’及びB-B’ループを有する。例えば、実質的に対称なmod-ITR対の修飾型ITRがC-C’アームの欠失を有する場合、同族のmod-ITRは、C-C’ループの対応する欠失を有し、またその同族のmod-ITRの幾何学的空間に同じ形状の残りのA及びB-B’ループの同様の三次元構造を有する。
【0113】
本明細書で使用される場合、活性剤又は治療用核酸などの治療剤の「有効量」又は「治療有効量」という語句は、治療用核酸の不存在下で検出された発現レベルと比較して、所望の効果、例えば、標的配列の発現の阻害をもたらすのに十分な量である。標的遺伝子又は標的配列の発現を測定するための好適なアッセイは、例えば、ドットブロット、ノーザンブロット、インサイチュハイブリダイゼーション、ELISA、免疫沈降、酵素機能、及び当業者に既知の表現型アッセイなどの当業者に既知の技法を使用するタンパク質又はRNAレベルの検査を含む。
【0114】
本明細書で使用される場合、「発現」という用語は、RNA及びタンパク質、また必要に応じて、例えば、転写、転写処理、翻訳及びタンパク質の折りたたみ、修飾及び処理を含むがこれらに限定されない分泌タンパク質の産生に関与する細胞プロセスを指すことを意味する。本明細書で使用される場合、「発現産物」という語句は、遺伝子(例えば、導入遺伝子)から転写されたRNA、及び遺伝子から転写されたmRNAの翻訳によって得られたポリペプチドを含む。
【0115】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」という用語は、ベクター上の転写調節配列に連結された配列からのRNA又はポリペプチドの発現を指示するベクターを指すことを意味する。発現される配列は、多くの場合、宿主細胞に対して異種であるが、必ずしもそうではない。発現ベクターは、追加のエレメントを含むことができ、例えば、発現ベクターは、2つの複製系を有することができるため、それを2つの生物、例えば発現の場合はヒト細胞、並びにクローニング及び増幅の場合は原核生物宿主で維持することができる。発現ベクターは、組換えベクターであってもよい。
【0116】
本明細書で使用される場合、「隣接する」という用語は、別の核酸配列に対するある核酸配列の相対位置を指すことを意味する。一般に、配列ABCにおいて、BはA及びCに隣接している。配列A×B×Cについても同様である。したがって、隣接する配列は、隣接される配列の前又は後に続くが、隣接される配列と連続している、又はすぐ隣である必要はない。
【0117】
本明細書で使用される場合、「スペーサー領域」という用語は、ベクター又はゲノム内の機能的エレメントを分離する介在配列を指すことを意味する。いくつかの実施形態では、スペーサー領域は、最適機能性のため所望の距離で2つの機能的エレメントを保持する。いくつかの実施形態では、スペーサー領域は、ベクター又はゲノムの遺伝的安定性を提供するか、又は増大させる。いくつかの実施形態では、スペーサー領域は、クローニング部位及び塩基対の設計番号のギャップに便利な位置を提供することによって、ゲノムの容易な遺伝子操作を促進する。
【0118】
本明細書で使用される場合、「発現カセット」及び「発現ユニット」という用語は、交換可能に使用され、DNAベクター、例えば、合成AAVベクターの導入遺伝子の転写を指示するのに十分なプロモーター又は他のDNA調節配列に操作可能に連結される異種DNA配列を指すことを意味する。好適なプロモーターには、例えば、組織特異的プロモーターが含まれる。プロモーターは、AAV起源でもあり得る。
【0119】
本明細書で使用される場合、「遺伝性疾患」又は「遺伝性障害」という語句は、ゲノム中の1つ以上の異常、特に出生時から存在する状態によって部分的又は完全に、直接的又は間接的に引き起こされる疾患を指すことを意味する。異常は、遺伝子における変異、挿入、又は欠失であり得る。異常は、遺伝子のコード配列又はその調節配列に影響を与える可能性がある。
【0120】
本明細書中で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸の反復配列を指すことを意味する。
【0121】
本明細書で使用される場合、「脂質」という用語は、脂肪酸のエステルを含むがこれらに限定されない有機化合物群を指すことを意味し、水に不溶であるが、多くの有機溶媒に可溶であることを特徴とする。それらは、通常、少なくとも3つのクラス:(1)脂肪及び油並びにワックスを含む「単純脂質」、(2)リン脂質及び糖脂質を含む「複合脂質」、並びに(3)ステロイドなどの「誘導脂質」に分類される。
【0122】
リン脂質の代表的な例としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、及びジリノレオイルホスファチジルコリンが挙げられるが、これらに限定されない。スフィンゴ脂質、スフィンゴ糖脂質ファミリー、ジアシルグリセロール、及びβ-アシルオキシ酸など、リンを欠く他の化合物も両親媒性脂質と呼ばれる群に含まれる。追加的に、上記の両親媒性脂質は、トリグリセリド及びステロールを含む他の脂質と混合することができる。
【0123】
一実施形態では、脂質組成物は、1つ以上の三級アミノ基、1つ以上のフェニルエステル結合、及びジスルフィド結合を含む。
【0124】
本明細書で使用される場合、「脂質コンジュゲート」という用語は、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)の凝集を阻害するコンジュゲートされた脂質を指すことを意味する。そのような脂質コンジュゲートには、限定されないが、PEG化脂質、例えば、ジアルキルオキシプロピルにカップリングしたPEG(例えば、PEG-DAAコンジュゲート)、ジアシルグリセロールにカップリングしたPEG(例えば、PEG-DAGコンジュゲート)、コレステロールにカップリングしたPEG、ホスファチジルエタノールアミンにカップリングしたPEG、及びセラミドにコンジュゲートしたPEG(例えば、米国特許第5,885,613号を参照されたい)、カチオン性PEG化脂質、ポリオキサゾリン(POZ)-脂質コンジュゲート(例えば、POZ-DAAコンジュゲート、例えば、2010年1月13日出願の米国仮出願第61/294,828号、及び2010年1月14日出願の米国仮出願第61/295,140号を参照されたい)、ポリアミドオリゴマー(例えば、ATTA-脂質コンジュゲート)、及びそれらの混合物が挙げられる。POZ-脂質コンジュゲートの追加の例は、国際特許出願公開第2010/006282号に記載されている。PEG又はPOZは、脂質に直接コンジュゲートするか、リンカー部分を介して脂質に結合することができる。例えば、非エステル含有リンカー部分及びエステル含有リンカー部分を含む、PEG又はPOZを脂質にカップリングするのに好適な任意のリンカー部分を使用することができる。特定の好ましい実施形態では、アミド又はカルバメートなどの非エステル含有リンカー部分が使用される。上記の各特許文書の開示内容は、あらゆる目的で参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0125】
本明細書で使用される場合、「脂質で封入する」という用語は、核酸(例えば、ceDNA)などの活性剤又は治療剤を、完全封入、部分封入、又はその両方で提供する脂質粒子を指すことを意味する。好ましい実施形態では、核酸は脂質粒子内に完全に封入される(例えば、核酸を含有する脂質粒子を形成するため)。
【0126】
本明細書で使用される場合、「脂質粒子」又は「脂質ナノ粒子」という用語は、核酸治療薬などの治療剤を目的の標的部位(例えば、細胞、組織、器官など)に送達するために使用され得る脂質製剤を指すことを意味する。一実施形態では、本開示の脂質粒子は核酸含有脂質粒子であり、これは典型的にはカチオン性脂質、非カチオン性脂質、及び任意選択的に粒子の凝集を防止するコンジュゲートされた脂質から形成される。他の好ましい実施形態では、治療用核酸などの治療剤を粒子の脂質部分に封入し、それにより酵素分解から保護することができる。一実施形態では、脂質粒子は、核酸(例えば、ceDNA)と、1つ以上の三級アミノ基、1つ以上のフェニルエステル結合及びジスルフィド結合を含む脂質とを含む。
【0127】
いくつかの実施形態によれば、本開示の脂質粒子は、典型的には、平均直径が約20nm~約75nm、約20nm~約70nm、約25nm~約75nm、約25nm~約70nm、約30nm~約75nm、約30nm~約70nm、約35nm~約75nm、約35nm~約70nm、約40nm~約75nm、約40nm~約70nm、約45nm~約75nm、約50nm~約75nm、約50nm~約70nm、約60nm~約75nm、約60nm~約70nm、約65nm~約75nm、約65nm~約70nm、又は約20nm、約25nm、約30nm、約35nm、約40nm、約45nm、約50nm、約51nm、約52nm、約53nm、約54nm、約55nm、約56nm、約57nm、約58nm、約59nm 約60nm、約61nm、約62nm、約63nm、約64nm、約65nm、約66nm、約67nm、約68nm、約69nm、約70nm、約71nm、約72nm、約73nm、約74nm、又は約75nm(±3nm)のサイズである。
【0128】
一般に、本開示の脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、意図した治療効果を提供するように選択された平均直径を有する。
【0129】
いくつかの実施形態によれば、本開示の脂質粒子は、典型的には、平均直径が約75nm未満、約70nm未満、約65nm未満、約60nm未満、約55nm未満、約50nm未満、約45nm未満、約40nm未満、約35nm未満、約30nm未満、約25nm未満、約20nm未満のサイズである。
【0130】
本明細書で使用される場合、「カチオン性脂質」という用語は、生理学的pHで正に荷電する任意の脂質を指す。脂質粒子中のカチオン性脂質は、例えば、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、1,2-ジ-γ-リノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(γ-DLenDMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C2-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、「SS切断可能な脂質」、又はそれらの混合物などの1つ以上のカチオン性脂質を含み得る。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質はまた、イオン化可能な脂質、すなわち、イオン化可能なカチオン性脂質である。本明細書に記載の全てのカチオン性脂質の対応する四級脂質(すなわち、カチオン性部分中の窒素原子がプロトン化されており、4つの置換基を有するもの)は、本開示の範囲内であると企図される。本明細書に記載の任意のカチオン性脂質は、例えば、アセトニトリル(CH3CN)及びクロロホルム(CHCl3)中のクロロメタン(CH3Cl)で処理することにより、対応する四級脂質に変換され得る。
【0131】
本明細書で使用される場合、「アニオン性脂質」という用語は、生理学的pHで負に荷電するあらゆる脂質を指す。これらの脂質には、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リジルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレイオールホスファチジルグリセロール(POPG)、及び中性脂質と結合した他のアニオン性修飾基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
本明細書で使用される場合、「疎水性脂質」という用語は、長鎖飽和及び不飽和脂肪族炭化水素基、並びに1つ以上の芳香族、脂環式、又は複素環式基で任意選択的に置換された基を含むがこれらに限定されない無極性基を有する化合物を指す。好適な例には、ジアシルグリセロール、ジアルキルグリセロール、N-N-ジアルキルアミノ、1,2-ジアシルオキシ-3-アミノプロパン、及び1,2-ジアルキル-3-アミノプロパンが含まれるが、これらに限定されない。
【0133】
本明細書で使用される場合、「イオン化可能な脂質」という用語は、脂質が生理学的pH(例えば、pH7.4)以下で正に帯電し、第2のpH、好ましくは生理学的pH以上で中性であるように、少なくとも1つのプロトン化可能又は脱プロトン化可能基を有する脂質、例えばカチオン性脂質を指すことを意味する。pHの関数としてのプロトンの付加又は除去は平衡プロセスであり、荷電又は中性脂質への言及は優勢種の性質を指し、全ての脂質が荷電又は中性の形態で存在する必要はないことは、当業者によって理解されるであろう。一般に、イオン化可能な脂質は、約4~約7の範囲のプロトン化可能な基のpKaを有する。いくつかの実施形態では、イオン化可能な脂質は、「切断可能な脂質」又は「SS切断可能な脂質」を含み得る。
【0134】
本明細書で使用される場合、「中性脂質」という用語は、選択されたpHで非荷電又は中性の双性イオン形態のいずれかで存在する多くの脂質種のいずれかを指すことを意味する。生理学的pHでは、そのような脂質には、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、コレステロール、セレブロシド、及びジアシルグリセロールが含まれる。
【0135】
本明細書で使用される場合、「非カチオン性脂質」という用語は、任意の両親媒性脂質、及び任意の他の中性脂質又はアニオン性脂質を指すことを意味する。
【0136】
本明細書で使用される場合、「切断可能な脂質」又は「SS切断可能な脂質」という用語は、ジスルフィド結合の切断可能な単位を含む脂質を指す。切断可能な脂質には、pH感受性の三級アミン及び自己分解性フェニルエステルを含む脂質様物質を含有する切断可能なジスルフィド結合(「ss」)が含まれ得る。例えば、SS切断可能な脂質は、ss-OP脂質(COATSOME(登録商標)SS-OP)、ss-M脂質(COATSOME(登録商標)SS-M)、ss-E脂質(COATSOME(登録商標)SS-E)、ss-EC脂質(COATSOME(登録商標)SS-EC)、ss-LC脂質(COATSOME(登録商標)SS-LC)、ss-OC脂質(COATSOME(登録商標)SS-OC)、及びss-PalmE脂質(例えば、式I~IVを参照されたい)、又はTogashi et al.,(2018)Journal of Controlled Release「A hepatic pDNA delivery system based on an intracellular environment sensitive vitamin E -scaffold lipid-like material with the aid of an anti-inflammatory drug」279:262-270によって記載された脂質であり得る。切断可能な脂質の追加の例は、米国特許第9,708,628号及び米国特許第10,385,030号に記載されており、これらの全内容は参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態では、切断可能な脂質は、酸性区画、例えば、膜不安定化のためのエンドソーム又はリソソーム、及び細胞質などの還元環境で切断され得るジスルフィド結合に応答する三級アミンを含む。一実施形態では、切断可能な脂質は、カチオン性脂質である。一実施形態では、切断可能な脂質は、イオン化可能なカチオン性脂質である。切断可能な脂質は、本明細書でより詳細に記載されている。
【0137】
本明細書で使用される場合、「有機脂質溶液」という用語は、全体又は一部に脂質を有する有機溶媒を含む組成物を指すことを意味する。
【0138】
本明細書で使用される場合、「リポソーム」という用語は、水性外部から分離された内部水性体積を封入する球形構成で組み立てられた脂質分子を指すことを意味する。リポソームは、少なくとも1つの脂質二層を有する小胞である。リポソームは、典型的に、製剤開発の文脈において薬物/治療薬送達のための担体として使用される。それらは、細胞膜と融合し、その脂質構造を再位置付けすることによって作用して、薬物又は活性製剤成分を送達する。そのような送達のためのリポソーム組成物は、典型的には、リン脂質、特にホスファチジルコリン基を有する化合物で構成されるが、これらの組成物はまた、他の脂質を含んでもよい。
【0139】
本明細書で使用される場合、「局所送達」という用語は、干渉RNA(例えば、siRNA)等の活性剤の、生物内の標的部位への直接的送達を指すことを意味する。例えば、薬剤は、腫瘍等の疾患部位、又は炎症部位等の他の標的部位、又は肝臓、心臓、膵臓、腎臓等の標的器官への直接注射によって局所的に送達することができる。
【0140】
本明細書で使用される場合、「核酸」という用語は、一本鎖又は二本鎖のいずれかの形態で少なくとも2つのヌクレオチド(すなわち、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)を含むポリマーを指すことを意味し、DNA、RNA、及びそれらのハイブリッドを含む。DNAは、例えば、アンチセンス分子、プラスミドDNA、DNA-DNA二重鎖、事前に凝縮されたDNA、PCR産物、ベクター(P1、PAC、BAC、YAC、人工染色体)、発現カセット、キメラ配列、染色体DNA、又はこれらの群の誘導体及び組み合わせの形態であり得る。DNAは、ミニサークル、プラスミド、バクミド、ミニ遺伝子、ミニストリングDNA(直鎖状の共有結合的に閉じたDNAベクター)、閉端直鎖状二重鎖DNA(CELiD又はceDNA)、doggybone(商標)DNA、ダンベル型DNA、最小限の免疫学的に定義された遺伝子発現(MIDGE)-ベクター、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターの形態であり得る。RNAは、低分子干渉RNA(siRNA)、ダイサー基質dsRNA、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、非対称干渉RNA(aiRNA)、マイクロRNA(miRNA)、mRNA、rRNA、tRNA、ウイルスRNA(vRNA)、及びそれらの組み合わせの形態であり得る。核酸としては、既知のヌクレオチド類似体又は修飾型骨格残基若しくは連結を含有する核酸が挙げられ、これらは、合成、天然に存在する、及び天然に存在しないものであり、参照核酸と同様の結合特性を有する。そのような類似体及び/又は修飾残基の例としては、ホスホロチオエート、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(モルホリノ)、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2’-O-メチルリボヌクレオチド、ロックド核酸(LNA(商標))、及びペプチド核酸(PNA)が挙げられる。別途限定されない限り、この用語は、参照核酸と同様の結合特性を有する天然ヌクレオチドの既知の類似体を含有する核酸を包含する。別途明記しない限り、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列だけではなく、その保存的修飾型バリアント(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNP、及び相補的配列を暗黙的に包含する。
【0141】
本明細書で使用される場合、「核酸治療」、「治療用核酸」及び「TNA」という語句は、交換可能に使用され、疾患又は障害を治療するための治療剤の活性成分として核酸を使用する治療の任意のモダリティを指す。本明細書で使用される場合、これらの語句は、RNAベースの治療薬及びDNAベースの治療薬を指す。RNAベースの治療剤の非限定的な例としては、mRNA、アンチセンスRNA及びオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタマー、干渉RNA(RNAi)、ダイサー基質dsRNA、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、非対称干渉RNA(aiRNA)、マイクロRNA(miRNA)が挙げられる。DNAベースの治療薬の非限定的な例は、ミニサークルDNA、ミニ遺伝子、ウイルス性DNA(例えば、レンチウイルス若しくはAAVゲノム)又は非ウイルス性合成DNAベクター、閉端直鎖状二重鎖DNA(ceDNA/CELiD)、プラスミド、バクミド、DOGGYBONE(商標)DNAベクター、最小限度に免疫学的に定義された遺伝子発現(minimalistic immunological-defined gene expression、MIDGE)ベクター、非ウイルス性ミニストリングDNAベクター(直鎖状の共有結合性閉鎖DNAベクター)、又はダンベル形DNAミニマルベクター(「ダンベルDNA」)を含む。
【0142】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド」は、糖デオキシリボース(DNA)又はリボース(RNA)、塩基、及びリン酸基を含む。ヌクレオチドは、リン酸基を介してともに連結している。
【0143】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水又は水/油などのエマルジョン、及び様々な種類の湿潤剤などの標準的な薬学的担体のいずれかを含む。この用語はまた、ヒトを含む動物での使用について、米国連邦政府の規制当局によって承認された、又は米国薬局方に列挙されている薬剤、並びに対象に重大な刺激を引き起こさず、投与された化合物の生物活性及び特性を損なわない担体又は希釈剤のいずれかを包含する。
【0144】
本明細書で使用される場合、「ギャップ」という用語は、本開示の合成DNAベクターの中断された部分を指すことを意味し、その他の二本鎖ceDNAには一本鎖DNA部分のストレッチが作成される。ギャップは、二重鎖DNAの一本鎖の長さが1塩基対~100塩基対の長さであり得る。本明細書に記載される方法によって設計及び作成された典型的なギャップ、及び当該方法によって生成された合成ベクターは、長さが、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、又は60bpの長さであり得る。本開示における例示的なギャップは、長さが1bp~10bpの長さ、1~20bpの長さ、1~30bpの長さであり得る。
【0145】
本明細書で使用される場合、「ニック」という用語は、典型的には損傷又は酵素作用による一本鎖の隣接ヌクレオチド間にホスホジエステル結合がない二本鎖DNA分子の不連続性を指す。1つ以上のニックは、DNA複製中に鎖のねじれの解放を可能にし、ニックはまた、転写機構の結合を促進する役割を果たすと考えられていることが理解される。
【0146】
「受容体」とは、1つ以上のリガンドに選択的に結合する細胞膜上に存在するポリペプチド、又はその一部を意味する。「受容体」という用語は、本明細書中で使用される場合、受容体全体又はそのリガンド結合部分を包含することが意図される。受容体のこれらの部分は、特に、リガンドの特異的結合が生じるのに十分な領域を含む。
【0147】
本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、本明細書で使用される場合、典型的には調節されない細胞増殖及び悪性腫瘍を特徴とする多細胞真核生物における生理学的状態を指す。したがって、この用語は、固形腫瘍、血液がん(例えば、白血病)、並びに骨髄線維症及び多発性骨髄腫を広く包含する。
【0148】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、本開示による治療用核酸による予防的治療を含む治療が提供される、ヒト又は動物を指すことを意味する。通常、動物は、限定されないが、霊長類、げっ歯類、飼育動物、又は狩猟動物などの脊椎動物である。霊長類としては、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、及びマカク、例えば、アカゲザルが挙げられるが、これらに限定されない。げっ歯類としては、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ、及びハムスターが挙げられる。飼育動物及び狩猟動物としては、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ種、例えば、飼いネコ、イヌ種、例えば、イヌ、キツネ、オオカミ、トリ種、例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ、並びに魚、例えば、トラウト、ナマズ、及びサケが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載される態様の特定の実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば、霊長類又はヒトである。対象は、男性又は女性であり得る。追加的に、対象は、幼児又は子供であり得る。いくつかの実施形態では、対象は、新生児又は胎児対象であり得、例えば、対象は、子宮内に存在する。好ましくは、対象は、哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、又はウシであり得るが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、疾患及び障害の動物モデルを代表する対象として有利に使用され得る。加えて、本明細書に記載される方法及び組成物は、飼育動物及び/又はペットに使用され得る。ヒト対象は、任意の年齢、性別、人種、又は民族グループ、例えば、コーカサス人(白人)、アジア人、アフリカ人、黒人、アフリカ系アメリカ人、アフリカ系ヨーロッパ人、ラテンアメリカ系、中東系などであり得る。いくつかの実施形態では、対象は、臨床設定において患者又は他の対象であり得る。いくつかの実施形態では、対象は、既に治療を受けている。いくつかの実施形態では、対象は、胚、胎児、新生児、幼児、子供、青年、又は成人である。いくつかの実施形態では、対象は、ヒト胎児、ヒト新生児、ヒト幼児、ヒト子供、ヒト青年、又はヒト成人である。いくつかの実施形態では、対象は、動物胚、又は非ヒト胚若しくは非ヒト霊長類胚である。いくつかの実施形態では、対象は、ヒト胚である。
【0149】
本明細書で使用される場合、「必要とする対象」という語句は、語句の文脈及び使用法が別段の指示されない限り、(i)記載された開示内容に従ってceDNA脂質粒子(若しくはceDNA脂質粒子を含む薬学的組成物)を投与される予定であり、(ii)記載された開示内要に従ってceDNA脂質粒子(若しくはaceDNA脂質粒子を含む薬学的組成物)を受けているか、又は(iii)記載された開示内要に従ってceDNA脂質粒子(若しくはceDNA脂質粒子を含む薬学的組成物)を受けた、対象を指す。
【0150】
本明細書で使用される場合、「抑制する」、「減少する」、「妨害する」、「阻害する」及び/又は「低減する」という用語(並びに同様の用語)は、一般に、天然、予想若しくは平均に対して、又は対照条件に対して、直接的又は間接的に、濃度、レベル、機能、活性、又は挙動を低減する行為を指す。
【0151】
本明細書で使用される場合、「全身送達」という用語は、生物内での干渉RNA(例えば、siRNA)などの活性剤の広範な生体内分布をもたらす脂質粒子の送達を指すことを意味する。投与技術によっては、特定の薬剤の全身送達にいたることもあれば、そうでないものもある。全身送達とは、有用な量、好ましくは治療量の薬剤が身体のほとんどの部分にさらされることを意味する。広範な生体内分布を得るには、一般に、薬剤が、投与部位より遠位の疾患部位に到達する前に(初回通過器官(肝臓、肺など)によって、又は急速な非特異的細胞結合によって)急速に分解又は排出されないような血液寿命が必要である。脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)の全身送達は、例えば静脈内、皮下、及び腹腔内を含む、当技術分野で既知の任意の手段によることができる。好ましい実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)の全身送達は、静脈内送達による。
【0152】
本明細書で使用される場合、活性剤(例えば、本明細書に記載されるceDNA脂質粒子)の「治療量」、「治療有効量」、「有効な量」、又は「薬学的有効量」という用語は交換可能に使用され、治療の意図された利益を提供するのに十分な量を指す。しかしながら、投与量レベルは、傷害の種類、年齢、体重、性別、患者の病状、病状の重症度、投与経路、及び用いられる特定の活性剤を含む、多様な因子に基づく。したがって、投与計画は、大きく異なる可能性があるが、標準的な方法を使用して医師によって常套的に決定され得る。追加的に、「治療量」、「治療有効量」及び「薬学的有効量」という用語は、記載された本開示の組成物の予防的(prophylactic)又は予防的(preventative)量を含む。記載された本開示の予防的(prophylactic)又は予防的(preventative)用途において、薬学的組成物又は薬剤は、疾患、障害又は状態の生化学的、組織学的及び/又は行動症状、その合併症、並びに疾患、障害又は状態の発症中に現れる中間の病理学的表現型を含む、疾患、障害又は状態に罹患しやすい患者、又はそうでなければそのリスクがある患者に、リスクを排除若しくは低減するか、重症度を減少させるか、又は疾患、障害若しくは状態の発症を遅らせるのに十分な量で投与される。いくつかの医学的判断によれば、最大用量、すなわち最高の安全用量を使用することが一般に好ましい。「用量」及び「投与量」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。
【0153】
本明細書で使用される場合、「治療効果」という用語は、治療の結果を指し、その結果は、望ましくかつ有益であると判断される。治療効果としては、直接的又は間接的に、疾患症状の阻止、低減、又は排除を挙げることができる。治療効果としてはまた、直接的又は間接的に、疾患症状の進行の阻止、低減、又は排除を挙げることができる。
【0154】
本明細書に記載される任意の治療剤について、治療有効量は、予備的なインビトロ研究及び/又は動物モデルから最初に決定することができる。治療有効用量はまた、ヒトのデータから決定することができる。適用される用量は、投与される化合物の相対的な生物学的利用能及び効力に基づいて調整することができる。上記の方法及び他の周知の方法に基づいて最大の効力を達成するように用量を調整することは、当業者の能力の範囲内である。参照により本明細書に組み込まれる、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,10th Edition,McGraw-Hill(New York)(2001)の第1章に見出され得る治療有効性を決定するための一般原則を以下に要約する。
【0155】
薬物動態学的原理は、許容できない副作用を最小限に抑えながら、望ましい程度の治療効果を得るために投与計画を変更するための基礎を提供する。薬物の血漿濃度を測定でき、治療濃度域に関連している状況では、投与量の変更に関する追加のガイダンスを入手することができる。
【0156】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」、及び/又は「治療」という用語は、状態の進行を抑制する、実質的に阻害する、遅らせる、若しくは逆転させる、状態の臨床症状を実質的に改善する、又は状態の臨床症状の出現を実質的に防ぐ、有益な若しくは望ましい臨床結果を得ることを含む。治療することは、以下:(a)障害の重症度を低減すること、(b)治療される障害に特徴的な症状の発症を制限すること、(c)治療される障害に特徴的な症状の悪化を制限すること、(d)以前に障害を有していた患者において障害の再発を制限すること、及び(e)以前に障害に対して無症候性であった患者において症状の再発を制限すること、のうちの1つ以上を達成することを更に指す。
【0157】
薬理学的及び/又は生理学的効果などの有益な又は所望の臨床結果は、疾患、障害又は状態の素因を有する可能性があるが、疾患の症状をまだ経験していないか、若しくは呈していない対象において疾患、障害又は状態が発生するのを防ぐこと(予防的治療)、疾患、障害又は状態の症状の緩和、疾患、障害又は状態の程度の減少、疾患、障害又は状態の安定化(すなわち、悪化させない)、疾患、障害又は状態の蔓延を防ぐこと、疾患、障害又は状態の進行を遅らせる又は遅くすること、疾患、障害又は状態の改善又は軽減、及びそれらの組み合わせ、同様に治療を受けていない場合に予想される生存と比較して生存を延長することを含むが、これらに限定されない。
【0158】
薬理学的及び/又は生理学的効果などの有益な又は所望の臨床結果は、疾患、障害又は状態の素因を有する可能性があるが、疾患の症状をまだ経験していないか、若しくは呈していない対象において疾患、障害又は状態が発生するのを防ぐこと(予防的治療)、疾患、障害又は状態の症状の緩和、疾患、障害又は状態の程度の減少、疾患、障害又は状態の安定化(すなわち、悪化させない)、疾患、障害又は状態の蔓延を防ぐこと、疾患、障害又は状態の進行を遅らせる又は遅くすること、疾患、障害又は状態の改善又は軽減、及びそれらの組み合わせ、同様に治療を受けていない場合に予想される生存と比較して生存を延長することを含むが、これらに限定されない。
【0159】
本明細書で使用される場合、「併用療法」という用語は、2つ以上の治療剤を含む臨床適応のための処置レジメンを指す。したがって、この用語は、第1の組成物(例えば、有効成分)を含む第1の療法が、第2の組成物(有効成分)を含む第2の療法と併せて患者に投与され、同じ又は重複する疾患又は臨床状態を治療することが意図される治療レジメンを指す。第1及び第2の組成物は両方とも、同じ細胞標的、又は別個の細胞標的に作用し得る。併用療法の文脈における「と併せて」という語句は、併用療法を受けている対象において、第1の療法の治療効果が第2の療法の治療効果と一時的及び/又は空間的に重複することを意味する。したがって、併用療法は、同時投与のための単一製剤として、又は療法の連続投与のための別々の製剤として製剤化することができる。
【0160】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、1~20個の炭素原子の飽和一価炭化水素基(すなわち、C1~20アルキル)を指す。「一価」とは、アルキルが分子の残りの部分に1つの結合点を有していることを意味する。一実施形態では、アルキルは、1~12個の炭素原子(すなわち、C1~12アルキル)、又は1~10個の炭素原子(すなわち、C1~10アルキル)を有する。一実施形態では、アルキルは、1~8個の炭素原子(すなわち、C1~8アルキル)、1~7個の炭素原子(すなわち、C1~7アルキル)、1~6個の炭素原子(すなわち、C1~6アルキル)、1~4個の炭素原子(すなわち、C1~4アルキル)、又は1~3個の炭素原子(すなわち、C1~3アルキル)を有する。例としては、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-メチル-1-プロピル、2-ブチル、2-メチル-2-プロピル、1-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、2-メチル-2-ブチル、3-メチル-2-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-1-ブチル、1-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3-メチル-3-ペンチル、2-メチル-3-ペンチル、2,3-ジメチル-2-ブチル、3,3-ジメチル-2-ブチル、1-ヘプチル、1-オクチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。「直鎖又は分岐鎖C1~6アルキル」、「直鎖又は分岐鎖C1~4アルキル」、若しくは「直鎖又は分岐鎖C1~3アルキル」などの直鎖又は分岐鎖アルキルは、飽和一価炭化水素基が直鎖又は分岐鎖であることを意味する。本明細書で使用される場合、脂肪族炭化水素鎖を指す用語「直鎖」は、鎖が分岐していないことを意味する。
【0161】
本明細書で使用される「アルキレン」という用語は、1~20個の炭素原子の飽和二価炭化水素基(すなわち、C1~20アルキレン)を指し、その例には、上に例示したようなアルキル基の同じコア構造を有するものが挙げられるが、それらに限定されない。「二価」とは、アルキレンが分子の残りの部分に2つの結合点を有していることを意味する。一実施形態では、アルキレンは、1~12個の炭素原子(すなわち、C1~12アルキレン)、又は1~10個の炭素原子(すなわち、C1~10アルキレン)を有する。一実施形態では、アルキレンは、1~8個の炭素原子(すなわち、C1~8アルキレン)、1~7個の炭素原子(すなわち、C1~7アルキレン)、1~6個の炭素原子(すなわち、C1~6アルキレン)、1~4個の炭素原子(すなわち、C1~4アルキレン)、又は1~3個の炭素原子(すなわち、C1~3アルキレン)を有し、エチレン、又はメチレンである。「直鎖又は分岐鎖C1~6アルキレン」、「直鎖又は分岐鎖C1~4アルキレン」、若しくは「直鎖又は分岐鎖C1~3アルキレン」などの直鎖又は分岐鎖アルキレンは、飽和二価炭化水素基が直鎖又は分岐鎖であることを意味する。
【0162】
「アルケニル」という用語は、1つ以上(例えば、1つ又は2つ)の炭素-炭素二重結合を有する直鎖又は分岐鎖脂肪族炭化水素基を指し、アルケニル基は、「シス」及び「トランス」配向、又は別の命名法によれば、「E」及び「Z」配向を有する基を含む。
【0163】
本明細書で使用される「アルケニレン」は、1つ又は2つの炭素-炭素二重結合を有する2~20個の炭素原子の脂肪族二価炭化水素基(すなわち、C2~20アルケニレン)を指し、ここで、アルケニレン基は、「シス」及び「トランス」配向又は別の命名法によれば、「E」及び「Z]配向を有する基を含む。「二価」とは、アルケニレンが分子の残りの部分に2つの結合点を有していることを意味する。一実施形態では、アルケニレンは、2~12個の炭素原子(すなわち、C2~16アルケニレン)、又は2~10個の炭素原子(すなわち、C2~10アルケニレン)を有する。一実施形態では、アルケニレンは2~4個の炭素原子(C2~4)を有する。例としては、エチレニレン又はビニレン(-CH=CH-)、アリル(-CH2CH=CH-)などが挙げられるが、これらに限定されない。「直鎖又は分岐鎖C2~6アルケニレン」、「直鎖又は分岐鎖C2~4アルケニレン」、若しくは「直鎖又は分岐鎖C2~3アルケニレン」などの直鎖又は分岐鎖アルケニレンは、不飽和二価炭化水素基が直鎖又は分岐鎖であることを意味する。
【0164】
本明細書で使用される「シクロアルキレン」は、単環式環として3~12個の炭素原子、又は二環式環として7~12個の炭素原子を有する二価飽和炭素環式環基を指す。「二価」は、シクロアルキレンが分子の残りの部分に2つの結合点を有していることを意味する。一実施形態では、シクロアルキレンは、3員~7員の単環式又は3員~6員の単環式である。単環式シクロアルキル基の例としては、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン、シクロオクチレン、シクロノニレン、シクロデシレン、シクロウンデシレン、シクロドデシレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、シクロアルキレンはシクロプロピレンである。
【0165】
「複素環」、「ヘテロシクリル」、複素環式及び「複素環式環」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、少なくとも1個のN原子を含有し、ヘテロ原子、並びに任意選択的にN及びSから選択される1~3個の追加のヘテロ原子を有し、非芳香族である(すなわち、部分的又は完全に飽和している)環状基を指す。単環式又は二環式(架橋若しくは融合)にすることができる。複素環式環の例としては、アジリジニル、ジアジリジニル、チアジリジニル、アゼチジニル、ジアゼチジニル、トリアゼチジニル、チアジアゼチジニル、チアゼチジニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イソチアゾリジニル、チアゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ヘキサヒドロピリミジニル、アゼパニル、アゾカニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。複素環は、1~4個のヘテロ原子を含み、これは、N及びSから選択され、同じであっても異なっていてもよい。1つの実施形態では、複素環は、1~3個のN原子を含む。別の実施形態では、複素環は、1個又は2個のN原子を含有する。別の実施形態では、複素環は、1個のN原子を含有する。「4員~8員のヘテロシクリル」とは、単環式環に配置された4~8個の原子(N及びSから選択される1~4個のヘテロ原子、又は1~3個のN原子、又は1個若しくは2個のN原子、又は1個のN原子を含む)を有する基を意味する。「5員又は6員のヘテロシクリル」とは、単環式環に配置された5又は6個の原子(N及びSから選択される1~4個のヘテロ原子、又は1~3個のN原子、又は1個若しくは2個のN原子、又は1個のN原子を含む)を有する基を意味する。「複素環」という用語は、考えられる全ての異性体形態を含むことを意図している。複素環は、Paquette,Leo A.,Principles of Modern Heterocyclic Chemistry(W.A.Benjamin,New York,1968)、特に、Chapters 1、3、4、6、7及び9、The Chemistry of Heterocyclic Compounds,A Series of Monographs(John Wiley & Sons,New York,1950から現在まで)、特に、Volumes 13、14、16、19、及び28、並びにJ.Am.Chem.Soc.(1960)82:5566に記載されている。ヘテロシクリル基は、可能であれば、分子の残りの部分に結合した炭素(炭素結合)又は窒素(窒素結合)であり得る。
【0166】
基が「任意選択的に置換されている」と記載されている場合、その基は(1)置換されていないか、又は(2)置換されている場合がある。基の炭素が置換基のリストのうちの1つ以上で任意選択的に置換されていると記載されている場合、炭素上水素原子のうちの1つ以上(存在する範囲で)を、独立して選択された任意の置換基で別々に及び/又は一緒に置き換えることができる。
【0167】
アルキル、アルキレン、アルケニレン、シクロアルキレン、及びヘテロシクリルに好適な置換基は、二官能性化合物の生物活性に著しく悪影響を及ぼさないものである。特に明記しない限り、これらの基の例示的な置換基としては、1~10個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状又は環状のアルキル、アルケニル又はアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ハロゲン、グアニジニウム[-NH(C=NH)NH2]、-OR100、NR101R102、-NO2、-NR101COR102、-SR100、-SOR101によって表されるスルホキシド、-SO2R101によって表されるスルホン、スルホネート-SO3M、サルフェート-OSO3M、-SO2NR101R102によって表されるスルホンアミド、シアノ、アジド、-COR101、-OCOR101、-OCONR101R102、及びポリエチレングリコール単位(-OCH2CH2)nR101、式中、Mが、H又はカチオン(例えば、Na+若しくはK+である)が挙げられ、R101、R102及びR103は、それぞれ独立して、H、1~10個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖又は環状アルキル、アルケニル又はアルキニル、ポリエチレングリコール単位(-OCH2CH2)n-R104(nが1~24の整数である)、6~10個の炭素原子を有するアリール、3~10個の炭素原子を有する複素環式環、及び5~10個の炭素原子を有するヘテロアリールから選択され、R104は、H、1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖環状アルキルであり、R100、R101、R102、R103及びR104によって表される基のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール及びヘテロシクルシル(heterocyclcyl)は、ハロゲン、-OH、-CN、-NO2、及び1~4個の炭素原子を有する非置換の直鎖若しくは分岐鎖アルキルから独立して選択される1個以上(例えば、2、3、4、5、6個、又はそれより多くの)置換基で任意選択的に置換される。好ましくは、上記の任意選択的に置換されたアルキル、アルキレン、アルケニレン、シクロアルキレン、及びヘテロシクリルについての置換基は、ハロゲン、-CN、-NR101R102、-CF3、-OR100、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、-SR101、-SOR101、-SO2R101、及び-SO3Mからなる群から選択される。あるいは、適切な置換基は、ハロゲン、-OH、-NO2、-CN、C1~4アルキル、-OR100、NR101R102、-NR101COR102、-SR100、-SO2R101、-SO2NR101R102、-COR101、-OCOR101、及び-OCONR101R102からなる群から選択され、ここで、R100、R101、及びR102は、それぞれ独立して、-H又はC1~4アルキルである。
【0168】
本明細書で使用される「ハロゲン」は、F、Cl、Br又はIを指す。「シアノ」は、-CNである。
【0169】
本明細書で交換可能に使用される「アミン」又は「アミノ」は、孤立電子対を有する塩基性窒素原子を含有する官能基を指す。
【0170】
本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」という用語は、本開示のイオン化可能な脂質の薬学的に許容される有機又は無機の塩を指す。例示的な塩としては、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酸性酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩「メシレート」、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、パモ酸(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))塩、アルカリ金属(例えば、ナトリウム及びカリウム)塩、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)塩、並びにアンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩は、酢酸イオン、コハク酸イオン又は他の対イオンなどの別の分子の包含を含み得る。対イオンは、親化合物の電荷を安定化させる任意の有機又は無機部分であり得る。更に、薬学的に許容される塩は、その構造中に2つ以上の荷電原子を有し得る。複数の荷電原子が薬学的に許容される塩の一部である場合、複数の対イオンを有することができる。したがって、薬学的に許容される塩は、1つ以上の荷電原子及び/又は1つ以上の対イオンを有することができる。
【0171】
本明細書に開示される本開示の代替エレメント又は実施形態のグループ化は、限定として解釈されるべきではない。各郡のメンバーは、個別に、又は群の他のメンバー又は本明細書で見られる他のエレメントとの任意の組み合わせで参照及び主張することができる。群の1つ以上のメンバーは、利便性及び/又は特許性の理由から、群に含まれるか、又は群から削除することができる。そのような任意の包含又は削除が発生した場合、本明細書では、明細書が修正されたグループを含むとみなされ、したがって添付の特許請求の範囲で使用されている全てのマーカッシュグループの記述を満たす。
【0172】
態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、本明細書に記載される開示は、人間のクローン化プロセス、人間の生殖細胞系列の遺伝的同一性を修正するプロセス、産業若しくは商業目的でのヒト胚の使用、又は人間若しくは動物にいかなる実質的な医学的利益ももたらすことなく苦しみを引き起こす可能性が高い動物、及びそのようなプロセスから生じる動物の遺伝的同一性を修正するためのプロセスに関係しない。
【0173】
本明細書では、本開示の様々な態様の説明内で他の用語が定義されている。
【0174】
本出願全体を通して引用される;参考文献、発行された特許、公開された特許出願、及び同時係属中の特許出願を含む全ての特許及び他の刊行物は、例えば、本明細書に記載される技術に関連して使用され得る、そのような刊行物に記載される方法論を説明及び開示する目的で、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。これらの出版物は、本出願の出願日より前のそれらの開示のためにのみ提供されている。この点に関するいかなるものも、発明者が先行する開示のおかげで、又はいかなる他の理由のためにもそのような開示に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。日付に関する全ての記述又はこれらの文書の内容に関する表現は、出願人が入手できる情報に基づいており、これらの文書の日付又は内容の正確さに関するいかなる承認も構成するものではない。
【0175】
本開示の実施形態の説明は、網羅的であること、又は本開示を開示された正確な形態に限定することを意図したものではない。本開示の特定の実施形態及び実施例が、例示の目的で本明細書で説明されているが、当業者が認識するように、本開示の範囲内で様々な同等の修正が可能である。例えば、方法のステップ又は機能は、所与の順序で提示されるが、代替的な実施形態は、異なる順序で機能を実施してもよく、又は機能は実質的に同時に実施されてもよい。本明細書で提供される開示の教示は、必要に応じて他の手順又は方法に適用することができる。本明細書に記載される様々な実施形態は、更なる実施形態を提供するために組み合わせることができる。本開示の態様は、必要に応じて、上記の参照文献及び出願の組成物、機能、及び概念を用いて本開示の更なる実施形態を提供するように修正することができる。更に、生物学的機能の同等性の考慮により、種類又は量の生物学的又は化学的作用に影響を与えることなく、タンパク質構造にいくつかの変更を加えることができる。詳細な説明に照らして、これらの変更及び他の変更を本開示に加えることができる。そのような修正は全て、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
【0176】
前述の実施形態のいずれかの特定のエレメントは、他の実施形態のエレメントと組み合わせるか、又は置き換えることができる。更に、本開示の特定の実施形態に関連する利点が、これらの実施形態の文脈で説明されたが、他の実施形態もそのような利点を示し得、全ての実施形態が本開示の範囲内にあるために必ずしもそのような利点を示す必要はない。
【0177】
本明細書に記載される技術は、以下の実施例によって更に説明されており、決してこれらを更に限定するものと解釈されるべきではない。本開示は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、及び試薬などにいかなる様式でも限定されず、そのようなものとして変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、単に特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲を限定することを意図されない。
【0178】
II.脂質ナノ粒子組成物
脂質ナノ粒子(LNP)及び治療用核酸(TNA)を含む薬学的組成物であって、LNPが、LNPに連結された、一本鎖可変断片(scFv)を含む薬学的組成物が本明細書で提供される。scFvは、細胞の表面に存在する抗原を対象とする。「結合された」という用語は、化学的コンジュゲーション、吸着(物理吸着及び/又は化学吸着)を包含する。「連結された」という用語によって包含される結合の種類は、共有結合相互作用及び非共有結合相互作用(例えば、水素結合、ファンデルワールス結合、イオン結合、及び疎水結合)である。いくつかの実施形態によれば、scFvは、共有結合によるコンジュゲーションを介してLNPに連結される。いくつかの実施形態によれば、scFvは、マレイミド連結を介してLNPに連結される。LNPへのscFvのマレイミドコンジュゲーションが、PDSコンジュゲーションなどの他のチオールベースの架橋方法と比較して、LNPへのより強固なコンジュゲーションをもたらし、重要なことにLNPのサイズ及び完全性を維持したことは、本開示の知見である。
【0179】
したがって、脂質ナノ粒子(LNP)及び治療用核酸(TNA)[ここで、LNPは、LNPに連結された一本鎖可変断片(scFv)を含み、scFvは、細胞の表面に存在する抗原を対象とする]、並びに少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物であって、scFvが、切断不可能なリンカーを介してLNPに共有結合により連結される、薬学的組成物が本明細書で提供される。いくつかの実施形態によれば、切断不可能なリンカーは、マレイミド含有リンカーである。
【0180】
脂質ナノ粒子(LNP)及び治療用核酸(TNA)[ここで、LNPは、LNPに連結された一本鎖可変断片(scFv)を含み、scFvは、細胞の表面に存在する抗原を対象とする]、並びに少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物であって、scFvが、切断可能なリンカーを介してLNPに共有結合により連結される、薬学的組成物、薬学的組成物も本明細書で提供される。
【0181】
本明細書に記載されるLNPは、大きな治療用核酸分子を封入することができる、より小さなサイズを含む、多数の治療上の利点を提供する。本明細書に記載されるscFv LNPが、scFvが対象とする細胞の表面に存在する抗原を能動的に発現する任意の細胞又は組織を標的とするのに有用であることは、本開示の有利な特徴である。いくつかの実施形態によれば、細胞は腫瘍細胞である。いくつかの実施形態によれば、細胞は肝臓細胞(肝細胞)である。
【0182】
いくつかの実施形態によれば、抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)又は腫瘍選択的抗原(TSA)である。「腫瘍関連抗原」又はTAAは、腫瘍上で発現される抗原である。「腫瘍選択的抗原」又はTSAは、腫瘍上で選択的に発現される抗原である。一実施形態では、抗原は、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)である。
【0183】
一実施形態では、TAA発現は、腫瘍細胞集団のみに限定され、全ての腫瘍細胞によって発現され、腫瘍細胞表面で発現され得る。他の抗原は、腫瘍細胞上で過剰発現されるが、正常細胞上ではより低い発現レベルで見られる場合があり、したがって腫瘍選択的抗原(TSA)である。更に、いくつかの腫瘍抗原は、「パッセンジャー変異」として生じ、すなわち、DNA修復に対する制御に欠陥を有する腫瘍細胞によって発現される非必須抗原であり、したがって、多様なタンパク質における変異を蓄積する。いくつかの腫瘍抗原は、免疫応答、特に、T細胞媒介性免疫応答を誘発する腫瘍細胞によって産生されるタンパク質である。
【0184】
いくつかの実施形態によれば、TAA又はTSAは、グリオーマ関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、チログルビリン、RAGE-1、MN-CAIX、ヒトテロメラーゼリバーストランスクリプターゼ、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺癌特異的抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、HER2/neu、サバイビン及びテロメラーゼ、前立腺癌腫腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン増殖因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体及びメソテリン、EphA2、HER2、GD2、グリピカン-3、5T4、8H9、αvβ6インテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CA9、CEA、CD19、CD20、CD22、カッパ軽鎖、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、ERBB3、ERBB4、ErbB3/4、FAP、FAR、FBP、胎児AchR、葉酸受容体a、GD2、GD3、HLA-AI MAGE A1、HLA-A2、IL11Ra、IL13Ra2、KDR、ラムダ、ルイス-Y、MCSP、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSC1、PSMA、ROR1、SURVIVIN、TAG72、TEM1、TEM8、VEGRR2、癌胎児性抗原、HMW-MAA、及びVEGF受容体からなる群から選択される。使用することができる他の例示的な抗原は、フィブロネクチン、テネイシン、又は腫瘍の壊死領域の癌胎児性変異体などの腫瘍の細胞外マトリックス中に存在する抗原である。
【0185】
使用することができる更なる腫瘍選択的分子としては、腫瘍細胞において発現又は過剰発現される任意の膜タンパク質又はバイオマーカーが挙げられ、これらに限定されないが、インテグリン(例えば、インテグリンαvβ3、α5β1)、EGF受容体ファミリー(例えば、EGFR2、Erbb2/HER2/neu、Erbb3、Erbb4)、プロテオグリカン(例えば、ヘパラン硫酸プロテオグリカン)、ジシアロガングリオシド(例えば、GD2、GD3)、B7-H3(aka CD276)、がん抗原125(CA-125)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、血管内皮増殖因子受容体1及び2(VEGFR-1、VEGFR-2)、CD52、癌胎児性抗原(CEA)、腫瘍関連糖タンパク質(例えば、TAG-72)、分化抗原群19(CD19)、CD20、CD22、CD30、CD33、CD40、CD44、CD74、CD152、ムチン1(MUC1)、腫瘍壊死因子受容体(例えば、TRAIL-R2)、インスリン様増殖因子受容体、葉酸受容体a、膜貫通糖タンパク質NMB(GPNMB)、C-Cケモカイン受容体(例えば、CCR4)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体d’origine nantais(RON)受容体、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)、及び他の腫瘍特異的受容体又は抗原が挙げられる。
【0186】
がん抗原性ペプチドデータベース(Cancer Antigenic Peptide Database)は、ペプチド配列及びタンパク質配列中のその位置を含むヒト腫瘍抗原の情報を編集する公的に利用可能なデータベース(caped.icp.ucl.ac.)である。いくつかの実施形態によれば、scFvは、がん抗原ペプチドデータベースに示される腫瘍関連抗原を対象とする。
【0187】
いくつかの実施形態によれば、scFvは、血液学的悪性腫瘍に関連する腫瘍抗原に結合する。いくつかの実施形態では、scFvは、固形腫瘍に関連する腫瘍抗原に結合する。
【0188】
現在臨床で開発されている抗体断片の大部分は、腫瘍学的適用に関するものである。従来のmAbと比較して、それらに優れた組織及び腫瘍浸透性を与える、免疫療法としてそれらを魅力的にする抗体断片の一般的な特徴、例えば、それらのサイズが小さいこと、及び自然免疫細胞の非特異的活性化を低下させるFcドメインの欠如に加えて、特定のフォーマットに固有の多くの作用機序が存在する。
【0189】
腫瘍学は、抗体断片が治療分子の顕著な分類になっている主要な領域であるが、抗体断片が評価されているいくつかの他の疾患領域がある。
【0190】
自己免疫疾患は慢性であり、生命を脅かす可能性があり、抗体療法は、通常、集中的な生涯にわたる治療を必要とするため、極めて高価である。抗体断片のより低い生産コスト及びそれらの小さいサイズに起因する免疫原性低下の可能性は、半減期延長部分を有する抗体断片の使用を、完全長抗体に対する実行可能な代替物とする。更に、がん免疫療法と同様に、自己免疫疾患の治療のための抗体断片の開発は、速いペースで成長しており、二特異性標的化について多数の可能性が存在する。
【0191】
自己免疫疾患の適応症のために市販された最初の抗体断片の1つは、UCB(Belgium)によって開発されたTNFを標的とするペグ化Fabであるセルトリズマブペゴル(CIMZIA(登録商標))であり、2008年にクローン病の治療のためにFDAによって承認された。その後、関節リウマチ、乾癬性関節炎、及び強直性脊椎炎について承認された。2つの他のFabが臨床試験中である:RAについての第II相のCD28に対するFR104(OSE/Janssen)、及びSLEについての第II相のUCBによって開発された抗CD40L Fab、すなわちダピロリズマブ。
【0192】
RAの治療のための臨床試験において現在評価されている1つのscFv形式は、Dekavil又はF8IL10(Philogen)である。これは、血管標的化scFv抗体F8がサイトカインインターロイキン-10に融合して構成される完全ヒト融合タンパク質である。scFvに融合したいくつかの他の免疫サイトカインも前臨床開発中である。
【0193】
Fab及びscFvなどの抗体断片は、局所投与後入りの妥当な期間にわたって、角膜に浸透し、眼の中に入り、前眼房において臨床的に有用な濃度を達成することができることが示されている(Thiel et al.Clin.Exp.Immunol.2002.)。抗体又は抗体断片で処置される最も一般的な眼障害は、加齢黄斑変性(AMD)であり、これは、先進国において、50歳以上の人々における不可逆的失明の主な原因である。AMDの場合、抗体断片は、硝子体内経路を介して眼に直接適用される。ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))は、ベバシズマブと同じ親マウス抗体に由来する、VEGF-Aを標的とする抗血管新生モノクローナル抗体断片である。これは、2006年に滲出型AMDに対して承認され、その後2012年及び2015年にそれぞれ糖尿病性黄斑浮腫及び糖尿病性網膜症に対して承認された。ブロルシズマブ(Alcon/Novartis)は、滲出型AMDの第III相にあるVEGFを標的とするscFvである。
【0194】
いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号1を含む。
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIDDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDVWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSADFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIK(配列番号1)
【0195】
いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号1と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号1と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号1と少なくとも96%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号1と少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号1と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号1と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号1からなる。
【0196】
いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号2を含む。配列番号2は、myc(太字下線)タグ及びHis(イタリック体)タグを、マレイミドコンジュゲーションに必要なc末端システインと共に含有する。
【0197】
【0198】
いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号2と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号2と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号2と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号2と少なくとも96%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号2と少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号2と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号2と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号2からなる。
【0199】
いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号3を含む。配列番号3は、配列番号1と同じscFVコア配列を含むが、トランスグルタミナーゼ媒介性コンジュゲーションを容易にするためのN末端His(イタリック体)タグ及びc末端LLQGAポリペプチド(太字及び下線)を有する。
【0200】
【0201】
いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号3と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号3と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号3と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号3と少なくとも96%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号3と少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号3と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号3と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、scFvは、配列番号3からなる。
【0202】
いくつかの実施形態によれば、LNPは、カチオン性脂質、ステロール又はその誘導体、非カチオン性脂質、又はPEG化脂質を含む。
【0203】
A.カチオン性脂質
いくつかの実施形態では、20~74nmの平均直径を有する脂質ナノ粒子は、カチオン性脂質を含む。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、例えば、非融合性カチオン性脂質である。「非融合性カチオン性脂質」とは、ceDNAなどの核酸カーゴを凝縮及び/又は封入することができるが、融合性活性を有するか、又はほとんど有しないカチオン性脂質を意味する。
【0204】
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、以下の表1に列挙される国際公開及び米国特許出願公開に記載されており、例えば、膜不透過性蛍光色素排除アッセイ(例えば、本明細書の実施例のセクションに記載されるアッセイ)によって測定されるように、非融合性であると決定される。以下の表1に列挙されるこれらの特許文献国際公開及び米国特許出願公開の全ての内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0205】
【0206】
【0207】
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピルl-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(N-[1-(2,3-dioleyloxy)propyll-N,N,N-trimethylammonium chloride、DOTMA);N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピルl-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(N-[1-(2,3-dioleoyloxy)propyll-N,N,N-trimethylammonium chloride、DOTAP);1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-ethylphosphocholine、DOEPC);1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(1,2-dilauroyl-sn-glycero-3-ethylphosphocholine、DLEPC);1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(1,2-dimyristoyl-sn-glycero-3-ethylphosphocholine、DMEPC);1,2-ジミリストオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(14:1)、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノールブチルカルボキサミドイエチル1-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンザミド(MVL5);ジオクタデシルアミド-グリシルスペルミン(Dioctadecylamido-glycylspermine、DOGS);3b-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロール(3b-[N-(N’,N’-dimethylaminoethyl)carb amoyl]cholesterol、DC-Chol);ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド(Dioctadecyldimethylammonium Bromide、DDAB);Saint脂質(例えば、SAINT-2、N-メチル-4-(ジオレイル)メチルピリジニウム);1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(1,2-dimyristyloxypropy1-3-dimethylhydroxyethylammonium bromide、DMRIE);1,2-ジオレオイル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(1,2-dioleoy1-3-dimethyl-hydroxyethyl ammonium bromide、DORIE);1,2-ジオレオイルオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド(1,2-dioleoyloxypropy1-3-dimethylhydroxyethyl ammonium chloride、DORI);ジ-アルキル化アミノ酸(Di-alkylated Amino Acid、DILA2)(例えば、C18:1-norArg-C16);ジオレイルジメチルアンモニウムクロリド(Dioleyldimethylammonium chloride、DODAC);1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(1-palmitoy1-2-oleoyl-sn-glycero-3-ethylpho sphocholine、POEPC);及び1,2-ジミリストオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(1,2-dimyristoleoyl-sn-glycero-3-ethylphosphocholine、MOEPC)からなる群から選択される。いくつかの変形例では、縮合剤、例えば、カチオン性脂質は、例えば、ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2ジメチルアミノエチル)-[1,31-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル-4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA)、1,2-ジオレオイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DODAP)、1,2-ジオレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DODMA)、モルホリノコレステロール(Mo-CHOL)、(R)-5-(ジメチルアミノ)ペンタン-1,2-ジイルジオレエート塩酸塩(DODAPen-C1)、(R)-5-グアニジノペンタン-1,2-ジイルジオレエート塩酸塩(DOPen-G)、(R)-N,N,N-トリメチル-4,5-ビス(オレオイルオキシ)ペンタン-1-アミニウムクロリド(DOTAPen)などの脂質である。
【0208】
いくつかの実施形態では、縮合脂質は、DOTAPである。
【0209】
イオン化可能な脂質
いくつかの実施形態によれば、イオン化可能な脂質及び非ウイルスベクター(例えば、ceDNA)などの治療用核酸を含むLNPを含有する薬学的組成物も本明細書で提供される。そのようなLNPを使用して、例えば、脂質ナノ粒子(LNP)及び治療用核酸(TNA)を含む薬学的組成物であって、LNPが、本明細書に記載されるように、LNPに連結されたscFvを含む薬学的組成物を、目的の標的部位(例えば、細胞、組織、器官など)に送達することができる。
【0210】
例示的なイオン化脂質は、国際特許出願公開第2015/095340号、同第2015/199952号、同第2018/011633号、同第2017/049245号、同第2015/061467号、同第2012/040184号、同第2012/000104号、同第2015/074085号、同第2016/081029号、同第2017/004143号、同第2017/075531号、同第2017/117528号、同第2011/022460号、同第2013/148541号、同第2013/116126号、同第2011/153120号、同第2012/044638号、同第2012/054365号、同第2011/090965号、同第2013/016058号、同第2012/162210号、同第2008/042973号、同第2010/129709号、同第2010/144740号、同第2012/099755号、同第2013/049328号、同第2013/086322号、同第2013/086373号、同第2011/071860号、同第2009/132131号、同第2010/048536号、同第2010/088537号、同第2010/054401号、同第2010/054406号、同第2010/054405号、同第2010/054384号、同第2012/016184号、同第2009/086558号、同第2010/042877号、同第2011/000106号、同第2011/000107号、同第2005/120152号、同第2011/141705号、同第2013/126803号、同第2006/007712号、同第2011/038160号、同第2005/121348号、同第2011/066651号、同第2009/127060号、同第2011/141704号、同第2006/069782号、同第2012/031043号、同第2013/006825号、同第2013/033563号、同第2013/089151号、同第2017/099823号、同第2015/095346、及び同第2013/086354号、並びに米国特許出願公開第2016/0311759号、同第2015/0376115号、同第2016/0151284号、同第2017/0210697号、同第2015/0140070号、同第2013/0178541号、同第2013/0303587号、同第2015/0141678号、同第2015/0239926号、同第2016/0376224号、同第2017/0119904号、同第2012/0149894号、同第2015/0057373号、同第2013/0090372号、同第2013/0274523号、同第2013/0274504号、同第2013/0274504号、同第2009/0023673号、同第2012/0128760号、同第2010/0324120号、同第2014/0200257号、同第2015/0203446号、同第2018/0005363号、同第2014/0308304号、同第2013/0338210号、同第2012/0101148号、同第2012/0027796号、同第2012/0058144号、同第2013/0323269号、同第2011/0117125号、同第2011/0256175号、同第2012/0202871号、同第2011/0076335号、同第2006/0083780号、同第2013/0123338号、同第2015/0064242号、同第2006/0051405号、同第2013/0065939号、同第2006/0008910号、同第2003/0022649号、同第2010/0130588号、同第2013/0116307号、同第2010/0062967号、同第2013/0202684号、同第2014/0141070号、同第2014/0255472号、同第2014/0039032号、同第2018/0028664号、同第2016/0317458、及び同2013/0195920号に記載されており、これら全ての内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0211】
いくつかの実施形態では、イオン化可能な脂質は、以下の構造を有するMC3(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル-4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA又はMC3)である:
【0212】
【0213】
脂質DLin-MC3-DMAは、Jayaraman et al.,Angew.Chem.Int.Ed Engl.(2012),51(34):8529-8533(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される。
【0214】
いくつかの実施形態では、イオン化可能な脂質は、国際公開第2015/074085号(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される、脂質ATX-002である。
【0215】
いくつかの実施形態では、イオン化可能な脂質は、国際公開第2012/040184号(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される、(13Z,16Z)-N,N-ジメチル-3-ノニルドコサ-13,16-ジエン-1-アミン(化合物32)である。
【0216】
いくつかの実施形態では、イオン化可能な脂質は、国際公開第2015/199952号(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている、化合物6又は化合物22である。
【0217】
式(I)
いくつかの実施形態によれば、カチオン性脂質は、式(I)によって表される:
【0218】
【化20】
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、
R
1及びR
1’は、それぞれ独立して、C
1~3アルキレンであり、
R
2及びR
2’は、それぞれ独立して、直鎖又は分岐鎖C
1~6アルキレン、又はC
3~6シクロアルキレンであり、
R
3及びR
3’は、それぞれ独立して、任意選択的に置換されたC
1~6アルキル、又は任意選択的に置換されたC
3~6シクロアルキルであるか、
又は代替的に、R
2が、分岐鎖C
1~6アルキレンである場合、かつR
3が、C
1~6アルキルである場合、R
2及びR
3は、それらの介在するN原子と一緒になって、4員~8員のヘテロシクリルを形成するか、
又は代替的に、R
2’が、分岐鎖C
1~6アルキレンである場合、かつR
3’が、C
1~6アルキルである場合、R
2’及びR
3’は、それらの介在するN原子と一緒になって、4員~8員のヘテロシクリルを形成し、
R
4及びR
4’は、それぞれ独立して、-CH、-CH
2CH、又は-(CH
2)
2CHであり、
R
5及びR
5’が、それぞれ独立して、水素、C
1~20アルキレン又はC
2~20アルケニレンであり、
R
6及びR
6’が、各出現に対して、独立してC
1~20アルキレン、C
3~20シクロアルキレン、又はC
2~20アルケニレンであり、
m及びnが、それぞれ独立して、1、2、3、4、及び5から選択される整数である。
【0219】
本明細書の態様又は実施形態のいずれかのいくつかの実施形態によれば、R2及びR2’は、それぞれ独立してC1~3アルキレンである。
【0220】
本明細書の態様又は実施形態のいずれかのいくつかの実施形態によれば、R1又はR1’によって表される直鎖又は分岐鎖C1~3アルキレン、R2又はR2’によって表される直鎖又は分岐鎖C1~6アルキレン、及び任意選択的に置換された直鎖又は分岐鎖C1~6アルキルは、それぞれ任意選択的に、1つ以上のハロ及びシアノ基で置換されている。
【0221】
本明細書の態様又は実施形態のいずれかのいくつかの実施形態によれば、R1及びR2は一緒になって、C1~3アルキレンであり、R1’及びR2’は一緒になって、C1~3アルキレン、例えば、エチレンである。
【0222】
本明細書の態様又は実施形態のいずれかのいくつかの実施形態によれば、R3及びR3’は、それぞれ独立して、任意選択的に置換されたC1~3アルキル、例えば、メチルである。
【0223】
本明細書の態様又は実施形態のいずれかのいくつかの実施形態によれば、R4及びR4’は、それぞれ-CHである。
【0224】
本明細書の態様又は実施形態のいずれかのいくつかの実施形態によれば、R2は、任意選択的に置換された分岐鎖C1~6アルキレンであり、R2及びR3は、それらの介在するN原子と一緒になって、5員又は6員のヘテロシクリルを形成する。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態によれば、R2’は、任意選択的に置換された分岐鎖C1~6アルキレンである。R2’及びR3’は、それらの介在するN原子と一緒になって、ピロリジニル又はピペリジニルなどの5員又は6員のヘテロシクリルを形成する。
【0225】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態によれば、R4は、-C(Ra)2CRa、又は-[C(Ra)2]2CRaであり、Raは、C1~3アルキルであり、R3及びR4は、それらの介在するN原子と一緒になって、5員又は6員のヘテロシクリルを形成する。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態によれば、R4’は、-C(Ra)2CRa、又は-[C(Ra)2]2CRaであり、Raは、C1~3アルキルであり、R3’及びR4’は、それらの介在するN原子と一緒になって、ピロリジニル又はピペリジニルなどの5員又は6員のヘテロシクリルを形成する。
【0226】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態によれば、R5及びR5’は、それぞれ独立して、C1~10アルキレン又はC2~10アルケニレンである。一実施形態では、R5及びR5’は、それぞれ独立して、C1~8アルキレン又はC1~6アルキレンである。
【0227】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態によれば、R6及びR6’は、各出現に対して、独立して、C1~10アルキレン、C3~10シクロアルキレン、又はC2~10アルケニレンである。一実施形態では、C1~6アルキレン、C3~6シクロアルキレン、又はC2~6アルケニレン。一実施形態では、C3~10シクロアルキレン又はC3~6シクロアルキレンは、シクロプロピレンである。本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態によれば、m及びnは、それぞれ3である。
【0228】
本明細書の態様又は実施形態のうちのいずれかのいくつかの実施形態によれば、カチオン性脂質は、表2の脂質のいずれか1つ又はその薬学的に許容される塩から選択される。
【0229】
【0230】
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
【0235】
【0236】
【0237】
【0238】
【0239】
【0240】
式(II)
いくつかの態様では、カチオン性脂質は、式(II)のもの、
【0241】
【化21】
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、
aは、1~20の範囲の整数であり(例えば、aは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20であり)、
bは、2~10の範囲の整数であり(例えば、bは、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10であり)、
R
1が、存在しないか、又は(C
2~C
20)アルケニル、-C(O)O(C
2~C
20)アルキル、及び(C
2~C
20)アルキルで置換されたシクロプロピルから選択され、
R
2が、(C
2~C
20)アルキルである。
【0242】
第2の化学的実施形態では、式(II)のカチオン性脂質は、式(XIII)のもの:
【0243】
【化22】
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、c及びdは、それぞれ独立して、1~8の範囲の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、又は8であり、残りの変数は、式(XII)について記載されているとおりである。
【0244】
第3の化学的実施形態では、式(II)又は(III)のカチオン性脂質中のc及びdは、それぞれ独立して、2~8、3~8、3~7、3~6、3~5、4~8、4~7、4~6、5~8、5~7、又は6~8の範囲の整数であり、残りの変数は、式(XII)について記載されているとおりである。
【0245】
第4の化学的実施形態では、式(II)又は(III)のカチオン性脂質中のcは、2、3、4、5、6、7、又は8であり、残りの変数は、式(XII)又は第2若しくは第3の化学的実施形態について記載されているとおりである。あるいは、第4の化学的実施形態の一部として、式(XII)若しくは(XIII)のカチオン性脂質又はその薬学的に許容される塩中のc及びdは、それぞれ独立して、1、3、5、又は7であり、残りの変数は、式(XII)又は第2若しくは第3の化学的実施形態について記載されているとおりである。
【0246】
第5の化学的実施形態では、式(II)又は(III)のカチオン性脂質中のdは、2、3、4、5、6、7、又は8であり、残りの変数は、式(II)又は第2若しくは第3若しくは第4の化学的実施形態について記載されているとおりである。あるいは、第4の化学的実施形態の一部として、式(II)若しくは(III)のカチオン性脂質又はその薬学的に許容される塩中のc及びdの少なくとも1つは7であり、残りの変数は、式(II)又は第2若しくは第3若しくは第4の化学的実施形態について記載されているとおりである。
【0247】
第6の化学的実施形態では、式(II)又は(III)のカチオン性脂質は、式(IV)のもの:
【0248】
【化23】
又はその薬学的に許容される塩であり、式中、残りの変数は、式(I)について記載されているとおりである。
【0249】
第7の化学的実施形態では、式(II)、(III)、又は(IV)のカチオン性脂質中のbは、3~9の範囲の整数であり、残りの変数は、式(II)、又は第2、第3、第4、若しくは第5の化学的実施形態について記載されているとおりである。あるいは、第7の化学的実施形態の一部として、式(II)、(III)、又は(IV)のカチオン性脂質中のbは、3~8、3~7、3~6、3~5、4~9、4~8、4~7、4~6、5~9、5~8、5~7、6~9、6~8、又は7~9の範囲の整数であり、残りの変数は、式(II)、又は第2、第3、第4、若しくは第5の化学的実施形態について記載されているとおりである。別の代替例では、第7の化学的実施形態の一部として、式(II)、(III)、又は(IV)のカチオン性脂質中のbは、3、4、5、6、7、8、又は9であり、残りの変数は、式(XII)、又は第2、第3、第4若しくは第5の化学的実施形態について記載されているとおりである。
【0250】
第8の化学的実施形態では、式(II)、(III)、又は(IV)のカチオン性脂質中のaは、2~18の範囲の整数であり、残りの変数は、式(II)、又は第2、第3、第4、第5、若しくは第7の化学的実施形態について記載されているとおりである。あるいは、第8の実施形態の一部として、式(II)、(III)、又は(IV)のカチオン性脂質中のaは、2~18、2~17、2~16、2~15、2~14、2~13、2~12、2~11、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、3~18、3~17、3~16、3~15、3~14、3~13、3~12、3~11、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、4~18、4~17、4~16、4~15、4~14、4~13、4~12、4~11、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、5~18、5~17、5~16、5~15、5~14、5~13、5~12、5~11、5~10、5~9、25~8、5~7、6~18、6~17、6~16、6~15、6~14、6~13、6~12、6~11、6~10、6~9、6~8、7~18、7~17、7~16、7~15、7~14、7~13、7~12、7~11、7~10、7~9、8~18、8~17、8~16、8~15、8~14、8~13、8~12、8~11、8~10、9~18、9~17、9~16、9~15、9~14、9~13、9~12、9~11、10~18、10~17、10~16、10~15、10~14、10~13、11~18、11~17、11~16、11~15、11~14、11~13、12~18、12~17、12~16、12~15、12~14、13~18、13~17、13~16、13~15、14~18、14~17、14~16、15~18、15~17、又は16~18の範囲の整数であり、残りの変数は、式(II)、又は第2、第3、第4、第5、若しくは第7の化学的実施形態について記載されているとおりである。別の代替例では、第8の実施形態の一部として、式(II)、(III)、又は(IV)のカチオン性脂質中のaは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、又は18であり、残りの変数は、式(II)、又は第2、第3、第4、第5、若しくは第7の化学的実施形態について記載されているとおりである。
【0251】
第9の化学的実施形態では、式(II)、(III)、若しくは(IV)のカチオン性脂質又はその薬学的に許容される塩中のR1は、存在しないか、又は(C5~C15)アルケニル、-C(O)O(C4~C18)アルキル、及び(C4~C16)アルキルで置換されたシクロプロピルから選択され、残りの変数は、式(II)、(III)、若しくは(IV)又は第2、第3、第4、第5、第7、若しくは第8の化学的実施形態について記載されているとおりである。あるいは、第9の化学的実施形態の一部として、式(II)、(III)、若しくは(IV)のカチオン性脂質又はその薬学的に許容される塩中のR1は、存在しないか、又は(C5~C15)アルケニル、-C(O)O(C4~C16)アルキル、及び(C4~C16)アルキルで置換されたシクロプロピルから選択され、残りの変数は、式(II)、(III)、若しくは(IV)又は第2、第3、第4、第5、第7、若しくは第8の化学的実施形態について記載されているとおりである。あるいは、第9の化学的実施形態の一部として、式(II)、(III)、若しくは(IV)のカチオン性脂質又はその薬学的に許容される塩中のR1は、存在しないか、又は(C5~C12)アルケニル、-C(O)O(C4~C12)アルキル、及び(C4~C12)アルキルで置換されたシクロプロピルから選択され、残りの変数は、式(II)、(III)、若しくは(IV)又は第2、第3、第4、第5、第7、若しくは第8の化学的実施形態について記載されているとおりである。別の代替例では、第9の化学的実施形態の一部として、式(II)、(III)、若しくは(IV)のカチオン性脂質又はその薬学的に許容される塩中のR1は、存在しないか、又は(C5~C10)アルケニル、-C(O)O(C4~C10)アルキル、及び(C4~C10)アルキルで置換されたシクロプロピルから選択され、残りの変数は、式(II)、(III)、若しくは(IV)又は第2、第3、第4、第5、第7、若しくは第8の化学的実施形態について記載されているとおりである。
【0252】
第10の化学的実施形態では、R1は、C10アルケニルであり、残りの変数は、前述の実施形態のうちのいずれか1つに記載されているとおりである。
【0253】
第11の化学的実施形態では、式(II)、(III)、若しくは(IV)のカチオン性脂質又はその薬学的に許容される塩中のR1のC(O)O(C2-C20)アルキル、-C(O)O(C4-C18)アルキル、-C(O)O(C4~C12)アルキル、又は-C(O)O(C4~C10)アルキル中のアルキルは、非分岐アルキルであり、残りの変数は、前述の実施形態のうちのいずれか1つに記載されているとおりである。1つの化学的実施形態では、R1は、-C(O)O(C9アルキル)である。あるいは、第11の化学的実施形態では、式(II)、(III)、若しくは(IV)のカチオン性脂質又はその薬学的に許容される塩中のR1の-C(O)O(C4~C18)アルキル、-C(O)O(C4~C12)アルキル、又は-C(O)O(C4~C10)アルキル中のアルキルは、分岐アルキルであり、残りの変数は、前述の化学的実施形態のうちのいずれか1つに記載されているとおりである。1つの化学的実施形態では、R1は-C(O)O(C17アルキル)であり、残りの変数は、前述の化学的実施形態のいずれか1つに記載されているとおりである。
【0254】
第12の化学的実施形態では、式(II)、(III)、若しくは(IV)のカチオン性脂質又はその薬学的に許容される塩中のR1は、以下の表3に列挙される任意の基から選択され、ここで、基の各々における波状結合は、脂質分子の残りへの基の結合点を示し、残りの変数は、式(II)、(III)、若しくは(IV)又は第2、第3、第4、第5、第7、若しくは第8の化学的実施形態について記載されているとおりである。本開示は、表4中のR1基のいずれか1つと表5中のR2基のいずれか1つとの組み合わせを更に企図し、残りの変数は、式(II)、(III)若しくは(IV)又は第2、第3、第4、第5、第7若しくは第8の化学的実施形態について記載されているとおりである。
【0255】
【0256】
第13の化学的実施形態では、式(II)のカチオン性脂質又はその薬学的に許容される塩中のR2は、以下の表4に列挙される任意の基から選択され、基の各々における波状結合は、脂質分子の残りへの基の結合点を示し、残りの変数は、式(II)、又は第7、第8、第9、第10、若しくは第11の化学的実施形態について記載されているとおりである。
【0257】
【0258】
特定の例は、表5、以下の例示セクションに提供され、式(II)のカチオン性脂質の本明細書における第14の化学的実施形態の一部として含まれる。薬学的に許容される塩及びイオン化形態及び中性形態もまた含まれる。
【0259】
【0260】
【0261】
【0262】
【0263】
【0264】
式(V)
いくつかの態様では、カチオン性脂質は、式(V)のもの:
【0265】
【化24】
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、
R
1及びR
1’が、それぞれ独立して、R
aから選択される1つ以上の基で任意選択的に置換された(C
1~C
6)アルキレンであり、
R
2及びR
2’が、それぞれ独立して、(C
1~C
2)アルキレンであり、
R
3及びR
3’が、それぞれ独立して、R
bから選択される1つ以上の基で任意選択的に置換された(C
1~C
6)アルキルであり、
又は代替的に、R
2及びR
3並びに/又はR
2’及びR
3’は、それらの介在するN原子と一緒になって、4員~7員のヘテロシクリルを形成し、
R
4及びR
4’が、それぞれ、-C(O)O-によって中断された(C
2~C
6)アルキレンであり、
R
5及びR
5’が、それぞれ独立して、(C
2~C
30)アルキル又は(C
2~C
30)アルケニルであり、これらのそれぞれが、任意選択的に-C(O)O-又は(C
3~C
6)シクロアルキルで中断され、
R
a及びR
bが、それぞれハロ又はシアノである。
【0266】
第2の化学的態様では、式(V)のカチオン性脂質中のR1及びR1’は、それぞれ独立して(C1~C6)アルキレンであり、残りの変数は式(V)について上に記載されているとおりである。あるいは、第2の化学的態様の一部として、式(V)のカチオン性脂質中のR1及びR1’は、それぞれ独立して(C1~C3)アルキレンであり、残りの変数は式(V)について上に記載されているとおりである。
【0267】
第3の化学的態様では、式(V)のカチオン性脂質は、
式(VI):
【0268】
【化25】
のもの、又はその薬学的に許容される塩であり、式中、残りの変数は式(V)について上に記載されているとおりである。
【0269】
第4の化学的態様では、式(V)のカチオン性脂質は、式(VII)又は(VIII)
【0270】
【化26】
のもの、又はその薬学的に許容される塩であり、式中、残りの変数は式(V)について上に記載されているとおりである。
【0271】
第5の化学的態様では、式(V)のカチオン性脂質は、式(IX)又は(VI)
【0272】
【化27】
のもの、又はその薬学的に許容される塩であり、式中、残りの変数は式(V)について上に記載されているとおりである。
【0273】
第6の化学的態様では、式(V)のカチオン性脂質は、式(XI)、(XII)、(XIII)、又は(XIV)
【0274】
【化28】
のもの、又はその薬学的に許容される塩であり、式中、残りの変数は式(XV)について上に記載されているとおりである。
【0275】
第7の化学的態様では、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、又は(XIV)のカチオン性脂質中のR5及びR5’の少なくとも1つは、分岐アルキル又は分岐アルケニルである(炭素原子のs数は、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、又は(XIV)について上に記載されているとおりである)。別の代替形態では、第7の化学的態様の一部として、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、又は(XIV)のカチオン性脂質中のR5及びR5’のうちの1つは、分岐アルキル又は分岐アルケニルである。別の代替形態では、第7の化学的態様の一部として、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、又は(XIV)のカチオン性脂質中のR5は、分岐アルキル又は分岐アルケニルである。別の代替形態では、第7の化学的態様の一部として、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、又は(XIV)のカチオン性脂質中のR5は、分岐アルキル又は分岐アルケニルである。
【0276】
第8の化学的態様では、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、又は(XIV)のカチオン性脂質中のR5は、(C6~C26)アルキル又は(C6~C26)アルケニルであり、これらのそれぞれは、任意選択的に-C(O)O-又は(C3~C6)シクロアルキルで中断され、残りの変数は、式(I)について上に記載されているとおりである。あるいは、第7の化学的態様の一部として、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、又は(XIV)のカチオン性脂質中のR5は、(C6~C26)アルキル又は(C6~C26)アルケニルであり、これらのそれぞれは、任意選択的に-C(O)O-又は(C3~C5)シクロアルキルで中断され、残りの変数は、式(V)について上に記載されているとおりである。別の代替例では、第8の化学的態様の一部として、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、又は(XIV)のカチオン性脂質中のR5は、(C7~C26)アルキル又は(C7~C26)アルケニルであり、これらのそれぞれは、任意選択的に-C(O)O-又は(C3~C5)シクロアルキルで中断され、残りの変数は、式(V)について上に記載されているとおりである。別の代替例では、第8の化学的態様の一部として、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、又は(XIV)のカチオン性脂質中のR5は、(C8~C26)アルキル又は(C8~C26)アルケニルであり、これらのそれぞれは、任意選択的に-C(O)O-又は(C3~C5)シクロアルキルで中断され、残りの変数は、式(V)について上に記載されているとおりである。別の代替例では、第8の化学的態様の一部として、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、又は(XIV)のカチオン性脂質中のR5は、(C6~C24)アルキル又は(C6~C24)アルケニルであり、これらのそれぞれは、任意選択的に-C(O)O-又はシクロプロピルで中断され、残りの変数は、式(V)について上に記載されているとおりである。別の代替例では、第8の化学的態様の一部として、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、又は(XIV)のカチオン性脂質中のR5は、(C8~C24)アルキル又は(C8~C24)アルケニルであり、当該(C8~C24)アルキルは、任意選択的に-C(O)O-又はシクロプロピルで中断され、残りの変数は、式(V)について上に記載されているとおりである。別の代替例では、第8の化学的態様の一部として、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、又は(XIV)のカチオン性脂質中のR5は、(C8~C10)アルキルであり、残りの変数は、式(V)について上に記載されているとおりである。別の代替例では、第8の化学的態様の一部として、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、又は(XIV)のカチオン性脂質中のR5は、シクロプロピルで中断された(C14~C16)アルキルであり、残りの変数は、式(V)について上に記載されているとおりである。別の代替例では、第8の化学的態様の一部として、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、又は(XIV)のカチオン性脂質中のR5は、-C(O)O-で中断された(C10~C24)アルキルであり、残りの変数は、式(V)について上に記載されているとおりである。別の代替例では、第8の化学的態様の一部として、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、又は(XIV)のカチオン性脂質中のR5は、(C16~C18)アルケニルであり、残りの変数は、式(V)について上に記載されているとおりである。別の代替例では、第8の化学的態様の一部として、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、又は(XIV)のカチオン性脂質中のR5は、-(CH2)3C(O)O(CH2)8CH3、-(CH2)5C(O)O(CH2)8CH3、-(CH2)7C(O)O(CH2)8CH3、-(CH2)7C(O)OCH[(CH2)7CH3]2、-(CH2)7-C3H6-(CH2)7CH3、-(CH2)7CH3、-(CH2)9CH3、-(CH2)16CH3、-(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3、又は-(CH2)7CH=CHCH2CH=CH(CH2)4CH3であり、残りの変数は、式(XV)について上に記載されているとおりである。
【0277】
第9の化学的態様では、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、又は(XIV)のカチオン性脂質中のR5’は、-C(O)O-で中断された(C15~C28)アルキルであり、残りの変数は、式(V)又は第8の化学的態様について上に記載されているとおりである。あるいは、第9の化学的態様の一部として、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、又は(XIV)のカチオン性脂質中のR5’は、-C(O)O-で中断された(C17~C28)アルキルであり、残りの変数は、式(V)又は第8の化学的態様について上に記載されているとおりである。別の代替例では、第9の実施形態の一部として、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、又は(XIV)のカチオン性脂質中のR5’は、-C(O)O-で中断された(C19~C28)アルキルであり、残りの変数は、式(V)又は第8の化学的態様について上に記載されているとおりである。別の代替例では、第9の化学的態様の一部として、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、又は(XIV)のカチオン性脂質中のR5’は、-C(O)O-で中断された(C17~C26)アルキルであり、残りの変数は、式(V)又は第8の化学的態様について上に記載されているとおりである。別の代替例では、第9の実施形態の一部として、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、又は(XIV)のカチオン性脂質中のR5’は、-C(O)O-で中断された(C19~C26)アルキルであり、残りの変数は、式(V)又は第8の化学的態様について上に記載されているとおりである。別の代替例では、第9の化学的態様の一部として、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、又は(XIV)のカチオン性脂質中のR5’は、-C(O)O-で中断された(C20~C26)アルキルであり、残りの変数は、式(V)又は第8の化学的態様について上に記載されているとおりである。別の代替例では、第9の実施形態の一部として、R5’は、-C(O)O-で中断された(C22~C24)アルキルであり、残りの変数は、式(V)又は第8の化学的態様について上に記載されているとおりである。別の代替例では、第9の実施形態の一部として、R5’は、-(CH2)5C(O)OCH[(CH2)7CH3]2、-(CH2)7C(O)OCH[(CH2)7CH3]2、-(CH2)5C(O)OCH(CH2)2[(CH2)7CH3]2、又は-(CH2)7C(O)OCH(CH2)2[(CH2)7CH3]2であり、残りの変数は、式(V)又は第8の化学的態様について上に記載されているとおりである。
【0278】
別の態様では、式(V)、(VI)、(VIII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XII)、(XIII)、又は(XIV)のカチオン性脂質は、表6の以下の脂質又はその薬学的に許容される塩のいずれかから選択されてもよい。
【0279】
【0280】
式(XV)
いくつかの態様では、カチオン性脂質は、式(XV)のもの、
【0281】
【化29】
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、
R’が、存在しないか、水素、又はC
1~C
6アルキルであり、但し、R’が水素又はC
1~C
6アルキルである場合、R’、R
1、及びR
2が全て結合している窒素原子が、プロトン化されており、
R
1及びR
2が、それぞれ独立して、水素、C
1~C
6アルキル、又はC
2~C
6アルケニルであり、
R
3が、C
1~C
12アルキレン又はC
2~C
12アルケニレンであり、
R
4が、C
1~C
16非分岐アルキル、C
2~C
16非分岐アルケニル、又は
【0282】
【化30】
であり、式中、
R
4a及びR
4bが、それぞれ独立して、C
1~C
16非分岐アルキル又はC
2~C
16非分岐アルケニルであり、
R
5が、存在しないか、C
1~C
8アルキレン、又はC
2~C
8アルケニレンであり、
R
6a及びR
6bが、それぞれ独立して、C
7~C
16アルキル又はC
7~C
16アルケニルであり、但し、R
6a及びR
6b中の合わせた場合の炭素原子の総数が、15より大きく、
X
1及びX
2が、それぞれ独立して、-OC(=O)-、-SC(=O)-、-OC(=S)-、-C(=O)O-、
-C(=O)S-、-S-S-、-C(R
a)=N-、-N=C(R
a)-、-C(R
a)=NO-、-O-N=C(R
a)-、-C(=O)NR
a-、
-NR
aC(=O)-、-NR
aC(=O)NR
a-、-OC(=O)O-、-OSi(R
a)
2O-、-C(=O)(CR
a
2)C(=O)O-、又はOC(=O)(CR
a
2)C(=O)-であり、式中、
R
aが、各出現に対して、独立して、水素又はC
1~C
6アルキルであり、
nが、1、2、3、4、5、及び6から選択される整数である。
【0283】
第2の実施形態では、第1の実施形態によるカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、X1及びX2が、同じであり、他の全ての残りの変数が、式(V)又は第1の実施形態について記載したとおりである。
【0284】
第3の実施形態では、第1若しくは第2の実施形態によるカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、X1及びX2が、それぞれ独立して、-OC(=O)-、-SC(=O)-、-OC(=S)-、-C(=O)O-、-C(=O)S-、若しくは-S-S-であるか、又はX1及びX2が、それぞれ独立して、-C(=O)O-、-C(=O)S-、若しくは-S-S-であるか、又はX1及びX2が、それぞれ独立して、-C(=O)O若しくは-S-S-であり、全ての他の残りの変数が、式V又は先行する実施形態のうちのいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0285】
第4の実施形態では、本開示のカチオン性脂質は、式(XVI)で表されるか、
【0286】
【化31】
又はその薬学的に許容される塩であり、式中、nが、1、2、3、及び4から選択される整数であり、他の全ての残りの変数が、式(XV)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0287】
第5の実施形態では、本開示のカチオン性脂質は、式(XVII)で表されるか:
【0288】
【化32】
又はその薬学的に許容される塩であり、式中、nが、1、2、及び3から選択される整数であり、他の全ての残りの変数が、式(XV)、式(XVI)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0289】
第6の実施形態では、本開示のカチオン性脂質は、式(XVIII)で表されるか、
【0290】
【化33】
又はその薬学的に許容される塩であり、他の全ての残りの変数が、式(XV)、式(XVI)、式(XVII)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0291】
第7の実施形態では、式(XV)、式(XVI)、式(XVII)、式(XVIII)若しくは先行する実施形態のうちのいずれか1つによるカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素、C1~C6アルキル若しくはC2~C6アルケニル、又はC1~C5アルキル若しくはC2~C5アルケニル、又はC1~C4アルキル若しくはC2~C4アルケニル、又はC6アルキル、又はC5アルキル、又はC4アルキル、又はC3アルキル、又はC2アルキル、又はC1アルキル、又はC6アルケニル、又はC5アルケニル、又はC4アルケニル、又はC3アルケニル、又はC2アルケニルであり、他の全ての残りの変数が、式(XV)、式(XVI)、式(XVII)、式(XVIII)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0292】
第8の実施形態では、本開示のカチオン性脂質は、式(XIX)で表されるか、
【0293】
【化34】
又はその薬学的に許容される塩であり、他の全ての残りの変数が、式(XV)、式(XVI)、式(XVII)、式(XVIII)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0294】
第9の実施形態では、式(XV)、式(XVI)、式(XVII)、式(XVIII)、式(XIX)若しくは先行する実施形態のうちのいずれか1つに記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、R3は、C1~C9アルキレン若しくはC2~C9アルケニレン、C1~C7アルキレン若しくはC2~C7アルケニレン、C1~C5アルキレン若しくはC2~C5アルケニレン、又はC2~C8アルキレン若しくはC2~C8アルケニレン、又はC3~C7アルキレン若しくはC3~C7アルケニレン、又はC5~C7アルキレン若しくはC5~C7アルケニレンであるか、あるいはR3が、C12アルキレン、C11アルキレン、C10アルキレン、C9アルキレン、又はC8アルキレン、又はC7アルキレン、又はC6アルキレン、又はC5アルキレン、又はC4アルキレン、又はC3アルキレン、又はC2アルキレン、又はC1アルキレン、又はC12アルケニレン、C11アルケニレン、C10アルケニレン、C9アルケニレン、又はC8アルケニレン、又はC7アルケニレン、又はC6アルケニレン、又はC5アルケニレン、又はC4アルケニレン、又はC3アルケニレン、又はC2アルケニレンであり、他の全ての残りの変数が、式(XV)、式(XVI)、式(XVII)、式(XVIII)、式(XIX)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0295】
第10の実施形態では、式(XV)、式(XVI)、式(XVII)、式(XVIII)、式(XIX)若しくは先行する実施形態のうちのいずれか1つ、又はその薬学的に許容される塩に記載のカチオン性脂質において、R5が、存在しないか、C1~C6アルキレン、若しくはC2~C6アルケニレンであるか、又はR5が、存在しないか、C1~C4アルキレン、若しくはC2~C4アルケニレンであるか、又はR5が存在しないか、又はR5が、C8アルキレン、C7アルキレン、C6アルキレン、C5アルキレン、C4アルキレン、C3アルキレン、C2アルキレン、C1アルキレン、C8アルケニレン、C7アルケニレン、C6アルケニレン、C5アルケニレン、C4アルケニレン、C3アルケニレン、又はC2アルケニレンであり、他の全ての残りの変数が、式(XV)、式(XVI)、式(XVII)、式(XVIII)、式(XIX)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0296】
第11の実施形態では、式(XV)、式(XVI)、式(XVII)、式(XVIII)、式(XIX)若しくは先行する実施形態のうちのいずれか1つ、又はその薬学的に許容される塩に記載のカチオン性脂質において、R4が、C1~C14非分岐アルキル、C2~C14非分岐アルケニル、又は
【0297】
【化35】
であり、R
4a及びR
4bが、それぞれ独立して、C
1~C
12非分岐アルキル若しくはC
2~C
12非分岐アルケニルであるか、又はR
4が、C
2~C
12非分岐アルキル若しくはC
2~C
12非分岐アルケニルであるか、又はR
4が、C
5~C
7非分岐アルキル若しくはC
5~C
7非分岐アルケニルであるか、又はR
4が、C
16非分岐アルキル、C
15非分岐アルキル、C
14非分岐アルキル、C
13非分岐アルキル、C
12非分岐アルキル、C
11非分岐アルキル、C
10非分岐アルキル、C
9非分岐アルキル、C
8非分岐アルキル、C
7非分岐アルキル、C
6非分岐アルキル、C
5非分岐アルキル、C
4非分岐アルキル、C
3非分岐アルキル、C
2非分岐アルキル、C
1非分岐アルキル、C
16非分岐アルケニル、C
15非分岐アルケニル、C
14非分岐アルケニル、C
13非分岐アルケニル、C
12非分岐アルケニル、C
11非分岐アルケニル、C
10非分岐アルケニル、C
9非分岐アルケニル、C
8非分岐アルケニル、C
7非分岐アルケニル、C
6非分岐アルケニル、C
5非分岐アルケニル、C
4非分岐アルケニル、C
3非分岐アルケニル、若しくはC
2アルケニルであるか、又はR
4が、
【0298】
【化36】
であり、R
4a及びR
4bが、それぞれ独立して、C
2~C
10非分岐アルキル若しくはC
2~C
10非分岐アルケニルであるか、又はR
4が、
【0299】
【化37】
であり、式中、R
4a及びR
4bが、それぞれ独立して、C
16非分岐アルキル、C
15非分岐アルキル、C
14非分岐アルキル、C
13非分岐アルキル、C
12非分岐アルキル、C
11非分岐アルキル、C
10非分岐アルキル、C
9非分岐アルキル、C
8非分岐アルキル、C
7非分岐アルキル、C
6非分岐アルキル、C
5非分岐アルキル、C
4非分岐アルキル、C
3非分岐アルキル、C
2アルキル、C
1アルキル、C
16非分岐アルケニル、C
15非分岐アルケニル、C
14非分岐アルケニル、C
13非分岐アルケニル、C
12非分岐アルケニル、C
11非分岐アルケニル、C
10非分岐アルケニル、C
9非分岐アルケニル、C
8非分岐アルケニル、C
7非分岐アルケニル、C
6非分岐アルケニル、C
5非分岐アルケニル、C
4非分岐アルケニル、C
3非分岐アルケニル、若しくはC
2アルケニルであり、他の全ての残りの変数が、式(XV)、式(XVI)、式(XVII)、式(XVIII)、式(XIX)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0300】
第12の実施形態では、式(XV)、式(XVI)、式(XVII)、式(XVIII)、式(XIX)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つ又はその薬学的に許容される塩に記載のカチオン性脂質において、R6a及びR6bが、それぞれ独立して、C6~C14アルキル若しくはC6~C14アルケニルであるか、又はR6a及びR6bは、それぞれ独立して、C8~C12アルキル若しくはC8~C12アルケニルであるか、又はR6a及びR6bが、それぞれ独立して、C16アルキル、C15アルキル、C14アルキル、C13アルキル、C12アルキル、C11アルキル、C10アルキル、C9アルキル、C8アルキル、C7アルキル、C16アルケニル、C15アルケニル、C14アルケニル、C13アルケニル、C12アルケニル、C11アルケニル、C10アルケニル、C9アルケニル、C8アルケニル、若しくはC7アルケニルであり、但し、R6a及びR6bにおいて合わせた炭素原子の総数が15より大きく、他の全ての残りの変数が、式(XV)、式(XVI)、式(XVII)、式(XVIII)、式(XIX)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0301】
第13の実施形態では、式(XV)、式(XVI)、式(XVII)、式(XVIII)、式(XIX)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つ又はその薬学的に許容される塩に記載のカチオン性脂質において、R6a及びR6bが、互いに等しい数の炭素原子を含有するか、又はR6a及びR6bが同じであるか、又はR6a及びR6bが両方とも、C16アルキル、C15アルキル、C14アルキル、C13アルキル、C12アルキル、C11アルキル、C10アルキル、C9アルキル、C8アルキル、C7アルキル、C16アルケニル、C15アルケニル、C14アルケニル、C13アルケニル、C12アルケニル、C11アルケニル、C10アルケニル、C9アルケニル、C8アルケニル、若しくはC7アルケニルであり、但し、R6a及びR6bにおいて合わせた炭素原子の総数が15より大きく、他の全ての残りの変数が、式(XV)、式(XVI)、式(XVII)、式(XVIII)、式(XIX)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0302】
第14の実施形態では、式(XV)、式(XVI)、式(XVII)、式(XVIII)、式(XIX)若しくは先行する実施形態のうちのいずれか1つに記載のカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、先行する実施形態のうちのいずれか1つに定義されるR6a及びR6bが、互いにそれぞれ異なる数の炭素原子を含有するか、又はR6a及びR6bの炭素原子の数が、1個若しくは2個の炭素原子だけ異なるか、又は、R6a及びR6bの炭素原子の数が、1個の炭素原子だけ異なるか、又はR6aがC7アルキルであり、かつR6aがC8アルキルであるか、R6aがC8アルキルであり、かつR6aがC7 アルキルであるか、R6aがC8アルキルであり、かつR6aがC9アルキルであるか、R6aがC9アルキルであり、かつR6aがC8アルキルであるか、R6aがC9アルキルであり、かつR6aがC10アルキルであるか、R6aがC10アルキルであり、かつR6aがC9アルキルであるか、R6aがC10アルキルであり、かつR6aがC11アルキルであるか、R6aがC11アルキルであり、かつR6aがC10アルキルであるか、R6aがC11アルキルであり、かつR6aがC12アルキルであるか、R6aがC12アルキルであり、かつR6aがC11アルキルであるか、R6aがC7アルキルであり、かつR6aがC9アルキルであるか、R6aがC9アルキルであり、かつR6aがC7アルキルであるか、R6aがC8アルキルであり、かつR6aがC10アルキルであるか、R6aがC10アルキルであり、かつR6aがC8アルキルであるか、R6aがC9アルキルであり、かつR6aがC11アルキルであるか、R6aがC11アルキルであり、かつR6aがC9アルキルであるか、R6aがC10アルキルであり、かつR6aがC12アルキルであるか、R6aがC12アルキルであり、かつR6aがC10アルキルであるか、R6aがC11アルキルであり、かつR6aがC13アルキルであるか、又はR6aがC13アルキルであり、かつR6aがC11アルキルであるか、などであり、他の全ての残りの変数が、式I、式II、式III、式IV、式V又は先行する実施形態のうちのいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0303】
一実施形態では、本開示のカチオン性脂質、又は式(XV)、式(XVI)、式(XVII)、式(XVIII)若しくは式(XIX)のカチオン性脂質は、表7の脂質から選択される任意の1つの脂質又はその薬学的に許容される塩である。
【0304】
【0305】
【0306】
式(XX)
いくつかの態様では、カチオン性脂質は、式(XX)のもの、
【0307】
【化38】
(XX)
又はその薬学的に許容される塩であって、式中、
R’が、存在しないか、水素、又はC
1~C
3アルキルであり、但し、R’が水素又はC
1~C
3アルキルである場合、R’、R
1、及びR
2が全て結合している窒素原子が、プロトン化されており、
R
1及びR
2が、それぞれ独立して、水素又はC
1~C
3アルキルであり、
R
3が、C
3~C
10アルキレン又はC
3~C
10アルケニレンであり、
R
4が、C
1~C
16非分岐アルキル、C
2~C
16非分岐アルケニル、又は
【0308】
【化39】
であり、式中、
R
4a及びR
4bが、それぞれ独立して、C
1~C
16非分岐アルキル又はC
2~C
16非分岐アルケニルであり、
R
5が、存在しないか、C
1~C
6アルキレン、又はC
2~C
6アルケニレンであり、
R
6a及びR
6bが、それぞれ独立して、C
7~C
14アルキル又はC
7~C
14アルケニルであり、
Xが、-OC(=O)-、-SC(=O)-、-OC(=S)-、-C(=O)O-、-C(=O)S-、-S-S-、-C(R
a)=N-、
-N=C(R
a)-、-C(R
a)=NO-、-O-N=C(R
a)-、-C(=O)NR
a-、-NR
aC(=O)-、-NR
aC(=O)NR
a-、
-OC(=O)O-、-OSi(R
a)
2O-、-C(=O)(CR
a
2)C(=O)O-、又はOC(=O)(CR
a
2)C(=O)-であり、式中、
R
aが、各出現に対して、独立して、水素又はC
1~C
6アルキルであり、
nが、1、2、3、4、5、及び6から選択される整数である。
【0309】
第2の実施形態では、第1の実施形態によるカチオン性脂質、又はその薬学的に許容される塩において、Xが、-OC(=O)-、-SC(=O)-、-OC(=S)-、-C(=O)O-、-C(=O)S-、又は-S-S-であり、他の全ての残りの変数が、式I又は第1の実施形態について説明したとおりである。
【0310】
第3の実施形態では、本開示のカチオン性脂質は、式(XXI)で表されるか、
【0311】
【化40】
又はその薬学的に許容される塩であり、式中、nが、1、2、3、及び4から選択される整数であり、他の全ての残りの変数が、式(XX)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つについて記載されているとおりである。代替の第3の実施形態では、nが、1、2、及び3から選択される整数であり、他の全ての残りの変数が、式(XX)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0312】
第4の実施形態では、本開示のカチオン性脂質は、式(XXII)で表されるか、
【0313】
【化41】
又はその薬学的に許容される塩であり、他の全ての残りの変数が、式(XX)、式(XXI)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0314】
第5の実施形態では、第1の実施形態によるカチオン性脂質又はその薬学的に許容される塩において、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素又はC1~C2アルキル、若しくはC2~C3アルケニルであるか、又はR’、R1、及びR2は、それぞれ独立して、水素、C1~C2アルキルであり、他の全ての残りの変数は、式(XX)、式(XXI)又は前述の実施形態のいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0315】
第6の実施形態では、本開示のカチオン性脂質は、式(XXII)で表されるか、
【0316】
【化42】
又はその薬学的に許容される塩であり、他の全ての残りの変数が、式(XX)、式(XXI)、式(XXII)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0317】
第7の実施形態では、式(XX)、式(XXI)、式(XXII)、式(XXIII)若しくは先行する実施形態のうちのいずれか1つ、又はその薬学的に許容される塩に記載のカチオン性脂質において、R5が、存在しないか、若しくはC1~C8アルキレンであるか、又はR5が、存在しないか、C1~C6アルキレン、若しくはC2~C6アルケニレンであるか、又はR5が、存在しないか、C1~C4アルキレン、若しくはC2~C4アルケニレンであるか、又はR5が存在しないか、又はR5が、C8アルキレン、C7アルキレン、C6アルキレン、C5アルキレン、C4アルキレン、C3アルキレン、C2アルキレン、C1アルキレン、C8アルケニレン、C7アルケニレン、C6アルケニレン、C5アルケニレン、C4アルケニレン、C3アルケニレン、又はC2アルケニレンであり、他の全ての残りの変数が、式(XX)、式(XXI)、式(XXII)、式(XXIII)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0318】
第8の実施形態では、本開示のカチオン性脂質は、式(XXIV)で表されるか、
【0319】
【化43】
又はその薬学的に許容される塩であり、他の全ての残りの変数が、式(XX)、式(XXI)、式(XXII)、式(XXIII)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0320】
第9の実施形態では、式(XX)、式(XXI)、式(XXII)、式(XXIII)、式(XXIV)若しくは先行する実施形態のうちのいずれか1つ、又はその薬学的に許容される塩に記載のカチオン性脂質において、R4が、C1~C14非分岐アルキル、C2~C14非分岐アルケニル、又は
【0321】
【化44】
であり、R
4a及びR
4bが、それぞれ独立して、C
1~C
12非分岐アルキル若しくはC
2~C
12非分岐アルケニルであるか、又はR
4が、C
2~C
12非分岐アルキル若しくはC
2~C
12非分岐アルケニルであるか、又はR
4が、C
5~C
12非分岐アルキル若しくはC
5~C
12非分岐アルケニルであるか、又はR
4が、C
16非分岐アルキル、C
15非分岐アルキル、C
14非分岐アルキル、C
13非分岐アルキル、C
12非分岐アルキル、C
11非分岐アルキル、C
10非分岐アルキル、C
9非分岐アルキル、C
8非分岐アルキル、C
7非分岐アルキル、C
6非分岐アルキル、C
5非分岐アルキル、C
4非分岐アルキル、C
3非分岐アルキル、C
2非分岐アルキル、C
1非分岐アルキル、C
16非分岐アルケニル、C
15非分岐アルケニル、C
14非分岐アルケニル、C
13非分岐アルケニル、C
12非分岐アルケニル、C
11非分岐アルケニル、C
10非分岐アルケニル、C
9非分岐アルケニル、C
8非分岐アルケニル、C
7非分岐アルケニル、C
6非分岐アルケニル、C
5非分岐アルケニル、C
4非分岐アルケニル、C
3非分岐アルケニル、若しくはC
2アルケニルであるか、又はR
4が、
【0322】
【化45】
であり、R
4a及びR
4bが、それぞれ独立して、C
2~C
10非分岐アルキル若しくはC
2~C
10非分岐アルケニルであるか、又はR
4が、
【0323】
【化46】
であり、式中、R
4a及びR
4bが、それぞれ独立して、C
16非分岐アルキル、C
15非分岐アルキル、C
14非分岐アルキル、C
13非分岐アルキル、C
12非分岐アルキル、C
11非分岐アルキル、C
10非分岐アルキル、C
9非分岐アルキル、C
8非分岐アルキル、C
7非分岐アルキル、C
6非分岐アルキル、C
5非分岐アルキル、C
4非分岐アルキル、C
3非分岐アルキル、C
2アルキル、C
1アルキル、C
16非分岐アルケニル、C
15非分岐アルケニル、C
14非分岐アルケニル、C
13非分岐アルケニル、C
12非分岐アルケニル、C
11非分岐アルケニル、C
10非分岐アルケニル、C
9非分岐アルケニル、C
8非分岐アルケニル、C
7非分岐アルケニル、C
6非分岐アルケニル、C
5非分岐アルケニル、C
4非分岐アルケニル、C
3非分岐アルケニル、若しくはC
2アルケニルであり、他の全ての残りの変数が、式(XX)、式(XXI)、式(XXII)、式(XXIII)、式(XXIV)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0324】
第10の実施形態では、式(XX)、式(XXI)、式(XXII)、式(XXIII)、式(XXIV)若しくは先行する実施形態のうちのいずれか1つ、又はその薬学的に許容される塩に記載のカチオン性脂質において、R3が、C3~C8アルキレン若しくはC3~C8アルケニレン、C3~C7アルキレン若しくはC3~C7アルケニレン、又はC3~C5アルキレン若しくはC3~C5アルケニレンであるか、又はR3が、C8アルキレン、若しくはC7アルキレン、若しくはC6アルキレン、若しくはC5アルキレン、若しくはC4アルキレン、若しくはC3アルキレン、若しくはC1アルキレン、若しくはC8アルケニレン、若しくはC7アルケニレン、若しくはC6アルケニレン、若しくはC5アルケニレン、若しくはC4アルケニレン、若しくはC3アルケニレンであり、他の全ての残りの変数が、式式(XX)、式(XXI)、式(XXII)、式(XXIII)、式(XXIV)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0325】
第11の実施形態では、式(XX)、式(XXI)、式(XXII)、式(XXIII)、式(XXIV)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つ又はその薬学的に許容される塩に記載のカチオン性脂質において、R6a及びR6bが、それぞれ独立して、C7~C12アルキル若しくはC7~C12アルケニルであるか、又はR6a及びR6bは、それぞれ独立して、C8~C10アルキル若しくはC8~C10アルケニルであるか、又はR6a及びR6bは、それぞれ独立して、C12アルキル、C11アルキル、C10アルキル、C9アルキル、C8アルキル、C7アルキル、C12アルケニル、C11アルケニル、C10アルケニル、C9アルケニル、C8アルケニル、若しくはC7アルケニルであり、他の全ての残りの変数が、式(XX)、式(XXI)、式(XXII)、式(XXIII)、式(XXIV)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0326】
第12の実施形態では、式(XX)、式(XXI)、式(XXII)、式(XXIII)、式(XXIV)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つ又はその薬学的に許容される塩に記載のカチオン性脂質において、R6a及びR6bが、互いに等しい数の炭素原子を含有するか、又はR6a及びR6bが同じであるか、又はR6a及びR6bが両方ともC12アルキル、C11アルキル、C10アルキル、C9アルキル、C8アルキル、C7アルキル、C12アルケニル、C11アルケニル、C10アルケニル、C9アルケニル、C8アルケニル、若しくはC7アルケニルであり、他の全ての残りの変数が、式(XX)、式(XXI)、式(XXII)、式(XXIII)、式(XXIV)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0327】
第13の実施形態では、式(XX)、式(XXI)、式(XXII)、式(XXIII)、式(XXIV)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つ又はその薬学的に許容される塩に記載のカチオン性脂質において、先行する実施形態のうちのいずれか1つに定義されるR6a及びR6bが、互いにそれぞれ異なる数の炭素原子を含有するか、又はR6a及びR6bの炭素原子の数が、1個若しくは2個の炭素原子だけ異なるか、又は、R6a及びR6bの炭素原子の数が、1個の炭素原子だけ異なるか、又はR6aがC7アルキルであり、かつR6aがC8アルキルであるか、R6aがC8アルキルであり、かつR6aがC7アルキルであるか、R6aがC8アルキルであり、かつR6aがC9アルキルであるか、R6aがC9アルキルであり、かつR6aがC8アルキルであるか、R6aがC9アルキルであり、かつR6aがC10アルキルであるか、R6aがC10アルキルであり、かつR6aがC9アルキルであるか、R6aがC10アルキルであり、かつR6aがC11アルキルであるか、R6aがC11アルキルであり、かつR6aがC10アルキルであるか、R6aがC11アルキルであり、かつR6aがC12アルキルであるか、R6aがC12アルキルであり、かつR6aがC11アルキルであるか、R6aがC7アルキルであり、かつR6aがC9アルキルであるか、R6aがC9アルキルであり、かつR6aがC7アルキルであるか、R6aがC8アルキルであり、かつR6aがC10アルキルであるか、R6aがC10アルキルであり、かつR6aがC8アルキルであるか、R6aがC9アルキルであり、かつR6aがC11アルキルであるか、R6aがC11アルキルであり、かつR6aがC9アルキルであるか、R6aがC10アルキルであり、かつR6aがC12アルキルであるか、R6aがC12アルキルであり、かつR6aがC10アルキルであるか、などであり、他の全ての残りの変数が、式(XX)、式(XXI)、式(XXII)、式(XXIII)、式(XXIV)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0328】
第14の実施形態では、式(XX)、式(XXI)、式(XXII)、式(XXIII)、式(XXIV)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つ又はその薬学的に許容される塩に記載のカチオン性脂質において、R’が存在せず、他の全ての残りの変数が、式(XX)、式(XXI)、式(XXII)、式(XXIII)、式(XXIV)又は先行する実施形態のうちのいずれか1つについて記載されているとおりである。
【0329】
一実施形態では、本開示のカチオン性脂質、又は式(XX)、式(XXI)、式(XXII)、式(XXIII)、式(XXIV)のカチオン性脂質は、表8の脂質から選択される任意の1つの脂質又はその薬学的に許容される塩である。
【0330】
【0331】
【0332】
特定の例は、以下の例示のセクションにおいて提供されており、本明細書に記載のカチオン性又はイオン化可能な脂質の一部として含まれる。薬学的に許容される塩及び中性形態もまた含まれる。
【0333】
切断可能な脂質
いくつかの実施形態によれば、脂質ナノ粒子(LNP)及び治療用核酸(TNA)を含む薬学的組成物であって、LNPが、カプシドを含まない非ウイルスDNAベクターを目的の標的部位(例えば、細胞、組織、器官など)に送達するために使用することができる切断可能な脂質を介して、LNPに連結された、scFv(例えば、scFvは、細胞の表面に存在する抗原を対象とする)を含む、薬学的組成物が本明細書で提供される。本明細書で使用される場合、「切断可能な脂質」という用語は、ジスルフィド結合(「SS」)切断可能な単位を含むカチオン性脂質を指す。一実施形態では、SS切断可能な脂質は、膜不安定化のための酸性区画(例えば、エンドソーム又はリソソーム)、及び還元環境で切断され得るジスルフィド結合(例えば、細胞質)に応答する三級アミンを含む。SS切断可能な脂質は、ss-OP脂質、ssPalm脂質、ss-M脂質、ss-E脂質、ss-EC脂質、ss-LC脂質及びss-OC脂質などのSS切断可能及びpH活性化脂質様物質を含み得る。
【0334】
いくつかの実施形態によれば、SS切断可能な脂質は、国際特許出願公開第2019188867号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0335】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載のLNPは、平均直径が約20~約70nmのサイズの範囲であり、例えば、平均直径が約20nm~約70nm、約25nm~約70nm、約30nm~約70nm、約35nm~約70nm、約40nm~約70nm、約45nm~約80nm、約50nm~約70nm、約60nm~約70nm、約65nm~約70nm、又は約20nm、約25nm、約30nm、約35nm、約40nm、約45nm、約50nm、約55nm、約60nm、約65nm、約70nmである。いくつかの実施形態によれば、LNPの平均直径は、約50nm~約70nmであり、これは著しく小さく、したがって免疫応答を標的とし、回避するのに有利である。更に、本明細書に記載のLNPは、ceDNAのような二本鎖DNAの約60%より多く約90%までを封入することができる。いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載のLNPは、ceDNAのような二本鎖DNAの約60%より多く、ceDNAのような二本鎖DNAの約65%より多く、ceDNAのような二本鎖DNAの約70%より多く、ceDNAのような二本鎖DNAの約75%より多く、ceDNAのような二本鎖DNAの約80%より多く、ceDNAのような二本鎖DNAの約85%より多く、又はceDNAのような二本鎖DNAの約90%より多くを封入することができる。
【0336】
本明細書に記載の脂質粒子(例えば、LNPに連結された、scFv(例えば、scFvは、細胞の表面に存在する抗原を対象とする)を含むLNP)は、他のプロセスによって生成されたLNPと比較して、及び他の脂質、例えば、イオン化可能なカチオン性脂質と比較して、標的細胞/組織への核酸(例えば、ceDNA、mRNA)の送達を増加させるために有利に使用することができる。したがって、本明細書に記載の脂質粒子(例えば、LNPに連結された、scFv(例えば、scFvは、細胞の表面に存在する抗原を対象とする)を含むLNP)は、当該技術分野で公知のプロセス及び方法によって調製された脂質粒子と比較して、最大の核酸送達を提供した。機構はまだ決定されておらず、また、理論に束縛されるものではないが、肝細胞への脂質粒子(例えば、LNPに連結された、scFv(例えば、scFvは、細胞の表面に存在する抗原を対象とする)を含むLNP)は、核からの食作用を回避し、核へのより効率的な輸送を行うと考えられる。本明細書に記載の脂質粒子(例えば、LNPに連結された、scFv(例えば、scFvは、細胞の表面に存在する抗原を対象とする)を含む、LNP)の別の利点は、他の脂質、例えば、イオン化可能なカチオン性脂質、例えば、MC3と比較して、より良好な忍容性である。
【0337】
一実施形態では、切断可能な脂質は、3つの構成成分、すなわち、アミン頭部基、リンカー基、及び疎水性テールを含み得る。一実施形態では、切断可能な脂質は、1つ以上のフェニルエステル結合、多くの三級アミノ基のうちの1つ、及びジスルフィド結合を含む。三級アミン基はpH応答性を提供し、エンドソームの脱出を誘導し、フェニルエステル結合は、構造の分解性(自己分解性)を高め、ジスルフィド結合は、還元環境で切断する。
【0338】
一実施形態では、切断可能な脂質は、ss-OP脂質である。一実施形態では、ss-OP脂質は、以下の式Aに示される構造を含む:
【0339】
【0340】
一実施形態では、SS切断可能な脂質は、SS切断可能及びpH活性化脂質様物質(ssPalm)である。ssPalm脂質は、当該技術分野において周知である。例えば、Togashi et al.,Journal of Controlled Release,279 (2018)262-270を参照し、これらの全内容は参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態では、ssPalmは、脂質Bの構造を含むssPalmM脂質である。
【0341】
【0342】
一実施形態では、ssPalmE脂質は、脂質Cの構造を含むssPalmE-P4-C2脂質である。
【0343】
【0344】
一実施形態では、ssPalmE脂質は、脂質Dの構造を含むssPalmE-Paz4-C2脂質である。
【0345】
【0346】
一実施形態では、切断可能な脂質は、ss-M脂質である。一実施形態では、ss-M脂質は、以下の脂質Eに示される構造を含む。
【0347】
【0348】
一実施形態では、切断可能な脂質は、ss-E脂質である。一実施形態では、ss-E脂質は、以下の脂質Fに示される構造を含む。
【0349】
【0350】
一実施形態では、切断可能な脂質は、ss-EC脂質である。一実施形態では、ss-EC脂質は、以下の脂質Gに示される構造を含む。
【0351】
【0352】
一実施形態では、切断可能な脂質は、ss-LC脂質である。一実施形態では、ss-LC脂質は、以下の脂質Hに示される構造を含む。
【0353】
【0354】
一実施形態では、切断可能な脂質は、ss-OC脂質である。一実施形態では、ss-OC脂質は、以下の脂質Jに示される構造を含む。
【0355】
【0356】
一実施形態では、脂質粒子(例えば、LNPに連結された、scFv(例えば、scFvは、細胞の表面に存在する抗原を対象とする)を含む、LNP)製剤を作製し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2018年9月7日出願の国際特許出願第PCT/US2018/050042号に開示されているプロセスによって得られるceDNAを充填される。これは、脂質をプロトン化し、粒子のceDNA/脂質会合及び核形成に好ましいエネルギー論を提供する、低pHでのエタノール脂質と水性ceDNAとの高エネルギー混合によって達成され得る。粒子は、水性希釈及び有機溶媒の除去によって更に安定化され得る。粒子は、所望のレベルに濃縮され得る。一実施形態では、本開示は、米国仮出願第63/194,620号の実施例2に記載のプロセスによって調製された式Iの脂質を含むceDNA脂質粒子を提供する。
【0357】
一般に、脂質粒子(例えば、LNPに連結された、scFv(例えば、scFvは、細胞の表面に存在する抗原を対象とする)を含む、LNP)は、約10:1~60:1の全脂質対ceDNA(質量又は重量)比で調製される。いくつかの実施形態では、脂質対ceDNA比(質量/質量比、w/w比)は、約1:1~約60:1、約1:1~約55:1、約1:1~約50:1、約1:1~約45:1、約1:1~約40:1、約1:1~約35:1、約1:1~約30:1、約1:1~約25:1、約10:1~約14:1、約3:1~約15:1、約4:1~約10:1、約5:1~約9:1、約6:1~約9:1、約30:1~約60:1の範囲内であり得る。いくつかの実施形態によれば、脂質粒子(例えば、LNPに連結された、scFv(例えば、scFvは、細胞の表面に存在する抗原を対象とする)を含む、LNP)は、約60:1のceDNA(質量又は重量)対全脂質比で調製される。いくつかの実施形態によれば、脂質粒子(例えば、LNPに連結された、scFv(例えば、scFvは、細胞の表面に存在する抗原を対象とする)を含む、LNP)は、約30:1のceDNA(質量又は重量)対全脂質比で調製される。脂質及びceDNAの量を調整して、所望のN/P比、例えば3、4、5、6、7、8、9、10以上のN/P比を提供し得る。一般に、脂質粒子製剤の全体脂質含有量は、約5mg/ml~約30mg/mLの範囲であり得る。
【0358】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、ceDNAなどの核酸カーゴを凝縮及び/又は封入するための薬剤を含む。このような薬剤は、本明細書では、凝縮剤又は封入剤とも称される。制限なしに、核酸を凝縮及び/又は封入するための当該技術分野で既知の任意の化合物は、それが非融合性である限り使用することができる。言い換えれば、薬剤は、ceDNAなどの核酸カーゴを凝縮及び/又は封入することができるが、融合活性をほとんど又は全く有しない。理論に拘束されることを望まないが、凝縮剤は、ceDNAなどの核酸を凝縮/封入しない場合、いくらかの融合活性を有する可能性があるが、当該凝縮剤で形成された脂質ナノ粒子を封入する核酸は、非融合性であり得る。
【0359】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載のLNPに連結された、scFv(例えば、scFvは、細胞の表面に存在する抗原を対象とする)を含む、LNP)を含むLNPは、ceDNAのような剛性二本鎖DNAの約60%より多く、ceDNAのような剛性二本鎖DNAの約65%より多く、ceDNAのような剛性二本鎖DNAの約70%より多く、ceDNAのような剛性二本鎖DNAの約75%より多く、ceDNAのような剛性二本鎖DNAの約80%より多く、ceDNAのような剛性二本鎖DNAの約85%より多く、又はceDNAのような剛性二本鎖DNAの約90%より多くを封入することができる。
【0360】
カチオン性脂質は、典型的に、核酸カーゴ、例えばceDNAを低pHで凝縮させるため、及び膜会合及び膜融合性を駆動するために用いられる。一般に、カチオン性脂質は、正に電荷される、又は例えばpH6.5以下の酸性条件下でプロトン化される少なくとも1つのアミノ基を含む脂質である。カチオン性脂質はまた、イオン化可能な脂質、例えば、イオン化可能なカチオン性脂質であり得る。「非融合性カチオン性脂質」とは、ceDNAなどの核酸カーゴを凝縮及び/又は封入することができるが、融合性活性を有するか、又はほとんど有しないカチオン性脂質を意味する。
【0361】
一実施形態では、カチオン性脂質は、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)に存在する全脂質の20~90%(mol)を含み得る。例えば、カチオン性脂質モル含有量は、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)に存在する全脂質の20~70%(mol)、30~60%(mol)、40~60%(mol)、40~55%(mol)又は45~55%(mol)であり得る。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、脂質粒子(例えば、LNPに連結された、scFv(例えば、scFvは、細胞の表面に存在する抗原を対象とする)を含む、LNP)中に存在する全脂質の約50mol%~約90mol%を構成する。
【0362】
一実施形態では、SS切断可能な脂質は、MC3(6Z,9Z,28Z,3lZ)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,3 l-テトラエン-19-イル-4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA又はMC3)ではない。DLin-MC3-DMAは、Jayaraman et al.,Angew.Chem.Int.Ed Engl.(2012),51(34):8529-8533に記載され、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。D-Lin-MC3-DMA(MC3)の構造を脂質Kとして以下に示す。
【0363】
【0364】
一実施形態では、切断可能な脂質は、脂質ATX-002ではない。脂質ATX-002は、WO2015/074085(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。一実施形態では、切断可能な脂質は、(13Z.16Z)-/V,/V-ジメチル-3-ノニルドコサ-13,16-ジエン-1-アミン(化合物32)ではない。化合物32は、WO2012/040184に記載され、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。一実施形態では、切断可能な脂質は、化合物6又は化合物22ではない。化合物6及び22は、WO2015/199952に記載され、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0365】
カチオン性脂質の非限定的な例としては、SS切断可能かつpH活性化脂質様物質-OP(ss-OP;式I)、SS切断可能かつpH活性化脂質様物質-M(SS-M;式V)、SS切断可能かつpH活性化脂質様物質-E(SS-E;式VI)、SS切断可能かつpH活性化脂質様物質-EC(SS-EC;式VII)、SS切断可能かつpH活性化脂質様物質-LC(SS-LC;式VIII)、SS切断可能かつpH活性化脂質様物質-OC(SS-OC;式IX)、ポリエチレンイミン、ポリアミドアミン(PAMAM)星形デンドリマー、リポフェクチン(DOTMA及びDOPEの組み合わせ)、リポフェクターゼ、LIPOFECTAMINE(商標)(例えば、LIPOFECTAMINE(商標)2000)、DOPE、Cytofectin(Gilead Sciences,Foster City,Calif.)、及びEufectin(JBL,San Luis Obispo,Calif.)が挙げられる。例示的なカチオン性リポソームは、N-[l-(2,3-ジオールオキシ)-プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N-[l-(2,3-ジオールオキシ)-プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムメチルサルフェート(DOTAP)、3b-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)、2,3-ジオレイルオキシ-N[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-l-プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、及びジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)から作製することができる。核酸(例えば、ceDNA又はCELiD)はまた、例えばポリ(L-リジン)又はアビジンと複合体化されてもよく、脂質は、この混合物、例えばステリル-ポリ(L-リジン)に含まれてもよく、又は含まれなくてもよい。
【0366】
一実施形態では、カチオン性脂質は、式Iのss-OPである。別の実施形態では、カチオン性脂質は、式IIのSS-PAZである。
【0367】
一実施形態では、本明細書に開示されるceDNAベクターは、米国特許第8,158,601号に記載されるカチオン性脂質、又は米国特許第8,034,376号に記載されるポリアミン化合物若しくは脂質を使用して送達される。
【0368】
B.非カチオン性脂質
一実施形態では、脂質粒子(例えば、LNPに連結された、scFv(例えば、scFvは、細胞の表面に存在する抗原を対象とする)を含む、LNP)は、非カチオン性脂質を更に含み得る。非カチオン性脂質は、融合性を高め、形成中のLNPの安定性を高めるのに役立つことができる。非カチオン性脂質としては、両親媒性脂質、中性脂質、及びアニオン性脂質が挙げられる。したがって、非カチオン性脂質は、中性の非電荷、双性イオン性、又はアニオン性脂質であり得る。非カチオン性脂質は、典型的に、膜融合性を増強するために用いられる。
【0369】
例示的な非カチオン性脂質としては、ジステアロイル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン 4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、モノメチル-ホスファチジルエタノールアミン(例えば16-O-モノメチルPE)、ジメチル-ホスファチジルエタノールアミン(例えば16-O-ジメチルPE)、18-1-trans PE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジエタノールアミン(SOPE)、水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、スフィンゴミエリン(SM)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジエルコイルホスファチジルコリン(DEPC)、パルミトイルオレイオールホスファチジルグリセロール(POPG)、ジエライドイル-ホスファチジルエタノールアミン(DEPE)、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DLPE);1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPHyPE);レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾレシチン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、卵スフィンゴミエリン(ESM)、セファリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、リン酸ジセチル、リゾホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。他のジアシルホスファチジルコリン及びジアシルホスファチジルエタノールアミンリン脂質もまた使用され得ることを理解されたい。これらの脂質中のアシル基は、好ましくは、C10~C24炭素鎖を有する脂肪酸に由来するアシル基、例えば、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、又はオレオイルである。
【0370】
脂質粒子(例えば、LNPに連結された、scFv(例えば、scFvは、細胞の表面に存在する抗原を対象とする)を含む、l LNP)中での使用に好適な非カチオン性脂質の他の例としては、例えば、ステアリルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、パルミチン酸アセチル、リシノール酸グリセロール、ステアリン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸イソプロピル、両性アクリル系ポリマー、トリエタノールアミン-硫酸ラウリル、アルキル-アリールサルフェートポリエチルオキシル化脂肪酸アミド、ジオクタデシルジメチル臭化アンモニウム、セラミド、スフィンゴミエリンなどの非リン脂質が挙げられる。
【0371】
一実施形態では、非カチオン性脂質は、リン脂質である。一実施形態では、非カチオン性脂質は、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPE、及びSMからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、非カチオン性脂質は、DSPCである。他の実施形態では、非カチオン性脂質は、DOPCである。他の実施形態では、非カチオン性脂質は、DOPEである。
【0372】
いくつかの実施形態では、非カチオン性脂質は、脂質ナノ粒子中に存在する全脂質の0~20%(mol)を含み得る。いくつかの実施形態では、非カチオン性脂質含有量は、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)に存在する全脂質の0.5~15%(mol)である。いくつかの実施形態では、非カチオン性脂質含有量は、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)に存在する全脂質の5~12%(mol)である。いくつかの実施形態では、非カチオン性脂質含有量は、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)に存在する全脂質の5~10%(mol)である。一実施形態では、非カチオン性脂質含有量は、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)に存在する全脂質の約6%(mol)である。一実施形態では、非カチオン性脂質含有量は、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)に存在する全脂質の約7.0%(mol)である。一実施形態では、非カチオン性脂質含有量は、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)に存在する全脂質の約7.5%(mol)である。一実施形態では、非カチオン性脂質含有量は、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)に存在する全脂質の約8.0%(mol)である。一実施形態では、非カチオン性脂質含有量は、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)に存在する全脂質の約9.0%(mol)である。いくつかの実施形態では、非カチオン性脂質含有量は、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)に存在する全脂質の約10%(mol)である。一実施形態では、非カチオン性脂質含有量は、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)に存在する全脂質の約11%(mol)である。
【0373】
例示的な非カチオン性脂質は、国際特許出願公開第2017/099823号及び米国特許出願公開第2018/0028664号に記載されており、これら両方の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0374】
一実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、脂質粒子の膜の統合性及び安定性を提供するために、ステロールなどの構成成分を更に含み得る。一実施形態では、脂質粒子に使用することができる例示的なステロールは、コレステロール又はその誘導体である。コレステロール誘導体の非限定的な例としては、5α-コレスタノール、5β-コプロスタノール、コレステリル-(2’-ヒドロキシ)-エチルエーテル、コレステリル-(4’-ヒドロキシ)-ブチルエーテル、及び6-ケトコレスタノールなどの極性類似体;5α-コレスタン、コレステノン、5α-コレスタノン、5β-コレスタノン、及びコレステリルデカノエートなどの非極性類似体、;並びにそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、コレステロール誘導体は、コレステリル-(4’-ヒドロキシ)-ブチルエーテルなどの極性類似体である。いくつかの実施形態では、コレステロール誘導体は、ヘミコハク酸コレストリル(CHEMS)である。
【0375】
例示的なコレステロール誘導体は、国際特許出願公開第2009/127060号及び米国特許出願公開第2010/0130588号に記載されており、これら両方の内容は、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0376】
一実施形態では、ステロールなどの膜統合性を提供する構成成分は、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)に存在する全脂質の0~50%(mol)を含み得る。いくつかの実施形態では、そのような構成成分は、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)の全脂質含有量の20~50%(mol)である。いくつかの実施形態では、そのような構成成分は、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)の全脂質含有量の30~40%(mol)である。いくつかの実施形態では、そのような構成成分は、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)の全脂質含有量の35~45%(mol)である。いくつかの実施形態では、そのような構成成分は、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)の全脂質含有量の38~42%(mol)である。
【0377】
一実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、ポリエチレングリコール(PEG)又はコンジュゲートされた脂質分子を更に含み得る。一般に、これらを使用して、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)の凝集を阻害し、かつ/又は立体安定化を提供する。例示的なコンジュゲートされた脂質としては、PEG-脂質コンジュゲート、ポリオキサゾリン(POZ)-脂質コンジュゲート、ポリアミド-脂質コンジュゲート(ATTA-脂質コンジュゲートなど)、カチオン性-ポリマー脂質(CPL)コンジュゲート、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、コンジュゲートされた脂質分子は、PEG化脂質、例えば、(メトキシポリエチレングリコール)-コンジュゲートされた脂質である。いくつかの他の実施形態では、PEG化脂質は、PEG2000-DMG(ジミリストイルグリセロール)である。
【0378】
例示的なPEG化脂質には、PEG-ジアシルグリセロール(DAG)(1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)など)、PEG-ジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG-リン脂質、PEG-セラミド(Cer)、PEG化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、PEGコハク酸ジアシルグリセロール(PEGS-DAG)(4-0-(2’,3’-ジ(テトラデカノイルオキシ)プロピル-1-0-(w-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)ブタンジオエート(PEG-S-DMG)など)、PEGジアルコキシプロピルカルバム、N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール2000)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンナトリウム塩、又はそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。追加の例示的なPEG-脂質コンジュゲートは、例えば、米国特許出願公開第5,885,613号、同第6,287,591、同第2003/0077829号、同第2003/0077829号、同第2005/0175682号、同第2008/0020058号、同第2011/0117125号、同第2010/0130588号、同第2016/0376224号、及び同第2017/0119904号に記載されており、それら全ての内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0379】
一実施形態では、PEG-DAA PEG化脂質は、例えば、PEG-ジラウリルオキシプロピル、PEG-ジミリスチルオキシプロピル、PEG-ジパルミチルオキシプロピル、又はPEG-ジステアリルオキシプロピルであり得る。PEG-脂質は、PEG-DMG、PEG-ジラウリルグリセロール、PEG-ジパルミトイルグリセロール、PEG-ジステリルグリセロール、PEG-ジラウリルグリカミド、PEG-ジミリスチルグリカミド、PEG-ジパルミトイルグリカミド、PEG-ジステリルグリカミド、PEG-コレステロール(1-[8’-(コレスト-5-エン-3[ベータ]-オキシ)カルボキサミド-3’,6’-ジオキサオクタニル]カルバモイル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)、PEG-DMB(3,4-ジテトラデカオキシルベンジル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)エーテル)、及び1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000]のうちの1つ以上であり得る。一実施形態では、PEG脂質は、PEG-DMG、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000]、
【0380】
【0381】
いくつかの実施形態では、PEG化脂質は、N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコールn)-1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DMPE-PEGn、ここで、nは、350、500、750、1000又は2000である)、N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコールn)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE-PEGn、ここで、nは、350、500、750、1000又は2000である)、DSPE-ポリグリセリン-シクロヘキシル-カルボン酸、DSPE-ポリグリセリン-2-メチルグルタル-カルボン酸、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE)コンジュゲートポリエチレングリコール(DSPE-PEG-OH)、ポリエチレングリコール-ジミリストールグリセロール(PEG-DMG)、ポリエチレングリコール-ジステアロイルグリセロール(PEG-DSG)、又はN-オクタノイル-スフィンゴシン-1-{スクシニル[メトキシ(ポリエチレングリコール)200011(C8 PEG2000セラミド)からなる群から選択される。nが350、500、750、1000又は2000であるDMPE-PEGnのいくつかの例では、PEG-脂質は、N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール2000)-1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DMPE-PEG 2,000)である。nが350、500、750、1000又は2000であるDSPE-PEGnのいくつかの例では、PEG-脂質は、N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール2000)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE-PEG 2,000)である。いくつかの実施形態では、PEG-脂質は、DSPE-PEG-OHである。いくつかの好ましい実施形態では、PEG-脂質は、PEG-DMGである。
【0382】
いくつかの実施形態では、コンジュゲートされた脂質、例えば、PEG化脂質は、組織特異的標的化リガンド、例えば、第1又は第2の標的化リガンドを含む。例えば、GalNAcリガンドとコンジュゲートしたPEG-DMG。
【0383】
一実施形態では、PEG以外の分子とコンジュゲートされた脂質は、PEG-脂質の代わりに使用することもできる。例えば、ポリオキサゾリン(POZ)-脂質コンジュゲート、ポリアミド-脂質コンジュゲート(ATTA-脂質コンジュゲートなど)、及びカチオン性-ポリマー脂質(CPL)コンジュゲートを、PEG-脂質の代わりに、又はそれに加えて使用することができる。例示的なコンジュゲートされた脂質、すなわち、PEG-脂質、(POZ)-脂質コンジュゲート、ATTA-脂質コンジュゲート、及びカチオン性ポリマー-脂質は、国際特許出願公開第1996/010392号、同第1998/051278号、同第2002/087541号、同第2005/026372号、同第2008/147438号、同第2009/086558号、同第2012/000104号、同第2017/117528号、同第2017/099823号、同第2015/199952号、同第2017/004143号、同第2015/095346号、同第2012/000104号、同第2012/000104号、及び同第2010/006282号、米国特許出願公開第2003/0077829号、同第2005/0175682号、同第2008/0020058号、同第2011/0117125号、同第2013/0303587号、同第2018/0028664号、同第2015/0376115号、同第2016/0376224号、同第2016/0317458号、同第2013/0303587号、同第2013/0303587号、及び同第2011/0123453号、並びに米国特許第5,885,613号、同第6,287,591号、同第6,320,017号、及び同第6,586,559号に記載されており、これら全ての内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0384】
いくつかの実施形態では、PEG化脂質は、脂質ナノ粒子中に存在する全脂質の0~20%(mol)を含み得る。いくつかの実施形態では、PEG化脂質含有量は、0.5~10%(mol)である。いくつかの実施形態では、PEG化脂質含有量は、1~5%(mol)である。いくつかの実施形態では、PEG化脂質含有量は、2~4%(mol)である。いくつかの実施形態では、PEG化脂質含有量は、2~3%(mol)である。一実施形態では、PEG化脂質含有量は、約2%(mol)である。一実施形態では、PEG化脂質含有量は、約2.5%(mol)である。いくつかの実施形態では、PEG化脂質含有量は、約3%(mol)である。一実施形態では、PEG化脂質含有量は、約3.5%(mol)である。一実施形態では、PEG化脂質含有量は、約4%(mol)である。
【0385】
カチオン性脂質、例えば、イオン化可能なカチオン性脂質と、非カチオン性脂質、ステロール、及びPEG化脂質とのモル比は、必要に応じて変えることができることが理解される。例えば、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、組成物のモル又は全重量で30~70%のカオチン性脂質、組成物のモル又は全重量で0~60%のコレステロール、組成物のモル又は全重量で0~30%の非カチオン性脂質、及び組成物のモル又は全重量で2~5%のPEG化脂質を含み得る。一実施形態では、組成物は、組成物のモル又は全重量で40~60%のカチオン性脂質、組成物のモル又は全重量で30~50%のコレステロール、組成物のモル又は全重量で5~15%の非カチオン性脂質、及び組成物のモル又は全重量で2~5%のPEG又はコンジュゲートされた脂質を含む。一実施形態では、組成物は、組成物のモル又は全重量で40~60%のカチオン性脂質、組成物のモル又は全重量で30~40%のコレステロール、及び組成物のモル又は全重量で5~10%の非カチオン性脂質、及び組成物のモル又は全重量で2~5%のPEG化脂質である。組成物は、組成物のモル又は全重量で60~70%のカチオン性脂質、組成物のモル又は全重量で25~35%のコレステロール、組成物のモル又は全重量で5~10%の非カチオン性脂質、及び組成物のモル又は全重量で2~5%のPEG化脂質を含有し得る。組成物はまた、組成物のモル又は全重量で最大45~55%のカチオン性脂質、組成物のモル又は全重量で35~45%のコレステロール、及び組成物のモル又は全重量で2~15%の非カチオン性脂質、及び組成物のモル又は全重量で2~5%のPEG化脂質を含有し得る。製剤はまた、脂質ナノ粒子製剤であってもよく、例えば、組成物のモル又は全重量で8~30%のカチオン性脂質、組成物のモル又は全重量で5~15%の非カチオン性脂質、及び組成物のモル又は全重量で0~40%のコレステロール;組成物のモル又は全重量で4~25%のカチオン性脂質、組成物のモル又は全重量で4~25%の非カチオン性脂質、組成物のモル又は全重量で2~25%のコレステロール、組成物のモル又は全重量で10~35%のコンジュゲートされた脂質、及び組成物のモル又は全重量で5%のコレステロール;又は組成物のモル又は全重量で2~30%のカチオン性脂質、組成物のモル又は全重量で2~30%の非カチオン性脂質、組成物のモル又は全重量で1~15%のコレステロール、組成物のモル又は全重量で2~35%のPEG化脂質、及び組成物のモル又は全重量で1~20%のコレステロール;又は更には、組成物のモル又は全重量で最大90%のカチオン性脂質、及び組成物のモル又は全重量で2~10%の非カチオン性脂質、又は更には、組成物のモル又は全重量で100%のカチオン性脂質を含む。いくつかの実施形態では、脂質粒子製剤は、カチオン性脂質、非カチオン性リン脂質、コレステロール、及びPEG化脂質(コンジュゲートされた脂質)を約50:9:38.5:2.5のモル比で含む。
【0386】
一実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)製剤は、カチオン性脂質、非カチオン性リン脂質、コレステロール、及びPEG化脂質(コンジュゲートされた脂質)を約50:7:40:3のモル比で含む。
【0387】
他の態様では、本開示は、リン脂質、レシチン、ホスファチジルコリン、及びホスファチジルエタノールアミンを含む脂質ナノ粒子製剤を提供する。
【0388】
一実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、カチオン性脂質、非カチオン性脂質(例えばリン脂質)、ステロール(例えば、コレステロール)及びPEG化脂質(コンジュゲートされた脂質)を含み、脂質のモル比は、カチオン性脂質の場合、20~70モルパーセントの範囲であり(目標30~60)、非カチオン性脂質のモルパーセントは、0~30の範囲であり(目標0~15)、ステロールのモルパーセントは、20~70の範囲であり(目標30~50)、PEG化脂質(コンジュゲートされた脂質)のモルパーセントは、1~6の範囲である(目標2~5)。
【0389】
ceDNAを含む脂質ナノ粒子(LNP)は、2018年9月7日に提出された国際特許出願第US2018/050042号に開示されており、これはその全体が本明細書に組み込まれ、本明細書に開示される方法及び組成物における使用が想定される。
【0390】
脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)のサイズは、Malvern Zetasizer Nano ZS(Malvern,UK)を使用して準弾性光散乱によって決定することができる。いくつかの実施形態によれば、光散乱によって決定されるLNPの平均直径は、約75nm未満又は約70nm未満である。いくつかの実施形態によれば、光散乱によって決定されるLNPの平均直径は、約50nm~約75nm又は約50nm~約70nmである。
【0391】
製剤化されたカチオン性脂質のpKaは、核酸の送達のためのLNPの有効性と相関させることができる(Jayaraman et al.,Angewandte Chemie,International Edition(2012),51(34),8529-8533、Semple et al.,Nature Biotechnology 28,172-176 (20 1 0)を参照されたい(これらは両方とも、参照によりその全体が組み込まれる))。一実施形態では、各カチオン性脂質のpKaは、2-(p-トルイジノ)-6-ナフタレンスルホン酸(TNS)の蛍光に基づくアッセイを使用して、脂質ナノ粒子中で決定される。0.4mM全脂質の濃度でのPBS中のカチオン性脂質/DSPC/コレステロール/PEG-脂質(50/10/38.5/1.5mol%)からなる脂質ナノ粒子は、本明細書及び他に記載されるインラインプロセスを使用して調製され得る。TNSは、蒸留水中の100mMストック溶液として調製され得る。小胞は、10mMのHEPES、10mMのMES、10mMの酢酸アンモニウム、130mMのNaClを含有する2mLの緩衝溶液中の24mM脂質に希釈され得、pHは、2.5~11の範囲である。TNS溶液のアリコートを添加して、1mMの最終濃度にすることができ、続いて渦流混合発光強度を、321nmの励起波長及び445nmの発振波長を使用し、SLM Aminco Series 2発光分光光度計において室温で測定する。S字状最良適合分析は、蛍光データに適用することができ、pKaは、半最適蛍光強度を生じるpHとして測定される。
【0392】
一実施形態では、相対活性は、尾静脈注射を介した投与の4時間後に肝臓内のルシフェラーゼ発現を測定することによって決定され得る。活性は、0.3及び1.0mg ceDNA/kgの用量で比較され、投与の4時間後に測定された肝臓1g当たりのルシフェラーゼngとして表される。
【0393】
限定されないが、本開示の脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、カプシド不含非ウイルスDNAベクターを目的の標的部位(例えば、細胞、組織、器官など)に送達するように使用され得る脂質製剤を含む。一般に、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、カプシド不含非ウイルス性DNAベクター及びカチオン性脂質又はその塩を含む。
【0394】
一実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、カチオン性脂質/非カチオン性脂質/ステロール/コンジュゲートされた脂質を50:10:38.5:1.5のモル比で含む。一実施形態では、本開示は、リン脂質、レシチン、ホスファチジルコリン及びホスファチジルエタノールアミンを含む脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)製剤を提供する。
【0395】
III.閉端DNA(ceDNA)ベクター
本開示の実施形態は、導入遺伝子(例えば治療用核酸(TNA))を発現することができる閉端直鎖状二重鎖(ceDNA)ベクターを含む方法及び組成物に基づく。本明細書に記載されるようなceDNAベクターは、ウイルスカプシド内の限定空間によって課されるパッケージング制約を有しない。ceDNAベクターは、封入されたAAVゲノムとは対照的な原核細胞的に産生されたプラスミドDNAベクターに対する可変の真核細胞的に産生された代替物を表す。これは、制御エレメント、例えば、本明細書に開示される調節スイッチ、大きな導入遺伝子、複数の導入遺伝子などの挿入を可能にする。
【0396】
ceDNAベクターは、好ましくは、非連続的な構造ではなく直鎖状で連続的な構造を有する。直鎖状で連続的な構造は、細胞エンドヌクレアーゼによる攻撃に対してより安定であると同時に、組換えられて変異誘発を引き起こす可能性が低いと考えられる。したがって、直鎖状で連続的な構造のceDNAベクターは、好ましい実施形態である。連続的な直鎖状の一本鎖分子内二重鎖ceDNAベクターは、AAVカプシドタンパク質をコードする配列なしに、終端に共有結合している可能性がある。これらのceDNAベクターは、細菌起源の環状二重鎖核酸分子であるプラスミド(本明細書に記載されるceDNAプラスミドを含む)とは構造的に異なる。プラスミドの相補鎖は、変性に続いて分離されて2つの核酸分子を産生することができるが、反対に、ceDNAベクターは、相補鎖を有するが、単一DNA分子であり、したがって変性された場合でも単一分子のままである可能性が高い。いくつかの実施形態では、ceDNAベクターは、プラスミドとは異なり、原核細胞タイプのDNA塩基メチル化なしに産生され得る。したがって、ceDNAベクター及びceDNA-プラスミドは、構造(特に、直鎖状対環状)並びにこれらの異なる対象物を産生及び精製するために使用される方法の両方に関して、またceDNA-プラスミドの場合は原核細胞タイプ及びceDNAベクターの場合は真核細胞タイプのものである、それらのDNAメチル化に関して異なる。
【0397】
共有結合性閉端を有する非ウイルス性カプシド不含ceDNA分子(ceDNA)が本明細書に提供される。これらの非ウイルスカプシド不含ceDNA分子は、2つの異なる逆位末端反復(ITR)配列の間に位置付けられた異種遺伝子(例えば、導入遺伝子、特に治療用導入遺伝子)を含有する発現構築物(例えば、ceDNA-プラスミド、ceDNA-バクミド、ceDNA-バキュロウイルス又は統合型細胞株)からの許容宿主細胞中で産生させることができ、ITRは、互いに関して異なる。いくつかの実施形態では、ITRのうちの1つは、野生型ITR配列(例えばAAV ITR)と比較して、欠失、挿入、及び/又は置換によって修飾され、かつITRのうちの少なくとも1つは、機能的末端分解部位(trs)及びRep結合部位を含む。ceDNAベクターは、好ましくは、発現カセットなどの分子の少なくとも一部分にわたって二重鎖、例えば、自己相補的である(例えば、ceDNAは、二本鎖環状分子ではない)。ceDNAベクターは、共有結合性閉端を有し、したがって、例えば1時間以上37℃でエキソヌクレアーゼ消化(例えばエキソヌクレアーゼI又はエキソヌクレアーゼIII)に対して耐性である。
【0398】
一態様では、ceDNAベクターは、5’から3’方向に、第1のアデノ関連ウイルス(AAV)逆位末端反復(ITR)、目的のヌクレオチド配列(例えば、本明細書に記載される発現カセット)、及び第2のAAV ITRを含む。一実施形態では、第1のITR(5’ITR)及び第2のITR(3’ITR)は、互いに対して非対称である。すなわち、それらは、互いに異なる三次元空間構成を有する。例示的な実施形態として、第1のITRは、野生型ITRであり得、第2のITRは、変異型又は修飾型ITRであり得るか、又はその逆であり、第1のITRは、変異型又は修飾型ITRであり得、第2のITRは、野生型ITRであり得る。一実施形態では、第1のITR及び第2のITRは、両方とも修飾されているが、異なる配列であるか、又は異なる修飾を有するか、又は同一の修飾型ITRではなく、異なる三次元空間構成を有する。言い換えると、非対称ITRを有するceDNAベクターは、WT-ITRに対する1つのITRにおける任意の変化が他のITRに反映されないITRを有するか、又はあるいは、非対称ITRが修飾された非対称ITR対を有する場合、互いに対して異なる配列及び異なる三次元形状を有し得る。
【0399】
一実施形態では、ceDNAベクターは、5’から3’方向に、第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端反復(ITR)、目的のヌクレオチド配列(例えば、本明細書に記載される発現カセット)、及び第2のAAV ITRを含み、第1のITR(5’ITR)及び第2のITR(3’ITR)は、互いに対して対称又は実質的に対称であり、すなわち、ceDNAベクターは、対称の三次元空間構成を有するITR配列を含み得、それによりそれらの構造は、幾何学的空間で同じ形状であるか、又は三次元空間で同じA、C-C’、B-B’ループを有する。そのような実施形態では、対称のITR対、又は実質的に対称のITR対は、野生型ITRではない修飾型ITR(例えば、mod-ITR)であり得る。mod-ITR対は、野生型ITRからの1つ以上の修飾を有し、互いに逆相補(逆位)である同じ配列を有し得る。一実施形態では、修飾型ITR対は、本明細書で定義されるように実質的に対称であり、すなわち、修飾型ITR対は、異なる配列を有し得るが、対応する又は同じ対称な三次元形状を有し得る。いくつかの実施形態では、対称のITR、又は実質的に対称のITRは、本明細書に記載されるように野生型(WT-ITR)であり得る。すなわち、両方のITRが野生型配列を有するが、必ずしも同じAAV血清型のWT-ITRである必要はない。一実施形態では、一方のWT-ITRは、1つのAAV血清型に由来し得、他方のWT-ITRは、異なるAAV血清型に由来し得る。そのような実施形態では、WT-ITR対は、本明細書で定義されるように実質的に対称であり、すなわち、それらは、対称的な三次元空間構成を維持しながら、1つ以上の保存的ヌクレオチド修飾を有することができる。
【0400】
本明細書に提供される野生型又は変異型又は他の方法で修飾されたITR配列は、ceDNAベクターの産生のために発現構築物(例えば、ceDNA-プラスミド、ceDNA-バクミド、ceDNA-バキュロウイルス)に含まれるDNA配列を表す。したがって、ceDNA-プラスミド又は他の発現構築物から産生されたceDNAベクター中に実際に含有されるITR配列は、産生プロセス中に起こる天然に存在する変化(例えば、複製エラー)の結果として、本明細書に提供されるITR配列に対して同一であっても同一でなくてもよい。
【0401】
一実施形態では、治療用核酸配列である導入遺伝子を有する発現カセットを含む本明細書に記載されるceDNAベクターは、導入遺伝子の発現を可能にするか又は制御する1つ以上の調節配列に操作可能に連結され得る。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、第1のITR配列及び第2のITR配列を含み、目的のヌクレオチド配列は、第1及び第2のITR配列によって隣接され、第1及び第2のITR配列は、互いに対して非対称であるか、又は互いに対して対称である。
【0402】
一実施形態では、発現カセットは、2つのITR間に位置し、導入遺伝子に操作可能に連結されたプロモーター、転写後調節エレメント、並びにポリアデニル化及び終結シグナルのうちの1つ以上をこの順に含む。一実施形態では、プロモーターは、調節可能-誘導可能又は抑制可能である。プロモーターは、導入遺伝子の転写を促進する任意の配列であり得る。一実施形態では、プロモーターは、CAGプロモーター又はその変形である。転写後調節エレメントは、導入遺伝子の発現を調整する配列であり、非限定的な例として、治療用核酸配列である導入遺伝子の発現を強化する三次構造を作成する任意の配列である。
【0403】
一実施形態では、転写後調節エレメントは、WPREを含む。一実施形態では、ポリアデニル化及び終結シグナルは、BGHポリAを含む。当該技術分野において既知の任意のシス調節エレメント、又はその組み合わせ、例えば、SV40後期ポリAシグナル上流エンハンサー配列(USE)又は他の転写後処理エレメント(単純ヘルペスウイルス又はB型肝炎ウイルス(HBV)のチミジンキナーゼ遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない)が追加として使用され得る。一実施形態では、5’~3’方向の発現カセット長は、AAVビリオン中でカプシド化されることが知られている最大長を超える。一実施形態では、長さは、4.6kb超、又は5kb超、又は6kb超、又は7kb超である。様々な発現カセットが、本明細書に例示される。
【0404】
一実施形態では発現カセットは、4000ヌクレオチド超、5000ヌクレオチド、10,000ヌクレオチド、若しくは20,000ヌクレオチド、若しくは30,000ヌクレオチド、若しくは40,000ヌクレオチド、又は50,000ヌクレオチド、又は約4000~10,000ヌクレオチド、若しくは10,000~50,000ヌクレオチドの任意の範囲、又は50,000ヌクレオチド超を含み得る。いくつかの実施形態では、発現カセットは、500~50,000ヌクレオチド長の範囲の治療用核酸配列である導入遺伝子を含み得る。一実施形態では、発現カセットは、500~75,000ヌクレオチド長の範囲の治療用核酸配列である導入遺伝子を含み得る。一実施形態では、発現カセットは、500~10,000ヌクレオチド長の範囲の治療用核酸配列である導入遺伝子を含み得る。一実施形態では、発現カセットは、1000~10,000ヌクレオチド長の範囲の治療用核酸配列である導入遺伝子を含み得る。一実施形態では、発現カセットは、500~5,000ヌクレオチド長の範囲の治療用核酸配列である導入遺伝子を含み得る。ceDNAベクターは、カプシド化AAVベクターのサイズ制限がないため、大きなサイズの発現カセットを宿主に送達することが可能である。一実施形態では、ceDNAベクターは、原核細胞特異的メチル化を欠いている。
【0405】
一実施形態では、剛性治療用核酸は、プラスミドであり得る。
【0406】
一実施形態では、本明細書に開示されるceDNAベクターは、治療目的(例えば、医療、診断、若しくは獣医学的使用)又は免疫原性ポリペプチドに使用される。
【0407】
発現カセットは、治療用核酸配列である任意の導入遺伝子を含むことができる。特定の実施形態では、ceDNAベクターは、1つ以上のポリペプチド、ペプチド、リボザイム、ペプチド核酸、siRNA、RNAis、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド、抗体、抗原結合断片、又はそれらの任意の組み合わせを含む、対象における任意の目的の遺伝子を含む。
【0408】
一実施形態では、ceDNA発現カセットは、例えば、レシピエント対象において存在しない、不活性、若しくは不十分な活性であるタンパク質をコードする発現可能な外因性配列(例えば、オープンリーディングフレーム)、又は所望の生物学的若しくは治療効果を有するタンパク質をコードする遺伝子を含み得る。一実施形態では、ドナー配列などの外因性配列は、欠陥遺伝子又は転写産物の発現を訂正するように機能することができる遺伝子産物をコードすることができる。一実施形態では、発現カセットはまた、訂正DNA鎖をコードし、ポリペプチド、センス若しくはアンチセンスオリゴヌクレオチド、又はRNA(コード若しくは非コード;例えば、siRNA、shRNA、マイクロRNA、及びそれらのアンチセンス対応物(例えば、antagoMiR))をコードし得る。一実施形態では、発現カセットは、実験又は診断の目的で使用されるレポータータンパク質をコードする外因性配列、例えばb-ラクタマーゼ、b-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、及び当該技術分野において周知の他のものを含み得る。
【0409】
したがって、発現カセットは、変異のために低減若しくは欠如しているタンパク質、ポリペプチド、若しくはRNAをコードする、又は過剰発現が本開示の範囲内であるとみなされる場合に治療効果をもたらす任意の遺伝子を含み得る。ceDNAベクターは、ヌクレアーゼによって提供される二本鎖切断(又はニック)の後に挿入される訂正DNA鎖として使用されるテンプレート又はドナーヌクレオチド配列を含み得る。ceDNAベクターは、誘導型RNAヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、又はジンクフィンガーヌクレアーゼによって提供される二本鎖切断(又はニック)の後に挿入される訂正DNA鎖として使用されるテンプレートヌクレオチド配列を含み得る。
【0410】
IV.治療用核酸
本開示の態様は、一般に、脂質ナノ粒子(LNP)及び治療用核酸(TNA)を含む組成物(例えば.、薬学的組成物)であって、LNPが、LNPに連結された、scFvを含む、組成物を提供する。実施形態によれば、本開示は、脂質ナノ粒子(LNP)及び治療用核酸(TNA)を含む薬学的組成物であって、LNPが、LNPに連結されたscFvを含み、scFvが、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、scFvが、マレイミドコンジュゲーションによってLNPに連結される、薬学的組成物を提供する。
【0411】
本開示の例示的な治療用核酸としては、ミニ遺伝子、プラスミド、ミニサークル、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、リボザイム、閉端二本鎖DNA(例えば、ceDNA、CELiD、直鎖状の共有結合的に閉じたDNA(「ミニストリング」)、doggybone(商標)、プロテロメア閉端DNA、又はダンベル直鎖状DNA)、ダイサー基質dsRNA、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、非対称干渉RNA(aiRNA)、マイクロRNA(miRNA)、mRNA、tRNA、rRNA、及びDNAウイルスベクター、ウイルスRNAベクター、並びにそれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0412】
RNA干渉(RNAi)と呼ばれるプロセスを通じて特定のタンパク質の細胞内レベルを下方調節することができるsiRNA又はmiRNAもまた、本開示によって核酸治療薬であると企図される。siRNA又はmiRNAが宿主細胞の細胞質に導入された後、これらの二本鎖RNA構築物はRISCと呼ばれるタンパク質に結合することができる。siRNA又はmiRNAのセンス鎖はRISC複合体によって除去される。RISC複合体は、相補的mRNAと結合すると、mRNAを切断し、切断された鎖を放出する。RNAiは、対応するタンパク質の下方調節をもたらすmRNAの特異的破壊を誘導することによるものである。
【0413】
タンパク質へのmRNA翻訳を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)及びリボザイムは、核酸治療薬となり得る。アンチセンス構築物の場合、これらの一本鎖デオキシ核酸は、標的タンパク質mRNAの配列に相補的な配列を有し、ワトソンは、クリック塩基対合によってmRNAに結合することができる。この結合は、標的mRNAの翻訳を防ぎ、かつ/又はmRNA転写産物のRNaseH分解を誘起する。その結果、アンチセンスオリゴヌクレオチドは作用の特異性(すなわち、特定の疾患関連タンパク質の下方調節)を高めた。
【0414】
本明細書に提供される態様及び実施形態のいずれにおいても、治療用核酸は、治療用RNAであり得る。当該治療用RNAは、mRNA翻訳の阻害剤、RNA干渉(RNAi)の薬剤、触媒的に活性なRNA分子(リボザイム)、転移RNA(tRNA)、又はmRNA転写産物(ASO)、タンパク質若しくは他の分子リガンドに結合するRNA(アプタマー)であり得る。本明細書で提供される方法のいずれにおいても、RNAiの薬剤は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、マイクロRNA、短鎖干渉RNA、低分子ヘアピンRNA、又は三重らせん形成オリゴヌクレオチドであり得る。
【0415】
変性治療用核酸
本開示の態様は、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子(LNP)及び治療用核酸(TNA)を含む組成物(例えば、薬学的組成物)であって、LNPが、LNPに連結された、scFv(例えば、scFvは、細胞の表面に存在する抗原を対象とする)を含む、組成物)及び変性治療用核酸(TNA)を含む薬学的組成物であって、TNAが、上に定義したとおりである、薬学的組成物を更に提供する。
【0416】
一実施形態では、変性TNAは、閉端DNA(closed-ended DNA、ceDNA)である。「変性した治療用核酸」という用語は、その立体構造が標準的なB型構造から変化した部分的又は完全なTNAを指す。立体構造変化は、二次構造の変化(すなわち、単一核酸分子内の塩基対相互作用)及び/又は三次構造の変化(すなわち、二重らせん構造)を含み得る。理論に束縛されるものではないが、アルコール/水溶液又は純粋なアルコール溶媒で処理されたTNAは、LNPによる封入効率を増強し、より小さい直径サイズ(すなわち、75nm未満、例えば、直径約68~74nmの平均サイズ)を有するLNP製剤を生成する立体構造への核酸の変性をもたらすと考えられた。本明細書に記載される全てのLNP平均直径サイズ及びサイズ範囲は、変性TNAを含有するLNPに適用される。
【0417】
DNAが水性環境中にある場合、それは、各々の完全なヘリックス1回転中に10.4塩基対を有するB型構造を有する。メタノールのような適度に極性の低いアルコールを添加することによってこの水性環境を徐々に変化させると、ヘリックスのねじれが緩和し、それによってDNAは、円偏光二色性(circular dichroism、CD)分光法によって可視化されるように、ヘリックス1回転当たり10.2塩基対しか有しない形態に滑らかに変化する。一実施形態では、本明細書で提供される薬学的組成物中の変性TNAは、10.2型構造を有する。
【0418】
この挙動とは対照的に、水がエタノールなどのわずかに極性の低いアルコールで置換される場合、同じ種類の立体構造変化は、水の約65%がエタノールで置換されるまでしか起こらない。この時点で、DNAは突然A型構造に変化し、これは、CDによって可視化されるように、ヘリックス1回転当たり11塩基対を含有する、より緊密にねじれたヘリックスを有する。一実施形態では、本明細書で提供される薬学的組成物中の変性TNAは、A型構造を有する。
【0419】
いくつかの実施形態によれば、本明細書で提供される薬学的組成物中の変性TNAは、透過型電子顕微鏡(transmission electron microscopy、TEM)下で可視化された場合に、棒状構造を有する。いくつかの実施形態によれば、本明細書で提供される薬学的組成物中の変性TNAは、透過型電子顕微鏡(TEM)下で可視化された場合、環状様構造を有する。比較すると、変性されていないTNAは、鎖様構造を有する。
【0420】
V.ceDNAベクターの産生
本開示の実施形態は、脂質ナノ粒子(LNP)及び治療用核酸(TNA)を含む組成物に基づく。本明細書に記載されるようなceDNAベクターは、ウイルスカプシド内の限定空間によって課されるパッケージング制約を有しない。ceDNAベクターは、封入されたAAVゲノムとは対照的な原核細胞的に産生されたプラスミドDNAベクターに対する可変の真核細胞的に産生された代替物を表す。これは、制御エレメント、例えば、本明細書に開示される調節スイッチ、大きな導入遺伝子、複数の導入遺伝子などの挿入を可能にする。
【0421】
本明細書で定義される非対称ITR対又は対称ITR対を含む本明細書に記載のceDNAベクターの産生のための方法は、2018年9月7日に出願された国際出願PCT/US18/49996号のセクションIVに記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるように、ceDNAベクターは、例えば、a)ポリヌクレオチド発現構築物テンプレート(例えば、ceDNA-プラスミド、ceDNA-バクミド、及び/又はceDNA-バキュロウイルス)を内包する宿主細胞(例えば昆虫細胞)の集団をインキュベートするステップであって、Repタンパク質の存在下では、宿主細胞内のceDNAベクターの産生を誘導するために効果的な条件下、かつそのために十分な時間にわたってウイルスカプシドコード配列を欠いており、宿主細胞が、ウイルスカプシドコード配列を含まない、インキュベートするステップと、b)ceDNAベクターを宿主細胞から採取し、単離するステップと、を含む、プロセスによって取得され得る。Repタンパク質の存在は、修飾型ITRを有するベクターポリヌクレオチドの複製を誘導して、宿主細胞中でceDNAベクターを産生する。
【0422】
以下は、非限定的な例として提供される。
【0423】
いくつかの実施形態によれば、合成ceDNAは、二本鎖DNA分子からの切除を介して産生される。ceDNAベクターの合成産生は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、2019年1月18日に出願された国際出願第US19/14122号の実施例2~6に記載される。二本鎖DNA分子の切除を伴う合成方法を使用してceDNAベクターを産生する1つの例示的な方法。簡潔には、ceDNAベクターは、二本鎖DNA構築物を使用して生成され得る。例えば、国際特許出願第PCT/US19/14122号の
図7A~8Eを参照されたい。いくつかの実施形態では、二本鎖DNA構築物はceDNAプラスミドであり、例えば、2018年12月6日に出願された国際特許出願第US2018/064242号の
図6を参照されたい)。
【0424】
いくつかの実施形態では、ceDNAベクターを作製するための構築物は、導入遺伝子の発現を調節するための追加成分、例えば、導入遺伝子の発現を調節するための調節スイッチ、又はベクターを含む細胞を殺傷し得るキルスイッチを含む。
【0425】
分子調節スイッチは、シグナルに応答して、状態の測定可能な変化を生成するものである。そのような調節スイッチは、本明細書に記載されるceDNAベクターと有用に組み合わせて、導入遺伝子の発現の出力を制御することができる。いくつかの実施形態では、ceDNAベクターは、導入遺伝子の発現を微調整するのに役立つ調節スイッチを含む。例えば、ceDNAベクターの生物学的封じ込め機能として役立ち得る。いくつかの実施形態では、スイッチは、ceDNAベクターにおける目的の遺伝子の、制御可能かつ調節可能な発現を開始又は停止(すなわち、シャットダウン)するように設計された「オン/オフ」スイッチである。いくつかの実施形態では、スイッチは、一旦スイッチが起動されると、合成ceDNAベクターを含む細胞がプログラム細胞死を受けるよう指示することができる「キルスイッチ」を含み得る。ceDNAベクターでの使用に包含される例示的な調節スイッチは、導入遺伝子の発現を調節するために使用することができ、参照により全体が本明細書に組み込まれかつ本明細書に記載される国際出願第US18/49996号においてより完全に考察されている。
【0426】
様々なオリゴヌクレオチドの構築を伴う合成方法を使用してceDNAベクターを産生する別の例示的な方法は、国際出願第PCT/US19/14122号の実施例3に提供されており、ceDNAベクターは、5’オリゴヌクレオチド及び3’ITRオリゴヌクレオチドを合成し、ITRオリゴヌクレオチドを、発現カセットを含む二本鎖ポリヌクレオチドにライゲーションすることによって産生される。参照により全体が本明細書に組み込まれるPCT/US19/14122の
図11Bは、5’ITRオリゴヌクレオチド及び3’ITRオリゴヌクレオチドを、発現カセットを含む二本鎖ポリヌクレオチドにライゲーションする例示的な方法を示す。
【0427】
合成方法を使用してceDNAベクターを産生する例示的な方法は、参照により全体が本明細書に組み込まれるPCT/US19/14122の実施例4において提供され、センス発現カセット配列に隣接しアンチセンス発現カセットに隣接する2つのアンチセンスITRに共有結合的に結合される2つのセンスITRを含む一本鎖の直鎖状DNAを使用し、次いで、この一本鎖の直鎖状DNAの末端をライゲーションして、閉端一本鎖分子を形成する。非限定的な一例は、一本鎖DNA分子を合成及び/又は産生し、分子の一部をアニーリングして、二次構造の1つ以上の塩基対合領域を有する単一の直鎖状DNA分子を形成し、次いで遊離5’及び3’末端を互いにライゲーションして、閉鎖状一本鎖分子を形成する。
【0428】
更に別の態様では、本開示は、非ウイルス性DNAベクターの産生に使用するため、本明細書に記載されるDNAベクターポリヌクレオチド発現テンプレート(ceDNAテンプレート)をそれら自体のゲノムに安定して組み込んでいる宿主細胞株を提供する。そのような細胞株を産生する方法は、Lee,L.et al.(2013)Plos One 8(8):e69879に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。例えば、Repタンパク質は、3のMOIで宿主細胞に添加される。一実施形態では、宿主細胞株は無脊椎動物の細胞株、好ましくは昆虫Sf9細胞である。宿主細胞株が哺乳動物細胞株、好ましくは293細胞である場合、細胞株は、安定して組み込まれたポリヌクレオチドベクターテンプレートを有し得、ヘルペスウイルスなどの第2のベクターを使用して、Repタンパク質を細胞に導入することができ、Repの存在下でのceDNAの切除及び増幅を可能にする。
【0429】
任意のプロモーターは、ベクターポリヌクレオチドの異種核酸(例えば、レポーター核酸又は治療用導入遺伝子)に操作可能に連結することができる。発現カセットは、CAGプロモーターなどの合成調節エレメントを含有し得る。CAGプロモーターは、(i)サイトメガロウイルス(CMV)早期エンハンサーエレメント、(ii)プロモーター、ニワトリベータアクチン遺伝子の第1のエクソン及び第1のイントロン、並びに(ii)ウサギベータグロビン遺伝子のスプライスアクセプターを含む。代替的に、発現カセットは、アルファ-1-アンチトリプシン(AAT)プロモーター、肝臓特異的(LP1)プロモーター、又はヒト伸長因子-1アルファ(EF1-α)プロモーターを含むことができる。いくつかの実施形態では、発現カセットは、1つ以上の構成的プロモーター、例えば、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(任意選択的にRSVエンハンサーを有する)、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター(任意選択的にCMVエンハンサーを有する)を含む。代替的に、誘導性若しくは抑制性プロモーター、導入遺伝子の未変性プロモーター、組織特異的プロモーター、又は当該技術分野において既知の様々なプロモーターを使用することができる。遺伝子療法のための好適な導入遺伝子は、当業者に周知である。
【0430】
カプシド不含ceDNAベクターはまた、シス調節エレメント、又はシス調節エレメントの組み合わせを更に含むベクターポリヌクレオチド発現構築物から産生することができ、非限定的な例は、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(woodchuck hepatitis virus posttranscriptional regulatory element、WPRE)及びBGHポリA、又は例えば、ベータ-グロビンポリAを含む。他の転写後処理エレメントは、例えば、単純ヘルペスウイルス、又はB型肝炎ウイルス(HBV)のチミジンキナーゼ遺伝子を含む。発現カセットは、例えば、ウシBGHpA若しくはウイルスSV40pAから単離された天然、又は合成などの、当該技術分野において既知の任意のポリアデニル化配列又はその変形を含み得る。いくつかの発現カセットはまた、SV40後期ポリAシグナル上流エンハンサー(upstream enhancer、USE)配列を含み得る。USEは、SV40pA又は異種ポリAシグナルと組み合わせて使用され得る。
【0431】
本明細書に記載されるDNAベクターを細胞から採取及び収集するための時間は、ceDNAベクターの高収率産生を達成するために選択され、最適化され得る。例えば、採取時間は、細胞生存率、細胞形態、細胞増殖などを考慮して選択され得る。一実施形態では、細胞は、十分な条件下で増殖し、DNAベクターを産生するためのバキュロウイルス感染から十分な時間が経過した後、但し細胞の大半がウイルスの毒性のために死滅し始める前に採取される。DNA-ベクターは、Qiagen Endo-Freeプラスミドキットなどのプラスミド精製キットを使用して単離され得る。プラスミド単離のために開発された他の方法もまた、DNAベクターに対して適合され得る。一般に、任意の核酸精製方法が採用され得る。
【0432】
DNAベクターは、DNAの精製のための当業者に既知の任意の手段によって精製され得る。一実施形態では、ceDNAベクターは、DNA分子として精製される。別の実施形態では、ceDNAベクターは、エキソソーム又は微粒子として精製される。
【0433】
一実施形態では、カプシド不含非ウイルス性DNAベクターは、第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端反復(ITR)、目的のヌクレオチド配列(例えば、外因性DNAの発現カセット)及び修飾AAV ITRをこの順で含むポリヌクレオチドテンプレートを含むプラスミドを含むか、又はそれから得られ、当該テンプレート核酸分子は、AAVカプシドタンパク質コードを欠いている。更なる実施形態では、本開示の核酸テンプレートは、ウイルス性カプシドタンパク質コード配列を欠いている(すなわち、AAVカプシド遺伝子だけでなく、他のウイルスのカプシド遺伝子も欠いている)。加えて、特定の実施形態では、テンプレート核酸分子はまた、AAV Repタンパク質コード配列を欠いている。したがって、好ましい実施形態では、本開示の核酸分子は、機能的なAAVキャップ及びAAV rep遺伝子の両方を欠いている。
【0434】
一実施形態では、ceDNAベクターは、本明細書に開示される野生型AAV2 ITRに関して変異したITR構造を含み得るが、依然として操作可能なRBE、TRS、及びRBE’部分を保持する。
【0435】
ceDNAプラスミド
ceDNA-プラスミドは、ceDNAベクターの後期産生に使用されるプラスミドである。一実施形態では、ceDNA-プラスミドは、転写方向の操作可能に連結された構成成分として、少なくとも(1)修飾型5’ITR配列、(2)シス調節エレメントを含有する発現カセット、例えば、プロモーター、誘導性プロモーター、調節スイッチ、エンハンサーなど、及び(3)修飾型3’ITR配列(3’ITR配列は、5’ITR配列に対して非対称である)を提供する既知の技法を使用して構築され得る。いくつかの実施形態では、ITRによって隣接された発現カセットは、外因性配列を導入するためのクローニング部位を含む。発現カセットは、AAVゲノムのrep及びcapコード領域を置き換える。
【0436】
一実施形態では、ceDNAベクターは、本明細書では、第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端反復(ITR)、導入遺伝子を含む発現カセット、及び変異型又は修飾型AAV ITRをこの順序でコードする「ceDNA-プラスミド」と参照されるプラスミドから取得され、当該ceDNA-プラスミドは、AAVカプシドタンパク質コード配列を欠いている。代替的な実施形態では、ceDNA-プラスミドは、第1の(又は5’)修飾型又は変異型AAV ITR、導入遺伝子を含む発現カセット、及び第2の(又は3’)修飾型AAV ITRをこの順序でコードし、当該ceDNA-プラスミドは、AAVカプシドタンパク質コード配列を欠いており、5’及び3’ITRは、互いに対して対称である。代替的な実施形態では、ceDNA-プラスミドは、第1の(又は5’)修飾型又は変異型AAV ITR、導入遺伝子を含む発現カセット、及び第2の(又は3’)変異型又は修飾型AAV ITRをこの順序でコードし、当該ceDNA-プラスミドは、AAVカプシドタンパク質コード配列を欠いており、5’及び3’修飾型ITRは、同じ修飾を有する(すなわち、それらは互いに対して逆相補又は対称である)。
【0437】
一実施形態では、ceDNA-プラスミド系は、ウイルスカプシドタンパク質コード配列を欠いている(すなわち、AAVカプシド遺伝子だけでなく、他のウイルスのカプシド遺伝子も欠いている)。一実施形態では、ceDNA-プラスミドはまた、AAV Repタンパク質コード配列を欠いている。一実施形態では、ceDNA-プラスミドは、機能的AAV cap及びAAV rep遺伝子(AAV2の場合GG-3’)に加えて、ヘアピン形成を可能にする可変パリンドローム配列を欠いている。一実施形態では、本開示のceDNA-プラスミドは、当該技術分野において周知の任意のAAV血清型のゲノムの天然ヌクレオチド配列を使用して生成され得る。一実施形態では、ceDNA-プラスミド骨格は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV 5、AAV7、AAV8、AAV9、AAV 10、AAV 11、AAV 12、AAVrh8、AAVrhlO、AAV-DJ、及びAAV-DJ8ゲノム、例えば、NCBI:NC 002077;NC001401、NC001729、NC001829、NC006152、NC006260、NC006261、Springerによって維持されるURLで入手可能な、Kotin and Smith,The Springer Index of Virusesに由来する。一実施形態では、ceDNA-プラスミド骨格は、AAV2ゲノムに由来する。一実施形態では、ceDNA-プラスミド骨格は、これらのAAVゲノムのうちの1つに由来する5’及び3’ITRに含まれるように遺伝子操作された合成骨格である。
【0438】
一実施形態では、ceDNA-プラスミドは、ceDNAベクター産生細胞株の確立における使用のための選択可能又は選択マーカーを任意選択的に含み得る。一実施形態では、選択マーカーは、3’ITR配列の下流(すなわち、3’)に挿入され得る。別の実施形態では、選択マーカーは、5’ITR配列の上流(すなわち、5’)に挿入され得る。適切な選択マーカーは、例えば、薬物耐性を付与するものを含む。選択マーカーは、例えば、ブラスチシジンS耐性遺伝子、カナマイシン、ゲネチシンなどであり得る。
【0439】
VI.脂質粒子の調製
脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、ceDNA及び脂質の混合時に自発的に形成することができる。所望の粒子サイズ分布に応じて、得られたナノ粒子混合物は、例えば、Lipex Extruder(Northern Lipids,Inc)などのサーモバレル押出機を使用して、膜(例えば、100nrnカットオフ)を通して押し出すことができる。場合によっては、押し出しステップは省略することができる。エタノール除去及び同時緩衝液交換は、例えば、透析又はタンジェンシャル・フロー・フィルトレーションによって達成され得る。一実施形態では、脂質ナノ粒子は、米国仮出願第63/194,620号に記載される実施例3に記載されるように形成される。
【0440】
一般に、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、当該技術分野において既知の任意の方法によって形成することができる。例えば、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、例えば、US2013/0037977、US2010/0015218、US2013/0156845、US2013/0164400、US2012/0225129、及びUS2010/0130588に記載されている方法によって調製することができ、これらの各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、連続混合法、直接希釈プロセス、又はインライン希釈プロセスを使用して調製することができる。直接希釈及びインライン希釈プロセスを使用して脂質ナノ粒子を調製するための装置のプロセス及び装置は、US2007/0042031に記載されており、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。段階希釈プロセスを使用して脂質ナノ粒子を調製するためのプロセス及び装置は、US2004/0142025に記載されており、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0441】
いくつかの態様によれば、本開示は、本明細書に記載のceDNAベクターを含むDNAベクターと、イオン化可能な脂質とを含む、LNPを提供する。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2018年9月7日に出願された国際特許出願第PCT/US2018/050042号に開示されるプロセスにより得られたceDNAなどの治療用核酸で作製され、充填される、脂質ナノ粒子製剤。
【0442】
一実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、衝突ジェットプロセスによって調製することができる。一般に、粒子は、アルコール(例えば、エタノール)に溶解した脂質を、緩衝液、例えば、クエン酸緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、酢酸ナトリウム及び塩化マグネシウム緩衝液、リンゴ酸緩衝液、リンゴ酸及び塩化ナトリウム緩衝液、又はクエン酸ナトリウム及び塩化ナトリウム緩衝液に溶解したceDNAと混合することによって形成される。ceDNAに対する脂質の混合比は、約45~55%の脂質及び約65~45%のceDNAであり得る。
【0443】
脂質溶液は、アルコール、例えばエタノール中に、5~30mg/mL、よりおそらく5~15mg/mL、最もおそらく9~12mg/mLの全脂質濃度で、カチオン性脂質(例えば、イオン化可能なカチオン性脂質)、非カチオン性脂質(例えば、DSPC、DOPE、及びDOPCなどのリン脂質)、PEG又はPEGコンジュゲートされた分子(例えば、PEG-脂質)、及びステロール(例えば、コレステロール)を含有することができる。脂質溶液において、脂質のモル比は、カチオン性脂質について約25~98%、好ましくは約35~65%;非イオン性脂質について約0~15%、好ましくは約0~12%の範囲;PEG又はPEGコンジュゲートされた脂質分子について約0~15%、好ましくは約1~6%;ステロールについて約0~75%、好ましくは約30~50%の範囲であり得る。
【0444】
ceDNA溶液は、3.5~5の範囲のpHを有する、緩衝溶液中に0.3~1.0mg/mL、好ましくは、0.3~0.9mg/mLの濃度範囲でceDNAを含むことができる。
【0445】
LNPを形成するために、1つの例示的であるが非限定的な実施形態では、2つの液体は、約15~40℃、好ましくは約30~40℃の範囲の温度に加熱され、次いで、例えば、衝突ジェットミキサーにおいて混合され、即座にLNPを形成する。混合流量は、10~600mL/分の範囲であり得る。チューブIDは、0.25~1.0mmの範囲を有し、10~600mL/分の総流量であり得る。流量とチューブIDとの組み合わせは、LNPの粒子サイズを30~200nmに制御する効果を有し得る。次いで、溶液を、より高いpHで、1:1~1:3の体積:体積、好ましくは約1:2の体積:体積の範囲の混合比で緩衝溶液と混合することができる。必要に応じて、この緩衝溶液は、15~40℃又は30~40℃の範囲の温度であり得る。次いで、混合されたLNPは、アニオン交換濾過ステップを受けることができる。アニオン交換の前に、混合されたLNPを一定期間、例えば30分~2時間インキュベートすることができる。インキュベーション中の温度は、15~40℃又は30~40℃の範囲の温度になり得る。インキュベーション後、アニオン交換分離ステップを含む0.8μmフィルターなどのフィルターで溶液を濾過する。このプロセスでは、1mmのID~5mmのIDの範囲のチューブID及び10~2000mL/分の流量を使用できる。
【0446】
形成後、LNPを濃縮し、限外濾過プロセスを介して限界濾過することができ、このプロセスでは、アルコールが除去され、緩衝液が最終的な緩衝溶液、例えば、約pH7、例えば約pH6.9、約pH7.0、約pH7.1、約pH7.2、約pH7.3、又は約pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline、PBS)と交換される。
【0447】
限外濾過プロセスでは、膜の公称分子量カットオフ範囲が30~500kDのタンジェンシャル・フロー・フィルトレーションフォーマット(TFF)を使用できる。膜フォーマットは中空糸又はフラットシートカセットである。適切な分子量カットオフのTFFプロセスでは、保持液にLNPを保持することができ、濾液又は透過液はアルコール、クエン酸緩衝液及び最終緩衝液の廃棄物を含有する。TFFプロセスは、初期濃度が1~3mg/mLのceDNA濃度になる複数ステップのプロセスである。濃縮後、LNP溶液を最終緩衝液に対して10~20容量で限界濾過し、アルコールを除去して緩衝液交換を実施する。次いで、材料を更に1~3倍に濃縮することができる。濃縮されたLNP溶液は滅菌濾過できる。
【0448】
VII.薬学的組成物及び製剤
脂質ナノ粒子(LNP)及び治療用核酸(TNA)を含む薬学的組成物であって、LNPが、LNPに連結されたscFv、及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物が、本明細書で提供される。一態様によれば、脂質ナノ粒子(LNP)及び治療用核酸(TNA)[ここで、LNPは、LNPに連結された一本鎖可変断片(scFv)を含み、scFvは、細胞の表面に存在する抗原を対象とする]、並びに少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物であって、scFvが、切断不可能なリンカーを介してLNPに共有結合により連結される、薬学的組成物が本明細書で提供される。一態様によれば、脂質ナノ粒子(LNP)及び治療用核酸(TNA)[ここで、LNPは、LNPに連結された一本鎖可変断片(scFv)を含み、scFvは、細胞の表面に存在する抗原を対象とする]、並びに少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物であって、scFvが、切断可能なリンカーを介してLNPに共有結合により連結される、薬学的組成物が本明細書で提供される。一態様によれば、脂質ナノ粒子(LNP)及び治療用核酸(TNA)[ここで、LNPは、LNPに連結された一本鎖可変断片(scFv)を含み、scFvは、細胞の表面に存在する抗原を対象とする]、並びに少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物であって、scFvが、LNPに非共有結合により連結される、薬学的組成物が本明細書で提供される。
【0449】
いくつかの実施形態によれば、TNA(例えば、ceDNA)は、脂質中に封入される。一実施形態では、TNA(例えば、ceDNA)脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、治療用核酸の完全な封入、部分的な封入と共に提供される。一実施形態では、核酸治療薬は、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)に完全に封入されて、脂質粒子を含有する核酸を形成する。一実施形態では、核酸は、粒子の脂質部分内に封入され、それによって、それを酵素分解から保護し得る。
【0450】
脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)の意図した使用に応じて、構成成分の割合は変化する可能性があり、特定の製剤の送達効率は、例えば、エンドソーム放出パラメータ(ERP)アッセイを使用して測定され得る。
【0451】
一実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、凝集を防止するために他の部分とコンジュゲートされ得る。そのような脂質コンジュゲートには、限定されないが、PEG-脂質コンジュゲート、例えば、ジアルキルオキシプロピルにカップリングしたPEG(例えば、PEG-DAAコンジュゲート)、ジアシルグリセロールにカップリングしたPEG(例えば、PEG-DAGコンジュゲート)、コレステロールにカップリングしたPEG、ホスファチジルエタノールアミンにカップリングしたPEG、及びセラミドにコンジュゲートしたPEG(例えば、米国特許第5,885,613号を参照されたい)、カチオン性PEG脂質、ポリオキサゾリン(POZ)-脂質コンジュゲート(例えば、POZ-DAAコンジュゲート、例えば、2010年1月13日出願の米国仮出願第61/294,828号、及び2010年1月14日出願の米国仮出願第61/295,140号を参照されたい)、ポリアミドオリゴマー(例えば、ATTA-脂質コンジュゲート)、及びそれらの混合物が挙げられる。POZ-脂質コンジュゲートの追加例は、PCT公開第2010/006282号に記載されている。PEG又はPOZは、脂質に直接コンジュゲートするか、リンカー部分を介して脂質に結合することができる。例えば、非エステル含有リンカー部分及びエステル含有リンカー部分を含む、PEG又はPOZを脂質にカップリングするのに好適な任意のリンカー部分を使用することができる。特定の好ましい実施形態では、アミド又はカルバメートなどの非エステル含有リンカー部分が使用される。上記の各特許文書の開示内容は、あらゆる目的で参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0452】
一実施形態では、TNA(例えば、ceDNA)は、粒子の脂質部分と複合され得るか、又は脂質粒子((例えば、脂質ナノ粒子)の脂質位置に封入され得る。一実施形態では、TNAは、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)の脂質位置に完全に封入されてもよく、それによって例えば水溶液中のヌクレアーゼによる分解からそれを保護する。一実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)中のTNAは、37℃で少なくとも約20、30、45、又は60分間のヌクレアーゼへの脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)の曝露後に実質的に分解されない。いくつかの実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)中のTNAは、37℃で少なくとも約30、45、若しくは60分、又は少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、若しくは36時間の血清中の粒子のインキュベーション後に実質的に分解されない。
【0453】
一実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、対象、例えばヒトなどの哺乳動物に対して実質的に非毒性である。
【0454】
一実施形態では、本開示の治療用核酸を含む薬学的組成物は、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)に製剤化され得る。いくつかの実施形態では、治療用核酸を含む脂質粒子は、カチオン性脂質から形成することができる。いくつかの他の実施形態では、治療用核酸を含む脂質粒子は、非カチオン性脂質から形成され得る。好ましい実施形態では、本開示の脂質粒子は、核酸を含有する脂質粒子であり、これは、mRNA、アンチセンスRNA及びオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタマー、干渉RNA(RNAi)、ダイサー基質dsRNA、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、非対称干渉RNA(aiRNA)、マイクロRNA(miRNA)、ミニサークルDNA、ミニ遺伝子、ウイルス性DNA(例えば、レンチウイルス若しくはAAVゲノム)又は非ウイルス性合成DNAベクター、閉端直鎖状二重鎖DNA(ceDNA/CELiD)、プラスミド、バクミド、doggybone(商標)DNAベクター、最小限の免疫学的に定義された遺伝子発現(MIDGE)ベクター、非ウイルス性ミニストリングDNAベクター(直鎖状共有結合性閉鎖DNAベクター)、又はダンベル型DNA最小ベクター(「ダンベルDNA」)からなる群から選択される治療用核酸を含むカチオン性脂質から形成される。
【0455】
別の好ましい実施形態では、本開示の脂質粒子は核酸含有脂質粒子であり、これは非カチオン性脂質、及び任意選択的に粒子の凝集を防止するコンジュゲートされた脂質から形成される。
【0456】
一実施形態では、脂質粒子製剤は、水溶液である。一実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)製剤は、凍結乾燥粉末である。
【0457】
いくつかの態様によれば、本開示は、1つ以上の薬学的賦形剤を更に含む脂質粒子製剤を提供する。一実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)製剤は、スクロース、トリス、トレハロース、及び/又はグリシンを更に含む。
【0458】
一実施形態では、本明細書に開示される脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、対象の細胞、組織、又は器官へのインビボ送達のために対象に投与するのに好適な薬学的組成物に組み込まれ得る。典型的に、薬学的組成物は、本明細書に開示されるTNA(例えば、ceDNA)脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)及び薬学的に許容される担体を含む。一実施形態では、本開示のTNA(例えば、ceDNA)脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、治療的投与(例えば、非経口投与)の所望の経路に適した薬学的組成物に組み込むことができる。高圧静脈内又は動脈内注入を介した受動組織形質導入、同様に、核内微量注射若しくは細胞質内注射等の細胞内注射もまた、企図される。治療目的のための薬学的組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、又は高TNA(例えば、ceDNA)ベクター濃度に好適な他の秩序構造として製剤化され得る。無菌の注射可能な溶液は、適切な緩衝液中の必要量のTNA(例えば、ceDNA)ベクター化合物を、必要に応じて、上記で列挙した成分のうちの1つ又は組み合わせと共に組み込み、その後の濾過滅菌によって調製され得る。
【0459】
本明細書に開示される脂質粒子は、局所、全身、羊膜内、くも膜下腔内、頭蓋内、動脈内、静脈内、リンパ内、腹腔内、皮下、気管、組織内(例えば、筋肉内、心臓内、肝内、腎臓内、脳内)、くも膜下腔内、膀胱内、結膜(例えば、眼窩外、眼窩内、眼窩後、網膜内、網膜下、脈絡膜、脈絡膜下、間質内、房内及び硝子体内)、蝸牛内、並びに粘膜(例えば、経口、直腸、経鼻)投与に好適な薬学的組成物に組み込むことができる。高圧静脈内又は動脈内注入を介した受動組織形質導入、同様に、核内微量注射若しくは細胞質内注射等の細胞内注射もまた、企図される。
【0460】
TNA(例えば、ceDNA)脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)を含む薬学的に活性な組成物は、核酸中の導入遺伝子をレシピエントの細胞に送達するように製剤化され、その中の導入遺伝子の治療的発現をもたらし得る。この組成物はまた、薬学的に許容される担体を含み得る。
【0461】
治療目的のための薬学的組成物は、典型的に、無菌であり、製造及び貯蔵の条件下で安定していなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、又は高TNA(例えば、ceDNA)ベクター濃度に好適な他の秩序構造として製剤化され得る。無菌の注射可能な溶液は、適切な緩衝液中の必要量のceDNAベクター化合物を、必要に応じて、上記で列挙した成分のうちの1つ又は組み合わせと共に組み込み、その後の濾過滅菌によって調製され得る。
【0462】
一実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、少なくとも1つの脂質二層を有する固体コア粒子である。一実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、非二層構造、すなわち非ラメラ(すなわち.、非二層)形態を有する。限定されないが、非二層形態としては、例えば、三次元チューブ、棒、立方対称性などを挙げることができる。脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)の非ラメラ形態(すなわち、非二層構造)は、当業者に既知であり、当業者によって使用される分析技法を使用して決定され得る。そのような技法としては、低温透過型電子顕微鏡(「Cryo-TEM」)、示差走査熱量計(「DSC」)、X線回折などが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、脂質粒子の形態(ラメラ対非ラメラ)は、例えば、US2010/0130588(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるCryo-TEM分析を使用して容易に評価され、特性化され得る。
【0463】
一実施形態では、非ラメラ形態を有する脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、高電子密度である。
【0464】
一実施形態では、本開示は、単一ラメラ構造又は多ラメラ構造のいずれかである脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)を提供する。いくつかの態様では、本開示は、多胞体粒子及び/又は発泡系粒子を含む脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)製剤を提供する。脂質構成成分の組成及び濃度を制御することによって、脂質コンジュゲートが脂質粒子(脂質ナノ粒子)外で交換する速度、次いで脂質ナノ粒子が膜融合性になる速度を制御することができる。加えて、例えば、pH、温度、又はイオン強度を含む他の変数を使用して、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)が膜融合性になる速度を変化及び/又は制御することができる。脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)が膜融合性になる速度を制御するために使用され得る他の方法は、本開示に基づいて当業者に明らかとなるであろう。脂質コンジュゲートの組成物及び濃度を制御することによって、脂質粒径を制御することができることも明らかとなるであろう。
【0465】
一実施形態では、製剤化されたカチオン性脂質のpKaは、核酸の送達のためのLNPの有効性と相関させることができる(Jayaraman et al.,Angewandte Chemie,International Edition (2012),51(34),8529-8533;Semple et al.,Nature Biotechnology 28,172-176(2010)を参照されたい(これらはいずれも、参照によりその全体が組み込まれる))。一実施形態では、pKaの好ましい範囲は、約5~約7である。一実施形態では、カチオン性脂質のpKaは、2-(p-トルイジノ)-6-ナフタレンスルホン酸(TNS)の蛍光に基づくアッセイを使用し、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)において決定され得る。
【0466】
一実施形態では、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)中のTNA(例えば、ceDNA)の封入は、核酸と会合したときに蛍光を増強した色素を使用する、膜不透過性蛍光色素排除アッセイ、例えばOligreen(登録商標)アッセイ又はPicoGreen(登録商標)アッセイを実施することによって決定され得る。一般に、封入は、脂質粒子製剤に色素を添加し、得られた蛍光を測定し、それを少量の非イオン性界面活性剤の添加時に観察される蛍光と比較することによって決定される。脂質二層の界面活性剤媒介性崩壊は、封入されたTNA(例えば、ceDNA)を放出し、それが膜不透過性色素と相互作用することを可能にする。ceDNAの封入は、E=(Io-I)/Ioとして計算することができ、I及びIoは、界面活性剤の添加前及び添加後の蛍光強度を指す。
【0467】
いくつかの実施形態によれば、眼科的送達のために、干渉RNA-リガンドコンジュゲート及びナノ粒子-リガンドコンジュゲートを、眼科的に許容される保存剤、共溶媒、界面活性剤、増粘剤、浸透促進剤、緩衝液、塩化ナトリウム、又は水と組み合わせて、水性の無菌眼科用懸濁液又は溶液を形成することができる。
【0468】
単位投与量
一実施形態では、薬学的組成物は、単位剤形で提示され得る。単位剤形は、典型的に、薬学的組成物の1つ以上の投与経路に適合されるであろう。いくつかの実施形態では、単位剤形は、吸入による投与のために適合される。いくつかの実施形態では、単位剤形は、吸入器による投与のために適合される。いくつかの実施形態では、単位剤形は、噴霧器による投与のために適合される。いくつかの実施形態では、単位剤形は、エアロゾル化器による投与のために適合される。いくつかの実施形態では、単位剤形は、経口投与のため、頬側投与のため、又は舌下投与のために適合される。いくつかの実施形態では、単位剤形は、静脈内、筋肉内、又は皮下投与のために適合される。いくつかの実施形態では、単位剤形は、髄腔内又は脳室内投与のために適合される。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、局所投与のために製剤化される。単一剤形を産生するために担体材料と組み合わされ得る活性成分の量は、一般に、治療効果をもたらす化合物の量となるであろう。
【0469】
VIII.治療方法
脂質ナノ粒子(LNP)及び治療用核酸(TNA)を含む薬学的組成物であって、LNPが、本明細書に記載されるように、LNPに連結されたscFv(例えば、scFvは、細胞の表面に存在する抗原を対象とする)を含む、薬学的組成物は、疾患又は障害を治療又は予防するために、核酸配列(例えば、TNA)を細胞に導入するために使用され得る。いくつかの実施形態によれば、薬学的組成物は、診断方法において使用され得る。
【0470】
対象の疾患又は障害を治療する方法であって、対象のそれを必要とする標的細胞(例えば、筋細胞若しくは筋組織、又は他の罹患細胞型)に、脂質ナノ粒子(LNP)及び治療用核酸(TNA)を含む治療有効量の薬学的組成物を導入することを含む方法であって、LNPが、LNPに連結されたscFvを含み、scFvが、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、細胞が腫瘍細胞である方法が本明細書で提供される。
【0471】
したがって、いくつかの態様によれば、本明細書に記載の薬学的組成物は、がんを治療する方法において使用され得る。他の態様によれば、本明細書に記載の薬学的組成物は、がんを予防する方法又はがんの再発を予防する方法において使用され得る。
【0472】
本明細書中で使用される場合、「がん」という用語は、周辺組織に侵入し、新しい身体部位に転移する傾向がある未分化細胞の増殖によって特徴付けられる任意の様々な悪性新生物を指し、また、そのような悪性新生物の増殖によって特徴付けられる病的状態を指す。がんは、限局性であってもよく(例えば、固形腫瘍)、全身性であってもよい。本開示の文脈において、「限局性」という用語(「限局性腫瘍」におけるような)は、全身性疾患とは対照的に、固形悪性腫瘍などの解剖学的に単離された又は単離可能な異常を指す。例えば、特定の白血病(例えば、骨髄線維症)及び多発性骨髄腫などの特定のがんは、疾患に対する限局性成分(例えば、骨髄)と全身性成分(例えば、循環血液細胞)の両方を有し得る。いくつかの実施形態では、がんは、血液学的悪性腫瘍などの全身性であり得る。本開示に従って治療され得るがんとしては、全ての種類のリンパ腫/白血病、癌腫及び肉腫、例えば、肛門、膀胱、胆管、骨、脳、乳房、子宮頸部、結腸/直腸、子宮内膜、食道、眼、胆嚢、頭頸部、肝臓、腎臓、喉頭、肺、縦隔(胸部)、口、卵巣、膵臓、陰茎、前立腺、皮膚、小腸、胃、脊髄、尾骨、精巣、甲状腺及び子宮において見られるがん又は腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の方法によって治療され得る癌の種類としては、乳頭腫/癌、絨毛癌、内胚葉洞腫瘍、奇形腫、腺腫/腺癌、メラノーマ、線維腫、脂肪腫、平滑筋腫、横紋筋腫、中皮腫、血管腫、骨腫、軟骨腫、神経膠腫、リンパ種/白血病、扁平上皮細胞癌、小細胞癌、大細胞未分化癌、基底細胞癌及び副鼻腔未分化癌が挙げられるが、これらに限定されない。肉腫の種類としては、軟部肉腫、例えば、胞巣状軟部肉腫、血管肉腫、皮膚線維肉腫、デスモイド腫瘍、線維形成性小円形細胞腫瘍、骨外軟骨肉腫、骨外骨肉腫、線維肉腫、血管周囲細胞腫、血管肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、リンパ肉腫、悪性線維性組織球腫、神経線維肉腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫及びアスキン腫瘍、ユーイング肉腫(原始神経外胚葉腫瘍)、悪性血管内皮腫、悪性シュワン細胞腫、骨肉腫及び軟骨肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0473】
TNA(例えば、ceDNA)脂質ナノ粒子は、本明細書に記載され、当該技術分野で公知の任意の適切な経路を介して投与することができる。一実施形態では、標的細胞は、ヒト対象にある。
【0474】
診断有効量又は治療有効量の、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物をそれを必要とする対象に提供するための方法であって、それを必要とする対象の細胞、組織又は器官に、ある量の、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物を、導入遺伝子のceDNAベクターからの発現を可能にするのに有効な時間提供し、それにより、診断有効量又は治療有効量の、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物を対象に提供することを含む、方法が本明細書で提供される。一実施形態では、対象は、ヒトである。
【0475】
疾患又は疾患状態の1つ以上の症状を治療又は軽減するために、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物を使用することを含む方法が本明細書で提供される。欠陥遺伝子が知られているいくつかの遺伝性疾患が存在し、典型的に、通常は一般に劣性的に遺伝される酵素の欠乏状態と、調節又は構造タンパク質に関与し得るが、典型的に常に優性的に遺伝されるとは限らない不均衡状態との2つのクラスに分類される。欠乏状態疾患については、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物を使用して、補充療法のために正常遺伝子を罹患組織にもたらす導入遺伝子を送達することができ、いくつかの実施形態では、アンチセンス変異を使用して疾患の動物モデルを作成ことができる。本明細書で使用される場合、疾患状態は、疾患を引き起こす、又はそれをより重篤にする欠乏又は不均衡を部分的又は全体的に修繕することによって治療される。
【0476】
一般に、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物を使用して、遺伝子発現に関連する任意の障害に関連する症状を治療、予防、又は改善するために、上記の記載に従って任意の導入遺伝子を送達することができる。例示的な疾患状態としては、嚢胞性線維症(及び他の肺の疾患)、血友病A、血友病B、サラセミア、貧血症及び他の血液障害、AIDS、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、てんかん及び他の神経障害、がん、糖尿病、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型、ベッカー型)、ハーラー病、アデノシンデアミナーゼ欠損症、代謝障害、網膜変性疾患(及び他の眼の疾患)、ミトコンドリオパチー(例えば、レーバー遺伝性視神経症(LHON)、リー症候群、及び亜急性硬化性脳炎)、ミオパチー(例えば、顔面肩甲上腕型ミオパチー(FSHD)及び心筋症)、固形臓器(例えば、脳、肝臓、腎臓、心臓)の疾患などが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるceDNAベクターは、代謝障害(例えば、オミチントランスカルバミラーゼ欠損症)を有する個体の治療において有利に使用され得る。
【0477】
一実施形態では、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞)の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物を使用して、遺伝子又は遺伝子産物の変異によって引き起こされる疾患又は障害を治療、改善、及び/又は予防することができる。ceDNAベクター(例えば、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞)の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物)で治療することができる例示的な疾患又は障害としては、がん及び腫瘍、代謝性疾患又は障害(例えば、ファブリー病、ゴーシェ病、フェニルケトン尿症(PKU)、糖原病);尿素サイクル疾患又は障害(例えば、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症);リソソーム蓄積症又は障害(例えば、異染性白質ジストロフィー(MLD)、II型ムコ多糖症(MPSII;ハンター症候群));肝臓の疾患又は障害(例えば、進行性家族性肝内胆汁うっ滞(PFIC);血液疾患又は障害(例えば、血友病(A及びB)、サラセミア、及び貧血);及び遺伝的疾患又は障害(例えば、嚢胞性線維症)を含む。
【0478】
一実施形態では、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物を用いて、導入遺伝子(例えば、本明細書に記載されるホルモン又は増殖因子をコードする導入遺伝子)発現のレベルを調節することが望ましい状況において、異種ヌクレオチド配列を送達し得る。
【0479】
一実施形態では、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物を使用して、疾患又は障害を引き起こす遺伝子産物の異常なレベル及び/又は機能(例えば、タンパク質の非存在、又はタンパク質中の欠陥)を修正することができる。本明細書に記載の脂質ナノ粒子中のceDNAベクターは、機能的タンパク質を生成し、かつ/又はタンパク質のレベルを修正して、タンパク質の非存在、又はタンパク質中の欠陥によって引き起こされる特定の疾患若しくは障害から生じる症状を緩和若しくは低減するか、又は利益を付与することができる。例えば、OTC欠損症の治療は、機能的OTC酵素を産生することによって達成することができ;血友病A及びBの治療は、第VIII因子、第IX因子、及び第X因子のレベルを改変することによって達成することができ;PKUの治療は、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ酵素のレベルを改変することによって達成することができ;ファブリー病又はゴーシェ病の治療は、機能的なアルファガラクトシダーゼ又はベータグルコセレブロシダーゼをそれぞれ産生することによって達成することができ;MFD又はMPSIIの治療は、それぞれ、機能的アリールスルファターゼA又はイズロン酸-2-スルファターゼを産生することによって達成することができ;嚢胞性線維症の治療は、機能的嚢胞性線維症膜貫通調節因子を産生することによって達成することができ;糖原病の治療は、機能的なG6Pase機能を回復させることによって達成することができ;PFICの治療は、機能的なATP8B1、ABCB11、ABCB4、又はTJP2遺伝子を産生することによって達成することができる。
【0480】
一実施形態では、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物を使用して、RNAベースの治療薬を細胞にインビトロ又はインビボで提供することができる。RNAベースの治療薬の例としては、mRNA、アンチセンスRNA及びオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタマー、干渉RNA(RNAi)、ダイサー基質dsRNA、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、非対称干渉RNA(aiRNA)、マイクロRNA(miRNA)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、一実施形態では、ceDNAベクター(例えば、本明細書に記載されるceDNAベクター脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子))を使用して、インビトロ又はインビボで細胞にアンチセンス核酸を提供することができる。例えば、導入遺伝子が、RNAi分子である場合、標的細胞中のアンチセンス核酸又はRNAiの発現は、細胞による特定のタンパク質の発現を減少させる。したがって、RNAi分子又はアンチセンス核酸である導入遺伝子を投与して、それを必要とする対象における特定のタンパク質の発現を減少させることができる。アンチセンス核酸をインビトロで細胞に投与して、細胞生理学を調節する、例えば、細胞又は組織培養系を最適化することもできる。
【0481】
一実施形態では、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物を使用して、インビトロ又はインビボで細胞にDNAベースの治療薬を提供することができる。DNAベースの治療薬の例としては、ミニサークルDNA、ミニ遺伝子、ウイルスDNA(例えば、レンチウイルス又はAAVゲノム)又は非ウイルス合成DNAベクター、閉端直鎖状二本鎖DNA(ceDNA/CELiD)、プラスミド、バクミド、doggybone(商標)DNAベクター、最小限の免疫学的に定義された遺伝子発現(MIDGE)-ベクター、非ウイルスミニストリングDNAベクター(直鎖状の共有結合的に閉じたDNAベクター)、又はダンベル型DNA最小ベクター(「ダンベルDNA」)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0482】
一実施形態では、ceDNAベクターなどのTNAによってコードされる例示的な導入遺伝子としては、リソソーム酵素(例えば、テイ・サックス病に関連するヘキソサミニダーゼA、又はハンター症候群/MPS IIに関連するイズロン酸スルファターゼ)、エリスロポエチン、アンジオスタチン、エンドスタチン、スーパーオキシドジスムターゼ、グロビン、レプチン、カタラーゼ、チロシンヒドロキシラーゼ、並びにサイトカイン(例えば、インターフェロン、b-インターフェロン、インターフェロン-g、インターロイキン-2、インターロイキン-4、インターロイキン12、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、リンホトキシンなど)、ペプチド増殖因子及びホルモン(例えば、ソマトトロピン、インスリン、インスリン様増殖因子1及び2、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、神経増殖因子(NGF)、神経栄養因子-3及び4、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア由来増殖因子(GDNF)、形質転換増殖因子-a及び-bなど)、受容体(例えば、腫瘍壊死因子受容体)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例示的な実施形態では、導入遺伝子は、1つ以上の所望の標的に特異的なモノクローナル抗体をコードする。いくつかの例示的な実施形態では、2つ以上の導入遺伝子が、ceDNAベクターによってコードされる。いくつかの例示的な実施形態では、導入遺伝子は、目的の2つの異なるポリペプチドを含む融合タンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、本明細書で定義されるように、全長抗体又は抗体断片を含む、抗体をコードする。いくつかの実施形態では、抗体は、本明細書に定義されるように、抗原結合ドメイン又は免疫グロブリン可変ドメイン配列である。他の例示的な導入遺伝子配列は、自殺遺伝子産物(チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、ジフテリア毒素、チトクロームP450、デオキシシチジンキナーゼ、及び腫瘍壊死因子)、がん療法において使用される薬物に対する耐性を付与するタンパク質、及び腫瘍抑制因子遺伝子産物をコードする。
【0483】
投与
一実施形態では、本明細書に記載されるような、脂質ナノ粒子(LNP)及び治療用核酸(TNA)を含む薬学的組成物を、インビボでの細胞の形質導入のために生物に投与することができる。一実施形態では、TNAを、エクスビボでの細胞の形質導入のために生物に投与することができる。
【0484】
一般に、投与は、分子を血液又は組織細胞と最終的に接触させるために通常使用される経路のうちのいずれかによるものである。そのような核酸を投与する好適な方法は、当業者によって利用可能かつ周知であり、特定の組成物を投与するために2つ以上の経路が使用され得るが、特定の経路は、多くの場合、別の経路よりもより即時的であり、より効果的な反応を提供し得る。LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物の例示的な投与形態としては、経口、直腸、経粘膜、鼻腔内、吸入(例えば、エアロゾルを介した)、頬側(例えば、舌下)、膣、髄腔内、眼内、経皮、内皮内、子宮内(又は卵内)、非経口(例えば、静脈内、皮下、皮内、頭蓋内、筋肉内[骨格、横隔膜、及び/又は心筋への投与を含む]、胸膜内、脳内、及び動脈内)、局所(例えば、気道表面を含む皮膚と粘膜表面の両方への、及び経皮投与)、リンパ内など、並びに直接組織又は器官注射(例えば、肝臓、眼、骨格筋、心筋、横隔膜、筋肉、若しくは脳への)が挙げられる。
【0485】
LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物の投与は、脳、骨格筋、平滑筋、心臓、横隔膜、気道上皮、肝臓、腎臓、脾臓、膵臓、皮膚、及び眼からなる群から選択される部位を含むが、これらに限定されない、対象の任意の部位に対して行われ得る。
【0486】
一実施形態では、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物の投与は、腫瘍(例えば、腫瘍若しくはリンパ節の内部若しくは付近)に対して行われ得る。
【0487】
任意の所与の症例における最も好適な経路は、治療、改善、及び/又は予防される状態の性質及び重症度、並びに使用されている本明細書に記載の特定のceDNAベクター(例えば、ceDNA脂質ナノ粒子)の性質に依存するであろう。追加的に、ceDNAは、単一のベクター、又は複数のceDNAベクター(例えば、ceDNAカクテル)中に2つ以上の導入遺伝子を投与することを可能にする。
【0488】
一実施形態では、骨格筋へのceDNAベクター(例えば、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物)の投与としては、四肢(例えば、上腕、前腕、上肢、及び/又は下肢)、背中、頸部、頭部(例えば、舌)、胸部、腹部、骨盤/会陰、及び/又は指の骨格筋への投与が挙げられるが、これらに限定されない。ceDNAベクター(例えば、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物)を、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、四肢灌流、(任意選択的に、脚及び/又は腕の隔離された四肢灌流;例えば、Arruda et al.,(2005)Blood 105:3458-3464を参照)並びに/又は直接筋肉内注入によって骨格筋に送達され得る。特定の実施形態では、ceDNAベクター(例えば、本明細書に記載されるceDNAベクター脂質粒子)は、対象(例えば、DMDなどの筋ジストロフィーを有する対象)の四肢(腕及び/又は脚)に、四肢灌流、任意選択的に隔離された四肢灌流(例えば、静脈内又は動脈内投与による)によって投与される。一実施形態では、ceDNAベクター(例えば、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物)を、「流体力学」の技法を用いることなく、投与することができる。
【0489】
ceDNAベクター(例えば、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物)の心筋への投与としては、左心房、右心房、左心室、右心室及び/又は中隔への投与が挙げられる。ceDNAベクター(例えば、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物)を、静脈内投与、動脈内投与、例えば、大動脈内投与、直接心臓注射(例えば、左心房、右心房、左心室、右心室への)、及び/又は冠動脈灌流によって、心筋に送達することができる。横隔膜筋への投与は、静脈内投与、動脈内投与、及び/又は腹腔内投与を含む任意の好適な方法によって行われ得る。平滑筋への投与は、静脈内投与、動脈内投与、及び/又は腹腔内投与を含む任意の好適な方法によって行われ得る。一実施形態では、投与は、平滑筋内、その付近、及び/又はその上に存在する内皮細胞に対して行われ得る。
【0490】
一実施形態では、ceDNAベクター(例えば、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物)を、骨格筋、横隔膜筋、及び/又は心筋に投与する(例えば、筋ジストロフィー又は心疾患(例えば、PAD又はうっ血性心不全)を治療、改善、及び/又は予防するために)。
【0491】
ceDNAベクター(例えば、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物)を、CNSに(例えば、脳又は眼に)投与することができる。ceDNAベクター(例えば、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物)を、脊髄液、脳幹(延髄、橋)、中脳(視床下部、視床、視床上、脳下垂体、黒質、松果体)、小脳、終脳(線条体、後頭葉、側頭葉、頭頂葉及び前頭葉を含む大脳、皮質、大脳基底核、海馬及び扁桃体(portaamygdala))、辺縁系、新皮質、線条体、大脳、及び下丘に導入し得る。ceDNAベクター(例えば、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物)はまた、網膜、角膜及び/又は視神経などの眼の異なる領域にも投与され得る。ceDNAベクター(例えば、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物)を、脳脊髄液に送達し得る(例えば、腰椎穿刺によって)。ceDNAベクター(例えば、本明細書に記載されるceDNAベクター脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子))は、更に、血液脳関門が撹乱された状況(例えば、脳腫瘍又は脳梗塞)において、CNSに血管内投与され得る。
【0492】
一実施形態では、ceDNAベクター(例えば、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物)を、髄腔内、眼内、脳内、脳室内、静脈内(例えば、マンニトールなどの糖の存在下)、鼻腔内、耳内、眼内(例えば、硝子体内、網膜下、前房)、及び眼周囲(例えば、テノン下領域)送達、並びに運動ニューロンへの逆行性送達を伴う筋肉内送達を含むが、これらに限定されない、当該技術分野において公知の任意の経路によってCNSの所望の領域に投与してもよい。
【0493】
いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクター(例えば、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物)を、CNSにおける所望の領域又は区画への直接注射(例えば、定位注射)によって、液体製剤で投与する。他の実施形態によれば、ceDNAベクター(例えば、ceDNAベクター脂質粒子(例えば、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物)は、所望の領域への局所適用によって、又はエアロゾル製剤の鼻腔内投与によって提供され得る。眼への投与は、液滴の局所適用によって行われてもよい。更なる代替例として、ceDNAベクターは、固体の徐放性製剤として投与され得る(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,201,898号を参照されたい)。一実施形態では、ceDNAベクター(例えば、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物)を、運動ニューロンが関与する疾患及び障害(例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS);脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy、SMA)など)を治療、改善、及び/又は予防するための逆行性輸送に使用することができる。例えば、ceDNAベクター(例えば、LNP及びTNAを含み、LNPがscFvを含み、scFvが、本明細書に記載されるように、細胞の表面に存在する抗原を対象とし、LNPに連結される、薬学的組成物)を、筋組織に送達することができ、そこからニューロンに移動することができる。
【0494】
一実施形態では、適切なレベルの発現が達成されるまで、治療用製品の反復投与を行うことができる。したがって、一実施形態では、治療用核酸を複数回投与及び再投与することができる。例えば、治療用核酸は、0日目に投与することができる。0日目の初回治療に続いて、治療用核酸を用いた初回治療の約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、又は約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約7ヶ月、約8ヶ月、約9ヶ月、約10ヶ月、約11ヶ月、又は約1年、約2年、約3年、約4年、約5年、約6年、約7年、約8年、約9年、約10年、約11年、約12年、約13年、約14年、約15年、約16年、約17年、約18年、約19年、約20年、約21年、約22年、約23年、約24年、約25年、約26年、約27年、約28年、約29年、約30年、約31年、約32年、約33年、約34年、約35年、約36年、約37年、約38年、約39年、約40年、約41年、約42年、約43年、約44年、約45年、約46年、約47年、約48年、約49年又は約50年後に、2回目の投薬(再投与)を実施することができる。
【0495】
一実施形態では、1つ以上の追加の化合物もまた含まれ得る。それらの化合物は、別々に投与され得るか、又は追加の化合物は、本開示の脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)中に含まれ得る。言い換えれば、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、ceDNAに加えて他の化合物、又は少なくとも第1のものとは異なる第2のceDNAを含有し得る。限定されないが、他の追加の化合物は、小さい又は大きい有機又は無機分子、単糖類、二糖類、三糖類、オリゴ糖類、多糖類、ペプチド、タンパク質、ペプチド類似体及びそれらの誘導体、ペプチド模倣体、核酸、核酸類似体及び誘導体、生体物質から作製される抽出物、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0496】
一実施形態では、1つ以上の追加の化合物は、治療剤であり得る。治療剤は、治療目的に好適な任意のクラスから選択され得る。したがって、治療剤は、治療目的に好適な任意のクラスから選択され得る。治療剤は、所望の治療目的及び生物作用に従って選択され得る。
【0497】
例えば、一実施形態では、LNP内のceDNAが、がんを治療するために有用である場合、追加の化合物は、抗がん剤(例えば、化学療法剤、標的がん療法(小分子、抗体、又は抗体-薬物コンジュゲートを含むが、これらに限定されない)であり得る。いくつかの実施形態によれば、追加の化合物は、免疫刺激剤である。
【0498】
一実施形態では、ceDNAを含有するLNPが、感染症を治療するために有用である場合、追加の化合物は、抗微生物剤(例えば、抗生物質又は抗ウイルス化合物)であり得る。一実施形態では、ceDNAを含有するLNPが、免疫疾患又は障害を治療するために有用である場合、追加の化合物は、免疫応答を調節する化合物(例えば、免疫抑制剤、免疫刺激性化合物、又は1つ以上の特定の免疫経路を調節する化合物)であり得る。一実施形態では、異なるタンパク質又は異なる化合物(治療薬など)をコードするceDNAなどの、異なる化合物を含有する異なる脂質粒子の異なるカクテルを、本開示の組成物及び方法で使用することができる。一実施形態では、追加の化合物は、免疫調節剤である。例えば、追加の化合物は、免疫抑制剤である。いくつかの実施形態では、追加の化合物は、免疫刺激性である。
【0499】
参考文献
本出願全体を通して引用される;参考文献、発行された特許、公開された特許出願、及び同時係属中の特許出願を含む全ての特許及び他の刊行物は、例えば、本明細書に記載される技術に関連して使用され得る、そのような刊行物に記載される方法論を説明及び開示する目的で、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。これらの出版物は、本出願の出願日より前のそれらの開示のためにのみ提供されている。この点に関するいかなるものも、発明者が先行する開示のおかげで、又はいかなる他の理由のためにもそのような開示に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。日付に関する全ての記述又はこれらの文書の内容に関する表現は、出願人が入手できる情報に基づいており、これらの文書の日付又は内容の正確さに関するいかなる承認も構成するものではない。
【0500】
本開示の実施形態の説明は、網羅的であること、又は本開示を開示された正確な形態に限定することを意図したものではない。本開示の特定の実施形態及び実施例が、例示の目的で本明細書で説明されているが、当業者が認識するように、本開示の範囲内で様々な同等の修正が可能である。例えば、方法のステップ又は機能は、所与の順序で提示されるが、代替的な実施形態は、異なる順序で機能を実施してもよく、又は機能は実質的に同時に実施されてもよい。本明細書で提供される開示の教示は、必要に応じて他の手順又は方法に適用することができる。本明細書に記載される様々な実施形態は、更なる実施形態を提供するために組み合わせることができる。本開示の態様は、必要に応じて、上記の参照文献及び出願の組成物、機能、及び概念を用いて本開示の更なる実施形態を提供するように修正することができる。更に、生物学的機能の同等性の考慮により、種類又は量の生物学的又は化学的作用に影響を与えることなく、タンパク質構造にいくつかの変更を加えることができる。詳細な説明に照らして、これらの変更及び他の変更を本開示に加えることができる。そのような修正は全て、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
【0501】
前述の実施形態のいずれかの特定のエレメントは、他の実施形態のエレメントと組み合わせるか、又は置き換えることができる。更に、本開示の特定の実施形態に関連する利点が、これらの実施形態の文脈で説明されたが、他の実施形態もそのような利点を示し得、全ての実施形態が本開示の範囲内にあるために必ずしもそのような利点を示す必要はない。
【0502】
本明細書に記載される技術は、以下の実施例によって更に説明されており、決してこれらを更に限定するものと解釈されるべきではない。本開示は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、及び試薬などにいかなる様式でも限定されず、そのようなものとして変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、単に特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲を限定することを意図されない。
【実施例】
【0503】
以下の実施例は、限定ではない例証によって提供される。
【0504】
実施例1:標的化リガンドの検証
概念実証として、インビトロでの細胞ベースのアッセイにおけるHER2 scFv結合及び内在化を行った。
図1A~1Fは、トラスツズマブ由来α-HER2 scFvが、インビトロでの明確なHER2特異的膜標的化及び内在化を示すことを示す。Alexa-fluor 488標識抗HER2 scFvを使用して、Sk-BR3及びSk-OV3 HER2発現(HER2+)細胞株(
図1A及び1B)におけるHER2受容体結合を示したが、HER2受容体を発現しない(HER2-)、MCF7細胞(
図1C)では示さなかった。第2の免疫蛍光標識(pHrhodo)を使用して、リガンド内在化を実証した。
図1D及び1Eに示すように、HER2受容体を発現するSk-BR3及びSk-OV3細胞はリガンド内在化を示したが、MCF7 HER2-細胞株は示さなかった(
図1F)。
【0505】
実施例2:α-HER2 scFvを有するLNPの製剤化
本実施例は、α-HER2 scFv(配列番号1)をそれらの表面に提示するLNPの調製を記載する。本明細書に記載されるように、取り込みの増強を、マレイミド化学によって調製されたHER2 scFvs LNPで実証した。HER2標的化のためのscFV配列を以下に示す:
配列番号1
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIDDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDVWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSADFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIK(配列番号1)
【0506】
配列番号2は、myc(太字下線)タグ及びHis(イタリック体)タグを、マレイミドコンジュゲーションに必要なc末端システインと共に含有する。この配列を、PDSコンジュゲーションのためにscFVにおいて使用した。
【0507】
【0508】
配列番号3は、トランスグルタミナーゼ媒介性コンジュゲーションのために使用され、配列番号1と同じscFVコア配列を有するが、トランスグルタミナーゼ媒介性コンジュゲーションを容易にするためのN末端His(イタリック体)タグ及びc末端LLQGAポリペプチド(太字及び下線)を有する。
【0509】
【0510】
scFv-LNPのマレイミド化学の評価
チオール系架橋を使用するコンジュゲーションの例示的な一次経路を
図2A及び
図2Bに示す。マレイミド(切断不可能)連結を
図2Aに示す。ピリジルジスルフィド又はPDS(切断可能)連結を
図2Bに示す。
【0511】
PDS化学のためのコンジュゲーションプロトコルを以下のように行った。scFvを50モル過剰のTCEPで37℃で2時間還元した。還元後、G-25スピンカラム(237μg scFv/カラム)を使用してscFvからTCEPを除去した。次いで、scFvを、異なるモル百分率(0.1%、0.5%)及びPEG長(2k、5k)の脂質A及びDSPE-PEG-OPSS(Nanosoft Polymers、Winston-Salem、NC、USA)を用いて製剤化したLNPと共に25℃で2時間インキュベートした。scFV/PDSの比は0.05である。反応後、未反応のscFvを300 kD MWCO膜で一晩透析することによって除去した。scFvがLNPにコンジュゲートされたかどうかを決定するために、SDS-PAGEを行い、HER2 scFvに対するウェスタンブロットを行った。
【0512】
マレイミド化学のためのコンジュゲーションプロトコルを以下のように行った。scFvを50モル過剰のTCEPで37℃で2時間還元した。還元後、G-25スピンカラム(237μgscFv/カラム)を使用してscFvからTCEPを除去した。次いで、scFvを、脂質A並びに異なるモル百分率(0.1%、0.5%、0.75%、1%、1.25%)及びPEG長(2k、5k)のDSPE-PEG-マレイミドを用いて製剤化されたLNPと共に25℃で2時間インキュベートした。scFV/マレイミドの比は0.05である。反応後、未反応のscFvを300 kD MWCO膜で一晩透析することによって除去した。scFvがLNPにコンジュゲートされたかどうかを決定するために、SDS-PAGEを実施し、HER2 scFvに対するウエスタンブロットを実施した。scFv-LNPコンジュゲーションプロセスは、優れたコンジュゲーション収率及びLNP粒子安定性を示すことが見い出された。例えば、最初のTCEP還元、新鮮なマレイミドコンジュゲートLNP調製、0.5%MAL-PEG2K、及びscFvの減少を含めたコンジュゲーションプロセスの結果:0.5:1、0.25:1、0.1:1、及び0.05:1の等モル当量を
図3Aに示す。次に、PEG鎖長を増加させ、透析ステップを使用して、粒径及び安定性を破壊することなく未反応scFvを除去した。結果を
図3Bに示す。
【0513】
図4A及び
図4Bは、封入効率(EE)によって測定されるLNPサイズ及び完全性がscFvコンジュゲーション後に維持された(±10nm)ことを示す。
図5は、マレイミドコンジュゲーションプロセスが強固なコンジュゲーションをもたらしたが、PDSコンジュゲーションプロセスは同等又はわずかに弱かったことを示す。マレイミドは、一般に、水性環境において、特に、より高いpH値において加水分解を受けやすく、これは、ポリペプチドのLNPへのコンジュゲーション効率に影響を及ぼし得るが、PDS化学は、典型的には、この課題を示さないので、これは驚くべき予想外の結果であった。
【0514】
次に、LNP上のリガンド機能の確認を行った。
図6Aは、
図6BにおけるDSPE対照LNPと比較して、Tras-scFvコンジュゲートLNPのみがHER2結合を示したことを示し、LNP上のリガンド機能が確認された。
図7は、マレイミドコンジュゲートLNPが、HER2特異的な増強された細胞取り込みを実証したことを示す。具体的には
図7は、コンジュゲートされたTras-scFv脂質A LNP(mCherry)の取り込みがHER2によって媒介されたことを実証する。最後に、
図8A及び
図8Bは、LNP表面のリガンド提示が生物活性に有意に影響を及ぼしたことを示す。
図8Aのグラフは、細胞生存率に対して正規化した、PEG鎖長が2000 Da(PEG2K)又は5000 Da(PEG5K)のいずれかであったマレイミドコンジュゲートLNPにおけるLNP取り込み(mCherry)を比較する。
図8Aに示すように、PEG5Kを有するマレイミドコンジュゲートLNPは、LNPの細胞取り込みによって評価したところ、より大きな生物活性を示した。
図8Bのグラフは、(PEG5Kにコンジュゲートされた)マレイミド濃度が0.5%~1.25%に増加するにつれて、LNP取り込み(mCherry)の用量依存的減少が観察されたことを示す。
【0515】
本明細書に提示される結果は、scFv-LNPのインビトロ結合及び内在化を実証し、LNP粒径及び安定性に対する影響が最小限である最適かつ効率的なマレイミド共有結合コンジュゲーションを記載し、LNPに対するリガンド機能を確認し、受容体特異的細胞の内在化及びTNAカーゴの送達を実証した。これらの結果は、全身投与後の最小限のオフターゲット組織(例えば、肝臓、脾臓)取り込みを伴うインビボでの標的化腫瘍取り込みにおける記載されたscFv-LNPの有効性を強く示唆する。
【国際調査報告】