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特表2024-529373被験者の心血管系に関連する健康情報を決定するための装置、システムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】被験者の心血管系に関連する健康情報を決定するための装置、システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20240730BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20240730BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A61B5/02 C
A61B5/0245 200
A61B5/11 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503357
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2022071192
(87)【国際公開番号】W WO2023006874
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】21188758.3
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.HDMI
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【弁理士】
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】デニッセン アドリアヌス ヨハネス マリア
(72)【発明者】
【氏名】アーツ ルーカス ペトルス アントニウス
(72)【発明者】
【氏名】ウェスターリンク ヨアン ヘンリエッテ デジリー モニーク
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ブロック エジディウス レオン
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA10
4C017AA18
4C017BC14
4C017BC16
4C038VA04
4C038VB35
4C038VC20
(57)【要約】
本発明は、被験者の心血管系に関連する健康情報を決定するための装置、システム及び方法に関する。決定された健康情報の精度を改善するために、装置は、経時的に被験者の心拍数を表すかまたは導出することを可能にする時間依存性の心拍数(HR)関連信号を取得するように構成されたHR入力部31と、被験者の運動イベントを検出することを可能にするイベント選択信号を取得するように構成されたイベント選択入力部32と、取得されたHR関連信号および取得されたイベント選択信号から被験者の心血管系に関連する健康情報を決定するように構成された処理ユニット33と、決定された健康情報を出力するように構成された出力部34とを有する。処理ユニット33は、イベント選択信号に基づいて被験者の運動イベントを検出し、HR関連信号の時間セグメントを抽出し、各時間セグメントはそれぞれの運動イベントを含む異なる期間をカバーし、抽出された時間セグメントを合成して、集約されたHR応答信号を計算し、集約されたHR応答信号から1つまたは複数の特徴を抽出して、被験者の心血管系に関連する健康情報を決定するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の心血管系に関する健康情報を決定するための装置であって、
経時的な前記被験者の心拍数を表すまたは導出することを可能にする時間依存の心拍数(HR)関連信号を取得するように構成されたHR入力部と、
前記被験者の運動イベントを検出することを可能にするイベント選択信号を取得するように構成されたイベント選択入力部と、
取得された前記HR関連信号および取得された前記イベント選択信号から被験者の心血管系に関する前記健康情報を決定するように構成された処理ユニットと、
決定された前記健康情報を出力するように構成された出力部と、
を有し、前記処理ユニットが、
前記イベント選択信号に基づいて前記被験者の運動イベントを検出し、
前記HR関連信号の時間セグメントであって、それぞれの運動イベントを含む異なる期間を各々がカバーする時間セグメントを抽出し、
抽出された時間セグメントを合成して集約されたHR応答信号を計算し、
前記集約されたHR応答信号から1つまたは複数の特徴を抽出して前記被験者の心血管系に関する前記健康情報を決定する、
ように構成される、装置。
【請求項2】
前記処理ユニットが、前記イベント選択信号または、それぞれの時間セグメント内の運動イベントの時間情報を示す取得されたアライメント信号に基づいて、合成前に前記抽出された時間セグメントを整列させるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記処理ユニットが、前記被験者の姿勢の変化または前記被験者の寝返り運動のような、前記被験者のHRに影響する前記被験者の運動、特に前記被験者の繰り返し起きる運動を検出することにより運動イベントを検出するように構成される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記処理ユニットが、前記被験者の運動の1つまたは複数の運動特徴を検出することにより運動イベントを検出するように構成され、前記運動特徴が、強度閾値を超える運動強度、運動パターン、運動速度、運動方向および運動距離の1つまたは複数を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記処理ユニットが、選択された時間セグメントから、特に、それぞれの選択された時間セグメントの1つまたは複数の特徴に基づいて、その間の前記HR関連信号が歪んでいるかまたはその間のHRが運動イベントの検出にもかかわらず影響を受けていない1つまたは複数の不要な時間セグメントを検出し、抽出された時間セグメントを合成するために、検出された不要な時間セグメントを破棄するように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記処理ユニットが、検出されたイベントの特定の特徴が現れる特徴的な時点を決定することにより前記HR関連信号の時間ユニットを抽出し、前記特徴的な時点の前の第1の時間期間および前記特徴的な時点の後の第2の時間期間に及ぶように前記特徴的な時点の前後の時間セグメントを選択するように構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記処理ユニットが、抽出された時間セグメントの合成のために、それぞれの選択された時間セグメント中の、検出された運動イベントが発生した時間期間を破棄し、それぞれの時間セグメント中の、検出された運動イベントの前および/または後の時間期間のみを用いるように構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記処理ユニットが、前記集約されたHR応答信号からの1つまたは複数の特徴として、
前記集約されたHR応答信号の最大値と最小値の間の差、
前記集約されたHR応答信号の最大値と開始値の間の差、
前記集約されたHR応答信号の終了値と開始値の間の差、
前記集約されたHR応答信号の最小値と最大値の出現の間の時間差、
前記集約されたHR応答信号の開始値と終了値の出現の間の時間差、
前記集約されたHR応答信号の最大勾配、ならびに
前記集約されたHR応答信号の増加の継続時間および/または速度
のうちの1つまたは複数を抽出するように構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記処理ユニットが、所定の関数、特に、所定のスカラーパラメータを適用する線形または非線形近似を用いることにより前記被験者の前記心血管系に関連する前記健康情報を決定するように構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記処理ユニットが、前記被験者の年齢と前記集約されたHR応答信号からの1つまたは複数の特徴のそれぞれとの間の1つまたは複数の関係から前記スカラーパラメータを決定するように構成される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記HR関連信号が、接触もしくは遠隔フォトプレチスモグラフィ(PPG)信号、HR信号、ECG信号、心弾動計信号、眼圧測定信号およびホログラフィックレーザドップラーイメージング信号のうちの1つであり、および/または
前記イベント選択信号が、前記被験者の身体の動きを示す動き信号、加速度計信号、筋肉活動信号、脳活動信号、圧力センサ信号、重量センサ信号、車両のCANバス信号およびカメラ信号のうちの1つである、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記処理ユニットが、
i)前記抽出された時間セグメントを経時的な周波数を表す信号に最初に変換し、その後これらの信号を集約されたHR応答信号に集約すること、または
ii)前記抽出された時間セグメントを時間-周波数行列に最初に変換し、特にピクセルごとに前記行列を合成し、その後、集約されたHR応答信号を得るために最大リッジラインを取得すること
により、前記抽出された時間セグメントを合成するように構成される、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
被験者の心血管系に関する健康情報を決定するためのシステムであって、当該システムは、
前記被験者の経時的な心拍数を表すまたは導出することを可能にする時間に依存する心拍数(HR)関連信号を検知するように構成されるHRセンサ、
前記被験者の運動イベントを検出することを可能にするイベント選択信号を検知するように構成される選択信号センサ、
検知された前記HR関連信号および検知された前記イベント選択信号から被験者の心血管系に関する前記健康情報を決定するための、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置、ならびに
決定された前記健康情報を発するように構成された出力インタフェイス、
を有するシステム。
【請求項14】
被験者の心血管系に関する健康情報を決定するための方法であって、
経時的な前記被験者の心拍数を表すまたは導出することを可能にする時間依存の心拍数(HR)関連信号を取得するステップと、
前記被験者の運動イベントを検出することを可能にするイベント選択信号を取得するステップと、
取得された前記HR関連信号および取得された前記イベント選択信号から被験者の心血管系に関する前記健康情報を決定するステップと、
決定された前記健康情報を出力するステップと、
を有し、前記健康情報が、
前記イベント選択信号に基づいて前記被験者の運動イベントを検出し、
前記HR関連信号の時間セグメントであって、それぞれの運動イベントを含む異なる期間を各々がカバーする時間セグメントを抽出し、
抽出された時間セグメントを合成して集約されたHR応答信号を計算し、
前記集約されたHR応答信号から1つまたは複数の特徴を抽出して前記被験者の心血管系に関する前記健康情報を決定する、
ことにより決定される、方法。
【請求項15】
コンピュータにより実行され、当該コンピュータに請求項14に記載の方法を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、被験者の心臓血管系の健康の指標として、被験者のいわゆる心臓年齢(HeartAge)を決定するために、被験者の心臓血管系に関連する健康情報を決定するための装置、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人々は、睡眠、栄養、全体的な健康、および生活の他の多くの側面を、アプリおよびウェアラブル装置の使用によって追跡する。例えば心電図(ECG)に基づく心血管モニタリングは、現在、疾患の同定、ストレス分析、予後診断、バイオメトリック同定などのために首尾よく使用されている。しかしながら、ECGは、特定の位置に複数のセンサを配置することを必要とし、これは、ウェアラブル装置としては非効率的である。フォトプレチスモグラフィ(PPG)センサは、皮膚に光を放射し、反射の強度を測定するパルスオキシメータを用いて心拍数(HR)および心拍変動(HRV)を測定することによって、この問題を解決する。この強度は、心周期によって調節される皮膚の下の血流に依存する。反射における周期性を測定することで、HRおよびHRVの推定値がもたらされる。この測定が身体の様々な部分、例えば手首、指先又は耳たぶで行われ得るという事実は、PPGセンサを日常生活において便利にし、スマートウォッチのようなウェアラブル装置に統合させることができる。さらに、PPGセンサは、心臓をモニタするだけで身体の物理的状態および精神的状態の変化を測定することができることが分かっている。それに加えて、遠隔PPGは、被験者の皮膚部分のカメラ信号から、HR、呼吸数、SpO2などのバイタルサインを検出することができることが見出されている。
【0003】
クリーンなPPG信号を得ることは、予測不可能なアーチファクトを含むので、ウェアラブル装置における最大の課題である。したがって、ほとんどの研究およびアプリケーションは、最小限の物理的移動を伴う制御された環境で実行される。移動によるノイズによって汚染されたPPG信号ウィンドウは、無視されるか、またはフィルタで除去される。
【0004】
モニタリングアプリケーションにおけるPPGの使用の計り知れない可能性にもかかわらず、PPGは、依然として、ノイズおよび信頼性の低い測定に関する多くの問題を有する。これらのアーチファクトは、臨床モニタリングデバイスとしてのPPGの使用を妨げる。
【0005】
米国特許出願公開第2018/0249951(A1)号明細書は、特に心血管ドリフトの効果が考慮される、人のエネルギー消費を正確に推定するための装置を開示している。この装置は、人の身体活動を表す運動信号および人の心拍数を表す心拍数信号を取得するための入力ユニットと、前記運動信号、ならびに、前記心拍信号、および/または、人の発汗量、体重減少、体温上昇、血中乳酸濃度、身体疲労の1つ以上に関する情報を運ぶ1つ以上の心血管ドリフト関連信号から心血管ドリフトフェイズを決定するための心血管ドリフト決定ユニットと 心血管ドリフトフェイズ中の心拍数を表す生成された心拍信号を補正する補正ユニットと、補正された心拍信号から人のエネルギー消費量を推定する推定ユニットとを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、好ましくは目立たない態様で動作し、オプションとして被験者の休息または睡眠中に使用することができる、被験者の心血管系に関連する健康情報を決定するための装置、システムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様では、被験者の心血管系に関連する健康情報を決定するための装置が提示され、当該装置は、
経時的な被験者の心拍数を表すまたは導出することを可能にする時間依存心拍数(HR)関連信号を取得するように構成されたHR入力部と、
被験者の運動イベントを検出することを可能にするイベント選択信号を取得するように構成されたイベント選択入力部と、
取得されたHR関連信号と取得されたイベント選択信号とから被験者の心血管系に関する健康情報を決定するように構成された処理ユニットと、
決定された健康情報を出力するように構成された出力部とを有し、
処理ユニットは、
イベント選択信号に基づいて被験者の運動イベントを検出し、
各々がそれぞれの運動イベントを含む異なる期間をカバーする、HR関連信号の時間セグメントを抽出し、
抽出された時間セグメントを組み合わせて、集約されたHR応答信号を計算し、
集約されたHR応答信号から1つまたは複数の特徴を抽出して、被験者の心血管系に関連する健康情報を決定するように構成される。
【0008】
本発明の更なる態様では、被験者の心血管系に関連する健康情報を決定するためのシステムが提示され、このシステムは、
経時的な被験者の心拍数を表すかまたは導出することを可能にする時間依存心拍数(HR)関連信号を感知するように構成されたHRセンサと、
被験者の運動イベントを検出することを可能にするイベント選択信号を感知するように構成された選択信号センサと、
感知されたHR関連信号および感知されたイベント選択信号から被験者の心血管系に関連する健康情報を決定するための、本明細書に開示されるような装置と、
決定された健康情報を発行するように構成された出力インタフェイスとを有する。
【0009】
本発明のさらなる態様は、対応する方法、コンピュータ上で実行されるときに当該コンピュータに本明細書に開示された方法のステップを実行させるためのプログラムコード手段からなるコンピュータプログラム、および、プロセッサによって実行されると本明細書に開示された方法を当該プロセッサに実行させるコンピュータプログラムを記憶している非一過性のコンピュータ読取可能記録媒体が提供される。本方法は、コンピュータで実施されることができる。
【0010】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に定義される。特許請求された方法、システム、コンピュータプログラムおよび媒体が、特に従属請求項に定義され、本明細書に開示されているように、特許請求されたシステムと同様のおよび/または同一の好ましい実施形態を有することが理解される。
【0011】
本発明は、運動に基づくノイズで「汚染された」HR関連信号(例えば、PPG信号)の時間セグメントに焦点を当てるという考えに基づいている。したがって、患者モニタリングのための既知の方法とは対照的に、被験者の運動イベントが検出され、それぞれの運動イベントを含む期間をカバーするHR関連信号の対応する時間セグメントが、その後の処理および被験者の心血管系に関する情報の決定のために使用される。
【0012】
したがって、本発明は、既知のモニタリング装置、システムおよび方法の技術的制限を克服することができ、例えば夜間に運動後に、または他の状況、例えば日中に被験者の運動がHRに影響を及ぼす場合(例えば、自身の車から降りるとき)にHR反応性をモニタすることによって、被験者の心血管の活力を邪魔にならずに決定することを可能にするソリューションを提示する。
【0013】
この心血管の活力(すなわち、決定された健康情報)は多くの場合、被験者の実際の年齢と相関するので、この新しい生理学的測定値は「HeartAge」と呼ばれ、これは被験者の生物学的年齢に関連し得る。したがって、それは、「HeartAge」としての強力な単一の値、すなわち、被験者の心血管系の適応性/柔軟性の指標の意味における被験者の心血管系の「年齢」として機能することができる。医療従事者(例えば、看護師または医師)の存在なしに、被験者の「HeartAge」を連続的にモニタすることによって、非常に早い段階で様々な心血管の問題に対するリスクを決定および/または信号伝達することが可能であり得る。したがって、本発明は命を救うことができ、近い将来のヘルスケアに大いに追加することができる。一般に、本発明は、被験者の心血管系に関連する健康情報の他の部分を決定するために使用されることができ、例えば、重み(「HeartWeight」)、BMI(「HeartBMI」)、活力(「HeartVitality」)、幸福度(「HeartHappiness」)、ストレスレベル(「HeartStress」)などの観点からそれらを提示することができる。
【0014】
この文脈において、運動イベントの「検出」は、運動イベントを実際に測定または識別することを意味するだけでなく、運動イベントを予測または推定することも意味する。例えば、関連するHR信号の時間セグメントが、或る運動イベントの後に最初に抽出され、次いで、この時間セグメントは、その運動イベントを含むように時間的に延長されることが可能である。
【0015】
好ましい実施形態によれば、処理ユニットは、イベント選択信号、またはそれぞれの時間セグメント内の運動イベントの時間情報を示す取得されたアライメント信号に基づいて、結合前に抽出された時間セグメントをアライメントするように構成される。これは、健康情報の決定の精度をさらに向上させる。一般に、イベント選択信号はアライメントのためにも使用されることができ、すなわち、イベント選択信号は運動イベントを選択するためだけでなく、抽出された時間セグメントをアライメントするためにも使用され得るが、別個のアライメント信号も使用され得る。例えば、身体装着型ACCセンサからの加速度計(ACC)信号が、アライメント信号およびイベント選択信号として使用されることができる。他の実施形態では、ACC信号をアライメント信号として使用することができ、非ACC信号(例えば、被験者の動きまたは姿勢変化を感知する重量または圧力センサ信号)をイベント選択信号として使用することができる。さらに他の実施形態では、ACC信号をイベント選択信号として使用することができ、非ACC信号をアライメント信号として使用することができる。
【0016】
処理ユニットは、有利には、被験者のHRに影響を与える被験者の動き、特に、被験者の反復的な動き、または被験者の姿勢の変化もしくは被験者の回転運動などの、より頻繁に生じる動きを検出することによって、運動イベントを検出するように構成され得る。1つ以上の身体装着型センサ(例えば、ACCセンサ)および/または外部センサ(例えば、カメラまたは圧力センサ)の1つ以上のセンサ信号が、この目的のために使用され得る。
【0017】
好ましくは、処理ユニットは、被験者の運動の1つ以上の動き特徴を検出することによって、運動イベントを検出するように構成されることができ、前記動き特徴は、強度閾値を超える動き強度、動きパターン、動き速度、動き方向および動き距離を含む。
【0018】
好ましい実施形態では、処理ユニットは、選択された時間セグメントの中で、HR関連信号が歪んでいるか、または特に、それぞれの選択された時間セグメントの1つまたは複数の特徴に基づいて、運動イベントの検出にもかかわらずHRが影響を受けない1つまたは複数の不要な時間セグメントを検出し、抽出された時間セグメントの合成の際に、検出された不要な時間セグメントを破棄するように構成される。これは、健康情報の決定の精度をさらに向上させる。HRが歪んだ時間セグメントに加えて、(運動イベントの検出にもかかわらず)HRが影響を受けない時間セグメントも除去され、所望の健康情報を決定するための更なる処理に使用されない。HRは、例えば信号ノイズ又は他の歪みの原因に起因して運動が誤って検出された場合には、被験者の運動に影響されない場合がある。運動がHRの変化を引き起こすという主な仮定に基づいて、HRが(実質的にまたは完全に)一定のままである時間セグメントを除去することによって、これらの誤差の補正が事後的に行われる。
【0019】
別の実施形態では、処理ユニットは、検出されたイベントの特定の特徴が現れる特徴的な時点を決定することによってHR関連信号の時間セグメントを抽出し、特徴的な時点の前の第1の時間期間および特徴的な時点の後の第2の時間期間に及ぶように、特徴的な時点の前後の時間セグメントを選択するように構成される。特徴的な時点は、例えば、被験者の位置または姿勢の変化が実際に起こった時点であることができる。この特徴的な時点は、例えば、イベント選択信号および/またはHR関連信号において認識されることができる。次いで、時間セグメントとしてのHR関連信号から前記特徴的な時点の前後(またはその後のみ)の期間を選択することができる。この期間は、予め定められて固定されていてもよく、またはユーザもしくは処理ユニットによって個別に設定もしくは選択されてもよい。この期間の妥当な値は、10~240秒の範囲、特に30~120秒の範囲であることができる。実際の値は本発明のアプリケーションに依存し、それらの値とは異なっていてもよく、すなわち、実際の値は、一般に、言及された最小値および最大値よりも小さくても大きくてもよい。
【0020】
処理ユニットは、抽出された時間セグメントの合成のために、検出された運動イベントが起こるそれぞれの選択された時間セグメントにおける時間期間を破棄し、検出された運動イベントの前および/または後のそれぞれの選択された時間セグメントにおける時間期間のみを使用するようにさらに構成されることができる。これは、運動イベントの瞬間において、HR関連信号がノイズを含むかまたは歪んでいる可能性があること、すなわち、運動がHR関連信号にアーチファクトをもたらす可能性があり、その結果、HR関連信号のこの部分は廃棄されるべきであり、運動イベントの直前および/または直後のHR関連信号の部分のみが時間セグメントとして使用されるべきであることが分かっているので、精度の更なる改善に寄与する。
【0021】
一般に、集約されたHR応答信号の異なる特徴を使用して、所望の健康情報を決定することができる。一実施形態では、処理ユニットは、集約されたHR応答信号からの1つまたは複数の特徴として、以下のうちの1つまたは複数を抽出するように構成されることができる:
- 集約されたHR応答信号の最大値と最小値との差;
- 集約されたHR応答信号の最大値と開始値との差;
- 集約されたHR応答信号の終了値と開始値の差;
- 集約されたHR応答信号の最小値と最大値の発生の間の時間差;
- 集約されたHR応答信号の開始値と終了値の発生の間の時間差;
- 集約されたHR応答信号の最大勾配;および
- 集約されたHR応答信号の増加の持続時間および/または速度。
【0022】
これらの特徴は、一般に、集約された心拍数応答を1つの数値で記述するという目標を有する。したがって、これらの特徴のうちの1つまたは複数が(あるいは、集約されたHR応答信号の下の面積、正常に戻る前の心拍の量などの追加の特徴も)、この目的に役立つように使用され得る。
【0023】
好ましくは、処理ユニットは、所定の関数、特に、1つまたは複数の所定のスカラーパラメータを適用する線形または非線形近似を使用することによって、被験者の心血管系に関連する健康情報を決定するように構成されることができる。スカラーパラメータは、例えば、様々なタイプの被験者について(例えば、年齢、性別、サイズ、体重、健康状態、フィットネスレベルなどに基づいて)予め決定されてもよく、または検査中の特定の被験者について個別に設定または決定されてもよい。
【0024】
一実施形態では、処理ユニットは、被験者の年齢と、集約されたHR応答信号からのそれぞれの1つまたは複数の特徴との間の1つまたは複数の関係からスカラーパラメータを決定するように構成されることができる。そのような決定は、好ましくは、被験者の健康情報の実際の決定に使用されるべき集約されたHR応答信号の1つまたは複数の特徴と年齢との間の関係を示すまたは導出することを可能にする経験的データに基づいて、事前に行われる。
【0025】
一般に、HR関連信号として各種の信号を用いることができる。好ましくは、接触または遠隔フォトプレチスモグラフィ(PPG)信号、HR信号、ECG信号、心弾動計信号、眼圧測定信号またはホログラフィックレーザドップラーイメージング信号のうちの1つが、実際の実装で使用される。
【0026】
イベント選択信号については、例えば、どのセンサを使用することができるか、またはどの信号が特定のアプリケーションシナリオにおいて利用可能であるかに基づいて、様々なオプションが同様に存在する。実際の実施では、イベント選択信号は、被験者の身体の動きを示す動き信号、加速度計信号、筋肉活動信号、脳活動信号、圧力センサ信号、重量センサ信号、車両のCAN(コントローラエリアネットワーク)バス信号(または他のバス信号)、およびカメラ信号のうちの1つであることができる。
【0027】
アライメント信号についても、どのセンサを使用することができるか、またはどの信号を特定のアプリケーションシナリオで利用することができるかに基づいて、様々なオプションが同様に存在する。実際の実施では、アライメント信号は、被験者の身体の動きを示す動き信号、加速度計信号、筋肉活動信号、脳活動信号、圧力センサ信号、重量センサ信号、車両のCANバス信号(または他のバス信号)、およびカメラ信号のうちの1つであることができる。
【0028】
HR関連信号の複数の時間セグメントを最終的な集約HR応答信号へと合成(例えば、平均化)するために、いくつかのオプションが存在する。
【0029】
好ましい実施形態では、処理ユニットは、抽出された時間セグメントを(例えばウェーブレット変換を用いて)経時的な周波数を表す信号に最初に変換し、 次いでこれらの信号を集約して集約されたHR反応信号にすることにより、抽出された時間セグメントを合成するように構成され、すなわち、すなわち、HR関連信号はまず、時間に対する周波数を表す信号に変換され、次いで抽出された時間セグメントを集約することによって合成される。 別の実施形態では、処理ユニットは、抽出された時間セグメントを最初に時間周波数行列に変換し、特に画素ごとに行列を合成し、次いで最大稜線を取って集約されたHR応答信号を得ることによって、集約された時間セグメントを合成するように構成され、すなわち、対応する時間周波数行列が合成され、次いで最大稜線が集約されたHR応答信号として取得される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかになり、これを参照して説明される。
図1】本発明によるシステムの実施形態の概略図。
図2】本発明による装置の実施形態の概略図。
図3】本発明による方法の第1の実施形態の概略図。
図4】本発明による方法の第2の実施形態の概略図。
図5】時間周波数行列を示す図。
図6】HR関連信号の時間セグメントの加算および平均化を示す図。
図7】集約されたHR応答信号が複数の夜にわたって安定したままであることを示す図。
図8】集約されたHR応答信号の強度と被験者の年齢との間の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明による、被験者の心血管系に関連する健康情報を決定するためのシステム1の実施形態の概略図を示す。被験者は一般に、任意のヒトであり得るが、本発明は、患者、高齢者、重大な心血管系を有する人、スポーツ選手などのモニタリングにおいて特定のアプリケーションを見出し得る。
【0032】
システム1は、経時的な被験者のHRを表すかまたは導出することを可能にする時間依存性HR関連信号を検知(すなわち、取得または測定)するように構成された心拍数(HR)センサ10を有する。HRセンサ10は、接触フォトプレチスモグラフィ(PPG)センサ、HRレートセンサ、ECGセンサなどのウェアラブルセンサであってもよい。他の実施形態では、HRセンサは、遠隔PPGセンサ、心弾動図センサ、眼圧測定センサ、またはホログラフィックレーザドップラーイメージングセンサなどの外部センサであってもよい。したがって、HR関連信号は、例えば、接触PPG信号またはHRレートセンサの場合、経時的な被験者のHRを直接示すことができ、あるいは、例えば、遠隔PPG信号または心弾動図信号の場合、被験者のHRを導出することを可能にする。
【0033】
システム1は、被験者の運動イベントを検出することを可能にするイベント選択信号を感知するように構成された選択信号センサ20をさらに有する。選択信号センサ20は、被験者が動きを実行するか、または動き、特に被験者のHRに影響を及ぼす動きを実行しようとする場合に、それを検出することができる信号を提供する、任意のウェアラブルなまたは外部のセンサであり得る。信号は、動きを直接示すことができ、または被験者の動きがあるか、またはあるのであろうことを導出することを可能にすることができる。したがって、運動イベントは、被験者の運動の結果として、被験者のHRが潜在的に一時的な変化を示すように、被験者が位置および/または姿勢を、特にある程度、またはある態様で変化させる任意のイベントであることができる。好ましい実施形態では、選択信号センサ20は、被験者の身体の動きを示す運動信号を提供する動きセンサ、加速度計、筋肉活動センサ、脳活動センサ、圧力センサ、重みセンサ、車両のCANバス信号を提供するCANバスまたはカメラであることができる。
【0034】
システム1は、感知されたHR関連信号および感知されたイベント選択信号から、被験者の心血管系に関連する健康情報を決定するように構成された装置30をさらに有する。装置30の詳細については後述する。装置30は、例えば、ソフトウェアおよび/またはハードウェアにおいて、プロセッサまたはコンピュータとして、またはその中に実装され得る。
【0035】
システム1は、決定された健康情報を発行するように構成された出力インタフェイス40をさらに有する。出力インタフェイス40は、一般に、決定された健康情報を、視覚的にまたは可聴形態で、例えば、テキスト形態で、画像または図として、音声または発話された単語などとして、出力する任意の手段であり得る。例えば、出力インタフェイス40は、ディスプレイ、ラウドスピーカ、タッチスクリーン、コンピュータモニタ、スマートフォンまたはタブレットのスクリーンなどであってもよい。
【0036】
オプションとして、システム1は、HR関連信号から抽出された時間セグメントを合成する前に、それらの時間セグメントを整列させることを可能にするアライメント信号を感知するように構成されたアライメント信号センサ50をさらに有することができるこのアライメントのために、イベント選択信号が使用されてもよい(この場合、アライメント信号センサ50は省略される)。そうでなければ、それぞれの時間セグメント内の運動イベントの時間情報を示す別個の粗いい面と信号が取得されることができ、時間セグメントはこの時間情報に基づいて時間的に整列される。
【0037】
図2は、本発明による、被験者の心血管系に関連する健康情報を決定するための装置30の実施形態の概略図を示す。
【0038】
装置30は、時間依存HR関連信号を取得するように構成されたHR入力部31と、イベント選択信号を取得するように構成されたイベント選択入力部32とを有する。オプションとして、利用可能な場合にアライメント信号を取得するための追加のアライメント信号入力部35が提供される。HR入力部31およびイベント選択入力部32(およびオプションのアライメント信号入力部35)はそれぞれ、HRセンサ10およびイベント信号センサ20(およびオプションのアライメント信号センサ50)に直接結合または接続されることができ、あるいは、記憶装置、バッファ、ネットワーク、またはバスなどからこれらの信号を取得(すなわち、読み出しまたは受信)することができる。したがって、入力部31,32および35は、例えば、Bluetooth(登録商標)インタフェイス、WiFiインタフェイス、LANインタフェイス、HDMIインタフェイス、直接ケーブル接続、または装置30への信号伝送を可能にする任意の他の適切なインタフェイスなどの(有線または無線の)通信インタフェイスまたはデータインタフェイスであり得る。
【0039】
装置30は、取得されたHR関連信号および取得されたイベント選択信号から、被験者の心血管系に関連する健康情報を決定するように構成された処理ユニット33をさらに有する。処理ユニット33は、信号を処理し、そこから健康情報を決定するように構成された任意の種類の手段である。それは、ソフトウェアおよび/またはハードウェアにおいて、例えば、スマートフォン、スマートウォッチ、タブレット、ラップトップ、PC、ワークステーションなどのユーザ装置上のプログラムされたプロセッサまたはコンピュータまたはアプリとして実装され得る。
【0040】
装置30は、決定された健康情報を出力するように構成された出力部34をさらに備える。出力部34は、一般に、決定された健康情報を提供する、例えば、それを別の装置に送信する、または別の装置(例えば、スマートフォン、コンピュータ、タブレットなど)による検索のためにそれを提供する、任意のインタフェイスであり得る。したがって、それは、一般に、任意の(有線または無線)通信またはデータインタフェイスであり得る。
【0041】
図3は、本発明による、被験者の心血管系に関連する健康情報を決定するための方法100の第1の実施形態の概略図を示す。本方法のステップは装置によって実行されることができ、本方法の主なステップは処理ユニットによって実行される。本方法は、コンピュータまたはプロセッサ上で実行されるコンピュータプログラムとして実装され得る。
【0042】
第1のステップ101において、時間依存HR関連信号が取得され、例えば、HRセンサ10から取り出されるかまたは受信される。ステップ101の前、後またはそれと並行して実行される第2のステップ102において、イベント選択信号が取得され、例えば、イベント信号センサ20から取り出されるかまたは受信される。続いて、ステップ103において、取得されたHR関連信号および取得されたイベント選択信号から、被験者の心血管系に関連する健康情報が決定される。最後に、ステップ104において、決定された健康情報が出力される。
【0043】
健康情報を決定するステップ103は、イベント選択信号に基づいて被験者の運動イベントを検出する第1のステップ1031を含む。それぞれの運動イベントについて、ステップ1032において、それぞれの運動イベントを含む期間をカバーする時間セグメントである時間セグメントがHR関連信号から抽出される。ステップ1033において、抽出された時間セグメントは、集約されたHR応答信号を計算するために合成(例えば、平均化)される。集約されたHR応答信号から、ステップ1034において、1つまたは複数の特徴が抽出され、抽出された1つまたは複数の特徴を使用して、被験者の心血管系に関連する健康情報が決定される。
【0044】
別の実施形態では、本発明の装置30は、以下の3つのモジュールを備えることができる:
i) (HR関連信号としての)PPG信号、選択信号およびアライメント信号を記録する(入力部31, 32および35を含むかまたは共通して表す)記録モジュール;
ii) これらの信号を合成し、特徴的な集約された心拍数応答(Aggregated Heart Rate Responses:AHRR)を抽出し、そこから健康情報を決定する(処理ユニット33を表す)処理モジュール;
iii) 結果を要約し報告する(出力部34を表す)フィードバックモジュール。
【0045】
一実施形態によると、処理モジュール(または処理ユニット)は、以下によりAHRRを抽出する:
i) バンドパスフィルタを使用してPPG信号および選択信号を前処理する;
ii) 選択信号を使用して関連する運動イベントを選択する;
iii) これらの運動イベント中のPPG信号から心拍数曲線をノイズ除去し、抽出する;
iv) ひどく歪んだ心拍数曲線を検出して除去する;
v) アライメント信号を用いて全ての残りの心拍数曲線をアライメントし、平均化し、それによってAHRRを得る。
【0046】
結果として得られるAHRRは、人ごとに安定であることが示される。これは、人のHeartAgeなどの人の健康情報を推定するために使用される。これらのステップは、以下でより詳細に説明される。
【0047】
フィードバックモジュールは、好ましくは、指定された期間にわたるすべての結果を要約し、報告する。フィードバックは、ユーザにまたは医師もしくは看護師などの医療従事者に与えられることができる。フィードバックは、いくつかの形態(例えば、テキストおよび映像)で提供されることができる。
【0048】
一実施形態では、AHRRを抽出するアルゴリズムは、(HR関連信号としての)PPG信号および選択信号を入力とする。適切な信号は、日中と比較した場合に心拍数が低下してより安定するので、睡眠中に収集されることができる。人は、睡眠中に20~80回の小さい(寝返り)運動をする。これらは、(おそらく、いわゆる心血管起立性反射に関連する)心拍数の典型的な一時的増加を引き起こす。寝返り運動の開始を検出するための選択信号として加速度信号が使用されることができる。図4は、そのようなアルゴリズムを使用する本発明による方法200の第2の実施形態の概略図を示す。この実施形態は特に、信号からノイズを除去し、AHRRを決定するために、一連のステップを実行する。
【0049】
まず、ステップ201において、PPG信号の一次導関数に対して、一例として、0.5~2Hzのカットオフ周波数を有するバンドパス3次Butterworthフィルタを使用して、前処理が実行される。一次導関数はベースライン変動を相殺し、ピーク検出をより容易にするために使用される。0.5~2Hzのカットオフ周波数は、30~120 BPM(Beats Per Minute)の予想HR範囲に対応し、HRの基本周波数の抽出を可能にする。さらに、選択信号およびPPG信号の両方は、[-0.5、0.5]秒に及ぶサンプルの周りのスライディング時間ウィンドウを使用して、信号に依存した一定の範囲に正規化され得る。信号は、最初および最後のサンプルの正しい正規化を確実にするために、最初および最後においてゼロ・パディングされてもよい。信号中の大きなスパイクおよび負の部分を扱うために、x/(max-min)正規化が、正の一定の信号範囲を保証するために使用されることができる。
【0050】
第2に、(「運動イベント」の一例として)睡眠中の寝返りイベントが検出され(ステップ202)、PPG信号が複数の関心ウィンドウにセグメント化される(ステップ203)。これらのイベントウィンドウ(「時間セグメント」)は、それぞれのイベントが行われる特有の時間インターバルとして定義される。運動イベントは、一般に、突然のHR応答、すなわち、HRの変化をトリガする任意のイベントであることができる。イベントは、明確な開始、明確な終了、およびそれらの間の相当の休止期間を有するように選択され得る。加速度信号の一時的な所定の閾値を上回る増加に基づいて、寝返りイベントウィンドウの開始および終了を定義することが可能であり、各イベントについて、加速度増加の終了が使用され得る。イベントウィンドウの開始は加速度増加の終了前の第1の時間期間として定義されることができ(例えば、加速度増加の前の10~90秒の範囲、例えば、その前の40秒)、イベントウィンドウの終了は加速度増加の終了後の別の第2の時間期間として定義されることができる(例えば、加速度増加の後の10~90秒の範囲、例えば、その後の60秒)。このようにして、(選択信号として使用される)加速度信号はまた、更なる処理の前に異なるイベントウィンドウを整列させるためのアライメント信号として機能し得る。(加速度の増加の終了とは異なる)他の特徴点が、イベントウィンドウ、ならびに上述のイベントウィンドウの第1および第2の期間を定義するために使用されることもできる。
【0051】
第3に、関心ウィンドウの間のPPG信号は、図5に示されるように、時間周波数行列(例えば、連続ウェーブレット変換行列)に変換され(ステップ304)、ここで、各列は、時間tにおける周波数スペクトルを記述する。まさにイベント中のPPG信号は、イベントの瞬間にしばしば歪みすぎるので、無視されることが好ましい。次いで、この行列は、例えば(samplefreq x 1)最大プールフィルタによって圧縮される。結果として得られる行列は、毎秒1列の分解能を有し、心拍数応答(HRR)と呼ばれる。これらの列の最大値の垂直位置は、周波数に対応する。これらの周波数は、図5の下図に示されるように、BPMにおけるHRRを記述する最大リッジライン(Maximal Ridgeline :MR)を得るために抽出され得る。
【0052】
PPG信号は歪みに非常に敏感であるので、時間周波数マトリクス内の最大画素値は、時としてHRによって引き起こされる周波数ではなくノイズによって引き起こされる周波数に対応する。したがって、ステップ205において、元のMRから、フィルタリングされたMR、例えば、9s中央値フィルタリングされたMRを減算することによって、異常を検出することができる。残差は、異常挙動を示す大きな偏差を見つけるために閾値と比較される。高いHR異常値を優先する非対称閾値を使用することができる。HRの変化は、最小および最大HR近傍で漸近的である傾向がある。したがって、安静時HRは、減少よりも増加する可能性が高いことが予想される。前のHRの30パーセントより大きいか、または10パーセントより小さい残差は、更なる処理から省略され得る。平均イベント持続時間よりも短い、結果として生じるギャップは、線形補間され得る。
【0053】
この実施形態は、誤った測定値(外れ値)を除去することを可能にする。外れ値の数は、HRR品質に関するヒントを与えることができる。しかし、それは使用される唯一の尺度ではない。歪みすぎているHRRを除去するプロセスは、2つのステップを含むことができる:第1のステップではHRR信号の特徴が測定され、第2のステップではその特徴に基づいてHRR曲線を除去するかどうかが選択される。例えば、第1のステップでは、いくつかの特徴がHRR曲線から抽出される。これらの特徴は、HRRの形態、安定性、分散、不良測定の数などを記述する。基本的に、これらの特徴は、人がHRR品質について自身で決定するために必要なすべての情報を記述する。しかしながら、人に決定するように求めてもよいが、好ましくは決定するように求められない。代わりに、アルゴリズムがこの決定を自動的に行うように訓練されることができる。この目的のために、第2のステップでは、特徴を抽出した後、HRR曲線が適切な品質を有するか、HRR曲線が何かに用いるには歪みすぎるがどうかを決定するために、アルゴリズムが訓練される。大きすぎる歪みは、意味のあるHRRを抽出することができないことを意味する。上記で説明したように、ランダムフォレストアルゴリズムを使用して、この二分決定タスクを行うことができる。そのようなランダムフォレストアルゴリズムは、複数(例えば、数百)の手動でラベル付けされたHRRを用いて訓練され得る。このラベリングおよびアルゴリズムの訓練は、多くのアプリケーションに対して、または特にあらゆるアプリケーションに対して、1回行われることができ、すなわち、一種の較正と見なされることができる。これらのHRRは、良好または不良品質であると手動でラベル付けされた。これらのHRR曲線およびすべての抽出された特徴に基づいて、ランダムフォレストアルゴリズムは、曲線の品質が良好であるか不良であるかを検出するために学習する。しかしながら、ランダムフォレストアルゴリズムの代わりに、他の分類器が使用されてもよい。
【0054】
次に、ステップ206において、補間されたHRRが分析され、識別アルゴリズムのための特徴空間として働く時間的および形態学的特徴が計算される。識別アルゴリズム(例えば、最大深度が例えば10レベルの、例えば100個の木を含むランダムフォレスト分類器)は、実際の心拍数応答を記述しない(例えば、フラットすぎる)、または更なる処理のためには歪みすぎているHRRを検出して除去することを学習している。
【0055】
最後に、複数の(好ましくは全ての)イベントウィンドウの残りのHRR信号が正規化され、整列され(ステップ207)、次いで、一緒に合成され(例えば、平均化され)(ステップ208)、再発パターンを強調し、それによってAHRRを取得する。これは、複数のHRRおよび結果として生じるAHRRを示す図6に示されている。イベントウィンドウが整列されるので、別々のイベントウィンドウを組み合わせることにより、再発するHR挙動を明らかにし、ランダムなエラーおよび変動をキャンセルすることができる。上述のように、HRRは、イベントに続くHR挙動に主な関心が向けられる選択信号に基づいて、イベントの終了時間で整列され得る。結果として、AHRR特性は、数晩にわたって人ごとに非常に安定である(クラス内相関=0.7~0.8)ことが分かった。そして、例えば、数晩にわたって得られたこれらのAHRRから特徴を抽出して、被験者の心血管系に関連する被験者の健康情報、例えば、本明細書ではHeartAgeとも呼ばれる動脈系の活力および状態を決定する(ステップ209)。
【0056】
ノイズ除去プロセスにおける状況アライメントの使用は、ウェアラブルアプリケーションにおいてはこれまで見られなかった分解能での詳細なHR挙動分析を可能にする。この分解能の増加は、夜間にバイタリティおよびHeartAgeを目立たずに継続的にモニタする新たな可能性を導入する。以下、より詳細な例(HeartAge例)について説明する。
【0057】
上述のように、多くの異なる信号が選択信号および/またはアライメント信号として使用され得る(例えば、胴体加速度および脚筋活動)。データは、完全な又は部分的な夜間無人家庭記録で取得されてもよい。しかし、他の状況においては、例えば、人が座ってから立つ間に姿勢を繰り返し変化させるオフィス、人が運動または姿勢の変化を伴ってスポーツを行っているとき、人が車両を離れる(すなわち、座席から立ち上がって車両を離れる)ときなどに、データが取得され得る。複数のセンサを使用することができ、AHRRが各人において安定していたという事実は、AHRRの決定および使用が多用途で、ロバストで、正確で、安定した新しい測定技術であることを示している。
【0058】
様々なHRRまたはHR関連信号の時間セグメントの整列は、他の方法で、例えば相互相関を使用することによって行うこともできる。そして、HRRまたは時間セグメント自体がアライメント信号として機能することができる。例えば、遅延の全範囲について2つのHRRを互いに相関させることができ、最も高い相関を生成する遅延が選択される。これは、2つのHRR曲線の全ての対(例えば、夜間の2つのHRR曲線の全ての対)について行われ、そして各HRR信号は、プロシージャが再開されてシフトされたHRR曲線からAHRRを計算する前に、その平均遅延の量だけシフトされる。この方法はまた、個々のHHR曲線間の相関の高さから異なるタイプのHRR曲線を識別することを可能にする:(ある遅延について)互いに良好に相関するHRR曲線は、同じクラスタに属する。次いで、各クラスタについて、特定のAHHRを構築することができる。おそらく、異なるクラスタは、夜間の異なるタイプの寝返り運動に関連する。
【0059】
一般に、多くの動き、例えば、睡眠中の各寝返りは、人の身体に特異的なHRRを生成する。これらのHRRを平均化すると、異なる夜間に取得された複数のAHRRを示す図7に示されているように、特定の身体に特徴的であり、夜ごとには有意に変化しない、一晩につき一層安定したAHRRが得られる(各プロットは、3夜間に取得された単一の被験体について3つのAHRR曲線を示す)。上記で計算されたAHHR信号を使用して、「HeartAge」は、以下のように計算され得る:
HeartAge = a + b*(AHRR増加)、
式中、aおよびbは好ましくは経験的に決定されるスカラーであり、AHRRは上記のように集約された心拍数応答である。AHHR増加は、AHHR信号における最大HRからt=0におけるAHHRを差し引いたものとして決定され得る。このAHRR増加は、いわゆる起立性反射、すなわち、直立した姿勢に変化するときのHRの増加に関係している可能性がある(例えば、G. Cybulski and W. Niewiadomski, "Influence of age on the immediate heart rate response to the active orthostatic test," J Physiol Pharmacol, vol. 54, no. 1, pp. 65-80, 2003を参照)。
【0060】
上述の実施形態は、線形近似を用いてAHRR増加からHeartAgeを計算する。これは最も簡単な方法であり、概して利用可能なデータによく適合する。関連する状況(例えば、自動車からまたは椅子から立ち上がる)のための十分な利用可能なデータが与えられると、任意の他の関数F(x)(xはAHRRの特徴であり、FはHeartAgeなどの所望の健康情報である)が一般にデータにフィットされることができ、例えば、2次関数F(x)=a+bx+cx2である。したがって、いくつかのアプリケーションでは、様々な関数がとりわけ異なる状況(自動車から出るなど)のために収集されるときに利用可能なデータセットに適用され得る。
【0061】
図8は、被験者のAHRR増加と実際の年齢との関係を示す:平均して、被験者の年齢が高いほど、被験者のAHRR増加は低くなる。そして、この全体的な母集団関係は、HeartAgeおよびパラメータaおよびbの線形依存性の推定を可能にするのに役立つ。このように、ある人のHeartAgeは、全集団が彼/彼女と同じAHRR増加を持つ年齢と考えることができる。
【0062】
医師の補助なしにAHRRの抽出を自宅で行うことができるという事実は、身体的訓練または薬物療法を最適化する新たな可能性を生み出す。これにより、活力およびHeartAgeの楽な経時的モニタリングが可能になる。
【0063】
図8において、年齢とAHRR増加との間の関係が特定のデータセットから決定されるように示される。グラフからわかるように、線形式AHRRn = C1 + C2 * age(C1 = 25.5 bpm、C2 = -0.275 bpm/年)に従う。AHRR増加からのHeartAgeの決定は、逆関数: HeartAge =(AHRR増加-C1)/C2= a + b*AHRR増加にちょうど従う。言い換えれば、線形近似を使用するアプローチにおいて上述されたスカラーaおよびbは、b= 1/C2= 3.64年/bpm、およびa = -C1/C2= 92.7年となるように、図8に示されるフィッティングされた線の線形方程式から決定され得る。HeartAge (または他の健康情報)を決定するために他の近似で使用する他のスカラーは、経験的データに基づいて、年齢と、より大きな母集団について事前に決定されたAHRRの1つまたは複数の特徴との間の関係に基づいて同じまたは同様の手法を使用して決定され得る。さらに、そのようなスカラーは、年齢、性別、サイズ、体重、フィットネスレベル、フィットネス状態、投薬などのような患者の典型的なパラメータに基づいて、特定のタイプの被験者について事前に決定されることができる。
【0064】
概して、HeartAgeを検出するために、1つまたは複数の特徴がAHRRから抽出され得る。上述の実施形態では、AHRR増加が特徴として使用されるが、1つまたは複数の他の特徴が代わりに、または追加で使用されることができる。睡眠中の寝返りイベントの場合、寝返り中に姿勢が幾分変化するが、その後水平に戻る。結果として、寝返り前のHRは寝返り後のHRと(十分に)ほぼ同じであり、寝返り中およびその直後にHRが一時的に増加することが予想される。車外へ出るときに、姿勢変化前の座位と姿勢変化後の立位があり、立位時のHRが座位時よりも高いことが知られている。したがって、HRの増加が続くと予想されるが、立ち上がる過程ではオーバーシュートを伴う可能性がある。この場合、HRの継続的増加およびオーバーシュートの高さの両方が、健康状態またはHeartAgeを示すことができるパラメータである。
【0065】
AHRRの以下のような他の特徴も同様に使用されることができる:
- 集約されたHR応答信号の最大値と最小値との差、
- 集約されたHR応答信号の最大値と開始値との差、
- 集約されたHR応答信号の終了値と開始値の差
- 集約されたHR応答信号の最小値と最大値が現れる間の時間差、
- 集約されたHR応答信号の開始値と終了値が現れる間の時間差、
- 集約されたHR応答信号の最大勾配、および
- 集約されたHR応答信号の増加の持続時間および/または速度。
【0066】
一般に運動イベントの周りの小さな関心ウィンドウのみを分析すればよいので、本発明のリアルタイムの実行が可能である。運動イベントは、少なくとも1つの関心ウィンドウの持続時間によって分離されなければならない。アルゴリズムは安価な計算のみからなるので、この分析はイベントの関心ウィンドウが終了した直後に行うことができる。連続するHRRまたはHR関連信号の抽出された時間セグメントは、最終的なAHRRを得るために、一時的なAHRRに追加され、最後にイベント数で割られることができる。この処理パイプラインは、計算パワーおよびバッテリリソースが制限されるリモートアプリケーションにおけるAHRRのリアルタイム計算を可能にする。
【0067】
スマートウォッチの導入に伴い、ウェアラブル装置の使用はここ数年で指数関数的に増加し、今後さらに増加すると予想される。ウェアラブルリストバンド装置がしばしばWiFiまたはBluetoothを介してスマートフォンに接続され、スマートフォン上でのPPGデータ(または一般にHR関連信号)の遠隔処理を可能にする。AHRR推定の実施形態の1つはPPGおよび加速度センサのみを使用するので、AHRR推定は理想的にはスマートウォッチおよびユーザフレンドリーなスマートフォンアプリを使用して行われることができる。スマートフォンの多大な相互接続性と頻繁な使用のために、日常生活におけるAHRRの使用事例は無限である。
【0068】
本発明の1つの潜在的なアプリケーションは、車両運転者または車両乗客が使用しているリストバンド(または任意の他のウェアラブル装置)を介してHeartAgeまたは他の健康情報を測定することである。運転者が車を離れるたびに、椅子およびドア内のセンサがこの活動を登録しており、したがって選択信号として機能することができる。車両を離れると、運転者は座った姿勢から立った姿勢へと変化し、心血管系において真の起立反射を誘発し、心拍数は、立った姿勢に適応するように増加する(そして、そうするときに一時的にオーバーシュートすることが多い)。これらの心拍数変化は、リストバンド内のPPGセンサによって測定される。シートおよびドアCAN信号を選択信号として使用して、運転者が着座位置から直立位置に変化する或る範囲の瞬間をPPGデータから選択することができ、本発明は、この特定の状況に対するAHRRおよびHeartAgeの計算を可能にする。同じことが、助手席とドアとそこに座っている人のリストバンドとの組み合わせにも当てはまる。
【0069】
したがって、そのような実施形態では、、次の1分ほどで運転者が座っている姿勢から立っている姿勢に変化することが予想されることを示す選択信号として、運転席のドアが開いた車両のCANバス信号が使用されることができ(すなわち、CANバス信号を使用して、将来の運動イベントを予測し、運動イベントの時間を推定することができる)、その結果、運転者のHRが増加すると仮定することができる。そして、ACC信号は、運転者が立ち上がるときの正確な指標として、すなわちアライメント信号として使用されることができる。このような組み合わせの利点は、複数の運動イベントの正しいタイミングおよびこれらの運動イベント中のHR関連信号の関連する時間セグメントを決定(およびアライメント)する際に、選択信号が適切な運動イベントの正しい選択においてより厳密であり得、アライメントがより良好であることである。
【0070】
別の実施形態では、ACC信号を選択信号として使用することができ、非ACCをアライメント信号として使用することができる。例えば、被験者の胸部に活動センサ(例えば、ACCセンサ)センサが装着され、被験者の三頭筋にEMGセンサ(筋肉張力を感知する;非ACCセンサ)が装着された場合、活動センサは被験者が動きを開始し、被験者の胸部が上方に向かうことを検出する。これは、胸部が上昇している(およびHR反応が予想される)という事実を捕捉するHRトレースを選択することを可能にする。三頭筋上のEMGセンサは、被験者が起立するために筋肉の使用を開始する正確な瞬間を示し、EMGセンサ信号はアライメントに使用されることができる。
【0071】
一般に、本発明を使用して、異なる健康情報を決定することができる。一例は、上述のHeartAgeである。別の例は、一般的に年齢がそうであるように、人の健康の別の指標としての人の体重である。本発明の使用によって得られる主な情報は、心血管系の柔軟性/適応性に関する情報である。そして、心血管系の柔軟性/適応性に関する情報は、年齢、体重またはBMIなど、一般人がよりよく理解することができるものに逆変換され得る。
【0072】
体重を決定するために、HeartAgeと類似するHeartWeightを構築することができ、AHHRincreaseなどのAHRRの1つまたは複数の特徴を、様々な体重の他の人の特徴と比較することによって、心臓の適応性/柔軟性の指標を与える。したがって、HeartWeightは、或る人が過体重(例えば100kgを超える体重の人)であるにもかかわらず、心臓応答がより痩せている人のそれと同様であり、すなわち、その人のHeartWeightは80kgに過ぎない可能性があることを、伝えることができる。これは、実際にはHeartAgeと同じ健康情報、すなわち、心血管系の柔軟性/適応性に関する情報である。それは異なる態様でしか提示されないだろう。
【0073】
同じことが、BMI(「HeartBMI」)、活力(「HeartVitality」)、幸福度(「HeartHappiness」)、ストレスレベル(「HeartStress」)などの他の心臓情報にも当てはまる。
【0074】
本発明は、人々の心血管の活力の目立たない、歩行可能な、安定した測定を可能にする。例えば、睡眠中の装着可能なPPG測定を使用して、人々の「HeartAge」を決定することができる。本発明は、異なる信号、例えば、ウェアレブル装置の加速度計信号を利用して、人々の動き、例えば、睡眠中の寝返りを識別することができる。その後、時間周波数変換方法(例えば、連続ウェーブレット変換)を使用して、これらの瞬間の周りのHR変化を除外する。したがって、本発明は通常の実践の逆の観点を取り入れ、イベント検出信号、例えば、ウェアラブル装置の加速度計信号を利用して、HR関連信号の特定の信号ウィンドウを抽出し、そうでなければ、運動ベースのノイズとして省略される。
【0075】
本発明は、健康および福祉の在宅モニタリングならびに睡眠および呼吸ケアに特定のアプリケーションを見出すことができる。さらに、本発明は、診断の容易な手段を提供する。別の適用分野は、自動車用途における乗客の健康である。
【0076】
本発明が、図面および前述の説明において詳細に図示および説明されてきたが、そのような図示および説明は、説明的または例示的であり、限定的ではないと考えられるべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。開示された実施形態に対する他の変形は、図面、開示、および添付の請求項の検討から、請求項に記載された発明を実施する際に当業者によって理解され、及び実施されることができる。
【0077】
請求項において、単語「有する」は、他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は、複数性を排除するものではない。単一の要素または他のユニットが、請求項に列挙されるいくつかの項目の機能を満たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。
【0078】
コンピュータプログラムは他のハードウェアと一緒に、またはその一部として供給される光記憶媒体またはソリッドステート媒体などの適切な非一過性の媒体上に記憶/配布することができるが、インターネットまたは他の有線もしくは無線通信システムなどを介してのような、他の形態で配信することもできる。
【0079】
請求項におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】