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特表2024-529377抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片の医薬組成物及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片の医薬組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240730BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240730BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P3/06
A61P9/00
A61P35/00
A61P29/00
A61P9/10 101
A61P9/12
A61P9/10
A61P25/00
A61P9/04
A61P1/18
A61P1/16
A61P27/02
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P3/10
A61K9/08
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/26
A61K9/19
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503454
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 CN2022106993
(87)【国際公開番号】W WO2023001228
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】202110822526.8
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519352757
【氏名又は名称】江▲蘇▼恒瑞医▲薬▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI PHARMACEUTICALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.7 KUNLUNSHAN ROAD, ECONOMIC AND TECHNOLOGICAL DEVELOPMENT ZONE, LIANYUNGANG, JIANGSU 222047, CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】516174208
【氏名又は名称】上海恒瑞医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】NO. 279 WENJING ROAD, MINHANG DISTRICT, SHANGHAI 200245, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 喜琴
(72)【発明者】
【氏名】葛 凌霄
(72)【発明者】
【氏名】王 宏▲偉▼
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA29
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC10
4C076CC11
4C076CC16
4C076CC21
4C076CC27
4C076DD09E
4C076DD38Q
4C076DD41Z
4C076DD42Z
4C076DD43Z
4C076DD60Z
4C076DD67Q
4C076EE23E
4C076FF15
4C076FF61
4C076GG06
4C085AA14
4C085AA16
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE05
(57)【要約】
抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片の医薬組成物及びその使用である。具体的に、上記医薬組成物は、抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片及び酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液を含み、上記医薬組成物は、糖及び界面活性剤をさらに含んでもよい。良好な抗体安定性がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片と、緩衝剤とを含む医薬組成物であって、前記緩衝剤は酢酸-酢酸ナトリウム、コハク酸-コハク酸ナトリウム、ヒスチジン-塩酸塩及びクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝剤から選ばれるいずれか1つであり、酢酸-酢酸ナトリウム又はコハク酸-コハク酸ナトリウム緩衝剤が好ましく、前記抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片は抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号14、配列番号15と配列番号16で示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、且つ前記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号11、配列番号12及び配列番号13で示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記緩衝剤のpHは4.0~7.0、好ましくは5.0~5.4、最も好ましくは約5.2である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記緩衝剤の濃度は5~40mM、好ましくは5~20mM、最も好ましくは約10mMである、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片の濃度は10~200mg/mL、好ましくは80~120mg/mL、最も好ましくは約100mg/mLである、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
界面活性剤をさらに含み、前記界面活性剤は、好ましくはポリソルベート80又はポリソルベート20、より好ましくはポリソルベート80である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤の濃度は0.05~0.6mg/mL、好ましくは0.1~0.4mg/mL、より好ましくは約0.2mg/mLである、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
糖である安定剤をさらに含み、好ましくは、前記糖はスクロース、トレハロース、マンニトール及びソルビトールから選ばれ、より好ましくは、前記糖はスクロースである、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記糖の濃度は60~90mg/mL、好ましくは70~80mg/mL、最も好ましくは約75mg/mLである、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
(a)10~200mg/mLの抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片と、
(b)5~30mMの酢酸塩緩衝液と、
(c)60~90mg/mLのスクロースと、
(d)0.05~0.6mg/mLのポリソルベート80と、を含み、
前記医薬組成物のpHは、好ましくは4.5~6.5、より好ましくは5.0~5.4である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
(a)約100mg/mLの抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片と、
(b)5~15mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液と、
(c)60~90mg/mLのスクロースと、
(d)0.1~0.4mg/mLのポリソルベート80と、を含み、
前記医薬組成物のpHは、好ましくは5.0~5.4、より好ましくは約5.2である、
請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片は、マウス抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体であり、好ましくは、前記ヒト化抗体の軽鎖と重鎖FR配列は、それぞれヒト生殖細胞系の軽鎖と重鎖のFRに由来する、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号17で示されるか又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有し、且つ前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号18で示されるか又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片は抗体の重鎖と軽鎖を含み、そのうち、前記重鎖のアミノ酸配列は、配列番号21で示されるか又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有し、且つ前記軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号22で示されるか又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物を調製する方法であって、前記抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片の原液を緩衝剤で置換するステップを含み、そのうち、前記緩衝剤は、好ましくは酢酸-酢酸ナトリウム緩衝剤である、方法。
【請求項15】
抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片を含む凍結乾燥製剤であって、前記凍結乾燥製剤は、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物を凍結乾燥することにより得られ、好ましくは、前記凍結乾燥は、予備凍結、一次乾燥及び二次乾燥のステップを順に含む、凍結乾燥製剤。
【請求項16】
抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片を含む再溶解溶液であって、請求項15に記載の凍結乾燥製剤を再溶解することにより得られる、再溶解溶液。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物、又は請求項15に記載の凍結乾燥製剤、又は請求項16に記載の再溶解溶液が収容された容器を含む、製品。
【請求項18】
請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物、又は請求項15に記載の凍結乾燥製剤、又は請求項16に記載の再溶解溶液の、疾患又は病状を治療及び/又は予防するための薬剤の調製における使用であって、
好ましくは、前記疾患又は病状は、高脂血症、高リポタンパク血症、脂質異常症、心臓血管疾患又は病状、がん又は腫瘍、非腫瘍性血管新生関連疾患又は病状、及び炎症性疾患又は病状から選ばれる1つ又は複数であり、
より好ましくは、前記疾患又は病状は、アテローム硬化性脂質異常症、糖尿病性脂質異常症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、カイロミクロン血症、混合型脂質異常症、脂肪異栄養症、脂肪萎縮症、アテローム性動脈硬化症、動脈瘤、高血圧、狭心症、脳卒中、脳血管疾患、うっ血性心不全、冠動脈疾患、心筋梗塞、末梢血管疾患、急性膵臓炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、血糖異常症、加齢黄斑変性症、網膜中心静脈閉塞症又は網膜分枝静脈閉塞症、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、関節炎、関節リウマチ(RA)及び乾癬から選ばれる1つ又は複数である、
使用。
【請求項19】
疾患又は病状を治療及び/又は予防する方法であって、必要とする対象に請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物、又は請求項16に記載の再溶解溶液を投与することを含み、
好ましくは、前記疾患又は病状は、高脂血症、高リポタンパク血症、脂質異常症、心臓血管疾患又は病状、がん又は腫瘍、非腫瘍性血管新生関連疾患又は病状、及び炎症性疾患又は病状から選ばれる1つ又は複数であり、
より好ましくは、前記疾患又は病状は、アテローム硬化性脂質異常症、糖尿病性脂質異常症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、カイロミクロン血症、混合型脂質異常症、脂肪異栄養症、脂肪萎縮症、アテローム性動脈硬化症、動脈瘤、高血圧、狭心症、脳卒中、脳血管疾患、うっ血性心不全、冠動脈疾患、心筋梗塞、末梢血管疾患、急性膵臓炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、血糖異常症、加齢黄斑変性症、網膜中心静脈閉塞症又は網膜分枝静脈閉塞症、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、関節炎、関節リウマチ(RA)及び乾癬から選ばれる1つ又は複数である、
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年7月21日に提出された出願番号が202110822526.8である中国特許出願の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、医薬製剤分野に関し、具体的に、抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物及びその医薬使用に関する。
【背景技術】
【0003】
アンジオポエチン様タンパク質3(Angiopoietin-like protein3、ANGPTL3)は、アンジオポエチン様タンパク質ファミリーのメンバーとして、主に肝臓で発現される分泌タンパク質の1種である。ANGPTL3のアミノ末端がカールした領域は、リポプロテインリパーゼ(Lipoprotein lipase、LPL)活性の阻害に関連し、トリグリセリド(triglyceride、TG)を調節するカルボキシ末端フィブリノゲン様領域は、主に血管新生の調節に関連しているので、当該タンパク質は、脂質代謝の調節及び血管新生の促進という機能を有する。
【0004】
ANGPTL3の主な役割は、リポタンパク質代謝の調節であり、LPL及び内皮リパーゼ(EL)を阻害することにより、脂質代謝の調節に役割を果たす。現在、ANGPTL3阻害物は、ANGPTL3-ASOと、EvinacumabなどのANGPTL3モノクローナル抗体という2つに分けられ、両者のメカニズム及び作用部位は異なっており、ANGPTL3-ASOは主に肝細胞に作用し、Evinacumabは血液循環において効果を奏する。しかしながら、表現型でも、遺伝子レベルでも、ANGPTL3を阻害すると、顕著で安定的な脂質低下効果が認められる。ANGPTL3を標的とするIgG4サブタイプのモノクローナル抗体は、ANGPTL3に結合可能であり、ANGPTL3とLPLの結合を遮断することにより、ANGPTL3によるLPL酵素活性の阻害を解除し、血漿におけるトリグリセリドの分解を促進し、高脂血症を治療する目的を達成させる。
【0005】
WO2021147984Aには、血中脂質低下効果がより良くかつより持続的な抗ANGPTL3抗体及びその抗原結合断片が提供されている。抗体薬物は、分子量が大きく、構造が複雑で、分解や重合したり、望ましくない化学修飾などが生じたりして不安定になることが容易である。抗体が投与に適し、保存中及びその後の使用中に安定性を維持し、より良い治療効果を果たすことを可能にするために、抗体薬物の安定化製剤の研究が特に重要である。従って、抗ANGPTL3抗体及びその抗原結合断片については、比較的安定した製剤を開発しなければならない。本開示は、十分に安定で、凍結乾燥形態が良く、投与により適する、抗ANGPTL3抗体及びその抗原結合断片を含む医薬組成物を提供する。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片と、緩衝剤とを含む医薬組成物を提供する。また、本開示は、上記医薬組成物を疾患の治療・予防に用いる方法、及びその医薬使用を提供する。
【0007】
幾つかの実施形態において、上記緩衝剤は、酢酸塩緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、リン酸塩緩衝剤、コハク酸塩緩衝剤及びクエン酸緩衝剤から選ばれるいずれか1つであり、例えば、酢酸塩緩衝剤である。
【0008】
幾つかの実施形態において、上記緩衝剤は、酢酸-酢酸ナトリウム、ヒスチジン-塩酸塩、リン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム、コハク酸-コハク酸ナトリウムとクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝剤から選ばれるいずれか1つであり、例えば、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝剤である。
【0009】
幾つかの実施形態において、医薬組成物に記載される抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片は抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、上記重鎖可変領域は、配列番号9で示されるアミノ酸配列の重鎖可変領域におけるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、及び/又は上記軽鎖可変領域は、配列番号10で示されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域におけるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む。ここで、上記CDRは、Kabat、IMGT、Chothia、AbM又はContact番号付けシステムに従って定義され、幾つかの具体的な実施形態では、Kabat番号付けシステムに従って定義される。
【0010】
幾つかの実施形態において、医薬組成物に記載される抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片は抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、上記重鎖可変領域は、アミノ酸配列が配列番号14で示されるHCDR1、LINPRDDSTSYAQKFQG(配列番号23)で示されるHCDR2と、配列番号16で示されるHCDR3を含み、及び/又は上記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がRSSQSLLHSNGYTYLD(配列番号24)で示されるLCDR1、配列番号12で示されるLCDR2と、配列番号13で示されるHCDR3を含む。
【0011】
幾つかの実施形態において、医薬組成物に記載される抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片は抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、上記重鎖可変領域は、配列番号17で示されるアミノ酸配列の重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、及び/又は上記軽鎖可変領域は、配列番号18で示されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む。ここで、上記CDRは、Kabat、IMGT、Chothia、AbM又はContact番号付けシステムに従って定義され、幾つかの具体的な実施形態では、Kabat番号付けシステムに従って定義される。
【0012】
幾つかの実施形態において、医薬組成物に記載される抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片は抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、上記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号14、配列番号15及び配列番号16で示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、及び/又は上記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号11、配列番号12及び配列番号13で示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む。
【0013】
幾つかの実施形態において、医薬組成物に記載される抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片は、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、全ヒト抗体から選ばれ、幾つかの具体的な実施形態では、ヒト化抗体である。
【0014】
幾つかの実施形態において、医薬組成物に記載されるヒト化ANGPTL3抗体の軽鎖と重鎖可変領域における軽鎖と重鎖FR配列は、それぞれヒト生殖細胞系の軽鎖と重鎖のFR又はその変異配列に由来する。
【0015】
幾つかの実施形態において、医薬組成物に記載される抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片は抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、上記重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号9で示されるか又はそれに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%以上の配列同一性を有し、及び/又は上記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号10で示されるか又はそれに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%以上の配列同一性を有する。
【0016】
幾つかの実施形態において、医薬組成物に記載される抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片は抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、上記重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号17で示されるか又はそれに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%以上の配列同一性を有し、及び/又は上記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号18で示されるか又はそれに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%以上の配列同一性を有する。
【0017】
本開示において、「少なくとも90%以上の配列同一性」は、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%以上の配列同一性を包含する。
【0018】
幾つかの実施形態において、医薬組成物に記載される抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片は抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、上記重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号9で示され、上記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号10で示される。
【0019】
幾つかの実施形態において、医薬組成物に記載される抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片は抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、上記重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号17で示され、上記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号18で示される。
【0020】
幾つかの実施形態において、上記抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片は、重鎖定常領域と軽鎖定常領域をさらに含む。選択的な実施形態において、上記重鎖定常領域はヒトIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4定常領域に由来し、上記軽鎖定常領域はヒトκとλ鎖定常領域に由来する。
【0021】
幾つかの実施形態において、上記重鎖定常領域のアミノ酸配列は、配列番号19で示されるか又はそれに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%以上の配列同一性を有し、及び/又は上記軽鎖定常領域のアミノ酸配列は、配列番号20で示されるか又はそれに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%以上の配列同一性を有する。
【0022】
幾つかの実施形態において、上記抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片は重鎖と軽鎖を含み、そのうち、上記重鎖のアミノ酸配列は、配列番号21で示されるか又はそれに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%以上の配列同一性を有し、及び/又は上記軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号22で示されるか又はそれに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%以上の配列同一性を有する。
【0023】
幾つかの実施形態において、医薬組成物に記載される抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片は抗体重鎖と軽鎖を含み、そのうち、上記重鎖のアミノ酸配列は配列番号21で示され、且つ上記軽鎖のアミノ酸配列は配列番号22で示される。
【0024】
幾つかの実施形態において、本開示に記載される抗原結合断片は、Fab、F(ab’)2、Fab’、Fd、Fv、dsFv、scFv、Fab及び二重特異性抗体から選ばれる。
【0025】
幾つかの実施形態において、医薬組成物に記載される緩衝剤のpH値は、4.0~7.0、例えば、4.0~6.9、4.0~6.8、4.0~6.7、4.0~6.6、4.0~6.5、4.0~6.4、4.0~6.3、4.0~6.2、4.0~6.1、4.0~6.0、4.0~5.9、4.0~5.8、4.0~5.7、4.0~5.6、4.0~5.5、4.5~6.5、4.5~6.0、4.5~5.5、5.0~7.0、5.0~6.5、5.0~6.0、5.0~5.5、4.6~6.6、4.6~6.5、4.6~6.4、4.6~6.3、4.6~6.2、4.6~6.1、4.6~6.0、4.6~5.9、4.6~5.8、4.6~5.7、4.6~5.6、4.6~5.5、4.6~5.4、4.8~6.6、4.8~6.5、4.8~6.4、4.8~6.3、4.8~6.2、4.8~6.1、4.8~6.0、4.8~5.9、4.8~5.8、4.8~5.7、4.8~5.6、4.8~5.5、4.8~5.4、4.9~5.4、5.0~5.4であり、幾つかの具体的な実施形態において、上記緩衝剤のpH値は、約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9又は約7.0、例えば、約5.2である。
【0026】
幾つかの実施形態において、医薬組成物に記載される緩衝剤濃度は5~40mM、例えば、5~30mM、5~20mM、5~15mM、5~10mM、10~15mM、8~12mMであり、幾つかの具体的な実施形態において、上記緩衝剤の濃度は約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約18mM、約20mM、例えば、約10mMである。
【0027】
幾つかの実施形態において、医薬組成物に記載される抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片の濃度は10~200mg/mL、例えば、50~200mg/mL、50~150mg/mL、60~150mg/mL、60~120mg/mL、80~150mg/mL、80~120mg/mL、90~120mg/mL、90~110mg/mLであり、幾つかの具体的な実施形態において、上記抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片の濃度は、約10mg/mL、約20mg/mL、約30mg/mL、約50mg/mL、約60mg/mL、約65mg/mL、約70mg/mL、約75mg/mL、約80mg/mL、約85mg/mL、約90mg/mL、約95mg/mL、約100mg/mL、約105mg/mL、約110mg/mL、約115mg/mL、約120mg/mL、約130mg/mL、約140mg/mL、約150mg/mL、約160mg/mL、約170mg/mL、約180mg/mL、約190mg/mL、約200mg/mL、又はいずれか2つの値の間の任意の値、例えば、約100mg/mLである。
【0028】
幾つかの実施形態において、医薬組成物に含まれる界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポロキサルコール、Triton、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、オクチルグルコシドナトリウム、ラウリル-スルホベタイン、ミリスチル-スルホベタイン、リノール-スルホベタイン、ステアリン-スルホベタイン、ラウリル-サルコシン、ミリスチル-サルコシン、リノール-サルコシン、ステアリン-サルコシン、リノール-ベタイン、ミリスチル-ベタイン、セチル-ベタイン、ラウラミドプロピル-ベタイン、コカミドプロピル-ベタイン、リノールアミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ベタイン、パルミタミドプロピル-ベタイン、イソステアラミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ジメチルアミン、パルミタミドプロピル-ジメチルアミン、イソステアラミドプロピル-ジメチルアミン、メチルココイルナトリウム、メチルオレイルタウリンナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレン及びプロピレングリコールの共重合体などから選ばれてもよい。幾つかの具体的な実施形態において、上記界面活性剤は、ポリソルベート80又はポリソルベート20、例えば、ポリソルベート80である。
【0029】
幾つかの実施形態において、医薬組成物における界面活性剤の濃度は0.05~0.6mg/mL、例えば、0.1~0.6mg/mL、0.1~0.5mg/mL、0.1~0.4mg/mL、例えば、0.1~0.3mg/mLであり、幾つかの具体的な実施形態において、上記医薬組成物における界面活性剤の濃度は約0.1mg/mL、約0.15mg/mL、約0.2mg/mL、約0.25mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、約0.6mg/mL、例えば、約0.2mg/mLである。
【0030】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は安定剤をさらに含む。選択的な実施形態において、上記安定剤は、糖又はアミノ酸から選ばれる。選択的な実施形態において、糖は、通常の組成物(CHO)及びその誘導体を含み、単糖、二糖、三糖、多糖、糖アルコール、還元糖、非還元糖などを含む。選択的な実施形態において、糖は、グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、デキストラン、グリセリン、エリトリトール、グリセロール、アラビトール、キシロース、ソルビトール、マンニトール、メリビオース、メレジトース、ラフィノース、マンニノトリオース、スタキオース、マルトース、ラクツロース、マルツロース、ソルビトール、マルトースアルコール、ラクトースアルコール、イソ-マルツロースなどから選ばれてもよい。幾つかの具体的な実施形態において、上記糖は、非還元二糖、例えば、スクロースである。幾つかの具体的な実施形態において、上記アミノ酸は、グリシン、メチオニン及びプロリンから選ばれる。
【0031】
幾つかの実施形態において、医薬組成物における糖の濃度は40~110mg/mL、例えば、40~95mg/mL、60~90mg/mL、60~80mg/mL、70~90mg/mL、70~80mg/mLであり、幾つかの具体的な実施形態において、上記糖の濃度は約60mg/mL、約65mg/mL、約70mg/mL、約75mg/mL、約80mg/mL、約85mg/mL、約90mg/mL又はいずれか2つの値の間の任意の値、例えば、約75mg/mLである。
【0032】
本開示は、
(a)10~200mg/mL(例えば、約50mg/mL)の抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片と、
(b)約10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝液と、
を含む医薬組成物を提供し、
選択的に、上記医薬組成物のpHは6.0~6.6(例えば、約6.0、約6.6)である。
【0033】
本開示は、
(a)10~200mg/mL(例えば、約50mg/mL)の抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片と、
(b)約10mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液と、
を含む医薬組成物を提供し、
選択的に、上記医薬組成物のpHは4.6~5.0(例えば、約4.6、約5.0)である。
【0034】
本開示は、
(a)10~200mg/mLの抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片と、
(b)5~30mMの酢酸塩緩衝液(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液)と、
を含む医薬組成物を提供する。
【0035】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、
(a)10~200mg/mLの抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片と、
(b)5~30mMの酢酸塩緩衝液(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液)と、
(c)40~90mg/mLの糖(例えば、スクロース)と、
(d)0.05~0.6mg/mLの界面活性剤(例えば、ポリソルベート80又はポリソルベート20)と、を含み、
選択的に、上記医薬組成物のpHは4.5~6.5、例えば、5.0~5.4、例えば、約5.2である。
【0036】
本開示は、
(a)10~200mg/mLの抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片と、
(b)5~20mMの酢酸塩緩衝液(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液)と、
を含む医薬組成物を提供する。
【0037】
選択的に、上記医薬組成物のpHは5.0~5.5である。
【0038】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、
(a)50~150mg/mLの抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片と、
(b)5~15mMの酢酸塩緩衝液(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液)と、
(c)60~90mg/mLのスクロースと、
(d)0.05~0.5mg/mLのポリソルベート80と、を含み、
選択的に、上記医薬組成物のpHは5.0~6.0である。
【0039】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、
(a)40~120mg/mLの抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片と、
(b)5~15mMの酢酸塩緩衝液(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液)と、
(c)60~90mg/mLのスクロースと、
(d)0.1~0.4mg/mLのポリソルベート80と、を含み、
選択的に、上記医薬組成物のpHは5.0~5.8である。
【0040】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、
(a)80~120mg/mLの抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片と、
(b)5~15mMの酢酸塩緩衝液(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液)と、
(c)70~90mg/mLのスクロースと、
(d)0.1~0.3mg/mLのポリソルベート80と、を含み、
選択的に、上記医薬組成物のpHは5.0~5.5である。
【0041】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、
(a)80~120mg/mLの抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片と、
(b)5~15mMの酢酸塩緩衝液(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液)と、
(c)70~90mg/mLのスクロースと、
(d)0.1~0.3mg/mLのポリソルベート80と、を含み、
選択的に、上記医薬組成物のpHは5.0~5.5である。
【0042】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、
(a)90~110mg/mLの抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片と、
(b)8~12mMの酢酸塩緩衝液(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液)と、
(c)75~85mg/mLのスクロースと、
(d)0.15~0.25mg/mLのポリソルベート80と、を含み、
選択的に、上記医薬組成物のpHは5.1~5.3である。
【0043】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、
(a)約100mg/mLの抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片と、
(b)5~15mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液と、
(c)60~90mg/mLのスクロースと、
(d)0.1~0.4mg/mLのポリソルベート80と、を含み、
選択的に、上記医薬組成物のpHは5.0~5.4である。
【0044】
幾つかの具体的な実施形態において、上記医薬組成物は、
(1)約100mg/mLの抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片、約75mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのポリソルベート80、及び約10mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液を含み、pHが5.0~5.4(例えば、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4)であり、
(2)約100mg/mLの抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片、約75mg/mLのスクロース、約0.2mg/mLのポリソルベート80、及び約10mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液を含み、pHが5.0~5.4(例えば、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4)であり、
(3)約100mg/mLの抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片、約75mg/mLのスクロース、約0.4mg/mLのポリソルベート80、及び約10mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液を含み、pHが5.0~5.4(例えば、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4)であり、
(4)約80mg/mLの抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片、約75mg/mLのスクロース、約0.2mg/mLのポリソルベート80、及び約10mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液を含み、pHが5.0~5.4(例えば、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4)であり、
(5)約120mg/mLの抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片、約75mg/mLのスクロース、約0.2mg/mLのポリソルベート80、及び約10mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液を含み、pHが5.0~5.4(例えば、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4)であり、
(6)約150mg/mLの抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片、約75mg/mLのスクロース、約0.2mg/mLのポリソルベート80、及び約10mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液を含み、pHが5.0~5.4(例えば、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4)であり、
(7)約100mg/mLの抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片、約60mg/mLのスクロース、約0.2mg/mLのポリソルベート80、及び約10mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液を含み、pHが5.0~5.4(例えば、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4)であり、
(8)約100mg/mLの抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片、約65mg/mLのスクロース、約0.2mg/mLのポリソルベート80、及び約10mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液を含み、pHが5.0~5.4(例えば、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4)であり、
(9)約100mg/mLの抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片、約70mg/mLのスクロース、約0.2mg/mLのポリソルベート80、及び約10mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液を含み、pHが5.0~5.4(例えば、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4)であり、
(10)約100mg/mLの抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片、約80mg/mLのスクロース、約0.2mg/mLのポリソルベート80、及び約10mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液を含み、pHが5.0~5.4(例えば、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4)であり、
(11)約100mg/mLの抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片、約90mg/mLのスクロース、約0.2mg/mLのポリソルベート80、及び約10mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液を含み、pHが5.0~5.4(例えば、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4)であり、
(12)約100mg/mLの抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片、約75mg/mLのスクロース、約0.2mg/mLのポリソルベート80、及び約5mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液を含み、pHが5.0~5.4(例えば、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4)であり、
(13)約100mg/mLの抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片、約75mg/mLのスクロース、約0.2mg/mLのポリソルベート80、及び約15mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液を含み、pHが5.0~5.4(例えば、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4)である。
【0045】
上述した実施形態において、上記抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片は、以下から選ばれる:
1)上記抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、上記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号11、配列番号12及び配列番号13で示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、且つ上記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号14、配列番号15及び配列番号16で示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、
2)上記抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片は抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、上記重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号17で示され、上記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号18で示され、
3)上記抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片は抗体の重鎖及び軽鎖を含み、上記重鎖のアミノ酸配列は配列番号21で示され、且つ上記軽鎖のアミノ酸配列は配列番号22で示され、
4)上記抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、上記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号24、配列番号12及び配列番号13で示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、且つ上記重鎖可変領域は、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号14、配列番号23及び配列番号16で示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、
5)上記抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片は抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、上記重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号9で示され、上記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号10で示される。
【0046】
本開示に係る医薬組成物は、十分な創薬安定性を持っており、長期間安定に放置することができる。本開示に係る医薬組成物は、少なくとも、安定性が良く、凍結乾燥形態が良いなどのメリットを有する。
【0047】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、2~8℃で少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月又は少なくとも24ヶ月間安定している。幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、25℃で少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月又は少なくとも24ヶ月間安定している。幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、40℃で少なくとも7日、少なくとも14日又は少なくとも28日間安定している。
【0048】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、200rpm、室温で少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、又は少なくとも60時間振とうされた後も安定したままである。
【0049】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、-35℃/室温で少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回凍結融解した後も安定したままである。
【0050】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、5000Lx、25℃で少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日間光照射された後も安定したままである。
【0051】
本開示は、上記医薬組成物を調製する方法であって、抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片の原液を緩衝剤で置換するステップを含む方法をさらに提供し、そのうち、上記緩衝剤は酢酸-酢酸ナトリウム緩衝剤であってもよい。
【0052】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は液体製剤である。別の幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は凍結乾燥製剤である。
【0053】
本開示は、抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片を含む凍結乾燥製剤を調製する方法であって、上記医薬組成物を凍結乾燥するステップを含む方法をさらに提供する。選択的な実施形態において、上記凍結乾燥は、予備凍結、一次乾燥及び二次乾燥のステップを順に含む。
【0054】
本開示は、抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片を含む凍結乾燥製剤であって、上記の凍結乾燥製剤を調製する方法により調製された凍結乾燥製剤をさらに提供する。
【0055】
本開示は、抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片を含む凍結乾燥製剤の再溶解溶液を調製する方法であって、上記凍結乾燥製剤を再溶解するステップを含む方法をさらに提供し、その再溶解に用いられる溶液は、注射用水、生理食塩水又はグルコース溶液から選ばれるが、これらに限定されない。
【0056】
本開示は、抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片を含む再溶解溶液であって、上記の再溶解溶液を調製する方法により調製された再溶解溶液をさらに提供する。
【0057】
本開示は、製品、生産品又は試薬キットを提供し、それは、上記本開示に係る抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物、液体製剤、凍結乾燥製剤、再溶解溶液のいずれかを含む。選択的に、上記本開示に係る医薬組成物、液体製剤、凍結乾燥製剤、再溶解溶液のいずれかが収容された1つ又は複数の容器をさらに含む。幾つかの実施形態において、上記容器はガラスバイアルであり、例えば、中性ホウケイ酸ガラス管製の注射剤バイアルである。
【0058】
本開示は、上記医薬組成物又は凍結乾燥製剤又は凍結乾燥製剤の再溶解溶液が収容された容器を含む製品をさらに提供する。
【0059】
本開示は、疾患又は病状を治療・予防する方法に使用される医薬組成物又は凍結乾燥製剤又は凍結乾燥製剤の再溶解溶液をさらに提供する。
【0060】
本開示は、上記医薬組成物又は凍結乾燥製剤又は凍結乾燥製剤の再溶解溶液の、疾患又は病状を治療及び/又は予防するための薬剤の調製における使用をさらに提供する。
【0061】
本開示は、疾患又は病状を治療及び/又は予防する方法であって、必要とする対象に治療及び/又は予防有効量の上記の医薬組成物又は凍結乾燥製剤又は凍結乾燥製剤の再溶解溶液を投与することを含む、方法をさらに提供する。幾つかの実施形態において、上記対象はヒト対象である。
【0062】
幾つかの実施形態において、上記疾患又は病状は、ANGPTL3の活性に関連する任意の疾患又は病状であり、ANGPTL3により媒介される疾患又は病状を含む。
【0063】
幾つかの実施形態において、上記疾患又は病状の実例は、高脂血症、高リポタンパク血症及び脂質異常症などの脂質代謝に関わる疾患又は病状を含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、上記疾患又は病状の実例は、アテローム硬化性脂質異常症、糖尿病性脂質異常症、高トリグリセリド血症(重篤なトリグリセリド血症を含み、TG>1000mg/dL)、高コレステロール血症、カイロミクロン血症、混合型脂質異常症(例えば、肥満、メタボリック症候群、糖尿病など)、脂肪異栄養症、脂肪萎縮症などを含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、上記疾患又は病状の実例は、LPL活性の低下、LPL欠損、LDL受容体(LDLR)活性の低下、LDL受容体欠損症(例えば、LDLR-/-ホモ接合体家族性高コレステロール血症)、変化したApoC2/ApoE欠損、ApoBの増加、超低密度リポタンパク質(VLDL)の産生及び/又は除去の低下、ある薬物療法(例えば、グルココルチコイド療法による脂質異常症)、いずれかの遺伝的素因、食事、生活様式などに起因する脂質異常症であってもよい。
【0064】
幾つかの実施形態において、上記疾患又は病状は、高脂血症、高リポタンパク血症及び/又は脂質異常症に関連するか、或いはそれによる疾患又は病状であってもよく、アテローム性動脈硬化症、動脈瘤、高血圧、狭心症、脳卒中、脳血管疾患、うっ血性心不全、冠動脈疾患、心筋梗塞、末梢血管疾患などの心臓血管疾患又は病状、急性膵臓炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、糖尿病、肥満などの血糖異常症を含むが、これらに限定されない。
【0065】
幾つかの実施形態において、上記疾患又は病状の他の実例は、がん/腫瘍及び非腫瘍性血管新生に関連する疾患又は病状を含む。選択的な実施形態において、上記疾患又は病状は、加齢黄斑変性症、網膜中心静脈閉塞症又は網膜分枝静脈閉塞症、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症などの眼内血管新生関連疾患又は病状であってもよい。選択的な実施形態において、上記疾患又は病状は、関節炎、関節リウマチ(RA)、乾癬などの炎症性疾患又は病状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】P8BG抗体によるSD(Sprague Dawley、スプラーグドーリー)ラットの血清トリグリセリドへの影響である。
図2】抗ANGPTL3抗体によるHFD(High-fat-diet、高脂肪食)マウスの血漿トリグリセリドへの影響である。
図3】抗ANGPTL3抗体によるHFDマウスの血漿低密度リポタンパク質コレステロール(Low-Density Lipoprotein Cholesterol、LDL-C)への影響である。
図4】抗ANGPTL3抗体によるHFDマウスの血漿総コレステロールへの影響である。
図5】抗ANGPTL3抗体によるAPOEマウス(アポリポタンパク質E(apolipoprotein E、ApoE)遺伝子ノックアウトマウス)の血漿トリグリセリドへの影響である。
図6】抗ANGPTL3抗体によるAPOEマウスの血漿高密度リポタンパク質コレステロール(High density liptein cholesterol、HDL-C)への影響である。
図7】抗ANGPTL3抗体のマウス体内における薬物動態実験の結果である。
図8】抗ANGPTL3抗体のカニクイザル体内における薬物動態実験の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
一、用語
本開示がさらに容易に理解されるように、以下、幾つかの技術・科学用語を具体的に定義する。本願で別途明確に定義しない限り、本願に使用される他の技術・科学用語の全ては、当業者に通常理解されている意味を持っている。
【0068】
「緩衝剤」は、その酸-塩基共役成分の作用によりpHの変化に耐える緩衝剤を指す。pHを適当な範囲に制御する緩衝剤の例は、酢酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、グルコン酸塩、ヒスチジン塩、シュウ酸塩、乳酸塩、リン酸塩、枸櫞酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グリシルグリシン及び他の有機酸緩衝剤を含む。
【0069】
「ヒスチジン塩緩衝剤」は、ヒスチジンイオンを含む緩衝剤である。ヒスチジン塩緩衝剤の実例は、ヒスチジン-塩酸塩、ヒスチジン-酢酸塩、ヒスチジン-リン酸塩、ヒスチジン-硫酸塩などの緩衝剤、例えば、ヒスチジン-酢酸塩緩衝剤又はヒスチジン-塩酸塩緩衝剤を含み、ヒスチジン-酢酸塩緩衝剤は、ヒスチジンと酢酸により調製されたもので、ヒスチジン塩緩衝剤はヒスチジンと塩酸により調製されたものである。
【0070】
「枸櫞酸塩緩衝剤」は、枸櫞酸イオンを含む緩衝剤である。枸櫞酸塩緩衝剤の実例は、枸櫞酸-枸櫞酸ナトリウム、枸櫞酸-枸櫞酸カリウム、枸櫞酸-枸櫞酸カルシウム、枸櫞酸-枸櫞酸マグネシウムなどを含む。枸櫞酸塩緩衝剤は、枸櫞酸-枸櫞酸ナトリウムであってもよい。
【0071】
「コハク酸塩緩衝剤」は、コハク酸イオンを含む緩衝剤である。コハク酸塩緩衝剤の実例は、コハク酸-コハク酸ナトリウム、コハク酸-コハク酸カリウム、コハク酸-コハク酸カルシウム塩などを含む。コハク酸塩緩衝剤は、コハク酸-コハク酸ナトリウムであってもよい。
【0072】
「リン酸塩緩衝剤」は、リン酸イオンを含む緩衝剤である。リン酸塩緩衝剤の実例は、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム-枸櫞酸などを含む。リン酸塩緩衝剤は、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウムであってもよい。
【0073】
「酢酸塩緩衝剤」は、酢酸イオンを含む緩衝剤である。酢酸塩緩衝剤の実例は、酢酸-酢酸ナトリウム、酢酸ヒスチジン塩、酢酸-酢酸カリウム、酢酸-酢酸カルシウム、酢酸-酢酸マグネシウムなどを含む。酢酸緩衝剤は、酢酸-酢酸ナトリウムであってもよい。
【0074】
「医薬組成物」は、1種又は複数種の本願に記載される化合物又はその生理学的/薬学的に許容される塩又はプロドラッグと、生理学的/薬学的に許容されるベクター及び賦形剤などの他の化学成分とを含む混合物を示す。医薬組成物は、生体への投与を促進し、活性成分の吸収に寄与してさらに生物活性を発揮するためのものである。本願において、「医薬組成物」及び「製剤」は、入れ替えて使用されてもよい。
【0075】
本開示に記載される医薬組成物の溶液形態は、特に説明のない限り、その中の溶媒はいずれも水である。
【0076】
「凍結乾燥製剤」は、液体若しくは溶液形態の医薬組成物又は溶液製剤を真空下で凍結乾燥するステップの後に得られた製剤又は医薬組成物を示す。
【0077】
本願に使用される「約」又は「ほぼ」という用語は、数値が当業者により測定される具体値の許容可能な誤差範囲にあることを意味し、上記数値部分は、如何に計測又は測定するか(即ち、計測システムの限度)によって決められる。例えば、この分野での各回の実行において「約」は、1以内又は1を超えた標準差を意味してもよい。或いは、「約」又は「基本的に含む」は、多くとも±20%の範囲を意味してもよく、例えば、約5.5のpHは、pH5.5±1.1を意味する。さらに、特に生物学的システム又は過程について、当該用語は、多くとも1桁又は数値の多くとも5倍を意味してもよい。特に説明のない限り、具体値が本願及び特許請求の範囲に現れる場合、「約」又は「基本的に含む」の意味は、当該具体値の許容可能な誤差範囲内にあると仮定すべきである。
【0078】
本開示に記載される医薬組成物は、安定的な効果を達成することができ、即ち、その中の抗体が貯蔵後に基本的にその物理的安定性及び/又は化学的安定性及び/又は生物学的活性を保持しており、好ましくは、医薬組成物は貯蔵後に、基本的にその物理的・化学的安定性及びその生物学的活性を保持している。貯蔵期間は、一般的に医薬組成物の所定の保存期間によって選択される。現在、タンパク質の安定性を測定する分析技術は複数種あり、所定温度で、所定期間貯蔵した後の安定性を測定することができる。
【0079】
安定した薬物抗体製剤は、冷蔵温度(2~8℃)で少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも1年間、最大2年間も保存した場合に、顕著な変化が認められない製剤である。また、安定した液体製剤は、25℃を含む温度で1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、又は40℃で1ヶ月を含む期間保存した後、所望の特徴を示している液体製剤を含む。安定性の典型的な許容可能な基準は、SEC-HPLCによって測定され、通常、約10%を超えず、例えば、約5%を超えない抗体モノマーが分解されることである。視覚的分析により、薬物抗体製剤は無色であるか、又は透明からやや乳白色である。上記製剤の濃度、pH及び重量モル浸透圧濃度は、変化が±10%を超えない。通常、約10%を超えず、例えば、約5%を超えない切断が見られ、通常、約10%を超えず、例えば、約5%を超えない凝集が形成される。
【0080】
色及び/又は透明度を目視で検査したところ、又はUV光散乱、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及び動的光散乱(DLS)により測定したところ、抗体が顕著な凝集の増加、沈殿及び/又は変性を示さない場合、上記抗体は、薬物製剤において「その物理的安定性を保持している」とする。タンパク質の配座の変化は、蛍光分光法(タンパク質の三次構造を確定するもの)により、及びFTIR分光法(タンパク質の二次構造を確定するもの)により評価されてもよい。
【0081】
抗体が顕著な化学的変化を示さない場合、上記抗体は、薬物製剤において「その化学的安定性を保持している」とする。化学的に形態が変化されたタンパク質を検出・定量することにより、化学的安定性を評価することができる。タンパク質の化学構造を常に変化させる分解プロセスは、加水分解又は切断(サイズ排除クロマトグラフィー及びSDS-PAGEなどの方法により評価される)、酸化(質量分析法又はMALDI/TOF/MSと組み合わせるペプチドマッピングなどの方法により評価される)、脱アミド化(イオン交換クロマトグラフィー、キャピラリー等電点電気泳動、ペプチドマッピング、イソアスパラギン酸の測定などの方法により評価される)及び異性化(イソアスパラギン酸の含有量の測定、ペプチドマッピングなどにより評価される)を含む。
【0082】
所定の期間における抗体の生物活性が薬物製剤の調製時に示された生物活性の所定範囲にあると、上記抗体は、薬物製剤において「その生物活性を保持している」とする。抗体の生物活性は、例えば、抗原結合測定によって決定することができる。
【0083】
本開示に使用されるアミノ酸の3文字コードと1文字コードは、J.biol.chem、243、p3558(1968)に記載された通りである。
【0084】
本開示に係る「抗体」とは、免疫グロブリンであり、天然完全抗体は2本の同じ重鎖と2本の同じ軽鎖が鎖間ジスルフィド結合により連結されてなるテトラペプチド鎖構造である。免疫グロブリンは、重鎖定常領域のアミノ酸組成と配列順序が異なるので、その抗原性も異なる。これにより、免疫グロブリンは、5種類、又は、免疫グロブリンのアイソタイプと呼ばれるIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEに分けることができ、その対応する重鎖は、それぞれμ鎖、δ鎖、γ鎖、α鎖及びε鎖である。同一種類のIgは、そのヒンジ領域のアミノ酸組成及び重鎖ジスルフィド結合の数と位置の違いによって、さらに異なるサブクラスに分けることができ、例えば、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4に分けることができる。軽鎖は、定常領域によって、κ鎖又はλ鎖に分けられる。5種類のIgのそれぞれは、κ鎖又はλ鎖を有してもよい。
【0085】
抗体重鎖及び軽鎖は、N末端に近い約110個のアミノ酸の配列の変化が大きくて、可変領域(Fv領域)となり、C末端に近い残りのアミノ酸配列が比較的に安定的で、定常領域となる。可変領域は、3つの超可変領域(HVR)と、配列が比較的に保存的である4つの骨格領域(FR)とを含む。3つの超可変領域は、抗体の特異性を決定し、相補性決定領域(CDR)とも称される。それぞれの軽鎖可変領域(LCVR)及び重鎖可変領域(HCVR)は、3つのCDR領域と、4つのFR領域とからなり、アミノ末端からカルボキシ末端へ、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配列される。軽鎖の3つのCDR領域は、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を指し、重鎖の3つのCDR領域は、HCDR1、HCDR2及びHCDR3を指す。本開示に記載される抗体又は抗原結合断片のLCVR領域及びHCVR領域のCDRアミノ基酸残基は、数量と位置において既知のKabat番号付け規則(LCDR1-3、HCDR2-3)に適合し、又はkabatとchothia番号付け規則(HCDR1)に適合する。
【0086】
本開示の抗体は、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、例えばヒト化抗体を含む。
【0087】
「マウス抗体」という用語は、本開示において、この分野での知識と技術により調製されたヒトANGPTL3に対するモノクローナル抗体である。調製時に、ANGPTL3抗原を試験対象に注射した後、所望の配列又は機能特性を有する抗体を発現したハイブリドーマを分離する。本開示の一選択的な実施形態において、上記マウス抗ANGPTL3抗体又はその抗原結合断片は、マウスκ、λ鎖又はその変異体の軽鎖定常領域をさらに含み、或いは、マウスIgG1、IgG2、IgG3、IgG4又はその変異体の重鎖定常領域をさらに含んでもよい。
【0088】
「キメラ抗体(chimeric antibody)」という用語は、異種(例えば、マウス)抗体の可変領域を抗体(例えば、ヒト抗体)の定常領域と融合してなる抗体であり、異種抗体により誘発される免疫応答反応を低減することができる。キメラ抗体、例えば、ヒトマウスキメラ抗体を作成するには、まず、マウス特異的モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを作成し、そしてマウスハイブリドーマ細胞から可変領域遺伝子をクローンニングし、さらに、必要に応じてヒト抗体の定常領域遺伝子をクローンニングし、マウス可変領域遺伝子とヒト定常領域遺伝子とをキメラ遺伝子になるように連結した後、発現ベクターに挿入し、最後に真核細胞系又は原核細胞系においてキメラ抗体分子を発現する。本開示の一選択的な実施形態において、上記抗ANGPTL3キメラ抗体の抗体軽鎖は、ヒトκ、λ鎖又はその変異体の軽鎖定常領域をさらに含む。上記ANGPTL3キメラ抗体の抗体重鎖は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4又はその変異体の重鎖定常領域をさらに含み、例えば、ヒトIgG1、IgG2又はIgG4重鎖定常領域を含み、或いはアミノ酸変異(例えば、L234A及び/又はL235A変異、及び/又はS228P変異)のIgG1、IgG2又はIgG4変異体を使用する。
【0089】
「ヒト化抗体(humanized antibody)」という用語は、CDR移植抗体(CDR-grafted antibody)とも呼ばれ、異種(例えば、マウス)のCDR配列をヒトの抗体可変領域フレームワーク、即ち、異なる種類のヒト生殖細胞系の抗体フレームワーク配列に移植して発生された抗体を指す。キメラ抗体が大量のマウスタンパク質成分を持つことにより誘導された異種反応性を克服することができる。このようなフレームワーク配列は、生殖細胞系抗体遺伝子配列を含む共通DNAデータベース又は開示された参考文献から取得することができる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系DNA配列は、「VBase」ヒト生殖細胞系配列データベース(インターネットwww.mrccpe.com.ac.uk/vbaseで取得可能)、及びKabat、E.A.et al.、1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版で見出すことができる。免疫原性の低下に伴う活性の低下を回避するために、上記ヒト抗体可変領域フレームワーク配列に対して最も少ない逆変異又は復帰変異を行うことにより、活性を保つことができる。本開示のヒト化抗体は、さらに酵母菌で提示される、CDRに対して親和性成熟変異を行ったヒト化抗体も含む。
【0090】
「ヒト抗体」及び「ヒト化抗体」という用語は、入れ替えて使用されてもよく、1つ又は複数の可変領域及び定常領域がヒト免疫グロブリン配列に由来することを指す。その一選択的な形態では、いずれの可変領域及び定常領域もヒト免疫グロブリン配列に由来するものであり、即ち、「完全ヒト化抗体」又は「全ヒト抗体」である。これらの抗体は様々な方法により調製して得られるが、ファージディスプレイ法により、ヒトPBMC、脾臓、リンパ節組織からB細胞を分離して、天然単鎖ファージヒト抗体ライブラリーを構築して、或いはヒト抗体軽重鎖を発現できる組換えマウスを免疫することでスクリーニングして得られた抗体を含む。本開示のヒト抗体は、ヒト抗体を基に1つ又は複数のアミノ酸変異により得られた、依然として目標抗原に結合する抗体をさらに含む。
【0091】
本開示の「抗体」は、全長抗体の他に、抗原に結合可能な抗原結合断片を含む。
【0092】
「抗原結合断片」又は「機能断片」という用語は、抗原(例えば、ANGPTL3)に特異的に結合する能力が保たれた抗体の1つ又は複数の断片である。全長抗体の断片により抗体の抗原結合機能を果たすことができることが示されている。「抗原結合断片」という用語に含まれる結合断片の実例は、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる1価断片であるFab断片と、(ii)ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む2価断片であるF(ab’)断片と、(iii)VHとCH1ドメインからなるFd断片と、(iv)抗体の単アームのVHとVLドメインからなるFv断片と、(v)VHとVLにより鎖間ジスルフィド結合で形成された安定的な抗原結合断片であるdsFvと、(vi)scFv、dsFv、Fabなどの断片を含む二重抗体、二重特異性抗体及び多重特異性抗体と、を含む。なお、Fv断片は、2つのドメインVL及びVHが分離した遺伝子でコードされるが、組換え法により、合成されたリンカーでそれらを連結することで、その中のVL及びVH領域がペアになって1価分子を形成する単一のタンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)と呼ばれ、例えば、Bird et al.(1988)Science242:423~426、及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci USA85:5879~5883を参照)として産生することができる。このような単鎖抗体も、抗体の「抗原結合断片」という用語に含まれる。このような抗体断片は、当業者に知られている通常の技術により得られ、且つ、完全抗体と同じように、断片が機能性によってスクリーニングされる。抗原結合部分は、組換えDNA技術により、又は、完全な免疫グロブリンを酵素的若しくは化学的に切断することにより産生することができる。抗体は、異なるアイソタイプの抗体であってもよく、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4アイソフォーム)、IgA1、IgA2、IgD、IgE又はIgM抗体である。
【0093】
本開示に記載される変異配列における「変異」は、「復帰変異」、「保存的修飾」又は「保存的置き換え又は置換」を含むが、これらに限定されない。本開示に記載される「保存的修飾」又は「保存的置き換え又は置換」は、類似の特徴(例えば、電荷、側鎖の大きさ、疎水性/親水性、主鎖の立体配座や剛性など)を有する他のアミノ酸でタンパク質中のアミノ酸を置換することで、タンパク質の生物学的活性を変えずに頻繁に変化可能にすることを意味する。当業者に知られているように、一般的に、ポリペプチドの非必須領域における単一のアミノ酸置換によって、基本的に生物学的活性を変えることはない(例えば、Watson et al.(1987)Molecular Biology of the Gene、The Benjamin/Cummings Pub.Co.、第224ページ、(第4版)を参照)。また、構造又は機能が類似したアミノ酸の置換は、生物学的活性を破壊する可能性が低い。
【0094】
本開示に記載される「変異配列」は、本開示のヌクレオチド配列及び/又はアミノ酸配列に対して適当な置換、挿入や欠失などの変異修飾を行った場合に、得られた本開示のヌクレオチド配列及び/又はアミノ酸配列と異なる百分率の配列同一性程度を有するヌクレオチド配列及び/又はアミノ酸配列を指す。本開示に記載される配列同一性は、少なくとも85%、90%又は95%、例えば、少なくとも95%であってもよい。非限定的な実施例は、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%を含む。2つの配列同士の配列比較及び同一性の百分率測定は、National Center For Biotechnology Instituteのホームページから取得可能なBLASTN/BLASTPアルゴリズムのデフォルト設定により行うことができる。
【0095】
「配列同一性」又は「配列相同性」はアミノ酸配列に使用される場合、2つのタンパク質又はポリペプチド間の配列類似性を指す。2つの比較される配列における位置がいずれも同じアミノ酸残基に占められる場合、例えば、2つのポリペプチドの1つの位置が同一のアミノ酸残基に占められる場合、上記分子は当該位置で相同である。配列同一性百分率及び配列類似性百分率を決定するのに適したアルゴリズムの実例は、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズムであり、それらは、それぞれAltschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403~410及びAltschul et al.(1977)Nucleic Acids Res.25:3389~3402に記載されている。BLAST分析を実行するためのソフトウエアは、米国国立生物工学情報センターから公的に入手可能である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。
【0096】
従来技術においてよく知られている抗体及び抗原結合断片の産生・精製方法は、例えば、コールド・スプリング・ハーバーの抗体実験技術マニュアルの5章~8章及び15章の通りである。本開示に記載される抗体又は抗原結合断片は、遺伝子工学的方法により、非ヒト由来のCDR領域に1つ又は複数のヒト由来のFR領域が加えられる。ヒトFR生殖細胞系配列は、IMGTヒト抗体可変領域生殖細胞系遺伝子データベースとMOEソフトウエアをアラインメントすることにより、ImMunoGeneTics(IMGT)のホームページであるhttp://imgt.cines.frから得るか、又は免疫グロブリン雑誌である2001ISBN012441351から得ることができる。
【0097】
本開示に係る工学的な抗体又は抗原結合断片は、通常の方法により調製・精製することができる。例えば、重鎖及び軽鎖をコードするcDNA配列は、クローンニングしてGS発現ベクターに組換えることができる。組換えた免疫グロブリン発現ベクターは、CHO細胞を安定的にトランスフェクションすることができる。さらに好ましい従来技術の一つとして、哺乳類発現系は、特にFc領域の高度に保存的なN末端部位において、抗体のグリコシル化を引き起こすことになる。ヒトCD40に特異的に結合する抗体を発現することにより、安定的なクローンが得られる。陽性のクローンは、バイオリアクターの無血清培地において培養を拡大することで、抗体を産生する。抗体が分泌された培養液は、通常の技術により精製することができる。例えば、調整された緩衝液を含むA又はG Sepharose FFカラムで精製が行われる。非特異的に結合した成分を洗い流す。さらに、pH勾配法により、結合した抗体を溶離し、SDS-PAGEで抗体断片を検出し、収集する。抗体は、通常の方法によりろ過濃縮することができる。可溶性の混合物及びポリマーは、分子ふるい、イオン交換などの通常の方法により除去されてもよい。得られた生成物は、直ちに-70℃などで冷凍し、又は凍結乾燥しなければならない。
【0098】
「投与」及び「処理」は、動物、ヒト、実験の対象、細胞、組織、器官や生物流体に適用される場合に、外因性薬剤、治療剤、診断薬又は組成物と、動物、ヒト、対象、細胞、組織、器官や生物流体との接触を意味する。「投与」及び「処理」は例えば、治療、薬物動態、診断、研究及び実験方法を意味してもよい。細胞の処理は、試薬の細胞との接触、及び試薬の流体との接触を含み、ここで、上記流体は細胞と接触する。「投与」及び「処理」は、また、試薬、診断、結合組成物により、又は別種の細胞を通じて、体外及びインビトロで例えば細胞を処理することを意味する。「処理」はヒト、獣医学又は研究対象に適用される場合に、治療的処理、予防又は予防的措置、研究と診断的応用を意味する。
【0099】
「治療」は、例えば、本開示のいずれか1つの結合化合物の組成物を含む経口又は外用治療剤を対象に与えることを意味し、上記対象は1種又は複数種の疾患症状を有するが、既知の上記治療剤は、これらの症状に対して治療作用を有する。通常、治療を受ける対象又はグループには、1種又は複数種の疾患症状を効果的に緩和する量で治療剤を与えることにより、これらの症状の解消を誘導し、又は臨床的に測定可能な任意の程度まで進行しないようにこれらの症状を抑制する。いずれかの具体的な疾患症状を効果的に緩和する治療剤の量(「治療有効量」とも呼ばれる)は、対象の疾患状態、年齢と体重、及び薬剤の対象に必要な治療効果を発生させる能力などの複数の要因によって、変化することができる。当該症状の重症度や進行状況の評価に医者や他のプロのヘルスケアプロバイダによく用いられる任意の臨床的検出方法により、疾患症状が低減されたか否かを評価することができる。本開示の実施形態(例えば、治療方法又は製品)は、それぞれの目標疾患症状の緩和において無効な可能性があるが、この分野で知られている任意の統計学的検定方法、例えばStudent t検定、カイ二乗検定、Mann及びWhitneyによるU検定、Kruskal-Wallis検定(H検定)、Jonckheere-Terpstra検定とWilcoxon検定により、統計学的に有意な数の対象において目標疾患症状を低減可能なことが確認される。
【0100】
「有効量」は、医学的疾患の症状又は病状の改善又は予防に十分な量を含む。有効量は、さらに、診断の許容又は促進に十分な量を指す。特定の対象又は獣医学的対象に使用される有効量は、例えば、治療すべき病状、対象の全体的健康状態、投与の方法や経路と用量、及び副作用の重症度といった要因によって変化することができる。有効量は、顕著な副作用又は毒性作用を回避する最大用量又は投与計画であってもよい。
【0101】
「Tm値」とは、タンパク質の熱変性温度、即ち、タンパク質の半分がアンフォールディングした場合の温度であり、この場合、タンパク質の空間構造が破壊されたので、Tm値が高いほど、タンパク質の熱安定性が高くなる。
【0102】
実施例
以下、実施例と合わせて本開示をさらに説明するが、これらの実施例は本開示の範囲を限定するものではない。本開示の実施例において具体的な条件が明記されていない実験方法は、一般的に、例えばコールド・スプリング・ハーバーの抗体技術実験マニュアル、分子クローニングマニュアルなどの通常の条件、或いは原料又は商品メーカーにより提案された条件に従う。具体的な供給源が明示されていない試薬は、市販される通常の試薬である。
【0103】
実施例1、ANGPTL3抗原の設計及び発現
ヒトANGPTL3タンパク質(Uniprot番号:Q9Y5C1)、マウスANGPTL3タンパク質(Uniprot番号:Q9R182)、カニクイザルANGPTL3タンパク質(Uniprot番号:A0A2K5UDC5)、ラットANGPTL3タンパク質(Uniprot番号:F7FHP0)を本開示ANGPTL3のテンプレートとして、本開示に係る抗原及び検出用タンパク質を設計し、ANGPTL3タンパク質を基に異なるタグを融合し、それぞれpTT5ベクター(Biovector、Cat#:102762)にクローニングし、293細胞で一過性トランスフェクションして発現してから、精製し、本開示に係る抗原及び検出用タンパク質を得た。
【0104】
1、ヒト全長ANGPTL3:ヒト-ANGPTL3(17-460)-Hisであり、免疫及び検出に利用することができ、そのアミノ酸配列が下記の通りである。
【化1】
注記:一重下線部分はシグナルペプチド配列であり、イタリック体部分はHis配列であり、ボールド体部分はヒトANGPTL3全長タンパク質の17~460番目のアミノ酸である。
【0105】
2、ヒトANGPTL3細胞外領域:ヒトANGPTL3(17-170)-Flag-Hisであり、免疫及び検出に利用することができ、そのアミノ酸配列が下記の通りである。
【化2】
注記:一重下線部分はシグナルペプチドであり、二重下線部分はリンカーであり、イタリック体部分はFlag及びHisであり、ボールド体部分はヒトANGPTL3全長タンパク質の17~170番目のアミノ酸である。
【0106】
3、ヒトANGPTL3細胞外領域(ヒトANGPTL3(17-170))とマウスIgG2aFc部分(略語:mFc)との融合タンパク質:ヒトANGPTL3(17-170)-mFcであり、検出に利用することができ、そのアミノ酸配列が下記の通りである。
【化3】
注記:下線部分はシグナルペプチドであり、イタリック体部分はマウスIgG2aFcであり、ボールド体部分はヒトANGPTL3全長タンパク質の17~170番目のアミノ酸である。
【0107】
4、ヒトANGPTL3細胞外領域(ヒトANGPTL3(17-220))とマウスIgG2aFc部分との融合タンパク質:ヒトANGPTL3(17-220)-mFcであり、免疫及び検出に利用され、そのアミノ酸配列が下記の通りである。
【化4】
注記:下線部分はシグナルペプチドであり、イタリック体部分はマウスIgG2aFcであり、ボールド体部分はヒトANGPTL3全長タンパク質の17~220番目のアミノ酸である。
【0108】
5、マウス全長ANGPTL3:マウスANGPTL3(17-455)-Hisであり、免疫及び検出に利用され、そのアミノ酸配列が下記の通りである。
【化5】
注記:下線部分はシグナルペプチドであり、イタリック体部分はHis配列であり、ボールド体部分はマウスANGPTL3全長タンパク質の17~455番目のアミノ酸である。
【0109】
6、マウスANGPTL3細胞外領域(mouse-ANGPTL3(17-220))とマウスIgG2aFc部分との融合タンパク質:マウスANGPTL3(17-220)-mFcであり、免疫に利用され、そのアミノ酸配列が下記の通りである。
【化6】
注記:下線部分はシグナルペプチドであり、イタリック体部分はマウスIgG2aFcであり、ボールド体部分はマウスANGPTL3全長タンパク質の17~220番目のアミノ酸である。
【0110】
7、カニクイザル全長ANGPTL3:カニクイザルANGPTL3(17-460)-Hisであり、検出に利用され、そのアミノ酸配列が下記の通りである。
【化7】
注記:下線部分はシグナルペプチドであり、イタリック体部分はHis配列であり、ボールド体部分はカニクイザルANGPTL3全長タンパク質の17~460番目のアミノ酸である。
【0111】
8、ラット全長ANGPTL3:ラットANGPTL3(17-455)-Hisであり、検出に利用され、そのアミノ酸配列が下記の通りである。
【化8】
注記:下線部分はシグナルペプチドであり、イタリック体部分はHis配列であり、ボールド体部分はラットANGPTL3全長タンパク質の17~455番目のアミノ酸である。
【0112】
実施例2、ANGPTL3抗原タンパク質、ハイブリドーマ抗体、組換え抗体の精製
2.1 Hisタグ付きの組換えタンパク質又はFlag-hisタグ付きの組換えタンパク質の精製
細胞発現試料を高速で遠心分離して細胞及び不溶性不純物を除去し、上清を収集して、最終濃度が5mMとなるようにイミダゾールを加えた。5mMのイミダゾールを含むPBS溶液によりニッケルカラムを平衡し、2~5倍のカラム体積で洗浄した。細胞上清をカラムにかけた。A280読取値が基線に低減されるまで、5mMのイミダゾールを含むPBS溶液によりカラムを洗浄した。次に、PBS+10mMのイミダゾールでクロマトグラフィーカラムを洗浄し、非特異的結合したヘテロタンパク質を除去し、流出液を収集した。さらに、300mMのイミダゾールを含むPBS溶液により標的タンパク質を溶離し、溶離ピークを収集した。
【0113】
収集された溶離液をSuperdexゲル濾過カラムによりさらに精製し、別々のチューブに収集した。得られた試料をSDS-PAGE、ペプチドマッピング、LC-MSにより正確であると同定した後、分注して使用に備えた。Hisタグ付きの組換えタンパク質又はFlag-hisタグ付きの組換えタンパク質を得た。
【0114】
2.2 ハイブリドーマ抗体又はmFcタグ付きの組換えタンパク質の精製
試料を高速で遠心分離して細胞及び不溶性不純物を除去し、上清を残した。1×PBSによりProtein Aアフィニティーカラムを平衡し、2~5倍のカラム体積で洗浄した。遠心分離された細胞発現上清試料をカラムにかけた。A280読取値が基線に低減されるまで、1×PBSによりカラムを洗浄した。1×PBSによりカラムを洗浄した。0.1Mの酢酸(pH3.5~4.0)で標的タンパク質を溶離し、収集してから、直ちに1MのTris-HCl(pH7.0)でタンパク質をpH値が中性になるように調整して溶離し、最後に透析又は濃縮して1×PBS緩衝液中に換液した。試料を収集し、電気泳動、ペプチドマッピング、LC-MSにより正確であると同定してから、分注して使用に備えた。mFcタグ付きの組換えタンパク質又はハイブリドーマ抗体を得た。
【0115】
2.3 抗体、Fcタグ付きの組換えタンパク質の精製
試料を高速で遠心分離して細胞及び不溶性不純物を除去し、上清を残した。1×PBSによりProtein Gアフィニティーカラムを平衡し、2~5倍カラム体積で洗浄した。遠心分離された細胞発現上清試料をカラムにかけた。A280読取値が基線に低減されるまで、1×PBSによりカラムを洗浄した。1×PBSによりカラムを洗浄した。酢酸(pH3.0)で標的タンパク質を溶離し、収集してから、すぐに1MのTris-HCl(pH7.0)でタンパク質をpH値が中性となるように調整して溶離し、最後に透析又は濃縮して1×PBS緩衝液中に交換した。試料を収集し、電気泳動、ペプチドマッピング、LC-MSにより正確であると同定した後、分注して使用に備えた。抗体又はhFcタグ付きの組換えタンパク質を得た。
【0116】
実施例3、抗ANGPTL3抗体の調製
3.1 ファージライブラリーによる抗ANGPTL3ヒト抗体のスクリーニング
ヒト化ファージ単鎖抗体ライブラリーを包装・濃縮し、ファージライブラリー(1012~1013/pfu)を2%のMPBS(2%脱脂粉乳を含むPBS)1mLに懸濁させ、100μLのDynabeads(登録商標)M-280ストレプトアビジン(Invitrogen Cat No.11206D)を加え、ターンテーブルに置いて繰り返して反転し、室温で1時間ブロッキングした。チューブを磁気ラックに2min置き、Dynabeadsを除去し、ファージライブラリーを新しいチューブに移した。ブロッキングされたファージライブラリーにビオチンで標識したヒトANGPTL3(17-460)-His 2μg/mLを加え、ターンテーブルに置いて1時間繰り返して反転した。同時に100μLのDynabeadsを取って2%のMPBS 1mLに懸濁させ、ターンテーブルに置いて繰り返して反転し、室温で1hブロッキングした。チューブを磁気ラックに2min置き、ブロッキング液を吸い取った。ブロッキングされたDynabeadsをファージライブラリーとヒトANGPTL3(17-460)-Hisとの混合液に加え、ターンテーブルに置いて15分間繰り返して反転した。チューブを磁気ラックに2min置き、混合液を吸い取った。1mLのPBST(0.1%Tween-20を含むPBS)でDynabeadsを10回洗浄し、さらに1mg/mLのトリプシン(Sigma Cat No.T1426-250MG)0.5mLを加え、ターンテーブルに置いて15分間繰り返して反転しながらインキュベートし、溶離し、溶離されてきたファージを大腸菌TG1コーティングプレートに感染させ、ランダムで単クローンを選択してファージELISAに利用した。
【0117】
クローンを96ウェルのディープウェルプレート(Nunc Cat No.260251)に接種し、37℃で16~18h培養した。少量取り、OD600が約0.5に達するまで、別の96ウェルのディープウェルプレートに接種し、M13K07ヘルパーファージ(NEB Cat No.N0315S)を加えて包装した。4000gで10分間遠心分離して菌細胞を除去し、培養液を吸い取ってANGPTL3結合のELISA検出を行った。陽性クローン菌種を種として凍結保存し、シークエンシング社に送ってシークエンシングした。ここで、測定された陽性クローンP8の対応するアミノ酸配列は下記の通りである。
【0118】
>P8重鎖可変領域配列:
【化9】
>P8軽鎖可変領域配列:
【化10】
備考:配列における下線部分はKabat番号付けシステムによって決定されたCDR配列であり、イタリック体はFR配列である。
【0119】
3.2 抗ANGPTL3抗体の変異
P8抗体の3次元構造を基に、P8重鎖可変領域の55番目のアミノ酸残基(自然順番号)をDからEに変異させ、P8軽鎖可変領域の34番目のアミノ酸残基(自然順番号)をGからVに変異させ、新しい抗体分子P8Bを得て、P8Bのアミノ酸配列は下記の通りである。
【0120】
>P8B重鎖可変領域配列:
【化11】
>P8B軽鎖可変領域配列:
【化12】
備考:配列における下線部分はKabat番号付けシステムによって決定されたCDR配列であり、イタリック体はFR配列である。
【0121】
【表1】
【0122】
3.3 抗ANGPTL3抗体の構築及び発現
プライマーPCRを設計して抗体VH/VK遺伝子断片を組立て、さらに発現ベクターpHr(シグナルペプチド及び定常領域付きの遺伝子(CH1-FC/CL)断片)と相同組換えを行い、抗体全長発現ベクターVH-CH1-FC-pHr/VK-CL-pHrを構築した。抗体の重鎖定常領域はヒトIgG1、IgG2、IgG4及びその変異体の定常領域から選ばれてもよく、軽鎖定常領域はヒトκ、λ鎖又はその変異体の軽鎖定常領域から選ばれてもよい。例示的に、抗体の重鎖定常領域は配列が配列番号19で示されるヒトIgG4-YTE変異体から選ばれ、軽鎖定常領域は配列が配列番号20で示されるヒトκ鎖の定常領域から選ばれる。
【0123】
>ヒトIgG4-YTE変異体重鎖定常領域配列:
【化13】
>ヒトκ鎖軽鎖定常領域配列:
【化14】
例示的に、上記軽鎖/重鎖定常領域は上記P8Bの可変領域と組合せて完全な抗ANGPTL3抗体であるP8BGを形成し、抗体の軽鎖/重鎖配列は下記の通りである。
【0124】
>P8BG重鎖配列:
【化15】
>P8BG軽鎖配列:
【化16】
【0125】
実施例4、抗ANGPTL3抗体のインビトロ評価
4.1 ANGPTL3タンパク質に結合する抗ANGPTL3抗体のELISA実験
抗ANGPTL3抗体は、ANGPTL3タンパク質に結合することで、ANGPTL3タンパク質の少なくとも1つの活性を抑制又は阻害した。ELISA実験により、抗ANGPTL3抗体のANGPTL3抗原への結合活性を検出した。ANGPTL3タンパク質(ヒトANGPTL3(17-170)-mFc)は、マイクロプレートで被覆されたヒツジ抗マウスIgGに結合することで、96ウェルマイクロプレートに固定され、抗体を加えた後のシグナルの強さによって抗体のANGPTL3への結合活性を判断した。同時にビオチン標識試薬キット(東仁化学、LK03)により標識されたHISタグ付きのANGPTL3タンパク質(マウスANGPTL3(17-455)-His、カニクイザルANGPTL3(17-460)-His、ラットANGPTL3(17-455)-His)は、マイクロプレートで被覆されたストレプトアビジンに結合することで、96ウェルマイクロプレートに固定され、抗体を加えた後のシグナルの強さによって抗体のANGPTL3への結合活性を判断した。
【0126】
pH7.4のPBS(上海源培、B320)緩衝液でヒツジ抗マウスIgG(Sigma、M3534-1ML)を2μg/mLの濃度まで希釈し、50μL/ウェルの体積で96ウェルマイクロプレート(Corning、CLS3590-100EA)に加え、37℃のインキュベータに3時間置き、又は4℃で一晩(16~18時間)置いた。液体を捨てた後、PBSで希釈された5%脱脂乳(BD、232100)ブロッキング液を250μL/ウェルで加え、37℃のインキュベータで3時間インキュベートし、又は4℃で一晩(16~18時間)置いてブロッキングした。ブロッキング完了後に、ブロッキング液を捨て、PBST緩衝液(0.05%ツィーン-20を含むpH7.4のPBS)でプレートを3回洗浄した後、試料希釈液(1%BSAを含むpH7.4のPBS)で0.5μg/mLに希釈されたヒトANGPTL3(17-170)-mFc(配列が配列番号3で示される)を50μL/ウェルで加え、37℃のインキュベータに置いて2時間インキュベートした。インキュベート完了後に、マイクロプレートにおける反応液を捨て、PBSTでプレートを3回洗浄した後、試料希釈液で希釈された様々な濃度の測定待ちの抗体を50μL/ウェルで加え、37℃のインキュベータに置いて2時間インキュベートした。インキュベート完了後に、PBSTでプレートを3回洗浄し、試料希釈液で希釈されたヒツジ抗ヒト二次抗体(Jackson Immuno Research、109-035-003)を50μL/ウェルで加え、37℃で1時間インキュベートした。PBSTでプレートを3回洗浄した後、TMB発色基質(KPL、52-00-03)を50μL/ウェルで加え、室温で2~5分間(min)インキュベートし、MHSOを50μL/ウェルで加えて反応を停止させ、VersaMaxプレートリーダーにより450nmで吸収値を読み取り、抗ANGPTL3抗体のANGPTL3抗原タンパク質に対する結合のEC50値を算出した。実験の結果は表3に示されている。
【0127】
pH7.4のPBS(上海源培、B320)緩衝液でストレプトアビジン(Sigma、S4762-5MG)を3μg/mLの濃度に希釈し、50μL/ウェルの体積で96ウェルマイクロプレート(Corning、CLS3590-100EA)に加え、37℃のインキュベータに3時間置き、又は4℃で一晩(16~18時間)置いた。液体を捨てた後、PBSで希釈された5%脱脂乳(BD、232100)ブロッキング液を250μL/ウェルで加え、37℃のインキュベータで3時間インキュベートし、又は4℃で一晩(16~18時間)置いてブロッキングした。ブロッキング完了後に、ブロッキング液を捨て、PBST緩衝液(0.05%ツィーン-20を含むpH7.4のPBS)でプレートを3回洗浄した後、試料希釈液(1%BSAを含むpH7.4のPBS)で0.5μg/mLに希釈されてビオチンで標識されたマウスANGPTL3(17-455)-His(配列が配列番号5で示される)、カニクイザルANGPTL3(17-460)-His(配列が配列番号7で示される)、ラットANGPTL3(17-455)-His(配列が配列番号8で示される)を50μL/ウェルで加え、37℃のインキュベータに置いて2時間インキュベートした。インキュベート完了後に、マイクロプレートにおける反応液を捨て、PBSTでプレートを3回洗浄した後、試料希釈液で希釈された様々な濃度の測定待ちの抗体を50μL/ウェルで加え、37℃のインキュベータに置いて2時間インキュベートした。インキュベート完了後に、PBSTでプレートを3回洗浄した後、試料希釈液で希釈されてHRPで標識されたヒツジ抗マウス二次抗体(Jackson Immuno Research、115-035-003)又はヒツジ抗ヒト二次抗体(Jackson Immuno Research、109-035-003)又はマウスHRP/抗M13から複合された二次抗体(Sino Biological、Cat No.11973-MM05-100、ファージスクリーニングに利用される)を50μL/ウェルで加え、37℃で1時間インキュベートした。PBSTでプレートを3回洗浄した後、TMB発色基質(KPL、52-00-03)を50μL/ウェルで加え、室温で2~5分間(min)インキュベートし、MHSOを50μL/ウェルで加えて反応を停止させ、VersaMaxプレートリーダーにより450nmで吸収値を読み取り、抗ANGPTL3抗体のANGPTL3抗原タンパク質に対する結合のEC50値を算出した。実験の結果は表2に示されており、実験の結果によると、本開示の抗ANGPTL3抗体は、様々な種のANGPTL3タンパク質に結合することができる。
【0128】
【表2】
【0129】
4.2 抗ANGPTL3抗体のANGPTL3抗原タンパク質へのHTRF結合実験
HTRF実験は同様に、抗ANGPTL3抗体の抗原への結合活性を検出するために利用される。ビオチン標識試薬キット(東仁化学、LK03)により標識されたHISタグ付きのANGPTL3(ヒトANGPTL3(17-460)-His、マウスANGPTL3(17-455)-His、カニクイザルANGPTL3(17-460)-His、ラットANGPTL3(17-455)-His)がHTRF試薬Streptavidin-Tb cryptata(Cisbio、610SATLA)に結合し、抗体が加えられた後、抗体は、それぞれHTRF試薬Pab抗マウスIgG-XL665(Cisbio、61PAMXLA)及びアンジオポエチン様タンパク質3に結合することになり、シグナルの強さは、抗体のアンジオポエチン様タンパク質3への結合活性の判断に利用される。
【0130】
希釈液(1%BSAを含むpH7.4のPBS)により、ビオチンで標識したヒトANGPTL3(17-460)-His(配列が配列番号1で示される)、マウスANGPTL3(17-455)-His(配列が配列番号5で示される)、カニクイザルANGPTL3(17-460)-His(配列が配列番号7で示される)、ラットANGPTL3(17-455)-His(配列が配列番号8で示される)4μg/mLを調製し、5μL/ウェルで384ウェルプレート(PerkinElmer、optiplate-384)に加えた後、HTRF試薬Streptavidin-Tb cryptataとPab抗マウスIgG-XL665との混合液を5μL/ウェルで加え、最後に試料希釈液で希釈された様々な濃度の測定待ちの抗体を10μL/ウェルで加え、25℃で1時間インキュベートした。PHERAstar FS(BMG LabTECH)によりHTRFモジュールにおいて数値を読み取り、抗ANGPTL3抗体のアンジオポエチン様タンパク質3に対する結合のEC50値を算出した。実験の結果は表3に示されており、実施結果によると、本開示の抗体は、ヒト、マウス、カニクイザル、ラットなどの種のANGPTL3抗原に対していずれも良好な結合活性を有する。
【0131】
【表3】
【0132】
4.3 抗ANGPTL3抗体によるLPL酵素活性阻害実験
LPLの酵素活性検出実験は、ANGPTL3タンパク質のLPL酵素への阻害作用を遮断する抗ANGPTL3抗体の活性を検出するために利用される。
【0133】
希釈緩衝液(pH7.4のPBS+2mg/mLのBSA)でウシLPL(Sigma、L2254-5KU)を12.5単位となるように希釈し、25μL/ウェルで96ウェルプレート(Corning、3603)に加えてから、試料希釈液で希釈された様々な濃度の測定待ちの抗体を25μL/ウェルで加え、さらに濃度が27.6μg/mLであるANGPTL3タンパク質(ヒトANGPTL3(17-170)-Flag-His(配列が配列番号2で示される)、マウスANGPTL3(17-455)-His(配列が配列番号5で示される)、カニクイザルANGPTL3(17-460)-His(配列が配列番号7で示される)、ラットANGPTL3(17-455)-His(配列が配列番号8で示される)を25μL/ウェルで加え、振とう機にて96ウェルプレートを均一に振とうし、37℃のインキュベータにおいて30minインキュベートした。最後に希釈緩衝液で希釈された20μMの基質(Sigma、30058-10MG-F)を25μL/ウェルで加え、振とう機にて96ウェルプレートを均一に振とうし、37℃のインキュベータにおいて30minインキュベートした。Flexstation3プレートリーダーによりEx535/Em612で数値を読取った。Graphpad Prism 5ソフトウエアにより濃度及び対応する蛍光値データを処理して、IC50を算出した。実験の結果は表4に示されており、実施結果によると、本開示の抗体は良好なLPL酵素阻害作用を有する。
【0134】
【表4】
【0135】
4.4 ANGPTL3タンパク質に対する抗ANGPTL3抗体のBiacore検出実験
Biacoreにより、測定待ちの抗ANGPTL3抗体のヒト、サル、ラット及びマウスANGPTL3への親和性を測定した。方法は下記の通りである。
【0136】
それぞれProtein Aバイオセンサチップ(Cat.# 29127556、GE)により所定量の測定待ちの抗体を親和的に捕捉した後、チップの表面で一定濃度のヒト、サル、ラット及びマウスのANGPTL3抗原(ヒト-ANGPTL3(R&D、3829-AN)、マウスANGPTL3(17-455)-His(配列が配列番号5で示される)、カニクイザルANGPTL3(17-460)-His(配列が配列番号7で示される)、ラットANGPTL3(17-455)-His(配列が配列番号8で示される))を流した。Biacore T200機器により反応シグナルをリアルタイムで検出して、結合・解離曲線を得た。各サイクル解離が完了した後、pH1.5のグリシン-塩酸再生溶液(Cat.# BR-1003-54、GE)でバイオチップを洗浄して再生した。試験作動緩衝液は、1×HBS-EP緩衝溶液(Cat.# BR-1001-88、GE)である。試験で得られたデータをGE Biacore T200評価ソフトウエア3.0バージョンにより(1:1)Langmuirモデルでフィッティングし、親和性の値を得た。実験の結果は表5に示されており、実験の結果によると、本開示の抗ANGPTL3抗体は、ヒト、カニクイザル、ラット及びマウスのANGPTL3抗原に高親和性で結合することができる。
【0137】
【表5】
【0138】
実施例5、抗ANGPTL3抗体のラット体内における薬効評価
5.1 P8BG抗体のラット体内における脂質低下実験
実験用SDラットをラボ環境において1週間適応飼育し(4週齢のSDラット、SPF、約100g、雄、上海SLAC実験動物有限責任公司より購入、合格証明書番号:20170005013017、SCXK(滬)2017-0005)、12/12時間の明/暗周期で調節し、温度23±1℃、湿度40~50%で、動物にいずれも標準的な滅菌マウス用飼料を投与し、水や餌を自由に摂取させた。実験開始の7日前に、動物を4h断食させた後、眼窩から採血し、3500RPMで15min遠心分離し、血清を取った。ADVIA 2400化学システム(Siemens)により血清脂質濃度(トリグリセリド)を測定した。ラットをトリグリセリドレベルによって6群(非相関ホモヒトIgGタンパク質(hIgG、以下同様)を陰性対照群、Evinacumab(配列構造がWHO Drug Information、Vol.29、No.3、2015中のEvinacumab配列を参照)3.5mpk群、Evinacumab7mpk群、P8BG3.5mpk群、P8BG1.75mpk群、P8BG7mpk群とした)に分け、1群ラット6匹とし、皮下注射で1回投与し、注射後の1日目、5日目、9日目、13日目及び16日目に各群のラットを4時間断食させた後、採血して血清を分離し、ADVIA 2400化学システム(Siemens)により血清脂質濃度(トリグリセリド)を測定した。実験データを平均値±標準偏差(Mean±SEM)で示し、Graphpad Prism5ソフトウエアによりプロットし、TTESTにより統計的分析を行った。
【0139】
実験の結果は図1及表6に示す通りであり、陰性対照群と比べて、1日投与後に、各治療群はトリグリセリドが全て低下し、Evinacumab3.5mpk群を除き、他の各群はいずれも統計的に差があり、実験中において、P8BG7mpk群はトリグリセリドが最大83.7%低下し、P8BG3.5mpk群はトリグリセリドが最大81.8%低下し、P8BG1.75mpk群はトリグリセリドが最大68.7%低下し、5日投与後に、P8BG3.5mpk群、P8BG1.75mpk群、P8BG7mpk群は依然としてトリグリセリドの低下において統計的に有意差があるが、Evinacumab3.5mpk群、Evinacumab7mpk群は統計的に差がなく、9日投与後に、P8BG7mpk群とP8BG3.5mpk群は依然として統計的に有意差がある。これにより、同じ用量で、P8BGはEvinacumabと比べてトリグリセリド低下效果がより良くて持続的であることが示されている。また、実験中に、各群の動物は体重が正常である。
【0140】
【表6】
【0141】
(備考:Max Inh%は陰性対照群TGに対する最大脂質低下百分率を示し、mpkはmg/kgを示す。)
【0142】
5.2 高脂肪高コレステロールで飼育されたc57bl/6マウスにおける抗ANGPTL3抗体の血漿脂質濃度に対する体内効果の測定
c57bl/6マウスを5匹/ケージで飼育し(4週齢のc57bl/6マウス、SPF、約16~18g、雄、上海Cavens実験動物有限責任公司より購入、合格証明書番号:201913812、SCXK(蘇)2016-0010)、ラボ環境で適応性飼育を4週間行い、12/12時間の明/暗周期で調節し、温度23±1℃、湿度40~50%で、動物にいずれも一般的な飼料を与えて飼育し、水や餌を自由に摂取させた。事前採血の5日後に、一般的な飼料を高脂肪高コレステロール飼料(D12079B、江蘇省協同医薬生物工程有限責任公司より購入)に交換して、実験が終了するまでマウスを飼育した。実験開始の8日前に動物を断食させ、4時間断食後に眼窩から採血し、8000RPMで2min遠心分離し、血漿を収集した。ADVIA 2400化学システム(Siemens)により血漿脂質濃度を測定した。マウスをトリグリセリドレベルによって4群(hIgG陰性対照群、Evinacumab25mpk群、P8BG25mpk群、P8BG5mpk群)に分け、1群11匹とし、皮下投与し、週1回注射し、合計8回投与した。実験開始後の2週目、3週目、5週目、7週目、9週目、10週目と11週目に、各群のマウスを4時間断食させた後、眼窩から採血して血漿を収集した。ADVIA 2400化学システム(Siemens)により血漿脂質濃度(トリグリセリド(TG)、総コレステロール(TC)及びLDLコレステロール(LDL-C))を測定した。実験データを平均値±標準偏差(Mean±SEM)で示し、Graphpad Prism5ソフトウエアによりプロットし、TTESTにより統計的分析を行った。
【0143】
実験の結果は表7~表9及び図2~4に示す通りであり、hIgG陰性対照群と比べて、実験の2週間、3週間、5週間と7週間後に、P8BG25mpk群はTG、TC及びLDL-Cが全て顕著に低下し、Evinacumab25mpk及びP8BG5mpk群は実験の3週間、5週間と7週間後に、TG、TC及びLDL-Cが低下した。実験の9週間後に、hIgG陰性対照群と比べて、トリグリセリドが顕著に低下したものはP8BG25mpk群及びP8BG5mpk群の2群だけである。Evinacumab25mpk群と比べて、実験の2週目、3週目、9週目に、P8BG25mpk群はトリグリセリド及び総コレステロールが全て顕著に低下し、Evinacumab25mpk群と比べて、実験の2週目、9週目に、P8BG25mpk群はLDL-Cが顕著に低下した。1~11週目の全実験周期に、Evinacumab25mpk群はTGが最低40.5±2.3まで低下し、開始TGよりも32.60%低下したが、P8BG25mpk群はTGが最低21.1±1.3まで低下し、開始TGよりも64.90%低下した。これにより、P8BGはEvinacumabと比べて脂質低下效果がより良くて持続的であることが示されている。
【0144】
【表7】
(備考:max Inh%は開始TGに対する最大脂質低下百分率を示す)
【0145】
【表8】
(備考:Max Inh %は陰性対照群LDLに対する最大脂質低下百分率を示す)
【0146】
【表9】
(備考:Max Inh %は陰性対照群TCに対する最大脂質低下百分率を示す)
【0147】
5.3 APOEマウスにおける抗ANGPTL3抗体の血漿脂質濃度に対する体内効果の測定
APOEマウスを2匹/ケージで飼育し(8週齢のAPOEマウス、SPF、約22g、雄、上海Cavens実験動物有限責任公司より購入、合格証明書番号:201917260、SCXK(蘇)2016-0010)、ラボ環境で適応性飼育を4週間行い、12/12時間の明/暗周期で調節し、温度23±1℃、湿度40~50%で、動物にいずれも高脂肪飼料(D12108C)を与えて飼育し、水や餌を自由に摂取させた。実験開始の7日前に動物を断食させ、4時間(h)断食後に眼窩から採血し、8000RPMで2分間(min)遠心分離し、血漿を収集した。ADVIA 2400化学システム(Siemens)により血漿脂質濃度を測定した。マウスをトリグリセリドレベルによって5群(hIgG陰性対照群、Evinacumab10mpk群、Evinacumab5mpk群、P8BG10 mpk群、P8BG5mpk群)に分け、1群8匹であり、それぞれ皮下注射で1回投与し(各群の投与量は表6を参照)、投与後の1日目(d)、7日目及び11日目にそれぞれ、各群のマウスを4時間絶食させた後に眼窩から採血し、血漿を収集し、ADVIA2400化学システム(Siemens)により血漿脂質濃度(トリグリセリド、HDLコレステロール)を測定した。実験データを平均値±標準偏差(Mean±SEM)で示し、Graphpad Prism5ソフトウエアによりプロットし、TTESTにより統計的分析を行った。
【0148】
この実験の結果は図5、6及び表10に示す通りであり、hIgG陰性対照群と比べて、1d投与後に、各治療群はトリグリセリドが全て低下し、Evinacumab(10mpk)群はトリグリセリドが最低65.6±5.4mg/dLまで低下し、開始TG値よりも46.2%低下し、Evinacumab(5mpk)群はトリグリセリドが最低71.8±3.3mg/dLまで低下し、開始TG値よりも42.1%低下し、P8BG(10mpk)群はトリグリセリドが最低33.3±2.2mg/dLまで低下し、開始TG値よりも72.9%低下し、P8BG(5mpk)群はトリグリセリドが最低37.0±1.7mg/dLまで低下し、開始TG値よりも70.2%低下した。また、実験の結果によると、1日投与後に、P8BG10mpk群は血漿HDL-Cが向上し、Evinacumab10mpk群は血漿HDL-Cが低下したが、脂質低下実験において、通常、脂質低下と同時にHDL-Cを低下させることは望ましくない。
【0149】
【表10】
(備考:max Inh%は開始TGに対する最大脂質低下百分率を示す)
【0150】
実施例6、抗ANGPTL3抗体の薬物動態評価
6.1 抗ANGPTL3抗体のマウス体内における薬物動態実験
体重18~24gのC57BL/6マウス(浙江維通利華実験動物技術有限公司より購入)である。ラボ環境で適応性飼育を3日間以上行い、12/12時間の明/暗周期で調節し、温度16~26℃、相対湿度40~70%で、飼育期間に飼料や水を自由に摂取させた。実験開始の1日前に、C57BL/6マウスに番号を付け、ランダムで群分けし、1群3匹である。実験当日に、各群のマウスにそれぞれ静脈注射により被験薬P8BG及びEvinacumabを投与し、投与量は10mg/kgで、注射体積はいずれも5mL/kgである。
【0151】
投与群は、投与前及び投与後の5min、8h、1d、2d、4d、7d、10d、14d、21d、28dに全血0.1mLを採取し、抗凝固薬を加えず、採血後に4℃で30min静置し、1000gで15min遠心分離し、上清(血清)を取ってEPチューブに入れ、-80℃で保存した。
【0152】
ELISA方法により血清中の抗体濃度を検出し、Winnolinソフトウエアにより被験薬の薬物動態パラメータを算出した。得られた主な薬物動態結果は、表11及び図7に示されている。実験の結果によると、本開示のP8BG抗体は、マウス体内における半減期が陽性対照Evinacumabよりも高い。
【0153】
【表11】
(備考:AUC0-∞:血中濃度-時間曲線下面積、t1/2(h):半減期(時間単位)、t1/2(d):半減期(日単位)、i.v.:静脈内注射。)
【0154】
6.2 抗ANGPTL3抗体のカニクイザル体内における薬物動態評価
体重3~4kgのカニクイザル(広東前沿生物科技有限公司より購入)が使用された。動物を実験に移す前に、少なくとも14日間検疫及び飼養を行った。動物をステンレスケージで飼育し、各群は2匹以下/ケージである。動物飼育室の室温を18~26℃、相対湿度を40%~70%に制御し、明暗交互に12時間光照射した。実験過程において、動物に水を自由に摂取させた。生化学指標によってカニクイザル6匹をランダムで2群に分け、1群動物3匹である。各群にそれぞれ皮下注射により被験薬P8BG及びEvinacumabを投与し、投与量は10mg/kgで、注射体積は2mL/kgである。
【0155】
群分け後に動物を一晩断食させ、それぞれ投与前、投与開始後の1時間(h)、2h、4h、8h、12h、1日(d)、3d、5d、7d、10d、14d、21d、28d、35d、42d、49d及び56dに下肢静脈から約2mL採血し、分離ゲルを含む採血管に入れ、採血後に室温で30分間(min)静置し、1000gで15min遠心分離し、上清を取って2つの清潔なEP管に分注し、-70℃以下で一時的に保存した(採血後の2h以内に完了させた)。ELISA方法により血清中の抗体濃度を検出し、Winnolinソフトウエアにより被験薬の薬物動態パラメータを算出した。得られた主な薬物動態結果は、表12及び図8に示されている。実験の結果によると、本開示のP8BG抗体は、カニクイザル体内における半減期が陽性対照Evinacumabよりも高い。
【0156】
【表12】
(備考:AUC0-∞:血中濃度-時間曲線下面積、t1/2(h):半減期(時間単位)、t1/2(d):半減期(日単位)、sc.:皮下注射。)
【0157】
実施例7、例示的な抗体医薬組成物(製剤)の調製プロセス
ステップ1:抗ANGPTL3抗体及び安定剤で抗ANGPTL3抗体を含む製剤原液を調製し、ろ過した後にセンターコンソールによりサンプリングして無菌性を検出した。原液を0.22μmのPVDFろ材でろ過し、ろ液を収集した。
【0158】
ステップ2:充填量を調整して充填し(充填量と包装材は未定)、栓をして、それぞれ充填開始、充填中、充填終了時にサンプリングしてターコンソールにより充填量の差を検出した。
【0159】
ステップ3:蓋付け機のスイッチを入れ、アルミニウム蓋を施し、蓋を圧着した。
【0160】
ステップ4:目視により、製品に充填量が正確でないといった欠陥がないかを確認した。バイアル瓶のラベルを印刷し、貼り付け、カートンのラベルを印刷し、カートンを折り畳み、カートンに入れ、カートンのラベルを貼り付けた。
【0161】
実施例7~13に使用された抗ANGPTL3抗体はP8BG抗体であり、その重鎖配列が配列番号21で示され、軽鎖配列が配列番号22で示される。
【0162】
実施例8、抗ANGPTL3抗体製剤のpH値のスクリーニング
以下の緩衝液を調製し、抗ANGPTL3抗体の濃度が1.0mg/mLである抗体製剤を製造し、試料の融解温度(Tm)、熱分解開始温度(Tonset)を測定することにより、抗ANGPTL3抗体の様々なpH条件での熱安定性を考察し、試料の凝集温度(Tagg)及び粒子径(Radius)を測定することにより、抗ANGPTL3抗体の様々なpH条件でのコロイド安定性を考察した。
【0163】
1)10mMのリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム、pH4.2
2)10mMのリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム、pH4.6
3)10mMのリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム、pH5.0
4)10mMのリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム、pH5.4
5)10mMのリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム、pH5.8
6)10mMのリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム、pH6.2
7)10mMのリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム、pH6.6
8)10mMのリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム、pH7.0
9)10mMのリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム、pH7.4
10)10mMのリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム、pH7.8
11)10mMのリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム、pH8.2
12)10mMのリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム、pH8.6
【0164】
【表13-1】
【表13-2】
【0165】
(備考:%PDは分散係数を示し、値が小さいほど、粒子径の分布が均一になることが示され、N/Aは該当しないことを示す)
その結果、抗ANGPTL3抗体は、pH値が5.0±0.4である条件でTagg及びTonset値が比較的高く、pH値が6.2±0.4である条件で粒子径が比較的小さく、分布がより均一であり、且つTm1値が比較的高いことで、当該抗体は、pH値が5.0±0.4及び6.2±0.4である条件で熱安定性とコロイド安定性が比較的良いことが示されている。
【0166】
実施例9、抗ANGPTL3抗体製剤の緩衝系のスクリーニング及び確認
9.1 pH6.0緩衝系スクリーニング
10mMのリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウムpH6.0、10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH6.0の緩衝系を選択して、50mg/mLの抗ANGPTL3抗体を含む製剤を調製し、サンプリングして高温(40℃)と室温(25℃)での安定性の研究を行った:
1)10mMのリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウムpH6.0
2)10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH6.0
【0167】
【表14】
(注:この表は、抗ANGPTL3抗体の緩衝系(pH6.0)スクリーニングの0時での試料安定性結果である)
【0168】
【表15-1】
【表15-2】
(注:1Wは1週間を示し、粒子径はコロイド安定性を表し、%PDは分散係数を示す)
【0169】
【表16】
(注:1Wは1週間を示す)
その結果、同じ考察条件で、10mMのリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウムpH6.0緩衝系と比べて、抗ANGPTL3抗体は、10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH6.0緩衝系においてTagg値がより高く、粒子径がより小さく、ポリマーの含有量がより低いことで、抗ANGPTL3抗体は、10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH6.0緩衝系において安定性がより良いことが示されている。
【0170】
9.2 pH6.6緩衝系のスクリーニング
10mMのリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウムpH6.6、10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH6.6の緩衝系を選択して、50mg/mLの抗ANGPTL3抗体を含む製剤を調製し、サンプリングして高温(40℃)と室温(25℃)での安定性の研究を行った:
1)10mMのリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウムpH6.6
2)10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH6.6
【0171】
【表17】
(注:この表は、抗ANGPTL3抗体緩衝系(pH6.6)スクリーニングの0時での試料安定性結果である)
【0172】
【表18】
(注:1Wは1週間を示し、粒子径はコロイド安定性を表し、%PDは分散係数を示す)
【0173】
【表19】
(注:1Wは1週間を示す)
その結果、同じ考察条件で、10mMのリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウムpH6.6緩衝系と比べて、抗ANGPTL3抗体は、10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH6.6緩衝系においてTonset値がより低く、Tagg値がより高く、粒子径が比較的より大きいが、ポリマーの含有量が比較的より低く、モノマーとメインピークの含有量が比較的より高いことで、総じて考えると、抗ANGPTL3抗体は、10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH6.6緩衝系において安定性がより良いことが示されている。
【0174】
9.3 pH4.6緩衝系のスクリーニング
10mMのコハク酸-コハク酸ナトリウムpH4.6、10mMの酢酸-酢酸ナトリウムpH4.6の緩衝系を選択して、50mg/mLのタンパク質を含む抗体製剤を調製し、サンプリングして高温(40℃)と室温(25℃)での安定性の研究を行った:
1)10mMのコハク酸-コハク酸ナトリウムpH4.6
2)10mMの酢酸-酢酸ナトリウムpH4.6
【0175】
【表20】
(注:この表は、抗ANGPTL3抗体の緩衝系(pH4.6)スクリーニングの0時での試料安定性結果を示し、N/Aは該当しないことを示す)
【0176】
【表21】
(注:1Wは1週間を示し、粒子径はコロイド安定性を表し、%PDは分散係数を示し、N/Aは該当しないことを示す)
【0177】
【表22】
(注:1Wは1週間を示す)
その結果、同じ考察条件で、10mMのコハク酸-コハク酸ナトリウムpH4.6緩衝系と比べて、抗ANGPTL3抗体は、10mMの酢酸-酢酸ナトリウムpH4.6緩衝系においてTm値がより低いが、Tonset値がより高く、粒子径がより小さく、且つポリマーの含有量がより低いことで、抗ANGPTL3抗体は、10mMの酢酸-酢酸ナトリウムpH4.6緩衝系において安定性がより良いことが示されている。
【0178】
9.4 pH5.0緩衝系のスクリーニング
10mMのコハク酸-コハク酸ナトリウムpH5.0、10mMの酢酸-酢酸ナトリウムpH5.0の緩衝系を選択して、50mg/mLの抗ANGPTL3抗体を含む製剤を調製し、サンプリングして高温(40℃)と室温(25℃)での安定性の研究を行った:
1)10mMのコハク酸-コハク酸ナトリウムpH5.0
2)10mMの酢酸-酢酸ナトリウムpH5.0
【0179】
【表23】
(注:この表は、緩衝系(pH5.0)スクリーニングの0時での試料安定性結果であり、N/Aは該当しないことを示す)
【0180】
【表24】
(注:1Wは1週間を示し、粒子径はコロイド安定性を表し、%PDは分散係数を示す)
【0181】
【表25】
(注:1Wは1週間を示す)
その結果、同じ考察条件で、10mMのコハク酸-コハク酸ナトリウムpH5.0緩衝系と比べて、抗ANGPTL3抗体は、10mMの酢酸-酢酸ナトリウムpH5.0緩衝系においてTm値、Tonset値、Tagg値がより高く、且つ粒子径がより小さく、ポリマーの含有量がより低く、モノマーとメインピークの含有量が高いことで、抗ANGPTL3抗体は、10mMの酢酸-酢酸ナトリウムpH5.0緩衝系において安定性がより良いことが示されている。
【0182】
抗ANGPTL3抗体の緩衝系スクリーニングの結果によると、抗ANGPTL3抗体は、10mMのコハク酸-コハク酸ナトリウムpH4.6、10mMの酢酸-酢酸ナトリウムpH4.6、10mMの酢酸-酢酸ナトリウムpH5.0緩衝系において外観が比較的良く、且つTm、Tagg及びTonset値が比較的高いが、高温40℃の条件では、ポリマーが明らかに増加され、10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH6.0緩衝系において外観が比較的悪く、Tm、Tagg及びTonset値が比較的高く、高温条件では、ポリマーの有意な増加がない。緩衝系スクリーニングに使用された試料が混合試料であることを考慮したら、最終的なpHと緩衝系をさらに確認するために、モノクローナル抗体試料を使用して緩衝系の確認を行った。
【0183】
9.5 抗ANGPTL3抗体製剤の緩衝系の確認
10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH6.0、10mMのコハク酸-コハク酸ナトリウムpH4.6、10mMの酢酸-酢酸ナトリウムpH4.6、10mMの酢酸-酢酸ナトリウムpH5.0の緩衝系を選択して、50mg/mLの抗ANGPTL3抗体を含む製剤を調製し、サンプリングして高温60℃と40℃での安定性の研究を行った:
1)10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン、pH6.0、
2)10mMのコハク酸-コハク酸ナトリウム、pH4.6、
3)10mMの酢酸-酢酸ナトリウム、pH4.6、
4)10mMの酢酸-酢酸ナトリウム、pH5.0、
【0184】
【表26】
(注:hは時間を示し、dは日間を示し、粒子径はコロイド安定性を示し、%PDは分散係数を示し、NTは未検出を示し、Imcompletedは、試料が不良であるため、機器で正常に検出できなかったことを示す)
【0185】
【表27】
(注:hは時間を示し、dは日間を示し、NTは未検出を示す)
その結果、10mMのコハク酸-コハク酸ナトリウムpH4.6及び10mMの酢酸-酢酸ナトリウムpH4.6緩衝系と比べて、抗ANGPTL3抗体は、10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH6.0、10mMの酢酸-酢酸ナトリウムpH5.0緩衝系において安定性がより良いが、10mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジンpH6.0緩衝系では、顕著な乳白光を示し、且つポリソルベート80を加えた後、外観が改善されなかった。
【0186】
実施例10、抗ANGPTL3抗体製剤における糖濃度のスクリーニング
10mMの酢酸-酢酸ナトリウムpH5.0の緩衝系を選択して、様々な糖濃度を有する緩衝系又は抗ANGPTL3抗体製剤を調製した:
1)10mMの酢酸-酢酸ナトリウム、pH5.0、
2)10mMの酢酸-酢酸ナトリウム、0.2mg/mLのポリソルベート80、60mg/mLのスクロース、pH5.0、
3)10mMの酢酸-酢酸ナトリウム、0.2mg/mLのポリソルベート80、70mg/mLのスクロース、pH5.0、
4)10mMの酢酸-酢酸ナトリウム、0.2mg/mLのポリソルベート80、75mg/mLのスクロース、pH5.0、
5)10mMの酢酸-酢酸ナトリウム、0.2mg/mLのポリソルベート80、80mg/mLのスクロース、pH5.0、
6)10mMの酢酸-酢酸ナトリウム、0.2mg/mLのポリソルベート80、90mg/mLのスクロース、pH5.0、
7)10mMの酢酸-酢酸ナトリウム、0.2mg/mLのポリソルベート80、80mg/mLのスクロース、pH5.0、

以上の1)~7)のいずれにおいても、100mg/mLの抗ANGPTL3抗体が含まれた。
【0187】
各試料の浸透圧結果は、下記の表に示されている。
【0188】
【表28】
浸透圧の結果によると、等浸透圧の抗ANGPTL3抗体製剤を調製するために、スクロースの利用可能な濃度は60~90mg/mLであり、例えば、スクロースの濃度は75mg/mLである。
【0189】
実施例11、抗ANGPTL3抗体製剤における界面活性剤濃度のスクリーニング
10mMの酢酸-酢酸ナトリウムを選択して、100mg/mLの抗ANGPTL3抗体、75mg/mLのスクロース、様々な濃度のポリソルベート80を含む製剤を調製し、且つ振とう・凍結融解・光照射・高温条件での抗体安定性を考察した。
【0190】
1)10mMの酢酸-酢酸ナトリウム、0.1mg/mLのポリソルベート80、75mg/mLのスクロース、抗ANGPTL3抗体の濃度100mg/mL、pH5.0
2)10mMの酢酸-酢酸ナトリウム、0.4mg/mLのポリソルベート80、75mg/mLのスクロース、抗ANGPTL3抗体の濃度100mg/mL、pH5.0
【0191】
【表29-1】
【表29-2】
(注:hは時間を示し、Wは週間を示し、RTは室温を示し、粒子径はコロイド安定性を表し、%PDは分散係数を示し、NTは未検出を示す)
【0192】
【表30-1】
【表30-2】
(注:hは時間を示し、Wは週間を示し、RTは室温を示す)
その結果、0.1mg/mL又は0.4mg/mLのポリソルベート80を含む抗ANGPTL3抗体製剤は、振とう・凍結融解・光照射・高温条件で、安定性に有意差がないので、抗ANGPTL3抗体製剤は、ポリソルベート80の利用可能な濃度範囲が0.1~0.4mg/mLである。
【0193】
実施例12、製剤pHの安定性への影響
10mMの酢酸-酢酸ナトリウムを選択して、75mg/mLのスクロース、0.2mg/mLのポリソルベート80を含み、抗ANGPTL3抗体の濃度が100mg/mL、pHがそれぞれ5.0と5.4である製剤を調製し、振とう・凍結融解・光照射・高温条件で抗体製剤の安定性を考察した。
【0194】
1)10mMの酢酸-酢酸ナトリウム、0.2mg/mLのポリソルベート80、75mg/mLのスクロース、抗ANGPTL3抗体の濃度100mg/mL、pH5.0
2)10mMの酢酸-酢酸ナトリウム、0.2mg/mLのポリソルベート80、75mg/mLのスクロース、抗ANGPTL3抗体の濃度100mg/mL、pH5.4
【0195】
【表31-1】
【表31-2】
(注:hは時間を示し、Wは週間を示し、RTは室温を示し、粒子径はコロイド安定性を表し、%PDは分散係数を示す)
【0196】
【表32-1】
【表32-2】
(注:hは時間を示し、Wは週間を示し、RTは室温を示す)
その結果、0時と比べて、振とう・凍結融解・光照射・高温条件で、pH5.0と5.4の製剤におけるタンパク質の変化傾向が近いので、抗ANGPTL3抗体製剤のpHの範囲は5.0~5.4と決定された。
【0197】
0.1mg/mLのポリソルベート80と0.4mg/mLのポリソルベート80は、抗体安定性への影響があまり大きくないので、製剤に利用可能なポリソルベート80の濃度範囲は0.1~0.4mg/mLであり、pH値5.0と5.4は抗体安定性への影響があまり大きくないので、製剤に利用可能なpH範囲は5.0~5.4であり、抗ANGPTL3抗体の濃度は100mg/mLと決定された。
【0198】
実施例13、選択可能な製剤配合法
また、本開示は、他の製剤配合法による抗ANGPTL3抗体医薬製剤をさらに提供し、当該製剤配合法は以下を含むが、これらに限定されない:
(1)100mg/mLの抗ANGPTL3抗体、75mg/mLのスクロース、0.1mg/mLのポリソルベート80、及び10mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液 pH5.0、
(2)100mg/mLの抗ANGPTL3抗体、75mg/mLのスクロース、0.2mg/mLのポリソルベート80、及び10mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液 pH5.0、
(3)100mg/mLの抗ANGPTL3抗体、75mg/mLのスクロース、0.4mg/mLのポリソルベート80、及び10mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液 pH5.0、
(4)100mg/mLの抗ANGPTL3抗体、75mg/mLのスクロース、0.1mg/mLのポリソルベート80、及び10mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液 pH5.2、
(5)100mg/mLの抗ANGPTL3抗体、75mg/mLのスクロース、0.2mg/mLのポリソルベート80、及び10mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液 pH5.2、
(6)100mg/mLの抗ANGPTL3抗体、75mg/mLのスクロース、0.4mg/mLのポリソルベート80、及び10mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液 pH5.2、
(7)100mg/mLの抗ANGPTL3抗体、75mg/mLのスクロース、0.1mg/mLのポリソルベート80、及び10mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液 pH5.4、
(8)100mg/mLの抗ANGPTL3抗体、75mg/mLのスクロース、0.2mg/mLのポリソルベート80、及び10mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液 pH5.4、
(9)100mg/mLの抗ANGPTL3抗体、75mg/mLのスクロース、0.4mg/mLのポリソルベート80、及び10mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液 pH5.4、
(10)80mg/mL、100mg/mL、120mg/mL又は150mg/mLの抗ANGPTL3抗体、75mg/mLのスクロース、0.2mg/mLのポリソルベート80、及び10mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.0~5.4、
(11)100mg/mLの抗ANGPTL3抗体、60mg/mL、70mg/mL、75mg/mL、80mg/mL、85mg/mL又は90mg/mLのスクロース、0.2mg/mLのポリソルベート80、及び10mMの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.0~5.4。
【0199】
実験の結果によると、上記製剤配合法による抗ANGPTL3抗体製剤は、いずれも良好な安定性を有し、抗ANGPTL3抗体医薬の調製に適用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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【国際調査報告】