IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイピージー フォトニクス コーポレーションの特許一覧

特表2024-529378生物組織内の流体圧力の遠隔モニタリング
<>
  • 特表-生物組織内の流体圧力の遠隔モニタリング 図1
  • 特表-生物組織内の流体圧力の遠隔モニタリング 図2
  • 特表-生物組織内の流体圧力の遠隔モニタリング 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】生物組織内の流体圧力の遠隔モニタリング
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/12 20060101AFI20240730BHJP
   A61M 1/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61B 18/26 20060101ALI20240730BHJP
   A61B 1/307 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A61B1/12 521
A61M1/00 140
A61B18/26
A61B1/307
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503455
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 US2022037582
(87)【国際公開番号】W WO2023003871
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】63/223,251
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/228,216
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501012517
【氏名又は名称】アイピージー フォトニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アイザック・オストロフスキー
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・アルトゥシュラー
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリ・ボウトウソフ
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイ・ピリペツキー
(72)【発明者】
【氏名】イリヤ・ヤロスラフスキー
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・トレクサー
【テーマコード(参考)】
4C026
4C077
4C161
【Fターム(参考)】
4C026AA04
4C026DD03
4C026GG06
4C077AA19
4C077HH10
4C077HH13
4C077HH21
4C077JJ09
4C077JJ13
4C161AA15
4C161HH08
(57)【要約】
腎臓内の圧力を制御するためのシステムであって、圧力センサーを有して構成された灌流チャネルであって、灌流チャネルの遠位端は腎臓の内部と流体連通している、灌流チャネルと、ドレンリザーバーと流体連通している吸引チャネルであって、吸引チャネルの遠位端は腎臓の内部と流体連通している、吸引チャネルと、灌流チャネル内の灌流流体の流体流量を決定することと、センサーから圧力測定値を受信することと、決定された流体流量および圧力測定に少なくとも部分的に基づいて腎臓の内部の圧力を計算することと、計算された腎臓圧力を目標腎臓圧力値と比較することと、その比較に基づいて、灌流チャネルおよび吸引チャネルの少なくとも一方の灌流流体の流体流量を制御することと、をするように構成された、コントローラーと、を含む、システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腎臓内の圧力を制御するためのシステムであって、
近位端および遠位端を有し、灌流チャネル内の圧力を測定するように構成された圧力センサーを有して構成された、灌流チャネルであって、前記灌流チャネルの前記遠位端は、前記腎臓の内部に灌流流体を送るように前記腎臓の前記内部と流体連通している、灌流チャネルと、
近位端および遠位端を有する吸引チャネルであって、前記吸引チャネルは、ドレンリザーバーと流体連通しており、前記吸引チャネルの前記遠位端は、前記腎臓の前記内部から灌流流体を取り出すように前記腎臓の前記内部と流体連通している、吸引チャネルと、
前記圧力センサーと通信しており、
前記灌流チャネル内の灌流流体の流体流量を決定することと、
前記圧力センサーから圧力測定値を受信することと、
前記決定された流体流量および前記圧力測定に少なくとも部分的に基づいて、前記腎臓の前記内部の圧力を計算することと、
前記計算された腎臓圧力を目標腎臓圧力値と比較することと、
前記比較に基づいて、前記灌流チャネル中の灌流流体の前記流体流量および前記吸引チャネル中の灌流流体の流体流量の少なくとも一方を制御することと、
をするように構成されたコントローラーと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記灌流チャネルには内部構造物も障害物もない、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記灌流チャネルには、レーザーファイバー、ガイドワイヤー、および結石摘除バスケットがない、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記吸引チャネルおよび前記灌流チャネルの少なくとも一部分を受けるための中央通路を有し、尿管中に挿入されるように構成された、可撓性シースをさらに備え、前記可撓性シースは、前記可撓性シースと前記尿管との間のドレナージ流路を介して前記ドレンリザーバーに灌流流体を排出できるように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記可撓性シースは近位端および遠位端を有し、前記可撓性シースの前記遠位端は、前記腎臓の前記内部と流体連通しており、前記圧力センサーは、前記可撓性シースの前記近位端の上流に位置決めされている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記計算された腎臓圧力が前記目標腎臓圧力値よりも大きいときには、前記コントローラーは、
前記吸引チャネル中の灌流流体の前記流体流量を増加させること、
前記灌流チャネル中の灌流流体の前記流体流量を減少させること、または
前記吸引チャネル中の灌流流体の前記流体流量を増加させかつ前記灌流チャネル中の灌流流体の前記流体流量を減少させること
をするように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記吸引チャネルと流体連通しており、前記吸引チャネルの前記遠位端から前記近位端に向かって灌流流体をポンプ輸送するように構成された、吸引ポンプであって、前記コントローラーは、前記吸引チャネル中の灌流流体の前記流体流量を増加させるように前記吸引ポンプを制御するように構成されている、吸引ポンプと、
灌流ポンプまたは灌流流体流量制御弁の一方であって、前記灌流ポンプおよび前記灌流流体流量制御弁はそれぞれ、
灌流流体源と流体連通しており、
前記コントローラーと通信しており、
前記灌流チャネル中の灌流流体の前記流体流量を制御するように動作可能である、灌流ポンプまたは灌流流体流量制御弁の一方と、
をさらに備え、
前記コントローラーは、前記灌流チャネル中の灌流流体の前記流体流量を減少させるように前記灌流ポンプおよび前記灌流流体流量制御弁の少なくとも一方を制御するように構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記吸引ポンプは、可変速ポンプとして構成されており、前記コントローラーは、電源投入するかまたは前記可変速度の速度を上昇させることによって前記吸引ポンプを制御し、
前記灌流ポンプは、可変速ポンプとして構成されており、前記コントローラーは、電源遮断するかまたは前記可変速度の速度を低下させることによって前記灌流ポンプを制御し、
前記コントローラーは、前記灌流流体流量制御弁を制限または閉止することによって、前記灌流流体流量制御弁を制御する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記灌流チャネルと前記ドレンリザーバーとの間に流体連通を提供するように構成されたドレナージチャネルをさらに備え、前記ドレナージチャネルは、前記灌流チャネルから前記ドレンリザーバーへの灌流流体の流れを制御するように動作可能な安全弁を有して構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラーは、前記灌流チャネルと前記ドレンリザーバーとの間の流体連通を可能にするように前記安全弁を開放することによって前記安全弁を制御するように構成されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記計算された腎臓圧力が前記目標腎臓圧力値よりも小さいときには、前記コントローラーは、
前記吸引チャネル中の灌流流体の前記流体流量を減少させること、
前記灌流チャネル中の灌流流体の前記流体流量を増加させること、または
前記吸引チャネル中の灌流流体の前記流体流量を減少させかつ前記灌流チャネル中の灌流流体の前記流体流量を増加させること
をするように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記灌流チャネル内の灌流流体流量を測定するように構成された流体流量センサーをさらに備え、前記コントローラーはさらに、前記流体流量センサーから流体流量測定値を受信し、前記流体流量測定に少なくとも部分的に基づいて、前記腎臓の前記内部の前記圧力を計算するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記目標腎臓圧力値は、境界値を含む10mmHg~40mmHgの範囲にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
腎臓内の圧力を制御するための方法であって、
灌流チャネルを通して灌流流体を前記腎臓の内部に方向付けるステップと、
前記腎臓の前記内部から灌流流体を取り出し、吸引チャネルを通して前記灌流流体をドレンリザーバーに向かって方向付けるステップと、
前記灌流チャネル内の灌流流体の流体流量を決定するステップと、
前記灌流チャネル内の圧力を測定するステップと、
前記決定された流体流量および前記圧力測定に少なくとも部分的に基づいて、前記腎臓の内部の圧力を計算するステップと、
前記計算された腎臓圧力を目標腎臓圧力値と比較するステップと、
前記比較に基づいて、前記吸引チャネル中の灌流流体の流体流量および前記灌流チャネル中の灌流流体の流体流量の少なくとも一方を制御するステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記計算された腎臓圧力が前記目標腎臓圧力値よりも大きいときには、前記方法は、
前記吸引チャネル中の灌流流体の流体流量を増加させるステップ、および
前記灌流チャネル中の灌流流体の流体流量を減少させるステップ
の少なくとも一方を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記吸引チャネル中の灌流流体の前記流体流量を増加させるステップは、前記吸引チャネルと流体連通している吸引ポンプに電源投入するかまたは前記吸引ポンプの速度を上昇させるステップの少なくとも一方を含み、
前記灌流チャネル中の灌流流体の前記流体流量を減少させるステップは、
灌流流体源と流体連通している灌流ポンプを電源遮断するかまたは前記灌流ポンプの速度を低下させるステップ、および
前記灌流流体源と流体連通している灌流流体流量制御弁を制限または閉止するステップ
の少なくとも一方を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記灌流チャネルと前記ドレンリザーバーとの間に流体連通を提供するように構成されたドレナージチャネルを通して、灌流流体を方向付けるステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記計算された腎臓圧力が前記目標腎臓圧力値よりも小さいときには、前記方法は、
前記吸引チャネル中の灌流流体の流体流量を減少させるステップ、および
前記灌流チャネル中の灌流流体の流体流量を増加させるステップ
の少なくとも一方を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記吸引チャネル中の灌流流体の前記流体流量を減少させるステップは、前記吸引チャネルと流体連通している吸引ポンプを電源遮断するかまたは前記吸引ポンプの速度を低下させるステップを含み、
前記灌流チャネル中の灌流流体の前記流体流量を増加させるステップは、
灌流流体源と流体連通している灌流ポンプに電源投入するかまたは前記灌流ポンプの速度を上昇させるステップ、および
前記灌流流体源と流体連通している灌流流体流量制御弁を開放するステップ
の少なくとも一方を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記灌流チャネル内の灌流流体の前記流体流量を測定するステップと、前記流体流量測定に少なくとも部分的に基づいて、前記腎臓の前記内部の前記圧力を計算するステップと、をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記吸引チャネルおよび前記灌流チャネルの少なくとも一部分を受けるための中央通路を有する可撓性シースを提供するステップと、
前記可撓性シースと尿管との間のドレナージ流路から前記ドレンリザーバーに灌流流体を排出できるように、前記尿管内に前記可撓性シースを位置決めするステップと、
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記灌流チャネル内の前記圧力を測定するステップは、前記灌流チャネルにおける圧力センサーを用いて測定するステップを含み、
前記可撓性シースは、近位端および遠位端を有し、前記可撓性シースの前記遠位端は、前記腎臓の前記内部と流体連通しており、
前記方法はさらに、
前記圧力センサーが前記可撓性シースの前記近位端の上流に位置決めされるように構成された前記灌流チャネルを提供するステップ
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記目標腎臓圧力値は、境界値を含む10mmHg~40mmHgの範囲にある、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記灌流チャネルおよび前記吸引チャネルを含む尿管鏡を提供するステップをさらに含み、前記灌流チャネルは、内部構造物も障害物もないように構成されている、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年7月19日出願の「REMOTE MONITORING OF FLUID PRESSURE IN BIOLOGICAL TISSUE」という名称の米国特許仮出願第63/223,251号、および2021年8月2日出願の「REMOTE MONITORING OF FLUID PRESSURE IN BIOLOGICAL TISSUE」という名称の米国特許仮出願第63/228,216号に基づく優先権を主張するものであり、それらの内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本技術分野は、概して、尿管鏡法に関し、より詳細には、それらの手術の間の圧力モニタリングのためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
尿管鏡手術中には、その手術の性質によって腎臓内の圧力が上昇する。レーザーエネルギーを用いて結石を破砕し、それを腎臓から取り出すには、高い流体流量が必要である。流体は、尿管鏡の作業チャネルを通して腎臓の内部に送られる。流体は、尿管鏡の外面と患者の解剖学的構造(尿管および尿道の内径(ID))との間の隙間、または尿管鏡とアクセスシースの内面との間の隙間を介して腎臓から出される。いずれの場合も、隙間は非常に小さく、腎臓内で圧力の上昇なしでは、流体の流出が非常に遅くなる。そのことは、流れを増やすためにいくらかの圧力を必要とし、圧力が高いほど、流れが速くなる。
【0004】
腎臓は、限られた圧力には耐えることができる。正常な生理学的腎内圧力は約10mmHg(13cmHO)である。30mmHg~40mmHg(40cmHO~55cmHO)程度の圧力には安全に耐え得るが、圧力が高いと患者を害する可能性があることが示されている。一般的な手法は、灌流のために患者の約40cm上方に吊るした流体バッグを使用することである。腎臓内の圧力が最大レベルに達するのは、腎臓からの流出が完全に止まった場合だけであることに留意することが重要である。次いで、腎臓内部圧力は、安全であると考えられているバッグの圧力(40cmHO)に等しくなる。通常は、流体が腎臓を満たしたときに、圧力が上昇して解剖学的構造を広げ、そのことが、尿管鏡の外面と、尿管および尿道の内面と、の間の隙間を開く。その結果、流出が起きて腎臓内の圧力が低下する。したがって、流体が患者から出る場合、腎臓内の圧力がバッグの圧力よりも低いことを示す。
【0005】
患者の40cm上方のバッグから腎臓を通る流量は(尿管鏡の作業チャネルの内側にツールがない状態で)、典型的には、30mL/min~40mL/minの範囲にあることも示されている。レーザーファイバー、ガイドワイヤー、バスケット、または任意の他のツールが作業チャネルの内側にある場合は、結果として灌流流体の流れが制限されるため、流量は10mL/min~20mL/minまで低下する。腎臓結石のレーザー治療中の流量は、結石の破片を取り出す速度および効果に影響を及ぼす。流量が高いほど、手術時間が短くなり、より効率的に破片が取り出される。効率的な結石のレーザー照射および破片の取り出しのためには、最大80mL/min~100mL/minの流量が望ましいと考えられている。このような流量は、引き込む圧力を上昇させることによってのみ実現でき、その圧力上昇は、腎臓内の圧力がリアルタイムで制御される場合に行うことができる。しかし、手術中に腎臓内に圧力センサーを設置することが可能であるが、これも非常に難しく高価である。したがって、遠隔で、すなわち、患者の身体の外側から、腎臓内の圧力をモニタリングおよび制御する能力が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
各態様および各実施形態は、腎臓内の圧力を制御するための方法およびシステムを対象としている。
【0007】
例示的な実施形態によれば、腎臓内の圧力を制御するためのシステムであって、近位端および遠位端を有し、灌流チャネル内の圧力を測定するように構成された圧力センサーを有して構成された、灌流チャネルであって、灌流チャネルの遠位端は、腎臓の内部に灌流流体を送るように腎臓の内部と流体連通している、灌流チャネルと、近位端および遠位端を有する吸引チャネルであって、吸引チャネルは、ドレンリザーバーと流体連通しており、吸引チャネルの遠位端は、腎臓の内部から灌流流体を取り出すように腎臓の内部と流体連通している、吸引チャネルと、圧力センサーと通信しており、灌流チャネル内の灌流流体の流体流量を決定することと、圧力センサーから圧力測定値を受信することと、決定された流体流量および圧力測定に少なくとも部分的に基づいて、腎臓の内部の圧力を計算することと、計算された腎臓圧力を目標腎臓圧力値と比較することと、比較に基づいて、灌流チャネル中の灌流流体の流体流量および吸引チャネル中の灌流流体の流体流量の少なくとも一方を制御することと、をするように構成されたコントローラーと、を含む、システムが提供される。
【0008】
一例において、灌流チャネルには内部構造物も障害物もない。さらなる例において、灌流チャネルには、レーザーファイバー、ガイドワイヤー、および結石摘除バスケットがない。
【0009】
一例において、本システムはさらに、吸引チャネルおよび灌流チャネルの少なくとも一部分を受けるための中央通路を有し、尿管中に挿入されるように構成された、可撓性シースを含み、可撓性シースは、可撓性シースと尿管との間のドレナージ流路を介してドレンリザーバーに灌流流体を排出できるように構成されている。さらなる例において、可撓性シースは近位端および遠位端を有し、可撓性シースの遠位端は、腎臓の内部と流体連通しており、圧力センサーは、可撓性シースの近位端の上流に位置決めされている。
【0010】
一例において、計算された腎臓圧力が目標腎臓圧力値よりも大きいときには、コントローラーは、吸引チャネル中の灌流流体の流体流量を増加させること、灌流チャネル中の灌流流体の流体流量を減少させること、または吸引チャネル中の灌流流体の流体流量を増加させかつ灌流チャネル中の灌流流体の流体流量を減少させることをするように構成されている。さらなる例において、システムは、吸引チャネルと流体連通しており、吸引チャネルの遠位端から近位端に向かって灌流流体をポンプ輸送するように構成された、吸引ポンプであって、コントローラーは、吸引チャネル中の灌流流体の流体流量を増加させるように吸引ポンプを制御するように構成されている、吸引ポンプと、灌流ポンプまたは灌流流体流量制御弁の一方であって、灌流ポンプおよび灌流流体流量制御弁はそれぞれ、灌流流体源と流体連通しており、コントローラーと通信しており、灌流チャネル中の灌流流体の流体流量を制御するように動作可能である、灌流ポンプまたは灌流流体流量制御弁の一方と、をさらに含み、コントローラーは、灌流チャネル中の灌流流体の流体流量を減少させるように灌流ポンプおよび灌流流体流量制御弁の少なくとも一方を制御するように構成されている。さらなる例において、吸引ポンプは、可変速ポンプとして構成されており、コントローラーは、電源投入するかまたは可変速度の速度を上昇させることによって吸引ポンプを制御し、灌流ポンプは、可変速ポンプとして構成されており、コントローラーは、電源遮断するかまたは可変速度の速度を低下させることによって灌流ポンプを制御し、コントローラーは、灌流流体流量制御弁を制限または閉止することによって、灌流流体流量制御弁を制御する。さらなる例において、システムは、灌流チャネルとドレンリザーバーとの間に流体連通を提供するように構成されたドレナージチャネルをさらに含み、ドレナージチャネルは、灌流チャネルからドレンリザーバーへの灌流流体の流れを制御するように動作可能な安全弁を有して構成されている。さらなる例において、コントローラーは、灌流チャネルとドレンリザーバーとの間の流体連通を可能にするように安全弁を開放することによって安全弁を制御するように構成されている。
【0011】
一例において、計算された腎臓圧力が目標腎臓圧力値よりも小さいときには、コントローラーは、吸引チャネル中の灌流流体の流体流量を減少させること、灌流チャネル中の灌流流体の流体流量を増加させること、または吸引チャネル中の灌流流体の流体流量を減少させかつ灌流チャネル中の灌流流体の流体流量を増加させることをするように構成されている。
【0012】
一例において、本システムはさらに、灌流チャネル内の灌流流体流量を測定するように構成された流体流量センサーを含み、コントローラーはさらに、流体流量センサーから流体流量測定値を受信し、流体流量測定に少なくとも部分的に基づいて、腎臓の内部の圧力を計算するように構成されている。
【0013】
一例において、目標腎臓圧力値は、境界値を含む10mmHg~40mmHgの範囲にある。
【0014】
別の例示的な実施形態によれば、腎臓内の圧力を制御するための方法であって、灌流チャネルを通して灌流流体を腎臓の内部に方向付けるステップと、腎臓の内部から灌流流体を取り出し、吸引チャネルを通して灌流流体をドレンリザーバーに向かって方向付けるステップと、灌流チャネル内の灌流流体の流体流量を決定するステップと、灌流チャネル内の圧力を測定するステップと、決定された流体流量および圧力測定に少なくとも部分的に基づいて、腎臓の内部の圧力を計算するステップと、計算された腎臓圧力を目標腎臓圧力値と比較するステップと、比較に基づいて、吸引チャネル中の灌流流体の流体流量および灌流チャネル中の灌流流体の流体流量の少なくとも一方を制御するステップと、を含む、方法が提供される。
【0015】
一例において、計算された腎臓圧力が目標腎臓圧力値よりも大きいときには、本方法は、吸引チャネル中の灌流流体の流体流量を増加させるステップ、および灌流チャネル中の灌流流体の流体流量を減少させるステップの少なくとも一方を含む。さらなる例において、吸引チャネル中の灌流流体の流体流量を増加させるステップは、吸引チャネルと流体連通している吸引ポンプに電源投入するかまたは吸引ポンプの速度を上昇させるステップの少なくとも一方を含み、灌流チャネル中の灌流流体の流体流量を減少させるステップは、灌流流体源と流体連通している灌流ポンプを電源遮断するかまたは灌流ポンプの速度を低下させるステップ、および灌流流体源と流体連通している灌流流体流量制御弁を制限または閉止するステップの少なくとも一方を含む。別の例において、本方法は、灌流チャネルとドレンリザーバーと間に流体連通を提供するように構成されたドレナージチャネルを通して、灌流流体を方向付けるステップをさらに含む。
【0016】
一例において、計算された腎臓圧力が目標腎臓圧力値よりも小さいときには、本方法は、吸引チャネル中の灌流流体の流体流量を減少させるステップ、および灌流チャネル中の灌流流体の流体流量を増加させるステップの少なくとも一方を含む。さらなる例において、吸引チャネル中の灌流流体の流体流量を減少させるステップは、吸引チャネルと流体連通している吸引ポンプを電源遮断するかまたは吸引ポンプの速度を低下させるステップを含み、灌流チャネル中の灌流流体の流体流量を増加させるステップは、灌流流体源と流体連通している灌流ポンプに電源投入するかまたは灌流ポンプの速度を上昇させるステップ、および灌流流体源と流体連通している灌流流体流量制御弁を開放するステップの少なくとも一方を含む。
【0017】
一例において、本方法はさらに、灌流チャネル内の灌流流体の流体流量を測定するステップと、流体流量測定に少なくとも部分的に基づいて、腎臓の内部の圧力を計算するステップと、を含む。
【0018】
一例において、本方法は、吸引チャネルおよび灌流チャネルの少なくとも一部分を受けるための中央通路を有する可撓性シースを提供するステップと、可撓性シースと尿管との間のドレナージ流路からドレンリザーバーに灌流流体を排出できるように、尿管内に可撓性シースを位置決めするステップと、をさらに含む。さらなる例において、灌流チャネル内の圧力を測定するステップは、灌流チャネルにおける圧力センサーを用いて測定するステップを含み、可撓性シースは、近位端および遠位端を有し、可撓性シースの遠位端は、腎臓の内部と流体連通しており、本方法はさらに、圧力センサーが可撓性シースの近位端の上流に位置決めされるように構成された灌流チャネルを提供するステップを含む。
【0019】
一例において、本方法はさらに、灌流チャネルおよび吸引チャネルを含む尿管鏡を提供するステップを含み、灌流チャネルは、内部構造物も障害物もないように構成されている。
【0020】
さらに他の態様、実施形態、ならびにそれらの例示的な態様および実施形態の利点を以下で詳細に論じる。さらに、上記の情報および下記の詳細な説明は両方とも、様々な態様および実施形態の説明のための例に過ぎず、特許請求される態様および実施形態の性質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供することが意図されていることを理解されたい。本明細書に開示されている実施形態は、他の実施形態と組み合わせてよく、「実施形態」、「実施例」、「いくつかの(some)実施形態」、「いくつかの例」、「代替的な実施形態」、「様々な実施形態」、「一実施形態」、「少なくとも1つの実施形態」、「このおよび他の実施形態」、「いくつかの(certain)実施形態」などへの言及は、必ずしも互いに排他的ではなく、記載されている特定の特性、構造、または特徴が少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを示すものである。このような用語が本明細書に現れても、必ずしもすべてが同じ実施形態について言及しているとは限らない。
【0021】
少なくとも1つの実施形態の様々な態様を以下で添付の図を参照しながら論じる。それらの図は縮尺通りに描かれているものではない。図は、様々な態様および実施形態の説明およびさらなる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれ、その一部を構成するが、いずれかの特定の実施形態の範囲の定義としては意図されていない。図面は、明細書の残りの部分と一緒に、記載および特許請求される態様および実施形態の原理および動作を説明するように働く。図では、様々な図に示されている同一またはほぼ同一の構成要素はそれぞれ、同様の数字によって表される。話を簡単にするために、どの図でも、すべての構成要素に名称が付されているとは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の1つまたは複数の態様による腎臓圧力管理システムの一例の概略図である。
図2】本発明の1つまたは複数の態様による腎臓圧力管理システムの別の例の概略図である。
図3】本発明の1つまたは複数の態様による腎臓圧力管理システムの別の例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の各態様は、腎臓内(尿管鏡の出口)の圧力と、尿管鏡の入り口の圧力と、尿管鏡および腎臓を通る流体流量と、の間の相関関係を示すことを対象としている。患者の外から腎臓内の圧力を制御する方法およびシステムが開示されている。いくつかの実施形態によれば、どのようなツールによる妨げもない灌流チャネルを有して構成された2チャネルの尿管鏡を、本方法において利用することができる。
【0024】
ハーゲン-ポアズイユの式によれば、2点間の流量は、それらの点の間の圧力差およびそれらの点をつなぐチャネルの断面に比例し、流量は、チャネルの長さおよび流体の粘度に反比例する。
Q=δPπr/8μL (1)
Q=体積流量
δP=圧力差、すなわち、δP-P(入力)-P(出力)
μ=流体の動的粘度
L=流れの長さ(チャネルの長さ)、または対象の2点間の距離
R=流れを案内するチャネルの半径
【0025】
その式によれば、流れを増やすためには、圧力差(δP)が増大しなければならないか、チャネルの内径(ID)(または半径(r))が増大しなければならないか、またはチャネルの長さ(L)が減少しなければならない。しかし、チャネルIDおよびチャネルの長さは両方とも、(典型的には)所与の尿管鏡に関する定数である。流体の動的粘度も、尿管鏡手術に関する定数であり、例えば、典型的には、0.9%生理食塩水溶液(無菌)が使用される。
【0026】
作業チャネル内に何もない所与の尿管鏡の場合に、式(1)の1つの要素(δP)を除くすべての要素が、尿管鏡または流体の固定パラメーターであるため一定である。それらの要素を組み合わせて、やはり定数である1つのパラメーターにすることができる。説明のために、この定数を尿管鏡の流体力学定数(Hydro-mechanical constant)と称し、文字Uを割り当てることができる。
πr/8μL=U (2)
したがって、Uを計算できる。非限定的な例として、作業チャネルのID=1.2mmおよび長さ0.7mを有する典型的な尿管鏡では、
U=8*1.02*10-3*0.7/π*(6*10-4=1.4*10^-10Pa*sec/m=0.84cmHO*min/mL
である。これは、典型的な尿管鏡の場合、1mL/minの流量を生成するために0.84センチメートル水柱圧力を必要とすることを意味する。実際には、この値は、作業チャネルに使用される材料ならびに幾何形状を含む1つまたは複数の要因によって偏っている可能性がある。したがって、どの特定の尿管鏡の場合でも、この値は、実験に基づいて定義する必要がある可能性がある。
【0027】
ここで、式(1)は、
Q=δP*U (3)
として表すことができる。これは、所与の尿管鏡の場合に、作業チャネルを通る流量が、入力と出力との間の圧力降下の関数であることを示唆している。別の言い方をすれば、尿管鏡の入力と出力との間の圧力降下は、その特定の尿管鏡の空の作業チャネルを通る流量関数であり、これは、
δP=Q/U (4)
として表すことができる。流体力学定数Uを有する尿管鏡への入力と、腎臓内の圧力と、の間の圧力差は、流量の関数である。
δP=P(入力)-P(腎臓)=Q/U (5)
ここで、(5)から、
P(腎臓)=P(入力)-Q/U (6)
になる。尿管鏡への入力圧力は、尿管鏡を通る流体流量と同様に測定およびモニタリングすることができる。したがって、腎臓内の圧力をモニタリングおよび制御するためのアルゴリズムとして、式(6)を実装できる。例えば、尿管鏡の手前(尿管鏡の上流)の圧力および尿管鏡を通る流体流量は、モニタリングおよび制御することができる。
【0028】
この手法に対する1つの制限は、灌流フローチャネルのID、またはチャネルの等価の断面が、手術中に常に同じでなければならず、すなわち、決して変化してはならないことである。レーザーファイバー、ガイドワイヤー、またはバスケットなどのどのようなデバイスも、この断面を変化させ、式(6)を無効にさせることになる。(IDに)等価の断面とは、チャネルが特定の形状のものである必要はないが、流体の流れに対して開放していなければならず、手術中に変化してはならないことを示唆している。したがって、灌流チャネルは空でなければならず、すなわち、灌流チャネルには内部構造物も障害物もない。この条件は、作業チャネルが様々なデバイスを送るために使用されるため、従来の尿管鏡によって満たすことができない。少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも2つのチャネルを有して構成された尿管鏡が提供され、別の実施形態において、2つのチャネルを有して構成された尿管鏡が提供される。1つのチャネルは、灌流のためにのみ構成されており、少なくとも1つの他のチャネルは、ツールのために使用でき、その非限定的な例には、レーザーファイバー、バスケット、および/またはガイドワイヤーが含まれる。第2のチャネルは、場合によっては、付加的な自然ドレナージのために、または例えば手動のシリンジもしくはポンプによる陰圧を用いた強制吸引のために、使用することもできる。
【0029】
強制吸引が用いられる場合、腎臓内の圧力がその自然のレベルを下回るほど降下しないように、腎臓内の最小圧力も制御しなければならない。式(6)によれば、腎臓内の圧力は、入力圧力および流量を制御することによって絶えず制御することができる。入力圧力がより高い場合でも、流量が十分に高い限り、尿管鏡自体に有意な圧力降下があり、腎臓内の圧力が安全な閾値よりも下に維持される。腎臓からのドレナージに詰まりが発生する場合は、腎臓内の圧力が上昇し始める。この詰まりは、(式(6)によれば)入力圧力を上昇させ、流量を減少させる。本発明の態様による制御機構は、そのような変化を検出し、例えば腎臓圧力が目標値に戻るようにシステムの1つまたは複数の構成要素を制御することになる。様々な実施形態によれば、式(6)を利用する制御機構が提供される。
【0030】
図1は、少なくとも1つの実施形態による腎臓圧力管理システム100の一例であり、流体管理の手法の一例を概説する図を含む。この例示的な構成において、高流体流量システムが、従来の吊り下げ式の灌流バッグを用いて実装されている。以下でさらに詳細に説明するように、流体流量制御弁は、システム100の灌流バッグと組み合わせて使用される。
【0031】
システム100は、圧力センサー114を有して構成された灌流チャネル110と、ドレンリザーバー125(廃棄トレイとも称される)と流体連通している吸引チャネル130と、コントローラー150と、を備える。システム100の尿管鏡102は、灌流チャネル110および吸引チャネル130の少なくとも一部分を含み、腎臓105の尿管106に挿入されるように構成されている。本開示の方法の下では、尿管鏡102は患者の身体に挿入できる。
【0032】
灌流チャネル110は、近位端および遠位端を有し、遠位端は、腎臓105の内部に灌流流体を送るように腎臓105の内部と流体連通している。灌流チャネル110は、レーザーファイバー、ガイドワイヤー、および結石摘除バスケットなどのツールを含む、内部構造物も障害物もないように構成されている。このリストは排他的ではなく、灌流チャネル110には、グラスパー、スネア、鉗子、可撓性の針、およびバルーンツールを含む、やはり本開示の尿管鏡の範囲内にある他のツールもないことを理解されたい。灌流チャネル110を(手術中に)内部構造物も障害物もないようにすることは、腎臓内の圧力を事実上制御するために、上記の式(6)を用いるための条件を定めるために必要である。
【0033】
灌流チャネル110は、圧力センサー114を有して構成されている。センサー114を用いて灌流チャネル110に沿って圧力を測定することは、腎臓中に直接的に圧力センサーを挿入すること、またはやはり損傷を受けやすい尿管鏡の先端に圧力センサーを位置決めすることよりも、ずっと単純であり、廉価である。圧力センサー114は、灌流チャネル110内の圧力を感知するかまたは別の方法で測定するように構成されており、コントローラー150と通信している(コントローラー150は圧力センサー114と通信している)。いくつかの実施形態において、圧力センサー114は、灌流チャネル110に沿って位置決めされており、灌流チャネル110中の灌流流体と(例えば、ポートを介して)直接的に接触する。圧力センサー114は、灌流バッグ116(すなわち、灌流流体源)または灌流流量制御弁118と、灌流チャネル110の終端部(遠位端)と、の間に位置決めされている。いくつかの実施形態によれば、尿管鏡102の可撓性シース103は、吸引チャネルおよび灌流チャネルの少なくとも一部分を受けるための中央通路を有する。可撓性シース103は、近位端107および遠位端104を有し、遠位端104は、(手術のために完全に適位置にあるときは)腎臓の内部と流体連通している。いくつかの実施形態によれば、圧力センサー114は、可撓性シース103の近位端107の上流に位置決めされている。いくつかの実施形態において、圧力センサー114は、可撓性シース103の近位端107に隣接した位置から、近位端107から最大2メートル上流の距離までのいずれかの位置に位置決めされている。
【0034】
先に言及したように、システム100は、従来の吊り下げ式灌流バッグ116(重力バッグまたは流体バッグとも称される)として構成された灌流流体源を備える。いくつかの実施形態において、灌流流体流量制御弁118は、その灌流流体源と流体連通しており、灌流チャネル110中の灌流流体の流量を制御するように動作可能である。そのためには、灌流流体流量制御弁118は、コントローラー150と通信しており、可変流量機能を有して構成されるかまたは別の方法でそれを備える。
【0035】
いくつかの実施形態において、灌流チャネル110は、任意選択で、図1において点線の構造物の流量センサー112によって示されているような流量センサーも有して構成されている。実装されるときは、流量センサー112は、灌流チャネル110内の灌流流体流量を感知するかまたは別の方法で測定するように構成されており、コントローラー150と通信している。流量センサー112は、灌流流体源(例えば、灌流バッグ116)または灌流流量制御弁118と、灌流チャネル110の終端部(遠位端)と、の間に位置決めされている。任意選択の流量測定値は、以下でさらに詳細に記載するように、コントローラー150によって、腎臓の圧力を計算するときに式(6)で用いることができる。流量測定値は、例えば、灌流ポンプが較正されなかったときに、または灌流チャネル中の流体流量が不明であるかもしくは変化する他の例において使用できる。
【0036】
システム100の吸引チャネル130は、近位端および遠位端を有し、その遠位端は、腎臓105の内部から灌流流体を取り出すように腎臓105の内部と流体連通している。ドレナージチャネル138は、吸引チャネル130とドレンリザーバー125との間に流体連通を提供するように構成されている。吸引ポンプ132は、吸引チャネル130と流体連絡しており、吸引チャネル130の遠位端から近位端に向かってドレナージチャネル138まで、さらにドレンリザーバー125に、灌流流体をポンプ輸送するように構成されている。少なくとも1つの実施形態によれば、吸引ポンプ132は、可変速ポンプとして構成されている。図1に示すように、吸引チャネル130の近位端は、ドレンリザーバー125と流体連通しており、吸引ポンプ132は、吸引チャネル130の近位端と、吸引チャネル130の遠位端と、の間に位置決めされている。
【0037】
システム100は、安全圧力逃がし弁134(単に「安全弁」とも称される)を有して構成されたドレナージチャネル136も備える。ドレナージチャネル136は、灌流チャネル110とドレンリザーバー125との間に流体連通を提供するように構成されている。安全弁134は、灌流チャネル110からドレンリザーバー125への灌流流体の流れを可能にするかまたは停止する(すなわち、制御する)ように動作可能である。通常の動作の間は、安全弁134は閉位置にあり、そのため、灌流流体は、灌流チャネル110を通って腎臓に流入する。ドレナージチャネル136は、計算された腎臓圧力が極めて高く、灌流チャネル中の灌流流体を直ちにドレナージチャネル136に方向付ける必要がある場合に、安全対策として使用できる。そのときに、コントローラー150は、信号を送信して安全弁134を開放させ、そうすることで、灌流チャネル110とドレンリザーバー125との間に流体連通を提供する。
【0038】
システムドレナージはまた、可撓性シース103と尿管106との間に存在するドレナージ流路120(自然ドレナージとも称される)によっても供給される。ドレンリザーバー125へのドレナージはまた、吸引ポンプ132を通してドレナージチャネル138を介しても提供される。ドレナージチャネル136、ドレナージ流路120、およびドレナージチャネル138はすべて、ドレンリザーバー125に流体連結されている。
【0039】
コントローラー150は、灌流チャネル110中の灌流流体の流体流量を決定するように構成されている。例えば、コントローラー150は、オペレーターもしくは灌流流体流量制御弁118、または灌流流体流量の値をコントローラー150に送信するように構成された他のデバイス(例えば、灌流ポンプ)からの入力として、灌流チャネル110中の灌流流体の流体流量に関する値を受信することができる。先に言及したように、いくつかの実施形態において、灌流チャネル110両端間の圧力降下は、一定であると見なすことができ、したがって、灌流チャネル110内の流体流量は、一定であると見なすことができる。例えば、灌流チャネルを通して灌流流体をポンプ輸送するために可変速ポンプが使用される例(例えば、以下で記載するシステム200)において、良好に較正された灌流ポンプがあれば、流体流量センサー(および流体流量測定)を省略できることを示唆することになる。流量は、灌流ポンプからの流量データに基づいて計算するか、または別の方法で取得することもできる。
【0040】
コントローラー150はまた、灌流チャネル110の圧力センサー114から圧力測定値を受信するようにも構成されている。コントローラー150は、決定された灌流チャネル110中の灌流流体の流体流量および灌流チャネル110の流体の圧力測定に少なくとも部分的に基づいて、腎臓内の圧力を計算する(例えば、上記の式(6)を用いる)。
【0041】
式(6)の流体力学定数Uは、オペレーターによるコントローラー150への入力でもよい尿管鏡の物理的パラメーター(すなわち、チャネルIDおよび長さ)に基づいて、コントローラー150によって計算する(またはオペレーターが直接的に入力する)こともできる。次いで、以下でより詳細に説明するように、コントローラー150は、計算された腎臓圧力を目標腎臓圧力(例えば、10mmHg~40mmHg)と比較し、比較に基づいて、灌流チャネル110中の灌流流体の流体流量および吸引チャネル130中の灌流流体の流体流量の少なくとも一方を制御する。例えば、コントローラー150は、灌流流体流量制御弁118および吸引ポンプ132とも通信しており、それぞれの灌流チャネル110および吸引チャネル130中の灌流流体の流量を制御するために、それらのデバイスのいずれかまたは両方に制御コマンドを送信することができる。
【0042】
一実施形態によれば、式(6)の流体力学定数Uは、尿管鏡手術前に較正手順を行うことによって、計算するかまたは別の方法で取得することができる。この較正手順の間は、既知の流量の灌流の流れを、尿管鏡を通して直接的にドレナージに送ることができる。圧力出力は、そのときはゼロであり、入力圧力は、尿管鏡の実際の圧力降下に等しく、そのことによって、式(6)のUの計算が簡単になる。
【0043】
コントローラー150(制御システムとも称される)は、当業者に理解されるように、1つまたは複数のデジタルまたはアナログのプロセッサー(CPU)を備えることができ、そのプロセッサー(CPU)は、メモリー(または複数のメモリー)、回路構成、ユーザーインターフェース、ならびに/または、ハードワイヤードデバイスおよび/もしくはプログラム可能デバイスを含む他の物理コンポーネントを有する。本明細書および特許請求の範囲において、コントローラーがいくつかのステップを実行するように「構成」または「プログラム」されていることが示されている。そのことは、実際にコントローラーを構成またはプログラムできるようにする任意の手段によって実現され得る。例えば、コントローラーが1つまたは複数のCPUを備える例において、適切なメモリーに1つまたは複数のプログラム(例えば、ソフトウェア)が格納されている。1つまたは複数のプログラムは指示を含み、その指示は、コントローラーによって実行されるときに、コントローラーに関連付けて記載および/または特許請求されるステップをコントローラーに実行させる。
【0044】
システム100を尿管鏡手術に組み込むには、尿管鏡が対象の尿管106に導入されたときに、医師などのオペレーターがまず、灌流チャネル110を通る灌流流体の流れを開始する。これは、コントローラー150を用いてまたはオペレーターによって手動で行うことができる。そのことは、流量制御弁またはポンプ(例えば、制御弁118、または図2を参照しながら以下で論じるシステム200の灌流ポンプ215)を始動させるかまたは別の方法で制御することによって実現される。流量制御弁またはポンプは、灌流チャネル110中の灌流流体に関する所定または目標の流量を開始するように設定することができる。いくつかの実施形態において、これは、境界値を含む20mL/min~100mL/minの範囲にある。いくつかの実施形態において、灌流流体の流体流量は、境界値を含む80mL/min~100mL/minの範囲にある。他の実施形態において、灌流流体の流体流量は10mL/minであり、いくつかの実施形態において、灌流流体の流体流量は20mL/minである。次いで、灌流流体は、灌流チャネル110の近位端から遠位端に流れ、腎臓105の内部に入る。
【0045】
いくつかの手法で腎臓105から灌流流体を取り出すことができる。先に言及したように、尿管鏡102は、灌流チャネル110および吸引チャネル130の少なくとも一部分を含み、腎臓105の尿管106に挿入されるように構成されている。いくつかの実施形態によれば、尿管鏡102の可撓性シース103は、吸引チャネルおよび灌流チャネルの少なくとも一部分を受けるための中央通路を有し、可撓性シースは、可撓性シース103と尿管106との間のドレン流路120(図1では自然ドレナージとしても表示されている)を介してドレンリザーバー125に灌流流体を排出できるように構成されている。したがって、これは灌流流体が腎臓105から出るための少なくとも1つの機構である。灌流流体は、ポンプの使用なしで(例えば、吸引ポンプ132の使用なしで)、腎臓105に入る灌流流体によって生じる流体圧力によって、ドレン流路120を通ってドレンリザーバー125に流れることができる。手術が始まり、腎臓がより多くの流体でいっぱいになると、コントローラー150は、吸引ポンプ132を起動することができ、吸引ポンプ132は、吸引チャネル130の遠位端から近位端に向かってドレナージチャネル138まで、さらにドレンリザーバー125に灌流流体をポンプ輸送する。
【0046】
灌流源から灌流流体の流れが始まると、コントローラー150は、圧力センサー114から圧力測定値を受信する。腎臓105内の圧力は、先に論じたように灌流流体の圧力測定値および測定された流体流量に少なくとも部分的に基づいて、コントローラー150によって計算される。コントローラー150は、計算された腎臓圧力を目標腎臓圧力値と比較し、次いで、その比較に基づいて、コントローラー150は、灌流チャネル110中の灌流流体の流量および吸引チャネル130中の灌流流体の流量の少なくとも一方を制御する。
【0047】
一実施形態によれば、目標腎臓圧力値は、境界値を含む10mmHg~40mmHgの範囲にある。いくつかの実施形態において、計算された腎臓圧力が目標腎臓圧力よりも大きい場合には、コントローラー150は、吸引チャネル130中の灌流流体の流体流量を増加させること、灌流チャネル110中の灌流流体の流体流量を減少させること、またはその両方を行う(すなわち、吸引チャネル130中の灌流流体の流体流量を増加させかつ灌流チャネル110中の灌流流体の流体流量を減少させる)ように構成されている。例えば、コントローラー150は、吸引チャネル130中の灌流流体の流体流量を増加させるように吸引ポンプ132を制御し、灌流チャネル110中の灌流流体の流体流量を減少させるように灌流流体流量制御弁118を制御するように構成されている。先に言及したように、吸引ポンプ132は、可変速ポンプとして構成されており、コントローラー150は、吸引チャネル130中の灌流流体の流体流量を増加させるように、電源投入するかまたは可変速度の速度を上昇させることによって吸引ポンプ132を制御する。先に言及したように、灌流流体流量制御弁118は、可変流量機能も有して構成されている。したがって、コントローラー150は、灌流流体が灌流チャネル110から腎臓105に入るときの流量を減少させるように弁を制限または閉止することによって灌流流体流量制御弁118を制御することができる。
【0048】
吸引チャネル130中の流体流量を増加させることは、吸引チャネル130内に陰圧を生み出し、ここで灌流流体は、吸引ポンプ132によってドレナージチャネル138を通ってドレンリザーバー125に方向付けられる。陰圧は腎臓105内の圧力を低下させる。灌流チャネル110中の灌流流体の流体流量を減少させることは、腎臓に入る流体の量を減少させ、そのことでドレナージ流路120を通るかつ/またはドレナージチャネル138を通るより多くのドレナージが起きることを可能にでき、そうすることで、腎臓105内の圧力を低下させる。
【0049】
いくつかの実施形態において、コントローラー150は、吸引チャネル130が詰まったときに灌流チャネル110中の灌流流体の流体の流れを減少させるように、灌流流体流量制御弁118および/または安全弁134を制御することができる。吸引チャネルが詰まると、コントローラー150が吸引ポンプ132の速度または動作を上昇させるように制御信号を送信するにもかかわらず、腎臓105の圧力の上昇が起きる(計算された腎臓圧力値が目標腎臓圧力値よりも大きくなる)。先に言及したように、安全弁134は、灌流チャネル110からドレンリザーバー125への灌流流体の流れを制御するように動作可能であり、通常は閉止されていて、灌流流体が灌流チャネル110を通って腎臓105に方向付けられているが、計算された腎臓の圧力が目標腎臓圧力よりも大きい場合、例えば、計算された腎臓の圧力が目標腎臓圧力よりもずっと大きく、実際に(所定の)最大腎臓圧力を超える場合には、安全対策として機能することができる。例えば、目標腎臓圧力が10mmHg~40mmHgの範囲にある場合に、最大腎臓圧力は45mmHg(およびそれを上回る値)でよい。このように計算された圧力がその最大腎臓圧力を超える例においては、コントローラー150は、灌流チャネル110とドレンリザーバー125との間の流体連通を可能にするように安全弁134を開放することによって安全弁134を制御するように構成されている。
【0050】
圧力センサー114および任意選択の流量センサー112は、手術が始まったら継続的または周期的な測定を含む測定を行うように構成するかまたはコントローラー150によって制御することができる。このような測定データは、コントローラー150によって受信され、腎臓105の内部圧力を計算するために使用される。先に言及したように、いくつかの実施形態によれば、コントローラー150は、灌流チャネル110の流量センサー112から流体流量測定値を受信する。
【0051】
少なくとも1つの実施形態によれば、計算された腎臓圧力が目標腎臓圧力よりも僅かまたは低い場合には、コントローラー150は、吸引チャネル130中の灌流流体の流体流量を減少させること、灌流チャネル110中の灌流流体の流体流量を増加させること、またはその両方(すなわち、吸引チャネル130中の灌流流体の流体流量を減少させかつ灌流チャネル110中の灌流流体の流体流量を増加させること)を行うように構成されている。例えば、コントローラー150は、吸引チャネル130中の灌流流体の流体流量を減少させるように吸引ポンプ132を制御し、灌流チャネル110中の灌流流体の流体流量を増加させるように灌流流体流量制御弁118を制御するように構成されている。先に言及したように、吸引ポンプ132は、可変速ポンプとして構成されており、コントローラー150は、吸引チャネル130中の灌流流体の流体流量を減少させるように電源遮断するかまたは可変速度の速度を低下させることによって吸引ポンプ132を制御する。コントローラー150は、灌流流体が灌流チャネル110から腎臓105に入るときの流量を増加させるように、弁118を開放する(すなわち、さらに開放する)ことによって(または、システム200を参照しながら以下に記載するように、可変速ポンプ215の速度を上昇させることによって)、灌流流体流量制御弁118を制御するように構成されている。コントローラー150によるそれらの作用の一方または両方によって、灌流流体が腎臓105に蓄積し、そうすることで、腎臓105内の内部圧力を上昇させることが可能になる。
【0052】
図2は、別の実施形態による腎臓圧力管理システム200の別の例であり、図1のシステム100と同様であるが、この例示的な構成において、高流体流量システムは、図1においてシステム100の灌流バッグ116(灌流源)と組み合わせて使用される灌流流体流量制御弁118の代わりに、灌流チャネル210(および灌流流体源、例えば、灌流源217)に流体連結された灌流ポンプ215を用いて実装されている。灌流ポンプ215は、灌流流体源217(水リザーバー)と流体連通している。灌流ポンプ215は、コントローラー250とも通信しており、灌流チャネル210中の灌流流体の流量を制御するように動作可能である。灌流ポンプ215は、可変速ポンプとして構成されている。
【0053】
システム200は、図1のシステム100と同様にして動作し、話を簡単にするために、ここでは繰り返さない。主な違いは、灌流流体流量制御弁118を制御する代わりに、コントローラー250が、灌流流体が灌流チャネル210から腎臓205に入るときの流量を減少または増加させるように、ポンプの速度を調節することによって灌流ポンプ215を制御することである。例えば、計算された腎臓圧力が目標腎臓圧力値よりも大きいときには、コントローラー250は、灌流ポンプ215を電源遮断するかまたはその速度を低下させることによって、灌流チャネル210中の灌流流体の流体流量を減少させることができる。計算された腎臓圧力が目標腎臓圧力値よりも小さいときには、コントローラー250は、灌流ポンプ215に電源投入するかまたはその速度を上昇させることによって、灌流チャネル210中の灌流流体の流体流量を増加させることができる。システム200が有するシステム100との別の違いは、最大入力圧力に関することである。吊り下げ式バッグを用いるシステム100の構成においては、最大圧力はバッグの高さによって制限される。そのときに、流量は、腎臓の圧力に応じて変動することになる(Pinputが一定であり、Pkidneyが上昇する場合、式(6)によれば流量が減少する)。流量が変動するため、腎臓内の圧力を制御するために、流量は、流量計(例えば、流量計212)によってモニタリングでき、式(6)によって利用できる。
【0054】
ただし、いくつかのポンプは、実質的に高い圧力を生成でき、そのため、手術に必要な全範囲の入力圧力において一定の流量を維持できる。その場合に、ポンプの可変速度が例えばmL/minの流れで段階分けされており、流量が精密に較正されている場合は、直接的な流量測定の代わりに、ポンプの流量設定を使用することが可能である。この構成の利点の一つは、流量計自体が必要ないことである。本出願人によって行われた特定の一実験において、灌流ポンプ(Bianca Pumps、Temecula、California、USAから市販されているモデルPP-606、Precision Peristaltic Pump)が使用された。そのポンプは、0mL/min~111mL/minの可変流体流量を高圧で生成することができる。灌流流体流量は80mL/minに設定され、その流量での尿管鏡の圧力降下は、250cmHO~400cmHOの範囲内にあった。腎臓の圧力が上昇したときには、ポンプは、灌流流体流量を維持するのに十分な入力圧力を生成することができ、そのため、灌流流体流量の直接的なモニタリングは必要なく、その代わりに、ポンプの流量設定はコントローラーによる入力として使用された。
【0055】
図3は、別の実施形態による腎臓圧力管理システム300の別の例であり、図1のシステム100および図2のシステム200と同様であるが、この例示的な構成において、高流体流量システムは、可変圧縮デバイスまたは可変圧縮機構319と、止め弁313と、灌流チャネル310上に位置決めされた逆流防止弁311と、を用いて実装されている。それらのデバイスのうちの1つまたは複数は、灌流チャネル310中の灌流流体の流れを制御するように、灌流バッグ316(灌流源)と組み合わせて使用することができる。
【0056】
可変圧縮デバイス319は、灌流チャネル310中の灌流流体の流れを制御するように、灌流バッグ316に圧力を加えるかまたは別の方法で圧縮力を加えるように構成されている。例えば、灌流バッグ316への圧縮力を上昇させると、灌流チャネル310中の灌流流体の流量が増加し、圧縮力を低下させると、逆の結果を有し、すなわち、灌流チャネル310中の灌流流体の流体流量が減少する。止め弁313も、灌流源316と灌流チャネル310との間の流体連通を可能にする(開放しているとき)、または灌流源316と灌流チャネル310との間の流体連通を休止する(閉止しているとき)によって、この機能を補助することができる。逆流防止弁311によって、灌流バッグ316を患者に対して任意の(すなわち、患者からちょうど40cm上方でない)高さに置くことが可能になり、腎臓305からの灌流流体が灌流バッグ316に逆流することが防止される。図3に示すように、可変圧縮デバイス319、止め弁313、および逆流防止弁311はそれぞれ、コントローラー350と通信しており、灌流チャネル310における灌流流体の流量を制御するように(単独でまたは組み合わせて)動作可能である。
【0057】
システム300は、図1および図2のシステム100および200と同様にして動作し、話を簡単にするために、ここでは繰り返さない。主な違いは、灌流流体流量制御弁118または灌流ポンプ215を制御する代わりに、コントローラー350は、灌流流体が灌流チャネル310から腎臓305に入るときの流量を減少または増加させるように、可変圧縮デバイス319を制御することである。コントローラー350は、その機能を補助するように止め弁313および/または逆流防止弁311を制御することもできる。例えば、特定の尿管鏡の場合、医師またはコントローラー350は、まず、可変圧縮デバイス319を介して圧縮力を加えることで所望の流量の灌流流体を確立することと組み合わせて止め弁313を開放することによって手術を開始できる。
【0058】
図には明白には示されていないが、他の実施形態において、システム100、200、および300は、詰まり除去機能を含むこともでき、すなわち、システムは、灌流流体を吸引チャネルに方向付けし直すように構成されてよい。例えば、ドレナージチャネル136、236、および336の弁は、灌流流体を灌流チャネルから吸引チャネルに向けるように構成され得る。いくつかの例において、この同じ弁は、灌流流体を灌流チャネルからドレンリザーバー125、225、325に向けるように構成されてもよい。
【0059】
(実施例)
本明細書で開示されているシステムの実施形態および技術の機能および利点は、以下に記載する実施例に基づいてより完全に理解することができる。以下の実施例は、開示されている腎臓圧力管理システムの様々な態様を示すことが意図されているが、その尿管鏡全体を完全に例示するものではない。
【0060】
(実施例1)
図1のシステム100は以下の通りに動作する。
・医師が、望ましい流量のレベルになるまで流量制御弁(例えば、弁118)を開放する。
・灌流流体は、2チャネルの尿管鏡102の灌流チャネル110を通って腎臓105に流れ、腎臓105から流れ出て尿管鏡本体の周りで尿管/尿道を通って(自然ドレナージ、ドレナージ流路120)廃棄部に至る。
・計算された腎臓105内の圧力が目標圧力値を超えて上昇する場合(コントローラー150によって判定される)に、コントローラーは、
吸引ポンプ132をオンにするかもしくはその速度を上昇させる、かつ/または
灌流ライン110上の可変流量制御弁118を制限もしくは閉止する。
・計算された腎臓105内の圧力が目標圧力値よりも小さい場合には、コントローラーは、
吸引ポンプ132を停止させるかもしくはその速度を低下させる、かつ/または
灌流ライン110上の可変流量制御弁118を開放するかもしくはさらに開放する。
【0061】
(実施例2)
図2のシステム200は以下の通りに動作する。
・医師が、灌流ポンプ215をオンにしてそれを所定の値になるように設定する。
・灌流流体は、2チャネルの尿管鏡202の灌流チャネル210を通って腎臓205に流れ、腎臓205から流れ出て尿管鏡本体の周りで尿管/尿道を通って(自然ドレナージ、ドレナージ流路220)廃棄部に至る。
・計算された腎臓205内の圧力が目標圧力値を超えて上昇する場合(コントローラー250によって判定される)に、コントローラー250は、
吸引ポンプ232をオンにするもしくはその速度を上昇させる、かつ/または
灌流ポンプ215を速度低下させるかもしくは停止させる。
・計算された腎臓205内の圧力が目標圧力値よりも小さい場合には、コントローラーは、
吸引ポンプ232をオフにするかもしくはその速度を低下させる、かつ/または
灌流ポンプ215を速度上昇させるかもしくは停止させる。
【0062】
本発明による、本明細書で開示されている態様は、それらの用途において、以下の説明に記載されるかまたは添付の図面に示される構成要素の構成および配置の詳細に限定されない。それらの態様は、他の実施形態を想定でき、様々な形で実施または実行することができる。特定の実装形態の例は、単なる例示を目的として本明細書に提示されており、限定的なものではない。具体的には、任意の1つまたは複数の実施形態と関連付けて論じられる作用、構成要素、要素、および特性は、任意の他の実施形態において同様の役割から除外されるものではない。
【0063】
また、本明細書で使用されている表現および用語は、説明を目的とするものであり、限定と見なすべきではない。単数形で言及されている本明細書のシステムおよび方法の例、実施形態、構成要素、要素、または作用への言及はいずれも、複数形を含む実施形態を包含することもでき、本明細書のいずれの実施形態、構成要素、要素、または作用への複数形での言及はいずれも、単数のみを含む実施形態を包含することもできる。単数形または複数形での言及は、現在開示されているシステムまたは方法、それらの構成要素、作用、または要素を限定するものではない。本明細書における「含む(including)」、「備える」、「有する」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、およびそれらの変化形の使用は、その後に列挙されている項目、およびその等価物、ならびに付加的な項目を包含することを意味する。「または」への言及は、「または」を用いて記載されている用語はいずれも1つだけ、2つ以上、および記載されている用語のすべてのうちのいずれかを示すことができるように、包括的に解釈され得る。さらに、本明細書と本出願に参照により援用する文献との間で整合性のとれない用語の使用があった場合、参照により援用している用語の使用は、本明細書における用語の使用を補足し、両立し得ない不整合があれば、本明細書における用語の使用を優先する。さらに、本明細書では読み手の便宜のためにタイトルまたはサブタイトルが使用される場合があるが、それらは本発明の範囲に影響を与えないものとする。
【0064】
このように少なくとも1つの例のいくつかの態様を記載してきたが、様々な変形例、修正例、および改善例が当業者には容易に思いつくであろう。例えば、本明細書に開示されている例は、他の文脈で使用されてもよい。そのような変形例、修正例、および改善例は、本明細書の一部であることが意図され、本明細書で論じた例の範囲内にあることが意図されている。したがって、前述の説明および図面は単なる例に過ぎない。
【符号の説明】
【0065】
100 腎臓圧力管理システム
102 尿管鏡
103 可撓性シース
104 遠位端
105 腎臓
106 尿管
107 近位端
110 灌流チャネル
112 流量センサー
114 圧力センサー
116 灌流バッグ、灌流流体源
118 灌流流量制御弁
120 ドレナージ流路
125 ドレンリザーバー
130 吸引チャネル
132 吸引ポンプ
134 安全圧力逃がし弁、安全弁
136 ドレナージチャネル
138 ドレナージチャネル
150 コントローラー
200 腎臓圧力管理システム
202 尿管鏡
205 腎臓
210 灌流チャネル
212 流量計
215 灌流ポンプ
217 灌流流体源、灌流源、水リザーバー
220 ドレナージ流路
225 ドレンリザーバー
232 吸引ポンプ
236 ドレナージチャネル
250 コントローラー
300 腎臓圧力管理システム
305 腎臓
310 灌流チャネル
311 逆流防止弁
313 止め弁
316 灌流バッグ、灌流源
319 可変圧縮デバイス、可変圧縮機構
325 ドレンリザーバー
336 ドレナージチャネル
350 コントローラー
図1
図2
図3
【国際調査報告】