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特表2024-529385循環癌関連マクロファージ様細胞(CAML)の変化を用いて癌治療反応を予測及び/又はモニタリングする方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】循環癌関連マクロファージ様細胞(CAML)の変化を用いて癌治療反応を予測及び/又はモニタリングする方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20240730BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20240730BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G01N33/48 M
G01N33/68
C12Q1/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503559
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 US2022037874
(87)【国際公開番号】W WO2023004038
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】63/224,166
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/240,669
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/317,642
(32)【優先日】2022-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518362775
【氏名又は名称】クリエイティブ マイクロテック インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】CREATV MICROTECH, INC.
【住所又は居所原語表記】11609 Lake Potomac Drive,Potomac, Maryland 20854, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100113398
【弁理士】
【氏名又は名称】寺崎 直
(72)【発明者】
【氏名】アダムス, ダニエル エル.
(72)【発明者】
【氏名】タン, チャ-メイ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CB02
2G045DA36
2G045FB03
2G045GC22
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QR77
4B063QS10
4B063QX01
(57)【要約】
癌に罹患している対象の治療反応を予測するための手段を開示し、その予測は、ベースライン時及び治療導入後の対象の血液等の生体サンプルに認められる循環癌関連マクロファージ様細胞(CAML)及び循環腫瘍細胞(CTC)の数及びサイズを比較することに基づく。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法であって、前記対象から取得された治療前のサンプル(治療前サンプル)及び治療後のサンプル(治療後サンプル)におけるCAMLのサイズ及び数を判定及び比較し、これに基づいて予測を行うことを含み、
前記治療後サンプル中の少なくとも1つのCAMLのサイズが、前記治療前サンプル中の最大のCAMLよりも大きく、前記治療後サンプル中のCAMLの数が前記治療前サンプル中のCAMLの数よりも多い場合、前記対象は、治療に反応しないと予測する、前記方法。
【請求項2】
癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法であって、前記癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療前サンプルを取得し、前記対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、前記治療前サンプルと前記治療後サンプルとの間のCAMLの数及びサイズを比較して差異を求めることを含み、
前記治療後サンプル中の最大のCAMLが、前記治療前サンプル中の最大のCAMLと比較して、サイズが減少している又はサイズが同様であり、前記治療後サンプル中のCAMLの数が、前記治療前サンプル中のCAMLの数より少ない場合、前記対象は、前記治療から利益を得る又は前記治療に反応する可能性がある、前記方法。
【請求項3】
癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法であって、前記癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療前サンプルを取得し、前記対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、前記治療前サンプルと前記治療後サンプルとの間のCAMLの数及びサイズを比較して差異を求めることを含み、
前記治療後サンプル中の最大のCAMLが、前記治療前サンプル中の最大のCAMLと比較して、サイズが減少している又はサイズが同様であり、前記治療後サンプル中のCAMLの数が、前記治療前サンプル中のCAMLの数より多い又は前記治療前サンプル中のCAMLの数と同じである場合、前記対象は、前記治療から利益を得られない又は前記治療に反応しない可能性がある、前記方法。
【請求項4】
癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法であって、前記癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療前サンプルを取得し、前記対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、前記治療前サンプルと前記治療後サンプルとの間のCAMLの数及びサイズを比較して差異を求めることを含み、
前記治療後サンプル中の最大のCAMLが、前記治療前サンプル中の最大のCAMLと比較して、サイズが増加している又はサイズが同様であり、前記治療後サンプル中のCAMLの数が、前記治療前サンプル中のCAMLの数より少ない又は前記治療前サンプル中のCAMLの数と同じである場合、前記対象は、治療から利益を得られない又は前記治療に反応しない可能性がある、前記方法。
【請求項5】
癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法であって、前記癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療前サンプルを取得し、前記対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、前記治療前サンプルと前記治療後サンプルとの間のCAMLの数及びサイズを比較して差異を求めることを含み、
前記治療後サンプル中の最大のCAMLが、前記治療前サンプル中の最大のCAMLと比較して、サイズが増加している又はサイズが同様であり、前記治療後サンプル中のCAMLの数が前記治療前サンプル中のCAMLの数より多い場合、前記対象は、治療から利益を得られない又は治療に反応しない可能性がある、前記方法。
【請求項6】
癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法であって、前記癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、CTCについて前記サンプルをアッセイすることを含み、前記サンプル中に1つ又は複数のCTCが検出された場合、前記対象は、治療から利益を得られない又は治療に反応しない可能性がある、前記方法。
【請求項7】
癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法であって、前記癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療前サンプルを取得し、前記対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、(i)前記治療前サンプルと前記治療後サンプルとの間のCAMLの数及びサイズを比較して差異を求め、(ii)前記治療後サンプル中のCTCの数を判定することを含み、前記CAMLの数及び/又はサイズに差異が認められた場合、及び/又は少なくとも1つのCTCが検出された場合、治療反応を予測する、前記方法。
【請求項8】
前記治療後サンプルにおいて少なくとも1つのCTCが検出された場合、前記対象は、治療から利益を得られない又は治療に反応しない可能性がある、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記CAMLは、
(a)約14~64μmのサイズを有する複数の個々の核及び/又は1つ若しくは複数の融合核;
(b)約20~300μmの細胞サイズ;および
(c)紡錘形、オタマジャクシ形、円形、長円形、2本脚、2本脚以上、細い脚、及び無定形からなる群から選択される形態学的形状、
の特徴を有する、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記CAMLは、
(d)CD14陽性表現型
(e)CD45発現
(f)EpCAM発現
(g)ビメンチン発現
(h)PD-L1発現
(i)単球性CD11Cマーカー発現
(j)内皮CD146マーカー発現
(k)内皮CD202bマーカー発現
(l)内皮CD31マーカー発現
(m)上皮性癌細胞CK8、CK18、及び/又はCK19マーカー発現
のうちの1つ又は複数の特徴を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記サンプルのサイズは、5~50mLである、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記サンプルの供給源は、末梢血、血液、リンパ節、骨髄、脳脊髄液、組織、尿、末梢血単核細胞(PBMC)、および凍結保存PBMCのうちの1つ又は複数である、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記サンプルは、肘正中静脈血、下大静脈血、大腿静脈血、門脈血、又は頸静脈血である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記癌は、固形腫瘍、ステージI癌、ステージII癌、ステージIII癌、ステージIV癌、癌腫、肉腫、神経芽細胞腫、黒色腫、上皮細胞癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、膵臓癌、大腸癌、肝臓癌、頭頸部癌、腎臓癌、卵巣癌、食道癌、子宮癌、尿路上皮癌、膀胱癌、子宮内膜癌、胆管癌、神経内分泌癌、又は他の固形腫瘍癌である、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
CAML及びCTCが、サイズ排除法、免疫捕捉、デンドリマー媒介多価細胞捕捉、親和性に基づく表面捕捉、バイオミメティック表面コーティング捕捉、セレクチンコーティング表面捕捉、その他の機能化表面捕捉、慣性集束チップ、赤血球溶解、白血球除去、FICOLL分離、電気泳動、誘電泳動、フローサイトメトリー、磁気浮上、各種マイクロ流体チップ、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数の手段を用いてサンプルから単離される、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記CAML及びCTCは、マイクロフィルターを用いるサイズ排除法を用いてサンプルから単離される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記マイクロフィルターが、約5μmから約20μmの範囲の孔径を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記マイクロフィルターの孔は、円形、レーストラック形状、楕円形、正方形、及び/又は長方形の孔形状を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記マイクロフィルターは、精密な孔形状及び均一な孔分布を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記CAML及び前記CTCは、物理的サイズに基づく選別、流体力学的サイズに基づく選別、グループ化、トラッピング、免疫捕捉、大きな細胞の濃縮、又はサイズに基づく小さな細胞の排除を介する、マイクロ流体チップを使用して単離される、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記CAML及び前記CTCは、前記CAMLは、CellSieve(登録商標)低圧精密濾過アッセイを用いて、前記判定ステップのために前記生体サンプルから単離される、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記治療は、化学療法、単剤療法、薬剤の併用療法、免疫療法、標的療法、放射線療法、化学放射線療法、放射線と単剤又は複数の薬剤の併用療法、化学放射線療法と単一又は複数の薬剤の併用療法、癌ワクチン療法、および細胞療法のうちから選択される1つ又は複数である、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記治療は、癌ワクチンである、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、固形腫瘍等の癌に罹患している対象における癌治療反応の予測及び/又はモニタリングのための、血液及び他の体液中のバイオマーカーの使用に関する。この情報は、癌治療を計画する際、患者及び癌専門医にとって有用である。
【背景技術】
【0002】
腫瘍細胞は、原発性固形腫瘍から離脱すると、血液又はリンパ液循環に浸透し、最終的には、血流を離れて臓器又は組織のいずれかに入り、転移する。癌に関連する死亡の90%は、転移プロセスによるものである。最も一般的な転移部位は、肺、肝臓、骨、脳である。循環中に発見される腫瘍細胞は、循環腫瘍細胞(circulating tumor cell:CTC)と呼ばれる。多くの研究発表や臨床試験は、(i)血流中のCTCを列挙(enumeration)することにより、予後の生存や癌の再発に関する情報が提供され、及び(ii)タンパク質の発現レベル、CTC中の遺伝子変異や転座の発生を調べることにより、治療に関する情報が提供されるとい点において、CTCが臨床的に有用であることを示している。しかしながら、ステージIVの癌患者であっても、CTCと、対象の癌の発症及び/又は存在との関連性に一貫性があるわけではない。CTCは、乳癌、前立腺癌、大腸癌(colorectal cancer)のステージIVで最も頻繁に発見されるが、これらの癌の早期ステージでは、稀である。CTCは、他の癌でも稀である。
【0003】
循環癌関連マクロファージ様細胞(circulating cancer associated macrophage-like cell:CAML)は、癌に罹患している対象の血液中に認められる他の癌関連細胞である。CAMLは、検査された全ての固形腫瘍及び全ての病期の癌と関連している。CAMLは、倍数体でサイズが非常に大きく、約25μmから約300μm、場合によってはこれ以上である。これらの倍数体細胞は、CD45(-)又は(+)であり、通常CD14とCD31を発現しており、骨髄系であることが確認されている。これらの細胞は、CTCや細胞残屑を飲み込む過程で発見されることが多い[1-6]。
【0004】
血液やその他の体液中のCAML等のバイオマーカーの同定や特徴付けに関連するアッセイは、予測や予後の情報を提供するために使用できる。本発明は、このようなツールを臨床医及びその他の重要な目的に対して提供するものである。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、癌腫、肉腫、神経芽細胞腫、黒色腫等の固形腫瘍を有する対象の血液中に見出される、特異的な特徴を有する細胞の一種を使用する方法に係る。これらの循環細胞は「循環癌関連マクロファージ様細胞」(circulating Cancer Associated Macrophage-like cell:CAML)と呼ばれ、癌に罹患している対象の固形腫瘍の存在と関連することが判明している。CAMLに関連する5つの形態が特徴付けられ、記述されている[1-3]。CAMLは、精密マイクロフィルターを用いたサイズ排除精密濾過により、ステージIからステージIVの固形腫瘍を有する対象の末梢血から一貫して検出されている。
【0006】
CAMLに関連する医療用途としては、以下に限定されるものではないが、癌の早期発見や診断、特に癌の再発や再燃の早期発見や診断、癌変異の判定を行うためのバイオマーカーとしての細胞の使用が挙げられる。CAMLのサイズは、予後情報を提供することが明らかになっている。7.5mLの血液サンプル中に50μm以上のCAMLを有する患者は、50μm以上のCAMLを有さない患者と比較して、無増悪生存期間と全生存期間が短いことが明らかになっている[4]。
【0007】
ここに初めて報告されることとして、癌患者の血液中に見出されるCAMLに関連する他の特性、並びに同じサンプル中に見出される循環腫瘍細胞(circulating tumor cell:CTC)に関連する特性は、患者のケアに重要な予測及び予後の両方の情報を提供するために使用できる。例えば、ある治療計画から得られた臨床データに、バイオマーカー陽性群とバイオマーカー陰性群の両方が含まれる場合、(1)バイオマーカー陰性群が治療反応者と非反応者を層別化できない場合、データは、予測的であり、(2)バイオマーカー陽性コホートとバイオマーカー陰性コホートの両方でバイオマーカーが反応者を層別化できる場合、データは、予測的であると共に予後的であり得る[7]。
【0008】
本発明は、これらの特性を利用し、第1の実施形態において、同一患者からの少なくとも2つのサンプルにおけるCAMLのサイズ及び数を判定及び比較することによって、癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法を提供し、第1の患者サンプルは、治療前に得られ(すなわち、治療前サンプル)、第2の患者サンプルは、治療後に得られる(すなわち、治療後サンプル)。ベースライン(baseline:BL)は、第1の(治療前の)患者サンプルによって提供される。本発明のいくつかの局面において、治療後サンプル中の少なくとも1つのCAMLが、治療前サンプル中の最大のCAMLよりもサイズが大きく、治療後サンプル中のCAMLの数が治療前サンプル中のCAMLの数よりも多い場合、対象は、治療に反応しないと予測する。
【0009】
本実施形態の第1の特定の局面は、癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法であって、癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療前サンプルを取得し、対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、治療前サンプルと治療後サンプルとの間のCAMLの数及びサイズを比較して差異を求めることを含み、CAMLの数及び/又はサイズに差異が認められた場合、治療反応を予測する。差異は、CAMLのサイズの変化、CAMLの数の変化、又はその両方でありうる。CAMLのサイズの変化は、サンプル中の全てのCAMLについて算出された平均サイズの変化であってもよく、またはサンプル中の最大のCAMLのサイズの変化であってもよい。サイズの変化は、サイズの増加であってもよく、またはサイズの減少であってもよい。
【0010】
本実施形態の第2の特定の局面は、癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法であって、癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療前サンプルを取得し、対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、治療前サンプルと治療後サンプルとの間のCAMLの数及びサイズを比較して差異を求めることを含み、治療後サンプル中の最大のCAMLが、治療前サンプル中の最大のCAMLと比較して、サイズが減少している又はサイズが同様であり、治療後サンプル中のCAMLの数が、治療前サンプル中のCAMLの数より少ない場合、対象は、治療から利益を得る又は治療に反応する可能性がある。
【0011】
本実施形態の第3の特定の局面は、癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法であって、癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療前サンプルを取得し、対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、治療前サンプルと治療後サンプルとの間のCAMLの数及びサイズを比較して差異を求めることを含み、治療後サンプル中の最大のCAMLが、治療前サンプル中の最大のCAMLと比較して、サイズが減少している又はサイズが同様であり、治療後サンプル中のCAMLの数が、治療前サンプル中のCAMLの数より多い又は治療前サンプル中のCAMLの数と同じである場合、対象は、治療から利益を得られない又は治療に反応しない可能性がある。
【0012】
本実施形態の第4の特定の局面は、癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法であって、癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療前サンプルを取得し、対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、治療前サンプルと治療後サンプルとの間のCAMLの数及びサイズを比較して差異を求めることを含み、治療後サンプル中の最大のCAMLが、治療前サンプル中の最大のCAMLと比較してサイズが増加している又はサイズが同様であり、治療後サンプル中のCAMLの数が、治療前サンプル中のCAMLの数以下である又は治療前サンプル中のCAMLの数と同じである場合、対象は、治療から利益を得られない又は治療に反応しない可能性がある。
【0013】
本実施形態の第5の特定の局面は、癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法であって、癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療前サンプルを取得し、対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、治療前サンプルと治療後サンプルとの間のCAMLの数及びサイズを比較して差異を求めることを含み、治療後サンプル中の最大のCAMLが、治療前サンプル中の最大のCAMLと比較して、サイズが増加している又はサイズが同様であり、治療後サンプル中のCAMLの数が治療前サンプル中のCAMLの数よりも多い場合、対象は、治療から利益を得られない又は治療に反応しない可能性がある。
【0014】
第2の実施形態において、本発明は、癌に罹患している対象からのサンプル中のCTCをアッセイすることによって、癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法に係り、癌治療後のサンプル(すなわち、治療後サンプル)中に1つ又は複数のCTCが存在することは、対象が治療から利益を得られない又は治療に反応しない可能性があることを示唆する。転移性乳癌、前立腺癌、大腸癌、小細胞肺癌(small cell lung cancer:SCLC)を除き、癌患者の血液中にCTCが見出されることは稀であるが、一部のサンプルにおけるCTCの存在を確認することによって治療反応を予測できる。
【0015】
この実施形態の1つの特定の局面は、癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法であって、癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、CTCについてサンプルをアッセイすることを含み、サンプル中に1つ又は複数のCTCが検出された場合、対象は、治療から利益を得られない又は治療に反応しない可能性がある。
【0016】
第3の実施形態において、本発明は、第1及び第2の実施形態の特徴を組み合わせた方法に係る。
【0017】
また、この第3の実施形態の方法は、癌に罹患している対象における治療反応を予測するために使用できる。本方法は、(i)少なくとも2つの患者サンプルにおけるCAMLのサイズ及び数を比較することであって、第1の患者サンプル(すなわち、治療前サンプル)が治療前に取得され、第2の患者サンプル(すなわち、治療後サンプル)が治療後に取得されることと、(ii)治療後に得られた第2の患者サンプル(すなわち、治療後サンプル)中のCTCの数を判定することとを含む。
【0018】
この実施形態の1つの特定の局面は、癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法であって、癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療前サンプルを取得し、対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、(i)治療前サンプルと治療後サンプルとの間のCAMLの数及びサイズを比較して差異を求めることと、(ii)治療後サンプル中のCTCの数を判定することとを含み、CAMLの数及び/又はサイズに差異が認められた場合、及び/又は少なくとも1つのCTCが検出された場合、治療反応を予測する。一例として、治療後サンプルにおいて少なくとも1つのCTCが検出された場合、対象は、治療から利益を得られない又は治療に反応しない可能性がある。
【0019】
上記の実施形態と同様に、差異は、CAMLのサイズの変化、CAMLの数の変化、又はその両方であってもよい。CAMLのサイズの変化は、サンプル中の全てのCAMLについて算出された平均サイズの変化であってもよく、またはCAMLのサイズの変化は、サンプル中の最大のCAMLのサイズの変化であってもよい。サイズの変化は、サイズの増加であってもよく、またはサイズの減少であってもよい。
【0020】
本発明の各実施形態及び局面において、CAMLは、以下の各特徴を有するものとして定義できる。
(a)約14~64μmのサイズの大きな非定型倍数体核(atypical polyploid nucleus)又はこれ以上のサイズの核、又は単一細胞内の複数の核
(b)約20~300μmの細胞サイズ(より大きいサイズの可能性もある)
(c)紡錘形、オタマジャクシ形、円形、長円形(oblong)、2本脚、細い脚、及び無定形からなる群から選択される形態学的形状
【0021】
本発明の実施形態のいくつかの局面において、CAMLは更に、以下の付加的な特徴の1つ又は複数を有する可能性があると定義できる。
(d)CD14陽性表現型
(e)CD45発現
(f)EpCAM発現
(g)ビメンチン発現
(h)PD-L1発現
(i)単球性CD11Cマーカー発現
(j)内皮CD146マーカー発現
(k)内皮CD202bマーカー発現
(l)内皮CD31マーカー発現
【0022】
本発明の各局面及び実施形態において、サンプルは、生体サンプルであり、サンプルは、以下に限定されるものではないが、末梢血、血液、リンパ節、骨髄、脳脊髄液、組織、尿、末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell:PBMC)、及び凍結保存PBMCのうちの1つ又は複数であってもよい。生体サンプルが血液である場合、血液は、例えば、肘正中静脈血、下大静脈血、大腿静脈血、門脈血、又は頸静脈血であってもよい。サンプルは、新鮮なサンプルであってもよく、適切に調製された凍結保存サンプルを解凍したものであってもよい。本発明のいくつかの局面において、サンプルは、血液サンプルであり、血液サンプルのサイズは、5~50mLである。
【0023】
本発明の各局面及び実施形態において、癌は、固形腫瘍、ステージI癌、ステージII癌、ステージIII癌、ステージIV癌、癌腫(carcinoma)、肉腫(sarcoma)、神経芽細胞腫、黒色腫、上皮細胞癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、膵臓癌、大腸癌、肝臓癌、頭頸部癌、腎臓癌、卵巣癌、食道癌、子宮癌、尿路上皮癌、膀胱癌、子宮内膜癌、胆管癌、神経内分泌癌、又は他の固形腫瘍癌である。
【0024】
本発明の実施形態のいくつかの局面において、CAML及びCTCは、サイズ排除法、免疫捕捉、デンドリマー媒介多価細胞捕捉、親和性に基づく表面捕捉、バイオミメティック表面コーティング捕捉、セレクチンコーティング表面捕捉、その他の機能化表面捕捉、慣性集束チップ、赤血球溶解、白血球除去、FICOLL分離、電気泳動、誘電泳動、フローサイトメトリー法、磁気浮上、各種マイクロ流体チップ、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数の手段を用いてサンプルから単離される。
【0025】
本発明の一局面において、CAML及びCTCは、マイクロフィルターを用いるサイズ排除法を用いてサンプルから単離してもよい。マイクロフィルターは、CTCとCAMLの両方を捕捉するために、約5μmから約10μmの範囲の孔径を有してもよく、マイクロフィルターは、主にCAMLを捕捉するために、約20μmの範囲の孔径を有してもよい。マイクロフィルターの孔は、円形、レーストラック形状、楕円形、正方形及び/又は長方形の孔形状を有していてもよい。マイクロフィルターは、精密な孔形状及び/又は均一な孔分布を有していてもよい。
【0026】
本発明の他の局面において、CAML及びCTCは、物理的サイズに基づく選別、流体力学的サイズに基づく選別、グループ化、トラッピング、免疫捕捉、大きな細胞の濃縮、又はサイズに基づく小さな細胞の排除を介して、マイクロ流体チップを使用してサンプルから単離してもよい。
【0027】
本発明の更なる局面において、CAML及びCTCは、CellSieve(登録商標)低圧精密濾過アッセイを用いて、生体サンプルから単離できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】治療後における治療前サンプルからのCAMLのサイズと数の変化を示す図である。(i)治療後サンプル中のCAMLが治療前サンプルより増加し、かつ最大CAMLのサイズが治療前サンプルより増加した場合、その患者を「CAML増加」に分類する。(ii)治療後サンプル中のCAMLが治療前サンプルより増加し、かつ最大CAMLのサイズが治療前サンプルより増加していない場合、その患者を「CAML混在」に分類する。(iii)治療後サンプル中のCAMLが増加せず、かつ最大CAMLのサイズが治療前サンプルの細胞より増加した場合も、その患者を「CAML混在」に分類する。(iv)治療後サンプル中のCAMLが減少し、最大のCAMLのサイズが治療前サンプルより減少した場合、患者を「CAML減少」に分類する。
【0029】
図2A】1つの薬物治療試験について、CAMLのサイズ又は数の変化に基づいて層別化した無増悪生存期間(PFS)を示す図である。
【0030】
図2B】1つの薬物治療試験において、CAMLのサイズ又は数の変化に基づいて層別化した全生存期間(OS)を示す図である。
【0031】
図3】CAMLのサイズ又は数の変化に基づく治療後の転移性乳癌患者グループの腫瘍サイズの変化のスパイダープロットを示す図である。
【0032】
図4図3のスパイダープロットで示された転移性乳癌患者の一部のより大規模なコホートについて、CAMLのサイズ及び/又は数の変化を考慮したPFSのカプランマイヤープロット(Kaplan-Meier plot)を示す図である。
【0033】
図5A】CAMLのサイズと数、CTCの存在を考慮した転移性乳癌患者のPFSのカプランマイヤープロットを示し、ベースライン時と治療後のCTC及びCAMLの情報を比較して示す図である。
【0034】
図5B】CAMLのサイズと数、CTCの存在を考慮した転移性乳癌患者のOSのカプランマイヤープロットを示し、ベースライン時と治療後のCTC及びCAML情報を比較して示す図である。
【0035】
図6A】CAMLのサイズと数、CTCの存在を考慮した多数の異なる癌種を有する220人の転移性癌患者のPFSのカプランマイヤープロットを示し、ベースライン時と治療後のCTC及びCAML情報を比較して示す図である。
【0036】
図6B】CAMLのサイズと数、CTCの存在を考慮した多数の異なる癌種を有する220人の転移性癌患者のOSのカプランマイヤープロットを示し、ベースライン時と治療後のCTC及びCAML情報を比較して示す図である。
【0037】
図7A】治療後に50μm以上のCAMLを有し、CTCが存在する患者を考慮した多数の異なる癌種を有する220人の転移性癌患者のPFSのカプランマイヤープロットを示す図である。
【0038】
図7B】治療後に50μm以上のCAMLを有し、CTCが存在する患者を考慮した多数の異なる癌種を有する220人の転移性癌患者のOSのカプランマイヤープロットを示す図である。
【0039】
図8】CCR5製剤投与30日後に解析したトリプルネガティブ乳癌(triple negative breast cancer:TNBC)患者25人の(A)PFSと(B)OSを、ベースラインからのCAMLのサイズと数の変化に基づいて層別化した図である。
【0040】
図9】CCR5薬剤投与30日後に解析したトリプルネガティブ乳癌(TNBC)患者25人の(A)PFSと(B)OSを層別化した図である。CCR5薬剤による治療を受けたが、治療後30日のデータがない4人のTNBC患者が含まれている。これら4人の患者については、ベースライン時にCAMLが50μm未満であった患者をCAML減少群とした。
【0041】
図10】CAMLのサイズが35μm変化した場合のPFSとOSを示す図である。(a)及び(b)は、NSCLC全患者n=182人のPFS及びOSである。(c)及び(d)は、IMT集団(n=91、緑)及びCRT単独集団(n=91)のPFS及びOSである。
【0042】
図11】CTC、CAML及び上皮間葉転換細胞(EMT)におけるCXCR4発現の効果を示す図である。CTC、CAML、及びEMT発現のPFS及びOSのカプランマイヤーグラフ。(a.)CTCにおけるCXCR4発現のPFS。(b.)CTCにおけるCXCR4発現のOS。(c.)CAMLにおけるCXCR4発現のPFS。(d.)CAMLにおけるCXCR4発現のOS。(e.)EMTにおけるCXCR4発現のPFS。(f.)EMTにおけるCXCR4発現のOS。
【0043】
図12】化学放射線療法(CRT)後に免疫療法を受けたNSCLC患者の(A)PFSと(B)OSの層別化を、CAMLにおけるPD-L1発現と比較して示す図である。
【0044】
図13】化学放射線療法(CRT)後に免疫療法を受けたNSCLC患者の(A)PFSと(B)OSの層別化を、PD-L1発現とCAMLのサイズの組み合わせによってグループ化した図である。非応答者は、PD-L1が低く、1つ又は複数のCAMLが50μm以上の患者グループに属する。
【0045】
図14】化学放射線療法(CRT)を受けたNSCLC患者のうち、抗PD-L1/PD-1免疫療法を追加した患者(n=41)又は追加しなかった患者(n=41)の(A)PFS及び(B)OSの層別化を、CAMLにおけるPD-L1発現の高低で比較して示す図である。
【0046】
図15】化学放射線療法(CRT)を受けたNSCLC患者のうち、抗PD-L1/PD-1免疫療法を追加した患者(n=41)又は追加しなかった患者(n=41)の(A)PFS及び(B)OSの層別化を、治療前及び治療後のCAMLにおけるPD-L1発現の変化を比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
詳細な説明
本明細書で定義される詳細な構成及び要素等の事項は、本発明の包括的な理解を補助するために提示しているに過ぎない。したがって、本発明の範囲及び思想から逸脱することなく、ここに記載された実施形態を様々に変更及び修正できることは、当業者にとって明らかである。
【0048】
癌は、世界で最も恐れられている病気の1つであり、あらゆる国のあらゆる人口及び民族構成に影響を及ぼしている。男女ともに約40%が一生のうちに癌を発症する。米国のみでも、常時1,200万人以上の癌患者がおり、2018年には、新たに170万人の癌患者が発生し、60万人以上が死亡すると推定されている。世界の癌死亡者数は、年間約800万人と推定され、そのうち300万人は、患者が治療を受けられる先進国で発生している。
【0049】
選択した治療法が有効かどうかを迅速に判断できる診断法が存在することが理想的である。また、その診断法は、血液検査であることが理想的である。
【0050】
本開示では、ステージI~IVの固形腫瘍患者の血液中に、他のどの癌関連細胞よりも一貫して見出される細胞型を提示する。これらの循環細胞は、原発腫瘍と同じ腫瘍マーカーを含むマクロファージ様細胞であり、ここでは、循環癌関連マクロファージ様細胞(circulating Cancer Associated Macrophage-like cell:CAML)と称する。
【0051】
癌に罹患している患者からの生体サンプル中に存在するCAMLは、循環腫瘍細胞(circulating tumor cell:CTC)とともに、例えば、精密濾過法を含むサイズ排除法の使用によって単離し、特徴付けることができる。マイクロフィルターは、CTCやCAML等の大きな細胞を保持しながら、赤血球や大部分の白血球を通過させるのに十分なサイズの孔を持つように形成できる。採取された細胞は、フィルター上で直接、あるいは、他の手段によって、特性解析できる。
【0052】
CAMLは、単独で使用される場合、多くの臨床的有用性を有する。更に、生体サンプル中のCAMLの特性解析は、CTC、無細胞DNA、血液中の遊離タンパク質等の他のマーカーのアッセイと組み合わせることで、診断技術の感度と特異性を更に向上させることができる。CAML及びCTCは、同じ手段で同時に単離及び同定できるため、上記の特徴は、特に、CAML及びCTCに当てはまる。
【0053】
循環癌関連マクロファージ様細胞(CAML)
ここで定義するように、本発明の方法で使用される循環細胞は「CAML」と称することができる。CAMLは、以下の特徴の1つ又は複数を有する。
・CAMLは、大きな非定型倍数体核又は複数の個別核を有し、多くの場合、細胞内に散在しているが、拡大した融合核小体(enlarged fused nucleoli)が共通している。CAMLの核のサイズは、一般的に直径約10μm~約70μm、より一般的には、直径約14μm~約64μmである。
・CAMLは、CD45陽性又はCD45陰性でありえ、本発明は、両方のタイプのCAMLの使用を包含する。
・CAMLは、大きく、長径が約20μmから約300μmである。
・CAMLは、紡錘形、オタマジャクシ形、円形、長円形、2本脚、2本脚以上、細い脚、無定形等、多数の異なる形態学的形状で見出される。
・癌腫由来のCAMLは、通常、拡散したサイトケラチンを有する。
・CAMLがEpCAMを発現している場合、EpCAMは、通常、細胞全体に拡散しているか、液胞及び/又は摂取物質と関連しており、細胞全体に亘って略均一であるが、腫瘍によっては、EpCAMの発現が非常に低いか全くないため、全てのCAMLがEpCAMを発現するわけではない。
・CAMLがマーカーを発現している場合、そのマーカーは、通常、細胞全体に拡散しているか、液胞及び/又は摂取物質と関連しており、細胞全体に略均一であるが、全てのCAMLが同じマーカーを同じ強度で発現するわけではない。
・CAMLは腫瘍由来のマーカーに関連するマーカーを発現することが多い。例えば、腫瘍が前立腺癌由来でPSMAを発現する場合、そのような患者からのCAMLもPSMAを発現する。別の例として、原発腫瘍が膵臓由来でPDX-1を発現する場合、そのような患者からのCAMLもPDX-1を発現する。更なる例として、癌由来の原発腫瘍又はCTCがCXCR-4を発現している場合、そのような患者由来のCAMLもCXCR-4を発現する。上皮性癌に関連するCAMLは、CK8、CK18又はCK19、ビメンチン等を発現することがある。肉腫、神経芽細胞腫、黒色腫の場合、CK8、CK18、CK19の代わりに癌に関連する他のマーカーを使用できる。
・癌由来の原発腫瘍又はCTCが薬物標的のバイオマーカーを発現している場合、そのような患者からのCAMLも薬物標的のバイオマーカーを発現する。このような免疫療法のバイオマーカーの例は、PD-L1である。
・CAMLは、単球マーカー(例えば、CD11c、CD14)や内皮マーカー(例えば、CD146、CD202b、CD31)を発現する。
・CAMLは、Fc断片を結合する能力を有する。
【0054】
CAMLは、H&E等の比色染色、あるいは、特定のマーカーの蛍光染色によって可視化できる。細胞質については、CD31が最も陽性の表現型である。CD31単独、又は他の陽性マーカー、あるいは、腫瘍に関連する癌マーカーとの併用が推奨される。
【0055】
本発明の様々な実施形態及び局面において、CAMLは、以下の特徴を有する細胞として定義できる。(a)約14~64μmの大きな非定型倍数体核、又は単一細胞内に複数の核を有する。(b)約20~300μmの細胞サイズ。(c)紡錘形、オタマジャクシ形、円形、長円形、2本脚、2本脚以上、細い脚、及び無定形からなる群から選択される形態学的形状。更なる実施形態において、CAMLは、以下の付加的な特性の1つ又は複数をも有するものとして定義できる。(d)CD14陽性表現型。(e)CD45発現。(f)EpCAM発現。(g)ビメンチン発現。(h)PD-L1発現。(i)単球性CD11Cマーカー発現。(j)内皮CD146マーカー発現。(k)内皮CD202bマーカー発現。(l)内皮CD31マーカー発現。
【0056】
循環腫瘍細胞
ここで定義するように、癌腫に関連するCTCは、多くのサイトケラチン(cytokeratin:CK)を発現する。CK8、CK18、及びCK19は、CTCによって最も一般的に発現され、診断において使用されるサイトケラチンであるが、調査では、これらのマーカーのみに限定する必要はない。固形腫瘍CTCの表面は、通常、上皮細胞接着分子(epithelial cell adhesion molecule:EpCAM)を発現する。しかしながら、この発現は、一様ではなく、一貫しているわけでもない。CTCは、CD45を発現しないが、これは、CD45が白血球マーカーであるためである。CTCやCAML等の腫瘍関連細胞を同定するアッセイでは、CK8、CK18、CK19等の固形腫瘍に関連するマーカーに対する抗体、あるいは、CD45やDAPIに対する抗体を用いれば十分である。染色技術を形態学と組み合わせることによって、病理学的に定義可能なCTC(pathologically-definable CTC:PDCTC)、アポトーシスCTC、CAMLを同定できる[3]。
【0057】
固形腫瘍に関連するPDCTCは、CK8、CK18、及びCK19を発現し、以下の特徴によって同定及び定義される。
・DAPIで染色された「癌様」核。核は、通常大きく、ドットパターンを有する。ただし、細胞分裂中は、例外である。核が凝縮していることもある。
・CK8、CK18、及びCK19のうちの1つ又は複数の発現。上皮癌からのCTCは、通常、少なくともCK8、CK18、及びCK19を発現する。サイトケラチンは、糸状パターンを有する。
・CD45の発現の欠如。
【0058】
癌腫に関連するアポトーシスCTCは、CK8、CK18、及びCK19を発現し、以下の特徴により同定及び定義される:
・劣化した核。
・CK8、CK18、及びCK19の1つ又は複数の発現。全てのサイトケラチンのパターンが糸状ではなく、一部又は全体が斑点状に断片化されている。
・CD45発現の欠如。
【0059】
上に示唆したように、ここに開示するCAML及びCTCのユニークな特徴は、癌等の疾患のスクリーニング及び診断、治療のモニタリング、疾患の進行及び再発のモニタリング、並びに治療反応の予測の方法を含む臨床用途での使用に適している。
【0060】
治療反応を予測する方法
本発明は、これらの特性を利用し、第1の実施形態において、同一患者からの少なくとも2つのサンプルにおけるCAMLのサイズ及び数を判定及び比較することによって、癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法を提供し、第1の患者サンプルは、治療前に得られ(すなわち、治療前サンプル)、第2の患者サンプルは、治療後に得られる(すなわち、治療後サンプル)。ベースライン(baseline:BL)は、第1の(治療前の)患者サンプルによって提供される。本発明のいくつかの局面において、治療後サンプル中の少なくとも1つのCAMLが、治療前サンプル中の最大のCAMLよりもサイズが大きく、治療後サンプル中のCAMLの数が治療前サンプル中のCAMLの数よりも多い場合、対象は、治療に反応しないと予測する。
【0061】
本実施形態の第1の特定の局面は、癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法であって、癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療前サンプルを取得し、対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、治療前サンプルと治療後サンプルとの間のCAMLの数及びサイズを比較して差異を求めることを含み、CAMLの数及び/又はサイズに差異が認められた場合、治療反応を予測する。差異は、CAMLのサイズの変化、CAMLの数の変化、又はその両方でありうる。CAMLのサイズの変化は、サンプル中の全てのCAMLについて算出された平均サイズの変化であってもよく、またはサンプル中の最大のCAMLのサイズの変化であってもよい。サイズの変化は、サイズの増加であってもよく、またはサイズの減少であってもよい。
【0062】
本実施形態の第2の特定の局面は、癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法であって、癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療前サンプルを取得し、対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、治療前サンプルと治療後サンプルとの間のCAMLの数及びサイズを比較して差異を求めることを含み、治療後サンプル中の最大のCAMLが、治療前サンプル中の最大のCAMLと比較して、サイズが減少している又はサイズが同様であり、治療後サンプル中のCAMLの数が、治療前サンプル中のCAMLの数より少ない場合、対象は、治療から利益を得る又は治療に反応する可能性がある。
【0063】
本実施形態の第3の特定の局面は、癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法であって、癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療前サンプルを取得し、対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、治療前サンプルと治療後サンプルとの間のCAMLの数及びサイズを比較して差異を求めることを含み、治療後サンプル中の最大のCAMLが、治療前サンプル中の最大のCAMLと比較して、サイズが減少している又はサイズが同様であり、治療後サンプル中のCAMLの数が、治療前サンプル中のCAMLの数より多い又は治療前サンプル中のCAMLの数と同じである場合、対象は、治療から利益を得られない又は治療に反応しない可能性がある。
【0064】
本実施形態の第4の特定の局面は、癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法であって、癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療前サンプルを取得し、対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、治療前サンプルと治療後サンプルとの間のCAMLの数及びサイズを比較して差異を求めることを含み、治療後サンプル中の最大のCAMLが、治療前サンプル中の最大のCAMLと比較してサイズが増加している又はサイズが同様であり、治療後サンプル中のCAMLの数が、治療前サンプル中のCAMLの数以下である又は治療前サンプル中のCAMLの数と同じである場合、対象は、治療から利益を得られない又は治療に反応しない可能性がある。
【0065】
本実施形態の第5の特定の局面は、癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法であって、癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療前サンプルを取得し、対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、治療前サンプルと治療後サンプルとの間のCAMLの数及びサイズを比較して差異を求めることを含み、治療後サンプル中の最大のCAMLが、治療前サンプル中の最大のCAMLと比較して、サイズが増加している又はサイズが同様であり、治療後サンプル中のCAMLの数が治療前サンプル中のCAMLの数よりも多い場合、対象は、治療から利益を得られない又は治療に反応しない可能性がある。
【0066】
第2の実施形態において、本発明は、癌に罹患している対象からのサンプル中のCTCをアッセイすることによって、癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法を提供し、癌治療後のサンプル(すなわち、治療後サンプル)中に1つ又は複数のCTCが存在することは、対象が治療から利益を得られない又は治療に反応しない可能性があることを示唆する。転移性乳癌、前立腺癌、大腸癌、小細胞肺癌(small cell lung cancer:SCLC)を除き、癌患者の血液中にCTCが見出されることは稀であるが、一部のサンプルにおけるCTCの存在を確認することによって治療反応を予測できる。
【0067】
この実施形態の1つの特定の局面は、癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法であって、癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、CTCについてサンプルをアッセイすることを含み、サンプル中に1つ又は複数のCTCが検出された場合、対象は、治療から利益を得られない又は治療に反応しない可能性がある。
【0068】
第3の実施形態において、本発明は、第1及び第2の実施形態の特徴を組み合わせた方法に係る。
【0069】
この第3の実施形態の方法もまた、癌に罹患している対象における治療反応を予測するために使用できる。本方法は、(i)少なくとも2つの患者サンプルにおけるCAMLのサイズ及び数を比較することであって、第1の患者サンプル(すなわち、治療前サンプル)が治療前に取得し、第2の患者サンプル(すなわち、治療後サンプル)が治療後に取得されることと、(ii)治療後に得られた第2の患者サンプル(すなわち、治療後サンプル)中のCTCの数を判定することとを含む。
【0070】
この実施形態の1つの特定の局面は、癌に罹患している対象における治療反応を予測する方法であって、癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療前サンプルを取得し、対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、(i)治療前サンプルと治療後サンプルとの間のCAMLの数及びサイズを比較して差異を求めることと、(ii)治療後サンプル中のCTCの数を判定することとを含み、CAMLの数及び/又はサイズに差異が認められた場合、及び/又は少なくとも1つのCTCが検出された場合、治療反応を予測する。この実施形態の一局面では、治療後サンプルにおいて少なくとも1つのCTCが検出された場合、対象は、治療から利益を得られない又は治療に反応しない可能性がある。
【0071】
上記の実施形態と同様に、差異は、CAMLのサイズの変化、CAMLの数の変化、又はその両方であってもよい。CAMLのサイズの変化は、サンプル中の全てのCAMLについて算出された平均サイズの変化であってもよく、またはCAMLのサイズの変化は、サンプル中の最大のCAMLのサイズの変化であってもよい。サイズの変化は、サイズの増加であってもよく、またはサイズの減少であってもよい。
【0072】
本発明の更なる局面において、PD-L1の発現レベルも、治療前後のサンプルにおいて採取されたCAML及び/又はCTCに基づいて判定できる。ここに提示し、後述する実験的証拠に示されるように、CAMLにおけるPD-L1発現も、癌に罹患している対象、特に免疫療法によって治療される対象における治療反応を予測するために有用な情報を提供することができる。一般的に、CAMLにおけるPD-L1発現のレベルが高いほど、対象が治療から利益を得る又は治療に反応する確率が高くなる。したがって、ここに明示される各実施形態で概説される方法は、治療前サンプルと治療後サンプルとの間でCAMLにおけるPD-L1発現のレベルを比較して差異を求めるステップを含むことによっても実施できる。一局面において、治療後サンプルのCAMLにおけるPD-L1の発現レベルが、治療前サンプルの発現レベルよりも低い場合、対象は、治療から利益を得られない、又は治療に反応しない可能性がある。別の局面において、治療後サンプルのCAMLにおけるPD-L1の発現レベルが、治療前サンプルの発現レベルよりも高い場合、対象は、治療から利益を得る又は治療に反応する可能性がある。
【0073】
本発明の更なる局面において、CXCR4の発現レベルは、治療前サンプル及び治療後サンプルにおいて採取されたCAML及び/又はCTCにおいても判定できる。ここに提示し、後述する実験的証拠に示されるように、CAMLにおけるCXCR4発現も、癌に罹患している対象における治療反応を予測するために有用な情報を提供し得る。一般的に、CAMLにおけるCXCR4発現のレベルが低いほど、対象が治療から利益を得る又は治療に反応する確率が高くなる。したがって、ここに明示される各実施形態で概説される方法は、治療前サンプルと治療後サンプルとの間でCAMLにおけるCXCR4発現のレベルを比較して差異を求めるステップを含むことによっても実施できる。一局面において、治療後サンプルのCAMLにおけるCXCR4発現レベルが治療前サンプルの発現レベルよりも高い場合、対象は、治療から利益を得られない又は治療に反応しない可能性がある。別の局面において、治療後サンプルのCAMLにおけるCXCR4発現レベルが治療前サンプルの発現レベルより低い場合、対象は、治療から利益を得る又は治療に反応する可能性がある。
【0074】
本発明の実施形態及び局面のそれぞれにおいて、CAMLは、以下の特徴のそれぞれを有するものとして定義できる。
(a)約14~64μmのサイズの大きな非定型倍数体核又はこれ以上のサイズの核、又は単一細胞内の複数の核
(b)約20~300μmの細胞サイズ(より大きいサイズの可能性もある)
(c)紡錘形、オタマジャクシ形、円形、長円形、2本脚、細い脚、及び無定形からなる群から選択される形態学的形状
【0075】
本発明の実施形態のいくつかの局面において、CAMLは更に、以下の付加的な特徴の1つ又は複数を有する可能性があると定義できる。
(d)CD14陽性表現型
(e)CD45発現
(f)EpCAM発現
(g)ビメンチン発現
(h)PD-L1発現
(i)単球性CD11Cマーカー発現
(j)内皮CD146マーカー発現
(k)内皮CD202bマーカー発現
(l)内皮CD31マーカー発現
【0076】
ここで用いられる、「可能性がある」という用語は、50%以上の確率があることを意味する。したがって、「可能性がある」とは、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上の確率を意味しうる。
【0077】
ここで用いられる、「治療反応」という用語は、治療を受ける対象による反応を意味する。治療反応は、対象が治療されている癌に対して、治療がポジティブな効果を有する(例えば、腫瘍のサイズを縮小させる又は成長を遅らせる)ポジティブ反応であったり、対象が治療されている癌に対して、治療がネガティブな効果を有する(例えば、腫瘍サイズを増大させる、又は成長を速める)ネガティブ反応であったり、あるいは、対象が治療されている癌に対して、治療が明白な効果を有さない中立的反応であったりしうる。これに代えて又はこれに加えて、治療反応は、無増悪生存期間(progression free survival:PFS)又は全生存期間(overall survival:OS)、あるいはその両方の変化であってもよい。治療反応は、無増悪生存期間(PFS)若しくは全生存期間(OS)の増加、又はその両方ということもありうる。治療反応は、無増悪生存期間(PFS)若しくは全生存期間(OS)の減少、又はその両方ということもありうる。
【0078】
本発明の各方法において、無増悪生存期間(PFS)若しくは、全生存期間(OS)、又はその両方は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30箇月、又はこれ以上の期間である。本発明の一局面において、PFS若しくは、OS、又はその両方は、少なくとも約24箇月である。
【0079】
本明細書において、「無増悪生存期間(PFS)」という用語は、米国国立癌研究所(National Cancer Institute)による定義に従い、すなわち、癌等の疾患の治療中及び治療後において、患者が疾患とともに生存し、疾患が悪化しない期間の長さである。また、PFSは、治療を開始した日や、癌の進行を評価するために治療前の血液を採取した日等の選択された日から、癌を有する対象が生存し、癌が悪化又は進行していない期間の長さとして定義することもできる。
【0080】
ここで用いられる、「全生存期間(OS)」という用語は、米国国立癌研究所による定義に従い、すなわち、癌等の疾患の診断日又は治療開始日のいずれかから、その疾患と診断された患者が生存している期間の長さである。OSとは、治療開始日又は治療前の採血日からの期間のことである。
【0081】
ここで用いられる、「治療から利益を得る」という表現は、治療を受ける対象が、治療中の状態又は治療中の状態の症状の改善を経験することを意味する。
【0082】
ここで用いられる、「治療に反応する」という表現は、治療を受ける対象が、治療中の状態又は治療中の状態の症状の改善を示すことを意味する。
【0083】
ここで用いられる、「治療前サンプル」という用語は、対象に特定の治療が施される前に対象から得られる生体サンプルを意味する。特定の治療は、対象に投与される最初又は唯一の治療ではなくてもよい。但し、この治療は、対象における治療反応に関する情報が望まれる治療である。ここで用いられる、「治療後サンプル」という用語は、対象に特定の治療が施された後に対象から得られる生体サンプルを意味する。複数の治療が対象に施される場合、複数の「治療後サンプル」が存在してもよい。
【0084】
ここで用いられる、「対象」とは、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、又はイヌ、ネコ、げっ歯類等の伴侶動物、又は他の哺乳動物である。
【0085】
ここで用いられる、例えば、患者サンプル、治療前サンプル、治療後サンプル等の「サンプル」は、生体サンプルであり、サンプルは、以下に限定されるものではないが、末梢血、血液、リンパ節、骨髄、脳脊髄液、組織、尿、末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell:PBMC)、凍結保存PBMCのうちの1つ又は複数であってもよい。生体サンプルが血液である場合、血液は、例えば、肘正中静脈血、下大静脈血、大腿静脈血、門脈血、又は頸静脈血であってもよい。サンプルは、新鮮なサンプルであってもよく、適切に調製された凍結保存サンプルを解凍したものであってもよい。
【0086】
本発明の各方法において、細胞(CAML及びCTC)がアッセイされるサンプルの量は、様々であり得ることは明らかである。しかしながら、細胞のサイズを判定することに基づく方法の場合、関連する細胞数を得るためには、サンプルは、少なくとも約2.5mLであるべきである。また、サンプルの量は、少なくとも約3、4、5、6、7、7.5、8、9、10、11、12、12.5、13、14、15、16、17、17.5、18、19、20、21、22、22.5、23、24、25、26、27、27.5、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50mL、又はこれ以上であってもよい。また、サンプルの量は、約2.5~50mL、約2.5~20mL、約5~15mL、又は約5~10mLであってもよい。本発明の一局面では、サンプルは、約7.5mLである。本発明のいくつかの局面では、サンプルは、血液サンプルであり、血液サンプルのサイズは、7.5mLである。
【0087】
サンプル中の循環細胞(CAML及びCTC)数に基づいて癌に罹患している対象のOS及びPFSを予測する方法に関して、癌に罹患している対象からのサンプルの選択された体積中の循環細胞の比率が判定される。様々な量のサンプルを用いることができるが、サンプルのサイズに対するサンプル中の細胞数の比率が判定され、対象間で比較されることは明らかである。例えば、15mLのサンプルに8個の細胞という比率は、7.5mLのサンプルに4個の細胞、3.75mLのサンプルに2個の細胞に相当する。
【0088】
ここで用いられる、「癌」とは、固形腫瘍、ステージI癌、ステージII癌、ステージIII癌、ステージIV癌、癌腫、肉腫、神経芽細胞腫、黒色腫、上皮細胞癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、膵臓癌、大腸癌、肝臓癌、頭頸部癌、腎臓癌、卵巣癌、食道癌、子宮癌、尿路上皮癌、膀胱癌、子宮内膜癌、胆管癌、神経内分泌癌、又は他の固形腫瘍癌である。本発明の方法が特定の形態又はタイプの癌に限定されず、多種多様な癌に関連して実施され得ることは当業者にとって明らかである。
【0089】
癌に罹患している対象は、治療を受けていてもよい。ここで、癌に罹患している対象との関連において、「治療」又は「治療する」とは、癌の増殖又は広がりの減少、癌の増殖又は広がりの阻止、又は癌を治癒させることのいずれかに使用できる任意の治療用分子、物質、化学物質、抗体、細胞、デバイス、薬剤、状態又は手順への言及である。適切な治療としては、以下に限定されるものではないが、化学療法、単剤療法、薬剤併用療法、免疫療法、標的療法、放射線療法、化学放射線療法、放射線と単剤又は複数の薬剤との併用療法、化学放射線と単剤又は複数の薬剤との併用療法、化学放射線と単剤又は複数の免疫治療薬との併用療法、癌ワクチン、細胞療法の1つ又は複数が挙げられる。適切な治療分子としては、以下に限定されるものではないが、アテゾリズマブ(atezolizumab)、デュルバルマブ(durvalumab)、およびペムブロリズマブ(pembrolizumab)が挙げられる。特定の非限定的な例では、治療は、乳癌に対する癌ワクチンである。
【0090】
治療前からの治療後におけるCAMLの数又はサイズの変化に関して、その差は、CAMLのサイズの変化、CAMLの数の変化、又はその両方であってもよい。CAMLのサイズの変化は、サンプル中の全てのCAMLについて算出された平均サイズの変化であってもよく、CAMLのサイズの変化は、2つ以上のサンプル中の最大のCAMLのサイズの変化であってもよい。サイズの変化は、増加又は減少である。CAMLの形状は様々であるため、CAMLのサイズは、セル上の最も離れた2点間の距離を測定することによって把握されるべきである。CAMLが円形又は略円形の場合、セルのサイズは、セルの直径としてもよい。
【0091】
本発明の各実施形態及び局面において、細胞は、サイズ排除法、免疫捕捉、デンドリマー媒介多価細胞捕捉、親和性に基づく表面捕捉、バイオミメティック表面コーティング捕捉、セレクチンコーティング表面捕捉、その他の機能化表面捕捉、慣性集束チップ、赤血球溶解、白血球除去、FICOLL分離、電気泳動、誘電泳動、フローサイトメトリー、磁気浮上、及び各種マイクロ流体チップ、又はこれらの組合せを用いてサンプルから単離してもよい。
【0092】
本発明の一局面において、CAML及びCTCは、マイクロフィルターを用いるサイズ排除法を用いてサンプルから単離してもよい。孔は、全ての赤血球と大部分の白血球を除去するのに十分な大きさを有する必要がある。また、孔は、CAMLとCTCを一貫して捕捉するのに十分な小ささを有する必要がある。マイクロフィルターは、CTCとCAMLの両方を捕捉するために、約5μmから約10μmの範囲の孔径を有してもよく、マイクロフィルターは、主にCAMLを捕捉するために、約20μmの範囲の孔径を有してもよい。幾つかの具体例では、孔径を約50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、又はこれ以上まで大きくして、より大きなサイズのCAMLのみを捕捉することもできる。マイクロフィルターの孔は、円形、レーストラック形状、楕円形、正方形及び/又は長方形の孔形状を有していてもよい。マイクロフィルターは、精密な孔形状及び/又は均一な孔分布を有していてもよい。
【0093】
本発明の他の局面において、細胞は、物理的サイズに基づく選別、流体力学的サイズに基づく選別、グループ化、トラッピング、免疫捕捉、大きな細胞の濃縮、又はサイズに基づく小さな細胞の排除を介する、マイクロ流体チップを用いてサンプルから単離される。細胞の捕捉効率は、採取方法によって異なり得る。また、異なるプラットフォームで捕捉できる循環細胞(CAML及びCTC)のサイズも異なり得る。循環細胞サイズを予後や生存の判定に用いる原理は同じであっても、統計が異なることもある。CellSieve(登録商標)マイクロフィルターを用いた循環細胞の採取は、100%の捕捉効率と高品質の細胞を提供する。
【0094】
本発明の他の局面において、CAML及びCTCは、物理的サイズに基づく選別、流体力学的サイズに基づく選別、グループ化、トラッピング、免疫捕捉、大きな細胞の濃縮、又はサイズに基づく小さな細胞の排除を介する、マイクロ流体チップを使用してサンプルから単離してもよい。
【0095】
本発明の他の局面では、血液は、採血管を用いて採取される。CellSave採血管(Menarini Silicon Biosystems社)は、安定した細胞形態とサイズを提供する。他の採血管では、細胞の安定性が得られない。他のほとんどの採血管では、細胞が増大し、破裂して採取されることさえある。
【0096】
本発明の更なる一局面では、CellSieve(登録商標)低圧精密濾過アッセイを用いて、生体サンプルからCAMLとCTCを分離する。
【0097】
本発明の他の局面は、サンプル中の大きな細胞を同定することであり、細胞をこれ自体CAML細胞として特異的に同定することに代えて、単に細胞質と核のサイズに基づいて細胞を同定する。このような技術の例としては、H&E染色等のカラーメトリック染色を使用すること又は単にCK(+)細胞を見ること等が含まれる。
【0098】
サンプルの採取及び処理の例
以下に提供し概説する各実験例では、末梢血をCellSave採血管(Menarini Silicon Biosystems社)に採取し、96時間以内に処理した。CellSieve(登録商標)精密濾過技術を用いて、血液サンプル中の癌関連細胞(CTC、EMT、循環内皮細胞(CEC)、CAML)を全て採取した。CellSieve(登録商標)マイクロフィルターは、9mmの領域内に7μmの孔径で160,000個以上の孔が均一に配列されている。試薬は、前処理バッファー(prefixation buffer)、後処理バッファー(postfixation buffer)、透過化バッファー(permeabilization buffer)、抗体カクテルを含む。濾過には、5mL/minのシリンジポンプ又は真空ポンプを用いた[8]。濾過工程は、7.5mLの血液を7.5mLの前処理バッファーで前処理した後、フィルターに通すことによって開始した。その後、濾過及び捕捉された細胞に、洗浄、後固定、洗浄、透過化、洗浄を施した。次に、フィルター上の捕捉細胞をFITC-抗サイトケラチン8、18、19、フィコエリトリン(PE)結合EpCAM、及びCy5-抗CD45(5)からなる抗体カクテルで染色した後、洗浄した。フィルターを顕微鏡スライドに置き、Fluoromount-G/DAPI(Southern Biotech社)でカバースリップした。カールツァイスAxioCam付きオリンパスBX54WI蛍光顕微鏡を使用し、特定の蛍光キューブとモノクロカメラを用いて細胞を画像化した。細胞間のシグナルを等しく比較するため、露光は、3秒(Cy5)、2秒(PE)、100~750ミリ秒(FITC)、10~50ミリ秒(DAPI)にプリセットした。画像処理には、Zen2011Blue(カールツァイス社)を使用した。
【0099】
実験例
図1は、治療後サンプルと治療前サンプルとの間のCAMLのサイズと数の変化の解析を説明する図である。
【0100】
例1
以下の例は、転移性トリプルネガティブ乳癌(metastatic triple negative breast cancer:mTNBC)に対するヒト化モノクローナル抗体レロンリマブによる治療後の治療反応の予測を示している。レロンリマブ(leronlimab)は、腫瘍のCCR5マーカーを標的とする。CAMLのサイズと数の変化に基づく薬剤効果の中間解析により、治療反応を予測できることが判明した。具体的には、22人の患者のコホートからベースライン(治療前)の血液サンプルと治療後の血液サンプルが提供された。22人の患者のうち、20人は、CAMLのサイズに変化がみられ、2人は、CAMLのサイズに変化はみられなかったが、CAMLの数に変化がみられた。図2の「CAML減少」と「CAML増加/混在」は、図1に示す定義に基づいている。「CAML減少」を示した患者は、「CAML増加/混在」を示した患者と比較して、PFS及びOSが増加した(図2A及び2B参照)。
【0101】
例2
更なる実験として、CAMLとCTCの両方からのデータを組み合わせたアルゴリズムを適用して、治療法の種類に関係なく、患者の治療反応を判定できる。
【0102】
以下は、6つの異なる治療法で治療された83人の転移性乳癌患者のデータを、上述の方法で解析したものである。治療には、以下が含まれる。
・レロンリマブを基本療法とし、担当腫瘍医の判断に基づき、一部の患者には、カルボ(Carbo)を、他の患者には、レロンリマブを投与
・BriaVax、担当腫瘍医の判断に基づき、一部の患者には、ペムブロ(pembro)を投与
・ペムブロとビニメチニブ(binimetinib)の併用療法
・Her2療法
・エリブリン(eribulin)
・トラスツズマブ(trastuzumab)とラパチニブ(lapatinib)による化学療法
【0103】
図3は、各グループを色分けして、既知のPET/CTスキャン(RECIST1.1)による腫瘍サイズの変化を示すスパイダープロットである。この図からわかるように、腫瘍サイズの縮小とCAMLのサイズ及び数の減少には相関性がある。
【0104】
図4は、治療導入前後のCAMLの変化に基づく転移性乳癌患者83人のPFSのカプランマイヤープロットであり、図1に記載した「CAML減少」と「CAML増加/混在」のデータが示されている。この図からわかるように、PFSとCAMLのサイズ及び数の減少には相関性がある。
【0105】
図5Aは、転移性乳癌(mBC)患者(n=101)において、CTCとCAMLの変化を新たな治療ライン導入の前後で評価するために実施した2年間の前向き単盲検多施設共同研究から得られた結果のPFSのカプランマイヤープロットであり、図5Bは、そのOSのカプランマイヤープロットである。新たな治療導入前にベースライン(BL)血液サンプルを採取し、全身療法開始後(約30日)に2回目のサンプル(T1)を採取した。LifeTracDxx(登録商標)液体生検検査を実施し、CellSieve(登録商標)マイクロフィルターを用いてCTCとCAMLを採取した。CTCとCAMLの量とサブタイプを解析した。無増悪生存期間(PFS)の定義にはRECISTv1.1を使用し、2年間の打ち切り単変量解析と多変量解析によってハザード比(HR)を求めた。
【0106】
mBC患者が治療導入後のサンプル(7.5mLの血液)中にCTCを1つのみでも有していた場合、そのPFSとOSは、CTCのない患者よりも有意に短かった(図5A及び図5B)。CAMLのサイズと数が減少した患者は、CAMLのサイズと数が増加した患者と、結果が混在する患者よりもPFSとOSが良好であった(図5A及び図5B)。特に、CTCは、ベースライン時(BL)で患者の35%(n=35/101)、治療後のサンプル採取時(T1)で患者の26%(n=26/101)において同定された。T1時点での単一のCTCは、PFS HR=6.5、p<0.0001、OS HR=5.2、p=0.00188の予後不良を強く示唆した。CAMLは、BLでは、患者の93%(n=94/11)、T1では、患者の86%(n=87/101)に認められた。CAML減少(すなわち、サイズ/数)は、CTCがない場合のPFSの有意の予後改善(HR=2.8、p=0.00029、OS HR=2.6、p=0.01895)を示唆した。T1で1個以上のCTCを有する患者(n=26)のPFS中央値は、2.4箇月、OS中央値は、4.7箇月であった。CTCがなく、CAMLの増加/混在を認めた患者(n=36)のPFS中央値は、5.9箇月、OS中央値は、14.1箇月であった。CTCなく、CAMLの減少が認められた患者(n=39)のPFS中央値は、15.0箇月、OS中央値は、18.8箇月であった。
【0107】
更に、図1で使用したアルゴリズムは、多種多様な固形腫瘍に適用できることがわかった。図6Aは、治療導入前後のCAMLの変化とフォローアップ時のCTCの存在に基づく転移性癌患者220人のPFSのカプランマイヤープロットであり、図6Bは、そのOSのカプランマイヤープロットである。患者らは、乳癌、肺癌、前立腺癌、腎癌、膵臓癌、肉腫、及び肝臓癌の癌患者である。治療導入後のサンプル(血液7.5mL)にCTCが1つでもあれば、PFSとOSは、CTCのない患者より有意に短かった。CAMLのサイズと数が減少した患者は、CAMLのサイズと数が増加した患者と混在した患者よりもPFSとOSが良好であった。
【0108】
図6で使用した同じ患者グループのデータを、CAMLのサイズ≧50μm又は<50μm、及びフォローアップ時のCTCの有無に基づいて再解析した。図7Aは、図6と同じ220人の転移性癌患者のPFSのカプランマイヤープロットであり、図7Bは、OSのカプランマイヤープロットである。治療導入後、サンプル中にCAML≧50μm又は少なくとも1つのCTCのいずれかを有する患者は、PFS及びOSが不良である。
【0109】
例3
腫瘍上のCCR5マーカーを標的とする薬剤を用いたTNBC(トリプルネガティブ乳癌)臨床試験を実施した。CellSieve(登録商標)アッセイを実施し、これらの細胞上のCCR5マーカーの染色を含むCTC及びCAMLに関する情報を得た。CCR5薬剤は、腫瘍を死滅させない。臨床試験終了時、データの初期解析から、異なる情報の組み合わせにより、薬剤反応性の有用な層別化が可能であることが判明した。
【0110】
25人の患者のPFS及びOSを示す図8Aからわかるように、ベースラインを基準として、CCR5薬剤の初回治療サイクル後約30日目におけるCAMLのサイズの減少及びCAMLの数の減少は、薬剤に対する反応者及び非反応者の層別化に有益であった。
【0111】
4人の患者は、CCR5治療薬の初回治療後30日目のフォローアップ採血を受けなかった。CAMLが50μm未満の患者は、CAMLが大きい患者よりも良好な結果が得られる確率が高い傾向があるため、これら4名のベースライン時のCAMLのサイズを以下の方法でデータに含ませた。30日目のフォローアップがなく、全てのCAMLが50μm未満であった患者は、CCR5薬の初回治療サイクル後30日目にCAMLのサイズが減少した又はCAMLの数が減少した18人の患者と同じグループにグループ化した。図9A及び図9Bは、それぞれ修正されたPFS及びOSを示している。
【0112】
これらの2つの例は、CellSieve(登録商標)血液検査が、単一のマーカーを単独で解析するよりも、癌及び/又は薬剤に対する反応について、より有用な情報を提供できることを示している。
【0113】
例4
CAMLは、非小細胞肺癌(non-small cell lung carcinoma:NSCLC)患者の循環中に広く存在し、炎症性腫瘍微小環境を表す巨大な貪食マクロファージとして出現する。治療後に50μm以上の肥大したCAMLを有する患者は、予後不良であることが以前に示されている。しかしながら、化学放射線療法(CRT)や免疫療法(IMT)等の治療に対するCAMLの動的な経時的変化の解析は、これまで評価されていない。CRT単独(n=91)又はIMT併用(n=91)治療を受けた切除不能NSCLCステージII/III患者n=182人のモニタリングを行い、無増悪生存期間(PFS)又は全生存期間(OS)に関連するCRT導入前後のCAMLの変化を評価した。
【0114】
具体的には、CRT単独治療(n=91)、CRT及びアテゾリズマブ同時併用治療(n=40、臨床試験NCT02525757)、デュルバルマブ同時併用治療(n=51)の3つの異なるレジームから患者をプロスペクティブに用意した。病理学的にステージII/IIIと確定された切除不能NSCLC患者182人を集めた。治療開始前のベースライン時(BL)とCRT導入後約5週間(T1)に合計15mLの血液サンプルを採取した。CellSieve(登録商標)フィルターを用いて血液濾過を行い、CAMLを同定及び測定し、2年後のPFSとOSのハザード比(HR)を単変量解析と多変量解析で評価した。解析では、CAMLのサイズが閾値より増加した患者と、CAMLのサイズが減少した患者やCAMLに変化がない患者を含む、変化が閾値以下の患者を比較した。
【0115】
その結果、BLとT1の間でCAMLのサイズが10~50μm増加した症例は、PFSとOSの短縮と相関した(データ非表示)。BLとT1間のCAMLのサイズ35μmの増加は、PFSとOSの観点から患者を層別化するのに最適であった(図10A及び図10B)。35μmのCAMLのサイズの増加は、CRTで治療された患者のPFSとOSを有意に層別化したが、IMTで治療された患者では有意ではなかった(図10C及び図10D)。
【0116】
例5
CAMLのサイズと数に加え、腫瘍の特性の幾つかは、癌の攻撃性を示すこともある。その一例がマーカーCXCR4である。30人の膵臓癌患者の末梢血をCXCR4の発現について解析した。CTC、CAML、EMTのPFS及びOSのカプランマイヤープロットをCXCR4発現について解析した。CTCにおけるCXCR4は、進行の有意な予測因子(HR=1.6、95%CI0.4-5.4、p=0.645)(図11A)でもOSの有意な予測因子(HR=1.7、95%CI0.5-5.6、p=0.497)(図11B)でもないことが判明した。一方、CAMLにおけるCXCR4の高発現は、有意に速い進行(HR=4.0、95%CI1.5-10.5、p=0.012)(図11C)と有意に高い死亡率(HR=4.8、95%CI1.7-13.1、p=0.006)(図11D)と関連していた。更に、EMTにおけるCXCR4の発現も進行と生存に関連していると考えられ、EMTにCXCR4を高発現している患者は、進行が有意に速く(HR=4.6、95%CI1.3-15.4、p=0.033)(図11E)、死亡率が高い(HR=5.4、95%CI1.5-19.2、p=0.021)(図11F)。
【0117】
このように、CXCR4発現は、CAML<50μmグループ又はCAML減少グループの患者のうち、早く進行するか早く死亡する患者を更に層別化するために用いることができる。
【0118】
例6
単盲検、複数年のプロスペクティブスタディを行って、非小細胞肺癌(NSCLC)におけるPFS/OSを得るためのPD-L1発現とCAMLのサイズの関係を検証した。96人の患者が化学放射線療法(CRT)後に免疫療法を受けた。これには、アテゾリズマブ(プロスペクティブシングルアームNCT02525757)n=39人、デュルバルマブn=52人、ペムブロリズマブn=5人が含まれた。血液サンプル(7.5mL)は、ベースライン時(BL)、CRT終了時(T1)、及び免疫療法後のCRTから約1箇月後(T2)に採取した。血液は、CellSieve(登録商標)で濾過した。CAMLのサイズとPD-L1発現を解析した。CRT後に免疫療法を1-2治療サイクル行った後にPFS及びOSのデータを解析した。T2時点の患者数は、80人に減少した。
【0119】
7.5mLの血液中に50μm以上の大きなCAMLが1つでも認められた患者は、PFSとOSが短かった(データ非表示)。このスタディは、免疫療法に関するものであったため、図12に示すように、PD-L1発現によってPFSとOSをよりよく層別化できた。PD-L1発現が中等度から高度の患者は、免疫療法から有意な利益を得た。
【0120】
CAMLのサイズとPD-L1発現の両方が同じCellSieve(登録商標)アッセイから得られたので、データは、(1)PD-L1低CAML小、(2)PD-L1低CAML大、(3)PD-L1高CAML小、(4)PD-L1高CAML大の4つのカテゴリーにまとめて解析することもできる。「CAML大」とは、サンプル中の1つ又は複数のCAMLが50μm以上であることを意味する。「CAML小」とは、サンプル中の全てのCAMLが50μm未満であることを意味する。図13に示すように、PD-L1が低くCAMLが大きい患者は、PFSとOSが有意に不良であった。PFSについては、グループ2と、グループ1、3、4とを比較し、HR=9.0(95%Cl3.5-22.9)、p<0.00001であった。OSについては、グループ2と、グループ1、3、4とを比較し、HR=14.7(95%Cl4.8-44.81)、p<0.00001であった。
【0121】
このアッセイは、1-2回の免疫療法を行った直後に免疫療法に反応しない患者を判定するのに非常に有用であった。
【0122】
例7
CAMLは、腫瘍微小環境のリアルタイムの炎症性PD-L1の状態と並行していると考えられる。これまでに、局所非小細胞肺癌(NSCLC)において、CAML上のPD-L1発現は動的であり、無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)に基づき、後続するサンプリングにおける化学療法導入後(約30日)のPD-L1/PD-1免疫療法(IMT)に対する反応を予測できることが実証されている。しかしながら、これは、再発NSCLCでは、検証されていなかった。そこで、化学療法導入前後(約30日)のCAMLにおけるPD-L1発現をモニタリングし、IMTを併用又は非併用で治療した再発NSCLC患者におけるCAMLのPD-L1予測能を評価した。
【0123】
単盲検複数年プロスペクティブスタディを実施して、再発mNSCLCにおいて、抗PD-L1/PD-1IMTを追加投与した場合(n=41)又は追加投与しない場合(n=41)のCAMLにおけるPD-L1発現と化学療法導入前後のPFS及びOSとの関係を検証した。これには、アテゾリズマブ(n=4)、ニボルマブ(nivolumab)(n=8)、ペムブロリズマブ(n=29)である3つのIMTが含まれた。新たに再発した疾患に対する治療前に病理学的に再発が確認されたNSCLC患者82人を集めた。血液サンプル(15mL)は、ベースライン(BL)、化学療法前、及び化学療法後約30日目(T1)に採取した。血液をCellSieve(登録商標)で濾過し、CAML発現を高スコアと低スコアの2値に分け、24箇月後のPFSとOSのハザード比(HR)を打切り単変量解析と多変量解析で評価した。
【0124】
その結果、CAMLは、入手可能な全サンプルの97%に認められ、BLでは、94%、T1では、100%であった(図14図15)。BLにおいて、IMT治療を受けなかった患者におけるPD-L1高値は、PFS(p=0.825)及びOS(p=0.518)に対して有意ではなかった。T1では、IMT治療を受けなかった患者におけるPD-L1高値は、PFS(HR=1.10、p=0.937)、OS(HR=1.75、p=0.298)ともに有意ではなかった。T1では、IMT治療を受けた患者におけるPD-L1高値患者は、PFS(HR=3.19、p=0.0112)が有意に良好であり、OS(HR=2.37、p=0.0809)は、境界域であった。BLとT1の間でPD-L1発現が増加した患者は、PFS(HR=3.49、p=0.0009)とOS(HR=2.88、p=0.0430)が有意に良好であった。
【0125】
したがって、再発NSCLCにおいて、CAMLにおけるPD-L1高発現は、IMT使用による予後を示し、CRT後の併用されたIMTに対する反応を予測する。CAMLにおけるPD-L1の動的変化のモニタリングにより、再発NSCLCにおける免疫療法の有効性を予測できると考えられる。
【0126】
引用
1. Adams, D., et al., Circulating giant macrophages as a potential biomarker of solid tumors. PNAS 2014, 111(9):351-3519.
2. International Patent Appln. Publn. No. WO 2013/181532, dated December 5, 2013.
3. International Patent Appln. Publn. No. WO 2016/33103, dated March 3, 2016.
4. International Patent Appln. Publn. No. WO 2018/151865, dated August 23, 2018.
5. International Patent Appln. Publn. No. WO 2019/178226, dated September 19, 2019.
6. International Patent Appln. Publn. No. WO 2018/184005, dated October 4, 2018.
7. Ballman, K.V., Biomarker: Predictive or Prognostic? J. Clin. Oncol. 2015, 33(33):3968-3972.
8. Adams DL, et al. The systematic study of circulating tumor cell isolation using lithographic microfilters. RSC Adv 2014, 4:4334-4342.
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2024-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌に罹患している対象における治療反応を予測するための情報を提供する方法であって、前記対象から取得された治療前のサンプル(治療前サンプル)及び治療後のサンプル(治療後サンプル)におけるCAMLのサイズ及び数を判定及び比較し、これに基づいて予測を行うことを含み、
前記治療後サンプル中の少なくとも1つのCAMLのサイズが、前記治療前サンプル中の最大のCAMLよりも大きく、前記治療後サンプル中のCAMLの数が前記治療前サンプル中のCAMLの数よりも多い場合、前記対象は、治療に反応しないと予測する情報を提供する、前記方法。
【請求項2】
癌に罹患している対象における治療反応を予測するための情報を提供する方法であって、前記癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療前サンプルを取得し、前記対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、前記治療前サンプルと前記治療後サンプルとの間のCAMLの数及びサイズを比較して差異を求めることを含み、
前記治療後サンプル中の最大のCAMLが、前記治療前サンプル中の最大のCAMLと比較して、サイズが減少している又はサイズが同じであり、前記治療後サンプル中のCAMLの数が、前記治療前サンプル中のCAMLの数より少ない場合、前記対象は、前記治療から利益を得る又は前記治療に反応する可能性があるとの情報を提供する、前記方法。
【請求項3】
癌に罹患している対象における治療反応を予測するための情報を提供する方法であって、前記癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療前サンプルを取得し、前記対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、前記治療前サンプルと前記治療後サンプルとの間のCAMLの数及びサイズを比較して差異を求めることを含み、
前記治療後サンプル中の最大のCAMLが、前記治療前サンプル中の最大のCAMLと比較して、サイズが減少している又はサイズが同じであり、前記治療後サンプル中のCAMLの数が、前記治療前サンプル中のCAMLの数より多い又は前記治療前サンプル中のCAMLの数と同じである場合、前記対象は、前記治療から利益を得られない又は前記治療に反応しない可能性があるとの情報を提供する、前記方法。
【請求項4】
癌に罹患している対象における治療反応を予測するための情報を提供する方法であって、前記癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療前サンプルを取得し、前記対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、前記治療前サンプルと前記治療後サンプルとの間のCAMLの数及びサイズを比較して差異を求めることを含み、
前記治療後サンプル中の最大のCAMLが、前記治療前サンプル中の最大のCAMLと比較して、サイズが増加している又はサイズが同じであり、前記治療後サンプル中のCAMLの数が、前記治療前サンプル中のCAMLの数より少ない又は前記治療前サンプル中のCAMLの数と同じである場合、前記対象は、治療から利益を得られない又は前記治療に反応しない可能性があるとの情報を提供する、前記方法。
【請求項5】
癌に罹患している対象における治療反応を予測するための情報を提供する方法であって、前記癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療前サンプルを取得し、前記対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、前記治療前サンプルと前記治療後サンプルとの間のCAMLの数及びサイズを比較して差異を求めることを含み、
前記治療後サンプル中の最大のCAMLが、前記治療前サンプル中の最大のCAMLと比較して、サイズが増加している又はサイズが同じであり、前記治療後サンプル中のCAMLの数が前記治療前サンプル中のCAMLの数より多い場合、前記対象は、治療から利益を得られない又は治療に反応しない可能性があるとの情報を提供する、前記方法。
【請求項6】
癌に罹患している対象における治療反応を予測するための情報を提供する方法であって、前記癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、CTCについて前記サンプルをアッセイすることを含み、前記サンプル中に1つ又は複数のCTCが検出された場合、前記対象は、治療から利益を得られない又は治療に反応しない可能性があるとの情報を提供する、前記方法。
【請求項7】
癌に罹患している対象における治療反応を予測するための情報を提供する方法であって、前記癌に罹患している対象から少なくとも1つの治療前サンプルを取得し、前記対象から少なくとも1つの治療後サンプルを取得し、(i)前記治療前サンプルと前記治療後サンプルとの間のCAMLの数及びサイズを比較して差異を求め、(ii)前記治療後サンプル中のCTCの数を判定することを含み、前記CAMLの数及び/又はサイズに差異が認められた場合、及び/又は少なくとも1つのCTCが検出された場合、治療反応を予測する情報を提供する、前記方法。
【請求項8】
前記治療後サンプルにおいて少なくとも1つのCTCが検出された場合、前記対象は、治療から利益を得られない又は治療に反応しない可能性があるとの情報を提供する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記CAMLは、
a)14~64μmのサイズを有する複数の個々の核及び/又は1つ若しくは複数の融合核;
b)20~300μmの細胞サイズ;および
(c)紡錘形、オタマジャクシ形、円形、長円形、2本脚、2本脚以上、細い脚、及び無定形からなる群から選択される形態学的形状、
の特徴を有する、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記CAMLは、
(d)CD14陽性表現型
(e)CD45発現
(f)EpCAM発現
(g)ビメンチン発現
(h)PD-L1発現
(i)単球性CD11Cマーカー発現
(j)内皮CD146マーカー発現
(k)内皮CD202bマーカー発現
(l)内皮CD31マーカー発現
(m)上皮性癌細胞CK8、CK18、及び/又はCK19マーカー発現
のうちの1つ又は複数の特徴を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記サンプルのサイズは、5~50mLである、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記サンプルの供給源は、末梢血、血液、リンパ節、骨髄、脳脊髄液、組織、尿、末梢血単核細胞(PBMC)、および凍結保存PBMCのうちの1つ又は複数である、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記サンプルは、肘正中静脈血、下大静脈血、大腿静脈血、門脈血、又は頸静脈血である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記癌は、固形腫瘍、ステージI癌、ステージII癌、ステージIII癌、ステージIV癌、癌腫、肉腫、神経芽細胞腫、黒色腫、上皮細胞癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、膵臓癌、大腸癌、肝臓癌、頭頸部癌、腎臓癌、卵巣癌、食道癌、子宮癌、尿路上皮癌、膀胱癌、子宮内膜癌、胆管癌、神経内分泌癌、又は他の固形腫瘍癌である、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
CAML及びCTCが、サイズ排除法、免疫捕捉、デンドリマー媒介多価細胞捕捉、親和性に基づく表面捕捉、バイオミメティック表面コーティング捕捉、セレクチンコーティング表面捕捉、その他の機能化表面捕捉、慣性集束チップ、赤血球溶解、白血球除去、FICOLL分離、電気泳動、誘電泳動、フローサイトメトリー、磁気浮上、各種マイクロ流体チップ、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数の手段を用いてサンプルから単離される、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記CAML及びCTCは、マイクロフィルターを用いるサイズ排除法を用いてサンプルから単離される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記マイクロフィルターが、5μmから20μmの範囲の孔径を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記マイクロフィルターの孔は、円形、レーストラック形状、楕円形、正方形、及び/又は長方形の孔形状を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記マイクロフィルターは、精密な孔形状及び均一な孔分布を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記CAML及び前記CTCは、物理的サイズに基づく選別、流体力学的サイズに基づく選別、グループ化、トラッピング、免疫捕捉、大きな細胞の濃縮、又はサイズに基づく小さな細胞の排除を介する、マイクロ流体チップを使用して単離される、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記CAML及び前記CTCは、前記CAMLは、CellSieve(登録商標)低圧精密濾過アッセイを用いて、前記判定ステップのために前記生体サンプルから単離される、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記治療は、化学療法、単剤療法、薬剤の併用療法、免疫療法、標的療法、放射線療法、化学放射線療法、放射線と単剤又は複数の薬剤の併用療法、化学放射線療法と単一又は複数の薬剤の併用療法、癌ワクチン療法、および細胞療法のうちから選択される1つ又は複数である、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記治療は、癌ワクチンである、請求項22に記載の方法。
【国際調査報告】