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特表2024-529391空気中の放射性核種をモニタリングするための輸送可能なシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】空気中の放射性核種をモニタリングするための輸送可能なシステム
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/167 20060101AFI20240730BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20240730BHJP
   G01N 1/02 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G01T1/167 B
G01N1/00 101R
G01N1/02 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503631
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 CA2022051120
(87)【国際公開番号】W WO2023000093
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】63/223,903
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】502395295
【氏名又は名称】アトミック エナジー オブ カナダ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レベル、ルーク
(72)【発明者】
【氏名】クルティエリー、アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ディクソン、レイモンド
【テーマコード(参考)】
2G052
2G188
【Fターム(参考)】
2G052AA01
2G052AB28
2G052AC02
2G052AD04
2G052AD52
2G052BA14
2G052CA02
2G052CA04
2G052CA12
2G052EA03
2G052GA18
2G052HA15
2G052HA18
2G188AA11
2G188AA23
2G188BB04
2G188CC29
2G188DD30
2G188HH03
(57)【要約】
対象環境から空気中の放射性核種を測定するための輸送可能なシステムは、カートリッジ・ドックを含む主要気体流路を含み得る。カートリッジ・ドックには少なくとも第1のフィルタ・カートリッジを接続可能であってもよく、このフィルタ・カートリッジは、サンプル供給ポートに密封接続可能なカートリッジ気体入口と、排気ポートに密封接続可能なカートリッジ気体出口と、これらの間に延在するカートリッジ流路と、を含み得る。カートリッジは、第1及び第2のフィルタを収容する第1及び第2のフィルタ・チャンバを含み得る。ガンマ線検出器装置は、第1のフィルタ・カートリッジがカートリッジ・ドックに接続されているときに第1のフィルタ・カートリッジと隣り合わせて配置可能であってもよく、第1のフィルタから放出された放射線を検出するように、及び、第2のフィルタから放出された放射線を検出するように、及び、検出された放射線に基づいてセンサ出力信号を生成するように、構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象環境から空気中の放射性核種を測定するための輸送可能なシステムであって、前記システムは前記対象環境内に配置可能であり、且つ、
a)気体サンプルを引き込むように構成されているシステム気体入口と、前記システム気体入口から下流のシステム気体出口との間に延在する、主要気体流路と、
b)前記主要気体流路内に配設されており、且つ、前記システム気体入口の下流で流体連通しているサンプル供給ポート及び前記システム気体出口の上流で流体連通している排気ポートを備える、カートリッジ・ドックと、
c)前記カートリッジ・ドックに接続可能な少なくとも第1のフィルタ・カートリッジであり、
i.前記サンプル供給ポートに密封接続可能なカートリッジ気体入口、
ii.前記排気ポートに密封接続可能なカートリッジ気体出口、及び
iii.前記カートリッジ気体入口と前記カートリッジ気体出口との間に延在するカートリッジ流路であり、前記第1のフィルタ・カートリッジを前記カートリッジ・ドックに接続することによって前記サンプル供給ポートと前記排気ポートとの間の流体連通が実現され、前記主要気体流路が完成する、前記カートリッジ流路、
iv.前記カートリッジ流路内で前記カートリッジ気体入口の下流に配設されており且つ第1のフィルタを収容している、第1のフィルタ・チャンバ、
v.前記カートリッジ流路内で第1のフィルタ・チャンバと前記カートリッジ気体出口との間に配設されており且つ第2のフィルタを収容している、第2のフィルタ・チャンバ、を備える、前記少なくとも第1のフィルタ・カートリッジと、
d)前記第1のフィルタ・カートリッジが前記カートリッジ・ドックに接続されているときに前記第1のフィルタ・カートリッジと隣り合わせて配置可能であり、且つ、前記第1のフィルタから放出された放射線を検出するように、及び、前記第2のフィルタから放出された放射線を検出するように、及び、検出された放射線に基づいてセンサ出力信号を生成するように、構成されている、ガンマ線検出器装置と、
e)前記センサ出力信号を受信し対応する使用者出力を生成するように構成されているシステム制御装置と、を備える、輸送可能なシステム。
【請求項2】
前記第1のフィルタ・カートリッジは前記カートリッジ・ドックから取り外し可能であり、前記第1のフィルタ・カートリッジを前記カートリッジ・ドックから取り外すことによって前記主要気体流路が遮断される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1のフィルタは第1のフィルタ・タイプのものであり、前記第2のフィルタは異なる第2のフィルタ・タイプである、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1のフィルタは前記気体サンプル中の粒子を捕捉するように構成されているエアロゾル・フィルタを備え、前記第2のフィルタはヨウ素フィルタを備える、請求項1から3までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記フィルタ・カートリッジは前記第1のフィルタ・カートリッジを挿入方向に平行移動させることによって前記カートリッジ・ドックに接続可能である、請求項1から4までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1のフィルタ・カートリッジが前記カートリッジに接続されると前記カートリッジ気体入口が前記出口ポートと位置合わせされ、前記第1のカートリッジと前記カートリッジ・ドックとの間に流体シールが形成される、請求項1から5までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1のフィルタ・チャンバは、前記第1のカートリッジが前記カートリッジ・ドックに接続されているとき密封され、前記第1のフィルタ・カートリッジを前記カートリッジ・ドックから取り外すことによって開放される、請求項1から6までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1のフィルタは前記第1のフィルタ・カートリッジが前記カートリッジ・ドックから取り外されているときに露出される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1のフィルタは、前記第1のフィルタ・カートリッジが前記カートリッジ・ドックから取り外されているときに、前記第1のフィルタ・チャンバから前記挿入方向に取り外し可能である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記第2のフィルタ・チャンバは、前記第1のカートリッジが前記カートリッジ・ドックに接続されているとき密封され、前記第2のフィルタ・カートリッジを前記カートリッジ・ドックから取り外すことによって開放される、請求項1から9までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記第2のフィルタは前記第1のフィルタ・カートリッジが前記カートリッジ・ドックから取り外されているときに露出される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第2のフィルタは、前記第1のフィルタ・カートリッジが前記カートリッジ・ドックから取り外されているときに、前記第2のフィルタ・チャンバから前記挿入方向に取り外し可能である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
システムは、前記システム制御装置によって制御可能であり且つ第1のカートリッジ使用期間の終了時に前記カートリッジ・ドックから前記第1のフィルタ・カートリッジを取り外すように構成されている、カートリッジ取り回し装置を更に備える、請求項1から6までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記カートリッジ・ドックに接続可能な第2のフィルタ・カートリッジを更に備え、前記第2のフィルタ・カートリッジは、
i.前記サンプル供給ポートに密封接続可能なカートリッジ気体入口と、
ii.前記排気ポートに密封接続可能なカートリッジ気体出口と、
iii.前記カートリッジ気体入口と前記カートリッジ気体出口との間に延在するカートリッジ流路であり、前記第1のフィルタ・カートリッジを前記カートリッジ・ドックに接続することによって前記サンプル供給ポートと前記排気ポートとの間の流体連通が実現され、前記主要気体流路が完成する、前記カートリッジ流路と、
iv.前記カートリッジ流路内で前記カートリッジ気体入口の下流に配設されており且つ第1のフィルタを収容している、第1のフィルタ・チャンバと、
v.前記カートリッジ流路内で第1のフィルタ・チャンバと前記カートリッジ気体出口との間に配設されており且つ第2のフィルタを収容している、第2のフィルタ・チャンバと、を備え、
前記カートリッジ取り回し装置は、前記システム制御装置によって、前記第1のフィルタ・カートリッジが前記カートリッジ・ドックから取り外された後で、前記第2のフィルタ・カートリッジを前記カートリッジ・ドックに接続するように制御可能である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
未使用のフィルタ・カートリッジを保管するように構成されており且つ少なくとも前記第2のフィルタ・カートリッジを収容している、少なくとも1つの新しいカートリッジ・バンクを更に備え、前記カートリッジ取り回し装置は、前記第1のフィルタ・カートリッジが前記カートリッジ・ドックから取り外された後で、前記第2のフィルタ・カートリッジを取り出し、前記第2のフィルタ・カートリッジを移動させて前記カートリッジ・ドックと位置合わせするように構成されている、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
使用済みフィルタ・カートリッジを受け入れて保管するように構成されている、少なくとも1つの使用済みカートリッジ・バンクを更に備え、前記カートリッジ取り回し装置は、前記カートリッジ・ドックから前記第1のフィルタ・カートリッジを取り出し、前記第1のフィルタ・カートリッジを前記使用済みカートリッジ・バンク内に収めるように構成されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記カートリッジ取扱い装置は、第1のフィルタ・カートリッジを選択的に把持するように構成されており且つ少なくとも2自由度で移動可能なエンド・エフェクタを備える、請求項13から16までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記カートリッジ取り回し装置は、キャリッジ・レールに沿って移動可能なキャリッジと、前記キャリッジに装着されており前記エンド・エフェクタを支持し延長軸に沿って移動させるように構成されている延長ユニットと、を備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記キャリッジ・レールは実質的に直線状である、請求項12に記載のシステム。
【請求項20】
前記延長軸は実質的に直線状であり、前記キャリッジ・レールと実質的に直交している、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記ガンマ線検出器装置はセンサ部分を備え、前記センサ部分は、
a)前記ガンマ線検出器装置が前記第1のフィルタ・カートリッジに隣り合っており、前記カートリッジ・ドックからの前記第1のフィルタ・カートリッジの取り外しが前記センサ部分によって阻止される、測定位置と、
b)前記センサ部分が前記第1のフィルタ・カートリッジから離間されており、前記第1のフィルタ・カートリッジを前記カートリッジ・ドックから取り外すことのできる、交換位置と、の間で移動可能である、請求項1から20までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記ガンマ線検出器装置は、前記制御装置に通信可能に連結されており且つ前記センサ部分を支持する検出器アクチュエータを更に備え、前記検出器アクチュエータは、前記センサ部分を前記測定位置と前記交換位置との間で選択可能に移動させるように構成されている、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記検出器アクチュエータは、前記センサ部分を検出器軸に沿って前記測定位置と前記交換位置との間で直線的に平行移動させるように構成されている、リニア・アクチュエータを備える、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記検出器アクチュエータは前記カートリッジ取り回し装置から独立して動作可能である、請求項22又は23に記載のシステム。
【請求項25】
前記ガンマ線検出器装置は、前記第1のフィルタと位置合わせされている第1の検出器と、前記第1の検出器から離間させて配置され前記第2のフィルタと位置合わせされている第2の検出器と、を少なくとも含み、前記第1の検出器は前記第1のフィルタ内のガンマ放射線に基づく第1の検出信号を生成するように構成されており、前記第2の検出器は前記第2のフィルタ内のガンマ放射線に基づく第2の検出信号を生成するように構成されている、請求項1から24までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項26】
前記第1の検出器及び前記第2の検出器の少なくとも一方は、前記フィルタ・カートリッジから放出されたのではないバックグラウンド放射線への曝露を制限するために、放射線遮蔽体によって少なくとも部分的に側方を取り囲まれている、ガンマ線分光計、好ましくはCZTガンマ線分光計を備える、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記サンプル供給ポートは湾曲した供給密封表面を備えるサンプルドック・カプラを備え、前記カートリッジ気体入口は、前記供給密封表面に対して密封を行うように構成されている相補的な湾曲した入口密封表面を備える、請求項1から26までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項28】
前記供給密封表面は凸状であり、前記湾曲した入口密封表面は凹状である、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記第1のカートリッジが前記カートリッジ・ドックに接続されているとき、前記供給密封表面は前記入口密封表面に押し付けられて前記第1のフィルタ・チャンバを密封し、前記第1のカートリッジは前記カートリッジ・ドックから離れるように平行移動可能であり、以って締結具を解放することなく前記供給密封表面と前記入口密封表面が分離される、請求項27又は28に記載のシステム。
【請求項30】
前記排気ポートは湾曲した排気密封表面を備える排気ドック・カプラを備え、前記カートリッジ気体出口は、前記排気密封表面に対して密封を行うように構成されている相補的な湾曲した出口密封表面を備える、請求項1から29までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項31】
前記密封表面は凸状であり、前記湾曲した出口密封表面は凹状である、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記第1のカートリッジが前記カートリッジ・ドックに接続されているとき、前記排気密封表面は前記出口密封表面に押し付けられて前記第2のフィルタ・チャンバを密封し、前記第1のカートリッジは前記カートリッジ・ドックから離れるように平行移動可能であり、以って締結具を解放することなく前記排気密封表面と前記出口密封表面が分離される、請求項30又は31に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、Portable System for Monitoring Airborne Radionuclidesと題する2021年7月20日出願の係属中の米国仮出願第63/223,903号の利益及び優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に記載する教示の目下の主題は一般に、輸送可能な放射線検出装置に関し、特に、空気中の放射性核種をモニタリングするための輸送可能なシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
米国特許第10,585,197号には、流体の流れを取得するための流体入口と、流体出口と、これらの間の流体流路と、を含む、輸送可能な検出装置が開示されている。ポンプが流体流路の中で流体を循環させる。流体によって放出される放射線を分析及び検出するために、流体流路にはガンマ線分光計及び水銀分析器が係合される。ガンマ線分光計及び水銀分析器の下流の流体流路内にはフィルタ・トラップがある。フィルタ・トラップは、弁アセンブリと、流体から気体状成分を捕集するための少なくとも第1及び第2のフィルタと、を含む。各フィルタは第1の弁アセンブリに取り外し可能に接続されている。弁アセンブリは、第1のフィルタが流体流路に流体に関して接続されており、第2のフィルタが流体流路から流体に関して分離されている、第1の構成と、第2のフィルタが流体流路に流体に関して接続されており、第1のフィルタが流体流路から流体に関して分離されている、第2の構成と、を有する。
【0004】
米国特許第7,824,479号には、空気汚染物質を検出するためのセンサと、プロセッサと、データ・ロガーと、装置が空中にあるときを検出するための手段と、制御ユニットと、手動トリガと、少なくとも1つの吸着剤チューブと、吸着剤チューブを汚染から分離するための弁又は他の手段と、吸着剤チューブを通して空気を引き込むためのポンプと、を備える、航空機キャビン内の空気をサンプリングするための装置が開示されている。代替の装置ではテドラー(R)バッグが使用される。空気をサンプリングする方法及び装置の使用も開示されている。
【0005】
カナダ特許公開第2,341,870号には、浄化活動の開始前に周囲空気中の対象汚染物質のバックグラウンド・レベルを確定することのできる、周囲空気品質モニタリングのためのシステムが開示されている。このシステムは、浄化施設における粉塵及び蒸気の公衆衛生を保護する浄化措置レベルを策定することができ、浄化活動中の対象汚染物質のフェンス・ライン周辺空気レベルをモニタリングし文書化することができる。したがって、このシステム及びプロセスにより、空気中のコンテインメント・レベルを懸念レベル未満にまで下げるための粉塵又は蒸気制御手段の、必要性の評価が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第10,585,197号
【特許文献2】米国特許第7,824,479号
【特許文献3】カナダ特許公開第2,341,870号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】S. Mukhopadhyay、R. Maurer、P. Guss、「Modern Trends in gamma detection systems for emergency response」、Proc.SPIE 11494, Hard X-Ray, Gamma-Ray, and Neutron Detector Physics XXII, 114940B (2020); doi: 10.1117/12.2560115)
【非特許文献2】W.C. Evans、「Quantitative methods for continuous particulate air monitoring」、IEEE Transactions on Nuclear Science、48(5)巻、1639~1657頁(2001年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本概要は続くより詳細な説明へと読者を導くことを意図しており、特許請求されている又はまだ特許請求されていないいかなる発明を限定又は定義することも意図していない。1つ又は複数の発明が、請求項及び図を含め本文書の任意の部分に開示されている要素又はプロセス・ステップの任意の組合せ又は下位組合せとして存在し得る。
【0009】
潜在的染物質のレベルと排出レベルを測定するために、さまざまな状況で環境モニタリング・システム及び装置が使用され得る。環境状況を適切に評価し、排出物を検出し、排出物の流れをプロファイリングするためには、取得した流体サンプルを、一連の様々な技術又は様々な技術のシークエンスと分析機器とを使用して測定及び分析を行うことが必要な場合がある。場合によっては例えば、事故、災害、又は緊急事態によって引き起こされたものなど、最近発生した計画外の排出による汚染及び排出物を調査するために、分析及びモニタリング機器を現場で一度だけ使用する場合がある。
【0010】
例えば、原子力緊急事態の場合に、原子炉周辺の放射線モニタリング・ステーションから有用な情報を得ることができる。これらの情報は放射能が環境中に放出中であることの確認に役立つ可能性があり、近隣の人が曝露され得る線量率の定量化に役立つ場合がある。現在、2種類の放射線モニタリング・ステーションが使用されている。第1のものはモニタリング・ステーションの大部分を占めるものであり、周囲の放射線量率を測定する。これらは線量率に関するリアル・タイムのデータを提供することができる。しかしながらこれらは、空気中に存在する放射性核種の個々の核種に関する詳細な情報を、何ら提供することができない。このことは多くの場合、エア・サンプラを採用して対処される。この場合、空気中の放射性核種をフィルタ上に捕捉し、その後それらを後からガンマ線分光法で分析することによって、混在する放射性核種の組成に関する不足情報を得ることができる。
【0011】
環境内への放射性物質の望まれない/制御されない放出が行われる原子力事象では、様々な異なる物質が様々な濃度で放出される可能性がある。放射性物質の性質及び量に関する概ね信頼できる適時の情報を得ることは、対応の調整に役立つ可能性がある。例えば、原子力発電所での深刻な事故においては、何十種類もの異なる核種の放射性核種が放出される可能性がある。そのような事象の1つが、2011年3月に発生した福島第一の事故であった。この事象において、福島事故からの重要な/注目すべき放出物は例えば、Xe、I、Te、Cs、Tc、La、Sb、Ba、Agの放射性同位体であった。各放射性核種は異なるエネルギーでガンマ線を放出し、このため、それらは全て異なる程度で、全体的な環境ガンマ線量率に寄与する。上記した技術を使用した場合、環境ガンマ線測定において異なる放射性同位体を区別することは不可能である。混在する放射性核種に関する先験的な仮定なしでは、測定地近傍の放射能濃度について推論を行うことさえ非常に困難である。オン・サイトでのリアル・タイムのモニタリング及び測定システムが限られていることが、この入手可能情報の不足の原因となっている。例えば、2011年3月に発生した福島第一の事故の際に実施されたオン・サイトでの空気サンプリング測定では期間及び場所が限られていたが、その理由は、サンプリング・システムを稼働させ、別の研究室でガンマ線分光分析を行うべくフィルタを回収するために、現場チームを派遣しなければならなかったからである。空気サンプリングの開始は遅れ、緊急時対応担当者が空気中の放射性核種の組成に関する情報を適時に使用することは不可能であった。
【0012】
このような状況では、1回又は複数回の異なる測定及び分析を行うことのできる輸送可能な検出装置を用いること、並びに好ましくは、現場からサンプルを採取し分析のために研究室又は他のオフ・サイトの施設に輸送することを必要とするのではなく、現場で、任意選択的にはリアル・タイム又は少なくとも準リアル・タイムで測定を行うことを可能にできることが、有益な場合がある。例えば、放射性同位体ごとの放射性核種排出量のリアル・タイム又は準リアル・タイムのデータを用いることが有用であると考えられるが、その理由は、少なくとも部分的には、放射性同位体が異なればその放射能毒性が大きく異なることによる。例えば、放射性ヨウ素は甲状腺に蓄積する傾向があるため、人の被曝を考える上で特に重要である。同位体132Teも同じく重要であるが、その理由は、これが他の放射性ヨウ素核種と同様の放射能毒性を有する132Iに崩壊するためである。放射性ヨウ素はまた、エアロゾル、I2蒸気、及び揮発性有機ヨウ素など、いくつかの化学形態で環境中に存在する。一方、放射性セシウムは、事故の初期段階での直接的な放射能毒性が比較的低いため、第1応答者の状況における重要性はより低い場合があるが、その2つの長寿命放射性同位体134Cs及び137Csに起因して、より長期的な影響を及ぼす可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
既存の放射線モニタリング・システムの欠点の少なくともいくつかへの対処に役立てるべく、本明細書の教示は、過酷事故時に環境中の原位置の、すなわちオン・サイトの空気中放射能濃度を測定するために使用可能なシステムに関連しており、この過酷事故には、2011年の福島事故時の環境中の事象と同程度の過酷さであると想定され得る事象が含まれるのが好ましい。好ましくは、本明細書に記載するシステムは、フィルタの交換、サンプルの収集、又は研究室でのガンマ線分光測定の実施にあたって人の介入に依存することなく、空気中の様々な放射性核種の濃度に関する生の準リアル・タイム情報を提供するように構成可能であり得る。システムは、空気中の放射性核種を捕捉及び隔離することができるとともに、センサ装置が有用な読み取り値を得るのに十分な形態係数(view factor)を提供することのできる、新規なフィルタ・カートリッジ装置と組合せ可能な、適切なセンサ装置、例えば分光計を、任意選択的に利用し得る。つまり、本明細書に記載するシステム及び方法は好ましくは、人の介入に依存する必要なく、所与の標的場所(原子力事象が疑われる場所など)の周囲の空気中の、様々な放射性核種の濃度を測定するように構成され得る。
【0014】
本明細書に記載するシステムは、様々なシステム構成要素を格納できる主要なシステム・ハウジング又はフレームを含み得、1種又は複数種の標的放射性物質をリアル・タイムで検出するように動作可能なガンマ線センサ装置と、空気中の放射性核種(粒子及び/又は蒸気種を含み得る)を捕捉するための1つ又は複数のフィルタを含むことができ、且つ、ガンマ線センサ装置を使用した有用な放射線測定が可能になるようにガンマ線センサ装置に対して物理的に配置することのできる、フィルタ・カートリッジと、また更に、好適な電源(任意選択的に、内蔵されたバッテリ及び/又は外部電源への接続部)と、ガンマ線センサ装置の動作を調整するための制御装置又は他の好適な装置と、センサ測定値をモニタリング/分析のために遠隔の使用者に通信するための任意の他のハードウェア(送信機及び/又は受信機など)と、を含み得る。本システムはまた、本明細書に記載するようなものを含め、所望に応じて他の構成要素も含み得る。
【0015】
好適なセンサ装置の1つの実例としては、Cd-Zn-Te(CZT)分光計(例えば、参照により本明細書に組み込まれている、S. Mukhopadhyay、R. Maurer、P. Guss、「Modern Trends in gamma detection systems for emergency response」、Proc.SPIE 11494, Hard X-Ray, Gamma-Ray, and Neutron Detector Physics XXII, 114940B (2020); doi: 10.1117/12.2560115に記載されているもの)を挙げることができるが、これは室温センサに適度に高い分解能のスペクトルを与えることができ、現場での測定の実施を容易にするのに役立ち得る。本明細書には適切なフィルタ・カートリッジの実例が記載されているが、それらは好ましくは、別々のエアロゾル・フィルタ及びヨウ素フィルタであって、共通のフィルタ・ユニット内にあり且つ2つのフィルタ間に空気流を導くのに役立ち得る内部空気流通路を有する、エアロゾル・フィルタ及びヨウ素フィルタ、を含むように構成することができる。フィルタ・カートリッジはまた、測定正確度の改善に役立つように、フィルタとCZTセンサとの間に十分な形態係数を提供するとともに、フィルタの比較的近くへのセンサの配置を実現するように構成されているのが好ましい。
【0016】
任意選択的に、自動化システムを使用して、使用済みの/飽和したカートリッジをサンプリング領域から除去すること、及び好ましくは、カートリッジ・バンク又は他の適切な供給源から新しいカートリッジを供給することができる。このことによりシステムがより長い時間動作し続けること、詳細には、所与のいずれか1つのサンプリング・カートリッジの動作寿命/容量よりも長い動作期間を有することが可能になり得る。
【0017】
好ましくは、複数のフィルタ・カートリッジの交換の容易化を支援するために、システムは、カートリッジのより複雑な可動範囲又は方向付けを必要とするのではなく、概ね一方向の又は直線的な挿入動作で、フィルタをシステム内に(及び所望の気流連通部内に)挿入することを可能にする、結合機構を含むように構成され得る。このことは自動フィルタ交換システムの要件を簡潔にするのに役立ち得る。対応するハウジング又は全体的なシステムの他の部分内にカートリッジを文字通り挿入したときに、所望の空気流接続部もまた概ね自動的に確立することができ、カップリングを係合させる又はそれ以外の様式で空気流路接続部を確立する、別個のステップが必要ないようにするのが好ましい。例えば、カートリッジ上の継手及びシステム・ハウジング上の対応する継手は、フィルタ・カートリッジがシステム・ハウジングと物理的に位置合わせされたときに所望の空気流接続部を自動的に確立できる、球ジョイント、干渉嵌め若しくは摩擦嵌め、又は他のタイプの相補的な封止機構を含み得る。このことにより、カートリッジの設置プロセスが簡略化され得る(つまり、別個の空気流路結合/接続ステップが回避される)、及び/又は、カートリッジの自動交換プロセスの複雑さが軽減され得る。このことによってまた、システムからの使用済みカートリッジの比較的容易な取り外しが促進された可能性があるが、その理由は、カートリッジを単純に把握し次いでシステム・ハウジングから離れる方へと概ね直線的な動きで平行移動させることができ、このことによって同時に、使用済みカートリッジとシステムとの間の空気流の連通を遮断し、(例えば、物理的な取り外しステップの前の最初の結合解除ステップを必要とせずに)カートリッジをハウジングから取り外すことができるからである。別法として、システムのいくつかの実施例では、空気流路の結合/結合解除操作は、カートリッジの直線的な挿入及び/又は取り外し以外の、別個のステップであってもよい。同様に、システムのいくつかの実例では、カートリッジは、(実質的に直線的な単純な平行移動の代わりに)少なくとも2自由度を用いて挿入されてもよく、結合機構はそのような目的のために構成され得る。
【0018】
本明細書に記載する教示の1つの実例では、システムはCd-Zn-Te分光計を含むことができるが、これは室温センサでの適度に高い分解能の分光測定を実現することができ、現場での測定の実施を可能にし得る。改善されたフィルタ・カートリッジの1つの実例は、エアロゾル・フィルタとヨウ素フィルタの対を共通のカートリッジ内の所定位置に保持し、このとき高い計数率効率が得られるようにガンマ線分光計を可能な限り近くに維持するように構成される。単一のカートリッジで両方のフィルタを保持し得るのが好ましく、このカートリッジはフィルタ間で空気の流れを導く内部流路を有してもよい。このカートリッジの設計によりまた、フィルタに蓄積された放射能が過度に高くなったときのフィルタの交換が容易になる。例えば、自動化システムによって、フィルタ・カートリッジを新しいカートリッジ保管バンクからサンプリング場所(ろ過及びガンマ線分光)まで移動させ、使用済みフィルタ・カートリッジを使用済みカートリッジ保管バンクに戻すことができる。ガンマ線分光測定は原位置で比較的良好な分解能で行われ、システムは自動化されている場合があるため、使用済みフィルタ・カートリッジの物理的な回収及び輸送並びに実験室での追加の分析時間を待つ必要はなく、システムによってデータを緊急オペレーション・センターなどの遠隔の使用者に、直ちに(又は少なくとも準リアル・タイムで)送り返すことが可能になり得る。
【0019】
緊急事態に対応するための比較的迅速に展開可能なモニタリング能力及び分析能力を、輸送可能な検出装置で実現できる場合がある。また、必要な特定の環境評価に応じた変更が可能になるように、検出装置を本質上モジュール式にすることも有用な場合がある。
【0020】
本明細書に開示する教示の1つの広範な態様によれば、対象環境から空気中の放射性核種を測定するための輸送可能なシステムを対象環境内に配置できるようにすることができ、このシステムは、気体サンプルを引き込むように構成されたシステム気体入口と、システム気体入口から下流にあるシステム気体出口との間に延在する、主要気体流路を含み得る。主要気体流路内にはカートリッジ・ドックが配設されてもよく、これは、システム気体入口の下流で流体連通しているサンプル供給ポートと、システム気体出口の上流で流体連通している排気ポートと、を含み得る。カートリッジ・ドックには少なくとも第1のフィルタ・カートリッジを接続可能であり得る。第1のフィルタ・カートリッジは、サンプル供給ポートに密封接続可能なカートリッジ気体入口と、排気ポートに密封接続可能なカートリッジ気体出口と、カートリッジ気体入口とカートリッジ気体出口との間に延在するカートリッジ流路と、を含み得る。第1のフィルタ・カートリッジをカートリッジ・ドックに接続することによって、サンプル供給ポートと排気ポートとの間の流体連通を実現することができ、主要気体流路が完成する。カートリッジ流路内でカートリッジ気体入口の下流に第1のフィルタ・チャンバを配設してもよく、これは第1のフィルタを収容し得る。カートリッジ流路内の第1のフィルタ・チャンバとカートリッジ気体出口との間に第2のフィルタ・チャンバを配設してもよく、これは第2のフィルタを収容し得る。
【0021】
ガンマ線検出器装置は、第1のフィルタ・カートリッジがカートリッジ・ドックに接続されているときに第1のフィルタ・カートリッジと隣り合わせて配置可能であってもよく、第1のフィルタから放出された放射線を検出するように、及び、第2のフィルタから放出された放射線を検出するように、及び、検出された放射線に基づいてセンサ出力信号を生成するように、構成されている。
【0022】
システム制御装置は、センサ出力信号を受信し、対応する使用者出力を生成するように構成され得る。
【0023】
第1のフィルタ・カートリッジはカートリッジ・ドックから取り外し可能であり得る。カートリッジ・ドックから第1のフィルタ・カートリッジを取り外すことによって、主要気体流路が遮断されてもよい。
【0024】
第1のフィルタは第1のフィルタ・タイプのものであり得、第2のフィルタは異なる第2のフィルタ・タイプものであり得る。
【0025】
第1のフィルタは気体サンプル中の粒子を捕捉するように構成されたエアロゾル・フィルタを含み得、第2のフィルタはヨウ素フィルタを含み得る。
【0026】
フィルタ・カートリッジは、第1のフィルタ・カートリッジを挿入方向に平行移動させることによってカートリッジ・ドックに接続可能であり得る。
【0027】
第1のフィルタ・カートリッジがカートリッジに接続されるとカートリッジ気体入口が出口ポートと位置合わせされ得、第1のカートリッジとカートリッジ・ドックとの間に流体シールが形成される。
【0028】
第1のフィルタ・チャンバは第1のカートリッジがカートリッジ・ドックに接続されているとき密封され得、第1のフィルタ・カートリッジをカートリッジ・ドックから取り外すことによって開放される。
【0029】
第1のフィルタは、第1のフィルタ・カートリッジがカートリッジ・ドックから取り外されているときに露出され得る。
【0030】
第1のフィルタは、第1のフィルタ・カートリッジがカートリッジ・ドックから取り外されているときに、第1のフィルタ・チャンバから挿入方向に取り外し可能であり得る。
【0031】
第2のフィルタ・チャンバは第1のカートリッジがカートリッジ・ドックに接続されているとき密封され得、第2のフィルタ・カートリッジをカートリッジ・ドックから取り外すことによって開放され得る。
【0032】
第2のフィルタは、第1のフィルタ・カートリッジがカートリッジ・ドックから取り外されているときに露出され得る。
【0033】
第2のフィルタは、第1のフィルタ・カートリッジがカートリッジ・ドックから取り外されているときに、第2のフィルタ・チャンバから挿入方向に取り外し可能であり得る。
【0034】
システムは、システム制御装置によって制御可能であり且つ第1のカートリッジ使用期間の終了時にカートリッジ・ドックから第1のフィルタ・カートリッジを取り外すように構成されている、カートリッジ取り回し装置を含み得る。
【0035】
システムは、カートリッジ・ドックに接続可能な第2のフィルタ・カートリッジを含み得、第2のフィルタ・カートリッジは、サンプル供給ポートに密封接続可能なカートリッジ気体入口と、排気ポートに密封接続可能なカートリッジ気体出口と、カートリッジ気体入口とカートリッジ気体出口との間に延在するカートリッジ流路であり、第1のフィルタ・カートリッジをカートリッジ・ドックに接続することによってサンプル供給ポートと排気ポートとの間の流体連通が実現され、主要気体流路が完成する、カートリッジ流路と、を備え得る。カートリッジ流路内でカートリッジ気体入口の下流に配設されており且つ第1のフィルタを収容している、第1のフィルタ・チャンバ。カートリッジ流路内で第1のフィルタ・チャンバとカートリッジ気体出口との間に第2のフィルタ・チャンバを配設してもよく、これは第2のフィルタを収容し得る。カートリッジ取り回し装置は、システム制御装置によって、第1のフィルタ・カートリッジがカートリッジ・ドックから取り外された後で、第2のフィルタ・カートリッジをカートリッジ・ドックに接続するように制御可能であり得る。
【0036】
システムは、未使用のフィルタ・カートリッジを保管するように構成されており且つ少なくとも第2のフィルタ・カートリッジを収容している、少なくとも1つの新しいカートリッジ・バンクを更に含み得る。カートリッジ取り回し装置は、第1のフィルタ・カートリッジがカートリッジ・ドックから取り外された後で、第2のフィルタ・カートリッジを取り出し、第2のフィルタ・カートリッジを移動させてカートリッジ・ドックと位置合わせするように構成され得る。
【0037】
システムは、使用済みフィルタ・カートリッジを受け入れて保管するように構成され得る、少なくとも1つの使用済みカートリッジ・バンクを更に含み得る。カートリッジ取り回し装置は、カートリッジ・ドックから第1のフィルタ・カートリッジを取り出し、第1のフィルタ・カートリッジを使用済みカートリッジ・バンク内に収めるように構成されている。
【0038】
カートリッジ取扱い装置は、第1のフィルタ・カートリッジを選択的に把持するように構成されており且つ少なくとも2自由度で移動可能な、エンド・エフェクタを含み得る。
【0039】
カートリッジ取り回し装置は、キャリッジ・レールに沿って移動可能なキャリッジと、キャリッジに装着されておりエンド・エフェクタを支持し延長軸に沿って移動させるように構成されている、延長ユニットと、を備える。
【0040】
キャリッジ・レールは実質的に直線状であってもよい。
【0041】
延長軸は実質的に直線状であってもよく、キャリッジ・レールと実質的に直交していてもよい。
【0042】
ガンマ線検出器装置は、以下の間を移動可能なセンサ部分を含み得る。
【0043】
ガンマ線検出器装置が第1のフィルタ・カートリッジに隣り合っており、カートリッジ・ドックからの第1のフィルタ・カートリッジの取り外しがセンサ部分によって阻止される測定位置、及び、センサ部分が第1のフィルタ・カートリッジから離間されており、第1のフィルタ・カートリッジをカートリッジ・ドックから取り外すことのできる交換位置。
【0044】
ガンマ線検出器装置は、制御装置に通信可能に連結されており且つセンサ部分を支持し得る、検出器アクチュエータを含み得る。検出器アクチュエータは、センサ部分を測定位置と交換位置との間で選択可能に移動させるように構成され得る。
【0045】
検出器アクチュエータは、センサ部分を検出器軸に沿って測定位置と交換位置との間で直線的に平行移動させるように構成されている、リニア・アクチュエータを備える。
【0046】
検出器アクチュエータは、カートリッジ取り回し装置から独立して動作可能であり得る。
【0047】
ガンマ線検出器装置は、第1のフィルタと位置合わせされている第1の検出器と、第1の検出器から離間させて配置され第2のフィルタと位置合わせされている第2の検出器と、を少なくとも含み得る。第1の検出器は第1のフィルタ内のガンマ放射線に基づく第1の検出信号を生成するように構成され得、第2の検出器は第2のフィルタ内のガンマ放射線に基づく第2の検出信号を生成するように構成され得る。
【0048】
第1の検出器及び第2の検出器の少なくとも一方は、フィルタ・カートリッジから放出されたのではないバックグラウンド放射線への曝露を制限するために、放射線遮蔽体によって少なくとも部分的に側方を取り囲まれている、ガンマ線分光計、好ましくはCZTガンマ線分光計を含み得る。
【0049】
サンプル供給ポートは湾曲した供給密封表面を有するサンプルドック・カプラを含み得、カートリッジ気体入口は、供給密封表面に対して密封を行うように構成されている相補的な湾曲した入口密封表面を備える。
【0050】
供給密封表面は凸状であってもよく、湾曲した入口密封表面は凹状であってもよい。
【0051】
第1のカートリッジがカートリッジ・ドックに接続されているとき、供給密封表面は入口密封表面に押し付けられて第1のフィルタ・チャンバを密封し得る。第1のカートリッジはカートリッジ・ドックから離れるように平行移動可能であり、以って締結具を解放することなく供給密封表面と入口密封表面が分離される。
【0052】
排気ポートは、湾曲した排気密封表面を有する排気ドック・カプラを含み得る。カートリッジ気体出口は、排気密封表面に対して密封を行うように構成された、相補的な湾曲した出口密封表面を含み得る。
【0053】
排気密封表面は凸状であってもよく、湾曲した出口密封表面は凹状であってもよい。
【0054】
第1のカートリッジがカートリッジ・ドックに接続されているとき、排気密封表面は出口密封表面に押し付けられて第2のフィルタ・チャンバを密封し得る。第1のカートリッジはカートリッジ・ドックから離れるように平行移動可能であり、以って締結具を解放することなく排気密封表面と出口密封表面が分離される。
【0055】
本明細書に開示する教示の他の態様及び特徴は、本開示の具体的な実例に関する以下の説明を検討すれば、当業者には明らかになるであろう。
【0056】
本明細書に含まれる図面は、本明細書の教示の物品、方法、及び装置の様々な実例を説明するためのものであり、いかなるかたちでも教示内容の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】様々なサンプリング時間(線のスタイル)及びエネルギー依存検出器効率(線の色)に関する、所与の空気中放射性核種濃度についての、フィルタの予測計数率に関連する動作エンベロープのオプションを示すグラフである。
図2】空気中の放射性核種を測定するためのシステムの1つの実例の概略図である。
図3】フィルタ・カートリッジの1つの実例のシステムの上面図である。
図4図3のフィルタ・カートリッジの側面図である。
図5】線5-5n沿って取られた、図3のフィルタ・カートリッジの断面図である。
図6】空気中の放射性核種を測定するためのシステムの一部の部分断面図である。
図7図6の部分の拡大図である。
図8図2の空気中の放射性核種を測定するためのシステムを様々な構成で示す図のうちの1つである。
図9図2の空気中の放射性核種を測定するためのシステムを様々な構成で示す図のうちの1つである。
図10図2の空気中の放射性核種を測定するためのシステムを様々な構成で示す図のうちの1つである。
図11図2の空気中の放射性核種を測定するためのシステムを様々な構成で示す図のうちの1つである。
図12】対象環境から空気中の放射性核種を測定するためのシステムの、プロトタイプの実例の一部を示す写真である。
図13a152Eu及び137Cs/241Amを用いて評価した、エアロゾル・フィルタ検出器及びヨウ素フィルタ検出器の原位置ガンマ線計数効率を示すグラフである。
図13b】エア・サンプラを、式7で与えられるフィルタ交換に関するサンプリング時間ベースのアルゴリズムに従って使用した場合の、仮想原子力緊急事態における131I、137Cs、及び103Ruの検出器計数率のシミュレーション結果を示すグラフである
図14】仮想原子力緊急事態における131I、137Cs、及び103Ruの空気中濃度の再構築を示したグラフである。
図15】粒子保持効率を評価するための試験装置の概略図である。
図16図15の試験装置のCAD図である。
図17a】試験に使用したフィルタの写真である。
図17b】試験に使用したフィルタの写真である。
図18】紙フィルタのみの場合の圧力降下対流量を示すグラフである。
図19】活性炭フィルタのみの場合の圧力降下対流量を示すグラフである。
図20】紙と活性炭を組み合わせたフィルタの場合の圧力降下対流量を示すグラフである。
図21】試験中にフィルタを通過したエアロゾル粒径の、対照(フィルタを設置しない)と比較したヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0058】
特許請求される各発明の実施例の実例を提供するために、様々な装置又はプロセスについて以下で説明する。以下に説明する実施例は特許請求されるどの発明を限定するものでもなく、特許請求されるどの発明も、以下に説明するものとは異なるプロセス又は装置を包含し得る。特許請求される発明は、以下に記載する任意の1つの装置若しくはプロセスの特徴を全て有する装置若しくはプロセスに、又は、以下に記載する複数若しくは全ての装置に共通する特徴に、限定されない。以下に記載する装置又はプロセスが、特許請求されているどの発明の実施例でもない場合もある。以下に記載する装置又はプロセスにおいて開示されている、本文書において特許請求されていない任意の発明が、別の保護手段、例えば継続特許出願の主題である可能性があり、出願人、発明者、又は所有者は、かかる発明を本文書で開示することによって放棄する、部分放棄する、又は公衆に捧げることは意図していない。
【0059】
放射性物質の計画外放出を伴う緊急対応状況では、モニタリング又は分析が必要となる場合がある。このような状況には、放射性輸送物が関与する道路事故及び液体又は大気への計画外の放出が含まれる。環境修復及び廃炉は、環境モニタリング・システムが利用され得る状況の別の実例である。環境物質の分析には、物理的フィルタ及びサンプルの収集及びオフ・サイトの研究所への搬送と、試験自体の実施と、その後の結果の送付及び受領のための時間と、に対応するために、比較的長い処理時間(場合によっては最大数週間の処理時間)を要する場合がある。空気中の汚染物質、線量、及び汚染物質拡散のオン・サイトでの分析及びモニタリングは全て、放射性物質が計画外に放出された場合に有用と成り得る。
【0060】
本明細書に記載されているように、原位置ガンマ線分光計を利用する、リアル・タイム又は準リアル・タイムを実施するための輸送可能なシステムが開発されている。本明細書に記載するシステムでの使用に適したガンマ線分光計は、事故初期からの大規模な放出及びより小規模な漏洩からの持続的なバックグラウンドを測定できるように構成されるのが好ましく、そのため、102Bq/m~108Bq/mのオーダーの広範囲の潜在的放射能濃度Ca,iを測定できるのが好ましい。ガンマ線分光計は飽和状態になるまでの動的測定範囲がかなり広いが、この測定範囲は、例えば空気をより短時間又はより長時間サンプリングすることによって、更に広げることができる。
【0061】
ガンマ線分光計は核種の物理的計数率
【数1】

を測定するように構成することができ、これはガンマ線エネルギー依存検出効率εによって、フィルタ上のその核種の放射能Af,iと関連付けられる:
【数2】
【0062】
そしてフィルタ上の放射能は、空気の体積流量F、フィルタ効率Φ、及びフィルタが使用された時間の量tによって、捕捉されている量と関連付いている。更に、フィルタの放射能はまた、崩壊定数λに基づく放射性崩壊の影響も受ける。したがって計数率は、空気中濃度Ca,iと以下の関連を有する:
【数3】
【0063】
式2では、空気中放射能濃度と空気サンプル流量がいずれも一定であると仮定している。計数率を測定する目的で、ガンマ線分光計は、バックグラウンド・レベルを超える総和計数ΔCを取得するために、指定された時間(検出期間)Δtaqにわたってデータを取得することができる。この検出期間は、ピークを識別する目的で比較的有用な/許容可能な信号対ノイズ比を得るのに十分な長さであるのが好ましく、ただし過渡的な計数率を近似するために、フィルタに捕捉される放射能の増加と比較して十分に短いのが好ましい。
【数4】
【0064】
W.C. Evans、「Quantitative methods for continuous particulate air monitoring」、IEEE Transactions on Nuclear Science、48(5)巻、1639~1657頁(2001年)に提示されているアルゴリズムなどのアルゴリズムを用いて、放射性崩壊の効果を含めて空気中濃度を計算することができ、これは以下で与えられる:
【数5】
【0065】
設計及び検討の目的でシステムについていくつかの仮定を行うことができ、例えば、フィルタ効率Φは1に近いと仮定できる。フィルタ上の短寿命放射性同位体の放射能は最終的にはプラトーに達し、場合によっては時間とともに減少するが、本明細書で対象とする放射性同位体のうちの少なくともいくつか(131I、137Cs、132Te、103Ru)は、約6時間を超える半減期を有するか、又はより長寿命の同位体と平衡状態にあるかのいずれかである。このことにより、本明細書の教示の目的に合わせて、式2を以下のように短縮することができるが、このことは、フィルタが設置されている時間が長くなるほど、計数率が概ね直線的に上昇することを示唆している:
【数6】
【0066】
サンプリング流量が5L/分の場合、式5を用いていくつかの曲線が計算され、それらが図1に示されている。空気中放射能濃度とフィルタ上の予想計数率との間の関係が、フィルタ収集時間及び検出器効率のいくつかの組合せ(例えば、様々なガンマ線エネルギー)について示されている。このプロットはまた、フィルタ上の放射能の検出と関連付けられたいくつかの制約も示している。特定の放射性同位体の計数率が約10カウント毎分(cpm:count per minute)未満の場合、特にフィルタ上に捕捉された他の放射性同位体に起因する比較的高いバックグラウンドが存在する場合には、非常に長い取得時間を用いない限り、その放射性同位体が観測され得る可能性は比較的低い。全体の計数率が約10cpmを超えた場合には、本明細書に記載する検出器は飽和し始めることになり、所望の様式で動作できない可能性がある。
【0067】
例示的な図1に示すように、10Bq/mから10Bq/mの間の空気中濃度を測定できるが、必ずしも設定されたサンプリング期間で測定する必要はない。従来の固定的なフィルタ構成では、フィルタの交換は、緊急時でせいぜい24時間に1回、日常的なモニタリング時では最長5~7日に1回しか期待できない。図1の固定的な期間のうちの1つを用いる場合、この実例では、測定可能な濃度範囲は3桁近く減少する。しかしながら、本発明者らは、フィルタ・カートリッジを現場で動的に、好ましくは人の介入なしに交換できれば、フィルタ・カートリッジの交換の頻度をはるかに高めることができ、したがってシステム全体として、より広範囲の空気中濃度について有用な測定値を得ることのできる可能性があると判断した。
【0068】
システムのもう一つの設計考慮事項は、所与のフィルタ内に蓄積された放射能に起因する、検出器の経時的な感度低下である。例えば、事故又は他の類似の事象時の原子力発電所からの放出は爆発的なものとなる傾向を有し得るが、このことは、比較的高濃度の放射能を含む雲が比較的短時間で通過する可能性があり、その後、空気中の放射能の量が大幅に低下する可能性があることを意味する。従来の固定的なフィルタを用いた測定では、蓄積された放射能は全て、使用者が共通のフィルタ媒体内を手作業で交換/回収するまで、その中に留まる。分光法では、信号の誤差(信号に内在するもの、及び、コンプトン・バックグラウンド又はピーク干渉による他の不確かさ)は、この説明の目的上、信号、この場合はフィルタに関する計数率の、平方根に等しいとみなされ、したがって以下のようになる:
【数7】
【0069】
これらの条件下では、例えばフィルタを交換しなければ又は放射性崩壊を待たなければ、従来のシステムで測定される計数率は高いままであると考えられ、この誤差は、高濃度事象の終了時に空気中放射能濃度が再び降下した後で取られたデータにおいて、ばらつきを増加させる傾向がある。
【0070】
対照的に、本明細書に記載するシステムは、所与の検出期間の間に2つ以上のフィルタを自動的に使用するように構成することができるが、このことは、測定の時間分解能の改善及びこれらの知られている課題のうちのいくつかへの対処に役立つ可能性がある。システムはまた好ましくは、流入する空気サンプルから異なる放射性核種を捕捉するように構成できる少なくとも2つの異なるタイプのフィルタ、例えば少なくとも1つのエアロゾル・フィルタ及び少なくとも1つのヨウ素フィルタを含む。好ましくは、システムは、各フィルタに捕捉された放射性核種を個別に検出することができ、より好ましくは、エアロゾルと蒸気ヨウ素種を区別できるように構成される。このようなシステムでは、本明細書に記載されているように、ヨウ素専用のチャコール・フィルタの第2の組も使用され得る。原位置での測定はその場合、1対のCZTガンマ線分光計(又は他の適切な検出器、各フィルタに1つが関連付けられる)を用いて実施することができ、これらはシステムが空気からサンプリングしている間に、データを収集することができる。
【0071】
図2を参照すると、対象環境から空気中の放射性核種を測定するための輸送可能なシステム100の、1つの実例の概略図が示されている。システム100及びその構成要素は、原子力発電所又は他の空気中の放射性核種の潜在的発生源の周辺エリアなど、空気中の放射性核種の測定が望まれるエリア又は環境にシステム100を輸送できるように、十分な輸送可能性を有し、また任意選択的に、全般に自己完結型であることが意図されている。本教示の目的上、そのようなエリアを対象環境とみなすことができ、そのような環境内にシステムを配置することは、システム100を原位置に又はオン・サイトに配置することと考えられ、一般には、空気中の放射性核種が予想される/疑われるエリアから遠隔の研究所又は他の建物/環境とは、一般に異なると理解される。
【0072】
この概略的な実例では、システム100は、他のシステム構成要素を支持及び/又は収容することのできるシステム・ハウジング102を含む。ハウジング102は、例えば雨、埃、及び他の大気汚染物質から内部構成要素を保護するのに役立つような、全体に堅固なハウジングであってもよく、ハウジング102の内部へのアクセスを提供するための1つ又は複数の開放可能なドア又はパネルを有するのが好ましい、堅固な又は実質的に堅固な壁を有してもよい。別法として、ハウジング102は、他のシステム構成要素を取り付け装着するためのいくつかの支持点を有する、全体的に開放されているフレーム状の構造であってもよいが、保護シェルなどを有する必要はない。全体的に連続した単一の構造として概略的に示されているが、いくつかの実例では、ハウジング102は、2つ以上の別個のハウジング、モジュール、容器、又は、まとめて全体的なシステム100のハウジングとみなすことのできる他のそのような構造を含み得る。その全体的な構成にかかわらず、ハウジング102は、本明細書に記載する空気サンプリングに対応するための、並びに、電源、制御装置、通信及びデータ接続部などの、システム100とインターフェース可能な任意の外部モジュールへの接続部を提供するための、様々な適切な開口部を含み得る。
【0073】
ハウジング102及びそれが支持する構成要素は好ましくは、一般に携帯可能であり、システム100の使用が望まれるときに、保管場所から放射能が見られる標的場所まで輸送可能であるようなサイズである。したがって、ハウジング102は、好ましくは使用者が運ぶことができるような、又は別法として、適切な装置(リフト・トラック若しくはクレーンなど)を使用して取り回すことができ、対象環境内に配備するために従来の乗り物(乗用車若しくはバン、ピック・アップ・トラック、飛行機、船舶、輸送トラックなど)に載せて輸送できるような、サイズとされる。
【0074】
この実例では、システム100はシステム気体入口104を含み、これを通して空気、及び周囲の対象環境からの他の気体のサンプルを、測定のためにシステム100内に引き込むことができる。この図示した実例では、システム気体入口104は、ハウジング102内に延在する導管の開放端の形態で提供されている。システム100はまたシステム気体出口106も含み、これを通して、本明細書に記載する測定が完了したときに、ハウジング102から空気が出ることができる。気体出口106は、所望であれば任意の適切な下流の処理装置に接続されてもよく、又は別法として、この実例に示されているように、排気された空気を単純に周囲の大気中に吐き戻すことを可能にする、全体に開放した空気流導管の端部とすることもできる。
【0075】
システム気体入口104とシステム気体出口106との間には主要システム気体空気流路108が延在し、これはシステム100を通って空気が流れることのできる経路を提供する。本明細書に記載する実例では、システム気体空気流路108は、システム100を通る全体的に連続した一方向の空気流路を提供するためにシステム100の使用中に互いに接続可能な、配管/導管の複数の様々なセクションを含む。好ましくは、導管及び他のそのような構造のうちの1つ又は複数を含む、気体空気流路108の少なくともいくつかの部分は、流入する空気サンプルとフィルタ・カートリッジの上流にあるシステム100の部分との間の化学的相互作用を低減するのに役立つように、ガラスなどの一般に非反応性の材料から形成され得る。システム100が本明細書に記載するよう動作するのを助けるために、ポンプ、コンプレッサ、弁、圧力センサ、流量センサ、温度センサ、並びに他の適切な装置及びセンサなど、様々な異なる空気流デバイスを、空気流路108に沿って設けることができる。この概略的な実例には、そのような特徴の例示的な説明として、空気循環ポンプ110と流量及び圧力計112とが含まれている。
【0076】
空気流デバイスに加えて、システム100は、主要空気流路108内に設けられ、主要空気流路108の一部を形成するのに役立つ、カートリッジ・ドック114を含む。カートリッジ・ドック114は、本明細書に記載するようなシステム100を使用した空気中の放射性核種の捕捉並びに測定及び検出のためのそれらの保持に役立つように使用されるフィルタ・カートリッジに、着脱可能に接続するように構成されている、システム100の一部である。カートリッジ・ドック114はしたがって、所与のフィルタ・カートリッジ設計との接続に適した任意の構成を有することができ、好ましくは、カートリッジ・ドック114と入れ替え可能なフィルタ・カートリッジとの間に実質的に気密な接続部を提供するのに役立つような、相補的な結合及び密封部を有することになる。好ましくは、システム100は、フィルタ・カートリッジがカートリッジ・ドック114に結合されているときに、フィルタ・カートリッジが、システム気体入口104からシステム気体出口106までカートリッジ・ドック114及び連結されたフィルタ・カートリッジの両方を通過して空気が移動できるように、主要空気流路108を完成させるのを助けるように構成される。この構成では、フィルタ・カートリッジは、カートリッジ・ドック114から取り外されるとき、主要空気流路108を遮断することができる。
【0077】
空気中の放射性核種を捕捉するために、システム100は少なくとも1つのフィルタ・カートリッジを含み、好ましくは本明細書に記載するように、システム100の使用中に検出期間が経過する間カートリッジ・ドック114に接続可能な、複数の入れ替え可能なフィルタ・カートリッジを含み得る。図示した実例では、システムの一部であるものとして複数の適切なフィルタ・カートリッジ120が示されており、これには、複数の新しい又は未使用のカートリッジ120と、カートリッジ120上の1つ又は複数の小円の存在によって概略的に示されているような空気中の放射性核種及び/又は他の汚染物質を少なくとも一定量捕捉した、複数の使用済みカートリッジと、が含まれる。
【0078】
図3図6も参照すると、本明細書に記載するシステム100と共に使用するのに適したフィルタ・カートリッジ120の1つの実例は、カートリッジ・ハウジング122を含み、これはこの実例では、上側の壁124と、カートリッジの厚さ128だけ上側の壁124から離間された反対側の下側の壁126と、上側の壁124と下側の壁126との間に延在する側壁130と、を含む。壁124、126、及び130はともに、フィルタ・カートリッジ120内の内部空気流通路又はカートリッジ流路133を取り囲むように協働する。
【0079】
このフィルタ・カートリッジ120は、2つのフィルタを保持するように、及び、フィルタ・カートリッジ120の使用中にこれが全体的な主要空気流路108の一部を形成できるように、フィルタ・カートリッジ120の本体を空気が通過するのを可能にするように構成されている。この実例では、フィルタ・カートリッジ120は、空気がフィルタ・カートリッジ120に流入できるように、主要空気流路108の一部を形成する空気流導管に(例えば、本明細書に記載するように、それぞれサンプル供給ポート及び排気ポートに)概ね気密な様式で接続可能な、空気入口132を含む。この実例では、空気入口132は、フィルタ・カートリッジ120の上側の壁124に形成された穴/開口であるが、異なる実例では異なる構成を有し得る。
【0080】
フィルタ・カートリッジ120はまた、カートリッジ120の使用中に主要空気流路108の一部を形成する別の導管に接続可能な、空気出口134も含む。空気入口132と空気出口134との間にカートリッジ内部流路136が延在し(図5を参照)、これによってカートリッジ120を通る空気流の連通が実現される。
【0081】
この実例のフィルタ・カートリッジ120は、主要空気流路108内に配置されることになる2つのフィルタを保持するように構成されており、このことにより、空気サンプルと一緒に空気流路108を通って移動している物質がフィルタに捕えられることになり、それらを測定及び分析のために保持できるようになっている。例えば、空気ポンプ110は、カートリッジ120が設置されるとオンになるように構成され得、(例えば、示されているように約5L/分で)空気の引き込みを開始してもよく、空気サンプリング率のモニタリングのために流量計及び圧力センサ112が使用され得る。ガンマ線分光計は、空気ポンプ110がオンになると計数を開始し、制御装置186とともに、放射性核種の放射能が本明細書で説明するようなカートリッジ120内のフィルタに蓄積するときに、それを追跡し得る。他の実例では他の装置、弁なども提供され得る。
【0082】
フィルタはカートリッジ空気流路136内の任意の場所に配置されてもよく、互いに並列に又は好ましくは直列に配置されてもよい。この実例では、カートリッジ120は、カートリッジ120のハウジング/本体の一部によって画定され、第1のフィルタ140を収容するように構成されている、第1のフィルタ・チャンバ138を含む(図5)。この実例の第1のフィルタ・チャンバ138は、空気入口132に配置されている(ただし他の実例では別の場所にあり得る)。
【0083】
好ましくは、第1のフィルタ140は第1のフィルタ・チャンバ138の寸法及び形状と概ね一致するようなサイズであり、流入する空気流に曝される。第1のフィルタ140は、空気中の標的汚染物質を捕捉するのに適した任意の適切なタイプのフィルタ媒体とすることができ、好ましくは、セルロースなどの適切な材料から形成され、通過する空気から粒子を捕捉するように動作可能な、エアロゾル・フィルタとすることができる。適切なエアロゾル・フィルタの1つの実例は、Whatman(R)定性ろ紙、Grade 1(WHA1001047)である。任意選択的に、第1のフィルタ・チャンバ138は、第1のフィルタ140を所望に応じて挿入及び取り外しできるように、開放可能とすることができる。いくつかの実例では、フィルタ・カートリッジ120から使用済みフィルタを取り外すことができ、それを新しいフィルタ媒体と交換することができる。このことにより、所与のフィルタ・カートリッジ120を複数回使用することが可能になり得る。
【0084】
このカートリッジ120はまた、第1のフィルタ・チャンバ138の下流にあり、この実例では空気出口134に位置する、第2のフィルタ・チャンバ142も含む(ただし他の実例では別の場所にあり得る)。第2のフィルタ・チャンバ142は第2のフィルタ144を保持するように構成されている。第2のフィルタ144は第1のフィルタ140と同じタイプのフィルタであってもよいが、好ましくは、第1のフィルタ140とは異なるタイプの空気中の汚染物質を捕捉するように構成されている、異なるタイプのフィルタ-例えばヨウ素専用のチャコール・フィルタ-である。この構成ではフィルタ・カートリッジ120は2段式フィルタとみなすことができ、異なる場所に配置された異なるフィルタ140及び144で、種類の異なる汚染物質が捕捉されることになる。このことはフィルタ140及び144上の汚染物質の独立した測定を容易にするのに役立ち、このことによりシステム100が以下を個別にモニタリングすることが可能になり得る。
【0085】
各フィルタ・カートリッジ120は予め定められた使用期間の間使用されるように意図されているため、カートリッジ120を比較的容易な様式で、好ましくは所望の気密シールを確立するために締結具、コネクタなどの別個の作動又は操作を必要としない概ね1ステップのプロセスで、空気流路108に対して接続及び接続解除できるのが有利であり得る。例えば、システム100のいくつかの実例では、カートリッジ120を、単一の結合方向への移動、例えば挿入/取り外し方向へのカートリッジの平行移動を介して、システムの対応する部分(本明細書に記載するようなカートリッジ・ドック114など)に結合できることが好ましい場合がある。任意選択的に、挿入/取り外し方向は概ね直線的な移動経路とすることができ、カートリッジ120は適切なリニア・アクチュエータなどを介して移動され得る。このことはカートリッジ120の自動化された取り付け及び取り外しを容易にするのに役立つ場合があり、またこのことによって、カートリッジの取り付け又は取り外しを使用者が手作業で行う必要性が、減少又は場合によっては排除され得る。このタイプの比較的簡単な取り付け及び取り外しを可能にすることは、フィルタ・カートリッジ120に適切な結合及び密封機構があり、システム100の他の部分に相補的な結合及び密封機構があることを含み得る。任意の適切な、補完的な機構の組が使用され得る。
【0086】
図6及び図7も参照すると、カートリッジ・ドック114の特徴のうちのいくつかを示す、システム100の一部の拡大図が示されている。この実例では、カートリッジ・ドック114は、主要空気流路108の一部を形成する、空気サンプル供給ポートで終端するフィルタ供給導管150、及び排気ポートで終端するフィルタ排気導管152の、少なくとも一部を含む。各導管150及び152は、ドック・カプラ154を備えた開放された自由端で終端する。この実例では、ドック・カプラは、導管150及び152の端部にあるサンプル供給ポート及び排気ポートに設けられた、全体に丸みを帯びたボール・ジョイント機構を含む。ポートにあるボール・ジョイントは、図7に示すような下側凸状密封表面156などの、全体に滑らかな凸状の外側表面を有し得る。これらの表面は、カートリッジ120とのシールの少なくとも一部を形成することができる。密封表面156と係合しこれを密封できる相補的な凹状の密封表面を提供するために、この実例に図示されているフィルタ・カートリッジ120は、カートリッジ120が図7に示すようにドッキングされているときに凸状の密封表面156に対して密封を行うように構成されている凹状の密封表面160を有する、全体に環状の密封部材の形態で提供される、カートリッジ結合部材158を含む。カートリッジ120の接続を解除するために、これを図7に図示されているように下向きに、カートリッジ・ドック114から離れる方へと直線的に移動させて、凸状の密封表面156に対して密封を行うように構成されている凹状の密封表面160を係脱することができる。この実例では、カートリッジ結合部材158は、気体入口132及び気体出口134、並びに第1のフィルタ・チャンバ138及び第2のフィルタ・チャンバ142の、側方を取り囲んでいる。
【0087】
図示した実例では、カートリッジ120をカートリッジ・ドック114から離れる方へと直線的に移動させると、カートリッジ120と主要空気流路108との間の空気流接続が自動的に遮断されることになり、また対応するフィルタ・チャンバ138及び142内に収容されているフィルタ140及び144を露出させることもできる。このことにより、フィルタ140、144に対する検査又はアクセスのために、チャンバのドア又は他のそのような構造に触れる、又はそれを開く必要性が排除され得る。
【0088】
カートリッジ120がカートリッジ・ドック114に接続されシステム100が使用中であるとき、主要空気流路108内に引き込まれた空気の中に巻き込まれた空気中の汚染物質は、フィルタ140及び144に捕捉され得る。汚染物質がフィルタ140及び144上に蓄積するときに、汚染物質の量及び/又は種類を、本明細書に記載するようなガンマ線検出器などの適切なセンサを使用して、システムによって測定することができる。種類の異なる汚染物質が異なるフィルタ・タイプ140及び144内に保持される得るため、各フィルタ140及び144から放出されるガンマ線放射を個別に測定することにより、システム100は、2つ以上の種類の異なる空気中の汚染物質の濃度を、同時に検出及び/又は測定することが可能になり得る。
【0089】
再び図2及び図6を参照すると、図示した実例では、システム100は、図6に概略的に示すように、システム100の使用中にフィルタ・カートリッジ120に隣り合わせて配置され対応するフィルタ140及び144と整列又は位置合わせされ得るセンサ部分172を有する、ガンマ線検出器装置170を含む。センサ部分172、及び任意選択的にガンマ検出器装置170の他の部分は、それが第1のフィルタ・カートリッジと隣り合う、図6に示すような測定位置と、センサ部分172がフィルタ・カートリッジ120から、フィルタ・カートリッジ120をカートリッジ・ドック114から垂直方向に脱着するのに十分な距離だけ離間される、交換位置(図8を参照)と、の間で移動され得るように、移動可能であるのが好ましい。センサ部分172が交換位置にある間に、使用済みカートリッジ120をカートリッジ・ドックから取り外して、新しいカートリッジ120と交換することができる。新しいカートリッジ120を設置した状態で、センサ部分172を測定位置に戻すことができる(図10も参照)。
【0090】
この実例では、センサ部分172は、タングステン遮蔽体などであり得る対応する遮蔽されたハウジング176内に各々収容されている、2つの別個のガンマ線分光計174を含み、このことにより、周囲環境からの誤った放射能読み取り値の検出を低減することができる。このような遮蔽は、緊急時にシステム100が原子力発電所の近くに配備される場合など、システム100の周囲の環境が汚染されている可能性があるいくつかの状況において、重要であり得る。任意選択的に、タングステン・コリメータ(例えば、いくつかの実例では、高さ20mm、内径35mm)を分光計174とカートリッジ120との間に設置して、視野を更に狭めるのに役立てることができる。例えば記載したコリメータ又は他のそのようなハードウェアを使用することによる、各分光計174に関するこの種の指向性及び被曝の制限は、例えばエアロゾル・フィルタ140からの放射能が、ヨウ素フィルタ144に焦点を合わせている分光計174によって認識される(viewed)こと、及びその逆を防止するのに役立ち得る。
【0091】
分光計174間でのこのような読み取り値の混合の可能性を低減するのを助けるために、フィルタ・チャンバ138及び142並びにその中のフィルタ140及び144は好ましくは、約2cm~約50cmの間であり約5cm~約20cmの間であってもよいオフセット距離180(図5)によって、互いに横方向に(例えば、図5に図示されている水平方向に)離間される。
【0092】
センサ部分172が測定位置にあるとき、各分光計174は、フィルタ140及び144の対応する一方と整列される。この構成では、分光計検出器174のうちの1つは、第1のフィルタ内のガンマ線放射に基づく第1の検出信号を生成することができ、分光計検出器174のうちの1つの第2のものは、第2のフィルタ内のガンマ線放射に基づく第2の検出信号を生成することができる。これらの信号はシステム制御装置186に送られて処理され得る。制御装置186はその後、適切な使用者出力及び/又は出力信号を生成することができる。フィルタ140と144で異なる量の放射線が検出される場合、第1及びと第2の検出信号は異なり得る。
【0093】
同様に、分光計174を軸方向(例えば、図6に図示されている垂直方向)において、フィルタ140及び144の比較的近くに配置することは、測定の品質及び/又は正確度の改善に役立ち得る。分光計174とフィルタ140及び144との間の垂直/軸方向の間隔に影響し得る1つの要因は、カートリッジ120の厚さ128である。好ましくは、カートリッジの厚さ128は比較的小さく、下側の壁126に隣り合って配置されるガンマ線分光計が依然として、有用な測定値を得るのに十分な程度にカートリッジ内のフィルタに接近できるようになっている。任意選択的に、厚さ128は約20cm未満であってもよく、好ましくは約10cm未満、及び約3~6cmとすることができる。信号品質を高めるのに役立ち得るので、分光計174は好ましくは、フィルタ140、144の可能な限り近くに配置される。
【0094】
このようにセンサ部分172を移動させるのを助けるために、ガンマ線検出器装置170はまた、センサ部分172を支持しこれを測定位置(図2及び図11)と交換位置(図9)との間で移動させることのできる、図2及び図8図9、及び図11に概略的に図示されている検出器アクチュエータ178のような、任意の適切なタイプのアクチュエータも含み得る。この検出器アクチュエータ178はリニア・アクチュエータを含むことができ、空気圧式、油圧式、若しくは電動式であってもよく、又は任意の他の適切な装置であってもよい。検出器アクチュエータ178は好ましくは、例えば有線接続又はワイヤレス接続によって、制御装置186に通信可能に連結され、センサ部分172を支持する。
【0095】
好ましくは、検出器アクチュエータ178は本明細書に記載されるカートリッジ取り回し装置から独立して制御され得るが、任意選択的に、異なるアクチュエータの動きを、例えば制御装置186によって、本明細書に記載するカートリッジ交換を容易にするのを助けるように調整することができる。
【0096】
全般に自律的な様式でのカートリッジ120の交換及びシステム100の操作を促進するのを助けるために、システムは、制御装置186によって制御可能な適切なカートリッジ取り回し装置190を含み得る。カートリッジ取り回し装置190は好ましくは、1つの使用済みフィルタ・カートリッジ120をそのカートリッジ使用期間の終了時にカートリッジ・ドック144から取り外すこと、及び、その後交換用の新しいフィルタ・カートリッジ120を、人間である使用者/操作者による介入を必要とすることなくカートリッジ・ドック114に接続することができるように構成される。
【0097】
好ましくは、カートリッジ120の供給の管理を助けるために、システム100は、図8に新しいバンク192として概略的に図示されている、1つ又は複数の未使用カートリッジを保持できる少なくとも1つの新しいカートリッジ・バンクを含み得る。同様に、システム100は好ましくは、図8に使用済みバンク194として概略的に図示されている、1つ又は複数の使用済みカートリッジを保持できる少なくとも1つの使用済みカートリッジ・バンクを含む。
【0098】
この実例では、カートリッジ取り回し装置190はしたがって、カートリッジ・ドック114から使用済みカートリッジ120を取り出し(センサ部分172が交換位置に移動している図2図8、及び図9を参照)、それを使用済みバンク194に向けて搬送するように構成されるのが好ましい。次いで新しいバンク192から未使用のカートリッジを入手することができ、カートリッジ取り回し装置190はそれをカートリッジ・ドック114に接続することができる(図10)。その後センサ部分172を、適切なカートリッジ使用期間の間、測定位置(図11)に戻すことができる。この目的のために様々な装置が使用され得る。
【0099】
図示した実例では、カートリッジ取り回し装置190はエンド・エフェクタ部分、例えばカートリッジ120を把握できる空気圧グリッパ196を含むものとして、概略的に図示されている。空気圧グリッパ196は好ましくは、所望のカートリッジ取り回し操作の達成に役立つように、少なくとも2自由度で移動可能である。例えばこの場合、カートリッジ取り回し装置190は、レール200に装着されており且つレール200に沿って第1の横平行移動方向202にスライド可能な、キャリッジ198を含む。この実例では、レール200は直線状の/真っ直ぐなものとして図示されているが、他の実例では他の形状(例えば、湾曲、傾斜、等)を有し得る。
【0100】
延長ユニット204が装着されるが、これはキャリッジ198とともに平行移動可能であり、空気圧グリッパ196(図9)を支持し、カートリッジ120をカートリッジ・ドック114に向かって及びカートリッジ・ドック114から離れるように移動させるように、第2の方向に延びることができる。これは空気圧ピストン/シリンダ、ボールねじ、シザー・リフト、リニア・レール、又は他のハードウェアを含み得る。この実例では、延長ユニット204の延長はキャリッジ198の移動と概ね直交しているが、他の実例では異なる構成のものであり得る。
【0101】
システム制御装置186は、本明細書の実例では概略的に図示されているが、カートリッジ取り回し装置、ガンマ線分光計、気体処理機器などのシステム100の構成要素に接続可能な、任意の適切なコンピュータ、プロセッサ、プログラマブル・ロジック制御装置などであってもよい。システム制御装置はこれらの様々な構成要素に、有線、ワイヤレス接続(BlueTooth又はWiFiなど)、赤外線通信デバイス、無線送信機/受信機などを含む、任意の適切な通信ハードウェア/プロトコルを使用して、通信可能に連結することができる。
【0102】
システム制御装置は、キーボード、マウス、トラック・パッド、又は他の入力デバイス、モニタ/スクリーン、スピーカ又は他の音生成トランスデューサ、ライト、音声/スピーチ機能、並列デバイス(例えばスマート・フォン、タブレットなど)上で実行されるアプリ又は他の類似のソフトウェアとのインターフェース、及び他の適切なデバイスを含む、使用者がシステムとインターフェースするのを可能にするための任意の適切な入力及び出力デバイスを含み得る。
【0103】
単一のユニットとして概略的に示されているが、システム制御装置はいくつかの実例では、互いに別個であるが互いに通信しており、本明細書に記載するシステム制御装置の機能を実行するために一緒に機能し得る、複数の異なる物理的デバイスを含み得る。
【0104】
システム100の使用中、ガンマ線分光計174は、それらが整列されているフィルタ140又は144内に捕捉されている/存在する放射性核種の数に比例する対応するセンサ出力信号を、各々生成できる。これらの信号は任意の適切なフォーマットであってもよく、制御装置186に提供され得る。その後制御装置186は、受信したセンサデータに基づいて適切な出力を生成することができる。この出力は、放射線レベル、サンプル中に存在する特定の空気中の汚染物質の特定に役立ち得る識別又は分類データなど、センサと関連付けられた記録データを含み得る。制御装置186はまた、天候データ、温度、時間、場所データ、及び他の適切なデータなど、入来する他の受信データ/情報も利用できる。これら様々なデータ源を制御装置186が利用することによって、測定された放射線レベルの時間ベースの記録、グラフ、レポート、オン・スクリーン表示、警告又はアラート(例えば、再コード化された値が予め定められたアラーム閾値を超えた場合)、及び他のそのような出力など、1つ又は複数の所望の使用者出力を生成することができる。使用者出力は、例えばアラームを鳴らすこと若しくはライトをトリガすることによって、制御装置によって局所的に生成されてもよく、且つ/又は、情報は、ハウジング102から物理的に分離されている外部若しくは遠隔のデバイス、例えばコンピュータ、タブレット、スマート・フォンなどに通信されてもよい。
【0105】
本明細書に記載するシステム100の動作を確認するために、試験を目的としたプロトタイプのシステムを構築した。図12を参照すると、プロトタイプの装置の一部の写真が示されている。プロトタイプの一部はシステム100の一部と類似しており、類似の特徴は類似の参照文字を使用して識別されている。図12はカートリッジ・ドック114に接続されている試験カートリッジ120の実例を示しており、センサ部分172は測定位置に配置されている。
【0106】
この実例の2つのガンマ線分光計はKromek GR1 CZT検出器であり、システム制御装置186には、ガンマ線分光測定値を捕捉し記録するために、Kromek MultiSpect Analysisソフトウェアが採用されている。タングステン遮蔽体176はCanberra CSM-GR1システムからのものであった。フィルタ・カートリッジ120の初期プロトタイプはポリ乳酸(PLA:polylactic acid)から3Dプリントし、他のバージョンはPTFEから製造した。検出器アクチュエータ178及びカートリッジ取り回し装置190の一部となる、直線軸スライド、空気圧ピストン、及び空気圧グリッパ、並びに制御ソフトウェア及び他の付属品には、Festo社の部品を採用した。
【0107】
このプロトタイプの原位置検出器の効率を、エアロゾル・フィルタ又はヨウ素フィルタ上に置かれた、収集された放射能をシミュレートするための計数用の1組の固定線源を用いて評価した。2つの異なる線源、すなわち、40.1keV、121.8keV、及び344.3keVのガンマ線エネルギーを有する6.47×10Bqの152Eu線源と、59.5keV及び661.7keVのガンマ線エネルギーを有する5.86×10Bqの241Am及び1.31×10Bqの137Csの混合線源でと、を採用した。どちらの線源もフィルタ・チャンバ内に嵌合する直径40mmの円盤であった。各線源をエアロゾル・フィルタ又はヨウ素フィルタのいずれかの上に置いて4回の測定を行い、これらは各々5分間行われた。原位置での効率は、期間中の正味計数率を各放射性核種の既知の放射能及びガンマ線の相対強度と比較することによって評価できた。このことが図13aに、エアロゾル・フィルタ検出器及びヨウ素フィルタ検出器についてのガンマ線エネルギーの関数として示されている。この試験では、フィルタはCZT分光計の頂部から56mmの高さにあった。
【0108】
本明細書に記載するような測定された検出器効率を用いて、空気サンプル中の放射性核種の仮想的混合に対する、提案される空気サンプリング・システムの予想性能をモデル化した。経時的な検出器計数率及びカートリッジ交換頻度(例えば、所与のカートリッジ使用期間の長さ)は、特にこの評価の対象であった。
【0109】
カートリッジをいつ交換すべきかの決定には、サンプリング時間ベースのアルゴリズムが用いられる。最大許容計数率
【数8】

が設定され、これが対象の放射性同位体のエネルギー範囲内での実際の計数率
【数9】

、及び、フィルタ・カートリッジがこれまでに設置されていた時間tと比較され、このtf,maxの値は式7に示されているように、最大24時間まで評価される。
【数10】

の値はエネルギーに依存し、高エネルギーのガンマ放射ほど検出効率が低くなる。この指標はデータの記録中継続的に評価されるが、その期間を通しての最小値が比較の基礎として使用される。カートリッジが設置されている実際の時間がtf,maxを超えると、フィルタが交換される。空気中濃度が上昇しているとき、
【数11】


【数12】

に接近するにつれtf,maxは急速に縮小することになり、そのようになるとフィルタ交換が行われることになる。空気中濃度が低下しているとき、
【数13】

はプラトーに入り、上昇を迅速に止めるが、最大サンプリング期間を設定するためのサンプリング期間のより早期からの値tf,maxも同様である。
【数14】
【0110】
原子力発電所事故から放出された、空気中の経時変化する131I、137Cs、及び103Ruの混合物が関与する仮想ケースをシミュレートした。エアロゾル・フィルタに面した検出器のシミュレーションした計数率を図13bに示し、各放射性同位体の実空気中濃度及び再構築した空気中濃度を図14に示す。より現実に近付けるために、ノイズの多い計数率を、予想値
【数15】

、標準偏差
【数16】

の正規分布からサンプリングして、式5から生成した。このシナリオでは、事故の開始から約12時間後に大規模な放出及び非常に高い屋外放射性核種濃度を伴う初期期間があり、これに続いて、放出が減少する中間期間、及び約40時間後に大量の後期放出である第2の段階があった。空気中の濃度は大量放出である第2の期間後に著しく減少した。大規模な131I及び137Csの放出は同じ時間窓の間に起こったが、初期の大規模なスパイク中の103Ruの大量放出はより長い期間続いた。
【0111】
図13bを含むモデルの本発明者らの分析に基づき、大規模なスパイクの間は、フィルタ・カートリッジ120をかなり頻繁に交換するのが望ましい可能性があると判断された。どちらのスパイクにおいても、サンプリング期間はわずか約30~40分であった。図14に示すように、空気中の濃度の再構築結果は全般に、シミュレーションされた実際の濃度とほぼ一致した。それらはこの図では10分の増分で与えられており、このことによって、データ報告に関して、手作業で収集され外部の研究所で分析される固定的なフィルタの場合に通常可能であると考えられるよりも、比較的高い時間分解能が実現される。この試験では137Csのデータは131I及び103Ruのデータよりもノイズが大きかったが、その理由はおそらく、計数率がより小さく、屋外濃度がより低かったからである。空気中の濃度が大きな減少後に過大予測された期間もいくつかあったが、このことは、フィルタ上に蓄積する新たな放射能の量が減少しているプラトーが計数率信号中のノイズによってマスクされた結果である可能性がある。このことは空気中の濃度がより高かったより早期からの、フィルタ上の高い放射能によって引き起こされた可能性があり、この過大予測は多くの場合、フィルタ120を交換するまで続いた。これらの差は比較的小さく、システム100の性能を大きく変えるようには見えなかったものの、このことは、フィルタ交換のための優れた尺度の組を用意する必要のあることをはっきり示している。
【0112】
エアロゾル保持効率及び選択されたフィルタ・カートリッジ120の設計の前後の圧力降下を決定するために、システム100のいくつかの追加試験を実施した。この試験は、複数の流量で紙(エアロゾル)フィルタ及び活性炭(ヨウ素)フィルタの前後の圧力降下を試験することと、複数の流量で各フィルタの前後でエアロゾル密度測定を試験することと、カートリッジ又は関連する接続部が意図した通りに機能し得るかどうかを判定するための密封試験を実施することと、この最初の実例で使用したフィルタの圧力及び流量の限界を判定するために、機能しなくなるまで試験することと、を含んでいた。この試験は、カナダのオンタリオ州にあるCanadian Nuclear Laboratories(カナダ原子力研究所)が運営するChalk River Laboratoriesの適切な試験室で行われた。
【0113】
試験の一部において、入口132に第1のフィルタ140としてWhatman(R)エアロゾル・フィルタを設置した、また、カートリッジの出口134に第2のフィルタ144として活性炭ヨウ素フィルタが設置される。各フィルタ・ユニットで捕捉される放射能をモニタリングするために、図6に模式的に示すように、カートリッジ120内のフィルタ・チャンバ138及び142の直下に、ガンマ線分光計174が配置されている。
【0114】
図15及び図16は、本明細書で説明する試験を実施するために使用された試験装置の図である。試験装置は、配管の組立体を支持するアルミニウム押出フレームと、様々な計器と、空気投入部と、を含む。圧縮空気ライン150は分割されており、一方側はエアロゾル生成器220に至り、他方は配管組立体の主たる空気入口に至る。エアロゾル生成器220は、圧力変換器222が接続されている配管組立体内へと送出を行う。配管組立体からの流れはその後、密封部材154を備えたガラス管を通って試験カートリッジ120内へと導かれ、そこでフィルタによってエアロゾルが捕捉される。その後第2のガラス管152から空気を吐出し、そこで光学式粒径分析計224用のサンプリングを行う。ベースライン濃度を把握するために、光学式粒径分析計224用のエアロゾル・サンプリングを、第1のガラス管の送出部で行った。試験装置の様々な態様を以下に列挙する。
【0115】
この構成では、エアロゾル生成器220は約200kPaの圧縮空気を受け取り、それを使用して約3mL/分の割合で水エアロゾルを生成する。エアロゾル生成器220中の液体は、NaClの5wt%水溶液である。生み出されたエアロゾル中の水は主たる空気の流れと混合された後で蒸発し、残留NaClエアロゾルが残る。主たる入力部に至る空気の圧力及び流量を変えることによって、様々な条件下でフィルタ効率を試験することが可能になる。配管組立体は、図15及び図16に見られるように、様々な投入部及びセンサの接続を可能にする、一連の直線セクション及び「T字部」である。
【0116】
試験装置に設置された機器及び計器のリストを表1に示す。
【表1】
【0117】
試験中に記録されるデータには、フィルタなしのカートリッジの上流及び下流並びに様々なフィルタを備えたカートリッジ120の下流における、エアロゾルの粒径分布と、給気体積流量と、カートリッジ120の前後の差圧と、が含まれる。
【0118】
図17に示すように、2つの異なるエアロゾル・フィルタ、Whatman(R)活性炭充填紙、Grade 72、及び、Whatman(R)ガラス・マイクロファイバ・フィルタ、Grade GF/Aを用いて、試験を実施した。実験計画の条件を表2に示す。これらの試験には、エアロゾル生成器220への投入量を実質的に一定(193kPa及び5SLPM)に維持することが含まれていた。ここで「SLPM」とは、標準リットル毎分(standard liter per minute)を指す。配管継手内への流量は、可能な限り5SLPMから55SLPMまでで変化させた。
【表2】
【0119】
これらの実験の手順は、所与の試験用のフィルタ構成でカートリッジ120を組み立てることであった。カートリッジ120を試験装置内に挿入し、PVC空気が所望の割合で投入されており、システムが十分に安定した定常状態にある状態で、試験準備ステップが完了したことを確認する。次いでPVC空気ラインを通る流量を、表2の最初の値に設定した。圧力が定常状態になるまでの時間を与えた後で、OPSを標準的な1分間の収集時間実行し、変換器が見た圧力を記録する。その後空気流量を5SLPM増加させ、これらの試験ステップを、表2に列挙されている最大流量に達するか又はフィルタが破断するまで繰り返した。
【0120】
どの試験においても目立った漏洩は検出されなかった。このことは、ガラス・ボール・ジョイントとカートリッジとの間の界面に、及び更にカートリッジ同士の接合部に石けん溶液を塗布することによって確認された。各試験運転期間を通して、気泡は観察されなかった。これらの観察結果を圧力読み取り値と組み合わせると、シールからの漏れが十分に低く維持されていること、及び、カートリッジ120とカートリッジ・ドック114の設計が意図した性能を発揮していることが定性的に示されている。
【0121】
圧力降下試験測定からの生データを表3~表6に示す。紙フィルタのみ、活性炭フィルタのみ、及び両方のフィルタを設置した場合の、フィルタ前後の圧力降下対流量のプロットを、データへの二次多項式フィットとともに図18図20に示す。試験した紙フィルタは圧力差が約10kPaになると破断し始め、オートメーションシステムで使用するための圧力上限が示された。図17(b)に破断した紙フィルタの実例を示すが、ここでは断裂する傾向が見られた。活性炭フィルタは裂けるよりはむしろそのフレームから滑落する傾向があった。そのため、最終的な放射性核種モニタリング・システム100は、紙フィルタ及び活性炭フィルタの両方が設置された状態で、好ましくは約10kPa未満の総合差圧で操作されることが推奨されるが、これは約25SLPMの流量に対応し得る(表6を参照)。
【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】
【0122】
フィルタ効率試験測定からの生データを表3から表6に示す。フィルタ効率は、フィルタを設置した場合と設置していない場合のカートリッジの出口におけるエアロゾル濃度の比から、式8に従って求めることができる。
【数17】
【0123】
エアロゾル生成器220で、質量中央径が約3.3μm、幾何標準偏差が1.3のNaClエアロゾルを作り出した。測定された粒径分布ヒストグラムを図21に示すが、これは、フィルタなしの結果を、紙フィルタ又は活性炭フィルタのいずれかがカートリッジ内の所定の位置に設置されているが他のタイプのフィルタが存在しない場合の結果と比較したものである。粒径分布には大きな下方シフトがあるが、このことはフィルタが>0.7μmの粒子に対してより効率的であることを意味する。表7に示すように、紙フィルタの総合効率は約99.996%であり、一方、活性炭フィルタの総合効率は99.98%であった。組み合わせた場合、両方のフィルタが設置されていたときの総合ろ過効率は約99.999%であった。最終的な放射性核種モニタリング・システムにおいて実装される場合、このことは、エアロゾルのほぼ全てが紙フィルタで効果的に捕捉されると想定され、活性炭フィルタへのエアロゾルのバイパスは限定的であると想定されることを意味する。
【0124】
上述した内容は、本発明の例示となるように及び非限定的であるように意図されており、当業者には、本明細書に添付する特許請求の範囲に規定されている本発明の範囲から逸脱することなく、他の変形及び修正を行うことのできることが理解されよう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13a
図13b
図14
図15
図16
図17a
図17b
図18
図19
図20
図21
【国際調査報告】