IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コンティネンタル・ライフェン・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特表2024-529394化合物、前記化合物を含むゴムブレンド、前記ゴムブレンドを少なくとも1つの成分に含む車両用タイヤ、前記化合物の製造プロセス、並びに前記化合物の老化安定剤及び/又はオゾン分解防止剤及び/又は染料としての使用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】化合物、前記化合物を含むゴムブレンド、前記ゴムブレンドを少なくとも1つの成分に含む車両用タイヤ、前記化合物の製造プロセス、並びに前記化合物の老化安定剤及び/又はオゾン分解防止剤及び/又は染料としての使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 219/08 20060101AFI20240730BHJP
   C09B 5/36 20060101ALI20240730BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240730BHJP
   C08K 5/3437 20060101ALI20240730BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240730BHJP
   C07C 229/58 20060101ALN20240730BHJP
   C07C 227/16 20060101ALN20240730BHJP
   C07C 227/08 20060101ALN20240730BHJP
   C07C 227/18 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
C07D219/08
C09B5/36 CSP
C08L101/00
C08K5/3437
B60C1/00 A
B60C1/00 B
B60C1/00 Z
C07C229/58
C07C227/16
C07C227/08
C07C227/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503670
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 DE2022200131
(87)【国際公開番号】W WO2023001341
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】102021207928.8
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】510156561
【氏名又は名称】コンチネンタル・ライフェン・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【住所又は居所原語表記】Continental-Plaza 1,30175 Hannover,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコプ・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ダウアー・ダーヴィット-ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】シュトローマイアー・ユリアン
【テーマコード(参考)】
3D131
4H006
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131AA06
3D131AA12
3D131BA08
3D131BC07
3D131BC31
3D131BC35
3D131BC51
4H006AA02
4H006AB51
4H006AB99
4H006AC46
4H006AC48
4H006AC52
4H006BE10
4H006BE12
4H006BE20
4H006BS30
4H006BT32
4J002AA001
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC081
4J002BB181
4J002EU036
4J002FD036
4J002FD096
4J002GJ02
4J002GM01
4J002GN01
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、化合物、前記化合物を含有するゴムブレンド、本ゴムブレンドを少なくとも1つの構成要素に含む車両用タイヤ、本化合物の製造方法並びに老化保護剤及び/又はオゾン劣化防止剤及び/又は染料としての本化合物の使用に関する。本発明による化合物は、式(I)[式中、Rは、xi)芳香族基(芳香族基は、ハロゲン基、シアノ基、エステル基、ケトン基、エーテル基及びチオエーテル基からなる群から選択される置換基を任意選択的に持っている)、及びxii)線状、分岐状及び環状脂肪族C~C12基、並びにxiii)芳香族基と脂肪族C~C12基との組合せからなる群から選択される]を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I):
【化1】
[式中、Rは、
xi)芳香族基(ここで、前記芳香族基は、ハロゲン基、シアノ基、エステル基、ケトン基、エーテル基及びチオエーテル基からなる群から選択される置換基を任意選択的に有する)、
及びxii)線状、分岐状及び環状脂肪族C~C12基、
並びにxiii)芳香族基と脂肪族C~C12基との組合せ
からなる群から選択され、式中、前記基R及びRは、互いに独立して、同一であっても異なってもよく、1つ以上のハロゲン置換基を任意選択的に有する線状、分岐状及び環状の、飽和及び不飽和の、脂肪族C~C12基、1つ以上のハロゲン置換基を任意選択的に有するアリール基並びにハロゲン基(ここで、フッ素、臭素及び塩素が好ましい)、シアノ基、エステル基、ケトン基、エーテル基及びチオエーテル基からなる群から選択され、式中、nは、0又は1又は2又は3又は4の値をとり、式中、nが、2又は3又は4である場合、前記基Rは、互いに独立して、同一であるか又は異なり、
式中、mは、0又は1又は2又は3の値をとり、式中、mが、2又は3である場合、前記基Rは、互いに独立して、同一であるか又は異なる]
の化合物。
【請求項2】
nは0(ゼロ)であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
mは0(ゼロ)であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
が第3級炭素原子を介して窒素原子(N)に結合していることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
が4~12個の炭素原子、好ましくは4~8個の炭素原子を有する分枝鎖アルキルラジカルであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
が、1,3-ジメチルブチルラジカル及びシクロヘキシルラジカルから選択され、Rが好ましくは1,3-ジメチルブチルラジカルであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
式II):
【化2】
の構造を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
特に、空気ばね、ベローズ、コンベヤベルト、ベルト、駆動ベルト、ホース、ゴムバンド、プロファイル、シール、メンブラン、医療用途若しくはロボット用触感センサー、又は、靴底若しくはその一部、並びに/又は、油及び/若しくは潤滑剤などの特に車両用タイヤ又は技術的ゴム物品における、老化安定剤としての、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項9】
繊維及び/又はポリマー及び/又は紙及び/又は(装飾用)塗料及びコーティング中の染料としての、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項10】
以下のプロセス工程:
a)式A)及びB)
【化3】
の化合物を提供する工程;
b)前記化合物A)及びB)を、塩基及び触媒の存在下で互いに反応させて式C):
【化4】
の化合物を得る工程;
c)式C)の前記化合物を、水素又は水素化試薬、特に水素化物、及びケトン又はアルデヒドと反応させて式D):
【化5】
の化合物を得る工程;
d)式D)の前記化合物を任意選択的に反応させて式E):
【化6】
の化合物を得る工程;
e)式D)又はE)の前記化合物を酸と反応させて式I):
【化7】
を得る工程
を含む式I)の化合物の製造方法であって、
式中、Rは、
xi)芳香族基(ここで、前記芳香族基は、ハロゲン基、シアノ基、エステル基、ケトン基、エーテル基及びチオエーテル基からなる群から選択される置換基を任意選択的に有する)、
及びxii)線状、分岐状及び環状脂肪族のとりわけC~C12基、
並びにxiii)芳香族基と脂肪族C~C12基との組合せ
からなる群から選択され、式中、前記基R及びRは、互いに独立して、同一であっても異なってもよく、1つ以上のハロゲン置換基を任意選択的に有する線状、分岐状及び環状の、飽和及び不飽和の、脂肪族C~C12基、1つ以上のハロゲン置換基を任意選択的に有するアリール基並びにハロゲン基(ここで、フッ素、臭素及び塩素が好ましい)、シアノ基、エステル基、ケトン基、エーテル基及びチオエーテル基からなる群から選択され、式中、nは、0又は1又は2又は3又は4の値をとり、式中、nが、2又は3又は4である場合、前記基Rは、互いに独立して、同一であるか又は異なり、
式中、mは、0又は1又は2又は3の値をとり、式中、mが、2又は3である場合、前記基Rは、互いに独立して、同一であるか又は異なる、
方法。
【請求項11】
水素及び前記アルデヒド又はケトン、好ましくはケトンとの工程c)における反応は、水素化触媒を使用して、及び120℃~150℃の温度で実施され、反応混合物は35~45barの圧力での水素に供され、反応は、オートクレーブ中で又は別の圧力反応器で実施されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物を含有するゴム混合物であって、前記ゴム混合物は、天然ポリイソプレン(NRゴム)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、ブチルゴム(IIR)及びハロブチルゴムからなる群から特に好ましくは選択される少なくとも1種のジエンゴムを好ましくは含有する混合物。
【請求項13】
請求項12に記載のゴム混合物を、少なくとも1つの構成要素に、好ましくは少なくとも1つの外側構成要素に含む車両用タイヤであって、前記外側構成要素は、好ましくは、トレッド、側壁及び/又はフランジ輪郭であるタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、化合物を含有するゴム混合物、少なくとも1つの構成要素中にゴム混合物を含む車両用タイヤ、化合物を製造するプロセス、並びに、老化安定剤及び/又はオゾン分解防止剤及び/又は染料としての化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用タイヤ及び技術的ゴム物品は、特にゴムなどの高分子材料を採用していることが公知である。
【0003】
長期にわたる保管の場合、並びに、特に、度々高温である目的用途では、天然ゴム及び合成ポリマー(IR、BR、SBR、ESBR等など)、さらに天然及び合成油、脂肪及び潤滑剤は、本来の所望の特性に悪影響を及ぼす酸化反応に供される。ポリマーの種類に応じて、ポリマー鎖は、材料が液化するまで、又は、材料のその後の硬化が生じるまで短くなってしまう。
【0004】
したがって、老化安定剤は、車両用タイヤ及び他の技術的ゴム物品の耐久性において決定的な役割を果たす。
【0005】
公知の老化安定剤は、芳香族アミン、例えば6-PPD(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)、IPPD(N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)又はSPPD(N-(1-フェニルエチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)である。
【0006】
これらの分子は、酸素若しくはオゾン、又は、アルキル、アルコキシ及びアルキルペルオキシラジカルなどの形成されるフリーラジカルと反応可能であり、これによりこれらを掃去し、したがって、ゴム等をさらなる酸化反応から保護するものである。
【0007】
しかしながら、この物質クラスの欠点は、それらが発癌性であると疑われることである。
【0008】
特にオゾンと反応してその掃去を達成する老化安定剤は、「オゾン分解防止剤」とも呼ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、特に車両用タイヤ又は他の工業用ゴム物品の老化安定剤として使用することができ、特に、それぞれのマトリクス、例えば特にポリマーへの十分な溶解性と相まって、潜在的な危険がより低い新規化合物を提供することである。これは、酸素及びオゾンからの最適な保護を継続し、健康への有害性を低減しながらブルーミングの傾向を防止することを意図している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1に記載の本発明の化合物により、化合物を含有する本発明のゴム混合物により、また、少なくとも1つの構成要素中に本発明のゴム混合物を含む本発明の車両用タイヤにより達成される。
【0011】
この目的は、化合物を老化安定剤及び/又はオゾン分解防止剤として使用することによってさらに達成される。
【0012】
請求項1に記載の化合物はさらに、染料として使用し得る。
【0013】
この目的は、本発明による化合物を製造するための本発明によるプロセスによってさらに達成される。
【0014】
請求項1において特許請求されるような化合物は、一般式I):
【化1】
[式中、Rは、
xi)芳香族基(ここで、芳香族基は、ハロゲン基、シアノ基、エステル基、ケトン基、エーテル基及びチオエーテル基からなる群から選択される置換基を任意選択的に有する)、
及びxii)線状、分岐状及び環状脂肪族C~C12基、並びにxiii)芳香族基と脂肪族C~C12基との組合せ
からなる群から選択され、
式中、基R及びRは、互いに独立して、同一であっても異なってもよく、1つ以上のハロゲン置換基を任意選択的に有する線状、分岐状及び環状の、飽和及び不飽和の、脂肪族C~C12基、1つ以上のハロゲン置換基を任意選択的に有するアリール基並びにハロゲン基(ここで、フッ素、臭素及び塩素が好ましい)、シアノ基、エステル基、ケトン基、エーテル基及びチオエーテル基からなる群から選択され、式中、nは、0又は1又は2又は3又は4の値をとり、式中、nが、2又は3又は4である場合、基Rは、互いに独立して、同一であるか又は異なり、
式中、mは、0又は1又は2又は3の値をとり、式中、mが、2又は3である場合、基Rは、互いに独立して、同一であるか又は異なる]
を有する。
【0015】
は、ベンジル並びに線状、分岐状及び環状脂肪族C~C12基からなる群から選択され、
式中、Rは、線状、分岐状及び環状脂肪族C~C12基並びにアリール基、シアノ基、ハロゲン基(ここで、フッ素、臭素及び塩素が好ましい)、エーテル基及びチオエーテル基からなる群から選択され、式中、nは、0又は1又は2又は3又は4の値をとり、nが、2又は3又は4である場合、基Rは、互いに独立して、同一であるか又は異なり、
式中、Rは、線状、分岐状及び環状脂肪族C~C12基、並びにアリール基、シアノ基、ハロゲン基(ここで、フッ素、臭素及び塩素が好ましい)、エーテル基及びチオエーテル基からなる群から選択され、
式中、mは、0又は1又は2又は3の値をとり、mが、2又は3である場合、基Rは、互いに独立して、同一であるか又は異なる
場合が好ましい。
【0016】
nが、それぞれのケースで0(ゼロ)又は1又は2又は3である場合、水素原子が、Rの代わりにベンゼン環の対応する炭素原子に結合していることは、当業者に明らかである。同様に、mが、0又は1又は2である場合、構造のベンゼン環における全ての残りの自由位置は、水素原子である。
【0017】
構造のそれぞれのベンゼン環への(R及び(R並びにRHNの結合の表現は、当然、ベンゼン環の炭素原子の四価性によって既に排除されるだろうように2つ以上が同じ位置に同時にないことを除いて、これらの基が、それぞれのベンゼン環上の任意の位置にそれぞれ配置され得ることを意味するとして理解されるべきであることは、当業者には同様に明らかである。
【0018】
本発明の文脈において、種類「C~C12ラジカル」の記載は、4~12個の炭素原子を有するラジカルを意味すると理解されるべきである。これとは無関係に、「C」は、カーン・インゴルド・プレローグ規則(CIP)による最も高度に酸化された炭素原子/最も優先順位の高い炭素原子の位置を記述するためにも使用される。それぞれの文脈において意味されることは当業者には明らかである。
【0019】
本発明による化合物は、アクリジノン誘導体であり、アニリンに基づく既知の老化安定剤(6-PPDの可能性のある切断生成物)と比較して低い潜在的な危険性を示す。基本構造アニリンとアクリジノンの安全性データシートを比較すると、アニリンとは異なり、アクリジノンは遺伝毒性も変異原性もないことが明らかになる。これは、特に車両用タイヤ又は他のゴム製品などの技術的用途において、ゴム成分を摩耗又は他の分解プロセスによって遊離させる可能性があるため、極めて重要な利点である。
【0020】
本発明による化合物はまた、6-PPDと比べて、特にポリマーに関して、酸化及びこうして老化からの改善された保護効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、とりわけ特許請求の範囲に反映されるすべての有利な実施形態を含む。本発明はまた、特に、本発明が「好ましい」として記載されるか、又は有利な実施形態の文脈で記載される第1の特徴と、例えば「特に好ましい」として記載されるさらなる特徴との組合せも含むように、これらの特徴に対する異なる優先度を有する異なる特徴の組合せから生じる実施形態を含む。
【0022】
基R及びRは、互いに独立して同一であるか又は異なり、1つ以上のハロゲン置換基を任意選択的に有する線状、分岐状及び環状の、飽和及び不飽和の、脂肪族C~C12基、1つ以上のハロゲン置換基を任意選択的に有するアリール基、並びにハロゲン基(ここで、フッ素、臭素及び塩素が好ましい)、シアノ基、エステル基、ケトン基、エーテル基及びチオエーテル基からなる群から選択される。
【0023】
列挙された基R及びRは、特に、好適な出発物質の選択によってそれぞれのベンゼン環/それの前駆体に既に結合していてもよい。
【0024】
nは0(ゼロ)である場合が好ましい。
【0025】
mは0(ゼロ)である場合が好ましい。
【0026】
ラジカルRは、
xi)芳香族ラジカルであって、ハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル及びチオエーテルラジカルからなる群から選択される置換基を有していてもよい芳香族ラジカル、
並びにxii)直鎖、分枝鎖及び環状の脂肪族C~C12ラジカル、特にC~C12ラジカル、並びにxiii)芳香族及び脂肪族C~C12ラジカルの組合せからなる群から選択される。
【0027】
サブグループxi)からの芳香族ラジカルは、例えば、好ましくはフェニルラジカルである。
【0028】
サブグループxi)の芳香族ラジカルは、置換基を有し得る。
【0029】
上述のように、これらは、ハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル及びチオエーテルラジカルからなる群から選択される。
【0030】
置換基が、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル及びチオエーテルラジカルからなる群から選択される場合が好ましい。
【0031】
好ましい実施形態では、芳香族ラジカルは、C原子に隣接する2個の炭素原子、すなわちN原子に結合した炭素原子で置換されていない。したがって、基本構造としてベンゼン環の場合、N原子に対するオルト位に置換基が存在しないことが好ましい。
【0032】
さらに好ましい実施形態では、サブグループxi)の芳香族ラジカルは置換されていない。
【0033】
が第3級炭素原子を介して窒素原子(N)と結合している場合が好ましい。したがって、C原子は、好ましくは第3級炭素原子である。
【0034】
本発明の文脈において、「第3級炭素原子」という用語は、ただ1つの水素原子に結合している炭素原子を意味すると理解されるべきである。
【0035】
これは、第2級炭素原子及び第4級炭素原子と比較して、ゴム混合物、特に車両用タイヤ及び他の工業用ゴム物品中の化合物の存在に起因して特に良好な保護効果をもたらし、特に老化安定化に関連する機構に関連して最適な反応性をもたらし、望ましくない副反応が回避される。
【0036】
サブグループxiii)の混合芳香族及び脂肪族ラジカルは、例えば好ましくは、合計7~18個の炭素原子を有するベンジルラジカル及び1-フェニルアルキルラジカルからなる群から選択され、特にベンジルラジカル及び1-フェニルエチルラジカルから選択され、1-フェニルアルキルラジカル、特に1-フェニルエチルは、第3級炭素原子について特に好ましい。
【0037】
さらなる有利な実施形態では、Rは、3~12個の炭素原子、好ましくは3~8個の炭素原子を有する分枝鎖又は環状アルキルラジカルであり、ここで、Rは、特に好ましくは、1,3-ジメチルブチルラジカル及びシクロヘキシルラジカルから選択され、ここで、Rは、極めて特に好ましくは、1,3-ジメチルブチルラジカルである。
【0038】
これにより、車両用タイヤ及び他の工業用ゴム物品のゴム混合物への特に良好な溶解性が達成される。
【0039】
好ましい実施形態では、化合物は、式II):
【化2】
の構造を有する。
【0040】
式II)の化合物は、実際に、特にポリマーにおいて、酸化、したがって老化に対する保護においてさらなる改善を達成することを可能にする。同時に、式II)の化合物は、上述のように、例えば6-PPD又はこの物質クラスの他の代表物よりも健康に対する有害性が著しく低い。
【0041】
したがって、6-PPDと比較して、式II)の化合物は、より良好であり、同時に健康に害が少なく、環境に優しい老化安定剤である。
【0042】
式I)、式II)、及び前述のすべての本発明の化合物は、特に、空気ばね、ベローズ、コンベヤベルト、ベルト、駆動ベルト、ホース、ゴムバンド、プロファイル、シール、メンブラン、医療用途若しくはロボット用触感センサー、又は、靴底若しくはその一部、並びに/又は、油及び/若しくは潤滑剤などの車両用タイヤ及び/又は技術的ゴム物品における老化安定剤及び/又はオゾン分解防止剤として特に好適である。
【0043】
したがって、本発明はさらに、特に空気ばね、ベローズ、コンベヤベルト、ベルト、駆動ベルト、ホース、ゴムバンド、異形材、シール、膜、医療用途若しくはロボット用途のための触覚センサー、又は靴底若しくはその一部、及び/又は油及び/又は潤滑剤などの、車両用タイヤ及び/又は工業用ゴム物品における老化安定剤及び/又はオゾン分解防止剤としての本発明による化合物の使用を提供する。
【0044】
列挙された物品又は物質において式I)、式II)の化合物及び前述のすべてを使用するために、前記化合物は組成物に使用され、前記組成物に組み込まれて使用される。
【0045】
車両用タイヤ又は他の工業用ゴム物品では、前記組成物は特にゴム混合物中にある。
【0046】
本発明はさらに、繊維及び/又はポリマー及び/又は紙及び/又は(装飾用)塗料及びコーティング中の染料としての式I)、式II)及び上記のすべての本発明の化合物の使用を提供する。
【0047】
本発明の更なる態様は、以下のプロセス工程:
a)式A)及びB)
【化3】
の化合物を提供する工程;
b)化合物A)及びB)を、塩基及び触媒の存在下で互いに反応させて式C):
【化4】
の化合物を得る工程;
c)式C)の化合物を、水素又は水素化試薬、特に水素化物、及びケトン又はアルデヒド(R=O)と反応させて、式D):
【化5】
の化合物を得る工程;
d)式D)の化合物を任意選択的に反応させて式E):
【化6】
の化合物を得る工程;
e)式D)又はE)の化合物を酸と反応させて式I):
【化7】
の化合物を得る工程
を含む式I)の化合物の製造方法である。
【0048】
前述の全ては、基R、R、及びR並びに指数m及びnに適用される。
【0049】
工程b)における塩基は、好ましくは、有機及び無機塩基から選択される。無機塩基は、好ましくは、炭酸カリウム、リン酸カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸セシウムからなる群から選択される。
【0050】
有機塩基は、好ましくは、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシドからなる群から選択される。
【0051】
工程b)における触媒は、好ましくは、特にヨウ化銅などの、「銅カップリング」を介して触媒する触媒である。
【0052】
銅カップリングは、好ましくは、塩基炭酸カリウムと併せて触媒として無機塩基、例えばヨウ化銅を用いる。
【0053】
触媒が、任意選択的に、一座又は多座配位子、特に一座又は多座ホスフィン配位子を含む、「パラジウムカップリング」に同様に言及される。好適な触媒には、特に及び例えば、トリフェニルホスフィン及びビナフチルホスフィン(BINAP)が含まれる。
【0054】
銅カップリングは、無機塩基か、又は有機塩基かのどちらかを用いることができる。
【0055】
「水素化試薬」は、水素化をもたらす化合物を意味すると理解されるべきである。そのような試薬は、当業者に知られているように、ヒドリド、特に金属ヒドリドを含む。
【0056】
適切な水素化物としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウムが挙げられる。
【0057】
本発明の文脈において、水素は、代替物として明示的に言及されているので、「水素化試薬」の下に追加的に列挙されない。それにもかかわらず、「水素化試薬」という用語は、その場で水素化を行う水素を形成するすべての試薬を包含することが理解されよう。
【0058】
工程c)における反応は、水素化触媒を使用して及び好ましくは50~70℃、特に例えば60℃の温度で、水素(H)及びケトン又はアルデヒド、好ましくはケトンで実施される場合が好ましい。
【0059】
反応混合物は、15~25bar、特に例えば20barの圧力での水素に供され、次いで好ましくは、1~20時間、好ましくは8~13時間、特に例えば10時間撹拌される。
【0060】
工程c)におけるケトンは、その後の基Rのケトン誘導体であり;アルデヒドの場合には、それは、したがってアルデヒド誘導体である。
【0061】
簡単さのために、基Rは、アルデヒド又はケトンとの反応後に窒素原子上に残る部分であるから、省略式R=Oがアルデヒド又はケトンに対して用いられる。
【0062】
ケトンメチルイソブチルケトンをここで用いることが好ましい。
【0063】
工程c)における水素との反応は、好ましくは、特にオートクレーブ又は別の圧力反応器中でなどの、比較的高い圧力に好適な容器中で実施される。
【0064】
工程c)における溶媒は、これが液体形態にある場合には、ケトン又はアルデヒドか、とりわけケトン又はアルデヒドが固体形態にある場合には、トルエン又ははキシレンなどの、不活性溶媒かのどちらかであり得る。後者の場合に、ケトン又はアルデヒドは、化学量論的量で反応体としてのみ用いられる。
【0065】
溶媒として液体形態の、ケトン又はアルデヒド、特に好ましくはケトンを用いることが好ましい。これは、トルエン又はキシレンなどの、追加の物質を避けることを可能にする。
【0066】
水素との反応が実施されるプロセス工程は、「水素化触媒」として本発明との関連で言及される好適な触媒を用いる場合が好ましい。
【0067】
水素化触媒は、特にパラジウム(Pd)又は白金(Pt)などの、貴金属触媒である場合が好ましい。貴金属は、炭素上のパラジウム(Pd/C)などの、炭素(C)上で用いられる場合が好ましい。
【0068】
さらに、ラネーニッケル又は銅クロマイトなどの、他の公知の触媒を用いることも可能である。
【0069】
塩基との反応は任意選択である。式D)の化合物はまた、式I)のターゲット化合物を得るために酸と直接反応させられ得る。
【0070】
用いられる酸は、特に及び好ましくは硫酸(HSO)である。
【0071】
しかしながら、工程d)による反応は、好ましくは最初に実施される。
【0072】
これは、式I)のターゲット化合物のより高い収率を達成することを可能にする。
【0073】
式E)の化合物を得るための式D)の化合物の反応は、エステル開裂であり、好ましくは、それに好適な試薬で、特に塩基、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)、又は酸、例えば濃塩酸(濃HCl)で行われる。
【0074】
工程d)における反応は、好ましくは、数時間還流下に加熱される。反応は、好ましくは、4~12時間、特に好ましくは6~10時間、例えば8時間(一晩)にわたって加熱され、その後冷却される。
【0075】
次いで、pHは、好ましくは氷冷しながら、6.8~7.2、特に7に調整される。
【0076】
これに、溶媒での抽出が続く。2-メチルテトラヒドロフラン(2-MTHF)を用いること、及び抽出を2回以上、特に3回行うことが好ましい。2-メチルテトラヒドロフラン(2-MTHF)の使用は、式E)の中間体の特に高い収率を達成する。
【0077】
工程d)が前に行われていた場合、式E)の化合物の反応は、酸で実施される。ここで用いられる酸は、例えば及び好ましくは、ポリリン酸(PPA)である。
【0078】
工程e)における反応は、120℃~140℃、例えば130℃の温度で実施される場合が好ましい。次いで、混合物は、好ましくは最初に50℃~70℃の温度に冷却され、未反応の酸は、水で加水分解される。次いで、混合物は、好ましくは室温にさらに冷却される。次いでpHは、6.8~7.2、特に7に調整される。これは、式I)のターゲット化合物の特に高い収率をもたらす。
【0079】
これに、溶媒での抽出が続く。2-メチルテトラヒドロフラン(2-MTHF)を用いること及び抽出を2回以上、特に2回行うことが好ましい。2-メチルテトラヒドロフラン(2-MTHF)の使用は、同様に、ターゲット化合物)の特に高い収率を達成する。
【0080】
本発明は、さらに、少なくとも以下のプロセス工程:
a1)式A1)
【化8】
[式中、前述が、基R、R並びに指数m及びnに適用され、Xは、ハロゲン、特にフッ素(F)、塩素(Cl)又は臭素(Br)である]
の化合物を提供する工程;
b1)式A1)の化合物を、塩基、特に炭酸カリウム(KCO)と反応させて、式B1):
【化9】
の化合物を得る工程;
c1)式B1)の化合物を、水素又は水素化試薬、特に水素化物、及びケトン又はアルデヒド(R=O)と反応させて、式I):
【化10】
の化合物を得る工程
を含む式I)の化合物の更なる製造方法を提供する。
【0081】
工程b1)における塩基は、好ましくは、炭酸カリウム(KCO)又はリン酸カリウム(KPO)などの、強塩基である。炭酸カリウム(KCO)を用いることが特に好ましい。
【0082】
工程b1)による反応は、好ましくは、特にジメチルホルムアミド(DMF)又はジメチルスルホキシド(DMSO)などの、極性溶媒中で実施される。ジメチルホルムアミド(DMF)が特に好ましくは用いられる。
【0083】
工程c1)における反応は、水素化触媒を使用して、及び好ましくは120~150℃、特に例えば140℃の温度で、水素及びケトン又はアルデヒド、好ましくはケトンで実施される。
【0084】
反応混合物は、35~45bar、特に例えば40barの圧力での水素に供され、次いで1~20時間、好ましくは8~13時間、特に例えば10時間好ましくは撹拌される場合が好ましい。
【0085】
工程c)におけるケトンは、次のラジカルRのケトン誘導体であり;アルデヒドの場合、したがってアルデヒド誘導体である。
【0086】
簡単にするために、ラジカルRはアルデヒド又はケトンとの反応後に窒素原子上に残る部分であるため、簡略化した式R=Oをアルデヒド又はケトンに使用する。
【0087】
ここでケトンメチルイソブチルケトンを用いることが好ましい。
【0088】
水素との反応が実施されるプロセス工程は、「水素化触媒」として本発明との関連で言及される好適な触媒を用いる場合が好ましい。
【0089】
水素化触媒は、特にパラジウム(Pd)又は白金(Pt)などの、貴金属触媒である場合が好ましい。貴金属は、炭素上のパラジウム(Pd/C)などの、炭素(C)上で用いられる場合が好ましい。
【0090】
さらに、ラネーニッケル又は銅クロマイトなどの、他の公知の触媒を用いることも可能である。
【0091】
工程c1)における溶媒は、これが液体形態である場合、ケトン若しくはアルデヒド、又は特にケトン若しくはアルデヒドが固体形態である場合、トルエン若しくはキシレンなどの不活性溶媒のいずれかであり得る。後者の場合、ケトン又はアルデヒドは、反応物質として化学量論量でのみ使用される。
【0092】
溶媒として、液体形態のケトン又はアルデヒド、特に好ましくはケトンを使用することが好ましい。これにより、トルエン又はキシレンなどの追加の物質を吐出することが可能になる。
【0093】
本発明による上記の方法の反応生成物は、特に、式I)の化合物を含む物質混合物であり、ここで、工程c1)又はe)に、好ましくは、例えばシリカゲル上の、例えばカラムクロマトグラフィーによる、精製が続く。
【0094】
上述のように、本発明はゴム混合物をさらに提供する。
【0095】
本発明によるゴム混合物は、式I)、特に式II)の化合物を含有する。本発明によるゴム混合物は、原則として、特に式I)、特に式II)の新規な本発明の化合物が低毒性で老化安定剤及び/又はオゾン分解防止剤として作用する任意のゴム混合物であり得る。
【0096】
本発明のゴム混合物は、少なくとも1つのゴムを含有する。
【0097】
本発明によるゴム混合物が、0.1~10phr、特に好ましくは0.1~7phr、非常に特に好ましくは1~6phrの式I)、特に式II)の化合物を含有する場合が好ましい。
【0098】
本書面において用いられている単位「phr」(ゴム100重量部当りの部)は、ゴム産業における混合物処方に係る量の従来の表示である。個々の物質の重量部の投与量は、本文書では、混合物中に存在するすべての高分子量(Mが20000g/molを超える)ゴムの総質量の100重量部に基づく。
【0099】
本発明の有利な実施形態において、本発明に係るゴム混合物は少なくとも1種のジエンゴムを含有する。
【0100】
したがって、ゴム混合物は、ジエンゴム、又は、2つ以上の異なるジエンゴムの混合物を含有し得る。
【0101】
ジエンゴムとは、ジエン及び/又はシクロアルケンを重合又は共重合させることによって形成され、そのために、主鎖又は側基のいずれかにC=C二重結合を有しているゴムである。
【0102】
ジエンゴムは、好ましくは、天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、エポキシ化ポリイソプレン(ENR)、ブタジエンゴム(BR)、ブタジエン-イソプレンゴム、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、スチレン-イソプレンゴム、分子量Mが20000g/molを超える液状ゴム、ハロブチルゴム、ポリノルボルネン、イソプレン-イソブチレンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、アクリレートゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ポリスルフィドゴム、エピクロルヒドリンゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンターポリマー、水添アクリロニトリルブタジエンゴム、及び水添スチレン-ブタジエンゴムからなる群から選択される。
【0103】
ニトリルゴム、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロブチルゴム及び/又はエチレン-プロピレン-ジエンゴムは、特に、技術的ゴム物品、例えばベルト、駆動ベルト及びホース並びに/又は靴底などの製造で使用される。充填材、可塑剤、加硫系及び添加剤の観点において特異的であるこれらのゴムについて当業者に公知である混合組成物が採用されることが好ましい。
【0104】
すべての実施形態の天然及び/又は合成ポリイソプレンは、cis-1,4-ポリイソプレン又は3,4-ポリイソプレンであり得る。しかしながら、90重量%を超えるcis-1,4比率を有するcis-1,4-ポリイソプレンを使用することが好ましい。第1に、このようなポリイソプレンは、チーグラーナッタ触媒を伴うか、又は、微細なリチウムアルキルを用いる溶液中における立体特異的重合により入手可能である。第2に、天然ゴム(NR)は、天然ゴム中のcis-1,4含有量が99重量%超である、このようなcis-1,4-ポリイソプレンである。
【0105】
1つ以上の天然ポリイソプレンと1種以上の合成ポリイソプレンとの混合物もさらに考慮される。
【0106】
本発明の文脈において、「天然ゴム」という用語は、ヘベア(Hevea)ゴムの木から、及び、「非ヘベア(non-Hevea)」供給源から入手され得る天然ゴムを意味すると理解されるべきである。非ヘベア(Hevea)供給源としては、例えば、グアユール低木、及び、例えばTKS(ロシアタンポポ(Taraxacum kok-saghyz);ロシアタンポポ)などのタンポポが挙げられる。
【0107】
本発明のゴム混合物がブタジエンゴム(すなわちBR、ポリブタジエン)を含有する場合、これは、当業者に公知の任意のタイプであってよい。これらは高-cis及び低-cisタイプと呼ばれるものを含み、ここで、90重量%以上のcis含有量を有するポリブタジエンは高-cisタイプと称され、90重量%未満のcis含有量を有するポリブタジエンは低-cisタイプと称される。低-cisポリブタジエンの一例は、20%~50重量%のcis含有量を有するLi-BR(リチウム触媒ブタジエンゴム)である。高-cis BRでは、ゴム混合物において特に良好な特性及び低ヒステリシスが達成される。
【0108】
採用されるポリブタジエンは、変性及び官能化で末端基-変性されていてもよく、及び/又は、ポリマー鎖に沿って官能基化されていてもよい。変性は、ヒドロキシル基及び/又はエトキシ基及び/又はエポキシ基及び/又はシロキサン基及び/又はアミノ基及び/又はアミノシロキサン及び/又はカルボキシル基及び/又はフタロシアニン基及び/又はシラン-スルフィド基による変性から選択され得る。しかしながら、官能化とも呼ばれる、当業者に公知のさらなる改変も有用である。金属原子がこのような官能化の構成成分であってもよい。
【0109】
ゴム混合物中に少なくとも1つのスチレン-ブタジエンゴム(スチレン-ブタジエンコポリマー)が存在する場合、これは、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)及び乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)から選択され得、少なくとも1つのSSBRと少なくとも1つのESBRとの混合物を採用することも可能である。「スチレン-ブタジエンゴム」及び「スチレン-ブタジエンコポリマー」という用語は、本発明の文脈において同義に用いられている。
【0110】
用いられるスチレン-ブタジエンコポリマーは、ポリブタジエンについて上記に言及されている変性及び官能化により、ポリマー鎖に沿って末端基-変性及び/又は官能基化されていてもよい。
【0111】
少なくとも1種のジエンゴムは、天然ポリイソプレン(NR、天然ゴム)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、ブチルゴム(IIR)及びハロブチルゴムからなる群から選択されることが好ましい。
【0112】
本発明の特に好ましい実施形態において、少なくとも1つのジエンゴムは、天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)及び乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)からなる群から選択される。
【0113】
本発明の特に有利な実施形態では、ゴム混合物は、少なくとも1つの天然ポリイソプレン(NR)及び/又は合成ポリイソプレン(IR)を、好ましくは50~100phrの量で含み、本発明の特に有利な一実施形態では、80~100phr、非常に特に好ましくは95~100phr、次いで好ましくは100phrの量で含む。このようなゴム混合物は、特に、良好な加工性及び復帰安定性と相まって、最適化された引裂特性及び摩耗特性を示す。
【0114】
ゴム混合物が100phr未満のNR及び/又はIRを含有する場合、ゴム混合物は、好ましくは、さらなるゴムとして、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)及び乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)からなる群から選択される少なくとも1つのジエンゴムを含有する。
【0115】
本発明のさらなる特定の有利な実施形態において、ゴム混合物は、少なくとも1種の天然ポリイソプレン(NR)を、好ましくは、5~55phrの量で、及び、本発明の特定の有利な一実施形態においては、5~25phr、極めて特に好ましくは5~20phrの量で含む。このようなゴム混合物は、特に良好な加工性及び加硫戻り安定性及び最適化された引裂き特性及び最適な転がり抵抗特徴を示す。
【0116】
本発明のさらなる特定の有利な実施形態において、ゴム混合物は、少なくとも1種のポリブタジエン(BR、ブタジエンゴム)を、好ましくは、10~80phr、特に好ましくは10~50phrの量、及び、本発明の特定の有利な実施形態においては、15~40phrの量で含む。これにより、本発明に係るゴム混合物の特に良好な引裂き及び摩耗特性、並びに、最適な制動特徴が達成される。
【0117】
本発明のさらなる特定の有利な実施形態において、ゴム混合物は、少なくとも1種の溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)を、好ましくは、10~80phr、特に好ましくは30~80phrの量、及び、本発明の特定の有利な一実施形態においては、50~70phrの量で含む。これにより、本発明に係るゴム混合物の特に良好な転がり抵抗特性が達成される。本発明の特に有利な実施形態において、SSBRは、最適で、且つ、バランスのとれた特性プロファイルを達成するために、少なくとも1種のさらなるゴムとの組合せで採用される。
【0118】
ゴム混合物が、少なくとも1種の充填材を、好ましくは、30~500phr、特に好ましくは50~400phrの量、次いで、好ましくは80~300phrの量で含有する場合が好ましい。
【0119】
本発明の有利な実施形態において、充填材は、カーボンブラック及び二酸化ケイ素からなる群から選択されることが好ましい補強用充填材である。
【0120】
好適なカーボンブラックは、当業者に知られているいずれかのカーボンブラックタイプを含む。カーボンブラックが工業用カーボンブラック及び熱分解カーボンブラックから選択される場合が好ましく、工業用カーボンブラックがより好ましい。
【0121】
カーボンブラックは、30~250g/kg、好ましくは30~180g/kg、特に好ましくは40~180g/kg、及び、さらに特に好ましくは40~130g/kgのヨウ素吸着量としても知られているASTM D1510に準拠したヨウ素価、並びに、30~200ml/100g、好ましくは70~200ml/100g、特に好ましくは90~200ml/100gのASTM D2414に準拠したDBP値を有する場合が好ましい。
【0122】
ASTM D2414に準拠したDBP値は、カーボンブラック又は淡色の充填材の、フタル酸ジブチルに係る特定の吸収体積を判定する。
【0123】
特に車両用タイヤのための、ゴム混合物中におけるこのような種類のカーボンブラックの使用により、耐摩耗性と蓄熱との間における最適な妥協が保証され、これは、次いで、生態学的に関連する転がり抵抗に影響する。
【0124】
特に適切で好ましいカーボンブラックは、80~110g/kgのヨウ素吸着数及び100~130ml/100gのDBP数を有するもの、例えば特にタイプN 339のカーボンブラックである。
【0125】
二酸化ケイ素は、好ましくは非晶質二酸化ケイ素、例えば沈降二酸化ケイ素とも呼ばれる沈降シリカである。しかしながら、例えば発熱性二酸化ケイ素を使用することも代替的に可能である。
【0126】
しかしながら、35~400m2/g、好ましくは35~350m2/g、より好ましくは85~320m2/g、最も好ましくは120~235m2/gの窒素表面積(BET表面積)(DIN ISO 9277及びDIN 66132による)及び30~400m2/g、好ましくは30~330m2/g、より好ましくは80~300m2/g、最も好ましくは115~200m2/gのCTAB表面積(ASTM D 3765による)を有する微粉砕された沈降シリカを使用することが特に好ましい。このようなシリカは、例えばタイヤトレッド用のゴム混合物において、加硫ゴムの特に良好な物理特性をもたらす。混合時間の短縮による混合物の加工における利点もまた、同一の生成物特性を保持しながらもたらされることが可能であり、向上した生産性がもたらされる。用いられるシリカはそれ故、例えば、Evonik製のUltrasil(登録商標)VN3タイプ(商品名)、又は、HDシリカとして知られる高分散シリカ(例えば、Solvay製のZeosil(登録商標)1165MP)であり得る。
【0127】
本発明の特に有利な実施形態において、ゴム混合物は、充填材として、少なくとも1種のシリカを、好ましくは、30~500phr、特に好ましくは50~400phrの量、次いで、好ましくは80~300phrの量で含有する。
【0128】
これらの量では、シリカは特に、単独又は主充填材(充填材総量に基づいて50重量%超)として存在する。
【0129】
本発明のさらなる有利な実施形態において、ゴム混合物は、少なくとも1種のシリカを、さらなる充填材として、好ましくは、5~100phr、特に好ましくは5~80phr、次いで、好ましくは10~60phrの量で含有する。
【0130】
これらの量では、シリカは特に、特にカーボンブラックなどの他の主充填材に追加して、さらなる充填材として存在する。
【0131】
「ケイ酸」及び「シリカ」という用語は、本発明の文脈において同義に用いられている。
【0132】
本発明の特に有利な実施形態において、本発明に係るゴム混合物は、0.1~60phr、好ましくは3~40phr、特に好ましくは5~30phr、極めて特に好ましくは5~15phrの少なくとも1種のカーボンブラックを含有する。これらの量では、カーボンブラックは特に、特にシリカなどの主充填材に追加して、さらなる充填材として存在する。
【0133】
本発明のさらなる有利な実施形態において、本発明に係るゴム混合物は、30~300phr、好ましくは30~200phr、特に好ましくは40~100phrの少なくとも1種のカーボンブラックを含有する。これらの量では、カーボンブラックは、単独又は主充填材として存在しており、任意選択的に、上記の下限側の量でシリカと組合せで存在している。
【0134】
本発明の特定の有利な実施形態において、ゴム混合物は、5~60phr、特に好ましくは5~40phrの少なくとも1種のカーボンブラック、及び、50~300phr、好ましくは80~200phrの少なくとも1種のシリカを含有する。
【0135】
ゴム混合物は、補強性又は非補強性のさらなる充填材をさらに含有してもよい。
【0136】
本発明の文脈において、さらなる(非補強用)充填材としては、アルミノケイ酸塩、カオリン、チョーク、デンプン、酸化マグネシウム、二酸化チタン、又はゴムゲル及び繊維(例えばアラミド繊維、ガラスファイバー、炭素繊維、セルロース繊維)が挙げられる。
【0137】
さらに任意選択的に補強充填材は、例えば、離散CNT、いわゆる中空炭素繊維(HCF)並びにヒドロキシル、カルボキシル及びカルボニル基などの1つ以上の官能基を含有する改質CNTを含む、カーボンナノチューブ(CNT)、黒鉛及びグラフェン、並びにいわゆる「カーボンシリカ二重相充填材」である。
【0138】
本発明に関連して、酸化亜鉛は、充填材中に含まれない。
【0139】
ゴム混合物はさらに、慣習的な添加剤を慣習的な重量部で含有可能であり、これらは、好ましくは、前記混合物の生成最中における少なくとも1つの一次混合ステージにおいて添加される。これらの添加剤としては以下を含む:
a)従来技術で知られている老化安定剤、
例えば、p-フェニレンジアミン、例えば、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)、N-(1-フェニルエチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(SPPD)、N,N’-ジトリル-p-フェニレンジアミン(DTPD)、N-(1,4-ジメチルペンチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(7PPD)、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)、
又はジヒドロキノリン、例えば2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)、
b)例えば酸化亜鉛及び脂肪酸(例えばステアリン酸)といった活性化剤、並びに/又は、例えば亜鉛エチルヘキサノエートといった亜鉛錯体などの他の活性化剤、
c)充填材、特にカーボンブラック又はシリカを結合するための活性化剤及び/又は薬剤、例えばS-(3-アミノプロピル)チオ硫酸及び/又はその金属塩(カーボンブラックの結合)及びシランカップリング剤(シリカの結合)、
d)オゾン分解防止剤ワックス、
e)樹脂、とりわけ粘着性付与樹脂、
f)例えば2,2’-ジベンズアミドジフェニルジスルフィド(DBD)といった素練り助剤、並びに
g)特に脂肪酸エステル及び金属セッケン、例えば亜鉛セッケン及び/又はカルシウムセッケンなどの加工助剤、
h)可塑剤、例えば特に芳香族、ナフテン系又はパラフィン系鉱油可塑剤、例えば方法IP 346に従って3重量%未満の多環式芳香族化合物の含有量を好ましくは有するMES(軽度抽出溶媒和物)、若しくはRAE(残留芳香族抽出物)、若しくはTDAE(処理留出物芳香族抽出物)又はゴム液化(RTL)油若しくはバイオマス液化(BTL)油、或いはトリグリセリド、例えばナタネ油又はファクチス又は炭化水素樹脂又は平均分子量(BS ISO 11344:2004に準拠してGPC=ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定)が500~20000g/molである液体ポリマー。
【0140】
鉱油を使用する場合、これは、好ましくは、DAE(留出物芳香族抽出物)、RAE(残留芳香族抽出物)、TDAE(処理留出物芳香族抽出物)、MES(軽度抽出溶媒和物)、及びナフテン系油からなる群から選択される。
【0141】
特に有利な実施形態では、本発明によるゴム混合物は、式I)、特に式II)の本発明の化合物に加えて、p-フェニレンジアミンの群からの老化安定剤、特にa)で上に列挙したものを含有しない。特に好ましい実施形態では、本発明によるゴム混合物は、特に、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N-(1-フェニルエチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(SPPD)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’-ジトリル-p-フェニレンジアミン(DTPD)、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)、N-(1,4-ジメチルペンチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(7PPD)を含有する、好ましくはこれらからなる群から選択される、p-フェニレンジアミンに基づく0~0.1phr、特に0phrのさらなる老化安定剤を含有する。
【0142】
本発明に従って存在する、好ましくは非常に少量の0~0.1phr、特に好ましくは0phrのp-フェニレンジアミン、並びに式I)、特に式II)の化合物は、より低い毒性で同等の保護効果を達成することを可能にする。式I)、特に式II)の本発明の化合物は、先行技術において公知の列挙されたp-フェニレンジアミンに取って代わる。
【0143】
本発明のさらなる有利な実施形態では、列挙されたp-フェニレンジアミン老化安定剤の少なくとも1つのさらなる代表物が存在するため、本発明による化合物は、従来技術で知られているp-フェニレンジアミンを部分的にのみ置き換える。これはまた、最適な程度に至らないだけで、本発明に係る利点を達成する。
【0144】
有利な実施形態において、TMQなどのジヒドロキノリン系の老化安定剤が、本発明の式I)の化合物に追加してゴム混合物に存在する。特にTMQなどの、存在するジヒドロキノリンの量は、好ましくは0.1~3、特に0.5~1.5phrである。
【0145】
オゾン分解防止剤ワックス(上記の群d)は別々に考慮され、本発明の好ましい実施形態では、追加の老化安定剤a)が存在するかどうかにかかわらず、ゴム混合物中に存在する。
【0146】
シランカップリング剤は、当業者に公知である任意の種類のものである。
【0147】
さらに、1つ以上の異なるシランカップリング剤を互いに組み合わせて使用し得る。そのため、ゴム混合物は異なるシランの混合物を含有し得る。
【0148】
シランカップリング剤は、ゴムへの充填材の添加前であってもゴム/ゴム混合物の混合中(in situ)又は前処理(予備改質)の状況で、二酸化ケイ素、特にシリカの表面シラノール基又は他の極性基と反応する。
【0149】
従来技術から知られているカップリング剤は、ケイ素原子上の脱離基として少なくとも1つのアルコキシ、シクロアルコキシ又はフェノキシ基を有すると共に、おそらくは開裂後に、ポリマーの二重結合との化学反応に進行可能である他の官能基を有する二官能性オルガノシランである。後者における基は、例えば以下の化学基を含み得る:
-SCN、-SH、-NH又は-S-(ここで、x=2~8)。
【0150】
採用可能なシランカップリング剤としては、それ故、例えば、2~8個の硫黄原子を有する、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-チオシアナトプロピルトリメトキシシラン又は3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、例えば3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(TESPT)、対応するジスルフィド(TESPD)、又は、1~8個の硫黄原子を有するスルフィドと内容の異なる種々のスルフィドとの他の混合物が挙げられる。TESPTはまた、例えば産業用カーボンブラックとの混合物として添加され得る(商品名X50S(登録商標)、Evonik製)。
【0151】
例えば、国際公開第99/09036号パンフレットから公知であるようなブロック化メルカプトシランもシランカップリング剤として使用され得る。国際公開第2008/083241A1号パンフレット、国際公開第2008/083242A1号パンフレット、国際公開第2008/083243A1号パンフレット、及び国際公開第2008/083244A1号パンフレットに記載のシランを用いることも可能である。使用可能なシランには、例えば、特に3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシランなど、NXTの名称で多数のバリアントで米国Momentiveによって販売されているもの、又はVP Si 363(登録商標)の名称でEvonik Industriesによって販売されているものが含まれる。
【0152】
さらなる添加剤の合計割合は、好ましくは、3~150phr、より好ましくは3~100phr、最も好ましくは5~80phrである。
【0153】
酸化亜鉛(ZnO)は、上述の量でのさらなる添加剤の全体割合の中に含まれ得る。
【0154】
これは、当業者に公知であるいずれかの種類の酸化亜鉛、例えばZnO顆粒又は粉末であり得る。従来使用されている酸化亜鉛は、通常、BET比表面積が10m2/g未満である。しかしながら、10~100m2/gのBET表面積を有する酸化亜鉛、例えばいわゆる「ナノ酸化亜鉛」を使用することも可能である。
【0155】
本発明のゴム混合物は、好ましくは加硫形態で、特に車両用タイヤ又は他の加硫された工業用ゴム物品に使用される。
【0156】
「加硫」及び「架橋」という用語は、本発明の文脈において同義に用いられている。
【0157】
本発明のゴム混合物の加硫は、好ましくは、加硫促進剤の補助を伴って、硫黄及び/又は硫黄ドナーの存在下に実施され、いくつかの加硫促進剤は同時に硫黄ドナーとして作用することが可能である。加硫促進剤は、チアゾール加硫促進剤、メルカプト加硫促進、スルフェンアミド加硫促進剤、チオカルバメート加硫促進剤、チウラム加硫促進剤、チオホスフェート加硫促進剤、チオウレア加硫促進剤、キサントゲネート加硫促進剤並びにグアニジン加硫促進剤からなる群から選択される。
【0158】
N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド(DCBS)、ベンゾチアジル-2-スルフェンモルホリド(MBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)、及びジフェニルグアニジン(DPG)などのグアニジン促進剤から選択されるスルフェンアミド促進剤を使用することが好ましい。
【0159】
用いられる硫黄ドナー物質は、当業者に公知であるいずれかの硫黄ドナー物質であり得る。
【0160】
加硫遅延剤がゴム混合物中に存在していてもよい。
【0161】
他の場合、本発明によるゴム混合物の製造は、好ましくは、加硫系(例えば、硫黄及び加硫影響物質)を除くすべての成分を含む一次混合物を1つ以上の混合段階で最初に製造することを含む、ゴム産業において通例のプロセスによって行われる。最終混合物は、最終混合ステージにおいて加硫系を添加することにより生成される。
【0162】
最終混合物は、例えばさらに加工され、及び、押出し成形操作又はカレンダ加工によって適切な形状とされる。
【0163】
本発明によるゴム混合物は、車両用タイヤ、特に空気式車両用タイヤにおける使用に特に好適である。原則として、すべてのタイヤ構成要素、特に外側構成要素、特に好ましくはフランジプロファイル、トレッド及び/又はサイドウォールでの使用が考えられる。キャップ/ベース構造を有するトレッドの場合、本発明によるゴム混合物は、少なくともキャップ内で使用されることが好ましい。
【0164】
車両用タイヤに使用するために、加硫前の完成混合物としての混合物は、好ましくは外側構成要素の対応する形状にされ、グリーン車両用タイヤの製造中に既知の方法で適用される。
【0165】
車両用タイヤにおける任意の他の物体混合物として使用するための本発明によるゴム混合物の製造は、上述のように実施される。混合物の押出し成形操作/カレンダ加工後の成形に違いが存在する。このように得られた、1つ以上の異なる本体混合物用のまだ加硫されていないゴム混合物の形状が、次いで、グリーンタイヤの製造に供される。
【0166】
ここで、「本体混合物」とは、基本的にスキージ、内側ライナ(内側層)、コアプロファイル、ベルト、ショルダー、ベルトプロファイル、カーカス、ビード補強、ビードプロファイル、フランジプロファイル及びバンデージなどのタイヤの内側構成要素のためのゴム混合物を指す。
【0167】
まだ加硫されていないグリーンタイヤがその後加硫される。
【0168】
駆動ベルト及び他のベルト、特にコンベヤベルトにおける本発明のゴム混合物の使用のために、押し出しされた、まだ加硫されていない混合物が適切な形状とされ、度々、同時に、又は、その後、補強部材、例えば合成繊維又はスチールコードが設けられる。これにより、通常、ゴム混合物の1つ及び/又はそれ以上のプライ、同等及び/又は異なる補強部材の1つ及び/又はそれ以上のプライ、並びに、同一及び/又は他のゴム混合物の1つ及び/又はそれ以上のさらなるプライからなるマルチプライ構造が得られる。
【0169】
本発明はさらに、少なくとも1つの構成要素中に本発明に係る化合物を含有する本発明に係るゴム混合物を含む車両用タイヤを提供する。
【0170】
少なくとも1つの構成要素中の加硫車両用タイヤは、本発明の少なくとも1つのゴム混合物の加硫物を含む。存在する大部分の物質、例えばゴムは、混合後に既に存在するか、又は加硫後にのみ化学修飾形態で存在し得ることが当業者に知られている。
【0171】
本発明の文脈において、「車両用タイヤ」は、産業用タイヤ、並びに、建設現場用車両、トラック、車及び二輪車両用タイヤを含む、空気式車両用タイヤ及び固体ゴムタイヤを意味するものとして理解されるべきである。
【0172】
本発明に係る車両用タイヤが少なくとも1つの外部構成要素中に本発明に係るゴム混合物を含み、ここで、外部構成要素は、好ましくは、トレッド、サイドウォール及び/又はフランジプロファイルである場合が好ましい。
【0173】
したがって、本発明による車両用タイヤは、式I)、特に式II)の本発明の化合物を含む本発明によるゴム混合物を、複数の構成要素中に、任意選択的に適合組成物中に含んでもよい。
【実施例
【0174】
以下に、実施例を参照して、ここで本発明をより具体的に明確にする。
【0175】
式I)の化合物の好ましい実施形態としての式II)の化合物を、第1の合成ルートに従って次の通り製造した:
スキームXI)による2-(p-フェニレンジアミン)-メチルベンゾエート-の合成:
【化11】
【0176】
2つの出発物質は市販されている。
【0177】
20mLの乾燥ジメチルスルホキシド(DMSO)中に、1.6g(14.5mmol、2.0eq)のp-フェニレンジアミン及び1.9gの2-ヨードメチルベンゾエート(7.24mmol、1.0eq)を、最初に装入した。1.00gの炭酸カリウム(KCO)(7.24mmol、1.0eq)及び0.14gのヨウ化銅(CuI)(0.72mmol、0.1eq)の添加後に、混合物を80℃で一晩撹拌した。反応の終了後に、溶媒を蒸留除去し、残留物を酢酸エチルと5重量%水性アンモニアとの混合物に取り上げた。硫酸ナトリウムで乾燥する前に、有機相を、5%アンモニア溶液、水及び飽和塩化ナトリウム溶液で再び抽出した。無機塩を濾過によって分離し、溶媒を真空下で除去した。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン(DCM)/メタノール(MeOH)95:5)によって精製した。オレンジ色油;収量 1.6g(理論の91%)。
H-NMR(核磁気共鳴)(500MHz,DMSO-d6)δ=9.00(s,1H),7.83(dd,J=8.6,1.7Hz,1H),7.29(ddd,J=8.6,7.0,1.7Hz,1H),6.91(d,J=8.5Hz,2H),6.79(dd,J=8.6,1.1Hz,1H),6.67-6.56(m,3H),5.07(s,2H),3.84(s,3H).
13C-NMR(126MHz,DMSO-d6)δ=168.7,150.4,146.9,134.9,128.4,126.6,116.0,115.1,113.4,110.0,52.2.
【0178】
スキームXII)による2-(N-(4-メチルペンタン-2-イル)-N-p-フェニレンジアミン)-メチルベンゾエートの合成:
【化12】
【0179】
6.80g(28.1mmol、1eq)の2-(p-フェニレンジアミン)-メチルベンゾエート、1.18gの炭素上のパラジウム(Pd/C)(5%)(4.67mmolの基質に関して0.2g)及び50.0mLのメチルイソブチルケトン(MIBK)を、Teflonライナを備えたステンレス鋼オートクレーブ中へ量り入れた。反応混合物をその後、20barの圧力での水素(H)に供し、60℃で10時間撹拌した。反応の終了時に、過剰の水素を放出し、懸濁液をCelite(登録商標)に通して濾過し、エタノールで洗浄した。濾液を蒸発乾固し、真空下で乾燥させた。残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/EE(酢酸エチル)95:5)によって精製した。オレンジ色油が得られた;収量 8.20g(理論の89%)。
H NMR(500MHz,DMSO-d)δ=9.01(s,1H),7.83(dd,J=8.1,1.7Hz,1H),7.30(ddd,J=8.7,7.0,1.7Hz,1H),6.95(d,J=8.7Hz,2H),6.81(dd,J=8.6,1.1Hz,1H),6.66-6.56(m,3H),5.32(d,J=8.6Hz,1H),3.84(s,3H),3.44(dq,J=8.6,6.7Hz,1H),1.74(dt,J=13.4,6.7Hz,1H),1.46(dt,J=14.0,7.1Hz,1H),1.27-1.16(m,1H),1.09(d,J=6.2Hz,3H),0.92(d,J=6.6Hz,3H),0.88(d,J=6.6Hz,3H).
13C-NMR(126MHz,DMSO-d6)δ=168.7,150.4,146.6,134.9,131.6,127.7,126.8,116.0,113.4,113.3,109.9,52.2,46.4,46.0,25.00,23.2,23.1,21.2.
ES-IMS(エレクトロスプレーイオン化質量分析法)[M+H]=327.
【0180】
スキームXII)による2-(N-(4-メチルペンタン-2-イル)-N-p-フェニレンジアミン)-安息香酸の合成:
【化13】
【0181】
40mLの脱気したジオキサン及び50mLの脱気した水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム、NaOH)(2モル濃度)中の3.90gの2-(N-(4-メチルペンタン-2-イル)-N-p-フェニレンジアミン)-メチルベンゾエート(12.0mmol、1eq)を、還流下で一晩加熱した。反応物が室温(RT)に達したらすぐに、pHを、氷冷しながらpH7に調整した。混合物を2-メチルテトラヒドロフラン(2-MTHF)で3回抽出し、合わせた有機相を、水及び飽和塩化ナトリウム溶液で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。暗緑色固体が得られた;収量 3.70g(理論の99%)。
H-NMR(500MHz,DMSO-d)δ=10.91(br s,1H),7.85(dd,J=7.7,1.8Hz,1H),7.04(ddd,J=8.6,7.0,1.8Hz,1H),6.89(d,J=8.7Hz,2H),6.81(dd,J=8.3,1.1Hz,1H),6.55(d,J=8.7Hz,2H),6.48(ddd,J=8.0,7.1,1.2Hz,1H),5.05(br s,1H),3.41(q,J=6.5Hz,1H),1.74(dt,J=13.5,6.7Hz,1H),1.45(dt,J=13.4,7.1Hz,1H),1.21(dt,J=13.5,6.9Hz,1H),1.08(d,J=6.1Hz,3H),0.92(d,J=6.7Hz,3H),0.88(d,J=6.5Hz,3H).
13C-NMR(126MHz,DMSO)δ=172.1,148.8,144.9,132.4,130.9,130.8,124.4,115.0,113.5,111.9,46.5,46.2,25.0,23.2,23.1,21.2.
ESI-MS [M+H]=313.
【0182】
スキームXIV)による2-(1,3-ジメチルブチルアミノ)-アクリジン-9(10H)-オン(式II)の化合物)の合成:
【化14】
【0183】
7.80gの2-(N-(4-メチルペンタン-2-イル)-N-p-フェニレンジアミン)-安息香酸(25.0mmol、1eq)を、130℃で16時間、40mLのポリリン酸(PPA)中で撹拌した。反応物が60℃になったらすぐに、PPAを水添加によってゆっくり加水分解した。次いで、溶液をRTに冷却し、pHを7に調整した。混合物を2-MTHFで3回抽出し、合わせた有機相を、水及び飽和塩化ナトリウム溶液で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。無機塩を濾過によって除去し、溶媒を真空下で除去した。次いで、残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/EE+1%トリエチルアミン(TEA)又はシクロヘキサン/テトラヒドロフラン(THF)+1%TEA)によって精製した。黄色~青銅色の固体が得られた;収量 5.30g(理論の72%)。
H-NMR(500MHz,DMSO-d)δ=11.47(s,1H),8.19(dd,J=8.2,1.5Hz,1H),7.62(ddd,J=8.4,6.8,1.6Hz,1H),7.47(d,J=8.4Hz,1H),7.37(d,J=8.8Hz,1H),7.24-7.09(m,3H),5.48(d,J=8.3Hz,1H),3.51(dq,J=7.8,6.3Hz,1H),1.77(dt,J=13.4,6.7Hz,1H),1.51(dt,J=13.9,7.1Hz,1H),1.26(dt,J=13.6,6.8Hz,1H),1.14(d,J=6.2Hz,3H),0.95(d,J=6.6Hz,3H),0.89(d,J=6.6Hz,3H).
13C-NMR(126MHz,DMSO)δ=176.4,143.7,140.5,133.2,132.7,126.4,123.8,122.3,120.3,119.8,118.8,117.6,102.9,46.3,46.2,25.0,23.2,23.1,20.9.
ESI-MS [M+H]=295.
【0184】
スキームXVによる2-(N-(4-メチルペンタン-2-イル)-N-p-フェニレンジアミン)-メチルベンゾエートからの2-(1,3-ジメチルブチルアミノ)-アクリジン-9(10H)-オン(式II)の化合物)の代替合成:
【化15】
【0185】
4.70gの2-(N-(4-メチルペンタン-2-イル)-N-p-フェニレンジアミン)-メチルベンゾエート(2.14mmol、1eq)を、40mLの硫酸(HSO)(13.5M)に溶解させ、115℃で16時間撹拌した、反応物がRTに達したらすぐに、pHを、氷冷しながらpH7に調整した。混合物を2-MTHFで3回抽出し、合わせた有機相を、水及び飽和塩化ナトリウム溶液で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。無機塩を濾過によって除去し、溶媒を真空下で除去した。次いで、残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/EE+1%TEA)又はシクロヘキサン/THF+1%TEA)によって精製した。黄色~青銅色の固体が得られた;収量 2.90g(理論の69%)。
H-NMR(500MHz,DMSO-d)δ=11.47(s,1H),8.19(dd,J=8.2,1.5Hz,1H),7.62(ddd,J=8.4,6.8,1.6Hz,1H),7.47(d,J=8.4Hz,1H),7.37(d,J=8.8Hz,1H),7.24-7.09(m,3H),5.48(d,J=8.3Hz,1H),3.51(dq,J=7.8,6.3Hz,1H),1.77(dt,J=13.4,6.7Hz,1H),1.51(dt,J=13.9,7.1Hz,1H),1.26(dt,J=13.6,6.8Hz,1H),1.14(d,J=6.2Hz,3H),0.95(d,J=6.6Hz,3H),0.89(d,J=6.6Hz,3H).
13C-NMR(126MHz,DMSO)δ=176.4,143.7,140.5,133.2,132.7,126.4,123.8,122.3,120.3,119.8,118.8,117.6,102.9,46.3,46.2,25.0,23.2,23.1,20.9.
ESI-MS [M+H]=295.
【0186】
更なる合成ルートに従って、式II)の化合物を次の通り合成した:
【0187】
最初に、2-ニトロアクリジン-9(10H)-オンを、スキームYI):
【化16】
(ここで、KCOは炭酸カリウムを表し、DMFはジメチルホルムアミドを表す)
に示されるようにR.Freyer J.Chem.1963,4979-5004に従って合成した。
【0188】
これを、スキームYII):
【化17】
に従って2-(1,3-ジメチルブチルアミノ)-アクリジン-9(10H)-オン(式IIの化合物)の合成に使用した。
【0189】
0.55g(2.62mmol、1eq)の2-ニトロアクリジン-9(10H)-オン、0.23gの白金(5%)(4.67mmolの基質に関して0.4g)及び20.0mLのメチルイソブチルケトンを、Teflonライナを備えたステンレス鋼オートクレーブ中へ量り入れた。反応混合物をその後、40barの圧力での水素に供し、140℃で10時間撹拌した。反応の終了時に、過剰の水素を放出し、懸濁液をCelite(登録商標)に通して濾過し、エタノールで洗浄した。濾液を蒸発乾固し、真空下で乾燥させた。残留物をLC-MSによって分析した。結果を表1に示す。
【0190】
物質を、シリカゲル上でカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル 10:1→1:1)によって精製し得る。淡黄色固体。
【0191】
【表1】
【0192】
酸化誘導時間(OIT)の測定
式II)の化合物を、酸化誘導時間の測定によって老化安定剤としてのその潜在的保護効果に関して実験室条件下で研究した。
【0193】
この目的のために、式II)の化合物並びに6-PPDを、それぞれの場合においてポリマー(液状合成ポリイソプレン(IR)、LIR-50、Kuraray、重量平均分子量分布M=54000g/mol、ガラス転移温度T=-63℃)と共に、酸化の開始まで一定温度(180℃)で加熱した(開始温度35℃、20K/分(ケルビン/分)の加熱速度で170℃まで加熱し、1K/分の加熱速度で180℃まで加熱;パージガス:窒素(N)、体積流量50ml/分)。
【0194】
試験片をN雰囲気下、180℃で等温維持し、次いで、雰囲気をO雰囲気に切り替えた(体積流量50ml/分)。
【0195】
DSC(示差走査熱量測定)を使用してピークを介して酸化を決定した。
【0196】
酸化までの時間(分)を測定した。
【0197】
既知の老化安定剤6-PPDと比較した結果を表2に要約する。
【0198】
【表2】
【0199】
±(プラス/マイナス)10分の計測精度考慮に入れて、式II)の化合物は、ポリマーが酸素によって分解させられるのにより長時間を要するので、著しくより良好な保護効果を実際に達成することが明らかである。式I)/式II)の本発明の化合物は、したがって、上述のような6-PPD/物質クラスの更なる代表的なものよりも環境にやさしく、且つ健康に有害ではなく、並びにまたより良好な老化安定剤である。
【0200】
車両用タイヤ用のゴム混合物に使用するために、式I)、例えば式II)の本発明の化合物は、例えば6PPD、7PPD又はIPPDなどの従来技術で知られている老化安定剤の代わりに、当業者に公知の方法で、ゴム混合物の製造中の混合ステージの1つで添加される。
【0201】
したがって、式II)の化合物を、表3に示すように、本発明による例示的なゴム混合物に組み込んだ。得られた本発明の実施例は、E1とラベル付けされている。
【0202】
比較として役立つのは、老化安定剤として式II)の化合物の代わりに6PPDを含有し、残りの組成は同一であるゴム混合物V1である。表3の量は、phrの単位で表される。
【0203】
混合物は、300ミリリットル~3リットルの体積を有する実験室用ミキサー内で、3段階の標準条件下でゴム産業において慣例のプロセスに従って製造され、最初に第1の混合段階(予備混合段階)において、加硫系以外(硫黄及び加硫影響物質)のすべての構成要素を145℃~165℃、目標温度152℃~157℃で200~600秒間混合した。第2の段階では、第1の段階からの混合物を再度混合した。第3の段階(最終混合段階)において、加硫系を添加すると、最終混合物が得られ、混合は、90℃~120℃で180~300秒かけて実施した。
【0204】
試験片は、160℃~170℃の圧力下で、t95~t100(ASTM D 5289-12/ISO 6502に従って移動型ダイレオメータを使用して測定)後に加硫することによってすべての混合物から製造した。
【0205】
また、V1とE1の両方の試験片の一部を老化させた(空気中で70℃、28日間)。
【0206】
すべての試験片について、ゴム産業に典型的な以下の材料特性を決定した:
・ ISO 4662又はASTM D 1054による室温(RT)での反発弾性
・ DIN 53 504による室温(RT)での破断伸び
【0207】
V1及びE1について、それぞれのケースで未老化サンプルと老化サンプルの値の差を決定した。
【0208】
V1について得られた値は、各場合において、参照のために100%に正規化された。
【0209】
E1について得られた値(未老化と老化との間の差)は、このそれぞれのV1基準に対して性能%として報告され、100%を超える値が有利である。
【0210】
表3から明らかなように、式I)の化合物の代表としての式II)の本発明の化合物は、破断伸び及び反発弾性などの重要な特性がそれぞれの場合において老化後のV1よりもE1の方が高いレベルであることから、改善された老化安定化をもたらす。
【0211】
【表3】
【手続補正書】
【提出日】2024-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0211
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0211】
【表3】
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.式I):
【化18】
[式中、R は、
xi)芳香族基(ここで、前記芳香族基は、ハロゲン基、シアノ基、エステル基、ケトン基、エーテル基及びチオエーテル基からなる群から選択される置換基を任意選択的に有する)、
及びxii)線状、分岐状及び環状脂肪族C ~C 12 基、
並びにxiii)芳香族基と脂肪族C ~C 12 基との組合せ
からなる群から選択され、式中、前記基R 及びR は、互いに独立して、同一であっても異なってもよく、1つ以上のハロゲン置換基を任意選択的に有する線状、分岐状及び環状の、飽和及び不飽和の、脂肪族C ~C 12 基、1つ以上のハロゲン置換基を任意選択的に有するアリール基並びにハロゲン基(ここで、フッ素、臭素及び塩素が好ましい)、シアノ基、エステル基、ケトン基、エーテル基及びチオエーテル基からなる群から選択され、式中、nは、0又は1又は2又は3又は4の値をとり、式中、nが、2又は3又は4である場合、前記基R は、互いに独立して、同一であるか又は異なり、
式中、mは、0又は1又は2又は3の値をとり、式中、mが、2又は3である場合、前記基R は、互いに独立して、同一であるか又は異なる]
の化合物。
2.nは0(ゼロ)であることを特徴とする、上記1に記載の化合物。
3.mは0(ゼロ)であることを特徴とする、上記1又は2に記載の化合物。
4.R が第3級炭素原子を介して窒素原子(N)に結合していることを特徴とする、上記1~3のいずれか一項に記載の化合物。
5.R が4~12個の炭素原子、好ましくは4~8個の炭素原子を有する分枝鎖アルキルラジカルであることを特徴とする、上記1~4のいずれか一項に記載の化合物。
6.R が、1,3-ジメチルブチルラジカル及びシクロヘキシルラジカルから選択され、R が好ましくは1,3-ジメチルブチルラジカルであることを特徴とする、上記1~5のいずれか一項に記載の化合物。
7.式II):
【化19】
の構造を有することを特徴とする、上記1~6のいずれか一項に記載の化合物。
8.特に、空気ばね、ベローズ、コンベヤベルト、ベルト、駆動ベルト、ホース、ゴムバンド、プロファイル、シール、メンブラン、医療用途若しくはロボット用触感センサー、又は、靴底若しくはその一部、並びに/又は、油及び/若しくは潤滑剤などの特に車両用タイヤ又は技術的ゴム物品における、老化安定剤としての、上記1~7のいずれか一項に記載の化合物の使用。
9.繊維及び/又はポリマー及び/又は紙及び/又は(装飾用)塗料及びコーティング中の染料としての、上記1~7のいずれか一項に記載の化合物の使用。
10.以下のプロセス工程:
a)式A)及びB)
【化20】
の化合物を提供する工程;
b)前記化合物A)及びB)を、塩基及び触媒の存在下で互いに反応させて式C):
【化21】
の化合物を得る工程;
c)式C)の前記化合物を、水素又は水素化試薬、特に水素化物、及びケトン又はアルデヒドと反応させて式D):
【化22】
の化合物を得る工程;
d)式D)の前記化合物を任意選択的に反応させて式E):
【化23】
の化合物を得る工程;
e)式D)又はE)の前記化合物を酸と反応させて式I):
【化24】
を得る工程
を含む式I)の化合物の製造方法であって、
式中、R は、
xi)芳香族基(ここで、前記芳香族基は、ハロゲン基、シアノ基、エステル基、ケトン基、エーテル基及びチオエーテル基からなる群から選択される置換基を任意選択的に有する)、
及びxii)線状、分岐状及び環状脂肪族のとりわけC ~C 12 基、
並びにxiii)芳香族基と脂肪族C ~C 12 基との組合せ
からなる群から選択され、式中、前記基R 及びR は、互いに独立して、同一であっても異なってもよく、1つ以上のハロゲン置換基を任意選択的に有する線状、分岐状及び環状の、飽和及び不飽和の、脂肪族C ~C 12 基、1つ以上のハロゲン置換基を任意選択的に有するアリール基並びにハロゲン基(ここで、フッ素、臭素及び塩素が好ましい)、シアノ基、エステル基、ケトン基、エーテル基及びチオエーテル基からなる群から選択され、式中、nは、0又は1又は2又は3又は4の値をとり、式中、nが、2又は3又は4である場合、前記基R は、互いに独立して、同一であるか又は異なり、
式中、mは、0又は1又は2又は3の値をとり、式中、mが、2又は3である場合、前記基R は、互いに独立して、同一であるか又は異なる、
方法。
11.水素及び前記アルデヒド又はケトン、好ましくはケトンとの工程c)における反応は、水素化触媒を使用して、及び120℃~150℃の温度で実施され、反応混合物は35~45barの圧力での水素に供され、反応は、オートクレーブ中で又は別の圧力反応器で実施されることを特徴とする、上記10に記載の方法。
12.上記1~7のいずれか一項に記載の化合物を含有するゴム混合物であって、前記ゴム混合物は、天然ポリイソプレン(NRゴム)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、ブチルゴム(IIR)及びハロブチルゴムからなる群から特に好ましくは選択される少なくとも1種のジエンゴムを好ましくは含有する混合物。
13.上記12に記載のゴム混合物を、少なくとも1つの構成要素に、好ましくは少なくとも1つの外側構成要素に含む車両用タイヤであって、前記外側構成要素は、好ましくは、トレッド、側壁及び/又はフランジ輪郭であるタイヤ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I):
【化1】
[式中、Rは、
xi)芳香族基(ここで、前記芳香族基は、ハロゲン基、シアノ基、エステル基、ケトン基、エーテル基及びチオエーテル基からなる群から選択される置換基を任意選択的に有する)、
及びxii)線状、分岐状及び環状脂肪族C~C12基、
並びにxiii)芳香族基と脂肪族C~C12基との組合せ
からなる群から選択され、式中、前記基R及びRは、互いに独立して、同一であっても異なってもよく、1つ以上のハロゲン置換基を任意選択的に有する線状、分岐状及び環状の、飽和及び不飽和の、脂肪族C~C12基、1つ以上のハロゲン置換基を任意選択的に有するアリール基並びにハロゲン基(ここで、フッ素、臭素及び塩素が好ましい)、シアノ基、エステル基、ケトン基、エーテル基及びチオエーテル基からなる群から選択され、式中、nは、0又は1又は2又は3又は4の値をとり、式中、nが、2又は3又は4である場合、前記基Rは、互いに独立して、同一であるか又は異なり、
式中、mは、0又は1又は2又は3の値をとり、式中、mが、2又は3である場合、前記基Rは、互いに独立して、同一であるか又は異なる]
の化合物。
【請求項2】
nは0(ゼロ)であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
mは0(ゼロ)であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
が第3級炭素原子を介して窒素原子(N)に結合していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項5】
が4~12個の炭素原子、好ましくは4~8個の炭素原子を有する分枝鎖アルキルラジカルであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項6】
が、1,3-ジメチルブチルラジカル及びシクロヘキシルラジカルから選択され、Rが好ましくは1,3-ジメチルブチルラジカルであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項7】
式II):
【化2】
の構造を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項8】
特に、空気ばね、ベローズ、コンベヤベルト、ベルト、駆動ベルト、ホース、ゴムバンド、プロファイル、シール、メンブラン、医療用途若しくはロボット用触感センサー、又は、靴底若しくはその一部、並びに/又は、油及び/若しくは潤滑剤などの特に車両用タイヤ又は技術的ゴム物品における、老化安定剤としての、請求項1又は2に記載の化合物の使用。
【請求項9】
繊維及び/又はポリマー及び/又は紙及び/又は(装飾用)塗料及びコーティング中の染料としての、請求項1又は2に記載の化合物の使用。
【請求項10】
以下のプロセス工程:
a)式A)及びB)
【化3】
の化合物を提供する工程;
b)前記化合物A)及びB)を、塩基及び触媒の存在下で互いに反応させて式C):
【化4】
の化合物を得る工程;
c)式C)の前記化合物を、水素又は水素化試薬、特に水素化物、及びケトン又はアルデヒドと反応させて式D):
【化5】
の化合物を得る工程;
d)式D)の前記化合物を任意選択的に反応させて式E):
【化6】
の化合物を得る工程;
e)式D)又はE)の前記化合物を酸と反応させて式I):
【化7】
を得る工程
を含む式I)の化合物の製造方法であって、
式中、Rは、
xi)芳香族基(ここで、前記芳香族基は、ハロゲン基、シアノ基、エステル基、ケトン基、エーテル基及びチオエーテル基からなる群から選択される置換基を任意選択的に有する)、
及びxii)線状、分岐状及び環状脂肪族のとりわけC~C12基、
並びにxiii)芳香族基と脂肪族C~C12基との組合せ
からなる群から選択され、式中、前記基R及びRは、互いに独立して、同一であっても異なってもよく、1つ以上のハロゲン置換基を任意選択的に有する線状、分岐状及び環状の、飽和及び不飽和の、脂肪族C~C12基、1つ以上のハロゲン置換基を任意選択的に有するアリール基並びにハロゲン基(ここで、フッ素、臭素及び塩素が好ましい)、シアノ基、エステル基、ケトン基、エーテル基及びチオエーテル基からなる群から選択され、式中、nは、0又は1又は2又は3又は4の値をとり、式中、nが、2又は3又は4である場合、前記基Rは、互いに独立して、同一であるか又は異なり、
式中、mは、0又は1又は2又は3の値をとり、式中、mが、2又は3である場合、前記基Rは、互いに独立して、同一であるか又は異なる、
方法。
【請求項11】
水素及び前記アルデヒド又はケトン、好ましくはケトンとの工程c)における反応は、水素化触媒を使用して、及び120℃~150℃の温度で実施され、反応混合物は35~45barの圧力での水素に供され、反応は、オートクレーブ中で又は別の圧力反応器で実施されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の化合物を含有するゴム混合物であって、前記ゴム混合物は、天然ポリイソプレン(NRゴム)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、ブチルゴム(IIR)及びハロブチルゴムからなる群から特に好ましくは選択される少なくとも1種のジエンゴムを好ましくは含有する混合物。
【請求項13】
請求項12に記載のゴム混合物を、少なくとも1つの構成要素に、好ましくは少なくとも1つの外側構成要素に含む車両用タイヤであって、前記外側構成要素は、好ましくは、トレッド、側壁及び/又はフランジ輪郭であるタイヤ。
【国際調査報告】