(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】化合物、前記化合物を含むゴムブレンド、前記ゴムブレンドを少なくとも1つの成分に含む車両用タイヤ、前記化合物の製造プロセス、並びに前記化合物の老化安定剤及び/又はオゾン分解防止剤及び/又は染料としての使用
(51)【国際特許分類】
C07D 209/08 20060101AFI20240730BHJP
C09B 57/00 20060101ALI20240730BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240730BHJP
C08K 5/3417 20060101ALI20240730BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C07D209/08
C09B57/00 Z CSP
C08L101/00
C08K5/3417
B60C1/00 A
B60C1/00 B
B60C1/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503671
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 DE2022200129
(87)【国際公開番号】W WO2023001339
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】102021207925.3
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】510156561
【氏名又は名称】コンチネンタル・ライフェン・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【住所又は居所原語表記】Continental-Plaza 1,30175 Hannover,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコプ・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ダウアー・ダーヴィット-ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】シュトローマイアー・ユリアン
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131AA06
3D131AA12
3D131BA02
3D131BA08
3D131BC07
3D131BC31
3D131BC35
3D131BC51
4J002AA001
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC081
4J002BB181
4J002BB241
4J002EU026
4J002FD036
4J002FD096
4J002GJ02
4J002GM01
4J002GN01
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、化合物、前記化合物を含有するゴムブレンド、少なくとも1つの成分にゴムブレンドを含む車両用タイヤ、前記化合物を製造するプロセス、並びに老化安定剤及び/又はオゾン分解防止剤及び/又は染料としての前記化合物の使用に関する。本発明による化合物は式I):
(式中、R1は、
xi)芳香族基であって、ハロゲン基、シアノ基、エステル基、ケトン基、エーテル基及びチオエーテル基からなる群から選択される置換基を任意選択的に有する芳香族基、
並びにxii)直鎖、分枝鎖及び環状の脂肪族C1~C12基、
並びにxiii)芳香族と脂肪族C1~C12基との組合せからなる群から選択される)
を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I):
【化1】
(式中、R
1は、
xi)芳香族ラジカルであって、ハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル及びチオエーテルラジカルからなる群から選択される置換基を有していてもよい芳香族ラジカル、
並びにxii)直鎖、分枝鎖及び環状の脂肪族C
1~C
12ラジカル、
並びにxiii)芳香族及び脂肪族C
1~C
12ラジカルの組合せ
からなる群から選択され;
R
2は、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよい直鎖、分枝鎖及び環状、飽和及び不飽和の脂肪族C
1~C
12ラジカル、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよいアリールラジカル、ハロゲンラジカルであって、フッ素、臭素及び塩素が好ましいハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル並びにチオエーテルラジカルからなる群から選択され;
mは、0又は1又は2又は3の値をとり、mが2又は3である場合、ラジカルR
2は互いに独立して同一であるか又は異なり;並びに
R
3は、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよい直鎖、分枝鎖及び環状、飽和及び不飽和の脂肪族C
1~C
12ラジカル、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよいアリールラジカル、ハロゲンラジカルであって、フッ素、臭素及び塩素が好ましいハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル並びにチオエーテルラジカルからなる群から選択され、nは値0又は1をとる)
の化合物。
【請求項2】
nが1であり、R
3が1~10個の炭素原子を有する脂肪族基及び芳香族基から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
nが1であり、R
3が5~10個の炭素原子を有する環状の飽和又は不飽和の脂肪族又は環状芳香族ラジカルであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
R
1が第3級炭素原子を介して窒素原子(N)に結合していることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
R
1が3~12個の炭素原子、好ましくは3~8個の炭素原子を有する分枝鎖アルキルラジカルであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
R
1が、1,3-ジメチルブチルラジカル及びシクロヘキシルラジカルから選択され、R
1が好ましくは1,3-ジメチルブチルラジカルであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
mが0(ゼロ)であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
R
3が、フェニルラジカル及びシクロヘキシルラジカルから選択されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
式II):
【化2】
の構造を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
式III):
【化3】
の構造を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
特に、空気ばね、ベローズ、コンベヤベルト、ベルト、駆動ベルト、ホース、ゴムバンド、プロファイル、シール、メンブラン、医療用途若しくはロボット用触感センサー、又は、靴底若しくはその一部、並びに/又は、油及び/若しくは潤滑剤などの特に車両用タイヤ又は技術的ゴム物品における、老化安定剤及び/又はオゾン分解防止剤としての、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項12】
繊維及び/又はポリマー及び/又は紙及び/又は(装飾用)塗料及びコーティング中の染料としての、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項13】
式I)の化合物を製造するためのプロセスであって、以下のプロセスステップ:
a)式A)の化合物を提供するステップ
【化4】
b)任意選択的に、式A)の化合物を水素と反応させて、式B)
【化5】
の化合物を得るステップ
c)式A)又は式B)の化合物を水素又は水素化試薬及びケトン又はアルデヒド、好ましくはケトンと反応させて、式I)
【化6】
の化合物を得るステップ
(式中、R
1は、
xi)芳香族ラジカルであって、ハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル及びチオエーテルラジカルからなる群から選択される置換基を有していてもよい、芳香族ラジカル、
並びにxii)直鎖、分枝鎖及び環状の脂肪族C
1~C
12ラジカル、
並びにxiii)芳香族及び脂肪族C
1~C
12ラジカルの組合せ
からなる群から選択され;
R
2は、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよい直鎖、分枝鎖及び環状、飽和及び不飽和の脂肪族C
1~C
12ラジカル、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよいアリールラジカル、ハロゲンラジカルであって、フッ素、臭素及び塩素が好ましいハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル並びにチオエーテルラジカルからなる群から選択され;
mは、0又は1又は2又は3の値をとり、mが2又は3である場合、ラジカルR
2は互いに独立して同一であるか又は異なり;並びに
R
3は、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよい直鎖、分枝鎖及び環状、飽和及び不飽和の脂肪族C
1~C
12ラジカル、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよいアリールラジカル、ハロゲンラジカルであって、フッ素、臭素及び塩素が好ましいハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル並びにチオエーテルラジカルからなる群から選択され、nは値0又は1をとる)を含む、プロセス。
【請求項14】
ステップc)における水素及び前記アルデヒド又はケトン、好ましくはケトンとの反応が、水素化触媒を使用して50℃~70℃の温度で行われ、反応混合物が15~25barの圧力で水素に供され、前記反応がオートクレーブ又は別の圧力反応器内で行われることを特徴とする、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物を含有するゴム混合物であって、
好ましくは、特に好ましくは、天然ポリイソプレン(NRゴム)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(SSBR)、乳化重合スチレンブタジエンゴム(ESBR)、ブチルゴム(IIR)及びハロブチルゴムからなる群から選択される少なくとも1つのジエンゴムを含む、ゴム混合物。
【請求項16】
請求項15に記載のゴム混合物を、少なくとも1つの構成要素、好ましくは少なくとも1つの外側構成要素に含み、前記外側構成要素が、好ましくはトレッド、側壁及び/又はフランジプロファイルである、車両用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、化合物を含有するゴム混合物、少なくとも1つの構成要素中にゴム混合物を含む車両用タイヤ、化合物を製造するプロセス、並びに、老化安定剤及び/又はオゾン分解防止剤及び/又は染料としての化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用タイヤ及び技術的ゴム物品は、特にゴムなどの高分子材料を採用していることが公知である。
【0003】
長期にわたる保管の場合、並びに、特に、度々高温である目的用途では、天然ゴム及び合成ポリマー(IR、BR、SSBR、ESBR等など)、さらに天然及び合成油、脂肪及び潤滑剤は、本来の所望の特性に悪影響を及ぼす酸化反応に供される。ポリマーの種類に応じて、ポリマー鎖は、材料が液化するまで、又は、材料のその後の硬化が生じるまで短くなってしまう。
【0004】
したがって、老化安定剤は、車両用タイヤ及び他の技術的ゴム物品の耐久性において決定的な役割を果たす。
【0005】
公知の老化安定剤は、芳香族アミン、例えば6-PPD(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)、IPPD(N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)又はSPPD(N-(1-フェニルエチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)である。
【0006】
これらの分子は、酸素若しくはオゾン、又は、アルキル、アルコキシ及びアルキルペルオキシラジカルなどの形成されるフリーラジカルと反応可能であり、これによりこれらを掃去し、したがって、ゴム等をさらなる酸化反応から保護するものである。
【0007】
しかしながら、この物質クラスの欠点は、それらが発癌性であると疑われることである。
【0008】
特にオゾンと反応してその掃去を達成する老化安定剤は、「オゾン分解防止剤」とも呼ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、特に車両用タイヤ又は他の工業用ゴム物品の老化安定剤として使用することができ、特に、それぞれのマトリクス、例えば特にポリマーへの十分な溶解性と相まって、潜在的な危険がより低い新規化合物を提供することである。これは、酸素及びオゾンからの最適な保護を継続し、健康への有害性を低減しながらブルーミングの傾向を防止することを意図している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1に記載の本発明の化合物により、化合物を含有する本発明のゴム混合物により、また、少なくとも1つの構成要素中に本発明のゴム混合物を含む本発明の車両用タイヤにより達成される。
【0011】
この目的は、化合物を老化安定剤及び/又はオゾン分解防止剤として使用することによってさらに達成される。
【0012】
請求項1に記載の化合物はさらに、染料として使用し得る。
【0013】
この目的は、本発明による化合物を製造するための本発明によるプロセスによってさらに達成される。
【0014】
請求項1に記載の化合物は、一般式I):
【化1】
(式中、R
1は、
xi)芳香族ラジカルであって、ハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル及びチオエーテルラジカルからなる群から選択される置換基を有していてもよい芳香族ラジカル、
並びにxii)直鎖、分枝鎖及び環状の脂肪族C
1~C
12ラジカル、並びにxiii)芳香族及び脂肪族C
1~C
12ラジカルの組合せからなる群から選択され;
R
2は、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよい直鎖、分枝鎖及び環状、飽和及び不飽和の脂肪族C
1~C
12ラジカル、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよいアリールラジカル、ハロゲンラジカルであって、フッ素、臭素及び塩素が好ましいハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル並びにチオエーテルラジカルからなる群から選択され;
mは、0又は1又は2又は3の値をとり、mが2又は3である場合、ラジカルR
2は互いに独立して同一であるか又は異なり;並びに
R
3は、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよい直鎖、分枝鎖及び環状、飽和及び不飽和の脂肪族C
1~C
12ラジカル、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよいアリールラジカル、ハロゲンラジカルであって、フッ素、臭素及び塩素が好ましいハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル並びにチオエーテルラジカルからなる群から選択され、nは値0又は1をとる)を有する。
【0015】
R1がベンジル並びに直鎖、分枝鎖及び環状の脂肪族C1~C12-ラジカルからなる群から選択される場合が好ましく;
R2は、直鎖、分枝鎖及び環状の脂肪族C1~C12ラジカル、並びにアリールラジカル、シアノラジカル、ハロゲンラジカルであって、フッ素、臭素及び塩素が好ましいハロゲンラジカル、エーテルラジカル及びチオエーテルラジカルからなる群から選択され;
mは、0又は1又は2又は3の値をとり、mが2又は3である場合、ラジカルR2は互いに独立して同一であるか又は異なり;並びに
R3は、直鎖、分枝鎖及び環状の脂肪族C1~C12ラジカル、並びにアリールラジカル、シアノラジカル、ハロゲンラジカルであって、フッ素、臭素及び塩素が好ましいハロゲンラジカル、エーテルラジカル及びチオエーテルラジカルからなる群から選択され、並びにnは値0又は1をとる。
【0016】
nが0(ゼロ)である場合、水素原子がR3の代わりにインドール構造の対応する炭素原子に結合することは当業者には明らかである。同様に、mが0又は1又は2である場合、インドール構造のベンゼン環に残っているすべての遊離位置は水素原子である。
【0017】
同様に、当業者には、インドール構造のベンゼン環に対する(R2)m及びR1HNの結合の表示は、これらの基がそれぞれ、ベンゼン環上の任意の位置を除いて、自然に、同時に、ベンゼン環の炭素原子の四価性によって既に除外されるのと同じ位置に配置され得ることを意味すると理解されるべきであることが明らかである。
【0018】
本発明の文脈において、種類「C1~C12ラジカル」の記載は、1~12個の炭素原子を有するラジカルを意味すると理解されるべきである。これとは無関係に、「C1」は、カーン・インゴルド・プレローグ規則(CIP)による最も高度に酸化された炭素原子/最も優先順位の高い炭素原子の位置を記述するためにも使用される。それぞれの文脈において意味されることは当業者には明らかである。
【0019】
本発明による化合物は、インドール誘導体であり、アニリンに基づく既知の老化安定剤(6-PPDの可能性のある切断生成物)と比較して低い潜在的な危険性を示す。基本構造アニリンとインドールの安全性データシートを比較すると、アニリンとは異なり、インドールは遺伝毒性も変異原性もないことが明らかになる。これは、特に車両用タイヤ又は他のゴム製品などの技術的用途において、ゴム成分を摩耗又は他の分解プロセスによって遊離させる可能性があるため、極めて重要な利点である。さらに、6-PPDの酸化生成物は、ギンザケに特定の危険性をもたらす。したがって、これは一般に水生生物に当てはまると仮定すべきである(Tian et al,Science,2020 Z.Tian,Science,2021,371(6525),185-189)。
【0020】
対照的に、インドール誘導体は、米国特許第20200339581A1号明細書及び特開第2004196699A号公報に開示されているように、スキンケアのための医薬組成物又は組成物において提案されている。
【0021】
日本特許第06147585B2号公報は、式S1)のインドール誘導体
【化2】
を開示しており、日本特許第06147585B2号公報では、R
1及びR
2は本事例とは異なるように定義されている。
【0022】
式S1)に示されるような先行技術からのインドール誘導体と比較して、本発明による化合物は、ゴム/ポリマーへの結合を可能にする加硫性基(-SHなど)を含まないという利点を有する。結合により、分子は局所的に結合し、したがって酸化ストレスが発生する遠隔地では効果的でない可能性がある。したがって、結合は、分子が老化安定剤及び/又はオゾン分解防止剤としてその完全な保護を発現するのを防ぐであろう。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、とりわけ特許請求の範囲に反映されるすべての有利な実施形態を含む。本発明はまた、特に、本発明が「好ましい」として記載されるか、又は有利な実施形態の文脈で記載される第1の特徴と、例えば「特に好ましい」として記載されるさらなる特徴との組合せも含むように、これらの特徴に対する異なる優先度を有する異なる特徴の組合せから生じる実施形態を含む。
【0024】
nが1であり、R3が1~10個の炭素原子を有する脂肪族基及び芳香族基から選択される場合が好ましい。
【0025】
nが1であり、R3が5~10個の炭素原子を有する環状の飽和又は不飽和の脂肪族又は環状芳香族ラジカルである場合が特に好ましい。したがって、ラジカルR3は、特に好ましくは、環状である飽和脂肪族又は不飽和脂肪族又は芳香族ラジカルであり得る。
【0026】
R3がフェニルラジカル及びシクロヘキシルラジカルから選択される場合が極めて特に好ましい。
【0027】
これにより、本発明によるこれらの化合物のゴム混合物、特に車両用タイヤ及び他の工業用ゴム物品への特に有利な溶解性がもたらされる。
【0028】
ラジカルR1は、
xi)芳香族ラジカルであって、ハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル及びチオエーテルラジカルからなる群から選択される置換基を有していてもよい芳香族ラジカル、
並びにxii)直鎖、分枝鎖及び環状の脂肪族C1~C12ラジカル、並びにxiii)芳香族及び脂肪族C1~C12ラジカルの組合せからなる群から選択される。
【0029】
サブグループxi)からの芳香族ラジカルは、例えば、好ましくはフェニルラジカルである。
【0030】
サブグループxi)の芳香族ラジカルは、置換基を有し得る。
【0031】
上述のように、これらは、ハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル及びチオエーテルラジカルからなる群から選択される。
【0032】
置換基が、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル及びチオエーテルラジカルからなる群から選択される場合が好ましい。
【0033】
好ましい実施形態では、芳香族ラジカルは、C1原子に隣接する2個の炭素原子、すなわちN原子に結合した炭素原子で置換されていない。したがって、基本構造としてベンゼン環の場合、N原子に対するオルト位に置換基が存在しないことが好ましい。
【0034】
さらに好ましい実施形態では、サブグループxi)の芳香族ラジカルは置換されていない。
【0035】
R1が第3級炭素原子を介して窒素原子(N)と結合している場合が好ましい。したがって、C1原子は、好ましくは第3級炭素原子である。
【0036】
本発明の文脈において、「第3級炭素原子」という用語は、ただ1つの水素原子に結合している炭素原子を意味すると理解されるべきである。
【0037】
これは、第2級炭素原子及び第4級炭素原子と比較して、ゴム混合物、特に車両用タイヤ及び他の工業用ゴム物品中の化合物の存在に起因して特に良好な保護効果をもたらし、それにより、特に老化安定化に関連する機構に関連して最適な反応性をもたらし、望ましくない副反応が回避される。
【0038】
サブグループxiii)の混合芳香族及び脂肪族ラジカルは、例えば好ましくは、合計7~18個の炭素原子を有するベンジルラジカル及び1-フェニルアルキルラジカルからなる群から選択され、特にベンジルラジカル及び1-フェニルエチルラジカルから選択され、1-フェニルアルキルラジカル、特に1-フェニルエチルは、第3級炭素原子について特に好ましい。
【0039】
さらなる有利な実施形態では、R1は、3~12個の炭素原子、好ましくは3~8個の炭素原子を有する分枝鎖又は環状アルキルラジカルであり、ここで、R1は、特に好ましくは、1,3-ジメチルブチルラジカル及びシクロヘキシルラジカルから選択され、ここで、R1は、極めて特に好ましくは、1,3-ジメチルブチルラジカルである。
【0040】
これにより、車両用タイヤ及び他の工業用ゴム物品のゴム混合物への特に良好な溶解性が達成される。
【0041】
ラジカルR2は、互いに独立して同一であるか又は異なっており、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよい直鎖、分枝鎖及び環状、飽和及び不飽和の脂肪族C1~C12ラジカル、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよいアリールラジカル、ハロゲンラジカルであって、フッ素、臭素及び塩素が好ましいハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル並びにチオエーテルラジカルからなる群から選択される。
【0042】
列挙されたラジカルR2は、特に、適切な出発物質を選択することによって、それぞれのベンゼン環/その前駆体に既に結合していてもよい。
【0043】
mが0(ゼロ)の場合が好ましい。
【0044】
好ましい実施形態では、化合物は式II):
【化3】
の構造を有する。
【0045】
式II)の化合物は、特にポリマーにおいて、酸化、したがって老化に対する最適な保護を達成することを可能にする。同時に、式II)の化合物は、上述のように、例えば6-PPD又はこの物質クラスの他の代表物よりも健康に対する有害性が著しく低い。
【0046】
さらに好ましい実施形態では、化合物は式III):
【化4】
の構造を有する。
【0047】
式III)の化合物は、実際に、特にポリマーにおいて、酸化及びしたがって老化に対する保護のさらなる改善を達成することを可能にする。同時に、式III)の化合物は、上述のように、例えば6-PPD又はこの物質クラスの他の代表物よりも健康に対する有害性が著しく低い。
【0048】
したがって、6-PPDと比較して、式III)の化合物は、より良好であり、同時に健康に害が少なく、環境に優しい老化安定剤である。
【0049】
式I)、式II)、式III)及び前述のすべての本発明の化合物は、特に、空気ばね、ベローズ、コンベヤベルト、ベルト、駆動ベルト、ホース、ゴムバンド、プロファイル、シール、メンブラン、医療用途若しくはロボット用触感センサー、又は、靴底若しくはその一部、並びに/又は、油及び/若しくは潤滑剤などの車両用タイヤ及び/又は技術的ゴム物品における老化安定剤及び/又はオゾン分解防止剤として特に好適である。
【0050】
したがって、本発明はさらに、特に空気ばね、ベローズ、コンベヤベルト、ベルト、駆動ベルト、ホース、ゴムバンド、異形材、シール、膜、医療用途若しくはロボット用途のための触覚センサー、又は靴底若しくはその一部、及び/又は油及び/又は潤滑剤などの、車両用タイヤ及び/又は工業用ゴム物品における老化安定剤及び/又はオゾン分解防止剤としての本発明による化合物の使用を提供する。
【0051】
列挙された物品又は物質において式I)、式II)、式III)の化合物及び前述のすべてを使用するために、前記化合物は組成物に使用され、前記組成物に組み込まれて使用される。
【0052】
車両用タイヤ又は他の工業用ゴム物品では、前記組成物は特にゴム混合物中にある。
【0053】
本発明はさらに、繊維及び/又はポリマー及び/又は紙及び/又は(装飾用)塗料及びコーティング中の染料としての式I)、式II)、式III)及び上記のすべての本発明の化合物の使用を提供する。
【0054】
本発明のさらなる態様は、以下のプロセスステップ:
a)式A)の化合物
【化5】
を提供するステップ;
b)任意選択的に、式A)の化合物を水素と反応させて、式B)
【化6】
の化合物を得るステップ;
c)式A)又は式B)の化合物を、水素又は水素化試薬、特に水素化物、及びケトン又はアルデヒド(R
1=O)、好ましくはケトン、特に好ましくはメチルイソブチルケトンと反応させて、式I)
【化7】
の化合物を得るステップ
を含む式I)の化合物を製造するためのプロセスである。上記のすべてが、ラジカルR
1、R
2、R
3並びにn及びmに当てはまる。ここでも、nが1であり、mが0である場合が好ましい。
【0055】
例えば、好ましくは、ステップa)で提供される化合物は、2-フェニル-5-ニトロ-1H-インドールである。これは、好ましくは、欧州特許第1571142号に記載されているように2-フェニル-1H-インドールから合成され、式XI):
【化8】
(式中、周知のように、KNO
3は硝酸カリウムを表し、H
2SO
4は硫酸を表す)
の反応スキームにおいて簡略化された形態で示される。
【0056】
化合物2-フェニル-1H-インドールは市販されている。
【0057】
本発明の好ましい実施形態では、ステップb)が実施される。ステップb)における水素との反応が水素化触媒を使用して、好ましくは室温で行われる場合が好ましく、反応混合物は、最初に好ましくは1.3~1.6bar、特に例えば1.5barの圧力で水素に供され、続いて1~20時間、好ましくは8~13時間、特に例えば12時間撹拌される。
【0058】
ステップb)における水素との反応は、特にオートクレーブ又は別の圧力反応器などの比較的高い圧力に適した容器内で行われてもよい。或いは、水素は、反応容器の上方のバルーンを介して供給されてもよい。
【0059】
ステップb)の反応は、特にオートクレーブ又は別の圧力反応器などの比較的高い圧力に適した容器内で行うことが好ましい。
【0060】
本発明のさらに好ましい実施形態では、式A)の化合物を、ステップc)に従って水素(H2)又は水素化試薬、特に水素化物、及びケトン又はアルデヒド(R1=O)、好ましくはケトン、特に好ましくはメチルイソブチルケトンと直接反応させて、式I)の化合物を得る。水素の場合、触媒として白金(Pt)、好ましくは炭素上(Pt/C)を用いることが特に好ましい(下記参照)。
【0061】
「水素化試薬」は、水素化をもたらす化合物を意味すると理解されるべきである。そのような試薬は、当業者に知られているように、ヒドリド、特に金属ヒドリドを含む。
【0062】
適切な水素化物としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウムが挙げられる。
【0063】
本発明の文脈において、水素は、代替物として明示的に言及されているので、「水素化試薬」の下に追加的に列挙されない。それにもかかわらず、「水素化試薬」という用語は、その場で水素化を行う水素を形成するすべての試薬を包含することが理解されよう。
【0064】
R1がシクロヘキシルラジカルである場合、反応に使用されるケトン(R1のケトン誘導体)はシクロヘキサノンである。ステップc)における反応は、水素の代わりに水素化試薬、特に水素化物、例えば水素化ホウ素ナトリウム、NaBH4を用いて行ってもよい。使用される溶媒は、例えば、好ましくは酢酸である。
【0065】
ステップc)における水素及びケトン又はアルデヒド、好ましくはケトンとの反応は、水素化触媒を使用して、好ましくは50℃~70℃、特に例えば60℃の温度で行われる場合が好ましい。反応混合物は、好ましくは15~25bar、特に例えば20barの圧力で水素に供され、続いて好ましくは1~20時間、好ましくは8~13時間、特に例えば10時間撹拌される。
【0066】
ステップc)におけるケトンは、次のラジカルR1のケトン誘導体であり;アルデヒドの場合、したがってアルデヒド誘導体である。
【0067】
簡単にするために、ラジカルR1はアルデヒド又はケトンとの反応後に窒素原子上に残る部分であるため、簡略化した式R1=Oをアルデヒド又はケトンに使用する。
【0068】
ケトンメチルイソブチルケトンを用いることが好ましい。
【0069】
ステップc)における水素との反応は、特にオートクレーブ又は別の圧力反応器などの比較的高い圧力に適した容器内で行うことが好ましい。
【0070】
ステップc)における溶媒は、これが液体形態である場合、ケトン若しくはアルデヒド、又は特にケトン若しくはアルデヒドが固体形態である場合、トルエン若しくはキシレンなどの不活性溶媒のいずれかであり得る。後者の場合、ケトン又はアルデヒドは、反応物質として化学量論量でのみ使用される。
【0071】
溶媒として、液体形態のケトン又はアルデヒド、特に好ましくはケトンを使用することが好ましい。これにより、トルエン又はキシレンなどの追加の物質を吐出することが可能になる。
【0072】
水素との反応が、本発明の文脈において「水素化触媒」と称される好適な触媒を採用して実施されるプロセスステップが好ましい。
【0073】
水素化触媒が貴金属触媒、例えば特にパラジウム(Pd)又は白金(Pt)である場合が好ましい。貴金属がパラジウム炭素(Pd/C)などの炭素(C)上で使用される場合が好ましい。
【0074】
さらに、ラネーニッケル又は銅クロマイトなどの他の公知の触媒を使用することも可能である。
【0075】
上記のプロセスにおいて、ラジカルR3は好ましくはフェニルラジカルである。
【0076】
本発明の好ましい実施形態では、ステップc)は、100℃以上、特に好ましくは120℃以上、特に120℃~200℃、例えば120℃の温度及び/又は25barを超える、例えば40barの水素圧力で行われる。これは、さらなる化合物として、老化安定剤として特に有利な特性を有する式III)の化合物を形成する。
【0077】
R
3が脂肪族ラジカル、特に好ましくはシクロヘキシルラジカルであるという変動を伴う式Iの本発明の化合物を製造するための代替経路は、R
3がシクロヘキシルである(したがって、nが1である)例を使用して式XVのスキームによって示される。
【化9】
【0078】
2-シクロヘキシル-1-インドール及びその調製は公知であり、Zhou et al,Synthesis 2017,49(16),3662-3669を参照されたい。これはニトロ化され、続いて還元アルキル化に供され、好ましくは同様に、使用されるR1のケトン又はアルデヒド、特に好ましくはケトン、好ましくはメチルイソブチルケトンである。さらに同様に、15~25bar、特に例えば20barの水素圧力を使用することが好ましい。当業者は、25barよりも任意選択的に高い圧力への圧力の調整を行うことができる。
【0079】
この反応は、好ましくはオートクレーブ中又は別の圧力反応器中で行われる。
【0080】
したがって、示される経路は、式III)の化合物の代替製造プロセスを示す。
【0081】
上述のように、本発明はゴム混合物をさらに提供する。
【0082】
本発明によるゴム混合物は、式I)、特に式II)及び/又はIII)の化合物を含有する。本発明によるゴム混合物は、原則として、特に式I)、特に式II)及び/又はIII)の新規な本発明の化合物が低毒性で老化安定剤及び/又はオゾン分解防止剤として作用する任意のゴム混合物であり得る。
【0083】
本発明のゴム混合物は、少なくとも1つのゴムを含有する。
【0084】
本発明によるゴム混合物が、0.1~10phr、特に好ましくは0.1~7phr、非常に特に好ましくは1~6phrの式I)、特に式II)及び/又はIII)の化合物を含有する場合が好ましい。
【0085】
本書面において用いられている単位「phr」(ゴム100重量部当りの部)は、ゴム産業における混合物処方に係る量の従来の表示である。個々の物質の重量部の投与量は、本文書では、混合物中に存在するすべての高分子量(Mwが20000g/molを超える)ゴムの総質量の100重量部に基づく。
【0086】
本発明の有利な実施形態において、本発明に係るゴム混合物は少なくとも1種のジエンゴムを含有する。
【0087】
したがって、ゴム混合物は、ジエンゴム、又は、2つ以上の異なるジエンゴムの混合物を含有し得る。
【0088】
ジエンゴムとは、ジエン及び/又はシクロアルケンを重合又は共重合させることによって形成され、そのために、主鎖又は側基のいずれかにC=C二重結合を有しているゴムである。
【0089】
ジエンゴムは、好ましくは、天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、エポキシ化ポリイソプレン(ENR)、ブタジエンゴム(BR)、ブタジエン-イソプレンゴム、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、スチレン-イソプレンゴム、分子量Mwが20000g/molを超える液状ゴム、ハロブチルゴム、ポリノルボルネン、イソプレン-イソブチレンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、アクリレートゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ポリスルフィドゴム、エピクロルヒドリンゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンターポリマー、水添アクリロニトリルブタジエンゴム、及び水添スチレン-ブタジエンゴムからなる群から選択される。
【0090】
ニトリルゴム、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロブチルゴム及び/又はエチレン-プロピレン-ジエンゴムは、特に、産業用ゴム物品、例えばベルト、駆動ベルト及びホース並びに/又は靴底などの製造で使用される。充填材、可塑剤、加硫系及び添加剤の観点において特異的であるこれらのゴムについて当業者に公知である混合組成物が採用されることが好ましい。
【0091】
すべての実施形態の天然及び/又は合成ポリイソプレンは、cis-1,4-ポリイソプレン又は3,4-ポリイソプレンであり得る。しかしながら、90重量%を超えるcis-1,4比率を有するcis-1,4-ポリイソプレンを使用することが好ましい。第1に、このようなポリイソプレンは、チーグラーナッタ触媒を伴うか、又は、微細なリチウムアルキルを用いる溶液中における立体特異的重合により入手可能である。第2に、天然ゴム(NR)は、天然ゴム中のcis-1,4含有量が99重量%超である、このようなcis-1,4-ポリイソプレンである。
【0092】
1つ以上の天然ポリイソプレンと1種以上の合成ポリイソプレンとの混合物もさらに考慮される。
【0093】
本発明の文脈において、「天然ゴム」という用語は、ヘベア(Hevea)ゴムの木から、及び、「非ヘベア(non-Hevea)」供給源から入手され得る天然ゴムを意味すると理解されるべきである。非ヘベア(Hevea)供給源としては、例えば、グアユール低木、及び、例えばTKS(ロシアタンポポ(Taraxacum kok-saghyz);ロシアタンポポ)などのタンポポが挙げられる。
【0094】
本発明のゴム混合物がブタジエンゴム(すなわちBR、ポリブタジエン)を含有する場合、これは、当業者に公知の任意のタイプであってよい。これらは高-cis及び低-cisタイプと呼ばれるものを含み、ここで、90重量%以上のcis含有量を有するポリブタジエンは高-cisタイプと称され、90重量%未満のcis含有量を有するポリブタジエンは低-cisタイプと称される。低-cisポリブタジエンの一例は、20%~50重量%のcis含有量を有するLi-BR(リチウム触媒ブタジエンゴム)である。高-cis BRでは、ゴム混合物において特に良好な特性及び低ヒステリシスが達成される。
【0095】
採用されるポリブタジエンは、変性及び官能化で末端基-変性されていてもよく、及び/又は、ポリマー鎖に沿って官能基化されていてもよい。変性は、ヒドロキシル基及び/又はエトキシ基及び/又はエポキシ基及び/又はシロキサン基及び/又はアミノ基及び/又はアミノシロキサン及び/又はカルボキシル基及び/又はフタロシアニン基及び/又はシラン-スルフィド基による変性から選択され得る。しかしながら、官能化とも呼ばれる、当業者に公知のさらなる改変も有用である。金属原子がこのような官能化の構成成分であってもよい。
【0096】
ゴム混合物中に少なくとも1つのスチレン-ブタジエンゴム(スチレン-ブタジエンコポリマー)が存在する場合、これは、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)及び乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)から選択され得、少なくとも1つのSSBRと少なくとも1つのESBRとの混合物を採用することも可能である。「スチレン-ブタジエンゴム」及び「スチレン-ブタジエンコポリマー」という用語は、本発明の文脈において同義に用いられている。
【0097】
用いられるスチレン-ブタジエンコポリマーは、ポリブタジエンについて上記に言及されている変性及び官能化により、ポリマー鎖に沿って末端基-変性及び/又は官能基化されていてもよい。
【0098】
少なくとも1種のジエンゴムは、天然ポリイソプレン(NR、天然ゴム)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、ブチルゴム(IIR)及びハロブチルゴムからなる群から選択されることが好ましい。
【0099】
本発明の特に好ましい実施形態において、少なくとも1つのジエンゴムは、天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)及び乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)からなる群から選択される。
【0100】
本発明の特に有利な実施形態では、ゴム混合物は、少なくとも1つの天然ポリイソプレン(NR)及び/又は合成ポリイソプレン(IR)を、好ましくは50~100phrの量で含み、本発明の特に有利な一実施形態では、80~100phr、非常に特に好ましくは95~100phr、次いで好ましくは100phrの量で含む。このようなゴム混合物は、特に、良好な加工性及び復帰安定性と相まって、最適化された引裂特性及び摩耗特性を示す。
【0101】
ゴム混合物が100phr未満のNR及び/又はIRを含有する場合、ゴム混合物は、好ましくは、さらなるゴムとして、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)及び乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)からなる群から選択される少なくとも1つのジエンゴムを含有する。
【0102】
本発明のさらなる特定の有利な実施形態において、ゴム混合物は、少なくとも1種の天然ポリイソプレン(NR)を、好ましくは、5~55phrの量で、及び、本発明の特定の有利な一実施形態においては、5~25phr、極めて特に好ましくは5~20phrの量で含む。このようなゴム混合物は、特に良好な加工性及び加硫戻り安定性及び最適化された引裂き特性及び最適な転がり抵抗特徴を示す。
【0103】
本発明のさらなる特定の有利な実施形態において、ゴム混合物は、少なくとも1種のポリブタジエン(BR、ブタジエンゴム)を、好ましくは、10~80phr、特に好ましくは10~50phrの量、及び、本発明の特定の有利な実施形態においては、15~40phrの量で含む。これにより、本発明に係るゴム混合物の特に良好な引裂き及び摩耗特性、並びに、最適な制動特徴が達成される。
【0104】
本発明のさらなる特定の有利な実施形態において、ゴム混合物は、少なくとも1種の溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)を、好ましくは、10~80phr、特に好ましくは30~80phrの量、及び、本発明の特定の有利な一実施形態においては、50~70phrの量で含む。これにより、本発明に係るゴム混合物の特に良好な転がり抵抗特性が達成される。本発明の特に有利な実施形態において、SSBRは、最適で、且つ、バランスのとれた特性プロファイルを達成するために、少なくとも1種のさらなるゴムとの組合せで採用される。
【0105】
ゴム混合物が、少なくとも1種の充填材を、好ましくは、30~500phr、特に好ましくは50~400phrの量、次いで、好ましくは80~300phrの量で含有する場合が好ましい。
【0106】
本発明の有利な実施形態において、充填材は、カーボンブラック及び二酸化ケイ素からなる群から選択されることが好ましい補強用充填材である。
【0107】
好適なカーボンブラックは、当業者に知られているいずれかのカーボンブラックタイプを含む。カーボンブラックが工業用カーボンブラック及び熱分解カーボンブラックから選択される場合が好ましく、工業用カーボンブラックがより好ましい。
【0108】
カーボンブラックは、30~250g/kg、好ましくは30~180g/kg、特に好ましくは40~180g/kg、及び、さらに特に好ましくは40~130g/kgのヨウ素吸着量としても知られているASTM D1510に準拠したヨウ素価、並びに、30~200ml/100g、好ましくは70~200ml/100g、特に好ましくは90~200ml/100gのASTM D2414に準拠したDBP値を有する場合が好ましい。
【0109】
ASTM D2414に準拠したDBP値は、カーボンブラック又は淡色の充填材の、フタル酸ジブチルに係る特定の吸収体積を判定する。
【0110】
特に車両用タイヤのための、ゴム混合物中におけるこのような種類のカーボンブラックの使用により、耐摩耗性と蓄熱との間における最適な妥協が保証され、これは、次いで、生態学的に関連する転がり抵抗に影響する。
【0111】
特に適切で好ましいカーボンブラックは、80~110g/kgのヨウ素吸着数及び100~130ml/100gのDBP数を有するもの、例えば特にタイプN 339のカーボンブラックである。
【0112】
二酸化ケイ素は、好ましくは非晶質二酸化ケイ素、例えば沈降二酸化ケイ素とも呼ばれる沈降シリカである。しかしながら、例えば発熱性二酸化ケイ素を使用することも代替的に可能である。
【0113】
しかしながら、35~400m2/g、好ましくは35~350m2/g、より好ましくは85~320m2/g、最も好ましくは120~235m2/gの窒素表面積(BET表面積)(DIN ISO 9277及びDIN 66132による)及び30~400m2/g、好ましくは30~330m2/g、より好ましくは80~300m2/g、最も好ましくは115~200m2/gのCTAB表面積(ASTM D 3765による)を有する微粉砕された沈降シリカを使用することが特に好ましい。このようなシリカは、例えばタイヤトレッド用のゴム混合物において、加硫ゴムの特に良好な物理特性をもたらす。混合時間の短縮による混合物の加工における利点もまた、同一の生成物特性を保持しながらもたらされることが可能であり、向上した生産性がもたらされる。用いられるシリカはそれ故、例えば、Evonik製のUltrasil(登録商標)VN3タイプ(商品名)、又は、HDシリカとして知られる高分散シリカ(例えば、Solvay製のZeosil(登録商標)1165MP)であり得る。
【0114】
本発明の特に有利な実施形態において、ゴム混合物は、充填材として、少なくとも1種のシリカを、好ましくは、30~500phr、特に好ましくは50~400phrの量、次いで、好ましくは80~300phrの量で含有する。
【0115】
これらの量では、シリカは特に、単独又は主充填材(充填材総量に基づいて50重量%超)として存在する。
【0116】
本発明のさらなる有利な実施形態において、ゴム混合物は、少なくとも1種のシリカを、さらなる充填材として、好ましくは、5~100phr、特に好ましくは5~80phr、次いで、好ましくは10~60phrの量で含有する。
【0117】
これらの量では、シリカは特に、特にカーボンブラックなどの他の主充填材に追加して、さらなる充填材として存在する。
【0118】
「ケイ酸」及び「シリカ」という用語は、本発明の文脈において同義に用いられている。
【0119】
本発明の特に有利な実施形態において、本発明に係るゴム混合物は、0.1~60phr、好ましくは3~40phr、特に好ましくは5~30phr、極めて特に好ましくは5~15phrの少なくとも1種のカーボンブラックを含有する。これらの量では、カーボンブラックは特に、特にシリカなどの主充填材に追加して、さらなる充填材として存在する。
【0120】
本発明のさらなる有利な実施形態において、本発明に係るゴム混合物は、30~300phr、好ましくは30~200phr、特に好ましくは40~100phrの少なくとも1種のカーボンブラックを含有する。これらの量では、カーボンブラックは、単独又は主充填材として存在しており、したがって、任意選択的に、上記の下限側の量でシリカと組合せで存在している。
【0121】
本発明の特定の有利な実施形態において、ゴム混合物は、5~60phr、特に好ましくは5~40phrの少なくとも1種のカーボンブラック、及び、50~300phr、好ましくは80~200phrの少なくとも1種のシリカを含有する。
【0122】
ゴム混合物は、補強性又は非補強性のさらなる充填材をさらに含有してもよい。
【0123】
本発明の文脈において、さらなる(非補強用)充填材としては、アルミノケイ酸塩、カオリン、チョーク、デンプン、酸化マグネシウム、二酸化チタン、又はゴムゲル及び繊維(例えばアラミド繊維、ガラスファイバー、炭素繊維、セルロース繊維)が挙げられる。
【0124】
さらに、任意選択的に補強性の充填材は、例えば、カーボンナノチューブ(離散CNT、中空炭素繊維(HCF)並びに1つ以上の官能基、例えばヒドロキシ、カルボキシ及びカルボニル基などを含む変性CNTなどの(CNT))、グラファイト及びグラフェン並びに「炭素-シリカ二相充填材」として知られているものである。
【0125】
本発明に関連して、酸化亜鉛は、充填材中に含まれない。
【0126】
ゴム混合物はさらに、慣習的な添加剤を慣習的な重量部で含有可能であり、これらは、好ましくは、前記混合物の生成最中における少なくとも1つの一次混合ステージにおいて添加される。これらの添加剤としては以下を含む:
a)従来技術で知られている老化安定剤、
例えば、p-フェニレンジアミン、例えば、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)、N-(1-フェニルエチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(SPPD)、N,N’-ジトリル-p-フェニレンジアミン(DTPD)、N-(1,4-ジメチルペンチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(7PPD)、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)、
又はジヒドロキノリン、例えば2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)、
b)例えば酸化亜鉛及び脂肪酸(例えばステアリン酸)といった活性化剤、並びに/又は、例えば亜鉛エチルヘキサノエートといった亜鉛錯体などの他の活性化剤、
c)充填材、特にカーボンブラック又はシリカを結合するための活性化剤及び/又は薬剤、例えばS-(3-アミノプロピル)チオ硫酸及び/又はその金属塩(カーボンブラックの結合)及びシランカップリング剤(シリカの結合)、
d)オゾン分解防止剤ワックス、
e)樹脂、とりわけ粘着性付与樹脂、
f)例えば2,2’-ジベンズアミドジフェニルジスルフィド(DBD)といった素練り助剤、並びに
g)特に脂肪酸エステル及び金属セッケン、例えば亜鉛セッケン及び/又はカルシウムセッケンなどの加工助剤、
h)可塑剤、例えば特に芳香族、ナフテン系又はパラフィン系鉱油可塑剤、例えば方法IP 346に従って3重量%未満の多環式芳香族化合物の含有量を好ましくは有するMES(軽度抽出溶媒和物)、若しくはRAE(残留芳香族抽出物)、若しくはTDAE(処理留出物芳香族抽出物)又はゴム液化(RTL)油若しくはバイオマス液化(BTL)油、或いはトリグリセリド、例えばナタネ油又はファクチス又は炭化水素樹脂又は平均分子量(BS ISO 11344:2004に準拠してGPC=ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定)が500~20000g/molである液体ポリマー。
【0127】
鉱油を使用する場合、これは、好ましくは、DAE(留出物芳香族抽出物)、RAE(残留芳香族抽出物)、TDAE(処理留出物芳香族抽出物)、MES(軽度抽出溶媒和物)、及びナフテン系油からなる群から選択される。
【0128】
特に有利な実施形態では、本発明によるゴム混合物は、式I)、特に式II)及び/又はIII)の本発明の化合物に加えて、p-フェニレンジアミンの群からの老化安定剤、特にa)で上に列挙したものを含有しない。特に好ましい実施形態では、本発明によるゴム混合物は、特に、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N-(1-フェニルエチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(SPPD)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’-ジトリル-p-フェニレンジアミン(DTPD)、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)、N-(1,4-ジメチルペンチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(7PPD)を含有する、好ましくはこれらからなる群から選択される、p-フェニレンジアミンに基づく0~0.1phr、特に0phrのさらなる老化安定剤を含有する。
【0129】
本発明に従って存在する、好ましくは非常に少量の0~0.1phr、特に好ましくは0phrのp-フェニレンジアミン、並びに式I)、特に式II)及び/又はIII)の化合物は、より低い毒性で同等の保護効果を達成することを可能にする。式I)、特に式II)及び/又はIII)の本発明の化合物は、先行技術において公知の列挙されたp-フェニレンジアミンに取って代わる。
【0130】
本発明のさらなる有利な実施形態では、列挙されたp-フェニレンジアミン老化安定剤の少なくとも1つのさらなる代表物が存在するため、本発明による化合物は、従来技術で知られているp-フェニレンジアミンを部分的にのみ置き換える。これはまた、最適な程度に至らないだけで、本発明に係る利点を達成する。
【0131】
有利な実施形態において、TMQなどのジヒドロキノリン系の老化安定剤が、本発明の式I)の化合物に追加してゴム混合物に存在する。特にTMQなどの、存在するジヒドロキノリンの量は、好ましくは0.1~3、特に0.5~1.5phrである。
【0132】
オゾン分解防止剤ワックス(上記の群d)は別々に考慮され、本発明の好ましい実施形態では、追加の老化安定剤a)が存在するかどうかにかかわらず、ゴム混合物中に存在する。
【0133】
シランカップリング剤は、当業者に公知である任意の種類のものである。
【0134】
さらに、1つ以上の異なるシランカップリング剤を互いに組み合わせて使用し得る。そのため、ゴム混合物は異なるシランの混合物を含有し得る。
【0135】
シランカップリング剤は、ゴムへの充填材の添加前であってもゴム/ゴム混合物の混合中(in situ)又は前処理(予備改質)の状況で、二酸化ケイ素、特にシリカの表面シラノール基又は他の極性基と反応する。
【0136】
従来技術から知られているカップリング剤は、ケイ素原子上の脱離基として少なくとも1つのアルコキシ、シクロアルコキシ又はフェノキシ基を有すると共に、おそらくは開裂後に、ポリマーの二重結合との化学反応に進行可能である他の官能基を有する二官能性オルガノシランである。後者における基は、例えば以下の化学基を含み得る:
-SCN、-SH、-NH2又は-Sx-(ここで、x=2~8)。
【0137】
採用可能なシランカップリング剤としては、それ故、例えば、2~8個の硫黄原子を有する、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-チオシアナトプロピルトリメトキシシラン又は3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、例えば3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(TESPT)、対応するジスルフィド(TESPD)、又は、1~8個の硫黄原子を有するスルフィドと内容の異なる種々のスルフィドとの他の混合物が挙げられる。TESPTはまた、例えばカーボンブラックとの混合物として添加され得る(商品名X50S(登録商標)、Evonik製)。
【0138】
例えば、国際公開第99/09036号パンフレットから公知であるようなブロック化メルカプトシランもシランカップリング剤として使用され得る。国際公開第2008/083241A1号パンフレット、国際公開第2008/083242A1号パンフレット、国際公開第2008/083243A1号パンフレット、及び国際公開第2008/083244A1号パンフレットに記載のシランを用いることも可能である。使用可能なシランには、例えば、特に3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシランなど、NXTの名称で多数のバリアントで米国Momentiveによって販売されているもの、又はVP Si 363(登録商標)の名称でEvonik Industriesによって販売されているものが含まれる。
【0139】
さらなる添加剤の合計割合は、好ましくは、3~150phr、より好ましくは3~100phr、最も好ましくは5~80phrである。
【0140】
酸化亜鉛(ZnO)は、上述の量でのさらなる添加剤の全体割合の中に含まれ得る。
【0141】
これは、当業者に公知であるいずれかの種類の酸化亜鉛、例えばZnO顆粒又は粉末であり得る。従来使用されている酸化亜鉛は、通常、BET比表面積が10m2/g未満である。しかしながら、10~100m2/gのBET表面積を有する酸化亜鉛、例えばいわゆる「ナノ酸化亜鉛」を使用することも可能である。
【0142】
本発明のゴム混合物は、好ましくは加硫形態で、特に車両用タイヤ又は他の加硫された工業用ゴム物品に使用される。
【0143】
「加硫」及び「架橋」という用語は、本発明の文脈において同義に用いられている。
【0144】
本発明のゴム混合物の加硫は、好ましくは、加硫促進剤の補助を伴って、硫黄及び/又は硫黄ドナーの存在下に実施され、いくつかの加硫促進剤は同時に硫黄ドナーとして作用することが可能である。加硫促進剤は、チアゾール加硫促進剤、メルカプト加硫促進、スルフェンアミド加硫促進剤、チオカルバメート加硫促進剤、チウラム加硫促進剤、チオホスフェート加硫促進剤、チオウレア加硫促進剤、キサントゲネート加硫促進剤並びにグアニジン加硫促進剤からなる群から選択される。
【0145】
N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド(DCBS)、ベンゾチアジル-2-スルフェンモルホリド(MBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)、及びジフェニルグアニジン(DPG)などのグアニジン促進剤から選択されるスルフェンアミド促進剤を使用することが好ましい。
【0146】
用いられる硫黄ドナー物質は、当業者に公知であるいずれかの硫黄ドナー物質であり得る。
【0147】
加硫遅延剤がゴム混合物中に存在していてもよい。
【0148】
他の場合、本発明によるゴム混合物の製造は、好ましくは、加硫系(例えば、硫黄及び加硫影響物質)を除くすべての成分を含む一次混合物を1つ以上の混合段階で最初に製造することを含む、ゴム産業において通例のプロセスによって行われる。最終混合物は、最終混合ステージにおいて加硫系を添加することにより生成される。
【0149】
最終混合物は、例えばさらに加工され、及び、押出し成形操作又はカレンダ加工によって適切な形状とされる。
【0150】
本発明によるゴム混合物は、車両用タイヤ、特に空気式車両用タイヤにおける使用に特に好適である。原則として、すべてのタイヤ構成要素、特に外側構成要素、特に好ましくはフランジプロファイル、トレッド及び/又はサイドウォールでの使用が考えられる。キャップ/ベース構造を有するトレッドの場合、本発明によるゴム混合物は、少なくともキャップ内で使用されることが好ましい。
【0151】
車両用タイヤに使用するために、加硫前の完成混合物としての混合物は、好ましくは外側構成要素の対応する形状にされ、グリーン車両用タイヤの製造中に既知の方法で適用される。
【0152】
車両用タイヤにおける任意の他の物体混合物として使用するための本発明によるゴム混合物の製造は、上述のように実施される。混合物の押出し成形操作/カレンダ加工後の成形に違いが存在する。このように得られた、1つ以上の異なる本体混合物用のまだ加硫されていないゴム混合物の形状が、次いで、グリーンタイヤの製造に供される。
【0153】
ここで、「本体混合物」とは、基本的にスキージ、内側ライナ(内側層)、コアプロファイル、ベルト、ショルダー、ベルトプロファイル、カーカス、ビード補強、ビードプロファイル、フランジプロファイル及びバンデージなどのタイヤの内側構成要素のためのゴム混合物を指す。
【0154】
まだ加硫されていないグリーンタイヤがその後加硫される。
【0155】
駆動ベルト及び他のベルト、特にコンベヤベルトにおける本発明のゴム混合物の使用のために、押し出しされた、まだ加硫されていない混合物が適切な形状とされ、度々、同時に、又は、その後、補強部材、例えば合成繊維又はスチールコードが設けられる。これにより、通常、ゴム混合物の1つ及び/又はそれ以上のプライ、同等及び/又は異なる補強部材の1つ及び/又はそれ以上のプライ、並びに、同一及び/又は他のゴム混合物の1つ及び/又はそれ以上のさらなるプライからなるマルチプライ構造が得られる。
【0156】
本発明はさらに、少なくとも1つの構成要素中に本発明に係る化合物を含有する本発明に係るゴム混合物を含む車両用タイヤを提供する。
【0157】
少なくとも1つの構成要素中の加硫車両用タイヤは、本発明の少なくとも1つのゴム混合物の加硫物を含む。存在する大部分の物質、例えばゴムは、混合後に既に存在するか、又は加硫後にのみ化学修飾形態で存在し得ることが当業者に知られている。
【0158】
本発明の文脈において、「車両用タイヤ」は、産業用タイヤ、並びに、建設現場用車両、トラック、車及び二輪車両用タイヤを含む、空気式車両用タイヤ及び固体ゴムタイヤを意味するものとして理解されるべきである。
【0159】
本発明に係る車両用タイヤが少なくとも1つの外部構成要素中に本発明に係るゴム混合物を含み、ここで、外部構成要素は、好ましくは、トレッド、サイドウォール及び/又はフランジプロファイルである場合が好ましい。
【0160】
したがって、本発明による車両用タイヤは、式I)、特に式II)及び/又はIII)の本発明の化合物を含む本発明によるゴム混合物を、複数の構成要素中に、任意選択的に適合組成物中に含んでもよい。
【実施例】
【0161】
以下に、実施例を参照して、ここで本発明をより具体的に明確にする。
【0162】
式I)の化合物の好ましい実施形態としての式II)の化合物を以下のようにして製造した。
【0163】
欧州特許第1571142号明細書に記載されており、式XI)の反応スキームに短縮形で示されている、物質2-フェニル-5-ニトロ-1H-インドールを最初に合成した:
【化10】
(式中、周知のように、KNO
3は硝酸カリウムを表し、H
2SO
4は硫酸を表す)。
【0164】
その後、以下に示すように、2-フェニル-5-アミノ-1H-インドールをそこから合成した:
【化11】
【0165】
テフロンライナーを取り付けたステンレススチール製オートクレーブに、2-フェニル-5-ニトロ-1H-インドール1.50g(6.30mmol、1当量)、パラジウム炭素(Pd/C)(5%)(基材4.67mmolに0.4g)0.53g及び無水エタノール20.0mlを秤量した。続いて、反応混合物を1.5barの圧力で水素(H2)に供し、室温(RT)で12時間撹拌した。反応が終了すると、過剰の水素が放出され、懸濁液をCelite(登録商標)を通して濾過し、エタノールで洗浄した。濾液を蒸発乾固させ、少量のジクロロメタン(DCM)でスラリー化した。固体を濾過し、少量のDCMで洗浄し、真空下で乾燥させた。灰色から淡褐色の固体が得られた。収量0.75g(理論値の57%)。
1H-NMR(核磁気共鳴)(500MHz、DMSO-d6)δ=11.02(s,1H)、7.79(d,J=7.0Hz,2H)、7.42(t,J=7.8Hz,2H)、7.26(t,J=7.4Hz,1H)、7.10(d,J=8.5Hz,1H)、6.67(d,J=2.0Hz,1H)、6.62(d,J=2.0Hz,1H)、4.47(s,2H)。
ESI-MS(エレクトロスプレーイオン化質量分析)[M+H]+=209。
【0166】
その後、この化合物を使用して、標的化合物2-フェニル-5-(1,3-ジメチルブチルアミノ)-1H-インドール(式IIの化合物)を以下の式XIIIに示すように合成した:
【化12】
【0167】
テフロンライナーを取り付けたステンレススチール製オートクレーブに、2-フェニル-5-アミノ-1H-インドール、0.35g(2.34mmol、1当量)、パラジウム炭素(5%)(4.67mmolの基板上に0.4g)0.18g及びメチルイソブチルケトン(MIBK)20.0mlを秤量した。その後、反応混合物を20barの圧力で水素に供し、60℃で10時間攪拌した。反応が終了すると、過剰の水素が放出され、懸濁液をCelite(登録商標)を通して濾過し、エタノールで洗浄した。濾液を蒸発乾固させ、真空下で乾燥させた。98%の純度が達成された。不十分な純度の場合、物質は、シクロヘキサンからの結晶化(好ましくは)又はシリカゲル上での結晶化(シクロヘキサン/EE(酢酸エチル)10:1)によって精製され得る。灰色がかった~紫色の固体;カラムクロマトグラフィー後に0.42g(理論値の85%)又は後処理なしで0.48g(理論値の98%)を得る。
1H-NMR(500MHz,DMSO-d6)δ=11.03(s,1H)、7.79(d,J=7.1Hz,2H)、7.42(t,J=7.8Hz,2H)、7.26(t,J=7.4Hz,1H)、7.13(d,J=8.6Hz,1H)、6.65(d,J=1.3Hz,1H)、6.60(d,J=2.2Hz,1H)、6.54(dd,J=8.7,2.1Hz,1H)、4.56(d,J=8.9Hz,1H)、3.44(dq,J=8.6,6.4Hz,1H)、1.78(dp,J=13.5,6.7Hz,1H)、1.49(dt,J=13.8,7.0Hz,1H)、1.22(dt,J=13.5,6.9Hz,1H)、1.10(d,J=6.1Hz,3H)、0.94(d,J=6.7Hz,3H)、0.89(d,J=6.6Hz,3H)。
13C-NMR(126MHz,DMSO-d6)δ=142.6、137.4、133.2、131.1、130.0、129.2、127.3、125.0、113.0、112.1、100.9、98.2、46.9、46.7、25.1、23.4、23.1、21.3。
ESI-MS[M+H]+=293。
融点:125℃。
【0168】
100℃以上、特に120℃以上、特に120℃~200℃、例えば120℃の温度で、水素化生成物として形成され、カラムクロマトグラフィーによって分離することができるのは特に同様に本発明の式III)の化合物である。
【0169】
これは、2-シクロヘキシル-5-(1,3-ジメチルブチルアミノ)-1H-インドール:
【化13】
である。
1H-NMR(500MHz,DMSO-d6)δ=10.33(s,1H)、6.98(d,J=8.4Hz,1H)、6.52(d,J=2.1Hz,1H)、6.40(dd,J=8.4,2.1Hz,1H)、5.85(s,1H)、4.34(d,J=8.5Hz,1H)、3.43-3.36(m,1H)、2.67-2.57(m,1H)、2.02-1.95(m,2H)、1.82-1.66(m,4H)、1.49-1.14(m,7H)、1.06(d,J=6.2Hz,3H)、0.91(d,J=6.6Hz,3H)、0.87(d,J=6.6Hz,3H)。
13C-NMR(126MHz,DMSO-d6)δ=145.38、142.01、129.69、129.45、111.36、110.85、101.47、95.68、47.12、46.72、37.33、33.05、26.36、26.23、25.06、23.37、23.06、21.29。
ESI-MS[M+H]
+=299。
【0170】
或いは、式XIV)に示すように、2-フェニル-5-ニトロ-1H-インドールから直接式I)の化合物の実施形態として式II)の本発明の化合物を合成することが可能である:
【化14】
【0171】
テフロンライナーを取り付けたステンレススチール製オートクレーブに、2-フェニル-5-ニトロ-1H-インドール0.50g(2.01mmol、1当量)、活性炭担持白金(Pt/C)(5%)(4.67mmolの基板上に0.4g)0.17g及びメチルイソブチルケトン20.0mlを秤量した。その後、反応混合物を20barの圧力で水素に供し、60℃で10時間攪拌した。反応が終了すると、過剰の水素が放出され、懸濁液をCelite(登録商標)を通して濾過し、エタノールで洗浄した。濾液を蒸発乾固させ、真空下で乾燥させた。灰色から紫色の固体;収量0.57g(理論値の92%)。
1H-NMR(500MHz,DMSO-d6)δ=11.03(s,1H)、7.79(d,J=7.1Hz,2H)、7.42(t,J=7.8Hz,2H)、7.26(t,J=7.4Hz,1H)、7.13(d,J=8.6Hz,1H)、6.65(d,J=1.3Hz,1H)、6.60(d,J=2.2Hz,1H)、6.54(dd,J=8.7,2.1Hz,1H)、4.56(d,J=8.9Hz,1H)、3.44(dq,J=8.6,6.4Hz,1H)、1.78(dp,J=13.5,6.7Hz,1H)、1.49(dt,J=13.8,7.0Hz,1H)、1.22(dt,J=13.5,6.9Hz,1H)、1.10(d,J=6.1Hz,3H)、0.94(d,J=6.7Hz,3H)、0.89(d,J=6.6Hz,3H)。
13C-NMR(126MHz,DMSO-d6)δ=142.6、137.4、133.2、131.1、130.0、129.2、127.3、125.0、113.0、112.1、100.9、98.2、46.9、46.7、25.1、23.4、23.1、21.3。
ESI-MS[M+H]+=293。
【0172】
式III)の化合物は、類似の様式で、上記スキームXV)に従って高収率で合成することができた。2-シクロヘキシル-5-ニトロ-1H-インドールを最初に生成し、次いでこれを以下の様式で、スキームXV-2)に要約するように反応させ、式III)の化合物(2-シクロヘキシル-5-(1,3-ジメチルブチルアミノ)-1H-インドール)を得た。
【化15】
【0173】
テフロンライナーを取り付けたステンレススチール製オートクレーブに、2-シクロヘキシル-5-ニトロ-1H-インドール5.75g(23.54mmol、1当量)、活性炭担持白金(5%)(4.67mmolの基板上に0.4g)2.00g及びメチルイソブチルケトン50.0mlを秤量した。その後、反応混合物を20barの圧力で水素に供し、60℃で10時間攪拌した。反応が終了すると、過剰の水素が放出され、懸濁液をCelite(登録商標)を通して濾過し、エタノールで洗浄した。濾液を蒸発乾固させ、真空下で乾燥させた。次いで、これを精製のためにシクロヘキサンから結晶化させた。灰色がかった固体;上記の1H-NMR、13C-NMRデータ及び表示質量を有する6.10g(理論値の87%)を得る。
【0174】
酸化誘導時間(OIT)の測定
式II)及びIII)の化合物を、酸化誘導時間の測定によって老化安定剤としての潜在的な保護効果について実験室条件下で調査した。
【0175】
この目的のために、式II)及びIII)の化合物並びに6-PPDを、それぞれの場合においてポリマー(液状合成ポリイソプレン(IR)、LIR-50、Kuraray、重量平均分子量分布Mw=54000g/mol、ガラス転移温度Tg=-63℃)と共に、酸化の開始まで一定温度(180℃)で加熱した(開始温度35℃、20K/分(ケルビン/分)の加熱速度で170℃まで加熱し、1K/分の加熱速度で180℃まで加熱;パージガス:窒素(N2)、体積流量50ml/分)。試験片をN2雰囲気下、180℃で5分間等温維持し、次いで、雰囲気をO2雰囲気に切り替えた(体積流量50ml/分)。
【0176】
DSC(示差走査熱量測定)を使用してピークを介して酸化を決定した。
【0177】
酸化までの時間(分)を測定した。
【0178】
既知の老化安定剤6-PPDと比較した結果を表1に要約する。
【0179】
【0180】
±(プラス/マイナス)10分の測定精度を考慮すると、式II)の化合物がより健康に有害な化合物6-PPDの適切な代替物であることは明らかである。式III)の化合物は、酸素によるポリマーの分解までの時間が延長されるため、著しく良好な保護効果さえ達成する。
【0181】
車両用タイヤ用のゴム混合物に使用するために、式I)、例えば式II)及び/又はIII)の本発明の化合物は、例えば6PPD、7PPD又はIPPDなどの当業者に公知の老化安定剤の代わりに、当業者に公知の方法で、ゴム混合物の製造中の混合ステージの1つで添加される。
【0182】
したがって、式II)の化合物を、表2に示すように、本発明による例示的なゴム混合物に組み込んだ。得られた本発明の実施例は、E1とラベル付けされている。
【0183】
比較として役立つのは、老化安定剤として式II)の化合物の代わりに6PPDを含有し、残りの組成は同一であるゴム混合物V1である。表2の量は、phrの単位で表される。
【0184】
混合物は、300ミリリットル~3リットルの体積を有する実験室用ミキサー内で、3段階の標準条件下でゴム産業において慣例のプロセスに従って製造され、最初に第1の混合段階(予備混合段階)において、加硫系以外(硫黄及び加硫影響剤)のすべての構成要素を145℃~165℃、目標温度152℃~157℃で200~600秒間混合した。第2の段階では、第1の段階からの混合物を再度混合した。第3の段階(最終混合段階)において、加硫系を添加すると、最終混合物が得られ、混合は、90℃~120℃で180~300秒かけて実施した。
【0185】
試験片は、160℃~170℃の圧力下で、t95~t100(ASTM D 5289-12/ISO 6502に従って移動型ダイレオメータを使用して測定)後に加硫することによってすべての混合物から製造した。
【0186】
また、V1とE1の両方の試験片の一部を老化させた(空気中で70℃、28日間)。
【0187】
すべての試験片について、ゴム産業に典型的な以下の材料特性を決定した:
・ ISO 4662又はASTM D 1054による室温(RT)での反発弾性
・ DIN 53 504による300%伸長(M 300)及び室温(RT)での破断伸びにおける応力値
V1及びE1について、未老化サンプルと老化サンプルの値の差を決定した。
【0188】
V1について得られた値は、各場合において、参照のために100%に正規化された。
【0189】
E1について得られた値(未老化と老化との間の差)は、このそれぞれのV1基準に対して性能%として報告され、100%を超える値が有利である。
【0190】
表2から明らかなように、式I)の化合物の代表としての式II)の本発明の化合物は、300%伸長時の応力値(300モジュラス)、破断伸び及び反発弾性などの重要な特性がそれぞれの場合において老化後のV1よりもE1の方が高いレベルであることから、改善された老化安定化をもたらす。
【0191】
【手続補正書】
【提出日】2024-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0191
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0191】
【表2】
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.式I):
【化16】
(式中、R
1
は、
xi)芳香族ラジカルであって、ハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル及びチオエーテルラジカルからなる群から選択される置換基を有していてもよい芳香族ラジカル、
並びにxii)直鎖、分枝鎖及び環状の脂肪族C
1
~C
12
ラジカル、
並びにxiii)芳香族及び脂肪族C
1
~C
12
ラジカルの組合せ
からなる群から選択され;
R
2
は、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよい直鎖、分枝鎖及び環状、飽和及び不飽和の脂肪族C
1
~C
12
ラジカル、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよいアリールラジカル、ハロゲンラジカルであって、フッ素、臭素及び塩素が好ましいハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル並びにチオエーテルラジカルからなる群から選択され;
mは、0又は1又は2又は3の値をとり、mが2又は3である場合、ラジカルR
2
は互いに独立して同一であるか又は異なり;並びに
R
3
は、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよい直鎖、分枝鎖及び環状、飽和及び不飽和の脂肪族C
1
~C
12
ラジカル、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよいアリールラジカル、ハロゲンラジカルであって、フッ素、臭素及び塩素が好ましいハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル並びにチオエーテルラジカルからなる群から選択され、nは値0又は1をとる)
の化合物。
2.nが1であり、R
3
が1~10個の炭素原子を有する脂肪族基及び芳香族基から選択されることを特徴とする、上記1に記載の化合物。
3.nが1であり、R
3
が5~10個の炭素原子を有する環状の飽和又は不飽和の脂肪族又は環状芳香族ラジカルであることを特徴とする、上記1又は2に記載の化合物。
4.R
1
が第3級炭素原子を介して窒素原子(N)に結合していることを特徴とする、上記1~3のいずれか一項に記載の化合物。
5.R
1
が3~12個の炭素原子、好ましくは3~8個の炭素原子を有する分枝鎖アルキルラジカルであることを特徴とする、上記1~4のいずれか一項に記載の化合物。
6.R
1
が、1,3-ジメチルブチルラジカル及びシクロヘキシルラジカルから選択され、R
1
が好ましくは1,3-ジメチルブチルラジカルであることを特徴とする、上記1~5のいずれか一項に記載の化合物。
7.mが0(ゼロ)であることを特徴とする、上記1~6のいずれか一項に記載の化合物。
8.R
3
が、フェニルラジカル及びシクロヘキシルラジカルから選択されることを特徴とする、上記1~7のいずれか一項に記載の化合物。
9.式II):
【化17】
の構造を有することを特徴とする、上記1~8のいずれか一項に記載の化合物。
10.式III):
【化18】
の構造を有することを特徴とする、上記1~8のいずれか一項に記載の化合物。
11.特に、空気ばね、ベローズ、コンベヤベルト、ベルト、駆動ベルト、ホース、ゴムバンド、プロファイル、シール、メンブラン、医療用途若しくはロボット用触感センサー、又は、靴底若しくはその一部、並びに/又は、油及び/若しくは潤滑剤などの特に車両用タイヤ又は技術的ゴム物品における、老化安定剤及び/又はオゾン分解防止剤としての、上記1~10のいずれか一項に記載の化合物の使用。
12.繊維及び/又はポリマー及び/又は紙及び/又は(装飾用)塗料及びコーティング中の染料としての、上記1~10のいずれか一項に記載の化合物の使用。
13.式I)の化合物を製造するためのプロセスであって、以下のプロセスステップ:
a)式A)の化合物を提供するステップ
【化19】
b)任意選択的に、式A)の化合物を水素と反応させて、式B)
【化20】
の化合物を得るステップ
c)式A)又は式B)の化合物を水素又は水素化試薬及びケトン又はアルデヒド、好ましくはケトンと反応させて、式I)
【化21】
の化合物を得るステップ
(式中、R
1
は、
xi)芳香族ラジカルであって、ハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル及びチオエーテルラジカルからなる群から選択される置換基を有していてもよい、芳香族ラジカル、
並びにxii)直鎖、分枝鎖及び環状の脂肪族C
1
~C
12
ラジカル、
並びにxiii)芳香族及び脂肪族C
1
~C
12
ラジカルの組合せ
からなる群から選択され;
R
2
は、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよい直鎖、分枝鎖及び環状、飽和及び不飽和の脂肪族C
1
~C
12
ラジカル、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよいアリールラジカル、ハロゲンラジカルであって、フッ素、臭素及び塩素が好ましいハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル並びにチオエーテルラジカルからなる群から選択され;
mは、0又は1又は2又は3の値をとり、mが2又は3である場合、ラジカルR
2
は互いに独立して同一であるか又は異なり;並びに
R
3
は、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよい直鎖、分枝鎖及び環状、飽和及び不飽和の脂肪族C
1
~C
12
ラジカル、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよいアリールラジカル、ハロゲンラジカルであって、フッ素、臭素及び塩素が好ましいハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル並びにチオエーテルラジカルからなる群から選択され、nは値0又は1をとる)を含む、プロセス。
14.ステップc)における水素及び前記アルデヒド又はケトン、好ましくはケトンとの反応が、水素化触媒を使用して50℃~70℃の温度で行われ、反応混合物が15~25barの圧力で水素に供され、前記反応がオートクレーブ又は別の圧力反応器内で行われることを特徴とする、上記13に記載のプロセス。
15.上記1~10のいずれか一項に記載の化合物を含有するゴム混合物であって、
好ましくは、特に好ましくは、天然ポリイソプレン(NRゴム)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(SSBR)、乳化重合スチレンブタジエンゴム(ESBR)、ブチルゴム(IIR)及びハロブチルゴムからなる群から選択される少なくとも1つのジエンゴムを含む、ゴム混合物。
16.上記15に記載のゴム混合物を、少なくとも1つの構成要素、好ましくは少なくとも1つの外側構成要素に含み、前記外側構成要素が、好ましくはトレッド、側壁及び/又はフランジプロファイルである、車両用タイヤ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I):
【化1】
(式中、R
1は、
xi)芳香族ラジカルであって、ハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル及びチオエーテルラジカルからなる群から選択される置換基を有していてもよい芳香族ラジカル、
並びにxii)直鎖、分枝鎖及び環状の脂肪族C
1~C
12ラジカル、
並びにxiii)芳香族及び脂肪族C
1~C
12ラジカルの組合せ
からなる群から選択され;
R
2は、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよい直鎖、分枝鎖及び環状、飽和及び不飽和の脂肪族C
1~C
12ラジカル、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよいアリールラジカル、ハロゲンラジカルであって、フッ素、臭素及び塩素が好ましいハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル並びにチオエーテルラジカルからなる群から選択され;
mは、0又は1又は2又は3の値をとり、mが2又は3である場合、ラジカルR
2は互いに独立して同一であるか又は異なり;並びに
R
3は、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよい直鎖、分枝鎖及び環状、飽和及び不飽和の脂肪族C
1~C
12ラジカル、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよいアリールラジカル、ハロゲンラジカルであって、フッ素、臭素及び塩素が好ましいハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル並びにチオエーテルラジカルからなる群から選択され、nは値0又は1をとる)
の化合物。
【請求項2】
nが1であり、R
3が1~10個の炭素原子を有する脂肪族基及び芳香族基から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
nが1であり、R
3が5~10個の炭素原子を有する環状の飽和又は不飽和の脂肪族又は環状芳香族ラジカルであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
R
1が第3級炭素原子を介して窒素原子(N)に結合していることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の化合物。
【請求項5】
R
1が3~12個の炭素原子、好ましくは3~8個の炭素原子を有する分枝鎖アルキルラジカルであることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の化合物。
【請求項6】
R
1が、1,3-ジメチルブチルラジカル及びシクロヘキシルラジカルから選択され、R
1が好ましくは1,3-ジメチルブチルラジカルであることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の化合物。
【請求項7】
mが0(ゼロ)であることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の化合物。
【請求項8】
R
3が、フェニルラジカル及びシクロヘキシルラジカルから選択されることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の化合物。
【請求項9】
式II):
【化2】
の構造を有することを特徴とする、請求項1
又は2に記載の化合物。
【請求項10】
式III):
【化3】
の構造を有することを特徴とする、請求項1
又は2に記載の化合物。
【請求項11】
特に、空気ばね、ベローズ、コンベヤベルト、ベルト、駆動ベルト、ホース、ゴムバンド、プロファイル、シール、メンブラン、医療用途若しくはロボット用触感センサー、又は、靴底若しくはその一部、並びに/又は、油及び/若しくは潤滑剤などの特に車両用タイヤ又は技術的ゴム物品における、老化安定剤及び/又はオゾン分解防止剤としての、請求項1
又は2に記載の化合物の使用。
【請求項12】
繊維及び/又はポリマー及び/又は紙及び/又は(装飾用)塗料及びコーティング中の染料としての、請求項1
又は2に記載の化合物の使用。
【請求項13】
式I)の化合物を製造するためのプロセスであって、以下のプロセスステップ:
a)式A)の化合物を提供するステップ
【化4】
b)任意選択的に、式A)の化合物を水素と反応させて、式B)
【化5】
の化合物を得るステップ
c)式A)又は式B)の化合物を水素又は水素化試薬及びケトン又はアルデヒド、好ましくはケトンと反応させて、式I)
【化6】
の化合物を得るステップ
(式中、R
1は、
xi)芳香族ラジカルであって、ハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル及びチオエーテルラジカルからなる群から選択される置換基を有していてもよい、芳香族ラジカル、
並びにxii)直鎖、分枝鎖及び環状の脂肪族C
1~C
12ラジカル、
並びにxiii)芳香族及び脂肪族C
1~C
12ラジカルの組合せ
からなる群から選択され;
R
2は、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよい直鎖、分枝鎖及び環状、飽和及び不飽和の脂肪族C
1~C
12ラジカル、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよいアリールラジカル、ハロゲンラジカルであって、フッ素、臭素及び塩素が好ましいハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル並びにチオエーテルラジカルからなる群から選択され;
mは、0又は1又は2又は3の値をとり、mが2又は3である場合、ラジカルR
2は互いに独立して同一であるか又は異なり;並びに
R
3は、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよい直鎖、分枝鎖及び環状、飽和及び不飽和の脂肪族C
1~C
12ラジカル、1つ以上のハロゲン置換基を有していてもよいアリールラジカル、ハロゲンラジカルであって、フッ素、臭素及び塩素が好ましいハロゲンラジカル、シアノラジカル、エステルラジカル、ケトンラジカル、エーテルラジカル並びにチオエーテルラジカルからなる群から選択され、nは値0又は1をとる)を含む、プロセス。
【請求項14】
ステップc)における水素及び前記アルデヒド又はケトン、好ましくはケトンとの反応が、水素化触媒を使用して50℃~70℃の温度で行われ、反応混合物が15~25barの圧力で水素に供され、前記反応がオートクレーブ又は別の圧力反応器内で行われることを特徴とする、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
請求項1
又は2に記載の化合物を含有するゴム混合物であって、
好ましくは、特に好ましくは、天然ポリイソプレン(NRゴム)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(SSBR)、乳化重合スチレンブタジエンゴム(ESBR)、ブチルゴム(IIR)及びハロブチルゴムからなる群から選択される少なくとも1つのジエンゴムを含む、ゴム混合物。
【請求項16】
請求項15に記載のゴム混合物を、少なくとも1つの構成要素、好ましくは少なくとも1つの外側構成要素に含み、前記外側構成要素が、好ましくはトレッド、側壁及び/又はフランジプロファイルである、車両用タイヤ。
【国際調査報告】