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特表2024-529399液体組成物中の汚染物質を除去するためのプロセスおよび製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】液体組成物中の汚染物質を除去するためのプロセスおよび製品
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/26 20060101AFI20240730BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20240730BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 31/49 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 33/06 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B01J20/26 E
B01J20/30
B01D15/00 N
A61P29/00
A61K31/192
A61K31/49
A61P33/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503715
(86)(22)【出願日】2022-07-18
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 US2022037501
(87)【国際公開番号】W WO2023003823
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】63/223,418
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
2.パイレックス
(71)【出願人】
【識別番号】524025288
【氏名又は名称】ヌマット テクノロジーズ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】NUMAT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】8025 Lamon Avenue, Skokie, Illinois 60077 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】トム,グレン マクファーソン
(72)【発明者】
【氏名】ニコルズ,ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】ウェストン,ミッチェル ヒュー
(72)【発明者】
【氏名】フェルミューレン,ニコラース
(72)【発明者】
【氏名】リナオロ,ヴィンセント
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
4D017
4G066
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA10
4C086CB17
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB37
4C206AA01
4C206AA10
4C206DA24
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZB11
4D017AA01
4D017BA13
4D017CA13
4D017CB01
4D017DA01
4G066AA47B
4G066AB07B
4G066AB10B
4G066AB12B
4G066AB13B
4G066AB15B
4G066AB16B
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA24
4G066BA25
4G066BA36
4G066CA20
4G066CA46
4G066DA07
4G066FA11
4G066FA37
4G066FA40
(57)【要約】
医薬品有効成分(原薬、API)を含む供給流から不純物を除去するための官能性ポリマー
吸着剤であり、この吸着剤は1つ以上の汚染物質を結合することができる少なくとも1つの
官能基で官能化された粒子を含み、ポリマーはマイクロレティキュラーポリマーである。
またこの官能性ポリマー吸着剤は少なくとも0.65cm3/gの細孔容積を有する。また、この
吸着剤は2,4,6,-ジメルカプトトリアジン-エチレンジチオール(DMT-EDT)付加物、2,4,6,-
トリメルカプトトリアジン-エチレンジチオール(TMT-EDT)付加物、またはそれらの組み合
わせのいずれかで官能化されたポリマーから構成でき、ポリマーはマイクロレティキュラ
ーポリマーまたは膨潤性ポリマーのいずれかで構成できる。吸着剤は原薬含有供給流から
汚染物質を除去するための連続またはバッチ(一括)プロセスで使用することができ、汚
染物質は元素不純物、特にパラジウムを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの汚染物質を含む液体組成物中の少なくとも1つの汚染物質の濃度を低減す
るためのプロセス(工程)であって、以下を含むもの。
前記液体組成物を精製条件下で吸着剤と接触させて、少なくとも1つの汚染物質の少なく
とも一部を吸着させる工程。ここで吸着剤は、1つ以上の汚染物質を結合することができ
る少なくとも1つの官能基で官能化された高分子ポリマーの粒子を含み、吸着剤は、少な
くとも0.65cm3/gの細孔容積を有することを特徴とするもの。
【請求項2】
請求項1の工程で、 前記液体組成物が医薬活性成分の製造工程における組成物であるも
の。
【請求項3】
請求項1の工程で、前記液体組成物が医薬有効成分またはその前駆体を含むもの。
【請求項4】
請求項1の工程で、前記少なくとも1つの汚染物質が、ICH Q3D(R1)ガイドラインのクラス
1、クラス2A、クラス2B、クラス3の元素から選ばれる元素不純物であるもの。
【請求項5】
請求項4の工程で、吸着剤が液体組成物中の元素状不純物の量を結合して回収した上で、
その原薬中の元素状不純物の濃度が許容一日暴露量(PDE)以下となるようにすることを
特徴とするもの。
【請求項6】
請求項1の工程で、ここで、前記少なくとも1つの官能基は、システアミン、2,4,6,-
トリメルカプトトリアジン(TMT)、2,4,6,-ジメルカプトトリアジン(DMT)、 2,4,6
,-ジメルカプトトリアジン-エタンジチオール(DMT-EDT)付加体、2,4,6,-トリメルカプ
トトリアジン-エタンジチオール(TMT-EDT)付加体、チオグリコール酸(TGA)、 チオ尿
素、4-メルカプトピリジン、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOT
A)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、チオ硫酸(TS)、メルカプトメチルホスホン酸
(MPA)、トリメルカプトトリアジン-メチル-ホスホン酸(TMT-PA)、および前述のいず
れかの混合物から選択されることを特徴とするもの。
【請求項7】
請求項1の工程で、前記官能基化マイクロレティキュラーポリマー吸着剤粒子は、約50~
150ミクロンの範囲の粒度分布D90を有するもの。
【請求項8】
請求項1の工程で、前記吸着剤粒子が150ミクロン未満の平均粒径を有するもの。
【請求項9】
1つ以上の汚染物質を結合することができる少なくとも1つの官能基で官能基化された高
分子ポリマーの粒子を含む吸着剤であって、当該吸着剤の粒子は少なくとも0.65cm3/gの
細孔容積を有する吸着剤であるもの。
【請求項10】
請求項9の吸着剤で、前記マイクロレティキュラーポリマーが69A~110Aの平均細孔径を
有することを特徴とするもの。
【請求項11】
請求項9の吸着剤で、吸着剤粒子がD50が200A未満である孔径分布を有するもの。
【請求項12】
請求項9の吸着剤で、前記の少なくとも1つの官能基が、システアミン、2,4,6,-トリ
メルカプトトリアジン(TMT)、2,4,6,-ジメルカプトトリアジン(DMT)、 2,4,6,-
ジメルカプトトリアジン-エタンジチオール(DMT-EDT)付加体、2,4,6,-トリメルカプト
トリアジン-エタンジチオール(TMT-EDT)付加体、チオグリコール酸(TGA)、 チオ尿素
、4-メルカプトピリジン、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA
)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、チオ硫酸(TS)、メルカプトメチルホスホン酸(
MPA)、トリメルカプトトリアジン-メチル-ホスホン酸(TMT-PA)、および前述のいずれ
かの混合物から選択されるもの。
【請求項13】
請求項9の吸着剤で、前記官能基化マイクロレティキュラーポリマー吸着剤粒子が約50~
150ミクロンの範囲の粒度分布D90を有するもの。
【請求項14】
アルケン基を含むポリマーを官能化する方法であって、以下の工程を含む手法。
前記ポリマーを、チオール基および連結基からなる第1の反応物と反応させる工程であり
、第1の反応物のチオール基がチオール-エン反応においてポリマーのアルケン基と反応し
て、前記ポリマーと前記連結基との間にチオエーテル結合を形成する工程および
ステップa.の生成物を、アリール基またはヘテロアリール基からなる第2の反応物と反応
させる工程であって、前記アリール基またはヘテロアリール基は置換または非置換であり
、前記第2の反応物を連結基に結合させる工程および
ステップb.の生成物を、官能性部位を有する第3の反応剤と反応させるステップであって
、前記第3の反応剤が前記第2の反応剤に結合して前記官能性部位を連結し、それにより前
記ポリマーを前記官能性部位で官能化するもの。
【請求項15】
請求項14の手法で、ステップc)の反応により前記トリアジン基に連結された前記官能基
がチオール基を含むもの。
【請求項16】
請求項14の手法で、前記の第3の反応物がスルフィド塩およびポリチオール化アルカンか
ら選択されるもの。
【請求項17】
2,4,6,-ジメルカプトトリアジン-エタンジチオール(DMT-EDT)付加物、2,4,6,-トリメル
カプトトリアジン-エタンジチオール(TMT-EDT)付加物、またはそれらの組み合わせから
選択される少なくとも1つの官能基で官能化されたポリマーの粒子を含む吸着剤であって
、前記ポリマーが膨潤性ポリマーおよびマイクロレティキュラーポリマーから選択するこ
とを特徴とするもの。
【請求項18】
請求項17の吸着剤で前記ポリマーがマイクロレティキュラーポリマーであるもの。
【請求項19】
請求項17の吸着剤で前記ポリマーは膨潤性ポリマーであるもの。
【請求項20】
少なくとも1つの汚染物質を含む液体組成物中の少なくとも1つの汚染物質の濃度を低減す
るためのプロセスであって、以下を含むもの。
前記液体組成物を精製条件下で吸着剤と接触させて、前記少なくとも1つの汚染物質の少
なくとも一部を吸着させる工程 であり、以下を含むもの。吸着剤が、2,4,6,-ジメル
カプトトリアジン-エタンジチオール(DMT-EDT)付加物、2,4,6,-トリメルカプトトリ
アジン-エタンジチオール(TMT-EDT)付加物、および前述のいずれかの混合物から選択さ
れる少なくとも1つの官能基で官能化されたポリマーの粒子を含むものであり、このとき
ポリマーが、膨潤性ポリマーおよび高分子ポリマーから選択されるもの。
【請求項21】
請求項20の工程で、ポリマーはマイクロレティキュラーポリマーであるもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本特許出願は、2021年7月19日に出願された米国仮特許出願番号63/223,418の元での優先
権を主張するものである。
発明の分野
本発明は、一般的には液体組成物からの汚染物質の除去に使用される官能基高分子吸収剤
およびその使用方法関連するものである。より具体的には、原薬(API)の処理工程にお
いて元素の不純物などの汚染物質を除去するための官能基高分子(ポリマー)吸収剤およ
びその使用方法関連するものである
【背景技術】
【0002】
発明の背景
2019年3月、医薬品規制調和国際会議(International Council for Harmonization of Te
chnical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use)は、医薬品中の元素不純物
に関するガイドラインQ3D(R1)を発表した。このガイドラインは、医薬品に許容される元
素不純物のレベルを規定している。元素は許容一日暴露量(PDE)に基づいて3つのクラス
に分けられている。クラス1は、As、Cd、Hg、Pbの金属がリストアップされている。これ
らは人体に対する毒性物質であり医薬品または原薬の製造に使用される化学物質中の不純
物として医薬品に含まれる。クラス2はクラス2Aとクラス2Bに分けられる。クラス2AはCo
、V、Niであり、クラス2BはAg、Au、Ir、Os、Pd、Pt、Rh、Ru、Se、Tlである。これらの
元素は原薬の製造に使用されるため、一般的に原薬中に存在する。クラス2Aに分類される
元素はクラス2Bに分類される元素に比べて原薬中に存在する確率が高い。クラス3の元素
はBa、Cr、Cu、Li、Mo、Sb、Snである。クラス3の元素はクラス1または2の元素よりも毒
性が低いと考えられている。
クラス2の元素のほとんどは、原薬の製造の触媒として使用され、原薬の製造後にその濃
度がPDE以下になるように、原薬製造処理において元素を除去しなければならない。元素
不純物を除去するためにこれまで産業界で使用されてきた吸着剤は、シリカ、ポリマーま
たはポリマー繊維をベースとした、元素と結合する官能基を結合させたものである。これ
らの官能基には、メルカプタン、アミン(アルキルおよびアリールの両方)などの硫黄ま
たは窒素含有基が含まれる。特定の不純物を除去するために必要な吸着剤の量は非常に多
くなることがあり、また必要な元素不純物濃度の低減を達成するために、原薬溶液を複数
のカラムに通す必要がある場合もある。
また、原薬(API)の製造工程以外の液体組成物から元素不純物やその他の汚染物質を除去
することが必要、または望ましい場合も多い。
【発明の概要】
【0003】
発明の概要
この必要性を満たすため、ある実施形態では、1つまたは複数の汚染物質を結合できる少
なくとも1つの官能基で官能化されたマイクロレティキュラー樹脂ポリマーを含む吸着剤
を開発している。この吸着剤の細孔の容積は少なくとも0.65 cm3/gである。
ある実施形態では、官能基大網状高分子吸着剤の細孔は、少なくとも0.65cm3/gの細孔容
積および150ミクロン未満の平均粒径を有する。
別の実施形態では、吸着剤の細孔は、約50~150ミクロンの範囲の粒度分布D90を有する。
ある実施形態では、吸着剤の細孔は、少なくとも0.65cm3/gの容積および300m2/gを超える
BET表面積を有する。
ある実施形態では、吸着剤の細孔は、少なくとも0.65cm3/gの容積およびD50が200A未満で
ある細孔径分布を有する。
ある実施形態では、少なくとも1つの官能基の部位には、システアミン、2,4,6,-トリ
メルカプトトリアジン(TMT)、2,4,6,-ジメルカプトトリアジン(DMT)、 2,4,6,-
ジメルカプトトリアジン-エタンジチオール(DMT-EDT)付加体、2,4,6,-トリメルカプト
トリアジン-エタンジチオール(TMT-EDT)付加体、チオグリコール酸(TGA)、 チオ尿素
、4-メルカプトピリジン、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA
)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、チオ硫酸(TS)、メルカプトメチルホスホン酸(
MPA)、トリメルカプトトリアジン-メチル-ホスホン酸(TMT-PA)、および前述のいずれ
かの混合物を含む。
ある実施形態では、少なくとも1つの官能基の部位には、システアミン、2,4,6,-トリ
メルカプトトリアジン(TMT)、2,4,6,-ジメルカプトトリアジン(DMT)、2、 4,6,-
ジメルカプトトリアジン-エタンジチオール(DMT-EDT)付加体、2,4,6,-トリメルカプト
トリアジン-エタンジチオール(TMT-EDT)付加体、および前述のいずれかの混合物が含ま
れる。
ある実施形態では、少なくとも1つの官能基の部位には、2,4,6,-ジメルカプトトリア
ジン-エタンジチオール(DMT-EDT)付加物、2,4,6,-トリメルカプトトリアジン-エタ
ンジチオール(TMT-EDT)付加物、および前述のいずれかの混合物が使用される。
ある実施形態では、2,4,6,-ジメルカプトトリアジン-エタンジチオール(DMT-EDT)付
加物、2,4,6,-トリメルカプトトリアジン-エタンジチオール(TMT-EDT)付加物、およ
び前述のいずれかの混合物からなる少なくとも1つの官能基の部分を含む高分子吸着剤を
開発した。ある実施形態では、ポリマーは膨潤性ポリマーである。別の実施形態ではは、
ポリマーはマイクロレティキュラーポリマーである。別の実施形態では、高分子ポリマー
をベースとし、2,4,6,-ジメルカプトトリアジン-エタンジチオール(DMT-EDT)付加物、2
,4,6,-トリメルカプトトリアジン-エタンジチオール(TMT-EDT)付加物、および前述のい
ずれかの混合物から選択される少なくとも1つの官能基の部分を有する吸着剤の細孔は、
少なくとも0.65cm3/gの容積を有する。ある実施形態では、細孔は少なくとも0.65cm3/gの
容積、および約50~300ミクロンの範囲、または125~250ミクロンの範囲、または150ミク
ロン未満の範囲の平均粒径を有する。

また、本明細書には、アルケン基を含むポリマーを官能基化する合成方法が開示されてお
り、以下の工程を含む。
前記ポリマーを、チオール基および連結基を含んだ第1の反応物と反応させる工程であっ
て、これにより第1の反応物のチオール基がポリマーのアルケン基と反応して、前記ポリ
マーと前記連結基との間にチオエーテル結合を有する第1の中間体を形成する工程 。
前記第一中間体を、アリール基またはヘテロアリール基からなる第二反応剤と反応させる
。ここで前記アリール基またはヘテロアリール基は置換または非置換であり、前記置換ま
たは非置換のアリール基またはヘテロアリール基が直接または間接的に連結基に結合した
第二中間体を形成する工程。
前記第二中間体を第三反応物と反応させて、前記結合した置換または非置換のアリール基
またはヘテロアリール基を官能基の部位に変え、それにより前記ポリマーを前記官能基の
部位で官能基化するステップ。
ある実施形態では、製造工程における官能基の部分は、1つ以上の汚染物質を結合するこ
とができる。
ある実施形態では、製造工程における官能基の部分は、少なくとも1つのチオール基、少
なくとも1つのチオ基、またはそれらの組み合わせを含む。
別の実施形態では、第2の反応剤はヘテロアリール基からなる。
別の実施形態では、第2の反応体は、置換トリアジン基であるヘテロアリール基を含む。
また、本明細書において開示される内容は、液体組成物中の少なくとも1つの汚染物質の
濃度を低減するためのプロセスであって、当該プロセスは、少なくとも1つの汚染物質の
少なくとも一部を吸着するために、精製条件下で、前記液体組成物を吸着剤と接触させる
ことを含む。ここで当該吸着剤は、1つ以上の汚染物質を結合することができる少なくと
も1つの官能基の部位を有する官能基ポリマーの細孔を含む。このポリマーはマイクロレ
ティキュラーポリマーであり、少なくとも0.65cm3/gの細孔容積を有する。
また本明細書では、液体組成物中の少なくとも1つの汚染物質の濃度を低減するためのプ
ロセスを開示するものであり、前記液体組成物を精製条件下で吸着剤と接触させて、少な
くとも1つの汚染物質の少なくとも一部を吸着させることを含むプロセスを開示するもの
である。 ここで吸着剤は、2,4,6,-ジメルカプトトリアジン-エタンジチオール(DMT-
EDT)付加物、2,4,6,-トリメルカプトトリアジン-エタンジチオール(TMT-EDT)付加
物、および前述のいずれかの混合物から選択される少なくとも1つの官能基で官能基化さ
れたポリマーの粒子を含む。このプロセスの一実施態様では、ポリマーは膨潤性ポリマー
である。ある実施形態では、ポリマーはマイクロレティキュラーポリマーである。別の実
施形態では、ポリマーはマイクロレティキュラーポリマーであり、官能性ポリマー吸着剤
は少なくとも0.65 cm3/gの細孔容積を有する。 別の実施形態では吸着剤の細孔は、 2,
4,6-ジメルカプトトリアジン-エタンジチオール(DMT-EDT)付加物、2,4
,6-トリメルカプトトリアジン-エタンジチオール(TMT-EDT)付加物から選択
される少なくとも1つの官能基の部分を有する。 また前述の混合物は、約100~30
0ミクロンの範囲、または125~250ミクロンの範囲の平均粒径を有する。 プロセ
スのある実施形態では、吸着剤粒子は、2,4,6-ジメルカプトトリアジン-エタンジ
チオール(DMT-EDT)付加物、2,4,6-トリメルカプトトリアジン-エタンジ
チオール(TMT-EDT)付加物から選択される少なくとも1つの官能基の部分を有す
る。 また平均粒径は 150 ミクロン未満である。
汚染物質の濃度を低減するプロセスは、様々な実施形態において本明細書に開示される吸
着剤のいずれかを用いて達成している。
本明細書で説明するように、液体組成物を吸着剤と接触させる工程は、バッチプロセス(
一括処理)または連続プロセスのいずれかである。
ある実施形態では、液体組成物は原薬またはその前駆体を含む。
ある実施形態では、液体組成物は原薬の製造プロセスにおける組成物である。
ある実施形態では、液体組成物は原薬の製造プロセスにおける組成物であり、当該組成物
はさらに原薬またはその前駆体を含む。
ある実施形態では、前記少なくとも1つの汚染物質は、 ICH Q3D(R1)ガイドラインのクラ
ス1、クラス2A、クラス2B、およびクラス3の少なくとも1つの元素から選択される
元素不純物である。
ある実施形態では、吸着剤は液体組成物中の元素状不純物の一定の量を結合し、回収した
原薬中の元素状不純物の濃度が許容一日暴露量(PDE)以下となるように計算された濃度
の液体組成物を提供する。
これ以外の実施態様や形態は、以下の詳細な説明を参照することでさらに理解が深まると
考える。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図の簡単な説明
図1】所望の細孔にサイジングした後の実施例1の2種類の吸着剤の等温データを示したもので、市販の2種類の吸着剤と比較したものである
図2図2Aは、細孔のサイズのサイジング前に、実施例1の吸着剤3種の細孔径の増分分布を市販の吸着剤2種と比較して示したものであり、細孔幅の関数としての細孔容積の増分として測定したものである。図2Bは、細孔のサイズのサイジング前に、実施例1の3つの吸着剤の細孔径の増分分布を製造後のポリマーと比較して示しており、細孔幅の関数として細孔容積の増分として測定している。図2Cは、細孔のサイズサイジング前の実施例1の3つの吸着剤の累積細孔径分布を2つの市販吸着剤と比較して示したものであり、細孔幅の関数としての累積細孔容積として測定している。図2Dは、実施例1の細孔のサイズのサイジング前の3つの吸着剤の累積細孔径分布を製造後ポリマーと比較して示すグラフであり、細孔幅の関数として累積細孔容積として測定したものである。
図3】所望の粒径にサイジングした後の実施例1の吸着剤のPd親和性について、市販の2種類の吸着剤と比較して示したグラフである。
図4】80mgの吸着剤および20mgの吸着剤を用いて所望の粒径にサイジングした後の実施例1の吸着剤のPd親和性を示すグラフである。
図5】所望の粒径にサイジングした後の実施例1の吸着剤のPd容量を市販の2種類の吸着剤と比較して示したグラフである。
図6】所望の粒径にサイジングした後の実施例1の吸着剤の吸着速度を市販のシリコン系吸着剤と比較して示したグラフである。
図7】極性溶媒中における、所望の粒径にサイジングした後の実施例1の吸着剤のPd親和力を市販の吸着剤2種と比較して示したグラフである。
図8】医薬品有効成分イブプロフェン存在下での、市販の吸着剤2種と比較した、所望の粒径にサイジングした後の実施例1の吸着剤のPd親和性を示すグラフである。
図9】医薬品有効成分キニーネの存在下で、市販の吸着剤2種と比較した、所望の粒径にサイジングした後の実施例1の吸着剤のPd親和力を示すグラフである。
図10】所望の粒径にサイジングした後の実施例1の吸着剤のCu親和性を、市販の2種類の吸着剤と比較して示したグラフである。
図11】市販の吸着剤と比較した、所望の粒径にサイジングした後の実施例1D、1Eおよび実施例9Bの吸着剤のPd容量を示すグラフである。
図12】実施例11の吸着剤製品の粒度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
発明の詳細
本明細書では、液体組成物から汚染物質を除去するための官能基化高分子吸着剤および吸
着剤を使用するプロセスを開示する。吸着剤およびプロセスは、液体組成物が原薬(API
)を含む溶液またはその流れであり、汚染物質が元素不純物である場合に特に有用である
が、吸着剤およびプロセスはそのような溶液またはその流れ、あるいはそのような元素不
純物に限定されるものではない。また、吸着剤の製造方法も開示する。
本明細書で使用される「除去」および「取り除く」という用語は、組成物中の汚染物質の
濃度が、組成物中の初期濃度と比較して低減されることを意味するが、汚染物質の濃度が
0%に低減されることを必ずしも意味するものではない。
本明細書で使用するC1-C6アルキルという用語は、1~6個の炭素原子を有する飽和アルキ
ル基を意味し、この基は直鎖状、分岐状、または環状であり得る。
「細孔径」、「細孔直径」、「細孔幅」などの用語は、本明細書では同じ意味として使用
する。平均細孔径は、式4V/Aによって決定され、ここでVは測定された細孔容積であり、
Aは測定されたBET重量測定表面積である。ここでVおよびAは両方とも窒素等温線によって
測定される。本明細書で報告される窒素等温線は、Micromeritics社のTristar 3020気孔
率測定器を用いて77Kで測定した。
本明細書で使用する「Yの細孔径分布DX」という用語は、試料の細孔のX%がYより小さい
サイズであることを意味する。例えば、「細孔径分布D50=90A」は、試料中の細孔の50%
が90A未満の細孔径を有することを意味する。
「[数値]の粒度分布DX」という用語は、粒子のX%がその範囲に入ることを意味する。例
えば、「50~150ミクロンの粒度分布D90」は、試料中の粒子の90%が50~150ミクロンの
大きさを有することを意味する。
【0006】
吸着剤
本明細書で開示する吸着剤は、1つ以上の汚染物質を結合することができる少なくとも1つ
の官能基の部分において、リンカー基を介して官能基化されたポリマーの粒子をベースと
しており、この時ポリマーはマイクロレティキュラーポリマーであり、少なくとも0.65cm
3/gの細孔容積を有する。ある実施形態では、吸着剤粒子は150ミクロン未満の平均粒径を
有する。別の実施形態では、吸着剤粒子は、約50~150ミクロンの範囲の粒度分布D90を有
する。
本明細書で使用する高分子ポリマーは、一般に架橋されており、水または有機溶媒に溶解
しない大きな離散孔を有する強靭で硬いスポンジ状の材料である。ある実施形態では、こ
の高分子ポリマーはオレフィン基を有しており、このオレフィン基は、ポリマーの骨格に
取り付けることも、ポリマー骨格内に含めることもできる。ポリスチレンをベースとする
高分子ポリマーもある。高分子ポリマーのある種類は、エチルビニルベンゼンとジビニル
ベンゼンのコポリマーをベースにしている。商業的に入手可能な高分子ポリマーとしては
、デュポン社製のAmberliteRポリマーが挙げられる。ここで開示する吸着剤について適切
なものとして、AmberliteR XAD4およびAmberliteR XAD16が挙げられるがAmberliteRポリ
マーに限定するものではない。ある実施形態において、官能基化前に使用されるマイクロ
レティキュラーポリマーは、DFT変換と結合した窒素取り込み等温線によって測定すると
、10~300Aの範囲の平均細孔直径を有し、100~250Aの範囲にピークを有する。
スターティングポリマーまたはポリマーを官能基化して生成したポリマー吸着剤の窒素等
温線を用いて、ブルナウアー・エメット・テラー(BET)表面積と細孔容積を測定するこ
とができる。吸着剤を形成するための官能基化後の高分子ポリマー粒子は、300m2/gを超
えるBET表面積を有し得る。ある実施形態では、官能基化された高分子ポリマー粒子は、3
50m2/gより大きいか、400m2/gより大きいか、450m2/gより大きいBET表面積を有し得る
。BET表面積は、官能基化の程度、リンカー基のサイズ、および官能基部分のサイズに依
存する。
吸着剤を形成するための官能基化後の高分子ポリマー粒子は、窒素等温線で測定して、0.
65cm3/gより大きいか、0.7cm3/gより大きいか、0.8cm3/gより大きいか、0.9cm3/gより大
きいか、1.0cm3/gより大きい細孔容積を有する。
官能基化後の高分子ポリマー粒子は、20~200A、または50~150A、あるいは60~100Aの範
囲の平均孔径を有する。ある実施形態では、官能基化された多孔性粒子は、D50が200A未
満、または150A未満、あるいは125A未満である細孔径分布(図2Cおよび2D)を有する。別
の実施形態では、D50孔径は、60~140A、または70~130A、あるいは80~120A、または90
~110Aの範囲である。別の実施形態では、官能基化多孔性粒子は、D90が400A未満、また
は350A未満、あるいは325A未満、もしくは300A未満である細孔径分布を有する。ある実施
形態において、D90細孔径は、100~500A、または125~400A、あるいは150~300A、または
150~250Aの範囲である。ある実施形態では、官能基化多孔性粒子は、D10が100A未満、ま
たは80A未満、あるいは60A未満、または40A未満である細孔径分布を有する。別の実施形
態では、D10孔径は10~50A、または15~40A、あるいはは15~30Aの範囲である。
本明細書に開示される官能基化マイクロレティキュラーポリマーの平均粒径は、150ミク
ロン未満、または100ミクロン未満、もしくは50ミクロン未満である。ある実施形態では
、平均粒径は50~150ミクロンの範囲である。別の実施形態では、平均粒径は50~100ミク
ロンの範囲内である。ある実施形態では、平均粒径は100~150ミクロンの範囲である。別
の実施形態では、平均粒径は50ミクロン未満である。こうした粒子径の縮小については、
所望のサイズの粒子を直接官能基化することによって達成できるほか、より大きなサイズ
の粒子を破砕するような技術によって達成することができる。粒径の縮小に続いて、ポリ
マー製品をふるいにかけて、所望の粒径範囲内の粒子を得ることができる。粒子径の縮小
のステップは、ポリマーを官能基部分で官能基化する前でも後でも実施できるが、必要で
あれば、官能基化ステップの前に粒子径を縮小させることが好ましい。
ある実施形態では、官能基化マイクロレティキュラーポリマー吸着剤粒子は、約50~150
ミクロンの範囲の粒度分布D90である。ある実施形態では、官能基化マクロ網目ポリマー
は約70~130ミクロンの範囲の粒度分布D90である。別の実施形態では、官能基化マイクロ
レティキュラーポリマーは約80~120ミクロンの範囲の粒度分布D90である。別の実施形態
では、官能基化マクロ網目状ポリマーは約85~100ミクロンの範囲の粒度分布D90である。
ある実施形態では、官能基化マクロ網目状ポリマーは約20~70ミクロンの範囲の粒度分布
D50である。ある実施形態では、官能基化マイクロレティキュラーポリマーは約30~60ミ
クロンの範囲の粒度分布D50である。ある実施形態では、官能基化マイクロレティキュラ
ーポリマーは約40~50ミクロンの範囲の粒度分布D50である。吸着剤製品中の余分な微粉
は、圧力損失の蓄積およびフィルタの目詰まりを引き起こす可能性のあることから、この
割合を制限するため、ある実施形態ではD50/D10の比は150未満であり、ある実施形態で
は、D50/D10の比は120未満であり、ある実施形態では、D50/D10の比は100未満である。
吸着効率を低下させる可能性のある吸着剤製品中の大きな粒子の数を制限するために、
ある実施形態では、D90/D50の比は10未満であり、ある実施形態では、D90/D50の比は7
未満であり、ある実施形態では、D90/D50の比は5未満としている。
別の実施形態では、本明細書に開示される官能基化マイクロレティキュラーポリマーの平
均粒径は、約50~300ミクロンの範囲、または125~250ミクロンの範囲内にすることも可
能である。
吸着ポリマー粒子は、1つ以上の汚染物質を結合できる少なくとも1つの官能基で官能化さ
れている。ある実施形態では、少なくとも1つの官能基は、チオエーテル結合によってポ
リマーに連結される。この時、少なくとも1つの官能基は、1つ以上のチオール基、1つ以
上のチオ基、チオール基とアミノ基の組み合わせ、またはチオ基とアミノ基の組み合わせ
を含む。ここに列挙するものに限定する意図はないが、適切な官能基としてはシステアミ
ン、ジメルカプトトリアジン、トリメルカプトトリアジン、2,4,6,-ジメルカプトトリア
ジン-エチレンジチオール(DMT-EDT)付加体、2,4,6,-トリメルカプトトリアジン-エチレ
ンジチオール(TMT-EDT)付加体、チオグリコール酸(TGA)、チオ尿素、 4-メルカプト
ピリジン、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸(DOTA)、エチレ
ンジアミン四酢酸(EDTA)、チオ硫酸(TS)、メルカプトメチルホスホン酸(MPA)、ト
リメルカプトトリアジン-メチル-ホスホン酸(TMT-PA)、および前述のいずれかの混合物
が挙げられる。これらの官能基は、元素不純物が金属不純物、特にパラジウムである場合
に好ましい。ある実施形態では、官能基は、システアミン、ジメルカプトトリアジン、ト
リメルカプトトリアジン、2,4,6,-ジメルカプトトリアジン-エチレンジチオール(DMT
-EDT)付加物、2,4,6,-トリメルカプトトリアジン-エチレンジチオール(TMT-EDT)付
加物、および前述のいずれかの混合物を含むものもある。別の実施形態では、官能基は2
,4,6,-ジメルカプトトリアジン-エチレンジチオール(DMT-EDT)付加物、2,4,6,-
トリメルカプトトリアジン-エチレンジチオール(TMT-EDT)付加物、および前述のいずれ
かの混合物から選択して使用される。
ある実施形態では、本出願人によって2,4,6,-ジメルカプトトリアジン-エタンジチオ
ール(DMT-EDT)付加物、2,4,6,-トリメルカプトトリアジン-エタンジチオール(TMT-
EDT)付加物、および前述のいずれかの混合物から選択される少なくとも1つの官能基で官
能化されたポリマーの粒子を含む吸着剤を開発している。この時ポリマーはマイクロレテ
ィキュラーポリマーである。ある実施形態において、2,4,6,-ジメルカプトトリアジン
-エタンジチオール(DMT-EDT)付加物、2,4,6,-トリメルカプトトリアジン-エタンジ
チオール(TMT-EDT)付加物、および前述のいずれかの混合物から選択される少なくとも1
つの官能基を有する吸着剤粒子は、約100~300ミクロンの範囲、または125~250ミクロン
の範囲の平均粒径である。ある実施形態では、2,4,6,-ジメルカプトトリアジン-エタ
ンジチオール(DMT-EDT)付加物、2,4,6,-トリメルカプトトリアジン-エタンジチオー
ル(TMT-EDT)付加物、および前述のいずれかの混合物から選択される少なくとも1つの官
能基を有する吸着剤粒子は150ミクロン未満の平均粒径である。
驚くべきことに、本明細書で開示する高分子ポリマー系吸着剤は、市販のポリマー系吸着
剤および市販のシリカ系吸着剤の両方と比較して、著しく改善された特性を有することが
わかった。特に、開示された吸着剤と不純物との反応速度は、市販の吸着剤と比較して最
大で1桁速く、除去されるべき不純物に対する開示された吸着剤の親和性は市販の吸着剤
よりも優れており、除去されるべき不純物に対する吸着剤の容量は市販の吸着剤よりも著
しく優れている。
【0007】
吸着剤の合成(製造)について
本明細書は官能基化ポリマー吸着剤の製造方法を開示するものである。本明細書に開示さ
れる吸着剤および液体組成物中の汚染物質の濃度を低減するために吸着剤を使用する方法
は、必ずしも以下に開示される方法によって製造される吸着剤に限定するものではない。
本明細書で開示する吸着剤を合成する方法は、以下の工程を含む。
アルケン基を含むポリマーを、チオール基および連結基を含む第1の反応物と反応させ、
これにより、第1の反応物のチオール基が、チオール-エン反応においてポリマーのアルケ
ン基と反応して、前記ポリマーと前記連結基との間にチオエーテル結合を有する第1の中
間体を形成する。
前記第一中間体を、アリール基またはヘテロアリール基を含む第二反応物と反応させる。
ここで前記アリール基またはヘテロアリール基は置換または非置換であり、このアリール
基またはヘテロアリール基が連結基に直接的または間接的に結合した第二中間体を形成す
る。
前記第2の中間体を第3の反応物と反応させて、結合した置換または非置換のアリール基ま
たはヘテロアリール基を官能性部位に変換し、それにより前記ポリマーを官能化する。
官能基は、1つ以上の汚染物質を結合できるようにする。
第一反応体を、任意に開始剤の存在下でポリマーと反応させて、第一反応体のチオール基
とポリマーのアルケン基との間のチオール-エン反応を促進し、第一中間体を形成する。
ある実施形態では、第一反応体は、式HS-C1-C6アルキル-Rのチオール化合物であり得、こ
こで、部分Rは、飽和および不飽和アルキルから選択され得る連結基を含んでなる、 アリ
ール、ヘテロアリール、ハロゲン化物、-OH、-NH2、-NHR′、-NR′2、-COOH、-NO2、-COH
、-CO(NH2)、-CO(NR′H)、-CO(NR′2)、-CN、および-N(OH)NOから選択され得る
連結基を含み、ここで各R′は独立して-C1-C6アルキルである。官能基Rは、チオール基と
連結基との間のアルキルまたはアリール架橋をさらに含む。ある実施形態では、連結基は
-NH2であり、官能基Rは-C1-C6アルキルNH2である。ある実施形態では、第一反応体はHSC2
H4NH2である。別の実施形態では、第1の反応体は式HS-Ar-Rのチオール化合物であり、こ
こでArは単環式、二環式または多環式であり得る任意選択で置換されたアリール基または
ヘテロアリール基であり、Rは上記のように定義される。
第2の反応剤は、置換または非置換のアリールまたはヘテロアリール基からなり、第1の中
間体の連結基と反応して第2の中間体を形成する。アリール基またはヘテロアリール基は
単環式、二環式、多環式が含まれる。任意であるが置換基はハロゲン化物、好ましくは塩
化物を含むことができる。ある実施形態では、第2の反応体はヘテロアリール基からなる
。ある実施形態では、ヘテロアリール基はトリアジンである。別の実施形態では、第2の
反応体は塩化シアヌルである。
第3の反応剤は第2の中間体と反応して官能性部位を形成する。官能性部位が1つ以上のチ
オール基を含むことが好ましい場合、第3の反応剤は1つ以上のチオール基を含むことがで
きる。第3の反応剤はスルフィド塩またはアルキルチオールもしくはアルキルポリチオー
ルが含まれる。ある実施形態では、第3の反応剤はNaSHであり得る。ある実施形態では、
第3の反応剤は、HS-C1-C6アルキル-SHから選択することができ、HS-C2H4-SHが好ましい。
【0008】
本明細書で開示する吸着剤を合成する方法の一例を以下の手法1に示す。
手法 1
ここでAIBNは開始剤アゾビスイソブチロニトリルであり、DIPEAは塩基N,N-ジイソプロピ
ルエチルアミンである。出発物質(I)は、ペンダントオレフィン基として例示されるア
ルケン基を有するポリマーである。マイクロレティキュラーポリスチレンおよびエチルビ
ニルベンゼンとジビニルベンゼンのマイクロレティキュラーコポリマーが特に適している

出発物質(I)を、チオアルキルアミンまたは塩、例えばシステアミンまたは塩化システア
ミンなどの第1の反応剤と、任意にAIBNなどの開始剤の存在下で反応させて、ペンダント
アミノ基を有する第1の中間体チオアルキルアミン官能性ポリマー(II)を生成する。 チオ
アルキルアミン官能性ポリマー(II)は、それ自体特定の不純物の好適な吸着剤として機
能する。したがってこの反応は最初の官能基化工程後に完了したとみなすことができる。
他の官能基を所望する場合は次の工程まで反応を続けることもできる。さらなる官能基化
が所望される場合、チオアルキルアミン官能基化ポリマー(II)を、塩化シアヌルのよう
なハロゲン化トリアジンなどの第2の反応物と反応させて、ペンダントハロゲントリアジ
ン基を有するポリマー(III)である第2の中間体を形成する。ポリマー(III)を硫化塩で
ある第3の反応剤と反応させて、チオアルキルアミノジメルカプトトリアジン基で官能化
されたポリマー(IV)を形成するか、第3の反応剤をエタンジチオールのようなジチオアル
キルと反応させて、チオアルキルアミノジメルカプトトリアジン-エチレンジチオール付
加物で官能化されたポリマー(V)を形成することもできる。
【0009】
汚染物質濃度の低減のプロセス
液体組成物中の少なくとも1つの汚染物質の濃度を低減するためのプロセスは、液体組成
物を本明細書に開示するように精製条件下で吸着剤と接触させて、少なくとも1つの汚染
物質の少なくとも一部を吸着させることを含む。ある実施形態では、液体組成物は医薬活
性成分の製造工程における組成物である。ある実施形態において、組成物は医薬活性成分
またはその前駆体を含み、これらは互換的に原薬(API)と称することもある。
2013年6月、国際医薬品規制調和会議(ICH:International Council for Harmonization
for Pharmaceuticals for Human Use)において、医薬品中の元素不純物量に関するガイ
ドラインが制定された。Q3D(R1)という最新のガイドラインは2019年3月に採択された。
元素不純物は不純物または触媒金属の残留量により医薬品中に存在する。こうした元素不
純物は患者に治療上の利益をもたらさないため、狭い範囲内で管理する必要がある。ICH
は元素不純物の毒性データに基づいて、各元素不純物の1日あたりの許容曝露量(PDE)を
設定した。各元素不純物のPDEは経口、非経口、吸入などの投与経路と1日あたりの薬剤摂
取量に基づいて算出した。

さらにICHは元素不純物をいくつかのクラスに分類した。クラス1はAs、Cd、Hg、Pbで構成
され、これらは人体への毒性があり、医薬品の製造にはほとんど使用されない。クラス2
はさらにクラス2Aとクラス2Bに分ける。クラス2の元素は、ルート依存性(投与方法)の
人体に有毒な物質である。クラス2Aの元素は医薬品に含まれる確率が高い。クラス2Aの元
素はCo、Ni、Vであり、クラス2Bの元素は、存在する確率が低いAg、Au、Ir、Os、Pd、Pt
、Rh、Ru、Se、Tlである。クラス3の元素は経口投与では毒性が低いBa、Cr、Cu、Li、Mo
、Sb、Snである。様々な元素不純物と投与経路のPDEは、ガイドラインの表A.2.1に示され
ており、以下に再掲する。

表A.2.1: 元素不純物の一日許容暴露量1
1表A.2.1は、ICHガイドラインQ3D(R1)から許可を得て転載したものである https://www.e
ma.europa.eu/en/documents/scientific-guideline/international-conference-harmonis
ation-technical-requirements-registration-pharmaceuticals-human-use_en-32.pdf.

供給流または供給溶液(用語は互換的に使用する)には、原薬と1つ以上の汚染物質、例
えば上に列挙した元素不純物が含まれる。供給流または供給溶液は有機溶媒または水性溶
媒からなる。溶媒は原薬の合成に使用された溶媒であってもよいし、原薬の合成に複数の
工程が必要な場合は、最後の反応工程で使用した溶媒であってもよいし、原薬の精製に使
用された溶媒であってもよい。溶媒例としては、水、メタノール、エタノール、イソプロ
パノール、ブタノール、t-ブチルアルコール、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチ
ルホルムアミド、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチル-tert-ブチルエーテル、ジエチ
ルエーテル ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン
、ジクロロベンゼン、アセトニトリル、N-メチル-2-ピロリドン、4-ジメチルアミノ-ピリ
ジン、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、および
これらの混合物などが挙げられる。

供給流はまた、添加剤、副生成物、未反応の出発物質、触媒分解生成物を含むがこれ以外
の汚染物質も含む。 以下で説明するプロセスは元素不純物、および/または他の汚染物
質を除去するために使用できるが、このプロセスは元素不純物を使用して説明するものの
、元素不純物のみを除去することに限定されないことをご理解いただきたい。
機能化ポリマー吸着剤は精製条件下で供給流と接触することにより、吸着剤が供給流から
不要な元素不純物を吸着除去して精製された原薬(API)流を提供する。吸着剤と原薬(AP
I)からなる供給流は、バッチシステムにおいて供給流と吸着剤を適切な容器内で混和する
ことにより接触させて精製原薬(API)流を提供することができる。精製ステップは、約-5
0℃~約120℃、または約-20℃~約100℃、または約0℃~約80℃、または約10℃~約70℃
、または約20℃~約60℃の温度などの条件で実施することができる。利点として本開示の
官能基化ポリマーは室温で良好に機能し、特別な温度制御を必要としない。それ以外の温
度は、活性医薬成分の製造工程に応じて使用すればよい。
【0010】
これ以外の精製条件としては、元素不純物の所望の除去を達成するのに必要な時間が挙げ
られる。本明細書で開示される官能基化ポリマーの利点は、反応速度が向上しており、先
行技術の吸着剤よりも短い接触時間である。接触時間はかなり変化するもので、接触温度
や供給流のpHおよび圧力に依存する。一般に接触時間は数秒から数日、より具体的には約
5秒から約3日、または約1分から約1日、または約10分から約18時間、または約20分から約
12時間、または約40分から約8時間、または約1時間から約6時間である。それ以外にも任
意で金属不純物の所望の最終濃度を達成するのに必要な時間を短縮するために、吸着剤と
供給流との接触を増加させるために混合物を撹拌または攪拌することができる。攪拌は振
動テーブル、オービタルシェーカー、または他の適切な装置を用いて行うことができる。
これは攪拌機を用いて行うことができる。攪拌速度は毎分約0.2回転から毎分約15回転、
または毎分約0.5回転から毎分約10回転、または毎分約1回転から毎分約8回転となるよう
に調整する。所定時間後に濃度がプラトーに達したが、元素不純物濃度がまだ要求限界を
超えていると判断された場合、原薬ストリームを吸着剤から分離し、原薬ストリームを新
鮮な量の吸着剤と接触させることができる。2つの精製ステップ間のw/w%(重量パーセン
ト濃度)、すなわち吸着剤の重量/流体の重量は同じである必要はない。すなわち第一工
程で使用する吸着剤の量は、第二工程で使用する吸着剤の量より多くても少なくてもよい
。例えば、第一段階のw/w%は、約0.1w/w%から約70w/w%、または約0.5w/w%から約60w/w%、
または約1w/w%から約50w/w%、または約2w/w%から約40w/w%、または約5w/w%から約30w/w%
、または約1w/w%から約30w/w%、または約0. 5w/w%から約60w/w%、または約1w/w%から約50
w/w%、または約2w/w%から約40w/w%、または約5w/w%から約30w/w%である。第二工程では、
w/w%は約0.1w/w%から約70w/w%まで、または約0.5w/w%から約60w/w%まで、または約1w/w%
から約50w/w%まで、または約2w/w%から約40w/w%まで、または約5w/w%から約30w/w%まで変
化し得る。

調整可能なもう一つのパラメーターは供給流のpHである。pHは除去される特定の元素不純
物に対する官能基部分の親和性に影響を及ぼす可能性がある。最適なpHや範囲はそれぞれ
の官能性部位に対して異なることがあり、この最適pHまたは範囲は実験的に決定すること
ができる。
上述のバッチプロセスで使用する吸着剤は、複数の元素不純物の除去を最適化するために
2種以上の吸着剤の混合物とすることができる。吸着剤の少なくとも1種は、本明細書に開
示するような官能性ポリマーであり、他の吸着剤の少なくとも1種は、本明細書に開示さ
れるような別の官能性ポリマー、活性炭、シリカ系吸着剤、または有機金属骨格(MOF)
系吸着剤などの別の吸着剤のいずれかが含まれる。どの吸着剤がある元素不純物に対して
よりよく吸着するかを実験的に決めることが可能であり、その結果、供給流中の元素不純
物の構成に基づいて任意の原薬(API)供給流を精製するための吸着剤の最適な混合物を得
ることができる。 2種類以上の吸着剤を混合することもできる。1つの容器で吸着剤の混
合物を使用する代わりに1つの容器で原薬(API)供給流を第1の吸着剤と混和し、部分的に
精製された流から吸着剤を(公知の手段で)分離した上で、第2の容器で部分的に精製さ
れた流を第2の吸着剤と同様のまたは異なる精製条件で混和して精製された原薬(API)流
を提供するプロセスも可能である。
この2つの吸着剤の量は同じでも、異なっていても構わない。各吸着剤の相対量は、特定
の元素不純物に対する吸着剤の親和性または元素不純物に対する吸着剤の総容量に基づい
て変化させることができる。各吸着剤に使用する精製条件(異なる容器で使用する場合)
も、元素不純物の除去を最適化するように調整することができる。達成すべき精製原薬ス
トリーム中の元素状不純物の最大濃度は、元素状不純物のPDE、原薬の供給流中の元素状
不純物濃度、および原薬中の元素状不純物の最終濃度に依存する(表A.2.1)。
別の実施形態では、ここで紹介する方法を連続のプロセスとして実施する。その際、吸着
剤は原薬及び1つ以上の汚染物質を含む供給流が流れるベッドに配置される。ある実施形
態においては、このベッドはカラム(柱)のような剛性構成の形態である。カラムは、正
方形、長方形または円形などの任意のタイプの形状を有することができる。円形カラム(
丸柱)は最も一般的なタイプのカラムである。供給流は1つまたは複数の吸入ポートから
導入され、供給流はカラムを通って下方または上方に流れる。別の実施形態では2つ以上
の吸入ポートを設置することで、カラムを横断する供給流の半径方向の均一な分布を確保
するものもある。1つ以上の吸入ポートをカラムの円周上に間隔をあけて配置する。供給
流がダウンフローの場合、供給流のシャワーがカラムを横切って半径方向に最も均一な分
布で吸着剤に接触することを可能にするように、カラムの上端またはキャップに位置する
シャワー型の構成を使用する。

吸入ポートは当技術分野で周知の任意の形状を有することができ、例えば面積や流れのパ
ターンを決める出口の直径および形状を開口部でカバーできるようなものが挙げられる。
精製されたは出口から取り出され、他の容器または反応器に送られて 原薬(API) が分
離される。
カラムは精製される供給流の量に応じてサイズが決められる。カラムの高さと直径の比率
はかなり変化する。考慮すべき要因としては、生じる背圧の量、供給流の流量、すなわち
接触時間、精製される薬物の量、必要な精製レベル、およびカラム媒体の有効性が挙げら
れる。例えば、高さ:直径の比が高いと背圧が高くなり、供給流をカラムに通すのに必要
な時間が長くなることがある。高さ:直径の比率を低くすれば背圧は減少するが、接触時
間は短くなり、半径方向の流れ分布は均一でなくなる可能性がある。数値流体力学(CFD
)を使えば、さまざまな構成をモデル化し、最適な構成を導き出すことができる。
精製された流れの元素不純物濃度が特定の元素不純物に関するICHガイドラインに適合す
るようにするためには、流量を制御して供給流と吸着剤との十分な接触時間を確保する必
要がある。線速度は反応器のサイズを考慮したパラメータであるため使用するパラメータ
として優れている。線速度は約0.02~約300cm/分、または約0.05~約200cm/分、または約
0.1~約100cm/分、または約0.2~約50cm/分の範囲である。
カラムは広い温度範囲で操作が可能である。範囲の下限は原薬(API)が溶液から析出し始
める温度に依存する。温度は約-50℃から約120℃、または約-20℃から約100℃、または約
0℃から約80℃、または約10℃から約70℃、または約20℃から約60℃の範囲で変化する。
カラムは気圧で操作できるが、気圧以下から気圧以上までの広い圧力で操作できる。一
般に、圧力範囲は、約0.01kPaから約1000kPa、または約5kPaから約500kPa、または約10kP
aから約200kPa、または約20kPaから約100kPaとすることができる。
カラムには1つの吸着剤の材料のみを使用することができるが、供給流が1つ以上の元素不
純物を含む場合、2つ以上の吸着剤を使用することが有利であり得える。ここで吸着剤の
少なくとも1つは本明細書に開示されるような官能性ポリマーであり、他の吸着剤の少な
くとも1つは本明細書に開示されるような別の官能性ポリマー、または活性炭、シリカ系
吸着剤、またはMOF系吸着剤などの別の吸着剤のいずれかであり得る。この場合、異なる
吸着剤を混合してカラムに充填するために使用することができる。あるいは2種類以上の
吸着剤を交互に重ねてカラムに入れることもできる。各レイヤー(層)は等しいサイズで
ある必要はなく、特定の元素不純物に対する吸着剤の親和性、または元素不純物に対する
吸着剤(単数または複数)の吸着容量、または供給流中の元素不純物の濃度に応じてサイ
ズを決めることができる。カラム内の吸着剤の順序も、様々な元素不純物に対する各吸着
剤の親和性と吸着容量によって決定される。複数のカラムを使用することも可能であり、
各カラムの吸着剤は同じでも異なっていてもよい。
精製するカラムを出る流れがPDEを超える1つ以上の元素不純物の濃度を有する場合、出口
の流れを同じカラムに2回目以上通すことができる。これは、出口ポートに近接したルー
プにより出口ポートから出口流を取り出し、吸入ポートに近接したカラムまたは反応器上
のループを通じて吸入ポートに流を通すといった方法で実現できる。あるいは、出口流を
新鮮な吸着剤を含む第2のカラムに通すこともできる。第2のカラムは、第1のカラムと同
じ吸着剤、または異なる吸着剤、または吸着剤の異なる軸方向配置を含むことができる。
ある実施形態では供給流は精製カラムに1回通されたものであり、出口流は元素不純物に
関するICHガイドラインを満たす精製流であるものもある。
本方法の前述の実施形態において、バッチモード(一括処理)であるか連続モード(処理
)であるかにかかわらず、1つ以上の吸着剤が使用される場合には、前記吸着剤の少なく
とも1つは本明細書に記載されるような平均粒径150ミクロン未満の官能化マイクロレティ
キュラーポリマーである。そして他の1つ以上の追加の吸着剤は、150ミクロン未満の平均
粒径の他の官能化マイクロレティキュラーポリマーであるか、または異なる粒径のそのよ
うな吸着剤であるか、または活性炭、シリカベースの吸着剤もしくはMOFベースの吸着剤
のような他のタイプの吸着剤であり得る。
本明細書に開示された吸着剤および方法の使用は、除去されるべき不純物に対する吸着剤
の親和性、反応速度論、および吸着剤容量の分野で改善された性能を提供することを示し
ている。ある実施形態において、本プロセスは元素状不純物の濃度を原薬(API)生成物の
流れの5ppm未満に低減している。 ある実施形態では本プロセスは元素状不純物の濃度を
原薬(API)製品ストリームの2ppm未満に低減している。ある実施形態では、本プロセスは
、元素状不純物の濃度を原薬(API)製品ストリームの1ppm未満に低減している。


以下の例では、以下の略語を使用する:
CA - システアミン
DCT-ジクロロトリアジン
DIPEA-N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMF-ジメチルホルムアミド
DMT - ジメルカプトトリアジン
EDT - エタンジチオール
MeOH - メタノール
THF - テトラヒドロフラン

実施例
【0011】
実施例1 - マイクロレティキュラーポリマー吸着剤の調製

アンバーライトR XAD4をベースとする吸着剤

A. ポリマー粒子径の縮小。AmberliteR XAD4(Sigma-Aldrich社から入手)マイクロレテ
ィキュラーポリマー(300g)を100℃のオーブンで一晩乾燥させ、水分を除去した。この
乾燥ポリマー(136g)を、すべてのポリマーが250μmのふるいを通過するまで、バッチで
コーヒーブレードグラインダー(コーヒーミル)にかけた。ふるいにかけたポリマーをMe
OHで湿らせ、2Lの水ですすいだ。次にポリマーを水流下で125μmと53μmのふるいに通し
て粒度を揃えた。ふるいから出る水が透明になったら、125-53μmの画分を100℃のオーブ
ンで一晩乾燥させた。最終収量は31gの125-53μmポリマーであった。

B. システアミンによる官能基化とフルサイズポリマー粒子。1Lのパイレックスジャーに
システアミン塩酸塩(51.1g、450mmol)、PEG-400(6.6ml)、およびAIBN開始剤(1.27g
、ポリマーの1.7重量%)をDMF(470ml)に溶解した。サプライヤーから受け取ったAmber
liteR XAD4 (75 g)を加えた。反応物をオーブン中80℃で一晩加熱した。得られたCA官能
基化ポリマー生成物を約400mlのDMF 2x、MeOH 1x、1M NaOH(4時間)、水 3x、MeOH 2x、
およびMeOH(一晩浸漬)で洗浄した後、回転蒸発で乾燥させ、84gの生成物を得た。元素
分析では生成物のNは1.46 mmol/g、Sは1.00 mmol/gであった。

C. ジクロロトリアジンによる官能基化、フルサイズポリマー粒子。 250mLのパイレック
スジャーに、塩化シアヌル(22.1g、120mmol)をTHF(120ml)に溶解した。溶液を氷浴中
で5℃に冷却し、DIPEA(20.9ml、120mmol)を加えた。実施例1BのCA官能性ポリマー40gを
各添加の間に約10分間をおいて5gずつ添加した。反応は強く発熱したが温度は12℃以下に
とどまった。ニンヒドリン試験ではポリマー生成物は淡青色であり、ニンヒドリン溶液は
透明であった。約4時間後、得られたDCT官能性ポリマー生成物をアセトンで2回洗浄し、
アセトンに一晩浸し、回転蒸発で乾燥させ、46gの生成物を得た。元素分析により生成物
は3.11 mmol/g Nおよび2.00 mmol/g Clを有していた。

D. 官能基化DCTをジメルカプトトリアジンに変換、フルサイズポリマー粒子。100mLのパ
イレックスジャーにNaSH(1.12g、20mmol)を水(40mL)に溶解した。実施例1CのDCT官能
性ポリマー5gをアセトン(10ml)で溶解し、NaSH溶液に加えた。室温で一晩反応させた。
得られたDMT官能性ポリマーを水3倍、MeOH3倍、THF3倍で洗浄し、一晩浸漬した。最終材
料を回転蒸発で乾燥させた。元素分析により生成物は3.30mmol/gのNと2.21mmol/gのSを有
していた。

E. 官能基化DCTをDMT-エタンジチオールに変換、フルサイズポリマー粒子。 100mLのパ
イレックス瓶にエタンジチオール(2.11ml、25.2mmol)をDMF(63ml)に溶解した。溶液
を氷浴で冷却した。鉱油中のNaHの60%懸濁液(1.01 g, 25.2 mmol)を4回に分けて加えた。
チオレート溶液を室温まで温めた後、ステップCのDCT官能性ポリマー(6.3 g)を加えた
。この反応を100℃のオーブンに一晩置いた。得られたDMT-EDT官能性ポリマーを温かいう
ちに濾過し、DMF 2x、1M HCl、DMF 2x、水 2x、THF 2x、THF(一晩浸漬)、THF 3xで洗浄
し、回転蒸発で乾燥させ、6.36gの生成物を得た。元素分析では生成物のNは2.55 mmol/g
、Sは2.39 mmol/gであった。

アンバーライトR XAD16(AmberliteR XAD16)をベースにした吸着剤

AmberliteR XAD16は、実施例1Aの手順で125~53μmの粒径にした。100℃での活性化後、7
31torrでの窒素取り込みは1101cm3/gであった。この工程を所望のサイズのアンバーライ
トが得られるまで繰り返した。
この粒径を小さくしたAmberliteR XAD16粒子を実施例1F~1Hに使用した。
F. システアミンによる官能基化。250 mLの丸底フラスコに、システアミン塩酸塩(10.2
g、90 mmol)、PEG-400(1.3 ml)、AIBN(255 mg、ポリマーの1.7重量%)をDMF(94 ml
)に溶解した。125 - 53 μm Amberlite XAD16 (15 g)を加えた。反応物を攪拌すること
なく70℃で一晩加熱した。官能基化ポリマーをDMF、1M aq. NaOH、水、MeOHで洗浄した(
一晩)。各洗浄ごとに、ポリマーをフィルター上の洗浄溶媒で1回すすぎ、溶媒に少なく
とも1時間浸した。ポリマーをヒュームフード内で風乾した。元素分析では、生成物は0.9
2mmol/gのNと1.27mmol/gのSを有していた。100℃での活性化後、735torrでの窒素取り込
み量は896cm3/gであった。

G. ジクロロトリアジンによる官能基化。 撹拌棒付き200mL丸底フラスコにTHF(60mL)お
よび塩化シアヌル(5.53g、30mmol)を加えた。溶液を5℃に冷却した。例1Fの生成物(10
g)をゆっくりと加え、続いてDIPEA(5.2 ml, 30 mmol)をゆっくりと添加した。反応は10℃
以下に保った。塩化シアヌルを加えた後、ポリマーをさらに1時間反応させた。ニンヒド
リン試験ではポリマー生成物は淡青色であり、ニンヒドリン溶液は透明であった。その後
官能性ポリマーをTHFとアセトンで洗浄した(一晩)。各洗浄ごとに、ポリマーをフィル
ター上の洗浄溶媒で1回すすぎ、少なくとも1時間溶媒に浸した。ポリマーをヒュームフー
ド内で風乾した。元素分析では、生成物は3.00mmol/gのN、1.67mmol/gのCl、0.96mmol/g
のSを有していた。100℃での活性化後、735torrでの窒素取り込み量は787cm3/gであった


H. 官能基化DCTのジメルカプトトリアジンへの変換。100mLのパイレックス( Pyrex)の
瓶にNaSH(1.79g、32mmol)を水(30ml)に溶解した。例1Gのポリマー(8g)をTHF(16ml
)で溶かし、NaSH溶液に加えた。室温で一晩反応させた。官能基化ポリマーを水、MeOH、
THFで洗浄した(一晩)。各洗浄ごとに、ポリマーをフィルター上の洗浄溶媒で2回すすぎ
、少なくとも1時間溶媒に浸した。樹脂をヒュームフード(ドラフトチャンバー)内で風
乾した。元素分析では、生成物のNは3.08 mmol/g、Sは2.09 mmol/gで、Clは検出限界以下
であった。100℃での活性化後、723torrでの窒素取り込み量は645cm3/gであった。


プレサイズポリマーをベースにした吸着剤

I. ポリマー粒子径の縮小。 アンバーライト(Amberlite)XAD4(300g)を100℃のオー
ブンで一晩乾燥させ、水分を除去した。この乾燥ポリマー(136g)を、すべてのポリマー粒
子が250μmのふるいを通過するまで、バッチでコーヒーブレードグラインダー(コーヒー
ミル)にかけた。これは、ポリマーが通過できる最小サイズのふるいである(粉砕したポ
リマーは静電気により、より小さなふるいで目詰まりを起こす)。250μm未満のポリマー
にMeOHを加え(湿らせる程度)、さらに2Lの水を加えた。その後、水流下で125μmと53μ
mのふるいを通してポリマーの粒度を調整した。ふるいから出る水が澄んだら、125-53μm
の画分を100℃のオーブンで一晩乾燥させた。最終収量は31 gの125 - 53 μmアンバーラ
イトであった。100℃での活性化後、735torrでの窒素取り込み量は810cm3/gであった。こ
の工程を、所望のサイズのポリマーが得られるまで繰り返した。

J. システアミンによる官能基化。機械で攪拌しつつ、1Lの丸底フラスコにシステアミン
塩酸塩(40.9g、260mmol)、PEG-400(5.3ml)、AIBN(1.02g、アンバーライトの1.7重量
%)をDMF(375ml)に溶解した。実施例1I.からの125~53μmのアンバーライトXAD4(60g)
を添加した。反応を70℃で一晩加熱した。官能性ポリマーをDMF、1M aq. NaOH、水、MeOH
で洗浄した。各洗浄について、ポリマーを約150mlの洗浄溶媒でフィルター上で1回洗浄し
、約500mlの溶媒に少なくとも1時間浸した。ポリマーをヒュームフード(ドラフトチャン
バー)内で風乾した。元素分析では生成物は0.99mmol/gのNと1.01mmol/gのSを有していた
。100℃での活性化後、735torrでの窒素取り込み量は647cm3/gであった。

K. ジクロロトリアジンによる官能基化。 機械で攪拌しつつ、1Lの丸底フラスコにTHF(
200ml)、実施例1Jのポリマー生成物(45g)、およびDIPEA(24ml、135mmol)を添加した
。溶液を5℃に冷却した。THF(100ml)中の塩化シアヌル(24.9g、135mmol)の溶液を滴
下添加した。反応は10℃以下に保った。塩化シアヌルを加えた後ポリマーをさらに1時間
反応させた。ニンヒドリン試験ではポリマー生成物は淡青色であり、ニンヒドリン溶液は
透明であった。官能性ポリマーをTHFとアセトンで洗浄した。各洗浄ごとに、樹脂をフィ
ルター上の洗浄溶媒で1回すすぎ、溶媒に少なくとも1時間浸した。ポリマーをヒュームフ
ード内で風乾した。
【0012】

元素分析では、生成物の窒素濃度は2.69 mmol/g、Cl濃度は1.27 mmol/g、S濃度は1.09 mm
ol/gであった。

L. 官能基化DCTのジメルカプトトリアジンへの変換。250mLのパイレックスジャーにNaSH
(6.73g、120mmol)を水(120ml)に溶解した。実施例1Kの生成物(30g)をTHF(60ml)
で溶かしてNaSH溶液に加えた。室温で一晩反応させた。次に、官能性ポリマーを水、MeOH
、THFで洗浄した(一晩)。各洗浄ごとに、ポリマーをフィルター上の洗浄溶媒で2回すす
ぎ、少なくとも1時間溶媒に浸した。ポリマーをヒュームフード内で風乾した。元素分析
では、生成物のNは2.73mmol/g、Sは1.93mmol/gで、Clは検出限界以下の0.4%であった。10
0℃での活性化後、735torrでの窒素取り込み量は544cm3/gであった。


実施例1B、1Dおよび1Eの官能基化多孔性ポリマーの各サンプルを100℃で活性化し、窒素
等温線を測定してBET表面積、細孔容積、N2取り込み量および細孔径分布を決定するため
に使用した(表IおよびIIならびに図4、5A~D参照)。対照Aは市販のシリカ-ジメルカプ
トトリアジン吸着剤で、粒径50~100μm、平均細孔直径63A、細孔容積0.34cm3/g、N2取り
込み量221cm3/gの範囲である。対照Bは、高分子ポリマー担体上のトリメルカプトトリア
ジンからなる市販の吸着剤で、測定平均粒径150~355μm、平均細孔直径93A、細孔容積0.
57cm3/g、N2取り込み量377cm3/gである。 比較として、機能化多孔性ポリマー1B、1D、1E
の平均細孔直径はそれぞれ69A、75A、84A、細孔容積はそれぞれ1.06cm3/g、0.78cm3/g、0
.89cm3/g、N2取り込み量はそれぞれ691cm3/g、505cm3/g、529cm3/gである。


細孔の特性

細孔径分布
図1は、対照Aおよび対照Bの等温線データに対する実施例1Dおよび1Eの生成物の等温線デ
ータを示している。実施例1Dおよび1Eの生成物は、対照試料のいずれよりも窒素取り込み
量が大きく、これらの実施例が対照試料よりも細孔容積および表面積が大きいことを示し
ている。このパラメータは、吸着速度論と吸着剤容量の両方において性能の向上につなが
ると考えられる。

図2Aは、対照Aおよび対照Bと比較した実施例1B、1Dおよび1Eの細孔径の増分分布を図示し
たものである。図2Bは製造したAmberlite XAD4ポリマーと比較した実施例1B、1Dおよび1E
の細孔径の増分分布を図示したものである。図2Cは、対照Aおよび対照Bと比較した実施例
1B、1Dおよび1Eの累積孔径分布を示したものである。図2Dは、製造したAmberlite XAD4ポ
リマーと比較した実施例1B、1Dおよび1Eの累積孔径分布を示す。実施例1B、1Dおよび1Eの
各々の吸着剤は、増分ベースまたは累積ベースのいずれかで測定された2つの対照のいず
れよりも高い細孔容積を有することがわかる。これはまた本開示の吸着剤が改善された動
力学および吸着容量の両方を有することを示唆する。
実施例1B、1D、1Eの各生成物約5gのサンプルを、実施例1Aの手順に従って粉砕し、サイズ
を調整して以下の実施例2~7に使用した。
以下の実施例2~7では誘導結合プラズマ測定をThermo iCap7600 ICP-OESで行い、検出限
界は0.001ppm~100ppm Pdであった。 紫外可視分光光度計による測定はMetraSpec Proを
用いて300nm~450nmの波長スキャンで行い、検出限界は1ppm~300ppm Pdであった。

実施例2 - Pdに対する吸着剤の親和性の測定
ジメチルホルムアミドとテトラヒドロフランを50:50で混合し、PdCl2(P(phenyl)3)2(Sigm
a)として85ppmのPdを添加した溶液の10mlアリコートに、各吸着剤80mgを添加してサンプ
ルを調製した。サンプルを50rpmのオービタルシェーカーで24時間混合した後、0.22マイ
クロメートルのPTFEシリンジフィルターでろ過した。各サンプルは3連で行った。溶液中
の残留Pdを誘導結合プラズマで測定した。その結果は図3に示した。実施例1の吸着剤はす
べて試料中の残留Pdが5ppm未満であり、実施例1D、1Fおよび1Lは試料中の残留Pdが1ppm未
満であり、実施例1の吸着剤はそれぞれ対照Bよりも有意に良好な性能を示したことがわか
る。図4に示すように、このレベルでは実施例1Dおよび1Eの吸着剤はPd吸着において対照A
よりも優れていた。

実施例3 - Pd吸着容量の測定
ジメチルホルムアミド:テトラヒドロフラン50:50のPdCl2(P(phenyl)3)2(Sigma)である300
ppmのPdを添加した溶液20mlアリコートに、各吸着剤40mgを添加してサンプルを調製した
。サンプルを50rpmのオービタルシェーカーで24時間混合した後、0.22マイクロメートル
のPTFEシリンジフィルターでろ過した。各サンプルは3連で行った。溶液中の残留Pdは紫
外可視分光光度計で測定した。評価した吸着剤は、実施例1で調製した各吸着剤、シリカ
担体上のDMTからなる市販の吸着剤(対照A)、および報告された平均粒径が150~350μm
であるマイクロレティキュラーポリマー担体上のTMTからなる市販の吸着剤(対照B)であ
った。結果を図5に示す。実施例1の吸着剤は対照Aよりも高いパラジウム容量を有し、対
照Bよりも有意に高いことがわかる。このため、対照と同じ量の精製を達成するために、
重量基準でより少ない吸着剤を使用することができる。本明細書で開示する吸着剤のPd容
量が市販の吸着剤と比較して向上していることは、図1に示すこれらのサンプルの等温デ
ータと一致するものであり、本開示の吸着剤はゼロから760torrまでのすべての圧力にお
いて、市販の吸着剤よりも大きなN2を吸着することがわかる。

実施例4 - カイネティクス吸着測定
ジメチルホルムアミド:テトラヒドロフラン50:50のPdCl2(P(phenyl)3)2(Sigma)である1
00ppmのPdを溶解した溶液の10mlアリコートに、評価する各吸着剤80mgを添加してサンプ
ルを調製した。実施例1Eの吸着剤および対照Aの吸着剤はいずれも、50~100μmの範囲の
平均粒径を有していた。試料を50rpmでオービタルシェーカー上で混合し、5分ごとに試料
を採取し、オービタルシェーカーに戻した。溶液中に残ったPdの量は紫外可視分光光度計
で測定した。速度論的データは図6に示されており、実施例1の吸着剤は5分以内に装置の
検出レベル以下まで溶液からPdを除去したことがわかる。比較すると、対照Aのシリカ系
吸着剤は5分後でも溶液中に60ppmのPdが残っており、50分後でも溶液中に35ppmのPdが残
っていた。これは先行技術のシリカ系吸着剤と比較して、本明細書で開示する吸着剤の大
きな利点であり、原薬の製造における精製工程の時間を大幅に短縮して、原薬の製造サイ
クルを速めることができるといえる。

実施例5-極性溶媒中のPdに対する吸着剤の親和性の測定

イソプロピルアルコールにPd(OAc)2(Sigma)として100ppmのPdを添加した溶液の10mlアリ
コートに、評価する各吸着剤80mgを加えてサンプルを調製した。 イソプロピルアルコー
ルは極性溶媒であり、ポリスチレンの非膨潤性溶媒である。PdCl2(P(phenyl)3)2は溶解し
ないが、Pd(OAc)2はイソプロピルアルコールに溶解するので、Pd塩として選択した。サン
プルを50rpmのオービタルシェーカーで24時間混合し、0.22マイクロメートルのPTFEシリ
ンジフィルターでろ過した。各サンプルは3連で行った。溶液中の残留Pdを誘導結合プラ
ズマで測定した。結果を図7に示す。実施例1の吸着剤は、対照Aおよび対照Bと同等かそれ
以上であることがわかる。

実施例6 - 原薬(API)イブプロフェン存在下でのPdに対する吸着剤の親和性の測定
試料は、評価する各吸着剤80 mgを、ジメチルホルムアミド:テトラヒドロフラン50:50のP
dCl2(P(phenyl)3)2(Sigma)に80 ppmのPdをに溶かした溶液に10 mlアリコートに加え、イ
ブプロフェンを20 mg/mlの濃度で加えて調製した。サンプルを50rpmのオービタルシェー
カーで24時間混合し、0.22マイクロメートルのPTFEシリンジフィルターでろ過した。各サ
ンプルは三重に測定した。溶液中の残留Pdを誘導結合プラズマで測定した。結果を図8
示す。実施例1B、1D、および1Eの吸着剤は対照Aと同等であり、対照Bよりも有意に優れて
いることがわかる。

実施例 7- 原薬(API)キニーネ存在下での Pd に対する吸着剤の親和性の測定。
評価する各吸着剤80 mgを、ジメチルホルムアミド:テトラヒドロフラン50:50のPdCl2(P(p
henyl)3)2(Sigma)に80 ppm Pd溶液の10 mlアリコートに加え、20 mg/mlの濃度でキニーネ
を加えてサンプルを調製した。サンプルを50rpmのオービタルシェーカーで24時間混合し
、0.22マイクロメートルのPTFEシリンジフィルターでろ過した。各サンプルは二重に測定
した。溶液中の残留Pdを誘導結合プラズマで測定した。結果を図9に示す。実施例1の吸着
剤1B、1Dおよび1Eは、対照AおよびBと同等であることがわかる。

例 8 - 銅に対する吸着剤の親和性の測定。
アセトニトリル中のCuI(シグマ社製)である100ppmのCuを添加した溶液10mlアリコート
に、評価する各吸着剤80mgを加えてサンプルを調製した。 サンプルを50rpmのオービタル
シェーカーで24時間混合し、0.22マイクロメートルのPTFEシリンジフィルターでろ過した
。各サンプルは3連で行った。溶液中の残留Cuを誘導結合プラズマで測定した。結果を図1
0に示す。実施例1の吸着剤1B、1Dおよび1Eは、対照Aおよび対照Bと同等かそれ以上である
ことがわかる。

本開示の別の実施形態では、2,4,6,-ジメルカプトトリアジン-エタンジチオール(DMT
-EDT)付加物、2,4,6,-トリメルカプトトリアジン-エタンジチオール(TMT-EDT)付加
物、および前述のいずれかの混合物から選択される少なくとも1つの官能基で官能化され
たポリマーの粒子を含む吸着剤を開発しており、その際ポリマーは膨潤性ポリマーである
。別の実施形態では、膨潤性ポリマーはポリスチレンをベースとすることができ、任意に
他のモノマーを含む。ある実施形態では、2,4,6,-ジメルカプトトリアジン-エタンジ
チオール(DMT-EDT)付加物、2,4,6,-トリメルカプトトリアジン-エタンジチオール(
TMT-EDT)付加物、および前述のいずれかの混合物から選択する少なくとも1つの官能基を
有する吸着剤粒子は、約100~300ミクロンの範囲、または125~250ミクロンの範囲の非溶
解ベースで測定される平均粒径を有する。ある実施形態では、2,4,6,-ジメルカプトト
リアジン-エタンジチオール(DMT-EDT)付加物、2,4,6,-トリメルカプトトリアジン-
エタンジチオール(TMT-EDT)付加物、および前述のいずれかの混合物から選択する少な
くとも1つの官能基を有する吸着剤粒子は、非溶解ベースで測定した平均粒径が150ミクロ
ン未満である。

さらに、想定していないことであったものの、2,4,6,-トリメルカプトトリアジン-エチレ
ンジチオール(TMT-EDT)付加体または2,4,6,-ジメルカプトトリアジン-エチレンジチオ
ール(DMT-EDT)付加体で官能基化された膨潤性ポリスチレンポリマーからなる吸着剤が
優れた吸着能を有することを見出した。

実施例9 - ジメルカプトトリアジンエタンジオールによるポリスチレンの官能基化

A. ポリスチレンのDCTによる官能基化。1Lのパイレックスの瓶に、塩化シアヌル(46.8g,
254mmol)をTHF(500ml)に溶解した。溶液を氷浴中で5℃に冷却し、DIPEA(27.7ml、159mm
ol)を加えた。PS-NH2(65.0g、1%架橋、~127mmol -CH2NH2)を約10gずつ加えた。反応
は強く発熱した。反応はニンヒドリン試験でモニターした。約4時間後、得られた官能基
化ポリスチレン生成物をTHFで2回洗浄し、THFに一晩浸して回転蒸発で乾燥させ、102gの
生成物を得た。元素分析により、生成物は5.02mmol/gのNと2.61mmol/gのClを有していた


B. 官能基化DCTのDMT-EDTへの変換。 500mLのパイレックス瓶に、エタンジチオール(6.
7ml、80mmol)をDMF(200ml)に溶解した。そして溶液を氷浴で冷却した。次に、鉱油中
のNaHの60%懸濁液(3.20 g, 80 mmol)を約4回に分けて加えた。チオレート溶液を室温
まで温めた後、ステップAのPS-DCT生成物(20g)を加えた。反応物を100℃のオーブンに
一晩置いた。得られたPS-DMT-EDT生成物を温かいうちに濾過し、DMF 2x、1M HCl、DMF 2x
、水 2x、THF 2x、THF(一晩浸漬)、THF 3x、MeOH(これによりポリマーが収縮し、乾燥
が非常に容易になる)で洗浄した後、回転蒸発で乾燥させ、18.2gの生成物を得た。元素
分析では、生成物のNは4.27mmol/g、Sは2.91mmol/gであった。

実施例10 Pdの吸着容量の測定

50:50のジメチルホルムアミド:テトラヒドロフランのPdCl2(P(phenyl)3)2(Oakwood)170pp
mのPd溶液の20mlアリコート溶液に、評価する各吸着剤40mgを添加してサンプルを調製し
た。サンプルを50rpmのオービタルシェーカーで24時間混合し、0.22マイクロメートルのP
TFEシリンジフィルターでろ過した。各サンプルは3連で行った。溶液中の残留PdはICP分
光光度法で測定した。評価した吸着剤は、実施例9B、1D、1Eで調製した吸着剤、およびシ
リカ担体上のDMTからなる市販の吸着剤(対照A)である。 結果を図11に示す。実施例9B
の吸着剤は、対照Aよりも高いパラジウム容量を有することがわかる。

実施例11 吸着剤Vの大型調製と粒子径測定
手法1の構造Vに示す吸着剤を、実施例1のステップA、B、CおよびEと実質的に同じプロセ
スを用いて、10リットルのスケールで調製した。得られた粒子を走査型電子顕微鏡(SEM
)で分析したところ平均粒径は95.2±31ミクロンであった。粒度分布を測定するため、吸
着剤の小サンプルをSEMサンプルプレートに取り付けた黒い両面テープに貼り付けた。そ
の後サンプルを真空下のSEMに入れ、37倍の倍率で検査した。各粒子の長さは、SEMソフト
ウェアに付属の定規ツールを使用して手動で測定した。0 μm から 200 μm までの 25
μm のサイズ範囲ごとに粒子数を集計した。 結果を図12に示す。
図1
図2
図3
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図5
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図10
図11
図12
【国際調査報告】