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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】バイオマーカー
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/497 20060101AFI20240730BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G01N33/497 A
G01N33/50 U
G01N33/50 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503786
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 GB2022051858
(87)【国際公開番号】W WO2023002167
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】2110365.0
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】512237475
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ レスター
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF LEICESTER
(71)【出願人】
【識別番号】316014294
【氏名又は名称】ラフバラー・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Loughborough University
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】ブライトリング,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】シディキ,サルマン
(72)【発明者】
【氏名】コーデル,レベッカ リン
(72)【発明者】
【氏名】ワイルド,マイケル ジョン
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CB22
2G045FA34
2G045FA36
2G045FB06
(57)【要約】
なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において心肺疾患を診断する方法であって、以下:
対象からの呼気の試料中の1つ以上の心肺疾患-VOCバイオマーカーの存在を検出すること
を含み、ここで、1つ以上のVOCバイオマーカーが試料中に存在する場合、対象は心肺疾患を患っている可能性がある、方法。
【請求項2】
対象において心肺疾患を処置する方法であって、以下:
対象からの呼気試料中の1つ以上の心肺疾患-VOCバイオマーカーの存在を検出すること、ここで試料中のVOCバイオマーカーの1つ以上の存在は、対象が心肺疾患を患っていることを示唆する、および
心肺疾患を処置するために、対象に治療薬を投与すること
を含む方法。
【請求項3】
対象において心肺疾患を処置する方法であって、以下:
本発明による方法を使用して心肺疾患と診断された対象に治療薬を投与すること
を含む、方法。
【請求項4】
心肺疾患の治療薬または組成物による処置のための対象を選択する方法であって、以下:
対象からの呼気試料中の1つ以上の心肺疾患-VOCバイオマーカーの存在を検すること、ここで試料中のVOCバイオマーカーの1つ以上の存在は、対象が心肺疾患を患っていることを示唆する、および
心肺疾患の治療薬または組成物による処置のために対象を選択すること
を含む、方法。
【請求項5】
治療薬または組成物が対象の心肺疾患を効果的に処置しているかどうかを判定する方法であって、以下:
対象が吐き出したテスト試料中の1つ以上の心肺疾患VOCバイオマーカーの濃度を測定すること、および
テスト試料中の少なくとも1つ以上のVOCの濃度を参照試料中の濃度と比較すること
を含み、ここで、テスト試料中の1つ以上のVOCバイオマーカーの濃度が参照試料中の濃度と比較して低い場合、治療薬または組成物が対象の心肺疾患を効果的に処置していることを示す、方法。
【請求項6】
テスト試料中のVOCバイオマーカーの濃度が、参照試料中の濃度と比較して、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%、低い(または少なくとも減少する)、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
対象が息切れを経験している、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
質量分析と組み合わせた二次元ガスクロマトグラフィーを使用して、試料中の1つ以上のVOCバイオマーカーの存在を検出する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
心肺疾患が、喘息、COPD、心不全、および肺炎を含む群から選択される1つ以上の疾患である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
1つ以上の心肺疾患-VOCバイオマーカーが、図16から選択される1つ以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
1つ以上の心肺疾患-VOCバイオマーカーが、以下:
ヘキサン;オクタン;テトラデカン;2,3-ブタンジオン;ヘキサナール;2-メチル-2-プロペナール;1-ヘキサデカノール;2-メチル-1,3-ジオキソラン;リモネン;ユーカリプトール;メントン;p-メンタ-1,4/8-ジエン;3-カレン;ベータフェランドレン;セスキテルペノイド;キシレン;2,3-ジメチルナフタレン;硫化カルボニル;4-シアノシクロヘキセン;メテナミン;ジクロロメタン;N,N-ジメチル-1-ノナンミン;アルケニルヘキサン酸エステル
のうちの1つ以上の選択である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1つ以上の心肺疾患-VOCバイオマーカーが、1つ以上の喘息-VOCバイオマーカー;1つ以上のCOPD-VOCバイオマーカー;1つ以上の心不全-VOCバイオマーカー;および/または1つ以上の肺炎-VOCバイオマーカー
である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
1つ以上の喘息-VOCバイオマーカーが、以下:
3-メチルペンタン;2-メチルノナン;デカン;1-ノネン;メチルデカナール異性体;ウンデカナール;3-メチルーベンズアルデヒド;2-エチルヘキサノール;テトラヒドロフラン;1,4-ジオキサン;β-ビサボレン;およびN,N-ジメチル-1-ドデカナミン(dodecanamine)
のうちの1つ以上の選択である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1つ以上のCOPD-VOCバイオマーカーが、以下:
ノナン;4-メチルウンデカン;1-デカノール;メントール;カンフェン;ガラキソリド;3-メチルチオフェン;およびN,N-ジメチル-1-ドデカナミン
のうちの1つ以上の選択である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
1つ以上の心不全-VOCバイオマーカーが、以下:
ウンデカン;シクロヘキセン;ブタナール;2-メチル-2-プロペナール;トリデカナール;酢酸エチル;1,3-ジオキソラン;ベータミルセン;エチルーベンゼン;およびデシルイソブチルエーテル
のうちの1つ以上の選択である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
1つ以上の肺炎-VOCバイオマーカーが、以下:
2,6-ジメチルオクタン、ジメチルウンデカン異性体;1-デセン;3-ブテン-2-オン(メチルビニルケトン);1-(メチルチオ)-1-プロペン;1-メチルチオプロパン;およびドデシルアクリレートのうちの1つ以上の選択である、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、息切れを経験している対象において心臓呼吸器疾患を診断する方法および処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
心肺疾患による息切れは、緊急入院患者全体の8人に1人以上を占めている。同じ症状が現れているにもかかわらず、急性息切れの病因は高度に多様であり、疾患の経過や処置の選択肢も多様である。急性息切れの診断評価は、血液ベースのバイオマーカー(C反応性タンパク質(CRP)、B型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)など)や放射線検査などの調査に大きく依存している。これらのバイオマーカーは、主に単一の病理を有する患者に対して臨床的有用性を有するが、急性息切れの多因子症状を呈する患者に対しては識別力が弱く、入院前の処置曝露(例えば、肺炎に対する抗生物質や入院時のCRP値など)との関連で解釈することが特に困難である。さらに、トリアージ時点での血液試料処理の遅れは、不適切な処置決定をもたらし、その結果、患者に悪影響を与えることができる。これらの問題に対処するために、メタボロミクスの分野では分析技術に支えられて大幅な進歩があり、臨床ケアの時点で採取された試料から生体系における代謝産物プロファイルの包括的な同定および定量化が可能になった。
【0003】
それにもかかわらず、息切れを症状として示す心肺疾患を診断し区別するために使用できるバイオマーカーが必要である。
【発明の概要】
【0004】
発明の記載
本発明の第1の態様によれば、対象において心肺疾患を診断する方法が提供され、該方法は、
対象からの呼気の試料中の1つ以上の心肺疾患-VOCバイオマーカーの存在を検出することを含み、
ここで、1つ以上のVOCバイオマーカーが試料中に存在する場合、対象は心肺疾患を患っていてもよい。
【0005】
一実施形態において、対象において喘息を診断する方法が提供され、該方法は、
対象からの呼気試料中の1つ以上の喘息-VOCバイオマーカーの存在を検出することを含み、
ここで、1つ以上のVOCバイオマーカーが試料中に存在する場合、対象は喘息を患っていてもよい。
【0006】
一実施形態において、対象においてCOPDを診断する方法が提供され、該方法は、
対象からの呼気試料中の1つ以上のCOPD-VOCバイオマーカーの存在を検出することを含み、
ここで1つ以上のVOCバイオマーカーが試料中に存在する場合、対象はCOPDを患っていてもよい。
【0007】
一実施形態において、対象において肺炎を診断する方法が提供され、該方法は、
対象からの呼気試料中の1つ以上の肺炎-VOCバイオマーカーの存在を検出することを含み、
ここで、1つ以上のVOCバイオマーカーが試料中に存在する場合、対象は肺炎を患っていてもよい。
【0008】
一実施形態において、対象において心不全を診断する方法が提供され、該方法は、
対象からの呼気試料中の1つ以上の心不全VOCバイオマーカーの存在を検出することを含み、
ここで、1つ以上のVOCバイオマーカーが試料中に存在する場合、対象は心不全を患っていてもよい。
【0009】
第2の態様によれば、対象において心肺疾患を処置する方法が提供され、該方法は、
対象からの呼気試料中の1つ以上の心肺疾患-VOCバイオマーカーの存在を検出すること、
ここで試料中のVOCバイオマーカーの1つ以上の存在は、対象が心肺疾患を患っていることを示唆する、および
心肺疾患を処置するために、対象に治療薬を投与することを含む。
【0010】
第3の態様によれば、対象において心肺疾患を処置する方法が提供され、該方法は、
本発明による方法を使用して心肺疾患と診断された対象に治療薬を投与することを含む。
【0011】
第4の態様によれば、心臓呼吸器疾患の治療薬または組成物による処置のための対象を選択する方法が提供され、該方法は、
対象からの呼気試料中の1つ以上の心肺疾患-VOCバイオマーカーの存在を検出すること、
ここで試料中のVOCバイオマーカーの1つ以上の存在は、対象が心肺疾患を患っていることを示唆する、および
心肺疾患の治療薬または組成物による処置のために対象を選択することを含む。
【0012】
別の態様によれば、心臓呼吸器疾患の治療薬または組成物による処置のための対象を選択する方法が提供され、該方法は、
本発明による方法を使用して心肺疾患と診断された対象を、心肺疾患の治療薬または組成物による処置のために選択することを含む。
【0013】
本発明は、より患者に準拠した心肺疾患の診断および処置方法を提供する。本発明により、採血または放射線学的プロセスなどの侵襲的処置を使用することなく対象を診断することが可能になる。該方法は対象に対して実施されなくてもよい。
【0014】
診断目的で使用されるバイオマーカーの2つの重要な特徴は、感度および特異性である。感度の度合いが高いほど、偽陰性が発生する確率は低くなる。特異性が高くなるほど、偽陽性が発生する確率は低くなる。本明細書に開示されるバイオマーカーは、驚くべきことに、心肺疾患を有する個体と健康な個体(対照)とを区別する場合に、最大79%の感度および85%の特異性(AUC0.89で)を示すことができる。
【0015】
各急性心肺疾患群を他の急性心肺疾患群から区別するための値(つまり、健康な患者に対するものではない)は次のとおりである:
・喘息-感度0.75(0.63、0.85)、特異性0.90(0.85、0.94);
・COPD-感度0.66(0.52、0.78)、特異性0.89(0.85、0.93);
・心不全-感度0.64(0.48、0.78)、特異性0.96(0.92、0.98);および
・肺炎-感度0.65(0.51、0.78)、特異性0.93(0.89、0.96)。
【0016】
したがって、本発明は、臨床医が、息切れを経験し、心肺障害を患っている対象の診断および処置について、より多くの情報に基づいた決定を下すことを可能にする。
【0017】
第5の態様によれば、治療薬または組成物が対象の心肺疾患を効果的に処置しているかどうかを判定する方法が提供され、該方法は、
対象が吐き出したテスト試料中の1つ以上の心肺疾患VOCバイオマーカーの濃度を測定すること、および
テスト試料中の少なくとも1つ以上のVOCの濃度を参照試料中の濃度と比較することを含み、
ここで、テスト試料中の1つ以上のVOCバイオマーカーの濃度が参照試料中の濃度と比較して低い場合、治療薬または組成物が対象の心肺疾患を効果的に処置していることを示す。
【0018】
テスト試料中のVOCバイオマーカーの濃度は、心肺疾患の大きさ/重症度と正の相関があることが理解されるであろう。したがって、例えば、参照試料中の濃度と比較したテスト試料中のVOCバイオマーカーの濃度の減少は、心肺疾患の大きさ/重症度の減少を示していてもよい。同様に、参照試料中の濃度と比較したテスト試料中のVOCバイオマーカーの濃度の増加は、心肺疾患の規模/重症度の増加を示していてもよい。
【0019】
テスト試料中のVOCバイオマーカーの濃度は、参照試料の濃度と比較して、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%低く(または少なくとも減少し)てもよい。
【0020】
参照試料は、同じ対象から採取されたものでも、異なる対象から採取されたものでもよい。好ましくは、参照試料は、同じ対象から採取された試料であるが、テスト試料よりも早い時点にある試料である。好ましくは、初期の試料は、対象が心肺疾患を患っていることを示す。
【0021】
好ましくは、本明細書で言及される対象は息切れを経験している。好ましくは、質量分析と組み合わせた二次元ガスクロマトグラフィーを使用して、試料中の1つ以上のVOCバイオマーカーの存在を検出する。
【0022】
心肺疾患は、心血管系の疾患もしくは障害、および/または呼吸器系の疾患であってもよい。心肺疾患の例としては、喘息、COPD、心不全および呼吸器感染症(肺炎など)、気管支炎、肺気腫、うっ血性心不全、高血圧、狭心症、末梢血管疾患および心筋梗塞が挙げられる。好ましくは、「心肺疾患」という用語は、喘息、COPD、心不全、および肺炎を含む群から選択される1つ以上の疾患を指す。
【0023】
VOC(揮発性有機化合物)は、101.3kPaの標準大気圧において約50℃から約250℃の間の沸点を有する有機化合物と呼ばれてもよい。
【0024】
心肺疾患-VOCバイオマーカーは、炭化水素、ケトン、アルデヒド、アルコール、酸素含有VOC、テルペノイド、芳香族化合物、硫黄含有VOC、窒素含有VOC、ハロゲン酸塩(例えば、ジクロロメタン)および界面活性剤および皮膚軟化剤を含む群から選択される1つ以上であってもよい。
【0025】
1つ以上の心肺疾患-VOCバイオマーカーの存在を検出する工程は、本発明による方法を使用することを含んでもよいことが理解されるであろう。試料中のもう1つの心肺疾患-VOCバイオマーカーの検出は、(試料が採取された)対象が心血管疾患を患っていることを示すことも理解されるであろう。
【0026】
炭化水素VOCは、以下を含む群から1つ以上選択されてもよい:2-メチルブタン;イソプレン;3-メチルペンタン;2,4-ジメチルペンタン;2,2-ジメチルペンタン;ヘキサン;オクタン;2,6-ジメチルオクタン;ノナン;2-メチルノナン;5-メチルノナン;デカン;4-メチルデカン;ウンデカン;4-メチルウンデカン;ジメチルウンデカン異性体;3-メチルトリデカン;テトラデカン;オクタデカン;1-ノネン;1-デセン;シクロヘキサン;シクロヘキサジエン異性体;メチルシクロペンタジエン;およびヘキサデセン異性体。炭化水素は、図16から選択される1つ以上であってもよい。好ましくは、炭化水素VOCは、以下を含む群から選択される1つ以上であってもよい:ヘキサン;オクタン;2,6-ジメチルオクタン;ノナン;2-メチルノナン;デカン;ウンデカン;4-メチルウンデカン;ジメチルウンデカン異性体;3-メチルトリデカン;テトラデカン;オクタデカン;1-ノネン;1-デセン;シクロヘキサン;シクロヘキサジエン異性体;メチルシクロペンタジエン;およびヘキサデセン異性体。炭化水素は、図16から選択される1つ以上であってもよい。
【0027】
ケトンVOCは、以下を含む群から選択される1つ以上であってもよい:アセトン;2,3-ブタンジオン;2-ペンタノン;3-ブテン-2-オン(メチルビニルケトン);4-メチル-2-ペンタノン;6-メチル-5-ヘプテン-2-オン;およびシクロヘキサノン。ケトンは、図16から選択される1つ以上であってもよい。好ましくは、ケトンVOCは、3-ブテン-2-オン(メチルビニルケトン);4-メチル-2-ペンタノン;および6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを含む群から選択される1つ以上であってもよい。
【0028】
アルデヒドVOCは、以下を含む群から選択される1つ以上であってもよい:ブタナール;ヘキサナール;ノナナール;デカナール;メチルデカナール異性体;ウンデカナール;2-メチル-2-プロペナール(メタクロレイン);3-メチルーベンズアルデヒド;およびトリデカナール。アルデヒドは、図16から1つ以上選択されてもよい。好ましくは、アルデヒドVOCは、ブタナール;メチルデカナール異性体;ウンデカナール;2-メチル-2-プロペナール(メタクロレイン);3-メチルーベンズアルデヒド;およびトリデカナールを含む群から1つ以上選択される。
【0029】
アルコールVOCは、2-プロパノール;2-エチルヘキサノール;1-デカノール;および1-ヘキサデカノールを含む群から選択される1つ以上であってもよい。アルコールは、図16から選択される1つ以上であってもよい。
【0030】
酸素含有VOCは、以下を含む群から選択される1つ以上であってもよい:酢酸エチル;テトラヒドロフラン;1,4-ジオキサン;2-メチル-1,3-ジオキソラン;および1,3-ジオキソラン。酸素含有VOCは、図16から選択される1つ以上であってもよい。
【0031】
テルペノイドVOCは、以下を含む群から選択される1つ以上であってもよい:リモネン;α-ピネン;ユーカリプトール;メントン;メントール;カンフェン;p-メンタ-1,4/8-ジエン;3-カレン;ベータミルセン;ベータフェランドレン;ゲラニルアセトン;β-ビサボレン;アルファイソメチルイオノン;およびガラキソリド。テルペノイドは、図16から選択される1つ以上であってもよい。
【0032】
芳香族VOCは、以下を含む群から選択される1つ以上であってもよい:エチルーベンゼン;2,3-ジメチルナフタレン;および置換ベンゼン。芳香族は、図16から選択される1つ以上であってもよい。
【0033】
硫黄含有VOCは、3-メチルチオフェン;硫化ジメチル;硫化アリルメチル;硫化カルボニル;1-(メチルチオ)-1-プロペン;および1-メチルチオプロパンを含む群から選択される1つ以上であってもよい。硫黄含有VOCは、図16から選択される1つ以上であってもよい。好ましくは、硫黄含有VOCは、硫化ジメチル;1-(メチルチオ)-1-プロペン;および1-メチルチオプロパンを含む群から選択される1つ以上であってもよい。
【0034】
窒素含有VOCは、以下を含む群から選択される1つ以上であってもよい:4-シアノシクロヘキセン;およびメテナミン。窒素含有VOCは、図16から選択される1つ以上であってもよい。
【0035】
界面活性剤および皮膚軟化剤VOCは、以下を含む群から選択される1つ以上であってもよい:ミリスチン酸イソプロピル;ステアリルビニルエーテル;N,N-ジメチル-1-ノナンミン;N,N-ジメチル-1-ドデカナミン;アルケニルヘキサン酸エステル;2,2,4,4,6,8,8-ヘプタメチルノナン;ドデシルアクリレート;およびデシルイソブチルエーテル。界面活性剤および皮膚軟化剤は、図16から選択される1つ以上であってもよい。
【0036】
心肺疾患-VOCバイオマーカーは、図16に開示されるVOCバイオマーカーの任意の組み合わせであってもよい。したがって、心肺疾患-VOCバイオマーカーは、図16から選択される1つ以上であってもよい。VOCは、図16に開示されるVOCの異性体であってもよい。したがって、心肺疾患-VOCバイオマーカーは、図16から選択される1つ以上のVOCバイオマーカー、またはその異性体であってもよい。異性体は、構造異性体、ジアステレオマー(例えば、シス-トランス異性体または回転異性体)または鏡像異性体であってもよい。
【0037】
一実施形態において、以下のVOCバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、すべて)の選択が、対象において心肺疾患を診断するために使用される:ヘキサン;オクタン;テトラデカン、2,3-ブタンジオン;ヘキサナール;2-メチル-2-プロペナール;1-ヘキサデカノール;2-メチル-1,3-ジオキソラン;リモネン;ユーカリプトール;メントン;p-メンタ-1,4/8-ジエン;3-カレン;ベータフェランドレン;セスキテルペノイド;キシレン;2,3-ジメチルナフタレン;硫化カルボニル;4-シアノシクロヘキセン;メテナミン;ジクロロメタン;N,N-ジメチル-1-ノナンミン;およびアルケニルヘキサン酸エステル。
【0038】
別の実施形態において、以下のVOCバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、すべて)の選択が、対象において喘息を診断するために使用される:ヘキサン;2-メチルノナン;デカン;テトラデカン;1-ノネン;2,3-ブタンジオン;2-ペンタノン;ヘキサナール;ノナナール;デカナール;メチルデカナール異性体;ウンデカナール;3-メチルーベンズアルデヒド;2-エチルヘキサノール;1-ヘキサデカノール;テトラヒドロフラン;1,4-ジオキサン;2-メチル-1,3-ジオキソラン;ユーカリプトール;p-メンタ-1,4/8-ジエン;3-カレン;ベータフェランドレン;β-ビサボレン;セスキテルペノイド;キシレン;4-シアノシクロヘキセン;メテナミン;ステアリルビニルエーテル;N,N-ジメチル-1-ノナンミン;およびN,N-ジメチル-1-ドデカナミン。
【0039】
以下のVOCバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、すべて)の選択は、対象において喘息を診断するために使用されてもよい:3-メチルペンタン;ヘキサン;2-メチルノナン;デカン;テトラデカン;1-ノネン;2,3-ブタンジオン;メチルデカナール異性体;ウンデカナール;3-メチルーベンズアルデヒド;2-エチルヘキサノール;1-ヘキサデカノール;テトラヒドロフラン;1,4-ジオキサン;2-メチル-1,3-ジオキソラン;ユーカリプトール;p-メンタ-1,4/8-ジエン;3-カレン;ベータフェランドレン;β-ビサボレン;セスキテルペノイド;キシレン;4-シアノシクロヘキセン;メテナミン;ステアリルビニルエーテル;N,N-ジメチル-1-ノナンミン;およびN,N-ジメチル-1-ドデカナミン。
【0040】
好ましくは、以下のVOCバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、すべて)の選択が、対象において喘息を診断するために使用される:2-メチルノナン;デカン;1-ノネン;2-ペンタノン;ノナナール;デカナール;メチルデカナール異性体;ウンデカナール。3-メチルーベンズアルデヒド;2-エチルヘキサノール;テトラヒドロフラン;1,4-ジオキサン;β-ビサボレン;およびN,N-ジメチル-1-ドデカナミン。
【0041】
最も好ましくは、以下のVOCバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、すべて)の選択が、対象において喘息を診断するために使用される:2-メチルノナン;デカン;1-ノネン;メチルデカナール異性体;ウンデカナール;3-メチルーベンズアルデヒド;2-エチルヘキサノール;テトラヒドロフラン;1,4-ジオキサン;β-ビサボレン;およびN,N-ジメチル-1-ドデカナミン。
【0042】
別の実施形態において、以下のVOCバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、すべて)の選択が、対象においてCOPDを診断するために使用される:ノナン;4-メチルウンデカン;シクロヘキサン;メチルシクロペンタジエン;2,3-ブタンジオン;6-メチル-5-ヘプテン-2-オン;1-デカノール;ユーカリプトール;2-メチル-1,3-ジオキソラン;リモネン;メントール;カンフェン;メントン;ガラキソリド;2,3-ジメチルナフタレン;硫化カルボニル;3-メチルチオフェン;アルケニルヘキサン酸エステル;硫化アリルメチル;ジクロロメタン;およびN,N-ジメチル-1-ドデカナミン。
【0043】
以下のVOCバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、すべて)の選択は、対象においてCOPDを診断するために使用されてもよい:ノナン;4-メチルウンデカン;シクロヘキサン;メチルシクロペンタジエン;6-メチル-5-ヘプテン-2-オン;1-デカノール;ユーカリプトール;2-メチル-1,3-ジオキソラン;リモネン;メントール;カンフェン;メントン;ガラキソリド;2,3-ジメチルナフタレン;3-メチルチオフェン;アルケニルヘキサン酸エステル;ジクロロメタン;およびN,N-ジメチル-1-ドデカナミン。
【0044】
好ましくは、以下のVOCバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、すべて)の選択が、対象においてCOPDを診断するために使用される:4-メチルウンデカン;1-デカノール;メントール;カンフェン;ガラキソリド;3-メチルチオフェン;およびN,N-ジメチル-1-ドデカナミン。
【0045】
別の実施形態において、以下のVOCバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、すべて)の選択が、対象において心不全を診断するために使用される:ヘキサン;5-メチルノナン;4-メチルデカン;ウンデカン;シクロヘキセン;アセトン;ブタナール;2-メチル-2-プロペナール;トリデカナール;酢酸エチル;1,3-ジオキソラン;リモネン;3-カレン;ベータミルセン;エチルーベンゼン;2,3-ジメチルナフタレン;N,N-ジメチル-1-ノナンミン;2-メチル-2-プロペナール(メタクロレイン);アルケニルヘキサン酸エステル;およびデシルイソブチルエーテル。
【0046】
以下のVOCバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、すべて)の選択は、対象において心不全を診断するために使用されてもよい:ヘキサン;ウンデカン;シクロヘキセン;アセトン;ブタナール;2-メチル-2-プロペナール;トリデカナール;酢酸エチル;1,3-ジオキソラン;リモネン;3-カレン;ベータミルセン;エチルーベンゼン;2,3-ジメチルナフタレン;N,N-ジメチル-1-ノナンミン;2-メチル-2-プロペナール(メタクロレイン);アルケニルヘキサン酸エステル;およびデシルイソブチルエーテル。
【0047】
好ましくは、以下のVOCバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、すべて)の選択は、対象において心不全を診断するために使用される:5-メチルノナン;4-メチルデカン;ウンデカン;シクロヘキセン;ブタナール;2-メチル-2-プロペナール;トリデカナール;酢酸エチル;1,3-ジオキソラン;ベータミルセン;エチルーベンゼン;およびデシルイソブチルエーテル。
【0048】
最も好ましくは、以下のVOCバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、すべて)の選択は、対象において心不全を診断するために使用される:シクロヘキセン;ブタナール;2-メチル-2-プロペナール;トリデカナール;酢酸エチル;1,3-ジオキソラン;ベータミルセン;エチルーベンゼン;およびデシルイソブチルエーテル。
【0049】
別の実施形態において、以下のVOCバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、すべて)の選択は、対象において肺炎を診断するために使用される:2,4-ジメチルペンタン;2,2-ジメチルペンタン;ヘキサン;オクタン価;2,6-ジメチルオクタン;ジメチルウンデカン異性体;テトラデカン;p-メンタ-1,4/8-ジエン;1-デセン;3-ブテン-2-オン(メチルビニルケトン);シクロヘキサノン;ヘキサナール;2-メチル-2-プロペナール;2-プロパノール;1-ヘキサデカノール;α-ピネン;メントン;ベータフェランドレン;セスキテルペノイド;キシレン;硫化カルボニル;1-(メチルチオ)-1-プロペン;2-メチル-2-プロペナール(メタクロレイン);1-メチルチオプロパン;4-シアノシクロヘキセン;メテナミン;ジクロロメタン;およびドデシルアクリレート。
【0050】
以下のVOCバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、すべて)の選択は、対象において肺炎を診断するために使用されてもよい:ヘキサン;オクタン価;2,6-ジメチルオクタン;ジメチルウンデカン異性体;テトラデカン;p-メンタ-1,4/8-ジエン;1-デセン;3-ブテン-2-オン(メチルビニルケトン);ヘキサナール;2-メチル-2-プロペナール;2-プロパノール;1-ヘキサデカノール;α-ピネン;メントン;ベータフェランドレン;セスキテルペノイド;キシレン;硫化カルボニル;1-(メチルチオ)-1-プロペン;2-メチル-2-プロペナール(メタクロレイン);1-メチルチオプロパン;4-シアノシクロヘキセン;メテナミン;ジクロロメタン;およびドデシルアクリレート。
【0051】
好ましくは、以下のVOCバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、すべて)の選択は、対象において肺炎を診断するために使用される:2,4-ジメチルペンタン;2,2-ジメチルペンタン;2,6-ジメチルオクタン;ジメチルウンデカン異性体;1-デセン;3-ブテン-2-オン(メチルビニルケトン);1-(メチルチオ)-1-プロペン;1-メチルチオプロパン;およびドデシルアクリレート。
【0052】
最も好ましくは、以下のVOCバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、すべて)の選択は、対象において肺炎を診断するために使用される:ジメチルウンデカン異性体;1-デセン;3-ブテン-2-オン(メチルビニルケトン);1-(メチルチオ)-1-プロペン;1-メチルチオプロパン;およびドデシルアクリレート。
【0053】
本明細書に開示される心肺疾患-VOCバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、喘息-VOCバイオマーカー、COPD-VOCバイオマーカー、肺炎-VOCバイオマーカー、または心不全-VOCバイオマーカー)は、対象において心肺疾患を診断することについての上記で開示されるバイオマーカーのうちの1つ以上の選択であってもよい。
【0054】
好ましくは、以下のVOCバイオマーカーのうちの1つ以上(例えば、すべて)は、息切れを経験している対象において心肺疾患を診断するために使用される。
【0055】
単一のVOCバイオマーカーの検出を使用して、対象の心肺疾患を診断してもよい。しかしながら、本発明において使用されるVOCバイオマーカーが多ければ多いほど、対象において心肺疾患をより確実に診断できることが理解されるであろう。言い換えれば、本発明で使用されるVOCバイオマーカーが多ければ多いほど、本発明の感度はより高くなり、特異性もより高くなる。したがって、本発明は、本明細書に開示されるVOCバイオマーカー(例えば、図16に開示されるバイオマーカー、または本明細書に開示される各心肺疾患に特異的なバイオマーカー)の2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、55以上、60以上、65以上、70以上、75以上、80以上、85以上、90以上、95以上、またはすべてを検出することを含んでもよい。好ましくは、本発明は、5以上、または10以上のVOCバイオマーカーの存在を決定することを含む。
【0056】
バイオマーカーの存在を検出することは、バイオマーカーの存在、非存在、またはレベルを検出することを含んでもよい。バイオマーカーの存在の検出は、バイオマーカーのレベルの検出を含んでもよい。バイオマーカーの存在またはレベルの検出は、試料中のバイオマーカーの濃度を決定することを含んでもよい。
【0057】
VOCの有無および/または濃度は、質量分析と組み合わせた二次元ガスクロマトグラフィー(GC×GC-MS)、ガスクロマトグラフ-イオン移動度分析(GC-IMS)技術、ガスクロマトグラフ(GC)、ガスクロマトグラフ-質量分析(GCMS)、質量分析(MS)、イオン移動度分析(IMS)、示差移動度分析(DMS)、光吸収分光分析、フィールド非対称イオン移動度分析(FAIMS)、電子鼻、選択的イオンフロー管質量分析(SIFT-MS)、タンパク質移動反応MS、吸光度/非分散型赤外線およびガスセンサー(個別)または配列内)などの、当技術分野で既知の任意の適切な方法/技術/技術を使用して検出または決定できることが理解されるであろう。好ましくは、対象からの呼気の試料中のVOCの有無、および/または濃度の検出は、質量分析と組み合わせた二次元ガスクロマトグラフィー(GC×GC-MS)を含む。GCxGC-MSを使用してVOCの有無および/または濃度を検出すると、VOCバイオマーカーの決定的な分離が可能になり、VOCバイオマーカーを確実に同定できる。
【0058】
試料は対象から採取した直後に分析できる(すなわち、新鮮な試料であってもよい)ことが理解されるであろう。試料は、ユニバーサルまたはビジューなどの密閉容器に入れられてもよい。試料は保管されてもよい。好ましくは、試料は、チューブ、ユニバーサルまたはビジューなどの密封/密封可能な容器に保管される。好ましくは、容器は吸着剤材料を含む/含有する。したがって、容器は、吸着剤を含む/含有する密閉可能な容器(例えばチューブ)であってもよい。試料は最大48時間保管できる。試料は、約2℃から約8℃の間の温度、または約3℃から約6℃の間の温度で保管されてもよい。好ましくは、試料は約4℃の温度で保管される。したがって、試料は、約48時間、約2℃と約8℃の間の温度、約2℃と約5℃の間の温度、約3℃と約6℃の間の温度、または約4℃の温度で保管されてもよい。
【0059】
試料の水分含有量をチューブあたり2mg未満に減らすために、試料をドライパージしてもよい。ドライパージは、試料を窒素ガスでパージすることによって実施されてもよい。好ましくは、ドライパージ(例えば、窒素ガスを使用するドライパージ)は、対象から試料が収集されてから48時間以内に実施される。
【0060】
「処置について対象を選択すること」とは、対象が心肺疾患の治療薬または組成物で処置されなければならないことを第三者が認識できるように、対象の名前および/または識別子を記録することを指してもよい。
【0061】
「記録すること」という用語は、書面(タイプ入力など)またはデジタル(ビデオまたは音声の記録、またはコンピュータ上など)で固定または保管することを指す。
【0062】
対象は、心肺疾患(例えば、喘息、COPD、心不全および/または肺炎)を患っていると疑われる人物であってもよい。好ましくは、対象は息切れを経験している。「息切れ」という用語は呼吸困難としても知られ、呼吸困難を指す。これは、速く浅い呼吸、うるさい呼吸、喘鳴、または呼吸を助けるために肩および/または胸上部の筋肉を使うことなどの形で現れてもよい。
【0063】
「対象」は、脊椎動物、哺乳動物、または家畜の哺乳動物であってもよい。したがって、本発明による方法は、任意の動物、例えば、ブタ、ネコ、イヌ、ウマ、ヒツジまたはウシを診断または処置するために使用してもよい。好ましくは、対象はヒトである。
【0064】
本発明の方法の工程の一部またはすべては、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで実施してもよい。
【0065】
本発明による方法は、対象から得られた試料を提供することを含んでもよい。したがって、「呼気(exhaled air)/呼気(breath)の試料」という用語は、対象によって吐き出される気体および/または液体、好ましくは対象の肺から吐き出される気体および/または液体(凝縮物)を指す。試料は、対象の鼻および/または口から吐き出される。好ましくは、試料は、呼気されたガス状試料である。したがって、本発明の方法は、対象に対して実施されなくてもよい。試料の量は、測定される十分なバイオマーカーを提供する量であればよく、例えば、試料は500mL~1Lであってもよい。
【0066】
「処置すること」という用語は、心肺疾患を予防すること、根絶すること、または重症度を軽減することを指す。したがって、本明細書で言及される治療薬または組成物は、喘息、COPD、心不全または肺炎を予防、根絶、または重症度を軽減する任意の薬剤であってもよい。
【0067】
「含む」という用語は、「からなる」または「本質的にからなる」を指してもよい。
【0068】
本明細書に記載されるすべての実施形態および特徴(添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)、および/またはそのように開示された任意の方法またはプロセスのすべての工程は、特定の組み合わせ、例えば、そのような特徴および/または工程の少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを参照して別の言い方をしない限り、上記の態様または実施形態のいずれかと組み合わされてもよい。
【0069】
本発明をよりよく理解するために、また本発明の実施形態が実施されてもよいことを示すために、例として添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】提案されている呼気検査および診断パイプラインを表す視覚的な要約である。心呼吸器疾患の増悪を伴う急性息切れ患者は、現在、臨床評価、デジタル病理学、および血液バイオマーカーによって入院時にトリアージされている。下気道由来の呼気揮発性有機化合物バイオマーカーは、最先端のGCxGC質量分析法を使用して可視化され、化学測定とトランスレーショナルモデリングを組み合わせたプロセスを経る。結果として得られる呼気代謝シグネチャは、特定のVOCプロファイルおよびVOCクラスおよび個々の増悪サブ群の同一位置を示し、急性心肺疾患患者の正確な疾患分類を提供する。
【0071】
図2-1】血液バイオマーカーによって注釈が付けられたさまざまな急性疾患群を表すトポロジカルデータ分析(TDA)である。TDAグラフの各円または「ノード」は、対象または対象の群を表す。類似した被写体は同じノードに群化され、被写体の相対的な類似性はノードの近さによって表され、各ノードのサイズはノード内の被写体の数によって決まる。(A)805の識別特徴に基づいて、各ノードの急性COPD増悪の割合によって色付けされた、発見コホート(n=139)の急性疾患群の視覚的マッピング。(B)ネットワークは、発見コホート(n=139)の各ノードのCRPの平均値によって色分けされる。より高いCRP値は、COPDおよび肺炎患者とトポロジー的に一致した。(C)ネットワークは、発見コホート(n=139)の各ノードのBNPの平均値によって色分けされる。より高いBNP値は心不全患者とトポロジカルに一致した。(D)ネットワークは、複製コホート(n=138)の各ノードにおける急性COPD増悪の割合によって色付けされる。複製コホートでは、肺炎およびCOPD悪化の対象が同じTDAネットワークの極端を占めていた。(E)ネットワークは、各ノードのCRPの平均値によって色付けされる。高いCRP値は、肺炎患者と位相的に一致した。(F)ネットワークは、各ノードのBNPの平均値によって色付けされる。高いBNP値は心不全対象と位相的に一致した。
図2-2】血液バイオマーカーによって注釈が付けられたさまざまな急性疾患群を表すトポロジカルデータ分析(TDA)である。TDAグラフの各円または「ノード」は、対象または対象の群を表す。類似した被写体は同じノードに群化され、被写体の相対的な類似性はノードの近さによって表され、各ノードのサイズはノード内の被写体の数によって決まる。(A)805の識別特徴に基づいて、各ノードの急性COPD増悪の割合によって色付けされた、発見コホート(n=139)の急性疾患群の視覚的マッピング。(B)ネットワークは、発見コホート(n=139)の各ノードのCRPの平均値によって色分けされる。より高いCRP値は、COPDおよび肺炎患者とトポロジー的に一致した。(C)ネットワークは、発見コホート(n=139)の各ノードのBNPの平均値によって色分けされる。より高いBNP値は心不全患者とトポロジカルに一致した。(D)ネットワークは、複製コホート(n=138)の各ノードにおける急性COPD増悪の割合によって色付けされる。複製コホートでは、肺炎およびCOPD悪化の対象が同じTDAネットワークの極端を占めていた。(E)ネットワークは、各ノードのCRPの平均値によって色付けされる。高いCRP値は、肺炎患者と位相的に一致した。(F)ネットワークは、各ノードのBNPの平均値によって色付けされる。高いBNP値は心不全対象と位相的に一致した。
【0072】
図3-1】(A)健常ボランティアと比較した急性心肺疾患患者における呼気VOCバイオマーカースコア値間の有意差を示す散布図である。散布図内の黒い水平線は、バイオマーカースコアの中央値を表す。マン・ホイットニー検定のp値<0.0001。(B)発見参加者の受信者動作特性(ROC)曲線(黒線)-AUC1.00(1.00-1.00)、および複製コホート(青線)-AUC0.89(0.82-0.95)p<0.0001。(C)診断の不確実性が高い患者の数を示すヒストグラム(値が20mmの上位四分位値を超える青色のバー)。(D)診断の不確実性が高い参加者における呼気VOCの識別力を評価するROC曲線。AUC0.96(0.92-0.99)p<0.0001。
図3-2】(A)健常ボランティアと比較した急性心肺疾患患者における呼気VOCバイオマーカースコア値間の有意差を示す散布図である。散布図内の黒い水平線は、バイオマーカースコアの中央値を表す。マン・ホイットニー検定のp値<0.0001。(B)発見参加者の受信者動作特性(ROC)曲線(黒線)-AUC1.00(1.00-1.00)、および複製コホート(青線)-AUC0.89(0.82-0.95)p<0.0001。(C)診断の不確実性が高い患者の数を示すヒストグラム(値が20mmの上位四分位値を超える青色のバー)。(D)診断の不確実性が高い参加者における呼気VOCの識別力を評価するROC曲線。AUC0.96(0.92-0.99)p<0.0001。
【0073】
図4】(A)疾患固有のVOCスコアおよび血液ベースのバイオマーカーのピアソン相関関係である。呼気VOCスコアと血液ベースのバイオマーカー間の正および負の相関を実証するピアソン相関。有意な相関、p値<0.05;および(B)疾患固有のVOCスコアおよび入院観察のピアソン相関。VOCバイオマーカースコアおよび入院バイタルサインの間のピアソン相関。VAS:Visual Analogue Scale(100mm)、参加者は入院時に100mmVASで息切れを評価するよう求められた。
【0074】
図5-1】(A)急性息切れに関連する101種類の呼気揮発性物質の代謝物セット強化および化学的類似性分析に基づいて生成された循環相関ツリーである。枝は、ChemRICH(方法)を使用して導出された代謝物セットを示している。棒グラフは、LASSO回帰を使用して抽出された101の特徴の-log10(p)およびlog(倍率変化)の値を示している。図16は、対照群と比較した急性息切れにおけるものである。円弧は、相関グラフから導出されたルーヴァンクラスターを表す(K-Sテストの結果に従って、上方制御された場合は緑、有意ではない場合は赤、下方制御された場合は青)。化学名は化学分類に基づいて色分けされており、色分けされた領域はより広範な化学群を要約するために使用される。(B)ルーヴァンクラスタリングを使用して同定された代謝物コミュニティを示す相関グラフ。心不全が有意に豊富なクラスターの正体および位置が円形樹状図上に投影される。(C)i)呼気代謝産物の複雑なプロファイルを示すGCxGCクロマトグラムの例、ii)呼気マーカーの視覚化を示すクロマトグラムの3Dレンダリング、およびiii)リスクスコア図16に含まれる特徴に基づく表現型の違い(黄色、喘息;赤、肺炎;マゼンタ、COPD;シアン、心不全)。
図5-2】(A)急性息切れに関連する101種類の呼気揮発性物質の代謝物セット強化および化学的類似性分析に基づいて生成された循環相関ツリーである。枝は、ChemRICH(方法)を使用して導出された代謝物セットを示している。棒グラフは、LASSO回帰を使用して抽出された101の特徴の-log10(p)およびlog(倍率変化)の値を示している。図16は、対照群と比較した急性息切れにおけるものである。円弧は、相関グラフから導出されたルーヴァンクラスターを表す(K-Sテストの結果に従って、上方制御された場合は緑、有意ではない場合は赤、下方制御された場合は青)。化学名は化学分類に基づいて色分けされており、色分けされた領域はより広範な化学群を要約するために使用される。(B)ルーヴァンクラスタリングを使用して同定された代謝物コミュニティを示す相関グラフ。心不全が有意に豊富なクラスターの正体および位置が円形樹状図上に投影される。(C)i)呼気代謝産物の複雑なプロファイルを示すGCxGCクロマトグラムの例、ii)呼気マーカーの視覚化を示すクロマトグラムの3Dレンダリング、およびiii)リスクスコア図16に含まれる特徴に基づく表現型の違い(黄色、喘息;赤、肺炎;マゼンタ、COPD;シアン、心不全)。
【0075】
図6】急性研究の募集および分析可能なGCxGC-MS呼気試料の数を概説するコンソート図である。
【0076】
図7】805から101までの呼気特徴の削除を示すフローチャートである。対象に対する変数の高い比率および候補特徴間の潜在的な相関関係のため、最小絶対収縮選択演算子(LASSO)およびElastic Net正則化回帰モデルが特徴選択方法として採用された。
【0077】
図8-1】GCxGC-MSピークテーブル内の最後の101個の呼気特徴の確率分布をグラフで示したものである。特徴は主に同様の分布に従う。一部の特徴にはゼロ値およびゼロ以外の値が混在していたが、これは測定値が機器の検出下限を下回ったために発生した。一定の特徴(すべてゼロ値)は、メインモデルをフィッティングする前に削除された。
図8-2】GCxGC-MSピークテーブル内の最後の101個の呼気特徴の確率分布をグラフで示したものである。特徴は主に同様の分布に従う。一部の特徴にはゼロ値およびゼロ以外の値が混在していたが、これは測定値が機器の検出下限を下回ったために発生した。一定の特徴(すべてゼロ値)は、メインモデルをフィッティングする前に削除された。
図8-3】GCxGC-MSピークテーブル内の最後の101個の呼気特徴の確率分布をグラフで示したものである。特徴は主に同様の分布に従う。一部の特徴にはゼロ値およびゼロ以外の値が混在していたが、これは測定値が機器の検出下限を下回ったために発生した。一定の特徴(すべてゼロ値)は、メインモデルをフィッティングする前に削除された。
図8-4】GCxGC-MSピークテーブル内の最後の101個の呼気特徴の確率分布をグラフで示したものである。特徴は主に同様の分布に従う。一部の特徴にはゼロ値およびゼロ以外の値が混在していたが、これは測定値が機器の検出下限を下回ったために発生した。一定の特徴(すべてゼロ値)は、メインモデルをフィッティングする前に削除された。
【0078】
図9】バッチ効果を調整する前の高次元ピークテーブルの2次元視覚化である。最初のパネルの収集日「Batch_ID」によるクラスタリングは、バッチ効果が明らかでない他の変数(オペレーター、収集時間、湿式保管および乾式保管の時間、および収集体積)と比較して明確にわかる。
【0079】
図10】収集日「Batch_ID」を調整した後の高次元ピークテーブルの2次元視覚化である。パラメトリック経験的ベイジアン調整の後、クラスタリングは表示されなくなった。
【0080】
図11】A)呼気代謝物(101のパネル)が各略式サブ群内でどのように相関しているかを示す相関グラフであり、ネットワーク全体の違いを強調するためにルーヴァンクラスターに基づいて色分けされている。強調表示されている視覚的な違いは、緑色のルーヴァンクラスターを含み、これは対照群では高度にコンパクトであるが、急性群では分散している。B)ChemRICH分析の出力。急性息切れ中に有意に強化された代謝物セット(丸)を示す(倍率変化を示すサイズ、赤=上方制御、青=下方制御)。高い化学的類似性(谷本係数に基づく)を有する上方制御された代謝産物セットは、主に非環式および分岐炭化水素で構成され、緑色のルーヴァンクラスター(外側のリングの色で示される)に属していた。ChemRICH分析の定量的出力は、グラフネットワークの視覚的な違いを補完する。
【0081】
図12-1】異なる疾患サブ群にわたるVOCバイオマーカースコア値間の有意差を示すバイオリンプロットを示す。ノンパラメトリックデータを比較するクラスカル-ウォリス検定。有意なp値<0.0001。
図12-2】異なる疾患サブ群にわたるVOCバイオマーカースコア値間の有意差を示すバイオリンプロットを示す。ノンパラメトリックデータを比較するクラスカル-ウォリス検定。有意なp値<0.0001。
図12-3】異なる疾患サブ群にわたるVOCバイオマーカースコア値間の有意差を示すバイオリンプロットを示す。ノンパラメトリックデータを比較するクラスカル-ウォリス検定。有意なp値<0.0001。
図12-4】異なる疾患サブ群にわたるVOCバイオマーカースコア値間の有意差を示すバイオリンプロットを示す。ノンパラメトリックデータを比較するクラスカル-ウォリス検定。有意なp値<0.0001。
図12-5】異なる疾患サブ群にわたるVOCバイオマーカースコア値間の有意差を示すバイオリンプロットを示す。ノンパラメトリックデータを比較するクラスカル-ウォリス検定。有意なp値<0.0001。
【0082】
図13-1】カプランマイヤー生存分析を示している。(A)合計29人の患者が退院後60日以内に再入院した。(B)基礎となるVOCスコアp値0.77(生存関数の等価性についての対数順位検定)に基づく再入院率に有意差がないことを示す、急性疾患のVOCスコア中央値によって分類された再入院患者の総数。(C)2年間の追跡期間中の死亡者数の合計(n=12)(D)疾患群ごとに分類された、全死因2年死亡率に関するカプランマイヤー生存分析。(E)急性疾患のVOCスコア中央値によって分類された、全死因2年死亡率のカプランマイヤー生存分析。
図13-2】カプランマイヤー生存分析を示している。(A)合計29人の患者が退院後60日以内に再入院した。(B)基礎となるVOCスコアp値0.77(生存関数の等価性についての対数順位検定)に基づく再入院率に有意差がないことを示す、急性疾患のVOCスコア中央値によって分類された再入院患者の総数。(C)2年間の追跡期間中の死亡者数の合計(n=12)(D)疾患群ごとに分類された、全死因2年死亡率に関するカプランマイヤー生存分析。(E)急性疾患のVOCスコア中央値によって分類された、全死因2年死亡率のカプランマイヤー生存分析。
【0083】
群間に有意差はない、p値0.07(生存関数の等価性に関する対数順位検定)
【0084】
図14】5つのバイオマーカースコアすべてを使用した全体的な分類精度を示すグラフである。
【0085】
図15】(A)プールされた(発見および複製)コホートにおける主に感染に起因する急性疾患群(肺炎およびCOPD)に対する喘息VOCスコアの診断価値を示す比較ROC分析である。(B)プールされたコホートにおける他の急性疾患サブ群(喘息、COPD、および肺炎)に対する心不全VOCスコアの診断的価値を実証する比較ROC分析。
【0086】
図16-1】化学名、CAS登録番号、KEGG、ヒトメタボロームデータベースおよびChEBI識別子、およびMSI準拠の代謝物同定レベル、濃度範囲、および急性群および対照群の倍率変化(logとして表される)、および疾患固有のバイオマーカーのリスクスコアに対する化合物の寄与(†調整されたp値<0.05)を詳述する回帰モデルから選択された予測の化学的割り当てを示す。
図16-2】化学名、CAS登録番号、KEGG、ヒトメタボロームデータベースおよびChEBI識別子、およびMSI準拠の代謝物同定レベル、濃度範囲、および急性群および対照群の倍率変化(logとして表される)、および疾患固有のバイオマーカーのリスクスコアに対する化合物の寄与(†調整されたp値<0.05)を詳述する回帰モデルから選択された予測の化学的割り当てを示す。
図16-3】化学名、CAS登録番号、KEGG、ヒトメタボロームデータベースおよびChEBI識別子、およびMSI準拠の代謝物同定レベル、濃度範囲、および急性群および対照群の倍率変化(logとして表される)、および疾患固有のバイオマーカーのリスクスコアに対する化合物の寄与(†調整されたp値<0.05)を詳述する回帰モデルから選択された予測の化学的割り当てを示す。
図16-4】化学名、CAS登録番号、KEGG、ヒトメタボロームデータベースおよびChEBI識別子、およびMSI準拠の代謝物同定レベル、濃度範囲、および急性群および対照群の倍率変化(logとして表される)、および疾患固有のバイオマーカーのリスクスコアに対する化合物の寄与(†調整されたp値<0.05)を詳述する回帰モデルから選択された予測の化学的割り当てを示す。
図16-5】化学名、CAS登録番号、KEGG、ヒトメタボロームデータベースおよびChEBI識別子、およびMSI準拠の代謝物同定レベル、濃度範囲、および急性群および対照群の倍率変化(logとして表される)、および疾患固有のバイオマーカーのリスクスコアに対する化合物の寄与(†調整されたp値<0.05)を詳述する回帰モデルから選択された予測の化学的割り当てを示す。
図16-6】化学名、CAS登録番号、KEGG、ヒトメタボロームデータベースおよびChEBI識別子、およびMSI準拠の代謝物同定レベル、濃度範囲、および急性群および対照群の倍率変化(logとして表される)、および疾患固有のバイオマーカーのリスクスコアに対する化合物の寄与(†調整されたp値<0.05)を詳述する回帰モデルから選択された予測の化学的割り当てを示す。
【0087】
図17】異なる疾患群にわたる101個の呼気362個の呼気バイオマーカーの最終パネルの分布を示すベン図である。
【発明を実施するための形態】
【0088】
実施例
心肺疾患(喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心不全または肺炎)の重度の悪化による息切れを呈する急性体調不良の入院患者および健康な対照者を対象とした、現実世界の前向き研究が、本明細書で開示される。呼吸バイオマーカーが急性心肺息切れを確実かつ繰り返し識別できることが実証され;これは診断の不確実性が存在する場合を含む。
【0089】
方法
治験設計、参加者および倫理的承認
この臨床研究は、英国のレスターにある三次心臓呼吸器センターで実施された、前向きの現実世界の観察研究だった。参加者は2017年5月から2018年12月まで通年募集された。
【0090】
レスター大学病院(UHL)を受診し、自己申告による急性息切れを患い、入院および/またはベースライン処置の変更を必要とする患者に、研究への参加を求めた。トリアージおよび上級臨床評価の後、(i)心不全の急性代償不全、(ii)喘息/COPDの増悪、または(iii)成人市中肺炎の初期臨床診断がトリアージ看護師/トリアージ時の担当臨床医によって疑われた場合研究チームのメンバーは、事前に定義された研究参加の適格基準に照らして患者を評価する。インフォームドコンセントは、入院後24時間以内にすべての参加者から得られた。年齢および/または家庭環境が一致する健康なボランティアを募集した。環境に適合した対照が不適切な場合は、地元の募集データベースおよび広告を通じて健康なボランティアを募集した。健康なボランティアの併存疾患および薬物使用の詳細を表1に示す。
【0091】
この治験は、ヘルシンキの宣言(deceleration)に関する倫理および原則、および適正臨床実施ガイドラインに従って実施された。すべての患者は書面による同意を提供した。国立研究倫理サービス委員会East Midlandsは、研究プロトコールを承認した(REC番号:16/LO/1747)。統合研究承認制度(IRAS)198921。
【0092】
【表1-1】
【表1-2】
【0093】
募集は2017年2月に開始され、分析方法の開発および継続的な展開を実現するための堅牢な試料経路の最適化、診療所へ往復する吸着剤チューブの収集および分析が続き、GCxGC-MSによる試料分析がセットアップされ、その年の後半(2017年8月)にオンラインになった。研究全体の分母は参加者455名だったが、ここで紹介するGCxGC-MS研究の参加者は363名で、GCxGC-MS完了率は76%だった(図6)。
【0094】
研究参加者の詳細な生存分析を図13に示す。
【0095】
この治験は、ヘルシンキの宣言(deceleration)に関する倫理および原則、および適正臨床実施ガイドラインに従って実施された。すべての患者は書面による同意を提供した。国立研究倫理サービス委員会イーストミッドランズは、研究プロトコールを承認した(REC番号:16/LO/1747)。統合研究承認制度(IRAS)198921。
【0096】
臨床判定
研究における診断ラベルを正確に定義および定量化するために臨床判定プロセスが導入され、潜在的な誤分類に対処した。2人の上級臨床判事(SSおよびNG)からなるパネルが、入手可能なすべての症例記録および画像を検討し、一致に達するために議論によって各症例の一次診断を決定した。診断の不確実性の程度は、所定の診断および血液バイオマーカーを盲検にして、100mm視覚アナログスケール(VASスケール)でマークされた。
【0097】
このプロセスを、診断をサポートするために必要なすべての病理データ(例えば、診断をサポートする)の急性トリアージ経路のミラーリングに重点を置いて実装した。CRP、BNPは最初の臨床レビューでは利用できない。
【0098】
臨床判定プロセスから得られた診断の不確実性の程度はブロックのランダム化に考慮され、診断の不確実性がより高い対象(≧上位四分位=20mm)は前述のように個別に評価された(図3c~d)。
【0099】
呼気試料の収集
CEマーク付き呼気採取装置「体外分析用呼吸収集器」RECIVA(登録商標)(Owlstone Nanotech Ltd)と専用の清浄空気供給ユニットを組み合わせて、同意を得た参加者全員に対して呼気採取が試みられた。ReCIVA(登録商標)デバイスは、患者にVOCを除去した清浄な空気供給を提供することにより、肺胞呼気の収集を標準化することを目的としている。呼気のVOCを吸着剤チューブに直接サンプリングしながら、収集される呼気の流量、量、割合を制御する。ReCIVA(登録商標)設定モードは「下気道のみ」に設定されており、CO2と分圧を継続的にモニタリングすることで、呼気のVOCが豊富な肺胞部分を標的化することが可能になった。収集体積、流量、および最大サンプリング時間は、それぞれ1L、250mL min-1、および900秒に設定された。呼気サンプリングはすべての参加者に良好に耐えられた。
【0100】
サンプリングの際、環境対照として室内空気および給気もサンプリングされた。これには、吸着剤チューブを手持ち式個人用ポンプ(Escort Elf, Sigma Aldrich, Dorset, UK)に取り付け、サンプリング端を室内空気に開放するか、Tピースを介してReCIVA(登録商標)空気供給ラインに接続する必要があった。0.5L min-1の流量で2分間、合計1Lの空気を収集した。
【0101】
吸着剤チューブに直ちに蓋をし(真鍮キャップ、Markes International Ltd)、4°Cの冷蔵庫に入れ、72時間以内に研究室に発送した。バックグラウンドの変動を最小限に抑えるために、試料の収集は可能な場合には入院病棟に付属する同じ処置室で完了したが、体調の悪い患者や酸素補給が必要な患者は、ベッドサイドで試料を採取した。
【0102】
試料の保管および調製
試料は、到着時に窒素(インライントラップ付きCPグレード、BOC、 Leicester、 UK)を流速50mL min-1で使用して2分間ドライパージし、分析するまで2℃の冷蔵庫に保管した。分析前に、試料を室温になるまで放置した後、重水素化トルエンおよびオクタンを含有する20μg mL-1標準溶液の0.6μLアリコートを流速100mL min-1の窒素流中に2分間添加して、余分な溶媒をパージした。
【0103】
室内空気および給気試料の分析
2つの別個の弾性ネット回帰モデルを室内空気試料および給気試料のピークテーブルに当てはめた。どちらのピークテーブルも
【化1】
が変換され、PEBAを使用してバッチ効果(収集日)に合わせて調整された。独立変数は101個の特徴の最終セットであり、従属変数は臨床診断(急性喘息、急性COPD、肺炎、心不全、または健康なボランティア)だった。2つのモデルのそれぞれに対して10分割相互検証を100回繰り返した後、安定した非ゼロ回帰係数を持つ特徴は2つだけであることがわかった。これらの特徴は、肺炎スコアの構成要素である給気と、健康スコアの構成要素である室内空気に関するものであり、選択された特徴分離モデルの堅牢性を強調している。
【0104】
呼気分析
TD-GC×GC-FID/MS
呼気試料は、流量変調を使用し、二重炎イオン化検出および質量分析(MS)と組み合わせた包括的な二次元ガスクロマトグラフィー(GCxGC)による加熱脱着によって分析された。MSおよび炎イオン化検出(FID)を使用したデュアル検出では、揮発性物質の分析に適したフローベースのモジュレーターからの過剰なフローを利用して、定量的および定性的結果の両方が得られる。
【0105】
GC×GCによる分析は、CFTフローモジュレーターおよび高効率EIイオン源を備えた5799B質量分析計を備えたAgilent 7890Aガスクロマトグラムを使用して最適化され、実施された(Agilent Technologies Ltd, Stockport, UK)。この装置は、TD-100xr熱脱離オートサンプラー(Markes International Ltd, Llantrisant, UK)に接続された。試料はトレイ内で分析された。通常、トレイあたり6個と、n-アルカンおよび芳香族化合物を含む参照混合物がトレイごとに実施され、参照室内空気VOC混合物がトレイ4つごとに実施される。データはMassHunter GC-MS Acquisition B.07.04.2260(Agilent)で取得され、GC Image(登録商標)v2.8スイート(GC Image, LLC. Lincoln, NE, US)およびPythonを使用して、事前に開発および最適化されたワークフローで処理(つまり、ベースライン補正、位置合わせ、特徴抽出)された。使用した吸着剤チューブは、対応するコールドトラップを備えたCarbograph 1TD(Hydrophobic, Markes International Ltd)を備えたTenax/TAだった。分析アーチファクトから生じるクロマトグラフィーの特徴は、ピークテーブルから削除された(例えば、遍在性シロキサン)。
【0106】
品質管理の目的で、詳細な試料履歴を使用して試料を分析し、オープンアクセスのLabPipeツールキットを使用して収集および分析のすべての段階でメタデータおよび実験データを記録した。
【0107】
同定された呼気バイオマーカーの化学種の特定
呼気として吐き出される揮発性代謝物の化学的性質は、新規でない低分子量化合物の多様な混合物で構成されている。したがって、特徴の大部分について、化学的同定は、メタボロミクス標準イニシアチブ(MSI)の代謝物同定のレベル1基準に従って、本物の参照化合物との比較を含む(図16)。同定は、一次および二次保持時間、質量スペクトル類似性の一致、および計算された保持指数を含む、少なくとも2つの独立した直交識別子に基づいて行われた。本物の参照化合物が入手できない場合、化学物質の同定は推定上の注釈についてMSIレベル2に準拠していた。GCxGCによって提供される高度に構造化されたクロマトグラフィーデータと群タイプの分離は、本物の化合物の広範なライブラリーの分析による十分に特徴付けられたクロマトグラフィー空間と並んで、暫定的な割り当てに対する信頼性を高めた。GCxGCの直交分離は、未知の代謝物の化学的同定が、少なくとも推定化学分類のMSIレベル3に準拠して行えることも意味した。
【0108】
報告された呼気VOCの診断精度を、診断精度研究ガイドラインの報告基準に従ってテストした。多変量予測モデルについては、個別の予後または診断のための多変量予測モデルの透明性レポート(TRIPOD)に従った。
【0109】
品質管理および品質保証体制
追跡可能で検証可能な多くの品質管理および品質保証(QC/QA)手順が、呼気のサンプリングおよび分析の工程全体にわたって適用されている。これにより、予期される欠陥を効率的に防止し、高い成果物基準を確保することができた。
【0110】
最終分析から品質の悪い試料を排除するために、高品質の呼気試料を選択するために4つの基準を使用した。これらは以下であった:
1.呼気中に存在する微量VOCを十分に事前強化するために、患者から800mL以上の呼気を採取する。
2.供給空気中のイソプレンおよびアセトンの濃度は、平均供給空気濃度の3標準偏差以下だった。これにより、呼気試料が給気試料として誤って割り当てられることがなくなった。
3.呼気中のイソプレンとアセトンの濃度は、患者の空気供給で測定されたレベルより、それぞれ標準偏差10以上および5標準偏差以上だった。これにより、試料が誤って割り当てられた空気供給試料ではなく、呼気が吸着剤チューブに収集されたことが保証された。
4.クロマトグラムを視覚的に確認したところ、大量の外因性化合物によって歪みはなかった(つまり、過負荷ピーク)。
【0111】
すべてのQC/QA基準を満たす呼気試料の数の概要を(図6)に示す。
【0112】
試料分析QC/QA手順
品質管理の目的で、以前に公開されたワークフローに従って試料を分析し、オープンアクセスのLabPipeツールキットを使用して収集および分析のすべての段階で詳細な試料履歴、メタデータ、実験データを記録した。クロマトグラフィー法は、ピーク形状、感度、分離に関して最適化された。内部標準の品質管理チャートを使用してTD-GCxGC-FID/MS分析の安定性を追跡し、2つの標準参照混合物におけるVOCの保持時間、ピーク面積、および形状の変動の評価に続いて機器の性能を評価した。6試料ごとに。調整してクリニックに送る前に、各チューブの熱サイクル数および重量を記録して、チューブの年齢および完全性をモニタリングした。コンディショニングサイクルごとに、すべてのチューブにバッチ番号が付けられ、バッチブランクを分析して試料前処理プロセスの開始時から汚染をモニタリングした。さらに、定期的なモニタリングを確実にするために、すべてのバッチに2週間の有効期限を与えた。生物学的および分析的交絡因子(例えば、概日リズム、試料の安定性)の影響を最小限に抑えるために、オペレーターによる潜在的な影響、分析日、収集時刻、ドライパージ前の保管時間、ドライパージ後の試料保管時間、および収集体積を評価し、必要に応じてバッチ修正において考慮する。保持シフトおよび機器の応答をモニタリングするために使用される参照標準のルーチン分析に加えて、TD-GCxGC分析システムは、試料のキャリーオーバーから生じる潜在的な問題を軽減するために、各試料間でプログラムされた熱サイクルを実行し、TDトラップのブランクおよび空の吸着剤チューブを6試料ごとに分析して、機器のベースライン信号をモニタリングした。
【0113】
統計的手順
統計分析を、R(3.6.1および4.0.0、R Core Team(2019))を使用して実施した。この研究では、レスター大学のSPECTERハイパフォーマンスコンピューティング施設を使用した。ベースラインデータおよび数値を、平均値±(SD)および中央値(IQ範囲)として表した。(ANOVA)を使用してデータを分析し、正規分布またはほぼ正規分布する変数についてはグループ間の差異を評価し、非正規分布変数についてはクラスカル-ウォリスを使用した。カテゴリ変数の違いを評価するために、ピアソンのカイ二乗法およびフィッシャーの正確値を使用した。特に報告がない限り、すべてのP値は両側であり、0.05レベルで有意である。研究試料サイズの計算は、適切な感度および/または特異性の試料サイズ推定に基づいて行われた(試料サイズ推定セクション)。
【0114】
発見セットおよび複製セット
277人の対象を、ブロックランダム割り当てを通じて1:1の比率で発見コホートおよび複製コホートに事後的にランダム化した。ランダム化は、(I)決定された臨床診断、(II)入院時点からの呼気検査までの時間、および(III)臨床診断の不確実性スコアに基づいて層別化された。Rパッケージのランダマイザーを使用して、ブロックのランダムな割り当てを実施した。ブロックランダム化後、発見セットおよび複製セットはそれぞれ139名および138名の対象を含んだ。
【0115】
発見セットおよび複製セットにおけるトポロジー的等価性の検査
トポロジカルデータ分析は、大規模で高次元の複雑なデータセットの分析に使用される教師なし機械学習ツールである。主成分分析(PCA)などの他のデータ削減ツールでは見落とされがちなパターンに対して高度に敏感である。
【0116】
TDAはデータの形状をキャプチャし、データポイント内の複雑な関係が保管され、共同して考慮される意味のある幾何学的表現を提供する。
【0117】
TDAを実施する前に、各特徴は
【化2】
変換された。TDAパラメーターは次のように設定された:ハイパーキューブの数=20、ここでハイパーキューブの数は投影の重複する間隔の数を指す。データ点間の距離をユークリッド距離を使用して測定した。最初の2つの線形判別関数(LD1)および(LD2)を射影として使用した。投影上の重複する間隔のクラスタリングを、完全な結合を備えた凝集型(ボトムアップ)階層クラスタリングを使用して実施した。TDAを、Kepler Mapper 1.4.0およびPython 3.5を使用して実施した。
【0118】
ここでは、GCxGC-MSピークテーブルから抽出された805個の揮発性特徴を使用して生成されたトポロジカルデータ形状間の等価性を、発見コホートおよび複製コホートの両方で計算した(図2)。
【0119】
呼気の特徴の選択
特徴選択を、Rにおけるglmnetパッケージを使用して、Lasso and Elastic-Net Regularized Generalized Linear Model(GLMNET)によって実装した。
【化3】
変換された発見GCxGC-MSピークテーブルからすべての試料の<80%に存在する特徴を削除した後、735個の特徴マトリックスを得た。LASSO正則化を使用した多項回帰モデルを、臨床診断(急性喘息、急性COPD、肺炎、心不全、または健康なボランティア)をモデルの従属変数として、10分割交差検証を使用して発見セットの735個の特徴行列に当てはめた。10分割相互検証を100回繰り返し、80回を超える相互検証実施でゼロ以外の回帰係数を有する特徴を、結果(臨床診断)を予測する安定した候補特徴とみなし、その結果、278の安定した候補の特徴を得た。
【0120】
弾性ネット正則化を使用した多項回帰モデルを、臨床診断をモデルの従属変数として278個の特徴に適合した。上記で詳述した化学測定検査およびlassoおよび弾性回帰分析の後、101種類の呼気揮発性化合物の最終セットを生成した(図7)。
【0121】
弾性ネット正則化を使用した多項回帰モデルを、10分割交差検証を100回繰り返して101個の呼気バイオマーカーのマトリックスに適合させた。RパッケージglmnetUtilsを使用して、弾性ネットペナルティであるαの最適値を決定した。αの最適値は0(リッジ回帰)だった。101のバイオマーカーに適合した多項回帰モデルからの最も安定した特徴の線形結合により、さまざまな疾患群(急性喘息、急性COPD、肺炎、心不全、または健康なボランティア)に属する確率を予測するためのスコアのセットが形成された。ロジットリンク関数を使用したリッジ回帰(バイナリロジスティック回帰)が101の呼吸関連特徴に適合し、従属変数はバイナリ結果として「急性疾患」だった。最も安定した特徴の組み合わせから得られる線形予測因子を、急性疾患を予測するためのスコアとして使用した。
【0122】
共発現および機能強化分析
101個の特徴の最終セット内に「共発現」特徴のセット、つまり相関関係のある特徴を含むセットが存在するかどうかを調査することは興味深いことだった。同時表現される特徴のセットを考慮することには、問題の次元を削減し、強化スコアを使用して多重テストの問題を軽減するという点で価値がある。共発現および機能強化分析については、(補足情報)に記載されている。
【0123】
代謝物セットは、ChemRICH法を使用したWard階層クラスター分析に基づいて導出され(図5A)、より広範なコミュニティはルーヴァンクラスター分析から導出され、相関グラフの解釈に役立つ(図5B、共発現および機能強化分析に関する補足情報セクションを参照)。代謝産物間の共変動にはそれ自体では証拠価値がないため、ChemRICH法を使用したコルモゴロフ・スミルノフ検定(K-S検定)を使用してセットレベルの有意性を確立し、Metaboxを使用してセット内の化学的類似性を評価するために谷本係数を計算し、出版文献および関連データベースの出現頻度が考慮された(KEGG、ChEBI、ヒトメタボロームデータベース、ヒューマンブレスオミクスデータベースおよび微生物VOCデータベース)。同様の経路に由来する化合物は、共通の構造的特徴や化学基を共有していてもよいため、化学的類似性は興味深いものである。このデータ主導型および化学主導型のアプローチを組み合わせたアプローチにより、強化分析が改善され、本明細書の中心となる知見のさらなる解釈が可能になることが示されている(図11)。
【0124】
補足情報(SI)
呼吸の特徴(バイオマーカー)の確率分布:
GCxGCピークテーブルの特徴は、次の3つの広いカテゴリーに分類される:(1)一定の特徴(すべての試料の値がゼロ)、(2)ゼロ値および非ゼロ値の混合を含む特徴、(3)ゼロ以外の値がすべて含まれていた。ゼロ値は、測定値が機器の検出下限を下回ったために発生した。メインモデルをフィッティングする前に、定数の特徴を削除した。
【0125】
主にタイプ2およびタイプ3のカテゴリーに分類される、最終的な101個の特徴(バイオマーカー)のグラフ分布を(図8)に示す。特定の特徴では、0値の急増がはっきりとわかる。これらの観察に基づくと、GCxGC-MSピークテーブルからの特徴の確率分布の理論モデルとして合理的な選択は、ゼロ修正対数正規分布である可能性がある。
【0126】
バイオマーカーパターン検出におけるバッチ効果の悪影響を軽減する
バッチ効果は、オミクスデータ解析における一般的な問題である。バッチ効果の存在により、異なる処理時間で収集および分析されたデータを比較することが困難になる(図9および10)。
【0127】
考えられるバッチ変動要因として、次の要因を調査した:
I.Batch_ID-試料収集の日付:
(1)バッチ1-2017年8月~2017年10月
(2)バッチ2-2017年11月~2018年3月
(3)バッチ3-2018年4月~2018年12月
II.オペレーター:(N:1~6)-サンプリングプログラムの全過程にわたってRECIVAを操作する研究チームのメンバーを示す。
III.試料が収集された時刻(概日リズム):
(1)1=午前9時から11時まで
(2)2=午前11時から午後1時まで
(3)3=午後1時から3時まで
(4)4=午後3時から午後5時まで
IV.湿った状態で保管されたタイム試料
(1)1=0~2日
(2)2=2~5日
(3)3=5~10日
(4)4=10~20日
(5)5=20~42日
(6)6=42日以上
V.乾燥状態で保管した時間(乾燥パージ後)
(1)1=0~2日
(2)2=2~5日
(3)3=5~10日
(4)4=10~20日
(5)5=20~42日
(6)6=42日以上
VI.収集された呼気の量(80%閾値以上):
(1)1=100%
(2)2=90~99%
(3)3=80~89%
【0128】
図9は、t確率的最近傍埋め込み(tSNE)を使用して、805個の特徴すべてを含むGCxGC-MSピークテーブルを視覚化したものである。「収集日」によるクラスタリングが見られた(左上のプロット)。残りの要因については、明らかなクラスター化は存在していないようである。効果収集日を、パラメトリック経験的ベイジアン調整(PEBA)を適用することで調整した。BioconductorのSVAパッケージのComBat機能を使用してPEBAを実施した。この調整の結果を(図10)に示す。収集日によるクラスタリングがもはや明らかではないことがわかる。バッチ効果で調整されたピークテーブルを、後続のすべての特徴選択モデルで使用した。
【0129】
モデル精度
101個の呼気特徴の最終セットからの5つのバイオマーカースコアすべてを使用した統計モデルの全体的な分類精度を、真のクラスラベルを使用してトレーニングされたモデルの平衡精度と、ランダムにシャッフルされたクラスラベルを使用してテストされた同じモデルの平衡精度を比較することによって評価した。このプロセスを1000回繰り返した。5つのバイオマーカースコアすべてを使用した全体的な分類精度は、0.722、95%CI(0.6653~0.774)であり、その結果を図14に示す。
【0130】
同定された呼気バイオマーカーの化学種の特定
101個の呼気ピークの連結リストの化学的同一性を確認するために、入手可能な標準参照化合物を購入して分析した。これは、C8-C20飽和アルカン認定標準物質(Sigma Aldrich, Dorset, UK)、芳香族校正標準(NJDEP EPH 10/08 Rev.2, Thames Restek, Saunderton, UK)、多成分室内空気標準(Sigma Aldrich, Dorset, UK)、2つのテルペン参照混合物(Spex Centriprep, Emerald Scientific, San Luis Obispo, US)、およびSigma Aldrich(Merck Life Sciences)、Greyhound Chromatography、Scientific Lab Supplies、Alfa Chemicals及びSantaCruz Biotechnologyからの個別の標準を含んだ。
【0131】
図16は、化学名、CAS登録番号、KEGG、ヒトメタボロームデータベース、およびChEBI識別子、およびMSI準拠の代謝物同定レベル、濃度範囲、およびそれらの間の倍率変化(log2として表される)を詳述する回帰モデルから選択された予測マーカーの化学的割り当てをリストしている。急性群と対照群、および疾患固有のバイオマーカーリスクスコアに対する化合物の寄与(†調整済みp値<0.05)。
【0132】
試料サイズの推定
研究プロトコールでは、550人の対象を募集することが目的だったが、550人の対象が募集されていれば、感度の推定値の最大許容誤差は95%の信頼度で5%を超えずに、急性息切れの感度の高いバイオマーカー(80%以上)を特定できるようになる。同様に、特異性の推定値の最大許容誤差が80%の信頼度で5%を超えない状態で、急性息切れの特定のバイオマーカー(80%以上)を特定してもよいが、合計試料サイズはn=277に達した。
【0133】
n=277の合計試料サイズに基づいて、70%および80%±(精度10%、15%、および20%)の感度を使用して、事後試料サイズの計算を実施し、急性疾患クラスを「除外」できるバイオマーカーを取得した。同じ標的を特異性にも適用した。計算を95%の信頼水準を使用して実施した。
【0134】
募集にあたっては急性疾患有病率が80%であると仮定し、募集された患者の1:5は息切れのない健康な対照だった(表2)。急性疾患の有病率が80%であるという仮定は、試料サイズの計算の有効性に制限を課すことは認められているが、有病率80%という推定値は、臨床上の期待に基づいて不合理ではない。
【0135】
【表2】
【0136】
共発現および機能強化分析
グラフ構築およびクラスター分析
発見セットおよび複製セットの両方からの対象は、健康な対象を除いて、以前の回帰分析から得られた101個の特徴を含むデータ行列
【化4】
に結合された。スピアマン順位相関行列は、データ行列
【化5】
に対して計算された。
【0137】
スケールフリーグラフgを、隣接行列
【化6】
を生成することによって構築した。
ここで、
【化7】

【化8】
の試料相関行列であり、β≧1である。
【0138】
RのWGCNAパッケージのpickSoftThreshold関数を使用してβを推定した。Rにおけるイグラフパッケージは、
【化9】
を使用してgを構築するために使用された。gは重み付きの符号なしグラフである。このグラフgを「相関グラフ」と呼ぶ。
【0139】
次に、相関グラフに対してルーヴァンクラスタリングが実施され、8つの特徴セットが取得された。
【0140】
相関グラフ上のルーヴァンクラスタリングから得られた8つの特徴セットが強化分析に使用された。個々の特徴と、それらが異なる疾患群をどのように区別するかを考慮する代わりに、特徴のセットが考慮され、特徴を組み合わせることでより優れた識別能力が得られる可能性があるという考えである。バイオコンダクター(バージョン3.12)パッケージGSVAおよびlimmaを使用して強化分析を実施した。特徴セット3は喘息およびHFが豊富であることが判明し、特徴セット5はHFのみが豊富であることが判明した。表3~6を参照のこと。強化された特徴セット3および5は、回帰分析から得られたスコアを超える診断精度の向上を実証しなかった。
【0141】
【表3】
【0142】
【表4】
【0143】
【表5】
【0144】
【表6】
【実施例1】
【0145】
実施例1-概要
急性に息切れした入院患者および対応する健康対照者から集めた277人の参加者からの呼気をサンプリングして分析し、心肺疾患における代謝クラスの調節不全を特定し、診断の不確かさにも関わらず呼気VOCプロファイルが急性心肺疾患の増悪を予測できるかどうかを調査した。したがって、急性心呼吸性息切れの表現型を決定する際に潜在的な役割を果たす。
【0146】
参加者の平均(SD)年齢は60.8±(16.8)歳、51%が男性、30人の患者が入院時に酸素補給を必要とし、平均入院修正早期警告スコア(mEWS-2スコア)は2であった。コホートは以下の増悪サブタイプを呈する患者で構成されていた;急性重度喘息(n=65)、急性重度COPD(n=58)、急性重度心不全(n=44)、市中肺炎(n=55)、健康ボランティア(n=55)、2017年5月の間に募集および2018年12月(図6)。参加者の人口統計学的特徴および臨床的特徴を、表7にまとめる。呼気試料はReCIVA(登録商標)デバイスを使用して収集され、肺胞揮発性物質を強化する標準化されたサンプリングおよびゲートプロトコールを採用し、包括的な二次元ガスクロマトグラフィーと組み合わせた加熱脱着(TD)を使用して分析された。(GCxGC)デュアル水素炎イオン化検出(FID)および質量分析(MS)を使用する(図1および方法)。
【0147】
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【実施例2】
【0148】
実施例2-トポロジカルデータ分析を使用した公平な発見により、急性疾患の呼吸マーカーが特定される
急性疾患群を予測する呼気VOCの公平な発見を達成するために、患者を事後的にランダム化して139人の参加者からなる発見コホートにブロックした(急性喘息n=33、急性COPDn=29、急性心不全n=22、地域社会)後天性肺炎n=28、健康ボランティアn=27)、および138人の参加者の複製コホート(急性喘息n=32、急性COPDn=29、急性心不全n=22、市中肺炎n=27、健康ボランティアn=28)。ランダム化により、関連する交絡因子を調整しながら、診断用呼気バイオマーカーの内部複製が可能になった。コホートのランダム化およびさらなる臨床的特徴の詳細は、方法と表1および表8に記載されている。VOCの化学分析および定量化は、2人の分析化学者(MWおよびRC)によって臨床診断を盲検化して行われ、独立した統計学者(MR)によるデータロックに続いて、被験者の識別子と化学測定バイオマーカーを結び付ける生物統計分析が行われた。
【0149】
TD-GCxGC-FID/MSを使用して、呼気試料セット全体で805の固有のクロマトグラフィー特徴(ピーク)が検出された。これら805個のクロマトグラフィー特徴にトポロジカルデータ解析(TDA)を適用すると、発見コホートと複製コホートの両方で対応する血液ベースのバイオマーカーを特定しながら、急性息切れの根本的な原因を区別するトポロジカルに異なるネットワークが得られた(図2)。具体的には、健康なボランティアおよび急性心不全患者は、発見集団および複製集団の両方で異なるトポロジー的群を形成したが、急性喘息、急性COPD、および肺炎による呼吸器入院は、複製コホートの単一ネットワークの異なる領域内にあるにもかかわらず、トポロジー的連続体を形成した。発見コホートでも同様の所見が見られたが、急性喘息は別個の群を形成していた。
【0150】
【表8-1】
【表8-2】
【実施例3】
【0151】
実施例3-バイオマーカープロファイリングおよびリスクスコア
診断用途に適した呼気バイオマーカーの連結リストを作成するために、患者群あたり80%の特徴存在の閾値を適用し、それを下回る特徴を削除した(図7)。このアプローチを、呼気バイオマーカーの独自の分布特性によってさらに裏付け(図8)、患者固有のマルチVOCバイオマーカーリスクスコアの生成が可能になった。最小絶対収縮選択演算子(LASSO)およびElasticNet回帰法を使用したさらなるフィルタリング工程、続いて化学的および物質的アーチファクト(シロキサンなど)と考えられる38個のピークを除去し、101個の呼気揮発性物質の最終パネルを生成した(図7)。したがって、この分析計画により、少数の個々のVOCマーカーとは対照的に、VOCプロファイルにおける豊富で化学的に多様な応答の同定が可能になり、バイオマーカーのリスクスコアの生成が可能になった。データをバッチ効果について検査し、それに応じて調整した。主要な機器メンテナンスイベントに関連して検出されたバッチ効果(3つの群を作成する2回発生した。バッチ調整に関する補足情報セクションを参照)。使用したReCIVAデバイス、操作者、時刻、または収集された呼気試料の量に基づいて有意な寄与は観察されず、潜在的なバイアスを減らすために研究全体を通じてすべてのコホートにわたる同時かつ連続的な募集によって無効になった可能性が最も高い(図9-10)。生成されたVOCバイオマーカーリスクスコアの値は、健康なボランティアと比較して、急性心肺疾患患者において有意に高いことが判明した(図3a)。発見コホート(n=139)では、VOCバイオマーカーリスクスコアは、曲線下面積(AUC)1.00(1.00-1.00)p<0.0001、感度1.00(1.00-1.00)、特異性(1.00-1.00)、陽性的中率(PPV)1.00(1.00-1.00)、陰性的中率(NPV)(1.00-1.00)で、心肺機能の急性増悪を示す参加者と、年齢が一致する健康な対照者とを効果的に区別することができた。複製コホート(n=138)では、同じVOCバイオマーカーリスクスコアにより、急性疾患の参加者と健康な対照者が、AUC0.89(0.82-0.95)p<0.0001、感度0.79(0.71-0.86)、特異性AUC0.85(0.72-0.98)、PPV0.95(0.91-0.99)、NPV0.51(0.36-0.65)で区別された(図3b)。
【0152】
臨床判定プロセス(方法)の後、臨床トリアージの時点で100mmビジュアルアナログスケール(VAS)を使用して、各患者に臨床診断の不確実性の程度を割り当てた(図3c)。診断の不確実性を、VASの値が上位4分の20mm以上の患者として定義した。急性疾患のVOCバイオマーカーリスクスコアは、AUC0.96(0.92-0.99)p<0.0001、感度0.90(0.82-0.97)、特異性0.92(0.85-0.99)、PPV0.93(0.86-0.99)、NPV0.89(0.81-0.97で急性疾患を特定できた(図3d)。
【0153】
さらに比較ROC分析を実施し、プールされたコホート曲線AUC:0.70(0.62-0.78)p<0.0001、感度0.72(0.64-0.83))、特異性0.64(0.55-0.73)、PPV0.54(0.43-0.64)、NPV0.80(0.72-0.88)における主に感染症による呼吸器疾患(肺炎およびCOPD)に対する喘息バイオマーカースコアの診断精度を評価した。ROC分析を、他の急性疾患群AUC:0.78(0.70-0.86)p<0.0001、感度0.77(0.64-0.89)、特異性0.71(0.64-0.78)、PPV0.40(0.29-0.50)、NPV0.92(0.88-0.97)に対する心不全バイオマーカースコアの診断価値を評価するために実施した(図15)。
【実施例4】
【0154】
実施例4-呼気バイオマーカースコアと血液ベースのバイオマーカーおよび入院観察との相関
前述したように、VOCバイオマーカーリスクスコアは、急性疾患サブ群と心肺息切れのない健康な対象のそれぞれに対して生成された。発見コホートと複製コホートを組み合わせたもの(n=277)において、健康状態のVOCスコアとCRPおよびBNPの間には有意な負の相関があることに加えて(それぞれn=277、r=-0.15、p<0.0001、および-0.21、p<0.0001)、肺炎とCRP(n=277、r=0.33、p<0.0001)、急性心不全とBNPのVOCスコアの間(n=277、r=0.33、p<0.0001)に弱いながら統計的に有意な正の相関関係があった(図4a)。
【0155】
興味深いことに、急性疾患のVOCスコアとトリアージ中に実施された生体観察との間に有意な相関関係も確認された(図4b)。
【実施例5】
【0156】
実施例5-疾患群における予測マーカーの化学的分類
101個のバイオマーカーパネルの化学的同定は、メタボロミクス標準イニシアチブ(MSI)の代謝産物同定のレベル1基準に準拠した本物の参照化合物との比較を含んだ(図16)。
【0157】
この研究で急性息切れに関連する最も一般的な化学物質は、直鎖およびメチル分岐炭化水素(30%)、ケトン(10%)、アルデヒド(8%)、テルペン(13%)、それに続き硫黄含有VOC(7%)、アルコール(6%)、芳香族化合物(5%)、エステル(3%)、窒素含有VOC(3%)、エーテル(2%)、ハロゲン化合物(1%)、および各種アクリレート(12%)などあまり普及しておらず関連性の低い他のクラスも含んだ(図16)。
【実施例6】
【0158】
実施例6-代謝物セットの強化および化学的類似性分析
既知の十分に注釈が付けられた代謝経路による代謝産物のマッピングに依存する機能的指標とは異なり、応答を示す代謝変化は独立して導き出すことができる。応答性の兆候を示す手がかりを得るために、共変動クラスター、つまり代謝物セットについて101個の特徴のパネルを評価した(図5Aおよび図11)。
【0159】
全体で20個の代謝物セットを同定し、そのうち11個を急性心呼吸器疾患の増悪中に強化した。上方制御された7つの代謝産物セットは、主に非環式および分岐炭化水素で構成されていた(図11のセット3、5、7、および9)。本明細書の分析結果は、化学的類似性が高く、著しく強化された炭化水素の共発現を示し、生体内で測定された疾患反応を示す呼気VOCの主要な証拠を提供する。これは(図5a)で明確に示されており、代謝産物セット(内側のツリー)はより広範な化学分類(外側のリング)によってラベル付けされている。C5-7、C8-10、およびC11-16は炭素数に基づいてクラスターを形成し、これも急性増悪中に最も大きな変化を示す。
【実施例7】
【0160】
実施例7-心呼吸器疾患サブ群における呼気バイオマーカースコアの診断精度
弾性ネット正則化を使用した多項回帰モデルを、10分割交差検証を100回繰り返して101個の呼気バイオマーカーのマトリックスに適合させた。101のバイオマーカーに適合した多項回帰モデルからの最も安定した特徴の線形結合により、さまざまな疾患群(急性喘息、急性COPD、肺炎、心不全、または健康なボランティア)に属する確率を予測するためのスコアのセットが形成された。呼気VOCスコアの中央値および疾患サブ群全体の分布の詳細を、図12に示す。
【0161】
プールされたコホート(n-277)では、5つのバイオマーカースコアすべてを使用した全体的な分類精度は0.722、95%CI(0.6653~0.774)だった(図14)。急性喘息の平衡精度は0.8274、急性COPDは0.7751、心不全は0.7967、市中肺炎は0.7935、健康対照は0.9274だった。
【0162】
議論
この実用的な急性期処置研究では、急性心呼吸性息切れを呈する高重症患者における呼気バイオマーカープロファイリングの有効性が評価された。発明者らは、GC×GC-MSを使用して、GC×GC-MSバイオマーカー特性評価と組み合わせた肺胞呼気の堅牢かつ検証されたサンプリングが、急性心呼吸性増悪に対する高い診断精度を実証したことを観察した。心肺機能悪化サブタイプを分類し、再現研究での検証を保証する呼気VOCバイオマーカーのサブセットからの推定バイオマーカーリスクスコアも特定されている。さらに、健康と比較して、急性疾患(サブ群を含む)で高度に相関し、選択的に増加または抑制されているいくつかのクラスのVOCSが特定されており、急性心呼吸性増悪におけるメタボロームの広範な調節不全についての潜在的な洞察が得られる。
【0163】
この研究は、重度の心肺機能の増悪を伴う大規模コホートにおける呼気VOCの特徴付けを試みた最初の試みであり、その結果は、この研究を急性期の臨床現場でのブレスオミクスの使用の概念実証として位置付けている。
【0164】
ここに記載されている分析方法は、大規模トランスレーショナル研究における呼気分析の標準化と統合に不可欠な、TD-GCxGC-FID/MSを使用した堅牢なバイオマーカー開発プロトコールによって支えられている。バッチ変動を含むいくつかの潜在的な交絡因子について詳細に対処した(SI)。さらに、モデル化された101種類のVOCのバイオマーカー定量化は、メタボロミクス標準イニシアチブ(MSI)の推奨に従い、純粋で追跡可能な標準(レベルI)に対して58の化合物が同定され、質量スペクトルおよび保持指数ライブラリーの一致に基づく21の推定同一性(レベル2)を使用した。図16.個々の心呼吸状態に局在すると思われるマーカーは、容易に視覚化できた(図5)。
【0165】
主要な化学クラスとして炭化水素とカルボニルが同定されたことは、炎症時の酸化ストレスの結果である脂質過酸化の化学的終点として想定されている現在のメカニズムの理解と一致していた。ノナナール、デカナール、ヘキサナールなどのアルデヒドは喘息を予測し、ケトンは2-ペンタノン(喘息)、シクロヘキサノン(肺炎)、2,3-ブタンジオン(COPD)を含む。2,4-および2,2-ジメチルペンタン;2-メチルブタン;4-メチルデカン;5-メチルノナンおよびイソプレンなどの個々の炭化水素は、肺炎および心不全を予測する。(COPDを予測することが判明している)3-メチルチオフェン、硫化アリルメチルおよび硫化カルボニルなどの硫黄含有VOCは、細菌の代謝に関連しており、腸から発生し、場合によっては放射線傷害の結果として発生すると考えられている。2,3-ブタンジオンもCOPDを予測する。
【0166】
すべての化合物が内因性VOCであるとは考えられず、そのうち27は化粧品図16などのパーソナルケア製品からの汚染に起因すると考えられた。対照群を予測する特徴のうち11は、香料(例えば、アルファイソメチルイオノン)または皮膚軟化剤および界面活性剤として化粧品において使用されるワックス状長鎖連鎖化学物質(例えば、ステアリルビニルエーテルおよびミリスチン酸イソプロピルな)のいずれかに割り当てられた。吸着剤チューブが患者の顔に近かったため、これらは呼気試料に捕捉された可能性がある。
【0167】
相関グラフ上のルーヴァンクラスターの共発現および強化分析(機能強化分析セクション-表3~6)により、特定の疾患群で大幅に強化された、高度に相関する一連の代謝産物が明らかになった。ルーヴァンクラスターと前述の方法を使用して同定された代謝産物セットを比較すると、強い重複が示された(図5Aおよび5B)。心不全で豊富な代謝産物は、化学的類似性が高い、高度に相関するC5-7炭化水素およびC3-5カルボニルのクラスターだった(方法および図11で決定された谷本係数に基づく)。クラスターは、2,4-および2,2-ジメチルペンタン、2-メチルブタン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、3-メチルペンタン、ヘキサンおよびシクロヘキサンを含んだ。
【0168】
この分析では、COPDや肺炎の急性増悪と比較して、喘息の急性増悪では高度に相関する別のアルデヒドのセット(ノナナール、デカナール、ウンデカナール、およびメチルデカナール異性体)が低いことも明らかになった。インビトロ実験中のVOCの枯渇は、免疫細胞による代謝活動の結果として報告されているが、ここでの関連性は暫定的なものであり、以前にも観察されたこれらの化合物の吸入空気濃度と呼気濃度との相関関係(スピアマンランクの中央値=0.60)のため、注意して解釈する必要がある。
【0169】
結論として、本発明者らは、堅牢な臨床技術および分析技術を使用して急性期処置の揮発性呼気バイオマーカー研究を実施し、急性心呼吸器疾患におけるバイオマーカーの高い診断感度および特異性を同定し、併せて、急性心肺疾患の増悪におけるさらなるメタボローム表現型解析のアプローチを保証する堅牢なバイオマーカー同定および機構的関連性を同定した。
図1
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図8-4】
図9
図10
図11
図12-1】
図12-2】
図12-3】
図12-4】
図12-5】
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図14
図15
図16-1】
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図16-4】
図16-5】
図16-6】
図17