(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】微小石灰化活性を検出するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240730BHJP
G01T 1/161 20060101ALI20240730BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20240730BHJP
A61B 1/313 20060101ALI20240730BHJP
A61B 1/045 20060101ALI20240730BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20240730BHJP
A61B 6/50 20240101ALI20240730BHJP
【FI】
A61B6/03 570Z
G01T1/161 Z
A61B6/03 560T
A61B6/03 560J
A61B1/00 526
A61B1/00 530
A61B1/313 510
A61B1/045 618
A61B1/045 614
A61B5/055 380
A61B6/50 500B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503820
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 AU2022050779
(87)【国際公開番号】W WO2023000039
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524026403
【氏名又は名称】ナヴィア メディカル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Navier Medical Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ドイル,バリー ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ケルシー,ラクラン ジェームズ
【テーマコード(参考)】
4C093
4C096
4C161
4C188
【Fターム(参考)】
4C093AA24
4C093AA26
4C093CA18
4C093CA32
4C093DA02
4C093FD03
4C093FF16
4C093FF28
4C093FF42
4C093FG18
4C096AD14
4C096DC19
4C096DC20
4C096DC23
4C096DC24
4C161AA22
4C161BB08
4C161CC07
4C161FF46
4C161JJ09
4C161MM10
4C161SS21
4C161WW02
4C188EE02
4C188FF07
4C188KK24
(57)【要約】
動脈又は静脈のいずれかを含む血管内の微小石灰化活性を予測するシステム及び方法であって、(a)血管組織サンプル内の冠状動脈プラーク又は可視疾患マーカの存在及び/又は量;血管組織サンプル内の健康な組織の存在及び/又は量;血管内の異常な血行力学的環境を規定する1以上の特徴;血管リモデリングに関連付けられて血管の血行力学に影響を与える1以上の幾何学的特徴、及び/又は、血管血行力学に影響を与える1以上の材料特性のうちの1以上を含む患者データを測定するステップ(a)と、(b)ステップ(a)で得られた測定値の関数として血管内の微小石灰化活性を計算するステップと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動脈又は静脈のいずれかを含む血管における微小石灰化活性を予測する方法であって、当該方法は、
(a)患者データを測定するステップであって、
(i)血管組織サンプル中の冠状動脈プラーク又は可視疾患マーカの存在及び/又は量、
(ii)前記血管組織サンプル中の健康な組織の存在及び/又は量、
(iii)血管内の異常な血行力学環境を規定する1以上の特徴、
(iv)血管リモデリングに関連付けられて血管内の血行力学に影響を与える1以上の幾何学的特徴、及び/又は、
(v)血管血行力学に影響を与える1以上の材料特性のうちの1以上を含む患者データを測定するステップと、
(b)ステップ(a)で得られた測定値の関数として血管内の微小石灰化活性を計算するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記血管組織サンプルが患者の血管系を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)の前記測定値が、放射性トレーサ
18F-フッ化ナトリウム(NaF)に関連付けられる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)の前記測定値が1以上の患者画像ソースから導出される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記1以上の患者画像ソースが、
コンピュータ断層撮影法、
光干渉断層撮影法、
血管内超音波、
X線血管造影、
磁気共鳴画像又は、
PET撮影法のうちの1以上を含む群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記測定値は、画像処理手段を使用して前記患者画像データをセグメント化して注釈を付けることによって取得される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記血管組織の前期測定値が、
血管内腔中心線の蛇行、
既定の閾値を下回る壁せん断応力値を有する血管内腔表面積の割合、又は、
前記血管組織のプラークフリー壁のうちの1以上を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記微小石灰化活性が、前記血管組織の各セグメントにおける組織対バックグラウンド比(TBR)の最大値として測定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(a)の前記測定値が、
血圧、
血流量又は局所的な血行力学特性及び、
組織応力のうちの1以上の群から選択される生体力学的測定値を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記1以上の幾何学的特徴が、アテローム性動脈硬化プロセス及び/又は微小石灰化活性に対応する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記1以上の幾何学的特徴が、石灰化しやすい血管内の画像ベースの直径測定値に対応する、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
血管における微小石灰化活性を予測する方法であって、当該方法は、
訓練データを取得するステップであって、前記訓練データは、
(i)複数の患者に関するデータ及び複数のデータを含む一般的な患者データと、
(ii)1以上の解剖学的位置における複数の患者からの微小石灰化活性データ(μCA)と、から構成される、訓練データを取得するステップと、
入力された患者データ及び微小石灰化活性データから関数を計算して、入力された訓練データセット[A
Tr、B
Tr、C
Tr、D
Tr、...]と同じ方法で取得された新しいデータ[a
new、b
new、c
new、n
new]に対するμCAを推定又は予測することによって回帰モデルを適合するステップであって、前記関数は
である、適合するステップと、
事前に適合された関数を評価して新しい関数入力のセットに対する微小石灰化活性(μCA
Est)の推定値のセットを取得することによって前記回帰モデルを評価するステップと、
同じ患者について収集されて関数入力を生成するために使用されたデータの対応のセットから導出された微小石灰化活性データ(μCA
Te)の既知/対応の値のセットと微小石灰化活性の推定値のセット(μCA
Est)を比較することによって、誤差関数Efを使用して誤差推定値を計算するステップであって、
である、計算するステップと、
前記誤差推定値をチェックして前記モデルの適合性を評価するステップと、を含む、方法。
【請求項13】
血管における微小石灰化活性を予測する方法であって、
訓練データを受け取るステップであって、前記訓練データは、
(i)血管組織サンプル中の冠状動脈プラーク又は可視疾患マーカの存在及び/又は量、
(ii)前記血管組織サンプル中の健康な組織の存在及び/又は量、
(iii)血管内の異常な血行力学環境を規定する1以上の特徴、
(iv)血管リモデリングに関連付けられて血管内の血行力学に影響を与える1以上の幾何学的特徴、及び/又は
(v)血管血行力学に影響を与える1以上の材料特性のうちの1以上に関連付けられる、訓練データを受け取るステップと、
前記訓練データ値に基づいて1以上の訓練特徴を決定するステップと、
前記1以上の訓練特徴に関連付けられた1以上の訓練ラベルを決定するステップと、
血管内の微小石灰化活性を決定するための、コンピュータを使用した予測モデルを構築するステップと、を含み、前記予測モデルを構築するステップは、
前記1以上の訓練特徴と、前記1以上の訓練特徴に関連付けられた前記1以上の訓練ラベルとを機械学習アルゴリズム又は回帰モデルに入力するステップと、
前記機械学習アルゴリズム又は回帰モデルから予測モデルを決定するステップであって、血管に関連付けられた新しいデータを受け取り、前記新しいデータに基づいて予測ラベルを決定するための前記予測モデルを決定するステップと、が含まれる、予測モデルを構築するステップと、を含む方法。
【請求項14】
血管における微小石灰化活性を測定するコンピュータ実装方法であって、
(a)測定するステップであって、
(i)血管組織サンプル中の冠状動脈プラーク又は可視疾患マーカの存在及び/又は量、
(ii)前記血管組織サンプル中の健康な組織の存在及び/又は量、
(iii)血管内の異常な血行力学環境を規定する1以上の特徴、
(iv)血管リモデリングに関連付けられて血管内の血行力学に影響を与える1以上の幾何学的特徴、及び/又は
(v)血管血行力学に影響を与える1以上の材料特性のうちの1以上を測定するステップと、
(b)訓練された機械学習モデル、回帰モデル又は予測モデルを使用して、ステップ(a)で得られた測定値の関数として前記血管内の微小石灰化活性を計算するステップと、を含む方法。
【請求項15】
前記第1機械学習モデルは、第1訓練回帰モデル又は予測モデルを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記血管が、冠状動脈、頸動脈、大脳動脈、大動脈、末梢動脈又は静脈のうちの1以上である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
患者の血管組織における
18F-NAFの取り込みを予測するための情報を提供する方法であって、
患者画像データに対して画像処理手段を使用して、心血管疾患の進行に関連付けられた前記血管組織における冠状動脈プラーク又は可視疾患マーカの存在及び/又は量を示す血管バイオマーカを測定するステップと、
プロセッサを使用して、測定値の関数として前記血管組織における微小石灰化活性を計算するステップと、を含む方法。
【請求項18】
冠状動脈、頸動脈、大脳動脈、大動脈、末梢動脈又は静脈を含む任意の対象の血管における微小石灰化活性を測定するステップを含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記微小石灰化活性の測定値が、前記患者の血管系の患者画像データの画像処理を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記患者データが、
脂質領域、
表面カルシウム、
深部カルシウム、
プラークフリー壁、
血栓、
マクロファージ、
マイクロチャネル、
コレステロール結晶、又は、
前記患者の1以上の血管に関する薄被膜線維性粥腫の群から選択される臨床的対象の1以上の特徴に関するバイオマーカデータを含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記患者データが、
OCT画像データ、
血管造影画像データ、
コンピュータ断層撮影(CT)画像データ、
CT血管造影画像データの群から選択される画像データのうちの1以上を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
組織の剛性の比に基づいて生体内材料特性を推定するステップをさらに含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
腔内せん断応力、
プラーク構造応力、
プラーク特徴分析、
微小石灰化活性、
仮想ステント留置、
血管壁の特徴分析、
薄被膜測定、
マルチモーダルイメージング、
血管枝、
冠血流予備量比、
迅速な時間枠、及び、
VR仮想化の群から選択される血管状態のうちの1以上の尺度を決定するステップをさらに含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
血管プラークの存在及び/又は量が、血管内患者画像データから疾患の幾何学的マーカを測定することに基づいて測定され、前記幾何学的マーカが、
脂質、
カルシウム、及び、
血管内で検出されたプラーク中のマクロファージのうちの1以上から選択される、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
複数の種類の患者画像データが使用されて、既定の血管パラメータを測定し、測定された前記パラメータが組み合わせられて血管における微小石灰化活性を予測する、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つのプロセッサと、
患者データを格納する少なくとも1つのメモリデバイスであって、前記患者データは、
(i)血管組織サンプル中の冠状動脈プラーク又は可視疾患マーカの存在及び/又は量、及び/又は、
(ii)血管組織サンプル中の健康な組織の存在及び/又は量、及び/又は、
(iii)血管内の異常な血行力学環境を規定する1以上の特徴、及び/又は、
(iv)血管リモデリングに関連付けられて血管内の血行力学に影響を与える1以上の幾何学的特徴、及び/又は、
(v)血管血行力学に影響を与える1以上の材料特性に関し、
前記少なくとも1つのプロセッサは、訓練された機械学習モデル、回帰モデル又は予測モデルを使用して、前記患者データの関数として前記血管における微小石灰化活性を計算するように構成される、少なくとも1つのメモリデバイスと、
前記患者データのAI訓練済みモデルにアクセスし、かつ、前記患者の血管組織における
18F-NaF取り込みを予測するための予測プロセッサと、を備えるコンピュータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、概して、血管組織における18F-NaF取り込みを推定/予測する分野に関し、特に、18F-NaF PET画像診断法を使用せずに血管組織における18F-NaF取り込みを推定/予測することに関し、かつ、本願を参照して以下に説明される。ただし、本発明はこの特定の使用分野に限定されないことが理解される。
【背景技術】
【0002】
[0002] 本明細書全体を通じた背景技術のいかなる議論も、そのような背景技術が従来技術であること、及び、そのような背景技術がオーストラリア又は世界中の分野で広く知られているものであること又は共通の一般知識の一部を形成していることを認めるものと決してみなされるべきではない。
【0003】
[0003] 本明細書で引用されるあらゆる特許又は特許出願を含むすべての参考文献が参照により本明細書に組み込まれる。いかなる参考文献も従来技術を構成するということは認められない。参考文献の議論は、それらの著者が主張している内容を記載し、かつ、本出願人は、引用文献の正確性及び妥当性について異議を唱える権利を留保する。本明細書では多くの先行技術刊行物が参照されるが、この参照は、これらの文書のいずれかがオーストラリア又は任意の他の国の当該技術分野における共通の一般知識の一部を形成することを認めるものではないことが明確に理解される。
【0004】
[0004] この議論は、特に、冠状動脈心疾患を引き起こす冠状動脈における微小石灰化活性の画像化及び分析に関するが、本明細書の開示は、冠状動脈に限定されず、かつ、特に少なくとも患者の頸動脈、脳動脈、大動脈、末梢動脈又は血管系の任意の動脈若しくは静脈を含む患者の全身の血管系に容易に適用可能である。
【0005】
[0005] 冠状動脈疾患(CHD)は世界で最も多い死因である。2015年には、CHDは、1億1000万人を襲い、かつ、890万人を死亡させた。この数字は、全死亡者数の16%を占め、世界的に最も多く見られる死因となっている。冠状動脈疾患は、オーストラリアにおける唯一の最も多い死因でもある(全死亡者数の12%、27分ごとに1人死亡)。
【0006】
[0006] 2016年、米国心臓協会(HCA)は、米国の20歳以上の1550万人がCHDに罹患していると報告した。報告された有病率は、女性及び男性の両方で年齢とともに増加している。
【0007】
[0007] CHDによる心臓発作で入院した患者の約25~30%は、死亡するか、又は、3年以内にさらなる臨床事象で少なくとも1回は再入院することになり、かなりの健康負担となっている。入院患者の冠状動脈造影及び血行再建、スタチン、抗血小板薬2剤併用療法、β遮断薬、ACE阻害薬及び生活習慣アドバイスを含むいくつかの実証済みのリスク軽減策を日常的に使用しているにもかかわらず、再発する事象が発生する。例えば、プラーク破裂に関連する炎症過程を標的とする新規な予防療法が評価されているが、費用がかかり、かつ、好ましくない副作用が生じる可能性がある。より効果がある患者のみにこれらの治療法をより適切に適用するために、リスク層別化を改善するという満たされていないニーズがあることは広く認識されている。
【0008】
[0008] 患者にCHDの疑いがある場合、治療する心臓専門医は通常、経皮的冠状動脈インターベンション(PCI)を実行する。PCIでは、手首又は鼠径部を介して心臓にカテーテルを挿入することを要する。X線撮像下で造影剤を注入すると、血流が強調表示され、かつ、動脈の狭窄が明らかになる。処置のこの部分は、冠状動脈血管造影と呼ばれ、かつ、その後の分析のために記録可能である。次に、心臓専門医は、閉塞に向かって別のカテーテルを誘導し、かつ、バルーンで閉塞を開くか、又は、閉塞領域にステントを留置する。PCI処置は、冠状動脈疾患の症状を緩和するに役立ち、かつ、心臓発作後又は心臓発作中の心臓へのダメージを軽減する。世界のPCI市場は、2017年に100億米ドルで、かつ、2023年までに150億米ドルを超えると予想されている。
【0009】
[0009] 冠状動脈血管造影中で、かつ、血管形成術(バルーン治療)又はステント留置術の前に、閉塞による疾患のある動脈に沿った圧力差に関する重要な情報を得ることができ、この情報は、ステントを使用するか否かの決定を知らせる。これは、冠血流予備量比(FFR)と呼ばれ、冠状動脈の狭窄(通常はアテローム性動脈硬化症による狭窄)全体の圧力差を測定し、狭窄が心筋への酸素供給を妨げる(心筋虚血の)可能性を判断する。FFRは、冠状動脈疾患(CAD)の生理学的重要性を評価するための標準治療となっている。経皮的冠状動脈インターベンション(PCI)をガイドするためにFFRが使用される場合、臨床転帰が改善され、展開されるステントの数が減り、そして、コストが削減される。
【0010】
[0010] しかしながら、FFRが最も頻繁に使用される国でさえ、FFRが使用されるのはPCI処置の10%未満であり、かつ、診断症例ははるかに少ない;したがって、これらの利点にもかかわらず、臨床での取り込みは依然として極めて低いままである。これは、実用性、時間及びコストに関連する要因の組み合わせによるものである。数値流体力学(CFD)を使用して冠状動脈血管造影(CAG)から「仮想」FFR(vFFR)を計算すると、侵襲的技術を制限する欠点を有しない生理学的ガイドPCIの利点が得られる。
【0011】
[0011] vFFRは、CFDモデリングを使用した冠状動脈CT血管造影(画像)からの冠状動脈解剖学的構造の3次元(3D)再構成に基づいて計算可能である。近年、FDAは、計算モデリングから導出されるFFRの臨床実装を承認した。vFFRを決定する最適化された方法(例えば、3D-QCA導出のvFFR)により、4分以内又はほぼリアルタイムで結果が得られる。初期の結果は有望なものであったが、vFFR計算の精度は、個々の患者ベースで冠状動脈及び病変形状(画像化及び再構成)並びに生理学的パラメータ(境界条件の調整)をモデルが表す精度によって制限される。信頼性の高いvFFRツールに対する最後の大きな障壁は、充血流量又は心筋抵抗を表す患者固有の調整戦略の適用である。
【0012】
[0012] 特に心イベントのリスクが高かった併発状態を有する患者においては、より優れた撮像システムを使用して、ステント移植のための最適化された治療計画を確立することができる。最近のネットワークメタ分析は、冠状動脈造影ガイド(Buccheri他、2017年)に対する血管内超音波(IVUS)及び/又は光干渉断層撮影(OCT)の優位性を明確に実証した。特に、血管造影では、血管のサイズ及びプラーク負荷、病変カルシウム及び偏心、ステント拡張並びにジオグラフィックミス及び合併症を評価することに限界があることが知られているので、現在では日常的なPCI中に発生する疑問に答えるためにIVUS及びOCTが使用されている。OCTの使用は、10倍高い画像解像度と高速な画像取得時間とにより、IVUSなどの古いテクノロジーに急速に取って代わりつつあり、例えば、日本では、OCTはすべてのPCIの約80%で使用されている。したがって、専門家は、OCT分析が重要なツールとなり、自動化された画像分析が早急に必要になると考えている。
【0013】
[0013] 他の画像診断法に比べてOCTを使用する主な利点のうちの1つは、プラークの壊死性コアを動脈の内腔から隔てる線維組織の縁である薄被膜線維性粥腫(TCFA)を測定することができることである。TFCAの破裂は、壊死性コアの内容物が血流内に流出し、かつ、下流での閉塞を引き起こすことを意味している。最も危険なTCFAの厚さは65μm未満であり、これはOCTを使用してのみ測定可能である。TCFAの厚さはリスクの1つの尺度であるが、冠状動脈疾患の予測不可能性は不安定プラークと安定プラークとの挙動によるものであり、現在、プラーク安定性を評価する方法はない。
【0014】
[0014] TCFAに加えて、プラーク安定性の他の多くのバイオマーカをOCT上で視覚化及び定量化することができる。現在臨床的対象の特徴は、
(1)脂質領域;
(2)表面カルシウム;
(3)深部カルシウム;
(4)プラークフリー壁;
(5)血栓;
(6)マクロファージ;
(7)マイクロチャネル;
(8)コレステロール結晶;そしてもちろん、
(9)薄被膜線維性粥腫である。
【0015】
[0015] これらの各々は、心臓発作及び潜在的な死亡を引き起こすプラーク破裂のリスクに寄与する。これらの特徴の重要性は認識されているが、現在は、それらは、(通常、動脈セグメントごとに約500ある)各OCT画像上に手動で注釈を付けられて定量化されなければならない。これは、膨大な時間がかかるだけでなく、ユーザごとのばらつきも生じさせる。
【0016】
[0016] プラーク安定性の画像ベースのバイオマーカに加えて、プラーク評価には生体力学的側面が重要であることを示唆する証拠が増えている。生体力学の観点からは、通常2つの力、せん断応力及び構造的応力が考慮される。
【0017】
[0017] せん断応力は、流れる血液によって血管(すなわち、動脈又は静脈のいずれかの)壁の内側及びプラークに作用する摩擦力である。数値流体力学(CFD)は、患者の動脈又は静脈の内壁に作用するせん断応力を計算するために使用される主な方法である。正常な生理学的機能にはあるレベルのせん断応力が必要とされ、かつ、せん断応力が低いことは、プラークの進行と将来の臨床事象とに対する十分に確立された予測因子である。現在、使用可能な血管せん断応力情報を臨床医に提供するために市販されたツールはない。
【0018】
[0018] 血圧によって血管及びプラークに作用する構造的応力も臨床的に大きな価値を有している。構造的応力が組織の構造的強度を超えた場合、プラークが破裂する。これは、長年にわたる主要な研究活動の焦点であり、大幅な進歩が見られた。しかしながら、せん断応力と同様に、これらの重要なデータを提供可能な臨床医が入手可能な市販のツールは現在ない。
【0019】
[0019] 現時点では、内腔を越えたOCT画像データを半自動又は自動で分析する方法、若しくは、プラークを不安定化して生命を脅かすプラーク破裂(心臓発作)を引き起こす重要な生体力学的な力を計算する方法はない。さらに、臨床医は、動脈へのさらなる損傷を最小限に抑えるために最適なステントのサイズ、長さ及び配置を包括的に選択することができる血管内撮像及びソフトウェアによるPCI前治療計画ツールを依然として必要としている。
【0020】
[0020] 陽電子放出型断層撮影(PET)によって検出される18F-フッ化ナトリウム(18F-NaF)の取り込みは、高リスクのプラーク冠状動脈の特徴及び将来の臨床事象と関連付けられている(Joshi他、2014年、18F-fluoride positron emission tomography for identification of ruptured and high risk coronary atherosclerotic plaques;a prospective clinical trial.Lancet,383,705-13;Lee他、2017年、Clinical Relevance of (18)F-Sodium Fluoride Positron-Emission Tomography in Noninvasive Identification of High-Risk Plaque in Patients with Coronary Artery Disease.Circ Cardiovasc Imaging,10)。18F-NaFの取り込みの領域は動脈壁の微小石灰化活性を示しており、かつ、これらの領域は将来巨石石化に発展する。最近、18F-NaF PETが、致死性又は非致死性の心筋梗塞の強力な独立した予測を提供することが示された(Kwiecinski他、2020年、Coronary 18F-Sodium Fluoride Uptake Predicts Outcomes in Patients With Coronary Artery Disease.J Am Coll Cardiol,75,3061-74)。Kwiecinski他では、彼らは、18F-NaFの取り込みを、血管内の18F-NaF PET活性の量及び強度に基づいて血管内の全体的な疾患活性を表す冠状微小石灰化活性(CMA)と呼ばれる同等の尺度に変換した。したがって、将来の有害事象の早期指標として18F-NaFの取り込みを検出、視覚化及び定量化することは、臨床的に大きな関連性を有している。しかしながら、この撮像技術は、高価であり、専門のセンタでのみ利用可能であり、かつ、画像を分析するにはかなりの技術的専門知識を必要とする。さらに、患者は追加の放射線に曝露され、一部の患者は撮像放射性トレーサに耐性がない。
【0021】
[0021] 18F-NaFトレーサは、他の血液由来粒子とともに、血流を介して輸送され、かつ、初期のアクティブな血管石灰化に結合する(Irkle他、2015年、Identifying active vascular microcalcification by 18F-sodium fluoride positron emission tomography.Nature Communications,6,7495)。18F-NaFトレーサは、したがって、血行力学(プラーク部位への輸送)及び冠状動脈内のプラークの分布の影響を受ける。増殖する/アクティブな冠状動脈プラークは、微小石灰化活性が発生しているので、細胞死及び炎症によって引き起こされるNaFの優先結合部位であると考えられる(Chen及びDilsizian、2013年、Targeted PET/CT Imaging of Vulnerable Atherosclerotic Plaques:Microcalcification with Sodium Fluoride and Inflammation with Fluorodeoxyglucose.Current Cardiology Reports,15,364)。
【0022】
[0022] 冠状血管への血液供給は、血管の直径/内径、血管の長さ及び心筋の筋肉量などの幾何学的測定値に依存することが示されている(Zamir他、1992年、Relation between diameter and flow in major branches of the arch of the aorta.J Biomech,25,1303-10;Choy及びKassab、2008年、Scaling of Myocardial Mass to Flow and Morphometry of Coronary Arteries.Journal of Applied Physiology (Bethesda,Md.:1985),104,1281-1286)。冠状動脈プラークの伝播は、リモデリングを通じて局所的な血管の内径及び形状を変化させる(Libby及びTheroux、2005年、Pathophysiology of coronary artery disease.Circulation,111,3481-8)。この形状変化は、面積及び偏心などの幾何学的測度によって説明されることが多く(Hausmann他、1994年、Lumen and plaque shape in atherosclerotic coronary arteries assessed by in vivo intracoronary ultrasound.Am J Cardiol,74,857-63)、かつ、プラーク内の構造的応力の上昇に関連している(Costopoulos他、2017年、Plaque Rupture in Coronary Atherosclerosis Is Associated with Increased Plaque Structural Stress.JACC Cardiovasc Imaging,10,1472-1483)。プラークの特徴は、内皮に作用する流体摩擦力である高い及び低い内皮壁せん断応力(WSS)の両方に関連付けられている(Koskinas他、2009年、The role of low endothelial shear stress in the conversion of atherosclerotic lesions from stable to unstable plaque.Curr Opin Cardiol,24,580-90.)。特定の位置におけるWSSの値は、血液供給、血液の特性(例えば、粘度)、血管の内径及び内腔の形状(例えば、偏心率、曲率(Myers他、2001年、Factors Influencing Blood Flow Patterns in the Human Right Coronary Artery.Annals of Biomedical Engineering,29,109-120.))を含む多くの要因に依存する。WSSが低いと、アテローム表現型を刺激して動脈炎症を促進し、接着タンパク質及びケモカインの発現が協働して血流から血管へ白血球を捕捉する(Malek他、1999年、Hemodynamic shear stress and its role in atherosclerosis.Jama,282,2035-42;Lawrence他、1987年、Effect of flow on polymorphonuclear leukocyte/endothelial cell adhesion.Blood,70,1284-90;及び、Gijsen他、2019年、Expert recommendations on the assessment of wall shear stress in human coronary arteries:existing methodologies,technical considerations,and clinical applications.European Heart Journal,40,3421-3433.)。さらに、低いWSSは再循環流と低い壁近傍速度との領域に存在し、これが内皮近くで血液由来粒子を凝集させるのに役立つ(Gijsen他、2019年、Expert recommendations on the assessment of wall shear stress in human coronary arteries:existing methodologies,technical considerations,and clinical applications.European Heart Journal,40,3421-3433.)。これらの血行力学的メカニズム及び関連の内皮機能不全は、なぜプラークの進行が低せん断応力の領域で発生するのかを説明するのに役立つ(Chatzizisis他、2008年、Prediction of the Localization of High-Risk Coronary Atherosclerotic Plaques on the Basis of Low Endothelial Shear Stress.Circulation,117,993-1002;Stone他、2012年、Prediction of Progression of Coronary Artery Disease and Clinical Outcomes Using Vascular Profiling of Endothelial Shear Stress and Arterial Plaque Characteristics:The PREDICTION Study.Circulation;Kumar他、2018年、Low Coronary Wall Shear Stress Is Associated with Severe Endothelial Dysfunction in Patients with Nonobstructive Coronary Artery Disease.JACC Cardiovasc Interv,11,207-2080;Yamamoto他、2017年、Low Endothelial Shear Stress Predicts Evolution to High-Risk Coronary Plaque Phenotype in the Future.Circulation:Cardiovascular Interventions,10,e005455;及び、Bourantas他、2019年、Implications of the local hemodynamic forces on the phenotype of coronary plaques.Heart,heartjnl-2018-314086)。
【0023】
[0023] 我々は、局所的なNaFトレーサの滞留、浸潤及び結合を通じて微小石灰化活性の検出を促進するために同じ環境を考慮している。
【0024】
[0024] せん断応力と構造的応力との両方を臨床的に使用する試みは、自動化された画像解析、計算時間、及び、シミュレーション用の重要な境界条件データの欠如などの重大な困難により、現在制限されている。これらの問題に対する解決策はこれまでのところ記載されていない。さらに、18F-NaF取り込み(すなわち、アクティブな微小石灰化)に関する定量的データは臨床的に有望であることを示しているが、高価でアクセス不可能な18F-NaF PETハードウェア、18F-NaFデータにアクセスして解釈するための核医学及び画像解析の専門知識、過度の放射線及び放射性トレーサに対する患者の不耐性の問題に対する現在の要件を克服する強いニーズが存在する。
【0025】
[0025] 本発明はこのような背景に対して開発された。特に、本発明は、上述した従来技術の欠点のうちの1以上を克服又は少なくとも改善すること、若しくは、消費者に有用な又は商業的な選択肢を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0026】
[0026] 本発明の目的は、従来技術の欠点のうちの少なくとも1以上を克服若しくは改善すること又は有用な代替案を提供することである。
【0027】
[0027] 一実施形態は、本明細書に記載の方法を実行するためのコンピュータプログラム製品を提供する。
【0028】
[0028] 一実施形態は、プロセッサ上で実行される場合、プロセッサに本明細書に記載の方法を実行させるコンピュータ実行可能コードを保持するための非推移的な搬送媒体を提供する。
【0029】
[0029] 一実施形態は、本明細書に記載の方法を実行するように構成されたシステムを提供する。
【0030】
[0030] 本発明は、解剖学的測定、画像測定、プラーク測定及び血流/血行力学的測定を使用して動脈(好ましくは冠状動脈)における微小石灰化活性を測定する方法を提供するという点で、一般的応用の原理に関する。特に、本発明は、健康な及び/又は疾患のある血管系内の対象領域及び病変の測定に対応し、かつ、これらの状態を識別/定量化/区別する手段を提供する。当該方法で使用するためのあり得る入力及び出力のリストは広範囲に及び、微小石灰化予測は、当該方法から導出され得る/おそらく意図され得る結果である。
【0031】
[0031] 本発明によれば、本発明者らは、血管(好ましくは冠状動脈)における微小石灰化活性を測定する方法を提供する。
【0032】
[0032] 本発明の第1態様によれば、血管内の微小石灰化活性を予測する方法が提供される。血管は動脈又は静脈のいずれかを含んでもよい。当該方法は、(a)血管組織サンプル内の冠状動脈プラーク又は可視疾患マーカの存在及び/又は量;及び/又は、血管組織サンプル内の健康な組織の存在及び/又は量;及び/又は、血管内の異常な血行力学的環境を規定する1以上の特徴;及び/又は、血管リモデリングに関連付けられて血管の血行力学に影響を与える1以上の幾何学的特徴、及び/又は、血管血行力学に影響を与える1以上の材料特性のうちの1以上を測定するステップ(a)を含んでもよい。当該方法は、(b)ステップ(a)で得られた測定値の関数として血管内の微小石灰化活性を計算するステップをさらに含んでもよい。
【0033】
[0033] 第1態様の特定の構成によれば、動脈又は静脈のいずれかを含む血管内の微小石灰化活性を予測する方法が提供され、当該方法は:
(a)以下のうちの1以上を測定するステップであって:
(i)血管組織サンプル内の冠状動脈プラーク又は可視疾患マーカの存在及び/又は量;及び/又は、
(ii)血管組織サンプル内の健康な組織の存在及び/又は量;及び/又は、
(iii)血管内の異常な血行力学環境を規定する1以上の特徴;及び/又は、
(iv)血管リモデリングに関連付けられて血管内の血行力学に影響を与える1以上の幾何学的特徴;及び/又は、
(v)血管血行力学に影響を与える1以上の材料特性のうちの1以上を測定するステップと;
(b)ステップ(a)で得られた測定値の関数として血管内の微小石灰化活性を計算するステップと、を含む。
【0034】
[0034] 本発明の第2態様によれば、血管内の微小石灰化活性を予測する方法が提供される。当該方法は、訓練データを取得するステップを含んでもよい。訓練データは、複数の患者に関するデータと、複数のデータと、を含む一般的な患者データと;1以上の解剖学的位置における複数の患者からの微小石灰化活性データ(μCA)と、から構成されてもよい。当該方法は、入力された患者データ及び微小石灰化活性データから関数を計算することによって多変量関数/モデルを適合し、入力訓練データセット[A
Tr、B
Tr、C
Tr、D
Tr、...]と同じ方法で取得された新しいデータ[a
new、b
new、c
new、d
new...]のμCAを推定又は予測するステップをさらに含んでもよく、前記関数は:
である。
【0035】
[0035] 当該方法は、事前に適合された関数を評価することによって多変量モデルを評価して、新しい関数入力のセットに対する微小石灰化活性の推定値のセット(μCA
Est)を取得するステップをさらに含んでもよい。当該方法は、微小石灰化活性の推定値のセット(μCA
Est)を、同じ患者に対して収集されて関数入力の生成に使用された対応のデータのセットから導出された微小石灰化活性データの既知/対応の値のセット(μCA
Te)と比較することによって、誤差関数Efを使用して誤差推定値を計算するステップをさらに含んでもよく:
【0036】
[0036] 当該方法は、誤差推定値をチェックしてモデルの適合性を評価するステップをさらに含んでもよい。
【0037】
[0037] 第2態様の特定の構成によれば、血管内の微小石灰化活性を予測する方法が提供され、当該方法は:
(i)複数の患者に関するデータと、複数のデータと、を含む一般的な患者データと;
(ii)1以上の解剖学的位置における複数の患者からの微小石灰化活性データ(μCA)と、から構成された訓練データを取得するステップと;
入力患者データと微小石灰化活性データとから関数を計算して多変量関数/モデルを適合し、入力訓練データセット[A
Tr、B
Tr、C
Tr、D
Tr、...]と同じ方法で取得された新しいデータ[a
new、b
new、c
new、d
new....]に対するμCAを推定又は予測するステップであって、前記関数は:
である、ステップと;
事前に適合された関数を評価することによって多変量モデルを評価し、新しい関数入力のセットに対する微小石灰化活性の推定値のセット(μCA
Est)を取得するステップと;
微小石灰化活性の推定値のセット(μCA
Est)を、同じ患者に対して収集されて関数入力を生成するために使用された対応のデータのセットから導出された微小石灰化活性データの既知/対応の値のセット(μCA
Te)と比較することによって、誤差関数Efを使用して誤差推定値を計算するステップであって、
である、ステップと;
誤差推定値をチェックしてモデルの適合性を評価するステップと、を含む。
【0038】
[0038] 本発明の第3態様によれば、血管内の微小石灰化活性を予測する方法が提供される。当該方法は、血管組織サンプル内の冠状動脈プラーク又は可視疾患マーカの存在及び/又は量;及び/又は、血管組織サンプル内の健康な組織の存在及び/又は量;及び/又は、血管内の異常な血行力学的環境を規定する1以上の特徴;及び/又は、血管リモデリングに関連付けられて血管内の血行力学に影響を与える1以上の幾何学的特徴、及び/又は、血管血行力学に影響を与える1以上の材料特性のうちの1以上に関連付けられた訓練データを受信するステップを含んでもよい。当該方法は、訓練データ値に基づいて1以上の訓練特徴を決定するステップをさらに含んでもよい。当該方法は、1以上の訓練特徴に関連付けられた1以上の訓練ラベルを決定するステップをさらに含んでもよい。当該方法は、血管内の微小石灰化活性を決定するために、コンピュータを使用して、予測モデルを構築するステップをさらに含んでもよい。予測モデルを構築するステップは、1以上の訓練特徴と、1以上の訓練特徴に関連付けられた1以上の訓練ラベルとを機械学習アルゴリズムに入力するステップを含んでもよい。予測モデルを構築するステップは、機械学習アルゴリズムから、血管に関連付けられた新しいデータを受信するための予測モデルを決定するステップと;新しいデータに基づいて予測ラベルを決定するステップと、をさらに含んでもよい。
【0039】
[0039] 第3態様の特定の構成によれば、血管内の微小石灰化活性を予測する方法が提供され、当該方法は:
(i)血管組織サンプル内の冠状動脈プラーク又は可視疾患マーカの存在及び/又は量;及び/又は、
(ii)血管組織サンプル内の健康な組織の存在及び/又は量;及び/又は、
(iii)血管内の異常な血行力学環境を規定する1以上の特徴;及び/又は、
(iv)血管リモデリングに関連付けられて血管内の血行力学に影響を与える1以上の幾何学的特徴、及び/又は
(v)血管血行力学に影響を与える1以上の材料特性のうちの1以上に関連付けられた訓練データを受信するステップと、
訓練データ値に基づいて1以上の訓練特徴を決定するステップと;
1以上の訓練特徴に関連付けられた1以上の訓練ラベルを決定するステップと;
コンピュータを使用して、血管内の微小石灰化活性を決定するための予測モデルを構築するステップであって、当該予測モデルを構築するステップは:
1以上の訓練特徴と、1以上の訓練特徴に関連付けられた1以上の訓練ラベルと、を機械学習アルゴリズムに入力するステップと;
機械学習アルゴリズムから、血管に関連付けられた新しいデータを受信して新しいデータに基づいて予測ラベルを決定するための予測モデルを決定するステップと、を含む、予測モデルを構築するステップと、を含む。
【0040】
[0040] 本発明の第4態様によれば、血管内の微小石灰化活性を測定するコンピュータ実装方法が提供される。当該コンピュータ実装方法は、(a)血管組織サンプル内の冠状動脈プラーク又は可視疾患マーカの存在及び/又は量;及び/又は、血管組織サンプル内の健康な組織の存在及び/又は量;及び/又は、血管内の異常な血行力学的環境を規定する1以上の特徴;及び/又は、血管リモデリングに関連付けられて血管内の血行力学に影響を与える1以上の幾何学的特徴、及び/又は、血管血行力学に影響を与える1以上の材料特性のうちの1以上を測定するステップを含んでもよい。コンピュータ実装方法は、(b)訓練された機械学習モデルを使用して、ステップ(a)で得られた測定値の関数として血管内の微小石灰化活性を計算するステップをさらに含んでもよい。
【0041】
[0041] 第4態様の特定の構成によれば、血管内の微小石灰化活性を測定するコンピュータ実装方法が提供され、当該方法は:
(a)測定するステップであって:
(i)血管組織サンプル内の冠状動脈プラーク又は可視疾患マーカの存在及び/又は量;及び/又は、
(ii)血管組織サンプル内の健康な組織の存在及び/又は量;及び/又は、
(iii)血管内の異常な血行力学環境を規定する1以上の特徴;及び/又は、
(iv)血管リモデリングに関連付けられて血管内の血行力学に影響を与える1以上の幾何学的特徴、及び/又は、
(v)血管血行力学に影響を与える1以上の材料特性のうちの1以上を測定するステップと;
(b)訓練された機械学習モデルを使用して、ステップ(a)で得られた測定値の関数として血管内の微小石灰化活性を計算するステップと、を含む。
【0042】
[0042] 第1機械学習モデルは第1訓練回帰モデルを含んでもよい。
【0043】
[0043] 血管は、冠状動脈、頸動脈、大脳動脈、大動脈、末梢動脈又は静脈のうちの1以上であってもよい。
【0044】
[0044] 本発明の第5態様によれば、患者の血管組織における18F-NAFの取り込みを予測するための情報を提供する方法。当該方法は、患者画像データに対する画像処理手段を使用して、冠状動脈プラーク又は心臓血管疾患の進行に関連付けられた血管組織内の可視疾患マーカの存在及び/又は量を示す血管バイオマーカを測定するステップを含んでもよい。当該方法は、プロセッサを使用して、測定値の関数として血管組織内の微小石灰化活性を計算するさらなるステップを含んでもよい。
【0045】
[0045] 第5態様の特定の構成によれば、患者の血管組織における18F-NAFの取り込みを予測するための情報を提供する方法が提供され、当該方法は、患者画像データに対する画像処理手段を使用して、冠状動脈プラーク又は心臓血管疾患の進行に関連付けられた血管組織内の可視疾患マーカの存在及び/又は量を測定するステップと;プロセッサを使用して、測定値の関数として血管組織内の微小石灰化活性を計算するステップと、を含む。
【0046】
[0046] 本発明の第6態様によれば、少なくとも1つのプロセッサと、患者データを格納する少なくとも1つのメモリデバイスと、を備えるコンピュータシステムが提供される。格納された患者の日付は、血管組織サンプル内の冠状動脈プラーク又は可視疾患マーカの存在及び/又は量;及び/又は、血管組織サンプル内の健康な組織の存在及び/又は量;及び/又は、血管内の異常な血行力学的環境を規定する1以上の特徴;及び/又は、血管リモデリングに関連付けられ、かつ、血管内の血行力学に影響を与える1以上の幾何学的特徴;及び/又は、血管血行力学に影響を与える1以上の材料特性に関連してもよい。少なくとも1つのプロセッサは、訓練された機械学習モデルを使用して、血管内の微小石灰化活性を患者データの関数として計算するように構成されてもよい。
【0047】
[0047] 第6態様の特定の構成によれば、コンピュータシステムが提供され、当該コンピュータシステムは:
少なくとも1つのプロセッサと;
少なくとも1つのメモリデバイスであって:
(i)血管組織サンプル内の冠状動脈プラーク又は可視疾患マーカの存在及び/又は量;及び/又は、
(ii)血管組織サンプル内の健康な組織の存在及び/又は量;及び/又は、
(iii)血管内の異常な血行力学環境を規定する1以上の特徴;及び/又は、
(iv)血管リモデリングに関連付けられて血管内の血行力学に影響を与える1以上の幾何学的特徴;及び/又は、
(v)血管血行力学に影響を与える1以上の材料特性に関する患者データを格納する、少なくとも1つのメモリデバイスと、を備え、
少なくとも1つのプロセッサは、訓練された機械学習モデルを使用して、血管内の微小石灰化活性を患者データの関数として計算するように構成される。
【0048】
[0048] 上記態様のいずれか1つの方法は、冠状動脈、頸動脈、大脳動脈、大動脈、末梢動脈又は静脈を含む任意の対象の血管における微小石灰化活性を測定するステップを含んでもよい。
【0049】
[0049] 本発明のさらなる態様によれば、血管内の微小石灰化活性を予測する方法が提供され、当該方法は:
訓練データ(Tr)を取得するステップであって、当該訓練データ(Tr)は:
複数の患者に関するデータと、1以上の解剖学的位置における画像データ及び/又は生体力学的データをさらに含み得る複数のデータと、を含む、一般的な患者データ[A
Tr、B
Tr、C
Tr、D
Tr...]、及び、
1以上の解剖学的位置における複数の患者からの微小石灰化活性データ(μCA)から構成される、ステップと、
入力された患者訓練データと、入力された訓練データセットA
Tr、B
Tr、C
Tr、D
Tr...と同じ方法で取得された新しいデータa
new、b
new、c
new、d
new...に対してμCAを新たに推定/予測することができる微小石灰化活性データと、から関数を計算することによって多変量関数/モデルを適合させるステップであって、前記関数は、
である、ステップと、
事前に適合された関数fを評価することによって多変量モデルを評価し、訓練セット[A
Te、B
Te、C
Te、D
Te...]に含まれていなかった新しい一般的な患者検査データ(Te)のセットである新しい関数入力のセットに対する微小石灰化活性(μCA
Est)の推定値のセットを取得するステップであって、
である、ステップと、
微小石灰化活性(μCAEst)の推定値(Est)のセットを、同じ患者について収集されて関数入力[ATe、BTe、CTe、DTe...]を生成するために使用された対応のデータのセットから導出された微小石灰化活性データ(μCATe)の既知/対応の値のセットと比較することによって、誤差関数Efを使用して誤差推定値を計算するステップであって、
である、ステップと、
誤差推定値をチェック/モデルの適合性を評価するステップと、を含む。誤差推定値が、誤差が小さくて結果が統計的に有意である入力データに対する必要な正確性、精度及び感度などの所望の基準のセットを満たしている場合、モデルは、目的に適合しているとみなされ、かつ、微小石灰化活性を予測するために使用されてもよい。
【0050】
[0050] 本発明のさらなる態様によれば、血管(好ましくは冠状動脈)内の微小石灰化活性を測定するためのコンピュータプログラム命令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体が提供され、当該コンピュータプログラム命令は、プロセッサによって実行されると、プロセッサに:
(a)測定するステップであって、
(i)血管組織サンプル内のプラーク又は可視疾患マーカの存在及び量;
(ii)血管組織サンプル内の健康な組織の存在及び又は量;
(iii)血管内の異常な血行力学的環境を規定する特徴の1以上;
(iv)血管リモデリングに関連付けられ、かつ、血管内の血行力学に影響を与える幾何学的特徴の1以上;及び/又は、
(v)血管血行力学に影響を与える材料特性の1以上のうちの1以上を測定するステップと、
(b)ステップ(a)で得られた測定値の関数として血管内の微小石灰化活性を計算するステップと、を含む工程を実行させる。
【0051】
[0051] 本発明のさらなる態様によれば、血管(好ましくは冠状動脈)内の微小石灰化活性を測定するためのコンピュータプログラム命令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体が提供され、当該コンピュータプログラム命令は、プロセッサによって実行されると、プロセッサに:
[A
Tr、B
Tr、C
Tr、D
Tr、...]などの一般的な患者データと、
1以上の解剖学的位置における複数の患者からの微小石灰化活性データ(μCA)と、から構成された訓練データを取得するステップと、
入力患者データと、入力訓練データと同じ方法で取得された新しいデータのμCAを推定/予測することができる微小石灰化活性データとから関数を計算することによって多変量関数/モデルを適合させるステップであって、前記関数は、
である、ステップと、
訓練セットに含まれていなかった新しい一般的な患者検査データのセットである、新しい関数入力のセットに対する微小石灰化活性の推定値のセット(μCA
Est)を取得するために、事前に適合された関数fを評価することによって多変量モデルを評価するステップであって、[A
Te、B
Te、C
Te、D
Te…]は、複数の患者に関するデータと、1以上の解剖学的位置における画像データ及び/又は生体力学データをさらに含んでもよい複数のデータと、を含み、
である、ステップと、
誤差関数Efを使用して、微小石灰化活性の推定値のセット(μCA
Est)を、(μCA
Te)の既知/対応の値のセットと比較することによって誤差推定値を計算するステップであって、
である、ステップと、
誤差推定値をチェックする/モデルの適合性を評価するステップと、を含む工程を実行させる。誤差推定値が、入力データに対する必要な正確性、精度及び感度など、所望の基準のセットを満たしている場合、モデルは、目的に適合しているとみなされ、かつ、微小石灰化活性の予測に使用されてもよい。
【0052】
[0052] 本発明のさらなる態様によれば、患者の動脈における微小石灰化活性を測定するためのコンピュータプログラム命令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体が提供され、当該コンピュータプログラム命令は、プロセッサによって実行されると、プロセッサに:
入力患者データの訓練モデルとμCAを推定/予測することができる微小石灰化活性CAデータとから計算された関数を含む多変量関数/モデルを受信するステップと、
訓練モデルの入力患者データと一致する患者の一般的な患者データを受信するステップと、
患者の動脈における微小石灰化活性の値(μCAEst)を計算するステップと、を含む工程を実行させる。
【0053】
[0053] 上記態様のうちのいずれか1つの方法は、以下の特徴のうちの1以上を任意に組み合わせてさらに含んでもよい。
【0054】
[0054] 当該方法は、冠状動脈、頸動脈、大脳動脈、大動脈、末梢動脈又は静脈を含む任意の対象の血管における微小石灰化活性を測定するステップを含んでもよい。
【0055】
[0055] 患者データ及び/又は訓練データは、これらに限定されないものの、脂質領域;表面カルシウム;深部カルシウム;プラークフリー壁;血栓;マクロファージ;マイクロチャネル;コレステロール結晶;又は患者の1以上の血管に関連した薄被膜線維性粥腫を含む臨床的対象のうちの1以上の特徴に関するバイオマーカデータを含んでもよい。
【0056】
[0056] 患者データ及び/又は訓練データは、OCT、血管造影、コンピュータ断層撮影(CT);CT血管造影画像データを含むがこれらに限定されない、1以上の画像データを含んでもよい。画像データは、共通の基準フレーム又は共通の座標系を参照してもよい。画像データは共通の基準フレームに変換されてもよい。画像データは、画像化された患者の動脈樹の完全な表現を提供してもよい。表現は、2次元及び/又は3次元の画像表現であってもよい。
【0057】
[0057] 当該方法は、画像フレーム間及び/又は解剖学的ランドマーク間の画像データの補間を含んでもよい。
【0058】
[0058] 当該方法は、画像化された血管に沿った任意の対象の位置で構造シミュレーションを実行するステップを含んでもよい。画像データは、画像化された血管内のプラーク及び血管壁の異なる領域を識別するためにユーザによってセグメント化されてもよい。
【0059】
[0059] 当該方法は、組織硬度比に基づいて生体内材料特性を推定するステップを含んでもよい。組織硬度比は、患者の心臓血管系の他の領域と同様の生体内材料特性に基づいていてもよい。
【0060】
[0060] 当該方法は、これらに限定されないが:腔内せん断応力;プラーク構造応力;プラーク特徴分析;微小石灰化活性;仮想ステント留置;血管壁特徴分析;薄被膜測定;マルチモーダルイメージング;血管枝;冠血流予備比;迅速な時間枠;及び、VR仮想化を含む、血管状態の測定値を提供するステップを含んでもよい。
【0061】
[0061] 血管、例えば冠状動脈などの動脈又は静脈における微小石灰化活性は、陽電子放射型断層撮影法(PET)を使用して測定されてもよい。当該方法では、任意の測定値のセットが(回帰又は機械学習技術を介して)モデルに適合されて、厳密な微小石灰化活性の結果を取得してもよい。
【0062】
[0062] 血管プラークの存在及び/又は量は、血管内光干渉断層撮影(OCT)画像からの十分に確立された幾何学的疾患マーカ、具体的には、プラーク内の脂質、カルシウム及びマクロファージ(輝点)の存在の測定に基づいて測定されてもよい。例えば、平均脂質アーク[°]、平均カルシウムアーク[°]、平均輝点の測定値が取得されてもよい。疾患を示す追加の幾何学的測定値は、血管の直径、面積、体積、動脈壁/層の厚さ、ねじれ及び偏心、並びに、これらの測定値のすべての組み合わせに関連する。同様に、これらの測定値は、臨床現場で一般的な他の画像診断法によって取得されてもよい。
【0063】
[0063] 健康な組織の存在及び/又は量は、血管内OCT画像を使用して目に見える健康な動脈壁の量の測定に基づいて測定されてもよく、例えば、プラークフリー壁(PFW)は疾患と逆相関する。例えば、プラークフリー壁の平均アーク[°]の測定値が取得されてもよい。同様に、この測定値は、臨床現場に典型的な他の任意の画像診断法によって取得されてもよい。
【0064】
[0064] 当該方法では、血液由来粒子の滞留又は異常なWSSなどの異常な血行力学環境の測定値が、数値流体力学(CFD)シミュレーション、又は、撮像技術を介して壁せん断応力(WSS)を直接推定することができる他の方法を使用して推定されてもよい。例えば、低せん断領域(LSA):低WSS領域[%]又は高せん断領域(HSA):高WSS領域[%]又はWSSの平均[Pa]を測定することによって。追加の血行力学由来の測定基準には、これらに限定されないが、振動せん断指数(OSI)、相対滞留時間(RRT)、低振動せん断(LOS)、内皮活性化電位(ECAP)、速度由来場関数(例えば、渦度)、圧力降下、又は、前述の測定基準の任意の勾配(例えば、WSSの勾配)が含まれてもよい。
【0065】
[0065] 血管リモデリング及び血行力学への影響に関連付けられた幾何学的特徴の測定値は、血管内OCT画像(周方向及び偏心)及び冠状動脈コンピュータ断層撮影血管造影(CCTA)から取得されてもよい。例えば、平均周長[mm](OCTを使用する)、平均偏心(OCTを使用する)、動脈壁/層厚さ、及び/又は、心室筋量[g](CTを使用する)を測定することによって。
【0066】
[0066] %ヘマトクリット値などの血行力学に影響を与える材料特性は、日常的な採血中に測定されてもよく、かつ、CFDでWSSを計算するために使用される粘度モデルを調整するために使用されてもよい。
【0067】
[0067] 当該方法は、1以上の対象の測定基準に基づいて治療選択肢の評価を可能にしてもよい。
【0068】
[0068] 当該方法では、当該方法の測定値を取得する際に使用される画像診断法には:コンピュータ断層撮影(CT);磁気共鳴画像法(MRI);超音波;静脈内超音波検査(IVUS);光干渉断層撮影法(OCT);単一光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)、PET又はNaF PETのうちの1以上が含まれてもよい。
【0069】
[0069] 当該方法は、多変量関数、例えば、パラメトリック回帰又はノンパラメトリック回帰の適合プロセスを含んでもよい。訓練データの一部は、適合プロセス中に検証データとして保存されてもよい。検証データは、モデル選択の予測誤差を推定するために使用されてもよい。ノンパラメトリック回帰には、例えば、カーネル回帰及び機械学習サポートベクタマシンなどの方法が含まれてもよい。パラメトリック適合は、パラメトリック機械学習アルゴリズム、又は、目的関数の最小値(例えば、「2乗誤差の合計」)を見つける従来の最適化方法を使用するステップを含んでもよい。非線形関数の場合、上記方法での使用に適した具体例としては、ネルダー-ミードシンプレックス法などの多次元非制約型最小化の直接探索法であってもよい。パラメトリック最適化では、生物学的関係に関連する一般的に使用される関数形式、例えば、アロメトリックスケーリング関数などを活用してもよい。
【0070】
[0070] 追加の目的、利点及び新規な特徴が、以下の説明に記載される、又は、図面及び以下のいくつかの非限定的な実施形態の詳細な説明を検討することによって当業者には明らかになる。
【0071】
[0071] 本発明の範囲内にあり得る他のいかなる形態にも関わらず、添付の図面を参照して本発明の好ましい一実施形態/複数の実施形態を単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1】
図1は、臨床決定支援ソフトウェアアプリケーションを提供するためにプラーク安定性を予測する機械学習システム及び方法の概要を示している。
【
図2】
図2は、本発明の方法の訓練及びテストのプロセスを示している。
【
図3】
図3は、血管蛇行の測定値のグラフィック表現を示している。
【
図4】
図4は、特定の閾値を下回る冠状動脈セグメントの内皮せん断応力の領域をパスカルで示している。
【
図5】
図5は、OCT画像から取得された円弧/角度の測定値のグラフィック表現を示している。
【
図6】
図6は、特定の閾値を下回る冠状動脈セグメントの内皮せん断応力の領域をパスカルで、及び、セグメント内の対応の
18F-NaF TBRを示している。
【
図7】
図7は、本明細書で開示される方法に従った微小石灰化訓練データとモデル出力データとの間の相関関係のグラフを示している。
【
図8】
図8は、本明細書に開示される方法に従った微小石灰化試験データとモデル出力データとの間の相関関係を示している。
【
図9】
図9は、表1のすべての測定値を使用した最大値TBRに対する最適化された適合を示している。
【
図10】
図10は、測定値のサブセットを使用する最大値TBRに対する最適化された適合(上);モデル近似に対するこれら5つの測定値の平均相対寄与度(下)を示している。
【
図11】
図11は、血管内OCT画像から取得れたカテゴリ測定値のサブセットを使用する最大値TBRに対する最適化された適合(上);モデル近似に対するOCT測定値の平均相対寄与度(下)を示している。
【
図12】
図12は、シグモイド隠れニューロンと線形出力ニューロンとを有する2層フィードフォワードネットワークを含むニューラルネットワークのオーバーフィットモデルの一例を示している。
【
図13】
図13は、システム100の一実施形態を実装可能な一例のコンピュータシステムを示すブロック図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0073】
[0072] 以下の説明では、異なる実施形態における同様又は同一の参照番号が同一又は同様の特徴を示していることに留意されたい。
【0074】
[0073] 本発明は、典型的にはNaF PETを使用して測定される厳密な微小石灰化活性の結果を取得するために、回帰又は機械学習技術を介して任意の測定値のセットをモデルに適合させることができるという発見に基づいている。本明細書に開示されるシステム及び方法は、解剖学的構造を識別して再構築するために患者画像データ上で直接AIを利用して識別する患者画像データからのAIモデリング方法の使用を通じて、フッ化ナトリウム(NaF)取り込みとプラーク解剖学的構造、血行力学環境などに関連する特徴とを相関させる予期せぬ実現を説明し、AIモデリング方法は、そして、回帰モデルで使用する派生データを抽出して、患者の動脈の微小石灰化活性を決定するために使用される。
【0075】
[0074] 微小石灰化活性を決定するという臨床上の大きな約束にもかかわらず、現在のフッ化ナトリウム-PET法から測定値を得るには、費用がかかり、準備及び取得にさらなる時間を必要とし、画像を複雑にし、そして、広く利用することができるわけではない。したがって、フッ化ナトリウム-PET法が日常的な臨床使用に至る可能性は低い。本明細書に開示されるシステム及び方法は、これまで検討又は実装されていなかった方法で、フッ化ナトリウム-PETに関連しないデータから微小石灰化活性に関する情報を決定する能力を提供するように構成されたAI及び回帰モデルを作成するためのフレームワークについて説明する。本明細書に開示されるシステム及び方法は、心臓発作の危険性が最も高い人及び介入から最も恩恵を受ける人を特定するという長期的な問題に対処する、フッ化ナトリウム-PETを入手する技術的困難に対する解決策を説明している。
【0076】
[0075] したがって、本発明は、NaF PET撮像の実行を必要とせず、血管(例えば、冠状動脈)内の微小石灰化活性を測定する方法を提供するという点で一般適用の原理を対象とする。
【0077】
[0076] 本発明の特徴は、本発明の非限定的な態様、実施形態及び実施例を説明する本説明の以下のセクションでさらに詳しく説明される。この説明は、本発明を例示する目的で含まれている。以下の説明は、上述した本発明の広範な概要又は開示を限定するものとして理解されるべきではない。
【0078】
概要
[0077] 当業者であれば、本明細書に記載された発明では、具体的に記載されたもの以外の変形及び修正が可能であることを理解する。本発明は、そのような変形及び修正をすべて含む。本発明はまた、個別に又は集合的に、本明細書で言及又は示されるステップ、特徴、配合及び化合物のすべてと、ステップ又は特徴の任意の及びすべての組み合わせ若しくは任意の2以上と、を含む。
【0079】
[0078] この文章で引用される各文書、参考文献、特許出願又は特許は、参照によりその全体が明示的に本明細書に組み込まれ、これは、読者によって文章の一部として読まれ、かつ、考慮されるべきであることを意味している。この文章で引用された文書、参考文献、特許出願又は特許がこの文書中で繰り返されていないのは単に簡潔にするためである。
【0080】
[0079] 本明細書で言及される又は参照により本明細書に組み込まれる任意の文書に記載されている製品に関する任意の製造業者の説明書、説明、製品仕様書及び製品シートは、参照により本明細書に組み込まれ、かつ、本発明の実施に採用されてもよい。
【0081】
[0080] 本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態のいずれかによって範囲を限定されるものではない。これらの実施形態は例示のみを目的とするものである。機能的に同等の製品、配合物及び方法は、明らかに、本明細書に記載の本発明の範囲内にある。
【0082】
[0081] 本明細書に記載される本発明は、値の1以上の範囲(例えば、用量、濃度など)を含んでもよい。値の範囲には、範囲を規定する値を含む、範囲内のすべての値と、範囲の境界を規定するその値にすぐ隣接する値と同じ又は実質的に同じ結果をもたらす範囲に隣接する値と、が含まれると理解される。したがって、別途示さない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。
【0083】
[0082] 前述の一般的な説明と以下の詳細な説明とはいずれも例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求の範囲に記載された本発明を限定するものではないことが理解される。
【0084】
[0083] 本願では、別段明記されない限り、単数形の使用には複数形も含まれる。
【0085】
[0084] 冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、冠詞の目的語の1又は複数(すなわち、少なくとも1つ)を参照するために使用される。一例として、「要素」は、1要素又は複数の要素を指している。
【0086】
[0085] 本願では、別段の記載がない限り、「又は」の使用は「及び/又は」を意味する。さらに、「含んでいる」という用語並びに「含む」及び「含まれる」などの他の形式の使用は限定的なものではない。また、別段明記されない限り、「要素」又は「構成要素」などの用語は、1つのユニットを構成する要素及び構成要素と、2以上のサブユニットを構成する要素及び構成要素と、の両方を包含する。
【0087】
[0086] 本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、1以上の要素のリストに関する「少なくとも1つ」という語句は、要素のリストの任意の1以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであるが、要素のリスト内に具体的にリストされている各々のうちの少なくとも1つ及びすべての要素が必ずしも含まれるわけではなく、要素のリストの要素の任意の組み合わせが除外されるわけではない。この定義は、「少なくとも1つ」という語句が指す要素のリスト内で具体的に特定された要素以外の要素が、具体的に特定された要素に関連する又は関連しないに関わらず、任意選択的に存在することも許容する。したがって、非限定的な例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(又は、同等に「A又はBのうちの少なくとも1つ」若しくは同等に「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、Bが存在しない(及び、任意選択的にB以外の要素を含む)少なくとも1つのA、任意選択的には複数のAを含むことを指し;別の実施形態では、Aが存在しない(及び、任意選択的にA以外の要素を含む)少なくとも1つのB、任意選択的には複数のBを含むことを指し;さらに別の実施形態では、少なくとも1つのA、任意選択的に複数のAと、少なくとも1つのB、任意選択的に複数のBと、を含む(及び任意選択的に他の要素を含む)ことなどを指す。
【0088】
[0087] 「約」という用語は、本明細書では、基準量に対して30%、好ましくは20%、より好ましくは10%、変動する量を指し、表示値の実験誤差内(例えば、平均値の95%の信頼区間内)又は表示値の10%以内(どちらか大きい方)を示し、かつ、その範囲内である。数値を修飾するために「約」という語を使用することは、その数値が正確な値として解釈されるべきではないことを明示的に示しているに過ぎない。変数のすべての値と変数の指示値とを平均し、かつ、週を表す時間間隔を指すために使用される場合、「約3週間」は17~25日、約2~4週間は10~40日を指す。
【0089】
[0088] 本明細書全体を通じて、文脈で別段の要求がない限り、「備える(comprise)」という単語、又は「備える(comprises)」又は「備えている(comprising)」などの変形は、指定された整数又は整数のグループを含むことを意味するが、任意の他の整数又は整数のグループを除外することを意味するものではないことが理解される。また、本開示及び特に特許請求の範囲及び/又は段落において、「備える」、「備えた」、「備えている」などの用語は、米国特許法に帰属する意味を有し得ること;例えば、「含む」、「含まれる」、「含んでいる」などを意味する場合があること;そして、「から本質的に構成されている」及び「から本質的に構成される」などの用語は、米国特許法で定められた意味を有すること、例えば、明示的に列挙されていない要素は許容するが、先行技術に見られる要素又は本発明の基本的又は新規な特徴に影響を与える要素を除外することにも留意されたい。
【0090】
[0089] 本明細書の目的のため、方法ステップが順番に記載されているが、その順序は、その順序を解釈する他の論理的な方法がない限り、そのステップがその順序で時系列順に実行されることを必ずしも意味するものではない。
【0091】
[0090] さらに、本発明の特徴又は態様がマーカッシュ群に関して説明される場合、当業者は、本発明がマーカッシュ群の任意の個々のメンバー又はメンバーのサブグループに関しても説明されることを認識する。
【0092】
[0091] 「患者」及び「対象」という用語は、同じ意味で使用され、かつ、霊長類、家畜、愛玩動物、実験動物、捕獲された野生動物、鳥類(卵を含む)、爬虫類及び魚類などの哺乳類及び非哺乳類を含む。したがって、この用語は、少なくとも、猿、ヒト、豚、牛、羊、山羊、馬、ねずみ、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、猫、犬、ニワトリ、七面鳥、アヒル、その他の家禽、カエル及びトカゲを指す。
【0093】
[0092] 「治療する」及び「治療」という用語は、障害、疾患若しくはそのような用語が適用される疾患の予防、又は、そのような障害若しくは疾患の1以上の症状の予防若しくは軽減を意味する。これには、治療的処置、予防的処置、及び、対象が障害又は他の危険因子を発症するリスクを軽減する応用が含まれる。治療は、障害の完全な治癒を必要とせず、症状、根底にある危険因子を軽減する、又は、障害の進行を遅らせる実施形態を包含する。
【0094】
[0093] 本明細書で使用される選択された用語の他の定義は、本発明の詳細な説明に記載されており、かつ、全体に適用される。別途定義されない限り、本明細書で使用される他のすべての科学用語及び技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有している。
【0095】
[0094] 本明細書で概説されるさまざまな方法又はプロセスは、さまざまなオペレーティングシステム又はプラットフォームのいずれか1つを採用する1以上のプロセッサ上で実行可能なソフトウェアとしてコード化されてもよい。さらに、そのようなソフトウェアは、多くの適切なプログラミング言語及び/又はプログラミング又はスクリプトツールのいずれかを使用して書かれてもよく、かつ、フレームワーク又は仮想マシン上で実行される実行可能な機械語コード又は中間コードとしてコンパイルされてもよい。
【0096】
[0095] この点、さまざまな発明概念が、1以上のコンピュータ又は他のプロセッサ上で実行される場合、上で議論した本発明のさまざまな実施形態を実装する方法を実行する1以上のプログラムでコード化されたコンピュータ可読記憶媒体(又は複数のコンピュータ可読記憶媒体)(例えば、コンピュータメモリ、1以上のフロッピーディスク、コンパクトディスク、光ディスク、磁気テープ、フラッシュメモリ、フィールドプログラマブルゲートアレイ若しくは他の半導体デバイスの回路構成、又は、他の非一時的媒体若しくは有形のコンピュータ記憶媒体)として具現化されてもよい。1又は複数のコンピュータ可読媒体は、そこに格納された1つのプログラム又は複数のプログラムが、1以上の異なるコンピュータ又は他のプロセッサにロードされて、上で議論された本発明のさまざまな態様を実装することができるように、可搬性を有してもよい。
【0097】
[0096] 「プログラム」又は「ソフトウェア」という用語は、本明細書では一般的な意味で使用され、上で議論された実施形態のさまざまな態様を実装するためにコンピュータ又は他のプロセッサをプログラムするために使用可能な任意の種類のコンピュータコード又はコンピュータ実行可能命令のセットを指している。さらに、一態様によれば、実行時に本発明の方法を実行する1以上のコンピュータプログラムは、単一のコンピュータ又はプロセッサ上に存在する必要はなく、多数の異なるコンピュータ間又はプロセッサ間にモジュール形式で分散されて本発明のさまざまな態様を実装してもよいことを理解されたい。
【0098】
[0097] コンピュータ実行可能命令は、1以上のコンピュータ又は他のデバイスによって実行されるプログラムモジュールなど、多くの形式をとってもよい。一般に、プログラムモジュールには、特定のタスクを実行する又は特定の抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などが含まれる。通常、プログラムモジュールの機能は、さまざまな実施形態において必要に応じて組み合わせられる又は分散されてもよい。
【0099】
[0098] また、データ構造は、任意の適切な形式でコンピュータ可読媒体に格納されてもよい。説明を簡単にするために、データ構造は、データ構造内の位置を通じて関連されるフィールドを有するように示されてもよい。このような関係は、フィールド間の関係を搬送するコンピュータ可読媒体内の位置をフィールドの記憶域に割り当てることによって同様に達成されてもよい。ただし、データ構造のフィールド内の情報間の関係を確立するために、ポインタ、タグ又はデータ要素間の関係を確立する他の機構の使用を含む、任意の適切な機構が使用されてもよい。
【0100】
[0099] また、さまざまな発明概念が、1以上の方法として具体化されてもよく、その一例が提供される。方法の一部として実行される動作は、任意の適切な方法で順序付けされてもよい。したがって、例示的な実施形態では連続的な動作として示されているが、動作が図示とは異なる順序で実行される実施形態が構築されてもよく、これにはいくつかの動作を同時に実行することが含まれてもよい。
【0101】
実施形態の説明
[0100] 以下の説明では、異なる実施形態における同様又は同一の参照符号が同一又は同様の特徴を示すことに留意されたい。
【0102】
[0101] 本明細書では、血管プラーク安定性、特に冠状動脈プラーク安定性を予測するための方法、及び、
図1に概要が示されるようなコンピュータ実装システム100として構成された臨床決定支援ソフトウェアアプリケーションを提供するためにプラーク安定性を予測するための自動コンピュータ実装システム及び方法が開示され、コンピュータ実装システム100は、血管内画像と生体力学コンピュータモデルとを分析することによって精密医療の患者固有のアプローチを使用して、プラーク安定性に関する包括的なデータを提供する。これにより、患者別の固有のデータが作成され、臨床医がプラーク破裂のリスクを評価して治療計画を調整して医療を個別化することを可能にする。
図1は、全体的なフレームワークを示しており、以下でより明確に説明する。
【0103】
[0102] 本明細書に開示されるシステム100は、血管内患者画像データ(例えば、OCT)の迅速なセグメント化及びアノテーションを可能にし、かつ、せん断応力及び構造応力の両方を計算するコンピュータモデルとリンクして、臨床事象(Stone他、2016年)を予測することが示された他の方法では達成不可能なデータを戻すように特に構成されている。実際には、冠状動脈事象の予測における生体力学的データの使用を支持してきたハーバード大学医学部のPeter Stone教授は、以下のように述べている:「解剖学的構造のみに基づいたプラークリスクの特徴付けは、必要であるものの、新たな臨床事象を不安定化させて引き起こし得る高いリスクプラークを予測するには十分ではない」。「カテーテル検査室で日常的かつ時間効率の良い方法でプラーク応力を計算することができれば、この情報は、最もリスクの高いプラークを特定し、かつ、管理上の決定に情報を提供するのに非常に役立つ可能性がある」。本明細書に開示される方法及びコンピュータ実装システムは、この差し迫った臨床上のニーズに対する解決策を提供する。
【0104】
[0103] 本明細書に開示されるシステム100は、市販のOCT撮像システムから患者固有の3D解剖学的モデルを作成することができる、2D及び3DにおけるOCTデータの血管及びプラーク特徴を評価するためのユーザフレンドリーな半自動ソフトウェアツールである。重要なことは、システム100は、既存の任意のOCT撮像システムと一緒に使用可能であることである。
【0105】
[0104] 血管内OCT103は、近赤外光を使用して冠状動脈の内部の画像を作成する。この技術により、非常に高解像度の画像(ピクセルサイズ10~15ミクロン)が提供され、かつ、心臓専門医が、次に最良のテクノロジーである血管内超音波(IVUS;ピクセルサイズ100~150ミクロン)を使用する場合よりも10倍、かつ、最先端のCT画像(ピクセルサイズ350ミクロン超)よりも最大35倍、より詳細に動脈の内部を観察することを可能にする。また、OCTは、心臓専門医に、動脈の内部のプラークをはっきりと確認して脂肪及び血栓の蓄積を測定し、かつ、ステントを配置する前後に正確な測定を行わせる。
【0106】
[0105] OCT分析:システム100は、ユーザがプラークの特徴を迅速に分析し、かつ、画像化された動脈の内腔の2次元分析111のためのピクセルパーフェクトのセグメント化(すなわち、マーキング)ツールを作成し、また、例えばユーザワークフローを自動化する機械学習(ML)内腔輪郭セグメント化ルーチンを通じて動脈をセグメント化することを可能にするように構成されている。最先端の機械学習ツール(カプセルを使用したディープラーニング)に基づいたエッジ検出アルゴリズムにより、動脈の輪郭並びに動脈のサイズ、形状及び位置に関するデータが自動的に取得される。現在のツールは時間がかかるとともに手動である(例えば、スライスごと、患者あたり1000スライス超)。したがって、システム100は、自動内腔輪郭セグメント化を含む現在のプラーク評価ツールと比較して、大幅に時間を節約することができる。観察されたシステム100の典型的な性能は、平均動脈セグメント化が現在の最先端の機械学習モデルに匹敵するが、画像の処理が大幅に高速であることを示しており、したがって、システム100は、人間のオペレータによって取得されるセグメント化と区別不可能なセグメント化を作成し、かつ、リアルタイム又はほぼリアルタイムの処理で再現可能である。
【0107】
[0106] 臨床的に関心のある現在の特徴は:脂質領域;表面カルシウム;深部カルシウム;プラークフリー壁;血栓;マクロファージ;マイクロチャネル;コレステロール結晶;及び、薄被膜線維性粥腫を含む。これらの各々は、プラークの破裂又は浸食によって心臓発作及び潜在的な死亡を引き起こすリスクとなる。これらのバイオマーカの各々は、システム100内で利用可能であり、あらゆるデータポイントの位置が3D位置合わせ中及び異なる3Dワークスペース間の情報のマッピング中に使用するために3Dで保存される。関連する場合には追加の機能が含まれてもよい。
【0108】
[0107] OCT画像分析が完了すると、ユーザは、追加の解析121のために2D画像データを3D画像に変換することができる。これにより、OCTデータが3D再構成に変換される。
【0109】
[0108] ソフトウェアマッピング:ほとんどの臨床シナリオでは、OCT画像データは、CT105及び/又は血管造影107などの別の診断法と並行して取得される。システム100は、高解像度のOCT103を、低解像度の血管造影(血管)107又はコンピュータ断層撮影(CT)又はCT血管造影(CTA)105と融合するように適合される。CTデータ105又は血管造影107は、画像化された動脈樹内の動脈中心線に関するデータを提供する動脈樹の3次元モデルに容易に変換115される。異なる画像診断法からの画像データは、OCTデータ103、CT/Aデータ105及び血管データ107の組み合わせによって、CT/Aデータから取得された左心室の筋肉量を含む画像化された動脈樹の完全な表示が提供されるように、共通の基準フレーム又は座標系に変換されてもよい。個々のデータセットが取得されると、システム100は、データのすべての異なるモードが互いに定性的及び定量的に関連可能になるように、異なる調査からのデータを同じx-y-zワークスペースに一緒に登録するように構成される。OCTデータ103が血管データ107又はCTデータ105と融合されると、生体力学的シミュレーションが可能になる。その結果、OCTの領域で精緻な詳細を有する3Dジオメトリと、既存の商用ソフトウェアでは取得不可能な新しい3D定量的病理学データが得られる。
【0110】
[0109] 何らかの理由で、利用可能なデータの特定のモードが1つだけである場合、ユーザは、多くの場合、システム100の多くの機能を実行することができるが、利用可能な分析方法にいくつかの制限が生じることになり、例えば、OCTデータ103のみが利用可能である場合、主な制限は、CT/A又は血管データからの3D中心線データが欠如しているので、せん断応力の計算が信頼できないことである。
【0111】
[0110] システム100によって実行されるソフトウェアマッピングプロセスは、解剖学的ランドマーク間のOCT画像フレームの位置を自動的に補間するように構成されている。これらのランドマーク(例えば、血管分岐点)は、他の医用撮像方法(例えば、CT/A又は血管データ)から取得されてもよい。さらに、CTデータセットが利用されて、CFDシミュレーションの境界条件を改善するために使用される左心室の筋肉量を取得してもよい。
【0112】
[0111] 生体力学シミュレーション-構造応力:画像化された血管に沿った任意の位置で、構造シミュレーションを実行することができる。これらのシミュレーションは、2D OCT画像上で直接実行され、画像は、プラーク及び血管壁の異なる領域を識別するためにシステム100内で利用可能な半自動ツールを使用して分析者/ユーザによってセグメント化される。生体内の材料特性を正確に知ることは不可能であるので、システム100は、心臓血管系の他の領域と同様に、組織の剛性の比率に基づくストラテジを使用する。これは、臨床的に応用可能な方法であり、システム100に特有のものである。
【0113】
[0112] 微小石灰化推定器:冠状動脈血管内の微小石灰化の存在は、将来の臨床事象の予測因子である。この微小石灰化活性は、PET/CT上の放射性トレーサ18F-フッ化ナトリウム(NaF)の取り込みを使用して画像化及び定量化される。ただし、NaF-PET/CT撮像は、高価であり、広く利用可能ではなく、画像を分析するにはかなりの技術的専門知識を必要とし、また、患者への放射線量も増加させる。本明細書では、血管壁及びプラークへのNaFの取り込みを予測し、及びしたがって、微小石灰化活性を予測する新規な式が開示される。驚くべきことに、この式が生体内でのNaFの取り込みと有意に相関していることも判明した。
【0114】
[0113] 本明細書で開示されるシステム及び方法は、患者及びその医師に、詳細なOCT、生体力学モデリング及び彼らの動脈の微小石灰化活性に基づいた臨床事象の可能性の予測評価を提供することによって医療のカスタマイズを可能にする。これにより、病院で使用されている現在の「汎用的な」アプローチから脱却し、高リスクとして特定された患者に対してより良い予防法がテストされ、低リスクの患者に対する治療のエスカレーションを緩和することを可能にする。このシステムは、OCTデータの高速な定性的及び比類のない定量的オフライン分析を可能にし、かつ、他の商用手段を介して取得不可能な生体力学及び微小石灰化活性データを提供するので、心臓専門医に患者固有のツールの新しいひと揃いを提供する。
【0115】
利点
[0114] 本明細書に開示されるコンピュータ実装システム100は、OCT走査機器に統合された一般的なOCT画像解析ツールの明確な利益及び利点を提供するように構成され、及びさらには、サードパーティの入手可能なOCTソフトウェア分析ツールに対する明確な利点を提供し、かつ、解剖学的状態から機能的状態まで血管の状態の関連の測定値を提供するように構成され、測定値は以下を含む:
【0116】
[0115] 管腔内せん断応力(ESS)、すなわち、血管の最内層に作用する生体力学的な摩擦力は、プラークの成長、進行及び臨床事象の既知の予測因子である。血管及びCTベースの3D再構成(OCT又はIVUSの追加の有無にかかわらず)からESSを計算するための研究ツールがいくつか存在するが、そのほとんどは、扱いにくく、数値流体力学の専門知識、及び、長い計算時間(例えば、典型的なワークステーションで1~2日)を必要とする。システム100は、臨床的に使用可能な時間枠内でデータを戻すESSを計算するためのハイブリッドアプローチを利用する。
【0117】
[0116] プラーク構造応力(PSS)は、プラークに作用する単位面積当たりの力である。プラーク破裂は、PSSがプラークキャップ強度を超えると発生し、PSSは、プラークのリモデリング、炎症、びらん、細胞増殖並びにプラークの進行及び安定性に関連するその他の活性にリンクする細胞活性にも影響を与える。生体内のプラーク破裂データは、80%以上のケースで最大PSSの位置が破裂部位に一致することを示している。PSSの重要性に関するデータは存在するが、PSSは、依然として研究ツールであり、かつ、プラーク分析を目的とした市販ソフトウェアには組み込まれていない。これは、患者固有の材料特性に関する知識が不足していることが部分的に原因である。システム100は、静的決定性の原理を使用することでこれを回避し、静的決定性は、動脈瘤などの他の心血管疾患では広く利用されているが(Joldes他、2017年)、冠状動脈疾患ではまだ利用されていない。
【0118】
[0117] OCTが特に際立っているのは、プラークの特徴分析である。他の診断法よりも優れた分解能は、プラーク壁の特徴を細胞レベル(例えば、マクロファージの存在など)に至るまで識別及び定量化することができることを意味している。システム100には、これらの特徴を迅速に抽出するための高度なツールが組み込まれている。
【0119】
[0118] プラーク壁の微小石灰化活性は、将来の臨床事象の強力な非侵襲性指標として浮上している。この活性は、陽電子放射断層撮影法(PET)画像上の放射性トレーサ18F-フッ化ナトリウム(NaF)の取り込みによって測定される。ただし、PET撮像は、高価で、容易にアクセスすることができず、解釈が難しく、かつ、さらに患者に多くの放射線を照射することになる。本明細書では、PET撮像を必要とせずに、動脈のセグメント内でのNaFの取り込み、及びしたがって、潜在的に将来の臨床事象の可能性を予測するための新規な方法が開示される。
【0120】
[0119] システム100のプラットフォームでは仮想ステント留置が可能である。OCTは、比類のない画像解像度を提供するので、ステントの計画は本質的により正確になる。正確な血管寸法を決定することによって、正確なステントの選択が可能になる。次に、システム100において適切な3Dステント形状を選択することによって、ステントは、血管内の所望の位置に仮想的に配置されることができ、その後、流れシミュレーションが実行可能である。これにより、手術前にステントの性能に関するデータを得ることを可能にする。
【0121】
[0120] 血管壁の特徴分析は、プラーク分析に似ており、かつ、比類のない画像解像度により、血管壁が迅速に特定されて定量化されることができることを意味する。システム100は、現在、最先端技術を上回るディープラーニング(人工知能、AI)に基づいて内腔をセグメント化する自動ツールを開発した。
【0122】
[0121] 薄被膜測定:繰り返すが、画像解像度が重要な要素である。薄被膜は、厚さが65ミクロン未満になると臨床的に危険になる。その解像度により、OCTはこのリス クのバイオマーカを測定可能な唯一の診断法である。
【0123】
[0122] マルチモーダル撮像:システム100は、臨床医が利用可能なあらゆる画像データを処理するように構成される。CT及び血管造影画像は、vFFRを使用したとしても、ペストの進行、びらん及び破裂に関する正確な情報を提供することはできない。理想的なシナリオには、画像診断法(例えば、CCTA及びOCT)の組み合わせが含まれるが、臨床医が、単一の画像診断法(例えば、CCTA又は血管造影検査)を使用して実行される分析の削減を望む場合、それはシステム100で可能である。
【0124】
[0123] 血管分岐はシステム100の解析に含まれる。これにより、動脈セグメント内の流れに関する正確な情報が提供され、かつ、血管に沿った分岐の流れが説明される。
【0125】
[0124] 冠血流予備量比(FFR)は、狭窄の上流と下流との圧力の比である。圧力差が特定の閾値(例えば、30%)より大きい場合、介入が考慮される。画像データのみを使用するFFRは、充血流の誘発(流量の強制的な増加)又は圧力測定ワイヤの存在:標準的なFFRの取り込みを制限する2つの主な要因を必要とせずにFFRの測定を可能にするので、心臓病学において現在の「ホットトピック」である。さらに、画像ベースのFFRには他にも大きな利点がある。FFRCT(すなわち、HeartFlow)は、CTのみを必要とするので、完全に非侵襲的であるが、計算にはかなり時間がかかる(HeartFlowを通じた所要時間は数時間)。ほとんどの患者は日常診療中に血管造影(侵襲的画像検査)を受けるが、血管造影に基づくFFRははるかに高速かつ安価である(すなわち、VIRTUheart及びCAAS)。
【0126】
[0125] OCTデータと血管造影データとの組み合わせ(又は、血管造影データが利用可能ではない場合はOCTのみ)に基づくFFRも可能である。
【0127】
[0126] 迅速な時間枠:システム100は臨床時間枠内で動作するように設計されており、かつ、「押しボタン」となることを目指している。システム100で使用される方法は、効率的なシミュレーション戦略を使用して生成されたデータ(すなわち、数分のCPU時間)が、より長いシミュレーション(すなわち、数日のCPU時間)のデータに匹敵するデータを生成することが検証された。
【0128】
[0127] VR視覚化:システム100からの出力もVR互換であり、問題及びその結果得られるデータの没入型ビューを提供する。
【0129】
本発明の態様
[0128] 本発明の第1態様では、動脈(好ましくは、冠状動脈)における微小石灰化活性を測定する方法が提供され、当該方法は:
(a)測定するステップであって:
(i)血管組織サンプル内の冠状動脈プラーク又は可視疾患マーカの存在及び/又は量;
(ii)前記血管組織サンプル内の健康な組織の存在及び/又は量;
(iii)血管内の異常な血行力学的環境を規定する特徴のうちの1以上;
(iv)血管リモデリングに関連付けられ、かつ、血管内の血行力学に影響を与える幾何学的特徴のうちの1以上、及び/又は、
(v)血管血行力学に影響を与える材料特性のうちの1以上のうちの1以上を測定するステップと、
(b)ステップ(a)で得られた測定値の関数として前記血管内の前記微小石灰化活性を計算するステップと、を含む。
【0130】
[0129] 本発明の一実施形態では、血管、例えば冠状動脈などの動脈又は静脈における微小石灰化活性が陽電子放射断層撮影法(PET)を使用して測定される。
【0131】
[0130] 本発明によれば、任意のセットの測定値が(回帰又は機械学習技術を介して)モデルに適合されて、通常、NaF PETを使用して測定される厳密な微小石灰化活性の結果を取得することができる。
【0132】
[0131] 本発明の一実施形態では、血管プラークの存在及び/又は量は、血管内光干渉断層撮影(OCT)画像からの十分に確立された幾何学的疾患マーカ、具体的には、プラーク内の脂質、カルシウム及びマクロファージ(輝点)の存在の測定に基づいて測定される。例えば、平均脂質アーク[°]、平均カルシウムアーク[°]、平均輝点の測定値が得られる。疾患を示す追加の幾何学的測定値は、血管の径、面積、体積、動脈壁/層の厚さ、ねじれ及び偏心、並びに、これらの測定値のすべての組み合わせに関連する。同様に、これらの測定値は、臨床現場で一般的な任意の他の画像診断法によって取得可能である。
【0133】
[0132] 本発明の別の実施形態では、健康な組織の存在及び/又は量は、血管内OCT画像を使用して目に見える健康な動脈壁の量の測定に基づいて測定される:プラークフリー壁(PFW)は疾患と逆相関する。例えば、プラークフリー壁の平均円弧[°]の測定値が得られる。同様に、この測定値は、臨床現場で一般的な任意の他の画像診断法によって取得可能である。
【0134】
[0133] 本発明のさらなる実施形態では、血液由来粒子滞留又は異常なWSSなどの異常な血行力学環境の測定値は、通常、数値流体力学(CFD)シミュレーション、又は、MRIなどの撮像技術を介して壁せん断応力(WSS)を直接推定することができる他の方法を使用して推定される。例えば、低せん断領域(LSA):低WSSの領域[%]又は高せん断領域(HSA):高WSSの領域[%]又はWSSの平均[Pa]を測定することによって。追加の血行力学由来測定基準には、振動せん断指数(OSI)、相対滞留時間(RRT)、低振動せん断(LOS)、内皮活性化電位(ECAP)、速度由来場関数(例えば、渦度)、圧力降下、又は、前述の測定基準の任意の勾配(例えば、WSSの勾配)が含まれるが、これらに限定されない。
【0135】
[0134] 本発明のさらに別の実施形態では、血管リモデリングに関連付けられ、かつ、血行力学に影響を与える幾何学的特徴の測定値は、好ましくは、血管内OCT画像(周長及び偏心)及び冠状動脈コンピュータ断層撮影血管造影法(CCTA)から取得される。例えば、平均周長[mm](OCTを使用する)、平均偏心率(OCTを使用する)、動脈壁/層の厚さ、及び/又は、心室筋量[g](CTを使用する)を測定することによって。
【0136】
[0135] 本発明のさらに別の実施形態では、%ヘマトクリットなどの血行力学に影響を与える材料特性が、ルーチン採血中に測定され、かつ、CFDでWSSを計算するために使用される粘度モデルを調整するために使用可能である。%ヘマトクリットを測定/推定する他の方法もここに適用される。
【0137】
[0136] 本発明の好ましい実施形態では、本方法のステップ(b)によって測定される微小石灰化活性が、1以上の対象の測定基準に基づいた治療選択肢の評価を可能にする。
【0138】
[0137] 本発明の一形態では、当該方法の測定値を取得する際に使用される画像診断法には、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、超音波、静脈内超音波検査(IVUS)、光干渉断層撮影法(OCT)、単一光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)、PET及びNaF PETが含まれる。好ましくは、測定値はNaF PETを使用して取得される。
【0139】
[0138] 単一又は複数のソース(例えば、冠状動脈画像診断法)から取得された、カテゴリ(i)から(v)のいずれかに属する測定値の所定のセットについて、微小石灰化活性を推定する関数が取得されてもよい。現在、明示的に定義された式が使用されて、標準的な最適化(誤差最小化)方法を使用して適合された、微小石灰化活性(18F-NaF PETを使用して測定される)に対する任意の数のカテゴリ測定値の寄与を記述している。
【0140】
[0139] これらの式は、以下の例示のPに関する関数(微小石灰化活性(μCA)予測)で説明され、形式P1からP6の式は引数としてカテゴリ測定値(A1、...、En)を使用し、かつ、小文字は、適合法(例えば、反復最適化法)を使用して決定された係数を記述する。オフセット値(定数)は適合中に決定されてもよい。添字nは、各カテゴリ(A~E)内の関数引数の最大係数又は測定指標である。この文書内の関数引数(すなわち、一般的な患者データ)の以前/他の説明/提示に関して、ここでの関数引数はカテゴリに分類されていることに留意されたい。これは、パラメトリック関数の数値適合係数を最小化するためにさまざまな関数形式が関連の測定値をどのように集計するかを記述するために行われる。式は、そのようなデータが存在しない又は除外されている場合、特定のカテゴリの測定値及び係数を無視して実装/適合可能である。簡潔にするために、ここに書かれた式は、中間/繰り返しの引数/用語/カテゴリを「...」として記述する。
形式P
1は、すべての測定値が独立して関数に寄与している(固有の係数)と仮定している。
形式P
2は、同じ比例スケーリング係数が与えられた所定のカテゴリの測定値を見て、固有の指数と乗算される。
形式P
3は、所定のカテゴリの測定値に同じ指数を使用することによって形式P
2を簡略化する。
形式P
4及びP
5は、カテゴリ的に乗算的な形式の例を提供するが、これらの形式は、測定誤差を増大させる可能性があり、かつ、値がゼロ(又は極値)の測定に敏感である。
形式P
6は、カテゴリのさまざまなグループが使用可能な形式を例示している。カテゴリA及びBからの測定値は、密接に関連しており、かつ、固有の指数を共有してもよいが、シミュレーション結果(カテゴリC)は排他的であるとみなされる。
【0141】
[0140] 以下に説明するように、方法をさらに最適化するために、数式の他の有限の組み合わせが使用又は生成されてもよい。ただし、これらの関数のすべては、適合プロセスを簡素化するために最大でも、測定ごとに1つの指数係数が含まれる。式(特にP1)は、冠状動脈の血液供給を含む生物学全体にわたる相対成長スケーリング関係を記述するために使用されてきたべき乗則公式を活用している。単純なべき乗則関係が流体力学に現れ、(生理学的に関連する)パイプ内部の流れのナビエストークス方程式に対する解析解では、流れ、圧力及び摩擦/WSSなどの量が半径に依存する。
【0142】
[0141] 最適化された(パラメトリック)適合:P(上記)などのスカラー方程式の係数を決定するため、ネルダーミードシンプレックスアルゴリズム:多次元の非制約型最小化についての直接探索法に従って、二乗誤差の合計が最小化されてもよい:
【0143】
[0142] ここで、
は、測定されたNaF取り込みデータのベクトルであり、
は、推定値を含むベクトルである。この推定値は、サンプルごとにPのスカラー方程式を使用して計算される。アルゴリズムの最初の反復では、Pの係数が推測される(又は、任意のランダム値に設定される)。各反復の後、最小値が見つかるまで係数が更新され、アルゴリズムが終了する。これは、誤差の変化が指定の許容値未満である場合に発生する。係数の最適なセットを見つけるアルゴリズムの機能を支援するため、入力データ(Pの引数)がそれらの平均値によって正規化される。
【0144】
[0143] 具体例を提供する前に、方法論/フレームワークに対する主な態様が以下でより広く説明される。これの中心となるのは予測モデルの訓練及びテストである。この後、モデルは、使用に適しているとみなされてもよい。
【0145】
[0144] 広範に、プロセス200は、
図2に示すような以下のステップを含む。
【0146】
[0145] ステップ1:以下から構成される訓練データを取得するステップ201:
複数の患者に関するデータと、1以上の解剖学的位置における画像データ及び/又は生体力学的データをさらに含み得る複数のデータと、を含む[ATr、BTr、CTr、DTr...]などの一般患者データ203、及び
1以上の解剖学的位置における複数の患者からの微小石灰化活性データ205(μCA)。
【0147】
[0146] ステップ2:入力された訓練データと同じ方法で取得された新しいデータのμCAを推定/予測することができる、入力された患者データ及び微小石灰化活性データから関数を計算するステップを含む多変量関数/モデルを適合するステップ207であって、前記関数は:
【0148】
[0147] ステップ3:事前に適合された関数fを評価することによって多変量モデルを評価し209、訓練セット[A
Te、B
Te、C
Te、D
Te...]に含まれていなかった新しい一般的な患者検査データのセットである、新しい関数入力のセットに対する微小石灰化活性の推定値のセット(μCA
Est)を取得するステップ。
【0149】
[0148] ステップ4:誤差関数Efを使用して、微小石灰化活性の推定値のセット(μCA
Est)を既知/対応の値(μCA
Te)のセットと比較することによって、誤差推定値を計算するステップ211:
【0150】
[0149] ステップ5:誤差推定をチェックする/モデルの適合性を評価するステップ213。誤差推定値が、必要な正確性、精度及び入力データに対する感度などの所望の基準のセットを満たしている場合、モデルは、目的に適合しているとみなされ、かつ、微小石灰化活性の予測に使用される。
【0151】
[0150] 誤差が小さく、かつ、結果が統計的に有意である場合、推定微小石灰化活性が取得される。誤差が小さくない場合、及び/又は、結果が統計的に有意ではない場合、さらなる訓練データの追加によってさらなる訓練が必要とされる。
【0152】
[0151] 以下の情報は、
図2にリストされている訓練及びテストプロセスの各態様に関する背景情報を提示している。
【0153】
ステップ1(i)-一般的な患者データ203[A、B、C、D...]
[0152] 一般的な患者データは、複数の患者及び複数のデータタイプから導出され、かつ、1以上の解剖学的位置での画像データ及び/又は生体力学的データを含む。
【0154】
[0153] 好ましくは、一般的な患者データは、微小石灰化活性の推定に関連する患者データを含み、この患者データには、18F-フッ化ナトリウム(18F−NaF)陽電子放出断層撮影法(PET)を使用して検出/測定される微小石灰化活性に影響を与える可能性がある情報が含まれる。
【0155】
[0154] 適合のために収集されるデータセットの数又は各データセット内の分類データに制約はない。例えば、すべての測定値が、本質的に幾何学的であってもよく、又は、幾何学的でなくてもよい。ただし、それらは、アテローム性動脈硬化プロセス、及びしたがって、微小石灰化活性に関連付けられると予想される測定基準/測定値に合理的に対応している必要があり、かつ、臨床実践から及び/又は使用される一般的な画像処理手段を使用した医用画像診断法の画像処理を通じて取得可能である必要があり、したがって、方法論をすぐに適用することを可能にする。
【0156】
[0155] 特定の構成では、幾何学的測定は、石灰化プロセスが起こりやすい特定の血管における画像ベースの直径測定値(血管の開存性/健康状態の標準測定)に対応し、極端な直径は不健康な血管構造に関連付けられ、かつ、血管サイズも、18F-NaFトレーサを結合部位に輸送するために利用可能な表面積に影響を与えることが予想される。幾何学的測定値は、コンピュータ断層撮影、光干渉断層撮影、血管内超音波、X線血管造影、磁気共鳴画像又はPET撮像のうちの1以上を含む、患者画像データの画像処理によって取得される。
【0157】
[0156] 幾何学的形状の直接的な解剖学的測定とは別に、血管の健康状態又は疾患負荷の測定(例えば、冠状動脈カルシウムスコアなど)や、心血管疾患の進行を裏付けることが実証されている患者固有の測定値が関連する。これらの測定には、例えば、画像ベースの測定(すなわち、コンピュータ断層撮影法、光干渉断層撮影、血管内超音波、X線血管造影、磁気共鳴画像又はPET画像測定)、及び、患者病歴又は血液サンプルデータなどの非画像ベースの測定が含まれる。関連のある他の測定は、例えば、血圧、血流量又は局所的な血行力学的特性の測定、及び、組織応力の測定などの生体力学的測定である。これらのタイプの測定基準は、18F-NaFトレーサの結合部位への輸送の役割を果たすことが期待されており、かつ、心血管疾患の進行と広く関連している。
【0158】
[0157] 収集されたデータは、モデル適合プロセスで使用される前に、適合アルゴリズムのパフォーマンスを向上させるために、任意選択的に変換/スケーリングを受けてもよい。
【0159】
ステップ1(ii)-微小石灰化活性データ205(μCA)
[0158]
18F-NaF PET画像データは、患者の心臓又は他の血管領域のPETスキャンから1以上の測定スケールで取得される。このデータは、複数の患者について収集されるべきであり、かつ、多変量関数/モデルの適合における従属変数である(
図2のステップ207)。
【0160】
[0159] PETデータを測定するための標準的な方法に従って、記録された18F-NaF PETデータは、各サンプル領域/位置での標準化された取り込み値の評価として記録される。この値は、基準位置での標準化された取り込み値を測定/評価することによって、血液プール活性に関して調整(正規化)されることが好ましい。この一例としては、右心房の対象の領域から平均値を取得することが考えられる。これを行うことで、PET測定プロセスが、患者間で標準化され、かつ、組織対バックグラウンド比(TBR)の測定を提供する。冠状動脈では、18F-NaF PETは、TBR又は他の同様の取り込み測定値として報告されることがよくあり、例えば、Coronary Microcalcification Activity(CMA)(Kwiecinski,J他、J Am Coll Cardiol.2020;75(24):3061-74)を参照されたい。
【0161】
[0160] さらに、測定スケールは、医用画像から18F-NaF PETデータがサンプリングされる方法を指す。このデータは、患者の血管系の領域内の最大値として得られてもよい。代替として、データは、患者の血管に沿った離散的な長さの間隔/対象の領域ごとにサンプリングされてもよい。この例としては、血管の中心線に沿って5cmごとのデータのサンプリング、又は分岐点間のデータのサンプリング、又はn番目の画像ごとのデータのサンプリング、若しくは、血管又は既定の解剖学的セグメント/セクションごとのデータの最大値のサンプリングがあり得る。データは、空間次元(例えば、医用画像スタック内の軸線方向の距離又は冠状動脈の中心線に沿った距離)などの連続変数に関して測定することによって、連続関数としてマッピングされてもよい。この方法でデータを取得すると、適合ステップ(例えば、特定の領域/間隔における関数の最大値/平均値を得る)前に特定の方法で(既定されない/データ収集中)に連続関数が評価されることを可能にする。さらに、サンプリングされたデータ点の局所性(例えば、空間次元)は、多変量関数の適合における独立変数とみなされてもよい。これにより、適合された多変量関数が、18F-NaF PETを使用して測定された微小石灰化活性の空間依存性を評価することを可能にする。このプロセスでは、一般的な患者データも、医用画像から取得された場合に同様の空間的離散化から恩恵を受ける。
【0162】
[0161] 測定の空間的/解剖学的位置特定を改善するため、PET画像は、(血管の外観を改善するために)造影コンピュータ断層撮影などの別の画像ソース(患者特有の解剖学的構造の二次的/より明確な表現を有する)と同時位置合わせされて、各18F-NaF PETサンプルに関連付けられた空間データの記録を改善することが好ましい。このプロセスを支援するため、PET画像データをより適切に提示するために、例えば弾性運動補正などの運動補正アルゴリズムが使用されてもよい。
【0163】
[0162] 収集されたデータは、適合アルゴリズムのパフォーマンスを向上させるために、モデル適合プロセスで使用される前に任意選択的に変換/スケーリングを受けてもよい。
【0164】
ステップ2-多変量関数/モデルを適合する207
[0163] 適合プロセス207は、当業者には理解されるように、例えばパラメトリック回帰又はノンパラメトリック回帰など、多変量関数を適合するための任意の方法を使用して実行されてもよい。本明細書の例には、ネルダーミードシンプレックス法が含まれるが、当業者であれば容易に理解するように、同一又は類似の係数が期待される代替の最適化法が、利用可能であり、かつ、適している。ただし、すべての場合において、適合プロセス207に機械学習方法が利用されるか否かに関係なく、訓練データ及びテストデータが必要とされる。予測子方程式(
図2の関数f)の形式は、既定の形式を有しないが、適合されるデータから導出される情報から決定/構築されるので、ノンパラメトリック回帰が好まれる。ただし、このため、パラメトリック回帰よりも多くのデータが必要とされる。これは、
図2に提示されるように、訓練データ201の一部が適合プロセス中に検証データ215として保存されることを必要とする。訓練データ201の大部分が、モデルを適合させるために使用されてもよいが、この検証セット(又はサブセット)215は、モデル選択のための予測誤差を推定するために使用される。ノンパラメトリック回帰のカテゴリには、例えば、カーネル回帰及び機械学習サポートベクタマシンなどの方法が含まれる。他方で、パラメトリック適合では、関数の形式が仮定/事前に決定され、かつ、関数の係数を学習/決定する方法が使用される。これは、パラメトリック機械学習アルゴリズム又は目的関数(「二乗誤差の合計」)の最小値を見つける従来の最適化方法を使用して実行されてもよい。非線形関数の場合、方法200での使用に適したこの特定の例は、多次元非制約最小化のための直接探索方法-ネルダーミードシンプレックス法などである。パラメトリック最適化(すなわち、式1~6)を実行する場合、適合される関数の形式は、アロメトリックスケーリング関数など、生物学全体の関係を記述するために使用されてきた一般的に使用される関数形式を活用することで恩恵を受け得る。
【0165】
ステップ3-多変量モデルを評価する209
[0164]
図2に示すように、モデルの評価209は、モデルの精度及び適合性をテストするために重要である。モデルは、訓練データと同じ方法で収集されたテストデータのセット(一般的な患者データ:モデルの入力/引数;A
Te、B
Te、C
Te、D
Te...)に対して評価されることが好ましい。このデータは、好ましくは、複数の部位の幅広い患者のセットから獲得され、かつ、適合されたモデルが外挿中の感度などの単純な誤差(訓練データの対象外のデータに対して取得された非物理的な値)を確実に受けないようにするのに十分なサイズである必要がある。テストセット215には、訓練201中に使用された一般的な患者データ203が含まれるべきではない。さらに、同じ患者のセットについて、適合されたモデルの誤差が定量化され得るように、微小石灰化活性データ205(μCATe)も取得される必要がある。
【0166】
ステップ4-誤差推定値を計算する211
[0165] テストデータの微小石灰化活性(μCAEst)の推定/予測のセットを生成したら、それらは、真の微小石灰化活性値(μCATe)と比較され得る。これらのデータのセットの各々間の差異により、誤差の分布が得られる。誤差が正規分布している場合、μCAEstとμCATeとの線形相関は、モデル性能を評価する非常に簡単な方法である。誤差分布は、モデルの正確性(理想的にはゼロを中心とする)と精度(理想的には分散/範囲/広がりが小さい)とを評価するために単純に使用されてもよい。誤差と予測子の値又は適合値との関係を調査するなど、他の有用な情報が誤差分布から生成されてもよく:これは、入力/出力に対するモデルの感度を評価するのに役立つ。
【0167】
[0166] モデルの出力は、離散/公称分類に変換されてもよく、これにより、誤差推定値がテストされ得る他の方法(例えば、感度及び特異性)を提供する。バイナリ分類の場合、これは、真陽性、偽陽性、真陰性及び偽陰性の測定を通じて行われる。微小石灰化活性の上昇を分類するにはカットオフ値を必要とする。これは、(心血管疾患の疑いがない)対照患者のセット及び/又は組織対バックグラウンド比の閾値(例えば、1を超える、相対バックグラウンド値)に対して確立され得る。
【0168】
ステップ4(a)-モデルの適合性を評価するために誤差推定値をチェックする213
[0167] 誤差推定値が、必要とされる正確性、精度及び入力データに対する感度などの所望の基準のセットを満たしている場合、そのモデルは、目的に適合しているとみなされ、かつ、微小石灰化活性の予測に使用される。
【0169】
好ましい実施形態
[0168] 以下に、本発明の性質をよりよく理解するために、本発明の特定の実施形態の実例を提示する。パラメトリックモデル生成を用いた純粋な画像ベースの一例は冠状動脈の血管構造である。ここでは、一般的な患者データは、血管内光干渉断層撮影(OCT)撮像データ及び冠状動脈コンピュータ断層撮影血管造影(CCTA)撮像データから取得される。微小石灰化活性データは、(コントラスト強調された)CCTA撮像データとの位置合わせステップ(画像空間とそれらの中のオブジェクトとの両方を整列させる)に続いて、18F-NaF PET撮像から取得される。一般的な患者データと微小石灰化活性の測定値とは、冠状動脈の血管構造のさまざまな領域:一般的に使用される冠状動脈セグメントマップによって記述される主要な冠状動脈セグメントでサンプリングされる。データ収集段階に続いて、モデル(パラメトリック)が適合されてテストされる。すべての方法及び結果を以下の表Aに詳細に示す。
【0170】
[0169] この例では、すべての訓練データとテストデータとが同じ段階で収集される。
【0171】
[0170] システムを使用して冠状動脈CT血管造影(CCTA)データから微小石灰化活性を決定する場合、システムは、生のCCTA画像データを受信し、その後、関連付けられた画像メタデータにアクセスすることによってこれらの画像データの品質を決定し:例えば、CTCA獲得のスライス厚さ及びピクセルサイズは特定の閾値を超えている必要がある。品質管理チェックに合格すると、システムは、AI訓練データセットで使用するためにCCTAデータを分類する。該当する場合、システムは、CCTAで識別可能な形態及びプラーク特徴を、同じ患者の侵襲的撮像(例えば、OCT)で見える対応の特徴と比較する。これは、CCTAで識別可能な特徴が、OCTで識別可能な特徴と空間的に相関していることを検証するためである。品質管理後、回帰訓練モデルで使用するために、解剖学的メトリクス及び画像ベースのピクセル密度分布などのデータがAI由来の幾何学的形状から抽出される。品質管理チェックに合格しない場合、システムは、生のCCTAデータが、訓練データ又はシステムのさらなる目的に使用不可能であることを示すエラーを返す。
【0172】
ステップ1(i)-一般的な患者データ203
[0171] これらのデータセットは、モデルの独立変数(入力又は予測子)とみなされ、A、B、C、Dなどのラベルが付される。各入力の複数の測定が行われる。3つの入力(すなわち、A、B及びC)の場合、各患者は、複数の場所で取得された、A、B及びCの各々に対する複数の測定値を有する。例えば、冠状血管系では、入力例には、動脈蛇行(Tort);低せん断領域(LSA)及びプラークフリー壁(PFW)が含まれてもよい。これらは、3つのすべての画像診断法(及びこれらに共通)によって画像化された空間領域にわたる血管構造内の各冠状動脈血管セグメントで測定される。
【0173】
[0172] 蛇行(Tort):CCTAから測定された血管内腔中心線301(
図3)の蛇行。病気の血管では蛇行が大きくなる傾向がある。血管の中心線は通常、壁境界距離フィールドから、又は、レイキャスティングを使用して壁距離を計算することによって構築され、かつ、多くの中心線アルゴリズムを使用して確実に構築されてもよい。このプロセスの前に、血管の境界が定義される必要があり、ここでは、画像セグメンテーションによってこれが行われた:このプロセスでは、画像上のオブジェクトは、ターゲットオブジェクト(血管内腔)を含み、かつ、周囲の他のオブジェクトを含まないハウンズフィールド単位/ピクセルレベル間の対象の領域内で閾値処理(マスク)される。中心線データが抽出されると、ここでは、中心線蛇行が、中心線セグメントに沿った全長LC301(すなわち、連続する点間の距離の合計)を、
図3に示すように患者固有の測定値が取得される対象の領域の境界となる中心線の端点間の最短距離LS303(直線)で割った比率として単純に測定される。
【0174】
[0173] 低せん断領域(LSA):壁せん断応力値が特定の閾値(この例では0.4Paが使用されるが、通常、動脈系で低せん断応力を表すために1Paも使用される)を下回る血管(セグメント)内腔表面積のパーセンテージ(割合)。この閾値は、壁付近での血流の停滞と単球壁接着の増加とに関連している。低い壁せん断応力は、アテローム性動脈硬化の開始と進行とに関連付けられている。低い壁せん断応力は、中心線再構成と同様に、数値流体力学を使用して血管内腔境界によって規定される領域から計算される。現在のデータセットの場合、これは、CCTA画像又はOCT画像からセグメント化された血管境界を使用して実行され得る。(ピクセル解像度が優れていることにより)OCT画像を選択すると、OCT血管内腔境界がCCTA画像空間に登録され、OCT血管境界に曲率が与えられ、かつ、OCT測定が、そこから各測定領域が規定される冠状セグメントマップにより規定される血管セグメントと空間的に対応/位置合わせされるようになる。以下は、CCTA画像空間への登録後のOCT由来の幾何学的形状の表面上で識別された低せん断領域(パスカル単位)を示す画像である(
図4参照)。
【0175】
[0174] プラークフリー壁(PFW):プラークフリー壁は、動脈壁がはっきりと見え、かつ、OCT信号を減衰させる(これは疾患の存在に関して反比例する)プラーク特徴によって妨げられていない領域で、血管内膜505及び中膜507が健全である内腔中心503周りの角度501として、OCT画像、例えば、
図5の画像500上で取得されるOCT測定値である。角度測定方法により、PFWが血管セグメントの内腔表面積のパーセンテージとして表されるように、PFWが血管境界にマッピングされることを可能にする。
図5は、OCT画像500上に重ねられたPFW円弧角501の一例として示されている。
【0176】
ステップ1(ii)-微小石灰化活性データ205
[0175] モデルの従属変数(予測された変数/出力)は、共通画像空間内の各血管セグメントについて評価された18F-NaF PET画像上の微小石灰化活性の測定値である。各セグメントには、上述した3つのカテゴリ、Tort、LSA及びPFWの各々からの対応の一般的な患者データ測定値も有するようにする。
【0177】
[0176]
図6は、LSA表面積データも表示される、
18F-NaF PETセグメント測定値の画像例600を示しており:両方のデータセットが同じ解剖学的領域について取得される。
【0178】
[0177] 微小石灰化活性は、各セグメントの組織対バックグラウンド比(TBR)の最大値として測定される:セグメント内の最大標準化取り込み値は、血液プール活性によって正規化される。血液プール活性は、右心房の平均標準化取り込み値として測定される場合。(微小石灰化活性は内腔ではなく壁で発生するので)PET画像上でTBRが測定される対象の領域には冠動脈壁が含まれる。
【0179】
ステップ2-多変量関数/モデルの適合
[0178] ここでは、収集データの半分がモデルの訓練に使用される。多変量モデルは、アロメトリック関係を表すためによく使用される、以下のべき乗則方程式の組み合わせを有するものと想定される:
ここで、a、b、c、d、e及びfは、モデル適合中に決定されるモデルの係数であり、μCA
Estは、微小石灰化活性のモデル推定値(最大セグメントTBR値)である。この例では、係数を決定するため、ネルダーミードシンプレックスアルゴリズムに従って二乗誤差(ε)の合計が最小化される:
ここで、μCA
Trは、訓練データのセット内の最大セグメントTBRのすべての測定値を含むベクトル/アレイであり、μCA
Estは、最適化中の所定の係数のセットの推定値のベクトル/アレイである。係数が生成されると、相関分析が実行されて、モデルが訓練データにどの程度適合しているかを評価する。モデルがこのデータに適合するように最適化されたことを考慮すると、この相関関係は高いことが予想される。一次多項式の場合、適合結果701を
図7に示す。
【0180】
ステップ3-多変量モデルを評価し、誤差推定値を計算し、及び、モデルの適合性を評価する
[0179] モデルの係数を決定したら、残りの一般的な患者データ(モデルに適合させるために使用された訓練データに含まれていなかったデータ)について評価される。訓練データとは対照的に、このデータに対する
図8の一次多項式適合801は、わずかに弱いが、依然として有意である(R
2Tr=0.71;R
2T
e=0.70;p値T
e<0.0001)。
【0181】
[0180] さらに、Ef=μCAEst-μCATeから取得された誤差の分布は、平均値0.099及び標準偏差0.24で正規分布していた。μCATeの平均値が1.16であるとすると、モデルは、中程度の精度で微小石灰化活性を~9%過剰予測する傾向があった。さらに、PFW値と誤差値との間に負の関連性(スピアマンのRho)が見つかり(Rho=-0.73、p値<0.001)、これは、PFW測定基準を使用して測定された場合に、現在のモデルがより健康な血管セグメントの微小石灰化活性を過小予測する傾向が高いことを示唆している。
【0182】
[0181] この情報を考慮すると、モデルは、冠状血管系のCCTA画像及びOCT画像を提示する患者に役立ち得るが、PFWを除外する及び/又は代わりに別の測定基準を使用することで利益が得られ得る。
【0183】
[0182] 追加の目的、利点及び新規な特徴は、以下の説明に記載され、又は、図面及び以下のいくつかの非限定的な実施形態の詳細な説明を検討することによって当業者には明らかになる。
【0184】
実施例
[0183] 本発明の一例では、表1に従って異なるカテゴリデータが取得される。
【0185】
[0184] 以下の結果は、測定された最大18F-NaF PET取り込み(最大ターゲット対バックグラウンド比(TBR))と、上記P1について式(1)を使用して計算された推定微小石灰化活性Pとの間の線形回帰を示している。
【0186】
[0185]
図9では、表1のすべての測定値が適合に使用され、冠状動脈セグメント及び冠状血管(すなわち、OCTプルバック全体)測定スケールで比較が実行される。測定値を取得するために使用される各セグメントのサイズは異なり、血管スケールでの最大TBRは、血管にわたるすべてのセグメントの最大TBRであることに留意されたい。
【0187】
[0186]
図9では、適合901及び903は、モデルとデータとの間の強い線形関係を示している。血管測定スケールでは、適合されたモデルの自由度の数(23係数)が、モデル係数の最適化/適合に使用されるデータポイントの数(20)を超える。したがって、現在のモデル例はほぼ確実にデータを過剰適合している:結果として得られるモデルは、追加のデータを適合することができない又は将来の観測を確実に予測することができない可能性がある。
【0188】
[0187]
図10では、幾何学的測定を無視しながら、使用されるカテゴリ測定値の数を減らすことによって、モデルが血管測定スケールで良好にパフォーマンスし、かつ、データの過剰適合のリスクが少ないことがわかる。ただし、セグメント測定スケールの性能は維持されていない。この変数のグループでは、低WSS(<0.4Pa)の正規化面積(LSA[%])とプラークフリー壁の平均円弧(平均値、PFW Arc[°])とが、微小石灰化活性の近似に最も大きく(平均的に)寄与する。
【0189】
[0188] さらに、OCT導出の測定基準のみを使用することによって、両方の測定スケールで良好なパフォーマンスするモデルが生成可能である(
図11)。興味深いことに、異なる測定スケールで適合すると、結果として得られるモデルは、円周及び偏心のさまざまな幾何学的測定値に適用される重みにおいて異なる。最適化プロセスは、初期条件に依存し、かつ、必ずしも大域最小値を見つける必要はない。ただし、モデルのバリエーションは予期せぬものではない。局所的な幾何学的測定値は、セグメント位置を示し、かつ、プラーク表現型の発生とともに冠状動脈血管系全体で変化する。通常、近位血管セグメントは、遠位セグメントよりも大きく、かつ、高リスクのプラークが近位血管構造に形成される傾向がある。
【0190】
[0189] 表2のこれらの幾何学的変数とTBR及びLSA測定値との関係は、単独では、円周及び偏心の両方がTBR及びLSAに正の関係があることを示している。ただし、偏心の相関係数が弱いのに対し、円周はわずかに強い関係を示している。すべての変数間の関係がモデルの結果に影響を与えるので、個々の相関の強さが多変量モデルへの寄与を反映していないことは明らかである。
【0191】
[0190] 表2には、血液供給(LVM
3/4)と粘度(HCT)とに影響を与える要因を組み込んだ、LSAを近似するための追加の単純なモデルが示されている。これらのモデルは、幾何学的測定値のみと比較された微小石灰化活性TBRの改善された近似値を提供し、かつ、LSAのCFD測定値と競合する。これらの単純なモデルを前の6パラメータのOCT導出多変量モデル(
図11)に含めることで、相関係数(R
2
Seg:0.71~0.72、R
2
ves:0.81~0.90)を向上させるが、べき乗則スケーリング係数を有する独立パラメータ(R
2
Seg=0.75;R
2
Ves=0.88)としてHCT及びLVM
3/4を含めるだけである。
【0192】
[0191] 現時点では、上述した式(1)のP1などの単純な多変量関数が調整されて、簡単に取得可能なカテゴリ測定値のサブセットに依存しながら、データに十分に適合するモデルを提供することができると結論付けることができる。ただし、適合前に多変量関数の形式が定義されていないものなどを含む、他の代替方法も利用可能である。
【0193】
[0192] この方法は、利用可能な一貫したデータの量によって制限される(ここではセグメントデータにのみ適用される)。方法は、現在のデータセットでは、
図9~
図11の関数P1と同様に訓練データに十分に適合するが、テストデータを予測することができなかった。
【0194】
[0193] 特定の代替方法は、データ駆動型適合(ノンパラメトリック)を実行する機械学習方法であり、Pの方程式が生成される。シグモイド隠れニューロンと線形出力ニューロンとを有する2層フィードフォワードネットワークが一実装例である。データに一貫性があり、かつ、モデルの隠れ層に十分なニューロンがある場合、このモデルは多次元マッピング問題を任意に十分に適合させることができる。このネットワークは、レーベンバーグ-マルカート逆伝播アルゴリズムと、隠れ層の10のニューロンのデフォルト値と、を使用して実装される。ただし、過剰適合の影響を受けないわけではない。モデルのパフォーマンスは、訓練、検証及びテストデータのさまざまな比率でテストされた。一部の例では、AIベースの適合の具体例を示す
図12に示されているように、訓練データは完全に適合するが、モデルが過剰適合していて、将来のデータではうまく機能しないことが明らかである。
【0195】
[0194] この問題は、P1の高次元モデル(引数が3を超える)を訓練セットとテストセットとに適合する場合にも発生し、その結果、
図10及び
図11のモデルの真の予測力は、さらなるデータがなければ不明である。ただし、一部の分析は、低次元モデルを使用して実行された(以下の表3及び表4)。これらのモデルは、有望であるが、より大規模なデータセットをさらに精査することで恩恵を受ける。LSA及びPFWモデルは、すべての訓練/テストデータセットの比率にわたって一貫性を示している。訓練用に高い割合のデータが提供される場合、すべてのモデルが適切にパフォーマンスする。
【0196】
[0195] 提示された方法は、18F-NaF PETを使用して検出された測定可能な微小石灰化活性が、局所の血行力学的環境、冠状動脈プラークの有無及び関連の測定基準の測定値を使用して予測可能であることを示している。疾患の一般的なマーカであるプラークフリー壁の欠如と、低い内皮低せん断応力領域の存在とは、議論した多変量モデルに不可欠であった。
【0197】
実装例-ハードウェア概要
[0196] 一実施形態によれば、本明細書で説明される技術は、少なくとも1つのコンピューティングデバイスによって実装される。この技術は、パケットデータネットワークなどのネットワークを使用して結合された少なくとも1つのサーバコンピュータ及び/又は他のコンピューティングデバイスの組み合わせを使用して全体的又は部分的に実装されてもよい。コンピューティングデバイスは、技術を実行するために配線接続されてもよく、又は、技術を実行するように永続的にプログラミングされる少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC)若しくはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などのデジタル電子デバイスを含んでもよく、又は、ファームウェア、メモリ、他の記憶装置若しくはそれらの組み合わせのプログラム命令に従って技術を実行するようにプログラミングされた少なくとも1つの汎用ハードウェアプロセッサを含んでもよい。このようなコンピューティングデバイスは、カスタムのハードワイヤードロジック、ASIC又はFPGAをカスタムプログラミングと組み合わせて、説明した技術を実現してもよい。コンピューティングデバイスは、サーバコンピュータ、ワークステーション、パーソナルコンピュータ、ポータブルコンピュータシステム、ハンドヘルドデバイス、モバイルコンピューティングデバイス、ウェアラブルデバイス、身体装着型又は埋め込み型デバイス、スマートフォン、スマート家電、インターネットワーキングデバイス、ロボット又は無人地上車両又は無人航空機などの自律型又は半自律型デバイス、記載された技術を実装するためのハードワイヤードロジック及び/又はプログラムロジックを組み込んだ任意の他の電子デバイス、データセンタ内の1以上の仮想コンピューティングマシン又はインスタンス、及び/又は、サーバコンピュータのネットワーク及び/又はパーソナルコンピュータであってもよい。
【0198】
[0197]
図13は、上述したシステム100の一実施形態が実装され得る例示的なコンピュータシステムを示すブロック図である。
図13の例では、コンピュータシステム1300と、開示された技術をハードウェア、ソフトウェア又はハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで実装するための命令とが、例えばボックス及び円として、コンピュータアーキテクチャ及びコンピュータシステム実装について伝達するために本開示が関係する当業者によって一般的に使用されるのと同じ詳細レベルで概略的に表されている。
【0199】
[0198] コンピュータシステム1300は、電子信号経路を介してコンピュータシステム1300のコンポーネント間で情報及び/又は命令を通信するためのバス及び/又は他の通信機構を含み得る入出力(I/O)サブシステム1302を含む。I/Oサブシステム1302は、I/Oコントローラ、メモリコントローラ及び少なくとも1つのI/Oポートを含んでもよい。電子信号経路は、図面では、例えば、線、一方向の矢印又は双方向の矢印として概略的に表されている。
【0200】
[0199] 少なくとも1以上のハードウェアプロセッサ1304が、情報及び命令を処理するためにI/Oサブシステム1302に結合される。ハードウェアプロセッサ1304は、例えば、汎用マイクロプロセッサ又はマイクロコントローラ、及び/又は、埋め込みシステム又はグラフィックス処理ユニット(GPU)又はデジタル信号プロセッサ又はARMプロセッサなどの専用マイクロプロセッサを含んでもよい。プロセッサ1304は、統合算術論理演算装置(ALU)を備えてもよく、又は、別個のALUに結合されてもよい。ハードウェアプロセッサ1304のうちの1以上が、患者画像データをセグメント化し、注釈を付け及びその他の方法で分析するための専用画像処理手段として実装されてもよい。代替として、画像処理手段の機能はハードウェアプロセッサ1304の各々の間で共有されてもよい。
【0201】
[0200] コンピュータシステム1300は、メインメモリなどのメモリ1306の1以上のユニットを含み、メモリ1306は、データ及びプロセッサ1304によって実行される命令を電子的にデジタル的に格納するためにI/Oサブシステム1302に結合される。メモリ1306は、プロセッサ1304による検索のために患者画像データ及び訓練データを格納するためにも使用される。メモリ1306は、さまざまな形態のランダムアクセスメモリ(RAM)又は他の動的記憶装置などの揮発性メモリを含んでもよい。メモリ1306はまた、プロセッサ1304によって実行される命令の実行中に、一時変数又は他の中間情報を格納するために使用されてもよい。このような命令は、プロセッサ1304にアクセス可能な非一時的コンピュータ可読記憶媒体に格納される場合、コンピュータシステム1300を、命令で指定された動作を実行するようにカスタマイズされた専用マシンにレンダリングすることができる。
【0202】
[0201] コンピュータシステム1300は、プロセッサ1304のための情報及び命令を格納するために、I/Oサブシステム1302に結合された読み取り専用メモリ(ROM)1308又は他の静的記憶装置などの不揮発性メモリをさらに含む。ROM1308は、消去可能なPROM(EPROM)又は電気的に消去可能なPROM(EEPROM)などのさまざまな形式のプログラマブルROM(PROM)を含んでもよい。永続記憶装置1310のユニットは、FLASHメモリ、又はソリッドステート記憶装置、磁気ディスク、又は、CD-ROM若しくはDVD-ROMなどの光ディスクなどのさまざまな形式の不揮発性RAM(NVRAM)を含んでもよく、かつ、情報及び命令を保存するためにI/Oサブシステム1302に結合されてもよい。ストレージ1310は、プロセッサ1304によって実行されると、コンピュータ実装方法に本明細書の技術を実行させる命令及びデータを格納するために使用され得る非一時的なコンピュータ可読媒体の一例である。
【0203】
[0202] メモリ1306、ROM1308又はストレージ1310内の命令は、モジュール、方法、オブジェクト、関数、ルーチン又は呼び出しとして編成される命令の1以上のセットを含んでもよい。命令は、1以上のコンピュータプログラム、オペレーティングシステムサービス、又は、モバイルアプリを含むアプリケーションプログラムとして編成されてもよい。命令には、オペレーティングシステム及び/又はシステムソフトウェア;マルチメディア、プログラミング又はその他の機能をサポートする1以上のライブラリ;TCP/IP、HTTP又はその他の通信プロトコルを実装するためのデータプロトコル命令又はスタック;HTML、XML、JPEG、MPEG又はPNGを使用してコード化されたファイルを解析又はレンダリングするためのファイルフォーマット処理命令;グラフィカルユーザインタフェース(GUI)、コマンドラインインタフェース又はテキストユーザインタフェースのコマンドをレンダリング又は解釈するためのユーザインタフェース命令;オフィススイート、インターネットアクセスアプリケーション、設計及び製造アプリケーション、グラフィックスアプリケーション、オーディオアプリケーション、ソフトウェアエンジニアリングアプリケーション、教育アプリケーション、ゲーム又はその他のアプリケーションなどのアプリケーションソフトウェアが含まれてもよい。この命令は、ウェブサーバ、ウェブアプリケーションサーバ又はウェブクライアントを実装してもよい。命令は、プレゼンテーション層、アプリケーション層及び構造化照会言語(SQL)を使用する又はSQLを使用しないリレーショナルデータベースシステム、オブジェクトストア、グラフデータベース、フラットファイルシステム又はその他のデータストレージなどのデータストレージ層として編成されてもよい。
【0204】
[0203] コンピュータシステム1300は、I/Oサブシステム1302を介して少なくとも1つの出力装置1312に結合されてもよい。一実施形態では、出力装置1312はデジタルコンピュータディスプレイである。さまざまな実施形態で使用され得るディスプレイの例には、タッチスクリーンディスプレイ、又は発光ダイオード(LED)ディスプレイ、又は液晶ディスプレイ(LCD)、又は電子ペーパディスプレイが含まれる。コンピュータシステム1300は、ディスプレイ装置に代えて又はディスプレイ装置に加えて、他の種類の出力装置1312を含んでもよい。他の出力装置1312の例には、プリンタ、チケットプリンタ、プロッタ、プロジェクタ、サウンドカード又はビデオカード、スピーカ、ブザー又は圧電デバイス又は他の可聴デバイス、ランプ又はLED又はLCDインジケータ、触覚デバイス、アクチュエータ又はサーボが含まれる。
【0205】
[0204] 少なくとも1つの入力装置1314が、信号、データ、コマンド選択又はジェスチャをプロセッサ1304に通信するためにI/Oサブシステム1302に結合される。入力装置1314の例には、タッチスクリーン、マイクロフォン、静止画及びビデオデジタルカメラ、英数字及びその他のキー、キーパッド、キーボード、グラフィックタブレット、イメージスキャナ、ジョイスティック、時計、スイッチ、ボタン、ダイヤル、スライド及び/又は、力センサ、モーションセンサ、熱センサ、加速度計、ジャイロスコープ及び慣性測定ユニット(IMU)センサなどのさまざまなタイプのセンサ、及び/又は、携帯電話又はWi-Fi、無線周波数(RF)などの無線、又は、赤外線(IR)トランシーバ及び全地球測位システム(GPS)トランシーバなどのさまざまな種類のトランシーバが含まれる。
【0206】
[0205] 別の種類の入力装置は、入力機能に代えて又は入力機能に加えて、カーソル制御又は表示画面上のグラフィカルインタフェースにおけるナビゲーションなどの他の自動制御機能を実行し得る制御装置1316である。制御装置1316は、方向情報及びコマンド選択をプロセッサ1304に通信し、かつ、ディスプレイ1312上のカーソルの動きを制御するための、タッチパッド、マウス、トラックボール又はカーソル方向キーであってもよい。入力装置は、装置が平面内の位置を指定することを可能にする、第1軸線(例えば、x)と第2軸線(例えば、y)との2つの軸線内で少なくとも2つの自由度を有してもよい。別のタイプの入力装置は、ジョイスティック、ワンド、コンソール、ステアリングホイール、ペダル、ギアシフト機構又は他の種類の制御デバイスなど、有線、無線又は光学式の制御装置である。入力装置1314は、ビデオカメラ及び深度センサなどの複数の異なる入力装置の組み合わせを含んでもよい。
【0207】
[0206] 別の実施形態では、コンピュータシステム1300は、出力装置1312、入力装置1314及び制御装置1316のうちの1以上が省略されたモノのインターネット(IoT)装置を備えてもよい。又は、そのような実施形態では、入力装置1314は、1以上のカメラ、動作検出器、温度計、マイクロフォン、地震検出器、他のセンサ又は検出器、測定装置又はエンコーダを備えてもよく、出力装置1312は、単線LED又はLCDディスプレイ、1以上のインジケータ、ディスプレイパネル、計器、バルブ、ソレノイド、アクチュエータ又はサーボなどの専用ディスプレイを備えてもよい。
【0208】
[0207] コンピュータシステム1300がモバイルコンピューティングデバイスである場合、入力装置1314は、複数のGPS衛星を三角測量し、コンピュータシステム1300の地球物理的位置の緯度経度値などの地理的位置又は位置データを決定及び生成することができるGPSモジュールに結合された全地球測位システム(GPS)受信機を備えてもよい。出力装置1312は、位置報告パケット、通知、パルス若しくは心拍信号、又は、コンピュータシステム1300の位置を特定する他の反復データ送信を、単独で又はホスト1324又はサーバ1330に向けられた他のアプリケーション特有データと組み合わせて生成するためのハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア及びインタフェースを含んでもよい。
【0209】
[0208] コンピュータシステム1300は、カスタマイズされた配線ロジック、少なくとも1つのASIC又はFPGA、ロードされてコンピュータシステムと組み合わせて使用又は実行される場合にコンピュータシステムを専用機として動作させる又はプログラムするファームウェア及び/又はプログラム命令又はロジックを使用して、本明細書に記載される技術を実装してもよい。一実施形態によれば、本明細書の技術は、メインメモリ1306に含まれる少なくとも1つの命令の少なくとも1つのシーケンスをプロセッサ1304が実行することに応答して、コンピュータシステム1300によって実行される。このような命令は、ストレージ1310などの別の記憶媒体からメインメモリ1306に読み込まれてもよい。メインメモリ1306に含まれる命令のシーケンスを実行すると、プロセッサ1304は、本明細書で説明するプロセスステップを実行する。代替の実施形態では、ソフトウェア命令に代えて又はソフトウェア命令と組み合わせて、配線回路が使用されてもよい。
【0210】
[0209] 本明細書で使用される「記憶媒体」という用語は、特定の方法で機械を動作させるデータ及び/又は命令を格納する任意の非一時的な媒体を指している。このような記憶媒体は、不揮発性媒体及び/又は揮発性媒体を含んでもよい。不揮発性媒体には、例えば、ストレージ1310などの光ディスク又は磁気ディスクが含まれる。揮発性媒体には、メモリ1306などの動的メモリが含まれる。記憶媒体の一般的な形式には、例えば、ハードディスク、ソリッドステートドライブ、フラッシュドライブ、磁気データ記憶媒体、任意の光学又は物理データ記憶媒体、メモリチップなどが含まれる。
【0211】
[0210] 記憶媒体は、伝送媒体とは異なるが、伝送媒体と組み合わせて使用されてもよい。伝送媒体は、記憶媒体間の情報の転送に関与する。例えば、伝送媒体には、I/Oサブシステム1302のバスを構成するワイヤを含む同軸ケーブル、銅線及び光ファイバが含まれる。伝送媒体は、電波及び赤外線データ通信中に生成される波などの音響波又は光波の形態をとり得る。
【0212】
[0211] さまざまな形態の媒体が、実行のために少なくとも1つの命令の少なくとも1つのシーケンスをプロセッサ1304に搬送することに関与してもよい。例えば、命令は、最初にリモートコンピュータの磁気ディスク又はソリッドステートドライブに搬送されてもよい。リモートコンピュータは、その動的メモリに命令をロードし、かつ、光ファイバ又は同軸ケーブル又はモデムを使用した電話回線などの通信リンクを介して命令を送信することができる。コンピュータシステム1300にローカルなモデム又はルータは、通信リンク上でデータを受信し、かつ、そのデータをコンピュータシステム1300が読み取り可能なフォーマットに変換することができる。例えば、無線周波数アンテナ又は赤外線検出器などの受信機は、無線信号又は光信号で搬送されるデータを受信することができ、かつ、適切な回路は、バス上にデータを配置するなど、I/Oサブシステム1302にデータを提供することができる。I/Oサブシステム1302はメモリ1306にデータを搬送し、プロセッサ1304はそこから命令を取り出して実行する。メモリ1306によって受信された命令は、任意選択的に、プロセッサ1304による実行の前又は後のいずれかにストレージ1310に格納されてもよい。
【0213】
[0212] コンピュータシステム1300は、バス1302に結合された通信インタフェース1318も含む。通信インタフェース1318は、ネットワーク1322又はインターネット上のパブリッククラウド又はプライベートクラウドなどの少なくとも1つの通信ネットワークに直接的又は間接的に接続されたネットワークリンク1320に結合する双方向データ通信を提供する。例えば、通信インタフェース1318は、イーサネットネットワーキングインタフェース、サービス総合デジタル網(ISDN)カード、ケーブルモデム、衛星モデム、又は、対応のタイプの通信回線、例えばイーサネットケーブル又はあらゆる種類のメタルケーブル又は光ファイバ回線又は電話回線へのデータ通信接続を提供するモデムであってもよい。ネットワーク1322は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、キャンパスネットワーク、インターネットワーク又はそれらの任意の組み合わせを広く表す。通信インタフェース1318は、互換性を有するLANへのデータ通信接続を提供するLANカード、又は、セルラー無線電話無線ネットワーキング標準に従ってセルラーデータを送信又は受信するために有線で接続されるセルラー無線電話インタフェース、又は、衛星無線ネットワーキング標準に従ってデジタルデータを送信又は受信するために有線で接続される衛星無線インタフェースを備えてもよい。このような実装形態では、通信インタフェース1318は、さまざまな種類の情報を表すデジタルデータストリームを搬送する信号経路を介して、電気信号、電磁信号又は光信号を送信及び受信する。
【0214】
[0213] ネットワークリンク1320は、通常、例えば、衛星、セルラー、Wi-Fi又はBLUETOOTH技術を使用して、電気、電磁又は光データ通信を直接又は少なくとも1つのネットワークを通じて他のデータデバイスに提供する。例えば、ネットワークリンク1320は、ネットワーク1322を通じてホストコンピュータ1324への接続を提供してもよい。
【0215】
[0214] さらに、ネットワークリンク1320は、ネットワーク1322を通じた接続、又は、インターネットサービスプロバイダ(ISP)1326によって運営されるインターネットワーキングデバイス及び/又はコンピュータを介した他のコンピューティングデバイスへの接続を提供してもよい。ISP1326は、インターネット1328として表されるワールドワイドパケットデータ通信ネットワークを通じてデータ通信サービスを提供する。サーバコンピュータ1330はインターネット1328に結合されてもよい。サーバ1330は、任意のコンピュータ、データセンタ、仮想マシン若しくはハイパーバイザの有無にかかわらず仮想コンピューティングインスタンス、又は、DOCKER若しくはKUBERNETESなどのコンテナ化されたプログラムシステムを実行するコンピュータを広く表す。サーバ1330は、複数のコンピュータ又はインスタンスを使用して実装され、かつ、ウェブサービスリクエスト、HTTPペイロード内のパラメータを有するユニフォームリソースロケータ(URL)文字列、APIコール、アプリサービスコール又は他のサービスコールを伝送することによってアクセス及び使用される電子デジタルサービスを表してもよい。コンピュータシステム1300及びサーバ1330は、他のコンピュータ、処理クラスタ、サーバファーム、又は、タスクを実行する又はアプリケーション若しくはサービスを実行するために協働する他のコンピュータの組織を含む分散型コンピューティングシステムの要素を形成してもよい。サーバ1330は、モジュール、メソッド、オブジェクト、関数、ルーチン又はコールとして編成される1以上の命令のセットを備えてもよい。命令は、1以上のコンピュータプログラム、オペレーティングシステムサービス又はモバイルアプリを含むアプリケーションプログラムとして編成されてもよい。命令には、オペレーティングシステム及び/又はシステムソフトウェア;マルチメディア、プログラミング又はその他の機能をサポートする1以上のライブラリ;TCP/IP、HTTP又は他の通信プロトコルを実装するためのデータプロトコル命令又はスタック;HTML、XML、JPEG、MPEG又はPNGを使用してコード化されたファイルを解析又はレンダリングするためのファイル形式処理命令;グラフィカルユーザインタフェース(GUI)、コマンドラインインタフェース又はテキストユーザインタフェースのコマンドをレンダリング又は解釈するためのユーザインタフェース命令;オフィススイート、インターネットアクセスアプリケーション、設計及び製造アプリケーション、グラフィックスアプリケーション、オーディオアプリケーション、ソフトウェアエンジニアリングアプリケーション、教育アプリケーション、ゲーム又はその他のアプリケーションなどのアプリケーションソフトウェアを備えてもよい。サーバ1330は、プレゼンテーション層、アプリケーション層及び構造化照会言語(SQL)を使用する又はSQLを使用しないリレーショナルデータベースシステム、オブジェクトストア、グラフデータベース、フラットファイルシステム又は他のデータストレージなどのデータストレージ層をホストするウェブアプリケーションサーバを備えてもよい。
【0216】
[0215] コンピュータシステム1300は、ネットワーク、ネットワークリンク1320及び通信インタフェース1318を通じて、メッセージを送信し、かつ、プログラムコードを含むデータ及び命令を受信することができる。インターネットの例では、サーバ1330は、インターネット1328、ISP1326、ローカルネットワーク1322及び通信インタフェース1318を通じてアプリケーションプログラムの要求されたコードを送信してもよい。受信されたコードは、受信されたままでプロセッサ1304によって実行されてもよく、及び/又は、後で実行するために記憶装置1310又は他の不揮発性記憶装置に記憶されてもよい。
【0217】
[0216] このセクションで説明される場合の命令の実行は、実行中で、かつ、プログラムコード及びその現在のアクティビティから構成されるコンピュータプログラムのインスタンスの形式でプロセスを実装してもよい。オペレーティングシステム(OS)によっては、プロセスは、命令を同時に実行する複数の実行スレッドから構成されてもよい。この点、コンピュータプログラムは、命令の受動的な集合であるが、プロセスは、それらの命令の実際の実行であってもよい。複数のプロセスが同じプログラムに関連付けられてもよく;例えば、同じプログラムの複数のインスタンスを開くということは、多くの場合、複数のプロセスが実行されていることを意味する。マルチタスクは、複数のプロセスがプロセッサ1304を共有することを可能にするように実装されてもよい。各プロセッサ1304又はプロセッサのコアは一度に単一のタスクを実行するが、コンピュータシステム1300は、各プロセッサが各タスクの終了を待たずに実行中のタスク間を切り替えることを可能にするマルチタスクを実装するようにプログラムされてもよい。一実施形態では、タスクが入出力操作を実行する場合、タスクが切り替え可能であることを示す場合、又は、ハードウェア割り込み時に切り替えが実行されてもよい。タイムシェアリングが実装されて、コンテキストスイッチを迅速に使用して複数のプロセスを同時に実行しているように見えることを可能にすることによって、対話型ユーザアプリケーションの高速応答を可能にする。一実施形態では、セキュリティ及び信頼性のために、オペレーティングシステムは、厳密に仲介及び制御されたプロセス間通信機能を提供する独立したプロセス間の直接通信を防止してもよい。
【0218】
[0217] 「クラウドコンピューティング」という用語は、本明細書では通常、コンピュータネットワーク、サーバ、ソフトウェアアプリケーション及びサービスなどのコンピューティングリソースの共有プールへのオンデマンドアクセスを可能にし、かつ、最小限の管理労力又はサービスプロバイダのインタラクションによって迅速なプロビジョニング及びリソースのリリースを可能にするコンピューティングモデルを表すために使用される。
【0219】
[0218] クラウドコンピューティング環境(クラウド環境又はクラウドということもある)は、さまざまな要件に最も適合するさまざまな方法で実装されてもよい。例えば、パブリッククラウド環境では、基盤となるコンピューティングインフラストラクチャは、そのクラウドサービスを他の組織又は一般の人々に利用可能にする組織によって所有される。対照的に、プライベートクラウド環境は通常、単一の組織による又は単一の組織内での使用のみを目的としている。コミュニティクラウドは、コミュニティ内の複数の組織によって共有されることを目的としている一方で、ハイブリッドクラウドは、データ及びアプリケーションポータビリティによって結び付けられた2以上のタイプのクラウド(例えば、プライベート、コミュニティ又はパブリックなど)から構成される。
【0220】
[0219] 一般に、クラウドコンピューティングモデルは、以前は組織独自の情報技術部門によって提供されていた彼らの責任の一部が、(クラウドのパブリック/プライベートの性質に応じて、組織内又は組織外の)消費者による使用のために、代わりにクラウド環境内のサービス層として提供されることを可能にする。特定の実装に応じて、各クラウドサービスレイヤによって又は各クラウドサービスレイヤ内で提供されるコンポーネント又は機能の正確な定義が異なり得るが、一般的な例は以下を含む:消費者が、クラウドインフラストラクチャ上で実行されているソフトウェアアプリケーションを使用する一方、SaaSプロバイダは、基盤となるクラウドインフラストラクチャ及びアプリケーションを管理又は制御する、サービスとしてのソフトウェア(SaaS)。消費者は、PaaSプロバイダがサポートするソフトウェアプログラミング言語及び開発ツールを使用して、独自のアプリケーションの開発、展開及びその他の制御を行うことができる一方で、PaaSプロバイダはクラウド環境の他の側面(すなわち、ランタイム実行環境以下のすべて)を管理又は制御する、サービスとしてのプラットフォーム(PaaS)。消費者は、任意のソフトウェアアプリケーションを展開及び実行し、及び/又は、処理、ストレージ、ネットワーク及びその他の基本的なコンピューティングリソースをプロビジョニングすることができる一方で、laaSプロバイダは、基盤となる物理クラウドインフラストラクチャ(すなわち、オペレーティングシステム層下のすべて)を管理又は制御する、サービスとしてのインフラストラクチャ(laaS)。消費者は、クラウドインフラストラクチャ上で実行されるデータベースサーバ又はデータベース管理システムを使用する一方で、DBaaSプロバイダは、基盤となるクラウドインフラストラクチャ、アプリケーション、及び、1以上のデータベースサーバを含むサーバを管理又は制御する、サービスとしてのデータベース(DBaaS)。
【国際調査報告】