(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】人工多能性幹細胞に基づくがんワクチン
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20240730BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240730BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240730BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61P35/00
A61P37/04
A61P35/02
A61K39/39
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504494
(86)(22)【出願日】2022-05-30
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 US2022031491
(87)【国際公開番号】W WO2022256277
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520239872
【氏名又は名称】クロリス・バイオサイエンシーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Khloris Biosciences, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルペ,ステファン デー
(72)【発明者】
【氏名】ブイ,リン エイ
(72)【発明者】
【氏名】クーレマン,ナイジェル ジー
【テーマコード(参考)】
4C085
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085CC03
4C085DD23
4C085DD62
4C085DD86
4C085EE01
4C085EE06
4C085FF14
(57)【要約】
一実施形態では、患者由来の体細胞のリプログラミングにより得られる有効量の哺乳動物人工多能性幹細胞(iPSC)を含む、哺乳動物自家ワクチンまたは同種異系ワクチンであって、ASTE1、BIRC5、CDCA1、CDKN2A、DEPDC1、EGER、ERBB2、F0XM1、GPC3、HJURP、HSPA8、HSP90B1、IDH1、IDO1、IGF2BP3、IMP3、KIF20A、KIF20B、MEEK、MGAT5、NUF2、PMEL、RAS、TAF1B、TOMM34、TTK、TP53、VEGFR1およびVEGFR2からなる群から選択される遺伝子を発現し、がんの治療のために患者の免疫応答を誘導する、自家ワクチンまたは同種異系ワクチンを本出願により開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者由来の体細胞のリプログラミングにより得られる有効量の哺乳動物人工多能性幹細胞(iPSC)を含む哺乳動物自家ワクチンまたは同種異系ワクチンであって、
ASTE1、BIRC5、CDCA1、CDKN2A、DEPDC1、EGFR、ERBB2、FOXM1、GPC3、HJURP、HSPA8、HSP90B1、IDH1、IDO1、IGF2BP3、IMP3、KIF20A、KIF20B、MELK、MGAT5、NUF2、PMEL、RAS、TAF1B、TOMM34、TTK、TP53、VEGFR1およびVEGFR2からなる群から選択される遺伝子を発現し、
適宜、アジュバントを含んでもよく、
がんの治療のために患者の免疫応答を誘導する、自家ワクチンまたは同種異系ワクチン。
【請求項2】
選択された1つまたは複数の遺伝子が、
星状細胞腫 IDH1;
膀胱 DEPDC1 KIF20B;
乳房 BIRC5 CDCA1 DEPDC1 ERBB2 KIF20A KIF20B;
頸部 FOXM1 HJURP MELK;
直腸結腸 ASTEl IGF2BP3 TAF1B TOMM34 VEGFRl VEGFR2;
食道 CDCA1 IGF2BP3 IMP3 TTK;
胃 ERRB2;
神経膠芽腫 EGFR HSP90B1;
頭頸部 CDCAl CDKN2A IMP3;
肝臓 GPC3 HSPA8;
メラノーマ HSP90B1 MGAT5 PMEL;
NSCLC ERBB2 HSP90Bl IDO1 IMP3 NUF2 TTK TP53 VEGFRl VEGFR2;
卵巣 BIRC5 ERBB2 FOXM1 HJURP MELK VEGFRl VEGFR2;
膵臓 ERBB2 HSPA8 KIF20A RAS TP53 VEGFRl VEGFR2;および
前立腺 BIRC5 ERBB2
からなる群から選択される患者におけるがんの型により決定される、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
患者由来の体細胞のリプログラミングにより得られる有効量の哺乳動物人工多能性幹細胞(iPSC)を含む哺乳動物自家ワクチンまたは同種異系ワクチンであって、
リプログラミングプロセスに関与しない阻害性RNAを含むように遺伝子改変し、
がんの治療のために患者の免疫応答を誘導する、自家ワクチンまたは同種異系ワクチン。
【請求項4】
阻害性RNAが、アンチセンスRNA、siRNA、shRNA、miRNA、lncRNA、pri-miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびpre-miRNAからなる群から選択される、請求項3に記載のワクチン。
【請求項5】
阻害性RNAが、MHCクラスI、MHCクラスII、ベータ2ミクログロブリンおよびLAMPからなる群から選択される遺伝子の発現を阻害する、請求項3または4に記載のワクチン。
【請求項6】
阻害性RNAが、PD-1、PDL-1、PDL-2、Nodal、サイトカインシグナル伝達1(SOCSl)、IL-10、IL-l0R、TGF-βおよびTGF-βRを含む群から選択される遺伝子の発現を阻害する、請求項5に記載のワクチン。
【請求項7】
患者由来の体細胞のリプログラミングにより得られる有効量の哺乳動物人工多能性幹細胞(iPSC)を含む哺乳動物自家ワクチンまたは同種異系ワクチンであって、
リプログラミングプロセスに関与しない遺伝子を発現するように遺伝子改変し、
がんの治療のために患者の免疫応答を誘導する、自家ワクチンまたは同種異系ワクチン。
【請求項8】
遺伝子が、ICAM1、LFA-1、LFA-3、CD80、CD81、CD28、ICOS、4-lBB、抗DEC-205抗体、抗CLEC9A(DNGR)抗体、抗DCIR-2抗体、抗DECTIN抗体、抗ASGPR抗体、抗マンノース受容体抗体および抗CLEC12(DCAL-2)抗体からなる群から選択される、請求項7に記載のワクチン。
【請求項9】
遺伝子が、XCR1、CCL3、CCL4、CCL5、CCL20、CCL25およびFLT3Lからなる群から選択される、請求項7に記載のワクチン。
【請求項10】
遺伝子が、GM-CSF、INFアルファ、INFベータ、IL-2、IL-12、IL-15およびIL-21.9からなる群から選択される、請求項7に記載のワクチン。
【請求項11】
遺伝子が、gp96、hsp90、hsp70、CD91、カルレティキュリンおよびLOX-1からなる群から選択される、請求項7に記載のワクチン。
【請求項12】
遺伝子が、B7、OX40、CD28、CD40L、TLR4、CD70、MHCクラスI、MHCクラスIIおよびOX40Lからなる群から選択される、請求項7に記載のワクチン。
【請求項13】
哺乳動物人工多能性幹細胞が生存不能であり、カルレティキュリン、Hsp70およびHSP90からなる群から選択されるタンパク質を細胞表面上に発現する、請求項1から12のいずれか一項に記載の哺乳動物自家ワクチンまたは同種異系ワクチン。
【請求項14】
哺乳動物人工多能性幹細胞が、化学療法剤のインビトロでの投与により殺傷される、請求項13に記載の哺乳動物自家ワクチンまたは同種異系ワクチン。
【請求項15】
化学療法剤が、オキサリプラチンまたはドキソルビシンからなる群から選択される、請求項14に記載の哺乳動物自家ワクチンまたは同種異系ワクチン。
【請求項16】
ワクチンが樹状細胞でさらに構成され、樹状細胞が患者から得られる、請求項1から3のいずれか一項に記載の哺乳動物自家ワクチンまたは同種異系ワクチン。
【請求項17】
樹状細胞に、患者から得られた成熟細胞からリプログラムしたiPS細胞をパルス適用する、請求項16に記載の哺乳動物自家ワクチンまたは同種異系ワクチン。
【請求項18】
樹状細胞を組織培養により増殖させ、人工多能性幹細胞由来の抗原をパルス適用した後、患者に戻し送達する、請求項16に記載の哺乳動物自家ワクチンまたは同種異系ワクチン。
【請求項19】
樹状細胞が、全多能性幹細胞、多能性幹細胞の抽出物、多能性幹細胞由来のmRNA、多能性幹細胞由来のcDNAまたは多能性幹細胞由来のタンパク質もしくはペプチドをパルス適用した樹状細胞の群から選択される、請求項18に記載の哺乳動物自家ワクチンまたは同種異系ワクチン。
【請求項20】
がんが、白血病、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、リンパ腫、骨髄増殖性障害、扁平上皮がん、腺癌、肉腫、神経内分泌癌、膀胱がん、皮膚がん、脳脊髄がん、頭頸部がん、甲状腺、骨のがん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、胃腸がん、(下)咽頭がん、食道がん、肝臓がん、肺がん、膵臓がん、前立腺がん、眼がん、腎細胞がん、腎臓、肝がん、卵巣がん、胃がん、精巣がん、甲状腺および胸腺がんからなる群から選択される、請求項1から19のいずれか一項に記載の哺乳動物自家ワクチンまたは同種異系ワクチン。
【請求項21】
アジュバントがCpGであり、1用量あたりのCpGの量が、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mgまたは10mgである、請求項20に記載の哺乳動物自家ワクチンまたは同種異系ワクチン組成物。
【請求項22】
1用量あたりのiPS細胞数が、約1千万、2千500万、5千万、1億、2億、4億、8億または20億個の細胞である、請求項21に記載の哺乳動物自家ワクチンまたは同種異系ワクチン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月1日申請の米国特許仮出願第63/195,609号、および2021年8月13日申請の米国特許仮出願第63/233,141号に関する。
【背景技術】
【0002】
山中および同僚らは(Yamanaka S. et al. Cell 126:663-76, 2006;Shi Y. et al. Nat Rev Drug Discov. 16:115-130, 2017において総説が記載)、成熟細胞を胚性状態に復帰させる方法を開発した(「リプログラミング」)。このような人工多能性幹細胞(iPSC)は、4つの転写因子を成熟体細胞に導入することにより生成することができ、これらは、転写および後成的状態を、胚性幹細胞(ESC)に酷似する多能性状態に形質転換する。
【0003】
Kooremanらは(米国特許出願公開第2019/0290697号、この全体を参照により本明細書に組み込む)、iPSCおよびがん細胞の遺伝子発現において多くの類似性を認め、多くのがんの増殖を予防するiPSCを使用するワクチンを開発した。このような著者らは、このワクチンに見られる最良の有効性は、個体から細胞を得、このような細胞をiPSCにリプログラミングし、この個体のiPSCをアジュバントとともにこの個体のためのワクチンとして使用することであると決定した(「自家」ワクチン接種)。また、このような研究者らは、これらのモデルにおいて最も効果的である、短い合成の非メチル化CpGモチーフに基づくオリゴデオキシヌクレオチド(「CpG」)で構成される特定の種類のアジュバントを同定した。
【0004】
特には、特許公開では、患者におけるがんの治療のための方法を開示しており、この方法は、ワクチンが、患者由来の体細胞のリプログラミングにより得られる有効量の哺乳動物多能性幹細胞を含み、ワクチンが、ワクチンに対する免疫応答をブーストする免疫学的製剤であるアジュバントをさらに含み、ワクチン接種が、哺乳動物多能性幹細胞を必要とする患者に投与する工程を含む、ワクチンによる患者のワクチン接種を含む。この方法の一態様では、多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)である。この方法の別の態様では、哺乳動物多能性幹細胞は、未分化多能性幹細胞である。この方法の別の態様では、多能性幹細胞は、Oct4、c-Myc、KLF-4およびSox2を含む4つのリプログラミング因子を含み、shRNAp53付加の可能性を有する、ミニイントロンプラスミドを使用して生成する。別の態様では、体細胞のリプログラミングにより得られる幹細胞は、線維芽細胞、ケラチノサイト、末梢血細胞および腎臓上皮細胞からなる群から選択される。また別の態様では、ワクチンは、次の方法:a)独立型ワクチン接種として、b)腫瘍切除前のアジュバント療法として、c)腫瘍切除後のアジュバント療法として、d)転移状態において、e)腫瘍またはがん非存在下の予防状態において、およびf)生物学的製剤、低分子製剤、生物学的もしくは低分子製剤を含むナノ粒子とともに、またはこれらの組合せを使用する、化学療法、免疫療法、標的療法と組み合わせた方法の少なくとも1つに従って投与する。この方法のまた別の態様では、がんは、乳がん、メラノーマおよび中皮腫からなる群から選択される。この方法の別の態様では、がんは、白血病、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、リンパ腫、骨髄増殖性障害、扁平上皮がん、腺癌、肉腫、神経内分泌癌、膀胱がん、皮膚がん、脳脊髄がん、頭頸部がん、甲状腺、骨のがん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、胃腸がん、(下)咽頭がん、食道がん、肝臓がん、肺がん、膵臓がん、前立腺がん、眼がん、腎細胞がん、腎臓、肝がん、卵巣がん、胃がん、精巣がん、甲状腺および胸腺がんからなる群から選択される。
【0005】
別の実施形態では、多能性幹細胞がんワクチンによる哺乳動物のワクチン接種のための方法が特許公開により開示されており、この方法は、レシピエント由来の体細胞のリプログラミングにより得られる哺乳動物多能性幹細胞を導入することであって、このワクチンが、ワクチンに対する免疫応答をブーストする免疫学的製剤であるアジュバントをさらに含む、ことと、レシピエントにワクチンを供することとを含む。この方法の一態様では、哺乳動物細胞は、未分化多能性細胞である。別の態様では、多能性幹細胞は、Oct4、c-Myc、KLF-4およびSox2を含む4つのリプログラミング因子を含むミニイントロンプラスミドを使用して生成する。また別の態様では、多能性幹細胞は、線維芽細胞、ケラチノサイト、末梢血細胞および腎臓上皮細胞からなる群から選択される体細胞のリプログラミングにより得られる。また別の態様では、ワクチンは、ワクチン接種前に放射線照射する。
【0006】
特許公開の別の実施形態では、哺乳動物由来の体細胞のリプログラミングにより得られる有効量の哺乳動物多能性幹細胞、およびワクチンに対する免疫応答をブーストするアジュバントまたは免疫学的製剤を含む、熱的に安定なワクチン組成物を提供している。ワクチン組成物の一態様では、多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)である。別の態様では、哺乳動物多能性幹細胞は、未分化多能性幹細胞である。また別の態様では、体細胞のリプログラミングにより得られる幹細胞は、線維芽細胞、ケラチノサイト、末梢血細胞および腎臓上皮細胞からなる群から選択されるリプログラミング体細胞により得られる。また別の態様では、アジュバントは、CpG、QS21、ポリ(ジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン;リポ多糖の誘導体、例えば、モノホスホリルリピドA、ムラミルジペプチド(MDP;Ribi)、スレオニル-ムラミルジペプチド(t-MDP;Ribi);OM-174;コレラ毒素(CT)、およびリーシュマニア(Leishmania)伸長因子からなる群から選択される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、さらなる抗原を提示して個体のがんに対する応答を強化することが可能なiPSCを開発する必要性が存在することを発見した。ある個体由来のiPSCを使用して遺伝的に無関係の個体を治療することができる(「同種異系ワクチン接種」)容易に入手可能な製剤を開発するだけでなく、さらに強力であるかまたはさらに有効な免疫応答が生じ得る他のアジュバントおよび標的化戦略を同定する必要性も存在する。その製造中(「リリース基準」)および個体に投与後(「バイオマーカー」)のiPSCがんワクチンの有効性を判断するための基準を開発する必要性も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態では、複数の型のがんを発症予防的または治療的に標的とするがんワクチンの生成のための組成物および方法を本出願により提供する。一態様では、ワクチンは、アジュバントおよびiPSCまたはミニイントロンプラスミド生成iPSC(MIP-iPSC)を含む。一変形形態では、アジュバントはiPSCと混合する。アジュバントは、細胞をこのアジュバントとともにインキュベートすることによりiPSC上に充填し得る。一変形形態では、アジュバントはiPSCにおいて遺伝的にコードされる。
【0009】
一実施形態では、がんワクチンは、自家性(または自己的)である。本明細書において使用する場合、自家または自己ワクチンは、個体由来の細胞のリプログラミングにより調製し、同一の個体に免疫を付与するために使用し得るワクチンを指す。
【0010】
一実施形態では、がんワクチンは、容易に入手可能な同種異系製剤である。
【0011】
一実施形態では、自家および同種異系がんワクチン生成のための方法およびワクチン接種治療計画を提供する。発明者らは驚くべきことに、特定の一態様において、同種異系iPSCワクチンが自家ワクチンほど有効ではないことを見出し、自家および同種異系の両ワクチン接種の有効性を向上させるための方法を開発した。
【0012】
一態様では、がんワクチンは、抗原提示の有効性を向上させるように遺伝子改変する。
【0013】
組成物および方法の別の実施形態では、自家または同種異系ワクチンは、抗体または抗体断片を発現するように遺伝子修飾する。抗体は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、抗体断片、またはこれらの組合せであり得る。抗体は、iPS細胞により分泌され得るか、またはこれらは、細胞表面において膜貫通タンパク質として発現し得る。抗体は、例えば、がん抗原、サイトカイン、増殖因子もしくはこれらの受容体、またはT細胞の表面上に発現するタンパク質に対して反応性であり得る。「抗体」の用語は、リガンドに結合可能である任意の内在性細胞表面タンパク質を定義するために使用してもよく、重および軽鎖で構成される免疫グロブリン、免疫グロブリン重(VH)および軽鎖(VL)可変領域の融合タンパク質である一本可変断片(scFv)、ラクダ類単一ドメイン抗体、ナノボディまたは当技術分野において公知の他の変形形態を含むが、これらに制限されない。
【0014】
一変形形態では、iPS細胞は、抗CD28および抗CD80抗体を細胞表面上に発現するように遺伝子修飾する。
【0015】
一変形形態では、自家または同種異系ワクチンは、ICAM1、LFA-1、LFA-3、CD80、CD81、CD28、ICOS、4-lBB、抗DEC-205抗体、抗CLEC9A(DNGR)抗体、抗DCIR-2抗体、抗DECTIN抗体、抗ASGPR抗体、抗マンノース受容体抗体および抗CLEC12(DCAL-2)抗体からなるリストから選択される細胞表面リガンドを発現するように遺伝子改変する。別の変形形態では、自家または同種異系ワクチンは、コネキシン43を発現するように遺伝子改変する。別の変形形態では、自家または同種異系ワクチンは、XCR1、CCL3、CCL4、CCL5、CCL20、CCL25およびFLT3Lまたはこれらの組合せからなる群から選択されるタンパク質を分泌するように遺伝子改変する。一変形形態では、同種異系ワクチンは、CCL3およびFLT3Lを発現するように遺伝子改変する。別の変形形態では、iPSCは、GM-CSF、INFアルファ、INFベータ、IL-2、IL-12、IL-15およびIL-21、またはこれらの組合せからなる群から選択されるタンパク質を分泌するように遺伝子改変する。別の変形形態では、同種異系ワクチンは、IL-15を細胞表面上に発現する。別の変形形態では、iPSCは、gp96、hsp90、hsp70、CD91、カルレティキュリンおよびLOX-1からなる群から選択されるタンパク質を発現するように遺伝子改変する。特定の変形形態では、iPSCは、hsp70を発現するように遺伝子改変する。別の変形形態では、自家または同種異系ワクチンは、B7、OX40、CD28、CD40L、TLR4、CD70、MHCクラスI、MHCクラスIIおよびOX40Lからなる群から選択される細胞表面タンパク質を発現するように遺伝子改変する。別の変形形態では、ワクチンは、OX40を発現するように改変する。
【0016】
一実施形態では、自家または同種異系ワクチンは、阻害性RNAを含むように遺伝子改変する。一変形形態では、阻害性RNAは、アンチセンスRNA、siRNA、shRNA、miRNA、lncRNA、pri-miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびpre-miRNAからなる群から選択される。一変形形態では、阻害性RNAは、MHCクラスI、MHCクラスII、ベータ2ミクログロブリンおよびLAMPからなる群から選択される遺伝子の発現を阻害する。別の変形形態では、阻害性RNAは、ベータ2ミクログロブリンを阻害する。一変形形態では、阻害性RNAは、PD-1、PDL-1、PDL-2、Nodal、サイトカインシグナル伝達1(SOCSl)、IL-10、IL-l0R、TGF-βおよびTGF-βからなる群から選択される遺伝子の発現を阻害する。一変形形態では、阻害性RNAは、TGF-βの発現を阻害する。一変形形態では、阻害性RNAは、iPSCワクチンを取り込む抗原提示細胞においてこのような遺伝子の1つまたは複数の発現を阻害するのに十分に高い濃度で発現する。当業者は、阻害性RNA以外の方法、例えば、CRISPRを含む方法を使用して、自家または同種異系ワクチンにおいて特定の遺伝子の発現を阻害可能であることが理解される。Li, H.L. et al. Methods 101:27-35, 2015; Terns M.P. Mol. Cell 72:404-412を参照されたい。
【0017】
別の態様では、自家または同種異系ワクチンは、低分子薬と組み合わせて投与する。一実施形態では、この薬物は、HDAC阻害物質、ブロモドメイン阻害物質、Vps34キナーゼ阻害物質、PRMT5阻害物質、オートファジー阻害物質、血管新生阻害物質、血管破壊物質、STING経路の活性化物質およびToll受容体経路の活性化物質からなる群から選択される。別の変形形態では、低分子薬は、STINGの活性化物質に加えてToll受容体経路の活性化物質である。
【0018】
一変形形態では、HDAC阻害物質は、バルプロ酸、ギビノスタット、ベリノスタット、エンチノスタット、モセチノスタット、プラクチノスタット(practinostat)、シダミド(chidamide)、キシノスタット、アベキシノスタット、ボリノスタット、ロミデプシン、パノビノスタットおよびベリノスタットからなる群から選択される。別の変形形態では、HDAC阻害物質は、ボリノスタットである。
【0019】
一変形形態では、BET阻害物質は、I-BET151(GSK1210151A)、I-BET762(GSK525762)、OTX-015、TEN-010、CPI-203およびCPI-0610からなる群から選択される。一変形形態では、BET阻害物質は、CPI-0610である。別の変形形態では、Vps34キナーゼ阻害物質は、SB02024およびSAR405からなる群から選択される。また別の変形形態では、PRMT5阻害物質は、GSK3326595である。
【0020】
一変形形態では、オートファジー阻害物質は、3-メチルアデニン、バフィロマイシンA1、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、N-2--(lH-ベンズイミダゾール-6-イル)-N-4--(5-シクロブチル-lH-ピラゾール-3-イル)キナゾリン-2,4-ジアミン、MRT68921、MRT67307、SBI-0206965、ULKl00、ULK101およびSB02024からなる群から選択される。別の変形形態では、オートファジー阻害物質は、SB02024である。
【0021】
一変形形態では、血管新生阻害物質は、アキシチニブ、ベバシズマブ、カボサンチニブ、エベロリムス、レナリドミド、レンバチニブメシル酸、パゾパニブ、レゴラフェニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、サリドマイド、バンデタニブおよびラムシルマブからなる群から選択される。別の変形形態では、血管新生阻害物質は、ソラフェニブである。
【0022】
一変形形態では、血管破壊物質は、コンブレタスタチン、AVE8062、ZD6126、ABT-571、MN-029、CKD516、OXi8006、5,6-ジメチルキサンテノン4-酢酸、コンブレタスタチンA-4リン酸、ZD6126、Oxi4503、DMXAAおよびドラタスタチン(dolatastatin)誘導体TZT-1027からなる群から選択される。別の変形形態では、血管破壊物質は、DMXAAである。
【0023】
一変形形態では、STING活性化物質は、ADU-S100、MK-1454、MK-2118、BMS-986301、SR-717、GSK3745417、SB-11285、IMSA-101、c-di-GMP、c-di-AMPおよびcGAMPからなる群から選択される。別の変形形態では、STING活性化物質は、SR-717である。
【0024】
一変形形態では、Toll経路活性化物質は、ジアシルリポペプチド、トリアシルリポペプチド、フラゲリン、ポリI:C、ヘキサ-アセチル化リピドA、モノホスホリルリピドA、ガーディキモド、イミキモドおよびR848からなる群から選択される。別の変形形態では、Toll経路活性化物質は、イミキモドである。
【0025】
別の変形形態では、自家または同種異系ワクチンは、抗CD47、リツキシマブ、セツキシマブ、ダラツムマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、ペルツズマブ、パニツムマブ、ラムシルマブ、ネシツムマブおよびブリナツモマブからなる群から選択される抗体と同時投与する。別の変形形態では、自家または同種異系ワクチンは、ブリナツモマブと同時投与する。別の変形形態では、自家または同種異系ワクチンは、イブルチニブ、アカラブルチニブおよびガルニセリチブ(galuniseritib)からなる群から選択される低分子薬と同時投与する。別の変形形態では、自家または同種異系ワクチンは、イブルチニブと同時投与する。
【0026】
別の態様では、多能性幹細胞は、特定の種類の細胞死を起こすように誘導する。発明者らは驚くべきことに、所望の抗がん免疫を誘発するのに注射時点で多能性幹細胞が生存可能である必要はないことを発見した。一実施形態では、オキサリプラチンまたはドキソルビシンのインビトロでの投与により殺傷され、カルレティキュリンを発現するように誘導された後、アジュバントと混合するiPSCは、特に強力である。
【0027】
一変形形態では、細胞死誘導剤は、グルタミン酸、ソラフェニブ、ML162、FIN56、FINO2、エラスチン(erastin)、スルファジン(sulfazine)、RSL3、Ki8751、SGX-523、AZD7762、KW-2449、NVP-TAE684、AZD4547、TG-101348、ブレオマイシン、アキシチニブ、サイトカラシンB、ダサチニブ、SNX-2112、セマガセスタット、CHIR-99021、B02、オラパリブ、シルミタセルチブ(silmitasertib)、タネスピマイシン、ニンテダニブ、ML031、カネルチニブ、SMER-3、BCL-LZH-4、SN-38、タマチニブ(tamatinib)、ML334ジアステレオマー、これらの類似体、塩または誘導体からなる群から選択される。別の変形形態では、細胞死誘導剤は、ブレオマイシンである。
【0028】
製剤は、凍結および融解した後、活性を失うことなく患者に投与することができる。一変形形態では、iPSCは、アジュバントと混合した後、凍結する。一変形形態では、アジュバントは、サポニン製剤、ビロソーム、ウイルス様粒子、腸内細菌リポ多糖(LPS)の非毒性誘導体、免疫刺激性オリゴヌクレオチド(例えば、CpGモチーフを含む免疫刺激性オリゴヌクレオチド)、ミネラル含有組成物、油性乳濁液、ポリマー、ミセル形成アジュバント(例えば、リポソーム)、免疫刺激複合マトリクス(例えば、ISCOMATRIX)、粒子、スクアレン、リン酸、カチオン性リポソーム-DNA複合体(CL DC)、DDA、DNAアジュバント、ガンマ-インスリン、ADPリボシル化毒素、ADPリボシル化毒素の解毒誘導体、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、ムラミルジペプチド、モノホスホリルリピドA(MPL)、ポリIC、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、イミキモド、QS21、AS101、アジュバント系AS0、アジュバント系AS02、アジュバント系AS03、MF59(登録商標)、ポリジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン;リポ多糖の誘導体、例えば、モノホスホリルリピドA、ムラミルジペプチド(MDP;Ribi)、スレオニル-ムラミルジペプチド(t-MDP;Ribi);OM-174;コレラ毒素(CT)、およびリーシュマニア伸長因子ならびにアルミニウムまたはアルミニウム塩(例えば、ミョウバン、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム)からなる群から選択される。別の変形形態では、アジュバントは、AS101である。
【0029】
リリースアッセイは、特定のロットの自家または同種異系iPSCをワクチン製剤において使用するのに適切な特性を有するものとして認定するために使用することができ、一方、認定アッセイは、特定の製造プロセスを検証するために使用することができる。リリースまたは認定アッセイは、制限されないが、PCR、RNAseq、フローサイトメトリー、ELISAおよび免疫組織染色を含む当技術分野において公知の方法に従ってiPSCにおけるmRNA、タンパク質または炭水化物を測定することによる適切な遺伝子の発現に基づき得る。再生医療用iPSCについてこれまでに公表されている基準に加えて(Sullivan et al. 2018)、発明者らは、iPSCにおいて発現することにより、特定のがんのためのワクチンとして特に有用となる遺伝子を同定した。このような遺伝子を表1に列挙する。
【0030】
表1-がんワクチン用iPSCの製造のためのリリースまたは認定アッセイとして有用な遺伝子:
星状細胞腫 IDH1
膀胱 DEPDC1 KIF20B
乳房 BIRC5 CDCA1 DEPDC1 ERBB2 KIF20A KIF20B
頸部 FOXM1 HJURP MELK
直腸結腸 ASTEl IGF2BP3 TAF1B TOMM34 VEGFRl VEGFR2
食道 CDCA1 IGF2BP3 IMP3 TTK
胃 ERRB2
神経膠芽腫 EGFR HSP90B1
頭頸部 CDCAl CDKN2A IMP3
肝臓 GPC3 HSPA8
メラノーマ HSP90B1 MGAT5 PMEL
NSCLC ERBB2 HSP90Bl IDO1 IMP3 NUF2 TTK TP53 VEGFRl VEGFR2
卵巣 BIRC5 ERBB2 FOXM1 HJURP MELK VEGFRl VEGFR2
膵臓 ERBB2 HSPA8 KIF20A RAS TP53 VEGFRl VEGFR2
前立腺 BIRC5 ERBB2
【0031】
表1から選択される1つまたは複数の遺伝子は、表に列挙するがんを有する患者のための自家ワクチンにおける使用のためのiPSCの製造ロットを認定するために使用することができる。別の実施形態では、表1から選択される1つまたは複数の遺伝子は、iPSCの製造ロットを認定するために使用することができる。
【0032】
一実施形態では、表1から選択される1つまたは複数の遺伝子は、ワクチンに対する患者の免疫応答を追跡するために使用することができる。一変形形態では、表1から選択される1つまたは複数の遺伝子に対する抗体応答は、制限されないが、ELISAまたはルミネックスを含むアッセイを使用して追跡することができる。一変形形態では、表1から選択される1つまたは複数の遺伝子に対する細胞免疫応答は、制限されないが、エリスポットまたは細胞傷害性T細胞殺傷アッセイを含むアッセイを使用して追跡することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
多能性ベクターの生成、このベクターを有するiPSCの生成、がんワクチンの確立ならびに対象への発症予防的および治療的ワクチン接種のための組成物および方法を提供する。
【0034】
がんワクチンは、本明細書において使用する場合、宿主の多能性幹細胞をアジュバントと組み合わせて使用して、同一宿主の免疫系を標的がん細胞において刺激する。
【0035】
宿主は一般に、哺乳動物であり、ヒト、イヌ、ネコ、またはウマを含むが、これらに制限されない。実験動物、例えば、齧歯動物は、がん選択試験、エピトープスクリーニングおよび機構試験の対象となる。さらに大型の動物試験、例えば、ブタおよびサルは、安全性試験の対象となる。
【0036】
本発明の目的では、多能性細胞は、レシピエントに対して自家性、同種異系および異種性であり得る。
【0037】
「治療」は、治療的処置および発症予防的または予防的処置の両方を指す。治療を必要とする者としては、障害を既に有する者だけでなく、障害を予防する者が挙げられる。別の実施形態では、任意の症状または障害の「治療(treatingまたはtreatment)」は、特定の実施形態では、対象に存在する症状または障害の回復を指し、発症予防的回復を含む。別の実施形態では、「治療」は、対象により識別不能であり得る少なくとも1つの理学的パラメータの回復を含む。「治療」の用語は、症状または障害の理学的(例えば、識別可能な症候の安定化)もしくは生理学的(例えば、理学的パラメータの安定化)のいずれかまたはこの両方による調節を含む。「治療」の用語は、症状または障害の発症の遅延を含む。加えて、「治療」の用語は、症状(例えば、疼痛)または症状(例えば、がん)の1つもしくは複数の症候(例えば、疼痛)のいずれかの低減または除去、あるいは症状または症状の1つもしくは複数の症候の進行を遅延させること、あるいは症状または症状の1つもしくは複数の症候の重症度を低減させることを含む。一変形形態では、「治療」は、本明細書に記載のワクチンの発症予防的投与を含む。
【0038】
本明細書において使用する場合、「哺乳動物」は、哺乳動物として分類される任意の動物を指し、ヒト、飼育動物および家畜、ならびに動物園、競技、またはペット用動物、例えば、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ等を含む。一態様では、哺乳動物は、ヒトである。
【0039】
本明細書において使用する場合、「多能性(pluripotencyおよびpluripotent)」幹細胞は、このような細胞が、成体生物においてあらゆる型の細胞に分化する能力を有することを意味する。「人工多能性幹細胞」の用語は、胚性幹細胞(ESC)と同様に、生物においてあらゆる型の細胞に分化する能力を維持しながら長期間にわたって培養可能であるが、ESC(胚盤胞の内部細胞塊に由来する)、すなわち、可能性がさらに狭く、さらに画定されており、実験的操作の非存在下では生物においてあらゆる型の細胞を生成可能であるとは言えない細胞とは異なり、分化体細胞に由来する多能性細胞を包含する。「iPSCとなる可能性を有する」は、分化体細胞をiPSCとなるように誘導可能、すなわち、iPSCとなるようにリプログラム可能であることを意味する。すなわち、体細胞を分化するように誘導して、多能性細胞の形態学的特性、増殖能および多能性を有する細胞を確立することができる。iPSCは、ヒトESC様形態を有しており、核・細胞質比が大きく、境界が画定され、核小体が顕著である平らなコロニーとして増殖する。加えて、iPSCは、制限されないが、アルカリホスファターゼ、SSEA3、SSEA4、Sox2、Oct3/4、Nanog、TRA160、TRA181、TDGF1、Dnmt3b、FoxD3、GDF3、Cyp26al、TERTおよびzfp42を含む当業者に公知の1つまたは複数の鍵となる多能性マーカーを発現する。加えて多能性細胞は、テラトーマを形成することが可能である。加えて、これらは生きた生物における外胚葉、中胚葉、または内胚葉組織を形成するかまたはこれらに寄与することが可能である。
【0040】
「生存可能」の用語は、例えば、「...多能性幹細胞が生存可能である必要はない...」の節において使用する場合、一般に使用される生死判別染色、例えば、トリパンブルー、ヨウ化プロピジウム、3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)および類似のアッセイにより評価するとき、細胞がインタクトな膜を有するかまたは代謝的に活性である必要はないことを意味する(Kamiloglu et al., 2020, Food Frontiers 1:332-349に総説が記載)。
【0041】
体細胞は、3、4、5、6つまたはこれ以上の因子と組み合わせて胚性幹細胞(ESC)と明らかには識別不能な状態に分化/リプログラムすることができる。このようなリプログラム細胞は「人工多能性幹細胞」(iPSC、iPC、iPSC)と呼ばれ、多様な組織から生成することができる(Shi Y. et al., Induced pluripotent stem cell technology: a decade of progress. Nat Rev Drug Discov. 2017 Feb; 16(2):115-130)。
【0042】
ワクチンは、アジュバントも含み得る。ワクチンにおいて有用なアジュバントは、当業者に周知であり、したがって適切なアジュバントの選択は、本出願を再評価すれば当業者により日常的に実施することができる。有用なアジュバントの例としては、完全および非完全フロイントミネラルゲル、例えば、水酸化アルミニウム、界面活性物質、例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチドおよび油性乳濁液が挙げられるが、これらに制限されない。特に有用なアジュバントは、細胞性免疫を刺激するものであり、CG濃縮オリゴデオキシヌクレオチド(CpG)、カルメット・ゲラン桿菌(BacillusCalmette-Guerin、BCG)、cGAS-STING経路の活性化物質、MPL(3-O-デスアシル-4’-モノホスホリルリピドA)、AS04アジュバントおよびマイコバクテリア細胞壁ペプチドグリカンを含むが、これらに制限されない。一部の実施形態では、ワクチンは、滅菌、発熱物質不含であり、等張性に製剤化され、微粒子不含の注射用組成物である。注射用組成物に必要とされる純度の基準は、注射用組成物の調製に使用される製造および精製方法と同様に周知である。ワクチンは、当技術分野において公知の任意の手段により投与し得る。注射用医薬組成物は、非経口的、すなわち、静脈内、皮下および筋肉内に投与し得る。一部の実施形態では、医薬ワクチン組成物は、鼻腔内に、または口腔内の組織に、例えば、舌下へ、または頬側組織への投与により投与し得る。
【0043】
「幹細胞」の用語は、それ自体で複製または自己再生し、多様な細胞型の特殊化細胞に発生することが可能な非特殊化細胞を指す。分裂を起こした幹細胞の産物は、起源細胞と同一の能力を有する少なくとも1つのさらなる細胞である。多能性幹細胞は、任意の種類の組織(通常は胚組織、例えば、胎生または前胎生組織)に由来する細胞であり、この組織の幹細胞は、適切な条件下で3つすべての胚層(内胚葉、中胚葉、および外胚葉)の誘導体である種々の細胞型の後代生成能を有するという特性を有する。人工多能性幹細胞(iPSC)は、ウイルスまたは非ウイルスベクターを使用して多能性マーカー(OCT4、SOX2、c-MYC、NANOGおよびKLF4)を外因的に高発現させ、これによりトランスフェクト細胞株への多能性を誘導することにより生成する。
【0044】
多能性幹細胞は、特定の系列に関係づけられていない場合、未分化であると判断される。このような細胞は、胚または成体起源の分化細胞からこれらを区別する形態学的特性を呈する。未分化iPSCは、当業者により容易に認識され、典型的には、細胞コロニーの二次元的顕微鏡観察により見ることができ、核/細胞質比は高く、核小体は顕著である。未分化iPSCは、未分化細胞の存在を検出するマーカーとして使用し得る遺伝子を発現し、このポリペプチド産物は、負の選択マーカーとして使用し得る。
【0045】
「樹状細胞」の用語は、本明細書において使用する場合、哺乳動物免疫系の抗原提示細胞を意味する。これらの主な機能は、抗原物質をプロセシングし、細胞表面上のこれを免疫系のT細胞に提示することである。樹状細胞は、ナイーブT細胞応答を活性化可能な唯一の免疫細胞であると考えられている。
【0046】
「治療」の用語は、疾患または病状、例えば、がんの進行の低減、回復、復帰、緩和、阻害、または予防を指す。別の態様では、この用語は、発症予防、療法および治癒をも包含する。「治療」を受けるかまたは「治療」を受けている対象または患者は、がんのためのこのような治療を必要とする任意の哺乳動物であり、霊長類、およびヒト、ならびに他の哺乳動物、例えば、ウマ、ウシ、ブタおよびヒツジ;ならびに家畜化哺乳動物およびペットを含む。
【0047】
「リプログラミング」の用語は、分化体細胞に対する多能性状態の誘導および当技術分野において使用されるとおりを意味する。
【0048】
目的の体細胞は、線維芽細胞、血中細胞、尿中細胞等を含むが、これらに制限されない。
【0049】
本明細書において使用する場合、「アジュバント」は、レシピエントの免疫系の免疫学的応答をブーストして多能性幹細胞を標的とする免疫学的製剤である。アジュバントは、本出願に開示のもの、およびレシピエントの免疫系の免疫学的応答をブーストして多能性幹細胞を標的とするための当技術分野において公知のものを含む。「アジュバント」の用語は、免疫応答を刺激可能な任意の物質または薬剤を指す。一部のアジュバントは、免疫系の細胞の活性化を生じ得る。例えば、アジュバントは、免疫細胞にサイトカインの産生および分泌を生じさせ得る。免疫系の細胞の活性化を生じ得るアジュバントの例としては、本明細書に記載のナノエマルジョン製剤、CG濃縮オリゴデオキシヌクレオチド(CpG)、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)、STING経路の活性化物質、MPL(3-O-デスアシル-4’-モノホスホリルリピドA)、AS04アジュバントおよびマイコバクテリア細胞壁ペプチドグリカン、Qサポナリアの木の樹皮から精製したサポニン、例えば、QS21、ポリジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン(PCPPポリマー;VirusResearchInstitute、米国);リポ多糖の誘導体、例えば、モノホスホリルリピドA(MPL;RibiImmunoChemResearch,Inc.社、Hamilton,Mont.)、ムラミルジペプチド(MDP;Ribi)およびスレオニル-ムラミルジペプチド(t-MDP;Ribi);OM-174(リピドAと関連するグルコサミン二糖;OM PharmaSA社、Meyrin,スイス国);コレラ毒素(CT)、およびリーシュマニア伸長因子(精製リーシュマニアタンパク質;CorixaCorporation社、Seattle,Wash.);またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに制限されない。当技術分野において公知の他のアジュバントとしては、例えば、リン酸アルミニウムまたは水酸化物塩が挙げられ得る。一部の実施形態では、多能性幹細胞は、1つまたは複数のアジュバントとともに投与する。一部の実施形態では、利用するアジュバントは、米国特許出願公開第2005158329号、米国特許出願公開第2009010964号、米国特許出願公開第2004047882号、または米国特許第6,262,029号に記載されており、がんワクチン用のアジュバントは、William S. Bowen et al., 2018, Current challenges for cancer vaccine adjuvant development, Expert Review of Vaccines, 17:3, 207-215に総説が記載されている。
【0050】
本明細書において使用する場合、「免疫応答をブースト(または誘導)するのに有効な量」(例えば、免疫応答を誘導またはブーストするための組成物)の節は、哺乳動物における免疫応答を刺激、生成および/または誘発するのに必要とされる投与レベルまたは量(例えば、哺乳動物に投与する場合)を指す。有効量は、本明細書に開示のように、種々の期間にわたる1回または複数の投与により投与することができる(例えば、同一または異なる経路を介して)。適用または投与は、特定の製剤または投与経路または期間に制限することは意図しない。
【0051】
腫瘍関連抗原(TAA)または腫瘍特異的抗原(TSA)は、本明細書において使用する場合、がん細胞上に存在する公知だけでなく未知の抗原/エピトープを指す。
【0052】
がんワクチンによる最適な免疫応答は、宿主の免疫系を刺激して、多能性細胞上に存在するこのようなTAAおよびTSAを標的とし、TAAおよびTSAを発現するがん型に対する免疫を付与することである。公知のTAAおよびTSAとしては、EPCAM、CEACAM、TERT、WNK2およびサバイビン等が挙げられるが、これらに制限されない。
【0053】
ワクチン接種の方法:
多能性幹細胞は、がんワクチンの源として、例えば、ヒト、霊長類、ウマ、ウシ、ブタ等を含む任意の哺乳動物種、特には、ヒト細胞から得ることができる。人工多能性細胞では、複数の出発組織または細胞を使用することができ、血液細胞、皮膚細胞、線維芽細胞および上皮細胞を含むが、これらに制限されない。
【0054】
多能性幹細胞は、当技術分野において公知の標準的方法を使用して、好ましくは、安定な多能性幹細胞集団が形成されるまでフィーダー細胞を使用しない条件下で生成および増殖させる(Sun N., Panetta NJ, Gupta DM, Wilson KD, Lee A, Jia F, Hu S, Cherry AM, Robbins RC, Longaker MT, Wu JC. Feeder-free derivation of induced pluripotent stem cells from adult human adipose stem cells. Proc Natl Acad Sci USA. 2009 Sep 15;106(37):15720-5;Jia F, Wilson KD, Sun N, Gupta DM, Huang M, Li Z, Panetta NJ, Chen ZY, Robbins RC, Kay MA, Longaker MT, Wu JC. A nonviral minicircle vector for deriving human iPS cells Nat Methods. 2010 Mar; 7(3):197-9;K. Turksen et al. (Eds) Induced Pluripotent Stem (iPS) Cells: Methods and Protocols. 2016. Humana Press. ISBN 978-1-4939-3054-8)。この集団は、磁気抗体選別(MACS)または蛍光抗体選別(FACS)を使用する多能性幹細胞選別により評価した場合、90%を超える純粋な多能性幹細胞パーセンテージを含む。
【0055】
開示するワクチン組成物の一態様では、ワクチン組成物である、1用量あたりの与えられるCpGの量は、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mgまたは10mgである。ワクチン組成物の別の態様では、1用量あたりの与えられるiPS細胞数は、約1千万、2千500万、5千万、1億、2億、4億、8億または20億個の細胞である。
【0056】
別の態様では、1用量あたりのCpGの量は、1mgであってもよく、約1千万、2千500万、1億、2億、4億、8億または20億個の細胞の多数のiPS細胞とともに与えるかまたは投与する。がんワクチンに使用する細胞用量(細胞1×106~1×109個の範囲にわたる)は、ワクチンを使用する哺乳動物に対して調整する必要を有し得る。小型の齧歯動物では、ワクチンの有効性は、1用量あたり細胞2×106個の多能性幹細胞に設定した。
【0057】
がんワクチンとしての臨床適用では、投与量は、1用量あたりのCpGの細胞数およびミリグラムにより表す。本明細書において使用する場合、「CpG」の用語は、非メチル化デオキシシチジリルデオキシグアノシンジヌクレオチドモチーフを有する合成免疫調節性オリゴヌクレオチドを指す(Kayraklioglu et al. in Angela Sousa (ed.), DNA Vaccines: Methods and Protocols, Methods in Molecular Biology, vol. 2197, https://doi.org/10.1007/978-1- 0716-0872-2_4, Springer Science+Business Media, LLC, part of Springer Nature 2021;Feher K. Protein Pept Sci 20:1060-1068, 2019.およびCampbell JD Methods Mol. Biol. 1494:15-27, 2017に総説が記載;これらのそれぞれは、この全体を参照により本明細書に組み込む)。多くのこのようなCpGオリゴヌクレオチドは、文献に記載されている。
【0058】
一実施形態では、有効量のCpGを使用する。「有効量」の用語は、本明細書に定義のものであり、哺乳動物においてそのiPS細胞に対する免疫応答を誘導するのにiPS細胞とともに必要とされるCpGの量をも指す。有効量の決定は経験的であり、治療する哺乳動物の種、同時投与するiPS細胞数ならびに投与経路およびスケジュールに依存することが理解され得る。
【0059】
一実施形態では、CpGは、CpG1018、CpG7909、SD-101、CpG10104、CpG55.2、CpG10101、CpG52364、MGN1703およびDV281からなる群から選択される。一実施形態では、使用するCpGは、CpG1018である。
【0060】
別の実施形態では、1用量あたりの与えられるCpGの量は、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mgまたは10mgである。特定の実施形態では、1用量あたりの量は、3mgである。一実施形態では、1用量あたりの与えられるiPS細胞数は、約1千万、2千500万、5千万、1億、2億、4億、8億または20億個の細胞である。特定の実施形態では、1用量あたりの与えられるiPS細胞数は、1億個の細胞である。
【0061】
一実施形態では、iPS細胞およびCpGは、単一剤形により投与する。一実施形態では、iPS細胞およびCpGは、別々に投与するか、または逐次投与する。一実施形態では、iPS細胞およびCpGは、薬学的に許容される溶液により投与し、これは、薬学的に許容される濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合する担体、アジュバント、および他の治療成分を適宜、日常的に含み得る。
【0062】
一実施形態では、iPS細胞およびCpGは、非経口的注射(皮下、皮内、静脈内、非経口的、腹腔内、くも膜下腔内等)、または粘膜投与(鼻腔内、気管内、吸入、および直腸内、膣内等)として投与する。注射は、ボーラスによるかまたは持続的注入であり得る。iPS細胞およびCpGは、マイクロカプセルに包むか、コクリエート状とするか、微細金粒子上にコーティングするか、リポソームに含むか、霧状、エアロゾル状、皮膚への移植のためにペレット状とするか、または皮膚を引っ掻く鋭器上に乾燥させ得る。また、医薬組成物は、粒剤、散剤、錠剤、コーティング錠剤、(マイクロ)カプセル、坐剤、シロップ、乳剤、懸濁剤、クリーム、点滴剤または活性化合物の遅延放出による製剤を含み、このような製剤賦形剤および添加剤ならびに/または補助物質、例えば、崩壊物質、結合物質、コーティング剤、膨張剤、潤滑物質、香味料、甘味料もしくは可溶化物質は、上記のように習慣的に使用する。医薬組成物は、多様な薬物デリバリー系における使用に適する。薬物デリバリーのための現在の方法の簡潔な総説については、参照により本明細書に組み込む、Langer, Science 249:1527-1533, 1990を参照されたい。
【0063】
特定の実施形態では、iPS細胞およびCpGは、皮下ボーラス注射として送達する。
【0064】
患者の治療では、化合物の活性、投与方法、免疫の目的(すなわち、発症予防的または治療的)、障害の性質および重症度、患者の年齢および体重に応じて種々の用量を必要とし得る。所与の用量の投与は、個々の用量単位剤形による単回投与またはいくつかの小用量単位剤形による投与の両方により行うことができる。数週または数カ月を空けた特定の間隔による用量の複数回投与は、抗原特異的応答のブーストに一般的である。
【0065】
特定の実施形態では、iPS細胞およびCpGは、週1回の注射を4回の治療単位として4カ月毎に送達する。
【0066】
一変形形態では、方法は、iPSCに基づくワクチンのインビトロでの生成およびワクチン接種を含み、例えば、レシピエントの皮下に数週連続を含む数週間、例えば、4週連続ワクチン接種する。一変形形態では、ワクチン接種は、少なくとも2週連続、3週連続、4週連続、5週連続、または少なくとも6週連続で週1回実施する。別の変形形態では、ワクチンは、アジュバントとともにiPSCの使用を含み、この場合、アジュバントは、ワクチンに対する免疫応答をブーストまたは増強する免疫学的製剤、例えば、抗体、ペプチドまたは低分子である。
【0067】
一実施形態では、アジュバントは、サポニン製剤、ビロソーム、ウイルス様粒子、腸内細菌リポ多糖(LPS)の非毒性誘導体、免疫刺激性オリゴヌクレオチド(例えば、CpGモチーフを含む免疫刺激性オリゴヌクレオチド)、ミネラル含有組成物、油性乳濁液、ポリマー、ミセル形成アジュバント(例えば、リポソーム)、免疫刺激複合マトリクス(例えば、ISCOMATRIX)、粒子、スクアレン、リン酸、カチオン性リポソーム-DNA複合体(CL DC)、DDA、DNAアジュバント、ガンマ-インスリン、ADPリボシル化毒素、ADPリボシル化毒素の解毒誘導体、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、ムラミルジペプチド、モノホスホリルリピドA(MPL)、ポリIC、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、イミキモド、QS21、アジュバント系AS0、アジュバント系AS02、アジュバント系AS03、MF59(登録商標)、ポリジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン;リポ多糖の誘導体、例えば、モノホスホリルリピドA、ムラミルジペプチド(MDP;Ribi)、スレオニル-ムラミルジペプチド(t-MDP;Ribi);OM-174;コレラ毒素(CT)、およびリーシュマニア伸長因子ならびにアルミニウムまたはアルミニウム塩(例えば、ミョウバン、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム)からなる群から選択される。一変形形態では、アジュバントは、AS101である。他の適するアジュバントとしては、TLRアゴニスト、NODアゴニストおよびリピドDNAアゴニスト複合体が挙げられる。
【0068】
一実施形態では、アジュバントは、iPSC細胞と混合する。一実施形態では、アジュバントは、iPSC細胞とともに単純に注射する。別の実施形態では、アジュバントは、iPSC細胞とともに一定期間インキュベートして、非特異的機構、例えば、飲作用または受容体媒介機構のいずれかによってiPSC細胞にアジュバントが取り込まれるようにする。一変形形態では、インキュベーションは、少なくとも1時間、2時間、6時間、12時間または24時間実施する。一実施形態では、iPSC細胞は、アジュバント中に乳化する。一変形形態では、使用する乳化剤は、水中油、サポニン、スクアレン、QS21、アジュバント系AS0、アジュバント系AS02およびアジュバント系AS03からなる群から選択される。別の実施形態では、アジュバントおよびiPSC細胞は、デリバリー系に組み込む。一変形形態では、デリバリー系は、吸収性マトリクスである。一変形形態では、吸収性マトリクスは、ヒドロゲル、コラーゲンゲル、アルギン酸、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)およびポリカプロラクトンからなる群から選択される。一実施形態では、アジュバントは細胞に共有結合する。一実施形態では、アジュバントはナノ粒子に含まれる。一変形形態では、ナノ粒子は、金、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)およびポリカプロラクトンナノ粒子からなる群から選択される。一変形形態では、ナノ粒子は、iPSC細胞とともに単純に注射する。別の変形形態では、アジュバントは、iPSC細胞とともに一定期間インキュベートして、非特異的機構、例えば、飲作用または受容体媒介機構のいずれかによってiPSC細胞にナノ粒子が取り込まれるようにする。一変形形態では、インキュベーションは、少なくとも1時間、2時間、6時間、12時間または24時間実施する。一変形形態では、ナノ粒子はiPSCに共有結合する。
【0069】
一実施形態では、多能性幹細胞は遺伝子改変しない。一実施形態では、多能性幹細胞は、当技術分野において公知の標準的方法を使用して遺伝子改変する。多能性幹細胞への遺伝子のデリバリーは、例えば、制限されないが、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびセンダイウイルスベクターを含むウイルスベクターにより達成することができる。また、多能性幹細胞への遺伝子のデリバリーは、DNAプラスミド、DNAミニサークルまたはRNAの細胞へのデリバリーにより達成することができる。このデリバリー方法は、エレクトロポレーション、ナノ粒子デリバリーまたは脂質の使用ならびに当技術分野において公知の他の手段により達成することができる。
【0070】
一実施形態では、多能性幹細胞は、遺伝子改変せずに、1つまたは複数の免疫細胞結合タンパク質(例えば、ICAM1、LFA-1、LFA-3、CD80、CD81、CD28、ICOS、4-lBB、抗DEC-205抗体、抗CLEC9A(DNGR)抗体、抗DCIR-2抗体、抗DECTIN抗体、抗ASGPR抗体、抗マンノース受容体抗体、抗CLEC12(DCAL-2)抗体またはこれらの組合せ)を発現させる。別の実施形態では、多能性幹細胞は、1つまたは複数の免疫細胞結合タンパク質(例えば、ICAM1、LFA-1、LFA-3、CD80、CD81、CD28、ICOS、4-lBB、抗DEC-205抗体、抗CLEC9A(DNGR)抗体、抗DCIR-2抗体、抗DECTIN抗体、抗ASGPR抗体、抗マンノース受容体抗体、抗CLEC12(DCAL-2)抗体またはこれらの組合せ)を発現するように遺伝子改変する。一変形形態では、多能性幹細胞は、CD28およびCD80を発現するように遺伝子改変する。
【0071】
別の実施形態では、免疫細胞結合タンパク質は、抗原提示細胞における抗原交差提示を向上させる。抗原提示細胞における交差提示のレベルは、制限されないが、フローサイトメトリーによる樹状細胞上のMHCタンパク質上のペプチドの発現の測定、インビトロでの交差提示樹状細胞により活性化されたT細胞レベルの測定およびインビボでの細胞傷害性T細胞活性化の測定を含む当技術分野において公知の方法により決定することができる。
【0072】
一実施形態では、多能性幹細胞は、遺伝子改変せずに、1つまたは複数のサイトカイン(例えば、XCR1、CCL3、CCL4、CCL5、CCL20、CCL25およびFLT3L、またはこれらの組合せ)を発現させる。別の実施形態では、多能性幹細胞は、CCL3およびFLT3Lを発現するように改変する。別の変形形態では、iPSCは、GM-CSF、INFアルファ、INFベータ、IL-2、IL-12、IL-15およびIL-21、またはこれらの組合せを含む群から選択されるタンパク質を分泌するように遺伝子改変する。別の実施形態では、同種異系ワクチンはIL-15を発現する。別の変形形態では、iPSCは、gp96、hsp90、hsp70、CD91、カルレティキュリンおよびLOX-1を含む群から選択されるタンパク質を発現するように遺伝子改変する。一実施形態では、iPSCは、hsp70を発現するように遺伝子改変する。別の変形形態では、自家または同種異系ワクチンは、B7、OX40、CD28、CD40L、TLR4、CD70、MHCクラスI、MHCクラスIIおよびOX40Lを含む群から選択される細胞表面タンパク質を発現するように遺伝子改変する。別の実施形態では、iPSCは、OX40を発現するように改変する。別の実施形態では、iPSCは、コネキシン43を発現するように改変する。
【0073】
一実施形態では、この遺伝子改変タンパク質の発現レベルは、免疫細胞の走化性または活性化が実証されるように調整する。一変形形態では、使用するプロモーターの強度は、所望の発現レベルが得られるように調整する。別の変形形態では、発現する遺伝子のコピー数は、所望の発現レベルが得られるように調整する。別の変形形態では、ワクチンにおけるトランスフェクトした多能性幹細胞の数は、所望の発現レベルが得られるように調整する。免疫細胞の走化性は、制限されないが、ボイデンチャンバーによるインビトロでのアッセイおよびワクチン接種部位の免疫浸潤物を調べるインビボでのアッセイを含む当技術分野において公知の方法により測定することができる。免疫細胞の活性化は、制限されないが、フローサイトメトリーもしくは免疫組織染色を使用する細胞上の抗原レベルの測定、エリスポットによる活性化免疫細胞数の測定、細胞傷害性アッセイによる活性化免疫細胞数の測定または当技術分野において公知の他の手段を含む当技術分野において公知の方法により測定することができる。
【0074】
別の変形形態では、自家または同種異系ワクチンは、阻害性RNAを含むように遺伝子改変する。一変形形態では、阻害性RNAは、アンチセンスRNA、siRNA、shRNA、miRNA、lncRNA、pri-miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびpre-miRNAからなる群から選択される。一変形形態では、阻害性RNAは、MHCクラスI、MHCクラスII、ベータ2ミクログロブリンおよびLAMPからなる群から選択される遺伝子の発現を阻害する。一実施形態では、阻害性RNAは、ベータ2ミクログロブリンを阻害する。一変形形態では、阻害性RNAは、PD-1、PDL-1、PDL-2、Nodal、サイトカインシグナル伝達1(SOCSl)、IL-10、IL-l0R、TGF-βおよびTGF-βからなる群から選択される遺伝子の発現を阻害する。別の変形形態では、阻害性RNAは、TGF-βの発現を阻害する。一変形形態では、阻害性RNAは、iPSCワクチンを取り込む抗原提示細胞におけるこのような遺伝子の1つまたは複数の発現を阻害するのに十分に高い濃度で発現する。当業者は、阻害性RNA以外の方法、例えば、CRISPRを含む方法を使用して、自家または同種異系ワクチンにおける特定の遺伝子の発現を阻害可能であることが理解される。
【0075】
一実施形態では、同種異系ワクチンは、ベータ2ミクログロブリンおよびHLA-DRの遺伝子を欠失させるためにCRISPRを使用して開発する。発明者らは驚くべきことに、このような遺伝子の存在は、目的のがん関連遺伝子に焦点が置かれるのではなく免疫系が同種異系抗原を第1に攻撃するように方向づけることを見出した。特定の理論に拘束されることは意図しないが、発明者らは、ベータ2ミクログロブリンおよびHLA-DRを欠失させると、レシピエントの免疫系が交差提示抗原に第1に応答するように強制され、これによりがんに対する免疫応答の誘導において有効な同種異系産物が生成されることを見出した。
【0076】
別の態様では、自家または同種異系ワクチンは、低分子薬と組み合わせて投与する。一実施形態では、この薬物は、HDAC阻害物質、ブロモドメイン阻害物質、Vps34キナーゼ阻害物質、PRMT5阻害物質、オートファジー阻害物質、血管新生阻害物質、血管破壊物質、STING経路の活性化物質およびToll受容体経路の活性化物質からなる群から選択される。別の変形形態では、低分子薬は、STINGの活性化物質に加えてToll受容体経路の活性化物質である。
【0077】
一変形形態では、HDAC阻害物質は、バルプロ酸、ギビノスタット、ベリノスタット、エンチノスタット、モセチノスタット、プラクチノスタット、シダミド、キシノスタット、アベキシノスタット、ボリノスタット、ロミデプシン、パノビノスタットおよびベリノスタットからなる群から選択される。別の変形形態では、HDAC阻害物質は、ボリノスタットである。
【0078】
一変形形態では、BET阻害物質は、I-BET151(GSK1210151A)、I-BET762(GSK525762)、OTX-015、TEN-010、CPI-203およびCPI-0610からなる群から選択される。一変形形態では、BET阻害物質は、CPI-0610である。
【0079】
一変形形態では、Vps34キナーゼ阻害物質は、SB02024およびSAR405からなる群から選択される。別の変形形態では、PRMT5阻害物質は、GSK3326595である。一変形形態では、オートファジー阻害物質は、3-メチルアデニン、バフィロマイシンA1、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、N-2--(lH-ベンズイミダゾール-6-イル)-N-4--(5-シクロブチル-lH-ピラゾール-3-イル)キナゾリン-2,4-ジアミン、MRT68921、MRT67307、SBI-0206965、ULKl00、ULK101およびSB02024からなる群から選択される。一変形形態では、オートファジー阻害物質は、SB02024である。
【0080】
一変形形態では、血管新生阻害物質は、アキシチニブ、ベバシズマブ、カボサンチニブ、エベロリムス、レナリドミド、レンバチニブメシル酸、パゾパニブ、レゴラフェニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、サリドマイド、バンデタニブおよびラムシルマブからなる群から選択される。別の変形形態では、血管新生阻害物質は、ソラフェニブである。
【0081】
一変形形態では、血管破壊物質は、コンブレタスタチン、AVE8062、ZD6126、ABT-571、MN-029、CKD516、OXi8006、5,6-ジメチルキサンテノン4-酢酸、コンブレタスタチンA-4リン酸、ZD6126、Oxi4503およびドラタスタチン誘導体TZT-1027からなる群から選択される。
【0082】
一変形形態では、STING活性化物質は、ADU-S100、MK-1454、MK-2118、BMS-986301、SR-717、GSK3745417、SB-11285、IMSA-101、c-di-GMP、c-di-AMPおよびcGAMPからなる群から選択される。一変形形態では、STING活性化物質は、SR-717である。
【0083】
一変形形態では、Toll経路活性化物質は、ジアシルリポペプチド、トリアシルリポペプチド、フラゲリン、ポリI:C、ヘキサ-アセチル化リピドA、モノホスホリルリピドA、ガーディキモド、イミキモドおよびR848からなる群から選択される。別の変形形態では、Toll経路活性化物質は、イミキモドである。
【0084】
別の変形形態では、自家または同種異系ワクチンは、抗CD47、リツキシマブ、セツキシマブ、ダラツムマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、ペルツズマブ、パニツムマブ、ラムシルマブ、ネシツムマブおよびブリナツモマブからなる群から選択される抗体と同時投与する。一変形形態では、自家または同種異系ワクチンは、ブリナツモマブと同時投与する。
【0085】
別の変形形態では、自家または同種異系ワクチンは、イブルチニブ、アカラブルチニブおよびガルニセリチブからなる群から選択される低分子薬と同時投与する。別の変形形態では、自家または同種異系ワクチンは、イブルチニブと同時投与する。
【0086】
一変形形態では、低分子薬およびiPSC細胞は、デリバリー系に組み込む。一変形形態では、デリバリー系は、吸収性マトリクスである。一変形形態では、吸収性マトリクスは、ヒドロゲル、コラーゲンゲル、アルギン酸、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)およびポリカプロラクトンからなる群から選択される。一実施形態では、低分子薬はナノ粒子に含まれる。一変形形態では、ナノ粒子は、金、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)およびポリカプロラクトンナノ粒子からなる群から選択される。一変形形態では、ナノ粒子は、iPSC細胞とともに注射する。別の変形形態では、アジュバントは、iPSC細胞とともに一定期間インキュベートして、非特異的機構、例えば、飲作用または受容体媒介機構のいずれかによってiPSC細胞にナノ粒子が取り込まれるようにする。一変形形態では、インキュベーションは、少なくとも1時間、2時間、6時間、12時間または24時間実施する。一変形形態では、ナノ粒子はiPSCに共有結合する。
【0087】
一変形形態では、低分子薬は、iPSCワクチンとともに経口的、非経口的または静脈内に与える。別の変形形態では、低分子薬は、ワクチンの4日前、ワクチンの3日前、ワクチンの2日前、ワクチンの1日前、ワクチンと同時、ワクチンの1日後、ワクチンの3日後、ワクチンの4日後またはワクチン投与の前、中および後の日数の任意の組合せに与える。
【0088】
一態様では、多能性幹細胞は、特定の種類の細胞死を起こすように誘導する。発明者らは驚くべきことに、所望の抗がん免疫を誘発するのに注射時点で多能性幹細胞が生存可能である必要はないことを発見した。
【0089】
一実施形態では、iPCは、細胞表面上のカルレティキュリンの発現を誘導するように殺傷される。
【0090】
一実施形態では、オキサリプラチンまたはドキソルビシンのインビトロでの投与により殺傷され、カルレティキュリンを発現するように誘導された後、アジュバントと混合するiPSCは、特に強力である。
【0091】
一変形形態では、細胞死誘導剤は、グルタミン酸、ソラフェニブ、ML162、FIN56、FINO2、エラスチン、スルファジン、RSL3、Ki8751、SGX-523、AZD7762、KW-2449、NVP-TAE684、AZD4547、TG-101348、ブレオマイシン、アキシチニブ、サイトカラシンB、ダサチニブ、SNX-2112、セマガセスタット、CHIR-99021、B02、オラパリブ、シルミタセルチブ、タネスピマイシン、ニンテダニブ、ML031、カネルチニブ、SMER-3、BCL-LZH-4、SN-38、タマチニブ、ML334ジアステレオマー、これらの類似体、塩または誘導体を含む群から選択される。別の変形形態では、細胞死誘導剤は、ブレオマイシンである。
【0092】
一変形形態では、細胞死誘導剤は、iPC細胞とともに1時間、2時間、6時間、12時間または24時間インキュベートする。別の変形形態では、低分子薬は、iPSC細胞とともに2時間インキュベートし、細胞を回収して凍結させる。一変形形態では、細胞死誘導剤は、iPSCワクチンとともに経口的、非経口的または静脈内に与える。一変形形態では、細胞死誘導剤は、ワクチンの4日前、ワクチンの3日前、ワクチンの2日前、ワクチンの1日前、ワクチンと同時、ワクチンの1日後、ワクチンの3日後、ワクチンの4日後またはワクチン投与の前、中および後の日数の任意の組合せに与える。
【0093】
別の実施形態では、ワクチンは樹状細胞で構成され、これは、治療する患者から得られ、組織培養により増殖させ、多能性幹細胞由来の抗原をパルス適用した後、患者に戻し送達する。この樹状細胞は、全多能性幹細胞、多能性幹細胞の抽出物、多能性幹細胞由来のmRNA、多能性幹細胞由来のcDNAまたは多能性幹細胞由来のタンパク質もしくはペプチドをパルス適用することができる。
【0094】
別の実施形態では、多能性幹細胞がんワクチンによる哺乳動物のワクチン接種のための方法を提供し、この方法は、1)胚性源由来の、または2)レシピエント由来の体細胞のリプログラミングによる、哺乳動物多能性幹細胞を導入することと、レシピエントに多能性幹細胞を供することとを含む。別の態様では、哺乳動物細胞は、未分化多能性細胞である。
【0095】
この方法の別の態様では、多能性幹細胞は、患者の腫瘍細胞から遺伝子改変する。腫瘍由来の任意の細胞型を使用可能であるが、幹細胞では、腫瘍の集団を使用し得る。腫瘍由来の幹細胞集団は、当技術分野において公知の多くの方法により単離することができる。
【0096】
別の実施形態では、多能性幹細胞は、正常細胞から遺伝子改変して患者の腫瘍細胞と融合させる。細胞の融合は、当技術分野において公知の方法、例えば、電気的細胞融合、ポリエチレングリコール細胞融合、センダイウイルス誘導細胞融合および適宜、熱制御プラズモニクスにより達成することができる。
【0097】
一実施形態では、ワクチンは、iPSCの増殖を防ぐためにワクチン接種前に放射線照射する。一変形形態では、増殖は、放射線照射の代わりにDNAの架橋剤へのiPSCの曝露により防ぐ。一変形形態では、架橋剤は、ナイトロジェンマスタード、シスプラチン、BCNU、ソラレンおよびマイトマイシンCを含む群から選択される。使用する架橋剤の量は、iPSCが細胞分裂を起こすのを防ぐのに十分な量である。さらなるDNA架橋剤は、細胞分裂を阻害し、iPSCのワクチン特性に干渉しないという条件で使用することができる。この方法の一変形形態では、ワクチンは、4週間以下、例えば、3週間、2週間または約1週間の期間、皮下に注射する。別の変形形態では、ワクチン接種は、週1回実施する。別の変形形態では、ワクチン接種は、毎日、週に数回、例えば、週に2回もしくは3回、または2週間毎に実施してもよく、期間は、2、3、4、5、6、7、もしくは8週間、またはこれ以上であり得る。
【0098】
治療有効量のワクチンは、がんに対するインビボでの免疫応答を、本出願のワクチンを投与しない場合の作用に対して少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%またはこれ以上ブーストまたは増強することができる。T細胞応答の測定に使用するアッセイは、遅延型過敏症検査、主要組織適合複合四量体ペプチドを使用するフローサイトメトリー、リンパ球増殖アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素結合免疫スポットアッセイ(エリスポット)、サイトカインフローサイトメトリー、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)アッセイ、CTL前駆細胞発生頻度アッセイ、T細胞増殖アッセイ、カルボキシフルオセイン二酢酸サクシニミジルエステルアッセイ、多機能性T細胞アッセイ、定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によるサイトカインmRNAの測定、RNAseqおよび限界希釈分析を含むが、これらに制限されない。
【0099】
腫瘍生検の分析は、がんワクチンに対する免疫応答を監視するために使用することができる。この生検により、免疫細胞の腫瘍への浸潤について評価することができる。免疫細胞は、免疫組織染色、フローサイトメトリー、Q-TOF、エリスポット、RNAseq、または当技術分野において公知のもしくは上記の方法のいずれかにより評価することができる。
【0100】
また、がんワクチンに対する応答は、免疫細胞上の細胞表面抗原の発現により評価することができる。CD69、Ox40、HLA-DRおよびCD154のような抗原の発現上昇ならびに/またはCD25、PD-LlおよびTIGITのような抗原の発現低下は、腫瘍内または循環中のいずれかにおける免疫細胞応答の活性化を測定するために使用することができる。
【0101】
免疫応答を評価する他のアッセイとしては、遺伝子発現プロファイリング、複数の抗原に対する抗体応答を一度に評価するタンパク質マイクロアレイ、ルシフェラーゼ免疫沈降、リンパ球免疫監視のために単一細胞レベルで免疫系における複数の細胞内シグナル伝達分子を測定するためのホスホフロー(phosphoflow)、および血清中の抗体免疫を監視するための表面プラズモン共鳴バイオセンサーが挙げられるが、これらに制限されない。
【0102】
有効性の臨床徴候は、制限されないが、MRIまたはPETスキャンを含むイメージング技術による腫瘍サイズの低減、制限されないが、PSA、AFP、CA19-9、CA-125、CEAを含むバイオマーカー、循環腫瘍細胞、循環miRNAならびに制限されないが、罹患率および脂肪率を含む臨床パラメータの低減を含むが、これらに制限されない。
【0103】
この方法の一変形形態では、ワクチン接種により腫瘍細胞の破壊が生じる。このような腫瘍細胞は、ワクチン活性のバイオマーカーとして検出および作用することが可能な低分子、ペプチド、タンパク質または遺伝物質を循環中に放出する。ワクチンにより腫瘍細胞を殺傷する免疫応答が誘導されると、バイオマーカーは血液、血漿、血清、尿、糞便物質または他の体液において上昇し得る。また、それらを産生する腫瘍細胞の量が低減すると、バイオマーカーは経時的に低減し得る。
【0104】
一実施形態では、バイオマーカーは、制限されないが、PCR、ELISA、フローサイトメトリーまたは分析化学を含む当技術分野において公知の方法により検出する。
【0105】
一実施形態では、タンパク質バイオマーカーは、乳酸デヒドロゲナーゼ、α1-酸性糖タンパク質、フコシル化α1-酸性糖タンパク質、PSA、PSA-3、CEA、CA19-9、CA15-3、CA27.29、NMP-22、カルシトニン、サイログロブリン、HCG-β、アルファ-フェトプロテイン、HER-2、MAGEA3、NY-ESO-1、PMELおよびIGFBP2を含む群から選択される。一実施形態では、バイオマーカーはセルフリーDNAである。一実施形態では、バイオマーカーはlncRNAまたはmiRNAである。一実施形態では、miRNAは、mi-24、mi-320a、mi-423-5q、miR-21-5p、miR-20a-5p、miR-141-3p、miR-145-5p、miR-155-5p、ならびにmiR-223-3p、miR-23a-3p、miR-27a-3p、miR-142-5p、miR-376c-3p、miR-642b-3p、miR-1202-5p、miR-1207-5p、miR-1225-5p、miR-4270-5p、miR-1825-3pおよびmiR-4281-3pを含む群から選択される。
【0106】
別の実施形態では、バイオマーカーは、腫瘍内で発現する。一変形形態では、バイオマーカーは、腫瘍遺伝子変異量(TMB)の尺度である。別の変形形態では、バイオマーカーは、PDL-1、PDL-2、TGFベータ、VEGF、CXCL12、CCL18、ARGl、iNOS、IL-10、IL-35およびガレクチン1を含む群から選択される1つまたは複数のタンパク質の腫瘍発現である。
【0107】
この方法の別の変形形態では、ワクチンは、がんの発症前に家族歴または遺伝的異常(BRCAl、BRCA2、APC、FAP、HNCC、TP53、Pl6およびPTENの突然変異を含むが、これらに制限されない)を有する患者に発症予防的に投与する。この方法の別の変形形態では、ワクチンは、がんの発症前に健常な個体に発症予防的に投与する。
【0108】
別の実施形態では、胚性源から得られるかまたは哺乳動物由来の体細胞のリプログラミングにより得られる有効量の哺乳動物多能性幹細胞、およびワクチンに対する免疫応答をブーストするアジュバントまたは免疫学的製剤を適宜含む、熱的に安定なワクチン組成物を提供する。
【0109】
一変形形態では、熱的に安定なワクチンの形成前に、オキサリプラチンまたはドキソルビシンのインビトロでの投与により殺傷され、カルレティキュリンを発現するように誘導された後、アジュバントと混合するiPSCは、特に強力である。一変形形態では、細胞死誘導剤は、グルタミン酸、ソラフェニブ、ML162、FIN56、FIN02、エラスチン、スルファジン、RSL3、Ki8751、SGX-523、AZD7762、KW-2449、NVP-TAE684、AZD4547、TG-101348、ブレオマイシンA2、アキシチニブ、サイトカラシンB、ダサチニブ、SNX-2112、セマガセスタット、CHIR-99021、B02、オラパリブ、シルミタセルチブ、タネスピマイシン、ニンテダニブ、ML031、カネルチニブ、SMER-3、BCL-LZH-4、SN-38、タマチニブ、ML334ジアステレオマー、これらの類似体、塩または誘導体を含む群から選択される。
【0110】
ワクチン組成物の別の態様では、多能性幹細胞は、人工多能性細胞(iPSC)である。ワクチン組成物の別の態様では、哺乳動物多能性幹細胞は、未分化多能性幹細胞である。ワクチン組成物の別の態様では、多能性幹細胞は、線維芽細胞、ケラチノサイト、末梢血細胞および腎臓上皮細胞からなる群から製造される。ワクチン組成物の別の態様では、多能性幹細胞は、最適濃度および期間のオキサリプラチンまたはドキソルビシンへの曝露により殺傷して、カルレティキュリンの発現を誘導する。一変形形態では、細胞死誘導剤は、グルタミン酸、ソラフェニブ、ML162、FIN56、FINO2、エラスチン、スルファジン、RSL3、Ki8751、SGX-523、AZD7762、KW-2449、NVP-TAE684、AZD4547、TG-101348、ブレオマイシンA2、アキシチニブ、サイトカラシンB、ダサチニブ、SNX-2112、セマガセスタット、CHIR-99021、B02、オラパリブ、シルミタセルチブ、タネスピマイシン、ニンテダニブ、ML031、カネルチニブ、SMER-3、BCL-LZH-4、SN-38、タマチニブ、ML334ジアステレオマー、これらの類似体、塩または誘導体を含む群から選択される。
【0111】
一変形形態では、ワクチンによる患者への投与を含む、患者におけるがんの治療における使用のための製剤であって、ワクチンが、胚性源から得られるかまたは患者由来の体細胞のリプログラミングにより得られる有効量の哺乳動物多能性幹細胞を含み、ワクチン接種が、哺乳動物多能性幹細胞を必要とする患者に投与する工程を含む、製剤を本出願により開示する。
【0112】
一実施形態では、患者におけるがんの治療における使用のためのワクチン接種であって、ワクチンが、胚性源から得られるかもしくは患者由来の体細胞のリプログラミングにより得られる有効量の哺乳動物多能性幹細胞、またはこの断片を含み、ワクチン接種が、哺乳動物多能性幹細胞を必要とする患者に投与する工程を含む、ワクチン接種を提供する。別の変形形態では、ワクチンは、胚性源から得られるかまたは哺乳動物由来の体細胞のリプログラミングにより得られる有効量の哺乳動物多能性幹細胞、およびワクチンに対する免疫応答をブーストするアジュバントまたは免疫学的製剤を含む、熱的に安定なワクチン組成物である。別の態様では、ワクチンは、胚性源から得られるかまたは哺乳動物由来の体細胞のリプログラミングにより得られる哺乳動物多能性幹細胞、および最適濃度および期間のオキサリプラチンまたはドキソルビシンへの曝露により殺傷されてカルレティキュリンの発現が誘導される哺乳動物多能性幹細胞の組合せ、ならびに免疫応答をブーストするアジュバントまたは免疫学的製剤である。
【0113】
実施例
次の例は、当業者に本発明を利用する方法についての完全な開示および説明を提供するために提示し、発明者らが彼らの発明であると考えるものの範囲を制限することは意図せず、以下の実験が実施した実験のすべてであり、唯一であるとすることをも意図しない。使用する数(例えば、量、温度等)に関する精度を確実とする試みがなされているが、一部の実験誤差および偏差は説明されなければならない。他に指示しない限り、部分は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度(℃)であり、圧力は気圧かまたは気圧付近である。
【0114】
本発明者により見出されたかまたは提唱された特定の実施形態に関して、本発明の実行に好ましい方法を含むように本発明を記載している。本開示を踏まえれば、意図する本発明の範囲から逸脱することなく、例証する特定の実施形態において多数の修飾および変更を行い得ることが当業者に理解される。例えば、コドンの冗長性のため、タンパク質配列に影響することなく、基礎をなすDNA配列における変更を行い得る。その上、生物学的機能等価性を考慮することにより、種類または量による生物学的作用に影響することなく、タンパク質構造における変更を行い得る。このようなすべての修飾は、添付の特許請求の範囲内に含むことを意図する。
【0115】
本出願の方法の実行に有用な一般的技術のさらなる精密化のため、医師は、細胞生物学、組織培養および発生学における標準的テキストおよび総説を参照することができる。組織培養およびESCに関しては、Teratocarcinomas and embryonic stem cells: A practical approach (E. J. Robertson, ed., IRL Press Ltd. 1987);Guide to Techniques in Mouse Development (P. M. Wasserman et al. eds., Academic Press 1993);Embryonic Stem Cell Differentiation in Vitro (M. V. Wiles, Meth.
Enzymol. 225:900, 1993);Properties and uses of Embryonic Stem Cells: Prospects for Application to Human Biology and Gene Therapy (P. D. Rathjen et al., Reprod. Fertil. Dev. 10:31, 1998)を参照されたい。
【0116】
分子および細胞生物化学における一般的方法は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed. (Sambrook et al., Harbor Laboratory Press 2001);Short Protocols in Molecular Biology, 4th Ed. (Ausubel et al. eds., John Wiley & Sons 1999);Protein Methods (Bollag et al., John Wiley & Sons 1996);Nonviral Vectors for Gene Therapy (Wagner et al. eds., Academic Press 1999);Viral Vectors (Kaplift & Loewy eds., Academic Press 1995);Immunology Methods Manual (I. Lefkovits ed., Academic Press 1997);およびCell and Tissue Culture: Laboratory Procedures in Biotechnology (Doyle & Griffiths, John Wiley & Sons 1998)のような標準的テキストに見出すことができる。本開示において言及する試薬、クローニングベクター、および遺伝子操作のためのキットは、商業的供給業者、例えば、BioRad社、TakaRa社、Thermofisher社、Sigma-Aldrich社およびQiagen社から入手可能である。
[実施例1]
【0117】
shRNAを使用する同種異系iPSCワクチン
特定の一態様では、本発明者らは、自家iPSCワクチンが同種異系iPSCワクチンよりも強力であることを見出した。自家およびiPSCワクチンの間の主な差は、主要組織適合性座位(MHCクラスIおよびMHCクラスII)の差である。MHC不適合により、強い免疫応答が誘発され得る。例えば、マウスでは、MHC座位が適合する皮膚移植片は、およそ1週間以内に急性的に拒絶されるが、主要組織適合性座位が不適合である皮膚移植片は、拒絶にはるかに多くの時間がかかり、1カ月超にわたってインタクトのままであり得る。
【0118】
iPSCワクチンの場合では、MHCの差に対する圧倒的な免疫応答により、目的のがん関連抗原に対する免疫応答の発生が取り除かれる。したがって、この場合、同種異系ワクチンに使用するiPCにおいてMHC抗原を除去することが望ましい。
【0119】
一方法では、siRNAまたはshRNAを使用してベータ2-ミクログロブリンの発現を抑制する。β-2-ミクログロブリンshRNAプラスミドを含むレンチウイルス粒子を商業的供給源、SantaCruzBiotechnology社(SantaCruz,CA)から得、製造者の指示に従って使用する。簡潔には、ウイルス感染の24時間前に、感染の日(2日目)に約50%コンフルエントとなるような濃度でiPC細胞を12ウェルの組織培養プレートに播種する。2日目に、iPC培地をポリブレン(登録商標)(sc-134220)とともにおよそ5μg/mlの最終濃度濃度で調製する(ポリブレンのロットに応じ、各ロットは毒性を誘導しない最適濃度について検査した)。iPC培養プレート内の培地を除去し、1ウェルあたりポリブレン/培地混合物1mlと交換する(12ウェルプレートでは)。レンチウイルス粒子を解凍し、レンチウイルスのロットに応じた濃度で細胞に加える(各ロットはインキュベーション前に最大の遺伝子阻害がもたらされる最適粒子濃度について検査した)。粒子は、細胞とともに一晩インキュベートし、次いで、洗浄し、新鮮な培地をプレートに加える。
【0120】
shRNAの安定な発現を得るために、ピューロマイシン選択を使用する。ピューロマイシンを、非トランスフェクト細胞を殺傷しない最高濃度、通常、2~10μg/mLで培養物に加える。培養をピューロマイシンの存在下で継続し、ピューロマイシン耐性クローンを選定し、ピューロマイシンの存在下でワクチンに使用する所望の細胞数に増殖させる。
【0121】
shRNAの有効性は、ベータ2ミクログロブリンのPCRまたはHLAクラスIの抗体を使用する細胞のFACS分析により、当技術分野において公知の標準的方法を使用して評価することができる。ベータ2ミクログロブリンのノックアウトは、HLAクラスIの発現を阻害するのに足るものである。類似の方法を使用し、HLA-DRのような個々のクラスIIメンバーに対して向けられるshRNAを使用してHLAクラスIIの発現を阻害することもできる。
[実施例2]
【0122】
CRISPRを使用する同種異系iPSCワクチン
shRNA使用の代替は、CRISPR技術を使用することである。ベータ2ミクログロブリンのコード配列の5’末端周辺に設計した2つの遺伝子特異的gRNAを、商業的供給業者、例えば、Origene社(Rockville,MD)のCRISPRノックアウトキットの一部により得、製造者の指示に従って使用する。
【0123】
簡潔には、トランスフェクションのおよそ18~24時間前に、プレートに細胞約3×105個の接着したiPSC細胞を6ウェルプレートの各ウェルの培養培地2mlに播種し、翌日50~70%のコンフルエンスを得るように正確な濃度に調整する。gRNAベクターのそれぞれ1μgをOpti-MEM I(LifeTechnologies社)250μLにより希釈し、穏やかにボルテックスする。次いで、ドナーDNA1μgを同一のOpti-MEM I 250μLに希釈し、穏やかにボルテックスする。ターボフェクチン(Turbofectin)8.0 6μLを希釈したDNAに加え(逆順序ではなく)、次いで、穏やかにピペットで滴下して十分に混合する(初回滴定を行って、比率3:1のターボフェクチン8.0対DNAが最適であるかどうか、または別の比率でトランスフェクション効率が向上するかどうかを確かめる)。次いで、混合物を室温で15分間インキュベートした後、培地は交換せずに細胞に滴下する。プレートを前後左右に穏やかに振動させて複合物を均等に分布させ、細胞を5%CO2のインキュベーターでインキュベートする。
【0124】
トランスフェクションの48時間後に細胞を1:10に分け、さらに3日間増殖させる。細胞を再び1:10に分け、プロセスを反復して細胞を合計2~4回分ける。
【0125】
CRISPRノックアウトが成功した細胞を選択するために、ピューロマイシン選択を使用する。非トランスフェクト細胞を殺傷しない最高濃度、通常、2~10μg/mLでピューロマイシンを培養物に加える。培養をピューロマイシンの存在下で継続し、ピューロマイシン耐性クローンを選定する。次いで、このようなクローンを、必要に応じてピューロマイシンの非存在下で増殖させることができる。
【0126】
CRISPRノックアウトの有効性は、ベータ2ミクログロブリンのPCRまたはHLAクラスIの抗体を使用する細胞のFACS分析により、当技術分野において公知の標準的方法を使用して評価することができる。ベータ2ミクログロブリンのノックアウトは、HLAクラスIの発現を阻害するのに足るものである。類似の方法を使用し、HLA-DRのような個々のクラスIIメンバーに対して向けられるgRNAをベクター使用してHLAクラスIIの発現を阻害することもできる。
[実施例3]
【0127】
増強同種異系ワクチン
iPSC細胞株は、実施例2のようにベータ2ミクログロブリンまたはクラスII HLA抗原を発現しないように遺伝子改変する。次いで、細胞にCD28およびCD80発現カセットを含むアデノ随伴ウイルス粒子(VectorBioLabs社、MalvernPA)を製造者の指示に従って感染させる。簡潔には、ウイルスストックを解凍し、所望の量のウイルスを増殖培地に加えて所望の感染多重度(MOI)を達成することによりウイルス含有培地を調製する。これは、次の式:使用するAAV GC粒子=MOI(感染多重度)*感染させる細胞数を使用して算出する。最適MOIは、2,000~500,000の範囲にわたるMOIを有する同一供給業者の緑色蛍光タンパク質(GFP)発現AAVを使用し、フローサイトメトリーにより最適GFP発現を探って決定する。CD28およびCD80発現カセットを含むAAVウイルスを感染させるために、細胞培養培地を除去し、AAV含有培地を細胞培養物に加え、6時間インキュベートする。iPS細胞上のCD28およびCD80のレベルは、フローサイトメトリーを使用して監視する。
[実施例4]
【0128】
がん細胞およびiPSの融合
iPSCワクチンは、がん細胞と共通の多数の胚性抗原を提示する。しかし、がん細胞は、個々のがんそれぞれに独特の体細胞突然変異により生じる抗原をも含み得る。iPSCの抗原呈示を拡大するために、発明者らは、個体のがん細胞をiPSCと融合させることにより、このような抗原のさらなる発現が可能となることを発見した。
【0129】
腫瘍生検由来の組織を、当技術分野において公知の手段によりコラゲナーゼを使用して解離させる。簡潔には、外科的切除による腫瘍組織を組織培養培地に配置し、メスで刻んで約1~3mm3の小片を得る。組織の量に応じて、刻んだ組織を15mLまたは50mLの円錐型チューブ内に移し、チューブを100×gにより室温で5分間遠心分離する。コラゲナーゼIIを含む溶液を加えて1mg/mLの最終濃度に達成し、DNaseIの溶液を加えて100Kunitz/mLの最終濃度を達成する(最終濃度は酵素のロットに応じて調整する)。
【0130】
混合物をフラスコに配置し、これを振動するプラットフォーム上に配置して、組織が可視的に解離するまで室温で振動させる。
【0131】
生じた細胞懸濁液を15mLまたは50mLの円錐型チューブに配置し、無血清組織培養培地で3回洗浄する。細胞を無血清組織培養培地に再懸濁させ、計数する。無血清組織培養培地によるiPS細胞の細胞懸濁液をiPS細胞1細胞毎にがん細胞2細胞の比率で加える。細胞を無血清組織培養培地中で100×gにより室温で5分間遠心分離する。上清を除去し、チューブの底を軽くたたくことにより細胞ペレットを穏やかに再懸濁させる。融合は、37℃に予め温めた50%のPEG1500 1mlを、1mlのピペットを使用して1分間にわたってペレットに緩徐に加え、さらに2分間穏やかに振盪させることにより細胞を絶えず混合することによって実施する。穏やかに振盪させることにより細胞を連続的に撹拌しながら、37℃に予め温めた培地3mlを3分間にわたって緩徐に加える。次いで、37℃に予め温めた培地10mlを穏やかに加え、細胞をさらに10分間インキュベートし、次いで、100×gにより5分間遠心分離する。次いで、細胞をもう一度洗浄して残留PEGを除去し、注射用に調製するかまたは標準的な凍結保存技術を使用して凍結させる。
【0132】
本明細書に引用する公表文献、書籍、特許出願、および特許を含むすべての参考文献は、各参考文献を参照により組み込むものと個別かつ詳細に示し、この全体を本明細書に記載すると同様に、参照により本明細書に組み込む。
参考文献
【表1】
【0133】
本発明は特定の実施形態および実施例と組み合わせて記載しているが、その技術および本開示を考慮して、詳細に開示する材料および方法の等価物をも本発明に適用可能であり、このような等価物を以下の特許請求の範囲内に含むことを意図することは、当業者に明らかである。
【国際調査報告】