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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】RNA化
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/13 20060101AFI20240730BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240730BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20240730BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20240730BHJP
   A61K 38/16 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
C07K1/13 ZNA
C07K19/00
C12N15/11 Z
C12N15/113 Z
A61K38/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504876
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 EP2022060525
(87)【国際公開番号】W WO2023006264
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/071295
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】301033396
【氏名又は名称】マックス-プランク-ゲゼルシャフト ツール フォーデルング デル ヴィッセンシャフテン エー.ヴェー.
(71)【出願人】
【識別番号】505065504
【氏名又は名称】ウニヴェルジテート ハイデルベルク
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】ヘファー,カタリーナ
(72)【発明者】
【氏名】イェシュケ,アンドレス
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA01
4C084AA06
4C084BA35
4C084BA41
4C084BA44
4C084CA62
4C084DA01
4C084DC01
4C084NA20
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA54
4H045CA40
4H045DA01
4H045DA50
4H045DA75
4H045DA89
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA10
(57)【要約】
本発明は、5'-ニコチンアミドヌクレオ塩基ジヌクレオチド(NND)キャップ核酸配列を融合タンパク質または複合体に取り付けるための方法に関し、該方法は、(a) (i)タグに融合される目的のポリ(ペプチド)を含む異種融合タンパク質または(ii)複合体と、5'-NADキャップ核酸配列およびADP-リボシルトランスフェラーゼ(ART)とを接触させる工程を含み、タンパク質は生理学的条件下でタグと複合体化され、5'-NNDキャップ核酸配列はタグに共有的に取り付けられ、タグは、ARTの認識モチーフを含み、好ましくは(i)アミノ酸モチーフDVRPVRD(配列番号:7)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:7が保存されると仮定すると配列番号:1もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;(ii)アミノ酸モチーフDVRPVRD(配列番号:7)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:7が保存されると仮定すると配列番号:2もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;(iii)アミノ酸モチーフDVRPVRD(配列番号:7)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:7が保存されると仮定すると配列番号:3もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;(iv)アミノ酸モチーフLADGVEGYLRASEASRDRVE(配列番号:8)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:8が保存されると仮定すると配列番号:4もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;(v)アミノ酸モチーフLADGVEGYLRASEASRDRVE(配列番号:8)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:8が保存されると仮定すると配列番号:5もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;または(vi)アミノ酸モチーフLADGVEGYLRASEASRDRVE(配列番号:8)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:8が保存されると仮定すると配列番号:6もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列を含むかまたはそれからなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5'-ニコチンアミドヌクレオ塩基ジヌクレオチド(NND)キャップ核酸配列を、融合タンパク質または複合体に取り付けるための方法であって、該方法は
(a) (i)タグに融合される目的のポリ(ペプチド)を含む異種融合タンパク質、または(ii)複合体と、5'-NNDキャップ核酸配列およびADP-リボシルトランスフェラーゼ(ART)とを接触させる工程を含み、ここでタンパク質は生理学的条件下でタグと複合体化され、5'-NNDキャップ核酸配列はタグに共有的に取り付けられ、
タグは、ARTの認識モチーフを含み、および好ましくはタグは、
(i)アミノ酸モチーフDVRPVRD(配列番号:7)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:7が保存されると仮定すると配列番号:1もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;
(ii)アミノ酸モチーフDVRPVRD(配列番号:7)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:7が保存されると仮定すると配列番号:2もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;
(iii)アミノ酸モチーフDVRPVRD(配列番号:7)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:7が保存されると仮定すると配列番号:3もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;
(iv)アミノ酸モチーフLADGVEGYLRASEASRDRVE(配列番号:8)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:8が保存されると仮定すると配列番号:4もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;
(v)アミノ酸モチーフLADGVEGYLRASEASRDRVE(配列番号:8)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:8が保存されると仮定すると配列番号:5もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;または
(vi)アミノ酸モチーフLADGVEGYLRASEASRDRVE(配列番号:8)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:8が保存されると仮定すると配列番号:6もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列
を含むかまたはそれからなる、方法。
【請求項2】
NNDのヌクレオ塩基が、プリン塩基またはピリミジン塩基であり、好ましくはアデニン、グアニン、シトシン、チミンおよびウラシルから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ARTが、配列番号:9もしくは配列番号:10またはそれに対して少なくとも80%同一である配列を含むかまたはそれからなる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
工程(a)の前に、
(a')請求項1において定義されるタグを目的のポリ(ペプチド)に融合して、タグに融合される目的のポリ(ペプチド)を含む異種融合タンパク質を得る工程、または
(a')請求項1において定義されるタグを目的のポリ(ペプチド)と複合体化する工程
を含む、請求項1~3いずれか記載の方法。
【請求項5】
請求項1において定義されるタグに融合される目的のポリ(ペプチド)または請求項1において定義されるタグと複合体化される目的のポリ(ペプチド)を含む複合体を含む、融合タンパク質。
【請求項6】
核酸配列が、その5'末端でニコチンアミドヌクレオ塩基ジヌクレオチド(NND)を介して請求項1において定義されるタグに、好ましくは該タグの保存されるArgの側鎖に共有的に取り付けられる、請求項5記載の融合タンパク質または複合体。
【請求項7】
請求項1~4いずれか記載の方法により得られる融合タンパク質もしくは複合体および/または請求項5もしくは6記載の融合タンパク質もしくは複合体を含む、組成物、好ましくは医薬組成物または診断組成物。
【請求項8】
核酸配列中の核酸が、RNA、DNA、PNA、モルホリノもしくはLNAまたはそれらの組合せ、および好ましくはRNAである、前記請求項いずれか記載の方法、融合タンパク質、複合体または組成物。
【請求項9】
核酸配列が、アンチセンス分子のsiRNA、shRNAである、前記請求項いずれか記載の方法、融合タンパク質、複合体または組成物。
【請求項10】
核酸配列が、その3'末端で蛍光標識、好ましくはAlexa FluorもしくはCy色素を含むかまたはその3'末端でビオチンを含む、前記請求項いずれか記載の方法、融合タンパク質、複合体または組成物。
【請求項11】
目的のポリ(ペプチド)が、抗体、抗体模倣物、サイトカイン、インターロイキン、膜貫通タンパク質、膜アンカータンパク質、酵素あるいはDNAおよび/またはRNA結合タンパク質である、前記請求項いずれか記載の方法、融合タンパク質、複合体または組成物。
【請求項12】
ポリ(ペプチド)およびタグが、ペプチド-リンカー、好ましくはG-リンカーまたはGS-リンカーを介して融合される、前記請求項いずれか記載の方法、融合タンパク質、複合体または組成物。
【請求項13】
5'-ニコチンアミドヌクレオ塩基ジヌクレオチド(NND)キャップ核酸配列を目的の(ポリ)ペプチドに取り付けるためのキットであって、
(a)請求項1において定義されるタグ、
(b)5'-NNDキャップ核酸配列をタグまたはADP-リボシルトランスフェラーゼ(ART)をコードする核酸分子に共有的に取り付け得るADP-リボシルトランスフェラーゼ(ART)、および
(c)任意に、ARTを有するタグを目的の(ポリ)ペプチドにどのように共有的に取り付けるかの指示書
を含む、キット。
【請求項14】
反応バッファまたはバッファストック溶液をさらに含むキットであって、好ましくは反応バッファまたはバッファストック溶液から調製される最終反応バッファが、
50~200mMの濃度のMg(OAc)2
100~500mMの濃度のNH4Cl;
250~1000mMの濃度のトリス酢酸pH7.5
5~15mMの濃度のEDTA;
50~200mMの濃度のβ-メルカプトエタノール;および
5~15%の濃度のグリセロール
を含む、請求項13記載のキット。
【請求項15】
少なくとも0.25M、好ましくは0.5M~2Mの濃度のMgCl2
イミダゾリドニコチンアミドモノヌクレオチド(Im-NMN)、
ヌクレアーゼ非含有水、および
陽性対照、好ましくはその3'末端に蛍光標識を含むオリゴヌクレオチドおよび/または請求項1において定義されるタグに融合されるかもしくはそれと複合体化される対照ポリ(ペプチド)を含む対照融合タンパク質
の1つ以上をさらに含む、請求項13または14記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5'-ニコチンアミドヌクレオ塩基ジヌクレオチド(NND)キャップ核酸配列を融合タンパク質または複合体に取り付けるための方法に関し、該方法は、(a) (i)タグに融合される目的のポリ(ペプチド)を含む異種融合タンパク質、または(ii)複合体と、5'-NNDキャップ核酸配列がタグに共有結合する条件下で5'-NNDキャップ核酸配列およびADP-リボシルトランスフェラーゼ(ART)とを接触させる工程を含み、ここでタンパク質は生理学的条件下でタグと複合体化され、タグは、ARTの認識モチーフを含み、好ましくは(i)アミノ酸モチーフDVRPVRD(配列番号:7)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:7が保存されると仮定すると配列番号:1もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;(ii)アミノ酸モチーフDVRPVRD(配列番号:7)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:7が保存されると仮定すると配列番号:2もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;(iii)アミノ酸モチーフDVRPVRD(配列番号:7)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:7が保存されると仮定すると配列番号:3もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;(iv)アミノ酸モチーフLADGVEGYLRASEASRDRVE(配列番号:8)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:8が保存されると仮定すると配列番号:4もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;(v)アミノ酸モチーフLADGVEGYLRASEASRDRVE(配列番号:8)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:8が保存されると仮定すると配列番号:5もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;または(vi)アミノ酸モチーフLADGVEGYLRASEASRDRVE(配列番号:8)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:8が保存されると仮定すると配列番号:6もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列を含むかあるいはそれからなる。
【0002】
本明細書において、特許出願および製造業者のマニュアルを含むいくつかの文書が引用される。これらの文書の開示は、本発明の特許性に関連のあるものとはみなされないが、その全体において参照により本明細書に援用される。より具体的に、全ての参照される文書は、それぞれ個々の文書が参照により援用されると具体的かつ個々に示される場合と同程度に参照により援用される。
【背景技術】
【0003】
翻訳後修飾(PTM)は、タンパク質がリボソームにより翻訳された後に、タンパク質上の1つ以上のアミノ酸に対して起こる生化学的な改変である。タンパク質翻訳後修飾(PTM)は、官能基もしくはタンパク質の共有的取り付け、制御サブユニットのタンパク質分解性切断または全タンパク質の分解によりプロテオームの機能的多様性を増加する。これらの修飾としては、リン酸化、グリコシル化、ユビキチン化、ニトロシル化、メチル化、アセチル化、脂質化およびタンパク質分解が挙げられ、正常細胞生物学および病因のほぼ全ての局面に影響を及ぼす。タンパク質機能の多くの局面に影響を及ぼす400を超える異なる種類のPTMがある。かかる修飾は、多様な細胞性プロセスを制御するための決定的な分子制御機構である。これらのプロセスは、タンパク質の構造および機能に対して重大な影響を有する。PTMの乱れは、生命維持に必要な生物学的プロセスの異常およびそのために種々の疾患をもたらし得る。
【0004】
そのため、さらなるPTMを同定および理解するための必要がある。これは、細胞生物学ならびに疾患の治療および予防の試験において非常に重要である。この必要性は、本発明により対処される。
【0005】
ADP-リボシルトランスフェラーゼ(ART)は、1つまたは複数のADP-リボース(ADPr)単位の、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)から標的タンパク質への転移を触媒する1。細菌および古細菌において、それらは毒素として働き、宿主防御または薬物耐性機構に関与するが8、真核生物において、それらはDNA損傷修復からマクロファージ活性化およびストレス応答の範囲の別個のプロセスにおいて役割を果たす9。ウイルスは、ARTを、宿主の遺伝子発現系を再プログラムするための武器として使用する7。機械論的に、標的タンパク質の求核性基(ほとんどArg、Glu、Asp、Ser、Cys)は、NADのニコチンアミドリボシド部分中のグリコシド炭素原子に攻撃して、N-、O-またはS-グリコシドとして共有結合を形成する(図1a)1
【0006】
ここで、最初に、バクテリオファージT4 ARTは、NADだけでなく、NND-RNAも基質として受け入れ、それにより「RNA化(RNAylation)」反応において全RNA鎖をアクセプタータンパク質に共有結合することが実験的に示される。ART ModBを用いて示されるように、ARTは、その宿主タンパク質標的、リボソームタンパク質S1をアルギニン残基で有効にRNA化し得、NADよりもNAD-RNAを強く好む。139位での単一のアルギニンの突然変異は、ADP-リボシル化およびRNA化を完全に破壊する。ARTはまた、NGD(5'-ニコチンアミドグアニンジヌクレオチド)-RNA、NCD(5'-ニコチンアミドシトシンジヌクレオチド)-RNAおよび(5'-ニコチンアミドウラシルジヌクレオチド)NUD-RNAと共に働くことがさらに示される。
【0007】
これらの所見は、ARTを介したNND-核酸配列の取り付けによるタンパク質のPTMである新規のPTM「RNA化」を明らかにする。
【0008】
したがって、本発明は、第1の局面において、5'-ニコチンアミドヌクレオ塩基ジヌクレオチド(NND、本明細書においてNXDとも示される)キャップ核酸配列を融合タンパク質または複合体に取り付けるための方法に関し、該方法は、(a) (i)タグに融合される目的のポリ(ペプチド)を含む異種融合タンパク質または(ii)複合体と、5'-NNDキャップ核酸配列がタグに共有的に取り付けられる条件下で5'-NNDキャップ核酸配列およびADP-リボシルトランスフェラーゼ(ART)とを接触させる工程を含み、ここでタンパク質は、生理学的条件下でタグと複合体化され、タグは、ARTの認識モチーフを含み、好ましくは(i)アミノ酸モチーフDVRPVRD(配列番号:7)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:7が保存されると仮定すると配列番号:1もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;(ii)アミノ酸モチーフDVRPVRD(配列番号:7)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:7が保存されると仮定すると配列番号:2もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;(iii)アミノ酸モチーフDVRPVRD(配列番号:7)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:7が保存されると仮定すると配列番号:3もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;(iv)アミノ酸モチーフLADGVEGYLRASEASRDRVE(配列番号:8)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:8が保存されると仮定すると配列番号:4もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;(v)アミノ酸モチーフLADGVEGYLRASEASRDRVE(配列番号:8)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:8が保存されると仮定すると配列番号:5もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;または(vi)アミノ酸モチーフLADGVEGYLRASEASRDRVE(配列番号:8)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:8が保存されると仮定すると配列番号:6もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列を含むかまたはそれからなる。
【0009】
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)は、代謝に対して中心的な補酵素である。全ての生きた細胞で見られるように、NADは、それらのリン酸基を介して連結される2つのヌクレオチドからなるので、ジヌクレオチドと称される。1つのヌクレオチドは、アデニンヌクレオ塩基および他のニコチンアミドを含む。NADは2つの形態:それぞれNAD+およびNADH (Hは水素)と省略される酸化および還元形態で存在する。
【0010】
用語「核酸配列」(本明細書において「核酸分子」とも称される)は、本発明に従って、DNA、例えば二本鎖または一本鎖DNAおよびRNAを含む。核酸配列は、好ましくは一本鎖、例えば一本鎖DNAおよびRNAである。これに関して「DNA」(デオキシリボ核酸)は、ヌクレオチド塩基と称され、デオキシリボース糖骨格上で一緒に連結される化学構築ブロックアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)およびチミン(T)の任意の鎖または配列を意味する。DNAは、ヌクレオチド塩基の1つの鎖または二重らせん構造を形成し得る2つの相補的な鎖を有し得る。「RNA」(リボ核酸)は、ヌクレオチド塩基と称され、リボース糖骨格上で一緒に連結される化学構築ブロックアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)およびウラシル(U)の任意の鎖または配列を意味する。RNAは典型的に、ヌクレオチド塩基、例えばmRNAの一本の鎖を有する。一本鎖および二本鎖ハイブリッド分子、すなわちDNA-DNA、DNA-RNAおよびRNA-RNAも含まれる。
【0011】
核酸分子はまた、当該技術分野で公知の任意の手段により修飾され得る。かかる修飾の非限定的な例としては、メチル化、1つ以上の天然に存在するヌクレオチドのアナログによる置換およびヌクレオチド間修飾、例えば非電荷連結(例えばメチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、カルバメート等)によるものおよび電荷連結(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)によるものが挙げられる。以下でポリヌクレオチドとも称される核酸分子は、1つ以上のさらなる共有結合される部分、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジン等)、インターカレーター(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート剤(例えば金属、放射性金属、鉄、酸化金属等)、アルキル化剤、フルオロフォア(例えばAlexaまたはCy色素)、蛍光クエンチ剤またはビオチンを含み得る。ポリヌクレオチドは、メチルもしくはエチルホスホトリエステルまたはアルキルホスホロアミデート連結の形成により誘導体化され得る。当該技術分野で公知の核酸模倣分子、例えばDNAまたはRNAの合成または半合成誘導体および混合されたポリマーがさらに含まれる。
【0012】
本明細書において以下にさらに詳述されるように、本発明によるかかる核酸模倣分子または核酸誘導体としては、ホスホロチオエート核酸、ホスホロアミデート核酸、2'-O-メトキシエチルリボ核酸、モルホリノ核酸、ヘキシトール核酸(HNA)、ペプチド核酸(PNA)およびロックト核酸(LNA)が挙げられる(Braasch and Corey, Chem Biol 2001, 8: 1参照)。
【0013】
修飾された塩基、例えばチオ-ウラシル、チオ-グアニンおよびフルオロ-ウラシルを含む核酸も含まれる。核酸分子は典型的に、遺伝子情報、例えばタンパク質および/またはポリペプチドを作製するための細胞性機構により使用される情報を保有する。本明細書により考慮される核酸分子はさらに、プロモーター、エンハンサー、応答因子、シグナル配列、ポリアデニル化配列、イントロン、5'-および3'-ノンコーディング領域等を含み得る。
【0014】
5'-ニコチンヌクレオ塩基ジヌクレオチド(NND)キャップ核酸配列は、ジホスフェート連結を介してNNDが核酸配列の5'末端に連結する核酸配列を示す。ヌクレオ塩基は、ヌクレオシドを形成する窒素含有生物学的化合物である。ヌクレオシドは、これらのモノマーの全てが核酸の塩基性構築ブロックを構成するヌクレオチドの構成要素である。
【0015】
用語「タンパク質」(「ポリペプチド」とも称される)は、用語「ポリペプチド」と交換可能に本明細書で使用される場合、少なくとも50アミノ酸を含む単一鎖タンパク質またはそれらの断片などのアミノ酸の線形の分子鎖を記載する。用語「ペプチド」は、本明細書で使用する場合、49までのアミノ酸からなる一群の分子を記載する。用語「ペプチド」は、本明細書で使用する場合、少なくとも15アミノ酸、少なくとも20アミノ酸 少なくとも25アミノ酸および少なくとも40アミノ酸の増加した好ましさと一致する一群の分子を記載する。ペプチドおよびポリペプチドの群は、用語「(ポリ)ペプチド」を使用して一緒になって言及される。(ポリ)ペプチドはさらに、少なくとも2つの同一または異なる分子からなるオリゴマーを形成し得る。かかるマルチマーの対応するより高次の構造は、相応じて、ホモ-またはヘテロダイマー、ホモ-またはヘテロトリマー等と称される。さらに、アミノ酸(1つまたは複数)および/またはペプチド結合(1つまたは複数)が機能性のアナログにより置き換えられたかかるタンパク質/(ポリ)ペプチドのペプチド模倣物も、本発明に包含される。かかる機能性アナログは、セレノシステインなどの20遺伝子にコードされるアミノ酸以外の全ての公知のアミノ酸を含む。用語「(ポリ)ペプチド」および「タンパク質」はまた、修飾が、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化および当該技術分野で周知である同様の修飾により実行される、天然の修飾された(ポリ)ペプチドおよびタンパク質をいう。
【0016】
目的の(ポリ)ペプチドは、本明細書に開示される新規のPTM RNA化により同じものを修飾することが望ましい任意の(ポリ)ペプチドであり得る。目的の(ポリ)ペプチドの例を本明細書の以下に記載する。
【0017】
本発明による融合タンパク質および本発明による複合体の両方において、目的の(ポリ)ペプチドはタグに取り付けられる。タグは、目的の(ポリ)ペプチドの両方の末端のN末端、C末端に取り付けられ得る。
【0018】
複合体において、タグは、好ましくはビオチンのアビジン、ストレプトアビジンまたはニュートラアビジンへの結合を介して、目的の(ポリ)ペプチドに非共有的に連結する(生理学的条件下)。ビオチンは、目的の(ポリ)ペプチドおよびアビジン、ストレプトアビジンまたはニュートラアビジンに、タグにまたはその逆で連結され得る。アビジンは、ビオチンに対してかなりの親和性を示す鳥類および両生類の両方に由来のタンパク質であり、複数の真核生物生物学的プロセスにおいて役割を果たす補因子である。アビジン、ストレプトアビジンおよびニュートラアビジンは、4つまでのビオチン分子に結合する能力を有する。アビジン-ビオチン複合体は、タンパク質とリガンドの間の最も強力な公知の非共有的相互作用(Kd = 10-15M)である。ビオチンとアビジンの間の結合形成は非常に迅速であり、一端形成されると、過度なpH、温度、有機溶媒および他の変性剤により影響を受けない。そのため、表示「生理学的条件下」は、かかる条件下で結合が生じなければならないことを意味するが、非生理学的条件下でも結合が可能であることを排除しない。用語「生理学的条件」は、人工的な実験室条件とは対照的に、かかる生物または細胞系について天然に生じ得る外部または内部の環境の条件をいう。
【0019】
タンパク質ADP-リボシル化は、複数の生物学的プロセスにおいて多用途的な役割を果たす重要な翻訳後修飾である。ADP-リボシル化は、ADP-リボシルトランスフェラーゼ(ART)として公知の酵素の群により触媒される。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)をドナーとして使用して、先行技術から、ARTがNADからそれらの基質(ポリ)ペプチドへと、単一または複数のADP-リボース部分に共有的に連結して、モノADP-リボシル化またはポリADP-リボシル化を形成する(PAR化)ことが知られる。
【0020】
本発明により、ARTの新規の機能が予期されずに解明された。ARTは、NADだけでなく、5'-NNDキャップ核酸配列をもそれらの基質(ポリ)ペプチドへと転移し得る。ART ModBは、5'-NNDキャップ核酸配列を基質(ポリ)ペプチドに共有的に連結し得ることが本明細書の以下の実施例に特に示される。ADP-リボース連結は、RNAと、基質(ポリ)ペプチド内のアルギニンの側鎖との間にあることが特に見出された。
【0021】
ART ModBの基質(ポリ)ペプチドは、ARTに特異的に認識されるモチーフを収容することおよび該モチーフは、特定のアルギニンを含むことがさらに見出され、ここで該アルギニンの側鎖は、5'-NNDキャップ核酸配列の、基質(ポリ)ペプチドへの連結の部位として働く。このモチーフは、本明細書に上記されるように、タグとして、任意の目的の(ポリ)ペプチドに取り付けられ得、その結果、任意の目的の(ポリ)ペプチドは、新規のPTM RNA化により修飾され得る。
【0022】
この理由で、本発明のタグは、ARTの認識モチーフおよび好ましくは5'-NNDキャップ核酸配列の基質(ポリ)ペプチドへの連結の部位として働く少なくとも1つのアルギニンを含む。
【0023】
議論されるように、RNA化は、ART ModBを用いて本明細書の以下の実施例において説明される。ModBの基質(ポリ)ペプチドはタンパク質rS1である。タンパク質rS1は、6個のドメイン(DI~DVI)を含み、ARTの認識モチーフは、ドメインDIIおよびDVI内で見出された。ドメインDIIおよびDVI内の野生型モチーフは、配列番号:1および4のそれぞれに対応する。2つの野生型モチーフがさらに調査され、配列番号:2および5は、「不可欠な」モチーフであると同定された。野生型モチーフ(motives)はまた、短い側鎖および5'-NNDキャップ核酸配列のコンジュゲーションの部位の隣に長い側鎖を有するいわゆる「vokuhila」モチーフにプロセッシングされた。
【0024】
全てのこれらのモチーフは、2つのβシートおよび中心ループを含む。ドメインDIIおよびDVI内のループをそれぞれ配列番号:7および8に示す。βシートは、ループをある位置に配置すると考えられるが、ループ中のアミノ酸はARTにより認識され、ここで保存されて機能的に不可欠なアルギニン(R)は、その側鎖を介して、5'-NNDキャップ核酸配列のための取り付けの部位として働く。
【0025】
そのため、タグは好ましくは、(i)アミノ酸モチーフDVRPVRD(配列番号:7)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:7が保存されると仮定すると配列番号:1もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;(ii)アミノ酸モチーフDVRPVRD(配列番号:7)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:7が保存されると仮定すると配列番号:2もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;(iii)アミノ酸モチーフDVRPVRD(配列番号:7)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:7が保存されると仮定すると配列番号:3もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;(iv)アミノ酸モチーフLADGVEGYLRASEASRDRVE(配列番号:8)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:8が保存されると仮定すると配列番号:4もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;(v)アミノ酸モチーフLADGVEGYLRASEASRDRVE(配列番号:8)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:8が保存されると仮定すると配列番号:5もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;または(vi)アミノ酸モチーフLADGVEGYLRASEASRDRVE(配列番号:8)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:8が保存されると仮定すると配列番号:6もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列を含むかまたはそれからなる。
【0026】
本発明によると、用語「パーセント(%)配列同一性」は、鋳型核酸またはアミノ酸配列を作製するヌクレオチドまたはアミノ酸残基の数と比較して、2つ以上の整列された核酸またはアミノ酸配列の同一のヌクレオチド/アミノ酸の適合(「ヒット」)の数を記載する。他の用語において、2つ以上の配列またはサブ配列について整列を使用すると、同じであるアミノ酸残基またはヌクレオチドのパーセンテージ(例えば70%、75%、80%、85%、90%または95%同一性)は、比較のウィンドウにわたりまたは当該技術分野で公知の配列比較アルゴリズムを使用して測定されるような指定される領域にわたり最大の一致について(サブ)配列が比較されて整列される場合、あるいは手動で整列されて視覚的に調べられる場合に決定され得る。この定義は、整列される任意の配列の相補物についても適用される。
【0027】
本発明に関するヌクレオチドおよびアミノ酸配列解析は、好ましくはNCBI BLASTアルゴリズム(Stephen F. Altschul, Thomas L. Madden, Alejandro A. Schaeffer, Jinghui Zhang, Zheng Zhang, Webb Miller, and David J. Lipman (1997), Nucleic Acids Res. 25:3389-3402)を使用して実施される。BLASTは、ヌクレオチド配列(ヌクレオチドBLAST)およびアミノ酸配列(タンパク質BLAST)に使用され得る。当業者は、核酸配列を整列するためのさらなる適切なプログラムを知っている。
【0028】
本明細書で定義される場合、少なくとも80%同一、好ましくは少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一および最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性が本発明により構想される。しかしながら、好ましさを増加して、少なくとも97.5%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%および100%の配列同一性も本発明により構想される。
【0029】
本発明の第1の局面の好ましい態様によると、NNDのヌクレオ塩基は、プリン塩基またはピリミジン塩基であり、好ましくはアデニン、グアニン、シトシン、チミンおよびウラシルから選択される。
【0030】
ピリミジン塩基と比較してプリン塩基が好ましい。
【0031】
5つの好ましいヌクレオ塩基アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)およびウラシル(U)は、主要または規範的と称される。それらは、遺伝子コードの基本単位として機能し、塩基A、G、CおよびTはDNA中に見られ、A、G、CおよびUはRNA中に見られる。チミンおよびウラシルは、これらの複素環式6員環の5番目の炭素(C5)上のメチル基の存在または非存在のそれぞれにより区別される。アデニンおよびグアニンは、プリンに由来する縮合環骨格構造を有し、そのためにプリン塩基の部類の一員である。シトシン、ウラシルおよびチミンの環構造はピリミジンに由来するので、それらはピリミジン塩基の部類の一員である。
【0032】
5つの好ましいヌクレオ塩基アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)およびウラシル(U)のいずれかの内、アデニン(A)は、ARTの天然の基質であるので好ましいか、またはシトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)およびウラシル(U)は、ARTの非天然の基質であるので好ましい。非天然の基質は、ヒトADP-リボースヒドロラーゼARH1により除去されず、それによりRNA-タンパク質安定性の増加を有利に示す(実施例7参照)。シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)およびウラシル(U)のうち、3つのヌクレオ塩基シトシン(C)、グアニン(G)およびウラシル(U)は、RNAを形成するので好ましい。
【0033】
例えば、さらなるヌクレオ塩基は、キサンチン、ヒポキサンチン、7-メチルグアニン、2,6-ジアミノプリンおよび6,8-ジアミノプリン(プリン塩基)、シュードウリジン、N1-メチル-シュードウリジンまたは5,6-ジヒドロウラシル、5-メチルウラシルおよび5-ヒドロキシメチルシトシン(ピリミジン塩基)である。
【0034】
本発明の第1の局面の好ましい態様によると、ARTは、配列番号:9もしくは配列番号:10またはそれに対して少なくとも80%同一である配列を含むかまたはそれからなる。
【0035】
配列番号:9は、Acc. No. CAA67254.1で寄託されるエシェリキアウイルスT4由来のART ModBのアミノ酸配列である。配列番号:10は、本明細書の以下の実施例に使用されるクローニングされたModBのアミノ酸配列であり、例えば異種融合タンパク質について本明細書の以下に記載されるように発現ベクターから組換え的に産生された後に、ModBの精製のために働くHis6タグをさらに含む。
【0036】
本発明の第1の局面の好ましい態様によると、該方法は、工程(a)の前に、(a')第1の局面に関して定義されるように、タグを目的のポリ(ペプチド)に融合させる工程を含み、タグに融合される目的のポリ(ペプチド)を含む異種融合タンパク質が得られる。
【0037】
本発明の第1の局面の代替的な好ましい態様において、該方法は、工程(a)の前に、(a')第1の局面に関して定義されるように、タグを、目的のポリ(ペプチド)と複合体化する工程を含む。
【0038】
例えば、目的のポリ(ペプチド)、タグおよび任意にペプチドリンカーをコードする核酸配列は、発現可能な形態で発現ベクター中のフレーム内に導入され得る。次いで発現ベクターは宿主細胞に導入され得、宿主細胞は、異種融合タンパク質が産生される条件下で培養され得る。次いで、異種融合タンパク質は、細胞から単離され得る。
【0039】
目的のポリ(ペプチド)の代替物として、タグおよび任意にペプチドリンカーは、ペプチド合成を介して合成されて連結され、異種融合タンパク質を形成し得る。
【0040】
本発明の第1の局面の好ましい態様によると、該方法は、工程(a)の後に、(b)融合タンパク質またはNND-5'キャップ核酸配列が取り付けられた複合体を精製または単離する工程を含む。
【0041】
タンパク質またはペプチドの単離または精製のための手段および方法は、当該技術分野で公知である。該手段および方法は、限定されることなく、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー(サイズ排除クロマトグラフィー)、アフィニティークロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相HPLC、ディスクゲル電気泳動または免疫沈降などの方法技術および工程を含み、例えばSambrook, 2001, Molecular Cloning: A laboratory manual, 3rd ed, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York参照。
【0042】
本発明は、第2の局面において、本発明の第1の局面に関して定義されるようなタグに融合される目的のポリ(ペプチド)を含む融合タンパク質または本発明の第1の局面に関して定義されるようなタグと複合体化される目的のポリ(ペプチド)を含む複合体に関する。
【0043】
本発明の第1の局面の定義および好ましい態様は、本発明の第2の局面に適用可能である限り、必要な変更を加えて本発明の第2の局面に適用される。
【0044】
そのため、第2の局面の融合タンパク質も、ポリ(ペプチド)のアミノ酸配列が天然で生じないことを意味する異種融合タンパク質であり、タグは、天然においてタンパク質rS1の一部であり得ることに注意。
【0045】
同様に、本発明の第2の局面の複合体も、ビオチンの、アビジンまたはストレプトアビジンまたはニュートラアビジンへの結合により好ましく形成される。
【0046】
さらに、第2の局面に関して、タグはまた、ARTの認識モチーフを含み、好ましくは(i)アミノ酸モチーフDVRPVRD(配列番号:7)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:7が保存されると仮定すると配列番号:1もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;(ii)アミノ酸モチーフDVRPVRD(配列番号:7)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:7が保存されると仮定すると配列番号:2もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;(iii)アミノ酸モチーフDVRPVRD(配列番号:7)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:7が保存されると仮定すると配列番号:3もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;(iv)アミノ酸モチーフLADGVEGYLRASEASRDRVE(配列番号:8)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:8が保存されると仮定すると配列番号:4もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;(v)アミノ酸モチーフLADGVEGYLRASEASRDRVE(配列番号:8)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:8が保存されると仮定すると配列番号:5もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列;または(vi)アミノ酸モチーフLADGVEGYLRASEASRDRVE(配列番号:8)における下線が引かれたArgが保存されるおよび好ましくは配列番号:8が保存されると仮定すると配列番号:6もしくはそれに対して少なくとも80%同一である配列を含むかまたはそれからなる。
【0047】
本発明はまた、第2の局面に関して、核酸分子、好ましくは第2の局面の融合タンパク質をコードするベクターに関する。
【0048】
本発明によると用語「ベクター」は、好ましくはプラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージまたは例えば本発明の核酸分子を運搬する遺伝子工学において従来から使用される別のベクターを意味する。本発明の核酸分子は、例えばいくつかの商業的に入手可能なベクターに挿入され得る。非限定的な例としては、原核生物プラスミドベクター、例えばpUC-シリーズ、pBluescript (Stratagene)、pET-シリーズの発現ベクター(Novagen)またはpCRTOPO (Invitrogen)ならびにpREP (Invitrogen)、pcDNA3 (Invitrogen)、pCEP4 (Invitrogen)、pMC1neo (Stratagene)、pXT1 (Stratagene)、pSG5 (Stratagene)、EBO-pSV2neo、pBPV-1、pdBPVMMTneo、pRSVgpt、pRSVneo、pSV2-dhfr、pIZD35、pLXIN、pSIR (Clontech)、pIRES-EGFP (Clontech)、pEAK-10 (Edge Biosystems) pTriEx-Hygro (Novagen)およびpCINeo (Promega)などの哺乳動物細胞内の発現に適合性のベクターが挙げられる。ピキア・パストリスに適切なプラスミドベクターについての例は、例えばプラスミドpAO815、pPIC9KおよびpPIC3.5K(全てInvitrogen)を含む。
【0049】
ベクターに挿入される核酸分子は、例えば標準的な方法により合成され得る。コーディング配列の転写制御因子および/または他のアミノ酸コーディング配列へのライゲーションはまた、確立された方法を使用して実行され得る。原核生物または真核生物細胞における発現を確実にする転写制御因子(発現カセットの部分)は、当業者に周知である。これらの因子は、転写の開始を確実にする制御配列(例えば転写開始コドン、プロモーター、例えば天然に関連するかまたは異種プロモーターおよび/またはインシュレーター;上記参照)、内部リボソーム進入部位(IRES) (Owens, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98 (2001), 1471-1476)ならびに転写の終結および転写産物の安定化を確実にする任意にポリ-Aシグナルを含む。さらなる制御因子は、転写および翻訳のエンハンサーを含み得る。好ましくは、本発明のポリペプチド/タンパク質または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、原核生物または真核生物細胞における発現を可能にするかかる発現制御配列に操作可能に連結される。ベクターはさらに、さらなる制御因子として分泌シグナルをコードする核酸配列を含み得る。かかる配列は当業者に周知である。さらに、使用される発現系に応じて、発現されるポリペプチドを細胞区画に方向づけ得るリーダー配列が、本発明のポリヌクレオチドのコーディング配列に付加され得る。かかるリーダー配列は当該技術分野で周知である。
【0050】
さらに、ベクターが選択可能マーカーを含むことが好ましい。選択可能マーカーの例としては、ネオマイシン、アンピシリン、ハイグロマイシン、クロラムフェニコールおよびカナマイシンに対する抵抗性をコードする遺伝子が挙げられる。特異的に設計されるベクターは、細菌-真菌細胞または細菌-動物細胞などの異なる宿主の間のDNAの輸送を可能にする(例えばInvitrogenで入手可能なGatewayシステム)。本発明による発現ベクターは、本発明のポリヌクレオチドおよびコードされる融合タンパク質の複製および発現を誘導し得る。ファージベクターまたはウイルスベクター(例えばアデノウイルス、レトロウイルス)などのベクターを介した導入とは別に、本明細書に上述される核酸分子は、直接導入またはリポソームを介した細胞への導入のために設計され得る。さらに、バキュロウイルスシステムまたはワクシニアウイルスもしくはセムリキ森林ウイルスに基づくシステムは、本発明の核酸分子のための真核生物発現系として使用され得る。
【0051】
本発明の第2の局面のさらに好ましい態様によると、核酸配列は、本発明の第1の局面に関して定義されるように、ニコチンアミドヌクレオ塩基ジヌクレオチド(NND)を介してその5'末端でタグに、好ましはタグの保存されるArgの側鎖に共有的に取り付けられる。
【0052】
本明細書で上述されるように、本発明の方法によると、5'-ニコチンアミドヌクレオ塩基ジヌクレオチド(NAD)キャップ核酸配列は、第1の局面に関して定義されるように融合タンパク質または複合体に、および好ましくは融合タンパク質に含まれるタグの保存されるArgにまたは複合体に取り付けられ得る。
【0053】
そのため、上述の好ましい態様の融合タンパク質または複合体は、本発明の第1の局面の方法により入手され得るか、入手可能であるかまたは入手される。
【0054】
本発明は、第3の局面において、第1の局面の方法により入手可能である融合タンパク質もしくは複合体または第2の局面の融合タンパク質および/または複合体を含む組成物、好ましくは医薬または診断組成物に関する。
【0055】
本発明の第1および第2の局面の定義および好ましい態様は、本発明の第3の局面に適用可能である限り、必要な変更を加えて本発明の第3の局面に適用される。
【0056】
本明細書で使用する場合、用語「組成物」は、少なくとも1つの上で定義される融合タンパク質および/または複合体、または以下においてまとめて化合物とも称されるそれらの組合せを含む組成物をいう。
【0057】
本発明によると、用語「医薬組成物」は、患者、好ましくはヒト患者への投与のための組成物に関する。本発明の医薬組成物は、上に記載される化合物を含む。任意に該組成物は、本発明の化合物の性質を変更して、それにより例えばそれらの機能を安定化、改変および/または活性化し得るさらなる分子を含み得る。該組成物は固体、液体または気体の形態であり得、特に粉末(1つまたは複数)、錠剤(1つまたは複数)、溶液(1つまたは複数)またはエーロゾル(1つまたは複数)の形態であり得る。本発明の医薬組成物は、任意およびさらに薬学的に許容され得る担体を含み得る。適切な医薬担体の例は当該技術分野で周知であり、リン酸緩衝化食塩水溶液、水、エマルジョン、例えば油/水エマルジョン、種々の型の湿潤剤、滅菌性溶液、有機溶媒、例えばDMSO等が挙げられる。かかる担体を含む組成物は、周知の従来の方法により製剤化され得る。これらの医薬組成物は、適切な用量で被験体に投与され得る。用量養生法は、かかりつけ医および臨床的要因により決定される。医学の分野において周知であるように、任意の1患者についての用量は、患者のサイズ、体重、表面積、年齢、投与される具体的な化合物、性別、投与の時間および経路、一般的な健康状態、ならびに同時に投与される他の薬物などの多くの要因に依存する。所定の状況についての治療有効量は、常套的な実験により容易に決定され、通常の臨床医または医師の技術および判断の範囲内にある。一般的に、医薬組成物の規則的な投与としての養生法は、1日当たり1μg~5gの単位の範囲にあるべきである。しかしながら、より好ましい用量は、1日当たり0.01mg~100mg、さらにより好ましくは0.01mg~50mgおよび最も好ましくは0.01mg~10mgの範囲であり得る。さらに、例えば該化合物がsiRNAである場合、投与される医薬組成物の総医薬有効量は、典型的に、体重1kg当たり約75mg未満、例えば体重1kg当たり約70、60、50、40、30、20、10、5、2、1、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001または0.0005mg未満である。より好ましくは、量は、体重1kg当たり2000nmol未満のiRNA剤(例えば約4.4 x 1016コピー)、例えば体重1kg当たり1500、750、300、150、75、15、7.5、1.5、0.75、0.15、0.075、0.015、0.0075、0.0015、0.00075または0.00015nmol未満のiRNA剤である。変化および応答が起こる治療後の間隔を観察するために必要な治療の長さは、望ましい効果に応じて変化する。特定の量は、当業者に周知の従来の試験により決定され得る。
【0058】
医薬組成物および本明細書の以下に記載される医学的用途において、活性化合物は、タグ上の目的の(ポリ)ペプチドおよび/または核酸配列であり得る。薬学的に活性な目的の(ポリ)ペプチドの部類の非限定的な例は抗体である。いくつかの種類の癌および自己免疫疾患に対する治療抗体は、商業的に入手可能である。薬学的に活性な核酸配列の部類の非限定的な例は、事実上任意の所望の遺伝子の発現をサイレンシングするために設計され得るsiRNAである。抗体およびsiRNAの好ましい特性を合わせることも可能である。例えば、抗体は、組織特異的抗原に結合して、それによりsiRNAの活性を特定の組織に付与し得るかまたは少なくとも焦点を当て得る。
【0059】
本発明による化粧用組成物は、非治療用途における使用のためのものである。化粧用組成物はまた、擦られる、注がれる、降りかけられるもしくは噴霧される、またはそうでなければ清浄化する、美化する、魅力を増進するもしくは外観を変化させるために人の身体に適用されるように意図される組成物として、それらの意図される用途により定義され得る。本発明による化粧用組成物の特定の製剤は限定されない。構想される製剤としては、すすぎ溶液、エマルジョン、クリーム、乳状物、ゲル例えばヒドロゲル、軟膏、懸濁物、粉末、固体の棒、泡、スプレー剤およびシャンプーが挙げられる。この目的で、本発明による化粧用組成物は、化粧用に許容され得る希釈剤および/または担体をさらに含み得る。所望の製剤に応じて適切な担体および希釈剤を選択することは当業者の技術の範囲内にある。適切な化粧用に許容され得る希釈剤および担体は当該技術分野で周知であり、Bushell et al. (WO 2006/053613)において参照される薬剤が挙げられる。該化粧用組成物のための好ましい製剤は、すすぎ溶液およびクリームである。単回適用で適用される本発明による化粧用組成物の好ましい量は、0.1~10g、より好ましくは0.1~1g、最も好ましくは0.5gである。適用される量はまた、処理される領域のサイズに応じ、それに適合される必要がある。
【0060】
本発明の前述の3つの局面の好ましい態様により、核酸配列中の核酸は、RNA、DNA、PNA、モルホリノもしくはLNAまたはそれらの組合せであり、好ましくはRNAである。
【0061】
本明細書の以下の実施例において、ARTは、5'-ニコチンアミドヌクレオ塩基ジヌクレオチド(NND)-キャップRNA配列を、タグの認識部位を有するタグに取り付け得ることが示される。この理由で、核酸配列中の核酸は、最も好ましくはRNAである。
【0062】
ARTは、5'-ニコチンアミドヌクレオ塩基ジヌクレオチド(NND)-キャップRNA配列をタンパク質に取り付け得るだけでなく、NAD由来の単一または複数のADP-リボース部分をそれらの基質(ポリ)ペプチドに共有的に連結し得るので、ARTは、5'-ニコチンアミドヌクレオ塩基ジヌクレオチド(NND)-キャップRNA配列だけでなく、一般的に5'-ニコチンアミドヌクレオ塩基ジヌクレオチド(NND)-キャップ核酸配列をタグに取り付け得ると考えられる。
【0063】
RNAに次いで、DNA、PNA、モルホリノまたはLNAは、有用な核酸配列を形成するために使用され得る核酸である。
【0064】
PNAは、糖-リン酸骨格がシュードペプチド骨格により置き換えられたオリゴヌクレオチドアナログである。それらは、DNAおよびRNAを高い特異性および選択性を伴って結合させ、対応する核酸複合体よりも安定なPNA-RNAおよびPNA-DNAハイブリッドを生じる。
【0065】
LNAは、リボース環が、2'-酸素と4'-炭素の間のメチレン結合により拘束されるRNA誘導体である。LNAヌクレオチドのリボース部分は、2'酸素および4'炭素を連結する過剰な架橋により修飾される。該架橋は、リボースを、しばしばA形態二重鎖において見られる3'-エンド(North)コンホメーションに「固定する」。固定されたリボースコンホメーションは、塩基スタッキングおよび骨格前組織化を高める。これは、オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション特性(融点)を有意に増加する。
【0066】
モルホリノは、核酸の合成非電荷P-キラルアナログである。モルホリノオリゴヌクレオチドは典型的に、それぞれが4つの核酸塩基の1つを有する25サブユニットを一緒に連結することにより構築される。
【0067】
上述の種類のヌクレオチドは、望ましい場合はいつでも1つの配列に合わされ得る。かかる配列は、化学的に合成され得るかまたは商業的に入手可能である。
【0068】
本明細書で使用される核酸配列の長さは特に限定されないが、核酸配列は、約100以下のヌクレオチド、好ましくは約50以下のヌクレオチドおよび最も好ましくは約25以下のヌクレオチドを含むことが好ましい。
【0069】
用語「約」は本明細書において、好ましさの増加を伴って、±20%、±10%および±5%である。
【0070】
本発明の前述の3つの局面のさらに好ましい態様により、核酸配列は、siRNA、アンチセンス分子のshRNAである。
【0071】
核酸配列は、好ましくは標的の核酸分子、典型的には宿主または生物(例えばヒト)において発現されるmRNAの発現を阻害し得るアンチセンス分子(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、例えばLNA-GapmeR、AntagomirまたはantimiR)、siRNA、shRNAである。かかる核酸配列は、DNA配列(例えばLNA GapmeR)またはRNA配列(例えばsiRNA)を含み得る。本明細書の以下でもさらに詳述されるように、標的核酸分子の発現を阻害するヌクレオチド系化合物は、一本鎖(例えばLNA GapmeR)または二本鎖(例えばsiRNA)であり得る。
【0072】
標的核酸分子の下方制御のためのアンチセンス技術は、十分に確立されており、種々の疾患を治療するために当該技術分野において広く使用される。アンチセンス技術の基本的な考えは、選択された標的RNAを、相補性に基づく対形成の強い特異性を介してサイレンシングするためのオリゴヌクレオチドの使用である(Re, Ochsner J., 2000 Oct; 2(4): 233-236)。siRNA、shRNAおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドのアンチセンス構築物化合物クラスについて本明細書の以下に詳細が提供される。本明細書の以下にさらに詳述されるように、アンチセンスオリゴヌクレオチドは一本鎖アンチセンス構築物であり、siRNAおよびshRNAは、1つの鎖がアンチセンスオリゴヌクレオチド配列を含む(すなわちいわゆるアンチセンス鎖)二本鎖アンチセンス構築物である。全てのこれらの化合物クラスは、標的RNAの下方制御または阻害を達成するために使用され得る。
【0073】
本発明によると、用語「siRNA」は、短干渉RNAまたはサイレンシングRNAとしても知られる小干渉RNAをいう。siRNAは、生物学において種々の役割を果たす12~30、好ましくは18~30、より好ましくは20~25および最も好ましくは21~23または21ヌクレオチド長二本鎖RNA分子のクラスである。最も顕著に、siRNAは、siRNAが特定の遺伝子の発現を干渉するRNA干渉(RNAi)経路に含まれる。RNAi経路におけるそれらの役割に加えて、siRNAはまた、例えば抗ウイルス機構としてまたはゲノムのクロマチン構造の形成におけるRNAi関連経路において作用する。siRNAは、十分に定義された構造:有利にオーバーハングを有する少なくとも1つのRNA鎖を有する短い二本鎖のRNA(dsRNA)を有する。それぞれの鎖は典型的に、5'リン酸基および3'ヒドロキシル(-OH)基を有する。この構造は、長いdsRNAまたは小さいヘアピンRNAのいずれかをsiRNAに変換する酵素であるダイサーによるプロセッシングの結果である。siRNAはまた、細胞に外因的に(人工的に)導入されて、目的の遺伝子の特異的なノックダウンを生じ得る。そのため、配列が公知である任意の遺伝子は、原則的に適切に調整されたsiRNAとの配列相補性に基づいて標的化され得る。二本鎖RNA分子またはその代謝処理産物は、標的特異的核酸修飾、特にRNA干渉および/またはDNAメチル化を媒介し得る。また、好ましくは少なくとも1つのRNA鎖は5'-および/または3'-オーバーハングを有する。好ましくは、二本鎖の1つまたは両方は、1~5ヌクレオチド、より好ましくは1~3ヌクレオチドおよび最も好ましくは2ヌクレオチドの3'-オーバーハングを有する。一般的に、siRNAとして働くのに適した任意のRNA分子が本発明において構想される。これまでは、21-ntセンスおよび21-ntアンチセンス鎖で構成され、2-nt 3'-オーバーハングを有する様式で対にされたsiRNA二本鎖を用いて最も有効なサイレンシングが得られた。2-nt 3'オーバーハングの配列は、第1の塩基対に隣接する対にならないヌクレオチドに制限される標的認識の特異性に小く貢献する(Elbashir et al. Nature. 2001 May 24; 411(6836):494-8)。3'オーバーハングにおける2'-デオキシヌクレオチドは、リボヌクレオチドと同様に有効であるが、しばしば合成するのにより安価であり、おそらくはよりヌクレアーゼ抵抗性である。本発明によるsiRNAは、好ましさの増加を伴って、標的核酸配列の少なくとも13ヌクレオチド、少なくとも14ヌクレオチド、少なくとも15ヌクレオチド、少なくとも16ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも18ヌクレオチド、少なくとも19ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチドまたは少なくとも21ヌクレオチドに相補的である配列を含むかまたはそれからなるアンチセンス鎖を含む。
【0074】
siRNAの好ましい例は、エンドリボヌクレアーゼ調製siRNA(esiRNA)である。esiRNAは、長い二本鎖RNA(dsRNA)の切断により生じるsiRNAオリゴと、大腸菌RNase IIIまたはダイサーなどのエンドリボヌクレアーゼの混合物である。esiRNAは、RNA干渉(RNAi)のための化学的に合成されたsiRNAの使用についての代替的な概念である。esiRNAの作製について、lncRNA鋳型のcDNAは、PCRにより増幅され得、2つのバクテリオファージプロモーター配列によりタグ付けされ得る。次いでRNAポリメラーゼを使用して、標的遺伝子cDNAに相補的な長い二本鎖RNAが作製される。この相補的RNAは、その後大腸菌由来のRNase IIIにより消化されて、18~25塩基対の長さを有するsiRNAの短い重複断片を生じ得る。短い二本鎖RNAのこの複合体混合物は、インビボにおけるダイサー切断により作製される混合物と同様であり、そのためにエンドリボヌクレアーゼ調製siRNAまたは短esiRNAと称される。そのためesiRNAは、全てが同じmRNA配列を標的化するsiRNAの異種混合物である。esiRNAは、高度に特異的で効果的な遺伝子サイレンシングをもたらす。
【0075】
本発明による「shRNA」は、RNA干渉を介して遺伝子発現をサイレンシングするためにも使用され得る(密な)ヘアピンターンを作製するRNAの配列である短ヘアピンRNAである。shRNAは、その発現のために好ましくはU6プロモーターを使用する。shRNAヘアピン構造は、細胞機構によりsiRNAに切断されて、これは次いでRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に結合される。この複合体はmRNAに結合して切断し、それに結合するshRNAに適合する。本発明によるshRNAは、好ましさの増加を伴って、標的核酸配列の少なくとも13ヌクレオチド、少なくとも14ヌクレオチド、少なくとも15ヌクレオチド、少なくとも16ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも18ヌクレオチド、少なくとも19ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも21ヌクレオチドに相補的な配列を含むかまたはそれからなるアンチセンス鎖を含む。
【0076】
本発明による用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、ワトソン-クリック塩基対ハイブリダイゼーションにより、標的核酸配列に相補的な一本鎖ヌクレオチド配列をいい、標的核酸配列はブロッキングされる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、修飾され得ないかまたは化学的に修飾され得る。一般的に、それらは比較的短い(好ましくは13~25ヌクレオチド)。さらに、それらは標的核酸配列に特異的であり、すなわちそれらは、標的細胞/生物に存在する標的の全プール中の特有の配列にハイブリダイズする。本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましさの増加を伴って、標的核酸配列の少なくとも13ヌクレオチド、少なくとも14ヌクレオチド、少なくとも15ヌクレオチド、少なくとも16ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも18ヌクレオチド、少なくとも19ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも21ヌクレオチド、少なくとも22ヌクレオチド、少なくとも23ヌクレオチド、少なくとも24ヌクレオチドまたは少なくとも25ヌクレオチドに相補的な配列を含むかまたはそれからなる。
【0077】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくはLNA-GapmeR、AntagomirまたはantimiRである。
【0078】
LNA-GapmeRまたは単純にGapmeRは、mRNAおよびlncRNA機能の高度に有効な阻害のために使用される潜在的なアンチセンスオリゴヌクレオチドである。GapmeRは、相補的なRNA標的のRNase H依存的分解により機能する。それらは、mRNAおよびlncRNAのノックダウンのためのsiRNAに対する優れた代替物である。それらは有利に、トランスフェクション試薬を用いずに細胞に取り込まれる。GapmeRは、LNAのブロックと隣り合うDNAモノマーの中心鎖を含む。GapmeRは、好ましは14~16ヌクレオチド長であり、任意に十分にホスホロチオエート化される。DNAギャップは、標的化されたRNAのRNAse H媒介分解を活性化し、核内で直接転写産物を標的化することにも適する。本発明によるLNA-GapmeRは、好ましさの増加を伴って、標的核酸配列の少なくとも13ヌクレオチド、少なくとも14ヌクレオチドまたは少なくとも15ヌクレオチドに相補的な配列を含む。
【0079】
記載されるように、AntimiRは、miRNAに相補的であるように最初に設計されたオリゴヌクレオチド阻害剤である。miRNAに対するAntimiRは、特異的なmiRNA機能の理解を得るためのツールとしておよび潜在的な治療薬として広範囲に使用された。本明細書で使用する場合、AntimiRは、標的核酸配列に対して相補的であるように設計される。AntimiRは、好ましくは14~23ヌクレオチド長である。本発明によるAntimiRは、より好ましくは、好ましさの増加を伴って、標的核酸配列の少なくとも15ヌクレオチド、少なくとも16ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも18ヌクレオチド、少なくとも19ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも21ヌクレオチド、少なくとも22ヌクレオチドまたは少なくとも23ヌクレオチドに相補的な配列を含むかまたはそれからなる。
【0080】
AntimiRは、好ましくはAntagomiRである。AntagomiRは、好ましくは21~23ヌクレオチドの合成2-O-メチルRNAオリゴヌクレオチドであり、好ましくは選択される標的核酸配列に対して十分に相補的である。AntagomiRはmiRNAに対して最初に設計されたが、それらはmRNAに対しても設計され得る。そのため、本発明によるAntagomiRは、好ましくは標的核酸配列の21~23ヌクレオチドに相補的な配列を含む。AntagomiRは、好ましくは2'-OMe修飾塩基(リボースの2'-ヒドロキシルがメトキシ基に置き換えられる)、最初の2つおよび最後の4つの塩基上でホスホロチオエート(ホスホジエステル結合がホスホロチオエートに変わる)、ならびにヒドロキシプロリノール修飾結合を介した3'末端でコレステロールモチーフの付加により合成される。2'-OMeおよびホスホロチオエート修飾の付加は生体安定性を向上し、コレステロールコンジュゲーションはAntagomiRの分布および細胞浸透を高める。
【0081】
本発明による有用なアンチセンス分子(アンチセンスオリゴヌクレオチド、例えばLNA-GapmeR、Antagomir、antimiRなど)、siRNAおよびshRNAは、好ましくは従来の核酸合成機を使用して化学的に合成される。核酸配列合成試薬の供給源としては、Proligo (Hamburg, Germany)、Dharmacon Research (Lafayette, CO, USA)、Pierce Chemical (Perbio Scienceの一部、Rockford, IL, USA)、Glen Research (Sterling, VA, USA)、ChemGenes (Ashland, MA, USA)およびCruachem (Glasgow, UK)が挙げられる。
【0082】
アンチセンス分子(アンチセンスオリゴヌクレオチド、例えばLNA-GapmeR、Antagomir、antimiRなど)、siRNAおよびshRNAの強力ではあるが可逆的に、インビボにおいて標的核酸配列をサイレンシングまたは阻害する能力により、これらの分子は、本発明の医薬組成物における使用に特に十分に適合されたものになる。
【0083】
アンチセンス分子(アンチセンスオリゴヌクレオチド、例えばLNA-GapmeR、Antagomir、antimiRなど)、siRNA、shRNAは、ロックト核酸(LNA)などの修飾されたヌクレオチドを含み得る。
【0084】
本発明の前述の3つの局面の別の好ましい態様によると、核酸配列は、その3'末端に蛍光標識、好ましくはAlexa FluorもしくはCy色素を含むか、またはその3'末端にビオチンを含む。
【0085】
蛍光標識は、本発明の診断組成物において特に有利であるので、それにより核酸配列が取り付けられた本発明の融合または複合体は、被験体(好ましくはヒト被験体)によりインビボで配置され得る。
【0086】
Cy色素は、好ましくはCy2、Cy3またはCy5である。Alex Fluorは、好ましくはAlexa Fluor 488、532、546、555、568、594、647、660、680、700および750である。
【0087】
核酸配列の3'末端でのビオチンは、本発明による複合体中に存在し得るビオチンとは離れて保持される必要がある。核酸配列の3'末端でのビオチンは、アビジンまたはストレプトアビジンまたはニュートラアビジンを介して、今度はタグおよび目的の(ポリ)ペプチドの連結のためではなく核酸配列に対するさらなる取り付けの部位として働き得る。
【0088】
本発明の前述の3つの局面のさらに好ましい態様によると、核酸配列は、アルキンまたはアジドなどのクリック化学に使用され得る部分を含む。
【0089】
「クリック化学」は、当該技術分野で確立された用語であり;例えばKolb et al. (2001) Click chemistry: diverse chemical function from a few good reactions. Angew. Chem. Int. Ed. 40 (11):2004; Sletten et al. (2009) Bioorthogonal Chemistry: Fishing for Selectivity in a Sea of Functionality. Angew. Chem. Int. Ed.48:6998;Jewett et al.(2010) Cu-free click cycloaddition reactions in chemical biology. Chem. Soc. Rev. 39(4):1272; Best et al. (2009) Click Chemistry and Bioorthogonal Reactions: Unprecedented Selectivity in the Labeling of Biological Molecules. Biochemistry.48:6571;およびLallana et al. (2011) Reliable and Efficient Procedures for the Conjugation of Biomolecules through Huisgen Azide-Alkyne Cycloadditions. Angew. Chem. Int. Ed. 50:8794参照。該基準を満たすいくつかの反応があるが、アジドおよび末端アルキンのHuisgen 1,3-双極付加環化は、先駆者として現れた。
【0090】
本発明の前述の3つの局面の好ましい態様によると、目的のポリ(ペプチド)は、抗体、抗体模倣物、サイトカイン、インターロイキン、膜貫通タンパク質、膜アンカータンパク質、酵素あるいはDNAおよび/またはRNA結合タンパク質である。
【0091】
本発明により使用する場合、用語「抗体」は、例えばポリクローナルまたはモノクローナル抗体を含む。さらに、依然として標的に対する結合特異性を保持するそれらの誘導体または断片も、用語「抗体」に含まれる。抗体断片または誘導体は、特にFabまたはFab'断片、Fd、F(ab')2、FvまたはscFv断片、一本鎖ドメインVHまたはV様ドメイン、例えばVhHまたはV-NAR-ドメイン、ならびに多量体形態、例えばミニボディ、ダイアボディ、トリボディまたはトリプルボディ、テトラボディまたは化学的にコンジュゲートされたFab'-多量体を含む(例えばHarlow and Lane 「Antibodies, A Laboratory Manual」, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988;Harlow and Lane 「Using Antibodies: A Laboratory Manual」 Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999;Altshuler EP, Serebryanaya DV, Katrukha AG. 2010, Biochemistry (Mosc)., vol. 75(13), 1584;Holliger P, Hudson PJ. 2005, Nat Biotechnol., vol. 23(9), 1126参照)。特に多量体形態は、2つの異なる種類の抗原に同時に結合し得る二重特異性抗体を含む。第1の抗原は、本発明の目的の(ポリ)ペプチド上に見られ得る。第2の抗原は、例えば癌細胞または特定の種類の癌細胞上に特異的に発現される腫瘍マーカーであり得る。二重特異性抗体形態の非限定的な例は、Biclonics (二重特異性、全長ヒトIgG抗体)、DART(二重親和性再標的化抗体)およびBiTE (異なる抗体の2つの一本鎖可変断片(scFvs)からなる)分子である(Kontermann and Brinkmann (2015), Drug Discovery Today, 20(7):838-847)。
【0092】
用語「抗体」はまた、キメラ(ヒト定常ドメイン、非ヒト可変ドメイン)、一本鎖およびヒト化(非ヒトCDRを除くヒト抗体)抗体などの態様を含む。
【0093】
抗体の作製のための種々の技術は当該技術分野で周知であり、例えばHarlow and Lane (1988) and (1999) and Altshuler et al., 2010, loc. citに記載される。そのため、ポリクローナル抗体は、添加剤およびアジュバントと混合した抗原を用いた免疫後に動物の血液から得られ得、モノクローナル抗体は、連続細胞株培養により作製される抗体を提供する任意の技術により作製され得る。かかる技術の例は、例えばHarlow E and Lane D, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988;Harlow E and Lane D, Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999に記載され、Koehler and Milstein, 1975に最初に記載されたハイブリドーマ技術、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(例えばKozbor D, 1983, Immunology Today, vol.4, 7; Li J, et al. 2006, PNAS, vol. 103(10), 3557参照)およびヒトモノクローナル抗体を作製するためのEBVハイブリドーマ技術(Cole et al., 1985, Alan R. Liss, Inc, 77-96)が挙げられる。さらに、組換え抗体は、モノクローナル抗体から得られ得るかまたはファージ、リボソーム、mRNAもしくは細胞ディスプレイなどの種々のディスプレイ法を使用して新たに調製され得る。組換え(ヒト化)抗体の発現のための適切な系は、例えば細菌、酵母、昆虫、哺乳動物細胞株またはトランスジェニック動物もしくは植物から選択され得る(例えば米国特許6,080,560;Holliger P, Hudson PJ. 2005, Nat Biotechnol., vol. 23(9), 11265参照)。さらに、一本鎖抗体の作製のために記載される技術(特に米国特許4,946,778参照)は、エピトープに特異的な一本鎖抗体を作製するように適合され得る。BIAcoreシステムに使用されるような表面プラスモン共鳴は、ファージ抗体の効率を上げるために使用され得る。
【0094】
本明細書で使用する場合、用語「抗体模倣物」は、抗体と同様に抗原に特異的に結合し得るが、抗体とは構造的に関係のない化合物をいう。抗体模倣物は、通常約3~20kDaのモル質量を有する人工のペプチドまたはタンパク質である。例えば、抗体模倣物は、アフィボディ(affibody)、アドネクチン(adnectin)、アンチカリン(anticalin)、DARPin、アビマー(avimer)、ナノフィチン(nanofitin)、アフィリン(affilin)、Kunitzドメインペプチド、Fynomers(登録商標)、三重特異性結合分子およびプロボディ(prododies)からなる群より選択され得る。これらのポリペプチドは、当該技術分野で周知であり、本明細書の以下にさらに詳細に記載される。
【0095】
用語「アフィボディ」は、本明細書で使用する場合、ブドウ球菌タンパク質AのZドメイン由来の抗体模倣物のファミリーをいう。構造的に、アフィボディ分子は、融合タンパク質にも組み込まれ得る三重らせんバンドルドメインに基づく。それ自体において、アフィボディは、約6kDaの分子質量を有し、高温で、酸性またはアルカリ性条件下で安定である。標的特異性は、親タンパク質ドメインの結合活性に関与する2つのαヘリックス中に位置する13アミノ酸の無作為化により得られる(Feldwisch J, Tolmachev V.; (2012) Methods Mol Biol. 899:103-26)。
【0096】
用語「アドネクチン」(「モノボディ」とも称される)は、本明細書で使用する場合、2~3の曝露されたループを有する94残基のIg様βサンドイッチ折りたたみを採用するが、中心のジスルフィド架橋を欠損するヒトフィブロネクチンIIIの10番目の細胞外ドメイン(10Fn3)に基づく分子に関する(Gebauer and Skerra (2009) Curr Opinion in Chemical Biology 13:245-255)。所望の標的特異性を有するアドネクチンは、タンパク質の特定のループ中に修飾を導入することにより遺伝子的に作り変えられ得る。
【0097】
用語「アンチカリン」は、本明細書で使用する場合、リポカリン由来の遺伝子工学で作り変えられたタンパク質をいう(Beste G, Schmidt FS, Stibora T, Skerra A. (1999) Proc Natl Acad Sci U S A. 96(5):1898-903; Gebauer and Skerra (2009) Curr Opinion in Chemical Biology 13:245-255)。アンチカリンは、リポカリン内に高度に保存されたコアユニットを形成し、開放端で4つの構造的に異なるループによりリガンドに対する結合部位を天然に形成する8本鎖βバレルを有する。アンチカリンは、IgGスーパーファミリーと相同ではないが、これまで抗体の結合部位に典型的であると考えられてきた特徴:(i)配列バリエーションの結果としての高い構造的可塑性および(ii)異なる形状を有する標的に対する誘導適合を可能にする高いコンホメーション可撓性を示す。
【0098】
本明細書で使用する場合、用語「DARPin」は、典型的に3つの反復されたβターンから生じる堅い界面を提供する示されるアンキリンリピートドメイン(166残基)をいう。DARPinは通常、人工のコンセンサス配列に対応する3つのリピートを有し、ここで1つのリピート当たり6か所の位置は無作為化される。結果的に、DARPinは、構造的可撓性を欠く(Gebauer and Skerra, 2009)。
【0099】
用語「アビマー」は、本明細書で使用する場合、種々の膜受容体のAドメイン由来であり、リンカーペプチドにより連結される、それぞれ30~35アミノ酸の2つ以上のペプチド配列からなる抗体模倣物のクラスをいう。標的分子の結合はAドメインを介して起こり、所望の結合特異性を有するドメインは、例えばファージディスプレイ技術により選択され得る。しかしながら、アビマーに含まれる異なるAドメインの結合特異性は同一である必要はない場合がある(Weidle UH, et al., (2013), Cancer Genomics Proteomics; 10(4):155-68)。
【0100】
「ナノフィチン」(アフィチン(affitin)としても知られる)は、スルフォロブス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius)のDNA結合タンパク質Sac7d由来の抗体模倣物タンパク質である。ナノフィチンは通常、約7kDaの分子量を有し、結合表面上のアミノ酸を無作為化することにより標的分子に特異的に結合するように設計される(Mouratou B, Beehar G, Paillard-Laurance L, Colinet S, Pecorari F., (2012) Methods Mol Biol.; 805:315-31)。
【0101】
用語「アフィリン」は、本明細書で使用する場合、骨格としてγ-Bクリスタリンまたはユビキチンのいずれかを使用して、これらのタンパク質の表面上のアミノ酸をランダム突然変異誘発により改変することにより開発される抗体模倣物をいう。所望の標的特異性を有するアフィリンの選択は、例えばファージディスプレイまたはリボソームディスプレイ技術により実行される。骨格に応じて、アフィリンは、約10または20kDaの分子量を有する。本明細書で使用する場合、用語アフィリンはまた、アフィリンの二量体化または多量体化形態をいう(Weidle UH, et al., (2013), Cancer Genomics Proteomics; 10(4):155-68)。
【0102】
「Kunitzドメインペプチド」は、ウシ膵臓トリプシン阻害剤(BPTI)、アミロイド前駆体タンパク質(APP)または組織因子経路阻害剤(TFPI)などのKunitz型プロテアーゼ阻害剤のKunitzドメインに由来する。Kunitzドメインは、約6kDAの分子量を有し、必要とされる標的特異性を有するドメインは、ファージディスプレイなどのディスプレイ技術により選択され得る(Weidle et al., (2013), Cancer Genomics Proteomics; 10(4):155-68)。
【0103】
本明細書で使用する場合、用語「Fynomer(登録商標)」は、ヒトFyn SH3ドメイン由来の非免疫グロブリン由来結合ポリペプチドをいう。Fyn SH3由来ポリペプチドは当該技術分野で周知であり、例えばGrabulovski et al. (2007) JBC, 282, p. 3196-3204、WO 2008/022759、Bertschinger et al (2007) Protein Eng Des Sel 20(2):57-68、Gebauer and Skerra (2009) Curr Opinion in Chemical Biology 13:245-255またはSchlatter et al. (2012), MAbs 4:4, 1-12)に記載されている。
【0104】
用語「三重特異性結合分子」は、本明細書で使用する場合、3つの結合ドメインを有し、そのため好ましくは3つの異なるエピトープに特異的に結合し得るポリペプチド分子をいう。三重特異性結合分子は、好ましくはTriTacである。TriTacは、延長された血清半減期を有し、モノクローナル抗体の約1/3のサイズになるように設計された3つの結合ドメインで構成される固形腫瘍のT細胞エンゲージャー(engager)である。
【0105】
本明細書で使用する場合、用語「プロボディ」は、プロテアーゼ活性化可能抗体プロドラッグをいう。プロボディは、忠実なIgG重鎖および改変された軽鎖からなる。腫瘍特異的プロテアーゼにより切断可能であるペプチドリンカーを介して、マスキングペプチドが軽鎖に融合される。マスキングペプチドは、プロボディが健常組織に結合することを防ぎ、それにより毒性の副作用を最小化する。
【0106】
サイトカインは、好ましくはIL-2、IL-12、TNF-α、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL-10、IL-15、IL-24、GM-CSF、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-9、IL-11、IL-13、LIF、CD80、B70、TNFβ、LT-β、CD-40リガンド、Fas-リガンド、TGF-β、IL-1αおよびIL-1βからなる群より選択される。
【0107】
ケモカインは、好ましくはIL-8、GROα、GROβ、GROγ、ENA-78、LDGF-PBP、GCP-2、PF4、Mig、IP-10、SDF-1α/β、BUNZO/STRC33、I-TAC、BLC/BCA-1、MIP-1α、MIP-1β、MDC、TECK、TARC、RANTES、HCC-1、HCC-4、DC-CK1、MIP-3α、MIP-3β、MCP-1-5、Eotaxin、Eotaxin-2、I-309、MPIF-1、6Ckine、CTACK、MEC、LymphotactinおよびFractalkineからなる群より選択される。
【0108】
酵素は、生物学的触媒(生体触媒)として働くタンパク質である。触媒は、化学反応を加速させる。酵素が働き得る分子は基質と称され、酵素は、基質を生成物として知られる異なる分子に変換する。細胞内のほぼ全ての代謝プロセスは、生命を持続させるのに十分速い速度で生じるために、酵素触媒を必要とする。酵素は、好ましくは配列特異的DNAまたはRNAヌクレアーゼであり、該DNAまたはRNAヌクレアーゼは、最も好ましくはCasヌクレアーゼである(例えばCas 9、Cpf1またはCms1)。Casヌクレアーゼは、細胞のゲノム内の所望の位置を特異的に切断し得、正確な位置はガイドRNAにより決定されることに注意。ガイドRNAは、本明細書に上述されるように目的のポリ(ペプチド)に取り付けられ得る。
【0109】
DNAおよびRNAの両方に結合するタンパク質は、単一の遺伝子産物が複数の機能を実行する能力をまとめる。かかるDNA-およびRNA-結合タンパク質(DRBP)は、転写、翻訳、遺伝子サイレンシング、microRNA生合成およびテロメア維持などの多くの細胞性プロセスを制御する。例は、ジンクフィンガー結合タンパク質である。DNA/RNA-結合タンパク質は、好ましくはRNA輸送および/または局在化の原因となるものである。
【0110】
本発明の前述の3つの局面のさらに好ましい態様により、目的のポリ(ペプチド)はさらに、精製タグ、好ましくはHis-タグを含む。
【0111】
そのため、融合タンパク質または複合体は、その精製を容易にする精製タグを含み得る。かかるタグの非限定的な例は、ALFA-タグ、V5-タグ、Myc-タグ、HA-タグ、Flag-タグ、Spot-タグ、T7-タグまたはNE-タグである。His-タグは、実施例に使用され、そのために好ましい。
【0112】
前述の3つの局面のさらに好ましい態様によると、ポリ(ペプチド)およびタグは、ペプチド-リンカー、好ましくはG-リンカーまたはGS-リンカーを介して融合される。
【0113】
融合タンパク質において、タグは、目的の(ポリ)ペプチドに対する1つ以上のペプチド結合により共有的に連結される。1つのみのペプチド結合の場合、目的の(ポリ)ペプチドおよびタグは、互いに直接融合される。
【0114】
前述の好ましい態様によると、目的の(ポリ)ペプチドおよびタグは、GS-リンカーまたはG-リンカーなどのリンカー(2つ以上のペプチド結合を含む)を介して互いに融合される。G-リンカーは、添付の実施例において使用される。
【0115】
本発明は、第4の局面において、5'-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NND)キャップ核酸配列を目的の(ポリ)ペプチドに取り付けるためのキットに関し、ここで該キットは、(a)第1の局面に関して定義されるタグ、(b)5'-NNDキャップ核酸配列をタグまたはARTをコードする核酸分子に共有的に取り付け得るADP-リボシルトランスフェラーゼ(ART)、および(c)任意に、ARTを有するタグを目的の(ポリ)ペプチドにどのように共有的に取り付けるかの指示書を含む。
【0116】
本発明の第1、第2および第3の局面の定義および好ましい態様は、本発明の第4の局面に適用可能である限り、必要な変更を加えて、本発明の第4の局面に適用される。
【0117】
キットは、好ましくはキットの成分についての複数の区画を含み、該区画のそれぞれ1つには1つの成分が充填される。該区画は、例えばチューブまたはバイアル、バッグまたは他のパッケージであり得る。
【0118】
ARTは、好ましくはグリセロール、例えば約50%グリセロール中に提供される。タグは、好ましくは約50mM Tris-HCl (pH7.5)、約300mM NaClおよび約50%グリセロール中に提供される。
【0119】
ARTを有するタグを目的の(ポリ)ペプチドにどのように共有的に取り付けるかの指示書は、好ましくはさらに、該キットに関して使用される反応条件、例えば温度、時間および反応バッファ成分についてのガイダンスを含む。限定されないが好ましい温度および/または時間は、約2hおよび約15℃である。限定されないが好ましい反応バッファは、約50mM Tris-HCl (pH 7.5)、約10mM Mg(OAc)2、約22mM NH4Cl、約1mM EDTA、約10mMβ-メルカプトエタノール、約1%グリセロール、約1μM ADP-リボシルトランスフェラーゼ(ART、例えばModB)、約0.1~10μM(ポリ)ペプチドおよび約1~10μM 5'-NNDキャップ核酸配列を含む。これらの反応条件は、本発明の第1の局面の方法に関しても適用され得る。
【0120】
該指示書は、キットの一部として包含される形態またはリーフレットであり得るが、インターネット上に保存される場合は指示書に方向づけるウェブリンクまたはQRコードの形態でもあり得る。
【0121】
第4の局面の好ましい態様によると、キットはさらに、反応バッファまたはバッファストック溶液を含み、ここで好ましくはバッファストック溶液から調製される反応バッファまたは最終反応バッファは、
50~200mM、好ましくは約100mMの濃度のMg(OAc)2
100~500mM、好ましくは約220mMの濃度のNH4Cl;
250~1000mM、好ましくは約500mMの濃度のTris-酢酸pH7.5;
5~15mM、好ましくは約10mMの濃度のEDTA;
50~200mM、好ましくは約100mMの濃度のβ-メルカプトエタノール;および
5~15%、好ましくは約10%の濃度のグリセロール
を含む。
【0122】
キット内のバッファストック溶液の場合、ARTを有するタグを目的の(ポリ)ペプチドに共有的にどのように取り付けるかの指示書は、好ましくはさらにバッファストック溶液から反応バッファを得るために、ストック溶液の希釈についての情報を含む。バッファストック溶液の非限定的な例は、5xバッファストック溶液および10xバッファストック溶液である。
【0123】
上述の好ましい態様による反応バッファは、ART ModBのために添付の実施例において使用され、本発明の方法において使用する場合にこの酵素に対して非常によく働くことが見出された。この理由で、キットの上述の好ましい態様による反応バッファは、好ましくは本発明の第1の局面の方法にも使用される。
【0124】
第4の局面の好ましい態様によると、キットはさらに、少なくとも0.25M、好ましくは0.5M~2M、最も好ましくは約1Mの濃度でMgCl2の1つ以上を含む。イミダゾリドニコチンアミドモノヌクレオチド(Im-NMN)、ヌクレアーゼ非含有水および陽性対照、好ましくはその3'末端に蛍光標識を含むオリゴヌクレオチドおよび/または本発明の第1の局面に関してタグと融合されるかまたは複合体化される対照ポリ(ペプチド)を含む対照融合タンパク質。
【0125】
MgCl2がキットに含まれる場合、指示書は、好ましくはキットを使用する場合に、EDTAの濃度がMg2+イオンの濃度よりも高くなるべきではないという情報をさらに含む。これは、EDTAがMg2+と錯体を形成し、酵素に接触できないためである。
【0126】
Im-NMNがキットに含まれる場合、指示書は、好ましくはキットを使用する場合に、Im-NMNは、5'-ニコチンアミドヌクレオ塩基ジヌクレオチド(NND)キャップ核酸配列に対して少なくとも1000x倍過剰に使用されるということを伝える。
【0127】
ヌクレアーゼ非含有水は、キットがバッファストック溶液を含む場合に特にキットに含まれる。次いでヌクレアーゼ非含有水は、最終バッファ溶液を調製するために使用される。
【0128】
5'-ニコチンアミドヌクレオ塩基ジヌクレオチド(NND)キャップ核酸配列を、本明細書に上述される融合タンパク質または複合体に取り付けるための方法にキットを使用する場合に、キット構成要素自体が働くかどうかをチェックするために陽性対照が使用され得るが、結果的に所望のRNA化された融合タンパク質または複合体は得られない。かかる失敗のあり得る理由は、例えばタグが目的の(ポリ)ペプチドに十分に取り付けられなかったということであり得る。
【0129】
本明細書、特に特許請求の範囲において特徴付けられる態様に関して、従属項において記載されるそれぞれの態様は、該従属項が従属するそれぞれの請求項(独立または従属)のそれぞれの態様と組み合されることが意図される。例えば、3つの選択肢A、BおよびCを記載する独立項1、3つの選択肢D、EおよびFを記載する従属項2ならびに請求項1および2に従属し、3つの選択肢G、HおよびIを記載する請求項3の場合、そうではないと具体的に記載されない限り、明細書は、組合せA、D、G;A、D、H;A、D、I;A、E、G;A、E、H;A、E、I;A、F、G;A、F、H;A、F、I;B、D、G;B、D、H;B、D、I;B、E、G;B、E、H;B、E、I;B、F、G;B、F、H;B、F、I;C、D、G;C、D、H;C、D、I;C、E、G;C、E、H;C、E、I;C、F、G;C、F、H;C、F、Iに対応する態様を明白に開示することが理解される。
【0130】
同様に、ならびに独立項および/または従属項が選択肢を記載しない場合にも、従属項が複数の先行請求項を戻って参照する場合、それらにカバーされる主題の任意の組合せは、明示的に開示されると考えられることが理解される。例えば、独立項1、請求項1を戻って参照する従属項2ならびに請求項2および1の両方を戻って参照する従属項3の場合、請求項3および1の主題の組合せは、請求項3、2および1の主題の組合せと同様に明確かつ明白に開示されることに従う。請求項1~3のいずれか1項を参照するさらなる従属項4が存在する場合、請求項4および1、請求項4、2および1、請求項4、3および1ならびに請求項4、3、2および1の主題の組合せは、明確かつ明白に開示されることに従う。
【0131】
上述の考察は、必要な変更を加えて全ての添付の特許請求の範囲に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0132】
図面は以下を示す:
図1-1】図1:ADP-リボシル化および提唱される「RNA化」の機構。a. ここで、ADP-リボシル化の機構を、アルギニンについて実験的に示す。最初に、リボースとニコチンアミドの間のN-グリコシド結合は、ARTのグルタミン残基により不安定化される。これは、ADP-リボースのオキソカルベニウムイオンの形成をもたらす。ニコチンアミドは、脱離基として働く。この求電子性イオンは、グルタミン酸媒介プロトン抽出の後に受容体タンパク質の求核性アルギニン残基により攻撃される。これは、N-グリコシド結合の形成をもたらす30
図1-2】b. NADの存在下のADP-リボシル化と類似して、本発明者らは、ARTがNAD-RNAを使用して「RNA化」反応を触媒し得、それによりRNAを受容体タンパク質に共有的に取り付けることを提唱する。
図2-1】図2:ART ModBによるインビトロにおけるrS1の翻訳後タンパク質修飾。a, ModBによるrS1のADP-リボシル化の時間経過(完了のSDS-PAGEゲルを図5bに示す)。b, ModBによるrS1のRNA化の時間経過(完了のSDS-PAGEゲルを図5cに示す)。
図2-2】c, 過剰なNADの存在下におけるModBによるrS1のRNA化のインビトロ動力学。d, SDS-PAGEにより分析した、基質として5'-NAD-100nt-RNA (Qβ-RNA)を使用したModBによるrS1のRNA化のインビトロ動力学(最上部パネル)。シフトしたRNA化rS1を桃色のアスタリスクで強調する。5'-P-100-nt-RNAを陰性対照として使用する(底部パネル)。e, RNA化タンパク質rS1のヌクレアーゼP1消化。共有的に取り付けられた100nt長のRNAは、SDS-PAGEにおいてRNA化タンパク質rS1(約100kDa)のシフトを生じる。ホスホジエステル結合を切断するヌクレアーゼP1によるRNA化タンパク質rS1の処理、これはモノヌクレオチドに取り付けられたRNAの分解を生じる。ヌクレアーゼP1は、RNA化rS1をADP-リボシル化rS1(約70kDa)に変換し得、これはSDS-PAGEゲル上の下方にシフトしたタンパク質バンドにより視覚化され得る。
図3-1】図3:rS1のRNA化部位の同定。a~d, ARH1によるADP-リボシル化およびRNA化の特異的な除去。SDS-PAGEで分析されるADP-リボシル化またはRNA化タンパク質rS1の存在下のARH1の酵素動力学。
図3-2】e, 質量分析による修飾されたアミノ酸残基を同定するためのパイプライン。f, インビトロ修飾タンパク質rS1のMALDI-TOF-MS。ペプチド-ADPRコンジュゲートの単離スキャン(MS1)および偽MS2 (LIFT)スペクトル。所定のペプチドAFLPGSLVDVRPVR(配列番号:11)は、ADPRに連結する場合に2067でピークを生じる。インビトロ修飾タンパク質rS1を用いたMALDI-TOF-MSは、示される2つのスペクトルを生じた。LIFT親イオン単離は、干渉をほとんど有さない所定のMS1を生じた。注意:R5P修飾を有するペプチドに対応するm/z = 1483Thでのシフトしたb12イオン、ADP-リボシル化の脆弱な性質を示す。得られる偽MS2は、ペプチド配列および黄色のボックス内のアルギニン残基上のADPr修飾を確認するために十分な配列決定イオンを生じる。
図4-1】図4:ADP-リボシル化およびRNA化のインビボ特徴付け。a, ヌクレアーゼP1消化およびウエスタンブロット分析を使用したタンパク質rS1 RNA化の定量化の表示。b, インビボでのrS1 RNA化の定量化。
図4-2】c, ADP-リボシル化およびd, RNA化の定量化。rS1ドメイン1~6の修飾。n=2の生物学的に独立した反復。
図4-3】e, S1-モチーフを有するタンパク質のModBによるADP-リボシル化およびRNA化のグラフ表示。
図4-4】f, ModBによるタンパク質rS1、RNase E、不活性NudC変異体(* V157A、E174A、E177A、E178A)およびBSAのRNA化およびADP-リボシル化のSDS-PAGE分析。n=2の生物学的に独立した反復。
図4-5】g, T4の存在下(+T4)または非存在下(-T4)のrS1レベルの定量化、n=4。h, T4感染の間のADP-リボシル化およびRNA化修飾のARH1-媒介除去。i, ARH1-WTまたはその不活性変異体ARH1 D55,56Aのプラスミド運搬コピーを発現する大腸菌のバクテリオファージT4-媒介溶解の時間経過。
図5-1】図5:T4 ARTによるADP-リボシル化およびRNA化。a, ART AltおよびModAの機能的特徴付け。SDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーにより分析されるNADまたはNAD-RNAを使用したAltによる自己および標的修飾。b, SDS-PAGEにより分析されるModBによるrS1のADP-リボシル化の時間経過。
図5-2】およびc, SDS-PAGEにより分析されるModBによるrS1のRNA化の時間経過。d, ModBによるrS1のRNA化の陰性対照。RNA化アッセイは、32P-RNAの存在下、rS1の非存在下(-rS1)またはModBの非存在下(-ModB)で行った。
図6-1】図6:ModBによるタンパク質rS1のRNA化の特徴付け。a, ART阻害剤3-メトキシベンズアミド(3-MB)を介したModBによるタンパク質rS1のインビトロRNA化の阻害。反応は、32P-NAD-RNA 8マー(32P-NAD-8マー)および32P-RNA 8マー(陰性対照)を用いて行った。b, RNase T1によるRNA化およびADP-リボシル化タンパク質rS1のインビトロ消化。RNase T1の非存在下(-)で行った反応は、陰性対照として働く。32P-NADの存在下のタンパク質rS1 ADP-リボシル化は参照として適用された(S1-ADPr)。
図6-2】c, NudC (矢印で記される)およびアルカリ性ホスファターゼ(AP)によるADP-リボシル化およびRNA化タンパク質rS1のインビトロ処理、ならびにADP-リボシル化およびRNA化タンパク質rS1のトリプシン消化。全ての試料は12% SDS-PAGEにより分析した。左パネル:クーマシー染色ゲル、真ん中のパネル:オートラジオグラフィースキャン、右パネル:クーマシー染色とオートラジオグラフィースキャンの重ね合わせ。
図7-1】図7:基質としてのNAD-RNAについてのModBの特異性の特徴付け。a, 32P-NAD-RNAおよび過剰な非標識NADを使用した競合実験により、前者に対するModBの好ましさが明らかにされた(図2c、dを比較)。ADPr-rS1は参照として働く。b, RNAの5'-NAD-キャップの存在に対するRNA化依存性の分析。5'-NAD- (NAD-32P-Qβ)、5'-一リン酸-(5'-P32-Qβ)または5'-三リン酸-Qβ-RNA (5'-P32PP-Qβ)のいずれかの存在下のModBによるタンパク質rS1のインビトロRNA化の10% SDS-PAGE分析。
図7-2】c, ModBの基質としてのADPr-RNAの特徴付け。陽性対照として、NAD-8マーを適用した。全ての反応は12% SDS-PAGEにより分析した。左パネル:クーマシー染色ゲル、真ん中のパネル:オートラジオグラフィースキャン、右パネル:クーマシー染色とオートラジオグラフィースキャンの重ね合わせ。
図8図8:化学的および酵素的処理を使用したRNA化の特異的除去。a, 異なるADP-リボース-タンパク質連結は、HgCl2および中性ヒドロキシルアミンの存在下で安定または不安定のいずれかであると示され、これはADP-リボシル化部位を同定するための比較的直接的で迅速なアプローチを示す。ヒドロキシルアミンによる処理は、グルタミン酸およびアスパラギン酸およびADP-リボースの間の連結を加水分解する。HgCl2は、チオール-グリコシド結合を特異的に切断する。ADP-リボシル化およびRNA化タンパク質rS1を、ヒドロキシルアミンまたはHgCl2で処理した。ADPrまたはRNAの除去は、タンパク質rS1の放射性シグナルの低下を生じた。全ての試料は12% SDS-PAGEにより分析した。対照(未処理)との比較における放射性シグナルの低下は測定されなかった。b, 12% SDS-PAGEにより分析されたARH1またはARH3の存在下のRNA化タンパク質のインビトロ動力学。
図9-1】図9:ペプチドリボース-5-リン酸を有するrS1ペプチドのLC-MS2スペクトル。インビボ実験からのR139およびR426でのペプチドリボース-5-リン酸(R5P)修飾を有するrS1ペプチドのLC-MS2スペクトル。手動で検証したスペクトルの十分なペプチド配列カバー率により、唯一アルギニンがインビボで修飾されたアミノ酸であると明らかにされる。ADPrはLC-MS検出を回避したが、本発明者らは、リボース-5-リン酸(R5P)、m/z = 212.0086Thを、ADPrのより短い断片であると、信頼性高く、明白に同定した。R5P-連結アルギニン残基は黄色のボックスで囲む。
図9-2】図9:ペプチドリボース-5-リン酸を有するrS1ペプチドのLC-MS2スペクトル。インビボ実験からのR139およびR426でのペプチドリボース-5-リン酸(R5P)修飾を有するrS1ペプチドのLC-MS2スペクトル。手動で検証したスペクトルの十分なペプチド配列カバー率により、唯一アルギニンがインビボで修飾されたアミノ酸であると明らかにされる。ADPrはLC-MS検出を回避したが、本発明者らは、リボース-5-リン酸(R5P)、m/z = 212.0086Thを、ADPrのより短い断片であると、信頼性高く、明白に同定した。R5P-連結アルギニン残基は黄色のボックスで囲む。
図10-1】図10:インビボにおけるrS1のR139のADP-リボシル化およびRNA化の特徴付け。インビボ試料から単離されたペプチドAFLPGSLVDVRPVRTHLEGKは、黄色のボックスにより示されるように、R139でR5P修飾を有する。R142での誤った切断のためにペプチドがより長かったとしても、ペプチド配列および修飾部位は信頼性高く決定された。rS1 R139AまたはR139K変異体から同定されたペプチドAFLPGSLVDVAPVRTHLEGKは、139位でR5P修飾を有さない。
図10-2】図10:インビボにおけるrS1のR139のADP-リボシル化およびRNA化の特徴付け。インビボ試料から単離されたペプチドAFLPGSLVDVRPVRTHLEGKは、黄色のボックスにより示されるように、R139でR5P修飾を有する。R142での誤った切断のためにペプチドがより長かったとしても、ペプチド配列および修飾部位は信頼性高く決定された。rS1 R139AまたはR139K変異体から同定されたペプチドAFLPGSLVDVAPVRTHLEGKは、139位でR5P修飾を有さない。
図11図11:ウエスタンブロット分析によるADP-リボシル化およびRNA化のインビボ特徴付け。a, pan-ADPr抗体の基質特異性の分析。インビトロで調製されたADP-リボシル化またはRNA化タンパク質rS1を、抗体の特性を評価するために適用した。b, ウエスタンブロットによるヌクレアーゼP1消化およびタンパク質-連結ADP-リボースの検出の組合せを使用したRNA化の定量化。TCE染色によるタンパク質充填の視覚化。ARH1処理によるADP-リボースシグナルの除去。対応する棒グラフを図4に示す。
図12-1】図12:インビトロにおけるModBによるrS1ドメインD1~D6およびPNPaseのS1モチーフのADP-リボシル化およびRNA化。a, rS1のrS1-モチーフ、ドメイン1 (2MFI)、2 (2MFL)、4 (2KHI)、5 (5XQ5)および6 (2KHJ)の結晶構造(PDB)ならびにドメイン3のNMR構造の概略的表示1。b, T-coffee expressoを使用したrS1のD2およびD6ならびにPNPaseのS1ドメインの整列2。D2のR139は矢印で強調される。
図12-2】c, ADP-リボシル化および
図12-3】d, RNA化実験は、三重に行い、16%トリシンSDS-PAGEにより分析した、(L=ラダー)。ModBおよびS1ドメインは、黒色矢印で記される。非修飾タンパク質と比較して有意なシフトにより特徴付けられるRNA化rS1ドメインは、赤色矢印で強調される。n=2の生物学的に独立した反復。反応は、ModBの基質として32P-NADまたは32P-NAD-RNA 8マーを使用して行った。
図13-1】図13:ADP-リボシル化およびRNA化に対するrS1ドメイン2のR139の影響の特徴付け。a, 16%トリシン-SDS-PAGEによるrS1ドメイン2ならびにその変異体R139AおよびR139KのADP-リボシル化の分析。b, rS1ドメイン2ならびにその変異体R139AおよびR139KのADP-リボシル化の相対強度の定量化。n=2の生物学的に独立した反復。
図13-2】c, 16%トリシン-SDS-PAGEによるrS1ドメイン2ならびにその変異体R139AおよびR139KのRNA化の分析。NudC V157A、E174A、E177A、E178A (NudC*)の不活性バージョンを使用した。d, rS1ドメイン2ならびにその変異体R139AおよびR139KのRNA化の相対強度の定量化。n=2の生物学的に独立した反復。
図14-1】図14:ADP-リボシル化およびRNA化のインビボ特徴付け。a, ウエスタンブロットにより分析したFlag-タグのrS1への染色体融合を有するT4-感染(+T4)または非感染(-T4)大腸菌のADP-リボシル化の時間経過。インビトロで調製したrS1-ADPrは陽性対照として働く、n=4。b, ARH1 WTおよび不活性ARH1 D55,56Aの存在下でのバクテリオファージT4感染の間のFLAG-rS1のアバンダンスを特徴づけるためのウエスタンブロット。ARH1 WTまたはARH1 D55,56Aの同等の発現は、His-タグ特異的抗体を使用して、ウエスタンブロッティングにより検証した。ARH1 WTの過剰発現は、pan-ADPrシグナルの有意な低下を生じる。
図14-2】c, ARH1 WTまたは不活性ARH1 D55,56Aを過剰発現するT4ファージ感染大腸菌におけるFLAG-rS1レベルの定量化。FLAG-rS1レベルは、bに示されるウエスタンブロッティングにより決定した。
図15図15:インビトロでの3'Cy5標識NAD-キャップRNAを使用したModBによるrS1のRNA化。ModBの酵素動力学は、3'-Cy5標識を有するNAD-キャップ-10マーの存在下で実施した。rS1は、RNA化の際に蛍光(Cy5)を生じるModBについての標的として使用した。Typhoonスキャナーを使用して蛍光シグナルを視覚化した。試料は12% SDS-PAGEにより分析した。
図16図16:5'P-X-10マー-Cy5 RNAの調製。A) 5'-P-X-RNAを、1000倍過剰のIm-NMN、50mM MgCl2の存在下、50℃で5時間インキュベートした。(23)に記載されるように、Im-NMNの5'-一リン酸基へのカップリングにより5'-NXD-RNAを作製した。B) 分析APBゲル電気泳動によるNXD-キャッピングの分析。5'-P-X-RNAは陰性対照として働いた(n=1)。C) NXD-RNAキャッピング反応の計算された収率の比較。
図17図17:5'-NXD-RNAの存在下でのModBによるrS1およびrS1 DIIのRNA化反応。A) ModBによるrS1タンパク質についての提唱されたRNA化反応機構を示す。rS1タンパク質を、ModBの存在下でそれぞれの5'-NXD-RNAとインキュベートしてRNA化rS1を作製した。B) ModBによるrS1 DIIのRNA化反応を示す。それぞれの5'-NXD-RNAの存在下で、全RNA鎖はrS1 DIIに共有的に連結されて、RNA化rS1 DIIを作製した。C) ModBの基質として異なるNXD-RNAを使用したrS1およびrS1 DIIの相対的RNA化効率。
図18図18:ModBによる、異なってキャッピングされるRNAの存在下でのrS1およびrS1 DIIのインビトロRNA化。A、B) 5'-P-X-10マー-Cy5または5'-NXD-10マー-Cy5 RNAの存在下でのrS1のRNA化反応は、12% SDS-PAGEにより分析した。RNA化rS1は、5'-NXD-RNAおよびModBの存在下で、シフトしたバンドとして検出された(n=2)。C、D) 5'-P-X-10マー-Cy5または5'-NXD-10マー-Cy5 RNAを用いたrS1 DII RNA化反応は、15%トリシン電気泳動により分析した。シフトしたRNA化rS1 DIIは、5'-NXD-RNAおよびModBの存在下で観察された(n=2)。
図19図19:異なってキャップされたRNAを用いたRNA化rS1のインビトロARH1消化動力学。RNA化ADPr-RNA-rS1 (A)、GDPr-RNA-rS1 (B)、CDPr-RNA-rS1 (C)またはUDPr-RNA-rS1 (D)タンパク質を、0、2、5、10、30、60、120および180分間ARH1消化に供した。12% SDS-PAGEにより反応を分析した。E) ARH1処理の間の相対RNA化レベルの計算された平均、N=2。F) ARH1によるRNA化(XDPr-RNA)-rS1からXDPr-RNAを除去する機構の概略的表示。
図20図20:ModBによる、異なってキャップされるDNAの存在下でのrS1およびrS1 DIIのインビトロRNA化。A、B) 5'-P-X-10マー(DNA)-Cy5または5'-NXD-10マー(DNA)-Cy5 RNAの存在下のrS1のRNA化反応は、12% SDS-PAGEにより分析した。5'-NXD-DNAおよびModBの存在下で、RNA化rS1はシフトしたバンドとして検出された(n=2)。(N=3)。
図21図21:A) ModBの基質として異なるNXD-DNAを使用したrS1の相対的RNA化効率、(N=3)。
図22図22:異なってキャップされるDNAを用いたRNA化rS1のインビトロARH1消化動力学。RNA化dADPr-DNA-rS1、dGDPr-DNA-rS1、dCDPr-DNA-rS1またはdUDPr-DNA-rS1タンパク質を、0、2、5、10、30、60、120および180分間のARH1消化に供した。反応は12% SDS-PAGEにより分析し、ARH1処理の間の相対的RNA化レベルの平均を計算した。
【発明を実施するための形態】
【0133】
実施例により本発明を説明する。
【実施例
【0134】
実施例1-T4 ARTはインビトロでRNA化を触媒する
ARTが基質としてNAD-RNAを受容し得るという仮説を試験するために、3つのT4 ARTを精製して、合成の部位特異的に32P標識された5'-NAD-RNA 8マーとインキュベートし、自己修飾または標的タンパク質の修飾のいずれかについて試験した。修飾は、ARTまたは標的タンパク質のそれぞれによる32P標識の取得により示される。AltおよびModAの両方は、低い程度の自己および標的RNA化のみを示した(図5a)が、SDS-PAGEゲルにおける予想移動度を有する放射性バンドにより示されるように、ModBは、その公知の標的リボソームタンパク質S1(rS1)を、検出可能な自己RNA化なく、迅速にRNA化した。対照的に、32P-NADの存在下のADP-リボシル化は、同様の放射性バンド強度を伴って両方のタンパク質(ModBおよびrS1)の修飾を生じた(図2a、bおよび図5b、c)。放射性バンドは、ModBもしくはrS1のいずれかが欠損した場合または同じ配列の5'-32P-一リン酸-RNA(5'-32P-RNA)がModBの基質として使用された場合には見られなかった(図5d)。
【0135】
実施例2-ModBは、NADよりもNAD-RNAを好む
rS1のModB-触媒RNA化は、ART阻害剤3-メトキシベンズアミド(3-MB)により強力に阻害された(図6a)。放射性rS1バンドは、反応生成物をRnase T1で処理した場合に消失しなかった。この処理は、RNAが、rS1に非共有結合した場合または5'-末端位置以外を介して共有的に連結された場合に32P標識を除去した(図6b)。種々の非カノニカルキャップ構造においてピロリン酸結合を加水分解する細菌性酵素NudC 21は、53%だけ放射性シグナルの低下を生じ(図6c)、リボース5'-リン酸修飾rS1の生成が示された。しかしながら、放射性バンドは、トリプシン(rS1を消化する)での処理の際に全体的に消失した(図6c)。まとめると、これらのデータは、図1bに示されるように、ジホスホリボシド連結を介したRNAのrS1への共有連結を強く支持する。
【0136】
32P-NAD-RNAおよび過剰な非標識NADを使用した競合実験により、インビボでの修飾反応に重要である前者についてのModBの優先が明らかにされ、ここでNADは、NAD-RNAよりもかなり豊富である(図2cおよび図7a)。ModBはまた、同等の活性を有するより長い生物学的に関連のあるRNA(例えば約100ntのQβ-RNA断片22図2dおよび図7b)を受容した。このNAD-キャップ-Qβ-RNAを用いたRNA化は、タンパク質rS1(約70kDa)を、SDS-PAGEゲル上で100kDaタンパク質と同様に移動させた(図2e)。3'-5'ホスホジエステル結合を加水分解するが、5'-ADP-リボースのピロリン酸結合は攻撃しないヌクレアーゼP1を用いたRNA化タンパク質の処理によりこのシフトは戻り、放射性生成物は、非修飾rS1またはADPr-rS1と同様に移動し(図2e)、共有的連結の提唱された性質が再度確認された。
【0137】
ModBが、加水分解によりNAD-RNAからちょうどニコチンアミド部分を除去して、(その被覆されたアルデヒド基を介して)その付近で求核基と自発的に反応し得る高度に反応性のリボシル部分を生じ得る可能性を排除するために23、真のADP-リボース-修飾RNA(部位特異的32P標識)を調製して、それを基質として試験した。放射性バンドは見られず(図7c)、自発的ADP-リボシル化についての支持は提供されなかった。
【0138】
実施例3-ModBはrS1において特定のアルギニンを修飾する
RNA化の際にRNA鎖が共有的に連結されるタンパク質rS1中のアミノ酸残基を同定するために、タンパク質ADP-リボシル化を分析するために開発されたツールを利用した。RNA化タンパク質rS1(図2bにおいて調製される)の放射性シグナルは、HgCl2(Cysにより生じるS-グリコシド残基を切断する)、NH2OH(O-グリコシドを加水分解する)(図8a)および組換え酵素ARH3(セリン残基でO-ADPrグリコシドを特異的に加水分解する)(図8b)を用いた処理の際に変化せず、ヒトARH1を用いた処理により有効に除去された(図3a~d)24。これらの所見は、ModB-触媒RNA化反応の主要な生成物(1つまたは複数)が、アルギニン残基を介してN-グリコシドとして連結されることを示す(図3a、bに示されるものと同様)。
【0139】
ModBにより標的化されるアミノ酸残基を同定するために、インビトロで修飾されたrS1を、トリプシン消化、クロマトグラフィー精製および質量分光分析に供した。このLC/MS/MS分析により、rS1中の3つの特定の修飾部位、すなわちR19、R139およびR426が明らかにされた(図9)。
【0140】
インビボにおけるT4 ARTによるRNA化の生物学的有意さを確立するために、(タグ付加されない)タンパク質rS1を、非感染およびT4感染大腸菌のそれぞれから内因的に単離した。大腸菌は、有意な量の内因性NAD-RNAを有する4、6。リボソームを単離して、ポリ-U-セファロースによりrS1を引きおろし、LC/MS/MS分析に供した(図3e)。この実験により、インビトロデータを確認し、T4-感染試料中のみでホスホリボース修飾が豊富である同じ3つの部位、すなわちR19、R139およびR426が明らかにされた(図3f)。部位誘導突然変異誘発により、修飾された残基がさらに確認され:タンパク質rS1のR139KおよびR139A変異体を、T4感染大腸菌内で発現させ、精製および分析して、これらの突然変異が修飾を禁止することを明らかにした(図10)。
【0141】
実施例4-インビボにおけるRNA化の検出
質量分光計パイプラインにより、同じ方法で、すなわちリボース-5'-リン酸塩またはADPr断片としてADP-リボシル化およびRNA化を検出した。2つの修飾を区別するために、抗体様ADP-リボース結合試薬(「pan-ADPr」)を用いるイムノブロッティングアッセイを考慮した。pan-ADPrの特異性は、インビトロ調製ADP-リボシル化またはRNA化タンパク質のそれぞれを用いたウエスタンブロッティングにより調査した(図11a)。予想されるとおり、rS1-ADPrおよびModB-ADPrは両方pan-ADPrにより認識され、高い強度を有するバンドを生じたが、rS1-RNAについてシグナルは観察されず、pan-ADPrはリボース部分の3'-伸長を許容しないことが示唆された。しかしながら、pan-ADPr処理の前にrS1-RNAをヌクレアーゼP1で消化して、それによりRNAを分解して同様にrS1-ADPrを残した場合、真のrS1-ADPrと同等の強いシグナルがブロットにおいて見られた(図4a)。
【0142】
このイムノブロッティングアッセイは、インビボでのADP-リボシル化およびRNA化を調べるために適用された。rS1のプラスミド運搬コピーは、非感染またはT4-感染大腸菌に適用した。その後、rS1をアフィニティー精製して、そのADP-リボシル化をpan-ADPrブロッティングにより分析した(データ図11b)。本発明者らの質量分光計データと一致して、この実験により、T4-感染試料のみにおいて、rS1の広範囲のADP-リボシル化が明らかにされた。ヌクレアーゼP1-処理の後、rS1バンドのpan-ADPrシグナル強度は有意に増加し(図4b)、修飾されたrS1の約30%がインビボにおいてRNA化されたことが示された(P1-処理とヌクレアーゼ未処理の試料の間の差として測定)。さらに、ADP-リボースについてのシグナルはARH1処理の際に消失し、RNA-タンパク質連結の性質が再度確認された(図11b)。
【0143】
実施例5-ModBについての認識モチーフ
ModBがその標的をどのように同定するかは難問を残す。標的タンパク質rS1は、オリゴヌクレオチド結合(OB)ドメインを含む22。OB折りたたみの1つの構造的バリアントは、配列が異なる6コピー中のrS1に存在するS1ドメインである(図12a、b)。S1ドメインは、ModBにより基質認識に重要であり得ると推測された。異なるrS1ドメインに対するMobBの特異性を特徴づけるために、rS1のそれぞれのS1ドメイン位を個々にクローニングして、発現させ、精製し、それらをRNA化アッセイにおいて適用した(図4c、dおよび図12c、d)。rS1ドメインについて、D2およびD6の高RNA化シグナルを決定した。比較において、rS1 D1、D3、D4およびD5ドメインを、かなり低い程度まで修飾した。rS1のD2およびD6、ならびにPNPaseのS1ドメイン、S1ドメインを有する別のタンパク質大腸菌の整列により、これらのS1モチーフが、β-バレルの鎖3および4を連結するループの一部としてアルギニン残基を共有することが明らかにされた25(図12b)。このループは、β-バレルの頂部で詰め込まれ、それにより同様にModBについてアクセス可能である。rS1 D2について、この特定の残基は、質量分析により修飾されたことが示されたR139である(図3f)。突然変異分析により、R139がアラニンまたはリジンにより置換される場合に、D2のADP-リボシル化レベルが劇的に低減されることが確認された(図13)。これらの所見に基づいて、鎖3および4の間のループ中にアルギニンを有するS1ドメインを保有する他の大腸菌タンパク質をスクリーニングし、Rnase Eが同定された。本発明者らのインビトロアッセイにおいて、その活性部位中にS1モチーフを有するRnase EはModBにより有効に修飾され、S1ドメインを有さない対照タンパク質(BSA、NudC不活性4倍変異体)は修飾されず、RNA化標的モチーフとして埋め込まれたアルギニンを有するS1ドメインのサブグループの同定が支持された(図4e、f)。
【0144】
実施例6-修飾およびT4複製サイクル
rS1は、大腸菌中の事実上全ての細胞性mRNAの翻訳に必要とされる重要なRNA-結合タンパク質である。ModBによるrS1修飾の生物学的な結果を調査するために、rS1とFLAG-タグの染色体融合を含む大腸菌株を使用して、T4感染の間にrS1レベルを分析した(図4gおよび図13a)。感染の直後に、rS1レベルは急速に低下し、それらは、T4の非存在下では20分かけて適度に増加した。そのため、ADP-リボシル化および/またはRNA化は、rS1の安定性に影響し得ると推測された。この仮説を試験するために、ADP-リボースおよび連結するRNAを除去すると考えられるヒトARH1を、T4感染の間に大腸菌中で過剰発現させた。対照として、大きく不活性のARH1 D55, 56A変異体を過剰発現させた。実際に、活性なARH1を用いて、ADP-リボシル化シグナルは劇的に低下し(図14b)、変異体は、親の株と同様のパターンを示した(図14a)。これらの構築された大腸菌株を使用して、rS1レベルに対するADP-リボシル化およびRNA化の影響を、ファージ感染の間に分析した。実際に、活性なARH1を発現する株は、非感染試料と同様に、経時的なrS1レベルの増加を示し、変異体株は、ARH1を有さないT4-感染試料と同様に低下したレベルを示した(図14b、c)。そのため、ファージ感染の間のADPrおよびRNA鎖の除去は、rS1レベルの安定化と同時に起こる。
【0145】
これらの修飾がファージの溶原性の挙動に重要であるかどうかを調べるために、ARH1またはその不活性変異体のいずれかを発現する大腸菌株をT4に感染させ、光学密度を経時的にモニタリングした(図4i)。不活性変異体株において、細菌性溶解は感染の50分後に開始し、活性ARH1を過剰発現させた場合に溶解の遅延(120分)が観察された(図4i)。まとめると、これらのデータは、ADP-リボシル化および/またはRNA化が、タンパク質安定性を障害し、T4感染の経路および効率を調節することを示す。
【0146】
実施例7-NND(=NXD)-キャップRNAおよびDNAを使用したタンパク質のRNA化
この実施例には、ModBが、RNA化反応の基質として5'-NAD-RNAに加えて5'-NGD-、NCD-またはNUD-キャップ-RNAを受容することが示される。NADからNGD、NCDまたはNUDへのRNA-キャップの交換は、ModBの触媒活性を変化しない。この所見は、ModBの触媒ポケットがNADのアデノシン部分を感知しないことを示す。対照的に、ニコチンアミド部分は、ModBによる基質認識に決定的であり得る。さらに、天然に存在しないNGD-、NCD-またはNUD-RNAキャップを適用することにより、RNA化反応の基質として5'-NXD-RNAの柔軟かつ適用可能な設計が可能になる。そのため、ModBの標的タンパク質は、任意の好ましいRNA配列によりRNA化され得る。最終的に、この実施例には、GDPr-、UDPr-およびCDPr連結RNAが、ヒトADP-リボースヒドロラーゼARH1により除去されず、それによりRNA-タンパク質安定性の増加を示すことが示される。これらの特性は、将来、インビボにおいて真核生物系に適用され得る新規のインビトロRNA-タンパク質コンジュゲートを作製するための基礎を設定する。
【0147】
7.1 イミダゾリド反応は全ての一リン酸化RNAの有効な5'-NXD-キャッピングをもたらした
全ての生物界において説明されているNAD-RNAと比較して、NUD-RNA、NCD-RNAおよびNGD-RNAは、生物系においてまだ説明されていない。したがって、NXD-キャップRNAがRNA化の基質として適用され得るかどうかを検証するために、化学合成によりそれらが作製された。ここで、5'-一リン酸化-RNAの5'-NXD-キャッピングは、Im-NMNを、RNAの5'-一リン酸基にカップリングすることにより、イミダゾリド反応を使用して達成された(図16A)。キャッピング反応効率を調べるために、反応生成物を、APBゲル電気泳動により特徴付けた(図16B)。計算された5'-NXD-RNA収率は、反応のキャッピング効率が、NUDキャッピングに対応する42.8%~NADキャッピングについて観察される66.2%の範囲であることを示した。NGDおよびNCDについて、それぞれ52.4%および45.0%のキャッピングが計算された(図16C)。キャッピング効率は以前の報告と一致した。
【0148】
7.2 ModBはRNA化反応の基質として5'-NXD-キャップRNAを受容する
NXD-キャップRNAの成功裡の調製により、ModBの基質範囲を試験することが可能になった。全ての試験された5'-NXD-キャップ-RNAが、RNA化反応のためにModBにより受容され得ると仮説が立てられた。
【0149】
図17Aおよび17Bは、rS1およびrS1 DII RNA化反応の提唱された機構を示す。5'-NXD-10マー-Cy5 RNAの存在下、ModBは、RNA化反応により全RNA鎖を標的タンパク質に共有的に連結し得る。
【0150】
NXD-キャップRNAがModBの新規の基質として適用され得るかどうかを検証するために、インビトロRNA化反応を行った(図17Cおよび図18)。RNA化反応は、ModBの存在下および非存在下で、5'-P-X-RNA(陰性対照)および5'-NXD-RNAを使用して行った。NAD-RNAは、陽性対照およびRNA化についての参照として働いた。データにより、ModBによるrS1タンパク質のRNA化は、キャップ構造内に位置づけられる第2のヌクレオチドに関係なく達成されたことが示される。NGD-RNA、NCD-RNAまたはNUD-RNAは、ModBによるRNA化の新規の基質として受容されることが同定された。さらに、NXD-RNAを用いたrS1のRNA化は、タンパク質サイズを変化させ、非修飾タンパク質と比較して修飾タンパク質の現在の挙動の変化を引き起こす(図18Aおよび18B)。
【0151】
5'-NGD-RNAまたは5'-NUD-RNAの存在下のrS1の計算されたRNA化収率は、5'-NAD-RNAを用いたRNA化と同様であった。驚くべきことに、5'-NCD-RNAを用いたRNA化反応は、5'-NAD-RNAよりも4倍高い収率を生じた(図3C)。rS1が非酵素的な方法でRNAに共有結合しないと仮定すると、ModBの非存在下でRNA化は検出されなかった。さらに、5'-P-X-RNAは、ModBにより基質として受容されず、RNA化反応は、5'-NXD-キャップRNAの存在下のみで起こった(図18Aおよび18B)。
【0152】
rS1は、ModBにより5'-NXD-RNAの存在下でRNA化され得ることが示され得る。また、異なる標的タンパク質が、基質としてNXD-RNAを使用して、ModBによりRNA化され得るかどうかという質問が尋ねられた。そのため、ModBによる別の標的タンパク質、rS1 DIIのRNA化を、5'-NXD-RNAの存在下で特徴付けた。既に調べられたrS1(68kDa)とは対照的に、rS1 DIIは、9.7kDaの分子量を有する小さなタンパク質である。
【0153】
rS1タンパク質と同様に、rS1 DIIは、5'-NXD-RNAの存在下でModBによりRNA化されたことが示され得る。さらに、RNA化タンパク質の異なるサイズのシフトが観察され得る(図18Cおよび18D)。計算されたRNA化効率により、rS1について記載されるものと同じ傾向が明らかになる。再度、rS1 DIIの最高のRNA化は、NCD-RNAの存在下で観察された(図17C)。
【0154】
したがって、データにより、rS1およびrS1 DIIの両方は、5'-NXD-RNAおよびModBの存在下で成功裡にRNA化されたことが示される。さらに、RNA化効率は、標的タンパク質間で異ならず、種々の標的タンパク質が、それらの分子量とは関係なく同じ効率でRNA化され得ることが意味される。
【0155】
7.3 ARH1は、ADP-リボシル-アルギニン残基のN-グリコシド結合を特異的に加水分解する
真核生物系において、ARH1は、ADP-リボシル化の除去における主要な役者である。そのため、真核生物系に適用されるインビトロ調製RNA化タンパク質コンジュゲートの安定性は、ARH1の酵素活性に依存する。GDPr-RNA、CDPr-RNAまたはUDPr-RNAに共有結合したADP-リボース-RNAの交換は、ARH1による基質認識を変化させると推測された。
【0156】
共有的に連結したXDPr-RNAがARH1により除去されるかどうかを試験するために、5'-NXD-RNAを用いたrS1タンパク質RNA化を、ARH1によりインビトロで消化した(図19)。5'-NAD-RNAを用いたrS1タンパク質RNA化(ADPr-RNA-rS1)は、ARH1消化についての陽性対照として働いた。ARH1は、ADPr-RNA-rS1からADPr-RNAを有効に除去することが示され得る。相対的RNA化レベルは、ARH1処理の30分後に20%まで低下した(図19A、E)。対照的に、ARH1は、RNA化GDPr-RNA-rS1、CDPr-RNA-rS1またはUDPr-RNA-rS1タンパク質から、GDPr-RNA、CDPr-RNAまたはUDPr-RNAを除去し得なかった(図19B~E)。ADPr-RNAの存在下のRNA化の加水分解と比較して、反応は、CDPr-RNA-およびUDPr-RNAのそれぞれの存在下で40倍および20倍遅く起こる。したがって、ARH1は、ADP-リボシル-アルギニン残基のN-グリコシド結合を特異的に加水分解する。
【0157】
7.4 NND(=NXD)-キャップDNAを使用したタンパク質のRNA化
ModBにより異なってキャップされるDNAの存在下のrS1およびrS1 DIIのインビトロRNA化は図20にある。5'-P-X-10マー(DNA)-Cy5または5'-NXD-10マー(DNA)-Cy5 RNAの存在下のrS1のRNA化反応を12% SDS-PAGEにより分析した。RNA化rS1は、5'-NXD-DNAおよびModBの存在下でシフトしたバンドとして検出された(n=2)。
【0158】
また、ModBの基質として異なるNXD-DNAを使用したrS1の相対的なRNA化効率を試験した(etsed)(図21)。
【0159】
最終的に、異なってキャップされるDNAを用いたRNA化rS1のインビトロARH1消化動力学を分析した(図22)。この分析について、RNA化dADPr-DNA-rS1、dGDPr-DNA-rS1、dCDPr-DNA-rS1またはdUDPr-DNA-rS1タンパク質を、0、2、5、10、30、60、120および180分間ARH1消化に供し、反応を分析した。
【0160】
実施例8-考察
8.1 実施例1~7の考察
今日まで、RNAとタンパク質との間の全ての相互作用は、非共有的相互作用に基づくように記載される26。対照的に、本明細書において、ADP-リボシルトランスフェラーゼは、NND-キャップRNAを、共有的な様式で標的タンパク質に取り付け得ることが示される。この所見は、細菌中のRNAに対するNND-キャップの異なる生物学的機能、すなわち受容体タンパク質への酵素的転移についてのRNAの活性化を示す。バクテリオファージT4による細菌性大腸菌の感染において役割を果たす新規の翻訳後タンパク質修飾である標的タンパク質のRNA化が発見された。本発明者らのデータは、T4 ART ModBが、S1 RNA結合ドメインを有するタンパク質を修飾することを示す。修飾される特定のアルギニン残基が同定され、それにより標的タンパク質の分子量および負の電荷を増加し、確実に、修飾されたタンパク質の特性および機能の大きな変化を引き起した。細菌性の翻訳および転写における決定的な役者の翻訳後修飾は、公知のADP-リボシル化およびバクテリオファージ病原性について新規に発見されたRNA化反応の重要性を示す。これらの修飾を除去するヒトADPリボシルヒドロラーゼARH1の大腸菌への導入は、ファージ感染の際の細菌溶解の有意な遅延を引き起こした。
【0161】
ARTがRNAを翻訳に関連するタンパク質に取り付ける理由は、これらのRNAが、(例えば塩基対形成により)ファージタンパク質をコードするmRNAを優先的にリボソームに会合させ、それによりそれらの生合成を保証することを補助するということであり得る。同様に、大腸菌におけるRNA代謝回転における主要な役者であるRnase Eが、その触媒中心でModBによりRNA化されるという観察は、AltおよびModAによる転写の再プログラミングの後にT4ファージが、宿主においてRNA分解を遮断して、ファージmRNAの長い半減期を確実にすることを示唆し得る。本発明者らは、それらの生化学的機構の解明を可能にする、標的タンパク質に取り付けられるRNAを同定するための方法について働いている。
【0162】
ARTは、バクテリオファージのみにおいて生じるわけではないことが知られ、ADP-リボシル化タンパク質は、種々のウイルス、例えばインフルエンザ、コロナおよびHIVによる感染の際に宿主中で検出されている。武器としてARTを使用するウイルスに加えて、哺乳動物抗ウイルス防御系は、ウイルスタンパク質を不活性化するために宿主ARTを適用する。さらに、哺乳動物ARTおよびポリ-(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)は、決定的な細胞性経路の制御因子であり、RNAと相互作用することが知られる27。したがって、異なる生物におけるARTは、RNA化反応を触媒し得、RNA化は、広範囲の生物学的関連性の現象であると予想され得る。
【0163】
最終的に、RNA化は、翻訳後タンパク質修飾および転写後RNA修飾の両方であるとみなされ得る。本発明者らの所見は、RNAおよびタンパク質がどのように互いに相互作用し得るかという確立された見解に挑戦する。これらの新規のRNA-タンパク質コンジュゲートの発見は、異なる部類のバイオポリマーの間の構造的および機能的な境界が徐々にぼんやりしてくる時期に達する28、29
【0164】
8.2 実施例7のさらなる考察
最近同定されたNAD-RNAとは対照的に、NGD-、NCD-またはNUD-RNAは、生物学系においてはまだ発見されていなかった。そのため、5'-NXD-キャップ-RNAは、イミダゾリド反応を使用して化学合成により作製された。より初期の試験に加えて、本明細書において、合成3'-Cy5標識RNAは、蛍光NXD-キャップ-RNA/DNAを調製するためのイミダゾリド反応の鋳型として使用され得ることが示される。5'-NXD-キャップ-RNAについての計算されたキャッピング効率は、以前の報告と同様であった。さらに、作製された5'-NXD-RNAは、ModBの基質特異性を調べるために使用された。ModBによるrS1およびrS1 DIIのインビトロRNA化反応は、5'-NXD-RNAの存在下で行われた。
【0165】
5'-NXD-キャップ-RNA/DNAは、ModBにより基質として受け入れられることが発見された。そのため、RNA化反応は、RNAの最初の塩基に関係なく起こる。これは、キャップ構造においてAがG、CまたはUに交換され得、キャップRNAも、ModBによるRNA化反応についての基質として使用され得ることを意味する。
【0166】
今日まで、ModBおよびその基質NADのタンパク質結晶構造は、利用可能ではない。この理由で、ModBの基質特異性は不明瞭なままである。RNA-キャップの、NADからNGD、NCDまたはNUDへの交換は、ModBの触媒活性を変化させない。この所見は、ModBの触媒ポケットは、NADのアデノシン部分を検知しないことを示す。対照的に、ニコチンアミド部分は、ModBによる基質認識について決定的であり得る。したがって、RNA化基質設計の必須の要件は、NAD-RNA-キャップのNMN部分のみであることが結論付けられる。
【0167】
さらに、本明細書におけるデータは、5'-NGD-RNAおよび5'-NUD-RNAが、参照として使用された5'-NAD-RNAと同様のRNA化収率を生じたことを示す。興味深いことに、ModBのRNA化効率の増加は、5'-NCD-RNAの存在下で同定された。
【0168】
最近、天然に存在するRNA化は、分子量などの標的タンパク質の分子特性に影響を及ぼすことが示された(Hoefer et al. (2021), bioRxiv, 2021.2006.2004.446905)。実施例7には、NGD-RNA、NCD-RNAまたはNUD-RNAの標的タンパク質rS1およびrS1 DIIへの共有的取り付けは、タンパク質サイズを増加することが示される。結論において、ModBの新規の基質としてNXD-RNAを発見することは、RNA化反応に適用されるRNA-オリゴの柔軟な設計を可能にする。RNA化基質は、固相合成またはインビトロ転写により作製され得る。特に、インビトロ転写反応は、80ヌクレオチドより長い生物学的に関連のある転写産物の調製を可能にする。ここで、G-開始点は典型的に、NGD-RNAなどのRNA化基質を調製するために必要とされる高い転写収率を生じる。さらに、本発明者らのデータは、より高いRNA化収率は、基質として5'-NCD-RNAを使用することにより達成され得ることを示す。
【0169】
さらに、ヒトARH1の存在下のXDPr-RNA-タンパク質の安定性を実施例7で試験した。ARH1は、インビボにおいて標的タンパク質からRNA化を除去することがこれまでに知られる唯一の真核生物酵素である。異なってキャップされたRNAの存在下でのARH1触媒活性は、以前には試験されていない。実施例7には、ARH1が、GDPr-RNA、UDPr-RNA、CDPr-RNAの存在下でRNA化を有効に除去できないことが示される。インビトロ動力学データは、ARH1が、基質としてGDPr-RNA、UDPr-RNA、CDPr-RNAよりもアルギニン連結ADPr-RNAを強く好むことを示す。
【0170】
結論において、タンパク質のRNA化の基質としてNXD-RNAを適用することにより、ModBおよびARH1の基質特異性の理解が向上される。ModBは、基質として4つ全ての異なるNXD-RNA誘導体を受け入れるが、ARH1は、ADP-リボシル-アルギニンのN-グリコシド結合の加水分解に高度に特異的である。それにより、GDPr-RNA-rS1、UDPr-RNA-rS1、CDPr-RNA-rS1タンパク質は、インビトロにおいてヒトARH1の存在下で安定性を増加させた。これらの特性は、将来インビボにおいて真核生物系に適用され得るインビトロRNA-タンパク質コンジュゲートを作製するための基礎を設定する。
【0171】
実施例9-拡張されたデータ
【表1】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表3-1】
【表3-2】
【表4-1】
【表4-2】
【0172】
参考文献
【表5-1】
【表5-2】
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図4-5】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8
図9-1】
図9-2】
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11
図12-1】
図12-2】
図12-3】
図13-1】
図13-2】
図14-1】
図14-2】
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【配列表】
2024529443000001.app
【国際調査報告】