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特表2024-529448三角形トレンチプロファイルを備える光ファイバ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】三角形トレンチプロファイルを備える光ファイバ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/028 20060101AFI20240730BHJP
   G02B 6/036 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G02B6/028
G02B6/036
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504930
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 US2021043225
(87)【国際公開番号】W WO2023009103
(87)【国際公開日】2023-02-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509094034
【氏名又は名称】オーエフエス ファイテル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 高志
(72)【発明者】
【氏名】ブラガンザ,デヴィッド,デー.
(72)【発明者】
【氏名】クライン,アラン,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ペッカム,デヴィッド,ダブリュ
【テーマコード(参考)】
2H250
【Fターム(参考)】
2H250AB04
2H250AB05
2H250AB10
2H250AB18
2H250AD02
2H250AD14
2H250AD42
2H250AE12
2H250AE15
2H250AE16
2H250AE25
2H250AE39
2H250AE54
2H250AE63
2H250AH22
(57)【要約】
ITU-T G.657.A2推奨に準拠する光ファイバである。光ファイバは、コアに隣接し、それによってコア半径(rcore)から内側クラッド半径(rinner_clad)まで延在する内側クラッドを備える。内側クラッド屈折率は、半径(r)の関数としてほぼ直線的に減少し、それによって、第1の内側クラッド相対屈折率(Δinner_clad_1)から第2の内側クラッド相対屈折率(Δinner_clad_2)までほぼ直線的に減少する。rcoreに対するrinner_cladの比は、約3.2から約4.2(rinner_clad/rcoreは約3.2以上約4.2以下)である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準相対屈折率(Δ)と、
軸中心(r)と、
からコア半径(rcore)まで半径方向に延在し、コア相対屈折率(Δcore)を有するコアと、
coreから内側クラッド半径(rinner_clad)まで半径方向に延在し、r依存の内側クラッド相対屈折率(Δinner_clad(r))を有する内側クラッドであって、Δinner_clad(r)はrの関数としてほぼ直線的に減少し、Δinner_clad(r)は第1の内側クラッド相対屈折率(Δinner_clad_1)から第2の内側クラッド相対屈折率(Δinner_clad_2)まで減少する、内側クラッドと、
inner_cladから外側クラッド半径(router_clad)まで半径方向に延在し、外側クラッド相対屈折率(Δouter_clad)を有する外側クラッドであって、Δouter_cladはΔにおよそ等しい、外側クラッドとを含み、
マクロベンディング損失は、ITU-T G.657.A2推奨に従うことを特徴とする光ファイバ。
【請求項2】
Δは、ほぼゼロパーセントに等しい(Δは、およそ0±0.03%)であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
outer_cladは約62.5μm以下である(router_cladは約62.5±1.0μm以下)であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項4】
coreは、約4.0マイクロメートル以上かつ約4.5マイクロメートル以下である(rcoreは約4.0μm以上約4.5μm以下)であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項5】
inner_clad/rcoreは、約3.2~約4.2である(rinner_clad/rcoreは約3.2以上約4.2以下)であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項6】
Δcoreは、約0.33パーセント~約0.40パーセント(Δcoreは約0.33±0.03%以上約0.40±0.03%以下)であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項7】
Δinner_clad_1はΔ以下であり、Δinner_clad_2はΔinner_clad_1より小さいことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項8】
前記外側クラッドは、約0.8重量パーセント(~0.8wt%)のフッ素(F)から~1.1wt%のFでドープされており、前記コアは、~0.75wt%の塩素(Cl)から~1.5wt%のClでドープされることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項9】
Δinner_clad_2は、約-0.235パーセントから約-0.275パーセント(Δinner_clad_2は、-0.275±0.03%以上-0.235±0.03%)であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項10】
約1310ナノメートル(~1310nm)の中心波長(λ)における約8.6μmから約9.2μmであって約±0.4μmの公差を有する公称モードフィールド直径(MFD)と、
~1260nm未満のケーブルカットオフ波長(λcutoff)をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して光ファイバに関し、より詳細には、シングルモード光ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)は、あらゆる実用的な目的のために様々な産業の規格として受け入れられる推奨を公開する規格設定機関である。国際電気通信連合通信規格部門(ITU-T:Telecommunication Standardization Sector Of the ITU)は、伝送システムおよび媒体、デジタルシステム、およびネットワークの規格を公開しており、それをシリーズGと指定している。これらのうち、ITU-T G.657は、光ファイバケーブルに対する伝送媒体および光学システム特性の規格として広く受け入れられている。ITU-T G.657は、曲げ損失非感受性シングルモード光ファイバおよびケーブルの詳細な性能特性を記載しており(https://www.itu.int/rec/T-REC-G.657/enで入手可能であり、本明細書に明示的に記載されているかのようにその全体が参照により組み込まれる)、サブカテゴリITU-T G.657.A1およびITU-T G.657.A2は、それぞれ10ミリメートル(10mm)および7.5mmの最小マクロ曲げ設計半径を有するファイバの推奨を提供している。当業者がITU-T G.657規格を完全に理解する限り、ITU-T G.657規格の短縮された議論のみが本明細書で提供される。
【0003】
ITU-T規格下での曲げ非感受性要件に適応する様々な光ファイバプロファイルが存在し、ITU-T G.657規格を満たすかまたは超える光ファイバの光ファイバ性能および製造プロセスを改善するための努力が進行中である。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、ITU-T G.657.A2規格に準拠する光ファイバを教示する。開示される光ファイバは、コアに隣接し、それによってコア半径(rcore)から内側クラッド半径(rinner_clad)まで延在する内側クラッドを備える。内側クラッド屈折率は、半径(r)の関数としてほぼ直線的に減少し、それによって、第1の内側クラッド相対屈折率(Δinner_clad_1)から第2の内側クラッド相対屈折率(Δinner_clad_2)までほぼ直線的に減少する。明確にするために、Δinner_clad_1は相対屈折率の内側部分(すなわち、コアにより近い部分である)を表し、Δinner_clad_2は相対屈折率の外側部分(すなわち、外側クラッドにより近い部分である)を表す。rcoreに対するrinner_cladの比は、約3.2~約4.2(~3.2≦rinner_clad/rcore≦~4.2)である。好ましくは、rinner_clad/rcore≦~4.0である。
【0005】
本開示はまた、開示される光ファイバを製造するためのプロセスを提供する。他の実施形態について、本開示はさらに、開示される光ファイバを含むケーブルを、そのようなケーブルを製造するためのプロセスとともに教示する。
【0006】
他のシステム、デバイス、方法、特徴、および利点は、以下の図面および詳細な説明の検討によって、当業者に明白となるであろう。全てのそのような追加のシステム、方法、特徴、および利点は、本説明内に含まれ、本開示の範囲内であり、添付の請求の範囲によって保護されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の多くの態様は、以下の図面を参照してより良く理解することができる。図面中の構成要素は必ずしも縮尺通りではなく、本開示の原理を明確に示すことに重点が置かれている。さらに、図面において、同様の参照番号は、いくつかの図を通して対応する部分を示す。
【0008】
図1図1は、ITU-T G.657.A2推奨に準拠する市販のディプレストクラッド光ファイバの一実施形態の屈折率プロファイルを示す図である。
図2図2は、ITU-T G.657.A2推奨に準拠する市販の光ファイバの他の実施形態の屈折率プロファイルを示す図である。
図3図3は、光ファイバの三角形トレンチプロファイルと台形トレンチを有する屈折率プロファイル(台形トレンチプロファイル)の両方を示す図であり、両方ともITU-T G.657.A2推奨に従うマクロ曲げ損失を有する。
図4図4は、図3のプロファイルの数値屈折率プロファイルパラメータの一実施形態を示す表である。
図5図5は、三角形トレンチを有する光ファイバの一実施形態の屈折率プロファイル(三角形トレンチプロファイル)を、他の市販の光ファイバの屈折率プロファイルと比較して示す図であり、三角形トレンチプロファイルは、ITU-T G.657.A2推奨に従うマクロ曲げ損失を有する。
図6A図6Aは、三角形トレンチプロファイルを有する光ファイバのいくつかの実施形態の曲げ性能パラメータを示す表である。
図6B図6Bは、三角形トレンチプロファイルを有する光ファイバのいくつかの他の実施形態の曲げ性能パラメータを示す表である。
図6C図6Cは、三角形トレンチプロファイルを有する光ファイバのいくつかの他の実施形態の曲げ性能パラメータを示す表である。
図6D図6Dは、三角形トレンチプロファイルを有する光ファイバのいくつかの他の実施形態の曲げ性能パラメータを示す表である。
図6E図6Eは、三角形トレンチプロファイルを有する光ファイバのいくつかの他の実施形態の曲げ性能パラメータを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に、別段の指示がない限り、明示的または暗示的文脈のいずれかで、本明細書(請求の範囲を含む)におけるすべての用語(例えば、ファイバ、ケーブル、コア、内側クラッド、外側クラッド、屈折率(例えば、n、n、nなど)、相対屈折率差(デルタまたはΔであって、パーセント(%)の単位で表される)、トレンチ、ドープ(またはドーパント、ドーピング)、屈折率プロファイル、プロファイルパラメータ(アルファまたはα)、オーバークラッド、スート、マクロベンド(MB)、公称モードフィールド直径(MFD、典型的にはマイクロメートル(μm)の単位で表される)、カットオフ、損失、感度、ショルダなど)は、それらの用語が当業者によって理解されるように、それらの平易かつ通例の意味に従って使用される。さらに、明確にする目的で、別段に明確に示されない限り、または文脈によって暗示されない限り、用語「約」は、1つの重要な数字の範囲内を意味するように本明細書で明確に定義される(例えば、約10は10±1を意味し、約100は100±10を意味するなど)。
【0010】
光ファイバ設計に着目すると、ITU-T G.657は、光ファイバケーブルのための伝送媒体および光学システム特性のための規格として広く受け入れられている。一般に、これらの規格を満たすために、ディプレストクラッド(DC:Depressed Cladding)設計またはトレンチアシスト(TA)設計のいずれかが使用される。
【0011】
例えば、DC設計は、図1に示されるものと同様の屈折率プロファイルを有する。具体的には、図1に示される実施形態において、屈折率プロファイルは、半径rcoreおよび相対屈折率Δcoreを有する中心ゲルマニウム(Ge)ドープコアを含む。コアを半径方向に囲むのは、フッ素(F)ドープディプレストクラッド(おそらく、コアから外側への拡散によっていくらかGeOの低い濃度を有する)である。ディプレストクラッドを半径方向に囲み、ファイバ半径(典型的には、約62.5マイクロメートル(μm)までである)まで延在するのは、基準相対屈折率(Δ)を有する外側クラッドである。外側クラッドは、Fまたは塩素(Cl)でドープされていないか、または軽くドープされている。
【0012】
ディプレストクラッドは、Δdepressed_cladの相対屈折率を有し、rdepressed_cladの半径まで延在する。ITU-T G.657.A2要件に準拠するために、rdepressed_clad/rcoreは5より大きく(rdepressed_clad/rcore>5)、Δdepressed_cladは、負の0.02パーセント(-0.02%)と-0.12%との間の範囲内にある。これらのDCファイバ特性は、減衰性能と低コスト、大量コアロッド製造のバランスを取るための最適値よりもはるかに大きいコアロッドの製造を必要とする。代替として、これらのDCファイバ特性は、2つの別の製造ステップを使用して、DC領域の製造を必要とする。これらのアプローチのいずれかは、追加の製造コストをもたらす。
【0013】
例示的な屈折率プロファイルが図2に示されているTA設計を有する光ファイバの場合、中心Geドープコア(コア半径rcoreを有する)は、rshoulderの半径まで延在する軽くドープされたショルダ(Δshoulder±0.025%)によって囲まれており、これは、約1.5*rcore(~1.5*rcore)~約2.5*rcoreの間の部分である。ショルダを半径方向に囲むのはFドープトレンチであり、Fドープトレンチはrshoulderからrtrenchまで延在し、rtrench/rcoreは約2.0~約4.5である。外側クラッドは、rtrenchからファイバ半径(典型的には約62.5μm)まで延在する。
【0014】
ITU-T G.657.A2規格に準拠するために、Fドープトレンチは、大きいデルタ(典型的には、Δtrench<-0.1%)を提供するように高濃度にドープされ、これは、プリフォーム製造プロセスに複雑さを加える。多孔質スート体が、F含有ガスを使用するスート堆積ステップまたはスート脱水(DH)または焼結ステップのいずれかの間にFドープされる場合、ドーピングは、多孔質体を通るFソース(例えば、四フッ化ケイ素(SiF))の気相拡散に大きく依存する。例えば、DHまたは焼結雰囲気中にF含有ガスを導入し、スート体の外側から内側にガスを拡散させると、焼結ガラス体中のFドープ濃度(トレンチ深さに悪影響を及ぼす)とFの侵入深さとの間にトレードオフが生じる。その結果、Fドープ領域のF濃度および半径方向厚さの半径方向変動は、スート本体特性(例えば、多孔度、密度、粒子サイズ等)およびプロセス条件(例えば、DH温度、焼結温度、雰囲気、速度等)の複雑な関数に依存する。したがって、コアロッドスートブール内の別個の、狭く、特に指定された狭いバンドに隔離される深く、狭く、半径方向に均一なトレンチを正確に製作することは困難である。
【0015】
あるいは、Fドーピングが、スート堆積処理中にFソースを酸化火炎に導入することによって行われる場合、堆積処理の時間スケール(多孔質スートを通る気相拡散の速度に対する)は、スート体の特定の半径方向に別個の領域内にFドーピングを局所化するのを困難にする。しばしば、この困難さは、Fを有することが望ましくない(例えば、コアまたはショルダなどの)スート体におけるFドープ領域として現れる。
【0016】
TA光ファイバを製造するための現在の最先端のプロセスは、以下を別々に行うものである。
(a)コアおよびショルダの両方を有する焼結ロッドを作製する。
その後、(b)以下のいずれかにより、高濃度Fドープトレンチを作製する。
(1)焼結ロッド上にスート層を堆積させ、スートの堆積、DHまたは焼結中にFドープが生じる。または、
(2)既知のロッドインチューブプロセスを使用して、焼結ロッドを高濃度Fドープオーバークラッドジャケットでオーバージャケットする。
コア+ショルダおよびFドープトレンチの別々の製造は、(シリカスートブールのFドープと比較して)より良好な制御を提供するが、この2つのステッププロセスは、約2倍の処理時間および対応する製造コストの増加を必要とする。
【0017】
追加の製造コストおよび処理時間の延長に加えて、2つのステッププロセスは、ショルダとトレンチとの間に新しいガラス界面を導入し、コア-ショルダロッド表面の注意深いエッチングまたは洗浄を必要とする。そうでなければ、結果として生じる光ファイバの機械的完全性が損なわれるか、または汚染物質が界面に導入され、それによって潜在的に信号伝搬を劣化させる。
【0018】
DCおよびTA光ファイバにおけるこれらおよび他の欠陥を軽減するために、本開示は、三角形または台形トレンチ(TT)設計を教示する。開示されたTT設計は、ITU-T G.657.A2要件に準拠するマクロ曲げ損失を有し、DC設計またはTA設計の複雑さ、コスト、または時間の延長を伴わない。具体的には、TT設計は、約4.2*rcore未満のrinner_clad(rinner_clad/rcore<約4.2)まで延在する(Geドープされた)コアに隣接する内側クラッドを含む。DCまたはTA設計とは異なり、開示されるTT設計のデルタは、rcoreからrinner_cladまでほぼ直線的に減少する。そのような直線的に減少するデルタは、例えば、蒸気軸蒸着(VAD:Vapor Axial Deposition)または外部蒸着(OVD:Outside Vapor Deposition)等の標準的技法を使用して製造されることができ、それによって、DCまたはTA光ファイバのための現在の製造プロセスと関連付けられる複雑化および費用を低減または排除する。
【0019】
技術的問題に対する広範な技術的解決策を提供したので、ここで、図面に示される実施形態の説明を詳細に参照する。具体的には、図3および図4は、それぞれ、三角形トレンチまたは台形トレンチのいずれかを有する光ファイバの例示的な屈折率プロファイルおよびそれらの物理的特性を示す。図5は、開示されたTT光ファイバと市販のDCまたはTA光ファイバとの比較を示す。また、図6A図6B図6C図6D図6E図6としてまとめて指定される)は、ITU-T G.657.A2規格に関する曲げ性能パラメータを示す。いくつかの実施形態がこれらの図面に関連して説明されるが、本開示を本明細書に開示される1つまたは複数の実施形態に限定する意図はない。そうではなく、すべての代替形態、修正形態、および均等物を網羅することが意図される。
【0020】
ここで図3を参照すると、三角形トレンチ設計の屈折率プロファイル(三角形トレンチプロファイル(実線で示される))および台形トレンチ設計の屈折率プロファイル(台形トレンチプロファイル(破線で示される))の両方が示されており、これらは両方とも、ITU-T G.657.A2推奨に従うマクロ曲げ損失を有する。台形トレンチを有する光ファイバ(傾斜が非ゼロの第1の内側クラッド相対屈折率(Δinner_clad_1<0)によってオフセットされる)は、三角形トレンチを有する光ファイバ(Δinner_clad_1がおよそ0)の特別な場合であり、またはその逆であるため、両方とも、本明細書ではTT光ファイバと称される。図3に示すTT光ファイバの実施形態に関して、基準相対屈折率(Δ)はΔ=0%で提供され(後のΔ値の比較のため)、軸中心(r)は、全ての半径(r)測定が行われる基準点としてr=0で提供される。Δは±0.03%の公差を有する(すなわち、Δはおよそ0±0.03%)ことを理解されたい。
【0021】
図3の屈折率プロファイルに示されるように、TT光ファイバの一実施形態は、rからコア半径(rcore)まで半径方向に延在するコアを備える。いくつかの実施形態では、コアは、Geでドープされ、約4~約4.5マイクロメートル(rcoreは約4.0μm以上約4.5μm以下)であるrcoreまで延在する。コアは、いくつかの実施形態では約0.33%~約0.40%(Δcoreは、約0.33%±0.03%以上約0.40%±0.03%以下)であるコア相対屈折率(Δcore)を有する。いくつかの実施形態では、コアは、約0.75重量パーセント(~0.75wt%)~約1.5wt%~の塩素(Cl)でドープされ、これは、概して、約0.05%~約0.1%であるΔcore(非ドープシリカに対して)に相当する。
【0022】
TT光ファイバは、rcoreから内側クラッド半径(rinner_clad)まで半径方向に延在する内側クラッドをさらに備える。TT光ファイバがITU-T G.657要件に準拠するマクロ曲げ損失を有するためには、コアおよび内側クラッドの寸法は、rinner_clad/rcoreが約3.2以上約4.2以下の範囲内であるべきである。好ましくは、rinner_clad/rcoreが約4以下である。内側クラッドは、半径(r)の関数としてほぼ直線的に減少する半径依存の内側クラッド相対屈折率(Δinner_clad(r))を含む。具体的には、Δinner_clad(r)は、Δinner_clad_1から第2の内側クラッド相対屈折率(Δinner_clad_2)まで減少する。ITU-T G.657規格に準拠するマクロ曲げ損失の場合、Δinner_clad_2は、-0.275±0.03%以上-0.235±0.03%以下の範囲にあるべきである。
【0023】
一般に、Δinner_clad_1はΔ以下であり、三角形トレンチ設計は、Δinner_clad_1=Δの場合に特別なケースである。内側クラッドのr依存Δは、厳密には、
【数1】
【0024】
TT光ファイバは、rinner_cladから外側クラッド半径(router_clad)まで半径方向に延在する外側クラッドをさらに備える。外側クラッドは、非ドープまたはClドープのいずれかであり、Δinner_clad_2<Δinner_clad_1であるような外側クラッド相対屈折率(Δouter_clad)を有する。ITU-T G.657要件に準拠するマクロ曲げ損失を有する典型的な曲げ非感受性ファイバの場合、router_cladは約62.5μm(router_cladが約62.5±1.0μm)以下である。他の実施形態では、router_cladは約40.0±1.0μmである。いくつかの実施形態では、外側クラッドは、約0.8wt%以上約1.1wt%以下のFでドープされ、これは、約-0.33%以上約-0.25%以下のΔouter_clad(非ドープシリカに対して)に対応する。
【0025】
TT光ファイバは、約1310ナノメートル(nm)の中心波長(λ)で8.6μm~9.2μmの公称モードフィールド直径(MFD)をさらに含み、公称MFDは約±0.4μmの公差を有し、ケーブルカットオフ波長(λcutoff)は約1260nm未満であり、ITU T G.657.A2推奨に従うマクロ曲げ損失である。
【0026】
図4は、図3に示される屈折率プロファイルの異なる実施形態に対応する数値屈折率プロファイルパラメータを有する表を示す。約20(α=20)のコアαは、TT光ファイバに適したステップ屈折率コアを提供する。
【0027】
製造プロセスの観点から、TT光ファイバは、VADまたはOVDなどの既知のプロセスに従ってスートブールをまず製造することによって製造される。スートブールは、(a)約0.33±0.03%以上0.40±0.03%以下のΔcoreを有するGeドープ中心コア、(b)中心コアの直径の約3.2~約4.2倍の内側クラッドを有する。直線的に減少するFドープトレンチを提供するために、F含有ガス(例えばSiF)は、DHステップ、焼結ステップ、またはDHステップと焼結ステップとの間の中間ステップ中に炉雰囲気中に導入される。スートブール中のFの半径方向密度変動は、温度、横断速度、および炉雰囲気中のF含有ガスの濃度を注意深く監視することによって制御される。このようにFを制御することはより単純(およびより費用効果的)であるため、三角形または台形の形状は、典型的なDCまたはTA光ファイバ製造プロセスに関連する複雑さまたはコストを伴わずに容易に得られる。また、堆積ステップ中の酸化プロセスへの少量のF含有ガス(例えば、四フッ化炭素(CF))の導入は、特にΔinner_clad_1<0である台形トレンチに対して、最も内側のクラッド形状を制御するのに有用である。
【0028】
ここで図5を参照すると、G.657準拠TT光ファイバ(図3および図4からの)の屈折率プロファイルが、他の市販の光ファイバの屈折率プロファイルと比較される。TT光ファイバの屈折率プロファイルは、濃い実線で示され、他の市販の光ファイバは、異なる陰影および異なるタイプの破線で示される。例えば、明るい斜線の実線はDC光ファイバを示し、様々な破線は異なるタイプのTA光ファイバを示す。異なる屈折率プロファイルに重複が存在するように見えるかもしれないが、当業者は、屈折率プロファイルパラメータのわずかな変動でさえ、光学性能の予想外に大きい差異をもたらすことを理解するであろうことに留意されたい。実際、同じタイプの光ファイバ(例えば、TT光ファイバ)であっても、小さな変化は、光ファイバをコンプライアンスから外れさせ得る性能変化をもたらす場合がある。
【0029】
重要なことに、図5が示すことは、DC光ファイバが、比較的大きいrdepressed_clad(5*rcoreを超える)まで延在する浅いΔdepressed_clad(典型的には、-0.12%を超える)を有する一方で、TA光ファイバは、より狭い(rtrench<約10μm)が、はるかに深いΔtrench(時々、最大-0.5%)が続くショルダを有することである。比較的に、TT光ファイバは、深すぎず、浅すぎず、狭すぎず、広すぎない最適ゾーン(またはゴルジロックゾーン(Goldilocks zone))を占有する。
【0030】
これを念頭に置いて、小さなパラメータ変化に起因する大きな性能変化の例を図6A図6Eに示す。具体的には、図6A図6E(まとめて図6)は、TT光ファイバのいくつかの実施形態の曲げ性能パラメータを示す。図6の表は、ケーブルカットオフ波長(μm)、1310nmでの公称MFD(μm)、ゼロ分散波長(ZDW、nm)、ならびに異なるコアパラメータ(r、Δ)および内側クラッドパラメータ(r、Δ)に対する1550nmおよび1625nmの波長での様々なマクロ曲げ(MB)損失(30mm、20mmおよび15mmの曲げ直径についてデシベル(dB)で測定した)を示す。参照のため、および比較のために、ディプレストクラッド、トレンチアシスト型、三角形トレンチ(一般的)、三角形トレンチ(平均)、および三角トレンチの例(最小、平均および最大)の値は、図6A図6Eの各表上で繰り返される。
【0031】
同じタイプの光ファイバ(すなわち、TT光ファイバ)内のパラメータ値の小さな変化が性能の著しい変化につながり得ることを実証するために、設計クラス番号4304(図6E)を設計クラス番号637(図6B)と比較する。rcladding/rcoreの3.8から4.0への5パーセント(5%)の増加およびΔinner_clad_2の負の0.265から負の0.235への11%の増加は、MB損失のほぼ35倍の増加(×35)をもたらした(0.0005dBから0.0171dB(1550nmの波長で30mmの曲げ直径で10回転(10x30mm 1550nmと略す)))。設計クラス番号4304(図6E)と設計クラス番号2599(図6C)との間の別の比較は、1x15mm 1550nmおよび1x15mm 1625nmの両方についてMB損失のほぼ10倍の増加を示す。
【0032】
性能の著しい変化は、同じファイバタイプ(例えば、TT光ファイバ間)におけるパラメータ値のわずかな差でさえ観察可能である場合があるため、当業者は、異なるタイプのファイバ(例えば、TT光ファイバと比較して、TA光ファイバと比較して、DC光ファイバ)間のパラメータ値のより大きい差異が、さらにより大きい変動性およびさらにより大きい性能差異をもたらすことを理解するであろう。簡潔に述べると、パラメータ値の微妙な差でさえ重要であり、なぜなら、これらの微妙な差は、著しく異なる性能特性に現れるからである。したがって、当業者は、光ファイバパラメータのゴルジロックゾーンを見つけることは些細でもなく、自明でもないことを完全に理解する。
【0033】
上述したように、図1図6を参照すると、DCおよびTA光ファイバの欠陥は、ITU-T G.657.A2要件に準拠するマクロ曲げ損失を有するTT設計を使用することによって軽減される。言い換えれば、開示されるTT設計は、DC設計またはTA設計のいずれかの複雑さ、コスト、または延長された時間なしに、ITU-T G.657.A2要件に準拠するマクロ曲げ損失を有する。具体的には、開示されるTT設計の各々は、コアに隣接する内側クラッドを有し、内側クラッドは、約4.2*rcore未満のrinner_cladまで延在する。言い換えれば、rinner_clad/rcore<~4.2である。DCまたはTA設計とは異なり、開示されるTT設計のΔinner_cladは、rcoreからrinner_cladまでほぼ直線的に減少する。そのような直線的に減少するデルタは、VADまたはOVD等の標準技術を使用して加工されることができ、それによって、DCまたはTA光ファイバのための現在の製造プロセスと関連付けられる複雑さおよび費用を低減または排除する。
【0034】
本開示の当業者によって理解されるように、フローチャートにおける任意のプロセスの説明またはブロックは、関与する機能に応じて、実質的に同時または逆の順序を含み、図示または説明された順序とは異なる順序で実行可能であるものとして理解されるべきである。
【0035】
例示的な実施形態を示し、説明してきたが、当業者には、説明したような本開示に対して多くの変更、修正、または改変を行うことができることが明らかであろう。したがって、全てのそのような変更、修正、および改変は、本開示の範囲内であると見なされるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
【国際調査報告】