(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】がん治療における使用のためのMycobacterium
(51)【国際特許分類】
A61K 35/74 20150101AFI20240730BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240730BHJP
A61K 51/02 20060101ALI20240730BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20240730BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240730BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20240730BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20240730BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240730BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A61K35/74 A
A61P35/00
A61P37/04
A61K51/02 100
A61K45/00
A61P1/18
A61P35/04
A61K31/337
A61K31/7068
A61P43/00 121
A61K39/395 N
A61K39/395 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505006
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 GB2021051935
(87)【国際公開番号】W WO2023007107
(87)【国際公開日】2023-02-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516178402
【氏名又は名称】イモデュロン セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン エイク、キャスパー ヘンリキュス ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ガヤ、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン、グレン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA12
4C084AA19
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4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬を提供するが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含む。本発明はまた、1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤の使用、ならびに使用するための手順及び投薬レジメンについても記載する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の前記患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬であって、
前記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含む、前記使用のための免疫調節薬。
【請求項2】
前記光子療法は、x線及び/またはガンマ線の投与を含む、請求項1に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項3】
前記粒子療法は、電子、陽子、中性子、パイオン、ネオンイオン、アルゴンイオン、ケイ素イオン、または炭素イオンの投与を含む、請求項1に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項4】
前記光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、外部放射源から前記患者に投与される、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項5】
前記光子療法の外部放射源は、外部照射放射線療法、2-D放射線療法、全身3次元原体照射法(3D-CRT)、回転、ヘリカルまたはアークベース強度変調放射線治療(IMRT)、画像誘導放射線治療(IGRT)、少分割コーンビーム放射線療法、トモセラピー、術中放射線治療(IORT)、超高線量率(FLASH)放射線療法、GammaKnifeもしくはCyberKnifeまたは類似の装置を介した定位放射線手術または体幹部定位放射線治療(SBRT)から選択される、請求項4に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項6】
前記光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、前記がん内に、または近接して配置される1つ以上の粒子またはナノ粒子を含む内部放射源から前記患者に投与される、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項7】
前記がん内に、または近接して配置される前記1つ以上の粒子またはナノ粒子は、フリーラジカル、α線、β線、x線もしくはガンマ線、またはそれらの組み合わせを放射し、ハフニウム酸化物ナノ粒子(NBTXR3,NanoBiotix,Inc)を含み、その後に、放射線療法によって活性化される、請求項6に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項8】
前記1つ以上の粒子またはナノ粒子は、リン-32(Oncosilなど)またはヨウ素-125(American SynQor,Inc)などの放射性同位体を含有する近接照射療法種を含む、請求項7に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項9】
前記光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、X線、CT、PET、超音波または磁気共鳴(MR)から導出される画像またはリアルタイムガイダンスを使用して、前記患者に投与される、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項10】
前記画像またはリアルタイムガイダンスは、磁気共鳴から、好ましくは、MRIdianまたはElekta UnityなどのMRI誘導LINACまたはSBRTを介して、導出される、請求項9に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項11】
前記患者は、前記原発腫瘍から遠隔のリンパ節及び/または臓器に転移を呈しており、前記患者は、1~10個の少数転移腫瘍または病変を呈している、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項12】
前記患者は、肺から肝臓の間で合計5個未満の少数転移腫瘍または病変を呈している、請求項10に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項13】
前記患者は、前記原発腫瘍から遠隔のいずれかのリンパ節及び/または臓器に転移を呈さない、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項14】
前記使用は、腫瘍切除手術を受ける予定の、または受けた患者における、原発腫瘍を含むがんのアジュバント、ネオアジュバント、またはペリアジュバント治療または制御を含む、請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項15】
前記光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、10グレイのα/βで最大生物学的等価線量、約40グレイ超、または約50グレイ超、または約90グレイ超の(BED10)を含む、請求項1~請求項14のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項16】
前記光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、単一画分として、または分割レジメンを介して、前記患者に投与される、請求項1~請求項15のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項17】
前記分割レジメンは、2~50個の画分、例えば、3~10個の画分、好ましくは3~5個の画分を含む、請求項15に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項18】
前記線量は、40~50グレイであり、5個の画分で、適切には、画分あたり8グレイ、または画分あたり10グレイで、連日または隔日で投与される、請求項16または請求項17に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項19】
前記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤は、養子細胞療法、外科的(腫瘍切除)療法、化学療法、ホルモン療法、チェックポイント阻害剤療法、メトホルミンなどの小分子療法、受容体キナーゼ阻害剤療法、温熱療法、光線療法、高周波アブレーション治療(RFA)、抗血管新生療法、サイトカイン療法、寒冷療法、生物学的療法、HDAC阻害剤、例えば、OKI-179、BRAF阻害剤、MEK阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、P13Kデルタ阻害剤、PARP阻害剤、mTOR阻害剤、低メチル化剤、腫瘍溶解性ウイルス、TLR2、3、4、7、8または9アゴニストを含むTLRアゴニスト、または、リンタトリモドなどのTLR5アゴニスト、MRx0518(4D Pharma)、STINGアゴニスト(MIW815及びSYNB1891を含む)、ミファムルチド及びがんワクチン、例えば、GVAXまたはCIMAvax、ならびにそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項20】
前記がんは、膀胱癌(筋層非浸潤性膀胱癌または尿路上皮癌を含む)、前立腺癌、肝臓癌、腎臓癌、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌、脳癌(膠芽腫を含む)、肝細胞癌、リンパ腫、白血病、胃癌、子宮頸癌、卵巣癌、甲状腺癌、黒色腫、頭頚部癌、皮膚癌、及び軟組織肉腫、及び/または骨肉腫から選択され、膵管腺癌(PDAC)及び膵臓神経内分泌腫瘍(PNET)を含み、任意選択で、前記がんは、転移性である、請求項1~請求項19のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項21】
前記がんは、局所進行性膵臓癌(結節性病変を含有または非含有)、切除可能な膵臓癌、境界切除可能膵臓癌、チェックポイント難治性膵臓癌、化学療法難治性膵臓癌、少数転移膵臓癌、膵管腺癌(PDAC)、及び転移性膵管腺癌(mPDAC)から選択される膵臓癌である、請求項20に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項22】
前記がんは、TNMステージ基準によって臨床的に定義され、この際、前記患者は、T1~T4の原発腫瘍(T)、及び/またはN0、N1、もしくはN2のNode(節)指定を有しているか、または前記がんは、ステージI、ステージII、ステージIII、またはステージIVと臨床的に定義され、任意選択で、前記患者は、転移の所見がない(M0)、請求項1~請求項21のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項23】
前記患者は、腫瘍切除手術を受けた、または受ける予定であり、任意選択で、前記腫瘍切除手術は、リンパ節切除、及び任意選択で、転移性膵管腺癌(mPDAC)などの転移性疾患が存在する場合、転移性腫瘍切除をさらに含む、請求項1~請求項22のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項24】
前記がんは、DNAミスマッチ修復欠損(dMMR)または熟達(proficient)(pMMR)タンパク質発現に対するPCRベースのアッセイ及び/またはIHC染色によって測定した際に、マイクロサテライト不安定性(MSI)が高い、またはMSIが低いと判断され、MSIが高く、dMMRが好ましい、請求項1~請求項23のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項25】
前記患者は、ECOGスケールに従って、0、1、1-、2、3、または4のパフォーマンスステータスを有するとして臨床的に分類されるか、2つ以上の化学療法レジメンに耐えるために十分に健康ではないと分類される、請求項1~請求項24のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項26】
前記対象はまた、FOLFIRINOX、mFOLFIRINOX、FOLFOX、NALIRIFOXなどの1つ以上の細胞傷害性化学療法剤を受けている、または以前に受けており、任意選択で、前記患者は、前記FOLFIRINOX、前記mFOLFIRINOX、前記FOLFOX、または前記NALIRIFOX療法後、部分奏効または安定病態を示している、請求項1~請求項25のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項27】
前記患者はまた、ナブパクリタキセルを、ゲムシタビンと適切に組み合わせて受けている、または以前に受けている、請求項1~請求項26のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項28】
前記患者はまた、1つ以上のチェックポイント阻害剤を投与される、請求項1~請求項27のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項29】
前記1つ以上のチェックポイント阻害剤は、受容体:CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、IDO、TIM-3、BTLA、VISTA、TIGIT、LAG-3、CD40、KIR、CEACAM1、GARP、PS、CSF1-R、CD94/NKG2A、TDO、TNFR、DcR3、CD27、CD28、CD40、CD122、CD137、0X40、GITR、ICOS及びこれらの組み合わせ、好ましくはCTLA-4、PD-1またはPD-L1に結合とする、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、ADC(抗体薬物複合体)、ISAC、Fabフラグメント(Fab)、F(ab’)2フラグメント、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、プロボディ、融合タンパク質、単鎖可変領域フラグメント(scFv)、ジスルフィド安定化可変領域フラグメント(dsFv)、または他のそれらの抗原結合フラグメントから選択される、請求項29に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項30】
前記1つ以上のチェックポイント阻害剤は、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アゼトリズマブ、BI 754091(抗PD-1)、バビツキシマブ(PSに対するIgG3モノクローナル抗体)、デュルバルマブ、ドスタルリマブ、トレメリムマブ、スパルタリズマブ、アベルマブ、シンチリマブ、トリパリマブ、プロルゴリマブ(prolgolimab)、チスレリズマブ、カムレリズマブ、MGA012(レチファンリマブ)、MGD013(テボテリマブ)、MGD019、エノブリツズマブ、MGD009、MGC018、MEDI0680、ミプテナリマブ(BI 754111、抗LAG-3)、PDR001、FAZ053、TSR022、MBG453、レラトリマブ(BMS986016)、LAG525(IMP701)、IMP321(Eftilagimod alpha)、REGN2810(セミプリマブ)、REGN3767、ペキシダルチニブ(PLX3397)、LY3022855、FPA008、BLZ945、GDC0919、エパカドスタット、エマクツズマブ(CSF-1Rを標的とするRG1755)、FPA150、インドキシミド(indoximid)、BMS986205、CPI-444、MEDI9447、PBF509、FS118(LAG-3及びPD-L1に対して二重特異性)、リリルマブ、Sym023、TSR-022、A2Ar阻害剤(例えば、EOS100850、AB928)、モナリズマブなどのNKG2A阻害剤及びこれらの組み合わせから選択され、任意選択で、前記1つ以上のチェックポイント阻害剤は、治療量以下の量及び/または期間で投与される、請求項29に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項31】
前記非病原性の生育不能Mycobacteriumの投与は、前記1つ以上のチェックポイント阻害剤の前記投与前及び/または後に行われる、請求項28~請求項30のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項32】
前記非病原性の生育不能Mycobacteriumは、受入番号NCTC 11659及び関連する指定下に寄託された株、例えば、SRL172、SRP299、IMM-201、DAR-901、ならびにATCC 95051下に寄託された株を含むM.vaccae(Vaccae(商標));M.obuense、M.paragordonae(株49061)、M.parafortuitum、M.paratuberculosis、M.brumae、M.aurum、M.indicus pranii、M.w、M.manresensis、M.kyogaense(DSM 107316/CECT 9546下に寄託された)、M.phlei、M.smegmatis、M.tuberculosis Aoyama BもしくはH37Rv、RUTI、MTBVAC、BCG、VPM1002BC、SMP-105、Z-100及びこれらの組み合わせから選択され、受入番号NCTC 13365下に寄託されたブダペスト条約に基づくMycobacterium obuenseの株が好ましい、請求項1~請求項31のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項33】
前記非病原性の生育不能Mycobacteriumは、M.obuense NCTC 13365、好ましくは、粗いバリアントであり、及び/または加熱殺菌であり、及び/または画分、フラグメント、細胞内成分、溶解物、ホモジネート、超音波処理物、または実質的に全細胞形態で存在する、請求項32に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項34】
前記免疫調節薬は、10
3~10
9細胞、または0.0001~1.0mg、好ましくは0.05mg~1.0mgを含む用量で投与される、請求項1~請求項33のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項35】
前記免疫調節薬は、腫瘍切除手術及び/または前記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤、好ましくはチェックポイント阻害剤療法の投与の前に投与され、少なくとも1~3回投与される、請求項1~請求項34のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項36】
前記免疫調節薬は、腫瘍切除手術及び/または前記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤、好ましくはチェックポイント阻害剤療法の投与の前に投与され、3回投与される、請求項35に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項37】
前記免疫調節薬は、腫瘍切除手術または前記1つ以上の追加の抗がん治療もしくは薬剤、好ましくはチェックポイント阻害剤療法の投与の後に投与され、任意選択で、前記投与は、3ヶ月、または6ヶ月、または12ヶ月以上の期間にわたって行われる、請求項1~請求項36のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項38】
前記免疫調節薬及び前記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤、好ましくはチェックポイント阻害剤療法の両方は、腫瘍切除手術前及び/または後に投与され、任意選択で、前記免疫調節薬及び前記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤、好ましくはチェックポイント阻害剤療法の両方の前記投与は、前記腫瘍切除手術後、3ヶ月、または6ヶ月、または12ヶ月以上の期間にわたって行われる、請求項1~請求項37のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項39】
前記免疫調節薬は、非経口、経口、舌下、経鼻、または肺経路を介して投与される、請求項1~請求項38のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項40】
前記非経口経路は、皮下、皮内、結節内、筋肉内、真皮下、腹腔内、または静脈内から選択され、かつ前記非経口経路は、任意選択で、腫瘍内、腫瘍周囲、病変周囲、または病巣内投与及びこれらの組み合わせを含む、請求項39に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項41】
腫瘍内または病巣内投与に続いて、連続的に皮内投与が行われる、請求項40に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項42】
前記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤は、ベバシズマブ、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、ムスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾロン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン、エトポシド、シスプラチン、エピルビシン、カペシタビン、ロイコボリン、フォリン酸、カルボプラチン、オキサリプラチン、ゲムシタビン、FOLFIRINOX、改変FOLFIRINOX、FOLFOX、NALIRIFOX、パクリタキセル、ナブパクリタキセル、ペメトレキセド、イリノテカン、テモゾロミド、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体、抗PD-L1抗体及び/またはmTOR阻害剤及びこれらの組み合わせから選択され、前記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤は、腫瘍内、動脈内、静脈内、血管内、胸膜内、腹腔内、気管内、鼻腔内、肺、くも膜下腔内、筋肉内、内視鏡的、病巣内、経皮、皮下、局所、経口、または直接注入もしくは灌流によって投与される、請求項1~請求項41のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項43】
前記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤は、FOLFIRINOX、改変FOLFIRINOX、FOLFOX、NALIRIFOX、ゲムシタビン、ナブパクリタキセル、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体、抗PD-L1抗体及び/またはmTOR阻害剤及びこれらの組み合わせ、例えば、3週間ごとに1200mgもしくは2週間ごとに840mgのいずれかの用量で投与されるアテゾリズマブ、または3週間ごとに200mgもしくは6週間ごと400mgのいずれかの用量で投与されるペムブロリズマブ、または3週間ごとに350mgの用量で投与されるセミプリマブから選択される、請求項42に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項44】
前記免疫調節薬は、最初に、前記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤の前に、任意選択で、前記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤と組み合わせて、またはその後に投与される、請求項37~43のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項45】
前記治療または前記制御は、1つ以上のバイオマーカーの測定に基づいてモニタリングされる、請求項1~請求項44のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項46】
前記1つ以上のバイオマーカーは、前立腺特異抗原(PSA)、癌胎児性抗原(CEA)、CA19.9、PNR、INR、予後栄養指数(PNI)、全身性免疫炎症指数(SII)及び全身性炎症スコア(SIS)のうちいずれか1つ以上を含む、請求項45に記載の免疫調節薬。
【請求項47】
原発腫瘍を含む前記がんの前記治療または前記制御は、(i)全生存期間、(ii)無増悪生存期間、(iii)無病生存期間、(iv)奏効率、(v)原発腫瘍サイズ及び/または転移性疾患の低減、(vi)炭水化物抗原19.9(CA19.9)及び癌胎児性抗原(CEA)または腫瘍に依存する他のものなどの腫瘍抗原の循環レベル、(vii)栄養上の状態(体重、食欲、血清アルブミン)、(viii)疼痛制御または鎮痛剤使用、(ix)CRP/アルブミン比率、(x)生活の質の改善、(xi)除脂肪体重の維持、(xii)ctDNAの低減または排除、のうち1つ以上から選択される疾患状態及び進行の1つ以上のマーカーで、臨床的に適切な改善をもたらし、これは、好ましくは、手術後、または光子療法もしくは粒子療法の終了から12ヶ月後に評価される、請求項1~請求項46のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項48】
原発腫瘍を含むがんの前記治療または前記制御は、前記原発腫瘍の安定病態(SD)、完全奏効(CR)、または部分奏効(PR);及び/または1つ以上の非標的腫瘍の安定病態(SD)、または完全奏効(CR)をもたらし、これは、免疫関連応答基準(irRC)、iRECIST RECSIT 1.1またはirRECISTによって評価され、好ましくは、手術後、または光子療法もしくは粒子療法、任意選択で、腫瘍切除手術を受ける予定であるか、または受けた患者におけるアジュバント、ネオアジュバント、またはペリアジュバント治療の終了から12ヶ月後に評価される、請求項1~請求項47のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項49】
前記対象の前記パフォーマンスステータスは、前記がんの前記治療または前記制御中及び/またはその後、安定したままか、または改善する、請求項1~請求項48のいずれか1項に記載の使用のための免疫調節薬。
【請求項50】
患者における原発腫瘍を含むがんを治療または制御する方法であって、前記方法は、(i)前記患者への光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量、及び(ii)非病原性の生育不能Mycobacteriumを、同時に、別々に、または連続的に前記対象に投与することを含み、前記方法は、光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量、または非病原性の生育不能全細胞Mycobacteriumの単独の投与と比較して治療効果の増強をもたらす、前記方法。
【請求項51】
前記患者は、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記光子療法は、x線及び/またはガンマ線の投与を含む、請求項50または請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記粒子療法は、電子、陽子、中性子、パイオン、ネオンイオン、アルゴンイオン、ケイ素イオン、または炭素イオンの投与を含む、請求項50~請求項52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、外部放射源から前記患者に投与される、請求項50~請求項53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記光子療法の外部放射源は、外部照射放射線療法、2-D放射線療法、全身3次元原体照射法(3D-CRT)、回転、ヘリカルまたはアークベース強度変調放射線治療(IMRT)、画像誘導放射線治療(IGRT)、少分割コーンビーム放射線療法、トモセラピー、術中放射線治療(IORT)、超高線量率(FLASH)放射線療法、GammaKnifeもしくはCyberKnifeまたは類似の装置を介した定位放射線手術または体幹部定位放射線治療(SBRT)から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、前記がん内に、または近接して配置される1つ以上の粒子またはナノ粒子を含む内部放射源から前記患者に投与される、請求項50~請求項53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記がん内に、または近接して配置される前記1つ以上の粒子またはナノ粒子は、フリーラジカル、α線、β線、x線もしくはガンマ線、またはそれらの組み合わせを放射し、ハフニウム酸化物ナノ粒子(NBTXR3,NanoBiotix,Inc)を含み、その後に、放射線療法によって活性化される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記1つ以上の粒子またはナノ粒子は、リン-32(Oncosilなど)またはヨウ素-125(American SynQor,Inc)などの放射性同位体を含有する近接照射療法種を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、X線、CT、PET、超音波または磁気共鳴(MR)から導出される画像またはリアルタイムガイダンスを使用して、前記患者に投与される、請求項50~請求項58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記画像またはリアルタイムガイダンスは、磁気共鳴から、好ましくは、MRIdianまたはElekta UnityなどのMRI誘導LINACまたはSBRTを介して、導出される、請求項50~請求項59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記患者は、前記原発腫瘍から遠隔のリンパ節及び/または臓器に転移を呈しており、前記患者は、1~10個の少数転移腫瘍または病変を呈している、請求項50~請求項60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記患者は、肺から肝臓の間で合計5個未満の少数転移腫瘍または病変を呈している、請求項50~請求項61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記患者は、前記原発腫瘍から遠隔のいずれかのリンパ節及び/または臓器に転移を呈さない、請求項50~請求項62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記使用は、腫瘍切除手術を受ける予定の、または受けた患者における、原発腫瘍を含むがんのアジュバント、ネオアジュバント、またはペリアジュバント治療または制御を含む、請求項50~請求項63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、10グレイのα/βで最大生物学的等価線量、約40グレイ超、または約50グレイ超、または約90グレイ超の(BED10)を含む、請求項50~請求項64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、単一画分として、または分割レジメンを介して、前記患者に投与される、請求項50~請求項65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記分割レジメンは、2~50個の画分、例えば、3~10個の画分、好ましくは3~5個の画分を含む、請求項50~請求項66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記線量は、40~50グレイであり、5個の画分で、適切には、画分あたり8グレイ、または画分あたり10グレイで、連日または隔日で投与される、請求項50~請求項67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤は、養子細胞療法、外科的(腫瘍切除)療法、化学療法、ホルモン療法、チェックポイント阻害剤療法、メトホルミンなどの小分子療法、受容体キナーゼ阻害剤療法、温熱療法、光線療法、高周波アブレーション治療(RFA)、抗血管新生療法、サイトカイン療法、寒冷療法、生物学的療法、HDAC阻害剤、例えば、OKI-179、BRAF阻害剤、MEK阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、P13Kデルタ阻害剤、PARP阻害剤、mTOR阻害剤、低メチル化剤、腫瘍溶解性ウイルス、TLR2、3、4、7、8または9アゴニストを含むTLRアゴニスト、例えば、リンタトリモド、またはTLR5アゴニスト、sMRx0518(4D Pharma)、STINGアゴニスト(MIW815及びSYNB1891を含む)、ミファムルチド及びがんワクチン、例えば、GVAXまたはCIMAvax、ならびにそれらの組み合わせから選択される、請求項51~請求項68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記がんは、膀胱癌(筋層非浸潤性膀胱癌または尿路上皮癌を含む)、前立腺癌、肝臓癌、腎臓癌、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌、脳癌(膠芽腫を含む)、肝細胞癌、リンパ腫、白血病、胃癌、子宮頸癌、卵巣癌、甲状腺癌、黒色腫、頭頚部癌、皮膚癌、及び軟組織肉腫、及び/または骨肉腫から選択され、膵管腺癌(PDAC)及び膵臓神経内分泌腫瘍(PNET)を含み、任意選択で、前記がんは、転移性である、請求項50~請求項69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記がんは、局所進行性膵臓癌(結節性病変を含有または非含有)、切除可能な膵臓癌、境界切除可能膵臓癌、チェックポイント難治性膵臓癌、化学療法難治性膵臓癌、少数転移膵臓癌、膵管腺癌(PDAC)、及び転移性膵管腺癌(mPDAC)から選択される膵臓癌である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記がんは、TNMステージ基準によって臨床的に定義され、この際、前記患者は、T1~T4の原発腫瘍(T)、及び/またはN0、N1、もしくはN2のNode(節)指定を有しているか、または前記がんは、ステージI、ステージII、ステージIII、またはステージIVと臨床的に定義され、任意選択で、前記患者は、転移の所見がない(M0)、請求項50~請求項71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記患者は、腫瘍切除手術を受けた、または受ける予定であり、任意選択で、前記腫瘍切除手術は、リンパ節切除、及び任意選択で、転移性膵管腺癌(mPDAC)などの転移性疾患が存在する場合、転移性腫瘍切除をさらに含む、請求項50~請求項72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記がんは、DNAミスマッチ修復欠損(dMMR)または熟達(pMMR)タンパク質発現に対するPCRベースのアッセイ及び/またはIHC染色によって測定した際に、マイクロサテライト不安定性(MSI)が高い、またはMSIが低いと判断され、MSIが高く、dMMRが好ましい、請求項50~請求項73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記患者は、ECOGスケールに従って、0、1、1-、2、3、または4のパフォーマンスステータスを有するとして臨床的に分類されるか、2つ以上の化学療法レジメンに耐えるために十分に健康ではないと分類される、請求項50~請求項74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記対象はまた、FOLFIRINOX、mFOLFIRINOX、FOLFOX、NALIRIFOXなどの1つ以上の細胞傷害性化学療法剤を受けている、または以前に受けており、任意選択で、前記患者は、前記FOLFIRINOX、mFOLFIRINOX、FOLFOX、またはNALIRIFOX療法後、部分奏効または安定病態を示している、請求項50~請求項75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記患者はまた、ナブパクリタキセルを、ゲムシタビンと適切に組み合わせて受けている、または以前に受けている、請求項50~請求項76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記患者はまた、1つ以上のチェックポイント阻害剤を投与される、請求項50~請求項77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記1つ以上のチェックポイント阻害剤は、受容体:CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、IDO、TIM-3、BTLA、VISTA、TIGIT、LAG-3、CD40、KIR、CEACAM1、GARP、PS、CSF1-R、CD94/NKG2A、TDO、TNFR、DcR3、CD27、CD28、CD40、CD122、CD137、0X40、GITR、ICOS及びこれらの組み合わせ、好ましくはCTLA-4、PD-1またはPD-L1に結合とする、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、ADC(抗体薬物複合体)、ISAC、Fabフラグメント(Fab)、F(ab’)2フラグメント、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、プロボディ、融合タンパク質、単鎖可変領域フラグメント(scFv)、ジスルフィド安定化可変領域フラグメント(dsFv)、または他のそれらの抗原結合フラグメントから選択される、請求項50~請求項78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記1つ以上のチェックポイント阻害剤は、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アゼトリズマブ、BI 754091(抗PD-1)、バビツキシマブ(PSに対するIgG3モノクローナル抗体)、デュルバルマブ、ドスタルリマブ、トレメリムマブ、スパルタリズマブ、アベルマブ、シンチリマブ、トリパリマブ、プロルゴリマブ(prolgolimab)、チスレリズマブ、カムレリズマブ、MGA012(レチファンリマブ)、MGD013(テボテリマブ)、MGD019、エノブリツズマブ、MGD009、MGC018、MEDI0680、ミプテナリマブ(BI 754111、抗LAG-3)、PDR001、FAZ053、TSR022、MBG453、レラトリマブ(BMS986016)、LAG525(IMP701)、IMP321(Eftilagimod alpha)、REGN2810(セミプリマブ)、REGN3767、ペキシダルチニブ(PLX3397)、LY3022855、FPA008、BLZ945、GDC0919、エパカドスタット、エマクツズマブ(CSF-1Rを標的とするRG1755)、FPA150、インドキシミド(indoximid)、BMS986205、CPI-444、MEDI9447、PBF509、FS118(LAG-3及びPD-L1に対して二重特異性)、リリルマブ、Sym023、TSR-022、A2Ar阻害剤(例えば、EOS100850、AB928)、モナリズマブなどのNKG2A阻害剤及びこれらの組み合わせから選択され、任意選択で、前記1つ以上のチェックポイント阻害剤は、治療量以下の量及び/または期間で投与される、請求項50~請求項79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記非病原性の生育不能Mycobacteriumの投与は、前記1つ以上のチェックポイント阻害剤の前記投与前及び/または後に行われる、請求項50~請求項80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記非病原性の生育不能Mycobacteriumは、受入番号NCTC 11659及び関連する指定下に寄託された株、例えば、SRL172、SRP299、IMM-201、DAR-901、ならびにATCC 95051下に寄託された株を含むM.vaccae(Vaccae(商標));M.obuense、M.paragordonae(株49061)、M.parafortuitum、M.paratuberculosis、M.brumae、M.aurum、M.indicus pranii、M.w、M.manresensis、M.kyogaense(DSM 107316/CECT 9546下に寄託された)、M.phlei、M.smegmatis、M.tuberculosis Aoyama BもしくはH37Rv、RUTI、MTBVAC、BCG、VPM1002BC、SMP-105、Z-100及びこれらの組み合わせから選択され、受入番号NCTC 13365下に寄託されたブダペスト条約に基づくMycobacterium obuenseの株が好ましい、請求項50~請求項81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記非病原性の生育不能Mycobacteriumは、M.obuense NCTC 13365、好ましくは、粗いバリアントであり、及び/または加熱殺菌であり、及び/または画分、フラグメント、細胞内成分、溶解物、ホモジネート、超音波処理物、または実質的に全細胞形態で存在する、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記免疫調節薬は、10
3~10
9細胞、または0.0001~1.0mg、好ましくは0.05mg~1.0mgを含む用量で投与される、請求項50~請求項83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記免疫調節薬は、腫瘍切除手術及び/または前記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤、好ましくはチェックポイント阻害剤療法の投与の前に投与され、少なくとも1~3回投与される、請求項50~請求項84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記免疫調節薬は、腫瘍切除手術及び/または前記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤、好ましくはチェックポイント阻害剤療法の投与の前に投与され、3回投与される、請求項50~請求項85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記免疫調節薬は、腫瘍切除手術または前記1つ以上の追加の抗がん治療もしくは薬剤、好ましくはチェックポイント阻害剤療法の投与の後に投与され、任意選択で、前記投与は、3ヶ月、または6ヶ月、または12ヶ月以上の期間にわたって行われる、請求項50~請求項86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
前記免疫調節薬及び前記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤、好ましくはチェックポイント阻害剤療法の両方は、腫瘍切除手術前及び/または後に投与され、任意選択で、前記免疫調節薬及び前記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤、好ましくはチェックポイント阻害剤療法の両方の前記投与は、前記腫瘍切除手術後、3ヶ月、または6ヶ月、または12ヶ月以上の期間にわたって行われる、請求項50~請求項87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
前記免疫調節薬は、非経口、経口、舌下、経鼻、または肺経路を介して投与される、請求項50~請求項88のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
前記非経口経路は、皮下、皮内、結節内、筋肉内、真皮下、腹腔内、または静脈内から選択され、かつ前記非経口経路は、任意選択で、腫瘍内、腫瘍周囲、病変周囲、または病巣内投与及びこれらの組み合わせを含む、請求項50~請求項89のいずれか1項に記載の方法。
【請求項91】
腫瘍内または病巣内投与に続いて、連続的に皮内投与が行われる、請求項50~請求項90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
前記1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤は、ベバシズマブ、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、ムスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾロン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン、エトポシド、シスプラチン、エピルビシン、カペシタビン、ロイコボリン、フォリン酸、カルボプラチン、オキサリプラチン、ゲムシタビン、FOLFIRINOX、改変FOLFIRINOX、FOLFOX、NALIRIFOX、パクリタキセル、ナブパクリタキセル、ペメトレキセド、イリノテカン、テモゾロミド、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体、抗PD-L1抗体及び/またはmTOR阻害剤及びこれらの組み合わせから選択され、前記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤は、腫瘍内、動脈内、静脈内、血管内、胸膜内、腹腔内、気管内、鼻腔内、肺、くも膜下腔内、筋肉内、内視鏡的、病巣内、経皮、皮下、局所、経口、または直接注入もしくは灌流によって投与される、請求項51~請求項91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
前記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤は、FOLFIRINOX、改変FOLFIRINOX、FOLFOX、NALIRIFOX、ゲムシタビン、ナブパクリタキセル、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体、抗PD-L1抗体及び/またはmTOR阻害剤、例えば、3週間ごとに1200mgもしくは2週間ごとに840mgのいずれかの用量で投与されるアテゾリズマブ、または3週間ごとに200mgもしくは6週間ごと400mgのいずれかの用量で投与されるペムブロリズマブ、または3週間ごとに350mgの用量で投与されるセミプリマブから選択される、請求項51~請求項92のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
前記免疫調節薬は、最初に、前記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤の前に、任意選択で、前記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤と組み合わせて、またはその後に投与される、請求項50~請求項93のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
前記治療または前記制御は、1つ以上のバイオマーカーの測定に基づいてモニタリングされる、請求項50~請求項94のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
前記1つ以上のバイオマーカーは、前立腺特異抗原(PSA)、癌胎児性抗原(CEA)、CA19.9、PNR、INR、予後栄養指数(PNI)、全身性免疫炎症指数(SII)及び全身性炎症スコア(SIS)のうちいずれか1つ以上を含む、請求項50~請求項95のいずれか1項に記載の方法。
【請求項97】
原発腫瘍を含む前記がんの前記治療または前記制御は、(i)全生存期間、(ii)無増悪生存期間、(iii)無病生存期間、(iv)奏効率、(v)原発腫瘍サイズ及び/または転移性疾患の低減、(vi)炭水化物抗原19.9(CA19.9)及び癌胎児性抗原(CEA)または腫瘍に依存する他のものなどの腫瘍抗原の循環レベル、(vii)栄養上の状態(体重、食欲、血清アルブミン)、(viii)疼痛制御または鎮痛剤使用、(ix)CRP/アルブミン比率、(x)生活の質の改善、(xi)除脂肪体重の維持、(xii)ctDNAの低減または排除、のうち1つ以上から選択される疾患状態及び進行の1つ以上のマーカーで、臨床的に適切な改善をもたらし、これは、好ましくは、手術後、または光子療法もしくは粒子療法の終了から12ヶ月後に評価される、請求項50~請求項96のいずれか1項に記載の方法。
【請求項98】
原発腫瘍を含むがんの前記アジュバント、前記ネオアジュバント、または前記ペリアジュバント治療または制御は、前記原発腫瘍の安定病態(SD)、完全奏効(CR)、または部分奏効(PR);及び/または1つ以上の非標的腫瘍の安定病態(SD)、または完全奏効(CR)をもたらし、これは、免疫関連応答基準(irRC)、iRECIST RECSIT 1.1またはirRECISTによって評価され、好ましくは、手術後、または光子療法もしくは粒子療法の終了から12ヶ月後に評価される、請求項64~請求項97のいずれか1項に記載の方法。
【請求項99】
前記対象の前記パフォーマンスステータスは、前記がんの前記治療または前記制御中及び/またはその後、安定したままか、または改善する、請求項50~請求項98のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん治療の分野に関する。特に、本発明は、Mycobacterium調製物と組み合わせて、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者におけるがんの治療または制御に関する。
【背景技術】
【0002】
がんを患うヒトにおいて、治療レジメンは、多くの場合、腫瘍学的外科的介入、化学療法、放射線療法、または免疫療法の形態を含む。進行癌では、抗腫瘍免疫は、炎症誘発性及び抗炎症性、免疫刺激性及び免疫抑制因子シグナルの密接に調節された相互作用が原因で、しばしば無効である。例えば、抗炎症性シグナルの損失により、慢性炎症及び長期の増殖シグナル伝達がもたらされる。興味深いことに、腫瘍細胞の増殖の促進及び抑制の両方を行うサイトカインは、腫瘍部位で産生される。これらの種々のプロセスの効果間の不均衡が生じ、これにより腫瘍促進がもたらされる。
【0003】
膵臓癌は、がん死の3番目に多い原因である。診断から死亡までの平均寿命は、およそ6~12ヶ月である。残念ながら、低い生存率は、がん発症の初期段階で症状がないことが原因である。したがって、症状が現れるまでに、膵臓癌は既に転移し始めており、膵臓癌の治療を成功させることを困難なものにする。
【0004】
現在まで、膵臓癌などのがんに対する有効な免疫療法の開発の試みに対する主な障壁は、がん部位で免疫抑制を破壊できないこと、及び免疫反応性の正常なネットワークを回復できないことであった。免疫療法の生理学的アプローチは、例えば、内因性腫瘍抗原が認識され、かつ有効な細胞溶解応答が腫瘍細胞に対して発生するように、免疫反応性を正常化することである。腫瘍免疫監視が存在するかどうかは、かつでは不明であったが、現在では、免疫系が、常に新しい変換細胞を監視し、排除すると考えられている。それに応じて、がん細胞は、攻撃から逃れて(免疫逃避)、抑制シグナルの発現を増加させるために免疫圧に応じてそれらの表現型を変化させる。免疫逃避及びその他の破壊的なプロセスを通して、原発腫瘍及び転移は、それら自体の生存を維持する。転移性がん細胞は、リンパ球及び血小板ならびに腫瘍細胞を含有するマイクロコロニーとして腫瘍を残し、かつ微小転移として組織に沈着する。炎症は、腫瘍成長を促すサイトカイン環境を作り出すことによって、転移部位における役割を果たし続ける。
【0005】
抗腫瘍免疫破壊の主要なメカニズムの1つは、T細胞疲弊として知られており、これは、抗原への慢性的な曝露から生じ、抑制性受容体の発現上昇を特徴とする。これらの抑制性受容体は、制御されない免疫反応を防止するための免疫チェックポイントとして機能する。PD-1及び共抑制性受容体、例えば、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、B及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA;CD272)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン3(Tim-3)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3;CD223)、及びその他のものは、多くの場合、チェックポイント調節因子と呼ばれる。これらは、分子の「通行料金所(tollbooth)」として作用し、細胞外情報が、細胞周期進行及びその他の細胞内シグナル伝達プロセスが進行されるべきかどうかを決定することを可能にする。
【0006】
T細胞受容体(TCR)を介した特異的抗原認識に加えて、T細胞活性化は、共刺激性受容体によって供給される正及び負のシグナルの均衡によって制御される。これらの表面タンパク質は、典型的に、TNF受容体またはB7スーパーファミリーのいずれかのメンバーである。活性化共刺激分子を対象とするアゴニスト抗体と、負の共刺激分子を対象とする遮断抗体は、T細胞刺激を増強して、腫瘍破壊を促進する場合がある。プログラム細胞死タンパク質1(PD-1またはCD279)、55-kDタイプ1膜貫通タンパク質は、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバーCD28、CTLA-4、誘導性共刺激物質(ICOS)、及びBTLAを含むT細胞共刺激受容体のCD28ファミリーのメンバーである。PD-1は、活性化しているT細胞及びB細胞で高度に発現する。PD-1発現はまた、様々な発現レベルで、メモリーT細胞亜集団でも検出されることがある。
【0007】
PD-1に対して特異的な2つのリガンド、すなわち、プログラム死リガンド1(PD-L1)(B7-H1またはCD274としても知られている)、及びPD-L2(B7-DCまたはCD273としても知られている)がこれまでに同定されている。PD-L1及びPD-L2は、マウス系及びヒト系の両方で、PD-1に結合すると、T細胞活性化を下方制御することが明らかとなっている。PD-1と、抗原提示細胞(APC)及び樹状細胞(DC)で発現するそのリガンドであるPD-L1及びPD-L2との相互作用は、活性化されたT細胞の免疫応答を下方制御する負の制御因子刺激を伝達する。PD-1の遮断により、この負のシグナルが抑制され、T細胞応答が増幅される。
【0008】
多くの研究は、がん微小環境がPD-L1/PD-1シグナル伝達経路を操作し、PD-L1発現の誘発が膵臓癌などのがんに対する免疫応答の抑制に関連し、ゆえにがん進行及び転移を可能にすることを示している。PD-L1/PD-1シグナル伝達経路は、いくつかの理由によるがん免疫回避の主要なメカニズムである。第1に、最も重要なことに、この経路は、末梢に見られる活性化されたTエフェクター細胞の免疫応答の負の調節に関与する。第2に、PD-L1は、がん微小環境で上方制御され、同時に、PD-1もまた活性化された腫瘍浸潤性T細胞上で上方制御されるため、おそらく抑制の悪循環が増す。第3に、この経路は、双方向シグナル伝達を介した自然免疫調節及び適応免疫調節の両方に複雑に関与する。これらの因子により、PD-1/PD-L1複合体が、それを通してがんが免疫応答を操作し、かつそれ自体の進行を促進する中心点となる。
【0009】
臨床治験で試験された第1の免疫チェックポイント阻害剤は、イピリムマブ(Yervoy,Bristol-Myers Squibb)、CTLA-4モノクローナル抗体であった。CTLA-4は、PD-1、BTLA、TIM-3、及びT細胞活性化のVドメイン免疫グロブリン抑制因子(VISTA)も含む受容体の免疫グロブリンスーパーファミリーに属する。抗CTLA-4モノクローナル抗体は、強力なチェックポイント阻害剤であり、ナイーブ細胞及び抗原経験細胞の両方から「破壊」を除去する。治療は、CD8+T細胞の抗腫瘍機能を増強し、Foxp3+T制御性細胞に対するCD8+T細胞の比率を増加させ、T制御性細胞の抑制性機能を阻害する。抗CTLA-4モノクローナル抗体療法の主な欠点は、自制する能力を失った、過剰に活発な免疫系のオンターゲット効果に起因して自己免疫毒性が発生することである。イピリムマブで治療された患者の最大25%が、皮膚炎、全腸炎、肝炎、内分泌障害(下垂体炎、甲状腺炎、及び副腎炎を含む)、関節炎、ぶどう膜炎、腎炎、ならびに無菌性髄膜炎を含む、重篤なグレード3~4の有害事象/自己免疫型副作用を発症したことが報告されている。抗CTLA-4経験とは対照的に、抗PD-1療法は、より良好な耐性があり、比較的少ない割合の自己免疫型副作用を誘導すると思われる。
【0010】
TIM-3は、疲弊したCD8+T細胞で発現する別の重要な抑制性受容体として同定されている。がんのマウスモデルでは、最も機能不全の腫瘍浸潤性CD8+T細胞は、実際に、PD-1及びTIM-3を共発現することが明らかとなっている。
【0011】
LAG-3は、最近同定された別の抑制性受容体であり、エフェクターT細胞機能を制限するように作用し、T制御性細胞の抑制活性を増強する。PD-1及びLAG-3が、マウスの腫瘍浸潤性T細胞で広範に共発現し、かつPD-1及びLAG-3の複合遮断により、がんのマウスモデルにおいて、強力な相乗的抗腫瘍免疫応答を誘発することが最近明らかとなった。
【0012】
PD-1経路遮断は、治療効果を向上させるために、ワクチンまたは他の免疫調節抗体と組み合わせられる場合がある。現在、PD-1及びそれらのリガンドであるPD-L1の両方に対するアンタゴニストモノクローナル抗体が、がんの治療の様々な開発段階にあり、最近のヒトでの治験では、進行性の治療難治性疾患のがん患者で有望な結果を示した。
【0013】
第I相臨床治験に入るB7-H1/PD-1経路を遮断する薬剤の第1のものは、Bristol-Myers Squibbによって開発された完全ヒトlgG4抗PD-1モノクローナル抗体であるニボルマブ(MDX-1 106/BMS-936558/ONO-4538)であった。臨床評価を受けている別のPD-1モノクローナル抗体は、CureTech Ltdによって開発された、PD-1に対して特異的なヒト化lgG1モノクローナル抗体であるCT-01 1である。他の薬剤としては、ラムブロリズマブ(MK-3475-Merck)、ヒト化モノクローナルlgG4 PD-1抗体;BMS-936559、完全ヒトlgG4 PD-L1抗体及びRoche社のMPDL3280A、PD-L1経路を標的とするヒトモノクローナル抗体が挙げられる。F野生型黒色腫患者でのニボルマブとイピリムマブの併用とイピリムマブ単独とを比較した第II相試験の結果は、客観的奏効率が、併用療法では61%、単独療法では11%、完全奏効は、それぞれ、患者の22%及び0%であったことを示した。グレード3または4の治療関連有害事象が、併用群の患者の54%、イピリムマブ群の患者の24%で報告された。治験薬の中断に至るいずれかのグレードの治療関連有害事象は、ニボルマブ群の患者の7.7%、ニボルマブとイピリムマブとの群の患者の36.4%、イピリムマブ群の患者の14.8%で発生した。
【0014】
化学療法及び放射線療法の作用に伴う抗がん免疫応答は、最近再調査されており、そのような応答は、残存するがん細胞を排除し、休止状態で微小転移を維持することによる治療的成功に不可欠であることを示している(Zitvogel et al,J Clin Invest 2008;1 18:1991 -2001)。しかし、この参考文献は、そのような免疫応答を一貫して増強するために利用可能な単純な免疫療法戦略が存在しないことを明らかにしている。
【0015】
免疫原性がん細胞死の特定の形態を誘導する治療手順もまた、腫瘍抗原の放出につながるといったエビデンスもある。3つの主要なタイプの細胞死、すなわちアポトーシス(タイプ1)、オートファジー(タイプ2)、及びネクローシス(タイプ3)が存在する(Tesniere et al,Cell Death Differ 2008;15:3-12)。アポトーシス、またはプログラム細胞死は、特に子宮内だけでなく子宮外でも、組織再構築にとって一般的かつ規則的に発生する必須の現象である。これは、核内のDNA断片化、及び食細胞によって貪食かつ消化される「アポトーシス体」を形成する細胞質の凝縮を特徴とする。オートファジーでは、細胞小器官及び細胞質は、細胞から押し出される空胞内に隔離される。これは、有害な栄養条件または他のストレス条件において細胞が生存する手段を提供するが、過剰なオートファジーは細胞死をもたらす。ネクローシスは、細胞内小器官への損傷及び細胞膨潤を特徴とする「より粗雑な」プロセスであり、結果として、細胞膜の破裂及び細胞内物質の放出をもたらす。
【0016】
ネクローシスは、免疫原性細胞死として主に分類されている。限定された数の研究は、免疫原性細胞死を誘導する手順が細胞傷害性CD8+T細胞及びNK細胞の活性化を含む免疫応答を誘導することができ、かつ、原理的に生体内でDCワクチンを作成する能力を有している樹状細胞(DC)に到達可能な抗原となることを含む、標的として作用する媒介物質及び腫瘍抗原の両方を放出することを示している。
【0017】
このような細胞死の正確なメカニズムに関係なく、免疫原性形態及び非免疫原性形態に細胞死を分類することがより有用である。有益な免疫調節の回復を伴う治療では、免疫原性細胞死によって放出される抗原は、特に、損傷関連(傷害関連)分子パターン(DAMP)の存在下で放出される場合、有効な抗腫瘍免疫応答を誘発することができる(Jerome et al.,N.Eng.J.Med.2004;350:41141-2)。
【0018】
放射線療法は、治療中にがん患者の60~70%に必要とされる。放射線療法は、最も広く使用され、かつ有効な抗腫瘍療法であるが、健康な組織への急性及び遅発型の損傷を引き起こすことがある。したがって、腫瘍に送達される線量は、近傍の健康な組織に対する毒性のために制限され、これは、腫瘍を完全に殺傷することができず、放射線療法の有効性が減少することを意味し得る。したがって、放射線誘導型の健康な組織の損傷を回避または軽減することは、常に、放射線療法研究において特に関心の高いトピックである。強度変調放射線治療(IMRT)、ヘリカルトモセラピー(HT)、及び陽子線治療などの最新の放射線療法技術は、健康な組織への放射線損傷を低減することができる。さらに、長期のがん生存者の数が増えるにつれて、RTから生じる遅発性毒性が出現し、これらの患者の生活の質に著しく影響を与える。したがって、周囲の健康な組織で誘導される毒性の程度を制限しながら、抗腫瘍効果を維持する新規のRT戦略が必要とされている。正常組織への毒性の誘発を制限することにより、RTレジメンの治療指数が増加することになる。放射線療法では、線量が指数関数的に減少する外部放射線照射を使用するが、患者組織の特定の深さ内にエネルギーが蓄積することがある。したがって、深在性腫瘍の場合、腫瘍の前の健康な正常組織が、腫瘍に比べて大きな線量の電離放射線を受ける。さらに、腫瘍の背後に位置する健康な正常組織が、ビームが腫瘍を通過する場合に放射線の射出線量を受ける可能性がある。これにより、脳及び脊髄などの感受性組織及びリスク臓器(OAR)に対して重要な課題が存在し得る。
【0019】
画像誘導放射線治療、強度変調放射線治療、及び強度変調回転放射線治療などの現代の放射線療法救済及びイメージング技術の進歩は、標的のコンビナトリアル薬物療法及び免疫療法と共に、放射線療法の治療指数を増加させた。さらに、入射線量が従来の放射線療法よりも低く、かつ放射線線量の大部分が腫瘍に特異的に標的化され得る陽子線治療(PBT)の使用の増加もまた、周囲の正常組織への不必要な照射を制限し、それにより、有害な副作用を低減することができる。これにもかかわらず、多くの腫瘍が本質的に放射線抵抗性を維持するため、新規な治療戦略へのさらなる発見及び研究は、放射線療法の腫瘍殺傷効果を最大化し、同時に、周囲の正常組織への毒性の影響を最小限に抑えるために重要である。脳転移、孤立性原発性脳腫瘍、動静脈奇形(AVM)、下垂体腺腫、及び聴神経腫など種々の神経疾患を治療するために、定位放射線手術法が、数十年間使用されてきた。より最近では、パーキンソン病などの一部の機能障害を治療するために使用されてきた。
【0020】
現在の定位放射線手術デバイスは、BrainLab AG及びAccuray Incorporatedにより提供されているデバイス、またはElekta Ltdによって提供されているデバイスなど201 Cobalt線源を使用するデバイスなどのカスタマイズされた線形加速器で構成されている。これらのデバイスは、非常に高い放射線用量を送達して、単一の治療または少数の日常の治療で腫瘍/病変を切除するために使用される。目的の病変は、多くの場合、頭蓋の他の機能的に感受性の領域の極めて近くに位置する。したがって、放射線が確実に病変(複数可)に十分に送達され、かつ他の箇所には無視できる程度に送達されるように、病変(複数可)を取り囲む標的容積に位置合わせする際に非常に高い幾何学的精度が必要である。
【0021】
放射線療法の目的は、周囲の正常組織の全てに対する影響を最小限に抑えて、高線量の放射線で病変を標的とすることである。腫瘍及び腫瘍を取り囲む他の重要な構造を局所化するために、体外照射RT送達の前に初期の治療計画手順が実施される。この計画手順は、通常、これらの構造を識別するためにCTイメージングを必要とする。セグメント化された腫瘍及び周囲の組織構造に基づいて、ビーム配向及びコリメーター設定のセットが、反復プロセスを通して展開されて、周囲の重要な回避構造への線量を最小限に抑えながら、腫瘍への線量を最大化する最適線量分布パターンが決定される。
【0022】
MRIは、現在、CTと比較して、より高い軟部組織コントラストに基づく腫瘍局在化のための最適なモダリティであり、治療計画ワークフローに組み込むことができる。MRIは、治療計画目的のために腫瘍の良好な位置を提供するが、これらの治療計画画像は、通常、治療の数日前に収集されるため、治療日の腫瘍位置を完全に表していない可能性がある。この制限に対処するために、腫瘍専門医は、標的容積を増加させて、腫瘍組織の全てが確実に最大線量を受けるようにする傾向がある。標的とされる領域内の全ての細胞が必要なRT治療線量を受け、かつ、この増加された治療標的容積が治療計画線量分布と病変の実際の領域に送達される線量との間の誤差の影響を小さくすることが見込まれる。しかし、この増加された治療辺縁により、副次的な組織損傷も生じ、これは、患者の生活の質に著しい影響を与え、かつ二次的RT誘導がんの可能性を高くする可能性がある。
【0023】
治療辺縁の増加の必要性を軽減するために、臨床医は、画像がRT治療送達直前に取得される画像誘導外部照射放射線療法と呼ばれる方法を採用してきた。このような利用可能な解決策の1つは、MRIシステムと線形加速器とを完全に統合して、RT治療中に腫瘍のリアルタイムイメージングを可能にすることを含む。しかし、この設計は、複雑で高価であり、かつMRI及び線形加速器の両方の機能性能に対する深刻な妥協を伴う可能性がある。
【0024】
治療計画画像は、通常、数週間にわたって行われることがある実際の分割治療送達の前に数日収集される。そのようなものであるため、治療イメージング計画の腫瘍の位置は、治療の各日における実際の病変位置を表していない可能性がある。各治療セッション直前に画像ガイダンスを組み込むことによって、各治療セッション中の病変の正確な位置を決定することが可能である。RT治療直前にMR画像を取得することにより、正確な病変位置が特定され、原体照射送達のための正しいガントリ位置が定められる。放射線療法デバイスとしては、一般に、ガントリに取り付けられ、かつ患者診察台上に横たわる患者とほぼ平行な軸線を中心にして回転可能な線形電子線加速器が挙げられる。患者は、元の電子ビームから生じた電子、γ、またはX線ビームのいずれかを使用して治療される。ビームは、コリメーターの使用及びビームの回転を組み合わせることによって標的に焦束される。患者は、ガントリが回転するのと同時に標的病変が電子ビームの平面内に位置され得るように位置決め可能な診察台上に置かれる。この患者診察台は、最大6度の運動(x、y、z、回転、ピッチ、及びヨー)を使用して、正確にRTシステムのアイソセンターに標的を整列させるように患者の位置を調整するように設計される。いくつかの製造者によって採用されている現在の診察台設計は、全身を通して疾患部位を治療するのに十分な移動範囲を可能にするカンチレバー型診察台トップを採用している。
【0025】
がん患者は、多くの場合、疾患がどの程度患者の毎日の生活能力に影響を与えるかを確認するために標準的な基準に対して評価される。この評価は、患者のパフォーマンスステータス(PS)として知られている。最も有名な標準化された評価は、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)によって開発され、かつ1982年に公開されたものである。ECOGスケールは、患者の機能レベル、すなわちパフォーマンスステータスを、自己管理の能力、日常活動、及び歩行や仕事などの身体的能力の観点から記述している。また、医療専門家が、がん治療中に介入の結果としての患者の機能レベルの変化を追跡するための方法でもある。PS0のスコアは、疾患がないことを意味し、PS5のスコアは、死亡を意味する。
【0026】
IMM-101は、加熱殺菌されたMycobacterium obuenseであり、典型的には、自然及び適応免疫系を調節して、1型免疫応答を回復させ、かつ2型免疫応答を下方制御し得るホウ酸緩衝食塩水中の懸濁液として調製される。膵臓癌のマウス遺伝子組換えマウスモデルでは、IMM-101は生存を延長させた。IMM-101はまた、腫瘍部位、周辺部、及び全身においてT細胞及び細胞傷害性CD8+細胞の活性化を誘導した。中和抗体を使用した枯渇実験によって、延命効果がCD8+T細胞から得られることが実証された。IMM-101は、樹状細胞(DC)のような自然免疫細胞上のトール様受容体(TLR)1/2を含む病原体認識受容体(PRR)の定義付けられた選択を活性化する微生物関連分子パターン(MAMP)を含む(Bazzi et al.2017,Galdon et al.2019)。未成熟DCのIMM-101活性化は、活性化されたcDC1の歪んだ成熟をもたらし、その活性化は、主に、有効な腫瘍細胞殺傷に必要な、IFN-γ、パーフォリン及びグランザイム産生CTLの産生及び成熟によって定義される1型免疫応答を誘導する(Galdon et al.,2019)。IMM-101誘導型cDC1活性化はまた、活性化されたIFN-γを産生するTh-1細胞NK、NKT、及びγδ-T細胞の産生をもたらし(Fowler et al.,2014;Galdon et al.,2019)、これらは、異なるメカニズムによって腫瘍細胞を殺傷することができる。活性化されたγδ-T細胞は、効率的な抗原提示細胞であり(Moser et al.,2017)、これは、さらに抗腫瘍応答を増強させることができる。IMM-101はまた、単核細胞を含む他の自然免疫細胞を活性化し、これらは、抗腫瘍応答を増強し、かつ免疫抑制性M2マクロファージの形成を防ぐことができるM1マクロファージに成熟する(Bazzi et al.2015)。
【0027】
膵臓癌マウスモデル(Kras、p53、及びPdx-Creの変異、KPCとして知られている)を使用する場合、ゲムシタビン及びIMM-101の組み合わせは、生存を延長しなかったが、この組み合わせは、肝臓及び腹膜における転移の形成を著しく低減した。転移性膵臓癌患者を含む第II相治験では、ゲムシタビン療法にIMM-101を加えることにより、全生存期間が、4.4から7.0ヶ月と大幅に改善し、かつ一部の長期間生存者が確認された。加えて、IMM-101は、1型に基づく刺激を介して、樹状細胞を刺激して、活性化された表現型へ成熟させることができた。この1型免疫応答はまた、CD103(+)樹状細胞が、インタクトな抗原をリンパ節に輸送し、腫瘍特異的CD8(+)T細胞を抗原刺激する唯一の抗原提示細胞であったため、免疫チェックポイント阻害剤(CPI)の最適な有効性のための必要条件であることが明らかとなっている。生体内骨髄由来細胞(BMDC)移入モデルを使用して、IMM-101処置済み樹状細胞(DC)の投与が、IFNガンマ及びIL-17を誘導し、DC抗原プロセシング及び提示能力を増強することがこれまでに実証されている。PD-1抗体と組み合わせたIMM-101の投与が、PD-1単独と比較して、抗PD-1と組み合わせた腫瘍内CD8T細胞/Treg比率の有意な増加を介して、乳癌及び膵臓癌の同系モデルで腫瘍負荷量を低減することも実証された。
【0028】
抗腫瘍免疫におけるAPCの機能は、腫瘍抗原を、腫瘍流入領域リンパ節に輸送し、腫瘍特異的CD8+T細胞の抗原刺激を行うことである。黒色腫では、CD103+DCが、そのような機能を有する唯一のAPCである。黒色腫マウスモデルでは、成長因子FLT3L及びポリI:Cの投与により、腫瘍におけるCD103+DC始原細胞が増殖し、活性化し、それにより、抗PD-L1耐性が逆転した。さらに、研究は、非炎症腫瘍におけるT細胞動員ケモカインCXCL9/10の主要な発生源である細胞型であるCD103+樹状細胞の蓄積不足は、治療的に活性化されたT細胞の不十分な侵入及び免疫療法への耐性を媒介することを示している。したがって、腫瘍微小環境からのCD103+DCの欠如は、複数の免疫療法への耐性の主要なメカニズムである可能性がある。
【0029】
通常型樹状細胞(cDC)は、T細胞免疫を制御する固有の抗原提示細胞である。マウスでの系統追跡実験により、CD103及びCD11bの発現によって定義される末梢組織に存在する、それぞれ、2つの発達的かつ機能的に異なる集団、cDC1及びcDC2が明らかとなった。これらの系統及びそれらの機能は、ヒトにおいても保存されている。これらのうち、cDC1は、細胞傷害性T細胞に抗原を交差提示する際に非常に効果があり、流入領域リンパ節(LN)における抗腫瘍免疫の生成、及び腫瘍微小環境内のエフェクターT細胞との直接的な相互作用の際の両方で、腫瘍内の主要な刺激性cDC集団である。さらに、cDC1は、チェックポイント遮断に対する治療応答に重要である。
【0030】
これらの組み合わせは、膵臓癌を含む様々ながんの治療において有効性を実証してきたが、それらの毒性特性に起因して、効果的な化学療法を受けるには、あまりに脆弱または不適切であると見なされる患者にとって適切な確定された治療レジメンは未だに存在しない。
【0031】
膵臓癌では、FOLFIRINOX(フォリン酸、フルオロウラシル、イリノテカン塩酸塩及びオキサリプラチンの混合物)、ナブパクリタキセル(Abraxane(登録商標))及びゲムシタビンが、ECOGパフォーマンスステータスが0及び1のみの転移性膵管腺癌(PDAC)患者に対する好ましい第一選択治療である。これらの治療は、毒性プロファイルに起因して、スコアがPS2以上の患者には禁忌である。しかし、新規の転移性疾患を示している患者のほぼ50%は、パフォーマンススコアが低く、活動性介入に関する選択肢が非常に限定される。ゲムシタビンなどの単剤化学療法は、既に制限されている生活の質と患者の健康を悪化させる可能性のある毒性レジメンへの対処との間のトレードオフにおいて最良の適度の利益を与える。患者のこのサブグループは、これらの組み込み基準及び除外基準に起因して臨床治験設定において従来より十分な治療を受けていない。したがって、新規の許容範囲内の併用療法は、少なくともPS2、3、及び4の患者には緊急に必要であるが、PS0及びPS1の患者にも有益である。
【発明の概要】
【0032】
本発明は、Mycobacterium調製物を、光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量と組み合わせて、それを必要とする患者に投与することによって対象におけるがんを治療、低減、阻害または制御する有効な方法を提供する。
【0033】
本発明の第1の態様において、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬が提供されるが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含む。
【0034】
本発明の第2の態様において、患者における原発腫瘍を含むがんを治療または制御する方法が提供されるが、ここで、上記方法は、(i)患者への光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量、及び(ii)非病原性の生育不能Mycobacteriumを、同時に、別々に、または連続的に対象に投与することを含み、ここで、上記方法は、光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量、または非病原性の生育不能全細胞Mycobacteriumの単独の投与と比較して治療効果の増強をもたらす。
【0035】
したがって、本発明は、対象におけるがんの治療、低減、阻害、または制御において使用するための非病原性の生育不能Mycobacteriumを、上記Mycobacteriumの投与によって上記がんを治療する方法と一緒に提供する。本発明者らは、電離放射線と組み合わせたMycobacteriumの患者への投与が、いずれかの作用因子の単独投与と比較してより良好な有効性をもたらすことを予想外に発見した。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬を提供するが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含む。
【0037】
これは、手術またはチェックポイント阻害剤療法(CPI)前のネオアジュバント治療法としての非病原性の全細胞加熱殺菌Mycobacteriumを、標的電離放射線/放射線療法(RT)と組み合わせて投与することにより、抗腫瘍活性及び/または抗腫瘍活性が増強され、手術、RT、またはCPIを単独で行うよりもより効力があるといった驚くべき発見に基づいている。さらに、Mycobacteriumによる治療は、有効かつ持続した病理学的応答及び治療患者の生存をもたらすことが明らかとなった。
【0038】
膵管腺癌(PDAC)患者を含む第II相臨床治験では、非病原性の全細胞加熱殺菌Mycobacteriumを、多様式ネオアジュバント治療レジメンで、化学療法剤ゲムシタビンと組み合わせて投与することにより、驚くべきことに、ゲムシタビン単独でと比較して、特に転移性患者において、有効かつ持続した病理学的応答及び生存がもたらされることが見出された。
【0039】
したがって、切除手術または他のがん治療を補助するためのいくつかのネオアジュバント療法が、当技術分野において知られているが、本明細書にて開示する本発明は、特異的な免疫調節薬ベースのネオ、ペリ、及びアジュバントプロトコルを提供し、これは、治療効果を改善し、ゆえに手術及び/またはチェックポイント免疫療法を受ける対象のより多くの割合で応答するように最適化される。
【0040】
本発明をより容易に理解できるように、特定の用語をまず定義する。他の定義についても、本明細書の全体を通してその詳細を説明する。
【0041】
「術前治療」と同じ意味で用いられることがある「ネオアジュバント」または「ネオアジュバント療法」という用語は、主要な治療または手術前の1つ以上の治療剤またはモダリティの投与を指す。このような療法は、より広範囲の外科的処置の障害及び病的状態を効果的に低減すること、ならびに上記外科的処置の全体的な有効性を増強することを目的とする。
【0042】
「アジュバント療法」及び「ペリアジュバント療法」という用語も、本明細書で使用され、この用語は、それぞれ、手術もしくは治療後の療法、または手術もしくは治療法の前及び後の両方の療法を指す。
【0043】
本明細書では単に「手術」または「外科的処置」と呼ばれる場合がある「腫瘍切除手術」とは、腫瘍の、好ましくは原発腫瘍もしくは結節の全てもしくは一部、または単離された単一の腫瘍もしくは結節を物理的に除去することを目的とした処置を指す。腫瘍切除手術は、多くの場合、化学療法または放射線の前に使用され、多くの場合、アジュバント療法を含むレジメンで使用される。腫瘍切除手術という用語は、腫瘍切除手術の種々の形態を定義するために使用され、リンパ節切除などのリンパ節切除性質のものを含むさらに補助的な手術を含む場合がある。これは、局所転移腫瘍に対する手術も包含する場合がある。
【0044】
「腫瘍」、「がん」、及び「異常増殖」という用語は、同じ意味で用いられる場合があり、その成長、増殖、または生存が、正常な対応細胞の成長、増殖、または生存よりも多い、例えば、細胞増殖障害または分化障害の細胞または細胞の集団を指す。典型的には、成長は制御されない。「悪性腫瘍」という用語は、近傍の組織の浸潤を指す。「転移」という用語は、腫瘍、がんまたは異常増殖の、部位、箇所、または領域が、原発腫瘍、結節またはがんとは異なる及び/またはそれらから遠隔の、患者内の他の部位、箇所、または領域への拡散または浸透を指す。
【0045】
「非転移性」という用語は、2-デオキシ-2-[フッ素-18]フルオロ-D-グルコース(18F-FDG)スキャニングを用いるCT、MRIまたはポジトロン放射断層撮影(PET)によって測定した際に、患者における原発腫瘍、結節またはがんと比較して、遠隔転移または残存病変が存在しない場所を指す。
【0046】
「チェックポイント阻害剤」は、TNF受容体またはB7スーパーファミリーのいずれかのメンバーである表面タンパク質に対して作用する薬剤であり、これは、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、IDO、TIM-3、BTLA、VISTA、TIGIT、LAG-3、CD40、KIR、CEACAM1、GARP、PS、CSF1 R、CD94/NKG2A、TDO、TNFR、DcR3、CD27、CD28、CD40、CD122、CD137、0X40、GITR、ICOS及びこれらの組み合わせを対象とする、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、ADC(抗体薬物複合体)、Fabフラグメント(Fab)、F(ab’)2フラグメント、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、プロボディ、単鎖可変領域フラグメント(scFv)、ジスルフィド安定化可変領域フラグメント(dsFv)、または他のそれらの抗原結合フラグメントから選択される、陰性共刺激分子に結合する薬剤を含む。「ブロック剤」は、上記の共刺激分子及び/またはそれらの対応するリガンドのいずれかに結合する薬剤である。「チェックポイント阻害剤」及び「ブロック剤」は、全体を通して同じ意味で用いられる場合がある。阻害剤は、好ましくは、表面タンパク質上の抗原部位を標的とする抗体または抗原結合分子である。例えば、阻害剤は、PD-L1またはPD-1またはCTLA-4上の抗原部位を標的とする抗体である。
【0047】
「プログラム死1」、「プログラム細胞死1」、「タンパク質PD-1」、「PD-1」及び「PD1」という用語は、同じ意味で用いられ、ヒトPD-1のバリアント、アイソフォーム、種のホモログ、及びPD-1と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。完全なPD-1配列は、GenBank受入番号U64863で見つけることが可能である。
【0048】
「OX40」、「CD137」及び「OX-40」という用語は、同じ意味で用いられ、ヒトOX40のバリアント、アイソフォーム、種のホモログ、及びOX40と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。
【0049】
「GITR」、及び「グルココルチコイド誘導TNFRファミリー関連遺伝子」という用語は、同じ意味で用いられ、ヒトGITRのバリアント、アイソフォーム、種のホモログ、及びGITRと少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。
【0050】
「CD137」及び「4-1BB」という用語は、同じ意味で用いられ、ヒトCD137のバリアント、アイソフォーム、種のホモログ、及びCD137と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。
【0051】
「B7-H3」及び「CD276」という用語は、同じ意味で用いられ、ヒトB7-H3のバリアント、アイソフォーム、種のホモログ、及びB7-H3と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。
【0052】
「B7-H4」及び「VTCN1」という用語は、同じ意味で用いられ、ヒトB7-H4のバリアント、アイソフォーム、種のホモログ、及びB7-H4と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。
【0053】
「A2AR」及び「アデノシンA2A受容体」という用語は、同じ意味で用いられ、ヒトA2ARのバリアント、アイソフォーム、種のホモログ、及びA2ARと少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。
【0054】
「IDO」及び「インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ」という用語は、同じ意味で用いられ、ヒトIDOのバリアント、アイソフォーム、種のホモログ、及びIDOと少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。
【0055】
「細胞傷害性Tリンパ球関連抗原-4」、「CTLA-4」、「CTLA4」及び「CTLA-4抗原」という用語は、同じ意味で用いられ、ヒトCTLA-4のバリアント、アイソフォーム、種のホモログ、及びCTLA-4と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。
【0056】
本明細書で使用される場合、「治療量以下の用量」とは、がんの治療のために単独で投与される場合に、より短い期間の治療化合物または療法またはモダリティの通常または典型的な用量よりも少ない、治療化合物(例えば、抗体)またはモダリティの用量または治療期間を意味する。
【0057】
「治療有効量」という用語は、免疫調節薬と組み合わせたチェックポイント阻害剤を含む1つ以上の治療剤またはモダリティの量として定義され、これにより、好ましくは、疾患症状の重症度の軽減、疾患無症状期間の頻度及び持続時間の増加、または疾患の苦痛に起因する機能障害もしくは身体障害の予防がもたらされる。「有効量」または「薬学的有効量」という用語は、薬剤が所望の生物学的または治療的結果を提供するのに十分な量を指す。その結果は、疾患の徴候、症状または原因のうち1つ以上の低減、改善、一時的軽減、軽減、遅延、及び/または緩和であるか、生物系の任意の他の所望の変化であり得る。がんに関して、有効量は、腫瘍を縮小及び/または減少させるか、及び/または腫瘍の増殖率を安定化させる(例えば、腫瘍成長を抑制する)か、望ましくない他の細胞増殖を予防するか、または遅延させるのに十分な量を含み得る。いくつかの実施形態では、有効量は、発症を遅延させるか、生存を延長させるか、またはがんもしくは腫瘍の安定化を誘導するのに十分な量である。
【0058】
いくつかの実施形態では、治療有効量は、再発を予防または遅延させるのに十分な量である。治療有効量は、1回以上の投与で投与され得る。1つ以上の治療剤もしくはモダリティまたはこれらの組み合わせの治療有効量は、(i)がん細胞の数の減少、(ii)腫瘍サイズの減少、(iii)がん細胞の周辺臓器への湿潤のある程度の阻害、阻止、遅延、及び、好ましくは停止、(iv)腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度の遅延、及び、好ましくは停止)、(v)腫瘍成長の阻害、(vi)腫瘍の発症及び/または再発の予防または遅延、及び/または(vii)がんに関連する症状のうち1つ以上のある程度の軽減、のうち1つ以上をもたらすことができる。例えば、腫瘍の治療のために、「治療有効投薬量」は、ベースライン測定値に対して少なくとも約5%、例えば、少なくとも約10%、または約20%、または約60%以上の腫瘍収縮を誘導することができる。ベースライン測定値は、未処置の対象から導出される場合がある。
【0059】
治療化合物の治療有効量は、腫瘍サイズを減少させるか、または対象における症状を緩和することができる。当業者は、対象のサイズ、対象の症状の重症度、及び選択された特定の組成物もしくは投与経路などの因子に基づいてそのような量を決定することができるであろう。「免疫応答」という用語は、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、及び上記の細胞または肝臓によって産生される可溶性高分子(抗体、サイトカイン、及び補体を含む)の作用を指し、これにより、人体からがん性細胞が選択的に損傷、破壊、または除去される。
【0060】
「有効量」または「薬学的有効量」という用語は、薬剤が所望の生物学的または治療的結果を提供するのに十分な量を指す。その結果は、がんの徴候、症状または原因のうち1つ以上の低減、改善、一時的軽減、軽減、遅延、及び/または緩和であるか、生物系の任意の他の所望の変化であり得る。がんに関して、有効量は、腫瘍を縮小させるか、及び/または腫瘍の増殖率を減少させる(例えば、腫瘍成長を抑制する)か、望ましくない他の細胞増殖を予防するか、または遅延させるのに十分な量を含み得る。いくつかの実施形態では、有効量は、発症を遅延させるか、生存を延長させるか、またはがんもしくは腫瘍の安定化を誘導するのに十分な量である。好ましくは、治療効果は、標的腫瘍の安定病態(SD)、完全奏効(CR)または部分奏効(PR)、及び/または1つ以上の非標的腫瘍の安定病態(SD)または完全奏効(CR)を含むRECIST 1.1によって定義されるような1つ以上の上記腫瘍の腫瘍サイズの減少または安定化によって測定される。あるいは、治療効果は、当業者に知られているように、免疫関連応答基準(irRC)、iRECISTまたはirRECISTによって評価される。
【0061】
「免疫応答」という用語は、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、及び上記の細胞または肝臓によって産生される可溶性高分子(抗体、サイトカイン、及び補体を含む)の作用を指し、これにより、人体からがん性細胞が選択的に損傷、破壊、または除去される。
【0062】
「チェックポイント阻害剤」または「免疫調節薬」または「免疫療法」という用語は、本発明を実践する際の、細胞、ウイルス、溶解物、ベクター、遺伝子、mRNA、DNA、核酸、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、ADC(抗体薬物複合体)、Fabフラグメント(Fab)、F(ab′)2フラグメント、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、プロボディ、単鎖可変領域フラグメント(scFv)、ジスルフィド安定化可変領域フラグメント(dsFv)、または他のそれらの抗原結合フラグメントの使用をさらに含む場合がある。
【0063】
本明細書で言及される「抗体」という用語は、全抗体、及び任意の抗原結合フラグメント(すなわち、「抗原結合部分」)、またはその単鎖を含む。抗体の「抗原結合部分」(または単純に「抗体部分」)という用語は、本明細書で使用される場合、受容体及びそのリガンド(例えば、PD-1)に特異的に結合する能力を維持する抗体の1つ以上のフラグメントを指し、これには(i)Fabフラグメント、(ii)F(ab’)2フラグメント、(iii)VH及びCHIドメインからなるFdフラグメント、(iv)Fvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al,Nature,341:544-546(1989))、及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。また、単鎖抗体は、抗体の「抗原結合部分」という用語の範囲内に包含されることが意図される。これらの抗体フラグメントは、当業者に公知の従来の技術を使用して得られ、かつこのフラグメントは、インタクトな抗体と同じ様式で有用性についてスクリーニングされる。
【0064】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一結合特異性及び親和性を示す。
【0065】
「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、フレームワーク及びCDR領域の両方が、ヒト生殖細胞免疫グロブリン配列に由来する、可変領域を有する抗体を含むことが意図される。
【0066】
「ヒト化抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳類種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を指すことが意図される。追加のフレームワーク領域修飾が、ヒトフレームワーク配列内で行われ得る。抗体に加えて、適切な標的に対する結合親和性を有するペプチドを含む他の生物学的分子が、チェックポイント阻害剤として作用する場合がある。
【0067】
「生育不能」とは、細胞殺傷の特定の手段を介して、Mycobacteriumが微生物的に不活性化されたことを意味する。そのような生育不能性を可能にするか、または強制する方法は、加熱殺菌、長時間凍結乾燥(Tolerys SA)、ガンマ波または電子ビームによる照射、またはマイコバクテリアをホルムアルデヒドなどの化学物質に曝すことを含む場合がある。製造中のこのような調製は、生生物または弱毒生物の送達から派生する既知の副作用に生物が関連しないことを意味する。
【0068】
「治療」または「療法」という用語は、病態(例えば、疾患)、病態の症状を治療するか、治癒するか、軽減するか、和らげるか、変化させるか、修復するか、緩和するか、改善するか、もしくは影響を与えるか、または症状、合併症、疾患の生化学的徴候の発症を予防するか、もしくは遅延させるか、あるいは統計的に有意なように、疾患、病態、もしくは障害のさらなる発症を抑止または阻害する目的で、活性薬剤を投与することを意味する。
【0069】
本明細書で使用される場合、「対象」または「患者」という用語は、ヒト及び非ヒト動物を含むことが意図される。好ましい対象には、免疫応答の増強を必要としているヒト患者が含まれる。方法は、T細胞媒介免疫応答を増強することによって治療可能な障害を有するヒト患者を治療するのに特に好適である。特定の実施形態では、方法は、生体内のがん細胞の治療に特に好適である。
【0070】
本明細書で使用される場合、「同時投与」または「同時に」または「同時」という用語は、投与が同じ日に行われることを意味する。「連続的投与」または「連続的に」または「別々の」という用語は、投与が異なる日に行われることを意味する。
【0071】
本明細書で定義されるような「同時」投与は、免疫調節薬と、チェックポイント阻害剤療法を含む1つ以上の治療剤またはモダリティとを、互いに、約2時間以内、または約1時間以下で、さらにより好ましくは同時に投与することを含む。
【0072】
本明細書で定義されるような「別々の」投与は、免疫調節薬と、チェックポイント阻害剤療法を含む1つ以上の治療剤またはモダリティとを、約12時間超、または約8時間、または約6時間、または約4時間、または約2時間間隔をあけて投与することを含む。
【0073】
本明細書で定義されるような「連続的」投与は、免疫調節薬と、チェックポイント阻害剤療法または化学療法剤を含む1つ以上の治療剤またはモダリティとを、それぞれ複数のアリコート及び/または用量で、及び/または別々の機会で投与することを含む。免疫調節薬は、チェックポイント阻害剤療法を含む1つ以上の治療剤またはモダリティの投与後、前及び/または後に患者に投与されてよい。あるいは、免疫調節薬は、チェックポイント阻害剤療法を含む1つ以上の治療剤またはモダリティによる治療後、患者への適用が継続される。
【0074】
選択肢(例えば、「または」)の使用は、選択肢の一方、両方またはその任意の組み合わせのいずれかを意味することを理解されたい。本発明で使用される場合、不定冠詞「a」または「an」は、列挙または示した構成要素のうち「1つ以上」を指すと理解されるべきである。
【0075】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、当業者によって決定されるような特定の値が許容可能な誤差範囲内であることを意味し、値を測定する、または決定する方法、すなわち、測定システムの限界に部分的に依存する。例えば、「約」は、当該技術分野における慣例に従い、1以内のまたは1以上の標準偏差を意味する場合がある。あるいは、「約」は、最大20%の範囲を意味する場合がある。特定の値が本願及び特許請求の範囲に記載されている場合、特に指定のない限り、「約」の意味は、その特定の値が許容可能な誤差範囲内であることが想定されるべきである。
【0076】
本発明の一部として、対象は、ECOGスケールに従って、0、1、1-、2、3、または4のパフォーマンスステータスを有するとして分類される。ECOGスケールはまた、ZubrodスケールまたはWHOスケールとして知られていることもあり、したがって、このような用語は交換可能である。ECOGスケールは、以下に説明するように、PS0からPS5である。いくつかの実施形態では、PS1-の値は、患者がPS2のような重度の行動の全ての態様を示さず、かつPS1として分類された行動の全ての態様を示さない、PS1とPS2との間の整数を表している。パフォーマンスステータスのさらなる臨床分類法が、100が疾患がないことであり、かつ0が死亡である0から100のKarnofskyスケールとして知られている。
【0077】
通常、パフォーマンスステータスを評価するために、2人の臨床観察者が必要である。2つのスコアに不一致がある場合、最高(最低)の評価が使用される。
【表1-1】
【表1-2】
60以上のKarnofskyスケール値は、PS2、3、4,または5のECOGスケール読取り値と等しい場合がある。あるいは、Mycobacteriumによる投与を目的とする対象または患者は、2つ以上の化学療法レジメンに耐えるために十分に健康ではないと代替的に分類される。2つ以上の化学療法レジメンに耐えるために十分に健康でないと分類された対象は、ECOGスケールによるスコアがPS2、3、4もしくは5の対象もしくは患者か、またはKarnofskyスケールによるスコアが60以上、例えば、70以上の対象もしくは患者と等しいと見なされる。
【0078】
本発明による化学療法レジメンは、1つの化学療法剤または複数の化学療法剤を、任意の他の治療剤と、任意選択で、同時に、別々に、または連続的に投与することである。レジメンは、1日2回以上、1週間に2回以上、1ヶ月に2回以上、1年に2回以上繰り返されてよい。化学療法剤は、1つ以上の細胞メカニズムで干渉することによって細胞死を引き起こす可能性が高いと定義される細胞傷害性であってよい。
【0079】
M.vaccae及びM.obuenseは、宿主における複合免疫応答を誘導することが明らかとなっている。これらの調製物による治療は、Th1及びマクロファージ活性化ならびに細胞傷害性細胞活性を含む、自然免疫及び1型免疫を刺激する。これらはまた、個別に、免疫調節性メカニズムを介して不適正なTh2応答を下方制御する。マウス及びヒト免疫細胞による実験で、IMM-101(生育不能の全細胞M.obuense)が抗原提示マクロファージ及び樹状細胞(DC)の強力な活性化因子であり、かつDC活性化により、CD4+Tヘルパー1リンパ球(Th1)及びCD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の形成及び活性化を伴う典型的な1型免疫応答、ならびにIMM-101活性化DCが存在するリンパ節におけるサイトカインインターフェロン-γ(IFN-γ)の産生の増加がもたらされることが明らかとなっている。
【0080】
加えて、他の実験では、IMM-101はまた、ナチュラルキラー細胞(NK)及びT細胞発現ガンマ/デルタ受容体(γδ-T細胞)の数及び活性化を増加させることが明らかとなった。Th1及びCTLは、攻撃するために腫瘍細胞が特異的腫瘍関連抗原(TAA)を発現することを必要とするが、NK及びγδ-T細胞は、腫瘍細胞を殺傷するためにそのようなTAAの存在を必要としない。これらの4つの異なる免疫細胞は、有効な抗腫瘍応答を形成するように協力して働く。がんに関して、IMM-101の観察された抗腫瘍効果が、膵臓癌モデルにおいてCD8+T細胞の枯渇によって完全に抑止される可能性があるため、IFN-y産生CTLの形成は、IMM-101治療からの最も重要な結果である可能性が高い。
【0081】
マクロファージを活性化するIMM-101の能力は、炎症誘発性マクロファージ由来サイトカイン(例えば、DCを1型免疫応答に偏らせるために必要なIL-12)の放出を介してDCの活性化を手助けできるだけではなく、腫瘍関連免疫抑制因子2型マクロファージを腫瘍侵襲性1型マクロファージに変化させるために重要である場合がある。この後者の特徴は、類似の加熱殺菌マイコバクテリウムM.indicus praniiに関して示された。
【0082】
IMM-101の重要な特徴は、DCを活性化し、cDC1として知られている樹状細胞のサブクラス(すなわち、1型免疫応答に必要とされるDC)に成熟させるその能力である。十分な数のcDC1の活性化は、CPIを効果的にするための必須条件であることが明らかとなっている。
【0083】
TAA発現腫瘍細胞を特異的に攻撃するINF-γ産生Th1及びCTL、ならびに他のメカニズムを介して腫瘍を攻撃する活性化NK及びγδ-T細胞をもたらす1型免疫応答は、身体の主要なメカニズムであり、かつ有効な抗がん応答に必須であり、したがって、任意の免疫媒介がん治療の中核であるべきであると考えられている(前臨床データは、IMM-101がかかる必要とされる1型免疫応答を刺激する能力があることを示している)。
【0084】
DC抗原刺激に対するIMM-101の影響については、生体外でこれまでに研究されており、ヒト及びマウスDCの両方に関して、IMM-101が表現型活性化及びサイトカイン産生を誘導する用量依存的能力を呈することが判明した。例えば、GM-CSF由来マウスDCは、IMM-101に対して用量依存的応答を示し、CD80、CD86、CD40及びMHC IIの膜発現の増加、ならびにIL-6、IL-12p40及び一酸化窒素の産生の増加を伴った。これらは、全て、T細胞の有効な抗原依存性活性化に必須の分子である。さらに、ヒト単核細胞由来DCは、IMM-101に対して類似の応答を示し、CD80、CD86及びMHC IIの上方制御、及び多くの関連サイトカインの分泌を伴い、明らかなDCの活性化を示した。生体外でのIMM-101への曝露により、IMM-101は、抗原をプロセシングして提示するそれらの能力を増強させることによって、DCに機能的に影響を及ぼすことも明らかとなった。
【0085】
生体内実験により、IMM-101(生体外)活性化GM-CSF由来マウスDCのナイーブレシピエントマウスへの皮下養子移入の7日後の、流入領域リンパ節細胞調製物の再刺激後に、IMM-101活性化DCが、CD8+及びCD4+T細胞を活性化し、IFN-γの分泌を促進できることが明らかとなっている。
【0086】
以前の臨床試験で、単独療法及び化学療法剤またはチェックポイント阻害剤との組み合わせの際のIMM-101の安全性が実証されている(Stebbing et al.2012,Dalgleish et al.2016,Dalgleish et al.2018)。
【0087】
マイクロサテライト不安定性(MSI)高結腸直腸癌におけるチェックポイント阻害剤の術前短時間投与は、高い割合の病理学的退縮を誘導することが明らかとなっている。最近提示された小規模の探索的第II相試験(Chalabi et al.2018,immunotherapy of cancer 29:8)では、CTLA-4抗体イピリムマブ及びPD-1抗体ニボリムマブ(nivolimumab)の6週間の術前投与が、完全な、または部分的な病理学的寛解をもたらすことが示され、これは、ネオアジュバント療法が一部のがん提示に特に効果的であり得ることを示唆している。したがって、本発明は、がんに対する腫瘍切除手術またはチェックポイント阻害剤療法を受ける予定の患者の好ましくない予後を改善するために、他の化学療法剤の使用を伴って、または伴わずに、驚くべきことに有利なネオアジュバント治療法またはアジュバント治療法としてIMM-101を使用するプロトコルを提供する。このような患者としては、結腸直腸癌、特に、マイクロサテライト不安定性(MSI)を伴うミスマッチ修復欠損(dMMR)結腸直腸癌患者が挙げられる。
【0088】
本発明のさらなる態様では、がんは、DNAミスマッチ修復(MMR)タンパク質発現に対するPCRベースのアッセイ及び/またはIHC染色により測定した際に、マイクロサテライト不安定性(MSI)が高いと判断された。
【0089】
本発明の好ましい実施形態では、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬が提供されるが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含み、かつ上記光子療法は、x線及び/またはガンマ線の投与を含む。
【0090】
本発明のさらに好ましい実施形態では、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬が提供されるが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含み、かつ上記粒子療法は、電子、陽子、中性子、パイオン、ネオンイオン、アルゴンイオン、ケイ素イオン、または炭素イオンの投与を含む。
【0091】
本発明の別の実施形態では、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬が提供されるが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含み、かつ上記光子療法は、x線及び/またはガンマ線の投与を含み、上記粒子療法は、電子、陽子、中性子、パイオン、ネオンイオン、アルゴンイオン、ケイ素イオン、または炭素イオンの投与を含み、かつ上記光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、外部放射源または内部放射源のいずれかから患者に投与される。
【0092】
本発明の実施形態では、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬が提供されるが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含み、かつ上記光子療法は、x線及び/またはガンマ線の投与を含み、光子療法の上記外部放射源は、外部照射放射線療法、2-D放射線療法、全身3次元原体照射法(3D-CRT)、回転、ヘリカルまたはアークベース強度変調放射線治療(IMRT)、画像誘導放射線治療(IGRT)、少分割コーンビーム放射線療法、トモセラピー、術中放射線治療(IORT)、超高線量率(FLASH)放射線療法、例えば、GammaKnifeまたはCyberKnifeまたは類似の装置を介した定位放射線手術または体幹部定位放射線治療(SBRTまたはSABR、全体を通して交換可能)、から選択される。
【0093】
本発明の別の実施形態では、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬が提供されるが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含み、上記光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、上記がん内に、または近接して配置される1つ以上の粒子またはナノ粒子を含む内部放射源から患者に投与され、好ましくは、上記がん内に、または近接して配置される上記1つ以上の粒子またはナノ粒子は、フリーラジカル、α線、β線、x線もしくはガンマ線、またはそれらの組み合わせを放射し、ハフニウム酸化物ナノ粒子(NBTXR3,NanoBiotix,Inc)を含み、その後に、放射線療法によって活性化される。
【0094】
本発明のさらに別の実施形態では、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬が提供されるが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含み、上記光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、上記がん内に、または近接して配置される1つ以上の粒子またはナノ粒子を含む内部放射源から患者に投与され、好ましくは、上記1つ以上の粒子またはナノ粒子は、リン-32(Oncosilなど)またはヨウ素-125(American SynQor,Inc)などの放射性同位体を含有する近接照射療法種を含む。
【0095】
機構的に、放射線療法は、CXCL9、CXCL10及びCXCL16を含む炎症誘発性ケモカインの産生を誘発することができ、TME(腫瘍微小環境)へのエフェクターCD8+T細胞の走化性動員をもたらす。RT後のMig及びIP10などのケモカインの放出は、血管ネットワークの修復及びT細胞血管外遊走の一因となる。同様に、低線量RT(例えば、2Gy)は、腫瘍常在性マクロファージを免疫抑制(「M2」)表現型からTH1極性化iNOS+(M1)表現型に再プログラムすることができる。
【0096】
本発明の好ましい実施形態では、粒子療法の電離放射線の1つ以上の線量が、患者に投与される。公表された前臨床業務は、陽子療法の免疫原性の可能性を支持し、実際に、光子よりも幅広い免疫原性用途を有し得ることを示唆している。例えば、生体外研究は、陽子が光子よりも高レベルで細胞表面へのカルレティキュリン転位を媒介し、交差抗原刺激及びCTLに対する感受性を増加させる可能性があることを示唆している。生体外データはまた、陽子線治療(PBT)及びX線照射が、照射された黒色腫細胞の同様のレベルの生存を達成するが、PBTのみが遊走の長期間阻害を誘導することを示している。抗転移の潜在力もまた、ヒトの乳癌細胞及びNSCLC細胞でのPBTによって実証されており、さらに、マウス乳房腫瘍(EMT6)細胞及びヒト唾液腺腫瘍細胞における研究では、致死量以下の損傷回復が、X線照射後よりもPBT後に抑制されたことが明らかとなった。しかし、低エネルギー陽子線は、活性酸素種形成及びカスパーゼの活性化を介して腫瘍細胞アポトーシスを誘導するが、このプロセスでは、免疫原性細胞死(ICD)を介してCTLを抗原刺激することは期待できない。生体外腫瘍細胞モデルでは、光子放射線と比べて陽子放射線は、カルレティキュリンのより高い転位をもたらし、それによって、TAAの交差抗原刺激及びCTL媒介殺傷に対する腫瘍細胞の感受性を増加させることが明らかとなった。
【0097】
さらに、陽子は、荷電粒子として、正常細胞及びがん細胞の線量計測的及び生物学的差の両方を示し、これにより、RTの免疫アジュバント効果の増強だけでなく、免疫抑制因子メカニズムも低減できる可能性がある。
【0098】
技術の向上にもかかわらず、SABRには、グレード3+毒性では高線量における問題が残り、かつ低い線量では治療有効性が損なわれるといったいくつかの課題がある。定位MRI誘導適応型放射線療法(SMART)は、少分割放射線療法の精度及び送達を最適化し、それにより、SABRが高線量を実現するのと同時に、重要な正常構造への損傷を低減することが可能となる。このことは、呼吸ゲート法、標的容積の毎日の適応、リスク臓器の毎日の再輪郭付け、日々の解剖学的構造に対する治療計画の毎日の再最適化によって実現され、それらの全てによって、より小さな治療容積、ゆえに重要な正常組織に対するより低い線量がもたらされる。これにより、順次、局所制御及び結果を改善するために、線量漸増が可能になる可能性がある。
【0099】
MR誘導放射線療法は、過去5年に出現し、様々な固形腫瘍に対して見込みのある新規の治療技法である。2つの市販のMRI線形加速器(MRリニアック)システムが存在し、1つはMRIdianと呼ばれるViewRayからのもの(ViewRay Inc.,Oakwood Village,Ohio)、もう1つはElekta Unityと呼ばれるElektaからのもの(Elekta AB,Stockholm,Sweden)である。手短に言えば、治療送達前に腫瘍及び正常臓器の位置を特定するために線形加速器内に設置されたCTユニットを使用する代わりに、MRリニアックは、MRIデバイスと線形加速器とを組み合わせている。このような組み合わせは、PDACの治療に対して独自に有用ないくつかの性能を可能にする。第1に、MRガイダンスが、改善された軟組織コントラストを提供し、それにより、異なるタイプの軟組織の境界を区別する能力を提供する。これは、腫瘍、小腸、胃、または血管構造の位置を含み得る。第2に、市販のMR線形加速器デバイスの両方で、ビームがオンになり、放射線療法が送達される際に、MRイメージングが可能になる。これにより、放射線療法送達の実時間の間に正常な臓器の動きを追跡かつモニタリングすることが可能になる。このような「リアルタイム」の臓器の動きは、治療中のモニタリングを可能にする。リアルタイムイメージングは、以前は価値を認められていなかった、完全に新規の追跡アプローチを可能にする。第3に、画分ごとにMRgRTを用いることで、実際のMRI可視化解剖学的構造に基づいて新しい治療計画が作成可能である。
【0100】
現在では、この技術を使用する非常に限られた数の臨床治験が進行中である。SMART治験は、局所進行性PDACに対するMR誘導放射線の使用を試験するよく知られている第II相治験で、現在、蓄積中であり(NCT03621644)、本試験では、患者は、5日間にわたって分割された50Gyを受け、隔日で投与されている。合計133人の患者に、この多施設治験への登録が計画されている。本試験の主な評価項目は、放射線療法の完了の90日以内のグレード3以上の胃腸(GI)毒性である。Dana Farber Cancer Instituteにおける第2の現在進行中の試験は、PDAC患者、肺癌患者、または腎臓癌患者のいずれかを対象とした第I/II相試験である(NCT04115254)。試験の第I相部分の主な評価項目は、複数の腫瘍タイプにわたるSMARTの送達成功率である。
【0101】
本発明の好ましい実施形態では、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬が提供されるが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含み、上記光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、位置合わせ種、X線、CT、PET、超音波または磁気共鳴(MR)から導出される画像またはリアルタイムガイダンスを使用して患者に投与され、上記画像またはリアルタイムガイダンスは、磁気共鳴から、好ましくは、MRIdianまたはElekta UnityなどのMRI誘導LINACまたはSBRTを介して導出される。
【0102】
本発明の好ましい実施形態では、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬が提供されるが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含み、上記光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、位置合わせ種から導出される画像またはリアルタイムガイダンスを使用して患者に投与され、かつ上記光子療法は、CyberKnifeなどのSBRTを含む。
【0103】
本発明の別の実施形態では、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬が提供されるが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含み、上記患者は、原発腫瘍から遠隔のリンパ節及び/または臓器に(限局)転移を呈し、例えば、上記患者は、1~10個の少数転移腫瘍または病変を呈する。
【0104】
本発明の別の実施形態では、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬が提供されるが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含み、上記患者は、肺から肝臓の間で合計5個未満の少数転移腫瘍または病変を呈する。あるいは、上記患者は、原発腫瘍から遠隔のいずれかのリンパ節及び/または臓器に転移を呈さない。
【0105】
本発明の実施形態では、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬が提供されるが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含み、上記使用は、腫瘍切除手術を受ける予定か、または受けている患者における原発腫瘍を含むがんのアジュバント、ネオアジュバント、またはペリアジュバント治療または制御を含む。
【0106】
本発明の実施形態では、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬が提供されるが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含み、上記光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、10グレイのα/βで最大生物学的等価線量、約40グレイ超、または約50グレイ超、または約90グレイ超の(BED10)を含む。
【0107】
本発明の好ましい実施形態では、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬が提供されるが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含み、上記光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、単一画分として、または分割レジメンを介して、患者に投与される。上記分割レジメンは、2~50個の画分、例えば、3~10個の画分、好ましくは3~5個の画分を含んでよい。
【0108】
本発明の実施形態では、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬が提供されるが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含み、線量は、40~50グレイであり、5個の画分で、MRIdianもしくはElekta Unity、またはCyberKnifeもしくはGammaKnifeなどの従来のSBRTなど、MRI誘導LINACまたはSBRTを介して適切に投与される。あるいは、40~50Gyの範囲の線量が、リスク臓器耐性に応じて、当業者に周知の線量計測許容量と共に適用されてよい。
【0109】
本発明の実施形態では、公称線量は、約40~約50グレイであり、5個の画分で、MRIdianもしくはElekta UnityなどのMRI誘導LINACもしくはSBRT、またはCyberKnifeもしくはGammaKnifeなどの従来のSBRTを介して、好ましくは、5個の画分で、画分あたり8Gy、または画分あたり10Gyで、適切に投与され、好ましくは、各画分は、連日または隔日で投与される。
【0110】
好ましくは、光子療法の外部放射源が、外部照射放射線療法、2-D放射線療法、全身3次元原体照射法(3D-CRT)、回転、ヘリカルまたはアークベース強度変調放射線治療(IMRT)、画像誘導放射線治療(IGRT)、少分割コーンビーム放射線療法、トモセラピー、術中放射線治療(IORT)、超高線量率(FLASH)放射線療法、例えば、GammaKnifeもしくはCyberKnifeまたは類似の装置を介した定位放射線手術または体幹部定位放射線治療(SBRTまたはSABR、全体を通して交換可能)、から選択される場合の、光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の線量画分は、毎日、または隔日または毎週または長期間にわたって投与され、好ましくは、SBRT(CyberKnife、GammaKnife、または類似のもの)またはMRI誘導SBRTは、隔日で投与される。
【0111】
本発明の実施形態では、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬が提供されるが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含み、上記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤は、養子細胞療法、外科的(腫瘍切除)療法、化学療法、ホルモン療法、チェックポイント阻害剤療法、メトホルミンなどの小分子療法、受容体キナーゼ阻害剤療法、温熱療法、光線療法、高周波アブレーション治療(RFA)、抗血管新生療法、サイトカイン療法、寒冷療法、生物学的療法、HDAC阻害剤、例えば、OKI-179、BRAF阻害剤、MEK阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、P13Kデルタ阻害剤、PARP阻害剤、mTOR阻害剤、低メチル化剤、腫瘍溶解性ウイルス、TLR2、3、4、7、8または9アゴニストを含むTLRアゴニスト、例えば、リンタトリモド、またはTLR5アゴニスト、MRx0518(4D Pharma)、STINGアゴニスト(MIW815及びSYNB1891を含む)、ミファムルチド及びがんワクチン、例えば、GVAXまたはCIMAvax、ならびにそれらの組み合わせから選択される。
【0112】
TLR3アゴニストポリリボイノシン酸:ポリリボシチジル酸(ポリI:C)は、I型IFN生成、ならびにDC成熟を誘導する。CD141+DCは、マウスCD8+/CD103+DCのヒト等価物であり、TLR3及びTLR8は、CD141+DCで発現する。本発明中で使用するための最も好ましいTLR3アゴニストは、リンタトリモド(Ampligen)である。TLR3及びTLR7アゴニスト(レシキモド)をマウスへ注射すると、CD141+DC及びCD1c+DCによって共刺激分子CD80、CD83、及びCD86の発現増加が生じる。
【0113】
さらなる実施形態では、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含み、該非病原性の生育不能Mycobacteriumは、CTL活性を促進し、ここで、CTL活性は、1つ以上の炎症誘発性サイトカインの分泌及び/または標的細胞のCTL媒介殺傷を含み;及び/またはCD4+T細胞活性化及び/またはCD4+T細胞増殖及び/またはCD4+T細胞媒介細胞枯渇を促進し;及び/またはCD8+T細胞活性化及び/またはCD8+T細胞増殖及び/またはCD8+T細胞媒介細胞枯渇を促進し;及び/またはNK細胞活性及び/またはNK細胞増殖及び/またはNK細胞媒介細胞枯渇を増強し、ここで、増強されたNK細胞活性は、標的細胞の枯渇の増加及び/または炎症誘発性サイトカイン放出を含み;及び/またはCD103+CD141+DCを上方制御または刺激し;及び/または制御性細胞(Treg)の分化、増殖、及び/または活性、及び/または骨髄由来抑制細胞(MDSC)の分化、増殖、湿潤、及び/または活性を低減または排除し;及び/または誘導性Treg(iTreg)の標的部位への湿潤を低減または排除する。
【0114】
本発明の実施形態では、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬が提供されるが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含み、がんは、膀胱癌(筋層非浸潤性膀胱癌または尿路上皮癌を含む)、前立腺癌、肝臓癌、腎臓癌、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌、脳癌(膠芽腫を含む)、肝細胞癌、リンパ腫、白血病、胃癌、子宮頸癌、卵巣癌、甲状腺癌、黒色腫、頭頚部癌、皮膚癌、及び、軟組織肉腫及び/または骨肉腫から選択され、膵管腺癌(PDAC)及び膵臓神経内分泌腫瘍(PNET)を含み、任意選択で、上記がんは、転移性である。
【0115】
本発明の実施形態では、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬が提供されるが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含み、がんは、局所進行性膵臓癌(結節性病変を含有または非含有)、切除可能な膵臓癌、境界切除可能膵臓癌、チェックポイント難治性膵臓癌、化学療法難治性膵臓癌、少数転移膵臓癌、膵管腺癌(PDAC)、及び転移性膵管腺癌(mPDAC)から選択される膵臓癌である。
【0116】
本発明の実施形態では、がんは、TNMステージ基準によって臨床的に定義され、この際、患者は、T1~T4の原発腫瘍(T)、及び/またはN0、N1、またはN2のNode(節)指定を有しているか、または上記がんは、ステージI、ステージII、ステージIII、またはステージIVと臨床的に定義され、任意選択で、患者は、転移の所見がない(M0)。
【0117】
本発明の別の実施形態では、患者は、腫瘍切除手術を受けた、または受ける予定であり、任意選択で、腫瘍切除手術は、リンパ節切除、及び任意選択で、転移性膵管腺癌(mPDAC)などの転移性疾患が存在する場合、転移性腫瘍切除をさらに含む。
【0118】
本発明の別の実施形態では、がんは、DNAミスマッチ修復欠損(dMMR)または熟達(pMMR)タンパク質発現に対するPCRベースのアッセイ及び/またはIHC染色によって測定した際に、マイクロサテライト不安定性(MSI)が高い、またはMSIが低いと判断され、MSIが高く、dMMRが好ましい。
【0119】
本発明のさらなる実施形態では、患者は、ECOGスケールに従って、0、1、1-、2、3、または4のパフォーマンスステータスを有するとして臨床的に分類されるか、2つ以上の化学療法レジメンに耐えるために十分に健康ではないと分類される。
【0120】
本発明のさらなる実施形態では、患者はまた、FOLFIRINOX、mFOLFIRINOX、FOLFOX、NALIRIFOXなどの1つ以上の細胞傷害性化学療法剤を受けている、または以前に受けている。任意選択で、患者は、上記FOLFIRINOX、mFOLFIRINOX、FOLFOX、またはNALIRIFOX療法後、部分奏効または安定病態を示している。
【0121】
本発明のさらなる実施形態では、患者はまた、ナブパクリタキセルを、ゲムシタビンと適切に組み合わせて受けている、または以前に受けている。
【0122】
本発明の好ましい実施形態では、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬が提供されるが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含み、患者はまた、以下の受容体:CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、IDO、TIM-3、BTLA、VISTA、TIGIT、LAG-3、CD40、KIR、CEACAM1、GARP、PS、CSF1-R、CD94/NKG2A、TDO、TNFR、DcR3、CD27、CD28、CD40、CD122、CD137、0X40、GITR、ICOS及びこれらの組み合わせ、好ましくは、CTLA-4、PD-1またはPD-L1に結合する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、ADC(抗体薬物複合体)、ISAC、Fabフラグメント(Fab)、F(ab’)2フラグメント、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、プロボディ、融合タンパク質、単鎖可変領域フラグメント(scFv)、ジスルフィド安定化可変領域フラグメント(dsFv)、または他のそれらの抗原結合フラグメントから適切に選択された1つ以上のチェックポイント阻害剤を投与される。
【0123】
本発明のさらに好ましい実施形態では、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬が提供されるが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含み、1つ以上のチェックポイント阻害剤は、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アゼトリズマブ(azetolizumab)、BI 754091(抗PD-1)、バビツキシマブ(PSに対するIgG3モノクローナル抗体)、デュルバルマブ、ドスタルリマブ、トレメリムマブ、スパルタリズマブ、アベルマブ、シンチリマブ、トリパリマブ、プロルゴリマブ(prolgolimab)、チスレリズマブ、カムレリズマブ、MGA012(レチファンリマブ)、MGD013(テボテリマブ)、MGD019、エノブリツズマブ、MGD009、MGC018、MEDI0680、ミプテナリマブ(BI 754111、抗LAG-3)、PDR001、FAZ053、TSR022、MBG453、レラトリマブ(BMS986016)、LAG525(IMP701)、IMP321(Eftilagimod alpha)、REGN2810(セミプリマブ)、REGN3767、ペキシダルチニブ(PLX3397)、LY3022855、FPA008、BLZ945、GDC0919、エパカドスタット、エマクツズマブ(CSF-1Rを標的とするRG1755)、FPA150、インドキシミド(indoximid)、BMS986205、CPI-444、MEDI9447、PBF509、FS118(LAG-3及びPD-L1に対して二重特異性)、リリルマブ、Sym023、TSR-022、A2Ar阻害剤(例えば、EOS100850、AB928)、モナリズマブなどのNKG2A阻害剤及びこれらの組み合わせから選択され、任意選択で、1つ以上のチェックポイント阻害剤は、治療量以下の量及び/または期間で投与される。
【0124】
本発明のさらに好ましい実施形態では、上記非病原性の生育不能Mycobacteriumの投与は、上記1つ以上のチェックポイント阻害剤の投与前及び/または後に行われる。
【0125】
本発明の一態様では、非病原性の生育不能Mycobacteriumは、非病原性加熱殺菌Mycobacteriumを含む。本発明における使用のためのマイコバクテリア種の例としては、M.vaccae、M.thermoresistibile、M.flavescens、M.duvalii、M.phlei、M.obuense、M.parafortuitum、M.sphagni、M.aichiense、M.rhodesiae、M.neoaurum、M.chubuense、M.tokaiense、M.komossense、M.aurum、M.w、M.tuberculosis、M.microti、M.africanum、M.kansasii、M.marinum、M.simiae、M.gastri、M.nonchromogenicum、M.terrae、M.triviale、M.gordonae、M.scrofulaceum、M.paraffinicum、M.intracellulare、M.avium、M.xenopi、M.ulcerans、M.diernhoferi、M.smegmatis、M.thamnopheos、M.flavescens、M.fortuitum、M.peregrinum、M.chelonei、M.paratuberculosis、M.leprae、M.lepraemurium及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0126】
本発明のさらに好ましい実施形態では、生育不能の非病原性Mycobacteriumは、好ましくは、受入番号NCTC 11659及び関連する指定下に寄託された株、例えば、SRL172、SRP299、IMM-201、DAR-901、ならびにATCC 95051下に寄託された株を含むM.vaccae(Vaccae(商標));M.obuense、M.paragordonae(株49061)、M.parafortuitum、M.paratuberculosis、M.brumae、M.aurum、M.indicus pranii、M.w、M.manresensis、M.kyogaense(DSM 107316/CECT 9546下に寄託された)、M.phlei、M.smegmatis、M.tuberculosis Aoyama BもしくはH37Rv、RUTI、BCG、MTBVAC、VPM1002BC、SMP-105、ミファムルチドもしくはZ-100及びこれらの組み合わせから選択され、受入番号NCTC 13365下に寄託されたブダペスト条約に基づくMycobacterium obuenseの株が好ましい。
【0127】
本発明の好ましい実施形態では、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬が提供されるが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含み、該非病原性の生育不能Mycobacteriumは、M.obuense NCTC 13365、好ましくは、粗いバリアントであり、及び/または加熱殺菌であり、及び/または画分、フラグメント、細胞内成分、溶解物、ホモジネート、超音波処理物、または実質的に全細胞形態で存在する。
【0128】
別の最も好ましい実施形態では、全細胞または生育不能Mycobacteriumは、NCTC 11569下に寄託されたものを含むM.vaccae、またはNCTC 13365下に寄託されたものなどのM.obuenseである。
【0129】
より好ましくは、全細胞非病原性の生育不能Mycobacteriumは、粗いバリアントである。好ましくは、全細胞非病原性の生育不能Mycobacteriumは、加熱殺菌されている。
【0130】
本発明の好ましい実施形態では、非病原性の生育不能Mycobacteriumは、粗いバリアント、好ましくは、M.obuenseの粗いバリアントである。
【0131】
本発明のその他の実施形態では、非病原性の生育不能Mycobacteriumは、粗いバリアント及び/または全細胞であり、好ましくは、受入番号NCTC 13365下に寄託されたブダペスト条約に基づくMycobacterium obuenseの粗い株である。
【0132】
本発明の別の実施形態では、非病原性の生育不能Mycobacteriumは、オートクレービングなどの熱、長時間凍結乾燥、ホルムアルデヒドなどの化学的曝露、またはガンマ照射もしくは電子ビームなどの照射によって不活性化されている。
【0133】
本発明の別の実施形態では、非病原性の生育不能Mycobacteriumは、生弱毒生形態のBCGを含まない。
【0134】
さらなる実施形態では、非病原性の生育不能Mycobacteriumは、粗いバリアントであり、及び/または画分、フラグメント、細胞内成分、溶解物、ホモジネート、超音波処理物、または実質的に全細胞形態で存在する。
【0135】
本発明の好ましい実施形態では、非病原性の生育不能Mycobacterium、適切には、Mycobacterium obuenseは、実質的に全細胞形態であり、例えば、この際、懸濁液中のマイコバクテリアの50%以上が、レーザー回折(例えば、D50値または平均粒径)により測定した際に、直径が1~10ミクロンより大きいか、または実質的な細胞溶解を誘導する高圧力プロセシングもしくはその他の条件に曝されていない形態である。
【0136】
本発明の別の実施形態では、免疫調節薬は、103~109細胞、または0.0001~1.0mg、好ましくは0.05mg~1.0mgを含む用量で投与される。
【0137】
本発明の別の実施形態では、免疫調節薬は、腫瘍切除手術及び/または上記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤、好ましくはチェックポイント阻害剤療法の投与の前に投与され、少なくとも1~3回投与される。
【0138】
本発明の別の実施形態では、免疫調節薬は、腫瘍切除手術及び/または上記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤、好ましくはチェックポイント阻害剤療法の投与の前に投与され、3回投与される。
【0139】
本発明のさらに別の実施形態では、免疫調節薬は、腫瘍切除手術または上記1つ以上の追加の抗がん治療もしくは薬剤、好ましくはチェックポイント阻害剤療法の投与の前及び/または後に投与され、任意選択で、上記投与は、3ヶ月、6ヶ月、または12ヶ月以上の期間にわたって行われる。
【0140】
本発明のさらに別の実施形態では、免疫調節薬及び上記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤、好ましくはチェックポイント阻害剤療法の両方は、腫瘍切除手術前及び/または後に投与され、任意選択で、免疫調節薬及び上記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤、好ましくはチェックポイント阻害剤療法の両方の上記投与は、上記腫瘍切除手術後、3ヶ月、または6ヶ月、または12ヶ月以上の期間にわたって行われる。
【0141】
当業者であれば理解されるように、M.obuenseの粗いバリアントは、例えば、Roux et al.2016,Open Biol 6:160185に記載されているように、細胞表面関連糖ペプチド脂質(GPL)を欠くことにより、特徴的な粗い形態となり、非運動性及び非生物膜形成特性を有する。本発明において患者に投与されるMycobacteriumの量は、患者の免疫系が、有効な免疫応答を高めることができるように、患者における防御免疫応答を誘発するのに十分な量である。患者に投与されるMycobacteriumの量は、患者の免疫系が、がんまたは腫瘍に対して有効な免疫応答を高めることができるように、患者における防御免疫応答を誘発するのに十分な量である。
【0142】
本発明の実施形態では、有効量の免疫調節薬組成物は、患者に対する光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続して投与することから、またはその後、放出される腫瘍抗原に対する免疫応答を誘発する。
【0143】
本発明の特定の実施形態では、典型的には103~1011生物、好ましくは104~1010生物、より好ましくは106~1010生物、さらにより好ましくは106~109生物であり得る、本発明における使用のための生育不能Mycobacteriumの有効量を含む、封じ込め手段が提供される。本発明における使用のための生育不能Mycobacteriumの有効量は、103~1011生物、好ましくは104~1010生物、より好ましくは106~1010生物、さらにより好ましくは106~109生物であり得る。本発明における使用のための生育不能全細胞Mycobacteriumの最も好ましい量は、107~109細胞または生物である。
【0144】
典型的には、本発明による組成物は、ヒト及び動物への使用の場合、108~109細胞の用量で投与され得る。あるいは、用量は、0.0001mg~5mgまたは0.001mg~5mg生物、好ましくは0.01mg~2mgまたは0.1mg~2mg生物であり、例えば、この際、用量は、約0.5mgもしくは1mgまたは0.5mgもしくは1mg生物である。用量は、懸濁液または乾燥調製物のいずれかとして調製されてよい。
【0145】
M.vaccae及びM.obuenseは、宿主において複合免疫応答を誘導する。これらの調製物による治療は、Th1及びマクロファージ活性化ならびに細胞傷害性細胞活性を含む、自然免疫及び1型免疫を刺激する。これらはまた、個別に、免疫調節性メカニズムを介して不適正なTh2応答を下方制御する。これにより、免疫系の健康な均衡が回復する。
【0146】
本発明の特定の実施形態では、投与される非病原性の生育不能Mycobacteriumの量は、単回用量あたり0.0001mg~1mgであり、任意選択で、単回用量は、0日目、14日目(+/-1、3、または5日以上)、及び任意選択で30日目(+/-5、7または10日以上)、または45日目(+/-7、10、または14日以上)のそれぞれの日での投与など、少なくとも7日以上間隔をあけた2回以上の別々の機会に投与される。
【0147】
いくつかの実施形態では、投与される非病原性の生育不能Mycobacteriumの量は、用量あたり0.0001mg~1mgであってよく、ここで、この用量は、数日、数週間、または数ヶ月にわたって1、2、3、4、5、6、10、または20回以上投与され、適切には、Mycobacteriumは、M.obuenseである。
【0148】
本発明のその他の実施形態では、投与される非病原性の生育不能Mycobacteriumの量は、用量あたり0.0001mg~1mgであってよく、ここで、この用量は、最初に、1つの三角筋への1mgの1回の注射、または各三角筋への0.5mgの2回の注射、または各三角筋への1.0mgの2回の注射、続いて、7または14日以上後の、0.5または1.0mgのいずれかの第2の用量を含む。
【0149】
本発明の特定の実施形態では、投与される非病原性の生育不能Mycobacteriumの量は、単回用量あたり0.0001mg~1mg、例えば、約0.5~1mgであり、単回用量は、腫瘍及び/または結節切除手術の前に、手術に対して(すなわち、前)-35日目、-21日目、及び-5日目のそれぞれの日での投与など、少なくとも7日以上間隔をあけた2回以上の別々の機会に投与され、任意選択で、この際、-35日目の用量は1mgであり、-21日目の用量は0.5mgであり、かつ-5日目の用量は0.5mgである。抗PD-L1モノクローナル抗体、適切には、アテゾリズマブ、ペムブロリズマブもしくはセミプリマブなど、または本明細書にて開示するようなチェックポイント療法剤は、同日に、または上記Mycobacteriumの単回投与間で、例えば、上記手術に対して(すなわち、前)-28日目~-7日目に、投与されてよい。
【0150】
本発明のさらなる実施形態では、投与される非病原性の生育不能Mycobacteriumの量は、単回用量あたり0.0001mg~1mg、例えば、約0.5~1mgであり、単回用量は、腫瘍及び/または結節切除手術の後に、例えば、上記手術後21日目、35日目、及び49日目以降のそれぞれの日での投与など、少なくとも7日以上間隔をあけた2回以上の別々の機会に投与され、任意選択で、この際、21日目の用量は1mgであり、35日目の用量は0.5mgであり、かつ49日目以降の用量は0.5mgである。抗PD-L1モノクローナル抗体、適切には、アテゾリズマブ、ペムブロリズマブもしくはセミプリマブなど、または本明細書にて開示するようなチェックポイント療法剤は、同日に、または上記Mycobacteriumの単回投与間で、例えば、上記手術後28日目、42日目、及び56日目以降に、投与されてよい。
【0151】
本発明のさらに別の実施形態では、投与される非病原性の生育不能Mycobacteriumの量は、単回用量あたり0.0001mg~1mg、例えば、約0.5~1mgであり、単回用量は、腫瘍及び/または結節切除手術の前に、手術に対して(すなわち、前)-35日目、-21日目、及び-5日目のそれぞれの日での投与など、少なくとも7日以上間隔をあけた2回以上の別々の機会に投与され、任意選択で、この際、-35日目の用量は1mgであり、-21日目の用量は0.5mgであり、かつ-5日目の用量は0.5mgである。抗PD-L1モノクローナル抗体、適切には、アテゾリズマブ、または本明細書にて開示するようなチェックポイント療法剤は、同日に、または上記Mycobacteriumの単回投与間で、例えば、上記手術に対して(すなわち、前)-28日目~-7日目に、投与されてよく、ここで、単回用量は、腫瘍及び/または結節切除手術の後に、例えば、上記手術後21日目、35日目、及び49日目以降のそれぞれの日での投与など、少なくとも7日以上間隔をあけた2回以上の別々の機会に投与され、任意選択で、この際、21日目の用量は1mgであり、35日目の用量は0.5mgであり、かつ49日目以降の用量は0.5mgである。抗PD-L1モノクローナル抗体、適切には、アテゾリズマブ、または本明細書にて開示するようなチェックポイント療法剤は、同日に、または上記Mycobacteriumの単回投与間で、例えば、上記手術後28日目、42日目、及び56日目以降に、投与されてよい。本発明は、固形癌または非固形癌などの腫瘍性疾患を治療するために使用することができる。
【0152】
本明細書で使用される場合、「治療」は、原発腫瘍の退縮もしくは安定化、及び/または1つまたは転移の退縮もしくは安定化、または1つ以上の転移もしくは微小転移の予防もしくは阻害を含む、腫瘍性疾患の予防、低減、制御、及び/または阻害を包含する。
【0153】
異常増殖、腫瘍、及びがんは、良性、悪性、転移性、及び非転移性型を含み、かつ任意のステージ(I、II、III、IVまたはV)もしくはグレード(G1、G2、G3など)の異常増殖、腫瘍、もしくはがん、または進行している、悪化している、安定化された、もしくは寛解中の異常増殖、腫瘍、がん、もしくは転移を含む。好ましくは、本発明の実践の開始時におけるがんは、ステージI、ステージII、またはステージIII、またはステージIVであると臨床的に定義される。
【0154】
さらなる実施形態では、非病原性の生育不能Mycobacteriumは、第一選択治療として、任意選択で、1つ以上の治療剤またはがん治療の投与と同時に、別々に、または連続して、あるいは、光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量の投与と同時に、別々に、または連続して、対象に投与される。第一選択治療はまた、主要な治療として既知である場合があり、典型的には、初期の診断後の第1治療または療法として対象または患者に投与される。他の治療剤は、典型的にがんを治療するか、がんを制御するか、疼痛を軽減するか、またはがん関連病状に対して予防的に作用するために使用される任意の医薬剤、例えば、ステロイド、ビスホスホネート、及びNSAIDを含む場合がある。適切な血液療法としては、抗悪性腫瘍薬、代謝拮抗薬、微小管阻害剤、ヌクレオシド代謝阻害剤、及び免疫原性薬剤の投与を挙げることができるが、これらに限定されない。好ましい化学療法剤は、FOLFIRINOX、Abraxane(登録商標)(ナブパクリタキセル)、ゲムシタビン、及びペムブロリズマブ、好ましくは複数の組み合わせで含む。ゲムシタビンなどのヌクレオシド代謝阻害剤が、投与されてよい。あるいは、Abraxane(ナブパクリタキセル)などの微小管阻害剤が、投与されてよい。
【0155】
さらなる実施形態では、非病原性の生育不能Mycobacteriumは、第一または第二選択治療または維持療法として、ゲムシタビン及びナブパクリタキセルの両方の投与と同時に、別々に、または連続して、光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量の投与と同時に、別々に、または連続して、任意選択で、FOLFIRINOX、mFOLFIRINOX、FOLFOXまたはNALIRIFOX療法の後に、対象に投与される。この維持療法は、特に、転移性膵管腺癌患者に適用可能である。
【0156】
さらなる実施形態では、非病原性の生育不能Mycobacteriumは、第一または第二選択治療または維持療法として、光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量の投与と同時に、別々に、または連続して、ゲムシタビン及び1つ以上のチェックポイント阻害剤、適切には、ペムブロリズマブの両方の投与と同時に、別々に、または連続して、任意選択で、FOLFIRINOX、mFOLFIRINOX、FOLFOXまたはNALIRIFOX療法の後に、対象に投与される。この維持療法は、特に、転移性膵管腺癌患者に適用可能である。
【0157】
さらなる実施形態では、非病原性の生育不能全細胞Mycobacteriumは、第一または第二選択治療または維持療法として、光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量の投与と同時に、別々に、または連続して、ゲムシタビン及びナブパクリタキセルの両方の投与と同時に、別々に、または連続して、任意選択で、FOLFIRINOX療法による部分奏効または安定化の後に、対象に投与される。この維持療法は、特に、転移性膵管腺癌患者に適用可能である。
【0158】
さらなる実施形態では、非病原性の生育不能全細胞Mycobacteriumは、第一または第二選択治療または維持療法として、光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量の投与と同時に、別々に、または連続して、ゲムシタビン及び/または1つ以上のチェックポイント阻害剤、適切には、ペムブロリズマブの両方の投与と同時に、別々に、または連続して、任意選択で、FOLFIRINOX、mFOLFIRINOX、FOLFOXまたはNALIRIFOX療法による適切な応答後に、対象に投与される。この維持療法は、特に、転移性膵管腺癌患者に適用可能である。
【0159】
さらなる実施形態では、非病原性の生育不能全細胞Mycobacteriumは、第一または第二選択治療または維持療法として、光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量の投与と同時に、別々に、または連続して、ゲムシタビン及びナブパクリタキセルの両方の投与と同時に、別々に、または連続して、対象に投与され、この際、上記ナブパクリタキセルは、125mg/m2の用量で提供され、i.v.注入として約30分間かけて投与され、続いて、28日サイクルの1日目、8日目、15日目にゲムシタビン1000mg/m2が30分のi.v.注入で投与される。この維持療法は、特に、転移性膵管腺癌患者に適用可能である。
【0160】
本発明は、固形癌または非固形癌などの腫瘍性疾患を治療するために使用することができる。このような疾患としては、肉腫、癌腫、腺癌、黒色腫、骨髄腫、芽球腫、神経膠腫、リンパ腫または白血病が挙げられる。例示的ながんとしては、例えば、癌腫、肉腫、腺癌、黒色腫、神経性(芽球腫、神経膠腫)、中皮腫及び細網内皮系、リンパ性または造血性腫瘍性障害(例えば、骨髄腫、リンパ腫または白血病)が挙げられる。いくつかの態様では、新生物、腫瘍、またはがんとしては、肺腺癌、肺癌腫、拡散性または介在性胃癌、結腸腺癌、前立腺腺癌、食道癌腫、乳房癌腫、膵臓腺癌、卵巣腺癌、副腎腺癌、子宮内膜腺癌または子宮腺癌が挙げられる。異常増殖、腫瘍、及びがんは、良性、悪性、転移性、及び非転移性型を含み、かつ任意のステージ(I、II、III、IVまたはV)もしくはグレード(G1、G2、G3など)の異常増殖、腫瘍、もしくはがん、または進行している、悪化している、安定化された、もしくは寛解中の異常増殖、腫瘍、がん、もしくは転移を含む。本発明の実践の開始時におけるがんは、ステージI、ステージII、またはステージIII、またはステージIV、またはステージVであると臨床的に定義される。
【0161】
本発明に従って治療され得るがんとしては、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、胃腸、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、頸部、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、または子宮のがんが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、がんは、前立腺癌、肝臓癌、腎臓癌、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、膵臓癌、脳癌、肝細胞癌、リンパ腫、白血病、胃癌、子宮頸癌、卵巣癌、甲状腺癌、黒色腫、頭頚部癌、皮膚癌、及び軟組織肉腫、及び/または癌腫の他の形態から選択される。腫瘍は、転移性、または悪性腫瘍であり、最も好ましくは転移性である。より好ましくは、がんは、膵臓癌、結腸直腸癌、前立腺癌、卵巣癌であり、最も好ましくは、がんは、膵臓癌であり、最も好ましくは、がんは、転移性膵臓癌である。
【0162】
本発明の非病原性の生育不能全細胞Mycobacteriumは、非経口、経口、舌下、経鼻、または肺経路を介して投与されてよい。さらに好ましくは、非経口経路は、皮下、皮内、真皮下、腹腔内、静脈内、腫瘍周囲、病変周囲、病巣内、または腫瘍内、及びこれらの組み合わせから選択される。適切には、腫瘍内投与、それに続いて皮内投与が連続的に行われてよい。
【0163】
さらなる実施形態では、より多い追加の抗がん剤は、ベバシズマブ、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、ムスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾロン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン、エトポシド、シスプラチン、エピルビシン、カペシタビン、ロイコボリン、フォリン酸、カルボプラチン、オキサリプラチン、ゲムシタビン、FOLFIRINOX、改変FOLFIRINOX、FOLFOX、NALIRIFOX、パクリタキセル、ナブパクリタキセル、ペメトレキセド、イリノテカン、テモゾロミド、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体、抗PD-L1抗体及び/またはmTOR阻害剤及びこれらの組み合わせから選択され、ここで、上記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤は、腫瘍内、動脈内、静脈内、血管内、胸膜内、腹腔内、気管内、鼻腔内、肺、くも膜下腔内、筋肉内、内視鏡的、病巣内、経皮、皮下、局所、経口、または直接注入もしくは灌流によって投与される。
【0164】
さらなる実施形態では、より多い追加の抗がん剤は、FOLFIRINOX、改変FOLFIRINOX、FOLFOX、NALIRIFOX、ゲムシタビン、ナブパクリタキセル、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体、抗PD-L1抗体及び/またはmTOR阻害剤及びこれらの組み合わせ、例えば、3週間ごとに1200mgもしくは2週間ごとに840mgのいずれかの用量で投与されるアテゾリズマブ、または3週間ごとに200mgもしくは6週間ごと400mgのいずれかの用量で投与されるペムブロリズマブ、または3週間ごとに350mgの用量で投与されるセミプリマブから選択される。
【0165】
さらなる実施形態では、免疫調節薬は、最初に、上記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤の前に、任意選択で、上記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤と組み合わせて、またはその後に投与される。
【0166】
さらに別の実施形態では、治療または制御は、前立腺特異抗原(PSA)、癌胎児性抗原(CEA)、CA19.9、PNR、INR、予後栄養指数(PNI)、全身性免疫炎症指数(SII)及び全身性炎症スコア(SIS)のうちいずれか1つ以上を含み得る1つ以上のバイオマーカーの測定に基づいてモニタリングされる。
【0167】
本発明の別の態様によれば、対象のパフォーマンスステータスは、上記がんの上記治療または制御中及び/またはその後、同じままか、または改善する。さらなる実施形態では、本発明の方法は、1)転移を潜在的にもしくは発生する腫瘍もしくはがん細胞の成長、増殖、移動度もしくは浸潤性を低減もしくは阻害すること、2)原発腫瘍もしくはがんから、該原発腫瘍もしくはがんとは異なる1つ以上のその他の部位、箇所、もしくは領域に生じる転移の形成もしくは確立を低減もしくは阻害すること、3)転移が形成された、もしくは確立された後の、原発腫瘍もしくはがんとは異なる1つ以上のその他の部位、箇所、もしくは領域における転移の成長もしくは増殖を低減もしくは阻害すること、4)転移が形成された、もしくは確立された後の、追加の転移の形成もしくは確立を低減もしくは阻害すること、5)全生存期間の延長、6)無増悪生存期間の延長、または7)疾患安定化、のうち1つ以上を含む。
【0168】
治療上の利益または有益な効果は、病態もしくは病状における任意の客観的もしくは主観的な、一過性の、一時的な、または長期間の改善であるか、または異常増殖、腫瘍、もしくはがん、もしくは転移などの細胞増殖もしくは細胞性過剰増殖障害に関連するか、もしくはそれによって生じる有害な症状の発症、重症度、期間もしくは頻度の低減である。これは、生存の改善につながる可能性がある。本発明に関連する治療法の良好な臨床エンドポイントは、例えば、1つ以上の関連病状、有害な症状もしくは合併症の重症度、期間もしくは頻度の増加的もしくは部分的な低減、または異常増殖、腫瘍、もしくはがん、もしくは転移などの細胞増殖もしくは細胞性過剰増殖障害の生理学的、生化学的、もしくは細胞性の徴候もしくは特性のうち1つ以上の阻害もしくは反転がある場合に達成される。したがって、治療上の利益または改善は、限定はされないが、標的増殖細胞(例えば、異常増殖、腫瘍、またはがん、または転移)の破壊、または異常増殖、腫瘍、もしくはがん、もしくは転移などの細胞増殖もしくは細胞性過剰増殖障害に関連するか、もしくはそれによって生じる1つ以上の、ほとんどの、もしくは全ての病状、有害な症状、もしくは合併症の消失であり得る。しかし、治療上の利益または改善は、全ての標的増殖細胞(例えば、異常増殖、腫瘍、またはがん、または転移)の治癒もしくは完全な破壊、または異常増殖、腫瘍、もしくはがん、もしくは転移などの細胞増殖もしくは細胞性過剰増殖障害に関連するもしくはそれによって生じる全ての病状、有害な症状、もしくは合併症の消失である必要はない。例えば、腫瘍もしくはがん細胞塊体の部分的な破壊、または腫瘍もしくはがんの進行もしくは悪化を阻害することによる腫瘍もしくはがん塊体、サイズもしくは細胞数の安定化により、腫瘍またはがん塊体、サイズまたは細胞の一部または大部分が残ったとしても、数日、数週間、または数ヶ月であっても、死亡率を低下させ、寿命を延長することができる。治療上の利益の特異的非限定的例としては、異常増殖、腫瘍、もしくはがん、もしくは転移容積(サイズ、または細胞塊体)、もしくは細胞数の低減、異常増殖、腫瘍、もしくはがん容積の増加の阻害もしくは防止(例えば、安定化)、異常増殖、腫瘍、もしくはがんの進行、悪化、もしくは転移の緩徐化もしくは阻害、または異常増殖、腫瘍、もしくはがんの増殖、成長、もしくは転移の阻害が挙げられる。
【0169】
本発明の実施形態では、光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量の投与と同時に、別々に、または連続して、対象におけるがんの治療、低減、阻害または制御で使用するための非病原性の生育不能Mycobacteriumであって、任意選択で、該対象は、ECOGスケールに従って0、1、1-、2、3、または4のパフォーマンスステータスを有するとして臨床的に分類されるか、2つ以上の化学療法レジメンに耐えるために十分に健康ではないと分類される、非病原性の生育不能Mycobacteriumが提供されるが、これは、標的腫瘍の安定病態(SD)、完全奏効(CR)または部分奏効(PR)、及び/または1つ以上の非標的腫瘍の安定病態(SD)または完全奏効(CR)を含むRECIST 1.1、またはiRRC、またはiRECIST、またはirrRECISTによって定義されるような、好ましくは1つ以上の上記腫瘍の腫瘍サイズの減少または安定化によって測定される際に、治療上の利益を高める強力かつ持続的な免疫応答を誘発する可能性がある。あるいは、治療効果は、当業者に知られているように、免疫関連応答基準(irRC)、iRECISTまたはirRECISTによって評価される。
【0170】
本発明の実施形態では、光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量の投与と、任意選択で、1つ以上のチェックポイント阻害剤、またはFOLFIRINOX、mFOLFIRINOX、FOLFOX、NALIRIFOXと、同時に、別々に、または連続して、非病原性の生育不能Mycobacteriumを投与することは、irRC(時点応答評価から導出され、かつ腫瘍負荷量に基づく)に従った検出可能または測定可能な改善または全体的な応答を提供するが、このirRCは、(i)irCR:測定可能であるかどうかにかかわらず全ての病変の完全消失、及び新しい病変なし(最初の文書化の日から4週間以上の繰り返し連続した評価によって確認)、(ii)irPR:ベースラインと比較して>50%の腫瘍負荷量の減少(最初の文書化後少なくとも4週間の連続評価によって確認)のうち1つ以上を含む。好ましくは、使用されるチェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、またはPD-L1及びこれらの組み合わせを対象とするものである。
【0171】
本発明のいくつかの実施形態では、初期または後期の進行がんの治療、低減、阻害または制御は、1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤の投与をさらに含む。
【0172】
1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤は、養子細胞療法、外科的(腫瘍切除)療法、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、チェックポイント阻害剤療法、メトホルミンなどの小分子療法、受容体キナーゼ阻害剤療法、温熱療法、光線療法、放射性アブレーション治療、高周波アブレーション治療(RFA)、抗血管新生療法、サイトカイン療法、寒冷療法、生物学的療法、HDAC阻害剤、例えば、OKI-179、BRAF阻害剤、MEK阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、P13Kデルタ阻害剤、PARP阻害剤、mTOR阻害剤、低メチル化剤、腫瘍溶解性ウイルス、TLR2、3、4、7、8または9アゴニストを含むTLRアゴニスト、例えば、リンタトリモド、またはTLR5アゴニスト、例えば、MRx0518(4D Pharma)、STINGアゴニスト(MIW815及びSYNB1891を含む)、ミファムルチド及びがんワクチン、例えば、GVAXまたはCIMAvax、ならびにそれらの組み合わせから選択され得る。
【0173】
本発明の別の好ましい実施形態では、光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、腫瘍または腫瘍細胞の損傷をもたらし、その結果、これらの細胞は、腫瘍を認識して、標的とするために免疫系によって利用される抗原を放出する。この用語には、切除療法が含まれる。腫瘍抗原の放出は、例えば、リコール応答及び細胞傷害性T細胞応答の増加を観察することによって確認することができる。
【0174】
あるいは、光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、腫瘍または腫瘍細胞の損傷をもたらし、その結果、これらの細胞は、抗原を放出するか、及び/または、(a)カルレティキュリン(CRT)の細胞表面転位、(b)HMGB1の細胞外放出、及び(c)アデノシン-5’-三リン酸(ATP)の細胞外放出が生じる。
【0175】
本発明の別の実施形態では、1つ以上の追加の抗がん治療は、その全体が参照により援用されるWO2013/07998に記載されているような免疫原性細胞死療法をもたらす。この療法は、アポトーシス(1型)、オートファジー(2型)、及びネクローシス(3型)を含む腫瘍免疫原性細胞死の誘導をもたらし、その結果、細胞傷害性CD8+T細胞及びNK細胞の活性化を含む両方の免疫応答を誘導することができ、かつ樹状細胞に到達可能な抗原となることを含む、標的として作用する腫瘍抗原の放出が生じる。免疫原性細胞死療法は、最適以下レベルで、すなわち、腫瘍を完全に除去または根絶することは意図されないが、それにもかかわらず、いくつかの腫瘍細胞または組織が壊死することになるような非治癒的療法で行われ得る。当業者は、使用する技法、患者の年齢、疾患の状態、ならびに特に腫瘍または転移のサイズ及び位置に応じて、このことを達成するために必要な療法の程度を理解されるであろう。特に、好ましい治療としては、マイクロ波照射、塞栓術、寒冷療法、超音波、高密度焦点式超音波療法、サイバーナイフ、温熱、高周波アブレーション、冷凍切除、電気メス加熱、温水注射、アルコール注射、塞栓形成、放射線曝露、光線力学的療法、レーザービーム照射、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0176】
本発明の別の実施形態では、免疫原性細胞死療法または電離放射線は、最適以下レベルで、すなわち、腫瘍を完全に除去または根絶することは意図されないが、それにもかかわらず、いくつかの腫瘍細胞または組織をもたらすような非治癒的療法で行われ得る。
【0177】
本発明のさらなる実施形態では、TLRアゴニストとしては、MRx0518(4D Pharma)、ミファムルチド(Mepact)、Krestin(PSK)、IMO-2125(チルソトリモド)、CMP-001、MGN-1703(レフィトリモド)、エントリモド、リンタトリモド(Ampligen)、SD-101、GS-9620、イミキモド、レシキモド、MEDI4736(デュルバルマブ)、ポリI:C、CPG7909、DSP-0509、VTX-2337(モトリモド)、MEDI9197、NKTR-262、G100またはPF-3512676及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0178】
本発明のさらなる実施形態では、化学療法は、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、ムスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾロン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン、エトポシド、シスプラチン、エピルビシン、カペシタビン、ロイコボリン、フォリン酸、カルボプラチン、オキサリプラチン、ゲムシタビン、FOLFIRINOX、改変FOLIFIRINOX、FOLFOX、パクリタキセル、ペメトレキセド、イリノテカン、テモゾロミド、及びこれらの組み合わせから選択される1つ以上の薬剤の投与を含む。
【0179】
本発明のさらなる実施形態では、Mycobacterium及び光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量の投与と組み合わせた、FOLFOX、及びペモブロリズマブ及び/またはアテゾリズマブまたはデュルバルマブ及び/またはトレメリムマブなどのチェックポイント阻害剤を伴う、または伴わない組み合わせなどの、組み合わせは、pMMR-MSI-低CRC腫瘍、すなわち、ミスマッチ修復熟達及びマイクロサテライト不安定性の低い腫瘍の治療に好適である。その他の組み合わせとしては、Mycobacteriumを伴ったアテゾリズマブ及びベバシズマブと、光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量の投与との組み合わせが挙げられる。
【0180】
本発明のさらなる実施形態では、組み合わせは、pMMR-MSI-低CRC腫瘍の治療に好適であり、ここで、非病原性の生育不能Mycobacteriumは、光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量との組み合わせで、RFA及び/またはEBRT及び/またはペムブロリズマブ;RFA及び/またはデュルバルマブ及び/またはトレメリムマブ;アテゾリズマブ及び/またはベバシズマブ及び/またはFOLFOXまたはmFOLFIRINOX;アテゾリズマブ及びコビメチニブ;ニボルマブ+イピリムマブ+コビメチニブ;アテゾリズマブ+コビメチニブ+ベバシズマブ;アテゾリズマブ+CEA-BTC抗体;ペムブロリズマブ+インドキシモド;ニボルマブ+エパカドスタット;デュルバルマブ+ペキシダルチニブの組み合わせのうち1つ以上と共に、投与される。
【0181】
本発明のさらなる実施形態では、この組み合わせで、光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量、加えて、CRC患者における高周波アブレーション(RFA)または外部照射放射線療法(EBRT)、加えて、ペモブロリズマブ及び/またはアテゾリズマブ、またはデュルバルマブ及び/またはトレメリムマブなどのチェックポイント阻害剤を、Mycobacteriumと組み合わせて投与する。
【0182】
本発明のさらなる実施形態では、本明細書にて開示するような腫瘍切除と比較して、アジュバント、ネオアジュバント、またはペリアジュバント療法は、ステージIIIのdMMR及び/またはMSIの高い結腸直腸癌、または結腸癌、または直腸癌の患者に適用され、ここで、上記患者は、任意に、0(PS0)、1(PS1)、またはPS1-、または2(PS2)のECOGパフォーマンスステータスを呈している。
【0183】
本発明のさらなる実施形態では、本明細書にて開示するような腫瘍切除と比較して、アジュバント、ネオアジュバント、またはペリアジュバント療法は、0(PS0)、1(PS1)、またはPS1-、または2(PS2)のECOGパフォーマンスステータスを呈する患者に適用され、ここで、上記パフォーマンスステータス値は、手術後、または本発明の併用療法の終了時に評価される場合に同じであるかまたは改善されている。
【0184】
本発明のさらなる実施形態では、本明細書にて開示するアジュバント、ネオアジュバント、またはペリアジュバント療法は、ステージIIIのpMMR/MSIの低い結腸直腸癌、または結腸癌、または直腸癌の患者、すなわち、結腸直腸癌、または結腸癌、または直腸癌の患者におけるミスマッチ修復熟達及びマイクロサテライト不安定性の低い腫瘍に適用され、ここで、上記患者は、0(PS0)、1(PS1)、またはPS1-、または2(PS2)のECOGパフォーマンスステータスを呈している。
【0185】
いくつかの好ましい実施形態では、1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤は、チェックポイント阻害剤薬剤を含む場合がある。かかるチェックポイント阻害剤は、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アゼトリズマブ、BI 754091(抗PD-1)、バビツキシマブ(PSに対するIgG3モノクローナル抗体)、デュルバルマブ、ドスタルリマブ、トレメリムマブ、スパルタリズマブ、アベルマブ、シンチリマブ、トリパリマブ、プロルゴリマブ(prolgolimab)、チスレリズマブ、カムレリズマブ、MGA012(レチファンリマブ)、MGD013(テボテリマブ)、MGD019、エノブリツズマブ、MGD009、MGC018、MEDI0680、ミプテナリマブ(BI 754111、抗LAG-3)、PDR001、FAZ053、TSR022、MBG453、レラトリマブ(BMS986016)、LAG525(IMP701)、IMP321(Eftilagimod alpha)、REGN2810(セミプリマブ)、REGN3767、ペキシダルチニブ(PLX3397)、LY3022855、FPA008、BLZ945、GDC0919、エパカドスタット、エマクツズマブ(CSF-1Rを標的とするRG1755)、FPA150、インドキシミド(indoximid)、BMS986205、CPI-444、MEDI9447、PBF509、FS118(LAG-3及びPD-L1に対して二重特異性)、リリルマブ、Sym023、TSR-022、A2Ar阻害剤(例えば、EOS100850、AB928)、モナリズマブなどのNKG2A阻害剤及びこれらの組み合わせから選択され得、任意選択で、1つ以上のチェックポイント阻害剤は、治療量以下の量及び/または期間で投与される。
【0186】
本発明のその他の実施形態では、腫瘍及び/または転移は、切除を介して外科的に除去され得、これにより、原発腫瘍部位において顕微鏡的にがん細胞が見られないR0切除辺縁;または原発腫瘍部位において顕微鏡的にがん細胞が存在するR1;または原発性がん部位及び/または所属リンパ節において巨視的な残存腫瘍が見られるR2などの、AJCC 8th Editionに従って定義される腫瘍辺縁が生じる。
【0187】
さらなる実施形態では、本発明による組み合わせは、腫瘍切除の1、2、5、10、20、30、40、50、60または70日前及び/または後以内に投与され、上記腫瘍切除は、適切には、R0、R1またはR2切除であり、好ましくは、R0であり、かつ70日後以内である。
【0188】
Mycobacteriumの投与は、腫瘍切除前及び/または後に、最初に1.0mgの用量で、任意選択で、続いて、2週間ごとに1ヶ月間0.5mgまたは1mgの用量のMycobacteriumの投与、続いて、4週間ごとに11ヶ月以上にわたって0.5mgまたは1mgの用量のMycobacteriumを皮内投与で行われてよく、ここで、上記Mycobacteriumは、M.obuense NCTC 13365である。
【0189】
さらなる実施形態では、本発明は、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬を提供するが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含み、上記生育不能非病原性Mycobacterium及び1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤は、任意選択で、同じまたは異なる投与経路を介して、同じまたは異なる時間で投与され、かつ、この際、患者は、手術後、または治療の終了から5または6または12週間後に病理学的完全または部分的/亜全応答または腫瘍退縮を呈するか、及び/または手術後または治療の終了から1、2、3または5年以降に、改善された無病生存期間(DFS)または全生存期間(OS)を呈するか、及び/または生活の質の改善(EORTC QLQ-C30及びPRO-CTCAE質問事項によって評価される)を呈するか、及び/または手術、または治療の終了から12ヶ月後に検出可能なctDNAが存在しないことを呈し、好ましくは、上記Mycobacteriumは、M.obuense NCTC 13365である。
【0190】
循環腫瘍DNA(「ctDNA」)は、血流中に存在し、がん性細胞及び腫瘍に由来するDNAを指す。ctDNAの測定は、進行癌患者の疾患状態をモニタリングするための有望な血液ベースのバイオマーカーとして出現した。血液中のctDNAの存在は、生物過程、すなわち、腫瘍細胞アポトーシス及び/またはネクローシスの結果であり、かつがん特異的変異を標的にすることによって異なるがんをモニタリングするために使用することができる。
【0191】
本発明の方法は、直ちに効果が見られない可能性がある。例えば、治療後に、異常増殖、腫瘍またはがん細胞の数または塊体が増加する可能性があるが、経時的に、所与の対象における腫瘍細胞塊体、細胞のサイズまたは数の最終的な安定化または低減が、その後に起こる可能性がある。阻害、低減、減少、遅延または防止され得る異常増殖、腫瘍、がん及び転移に関連する追加の有害な症状及び合併症としては、例えば、悪心、食欲不振、無気力、疼痛及び不快感が挙げられる。したがって、細胞性過剰増殖障害に関連するか、またはそれによって生じる有害な症状または合併症の重症度、期間、または頻度の部分的なまたは完全な減少または低減、エネルギー、食欲、心理的幸福の改善などの対象の生活の質及び/または幸福の改善は、全て、治療上の利益の特定の非限定的例である。
【0192】
したがって、治療上の利益または改善には、治療される対象の生活の質の主観的改善が含まれ得る。追加の実施形態では、方法は、対象の寿命(生存)を延長または延命する。さらなる実施形態では、方法は、対象の生活の質を改善する。別の実施形態では、チェックポイント阻害剤の投与は、(i)全生存期間、(ii)無増悪生存期間、(iii)奏効率、(iv)転移性疾患の低減、(v)炭水化物抗原19.9(CA19.9)及び癌胎児性抗原(CEA)または腫瘍に依存する他のものなどの腫瘍抗原の循環レベル、(vii)栄養上の状態(体重、食欲、血清アルブミン)及び除脂肪体重の減少の低減、すなわち、悪液質の予防または低減、(viii)疼痛制御または鎮痛剤使用、(ix)CRP/アルブミン比率、のうち1つ以上から選択される疾患状態及び進行の1つ以上のマーカーで、臨床的に適切な改善をもたらす。
【0193】
非病原性の生育不能M.vaccae及び/またはM.obuenseによる治療は、自然免疫及び1型免疫の発生だけではなく、適切な免疫機能をより効率的に回復させる免疫制御を含む、より複合的な免疫を生じさせる。
【0194】
さらに好ましい実施形態では、チェックポイント阻害剤は、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アゼトリズマブ、トレメリムマブ、セミプリマブ、アベルマブ、カムレリズマブもしくはレラトリマブ、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される抗体である。
【0195】
別の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブであり、上記対象または患者は、上記がんに関連するミスマッチ修復欠損腫瘍を有し、及び/またはSP142免疫組織化学抗体アッセイを使用して測定した際に、腫瘍細胞の少なくとも5%、10%、または20%、または30%、または40%、または50%以上でPD-L1発現を呈している。
【0196】
さらなる実施形態では、チェックポイント阻害剤は、イピリムマブであり、3週間ごとに10、5、または2mg/mg以下の用量で、任意選択で最大4回の注入で、静脈内投与される。別の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、ニボルマブであり、4週間ごとに少なくとも1、2、3、または5、または10mg/mg以上の用量で静脈内投与され、任意選択で、上記患者は、SP142免疫組織化学抗体アッセイを使用して測定した際に、腫瘍細胞の少なくとも1%、5%、または10%以上でPD-L1発現を呈している。
【0197】
さらなる実施形態では、チェックポイント阻害剤は、アゼトリズマブであり、3週間ごとに少なくとも1、5、または10、または15mg/kg以上の用量で静脈内投与され、任意選択で、上記患者は、SP142免疫組織化学抗体アッセイを使用して測定した際に、腫瘍細胞及び/またはB細胞及びNK細胞から選択される腫瘍浸潤性免疫細胞の少なくとも1%、5%、または10%以上でPD-L1発現を呈している。あるいは、アテゾリズマブは、840mgまたは1200mg注入として投与される。
【0198】
本明細書の全体を通して使用される用語「組み合わせ」は、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における非病原性の生育不能Mycobacteriumの投与と同時に、別々に、または連続的に、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を投与することを包含する場合がある。したがって、1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤と非病原性の生育不能Mycobacteriumとは、同じまたは別々の医薬製剤で存在してよく、電離放射線の1つ以上の線量と同時に、または異なる時間に投与されてよい。あるいは、非病原性全細胞生育不能Mycobacteriumと1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤とは、同時または異なる時間での投与向けの別々の薬物として提供されてよい。好ましくは、非病原性の生育不能Mycobacteriumとチェックポイント阻害剤などの1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤とは、異なる時間での投与向けの別々の薬物として提供される。別々に、異なる時間で投与される場合、非病原性の生育不能Mycobacteriumまたはチェックポイント阻害剤などの1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤のいずれかは、最初に投与されてよいが、チェックポイント阻害剤などの1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤に続いて、非病原性の生育不能Mycobacteriumが投与されることが好適である。上記のシナリオのそれぞれにおいて、光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、上記非病原性の生育不能Mycobacterium及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の前、その間、その後に投与されてよい。加えて、いずれも、同日、または異なる日に投与することができ、かつそれらは、治療サイクル中に同じスケジュールまたは異なるスケジュールを使用して投与することができる。本発明の実施形態では、治療サイクルは、毎週、隔週、または毎月の1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤、例えば、チェックポイント阻害剤と同時の、毎日、毎週、隔週、または毎月の非病原性の生育不能Mycobacteriumの投与からなる。
【0199】
一実施形態では、非病原性の生育不能Mycobacteriumは、上記1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤、例えば、チェックポイント阻害剤の前後に患者に投与される。投与延期及び/または用量低減及びスケジュール調節が、治療に対する個々の患者の忍容性に応じて必要があれば実施される。あるいは、1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤、例えば、チェックポイント阻害剤の投与は、有効量の非病原性の生育不能Mycobacteriumの投与と同時に実施されてよい。
【0200】
本発明の態様では、有効量の非病原性の生育不能Mycobacteriumは、単回投与として投与されてよい。あるいは、有効量の非病原性の生育不能Mycobacteriumは、複数回(反復)投与、例えば、2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、10回以上、または20回以上の反復投与で投与されてよい。非病原性の生育不能Mycobacteriumは、1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤、例えば、チェックポイント阻害剤の前、及び/または、上記非病原性の生育不能Mycobacteriumまたは1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の前、その間、その後に投与され得る光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量の前、約4週~約1日、例えば、約4週~1週、または約3週~1週、または約3週~2週前に投与されてよい。投与は、単回投与または複数回投与で提供されてよい。
【0201】
本発明の一実施形態では、非病原性の生育不能Mycobacteriumは、ある剤形で患者に投与される薬物の形態であってよい。ある特定の例における本発明による容器は、バイアル、アンプル、シリンジ、予め充填されたシリンジ、カプセル、錠剤、またはチューブであってよい。場合によっては、マイコバクテリアは、凍結乾燥されて、投与前の再懸濁向けに製剤化されてよい。しかし、他の場合には、マイコバクテリアは、薬学的に許容される液体の容積中に懸濁している。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体に懸濁したマイコバクテリアの単一の単回用量を含む容器が提供され、ここで、該単回用量は、約1×106~約1×1010殺傷生物を含む。いくつかの実施形態では、懸濁したマイコバクテリアを含有する液体は、約0.05もしくは0.1ml~10ml、または約0.3ml~2ml、または約0.5ml~2mlの容積で提供される。前述の組成物は、本明細書に記載の免疫療法用途に対して理想的な単位を提供する。
【0202】
本発明の方法及び/または組成物に関連して論じた実施形態は、本明細書に記載の任意のその他の方法または組成物に関して使用されてよい。したがって、1つの方法または組成物に関連するある実施形態が、本発明の他の方法及び組成物に同様に適用されてもよい。場合によっては、非病原性の生育不能Mycobacteriaは、対象上または対象内の特定の部位に投与される。例えば、本発明によるマイコバクテリア組成物、特にM.obuenseを含むものなどは、腫瘍に、もしくは腫瘍の近くに、またはリンパ節に、もしくはリンパ節の近くに、例えば、腫瘍の周囲の組織を排出するものなどに投与されてよい。したがって、ある特定の例では、マイコバクテリア組成物の投与の部位は、後頸部、扁桃、腋窩、鼠経、前頸部、下顎下、オトガイ下、または鎖骨上部リンパ節であるか、それらの近くであってよい。非病原性加熱殺菌Mycobacteriumは、がんまたは腫瘍(複数可)が患者において存在する時間長にわたって、またはがん、例えば、原発腫瘍及び/または1つ以上の転移が、消失するか、及び/または安定化するか、及び/または切除される時間まで、投与されてよい。非病原性の生育不能Mycobacteriumはまた、がんまたは腫瘍または転移が消失されるか、または安定化されるか、または切除された後も、患者への投与が継続されてよい。
【0203】
別の特に好ましい実施形態では、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬であって、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含む、免疫調節薬は、アブスコパル効果をもたらす。
【0204】
電離放射線は、照射の範囲外の腫瘍成長を低減することができ、これは、ラテン語「ab scopus」、「標的から離れた」に由来するアブスコパル効果としても知られている。複数の悪性腫瘍がこれまでに報告されているが、アブスコパル効果は、稀であり、十分に理解されていない事象のままである。それらの稀な発生は、それ自体によって、標準的な放射線療法が確立した腫瘍の微小環境の既存の免疫制御特徴を破壊する際に不適切であるといった事実を反映している。アブスコパル効果は、例えば、PET-CTによって評価した際の、照射範囲外の測定可能な病変のいずれかにおける測定可能な応答、または照射した腫瘍(複数可)に関する遠隔転移の安定化もしくは退縮として定義される。
【0205】
本発明によるマイコバクテリア組成物は、典型的には薬学的に許容される担体中に分散させた有効量のマイコバクテリアを含む。「薬学的または薬理学的に許容可能な」という語句は、例えば、必要に応じてヒトなどの動物に投与された場合に、有害なアレルギー性反応またはその他の有害反応を生成しない分子実体及び組成物を指す。マイコバクテリアを含有する医薬組成物の調製は、当業者に知られているものであろう。さらに、動物(例えば、ヒト)への投与に対して、調製物が、無菌性、発熱性、一般的な安全性及び純度基準を満たさなければならないことを理解されよう。本明細書に記載されるような薬理学的に許容可能な担体の特定の例は、ホウ酸緩衝液または滅菌生理食塩水(0.9% NaCl)である。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」としては、当業者に既知であるように、任意の及び全ての溶媒、分散媒体、コーティング材、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗細菌剤、抗カビ剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、保存剤、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、着香剤、染料、これらの類似の物質及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0206】
別の実施形態では、非病原性の生育不能Mycobacteriumは、皮下、皮内、真皮下、腹腔内、静脈内、及び小胞内注射から選択される非経口経路を介して投与される。皮内注射は、真皮層へのマイコバクテリア組成物の全割合の送達を可能にし、すなわち、免疫監視に到達可能であり、ゆえに抗がん免疫応答を選出し、局所リンパ節での免疫細胞増殖を促進することができる。本発明のいくつかの実施形態では、マイコバクテリア組成物は、直接皮内注射によって投与され、投与の他の方法も、場合によっては使用され得ることも企図される。したがって、ある特定の例では、本発明の非病原性の生育不能Mycobacteriumは、当業者に既知であるように、注射、注入、連続注入、静脈内、皮内、動脈内、腹腔内、病巣内、硝子体内、膣内、直腸内、局部、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、皮下、結膜下、小胞内、粘膜、心膜内、臍帯内、眼球内、経口、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、気管内、鼻腔内、結節内、局部、局所、吸入(例えば、エアロゾル吸入)、病変周囲、腫瘍周囲、経皮、領域、定位的、経口、またはカテーテルを介した、洗浄を介した直接注射もしくは灌流によって、または他の方法、または上述の任意の組み合わせによって投与することができる。
【0207】
本発明のさらなる実施形態は、対象におけるがんを治療するか、低減するか、阻害するか、または制御する方法であり、ここで、上記方法は、(i)1つ以上の治療剤及び/またはがん治療、及び(ii)非病原性の生育不能全細胞Mycobacteriumを、同時に、別々に、または連続して、対象に投与することを含み、上記方法は、1つ以上の治療剤及び/またはがん治療単独の投与と比較して、治療効果の増強をもたらし、かつ該対象は、ECOGスケールに従って、2、3、または4のパフォーマンスステータスを有するか、または2つ以上の化学療法レジメンに耐えるために十分に健康ではないとして臨床的に分類される。好ましくは、対象は、0、1もしくは2、または好ましくは、0もしくは1のパフォーマンスステータスを有するとして分類される。
【0208】
本発明の他の態様では、方法で使用される非病原性の生育不能Mycobacteriumは、M.vaccae、M.parafortuitum、M.aurum、M.indicus pranii、及びこれらの組み合わせであり、最も好ましくは、M.obuenseである。好ましくは、非病原性の生育不能Mycobacteriumは、加熱殺菌されている。好ましくは、非病原性の生育不能Mycobacteriumは、粗いバリアントである。さらに好ましくは、生育不能全細胞Mycobacteriumは、第一選択治療として、任意選択で、1つ以上の治療剤またはモダリティの投与と同時に、別々に、または連続して、対象に投与される。
【0209】
方法のいくつかの態様では、対象または患者は、FOLFIRINOXなどの1つ以上の細胞傷害性化学療法剤を受ける。対象はまた、ヌクレオシド代謝阻害剤、好ましくは、ゲムシタビンを投与されてよい。好ましくは、対象は、微小管阻害剤、最も好ましくは、ナブパクリタキセルを、任意選択でゲムシタビンと組み合わせて投与されてよい。方法のいくつかの態様では、対象はまた、体幹部定位放射線治療(例えば、Cyberknife(登録商標))などの標的放射線療法を施されてもよい。
【0210】
本発明のいくつかの態様では、対象はまた、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、IDO、TIM-3、BTLA、VISTA、TIGIT、LAG-3、CD40、KIR、CEACAM1、GARP、PS、CSF1 R、CD94/NKG2A、TDO、TNFR、DcR3、CD27、CD28、CD40、CD122、CD137、0X40、GITR、ICOS及びこれらの組み合わせを対象とする、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、ADC(抗体薬物複合体)、Fabフラグメント(Fab)、F(ab’)2フラグメント、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、プロボディ、単鎖可変領域フラグメント(scFv)、ジスルフィド安定化可変領域フラグメント(dsFv)、または他のそれらの抗原結合フラグメントから選択される1つ以上のチェックポイント阻害剤が投与される。方法のいくつかの態様では、1つ以上のチェックポイント阻害剤は、治療量以下の量及び/または期間で投与され得る。本発明のいくつかの態様では、上記非病原性の生育不能全細胞Mycobacteriumの投与は、チェックポイント阻害剤の投与前に、及び/または後に行われる。
【0211】
本発明の実施形態では、共刺激チェックポイント療法は、ウトミルマブ、ウレルマブ、MOXR0916、PF04518600、MEDI0562、GSK3174988、MEDI6469、RO7009789、CP870893、BMS986156、GWN323、JTX-2011、バリルマブ、MK-4166、NKT-214及びこれらの組み合わせから選択される1つ以上の結合剤の投与を含む。
【0212】
適切な特定の組み合わせとしては、デュルバルマブ+トレメリムマブ、ニボルマブ+イピリムマブ、ペムブロリズマブ+イピリムマブ、MEDI0680+デュルバルマブ、PDR001+FAZ053、ミボルマブ+TSR022、PDR001+MBG453、ニボルマブ+BMS986016、PDR001+LAG525、ペムブロリズマブ+IMP321、REGN2810(セミプリマブ)+REGN3767、及び他の適切な組み合わせが挙げられる。
【0213】
いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤療法は、CTLA-4及びCD40、CTLA-4及びOX40、CTLA-4及びIDO、OX-40及びPD-L1、PD-1及びOX-40、CD27及びPD-L1、PD-1及びCD137、PD-L1及びCD137、OX-40及びCD137、CTLA-4及びIDO、PD-1及びIDO、PD-L1及びIDO、PD!及びA2AR、PD-L1及びA2AR、PD1及びGITR、PD-L1及びGITR、PD1及びICOS、PD-L1及びICOS、PD1及びCD27、PD-L1及びCD27、PD1及びCD122、PD-L1及びCD122、PD1及びCSF1R、PD-L1及びCSF1R、ならびに他のそのような適切な組み合わせのうち任意の1つを対象とする共刺激チェックポイント療法をさらに含み得る。
【0214】
適切な特定の組み合わせとしては、アベルマブ+ウトミルマブ、ニボルマブ+ウレルマブ、ペムブロリズマブ+ウトミルマブ、アテゾリムマブ+MOXR0916±ベバシズマブ、アベルマブ+PF-04518600、デュルバルマブ+MEDI0562、ペムブロリズマブ+GSK3174998、トレメリムマブ+デュルバルマブ+MEDI6469、トレメリムマブ+MEDI0562、ウトミルマブ+PF-04518600、アテゾリムマブ+RO7009789、トレメリムマブ+CP870893、ニボルマブ+BMS986156、PDR001+GWN323、ニボルマブ+JTX-2011、アテゾリズマブ+GDC0919、イピリムマブ+エパカドスタット、イピリムマブ+インドキシミド、ニボルマブ+BMS986205、ペムブロリズマブ+エパカドスタット、アテゾリズマブ+CPI-444、デュルバルマブ+MEDI9447、PDR001+PBF509、ニボルマブ+バリルマブ、アテゾリズマブ+バリルマブ、ニボルマブ+NKTR-214、デュルバルマブ+ペキシダルチニブ(PLX3397)、デュルバルマブ+LY3022855、ニボルマブ+FPA008、ペムブロリズマブ+ペキシダルチニブ、PDR001+BLZ945、トレメリムマブ+LY3022855が挙げられる。
【0215】
さらなる実施形態では、チェックポイント阻害剤療法は、ブロック剤の投与を含み、上記ブロック剤は、AMP-224(Amplimmune,Inc)、BMS-986016(レラトリマブと呼ばれる抗LAG-3モノクローナル抗体)、またはMGA-271(エノブリツズマブと呼ばれる抗B7-H3モノクローナル抗体)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される抗体である。B7-DCIgとしても知られているAMP-224は、WO2010/027827及びWO2011/066342に記載されているPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。別の適切な薬剤には、TGFβ及びPD-L1受容体をブロックするように設計された二機能性融合タンパク質であるbintrafusp alfaが含まれる。
【0216】
さらなる実施形態では、チェックポイント阻害剤療法は、ブロック剤の投与を含み、ここで、上記ブロック剤は、強力な抗腫瘍作用を有するB7-H3に対する操作されたFcヒト化IgG1モノクローナル抗体であるエノブリツズマブ(Macrogenics,Inc)などの、B7-H3に特異的に結合する抗体、または、T細胞上のCD3及び標的細胞上のB7-H3の両方に結合するB7-H3二重親和性再標的化(DART)タンパク質であるMGD009であり、これにより、T細胞を腫瘍部位に動員し、腫瘍根絶を促進することがこれまでに判明しており、またはMGD009は、ヒト化DARTタンパク質である。MGC018は、デュオカルマイシンペイロード及び切断可能ペプチドリンカーとの抗B7-H3抗体薬物複合体(ADC)である。
【0217】
いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤療法は、DS-5573(Daiichi Sankyo,Inc.)、エノブリツズマブ(MacroGenics,Inc.)及びオムブルタマブ[8H9](Y-mabs Therapeutics,Inc)、放射性ヨウ素(I-131)で標識されたB7-H3に対する抗体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される抗B7-H3結合タンパク質の投与を含む。
【0218】
いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤療法は、D-l-メチル-トリプトファン(Lunate)などのインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、及びその内容が参照により本明細書に援用される米国特許第7,799,776号に記載されているその他の化合物の投与を含む。
【0219】
特定の実施形態では、共刺激チェックポイント療法は、細胞免疫系を上方制御し、ここで、上記共刺激チェックポイント療法は、CD27、OX40、GITR、またはCD137及びこれらの組み合わせを対象とする、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、またはその抗原結合フラグメントから選択される結合剤、例えば、限定はされないが、BMS-663513(ウレルマブ、抗CD137ヒト化モノクローナル抗体アゴニスト、Bristol-Myers Squibb)を含むCD137アゴニスト;CP-870,893などのCD40に対するアゴニスト(CD40ヒト化モノクローナル抗体、Pfizer);OX40(CD134)アゴニスト(例えば、抗OX40ヒト化モノクローナル抗体、AgonOx及び米国特許第7,959,925号に記載されているもの)、及びヒト化OX40アゴニストであるAstra ZenecaのMEDI0562;マウスOX40アゴニストであるMEDI6469;及びOX40アゴニストであるMEDI6383;またはCDX-1127(CD27ヒト化モノクローナル抗体、Celldex)などのCD27に対するアゴニストの投与を含む。適切な抗GITR抗体としては、TRX518(Tolerx)、MK-1248(Merck)、CK-302が挙げられ、本発明で使用するための適切な抗4-1BB抗体としては、PF-5082566(Pfizer)が挙げられる。
【0220】
本発明の一実施形態では、対象は、アミノ酸、抗酸化剤、脂肪、ビタミン、微量元素、ミネラル、微量栄養素、植物抽出物、植物性化学物質、線維、プレバイオティクス、プロバイオティクス及び/またはこれらの組み合わせ、好ましくは、ビタミンD、ビタミンC及び/または亜鉛から選択される1つ以上の栄養補助食品をさらに投与される。ビタミンDは、マクロファージを含む免疫細胞における多面的効果を有し、かつ種々の免疫細胞及び疾患におけるビタミンDの免疫調節役割は、これまでに実証されている。したがって、ビタミンDの適切な提示は、パリカルシトールの経口もしくは注射用製剤、例えば、1mcgの経口用;週あたり60,000IUの経口用のコレカルシフェロール、もしく300,000IUの単回注射;または300,000IUの注射用のエルゴカルシフェロールを含む場合がある。
【0221】
加えて、がんは、具体的には、以下の組織学タイプ:悪性癌腫新生物;未分化癌腫;巨大及び紡錘体細胞癌;小細胞癌;乳頭癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;毛質性上皮癌;移行上皮細胞癌;乳頭状移行上皮細胞癌;腺癌;悪性胆管癌ガストリノーマ;肝細胞癌;複合肝細胞癌及び胆管癌;線維柱腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫様ポリープの腺癌;家族性大腸ポリポーシス腺癌;固形癌;悪性細気管支-肺胞腺癌カルチノイド腫瘍;乳頭腺癌;色素嫌性癌;好酸性癌;好酸性腺癌;塩基好性癌;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞腺癌;乳頭状及び濾胞腺癌;非被包性硬化性癌;副腎皮質癌;子宮内膜癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳垢腺癌;粘膜類表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭状嚢胞腺癌;乳頭状漿液嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌;粘液性腺癌;印環細胞癌;浸潤性導管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性癌;乳腺パジェット病;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生随伴腺癌;胸腺腫、悪性卵巣間質腫、悪性莢膜腫、悪性顆粒膜細胞腫、悪性男性胚細胞腫、悪性セルトリ細胞腫;ライディッヒ細胞腫、悪性脂質細胞腫瘍、悪性傍神経節腫、悪性乳房外傍神経節腫、悪性褐色細胞腫;血管球血管肉腫;悪性黒色腫;メラニン欠乏性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑の悪性黒色腫;転移性黒色腫、悪性黒子、悪性黒子由来黒色腫、皮膚扁平上皮癌、結節性黒色腫、末端黒子型黒色腫、線維形成性黒色腫、類上皮細胞黒色腫;悪性青色母斑肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣型横紋筋肉腫;未分化多形性肉腫;間質性肉腫;混合腫瘍;ミュラー管混合腫瘍;腎芽細胞腫;肝芽腫;癌肉腫;間葉腫、悪性ブレンナー腫瘍、悪性葉状腫瘍、悪性滑膜肉腫;中皮腫、悪性未分化胚細胞腫;胎児性癌;悪性奇形腫;悪性卵巣甲状腺腫;絨毛癌;中腎腫、悪性血管内皮腫;血管内皮腫、悪性カポジ肉腫;血管外皮細胞腫、悪性リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽細胞腫、悪性間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性エナメル芽細胞歯牙肉腫;エナメル上皮腫、悪性エナメル芽細胞線維肉腫;松果体腫、悪性脊索腫;神経膠腫、悪性上衣腫;星細胞腫;原形質性星状細胞腫;線維性星細胞腫;星状芽細胞腫;多形神経膠芽腫;乏突起神経膠腫;乏突起膠芽細胞腫;原始神経外胚葉性;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅神経腫瘍;髄膜腫、悪性神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性顆粒細胞腫、悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキン側肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性悪性リンパ腫、びまん性大細胞;濾胞性悪性リンパ腫;菌状息肉腫;その他の特定の非ホジキンリンパ腫;悪性組織球症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞性白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;及び毛様細胞性白血病であり得るが、これらに限定されない。好ましくは、がんは、膀胱癌(筋層非浸潤性膀胱癌を含む)前立腺癌、肝臓癌、腎臓癌、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌、脳癌(膠芽腫を含む)、肝細胞癌、リンパ腫、白血病、胃癌、子宮頸癌、卵巣癌、甲状腺癌、黒色腫、頭頚部癌、皮膚癌、及び軟組織肉腫、及び/または癌腫の他の形態から選択される。
【0222】
好ましくは、がんは、前立腺癌、肝臓癌、腎臓癌、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、膵臓癌、脳癌、肝細胞癌、リンパ腫、白血病、胃癌、子宮頸癌、卵巣癌、甲状腺癌、黒色腫、頭頚部癌、皮膚癌、及び軟組織肉腫、及び/または癌腫の他の形態から選択される。
【0223】
腫瘍は、転移性、または悪性腫瘍であり、最も好ましくは転移性である。より好ましくは、がんは、膵臓癌、結腸直腸癌、前立腺癌、卵巣癌であり、最も好ましくは、がんは、膵管腺癌(PDAC)を含む膵臓のがんであるか、またはがんは、転移性膵管腺癌(mPDAC)、局所進行性膵臓癌(結節性病変を含有または非含有)、切除可能な膵臓癌、境界切除可能膵臓癌、チェックポイント難治性膵臓癌、化学療法難治性膵臓癌、または少数転移膵臓癌を含む転移性膵臓癌である。
【0224】
好ましい実施形態では、本発明は、患者に光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量、好ましくは、CyberKnife、GammaKnife、MRI誘導SBRT(MRIdian,Elekta Unity)などを含むSBRTなどの標的放射線療法を、同時に、別々に、または連続的に投与することを含む、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定の患者における原発腫瘍を含むがんの治療または制御における使用のための免疫調節薬を提供するが、ここで、上記免疫調節薬は、非病原性の生育不能Mycobacteriumを含み、かつ、がんは、膵管腺癌(PDAC)、膵臓神経内分泌腫瘍(PNET)、転移性膵管腺癌(mPDAC)、局所進行性膵臓癌「LAPC」(結節性病変を含有または非含有)、切除可能な膵臓癌、境界切除可能膵臓癌、チェックポイント難治性膵臓癌、化学療法難治性膵臓癌、または少数転移膵臓癌から選択される膵臓癌であり、好ましくは、局所進行性膵臓癌または少数転移膵臓癌である。1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤は、上記MRI誘導SBRT及び/または非病原性の生育不能Mycobacteriumの前、後の、または前及び後の両方のFOLFIRINOX投与を含んでよい。さらに、このようなMRI誘導SBRTは、位置合わせマーカーまたは種の使用を必要としない。
【0225】
好ましい実施形態では、18歳を超える局所進行性膵臓管腺癌であると最近診断され、ECOGパフォーマンスステータスが<2であり、FOLFIRINOXを受けることが計画され、治験責任医師の判断で、安定または反応性疾患の場合に、SMART(MRI誘導SBRT)を受けるのに適格であると見なされた、患者に対するネオアジュバント治療が提供され、該治療は、1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を含み、かつ、非病原性の生育不能Mycobacteriumの1つ以上の用量を同時に、別々に、または連続的に投与することを含む。
【0226】
放射線療法は、単独で、または化学療法と組み合わせて、主に、治癒設定またはネオアジュバント設定でのPDACの標準的な治療戦略の一部である。現在まで、局所進行性PDACを患い、European Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータス(PS)が0または1である患者における推奨されたアジュバント療法は、注入型5-フルオロウラシル(5-FU)、ロイコボリン/フォリン酸(LV)、イリノテカン及びオキサリプラチン(mFOLFIRINOX)である。免疫療法は、がん治療に新たな可能性をもたらした。しかし、PDACにおける免疫療法の結果は、段階的進行性PDACにおけるチェックポイント阻害剤単独療法(抗CTLA4及び抗PD-L1モノクローナル抗体)の失敗により、今までのところ期待外れのものである。しかし、腸穿孔などの生命を脅かす有害反応、合併症をもたらす可能性のある十二指腸、腸及び胃のような様々な放射線感受性の正常構造(リスク臓器、「OAR」)への近接に基づく困難な技術が残っている。さらに、PDACは、転移する傾向が高い。大部分の患者が遠隔転移性疾患を発症している場合、OSに有意な改善を示す手術または放射線療法などの局所モダリティの能力は、減少する。したがって、この種の技術は、進行性転移性疾患ではなく、局所進行性疾患の設定でより適切である可能性が高い。これにもかかわらず、PDAC患者の約30%が、主に局所疾患進行により死亡する。したがって、局所療法の最大化は、PDAC患者にとって、ますます重要になり、より効果的な全身療法の時代において、より良いOSにつながる可能性がある。局所進行により、治療が困難な病的状態が生じる。効果的な局所療法は、症状を低減し、生活の質を改善することができ、その両方について、放射線療法は、一貫して効果的であることが示されており、放射線療法の高線量は、OS及び局所制御における改善と関連している。SBRTによる歴史的戦略は、腫瘍のみを含んでいたが、最近公表された再発データのパターンは、腫瘍のみを含む限局的なSBRTに付随する脈管構造の周りでの局所及び領域性のより高い再発の可能性を示唆している。
【0227】
少数転移状態は主に、がんが原発腫瘍の部位を超えて広がったが、広範囲に転移していない疾患の段階を指す。現行の第III相SABR-COMET-10治験では、4~10個の少数転移を有する12人の患者に対して、確実にSABRを安全に送達できるように、ランダム化の前に、放射線の事前計画が行われている。
【0228】
特定の実施形態では、上記少数転移膵臓癌は、「限局型転移性疾患」と定義され、この際、患者は、少なくとも8サイクルのFOLFIRINOXが完了した後の、同時性または異時性の限局型転移性膵臓癌(腫瘍体積が臓器あたり<9cmの≦5個の肝病変及び/または肺病変)を有する成人患者である。「同時性」腫瘍とは、続発性原発癌が、原発性癌が6ヶ月以内に診断される症例を指し、「異時性」腫瘍とは、続発性原発癌が、最初の原発性癌または腫瘍の診断の6ヶ月以上後に診断される症例を指す。
【0229】
あるいは、PDACの限局型転移性疾患に対する基準は、肝病変及び/または肺病変の数が≦5個、臓器あたりの全ての病変の合計した直径が9cm(センチメートル)未満、WHO分類が1/2、他の臓器への転移なし、悪性腹水なし、CA 19-9が<1000U/mL、及びFOLFIRINOX療法後に応答または安定病態、と定義される。
【0230】
本発明の別の実施形態では、本発明による使用または方法は、(i)腫瘍切除の適格性の向上、(ii)患者コホートにわたる切除可能性の割合の増加、(iii)R0もしくはR1腫瘍切除の可能性の向上、(iv)根治的または治癒的外科的切除の可能性の向上、または(v)腫瘍進度の低下の可能性の向上をもたらす。
【0231】
本発明の別の実施形態では、1つ以上の追加の抗がん剤またはモダリティは、非病原性の生育不能全細胞Mycobacteriumと、同時に、別々に、または、連続して、任意選択で、患者への光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量の上記投与の前、及び/または、後に、腫瘍内投与される。例えば、非病原性の生育不能全細胞Mycobacteriumは、RenovoCath(商標)RC120カテーテル(RenovoRx)を使用して、動脈内通過を介して膵臓部位に送達することができる。RenovoCath(商標)RC120カテーテルは、2つの摺動可能な柔軟なバルーンを使用して、目的の臓器に供給する動脈の可変セグメントを単離ように設計された血管内多腔型の2ハンドル付きカテーテルである。近位閉塞バルーン及び遠位閉塞バルーンが膨張すると、カテーテルは、上記治療剤を特異的に送達する部位を単離する。別の適切な組み合わせは、非病原性の生育不能Mycobacteriumと、その後、放射線療法(NBTXR3,NanoBiotix,Inc.)によって活性化されるハフニウム酸化物ナノ粒子との腫瘍内投与である。
【0232】
さらに別の好適な組み合わせは、非病原性の生育不能Mycobacteriumと、Oncosil(Oncosil Medial,Australia)などの近接照射療法種との腫瘍内投与である。OncoSil(商標)は、特別に処方された希釈剤に懸濁した亜リン酸-32(32P)微小粒子を含む単回使用の近接照射療法医療装置である。所定の放射線活性を含有するOncoSil(商標)懸濁液は、腫瘍に直接注射され、81日で100Gyの吸収用量が送達される。OncoSil(商標)デバイスによって放射されたβ放射線は、腫瘍組織内部で短い距離を移動し、がん細胞DNAに対する直接的な損傷を起こす。微小粒子は、恒久的に腫瘍に残り、埋植される体積は、腫瘍体積の8%に等しい。Oncosilは、超音波誘導内視鏡検査を介して適切な有資格の内視鏡医によって送達され、この際、エコー内視鏡機器は、上腸内に誘導される。次に、FNAニードルが、エコー内視鏡機器の生検チャネルを通して装着され、胃壁または十二指腸壁を通って標的膵臓腫瘍にゆっくりと導入される。
【0233】
本発明の別の実施形態によれば、対象のパフォーマンスステータスは、上記がんの上記治療、低減、阻害、または制御の間、及び/または後に、同じままであるか、改善し、例えば、患者は、PS0、PS1またはPS2として、本発明に基づいて治療を開始することができ、所望の治療またはレジメンを通して、またはその終了時に、上記スコアを維持するか、あるいは、患者は、PS1として本発明に基づいて治療を開始することができ、所望の治療またはレジメンを通して、及び/またはその終了時に、パフォーマンススコアの改善、例えば、PS0を示す。
【0234】
本発明の別の実施形態では、患者における原発腫瘍を含むがんを治療または制御する方法が提供されるが、ここで、上記方法は、(i)患者への光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量、及び(ii)非病原性の生育不能Mycobacteriumを、同時に、別々に、または連続的に対象に投与することを含み、ここで、上記方法は、光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量、または非病原性の生育不能全細胞Mycobacteriumの単独の投与と比較して治療効果の増強をもたらす。
【0235】
上記方法による本発明の別の実施形態では、患者は、腫瘍切除手術及び/または1つ以上の追加の抗がん治療及び/または薬剤の投与を受けた、または受ける予定である。
【0236】
さらなる実施形態では、本発明の方法は、以下を含む。上記光子療法は、x線及び/またはガンマ線の投与を含むか、上記粒子療法は、電子、陽子、中性子、パイオン、ネオンイオン、アルゴンイオン、ケイ素イオン、または炭素イオンの投与を含み;上記光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、外部照射放射線療法、2-D放射線療法、全身3次元原体照射法(3D-CRT)、回転、ヘリカルまたはアークベース強度変調放射線治療(IMRT)、画像誘導放射線治療(IGRT)、少分割コーンビーム放射線療法、トモセラピー、術中放射線治療(IORT)、超高線量率(FLASH)放射線療法、例えば、GammaKnifeまたはCyberKnifeまたは類似の装置を介した定位放射線手術または体幹部定位放射線治療(SBRT)などの外部放射源から患者に投与され;あるいは、上記光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、上記がん内に、または近接して配置される1つ以上の粒子またはナノ粒子を含む内部放射源から患者に投与され、これらの粒子は、フリーラジカル、α線、β線、x線もしくはガンマ線、またはそれらの組み合わせを放射することができ、ハフニウム酸化物ナノ粒子(NBTXR3,NanoBiotix,Inc)を含み、その後に、放射線療法によって活性化される;あるいは、上記1つ以上の粒子またはナノ粒子は、リン-32(Oncosilなど)またはヨウ素-125(American SynQor,Inc)などの放射性同位体を含有する近接照射療法種を含み;あるいは、上記光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、X線、CT、PET、超音波または磁気共鳴(MR)から、好ましくは、MRIdianまたはElekta UnityなどのMRI誘導LINACまたはSBRTを介して、導出される画像またはリアルタイムガイダンスを使用して患者に投与され;あるいは、上記患者は、原発腫瘍から遠隔のリンパ節及び/または臓器に転移を呈しており、例えば、上記患者は、肺から肝臓の間で合計1~10個の少数転移腫瘍もしくは病変を有するか、または5個未満の少数転移腫瘍もしくは病変を有するか;あるいは上記患者は、原発腫瘍から遠隔のいずれかのリンパ節及び/または臓器に転移を呈さない。
【0237】
さらなる実施形態では、本発明の方法は、腫瘍切除手術を受ける予定の、または受けたことのある患者における原発腫瘍を含むがんのアジュバント、ネオアジュバント、もしくはペリアジュバント治療または制御を含み;あるいは、上記光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、10グレイのα/βで最大生物学的等価線量、約40グレイ超、または約50グレイ超、または約90グレイ超の(BED10)を含み;あるいは、上記光子療法または粒子療法から選択される電離放射線の1つ以上の線量は、単一画分として、または分割レジメンを介して、患者に投与され;あるいは上記分割レジメンは、2~50個の画分、例えば、3~10個の画分、好ましくは3~5個の画分を含み;あるいは、線量は、40~50グレイであり、5個の画分で投与され;あるいは、上記1つ以上の追加の抗がん治療または薬剤は、養子細胞療法、外科的(腫瘍切除)療法、化学療法、ホルモン療法、チェックポイント阻害剤療法、メトホルミンなどの小分子療法、受容体キナーゼ阻害剤療法、温熱療法、光線療法、高周波アブレーション治療(RFA)、抗血管新生療法、サイトカイン療法、寒冷療法、生物学的療法、HDAC阻害剤、例えば、OKI-179、BRAF阻害剤、MEK阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、P13Kデルタ阻害剤、PARP阻害剤、mTOR阻害剤、低メチル化剤、腫瘍溶解性ウイルス、TLR2、3、4、7、8または9アゴニストを含むTLRアゴニスト、例えば、リンタトリモド、またはTLR5アゴニスト、MRx0518(4D Pharma)、STINGアゴニスト(MIW815及びSYNB1891を含む)、ミファムルチド及びがんワクチン、例えば、GVAXまたはCIMAvax、ならびにそれらの組み合わせから選択され;あるいは、がんは、膀胱癌(筋層非浸潤性膀胱癌または尿路上皮癌を含む)、前立腺癌、肝臓癌、腎臓癌、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌、脳癌(膠芽腫を含む)、肝細胞癌、リンパ腫、白血病、胃癌、子宮頸癌、卵巣癌、甲状腺癌、黒色腫、頭頚部癌、皮膚癌、及び、軟組織肉腫及び/または骨肉腫から選択され、膵管腺癌(PDAC)及び膵臓神経内分泌腫瘍(PNET)を含み、任意選択で、上記がんは、転移性であり;あるいは、好ましくは、がんは、局所進行性膵臓癌(結節性病変を含有または非含有)、切除可能な膵臓癌、境界切除可能膵臓癌、チェックポイント難治性膵臓癌、化学療法難治性膵臓癌、少数転移膵臓癌、膵管腺癌(PDAC)、及び転移性膵管腺癌(mPDAC)から選択される膵臓癌である。
【0238】
あるいは、上記方法は、TNMステージ基準によって臨床的に定義されるがんに適用され、この際、患者は、T1~T4の原発腫瘍(T)、及び/またはN0、N1、もしくはN2のNode(節)指定を有しているか、または上記がんは、ステージI、ステージII、ステージIII、またはステージIVと臨床的に定義され、任意選択で、患者は、転移の所見がない(M0);あるは、患者は、腫瘍切除手術を受けた、または受ける予定であり、任意選択で、腫瘍切除手術は、リンパ節切除、及び任意選択で、転移性膵管腺癌(mPDAC)などの転移性疾患が存在する場合、転移性腫瘍切除をさらに含む。
【0239】
本発明の実施形態では、本明細書にて開示する使用、組み合わせ、方法は、(i)全生存期間、(ii)無増悪生存期間、(iii)奏効率、(iv)転移性疾患の低減、(v)炭水化物抗原19.9(CA19.9)、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特異抗原(PSA)または腫瘍に依存する他のものなどの腫瘍抗原の循環レベル、またはCXCL10発現の増加、(vii)栄養上の状態(体重、食欲、血清アルブミン)及び除脂肪体重の減少の低減、すなわち、悪液質の予防または低減、(viii)全身性免疫炎症指標(SII)または全身性炎症スコア(SIS)、(ix)疼痛制御または鎮痛剤使用、あるいは(x)CRP/アルブミン比率または予後栄養指数(PNI)または好中球/リンパ球比率(NLR)、あるいは(xi)生活の質の改善、あるいは(xi)ctDNAの低減または排除、のうち1つ以上から選択される疾患状態及び進行の1つ以上のマーカーで、臨床的に適切な改善をもたらし、これは、好ましくは、手術後、または光子療法もしくは粒子療法の終了から12ヶ月後に評価される。
【0240】
いくつかの実施形態では、前述のリストから選択される疾患状態及び進行の1つ以上のマーカーは、本発明の治療、低減、阻害、または制御手順をモニタリングする間に計測することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、前立腺特異抗原(PSA)、癌胎児性抗原(CEA)、予後栄養指数(PNI)、全身性免疫炎症指数(SII)、または好中球/リンパ球比率(NLR)及び全身性炎症スコア(SIS)のうちいずれか1つ以上を含み得る。
【0241】
本発明は、以下の非限定的実施例を参照してさらに説明される。
【0242】
実施例1
第I/II相試験を、局所進行性膵臓癌患者における標準的な定位放射線治療(SBRT,CyberKnife)へのIMM-101(加熱殺菌全細胞M.obuense NCT13365)の追加の安全性及び有効性を調査するために開発した。(LAPC-2 治験-Dutch Trial Registerエントリ:NL7578)
https://www.trialregister.nl/trial/7578
【0243】
概要-この第I/II相試験は、2つの連続する試験パートからなる。第I相パートは、少なくとも4サイクルのFOLFIRINOX化学療法を完了した局所進行性膵臓癌を有する20人の患者におけるSBRTとのIMM-101の組み合わせ投与の安全性を調査することを含む。1年間の無病生存期間の20%の改善に基づいてSBRTとのIMM-101治療の組み合わせの有効性を調査できるように、安全かつ実現可能であると見なされた(IMM-101介入に関連するグレード4/5毒性を経験している20人の患者のうち最大6人と定義された)後に、追加の18人の患者と共に第II相への組み込みを続けた。二次評価項目は、全生存期間、局所進行までの時間、遠隔転移までの時間、実現可能性、安全性/毒性、切除率、腫瘍特異的免疫応答、及び生活の質/睡眠である。
【0244】
目標数-38患者
【0245】
組み込み基準-明確な細胞学報告によって示された組織学的に確認された膵臓癌;CTイメージングを含む精密検診後、局所進行性疾患及びに対するDPCG基準及び診断上の腹腔鏡検査を使用して、局所進行したと見なされる腫瘍;>18歳及び<75歳;WHO(ECOG)パフォーマンスステータスが0または1;ASA分類がIまたはII、転移性疾患の所見なし;最大腫瘍サイズが<7cm×7cm×7cm;正常な腎機能(クレアチニン≧30ml/分);正常な肝臓検査(ビリルビンが通常*の<1.5倍;ALAT/ASATが通常の<5倍);正常な骨髄機能(WBCが>3.0×10e9/L、血小板が>100×10e9/L、及びヘモグロビンが>5.6mmol/l)。
【0246】
仮説-膵臓癌患者のおよそ30~40%が局所進行性膵臓癌を呈する。局所進行性膵臓癌患者は、外科的に切除できないが、同時に、臨床的に検出可能な遠隔転移がない。現在の治療レジメンは、FOLFIRINOXなどのネオアジュバント化学療法の使用、それに続く体幹部定位放射線治療からなる。患者の転帰の改善が遅いにもかかわらず、この戦略により、外科的に切除可能な患者はおよそ3分の1に留まり、全生存期間はわずか10~12ヶ月になる。最近、腫瘍免疫学の分野において向上した理解は、がん免疫療法戦略における進歩及びブレークスルーをもたらした。このような治療戦略の1つは、免疫系の調節物質を使用した免疫療法である。放射線療法は、生体内原位置ワクチンとして作用することができ、細胞表面受容体の発現及び腫瘍抗原提示を増加させ、かつ抗腫瘍細胞傷害性T細胞応答を生成することさえできる。しかし、最適な抗腫瘍応答には、インタクトな宿主免疫系が必要であり、増幅なしでは、放射線療法から生じる抗腫瘍免疫は、制限される可能性が高い。腫瘍抗原に対する曝露を増加する状態で身体の各免疫応答を増強することの組み合わせは、さらなる腫瘍成長に対抗するのに十分な免疫系の誘導をもたらすであろうと仮定する。IMM-101は、抗原提示細胞、及び特に樹状細胞のその活性化及び成熟を通して、進行性膵臓癌の状況では不十分なプロセスである抗原プロセシング及びT細胞交差抗原刺激を補助することができる。それによって、IMM-101免疫療法は、放射線療法の免疫原性抗腫瘍効果を最適化する可能性を有する。
【0247】
介入-体幹部定位放射線治療の2週間前に開始するIMM-101(加熱殺菌全細胞Mycobacterium obuenseを含有するワクチンアジュバント)の6回の皮内注射。3回目と4回目の注射の間は、4週間中断する。IMM-101の投与は、0、2、4、8、10、及び12週目に行う。
【0248】
主要転帰
第I相-第1の組み込みフェーズの主要評価項目は、SBRTを受けているLAPC患者におけるIMM-101投与の安全性/毒性を決定することである。IMM-101介入の安全性/毒性を、CTCAEバージョン5.0に準じて決定する。IMM-101生成物の投与に関連する全てのグレード4及び5の事象は、この評価項目の事象と見なす。
【0249】
第II相-第2の組み込みフェーズの主要評価項目は、LAPC患者におけるSBRTと組み合わせたIMM-101療法の有効性を評価することである。有効性を、1年のPFSの割合を用いて決定する。PFSは、組み込みの日から局所進行性疾患、遠隔転移の発生、二次または再発性膵臓癌の発生のない生存として定義する。全ての組み込まれた患者(すなわち、38患者)を、この評価項目について分析する。
【0250】
二次転帰
全患者に対して、以下の二次評価項目:全生存期間;組み込み後、局所進行がない期間と定義される局所進行までの時間;組み込み後、遠隔転移がない期間と定義される遠隔転移までの時間;RECIST基準(バージョン1.1)を使用したIMM-101及びSBRT後の放射線的奏効率;治癒目的切除を受けた組み込まれる患者のパーセンテージと定義される切除率;IMM-101治療を受け、かつ経過観察を実施する実現可能性、を決定する。IMM-101を患者に投与し、これらの患者を経過観察することができる(例えば、指定された時点で追加の血液サンプルを収集する能力)として定義される治療手順の実現可能性;CTCAE5.0に準ずる安全性/毒性;腫瘍特異的免疫応答;睡眠の質及び睡眠時間;生活の質。
【0251】
治験依頼者-Erasmus MC,外科部門
【0252】
時点
スクリーニング、ベースライン、2/4/8/10/12/14及び26週。試験の26週目の後、標準的なFUを、試験の9/12/15/18/21/24/36/42/48/54及び60ヶ月目に実施する。
【0253】
記載時に、このLAPC-2試験の募集が終わり、全ての患者が最初の14週間の来院を完了していた;この時点で、腫瘍切除可能性が評価される。5人の患者に関して試験を続け、26週目までの試験薬物を受けとることになる。LAPC-1治験(LAPC患者のSBRT単独治療;10.1016/j.eclinm.2019.10.013)では、ネオアジュバント化学療法後にSRBTで治療された患者の12%が、その後、治療期間の終了時に腫瘍切除を受けた。無増悪(PFS)及び全生存期間(OS)の中央値は、それぞれ、11ヶ月及び15ヶ月であったが、1年の生存率は、64%であった。
【0254】
現在まで、SBRTとIMM-101との組み合わせは、以前に報告されたように、IMM-101に関連するとして報告されるSAEがなく、IMM-101に関連するとして報告されるAEの大部分が、CTCAEグレード1または2(主として注入部位の局所紅斑、発熱、及びいくらかの疲労)であると、全体的に許容可能な安全性プロファイルをもたらした。LAPC-2試験で報告されたSAEの大部分は、疾患進行に関連し、SBRT自体に潜在的に関連すると報告されたのは、ごくわずかであった。
【0255】
試験は進行中であるが、現在までにこの試験で観察された切除可能性の割合は、最初にLAPC-1(DOI:10.1016/j.eclinm.2019.10.013)で報告された割合12%よりも高い。他の評価項目は、試験が完了するまで決定されない。
【0256】
実施例2
試験を、限局型転移性膵臓癌患者における標準的な定位放射線治療(SBRT,CyberKnife)へのIMM-101(加熱殺菌全細胞M.obuense NCT13365)の追加の安全性及び有効性を調査するために開発した(MEPANC-1治験-Dutch Trial Registerエントリ:NL8819)
https://www.trialregister.nl/trial/8819
【0257】
概要-膵臓癌であると診断された患者の約40%~50%が転移性疾患を呈する。加えて、膵管腺癌(PDAC)を切除した患者の80%は、その侵襲性性質及び初期転移を発症するその傾向に起因して、再発性疾患を発症する。再発した患者の約25%は、肝臓にのみ転移を発症する。肺のみの再発が、患者の14.7%に見られる。切除後に転移を発症する患者を含む全てのこれらの患者は、転移のパターンに関係なく、現在、緩和的化学療法薬で治療されている。FOLFIRINOXで治療されたこれらの転移性患者の全生存期間の中央値は、最も効果的な化学療法レジメンで、11ヶ月未満であり、1年の無増悪生存期間は12%である。限局型肝及び/または肺転移を有する患者は、標準的な緩和的治療後、追加の多様式治療から利益を得ることができる。この治療は、少数転移疾患としても知られている限局した臓器部位への転移がほとんどない患者にとって効果的であり得る。近年、PDACにおける少数転移疾患の新しい定義が提案され、これには、解剖学的基準及び生物学的基準が含まれる。本発明者らは、限局型転移性疾患を肝臓及び/または肺における≦5個の転移、臓器あたりの総腫瘍サイズが<9cmと定義する。限局型転移性疾患の概念は、患者の個々の転移性状態ごとに追加の治療アプローチを作り出す。FOLFIRINOX後の、免疫療法(IMM-101)を伴う体幹部定位放射線治療(SBRT)の追加は、相乗的アプローチで免疫系を利用する。SBRTは、生体内原位置ワクチンとして作用することができ、細胞表面受容体の発現及び腫瘍抗原提示を増加させ、かつ抗腫瘍細胞傷害性T細胞応答を生成することさえできる。加えて、IMM-101(加熱殺菌全細胞Mycobacterium obuenseの懸濁液)は、抗原提示細胞を活性化し、成熟させる。特に、樹状細胞は、転移性膵臓癌の状況では不十分なプロセスである抗原プロセシング及びT細胞交差抗原刺激を補助することができる。それによって、IMM-101免疫療法は、放射線療法の免疫原性抗腫瘍効果を最適化する可能性を有する。免疫応答を増加することと、腫瘍抗原に対する曝露を増加する状態での免疫療法との組み合わせは、さらなる転移負荷に対抗するのに十分な免疫系の誘導をもたらすであろう。本発明者らは、PDACの限局型転移性肝疾患または肺疾患患者におけるSBRTと組み合わせたIMM-101の治療は、耐久性のある局所及び全身性抗腫瘍免疫応答を誘導し、疾患制御を得ると仮定する。このIMM-101及びSBRTプロトコルは、標準的な化学療法治療(FOLFIRINOX)の4週間後に開始する。
【0258】
目標数-100患者
【0259】
組み込み基準-明確な細胞学/組織学報告によって示された組織学的に確認された転移性膵臓癌;合計で≦5個の肝及び/または肺転移;全ての肝臓転移と膵臓における原発腫瘍または局所再発との合算した直径が<9cm;全ての肺転移の合算した直径が<9cm;化学療法の完了後、CA 19-9が<1000IU/mL;年齢>18歳及び<75歳;WHO(ECOG)パフォーマンスステータスが0~2;原発腫瘍の腫瘍体積が<7cm×7cm×7cm;各直径は、7cmを超えてはならない;適切な腎機能(クレアチニンが≧30ml/分);適切な肝臓検査(ビリルビンが通常の<1.5倍;ALAT/ASATが通常の<5倍);適切な骨髄機能(WBCが>3.0×109/L、血小板が>100×10^9/L、及びヘモグロビンが>5.6mmol/l);効果的な避妊法;書面での同意;重度の毒性に起因して少なくとも8サイクルの化学療法を完了していない患者は、増殖コホートに含まれる。
【0260】
除外基準-肺及び肝臓以外の他の臓器への転移;組織病理学的に証明された追加の所属リンパ節転移;悪性腹水;放射線療法の定められた線量に耐えるのに不十分な肝臓機能;チャイルド・ピュー分類グレードがB/C;放射線療法の定められた線量に耐えるのに不十分な肺機能;CTスキャンに基づく拡散肝臓転移パターン;免疫療法薬物による現在または過去の治療;続発性原発悪性腫瘍、ただし、生体内原位置子宮頸癌、適切に治療を受けた非黒色腫皮膚癌、または膵臓癌の診断よりも少なくとも5年前に治療を受けて、再発の所見がない他の悪性腫瘍を除く。
【0261】
仮説-FOLFIRINOX後の、免疫療法(IMM-101)を伴う体幹部定位放射線治療(SBRT)の追加は、相乗的アプローチで免疫系を利用する。SBRTは、生体内原位置ワクチンとして作用することができ、細胞表面受容体の発現及び腫瘍抗原提示を増加させ、かつ抗腫瘍細胞傷害性T細胞応答を生成することさえできる。加えて、IMM-101(加熱殺菌全細胞Mycobacterium obuense NCTC 13365の懸濁液)は、抗原提示細胞を活性化し、成熟させる。特に、樹状細胞は、転移性膵臓癌の状況では不十分なプロセスである抗原プロセシング及びT細胞交差抗原刺激を補助することができる。それによって、IMM-101免疫療法は、放射線療法の免疫原性抗腫瘍効果を最適化する可能性を有する。免疫応答を増加することと、腫瘍抗原に対する曝露を増加する状態での免疫療法との組み合わせは、さらなる転移負荷に対抗するのに十分な免疫系の誘導をもたらすであろう。本発明者らは、PDACの限局型転移性肝疾患または肺疾患患者におけるSBRTと組み合わせたIMM-101の治療は、耐久性のある局所及び全身性抗腫瘍免疫応答を誘導し、疾患制御を得ると仮定する。このIMM-101及びSBRTプロトコルは、標準的な化学療法治療(FOLFIRINOX)の4週間後に開始する。
【0262】
介入-IMM-101免疫療法及び定位放射線治療(SBRT)
【0263】
主要転帰-安全性観察の主な目標は、膵臓癌からの限定型メタまたは同時性転移性疾患の肝臓及び/または肺転移性疾患患者におけるSBRTと組み合わせたIMM-101ワクチンの安全性/毒性プロファイルを決定することである。
【0264】
二次転帰-FOLFIRINOX(OS1)の開始から計算される全生存期間;IMM-101(OS2)から計算される全生存期間;IMM-101の開始12ヶ月後から原発腫瘍の進行性疾患、局所再発、以前に治療された肺及び/または肝臓転移の進行、新しい転移の発生、または死の日付まで計算される無増悪生存期間(PFS2)。全ての組み込まれた患者を、この評価項目;生活の質;RECIST基準(バージョン1.1)を使用したIMM-101及びSBRT後の放射線的奏効率;免疫学的効果;循環免疫細胞に対するIMM-101及びSBRTの効果;腫瘍マーカーCA19.9及びCEAに対する効果について分析する。
【0265】
治験依頼者-Erasmus MC
【0266】
時点-0、2、4、8、10、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48及び52週目
【0267】
本試験は、記載時に、患者の募集を開始していた。
【0268】
実施例3
FOLFIRINOX、局所進行性膵管腺癌(PDAC)患者における定位的MRI誘導適応型放射線療法(SMART)及びチェックポイント阻害剤と組み合わせたIMM-101の安全性及び有効性を評価するための第I/II相、非盲検、非ランダム化試験。これは、18歳を超える局所進行性膵臓管腺癌であると最近診断され、ECOGパフォーマンスステータスが<2であり、FOLFIRINOXを受けることが計画され、治験責任医師の判断で、安定または反応性疾患の場合に、SMARTを受けるのに適格であると見なされた、患者に対するネオアジュバント治療である。
【0269】
試験期間-最大38人の患者を、12ヶ月間にわたって治療する。
【0270】
組み込み基準:≧18歳の男性及び女性;組織学的または細胞学的に確認された膵臓の局所進行性腺癌;ECOGパフォーマンスステータスが0~1(<2);少なくとも3ヶ月の期待寿命;明らかな辺縁を有するが、診断時に外科的切除または治癒目的の放射線の選択肢がない病変;参加者は、従来技術を用いて≧20mm、またはスパイラルCTスキャン、MRIを用いて≧10mmとして、少なくとも1つの次元(非結節性病変の場合は最大寸法が記録され、及び結節性病変の場合は短軸)で正確に測定され得る病変として定義される測定可能な疾患を患っている必要がある(RECIST V1.1基準に準じたX線検査で評価可能な疾患);ネオアジュバントレジメンとしてFOLFIRINOXを受けるのに適格である患者;遠隔転移の所見なし;最長軸方向寸法で膵臓腫瘍サイズが≦7cm;呼吸ゲート法処置に伴う呼吸指示を理解し、それに従う能力がある;参加者は、以下のように定義される正常臓器及び骨髄機能を有している必要がある:a.絶対好中球数が≧1,500/mcL、b.適切なリンパ球数、c.血小板が≧100,000/mcL、d.総ビリルビンが施設基準の正常範囲内;AST(SGOT)/ALT(SGPT)が施設上限正常値の≦2.5倍;クレアチニンが施設基準の正常範囲内、または施設正常値を超えるクレアチニンレベルを有する参加者の場合クレアチニンクリアランスが≧60mL/分/1.73m2;妊娠の可能性のある女性(FCBP)は治験薬の最初の投与の7日以内に高感度血清妊娠試験が陰性である必要がある。
【0271】
IMM-101は、各投与間で腕を交互に変えて、皮内注射を介して三角筋の上を被う皮膚に与える必要がある。IMM 101は、朝、及び化学療法を共に投与する日は、化学療法の前に投与する。IMM-101は、1.0mg(0.1mL)の用量で皮膚内に投与し、10mg/mLのIMM-101を含有する0.1mLの容量を、0、2、4、8、10及び12週目に注射する。
【0272】
CPIを製造者の指示/sMPCに従って、ニボルマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、ペモブロリズマブ、もしくはアテゼリズマブ、または研究者によって選択されるもの、から選択して投与する。
【0273】
主要目的は、局所進行性PDAC患者における、IMM-101とmFOLFIRINOX、チェックポイント阻害剤(CPI)及びSMARTとの組み合わせの安全性及び忍容性を評価することであり、これは、経験した有害事象のプロファイル(IMM-101の注射部位における局所忍容性を含む、臨床状態及び臨床検査パラメータでの変化)を検査することによって行う。
【0274】
二次目的は、1年の無増悪生存率(PFS率)によって評価されるmFOLFIRINOX、CPI及びSMARTと組み合わせたIMM-101の有効性を評価すること;IMM-101、mFOLFIRINOX、CPI及びSMARTを受ける、登録時に18歳以上の局所進行性PDAC患者の1年の全生存期間を評価すること;IMM-101、mFOLFIRINOX、CPI及びSMARTを受ける、登録時に18歳以上の局所進行性PDAC患者の5年の全生存期間を評価すること;同意からイメージング(CTスキャンまたはMRI)を介して決定されるような局所進行の徴候までの局所進行がない期間として定義される局所進行までの時間;同意後イメージング(CTスキャンまたはMRI)を介した転移の画像までの遠隔転移がない期間として定義される遠隔転移までの時間;RECIST基準(バージョン1.1)を使用した、IMM-101、mFOLFIRINOX、CPI及びSMART後の放射線的奏効率;切除に適格であり、かつ切除の意向を決定するための14週間後の来院時に判断された治癒的切除を受けた、試験に組み込まれた患者のパーセンテージとして定義される切除率、である。
【0275】
調査目的は、ベースライン、1、2、3ヶ月での生活の質アンケートC30(QLQ-C30);睡眠の質、睡眠効率及び睡眠時間を判断するために使用される一般的な睡眠障害アンケート;生物学的及び免疫学的マーカー(腫瘍特異的及び非腫瘍特異的)に関するサンプル収集;さらなる分析のための膵臓腫瘍の切除の間に抽出され、固定された腫瘍ブロックの収集、である。
【0276】
この試験は、18歳を超える局所進行性PDACであると最近診断され、ECOGパフォーマンスステータスが<2であり、ネオアジュバント療法としてmFOLFIRINOXを受けることが計画され、SBRTまたはSMARTに適していると見なされ、局所進行性疾患の転帰として意図される切除で治療される、患者を募集する。
【0277】
同意が得られた後に、患者は、スクリーニング検査を受ける。適格患者は、mFOLFIRINOX、CPI及びSMART(隔日で5回、1回の放射線投与あたり8Gy)化学療法、ならびに「標準治療」に準じて投与されるCPIに組み合わせたIMM-101を受ける。
【0278】
全患者のビタミンDレベルを、スクリーニング時に測定し、正常範囲以下のレベルの患者を、治験薬を受ける間そのレベルを正常化するために補う。それらのビタミンレベルを、UKガイドラインに準じてモニタリングする。
【0279】
追加のサンプルは、免疫学応答を評価するために収集される。生検ブロックは、さらなる分析のために切除処置の間に収集される。
【0280】
患者は、より良好な疾患評価(より具体的には、局所領域疾患及び治療に対する反応に関して、代謝活性病変と非代謝活性病変とを区別することを可能にする)のためにスクリーニング、及び12週目にPETスキャンを受ける。
【0281】
試験中の患者は、14週目に膵臓腫瘍切除可能性について評価されるまで、治験レジメンを受ける。転帰に基づいて、患者は、1.腫瘍切除を有する可能性があり、2.切除に適していない患者は、疾患進行、取り下げ、または死亡まで、標準治療のFOLFIRINOXに戻す。試験を終了すると、患者に、切除を行うか、またはmFOLFIRINOXを継続し、疾患状態(寛解、進行、及び/または死亡)を取り込むために、患者を、合計5年間、電話を介して年4回、経過観察する。
【0282】
患者は、10mg/mLを含有する0.1mLの容量でIMM-101の最初の用量を経皮的に受け、2週間後に、mFOLFIRINOX及びCPIの最初のサイクルを受ける。mFOLFIRINOXを2週間ごとに6サイクルで、以下の通りに、患者に投与する:120分かけてオキサリプラチン85mg/m2を点滴、その直後に、120分かけてフォリン酸(ロイコボリン)400mg/m2を点滴、加えて、30分後に90分かけてイリノテカンを135mg/m2の用量で点滴、続いて、5FUの300mg/m2をi.v.ボーラス投与、続いて、2400mg/m2を46時間かけて連続点滴(ボーラス5FU及びイリノテカン用量は25%減量)。毎回、患者は、IMM-101及びmFOLFIRINOXを受けるが、IMM-101が最初に投与され、続いて、1時間後に、mFOLFIRINOX及びCPIが投与される。CPIは、添付文書の推奨に従って投与する。CPI及びIMM-101と組み合わせたFOLFIRINOXの最初の6サイクルの完了から2、4週間後に、患者はSMARTを受ける。患者は、隔日で5回、それぞれ8グレイの5画分で40グレイ(Gy)の総公称線量を受ける。
【0283】
患者を、試験研究製品に対する成績を決定するために、事象のスケジュールに応じて、安全性及び有効性について評価する。様々な臨床検査、臨床、イメージング評価及び生活の質評価を、スクリーニング来院から、最後の経過観察試験来院まで試験の全体を通して実施する。
【国際調査報告】