(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】生弱毒化細菌を用いたがん療法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/112 20060101AFI20240730BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240730BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20240730BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240730BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240730BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240730BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240730BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20240730BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240730BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20240730BHJP
【FI】
A61K39/112
A61P35/00
A61P35/02
A61P13/10
A61P43/00 121
A61P37/04
A61K45/00
A61K35/17
A61K39/395 E
A61K39/395 N
C12N1/20 A
C12N1/21
A61K35/74 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505007
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 EP2022071198
(87)【国際公開番号】W WO2023006879
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521339784
【氏名又は名称】プロカリウム リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デバン,リヴィヤ
(72)【発明者】
【氏名】グランヴィル,ニコラス
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA46X
4B065AA46Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
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4B065CA46
4C084AA22
4C084NA05
4C084ZA811
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4C087AA01
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4C087ZB02
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明はがん療法の分野に関する。特に、本発明は、対象における新生物性疾患の治療、予防、低減、阻害、再発の予防、または制御における使用のための生弱毒化細菌を含む第1の組成物であって、対象が、第1の組成物の生弱毒化細菌と同じまたは異なる生弱毒化細菌を含む第2の組成物を投与されているかまたは投与されることが意図される、第1の組成物、およびその方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における新生物性疾患の治療、予防、低減、阻害、再発の予防、または制御における使用のための生弱毒化細菌を含む第1の組成物であって、前記対象が、前記第1の組成物の前記生弱毒化細菌と同じまたは異なる生弱毒化細菌を含む第2の組成物を投与されているかまたは投与されることが意図され、
前記第1の組成物が、前記対象において全身性免疫応答を刺激するための経口、静脈内、鼻腔内、皮内または皮下送達のために製剤化されており、および前記第2の組成物との同時、別々または逐次的な投与のためのものであり、ならびに
前記第2の組成物が、前記新生物性疾患の部位への局所的な投与のためのものである、第1の組成物。
【請求項2】
前記第1および/または第2の組成物の前記生弱毒化細菌がグラム陰性細菌であり、好ましくは前記生弱毒化細菌がサルモネラ属菌である、請求項1に記載の使用のための生弱毒化細菌。
【請求項3】
前記第1および/または第2の組成物の前記生弱毒化細菌がサルモネラ・エンテリカであり、好ましくは、前記生弱毒化細菌がサルモネラ・エンテリカ血清型ティフィおよび/またはサルモネラ・エンテリカ血清型ティフィムリウムである、請求項1または2に記載の使用のための生弱毒化細菌。
【請求項4】
前記第1の組成物の前記生弱毒化細菌および/または前記第2の組成物の前記生弱毒化細菌が、遺伝子改変された非天然の細菌を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のための生弱毒化細菌。
【請求項5】
前記遺伝子改変された非天然の細菌が、サルモネラ属菌に由来し、ならびにサルモネラ病原性アイランド2(SPI-2)遺伝子中の弱毒化突然変異および/または第2の遺伝子中の弱毒化突然変異を含み、好ましくは、前記遺伝子改変された非天然の細菌が、サルモネラ属菌に由来し、ならびにサルモネラ病原性アイランド2(SPI-2)遺伝子中の弱毒化突然変異および第2の遺伝子中の弱毒化突然変異を含む、請求項4のいずれか1項に記載の使用のための生弱毒化細菌。
【請求項6】
前記SPI-2遺伝子がssaV遺伝子であり、および前記第2の遺伝子がaro遺伝子である、請求項5に記載の使用のための生弱毒化細菌。
【請求項7】
前記新生物性疾患が固形がんおよび/または血液学的悪性腫瘍である、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のための生弱毒化細菌。
【請求項8】
前記固形がんおよび/または前記血液学的悪性腫瘍が、前立腺がん、食道がん、肝臓がん、腎臓がん、肺がん、乳がん、大腸がん、膀胱がん、乳がん、膵臓がん、脳腫瘍、中皮腫、肝細胞がん、リンパ腫、白血病、胃がん、子宮頸がん、卵巣がん、甲状腺がん、黒色腫、癌腫、頭頸部がん、皮膚がんまたは肉腫から選択されるがんであり、好ましくは、前記新生物性疾患が、膀胱がん、肺がん、中皮腫、肝細胞がん、黒色腫、食道がん、胃がん、卵巣がん、大腸がん、頭頸部がんまたは乳がんから選択されるがんと関連付けられ、より好ましくは、前記新生物性疾患が、膀胱がんまたは大腸がんから選択されるがんと関連付けられる、請求項7に記載の使用のための生弱毒化細菌。
【請求項9】
前記新生物性疾患が膀胱がんであり、好ましくは、前記膀胱がんが筋層非浸潤性膀胱がんまたは筋層浸潤性膀胱がんである、請求項7または8に記載の使用のための生弱毒化細菌。
【請求項10】
前記第2の組成物が、局所的な点滴注入、腹腔内、胸膜内、膀胱内、腫瘍周囲注射または腫瘍内注射を介して投与される、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用のための生弱毒化細菌。
【請求項11】
前記第1の組成物がワクチンである、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のための生弱毒化細菌。
【請求項12】
前記第1の組成物の前記生弱毒化細菌が、前記第2の組成物の前記生弱毒化細菌に先立って前記対象に投与される、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のための生弱毒化細菌。
【請求項13】
前記第1および/または第2の組成物の前記生弱毒化細菌が、免疫療法、放射線療法、化学療法または抗がん剤と組み合わせて投与され、好ましくは、前記免疫療法が、チェックポイント阻害剤、抗原特異的T細胞、養子T細胞療法、治療抗体、がんワクチンまたは任意の他の操作型細胞免疫療法を含む、請求項1~12に記載の使用のための生弱毒化細菌。
【請求項14】
前記第1の組成物の前記生弱毒化細菌がサルモネラ・エンテリカ血清型ティフィであり、および前記第2の組成物の前記生弱毒化細菌がサルモネラ・エンテリカ血清型ティフィである、請求項1~13に記載の使用のための生弱毒化細菌。
【請求項15】
前記第1の組成物の前記生弱毒化細菌がサルモネラ・エンテリカ血清型ティフィZH9であり、および前記第2の組成物の前記生弱毒化細菌がサルモネラ・エンテリカ血清型ティフィZH9である、請求項14に記載の使用のための生弱毒化細菌。
【請求項16】
前記第1の組成物の前記生弱毒化細菌がサルモネラ・エンテリカ血清型ティフィムリウムであり、および前記第2の組成物の前記生弱毒化細菌がサルモネラ・エンテリカ血清型ティフィである、請求項1~13に記載の使用のための生弱毒化細菌。
【請求項17】
前記第1の組成物の前記生弱毒化細菌がサルモネラ・エンテリカ血清型ティフィムリウムMD58であり、および前記第2の組成物の前記生弱毒化細菌がサルモネラ・エンテリカ血清型ティフィZH9である、請求項16に記載の使用のための生弱毒化細菌。
【請求項18】
対象において新生物性疾患を治療、阻害、再発を予防、または制御する方法であって、前記方法が、(i)生弱毒化細菌を含む第1の組成物および(ii)前記第1の組成物の前記生弱毒化細菌と同じまたは異なる生弱毒化細菌を含む第2の組成物を前記対象に同時に、別々にまたは逐次的に投与することを含み、
前記第1の組成物が、前記対象において全身性免疫応答を刺激するための経口、静脈内、鼻腔内、皮内または皮下送達のために製剤化されており、および前記第2の組成物との同時、別々または逐次的な投与のためのものであり、ならびに
前記第2の組成物が、前記新生物性疾患の部位への局所的な投与のためのものである、方法。
【請求項19】
請求項1~17に記載の使用のための生弱毒化細菌を含む、請求項18に記載の対象において新生物性疾患を治療、阻害、または制御する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はがん療法の分野に関する。特に、本発明は、対象において新生物性疾患を予防し、治療しまたはその進行を阻害する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がん療法の分野は、がんの形成および進行と関連付けられる基礎となる機序の我々の理解が向上するにつれて新たな療法と共に絶えず進化している。現在、がんと診断された患者は、手術、放射線療法、化学療法および免疫療法を含む、多数の治療オプションを有する。しかしながら、がん患者にとって利用可能な多様な治療オプションにもかかわらず、患者の大部分は再発するか、治療に対して難治性のままとなるか、または治療の中止を結果としてもたらす毒性副作用を経験する。よって、新規の、有効なおよび安全ながん治療戦略が要求され続けている。
【0003】
腫瘍学分野において採用されている1つの治療アプローチは、生弱毒化細菌を含む組成物を使用する治療アプローチである。例えば、膀胱がんの分野において少なくとも部分的に成功している1つの治療戦略は、バチラス・カルメット・ゲラン(Bacillus Calmette-Guerin;BCG)を用いる膀胱内免疫療法の治療戦略である。しかしながら、BCG療法はある程度の臨床的な成功を収めているが、患者の90%近くは、膀胱炎から敗血症および死までの範囲に及ぶ、何らかの種類の有害な副作用を経験すること、ならびに患者の遵守は、一部の事例において、要求の厳しい投薬スケジュール(6回の連続する週毎の膀胱内注入)に起因して低いことが見積もられている。追加的に、BCGは、有効性を増強するための努力において他の療法と組み合わせて使用されるが、これらの併用療法は、上記に開示される副作用を改善しない。
【0004】
固形腫瘍がんの成長の阻害またはその体積の低減のための、弱毒化サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella Typhimurium)を含む、弱毒化組換え細菌および/または弱毒化腫瘍標的化細菌を含む組成物を開発するための別々の試みが為されており、例えば国際公開第03/063593号パンフレット(Vion Pharmaceuticals);米国特許出願公開第2007/0298012号明細書(I.King & L.M. Zheng);国際公開第2009/098246号パンフレット(Aeterna Zentaris GmbH);国際公開第2006/076678号パンフレット(Univ. John Hopkins)などのものがある。サルモネラ・ティフィ(Salmonella Typhi)株はまた、腫瘍学分野における使用のために、例えば、膀胱がんの治療のために提案されている(国際公開第2014/180929号パンフレットを参照)。Zhou et al., (Nature Reviews Cancer, 18:12:727-743, 2018)は、がんと戦うために操作された腫瘍標的化細菌を開示しており、Chorobik et al., (Acta Biochimica Polonica, 60:3:285-297, 2013)は、がんの文脈における可能な治療剤であるとしてサルモネラ(Salmonella)を開示している。しかしながら、最適未満のレベルの抗がん活性を含む、多数の課題がこのアプローチには依然として存在する。
【0005】
よって、新規の治療戦略に対する重大なニーズががんの分野において依然として存在する。特に、ポジティブな応答を示す個体において前記治療の向上された有効性を有する方法に対するニーズが依然として存在する。同時に、さもなければ前記治療に対して難治性である個体において持続された有効性を示す方法に対する重大なニーズが存在する。最後に、患者のコンプライアンスが改善される治療戦略に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、生弱毒化細菌を両方とも含む第1および第2の組成物を投与することにより対象において新生物性疾患を治療、予防および/または再発を予防する有効な方法を提供する。本発明者らは、驚くべきことに、この組合せは、対象が、生弱毒化細菌を含む単一の組成物を用いて治療された場合よりも、有効な療法を結果としてもたらすこと、すなわち、相乗的なまたは付加的な効果が達成されることを見出した。第1の組成物の生弱毒化細菌の投与から観察される全身性修飾は、前記生弱毒化細菌に対して生成される全身性免疫記憶と組み合わせて、第2の組成物が新生物性疾患の部位に局所的に投与される場合に、自然免疫応答の増強およびエフェクターメモリー細胞の動員のバイスタンダー効果を介して第2の組成物の生弱毒化細菌の抗腫瘍活性を増強することができると考えられる。
【0007】
よって、第1の態様において、本発明は、対象における新生物性疾患の治療、予防、低減、阻害、再発の予防、または制御における使用のための生弱毒化細菌を含む第1の組成物であって、対象が、第1の組成物の生弱毒化細菌と同じまたは異なる生弱毒化細菌を含む第2の組成物を投与されているかまたは投与されることが意図され、第1の組成物が、対象において全身性免疫応答を刺激するための経口、静脈内、鼻腔内、皮内または皮下送達のために製剤化されており、および第2の組成物との同時、別々または逐次的な投与のためのものであり、ならびに第2の組成物が、新生物性疾患の部位への局所的な投与のためのものである、第1の組成物を提供する。
【0008】
第2の態様において、本発明は、対象において新生物性疾患を治療、予防、低減、阻害、再発の予防、または制御する方法であって、方法が、(i)生弱毒化細菌を含む第1の組成物および(ii)第1の組成物の生弱毒化細菌と同じまたは異なる生弱毒化細菌を含む第2の組成物を対象に同時に、別々にまたは逐次的に投与することを含み、第1の組成物が、対象において全身性免疫応答を刺激するための経口、静脈内、鼻腔内、皮内または皮下送達のために製剤化されており、および第2の組成物との同時、別々または逐次的な投与のためのものであり、ならびに第2の組成物が、新生物性疾患の部位への局所的な投与のためのものである、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、同所性マウスMB49膀胱がんモデルにおけるサルモネラ・ティフィの皮下全身および局所投与のタイムラインを示す図式を示す。S.c.、皮下。IVES、膀胱内。
【
図1B】
図1Bは、サルモネラ・ティフィの皮下全身および局所投与で治療されたマウスの生存パーセンテージを示す。C57BL/6マウスを皮下へのZH9で治療したかまたは治療せず、膀胱にMB49腫瘍細胞を接種し、膀胱内(ives)へのZH9またはPBS対照で治療した。生存を100日にかけてモニターした。グラフは、5つの独立した研究からの結果の組合せである。統計はログランク(マンテル-コックス)検定である。
**p<0.01。
****p<0.0001。
【
図2】
図2は、健常マウスにおけるサルモネラ・ティフィの皮下全身および局所投与後のフローサイトメトリー分析のタイムラインを示す図式を示す。S.c.、皮下。IVES、膀胱内。
【
図3A】
図3A~3Cは、好中球(
図3A)、CD4+ T細胞(
図3A)、単球(
図3B)、CD8+ T細胞(
図3B)、交差提示樹状細胞(
図3C)およびナチュラルキラー細胞(
図3C)の数における、健常マウスにおけるサルモネラ・ティフィの皮下全身および局所投与(ives)の24時間および7日後の変化を示す。個々のデータ点は、n=2(ivesでのZH9で治療された)またはn=3(ivesでのPBSで治療された)のマウスからの細胞のプールおよび各々n=4のプールの2つの独立した実験を組み合わせて表す。線は群の平均値を指し示す。示される樹状細胞集団はCD11b+ Ly6G- CD11c+ Ly6C+ CD103+として定義される。指し示される統計は、シダックの事後検定を伴う一元配置ANOVAである。
【
図3B】
図3A~3Cは、好中球(
図3A)、CD4+ T細胞(
図3A)、単球(
図3B)、CD8+ T細胞(
図3B)、交差提示樹状細胞(
図3C)およびナチュラルキラー細胞(
図3C)の数における、健常マウスにおけるサルモネラ・ティフィの皮下全身および局所投与(ives)の24時間および7日後の変化を示す。個々のデータ点は、n=2(ivesでのZH9で治療された)またはn=3(ivesでのPBSで治療された)のマウスからの細胞のプールおよび各々n=4のプールの2つの独立した実験を組み合わせて表す。線は群の平均値を指し示す。示される樹状細胞集団はCD11b+ Ly6G- CD11c+ Ly6C+ CD103+として定義される。指し示される統計は、シダックの事後検定を伴う一元配置ANOVAである。
【
図3C】
図3A~3Cは、好中球(
図3A)、CD4+ T細胞(
図3A)、単球(
図3B)、CD8+ T細胞(
図3B)、交差提示樹状細胞(
図3C)およびナチュラルキラー細胞(
図3C)の数における、健常マウスにおけるサルモネラ・ティフィの皮下全身および局所投与(ives)の24時間および7日後の変化を示す。個々のデータ点は、n=2(ivesでのZH9で治療された)またはn=3(ivesでのPBSで治療された)のマウスからの細胞のプールおよび各々n=4のプールの2つの独立した実験を組み合わせて表す。線は群の平均値を指し示す。示される樹状細胞集団はCD11b+ Ly6G- CD11c+ Ly6C+ CD103+として定義される。指し示される統計は、シダックの事後検定を伴う一元配置ANOVAである。
【
図4】
図4は、同系皮下MC38マウス大腸がんモデルにおけるサルモネラ・ティフィムリウムの経口全身投与、続いてサルモネラ・ティフィの局所投与(腫瘍内)のタイムラインを示す図式を示す。IT、腫瘍内。
【
図5A】
図5Aおよび
図5Bは、単独での腫瘍内治療と比較した腫瘍内サルモネラ・ティフィ治療と組み合わせた経口サルモネラ・ティフィムリウムでの全身性プライミングの1日(
図5A)および7日(
図5B)後の腫瘍浸潤性CD8 T細胞、CD4 T細胞および制御性T細胞(Treg)の数を示す。時点当たりN=3または4のマウス/群。バーは平均値±S.E.M.である。
【
図5B】
図5Aおよび
図5Bは、単独での腫瘍内治療と比較した腫瘍内サルモネラ・ティフィ治療と組み合わせた経口サルモネラ・ティフィムリウムでの全身性プライミングの1日(
図5A)および7日(
図5B)後の腫瘍浸潤性CD8 T細胞、CD4 T細胞および制御性T細胞(Treg)の数を示す。時点当たりN=3または4のマウス/群。バーは平均値±S.E.M.である。
【
図6】
図6は、単独での腫瘍内治療と比較した腫瘍内サルモネラ・ティフィ治療と組み合わせた経口サルモネラ・ティフィムリウムでの全身性プライミングの1日および7日後の腫瘍中および末梢中のCD8 T細胞増殖を示す。時点当たりN=4のマウス/群。バーは平均値±S.E.M.である。
【
図7】
図7は、単独での腫瘍内治療と比較した腫瘍内サルモネラ・ティフィ治療と組み合わせた経口サルモネラ・ティフィムリウムでの全身性プライミングの1日および7日後の腫瘍中および末梢中のCD4 T細胞増殖を示す。時点当たりN=4のマウス/群。バーは平均値±S.E.M.である。
【
図8】
図8は、単独での腫瘍内治療と比較した腫瘍内サルモネラ・ティフィ治療と組み合わせた経口サルモネラ・ティフィムリウムでの全身性プライミングで治療されたマウスにおけるCD8 T細胞の機能的な潜在能力を示す。時点当たりN=4のマウス/群。バーは平均値±S.E.M.である。
【
図9】
図9は、単独での腫瘍内治療と比較した腫瘍内サルモネラ・ティフィ治療と組み合わせた経口サルモネラ・ティフィムリウムでの全身性プライミングで治療されたマウスにおけるCD4 T細胞の機能的な潜在能力を示す。時点当たりN=4のマウス/群。バーは平均値±S.E.M.である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
本発明がより容易に理解され得るように、ある特定の用語が最初に定義される。追加の定義は、詳細な説明の全体を通じて記載される。
【0011】
本明細書において使用される場合、用語「弱毒化(された)」(attenuated)は、本発明の文脈において、微生物の生存を維持しながら、その病原性を低減させて、宿主にとって無害なものとするための微生物の改変を指す。この方法は、許容される安全性プロファイルを維持しながら高度に特異的な免疫応答を誘発する能力に起因してワクチンの開発において一般的に使用される。そのようなワクチンの開発は多数の方法を伴うことができ、その例は、病原性が喪失されるまでインビトロ条件下で病原体を継代すること、化学的突然変異誘発および遺伝子操作技術を含むが、これらに限定されない。そのような弱毒化微生物は好ましくは生弱毒化微生物であるが、非生弱毒化微生物もまた開示される。
【0012】
本明細書において使用される場合、用語「不活性化突然変異」は、特定の遺伝子の天然の遺伝コードまたはその遺伝子と関連付けられる遺伝子プロモーターの改変、例えばヌクレオチドコードを変化させるか、またはヌクレオチドのセクションを欠失させるか、または非コーディングヌクレオチドもしくは非天然ヌクレオチドを付加することによる改変であって、特定の遺伝子が適切に転写もしくは翻訳されないか、または非活性タンパク質となるように発現され、その結果、遺伝子の天然の機能が、それが測定可能でないような程度まで消失または低減されるようなものを指す。そのため、遺伝子の突然変異は、その遺伝子の機能またはその遺伝子がコードするタンパク質の機能を不活性化する。
【0013】
本明細書において使用される場合、用語「免疫療法」は、例えば、抗体もしくは免疫細胞により、または免疫系を刺激し、阻害し、もしくは調節する薬物もしくは他の剤により、免疫系応答を調節することを目的とした任意の療法を指す。これらは、免疫系に影響する免疫調節剤、薬物または物質を含み;これは、抗体(例えば、抗腫瘍抗原抗体)、抗体のエピトープ結合性部分、細胞傷害性コンジュゲートを含む抗体-薬物コンジュゲート、放射線学的剤、他の腫瘍標的化剤、腫瘍溶解性ウイルス、サイトカイン、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、コロニー刺激因子、免疫応答を調節する薬物もしくは他の剤、免疫細胞、または標的細胞と相互作用し、標的細胞を認識し、もしくは標的細胞に結合する操作された細胞を含むがこれらに限定されない。
【0014】
本明細書において使用される場合、用語「免疫系の細胞成分」は、特有の抗原、例えばプリオン、ウイルス、細菌、酵母、真菌、寄生生物、腫瘍関連もしくは腫瘍特異的抗原、または特定の疾患、障害、もしくは状態と関連付けられる他の抗原を認識し得る、免疫細胞、例えばリンパ球、例えばTおよびBリンパ球、ガンマ-デルタT細胞、ならびにNK細胞を指す。本発明者らが指す他の免疫細胞は、顆粒球または無顆粒球であってもよい、白血球を含む。免疫細胞の例は、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球、およびマクロファージを含む。樹状細胞、ミクログリア、および他の抗原提示細胞もまたこの定義に含まれる。
【0015】
本明細書において使用される場合、用語「非天然の細菌」は、天然に存在する細胞に関して変更されるように遺伝子改変または「操作」されている細菌(原核)細胞を指す。そのような遺伝子改変は、例えば、細胞中への追加の遺伝情報の組込み、既存の遺伝情報の改変または既存の遺伝情報の実際に欠失であってもよい。これは、例えば、細胞中への組換えプラスミドのトランスフェクションまたは細菌ゲノムに直接的に為される改変によって達成されてもよい。追加的に、細菌細胞は、例えば、弱毒化を達成するための、化学的
突然変異誘発によって遺伝子改変されてもよく、その方法は当業者に周知である。そのため、用語「非天然の細菌」は、組換え的に改変された細菌の株および非組換え的に改変された細菌の株の両方を指すことがある。
【0016】
本明細書において使用される場合、用語「組換え」、「組換え株」または「組換え細菌」は交換可能に使用され、本発明の文脈において、細菌DNAが新たなDNAの導入により変更されているような遺伝子操作を受けた細菌の株を指す。組換えDNA法は、ベクター、例えば、プラスミドを介する新たなDNAの導入を一般的に伴う。そのような方法は当業者に周知である。細菌の組換え株の使用は、細菌株に有利な特性、例えば長期化された活性、対象におけるより強い免疫応答の誘発、または所望される分子の導入を付与し得る。
【0017】
本明細書において使用される場合、用語「免疫応答」は、がん性細胞への選択的な損傷、その破壊、またはそのヒト身体からの排除を結果としてもたらす、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、ならびに上記の細胞または肝臓により産生される可溶性高分子(抗体、サイトカイン、および補体を含む)の作用を指す。
【0018】
本明細書において使用される場合、用語「全身性免疫応答」および「全身性免疫」は交換可能に使用され、局所的な、空間的に制限された応答とは対照的に、誘発剤に対して方向付けられた対象の身体の全体を通じた広汎な免疫応答の他に、広汎な非特異的な免疫活性化を指す。そのような応答は、免疫応答の異なる細胞、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球および上記の細胞または肝臓により産生される可溶性高分子の間の複雑な相互作用を伴い、本発明の文脈において、生弱毒化細菌を含む第2の組成物が新生物性疾患の部位に局所的に投与される場合に、対象が第2の組成物に対してより応答性となるように、対象の免疫系をプライムすると考えられる。「全身性免疫応答」は、したがって、好中球、単球、樹状細胞、T細胞(例えばCD4+および/またはCD8+ T細胞)ならびにナチュラルキラー細胞を含むが、これらに限定されない、様々な異なる免疫細胞タイプの分析を介して測定および定量化されてもよい。これらの効果が測定され得る方法は当業者に周知であり、例えば、フローサイトメトリーがある。「全身性免疫応答」はまた、IgGおよびIgAアイソタイプ抗体を含むがこれらに限定されない、抗体の存在により測定および定量化されてもよい。これらの抗体が測定され得る方法は当業者に周知であり、例えば、ELISAがある。よって、第1の組成物は、第2の組成物の投与後に対象の免疫応答をプライム(「コンディショニング」、「ブースト」、「増幅」、「増強」、「向上」、「増大」または「促進」と交換可能に使用される)するように作用してもよい。
【0019】
本明細書において使用される場合、用語「局所的に」および「局所的に投与される」は交換可能に使用され、本発明の文脈において、第2の組成物が対象に投与される方法を指す。よって、生弱毒化細菌を含む第2の組成物は、新生物性疾患の中/上/周囲に投与されてもよい。例えば、第2の組成物は、例えば、腫瘍内注射を介して、新生物性疾患に直接的に投与されてもよいか、または第2の組成物が腫瘍の組織/表面と接触するように、例えば腹腔内に、胸膜内に、膀胱内に、腫瘍周囲に、投与されてもよい。用語「局所的に」は、したがって、問題とする新生物性疾患との直接的な接触および間接的な接触の両方、例えば、局所的な点滴注入(instillation)、腫瘍内注射、腫瘍周囲注射、胸膜内、膀胱内および/または腹腔内注射を指すことがある。そのため、対象において生成される、結果としてもたらされる免疫応答は、新生物性疾患の部位に局所的であるとも言われ、すなわち、それは、本発明の第1の組成物を用いて生成されるような、広汎な全身性免疫応答ではない。
【0020】
用語「腫瘍」、「がん」、「悪性腫瘍」(malignancy)および「新生物」(
neoplasia)は交換可能に使用され、その成長、増殖または生存が、正常な対応物細胞の成長、増殖または生存よりも大きい細胞または細胞の集団、例えば細胞増殖性または分化性障害を指す。典型的には、成長は制御されない。用語「悪性腫瘍」は、近くの組織への浸潤を指す。用語「転移」は、対象内の他の部位、位置または領域への腫瘍、がんまたは新生物の拡大または播種であって、部位、位置または領域が原発性腫瘍またはがんとは別個であるものを指す。
【0021】
用語「有効量」または「医薬的有効量」は、所望される生物学的なまたは治療的な結果を提供するための剤の十分な量を指す。その結果は、疾患の徴候、症状、もしくは原因のうちの1つ以上の低減、寛解、緩和、減少、遅延、および/もしくは軽減、または生物学的システムの任意の他の所望される変化であることができる。がんに関して、有効量は、腫瘍の縮小を引き起こしおよび/または腫瘍の成長速度を減少させる(例えば腫瘍成長を抑制する)か、または他の望ましくない細胞増殖を予防するかもしくは遅延させるために十分な量を含んでもよい。一部の実施形態において、有効量は、進行を遅延させるか、または生存を長期化させるか、またはがんもしくは腫瘍の安定化を誘導するために十分な量である。
【0022】
一部の実施形態において、治療有効量は、再発を予防するかまたは遅延させるために十分な量である。治療有効量は、1以上の投与において投与され得る。治療有効量の薬物または組合せは、以下:(i)がん細胞の数の低減;(ii)腫瘍サイズの低減;(iii)末梢臓器中へのがん細胞浸潤の阻害、遅延化、何らかの程度までの緩慢化および好ましくは停止;(iv)腫瘍転移の阻害(すなわち、何らかの程度までの緩慢化および好ましくは停止);(v)腫瘍成長の阻害;(vi)腫瘍の発生および/もしくは再発の予防もしくは遅延化;ならびに/または(vii)がんと関連付けられる症状のうちの1つ以上の何らかの程度までの緩和のうちの1つ以上を結果としてもたらしてもよい。
【0023】
例えば、腫瘍の治療のために、「治療有効投薬量」は、ベースライン測定と比べて少なくとも約5%、例えば少なくとも約10%、または約20%、または約60%またはより大きい%の腫瘍収縮を誘導してもよい。ベースライン測定は、治療されていない対象に由来してもよい。
【0024】
治療有効量の治療用化合物は、腫瘍サイズを減少させるか、または対象において症状を他に寛解させることができる。当業者は、対象のサイズ、対象の症状の重症度、および選択される特定の組成物または投与の経路などの要因に基づいてそのような量を決定することができる。
【0025】
用語「治療」または「療法」は、状態(例えば、疾患)、状態の症状を治癒し、治し、軽減し、緩和し、変更し、治療し、寛解させ、改善し、もしくは影響するか、または疾患の症状、合併症、生化学的徴候の開始を予防するかもしくは遅延させるか、または統計的に有意な方式において疾患、状態、もしくは障害のさらなる進行を他に停止させるかもしくは阻害する目的と共に活性剤を投与することを指す。
【0026】
本明細書において使用される場合、用語「対象」は、ヒトおよび非ヒト動物を含むことが意図される。好ましい対象は、免疫応答の増強を必要とするヒト患者を含む。方法は、免疫応答を増大することにより治療され得る障害を有するヒト患者を治療するために特に好適である。特定の実施形態において、方法は、インビボでのがんの治療のために特に好適である。
【0027】
本明細書において使用される場合、用語「同時的な投与」または「同時的に」または「同時の」は、投与が同じ日に行われることを意味する。用語「逐次的な投与」または「逐
次的に」または「別々の」は、投与が異なる日に行われることを意味する。
【0028】
本明細書において定義される、「同時的な」投与は、互いに約2時間または約1時間またはより短い時間以内の、よりいっそう好ましくは同じ時点における、第1の組成物および第2の組成物の投与を含む。
【0029】
本明細書において定義される、「別々の」投与は、約12時間、または約8時間、または約6時間または約4時間または約2時間よりも長く離れた第1の組成物および第2の組成物の投与を含む。
【0030】
本明細書において定義される、「逐次的な」投与は、複数のアリコートおよび/もしくは用量中で各々に、ならびに/または別々の機会において第1の組成物および第2の組成物を投与することを含む。第1の組成物は、第2の組成物の投与の前および/または後に患者に投与されてもよい。
【0031】
選択肢(例えば、「または」)の使用は、選択肢のいずれか1つ、両方、またはその任意の組合せを意味することが理解されるべきである。本明細書において使用される場合、不定冠詞「a」または「an」は、任意の記載または列挙された構成要素の「1つ以上」を指すことが理解されるべきである。
【0032】
本明細書において使用される場合、「約」は、値がどのように測定または決定されるのか、すなわち、測定システムの限界に部分的に依存する、当業者により決定されるような特定の値についての許容される誤差範囲内にあることを意味する。例えば、「約」は、当技術分野におけるプラクティスにしたがって1または1より大きい標準偏差内にあることを意味することができる。代替的に、「約」は、最大20%の範囲を意味することができる。特定の値が本出願および請求項において提供される場合、他に記載されなければ、「約」の意味は、その特定の値についての許容される誤差範囲内にあることが想定されるべきである。
【0033】
本発明は、対象における新生物性疾患が複数の用量(すなわち、少なくとも2つの用量)の生弱毒化細菌の使用により予防および/または治療され得る有効な方法であって、用量が、新生物性疾患に対して対象の免疫系を有効に活性化させるために別個の投与の経路を介して投与される、有効な方法を提供する。
【0034】
よって、第1の態様において、本発明は、対象における新生物性疾患の治療、予防、低減、阻害、再発の予防、または制御における使用のための生弱毒化細菌を含む第1の組成物であって、対象が、第1の組成物の生弱毒化細菌と同じまたは異なる生弱毒化細菌を含む第2の組成物を投与されているかまたは投与されることが意図され、第1の組成物が、対象において全身性免疫応答を刺激するための経口、静脈内、鼻腔内または皮下送達のために製剤化されており、および第2の組成物との同時、別々または逐次的な投与のためのものであり、ならびに第2の組成物が、新生物性疾患の部位への局所的な投与のためのものである、第1の組成物を提供する。
【0035】
したがって、第1の組成物の生弱毒化細菌は、対象の免疫系の「プライミング」剤として作用して、全身性免疫応答、および引き続いて、第2の組成物の生弱毒化細菌をさらに局所的に投与された場合に、新生物性疾患に対するより有効な自然免疫応答の他に有効な適応応答を開始することができる対象の免疫系の能力を結果としてもたらすことが想定される。
【0036】
生弱毒化細菌を含む第1の組成物は、経口、静脈内、鼻腔内、皮内または皮下送達のた
めに製剤化される。これらの送達の経路のために好適な製剤は当業者に明らかである。第1の組成物は、優先的に、液体凍結製剤であってもよいか、またはフリーズドライなどの方法により凍結乾燥され、ならびに、後の再水和および投与のために、例えば、サシェ剤中で、適切に貯蔵されてもよい。代替的に、第1の組成物は、腸溶性コーティングされたカプセル中に分配されてもよい。被包された製剤のために、凍結乾燥された第1の組成物は、好ましくは、カプセルから小腸中に放出された場合に生存を高めるように、胆汁吸着樹脂、例えばコレスチラミンと混合される(さらなる詳細について、国際公開第2010/079343号パンフレットを参照)。第1の組成物の特定の製剤は、様々な要因、例えば、投与の経路または標的患者集団、すなわち、若年児、青少年もしくは成人に依存して変動してもよい。第1の組成物はまた、任意の他の好適なアジュバント、希釈剤または賦形剤を含むように製剤化されてもよい。好適なアジュバント、希釈剤または賦形剤は、リン酸水素二ナトリウム、ダイズペプトン、リン酸二水素カリウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、スクロース、無菌食塩水、および無菌水を含むが、これらに限定されない。
【0037】
対象において要求される免疫応答を生じさせる能力を有する任意の生弱毒化細菌、または生弱毒化細菌の組合せが本発明において使用されてもよいことが想定される。好ましい実施形態において、第1および/または第2の組成物の生弱毒化細菌はグラム陰性細菌であってもよい。本発明における使用のためのグラム陰性細菌の例は、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、サルモネラ、シゲラ(Shigella)、シュードモナス(Pseudomonas)、モラクセラ(Moraxella)、ヘリコバクター(Helicobacter)、ステノトロフォモナス(Stenotrophomonas)、ブデロビブリオ(Bdellovibrio)、レジオネラ(Legionella)、クラミジア(Chlamydia)およびエルシニア(Yersinia)を含むが、これらに限定されない。グラム陰性細菌は、グラム陰性細菌がクリスタルバイオレット染色を保持しないグラムの差次的な染色技術を介して容易に同定およびグラム陽性細菌から区別され得る。
【0038】
好ましくは、第1および/または第2の組成物の生弱毒化細菌はサルモネラ属菌であってもよい。本発明における使用のためのサルモネラ種の例は、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)およびサルモネラ・ボンゴリ(Salmonella bongori)である。サルモネラ・エンテリカは、異なる血清型(serotypesまたはserovars)にさらに分割され得る。本発明における使用のための前記血清型の例は、サルモネラ・エンテリカ・ティフィ(Salmonella enterica Typhi)、サルモネラ・エンテリカ・パラティフィ(Salmonella enterica Paratyphi)A、サルモネラ・エンテリカ・パラティフィB、サルモネラ・エンテリカ・パラティフィC、サルモネラ・エンテリカ・ティフィムリウム(Salmonella enterica Typhimurium)およびサルモネラ・エンテリカ・エンテリティディス(Salmonella enterica Enteritidis)である。好ましい実施形態において、生弱毒化細菌はサルモネラ・エンテリカ血清型ティフィおよび/またはサルモネラ・エンテリカ・ティフィムリウムであってもよい。
【0039】
第1および第2の組成物の生弱毒化細菌は、同じ生弱毒化細菌または異なる生弱毒化細菌であってもよい。よって、本発明にしたがって生弱毒化細菌の様々な異なる組合せが本明細書において開示される。好ましい実施形態において、第1および第2の組成物の生弱毒化細菌は同じ種のものである。最も好ましい実施形態において、第1および第2の組成物の生弱毒化細菌は両方ともサルモネラ・エンテリカ種のものである。
【0040】
第1の組成物の生弱毒化細菌および第2の組成物の生弱毒化細菌は、遺伝子改変された
非天然の細菌を含んでもよい。当業者により理解されるように、遺伝子は、当技術分野における多数の周知の方法、例えば関心対象の遺伝子に対して標的化された組換えプラスミドを用いる相同組換えにより突然変異されてもよく、その場合、標的遺伝子に対して相同性を有する操作された遺伝子が適切な核酸ベクター(例えばプラスミドまたはバクテリオファージ)中に組み込まれ、それが標的細胞中にトランスフェクトされる。相同的な操作された遺伝子は次に天然遺伝子と組み換えられて、天然遺伝子を置き換えるかまたは突然変異させて、所望される不活性化型突然変異が達成される。そのような改変は、遺伝子のコーディング部分または任意の調節的部分、例えばプロモーター領域におけるものであってもよい。当業者により理解されるように、任意の適切な遺伝子改変技術が、関心対象の遺伝子を突然変異させるために使用されてもよく、例えばCRISPR/Casシステム、例えば、CRISPR/Cas 9が使用されてもよい。
【0041】
このように、細菌株を遺伝学的に操作するための多数の方法および技術は当業者に周知である。これらの技術は、染色体組込みを介して、または安定な常染色体自己複製性遺伝子エレメントの導入を介して細菌中に異種遺伝子を導入するために要求されるものを含む。細菌細胞を遺伝子改変(「形質転換」または「操作」としても言及される)するための例示的な方法は、バクテリオファージ感染、形質導入、コンジュゲーション、リポフェクションまたはエレクトロポレーションを含む。分子および細胞生化学におけるこれらおよび他の方法に関する一般的な議論は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 3rd Ed. (Sambrook et al., HaRBor Laboratory Press 2001); Short Protocols in Molecular Biology, 4th Ed. (Ausubel et al. eds., John Wiley & Sons 1999); Protein Methods (Bollag et al., John Wiley & Sons 1996)(これらは参照により本明細書に組み込まれる)などの標準的な教科書において見出され得る。
【0042】
よって、第1の組成物および第2の組成物の両方は、その遺伝子構成が、例えば、遺伝子操作を介して、または化学的突然変異誘発を介して、変化、例えば、突然変異、付加または欠失を誘導するために何らかの形態において変更されている細菌を含んでもよい。第1の組成物および/または第2の組成物は、第1の組成物および第2の組成物が細菌の組換え株を含むように遺伝子改変されてもよい。代替的に、第1の組成物および/または第2の組成物は細菌の非組換え株を含んでもよい。第1の組成物および第2の組成物は、上記のように遺伝子改変されている同じ生弱毒化細菌を含んでもよいか、または第1および第2の組成物は、遺伝子改変されている2つの異なる細菌株(同じ属内であってもよいか、もしくはそうでなくてもよい)を含んでもよい。代替的に、第1の組成物は細菌の組換え株を含んでもよく、および第2の組成物は細菌の非組換え株を含んでもよく、ならびにその逆であってもよい。
【0043】
本発明にしたがって対象の全身性免疫応答を誘導する能力を有する任意の細菌が使用されてもよいことが想定される。よって、第1の組成物の部分として全身性免疫応答を誘導する能力を有する任意の生弱毒化細菌が本明細書において開示され、および第2の組成物の部分として局所的な免疫応答を誘導する任意の生弱毒化細菌が本明細書において開示される。好ましい実施形態において、任意の弱毒化された、非病原性の、サルモネラ・エンテリカ血清型ティフィまたはティフィムリウム株が使用されてもよい。さらなる好ましい実施形態において、第1または第2の組成物の生弱毒化細菌は、Ty21a、CVD 908-htrA、CVD 909、Ty800、ZH9(「M01ZH09」としても言及される)、ZH9PA、x9633、x639、x9640、x8444、DTY88、MD58、WT05、ZH26、SL7838、SL7207、VNP20009、A1-R、またはこれらの任意の組合せを含む群から選択されてもよい。第1および第2の組成物の生弱毒化細菌は同じであってもよく、例えば、第1および第2の組成物の両方は、Ty21a、CVD 908-htrA、CVD 909、Ty800、ZH9、ZH9PA、x9633、x639、x9640、x8444、DTY88、MD58、WT05、ZH26、SL7838、SL7207、VNP20009またはA1-Rを含んでもよい。代替的に、第1および第2の組成物の生弱毒化細菌は異なってもよく、例えば、第1の組成物はTy21aであってもよく、および第2の組成物は、CVD 908-htrA、CVD 909、Ty800、ZH9、ZH9PA、x9633、x639、x9640、x8444、DTY88、MD58、WT05、ZH26、SL7838、SL7207、VNP20009またはA1-Rであってもよい、などである。好ましい実施形態において、第1または第2の組成物のうちの少なくとも1つの生弱毒化細菌はサルモネラ・ティフィZH9である。例えば、第1の組成物の生弱毒化細菌はサルモネラ・ティフィムリウムMD58であってもよく、および第2の組成物の生弱毒化細菌はサルモネラ・ティフィZH9であってもよい。さらなる好ましい実施形態において、第1および第2の組成物の生弱毒化細菌は同じである。最も好ましい実施形態において、第1および第2の組成物の生弱毒化細菌は両方ともサルモネラ・ティフィZH9である。
【0044】
よって、第1および/または第2の組成物が遺伝子改変された非天然の細菌を含む場合、前記遺伝子改変された非天然の細菌はサルモネラ属菌に由来することが好ましい。前記サルモネラ属菌は、サルモネラ病原性アイランド2(Salmonella Pathogenicity Island 2;SPI-2)遺伝子中の弱毒化突然変異および/または第2の遺伝子中の弱毒化突然変異を含み得ることがさらに好ましい。好ましくは、遺伝子改変された非天然の細菌は、サルモネラ属菌に由来し、ならびにSPI-2遺伝子中の弱毒化突然変異および第2の遺伝子中の弱毒化突然変異の両方を含む。そのような生弱毒化サルモネラ微生物の好適な遺伝子および詳細は、国際公開第2000/68261号パンフレット(これは参照により全体が本明細書に組み込まれる)に記載される通りである。
【0045】
SPI-2遺伝子はssa遺伝子であってもよい。例えば、本発明は、ssaV、ssaJ、ssaU、ssaK、ssaL、ssaM、ssaO、ssaP、ssaQ、ssaR、ssaS、ssaT、ssaD、ssaE、ssaG、ssaI、ssaCおよびssaHの1つ以上における弱毒化突然変異を含む。好ましくは、弱毒化突然変異はssaVまたはssaJ遺伝子中にある。よりいっそう好ましくは、弱毒化突然変異はssaV遺伝子中にある。
【0046】
遺伝子操作されたサルモネラ微生物はまた、SPI-2領域中にあってもよいか、またはそうでなくてもよい、第2の遺伝子中の弱毒化突然変異を含んでもよい。突然変異は、SPI-2領域の外側にあってもよく、および芳香族化合物の生合成に関与してもよい。例えば、本発明は、aro遺伝子中の弱毒化突然変異を含んでもよい。好ましい実施形態において、aro遺伝子はaroAまたはaroCである。よりいっそう好ましくは、aro遺伝子はaroCである。
【0047】
遺伝子操作されたサルモネラ微生物が二重の弱毒化突然変異を含む場合、両方の突然変異はSPI-2遺伝子中にあってもよいか、または両方の突然変異は、SPI-2領域中にあってもよいか、もしくはそうでなくてもよい、第2の遺伝子中にあってもよい。好ましくは、遺伝子操作されたサルモネラ微生物は、ssaV遺伝子およびaro遺伝子中の弱毒化突然変異を含み、よりいっそう好ましくは、aro遺伝子はaroCである。
【0048】
遺伝子操作された微生物は1つ以上の遺伝子カセットをさらに含んでもよい。そのような遺伝子カセットは、免疫系プライマーおよび/または刺激剤としての遺伝子改変された非天然の細菌の機能をサポートするための追加の分子を与えるために使用されてもよい。
【0049】
さらに別の実施形態において、遺伝子操作された微生物は、サルモネラ微生物に由来してもよく、ならびにpltA、pltB、cdtBおよびttsAから選択される1つ以上の遺伝子中の不活性化突然変異を含んでもよく、ならびにaroAおよび/またはaroCおよび/またはssaVから選択される1つ以上の遺伝子中の弱毒化突然変異をさらに含む。好ましくは、弱毒化突然変異はaroCおよびssaV中にある。前記遺伝子および突然変異の詳細は国際公開第2019/110819号パンフレット(これは参照により全体が本明細書に組み込まれる)に記載される通りである。
【0050】
本発明は、新生物性疾患、および/または新生物性疾患と関連付けられる二次性疾患の予防および/または治療のために使用され得る本明細書に開示される生弱毒化細菌を含む第1および第2の組成物を提供する。1つの実施形態において、新生物性疾患は固形がんおよび/または血液学的悪性腫瘍であってもよい。新生物、腫瘍およびがんは、良性、悪性、転移性および非転移性タイプを含み、ならびに任意のステージ(I、II、III、IVもしくはV)もしくはグレード(G1、G2、G3など)の新生物、腫瘍、もしくはがん、または進行している、悪化している、安定化したもしくは軽快している新生物、腫瘍、がんもしくは転移を含む。
【0051】
本発明にしたがって治療されてもよいがんは、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、大腸、食道、胃腸、歯肉、頭、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、頸部、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、または子宮の細胞または新生物を含むが、これらに限定されない。追加的に、がんは、特に、以下に限定されないが、以下の組織学的タイプのものであってもよい:新生物、悪性腫瘍;癌腫;未分化癌;巨細胞癌および紡錘細胞癌;小細胞癌;乳頭癌;扁平上皮細胞癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;毛母癌;移行細胞癌;乳頭状移行細胞癌;腺癌;悪性ガストリノーマ;胆管癌;肝細胞癌;混合型の肝細胞癌および胆管癌;小柱腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫様ポリープ内腺癌;腺癌、家族性大腸ポリポーシス;固形癌;悪性カルチノイド腫瘍;細気管支肺胞腺癌;乳頭腺癌;色素嫌性癌;好酸性癌;好酸性腺癌;好塩基性癌;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞腺癌;乳頭状濾胞腺癌;非被包性硬化性癌;副腎皮質癌;子宮内膜様癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;脂腺腺癌;耳垢腺癌;粘膜表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭状嚢胞腺癌;乳頭状漿液性嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌;粘液性腺癌;印環細胞癌;浸潤性腺管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性癌;乳房パジェット病;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生を伴う腺癌;悪性胸腺腫;悪性卵巣間質腫瘍;悪性卵胞膜細胞腫;悪性顆粒膜細胞腫瘍;悪性アンドロブラストーマ;セルトリ細胞癌;悪性ライディッヒ細胞腫瘍;悪性脂質細胞腫瘍;悪性傍神経節腫;悪性乳房外傍神経節腫;褐色細胞腫;血管球血管肉腫;悪性黒色腫;無色素性黒色腫;表在性黒色腫;巨大色素性母斑内悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;悪性青色母斑;肉腫;線維肉腫;悪性繊維性組織球腫;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胚性横紋筋肉腫;肺胞横紋筋肉腫;間質肉腫;混合腫瘍;ミュラー混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;癌肉腫;悪性間葉腫;悪性ブレンナー腫瘍;悪性葉状腫瘍;滑膜肉腫;悪性中皮腫;未分化胚細胞腫;胚性癌腫;悪性奇形腫;悪性卵巣甲状腺腫;絨毛癌;悪性中腎腫;血管肉腫;悪性血管内皮腫;カポジ肉腫;悪性血管周囲細胞腫;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;悪性軟骨芽腫;間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫;ユーイング肉腫;悪性歯原性腫瘍;エナメル芽細胞歯牙肉腫;悪性エナメル芽細胞腫;エナメル芽細胞線維肉腫;悪性松果体腫;脊索腫;悪性神経膠腫;上衣腫;星細胞腫;原形質性星細胞腫;線維性星細胞腫;星状芽細胞腫;神経膠芽腫;乏突起膠腫;乏突起膠芽細胞腫;未分化神経外胚葉性腫瘍;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽腫;網膜芽腫;嗅神経腫瘍;悪性髄膜腫;神経線維肉腫;悪性神経鞘腫;悪性顆粒細胞腫瘍;悪性リンパ腫;ホジキン病(Hodgkin’s disease);ホジキン病(Hodgkin’s);傍肉芽腫;小リンパ球性悪性リンパ腫;びまん性大細胞型悪性リンパ腫;濾胞性悪性リンパ腫;菌状息肉症;他の特定される非ホジキンリンパ腫;悪性組織球増加症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞白血病;骨髄性白血病;好塩基性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄肉腫;ならびに有毛細胞白血病。
【0052】
好ましくは、固形がんおよび/または血液学的悪性腫瘍は、前立腺がん、食道がん、肝臓がん、腎臓がん、肺がん、乳がん、大腸がん、膀胱がん、乳がん、膵臓がん、脳腫瘍、肝細胞がん、リンパ腫、白血病、胃がん、子宮頸がん、卵巣がん、中皮腫、甲状腺がん、黒色腫、癌腫、頭頸部がん、皮膚がんまたは肉腫から選択されるがんであってもよい。よりいっそう好ましくは、新生物性疾患は、膀胱がん、肺がん、中皮腫、肝細胞がん、黒色腫、食道がん、胃がん、卵巣がん、大腸がん、頭頸部がんまたは乳がんから選択されるがんと関連付けられるものであってもよい。好ましい実施形態において、新生物性疾患は大腸がんまたは膀胱がんである。最も好ましい実施形態において、新生物性疾患は膀胱がんである。
【0053】
予防および/または治療されるべき新生物性疾患が膀胱がんである場合、膀胱がんは、筋層非浸潤性膀胱がん、または筋層浸潤性膀胱がんであってもよい。筋層非浸潤性膀胱がんは、膀胱の内壁の内側に含有されるがん性細胞からなる任意の膀胱がんとして定義され、最も一般的なタイプである。筋層浸潤性膀胱がんは、がん性細胞が膀胱の内壁を越えて拡大しており、したがって周囲の膀胱筋層中に浸潤している任意の膀胱がんとして定義される。後者はより一般的でないが、身体の他の部分に広がるより高い可能性を有する。
【0054】
膀胱がんが筋層非浸潤性膀胱がんである場合、前記膀胱がんは移行細胞(尿路上皮)癌(TCC)として言及され得る。TCCは膀胱がんの約95%を占め、よって、本発明の第1および第2の組成物の生弱毒化細菌は、好ましくは、TCCの予防および/または治療のために使用されてもよい。TCCは、膀胱がんの2つのサブタイプ:乳頭癌および平坦癌にさらに分割され得る。よって、いっそうさらなる実施形態において、本発明の第1および第2の組成物の生弱毒化細菌は、好ましくは、乳頭癌および/または平坦癌の予防および/または治療のために使用されてもよい。本発明が好適であり得る代替的な膀胱がんは、扁平上皮細胞癌、腺癌、小細胞癌および/または肉腫を含むが、これらに限定されない。
【0055】
1つの実施形態において、本発明は、対象における新生物性疾患の治療、低減、阻害、再発の予防、または制御における使用のための生弱毒化細菌を含む第1の組成物であって、対象が、生弱毒化細菌を含む第2の組成物を投与されているかまたは投与されることが意図され、第1の組成物が、対象において全身性免疫応答を刺激するための経口送達のために製剤化されており、および第2の組成物との同時、別々または逐次的な投与のためのものであり、第2の組成物が、新生物性疾患の部位への局所的な投与のためのものであり、ならびに第1および第2の組成物の生弱毒化細菌がサルモネラ血清型ティフィZH9株である、第1の組成物を提供する。
【0056】
さらなる実施形態において、本発明は、対象における膀胱がんの治療、低減、阻害、再発の予防、または制御における使用のための生弱毒化細菌を含む第1の組成物であって、対象が、生弱毒化細菌を含む第2の組成物を投与されているかまたは投与されることが意図され、第1の組成物が、対象において全身性免疫応答を刺激するための経口送達のために製剤化されており、および第2の組成物との同時、別々または逐次的な投与のためのものであり、第2の組成物が膀胱への局所的な投与のためのものであり、ならびに第1および第2の組成物の生弱毒化細菌がサルモネラ血清型ティフィZH9株である、第1の組成物を提供する。
【0057】
別の実施形態において、本発明は、対象におけるTCCの治療、低減、阻害、再発の予
防、または制御における使用のための生弱毒化細菌を含む第1の組成物であって、対象が、生弱毒化細菌を含む第2の組成物を投与されているかまたは投与されることが意図され、第1の組成物が、対象において全身性免疫応答を刺激するための経口送達のために製剤化されており、および第2の組成物との同時、別々または逐次的な投与のためのものであり、第2の組成物が膀胱への局所的な投与のためのものであり、ならびに第1および第2の組成物の生弱毒化細菌がサルモネラ血清型ティフィZH9株である、第1の組成物を提供する。
【0058】
別の実施形態において、本発明は、対象における新生物性疾患の治療、低減、阻害、再発の予防、または制御における使用のための生弱毒化細菌を含む第1の組成物であって、対象が、生弱毒化細菌を含む第2の組成物を投与されているかまたは投与されることが意図され、第1の組成物が、対象において全身性免疫応答を刺激するための皮下送達のために製剤化されており、および第2の組成物との同時、別々または逐次的な投与のためのものであり、第2の組成物が新生物性疾患の部位への膀胱内投与のためのものであり、ならびに第1および第2の組成物の生弱毒化細菌がサルモネラ血清型ティフィZH9株である、第1の組成物を提供する。
【0059】
別の実施形態において、本発明は、対象における膀胱がんの治療、低減、阻害、再発の予防、または制御における使用のための生弱毒化細菌を含む第1の組成物であって、対象が、生弱毒化細菌を含む第2の組成物を投与されているかまたは投与されることが意図され、第1の組成物が、対象において全身性免疫応答を刺激するための皮下送達のために製剤化されており、および第2の組成物との同時、別々または逐次的な投与のためのものであり、第2の組成物が膀胱への膀胱内投与のためのものであり、ならびに第1および第2の組成物の生弱毒化細菌がサルモネラ血清型ティフィZH9株である、第1の組成物を提供する。
【0060】
別の実施形態において、本発明は、対象における新生物性疾患の治療、低減、阻害、再発の予防、または制御における使用のための生弱毒化細菌を含む第1の組成物であって、対象が、生弱毒化細菌を含む第2の組成物を投与されているかまたは投与されることが意図され、第1の組成物が、対象において全身性免疫応答を刺激するための経口送達のために製剤化されており、および第2の組成物との同時、別々または逐次的な投与のためのものであり、第2の組成物が新生物性疾患の部位への腫瘍内投与のためのものであり、第1の組成物の生弱毒化細菌がサルモネラ血清型ティフィムリウムMD58株であり、および第2の組成物の生弱毒化細菌がサルモネラ血清型ティフィZH9株である、第1の組成物を提供する。
【0061】
別の実施形態において、本発明は、対象における大腸がんの治療、低減、阻害、再発の予防、または制御における使用のための生弱毒化細菌を含む第1の組成物であって、対象が、生弱毒化細菌を含む第2の組成物を投与されているかまたは投与されることが意図され、第1の組成物が、対象において全身性免疫応答を刺激するための経口送達のために製剤化されており、および第2の組成物との同時、別々または逐次的な投与のためのものであり、第2の組成物が大腸がんの部位への腫瘍内投与のためのものであり、第1の組成物の生弱毒化細菌がサルモネラ血清型ティフィムリウムMD58株であり、および第2の組成物の生弱毒化細菌がサルモネラ血清型ティフィZH9株である、第1の組成物を提供する。
【0062】
第1および第2の組成物の異なる送達経路、すなわち、第1の組成物が、全身性効果を達成するために経口的に、静脈内に、鼻腔内に、胸膜内に、皮内にまたは皮下に投与され、および第2の組成物が新生物性疾患の部位に局所的に投与されることは、対象における新生物性疾患が有効に予防および/または治療され得るような方法において互いを補完することが想定される。特に、そのような組合せは、第1または第2の組成物の各々が孤立的に与えられた場合よりも特異的な、標的化されたおよび有効な方法で対象において免疫系の抗腫瘍活性を活性化させる。
【0063】
上記のように、第2の組成物は、対象における新生物性疾患の部位、例えば、膀胱への局所投与のためのものである。よって、第2の組成物は、第2の組成物が新生物性疾患の緊密な近接性(close proximity)内にあると考えられる任意の形態において投与されてもよい。本明細書において使用される場合、用語「緊密な近接性」は、ある距離までの新生物性疾患の周囲の区画または領域を指すことが意図される。例えば、1つの実施形態において、用語「緊密な近接性」は、新生物性疾患の境界から最大10mmまで広がる区画/領域を指してもよい。別の実施形態において、用語「緊密な近接性」は、新生物性疾患の境界から最大5mmまで広がる区画/領域を指してもよい。さらに別の実施形態において、用語「緊密な近接性」は、新生物性疾患の境界から最大2.5mmまで広がる区画/領域を指してもよい。新生物性疾患の部位からの第2の組成物が投与される距離は、第2の組成物の生物学的効果、例えば、様々な免疫細胞タイプの動員および活性化が、身体の関係ない区画に位置する組織に対して最小の効果を有するかまたは効果を有さずに、問題とする新生物性疾患に対して効果を有することを可能とする。そのため、第2の組成物は、直接的に新生物性組織に、または新生物性疾患の緊密な近接性において周囲組織に投与されてもよい。追加的に、第2の組成物は、新生物性組織または周囲組織「中」または「上」に投与されてもよい。そのため、用語「局所投与」は、生弱毒化細菌が、所望される効果を有するために新生物性疾患と接触させられ得るか、またはすぐ周囲の組織と接触させられ得る任意の文脈を指す。
【0064】
好ましくは、第2の組成物は、局所的な点滴注入、腹腔内、胸膜内、膀胱内、腫瘍周囲注射または腫瘍内注射を介して投与されてもよく、「点滴注入」は、第2の組成物が、関連する解剖学的部位に導入され、そこに特有の時間量にわたり残存させた後に、ドレナージされるか、空にされるかまたは取り除かれることを指し、「腹腔内」は、対象の腹膜中への第2の組成物の注射を指し、「胸膜内」は、対象の胸膜、または胸膜腔中への第2の組成物の注射を指し、「膀胱内」は、膀胱中へのカテーテルを介する注射または点滴注入を指し、「腫瘍周囲注射」は、新生物性疾患の部位の周囲への第2の組成物の注射を指し、「腫瘍内注射」は、直接的に対象の新生物性疾患中への第2の組成物の注射を指す。第2の組成物の投与の特有の方法は、治療されるべき新生物性疾患、例えば、治療されるべき新生物性疾患の位置およびタイプの両方に依存し得ることが理解される。例えば、大きい表面積の身体腔、例えば、対象の胸膜腔が治療されることが望まれる場合、点滴注入を介する投与は最も適切であり得る。代替的に、新生物性疾患が腹膜腔内に位置する場合、例えば、卵巣がんである場合、腹腔内注射を介する投与は最も適切であり得る。いっそうさらに、予防および/または治療されるべき新生物性疾患が血液学的悪性腫瘍である場合、腫瘍内注射は選択される投与方法でない可能性があることが留意される。
【0065】
予防および/または治療されるべき新生物性疾患が膀胱がんである事例において、第2の組成物は、膀胱点滴注入、膀胱内治療または膀胱内療法としても言及される、膀胱内点滴注入を介して投与され得ることが好ましい。そのような投与方法は、第2の組成物がカテーテルを介して膀胱に送達され得る方法を指す。以前に記載されたように、そのような方法は、経口または非経口送達と比較して低減された全身性副作用に起因して「局所的」であると考えられる。
【0066】
よって1つの実施形態において、本発明は、対象における膀胱がんの治療、低減、阻害、再発の予防、または制御における使用のための生弱毒化細菌を含む第1の組成物であって、対象が、第1の組成物の生弱毒化細菌と同じまたは異なる生弱毒化細菌を含む第2の組成物を投与されているかまたは投与されることが意図され、第1の組成物が、対象において全身性免疫応答を刺激するための経口または皮下送達のために製剤化されており、および第2の組成物との同時、別々または逐次的な投与のためのものであり、第2の組成物が膀胱内点滴注入を介する投与のためのものである、第1の組成物を提供する。
【0067】
別の実施形態において、本発明は、対象における膀胱がんの治療、低減、阻害、再発の予防、または制御における使用のための生弱毒化細菌を含む第1の組成物であって、対象が、生弱毒化細菌を含む第2の組成物を投与されているかまたは投与されることが意図され、第1の組成物が、対象において全身性免疫応答を刺激するための経口または皮下送達のために製剤化されており、および第2の組成物との同時、別々または逐次的な投与のためのものであり、第2の組成物が膀胱内点滴注入を介する投与のためのものであり、ならびに第1および第2の組成物の生弱毒化細菌がサルモネラ血清型ティフィZH9株である、第1の組成物を提供する。
【0068】
本発明の第1の組成物は、対象において全身性免疫応答を生じさせることが意図される。よって、本発明の第1の組成物はワクチンまたはワクチン組成物であってもよい。そのような用語は交換可能に使用され、対象が生物学的調製物に対する免疫応答を生じ、したがって特定の感染性疾患、例えば、サルモネラ属菌により引き起こされる疾患に対する能動的な獲得免疫を提供する、前記生物学的調製物を指す。本発明の文脈において、ワクチンは、感染惹起性細菌に似た剤、または「外来」剤を含有してもよく、該剤、または「外来」剤は、弱体化もしくは殺傷された形態の前記細菌、または細菌タンパク質、カプセル、DNAもしくはRNAの任意の部分、もしくは断片である。そのような外来剤は、ワクチン被接種者の免疫系により認識され、次いで免疫系は、前記剤を破壊し、および細菌に対する「記憶」を発達させて、同じまたは類似したウイルスからの将来の細菌感染に対するあるレベルの永続的な防護を誘導する。本発明のワクチン組成物を含む、ワクチン接種の経路を通じて、ワクチン接種された対象が、前記対象がワクチン接種された同じ細菌または細菌分離株に再び遭遇すると、個体の免疫系はそれにより前記細菌または細菌分離株を認識し、感染に対してより有効な防御を誘発し得ることが想定される。ワクチンの結果として対象において誘導される能動的な獲得免疫は、液性および/または細胞性の性質であってもよい。よって、第1および第2の組成物が同じである実施形態において、本発明の第1の組成物は、第2の組成物に対する非特異的な自然免疫応答をブーストする全身性免疫応答を誘導し得るだけでなく、対象が第1の組成物の生弱毒化細菌に対する能動免疫を獲得するという追加の利益を付与し得る。
【0069】
第1の組成物は、それを必要とする対象に第2の組成物と同時に、別々にまたは逐次的に投与されてもよい。理論により縛られないが、第2の組成物の投与に先立つ第1の組成物の投与は、対象の免疫系が第2の組成物の投与に先立って有効にプライムされることを可能とし、したがってより有効な予防または治療戦略を結果としてもたらすと考えられる。よって、第1および第2の組成物が互いの迅速な連続内で、または同じ時点に投与される一部の事例があり得るが、第1の組成物の生弱毒化細菌は、第2の組成物の生弱毒化細菌に先立って対象に投与されることが好ましい。
【0070】
対象に投与される第1の組成物の生弱毒化細菌の量は、対象において全身性免疫応答を誘発するために十分なものであり、その結果、対象の免疫系は、新生物性疾患にとって局所的な部位において第2の組成物を与えられるために有効にプライムされて、2つの組成物を組合せで用いて治療された場合に、対象の免疫系が、がんまたは腫瘍に対して有効な免疫応答を開始できることを結果としてもたらす。組成物の投与により開始される免疫応答は、それ自体で治療レベルのものであってもよいか、または治療効果を発揮するために第2の組成物の引き続いての投与を要求する治療レベル未満のものであってもよい。
【0071】
生弱毒化細菌を含む第1および第2の組成物は、少なくとも1回、または2週離して少
なくとも2回、投与されてもよいことが想定される。第1の組成物は、第2の組成物の投与の前、間または後に投与されてもよい。好ましくは、第1の組成物の少なくとも1つの投与は第2の組成物の投与に先立って行われ、そのような投与は、第2の組成物の投与の少なくとも1週前に行われてもよい。第1および第2の組成物の投与は、治療レジメンに依存して、繰り返されてもよいことが想定される。第1および/または第2の組成物の生弱毒化細菌は、104~1012CFUの用量で投与されてもよく、CFUはコロニー形成単位である。例えば、好適な用量は、104~105CFU、104~106CFU、104~107CFU、104~108CFU、104~109CFU、104~1010CFU、104~1011CFU、104~1012CFU、105~106CFU、105~107CFU、105~108CFU、105~109CFU、105~1010CFU、105~1011CFU、105~1012CFU、106~107CFU、106~108CFU、106~109CFU、106~1010CFU、106~1011CFU、106~1012CFU、107~108CFU、107~109CFU、107~1010CFU、107~1011CFU、107~1012CFU、108~109CFU、108~1010CFU、108~1011CFU、108~1012CFU、109~1010CFU、109~1011CFU、109~1012CFU、1010~1011CFU、1010~1012CFU、または1011~1012CFUであってもよい。
【0072】
新生物性疾患の原因は多面的および多様であり、最適な結果を達成するために複数の療法を含む予防および治療戦略に多くの場合に繋がることが広く知られている。そのため、本発明は、第1および/または第2の組成物の生弱毒化細菌を他の既知のがん療法と組み合わせることを伴ってもよい。好ましくは、第1および/または第2の組成物の生弱毒化細菌は、免疫療法、放射線療法、化学療法または抗がん剤と組み合わせて投与されてもよい。用語「抗がん剤」は、本明細書において使用される場合、がん細胞の殺傷、がん細胞の分裂の停止において有効であるか、またはがん細胞の再発の予防を助けるが、免疫療法、放射線療法または化学療法であるとは考えられない任意の剤を指す。
【0073】
好ましい実施形態において、第1および/または第2の組成物の生弱毒化細菌は、免疫療法と組み合わせて投与されてもよい。好ましくは、免疫療法は、チェックポイント阻害剤、抗原特異的T細胞、養子T細胞療法、治療抗体、がんワクチンまたは任意の他の操作型細胞免疫療法を含んでもよい。
【0074】
「チェックポイント阻害剤」は、TNF受容体もしくはB7スーパーファミリーのいずれかのメンバー、またはその他である表面タンパク質に作用する剤であり、負の共刺激分子に結合する剤を含む。そのようなチェックポイント阻害剤の例は、CTLA-4、PD-1、TIM-3、BTLA、TIGIT、VISTA、LAG-3、および/または、PD-L1を含む、それらのそれぞれのリガンドを含むが、これらに限定されない。
【0075】
免疫療法がチェックポイント阻害剤を含む場合、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG3、TIM3、BTLA、VISTAまたはTIGITに対して方向付けられていてもよい。好ましい実施形態において、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1またはPD-L1に対して方向付けられていてもよい。一部の事例において、遮断剤は、イピリムマブ(Yervoy(登録商標);CTLA-4を標的化する)、ニボルマブ(Opdivo(登録商標);PD-1を標的化する)、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標);PD-1を標的化する)、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標);PD-L1を標的化する)、セミプリマブ(Libtayo(登録商標);PD-1を標的化する)またはデュルバルマブ(Imfinzi(登録商標);PD-L1を標的化する)であってもよい。
【0076】
用語「プログラム死1」、「プログラム細胞死1」、「タンパク質PD-1」、「PD-1」、CD279および「PD1」は交換可能に使用され、ヒトPD-1のバリアント、アイソフォーム、種ホモログ、およびPD-1と少なくとも1つの共通のエピトープを有するアナログを含む。完全なPD-1配列は、GenBankアクセッション番号NP 005009.2の下で見出され得る。
【0077】
用語「PD-L1」、「PDL1」、「プログラム細胞死リガンド1」、CD274および「プログラム細胞死1」は交換可能に使用され、ヒトPD-L1のバリアント、アイソフォームおよび種ホモログ、ならびにPD-L1と少なくとも1つの共通のエピトープを有するアナログを含むと解釈される。完全なPD-L1配列は、GenBankアクセッション番号NP 054862.1の下で見出され得る。
【0078】
用語「細胞傷害性Tリンパ球関連抗原-4」、「CTLA-4」、「CTLA4」、CD152および「CTLA-4抗原」は交換可能に使用され、ヒトCTLA-4のバリアント、アイソフォーム、種ホモログ、およびCTLA-4と少なくとも1つの共通のエピトープを有するアナログを含む。完全なCTLA-4配列は、GenBankアクセッション番号NP_005205.2の下で見出され得る。
【0079】
用語「LAG-3」、「LAG3」、CD223および「リンパ球活性化遺伝子3」は交換可能に使用され、ヒトLAG-3のバリアント、アイソフォームおよび種ホモログ、ならびにLAG-3と少なくとも1つの共通のエピトープを有するアナログを含むと解釈される。完全なLAG-3配列は、GenBankアクセッション番号NP_002277.4の下で見出され得る。
【0080】
用語「TIM-3」、「TIM3」、「HAVCR2」、「A型肝炎ウイルス細胞受容体2」、CD366ならびに「T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3」は交換可能に使用され、ヒトTIM-3のバリアント、アイソフォームおよび種ホモログ、ならびにTIM-3と少なくとも1つの共通のエピトープを有するアナログを含むと解釈される。完全なTIM-3配列は、GenBankアクセッション番号NP_116171.3の下で見出され得る。
【0081】
用語「BTLA」、「BおよびTリンパ球アテニュエーター」および「CD272」は交換可能に使用され、ヒトBTLAのバリアント、アイソフォームおよび種ホモログ、ならびにBTLAと少なくとも1つの共通のエピトープを有するアナログを含むと解釈される。完全なBTLA配列は、GenBankアクセッション番号NP_861445.4の下で見出され得る。
【0082】
用語「VISTA」、「Vセット免疫調節受容体」、「B7H5」、「B7-H5」、「PD-1H」および「T細胞活性化のVドメインIg抑制因子」は交換可能に使用され、ヒトVISTAのバリアント、アイソフォームおよび種ホモログ、ならびにVISTAと少なくとも1つの共通のエピトープを有するアナログを含むと解釈される。完全なVISTA配列は、GenBankアクセッション番号NP_071436.1の下で見出され得る。
【0083】
用語「TIGIT」、「IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体」、「WUCAM」ならびに「Vstm3」は交換可能に使用され、ヒトTIGITのバリアント、アイソフォームおよび種ホモログならびにTIGITと少なくとも1つの共通のエピトープを有するアナログを含むと解釈される。完全なTIGIT配列は、GenBankアクセッション番号NP_776160.2の下で見出され得る。
【0084】
PD-L1/PD-1シグナル伝達経路は、いくつかの理由のためにがん免疫逃避の主要な機序である。第1に、および最も重要なことに、この経路は、末梢中に見出される、活性化されたエフェクターT細胞の免疫応答の負の調節に関与する。第2に、PD-L1はがん微小環境中で上方調節され、PD-1もまた、活性化された腫瘍浸潤性T細胞上で上方調節され、そのため、阻害の悪循環を助長する可能性がある。第3に、この経路は、2方向性シグナル伝達を通じて自然免疫調節および適応免疫調節の両方に複雑に関与する。これらの要因は、PD-1/PD-L1複合体を、がんが免疫応答をマニピュレートしてそれ自身の進行を促進することができる中心点とする。結果として、腫瘍は、阻害性免疫チェックポイント分子経路を活性化させて、免疫系の抑制およびがん性細胞の妨害されない増殖の継続を結果としてもたらすことができる。T細胞活性化後に、CTLA-4は表面に輸送され、そこで抗原提示細胞(APC)上の同じリガンドについてCD28と競合して、CD28の抑制ならびにT細胞活性化および増殖の引き続いての抑制を結果としてもたらす。PD-1、PD-L1およびCTLA-4を標的化することは、これらの事象が起こることを予防することを目的とする。
【0085】
免疫療法が抗原特異的T細胞を含む場合、抗原特異的T細胞は養子T細胞療法の結果であってもよい。用語「養子細胞療法」は、対象、好ましくはヒト中への細胞の移入/投与を伴う任意の療法を指すことが意図される。細胞は自家または同種であってもよい。好ましくは、細胞は、免疫機能性を向上させる目標と共に免疫系に一般的に由来する。養子細胞療法は、CAR-T細胞療法(キメラ抗原受容体T細胞)、TIL療法(腫瘍浸潤性リンパ球)およびiPSC由来療法(人工多能性幹細胞)を含んでもよいが、これらに限定されない。養子T細胞療法はCAR-T細胞療法であってもよいことが特に想定される。一部の事例において、CAR-T細胞療法は、B細胞由来がんにおいて存在する抗原CD19に対して方向付けられている。よって、そのような療法は、B細胞由来がん、例えば急性リンパ芽球性白血病(ALL)およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)のために特に適し得る。他の事例において、CAR-T細胞療法は、腫瘍関連抗原(TAA)に対して方向付けられており、よって固形腫瘍の治療のためにより適する。そのような抗原の例は、CD133、CD138、CEA、EGFR、EpCAM、GD2、GPC3、HER2、HerinCAR-PD1、MSLN、MG7、MUC1、LMP1、PSMAおよびPSCAを含むが、これらに限定されない。そのような技術は当業者に公知であり、読者は、さらなる情報のために「Adoptive cellular therapies: the current landscape」というタイトルの総説(Rohaan et al. 2019, Virchows Arch. 474(4): 449-461)に方向付けられる。
【0086】
免疫療法が治療抗体を含む場合、前記治療抗体はがんまたは腫瘍に方向付けられていてもよい。用語「治療抗体」は、本明細書において言及される場合、治療効果を結果としてもたらす全抗体および任意の抗原結合性断片(すなわち、「抗原結合性部分」)またはこれらの単一の鎖を含む。そのような治療抗体は、上記に方向付けられるチェックポイント阻害剤分子に方向付けられていてもよいか、または共刺激分子標的、例えばICOS(誘導性T細胞共刺激分子/CD278)、GITR(グルココルチコイド誘導性TNF受容体/TNFRSF18/CD357/AITR)、4-1BB(CD137)、CD27およびCD40に方向付けられたアゴニスト抗体を含んでもよい。一部の事例において、対象は両方のタイプの治療抗体を与えられることが望ましいことがある。
【0087】
治療抗体は、モノクローナル抗体、よりいっそう好ましくは、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体であってもよい。用語「モノクローナル抗体」は、本明細書において使用される場合、単一の分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す。用語「ヒト抗体」は、本明細書において使用される場合、フレームワーク領域およびCDR領域の両方がヒト生殖
系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことが意図される。用語「ヒト化抗体」は、別の哺乳動物種、例えばマウスの生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を指すことが意図される。追加のフレームワーク領域改変がヒトフレームワーク配列内で為されてもよい。
【0088】
そのようなモノクローナル抗体を得る方法は当業者に公知である。治療抗体は、がん細胞中の異常なタンパク質を遮断するか、がん細胞上の特異的なタンパク質に付着するか、または細胞傷害性分子、例えば抗がん薬にコンジュゲートされてもよい。後者は、免疫系に対してがん細胞に目印を付け、その結果、異常な細胞は引き続いて免疫系の細胞成分により標的化および破壊され得る。一部の事例において、モノクローナル抗体はまたチェックポイント阻害剤であってもよい。例えば、イピリムマブ(Yervoy(登録商標))、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))およびペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))はすべてモノクローナル抗体である他に、チェックポイント阻害剤である。他の事例において、モノクローナル抗体は、共刺激分子標的、例えばICOS(誘導性T細胞共刺激分子/CD278)、GITR(グルココルチコイド誘導性TNF受容体/TNFRSF18/CD357/AITR)、4-1BB(CD137)、CD27およびCD40に方向付けられたアゴニスト抗体であってもよい。がんの治療のための非チェックポイント阻害剤モノクローナル抗体の例は、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、セツキシマブ(Erbitux(登録商標))、パニツムマブ(Vectibix(登録商標))、リツキシマブ(Rituxan(登録商標)およびMabthera(登録商標))、アレムツズマブ(Campath(登録商標))、オファツムマブ(Arzerra(登録商標))、ゲムツズマブオゾガマイシン(Mylotarg(登録商標))およびブレンツキシマブベドチン(Adcetris(登録商標))を含むが、これらに限定されない。
【0089】
免疫療法はがんワクチンを含んでもよい。がんワクチンは予防ワクチンまたは治療ワクチンであってもよく、好ましくはワクチンは治療ワクチンである。がんワクチンの使用は、がん性細胞により提示される抗原を認識および破壊するように免疫系に教示する。そのようなワクチンはまた、いっそうさらに応答をブーストするのを助けるためにアジュバントを含んでもよい。
【0090】
免疫療法は、任意の他の操作型細胞免疫療法を含んでもよい。本発明の文脈において、「任意の他の操作型細胞免疫療法」は、対象において免疫系または免疫応答を調節して、がんの予防または治療に関して好都合なアウトカムを提供するように設計された方式において操作されている任意の細胞タイプを指す。そのような細胞の例は、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、リンパ球、幹細胞および樹状細胞を含むが、これらに限定されない。
【0091】
第2の態様において、本発明は、対象において新生物性疾患を治療、予防、阻害、再発の予防、または制御する方法であって、方法が、(i)生弱毒化細菌を含む第1の組成物および(ii)第1の組成物の生弱毒化細菌と同じまたは異なる生弱毒化細菌を含む第2の組成物を対象に同時に、別々にまたは逐次的に投与することを含み、第1の組成物が、対象において全身性免疫応答を刺激するための経口、静脈内、鼻腔内、皮内または皮下送達のために製剤化されており、および第2の組成物との同時、別々または逐次的な投与のためのものであり、ならびに第2の組成物が、新生物性疾患の部位への局所的な投与のためのものである、方法を提供する。
【0092】
本発明は、したがって、対象において新生物性疾患を治療、予防、阻害、再発の予防、または制御する方法であって、本明細書に記載される使用のための生弱毒化細菌を含む、方法を提供する。
【0093】
したがって、本発明の方法は、他の部位への原発性腫瘍もしくはがんの転移、または原発性腫瘍もしくはがんから遠位の他の部位における転移性腫瘍もしくはがんの形成もしくは確立を低減させるかまたは阻害し、それにより、腫瘍もしくはがんの再発または腫瘍もしくはがんの進行を阻害するかまたは低減させるために使用されてもよい。よって、本発明は、所与の対象の状態における検出可能なまたは測定可能な改善、例えば細胞増殖性もしくは細胞過剰増殖性障害、新生物、腫瘍もしくはがん、または転移の存在と関連付けられる1つ以上の有害な(身体的)症状または予後の軽減または寛解、すなわち、治療的な利益または有益な効果を提供する。
【0094】
本発明の方法は、したがって、その特色が上記される2つの組成物の投与を含む併用療法である。そのような組合せは、対象において強力なおよび永続性のある免疫応答を誘発して、治療的な利益の増強を結果としてもたらす潜在能力を有する。
【0095】
治療的な利益または有益な効果は、状態もしくは病理における任意の客観的なもしくは主観的な、一過性の、一時的な、もしくは長期間の改善、または細胞増殖もしくは細胞過剰増殖性障害、例えば新生物、腫瘍もしくはがん、もしくは転移と関連付けられるかもしくはそれにより引き起こされる有害な症状の発症、重症度、持続期間もしくは頻度における低減である。それは生存の改善に繋がってもよい。本発明による治療方法の満足のいく臨床的なエンドポイントは、例えば、1つ以上の関連付けられる病理、有害な症状もしくは合併症の重症度、持続期間もしくは頻度における増加的なもしくは部分的な低減、または細胞増殖もしくは細胞過剰増殖性障害、例えば新生物、腫瘍もしくはがん、もしくは転移の生理学的、生化学的もしくは細胞的な現れもしくは特徴のうちの1つ以上の阻害もしくは逆転がある場合に達成される。治療的な利益または改善は、したがって、標的増殖性細胞(例えば、新生物、腫瘍もしくはがん、もしくは転移)の破壊または細胞増殖もしくは細胞過剰増殖性障害、例えば新生物、腫瘍もしくはがん、もしくは転移と関連付けられるかもしくはそれにより引き起こされる1つ以上、ほとんどもしくはすべての病理、有害な症状もしくは合併症の除去であってもよいが、これらに限定されない。しかしながら、治療的な利益または改善は、すべての標的増殖性細胞(例えば、新生物、腫瘍もしくはがん、もしくは転移)の治癒もしくは完全な破壊または細胞増殖もしくは細胞過剰増殖性障害、例えば新生物、腫瘍もしくはがん、もしくは転移と関連付けられるかもしくはそれにより引き起こされるすべての病理、有害な症状もしくは合併症の除去である必要はない。例えば、腫瘍もしくはがん細胞量の部分的な破壊、または腫瘍もしくはがんの進行もしくは悪化を阻害することによる腫瘍もしくはがんの量、サイズもしくは細胞数の安定化は、腫瘍またはがんの量、サイズまたは細胞の一部分または大部分が残存するとしても、死亡率を低下させることができ、および、数日、数週または数か月のみであったとしても、寿命を長期化させることができる。
【0096】
治療的な利益の特有の非限定的な例は、新生物、腫瘍もしくはがん、もしくは転移の体積(サイズもしくは細胞量)もしくは細胞の数における低減、新生物、腫瘍もしくはがんの体積における増加の阻害もしくは予防(例えば、安定化)、新生物、腫瘍もしくはがんの進行、悪化もしくは転移の緩慢化もしくは阻害、または新生物、腫瘍もしくはがんの増殖、成長もしくは転移の阻害を含む。
【0097】
本発明の方法は、直ちに効果を得なくてもよい。例えば、治療には、新生物、腫瘍またはがんの細胞数または量における増加が後続してもよいが、所与の対象における腫瘍細胞量、サイズまたは細胞の数における経時的な最終的な安定化または低減が引き続いて起こってもよい。
【0098】
阻害、低減、減少、遅延または予防され得る新生物、腫瘍、がんおよび転移と関連付け
られる追加の有害な症状および合併症は、例えば、吐き気、食欲不振、嗜眠、疼痛および不快感を含む。そのため、細胞過剰増殖性障害と関連付けられるかまたはそれにより引き起こされる有害な症状または合併症の重症度、持続期間または頻度における部分的なまたは完全な減少または低減、対象の生活の質および/または幸福における改善、例えばエネルギー、食欲、心理学的幸福の増加はすべて、治療的な利益の特定の非限定的な例である。
【0099】
治療的な利益または改善は、したがってまた、治療された対象の生活の質における主観的な改善を含むことができる。追加の実施形態において、方法は、対象の寿命(生存)を長期化または延長させる。さらなる実施形態において、方法は、対象の生活の質を改善する。
【0100】
治療的な利益はまた、新生物、腫瘍、がんおよび転移の再発の予防を含んでもよく、例えば、前記新生物、腫瘍、がんおよび転移は、外科的にまたは化学的に切除されている。
【0101】
本発明は、先行する予防および/または治療戦略に対して難治性であった個体に適し得る。「難治性」により、本発明者らは、治療に応答しない任意の新生物性疾患への言及を意図する。本発明は、先行する治療に対して以前に低レスポンダー、中レスポンダーまたは高レスポンダーであった個体に適し得ることもまた想定される。
【0102】
第1および第2の組成物は、典型的には、有効量の生弱毒化細菌、例えば、サルモネラ血清型ティフィZH9株を含み、および医薬的に許容される担体/アジュバント/希釈剤または賦形剤をさらに含む組成物中で対象に投与される。語句「医薬的に」および「薬理学的に許容される」は、動物、例えば、ヒトなどに適宜投与された場合に、有害な、アレルギー性のまたは他の不都合な反応を生成しない分子実体および組成物を指す。そのような調製物は当業者に公知である。さらに、動物(例えば、ヒト)への投与のために、調製物は、適用可能であるような、無菌性、発熱原性、一般的安全性および純度の基準を満たすべきことが理解される。
【0103】
本明細書において使用される場合、「医薬的に許容される担体/アジュバント/希釈剤/賦形剤」は、当業者に公知であるような、任意のおよびすべての溶媒、分散媒体、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、薬物、薬物安定化剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、色素、これらの類似物質および組合せを含む(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990, pp. 1289-1329を参照)。例は、リン酸水素二ナトリウム、ダイズペプトン、リン酸二水素カリウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、スクロース、ホウ酸緩衝液、無菌食塩水溶液(0.9% NaCl)および無菌水を含むが、これらに限定されない。
【0104】
第1および/または第2の組成物はまた、免疫応答を増強するために意図される追加の成分を含んでもよい。そのような追加の成分の例は、アルミニウム塩、例えば水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム、油ベースアジュバント、例えばフロイント完全アジュバントおよびフロイント不完全アジュバント、ミコール酸ベースアジュバント(例えば、トレハロースジミコレート)、細菌リポ多糖(LPS)、ペプチドグリカン(例えば、ムレイン、ムコペプチド、もしくは糖タンパク質、例えばN-Opaca、ムラミルジペプチド[MDP]、もしくはMDPアナログ)、プロテオグリカン(例えば、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)から抽出される)、ストレプトコッカス(streptococcal)調製物(例えば、OK432)、ムラミルジペプチド、免疫刺激複合体(EP 109 942、EP 180 564、EP 231 039において開示されている「Iscoms」)、サポニン、DEAE-デキストラン、中性油(例えばミグリオール)、植物油(例えばピーナッツ油)、リポソーム、ポリオール、Ribiアジュバントシステム(例えば、GB-A-2 189 141を参照)、ビタミンE、カーボポール、インターフェロン(例えば、IFN-アルファ、IFN-ガンマ、もしくはIFN-ベータ)、インターロイキン、特には細胞媒介性免疫を刺激するもの(例えば、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16,IL-17、IL-18、IL-21)またはケモカイン(例えばCXCL9、CXCL10、CXCL11、CCL5、CCL2、CX3CL1)を含むがこれらに限定されない。
【0105】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照してさらに記載される。
【実施例】
【0106】
実施例1
インビトロ浸潤アッセイならびに細胞内サルモネラ共通抗原(CSA-1)および細胞死のためのヨウ化プロピジウムについてのフローサイトメトリー染色を使用して尿路上皮がん細胞とのZH9の相互作用を調べた。膀胱腫瘍成長に対するZH9の治療有効性が、マウス同所性、同系MB49膀胱腫瘍モデルにおいて確立された。ZH9またはOncoTice BCGの単回の膀胱内用量を用いて腫瘍保有動物を治療し、長期生存比較をログランク(マンテル-コックス)検定により評価した。健常マウスの治療後の脱凝集したマウス膀胱のフローサイトメトリー染色により局所的な免疫応答を分析した。
【0107】
MB49腫瘍接種の2日後に単回用量のZH9で治療されたマウスは、媒体で治療された動物(メジアン生存 49.5 vs. 31日、p=0.003)およびBCGで治療された動物(メジアン生存 49.5 vs. 27.5日、p<0.001)の両方と比較して有意な生存利益を実証した。腫瘍接種の4日後の治療を用いたより厳密なモデルにおいても、ZH9は有意な有効性を示した(メジアン生存は媒体およびBCGについてそれぞれ30 vs. 20.5(p=0.003)および23.5(p=0.025)日)。生存したZH9で治療された動物は、ナイーブ対照とは異なり、MB49腫瘍細胞でのさらなる膀胱接種に抵抗性であり、ZH9治療からの永続的な抗腫瘍免疫の結果を示唆した(100% vs. 31.5% メジアン生存 45日目、p=0.01)。インビトロで、ヒト(UMUC3、T24、RT4、5637)およびマウス(MB49)尿路上皮がん細胞株における細胞内フローサイトメトリーは、ZH9は、1時間の曝露の24時間後にすべての細胞タイプに浸潤しおよび細胞死を誘導することを示した。インビボで、ZH9での単回の膀胱内治療は、すべての場合において同等の用量のBCGでの単回の治療後よりも大きい規模および持続期間である、活性化された、交差提示性(Ly6C+、CD103+)の表現型を有する単球、NK細胞、CD4+およびCD8+ T細胞ならびに樹状細胞の強い動員により7日目において特徴付けられる強い細胞性免疫応答を結果としてもたらした。
【0108】
よって、生弱毒化サルモネラ株ZH9は、恐らくは直接的な腫瘍細胞殺傷および堅牢な細胞性免疫応答の誘導の両方を介して、同所性膀胱がんモデルにおいて標準治療を上回る明確な生存利益を実証することが示されており、そのため、膀胱がんにおけるZH9の有意な治療的な潜在能力を指し示す。
【0109】
実施例2
皮下サルモネラ・ティフィでの先行する全身性プライミングは局所的な膀胱サルモネラ・ティフィ治療の有効性を増強する
ここに記載される研究の目的は、筋層非浸潤性膀胱がんモデルにおいてマウス生存のレベルに対する膀胱内(ives)ZH9治療の前の弱毒化サルモネラ・ティフィ株ZH9での皮下(s.c.)プライミングの効果を評価することであった(
図1Aを参照)。
【0110】
以下に詳述されるように、本出願の発明者らは、驚くべきことに、サルモネラ・ティフィの全身投与および局所投与の両方で治療されたマウスは生存率の改善を示すことを示した。
【0111】
材料および方法
マウス細胞
MB49細胞株(Prof. A. Loskog、Uppsala University、Swedenにより提供された)は、雄C57Bl/6マウスにおける発癌物質誘導性尿路上皮癌に由来する(Summerhayes, Journal of the National Cancer Institute, 62(4):1017-1023, 1979)。ホタルルシフェラーゼをコードするレンチウイルスベクター(Prof. D. Trono、EPFL、Lausanne、Switzerlandにより提供された)を用いたトランスフェクションによりルシフェラーゼ発現(MB49-luc)を生成した。
【0112】
MB49同所性膀胱腫瘍モデル
7~10週齢の雌C57Bl/6野生型マウス(Charles River)を使用し、すべての実験は、スイス国の法律にしたがってthe Cantonal Veterinary Office of Canton de Vaud、Switzerlandの承認と共に行った。Introcan 24Gx3/4カテーテル(Braun、Melsungen、Germany)を使用して尿道カテーテル治療された深麻酔されたマウスにおいて膀胱腫瘍を確立した。100μlの22%エタノールでの15分の前治療を、50μl中の500,000個のMB49-luc細胞の点滴注入の前に行った。Xenogenイメージングシステム(Xenogen/IVIS Caliper Life Science;細胞イメージング施設、CIF/UNIL、Lausanne、Switzerlandの好意により提供された)におけるD-ルシフェリン(Promega、L8220、体重1g当たり150μg)の腹腔内(I.P)注射の15分後の生物発光によりMB49-luc腫瘍成長をモニターした。100%のマウスは膀胱腫瘍を進行させた。MB49-luc腫瘍の生物発光モニタリングは、最初の3週間の腫瘍の確立および成長を評価するために非常に効率的であるが、成長する腫瘍の発光が制御不能に喪失することが次に多くの場合に出現することがあり(Jurczok et al., BJU International, 101(1):120-124, 2008)、マウスの触診、血尿および全般的な健康状態による追加のモニタリングを要求し得る。承認された終了(termination)に達した場合にマウスを屠殺した。
【0113】
細菌の調製
ives点滴注入のために3×107CFU/50μlおよびs.c.注射のために1×107CFU/100μlを達成するために要求されるようにPBS中で弱毒化サルモネラ・ティフィ株(ZH9)の希釈液を調製した。
【0114】
膀胱内治療
上記されるように、尿道カテーテル法により50μlの細菌懸濁液を点滴注入した。麻酔から覚めたマウスが自発的に排尿するまで、膀胱中の保持時間は1時間であった。この厳密な設定において、単回の膀胱内治療点滴注入を5日目(膀胱内腫瘍細胞点滴注入の4日後)に投与した。腫瘍は5日目に生物発光により検出可能であった。
【0115】
生存率を100日にかけてモニターした。結果は5つの別々の研究を反映したものであり、前記結果の再現性を実証する。
【0116】
結果
膀胱へのZH9の局所投与(ives)を与えられたマウスは、ivesでのPBSで治療されたマウスと比較して研究終了時の生存が改善されていた(p<0.01)。ivesでのZH9に加えてs.c.でのZH9を与えられたマウスはよりいっそう高い割合で生存した(p<0.01)(
図1Bを参照)。統計はログランク(マンテル-コックス)検定である。サルモネラの全身投与および局所膀胱投与の両方で治療されたマウスは、単独での局所膀胱ZH9投与についての43%および局所膀胱PBS治療についての26%に対して77%の終了時生存率を示した。
【0117】
実施例3
皮下サルモネラ・ティフィでの全身性プライミングは局所的なサルモネラ・ティフィ治療に対する望ましい膀胱細胞性免疫応答を増強する
ここに記載される研究の目的は、サルモネラ・ティフィ株(ZH9)の局所的な膀胱内投与に先立ってサルモネラ・ティフィ株(ZH9)での皮下全身性プライミングを与えられたマウスの膀胱における免疫細胞浸潤のレベルをフローサイトメトリーにより評価することであった(
図2を参照)。
【0118】
以下に詳述されるように、本発明の発明者らは、驚くべきことに、全身性プライミングは、膀胱において骨髄およびリンパ系免疫応答のピークの大きさおよび持続期間を増加させること、ならびに望ましくない好中球性炎症は増強されないことを示した。
【0119】
材料および方法
-35および-14日目に1×10
7CFUのサルモネラ・ティフィZH9またはPBS対照を皮下に用いて雌C57BL/6マウスを治療した。1日目に、3×10
7CFUのサルモネラ・ティフィZH9またはPBS対照を膀胱内に用いてマウスを治療した。治療後の指し示される時点(24時間および7日)において、膀胱組織を採取し、コラゲナーゼ/ディスパーゼ/DNaseで消化した(
図2を参照)。単一細胞懸濁液を生成し、細胞をフローサイトメトリー分析のために染色した。
【0120】
細菌の調製
ives点滴注入のために3×107CFU/50μlおよびs.c.注射のために1×107CFU/100μlを達成するために要求されるようにPBS中で弱毒化サルモネラ・ティフィ株(ZH9)の希釈液を作製した。
【0121】
膀胱内治療
7~10週齢の雌C57Bl/6野生型マウス(Charles River)を使用し、すべての実験は、スイス国の法律にしたがってthe Cantonal Veterinary Office of Canton de Vaud、Switzerlandの承認と共に行った。Introcan 24Gx3/4カテーテル(Braun、Melsungen、Germany)を使用して尿道カテーテル治療された深麻酔されたマウスにおいて膀胱内点滴注入を行った。50μlの細菌懸濁液を点滴注入した。麻酔から覚めたマウスが自発的に排尿するまで、膀胱中の保持時間は約1時間であった。
【0122】
膀胱の調製
CO2吸入によりマウスを屠殺して膀胱を収集した。DL-ジチオトレイトール(Sigma Merck KGaA)中でミンチし、20%ウシ胎仔血清(Gibco、MA、USA)と共に1mg/mLのコラゲナーゼ/ディスパーゼ(Roche、Basel、Switzerland)および0.1mg/mlのDNAse I(Sigma Merck KGaA)を用いて消化することにより単一細胞懸濁液を得た。回収された細胞を免疫染色のために使用した。
【0123】
免疫染色およびフローサイトメトリー分析
使用されたモノクローナル抗マウス抗体は、Anti-CD3-PE(17A2)、Anti-CD3-PerCP/Cy5.5(17A2)、Anti-Ly6G-PE/Cy7(1A8)、Anti-Ly6C-AF700(HK1.4)、Anti-CD8-APC/Cy7(53-6.7)、Anti-CD103-PcBlue(2E7)、Anti-CD11b-FITC(M1/70)、Anti-XCR1-APC(ZET)(Biolegend);Anti-CD4-APC(RM4-5)、Anti-CD8-PE(53-6.7)(BD Biosciences)、Anti-CD11c-PE-eF610(N418)、Anti-CD45-FITC(30-F11)、Anti-CD45-PerCP/Cy5.5(30-F11)、Anti-CD11b-AF700(M1/70)、Anti-CD335-eF450(29A1.4)(eBioscience、Thermo Fisher Scientific、MA、USA)であった。以下のアイソタイプ対照を使用した:ラットIgG2a、κアイソタイプ対照-APC-Cy7(RTK2758)、ラットIgG2a、κアイソタイプ対照-APC(RTK2758)(Biolegend)、ArmハムスターIgGアイソタイプ対照-PE-eF610(eBio99Arm)(eBioscience)。
【0124】
live/dead fixable aqua dead cell stain kit(Invitrogen Thermo Fisher Scientific、MA、USA)により死細胞を除外した。Gallios Flow Cytometer(Beckman Coulter、Nyon、Switzerland)およびFlowJoソフトウェア(Tree Star、Ashland、OR)をそれぞれ使用して細胞の取得および分析を行った。
【0125】
結果
免疫濾過(Immune filtration)は、ivesでのZH9の前に投与された場合のs.c.でのZH9でのプライミングにより有意に増加する(
図3A、
図3Bおよび
図3Cを参照)。これは点滴注入の7日後に特に著明である。ZH9でのプライミングは、ivesでの点滴注入の7日後にT細胞およびNK細胞を特に増加させたが、骨髄細胞はあまり変更されなかった。CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞の両方は、ivesでのZH9の点滴注入の7日後に、ZH9でのプライミングにより有意に増加する(
図3Aおよび
図3Bを参照)。好中球はZH9でのプライミングにより変更されなかったが、単球は、特にivesでのZH9の24時間後に、有意に増加した(
図3Aおよび
図3Bを参照)。
【0126】
実施例4
経口サルモネラ・ティフィムリウムでの全身性プライミングは局所的なサルモネラ・ティフィ治療に対する望ましい細胞性免疫応答を増強する
ここに記載される研究の目的は、サルモネラ・ティフィ株(ZH9)での局所的な腫瘍内治療と組み合わせたサルモネラ・ティフィムリウム株(MD58)での経口全身性プライミング後の腫瘍保有マウス(マウス大腸がんモデル)においてT細胞数、表現型および機能における変化を測定することであった。
【0127】
材料および方法
細菌細胞の調製
経口胃管栄養法のために1×109CFU/100μlを達成するために要求されるよ
うにPBS中で弱毒化サルモネラ・ティフィムリウム株(MD58)の希釈液を作製した。腫瘍内注射のために1×107CFU/40μlを達成するために要求されるようにPBS中で弱毒化サルモネラ・ティフィ株(ZH9)の希釈液を作製した。
【0128】
MC38大腸がんモデル
7~14週齢の雌C57BL/6マウスをすべての実験のために使用した。MC38大腸がん細胞株はKerafast, Inc.から購入し、注射まで指数増殖期内に維持した。細胞をトリプシン処理により調製し、単純培地中で洗浄し、自動化細胞カウンターを介して生存細胞をカウントした。腫瘍細胞移植に先立って、1~2%イソフルランを使用して各々のマウスを麻酔し、注射区画を剃毛し、洗浄した。27Gシリンジを使用して200μLの無血清培地中の6×10
5個のMC38細胞を後脇腹の皮下に注射した。ProkariumのHome Office licenceによる許容されるレベルを超えないように腫瘍負担を定期的な間隔でモニターした。マウスを(MC38接種の7日前に)経口サルモネラ・ティフィムリウムで治療し、続いて(MC38接種の14日後に)サルモネラ・ティフィでの腫瘍内治療を行ったか、または(MC38接種の14日後に)サルモネラ・ティフィでの腫瘍内治療を単独で行った(
図4を参照)。T細胞の浸潤、表現型および機能的状態に対するサルモネラ・ティフィムリウムの経口全身性プライムの効果をサルモネラ・ティフィでの腫瘍内治療の1日および7日後に評価した。
【0129】
組織の単離およびフローサイトメトリー
腫瘍および脾臓を切除し、ストレーナーおよびシリンジプランジャーを使用して機械的に解離させた。溶解液を次に70μmの細胞ストレーナーに通して濾過し、赤血球細胞を溶解した。35% Percoll溶液を使用して腫瘍を追加的に処理して細胞デブリを除去した。細胞ペレットを下流の分析のために適切な緩衝液中に再懸濁した。フローサイトメトリー分析のために、死細胞をlive/dead fixable aqua dead cell stain kit(Thermo Fisher)により除外し、次に以下のモノクローナル抗体:anti-CD90.2(53-2.1;Biolegend)、Anti-CD4(RM4-5;Thermo Fisher)、Anti-CD8α(53-6.7;Biolegend)、Foxp3(FJK-16s;Thermo Fisher)、IFNγ(XMG1.2;Biolegend)、およびKi-67(16A8;Biolegend)で染色した。ATTUNE NXTサイトメーター(Thermo Fisher)およびFlowJoソフトウェア(Tree Star)をそれぞれ使用して細胞の取得および分析を行った。
【0130】
腫瘍浸潤性CD8+およびCD4+ T細胞の数の評価
7~9週齢の雌C57BL/6マウスをペルオス(PO、「経口」)での1×109CFUのサルモネラ・ティフィムリウムMD58で免疫化したか、または未治療のままとした。7日後に、6×105個のMC38(大腸)腫瘍細胞をすべてのマウスの皮下に接種した。14日後に、すべてのマウスに1×107CFUのサルモネラ・ティフィZH9の腫瘍内(IT)用量を与えた。時点当たりn=3または4のマウス/群で、腫瘍および脾臓をIT治療の1日および7日後に採取した。腫瘍を機械的に解離させ、濾過し、単一細胞懸濁液をAttune NXTサイトメーター上でのフローサイトメトリーにより分析した。細胞を表面マーカーについて染色し、続いて固定/透過処理を行い、次に細胞内分子について染色した。指し示されるT細胞集団をFSC/SSC、シングレット、viability dye-、CD90+、続いてCD4、CD8、またはCD4のいずれかおよびFoxp3においてゲーティングした。絶対細胞数を各々の腫瘍の重量に対して正規化した。
【0131】
腫瘍中および末梢中のT細胞増殖の評価
7~9週齢の雌C57BL/6マウスをペルオス(PO、「経口」)での1×109C
FUのサルモネラ・ティフィムリウムMD58で免疫化したか、または未治療のままとした。7日後に、6×105個のMC38(大腸)腫瘍細胞をすべてのマウスの皮下に接種した。14日後に、すべてのマウスに1×107CFUのサルモネラ・ティフィZH9の腫瘍内(IT)用量を与えた。時点当たりn=4のマウス/群で、腫瘍および脾臓をIT治療の1日および7日後に採取した。腫瘍を機械的に解離させ、濾過し、単一細胞懸濁液をAttune NXTサイトメーター上でのフローサイトメトリーにより分析した。細胞を表面マーカーについて染色し、続いて固定/透過処理を行い、次に細胞内分子について染色した。CD8 T細胞をFSC/SSC、シングレット、viability dye -、CD90+、およびCD8+においてゲーティングした。CD4 T細胞をFSC/SSC、シングレット、viability dye -、CD90+、CD4+、およびFoxp3-においてゲーティングした。増殖性T細胞をKi-67+として定義し、全CD8 T細胞のパーセンテージとして表す。
【0132】
CD8+およびCD4+ T細胞の機能的な潜在能力の評価
7~9週齢の雌C57BL/6マウスをペルオス(PO、「経口」)での1×109CFUのサルモネラ・ティフィムリウムMD58で免疫化したか、または未治療のままとした。7日後に、6×105個のMC38(大腸)腫瘍細胞をすべてのマウスの皮下に接種した。14日後に、すべてのマウスに1×107CFUのサルモネラ・ティフィZH9の腫瘍内(IT)用量を与えた。時点当たりn=4のマウス/群で、腫瘍および脾臓をIT治療の1日および7日後に採取した。腫瘍を機械的に解離させ、濾過し、単一細胞懸濁液をAttune NXTサイトメーター上でのフローサイトメトリーにより分析した。細胞を表面マーカーについて染色し、続いて固定/透過処理を行い、次に細胞内分子について染色した。CD8 T細胞をFSC/SSC、シングレット、viability dye -、CD90+、およびCD8+においてゲーティングした。CD4 T細胞をFSC/SSC、シングレット、viability dye -、CD90+、CD4+、およびFoxp3-においてゲーティングした。増殖性T細胞をKi-67+として定義し、全CD8 T細胞のパーセンテージとして表す。サイトカイン産生能力の評価のために、細胞をCell Activation Cocktail with Brefeldin A(Biolegend;423303)の存在下37℃で4時間刺激した。刺激後に、細胞を表面マーカーについて染色し、続いて固定/透過処理を行い、次に細胞内分子について染色した。CD8 T細胞をFSC/SSC、シングレット、viability dye-、CD90+、およびCD8+においてゲーティングした。IFNγ+ CD8 T細胞を全CD8 T細胞のパーセンテージとして表す。CD4 T細胞をFSC/SSC、シングレット、viability dye-、CD90+、CD4+、およびFoxp3-においてゲーティングした。IFNγ+ CD4 T細胞を全CD4 T細胞のパーセンテージとして表す。T細胞活性化カクテル(PMA+イオノマイシン+ブレフェルジンA)での刺激後にIFNγを産生できるT細胞の%として機能的な潜在能力を測定する。
【0133】
結果
腫瘍浸潤性CD8およびCD4 T細胞の数は、単独での腫瘍内治療と比較して腫瘍内サルモネラ・ティフィ治療と組み合わせた経口サルモネラ・ティフィムリウムでの全身性プライミング後に増加することが見出されたが、制御性T細胞(Treg)の数はそうではなかった(
図5Aおよび
図5Bを参照)。追加的に、腫瘍中および末梢中のT細胞増殖は、単独での腫瘍内治療と比較して腫瘍内サルモネラ・ティフィ治療と組み合わせた経口サルモネラ・ティフィムリウムでの全身性プライミング後に増加することが示され、局所的および全身的の両方での、適応免疫系の活性化を示唆する(
図6および
図7を参照)。CD8およびCD4細胞の機能的な潜在能力もまた、単独での腫瘍内治療と比較して腫瘍内サルモネラ・ティフィ治療と組み合わせた経口サルモネラ・ティフィムリウムでの全身性プライミングで治療されたマウスにおいて増加することが示された(
図8および
図9を
参照)。
【0134】
開示される本明細書中の実施例は、サルモネラの全身投与、続いてサルモネラの局所投与は、サルモネラの局所投与の有効性を増強することを実証する。本発明者らはまた、サルモネラの全身投与および局所投与の組合せは、単独でのサルモネラの局所投与で見られるよりも強い免疫応答を誘導し、抗腫瘍活性を駆動するようであることを実証した。さらには、本発明者らは、本明細書において例示される効果は、複数のサルモネラ株、全身および局所投与の複数のモードにわたり、ならびに複数のがんモデルにおいて見られることを本明細書において実証した。
【国際調査報告】