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特表2024-529465平面状及び非平面状導体を備えた電磁部品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】平面状及び非平面状導体を備えた電磁部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20240730BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20240730BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20240730BHJP
   H01F 5/00 20060101ALI20240730BHJP
   H01G 4/40 20060101ALI20240730BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H01F17/00 B
H01F17/04 F
H01F27/00 160
H01F27/00 S
H01F5/00 M
H01G4/40 321A
H01G4/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505111
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 US2022038179
(87)【国際公開番号】W WO2023009433
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】63/226,022
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521565338
【氏名又は名称】レゾナント リンク インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RESONANT LINK,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100207837
【弁理士】
【氏名又は名称】小松原 寿美
(74)【代理人】
【識別番号】100214640
【弁理士】
【氏名又は名称】立山 千晶
(72)【発明者】
【氏名】チョー、ピョー アウン
(72)【発明者】
【氏名】スタイン、アーロン
(72)【発明者】
【氏名】サリバン、チャールズ アール.
【テーマコード(参考)】
5E070
5E082
【Fターム(参考)】
5E070AA05
5E070AB03
5E070BA06
5E070CB13
5E082AB01
5E082BC14
5E082DD08
(57)【要約】
電磁部品の一例として、電磁部品の円周方向に沿って延在するトレースを有しかつ電磁部品の半径方向に沿って延在する幅を有する薄導体層を備える。幅は、トレース内の交流電流分布が、トレースと同じ半径方向の広がりを有する単一のトレース内の交流電流分布に近似するように選択されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁部品であって、
電磁部品の円周方向に沿って延在するトレースを有し、電磁部品の半径方向に沿って延在する幅を有する薄導体層であって、幅は、トレース内の交流電流分布が、トレースと同じ半径方向の広がりを有する単一のトレース内の交流電流分布に近似するように選択されている薄導体層
を備える、電磁部品。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁部品において、
トレースは、第1の幅を有する第1のトレースと、第2の幅を有する第2のトレースと、を含み、
第1のトレースは薄導体層の最も内側のトレースであり、第2の幅は第1の幅よりも大きい、電磁部品。
【請求項3】
請求項2に記載の電磁部品において、
トレースは、第2の幅よりも大きい第3の幅を有する第3のトレースを含み、
第3のトレースは、第2のトレースよりも、電磁部品の中心から半径方向にさらに遠くにある、電磁部品。
【請求項4】
請求項1~3のうちいずれか一項に記載の電磁部品は、更に、
磁性コアを含み、
薄導体層は、磁性コア内に設けられている、電磁部品。
【請求項5】
請求項4に記載の電磁部品において、
磁性コアは、センターポスト及びアウターリムを含み、
薄導体層は、センターポストとアウターリムとの間に設けられている、電磁部品。
【請求項6】
請求項1~5のうちいずれか一項に記載の電磁部品において、
トレースは、互いに直列である、電磁部品。
【請求項7】
電磁部品であって、
電磁部品の円周方向に沿って延在するトレースを有し、電磁部品の半径方向に沿って延在する幅を有する薄導体層であって、トレースが第1の幅を有する第1のトレースであり、第1のトレースが薄導体層の最も内側のトレースである薄導体層、を備え、
第1の幅は、
【数1】

であり、式中のwが第1の幅であり、rwinがトレースの内側半径であり、rwoutがトレースの外側半径であり、Nがトレースの量であるように選択されている、電磁部品。
【請求項8】
電磁部品7に記載の電磁部品において、
トレースは、更に、
第1の幅よりも大きい第2の幅を有する第2のトレースを含み、
第2のトレースは、第1のトレースに半径方向に隣接し、
第2の幅は、
【数2】

であり、式中のwが第2のトレースの幅であるように選択されている、電磁部品。
【請求項9】
電磁部品8に記載の電磁部品において、
トレースは、更に、
第1の幅よりも大きい第3の幅を有する第3のトレースを含み、
第3のトレースは、第2のトレースの外側で第2のトレースに半径方向に隣接し、
第3の幅は、
【数3】

であり、式中のwが第3のトレースの幅であるように選択されている第3のトレースをさらに含んでもよい。
【請求項10】
電磁部品であって、
電磁部品の円周方向に沿って延在するN個のトレースを有し、電磁部品の半径方向に沿って延在する幅を有する薄導体層であって、トレースが第1の幅wを有する第1のトレースを含み、第1のトレースが第1の層の最も内側のトレースであり、
トレースは、
【数4】

の幅を有する第2のトレース及びの第3のトレースを含み、
式中のkは、2又は3にそれぞれ等しい第2のトレース及び第3のトレースの指数であり、第2のトレースが第1のトレースに半径方向に隣接し、第3のトレースが第2のトレースの外側で第2のトレースに半径方向に隣接している、薄導体層
を含む電磁部品。
【請求項11】
請求項10に記載の電磁部品において、
トレースは、更に、
第3のトレースの外側に少なくとも1つの追加のトレースを含み、
第3のトレースは幅w>2*wを有し、
式中のwが指数kを有するトレースの幅であり、
トレースの指数kは、最も内側のトレースが指数1として始まり、最も内側のトレースから半径方向に外側にカウントしながら1ずつ増分している、トレースの数である、電磁部品。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の電磁部品において、
【数5】

では、式中のrwinがトレースの内側半径であり、rwoutがトレースの外側半径である、電磁部品。
【請求項13】
電磁部品を設計する方法であって、
電磁部品は、電磁部品の円周方向に沿って延在するトレースを有しかつ電磁部品の半径方向に沿って延在する幅を有する薄導体層を含み、
方法は、
トレースと同じ半径方向の広がりを有する単一のトレースに対して、電磁部品の半径方向位置に対する交流電流密度の分布を得ることと、
分布を半径方向位置にわたって積分又は合計して、全交流電流を求めることと、
全交流電流をトレースの数Nで割り算して、トレースごとの交流電流を求めることと、
N個のトレースそれぞれの幅を選択することであって、分布に基づいて、求められたトレースごとの交流電流を有するN個のトレースが得られる、ことと
を備える、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
幅の決定は、第1のトレースの交流電流が求められたトレースごとの交流電流と等しくなるところに幅が到達するまで、半径方向に沿った分布に沿って積分又は合計することによって、第1のトレースの幅を選択することを含む、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、
第1のトレースは、第1の層の最も内側のトレース又は最も外側のトレースである、方法。
【請求項16】
電磁部品であって、
巻線であって、第1の終端及び第2の終端、及び第1の終端と第2の終端との間で直列に接続された複数のターンを含む導体を含む、巻線と、
複数のターンの第1のターンに対応する直列ターンキャパシタンスと
を備える、電磁部品。
【請求項17】
請求項16に記載の電磁部品において、
直列ターンキャパシタンスは、第1のターンと直列であり、かつ第1の終端及び第2の終端とは異なる場所で第1のターンに接続されている、電磁部品。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の電磁部品において、
直列ターンキャパシタンスは、第1のターンの第1の部分と第2の部分との間で直列に接続されている、電磁部品。
【請求項19】
請求項16~18のうちいずれか一項に記載の電磁部品において、
複数のターンは、更に、第2のターンを含み、
直列ターンキャパシタンスは、第1の直列ターンキャパシタンスであり、
電磁部品は、更に、第2のターンに対応する第2の直列ターンキャパシタンスを含む、電磁部品。
【請求項20】
請求項16~18のうちいずれか一項に記載の電磁部品において、
直列ターンキャパシタンスは、スタンドアロン型キャパシタ又は集積化キャパシタンスを含む、電磁部品。
【請求項21】
請求項20に記載の電磁部品において、
直列ターンキャパシタンスは、ディスクリートのキャパシタであるスタンドアロン型キャパシタを含む、電磁部品。
【請求項22】
請求項20又は21に記載の電磁部品において、
巻線は、複数の層内に形成され、
電磁部品は、スタンドアロン型キャパシタのキャパシタパッド間にビアを含み、
ビアは、複数の層の内側層を別のキャパシタンスに接続する、電磁部品。
【請求項23】
請求項20に記載の電磁部品において、
直列ターンキャパシタンスは、誘電体によって分離された導体の第1の層と第2の層との間の重なり合いによって形成された集積化キャパシタンスを含む、電磁部品。
【請求項24】
請求項23に記載の電磁部品において、
電磁部品は、導体の第1の層と第2の層との間のそれぞれの重なり合いによって形成された複数の直列ターンキャパシタンスを含む、電磁部品。
【請求項25】
請求項22~24のうちいずれか一項に記載の電磁部品において、
導体の第1の層及び第2の層は、プリント回路基板の導体層である、電磁部品。
【請求項26】
請求項22~25のうちいずれか一項に記載の電磁部品において、
導体の第1の層及び第2の層は、多層セラミックキャパシタ(MLCC)プロセス又は低温同時焼成セラミック(LTCC)プロセスの電極層である、電磁部品。
【請求項27】
請求項22~26のうちいずれか一項に記載の電磁部品において、
交流電流は、直列ターンキャパシタンスを通って、巻線の円周方向に第1の層と第2の層との間の巻線を通って流れる、電磁部品。
【請求項28】
請求項16~27のうちいずれか一項に記載の電磁部品において、
直列ターンキャパシタンスのキャパシタンス値は、第1のターンの誘導インピーダンスの50%~200%の間のインピーダンスを提供するように選択される、電磁部品。
【請求項29】
請求項16~28のうちいずれか一項に記載の電磁部品において、
直列ターンキャパシタンスのキャパシタンス値は、直列ターンキャパシタンスのインピーダンスが第1のターンのインピーダンスを取り消すように選択される、電磁部品。
【請求項30】
請求項16~29のうちいずれか一項に記載の電磁部品において、
直列ターンキャパシタンスは、第1のターンに対して複数の直列ターンキャパシタンスを含む、電磁部品。
【請求項31】
電磁部品であって、
円周方向に延在する少なくとも第1のターン及び第2のターンを備えたトレースを有する薄導体層を含む巻線を備え、
第1のターンが不変の半径を有する第1の部分を有し、
第2のターンが不変の半径を有する第2の部分を有し、
トレースは、更に、第1の部分と第2の部分との間に延在する遷移部分である第3の部分を含む、電磁部品。
【請求項32】
請求項31に記載の電磁部品において、
トレースは、更に、円周方向に延在する第3のターンを含み、
第3のターンは、不変の半径を有する第4の部分を有し、
トレースは、更に、第4の部分と第4の部分との間に延在する第2の遷移部分である第5の部分を含む、電磁部品。
【請求項33】
請求項32に記載の電磁部品において、
第3の部分及び第5の部分は、遷移領域内にある、電磁部品。
【請求項34】
請求項33に記載の電磁部品において、
遷移領域は、巻線の面積の4分の1未満である面積を有している、電磁部品。
【請求項35】
請求項31~34のうちいずれか一項に記載の電磁部品において、
巻線の第1の終端は、遷移領域の下方、又は遷移領域の上方に延在している、電磁部品。
【請求項36】
請求項31~34のうちいずれか一項に記載の電磁部品において、
巻線の第1の終端及び第2の終端は、磁性コアの後板を通って延在している、電磁部品。
【請求項37】
請求項31~36のうちいずれか一項に記載の電磁部品において、
巻線の第1の終端及び第2の終端は、最も広い寸法を有する面同士を互いに向かい合わせにするように、積み重ねられている、電磁部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の装置及び技術は、電磁部品に関する。
【背景技術】
【0002】
インダクタ及び変圧器などの電磁部品は、導電体で形成された1つ又は複数の巻線を含む場合がある。いくつかの電磁部品は、1つ又は複数の磁性コアを有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
いくつかの態様は、電磁部品であって、電磁部品の円周方向に沿って延在するトレースを有し、電磁部品の半径方向に沿って延在する幅を有する薄導体層であって、幅は、トレース内の交流電流分布が、トレースと同じ半径方向の広がりを有する単一のトレース内の交流電流分布に近似するように選択されている薄導体層を含む電磁部品に関する。
【0004】
トレースは、第1の幅を有する第1のトレースと、第2の幅を有する第2のトレースと、を含んでもよい。第1のトレースは、薄導体層の最も内側のトレースとすることができ、また第2の幅は、第1の幅よりも大きい。
【0005】
トレースは、第2の幅よりも大きい第3の幅を有する第3のトレースであって、第2のトレースよりも電磁部品の中心から半径方向にさらに遠くにある第3のトレースを含んでもよい。
【0006】
電磁部品は、磁性コアをさらに含んでもよい。
薄導体層は、磁性コア内に設けてもよい。
磁性コアは、センターポスト及びアウターリムを含む場合があり、薄導体層は、センターポストとアウターリムとの間にあってもよい。
【0007】
トレースは、互いに直列であってもよい。
いくつかの態様は、電磁部品であって、電磁部品の円周方向に沿って延在するトレースを有し、電磁部品の半径方向に沿って延在する幅を有する薄導体層を含むとともに、トレースが、第1の幅を有する第1のトレースであって、薄導体層の最も内側のトレースである第1のトレースを含み、第1の幅は、
【0008】
【数1】
【0009】
であり、式中のwが第1の幅であり、rwinがトレースの内側半径であり、rwoutがトレースの外側半径であり、Nがトレースの量であるように選択されている電磁部品に関する。
【0010】
トレースは、第1の幅よりも大きい、第2の幅を有する第2のトレースであって、第1のトレースに半径方向に隣接するとともに、第2の幅は、
【0011】
【数2】
【0012】
であり、式中のwが第2のトレースの幅であるように選択されている第2のトレースをさらに含んでもよい。
トレースは、第1の幅よりも大きい、第3の幅を有する第3のトレースであって、第2のトレースの外側で第2のトレースに半径方向に隣接するとともに、第3の幅は、
【0013】
【数3】
【0014】
であり、式中のwが第3のトレースの幅であるように選択されている第3のトレースをさらに含んでもよい。
いくつかの態様は、電磁部品であって、電磁部品の円周方向に沿って延在するN個のトレースを有し、電磁部品の半径方向に沿って延在する幅を有する薄導体層であって、トレースが、第1の幅wを有する第1のトレースであって、第1の層の最も内側のトレースである第1のトレースを含むトレースであり、且つ、第2のトレース及びの第3のトレースであって、
【0015】
【数4】
【0016】
であり、式中のkが、2又は3にそれぞれ等しい第2のトレース及び第3のトレースの指数である幅を有するとともに、第2のトレースが第1のトレースに半径方向に隣接し、第3のトレースが第2のトレースの外側で第2のトレースに半径方向に隣接している第2のトレース及びの第3のトレースを含むトレースである、薄導体層を含む電磁部品に関する。
【0017】
トレースは、第3のトレースの外側に少なくとも1つの追加のトレースであって、幅w>2*wを有し、式中のwが指数kを有するトレースの幅であるとともに、トレースの指数kが、最も内側のトレースを指数1として始まり、最も内側のトレースから半径方向に外側にカウントしながら1ずつ増分しているトレースの数である、少なくとも1つの追加のトレースをさらに含んでもよい。
【0018】
いくつかの態様では、
【0019】
【数5】
【0020】
であり、式中のrwinがトレースの内側半径であり、rwoutがトレースの外側半径である。
いくつかの態様は、電磁部品の円周方向に沿って延在するトレースを有し、電磁部品の半径方向に沿って延在する幅を有する薄導体層を含む電磁部品を設計する方法であって、トレースと同じ半径方向の広がりを有する単一のトレースの場合の、電磁部品の半径方向位置に対する交流電流密度の分布を得ることと、分布を半径方向位置にわたって積分又は合計して全交流電流を求めることと、全交流電流をトレースの数Nで割り算してトレースごとの交流電流を求めることと、分布に基づいて、N個のトレースそれぞれの幅を選択し、N個のトレースが求められたトレースごとの交流電流を有するようにすることと、を含む方法に関する。
【0021】
幅の決定は、第1のトレースの交流電流が求められたトレースごとの交流電流に等しくなるところに幅が到達するまで、半径方向に沿った分布に沿って積分又は合計することによって、第1のトレースの幅を選択することを含んでもよい。
【0022】
第1のトレースは、第1の層の最も内側のトレース又は最も外側のトレースであってもよい。
いくつかの態様は、電磁部品であって、巻線であって、第1の終端及び第2の終端、及び第1の終端と第2の終端との間で直列に接続された複数のターンを含む導体を含む巻線と、複数のターンの第1のターンに対応する直列ターンキャパシタンスと、を含む電磁部品に関する。
【0023】
直列ターンキャパシタンスは、第1のターンと直列であってもよく、また、第1の終端及び第2の終端とは異なる場所で第1のターンに接続してもよい。
直列ターンキャパシタンスは、第1のターンの第1の部分と第2の部分との間で直列に接続してもよい。
【0024】
複数のターンは、第2のターンをさらに含んでもよく、直列ターンキャパシタンスは、第1の直列ターンキャパシタンスであり、電磁部品は、第2のターンに対応する第2の直列ターンキャパシタンスをさらに含んでもよい。
【0025】
直列ターンキャパシタンスは、スタンドアロン型キャパシタ又は集積化キャパシタンスを含んでもよい。
直列ターンキャパシタンスは、ディスクリートのキャパシタであるスタンドアロン型キャパシタを含んでもよい。
【0026】
巻線は、複数の層内に形成してもよく、また電磁部品は、スタンドアロン型キャパシタのキャパシタパッドの間に、ビアであって、複数の層の内側層を別のキャパシタンスに接続するビアを含んでもよい。
【0027】
直列ターンキャパシタンスは、誘電体によって分離された導体の第1の層と第2の層との間の重なり合いによって形成された、集積化キャパシタンスを含んでもよい。
電磁部品は、導体の第1の層と第2の層との間のそれぞれの重なり合いによって形成された、複数の直列ターンキャパシタンスを含んでもよい。
【0028】
導体の第1の層及び第2の層は、プリント回路基板の導体層であってもよい。
導体の第1の層及び第2の層は、多層セラミックキャパシタ(MLCC:multilayer ceramic capacitor)プロセス又は低温同時焼成セラミック(LTCC:low-temperature co-fired ceramic)プロセスの電極層であってもよい。
【0029】
交流電流は、直列ターンキャパシタンスを通って、巻線の円周方向に第1の層と第2の層との間の巻線を通って流れてもよい。
直列ターンキャパシタンスのキャパシタンス値は、第1のターンの誘導インピーダンスの50%~200%の間のインピーダンスを提供するように選択してもよい。
【0030】
直列ターンキャパシタンスのキャパシタンス値は、直列ターンキャパシタンスのインピーダンスが第1のターンのインピーダンスを取り消すように選択してもよい。
直列ターンキャパシタンスは、第1のターンに対して複数の直列ターンキャパシタンスを含んでもよい。
【0031】
いくつかの態様は、電磁部品であって、円周方向に延在する少なくとも第1のターン及び第2のターンを有するトレースを有する薄導体層を含む巻線を含み、第1のターンが不変の半径を有する第1の部分を有し、第2のターンが不変の半径を有する第2の部分を有するとともに、トレースが、第1の部分と第2の部分との間に延在する遷移部分である第3の部分をさらに含む電磁部品に関する。
【0032】
トレースは、円周方向に延在する第3のターンであって、不変の半径を有する第4の部分を有する第3のターンをさらに有してもよく、トレースは、第4の部分と第4の部分との間に延在する第2の遷移部分である第5の部分をさらに含む。
【0033】
第3の部分及び第5の部分は、遷移領域内にあってもよい。
遷移領域は、巻線の面積の4分の1未満である面積を有してもよい。
巻線の第1の終端は、遷移領域の下方、又は遷移領域の上方に延在してもよい。
【0034】
巻線の第1の終端及び第2の終端は、磁性コアの後板を通って延在してもよい。
巻線の第1の終端及び第2の終端は、最も広い寸法を有する面同士を互いに向かい合わせにするように、積み重ねてもよい。
【0035】
上記の概要は、説明を目的とするものであり、限定を意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1A】それぞれ1ターン及び3ターンを有する薄層導体を有する電磁部品の例を示す。
図1B】それぞれ1ターン及び3ターンを有する薄層導体を有する電磁部品の例を示す。
図2図1A及び図1Bに示されている電磁部品のような、固定巻線領域の単一の層にターン数が異なる巻線を有する平面状電磁部品の例の品質係数のプロットを示す。
図3】幅がまちまちである薄層導体を有する電磁部品を示す。
図4】3つの異なる設計の、半径方向位置に対する電流密度のプロットを示す。
図5A】スタンドアロン型キャパシタによって形成された直列ターンキャパシタンスを含む巻線の例を示す。
図5B】スタンドアロン型キャパシタによって形成された直列ターンキャパシタンスを含む巻線の例を示す。
図6A】キャパシタパッド間のビア配置を図示する。
図6B】キャパシタパッド間のビア配置を図示する。
図6C】キャパシタパッド間のビア配置を図示する。
図6D】キャパシタパッド間のビア配置を図示する。
図7】薄層導体の2つの層の間の集積化直列ターンキャパシタンスを含む構造の断面図を示す。
図8A】集積化直列ターンキャパシタンスを含む巻線の様々な図を示す。
図8B】集積化直列ターンキャパシタンスを含む巻線の様々な図を示す。
図8C】集積化直列ターンキャパシタンスを含む巻線の様々な図を示す。
図8D】集積化直列ターンキャパシタンスを含む巻線の様々な図を示す。
図9】ターン間に遷移領域を有する巻線を示す。
図10A】遷移領域のエッジに集中している電流を図示するシミュレーション結果を示す。
図10B】遷移領域のエッジに集中している電流を図示するシミュレーション結果を示す。
図11A】遷移領域におけるトレースの半径方向成分に起因する磁場が遷移領域の上方、又は下方に戻りトレースを位置決めすることによって補正可能であることを示す。
図11B】遷移領域におけるトレースの半径方向成分に起因する磁場が遷移領域の上方、又は下方に戻りトレースを位置決めすることによって補正可能であることを示す。
図12】補正を図示するシミュレーション結果を示す。
図13A】性能の向上が2つの平面状導体を積み重ねることによって可能であることを図示している。
図13B】性能の向上が2つの平面状導体を積み重ねることによって可能であることを図示している。
図14】積み重ねられたリード線設計を図示している。
図15】巻線リード線が磁性コアの後板の開口を通って延在し得ることを図示している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図面においては、異なる図における同一又は略同一の構成要素には同様の符号が付されている。図示を明瞭にするため、図面において全ての構成要素に符号が付されているわけではない。図面は必ずしも寸法比率が等しいものではなく、本明細書に記載される手法及び装置の様々な態様を示すことに重点が置かれている。
【0038】
本発明者らは、電磁部品に対するいくつかの改良形態を開発した。
いくつかの電磁部品は、薄層導体(本明細書では薄導体層とも呼ばれる)を含む。薄層導体は、低背型であり、例えば、マグネット線又はリッツ線巻線などの代替的選択肢と比較して、製造が低コストであるという長所を有する場合がある。薄層導体は、種々様々なプロセスで形成することができ、一例では、プリント回路基板から形成することができる(PCBトレース)。
【0039】
図1Aは、単一のターンを有する薄層導体2を含む巻線(コイルとも呼ばれる)を有する電磁部品の一例を示す。さらに図1Aに図示されているのは、巻線のリード線3、及び磁性コア4である。例における磁性コア4は、センターポスト4a及びアウターリム4bを有するつぼ形コアである。任意に、磁性コア4は、後板(図1Aに示されていない)を有することができる。さらに図1Aに図示されているのは、極座標系で使用されるような、上から見たときに電磁部品の外郭線に近似する架空の円の中心から半径方向に延在する半径方向、電磁部品のまわりのそれぞれの円周方向位置における半径方向に垂直な円周方向、及び半径方向及び円周方向に垂直に延在する垂直(厚さ)方向を含む電磁部品に対する方向である。
【0040】
図1Bは、複数のターン、具体的には、例では3つのターンを有する薄層導体2を含む巻線を有する電磁部品の一例を示す。各ターンは、巻線の中心のまわりの巻線の一回転に相当する。図1Bの巻線は、リード線3aから中心に向かって徐々に螺旋状になり、そのあと、戻りリード線3bとして巻線のターンの真下に戻っている。さらに図1Bに見えるのは、磁性コア4の後板4cである。巻線のターン及び戻りリード線3bは、誘電材料(図示せず)によって互いに電気的に絶縁されている。
【0041】
薄層導体を有する電磁部品は、(図1A及び図1Bに示されているような)単一の導体層、又は複数の層を含むことができる。複数の層の薄層導体を有する電磁部品の例について、さらに以下で論じる。
【0042】
薄層巻線は、1つ又は複数の薄層導体からなる巻線である。薄層導体は、巻線の厚さがその幅よりもはるかに小さい(例えば、少なくとも10分の1)導電体である。例えば、図1Aに示されている薄層巻線は、その(半径方向における)幅よりもはるかに小さい(垂直方向における)厚さを有する導体箔で形成することができる。複数のターンを有する薄層巻線の場合、薄層巻線は、薄層巻線のすべてのターンの幅(半径方向の広がり)よりもはるかに小さい(例えば、少なくとも10分の1)厚さを有する。例えば、図1Bでは、薄層巻線の幅は、3つのトレースすべてを横断する巻線の半径方向の広がりであり、3つのトレースはこの場合、直列に接続された3つのターンである。薄層導体又はそれらの用途のいくつかの例は、限定されるものではないが、平坦な電流ループ(例えば、C字形、円弧形、矩形、又は任意の多角形の導体)を形成する箔層、エッジ巻きの導体、プリント回路基板、多層自己共振構造(米国特許第10,109,413号明細書及び同第10,707,011号明細書、国際特許出願第PCT/US2017/043377号明細書、米国特許出願第16/994,448号明細書)、誘導結合電流ループ(国際特許出願第PCT/US2021/15260号明細書)、集積化キャパシタンスを有する多層導体(国際特許出願第PCT/US2021/041387号明細書)、及び低周波共振構造(国際仮特許出願第PCT/US2021/041387号明細書)、並びに、前述した、導体がパターン化された箔導体のうちのいずれか、を含むことができる。
【0043】
薄層導体(本明細書では、導電体又は単に導体とも呼ばれる)は、限定されるものではないが、銀、銅、アルミニウム、金及びチタンなどの1つ又は複数の金属、並びにグラファイトなどの非金属材料を含む任意の導電性材料、又は材料の組み合わせで作ることができる。導電性材料は、1MS/mよりも高い電気伝導率、任意に、200kS/mよりも高い電気伝導率を有することができる。薄層導体は、限定されるものではないが、固体材料、箔、基板上に積層された導体、プリント回路基板トレース、多層セラミックキャパシタ(MLCC)プロセスの電極層、低温同時焼成セラミック(LTCC)プロセスの電極層、集積回路トレース、又はそれらの任意の組み合わせを含む任意の物理的形状を有することができる。
【0044】
薄層導体の層、又は異なるトレース(例えば、ターン)の薄層導体は、限定されるものではないが、空気、FR4、PLA、ABS、ポリイミド、PTFE、ポリプロピレン、ロジャーズ基板(Rogers Substrate)、プラスチック、ガラス、アルミナ、セラミック、多層セラミックキャパシタ(MLCC)プロセスの誘電体若しくはセラミック層、又は低温同時焼成セラミック(LTCC)プロセスの誘電体若しくはセラミック層、のうちの1つ又は複数を含む任意の非導電性材料(誘電材料)、若しくは材料の組み合わせによって、分離することができる。
【0045】
図1A及び図1Bに図示されているように、薄層導体は、磁性コアの巻線領域内のセンターポストとアウターリムとの間に位置決めすることができる。しかしながら、本明細書に記載の技法及び装置は、いくつかの磁性コアでは、センターポスト及び/又はアウターリムがない場合があり、場合によっては、磁性コアが省略されている場合があるので、特定のタイプの磁性コアに限定されない。
【0046】
磁性コアが存在する場合、磁性コアの全体、又は一部分は、比透磁率が1よりも大きい、任意に、10よりも大きい1つ又は複数の強磁性材料で作ることができる。磁性コア材料は、限定されるものではないが、鉄、種々の鋼合金、コバルト、マンガン-亜鉛(MnZn)及び/又はニッケル-亜鉛(NiZn)フェライトを含むフェライト、Co-Zr-Oなどのナノ粒状材料、及び有機又は無機結合剤と混合された強磁性材料の粉末からなる粉末コア材料のうちの1つ又は複数を含むことができる。しかしながら、本明細書に記載の技法及びデバイスは、特定の材料の磁性コアに関して限定されない。磁性コアの形状は、例として、つぼ形コア、シート(Iコア)、センターポスト付きシート、アウターリム付きシート、RMコア、Pコア、PHコア、PMコア、PQコア、Eコア、EPコア、又はEQコアとすることができる。しかしながら、本明細書に記載の技法及びデバイスは、特定の磁性コアの形状に限定されない。電磁部品は、磁束路にエアギャップを有する磁性コア、又はエアギャップのない磁性コアのうちの1つ又は複数を含むことができる。いくつかの実施形態では、例えば、ワイヤレス電力伝送に広く使用されている表面開放型のつぼ形コアの場合、磁束路内のエアギャップが重要な場合がある。
【0047】
AC電流分布に基づいて可変のトレース幅
薄層導体を有する電磁部品は、巻線が単一ターンの薄層導体-中心マンドレル(例えば、図1Aの磁性コアにおけるセンターポスト)に1回巻き付けられている薄層導体-からなる場合、又は巻線が、動作周波数における導体の表皮深さよりも小さい幅を半径方向にそれぞれが有する複数のターンからなる場合、高性能(すなわち、低損失又は高い品質係数)を有することが可能である。
【0048】
図2は、図1A及び図1Bに示されているような、固定巻線領域の単一の層に、ターン数が異なる巻線を有する平面状電磁部品の例の品質係数を示す。
図2では、「等しいトレース幅」という標題が示されている曲線は、図1A及び図1Bの電磁部品の例の品質係数をターン数(又は各ターンの幅)の関数として示したものであり、各ターンの(すなわち、図1Bの半径方向における)幅は同じである。品質係数は、電磁部品の性能を表しており、品質係数が高くなるほど、電磁部品の性能が向上し、損失が低減される。単一ターンの巻線(図1Aの例のような)は、900を上回る品質係数Qを有するが、第2のターン又はトレースを巻線に加えると、品質係数が約250まで低下(Qが73.4%低下)することがわかる。性能、又は品質係数は、7~10のターンのあたりで最も低く(Qが85%低下)なり、ターン数が10を超えて増加すると上昇する。図2にプロットされている、ターン数に対する品質係数は、平面状電磁部品設計の一例に基づいており、特定の値の品質係数及びターン数は電磁部品の設計によって決まるが、本明細書に記載のターン数の関数としての品質係数の傾向は、異なる設計に対してもやはり同様である。図2の残りの曲線について以下で論じる。
【0049】
電磁部品(例えば、インダクタ、変圧器、ワイヤレス充電コイル)の用途の多くは、ターン数が少な過ぎず(例えば、5未満)、また多過ぎない(例えば、20を超える数)ことを指定している場合がある。いくつかの用途における特定のターン数に対する指定は、薄層導体を有する電磁部品の品質係数が、最小であるターン数(例えば、図2では7ターン)、又は低いQとなる別のターン数と一致する場合があり、その結果、薄層導体が不適切になったり、所望されるほど効果的でなくなったりする可能性がある。
【0050】
本発明者らは、ターン数とは無関係に良好な品質係数を有する薄層導体を有する電磁部品を設計するための技法を開発した。このような技法は、各トレースの半径方向幅を変えることを伴っている。すなわち、同じ層又は平面内の異なるトレースが、異なる半径方向幅を有することができる。トレースの半径方向幅は、中心点からの半径方向距離の関数とすることができる。特に、各トレースの半径方向幅は、巻線のトレースと同じ半径方向の広がりを有する単一のトレース内の交流電流分布に近似させるように選択することができる。本明細書に記載の装置及び技法は、2以上の任意の数のトレース又はターンを有する巻線に適用可能である。
【0051】
このような技法に従って選択されたトレース幅を有する電磁部品は、高い品質係数を実現することができる。例えば、図2に示されているように、このような技法により、品質係数はターン数とは無関係に900前後になる可能性がある(「等しいAC電流」)。この技法は、薄層導体を有する電磁部品の設計の際に自由度を導入することによって、様々な用途において有用な場合がある。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の技法を(例えば、最適に)使用して各ターンの半径方向幅が選ばれる場合、強度のオーダーを可能な限り、又はより大きくすることによって、平面状電磁部品の性能を向上させること、又はその巻線の損失を低減することができる。1つの層内に3つのトレースを有するこのような電磁部品の一例が、図3に示されている。図3は、内側のトレースを外側のトレースよりも小さい幅で形成して、巻線のトレースと同じ半径方向の広がりを有する単一のトレース内の半径方向の交流電流分布に近似させることが可能であることを図示している。内側のトレースの幅が小さくなっている理由は、単一ターンの巻線では、電流は内側エッジの近くに集中する傾向があることを示している図4から、理解することができる。
【0053】
従来、複数ターンの平面状コイルの各ターンの半径方向幅は、各ターンの直流電流(DC)抵抗を等しくすることによって選択することができ、半径方向に外側のターンは、平均ターン長さが長くなっているが、それらは通常、比例して幅が大きくなるように選択されている。戦略(図2の「等しいDC ESR」)は、たとえすべてのトレースの半径方向幅が等しい設計(図2の「等しいトレース幅」)よりも優れた性能をもたらし得るとは言え、結果として得られたこのような複数ターンの巻線の性能は、単一ターンの巻線の37%という低さである(Qが63%低下)。
【0054】
上述したように、本発明者らは、ターン数とは無関係にコイルが良好な品質係数を有する結果となるように、複数ターンの平面状コイルの各ターンの半径方向幅を選択するための技法を開発した。図2に示されているように、単一ターンの巻線を有する平面状コイルは、複数ターンの巻線を有する平面状コイルと比較して、大幅に優れた品質係数を提供する。単一ターンの巻線は、平面状コイルの巻線の導電性材料に半径方向の切れ目がなく、巻線内の半径方向のAC電流分布は、当然、生成された磁力線の大半が、平面状巻線に平行であるように調節され、これにより、巻線の損失が低減されている。対照的に、複数ターンの巻線は、各ターンの幅が、等しくなるように選択されているのか、等しいDC等価直列抵抗(ESR:equivalent series resistance)を提供するように選択されているのかを問わず、巻線の導電性材料に半径方向の切れ目があり、これにより電流分布の自然な調節が中断され、その結果、各ターンのエッジに電流が集中し、著しい巻線の損失につながる。電流集中の問題はまた、各ターンの電流-等しい幅又は等しい直流電流(DC)ESRを有する-により、交流電流(AC)の電流分布が巻線に平行でない磁力線をもたらすため、深刻になる。上述したように、品質係数の高い複数ターンの平面状コイルを実現するための効果的な戦略は、複数ターンのコイル内の相対的なAC電流分布が単一ターンのコイルのAC電流分布を模倣するように、各ターンの幅を選択することである。言いかえれば、N個のターンを有する複数ターンの巻線(Nターンの巻線)の各ターンの幅は、同様の内側半径及び外側半径を有する単一ターンの巻線のAC電流分布をシミュレーション又は計算し、幅が異なるN個の部分環であって、シミュレーション又は計算された単一ターンのAC電流分布に基づくそれぞれの全AC電流が等しい部分環へと、単一ターンの巻線を割り算することによって、選ぶことができる。
【0055】
以下のステップを使用して、内側半径rwin及び外側半径rwoutを有するNターンの巻線の各ターンで等しい交流電流を有するトレース幅を選択することができる。なお、rwinは最も内側のターンの内側半径であり、rwoutは最も外側のターンの外側半径である。この例では、巻線は、半径rwinの円と、半径rwoutの円との間の区域によって画定された環状領域(巻線領域)に位置している。
【0056】
(1)内側半径rwin及び外側半径rwoutを有する単一のトレースの場合の電流密度と半径方向位置との間の関係を得ることができる。いくつかの実施形態では、このような関係(例えば、曲線)はシミュレーション又は計算によって得ることができる。このようなシミュレーションされた関係の一例が、20.25mmの内側半径及び41.75mmの外側半径に関して図4に実線により示されている。
【0057】
(2)所望のターン/トレースの数Nを選択する。ステップ2は、電磁部品の設計プロセスの間に実行することができ、ステップ1の前か、又はステップ1の後に実行することができる。ターン/トレースの数Nは、通常、特定の用途によって定められ、電磁部品の設計のための所与のパラメータとすることができる。Nは、通常、電磁部品が使用される、より大きなシステムの設計の際に選択される。例えば、所望の電流リップルを得るための電力変換装置であれば、特定のインダクタンスが必要になり、こうしたインダクタンスを実現するために、特定のターン数Nが選択されることになる。トレースは、直列又は並列といったような、任意の構成で接続されるように設計することができる。
【0058】
(3)ステップ1から、位置に対する電流密度の関係における全AC電流は、電磁部品の半径方向の広がりを横断する半径方向位置にわたって、ステップ1で求められた関係を積分又は合計することによって求めることができる。このステップはステップ2の前か、又はステップ2の後に実行することができる。
【0059】
(4)ステップ3で求められた全AC電流は、所望のトレースの数Nで割り算される。これにより、ステップ1における電流分布に従ったトレースごとのAC電流が得られる。
(5)各トレースの幅は、ステップ1からの関係を幅にわたって積分又は合計した各トレースのAC電流が、ステップ4で求められたトレースごとのAC電流に等しくなるように求めることができる。例えば、第1のトレース(例えば、最も内側又は最も外側のトレースから始まっている)の幅を最初に計算することができる。幅は、トレースのAC電流がステップ4で求められたAC電流に等しくなるまで、ステップ1で求められた関係又は曲線に沿って積分又は合計することによって計算することができる。残りのトレースの幅は同様に計算することができる。これらの幅は、内側半径から外側半径に、外側半径からに内側半径に、といったように、様々な順序で計算することができる。
【0060】
20.25mmの内側半径、及び41.75mmの外側半径を有する巻線内の半径方向位置の関数としてのAC電流分布が、1)単一ターンのコイル、2)各ターンのトレース幅が等しい複数ターンのコイル、及び3)単一ターンのコイルのAC電流分布を模倣している複数ターンのコイルの場合について、図4に比較されている。単一のターンのコイルは、巻線の内側エッジ及び外側エッジで電流密度が高くなっている連続的なAC電流分布を有する。各ターンのトレース幅が等しい複数ターンのコイルでは、AC電流分布は、単一ターンの巻線のAC電流分布とは大幅に異なるものとなっている。すなわち、電流密度は、各ターンの内側エッジで外側エッジよりも大幅に高くなっており、巻線の損失が大幅に大きくなっている。記載されている技法は、単一ターンの巻線のAC電流分布に基づき各ターンの全AC電流を等しくしたものだが、この技法により、複数ターンのコイルは、各ターンのエッジで電流密度がわずかに高くなっているが、単一ターンの巻線のAC電流分布をほぼ辿るAC電流分布を有するようになっている。各ターンのエッジで電流密度がわずかに高くなったことにより、単一ターンのコイルと比較して、損失が増加しているとは言え、損失の増加は最小限であり、品質係数は、単一ターンの巻線の品質係数とほぼ同等になっている。
【0061】
本明細書に記載の技法の有効性は図2に見ることができ、同図では、AC電流を等しくした複数ターンのコイルの品質係数(「等しいAC電流」)が、1~50ターンまでの間ほぼ一定に保たれ、最大100ターンまでの間で初めて、わずかに減少する。一方、幅又はDC ESRを等しくした複数ターンのコイルの品質係数は、同様の単一ターンのコイルの品質係数よりも大幅に低くなっている。
【0062】
隣接するターン間の半径方向隙間は、製作プロセスによって決まる場合がある。いくつかの実施形態では、半径方向隙間を可能な限り小さくすることができる。これは、間隔は最終的に各ターン/トレースの幅である必要があり、銅の面積が少なくとも2分の1に減少するので性能を低下させると述べている文献とは対照的である。トレース間で可能な限り小さい半径方向隙間を使用すると、銅の面積が大きくなり、巻線領域をより有効に活用することが可能になる。隙間は無限小にすることはできないので、各ターンの幅を減少させることになる。したがって、いくつかの実施形態では、隣接するターン/トレース間の半径方向隙間は、ターン/トレースの幅よりも小さく、0よりも大きい。隙間の微小切り込みに関する正確な位置は、隙間が微小切り込みを取り囲んでいる限り、それほど重要ではない。
【0063】
最終的なコイル設計の特徴付け
以下の説明は、単一の層内にN個の異なるターン/トレースを有するコイルに当てはまる。これらのN個の異なるトレースは並列若しくは直列に、又は直列及び並列の何らかの組み合わせで接続することができ、異なる層内のトレースは並列若しくは直列に、又は直列及び並列の何らかの組み合わせで接続することができる。直列に接続されたN個のトレースが、Nターンのコイルになる。
【0064】
N個のトレースを有する層ごとに、トレースは、k=1~Nとして符号が付され、この場合、k=1は最も内側のターンを表し、k=Nは最も外側のターンを表す。平面状コイルの内側半径はrwinによって表示され、外側半径はrwoutによって表示される。
【0065】
上述した方法に従って設計された平面状コイルは、以下のように特徴付けすることができる。層内にN個のトレースを有するコイルについて、表1は、本明細書に記載の技法に従って巻線を設計するための、k番目のトレースの幅w(この場合、k=1~N-1)を説明している。最も外側のトレースの幅wは、利用可能な全幅、及び他のN-1個のターンの幅によって求められる。
【0066】
【表1】
【0067】
巻線の中にキャパシタンスを加える。
従来のコイルは、2つの端部(終端)を有する誘導電流ループに巻き付けられた1つ又は複数のターンの導電性材料から構築されている。コイルを任意に磁性コアに配置することができる。従来のコイルでは、1つ又は複数のキャパシタを巻線の2つの終端に接続させることができる。巻線の2つの終端に接続された1つ又は複数のキャパシタは、共振キャパシタンスを提供することができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、共振キャパシタンスは、コイルのそれぞれのターンと直列に接続された複数のキャパシタンスに分布させることができる。コイルのターンと直列に接続されたキャパシタンスは、本明細書では直列ターンキャパシタンスとも呼ばれる。直列ターンキャパシタンスのキャパシタンス値は、キャパシタが直列に接続されているターンの誘導インピーダンスを取り消すか、ほぼ取り消すように選択することができる。しかしながら、本明細書に記載の技法及び装置は、厳密な取り消しに限定されない。部分的な取り消し、又は追加の取り消しが有用な場合がある(例えば、容量性リアクタンスがターンの誘導リアクタンスの50%~200%である)。ワイヤレス電力伝送、又は他の共振電力変換の用途では、直列ターンキャパシタンス値は、ターンのインダクタンスと共振し、それがワイヤレス電力伝送又は電力変換に使用される共振をもたらすように選ぶことができる。
【0069】
共振キャパシタンスの一部又はすべてを複数のキャパシタンスの中に直列共振コイルのターンと直列に分布させると、回路、巻線、及びリード線の損失を低減させる場合がある。共振キャパシタンスを1つ又は複数のターンの中に直列ターンキャパシタンスとして分布させることにより、各ターン間、又はターンと戻り電流経路との間の電圧(電位差)が減少するため、寄生容量の励起が低減又は除去される。いくつかの実施形態では、コイル全体に単一の共振キャパシタンスを提供することとは対照的に、電圧定格がより低い容量性デバイスを各ターンと直列であるキャパシタンスに使用することができる。直列ターンキャパシタンスは、コイル内の熱生成の分布をより均一にすることによって、電力動作の向上を可能にし得る。
【0070】
実験結果は、直列ターンキャパシタンスを使用すると、Qが増加することを示している。キャパシタがリード線で接続された(従来の設計)18cmの4ターンのコイルは、品質係数150という測定結果を得ている。各ターンで直列ターンキャパシタを加えると、その品質係数は850に増加する。
【0071】
いくつかの実施形態では、コイルのどのターンにも直列ターンキャパシタンスを含めることができ、優れた性能を提供することができる。しかしながら、コイルの任意の1つ又は複数のターンに対応して直列ターンキャパシタンスを提供することができるので、本明細書に記載の装置及び技法は、この点に関して限定されない。
【0072】
1つ又は複数の直列ターンキャパシタンスを含めることは、限定されるものではないが、リッツ線、PCBトレース、箔、マグネットワイヤ、基板層上に積層された導体、誘導結合電流ループ、多層自己共振構造、多層セラミックキャパシタ(MLCC)プロセスの電極層、低温同時焼成セラミック(LTCC)プロセスの電極層、集積回路トレース、などを含む、いずれかのタイプの導体を用いて構築された共振コイルに適用することができる。導体は、平面状であってもよいし、非平面状であってもよい。非平面状コイルの例には、ソレノイド及びバレル巻線コイルが含まれる。コイル又は巻線は、磁性コアに配置することができるが、それらを磁性コアに配置するかどうかは任意である。
【0073】
直列ターンキャパシタンスは、例えば、スタンドアロン型キャパシタ又は集積化キャパシタなど、種々様々な容量性デバイスによって提供することができる。スタンドアロン型キャパシタは、種々様々なデバイスのいずれかによって形成することができる。スタンドアロン型キャパシタは、所望の動作周波数において支配的な容量性(負の反応性)インピーダンスを有するデバイスであり、それらは、動作周波数における容量性インピーダンスよりも小さい誘導性(正の反応性)インピーダンスを有することができ、任意に、動作周波数における容量性インピーダンスの20%よりも小さいインピーダンスを有することができる。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のスタンドアロン型キャパシタは、ディスクリートのキャパシタである。スタンドアロン型キャパシタは、導電体に(例えば、はんだ付けによって)ガルバニック接続することが可能な個々のパッケージングを有することができる。スタンドアロン型キャパシタは、限定されるものではないが、セラミックキャパシタ、多層セラミックキャパシタ(MLCC)、フィルムキャパシタ、雲母キャパシタ、PTFEキャパシタ、タンタルキャパシタ、タンタル-ポリマーキャパシタ、薄膜キャパシタ、電気二重層キャパシタ、ポリマーキャパシタ、電解キャパシタ、酸化ニオブキャパシタ、シリコンキャパシタ、可変キャパシタ、及びデバイスの任意の組み合わせ、ネットワーク又はアレイのうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0074】
スタンドアロン型キャパシタによって形成された直列ターンキャパシタンスを含むコイルの例が、図5A及び図5Bに示されている。図5Aは、薄導体層で形成された3ターンの巻線を示し、各ターンは、1つ又は複数のスタンドアロン型キャパシタによって形成された直列ターンキャパシタンス51を含む。この例では、単一の直列ターンキャパシタンス51は、各ターンが通っている通路の50%の場所に位置し、2つの終端3から180度離れている。しかしながら、直列ターンキャパシタンス51は、この位置に位置する必要はなく、1ターンに対し1つだけの直列ターンキャパシタンスに限定する必要はない。
【0075】
いくつかの実施形態では、1ターンに対し2つ以上の直列ターンキャパシタンスを提供すると、熱の分布を向上させる場合がある。1ターンに対し2つ以上の直列ターンキャパシタンスが含まれている場合、1つ又は複数の直列キャパシタンスは、導体の一部分によって分離させることができる。図5Bは、各ターンが、互いに180度離れて位置する2つの直列ターンキャパシタンス51を含む一例を示す。しかしながら、任意の数の直列ターンキャパシタンスを含むことができるので、1ターンに対する直列ターンキャパシタンスの数は、2つに限定されない。直列ターンキャパシタンスは、互いに180度離れている必要はなく、ターン内のどこにあってもよい。
【0076】
スタンドアロン型キャパシタの接続及び配置
多層構造では、スタンドアロン型キャパシタ(例えば、ディスクリートのキャパシタ)である直列ターンキャパシタンスを内側層のターンに接続することに課題が生じる。ビアを使用して内側層に接続すると、他の層内の導体領域を犠牲にすることになる場合がある。本発明者らは、空間を有効に使用するやり方は、スタンドアロン型キャパシタがはんだ付けされているキャパシタパッド間の隙間の中間にビアを位置決めすることであると認識した。
【0077】
図6A図6Dは、層1及び層2に4ターンのコイルを有する4層のPCBを示す。層の番号付けは、最上層=1、内側上部層=2、内側下部層=3、下端層=4である。特に、図6Aは、最上層の上面図を示し、図6Bは、図6Aの部分を拡大して示したものであり、キャパシタパッド61のまわり、及びそれらの間の区域を示しており、図6Cは、下端層の底面図を示し、図6Dは、図6Cの部分を拡大して示したものであり、キャパシタパッド61のまわり、及びそれらの間の区域を示している。この例では、層1及び層2は、4ターンの銅巻線であり、層4は、戻りトレース用である。層2がスタンドアロン型キャパシタへの接続にアクセスできるように、層1のキャパシタパッド61は、パッド間に大きな隙間を有するように作られている。これらのパッドの中間は、層2に接続された貫通ビア62であり、キャパシタパッド61は、下端層(層4)に配置され、そこではビア62はキャパシタパッドに短絡されている。これにより、貫通ビアプロセスを使用して内側層にアクセスするやり方が提供され、このやり方は、ブラインドビアプロセス又は入れ子式ビアプロセスほど高価ではない可能性がある。有益なこととして、ビア62は、伝導区域を最上層(層1)から切断しない。この例では、層3はブランク層とすることができる。しかしながら、他の実施形態では、層3はコイル層を含むことができる。
【0078】
集積化直列ターンキャパシタンス
いくつかの実施形態では、直列ターンキャパシタンスは集積化させて形成することができる。薄層導体を有する多層構造では、1つ又は複数の直列ターンキャパシタンスは、誘電体によって分離された多層構造の薄層導体からなる2つの層によって形成することができる。図7は、2つの層の間に集積化直列ターンキャパシタンスを含む構造を図示する。見てわかるように、層1の導体Aは、層2の導体Bと(垂直方向に)部分的に重なり合って、それらの間にキャパシタンスを形成している。導体Bは、層1の導体Cと部分的に重なり合って、それらの間にキャパシタンスを形成している。導体Cは、層2の導体Dと部分的に重なり合って、それらの間にキャパシタンスを形成している。交流電流(AC)は、図7に示されている矢印の方向に沿って、導体A~D及びそれらの集積化直列ターンキャパシタンスを通って流れる。すなわち、交流電流は、集積化キャパシタンスを通って層1及び層2の導体間を行き来して流れる。キャパシタンスは、異なる層の導体間の重なり合いの面積に比例する。したがって、キャパシタンスは、重なり合い面積を変えることによって選択することができる。
【0079】
図8A図8Dは、図7に図示されているような集積化直列ターンキャパシタンスを有するコイルの一例の斜視図(図8A)、上面図(図8B)、下端層(層2)の上面図(図8C)、及び最上層(層1)の上面図(図8D)を示す。層1及び層2内の導体は、同じ層の隣接する導体同士(例えば、A、C)を分離する隙間を有して円周方向に延在し、異なる層の導体が互いに部分的に重なり合って、直列ターンキャパシタンスを形成している。この設計を用いると、交流電流は、コイルの周りを一回りするときに2つの層の間を行き来して流れるので、「ターン」は両方の層の導体を利用する。この例では、コイルは、互いに電気的に隔離された2つのターンを有して示されている。しかしながら、これは一例であり、集積化直列ターンキャパシタンスを有するコイルは、任意の1つ又は複数の数のターンで形成することができる。さらに、ある例は、2つの層を有して示されているが、他の例では、集積化直列ターンキャパシタンスを有するコイルを3つ以上の層に形成することができる。例えば、3層構造では、キャパシタンスを層1と層2との間に形成し、次に層2と層3との間に、次に層3と層2との間に、次に層2と層1との間に形成し、コイルの周りを一回りさせることができる。さらに、内側のターンに8つの直列ターンキャパシタンスを有し、外側のターンに12個の直列ターンキャパシタンスを有する一例が図8A図8Dに示されているが、本明細書に記載の装置及び技法は、1ターンの直列ターンキャパシタンスの数はゼロ以上とすることができるので、この点に関して限定されず、また、直列ターンキャパシタンスの数は、異なるターンに対して同じである場合もあれば、異なる場合もある。さらに、いくつかの実施形態では、電磁部品は異なるタイプの直列ターンキャパシタンスを有する場合がある。例えば、1つ又は複数の直列ターンキャパシタンスを集積化直列ターンキャパシタンスによって形成することができ、また、1つ又は複数の直列ターンキャパシタンスをスタンドアロン型キャパシタによって形成することができる。
【0080】
同心ターン
薄層巻線を有する電磁部品は、図1Bに示されているような、巻線の半径が連続的に変わる螺旋状の構成をした巻線ターンで作られる場合が多い。本発明者らは、異なる半径のターンの間に遷移領域を有する同心ターンを使用することによって、薄層巻線の性能を高めることが可能であることを認識し、評価した。3ターンの巻線について図9に示されているように、ターンは円形とすることができ、遷移領域の外側に不変の半径を有することができる。遷移領域91内では、隣接するターン同士を接続するトレースは、第1のターンに対応する1つの半径方向位置から第2のターンに対応する第2の半径方向位置まで延在している。遷移領域91内では、トレースは、ある半径から別の半径に遷移する半径方向成分を有する方向に延在している。いくつかの実施形態では、遷移領域91は、ある半径から別の半径に遷移するトレースを有する巻線の区域(上面図において)であるが、それは、(最も内側のターンの内側半径から最も外側のターンの外側半径までの間の区域である)巻線の合計面積の4分の1未満である。
【0081】
このような設定には多くの利点がある。利用可能な巻線空間のより効果的な使用が可能になることで、導通損失が低減される。また、図9に示されるように、平面状巻線の内側エッジが、磁性コアのセンターポストをほぼ辿るようになり、これにより、複数ターンの巻線の平面にほぼ平行な磁力線が提供され、このことがひいては、巻線に誘導される渦電流を低減させ、巻線内に放散される損失をさらに低減させる。加えて、螺旋状巻線では、電流の流れは、すべての円周方向位置において少量の半径方向成分を有し、一方、同心ターンを有する巻線では、電流の流れは、巻線ターンの遷移領域の内側にのみ半径方向成分を有する。さらに以下で論じるように、半径方向の電流の流れが小さい領域に集中していることにより、このような半径方向の電流の影響を取り消すこともまた可能になり、さらなる性能向上につながる。
【0082】
遷移領域における電流
単一ターンのコイルは、1次元の電流の流れ(円周方向)を有する。複数ターンのコイルは、あるターンから別のターンへの遷移領域を有することができ、これにより、第2の次元(半径方向)の電流の流れが生じる。図10A及び図10Bで上面図及び底面図に図示されているシミュレーション結果に示されるように、第2の次元のこの電流の流れの結果、電流は遷移領域で導体のエッジに集中している。
【0083】
いくつかの実施形態では、図11A(斜視図)及び図11B(上面図)に示されるように、遷移領域のトレースの半径方向成分に起因する磁場は、遷移領域の上方、又は遷移領域の下方に戻りトレースを位置決めすることによって補正することができる。図12は、図10A及び図10Bと比較して電流密度が減少していることを図示しているシミュレーション結果を示す。
【0084】
完全に覆うことで、電流分布は良くなるが、寄生容量が大きくなる。動作周波数における電力損失は、各ターンが対応するターンのインダクタンスと共振するようにキャパシタンスを加えることによって、制御することができる。しかしながら、寄生容量は、高調波電流の増加につながる場合があり、回路性能に影響を与える場合がある。部分的に覆うことにより、より小さい寄生容量、又は制御可能な寄生容量で、性能の点においては完全に覆うことに近づけることができる。より高調波で高インピーダンスを提供するように寄生容量を制御して、高調波電流を減少させることができる。
【0085】
反対の電流を有する2つのトレース
電磁部品の性能は、平面状導体を互いに注意深く配置することによって向上させることができる。2つの平面状導体が反対方向に流れる電流を有する領域では、図13Aに示されているようにそれらを横に並べて配置するのではなく、図13Bに示されているように、(寸法が大きい方の面同士を互いに隣接させて)2つの平面状導体を積み重ねることによって、より優れた性能を実現することができる。図13Bに示されているように、反対の電流を有する平面状導体を積み重ねることで、それらを横に並べて配置することに比べて電流分布が良くなる。2つの導体を積み重ねる場合(図13B)、2つの導体は必ずしも同じ幅を有する必要はない。一方の導体の幅がもう一方の幅よりも狭ければ、幅が広い方の導体の電流は主として重なり合っている領域に流れることになる。
【0086】
これは、コイルをパワーエレクトロニクス回路に接続するやり方を設計する際に有用である。例えば、図9のリード線の設計は、反対方向に流れる電流を有する2つの巻線リード線が横に並んでいるので、追加の損失につながる場合がある。したがって、リード線の電流は、それらの2つのリード線の内側エッジに集中することになる。
【0087】
図14のリード線の設計は、2つのリード線3は、(先の例の、最も狭い寸法とは対照的に、最も広い寸法を互いに向かい合わせにして)それらが互いに重なり合うように積み重ねられているので、損失が低減される。これにより、リード線の電流はリード線の幅全体を利用することが可能になる。
【0088】
他の実施形態では、図15に示されるように、巻線リード線3は、磁性コアの後板の開口を通って延在する場合がある。代替的に、後板の開口を通って延在する各リード線は、1つ又は複数のピン若しくはワイヤの列と置き換えることができる。
【0089】
本明細書に記載された装置及び手法の様々な態様は、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよいし、前述した実施形態の説明においては記載されていない様々な構成にて用いてもよく、上記の説明又は図面に示された構成要素の詳細及び構成への適用に限定されない。例えば、1つの実施形態で説明した態様を、他の実施形態で説明した態様と任意の方法で組み合わせてもよい。
【0090】
請求要素を修飾するために特許請求の範囲において使用されている「第1」、「第2」、「第3」等の序数表現は、1つの請求要素に対する別の要素の優先、先行又は順序や、ある方法の動作が実行される時間的な順序をそれ自体が暗示するものではなく、ある名称を有している請求要素を、同一の名称(序数表現以外は同一)を有している別の請求要素と区別してこれらの請求要素を区別するための表示を目的としてのみ使用される。
【0091】
「実質的に」、「およそ」、「約」等の用語は、パラメータが記載された値の10%以内、場合によっては5%未満であることを指す。
また、本明細書で使用される表現及び用語は説明を目的とするものであり、限定的ではない。本明細書における「含む」、「備える」、「有する」、「持つ」、「用いる」及びこれらの変形は、その後に記載される項目及びその同等物、ならびに追加の項目を包含することを意味する。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14
図15
【国際調査報告】