(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】抗体薬物コンジュゲート及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20240730BHJP
A61K 38/05 20060101ALI20240730BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240730BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240730BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K38/05 ZNA
A61K39/395 Y
A61K47/54
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505116
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 US2022038730
(87)【国際公開番号】W WO2023009759
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520355792
【氏名又は名称】アール.ピー.シェーラー テクノロジーズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ドレイク,ペネロペ・エム
(72)【発明者】
【氏名】シュプラコフ,ステパン
(72)【発明者】
【氏名】オグンコヤ,アヨデル・オー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076DD52
4C076DD66
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA02
4C084BA14
4C084CA59
4C084NA13
4C084ZB26
4C085AA25
4C085AA26
4C085BB11
4C085EE01
(57)【要約】
本開示は、抗体コンジュゲート(例えば、抗体薬物コンジュゲート(ADC))を提供する。本開示はまた、そのようなコンジュゲートの産生の方法、並びにそれを使用する方法も包含する。また、いくつかの事例では薬学的組成物を含む、本開示のADCを含む組成物も提供される。特定の態様では、個体に治療有効量の本開示のADCを投与することを含む、ADCを使用する方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のコンジュゲートであって、
【化1】
式中、
Zが、CR
4又はNであり、
R
1が、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択され、
R
2及びR
3が、各々独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノアシル、アルキルアミド、置換アルキルアミド、スルホニル、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択されるか、又はR
2及びR
3が、任意選択的に環状に連結されて、5員若しくは6員ヘテロシクリルを形成し、
各R
4が、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノアシル、アルキルアミド、置換アルキルアミド、スルホニル、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択され、
Lが、リンカーであり、
W
1が、薬物であり、
W
2が、抗体である、コンジュゲート。
【請求項2】
Lが、
-(T
1-V
1)
a-(T
2-V
2)
b-(T
3-V
3)
c-(T
4-V
4)
d-(T
5-V
5)
e-(T
6
-V
6)
f-
を含み、
式中、
a、b、c、d、e、及びfが、各々独立して、0又は1であり、a、b、c、d、e、及びfの合計が、1~6であり、
T
1、T
2、T
3、T
4、T
5、及びT
6が、各々独立して、共有結合、(C
1~C
12)アルキル、置換(C
1~C
12)アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリル、(EDA)
w、(PEG)
n、(AA)
p、-(CR
13OH)
m-、4-アミノ-ピペリジン(4AP)、メタ-アミノ-ベンジルオキシ(MABO)、メタ-アミノ-ベンジルオキシカルボニル(MABC)、パラ-アミノ-ベンジルオキシ(PABO)、パラ-アミノ-ベンジルオキシカルボニル(PABC)、パラ-アミノベンジル(PAB)、パラ-アミノ-ベンジルアミノ(PABA)、パラ-アミノ-フェニル(PAP)、パラ-ヒドロキシ-フェニル(PHP)、アセタール、ヒドラジン、ジスルフィド、並びにエステルから選択され、EDAが、エチレンジアミン部分であり、PEGが、ポリエチレングリコールであり、AAが、アミノ酸残基又はアミノ酸類似体であり、各wが、1~20の整数であり、各nが、1~30の整数であり、各pが、1~20の整数であり、各mが、1~12の整数であり、
V
1、V
2、V
3、V
4、V
5、及びV
6が、各々独立して、共有結合、-CO-、-NR
15-、-NR
15(CH
2)
q-、-NR
15(C
6H
4)-、-CONR
15-、-NR
15CO-、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、-S(O)-、-SO
2-、-SO
2NR
15-、-NR
15SO
2-、及び-P(O)OH-からなる群から選択され、各qが、1~6の整数であり、
各R
13が、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリールから選択され、
各R
15が、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択される、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
T
1が、(C
1~C
12)アルキル及び置換(C
1~C
12)アルキルから選択され、
T
2、T
3、T
4、T
5、及びT
6が、各々独立して、共有結合、(C
1~C
12)アルキル、置換(C
1~C
12)アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリル、(EDA)
w、(PEG)
n、(AA)
p、-(CR
13OH)
m-、4-アミノ-ピペリジン(4AP)、MABO、MABC、PABO、PABC、PAB、PABA、PAP、PHP、アセタール基、ヒドラジン、及びエステルから選択され、
V
1、V
2、V
3、V
4、V
5、及びV
6が、各々独立して、共有結合、-CO-、-NR
15-、-NR
15(CH
2)
q-、-NR
15(C
6H
4)-、-CONR
15-、-NR
15CO-、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、-S(O)-、-SO
2-、-SO
2NR
15-、-NR
15SO
2-、及び-P(O)OH-からなる群から選択され、
(PEG)
nが、
【化2】
であり、式中、nが、1~30の整数であり、
EDAが、以下の構造:
【化3】
を有するエチレンジアミン部分であり、式中、yが、1~6の整数であり、rが、0又は1であり、
4-アミノ-ピペリジン(4AP)が、
【化4】
であり、
各R
12が、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、ポリエチレングリコール部分、アリール、及び置換アリールから選択され、いずれか2つの隣接するR
12基が、環状に連結されて、ピペラジニル環を形成し得る、請求項2に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
MABO、MABC、PABO、PABC、PAB、PABA、PAP、及びPHPが各々、任意選択的にグリコシドで置換されている、請求項2又は3に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
前記グリコシドが、グルクロニド、ガラクトシド、グルコシド、マンノシド、フコシド、O-GlcNAc、及びO-GalNAcから選択される、請求項4に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
T
1が、(C
1~C
12)アルキルであり、V
1が、-CO-であり、
T
2が、4APであり、V
2が、-CO-であり、
T
3が、(C
1~C
12)アルキルであり、V
3が、-CO-であり、かつ
d、e、及びfが各々、0であるか、又は
T
1が、(C
1~C
12)アルキルであり、V
1が、-CO-であり、
T
2が、4APであり、V
2が、存在せず、
T
3が、(PEG)
nであり、V
3が、-CO-であり、かつ
d、e、及びfが各々、0であるか、又は
T
1が、(C
1~C
12)アルキルであり、V
1が、-CO-であり、
T
2が、4APであり、V
2が、存在せず、
T
3が、(PEG)
nであり、V
3が、-CO-であり、
T
4が、(AA)
pであり、V
4が、存在せず、
T
5が、PABCであり、V
5が、存在せず、かつ
fが、0であるか、又は
T
1が、(C
1~C
12)アルキルであり、V
1が、-CONH-であり、
T
2が、(PEG)
nであり、V
2が、-CO-であり、
T
3が、(AA)
pであり、V
3が、存在せず、
T
4が、PABCであり、V
4が、存在せず、かつ
e及びfが各々、0であるか、又は
T
1が、(C
1~C
12)アルキルであり、V
1が、-CO-であり、
T
2が、アミノ酸類似体であり、V
2が、-NH-であり、
T
3が、(PEG)
nであり、V
3が、-CO-であり、
T
4が、(AA)
pであり、V
4が、存在せず、
T
5が、PABCであり、V
5が、存在せず、かつ
fが、0である、請求項2~5のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
前記リンカーLが、以下から選択される構造を有し、
【化5】
【化6】
が、式(I)中のNへのLの結合を表し、*が、W
1へのLの結合を表す、請求項1~6のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
前記薬物が、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)である、請求項1~7のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
前記コンジュゲートが、以下:
【化7】
からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
前記抗体が、IgG1抗体である、請求項1~9のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
前記抗体が、IgG1カッパ抗体である、請求項10に記載のコンジュゲート。
【請求項12】
前記抗体が、fGly’を有する配列を含み、fGly’が、前記リンカーを通して前記薬物にカップリングされたアミノ酸残基である、請求項1~11のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
前記配列が、前記抗体の重鎖定常領域のC末端に位置付けられている、請求項1~12のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項14】
前記配列が、前記抗体の軽鎖定常領域内に位置付けられている、請求項1~12のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項15】
前記配列が、前記抗体の重鎖CH1領域内に位置付けられている、請求項1~12のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項16】
前記配列が、前記抗体の重鎖CH2領域内に位置付けられている、請求項1~12のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項17】
前記配列が、前記抗体の重鎖CH3領域内に位置付けられている、請求項1~12のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項18】
式(III)の化合物であって、
【化8】
式中、
Zが、CR
4又はNであり、
R
2及びR
3が、各々独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノアシル、アルキルアミド、置換アルキルアミド、スルホニル、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択されるか、又はR
2及びR
3が、任意選択的に環状に連結されて、5員若しくは6員ヘテロシクリルを形成し、
各R
4が、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノアシル、アルキルアミド、置換アルキルアミド、スルホニル、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択され、
Lが、リンカーであり、
W
1が、薬物である、化合物。
【請求項19】
Lが、
-(T
1-V
1)
a-(T
2-V
2)
b-(T
3-V
3)
c-(T
4-V
4)
d-(T
5-V
5)
e-(T
6
-V
6)
f-
を含み、
式中、
a、b、c、d、e、及びfが、各々独立して、0又は1であり、a、b、c、d、e、及びfの合計が、1~6であり、
T
1、T
2、T
3、T
4、T
5、及びT
6が、各々独立して、共有結合、(C
1~C
12)アルキル、置換(C
1~C
12)アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリル、(EDA)
w、(PEG)
n、(AA)
p、-(CR
13OH)
m-、4-アミノ-ピペリジン(4AP)、メタ-アミノ-ベンジルオキシ(MABO)、メタ-アミノ-ベンジルオキシカルボニル(MABC)、パラ-アミノ-ベンジルオキシ(PABO)、パラ-アミノ-ベンジルオキシカルボニル(PABC)、パラ-アミノベンジル(PAB)、パラ-アミノ-ベンジルアミノ(PABA)、パラ-アミノ-フェニル(PAP)、パラ-ヒドロキシ-フェニル(PHP)、アセタール、ヒドラジン、ジスルフィド、並びにエステルから選択され、EDAが、エチレンジアミン部分であり、PEGが、ポリエチレングリコールであり、AAが、アミノ酸残基又はアミノ酸類似体であり、各wが、1~20の整数であり、各nが、1~30の整数であり、各pが、1~20の整数であり、各mが、1~12の整数であり、
V
1、V
2、V
3、V
4、V
5、及びV
6が、各々独立して、共有結合、-CO-、-NR
15-、-NR
15(CH
2)
q-、-NR
15(C
6H
4)-、-CONR
15-、-NR
15CO-、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、-S(O)-、-SO
2-、-SO
2NR
15-、-NR
15SO
2-、及び-P(O)OH-からなる群から選択され、各qが、1~6の整数であり、
各R
13が、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリールから選択され、
各R
15が、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択される、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
T
1が、(C
1~C
12)アルキル及び置換(C
1~C
12)アルキルから選択され、
T
2、T
3、T
4、T
5、及びT
6が、各々独立して、共有結合、(C
1~C
12)アルキル、置換(C
1~C
12)アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリル、(EDA)
w、(PEG)
n、(AA)
p、-(CR
13OH)
m-、4-アミノ-ピペリジン(4AP)、MABO、MABC、PABO、PABC、PAB、PABA、PAP、PHP、アセタール基、ヒドラジン、及びエステルから選択され、
V
1、V
2、V
3、V
4、V
5、及びV
6が、各々独立して、共有結合、-CO-、-NR
15-、-NR
15(CH
2)
q-、-NR
15(C
6H
4)-、-CONR
15-、-NR
15CO-、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、-S(O)-、-SO
2-、-SO
2NR
15-、-NR
15SO
2-、及び-P(O)OH-からなる群から選択され、
(PEG)
nが、
【化9】
であり、式中、nが、1~30の整数であり、
EDAが、以下の構造:
【化10】
を有するエチレンジアミン部分であり、式中、yが、1~6の整数であり、rが、0又は1であり、
4-アミノ-ピペリジン(4AP)が、
【化11】
であり、
各R
12が、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、ポリエチレングリコール部分、アリール、及び置換アリールから選択され、いずれか2つの隣接するR
12基が、環状に連結されて、ピペラジニル環を形成し得る、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
MABO、MABC、PABO、PABC、PAB、PABA、PAP、及びPHPが各々、任意選択的にグリコシドで置換されている、請求項19又は20に記載の化合物。
【請求項22】
前記グリコシドが、グルクロニド、ガラクトシド、グルコシド、マンノシド、フコシド、O-GlcNAc、及びO-GalNAcから選択される、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
T
1が、(C
1~C
12)アルキルであり、V
1が、-CO-であり、
T
2が、4APであり、V
2が、-CO-であり、
T
3が、(C
1~C
12)アルキルであり、V
3が、-CO-であり、かつ
d、e、及びfが各々、0であるか、又は
T
1が、(C
1~C
12)アルキルであり、V
1が、-CO-であり、
T
2が、4APであり、V
2が、存在せず、
T
3が、(PEG)
nであり、V
3が、-CO-であり、かつ
d、e、及びfが各々、0であるか、又は
T
1が、(C
1~C
12)アルキルであり、V
1が、-CO-であり、
T
2が、4APであり、V
2が、存在せず、
T
3が、(PEG)
nであり、V
3が、-CO-であり、
T
4が、AAであり、V
4が、存在せず、
T
5が、PABCであり、V
5が、存在せず、かつ
fが、0であるか、又は
T
1が、(C
1~C
12)アルキルであり、V
1が、-CONH-であり、
T
2が、(PEG)
nであり、V
2が、-CO-であり、
T
3が、AAであり、V
3が、存在せず、
T
4が、PABCであり、V
4が、存在せず、かつ
e及びfが各々、0であるか、又は
T
1が、(C
1~C
12)アルキルであり、V
1が、-CO-であり、
T
2が、アミノ酸類似体であり、V
2が、-NH-であり、
T
3が、(PEG)
nであり、V
3が、-CO-であり、
T
4が、AAであり、V
4が、存在せず、
T
5が、PABCであり、V
5が、存在せず、かつ
fが、0である、請求項19~22のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
前記リンカーLが、以下から選択される構造を有し、
【化12】
【化13】
が、式(I)中のNへのLの結合を表し、*が、W
1へのLの結合を表す、請求項18~23のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
前記薬物が、MMAEである、請求項18~24のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項26】
前記化合物が、
【化14】
からなる群から選択される、請求項18~25のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項27】
薬学的組成物であって、
請求項1~17のいずれか一項に記載のコンジュゲートと、
薬学的に許容され得る賦形剤と、を含む、薬学的組成物。
【請求項28】
方法であって、
対象に有効量の請求項1~17のいずれか一項に記載のコンジュゲートを投与することを含む、方法。
【請求項29】
対象においてがんを治療する方法であって、
前記対象に治療有効量の請求項27に記載の薬学的組成物を投与することを含み、前記投与することが、前記対象においてがんを治療するために有効である、方法。
【請求項30】
前記がんが、乳がん、卵巣がん、肺がん、又は胃がんである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
対象における標的部位に薬物を送達する方法であって、
前記対象に請求項27に記載の薬学的組成物を投与することを含み、前記投与することが、前記対象における前記標的部位に治療有効量の前記薬物を送達するために有効である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月30日に出願された米国仮出願第63/227,666号、2022年3月23日に出願された米国仮出願第63/322,914号、及び2022年5月23日に出願された米国仮出願第63/344,932号に対する優先権の利益を主張し、これらの各々の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
序論
タンパク質-小分子治療コンジュゲートの分野は大幅に進化し、今後数年間でより多くの薬物を提供する見込みを有するいくつかの臨床的に有益な薬物が提供されている。タンパク質-コンジュゲート治療薬は、例えば、特異性、機能の多様性、及び比較的低い標的外活性により、いくつかの利点を提供することができ、より少ない副作用をもたらす。タンパク質の化学修飾は、これらの利点をより強力に、安定に、又は多様にすることによって、これらの利点を拡張し得る。
【0003】
いくつかの標準的な化学的転換は、タンパク質に対して翻訳後修飾を作製及び操作するために一般的に使用される。特定のアミノ酸の側鎖を選択的に修飾することができる、いくつかの方法が存在する。例えば、カルボン酸側鎖(アスパルテート及びグルタメート)は、水溶性カルボジイミド試薬による初期活性化及びアミンによる後続の反応によって標的化され得る。同様に、リジンは、活性化したエステル又はイソチオシアネートの使用を通して標的化することができ、システインチオールは、マレイミド及びα-ハロ-カルボニルを用いて標的化することができる。
【0004】
化学改変タンパク質治療薬又は試薬の作製に対する1つの重大な障害は、生物学的に活性な均質な形態でのタンパク質の産生である。ポリペプチドに対する薬物又は検出可能な標識のコンジュゲーションは、制御が困難であり、結合した薬物分子の数及び化学的コンジュゲーションの位置が異なるコンジュゲートの不均一な混合物をもたらし得る。いくつかの事例において、合成有機化学のツールを使用して、コンジュゲーションの部位及び/又はポリペプチドにコンジュゲートされた薬物若しくは検出可能な標識を制御して、ポリペプチド上の化学結合の正確かつ選択的な形成を指示することが望ましい場合がある。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、抗体コンジュゲート(例えば、抗体薬物コンジュゲート(ADC))を提供する。本開示はまた、そのようなコンジュゲートの産生の方法、並びにそれを使用する方法も包含する。また、いくつかの事例では薬学的組成物を含む、本開示のADCを含む組成物も提供される。特定の態様では、個体に治療有効量の本開示のADCを投与することを含む、ADCを使用する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】パネルAは、標準的な分子生物学的技術を使用して、抗体骨格に沿った所望の場所に挿入されたホルミルグリシン生成酵素(FGE)認識配列を示す。発現時に、真核細胞に対して内因性であるFGEは、コンセンサス配列内のCysのホルミルグリシン残基(fGly)への変換を触媒する。
図1のパネルBは、ヒドラジノ-イソ-ピクテ-スペングラー(HIPS)リンカー及びペイロードと反応して、部位特異的にコンジュゲート されたADCを生成する、アルデヒド部分(抗体当たり2個)を保有する抗体を示す。
図1のパネルCは、中間体ヒドラゾニウムイオン、続いて求核性インドールによる分子内アルキル化を通して進行し、安定したC-C結合を生成する、HIPS化学を示す。
【
図2】本開示の実施形態による、投与後5日目のラットにおけるリンパ球集団のグラフを示す。
【
図3】本開示の実施形態による、投与後5日目のラットにおける循環アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)レベルのグラフを示す。
【
図4】本開示の実施形態による、投与後5日目のラットにおける循環アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルのグラフを示す。
【
図5】本開示の実施形態による、投与後5日目のラットにおける赤血球数のグラフを示す。
【
図6】本開示の実施形態による、投与後5日目のラットにおけるヘモグロビンレベルのグラフを示す。
【
図7】本開示の実施形態による、投与後5日目のラットにおけるヘマトクリットレベルのグラフを示す。
【
図8】本開示の実施形態による、7日目の単回用量のADCを用いた第1のGranta異種移植研究のグラフを示す。
【
図9】本開示の実施形態による、0日目の単回2mg/kg用量のADCを用いた第2のGranta異種移植研究のグラフを示す。内部タグ58Q及び91Nを使用することにより、ベドチンコンジュゲートと比較して、半分のDARで優れた効能が得られた。
【
図10】本開示の実施形態による、ビヒクル又はADCを繰り返し投与されたラットにおける循環好中球数のグラフを示す。
【
図11】本開示の実施形態による、ビヒクル又はADCを繰り返し投与されたラットにおける循環単球数のグラフを示す。
【
図12】本開示の実施形態による、ビヒクル又はADCを繰り返し投与されたラットにおける赤血球数のグラフを示す。
【
図13】本開示の実施形態による、ビヒクル又はADCを繰り返し投与されたラットにおけるヘモグロビンレベルのグラフを示す。
【
図14】本開示の実施形態による、ビヒクル又はADCを繰り返し投与されたラットにおけるヘマトクリットレベルのグラフを示す。
【
図15】本開示の実施形態による、ラット交差反応性ネクチン-4ADCを繰り返し投与されたラットにおける臨床観察のグラフを示す。矢印は、投与日を示す。化合物5コンジュゲートを投与された動物では何ら観察結果が見られなかった一方で、ベドチン投与群での臨床観察は、17日目に平均2.5であり、動物の死で頂点に達した。
【
図16A】アルデヒドタグ付きIgポリペプチドの生成のための可能性のある修飾部位を示す部位マップを描写する。上側の配列は、IgG1軽鎖ポリペプチドの保存領域のアミノ酸配列(配列番号1)であり、Ig軽鎖中の可能性のある修飾部位を示し、下側の配列は、Ig重鎖ポリペプチドの保存領域のアミノ酸配列(配列番号2)(GenBankアクセッション番号AAG00909)であり、Ig重鎖中の可能性のある修飾部位を示す。重鎖及び軽鎖の付番は、完全長重鎖及び軽鎖に基づく。
【
図16B】IgG1(配列番号3、GenBank P01857.1)、IgG2(配列番号4、GenBank P01859.2)、IgG3(配列番号5、GenBank P01860.2)、IgG4(配列番号6、GenBank AAB59394.1)、及びIgA(配列番号7、GenBank AAAT74070)のホモサピエンス免疫グロブリン重鎖定常領域のアラインメントを描写し、アルデヒドタグが免疫グロブリン重鎖中に提供され得る修飾部位を示す。重鎖及び軽鎖の付番は、全重鎖及び軽鎖に基づく。
【
図16C】IgG1(配列番号3、GenBank P01857.1)、IgG2(配列番号4、GenBank P01859.2)、IgG3(配列番号5、GenBank P01860.2)、IgG4(配列番号6、GenBank AAB59394.1)、及びIgA(配列番号7、GenBank AAAT74070)のホモサピエンス免疫グロブリン重鎖定常領域のアラインメントを描写し、アルデヒドタグが免疫グロブリン重鎖中に提供され得る修飾部位を示す。重鎖及び軽鎖の付番は、全重鎖及び軽鎖に基づく。
【
図16D】免疫グロブリン軽鎖定常領域のアラインメントを描写し、アルデヒドタグが免疫グロブリン軽鎖中に提供され得る修飾部位を示す。配列1=ホモサピエンスカッパ軽鎖定常領域、GenBank CAA75031.1、配列番号8。配列2=ホモサピエンスカッパ軽鎖定常領域、GenBank BAC0168.1、配列番号9。配列3=ホモサピエンスラムダ軽鎖定常領域、GenBank CAA75033、配列番号10。配列4=ハツカネズミ軽鎖定常領域、GenBank AAB09710.1、配列番号11。配列5=ドブネズミ軽鎖定常領域、GenBank AAD10133、配列番号12。
【
図17】0日目の単回静脈内用量の列挙された抗CD30ADCを用いたL-82異種移植研究のグラフを示す。VH4/VL4化合物8(RED-601)は、内部91Nタグを使用し、Adcetrisと比較して半分のペイロード用量を送達する。50%ADC投与(1.5mg/kg)及び同等投与(3mg/kg)では、VH4/VL4化合物8は、Adcetrisと比較して同等に有効であり、全ての治療群が8匹のマウス/群のうち8件の完全奏効を示した。VH4/VL4抗体単独は、最小限の活性を有していた。
【
図18】0日目の単回静脈内用量の列挙された抗CD30ADCを用いたKarpas299異種移植研究のグラフを示す。VH4/VL4化合物8(RED-601)は、内部91Nタグを使用し、Adcetrisと比較して半分のペイロード用量を送達する。50%ADC投与(1.5mg/kg)及び同等投与(3mg/kg)では、VH4/VL4化合物8は、Adcetrisと比較して5/6及び6/6件の完全奏効をもたらし、Adcetrisは、VH4/VL4化合物8と比較して2倍のペイロード量ではあるが、6/6件の完全奏効をもたらした。VH4/VL4抗体単独は、最小限の活性を有していた。
【
図19】0日目の単回2.5又は7.5mg/kg静脈内用量の列挙された抗ネクチン-4ADCを用いたNCI-H1781異種移植研究のグラフを示す。VH4/VL1化合物8(RED-601)及びVH4/VL5化合物8は両方とも、内部91Nタグを使用し、Padcevと比較して半分のペイロード用量を送達する。アイソタイプ対照ADCは、最小限の活性を有していた。
【
図20】多用量非GLPラット毒性試験#2からのラット血漿試料の毒物動態分析を示す。分析は、投与レベルを確認し、エンホルツマブベドチンコンジュゲートに対するエンホルツマブ化合物5コンジュゲートのインビボ安定性の改善を示す。
【0007】
定義
「アルキル」は、1~6個の炭素原子、又は1~5個、又は1~4個、又は1~3個の炭素原子などの1~10個の炭素原子を有する一価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。この用語は、例として、メチル(CH3-)、エチル(CH3CH2-)、n-プロピル(CH3CH2CH2-)、イソプロピル((CH3)2CH-)、n-ブチル(CH3CH2CH2CH2-)、イソブチル((CH3)2CHCH2-)、sec-ブチル((CH3)(CH3CH2)CH-)、t-ブチル((CH3)3C-)、n-ペンチル(CH3CH2CH2CH2CH2-)、及びネオペンチル((CH3)3CCH2-)などの直鎖及び分岐鎖ヒドロカルビル基を含む。
【0008】
「置換アルキル」という用語は、本明細書で定義されるアルキル基であって、アルキル鎖中の1つ以上の炭素原子(C1炭素原子を除く)が、任意選択的に、-O-、-N-、-S-、-S(O)n-(式中、nが0~2である)、-NR-(式中、Rが水素又はアルキルである)などのヘテロ原子で置き換えられ、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、-SO-アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO2-アルキル、-SO2-アリール、-SO2-ヘテロアリール、及び-NRaRbからなる群から選択される1~5個の置換基を有し、R’及びR”が、同じであるか、又は異なり得、水素、任意選択的に置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び複素環式から選択される、アルキル基を指す。
【0009】
「アルキレン」は、好ましくは、直鎖又は分岐鎖のいずれかである、1~6個、より好ましくは1~3個の炭素原子を有し、任意選択的に-O-、-NR10-、NR10C(O)-、-C(O)NR10-などから選択される1つ以上の基で中断されている、二価脂肪族ヒドロカルビル基を指す。この用語は、例として、メチレン(-CH2-)、エチレン(-CH2CH2-)、n-プロピレン(-CH2CH2CH2-)、イソプロピレン(-CH2CH(CH3)-)、(-C(CH3)2CH2CH2-)、(-C(CH3)2CH2C(O)-)、(-C(CH3)2CH2C(O)NH-)、(-CH(CH3)CH2-)などを含む。
【0010】
「置換アルキレン」は、以下の「置換」の定義において炭素について記載されているように、置換基で置き換えられた1~3個の水素を有するアルキレン基を指す。
【0011】
「アルカン」という用語は、本明細書で定義されるアルキル基及びアルキレン基を指す。
【0012】
「アルキルアミノアルキル」、「アルキルアミノアルケニル」、及び「アルキルアミノアルキニル」という用語は、R’NHR”-基を指し、式中、R’は、本明細書で定義されるアルキル基であり、R”は、本明細書で定義されるアルキレン、アルケニレン又はアルキニレン基である。
【0013】
「アルカリール」又は「アラルキル」という用語は、-アルキレン-アリール及び-置換アルキレン-アリール基を指し、アルキレン、置換アルキレン、及びアリールは、本明細書で定義される。
【0014】
「アルコキシ」は、-O-アルキル基を指し、アルキルは、本明細書で定義されるとおりである。アルコキシは、例として、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシなどを含む。「アルコキシ」という用語はまた、アルケニル-O-、シクロアルキル-O-、シクロアルケニル-O-、及びアルキニル-O-基を指し、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、及びアルキニルは、本明細書で定義されるとおりである。
【0015】
「置換アルコキシ」という用語は、置換アルキル-O-、置換アルケニル-O-、置換シクロアルキル-O-、置換シクロアルケニル-O-、及び置換アルキニル-O-基を指し、置換アルキル、置換アルケニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、及び置換アルキニルは、本明細書で定義されるとおりである。
【0016】
「アルコキシアミノ」という用語は、-NH-アルコキシ基を指し、アルコキシは、本明細書で定義される。
【0017】
「ハロアルコキシ」という用語は、アルキル-O-基を指し、アルキル基上の1つ以上の水素原子は、ハロ基で置換されており、例として、トリフルオロメトキシなどの基を含む。
【0018】
「ハロアルキル」という用語は、上記に記載される置換アルキル基を指し、アルキル基上の1つ以上の水素原子は、ハロ基で置換されている。そのような基の例としては、限定されないが、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロエチルなどのフルオロアルキル基が挙げられる。
【0019】
「アルキルアルコキシ」という用語は、-アルキレン-O-アルキル、アルキレン-O-置換アルキル、置換アルキレン-O-アルキル、及び置換アルキレン-O-置換アルキル基を指し、アルキル、置換アルキル、アルキレン及び置換アルキレンは、本明細書で定義されるとおりである。
【0020】
「アルキルチオアルコキシ」という用語は、-アルキレン-S-アルキル、アルキレン-S-置換アルキル、置換アルキレン-S-アルキル、及び置換アルキレン-S-置換アルキル基を指し、アルキル、置換アルキル、アルキレン、及び置換アルキレンは、本明細書で定義されるとおりである。
【0021】
「アルケニル」は、2~6個の炭素原子、好ましくは2~4個の炭素原子を有し、少なくとも1個、好ましくは1~2個の二重結合不飽和部位を有する、直鎖又は分岐鎖ヒドロカルビル基を指す。この用語は、例として、ビ-ビニル、アリル、及びブタ-3-エン-1-イルを含む。この用語には、シス及びトランス異性体、又はこれらの異性体の混合物が含まれる。
【0022】
「置換アルケニル」という用語は、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO2-アルキル、-SO2-置換アルキル、-SO2-アリール、及び-SO2-ヘテロアリールから選択される1~5個の置換基、又は1~3個の置換基を有する、本明細書で定義されるアルケニル基を指す。
【0023】
「アルキニル」は、2~6個の炭素原子、好ましくは2~3個の炭素原子を有し、少なくとも1個、好ましくは1~2個の三重結合不飽和部位を有する、直鎖又は分岐鎖一価ヒドロカルビル基を指す。そのようなアルキニル基の例としては、アセチレニル(-C≡CH)、及びプロパルギル(-CH2C≡CH)が挙げられる。
【0024】
「置換アルキニル」という用語は、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO2-アルキル、-SO2-置換アルキル、-SO2-アリール、及び-SO2-ヘテロアリールから選択される1~5個の置換基、又は1~3個の置換基を有する、本明細書で定義されるアルキニル基を指す。
【0025】
「アルキニルオキシ」は、-O-アルキニル基を指し、アルキニルは、本明細書で定義されるとおりである。アルキニルオキシは、例として、エチニルオキシ、プロピニルオキシなどを含む。
【0026】
「アシル」は、H-C(O)-、アルキル-C(O)-、置換アルキル-C(O)-、アルケニル-C(O)-、置換アルケニル-C(O)-、アルキニル-C(O)-、置換アルキニル-C(O)-、シクロアルキル-C(O)-、置換シクロアルキル-C(O)-、シクロアルケニル-C(O)-、置換シクロアルケニル-C(O)-、アリール-C(O)-、置換アリール-C(O)-、ヘテロアリール-C(O)-、置換ヘテロアリール-C(O)-、ヘテロシクリル-C(O)-、及び置換ヘテロシクリル-C(O)-基を指し、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、及び置換複素環式は、本明細書で定義されるとおりである。例えば、アシルは、「アセチル」基CH3C(O)-を含む。
【0027】
「アシルアミノ」は、-NR20C(O)アルキル、-NR20C(O)置換アルキル、NR20C(O)シクロアルキル、-NR20C(O)置換シクロアルキル、-NR20C(O)シクロアルケニル、NR20C(O)置換シクロアルケニル、-NR20C(O)アルケニル、-NR20C(O)置換アルケニル、-NR20C(O)アルキニル、-NR20C(O)置換アルキニル、-NR20C(O)アリール、NR20C(O)置換アリール、NR20C(O)ヘテロアリール、NR20C(O)置換ヘテロアリール、NR20C(O)複素環式、及びNR20C(O)置換複素環式基を指し、式中、R20は、水素又はアルキルであり、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、及び置換複素環式は、本明細書で定義されるとおりである。
【0028】
「アミノカルボニル」又は「アミノアシル」という用語は、C(O)NR21R22基を指し、式中、R21及びR22は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、及び置換複素環式からなる群から選択され、R21及びR22は、任意選択的に、それらに結合した窒素とともに結合して、複素環式又は置換複素環式基を形成し、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、及び置換複素環式は、本明細書で定義されるとおりである。
【0029】
「アミノカルボニルアミノ」は、-NR21C(O)NR22R23基を指し、式中、R21、R22、及びR23は、独立して、水素、アルキル、アリール、若しくはシクロアルキルから選択されるか、又は2つのR基は、結合してヘテロシクリル基を形成する。
【0030】
「アルコキシカルボニルアミノ」という用語は、-NRC(O)OR基を指し、式中、各Rは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルであり、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリール、及びヘテロシクリルは、本明細書で定義されるとおりである。
【0031】
「アシルオキシ」という用語は、アルキル-C(O)O-、置換アルキル-C(O)O-、シクロアルキル-C(O)O-、置換シクロアルキル-C(O)O-、アリール-C(O)O-、ヘテロアリール-C(O)O-、及びヘテロシクリル-C(O)O-基を指し、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、及びヘテロシクリルは、本明細書で定義されるとおりである。
【0032】
「アミノスルホニル」は、-SO2NR21R22基を指し、式中、R21及びR22は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、置換複素環式からなる群から選択され、R21及びR22は、任意選択的に、それらに結合した窒素とともに結合して、複素環式又は置換複素環式基を形成し、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、及び置換複素環式は、本明細書で定義されるとおりである。
【0033】
「スルホニルアミノ」は、-NR21SO2R22基を指し、式中、R21及びR22は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、及び置換複素環式からなる群から選択され、R21及びR22は、任意選択的に、それらに結合した原子とともに結合して、複素環式又は置換複素環式基を形成し、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、及び置換複素環式は、本明細書で定義されるとおりである。
【0034】
「アリール」又は「Ar」は、単環(例えば、フェニル基に存在するものなど)、又は結合点が芳香環の原子を通すことを条件として、縮合環が芳香族である場合もそうではない場合もある、複数の縮合環を有する環系(そのような芳香環系の例には、ナフチル、アントリル、及びインダニルが含まれる)を有する、6~18個の炭素原子の一価芳香族炭素環式基を指す。この用語は、例として、フェニル及びナフチルを含む。アリール置換基の定義によって別段の制約を受けない限り、そのようなアリール基は、アシルオキシ、ヒドロキシ、チオール、アシル、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換アルキル、置換アルコキシ、置換アルケニル、置換アルキニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アシルアミノ、アルカリール、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、カルボキシルアルキル、シアノ、ハロゲン、ニトロ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO2-アルキル、-SO2-置換アルキル、-SO2-アリール、-SO2-ヘテロアリール、及びトリハロメチルから選択される1~5個の置換基、又は1~3個の置換基で任意選択的に置換され得る。
【0035】
「アリールオキシ」は、-O-アリール基を指し、アリールは、本明細書で定義されるとおりであり、例として、フェノキシ、ナフトキシなどを含み、同様に本明細書で定義される任意選択的に置換されたアリール基を含む。
【0036】
「アミノ」は、-NH2基を指す。
【0037】
「置換アミノ」という用語は、-NRR基を指し、式中、各Rは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、ヘテロアリール、及びヘテロシクリルからなる群から選択され、但し、少なくとも1つのRが水素ではないことを条件とする。
【0038】
「アジド」という用語は、-N3基を指す。
【0039】
「カルボキシル」、「カルボキシ」、又は「カルボキシレート」は、-CO2H又はその塩を指す。
【0040】
「カルボキシルエステル」若しくは「カルボキシエステル」、又は「カルボキシアルキル」若しくは「カルボキシルアルキル」という用語は、-C(O)O-アルキル、-C(O)O-置換アルキル、-C(O)O-アルケニル、-C(O)O-置換アルケニル、-C(O)O-アルキニル、-C(O)O-置換アルキニル、-C(O)O-アリール、-C(O)O-置換アリール、-C(O)O-シクロアルキル、-C(O)O-置換シクロアルキル、-C(O)O-シクロアルケニル、-C(O)O-置換シクロアルケニル、-C(O)O-ヘテロアリール、-C(O)O-置換ヘテロアリール、-C(O)O-複素環式、及び-C(O)O-置換複素環式基を指し、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、及び置換複素環式は、本明細書で定義されるとおりである。
【0041】
「(カルボキシルエステル)オキシ」又は「カーボネート」は、-O-C(O)O-アルキル、-O-C(O)O-置換アルキル、-O-C(O)O-アルケニル、-O-C(O)O-置換アルケニル、-O-C(O)O-アルキニル、-O-C(O)O-置換アルキニル、-O-C(O)O-アリール、-O-C(O)O-置換アリール、-O-C(O)O-シクロアルキル、-O-C(O)O-置換シクロアルキル、-O-C(O)O-シクロアルケニル、-O-C(O)O-置換シクロアルケニル、-O-C(O)O-ヘテロアリール、-O-C(O)O-置換ヘテロアリール、-O-C(O)O-複素環式、及び-O-C(O)O-置換複素環式基を指し、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、及び置換複素環式は、本明細書で定義されるとおりである。
【0042】
「シアノ」又は「ニトリル」は、-CN基を指す。
【0043】
「シクロアルキル」は、単一の環式環、又は縮合環式環系、架橋環系、及びスピロ環系を含む複数の環式環を有する、3~10個の炭素原子の環式アルキル基を指す。好適なシクロアルキル基の例としては、例えば、アダマンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチルなどが挙げられる。そのようなシクロアルキル基としては、例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチルなどの単環構造、又はアダマンタニルなどの多重環構造が挙げられる。
【0044】
「置換シクロアルキル」という用語は、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO2-アルキル、-SO2-置換アルキル、SO2-アリール、及び-SO2-ヘテロアリールから選択される1~5個の置換基、又は1~3個の置換基を有するシクロアルキル基を指す。
【0045】
「シクロアルケニル」は、単一又は複数の環を有し、かつ少なくとも1個の二重結合、好ましくは1~2個の二重結合を有する、3~10個の炭素原子の非芳香族環状アルキル基を指す。
【0046】
「置換シクロアルケニル」という用語は、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO2-アルキル、-SO2-置換アルキル、-SO2-アリール、及び-SO2-ヘテロアリールから選択される1~5個の置換基、又は1~3個の置換基を有するシクロアルケニル基を指す。
【0047】
「シクロアルキニル」は、単一又は複数の環を有し、かつ少なくとも1個の三重結合を有する、5~10個の炭素原子の非芳香族シクロアルキル基を指す。
【0048】
「シクロアルコキシ」は、-O-シクロアルキルを指す。
【0049】
「シクロアルケニルオキシ」は、-O-シクロアルケニルを指す。
【0050】
「ハロ」又は「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードを指す。
【0051】
「ヒドロキシ」又は「ヒドロキシル」は、-OH基を指す。
【0052】
「ヘテロアリール」は、環内の1~10個の炭素原子などの1~15個の炭素原子、並びに酸素、窒素、及び硫黄からなる群から選択される1~10個のヘテロ原子の芳香族基を指す。そのようなヘテロアリール基は、環系内に単一の環(ピリジニル、イミダゾリル、若しくはフリルなど)又は(例えば、インドリジニル、キノリニル、ベンゾフラン、ベンズイミダゾリル、又はベンゾチエニルなどの基におけるような)複数の縮合環を有することができ、環系内の少なくとも1つの環は、芳香族である。価数の要件を満たすために、そのようなヘテロアリール環内の任意のヘテロ原子は、H又は置換基、例えば、本明細書に記載のアルキル基又は他の置換基に結合される場合もそうではない場合もある。特定の実施形態では、ヘテロアリール基の窒素及び/又は硫黄環原子(複数可)は、任意選択的に酸化されて、N-オキシド(N→O)、スルフィニル、又はスルホニル部分を提供する。この用語は、例として、ピリジニル、ピロリル、インドリル、チオフェニル、及びフラニルを含む。ヘテロアリール置換基の定義によって別段の制約を受けない限り、そのようなヘテロアリール基は、アシルオキシ、ヒドロキシ、チオール、アシル、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換アルキル、置換アルコキシ、置換アルケニル、置換アルキニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アシルアミノ、アルカリール、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、カルボキシルアルキル、シアノ、ハロゲン、ニトロ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、SO2-アルキル、-SO2-置換アルキル、-SO2-アリール及び-SO2-ヘテロアリール、及びトリハロメチルから選択される1~5個の置換基、又は1~3個の置換基で任意選択的に置換され得る。
【0053】
「ヘテロアラルキル」という用語は、-アルキレン-ヘテロアリール基を指し、アルキレン及びヘテロアリールは、本明細書で定義されるとおりである。この用語は、例として、ピリジルメチル、ピリジルエチル、インドリルメチルなどを含む。
【0054】
「ヘテロアリールオキシ」は、-O-ヘテロアリールを指す。
【0055】
「複素環」、「複素環式」、「ヘテロシクロアルキル」、及び「ヘテロシクリル」は、単環、又は縮合架橋環系及びスピロ環系を含む複数の縮合環を有し、1~10個のヘテロ原子を含む3~20個の環原子を有する、飽和又は不飽和基を指す。これらの環原子は、窒素、硫黄、又は酸素から選択され、縮合環系において、環のうちの1つ以上が、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり得、但し、結合点が非芳香環を通すことを条件とする。特定の実施形態では、複素環式基の窒素及び/又は硫黄原子(複数可)は、任意選択的に酸化されて、N-オキシド、-S(O)-、又は-SO2-部分を提供する。価数の要件を満たすために、そのような複素環式環内の任意のヘテロ原子は、1つ以上のH又は1つ以上の置換基、例えば、本明細書に記載のアルキル基又は他の置換基に結合される場合もそうではない場合もある。
【0056】
複素環及びヘテロアリールの例としては、アゼチジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、ジヒドロインドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソオキサゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、フタルイミド、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン、チアゾール、チアゾリジン、チオフェン、ベンゾ[b]チオフェン、モルホリニル、チオモルホリニル(チアモルホリニルとも称される)、1,1-ジオキソチオモルホリニル、ピペリジニル、ピロリジン、テトラヒドロフラニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
複素環式置換基の定義によって別段の制約を受けない限り、そのような複素環式基は、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO2-アルキル、-SO2-置換アルキル、-SO2-アリール、-SO2-ヘテロアリール、及び縮合複素環から選択される1~5個、又は1~3個の置換基で任意選択的に置換され得る。
【0058】
「ヘテロシクリルオキシ」は、-O-ヘテロシクリル基を指す。
【0059】
「ヘテロシクリルチオ」という用語は、複素環式-S-基を指す。
【0060】
「ヘテロシクレン」という用語は、本明細書で定義されるように、複素環から形成されるジラジカル基を指す。
【0061】
「ヒドロキシアミノ」という用語は、-NHOH基を指す。
【0062】
「ニトロ」は、-NO2基を指す。
【0063】
「オキソ」は、原子(=O)を指す。
【0064】
「スルホニル」は、SO2-アルキル、SO2-置換アルキル、SO2-アルケニル、SO2-置換アルケニル、SO2-シクロアルキル、SO2-置換シクロアルキル、SO2-シクロアルケニル、SO2-置換シルコアルケニル(cylcoalkenyl)、SO2-アリール、SO2-置換アリール、SO2-ヘテロアリール、SO2-置換ヘテロアリール、SO2-複素環式、及びSO2-置換複素環式基を指し、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、及び置換複素環式は、本明細書で定義されるとおりである。スルホニルは、例として、メチル-SO2-、フェニル-SO2-、及び4-メチルフェニル-SO2-を含む。
【0065】
「スルホニルオキシ」は、-OSO2-アルキル、OSO2-置換アルキル、OSO2-アルケニル、OSO2-置換アルケニル、OSO2-シクロアルキル、OSO2-置換シクロアルキル、OSO2-シクロアルケニル、OSO2-置換シルコアルケニル、OSO2-アリール、OSO2-置換アリール、OSO2-ヘテロアリール、OSO2-置換ヘテロアリール、OSO2-複素環式、及びOSO2置換複素環式基を指し、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、及び置換複素環式は、本明細書で定義されるとおりである。
【0066】
「アミノカルボニルオキシ」という用語は、-OC(O)NRR基を指し、式中、各Rは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリール、又は複素環式であり、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリール、及び複素環式は、本明細書で定義されるとおりである。
【0067】
「チオール」は、-SH基を指す。
【0068】
「チオキソ」、又は「チオケト」という用語は、原子(=S)を指す。
【0069】
「アルキルチオ」又は「チオアルコキシ」という用語は、-S-アルキル基を指し、アルキルは本明細書で定義されるとおりである。特定の実施形態では、硫黄は、-S(O)-へと酸化され得る。スルホキシドは、1つ以上の立体異性体として存在し得る。
【0070】
「置換チオアルコキシ」という用語は、-S-置換アルキル基を指す。
【0071】
「チオアリールオキシ」という用語は、アリール-S-基を指し、アリール基は本明細書で定義されるとおりであり、本明細書で定義される任意選択的に置換されたアリール基を含む。
【0072】
「チオヘテロアリールオキシ」という用語は、ヘテロアリール-S-基を指し、ヘテロアリール基は本明細書で定義されるとおりであり、同様に本明細書で定義される任意選択的に置換されたアリール基を含む。
【0073】
「チオヘテロシクロオキシ」という用語は、ヘテロシクリル-S-基を指し、ヘテロシクリル基は本明細書で定義されるとおりであり、同様に本明細書で定義される任意選択的に置換されたヘテロシクリル基を含む。
【0074】
本明細書における開示に加えて、「置換された」という用語は、特定の基又はラジカルを修飾するために使用される場合、特定の基又はラジカルの1つ以上の水素原子が、各々互いに独立して、以下で定義される同じ又は異なる置換基で置き換えられていることを意味し得る。
【0075】
本明細書の個々の用語に関して開示される基に加えて、特定の基又はラジカル中の飽和炭素原子上の1個以上の水素を置換するための置換基(単一の炭素上のいずれか2個の水素を、=O、=NR70、=N-OR70、=N2又は=Sで置き換えることができる)は、別段の指定がない限り、-R60、ハロ、=O、-OR70、-SR70、-NR80R80、トリハロメチル、-CN、-OCN、-SCN、-NO、-NO2、=N2、-N3、-SO2R70、-SO2O-M+、-SO2OR70、-OSO2R70、-OSO2O-M+、-OSO2OR70、-P(O)(O-)2(M+)2、-P(O)(OR70)O-M+、-P(O)(OR70)2、-C(O)R70、-C(S)R70、-C(NR70)R70、-C(O)O-M+、-C(O)OR70、-C(S)OR70、-C(O)NR80R80、-C(NR70)NR80R80、-OC(O)R70、-OC(S)R70、-OC(O)O-M+、-OC(O)OR70、-OC(S)OR70、-NR70C(O)R70、-NR70C(S)R70、-NR70CO2
-M+、-NR70CO2R70、-NR70C(S)OR70、-NR70C(O)NR80R80、-NR70C(NR70)R70、及び-NR70C(NR70)NR80R80であり、式中、R60は、任意選択的に置換されたアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、及びヘテロアリールアルキルからなる群から選択され、各R70は、独立して、水素又はR60であり、各R80は、独立してR70であるか、又は代替的に、2つのR80は、それらが結合されている窒素原子と一緒になって、5員、6員、若しくは7員ヘテロシクロアルキルを形成し、これらは、任意選択的に、O、N、及びSからなる群から選択される同じ又は異なる追加のヘテロ原子のうちの1~4個を含み得、そのうち、Nは、-H又はC1~C3アルキル置換を有し得、各M+は、正味の単一正電荷を有する対イオンである。各M+は、独立して、例えば、アルカリイオン、例えば、K+、Na+、Li+;アンモニウムイオン、例えば、+N(R60)4;又はアルカリ土類イオン、例えば、[Ca2+]0.5、[Mg2+]0.5、若しくは[Ba2+]0.5であり得る(下付きの0.5は、そのような二価アルカリ土類イオンの対イオンのうちの一方が本発明の化合物のイオン化形態であり、他方が塩化物などの典型的な対イオンであり得るか、又は本明細書に開示される2つのイオン化化合物が、そのような二価アルカリ土類イオンの対イオンとして機能し得るか、又は本発明の二重イオン化化合物が、そのような二価アルカリ土類イオンの対イオンとして機能し得ることを意味する)。具体的な例として、-NR80R80は、-NH2、-NH-アルキル、N-ピロリジニル、N-ピペラジニル、4N-メチル-ピペラジン-1-イル、及びN-モルホリニルを含むように意図されている。
【0076】
本明細書における開示に加えて、「置換」アルケン、アルキン、アリール及びヘテロアリール基中の不飽和炭素原子上の水素の置換基は、別段の指定がない限り、-R60、ハロ、-O-M+、-OR70、-SR70、-S-M+、-NR80R80、トリハロメチル、-CF3、-CN、-OCN、-SCN、-NO、-NO2、-N3、-SO2R70、-SO3
-M+、-SO3R70、-OSO2R70、-OSO3
-M+、-OSO3R70、-PO3
-2(M+)2、-P(O)(OR70)O-M+、-P(O)(OR70)2、-C(O)R70、-C(S)R70、-C(NR70)R70、-CO2
-M+、-CO2R70、-C(S)OR70、-C(O)NR80R80、-C(NR70)NR80R80、-OC(O)R70、-OC(S)R70、-OCO2
-M+、-OCO2R70、-OC(S)OR70、-NR70C(O)R70、-NR70C(S)R70、-NR70CO2
-M+、-NR70CO2R70、-NR70C(S)OR70、-NR70C(O)NR80R80、-NR70C(NR70)R70、及びNR70C(NR70)NR80R80であり、R60、R70、R80、及びM+は、以前に定義されたとおりであり、但し、置換アルケン又はアルキンの場合には、置換基が、-O-M+、-OR70、-SR70、又は-S-M+ではないことを条件とする。
【0077】
本明細書の個々の用語に関して開示される基に加えて、「置換」ヘテロアルキル及びシクロヘテロアルキル基中の窒素原子上の水素の置換基は、別段の指定がない限り、-R60、-O-M+、-OR70、-SR70、-S-M+、-NR80R80、トリハロメチル、-CF3、-CN、-NO、-NO2、-S(O)2R70、-S(O)2O-M+、-S(O)2OR70、-OS(O)2R70、-OS(O)2O-M+、-OS(O)2OR70、-P(O)(O-)2(M+)2、-P(O)(OR70)O-M+、-P(O)(OR70)(OR70)、-C(O)R70、-C(S)R70、-C(NR70)R70、-C(O)OR70、-C(S)OR70、-C(O)NR80R80、-C(NR70)NR80R80、-OC(O)R70、-OC(S)R70、-OC(O)OR70、-OC(S)OR70、-NR70C(O)R70、-NR70C(S)R70、-NR70C(O)OR70、-NR70C(S)OR70、-NR70C(O)NR80R80、-NR70C(NR70)R70、及び-NR70C(NR70)NR80R80であり、式中、R60、R70、R80
、及びM+は、以前に定義されたとおりである。
【0078】
本明細書における開示に加えて、特定の実施形態では、置換される基は、1、2、3、若しくは4つの置換基、1、2、若しくは3つの置換基、1若しくは2つの置換基、又は1つの置換基を有する。
【0079】
上記で定義された全ての置換された基において、それ自体に更なる置換基を有する置換基(例えば、それ自体が置換アリール基で置換され、その置換アリール基が更に置換アリール基によって置換されている、置換アリール基を置換基として有する置換アリールなど)を定義することによって到達するポリマーは、本明細書に含まれることを意図していないことが理解される。そのような場合において、そのような置換の最大数は3である。例えば、本明細書で具体的に企図される置換アリール基の連続的な置換は、置換アリール-(置換アリール)-置換アリールに限定される。
【0080】
別段の指示がない限り、本明細書で明示的に定義されない置換基の命名は、結合点に向かって隣接する官能基の前の官能基の末端部分を命名することによって到達される。例えば、「アリールアルキルオキシカルボニル」という置換基は、基(アリール)-(アルキル)-O-C(O)-を指す。
【0081】
1つ以上の置換基を含む本明細書に開示される基のうちのいずれについても、もちろん、そのような基は、立体的に実用的でなく、及び/又は合成的に実現不可能である任意の置換若しくは置換パターンを含まないことが理解される。加えて、主題の化合物は、これらの化合物の置換から生じる全ての立体化学異性体を含む。
【0082】
「薬学的に許容され得る塩」という用語は、哺乳類などの患者への投与に対して許容され得る塩(所与の投薬レジメンに対して許容され得る哺乳類の安全性を有する対イオンを含む塩)を意味する。そのような塩は、薬学的に許容され得る無機又は有機塩基、及び薬学的に許容され得る無機又は有機酸に由来し得る。「薬学的に許容され得る塩」は、化合物の薬学的に許容され得る塩を指し、その塩は、当該技術分野で周知の多様な有機及び無機対イオンに由来し、例としてのみであるが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなどを含み、並びに、分子が塩基性官能基を含む場合、塩酸塩、臭化水素酸塩、ギ酸塩、酒石酸塩、ベシル酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩などの有機又は無機酸の塩を含む。
【0083】
「その塩」という用語は、酸のプロトンが、金属カチオン又は有機カチオンなどのカチオンによって置き換えられた場合に形成される化合物を意味する。該当する場合、塩は、薬学的に許容され得る塩であるが、これは、患者への投与を意図していない中間化合物の塩には必要ではない。例として、本化合物の塩は、化合物が無機酸又は有機酸によってプロトン化されてカチオンを形成し、無機酸又は有機酸の共役塩基を塩のアニオン性成分として有するものを含む。
【0084】
「溶媒和物」は、溶媒分子と溶質の分子又はイオンとの組み合わせによって形成される複合体を指す。溶媒は、有機化合物、無機化合物、又は両方の混合物であり得る。溶媒のいくつかの例としては、メタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、及び水が挙げられるが、これらに限定されない。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は、水和物である。
【0085】
「立体異性体(stereoisomer)」及び「立体異性体(stereoisomers)」は、同じ原子連結性を有するが、空間における異なる原子配置を有する化合物を指す。立体異性体は、シス-トランス異性体、E及びZ異性体、鏡像異性体、並びにジアステレオマーを含む。
【0086】
「互変異性体」とは、原子の電子結合においてのみ、及び/又は陽子の位置においてのみ異なる分子の代替形態、例えば、エノール-ケト及びイミン-エナミン互変異性体、又はピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、及びテトラゾールなどの-N=C(H)-NH-環原子配置を含むヘテロアリール基の互変異性体を指す。当業者は、他の互変異性環原子配置が可能であることを認識するであろう。
【0087】
「又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体」という用語は、塩、溶媒和物、及び立体異性体の全ての順列、例えば、主題の化合物の立体異性体の薬学的に許容され得る塩の溶媒和物を含むことを意図していることを理解されたい。
【0088】
「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、任意のアイソタイプの抗体又は免疫グロブリン(例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4)、IgE、IgD、IgA、IgMなど)、全抗体(例えば、四量体で構成される抗体、順に四量体は、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの2つの二量体で構成される)、一本鎖抗体(例えば、scFv)、Fab、Fv、scFv、及びFd断片を含むがこれらに限定されない、抗原への特異的結合を保持する抗体の断片(例えば、全鎖抗体又は一本鎖抗体の断片)、キメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、並びに抗体の抗原結合部分及び非抗体タンパク質を含む融合タンパク質を含む。抗体は、例えば、放射性同位体、検出可能な生成物を生成する酵素、蛍光タンパク質などで検出可能に標識され得る。抗体は、特異的結合対のメンバー、例えば、ビオチン(ビオチン-アビジン特異的結合対のメンバー)などの他の部分に更にコンジュゲートされ得る。抗体はまた、ポリスチレンプレート又はビーズなどを含むがこれらに限定されない、固体支持体に結合され得る。また、Fab’、Fv、F(ab’)2、及び/又は抗原への特異的結合を保持する他の抗体断片、並びにモノクローナル抗体も本用語によって包含される。抗体は、一価又は二価であり得る。
「抗体断片」は、インタクト抗体の一部、例えば、インタクト抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、ダイアボディ、線形抗体(Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057-1062(1995))、一本鎖抗体分子、並びに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。抗体のパパイン消化は、各々単一の抗原結合部位を有する、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、及び容易に結晶化する能力を反映する名称である残留「Fc」断片を産生する。ペプシン処理は、2つの抗原複合部位を有し、依然として抗原を架橋結合することが可能である、F(ab’)2断片を生じさせる。
【0089】
「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、緊密な非共有結合における1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この構成では、各可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、VH-VL二量体の表面上の抗原結合部位を画定する。集合的に、6つのCDRは、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でも、抗原を認識及び結合する能力を有するが、結合部位全体よりも親和性が低い。
【0090】
「Fab」断片はまた、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含む。Fab断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端におけるいくつかの残基の添加により、Fab’断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つ、Fab’の本明細書における名称である。F(ab’)2抗体断片は、本来、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学カップリングも知られている。
【0091】
任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ及びラムダと呼ばれる2つの明確に異なるタイプのうちの1つに割り当てることができる。それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには、5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2に更に分けられ得る。
【0092】
「一本鎖Fv」又は「sFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一ポリペプチド鎖に存在する。いくつかの態様では、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを更に含み、これは、sFvが抗原結合のために所望の構造を形成することを可能にする。
【0093】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片を指し、その断片は、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH-VL)。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対合し、2つの抗原結合部位を作製するように強制される。
【0094】
本明細書で使用される場合、「親和性」という用語は、2つの薬剤の可逆的結合の平衡定数を指し、解離定数(Kd)として表される。親和性は、無関係なアミノ酸配列に対する抗体の親和性よりも少なくとも1倍高く、少なくとも2倍高く、少なくとも3倍高く、少なくとも4倍高く、少なくとも5倍高く、少なくとも6倍高く、少なくとも7倍高く、少なくとも8倍高く、少なくとも9倍高く、少なくとも10倍高く、少なくとも20倍高く、少なくとも30倍高く、少なくとも40倍高く、少なくとも50倍高く、少なくとも60倍高く、少なくとも70倍高く、少なくとも80倍高く、少なくとも90倍高く、少なくとも100倍高く、又は少なくとも1000倍以上高くあり得る。標的タンパク質に対する抗体の親和性は、例えば、約100ナノモル(nM)~約0.1nM、約100nM~約1ピコモル(pM)、又は約100nM~約1フェムトモル(fM)以上であり得る。本明細書で使用される場合、「アビディティ」という用語は、希釈後の解離に対する2つ以上の薬剤の複合体の耐性を指す。「免疫反応性」及び「優先的に結合する」という用語は、本明細書では抗体及び/又は抗原結合断片に関して互換的に使用される。
【0095】
「結合」という用語は、例えば、塩架橋及び水架橋などの相互作用を含む、共有結合、静電気、疎水性、並びにイオン及び/又は水素結合相互作用に起因する、2つの分子間の直接会合を指す。主題の抗体は、ポリペプチド、例えば、ヒトポリペプチド、例えば、グリコシル化ポリペプチド又はその断片内のエピトープに特異的に結合する。非特異的結合は、約10-7M未満の親和性を有する結合、例えば、10-6M、10-5M、10-4Mなどの親和性を有する結合を指す。
【0096】
抗体及び抗原の文脈における「特異的に結合する」という用語は、抗体が、例えば、約105M-1以上の親和性又はKa(すなわち、1/Mの単位を有する特定の結合相互作用の平衡会合定数)を有する抗原に結合するか、又は抗原と会合することを意味する。
【0097】
「高親和性」結合は、少なくとも107M-1、少なくとも108M-1、少なくとも109M-1、少なくとも1010M-1、少なくとも1011M-1、少なくとも1012M-1、少なくとも1013M-1、又はそれ以上のKaを有する結合を指す。代替的に、親和性は、Mの単位(例えば、10-5M~10-13M、又はそれ以下)を有する特定の結合相互作用の平衡解離定数(KD)として定義され得る。いくつかの実施形態では、特異的結合は、抗体が、約10-5M以下、約10-6M以下、約10-7M以下、約10-8M以下、若しくは約10-9M、10-10M、10-11M、又は10-12M以下のKDで抗原に結合することを意味する。抗原に対する抗体の結合親和性は、従来の技術を使用して、例えば、競合ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、平衡透析によって、表面プラズモン共鳴(SPR)技術(例えば、製造業者によって概説される一般的な手順を使用するBIAcore2000機器)を使用して、放射免疫測定などによって、容易に決定することができる。
【0098】
本明細書で使用される場合、抗体可変領域に関して使用されるときの「フレームワーク」という用語は、抗体の可変領域内のCDR領域の外側の全てのアミノ酸残基を意味することを意図している。可変領域フレームワークは、一般に、約100~120アミノ酸の長さである不連続アミノ酸配列であるが、CDRの外側のそれらのアミノ酸のみを参照することを意図している。本明細書で使用される場合、「フレームワーク領域」という用語は、CDRによって分離されるフレームワークの各ドメインを意味することを意図している。
【0099】
「親Igポリペプチド」は、本明細書に記載されるアルデヒドタグ付き定常領域を欠くアミノ酸配列を含むポリペプチドである。親ポリペプチドは、天然配列定常領域を含み得るか、又は既存のアミノ酸配列修飾(付加、欠失、及び/又は置換など)を有する定常領域を含み得る。
【0100】
Igポリペプチドの文脈において、「定常領域」という用語は、当該技術分野で十分に理解されており、Ig重鎖又はIg軽鎖のC末端領域を指す。Ig重鎖定常領域は、CH1、CH2、及びCH3ドメイン(並びに、重鎖がμ又はε重鎖である場合、CH4ドメイン)を含む。天然Ig重鎖において、CH1、CH2、CH3(及び、存在する場合、CH4)ドメインは、重鎖可変(VH)領域の直後(これに対してC末端)で開始し、かつ各々約100アミノ酸~約130アミノ酸の長さである。天然Ig軽鎖において、定常領域は、軽鎖可変(VL)領域の直後(これに対してC末端)で開始し、約100アミノ酸~120アミノ酸の長さである。
【0101】
「エピトープ」は、抗体が結合する抗原上の部位である。エピトープは、タンパク質の折り畳み(例えば、三次折り畳み)によって並置された連続アミノ酸又は不連続アミノ酸の両方から形成することができる。連続アミノ酸から形成されたエピトープが、典型的には、変性溶媒への曝露時に保持される一方で、折り畳みによって形成されたエピトープは、典型的には、変性溶媒を用いた処理時に失われる。エピトープは、典型的には、線形又は空間立体構造に、少なくとも3個、より一般的には少なくとも5個又は8~10個のアミノ酸を含む。エピトープの空間立体構造を決定する方法は、例えば、X線結晶構造解析法及び二次元核磁気共鳴を含む。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,Vol.66,Glenn E.Morris,Ed(1996)を参照されたい。いくつかの民間研究所が、エピトープマッピングサービスを提供している。膜関連抗原と免疫反応性の抗体によって結合されたエピトープは、そのようなエピトープが、細胞表面接近可能、溶媒接近可能、及び/又は細胞表面露出とみなされるように、細胞の表面上に(例えば、膜貫通タンパク質の細胞外領域内に)存在し得る。
【0102】
ポリペプチド、ペプチド、又はタンパク質のアミノ酸配列に関して使用される「遺伝子的にコード可能な」とは、アミノ酸配列が、そのアミノ酸配列をコードする核酸の転写及び翻訳によって産生することができるアミノ酸残基で構成され、転写及び/又は翻訳が、細胞中、又は無細胞インビトロ転写/翻訳系において生じ得ることを意味する。
【0103】
「制御配列」という用語は、特定の発現系、例えば、哺乳動物細胞、細菌細胞、無細胞合成などにおいて作動可能に連結されたコード配列の発現を促進するDNA配列を指す。原核生物系に好適である制御配列には、例えば、プロモーター、任意選択的に、オペレーター配列、及びリボソーム結合部位が含まれる。真核細胞系は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、及びエンハンサーを利用し得る。
【0104】
核酸は、別の核酸配列と機能的関係に置かれる場合、「作動可能に連結される」。例えば、前配列又は分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与する前タンパク質として発現される場合、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結され、プロモーター若しくはエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結され、又はリボソーム結合部位は、翻訳の開始を促進するように位置付けられる場合、コード配列に作動可能に連結される。一般に、「作動可能に連結される」とは、連結されているDNA配列が連続しており、分泌リーダーの場合、連続しており、リーディングフレームにあることを意味する。連結は、ライゲーションによって、又は増幅反応を通して達成される。合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーは、従来の慣行に従って配列を連結するために使用され得る。
【0105】
本明細書で使用される場合の「発現カセット」という用語は、(例えば、目的の構築物へのライゲーションと適合性のある制限部位の使用によって、又は目的の構築物へ、若しくは宿主細胞ゲノムへの相同組換えによって)核酸に挿入することができる、核酸、通常はDNAのセグメントを指す。一般に、核酸セグメントは、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、カセット及び制限部位は、転写及び翻訳のための適切なリーディングフレームへのカセットの挿入を促進するように設計される。発現カセットはまた、宿主細胞、例えば、哺乳動物宿主細胞内で目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現を促進するエレメントを含むこともできる。これらのエレメントには、プロモーター、ミニマルプロモーター、エンハンサー、応答エレメント、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列などが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0106】
「単離された」抗体は、その天然環境の成分から同定され、分離され、かつ/又は回収されたものである。その天然環境の汚染成分は、抗体の診断又は治療的使用を妨げる物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質を含み得る。いくつかの実施形態では、抗体は、(1)ローリー法によって決定される抗体の90重量%超、95重量%超、又は98重量%超、例えば、99重量%超まで、(2)スピニングカップシークエネーターの使用によってN末端若しくは内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を取得するために十分な程度まで、又は(3)クーマシーブルー若しくは銀染色を使用する還元若しくは非還元条件下でのドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって均質性まで精製される。単離された抗体は、抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内にインサイチュで抗体を含む。いくつかの事例では、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0107】
「天然抗体」という用語は、抗体の重鎖及び軽鎖が作製されており、多細胞生物の免疫系によって対形成されている抗体を指す。脾臓、リンパ節、骨髄、及び血清は、天然抗体を産生する組織の例である。例えば、抗原で免疫化された第1の動物から分離された抗体産生細胞によって産生される抗体は、天然抗体である。
【0108】
「ヒト化抗体」又は「ヒト化免疫グロブリン」という用語は、ヒト抗体に由来する対応して位置付けられたアミノ酸で置換されている1つ以上のアミノ酸を(例えば、フレームワーク領域、定常領域又はCDR中に)含む非ヒト(例えば、マウス又はウサギ)抗体を指す。概して、ヒト化抗体は、非ヒト化型の同じ抗体と比較して、ヒト宿主中で低減された免疫応答を生成する。抗体は、例えば、CDRグラフティング、ベニヤリング又はリサーフェシング、鎖シャッフリングなどを含む、当該技術分野で既知である種々の技術を使用してヒト化することができる。特定の実施形態では、フレームワーク置換は、抗原結合及び配列比較に重要なフレームワーク残基を同定し、特定の位置にある異常なフレームワーク残基を同定するために、CDR及びフレームワーク残基の相互作用のモデリングによって同定される。したがって、上記に記載される抗体は、当該技術分野で周知の方法を使用してヒト化され得る。
【0109】
特定の実施形態では、本明細書に開示される抗体分子は、本明細書で提供される可変重鎖領域、及びUniProt:P01857-1、バージョン1に記載されるアミノ酸配列を有するヒトIgG1定常領域を含む、重鎖を含む。特定の実施形態では、本明細書に開示される抗体分子は、本明細書で提供される可変軽鎖領域及びヒト軽鎖定常領域を含む、軽鎖を含む。特定の実施形態では、ヒト軽鎖定常領域は、UniProtKB/Swiss-Prot:P01834.2に記載されるアミノ酸を有する、ヒトカッパ軽鎖定常領域である。特定の実施形態では、主題の抗体に存在するヒトIgG1重鎖定常領域は、変異、例えば、Fc機能を調節するための置換を含み得る。例えば、LALAPGエフェクター機能変異(L234A、L235A、及びP329G)又はN297A変異が導入され、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を低減し得る。置換の付番は、EU付番システムに基づく。「EU付番システム」又は「EUインデックス」は、一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域内の残基を指すときに使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)で報告されるEUインデックス)。「KabatのようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基付番を指す。
【0110】
「キメラ抗体」という用語は、軽鎖及び重鎖遺伝子が、異なる種に属している抗体可変領域及び定常領域遺伝子から、典型的には遺伝子操作によって構築されている抗体を指す。例えば、マウスモノクローナル抗体由来の遺伝子の可変セグメントは、ガンマ1及びガンマ3などのヒト定常セグメントに結合され得る。治療用キメラ抗体の一例は、マウス抗体由来の可変ドメイン又は抗原結合ドメイン、及びヒト抗体由来の定常ドメイン又はエフェクタードメインで構成されているハイブリッドタンパク質であるが、他の哺乳動物種由来のドメインも使用され得る。
【0111】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指すために本明細書で互換的に使用される。別段の具体的な指示がない限り、「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、遺伝的にコードされた及びコードされていないアミノ酸、化学的若しくは生化学的に修飾された、又は誘導されたアミノ酸、並びに修飾ペプチド骨格を有するポリペプチドを含み得る。本用語は、異種のアミノ酸配列を有する融合タンパク質、異種及び相同のリーダー配列を有する融合物、少なくとも1つのN末端メチオニン残基を含むタンパク質(例えば、組換え宿主細胞における産生を促進するため)、免疫学的にタグ付けされたタンパク質などを含むが、これらに限定されない、融合タンパク質を含む。抗体の文脈において、鎖又はドメインがポリペプチドを含むことは明確である。
【0112】
「天然アミノ酸配列」又は「親アミノ酸配列」は、修飾アミノ酸残基を含むための修飾前のポリペプチドのアミノ酸配列を指すために本明細書で互換的に使用される。
【0113】
「アミノ酸類似体」、「非天然アミノ酸」などの用語は、互換的に使用され、天然に存在するタンパク質(例えば、Ala又はA、Cys又はC、Asp又はD、Glu又はE、Phe又はF、Gly又はG、His又はH、Ile又はI、Lys又はK、Leu又はL、Met又はM、Asn又はN、Pro又はP、Gln又はQ、Arg又はR、Ser又はS、Thr又はT、Val又はV、Trp又はW、Tyr又はY)中に一般的に見出される1つ以上のアミノ酸と構造及び/又は全体的な形状が類似しているアミノ酸様化合物を含み得る。アミノ酸類似体はまた、修飾側鎖又は骨格を有する天然アミノ酸も含む。アミノ酸類似体はまた、天然に存在するD形態と同じ立体化学を有するアミノ酸類似体、並びにアミノ酸類似体のL形態を含む。いくつかの事例において、アミノ酸類似体は、1つ以上の天然アミノ酸の骨格構造及び/又は側鎖構造を共有し、その違い(複数可)は、分子中の1つ以上の修飾基である。そのような修飾には、ある原子(Nなど)の関連する原子(Sなど)による置換、ある基(メチル若しくはヒドロキシルなど)又はある原子(Cl若しくはBrなど)の付加、ある基の欠失、共有結合の置換(単結合の二重結合による置換)、あるいはそれらの組み合わせが含まれ得るが、それらに限定されない。例えば、アミノ酸類似体は、α-ヒドロキシ酸、及びα-アミノ酸などを含み得る。
【0114】
「アミノ酸側鎖」又は「アミノ酸の側鎖」などの用語は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、及びアミノ酸類似体を含む、アミノ酸残基のα炭素に結合している置換基を指すために使用され得る。アミノ酸側鎖はまた、本明細書に記載される修飾アミノ酸及び/又はコンジュゲートの文脈で記載されるアミノ酸側鎖を含み得る。
【0115】
「コンジュゲートされた」という用語は、一般に、1つの目的の分子を第2の目的の分子と近位に会合させる、共有結合又は非共有結合のいずれかであり、通常は共有結合である、化学結合を指す。いくつかの実施形態では、薬剤は、半減期延長部分、標識剤、及び治療剤から選択される。半減期延長のために、例えば、本開示の抗体は、任意選択的に、(例えば、PEG化、過グリコシル化などによって)改善された薬物動態プロファイルを提供するように修飾され得る。血清半減期を向上させることができる修飾が、関心対象となる。
【0116】
「炭水化物」などの用語は、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、及び多糖類のモノマー単位及び/又はポリマーを指すために使用され得る。糖という用語は、単糖類、二糖類などのより小さな炭水化物を指すために使用され得る。「炭水化物誘導体」という用語は、目的の炭水化物の1つ以上の官能基が置換される(任意の便宜的な置換基によって置き換えられる)か、修飾される(任意の便宜的な化学物質を使用して別の基に変換される)か、又は存在しない(例えば、排除されるか、若しくはHによって置き換えられる)、化合物を含む。様々な炭水化物及び炭水化物誘導体が利用可能であり、主題の化合物及びコンジュゲートで使用するために適合化され得る。
【0117】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、化合物が天然に存在するものとは異なる環境にある目的の化合物を説明することを意図する。「単離された」は、目的の化合物が実質的に濃縮されており、かつ/又は目的の化合物が部分的若しくは実質的に精製されている試料内にある化合物を含むことを意図する。
【0118】
本明細書で使用される場合、「実質的に精製された」という用語は、その天然の環境から除去され、天然に会合する成分を少なくとも60%含まない、少なくとも75%含まない、少なくとも80%含まない、少なくとも85%含まない、少なくとも90%含まない、少なくとも95%含まない、少なくとも98%含まない、又は98%超含まない化合物を指す。
【0119】
「生理学的条件」という用語は、生細胞と適合性のある条件、例えば、生細胞と適合性のある温度、pH、塩分などの主に水性の条件を包含することを意味する。
【0120】
「反応性パートナー」とは、別の反応性パートナーと特異的に反応して反応生成物を産生する、分子又は分子部分を意味する。例示的な反応性パートナーは、スルファターゼモチーフのシステイン又はセリン、及びホルミルグリシン生成酵素(FGE)を含み、これらが反応して、モチーフ中のシステイン又はセリンの代わりに、ホルミルグリシン(fGly)を含有する変換されたアルデヒドタグの反応生成物を形成する。他の例示的な反応性パートナーは、変換されたアルデヒドタグのfGly残基のアルデヒド(例えば、反応性アルデヒド基)、並びにアルデヒド反応性基及び目的の部分を含む「アルデヒド反応性の反応性パートナー」を含み、これらが反応して、fGly残基を通してポリペプチドにコンジュゲートされた目的の部分を有するポリペプチドの反応生成物を形成する。
【0121】
「N末端」は、遊離アミン基を有するポリペプチドの末端アミノ酸残基を指し、非N末端アミノ酸残基中のアミン基が、通常、ポリペプチドの共有結合性骨格の一部を形成する。
【0122】
「C末端」は、遊離カルボキシル基を有するポリペプチドの末端アミノ酸残基を指し、非C末端アミノ酸残基中のカルボキシル基が、通常、ポリペプチドの共有結合性骨格の一部を形成する。
【0123】
ポリペプチド又はポリペプチドのアミノ酸配列に関して使用される場合の「内部部位」とは、N末端又はC末端にはないポリペプチドの領域を意味する。
【0124】
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療すること」などの用語は、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指す。効果は、疾患若しくはその症状を完全に若しくは部分的に予防する点で予防的であり得、かつ/又は疾患及び/若しくは疾患に起因する副作用の部分的若しくは完全な治癒の点で治療的であり得る。本明細書で使用される場合の「治療」は、哺乳動物、特に、ヒトにおける疾患の任意の治療を対象とし、(a)疾患の素因があり得るが、まだそれを有すると診断されていない対象において疾患が発生することを防止することと、(b)疾患を阻害すること、例えば、その発症を阻止することと、(c)疾患を軽減すること、例えば、疾患の退行を引き起こすことと、を含む。
【0125】
本明細書で互換的に使用される、「個体」、「対象」、「宿主」、及び「患者」という用語は、ヒト、ネズミ(例えば、ラット、マウス)、非ヒト霊長類、ヒト、イヌ、ネコ、有蹄類(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)などを含むがこれらに限定されない、哺乳動物を指す。
【0126】
「治療有効量」又は「有効量」は、疾患を治療するために哺乳動物又は他の対象に投与されると、疾患に対するそのような治療をもたらすために十分である、主題の抗体薬物コンジュゲートの量を指す。「治療有効量」は、抗体、薬物、疾患及びその重症度、並びに治療される対象の年齢、体重などに応じて変動するであろう。
【0127】
本発明を更に説明する前に、本発明は記載された特定の実施形態に限定されず、それ自体は勿論、変化し得ることを理解されたい。また、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになるので、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためのものであり、限定的であることを意図していないことも理解されたい。
【0128】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、その範囲の上限と下限との間の、下限の単位の10分の1までの各中間値、及びこの記載の範囲内の任意の他の記載される値又は中間値が本発明に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立して、より小さい範囲に含まれてもよく、また、記載された範囲内の任意の特異的に除外された制限に従って、本発明内に包含される。記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれか又は両方を除外する範囲も、同様に本発明に含まれる。
【0129】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の方法及び材料も、本発明の実施又は試験に使用することができるが、好ましい方法及び材料が、以下に記載される。本明細書で言及される全ての刊行物は、刊行物が引用されることに関連して方法及び/又は材料を開示及び説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0130】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「抗体」への言及は、複数のそのような抗体を含み、「CDR」への言及は、1つ以上のCDR及び当業者に既知であるその同等物への言及を含む、などである。特許請求の範囲は、あらゆる任意選択的な要素を排除するように記載され得ることに更に留意されたい。したがって、この記述は、特許請求要素の列挙に関連した「もっぱら(solely)」、「のみ(only)」などの排他的用語の使用のための、又は「消極的な」限定の使用のための先行根拠として機能することを意図している。
【0131】
本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日より前のそれらの開示について、もっぱら提供される。本明細書のいかなる内容も、本発明が、先行発明のために、そのような刊行物の日付に先行する権利がないことを承認するものと解釈するべきではない。更に、提供された刊行物の日付は、実際の公開日とは異なる場合があり、独立して確認する必要があり得る。
【発明を実施するための形態】
【0132】
本開示は、抗体コンジュゲート(例えば、抗体薬物コンジュゲート(ADC))を提供する。本開示はまた、そのようなコンジュゲートの産生の方法、並びにそれを使用する方法も包含する。また、いくつかの事例では薬学的組成物を含む、本開示のADCを含む組成物も提供される。特定の態様では、個体に治療有効量の本開示のADCを投与することを含む、ADCを使用する方法が提供される。
【0133】
抗体薬物コンジュゲート
本開示は、コンジュゲート、例えば、抗体薬物コンジュゲート(ADC)を提供する。「コンジュゲート」とは、目的の部分(例えば、薬物又は活性薬剤)に共有結合しているポリペプチド(例えば、抗体)を意味する。例えば、本開示による抗体薬物コンジュゲートは、抗体に共有結合している1つ以上の薬物又は活性薬剤を含む。特定の実施形態では、ポリペプチド(例えば、抗体)及び1つ以上の薬物又は活性薬剤は、1つ以上の官能基及び共有結合を通して互いに結合される。例えば、1つ以上の官能基及び共有結合は、本明細書に記載されるリンカーを含むことができる。
【0134】
特定の実施形態では、コンジュゲートは、1つ以上の他の部分にコンジュゲートされたポリペプチド(例えば、抗体)を含む、ポリペプチドコンジュゲートである。特定の実施形態では、ポリペプチドにコンジュゲートされた1つ以上の部分は、各々独立して、限定されないが、薬物、活性薬剤、検出可能な標識、水溶性ポリマー、又は膜若しくは表面へのポリペプチドの固定化のための部分などの様々な目的の部分のうちのいずれかであり得る。特定の実施形態では、コンジュゲートは、ポリペプチドが抗体であり、したがって、抗体薬物コンジュゲートを提供する、薬物コンジュゲートである。例えば、コンジュゲートは、ポリペプチドが1つ以上の薬物又は活性薬剤にコンジュゲートされている、薬物コンジュゲートであり得る。様々なタイプの薬物及び活性薬剤が、コンジュゲートに使用され得、以下により詳細に記載される。
【0135】
1つ以上の薬物又は活性薬剤は、ポリペプチドの任意の所望の部位でポリペプチド(例えば、抗体)にコンジュゲートされ得る。したがって、本開示は、例えば、ポリペプチドのC末端又はその付近の部位でコンジュゲートされた薬物又は活性薬剤を有するポリペプチドを提供する。他の例としては、ポリペプチドのN末端又はその付近の位置でコンジュゲートされた薬物又は活性薬剤を有するポリペプチドが挙げられる。また、例としては、ポリペプチドのC末端とN末端との間の位置で(例えば、ポリペプチドの内部部位で)コンジュゲートされた薬物又は活性薬剤を有するポリペプチドも挙げられる。上記の組み合わせは、ポリペプチドが2つ以上の薬物又は活性薬剤にコンジュゲートされている場合にも可能である。
【0136】
特定の実施形態では、本開示のコンジュゲートは、アミノ酸残基のα-炭素でポリペプチドのアミノ酸残基にコンジュゲートされた1つ以上の薬物又は活性薬剤を含む。別の言い方をすれば、コンジュゲートは、ポリペプチド中の1つ以上のアミノ酸残基の側鎖が修飾され、1つ以上の薬物又は活性薬剤に結合している(例えば、本明細書に記載されるリンカーを通して1つ以上の薬物又は活性薬剤に結合している)ポリペプチドを含む。例えば、コンジュゲートは、ポリペプチド中の1つ以上のアミノ酸残基のα-炭素が修飾され、1つ以上の薬物又は活性薬剤に結合している(例えば、本明細書に記載されるリンカーを通して1つ以上の薬物又は活性薬剤に結合している)ポリペプチドを含む。
【0137】
本開示の実施形態は、ポリペプチドが、1個以上の部分、例えば、2個の部分、3個の部分、4個の部分、5個の部分、6個の部分、7個の部分、8個の部分、9個の部分、又は10個以上の部分にコンジュゲートされている、コンジュゲートを含む。部分は、ポリペプチド中の1つ以上の部位でポリペプチドにコンジュゲートされ得る。例えば、1つ以上の部分は、ポリペプチドの単一アミノ酸残基にコンジュゲートされ得る。いくつかの場合において、1つの部分が、ポリペプチドのアミノ酸残基にコンジュゲートされる。他の実施形態では、2つの部分が、ポリペプチドの同じアミノ酸残基にコンジュゲートされ得る。他の実施形態では、第1の部分が、ポリペプチドの第1のアミノ酸残基にコンジュゲートされ、第2の部分が、ポリペプチドの第2のアミノ酸残基にコンジュゲートされる。例えば、ポリペプチドが第1のアミノ酸残基で第1の部分にコンジュゲートされ、第2のアミノ酸残基で2つの他の部分にコンジュゲートされる場合、上記の組み合わせも可能である。限定されないが、第1のアミノ酸残基で第1及び第2の部分にコンジュゲートされ、第2のアミノ酸残基で第3及び第4の部分にコンジュゲートされたポリペプチドなどの他の組み合わせも可能である。
【0138】
目的の1つ以上の部分にコンジュゲートされるポリペプチドの1つ以上のアミノ酸残基は、天然に存在するアミノ酸、非天然アミノ酸、又はそれらの組み合わせであり得る。例えば、コンジュゲートは、ポリペプチドの天然に存在するアミノ酸残基にコンジュゲートされた1つ以上の薬物又は活性薬剤を含み得る。他の事例において、コンジュゲートは、ポリペプチドの非天然アミノ酸残基にコンジュゲートされた1つ以上の薬物又は活性薬剤を含み得る。1つ以上の薬物又は活性薬剤は、本明細書に記載されるように、単一の天然又は非天然アミノ酸残基でポリペプチドにコンジュゲートされ得る。ポリペプチド中の1つ以上の天然又は非天然アミノ酸残基は、本明細書に記載されるように、1つ以上の部分にコンジュゲートされ得る。例えば、ポリペプチド中の2つ(以上)のアミノ酸残基(例えば、天然又は非天然アミノ酸残基)は各々、ポリペプチド中の複数の部位が目的の部分にコンジュゲートされるように、1つ又は2つの部分にコンジュゲートされ得る。
【0139】
特定の実施形態では、ポリペプチド(例えば、抗体)及び目的の部分(例えば、薬物又は活性薬剤)は、コンジュゲーション部分を通してコンジュゲートされる。例えば、ポリペプチド及び目的の部分は各々、コンジュゲーション部分に結合(例えば、共有結合)され、したがって、コンジュゲーション部分を通してポリペプチド及び目的の部分をともに間接的に結合し得る。いくつかの場合において、コンジュゲーション部分は、ヒドラジニル-インドリル若しくはヒドラジニル-ピロロ-ピリジニル化合物、又はヒドラジニル-インドリル若しくはヒドラジニル-ピロロ-ピリジニル化合物の誘導体を含む。例えば、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルコンジュゲーション部分を通して目的の部分をポリペプチドにカップリングするための一般的なスキームが、以下の一般的反応スキームに示される。ヒドラジニル-インドリル及びヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルコンジュゲーション部分はまた、本明細書では、それぞれ、ヒドラジノ-イソ-ピクテ-スペングラー(HIPS)コンジュゲーション部分及びアザ-ヒドラジノ-イソ-ピクテ-スペングラー(azaHIPS)コンジュゲーション部分とも称される。
【化1】
【0140】
上記の反応スキームでは、Rは、ポリペプチドにコンジュゲートされる(例えば、本明細書に記載されるリンカーを通してポリペプチドにコンジュゲートされる)目的の部分(例えば、薬物又は活性薬剤)を含む。上記の反応スキームに示されるように、2-ホルミルグリシン残基(fGly)を含むポリペプチドは、コンジュゲーション部分(例えば、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルコンジュゲーション部分)を含むように修飾された薬物又は活性薬剤と反応し、コンジュゲーション部分に結合しているポリペプチドコンジュゲートを産生し、したがって、コンジュゲーション部分を通して薬物又は活性薬剤をポリペプチドに結合させる。
【0141】
本明細書に記載されるように、この部分は、限定されないが、検出可能な標識、又は薬物若しくは活性薬剤などの化学エンティティなどの様々な部分のうちのいずれかであり得る。R’及びR”は、各々独立して、限定されないが、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノアシル、アルキルアミド、置換アルキルアミド、スルホニル、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルなどの任意の所望の置換基であり得る。Zは、CR21、NR22、N、O、又はSであり得、式中、R21及びR22は、各々独立して、上記のR’及びR”について記載される置換基のうちのいずれかから選択される。
【0142】
本明細書に記載されるコンジュゲート及び化合物において示されるように、他のヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルカップリング部分も可能である。例えば、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルカップリング部分は、リンカーに結合(例えば、共有結合)し得る。したがって、本開示の実施形態は、リンカーを通して薬物又は活性薬剤に結合しているヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルコンジュゲーション部分を含む。ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルコンジュゲーション部分を薬物又は活性薬剤にカップリングし得るリンカーの様々な実施形態が、本明細書で詳細に記載される。例えば、いくつかの事例において、リンカーは、本明細書に記載される切断可能なリンカーである。他の実施形態では、リンカーは、本明細書に記載される非切断可能なリンカーである。
【0143】
特定の実施形態では、ポリペプチド(例えば、抗体)は、1つ以上の目的の部分にコンジュゲートされ得、ポリペプチドの1つ以上のアミノ酸は、目的の部分へのコンジュゲーションの前に修飾される。ポリペプチドの1つ以上のアミノ酸の修飾は、目的の部分へのコンジュゲーションに好適な1つ以上の反応性基を含むポリペプチドを産生し得る。いくつかの場合において、ポリペプチドは、1つ以上の修飾アミノ酸残基を含み、目的の部分(例えば、上記に記載されるヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルコンジュゲーション部分などのコンジュゲーション部分を含む1つ以上の部分)へのコンジュゲーションに好適な1つ以上の反応性基を提供し得る。例えば、ポリペプチドのアミノ酸は、反応性アルデヒド基(例えば、反応性アルデヒド)を含むように修飾され得る。反応性アルデヒドが、「アルデヒドタグ」又は「ald-タグ」に含まれてもよく、これらは、本明細書で使用される場合、ホルミルグリシン生成酵素(FGE)の作用によって、2-ホルミルグリシン残基(本明細書では「fGly」と称される)を含むように変換されている、スルファターゼモチーフ由来のアミノ酸配列(例えば、L(C/S)TPSR)を指す。FGEによって生成されるfGly残基はまた、「ホルミルグリシン」とも称され得る。言い換えれば、「アルデヒドタグ」という用語は、「変換された」スルファターゼモチーフ(例えば、システイン又はセリン残基がFGEの作用によってfGlyに変換されているスルファターゼモチーフ、例えば、L(fGly)TPSR)を含むアミノ酸配列を指すために本明細書で使用される。変換されたスルファターゼモチーフは、「変換されていない」スルファターゼモチーフ(例えば、システイン又はセリン残基がFGEによってfGlyに変換されていないが、変換されることが可能であるスルファターゼモチーフ、例えば、配列L(C/S)TPSRを有する変換されていないスルファターゼモチーフ)を含むアミノ酸配列から産生され得る。スルファターゼモチーフ上のホルミルグリシン生成酵素(FGE)の作用の文脈において使用される場合の「変換」とは、スルファターゼモチーフにおけるシステイン又はセリン残基のホルミルグリシン(fGly)残基への(例えば、CysからfGlyへの、又はSerからfGlyへの)生化学的修飾を指す。部位特異的タンパク質修飾におけるアルデヒドタグ及びその使用の追加の態様は、米国特許第7,985,783号及び米国特許第8,729,232号に記載され、これらの各々の開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0144】
いくつかの場合において、コンジュゲートを産生するために、fGly残基を含むポリペプチドは、fGlyと化合物(例えば、上記に記載されるように、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルコンジュゲーション部分を含む化合物)との反応によって、目的の部分にコンジュゲートされ得る。例えば、fGly含有ポリペプチドは、ポリペプチドへの薬物のコンジュゲーションを提供するために好適な条件下で、反応性パートナー含有薬物と接触され得る。いくつかの事例において、反応性パートナー含有薬物は、上記に記載されるヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルコンジュゲーション部分を含み得る。例えば、薬物又は活性薬剤は、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルコンジュゲーション部分を含むように修飾され得る。いくつかの場合において、薬物又は活性薬剤は、本明細書に詳細に記載されるリンカーなどのリンカーを通して、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルに共有結合しているなど、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルに結合している。
【0145】
特定の実施形態では、本開示のコンジュゲートは、1つ以上の目的の部分(例えば、薬物又は活性薬剤)に結合している少なくとも1つのアミノ酸残基を有するポリペプチド(例えば、抗体)を含む。コンジュゲートを作製するために、ポリペプチドのアミノ酸残基は、修飾され、次いで、上記に記載されるヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルコンジュゲーション部分に結合している1つ以上の薬物又は活性薬剤にカップリングされ得る。特定の実施形態では、ポリペプチド(例えば、抗体)のアミノ酸残基は、上記に記載されるように、fGly残基に修飾されるシステイン又はセリン残基である。特定の実施形態では、修飾アミノ酸残基(例えば、fGly残基)は、上記に記載されるヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルコンジュゲーション部分を含む薬物又は活性薬剤にコンジュゲートされて、1つ以上の薬物又は活性薬剤がヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルコンジュゲーション部分を通してポリペプチドにコンジュゲートされる、本開示のコンジュゲートを提供する。本明細書で使用される場合、fGly’という用語は、目的の部分(例えば、薬物又は活性薬剤)にカップリングされるポリペプチド(例えば、抗体)の修飾アミノ酸残基を指す。
【0146】
特定の実施形態では、コンジュゲートは、本明細書に記載されるリンカーに結合している少なくとも1つのアミノ酸残基を有するポリペプチド(例えば、抗体)を含み、これは順に、薬物又は活性薬剤に結合している。例えば、コンジュゲートは、上記に記載される1つ以上の目的の部分(例えば、1つ以上の薬物又は活性薬剤)にコンジュゲートされる少なくとも1つのアミノ酸残基(fGly’)を有するポリペプチド(例えば、抗体)を含み得る。
【0147】
本開示の態様は、式(I)のコンジュゲートであって、
【化2】
式中、
Zが、CR
4又はNであり、
R
1が、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択され、
R
2及びR
3が、各々独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノアシル、アルキルアミド、置換アルキルアミド、スルホニル、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択されるか、又はR
2及びR
3が、任意選択的に環状に連結されて、5員若しくは6員ヘテロシクリルを形成し、
各R
4が、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノアシル、アルキルアミド、置換アルキルアミド、スルホニル、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択され、
Lが、リンカーであり、
W
1が、薬物であり、
W
2が、抗体である、コンジュゲートを含む。
【0148】
特定の実施形態では、Zは、CR4又はNである。特定の実施形態では、Zは、CR4である。特定の実施形態では、Zは、Nである。
【0149】
特定の実施形態では、R1は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択される。
【0150】
特定の実施形態では、R1は、水素である。特定の実施形態では、R1は、C1~6アルキル若しくはC1~6置換アルキル、又はC1~4アルキル若しくはC1~4置換アルキル、又はC1~3アルキル若しくはC1~3置換アルキルなどのアルキル又は置換アルキルである。特定の実施形態では、R1は、メチルである。特定の実施形態では、R1は、C2~6アルケニル若しくはC2~6置換アルケニル、又はC2~4アルケニル若しくはC2~4置換アルケニル、又はC2~3アルケニル若しくはC2~3置換アルケニルなどのアルケニル又は置換アルケニルである。特定の実施形態では、R1は、C2~6アルケニル若しくはC2~6置換アルケニル、又はC2~4アルケニル若しくはC2~4置換アルケニル、又はC2~3アルケニル若しくはC2~3置換アルケニルなどのアルキニル又は置換アルキニルである。特定の実施形態では、R1は、C5~8アリール若しくはC5~8置換アリール、例えば、C5アリール若しくはC5置換アリール、又はC6アリール若しくはC6置換アリールなどのアリール又は置換アリールである。特定の実施形態では、R1は、C5~8ヘテロアリール若しくはC5~8置換ヘテロアリール、例えば、C5ヘテロアリール若しくはC5置換ヘテロアリール、又はC6ヘテロアリール若しくはC6置換ヘテロアリールなどのヘテロアリール又は置換ヘテロアリールである。特定の実施形態では、R1は、C3~8シクロアルキル若しくはC3~8置換シクロアルキル、例えば、C3~6シクロアルキル若しくはC3~6置換シクロアルキル、又はC3~5シクロアルキル若しくはC3~5置換シクロアルキルなどのシクロアルキル又は置換シクロアルキルである。特定の実施形態では、R1は、C3~8ヘテロシクリル若しくはC3~8置換ヘテロシクリル、例えば、C3~6ヘテロシクリル若しくはC3~6置換ヘテロシクリル、又はC3~5ヘテロシクリル若しくはC3~5置換ヘテロシクリルなどのヘテロシクリル又は置換ヘテロシクリルである。
【0151】
特定の実施形態では、R2及びR3は、各々独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノアシル、アルキルアミド、置換アルキルアミド、スルホニル、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択されるか、又はR2及びR3は、任意選択的に環状に連結されて、5員若しくは6員ヘテロシクリルを形成する。
【0152】
特定の実施形態では、各R2は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノアシル、アルキルアミド、置換アルキルアミド、スルホニル、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択される。特定の実施形態では、R2は、水素である。特定の実施形態では、R2は、C1~6アルキル若しくはC1~6置換アルキル、又はC1~4アルキル若しくはC1~4置換アルキル、又はC1~3アルキル若しくはC1~3置換アルキルなどのアルキル又は置換アルキルである。特定の実施形態では、R2は、メチルである。特定の実施形態では、R2は、C2~6アルケニル若しくはC2~6置換アルケニル、又はC2~4アルケニル若しくはC2~4置換アルケニル、又はC2~3アルケニル若しくはC2~3置換アルケニルなどのアルケニル又は置換アルケニルである。特定の実施形態では、R2は、アルキニル又は置換アルキニルである。特定の実施形態では、R2は、アルコキシ又は置換アルコキシである。特定の実施形態では、R2は、アミノ又は置換アミノである。特定の実施形態では、R2は、カルボキシル又はカルボキシルエステルである。特定の実施形態では、R2は、アシル又はアシルオキシである。特定の実施形態では、R2は、アシルアミノ又はアミノアシルである。特定の実施形態では、R2は、アルキルアミド又は置換アルキルアミドである。特定の実施形態では、R2は、スルホニルである。特定の実施形態では、R2は、チオアルコキシ又は置換チオアルコキシである。特定の実施形態では、R2は、C5~8アリール若しくはC5~8置換アリール、例えば、C5アリール若しくはC5置換アリール、又はC6アリール若しくはC6置換アリールなどのアリール又は置換アリールである。特定の実施形態では、R2は、C5~8ヘテロアリール若しくはC5~8置換ヘテロアリール、例えば、C5ヘテロアリール若しくはC5置換ヘテロアリール、又はC6ヘテロアリール若しくはC6置換ヘテロアリールなどのヘテロアリール又は置換ヘテロアリールである。特定の実施形態では、R2は、C3~8シクロアルキル若しくはC3~8置換シクロアルキル、例えば、C3~6シクロアルキル若しくはC3~6置換シクロアルキル、又はC3~5シクロアルキル若しくはC3~5置換シクロアルキルなどのシクロアルキル又は置換シクロアルキルである。特定の実施形態では、R2は、C3~6ヘテロシクリル若しくはC3~6置換ヘテロシクリル、又はC3~5ヘテロシクリル若しくはC3~5置換ヘテロシクリルなどのヘテロシクリル又は置換ヘテロシクリルである。
【0153】
特定の実施形態では、各R3は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノアシル、アルキルアミド、置換アルキルアミド、スルホニル、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択される。特定の実施形態では、R3は、水素である。特定の実施形態では、R3は、C1~6アルキル若しくはC1~6置換アルキル、又はC1~4アルキル若しくはC1~4置換アルキル、又はC1~3アルキル若しくはC1~3置換アルキルなどのアルキル又は置換アルキルである。特定の実施形態では、R3は、メチルである。特定の実施形態では、R3は、C2~6アルケニル若しくはC2~6置換アルケニル、又はC2~4アルケニル若しくはC2~4置換アルケニル、又はC2~3アルケニル若しくはC2~3置換アルケニルなどのアルケニル又は置換アルケニルである。特定の実施形態では、R3は、アルキニル又は置換アルキニルである。特定の実施形態では、R3は、アルコキシ又は置換アルコキシである。特定の実施形態では、R3は、アミノ又は置換アミノである。特定の実施形態では、R3は、カルボキシル又はカルボキシルエステルである。特定の実施形態では、R3は、アシル又はアシルオキシである。特定の実施形態では、R3は、アシルアミノ又はアミノアシルである。特定の実施形態では、R3は、アルキルアミド又は置換アルキルアミドである。特定の実施形態では、R3は、スルホニルである。特定の実施形態では、R3は、チオアルコキシ又は置換チオアルコキシである。特定の実施形態では、R3は、C5~8アリール若しくはC5~8置換アリール、例えば、C5アリール若しくはC5置換アリール、又はC6アリール若しくはC6置換アリールなどのアリール又は置換アリールである。特定の実施形態では、R3は、C5~8ヘテロアリール若しくはC5~8置換ヘテロアリール、例えば、C5ヘテロアリール若しくはC5置換ヘテロアリール、又はC6ヘテロアリール若しくはC6置換ヘテロアリールなどのヘテロアリール又は置換ヘテロアリールである。特定の実施形態では、R3は、C3~8シクロアルキル若しくはC3~8置換シクロアルキル、例えば、C3~6シクロアルキル若しくはC3~6置換シクロアルキル、又はC3~5シクロアルキル若しくはC3~5置換シクロアルキルなどのシクロアルキル又は置換シクロアルキルである。特定の実施形態では、R3は、C3~8ヘテロシクリル若しくはC3~8置換ヘテロシクリル、例えば、C3~6ヘテロシクリル若しくはC3~6置換ヘテロシクリル、又はC3~5ヘテロシクリル若しくはC3~5置換ヘテロシクリルなどのヘテロシクリル又は置換ヘテロシクリルである。
【0154】
特定の実施形態では、R2及びR3は、任意選択的に環状に連結されて、5員又は6員ヘテロシクリルを形成する。特定の実施形態では、R2及びR3は、環状に連結されて、5員又は6員ヘテロシクリルを形成する。特定の実施形態では、R2及びR3は、環状に連結されて、5員ヘテロシクリルを形成する。特定の実施形態では、R2及びR3は、環状に連結されて、6員ヘテロシクリルを形成する。
【0155】
特定の実施形態では、各R4は、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノアシル、アルキルアミド、置換アルキルアミド、スルホニル、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択される。
【0156】
各R4についての様々な可能性が、以下により詳細に記載される。特定の実施形態では、R4は、水素である。特定の実施形態では、各R4は、水素である。特定の実施形態では、R4は、F、Cl、Br、又はIなどのハロゲンである。特定の実施形態では、R4は、Fである。特定の実施形態では、R4は、Clである。特定の実施形態では、R4は、Brである。特定の実施形態では、R4は、Iである。特定の実施形態では、R4は、C1~6アルキル若しくはC1~6置換アルキル、又はC1~4アルキル若しくはC1~4置換アルキル、又はC1~3アルキル若しくはC1~3置換アルキルなどのアルキル又は置換アルキルである。特定の実施形態では、R4は、メチルである。特定の実施形態では、R4は、C2~6アルケニル若しくはC2~6置換アルケニル、又はC2~4アルケニル若しくはC2~4置換アルケニル、又はC2~3アルケニル若しくはC2~3置換アルケニルなどのアルケニル又は置換アルケニルである。特定の実施形態では、R4は、アルキニル又は置換アルキニルである。特定の実施形態では、R4は、アルコキシ又は置換アルコキシである。特定の実施形態では、R4は、アミノ又は置換アミノである。特定の実施形態では、R4は、カルボキシル又はカルボキシルエステルである。特定の実施形態では、R4は、アシル又はアシルオキシである。特定の実施形態では、R4は、アシルアミノ又はアミノアシルである。特定の実施形態では、R4は、アルキルアミド又は置換アルキルアミドである。特定の実施形態では、R4は、スルホニルである。特定の実施形態では、R4は、チオアルコキシ又は置換チオアルコキシである。特定の実施形態では、R4は、C5~8アリール若しくはC5~8置換アリール、例えば、C5アリール若しくはC5置換アリール、又はC6アリール若しくはC6置換アリールなどのアリール又は置換アリール(例えば、フェニル又は置換フェニル)である。特定の実施形態では、R4は、C5~8ヘテロアリール若しくはC5~8置換ヘテロアリール、例えば、C5ヘテロアリール若しくはC5置換ヘテロアリール、又はC6ヘテロアリール若しくはC6置換ヘテロアリールなどのヘテロアリール又は置換ヘテロアリールである。特定の実施形態では、R4は、C3~8シクロアルキル若しくはC3~8置換シクロアルキル、例えば、C3~6シクロアルキル若しくはC3~6置換シクロアルキル、又はC3~5シクロアルキル若しくはC3~5置換シクロアルキルなどのシクロアルキル又は置換シクロアルキルである。特定の実施形態では、R4は、C3~8ヘテロシクリル若しくはC3~8置換ヘテロシクリル、例えば、C3~6ヘテロシクリル若しくはC3~6置換ヘテロシクリル、又はC3~5ヘテロシクリル若しくはC3~5置換ヘテロシクリルなどのヘテロシクリル又は置換ヘテロシクリルである。
【0157】
特定の実施形態では、W1は、薬物である。薬物の更なる説明が、本明細書における開示に見出される。
【0158】
特定の実施形態では、W2は、抗体である。特定の実施形態では、W2は、本明細書に記載される1つ以上のfGly’残基を含む。特定の実施形態では、抗体は、本明細書に記載されるfGly’残基を通してコンジュゲートの残りの部分に結合している。主題のコンジュゲートで使用される抗体の更なる説明が、本明細書における開示に見出される。
【0159】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は、リンカーLを含む。リンカーは、コンジュゲーション部分(例えば、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルコンジュゲーション部分)を1つ以上の目的の部分に結合するために利用され得る。リンカーは、任意の便宜的な位置でコンジュゲーション部分(例えば、本明細書に記載される)に結合(例えば、共有結合)され得る。例えば、リンカーは、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルコンジュゲーション部分を薬物に結合させ得る。ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルカップリング部分は、リンカー(したがって、薬物)を抗体などのポリペプチドにコンジュゲートするために使用され得る。例えば、コンジュゲーション部分は、リンカー(したがって、薬物)を抗体のfGly残基などのポリペプチドの修飾アミノ酸残基にコンジュゲートするために使用され得る。
【0160】
特定の実施形態では、Lは、コンジュゲーション部分をW1に結合させ、したがって、コンジュゲーション部分は、リンカーLを通してW1に間接的に結合される。上記に記載されるように、W1は、薬物であり、したがって、Lは、コンジュゲーション部分を薬物に結合し、例えば、コンジュゲーション部分は、リンカーLを通して薬物に間接的に結合される。
【0161】
任意の便宜的なリンカーが、主題のコンジュゲートで利用され得る。特定の実施形態では、Lは、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシルアミノ、アルキルアミド、置換アルキルアミド、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択される基を含む。特定の実施形態では、Lは、アルキル又は置換アルキル基を含む。特定の実施形態では、Lは、アルケニル又は置換アルケニル基を含む。特定の実施形態では、Lは、アルキニル又は置換アルキニル基を含む。特定の実施形態では、Lは、アルコキシ又は置換アルコキシ基を含む。特定の実施形態では、Lは、アミノ又は置換アミノ基を含む。特定の実施形態では、Lは、カルボキシル又はカルボキシルエステル基を含む。特定の実施形態では、Lは、アシルアミノ基を含む。特定の実施形態では、Lは、アルキルアミド又は置換アルキルアミド基を含む。特定の実施形態では、Lは、アリール又は置換アリール基を含む。特定の実施形態では、Lは、ヘテロアリール又は置換ヘテロアリール基を含む。特定の実施形態では、Lは、シクロアルキル又は置換シクロアルキル基を含む。特定の実施形態では、Lは、ヘテロシクリル又は置換ヘテロシクリル基を含む。
【0162】
特定の実施形態では、Lは、ポリマーを含む。例えば、ポリマーは、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールホモポリマー、ポリプロピレングリコールホモポリマー、エチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー(例えば、ホモポリマー及びコポリマーは、非置換であるか、又はアルキル基で一端で置換されている)、ポリビニルアルコール、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルピロリドン、それらの組み合わせなどを含む、ポリアルキレングリコール及びその誘導体を含み得る。特定の実施形態では、ポリマーは、ポリアルキレングリコールである。特定の実施形態では、ポリマーは、ポリエチレングリコールである。以下により詳細に記載されるコンジュゲート及び化合物において示されるように、他のリンカーも可能である。
【0163】
いくつかの実施形態では、Lは、以下の式によって記載されるリンカーであり、
-(L1)a-(L2)b-(L3)c-(L4)d-(L5)e-(L6)f-、
式中、L1、L2、L3、L4、L5、及びL6は、各々独立して、リンカーサブユニットであり、a、b、c、d、及びfは、各々独立して、0又は1であり、a、b、c、d、及びfの合計は、1~6である。
【0164】
特定の実施形態では、a、b、c、d、e、及びfの合計は、1である。特定の実施形態では、a、b、c、d、e、及びfの合計は、2である。特定の実施形態では、a、b、c、d、e、及びfの合計は、3である。特定の実施形態では、a、b、c、d、e、及びfの合計は、4である。特定の実施形態では、a、b、c、d、e、及びfの合計は、5である。特定の実施形態では、a、b、c、d、e、及びfの合計は、6である。特定の実施形態では、a、b、c、d、e、及びfは各々、1である。特定の実施形態では、a、b、c、d、及びeは各々、1であり、fは、0である。特定の実施形態では、a、b、c、及びdは各々、1であり、e及びfは各々、0である。特定の実施形態では、a、b、及びcは各々、1であり、d、e、及びfは各々、0である。特定の実施形態では、a及びbは各々、1であり、c、d、e、及びfは各々、0である。特定の実施形態では、aは、1であり、b、c、d、e、及びfは各々、0である。
【0165】
特定の実施形態では、リンカーサブユニットL1は、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルコンジュゲーション部分(例えば、上記の式(I)に示される)に結合している。特定の実施形態では、リンカーサブユニットL2は、存在する場合、薬物に結合している。特定の実施形態では、リンカーサブユニットL3は、存在する場合、薬物に結合している。特定の実施形態では、リンカーサブユニットL4は、存在する場合、薬物に結合している。特定の実施形態では、リンカーサブユニットL5は、存在する場合、薬物に結合している。特定の実施形態では、リンカーサブユニットL6は、存在する場合、薬物に結合している。
【0166】
任意の便宜的なリンカーサブユニットが、リンカーLで利用され得る。目的のリンカーサブユニットには、ポリエチレングリコール、ポリエチレン及びポリアクリレート、アミノ酸残基(複数可)、炭水化物系ポリマー又は炭水化物残基及びその誘導体、ポリヌクレオチド、アルキル基、アリール基、複素環式基、それらの組み合わせ、並びにそれらの置換バージョンなどのポリマーの単位が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、L1、L2、L3、L4、L5、及びL6(存在する場合)の各々は、独立して、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、アミノ酸残基、アルキル基、置換アルキル、アリール基、置換アリール基、及びジアミン(例えば、アルキレンジアミンを含む連結基)から選択される1つ以上の基を含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、L1(存在する場合)は、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、アミノ酸残基、アルキル基、置換アルキル、アリール基、置換アリール基、又はジアミンを含む。いくつかの実施形態では、L1は、ポリエチレングリコールを含む。いくつかの実施形態では、L1は、修飾ポリエチレングリコールを含む。いくつかの実施形態では、L1は、アミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、L1は、アルキル基又は置換アルキルを含む。いくつかの実施形態では、L1は、アリール基又は置換アリール基を含む。いくつかの実施形態では、L1は、ジアミン(例えば、アルキレンジアミンを含む連結基)を含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、L2(存在する場合)は、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、アミノ酸残基、アルキル基、置換アルキル、アリール基、置換アリール基、又はジアミンを含む。いくつかの実施形態では、L2は、ポリエチレングリコールを含む。いくつかの実施形態では、L2は、修飾ポリエチレングリコールを含む。いくつかの実施形態では、L2は、アミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、L2は、アルキル基又は置換アルキルを含む。いくつかの実施形態では、L2は、アリール基又は置換アリール基を含む。いくつかの実施形態では、L2は、ジアミン(例えば、アルキレンジアミンを含む連結基)を含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、L3(存在する場合)は、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、アミノ酸残基、アルキル基、置換アルキル、アリール基、置換アリール基、又はジアミンを含む。いくつかの実施形態では、L3は、ポリエチレングリコールを含む。いくつかの実施形態では、L3は、修飾ポリエチレングリコールを含む。いくつかの実施形態では、L3は、アミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、L3は、アルキル基又は置換アルキルを含む。いくつかの実施形態では、L3は、アリール基又は置換アリール基を含む。いくつかの実施形態では、L3は、ジアミン(例えば、アルキレンジアミンを含む連結基)を含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、L4(存在する場合)は、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、アミノ酸残基、アルキル基、置換アルキル、アリール基、置換アリール基、又はジアミンを含む。いくつかの実施形態では、L4は、ポリエチレングリコールを含む。いくつかの実施形態では、L4は、修飾ポリエチレングリコールを含む。いくつかの実施形態では、L4は、アミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、L4は、アルキル基又は置換アルキルを含む。いくつかの実施形態では、L4は、アリール基又は置換アリール基を含む。いくつかの実施形態では、L4は、ジアミン(例えば、アルキレンジアミンを含む連結基)を含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、L5(存在する場合)は、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、アミノ酸残基、アルキル基、置換アルキル、アリール基、置換アリール基、又はジアミンを含む。いくつかの実施形態では、L5は、ポリエチレングリコールを含む。いくつかの実施形態では、L5は、修飾ポリエチレングリコールを含む。いくつかの実施形態では、L5は、アミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、L5は、アルキル基又は置換アルキルを含む。いくつかの実施形態では、L5は、アリール基又は置換アリール基を含む。いくつかの実施形態では、L5は、ジアミン(例えば、アルキレンジアミンを含む連結基)を含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、L6(存在する場合)は、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、アミノ酸残基、アルキル基、置換アルキル、アリール基、置換アリール基、又はジアミンを含む。いくつかの実施形態では、L6は、ポリエチレングリコールを含む。いくつかの実施形態では、L6は、修飾ポリエチレングリコールを含む。いくつかの実施形態では、L6は、アミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、L6は、アルキル基又は置換アルキルを含む。いくつかの実施形態では、L6は、アリール基又は置換アリール基を含む。いくつかの実施形態では、L6は、ジアミン(例えば、アルキレンジアミンを含む連結基)を含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、Lは、-(L1)a-(L2)b-(L3)c-(L4)d-(L5)e-(L6)f-を含む、リンカーであり、式中、
-(L1)a-は、-(T1-V1)a-であり、
-(L2)b-は、-(T2-V2)b-であり、
-(L3)c-は、-(T3-V3)c-であり、
-(L4)d-は、-(T4-V4)d-であり、
-(L5)e-は、-(T5-V5)e-であり、
-(L6)f-は、-(T6-V6)f-であり、
T1、T2、T3、T4、T5、及びT6は、存在する場合、テザー基であり、
V1、V2、V3、V4、V5、及びV6は、存在する場合、共有結合又は連結官能基であり、
a、b、c、d、e、及びfは、各々独立して、0又は1であり、a、b、c、d、e、及びfの合計は、1~6である。
【0174】
上記に記載されるように、特定の実施形態では、L1は、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルコンジュゲーション部分(例えば、上記の式(I)に示される)に結合している。したがって、特定の実施形態では、T1は、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルコンジュゲーション部分(例えば、上記の式(I)に示される)に結合している。特定の実施形態では、V1は、薬物に結合している。特定の実施形態では、L2は、存在する場合、薬物に結合している。したがって、特定の実施形態では、T2が、存在する場合、薬物に結合しているか、又はV2が、存在する場合、薬物に結合している。特定の実施形態では、L3は、存在する場合、薬物に結合している。したがって、特定の実施形態では、T3が、存在する場合、薬物に結合しているか、又はV3が、存在する場合、薬物に結合している。特定の実施形態では、L4は、存在する場合、薬物に結合している。したがって、特定の実施形態では、T4が、存在する場合、薬物に結合しているか、又はV4が、存在する場合、薬物に結合している。特定の実施形態では、L5は、存在する場合、薬物に結合している。したがって、特定の実施形態では、T5が、存在する場合、薬物に結合しているか、又はV5が、存在する場合、薬物に結合している。特定の実施形態では、L6は、存在する場合、薬物に結合している。したがって、特定の実施形態では、T6が、存在する場合、薬物に結合しているか、又はV6が、存在する場合、薬物に結合している。
【0175】
テザー基T1、T2、T3、T4、T5、及びT6に関して、任意の便宜的なテザー基が、主題のリンカーで利用され得る。いくつかの実施形態では、T1、T2、T3、T4、T5、及びT6は、各々独立して、共有結合、(C1~C12)アルキル、置換(C1~C12)アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリル、(EDA)w、(PEG)n、(AA)p、-(CR13OH)m-、4-アミノ-ピペリジン(4AP)、メタ-アミノ-ベンジルオキシ(MABO)、メタ-アミノ-ベンジルオキシカルボニル(MABC)、パラ-アミノ-ベンジルオキシ(PABO)、パラ-アミノ-ベンジルオキシカルボニル(PABC)、パラ-アミノベンジル(PAB)、パラ-アミノ-ベンジルアミノ(PABA)、パラ-アミノ-フェニル(PAP)、パラ-ヒドロキシ-フェニル(PHP)、アセタール基、ヒドラジン、ジスルフィド、並びにエステルから選択される1つ以上の基を含み、各wは、1~20の整数であり、各nは、1~30の整数であり、各pは、1~20の整数であり、各mは、1~12の整数である。
【0176】
特定の実施形態では、テザー基(例えば、T1、T2、T3、T4、T5、及び/又はT6)は、(C1~C12)アルキル又は置換(C1~C12)アルキルを含む。特定の実施形態では、(C1~C12)アルキルは、1~12個の炭素原子、例えば、1~10個の炭素原子、又は1~8個の炭素原子、又は1~6個の炭素原子、又は1~5個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子、又は1~3個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖アルキル基である。いくつかの事例において、(C1~C12)アルキルは、C1~C12アルキル、又はC1~C10アルキル、又はC1~C6アルキル、又はC1~C3アルキルなどのアルキル又は置換アルキルであり得る。いくつかの事例において、(C1~C12)アルキルは、C2-アルキルである。例えば、(C1~C12)アルキルは、C1~C12アルキレン、又はC1~C10アルキレン、又はC1~C6アルキレン、又はC1~C3アルキレンなどのアルキレン又は置換アルキレンであり得る。いくつかの事例において、(C1~C12)アルキルは、C2-アルキレン(例えば、CH2CH2)である。
【0177】
特定の実施形態では、置換(C1~C12)アルキルは、1~12個の炭素原子、例えば、1~10個の炭素原子、又は1~8個の炭素原子、又は1~6個の炭素原子、又は1~5個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子、又は1~3個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖置換アルキル基である。いくつかの事例において、置換(C1~C12)アルキルは、置換C1~C12アルキル、又は置換C1~C10アルキル、又は置換C1~C6アルキル、又は置換C1~C3アルキルなどの置換アルキルであり得る。いくつかの事例において、置換(C1~C12)アルキルは、置換C2-アルキルである。例えば、置換(C1~C12)アルキルは、置換C1~C12アルキレン、又は置換C1~C10アルキレン、又は置換C1~C6アルキレン、又は置換C1~C3アルキレンなどの置換アルキレンであり得る。いくつかの事例において、置換(C1~C12)アルキルは、置換C2-アルキレンである。
【0178】
特定の実施形態では、テザー基(例えば、T1、T2、T3、T4、T5、及び/又はT6)は、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、又は置換ヘテロシクリルを含む。いくつかの事例において、テザー基(例えば、T1、T2、T3、T4、T5、及びT6)は、アリール又は置換アリールを含む。例えば、アリールは、フェニルであり得る。いくつかの場合において、置換アリールは、置換フェニルである。置換フェニルは、(C1~C12)アルキル、置換(C1~C12)アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択される1つ以上の置換基で置換され得る。いくつかの事例において、置換アリールは、置換フェニルであり、置換基は、本明細書に記載される切断可能な部分(例えば、グリコシド又はグリコシド誘導体などの酵素的に切断可能な部分)を含む。
【0179】
いくつかの事例において、テザー基(例えば、T1、T2、T3、T4、T5、及び/又はT6)は、ヘテロアリール又は置換ヘテロアリールを含む。いくつかの事例において、テザー基(例えば、T1、T2、T3、T4、T5、及びT6)は、シクロアルキル又は置換シクロアルキルを含む。いくつかの事例において、テザー基(例えば、T1、T2、T3、T4、T5、及びT6)は、ヘテロシクリル又は置換ヘテロシクリルを含む。いくつかの事例において、置換ヘテロアリール、置換シクロアルキル、又は置換ヘテロシクリル上の置換基は、本明細書に記載される切断可能な部分(例えば、グリコシド又はグリコシド誘導体などの酵素的に切断可能な部分)を含む。
【0180】
特定の実施形態では、テザー基(例えば、T
1、T
2、T
3、T
4、T
5、及び/又はT
6)は、エチレンジアミン(EDA)部分、例えば、EDA含有テザー基を含む。特定の実施形態では、(EDA)
wは、1つ以上のEDA部分を含み、例えば、wは、1~50、例えば、1~40、1~30、1~20、1~12、又は1~6、例えば、1、2、3、4、5、又は6の整数である)。連結されたエチレンジアミン(EDA)部分は、任意選択的に、1つ以上の便宜的な位置において、任意の便宜的な置換基、例えば、アルキル、置換アルキル、アシル、置換アシル、アリール、又は置換アリールで置換され得る。特定の実施形態では、EDA部分は、以下の構造によって記載され、
【化3】
式中、yは、1~6の整数であり、rは、0又は1であり、各R
12は、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノアシル、アルキルアミド、置換アルキルアミド、スルホニル、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択される。特定の実施形態では、yは、1、2、3、4、5、又は6である。特定の実施形態では、yは、1であり、rは、0である。特定の実施形態では、yは、1であり、rは、1である。特定の実施形態では、yは、2であり、rは、0である。特定の実施形態では、yは、2であり、rは、1である。特定の実施形態では、各R
12は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリールから選択される。特定の実施形態では、EDAのいずれか2つの隣接するR
12基は、環状に連結されて、例えば、ピペラジニル環を形成し得る。特定の実施形態では、yは、1であり、2つの隣接するR
12基は、環状に連結されてピペラジニル環を形成するアルキル基である。特定の実施形態では、yは、1であり、隣接するR
12基は、水素、アルキル(例えば、メチル)、及び置換アルキル(例えば、エチル-OH又はプロピル-OHなどの低級アルキル-OH)から選択される。
【0181】
特定の実施形態では、テザー基(例えば、T
1、T
2、T
3、T
4、T
5、及び/又はT
6)は、4-アミノ-ピペリジン(4AP)部分(本明細書ではピペリジン-4-アミノ、P4Aとも称される)を含む。4AP部分は、任意選択的に、1つ以上の便宜的な位置において、任意の便宜的な置換基、例えば、アルキル、置換アルキル、ポリエチレングリコール部分、アシル、置換アシル、アリール、又は置換アリールで置換され得る。特定の実施形態では、4AP部分は、以下の構造によって記載され、
【化4】
式中、R
12は、水素、アルキル、置換アルキル、ポリエチレングリコール部分(例えば、ポリエチレングリコール又は修飾ポリエチレングリコール)、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノアシル、アルキルアミド、置換アルキルアミド、スルホニル、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択される。特定の実施形態では、R
12は、ポリエチレングリコール部分である。特定の実施形態では、R
12は、カルボキシ修飾ポリエチレングリコールである。
【0182】
特定の実施形態では、R
12は、式:(PEG)
kによって記載されるポリエチレングリコール部分を含み、これは、以下の構造によって表され得、
【化5】
式中、kは、1~20、例えば、1~18、又は1~16、又は1~14、又は1~12、又は1~10、又は1~8、又は1~6、又は1~4、又は1若しくは2の整数であり、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20である。いくつかの事例において、kは、2である。特定の実施形態では、R
17は、OH、COOH、又はCOORから選択され、式中、Rは、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択される。特定の実施形態では、R
17は、COOHである。特定の実施形態では、R
17は、COOCH
3である。
【0183】
特定の実施形態では、テザー基(例えば、T
1、T
2、T
3、T
4、T
5、及び/又はT
6)は、(PEG)
nを含み、(PEG)
nは、ポリエチレングリコール又は修飾ポリエチレングリコール連結単位である。特定の実施形態では、(PEG)
nは、以下の構造によって記載され、
【化6】
式中、nは、1~50、例えば、1~40、1~30、1~20、1~12、又は1~6の整数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20である。いくつかの事例において、nは、2である。いくつかの事例において、nは、3である。いくつかの事例において、nは、6である。いくつかの事例において、nは、12である。
【0184】
特定の実施形態では、テザー基(例えば、T1、T2、T3、T4、T5、及び/又はT6)は、(AA)pを含み、式中、AAは、アミノ酸残基である。任意の便宜的なアミノ酸が利用され得る。目的のアミノ酸には、L-アミノ酸及びD-アミノ酸、20個の主なアルファ-アミノ酸及びベータ-アラニンのうちのいずれかなどの天然に存在するアミノ酸、天然に存在しないアルファ-アミノ酸又は天然に存在しないベータ-アミノ酸などの天然に存在しないアミノ酸(例えば、アミノ酸類似体)などが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、pは、1~50、例えば、1~40、1~30、1~20、1~12、又は1~6の整数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20である。特定の実施形態では、pは、1である。特定の実施形態では、pは、2である。
【0185】
特定の実施形態では、テザー基(例えば、T1、T2、T3、T4、T5、及び/又はT6)は、アミノ酸類似体を含む。アミノ酸類似体は、天然に存在するタンパク質(例えば、Ala又はA、Cys又はC、Asp又はD、Glu又はE、Phe又はF、Gly又はG、His又はH、Ile又はI、Lys又はK、Leu又はL、Met又はM、Asn又はN、Pro又はP、Gln又はQ、Arg又はR、Ser又はS、Thr又はT、Val又はV、Trp又はW、Tyr又はY)中に一般的に見出される1つ以上のアミノ酸と構造及び/又は全体的な形状が類似している化合物を含む。アミノ酸類似体はまた、修飾側鎖又は骨格を有する天然アミノ酸も含む。アミノ酸類似体はまた、天然に存在するD形態と同じ立体化学を有するアミノ酸類似体、並びにアミノ酸類似体のL形態を含む。いくつかの事例において、アミノ酸類似体は、1つ以上の天然アミノ酸の骨格構造及び/又は側鎖構造を共有し、その違い(複数可)は、分子中の1つ以上の修飾基である。そのような修飾には、ある原子(Nなど)の関連する原子(Sなど)による置換、ある基(メチル、若しくはヒドロキシルなど)又はある原子(Cl、若しくはBrなど)の付加、ある基の欠失、共有結合の置換(単結合の二重結合による置換)、あるいはそれらの組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されない。例えば、アミノ酸類似体は、α-ヒドロキシ酸、及びα-アミノ酸などを含み得る。アミノ酸類似体の例としては、スルホアラニンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0186】
特定の実施形態では、テザー基(例えば、T1、T2、T3、T4、T5、及び/又はT6)は、式-(CR13OH)m-によって記載される部分を含み、式中、mは、0であるか、又は、nは、1~50、例えば、1~40、1~30、1~20、1~12、又は1~6、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、若しくは12などの整数である。特定の実施形態では、mは、1である。特定の実施形態では、mは、2である。特定の実施形態では、各R13は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノアシル、アルキルアミド、置換アルキルアミド、スルホニル、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択される。特定の実施形態では、R13は、水素である。特定の実施形態では、R13は、C1~6アルキル若しくはC1~6置換アルキル、又はC1~4アルキル若しくはC1~4置換アルキル、又はC1~3アルキル若しくはC1~3置換アルキルなどのアルキル又は置換アルキルである。特定の実施形態では、R13は、C2~6アルケニル若しくはC2~6置換アルケニル、又はC2~4アルケニル若しくはC2~4置換アルケニル、又はC2~3アルケニル若しくはC2~3置換アルケニルなどのアルケニル又は置換アルケニルである。特定の実施形態では、R13は、アルキニル又は置換アルキニルである。特定の実施形態では、R13は、アルコキシ又は置換アルコキシである。特定の実施形態では、R13は、アミノ又は置換アミノである。特定の実施形態では、R13は、カルボキシル又はカルボキシルエステルである。特定の実施形態では、R13は、アシル又はアシルオキシである。特定の実施形態では、R13は、アシルアミノ又はアミノアシルである。特定の実施形態では、R13は、アルキルアミド又は置換アルキルアミドである。特定の実施形態では、R13は、スルホニルである。特定の実施形態では、R13は、チオアルコキシ又は置換チオアルコキシである。特定の実施形態では、R13は、C5~8アリール若しくはC5~8置換アリール、例えば、C5アリール若しくはC5置換アリール、又はC6アリール若しくはC6置換アリールなどのアリール又は置換アリールである。特定の実施形態では、R13は、C5~8ヘテロアリール若しくはC5~8置換ヘテロアリール、例えば、C5ヘテロアリール若しくはC5置換ヘテロアリール、又はC6ヘテロアリール若しくはC6置換ヘテロアリールなどのヘテロアリール又は置換ヘテロアリールである。特定の実施形態では、R13は、C3~8シクロアルキル若しくはC3~8置換シクロアルキル、例えば、C3~6シクロアルキル若しくはC3~6置換シクロアルキル、又はC3~5シクロアルキル若しくはC3~5置換シクロアルキルなどのシクロアルキル又は置換シクロアルキルである。特定の実施形態では、R13は、C3~8ヘテロシクリル若しくはC3~8置換ヘテロシクリル、例えば、C3~6ヘテロシクリル若しくはC3~6置換ヘテロシクリル、又はC3~5ヘテロシクリル若しくはC3~5置換ヘテロシクリルなどのヘテロシクリル又は置換ヘテロシクリルである。
【0187】
特定の実施形態では、R13は、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリールから選択される。これらの実施形態では、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリールは、R13について上記に記載されているとおりである。
【0188】
特定の実施形態では、テザー基(例えば、T1、T2、T3、T4、T5、及び/又はT6)は、メタ-アミノ-ベンジルオキシ(MABO)、メタ-アミノ-ベンジルオキシカルボニル(MABC)、パラ-アミノ-ベンジルオキシ(PABO)、パラ-アミノ-ベンジルオキシカルボニル(PABC)、パラ-アミノベンジル(PAB)、パラ-アミノ-ベンジルアミノ(PABA)、パラ-アミノ-フェニル(PAP)、又はパラ-ヒドロキシ-フェニル(PHP)を含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、テザー基は、以下の構造によって記載されるMABO基を含む。
【化7】
【0190】
いくつかの実施形態では、テザーは、以下の構造によって記載されるMABC基を含む。
【化8】
【0191】
いくつかの実施形態では、テザーは、以下の構造によって記載されるPABO基を含む。
【化9】
【0192】
いくつかの実施形態では、テザーは、以下の構造によって記載されるPABC基を含む。
【化10】
【0193】
いくつかの実施形態では、テザーは、以下の構造によって記載されるPAB基を含む。
【化11】
【0194】
いくつかの実施形態では、テザーは、以下の構造によって記載されるPABA基を含む。
【化12】
【0195】
いくつかの実施形態では、テザーは、以下の構造によって記載されるPAP基を含む。
【化13】
【0196】
いくつかの実施形態では、テザーは、以下の構造によって記載されるPHP基を含む。
【化14】
【0197】
特定の実施形態では、各R14は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノアシル、アルキルアミド、置換アルキルアミド、スルホニル、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択される。
【0198】
特定の実施形態では、R14は、水素である。特定の実施形態では、各R14は、水素である。特定の実施形態では、R14は、C1~6アルキル若しくはC1~6置換アルキル、又はC1~4アルキル若しくはC1~4置換アルキル、又はC1~3アルキル若しくはC1~3置換アルキルなどのアルキル又は置換アルキルである。特定の実施形態では、R14は、C2~6アルケニル若しくはC2~6置換アルケニル、又はC2~4アルケニル若しくはC2~4置換アルケニル、又はC2~3アルケニル若しくはC2~3置換アルケニルなどのアルケニル又は置換アルケニルである。特定の実施形態では、R14は、アルキニル又は置換アルキニルである。特定の実施形態では、R14は、アルコキシ又は置換アルコキシである。特定の実施形態では、R14は、アミノ又は置換アミノである。特定の実施形態では、R14は、カルボキシル又はカルボキシルエステルである。特定の実施形態では、R14は、アシル又はアシルオキシである。特定の実施形態では、R14は、アシルアミノ又はアミノアシルである。特定の実施形態では、R14は、アルキルアミド又は置換アルキルアミドである。特定の実施形態では、R14は、スルホニルである。特定の実施形態では、R14は、チオアルコキシ又は置換チオアルコキシである。特定の実施形態では、R14は、C5~8アリール若しくはC5~8置換アリール、例えば、C5アリール若しくはC5置換アリール、又はC6アリール若しくはC6置換アリールなどのアリール又は置換アリールである。特定の実施形態では、R14は、C5~8ヘテロアリール若しくはC5~8置換ヘテロアリール、例えば、C5ヘテロアリール若しくはC5置換ヘテロアリール、又はC6ヘテロアリール若しくはC6置換ヘテロアリールなどのヘテロアリール又は置換ヘテロアリールである。特定の実施形態では、R14は、C3~8シクロアルキル若しくはC3~8置換シクロアルキル、例えば、C3~6シクロアルキル若しくはC3~6置換シクロアルキル、又はC3~5シクロアルキル若しくはC3~5置換シクロアルキルなどのシクロアルキル又は置換シクロアルキルである。特定の実施形態では、R14は、例えば、C3~8ヘテロシクリル若しくはC3~8置換ヘテロシクリル、例えば、C3~6ヘテロシクリル若しくはC3~6置換ヘテロシクリル、又はC3~5ヘテロシクリル若しくはC3~5置換ヘテロシクリルなどのヘテロシクリル又は置換ヘテロシクリルである。
【0199】
上記に示されるMABO、MABC、PABO、PABC、PAB、PABA、PAP、及びPHPテザー構造のいくつかの実施形態では、フェニル環は、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノアシル、アルキルアミド、置換アルキルアミド、スルホニル、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択される1つ以上の追加の基で置換され得る。
【0200】
リンカーLの特定の実施形態では、テザー基T1、T2、T3、T4、T5、又はT6のうちの1つ以上は各々、任意選択的にグリコシド又はグリコシド誘導体で置換される。特定の実施形態では、グリコシド又はグリコシド誘導体は、グルクロニド、ガラクトシド、グルコシド、マンノシド、フコシド、O-GlcNAc、及びO-GalNAcから選択される。
【0201】
特定の実施形態では、上記に示されるMABO、MABC、PABO、PABC、PAB、PABA、PAP、及びPHPテザー構造は、グリコシド及びグリコシド誘導体から選択される1つ以上の追加の基で置換され得る。例えば、上記に示されるMABO、MABC、PABO、PABC、PAB、PABA、PAP、及びPHPテザー構造のいくつかの実施形態では、フェニル環は、グリコシド及びグリコシド誘導体から選択される1つ以上の追加の基で置換され得る。特定の実施形態では、グリコシド又はグリコシド誘導体は、グルクロニド、ガラクトシド、グルコシド、マンノシド、フコシド、O-GlcNAc、及びO-GalNAcから選択される。
【0202】
例えば、いくつかの実施形態では、グリコシド又はグリコシド誘導体は、以下の構造:
【化15】
から選択され得る。
【0203】
連結官能基V1、V2、V3、V4、V5、及びV6に関して、任意の便宜的な連結官能基が、リンカーLで利用され得る。目的の連結官能基には、アミノ、カルボニル、アミド、オキシカルボニル、カルボキシ、スルホニル、スルホキシド、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、チオ、オキシ、ホスホ、ホスホロホスホロアミデート、チオホスホロアイデートなどが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、V1、V2、V3、V4、V5、及びV6は、各々独立して、共有結合、-CO-、-NR15-、-NR15(CH2)q-、-NR15(C6H4)-、-CONR15-、-NR15CO-、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、-S(O)-、-SO2-、-SO2NR15-、-NR15SO2-、及び-P(O)OH-から選択され、式中、qは、1~6の整数である。特定の実施形態では、qは、1~6の整数(例えば、1、2、3、4、5、又は6)である。特定の実施形態では、qは、1である。特定の実施形態では、qは、2である。特定の実施形態では、qは、3である。特定の実施形態では、qは、4である。特定の実施形態では、qは、5である。特定の実施形態では、qは、6である。
【0204】
いくつかの実施形態では、各R15は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノアシル、アルキルアミド、置換アルキルアミド、スルホニル、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択される。
【0205】
特定の実施形態では、R15は、水素である。特定の実施形態では、各R15は、水素である。特定の実施形態では、R15は、C1~6アルキル若しくはC1~6置換アルキル、又はC1~4アルキル若しくはC1~4置換アルキル、又はC1~3アルキル若しくはC1~3置換アルキルなどのアルキル又は置換アルキルである。特定の実施形態では、R15は、C2~6アルケニル若しくはC2~6置換アルケニル、又はC2~4アルケニル若しくはC2~4置換アルケニル、又はC2~3アルケニル若しくはC2~3置換アルケニルなどのアルケニル又は置換アルケニルである。特定の実施形態では、R15は、アルキニル又は置換アルキニルである。特定の実施形態では、R15は、アルコキシ又は置換アルコキシである。特定の実施形態では、R15は、アミノ又は置換アミノである。特定の実施形態では、R15は、カルボキシル又はカルボキシルエステルである。特定の実施形態では、R15は、アシル又はアシルオキシである。特定の実施形態では、R15は、アシルアミノ又はアミノアシルである。特定の実施形態では、R15は、アルキルアミド又は置換アルキルアミドである。特定の実施形態では、R15は、スルホニルである。特定の実施形態では、R15は、チオアルコキシ又は置換チオアルコキシである。特定の実施形態では、R15は、C5~8アリール若しくはC5~8置換アリール、例えば、C5アリール若しくはC5置換アリール、又はC6アリール若しくはC6置換アリールなどのアリール又は置換アリールである。特定の実施形態では、R15は、C5~8ヘテロアリール若しくはC5~8置換ヘテロアリール、例えば、C5ヘテロアリール若しくはC5置換ヘテロアリール、又はC6ヘテロアリール若しくはC6置換ヘテロアリールなどのヘテロアリール又は置換ヘテロアリールである。特定の実施形態では、R15は、C3~8シクロアルキル若しくはC3~8置換シクロアルキル、例えば、C3~6シクロアルキル若しくはC3~6置換シクロアルキル、又はC3~5シクロアルキル若しくはC3~5置換シクロアルキルなどのシクロアルキル又は置換シクロアルキルである。特定の実施形態では、R15は、C3~8ヘテロシクリル若しくはC3~8置換ヘテロシクリル、例えば、C3~6ヘテロシクリル若しくはC3~6置換ヘテロシクリル、又はC3~5ヘテロシクリル若しくはC3~5置換ヘテロシクリルなどのヘテロシクリル又は置換ヘテロシクリルである。
【0206】
特定の実施形態では、各R15は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択される。これらの実施形態では、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルは、R15について上記に記載されるとおりである。
【0207】
特定の実施形態では、テザー基は、アセタール基、ジスルフィド、ヒドラジン、又はエステルを含む。いくつかの実施形態では、テザー基は、アセタール基を含む。いくつかの実施形態では、テザー基は、ヒドラジンを含む。いくつかの実施形態では、テザー基は、ジスルフィドを含む。いくつかの実施形態では、テザー基は、エステルを含む。
【0208】
上記に記載されるように、いくつかの実施形態では、Lは、-(T1-V1)a-(T2-V2)b-(T3-V3)c-(T4-V4)d-(T5-V5)e-(T6-V6)f-を含むリンカーであり、式中、a、b、c、d、e、及びfは、各々独立して、0又は1であり、a、b、c、d、e、及びfの合計は、1~6である。
【0209】
いくつかの実施形態では、リンカーLにおいて、
T
1は、(C
1~C
12)アルキル及び置換(C
1~C
12)アルキルから選択され、
T
2、T
3、T
4、T
5、及びT
6は、各々独立して、(C
1~C
12)アルキル、置換(C
1~C
12)アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリル、(EDA)
w、(PEG)
n、(AA)
p、-(CR
13OH)
m-、4-アミノ-ピペリジン(4AP)、MABO、MABC、PABO、PABC、PAB、PABA、PAP、PHP、アセタール基、ジスルフィド、ヒドラジン、並びにエステルから選択され、
V
1、V
2、V
3、V
4、V
5、及びV
6は、各々独立して、共有結合、-CO-、-NR
15-、-NR
15(CH
2)
q-、-NR
15(C
6H
4)-、-CONR
15-、-NR
15CO-、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、-S(O)-、-SO
2-、-SO
2NR
15-、-NR
15SO
2-、及び-P(O)OH-から選択され、式中、qは、1~6の整数であり、
(PEG)
nは、
【化16】
であり、式中、nは、1~30の整数であり、
EDAは、以下の構造:
【化17】
を有するエチレンジアミン部分であり、式中、yは、1~6の整数であり、rは、0又は1であり、
4-アミノ-ピペリジン(4AP)は、
【化18】
であり、
AAは、アミノ酸残基であり、pは、1~20の整数であり、
各R
12は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、ポリエチレングリコール部分、アリール、及び置換アリールから選択され、いずれか2つの隣接するR
12基は、環状に連結されて、ピペラジニル環を形成し得、
各R
13は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリールから選択され、
各R
15は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択される。
【0210】
特定の実施形態では、T1、T2、T3、T4、T5、及びT6、並びにV1、V2、V3、V4、V5、及びV6は、以下から選択され、
T1は、(C1~C12)アルキルであり、V1は、-CO-であり、
T2は、4APであり、V2は、-CO-であり、
T3は、(C1~C12)アルキルであり、V3は、-CO-であり、かつ
d、e、及びfは各々、0であるか、又は
T1は、(C1~C12)アルキルであり、V1は、-CO-であり、
T2は、4APであり、V2は、存在せず、
T3は、(PEG)nであり、V3は、-CO-であり、かつ
d、e、及びfは各々、0であるか、又は
T1は、(C1~C12)アルキルであり、V1は、-CO-であり、
T2は、4APであり、V2は、存在せず、
T3は、(PEG)nであり、V3は、-CO-であり、
T4は、(AA)pであり、V4は、存在せず、
T5は、PABCであり、V5は、存在せず、かつ
fは、0であるか、又は
T1は、(C1~C12)アルキルであり、V1は、-CONH-であり、
T2は、(PEG)nであり、V2は、-CO-であり、
T3は、(AA)pであり、V3は、存在せず、
T4は、PABCであり、V4は、存在せず、かつ
e及びfは各々、0であるか、又は
T1は、(C1~C12)アルキルであり、V1は、-CO-であり、
T2は、アミノ酸類似体であり、V2は、-NH-であり、
T3は、(PEG)nであり、V3は、-CO-であり、
T4は、(AA)pであり、V4は、存在せず、
T5は、PABCであり、V5は、存在せず、かつ
fは、0である。
【0211】
例えば、特定の実施形態では、式(I)のリンカーLは、以下:
【化19】
から選択される構造を有する。
【0212】
特定の実施形態では、波線
【化20】
によって示されるリンカーLの左側は、それぞれ、インドリル又はピロリル窒素において、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルコンジュゲーション部分に結合している。特定の実施形態では、アスタリスク(*)によって示されるリンカーLの右側は、薬物W
1に結合している。例えば、リンカーLの右側は、アミド結合を通して薬物W
1に結合し得る。
【0213】
特定の実施形態では、式(I)のコンジュゲートは、以下:
【化21】
から選択される構造を有する。
【0214】
特定の実施形態では、コンジュゲートは、上記に記載されるように、抗体及び薬物がリンカー(例えば、L)によってともに連結されている、抗体薬物コンジュゲートである。いくつかの事例において、リンカーは、非切断可能なリンカーである。
【0215】
他の事例において、リンカーは、切断可能なリンカーである。切断可能なリンカーは、1つ以上の切断可能な部分を含むリンカーであり、切断可能な部分は、特定の条件下で解離し、したがって、切断可能なリンカーを2つ以上の分離可能な部分に分離することができる、1つ以上の結合を含む。例えば、切断可能な部分は、1つ以上の共有結合を含み得、これは、特定の条件下で解離又は分解して、切断可能なリンカーを2つ以上の部分に分離することができる。したがって、切断可能なリンカーは、適切な条件下で、切断可能なリンカーが切断されて、薬物の所望の標的作用部位で抗体から薬物を分離又は放出するように、抗体薬物コンジュゲートに含まれ得る。
【0216】
いくつかの事例において、切断可能なリンカーは、第1の切断可能な部分及び第2の切断可能な部分などの2つの切断可能な部分を含む。切断可能な部分は、薬物の所望の標的作用部位で抗体から薬物を分離又は放出するために、両方の切断可能な部分の切断が必要とされるように構成され得る。例えば、切断可能なリンカーの切断は、最初に2つの切断可能な部分のうちの一方を切断し、次いで、2つの切断可能な部分のうちの他方を切断することによって達成することができる。特定の実施形態では、切断可能なリンカーは、第1の切断可能な部分、及び第1の切断可能な部分の切断を妨害する第2の切断可能な部分を含む。「切断を妨害する」とは、切断されていない第2の切断可能な部分の存在が、第1の切断可能な部分の切断の可能性を低減するか、又は切断を実質的に阻害し、したがって、切断可能なリンカーの切断の量を実質的に低減するか、又は切断を防止することを意味する。例えば、切断されていない第2の切断可能な部分の存在は、第1の切断可能な部分の切断を妨害することができる。第2の切断可能な部分の存在による第1の切断可能な部分の切断の妨害は、ひいては、抗体からの薬物の放出の量を実質的に低減するか、又は放出を防止する。例えば、抗体薬物コンジュゲートが、薬物の所望の標的作用部位にあるか、又はその付近にあるようになるまで、抗体からの薬物の早期放出を実質的に低減又は防止することができる。
【0217】
いくつかの場合において、第2の切断可能な部分が、第1の切断可能な部分の切断を妨害するため、切断可能なリンカーの切断は、最初に第2の切断可能な部分を切断し、次いで、第1の切断可能な部分を切断することによって達成することができる。第2の切断可能な部分の切断は、第1の切断可能な部分の切断に対する妨害を低減又は排除し、したがって、第1の切断可能な部分が切断されることを可能にすることができる。第1の切断可能な部分の切断は、切断可能なリンカーを上記に記載されるように2つ以上の部分に解離又は分離させて、抗体薬物コンジュゲートから薬物を放出することができる。いくつかの事例において、第1の切断可能な部分の切断は、切断されていない第2の切断可能な部分の存在下では実質的に起こらない。実質的にとは、切断されていない第2の切断可能な部分の存在下で、第1の切断可能な部分の約10%以下の切断が生じること、例えば、切断されていない第2の切断可能な部分の存在下で、第1の切断可能な部分の約9%以下、又は約8%以下、又は約7%以下、又は約6%以下、又は約5%以下、又は約4%以下、又は約3%以下、又は約2%以下、又は約1%以下、又は約0.5%以下、又は約0.1%以下の切断が生じることを意味する。
【0218】
別の言い方をすれば、第2の切断可能な部分は、第1の切断可能な部分を切断から保護することができる。例えば、切断されていない第2の切断可能な部分の存在は、第1の切断可能な部分を切断から保護し、したがって、抗体薬物コンジュゲートが、薬物の所望の標的作用部位にあるか、又はその付近にあるようになるまで、抗体からの薬物の早期放出を実質的に低減又は防止することができる。したがって、第2の切断可能な部分の切断は、第1の切断可能な部分を露出させ(例えば、第1の切断可能な部分を脱保護し)、したがって、第1の切断可能な部分が切断されることを可能にし、これは、切断可能なリンカーの切断をもたらし、ひいては、上記に記載されるように、薬物の所望の標的作用部位で抗体から薬物を分離又は放出する。特定の事例において、第2の切断可能な部分の切断は、後続の切断に対して第1の切断可能な部分を露出させるが、第2の切断可能な部分の切断は、それ自体では切断可能なリンカーの切断をもたらさない(例えば、切断可能なリンカーを切断するためには、第1の切断可能な部分の切断が依然として必要とされる)。
【0219】
切断可能なリンカーに含まれる切断可能な部分は各々、酵素的に切断可能な部分であり得る。例えば、第1の切断可能な部分は、第1の酵素的に切断可能な部分であり得、第2の切断可能な部分は、第2の酵素的に切断可能な部分であり得る。酵素的に切断可能な部分は、酵素の酵素作用を通して上記に記載されるように2つ以上の部分に分離することができる切断可能な部分である。酵素的に切断可能な部分は、限定されないが、ペプチド、グリコシドなどの酵素の酵素作用を通して切断することができる任意の切断可能な部分であり得る。いくつかの事例において、酵素的に切断可能な部分を切断する酵素は、抗体薬物コンジュゲートから放出される薬物の所望の標的作用部位などの所望の標的作用部位に存在する。いくつかの場合において、酵素的に切断可能な部分を切断する酵素は、全血、血漿、又は血清などの他の領域に有意な量では存在しない。したがって、酵素的に切断可能な部分の切断を、実質的な切断が所望の作用部位で生じるように制御することができる一方で、切断は、他の領域では、又は抗体薬物コンジュゲートが所望の作用部位に到達する前には、顕著に起こらない。
【0220】
例えば、本明細書に記載されるように、本開示の抗体薬物コンジュゲートは、がん細胞が存在する所望の作用部位へのがん治療薬の送達のためなど、がんの治療のために使用することができる。いくつかの場合において、プロテアーゼ酵素カテプシンBなどの酵素は、がん細胞において過剰発現される、がんのバイオマーカーであり得る。がんにおける特定の酵素の過剰発現、したがって、局在化は、所望の作用部位(例えば、がん(及び過剰発現した酵素)の部位)で薬物を特異的に放出するために、本開示の抗体薬物コンジュゲートの切断可能なリンカーに含まれる酵素的に切断可能な部分との関連で使用することができる。したがって、いくつかの実施形態では、酵素的に切断可能な部分は、がん細胞において過剰発現される酵素によって切断することができる切断可能な部分(例えば、ペプチド)である。例えば、酵素は、プロテアーゼ酵素カテプシンBであり得る。したがって、いくつかの事例において、酵素的に切断可能な部分は、カテプシンBなどのプロテアーゼ酵素によって切断することができる切断可能な部分(例えば、ペプチド)である。
【0221】
特定の実施形態では、酵素的に切断可能な部分は、ペプチドである。ペプチドは、切断可能なリンカーにおける使用に好適であり、かつ酵素の酵素作用を通して切断することができる、任意のペプチドであり得る。酵素的に切断可能な部分として使用することができるペプチドの非限定的な例としては、例えば、Val-Ala、Phe-Lysなどが挙げられる。例えば、上記に記載される第1の切断可能な部分(すなわち、第2の切断可能な部分によって早期切断から保護される切断部分)は、エステルを含むことができる。切断されていない第2の切断可能な部分の存在は、プロテアーゼ酵素(例えば、カテプシンB)による切断から第1の切断可能な部分(ペプチド)を保護し、したがって、抗体薬物コンジュゲートが、薬物の所望の標的作用部位にあるか、又はその付近にあるようになるまで、抗体からの薬物の早期放出を実質的に低減又は防止することができる。いくつかの事例において、第1の切断可能な部分を含むペプチドのアミノ酸残基のうちの1つは、置換基に連結されているか、又は置換基を含み、置換基は、第2の切断可能な部分を含む。いくつかの事例において、第2の切断可能な部分は、グリコシドを含む。
【0222】
いくつかの実施形態では、酵素的に切断可能な部分は、グリコシド(又はグリコシル)などの糖部分である。いくつかの場合において、グリコシドは、グリコシドを含まない切断可能なリンカーと比較して、切断可能なリンカーの親水性の増加を促進することができる。グリコシドは、切断可能なリンカーにおける使用に好適であり、かつ酵素の酵素作用によって切断することができる、任意のグリコシド又はグリコシド誘導体であり得る。例えば、第2の切断可能な部分(すなわち、第1の切断可能な部分を早期切断から保護する切断可能な部分)は、グリコシドであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、第1の切断可能な部分は、ペプチドを含み、第2の切断可能な部分は、グリコシドを含む。特定の実施形態では、第2の切断可能な部分は、グルクロニド、ガラクトシド、グルコシド、マンノシド、フコシド、O-GlcNAc、及びO-GalNAcから選択されるグリコシド又はグリコシド誘導体である。いくつかの事例において、第2の切断可能な部分は、グルクロニドである。いくつかの事例において、第2の切断可能な部分は、ガラクトシドである。いくつかの事例において、第2の切断可能な部分は、グルコシドである。いくつかの事例において、第2の切断可能な部分は、マンノシドである。いくつかの事例において、第2の切断可能な部分は、フコシドである。いくつかの事例において、第2の切断可能な部分は、O-GlcNAcである。いくつかの事例において、第2の切断可能な部分は、O-GalNAcである。
【0223】
グリコシドは、グリコシド結合を通して切断可能なリンカーに結合(例えば、共有結合)することができる。グリコシド結合は、限定されないが、O-グリコシド結合(O-グリコシド)、N-グリコシド結合(グリコシルアミン)、S-グリコシド結合(チオグリコシド)、又はC-グリコシド結合(C-グリコシド若しくはC-グリコシル)などの様々なタイプの結合を通してグリコシドを切断可能なリンカーに連結することができる。いくつかの事例において、グリコシド結合は、O-グリコシド結合(O-グリコシド)である。いくつかの場合において、グリコシドは、酵素によって結合されている切断可能なリンカーから(例えば、グリコシド結合の酵素によって媒介される加水分解を介して)切断することができる。グリコシドは、グリコシドを切断可能なリンカーに結合するグリコシド結合の切断(加水分解)を実行することができる任意の便宜的な酵素によって、切断可能なリンカーから除去又は切断することができる。グリコシドを切断可能なリンカーに結合するグリコシド結合の切断(加水分解)を媒介するために使用することができる酵素の一例は、グルクロニダーゼ、グリコシダーゼ、例えば、ガラクトシダーゼ、グルコシダーゼ、マンノシダーゼ、フコシダーゼなどである。他の好適な酵素もまた、グリコシドを切断可能なリンカーに結合するグリコシド結合の切断(加水分解)を媒介するために使用され得る。いくつかの場合において、グリコシドを切断可能なリンカーに結合するグリコシド結合の切断(加水分解)を媒介するために使用される酵素は、抗体薬物コンジュゲートの薬物の所望の作用部位に、又はその付近に見出される。例えば、酵素は、抗体薬物コンジュゲートの薬物の所望の作用部位又はその付近の細胞において見出される、リソソームグリコシダーゼなどのリソソーム酵素であり得る。いくつかの場合において、酵素は、第1の切断可能な部分の切断を媒介する酵素が見出される標的部位、又はその付近で見出される酵素である。
【0224】
本明細書に記載される説明及び構造に示される化学エンティティ、薬物、リンカー、及びカップリング部分のうちのいずれも、主題のコンジュゲートで使用するために適合され得る。
【0225】
ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニル化合物、及びコンジュゲートを産生するための方法に関する追加の開示は、米国特許第9,310,374号及び米国特許第9,493,413号に見出され、これらの各々の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。切断可能なリンカーに関する追加の開示は、2020年1月22日に出願されたPCT公開第WO2020/154437号、及び2021年11月19日に出願された米国出願第17/531,343号に見出され、これらの各々の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0226】
抗体薬物コンジュゲート(ADC)は、一般に、細胞傷害性小分子などの薬物に連結された抗体を含み、健康ではない細胞において標的化される。標的抗原は、インビボで健康ではない細胞及び健康な細胞の両方で発現されることがあるため、ペイロード(例えば、薬物又は活性薬剤)は、いずれかのタイプの細胞上でオフロードされ得る。この場合、ADCは、健康ではない細胞と同じ抗原を発現する標的外細胞又は健康な細胞を標的とし得る。これは、臨床的に検出することができる交差反応性と呼ばれるものをもたらし得る。例えば、対象へのADCの投与は、ADCの標的媒介性交差反応性に関連する毒性を誘発し得る。毒性は、ADC自体の特異性又は有効性にかかわらず、対象に投与することができる制限された投薬量を含意し得る。したがって、いくつかの事例において、標的抗原を発現する健康な細胞とのADCの交差反応性によって引き起こされる毒性を低減することが望ましい場合がある。
【0227】
いくつかの場合において、本開示のADCは、ADCが対象に投与されるときに、ADCの標的媒介性交差反応性に関連する毒性を低減させる。例えば、本明細書に記載される式(I)のADCは、対象が式(I)ではないADCを投与されたときに交差反応性によって引き起こされる毒性と比較して、対象において標的媒介性交差反応性によって引き起こされる毒性を減少又は低減させ得る。毒性を減少又は低減させることとは、対象における毒性に関連するパラメータのうちの1つ以上の減少又は低減を意味する。例えば、パラメータは、臨床観察に基づいてスコア化することができ、対象における身体領域、又は機能的、生理学的、若しくは行動的側面に対応し得る。毒性を低減させることによって、本開示のADCは、対象の各身体領域又は生理学的若しくは行動的側面の臨床スコア(複数可)に基づいて、対象における反応パラメータの発生、強度、重症度、及び/又は持続時間を低減又は減少させる。対象における毒性に関連するパラメータには、活動レベル/誘発されていない行動、誘発された行動、運動/神経学的、呼吸、姿勢、身体状態、皮膚状態、眼の状態、腫瘍又は感染症(疾患適応症とは無関係である)、体重など、及びこれらの組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0228】
いくつかの事例において、本明細書で使用される場合の式(I)以外のADCは、リンカーペイロードが、構造的若しくは機能的のいずれかで、又はその両方で本明細書に開示される式(I)のADCとは異なる、ADCを指す。いくつかの事例において、式(I)以外のADCは、本開示の式(I)によって包含されない。例えば、式(I)以外のADCは、式(I)と比較して異なる構造を有するリンカーを有する薬物に連結された抗体を指し得る。
【0229】
いくつかの実施形態では、式(I)のADCを対象に投与するとき、標的媒介性交差反応性は、その対象において、少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、又は10倍以上低減する。いくつかの実施形態では、式(I)のADCを対象に投与するとき、標的媒介性交差反応性は、上記に記載される特定のパラメータ又はパラメータの組み合わせの臨床観察の数、重症度、及び/又は持続時間を低減させることによって、対象において減少する。
【0230】
いくつかの実施形態では、式(I)のADCを対象に投与するとき、インビボでのADCの安定性は、対象が式(I)のもの以外のADCを投与されたとき、及び標的抗原が同じ場合と比較して増加する。
【0231】
いくつかの実施形態では、上記で考察されるように、式(I)のADCは、第1及び第2の切断可能な部分を有する切断可能なリンカーを含み、切断されていない第2の切断可能な部分の存在は、第1の切断可能な部分を切断から保護し、したがって、ADCからの薬物の放出を実質的に低減又は防止する。例えば、いくつかの実施形態では、式(I)のADCは、切断可能なリンカーを含み、第2の切断可能な部分(例えば、第1の切断可能な部分を早期切断から保護する切断可能な部分)は、グリコシド又はグリコシド誘導体であり、第1の切断可能な部分は、ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、対象は、ADCによって標的化される健康ではない細胞と比較して、健康な細胞におけるグルクロニダーゼ又はグリコシダーゼの差次的発現を有し得る。例えば、健康な細胞は、ADCによって標的化される健康ではない細胞と比較して、より少ないグルクロニダーゼ又はグリコシダーゼを発現し得る。いくつかの事例において、標的抗原を発現する健康な細胞とのADCの標的媒介性交差反応性がある場合、健康な細胞によるグルクロニダーゼ又はグリコシダーゼの発現の低減は、リンカーの第2の切断可能な部分の切断の低減又は防止、したがって、健康な細胞の場所におけるADCからの薬物の放出の低減又は防止をもたらし得る。ひいては、いくつかの実施形態では、これは、標的抗原を発現する健康な細胞とのADCの標的媒介性交差反応性によって引き起こされる毒性の低減をもたらし得る。
【0232】
コンジュゲートを産生するために有用な化合物
本開示は、本明細書に記載されるコンジュゲートを産生するために有用なヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニル化合物を提供する。特定の実施形態では、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニル化合物は、ポリペプチド(例えば、抗体)及び薬物又は活性薬剤(例えば、カンプトテシン若しくはカンプトテシン誘導体)のコンジュゲーションのために有用なコンジュゲーション部分であり得る。例えば、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニル化合物は、ポリペプチド(抗体)に結合され、また、薬物又は活性薬剤にも結合され、したがって、ポリペプチド(抗体)及び薬物をともに間接的に結合し得る。
【0233】
特定の実施形態では、化合物は、式(III)の化合物であって、
【化22】
式中、
Zが、CR
4又はNであり、
R
2及びR
3が、各々独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノアシル、アルキルアミド、置換アルキルアミド、スルホニル、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択されるか、又はR
2及びR
3が、任意選択的に環状に連結されて、5員若しくは6員ヘテロシクリルを形成し、
各R
4が、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノアシル、アルキルアミド、置換アルキルアミド、スルホニル、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択され、
Lが、リンカーであり、
W
1が、薬物である、化合物である。
【0234】
式(III)の化合物に関して、置換基Z、R2、R3、R4、L、及びW1は、式(I)のコンジュゲートに関して上記に記載されるとおりである。同様に、式(III)のリンカーLに関して、T1、T2、T3、T4、T5、T6、V1、V2、V3、V4、V5、及びV6置換基は、式(I)のコンジュゲートに関して上記に記載されるとおりである。
【0235】
例えば、式(III)の化合物のいくつかの事例において、T1、T2、T3、T4、T5、及びT6、並びにV1、V2、V3、V4、V5、及びV6は、以下から選択され、
T1は、(C1~C12)アルキルであり、V1は、-CO-であり、
T2は、4APであり、V2は、-CO-であり、
T3は、(C1~C12)アルキルであり、V3は、-CO-であり、かつ
d、e、及びfは各々、0であるか、又は
T1は、(C1~C12)アルキルであり、V1は、-CO-であり、
T2は、4APであり、V2は、存在せず、
T3は、(PEG)nであり、V3は、-CO-であり、かつ
d、e、及びfは各々、0であるか、又は
T1は、(C1~C12)アルキルであり、V1は、-CO-であり、
T2は、4APであり、V2は、存在せず、
T3は、(PEG)nであり、V3は、-CO-であり、
T4は、AAであり、V4は、存在せず、
T5は、PABCであり、V5は、存在せず、かつ
fは、0であるか、又は
T1は、(C1~C12)アルキルであり、V1は、-CONH-であり、
T2は、(PEG)nであり、V2は、-CO-であり、
T3は、AAであり、V3は、存在せず、
T4は、PABCであり、V4は、存在せず、かつ
e及びfは各々、0であるか、又は
T1は、(C1~C12)アルキルであり、V1は、-CO-であり、
T2は、アミノ酸類似体であり、V2は、-NH-であり、
T3は、(PEG)nであり、V3は、-CO-であり、
T4は、AAであり、V4は、存在せず、
T5は、PABCであり、V5は、存在せず、かつ
fは、0である。
【0236】
例えば、特定の実施形態では、式(III)のリンカーLは、以下:
【化23】
から選択される構造を有する。
【0237】
特定の実施形態では、波線
【化24】
によって示されるリンカーLの左側は、それぞれ、インドリル又はピロリル窒素において、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルコンジュゲーション部分に結合している。特定の実施形態では、アスタリスク(*)によって示されるリンカーLの右側は、薬物W
1に結合している。例えば、リンカーLの右側は、アミド結合を通して薬物W
1に結合し得る。
【0238】
式(III)の化合物は、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルコンジュゲーション部分に結合している薬物又は活性薬剤が、ポリペプチド(例えば、抗体)にコンジュゲートされて、抗体薬物コンジュゲートを形成する、本明細書に記載されるコンジュゲーション反応で使用することができる。
【0239】
特定の実施形態では、式(III)の化合物は、以下:
【化25】
から選択される構造を有する。
【0240】
上記の構造に記載される化学エンティティ、リンカー及びコンジュゲート化部分のうちのいずれも、本主題の化合物及びコンジュゲートで使用するために適合され得る。
【0241】
抗体
上記のように、主題のコンジュゲートは、置換基W2として、抗体のアミノ酸配列が2-ホルミルグリシン(fGly)残基を含むように修飾されている、抗体を含み得る。本明細書で使用される場合、アミノ酸は、それらの標準的な名称、それらの標準的な3文字の略称、及び/又はそれらの標準的な1文字の略称で称することができ、例えば、アラニン又はAla又はA、システイン又はCys又はC、アスパラギン酸又はAsp又はD、グルタミン酸又はGlu又はE、フェニルアラニン又はPhe又はF、グリシン又はGly又はG、ヒスチジン又はHis又はH、イソロイシン又はIle又はI、リジン又はLys又はK、ロイシン又はLeu又はL、メチオニン又はMet又はM、アスパラギン又はAsn又はN、プロリン又はPro又はP、グルタミン又はGln又はQ、アルギニン又はArg又はR、セリン又はSer又はS、トレオニン又はThr又はT、バリン又はVal又はV、トリプトファン又はTrp又はW、及びチロシン又はTyr又はYと称し得る。
【0242】
本開示の抗体は、特異的な標的細胞(例えば、がん性組織)に結合し得、正常組織への結合を示さない場合がある(例えば、免疫組織化学によって測定される重要ではない結合、又は免疫組織化学によって検出不可能な結合)。例えば、本明細書に記載される抗体は、がん性細胞を有するヒトの胃、乳房、及び/又は肺組織に結合し得る一方で、がん性細胞を有していないヒトの胃、乳房、及び/又は肺組織への検出可能な結合を示さない。
【0243】
抗体は、各々の開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国出願公開第2012/0141375号及び同第2016/0145343号に記載される方法のうちのいずれかを実施するためを含む、様々な研究、診断、及び治療用途に使用される。
【0244】
主題の抗体は、その特異的標的への高親和性結合を示す。例えば、主題の抗体は、少なくとも約10-7M、少なくとも約10-8M、少なくとも約10-9M、少なくとも約10-10M、少なくとも約10-11M、若しくは少なくとも約10-12M、又は10-12M超の親和性で結合し得る。例えば、主題の抗体は、約10-7M~約10-8M、約10-8M~約10-9M、約10-9M~約10-10M、約10-10M~約10-11M、若しくは約10-11M~約10-12M、又は10-12M超の親和性でエピトープに結合し得る。
【0245】
本明細書で使用される場合、「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされる1つ以上のポリペプチドからなるタンパク質を指す。認識されるヒト免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ(IgA1及びIgA2)、ガンマ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、デルタ、イプシロン、及びミュー定常領域遺伝子、並びに多数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。完全長免疫グロブリン軽鎖(約25kD又は214アミノ酸)は、N末端の可変領域遺伝子(約110アミノ酸)及びC末端のカッパ又はラムダ定常領域によってコードされる。完全長免疫グロブリン重鎖(約50kD又は446アミノ酸)は、N末端の可変領域遺伝子(約116アミノ酸)及びC末端の他の前述の定常領域遺伝子のうちの1つ、例えば、ガンマ(約330アミノ酸をコードする)によってコードされる。いくつかの実施形態では、主題の抗体は、完全長免疫グロブリン重鎖及び完全長免疫グロブリン軽鎖を含む。
【0246】
いくつかの実施形態では、主題の抗体は、完全長免疫グロブリン重鎖及び完全長免疫グロブリン軽鎖を含まず、代わりに、完全長免疫グロブリン重鎖及び完全長免疫グロブリン軽鎖の抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、別個のポリペプチド鎖上に含まれ、他の実施形態では、抗原結合断片は、単一のポリペプチド鎖内に含まれる。「抗原結合断片」という用語は、上記に記載されるように、標的に特異的に結合することが可能である完全長抗体の1つ以上の断片を指す。結合断片の例としては、(i)Fab断片(VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価断片)、(ii)F(ab’)2断片(ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片、(iii)Fd断片(VH及びCH1ドメインからなる)、(iv)Fv断片(抗体の単一アームのVH及びVLドメインからなる)、(v)dAb断片(VHからなる)、(vi)単離されたCDR、(vii)一本鎖Fv(scFv)(VH及びVLドメインが対合して一価分子を形成するように、組換え手段を使用して合成リンカーによって結合された抗体の単一アームのVH及びVLドメインからなる)、(viii)ダイアボディ(VH及びVLドメインが対合して一価分子を形成しないようにそれらが結合される、2つのscFvからなり、scFvのうちの各一方のVHは、他方のscFvのVLドメインと対合して、二価分子を形成する)、(ix)二重特異性抗体(少なくとも2つの抗原結合領域からなり、各領域が異なるエピトープに結合する)が挙げられる。いくつかの実施形態では、主題の抗体断片は、Fab断片である。いくつかの実施形態では、主題の抗体断片は、一本鎖抗体(scFv)である。
【0247】
いくつかの実施形態では、主題の抗体は、組換え抗体又は修飾抗体、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、脱免疫化抗体、又はインビトロで生成された抗体である。本明細書で使用される場合の「組換え」又は「修飾」抗体という用語は、(i)宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現される抗体、(ii)組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離される抗体、(iii)ヒト免疫グロブリン遺伝子にトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離される抗体、又は(iv)他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングを伴う任意の他の手段によって調製、発現、作製、若しくは単離される抗体などの、組換え手段によって調製、発現、作製、又は単離される全ての抗体を含むことを意図している。そのような組換え抗体には、ヒト化抗体、CDR移植抗体、キメラ抗体、脱免疫化抗体、及びインビトロで生成された抗体が含まれ、任意選択的に、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する定常領域を含むことができる。
【0248】
完全長二重特異性抗体は、無細胞環境においてインビトロで、又は共発現を使用してのいずれかで、明確に異なる特異性を有する2つの抗体半分子のヘテロ二量体形成に有利に働くように、各半分子の重鎖CH3界面に置換を導入することによって、2つの単一特異性二価抗体間のFabアーム交換(又は半分子交換)を使用して、生成され得る。Fabアーム交換反応は、ジスルフィド結合異性化反応及びCH3ドメインの解離・会合の結果である。親単一特異性抗体のヒンジ領域内の重鎖ジスルフィド結合は、低減される。親単一特異性抗体のうちの1つの結果として得られる遊離システインは、第2の親単一特異性抗体分子のシステイン残基と重鎖間ジスルフィド結合を形成し、同時に親抗体のCH3ドメインが、解離・会合によって放出及び再形成される。FabアームのCH3ドメインは、ホモ二量体化よりもヘテロ二量体化に有利に働くように操作され得る。結果として得られる生成物は、各々が明確に異なるエピトープに結合する2つのFabアーム又は半分子を有する、二重特異性抗体である。
【0249】
「ノブインホール」方略(例えば、PCT国際公開第WO2006/028936号を参照されたい)は、完全長二重特異性抗体を生成するために使用され得る。手短に言えば、ヒトIgG中のCH3ドメインの界面を形成する選択されたアミノ酸は、CH3ドメイン相互作用に影響を及ぼす位置で変異されて、ヘテロ二量体形成を促進することができる。小さな側鎖(ホール)を有するアミノ酸が、第1の抗原に特異的に結合する抗体の重鎖に導入され、大きな側鎖(ノブ)を有するアミノ酸が、第2の抗原に特異的に結合する抗体の重鎖に導入される。2つの抗体の共発現の後、ヘテロ二量体が、「ノブ」を有する重鎖との「ホール」を有する重鎖の優先的な相互作用の結果として形成される。ノブ及びホールを形成する例示的なCH3置換対は、以下である(第1の重鎖の第1のCH3ドメイン内の修飾位置/第2の重鎖の第2のCH3ドメイン内の修飾位置として表される):T366Y/F405A、T366W/F405W、F405W/Y407A、T394W/Y407T、T3945/Y407A、T366W/T394S、F405W/T394S、及びT366W/T366S/L368A/Y407V。
【0250】
米国出願公開第2010/0015133号、同第2009/0182127号、同第2010/028637号、及び同第2011/0123532号に記載されるように、1つのCH3表面における正荷電を持つ残基及び第2のCH3表面における負荷電を持つ残基を置換することによって、静電相互作用を使用して重鎖ヘテロ二量体化を促進することなどの他の方略が使用され得る。他の方略では、ヘテロ二量体化は、以下の置換(第1の重鎖の第1のCH3ドメイン内の修飾位置/第2の重鎖の第2のCH3ドメイン内の修飾位置として表される)によって促進され得る:米国出願公開第2012/0149876号又は米国出願公開第2013/0195849号に記載される、L351Y/F405A/Y407V/T394W、T366I/K392M/T394W/F405A/Y407V、T366L/K392M/T394W/F405A/Y407V、L351Y/Y407A/T366A/K409F、L351Y/Y407A/T366V/K409F、Y407A/T366A/K409F、又はT350V/L351Y/F405A/Y407V、T350V/T366L/K392L/T394W。
【0251】
また、一本鎖二重特異性抗体も提供される。いくつかの実施形態では、本開示の一本鎖二重特異性抗体は、二重特異性scFvである。主題の抗体をヒト化することができる。定常領域(複数可)はまた、存在する場合、実質的又は完全にヒト免疫グロブリンに由来し得る。
【0252】
ヒト化抗体を作製する方法は、当技術分野で既知である。ヒト可変ドメインフレームワーク内へのマウスCDRの置換は、例えば、ヒト可変ドメインフレームワークが、CDRが生じたマウス可変フレームワークと同じ又は類似する立体構造を採用する、それらの正しい空間配向の保持をもたらし得る。これは、フレームワーク配列が、CDRが由来したマウス可変フレームワークドメインと高度な配列同一性を示すヒト抗体から、ヒト可変ドメインを取得することによって、達成することができる。重鎖及び軽鎖可変フレームワーク領域は、同じ又は異なるヒト抗体配列に由来し得る。ヒト抗体配列は、天然に存在するヒト抗体の配列であり得るか、又はいくつかのヒト抗体のコンセンサス配列であり得る。
【0253】
マウスドナー免疫グロブリン及び適切なヒトアクセプター免疫グロブリンの相補性決定領域を同定すると、次のステップは、存在する場合、これらの成分からのどの残基が、結果として得られるヒト化抗体の特性を最適化するために置換されるべきであるかを決定することである。一般に、マウス残基の導入は、ヒトにおけるヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を誘発する抗体のリスクを増加させるため、マウスによるヒトアミノ酸残基の置換は、最少化されるべきである。特定の患者において、又は臨床試験中に、HAMA応答を監視するために、免疫応答を決定する当該技術分野で認識されている方法を実施することができる。ヒト化抗体を投与された患者は、当該療法の投与の開始時及びその全体を通して免疫原性評価を受けることができる。HAMA応答は、例えば、表面プラズモン共鳴技術(BIACORE)及び/又は固相ELISA分析を含む、当該技術分野で既知の方法を使用して、患者からの血清試料中のヒト化治療試薬に対する抗体を検出することによって測定される。多くの実施形態では、主題のヒト化抗体は、ヒト対象においてHAMA応答を実質的に誘発しない。
【0254】
ヒト可変領域フレームワーク残基からの特定のアミノ酸が、CDR立体構造及び/又は抗原への結合に対するそれらの可能性のある影響に基づいて、置換のために選択される。ヒト可変フレームワーク領域とのマウスCDR領域の非天然並置は、特定のアミノ酸残基の置換によって補正されない限り、結合親和性の喪失をもたらす、非天然立体構造制約をもたらし得る。置換のためのアミノ酸残基の選択は、部分的に、コンピュータモデリングによって決定することができる。免疫グロブリン分子の三次元画像を作成するためのコンピュータハードウェア及びソフトウェアが、当該技術分野で既知である。一般に、分子モデルが、免疫グロブリン鎖又はそのドメインの解決された構造から開始して作成される。モデル化される鎖は、解決された三次元構造の鎖又はドメインとのアミノ酸配列類似性について比較され、最大配列類似性を示す鎖又はドメインは、分子モデルの構築のための出発点として選択される。少なくとも50%の配列同一性を共有する鎖又はドメインが、モデリングのために選択され、好ましくは、少なくとも60%、70%、80%、90%の配列同一性を共有するものが、モデリングのために選択される。解決された出発構造は、モデル化されている免疫グロブリン鎖又はドメイン内の実際のアミノ酸と出発構造内のアミノ酸との間の差異を考慮に入れるように修飾される。次いで、修飾構造は、複合免疫グロブリンに組み立てられる。最後に、モデルは、エネルギー最小限化によって、かつ全ての原子が互いから適切な距離内にあり、結合長及び角度が化学的に許容され得る限界内にあることを検証することによって、精緻化される。
【0255】
Kabatによって定義されるフレームワーク残基がChothiaによって定義される構造ループ残基を構成する場合、マウス抗体中に存在するアミノ酸は、ヒト化抗体内への置換のために選択され得る。「CDR領域に隣接する」残基は、ヒト化免疫グロブリン鎖の一次配列中のCDRのうちの1つ以上に直接隣接する位置に、例えば、Kabatによって定義されるCDR、又はChothiaによって定義されるCDRに直接隣接する位置に、アミノ酸残基を含む(例えば、Chothia and Lesk JMB196:901(1987)を参照されたい)。これらのアミノ酸は、特に、CDR中のアミノ酸と相互作用する可能性が高く、アクセプターから選択された場合、ドナーCDRを歪曲し、親和性を低減する。更に、隣接するアミノ酸は、抗原と直接相互作用し得(Amit et al.,Science,233:747(1986)を参照されたい)、ドナーからこれらのアミノ酸を選択することは、元の抗体内で親和性を提供する全ての抗原接触を保つために望ましいことがあり得る。
【0256】
いくつかの実施形態では、主題の抗体は、scFv多量体を含む。例えば、いくつかの実施形態では、主題の抗体は、scFv二量体(例えば、2つのタンデムscFv(scFv2)を含む)、scFv三量体(例えば、3つのタンデムscFv(scFv3)を含む)、scFv四量体(例えば、4つのタンデムscFv(scFv4)を含む)、又は(例えば、タンデムで)4つよりも多くのscFvの多量体である。scFv単量体は、約2アミノ酸~約10アミノ酸の長さ、例えば、2aa、3aa、4aa、5aa、6aa、7aa、8aa、9aa、又は10aaの長さのリンカーを介して、タンデムで連結することができる。好適なリンカーには、例えば、xが2~10の整数である、(Gly)x、グリシン-セリンポリマーなどが含まれる。
【0257】
いくつかの実施形態では、主題の抗体は、免疫グロブリンの定常領域(例えば、Fc領域)を含む。Fc領域は、存在する場合、ヒトFc領域であり得る。定常領域が存在する場合、抗体は、軽鎖定常領域及び重鎖定常領域の両方を含むことができる。本明細書に記載される抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA、及びIgEを含む全てのタイプの定常領域、並びにIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む任意のアイソタイプを有する、抗体を含む。好適な重鎖Fc領域の一例は、ヒトアイソタイプIgG1Fcである。軽鎖定常領域は、ラムダ又はカッパであり得る。主題の抗体(例えば、主題のヒト化抗体)は、1つより多くのクラス又はアイソタイプからの配列を含むことができる。抗体は、2つの軽鎖及び2つの重鎖を含む四量体として、別個の重鎖、軽鎖として、Fab、Fab’F(ab’)2、及びFvとして、又は重鎖及び軽鎖可変ドメインがスペーサーを通して連結されている一本鎖抗体として、発現され得る。
【0258】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、Fc領域に導入された1つ以上のアミノ酸置換を含み得る。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換のうちの1つ以上は、Fc領域内の位置239、298、326、330、及び332にあり得る。いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、Fc領域に導入された以下のアミノ酸置換のうちの1つ以上を含み得る:I332E、S239D/A330L/I332E、S239D/S298A/I332E、S239D/K326T/I332E、S239D/S298A/K326T/I332E、又はS239D/A330L/I332E/D356E/L358M。
【0259】
いくつかの実施形態では、主題の抗体は、1つ以上の天然に存在しないアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、天然にコードされないアミノ酸は、カルボニル基、アセチル基、アミノオキシ基、ヒドラジン基、ヒドラジド基、セミカルバジド基、アジド基、又はアルキン基を含む。天然に存在しないアミノ酸の包含は、ポリマー、第2のポリペプチド、足場などへの連結を提供することができる。そのような天然に存在しないアミノ酸の例としては、N-アセチルグルコサミニル-L-セリン、N-アセチルグルコサミニル-L-トレオニン、及びO-ホスホチロシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0260】
本開示はまた、目的の結合部分、例えば、検出可能な標識、薬物、半減期延長部分などを有する抗体も提供する。抗体の修飾は、様々な合成及び/又は組換え方法によって達成することができる。抗体に結合している1つ又は複数の部位は、多種多様な機能又は特徴のうちの1つ以上を提供することができる。例示的な部分としては、検出可能な標識(例えば、染料標識(例えば、発色団、フルオロフォア)、生物物理学的プローブ(スピン標識、核磁気共鳴(NMR)プローブ)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)型標識(例えば、蛍光団/消光剤ペアの少なくとも1つのメンバーを含む、FRETペアの少なくとも1つのメンバー)、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)型標識(例えば、BRETペアの少なくとも1つのメンバー)、免疫検出可能なタグ(例えば、FLAG、His(6)など)、水溶性ポリマー(例えば、PEG化)、精製タグ(例えば、アフィニティクロマトグラフィーによる単離を促進するため(例えば、FLAGエピトープの結合、膜局在化ドメイン(例えば、脂質又はグリコホスファチジリニジリノシトール(GPI)型アンカー)、免疫化タグ(例えば、選択的結合を含む、ポリペプチドの表面への結合を促進するため)、薬物(例えば、抗体への薬物の結合を通して、例えば、薬物標的化を促進するため)などを含む。
【0261】
主題の抗体は、グリコシル化することができ、例えば、主題の抗体は、共有結合された炭水化物又は多糖部分を含むことができる。抗体のグリコシル化は、典型的には、N結合型又はO結合型のいずれかである。抗体へのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列がN又はO結合型グリコシル化部位を含むようにアミノ酸配列を改変することによって、便宜的に達成される。同様に、グリコシル化部位の除去は、抗体の天然グリコシル化部位内のアミノ酸改変によって達成することができる。
【0262】
主題の抗体は、いくつかの実施形態では、「放射線不透過性」標識、例えば、X線を使用して、例えば、容易に視覚化することができる標識を含む。放射線不透過性物質は、当業者に既知である。最も一般的な放射線不透過性物質には、ヨウ化物、臭化物、又はバリウム塩が含まれる。他の放射線不透過性物質も知られており、有機ビスマス誘導体、放射線不透過性マルチウレタン、有機ビスマス複合物質、放射線不透過性バリウム多量体複合体などが含まれるが、これらに限定されない。
【0263】
抗体の修飾のための方法
本開示の抗体コンジュゲートは、1)目的の部分にコンジュゲートされたIg重鎖定常領域、及び目的の部分にコンジュゲートされたIg軽鎖定常領域、2)目的の部分にコンジュゲートされたIg重鎖定常領域、及び目的の部分にコンジュゲートされていないIg軽鎖定常領域、又は3)目的の部分にコンジュゲートされていないIg重鎖定常領域、及び目的の部分にコンジュゲートされたIg軽鎖定常領域を含む。主題の抗体コンジュゲートはまた、目的の部分にコンジュゲートされたVH及び/又はVLドメインを含むこともできる。
【0264】
一実施例では、抗体は、異種部分の結合のための化学ハンドルとして機能し得る、2-ホルミルグリシン残基を含むように修飾することができる。例えば、本開示の抗体の重鎖及び/又は軽鎖定常領域は、2-ホルミルグリシン生成酵素(FGE)の作用によって、2-ホルミルグリシン(fGly)を含むように変換されることが可能である、スルファターゼモチーフのアミノ酸配列を含むように修飾することができる。そのようなスルファターゼモチーフはまた、本明細書ではFGE修飾部位とも称され得る。FGEの作用は、FGEが免疫グロブリンポリペプチド内に位置付けられたスルファターゼモチーフにおいて作用するという点で、配列特異的な様式で指向される。目的の部分は、タグ付きIgポリペプチドの変換されたアルデヒドタグのfGly残基のアルデヒドとの反応のための反応性パートナーの成分として提供される。アルデヒドタグ付きIgポリペプチドのfGly残基への目的の部分の結合を達成するために、広範囲の市販の試薬を使用することができる。例えば、いくつかの目的の部分のアミノオキシ、ヒドラジド、又はチオセミカルバジド誘導体は、好適な反応性パートナーであり、容易に利用可能であるか、又は標準的な化学方法を使用して生成することができる。
【0265】
上記のように、抗体のアミノ酸配列は、インビボ(例えば、細胞中のアルデヒドタグ含有タンパク質の翻訳時に)又はインビトロ(例えば、無細胞系においてアルデヒドタグ含有タンパク質をホルミルグリシン生成酵素(FGE)と接触させることによって)のいずれかで、FGEの作用によって2-ホルミルグリシン(fGly)残基に変換(酸化)されることが可能であるセリン又はシステイン残基を含むスルファターゼモチーフを含むように修飾することができる。そのようなスルファターゼモチーフはまた、本明細書ではFGE修飾部位とも称され得る。
【0266】
スルファターゼモチーフ
アルデヒドタグの最小スルファターゼモチーフは、通常、5又は6アミノ酸残基の長さであり、通常、6アミノ酸残基以下の長さである。Igポリペプチドにおいて提供されるスルファターゼモチーフは、少なくとも5つ又は6つのアミノ酸残基であり、例えば、16、15、14、13、12、11、10、9、8、又は7アミノ酸残基未満の長さのスルファターゼモチーフを定義するように、5~16、6~16、5~15、6~15、5~14、6~14、5~13、6~13、5~12、6~12、5~11、6~11、5~10、6~10、5~9、6~9、5~8、又は6~8アミノ酸残基の長さであり得る。
【0267】
特定の実施形態では、目的のポリペプチドは、ポリペプチド中にスルファターゼモチーフの配列を提供するための天然アミノ酸配列に比べて、1個以上のアミノ酸残基、例えば、2個以上、又は3個以上、又は4個以上、又は5個以上、又は6個以上、又は7個以上、又は8個以上、又は9個以上、又は10個以上、又は11個以上、又は12個以上、又は13個以上、又は14個以上、又は15個以上、又は16個以上、又は17個以上、又は18個以上、又は19個以上、又は20個以上のアミノ酸残基が挿入され、欠失され、置換され(置き換えられ)ているものを含む。特定の実施形態では、ポリペプチドは、ポリペプチドの天然アミノ酸配列に比べて、アミノ酸配列の20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、又は2個未満のアミノ酸残基の修飾(挿入、付加、欠失、及び/又は置換/置き換え)を含む。ポリペプチド(例えば、抗体)の天然のアミノ酸配列が、所望のスルファターゼモチーフの1つ以上の残基を含む場合、残基の修飾の総数は、例えば、所望のスルファターゼモチーフの配列を提供するための天然のアミノ酸残基に隣接するアミノ酸残基の部位特異的修飾(挿入、付加、欠失、置換/置き換え)によって削減され得る。特定の実施形態では、標的ポリペプチドの天然アミノ酸配列の修飾の程度は、挿入されるか、欠失されるか、置換される(置き換えられる)か、又は付加される(例えば、N末端若しくはC末端に)アミノ酸残基の数を最小限化するように、最小限化される。標的ポリペプチドのアミノ酸配列修飾の程度を最小限化することは、そのような修飾が機能及び/又は構造に及ぼし得る影響を最小限化し得る。
【0268】
特定の目的のアルデヒドタグが、少なくとも最小スルファターゼモチーフ(「コンセンサススルファターゼモチーフ」とも称される)を含むものである一方で、より長いアルデヒドタグは、本開示によって企図及び包含され、本開示の組成物及び方法で使用され得ることが容易に理解されることに留意されたい。したがって、アルデヒドタグは、5個若しくは6個の残基の最小スルファターゼモチーフを含むことができるか、又はより長くあり得、追加のアミノ酸残基がモチーフのN末端側及び/又はC末端側に隣接し得る最小スルファターゼモチーフを含む。例えば、5個又は6個のアミノ酸残基のアルデヒドタグ、並びに5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個超、又はそれ以上のアミノ酸残基のより長いアミノ酸配列が企図される。
【0269】
アルデヒドタグは、Ig重鎖のC末端又はその付近に存在し得、例えば、アルデヒドタグは、天然の野生型Ig重鎖のC末端の1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸内に存在し得る。アルデヒドタグは、Ig重鎖のCH1ドメイン内に存在し得る。アルデヒドタグは、Ig重鎖のCH2ドメイン内に存在し得る。アルデヒドタグは、Ig重鎖のCH3ドメイン内に存在し得る。アルデヒドタグは、Ig軽鎖定常領域内に、例えば、カッパ軽鎖定常領域又はラムダ軽鎖定常領域内に存在し得る。
【0270】
特定の実施形態では、使用されるスルファターゼモチーフは、以下の式によって記載され得る:
X1Z1X2Z2X3Z3(配列番号13)(I’)、式中、
Z1は、システイン又はセリン((C/S)によって表すこともできる)であり、
Z2は、プロリン又はアラニン残基((P/A)によって表すこともできる)のいずれかであり、
Z3は、塩基性アミノ酸(例えば、アルギン(R)であり、リジン(K)又はヒスチジン(H)、通常はリジンであり得る)、又は脂肪族アミノ酸(アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はプロリン(P)、通常はA、G、L、V、又はIであり、
X1は、存在するか、又は存在せず、存在する場合、任意のアミノ酸であり得るが、通常は、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(例えば、芳香族アミノ酸若しくは帯電アミノ酸以外)、通常は、L、M、V、S、又はT、より通常は、L、M、S、又はVであり得、但し、スルファターゼモチーフが標的ポリペプチドのN末端にある場合、X1が存在することを条件とし、
X2及びX3は、独立して、任意のアミノ酸であり得るが、通常は、脂肪族アミノ酸、極性非帯電アミノ酸、又は硫黄含有アミノ酸(例えば、芳香族アミノ酸若しくは帯電アミノ酸以外)、例えば、S、T、A、V、G、又はC、例えば、S、T、A、V、又はGであり得る。一実施例では、アルデヒドタグは、L(C/S)TPSR(配列番号14)、例えば、LCTPSR(配列番号15)又はLSTPSR(配列番号16)の式である。したがって、本開示は、アルデヒドタグ付きIg重鎖及び/又はアルデヒドタグ付きIg軽鎖を含む抗体を提供し、アルデヒドタグ付きIg抗体は、重鎖及び/又は軽鎖のアミノ酸配列がそのようなスルファターゼモチーフを含むIg定常領域を含む。
【0271】
例えば、いくつかの実施形態では、抗体重鎖及び/又は軽鎖のアミノ酸配列は、式X1Z1X2Z2X3Z3の少なくとも5個のアミノ酸の配列を提供するように修飾することができ、式中、
Z1は、システイン又はセリンであり、
Z2は、プロリン又はアラニン残基であり、
Z3は、脂肪族アミノ酸又は塩基性アミノ酸であり、
X1は、存在するか、又は存在せず、存在する場合、任意のアミノ酸であり、但し、異種スルファターゼモチーフがポリペプチドのN末端にある場合、X1が存在することを条件とし、
X2及びX3は、各々独立して、任意のアミノ酸であり、
この配列は、Ig定常領域の溶媒接近可能なループ領域内にあるか、又はそれに隣接しており、この配列は、Ig重鎖のC末端にはない。
【0272】
スルファターゼモチーフは、一般に、選択されたFGE、例えば、アルデヒドタグ付きポリペプチドが発現される宿主細胞中に存在するFGE、又は無細胞インビトロ法においてアルデヒドタグ付きポリペプチドと接触されるFGEによって変換されることが可能であるように選択される。
【0273】
例えば、FGEが真核生物FGE(例えば、ヒトFGEを含む哺乳動物FGE)である場合、スルファターゼモチーフは、以下の式であり得る:
X1CX2PX3Z3(I’’)
式中、
X1は、存在し得るか、又は存在しない場合があり、存在する場合、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸若しくは帯電アミノ酸以外)、例えば、L、M、S又はVであり得、但し、スルファターゼモチーフが標的ポリペプチドのN末端にある場合、X1が存在することを条件とし、
X2及びX3は、独立して、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸若しくは帯電アミノ酸以外)、例えば、S、T、A、V、G又はC、例えば、S、T、A、V又はGであり得、
Z3は、塩基性アミノ酸(例えば、アルギニン(R)であり、リジン(K)又はヒスチジン(H)、例えば、リジンであり得る)、又は脂肪族アミノ酸(アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はプロリン(P)、例えば、A、G、L、V、又はIである。
【0274】
スルファターゼモチーフの具体例としては、LCTPSR(配列番号17)、MCTPSR(配列番号18)、VCTPSR(配列番号19)、LCSPSR(配列番号20)、LCAPSR(配列番号21)、LCVPSR(配列番号22)、LCGPSR(配列番号23)、ICTPAR(配列番号24)、LCTPSK(配列番号25)、MCTPSK(配列番号26)、VCTPSK(配列番号27)、LCSPSK(配列番号28)、LCAPSK(配列番号29)、LCVPSK(配列番号30)、LCGPSK(配列番号31)、LCTPSA(配列番号32)、ICTPAA(配列番号33)、MCTPSA(配列番号34)、VCTPSA(配列番号35)、LCSPSA(配列番号36)、LCAPSA(配列番号37)、LCVPSA(配列番号38)、及びLCGPSA(配列番号39)が挙げられる。
【0275】
fGly含有配列
一般に、標的ポリペプチドのアルデヒドタグのスルファターゼモチーフにおいてfGlyへのシステイン又はセリンの変換を促進するために使用されるFGEは、アルデヒドタグに存在するスルファターゼモチーフに従って選択される。FGEは、アルデヒドタグ付きポリペプチドが発現される宿主細胞に天然であり得るか、又は宿主細胞は、適切なFGEを発現するように遺伝子修飾され得る。いくつかの実施形態では、ヒトFGEと適合性のあるスルファターゼモチーフを使用し、FGEを発現するヒト細胞において、又はヒトFGEを発現するように遺伝子修飾された宿主細胞、通常は哺乳動物細胞において、アルデヒドタグ付きタンパク質を発現させることが望ましい場合がある。一般に、fGly修飾抗体を生成する際に使用するために好適なFGEは、天然に存在する供給源から取得することができるか、又は合成的に産生することができる。例えば、適切なFGEは、FGEを天然に産生するか、又はFGEをコードする組換え遺伝子を発現するように遺伝子修飾される、生物学的供給源に由来し得る。いくつかのFGEをコードする核酸は、当該技術分野で既知であり、容易に知られる。
【0276】
スルファターゼモチーフへのFGEの作用後に、Z1は、酸化されて、2-ホルミルグリシン(fGly)残基を生成する。更に、FGE媒介性変換及び目的の部分を含む反応性パートナーとの反応の両方の後に、上記の式中のZ1におけるfGly位置は、目的の部分(例えば、検出可能な標識、水溶性ポリマー、ポリペプチド、薬物、活性剤など)に共有結合される。したがって、本開示は、fGly部分を含むように修飾されたアミノ酸配列を有する抗体を提供する。
【0277】
抗体重鎖及び/又は軽鎖へのFGEの作用時に、スルファターゼモチーフ中のセリン又はシステインは、fGlyに修飾される。したがって、fGly含有スルファターゼモチーフは、以下の式であり得る:
X1(fGly)X2Z2X3Z3(配列番号40)(I’’’)
式中、
fGlyは、ホルミルグリシン残基であり、
Z2は、プロリン又はアラニン残基((P/A)によって表すこともできる)のいずれかであり、
Z3は、塩基性アミノ酸(例えば、アルギン(R)であり、リジン(K)又はヒスチジン(H)、通常はリジンであり得る)、又は脂肪族アミノ酸(アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はプロリン(P)、例えば、A、G、L、V、又はIであり、
X1は、存在し得るか、又は存在しない場合があり、存在する場合、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸若しくは帯電アミノ酸以外)、例えば、L、M、V、S又はT、例えば、L、M又はVであり得、但し、スルファターゼモチーフが標的ポリペプチドのN末端にある場合、X1が存在することを条件とし、
X2及びX3は、独立して、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(例えば、芳香族アミノ酸若しくは帯電アミノ酸以外)、例えば、S、T、A、V、G又はC、例えば、S、T、A、V又はGであり得る。
【0278】
上記に記載されるように、コンジュゲートを産生するために、fGly残基を含むポリペプチドは、fGlyと薬物又は活性薬剤に結合しているリンカーの反応性部分(例えば、上記に記載されるように、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルカップリング部分)との反応によって、薬物又は活性薬剤にコンジュゲートされて、fGly’含有スルファターゼモチーフを産生し得る。本明細書で使用される場合、fGly’という用語は、本明細書に記載されるリンカーを通して薬物又は活性剤にカップリングされるスルファターゼモチーフのアミノ酸残基を指す。したがって、本開示は、抗体コンジュゲートを提供する。
【0279】
特定の実施形態では、抗体コンジュゲートは、以下の式のfGly’含有スルファターゼモチーフを含み、
X1(fGly’)X2Z2X3Z3(配列番号41)(II)
式中、
fGly’は、本明細書に記載されるリンカーを通して薬物又は活性剤にカップリングされたアミノ酸残基であり、
Z2は、プロリン又はアラニン残基((P/A)によって表すこともできる)のいずれかであり、
Z3は、塩基性アミノ酸(例えば、アルギン(R)であり、リジン(K)又はヒスチジン(H)、通常はリジンであり得る)、又は脂肪族アミノ酸(アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はプロリン(P)、例えば、A、G、L、V、又はIであり、
X1は、存在し得るか、又は存在しない場合があり、存在する場合、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸若しくは帯電アミノ酸以外)、例えば、L、M、V、S又はT、例えば、L、M又はVであり得、但し、スルファターゼモチーフが標的ポリペプチドのN末端にある場合、X1が存在することを条件とし、
X2及びX3は、独立して、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(例えば、芳香族アミノ酸若しくは帯電アミノ酸以外)、例えば、S、T、A、V、G又はC、例えば、S、T、A、V又はGであり得る。
【0280】
特定の実施形態では、式(II)の配列は、抗体の重鎖定常領域のC末端に位置付けられている。いくつかの事例において、重鎖定常領域は、式(II)の配列を含み、
X1(fGly’)X2Z2X3Z3(II)
式中、
fGly’は、本明細書に記載されるリンカーを通して薬物又は活性剤にカップリングされたアミノ酸残基であり、
Z2は、プロリン又はアラニン残基((P/A)によって表すこともできる)のいずれかであり、
Z3は、塩基性アミノ酸(例えば、アルギン(R)であり、リジン(K)又はヒスチジン(H)、通常はリジンであり得る)、又は脂肪族アミノ酸(アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はプロリン(P)、例えば、A、G、L、V、又はIであり、
X1は、存在し得るか、又は存在しない場合があり、存在する場合、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸若しくは帯電アミノ酸以外)、例えば、L、M、V、S又はT、例えば、L、M又はVであり得、但し、スルファターゼモチーフが標的ポリペプチドのN末端にある場合、X1が存在することを条件とし、
X2及びX3は、独立して、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸若しくは帯電アミノ酸以外)、例えば、S、T、A、V、G又はC、例えば、S、T、A、V又はGであり得、
この配列は、アミノ酸配列QKSLSLSPGKに対してC末端であり、この配列は、天然の野生型重鎖Ig定常領域内に存在しない1、2、3、4、5、又は5~10個のアミノ酸を含み得る。
【0281】
特定の実施形態では、重鎖定常領域は、Ig重鎖のC末端に、例えば、天然SLSLSPGK(配列番号43)配列の代わりに、配列SLSLSPGSL(fGly’)TPSRGS(配列番号42)を含む。
【0282】
特定の実施形態では、薬物又は活性薬剤にカップリングされたアミノ酸残基(fGly’)は、抗体の軽鎖定常領域内に位置付けられている。特定の実施形態では、軽鎖定常領域は、式(II)の配列を含み、
X1(fGly’)X2Z2X3Z3(II)
式中、
fGly’は、本明細書に記載されるリンカーを通して薬物又は活性剤にカップリングされたアミノ酸残基であり、
Z2は、プロリン又はアラニン残基((P/A)によって表すこともできる)のいずれかであり、
Z3は、塩基性アミノ酸(例えば、アルギン(R)であり、リジン(K)又はヒスチジン(H)、通常はリジンであり得る)、又は脂肪族アミノ酸(アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はプロリン(P)、例えば、A、G、L、V、又はIであり、
X1は、存在し得るか、又は存在しない場合があり、存在する場合、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸若しくは帯電アミノ酸以外)、例えば、L、M、V、S又はT、例えば、L、M又はVであり得、但し、スルファターゼモチーフが標的ポリペプチドのN末端にある場合、X1が存在することを条件とし、
X2及びX3は、独立して、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸若しくは帯電アミノ酸以外)、例えば、S、T、A、V、G又はC、例えば、S、T、A、V又はGであり得、
この配列は、アミノ酸配列KVDNAL(配列番号44)に対してC末端であり、かつ/又はアミノ酸配列QSGNSQ(配列番号45)に対してN末端である。
【0283】
特定の実施形態では、軽鎖定常領域は、配列KVDNAL(fGly’)TPSRQSGNSQ(配列番号46)を含む。
【0284】
特定の実施形態では、薬物又は活性薬剤にカップリングされたアミノ酸残基(fGly’)は、抗体の重鎖CH1領域内に位置付けられている。特定の実施形態では、重鎖CH1領域は、式(II)の配列を含み、
X1(fGly’)X2Z2X3Z3(II)
式中、
fGly’は、本明細書に記載されるリンカーを通して薬物又は活性剤にカップリングされたアミノ酸残基であり、
Z2は、プロリン又はアラニン残基((P/A)によって表すこともできる)のいずれかであり、
Z3は、塩基性アミノ酸(例えば、アルギン(R)であり、リジン(K)又はヒスチジン(H)、通常はリジンであり得る)、又は脂肪族アミノ酸(アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はプロリン(P)、例えば、A、G、L、V、又はIであり、
X1は、存在し得るか、又は存在しない場合があり、存在する場合、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸若しくは帯電アミノ酸以外)、例えば、L、M、V、S又はT、例えば、L、M又はVであり得、但し、スルファターゼモチーフが標的ポリペプチドのN末端にある場合、X1が存在することを条件とし、
X2及びX3は、独立して、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸若しくは帯電アミノ酸以外)、例えば、S、T、A、V、G又はC、例えば、S、T、A、V又はGであり得、
この配列は、アミノ酸配列SWNSGA(配列番号47)に対してC末端であり、かつ/又はアミノ酸配列GVHTFP(配列番号48)に対してN末端である。
【0285】
特定の実施形態では、重鎖CH1領域は、配列SWNSGAL(fGly’)TPSRGVHTFP(配列番号49)を含む。
【0286】
図16Aは、アルデヒドタグ付きIgポリペプチドの生成のための可能性のある修飾部位を示す部位マップを描写する。上側の配列は、IgG1軽鎖ポリペプチドの保存領域のアミノ酸配列(配列番号1)であり、Ig軽鎖中の可能性のある修飾部位を示し、下側の配列は、Ig重鎖ポリペプチドの保存領域のアミノ酸配列(配列番号2)(GenBankアクセッション番号AAG00909)であり、Ig重鎖中の可能性のある修飾部位を示す。重鎖及び軽鎖の付番は、完全長重鎖及び軽鎖に基づく。
【0287】
図16B~16Cは、IgG1(配列番号3、GenBank P01857.1)、IgG2(配列番号4、GenBank P01859.2)、IgG3(配列番号5、GenBank P01860.2)、IgG4(配列番号6、GenBank AAB59394.1)、及びIgA(配列番号7、GenBank AAAT74070)のホモサピエンス免疫グロブリン重鎖定常領域のアラインメントを描写し、アルデヒドタグが免疫グロブリン重鎖中に提供され得る修飾部位を示す。重鎖及び軽鎖の付番は、全重鎖及び軽鎖に基づく。
【0288】
図16Dは、免疫グロブリン軽鎖定常領域のアラインメントを描写し、アルデヒドタグが免疫グロブリン軽鎖中に提供され得る修飾部位を示す。配列1=ホモサピエンスカッパ軽鎖定常領域、GenBank CAA75031.1、配列番号8。配列2=ホモサピエンスカッパ軽鎖定常領域、GenBank BAC0168.1、配列番号9。配列3=ホモサピエンスラムダ軽鎖定常領域、GenBank CAA75033、配列番号10。配列4=ハツカネズミ軽鎖定常領域、GenBank AAB09710.1、配列番号11。配列5=ドブネズミ軽鎖定常領域、GenBank AAD10133、配列番号12。
【0289】
いくつかの実施形態では、スルファターゼモチーフは、Igポリペプチド重鎖のC末端以外の位置、又はそれに加えた位置にある。単離されたアルデヒドタグ付きポリペプチドは、本明細書に記載されるスルファターゼモチーフを含むように修飾された重鎖定常領域アミノ酸配列を含むことができ、スルファターゼモチーフは、ポリペプチド重鎖定常領域の表面接近可能なループ領域の中にあるか、又はそれに隣接している。
【0290】
IgG1重鎖の例示的な表面接近可能なループ領域には、1)ASTKGP、2)KSTSGGT、3)PEPV、4)NSGALTSG、5)NSGALTSGVHTFPAVLQSSGL、6)QSSGL、7)VTV、8)QTY、9)TQTY、10)HKPSN、11)EPKSCDKTHTCPPCPAPELLGG、12)FPPKP、13)ISRTP、14)DVSHEDPEV、15)SHEDPEV、16)DG、17)DGVEVHNAK、18)HNA、19)QYNST、20)VLTVL、21)GKE、22)NKALPAP、23)SKAKGQPRE、24)KAKGQPR、25)PPSRKELTKN、26)YPSDI、27)NGQPENN、28)TPPVLDSDGS、29)HEALHNHYTQKSLSLSPGK、及び30)SLSPGKが含まれる。
【0291】
IgG2重鎖の例示的な表面接近可能なループ領域には、1)ASTKGP、2)PCSRSTSESTAA、3)FPEPV、4)SGALTSGVHTFP、5)QSSGLY、6)VTV、7)TQT、8)HKP、9)DK、10)VAGPS、11)FPPKP、12)RTP、13)DVSHEDPEV、14)DGVEVHNAK、15)FN、16)VLTVV、17)GKE、18)NKGLPAP、19)SKTKGQPRE、20)PPS、21)MTKNQ、22)YPSDI、23)NGQPENN、24)TPPMLDSDGS、25)GNVF、及び26)HEALHNHYTQKSLSLSPGKが含まれる。
【0292】
IgG3重鎖の例示的な表面接近可能なループ領域には、1)ASTKGP、2)PCSRSTSGGT、3)FPEPV、4)SGALTSGVHTFPAVLQSSG、5)V、6)TQT、7)HKPSN、8)RVELKTPLGD、9)CPRCPKP、10)PKSCDTPPPCPRCPAPELLGG、11)FPPKP、12)RTP、13)DVSHEDPEV、14)DGVEVHNAK、15)YN、16)VL、17)GKE、18)NKALPAP、19)SKTKGQPRE、20)PPSREEMTKN、21)YPSDI、22)SSGQPENN、23)TPPMLDSDGS、24)GNI、25)HEALHNR、及び26)SLSPGKが含まれる。
【0293】
IgG4重鎖の例示的な表面接近可能なループ領域には、1)STKGP、2)PCSRSTSESTAA、3)FPEPV、4)SGALTSGVHTFP、5)QSSGLY、6)VTV、7)TKT、8)HKP、9)DK、10)YG、11)CPAPEFLGGPS、12)FPPKP、13)RTP、14)DVSQEDPEV、15)DGVEVHNAK、16)FN、17)VL、18)GKE、19)NKGLPSS、20)SKAKGQPREP、21)PPSQEEMTKN、22)YPSDI、23)NG、24)NN、25)TPPVLDSDGS、26)GNVF、及び27)HEALHNHYTQKSLSLSLGKが含まれる。
【0294】
IgA重鎖の例示的な表面接近可能なループ領域には、1)ASPTSPKVFPLSL、2)QPDGN、3)VQGFFPQEPL、4)SGQGVTARNFP、5)SGDLYTT、6)PATQ、7)GKS、8)YT、9)CHP、10)HRPA、11)LLGSE、12)GLRDASGV、13)SSGKSAVQGP、14)GCYS、15)CAEP、16)PE、17)SGNTFRPEVHLLPPPSEELALNEL、18)ARGFS、19)QGSQELPREKY、20)AV、21)AAED、22)HEAL、及び23)IDRLAGKPTHVNVSVVMAEVDGTCYが含まれる。
【0295】
Ig軽鎖(例えば、ヒトカッパ軽鎖)の例示的な表面接近可能なループ領域には、1)RTVAAP、2)PPS、3)Gly(例えば、
図8Cに描写されるヒトカッパ軽鎖配列の150位におけるGlyを参照されたい)、4)YPREA、5)PREA、6)DNALQSGN、7)TEQDSKDST、8)HK、9)HQGLSS、及び10)RGECが含まれる。
【0296】
Igラムダ軽鎖の例示的な面接近可能なループ領域には、QPKAAP、PPS、NK、DFYPGAV、DSSPVKAG、TTP、SN、HKS、EG、及びAPTECSが含まれる。
【0297】
本明細書に開示される抗体のHCの定常領域は、以下の配列のうちの1つから選択され得る。
【0298】
CTタグ付き(アルデヒドタグ-太字)
(配列表1)
【0299】
上記の配列では、重鎖定常領域のC末端における斜体の残基は、標準的なIgG1重鎖のC末端におけるリジン残基に取って代わる。斜体の残基の中の太字の残基(LCTPSR)は、アルデヒドタグを構成し、式中、Cは、重鎖の発現時にFGEによってfGly残基に変換される。fGlyをfGly’に変換することができる。fGly’は、目的の部分(例えば、薬物)にカップリングされる抗体のアミノ酸残基を指す。斜体の残基の中の太字ではない残基は、標準的なIgG1重鎖配列とは異なる追加の残基である。
【0300】
58Q-1(アルデヒドタグ-太字であり、「DEL」による「EEM」の置換)
(配列表2)
【0301】
61G-1(アルデヒドタグ-太字であり、「DEL」による「EEM」の置換)
(配列表3)
【0302】
91N-1(アルデヒドタグ-太字であり、「DEL」による「EEM」の置換)
(配列表4)
【0303】
116E-1(アルデヒドタグ-太字であり、「DEL」による「EEM」の置換)
(配列表5)
【0304】
【0305】
【0306】
【0307】
116E-2(アルデヒドタグ-太字)
(配列表9)
【0308】
58Q-3(アルデヒドタグ-太字であり、「KRV」による「KKV」の置換及び「DEL」による「EEM」の置換)
(配列表10)
【0309】
61G-3(アルデヒドタグ-太字であり、「KRV」による「KKV」の置換及び「DEL」による「EEM」の置換)
(配列表11)
【0310】
91N-3(アルデヒドタグ-太字であり、「KRV」による「KKV」の置換及び「DEL」による「EEM」の置換)
(配列表12)
【0311】
116E-3(アルデヒドタグ-太字であり、「KRV」による「KKV」の置換及び「DEL」による「EEM」の置換)
(配列表13)
【0312】
58Q-4(アルデヒドタグ-太字であり、「KRV」による「KKV」の置換)
(配列表14)
【0313】
61G-4(アルデヒドタグ-太字であり、「KRV」による「KKV」の置換)
(配列表15)
【0314】
91N-4(アルデヒドタグ-太字であり、「KRV」による「KKV」の置換)
(配列表16)
【0315】
116E-4(アルデヒドタグ-太字であり、「KRV」による「KKV」の置換)
(配列表17)
【0316】
太字の残基(LCTPSR)は、アルデヒドタグを構成し、式中、Cは、重鎖の発現時にFGEによってfGly残基に変換される。fGlyをfGly’に変換することができる。fGly’は、目的の部分(例えば、薬物)にカップリングされる抗体のアミノ酸残基を指す。
【0317】
薬物
いくつかの場合において、本開示の抗体は、抗体の重鎖及び/又は軽鎖に共有結合された薬物(例えば、本明細書に記載される式(I)のコンジュゲート及び式(III)の化合物中のW1)を有する。例えば、本開示の抗体コンジュゲートは、置換基W1として、薬物又は活性薬剤を含むことができる。いくつかの薬物のうちのいずれかは、抗体にコンジュゲートする反応性パートナーとして、使用するために好適であるか、又は使用するために好適にされるように修飾することができる。「薬物」には、小分子薬物、ペプチド薬物、毒素(例えば、細胞毒素)などが含まれる。
【0318】
本明細書で使用される場合の「小分子薬物」は、化合物、例えば、有機化合物を指し、これは、目的の薬学的活性を示し、概して、約800Da以下、又は2000Da以下の分子量であるが、最大5kDaの分子を包含することができ、約10kDaと同程度の大きさであり得る。小無機分子が、炭素原子を含まない分子を指す一方で、小有機分子は、少なくとも1つの炭素原子を含む化合物を指す。
【0319】
特定の実施形態では、薬剤又は活性薬剤は、メイタンシンであり得る。「メイタンシン」、「メイタンシン部分」、「メイタンシン活性薬剤部分」、及び「メイタンシノイド」は、メイタンシン並びにその類似体及び誘導体、並びに薬学的に活性なメイタンシン部分及び/又はその部分を指す。ポリペプチドにコンジュゲートされたメイタンシンは、限定されないが、本明細書に記載されるメイタンシン並びにその類似体及び誘導体などの様々なメイタンシノイド部分のうちのいずれかであり得る。
【0320】
特定の実施形態では、薬物又は活性薬剤は、アウリスタチン、又はその類似体若しくは誘導体、又は薬学的に活性なアウリスタチン部分及び/若しくはその部分であり得る。ポリペプチドにコンジュゲートされたアウリスタチンは、限定されないが、本明細書に記載されるアウリスタチン並びにその類似体及び誘導体などの様々なアウリスタチン部分のうちのいずれかであり得る。本明細書に記載されるコンジュゲート及び化合物で使用される薬物の例としては、アウリスタチン、又はモノメチルアウリスタチンD(MMAD)、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、それらの誘導体などのアウリスタチン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、薬物は、MMAEである。
【0321】
特定の実施形態では、薬物又は活性薬剤は、デュオカルマイシン、又はその類似体若しくは誘導体、又は薬学的に活性なデュオカルマイシン部分及び/若しくはその部分であり得る。ポリペプチドにコンジュゲートされたデュオカルマイシンは、限定されないが、本明細書に記載されるデュオカルマイシン並びにその類似体及び誘導体などの様々なデュオカルマイシン部分のうちのいずれかであり得る。本明細書に記載されるコンジュゲート及び化合物で使用される薬物の例としては、デュオカルマイシン、又はデュオカルマイシンA、デュオカルマイシンB1、デュオカルマイシンB2、デュオカルマイシンC1、デュオカルマイシンC2、デュオカルマイシンD、デュオカルマイシンSA、及びCC-1065、それらの誘導体などのデュオカルマイシン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、デュオカルマイシンは、限定されないが、アドゼレシン、ビゼレシン、又はカルゼレシンなどのデュオカルマイシン類似体である。
【0322】
特定の実施形態では、薬物又は活性薬剤は、カンプトテシン又はその類似体若しくは誘導体などのトポイソメラーゼ阻害剤、又は薬学的に活性なカンプトテシン部分及び/若しくはその一部であり得る。対象の抗体にコンジュゲートされたカンプトテシンは、限定されないが、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2022年1月13日に出願された米国出願第17/575,481号に記載されるカンプトテシン並びにその類似体及び誘導体などの様々なカンプトテシン部分のうちのいずれかであり得る。本明細書に記載されるコンジュゲートで使用されるトポイソメラーゼ阻害剤の追加の例としては、カンプトテシン、又はSN-38、ベロテカン、エキサテカン、9-アミノカンプトテシン(9-AC)、それらの誘導体などのカンプトテシン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0323】
特定の実施形態では、薬物は、細胞毒素、キナーゼ阻害剤、免疫刺激剤、トール様受容体(TLR)アゴニスト、オリゴヌクレオチド、アプタマー、サイトカイン、ステロイド、及びペプチドから選択される。
【0324】
例えば、細胞毒素は、細胞死(例えば、壊死若しくはアポトーシス)又は細胞生存の減少につながる任意の化合物を含むことができる。
【0325】
キナーゼ阻害剤には、アダボセルチブ、アファチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、セツキシマブ、コビメチニブ、クリゾチニブ、カボザンチニブ、ダコミチニブ、ダサチニブ、エントレクチニブ、エルダフィチニブ、エルロチニブ、フォスタマチニブ、ゲフィチニブ、イブルチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、ムブリチニブ、ニロチニブ、パゾパニブ、ペガプタニブ、ルキソリチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、ツカチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0326】
免疫刺激剤には、ワクチン(例えば、細菌又はウイルスワクチン)、コロニー刺激因子、インターフェロン、インターロイキンなどが含まれるが、これらに限定されない。TLRアゴニストには、イミキモド、レシキモドなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0327】
オリゴヌクレオチド薬物には、フォミビルセン、ペガプタニブ、ミポメルセン、エテプリルセン、デフィブロチド、ヌシネルセン、ゴロジルセン、ビルトラルセン、ボラネソルセン、イノテルセン、トフェルセン、トミネルセンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0328】
アプタマー薬物には、ペガプタニブ、AS1411、REG1、ARC1779、NU172、ARC1905、E10030、NOX-A12、NOX-E36などが含まれるが、これらに限定されない。
【0329】
サイトカインには、アルブインターフェロンアルファ-2B、アルデスロイキン、ALT-801、アナキンラ、アンセスチム、アボテルミン、バルグラスチム、ベンペガルデスロイキン、ビネトラキン、シントレデキンベスドトクス、CTCE-0214、ダルベポエチンアルファ、デニロイキンジフチトクス、デュラネルミン、エドデキンアルファ、エムフィラミン、エポエチンデルタ、エリスロポエチン、ヒトインターロイキン-2、インターフェロンアルファ、インターフェロンアルファ-2c、インターフェロンアルファ-n1、インターフェロンアルファ-n3、インターフェロンアルファコン-1、インターフェロンベータ-1a、インターフェロンベータ-1b、インターフェロンガンマ-1b、インターフェロンカッパ、インターロイキン-1アルファ、インターロイキン-10、インターロイキン-7、レノグラスチム、レリジスチム、リペグフィルグラスチム、ロルカフスプアルファ、Maxy-G34、メトキシポリエチレングリコールエポエチンベータ、モルグラモスチム、ムプレスチム、ナグレスチペン、オプレルベキン、ペグフィルグラスチム、ペギロデカキン、ペグインターフェロンアルファ-2a、ペグインターフェロンアルファ-2b、ペグインターフェロンベータ-1a、ペグインターフェロンラムダ-1a、組換えCD40リガンド、レグラモスチム、ロミプロスチム、サルグラモスチム、トロンボポエチン、ツコツズマブセルモロイキン、ウイルスマクロファージ炎症性タンパク質などが含まれるが、これらに限定されない。
【0330】
ステロイド薬物には、プレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、デフラザコートなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0331】
本明細書で使用される場合の「ペプチド薬物」は、アミノ酸含有ポリマー化合物を指し、天然に存在する及び天然に存在しないペプチド、オリゴペプチド、環式ペプチド、並びにタンパク質、及びペプチド模倣物を包含するように意図されている。ペプチド薬物は、化学合成によって取得されるか、又は遺伝子的にコードされる供給源(例えば、組換え供給源)から産生され得る。ペプチド薬物は、分子量の範囲であり得、200Da~10kDa以上の分子量であり得る。好適なペプチドには、細胞傷害性ペプチド、血管新生ペプチド、抗血管新生ペプチド、B細胞を活性化するペプチド、T細胞を活性化するペプチド、抗ウイルスペプチド、ウイルス融合を阻害するペプチド、1つ以上のリンパ球集団の産生を増加させるペプチド、抗微生物ペプチド、成長因子、成長ホルモン放出因子、血管作動性ペプチド、抗炎症ペプチド、グルコース代謝を調節するペプチド、抗血栓性ペプチド、抗侵害受容性ペプチド、血管拡張性ペプチド、血小板凝集阻害剤、鎮痛剤などが含まれるが、これらに限定されない。
【0332】
本明細書に記載されるコンジュゲート及び化合物で使用される薬物の追加の例としては、チューブリシンM、カリケアマイシン、STAT3阻害剤、アルファ-アマニチン、オーロラキナーゼ阻害剤、ベロテカン、及びアントラサイクリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0333】
いくつかの場合において、薬物は、毒素、例えば、細胞毒素である。高等植物に遍在するタンパク質のクラスである、リボソーム不活性化タンパク質(RIP)は、そのような細胞毒素の例である。好適な細胞毒素には、リシン、アブリン、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素(例えば、PE35、PE37、PE38、PE40など)、サポリン、ゲロニン、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP)、ボツリヌス毒素、ブリオジン、モモルジン、及びブガニンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0334】
いくつかの場合において、薬物は、がん化学療法剤である。がん化学療法剤は、がん細胞の増殖を低減する非ペプチド性(例えば、非タンパク質性)化合物を含み、細胞傷害剤及び細胞増殖抑制剤を包含する。化学療法剤の非限定的な例としては、アルキル化剤、ニトロソウレア、代謝拮抗物質、抗腫瘍抗生物質、植物(ビンカ)アルカロイド、又はステロイドホルモンが挙げられる。ペプチド性化合物も使用することができる。
【0335】
好適ながん化学療法剤には、ドラスタチン並びにその活性類似体及び誘導体、及びアウリスタチン並びにその活性類似体及び誘導体が含まれる。好適ながん化学療法剤にはまた、メイタンシノイド並びにその活性類似体及び誘導体、及びデュオカルマイシン並びにその活性類似体及び誘導体も含まれる。
【0336】
細胞増殖を低減するように作用する薬剤が、当該技術分野で既知であり、幅広く使用される。そのような薬剤には、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、及びトリアゼンなどのアルキル化剤が含まれ、メクロレタミン、シクロホスファミド(Cytoxan(商標))、メルファラン(L-サルコリシン)、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル-CCNU)、ストレプトゾトシン、クロロゾトシン、ウラシルマスタード、クロルメチン、イホスファミド、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホラミン、ブスルファン、ダカルバジン、及びテモゾロミドを含むが、これらに限定されない。
【0337】
代謝拮抗剤には、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体、及びアデノシンデアミナーゼ阻害剤が含まれ、シタラビン(CYTOSAR-U)、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル(5-FU)、フロクスウリジン(FudR)、6-チオグアニン、6-メルカプトプリン(6-MP)、ペントスタチン、5-フルオロウラシル(5-FU)、メトトレキサート、10-プロパルギル-5,8-ジデアザ葉酸(PDDF、CB3717)、5,8-ジデアザテトラヒドロ葉酸(DDATHF)、ロイコボリン、リン酸フルダラビン、ペントスタチン、及びゲムシタビンを含むが、これらに限定されない。
【0338】
好適な天然生成物及びそれらの誘導体(例えば、ビンカアルカロイド、抗腫瘍抗生物質、酵素、リンホカイン、及びエピポドフィロトキシン)には、Ara-C、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、ドセタキセル(Taxotere(登録商標))、デオキシコホルマイシン、マイトマイシン-C、L-アスパラギナーゼ、アザチオプリン;ブレキナル;アルカロイド、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシンなど;ポドフィロトキシン、例えば、エトポシド、テニポシドなど;抗生物質、例えば、アントラサイクリン、塩酸ダウノルビシン(ダウノマイシン、ルビドマイシン、セルビジン)、イダルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、及びモルホリノ誘導体など;フェノキシゾンビスシクロペプチド、例えば、ダクチノマイシン;塩基性糖ペプチド、例えば、ブレオマイシン;アントラキノン配糖体、例えば、プリカマイシン(ミトラマイシン);アントラセンジオン、例えば、ミトキサントロン;アジリノピロロインドールジオン、例えば、マイトマイシン;大環状免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、FK-506(タクロリムス、プログラフ)、ラパマイシンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0339】
他の抗増殖性細胞傷害性剤は、ナベルビン、CPT-11、アナストロゾール、レトロゾール、カペシタビン、レロキサフェン、シクロホスファミド、イホスファミド、及びドロロキシフェンである。
【0340】
抗増殖活性を有する微小管作用剤もまた、使用に好適であり、アロコルヒチン(NSC406042)、ハリコンドリンB(NSC609395)、コルヒチン(NSC757)、コルヒチン誘導体(例えば、NSC33410)、ドルスタチン(dolstatin)10(NSC376128)、メイタンシン(NSC153858)、リゾキシン(NSC332598)、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、Taxol(登録商標)誘導体、ドセタキセル(Taxotere(登録商標))、チオコルヒチン(NSC361792)、トリチルシステイン、ビンブラスチン硫酸塩、ビンクリスチン硫酸塩、エポチロンA、エポチロンB、ディスコデルモリドを含むがこれらに限定されない、天然及び合成エポチロン、エストラムスチン、ノコダゾールなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0341】
使用するために好適であるホルモン調節剤及びステロイド(合成類似体を含む)には、副腎皮質ステロイド、例えば、プレドニゾン、デキサメタゾンなど;エストロゲン及びプレゲスチン、例えば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、エストラジオール、クロミフェン、タモキシフェンなど;及び副腎皮質抑制剤、例えば、アミノグルテチミド;17α-エチニルエストラジオール;ジエチルスチルベストロール、テストステロン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、メチルプレドニゾロン、メチル-テストステロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ロイプロリド、フルタミド(Drogenil)、トレミフェン(Fareston)、並びにZoladex(登録商標)が含まれるが、これらに限定されない。エストロゲンは、増殖及び分化を刺激し、したがって、エストロゲン受容体に結合する化合物が、この活性を阻止するために使用される。
【0342】
他の好適な化学療法剤には、金属錯体、例えば、シスプラチン(シス-DDP)、カルボプラチンなど;尿素、例えば、ヒドロキシ尿素;及びヒドラジン、例えば、N-メチルヒドラジン;エピポフィロトキシン;トポイソメラーゼ阻害剤;プロカルバジン;ミトキサントロン;ロイコボリン;テガフールなどが含まれる。他の目的の抗増殖剤には、免疫抑制剤、例えば、ミコフェノール酸、サリドマイド、デスオキシスペルグアリン、アザスポリン、レフルノミド、ミゾリビン、アザスピラン(SKF105685);Iressa(登録商標)(ZD1839、4-(3-クロロ-4-フルオロフェニルアミノ)-7-メトキシ-6-(3-(4-モルホリニル)プロポキシ)キナゾリン)などが含まれる。
【0343】
タキサンは、使用するために好適である。「タキサン」には、パクリタキセル、並びに任意の活性タキサン誘導体又はプロドラッグが含まれる。「パクリタキセル」(例えば、ドセタキセル、TAXOL(商標)、TAXOTERE(商標)(ドセタキセルの製剤)、パクリタキセルの10-デスアセチル類似体、及びパクリタキセルの3’N-デスベンゾイル-3’N-t-ブトキシカルボニル類似体などの類似体、製剤、及び誘導体を含むと本明細書では理解されるべきである)は、当業者に既知の技術を利用して容易に調製される(WO94/07882、WO94/07881、WO94/07880、WO94/07876、WO93/23555、WO93/10076、米国特許第5,294,637号、同第5,283,253号、同第5,279,949号、同第5,274,137号、同第5,202,448号、同第5,200,534号、同第5,229,529号、及びEP590,267も参照されたい)か、又は例えば、Sigma Chemical Co.St.Louis,Mo.(Taxus brevifolia由来のT7402、又はTaxus yannanensis由来のT-1912)を含む様々な商業的供給源から入手され得る。
【0344】
パクリタキセルは、一般の化学的に利用可能な形態のパクリタキセルのみではなく、類似体及び誘導体(例えば、上記のようなTAXOTERE(商標)ドセタキセル)並びにパクリタキセルコンジュゲート(例えば、パクリタキセル-PEG、パクリタキセル-デキストラン、又はパクリタキセル-キシロース)も指すと理解されるべきである。
【0345】
また、親水性誘導体及び疎水性誘導体の両方を含む、様々な既知の誘導体も、「タキサン」という用語内に含まれる。タキサン誘導体には、ガラクトース及びマンノース誘導体、ピペラジノ及びピペラジノ誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0346】
本開示の実施形態は、抗体が、2個以上の薬物部分、例えば、3個の薬物部分、4個の薬物部分、5個の薬物部分、6個の薬物部分、7個の薬物部分、8個の薬物部分、9個の薬物部分、10個の薬物部分、11個の薬物部分、12個の薬物部分、13個の薬物部分、14個の薬物部分、15個の薬物部分、16個の薬物部分、17個の薬物部分、18個の薬物部分、19個の薬物部分、又は20個以上の薬物部分にコンジュゲートされている、コンジュゲートを含む。薬物部分は、本明細書に記載されるように、抗体中の1つ以上の部位で抗体にコンジュゲートされ得る。特定の実施形態では、コンジュゲートは、0.1~20、又は0.5~20、又は1~20、例えば、1~19、又は1~18、又は1~17、又は1~16、又は1~15、又は1~14、又は1~13、又は1~12、又は1~11、又は1~10、又は1~9、又は1~8、又は1~7、又は1~6、又は1~5、又は1~4、又は1~3、又は1~2の範囲内の平均薬物対抗体比(DAR)(モル比)を有する。特定の実施形態では、コンジュゲートは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10などの1~10の平均DARを有する。特定の実施形態では、コンジュゲートは、1~10の平均DARを有する。特定の実施形態では、コンジュゲートは、1~5の平均DARを有する。特定の実施形態では、コンジュゲートは、5~10の平均DARを有する。平均とは、算術平均を意味する。
【0347】
ポリペプチドにコンジュゲートされる薬物は、ポリペプチドとの反応のための反応性パートナーを組み込むように修飾され得る。薬物がペプチド薬物である場合、反応性部分(例えば、アミノオキシ又はヒドラジドは、N末端領域、N末端、C末端領域、C末端に、又はペプチドの内部の位置に位置付けることができる。例えば、方法の一例は、アミノオキシ基を有するペプチド薬物を合成することを伴う。この例では、ペプチドは、Boc保護前駆体から合成される。ペプチドのアミノ基は、カルボン酸基及びオキシ-N-Boc基を含む化合物と反応することができる。一例として、ペプチドのアミノ基は、3-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イルオキシ)プロパン酸と反応する。カルボン酸基及びオキシ-N-保護基を含む化合物上の他の変動は、アルキレンリンカー中の異なる数の炭素及びアルキレンリンカー上の置換基を含むことができる。ペプチドのアミノ基とカルボン酸基及びオキシ-N-保護基を含む化合物との間の反応は、標準的なペプチドカップリング化学を通して生じる。使用することができるペプチドカップリング試薬の例としては、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)、DIC(ジイソプロピルカルボジイミド)、ジ-p-トルオイルカルボジイミド、BDP(1-ベンゾトリアゾールジエチルホスフェート-1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリニルエチル)カルボジイミド)、EDC(1-(3-ジメチルアミノプロピル-3-エチル-カルボジイミド塩酸塩)、フッ化シアヌル、塩化シアヌル、TFFH(テトラメチルフルオロホルムアミジニウムヘキサフルオロリン酸塩)、DPPA(ジフェニルホスホラジデート)、BOP(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩)、HBTU(O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩)、TBTU(O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩)、TSTU(O-(N-スクシンイミジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩)、HATU(N-[(ジメチルアミノ)-1-H-1,2,3-トリアゾロ[4,5,6]-ピリジン-1-イルメチレン]--N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロリン酸N-オキシド)、BOP-Cl(ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロリド)、PyBOP((1-H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)-トリス(ピロリジノ)ホスホニウムテトラフルオロリン酸塩)、BrOP(ブロモトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸)、DEPBT(3-(ジエトキシホスホリルオキシ)-1,2,3-ベンゾトリアジン-4(3H)-オン)、PyBrOP(ブロモトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸)が挙げられるが、これらに限定されない。非限定的な例として、HOBt及びDICをペプチドカップリング試薬として使用することができる。
【0348】
アミノオキシ官能性を露出させるための脱保護が、N-保護基を含むペプチドで実施される。N-オキシスクシンイミド基の脱保護は、例えば、環状アミド基の標準的な脱保護条件に従って生じる。脱保護条件は、Greene and Wuts,Protective Groups in Organic Chemistry,3rd Ed.,1999,John Wiley&Sons,NY及びHarrison et al.に見出され得る。特定の脱保護条件は、ヒドラジン試薬、アミノ試薬、又は水素化ホウ素ナトリウムを含む。Boc保護基の脱保護は、TFAを用いて生じる。脱保護のための他の試薬には、ヒドラジン、メチルヒドラジン、フェニルヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、及びメチルアミンが含まれるが、これらに限定されない。生成物及び中間体は、HPLC精製などの従来の手段によって精製することができる。
【0349】
当業者は、pH及び立体障害(例えば、目的の反応性パートナーとの反応に対するアミノ酸残基の近接性)などの因子が重要であることを理解するであろう。最適なコンジュゲーション条件を提供するように反応条件を修飾することは、十分に当業者の技能の範囲内であり、当該技術分野では通常のことである。コンジュゲーションが生細胞の中又は上に存在するポリペプチドを用いて行われる場合、条件は、生理学的に適合性であるように選択される。例えば、pHは、反応が生じることを可能にするために十分な時間であるが、細胞によって耐容される期間内(例えば、約30分~1時間)に一次的に低下され得る。細胞表面上でポリペプチドの修飾を行うための生理学的条件は、細胞表面アジドを持つ細胞の修飾におけるケトン-アジド反応で使用されるものに類似し得る(例えば、U.S.6,570,040を参照されたい)。
【0350】
本明細書に開示される化合物又はコンジュゲートとともに反応性パートナーとして機能するα-求核基を含むか、又は含むように修飾された小分子化合物もまた、本開示のポリペプチド薬物コンジュゲート中の薬物として使用するために企図される。一般的な方法が、目的の化合物を合成するために有用な化学的合成スキーム及び条件について当該技術分野で既知である(例えば、Smith and March,March’s Advanced Organic Chemistry:Reactions, Mechanisms,and Structure,Fifth Edition,Wiley-Interscience,2001、又はVogel,A Textbook of Practical Organic Chemistry,Including Qualitative Organic Analysis,Fourth Edition,New York:Longman,1978を参照されたい)。
【0351】
抗体を産生する方法
主題の抗体は、任意の既知の方法、例えば、タンパク質合成のための従来の合成方法、組換えDNA方法などによって産生することができる。
【0352】
主題の抗体が一本鎖ポリペプチドである場合、標準的な化学ペプチド合成技術を使用して、それを合成することができる。ポリペプチドが化学的に合成される場合、合成は、液相又は固相を介して進行し得る。配列のC末端アミノ酸が不溶性支持体に結合している、固相ポリペプチド合成(SPPS)、続いて、配列中の残りのアミノ酸の連続的な添加は、主題の抗体の化学合成のための好適な方法の例である。Fmoc及びBocなどの様々な形態のSPPSが、主題の抗体を合成するために利用可能である。
【0353】
標準的な組換え方法を、主題の抗体の産生に使用することができる。例えば、任意選択的に定常領域に連結される、軽鎖及び重鎖可変領域をコードする核酸が、発現ベクターに挿入される。軽鎖及び重鎖は、同じ又は異なる発現ベクターでクローニングすることができる。免疫グロブリン鎖をコードするDNAセグメントは、免疫グロブリンポリペプチドの発現を確実にする発現ベクター(複数可)内の制御配列に作動可能に連結される。発現制御配列には、プロモーター(例えば、天然会合又は異種プロモーター)、シグナル配列、エンハンサーエレメント、及び転写終結配列が含まれるが、これらに限定されない。発現制御配列は、真核宿主細胞(例えば、COS又はCHO細胞)を形質転換又はトランスフェクトすることが可能なベクターにおける真核生物プロモーター系であり得る。ベクターが適切な宿主に組み込まれると、宿主は、ヌクレオチド配列の高レベル発現、並びに抗体の収集及び精製に好適な条件下で維持される。
【0354】
コードの縮重により、様々な核酸配列が、各免疫グロブリンアミノ酸配列をコードすることができる。所望の核酸配列を、デノボ固相DNA合成によって、又は所望のポリヌクレオチドの以前に調製されたバリアントのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)変異誘発によって産生することができる。
【0355】
好適な発現ベクターは、典型的には、エピソームとして、又は宿主染色体DNAの不可欠な部分としてのいずれかで、宿主生物において複製可能である。一般的に、発現ベクターは、所望のDNA配列で形質転換された細胞の検出を可能にするために選択マーカー(例えば、アンピシリン耐性、ヒグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性、又はネオマイシン耐性)を含む。
【0356】
Escherichia coliは、対象の抗体をコードするポリヌクレオチドをクローニングするために使用することができる原核宿主細胞の一例である。使用するために好適な他の微生物宿主には、Bacillus subtilisなどの桿菌、並びにSalmonella、Serratia、及び様々なPseudomonas種などの他の腸内細菌科が含まれる。酵母などの他の微生物もまた、発現に有用である。Saccharomyces(例えば、S.cerevisiae)及びPichiaは、好適な酵母宿主細胞の一例である。
【0357】
微生物に加えて、哺乳動物細胞(例えば、インビトロ細胞培養で増殖された哺乳動物細胞)もまた、本発明のポリペプチド(例えば、免疫グロブリン又はその断片をコードするポリヌクレオチド)を発現させ、産生するために使用することができる。好適な哺乳類宿主細胞には、CHO細胞株、様々なCos細胞株、HeLa細胞、骨髄腫細胞株、及び形質転換B細胞又はハイブリドーマが含まれる。これらの細胞の発現ベクターは、複製起点、プロモーター、及びエンハンサーなどの発現制御配列、並びにリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、及び転写終結配列などの必要な処理情報部位を含むことができる。好適な発現制御配列の例は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サイトメガロウイルスなどに由来するプロモーターである。
【0358】
(化学的又は組換えのいずれかで)合成されると、全抗体、それらの二量体、個々の軽鎖及び重鎖、又は他の形態の主題の抗体(例えば、scFvなど)は、硫安沈殿、アフィニティカラム、カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)精製、ゲル電気泳動などを含む当該技術分野の標準的な手順に従って精製することができる(概して、Scopes,Protein Purification(Springer-Verlag,N.Y.,(1982)を参照されたい)。主題の抗体は、実質的に純粋、例えば、少なくとも約80%~85%純粋、少なくとも約85%~90%純粋、少なくとも約90%~95%純粋、又は98%~99%以上純粋であり得、例えば、細胞残屑、主題の抗体以外の巨大分子などの汚染物質を含まない。
【0359】
組成物
本開示のコンジュゲートは、様々な異なる方法で製剤化することができる。一般に、コンジュゲートがポリペプチド薬物コンジュゲート(例えば、抗体薬物コンジュゲート)である場合、コンジュゲートは、ポリペプチドにコンジュゲートされた薬物、治療される条件、及び使用される投与経路と適合性のある様式で製剤化される。
【0360】
いくつかの実施形態では、本開示のコンジュゲートのうちのいずれかと、薬学的に許容され得る賦形剤と、を含む、薬学的組成物が提供される。
【0361】
コンジュゲート(例えば、抗体薬物コンジュゲート)は、任意の好適な形態で、例えば、薬学的に許容され得る塩の形態で提供することができ、投与の任意の好適な経路、例えば、経口、局所、又は非経口投与のために製剤化することができる。コンジュゲートが注射可能な液体として提供される場合(例えば、それらが静脈内又は直接的に組織に投与される実施形態など)、コンジュゲートは、すぐに使用可能な剤形として、又は薬学的に許容され得る担体及び賦形剤で構成される再構築可能な貯蔵安定性粉末若しくは液体として提供することができる。
【0362】
コンジュゲートを製剤化するための方法は、容易に利用可能なものから適合され得る。例えば、コンジュゲートは、治療有効量のコンジュゲート及び薬学的に許容され得る担体(例えば、生理食塩水)を含む、薬学的組成物で提供され得る。薬学的組成物は、任意選択的に、他の添加剤(例えば、緩衝剤、安定剤、保存剤など)を含み得る。いくつかの実施形態では、製剤は、哺乳動物への投与に好適であり、例えば、ヒトへの投与に好適なものである。
【0363】
例えば、本開示は、主題の抗体コンジュゲートを含む組成物を提供する。主題の抗体コンジュゲート組成物は、主題の抗体コンジュゲートに加えて、塩、例えば、NaCl、MgCl2、KCl、MgSO4など、緩衝剤、例えば、Tris緩衝剤、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)(HEPES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸ナトリウム塩(MES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N-トリス[ヒドロキシメチル]メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)など、可溶化剤、洗剤、例えば、Tween-20などの非イオン性洗剤、プロテアーゼ阻害剤、グリセロールなどのうちの1つ以上を含むことができる。
【0364】
特定の実施形態では、本開示は、主題の抗体コンジュゲートを含む、薬学的組成物を含む組成物を提供する。一般に、製剤は、有効量の主題の抗体コンジュゲートを含む。「有効量」とは、所望の結果、例えば、がん性細胞の数の削減を生じさせるために十分な投薬量を意味する。いくつかの場合において、所望の結果は、対照と比較して、少なくとも悪性腫瘍の症状の低減である。
【0365】
製剤
主題の方法では、所望の治療効果又は診断効果をもたらすことが可能な任意の便宜的な手段を使用して、主題の抗体コンジュゲートを宿主に投与することができる。したがって、抗体コンジュゲートを、治療的投与のための様々な製剤に組み込むことができる。より具体的には、主題の抗体コンジュゲートは、適切な薬学的に許容され得る担体又は希釈剤との組み合わせによって薬学的組成物に製剤化することができ、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、坐剤、注射剤、吸入剤、及びエアロゾルなどの固体、半固体、液体、又は気体形態の調製物に製剤化され得る。
【0366】
薬学的剤形では、主題の抗体コンジュゲートは、それらの薬学的に許容され得る塩の形態で投与することができるか、又はそれらはまた、単独で、若しくは適切な会合で、並びに他の薬学的に活性な化合物と組み合わせて使用され得る。以下の方法及び賦形剤は、例示的にすぎず、決して限定的ではない。
【0367】
経口製剤については、主題の抗体コンジュゲートを、単独で、又は錠剤、粉末、顆粒、若しくはカプセルを作製するための適切な添加剤と、例えば、ラクトース、マンニトール、トウモロコシデンプン、若しくはジャガイモデンプンなどの従来の添加剤と、結晶セルロース、セルロース誘導体、アカシア、トウモロコシデンプン、若しくはゼラチンなどの結合剤と、トウモロコシデンプン、ジャガイモロコシデンプン、若しくはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの崩壊剤と、タルク若しくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤と、並びに所望される場合、希釈剤、緩衝剤、保湿剤、防腐剤、及び香味剤と組み合わせて、使用することができる。
【0368】
主題の抗体コンジュゲートは、植物又は他の類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステル又はプロピレングリコールなどの水性又は非水性溶媒中で調製物を溶解、懸濁、又は乳化することによって、並びに所望される場合、可溶化剤、等張化剤、懸濁化剤、乳化剤、安定剤、及び防腐剤などの従来の添加剤を用いて、注射用の調製物に製剤化することができる。
【0369】
主題の抗体コンジュゲートを含む薬学的組成物は、所望の純度を有する抗体コンジュゲートを、任意選択的な生理学的に許容され得る担体、賦形剤、安定剤、界面活性剤、緩衝液及び/又は等張化剤と混合することによって調製される。許容され得る担体、賦形剤及び/又は安定剤は、採用される投薬量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸、グルタチオン、システイン、メチオニン、及びクエン酸を含む抗酸化剤;防腐剤(エタノール、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、p-クロル-m-クレゾール、メチル若しくはプロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、又はそれらの組み合わせなど);アルギニン、グリシン、オルニチン、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン、イソロイシン、ロイシン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、セリン、プロリン、及びそれらの組み合わせなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;ゼラチン又は血清アルブミンなどのタンパク質;EDTAなどのキレート剤;スクロース、ラクトース、グルコース、マンノース、マルトース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラフィノース、グルコサミン、N-メチルグルコサミン、ガラクトサミン、及びノイラミン酸などの糖;並びに/又はTween、Brij Pluronic、Triton-X、若しくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0370】
薬学的組成物は、液体形態、凍結乾燥形態、又は凍結乾燥形態から再構成された液体形態であり得、凍結乾燥調製物は、投与前に無菌溶液で再構成されるものである。凍結乾燥組成物を再構成するための標準的な手順は、ある体積の純水(典型的には、凍結乾燥中に除去される体積と同等である)を戻して添加することであるが、抗菌剤を含む溶液が、非経口投与のための薬学的組成物の産生に使用され得る。
【0371】
主題の薬学的組成物中の例示的な抗体コンジュゲート濃度は、約1mg/mL~約200mg/ml、又は約50mg/mL~約200mg/mL、又は約150mg/mL~約200mg/mLの範囲であり得る。
【0372】
抗体コンジュゲートの水性製剤は、例えば、約4.0~約7.0、若しくは約5.0~約6.0、又は代替的に約5.5の範囲のpHにおけるpH緩衝溶液中で調製され得る。この範囲内のpHに好適である緩衝液の例としては、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、クエン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、酢酸緩衝液、及び他の有機酸緩衝液が挙げられる。緩衝液濃度は、例えば、緩衝液及び製剤の所望の張性に応じて、約1mM~約100mM、又は約5mM~約50mMであり得る。
【0373】
凍結乾燥プロセス中に不安定化条件に対して不安定な活性成分(例えば、タンパク質)を保護するために、凍結保護剤が添加され得る。例えば、既知の凍結保護剤には、糖(グルコース及びスクロースを含む)、ポリオール(マンニトール、ソルビトール、及びグリセロールを含む)、並びにアミノ酸(アラニン、グリシン、及びグルタミン酸を含む)が含まれる。凍結保護剤は、約10nM~500nMの量で含むことができる。
【0374】
いくつかの実施形態では、主題の製剤は、主題の抗体コンジュゲート、及び1つ以上の薬剤(例えば、界面活性剤、緩衝液、安定剤、等張化剤)を含み、エタノール、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、p-クロル-m-クレゾール、メチル又はプロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、及びこれらの組み合わせなどの1つ以上の防腐剤を本質的に含まない。他の実施形態では、防腐剤が、例えば、約0.001~約2%(w/v)の範囲の濃度で製剤に含まれる。
【0375】
例えば、主題の製剤は、非経口投与に好適な液体又は凍結乾燥製剤であり得、約1mg/mL~約200mg/mLの主題の抗体コンジュゲート、約0.001%~約1%の少なくとも1つの界面活性剤、約1mM~約100mMの緩衝液、任意選択的に、約10mM~約500mMの安定剤、及び約5mM~約305mMの等張化剤を含むことができ、約4.0~約7.0のpHを有する。
【0376】
別の例として、主題の非経口製剤は、約1mg/mL~約200mg/mLの主題の抗体コンジュゲート、0.04%のTween20 w/v、20mMのL-ヒスチジン、及び250mMのスクロースを含む液体又は凍結乾燥製剤であり、5.5のpHを有する。
【0377】
「単位剤形」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒト及び動物対象のための単位投薬量として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位は、薬学的に許容され得る希釈剤、担体、又はビヒクルと関連して所望の効果を生じるために十分な量で計算された所定の量の本開示の抗体コンジュゲートを含む。主題の抗体コンジュゲートの仕様は、採用される特定の抗体コンジュゲート及び達成される効果、並びに宿主中の各抗体コンジュゲートに関連する薬力学に依存し得る。
【0378】
主題の抗体コンジュゲートを、注射用製剤として投与することができる。典型的には、注射用組成物は、液体溶液又は懸濁液として調製され、注射前の液体ビヒクル中の溶液又は懸濁液に好適な固体形態も調製され得る。調製物はまた、乳化され得るか、又は抗体コンジュゲートは、リポソームビヒクルにカプセル化され得る。
【0379】
ビヒクル、アジュバント、担体、又は希釈剤などの薬学的に許容され得る賦形剤は、一般大衆に容易に利用可能である。更に、pH調整剤及び緩衝剤、張性調整剤、安定剤、湿潤剤などの薬学的に許容され得る補助物質は、一般大衆に容易に利用可能である。
【0380】
いくつかの実施形態では、主題の抗体コンジュゲートは、制御放出製剤で製剤化される。徐放性調製物が、当技術分野で周知の方法を使用して調製され得る。徐放性調製物の好適な例としては、マトリクスが、成形品、例えば、フィルム又はマイクロカプセルの形態である、抗体コンジュゲートを含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスが挙げられる。徐放性基質の例としては、ポリエステル、L-グルタミン酸及びL-グルタミン酸エチルのコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、ヒドロゲル、ポリラクチド、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、並びにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。生物学的活性の起こり得る喪失及び徐放性調製物に含まれる抗体の免疫原性の起こり得る変化は、適切な添加剤を使用することによって、水分含有量を制御することによって、及び具体的なポリマーマトリクス組成物を開発することによって防止され得る。
【0381】
物理的システムには、マイクロカプセル化、マクロカプセル化、及び膜システムなどの速度制御膜を有するリザーバシステム、中空繊維、超微多孔質三酢酸セルロース、並びに多孔質ポリマー基材及びフォームなどの速度制御膜のないリザーバシステム、非多孔質、ポリマー、又はエラストマーマトリクスに物理的に溶解されたシステム(例えば、非浸食性、浸食性、環境作用物質浸入、及び分解性)、並びに非多孔質、ポリマー、又はエラストマーマトリクスに物理的に分散された材料(例えば、非浸食性、浸食性、環境作用物質浸入、及び分解性)を含むモノリシックシステム、外側制御層と化学的に類似するか、又は異なるリザーバ層を含む積層構造、及び浸透圧ポンプ又はイオン交換樹脂上への吸着などの他の物理的方法が含まれるが、これらに限定されない。
【0382】
化学的システムには、ポリマーマトリクスの化学的浸食(例えば、異種若しくは同種浸食)、又はポリマーマトリクスの生物学的浸食(例えば、異種若しくは同種)が含まれるが、これらに限定されない。
【0383】
投薬量
好適な投薬量を、様々な臨床要因に基づいて、主治医又は他の資格のある医療関係者によって決定することができる。医療分野で周知であるように、いずれか1人の患者のための投薬量は、患者のサイズ、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、患者の性別、投与の時間及び経路、全般的な健康、並びに同時に投与されている他の薬物を含む、多くの要因に依存する。主題の抗体コンジュゲートは、用量当たり1ng/kg体重~20mg/kg体重、例えば、0.1mg/kg体重~10mg/kg体重、例えば、0.5mg/kg体重~5mg/kg体重の量で投与され得るが、特に前述の要因を考慮して、この例示的な範囲を下回るか又は上回る用量が想定される。レジメンが連続注入である場合、これはまた、1分当たり体重1kg当たり1μg~10mgの範囲内であり得る。
【0384】
当業者は、用量レベルが、具体的な抗体コンジュゲート、症状の重症度、及び副作用に対する対象の感受性の関数として変動し得ることを容易に理解するであろう。所与の化合物の好ましい投薬量は、様々な手段によって当業者によって容易に決定可能である。
【0385】
投与経路
主題の抗体コンジュゲートは、インビボ及びエクスビボ方法、並びに全身及び局所的投与経路を含む、薬物送達に好適な任意の利用可能な方法及び経路を使用して個体に投与される。
【0386】
従来の薬学的に許容され得る投与経路には、鼻腔内、筋肉内、気管内、皮下、皮内、局所適用、静脈内、動脈内、直腸、経鼻、経口、並びに他の経腸及び非経口投与経路が含まれる。投与経路は、抗体コンジュゲート及び/又は所望の効果に応じて、組み合わせられるか、又は所望される場合、調整され得る。主題の抗体コンジュゲート組成物を、単回用量又は複数回用量で投与することができる。いくつかの実施形態では、主題の抗体コンジュゲート組成物は、経口投与される。いくつかの実施形態では、主題の抗体コンジュゲート組成物は、吸入経路を介して投与される。いくつかの実施形態では、主題の抗体コンジュゲート組成物は、鼻腔内に投与される。いくつかの実施形態では、主題の抗体コンジュゲート組成物は、局所的に投与される。いくつかの実施形態では、主題の抗体コンジュゲート組成物は、頭蓋内に投与される。いくつかの実施形態では、主題の抗体コンジュゲート組成物は、静脈内に投与される。
【0387】
抗体コンジュゲートは、全身又は局所的経路を含む、従来の薬物の送達に好適である任意の利用可能な従来の方法及び経路を使用して、宿主に投与することができる。一般に、本発明によって企図される投与経路には、腸内、非経口、又は吸入経路が含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0388】
吸入投与以外の非経口投与経路には、局所、経皮、皮下、筋肉内、眼窩内、嚢内、脊髄内、胸骨内、肝臓内、及び静脈内経路、例えば、消化管を通過する以外の任意の投与経路が含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。非経口投与を実行して、主題の抗体の全身又は局所送達をもたらすことができる。全身送達が所望される場合、投与は、典型的には、薬学的調製物の侵襲性投与、若しくは全身的に吸収される局所投与、又は粘膜投与を伴う。
【0389】
主題の抗体コンジュゲートはまた、腸内投与によって対象に送達することもできる。腸内投与経路には、経口及び直腸(例えば、坐剤を使用する)送達が含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0390】
治療とは、宿主が罹患している病的状態と関連する症状の少なくとも改善を意味し、改善は、乳がん、膵臓がん、又は肺がんなどの治療されている病的状態に関連するパラメータ、例えば、症状の大きさの少なくとも低減を指すために広義で使用される。したがって、治療はまた、宿主が、病的状態又は少なくとも病的状態を特徴付ける症状に苦しまなくなるように、病的状態又は少なくともそれに関連する症状が、完全に阻害される、例えば、発生が防止される、又は停止される、例えば、終了する状況も含む。
【0391】
いくつかの実施形態では、主題の抗体コンジュゲートは、例えば、全身送達(例えば、静脈内注入)のために、又は局所部位に、注射によって投与される。
【0392】
様々な宿主(「宿主」という用語は、本明細書では「対象」、「個体」、及び「患者」という用語と互換的に使用される)は、主題の方法に従って治療可能である。概して、そのような宿主は、「哺乳動物」又は「哺乳類」であり、これらの用語は、肉食動物(例えば、イヌ及びネコ)、齧歯類(例えば、マウス、モルモット、及びラット)、並びに霊長類(例えば、ヒト、チンパンジー、及びサル)を含む、哺乳類内にある生物を説明するために広く使用される。いくつかの実施形態では、宿主は、ヒトであろう。
【0393】
治療方法
本開示は、固形腫瘍又は血液悪性腫瘍を含む、悪性腫瘍を治療する方法を提供し、本方法は、概して、治療を必要とする個体(例えば、悪性腫瘍を有する個体)に、有効量の主題の抗体コンジュゲートを、単独で(例えば、単剤療法で)、又は1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて(例えば、併用療法で)投与することを伴う。
【0394】
悪性腫瘍には、例えば、HCC、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、有毛細胞白血病、前リンパ球性白血病、肛門がん、虫垂がん、胆管がん(例えば、胆管がん(cholangiocarcinoma))、膀胱がん、脳腫瘍、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、原発不明がん(CUP)、食道がん、眼がん、卵管がん、胃腸がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、髄芽腫、黒色腫、口腔がん、卵巣がん、膵臓がん、副甲状腺疾患、陰茎がん、下垂体腫瘍、前立腺がん、直腸がん、皮膚がん、胃がん、精巣がん、咽喉がん、甲状腺がん、子宮がん、膣がん、外陰がんなどが含まれる。
【0395】
いくつかの実施形態では、主題の抗体コンジュゲートの有効量は、1回以上の用量において、単独で(例えば、単剤療法で)、又は1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて(例えば、併用療法で)投与されると、抗体コンジュゲートを用いた治療がない場合の個体におけるがん細胞の数と比較して、個体におけるがん細胞の数を、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又はそれ以上低減するために有効な量である。
【0396】
いくつかの事例において、乳がんは、エストロゲン、プロゲステロン、及びHER2についてトリプルネガティブである。いくつかの事例において、トリプルネガティブ乳がんは、転移性トリプルネガティブ乳がんである。いくつかの事例において、トリプルネガティブ乳がんは、再発性又は難治性トリプルネガティブ乳がんである。いくつかの事例において、トリプルネガティブ乳がんは、再発性又は難治性転移性トリプルネガティブ乳がんである。
【0397】
本開示の態様は、対象における標的部位に薬物を送達する方法を含む。本方法は、本開示によるコンジュゲートを含む薬学的組成物を対象に投与することを含み、投与することは、対象における標的部位でコンジュゲートから治療有効量の薬物を放出するために有効である。
【0398】
いくつかの実施形態では、抗体薬物コンジュゲートの複数回用量が投与され得る。抗体薬物コンジュゲートの投与の頻度は、様々な要因、例えば、症状の重症度、対象の状態などのうちのいずれかに応じて変化し得る。例えば、いくつかの実施形態では、抗体薬物コンジュゲートは、1ヶ月に1回、1ヶ月に2回、1ヶ月に3回、隔週、週に1回(qwk)、週に2回、週に3回、週に4回、週に5回、週に6回、1日おき、毎日(qd/od)、1日に2回(bds/bid)、又は1日に3回(tds/tid)などで投与される。
【0399】
併用療法
いくつかの実施形態では、悪性腫瘍を治療する主題の方法は、主題の抗体コンジュゲート及び1つ以上の追加の治療剤を投与することを伴う。好適な追加の治療剤には、がん化学療法剤(上記に記載される)が含まれるが、これに限定されない。
【0400】
いくつかの実施形態では、治療方法は、対象に治療有効量の免疫調節治療剤を投与することを含み得る。免疫調節治療剤は、免疫チェックポイント阻害剤又はインターロイキンであり得る。免疫チェックポイント阻害剤は、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、CD277、IDO、KIR、PD-1、LAG-3、TIM-3、TIGIT、又はVISTAを阻害し得る。PD-1シグナル伝達を阻害する免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体であり得る。抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、又はアベルマブであり得る。CTLA-4を阻害する免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4抗体であり得る。抗CTLA-4抗体は、イピリムマブであり得る。
【0401】
治療に好適な対象
様々な対象が、主題の方法を用いた治療に好適である。好適な対象には、悪性腫瘍を有するか、悪性腫瘍と診断されているか、悪性腫瘍を有していたことがあり、悪性腫瘍の再発の危険性があるか、対象の抗体コンジュゲート以外の薬剤で悪性腫瘍について治療されていて(例えば、がん化学療法剤で治療されていて)、薬剤に応答していないか、又は対象の抗体コンジュゲート以外の薬剤で悪性腫瘍について治療されていて(例えば、がん化学療法剤で治療されていて)、最初は薬剤に応答したが、その後は応答しなくなった(例えば、再発した)、任意の個体、例えば、ヒトが含まれる。
【0402】
実施形態
本開示の特定の実施形態が、以下に列挙される条項に記載される。これらの実施形態は、例示的にすぎず、範囲において限定的であることを意図していない。
1.式(I)のコンジュゲートであって、
【化26】
式中、
Zが、CR
4又はNであり、
R
1が、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択され、
R
2及びR
3が、各々独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノアシル、アルキルアミド、置換アルキルアミド、スルホニル、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択されるか、又はR
2及びR
3が、任意選択的に環状に連結されて、5員若しくは6員ヘテロシクリルを形成し、
各R
4が、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノアシル、アルキルアミド、置換アルキルアミド、スルホニル、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択され、
Lが、リンカーであり、
W
1が、薬物であり、
W
2が、抗体である、コンジュゲート。
2.Lが、
-(T
1-V
1)
a-(T
2-V
2)
b-(T
3-V
3)
c-(T
4-V
4)
d-(T
5-V
5)
e-(T
6-V
6)
f-
を含み、式中、
a、b、c、d、e、及びfが、各々独立して、0又は1であり、a、b、c、d、e、及びfの合計が、1~6であり、
T
1、T
2、T
3、T
4、T
5、及びT
6が、各々独立して、共有結合、(C
1~C
12)アルキル、置換(C
1~C
12)アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリル、(EDA)
w、(PEG)
n、(AA)
p、-(CR
13OH)
m-、4-アミノ-ピペリジン(4AP)、メタ-アミノ-ベンジルオキシ(MABO)、メタ-アミノ-ベンジルオキシカルボニル(MABC)、パラ-アミノ-ベンジルオキシ(PABO)、パラ-アミノ-ベンジルオキシカルボニル(PABC)、パラ-アミノベンジル(PAB)、パラ-アミノ-ベンジルアミノ(PABA)、パラ-アミノ-フェニル(PAP)、パラ-ヒドロキシ-フェニル(PHP)、アセタール、ヒドラジン、ジスルフィド、並びにエステルから選択され、EDAが、エチレンジアミン部分であり、PEGが、ポリエチレングリコールであり、AAが、アミノ酸残基又はアミノ酸類似体であり、各wが、1~20の整数であり、各nが、1~30の整数であり、各pが、1~20の整数であり、各mが、1~12の整数であり、
V
1、V
2、V
3、V
4、V
5、及びV
6が、各々独立して、共有結合、-CO-、-NR
15-、-NR
15(CH
2)
q-、-NR
15(C
6H
4)-、-CONR
15-、-NR
15CO-、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、-S(O)-、-SO
2-、-SO
2NR
15-、-NR
15SO
2-、及び-P(O)OH-からなる群から選択され、各qが、1~6の整数であり、
各R
13が、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリールから選択され、
各R
15が、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択される、条項1に記載のコンジュゲート。
3.
T
1が、(C
1~C
12)アルキル及び置換(C
1~C
12)アルキルから選択され、
T
2、T
3、T
4、T
5、及びT
6が、各々独立して、共有結合、(C
1~C
12)アルキル、置換(C
1~C
12)アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリル、(EDA)
w、(PEG)
n、(AA)
p、-(CR
13OH)
m-、4-アミノ-ピペリジン(4AP)、MABO、MABC、PABO、PABC、PAB、PABA、PAP、PHP、アセタール基、ヒドラジン、及びエステルから選択され、
V
1、V
2、V
3、V
4、V
5、及びV
6が、各々独立して、共有結合、-CO-、-NR
15-、-NR
15(CH
2)
q-、-NR
15(C
6H
4)-、-CONR
15-、-NR
15CO-、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、-S(O)-、-SO
2-、-SO
2NR
15-、-NR
15SO
2-、及び-P(O)OH-からなる群から選択され、
(PEG)
nが、
【化27】
であり、式中、nが、1~30の整数であり、
EDAが、以下の構造:
【化28】
を有するエチレンジアミン部分であり、式中、yが、1~6の整数であり、rが、0又は1であり、
4-アミノ-ピペリジン(4AP)が、
【化29】
であり、
各R
12が、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、ポリエチレングリコール部分、アリール、及び置換アリールから選択され、いずれか2つの隣接するR
12基が、環状に連結されて、ピペラジニル環を形成し得る、条項2に記載のコンジュゲート。
4.MABO、MABC、PABO、PABC、PAB、PABA、PAP、及びPHPが各々、任意選択的にグリコシドで置換されている、条項2又は3に記載のコンジュゲート。
5.グリコシドが、グルクロニド、ガラクトシド、グルコシド、マンノシド、フコシド、O-GlcNAc、及びO-GalNAcから選択される、条項4に記載のコンジュゲート。
6.
T
1が、(C
1~C
12)アルキルであり、V
1が、-CO-であり、
T
2が、4APであり、V
2が、-CO-であり、
T
3が、(C
1~C
12)アルキルであり、V
3が、-CO-であり、かつ
d、e、及びfが各々、0であるか、又は
T
1が、(C
1~C
12)アルキルであり、V
1が、-CO-であり、
T
2が、4APであり、V
2が、存在せず、
T
3が、(PEG)
nであり、V
3が、-CO-であり、かつ
d、e、及びfが各々、0であるか、又は
T
1が、(C
1~C
12)アルキルであり、V
1が、-CO-であり、
T
2が、4APであり、V
2が、存在せず、
T
3が、(PEG)
nであり、V
3が、-CO-であり、
T
4が、(AA)
pであり、V
4が、存在せず、
T
5が、PABCであり、V
5が、存在せず、かつ
fが、0であるか、又は
T
1が、(C
1~C
12)アルキルであり、V
1が、-CONH-であり、
T
2が、(PEG)
nであり、V
2が、-CO-であり、
T
3が、(AA)
pであり、V
3が、存在せず、
T
4が、PABCであり、V
4が、存在せず、かつ
e及びfが各々、0であるか、又は
T
1が、(C
1~C
12)アルキルであり、V
1が、-CO-であり、
T
2が、アミノ酸類似体であり、V
2が、-NH-であり、
T
3が、(PEG)
nであり、V
3が、-CO-であり、
T
4が、(AA)
pであり、V
4が、存在せず、
T
5が、PABCであり、V
5が、存在せず、かつ
fが、0である、条項2~5のいずれかに記載のコンジュゲート。
7.リンカーLが、以下から選択される構造を有し、
【化30】
式中、
【化31】
が、式(I)中のNへのLの結合を表し、*が、W
1へのLの結合を表す、条項1~6のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
8.薬物が、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)である、条項1~7のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
9.コンジュゲートが、以下:
【化32】
からなる群から選択される、条項1~8のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
10.抗体が、IgG1抗体である、条項1~9のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
11.抗体が、IgG1カッパ抗体である、条項10に記載のコンジュゲート。
12.抗体が、fGly’を有する配列を含み、fGly’が、リンカーを通して薬物にカップリングされたアミノ酸残基である、条項1~11のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
13.配列が、抗体の重鎖定常領域のC末端に位置付けられている、条項1~12のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
14.配列が、抗体の軽鎖定常領域内に位置付けられている、条項1~12のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
15.配列が、抗体の重鎖CH1領域内に位置付けられている、条項1~12のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
16.配列が、抗体の重鎖CH2領域内に位置付けられている、条項1~12のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
17.配列が、抗体の重鎖CH3領域内に位置付けられている、条項1~12のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
18.式(III)の化合物であって、
【化33】
式中、
Zが、CR
4又はNであり、
R
2及びR
3が、各々独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノアシル、アルキルアミド、置換アルキルアミド、スルホニル、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択されるか、又はR
2及びR
3が、任意選択的に環状に連結されて、5員若しくは6員ヘテロシクリルを形成し、
各R
4が、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノアシル、アルキルアミド、置換アルキルアミド、スルホニル、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択され、
Lが、リンカーであり、
W
1が、薬物である、化合物。
19.Lが、
-(T
1-V
1)
a-(T
2-V
2)
b-(T
3-V
3)
c-(T
4-V
4)
d-(T
5-V
5)
e-(T
6-V
6)
f-
を含み、式中、
a、b、c、d、e、及びfが、各々独立して、0又は1であり、a、b、c、d、e、及びfの合計が、1~6であり、
T
1、T
2、T
3、T
4、T
5、及びT
6が、各々独立して、共有結合、(C
1~C
12)アルキル、置換(C
1~C
12)アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリル、(EDA)
w、(PEG)
n、(AA)
p、-(CR
13OH)
m-、4-アミノ-ピペリジン(4AP)、メタ-アミノ-ベンジルオキシ(MABO)、メタ-アミノ-ベンジルオキシカルボニル(MABC)、パラ-アミノ-ベンジルオキシ(PABO)、パラ-アミノ-ベンジルオキシカルボニル(PABC)、パラ-アミノベンジル(PAB)、パラ-アミノ-ベンジルアミノ(PABA)、パラ-アミノ-フェニル(PAP)、パラ-ヒドロキシ-フェニル(PHP)、アセタール、ヒドラジン、ジスルフィド、並びにエステルから選択され、EDAが、エチレンジアミン部分であり、PEGが、ポリエチレングリコールであり、AAが、アミノ酸残基又はアミノ酸類似体であり、各wが、1~20の整数であり、各nが、1~30の整数であり、各pが、1~20の整数であり、各mが、1~12の整数であり、
V
1、V
2、V
3、V
4、V
5、及びV
6が、各々独立して、共有結合、-CO-、-NR
15-、-NR
15(CH
2)
q-、-NR
15(C
6H
4)-、-CONR
15-、-NR
15CO-、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、-S(O)-、-SO
2-、-SO
2NR
15-、-NR
15SO
2-、及び-P(O)OH-からなる群から選択され、各qが、1~6の整数であり、
各R
13が、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリールから選択され、
各R
15が、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルから選択される、条項18に記載の化合物。
20.
T
1が、(C
1~C
12)アルキル及び置換(C
1~C
12)アルキルから選択され、
T
2、T
3、T
4、T
5、及びT
6が、各々独立して、共有結合、(C
1~C
12)アルキル、置換(C
1~C
12)アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリル、(EDA)
w、(PEG)
n、(AA)
p、-(CR
13OH)
m-、4-アミノ-ピペリジン(4AP)、MABO、MABC、PABO、PABC、PAB、PABA、PAP、PHP、アセタール基、ヒドラジン、及びエステルから選択され、
V
1、V
2、V
3、V
4、V
5、及びV
6が、各々独立して、共有結合、-CO-、-NR
15-、-NR
15(CH
2)
q-、-NR
15(C
6H
4)-、-CONR
15-、-NR
15CO-、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、-S(O)-、-SO
2-、-SO
2NR
15-、-NR
15SO
2-、及び-P(O)OH-からなる群から選択され、
(PEG)
nが、
【化34】
であり、式中、nが、1~30の整数であり、
EDAが、以下の構造:
【化35】
を有するエチレンジアミン部分であり、式中、yが、1~6の整数であり、rが、0又は1であり、
4-アミノ-ピペリジン(4AP)が、
【化36】
であり、
各R
12が、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、ポリエチレングリコール部分、アリール、及び置換アリールから選択され、いずれか2つの隣接するR
12基が、環状に連結されて、ピペラジニル環を形成し得る、条項19に記載の化合物。
21.MABO、MABC、PABO、PABC、PAB、PABA、PAP、及びPHPが各々、任意選択的にグリコシドで置換されている、条項19又は20に記載の化合物。
22.グリコシドが、グルクロニド、ガラクトシド、グルコシド、マンノシド、フコシド、O-GlcNAc、及びO-GalNAcから選択される、条項21に記載の化合物。
23.
T
1が、(C
1~C
12)アルキルであり、V
1が、-CO-であり、
T
2が、4APであり、V
2が、-CO-であり、
T
3が、(C
1~C
12)アルキルであり、V
3が、-CO-であり、かつ
d、e、及びfが各々、0であるか、又は
T
1が、(C
1~C
12)アルキルであり、V
1が、-CO-であり、
T
2が、4APであり、V
2が、存在せず、
T
3が、(PEG)
nであり、V
3が、-CO-であり、かつ
d、e、及びfが各々、0であるか、又は
T
1が、(C
1~C
12)アルキルであり、V
1が、-CO-であり、
T
2が、4APであり、V
2が、存在せず、
T
3が、(PEG)
nであり、V
3が、-CO-であり、
T
4は、AAであり、V
4は、存在せず、
T
5は、PABCであり、V
5は、存在せず、かつ
fが、0であるか、又は
T
1が、(C
1~C
12)アルキルであり、V
1が、-CONH-であり、
T
2は、(PEG)
nであり、V
2は、-CO-であり、
T
3は、AAであり、V
3は、存在せず、
T
4は、PABCであり、V
4は、存在せず、かつ
e及びfが各々、0であるか、又は
T
1が、(C
1~C
12)アルキルであり、V
1が、-CO-であり、
T
2が、アミノ酸類似体であり、V
2が、-NH-であり、
T
3が、(PEG)
nであり、V
3が、-CO-であり、
T
4が、AAであり、V
4が、存在せず、
T
5が、PABCであり、V
5が、存在せず、かつ
fが、0である、条項19~22のいずれか一項に記載の化合物。
24.リンカーLが、以下から選択される構造を有し、
【化37】
【化38】
が、式(I)中のNへのLの結合を表し、*が、W
1へのLの結合を表す、条項18~23のいずれか一項に記載の化合物。
25.薬物が、MMAEである、条項18~24のいずれか一項に記載の化合物。
26.化合物が、
【化39】
からなる群から選択される、条項18~25のいずれか一項に記載の化合物。
27.薬学的組成物であって、
条項1~17のいずれか一項に記載のコンジュゲートと、
薬学的に許容され得る賦形剤と、を含む、薬学的組成物。
28.方法であって、
対象に有効量の条項1~17のいずれか一項に記載のコンジュゲートを投与することを含む、方法。
29.対象においてがんを治療する方法であって、
対象に治療有効量の条項27に記載の薬学的組成物を投与することを含み、投与することが、対象においてがんを治療するために有効である、方法。
30.がんが、乳がん、卵巣がん、肺がん、又は胃がんである、条項29に記載の方法。
31.対象における標的部位に薬物を送達する方法であって、
対象に条項27に記載の薬学的組成物を投与することを含み、投与することが、対象における標的部位に治療有効量の薬物を送達するために有効である、方法。
【実施例】
【0403】
以下の実施例は、当業者に、本発明の作製及び使用方法の完全な開示及び説明を提供するために提示されるものであり、発明者らが発明とみなす範囲を限定することを意図せず、また、以下の実験が行われる全て又は唯一の実験であることを表すことを意図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して精度を保証するように努力がなされてはいるが、ある程度の実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。別段の指示がない限り、部とは重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧又は略大気圧である。標準的な略語、例えば、bp(塩基対(複数可))、kb(キロ塩基(複数可))、pl(ピコリットル(複数可))、s又はsec(秒(複数可))、min(分(複数可))、h又はhr(時間(複数可))、aa(アミノ酸(複数可))、kb(キロ塩基(複数可))、bp(塩基対(複数可))、nt(ヌクレオチド(複数可))、i.m.(筋肉内(で))、i.p.(腹腔内(で))、s.c.(皮下(で))などが使用されてもよい。
別段の指示がない限り、実施例で言及される市販の試薬が、製造業者の指示に従って使用された。ECACCアクセッション番号によって実施例及び本明細書の全体を通して同定される細胞の供給源は、European Collection of Cell Cultures(ECACC)(Salisbury,England)である。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって通常理解されているものと同じ意味を有する。例示的な方法及び材料が以下に記載されるが、本明細書に記載の方法及び材料と同様又は同等の方法及び材料もまた、本発明の実践又は試験に使用することができる。材料、方法、及び実施例は、例示的にすぎず、範囲において限定的であることを意図していない。
【0404】
実施例1
材料及び方法
一般
合成試薬を、Sigma-Aldrich、Acros、AK Scientific、又は他の商業的供給源から購入し、精製することなく使用した。無水溶媒を、商業的供給源から密封されたボトルの中で入手した。全ての場合において、Buchi V-700真空ポンプを装備したBuchi Rotovapor R-114を用いて、溶媒を減圧下で除去した。Biotageクロマトグラフィーシステムを使用して、カラムクロマトグラフィーを実施した。Phenomenex Kinetex 5μm EVO C18 150×21.2mmカラムを装備したWaters分取HPLCユニットを使用して、分取HPLC精製を実施した。0.05%トリフルオロ酢酸を含有する水及びアセトニトリルの10~100%勾配を使用して、室温において、モデルG1322Aデガッサー、モデルG1311Aクォータナリポンプ、モデルG1329Aオートサンプラー、モデルG1314可変波長検出器、Agilent Poroshell120SB C18、4.6mm×50mmカラムを装備したAgilent1100シリーズ分析HPLCで、HPLC分析を実施した。HPLCを254又は205nmで監視した。0.1%ギ酸を含有する水及びアセトニトリルの10~100%勾配を使用して、室温において、Agilent1260 Infinity HPLCシステム、G1314可変波長検出器、及びAgilent Poroshell120SB C18、4.6mm×50mmカラムを装備したAgilent Technology6120四重極LC/MSで、低分解能質量スペクトル(LRMS)を取得した。
【0405】
MMAE構築物の合成
研究で使用されるMMAE化合物1~5の構造が、以下に示される。化合物1は、Harpel et.al.Antibodies 2019,8,54で以前に報告された。化合物2及び3は、Chuprakov et. al.Bioconjugate Chem.2021,32,4,746-754で以前に報告された。合成中間体6、8、及び11を、Shanghai Medicilonから商業的に入手し、精製することなく使用した。モノメチルアウリスタチンE9を、BroadPharmから購入し、受領したまま使用した。
【化40】
【0406】
MMAE構築物4の合成
(9H-フルオレン-9-イル)メチル1,2-ジメチル-2-((1-(3-オキソ-3-((2-(2-(3-オキソ-3-(ペルフルオロフェノキシ)プロポキシ)エトキシ)エチル)アミノ)プロピル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-2-イル)メチル)ヒドラジン-1-カルボキシレート(7)の調製
【化41】
20mLのシンチレーションバイアル内で、化合物6(56mg、87μmol)、ペンタフルオロフェノール(18mg、98μmol)、35μLのDIPEA、及び1mLのEtOAcを組み合わせた。結果として得られた混合物を、19mg(122μmol)のEDCで処理し、室温で3日間撹拌した。反応混合物をDCMで希釈し、1Mの含水HCl、続いて、飽和含水NaHCO
3で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物を高真空下で乾燥させて、59mgのPFP-エステル7(73μmol、84%収率)を白色の固体として生じさせ、これを精製することなく更に使用した。
【0407】
LRMS(ESI):m/z 810.7[M+H]+、C41H40F5N5O7 m/z 810.8の計算値。
【0408】
【化42】
(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(2-((S)-2-((S)-2-アミノ-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)-5-((5S,8S,11S,12R)-11-((S)-sec-ブチル)-12-(2-((S)-2-((1R,2R)-3-(((1S,2R)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)アミノ)-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル)ピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)-5,8-ジイソプロピル-4,10-ジメチル-3,6,9-トリオキソ-2,13-ジオキサ-4,7,10-トリアザテトラデシル)フェノキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテート(10)の調製
オーブンで乾燥させた20mLのガラスシンチレーションバイアル内で、TFA塩(9、150mg、0.18mmol)としてのMMAE及びPNPカーボネート8(160mg、0.16mmol)を2mLの無水DMF中で混合した。この混合物を84uL(0.48mmol)のDIPEAで処理し、室温で2時間反応させた。DIPEAを真空下で除去し、残留溶液を32uL(0.32mmol)のピペリジンで0℃において7時間処理し、次いで、逆相分取HPLC(C18、0.05%TFAを含むアセトニトリル-水の5~95%勾配)によって精製した。純粋画分を凍結乾燥させて、160mg(0.12mmol、2ステップにわたって75%収率)の表題化合物10を白色の粉末として生じさせた。
【0409】
LRMS(ESI):m/z 1369.8[M+H]+、C68H104N8O21 m/z 1369.7の計算値。
【0410】
(2S,3S,4S,5R,6S)-6-(5-((5S,8S,11S,12R)-11-((S)-sec-ブチル)-12-(2-((S)-2-((1R,2R)-3-(((1S,2R)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)アミノ)-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル)ピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)-5,8-ジイソプロピル-4,10-ジメチル-3,6,9-トリオキソ-2,13-ジオキサ-4,7,10-トリアザテトラデシル)-2-((2S,5S)-19-(2-((1,2-ジメチルヒドラジンイル)メチル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-1-イル)-5-イソプロピル-2-メチル-4,7,17-トリオキソ-10,13-ジオキサ-3,6,16-トリアザノナデカンアミド)フェノキシ-3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸(4)の調製
ガラスバイアル内で、化合物10(20mg、15μmol)及びPFPエステル7(14mg、17μmol)を0.5mLの無水DMF中で組み合わせた。結果として得られた混合物を、DIPEA(7μL)及びHOAt(1mg)で処理し、室温で1時間撹拌した。反応混合物を真空下で濃縮し、2.5mLのMeOH中で再構築した。溶液を0℃まで冷却し、1.5mLの1M LiOH水溶液で処理し、室温まで加温させ、2時間撹拌した。反応混合物を1MのHClを添加することによって中和し、メタノールを真空中で除去し、残留物を逆相分取HPLC(C18、10~60%アセトニトリル-水/0.05%TFA)によって精製した。純粋画分を組み合わせ、凍結乾燥させて、12mg(7μmol、2ステップにわたって47%収率)の化合物4を白色の粉末として生じさせた。
【0411】
LRMS(ESI):m/z 1633.9[M+H]+、C81H125N13O22 m/z 1633.9の計算値。
【0412】
MMAE構築物5の合成
(R)-2-(3-(2-((2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)-1,2-ジメチルヒドラジンイル)メチル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-1-イル)プロパンアミド)-3-オキソ-3-((2-(2-(3-オキソ-3-((ペルフルオロフェノキシ)プロポキシ)エトキシ)エチル)アミノ)プロパン-1-スルホン酸(12)の調製
【化43】
カルボン酸11(1.33g、1.67mmol)を、6.5mLの無水DMF中でペンタフルオロフェノール(1.23g、6.68mmol)と組み合わせた。この混合物を、室温においてEDCI-HCl(0.64g、3.34mmol)で一度に処理し、HPLC分析によって判断されると11が完全に消費されるまで、20時間撹拌した。反応混合物を逆相クロマトグラフィー(C18カラム、0.05%TFAを含む0~80%アセトニトリル-水)によって直接精製した。純粋画分を組み合わせ、濁るまで真空下で濃縮し、凍結乾燥させて、PFP-エステル12(1.40g、1.46mmol、87%収率)を黄褐色の粉末として生じさせた。
【0413】
LRMS(ESI):m/z 961.2[M+H]+、C44H45F5N6O11S m/z 961.3の計算値。
【0414】
(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(2-((S)-2-((S)-2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)-5-((5S,8S,11S,12R)-11-((S)-sec-ブチル)-12-(2-((S)-2-((1R,2R)-3-(((1S,2R)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)アミノ)-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル)ピロリジン-1-イル)-2オキソエチル)-5,8-ジイソプロピル-4,10-ジメチル-3,6,9-トリオキサ-2,13-ジオキサ-4,7,10-トリアザテトラジル)フェノキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテート(13)の調製
【化44】
20mLのガラスバイアル内で、モノメチルアウリスタチンA9(720mg、1.0mmol)、5mLの無水DMF、及び0.35mLのDIPEA(2.0mmol)を室温で組み合わせた。結果として得られた混合物を撹拌し、固体としてのPNPカーボネート8(1014mg、1.0mmol)で少量ずつ処理し、続いて、HOAt(136mg、1.0mmol)を室温で一度に添加した。反応混合物を、反応が完了したと判断されるまで(HPLC)6時間撹拌した。反応混合物を30mLの水に注ぎ、結果として得られた沈殿物をスピンすることによって分離して収集し、5mLの水で洗浄し、高真空下で手短に乾燥させて、1.87gの粗生成物13を黄色がかった固体として生じさせ、これを精製することなく次のステップに進めた。
【0415】
(2S,3S,4S,5R,6S)-6-(2-((S)-2-((S)-2-アミノ-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)-5-((5S,8S,11S,12R)-11-((S)-sec-ブチル)-12-(2-((S)-2-((1R,2R)-3-(((1S,2R)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)アミノ)-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル)ピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)-5,8-ジイソプロピル-4,10-ジメチル-3,6,9-トリオキソ-2,13-ジオキサ-4,7,10-トリアザテトラデシル)フェノキシ)-3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸(14)の調製
【化45】
15mLのTHF中の粗化合物13(1.87g)の溶液を氷浴中で0℃まで冷却し、1Mの水酸化リチウム水溶液(3mL)でゆっくりと処理した。反応混合物を0℃で3時間撹拌し、次いで、周囲温度まで加温し、3mLの1M含水水酸化リチウムで処理し、3mLのメタノールで希釈した。結果として得られた混合物を、加水分解が完了するまで(HPLC)室温で3時間撹拌し、次いで、1MのHCl水溶液をpH7まで添加することによってクエンチした。次いで、反応混合物を減圧下で濃縮し、10mLのMTBEで洗浄した。水層を逆相クロマトグラフィー(C18カラム、0.05%TFAを含む0~40%アセトニトリル-水)によって精製した。純粋生成物画分を組み合わせ、減圧下で濃縮し、凍結乾燥させて、化合物14を白色の粉末として生じさせた(735mg、0.60mmol、2ステップにわたって60%収率)。
【0416】
LRMS(ESI):m/z 1229.7[M+H]+、C61H96N8O18 m/z 1229.7の計算値。
【0417】
(2S,3S,4S,5R,6S)-6-(5-((5S,8S,11S,12R)-11-((S)-sec-ブチル)-12-(2-((S)-2-((1R,2R)-3-(((1S,2R)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)アミノ)-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル)ピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)-5,8-ジイソプロピル-4,10-ジメチル-3,6,9-トリオキソ-2,13-ジオキサ-4,7,10-トリアザテトラデシル)-2-((2S,5S,18R)-22-(2-((1,2-ジメチルヒドラジン)メチル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-1-イル)-5-イソプロピル-2-メチル-4,7,17,20-テトラオキソ-18-(スルホメチル)-10,13-ジオキサ-3,6,16,19-テトラアザドコサンアミド)フェノキシ)-3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸(5)の調製
【化46】
3mLの無水DMA中の化合物14(735mg、0.60mmol)の撹拌溶液に、DIPEA(0.21mL、1.2mmol)及び2mLのDMA中のPFP-エステル12(575mg、0.60mmol)の溶液を室温で添加し、続いて、HOAt(84mg、0.60mmol)を添加した。カップリングが完了したと判断されるまで(HPLC分析)、結果として得られた混合物を30分間撹拌し、次いで、室温で1.2mLのピペリジンで直接処理した。15分後、反応混合物を逆相クロマトグラフィー(C18カラム、アセトニトリル-水の0~40%勾配)によって精製した。純粋画分を組み合わせ、減圧及び室温下で濃縮し、次いで、凍結乾燥させて、化合物5(808mg、0.45mmol、75%収率)を白色の綿毛状粉末として生じさせた。LRMS(ESI):m/z 1783.9[M+H]
+、C
84H
130N
14O
26S m/z 1783.9の計算値。
【0418】
実施例2:バイオコンジュゲーション、精製、及びHPLC分析
アルデヒドタグ付き抗体のHIPSコンジュゲーション
1つのアルデヒドタグを持つ抗体(15mg/mL)を、それぞれ、1.1mMにおいてリンカーペイロードにコンジュゲートした。反応は、20mMのクエン酸ナトリウム、0.85~2.5%のDMAを含有するpH5.5で50mMのNaCl(20/50緩衝液)中で、37℃で72時間進行した。コンジュゲーション後、30kD MWCO 0.5mL Amiconスピン濃縮器を使用して、遊離薬物を除去した。試料をスピン濃縮器に添加し、15,000xgで7分間遠心分離し、次いで、450μLの20mMクエン酸ナトリウム、pH5.5で50mMのNaClで希釈し、再び遠心分離した。本プロセスを10回繰り返した。最終生成物のDARを決定するために、HIC(Tosoh#14947)又はPLRP-RP(Agilent PL1912-1802 1000A、8um、50×2.1mm)カラムを使用する分析クロマトグラフィーによって、ADCを調査した。HIC分析は、移動相A:1.5Mの硫酸アンモニウム、pH7.0で25mMのリン酸ナトリウム、及び移動相B:25%イソプロパノール、pH7.0で18.75mMのリン酸ナトリウムを使用した。PLRP分析は、移動相A:水中の0.1%トリフルオロ酢酸、及び移動相B:アセトニトリル中の0.1%トリフルオロ酢酸を使用した。PLRP分析前に、50mMのDTT、4MのグアニジンHCl(最終濃度)の添加、及び37℃で30分間加熱することによって、試料を変性させた。凝集を決定するために、300mMのNaCl、5%イソプロパノールを含むpH6.8で25mMのリン酸ナトリウムの移動相を用いた分析サイズ排除クロマトグラフィー(SEC、Tosoh#08541)を使用して、試料を分析した。
【0419】
タグなし(野生型)抗体のマレイミドコンジュゲーション
PBS(pH8.0)、1mM DTPA中で、37℃で90分間、2.5モル当量のTCEPを使用して、抗体(5mg/mL)を還元した。TCEPを除去し、タンジェンシャルフロー濾過を使用して、タンパク質をPBS(pH7.4)、1mM DTPAに交換した。還元された抗体(3mg/mL)を、氷上で60分間、10モル当量のマレイミド-valcit-MMAEとコンジュゲートした。遊離薬物を除去し、タンジェンシャルフロー濾過を使用して、最終的なADCをPBS(pH7.4)に交換した。
実施例3:毒性研究
【表1】
【0420】
単回用量非GLPラット毒性研究
雄のSprague-Dawleyラット(研究開始時に8~9週齢、5匹の動物/群)に、ビヒクル単独又は非交差反応性ポラツズマブ(抗CD79b)コンジュゲートのいずれかを静脈内に投与した。ADCを20mg/kg(約4のDARのベドチンコンジュゲート)又は40mg/kg(約2のDARを有する全ての他のコンジュゲート)のいずれかで投与して、群にわたって等しいペイロード投与レベルを達成した。投与は、1日目に生じ、その後に11日間の観察期間が続いた。5日目及び12日目に臨床病理のために、かつ投与後8時間、並びに4、7、及び12日目に毒物動態分析のために、血液を全ての動物から収集した。臨床観察を毎日行った。
【0421】
単回用量非GLPラット毒性結果:5つの異なるリンカータイプを通してコンジュゲートされたMMAEを保有するポラツズマブADCを、ラット研究において等しいペイロード投与レベルでの忍容性について比較した。化合物5リンカーペイロードを持つコンジュゲートは、造血細胞集団及び肝機能検査(AST及びALT)への影響に関して、他の全てのADC(ビヒクル対照処置動物に最も類似する)よりも優れていた。
【0422】
図2は、投与後5日目のラットにおけるリンパ球集団のグラフを示す。
【0423】
図3は、投与後5日目のラットにおける循環アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)レベルのグラフを示す。
【0424】
図4は、投与後5日目のラットにおける循環アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルのグラフを示す。
【0425】
図5は、投与後5日目のラットにおける赤血球数のグラフを示す。
【0426】
図6は、投与後5日目のラットにおけるヘモグロビンレベルのグラフを示す。
【0427】
図7は、投与後5日目のラットにおけるヘマトクリットレベルのグラフを示す。
【表2】
【0428】
図8は、7日目の単回用量のADCを用いた第1のGranta異種移植研究のグラフを示す。
【0429】
第1のGranta異種移植研究の結果:ベドチン及びCTアルデヒドタグ付きHIPSコンジュゲートを含む、5つの異なるリンカータイプを通してコンジュゲートされたMMAEを保有するポラツズマブADCを、Granta519異種移植研究において等しいペイロード投与レベルでの有効性について比較した。全てのコンジュゲートは、単回用量後に優れた有効性を示し、ベドチン及び化合物5のコンジュゲートは、最も長い腫瘍成長阻害を示した。
【表3】
【0430】
図9は、0日目に単回2mg/kg用量のADCを用いた第2のGranta異種移植研究のグラフを示す。内部タグ58Q及び91Nを使用することは、ベドチンコンジュゲートと比較して、半分のDARで優れた有効性を提供した。
【0431】
第2のGranta異種移植研究の結果:ベドチンに、又はCT、58Q、及び91Nを含む様々なタグ部位で化合物5にコンジュゲートされたポラツズマブADCを、Granta519異種移植研究において等しい抗体投与レベルでの有効性について比較した。全てのコンジュゲートは、単回2mg/kg用量後に優れた有効性を示し、化合物5の内部タグ付きコンジュゲート58Q及び91Nが、最も長い腫瘍成長阻害を示した。これらの2つのコンジュゲートは、細胞傷害性ペイロード用量の50%のみを保持するにもかかわらず、ベドチンコンジュゲートと比較して優れた有効性を示した(例えば、3.45のベドチンDARを1.66の91N ADC DARと比較する)。2つの選択された内部タグとは対照的に、CTタグ付きADCの有効性は、ベドチンコンジュゲートと比較して、等しい抗体用量で非常に弱かった。この違いは、最良の結果を達成するために具体的なタグ部位を特定のリンカーペイロードと組み合わせることの重要性を強調する。
【表4】
【0432】
複数回用量非GLPラット毒性研究#1
雄のSprague-Dawleyラット(研究開始時に8~9週齢、5匹の動物/群)に、ビヒクル単独、又は各々約4のDARを有する非交差反応性ポラツズマブ(抗CD79b)ベドチン若しくはアルデヒドタグ付きHIPSコンジュゲートのいずれかを静脈内に投与した。投与は、合計で4回の投与(1日目、8日目、15日目、及び22日目)にわたって毎週行われた。動物を、最終投与後7日間にわたって観察した。体重を週に4回記録した。血液を(全ての投与について)投与の4日後に臨床病理のために収集した。臨床観察を毎日行った。
【0433】
複数回用量非GLPラット毒性研究#1結果:ベドチン、又はCH1/CTタグ部位で化合物5のいずれかにコンジュゲートされたポラツズマブADCを、複数回用量ラット研究において等しいペイロード/等しい抗体投与レベルでの忍容性について比較した。化合物5のADCを投与されたラットが、数週間の期間にわたってビヒクル対照群と同様の結果を示した一方で、ベドチンコンジュゲートを投与されたラットは、顕著な骨髄抑制を示し、白血球及び赤血球パラメータの低減が最初の投与後に明白であり、経時的に悪化した。
【0434】
図10は、ビヒクル又はADCを繰り返し投与されたラットにおける循環好中球数のグラフを示す。
【0435】
図11は、ビヒクル又はADCを繰り返し投与されたラットにおける循環単球数のグラフを示す。
【0436】
図12は、ビヒクル又はADCを繰り返し投与されたラットにおける赤血球数のグラフを示す。
【0437】
図13は、ビヒクル又はADCを繰り返し投与されたラットにおけるヘモグロビンレベルのグラフを示す。
【0438】
図14は、ビヒクル又はADCを繰り返し投与されたラットにおけるヘマトクリットレベルのグラフを示す。
【表5】
【0439】
複数回用量非GLPラット毒性研究#2
雄Sprague-Dawleyラット(試験開始時に8~9週齢、5匹/群)に、ビヒクル単独、又はラット交差反応性抗体エンホルツマブの可変領域を保有する抗体を使用して作製されたネクチン-4コンジュゲートのいずれかを静脈内に投与した。試験したADCは、ネクチン-4ベドチン及びネクチン-4 CH1/CT化合物5であった。10mg/kgでの投与は、合計で4回の投与(1日目、8日目、15日目、及び22日目)にわたって毎週行われた。動物を、最終投与後7日間にわたって観察した。体重を週に4回記録した。血液を、(全ての用量について)5、12、19、及び26日目の臨床病理、及び投与後8時間、並びに4日目及び7日目の毒物動態分析のために、全ての動物から収集した。臨床観察を毎日行った。0(正常)~3(重度)の範囲である臨床観察スコアリングシステムのスケールが、表1に示される。
【表6】
【0440】
複数用量非GLPラット毒性研究#2結果:
ベドチン、又はCH1/CTタグ部位で化合物5のいずれかにコンジュゲートされたエンホルツマブADCを、複数回用量ラット研究において等しいペイロード/等しい抗体投与レベルでの忍容性について比較した。この研究からの最も顕著な観察のうちの1つは、ベドチン投与群で注目された多数の臨床観察であった。観察のほとんどは、皮膚病変に関連した。対照的に、化合物5投与群では、臨床観察が注目されなかった(
図15)。ベドチン及び化合物5ADCの両方が同じペイロード(遊離MMAE)を放出することを考慮すると、化合物5治療群内の臨床観察の欠如は予想外であった。以前には、化合物5リンカーによって付与される忍容性の改善は主に、より低い標的外毒性につながる循環における安定性の改善に関連したと考えられていた。しかしながら、この研究の結果は、化合物5リンカーが、皮膚などの健康な組織における標的抗原発現を有するADCで使用されると、追加の忍容性改善も付与し得ることを示唆した。この発見は、新規で、予想外であり、潜在的な治療的有用性があった。
【0441】
図15は、ラット交差反応性ネクチン-4ADCを繰り返し投与されたラットにおける臨床観察のグラフを示す。矢印は、投与日を示す。化合物5コンジュゲートを投与された動物では観察がなかった一方で、ベドチン投与群での臨床観察は、17日目に平均2.5であり、動物の死で頂点に達した。
【0442】
実施例4:有効性研究
方法
ネクチン-4ADCを用いたNCI-H1781異種移植
雌のBALB/cヌードマウス(5匹のマウス/群)を研究に使用した。動物に、50%PBS/50%マトリゲル中の2000万個の細胞を脇腹に皮下接種した。腫瘍が220mm3の平均体積に達したとき、動物を、単回静脈内用量のビヒクル単独、又は2.5若しくは7.5mg/kgのいずれかにおけるADCで処置した。動物を、体重及び腫瘍サイズについて週に2回監視した。腫瘍が2000mm3に達したときに動物を安楽死させた。用量応答性有効性が、本研究ではADCについて観察された。
【0443】
CD30 ADCを用いたL-82異種移植
雌のNOD/SCIDマウス(8匹のマウス/群)を研究に使用した。動物に、50%PBS/50%マトリゲル中の2000万個の細胞を脇腹に皮下接種した。腫瘍が平均体積100mm3に達したとき、全ての動物を、単回10mg/kg静脈内用量のヒトIgGで処置した(0日目)。次いで、1日目に、動物を、ビヒクル単独で、非コンジュゲート抗体(3mg/kg)で、又は1.5若しくは3mg/kgにおけるADCで処置した。動物を、体重及び腫瘍サイズについて週に2回監視した。腫瘍が2000mm3に達したときに動物を安楽死させた。ADCは、本研究では非常に有効であった。
【0444】
図17は、0日目の単回静脈内用量の列挙された抗CD30 ADCを用いたL-82異種移植研究のグラフを示す。VH4/VL4化合物8(RED-601)は、内部91Nタグを使用し、Adcetrisと比較して半分のペイロード用量を送達する。50%ADC投与(1.5mg/kg)及び同等投与(3mg/kg)では、VH4/VL4化合物8は、Adcetrisと比較して同等に有効であり、全ての治療群が8匹のマウス/群のうち8件の完全奏効を示した。VH4/VL4抗体単独は、最小限の活性を有していた。
【0445】
図18は、0日目の単回静脈内用量の列挙された抗CD30 ADCを用いたKarpas299異種移植研究のグラフを示す。VH4/VL4化合物8(RED-601)は、内部91Nタグを使用し、Adcetrisと比較して半分のペイロード用量を送達する。50%ADC投与(1.5mg/kg)及び同等投与(3mg/kg)では、VH4/VL4化合物8は、Adcetrisと比較して5/6及び6/6の完全奏効をもたらし、Adcetrisは、VH4/VL4化合物8と比較して2倍のペイロード量ではあるが、6/6の完全奏効をもたらした。VH4/VL4抗体単独は、最小限の活性を有していた。
【0446】
図19は、0日目の単回2.5又は7.5mg/kg静脈内用量の列挙された抗ネクチン-4ADCを用いたNCI-H1781異種移植研究のグラフを示す。VH4/VL1化合物8(RED-601)及びVH4/VL5化合物8は両方とも、内部91Nタグを使用し、Padcevと比較して半分のペイロード用量を送達する。アイソタイプ対照ADCは、最小限の活性を有していた。
【0447】
実施例5:毒物動態試料分析
方法
全抗体及び全ADC濃度を、以前に記載され、
図20に図形化されるように、ELISAによって定量化した。全抗体について、コンジュゲートを抗ヒトIgG特異的抗体で捕捉し、HRPとコンジュゲートした抗ヒトFc特異的抗体で検出した。全ADCについて、コンジュゲートを抗ヒトFab特異的抗体で捕捉し、マウス抗メイタンシン一次抗体、続いて、HRPとコンジュゲートした抗マウスIgGサブクラス1特異的二次抗体で検出した。結合した二次抗体を、Ultra TMB One-Step ELISA基質(Thermo Fisher)を使用して検出した。硫酸で反応をクエンチした後、SoftMax Proソフトウェアを備えたMolecular Devices Spectra Max M5プレートリーダーで、450nmで吸光度を得ることによってシグナルを読み取った。データを、GraphPad Prism及びMicrosoft Excelソフトウェアを使用して分析した。
【0448】
結果:複数回用量非GLPラット毒性研究#2における動物由来の血漿試料の毒物動態分析は、投与レベル及び曝露を確認し、ベドチンADCと比較して、化合物5コンジュゲートの安定性の改善を実証した(
図20)。
【0449】
本発明は、その特定の実施形態に関して記載されてきたが、本発明の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更が行われ得、均等物が置換され得ることを当業者は理解すべきである。加えて、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、単一のプロセスステップ、又は複数のプロセスステップを本発明の目的、趣旨、及び範囲に適合させるために、多くの修正を行うことができる。そのような修正は全て、本明細書に添付される特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】