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特表2024-529490固定床バイオリアクタ用の均一な細胞培養基材
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】固定床バイオリアクタ用の均一な細胞培養基材
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
C12M1/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505343
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 US2022037800
(87)【国際公開番号】W WO2023009374
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】63/234,379
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/227,693
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【弁理士】
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】スゥン,ユィジエン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ヴィナリア
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,ユエ
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA21
4B029BB11
4B029CC11
4B029DA05
4B029DA06
4B029DG06
(57)【要約】
内部リザーバ、並びに該リザーバに接続された入口及び出口を備えた細胞培養容器を有する、細胞を培養するためのバイオリアクタシステムが提供される。該システムはまた、リザーバ内に細胞を接着させるための細胞培養マトリクスも含む。細胞培養マトリクスは、該細胞培養マトリクスを通る液体培地の均一な流れを維持し、該均一な流れは次式を満たす:
【数1】
式中、Pは、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、及び0.95以上のうちの少なくとも1つであり、Nは、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、及び1.0以下のうちの少なくとも1つである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を培養するためのバイオリアクタシステムであって、
少なくとも1つの内部リザーバ、前記リザーバに流体接続された入口、及び前記リザーバに流体接続された出口を備えた細胞培養容器、並びに
前記リザーバ内に配置された細胞培養マトリクスであって、細胞が接着するように構成された基材を含む、細胞培養マトリクス
を備えており、
前記細胞培養マトリクスが、該細胞培養マトリクスを通る液体培地の均一な流れを維持するように構成されており、前記均一な流れが次式を満たす:
【数1】
[式中、Pは、0.7以上であり、かつ
Nは0.5以下である]、
バイオリアクタシステム。
【請求項2】
Nが0.5以下であり、Pが0.9以上である、請求項1に記載のバイオリアクタシステム。
【請求項3】
θが0.8以下の場合及びθが1.2以上の場合、E(θ)が0.2以下である、請求項1に記載のバイオリアクタシステム。
【請求項4】
0.8からび1.2の間のθ値において、E’(θ)=0である、請求項1に記載のバイオリアクタシステム。
【請求項5】
前記細胞培養マトリクスが、約0.9以下の正規化分散で、前記細胞培養マトリクスを通る液体培地の前記均一な流れを維持するように構成される、請求項1に記載のバイオリアクタシステム。
【請求項6】
E(θ)の曲線が、θのすべての値にわたって単一のピークを有する、請求項1に記載のバイオリアクタシステム。
【請求項7】
前記単一のピークが、0.8から1.2の間のθ値におけるものである、請求項6に記載のバイオリアクタシステム。
【請求項8】
前記細胞培養マトリクスが、前記内部リザーバを通って流れる液体培地の1.2バイオリアクタ容積以内で前記内部リザーバの全液体体積の少なくとも90%が置換されるように、液体培地が前記細胞培養マトリクスを通って流れるように構成される、請求項1に記載のバイオリアクタシステム。
【請求項9】
前記細胞培養マトリクスが多層基材を含み、該多層基材の各層が、実質的に規則的かつ均一な物理的構造及び多孔率を含む、請求項1に記載のバイオリアクタシステム。
【請求項10】
前記細胞培養マトリクスが、95%以上の占有率で前記内部リザーバ内に配置される、請求項1に記載のバイオリアクタシステム。
【請求項11】
前記細胞培養マトリクスが、圧縮された充填構成で前記内部リザーバ内に配置される、請求項1に記載のバイオリアクタシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、その全体がここに参照することによって本願に援用される、2021年8月18日出願の米国仮特許出願第63/234,379号の米国法典第35編特許法119条に基づく優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、細胞を培養するための基材及びそのような基材を組み込んだ固定床バイオリアクタ、並びに細胞を培養するためのシステム及び方法に関する。特に、本開示は、均一な流体流動特性を有する細胞培養基材及びそのような基材を備えたバイオリアクタに関する。
【背景技術】
【0003】
バイオプロセス産業では、ホルモン、酵素、抗体、ワクチン、及び細胞療法の生産を目的として、細胞の大規模培養が行われる。細胞療法及び遺伝子治療の市場は急速に成長しており、有望な治療法は臨床試験へと移行し、急速に商業化に向けて進んでいる。しかしながら、細胞療法の1回の投与には、数十億の細胞又は数兆のウイルスが必要となる場合がある。したがって、臨床の成功には、短期間で大量の細胞産物を提供できることが重要である。
【0004】
バイオプロセスで用いられる細胞のかなりの部分は足場依存性であり、これは、細胞が増殖し機能するために接着する表面を必要とすることを意味する。従来、接着細胞の培養は、Tフラスコ、ペトリ皿、細胞工場、セルスタック容器、ローラボトル、及びHYPERStack(登録商標)容器など、多数の容器形式のうちの1つに組み込まれた二次元(2D)細胞接着表面上で行われる。これらの手法には、治療薬又は細胞の大規模生産を可能にするのに十分に高い細胞密度を達成することが困難であることを含む、重大な欠点を有する可能性がある。
【0005】
培養細胞の体積密度を増加させるための代替方法が提案されている。これらには、撹拌タンク内で行われるマイクロキャリア培養が含まれる。この手法では、マイクロキャリアの表面に接着した細胞は一定のせん断応力にさらされ、その結果、増殖及び培養性能に重大な影響を及ぼす。高密度細胞培養システムの別の例は、中空繊維バイオリアクタであり、ここで、細胞は、繊維間空間で増殖するときに大きい三次元凝集体を形成しうる。しかしながら、栄養素が不足すると、細胞の増殖及び性能は著しく阻害される。この問題を軽減するために、これらのバイオリアクタは小型に作られており、大規模製造には適していない。
【0006】
足場依存性細胞の高密度培養システムの別の例は、充填床バイオリアクタシステムである。このタイプのバイオリアクタでは、接着細胞の接着のための表面を提供するために細胞基材が用いられる。培地は表面に沿って、又は半多孔性基材を通して灌流され、細胞の増殖に必要な栄養素と酸素を供給する。例えば、細胞を捕捉するための支持体又はマトリクスシステムの充填床を含む充填床バイオリアクタシステムは、以前に特許文献1~3に開示されている。充填床マトリクスは通常、基材としての多孔質粒子又はポリマーの不織布マイクロファイバで作られる。このようなバイオリアクタは、再循環フロースルーバイオリアクタとして機能する。このようなバイオリアクタに関する重大な問題の1つは、充填床内の細胞分布が不均一であることである。例えば、充填床は、デプスフィルタとして機能し、主に入口領域で細胞が捕捉され、その結果、接種ステップ中に細胞分布の勾配が生じる。加えて、繊維がランダムに充填されていることにより、充填床の断面の流動抵抗及び細胞捕捉効率は均一ではない。例えば、培地は、細胞充填密度が低い領域では速く流れ、抵抗が高い領域では、捕捉された細胞の数が多いため、ゆっくりと流れる。これにより、体積細胞密度が低い領域には栄養素及び酸素がより効率的に供給され、細胞密度が高い領域では次善の培養条件で維持される、チャネリング効果が生じる。
【0007】
従来技術に開示されている充填床システムの別の重大な欠点は、培養プロセスの最後にインタクトな生細胞を効率的に回収することができないことである。最終生成物が細胞である場合、又はバイオリアクタが、細胞集団を1つの容器で増殖させ、その後細胞集団をさらに増殖させるために別の容器に移す「シードトレイン」の一部として用いられる場合、細胞の回収は重要である。特許文献4には、細胞回収ステップでの充填床からの細胞回収効率を向上させるためのバイオリアクタの設計が開示されている。これは、充填床マトリクスを疎にし、充填床粒子を撹拌して、多孔性マトリクスを衝突させ、それによって細胞を分離することに基づいている。しかしながら、この手法は手間がかかり、重大な細胞損傷を引き起こす可能性があるため、全体的な細胞生存率が低下する。
【0008】
現在市販されている充填床バイオリアクタの一例は、Pall Corporation社製造のiCellis(登録商標)である。「iCellis」は、不織布構成でランダムに配向した繊維からなる細胞基材材料の小さいストリップを使用する。これらのストリップを容器に充填して、充填床を生成する。しかしながら、市販されている同様の解決策と同様に、このタイプの充填床基材にも欠点がある。具体的には、基材ストリップの不均一な充填により、充填床内に目に見えるチャネルが生成し、充填床全体にわたる優先的かつ不均一な培地の流れ及び栄養素の分布が生じる。「iCellis」の研究では、「固定床の上から下に向かって数が増加する、細胞のシステム的な不均一な分布」、並びに「細胞の増殖及び産生の制限につながる…栄養勾配」が指摘されており、これらはすべて「トランスフェクション効率を損なう可能性のある、細胞の不均等な分布」につながる。(非特許文献1)。研究では、充填床を撹拌すると分散が改善さうるが、他の欠点を有するであろうことが指摘されている(すなわち、「接種及びトランスフェクション中に分散を良くするために必要な撹拌は、せん断応力の増加を引き起こし、ひいては細胞生存率の低下につながる。(necessary agitation for better dispersion during inoculation and transfection would induce increased shear stress, in turn leading to reduced cell viability.)」、同じく非特許文献1)。「iCellis」に関する別の研究では、細胞が不均一に分布しているため、バイオマスセンサを使用した細胞集団のモニタリングが困難であることが指摘されている(「…細胞が不均一に分布している場合、上部キャリア上の細胞からのバイオマス信号はバイオリアクタ全体の全体像を示さない可能性がある。(…if the cells are unevenly distributed, the biomass signal from the cells on the top carriers may not show the general view of the entire bioreactor.)」非特許文献2)。
【0009】
加えて、基材ストリップ内の繊維のランダムな配置と、所与の充填床リアクタシステムのある充填床と別の充填床との間でのストリップの充填のばらつきにより、基材は培養ごとに異なるため、ユーザが細胞培養性能を予測することが困難でありうる。さらには、多くの既存のバイオリアクタの充填された基材は、細胞が充填床に閉じ込められていると考えられことから、効率的な細胞の回収を非常に困難に又は不可能にする。
【0010】
既存の固定床又は充填床バイオリアクタシステムは、流体の流れを改善することが示唆されている疎充填床の概念に基づいて設計されている。この疎な充填により、占有率の低い床領域が生じる(すなわち、リアクタが最大占有率まで基材で満たされておらず、ましてや基材が密充填床へと圧縮されていないことから、リアクタ容積内に開放空間が残される)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,833,083号明細書
【特許文献2】米国特許第5,501,971号明細書
【特許文献3】米国特許第5,510,262号明細書
【特許文献4】米国特許第9,273,278号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Rational plasmid design and bioprocess optimization to enhance recombinant adeno-associated virus (AAV) productivity in mammalian cells.Biotechnol.J. 2016, 11, 290-297
【非特許文献2】Process Development of Adenoviral Vector Production in Fixed Bed Bioreactor: From Bench to Commercial Scale.Human Gene Therapy, Vol. 26, No. 8, 2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
早期臨床治験用のウイルスベクターの製造は既存のプラットフォームでも可能であるが、後期の商業生産規模に到達するためには、高品質の製品をより多く生産することができるプラットフォームが必要とされている。
【0014】
細胞培養基材及び/又はマトリクス、バイオリアクタ、システム、並びに均一な細胞分布を有する高密度形式での細胞の培養を可能にし、容易に達成でき、収穫量を増加させる方法が必要とされている。特に、改善された流体流動特性を有する固定床バイオリアクタ用の細胞培養基材が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示の一実施形態によれば、細胞培養用のバイオリアクタシステムが提供される。バイオリアクタシステムは、少なくとも1つの内部リザーバ、該リザーバに流体接続された入口、及びリザーバに流体接続された出口を備えた細胞培養容器を含む。該システムはまた、リザーバ内に配置された細胞培養マトリクス、細胞を接着させるための基材を有する細胞培養マトリクスも含む。細胞培養マトリクスは、細胞培養マトリクスを通る液体培地の均一な流れを維持するように配置されており、均一な流れは次式を満たす:
【0016】
【数1】
ここで、Pは、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、及び0.95以上のうちの少なくとも1つであり、Nは、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、及び1.0以下のうちの少なくとも1つである。実施形態では、基材は、充填床又は固定床としてリザーバ内に配置される。実施形態では、Nは0.5以下であり、Pは0.7以上である。細胞培養マトリクスを通る流体の流れは、θが0.8、0.75、0.7、0.6、又は0.5以下の場合、E(θ)が0.2以下又は0.1以下であるという条件も満たすことができる。細胞培養マトリクスを通る流体の流れは、θが1.2、1.25、1.3、1.4、又は1.5以上の場合、E(θ)が0.2以下又は0.1以下であるという条件も満たすことができる。実施形態では、0.6から1.4の間;0.7から1.3の間;0.8から1.2の間;及び、0.9から1.1の間のθ値において、E’(θ)=0である。細胞培養マトリクスは、少なくとも85%の占有率、少なくとも90%の占有率、少なくとも95%の占有率、100%以上の占有率、102%以上の占有率、105%以上の占有率、又は110%以上の占有率で内部リザーバ内に配置されうる。実施形態の一態様として、細胞培養マトリクスは、圧縮された充填構成で内部リザーバ内に配置される。
【0017】
1つ以上の実施形態は、細胞を培養するためのバイオリアクタシステムを提供し、該システムは、少なくとも1つの内部リザーバ、該リザーバに流体接続された入口、及びリザーバに流体接続された出口を備えた細胞培養容器を含む。該システムは、リザーバ内に配置された細胞培養マトリクスをさらに含み、該細胞培養マトリクスは、細胞が接着するための基材を含み、ここで、細胞培養マトリクスは、θが0.8、0.75、0.7、0.6、又は0.5以下の場合に、E(θ)が0.2以下又は0.1以下になるように、細胞培養マトリクスを通る液体培地の均一な流れを維持することができる。細胞培養マトリクスを通る流体の流れは、θが1.2、1.25、1.3、1.4、又は1.5以上の場合、E(θ)が0.2以下又は0.1以下であるという条件も満たすことができる。細胞培養マトリクスを通る流体の流れは、0.6から1.4の間;0.7から1.3の間;0.8から1.2の間;及び、0.9から1.1の間のθ値において、E’(θ)=0であるという条件も満たすことができる。細胞培養マトリクスは、少なくとも85%の占有率、少なくとも90%の占有率、少なくとも95%の占有率、100%以上の占有率、102%以上の占有率、105%以上の占有率、又は110%以上の占有率で内部リザーバ内に配置されうる。実施形態の一態様として、細胞培養マトリクスは、圧縮された充填構成で内部リザーバ内に配置される。
【0018】
1つ以上の実施形態は、細胞を培養するためのバイオリアクタシステムを提供し、該システムは、少なくとも1つの内部リザーバ、該リザーバに流体接続された入口、及びリザーバに流体接続された出口を有する細胞培養容器と、リザーバ内に配置された細胞培養マトリクスであって、細胞を接着させるための基材を有する細胞培養マトリクスとを含む。細胞培養マトリクスは、少なくとも85%の占有率、少なくとも90%の占有率、少なくとも95%の占有率、100%以上の占有率、102%以上の占有率、105%以上の占有率、又は110%以上の占有率で内部リザーバ内に配置される。実施形態の一態様として、細胞培養マトリクスは、圧縮された充填構成で内部リザーバ内に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】本開示の1つ以上の実施形態による、細胞培養基材の三次元モデルの斜視図
図1B図1Aの基材の二次元平面図
図1C図1Bにおける基材の線A-Aに沿った断面図
図2A】幾つかの実施形態による細胞培養基材の一例
図2B】幾つかの実施形態による細胞培養基材の一例
図2C】幾つかの実施形態による細胞培養基材の一例
図3】1つ以上の実施形態による、細胞培養システムの概略図
図4】1つ以上の実施形態による、細胞培養システムの概略図
図5A】本開示の1つ以上の実施形態による、密に充填された構成でのモデル化された多層織布メッシュ細胞培養基材の平面図
図5B】本開示の1つ以上の実施形態による、図5Aの多層織布メッシュ細胞培養基材の側面断面図
図6A】本開示の1つ以上の実施形態による、疎に充填された構成でのモデル化された多層織布メッシュ細胞培養基材の平面図
図6B】本開示の1つ以上の実施形態による、図6Aの多層織布メッシュ細胞培養基材の側面断面図
図7A図5A及び5Bに示されている破線の容積内のモデル化された空きスペースを示す図
図7B図6A及び6Bに示されている破線の容積内のモデル化された空きスペースを示す図
図8A】本開示の1つ以上の実施形態による、表5のメッシュ試料Aに従ったメッシュ試料の写真
図8B】本開示の1つ以上の実施形態による、表5のメッシュ試料Bに従ったメッシュ試料の写真
図8C】本開示の1つ以上の実施形態による、表5のメッシュ試料Cに従ったメッシュ試料の写真
図8D】本開示の1つ以上の実施形態による、表5のメッシュ試料Dに従ったメッシュ試料の写真
図8E】本開示の1つ以上の実施形態による、表5のメッシュ試料Eに従ったメッシュ試料の写真
図8F】本開示の1つ以上の実施形態による、表5のメッシュ試料Fに従ったメッシュ試料の写真
図9図8A~8Fの織布メッシュ試料A~Fの透過性の棒グラフ
図10図8A~Cの試料A~Cを使用した圧力損失試験の結果のグラフ
図11A】本開示の1つ以上の実施形態による、織布メッシュ基材を有するバイオリアクタの流れ均一性モデルを示す図
図11B図11Aの流れ均一性モデルの拡大図
図12A】不織布基材の透過性を測定するための実験装置の概略図
図12B】ランダムに充填された不織布基材の透過性を測定するための実験装置の概略図
図12C】本開示の1つ以上の実施形態による、開放織布メッシュ基材の透過性を測定するための実験装置の概略図
図13】織布及び不織布細胞培養基材の透過性測定値の棒グラフ
図14A】流れ方向に対して90°に整列された不織布メッシュ基材片の周りのシミュレートされた流速を示す図
図14B】流れ方向に対して45°に整列された不織布メッシュ基材片の周りのシミュレートされた流速を示す図
図15A】すべての隣り合うものの間に1mmの間隙を有する不織布メッシュ基材片の周囲のシミュレーションされた流速を示す図
図15B】すべての隣り合うものの間に1mmの間隙を有する開放織布メッシュの周囲のシミュレーションされた流速を示す図
図16】異なる細胞培養基材試料の滞留時間分布を測定するための実験セットアップの概略図
図17】織布及び不織布細胞培養基材の滞留時間分布の測定中の染料濃度の変化と時間の関係を示すグラフ
図18】本開示の実施形態による織布基材を有するバイオリアクタ、及び他の市販の不織布細胞培養基材を有するバイオリアクタを通過する正規化された流量に対する染料濃度の変化を示すグラフ
図19A】本開示の実施形態による、実験用バイオリアクタの占有率100%での基材ディスクのスタックの写真
図19B】本開示の実施形態による、実験用バイオリアクタの占有率95%での基材ディスクのスタックの写真
図20A】1つ以上の実施形態による、圧縮充填で95%の占有率で充填された基材のスタック層の細胞培養マトリクスを備えたバイオリアクタの写真
図20B】1つ以上の実施形態による、疎な充填で95%の占有率で充填された基材のスタック層の細胞培養マトリクスを備えたバイオリアクタの写真
図21A】1つ以上の実施形態による、圧縮充填構成における、3つの異なる充填密度からの滞留時間分布データのグラフ
図21B】1つ以上の実施形態による、疎充填構成における、3つの異なる充填密度からの滞留時間分布データのグラフ
図22A】1つ以上の実施形態による、異なる流量における102.5%の占有率での固定床からの滞留時間分布データのグラフ
図22B】1つ以上の実施形態による、異なる流量における、圧縮充填による95%の占有率での固定床からの滞留時間分布データのグラフ
図22C】1つ以上の実施形態による、異なる流量における、疎な充填による95%の占有率での固定床からの滞留時間分布データのグラフ
図23A】1つ以上の実施形態による、圧縮充填及び気泡の存在を伴うさまざまな占有率での固定床からの滞留時間分布データのグラフ
図23B】1つ以上の実施形態による、疎な充填及び気泡の存在を伴うさまざまな占有率での固定床からの滞留時間分布データのグラフ
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示のさまざまな実施形態は、もしあれば、図面を参照して詳細に説明される。さまざまな実施形態への言及は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。加えて、本明細書に記載された例は限定的ではなく、特許請求された発明の多くの可能な実施形態のうちの幾つかを単に記載するものである。
【0021】
本開示の実施形態は、細胞培養基材、及びそのような基材を組み込んだ細胞培養システム又はバイオリアクタシステム、並びにそのような基材及びバイオリアクタシステムを使用して細胞を培養する方法を対象とする。基材及びそれを組み込んだバイオリアクタシステムは、基材を通る流動特性の改善を示す。例えば、基材を通してより均一な流れが実現され、チャネリング又は乱流に起因する不均一な流れが減少又は排除される。バイオリアクタの基材又は固定床内の流れの「デッドゾーン」が、既存の解決策と比較して大幅に減少又は排除される。その結果、基材又は固定床全体に均一な灌流が可能となる基材又は固定床が得られ、これは、細胞培養中の細胞の健康を促進し、また、細胞の培養だけでなく、細胞の播種、及び細胞又は細胞副産物の回収に関しても効率的な細胞培養プロセスを促進する。
【0022】
従来の大規模細胞培養バイオリアクタでは、さまざまなタイプの固定床又は充填床バイオリアクタが使用されてきた。通常、これらの充填床は、接着細胞又は浮遊細胞を保持し、成長及び増殖を支援するための多孔質マトリクスを含む。充填床マトリクスは体積に対する表面積の比率が高く、他のシステムよりも細胞密度を高くすることができる。しかしながら、充填床は多くの場合、細胞がマトリクスの絡み合った繊維に物理的に捕捉される、デプスフィルタとして機能する。したがって、充填床を通る細胞接種材料の直線的な流れの理由から、細胞は充填床内で不均一に分布し、充填床の深さ又は幅にわたる細胞密度の変動につながる。例えば、細胞密度は、バイオリアクタの入口領域でより高く、バイオリアクタの出口に近づくほど大幅に低くなる。充填床内の細胞のこの不均一な分布は、バイオプロセス製造におけるこのようなバイオリアクタの拡張性及び予測可能性を著しく妨げ、充填床の単位表面積又は体積あたりの細胞の増殖又はウイルスベクター産生に関する効率の低下につながる可能性さえある。
【0023】
従来技術で開示されている充填床バイオリアクタにおいて遭遇する別の問題は、チャネリング効果である。充填された不織布繊維のランダムな性質に起因して、充填床の任意の断面における局所的な繊維密度は均一ではない。液体培地は、繊維密度が低い領域(床透過性が高い)では迅速に流れるが、繊維密度が高い(床透過性が低い)領域では非常に遅くなる。充填床全体にわたり結果として生じる不均一な培地灌流がチャネリング効果を生み出し、これは、細胞培養及びバイオリアクタの性能全体に悪影響を与える重大な栄養素及び代謝物の勾配として現れる。培地の灌流が低い領域に位置する細胞は飢餓状態になり、多くの場合、栄養素の不足又は代謝物中毒により死滅する。流れが非常に不均一になる可能性があるため、充填床内に事実上流れの「デッドゾーン」が存在し、そこでは灌流が起こらず、その領域の細胞への栄養素の送達は培地内の拡散力学に限定される。
【0024】
不織繊維足場が充填されたバイオリアクタを使用する場合、細胞回収はさらに別の問題に遭遇する。充填床はデプスフィルタとして機能することから、細胞培養プロセスの最後に放出される細胞は充填床内に閉じ込められ、細胞回収率は非常に低くなる。このことは、生細胞が生成物であるか、又は細胞副産物を捕捉するためのさらなる処理のために生細胞を採集する必要があるバイオプロセスにおけるそのようなバイオリアクタの利用を著しく制限する。したがって、不均一性により、流れ及びせん断に曝露される領域が異なり、使用可能な細胞培養領域が事実上減少し、培養が不均一になり、トランスフェクション効率及び細胞放出が妨げられる。
【0025】
加えて、既存の解決策は、疎な充填床が好ましいことを示唆しているが、本開示はその逆を例示するものであり、本開示の実施形態によれば、高密な充填床は、細胞培養用の固定床の性能を実際に向上させることができる。例えば、本開示の実施形態は、バイオリアクタ内の基材材料の高充填密度において、優れた流れ均一性を示す。実施形態はまた、概して、固定床及びバイオリアクタシステムにおける気泡の存在の減少も示す。それにもかかわらず、システム内に気泡が存在する場合でも、本明細書に記載されている均一な流体流動特性を維持することができる。気泡は細胞培養中によく観察され、基材を含む固定床バイオリアクタ内に容易に閉じ込められる可能性がある。一旦捕捉されると、それらは流れの方向を乱し、流れの均一性を低下させ、したがって、細胞の播種及び栄養素の供給を妨げる。固定床リアクタでの細胞培養の場合、より高い流量を一貫して使用して酸素と栄養素の供給を維持し、高密度の細胞増殖を支援する。充填床ディスクが制限されていない場合、高流量では、充填床内のメッシュディスクが持ち上げられる可能性がある。これにより、局所的な透過性が変化し、流れの方向が乱される可能性がある。高圧縮と高占有率を使用することにより、ディスクが所定の位置に制限され、気泡及び高流量による悪影響を軽減することができる。充填床の疎な充填又は移動は、従来のシステムにおける充填床の充填が一貫していないことも意味しうるため、透過性及びチャネリングに変動が生じる可能性がある。しかしながら、本開示の実施形態に従って床を圧縮すると、これらの負の流動特性を回避することができる。
【0026】
本開示の実施形態の上記の利点は、市場で疎な充填床が好まれていることを考慮すると、まったく予想外である。これらの改善は、流体流量(例えば、チャネリングを含む)又は固定床若しくはバイオリアクタのサイズに関係なく、実施形態にも存在する。したがって、さまざまなバイオリアクタ規模にわたって利点が存在する。さらなる利点には、取り扱い及び/又は輸送中のさまざまな流量に供されることに起因する、又は機械的力に起因する、固定床の移動又は固定床の圧縮変化を低減又は排除することが含まれる。加えて、固定床の圧縮率が高いため、結果的に、細胞の表面積が増加する。
【0027】
本明細書で用いられる場合、「占有率」は、100%の占有率に対する、リアクタの床容積に充填された基材のパーセンテージとして定義される100%の占有率を決定するため、リアクタ床スペースのスペース高さを各基材層の厚さで割って、100%占有率の基材層の数を取得する。100%未満の占有率(疎な充填とも呼ばれる)は、メッシュ層の必要な割合を削除することによって得られる。例えば、100%の占有条件から5%の層を削除すると、95%の占有率になる。100%を超える占有率を達成することも可能である。例えば、基材の材料にある程度の弾性があることに起因して、床がある程度圧縮され、したがって、ほとんどの基材層に追加のスペースが生じる可能性がある。100%を超える占有層数でそのスペースに追加の層が追加された場合、得られる占有率は100%を超えるであろう。例えば、2.5%の余分な層が追加された場合、占有率は102.5%になるであろう。
【0028】
既存の細胞培養溶液のこれら及び他の問題に対処するため、本開示の実施形態は、足場依存性細胞の効率的かつ高収量の細胞培養及び細胞産物(例えば、タンパク質、抗体、ウイルス粒子)の産生を可能にする、細胞増殖基材、このような基材のマトリクス、及び/又はこのような基材を使用する充填床システムを提供する。実施形態は、均一な細胞播種及び培地/栄養素の灌流、並びに効率的な細胞回収を可能にする、多孔性基材材料の規則正しい整然とした構成から作られた多孔性細胞培養マトリクスを含む。実施形態はまた、該実施形態の均一な性能を犠牲にすることなく、プロセス開発規模から完全な生産サイズ規模まで細胞を播種及び増殖させ、及び/又は細胞産物を回収することができる、基材及びバイオリアクタを備えた拡張可能な細胞培養ソリューションを可能にする。例えば、幾つかの実施形態では、バイオリアクタは、プロセス開発規模から製品規模まで容易に拡張することができ、生産規模全体にわたって基材の単位表面積あたりのウイルスゲノム(VG/cm)が同等である。本明細書の実施形態の回収可能性及び拡張性により、同じ細胞基材上で複数のスケールで細胞集団を増殖させるための効率的なシードトレインでの使用が可能になる。加えて、本明細書の実施形態は、記載された他の特徴と組み合わせて、高収率の細胞培養ソリューションを可能にする、高表面積を有する細胞培養マトリクスを提供する。幾つかの実施形態では、例えば、本明細書で論じられる細胞培養基材及び/又はバイオリアクタは、バッチあたり1016から1018のウイルスゲノム(VG)を生成することができる。
【0029】
一実施形態では、マトリクスには、接着細胞が接着して増殖するための構造的に規定された表面積が設けられており、これは、良好な機械的強度を有し、充填床又は他のバイオリアクタ内でアセンブリされた場合に、非常に均一な多数の相互接続された流体ネットワークを形成する。特定の実施形態では、機械的に安定で非分解性の織布メッシュを基材として使用して、接着細胞の産生を支援することができる。本明細書に開示される細胞培養マトリクスは、高体積密度形式で足場依存性細胞の接着及び増殖を支援する。このようなマトリクスへの均一な細胞播種が達成でき、また、細胞又はバイオリアクタの他の生成物の効率的な回収も達成可能である。加えて、本開示の実施形態は、接種ステップ中に均一な細胞分布を提供し、開示されたマトリクス上に接着細胞のコンフルエントな単層又は多層を達成するための細胞培養を支援し、また、栄養素の拡散が制限され、代謝産物濃度が増加する、大きい及び/又は制御不能な3D細胞凝集体の形成を回避することができる。したがって、マトリクスはバイオリアクタの動作中の拡散制限を排除する。加えて、マトリクスは、バイオリアクタからの細胞回収を簡単かつ効率的に可能にする。1つ以上の実施形態の構造的に画定されたマトリクスは、完全な細胞回収及びバイオリアクタの充填床からの一貫した細胞回収を可能にする。
【0030】
幾つかの実施形態によれば、治療用タンパク質、抗体、ウイルスワクチン、又はウイルスベクターのバイオプロセス生産のためのマトリクスを備えたバイオリアクタを使用する細胞培養方法も提供される。
【0031】
細胞培養バイオリアクタに用いられる既存の細胞培養基材(すなわち、ランダムに構成された繊維の不織布基材)とは対照的に、本開示の実施形態は、画定された規則的な構造を有する細胞培養基材を含む。画定された規則的な構造により、一貫した予測可能な細胞培養結果が得られる。加えて、基材は、細胞の捕捉を防ぎ、充填層を通る均一な流れを可能にする、開放多孔性構造を有する。この構造は、細胞の播種、栄養素の送達、細胞の増殖、及び細胞の回収の向上を可能にする。1つ以上の特定の実施形態によれば、マトリクスは、シートの厚さが基材の第1の側と第2の側の幅及び/又は長さに比べて小さくなるように、比較的薄い厚さで分離された第1の側と第2の側とを有する薄いシート状構造を有する基材材料で形成される。加えて、複数の穴又は開口部が、基材の厚さを貫通して形成される。開口部間の基材材料は、細胞がほぼ二次元(2D)表面であるかのように基材材料の表面に接着でき、同時に基板材料の周囲及び開口部を通る適切な流体の流れも可能になるサイズ及び幾何学形状のものである。幾つかの実施形態では、基材はポリマーベースの材料であり、成形ポリマーシート;厚さ全体に穿孔された開口部を備えたポリマーシート;メッシュ様の層に融合された多数のフィラメント;3D印刷された基材;又は、メッシュ層へと織られた複数のフィラメントとして形成することができる。マトリクスの物理的構造は、足場依存性細胞を培養するための高い表面積対体積比を有する。さまざまな実施形態によれば、マトリクスは、均一な細胞播種及び増殖、均一な培地灌流、並びに効率的な細胞回収のために、本明細書で論じられるある特定の方法でバイオリアクタ内に配置又は充填することができる。
【0032】
本開示の実施形態は、バッチあたり約1014超のウイルスゲノム、バッチあたり約1015超のウイルスゲノム、バッチあたり約1016超のウイルスゲノム、バッチあたり約1017超のウイルスゲノム、又はバッチあたり最大約1016又はそれより多くのウイルスゲノムの規模で、ウイルスゲノムを産生することができる実用的なサイズのウイルスベクタープラットフォームを実現することができる。幾つかの実施形態では、産生は、バッチあたり、約1015から約1018又はそれより多くのウイルスゲノムである。例えば、幾つかの実施形態では、ウイルスゲノム収量は、バッチあたり約1015から約1016のウイルスゲノム、又はバッチあたり約1016から約1019のウイルスゲノム、又はバッチあたり約1016~1018のウイルスゲノム、又はバッチあたり約1017から約1019のウイルスゲノム、又はバッチあたり約1018から約1019のウイルスゲノム、又はバッチあたり約1018以上のウイルスゲノムでありうる。
【0033】
加えて、本明細書に開示される実施形態は、細胞培養基材への細胞の接着及び増殖だけでなく、培養細胞の生存可能な回収も可能にする。生細胞を回収できないことは、現在のプラットフォームの重大な欠点であり、生産能力に十分な数の細胞を構築及び維持することが困難になる。本開示の実施形態の一態様によれば、80%から100%が生存、又は約85%から約99%が生存、又は約90%から約99%が生存を含めて、細胞培養基材から生細胞を回収することができる。例えば、回収される細胞のうち、少なくとも80%が生存、少なくとも85%が生存、少なくとも90%が生存、少なくとも91%が生存、少なくとも92%が生存、少なくとも93%が生存、少なくとも94%が生存、少なくとも95%が生存、少なくとも96%が生存、少なくとも97%が生存、少なくとも98%が生存、又は少なくとも99%が生存する。細胞は、例えばトリプシン、TrypLE、又はAccutaseを使用して細胞培養基材から放出されうる。
【0034】
図1A及び1Bは、それぞれ、本開示の1つ以上の実施形態の一例による、細胞培養基材100の三次元(3D)斜視図及び二次元(2D)平面図を示している。細胞培養基材100は、第1の方向に延びる第1の複数の繊維102と、第2の方向に延びる第2の複数の繊維104とからなる織布メッシュ層である。基材100の織られた繊維は、1つ以上の幅又は直径(例えば、D、D)によって画定されうる複数の開口部106を形成する。開口部のサイズ及び形状は、織りのタイプ(例えば、フィラメントの数、形状、及びサイズ;交差するフィラメント間の角度など)に基づいて変化しうる。織布メッシュは、マクロスケールでは、二次元のシート又は層として特徴付けることができる。しかしながら、織布メッシュを詳しく調べてみると、交差するメッシュの繊維が上下することにより、立体的な構造が明らかになる。したがって、図1Cに示されるように、織布メッシュ100の厚さTは、単一の繊維の太さ(例えば、t)より厚くなりうる。本明細書で用いられる場合、厚さTは、織布メッシュの第1の側108と第2の側110との間の最大厚さである。理論に束縛されるものではないが、基材100の三次元構造は、接着細胞を培養するための大きい表面積を提供することから、有利であり、また、メッシュの構造的剛性により、均一な流体の流れを可能にする一貫した予測可能な細胞培養マトリクス構造を提供することができると考えられる。
【0035】
図1Bでは、開口部106は、対向する繊維102間の距離として画定される直径Dと、対向する繊維104間の距離として画定される直径Dとを有する。DとDは、織りの形状に応じて、等しくても、等しくなくてもよい。DとDが等しくない場合、大きい方を長径、小さい方を短径と呼ぶ。幾つかの実施形態では、開口部の直径とは、開口部の最も広い部分を指しうる。別段の指定がない限り、本明細書で用いられる開口部の直径は、開口部の対向する側部の平行な繊維間の距離を指す。
【0036】
複数の繊維102の所与の繊維は太さtを有し、複数の繊維104の所与の繊維は太さtを有する。図1Aに示されるような円形断面の繊維、又は他の三次元断面の繊維の場合、太さt及びtは、繊維断面の最大直径又は太さである。幾つかの実施形態によれば、複数の繊維102はすべて、同じ太さtを有し、複数の繊維104はすべて、同じ太さtを有する。さらに、tとtは等しくてもよい。しかしながら、1つ以上の実施形態では、tとtは、例えば複数の繊維102が複数の繊維104とは異なる場合には、等しくない。加えて、複数の繊維102及び複数の繊維104の各々は、2つ以上の異なる太さ(例えば、t1a、t1bなど、及びt2a、t2bなど)の繊維を含みうる。実施形態によれば、太さt及びtは、その上で培養される細胞のサイズに比べて大きく、その結果、繊維は細胞の観点から見るとほぼ平坦な表面を提供し、これにより、繊維サイズが小さい(例えば、細胞直径の規模で)他の幾つかの解決策と比較して、より優れた細胞の接着及び増殖が可能となる。図1A~1Cに示されるように、織布メッシュの三次元的性質により、細胞の接着及び増殖に利用可能な繊維の2D表面積は、同等の平面2D表面における接着のための表面積を超える。
【0037】
1つ以上の実施形態では、繊維は、約50μmから約1000μm;約100μmから約750μm;約125μmから約600μm;約150μmから約500μm;約200μmから約400μm;約200μmから約300μm;又は、約150μmから約300μmの範囲の直径を有しうる。マイクロスケールレベルでは、細胞と比較した繊維のスケール(例えば、繊維の直径が細胞よりも大きい)に起因して、モノフィラメント繊維の表面は、接着細胞が接着し、増殖するための2D表面の近似として表示される。繊維は、約100μm×100μmから約1000μm×1000μmの範囲の開口部を有するメッシュへと織ることができる。幾つかの実施形態では、開口部は、約50μmから約1000μm;約100μmから約750μm;約125μmから約600μm;約150μmから約500μm;約200μmから約400μm;又は、約200μmから約300μmの直径を有しうる。フィラメント直径及び開口部直径のこれらの範囲は、幾つかの実施形態の例であるが、すべての実施形態によるメッシュの可能な特徴部サイズを制限することを意図するものではない。繊維直径と開口部直径との組合せは、例えば、細胞培養マトリクスが多数の隣接するメッシュ層(例えば、個々の層のスタック又は巻かれたメッシュ層)を含む場合に、基材を通る効率的で均一な流体の流れを提供するように選択される。
【0038】
繊維直径、開口部直径、及び織りのタイプ/パターンなどの要因により、細胞の接着及び増殖に利用可能な表面積が決まる。加えて、細胞培養マトリクスがスタック、ロール、又は重なり合う基材の他の構成を含む場合、細胞培養マトリクスの充填密度は充填床マトリクスの表面積に影響を与えるであろう。充填密度は、基材材料の充填厚さ(例えば、基材の層に必要なスペース)によって変化しうる。例えば、細胞培養マトリクスのスタックがある特定の高さを有する場合、スタックの各層は、スタックの全高をスタック内の層の数で割ることによって決定される充填厚さを有すると言うことができる。充填厚さは繊維の直径及び織り方に基づいて異なるが、スタック内の隣接する層の配置によっても変わりうる。例えば、織られた層の三次元的な性質に起因して、隣接する層が互いの位置合わせに基づいて対応することができる、ある程度のインターロッキング又は重なりが存在する。第1の位置合わせでは、隣接する層をしっかりと配置することができるが、第2の位置合わせでは、上層の最下点が下層の最上点と直接接触している場合など、隣接する層の重なりがゼロになることがある。ある特定の用途では、層の充填密度が低い(例えば、より高い透過性が優先される場合)、又は充填密度が高い(例えば、基材表面積を最大化することが優先される場合)、細胞培養マトリクスを提供することが望ましい場合がる。1つ以上の実施形態によれば、充填の厚さは、約50μmから約1000μm;約100μmから約750μm;約125μmから約600μm;約150μmから約500μm;約200μmから約400μm;約200μmから約300μmでありうる。
【0039】
上記構造因子により、単層の細胞培養基材であろうと、基材の複数の層を有する細胞培養マトリクスであろうと、細胞培養マトリクスの表面積を決定することができる。例えば、特定の実施形態では、円形で6cmの直径を有する単層の織布メッシュ基材は、約68cmの有効表面積を有することができる。本明細書で用いられる「有効表面積」とは、細胞の接着及び増殖に利用可能な基材材料の一部における繊維の総表面積である。特に明記されていない限り、「表面積」への言及は、この有効表面積を指す。1つ以上の実施形態によれば、直径6cmの単一織布メッシュ基材層は、約50cmから約90cm;約53cmから約81cm;約68cm;約75cm;又は約81cmの有効表面積を有しうる。これらの有効表面積の範囲は、例としてのみ提供されており、幾つかの実施形態は、異なる有効表面積を有しうる。細胞培養マトリクスは、本明細書の実施例で論じられるように、多孔性の観点から特徴付けることもできる。
【0040】
基材メッシュは、例えば、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリピロール類、及びポリプロピレンオキシドを含む、細胞培養用途に適合するポリマー材料のモノフィラメント又はマルチフィラメント繊維から製造することができる。メッシュ基材は、例えば、編み物、経編み物、又は織物(例えば、平織、綾織、オランダ織、五本針織)を含む、異なるパターン又は織りを有することができる。
【0041】
メッシュフィラメントの表面化学は、所望の細胞接着特性を提供するために修飾する必要がある場合がある。このような修飾は、メッシュのポリマー材料の化学処理を通じて、又は細胞接着分子をフィラメント表面にグラフトすることによって行うことができる。あるいは、メッシュは、例えば、コラーゲン又はMatrigel(登録商標)を含む、細胞接着特性を実証する生体適合性ヒドロゲルの薄層でコーティングすることができる。あるいは、メッシュのフィラメント繊維の表面は、業界で知られているさまざまなタイプのプラズマ、処理ガス、及び/又は化学薬品を用いた処理プロセスを通じて細胞接着特性を与えることができる。しかしながら、1つ以上の実施形態では、メッシュは、表面処理なしに、効率的な細胞増殖表面を提供することができる。
【0042】
図2A~2Cは、本開示の幾つかの企図される実施形態による織布メッシュの異なる例を示している。これらのメッシュの繊維直径と開口部サイズ、並びに同等の2D表面と比較したそれぞれのメッシュの単層によってもたらされる細胞培養表面積の増加のおおよその規模を、以下の表1にまとめる。表1において、メッシュAは図2Aのメッシュを指し、メッシュBは図2Bのメッシュを指し、メッシュCは図2Cのメッシュを指す。表1の3つのメッシュ形状は単なる例であり、本開示の実施形態はこれらの特定の例に限定されない。メッシュCは表面積が最も大きいため、細胞の接着及び増殖において高密度を達成するのに有利であり、したがって細胞培養に最も効率的な基材を提供することができる。しかしながら、幾つかの実施形態では、例えば、培養チャンバ内で所望の細胞分布又は流れ特性を達成するために、メッシュA又はメッシュBなどのより低い表面積を有するメッシュ、又は異なる表面積のメッシュの組合せを含むことが、細胞培養マトリクスにとって有利でありうる。
【0043】
【表1】
上の表に示されるように、メッシュの三次元品質により、同等のサイズの平面2D表面と比較して、細胞の接着及び増殖のための表面積の増加がもたらされる。この増加した表面積は、本開示の実施形態によって達成されるスケーラブルな性能に役立つ。プロセス開発及びプロセスの検証研究では、試薬のコストを節約し、実験スループットを向上させるために、多くの場合、小規模のバイオリアクタが必要とされる。本開示の実施形態は、このような小規模な研究に適用可能であるが、同様に産業規模又は生産規模にスケールアップすることもできる。例えば、直径2.2cmの円形の形状をした100層のメッシュCを、内径2.2cmの円筒状の充填床に充填すると、細胞が接着及び増殖するために利用可能な総表面積は、約935cmに等しくなる。このようなバイオリアクタを10倍に拡張するには、7cmの内径と100層の同じメッシュとを備えた、円筒状の充填床の同様のセットアップを使用することもできる。このような場合、総表面積は9,350cmになるであろう。幾つかの実施形態では、利用可能な表面積は約99,000cm/L以上である。充填床でのプラグ型灌流流により、充填床の断面表面積のml/min/cmで表される同じ流量を、バイオリアクタの小規模バージョン及び大規模バージョンで使用することができる。より大きい表面積により、より高い播種密度及びより高い細胞増殖密度が可能となる。1つ以上の実施形態によれば、本明細書に記載される細胞培養基材は、最大で22,000細胞/cm以上の細胞播種密度を実証している。参考までに、Corning HyperFlask(登録商標)の二次元表面上での播種密度は、20,000細胞/cm程度である。本明細書で用いられる場合、「プラグ型灌流流れ」又は「プラグ流れ」は、本明細書の実施形態による固定床を有するバイオリアクタを通る層流を指し、流れ方向に垂直な固定床の任意の断面を通る流れは、断面全体にわたって同じ速度で進む。
【0044】
より高い表面積及び高い細胞播種密度又は増殖密度の別の利点は、本明細書に開示される実施形態のコストが競合する解決策と同じかそれよりも低くなりうることである。具体的には、細胞製品あたり(例えば、細胞あたり、又はウイルスゲノムあたり)のコストを、他の充填床バイオリアクタと同等か又はそれより低くすることができる。
【0045】
十分な剛性を備えた構造的に画定された培養マトリクスを使用することにより、マトリクス又は充填床全体にわたる高い流動抵抗の均一性が達成される。さまざまな実施形態によれば、マトリクスは、単層又は多層フォーマットで配置することができる。この柔軟性により、拡散の制限が排除され、マトリクスに接着した細胞に栄養素と酸素が均一に供給される。加えて、開放マトリクスには充填床構成の細胞捕捉領域が欠けており、培養終了時に高い生存率での完全な細胞回収が可能になる。該マトリクスはまた、充填床の充填の均一性ももたらし、プロセス開発ユニットから大規模な産業用バイオプロセスユニットまでの直接的な拡張を可能にする。充填床から細胞を直接回収する能力は、複雑さが増し、細胞に有害なせん断応力を与えうるであろう、撹拌した又は機械的に振動させた容器内でマトリクスを再懸濁する必要性を排除する。さらに、細胞培養マトリクスの高い充填密度により、産業規模で管理可能な量で高いバイオプロセス生産性が得られる。
【0046】
メッシュ基材層の形状は、一又は複数の基材層を通る効率的かつ均一な流れを可能にするように設計される。さらには、マトリクスの構造は、複数の配向でマトリクスを通る流体の流れに適応することができる。例えば、バルク流体の流れの方向は、第1の基材層及び第2の基材層の主側面に対して垂直である。しかしながら、マトリクスは、基材層の側面がバルクフロー方向と平行になるように、流れに対して配向することもできる。流体の流れがメッシュ層の第1の側及び第2の側に対して垂直又は平行であることに加えて、マトリクスは、複数の基材片を中間の角度で配置することができ、あるいは流体の流れに対してランダムに配置することもできる。この配向の柔軟性は、織られた基材の本質的に等方性の流れ挙動によって可能になる。対照的に、既存のバイオリアクタの接着細胞用の基材は、この挙動を示さず、その代わりに充填床が優先的な流路を生成し、異方性透過性を備えた基材材料を有する傾向がある。本開示のマトリクスの柔軟性により、バイオリアクタ容器全体にわたるより良好かつより均一な透過性を可能にしつつ、さまざまな用途及びバイオリアクタ又は容器の設計での使用が可能となる。
【0047】
本明細書で論じられるように、1つ以上の実施形態によれば、細胞培養基材は、バイオリアクタ容器内で使用することができる。例えば、基材は、充填床バイオリアクタ構成で、又は三次元培養チャンバ内の他の構成で使用することができる。しかしながら、実施形態は三次元培養空間に限定されず、基材は二次元培養表面構成とみなされるうるものにおいても使用することができることが企図されており、ここで、基材の1つ以上の層は、平底の培養皿内などに平らに置かれ、細胞の培養基材を提供する。汚染の懸念があることから、容器は使用後に廃棄することができる使い捨て容器とすることができる。
【0048】
1つ以上の実施形態によれば、細胞培養マトリクスがバイオリアクタ容器の培養チャンバ内で用いられる、細胞培養システムが提供される。図3は、バイオリアクタ容器302の内部に細胞培養チャンバ304を有する、バイオリアクタ容器302を含む細胞培養システム300の一例を示している。細胞培養チャンバ304内には、基材層308のスタックから作られた細胞培養マトリクス306がある。基材層308は、第1の面又は第2の面が、隣接する基材層の第1の面又は第2の面に面するようにスタックされる。バイオリアクタ容器300は、一端に培地、細胞、及び/又は栄養素を培養チャンバ304に投入するための入口310を有し、反対端に培養チャンバ304から培地、細胞、又は細胞産物を除去するための出口312を有する。この方法で基材層をスタック可能にすることにより、画定された構造及びスタックされた基材を通る効率的な流体の流れに起因して、細胞の接着及び増殖に悪影響を与えることなく、システムを容易にスケールアップすることができる。容器300は、概して、入口310及び出口312を有するものとして説明されるが、幾つかの実施形態では、培地、細胞、又は他の内容物を培養チャンバ304に流入及び培養チャンバ304から流出させるために、入口310及び出口312の一方又は両方を使用することができる。例えば、入口310は、細胞播種、灌流、又は培養段階中に培地又は細胞を培養チャンバ304に流すために使用することができるが、回収段階で入口310を通じて培地、細胞、又は細胞産物のうちの1つ以上を取り出すために使用することもできる。したがって、「入口」及び「出口」という用語は、それらの開口部の機能を制限することを意図するものではない。
【0049】
1つ以上の実施形態では、充填床の流れ抵抗及び体積密度は、異なる幾何学形状の基材層を交互に配置することによって制御することができる。特に、メッシュのサイズ及び幾何学形状(例えば、繊維の直径、開口部の直径、及び/又は開口部の幾何学形状)は、充填床形式における流体の流れ抵抗を規定する。異なるサイズ及び幾何学形状のメッシュを間に配置することにより、バイオリアクタの1つ以上の特定の部分において流れ抵抗を制御又は変更することができる。これにより、充填床内の液体灌流の均一性を向上させることができる。例えば、10層のメッシュA(表1)に続いて10層のメッシュB(表1)、さらに10層のメッシュC(表1)を積み重ねて、所望の充填床特性を達成することができる。別の例として、充填床は、10層のメッシュBから始まり、次に50層のメッシュC、さらに10層のメッシュBが続きうる。このような繰り返しパターンは、バイオリアクタ全体にメッシュが充填されるまで継続させてもよい。これらは単なる例であり、可能な組み合わせを制限することを意図するものではなく、説明の目的で使用されている。実際、異なるサイズのメッシュをさまざまに組み合わせて、細胞増殖表面の体積密度と流れ抵抗の異なるプロファイルを得ることが可能である。例えば、異なる体積細胞密度のゾーン(例えば、低/高/低/高などの密度のパターンを生成する一連のゾーン)を備えた充填床カラムは、異なるサイズのメッシュを交互に配置することによってアセンブリすることができる。
【0050】
図3では、バルク流方向は、入口310から出口312の方向になり、この例では、基材層308の第1及び第2の主面はバルク流方向に対して垂直である。対照的に、図4に示される例は、システム320が、培養空間324内にバイオリアクタ容器322と、バルク流方向に平行な第1の側及び第2の側を有する基材328のスタックとを含む実施形態であり、バルク流方向は、入口330から入り、出口332から出る流線によって示される方向に対応する。したがって、本開示の実施形態のマトリクスは、いずれの構成においても採用することができる。システム300及び320の各々において、基材308、328は、培養チャンバ304、324によって画定される内部空間を満たすようにサイズ調整及び形状化され、その結果、各容器内の培養空間が細胞増殖表面で満たされて、単位容積当たりの細胞の観点から効率を最大化する。図4は、複数の入口330及び複数の出口332を示しているが、システム320は単一の入口によって供給され、単一の出口を有してもよいことが企図されている。しかしながら、本明細書のさまざまな実施形態によれば、分配プレートは、充填床の断面全体にわたり培地、細胞、又は栄養素を分配するのに役立てるために使用することができ、したがって充填床を通る流体の流れの均一性を向上させることができる。したがって、複数の入口330は、より均一な流れを生成するために、分配プレートに充填床の断面にわたって複数の穴をどのように設けることができるかを表している。
【0051】
細胞培養マトリクスは、所望のシステムに応じて、培養チャンバ内で複数の構成で配置することができる。例えば、1つ以上の実施形態では、システムは、培養チャンバ内の画定された細胞培養空間の幅を横切って延びる幅を有する、基材の1つ以上の層を含む。このように基材の複数の層を所定の高さまでスタックすることができる。上で論じたように、基材の層は、1つ以上の層の第1の側及び第2の側が、培養チャンバ内の画定された培養空間を通る培地のバルク流方向に対して垂直になるように配置することができ、あるいは1つ以上の層の第1の側及び第2の側がバルク流方向に対して平行であってもよい。1つ以上の実施形態では、細胞培養マトリクスは、バルク流に対して第1の配向にある1つ以上の基材層と、第1の配向とは異なる第2の配向にある1つ以上の他の層とを含む。例えば、さまざまな層は、バルク流方向に対して平行又は垂直であるか、あるいはその間の何らかの角度をなす、第1の側及び第2の側を有しうる。
【0052】
1つ以上の実施形態では、細胞培養システムは、充填床構成の複数の個別の細胞培養基材片を含み、この基材片の長さ及び/又は幅は培養チャンバに比べて小さい。本明細書で用いられる場合、基材片の長さ及び/又は幅が培養空間の長さ及び/又は幅の約50%以下であるとき、基材片は、培養チャンバに比べて小さい長さ及び/又は幅を有すると見なされる。したがって、細胞培養システムは、所望の配置で培養空間に充填された複数の基材片を含みうる。基材片の配置は、ランダム又はセミランダムであってもよいし、あるいは、基材片が実質的に同様の配向(例えば、水平、垂直、又はバルク流方向に対して0°から90°の間の角度)で配向されるなど、所定の順序又は構成を有していてもよい。
【0053】
本明細書で用いられる「画定された培養空間」とは、細胞培養マトリクスによって占有され、細胞播種及び/又は培養が行われる、培養チャンバ内の空間を指す。画定された培養空間は、培養チャンバのほぼ全体を満たすことができ、あるいは培養チャンバ内の空間の一部を占有してもよい。本明細書で用いられる場合、「バルク流方向」は、細胞の培養中及び/又は培養チャンバへの培地の流入又は流出中の、細胞培養マトリクスを通るか又は細胞培養マトリクス上の流体又は培地のバルク質量流の方向として定義される。
【0054】
1つ以上の実施形態では、細胞培養マトリクスは、固定機構によって培養チャンバ内に固定される。固定機構は、細胞培養マトリクスの一部を、該マトリクスを取り囲む培養チャンバの壁、又は培養チャンバの一端のチャンバ壁に固定することができる。幾つかの実施形態では、固定機構は、細胞培養マトリクスの一部を、培養チャンバを通る部材、例えば、培養チャンバの長手方向軸に平行に走る部材、又は長手方向軸に垂直に走る部材に接着する。しかしながら、1つ以上の他の実施形態では、細胞培養マトリクスは、チャンバ又はバイオリアクタ容器の壁に固定的に取り付けられることなく、培養チャンバ内に含まれていてもよい。例えば、マトリクスは、該マトリクスがそれらの境界又は構造部材にしっかりと固定されることなく、バイオリアクタ容器の所定の領域内に保持されるように、培養チャンバの境界又はチャンバ内の他の構造部材によって収容されてもよい。
【0055】
幾つかの実施形態の一態様は、ローラボトル構成のバイオリアクタ容器を提供する。培養チャンバは、本開示に記載される1つ以上の実施形態による細胞培養マトリクス及び基材を収容することができる。ローラボトル構成では、バイオリアクタ容器は、該バイオリアクタ容器を容器の中心長手方向軸の周りを移動させるための手段に動作可能に取り付けられうる。例えば、バイオリアクタ容器は、中心長手方向軸の周りを回転することができる。回転は、連続的(例えば、一方向に継続する)であっても、不連続的(例えば、単一方向又は交互方向に断続的に回転する、あるいは前後の回転方向に振動する)であってもよい。動作中、バイオリアクタ容器の回転が、チャンバ内の細胞及び/又は流体を移動させる。この動きは、チャンバの壁に対して相対的であると見なすことができる。例えば、バイオリアクタ容器がその中心長手方向軸の周りを回転すると、重力により、流体、培地、及び/又は未接着細胞がチャンバの下部に向かって残る可能性がある。しかしながら、1つ以上の実施形態では、細胞培養マトリクスは本質的に容器に対して固定されているため、容器とともに回転する。1つ以上の他の実施形態では、細胞培養マトリクスは取り付けられておらず、容器が回転すると、容器に対して所望の程度まで自由に移動することができる。細胞は細胞培養マトリクスに接着することができるが、容器の移動により、細胞は培養チャンバ内の細胞培養培地又は液体、及び酸素又は他のガスの両方に曝露されうる。
【0056】
本開示の実施形態による細胞培養マトリクス、例えば織物又はメッシュ基材を含むマトリクスなどを使用することにより、ローラボトル容器には、接着細胞が接着、増殖、及び機能するために利用可能な表面積の増加がもたらされる。特に、ローラボトル内にモノフィラメントポリマー材料の織布メッシュの基材を使用すると、表面積は、標準的なローラボトルの約2.4から約4.8倍、又は約10倍増加しうる。本明細書で論じられるように、メッシュ基材の各モノフィラメントストランドは、それ自体が接着細胞が接着するための2D表面として存在することができる。加えて、多層のメッシュをローラボトルに配置することができ、利用可能な総表面積が標準的なローラボトルの約2から20倍の範囲に増加する。したがって、細胞播種、培地交換、及び細胞回収を含む既存のローラボトル設備及び処理は、本明細書に開示される改良型細胞培養マトリクスの追加によって、既存の動作インフラストラクチャ及び処理ステップへの影響を最小限に抑えつつ、変更することができる。
【0057】
バイオリアクタ容器は、任意選択的に、入口及び/又は出口手段に取り付けることができる1つ以上の出口を含む。1つ以上の出口を通じて、液体、培地、又は細胞をチャンバに供給したり、チャンバから取り出したりすることができる。容器内の単一のポートが入口と出口の両方として機能してもよく、あるいは専用の入口及び出口として複数のポートが設けられてもよい。
【0058】
1つ以上の実施形態の充填床細胞培養マトリクスは、該細胞培養マトリクス内に配置又は散在した任意の他の形態の細胞培養基材なしに、織られた細胞培養メッシュ基材から構成されうる。すなわち、本開示の実施形態の織られた細胞培養メッシュ基材は、既存のソリューションで用いられる不規則な不織布基材のタイプを必要としない、有効な細胞培養基材である。これにより、流れの均一性、回収可能性などに関連して本明細書で論じられる他の利点を備えた高密度細胞培養基材を提供しつつ、簡素化された設計及び構造の細胞培養システムが可能になる。
【0059】
本明細書で論じられるように、細胞培養基材及びバイオリアクタシステムは、多くの利点を提供した。例えば、本開示の実施形態は、AAV(全血清型)及びレンチウイルスなどの多数のウイルスベクターのいずれかの産生を支援することができ、インビボ及びエクスビボの遺伝子治療用途に適用することができる。均一な細胞播種及び分布により、容器あたりのウイルスベクター収量が最大化され、生細胞の回収が可能な設計となっており、同じプラットフォームを使用する複数の増殖期間からなるシードトレインに有用である。加えて、本明細書の実施形態は、プロセス開発規模から生産規模まで拡張可能であり、最終的には開発時間とコストを節約する。本明細書に開示される方法及びシステムはまた、細胞培養プロセスの自動化及び制御を可能にして、ベクター収量を最大化し、再現性を向上させる。最後に、ウイルスベクターの生産レベルの規模(例えば、バッチあたり1016から1018のAAV VG)に達するために必要な容器の数は、他の細胞培養ソリューションと比較して大幅に削減することができる。
【0060】
実施形態は、中心長手方向軸の周りの容器の回転に限定されない。例えば、容器は、該容器に対して中心に位置しない軸の周りを回転してもよい。加えて、回転軸は水平軸でも垂直軸でもよい。
【実施例
【0061】
本開示の細胞培養マトリクス、細胞培養システム、及び関連方法の有効性を実証するために、以下の実施例に従って、細胞の播種及び培養に関する研究を行った。
【0062】
実施例1
本開示の基材の流れ均一性又は透過性をさらに調べるために、モデリングを使用して三次元細胞培養マトリクスの多孔率を理解した。織布PETメッシュ基材のシートを、密に充填された構成と疎に充填された構成とでモデル化した。これらは、モデリングされた特定のメッシュシートのための基材スタックの充填密度の上限と下限を表している。特に、図5Aは密に充填された構成の平面図を示しており、図5Bは同じスタックの側面断面図を示している。図6A及び6Bは、それぞれ、疎に充填された構成の平面図及び断面図を示している。モデル化された構成ごとに、試料セル600、602の単位体積当たりの多孔率を分析するために、同じ体積のメッシュ材料を囲む試料セル600、602を規定した。各セル内の開放空間のモデル化された体積が、図7A(密に充填されたスタックの場合)及び7B(疎に充填されたスタックの場合)に示されている。開放空間のパーセンテージで表された多孔率は、疎に充填されたセルでは約40.8%、密に充填されたセルでは61.4%であった。図5A~6Bのモデル化されたスタックは、所与のメッシュ材料の最も密に充填された構成及び最も疎に充填された構成を表しているため、40.8%及び61.4%の多孔率が、この特定のメッシュ材料の多孔率の上限及び下限である。このメッシュ材料を使用するときの配置及び実際の充填密度に応じて、多孔率はこれらの極端な値の間に入りうる。しかしながら、細胞培養容器内のメッシュ寸法の変動及び基材の配置により、異なる範囲の多孔率が生じる可能性があることから、本開示の実施形態はこの多孔率範囲に限定されない。
【0063】
モデル化された多孔率の範囲に加えて、PET織布メッシュ基材の実際の充填床を使用して多孔率を測定した。測定は、それぞれ22.4mmの直径を有する100枚のディスクを使用して、ランダムな配置で積み重ねて行った。100枚のディスクのスタックの総重量は5.65±0.2gであった。スタックのPET材料の体積は、PET密度を1.38g/cmであると仮定して、次式を使用して計算した:
PET=(スタックの総重量)/(PETの密度) 式2
したがって、5.65gのPETのPET体積VPET(直径22.4mmのディス100枚の場合)は、4.1mlであると計算された。次に、PET体積VPET及びスタック内の開放空間の体積を含む、スタックの総体積Vtotalを、次式を使用して計算した:
total=π×(0.5×ディスク直径)×(スタックされた床の高さ) 式3
100枚のディスクのスタックは、25±1mmスタック高さを有していた。したがって、ディスク直径が22.4mmの場合、Vtotalは9.85mlであることがわかった。したがって、積層床の多孔率は以下を使用して計算することができる:
多孔率=(Vtotal-VPET)/Vtotal 式4
式4及び上記値を使用して、多孔率は58.4%であると計算され、これは、モデルによって予測された範囲内である。
【0064】
実施例2
実施例2では、さまざまなPET織布メッシュ基材材料の透過性を比較した。表5は、この比較で使用したPETメッシュ試料を示している。
【0065】
【表5】
メッシュ試料AからFの写真が図8A~8Fに示されている。各メッシュ試料A~Fの透過性の結果が図9に示されている。図10は、試料A~Cについての圧力損失試験を示しており、試料Aについては、異なる配置及び充填密度を有するスタックで圧力損失試験を実施した。破線はメッシュ試料Aの最も密な充填密度と最も疎な充填密度を表しており、試料Aは試料Aよりも疎に充填されたスタックである。センチメートルあたりの圧力変化(Pa)で表した圧力損失をQ/Aに対してプロットしている。
【0066】
実施例3
本明細書で論じられるように、本開示の実施形態は、拡張可能であり、かつ細胞集団を徐々に増加させるための細胞シードトレインの提供に使用することができる、細胞培養基材、バイオリアクタシステム、及び細胞又は細胞副生成物を培養する方法を提供する。既存の細胞培養ソリューションにおける問題の1つは、所与のバイオリアクタシステム技法をシードトレインの一部とすることができないことである。代わりに、細胞集団は通常、さまざまな細胞培養基材上でスケールアップされる。細胞はある特定の表面に順応し、異なる種類の表面に移されると効率の低下につながると考えられていることから、これは細胞集団に悪影響を与える可能性がある。したがって、細胞培養基材間又は技術間のこのような移行を最小限に抑えることが望ましいであろう。本開示の実施形態によって可能になるように、シードトレイン全体にわたって同じ細胞培養基材を使用することにより、細胞集団をスケールアップする効率が増加する。例えば、シードトレインは、第1の容器(Corning社製のT175フラスコなど)に播種されるスターター細胞のバイアルから始めて、次に第2の容器(Corning社製のHyperFlask(登録商標))に播種し、次に本発明の実施形態によるプロセス開発スケールのバイオリアクタシステム(基材の有効表面積は約20,000cm)に播種し、次に本発明の実施形態による、より大きいバイオリアクタパイロットシステム(基材の有効表面積は約300,000cmである)に播種することができる。このシードトレインの最後に、本開示の実施形態に従って、例えば約5,000,000cmの表面積を有する生産規模のバイオリアクタ容器に細胞を播種することができる。細胞培養が完了したら、次に、回収及び精製のステップを行うことができる。回収は、界面活性剤(Triton X-100など)を使用したin situでの細胞溶解、又は機械的溶解によって達成することができ、必要に応じて、さらに下流の処理を行うことができる。
【0067】
シードトレイン内で(例えば、プロセス開発レベルからパイロットレベルまで、さらには生産レベルまで)同じ細胞培養基材を使用することの利点には、シードトレイン及び生産段階中に細胞が同じ表面に慣れることから得られる効率;シードトレインフェーズ中の手動のオープン操作の数の減少;本明細書に記載されるように、均一な細胞分布及び流体の流れによる充填床のより効率的な使用;並びに、ウイルスベクターの回収中に機械的又は化学的溶解を使用する柔軟性が含まれる。
【0068】
実施例4
本開示の基材の潜在的なウイルス産生収量の増加を理解するために、PET織布メッシュ基材の性能を、iCellis(登録商標)で用いられる基材と同様の基材材料の性能と比較した。表6は、簡略化されたバイオリアクタにおいてこれらの基材を使用して生成されるウイルス粒子の総量をまとめたものである。
【0069】
【表6】
表6の結果から、一定数のウイルス粒子を生成するのに必要な基材材料の体積を計算することが可能である。例えば、表7に示されるように、生産規模のウイルスベクター産生の目標が3.00E+18個のウイルス粒子である場合、必要なPET織布メッシュの量は、必要な不織布基材の量の約7分の1である。
【0070】
【表7】
実施例5
本開示の開放メッシュ基材を通る均一な流れを実証するために、充填床バイオリアクタを通る流体の流速をモデル化した。図11Aは、直径6cm、床の高さ10cmのPET織布メッシュディスクの充填床領域622を有し、357枚のPET織布メッシュ基材のディスクからなる容器620のモデリング結果を示している。流体速度の大きさが、示されているスケールに従って示されている。流速は入口624及び出口626付近では速いが、速度は充填床の高さに沿って及び幅全体を含む充填床領域622全体にわたって一定である。破線628で示される領域が、図11Bに拡大図で示されており、流体が細胞培養マトリクスの均一な開放構造に入ると、速度が比較的一定になることが示されている。この例の充填床は、総表面積約24,214cmに相当する。モデルに示されている均一な流れを所与とすると、不均一な流れに曝露されるこの表面積のパーセンテージ(平均速度からの偏差が>2.5%として定義される)は0%であった。
【0071】
容器のサイズがスケールアップされたときにこの均一な流れがどの程度維持されるかを実証するために、より広い充填床を備えた徐々に幅広になっている容器を使用して、図11Aと同様の追加のモデリングを行った。これらのより大きい容器についての不均一な流れのパーセンテージが表8に示されている。示されるように、リアクタが直径60cmまでスケールアップされた場合でも、不均一な流れの量は、基材の表面積の1パーセントの約半分以下のままである。これは、既存の細胞培養基材とは異なり、本明細書に記載の均一な開放織布メッシュ構造が充填床全体にわたって均一な流れを可能にすることを示している。
【0072】
【表8】
実施例6
本開示の織布メッシュ基材と既存市場の不織布の不規則な基材との間の透過性の違いをよりよく理解するために、これらの材料の透過性を測定する実験を行った。特に、PET織布メッシュを、不織布基材材料及び市販されている同様の不織布不規則基材と比較した。スタックされたディスクの充填床の織布メッシュ基材層に対して垂直な流れ、不織布基材のランダム充填床を通る流れ、及び不織布基材材料の固定シートを通る流れについて、透過性測定を行った。不織布メッシュは、繊維直径約20μm、厚さ約0.18mm、及び多孔率91%を有していた。織布メッシュ基材は、直径約160μm、及び開口部直径250μmを有していた。
【0073】
透過性を測定するために、細胞培養培地をシミュレートする試験に水を使用した。バイオリアクタ内で基材が通常経験する流れ条件をシミュレートするために、蠕動ポンプを使用して流量を15~50ml/cm/分の間に制御した。試験条件下で被った試料の圧力損失が低かったため、モノメーターを使用して試料間の圧力差を測定した。基材の種類及び包装方法が異なるため、基材をわずかに異なる方法で保持した。
【0074】
図12Aに示されるように、不織布メッシュを横切る流れを測定するために、不織布基材700を直径12mmのディスクへと切断し、Oリングでシールされた2つの開放された円筒形チャンバ間に10レベルの基材を保持した。モノメーター702、704を開放チャンバに直接接続して、不織布基材全体にわたる流体の圧力損失を測定した。
【0075】
図12Bに示されるように、ランダムに充填された不織布メッシュを通る流れを測定するために、基材を5mm×25mmのストリップへと切断し、充填床710を形成する直径29mmの円筒形チャンバに充填した。合計3gのメッシュストリップを30mlの容量に充填し、約45mmの床高さにした。充填されたストリップの両側で、2枚の開放織布メッシュのディスクを使用して充填床を閉じ込めた。床の両側には厚さ約3mmの開放空間があり、厚さ10mmの多孔質材料716の2つの片を使用して、容器の入口及び出口での流れを再分配した。モノメーター712及び714で充填床710全体の圧力損失を測定した。
【0076】
図12Cに示されるように、開放織布メッシュを通る流れを測定するために、メッシュ基材を直径29mmのディスクへと切断して、充填床720として円筒形チャンバに適合させた。床の高さが45mmになるまで、合計170枚のディスクを一層ずつ充填した。メッシュの各レベルの繊維の方向は互いに整列していなかった。流れはメッシュディスクを横切った(すなわち、ディスク表面に対して垂直)。床の両側に厚さ約3mmの開放空間があり、厚さ10mmの多孔質材料726の2つの片を使用して、入口及び出口での流れを再分配した。モノメーター722及び724で充填床720全体の圧力損失を測定した。
【0077】
次の式(5)を使用して透過度を計算した:
【0078】
【数2】
[式中、Q=流量;K=透過度;A=試料又は充填床の面積;dP=試験試料又は充填床全体の圧力損失;μ=水の粘度;及び、dL=試料の総厚又は充填床の高さである]。
【0079】
最終的に計算した透過度を図13にまとめる。結果は、不織布メッシュは、はるかに低い、約7.5×10-12の透過度を有しており、開放織布メッシュ全体の透過性の約1/50であったことを示している。不織布メッシュを小さいストリップへと切断し、ランダムに充填すると、透過性が大幅に増加し、開放織布メッシュと同様になった。この増加した透過性は、上で論じたチャネリング効果に起因して、流れがメッシュストリップの周りをほとんど迂回した結果であると考えられる。
【0080】
測定された透過度に基づいて、不織布メッシュ及び開放織布メッシュを通る流れ及びその周囲の流れをシミュレートした。シミュレーションは、ANSYS Fluent v19.2ソフトウェアパッケージを使用して実施した。説明の目的で、図14A及び14Bに示されるように、基材材料の表面が流れの方向に対して(i)90°及び(ii)45°に整列するという2つのシナリオを研究した。どちらの場合も、同じレベルの隣接するメッシュ間の間隔が5mmの場合、流れは大部分がメッシュの周囲にあり、メッシュを通過する流れはわずか約0.02~0.005%であった。これにより、メッシュの背後に大幅なデッドゾーンが形成され、充填床を通る不均一な流れが生じるであろう。不織布メッシュ片が流れ方向に対して垂直に完全に整列していない場合、不均一性はより深刻になる。
【0081】
開放織布メッシュの場合、開放構造により、メッシュを容易に通過できるようになり、開放メッシュ層の後ろにデッドゾーンが形成されなかった。織布メッシュの規則的な構造も、各レベルを通る均一な流れ分布に寄与すると考えられる。したがって、これにより、充填床全体を通るより均一な流れが可能になる。この比較は、基材材料の端部付近の流れの拡大図を示している、図15A(不織布メッシュ片)及び15B(開放織布メッシュ基材)に明確に示されている。図15A及び15Bの場合、6方向すべてにおける隣接するメッシュ片間の間隙が1mmに短縮され、このような1つのメッシュ片の周期ドメインのみがシミュレートされている。図15Aは、流れが基材の周りをほとんどバイパスし、基材自体を通る流れがほとんどないため、不織布メッシュは非常に低い透過性を有することを示している。総質量流量の0.17%のみが不織布メッシュを通過する。対照的に、開放織布メッシュははるかに高い透過性を有するため、図15Bに示されるように、メッシュを通過する流れがより多くなる。2つの事例のカラーバーを比較すると、間隙を通るショートカット流が弱くなる。開放織布メッシュの場合、基材を通過する総質量流量は10.7%もの高さに達し、これは、間隙が充填されている場合でさえも開放織布メッシュが優れた透過性を有することを示している。
【0082】
本明細書で論じられるように、複数の織布メッシュディスクをランダムに充填し、ディスク間の位置合わせに無数のばらつきを持たせることが可能である。しかしながら、可能な位置合わせの範囲は、充填密度に基づいた2つの理論上の制限(すなわち、最も密な充填と最も疎な充填)にまで縮小することができる。これら2つの理想条件又は境界条件により、大きい充填床を小さい周期領域へと単純化することができる。このモデルを使用して、最も密な充填限界と最も疎な充填限界とでは、基材の透過度がおよそ10倍異なることが分かった。上記の実験的に測定された透過性データはこの範囲内に十分に収まっており、良好な検証ポイントとして機能する。このモデルは、両方の充填条件において、流れ方向での透過性が横方向での透過性と同様であることも示した。これは、本開示の織布メッシュが、不織布基材で見出されたように流れの方向を変化させる可能性が低く、基材の向きに関係なく、流れをより均一にすることを示唆している。以下の実施例における滞留時間分布(RTD)測定によって、本開示の基材の改善された流れ均一性がさらに実証された。
【0083】
実施例7
滞留時間分布(RTD)は、容器内の流れを研究するのに役立つツールである。その理論、測定、及び分析は次のテキストに記載されている:Levenspiel, O. Chemical Reaction Engineering.3ed.1999.Wiley.New York。図16は、RTDを測定するためのセットアップの概略図を示している。固定床を含むバイオリアクタ容器は直径29mmの円筒形であり、固定床の総容積は36mlである。固定床は、3.6gの不織布メッシュ、又は本開示の実施形態によれば、200層の開放織布メッシュで構成されていた。1:2000希釈のMcCormick Green Food ColorをRTD測定用のトレーサとして使用した。Flowcellを備えたUV-visを使用して、トレーサ濃度の変化を監視した。すべての実験において22.5ml/mlの流量を使用した。まず、チャンバを水で満たした。緑色の染料に切り替えた後、光学密度(OD)の変化を記録した。時間に対する正規化された色素濃度の結果が図17に示されている。図17に示されるように、不織布メッシュでは、開放織布メッシュと比較して、長期間にわたって染料濃度の増加が遅くなった。例えば、不織布メッシュの正規化された染料濃度は、開放織布メッシュよりも低い傾きを有し、同等の正規化濃度レベルに達するまでに時間がかかる。
【0084】
次式を使用して、平均滞留時間t(式(6))と分散σ(式(7))を計算した:
【0085】
【数3】
ここで、Fは、ステップトレーサー応答における正規化された濃度である。表9は、計算された平均滞留時間と測定値からの分散をまとめたものである。開放織布メッシュは平均滞留時間がより短いことを示しているが、これはおそらく、多孔率の低下とデッドゾーンの減少によって引き起こされたと考えられる。開放織布メッシュの充填床では、多孔率は約60%であったが、不織布メッシュの多孔率はさらに高い多孔率を有しており、約93%であった。不織布メッシュの充填床で検出されたはるかに高い正規化分散は、不織布メッシュにおける流れが均一性不十分であったか、又は理想的ではなかったことを示唆している。
【0086】
【表9】
上で説明したのと同じセットアップを使用して、他の市販の充填床基材材料のRTDを測定した。供給業者の推奨に基づいて、疎な充填を避けるために、充填密度を計算した。容器を通って流れる水の量による染料濃度の変化が図18に示されている。前のセクションで説明したように、測定された染料変化を使用して、正規化分散を計算した。計算された分散が表10に示されている。
【0087】
【表10】
上記の透過性及び滞留時間の実験から、現在のバイオリアクタで用いられる種類の不織布の不規則な細胞培養基材は、本開示の基材よりも低い透過性を有することが示される。これらの不織布基材はまた、該不織布基材に対する流れの方向に応じて異なる透過性又は流量を有するのに対し、本開示の基材は本質的に等方性の流れ挙動を示す。不織布基材の不均一な流れ及び短い滞留時間に起因して、栄養分及びトランスフェクション試薬が基材表面上又は基材層の反対側にある細胞へと到達するまでに、本開示の均一な織布メッシュ基材と比較して時間がかかる可能性がある。これに加えて、ランダムに充填された不織布基材は透過性が高く、これは、強力なチャネリング効果、したがって細胞又は栄養素の不均一な送達を示唆している。
【0088】
実施例8
本開示の実施形態による基材内での流れの均一性をさらに定量化するために、固定床の圧縮又は占有は、図17に示されるものと同様の設定を使用した実験で制御した。具体的には、異なる固定床を通る流れの均一性を比較及び定量化するために、RTDを測定した。各実験では、バイオリアクタの固定床を通る流れを維持しつつ、少量の緑色染料溶液をバイオリアクタの入口に注入し、出口において染料濃度の経時変化を測定した。染料は、2秒以内に一方向に沿って注入した。これはパルス入力とみなされる。出口における染料濃度の変化は、紫外可視分光計を使用して記録した。実験計画に応じて、測定中に異なる流量を使用した。
【0089】
これらの実験で使用したリアクタは、固定床又は充填床として基材材料を保持するための内径63mm及び床空間高さ201.7mmを有していた。本開示の実施形態によれば、基材は開放織布メッシュディスクを含んでいた。リアクタに充填するために、各ディスクは、z軸を中心に45°回転するようにディスクに対して位置合わせされ、ここで、z軸はバイオリアクタの床空間の長手方向の軸に平行であり、ディスクの第1及び第2主面に対して垂直である。したがって、各織布ディスクの繊維を、隣接するディスクの繊維に対して45°回転させた。この回転により、ディスク間の繊維の絡み合いが防止されて、より一貫性のある透過性がもたらされた。充填密度又は占有率を制御するために、リアクタの空間高さを各メッシュディスクの厚さで割った値を使用して、100%の占有率を実現するディスクの数を求めた。この状況では、メッシュディスクはリアクタ空間の上部まで満たされた。図19Aは、占有率100%のディスクのスタックを示している。図19Bに示されるように、100%の占有状態からディスク数の5%を削除することにより、95%の占有率が得られた。
【0090】
占有率が低い場合は、図20Aに示されるように、ディスクが圧縮されて、充填床の上に空のスペースが生成される(これを圧縮充填と呼ぶ)か、又は図20Bに示されるように、上部に空きスペースがなく、余分なスペースが充填床全体に分散される(これを疎な充填と呼ぶ)のいずれかであった。占有率が100%の場合でも、メッシュ層の弾性に起因して、床は依然としてある程度圧縮されることがあり、固定床の上にわずかなスペースが残ることがある。これを占有率100%での圧縮充填と呼ぶが、圧縮が適用されないと疎な充填になる。圧縮構成では、102.5%の占有率にするために約2.5%の追加のディスクを追加した。これは、メッシュディスクが常に高圧縮状態に維持されたことを意味している。
【0091】
実験は、95%から102.5%までの異なる占有率を含む圧縮充填が、驚くべきことに良好で同等のRTDプロファイルをもたらし、図21Aに示されるように流れの均一性を実証したことを示した。しかしながら、疎な充填は比較的悪い結果を生じ、図21Bに示されるように、E(θ)曲線のより大きい初期ピークによって表されるように、100ml/分でより多くのバイパスを示した。流量が300ml/分などに増加すると、バイパスはさらに増加し、図21B及び図22A~Cに示されるように、占有率が低く、疎の充填状態の場合には、より顕著であった。これは、高密度細胞培養中に、より高い流量が必要な場合、流れの均一性がさらに損なわれることを意味する。
【0092】
図22A、22B、及び22Cは、異なる充填条件下での本開示の実施形態による基材ディスクを使用したE(θ)曲線を示している。図22Aでは、床は102.5%の占有率で充填される。図27Bでは、床は、圧縮充填で95%の占有率で充填される。図22Cでは、床は、疎な充填で95%の占有率で配置される。示されているように、図22Cの疎な充填状態では、初期のピーク(チャネリングを示す)、E(θ)曲線の裾幅の拡大、及び流量間のばらつきが大きくなり、流量が高くなるほど流れの悪化を生じる。比較すると、圧縮充填では、占有率が102.5%と95%の両方で、流量によって大きく変化しない、より均一な流れ状態が生成される
E(θ)曲線は正規化されており、無次元であり、したがって、異なるサイズのバイオリアクタを同じ曲線上で簡単に比較することができることに留意すべきである。本開示の実施形態によれば、基材及び固定床は、リアクタのサイズに関係なく、著しく一貫したE(θ)曲線を示す。例えば、5mの表面積を有する固定床と100mの表面積を有する固定床は、同様の重なり合うE(θ)曲線を有する。本明細書の実施形態による任意のサイズの固定床が同様の流動特性を有することが予想されるため、これらのサイズは単なる例として与えられている。
【0093】
当業者には理解されるように、「早い」ピークとは、E(θ)のピークがθ=1より早く来る(また、上記の実験では、圧縮充填のピークよりも早く来る)ことを意味する。θ=1に近いRTD曲線の分布は、より均一な流れ、又は真の「プラグフロー」状態に近い流れを示している。例えば、E(θ)曲線の単一の鋭いピークは、注入されたすべて(又はほぼすべて)の染料粒子がリアクタ内でほぼ同じ時間を費やしていることを示唆しており、理想的な「プラグフロー」に近い均一な流れを示している。しかしながら、一部の基材又は床では、チャネリングが発生する可能性があり、これは床の透過性が変化し、RTD実験に用いられる染料の粒子がリアクタ内で費やす時間が変化することを意味する。これは、E(θ)曲線上の「初期」ピークによって示され、染料が、バイオリアクタ出口に早く到達したこと、及び/又はより広いE(θ)曲線によって、リアクタから染料を除去するのに長い時間がかかることが示唆される。
【0094】
理論に束縛されるものではないが、疎な充填の場合、隣接するディスクからの制限が少ないことに起因して、基材ディスクを固定床内で平らに保つことができない可能性があると考えられる。ディスクが持ち上げられるか又は湾曲すると、ディスクと容器壁との間により多くの間隙が生じ、バイパスの増加につながる可能性がある。流量が高くなると、流れによってディスクがさらに持ち上げられ、間隙がより大きくなり、バイパス流が増える可能性がある。
【0095】
実施例9
気泡の影響をシミュレートするために、実施例8について上述した設定を使用したが、対応するRTD測定の前に入口に8mlの空気を注入した。得られたRTDプロファイルを、気泡導入前の同じリアクタと比較した。図23A及び23Bに示されるように、占有率が低い場合、RTDプロファイル又はE(θ)曲線はより広い広がりを有し、高い占有率の場合と比較して均一性が乏しいことを示唆している。これは、圧縮充填(図23A)と疎な充填(図23B)の両方で同様であった。
【0096】
理論に束縛されるものではないが、100%又は102.5%などの高い占有率では、充填床には気泡のための余分な空間はあまりなく、ほとんどの気泡は灌流流れによって床から押し出されたため、影響ははるかに小さくなったと考えられる。占有率が低い場合には、気泡が床内の余分な空間に容易に閉じ込められ、床を通る灌流の流れが妨げられた。細胞培養中に気泡を避けるのは難しいことから、高い占有率を使用することにより、気泡による悪影響を最小限に抑え、均一な流れを維持してより良好な細胞増殖を支援することを助けることができる。
【0097】
本開示の実施形態は、その内容全体がここに参照することによって本明細書に組み込まれる、米国特許出願第16/781,685号明細書;及び、米国特許出願第16/781,723号明細書;及び、米国仮特許出願第63/227,693号明細書に開示される実施形態の態様を含む。
【0098】
例示的な実装形態
以下は、開示された主題の実装形態のさまざまな態様の説明である。各態様は、開示された主題のさまざまな特徴、特性、又は利点のうちの1つ以上を含みうる。実装形態は、開示された主題の幾つかの態様を説明することを意図しており、すべての可能な実装形態の包括的又は網羅的な説明と見なされるべきではない。
【0099】
態様1は、細胞を培養するためのバイオリアクタシステムに関し、該システムは、少なくとも1つの内部リザーバ、該リザーバに流体接続された入口、及びリザーバに流体接続された出口を備えた細胞培養容器と、リザーバ内に配置された細胞培養マトリクスであって、細胞が接着するように構成された基材を備えた細胞培養マトリクスとを含み、細胞培養マトリクスは、該細胞培養マトリクスを通る液体培地の均一な流れを維持するように構成され、該均一な流れは次式を満たす:
【0100】
【数4】
[式中、Pは、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、及び0.95以上のうちの少なくとも1つであり、Nは、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、及び1.0以下のうちの少なくとも1つである]。
【0101】
態様2は、Nが0.5以下であり、Pが0.7以上である、態様1に記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0102】
態様3は、θが0.8、0.75、0.7、0.6、又は0.5以下の場合、E(θ)が0.2以下又は0.1以下である、態様1又は2に記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0103】
態様4は、θが1.2、1.25、1.3、1.4、又は1.5以上の場合、E(θ)が0.2以下又は0.1以下である、態様1から3のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0104】
態様5は、0.6から1.4の間;0.7から1.3の間;0.8から1.2の間;及び、0.9から1.1の間のθ値において、E’(θ)=0である、態様1から4のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0105】
態様6は、細胞培養マトリクスが、約1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.15、又は0.1以下の正規化分散で、細胞培養マトリクスを通る液体培地の均一な流れを維持するように構成される、態様1から5のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0106】
態様7は、細胞培養マトリクスが、内部リザーバ内に固定床構成で配置される、態様1から6のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0107】
態様8は、固定床の床高さ全体にわたって均一な流れが維持され、該床の高さが10cm;20cm;30cm;40cm;50cm;60cm;70cm;80cm;90cm;又は、100cm以上である、態様7に記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0108】
態様9は、E(θ)の曲線が、θのすべての値にわたって単一のピークを有する、態様1から8のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0109】
態様10は、単一のピークが、0.8から1.2の間のθ値;0.85から1.15の間;0.9から1.1の間;及び0.95から1.05の間のθ値におけるものである、態様9に記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0110】
態様11は、細胞培養マトリクスが、内部リザーバを通って流れる液体培地の1.2バイオリアクタ容積以内で内部リザーバの全液体体積の少なくとも90%が置換されるように、液体培地が細胞培養マトリクスを通って流れるように構成される、態様1から10のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0111】
態様12は、細胞培養マトリクスが、内部リザーバの幅に沿った任意の点における液体培地の流量が幅に沿った任意の他の点における流量の15%、10%、5%、又は2%以内になるように、液体培地が細胞培養マトリクスを通って流れるように構成されており、該流量が入口から出口への方向と平行な方向で測定される、態様1から11のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0112】
態様13は、細胞培養マトリクスが、該細胞培養マトリクス内の任意の点における液体培地の流量が、該細胞培養マトリクス内の他の任意の点での流量の15%、10%、5%、又は2%以内になるように、細胞培養マトリクス内の他の任意の点での流量の15%、10%、5%、又は2%以内になるように、液体培地が細胞培養マトリクスを通って流れるように構成されており、該流量が入口から出口への方向と平行な方向で測定される、態様1から12のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0113】
態様14は、細胞培養マトリクスが多層基材を含み、多層基材の各層が実質的に規則的かつ均一な物理的構造及び多孔率を含む、態様1から13のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0114】
態様15は、細胞培養マトリクスが実質的に均一な多孔率を含む、態様1から14のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0115】
態様16は、均一な流れが層流を含む、態様1から15のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0116】
態様17は、リザーバが長さ及び幅によって規定され、長さが入口に隣接したリザーバの第1の端から出口に隣接したリザーバの第2の端まで延び、細胞培養マトリクスがリザーバの実質的に幅全体にわたって延びる幅を有する、態様1から16のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0117】
態様18は、多層基材が、リザーバ内にスタックされた複数の基材ディスクを含む、態様14から17のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0118】
態様19は、複数の基材ディスクのスタックが、複数の基材ディスクの各々の幅全体にわたって実質的に均一な流体流れを示すように構成される、態様18に記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0119】
態様20は、多層基材が多孔率を規定する複数の開口部を含み、該複数の開口部が、複数の基材ディスクの各ディスク内に規則的パターン又は均一なパターンで配列される、態様18に記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0120】
態様21は、多層基材が、成形ポリマー格子、3D印刷された格子、及び織布基材のうちの少なくとも1つを含む、態様1から20のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0121】
態様22は、多層基材が、細胞が接着するように構成された表面を備えた複数の織り合わされた繊維を有する織布基材を含み、該複数の織り合わされた繊維が複数の開口部を画成する、態様21に記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0122】
態様23は、細胞培養マトリクスが複数の織布基材を含み、各織布基材が、第1の側と、該第1の側とは反対側にある、織布基材の厚さによって第1の側から分離された第2の側とを有する、態様22に記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0123】
態様24は、複数の織布基材が、該基材の第1の側及び第2の側のうちの一方が隣接する基材の第1の側又は第2の側に面するように、積み重ねて配列される、態様23に記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0124】
態様25は、複数の基材の少なくとも一部が、スペーサ材料若しくは障壁によって分離されない、又は互いに物理的に接触している、態様23又は態様24に記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0125】
態様26は、細胞培養マトリクスが、バイオリアクタ容器を通る培地のバルク流れ方向が第1の側及び第2の側に対して垂直になるようにバイオリアクタ容器内に配置される、態様22に記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0126】
態様27は、細胞培養マトリクスが、該細胞培養マトリクスの表面積の少なくとも90%にわたって均一な流体流れを示す、態様1から26のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0127】
態様28は、細胞培養マトリクスが、流体の流れの方向に細胞培養マトリクスの長さにわたってプラグ流れを示す、態様1から27のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0128】
態様29は、細胞培養マトリクスが、少なくとも85%の占有率、少なくとも90%の占有率、少なくとも95%の占有率、100%以上の占有率、102%以上の占有率、105%以上の占有率、又は110%以上の占有率で内部リザーバ内に配置される、態様1から28のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0129】
態様30は、細胞培養マトリクスが、圧縮された充填構成で内部リザーバ内に配置される、態様1から29のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0130】
態様31は、細胞を培養するためのバイオリアクタシステムに関し、該システムは、少なくとも1つの内部リザーバ、該リザーバに流体接続された入口、及びリザーバに流体接続された出口を備えた細胞培養容器と、リザーバ内に配置された細胞培養マトリクスであって、細胞が接着するように構成された基材を備えた細胞培養マトリクスとを含み、該細胞培養マトリクスは、θが0.8、0.75、0.7、0.6、又は0.5以下の場合にE(θ)が0.2以下又は0.1以下になるように、該細胞培養マトリクスを通る液体培地の均一な流れを維持するように構成されている。
【0131】
態様32は、θが1.2、1.25、1.3、1.4、又は1.5以上の場合、E(θ)が0.2以下又は0.1以下である、態様31に記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0132】
態様33は、0.6から1.4の間;0.7から1.3の間;0.8から1.2の間;及び、0.9から1.1の間のθ値において、E’(θ)=0である、態様31又は態様32に記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0133】
態様34は、細胞培養マトリクスが、約1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.15、又は0.1以下の正規化分散で、細胞培養マトリクスを通る液体培地の均一な流れを維持するように構成される、態様31から33のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0134】
態様35は、細胞培養マトリクスが多層基材を含み、該多層基材の各層が実質的に規則的かつ均一な物理的構造及び多孔率を含む、態様31から34のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0135】
態様36は、細胞培養マトリクスが実質的に均一な多孔率を含む、態様31から35のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0136】
態様37は、均一な流れが層流を含む、態様31から36のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0137】
態様38は、リザーバが長さ及び幅によって規定され、長さが入口に隣接したリザーバの第1の端から出口に隣接したリザーバの第2の端まで延び、細胞培養マトリクスがリザーバの実質的に幅全体にわたって延びる幅を有する、態様31から37のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0138】
態様39は、多層基材が、リザーバ内にスタックされた複数の基材ディスクを含む、態様35から38のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0139】
態様40は、複数の基材ディスクのスタックが、複数の基材ディスクの各々の幅全体にわたって実質的に均一な流体流れを示すように構成される、態様39に記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0140】
態様41は、多層基材が、多孔率を規定する複数の開口部を含み、該複数の開口部が、複数の基材ディスクの各ディスク内に規則的パターン又は均一なパターンで配列される、態様39に記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0141】
態様42は、多層基材が、成形ポリマー格子、3D印刷された格子、及び織布基材のうちの少なくとも31つを含む、態様1から41のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0142】
態様43は、多層基材が、細胞が接着するように構成された表面を備えた複数の織り合わされた繊維を有する織布基材を含み、該複数の織り合わされた繊維が複数の開口部を画成する、態様42に記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0143】
態様44は、細胞培養マトリクスが複数の織布基材を含み、各織布基材が、第1の側と、該第1の側とは反対側にある、織布基材の厚さによって第1の側から分離された第2の側とを有する、態様43に記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0144】
態様45は、複数の織布基材が、該基材の第1の側及び第2の側のうちの一方が隣接する基材の第1の側又は第2の側に面するように、積み重ねて配列される、態様44に記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0145】
態様46は、複数の基材の少なくとも一部が、スペーサ材料若しくは障壁によって分離されない、又は互いに物理的に接触している、態様44又は態様45に記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0146】
態様47は、細胞培養マトリクスが、バイオリアクタ容器を通る培地のバルク流れ方向が第1の側及び第2の側に対して垂直になるようにバイオリアクタ容器内に配置される、態様43に記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0147】
態様48は、細胞培養マトリクスが、該細胞培養マトリクスの表面積の少なくとも90%にわたって均一な流体流れを示す、態様31から47のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0148】
態様49は、細胞培養マトリクスが、流体の流れの方向に細胞培養マトリクスの長さにわたってプラグ流れを示す、態様31から48のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0149】
態様50は、細胞培養マトリクスが、少なくとも85%の占有率、少なくとも90%の占有率、少なくとも95%の占有率、100%以上の占有率、102%以上の占有率、105%以上の占有率、又は110%以上の占有率で内部リザーバ内に配置される、態様31から49のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0150】
態様51は、細胞培養マトリクスが、圧縮された充填構成で内部リザーバ内に配置される、態様31から50のいずれかに記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0151】
態様52は、細胞を培養するためのバイオリアクタシステムに関し、該システムは、少なくとも1つの内部リザーバ、該リザーバに流体接続された入口、及びリザーバに流体接続された出口を備えた細胞培養容器と、リザーバ内に配置された細胞培養マトリクスであって、細胞が接着するように構成された基材を備えた細胞培養マトリクスとを含み、ここで、該細胞培養マトリクスは、少なくとも85%の占有率、少なくとも90%の占有率、少なくとも95%の占有率、100%以上の占有率、102%以上の占有率、105%以上の占有率、又は110%以上の占有率で内部リザーバ内に配置される。
【0152】
態様53は、細胞培養マトリクスが、圧縮された充填構成で内部リザーバ内に配置される、態様52に記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0153】
定義
「全合成」又は「完全合成」とは、完全に合成原料から構成され、動物由来又は動物起源の材料を欠いている、マイクロキャリア又は培養容器の表面などの細胞培養物品を指す。本開示の全合成された細胞培養物品は、異種汚染のリスクを排除する。
【0154】
「含む(Include,includes)」、又は同様の用語は、網羅的であるが限定的ではない、すなわち包括的であって排他的ではないことを意味する。
【0155】
「ユーザ」とは、本明細書に開示されているシステム、方法、物品、又はキットを使用する人々を指し、細胞又は細胞産生物を回収するために細胞を培養している人々、又は本明細書の実施形態に従って培養及び/又は回収された細胞又は細胞産生物を使用する人々を含む。
【0156】
本開示の実施形態を説明する際に採用される、例えば、組成物中の成分の量、濃度、体積、プロセス温度、プロセス時間、収率、流量、圧力、粘度などの値、及びそれらの範囲、又は構成要素の寸法及び同様の値並びにそれらの範囲を変更する「約」は、例えば、材料、組成物、複合材料、濃縮物、構成部品、製造品、又は使用製剤の調製に使用される一般的な測定及び取り扱い手順を通じて;これらの手順における不注意によるエラーを通じて;方法を実行するために使用される出発材料又は原料の製造、供給源、又は純度の違いを通じて;及び同様の考慮事項を通じて発生する可能性のある数量の変動を指す。「約」という用語は、特定の初期濃度又は混合物を伴う組成物又は製剤の劣化に起因して異なる量、及び特定の初期濃度又は混合物を伴う組成物又は製剤の混合又は加工に起因して異なる量も包含する。
【0157】
「任意選択的な」又は「任意選択的に」とは、その後に記載される事象又状況が発生してもしなくてもよいこと、及び、その記載が、当該事象又状況が発生する場合と発生しない場合を含むことを意味する。
【0158】
本明細書で用いられる不定冠詞「a」又は「an」及びその対応する定冠詞「the」は、別段の指定がない限り、少なくとも1つ又は1つ以上を意味する。
【0159】
当業者によく知られている略語が用いられることがある(例えば、時間を「h」又は「hrs」、グラムを「g」又は「gm」、ミリリットルを「mL」、室温を「rt」、ナノメートルを「nm」、及び同様の略語)。
【0160】
成分、原料、添加剤、寸法、条件、及び同様の特徴、並びにそれらの範囲について開示されている特定の好ましい値は、例示のみを目的としており、他の定義された値又は定義された範囲内の他の値を除外しない。本開示のシステム、キット、及び方法は、本明細書に記載されるいずれかの値、特定の値、さらに具体的な値、及び好ましい値のうちの任意の値又は任意の組合せを含みうる。
【0161】
特に明記しない限り、本明細書に記載の任意の方法は、そのステップが特定の順序で実行されることを必要とすると解釈されることは、決して意図していない。したがって、方法クレームがその工程が従うべき順序を実際に列挙していないか、又は工程が特定の順序に限定されるべきであることが特許請求の範囲又は明細書に具体的に述べられていない場合には、いかなる特定の順序も、推測されることは、決して意図していない。
【0162】
開示される実施形態の精神又は範囲から逸脱することなく、さまざまな修正及び変更を加えることができることは、当業者にとって明白であろう。実施形態の精神及び本質を組み込んだ開示された実施形態の修正、組合せ、部分組合せ、及び変形が当業者に想起されうることから、本開示の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内のあらゆるものを含むと解釈されるべきである。
【0163】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0164】
実施形態1
細胞を培養するためのバイオリアクタシステムであって、該システムが、
少なくとも1つの内部リザーバ、前記リザーバに流体接続された入口、及び前記リザーバに流体接続された出口を備えた細胞培養容器と、
前記リザーバ内に配置された細胞培養マトリクスであって、細胞が接着するように構成された基材を含む、細胞培養マトリクスと
を備えており、
前記細胞培養マトリクスが、該細胞培養マトリクスを通る液体培地の均一な流れを維持するように構成されており、前記均一な流れが次式を満たす:
【0165】
【数5】
[式中、Pは、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、及び0.95以上のうちの少なくとも1つであり、かつ
Nは、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、及び1.0以下のうちの少なくとも1つである]、
バイオリアクタシステム。
【0166】
実施形態2
Nが0.5以下であり、Pが0.7以上である、実施形態1に記載のバイオリアクタシステム。
【0167】
実施形態3
θが0.8、0.75、0.7、0.6、又は0.5以下の場合、E(θ)が0.2以下又は0.1以下である、実施形態1又は実施形態2に記載のバイオリアクタシステム。
【0168】
実施形態4
θが1.2、1.25、1.3、1.4、又は1.5以上の場合、E(θ)が0.2以下又は0.1以下である、実施形態1から3のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0169】
実施形態5
0.6から1.4の間;0.7から1.3の間;0.8から1.2の間;及び、0.9から1.1の間のθ値で、E(θ)=0である、実施形態1から4のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0170】
実施形態6
前記細胞培養マトリクスが、約1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.15、又は0.1以下の正規化分散で、前記細胞培養マトリクスを通る液体培地の前記均一な流れを維持するように構成される、実施形態1から5のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0171】
実施形態7
前記細胞培養マトリクスが、前記内部リザーバ内に固定床構成で配置される、実施形態1から6のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0172】
実施形態8
前記均一な流れが固定床の床高さ全体にわたって維持され、前記床の高さが10cm;20cm;30cm;40cm;50cm;60cm;70cm;80cm;90cm;又は、100cm以上である、実施形態7に記載のバイオリアクタシステム。
【0173】
実施形態9
E(θ)の曲線が、θのすべての値にわたって単一のピークを有する、実施形態1から8のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0174】
実施形態10
前記単一のピークが、0.8から1.2の間;0.85から1.15の間;0.9から1.1の間;及び、0.95から1.05の間のθ値におけるものである、実施形態9に記載のバイオリアクタシステム。
【0175】
実施形態11
前記細胞培養マトリクスが、前記内部リザーバを通って流れる液体培地の1.2バイオリアクタ容積以内で前記内部リザーバの全液体体積の少なくとも90%が置換されるように、液体培地が前記細胞培養マトリクスを通って流れるように構成される、実施形態1から10のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0176】
実施形態12
前記細胞培養マトリクスが、前記内部リザーバの幅に沿った任意の点における液体培地の流量が前記幅に沿った任意の他の点における前記流量の15%、10%、5%、又は2%以内になるように、液体培地が前記細胞培養マトリクスを通って流れるように構成されており、前記流量が、前記入口から前記出口への方向と平行な方向で測定される、実施形態1から11のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0177】
実施形態13
前記細胞培養マトリクスが、該細胞培養マトリクス内の任意の点における液体培地の流量が、前記細胞培養マトリクス内の他の任意の点での前記流量の15%、10%、5%、又は2%以内になるように、液体培地が前記細胞培養マトリクスを通って流れるように構成されており、前記流量が、前記入口から前記出口への方向と平行な方向で測定される、実施形態1から12のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0178】
実施形態14
前記細胞培養マトリクスが多層基材を含み、前記多層基材の各層が、実質的に規則的かつ均一な物理的構造及び多孔率を含む、実施形態1から13のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0179】
実施形態15
前記細胞培養マトリクスが実質的に均一な多孔率を含む、実施形態1から14のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0180】
実施形態16
前記均一な流れが層流を含む、実施形態1から15のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0181】
実施形態17
前記リザーバが長さ及び幅によって規定され、前記長さが前記入口に隣接した前記リザーバの第1の端から前記出口に隣接した前記リザーバの第2の端まで延び、前記細胞培養マトリクスが前記リザーバの実質的に幅全体にわたって延びる幅を有する、実施形態1から16のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0182】
実施形態18
前記多層基材が、前記リザーバ内にスタックされた複数の基材ディスクを含む、実施形態14から17のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0183】
実施形態19
前記複数の基材ディスクの前記スタックが、前記複数の基材ディスクの各々の幅全体にわたって実質的に均一な流体流れを示すように構成される、実施形態18に記載のバイオリアクタシステム。
【0184】
実施形態20
前記多層基材が前記多孔率を規定する複数の開口部を含み、該複数の開口部が前記複数の基材ディスクの各ディスク内に規則的なパターン又は均一なパターンで配列される、実施形態18に記載のバイオリアクタシステム。
【0185】
実施形態21
前記多層基材が、成形ポリマー格子、3D印刷された格子、及び織布基材のうちの少なくとも1つを含む、実施形態1から20のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0186】
実施形態22
前記多層基材が、細胞が接着するように構成された表面を備えた複数の織り合わされた繊維を有する前記織布基材を含み、該複数の織り合わされた繊維が複数の開口部を画成する、実施形態21に記載のバイオリアクタシステム。
【0187】
実施形態23
前記細胞培養マトリクスが複数の織布基材を含み、各織布基材が、第1の側と、該第1の側とは反対側にあり、前記織布基材の厚さによって前記第1の側から分離されている第2の側とを有する、実施形態22に記載のバイオリアクタシステム。
【0188】
実施形態24
前記複数の織布基材が、該基材の前記第1の側及び第2の側のうちの一方が隣接する基材の前記第1の側又は第2の側に面するように積み重ねて配列される、実施形態23に記載のバイオリアクタシステム。
【0189】
実施形態25
前記複数の基材の少なくとも一部が、スペーサ材料若しくは障壁によって分離されない、又は互いに物理的に接触している、実施形態23又は実施形態24に記載のバイオリアクタシステム。
【0190】
実施形態26
前記細胞培養マトリクスが、前記バイオリアクタ容器を通る培地のバルク流れ方向が前記第1の側及び第2の側に対して垂直になるように、前記バイオリアクタ容器内に配置される、実施形態22に記載のバイオリアクタシステム。
【0191】
実施形態27
前記細胞培養マトリクスが、該細胞培養マトリクスの表面積の少なくとも90%にわたって均一な流体流れを示す、実施形態1から26のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0192】
実施形態28
前記細胞培養マトリクスが、流体の流れの方向に前記細胞培養マトリクスの長さにわたってプラグ流れを示す、実施形態1から27のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0193】
実施形態29
前記細胞培養マトリクスが、少なくとも85%の占有率、少なくとも90%の占有率、少なくとも95%の占有率、100%以上の占有率、102%以上の占有率、105%以上の占有率、又は110%以上の占有率で前記内部リザーバ内に配置される、実施形態1から28のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0194】
実施形態30
前記細胞培養マトリクスが、圧縮された充填構成で前記内部リザーバ内に配置される、実施形態1から29のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0195】
実施形態31
細胞を培養するためのバイオリアクタシステムであって、該システムが、
少なくとも1つの内部リザーバ、前記リザーバに流体接続された入口、及び前記リザーバに流体接続された出口を備えた細胞培養容器と、
前記リザーバ内に配置された細胞培養マトリクスであって、細胞が接着するように構成された基材を含む、細胞培養マトリクスと
を備えており、
前記細胞培養マトリクスが、θが0.8、0.75、0.7、0.6、又は0.5以下の場合に、E(θ)が0.2以下又は0.1以下になるように、前記細胞培養マトリクスを通る液体培地の均一な流れを維持するように構成される、
バイオリアクタシステム。
【0196】
実施形態32
θが1.2、1.25、1.3、1.4、又は1.5以上の場合、E(θ)が0.2以下又は0.1以下である、実施形態31に記載のバイオリアクタシステム。
【0197】
実施形態33
0.6から1.4の間;0.7から1.3の間;0.8から1.2の間;及び、0.9から1.1の間のθ値において、E’(θ)=0である、実施形態31又は実施形態32に記載のバイオリアクタシステム。
【0198】
実施形態34
前記細胞培養マトリクスが、約1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.15、又は0.1以下の正規化分散で、前記細胞培養マトリクスを通る液体培地の前記均一な流れを維持するように構成される、実施形態31から33のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0199】
実施形態35
前記細胞培養マトリクスが多層基材を含み、前記多層基材の各層が、実質的に規則的かつ均一な物理的構造及び多孔率を含む、実施形態31から34のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0200】
実施形態36
前記細胞培養マトリクスが実質的に均一な多孔率を含む、実施形態31から35のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0201】
実施形態37
前記均一な流れが層流を含む、実施形態31から36のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0202】
実施形態38
前記リザーバが長さ及び幅によって規定され、前記長さが前記入口に隣接した前記リザーバの第1の端から前記出口に隣接した前記リザーバの第2の端まで延び、前記細胞培養マトリクスが前記リザーバの実質的に幅全体にわたって延びる幅を有する、実施形態31から37のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0203】
実施形態39
前記多層基材が、前記リザーバ内にスタックされた複数の基材ディスクを含む、実施形態35から38のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0204】
実施形態40
前記複数の基材ディスクの前記スタックが、前記複数の基材ディスクの各々の幅全体にわたって実質的に均一な流体流れを示すように構成される、実施形態39に記載のバイオリアクタシステム。
【0205】
実施形態41
前記多層基材が前記多孔率を規定する複数の開口部を含み、該複数の開口部が前記複数の基材ディスクの各ディスク内に規則的なパターン又は均一なパターンで配列される、実施形態39に記載のバイオリアクタシステム。
【0206】
実施形態42
前記多層基材が、成形ポリマー格子、3D印刷された格子、及び織布基材のうちの少なくとも1つを含む、実施形態31から41のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0207】
実施形態43
前記多層基材が、細胞が接着するように構成された表面を備えた複数の織り合わされた繊維を有する前記織布基材を含み、前記複数の織り合わされた繊維が複数の開口部を画成する、実施形態42に記載のバイオリアクタシステム。
【0208】
実施形態44
前記細胞培養マトリクスが複数の織布基材を含み、各織布基材が、第1の側と、該第1の側とは反対側にあり、前記織布基材の厚さによって前記第1の側から分離されている第2の側とを有する、実施形態43に記載のバイオリアクタシステム。
【0209】
実施形態45
前記複数の織布基材が、該基材の前記第1の側及び第2の側のうちの一方が隣接する基材の前記第1の側又は第2の側に面するように積み重ねて配列される、実施形態44に記載のバイオリアクタシステム。
【0210】
実施形態46
前記複数の基材の少なくとも一部が、スペーサ材料若しくは障壁によって分離されない、又は互いに物理的に接触している、実施形態44又は実施形態45に記載のバイオリアクタシステム。
【0211】
実施形態47
前記細胞培養マトリクスが、前記バイオリアクタ容器を通る培地のバルク流れ方向が前記第1の側及び第2の側に対して垂直になるように、前記バイオリアクタ容器内に配置される、実施形態43に記載のバイオリアクタシステム。
【0212】
実施形態48
前記細胞培養マトリクスが、該細胞培養マトリクスの表面積の少なくとも90%にわたって均一な流体流れを示す、実施形態31から47のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0213】
実施形態49
前記細胞培養マトリクスが、流体の流れの方向に前記細胞培養マトリクスの長さにわたってプラグ流れを示す、実施形態31から48のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0214】
実施形態50
前記細胞培養マトリクスが、少なくとも85%の占有率、少なくとも90%の占有率、少なくとも95%の占有率、100%以上の占有率、102%以上の占有率、105%以上の占有率、又は110%以上の占有率で前記内部リザーバ内に配置される、実施形態31から49のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0215】
実施形態51
前記細胞培養マトリクスが、圧縮された充填構成で前記内部リザーバ内に配置される、実施形態31から50のいずれかに記載のバイオリアクタシステム。
【0216】
実施形態52
細胞を培養するためのバイオリアクタシステムであって、該システムが、
少なくとも1つの内部リザーバ、前記リザーバに流体接続された入口、及び前記リザーバに流体接続された出口を備えた細胞培養容器と、
前記リザーバ内に配置された細胞培養マトリクスであって、細胞が接着するように構成された基材を含む、細胞培養マトリクスと
を備えており、
前記細胞培養マトリクスが、少なくとも85%の占有率、少なくとも90%の占有率、少なくとも95%の占有率、100%以上の占有率、102%以上の占有率、105%以上の占有率、又は110%以上の占有率で前記内部リザーバ内に配置される、
バイオリアクタシステム。
【0217】
実施形態53
前記細胞培養マトリクスが、圧縮された充填構成で前記内部リザーバ内に配置される、実施形態52に記載のバイオリアクタシステム。
【符号の説明】
【0218】
100 細胞培養基材/織布メッシュ
102 第1の複数の繊維
104 第2の複数の繊維
108 第1の側
110 第2の側
200 多層基材
300 細胞培養システム/バイオリアクタ容器
302 バイオリアクタ容器
304 細胞培養チャンバ
306 細胞培養マトリクス
308 基材層
310 入口
312 出口
320 システム
322 バイオリアクタ容器
324 培養空間/培養チャンバ
328 基材
330 入口
332 出口
620 容器
622 充填床領域
624 入口
626 出口
700 不織布基材
702,704 モノメーター
710 充填床
712,714 モノメーター
716 多孔質材料
720 充填床
722,724 モノメーター
726 多孔質材料
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19A
図19B
図20A
図20B
図21A
図21B
図22A
図22B
図22C
図23A
図23B
【国際調査報告】