IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司の特許一覧

特表2024-529491親水性ポリマー、その製造方法及び親水性ポリマーを含有するリチウム二次電池
<>
  • 特表-親水性ポリマー、その製造方法及び親水性ポリマーを含有するリチウム二次電池 図1
  • 特表-親水性ポリマー、その製造方法及び親水性ポリマーを含有するリチウム二次電池 図2
  • 特表-親水性ポリマー、その製造方法及び親水性ポリマーを含有するリチウム二次電池 図3
  • 特表-親水性ポリマー、その製造方法及び親水性ポリマーを含有するリチウム二次電池 図4
  • 特表-親水性ポリマー、その製造方法及び親水性ポリマーを含有するリチウム二次電池 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】親水性ポリマー、その製造方法及び親水性ポリマーを含有するリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   C08F 212/08 20060101AFI20240730BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240730BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20240730BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240730BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240730BHJP
   C08F 236/04 20060101ALI20240730BHJP
   C08F 210/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C08F212/08
H01M4/62 Z
H01M10/0566
H01M10/052
H01M4/139
C08F236/04
C08F210/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505344
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 CN2022098915
(87)【国際公開番号】W WO2023240486
(87)【国際公開日】2023-12-21
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100140305
【弁理士】
【氏名又は名称】宮▲崎▼ 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(72)【発明者】
【氏名】チョウ シン
(72)【発明者】
【氏名】アイ シャオファ
(72)【発明者】
【氏名】チャン ユーシー
(72)【発明者】
【氏名】ゼン チー
(72)【発明者】
【氏名】チェン ユー
【テーマコード(参考)】
4J100
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4J100AB02Q
4J100AB07R
4J100AS02P
4J100BA03R
4J100CA05
4J100DA01
4J100DA44
4J100EA07
4J100EA09
4J100FA03
4J100FA20
4J100FA28
4J100FA30
4J100JA03
4J100JA43
4J100JA44
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM07
5H029DJ08
5H029EJ12
5H029HJ01
5H029HJ02
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA03
5H050DA11
5H050EA23
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
本発明は親水性ポリマー及びその製造方法に関する。該親水性ポリマーは、共役ジオレフィン、モノオレフィン及び式Iで示される親水性モノマーの共重合体であることを特徴とする。式I中では、X、X及びXはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~4の直鎖または分岐鎖アルキル基から選ばれる。R、R及びRの中の少なくとも1つは親水性基であり、残りはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~4のアルキル基またはアルコキシ基から選ばれる。
【化1】

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性ポリマーであって、
共役ジオレフィン、モノオレフィン及び式Iで示される親水性モノマーの共重合体であり、
【化1】
前記式Iでは、X、X及びXはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~4の直鎖または分岐鎖アルキル基から選ばれ、
前記R、R及びRの中の少なくとも1つは親水性基であり、残りはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~4のアルキル基またはアルコキシ基から選ばれることを特徴とする親水性ポリマー。
【請求項2】
前記共重合体はランダム共重合体であり、
前記共役ジオレフィンは炭素原子数4以上の共役ジオレフィンであり、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-シクロヘキサジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエンのうちの1種以上から選ばれることができ、好ましくは1,3-ブタジエンであり、および/または
前記モノオレフィンは芳香族モノビニル基化合物であり、スチレン、α-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、ブトキシスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン及びビニルナフタレンの中の1種以上から選ばれることができ、好ましくはスチレンであることを特徴とする請求項1に記載の親水性ポリマー。
【請求項3】
前記親水性基は、水酸基、アミノ基、カルボキシル基の中の少なくとも1種から選ばれるものであり、好ましくは水酸基であることを特徴とする請求項1または2に記載の親水性ポリマー。
【請求項4】
前記R、R及びRの中の少なくとも2つは親水性基であり、残りはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~4のアルキル基から選ばれることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の親水性ポリマー。
【請求項5】
前記Xと前記Xは水素原子であり、前記Xは炭素原子数1~4のアルキル基から選ばれることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の親水性ポリマー。
【請求項6】
数平均分子量Mnは12×10~17×10であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の親水性ポリマー。
【請求項7】
前記親水性ポリマーでは、前記共役ジオレフィン、前記モノオレフィン及び前記親水性モノマーからの質量部の比は10~90:90~10:1~6であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の親水性ポリマー。
【請求項8】
親水性ポリマーの製造方法であって、
共役ジオレフィン、モノオレフィン及び式Iで示される親水性モノマーを重合するステップを含み、
【化2】
前記式Iでは、X、X及びXはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~4の直鎖または分岐鎖アルキル基から選ばれ、
前記R、R及びRの中の少なくとも1つは親水性基であり、残りはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~4のアルキル基またはアルコキシ基から選ばれることを特徴とする親水性ポリマーの製造方法。
【請求項9】
共重合体はランダム共重合体であり、
前記共役ジオレフィンは炭素原子数4以上の共役ジオレフィンであり、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-シクロヘキサジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエンの中の1種以上から選ばれることができ、好ましくは1,3-ブタジエンであり、および/または、
前記モノオレフィンは芳香族モノビニル基化合物であり、スチレン、α-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、ブトキシスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン及びビニルナフタレンの中の1種以上から選ばれることができ、好ましくはスチレンであることを特徴とする請求項8に記載の親水性ポリマーの製造方法。
【請求項10】
前記親水性基は、水酸基、アミノ基、カルボキシル基の中の少なくとも1種から選ばれるものであり、好ましくは水酸基であることを特徴とする請求項8または9に記載の親水性ポリマーの製造方法。
【請求項11】
前記R、R及びRの中の少なくとも2つは親水性基であり、残りはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~4のアルキル基から選ばれることを特徴とする請求項8~10のいずれか1項に記載の親水性ポリマーの製造方法。
【請求項12】
前記Xと前記Xは水素原子であり、前記Xは炭素原子数1~4のアルキル基から選ばれることを特徴とする請求項8~11のいずれか1項に記載の親水性ポリマーの製造方法。
【請求項13】
数平均分子量Mnは12×10~17×10であることを特徴とする請求項8~12のいずれか1項に記載の親水性ポリマーの製造方法。
【請求項14】
前記親水性ポリマーでは、前記共役ジオレフィン、前記モノオレフィン及び前記親水性モノマーからの質量部の比は10~90:90~10:1~6であることを特徴とする請求項8~13のいずれか1項に記載の親水性ポリマーの製造方法。
【請求項15】
電極活物質スラリーであって、
電極活物質、分散媒及び請求項1~7のいずれか1項に記載の親水性ポリマーまたは請求項8~14のいずれか1項に記載の製造方法によって調製された親水性ポリマーを含み、好ましくは、前記電極活物質スラリーは負極活物質スラリーであることを特徴とする電極活物質スラリー。
【請求項16】
リチウムイオン二次電池であって、
正極シート、負極シート、セパレータ及び電解液を含み、前記負極シートは請求項15に記載の電極活物質スラリーで調製される負極膜層を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【請求項17】
請求項16に記載のリチウムイオン二次電池を含むことを特徴とする電池パック。
【請求項18】
請求項16に記載のリチウムイオン二次電池と請求項17に記載の電池パックの中から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする電気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はリチウム電池技術分野に関し、特に結着剤に使用できる親水性ポリマー、その製造方法及び該親水性ポリマーを含有するリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
新エネルギー自動車、スマートフォン、家電などの業界の急速な発展に伴い、リチウムイオン電池に対する市場の需要が高まっており、電極の製造に使用される接着剤に対してもより高い要求を求める。
【0003】
従来、リチウムイオン電池において、誘電率が高く、電気化学的耐食性に強いため、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を接着剤の材料として広く採用している。しかし、ポリフッ化ビニリデンの接着強度が低く、高温での電気化学的安定性が悪いため、安定したサイクル性能を提供することが困難であり、且つポリフッ化ビニリデンを接着剤材料として採用する場合、通常、N-メチルピロリドン(NMP)等の有機分散媒を分散剤として採用し、可燃性、爆発性、揮発性、高毒性、高回収コストの欠点がある。このため、加工性、接着性に優れた新しい水系接着剤を開発することは非常に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、上記問題を解決するために鋭意検討した結果、共役ジオレフィン、モノオレフィン、及び下記式Iで示す構造を有する親水性モノマーを共重合することにより、接着力が高く、且つ浮きやローラ粘着の問題がほとんどない接着剤が得られ、これにより、本発明を完了した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は、親水性ポリマーに関し、共役ジオレフィン、モノオレフィン及び下記式Iで示す構造の親水性モノマーを共重合することにより得られ、
【化1】
式では、X、X及びXはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~4の直鎖または分岐鎖アルキル基から選ばれ、R、R、Rはそれぞれ独立し、ただし、少なくとも1つは、同じまたは異なる親水性基を示し、残りは、水素原子または炭素数1~4から選ばれる直鎖または分岐鎖アルキル基またはアルコキシ基を示す。これにより、親水性と接着性が改善され、グラファイトなどの物質との親和力を向上させ、接着剤の浮きとローラ粘着の問題が改善される親水性モノマー変性共重合体を提供できる。
【0006】
本発明の親水性ポリマーの好ましい実施形態において、親水性ポリマーはランダム共重合体であり、共役ジオレフィンは1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-シクロヘキサジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエンのうちの1種以上であり、および/または、モノオレフィンは芳香族モノビニル基化合物であり、好ましくは、スチレン、α-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、ブトキシスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン及びビニルナフタレンの中の1種以上である。これにより、親水性ポリマーの親水性と接着性を更に向上させることができる。
【0007】
本発明の親水性ポリマーの好ましい実施形態において、親水性基は水酸基、アミノ基、カルボキシル基の中の少なくとも1種から選ばれるものであり、好ましくは水酸基である。これにより、親水性ポリマーの親水性と接着性を更に向上させることができる。
【0008】
本発明の親水性ポリマーの好ましい実施形態において、R、R及びRの中の少なくとも2つは親水性基であり、残りはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~4のアルキル基から選ばれる。これにより、親水性ポリマーの親水性と接着性を更に向上させることができる。
【0009】
本発明の親水性ポリマーの好ましい実施形態において、XとXは水素原子であり、Xは炭素原子数1~4のアルキル基から選ばれる。
【0010】
本発明の親水性ポリマーの好ましい実施形態において、その数平均分子量Mnは12×10~17×10である。
【0011】
本発明の親水性ポリマーの好ましい実施形態において、親水性ポリマーの中で、共役ジオレフィン、モノオレフィン及び親水性モノマーからの質量部の比は10~90:90~10:1~6である。これにより、より粘着力が強く、ゲル化しない親水性ポリマーを製造することができる。
【0012】
本発明はさらに親水性ポリマーの製造方法に関し、共役ジオレフィン、モノオレフィン及び式Iで示される親水性モノマーを重合して上記親水性ポリマーを得るステップを含み、
【化2】
式では、X、X及びXはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~4の直鎖または分岐鎖アルキル基から選ばれ、R、R及びRの中の少なくとも1つは親水性基であり、残りはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~4のアルキル基またはアルコキシ基から選ばれる。
【0013】
本発明の親水性ポリマーの製造方法の好ましい実施形態において、親水性ポリマーはランダム共重合体であり、共役ジオレフィンは1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-シクロヘキサジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエンのうちの1種以上および/または芳香族モノビニル基化合物から選ばれるモノオレフィンであり、好ましくはスチレン、α-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、ブトキシスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン及びビニルナフタレンの中の1種以上である。これにより、親水性ポリマーの親水性と接着性を更に向上させることができる。
【0014】
本発明の親水性ポリマーの好ましい実施形態において、親水性基は、水酸基、アミノ基、カルボキシル基の中の少なくとも1種から選ばれるものであり、好ましくは水酸基である。これにより、親水性ポリマーの親水性と接着性を更に向上させることができる。
【0015】
本発明の親水性ポリマーの製造方法の好ましい実施形態において、R、R及びRの中の少なくとも2つは親水性基であり、残りはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~4のアルキル基から選ばれる。これにより、親水性ポリマーの親水性と接着性を更に向上させることができる。
【0016】
本発明の親水性ポリマーの好ましい実施形態において、XとXは水素原子であり、Xは炭素原子数1~4のアルキル基から選ばれる。
【0017】
本発明の親水性ポリマーの製造方法の好ましい実施形態において、その数平均分子量Mnは12×10~17×10である。
【0018】
本発明の親水性ポリマーの製造方法の好ましい実施形態において、親水性ポリマーの中で、共役ジオレフィン、モノオレフィン及び親水性モノマーからの質量部の比は10~90:90~10:1~6である。これにより、より粘着力が強く、ゲル化しない親水性ポリマーを製造することができる。
【0019】
なお、本発明はさらに電極活物質スラリーに関し、電極活物質、分散媒及び結着剤としての上記親水性ポリマーを含有する。選択可能に、上記電極活物質スラリーは負極活物質スラリーである。これにより、結着剤の浮きが抑制され、ローラ粘着の問題が減少される活物質層を作製することができる。
【0020】
本発明はさらにリチウムイオン二次電池に関し、正極シート、負極シート、セパレータ及び電解液を含み、前記負極シートは上記電極活物質スラリーで製造される負極膜層を含む。これにより、寿命がより長いリチウムイオン二次電池を得ることができる。
【0021】
本発明は、上記のリチウムイオン二次電池を含む電池パックに関する。これにより、寿命がより長い電池パックを得ることができる。
【0022】
本発明はさらに、上記のリチウムイオン二次電池と電池パックの中の少なくとも1種を含む電気装置に関する。これにより、寿命がより長い電気装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本願の一実施形態による二次電池の模式図である。
図2図1に示す本願の一実施形態による二次電池の分解図である。
図3】本願の一実施形態による電池パックの模式図である。
図4図3に示す本願の一実施形態による電池パックの分解図である。
図5】本願の一実施形態による二次電池を電源して使用する電気装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を適切に参照して本願を詳細に説明する。しかし、必要ではない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、公知事項の詳細な説明や、実際に同じ構造の重複した説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供され、請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0025】
本願で開示された「範囲」は下限と上限の形態で限定され、所定の範囲は1つの下限と1つの上限を選択して限定され、選択された下限と上限によって特別な範囲の境界が限定される。このように限定される範囲は、境界値を含むものであっても、境界値を含まないものであってもよく、且つ任意に組み合わせることができ、即ち、任意の下限は任意の上限と組み合わせて1つの範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータに対して60-120と80-110の範囲がリストされている場合、60-110と80-120の範囲も予想されると理解される。なお、最小範囲値1と2、最大範囲値3、4及び5がリストされていると、以下の範囲、1-3、1-4、1-5、2-3、2-4及び2-5はすべて予想できる。本願では、他の説明がない限り、数値の範囲「a-b」は、aからbまでの任意の実数の組み合わせの省略表現を示し、aとbの両方が実数である。例えば数値範囲「0-5」は、本明細書でリストされている「0-5」の間のすべての実数を示し、「0-5」は、ただこれらの数値の組み合わせの省略表現である。また、あるパラメータが≧2の整数を示すと、該パラメータが、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などの整数であることに相当する。
【0026】
特別な説明がない限り、本願の全ての実施形態及び好ましい実施形態は互いに組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができる。
【0027】
特別な説明がない限り、本願の全ての技術的特徴及び好ましい技術的特徴は互いに組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができる。
【0028】
特別な説明がない限り、本願の全てのステップは順番に行っても、ランダムに行ってもよく、順番に行うことが好ましい。例えば、前記方法はステップ(a)と(b)を含むのは、前記方法が順番に行われるステップ(a)と(b)を含んでもよく、順番に行われるステップ(b)と(a)を含んでもよいことを示す。例えば、以上で言及された前記方法は、ステップ(c)を含んでもよいのは、ステップ(c)を任意の順番で前記方法に加えることができることを示し、例えば、前記方法はステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)及び(b)を含んでもよい。
【0029】
特別な説明がない限り、本願で言及された「備える」と「含む」は、非限定的なものであっても、限定的なものであってもよいことを示す。例えば、前記「備える」と「含む」は、リストされていない他の成分をさらに備えるまたは含むことができ、リストされた成分のみを備えるまたは含むことができる。
【0030】
特別な説明がない限り、本願において、「または」という用語は包括的である。例えば、「AまたはB」という単語は、「A、B、またはAとBの両方」を示す。より具体的に、Aが真(または存在する)で且つBは偽(または存在しない)である条件、Aは偽(または存在しない)であるが、Bが真(または存在する)である条件、またはAとBの両方とも真(または存在する)である条件のいずれかが、いずれも「AまたはB」という条件を満たす。
【0031】
本発明において、特に断りのない限り、通常「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0032】
水系接着剤として、現在、スチレン-ブタジエン共重合体(以下、単にスチレンブタジエンゴムまたはSBR)乳液を接着剤とし、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)と一緒にスラリーを作製し、グラファイト等のリチウム電池の負極材料の接着に用いることは、主流である。
【0033】
このようなスラリー系では、CMCは疎水性のカルボキシル基で変性されていない主鎖で疎水性のグラファイト粒子の表面に吸着し、親水性のカルボキシル基でCMCを吸着させたグラファイトを水中に安定に懸濁する。SBRの良好な弾性及びCMCの良好な分散効果を利用して、リチウム電池の負極材料の接着を実現する。
【0034】
しかし、SBRは撥水性を有するため、SBRとCMCを分散したグラファイトスラリーとの相容性が悪くなる現象が発生しやすい。このような水系CMC-SBR混合接着剤は、負極シートを製造する過程では、スラリーが静置している間にSBRが浮上する現象が発生しやすい。また、SBR粒子による可視光の散射により、波長が短い青色光は散射強度が大きいため、スラリーの青浮き現象が発生しやすい。
【0035】
また、電極シート、例えば負極シートは、塗布、乾燥の過程で、上下に不均一に加熱され、電極シートの内部に対流現象と毛管現象が更に発生し、水分の移動に伴ってSBRが電極シートの表面に上昇しやすくなり、さらに、電極シートの縦方向における乾燥後の接着剤の分布が不均一になり、活物質間及び活物質と集電体との間の接着力が低下し、負極は、ロールでプレスされた表面がローラを粘着し、ひいてはひどい場合に膜脱落を引き起こし、最終的に電池性能が低下する。
【0036】
本発明の親水性ポリマーは、共役ジオレフィン、モノオレフィン及び下記式Iで示される親水性モノマーをラジカル乳化共重合して得られ、
【化3】
式では、X、X及びXはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~4の直鎖または分岐鎖アルキル基から選ばれ、R、R及びRの中の少なくとも1つは親水性基であり、残りはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~4のアルキル基またはアルコキシ基から選ばれる。
【0037】
親水性共重合体では、共役ジオレフィン、モノオレフィン及び親水性モノマーからの質量部の比は10~90:90~10:1~6、より好ましくは10~30:90~70:3~6である。
【0038】
本発明の効果に影響を与えない範囲内で、共役ジオレフィン、モノオレフィン及び親水性モノマーと共重合可能な他のモノマーを共重合してもよい。
【0039】
共役ジオレフィン
共役ジオレフィンとして、炭素原子数4以上の共役ジオレフィン、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-シクロヘキサジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエンなどが挙げられる。これらの共役ジオレフィンは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。電極の剥離強度を高める点から、好ましくは、1,3-ブタジエン、イソプレンである。ポリマーの熱安定性を高め、電極の剥離強度と耐湿性をより高める点から、より好ましくは1,3-ブタジエンである。
【0040】
また、本発明の目的を損なわない範囲内で、上記共役ジオレフィンモノマーは本分野でよく使用される置換基を有することができ、このような置換基として、直鎖または分岐鎖のC1-6アルキル基またはそのハロゲン化アルキル基が挙げられ、具体的に、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、n-ペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、1,4-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、n-ヘキシルが挙げられる。また、上記ハロゲン化アルキル基として、上記直鎖または分岐鎖のC1-6アルキル基の中の1つまたは複数の水素原子がフッ素、塩素、臭素、ヨウ素で置換される基が挙げられる。
【0041】
モノオレフィン
モノオレフィンとして、1つの不飽和エチレン結合を有する化合物、例えば芳香族モノビニル基化合物、またはエチレン、プロピレンなどのオレフィン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル等のアクリル系化合物、フルオロエチレン、塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン、オレイン酸などの不飽和脂肪酸、エチレンアセテート、アクリロニトリルなどが挙げられる。好ましくは、芳香族モノビニル基化合物である。
【0042】
芳香族モノビニル基化合物として、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、クリセン、ペリレン、ベンゾピレンのビニル誘導体などの単環、多環または縮合環芳香化合物のビニル誘導体が挙げられる。且つ、本発明の目的を損なわない範囲内で、上記芳香化合物のビニル誘導体は、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲンなどの各種の置換基を有してもよい。このようなモノオレフィンとして、スチレン、α-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、ブトキシスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン及びビニルナフタレンなどが挙げられる。ここで、粒子状ポリマーの熱安定性を向上させ、電極の剥離強度及び耐湿性を向上させる点から、スチレンが好ましい。これらのモノオレフィンは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができ、1種を単独で使用することが好ましい。
【0043】
親水性モノマー
本発明の親水性モノマーとして、下記式Iで示される親水性モノマーであり、
【化4】
式では、X、X及びXはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~4の直鎖または分岐鎖アルキル基から選ばれ、R、R及びRの中の少なくとも1つは親水性基であり、残りはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~4のアルキル基またはアルコキシ基から選ばれる。
【0044】
上記親水性モノマーのうち、上記親水性基は、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などの水素結合を形成しやすい本分野でよく使用される親水性基が挙げられる。これらの親水性基のうちの1種または2種以上を有することができる。スラリー組成物の粘度安定性の向上と電極の剥離強度の向上、及び酸、アルカリ、高温、高湿等の悪い環境に対する耐受性の点から、好ましくは水酸基、アミノ基及びカルボキシル基であり、より好ましくは水酸基とアミノ基であり、特に好ましくは水酸基である。
【0045】
上記親水性モノマーでは、上記親水性基から選ばれる基を1つだけ有してもよいし、2つ以上有してもよい。スラリー組成物の粘度安定性の向上と電極の剥離強度の向上、及び酸、アルカリ、高温、高湿等の悪い環境に対する耐受性の点から、2つの親水性基を有することが好ましく、2つの親水性基が互いにベンゼン環上のオルト位置にあることがより好ましい。
【0046】
また、モノオレフィンと共役ジオレフィンからの繰り返し単位の合計値は100質量部である場合、親水性モノマーの繰り返し単位の添加量は、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、且つ好ましくは6質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。親水性モノマーの繰り返し単位の添加量が上記範囲内にあると、スラリー組成物の安定性を向上させ、塗布密度を高めるとともに、結着剤の浮きを抑制し、さらに電極シートがロールプレスされる際のローラ粘着問題を抑制し、電極複合材料層の電極の操作性をより向上させることができる。
【0047】
本発明では、共役ジオレフィン、モノオレフィン及び親水性モノマーを共重合して、構造的に結着剤の親水性を改善することによって、結着剤が活物質とより強い親和性を有し、根本的に乾燥時の浮きとロールプレス時のローラ粘着問題を回避する。
【0048】
このような構造の親水性ポリマーによる接着剤系の改善メカニズムは不明であるが、本発明者は、本発明の親水性ポリマー中の親水性基と芳香環による共有結合と非共有結合の作用が原因であると推定した。具体的に、本発明の親水性ポリマーモノマーは芳香環構造を有し、少なくとも1つの親水性置換基を有し、このように、以下のような非共有結合作用(i)、(ii)、(iii)及び共有結合作用(iv)を有する。
(i)水素結合作用:水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などの親水性基の中で、そのうちのO、N、P、Sなどの非水素元素はそれ自体強い極性を有し、該親水性基がその他の極性基と水素結合を形成しやすく、且つ該親水性基は孤立した電子対も持っているので、他の活性基の水素原子と水素結合を形成することができる。
(ii)配位作用:親水性基に存在する非水素元素は、該親水性基に弱酸/弱塩基性と強還元性を持たせ、強い金属配位能力を有し、Fe3+、Cu2+、V3+等の金属イオンとキレートを形成しやすく、流体から固体への相転移を実現し、さらに、接着剤の硬化を実現する。
(iii)π-πスタッキング作用:本発明の親水性ポリマーはベンゼン環を有し、芳香性を持ち、その中の価電子はSP2混成軌道で結合形成に関与し、他の芳香環基、例えばモノオレフィンの中の芳香環基、グラファイト等の活物質の中のSP2混成電子とπ-π非共有結合の電子相互作用を形成しやすい。
(iv)共有結合作用:R、R、Rの親水性基の中で、該親水性基はいずれも高い活性を有し、酸化されやすく、重合反応に寄与し、且つアミノ基またはメルカプト基を含有する物質とシッフ塩基反応及びマイケル付加などの反応を起こしやすく、これにより、安定した共有結合を形成し、接着剤の接着性を強化する。
【0049】
本発明者は、本発明において、親水性モノマー、共役ジオレフィン、モノオレフィンの共重合体を採用したので、上記(i)、(ii)、(iii)、(iv)の作用を利用することができ、構造的に結着剤と活物質との間の親和性を強化し、根本的に乾燥時の結着剤の浮きとロールプレス時のローラ粘着問題を回避すると推定した。
【0050】
特に好ましくは、R、R、Rの親水性基は2つの隣接する水酸基(-OH)である場合、即ち該親水性モノマーはカテコール構造である場合、フェノール性水酸基の極性が非常に強いため、水素結合を形成しやすく、強い還元性を有すると同時に、弱酸性を有し、非常に強い金属配位能力を備え、且つその中の酸素原子の価電子はSP2混成軌道で結合形成に関与しやすく、その他の芳香環基とのπ-π非共有結合の電子相互作用を実現しやすく、フェノール性水酸基自体が酸化されてやすく、化学活性の高いp-ベンゾキノンを生成し、重合反応に寄与し、アミノ基またはメルカプト基を含有する物質とシッフ塩基反応及びマイケル付加などの反応を起こしやすく、これにより、安定した共有結合を形成しやすく、これにより接着剤を硬化させるため、特に好ましい。
【0051】
合成過程では親水性モノマー、共役ジオレフィン、モノオレフィンを共重合することにより、共重合体そのものの親水性を高め、活物質と集電体との間の接着性を向上させることができ、これにより、乾燥過程における電極シートの浮き問題を改善する。
【0052】
その他のモノマー
本発明の親水性ポリマーにはその性質に影響を与えることなく、他のモノマーが含まれてもよい。他のモノマーとして、共役ジオレフィン、モノオレフィン及び親水性モノマーと共重合するものであれば、特に限定されない。他のモノマーは共役ジオレフィン、モノオレフィン及び親水性モノマーと一緒に重合して親水性ポリマーを得ることができ、共役ジオレフィン、モノオレフィン及び親水性モノマーが親水性ポリマーに重合した後、該ポリマーとさらに共重合またはグラフト重合してもよい。
【0053】
親水性ポリマーの製造方法
本発明の他の態様は、親水性ポリマーの製造方法に関し、上記共役ジオレフィン、モノオレフィン、親水性モノマーを分散媒中に分散した後、必要に応じて乳化剤、分子量調節剤を添加して混合液とし、次に、開始剤の存在下で共重合反応を行い、親水性ポリマーまたはその分散液を得る。
【0054】
共役ジオレフィン、モノオレフィン、親水性モノマーを重合する方法は特に限定されず、重合時の活性基の観点から、ラジカル重合、活性ラジカル重合、カチオン重合またはアニオン重合が挙げられ、重合系の種類の観点から、懸濁重合、乳化重合または溶液重合が挙げられる。重合及び後処理の簡便の観点から、ラジカル重合が好ましく、ラジカル乳化重合がより好ましい。
【0055】
分散媒
本発明に使用される分散媒は、共重合反応でよく使用される分散媒、例えば水、アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルカン類、ハロゲン化アルキル類、アミド類等またはそれらの混合物を採用することができる。環境保護の観点から、水が好ましい。
【0056】
ラジカル開始剤
本発明に使用される開始剤は、ラジカル重合でよく使用される各種の水溶性または油溶性ラジカル開始剤を採用することができ、具体的に、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジイソヘプタニトリル、アゾビスイソブチロリン酸ジメチル開始剤、アゾジイソブチミジン塩酸塩などのアゾ化合物類、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの無機過酸化物および過硫酸塩類、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドt-ブチル、過酸化ブタノンなどの過酸化物類などが挙げられる。
【0057】
上記ラジカル開始剤の添加量は特に限定されず、親水性ポリマーの量に応じて適切に添加でき、親水性ポリマーを構成する構造単位のモノマー合計値を100質量%とする場合、好ましくは0.1~2%、より好ましくは0.15~1%である。開始剤の使用量を適切に調整することによって、親水性ポリマーの分子量を制御することができる。
【0058】
本発明の親水性ポリマーでは、スラリー組成物の粘度安定性と電極の剥離強度の向上を実現するために、スラリー組成物の分散容易性と塗布容易性を考慮すると、本発明の親水性ポリマーの数平均分子量は、好ましくは8×10~30×10であり、より好ましくは12×10~17×10である。分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレンとして換算される分子量である。
【0059】
乳化剤
本発明の親水性ポリマーの製造過程では、必要に応じて乳化剤などを添加してもよい。
【0060】
本発明に使用される乳化剤は、ラジカル乳化共重合でよく使用される乳化剤、例えばアニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤、及び両性乳化剤を採用することができる。
【0061】
アニオン系乳化剤として、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ロジン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ナフテン酸ナトリウム、ロジン油石鹸などのカルボン酸塩(石鹸)型乳化剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、α-スルホモノカルボン酸エステル、脂肪酸スルホニルアルキルエステル、コハク酸エステルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、石油スルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、アルキルグリセリルエーテルスルホン酸塩などのスルホン酸塩型乳化剤、ラウリル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アリルポリオキシエチレンエーテル硫酸塩などの硫酸エステル塩型乳化剤、アルキルリン酸モノ、ジエステル塩、脂肪族アルコールポリオキシエチレンエーテルのリン酸モノビスエステル塩及びアルキルフェノールポリオキシエチレンエーテルのリン酸モノ、ジエステル塩などのリン酸エステル塩型乳化剤が挙げられる。
【0062】
カチオン系乳化剤として、塩化ラウリルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルピリジニウムなどのアルキルアミン塩及び四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0063】
ノニオン系乳化剤として、分子中にエーテル基、エステル基、アミド基を有するノニオン系乳化剤や複素環系乳化剤が挙げられ、具体的に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック共重合体、ポリビニルアルコールなどのジオール型またはポリオール型ノニオン系乳化剤が挙げられる。
【0064】
両性乳化剤として、各種のアミノ基酸とベタイン型の両性乳化剤が挙げられる。
【0065】
上記乳化剤の添加量は特に限定されず、親水性ポリマーの量に応じて適切に添加でき、親水性ポリマーを構成する構造単位のモノマー合計値を100質量%とする場合、好ましくは0.2~2%、より好ましくは0.2~0.5%である。
【0066】
分子量調節剤
本発明の親水性ポリマーの製造過程では、必要に応じて分子量調節剤などを添加してもよい。
【0067】
本発明の親水性ポリマーでは、共重合体の分子量を調整するために、必要に応じて分子量調節剤などを添加してもよい。本発明に用いられる分子量調節剤は、ラジカル乳化共重合によく使用される脂肪族チオール類、キサントゲン酸ジスルフィド類、多価フェノールなどを採用することができ、具体的に、ラウリルメルカプタン、酢酸ラウリルメルカプタン、シュウ酸ジラウリルメルカプタンエステル、ジイソプロピルキサントゲン二硫化エステル、フェノール、オイゲノール等が挙げられる。
【0068】
上記分子量調節剤の添加量は特に限定されず、上記親水性ポリマーの目標分子量に応じて適切に添加することができ、親水性ポリマーを構成する構造単位のモノマー合計値を100質量%とする場合、好ましくは0.1~1%であり、より好ましくは0.1~0.5%である。分子量調節剤の使用量を適切に調整することによって、親水性ポリマーの分子量を制御することができる。
【0069】
上記共役ジオレフィン、モノオレフィン及び親水性モノマーを共重合する際の乳化方法は特に限定されず、本分野によく使用される乳化方法を採用することができる。例えば、乳化装置として、各種の公知の乳化分散機を採用することができ、具体的に、IKA-LTRA-TURRAXが挙げられる。また、乳化分散機を利用して乳化操作を行う条件、例えば、処理温度、処理時間なども特に限定されず、乳化剤とラジカル開始剤の種類に応じて選択することができ、所望の分散状態にする方式で適切に選択すればよい。
【0070】
なお、上記重合と乳化では、乳化剤、開始剤、分散媒、分子量調節剤などの添加剤の種類及び添加量を示したが、当業者にとって、上記で用いられる乳化剤、分散媒、開始剤、分子量調節剤などの添加剤は、よく使用される種類及び添加量を使用し、重合方法などに応じて適切に調整することができることを理解すべきである。
【0071】
本発明において、共重合後で得られた親水性ポリマー粒子の粒径は80~400nmであり、好ましくは100~200nmである。親水性ポリマー粒子の粒径が小さいほど、接着剤と活物質との接触点が多くなるため、接着力を増加させることができる。しかし、粒径が小さすぎると、乾燥中に移行しやすく、浮き問題が発生し、次に、粒径が小さすぎると、リチウムイオン二次電池の動力学的性能に影響を及ぼす。親水性ポリマー粒子が上記粒径を有することにより、浮きを抑制すると同時に、良好な接着力を有することができる。
【0072】
また、本明細書では、共重合後で得られた親水性ポリマー粒子の粒径とは、レーザー回折法により測定した粒径である。
【0073】
また、スラリー組成物の粘度安定性と電極の剥離強度を向上させ、重合の不十分によるスラリーの青浮きとそれによる接着剤の浮きを避けるために、本発明の共重合では、低い温度で、加圧状態で低い回転数で撹拌することが好ましい。例えば、20~100℃で、好ましくは70~95℃の温度で、0.1~2.0MPaで、好ましくは0.6~1.0MPaの圧力下で、100~250、好ましくは150~200rpmの回転数で共重合することにより、粒径が上記範囲内にある親水性ポリマー粒子を得ることができ、特にリチウムイオン電池の電極シートを製造するためのスラリーを調製するのに特に適用する。
【0074】
以上のように得られた分散液の中で、固形分は30~70%、好ましくは40~60%である。固形分が低すぎると、製造設備が重く、製造効率が低くなり、固形分が高過ぎると、撹拌が不均一になる恐れがある。
【0075】
また、スラリー組成物の粘度安定性と電極の剥離強度を向上させ、重合の不十分によるスラリーの青浮きとそれによる接着剤の浮きを避けるために、本発明の共重合では、好ましくは、分散液のpH値を6~9に制御する。pH値の制御は、本分野でよく使用される酸またはアルカリ、好ましくは弱酸または弱アルカリを採用することができ、例えば酢酸、塩酸、硫酸などの酸、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ジエタノールアミンなどのアルカリである。
【0076】
活物質スラリー
本発明の親水性ポリマーは、電極活物質及び必要に応じて添加した他の材料とともに分散媒に分散することにより活物質スラリー組成物を製造することができる。
【0077】
電極活物質として、特に限定されず、形成された後述する電極シートに含まれる各種の活物質を使用することができる。
【0078】
負極シート
負極シートは、負極集電体及び負極集電体の少なくとも1つの表面に設けられる負極膜層を含み、前記負極膜層は負極活性材料を含む。
【0079】
例として、負極集電体は、自体の厚さ方向に対向する2つの表面を有し、負極膜層は負極集電体の対向する2つの表面のいずれか一方または両方に設けられる。
【0080】
いくつかの実施形態において、前記負極集電体には金属箔シートまたは複合集電体が採用することができる。例えば、金属箔シートとして、銅箔を用いることができる。複合集電体は、高分子材料基材層と、高分子材料基材層の少なくとも1つの表面に形成される金属層とを含むことができる。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成することによって形成されることができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、負極活性材料には本分野で公知の電池用の負極活性材料を採用することができる。例として、負極活性材料は、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン系材料、スズ系材料及びチタン酸リチウムなどの材料の中の少なくとも1つを含むことができる。前記シリコン系材料は、シリコン単体、シリコン酸化物、シリコン-カーボン複合物、シリコン-窒素複合物及びシリコン合金の中の少なくとも1つから選ばれることができる。前記スズ系材料は錫単体、錫酸化合物及び錫合金の中の少なくとも1つから選ばれることができる。しかし、本願はこれらの材料に制限されず、電池の負極活性材料として使用できる他の従来の材料を使用してもよい。これらの負極活性材料は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0082】
いくつかの実施形態において、負極膜層はさらに結着剤を含む。前記接着剤に本発明の親水性ポリマーが含まれる。
【0083】
重合過程では親水性モノマー、共役ジオレフィン、モノオレフィンを共重合することにより、親水性ポリマーが得られる。該親水性ポリマーを接着剤として使用する場合、接着剤の親水性が明らかに増加し、乾燥中に水の蒸発に伴う接着剤が表面に浮き上がる現象を軽減することができ、このように得られた接着剤は、それ自体が構造的に非常に強い接着力を有するため、活物質及び極シートとの間の接着強度を高める。
【0084】
いくつかの実施形態において、負極膜層はさらに導電剤を含むことが好ましい。導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、コーチンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーの中の少なくとも1つから選ばれることができる。
【0085】
いくつかの実施形態において、負極膜層はさらに、増粘剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などの他の補助剤を含むことが好ましい。
【0086】
いくつかの実施形態において、以下のように負極シートを製造することができ、上記の負極シートを製造するための上記の成分、例えば負極活性材料、導電剤、結着剤及び任意の他の成分を分散媒(例えば脱イオン水)に分散して、負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体にコーティングし、乾燥、冷間プレスなどの工程を経てから、負極シートを取得することができる。
【0087】
正極シート
【0088】
正極シートは、正極集電体及び正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられる正極膜層を含み、前記正極膜層は正極活性材料を含む。
【0089】
例として、正極集電体は、自体の厚さ方向に対向する2つの表面を有し、正極膜層は正極集電体の対向する2つの表面のいずれか一方または両方に設けられる。
【0090】
いくつかの実施形態において、正極集電体には金属箔シートまたは複合集電体が採用することができる。例えば、金属箔シートとして、アルミニウム箔を用いることができる。複合集電体は、高分子材料基材層と高分子材料基材層の少なくとも1つの表面に形成される金属層を含む。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成することによって形成されることができる。
【0091】
いくつかの実施形態において、正極活性材料には本分野において周知の電池用正極活性材料が採用することができる。例として、正極活性材料は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物及びそのそれぞれの変性化合物の中の少なくとも1つを含むことができる。本願はこれらの材料に制限されず、他の電池正極活性材料として使用できる従来の材料を使用してもよい。これらの正極活性材料は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。リチウム遷移金属酸化物の例として、コバルトリチウム酸化物(例えばLiCoO)、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMnO、LiMn)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3(NCM333と略称することもできる)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523と略称することもできる)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25(NCM211と略称することもできる)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM622と略称することもできる)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811と略称することもできる)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えばLiNi0.85Co0.15Al0.05)及びその変性化合物などの中の少なくとも1つを含むが、これらに制限されない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例として、リン酸鉄リチウム(例えばLiFePO(LFPと略称することもできる))、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガンリチウム(例えばLiMnPO)、リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素の複合材料の中の少なくとも1つを含むが、これらに制限されない。
【0092】
いくつかの実施形態において、正極膜層は、結着剤をさらに含む。前記接着剤はポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及び含フッ素アクリレート樹脂の中の少なくとも1つを含むことができ、本発明の親水性ポリマーを含んでもよい。
【0093】
いくつかの実施形態において、正極膜層はさらに導電剤を含む。例として、前記導電剤は超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、コーチンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーの中の少なくとも1種を含むことができる。
【0094】
いくつかの実施形態において、以下のように正極シートを製造することができ、上記の正極シートを製造するための成分、例えば正極活性材料、導電剤、結着剤及び任意の他の成分を分散媒に分散し、正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスなどの工程を経た後、正極シートを得ることができる。
【0095】
電解質
電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。本願は、電解質の種類に対して具体的に制限されず、必要に応じて選択できる。例えば、電解質は、液体、ゲル化、または全固体にすることができる。
【0096】
いくつかの実施形態において、前記電解質は電解液を採用することができる。前記電解液は電解質塩と溶剤を含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、電解質塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、ジフルオロスルホニルイミドリチウム、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドリチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム、ビス(シュウ酸)ホウ酸リチウム、ジフルオロジシュウ酸リン酸リチウム及びテトラフルオロシュウ酸リン酸リチウムの中の少なくとも1種から選ばれることができる。
【0098】
いくつかの実施形態において、溶剤はエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1,4-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン及びジエチルスルホンの中の少なくとも1種から選ばれることができる。
【0099】
いくつかの実施形態において、前記電解液はさらに添加剤を含む。例えば添加剤は、負極膜形成添加剤、正極膜形成添加剤を含むことができ、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温または低温性能を改善する添加剤など、電池のある性能を改善できる添加剤を含んでもよい。
【0100】
セパレータ
いくつかの実施形態において、二次電池にさらにセパレータが含まれる。本願はセパレータの種類に対して特別に制限されず、任意の公知の良好な化学的安定性と機械的安定性を有する多孔質構造セパレータを選択することができる。
【0101】
いくつかの実施形態において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンの中の少なくとも1つから選ばれることができる。セパレータは、特に制限されず、単層の薄膜であってもよく、多層の複合薄膜であってもよい。セパレータが多層の複合薄膜である場合、各層の材料は、特に制限されず、同様でも、異なってもよい。
【0102】
いくつかの実施形態において、正極シート、負極シート及びセパレータは巻回プロセスまたはラミネートプロセスによって電極アセンブリを製造することができる。
【0103】
いくつかの実施形態において、二次電池は外装を含んでもよい。該外装は、上記電極アセンブリ及び電解質を封止するために使用できる。
【0104】
いくつかの実施形態において、二次電池の外装は、例えば硬質プラスチックシェル、アルミニウムシェル、スチールシェルなどのハードシェルであってもよい。二次電池の外装は、パウチソフトバッグなどのソフトバッグであってもよい。ソフトバッグの材質は、プラスチックであってもよく、プラスチックとして、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。
【0105】
本願は、二次電池の形状に対して特に制限されず、円柱形、角形またはその他の任意の形状であってもよい。例えば、図1は角形構造の二次電池5の一例である。
【0106】
いくつかの実施形態において、図2を参照し、外装は、ハウジング51とカバープレート53を含むことができる。ハウジング51は底板と底板に接続される側板を含むことができ、底板と側板が収納室を形成するように囲むことができる。ハウジング51は収納室に連通される開口を有し、カバープレート53は、前記収納室を閉鎖するように前記開口に覆われることができる。正極シート、負極シート及びセパレータは巻回プロセスまたはラミネートプロセスによって電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は前記収納室内に封止される。電解液が電極アセンブリ52内に浸潤する。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は1つまたは複数であってもよく、当業者は具体的な実際の必要に応じて選択することができる。
【0107】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の二次電池5は電池モジュール4として組み立てた後、電池パック1に組み立てることができる。電池パック1に含まれる電池モジュール4の数は1つまたは複数であってもよく、具体的な数について、当業者は電池パック1の応用と容量に応じて選択できる。
【0108】
また、本願は、本願による二次電池、電池モジュール、または電池パックの中の少なくとも1種を含む電気装置を提供する。前記二次電池、電池モジュール、または電池パックは前記電気装置の電源として使用でき、前記電気装置のエネルギー貯蔵ユニットとしても使用できる。前記電気装置としては、モバイル機器(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含むが、これらに制限されない。
【0109】
前記電気装置として、その使用必要に応じて二次電池、電池モジュールまたは電池パックを選択できる。
【0110】
図3図4は電池パック1の一例である。図3図4を参照し、電池パック1には、電池箱と電池箱内に設けられる複数の電池モジュール4が含まれてもよい。
【0111】
電池箱は上箱体2と下箱体3を含み、上箱体2は下箱体3に覆われることができ、電池モジュール4を収納するための閉鎖空間を形成する。複数の電池モジュール4は任意の方式で電池箱内に配布されることができる。
【0112】
図5は電気装置の一例である。該電気装置は純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、またはプラグインハイブリッド電気自動車などである。該電気装置の二次電池の高出力と高エネルギー密度の需要を満たすために、電池パックまたは電池モジュールを用いることができる。
【0113】
他の例としては、携帯電話、タブレット、ノートパソコンなどであってもよい。該装置は、通常、薄型化を求め、二次電池を電源として使用することができる。
【0114】
実施例
【0115】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、当業者が、下記実施例は説明の例に過ぎず、本発明はこれらの実施例に限定されないことを理解すべきである。
【0116】
且つ、実施例と比較例では、以下の方法によって本発明におけるポリマーの各モノマー単位の割合、固形分、平均粒径、pH値、分子量、及びローラ粘着度合い、剥離力及び導電率を測定して評価する。
【0117】
実施例1
<親水性ポリマーの調製>
1000mlの加圧反応釜に、乳化剤としてドデシルスルホン酸ナトリウム0.2質量部、開始剤として過硫酸カリウム0.1質量部、及び分散媒として蒸留水150質量部を添加し、溶液に完全に溶解する。その後、共役ジエンとして1,3-ブタジエン10質量部、モノオレフィンとしてスチレン90質量部、親水性モノマーとして3,4-ジヒドロキシ-スチレン3質量部を添加する。0.6Mpaの条件下で撹拌加熱し、温度が80℃に上昇すると、該温度で6h反応し、重合反応を行う。反応が終了した後、温度が25℃に下がるまで、フィルターで濾過して親水性ポリマーの乳液を得る。得られた親水性ポリマーの乳液固形分、Malven粒径計を使用して測定した平均粒径、PHS-3C精密pH機を使用して測定したpH値、及びGPC法を使用して測定した分子量(ポリスチレン換算)を表1に示す。また、電極シートの剥離力、ローラ粘着度合いの結果を表1に示す。
【0118】
ここで、なお、NMR測定により、得られた親水性ポリマー中の各モノマーに由来する割合は投入割合とほぼ同じであることが確認される。
【0119】
<負極シートの調製>
負極活性材料としてグラファイト96.0質量部、導電剤として導電性カーボンブラック(SP)0.9質量部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)1.5質量部、以上のように製造された親水性ポリマー1.6質量部を適量の脱イオン水で十分に混合し、固形分54%の負極用スラリー組成物を取得する。
【0120】
スラリー組成物を作製する際に、分散液から抽出した純親水性ポリマーを添加してもよいし、親水性ポリマーの分散液を添加してもよい。分散液の形態で親水性ポリマーを添加する場合、上記添加量は純親水性ポリマーに換算したときの質量である。最終的に適量の脱イオン水で負極スラリー組成物中の固形分を調整する。操作の簡便さの観点から、親水性ポリマーを重合した後、親水性ポリマー分散液を直接またはフィルターで濾過した後、上記負極用スラリー組成物の調製に用いられる。
【0121】
乾燥後の塗布量が282mg/cmになるように、上記スラリーを負極集電体である銅箔の表面に均一に塗布し、90℃のオーブン内で乾燥し、集電体に負極フィルムシートが形成された負極素材を得る。
【0122】
次に、該負極素材を温度25℃の環境でロールプレスし、負極シートを得る。このように得られた負極シートについて、以下のように剥離強度(剥離力)を測定し、ローラ粘着度合いを評価した。結果を表1に示す。
【0123】
<剥離強度の試験>
本発明の剥離強度試験では、まず、上記ロールプレス後に得られた負極シートを縦方向の長さ100.0mm±0.1mm、横方向の幅20.0mm±0.1mmのサンプル各5本に均一に裁断する。両面テープで試験対象の一側の表面を接着し、試験面を2kgでプレスロールで固め、両面テープと負極シートを完全に貼り合う。両面テープの他側の表面と4×15cmの304ステンレス板の表面とを貼り付け、サンプルの一端を逆方向に折り曲げ、極シートを接着したステンレス板の一端をH型引張り機の下方治具に固定し、サンプルの曲げ末端を上方治具に固定し、サンプルの剥がした部分の縦軸が上下治具の中心線と重なるようにサンプル角度を調整し、適切に締め付けする。次に、温度25±2℃、相対湿度RH=65±5%の条件で、サンプルがすべて基板から剥離するまで、50mm/minの速度でサンプルを引っ張って、過程における変位と作用力を記録し、力を受けて釣り合っているときの力を電極シートの剥離力とする。5回の結果の平均値を剥離力とする。
【0124】
<ローラ粘着度合いの評価>
10名の専門家が負極シートの調製過程におけるローラ粘着度合いを肉眼で観察し、下記の三段階分類法で評価し、その評価の平均値をローラ粘着度合いの評価値とする。
○:ローラ粘着が観察されていないか、ほとんどない
△:わずかなローラ粘着があるが、剥離しやすい
×:ローラ粘着度合いがひどく、剥離できない
【0125】
<正極シートの調製>
プラネタリーミキサーに正極活性材料としてリン酸鉄リチウム95質量部、導電剤として市販のカーボンブラック2.5質量部、接着剤として市販のポリフッ化ビニリデン2.5質量部を混合する。有機溶剤N-メチルピロリドンを添加し、温度25±0.5℃で撹拌して混合し、粘度(DV-2TLVボーラー飛行型粘度計を使用し、温度:25±0.5℃、ローター:64#、ローター回転数:12rpmの条件下で測定する)が11000mPa・sの正極用スラリー組成物を得る。
【0126】
集電体としての厚さ13μmのアルミニウム箔に、乾燥後の塗布量が326±50mg/cmになるように得られた正極用スラリー組成物を塗布する。125℃のオーブン内で乾燥させ、集電体上に正極材料層を形成した正極素材を得る。
【0127】
次に、該正極素材を温度25℃の環境下でロールプレスし、正極シートを得る。
【0128】
<セパレータの調製>
セパレータとして、汎用のポリエチレン多孔質セパレータを準備する。
【0129】
<リチウムイオン電池の製造>
上記の負極シート、正極シート及びセパレータを使用して積層し、コアを得る。該コアを外装に装着し、電解液を充填して封止し、リチウムイオン電池を得る。以下のように電池性能を測定し、結果を表1に示す。
【0130】
<二次電池の常温のサイクル性能試験電池性能の測定方法>
25℃の環境で、各実施例と比較例で調製されたリチウムイオン二次イオン電池を初回の充電と放電を行い、1Cの定電流定電圧で3.65Vまで充電し、オフ電流0.05Cで5min静置し、さらに、1Cの放電電流で下限オフ電圧2.5Vまで定電流放電を行い、初回のサイクルの放電容量を記録した。上記方法に従って電池を500回の充電と放電サイクルを行い、500回目のサイクルの放電容量を記録した。二次電池のサイクル容量保持率を計算した。
サイクル容量保持率(%)=(500回目のサイクルの放電容量/初回のサイクルの放電容量)×100%
【0131】
実施例2~46
表1に示すように重合モノマーの割合を変える以外、いずれも実施例1と同様に行い、親水性ポリマー、負極用スラリー組成物、負極シート、正極シート、セパレータ及びリチウムイオン電池を作製した。実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0132】
比較例1
負極活性材料としてグラファイト96.0質量部、導電剤として導電性カーボンブラック(SP)0.9質量部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)1.5質量部、従来のSBR1.6質量部を、適量の脱イオン水で十分に混合し、固形分54%の負極用スラリー組成物を得る。その後、実施例1と同様なステップで負極シート、正極シート、セパレータ及びリチウムイオン電池を作製する。実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0133】
比較例2
比較例1の増粘剤をカルボキシメチルセルロースナトリウムと置換度が1.6の高置換グアーガムを1:3の質量比で混合して製造した増粘剤に置き換えた以外、比較例1と同様なステップで負極用スラリー組成物、負極シート、正極シート、セパレータ及びリチウムイオン電池を作製した。実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0134】
比較例3:
本発明の親水性ポリマーまたは従来のSBRを使用せず、ポリメタクリル酸エステル包埋シリカを含む接着剤1.6質量部を使用する以外、比較例1と同様なステップで負極用スラリー組成物、負極シート、正極シート、セパレータ及びリチウムイオン電池を作製した。実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0135】
【表1】
【0136】
上記表1の結果から分かるように、本発明の親水性ポリマーで負極用接着剤と負極スラリーを製造し、接着剤系中の浮きと負極シートのロールプレス時のローラ粘着問題を抑制し、活性材料と集電体との間の結合力を向上させると同時に、従来と同等であるかそれ以上の性能を有するリチウムイオン電池が得られる。
【0137】
なお、本願は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は例のみであり、本願の技術的解決手段の範囲内で技術思想と実際に同様な構成を有し、同一の作用効果を発揮する実施形態はいずれも本願の技術範囲内に含まれる。なお、本願の趣旨を逸脱しない範囲で、実施形態に当業者が想到できる様々な変形を加え、実施形態の中の一部の構成要素を組み合わせて構築した他の形態も本願の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0138】
1 電池パック
2 上箱体
3 下箱体
4 電池モジュール
5 二次電池
51 ハウジング
52 電極アセンブリ
53 カバープレート
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-01-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性ポリマーであって、
共役ジオレフィン、モノオレフィン及び式Iで示される親水性モノマーの共重合体であり、
【化1】
前記式Iでは、X、X及びXはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~4の直鎖または分岐鎖アルキル基から選ばれ、
前記R、R及びRの中の少なくとも1つは親水性基であり、残りはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~4のアルキル基またはアルコキシ基から選ばれることを特徴とする親水性ポリマー。
【請求項2】
前記共重合体はランダム共重合体であり、
前記共役ジオレフィンは炭素原子数4以上の共役ジオレフィンであり、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-シクロヘキサジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエンのうちの1種以上から選ばれることができ、好ましくは1,3-ブタジエンであり、および/または
前記モノオレフィンは芳香族モノビニル基化合物であり、スチレン、α-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、ブトキシスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン及びビニルナフタレンの中の1種以上から選ばれることができ、好ましくはスチレンであることを特徴とする請求項1に記載の親水性ポリマー。
【請求項3】
前記親水性基は、水酸基、アミノ基、カルボキシル基の中の少なくとも1種から選ばれるものであり、好ましくは水酸基であることを特徴とする請求項1または2に記載の親水性ポリマー。
【請求項4】
前記R、R及びRの中の少なくとも2つは親水性基であり、残りはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~4のアルキル基から選ばれることを特徴とする請求項1または2に記載の親水性ポリマー。
【請求項5】
前記Xと前記Xは水素原子であり、前記Xは炭素原子数1~4のアルキル基から選ばれることを特徴とする請求項1または2に記載の親水性ポリマー。
【請求項6】
数平均分子量Mnは12×10~17×10であることを特徴とする請求項1または2に記載の親水性ポリマー。
【請求項7】
前記親水性ポリマーでは、前記共役ジオレフィン、前記モノオレフィン及び前記親水性モノマーからの質量部の比は10~90:90~10:1~6であることを特徴とする請求項1または2に記載の親水性ポリマー。
【請求項8】
親水性ポリマーの製造方法であって、
共役ジオレフィン、モノオレフィン及び式Iで示される親水性モノマーを重合するステップを含み、
【化2】
前記式Iでは、X、X及びXはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~4の直鎖または分岐鎖アルキル基から選ばれ、
前記R、R及びRの中の少なくとも1つは親水性基であり、残りはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~4のアルキル基またはアルコキシ基から選ばれることを特徴とする親水性ポリマーの製造方法。
【請求項9】
共重合体はランダム共重合体であり、
前記共役ジオレフィンは炭素原子数4以上の共役ジオレフィンであり、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-シクロヘキサジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエンの中の1種以上から選ばれることができ、好ましくは1,3-ブタジエンであり、および/または、
前記モノオレフィンは芳香族モノビニル基化合物であり、スチレン、α-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、ブトキシスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン及びビニルナフタレンの中の1種以上から選ばれることができ、好ましくはスチレンであることを特徴とする請求項8に記載の親水性ポリマーの製造方法。
【請求項10】
前記親水性基は、水酸基、アミノ基、カルボキシル基の中の少なくとも1種から選ばれるものであり、好ましくは水酸基であることを特徴とする請求項8または9に記載の親水性ポリマーの製造方法。
【請求項11】
前記R、R及びRの中の少なくとも2つは親水性基であり、残りはそれぞれ独立して水素原子または炭素原子数1~4のアルキル基から選ばれることを特徴とする請求項8または9に記載の親水性ポリマーの製造方法。
【請求項12】
前記Xと前記Xは水素原子であり、前記Xは炭素原子数1~4のアルキル基から選ばれることを特徴とする請求項8または9に記載の親水性ポリマーの製造方法。
【請求項13】
数平均分子量Mnは12×10~17×10であることを特徴とする請求項8または9に記載の親水性ポリマーの製造方法。
【請求項14】
前記親水性ポリマーでは、前記共役ジオレフィン、前記モノオレフィン及び前記親水性モノマーからの質量部の比は10~90:90~10:1~6であることを特徴とする請求項8または9に記載の親水性ポリマーの製造方法。
【請求項15】
電極活物質スラリーであって、
電極活物質、分散媒及び請求項1または2に記載の親水性ポリマーまたは請求項8または9に記載の製造方法によって調製された親水性ポリマーを含み、好ましくは、前記電極活物質スラリーは負極活物質スラリーであることを特徴とする電極活物質スラリー。
【請求項16】
リチウムイオン二次電池であって、
正極シート、負極シート、セパレータ及び電解液を含み、前記負極シートは請求項15に記載の電極活物質スラリーで調製される負極膜層を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【請求項17】
請求項16に記載のリチウムイオン二次電池を含むことを特徴とする電池パック。
【請求項18】
請求項16に記載のリチウムイオン二次電池を含むことを特徴とする電気装置。
【国際調査報告】