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特表2024-529494抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質ならびにその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質ならびにその応用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20240730BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240730BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240730BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20240730BHJP
   C07K 14/52 20060101ALI20240730BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240730BHJP
   C12N 15/24 20060101ALI20240730BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20240730BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20240730BHJP
   C12P 21/02 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
C07K19/00
C07K14/54
C07K14/52
C12N15/13
C12N15/24
C12N15/62 Z
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K38/17 100
A61P35/00
A61P31/00
A61P37/02
A61K38/20
C12P21/08
C12P21/02 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505401
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 CN2022109039
(87)【国際公開番号】W WO2023006082
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】202110868857.5
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】521501093
【氏名又は名称】クレ バイオテクノロジ (シャンハイ) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チー シャンドン
(72)【発明者】
【氏名】パン チン
【テーマコード(参考)】
4B064
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064AG26
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA02
4C084BA22
4C084BA41
4C084BA44
4C084CA53
4C084DA12
4C084DA39
4C084DA46
4C084NA14
4C084ZB07
4C084ZB26
4C084ZB31
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085BB41
4C085BB42
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045DA02
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
CD16Aに特異的に結合するCD16A結合領域、腫瘍関連抗原(TAA)に特異的に結合するTAA結合領域、IL-15とIL-15Rαとの結合によって形成されるIL-15/IL-15Rα複合体、ならびにFcドメインを含む、抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質が開示される。設計された腫瘍標的化自然免疫細胞活性化分子は、抗TAA、抗CD16AおよびサイトカインIL15の三機能性融合タンパク質であり、腫瘍細胞上の腫瘍関連抗原(TAA)とNK細胞上のCD16Aとに同時に結合することにより、NK細胞を腫瘍に標的とし、NK細胞は、パーフォリンおよびグランザイムを放出し、アポトーシスを引き起こし、腫瘍細胞死を引き起こす。サイトカインIL15は、NK細胞の機能を拡張および維持し、免疫細胞の増殖を刺激し、腫瘍の免疫微小環境を変化させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質であって、
前記抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)を含み、前記三機能性融合タンパク質は、CD16Aに特異的に結合するCD16A結合領域、腫瘍関連抗原(TAA)に特異的に結合するTAA結合領域、IL-15とIL-15Rαとの結合によって形成されるIL-15/IL-15Rα複合体、ならびにFcドメインを含むことを特徴とする、前記抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質。
【請求項2】
前記CD16A結合領域は、抗CD16A抗体またはその抗原結合断片を含み、好ましくは、前記CD16A結合領域は、CD16Aを標的とするFab断片またはFv断片であることを特徴とする
請求項1に記載の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質。
【請求項3】
前記TAA結合領域は、抗TAA抗体またはその抗原結合断片を含み、好ましくは、前記TAA結合領域は、TAAを標的とするFab断片またはFv断片であることを特徴とする
請求項1に記載の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質。
【請求項4】
前記融合タンパク質は、連結断片をさらに含み、前記連結断片のアミノ酸配列は、若干のGSリピート配列であることが好ましいことを特徴とする
請求項1に記載の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質。
【請求項5】
前記融合タンパク質は、若干のペプチド鎖を含み、前記IL-15および前記IL-15Rαは、それぞれ異なるペプチド鎖上に位置することを特徴とする
請求項1に記載の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質。
【請求項6】
前記融合タンパク質は、第1の単量体および第2の単量体を含み、
前記第1の単量体は、前記TAA結合領域および第1のFc鎖を含み、前記第2の単量体は、前記CD16A結合領域、前記IL-15/IL-15Rα複合体および第2のFc鎖を含み、
前記第1のFc鎖および前記第2のFc鎖は、重合して前記Fcドメインを形成することを特徴とする
請求項1に記載の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質。
【請求項7】
前記TAA結合領域は、TAAを標的とするFab断片であり、前記CD16A結合領域は、CD16Aを標的とするFv断片であることを特徴とする
請求項6に記載の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質。
【請求項8】
前記融合タンパク質は、第1の単量体および第2の単量体を含み、
前記第1の単量体は、前記CD16A結合領域および第1のFc鎖を含み、前記第2の単量体は、前記TAA結合領域、前記IL-15/IL-15Rα複合体および第2のFc鎖を含み、
前記第1のFc鎖および前記第2のFc鎖は、重合して前記Fcドメインを形成することを特徴とする
請求項1に記載の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質。
【請求項9】
前記CD16A結合領域は、CD16Aを標的とするFab断片であり、前記TAA結合領域は、TAAを標的とするFv断片であることを特徴とする
請求項8に記載の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質。
【請求項10】
前記第1の単量体は、第1のペプチド鎖および第2のペプチド鎖を含み、前記第2の単量体は、第3のペプチド鎖および第4のペプチド鎖を含み、
前記第1のペプチド鎖は、VLドメインとCLドメインとの融合によって形成される軽鎖を含み、
前記第2のペプチド鎖は、VHドメインと、CH1ドメインと第1のFc鎖との融合によって形成される重鎖を含み、
前記第3のペプチド鎖は、抗体可変領域、サイトカインおよび第2のFc鎖を含み、
前記第4のペプチド鎖は、抗体可変領域およびサイトカインを含み、
前記第1のペプチド鎖のVLドメイン、CLドメイン、および前記第2のペプチド鎖のVHドメイン、CH1ドメインは、対になってFab断片を形成し、
前記第3のペプチド鎖の抗体可変領域および前記第4のペプチド鎖の抗体可変領域は、対になってFv断片を形成し、
前記第3のペプチド鎖のサイトカインと前記第4のペプチド鎖のサイトカインが結合して、前記IL-15/IL-15Rα複合体を形成し、
ここで、
前記Fab断片は、TAAを標的とし、前記Fv断片は、CD16Aを標的とするか、または、前記Fab断片は、CD16Aを標的とし、前記Fv断片は、TAAを標的とすることを特徴とする
請求項6または8に記載の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質。
【請求項11】
対になって前記Fv断片を形成する抗体可変領域は、VHドメインおよびVLドメインから選択され、前記サイトカインは、IL-15およびIL-15Rαから選択されることを特徴とする
請求項10に記載の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質。
【請求項12】
対になって前記Fv断片を形成するVHドメインとVLドメインとの間には、1対または複数対のジスルフィド結合があり、次の突然変異の組み合わせの形態のいずれかの1種以上を含み、EUに従ってカウントされることを特徴とする
請求項11に記載の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質。
【表1】
【請求項13】
ペプチド鎖のN末端からC末端にかけて、前記第3のペプチド鎖の融合順序は、抗体可変領域~サイトカイン~第2のFc鎖であるか、またはサイトカイン~抗体可変領域~第2のFc鎖であり、
ペプチド鎖のN末端からC末端にかけて、前記第4のペプチド鎖の融合順序は、抗体可変領域~サイトカインであるか、またはサイトカイン~抗体可変領域であり、「~」は、連結断片を表わすことを特徴とする
請求項10に記載の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質。
【請求項14】
前記IL-15は、IL-15、ならびにそのIL-15Raに結合できる突然変異、切断および様々な誘導体を含み、前記IL-15Raは、IL-15Ra、ならびにそのIL-15に結合できる突然変異、切断および様々な誘導体を含み、好ましくは、前記IL-15は、次の突然変異の組み合わせのいずれかを含むがこれらに限定されず、計数方法は、IL-15のアミノ酸配列の最初のアミノ酸に基づいて第1位としてカウントされ、
【表2】
または、前記IL-15/IL-15Ra複合体は、次の突然変異の組み合わせのいずれかを含むがこれらに限定されず、計数方法は、IL-15またはIL-15Raのアミノ酸配列の最初のアミノ酸に基づいて第1位としてカウントされることを特徴とする
請求項1に記載の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質。
【表3】
【請求項15】
前記TAAは、CD20、CD19、CD30、CD33、CD38、CD40、CD52、slamf7、GD2、CD24、CD47、CD133、CD217、CD239、CD274、CD276、CEA、Epcam、Trop2、TAG72、MUC1、MUC16、メソテリン(mesothelin)、folr1、CLDN18.2、EGFR、EGFR VIII、C-MET、HER2、FGFR2、FGFR3、PSMA、PSCA、EphA2、ADAM17、17-A1、NKG2Dリガンド(ligands)、MCSP、LGR5、SSEA3、SLC34A2、BCMA、GPNMB、CCR4、VEGFR-2、CD6、インテグリンα4、PDGFRα、NeuGcGM3、インテグリンαVβ3、CD51、CTAA16.88、CD22、ROR1、CSPG4、SS1またはIGFR1から選択されることを特徴とする
請求項1に記載の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質。
【請求項16】
前記Fcドメインは、ヒトIgG1 Fc、ヒトIgG2 Fc、ヒトIgG3 Fc、ヒトIgG4 Fcまたはその変異体から選択され、好ましくは、IgG1 Fc、またはヒトIgG4 Fcまたはその変異体から選択され、前記Fcドメインは、Fcヘテロ二量体の形態であり、好ましくは、前記Fcヘテロ二量体は、次の突然変異の組み合わせを含むがこれらに限定されず、次の突然変異は、EUに従ってカウントされることを特徴とする
請求項1に記載の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質。
【表4】
【請求項17】
前記Fcドメインは、免疫エフェクター機能を除去するように選択され、好ましくは、次の突然変異形態のいずれかを含み、次の突然変異は、EUに従ってカウントされることを特徴とする
請求項1に記載の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質。
【表5】
【請求項18】
前記第1のFc鎖は、プロテインAに結合せず、好ましくは突然変異H435RまたはH435R/Y436Fを含み、EUに従ってカウントされ、前記第2のFc鎖は、プロテインAに結合することができることを特徴とする
請求項10に記載の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質。
【請求項19】
前記CD16A結合領域は、SEQ ID NO:39に示されるようなVHドメインおよびSEQ ID NO:38に示されるようなVLドメインを含むか、または、前記IL-15の配列は、SEQ ID NO:46または47に示されたとおりであるか、または、前記IL-15Raの配列は、SEQ ID NO:48~54のいずれかに示されたとおりであり、好ましくは、前記CD16A結合領域のVHとVLとの間、および/または前記IL-15とIL-15Raとの間には、少なくとも1対以上のジスルフィド結合があることを特徴とする
請求項1に記載の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質。
【請求項20】
(1)SEQ ID NO:01、02、03、04;
(2)SEQ ID NO:01、05、03、06;
(3)SEQ ID NO:07、08、09、10;
(4)SEQ ID NO:01、02、11、12;
(5)SEQ ID NO:01、02、13、14;
(6)SEQ ID NO:01、05、11、15;
(7)SEQ ID NO:01、05、13、16の任意のセットの配列に示されるか、またはそれと90%以上の同一性を有するアミノ酸断片と融合することによって得られることを特徴とする
請求項1に記載の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質。
【請求項21】
前記抗原は、感染性疾患関連抗原、病原体、免疫機能関連抗原をさらに含むことを特徴とする
請求項1に記載の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質。
【請求項22】
核酸分子であって、
請求項1~21のいずれか1項に記載の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質をコードすることを特徴とする、前記核酸分子。
【請求項23】
医薬組成物であって、
請求項1~21のいずれか1項に記載の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質、ならびに薬学的に許容される担体を含むことを特徴とする、前記医薬組成物。
【請求項24】
癌、感染および免疫調節性疾患を阻害または治療するための薬物の調製における、請求項1~21のいずれか1項に記載の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質の応用。
【請求項25】
前記癌は、前立腺がん、肺がん、結腸がん、直腸がん、膀胱がん、黒色腫、腎臓がん、口腔がん、咽頭がん、膵臓がん、子宮がん、甲状腺がん、皮膚がん、頭頚部がん、子宮頸がん、卵巣がんまたは血液系がんを含むことを特徴とする
請求項24に記載の応用。
【請求項26】
タンパク質の複合ユニットであって、
前記複合ユニットは、請求項10に記載の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質における第3のペプチド鎖の抗体可変領域およびサイトカイン、第4のペプチド鎖の抗体可変領域およびサイトカイン、ならびに若干の連結断片を含み、
前記第3のペプチド鎖の抗体可変領域は、連結断片を介して、前記第3のペプチド鎖のサイトカインに融合され、前記第4のペプチド鎖の抗体可変領域は、連結断片を介して、前記第4のペプチド鎖のサイトカインに融合され、
前記第3のペプチド鎖の抗体可変領域および前記第4のペプチド鎖の抗体可変領域は、CD16Aを標的とするVHドメインまたはVLドメインから選択され、対になってFv断片を形成し、
前記第3のペプチド鎖のサイトカインおよび前記第4のペプチド鎖のサイトカインは、IL15またはIL15Rαから選択され、結合してIL-15/IL-15R複合体を形成し、
好ましくは、前記対になってFv断片を形成するVHドメインとVLドメインとの間、および/または前記IL15とIL15Rαとの間には、1対以上のジスルフィド結合があることを特徴とする、前記タンパク質の複合ユニット。
【請求項27】
核酸分子であって、
請求項26に記載のタンパク質の複合ユニットをコードすることを特徴とする、前記核酸分子。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、生物医学技術の分野に関し、具体的には、抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質ならびにその応用に関する。
【0002】
[背景技術]
ナチュラルキラー細胞(NK細胞)は、ウイルス感染または腫瘍形質転換細胞等のストレスを受けた細胞を非常に効果的に破壊できる自然免疫細胞である。NK細胞は、MHC非依存性細胞毒性、サイトカインの生成および免疫記憶等の機能を有しており、免疫応答系の重要な役割を果たしている。抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)は、ナチュラルキラー(NK)細胞によって媒介される効果的な細胞毒性メカニズムである。CD16aによるADCC効果は、NK細胞の抗腫瘍効果の主なメカニズムの一つである。特異的抗体が標的腫瘍細胞の膜に結合すると、免疫細胞は、当該反応を通じて細胞死を誘導する。
【0003】
抗体と免疫細胞との相互作用は、Fc受容体(FcR)ファミリーを通じて発生する。ヒトの場合、IgGのFcRファミリー(FcγR)は、FcγRI/CD64、FcγRIIa/CD32a、FcγRIIb/CD32b、FcγRIIc/CD32c、FcγRIIIa/CD16aおよびFcγRIIIb/CD16bの六つの受容体で構成され、ここで、CD16aは、主にNK細胞媒介性ADCCを引き起こす。通常の場合、ADCC効果は、主にFcγRIII(CD16)に結合する抗体を通じてNK細胞を活性化する。ヒトNK細胞は、CD56 BRIGHT細胞およびCD56 dim細胞の二つの主な亜集団に分けられる。CD56 bright NK細胞は、強力なサイトカイン生成細胞であるが、CD16aを欠いており、CD56 dim NK細胞は、高度の細胞毒性を有し、CD16aを発現する。CD16aを介してIgGオプソニン化されたターゲットポイントを識別する場合、NK細胞は、様々な細胞毒性分子を放出し、それによって標的細胞の死を引き起こす。このようなメカニズムは、免疫シナプスの形成、およびパーフォリンおよびグランザイムを含む溶解顆粒の脱顆粒に依存する。脱顆粒に加えて、NK細胞は、標的デスレセプター(例えば、DR4、DR5またはFas)とそのデスレセプターリガンド(例えば、FasLおよびTRAIL)とを結合することによって、標的細胞を除去することもできる。
【0004】
CD16aは、短いC-ter細胞質尾部を有し、且つ二つの細胞外Ig様ドメインを有する、膜貫通受容体である。CD16aとIgGのCH2とは、1:1で相互作用し、ここで、CH2上のN297位のN-グリカン鎖も、このような相互作用中で重要な役割を果たす。CD16aは、その細細胞質尾部にITAMドメインを有さないため、CD3ζおよびFcεRIγのITAMドメインを含む二つのタンデム細胞内鎖の助けを必要とする。CD16a結合後、Srcファミリーに属するキナーゼLckは、活性化され、CD3ζおよび/またはFcεRIγのITAMドメインをリン酸化する。リン酸化されたITAMは、SykおよびZAP-70等のSykファミリーからのキナーゼの募集およびリン酸化を可能にし、それらは、逆に後続のシグナル伝達に関与する。それらの基質において、PI3Kは、PIP2をPIP3に形質転換し、PIP3がPLC-γによって処理した後にIP3およびDAGを放出するため、高度に関連される。DAGは、PKCファミリーを活性化し、これは、脱顆粒の誘発に役立つ。IP3は、小胞体からのカルシウム放出を誘導し、このようなカルシウム流入は、ADCCによって引き起こされる主なシグナルの一つであり、核内でのNFATの転座を引き起こし、その標的遺伝子の転写を誘導する。ERK2 MAPK経路等のCD16aによって活性化される他の経路も、ADCCに寄与する。CD16a依存性NK細胞殺傷後、CD16aは、急速にダウンレギュレートされる。CD16a脱落のメカニズムの一つは、ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ17(ADAM17)によって媒介され、後者は、NK細胞で発現される。ADAM17によるCD16aの切断は、シス構造で起こり、これは、ADAM17を発現するNK細胞が別のNK細胞でCD16a脱落を誘導できないことを表わす。活性化後のCD16aダウンレギュレーションのもう一つのメカニズムは、内部移行であり、これは、CD16aだけでなく、CD3ζ、ZAP-70およびSyk等の他の細胞内シグナル成分でも発生する。
【0005】
NK細胞は、自然免疫細胞中のキラー細胞として、病原体および腫瘍細胞を直接殺すことができる。T細胞と比較して、NK細胞は、より強力な腫瘍識別能力および殺傷能力だけでなく、より強力な既製の応用への可能性を有する。自然免疫応答をより活性化し、抗体依存性細胞傷害性(ADCC、antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)を増強するように治療性抗体薬物の定常領域(FC末端)を修飾するかと、CD16Aに特異的に結合できるビス(ポリ)抗体の有効性をどのように評価するかとは、医薬品開発者にとって興味深い問題である。現在、ADCCの役割を改善するための策略は、主に次のような態様に焦点を当てている。
【0006】
(1)サイトカイン:ADCC活性を高める簡単な方法は、炎症誘発性サイトカインでNK細胞を刺激することである。NK細胞移植は、サイトカイン誘導性記憶様(CIML)NK細胞の注入等により、複数の臨床試験で成功裏に実施され、最も一般的に使用されるサイトカインの組み合わせは、IL-12、IL-15およびIL-18を含む。CIML NK細胞は、従来のNK細胞よりも多くのIFN-γを発現し、白血病細胞および原発性急性骨髄性白血病(AML)母細胞に対して優れた細胞毒性を示す。IL-12は、NK細胞によるIFN-γおよびTNF-αの生成を増加させ、I/II相臨床試験において、セツキシマブとIL-12とは、切除不能または再発の頭頚部扁平上皮がん患者に併用される。無増悪生存期間(PFS)が100日未満の患者と比較して、PFSが100日を超える患者のNK細胞は、インビトロでより高いADCC活性有する。IL-15は、NK細胞とCD8+T細胞との生存および機能に必要なサイトカインである。N-803は、突然変異型N72D IL-15スーパーアゴニストであり、前臨床モデルおよび臨床試験において、増強されたNK細胞のインビトロおよびインビボでの活性を示す。さらに、それは、NKおよびCD8+T細胞の数も増加した。
【0007】
(2)ADAM17の阻害:ADAM17は、活性化後のCD16aダウンレギュレーションの主なドライバーである。NK細胞のADCCを改善する一つの策略は、ADAM17を標的とすることによりCD16aの脱落を防ぐことである。研究によると、NK細胞においてCRISPR/Cas9技術を使用してADAM17をノックアウトすると、より優れたIFN-γ生成、ならびにインビボおよびインビトロでのADCC活性が示されることがわかる。しかしながら、ADAM17をブロッキングすると、NK細胞の生存率およびCD16a媒介性連続殺傷が低下され、細胞が標的細胞から分離できなくなり、別の標的細胞に移動することを妨げることも研究で示される。とにかく、ADAM17阻害の利点は、不明であり、結果についても議論の余地がある。この策略が成功するかどうかは、進行中の臨床試験(NCT04023071)の結果によって決定され、当該試験では、AMLおよびB細胞リンパ腫における非切断性CD16aを保有するiPSC由来NK細胞の応用を評価する予定である。
【0008】
(3)操作された抗体:抗体のFc部分を操作すると、CD16aに対するFcの親和性が増加され、その後ADCCが改善される。一部の突然変異は、非常に流行しており、例えば、いわゆるGASDALIEは、G236A/S239D/A330L/I332EのFcにおける四つの置換からなる。当該突然変異は、CD16aに対する親和性の大幅な増加を示すが、CD32b親和性の増加は、突然変異体18(F243L/R292P/Y300L/V305I/P396L)と呼ばれる別の突然変異は、ADCCを大幅に増加させる。これらの突然変異は、現在、抗HER2抗体マルゲツキシマブ(margetuximab)として臨床に導入され、様々なHER2陽性がんのI相治療において良好な効果が示される。さらに、抗体Fc N-グリカンの糖操作により、CD16aに対する親和性が増加されると予想される。最も研究されている糖修飾は、脱フコシル化修飾等の脱グリコシル化である。このような修飾により、CD16aとの結合が増加し、ADCCが改善される。この技術は、抗CD20抗体オビヌツズマブ(obinutuzumab)に使用される。
【0009】
(4)NK細胞エンゲージャー:操作された抗体に加えて、抗体の形態も研究できる。二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)策略の成功に基づいて、NK細胞用に同様の形態、即ち、いわゆる二重特異性キラー細胞エンゲージャー(BiKE)が開発される。BiKEは、二つのscFvが配列を連結することによって構成され、一つの単鎖抗体は、CD16aを標的とし、もう一つは、腫瘍抗原を標的とする。さらに、二つの腫瘍抗原をCD16aと一緒に標的とするか、または3番目の単鎖抗体の代わりにIL-15を添加する、三重特異性キラー細胞エンゲージャー(TRiKE)もある。このような構造の使用により、NK細胞が腫瘍細胞に再局在することが可能になり、標的細胞に対する強力なADCC効果を引き起こす。AFM13は、CD16aおよびCD30を標的とする二重特異性抗体であり、現在臨床II相段階にあり、末梢性T細胞リンパ腫、形質転換菌状息肉症およびホジキンリンパ腫の治療に使用される。再発性または難治性ホジキンリンパ腫を治療するIb臨床研究において、AFM13とペムブロリズマブ(pembrolizumab)との併用により、客観的奏効率が88%、全体の奏効率が83%となる。GTB-3550は、現在、複数種の白血病を対象とした第I/II相試験で研究されるCD16/CD33/IL-15のTRiKE形態である(NCT03214666)。
【0010】
しかしながら、腸がん、腎臓がん、肝臓がん、乳がんおよび肺がん等を含むほとんどの腫瘍の腫瘍微小環境には、非常に少ない数のNK細胞がみられる。従って、業界では、腫瘍表面抗原に特異的な抗体およびNK細胞CD16Aに特異的な抗体によって形成される二重特異性分子等、CD16Aの活性を使用して癌を治療する免疫治療法の開発を進めており、現在、HER2/neuおよびCD16Aの二重特異性抗体が開発されており、単独のHER2抗体よりもより強力な抗腫瘍活性を有し、CD16AおよびCD30に特異的に結合する二重特異性抗体であるAFM13は、NK細胞または単球の表面にあるCD16分子に結合して、これらの免疫エフェクター細胞がCD30を発現する腫瘍細胞に標的にして殺傷できるようにし、当該抗体は、ホジキン腫瘍のマウスモデルと患者との療法で腫瘍を除去する効果を示す。しかし、従来のCD16A抗体または抗CD16A抗原結合タンパク質に一定期間曝露すると、NK細胞の枯渇またはNK細胞毒性の効力低下が生じ、それによってNK細胞の腫瘍殺傷効果に影響を及ぼす。CD16A二重抗体を長期間投与することができなくなり、その効果に影響を及ぼす。
【0011】
インターロイキン-15(interleukin-15、IL-15)は、NK細胞、NKT細胞およびmemory CD8+T細胞機能に非常に重要な、長さ14~15kDaのサイトカインである。IL-15は、その受容体IL-15Rαに結合して、極めて高い生物学的効力を有する複合体IL-15スーパーアゴニスト(IL-15 SA)を生成した後に形質導入されて標的細胞に輸送される。IL-15 SAは、発現IL-15Rに応答する細胞、特にNK細胞/T細胞を強力に活性化し、それによって抗腫瘍および抗ウイルス機能を促進する。IL-15は、広範囲の免疫調節効果を有し、T細胞、特にNK細胞、メモリーCD8+T細胞の生存、増殖および機能の調節に関与する。IL-15とIL-2との構造は、非常に似ており、スパイラルサイトカインファミリーに属する。IL-15のヘテロ三量体受容体は、IL-2受容体とIL-2R/IL-15 Rβ(CD122)および共通のγc鎖(CD132)を共有しており、これらの共通の受容体成分および共通のJAK 1/JAK 3/STAT 5シグナル伝達経路により、IL-15およびIL-2は、T細胞増殖の刺激、細胞傷害性Tリンパ球の産生、B細胞の刺激による免疫グロブリンの合成、ならびにNK細胞の産生および持続的生存等を含む、同様の機能を有する。多くの適応性免疫応答において、IL-2およびIL-15は、独特で、しばしば競合する役割を果たす。主なポイントは、次のように四つある。1.IL-2は、Tregs細胞の活性化を調節できるが、IL-15は、調節できない。2.IL-2は、誘導性CD8+エフェクターT細胞の細胞死を活性化することによってT細胞応答を阻害する。3.IL-15は、NK、エフェクター細胞CD8+および記憶表現型CD8+T細胞の分化において重要な役割を果たす。4.前臨床研究によると、IL-15の毒性は、IL-2の毒性とは異なり、IL-2と比較して、IL-15は、血管毛細管の漏出がほとんどない。これらの要因により、IL-15は、腫瘍免疫策略においてより潜在的なサイトカインとなる。現在、複数のIL-15ターゲットポイント製品がまだ臨床試験段階にあり、その中で最も注目すべきなのは、IL-15タンパク質N72Dの突然変異後にIL-15RaとIgG1Fcとに結合して共発現する融合タンパク質であるIL-15スーパーアゴニストN-803であり、2022年5月23日、ImmunityBioは、非筋層浸潤性膀胱がん(NMIBC)の治療薬として、BCGワクチン(BCG)と併用したIL-15スーパーアゴニストN-803の販売申請をFDAに提出した。2021年に発表された臨床データでは、N-803+BCGの併用治療効果が顕著で、CR率は、71%(59/83)に達し、平均CR維持時間は、24.1カ月であることが示される。第1相臨床実験では、転移性非小細胞肺がんの治療においてニボルマブ(Nivolumab)(PD-1抗体、オプジーボ(Opdivo))とN-803と併用すると、患者の長期生存を大幅に延長できることが示される。Genentech社は、Xencor社と協力してIL-15サイトカインXmAb(登録商標)24306を開発し、現在、Tecentriqと併用したXmAb(登録商標)24306の臨床研究を実施している。Hengrui Pharmaceuticals Co., Ltd.のSHR-1501(IL-15融合タンパク質)は、2019年5月14日にSHR-1501臨床試験の実施が承認された。さらに、SHR-1316(PD-L1モノクローナル抗体薬物)は、治療が失敗した進行性悪性腫瘍患者に対してSHR-1501と併用する。しかしながら、サイトカインの臨床上使用は、単剤投与の標的化が不十分である欠点があり、高濃度投与でなければ抗腫瘍効果が得られず、高濃度投与では免疫阻害効果および高い毒性が生じる。また、非標的性サイトカインによる免疫系の活性化は、全身的であり、免疫系は、広範囲に活性化され、致命的な副作用がある。さらに、サイトカインは、低分子量のタンパク質に属し、体内で抗体のような循環保護機構を有さないため、単純なサイトカインは、半減期が短いことが多く、短時間で高用量の反復投与が必要となる。現在、臨床研究薬物では、主にPEG化またはFc融合を使用してサイトカインの半減期を延長し、半減期が延長されたものの、サイトカインの標的化が不十分であるという問題は依然として解決できない。
【0012】
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
本発明の第1の目的は、背景技術の問題を解決するために、新規抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質を提供することである。
【0013】
[課題を解決するための手段]
本発明によって提供される抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質は、CD16Aに特異的に結合するCD16A結合領域、腫瘍関連抗原(TAA)に特異的に結合するTAA結合領域、IL-15とIL-15Rαとの結合によって形成されるIL-15/IL-15Rα複合体、ならびにFcドメインを含む。本発明によって提供される三機能性融合タンパク質は、CD16AおよびTAAを同時に標的とするだけでなく、独特の成分を有し、且つ独特の構造を形成するIL-15/IL-15Rα複合体およびFcドメインを融合する。さらに、本発明の三機能性融合タンパク質は、IL-15およびIL-15Rαを使用して、二重特異性抗体の抗体構造の一つにおけるCLドメインおよびCH1ドメインをそれぞれ置き換え、IL-15とIL-15Rαとの間の超高親和性(KD約30~100pM)によって形成されるIL-15/IL-15Rα構造は、二重特異性抗体の軽鎖と重鎖との間の正しいペアリングを保証し、それによって二重特異性抗体の軽鎖の不一致の問題を解決する。同時に、三機能性融合タンパク質CD16A抗体は、NK細胞を腫瘍部位に標的化し、腫瘍細胞近くでNK細胞を活性化する。従来のCD16A抗体または抗CD16A抗原結合タンパク質に一定期間曝露すると、NK細胞の枯渇またはNK細胞毒性の効力低下を引き起こし、CD16A抗体を長期間投与できなくなり、腫瘍治療の効果に影響を及ぼすが、損傷したNK細胞の毒性は、本発明の三機能性融合タンパク質構造におけるサイトカインIL-15およびIL-15Rαによる刺激を通じて回復することができ、それによりNK細胞の腫瘍細胞殺傷効果がさらに増強され、CD16A抗体によるNK細胞の枯渇および腫瘍細胞毒性の弱体化の問題が解決される。IL-15およびIL-15Rαは、NK細胞およびT細胞等の免疫エフェクター細胞の増殖および活性化を刺激し、腫瘍に対する身体の免疫阻害活性を大幅に増強する。
【0014】
選択可能で、前記CD16A結合領域は、抗CD16A抗体またはその抗原結合断片を含む。
選択可能で、前記CD16A結合領域は、CD16Aを標的とするFab断片またはFv断片である。
【0015】
選択可能で、前記TAA結合領域は、抗TAA抗体またはその抗原結合断片を含む。
選択可能で、前記TAA結合領域は、TAAを標的とするFab断片またはFv断片である。
【0016】
選択可能で、前記融合タンパク質は、連結断片をさらに含み、前記連結断片のアミノ酸配列は、若干のGSリピート配列であることが好ましい。
【0017】
選択可能で、前記融合タンパク質は、若干のペプチド鎖を含み、前記IL-15および前記IL-15Rαは、それぞれ異なるペプチド鎖上に位置する。
【0018】
選択可能で、前記融合タンパク質は、第1の単量体および第2の単量体を含み、前記第1の単量体は、前記TAA結合領域および第1のFc鎖を含み、前記第2の単量体は、前記CD16A結合領域、前記IL-15/IL-15Rα複合体および第2のFc鎖を含み、前記第1のFc鎖および前記第2のFc鎖は、重合して前記Fcドメインを形成する。
【0019】
選択可能で、前記TAA結合領域は、TAAを標的とするFab断片であり、前記CD16A結合領域は、CD16Aを標的とするFv断片である。
【0020】
選択可能で、前記融合タンパク質は、第1の単量体および第2の単量体を含み、前記第1の単量体は、前記CD16A結合領域および第1のFc鎖を含み、前記第2の単量体は、前記TAA結合領域、前記IL-15/IL-15Rα複合体および第2のFc鎖を含み、前記第1のFc鎖および前記第2のFc鎖は、重合して前記Fcドメインを形成する。
【0021】
選択可能で、前記CD16A結合領域は、CD16Aを標的とするFab断片であり、前記TAA結合領域は、TAAを標的とするFv断片である。
【0022】
選択可能で、前記第1の単量体は、第1のペプチド鎖および第2のペプチド鎖を含み、前記第2の単量体は、第3のペプチド鎖および第4のペプチド鎖を含み、前記第1のペプチド鎖は、VLドメインとCLドメインとの融合によって形成される軽鎖を含み、前記第2のペプチド鎖は、VHドメインと、CH1ドメインと第1のFc鎖との融合によって形成される重鎖を含み、前記第3のペプチド鎖は、抗体可変領域、サイトカインおよび第2のFc鎖を含み、前記第4のペプチド鎖は、抗体可変領域およびサイトカインを含み、前記第1のペプチド鎖のVLドメイン、CLドメイン、および前記第2のペプチド鎖のVHドメイン、CH1ドメインは、対になってFab断片を形成し、前記第3のペプチド鎖の抗体可変領域および前記第4のペプチド鎖の抗体可変領域は、対になってFv断片を形成し、前記第3のペプチド鎖のサイトカインと前記第4のペプチド鎖のサイトカインが結合して、前記IL-15/IL-15Rα複合体を形成し、ここで、前記Fab断片は、TAAを標的とし、前記Fv断片は、CD16Aを標的とするか、または、前記Fab断片は、CD16Aを標的とし、前記Fv断片は、TAAを標的とする。
【0023】
選択可能で、対になって前記Fv断片を形成する抗体可変領域は、VHドメインおよびVLドメインから選択され、前記サイトカインは、IL-15およびIL-15Rαから選択される。
【0024】
選択可能で、対になって前記Fv断片を形成するVHドメインとVLドメインとの間には、1対または複数対のジスルフィド結合があり、次の突然変異の組み合わせの形態のいずれかの1種以上を含み、EUに従ってカウントされる。
【0025】
【表1】
【0026】
選択可能で、ペプチド鎖のN末端からC末端にかけて、前記第3のペプチド鎖の融合順序は、抗体可変領域~サイトカイン~第2のFc鎖であるか、またはサイトカイン~抗体可変領域~第2のFc鎖であり、ペプチド鎖のN末端からC末端にかけて、前記第4のペプチド鎖の融合順序は、抗体可変領域~サイトカインであるか、またはサイトカイン~抗体可変領域であり、「~」は、連結断片を表わす。
【0027】
選択可能で、前記IL-15は、IL-15、ならびにそのIL-15Raに結合できる突然変異、切断および様々な誘導体を含み、前記IL-15Raは、IL-15Ra、ならびにそのIL-15に結合できる突然変異、切断および様々な誘導体を含み、好ましくは、前記IL-15は、次の突然変異の組み合わせのいずれかを含むがこれらに限定されず、計数方法は、IL-15のアミノ酸配列の最初のアミノ酸に基づいて第1位としてカウントされ、
【0028】
【表2】
【0029】
または、前記IL-15/IL-15Ra複合体は、次の突然変異の組み合わせのいずれかを含むがこれらに限定されず、計数方法は、IL-15またはIL-15Raのアミノ酸配列の最初のアミノ酸に基づいて第1位としてカウントされる。
【0030】
【表3】
【0031】
選択可能で、前記TAAは、CD20、CD19、CD30、CD33、CD38、CD40、CD52、slamf7、GD2、CD24、CD47、CD133、CD217、CD239、CD274、CD276、CEA、Epcam、Trop2、TAG72、MUC1、MUC16、メソテリン(mesothelin)、folr1、CLDN18.2、EGFR、EGFR VIII、C-MET、HER2、FGFR2、FGFR3、PSMA、PSCA、EphA2、ADAM17、17-A1、NKG2Dリガンド(ligands)、MCSP、LGR5、SSEA3、SLC34A2、BCMA、GPNMB、CCR4、VEGFR-2、CD6、インテグリンα4、PDGFRα、NeuGcGM3、インテグリンαVβ3、CD51、CTAA16.88、CD22、ROR1、CSPG4、SS1またはIGFR1から選択される。
【0032】
選択可能で、前記Fcドメインは、ヒトIgG1 Fc、ヒトIgG2 Fc、ヒトIgG3 Fc、ヒトIgG4 Fcまたはその変異体から選択され、好ましくは、IgG1 Fc、またはヒトIgG4 Fcまたはその変異体から選択され、前記Fcドメインは、Fcヘテロ二量体の形態であり、好ましくは、前記Fcヘテロ二量体は、次の突然変異の組み合わせを含むがこれらに限定されず、次の突然変異は、EUに従ってカウントされる。
【0033】
【表4】
【0034】
選択可能で、前記Fcドメインは、免疫エフェクター機能を除去するように選択され、好ましくは、次の突然変異形態のいずれかを含み、次の突然変異は、EUに従ってカウントされる。
【0035】
【表5】
【0036】
選択可能で、前記第1のFc鎖は、プロテインAに結合せず、好ましくは突然変異H435RまたはH435R/Y436Fを含み、EUに従ってカウントされ、前記第2のFc鎖は、プロテインAに結合することができる。
【0037】
選択可能で、前記CD16A結合領域は、SEQ ID NO:39に示されるようなVHドメインおよびSEQ ID NO:38に示されるようなVLドメインを含むか、または、前記IL-15の配列は、SEQ ID NO:46または47に示されたとおりであるか、または、前記IL-15Raの配列は、SEQ ID NO:48~54のいずれかに示されたとおりであり、好ましくは、前記CD16A結合領域のVHとVLとの間、および/または前記IL-15とIL-15Raとの間には、少なくとも1対以上のジスルフィド結合がある。
【0038】
選択可能で、前記抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質は、
(1)SEQ ID NO:01、02、03、04、
(2)SEQ ID NO:01、05、03、06、
(3)SEQ ID NO:07、08、09、10、
(4)SEQ ID NO:01、02、11、12、
(5)SEQ ID NO:01、02、13、14、
(6)SEQ ID NO:01、05、11、15、
(7)SEQ ID NO:01、05、13、16の任意のセットの配列に示されるか、またはそれと90%以上の同一性を有するアミノ酸断片と融合することによって得られる。
【0039】
選択可能で、前記抗原は、感染性疾患関連抗原、病原体、免疫機能関連抗原をさらに含む。
本発明は、上記の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質をコードする、核酸分子をさらに提供する。
【0040】
本発明は、上記の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質、ならびに薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物をさらに提供する。
【0041】
本発明は、癌、感染および免疫調節性疾患を阻害または治療するための薬物の調製における、上記の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質の応用を提供する。
【0042】
前記癌は、前立腺がん、肺がん、結腸がん、直腸がん、膀胱がん、黒色腫、腎臓がん、口腔がん、咽頭がん、膵臓がん、子宮がん、甲状腺がん、皮膚がん、頭頚部がん、子宮頸がん、卵巣がんまたは血液系がんを含む。
【0043】
本発明は、タンパク質の複合ユニットをさらに提供し、前記複合ユニットは、第1の可変領域、第2の可変領域、第1のサイトカイン、第2のサイトカイン、若干の連結断片を含み、前記第1の可変領域は、連結断片を介して前記第1のサイトカインに融合され、前記第2の可変領域は、連結断片を介して前記第2のサイトカインに融合され、前記第1の可変領域および第2の可変領域は、VHドメインまたはVLドメインから選択され、前記第1の可変領域および第2の可変領域は、対になって、CD16Aに特異的に結合するFV断片を形成し、前記第1のサイトカインおよび第2のサイトカインは、IL15またはIL15Rαから選択され、前記IL-15および前記IL-15Rαは、それぞれ異なるペプチド鎖に位置し、前記第1のサイトカインおよび第2のサイトカインは、結合してIL15/IL15Rα複合体を形成し、好ましくは、前記VHドメインと前記VLドメインとの間、および/または前記IL15とIL15Rαとの間には、1対以上のジスルフィド結合がある。
【0044】
[発明の効果]
本発明の有益な効果は、次のとおりである。
(1)本発明によって提供される三機能性融合タンパク質は、CD16Aに特異的に結合するCD16A結合領域、腫瘍関連抗原(TAA)に特異的に結合するTAA結合領域、IL-15とIL-15Rαとの結合によって形成されるIL-15/IL-15Rα複合体、ならびにFcドメインを含み、CD16AとTAAとを同時に標的とするだけでなく、独特の成分を有し、且つ独特の構造を形成するIL-15/IL-15Rα複合体およびFcドメインも融合することができる。
【0045】
(2)本発明によって設計されるTAA/CD16A/IL15三機能性融合タンパク質は、腫瘍細胞上の腫瘍関連抗原(TAA)とNK細胞上のCD16Aとに同時に結合することにより、NK細胞を腫瘍に標的とし、NK細胞は、パーフォリンおよびグランザイムを放出し、アポトーシスを引き起こし、腫瘍細胞死を引き起こす。サイトカインIL15は、NK細胞の機能を拡張および維持し、免疫細胞の増殖を刺激し、腫瘍の免疫微小環境を変化させる。
【0046】
(3)本発明によって構築される抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質は、IL-15/IL-15Rα活性を有し、サイトカインを腫瘍部位に標的化し、腫瘍部位で免疫エフェクター細胞(NK細胞およびT細胞)を特異的に拡張および活性化して、免疫細胞の数および殺傷性サイトカインの放出を増加させ、免疫応答をより効果的に活性化して腫瘍細胞を殺傷する。
【0047】
(4)IL-15およびIL-15Rαは、抗体構造におけるCLドメインおよびCH1ドメインを置き換え、IL-15およびIL-15Rαの高親和性を利用してIL-15/IL-15Rα複合体を形成し、それによって二重特異性抗体軽鎖の正しいペアリングを実現し、二重特異性抗体軽鎖の不一致の問題を解決する。さらに、アミノ酸配列の突然変異により、VHとVLとの間、IL-15とIL-15Rαとの間に1対または複数対のジスルフィド結合を添加し、軽鎖/重鎖間の結合活性をさらに増強し、二重特異性抗体の重鎖の不一致の問題を解決するためにFcヘテロ二量体技術と組み合わせることで、二重特異性抗体の調製プロセスにおける軽鎖および重鎖の不一致、高い副産物、不十分な安定性という課題をより効果的に克服でき、正しくペアリングされた多機能性融合タンパク質が調製されると同時に、多機能性融合タンパク質の開発周期が短縮され、調製コストが削減される。
【0048】
(5)Fcドメインのエフェクター機能を保持したり、または免疫エフェクターを除去させた形態のFcドメイン使用したりすることができる。免疫エフェクターを除去させた形態のFcドメインを使用すると、Fcは、FcRγIII(CD16A)に結合できない。本発明の融合タンパク質がFcドメインのエフェクター機能を保持している場合、免疫細胞に対応する活性化効果も観察される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】それぞれ、本発明の異なる実施例における三機能性融合タンパク質の構造形態の模式図である。
図2】それぞれ、本発明の異なる実施例における三機能性融合タンパク質の構造形態の模式図である。
図3】それぞれ、本発明の異なる実施例における三機能性融合タンパク質の構造形態の模式図である。
図4】それぞれ、本発明の異なる実施例における三機能性融合タンパク質の構造形態の模式図である。
図5】それぞれ、本発明の異なる実施例における三機能性融合タンパク質の構造形態の模式図である。
図6】それぞれ、本発明の異なる実施例における三機能性融合タンパク質の構造形態の模式図である。
図7】それぞれ、本発明の異なる実施例における三機能性融合タンパク質の構造形態の模式図である。
図8】それぞれ、本発明の異なる実施例における三機能性融合タンパク質の構造形態の模式図である。
図9】それぞれ、本発明の異なる実施例における三機能性融合タンパク質の構造形態の模式図である。
図10】HL60細胞に結合する三機能性タンパク質のFACS検出の結果図である。
図11】Daudi細胞に結合するCD38/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質のFACS検出の結果図である。
図12】CS1タンパク質に結合する三機能性分子のELISA検出の結果図である。
図13】Mo7e細胞増殖実験に対するTAA/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質のCCK8検出の結果図である。
図14】Mo7e細胞増殖実験に対するTAA/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質のCCK8検出の結果図である。
図15】Mo7e細胞増殖実験に対するTAA/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質のCCK8検出の結果図である。
図16】10:1のエフェクター:ターゲット比を有するCD33/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質媒介性ADCC効果の結果図である。
図17】10:1のエフェクター:ターゲット比を有するCD33/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質媒介性ADCC効果の結果図である。
図18】20:1のエフェクター:ターゲット比を有するCD33/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質媒介性ADCC効果の結果図である。
図19】10:1のエフェクター:ターゲット比を有するCD38/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質媒介性ADCC効果の結果図である。
図20】5:1のエフェクター:ターゲット比を有するCD33/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質媒介性ADCPの結果図である。
図21】CD33/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質媒介性ADCPの結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、添付の図面および実施例を参照して、本発明の技術的解決策をさらに説明する。本発明をより理解しやすくするために、特定の技術的用語および科学的用語を以下に具体的に定義する。本明細書の他の場所で明確に定義されていない限り、本明細書で使用される他のすべての技術的用語および科学的用語は、当業者によって一般に理解される意味を有する。
【0051】
用語
「融合」という用語は、ペプチド結合による構成要素直接連結、連結断片を介した構成要素の連結、または分子間相互作用による非共有結合融合、一つまたは複数のジスルフィド結合もしくは化学架橋共有結合による融合を指す。単一のペプチド鎖において、融合とは、ペプチド結合による直接連結、または連結断片を介した連結を指す。「多機能融合タンパク質」とは、二つまたはそれ以上の異なるエピトープ(例えば、二つ、三つまたはそれ以上の異なるエピトープ)に結合できる、二つまたはそれ以上の抗原結合ドメインを含むタンパク質を指し、多機能融合タンパク質は、サイトカイン(例えば、IL-15、IL-15Ra)等をさらに含むこともできる。「融合位置」とは、ペプチド鎖における機能的領域またはドメインの位置を指し、当該ペプチド鎖上の各機能的断片の連結順序を示す。
【0052】
「ポリペプチド」という用語は、タンパク質およびその断片を含む、任意の長さのアミノ酸鎖を指す。本発明は、アミノ酸残基の配列としてのポリペプチドを開示する。あれらの配列は、アミノ基末端からカルボキシ基末端への方向に左から右に書かれている。標準命名法に従って、アミノ酸残基配列は、アラニン(Ala、A)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン((Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、シメシン(Cys、C)、グルタミン(Gln、Q)、グルタミン酸(Glu、E)、グリシン(Gly、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(I1e,I)、ロイシン(Leu、L)、リジン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、スレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)およびバリン(Val、V)のように3文字または1文字のコードで命名される。
【0053】
「ペプチド鎖」という用語は、ペプチド結合によってアミノ酸に線形的に結合した分子を指す。
「変異体」または「突然変異体」という用語は、含まれたアミノ酸またはヌクレオチドとは異なるが、基本的な特性を保持しているポリペプチドまたはポリヌクレオチドを指す。通常、変異体間または変異体と親抗体との間の違いは、限られており、アミノ酸配列は、一般に非常に類似している。本明細書において、変異前の抗体または抗体断片を親抗体と呼び、変異後の抗体または抗体断片を変異体と呼ぶ。変異体は、依然として抗原結合活性を有する。
【0054】
「抗体」(antibody、Ab)という用語は、少なくとも一つの抗原結合部位を含み、且つ抗原に特異的に結合できる免疫グロブリン分子(immunoglobulin、Ig)を指す。
【0055】
「抗原」という用語は、体内で免疫応答を誘導でき、且つ抗体に特異的に結合する物質である。抗原への抗体の結合は、水素結合、ファンデルワールス力、イオン結合、および疎水結合を含む両者間に形成される相互作用によって媒介された。抗原表面上で抗体に結合する領域を「抗原決定基」または「エピトープ」と呼び、一般に、各抗原には、複数の決定基がある。
【0056】
本発明で言及される「抗体」という用語は、最も広い意味で理解され、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、抗体断片、少なくとも二つの異なる抗原結合ドメインを含む多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)を含む。抗体は、マウス抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、および他に由来する抗体をさらに含む。本発明の抗体は、ヒト、非ヒト霊長類動物、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ニワトリ、ラクダ、アルパカ等の免疫グロブリンを含むがこれらに限定されない、任意の動物に由来することができる。抗体は、非天然アミノ酸、Fcエフェクター機能の突然変異およびグリコシル化部位の突然変異のような別の修飾を含むことができる。抗体は、抗体が所望の生物学的活性を示す限り、翻訳後修飾された抗体、抗体の抗原決定基を含む融合タンパク質、ならびに抗原識別部位に対する任意の他の修飾を含む免疫グロブリン分子をさらに含む。言い換えれば、抗体は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫活性断片、即ち、少なくとも一つの抗原結合ドメインを含む分子を含む。
【0057】
抗体の基本構造は、2本の完全に同一の重鎖(heavy chain、H)および2本の完全に同一の軽鎖(light chain、L)がジスルフィド結合によって連結されるY字型の単量体である。各鎖は、それぞれ2~5個の約110個のアミノ酸を含み、配列が類似しているが機能が異なるドメイン(機能領域とも呼ばれる)で構成される。抗体分子において、軽鎖および重鎖がN末端に近接するアミノ酸配列は、大きく変化しており、形成されたドメインを可変領域(variable region、V領域)と呼ばれ、C末端に近接するアミノ酸配列が相対的に一定な領域は、定常領域(constant region、C領域)と呼ばれる。
【0058】
重鎖および軽鎖のV領域は、それぞれVHおよびVLと呼ばれ、VHおよびVLは、それぞれ三つの領域のアミノ酸組成を有し、配列順序が非常に変化しやすく、超可変領域(hypervariable region、HVR)と呼ばれ、当該領域は、抗原エピトープに相補的な空間構造を形成し、相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)とも呼ばれる。VHの3个CDRは、それぞれVHCDR1、VHCDR2、VHCDR3で表され、VLの三つのCDRは、それぞれVLCDR1、VLCDR2、VLCDR3で表される。VHおよびVLの合計六つのCDRが、一緒に抗原結合部位(antigen-binding site)を形成する。CDR領域のアミノ酸の多様性は、抗体が多数の異なる抗原に特異的に結合する分子基盤である。V領域のCDRの外側のアミノ酸組成および排列順序は、比較的に変化が少なく、フレームワーク領域(framework region、FR)と呼ばれる。VHおよびVLは、FR1、FR2、FR3、FR4で表される四つのフレームワーク領域(フレームワーク領域と呼ばれる)を有する。VHおよびVLは、それぞれ三つのCDRおよび四つのFRで構成され、アミノ基端からカルボキシ基に向かう配列の順序は、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4である。
【0059】
抗体重鎖の定常領域のアミノ酸配列に従って、ヒト免疫グロブリンをIgM、IgG、IgA、IgD、IgEの五つのカテゴリーに分類できる。それは、異なるサブタイプ(アイソタイプ)に分けることができ、例えば、ヒトIgGは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4に分けることができ、IgAは、IgA1およびIgA2に分けることができる。IgM、IgD、IgEのサブタイプは、発見されていない。軽鎖アミノ酸配列に基づいて、軽鎖をκ鎖およびλ鎖に分類できる。本発明の抗体は、任意の種類(例えば、IgM、IgG、IgA、IgD、IgE)またはサブタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2)であり得る。
【0060】
重鎖および軽鎖の定常領域は、それぞれCHおよびCLと呼ばれる。IgG、IgA、IgDの重鎖定常領域は、CH1、CH2、CH3の三つのドメインを有し、IgM、IgEの重鎖定常領域は、CH1、CH2、CH3、CH4の四つのドメインを有する。
【0061】
ヒンジ領域(hinge region)は、CH1とCH2との間に位置し、豊富なプロリンを含むため、伸ばしたり曲げたりしやすく、Y字型の二つのアーム間の距離を変えることができ、二つのアームを同時に抗原エピトープに結合するのに有利する。
【0062】
「Fab断片」という用語は、抗原結合断片(fragment of antigen binding、Fab)であり、VL、VH、CLおよびCH1ドメインと構成される抗体断片を表わし、単一の抗原エピトープ(一価)に結合する。当業者は、一定条件下で、抗体分子鎖の特定の部分がタンパク質加水分解酵素によって容易に様々な断片に加水分解されることを知っている。パパインは、ヒンジ領域のN末端から抗体分子を二つの完全に同一の抗原結合断片(Fab)および結晶化可能な断片(Fc)に加水分解される。
【0063】
「Fv断片」という用語は、L鎖およびH鎖のV領域(VH+VL)からなる一価の低分子であり、抗原に結合する最小の機能的断片である。
「Fc」、「Fcセグメント」、「Fc断片」、「Fcドメイン」という用語は、抗原結合活性を有しない結晶化可能な断片(fragment crystallizable)を指し、抗体がエフェクター分子または細胞表面Fc受容体(FcR)に相互作用する部位である。Fc断片は、表面に対応するFc受容体を有する細胞に結合し、異なる生物学的効果を生み出す。ADCC効果(抗体依存性細胞媒介性細胞毒性効果、antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)において、抗体のFabセグメントは、ウイルス感染細胞または腫瘍細胞の抗原エピトープに結合し、そのFcセグメントは、殺傷細胞(NK細胞、マクロファージ等)表面のFcRに結合し、殺傷細胞を媒介して標的細胞を直接殺傷する。Fc断片は、重鎖定常領域CH1を除く抗体の定常領域ポリペプチド、即ち、ヒト免疫グロブリンIgA、IgD、IgG重鎖定常領域のカルボキシ基末端の二つの定常領域ドメインCH2およびCH3、ならびにヒト免疫グロブリンIgEおよびIgM重鎖定常領域のカルボキシ基末端の三つの定常領域ドメインCH2、CH3およびCH4を含む。Fc断片は、多くの場合、ヒトIgG1 Fc、ヒトIgG2 Fc、ヒトIgG3 Fc、ヒトIgG4 Fcまたはその変異体から選択され、好ましくはIgG1 Fc、またはヒトIgG4 Fcまたはその変異体から選択される。
【0064】
Fcは、2本の鎖から構成されることができ、本明細書において、Fc断片の2本の鎖を第1のFc鎖および第2のFc鎖と記載し、第1のFc鎖および第2のFc鎖は、それぞれ突然変異されることができ、本発明は、特定に限定されない。Fc断片は、Fcドメイン内の単一のポリペプチド鎖を指すこともできる。抗体のFcセグメントは、免疫エフェクター機能を排除するように選択でき、次のような突然変異の組み合わせ(EUによってカウントされる)を含むが、これらに限定されない。
【0065】
【表6】
【0066】
突然変異によって設計されたFc変異体の間は、空間充填効果、静電ステアリング、水素結合作用、疏水作用等を形成することができる。Fc変異体間の相互作用は、安定なヘテロ二量体の形成に有利する。好ましい突然変異設計は、「Knob-in-hole」形態の突然変異設計である。
【0067】
「連結断片」とは、タンパク質の正確なフォールディングおよびペプチドの安定性を確保するために、免疫グロブリンドメインに挿入され、且つ十分な移動性を提供する一つまたは複数のアミノ酸残基を指す。「連結断片」は、好ましくは(GGGGS)nであり、ここで、nは、0、1、2、3、4、5またはそれ以上であり得る。連結断片配列が短すぎると、二つのタンパク質の高次構造のフォールディングに影響を及ぼし、それによって相互に干渉する可能性があり、連結ペプチド配列が長すぎると、連結ペプチド配列自体が新しい抗原であるため、免疫原性の問題が発生する。
【0068】
腫瘍関連抗原(tumor-associated antigen、TAA)とは、胚性タンパク質、糖タンパク質抗原、扁平上皮抗原等を含む、腫瘍細胞または正常細胞に存在する抗原分子を指し、臨床腫瘍の診断に一般的に使用される。腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞の固有のものではなく、正常細胞でも微量合成されることができるが、腫瘍細胞が増殖すると高度に発現するため、「関連抗原」と呼ばれる。腫瘍関連抗原は、例えば、CD20、CD19、CD30、CD33、CD38、CD40、CD52、slamf7、GD2、CD24、CD47、CD133、CD239、CD276、PD-1、CEA、Epcam、Trop2、TAG72、MUC1、MUC16、mesothelin、folr1、CLDN18.2、PDL1、EGFR、EGFR VIII、C-MET、HER2、FGFR2、FGFR3、PSMA、PSCA、EphA2、ADAM17、17-A1、NKG2D ligands、MCSP、LGR5、SSEA3、SLC34A2、BCMA、GPNMBまたはGlypican-3であり得る。
【0069】
「ベクター」という用語は、それが連結している別のポリヌクレオチドを輸送できるポリヌクレオチド分子を指す。ベクターの一つの種類は、「プラスミド」であり、これは、環状の二本鎖DNA環を指し、ここで、追加のDNAセグメントに連結されることができる。ベクターの別の種類は、ウイルスベクターであり、ここで、追加のDNAセグメントは、ウイルスゲノムに連結されることができる。特定のベクターは、それらが導入された宿主細胞内で自律複製することができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーマル哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーマル哺乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入された後に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それによって宿主ゲノムとともに複製されることができる。さらに、特定のベクターは、それらが作動可能に連結される遺伝子の発現を指示することができる。通常、組換えDNA技術で有用である発現ベクターは、通常、プラスミドの形態である。本発明は、三機能性融合タンパク質をコードすることができる核酸断片を含むベクターを提供することができる。
【0070】
「IL-15」および「IL-15Ra」という用語は、その突然変異体または断片を指してもよい。本発明に記載の「IL-15」は、任意のIL-15またはIL-15Rαに結合できる突然変異体、例えば、ヒトIL-15または非ヒト哺乳動物もしくは非哺乳動物のIL-15であり得る。例示的な非ヒト哺乳動物としては、ブタ、ウサギ、サル、オランウータン、マウス等、例えばニワトリ等の非哺乳動物が挙げられ、好ましくは、ヒトのIL-15が挙げられる。「IL-15Rαに結合できる突然変異体」という用語は、IL-15とその受容体との間の親和性を増加または減少させる、またはT細胞もしくはNK細胞の刺激におけるその活性を増加または減少させる、一つまたは複数のアミノ酸の置換、増加または欠失によって突然変異が得られる突然変異体分子を指す。
【0071】
本発明に記載の「IL-15Rα」は、任意の種のIL-15RαまたはIL-15Rαに結合できる突然変異体、例えば、ヒトIL-15Rαまたは非ヒト哺乳動物IL-15Rαもしくは非哺乳動物IL-15Rαであり得る。例示的な非ヒト哺乳動物としては、ブタ、ウサギ、サル、オランウータン、マウス等、例えばニワトリ等の非哺乳動物が挙げられる。好ましくは、ヒトのIL-15Rα、より好ましくは、IL-15RαECDと呼ばれるヒトIL-15Rα細胞外ドメイン断片である(データベースUniProtKB、登録番号Q13261、31-205aa)。「IL-15Rαに結合できる突然変異体」という用語は、IL-15Rα上の一つまたは複数のアミノ酸欠失、挿入または置換突然変異によって形成され、IL-15等のそのリガンド分子に結合する能力を有する機能性突然変異体を指し、好ましくはヒトIL-15Rα分子、より好ましくはヒトIL-15Rα細胞外ドメイン断片の短縮型であり、即ち、細胞外ドメイン断片のC末端から一つまたは複数のアミノ酸を欠失突然変異により得られる、ヒトIL-15受容体α活性を有する分子、好ましくは65~178アミノ酸の欠失突然変異形態を保持する分子、例えばIL-15Rαである。IL-15タンパク質自体は、IL-15Rαタンパク質と複合する場合ほど安定ではない。当技術分野で知られているように、IL-15Rαタンパク質は、「sushiドメイン」を含み、それは、IL-15結合活性を保持する受容体の最も短い領域、または90%以上の結合活性を保持できる細胞外領域の一つのドメインである。
【0072】
CS1(CD319とも呼ばれ、SLAMF7)は、シグナル伝達リンパ球活性化分子ファミリーのメンバー7であり、NK細胞の免疫機能を調節する表面受容体タンパク質である。CS1は、多発性骨髄腫(MM)細胞株で高度に発現するが、健康な組織、原発性腫瘍組織または血液がんおよび非血液がん細胞株には見出されないため、当該疾患を治療するための魅力的な標的となっている。
【0073】
CD33は、67kDの1回膜貫通糖タンパク質であり、且つシアル酸結合免疫グロブリン様レクチン(Siglecs)ファミリーのメンバーである。その正確な生物学的機能は不明であるが、正常な人では、主に骨髄系分化抗原と考えられており、骨髄前駆細胞、好中球およびマクロファージでは、発現が低く、循環単球および樹状細胞では高度に発現する。重要なことは、急性骨髄性白血病(AML)患者の85%~90%の芽球および白血病幹細胞でCD33が検出されていることである。興味深いことに、CD33の発現は、造血細胞に限定されているが(Paul、Taylor、StansburyおよびMcVicar、2000年、Ulyanova、Blasioli、Woodford-ThomasおよびThomas、1999年)、正常な造血細胞には存在しない(Andrews、Torok-StorbおよびBernstein、1983年、Griffin、Linch、Sabbath、LarcomおよびSchlossman、1984、Jilaniら、2002年)。これらの発見は、CD33がAMLにおける抗体ベースの治療法の適切な標的であることを示唆する。
【0074】
CD38抗原は、1980年に発見され、大きさが46kDaのII型膜貫通糖タンパク質である。CD38のリガンドは、CD31であり、PECAM-1とも呼ばれ、それは、Ig遺伝子スーパーファミリーのメンバーである。CD31は、内皮細胞上の発現に加えて、リンパ系細胞(ザカB細胞および形質細胞)、肺(肺胞管、肺胞およびリンパ管)および腎臓(糸球体細胞)でも発現する。CD38は、リガンドCD31と相互作用し、細胞遊走、受容体媒介性接着およびシグナル伝達の調節において重要な役割を果たす。さらに、CD38タンパク質は、シクラーゼおよび加水分解酵素活性の両方を有する二機能性細胞外酵素でもあり、ヌクレオチド代謝に関与する。CD38は、NAD+を基質として使用して環状ADPリボース(cADPR)およびADPRを形成し、これらのヌクレオチド代謝産物は、効果的な第2のメッセンジャーであり、細胞質内のカルシウムイオンの動員を調節し、リンパ球の増殖、膵臓B細胞の分泌によるインスリン等の様々な生物学的プロセスを制御するシグナル伝達経路を活性化する。研究では、CD38依存性アデノシン産生は、ナチュラルキラー(NK)細胞媒介性免疫阻害において重要な役割を果たしていることが示される。通常、CD38は、正常なリンパ系細胞、骨髄系細胞、および非造血細胞では低レベルで発現しているが、造血起源の細胞(コミットされる幹細胞を含む)で広く発現される。CD38は、B細胞で発現され、形質細胞(エフェクターB細胞とも呼ばれる)でCD38の発現レベルが高くなる。CD38の発現は、AIDS、自己免疫性疾患(例えば、漸新世エリテマトーデス)、2型糖尿病、骨粗鬆症および癌を含む様々な疾患に関連する。研究によると、CD38は、多くの悪性血液がん、特に多発性骨髄腫等の癌で高度に発言していることが判明され、このため、CD38は、多発性骨髄腫に対する治療性抗体薬物の開発のターゲットポイントとなっている。
【0075】
「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域とFc受容体またはリガンドとの相互相から生じる生化学的事象を意味する。エフェクター機能は、ADCC、ADCPおよびCDCを含むが、これらに限定されない。「ADCC」または「抗体依存性細胞媒介性細胞毒性」とは、細胞媒介性応答を意味し、ここで、FcγRを発現する非特異的細胞傷害性細胞は、標的細胞上に結合した抗体を識別し、その後標的細胞の溶解を引き起こす。ADCCは、FcγRIIIaの結合に関連しており、FcγRIIIaへの結合の増加は、ADCC活性が増加する。本明細書で議論されるように、本発明の多くの実施例は、ADCC活性を完全に除去する。「ADCP」または抗体依存性細胞媒介性食作用とは、細胞媒介性応答を意味し、ここで、FcγRを発現する非特異的細胞傷害性細胞は、標的細胞上に結合する抗体を識別し、その後標的細胞の食作用を引き起こす。
【0076】
タンパク質配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、最大の配列同一性パーセントを達成するために、配列を整列させ、且つ必要の場合ギャップを導入した後、配列同一性の一部として保存的置換を考慮せず、特定(親)の配列内のアミノ酸残基と同一である候補配列内のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。いくつかの実施例において、二つまたはそれ以上のアミノ酸配列は、少なくとも80%、85%または90%同一である。いくつかの実施例において、二つまたはそれ以上のアミノ酸配列は、少なくとも95%、97%、98%、99%またはさらには100%同一である。
【0077】
「第1の」および「第2の」という用語は、説明の目的でのみ使用されており、その重要性の程度を示したり暗示したりするものではない。
本発明の抗原ターゲティング、抗CD16Aおよび免疫エフェクター細胞活性化の三機能性融合タンパク質は、CD16Aに特異的に結合するCD16A結合領域、腫瘍関連抗原(TAA)に特異的に結合するTAA結合領域、IL-15とIL-15Rαとの結合によって形成されるIL-15/IL-15Rα複合体、ならびにFcドメインを含む。本発明のTAA/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質は、治療効果を発揮し、主に腫瘍細胞上に発現する腫瘍関連抗原(TAA)およびNK細胞上のCD16Aを同時に結合することにより、この二つの細胞を架橋して免疫シナプスを形成し、NK細胞による腫瘍細胞の殺傷を促進し、同時にIL-15は、NK細胞の機能を拡張および維持する。
【0078】
本発明の三機能性融合タンパク質の構造形態は、図1図9を参照することができる。融合タンパク質は、四つのペプチド鎖が融合して形成され、第1のペプチド鎖および第2のペプチド鎖は、第1の単量体を形成し(図の左側)、第3のペプチド鎖および第4のペプチド鎖は、第2の単量体を形成する(図の右側)。第1のペプチド鎖は、VLドメインとCLドメインとの融合によって形成される軽鎖を含み、第2のペプチド鎖は、VHドメインと、CH1ドメインと第1のFc鎖との融合によって形成される重鎖を含み、第1のペプチド鎖のVLドメインおよびCLドメイン、ならびに前記第2のペプチド鎖のVHドメインおよびCH1ドメインは、対になってFab断片を形成する。第3のペプチド鎖は、抗体可変領域、サイトカインおよび第2のFc鎖を含み、第4のペプチド鎖は、抗体可変領域、サイトカインを含む。第3のペプチド鎖の抗体可変領域および前記第4のペプチド鎖の抗体可変領域は、対になってFv断片を形成し、第3のペプチド鎖のサイトカインおよび前記第4のペプチド鎖のサイトカインは、結合して前記IL-15/IL-15Rα複合体を形成する。
【0079】
図1図8に示される融合タンパク質において、第1の単量体におけるFab断片は、TAAを標的とし、図中のTAA抗体の機能を実現する。第2の単量体において、対になってFv断片を形成する抗体可変領域は、VHドメインおよびVLドメインから選択され、例えば、第3のペプチド鎖における抗体可変領域は、CD16Aを標的とするVHドメインから選択され、第4のペプチド鎖の抗体可変領域は、CD16Aを標的とするVLドメインから選択され、VHおよびVLは、対になってCD16Aを標的とするFv断片を形成し、図中の抗CD16A抗体(Anti-CD16A antibody)の機能を実現する。別の実施例において、第3のペプチド鎖における抗体可変領域は、CD16Aを標的とするVLドメインであり、第4のペプチド鎖における抗体可変領域は、CD16Aを標的とするVHドメインである。図中のVH(L)は、VHまたはVLの選択を表わす。図中の「VH(L)1」、「VL(H)1」、「VH2」、「VL2」の数字は、説明のみを目的としており、異なる抗原を標的とする抗体可変領域を表わす。VH(L)1は、VH1またはVL1を選択できることを表わし、第3のペプチド鎖の抗体可変領域がVH1である場合、第4のペプチド鎖の抗体可変領域は、VL1である必要があり、それにより対になってFv断片を形成できる。第3のペプチド鎖および第4のペプチド鎖におけるサイトカインは、IL-15およびIL-15Rαから選択され、IL-15/IL-15Rα複合体(IL-15/IL-15Rα complex)を形成する。いくつかの実施例において、第3のペプチド鎖におけるサイトカインは、IL-15であり、第4のペプチド鎖におけるサイトカインは、IL-15Rαである。逆に、いくつかの実施例において、第3のペプチド鎖は、IL-15Rαであり、第4のペプチド鎖は、IL-15である。
【0080】
第3のペプチド鎖および第4のペプチド鎖において、抗体可変領域(VHまたはVL)とサイトカインとの融合順序を限定しない。例えば、図1に示される融合タンパク質において、ペプチド鎖のN末端からC末端にかけて、前記第3のペプチド鎖の融合順序は、抗体可変領域~サイトカイン~第2のFc鎖であり、第4のペプチド鎖の融合順序は、抗体可変領域~サイトカインであり、「~」は、連結断片を表わす。図2に示される融合タンパク質と図1との違いは、ペプチド鎖のN末端からC末端にかけて、第4のペプチド鎖の融合順序は、サイトカイン~抗体可変領域である。図1図8における球状および三日月形は、異なるサイトカインを表わし、以下で、球状は、IL-15を表わし、三日月形は、IL-15Raを表わすものと仮定する。ペプチド鎖のN末端からC末端にかけて、図1図8に示される融合タンパク質の第3のペプチド鎖および第4のペプチド鎖の可能な組み合わせ形態の例は、次のとおりである。
【0081】
【表7】
【0082】
図9に示される融合タンパク質において、その第1の単量体(図中の左側部分)のFab断片は、CD16Aを標的とし、図中の抗CD16A抗体の機能を実現する。Fv断片は、TAAを標的とし、図中の抗TAA抗体の機能を実現する。図1図8に示される融合タンパク質と同様に、図9に示される融合タンパク質も、表1に列挙した第3のペプチド鎖および第4のペプチド鎖の様々な可能な組み合わせ形態を有することができる。
【0083】
本発明によって提供される革新的構造タンパク質の複合ユニットについては、図1に示される融合タンパク質の第2の単量体の上部、即ち、抗CD16AのFv断片とIL-15/IL-15Rα複合体とが融合した領域を参照することができる。複合ユニットは、二つの抗体可変領域(抗CD16AのVHおよびVL)、二つのサイトカイン(IL-15、IL-15Ra)、若干の連結断片を含む。抗体可変領域は、連結断片を介してサイトカインに融合される。二つの抗体可変領域が対になってFv断片を形成し、二つのサイトカインが結合してIL-15/IL-15R複合体を形成する。抗CD16AのVHドメインとVLドメインとの間、および/またはIL15とIL15Rαとの間には、好ましくは、1対以上のジスルフィド結合を有し、それによってより安定な構造を形成する。VHとVLとの間にジスルフィド結合を設定することができ、IL15とIL15Rαとの間にジスルフィド結合を設定しないことができ、IL15とIL15Rαとの間にジスルフィド結合を設定することができ、VHとVLとの間にジスルフィド結合を設定しないことができ、または、VHとVLとの間、およびIL15とIL15Rαとの間の両方にジスルフィド結合を設定することができる。本発明によって提供される複合ユニットを利用して、当業者は、本発明の実施例に示される融合タンパク質の形態に限定されることなく、他の標的タンパク質を構築することができる。
【0084】
サイトカインIL-15とIL-15Raとの間には、超高親和性(KD約30~100pM)を有し、本発明は、IL-15およびIL-15Raを使用して、抗体構造の一つにおけるCLおよびCH1ドメインをそれぞれ置換して、二重特異性抗体の軽鎖の不一致の問題を解決し、FCヘテロ二量体形態の重鎖の不一致の問題を解決することができる。いくつかの実施例において、Fabを有するFC末端は、プロテインAに結合できないように突然変異される。FC末端に結合するプロテインAアフィニティークロマトグラフィーおよびCH1ドメインに結合するCH1-XLアフィニティークロマトグラフィーの2段階を通じて、二重特異性ターゲティング抗体を精製する。
【0085】
実施例1:TAA/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質の取得、分子クローニング、一過性発現、およびタンパク質の精製
分子クローニング:この実施例では、以下の表に従って複数の融合タンパク質を構築し、TAAは、それぞれCD33、CD38、CS1を選択する。タンパク質の発現および配列番号は、以下の表に示されたとおりである。
【0086】
【表8】
【0087】
SEQ ID NO:01の配列は、次のとおりである。
【0088】
【化1】
ここで、点線で示す配列は、抗CD16AのVLであり、波線で示す配列は、IL-15である。
【0089】
SEQ ID NO:02の配列は、次のとおりである。
【0090】
【化2】
ここで、点線で示す配列は、抗CD16AのVHであり、波線で示す配列は、IL-15Raであり、二重下線は、Fc(Knob突然変異)である。
【0091】
SEQ ID NO:03の配列は、次のとおりである。
【0092】
【化3】
ここで、下線以外の部分は、抗CD33の軽鎖配列であり、点線で示す配列は、VLである。
【0093】
SEQ ID NO:04の配列は、次のとおりである。
【0094】
【化4】
ここで、下線以外の部分は、抗CD33の重鎖配列であり、点線で示す配列は、VHである。
【0095】
次のような配列をさらに提供する。
抗CD16A VL SEQ ID NO:38
SYVLTQPSSVSVAPGQTATISCGGHNIGSKNVHWYQQRPGQSPVLVIYQDNKRPSGIPERFSGSNSGNTATLTISGTQAMDEADYYCQVWDNYSVLFGGGTKLTVL
抗CD16A VH SEQ ID NO:39
QVQLVQSGAEVKKPGESLKVSCKASGYTFTSYYMHWVRQAPGQGLEWMGIINPSGGSTSYAQKFQGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARGSAYYYDFADYWGQGTLVTVSS
抗CD38 VL SEQ ID NO:40
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPTFGQGTKVEIK
抗CD38 VH SEQ ID NO:41
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAVSGFTFNSFAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGGTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYFCAKDKILWFGEPVFDYWGQGTLVTVSS
抗CS1 VL SEQ ID NO:42
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQDVGIAVAWYQQKPGKVPKLLIYWASTRHTGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYCQQYSSYPYTFGQGTKVEIK
抗CS1 VH SEQ ID NO:43
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFDFSRYWMSWVRQAPGKGLEWIGEINPDSSTINYAPSLKDKFIISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARPDGNYWYFDVWGQGTLVTVSS
抗CD33 VL SEQ ID NO:44
DIVMTQSPDSLTVSLGERTTINCKSSQSVLDSSTNKNSLAWYQQKPGQPPKLLLSWASTRESGIPDRFSGSGSGTDFTLTIDSPQPEDSATYYCQQSAHFPITFGQGTRLEIK
抗CD33 VH SEQ ID NO:45
QVQLVQSGAEVKKPGESVKVSCKASGYTFTNYGMNWVKQAPGQGLEWMGWINTYTGEPTYADKFQGRVTMTTDTSTSTAYMEIRNLGGDDTAVYYCARWSWSDGYYVYFDYWGQGTSVTVSS
IL-15 SEQ ID NO:46
NWVNVISDLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTS
IL-15(L52C)SEQ ID NO:47
NWVNVISDLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISCESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTS
IL-15Ra ECDSEQ ID NO:48
ITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIRDPALVHQRPAPPSTVTTAGVTPQPESLSPSGKEPAASSPSSNNTAATTAAIVPGSQLMPSKSPSTGTTEISSHESSHGTPSQTTAKNWELTASASHQPPGVYPQGHSDTT
IL-15Ra Sushi 65 SEQ ID NO:49
ITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIR
IL-15Ra Sushi 73 SEQ ID NO:50
ITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIRDPALVHQR
IL-15Ra Sushi 77 SEQ ID NO:51
ITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIRDPALVHQRPAPP
IL-15Ra Sushi 86 SEQ ID NO:52
ITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIRDPALVHQRPAPPSTVTTAGVT
IL-15Ra Sushi 102 SEQ ID NO:53
ITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIRDPALVHQRPAPPSTVTTAGVTPQPESLSPSGKEPAAS
IL-15Ra-sushi(S40C): SEQ ID NO:54
ITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTCSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIR。
【0096】
上記IL-15またはIL-15Raの配列は、すべて、本発明の融合タンパク質を構築するために使用されることができる。
表3に示されるように、対照抗体抗CD16a抗体、抗CD33抗体、エロツズマブ(Elotuzumab)、ダラツムマブ(Daratumumab)、TAA/CD16A二重抗体を設計および構築し、特許文献US20200148737A1に基づいてCD33/CD16A/IL-15対照分子GTB-3550等の分子を構築する。
【0097】
【表9】
【0098】
標的分子の一過性発現:
ExpiCHO-S細胞をFortiCHO培地(Gibco、A1148301)に接種し、8mMのGlutaMaxをさらに加え、37℃、120rpm、8%COで培養する。トランスフェクションの前日に、ExpiCHO-S細胞密度を3×10E6/mLに調整し、シェーカーに入れ、37℃、120rpm、8%COで培養し、トランスフェクション当日、サンプルを採取し、計数し、細胞密度を6×10E6/mlに希釈し、各ボトルは、40mLであり、125mlの振とうフラスコに入れ、20μgの同時トランスフェクションした各プラスミドを4.8mLのOpti MEMと混合し、120μlのPolyplus-FectoPROトランスフェクション試薬を加え、DNAおよびトランスフェクション試薬を均一に混合した後、室温で10分間放置し、混合物を細胞にゆっくりと入れ、均一に混合した後、シェーカーに入れて培養する。培養中に、1、4、6、8日目にそれぞれ2mLのFeed PFF05(OPM、F81279-001)および1mLの30%グルコース溶液をボトルに追加する。トランスフェクションの初日、温度を32℃に冷却し、CO濃度を5%に下げる。13日目にサンプルを収集し、8000rpmで20分間遠心分離し、上清を取り、精製する準備をする。
【0099】
融合タンパク質の精製:
プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによる精製
平衡溶液をカラムに通し、少なくとも3CV、実際の体積20mlであり、最終機器から流出する溶液のpHおよび導電率が平衡溶液と一致するように確保し、流速1ml/minであり、遠心分離後の培養液の上清をカラムに通し、40mlのサンプルをロードし、流速0.33ml/minであり、平衡溶液をカラムに通し、少なくとも3CV、実際の体積20mlであり、最終機器から流出する溶液のpHおよび導電率が平衡溶液と一致するように確保し、流速0.33ml/minであり、溶離液をカラムに通し、UV280が15mAUに上昇した時点で溶出ピーク(PAC-EP)の収集を開始し、UV280が15mAUに低下した時点で収集を停止し、流速1ml/minである。サンプル収集終了後、pH調節液でPAC-EPを中性に調整する。
【0100】
CH1-XLアフィニティークロマトグラフィー
プロテインAで処理したサンプルを8000rpm×15min遠心分離し、上清を取り、平衡溶液をカラムに通し、少なくとも3CV、実際の体積20mlであり、最終機器から流出する溶液のpHおよび導電率が平衡溶液と一致するように確保し、流速1ml/minであり、遠心分離した上清をサンプルループにかけてカラムに通し、流速0.33ml/minであり、平衡溶液をカラムに通し、少なくとも3CV、実際の体積20mlであり、最終機器から流出する溶液のpHおよび導電率が平衡溶液と一致するように確保し、流速0.33ml/minであり、溶離液をカラムに通し、UV280が10mAUに上昇した時点で溶出ピーク(PAC-EP)の収集を開始し、UV280が10mAUに低下した時点で収集を停止し、流速1ml/minである。サンプル収集終了後、pH調節液でCH1-EPを中性に調整する。
【0101】
実施例2:CD33に天然に発現するHL60細胞に結合するCD33/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質のFACS検出
実験目的:ヒト前骨髄性白血病細胞株HL60細胞は、CD33を天然に発現し、本発明は、FACSを使用して、CD33を天然に発現するHL60細胞へのCD33/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質の結合を検出する。
【0102】
実験方法:HL60細胞を37℃、5%COインキュベーターで培養し、トリプシン消化により細胞を収集し、ウェルあたり100000個の細胞を96ウェルプレートに接種し、2%FBS/PBSを用いて氷上で1時間ブロッキングし、異なる濃度の三機能性タンパク質および対照タンパク質をインキュベートし、氷上で1時間保持し、PBSで3回洗浄し、PE-抗ヒトFC(1:200)をインキュベートして希釈し、PBSで3回洗浄し、200μLのPBSで再懸濁し、FACSによって平均蛍光値を読み取り、graphpad prismソフトウェアを使用して結果を分析する。結果は、図10に示されたとおりであり、CD33抗体IgG1wtサブタイプQP41154116、CD33/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質QP743745(FC野生型)、QP43394340(FCは、L234A/L235A突然変異除去機能を実行する)、QP42914285(FCは、L234A/L235A突然変異除去機能を実行する)、CD33/CD16A二重特異性抗体QP4115777778(FC野生型)、CD33/CD16A二重特異性抗体QP411543674368(FCは、L234A/L235A突然変異除去機能を実行する)およびCD33抗体IgG1wtサブタイプQP41154116は、すべてCD33を天然に発現するHL60細胞に結合する。
【0103】
実施例3:CD38を天然に発現するDaudi細胞に結合するCD38/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質のFACS検出
実験目的:ヒトBurkitt’sリンパ腫細胞Daudi細胞は、CD38を天然に発現し、本発明は、FACSを使用して、CD38を天然に発現するDaudi細胞に結合するCD38/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質を検出する。
【0104】
実験方法:Daudi細胞を37℃、5%COインキュベーターで培養し、トリプシン消化により細胞を収集し、ウェルあたり100000の細胞を96ウェルプレートに接種し、2%FBS/PBSを用いて氷上で1時間ブロッキングし、異なる濃度の三機能性タンパク質および対照タンパク質をインキュベートし、氷上で1時間保持し、PBSで3回洗浄し、PE-抗ヒトFC(1:200)をインキュベートして希釈し、PBSで3回洗浄し、200μLのPBSで再懸濁し、FACSによって平均蛍光値を読み取り、graphpad prismソフトウェアを使用して結果を分析する。結果は、図11に示されたとおりであり、CD38抗体IgG1wtサブタイプQP34503451、CD38/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質QP43394341(FCは、L234A/L235A突然変異除去機能を実行する)は、CD38を天然に発現するDaudi細胞に濃度依存的に結合する。
【0105】
実施例4:CS1に対するCS1/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質結合活性のELISA検出
検出試薬:牛乳(BD、232100)、PBS(Sangon、B548117-0500)、HRP-抗ヒトIgG(H+L)(jackson、109-035-088)、TMB(Luoyang Baiaotong Experimental Materials Center、C060201)、Elisaプレート(costa、9018)1×PBS緩衝液、8.00gのNaCl、0.20gのKCl、2.9gのNaHPO・12H0、0.2gのKHPOを秤量して800mLのddHOに溶解し、十分に溶解した後に1Lに定容し、pHを7.4に調節し、高温で滅菌した後で備蓄する。または市販の10×、20×のPBS溶液を購入して1×PBS緩衝液に希釈して使用する。ブロッキング溶液:5gの牛乳をPBSに秤量し、ブロッキング溶液を調製してすぐに使用する必要がある。停止溶液(1mol/LHSO):109mLの98%濃HSOを秤量して2000mLのddHOにゆっくりと滴下する。TMBを37℃で10分間発色させ、100μl/ウェルでシェーカー(120rpm)に入れる。
【0106】
実験段階:CS1-FC融合タンパク質を1μg/ml、4℃で一晩プレーティングし、PBSで3回洗浄する。200μL/ウェルに従ってブロッキング溶液5%牛乳を加え、37℃で1時間インキュベートする。ブロッキング終了後、PBSで3回洗浄し、サンプルをインキュベートし、20μg/mlで5倍希釈し、合計七つの勾配で希釈し、最後のウェルを100倍に希釈し、100μl/ウェルで十分に混合した後、1時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄し、酵素標識抗体の添加:HRP-抗ヒトFab抗体を1:5000の希釈比率で100μl/ウェルでインキュベートし、十分に混合した後、1時間インキュベートし、PBSTで6回洗浄する。基質発色溶液の添加:基質発色溶液TMBを100μL/ウェルの用量で加え、シェーカーに入れ、200rpm、35℃で暗所で10分間発色させる。終了:発色終了後、100μL/ウェルの用量で停止溶液を速やかに反応を終了させる。検出:マイクロプレートリーダー上でA450nmでのOD値を測定し、graphpad prismソフトウェアを使用して結果を分析する。結果は、図12に示されたとおりであり、CS1/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質QP7434262(FC野生型)、QP43394342(FCは、L234A/L235A突然変異除去機能を実行する)は、すべてCS1タンパク質に濃度依存的に結合することを示す。
【0107】
実施例5:Mo7e細胞増殖実験
Mo7e(ヒト巨細胞性白血病細胞株)細胞は、IL-15Rβγを発現し、サイトカイン依存性成長細胞である。研究では、休止期NKおよびナイーブT細胞は、中程度の親和性IL-15Rβγ表現型を発現することが示され、Mo7e(IL-15Rβγ)細胞増殖実験におけるサイトカインIL-15/IL-15Raの結果は、刺激されていないPBMCでの増殖実験と一致する(Mol Cancer Ther、11(6)June2012)。本発明は、Mo7e細胞増殖実験を利用して、多機能性融合タンパク質IL-15活性を評価し、方法および結果は、次のとおりである。
【0108】
実験試薬:Mo7e細胞(ヒト巨細胞性白血病細胞株)は、中国医学アカデミー基礎医学研究所の細胞リソースセンターから購入され、細胞増殖および毒性検出キット(CCK-8)は、MeilunBioから購入され、製品番号MA0218、組換えヒトGM-CSFは、perprotechから購入され、製品番号300-03、ヒトIgGは、Sigmaから購入され、製品番号I4506、他の抗体は、内部で調製される。
【0109】
実験方法:Mo7e細胞は、10%FBS、2mMのL-グルタミンおよび8ng/mlのGM-CSFを含むRPMI1640培地を使用して、37℃、5%COインキュベーターで培養され、Mo7e細胞を収集し、800rpmで5分間遠心分離し、上清を捨て、GM-CSFを含まないRPMI1640培地で細胞を2回洗浄し、GM-CSFを含まないRPMI1640培地で細胞を再懸濁し、且つ計数し、2×104個の細胞を80μl/ウェルで96ウェルプレートに接種し、37℃、5%COインキュベーターで1時間培養し、試験する各薬用培地を4倍勾配希釈した後、ウェルあたり20μlを細胞懸濁液と均一に混合し、37℃、5%COインキュベーターで3日間培養し、試験する96ウェルプレートにウェルあたり10μlのCCK-8試薬を加え、37℃、5%COインキュベーターで4時間インキュベートし、96ウェルプレートを取り出し、マイクロプレートリーダーで波長450nmでの吸光度を検出する。
【0110】
図13図14図15の結果は、CD33/CD16A/IL-15、CD38/CD16A/IL-15、CS1/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質は、すべてMO7E細胞の増殖を促進することができることを示し、本発明の三機能性融合タンパク質分子形態タンパク質がすべてIL-15生物活性を有することを証明する。
【0111】
実施例6:CD33/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質媒介性ADCCの効果
実験目的:ADCC実験を通じてCD33/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質を検出する。
【0112】
実験材料:PBMCは、SailyBioから購入され、HL60細胞は、中国科学院Cell Bankから購入され、Cytotox96 非放射性細胞毒性実験検出キットは、Promega(G1780)から購入される。
【0113】
実験段階:PBMCを蘇生させ、翌日使用するために細胞を収集する。標的細胞の準備:HL60をトリプシンで1000rpmで5分間消化する。PBSで2回洗浄した後、96ウェルプレートに20000細胞/ウェル、50μl/ウェルでプレーティングし、37℃、5%COで2時間インキュベートする。抗体の準備:抗体を培地(10%低IgG FBSを含むRPMI1640)で八つの濃度に勾配希釈する。上記で希釈した各濃度の抗体を各ウェルに50μl加え、37℃で15分間インキュベートする。PBMCの準備:初日に蘇生したPBMCを遠心分離し、培地(10%低IgG FBSを含むRPMI1640)で再懸濁し、計数する。PBMC:標的細胞(Target cell)=20:1または10:1に従って、上記のウェルプレートにウェルあたり50μlを加え、37℃で4時間インキュベートする。LDH検出:最大放出群および体積補正群の場合、45分前に10μlの溶解溶液を加え、引き続きインキュベーターで培養する。4時間培養した後、50μlの上清をマイクロプレートにピペットで移し、Cytotox96非放射性細胞毒性実験検出キット(Promega、G1780)の指示に従って、50μlの試薬を加える。室温暗所で30分間反応させた後、50μlの停止溶液を加える。490nmでの吸光度を読み取る(停止溶液を添加完了後に1時間以内に読み取りを完了する)。計算:殺傷率=(サンプル放出-標的細胞の自然放出-エフェクター細胞の自然放出)/(標的細胞の最大放出-標的細胞の自然放出)×100。自然放出(抗体の非存在下でエフェクター細胞とインキュベートされる標的細胞に相当する)を0%細胞毒性として定義し、最大放出(1%Triton X-100で溶解した標的細胞)を100%細胞毒性として定義する。
【0114】
図16図17は、エフェクター:ターゲット比が10:1の場合の結果を示し、図18は、エフェクター:ターゲット比が20:1の場合の結果を示す。その結果:CD33抗体IgG1wtサブタイプQP41154116が、CD33を天然に発現するHL60細胞の濃度依存的にNK細胞殺傷を引き起こし、CD33/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質QP743745(FC野生型)、QP43394340(FCは、L234A/L235A突然変異除去機能を実行する)、QP42914285(FCは、L234A/L235A突然変異除去機能を実行する)、CD33/CD16A二重特異性抗体QP4115777778(FC野生型)、CD33/CD16A二重特異性抗体QP411543674368(FCは、L234A/L235A突然変異除去機能を実行する)は、CD33/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質対照分子GT-3550(QP877)およびCD33抗体IgG1wtサブタイプQP41154116よりも、NK細胞によるHL60細胞の殺傷を高める。CD16Aモノクローナル抗体QP43354336およびIL-15/IL-15Ra-FC融合タンパク質QP33123313の両方は、ADCC効果を有さない。
【0115】
実施例7:CD38/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質媒介性ADCCの効果
実験目的:ADCC実験を通じてCD38/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質を検出する。
【0116】
実験材料:PBMCは、SailyBioから購入され、Daudi細胞は、中国科学院Cell Bankから購入され、Cytotox96非放射性細胞毒性実験検出キットは、Promega(G1780)から購入される。
【0117】
実験段階:PBMCを蘇生させ、翌日使用するために細胞を収集する。標的細胞の準備:Daudi細胞をトリプシンで1000rpmで5分間消化する。PBSで2回洗浄した後、96ウェルプレートに20000細胞/ウェル、50μl/ウェルでプレーティングし、37℃、5%COで2時間インキュベートする。抗体の準備:抗体を培地(10%低IgG FBSを含むRPMI1640)で八つの濃度に勾配希釈する。上記で希釈した各濃度の抗体を各ウェルに50μl加え、37℃で15分間インキュベートする。PBMCの準備:初日に蘇生したPBMCを遠心分離し、培地(10%低IgG FBSを含むRPMI1640)で再懸濁し、計数する。PBMC:標的細胞(Target cell)=10:1または5:1に従って、上記のウェルプレートにウェルあたり50μlを加え、37℃で4時間インキュベートする。LDH検出:最大放出群および体積補正群の場合、45分前に10μlの溶解溶液を加え、引き続きインキュベーターで培養する。4時間培養した後、50μlの上清をマイクロプレートにピペットで移し、Cytotox96非放射性細胞毒性実験検出キット(Promega、G1780)の指示に従って、50μlの試薬(reagent)を加える。室温暗所で30分間反応させた後、50μlの停止溶液(stop solution)を加える。490nmでの吸光度を読み取る(停止溶液を添加完了後に1時間以内に読み取りを完了する)。計算:殺傷率=(サンプル放出-標的細胞の自然放出-エフェクター細胞の自然放出)/(標的細胞の最大放出-標的細胞の自然放出)×100。自然放出(抗体の非存在下でエフェクター細胞とインキュベートされる標的細胞に相当する)を0%細胞毒性として定義し、最大放出(1%Triton X-100で溶解した標的細胞)を100%細胞毒性として定義する。
【0118】
図19は、エフェクター:ターゲット比が10:1の場合の結果を示し、図20は、エフェクター:ターゲット比5:1の場合の結果を示し、図面に示されるように、異なるエフェクター:ターゲット比かで、CD38抗体IgG1wtサブタイプQP34503451は、CD38を天然に発現するDaudi細胞の濃度依存的にNK細胞殺傷を引き起こし、CD38/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質QP43394341(FCは、L234A/L235A突然変異除去機能を実行する)は、CD38抗体IgG1wtサブタイプQP34503451よりもNK細胞によるDaudi細胞の殺傷を高める。CD16Aモノクローナル抗体QP43354336およびIL-15/IL-15Ra-FC融合タンパク質QP33123313の両方は、ADCC効果を有さない。
【0119】
実施例8:CD33/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質媒介性ADCP
健康な人の末梢血単核球(PBMC)から単球を分離し、50ng/mLのヒト組換えM-CSF(Human Recombinant M-CSF)を加え、マクロファージへの分化を誘導する。HL60細胞を緑色蛍光CFSEで標識し、HL60細胞とマクロファージとを2:1の比率で96ウェルプレートに接種し、異なる濃度の検出対象タンパク質を加える。37℃で2時間インキュベートした後、反応を停止させ、APC抗ヒトCD11b抗体をインキュベートし、FACSによって読み取り、抗体の各濃度下でのAPC/FITC二重陽性細胞のパーセント、貪食作用を受けたマクロファージの割合を取得する。
【0120】
結果は、図21に示されたとおりであり、CD33/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質QP743745(FC野生型)およびQP43394340(FCは、L234A/L235A突然変異除去機能を実行する)の両方は、マクロファージに濃度依存的にHL60細胞を貪食させる。CD33/CD16A/IL-15三機能性融合タンパク質対照分子GT-3550(QP877)は、ADCPエフェクターを有さない。
【0121】
本発明の内容を上記の好ましい実施形態を通じて詳細に説明したが、本発明は上記の説明に限定されるものでないことを理解されたい。当業者であれば、上記の内容を読めば、本発明に対する様々な修正および変更が明らかとなるであろう。従って、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって限定されるべきである。
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【配列表】
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【国際調査報告】