(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】血液適合性を有する間葉系幹細胞、この製造方法および用途
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20240730BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240730BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240730BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20240730BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240730BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20240730BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20240730BHJP
C12N 15/863 20060101ALI20240730BHJP
C12N 15/869 20060101ALI20240730BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240730BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20240730BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240730BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240730BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20240730BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240730BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240730BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240730BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240730BHJP
A61P 23/02 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N15/113 Z
C12N15/63 Z
C12N15/867 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/861 Z
C12N15/86 Z
C12N15/863 Z
C12N15/869 Z
C12N15/09 110
A61K35/28
A61P1/04
A61P1/16
A61P1/18
A61P7/00
A61P9/00
A61P13/12
A61P11/00
A61P21/00
A61P25/00
A61P9/10
A61P25/28
A61P37/06
A61P23/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505403
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 KR2022011139
(87)【国際公開番号】W WO2023008933
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0100125
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】516355531
【氏名又は名称】ツールゲン インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TOOLGEN INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】シン,ウン ジ
(72)【発明者】
【氏名】イ,カン イン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ユ リ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ヘ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジェ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ファン ヨル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065BD50
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087CA04
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA36
4C087ZA51
4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZA75
4C087ZA81
4C087ZA94
4C087ZB08
(57)【要約】
血液凝固の開始因子であるCD142の発現または活性水準が減少または抑制されて血栓生成反応が阻害されることによって血液適合性を有する間葉系幹細胞、この製造方法およびこれを利用した細胞治療剤を提案し、前記間葉系幹細胞は血管内投与時、投与された間葉系幹細胞によって誘発され得る血栓生成反応が阻害されて向上した血液適合性を有する点を特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人為的に操作されたF3遺伝子を含む人為的に操作された間葉系幹細胞であって、
前記人為的に操作されたF3遺伝子は野生型間葉系幹細胞のF3遺伝子配列と異なり、
前記人為的に操作されたF3遺伝子は核酸配列内に一つ以上のインデル(indel)を含み、
前記人為的に操作された間葉系幹細胞の表面でCD142の発現水準は野生型間葉系幹細胞より減少して血液適合性が向上したことを特徴とする、人為的に操作された間葉系幹細胞。
【請求項2】
前記インデルはF3遺伝子のエキソン第1領域、第2領域、第3領域、第4領域または第6領域でプロトスペーサー隣接モチーフ(Protospacer-Adjacent Motif、PAM)配列内、またはPAM配列の5’末端または3′末端と隣接して位置する連続する5~50個のヌクレオチド配列内に位置することを特徴とする、請求項1に記載の人為的に操作された間葉系幹細胞。
【請求項3】
前記人為的に操作されたF3遺伝子の配列は配列番号1~43からなる群から選択された一つ以上の配列を含まないことを特徴とする、請求項1に記載の人為的に操作された間葉系幹細胞。
【請求項4】
前記人為的に操作された間葉系幹細胞内で、
前記人為的に操作されたF3遺伝子から転写されるmRNAは野生型間葉系幹細胞のF3遺伝子から転写されるmRNA発現水準と比較して、そのmRNA発現水準がさらに低いかまたは配列が異なることを特徴とする、請求項1に記載の人為的に操作された間葉系幹細胞。
【請求項5】
前記人為的に操作された間葉系幹細胞は脂肪、骨髓、臍帯、胎盤、羊水、羊膜、組織、臍帯血または出産前後組織(perinatal tissue)由来であることを特徴とする、請求項1に記載の人為的に操作された間葉系幹細胞。
【請求項6】
間葉系幹細胞のF3遺伝子の標的配列を標的化できるガイド配列を含むガイド核酸またはこれを暗号化する核酸;および
エディタ蛋白質またはこれを暗号化する核酸を含む、血液適合性を有する間葉系幹細胞製造用組成物。
【請求項7】
前記標的配列はSEQ ID NO:1~SEQ ID NO:43のうち選択された一つ以上の配列であることを特徴とする、請求項6に記載の血液適合性を有する間葉系幹細胞製造用組成物。
【請求項8】
前記組成物は
前記エディタ蛋白質および前記ガイド核酸をリボヌクレオプロテイン(RNP)形態で含む、請求項6に記載の血液適合性を有する間葉系幹細胞製造用組成物。
【請求項9】
前記組成物は
前記エディタ蛋白質を暗号化する核酸および前記ガイド核酸を暗号化する核酸を1以上のベクター形態で含む、請求項6に記載の血液適合性を有する間葉系幹細胞製造用組成物。
【請求項10】
前記ベクターはプラスミド、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルスおよび単純ヘルペスウイルスで構成された群から選択されたことを特徴とする、請求項9に記載の血液適合性を有する間葉系幹細胞製造用組成物。
【請求項11】
(1)F3遺伝子の標的配列を標的化できるガイド核酸またはこれを暗号化する核酸;およびエディタ蛋白質またはこれを暗号化する核酸を含む血液適合性を有する間葉系幹細胞製造用組成物を分離された間葉系幹細胞に導入する段階;および
(2)前記間葉系幹細胞のゲノム内に位置したF3遺伝子の標的配列にインデルを発生させることによって、CD142の発現または活性が減少または抑制されるようにF3遺伝子を編集する段階を含む、血液適合性を有する幹細胞の製造方法。
【請求項12】
前記標的配列はSEQ ID NO:1~SEQ ID NO:43のうち選択された一つ以上の配列であることを特徴とする、請求項11に記載の血液適合性を有する間葉系幹細胞の製造方法。
【請求項13】
前記組成物は前記エディタ蛋白質を暗号化する核酸および前記ガイド配列を暗号化する核酸を1以上のベクター形態で含む、請求項11に記載の血液適合性を有する間葉系幹細胞の製造方法。
【請求項14】
前記間葉系幹細胞のゲノム内に位置したF3遺伝子の標的配列に、ストレプトコッカスピオゲネス( Streptococcus pyogenes)由来Cas9蛋白質およびF3遺伝子の標的配列を標的化できるガイドRNAを含むCRISPR/Cas9複合体を接触させることによって、前記標的配列内にインデルが発生することを特徴とする、請求項11に記載の血液適合性を有する間葉系幹細胞の製造方法。
【請求項15】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載された人為的に操作された間葉系幹細胞を有効性分として含む、血管投与用細胞治療剤。
【請求項16】
前記血管投与用細胞治療剤は
心筋梗塞、心不全、虚血性心筋病症、心筋炎、虚血性腸炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、急性胆嚢炎、急性胆管炎、慢性胆嚢炎、急性膵臓炎、慢性膵臓炎、急性腎臓炎、慢性腎臓炎、急性腎不全、慢性腎不全、肺炎、間質性肺炎、特発性間質性肺炎、剥離性間質性肺炎、急性間質性肺炎、非特異的間質性肺炎、薬物誘発性肺疾患、急性呼吸困難症候群、慢性閉塞性肺疾患、小児脳性麻痺を含んだ脳性麻痺症候群、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis(ALS))、多発性神経病症、脊髄性筋萎縮症、急性横断性脊髄炎、脳卒中、多発性硬化症、末梢動脈疾患(peripheral artery disease(PAD))、閉塞性血栓血管炎(バージャー病)、川崎病(Kawasaki disease(KD))、および移植片対宿主疾患(Graft versus Host Disease(GVHD))からなる群から選択された1種の疾患治療用である、請求項15に記載の血管投与用細胞治療剤。
【請求項17】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載された人為的に操作された間葉系幹細胞を有効性分として含む、薬剤学的組成物。
【請求項18】
前記組成物は血管内に投与されるものである、請求項17に記載の薬剤学的組成物。
【請求項19】
前記組成物は心筋梗塞、心不全、虚血性心筋病症、心筋炎、虚血性腸炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、急性胆嚢炎、急性胆管炎、慢性胆嚢炎、急性膵臓炎、慢性膵臓炎、急性腎臓炎、慢性腎臓炎、急性腎不全、慢性腎不全、肺炎、間質性肺炎、特発性間質性肺炎、剥離性間質性肺炎、急性間質性肺炎、非特異的間質性肺炎、薬物誘発性肺疾患、急性呼吸困難症候群、慢性閉塞性肺疾患、小児脳性麻痺を含んだ脳性麻痺症候群、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis(ALS))、多発性神経病症、脊髄性筋萎縮症、急性横断性脊髄炎、脳卒中、多発性硬化症、末梢動脈疾患(peripheral artery disease(PAD))、閉塞性血栓血管炎(バージャー病)、川崎病(Kawasaki disease(KD))、および移植片対宿主疾患(Graft versus Host Disease(GVHD))からなる群から選択された1種の疾患の予防または治療に使うためのものである、請求項17に記載の薬剤学的組成物。
【請求項20】
疾病または病態を有する哺乳動物に治療学的に有効な量の請求項1~請求項5のいずれか一項に記載された人為的に操作された間葉系幹細胞を血管内に投与する段階を含む、幹細胞を使う細胞療法方法。
【請求項21】
前記疾病または病態は
心筋梗塞、心不全、虚血性心筋病症、心筋炎、虚血性腸炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、急性胆嚢炎、急性胆管炎、慢性胆嚢炎、急性膵臓炎、慢性膵臓炎、急性腎臓炎、慢性腎臓炎、急性腎不全、慢性腎不全、肺炎、間質性肺炎、特発性間質性肺炎、剥離性間質性肺炎、急性間質性肺炎、非特異的間質性肺炎、薬物誘発性肺疾患、急性呼吸困難症候群、慢性閉塞性肺疾患、小児脳性麻痺を含んだ脳性麻痺症候群、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis(ALS))、多発性神経病症、脊髄性筋萎縮症、急性横断性脊髄炎、脳卒中、多発性硬化症、末梢動脈疾患(peripheral artery disease(PAD))、閉塞性血栓血管炎(バージャー病)、川崎病(Kawasaki disease(KD))、および移植片対宿主疾患(Graft versus Host Disease(GVHD))からなる群から選択された1種である、請求項20に記載の細胞療法方法。
【請求項22】
疾病または病態を有する哺乳動物で血管内投与時に血栓生成を抑制するための薬剤の製造に使うための請求項1~請求項5のいずれか一項に記載された人為的に操作された間葉系幹細胞の用途。
【請求項23】
前記疾病または病態は
心筋梗塞、心不全、虚血性心筋病症、心筋炎、虚血性腸炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、急性胆嚢炎、急性胆管炎、慢性胆嚢炎、急性膵臓炎、慢性膵臓炎、急性腎臓炎、慢性腎臓炎、急性腎不全、慢性腎不全、肺炎、間質性肺炎、特発性間質性肺炎、剥離性間質性肺炎、急性間質性肺炎、非特異的間質性肺炎、薬物誘発性肺疾患、急性呼吸困難症候群、慢性閉塞性肺疾患、小児脳性麻痺を含んだ脳性麻痺症候群、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis(ALS))、多発性神経病症、脊髄性筋萎縮症、急性横断性脊髄炎、脳卒中、多発性硬化症、末梢動脈疾患(peripheral artery disease(PAD))、閉塞性血栓血管炎(バージャー病)、川崎病(Kawasaki disease(KD))、および移植片対宿主疾患Graft versus Host Disease(GVHD))からなる群から選択された1種である、請求項22に記載の人為的に操作された間葉系幹細胞の用途。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
血液凝固の開始因子であるCD142の発現または活性水準が減少または抑制されて血栓生成反応が阻害されることによって、静脈内などの血管内投与が可能な血液適合性を有する間葉系幹細胞、この製造方法および用途が提供される。
【0002】
〔背景技術〕
間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell)は自家増殖能、多分化能(multi-potency)を有しており、多様な種類の前駆細胞があるので幹細胞株の確保が容易であり、多分化性幹細胞として、胚胎幹細胞などの万能幹細胞に比べてはるかに遺伝的に安定化しているという長所を有している。また、抗炎症能、免疫調節能のために軟骨の再生、心筋梗塞の治療、移植片対宿主疾患の治療などのための細胞治療剤として開発されてきた。
【0003】
細胞治療剤として使われる間葉系幹細胞は静脈内(intravenous)、または患部(local)に直接投与されている。間葉系幹細胞を血管注射を通じて動物に投与するとそのほとんどは肺に蓄積されるが、一部分は炎症部位、リンパ球、肝、骨、脳などの多様な器官に移動し得る。間葉系幹細胞の治療メカニズム(therapeutic Mechanism of Action)は傍分泌因子(paracrine factor)の分泌と知られており、免疫調節(immune-modulation)が主な治療メカニズムと知られている。したがって、静脈内投与された間葉系幹細胞は体内多様な器官で免疫調節(immune-modulation)を引き起こし得るため、静脈内投与は好ましい投与経路となり得る。
【0004】
しかし、既存の静脈内に投与する骨髓(Bone marrow、BM)由来間葉系幹細胞とは異なって、脂肪細胞由来、臍帯血/臍帯由来、出産前後組織(perinatal tissue)由来間葉系幹細胞は組織因子(tissue factor、CD142、TF、factor III、血液凝固第3因子、以下CD142)を過発現すると知られており、これは血液の凝固を引き起こし得るため静脈に血栓症(thrombosis)と塞栓症(embolism)が発生する静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism、VTE)誘発の恐れがあり、静脈内投与はできなかった。骨髓由来間葉系幹細胞も静脈内投与時、その容量に限界点があった。ヒト由来間葉系幹細胞を対象としたin vitro/in vivo環境の血液適合性(Hemocompatibility)実験で、出産前後組織(perinatal tissue、PT)由来、臍帯血/臍帯由来間葉系幹細胞(Umbilical cord、UC)と脂肪組織由来間葉系幹細胞(adipose tissue、AT)でCD142の発現が高く示されたし、血栓生成が強く起きる傾向を示した。さらに、CD142を発現する出産前後組織(perinatal tissue、PT)由来、臍帯血/臍帯(Umbilical cord、UC)由来間葉系幹細胞と脂肪組織由来間葉系幹細胞(adipose tissue、AT)は、静脈内投与時に急性血液媒介性炎症反応(Instant blood mediated inflammatory reaction、IBMIR)を起こして血栓を生成するだけでなく、間葉系幹細胞の生着(engraftment)を阻害し免疫反応をかえって増加させる傾向を示す(Guido Moll et al.,Intravascular Mesenchymal Stromal/Stem Cell Therapy Product D4ersification:Time for New Clinical Guidelines、Trends in Molecular Medicine、VOLUME 25、ISSUE 2、P149-163、FEBRUARY 01、2019)。
【0005】
動物体の場合、組織損傷による血液の損失を最小化するために出血を防止する複雑な生体機構である血液凝固システムを有している。血液凝固システムは初期刺激に対して、いわゆるカスケード反応(cascade reaction)と呼ばれる連続した増幅反応過程であり、刺激によって直接誘発される固有経路(intrinsic pathway)と独自の外部経路(extrinsic pathway)で構成される。ここには多くの種類の血液凝固因子が関与している。
【0006】
このうち、CD142は外部経路(extrinsic pathway)凝固過程の最初の段階に作用する細胞膜糖蛋白質であり、生体内凝固過程に重要な役割をする。CD142は第VIIまたはVIIa凝固因子と結合後、第IXおよびプロトロンビンをトロンビンに活性化させるのに関与するX凝固因子を活性化して凝固過程中にトロンビンを生成し、トロンビンはフィブリノーゲンをフィブリンに活性化させて血栓が形成される。また、CD142は免疫細胞を活性化して好中球、血小板、単核球の活性を起こし、各種サイトカインの分泌を誘発し、内在した免疫体系を活性化する。
【0007】
〔先行技術文献〕
(特許文献1)US 2020-0016211
(特許文献2)JP2016-140346
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明の課題は、血管内投与時、投与された間葉系幹細胞によって誘発され得る血栓生成反応が阻害された、血液適合性を有する間葉系幹細胞、この製造方法およびこれを利用した細胞治療剤を提供することである。
【0008】
〔課題を解決するための手段〕
前記課題を達成するために、本発明は
血液凝固の開始因子であるCD142の発現または活性水準が減少または抑制されて、血栓生成反応が阻害されることによって血管内投与が可能な血液適合性を有する間葉系幹細胞を提供する。
【0009】
また、本発明は人為的に操作されたF3遺伝子を含む人為的に操作された間葉系幹細胞であって、前記人為的に操作されたF3遺伝子は野生型間葉系幹細胞のF3遺伝子配列と異なり、前記人為的に操作されたF3遺伝子は核酸配列内に一つ以上のインデル(indel)を含み、前記人為的に操作された間葉系幹細胞の表面でCD142の発現水準は野生型間葉系幹細胞より減少したことを特徴とする人為的に操作された間葉系幹細胞を提供する。
【0010】
また、本発明は間葉系幹細胞のF3遺伝子の標的配列を標的化できるガイド配列を含むガイド核酸またはこれを暗号化する核酸;およびエディタ蛋白質またはこれを暗号化する核酸を含む血液適合性を有する間葉系幹細胞製造用組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は(1)前記血液適合性を有する間葉系幹細胞製造用組成物を分離された間葉系幹細胞に導入する段階;および(2)前記間葉系幹細胞のゲノム内に位置したF3遺伝子の標的配列にインデルを発生させることによって、CD142の発現または活性が減少または抑制されるようにF3遺伝子を編集する段階を含む血液適合性を有する間葉系幹細胞の製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明は前記血液適合性を有するように人為的に操作された間葉系幹細胞を有効性分として含む血管投与用細胞治療剤を提供する。
【0013】
また、本発明は前記血液適合性を有するように人為的に操作された間葉系幹細胞を有効性分として含む、薬剤学的組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は疾病または病態を有する哺乳動物に治療学的に有効な量の前記人為的に操作された間葉系幹細胞を血管内に投与する段階を含む、幹細胞を使う細胞療法方法を提供する。
【0015】
また、本発明は疾病または病態を有する哺乳動物で血管内投与時に血栓生成を抑制するための薬剤の製造に使うための前記人為的に操作された間葉系幹細胞の用途を提供する。
【0016】
〔発明の効果〕
本発明の人為的に操作された間葉系幹細胞は血液凝固の開始因子であるCD142を暗号化するF3遺伝子を遺伝子ハサミ技術で人為的に変形して、CD142の発現または活性が減少または抑制されることによって、血液凝固メカニズムが抑制され得る。したがって、幹細胞の表面にCD142が過発現して静脈に血栓症(thrombosis)と塞栓症(embolism)が発生する静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism、VTE)誘発の憂慮で静脈内投与が困難であった出産前後組織(perinatal tissue、PT)由来、臍帯血/臍帯(Umbilical cord、UC)由来間葉系幹細胞と脂肪組織由来間葉系幹細胞(adipose tissue、AT)の静脈内投与を可能とする。また、既存の静脈内投与経路に使われたが投与容量に限界があった骨髓由来間葉系幹細胞の投与容量を増加させることができる。また、間葉系幹細胞の生着(engraftment)を向上させ、炎症反応を減少させて間葉系幹細胞の効能を増加させることができる。
【0017】
〔図面の簡単な説明〕
〔
図1〕F3遺伝子の配列番号1~43の標的配列を標的化するそれぞれのガイドRNAに対するインデル効率を標的化ディープシーケンシング方法を通じて測定した結果を示したグラフである。
【0018】
〔
図2〕スクリーニングしたF3 target sgRNAを使ってF3遺伝子がノックアウトされた骨髓由来間葉系幹細胞(F3 KO BM-MSC)でインデル頻度を示したグラフである。
【0019】
〔
図3〕スクリーニングしたF3 target sgRNAを使ってF3遺伝子がノックアウトされた臍帯血由来間葉系幹細胞(F3 KO UC-MSC)でインデル頻度(
図3(a))とF3遺伝子がノックアウトされた臍帯血由来間葉系幹細胞(F3 KO UC-MSC)表面でCD142発現程度をFACS分析を通じて示したグラフ
図3(b)である。
【0020】
〔
図4〕F3遺伝子の配列番号1~43の標的配列を標的化するそれぞれのガイドRNAを使ってF3遺伝子がノックアウトされた臍帯血由来間葉系幹細胞(F3 KO UC-MSC)表面でCD142発現程度をFACS分析を通じて示したグラフである。
【0021】
〔
図5〕本発明の一実施例に係る実験例で臍帯血由来間葉系幹細胞(US-MSC)継代による実験スケジュールを示したものである。
【0022】
〔
図6〕野生型臍帯血由来幹細胞(WT)、遺伝子操作なしに電気穿孔のみなされた臍帯血由来幹細胞(Mock)、配列番号31の標的配列をノックアウトした臍帯血由来幹細胞(sgCD142#33)に対するインデル効率を標的化ディープシーケンシング方法を通じて測定した結果を示したグラフ(
図6(a))およびF3mRNA発現量を示したグラフ(
図6(b))である。
【0023】
〔
図7〕形質導入(transfection)後の間葉系幹細胞の形状(morphology)を顕微鏡で観察した結果を示したものである。
【0024】
〔
図8〕野生型臍帯血由来幹細胞(WT)、遺伝子操作なしに電気穿孔のみなされた臍帯血由来幹細胞(Mock)、配列番号31の標的配列をノックアウトした臍帯血由来幹細胞(sgCD142#33)のPDL(Population Doubling Level)(
図8(a))およびPopulation Doubling time(PDT(Population Doubling time)(
図8(b))を示すグラフである。
【0025】
〔
図9〕野生型臍帯血由来幹細胞(WT)、遺伝子操作なしに電気穿孔のみなされた臍帯血由来幹細胞(Mock)、配列番号31の標的配列をノックアウトした臍帯血由来幹細胞(sgCD142#33)のCD142発現を示す細胞比率(
図9(a))およびCD142 MFI(平均蛍光強度、median fluorescence intensity)(
図9(b))を示すグラフである。
【0026】
〔
図10〕TEG 6s装備を使って測定した野生型臍帯血由来間葉系幹細胞(WT)、遺伝子操作なしに電気穿孔のみなされた臍帯血由来間葉系幹細胞(Mock)、配列番号31の標的配列をノックアウトした臍帯血由来幹細胞(sgCD142#33)の凝固反応時間(R-time:分析開始から血栓振幅が2mmに到達するまでの時間)(
図10(a))、血栓動力学(K-time:血栓振幅が2mmに到達した後、振幅が20mmに到達するまでの時間)(
図10(b))、血栓生成強度(アルファ角度:RとK時間の中間点で接線がなす角度)(
図10(c))および血栓最大振幅(MA:絶対血栓強度)(
図10(d))を示すグラフである。
【0027】
〔
図11〕野生型臍帯血由来幹細胞(WT)、遺伝子操作なしに電気穿孔のみなされた臍帯血由来幹細胞(Mock)、配列番号31の標的配列をノックアウトした臍帯血由来幹細胞(sgCD142#33)の細胞溶解物(cell lysate)組織因子(
図11(a))および調整培地(conditioned media)組織因子(
図11(b))を示すグラフである。
【0028】
〔
図12〕RNA-seq(QuantSeq)分析結果、p-value値が0.05未満であり、正規化されたデータ(log 2)値が4以上である遺伝子リストを示した表である。
【0029】
〔
図13〕抗体マイクロアレイ(Antibody Microarray)を通じての細胞分泌体分析(secretome analysis)結果を示した表である。
【0030】
〔発明を実施するための形態〕
以下、本発明を詳細に説明する。
【0031】
本明細書で使われる「約」という用語は、参照量、水準、値、数、頻度、パーセント、寸法、大きさ、量、重量または長さに対して30、25、20、25、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1程度に変わる量、水準、値、数、頻度、パーセント、寸法、大きさ、量、重量または長さを意味する。
【0032】
本明細書で使われる「人為的に操作された」という用語は、自然界にすでに存在する構成を有する物質、分子などと区分するために使う用語であって、前記物質、分子などに人為的な変形が加えられたことを意味する。例えば、「人為的に操作された遺伝子」の場合、自然界に存在する遺伝子の構成に人為的な変形が加えられた遺伝子を意味する。また、前記用語は当業界の通常の技術者が認識できる意味をすべて含み、文脈により適切に解釈され得る。
【0033】
本明細書で使われる「野生型」は、自然的に発生する塩基配列を含む遺伝子およびその遺伝子から発現する蛋白質が正常な機能的特性を有することを意味する。野生型遺伝子は自然的または人為的突然変異が発生していない形態を有し、集団で最も頻繁に観察される。本明細書で「野生型」という用語が人為的に操作された遺伝子、および/または人為的に操作された細胞と対比して使われるのであれば、これは人為的に操作された遺伝子、および/または人為的に操作された細胞と相応する同種の「人為的に操作されていない」自然的に発生する塩基配列を含む遺伝子およびこれを有する細胞を意味するものと解釈され得る。また、前記用語は当業界の通常の技術者が認識できる意味をすべて含み、文脈により適切に解釈され得る。
【0034】
本明細書で使われる「ノックアウト(knock-out)」、あるいは「ノックアウトされた遺伝子」という表現は、野生型遺伝子に突然変異または人為的変形が発生して、その結果、野生型遺伝子が発現する蛋白質が転写および/または翻訳過程を経て生成されることができないことを意味する。例えば、ノックアウトされた遺伝子Aを含む細胞は野生型遺伝子Aによって発現するmRNAおよび/または蛋白質を発現できないものであり得る。ノックアウトされたA遺伝子を含む細胞とは、細胞内存在する遺伝子Aのうち一つのみノックアウトされたものであり得、二つ以上ノックアウトされたものであり得る。また、前記用語は当業界の通常の技術者が認識できる意味をすべて含み、文脈により適切に解釈され得る。
【0035】
本明細書で使われる「ノックダウン(knock-down)」、あるいは「ノックダウンされた遺伝子」という表現は、野生型遺伝子に突然変異または人為的変形が発生して、その結果、野生型遺伝子より少ない量で物質を発現することを意味する。例えば、ノックダウンされた遺伝子Aを含む細胞は野生型遺伝子Aによって発現するmRNAより少ない量のmRNAを発現するものであり得る。さらに他の例として、ノックダウンされた遺伝子Aを含む細胞は野生型遺伝子Aによって発現する蛋白質より少ない量の蛋白質を発現するものであり得る。A遺伝子がノックダウンされた細胞とは、細胞内存在する遺伝子Aのうち一つのみノックダウンされたものであり得、二つ以上ノックダウンされたものであり得る。また、前記用語は当業界の通常の技術者が認識できる意味をすべて含み、文脈により適切に解釈され得る。
【0036】
本明細書において、「発現減少」は野生型で測定されたmRNAおよび/または蛋白質の発現水準より低い程度の発現を示すことを意味する。前記減少は遺伝的変形を有さない細胞または野生型細胞に比べて約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約30%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、または約100%以上減少したものであり得る。
【0037】
本明細書で使われた用語「活性減少」、または「減少した活性」は蛋白質または酵素の活性を測定した時、相対的な活性の減少を意味し得る。具体的には、「活性減少」、または「減少した活性」は与えられた母細胞または野生型細胞に比べてさらに低い水準の蛋白質、または酵素の活性を意味する。
【0038】
本明細書で使われる「血液適合性(Hemocompatibility)」は血液と接触時溶血(haemolysis)、血小板付着、血小板活性化および補体(complement)活性化を通じてのフィブリン形成、血栓形成反応または塞栓症を誘発しないことを意味する。
【0039】
本明細書において、「幹細胞(stem cell)」とは、多様な種類の身体組織細胞に分化できる能力、すなわち、幹細胞性(stemness)を有する未分化細胞を総称する広義の概念をいう。この時、前記幹細胞は誘導万能幹細胞、胚胎幹細胞、および成体幹細胞であり得る。また、前記細胞はヒト由来であり得るが、これに制限されるものではない。
【0040】
本明細書において、「間葉系幹細胞」は人間または哺乳類の組織から分離した未分化した幹細胞であって、多様な組織から由来し得る。特に、臍帯由来間葉系幹細胞、臍帯血由来間葉系幹細胞、骨髓由来間葉系幹細胞、脂肪由来間葉系幹細胞、筋肉由来間葉系幹細胞、神経由来間葉系幹細胞、皮膚由来間葉系幹細胞、羊膜由来間葉系幹細胞、羊水由来間葉系幹細胞、出産前後組織(perinatal tissue)由来間葉系幹細胞または胎盤由来間葉系幹細胞であり得、各組織で幹細胞を分離する技術は当業界ですでに公知である。
【0041】
本発明はCD142(tissue factor、TF、factor III、組織因子、血液凝固第3因子)の発現または活性が減少または抑制された間葉系幹細胞を提供する。
【0042】
前記CD142の発現または活性が減少または抑制された間葉系幹細胞は、外因系凝固過程の最初の段階に作用する細胞膜糖蛋白質として生体内血液凝固過程に重要な役割をするCD142の発現または活性が減少または抑制されて血栓凝固メカニズムが阻害された間葉系幹細胞であって、前記CD142の発現または活性が減少または抑制された間葉系幹細胞は細胞治療剤として活用されて血管投与経路のうち静脈経路に投与する時、野生型間葉系幹細胞、従来技術で人為的に操作された間葉系幹細胞または抗体、細胞分別装置や磁気ビーズなどで選別されたCD142低発現間葉系幹細胞より改善された血液適合性を示すことができる。
【0043】
具体的には、本発明は間葉系幹細胞のF3遺伝子を人為的に操作して、F3mRNAおよび/またはCD142の発現または活性が減少または抑制されることによって、静脈内投与時に血液凝固反応が減少したことを特徴とする血液適合性を有する人為的に操作された間葉系幹細胞を提供する。
【0044】
本発明はF3遺伝子の核酸配列が人為的に変形されたものを含む人為的に操作された間葉系幹細胞を提供する。
【0045】
本発明で、遺伝子核酸配列の「人為的な変形」または「人為的な操作」は遺伝子を構成する核酸配列の変形または単一塩基の化学的変形を通じてなされ得る。これは遺伝子の一部又は全部が変異、置換、削除されたり前記遺伝子に一つ以上の塩基が挿入されることによるものであり得、CRISPR-enzyme systemなどの遺伝子ハサミ技術を利用してなされ得る。一例として、前記遺伝子核酸配列の人為的な変形は非相同的な末端連結(non-homologous end joining、NHEJ)または相同組換え修復(homology directed repair、HDR)メカニズムによってなされ得る。
【0046】
一例として、前記人為的に操作された間葉系幹細胞はF3遺伝子がノックアウト(knock out)されるものであり得る。
【0047】
本明細書において、「非相同性末端連結(Non-homologous end joining、NHEJ)」は、切断された二本鎖または一本鎖の両末端が共に結合することによってDNA内二本鎖の破損を修復または修繕する方法であって、一般的に二本鎖の破損(例えば、切断)により形成された2個の適合性末端が頻繁な接触を繰り返して2個の末端が完全に結合される場合に破損した二本鎖が修復される。
【0048】
前記NHEJを利用した損傷した遺伝子または核酸の修復過程でNHEJ修繕部位に核酸配列の一部「挿入(insertion)および/または欠失(deletion)」(または「インデル」、InDel)が発生し得、インデルが発生した遺伝子は野生型遺伝子と同一の配列を有さない。このような挿入および/または欠失は遺伝子のリーディングフレームを変更させ、フレームシフトされた転写体mRNAを作り出し、その結果、ナンセンス-媒介崩壊(nonsense mediated decay)を体験したり正常な蛋白質の合成に失敗することによって本来の機能を喪失することになる。または追加的に、リーディングフレームを維持するものの、相当の量の配列を挿入または欠失させる突然変異を招いて蛋白質の機能性を破壊し得る。さらに他の例示において、遺伝子のプロモーター領域またはエンハンサー領域のような転写調節領域にインデルが発生する場合、mRNAが転写しないか、転写量が減少し、これに伴い、蛋白質が発現しないか、発現量が減少し得る。またはNHEJの突然変異発生メカニズムを活用して、特異的最終配列の生成が必要でない場合、一部の配列モチーフのみ欠失させるのに使われ得る。例えば、特定エキソンの5′および3′部分のイントロン部位をそれぞれ標的とする二以上のガイドRNAを利用して各イントロン部分に二本鎖切断を起こし、NHEJによって、遺伝子のエキソンの一部のみ欠失されると、他部分は正常に発現して蛋白質の主要な機能性は維持され得る。
【0049】
このようなNHEJを利用すると、遺伝子ハサミ技術を活用して目的とする遺伝子を特異的にノックアウト(knock-out)したりノックダウン(knock-down)することができる。
【0050】
例えば、遺伝子ハサミの一種であるCas9またはCpf1のようなCRISPR酵素を利用して標的遺伝子または標的核酸の二本鎖または二つの一本鎖を切断し、破損した標的遺伝子または破損した標的核酸の二本鎖または二つの一本鎖はNHEJによってインデルが生成され、これを通じて標的遺伝子または核酸の特異的ノックアウト(knock-out)またはノックダウン(knock-down)を誘導することができる。
【0051】
一例として、前記人為的に操作された間葉系幹細胞はF3遺伝子がノックダウン(knock-down)されたものであり得る。
【0052】
本発明の一具現例において、前記人為的に操作された間葉系幹細胞のF3遺伝子は核酸配列内に一つ以上のインデル(indel)を含むことができる。
【0053】
本発明の一具現例において、前記人為的に操作された間葉系幹細胞のF3遺伝子の配列は配列番号1~43からなる群から選択された一つ以上の配列を含まなくてもよい。
【0054】
本発明の一具現例において、前記人為的に操作された間葉系幹細胞はF3mRNAの発現が起きないものであり得る。
【0055】
本発明の一具現例において、前記人為的に操作された間葉系幹細胞の人為的に操作されたF3遺伝子から転写されるmRNAは野生型間葉系幹細胞のF3遺伝子から転写されるmRNA水準と比較して、そのmRNAの発現水準がさらに低くてもよい。
【0056】
本発明の一具現例において、前記人為的に操作された間葉系幹細胞は野生型幹細胞と比較して、F3mRNA配列が異なり得る。
【0057】
本発明の一具現例において、前記人為的に操作された間葉系幹細胞は野生型幹細胞と比較して、細胞表面でCD142の発現または活性が減少したものであり得る。これを通じて本発明の幹細胞はCD142の機能が低下または喪失され得る。
【0058】
すなわち、前記人為的に操作された間葉系幹細胞においてCD142の発現または活性が野生型間葉系幹細胞の発現または活性より約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%減少したものであり得る。
【0059】
本発明は間葉系幹細胞のCD142の発現または活性を減少させる段階を含む血液適合性を有する人為的に操作された間葉系幹細胞製造方法を提供する。
【0060】
前記CD142の発現または活性の増加、減少はF3遺伝子の人為的な変形によってなされ得、一例として遺伝子ハサミ技術を利用することができる。
【0061】
一例として、前記遺伝子ハサミ技術はTALエフェクター(transcription act4ator-like effectorまたはTALE)ドメインと切断ドメインが融合したTALEN(transcription act4ator like effctor nuclease)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(zinc-finger nuclease)、または微生物免疫体系であるCRISPR(Clustered regularly interspaced short palindromic repeats)から由来したCRISPR-enzyme systemを活用することができ、これに制限されるものではない。
【0062】
前記TALENに関連して国際公開特許WO2012/093833号またはアメリカ公開特許2013-0217131号に開示された内容の全文が本明細書に参考資料として含まれる。前記ZFNに関連して、Beerli et al.(2002)Nature Biotechnol.20:135-141;Pabo et al.(2001)Ann.Rev.Biochem.70:313-340;Isalan et al、(2001)Nature Biotechnol.19:656-660;Segal et al.(2001)Curr.Opin.Biotechnol.12:632-637;Choo et al.(2000)Curr.Opin.Struct.Biol.10:411-416、アメリカ特許登録7,888,121、8,409,861、6,479,626、6,903,185、7,153,949が本明細書の参考資料として含まれ得る。
【0063】
前記「CRISPR-enzyme system」はガイド核酸および/またはエディタ蛋白質で構成される。
【0064】
「ガイド核酸」は標的核酸、標的遺伝子または標的染色体を認知し、エディタ蛋白質と相互作用できる-核酸を意味する。この時、前記ガイド核酸は標的核酸、標的遺伝子または標的染色体内の一部のヌクレオチドと相補的な結合を形成することができる。
【0065】
前記ガイド核酸は標的DNA特異的ガイドRNA、前記ガイドRNAをコーディングするDNAまたはDNA/RNAの混合形態であり得る。
【0066】
前記ガイド核酸はガイドRNAであり得る。一例として、「ガイドRNA」は生体外(in vitro)転写されたものであり得、特にオリゴヌクレオチド二本鎖、またはプラスミド鋳型から転写されたものであり得る。他の一例として、前記ガイドRNAはベクターの形態で暗号化され得、ex vivoまたはin vivo環境で細胞内に伝達されてベクターから転写されたものであり得るが、これに制限されない。
【0067】
前記ガイドRNAの設計および構成は当業者に公知であり、韓国登録特許10-1656236、10-1656237、10-1706085、10-2052286、10-2182847に詳細に説明され、前記登録特許の全文が本発明の参考資料として本明細書に含まれる。
【0068】
前記ガイド核酸はスキャフォールド配列部分とガイド配列部分を含むことができる。前記スキャフォールド配列部分はCas蛋白質と相互作用する部分であり、Cas蛋白質とガイド核酸が結合して複合体(ribonucleoprotein、RNP)をなすことができるようにする。一般的に、前記スキャフォールド配列部分はtracrRNAとcrRNAの一部の配列部分を含み、前記スキャフォールド配列はどのようなCas蛋白質を使うかによって決定される。
【0069】
前記ガイド配列部分は、標的遺伝子または核酸の二本鎖のうちいずれか一つの鎖の一部の配列に相補的に結合できるヌクレオチド配列部分であって、人為的に変形できるヌクレオチド配列部分であり、関心がある標的ヌクレオチド配列によって決定される。この時、前記ガイド配列は標的遺伝子または標的核酸のガイド核酸結合配列と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%以上の相補性を有するかまたは完全な相補性を有するヌクレオチド配列であり得る。前記ガイド配列はガイド核酸のガイドドメインに含まれた配列であり得る。
【0070】
前記ガイド配列部分はcrRNAに含まれ得る。一例として、前記ガイド核酸は二つのRNA、すなわち、crRNA(CRISPR RNA)およびtracrRNA(trans-act4ating crRNA)を構成要素として含む二重RNA(dual RNA)であり得る。
【0071】
他の一例として、前記ガイド核酸はcrRNAおよびtracrRNAの主要部分が連結された形態であるsgRNA(single-chain guide RNA)であり得る。
【0072】
前記標的配列は標的遺伝子または標的核酸内に存在する一定の長さのヌクレオチド配列であり、具体的には標的遺伝子の調節領域(regulatory region)、暗号化領域(coding region;またはCDS、coding sequence)または非暗号化領域(non-coding region;またはUTR、untranslated region)に区分される標的領域内の一部のヌクレオチド配列であるか、前記標的領域の組み合わせから選択される一つ以上の一部のヌクレオチド配列であり得る。前記標的配列はガイド核酸-エディタ蛋白質複合体(RNP)のターゲットとなり得る。
【0073】
本発明の一具現例において、前記標的配列は野生型F3遺伝子のエキソン第1領域、第2領域、第3領域、第4領域または第6領域に含まれた配列であり得る。
【0074】
本発明の一具現例において、前記標的配列はSEQ ID NO:1~SEQ ID NO:43のうち選択された一つ以上の配列である。
【0075】
前記標的配列はエディタ蛋白質が認識するプロトスペーサー隣接モチーフ(protospacer-adjacent motif、PAM)配列と隣接した周辺のヌクレオチド配列であり、PAMの全体または一部を含むことができるが、これに制限されない。
【0076】
標的配列とは、二つのヌクレオチド配列情報をすべてを意味する用語として使われ得る。例えば、標的遺伝子の場合、標的配列は標的遺伝子DNAのtranscribed strandの配列情報を意味するものであってもよく、またはnon-transcribed strandのヌクレオチド配列情報を意味するものであってもよい。
【0077】
標的配列はガイド核酸結合配列またはガイド核酸非結合配列を含む。ガイド核酸結合配列はガイド核酸のガイドドメインに含まれるガイド配列と一部または完全な相補性を有するヌクレオチド配列であり、ガイド核酸のガイドドメインに含まれるガイド配列と相補的な結合ができる。標的配列およびガイド核酸結合配列は標的遺伝子または核酸により、すなわち遺伝子操作または校正しようとする対象により変わり得るヌクレオチド配列であり、ガイド核酸は標的遺伝子または標的核酸により多様に設計され得る。
【0078】
ガイド核酸非結合配列はガイド核酸のガイドドメインに含まれるガイド配列と一部または完全な相同性を有するヌクレオチド配列であり、ガイド核酸のガイドドメインに含まれるガイド配列と相補的な結合ができない。また、ガイド核酸非結合配列はガイド核酸結合配列と相補性を有するヌクレオチド配列であり、ガイド核酸結合配列と相補的な結合ができる。ガイド核酸結合配列は標的配列のうち一部のヌクレオチド配列であり、標的配列の二つの互いに異なる配列順序を有するヌクレオチド配列、すなわち、互いに相補的な結合ができる二つのヌクレオチド配列のうち一つのヌクレオチド配列であり得る。この時、ガイド核酸非結合配列は標的配列のうちガイド核酸結合配列を除いた残りのヌクレオチド配列であり得る。
【0079】
ガイド核酸結合配列は標的配列、すなわち、transcribed strandと同一のヌクレオチド配列およびnon-transcribed strandと同一のヌクレオチド配列のうち選択された一つのヌクレオチド配列であり得る。この時、ガイド核酸非結合配列は標的配列のうちガイド核酸結合配列、すなわち、transcribed strandと同一のヌクレオチド配列およびnon-transcribed strandと同一のヌクレオチド配列のうち選択された一つのヌクレオチド配列を除いた残りのヌクレオチド配列であり得る。
【0080】
ガイド核酸結合配列は標的配列の長さと同一であり得る。ガイド核酸非結合配列は標的配列またはガイド核酸結合配列の長さと同一であり得る。ガイド核酸結合配列は5~50個のヌクレオチド配列であり得る。
【0081】
一具体例として、前記ガイド核酸結合配列は16個のヌクレオチド配列、17個のヌクレオチド配列、18個のヌクレオチド配列、19個のヌクレオチド配列、20個のヌクレオチド配列、21個のヌクレオチド配列、22個のヌクレオチド配列、23個のヌクレオチド配列、24個のヌクレオチド配列または25個のヌクレオチド配列であり得る。ガイド核酸非結合配列は5~50個のヌクレオチド配列であり得る。
【0082】
一具体例として、前記ガイド核酸非結合配列は16個のヌクレオチド配列、17個のヌクレオチド配列、18個のヌクレオチド配列、19個のヌクレオチド配列、20個のヌクレオチド配列、21個のヌクレオチド配列、22個のヌクレオチド配列、23個のヌクレオチド配列、24個のヌクレオチド配列または25個のヌクレオチド配列であり得る。
【0083】
ガイド核酸結合配列はガイド核酸のガイドドメインに含まれたガイド配列と一部または完全な相補的な結合ができ、前記ガイド核酸結合配列の長さはガイド配列の長さと同一であり得る。
【0084】
前記ガイド核酸結合配列はガイド核酸のガイドドメインに含まれたガイド配列に相補的なヌクレオチド配列であり得、例えば少なくとも70%、75%、80%、85%、90%または95%以上の相補的であるかまたは完全に相補的なヌクレオチド配列であり得る。
【0085】
一例として、前記ガイド核酸結合配列はガイド核酸のガイドドメインに含まれたガイド配列に相補的でない1~8個のヌクレオチド配列を有するかまたは含むことができる。
【0086】
ガイド核酸非結合配列はガイド核酸のガイドドメインに含まれたガイド配列と一部または完全な相同性を有することができ、前記ガイド核酸非結合配列の長さはガイド配列の長さと同一であり得る。一例として、前記ガイド配列はガイド核酸非結合配列と相同性を有する配列に基づいて設計され得る。
【0087】
前記ガイド核酸非結合配列はガイド核酸のガイドドメインに含まれたガイド配列に相同性を有するヌクレオチド配列であり得、例えば少なくとも70%、75%、80%、85%、90%または95%以上の相同性を有するかまたは完全に相同性を有するヌクレオチド配列であり得る。
【0088】
一例として、前記ガイド核酸非結合配列はガイド核酸のガイドドメインに含まれたガイド配列に相同的でない1~8個のヌクレオチド配列を有するか含むことができる。ガイド核酸非結合配列はガイド核酸結合配列と相補的結合ができ、前記ガイド核酸非結合配列はガイド核酸結合配列の長さと同一であり得る。
【0089】
前記ガイド核酸非結合配列はガイド核酸結合配列に相補的なヌクレオチド配列であり得、例えば少なくとも90%または95%以上の相補的であるかまたは完全に相補的なヌクレオチド配列であり得る。
【0090】
一例として、前記ガイド核酸非結合配列はガイド核酸結合配列に相補的でない1~2個のヌクレオチド配列を有するか含むことができる。また、前記ガイド核酸結合配列はエディタ蛋白質が認識できるヌクレオチド配列(PAM配列)と相補的な配列に近接した位置のヌクレオチド配列であり得る。
【0091】
一例として、前記ガイド核酸結合配列はエディタ蛋白質が認識できるヌクレオチド配列(PAM配列)と相補的な配列の5′末端または/および3′末端に隣接して位置する連続する5~50個のヌクレオチド配列であり得る。
【0092】
また、前記ガイド核酸非結合配列はエディタ蛋白質が認識できるヌクレオチド配列(PAM配列)に近接した位置のヌクレオチド配列であり得る。
【0093】
一例として、前記ガイド核酸非結合配列はエディタ蛋白質が認識できるヌクレオチド配列(PAM配列)の5′末端または/および3′末端に隣接して位置する連続する5~50個のヌクレオチド配列であり得る。
【0094】
「エディタ蛋白質」は核酸と直接的に結合するか、または直接結合はしないが相互作用できるペプチド、ポリペプチドまたは蛋白質を意味する。前記エディタ蛋白質に対して、概念的に「人為的に操作されたヌクレアーゼ」またはRGEN(RNA-Guided Endonuclease)と称したりもする。
【0095】
一具体例において、前記エディタ蛋白質はCRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)酵素であり得る。「CRISPR酵素」はCRISPR-enzymeシステムの主要蛋白質構成要素であり、「Cas蛋白質(CRISPR associated protein)」と称したりもし、ガイドRNAと混合または複合体を形成して標的配列を認知しDNAを切断できるヌクレアーゼをいう。
【0096】
CRISPR酵素は当業者に公知であり、韓国登録特許10-1656236、10-1656237、10-1706085、10-2052286、10-2182847を参照する。前記CRISPR酵素は天然型蛋白質の他にもガイドRNAと協同して活性化されたエンドヌクレアーゼ(endonuclease)またはニッカーゼ(nickase)として作用できる変異体をすべて含む概念で本明細書で使われる。活性化されたエンドヌクレアーゼまたはニッカーゼである場合、標的DNA切断をすることができ、これを利用して遺伝体校正をすることができる。また、不活性化された変異体である場合、これを利用して転写調節あるいは目的とするDNAの分離をすることができる。
【0097】
前記CRISPR酵素はCRISPR酵素を暗号化する配列を有する核酸またはポリペプチド(または蛋白質)であり、代表的にはType II CRISPR酵素またはType V CRISPR酵素が多く使われ、前記Type II CRISPR酵素としてはCas9(CRISPR associated protein 9)蛋白質がある。
【0098】
前記Cas9蛋白質はストレプトコッカスピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカスサーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus sp.)、カンピロバクタージェジュニ(Campylobacter jejuni)、スタフィロコッカスアウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカスアウリクラーリス(Staphylococcus Auricularis)、ナイセリアメニンギチジス(Neisseria meningitidis)などの多様な微生物から由来したものであり得る。
【0099】
Cas9蛋白質が二本鎖DNA切断(double stranded DNA break)を誘導するためには、Cas9蛋白質が一定の長さのヌクレオチド配列であるプロトスペーサー隣接モチーフ(Protospacer Adjacent Motif、PAM)配列を認識し、ガイドRNAの一部(前記ガイド配列部分)が標的配列が位置するDNA一本鎖(前記ガイド核酸非結合配列)の相補的な鎖(前記ガイド核酸結合配列)と相補的に結合しなければならない。
【0100】
このPAM配列はCas9蛋白質の種類や起源により決定される配列であり、例えばストレプトコッカスピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来Cas9蛋白質(SpCas9)は標的核酸内5′-NGG-3′配列(相補的配列:5′-CCN-3′)を認識することができる。この時、前記Nは前記Nはアデノシン(A)、チミジン(T)、シチジン(C)、グアノシン(G)のうち一つである。また、前記SpCas9は標的核酸内5′-NAG-3′配列(相補的配列:5′-CTN-3′)を低い活性で認識することができる。
【0101】
また、前記Type V CRISPR酵素としてはCpf1があり、前記Cpf1はStreptococcus、Campylobacter、Nitratifractor、Staphylococcus、Parvibaculum、Roseburia、Neisseria、Gluconacetobacter、Azospirillum、Sphaerochaeta、Lactobacillus、Eubacterium、Corynebacter、Carnobacterium、Rhodobacter、Listeria、Paludibacter、Clostridium、Lachnospiraceae、Clostridiaridium、Leptotrichia、Francisella、Legionella、Alicyclobacillus、Methanomethyophilus、Porphyromonas、Prevotella、Bacteroidetes、Helcococcus、Letospira、Desulfovibrio、Desulfonatronum、Opitutaceae、uberibacillus、Bacillus、Brevibacilus、MethylobacteriumまたはAcidaminococcus由来のCpf1であり得る。
【0102】
前記Cas9またはCpf1蛋白質などのCRISPR酵素は、自然状態で存在する微生物から分離されたものまたは組換え的方法または合成的方法で非自然的に生産されたものであり得る。前記Cas蛋白質はまた、細胞内に導入され易い形態であり得る。その例として、Cas蛋白質は細胞浸透ペプチドまたは蛋白質伝達ドメイン(protein transduction domain)と連結され得る。前記蛋白質伝達ドメインはポリアルギニンまたはHIV由来のTAT蛋白質であり得るが、これに制限されない。細胞浸透ペプチドまたは蛋白質伝達ドメインは前記記述された例の他にも多様な種類が当業界に公知であるので、当業者は前記例に制限されず多様な例を本明細書に適用することができる。また、前記Cas蛋白質はNLS(nuclear localization sequence or signal)のような機能的ドメインと融合することができる。また、前記Cas9蛋白質はベクターの形態で暗号化されて細胞内で発現するものであり得る。
【0103】
本発明は間葉系幹細胞のF3遺伝子の標的配列を標的化できるガイド配列を含むガイド核酸またはこれを暗号化する核酸;およびエディタ蛋白質またはこれを暗号化する核酸を含む血液適合性を有する間葉系幹細胞製造用組成物を提供する。
【0104】
また、前記組成物は挿入を望む特定ヌクレオチド配列を含むドナーまたはこれを暗号化する核酸を選択的にさらに含むことができる。
【0105】
前記ドナー(donor)は特定ペプチドまたは蛋白質を発現させることができる外因性ヌクレオチド配列(exogenous nucleotide sequences)を意味し、相同組換え修復(homology directed repair、HDR)を通じてゲノムDNAに挿入され得る。
【0106】
前記ドナーは二本鎖核酸または一本鎖核酸であり得る。前記ドナーは線形または円形であり得る。
【0107】
前記ドナーはウイルスベクターまたは非ウイルスベクター(例えば、プラスミド)の形態であり得る。
【0108】
前記ウイルスはDNAウイルスまたはRNAウイルスであり得る。この時、前記DNAウイルスは二本鎖DNA(dsDNA)ウイルスまたは一本鎖DNA(ssDNA)ウイルスであり得る。この時、前記RNAウイルスは一本鎖RNA(ssRNA)ウイルスであり得る。
【0109】
前記ウイルスベクターはレトロウイルス(Retrovirus)、レンチウイルス(Lent4irus)、アデノウイルス(Adenovirus)、アデノ関連ウイルス(Adeno-associated virus、AAV)、ワクシニアウイルス(Vaccinia virus)、ポックスウイルス(Poxvirus)および単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus、HSV)で構成された群から選択される一つ以上のウイルスベクターであり得る。
【0110】
前記標的配列はガイド核酸-エディタ蛋白質複合体のターゲットとなり得、前記標的配列はエディタ蛋白質が認識するPAM(protospacer-adjacent motif)配列を含むことができるが、これに制限されない。
【0111】
前記ガイド核酸は組成物はF3遺伝子の標的配列を標的化できるガイドドメインを含むことができる。
【0112】
本発明の一具現例として、前記組成物の前記標的配列は配列番号1~42のうち選択された一つ以上の配列であるものであり得る。
【0113】
本明細書で、ガイド核酸、エディタ蛋白質またはガイド核酸-エディタ蛋白質複合体(リボヌクレオプロテイン、RNP)および/またはドナーは多様な形態で対象内に伝達または導入され得る。
【0114】
この時「対象」はガイド核酸、エディタ蛋白質またはガイド核酸-エディタ蛋白質複合体が導入される有機体;ガイド核酸、エディタ蛋白質またはガイド核酸-エディタ蛋白質複合体が作動する有機体;または有機体から獲得した検体または試料を意味する。
【0115】
前記対象はガイド核酸-エディタ蛋白質複合体の標的遺伝子、標的核酸または標的染色体を含む有機体であり得る。
【0116】
前記有機体は動物、動物の組織または動物細胞であり得る。この時、前記組織は眼球、皮膚、肝、腎臓、心臓、肺、脳、筋肉または血液であり得る。
【0117】
前記細胞は幹細胞、肝細胞、心筋細胞、内皮細胞または膵臓細胞であり得る。
【0118】
前記検体または試料は唾、血液、肝組織、脳組織、肝細胞、神経細胞、食細胞、大食細胞、T細胞、B細胞、星性膠細胞、癌細胞または幹細胞などの標的遺伝子、標的核酸または標的染色体を含む有機体で獲得したものであり得る。
【0119】
前記ガイド核酸、エディタ蛋白質またはガイド核酸-エディタ蛋白質複合体はDNA、RNAまたはこの混合形態で対象内に伝達または導入され得る。
【0120】
この時、ガイド核酸および/またはエディタ蛋白質を暗号化するDNA、RNAまたはこの混合形態は当業界に公知の方法によって対象内に伝達または導入され得る。
【0121】
またはガイド核酸および/またはエディタ蛋白質を暗号化するDNA、RNAまたはこの混合形態はベクター、非ベクターまたはこれらの組み合わせによって対象内に伝達または導入され得る。
【0122】
前記ベクターはウイルスベクターまたは非ウイルスベクター(例えば、プラスミド)であり得る。
【0123】
前記ウイルスはDNAウイルスまたはRNAウイルスであり得る。この時、前記DNAウイルスは二本鎖DNA(dsDNA)ウイルスまたは一本鎖DNA(ssDNA)ウイルスであり得る。この時、前記RNAウイルスは一本鎖RNA(ssRNA)ウイルスであり得る。
【0124】
前記ウイルスベクターはレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、ワクシニアウイルス、ポックスウイルスおよび単純ヘルペスウイルスで構成された群から選択される1以上であり得る。
【0125】
前記非ベクターはネイキッドDNA、DNA複合体またはmRNAであり得る。
【0126】
本発明の一具現例において、前記ガイド核酸および/またはエディタ蛋白質を暗号化する核酸は1以上のベクターの形態で対象内に伝達または導入され得る。
【0127】
前記ベクターはガイド核酸および/またはエディタ蛋白質を暗号化する核酸を含むことができる。一例として、前記ベクターはガイド核酸とエディタ蛋白質を暗号化する核酸を同時に含むことができる。他の一例として、前記ベクターはガイド核酸を暗号化する核酸を含むことができる。例えば、前記ガイド核酸を暗号化する核酸は一つのベクターにすべて含まれるかまたはガイド核酸を暗号化する核酸が分割されて複数個のベクターに含ませることができる。他の一例として、前記ベクターはエディタ蛋白質を暗号化する核酸を含むことができる。例えば、前記エディタ蛋白質の場合、エディタ蛋白質を暗号化する核酸は一つのベクターに含まれるかまたはエディタ蛋白質を暗号化する核酸が分割されて複数個のベクターに含まれ得る。
【0128】
前記エディタ蛋白質はペプチド、ポリペプチドまたは蛋白質の形態で対象内に伝達または導入され得る。
【0129】
前記エディタ蛋白質はペプチド、ポリペプチドまたは蛋白質の形態で当業界に公知の方法によって対象内に伝達または導入され得る。
【0130】
前記ガイド核酸およびエディタ蛋白質は核酸-蛋白質混合の形態で対象内に伝達または導入され得る。
【0131】
前記ガイド核酸およびエディタ蛋白質はガイド核酸-エディタ蛋白質複合体の形態で対象内に伝達または導入され得る。例えば、前記ガイド核酸はDNA、RNAまたはこの混合形態であり得る。前記エディタ蛋白質はペプチド、ポリペプチドまたは蛋白質の形態であり得る。一例として、ガイド核酸およびエディタ蛋白質はRNA形態のガイド核酸と蛋白質形態のエディタ蛋白質がガイド核酸-エディタ蛋白質複合体、すなわちribonucleoprotein(RNP)の形態で対象内に伝達または導入され得る。
【0132】
また、本発明は(1)前記血液適合性を有する間葉系幹細胞製造用組成物を分離された間葉系幹細胞に導入する段階;および(2)前記間葉系幹細胞のゲノム内に位置したF3遺伝子の標的配列にインデルを発生させることによって、CD142の発現または活性が減少または抑制されるようにF3遺伝子を編集する段階を含む血液適合性を有する間葉系幹細胞の製造方法を提供する。
【0133】
この時、前記「導入」は電気穿孔法(Electroporation)、リポフェクション(lipofection)、微細注入法、遺伝子銃、リポソーム、陽性リポソーム、プラスミド、ウイルスベクター、ナノパーティクル(nanoparticles)、PTD(Protein translocation domain)融合蛋白質方法、免疫リポソーム、多価陽イオンまたは脂質:核酸接合体、ネイキッドDNA、人工ビリオン、およびDNAの製剤向上吸収方法のうち選択された一つ以上の手段で遂行され得るが、これに制限されはしない。
【0134】
本発明の一具現例において、前記血液適合性を有する間葉系幹細胞製造用組成物を分離された間葉系幹細胞に電気穿孔法で導入して血液適合性を有する間葉系幹細胞を製造することができる。
【0135】
本発明の一具現例において、前記間葉系幹細胞のゲノム内に位置したF3遺伝子に、ストレプトコッカスピオゲネス( Streptococcus pyogenes)由来Cas9蛋白質およびF3遺伝子の標的配列を標的化できるガイドRNAを含むCRISPR/Cas9複合体を接触させることによってインデルを発生させることができる。
【0136】
本発明の一具現例において、前記標的配列は配列番号1~43からなる群から選択された一つ以上の配列であり得る。
【0137】
本発明の血液適合性を有する人為的に操作された間葉系幹細胞は、血管投与用細胞治療剤乃至薬剤学的組成物として利用されて多様なものの疾患の治療に利用することができる。例えば、心臓疾患、胃十二指腸疾患、小腸大腸疾患、肝疾患、胆管疾患、膵臓疾患、腎臓疾患、肝疾患、肺疾患、縦隔疾患、横隔膜疾患、胸膜疾患、腹膜疾患、神経系疾患、中枢神経系(CNS)障害、末梢動脈疾患、末梢静脈疾患に利用され得る。具体的な疾患としては、例えば、自家免疫性肝炎、劇症肝炎、慢性肝炎、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty l4er disease(NAFLD))、非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis(NASH))、非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty l4er(NAFL))、肝線維症、肝硬変、肝臓癌、脂肪肝、薬剤誘発性アレルギー性肝疾患、血色素沈着症、血色素症、ウィルソン病、原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis(PBC))、原発性硬化性胆管炎(Primary sclerosing cholangitis(PSC))、胆管閉鎖症、肝膿瘍、慢性活動性肝炎、慢性持続性肝炎などの肝疾患;心筋梗塞、心不全、不整脈、心悸亢進、心筋病症、虚血性心筋病症、狭心症、先天性心疾患、心臓弁膜症、心筋炎、家族性肥大型心筋病症、拡張型心筋病症、急性冠状動脈症候群、動脈硬化症、再狭窄などの心臓疾患;急性胃炎、慢性胃炎、胃十二指腸潰瘍、胃癌、十二指腸癌などの胃十二指腸疾患;虚血性腸炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、単純性潰瘍、腸管ベーチェット病、小腸癌、大腸癌などの小腸大腸疾患;急性胆嚢炎、急性胆管炎、慢性胆嚢炎、胆管癌、胆嚢癌などの胆管疾患;急性膵臓炎、慢性膵臓炎、膵臓癌などの膵疾患;急性腎臓炎、慢性腎臓炎、急性腎不全、慢性腎不全などの腎臓疾患;肺炎、肺気腫、肺線維症、間質性肺炎、特発性間質性肺炎、剥離性間質性肺炎、急性間質性肺炎、非特異的間質性肺炎、薬物誘発性肺疾患、好酸球性肺疾患、肺高血圧症、肺結核、肺結核後遺症、急性呼吸困難症候群、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、肺塞栓症、肺膿瘍、塵肺症、吸引性肺炎肺炎肺線維症、急性上気道感染症、慢性下気道感染症、気胸、肺胞上皮損傷疾患、リンパ管平滑筋腫、リンパ性間質性肺炎、肺胞蛋白症、肺ランゲルハンス細胞肉芽腫症などの肺疾患;縦隔洞腫瘍、縦隔洞嚢胞性疾患、縦隔洞炎などの縦隔洞疾患;横隔膜ヘルニアなどの横隔膜疾患;胸膜炎、膿胸、胸膜腫瘍、癌性胸膜炎、胸膜中皮腫などの胸膜疾患;腹膜炎、腹膜腫瘍などの腹膜疾患;小児脳性麻痺を含んだ脳性麻痺症候群、無菌性髄膜炎、ギランバレー症候群、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis(ALS))、重症筋無力症、単神経障害、多発性神経病症、脊髄性筋萎縮症、脊椎障害、急性横断性脊髄炎、脊髄梗塞(虚血性骨髓病症)、頭蓋内腫瘍、脊椎腫瘍などの神経疾患;アルツハイマー、認知障害、脳卒中、多発性硬化症、パーキンソン病などのCNS障害;線維筋性異形成、末梢動脈疾患(peripheral artery disease(PAD))、閉塞性血栓血管炎(バージャー病)、川崎病(Kawasaki disease(KD))等の末梢動脈疾患;深部静脈血栓症、慢性静脈不全症、静脈炎後症候群、表在性静脈血栓症などの末梢静脈疾患;移植片対宿主疾患(Graft versus Host Disease(GVHD))、2次免疫不全症、1次免疫欠乏疾患、B細胞の欠乏、T細胞欠乏、BおよびT細胞複合欠乏、食細胞欠乏、補体欠損などの免疫不全疾患が挙げられる。
【0138】
本発明の一具現例において、前記細胞治療剤乃至薬剤学的組成物は哺乳動物で心筋梗塞、心不全、虚血性心筋病症、心筋炎、虚血性腸炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、急性胆嚢炎、急性胆管炎、慢性胆嚢炎、急性膵臓炎、慢性膵臓炎、急性腎臓炎、慢性腎臓炎、急性腎不全、慢性腎不全、肺炎、間質性肺炎、特発性間質性肺炎、剥離性間質性肺炎、急性間質性肺炎、非特異的間質性肺炎、薬物誘発性肺疾患、急性呼吸困難症候群、慢性閉塞性肺疾患、小児脳性麻痺を含んだ脳性麻痺症候群、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis(ALS))、多発性神経病症、脊髄性筋萎縮症、急性横断性脊髄炎、脳卒中、多発性硬化症、末梢動脈疾患(peripheral artery disease(PAD))、閉塞性血栓血管炎(バージャー病)、川崎病(Kawasaki disease(KD))、および移植片対宿主疾患(Graft versus Host Disease(GVHD))からなる群から選択された1種の疾患を治療して予防するのに使われ得、これに限定されるものではない。
【0139】
前記「血管投与用」という用語は患者の血管系内への伝達を意味する。一例として、静脈であると見なされる血管内への投与、動脈であると見なされる血管内への投与であり得る。静脈には内頸静脈(internal jugular vein)、末梢静脈、冠状静脈、肝静脈、門静脈、大伏在静脈( great saphenous vein )、肺静脈、上大静脈、下大静脈、胃静脈、脾静脈、下腸間膜静脈(inferior mesenteric vein)、上腸間膜静脈(superior mesenteric vein)、頭部静脈および/または大腿静脈が含まれるが、これに制限されるものではない。動脈には冠状動脈、肺動脈、上腕動脈(brachial artery)、内頸動脈(internal carotid artery)、大動脈弓(aortic arch)、大腿動脈、末梢動脈および/または毛様体動脈(ciliary artery)が含まれるが、これに制限されるものではない。肝門脈、臍帯静脈、小動脈または毛細血管を通じて、または肝門脈、臍帯静脈、牛動脈または毛細血管に伝達されてもよい。
【0140】
本明細書において、「細胞治療剤」は個体から分離、培養および特殊な操作を通じて製造された細胞および組織で治療、診断および予防の目的で使われる医薬品(アメリカFDA規定)であり、細胞あるいは組織の機能を復元させるために生きている自家、同種、または異種細胞を体外で増殖選別したり他の方法で細胞の生物学的特性を変化させるなどの一連の行為を通じて治療、診断および予防の目的で使われる医薬品を意味する。
【0141】
前記細胞治療剤または薬剤学的組成物は細胞治療に一般的に使われる薬剤学的坦体とともに適合した形態に剤形化され得る。薬学的に許容されるイラン生理学的に許容され人間に投与される時、通常的に胃腸障害、めまいなどのようなアレルギー反応またはこれと類似する反応を起こさない組成物をいう。薬学的に許容される坦体としては例えば、水、適合したオイル、食塩水、水性グルコースおよびグリコールなどのような非経口投与用坦体などがあり、安定化剤および保存剤をさらに含むことができる。適合した安定化剤としては亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸のような抗酸化剤がある。適合した保存剤としてはベンザルコニウムクロリド、メチル-またはプロピルパラベンおよびクロロブタノールがある。その他の薬学的に許容される坦体としては次の文献に記載されているものを参照することができる(Remington′s Pharmaceutical Sciences、19th ed.,Mack Publishing Company、Easton、PA、1995)。
【0142】
また、前記細胞治療剤または薬剤学的組成物は標的細胞に移動できる任意の装置によって投与されてもよい。
【0143】
本発明の細胞治療剤または薬剤学的組成物は疾患の治療のために治療学的に有効な量の前記人為的に操作された間葉系幹細胞を含むことができる。「治療学的に有効な量(therapeutically effect4e amount)」は研究者、獣医師、医師またはその他臨床によって考えられる組織系、動物または人間で生物学的または医学的反応を誘導する有効成分または薬学的組成物の量を意味するもので、これは治療される疾患または障害の症状の緩和を誘導する量を含む。
【0144】
本発明の細胞治療剤または薬剤学的組成物に含まれる人為的に操作された間葉系幹細胞の含量は望む効果により変化されることは当業者に自明である。したがって、最適な細胞治療剤の含量は当業者によって容易に決定され得、疾患の種類、疾患の重症度、組成物に含まれた他の成分の含量、剤形の種類、および患者の年齢、体重、一般健康状態、性別および食餌、投与時間、投与経路および組成物の分泌率、治療期間、同時に使われる薬物をはじめとする多様な因子により調節され得る。前記要素をすべて考慮して副作用なしに最小限の量で最大効果が得られる量を含むことが重要である。例えば、本発明の幹細胞の1日投与量は1.0×105~1.0×1030細胞/kg体重、好ましくは1.0×1010~1.0×1020細胞/kg体重を1回または数回に分けて投与することができる。しかし、有効性分の実投与量は治療しようとする疾患、疾患の重症度、投与経路、患者の体重、年齢および性別などの多様な関連因子に照らして決定されなければならないものと理解されるべきであり、したがって、前記投与量はいずれの面であれ、本発明の範囲を限定するものではない。
【0145】
また、本発明の細胞治療剤または薬剤学的組成物は血管内、すなわち静脈内(intravenous therapy、i.v)経路または動脈内(intraarterial injection、i.a)経路を通じて通常の方式で投与することができる。
【0146】
本発明は疾病または病態を有する哺乳動物に治療学的に有効な量の本発明の前記人為的に操作された間葉系幹細胞を投与することを含む治療方法を提供する。ここで使われた用語哺乳動物は、治療、観察または実験の対象である哺乳動物をいい、好ましくは人間をいう。
【0147】
また、本発明は疾病または病態を有する哺乳動物に治療学的に有効な量の前記人為的に操作された間葉系幹細胞を血管内に投与する段階を含む、幹細胞を使う細胞療法方法(Cell therapy method)を提供する。
【0148】
本発明の一具現例において、前記方法は血液凝固の開始因子であるCD142を暗号化するF3遺伝子を遺伝子ハサミ技術で人為的に変形して、CD142の発現または活性が減少または抑制された人為的に操作された間葉系幹細胞が血管内に投与されることによって、血液凝固メカニズムが抑制され得る。
【0149】
また、本発明は疾病または病態を有する哺乳動物で血管内投与時に血栓生成を抑制するための薬剤の製造に使うための前記人為的に操作された間葉系幹細胞の用途を提供する。
【0150】
本発明の一具現例において、前記疾病または病態は哺乳動物で心筋梗塞、心不全、虚血性心筋病症、心筋炎、虚血性腸炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、急性胆嚢炎、急性胆管炎、慢性胆嚢炎、急性膵臓炎、慢性膵臓炎、急性腎臓炎、慢性腎臓炎、急性腎不全、慢性腎不全、肺炎、間質性肺炎、特発性間質性肺炎、剥離性間質性肺炎、急性間質性肺炎、非特異的間質性肺炎、薬物誘発性肺疾患、急性呼吸困難症候群、慢性閉塞性肺疾患、小児脳性麻痺を含んだ脳性麻痺症候群、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis(ALS))、多発性神経病症、脊髄性筋萎縮症、急性横断性脊髄炎、脳卒中、多発性硬化症、末梢動脈疾患(peripheral artery disease(PAD))、閉塞性血栓血管炎(バージャー病)、川崎病(Kawasaki disease(KD))、および移植片対宿主疾患(Graft versus Host Disease(GVHD))からなる群から選択された1種の疾患であり得、本発明はこれら疾患を治療して予防するのに使われ得、これに限定されるものではない。
【0151】
発明の実施のための形態
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明しようとする。
【0152】
これら実施例はひとえに本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例によって制限されないことは本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者において自明であろう。
【0153】
<実施例1:F3ノックアウトされた間葉系幹細胞製造>
<sgRNA設計>
F3遺伝子(CD142暗号化遺伝子)をノックアウトするために、human CD142遺伝子のCDS regionをCas-Designer toolを利用してsgRNAをスクリーニングした。http://www.rgenome.net/cas-designer/で予測されたガイド配列のうちオフターゲット効果が少なく予想されるmismatch 0値が1、mismatch 1、2値が0であるガイドRNAの標的を選別して設計した。
【0154】
F3遺伝子の標的配列は下記の表1に整理して示した。
【0155】
【0156】
前記配列番号1~43の標的配列を標的化するそれぞれのガイドRNAを合成して、以後の実験に使った。各ガイドRNAに対する各標的配列のインデル効率は下記の標的化ディープシーケンシング方法を通じて測定し、その結果は
図1~
図2に示した。
【0157】
ガイドRNAはMEGA short script T7 kit(Ambion)を利用してメーカーの指針により生体外転写した。sgRNAに対する鋳型(template)は二つの相補的なオリゴヌクレオチドの結合(annealing)および伸長(extension)を通じて製造した。
【0158】
<RNP(Ribonucleoprotein)伝達>
RNP複合体は4D-Nucleofector(Lonza)を利用して電気穿孔法で導入された。具体的には、RNP複合体は4ug Cas9蛋白質とin vitro transcribed sgRNA(T7 polymerase(New England BioLabs)を活用、メーカープロトコルにより製作)4ugを混合して形成し、室温で10分の間混合物をインキュベーティングした。前記RNP複合体は20ul Primary P1 buffer処理されたそれぞれの4×105 Human Bone marrow MSC(Lonza、Cat.No.PT-2501)、Umbilical cord MSC(ATCC、Cat.No.PCS-500-010)とともに核小体プログラム(nucleofector program)EW-104を使って電気穿孔を遂行した。その結果F3遺伝子がノックアウト(Knock-out)された臍帯血由来間葉系幹細胞(F3 KO UC-MSC)、F3遺伝子がノックアウト(Knock-out)された骨髓由来間葉系幹細胞(F3 KO BM-MSC)をそれぞれ収得した。
【0159】
<標的化ディープシーケンシング(Targeted deep sequencing)>
収得したF3 KO UC-MSC、F3 KO BM-MSCにBlood Genomic DNA Extraction Kit(Favorgen)を利用してメーカープロトコルによりgenomic DNA(gDNA)を抽出した。標的部位の増幅のためにPhusion High-Fidelity DNA Polymerase PCR Polymerase(NEB)を使って100ng genomic DNA(gDNA)を増幅させた。ディープシーケンシングライブラリー生成のためにTruSeq HT Dual Index Primers(Illumina、San Diego、CA、USA)を使ってアンプリコンをもう一度増幅させた。Illumina Miniseq Systemを利用してPaired-end sequencingを遂行し、インデル頻度は「http://www.rgenome.net/」で計算した。標的化ディープシーケンシングに使った各標的配列に対するprimer配列は表2に示した。
【0160】
【0161】
標的化ディープシーケンシング結果、各標的配列に対するF3 KO US-MSCの変異位置は野生型F3遺伝子の配列を基準として表示した。一例として、配列番号1~42の標的化ディープシーケンシング結果は
図1のように示された。
【0162】
スクリーニングしたF3 target sgRNAを使ってF3遺伝子がノックアウトされた骨髓由来間葉系幹細胞(F3 KO BM-MSC)でインデル頻度を標的化ディープシーケンシングを通じて分析した結果は
図2に示した。
【0163】
<FACS analysis>
F3 KO UC-MSCをphosphate buffer saline(PBS)で2回洗浄後0.05%trypsin-EDTAを使って細胞をカルチャープレートで引き離して1,000rpmで5分間遠心分離された。100ulのFACS staining bufferでcellをsuspensionさせてanti-CD142 antibody(Biolegend、Cat No.365206)を混合して20分の間4度で反応後FACS staining bufferで2回washingし、300ulのPBSで浮遊させてFACS analysisした。
【0164】
図3は、スクリーニングしたF3 target sgRNAを使ってF3遺伝子がノックアウトされた臍帯血由来間葉系幹細胞(F3 KO UC-MSC)でインデル頻度(
図3(a))とFACS分析を通じてF3遺伝子がノックアウトされた臍帯血由来間葉系幹細胞(F3 KO UC-MSC)表面でCD142発現程度を示したグラフ(
図3(b))である。
図3を参照すると、野生型幹細胞と比較して、F3遺伝子がノックアウトされた臍帯血由来間葉系幹細胞は細胞表面のCD142の発現が減少したことを確認することができた。
【0165】
図4は、F3遺伝子の配列番号1~43の標的配列を標的化するそれぞれのガイドRNAを使ってF3遺伝子がノックアウトされた臍帯血由来間葉系幹細胞(F3 KO UC-MSC)表面でCD142発現程度をFACS分析を通じて示したグラフである。
図4に示した通り、F3遺伝子がノックアウトされた臍帯血由来間葉系幹細胞は野生型幹細胞より細胞表面でCD142の発現が減少したし、特に配列番号3(sgCD142#3)、配列番号13(sgCD142#13)、配列番号21(sgCD142#23)、配列番号30(sgCD142#32)、配列番号31(sgCD142#33)、配列番号32(sgCD142#34)の標的配列を標的化する場合、細胞表面でCD142の発現が顕著に減少した。
【0166】
図5は、本発明の一実施例ともなう実験例で臍帯血由来間葉系幹細胞(US-MSC)継代による実験スケジュールを示したものである。
【0167】
図6は、野生型臍帯血由来幹細胞(WT)、遺伝子操作なしに電気穿孔のみなされた臍帯血由来幹細胞(Mock)、配列番号31の標的配列をノックアウトした臍帯血由来幹細胞(sgCD142#33)に対するインデル効率を標的化ディープシーケンシング方法を通じて測定した結果を示したグラフ(
図6(a))およびF3mRNA発現量を示したグラフ(
図6(b))である。
【0168】
図7は、形質導入(transfection)後の間葉系幹細胞の形状(morphology)を顕微鏡で観察した結果を示したものである。
図7に示した通り、野生型幹細胞(WT)と電気穿孔で形質導入(transfection)がなされた間葉系幹細胞(Mock、sgCD142#33)の間に形状(morphology)において差がなく、すべてP12で老化(senescence)を示した。
【0169】
<PDL(Population Doubling Level)、PDT(Population Doubling Time)>
細胞の成長度を調べるために継代培養前、後の細胞数を測量した。Harvest cell count数(Ct)をSeeding cell count数(Ci)で割った値をGrowth rateと見て、PDL(n)を次の数学式1のような公式で計算した。
【0170】
【0171】
培養時間(hr)をPDLで割った値をPopulation Doubling time(PDT)で表示した。
【0172】
【0173】
図8は、野生型臍帯血由来間葉系幹細胞(WT)、遺伝子操作なしに電気穿孔のみなされた臍帯血由来間葉系幹細胞(Mock)、配列番号31の標的配列をノックアウトした臍帯血由来幹細胞(sgCD142#33)のPDL(Population Doubling Level)(
図8(a))およびPDT(Population Doubling time)(
図8(b))を示すグラフである。
図8に示した通り、すべてのグループでPDL(Population Doubling Level)とPDT(Population Doubling time)において差が殆どなかった。
【0174】
<フローサイトメーター分析(Flow cytometer analysis)>
培養された臍帯血由来幹細胞(UC-MSC)をphosphate buffer saline(PBS)で2回洗浄後、0.05%trypsin-EDTAを使って細胞を引き離して1,500rpmで5分間遠心分離した。Group別に100ulのFACS staining buffer(2%FBS in PBS)で1×106 cellをsuspensionさせて抗体(CD142、CD34、CD45、CD73、CD90、CD105、CD29、CD51、CD44、CD51/61)を混合して20分の間4度で反応後、FACS staining bufferで2回洗浄し、300ulのPBSで浮遊させてフローサイトメーター分析(Flow cytometer analysis)を進めたし、これから得られた平均蛍光強度(median fluorescence intensity、MFI)を通じてCD142発現水準を測定した。
【0175】
図9は、野生型臍帯血由来間葉系幹細胞(WT)、遺伝子操作なしに電気穿孔のみなされた臍帯血由来間葉系幹細胞(Mock)、配列番号31の標的配列をノックアウトした臍帯血由来幹細胞(sgCD142#33)のCD142発現を示す細胞比率(
図9(a))およびCD142 MFI(平均蛍光強度、median fluorescence intensity)(
図9(b))を示すグラフである。
図9に示した通り、配列番号31の標的配列をノックアウトした臍帯血由来幹細胞(sgCD142#33)で特にCD142発現を示す細胞比率とCD142平均蛍光強度が減少したものと示された。
【0176】
<Thromboelastrometry(血栓弾性度確認)試験>
培養された臍帯血由来間葉系幹細胞(UC-MSC)を収穫してgroup別に4×105細胞を準備して、滅菌されたチューブに準備されたfresh human whole blood 400ulと反応させた。よく混合された細胞と全血sampleは直ちに試験装備で持っていって血栓弾性度を測定した。弾性度測定にはTEG 6s装備を使用し、装備に弾性度確認のためのkitを挿入後、全血が混じった幹細胞sampleをよく混ぜてsample loading chamberに入れた後、反応を確認した。
【0177】
図10は、TEG 6s装備を使って測定した野生型臍帯血由来幹細胞(WT)、遺伝子操作なしに電気穿孔のみなされた臍帯血由来幹細胞(Mock)、配列番号31の標的配列をノックアウトした臍帯血由来幹細胞(sgCD142#33)の凝固反応時間(R-time:分析開始から血栓振幅が2mmに到達するまでの時間)(
図10(a))、血栓動力学(K-time:血栓振幅が2mmに到達した後、振幅が20mmに到達するまでの時間)(
図10(b))、血栓生成強度(アルファ角度:RとK時間の中間点で接線がなす角度)(
図10(c))および血栓最大振幅(MA:絶対血栓強度)(
図10(d))を示すグラフである。
図10を参照すると、野生型臍帯血由来幹細胞(WT)とともに培養された人間血液の凝固時間が減少した反面、配列番号31の標的配列をノックアウトした臍帯血由来幹細胞(sgCD142#33)と培養された人間血液の場合、血液凝固時間は正常に回復された。
【0178】
<ELSIA( Enzyme-linked immunosorbent assay)>
培養された臍帯血由来幹細胞(UC-MSC)を収穫して組織因子活性(Tissue factor Act4ity)を確認した。Abcam社のTissue factor Act4ity assay kitを利用して確認した。group別に2×105細胞をTriton x-100または0.1%Tween 20が含まれた50mM Tris buffered saline 500ulを使って細胞を氷に30分インキュベーションさせて溶解(lysis)させた。Kit protocolにより進めたし、活性を確認した。
【0179】
図11は、野生型臍帯血由来幹細胞(WT)、遺伝子操作なしに電気穿孔のみなされた臍帯血由来幹細胞(Mock)、配列番号31の標的配列をノックアウトした臍帯血由来幹細胞(sgCD142#33)の細胞溶解物(cell lysate)組織因子(
図11(a))および調整培地(conditioned media)組織因子(
図11(b))を示すグラフである。
図11に示した通り、配列番号31の標的配列をノックアウトした臍帯血由来幹細胞(sgCD142#33)が細胞溶解物(cell lysate)と調整培地(conditioned media)で組織因子活性が最も低いものと示された。
【0180】
<RNA-seq( QuantSeq )>
全RNAはTrizol reagent(Invitrogen)を利用して分離した。RNA品質(quality)はthe RNA 6000 Nano Chip(Agilent Technologies、Amstelveen、The Netherlands)を使ってAgilent 2100 bioanalyzerで測定し、RNAの量はND-2000 Spectrophotometer(Thermo Inc.,DE、USA)を使って定量化した。
【0181】
対照群と試料RNA測定のために、ライブラリー構成は製造業者の指針によりQuantSeq 3’ mRNA-Seq Library Prep Kit(Lexogen、Inc.,Austria)を使って遂行した。500ngの全RNAを準備し、Illuminaプラットフォーム互換配列を5’末端に含むoligo-dTプライマーをRNAに混成化して逆転写した。RNA鋳型分解以後、Illumine互換リンカー配列を5’末端に含む無作為プライマーを使って二番目の鎖の合成を始めた。二本鎖ライブラリーを精製するためにマグネチックビーズを使った。クラスター生成のための全体アダプターシーケンスがライブラリーを増幅するために追加された。完成されたDouble stranded library PCR構成要素で精製した。以後、高処理量シークエンシング手続き(単一終端75シーケンス)が進行された(NextSeq 500、Illumina Inc.)。QuantSeq 3’mRNA-Seq判読はBowtie2(Langmead and Salzberg、2012)を使って整列した。Bowtie2指数はgenome組み合わせsequenceあるいは転写体から生成された。整列ファイルは転写体を組み合わせ、存在比を推定し、遺伝子の差等発現を検出するのに使われた。Badtools(Quinlan AR、2010)でカバレッジを使って、独特で多数の整列からのカウントに基づいて差が出るように発現した遺伝子を決定した。Bioconductor(Gentleman et al.,2004)を使ってR(R development Core Team、2020)以内でEdgeRを使ってTMM+CPM正規化方法に基づいてRC(Read Count)データを処理した。遺伝子分類はDAVID(http://david.abcc.ncifcrf.gov/)とMedline databases(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)エンジンによる検索を基盤とした。
【0182】
図12は、RNA-seq(QuantSeq)分析結果、p-value値が0.05未満であり、正規化されたデータ(log 2)値が4以上である遺伝子リストを示した表である。
【0183】
<抗体マイクロアレイ(Antibody Microarray)>
遺伝子編集された間葉系幹細胞に対する抗体アレイ分析はFull Moon Biosystemsで遂行した。細胞溶解物(cell lysate)はProtein Extraction Kit(Full Moon BioSystems)を利用して準備した。溶解物の住んでいる上清液を分離し、ビオチン化し、室温で2時間の間燐酸化蛋白質の抗体マイクロアレイ(Phospho Explorer Antibody Arrays、Full Moon BioSystems)を利用してインキュベーションした。アレイスライドを洗浄バッファー(Full Moon BioSystems)で洗浄し、脱イオン水でリンスした。その後、スライドは室温で45分の間Cy3-Streptavidinと共にインキュベーションした後、洗浄しリンスして乾燥した。アレイはGenePix Array Scanner(Molecular Devices)でスキャンした。イメージ定量化はGenePix Pro(Molecular Devices)で遂行した。アレイ各地点に対する信号強度データはアレイイメージから抽出された。各抗体に対して2個の複製物が印刷されるので、複製物の平均信号強度が決定される。データはその後にスライドにあるすべての抗体の中央値(信号強度)で正規化される。最後に、対照群サンプルと処理サンプル間の倍数変化は正規化されたデータ(処理サンプルの信号を対照群のサンプルで割る)を使って決定された。
【0184】
図13は、抗体マイクロアレイ(Antibody Microarray)を通じての細胞分泌体分析(secretome analysis)結果を示した表である。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【
図1】F3遺伝子の配列番号1~43の標的配列を標的化するそれぞれのガイドRNAに対するインデル効率を標的化ディープシーケンシング方法を通じて測定した結果を示したグラフである。
【
図2】スクリーニングしたF3 target sgRNAを使ってF3遺伝子がノックアウトされた骨髓由来間葉系幹細胞(F3 KO BM-MSC)でインデル頻度を示したグラフである。
【
図3】スクリーニングしたF3 target sgRNAを使ってF3遺伝子がノックアウトされた臍帯血由来間葉系幹細胞(F3 KO UC-MSC)でインデル頻度(
図3(a))とF3遺伝子がノックアウトされた臍帯血由来間葉系幹細胞(F3 KO UC-MSC)表面でCD142発現程度をFACS分析を通じて示したグラフ
図3(b)である。
【
図4】F3遺伝子の配列番号1~43の標的配列を標的化するそれぞれのガイドRNAを使ってF3遺伝子がノックアウトされた臍帯血由来間葉系幹細胞(F3 KO UC-MSC)表面でCD142発現程度をFACS分析を通じて示したグラフである。
【
図5】本発明の一実施例に係る実験例で臍帯血由来間葉系幹細胞(US-MSC)継代による実験スケジュールを示したものである。
【
図6】野生型臍帯血由来幹細胞(WT)、遺伝子操作なしに電気穿孔のみなされた臍帯血由来幹細胞(Mock)、配列番号31の標的配列をノックアウトした臍帯血由来幹細胞(sgCD142#33)に対するインデル効率を標的化ディープシーケンシング方法を通じて測定した結果を示したグラフ(
図6(a))およびF3mRNA発現量を示したグラフ(
図6(b))である。
【
図7】形質導入(transfection)後の間葉系幹細胞の形状(morphology)を顕微鏡で観察した結果を示したものである。
【
図8】野生型臍帯血由来幹細胞(WT)、遺伝子操作なしに電気穿孔のみなされた臍帯血由来幹細胞(Mock)、配列番号31の標的配列をノックアウトした臍帯血由来幹細胞(sgCD142#33)のPDL(Population Doubling Level)(
図8(a))およびPopulation Doubling time(PDT(Population Doubling time)(
図8(b))を示すグラフである。
【
図9】野生型臍帯血由来幹細胞(WT)、遺伝子操作なしに電気穿孔のみなされた臍帯血由来幹細胞(Mock)、配列番号31の標的配列をノックアウトした臍帯血由来幹細胞(sgCD142#33)のCD142発現を示す細胞比率(
図9(a))およびCD142 MFI(平均蛍光強度、median fluorescence intensity)(
図9(b))を示すグラフである。
【
図10】TEG 6s装備を使って測定した野生型臍帯血由来間葉系幹細胞(WT)、遺伝子操作なしに電気穿孔のみなされた臍帯血由来間葉系幹細胞(Mock)、配列番号31の標的配列をノックアウトした臍帯血由来幹細胞(sgCD142#33)の凝固反応時間(R-time:分析開始から血栓振幅が2mmに到達するまでの時間)(
図10(a))、血栓動力学(K-time:血栓振幅が2mmに到達した後、振幅が20mmに到達するまでの時間)(
図10(b))、血栓生成強度(アルファ角度:RとK時間の中間点で接線がなす角度)(
図10(c))および血栓最大振幅(MA:絶対血栓強度)(
図10(d))を示すグラフである。
【
図11】野生型臍帯血由来幹細胞(WT)、遺伝子操作なしに電気穿孔のみなされた臍帯血由来幹細胞(Mock)、配列番号31の標的配列をノックアウトした臍帯血由来幹細胞(sgCD142#33)の細胞溶解物(cell lysate)組織因子(
図11(a))および調整培地(conditioned media)組織因子(
図11(b))を示すグラフである。
【
図12】RNA-seq(QuantSeq)分析結果、p-value値が0.05未満であり、正規化されたデータ(log 2)値が4以上である遺伝子リストを示した表である。
【
図13】抗体マイクロアレイ(Antibody Microarray)を通じての細胞分泌体分析(secretome analysis)結果を示した表である。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-02-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人為的に操作されたF3遺伝子を含む人為的に操作された間葉系幹細胞であって、
前記人為的に操作されたF3遺伝子は野生型間葉系幹細胞のF3遺伝子配列と異なり、
前記人為的に操作されたF3遺伝子は核酸配列内に一つ以上のインデル(indel)を含み、
前記人為的に操作された間葉系幹細胞の表面でCD142の発現水準は野生型間葉系幹細胞より減少して血液適合性が向上したことを特徴とする、人為的に操作された間葉系幹細胞。
【請求項2】
前記インデルはF3遺伝子のエキソン第1領域、第2領域、第3領域、第4領域または第6領域でプロトスペーサー隣接モチーフ(Protospacer-Adjacent Motif、PAM)配列内、またはPAM配列の5’末端または3′末端と隣接して位置する連続する5~50個のヌクレオチド配列内に位置することを特徴とする、請求項1に記載の人為的に操作された間葉系幹細胞。
【請求項3】
前記人為的に操作されたF3遺伝子の配列は配列番号1~43からなる群から選択された一つ以上の配列を含まないことを特徴とする、請求項1に記載の人為的に操作された間葉系幹細胞。
【請求項4】
前記人為的に操作された間葉系幹細胞内で、
前記人為的に操作されたF3遺伝子から転写されるmRNAは野生型間葉系幹細胞のF3遺伝子から転写されるmRNA発現水準と比較して、そのmRNA発現水準がさらに低いかまたは配列が異なることを特徴とする、請求項1に記載の人為的に操作された間葉系幹細胞。
【請求項5】
前記人為的に操作された間葉系幹細胞は脂肪、骨髓、臍帯、胎盤、羊水、羊膜、組織、臍帯血または出産前後組織(perinatal tissue)由来であることを特徴とする、請求項1に記載の人為的に操作された間葉系幹細胞。
【請求項6】
間葉系幹細胞のF3遺伝子の標的配列を標的化できるガイド配列を含むガイド核酸またはこれを暗号化する核酸;および
エディタ蛋白質またはこれを暗号化する核酸を含む、血液適合性を有する間葉系幹細胞製造用組成物。
【請求項7】
前記標的配列はSEQ ID NO:1~SEQ ID NO:43のうち選択された一つ以上の配列であることを特徴とする、請求項6に記載の血液適合性を有する間葉系幹細胞製造用組成物。
【請求項8】
前記組成物は
前記エディタ蛋白質および前記ガイド核酸をリボヌクレオプロテイン(RNP)形態で含む、請求項6に記載の血液適合性を有する間葉系幹細胞製造用組成物。
【請求項9】
前記組成物は
前記エディタ蛋白質を暗号化する核酸および前記ガイド核酸を暗号化する核酸を1以上のベクター形態で含む、請求項6に記載の血液適合性を有する間葉系幹細胞製造用組成物。
【請求項10】
前記ベクターはプラスミド、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルスおよび単純ヘルペスウイルスで構成された群から選択されたことを特徴とする、請求項9に記載の血液適合性を有する間葉系幹細胞製造用組成物。
【請求項11】
(1)F3遺伝子の標的配列を標的化できるガイド核酸またはこれを暗号化する核酸;およびエディタ蛋白質またはこれを暗号化する核酸を含む血液適合性を有する間葉系幹細胞製造用組成物を分離された間葉系幹細胞に導入する段階;および
(2)前記間葉系幹細胞のゲノム内に位置したF3遺伝子の標的配列にインデルを発生させることによって、CD142の発現または活性が減少または抑制されるようにF3遺伝子を編集する段階を含む、血液適合性を有する幹細胞の製造方法。
【請求項12】
前記標的配列はSEQ ID NO:1~SEQ ID NO:43のうち選択された一つ以上の配列であることを特徴とする、請求項11に記載の血液適合性を有する間葉系幹細胞の製造方法。
【請求項13】
前記組成物は前記エディタ蛋白質を暗号化する核酸および前記ガイド配列を暗号化する核酸を1以上のベクター形態で含む、請求項11に記載の血液適合性を有する間葉系幹細胞の製造方法。
【請求項14】
前記間葉系幹細胞のゲノム内に位置したF3遺伝子の標的配列に、ストレプトコッカスピオゲネス( Streptococcus pyogenes)由来Cas9蛋白質およびF3遺伝子の標的配列を標的化できるガイドRNAを含むCRISPR/Cas9複合体を接触させることによって、前記標的配列内にインデルが発生することを特徴とする、請求項11に記載の血液適合性を有する間葉系幹細胞の製造方法。
【請求項15】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載された人為的に操作された間葉系幹細胞を有効性分として含む、血管投与用細胞治療剤。
【請求項16】
前記血管投与用細胞治療剤は
心筋梗塞、心不全、虚血性心筋病症、心筋炎、虚血性腸炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、急性胆嚢炎、急性胆管炎、慢性胆嚢炎、急性膵臓炎、慢性膵臓炎、急性腎臓炎、慢性腎臓炎、急性腎不全、慢性腎不全、肺炎、間質性肺炎、特発性間質性肺炎、剥離性間質性肺炎、急性間質性肺炎、非特異的間質性肺炎、薬物誘発性肺疾患、急性呼吸困難症候群、慢性閉塞性肺疾患、小児脳性麻痺を含んだ脳性麻痺症候群、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis(ALS))、多発性神経病症、脊髄性筋萎縮症、急性横断性脊髄炎、脳卒中、多発性硬化症、末梢動脈疾患(peripheral artery disease(PAD))、閉塞性血栓血管炎(バージャー病)、川崎病(Kawasaki disease(KD))、および移植片対宿主疾患(Graft versus Host Disease(GVHD))からなる群から選択された1種の疾患治療用である、請求項15に記載の血管投与用細胞治療剤。
【請求項17】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載された人為的に操作された間葉系幹細胞を有効性分として含む、薬剤学的組成物。
【請求項18】
前記組成物は血管内に投与されるものである、請求項17に記載の薬剤学的組成物。
【請求項19】
前記組成物は心筋梗塞、心不全、虚血性心筋病症、心筋炎、虚血性腸炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、急性胆嚢炎、急性胆管炎、慢性胆嚢炎、急性膵臓炎、慢性膵臓炎、急性腎臓炎、慢性腎臓炎、急性腎不全、慢性腎不全、肺炎、間質性肺炎、特発性間質性肺炎、剥離性間質性肺炎、急性間質性肺炎、非特異的間質性肺炎、薬物誘発性肺疾患、急性呼吸困難症候群、慢性閉塞性肺疾患、小児脳性麻痺を含んだ脳性麻痺症候群、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis(ALS))、多発性神経病症、脊髄性筋萎縮症、急性横断性脊髄炎、脳卒中、多発性硬化症、末梢動脈疾患(peripheral artery disease(PAD))、閉塞性血栓血管炎(バージャー病)、川崎病(Kawasaki disease(KD))、および移植片対宿主疾患(Graft versus Host Disease(GVHD))からなる群から選択された1種の疾患の予防または治療に使うためのものである、請求項17に記載の薬剤学的組成物。
【請求項20】
疾病または病態を有する
非ヒト哺乳動物に治療学的に有効な量の請求項1~請求項5のいずれか一項に記載された人為的に操作された間葉系幹細胞を血管内に投与する段階を含む、幹細胞を使う細胞療法方法。
【請求項21】
前記疾病または病態は
心筋梗塞、心不全、虚血性心筋病症、心筋炎、虚血性腸炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、急性胆嚢炎、急性胆管炎、慢性胆嚢炎、急性膵臓炎、慢性膵臓炎、急性腎臓炎、慢性腎臓炎、急性腎不全、慢性腎不全、肺炎、間質性肺炎、特発性間質性肺炎、剥離性間質性肺炎、急性間質性肺炎、非特異的間質性肺炎、薬物誘発性肺疾患、急性呼吸困難症候群、慢性閉塞性肺疾患、小児脳性麻痺を含んだ脳性麻痺症候群、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis(ALS))、多発性神経病症、脊髄性筋萎縮症、急性横断性脊髄炎、脳卒中、多発性硬化症、末梢動脈疾患(peripheral artery disease(PAD))、閉塞性血栓血管炎(バージャー病)、川崎病(Kawasaki disease(KD))、および移植片対宿主疾患(Graft versus Host Disease(GVHD))からなる群から選択された1種である、請求項20に記載の細胞療法方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
本明細書で使われる「約」という用語は、参照量、水準、値、数、頻度、パーセント、寸法、大きさ、量、重量または長さに対して30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1程度に変わる量、水準、値、数、頻度、パーセント、寸法、大きさ、量、重量または長さを意味する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0181
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0181】
対照群と試料RNA測定のために、ライブラリー構成は製造業者の指針によりQuantSeq 3’ mRNA-Seq Library Prep Kit(Lexogen、Inc.,Austria)を使って遂行した。500ngの全RNAを準備し、Illuminaプラットフォーム互換配列を5’末端に含むoligo-dTプライマーをRNAに混成化して逆転写した。RNA鋳型分解以後、Illumine互換リンカー配列を5’末端に含む無作為プライマーを使って二番目の鎖の合成を始めた。二本鎖ライブラリーを精製するためにマグネチックビーズを使った。クラスター生成のための全体アダプターシーケンスがライブラリーを増幅するために追加された。完成されたDouble stranded library PCR構成要素で精製した。以後、高処理量シークエンシング手続き(単一終端75シーケンス)が進行された(NextSeq 500、Illumina Inc.)。QuantSeq 3’mRNA-Seq判読はBowtie2(Langmead and Salzberg、2012)を使って整列した。Bowtie2指数はgenome組み合わせsequenceあるいは転写体から生成された。整列ファイルは転写体を組み合わせ、存在比を推定し、遺伝子の差等発現を検出するのに使われた。Bedtools(Quinlan AR、2010)でカバレッジを使って、独特で多数の整列からのカウントに基づいて差が出るように発現した遺伝子を決定した。Bioconductor(Gentleman et al.,2004)を使ってR(R development Core Team、2020)以内でEdgeRを使ってTMM+CPM正規化方法に基づいてRC(Read Count)データを処理した。遺伝子分類はDAVID(http://david.abcc.ncifcrf.gov/)とMedline databases(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)エンジンによる検索を基盤とした。
【国際調査報告】