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特表2024-529507半導性ナノ粒子を含むコンタクトレンズ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】半導性ナノ粒子を含むコンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20240730BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20240730BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20240730BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240730BHJP
   C08K 3/10 20180101ALI20240730BHJP
【FI】
G02C7/04
G02C7/10
G02B5/22
C08L101/00
C08K3/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505500
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2022071311
(87)【国際公開番号】W WO2023006936
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】21306059.3
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517338412
【氏名又は名称】ネクスドット
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ダミコ,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】カオ,エドガー
(72)【発明者】
【氏名】ナウディン,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】デュベルトレ,ブノワ
【テーマコード(参考)】
2H006
2H148
4J002
【Fターム(参考)】
2H006BB01
2H006BB03
2H006BB05
2H006BB06
2H006BB07
2H006BB08
2H006BC06
2H006BC07
2H006BE00
2H006BE01
2H006BE05
2H148CA05
2H148CA13
2H148CA20
2H148CA27
4J002AA011
4J002BG011
4J002BG021
4J002BG051
4J002BG061
4J002BG071
4J002BG131
4J002CP031
4J002DB006
4J002FD206
4J002GB01
(57)【要約】
本発明は、
a.少なくとも1つのポリマーマトリックスと;
b.ポリマーマトリックス中に分散された吸収性半導性ナノ粒子と、を含む、コンタクトレンズに関し;
ここで、本コンタクトレンズの層を通る吸光度は、350nmからλcutの範囲の各光波長に対して0.5より高く、λcutは、可視範囲内、好ましくは400nm~480nmの範囲内であり、この層は、50μm~250μmの範囲の厚さを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトレンズであって、
a.少なくとも1つのポリマーマトリックスと;
b.前記ポリマーマトリックス中に分散された吸収性半導性ナノ粒子と、を含み、
前記コンタクトレンズの層を通る吸光度は、350nmからλcutの範囲の各光波長に対して0.5より高く、λcutは、可視範囲内、好ましくは400nm~480nmの範囲内であり、前記層が、50μm~250μmの範囲の厚さを有する、コンタクトレンズ。
【請求項2】
前記コンタクトレンズの層を通る前記吸光度が、350nmからλcutの範囲の各光波長に対して0.5より高く、λcutは、可視範囲内、好ましくは400nm~480nmの範囲内であり、前記層が、150μmの厚さを有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記ポリマーマトリックスが、モノマーの重合を開始するための少なくとも1つの触媒の存在下において、前記少なくとも1つのモノマーの重合によって得られる、請求項1または2に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記ポリマーマトリックスが、成形ポリマーである、請求項1または2に記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記ポリマーマトリックスが、柔軟な材料であり、これにより、前記コンタクトレンズがソフトコンタクトレンズであるようになる、請求項1~4のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ:
-20x10-11~150x10-11(cm/秒)の範囲のO透過率(ml O/mlxmmHg);
-20μm~500μmの範囲である平均中心厚;
-5mm~20mmの範囲の直径;および/または
-5mm~15mmの範囲のベースカーブ。
【請求項7】
前記ポリマーマトリックスが、アクリレートポリマー、ビニル系ポリマー、ポリオキシエチレンポリオール、ポリビニルカーボネート、ポリビニルカルバメート、またはポリオキサゾロンを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記アクリレートポリマーが、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート、ポリN-ジメチルアクリルアミド、ポリ(グリセロールメタクリレート)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリテトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(メタ)アクリルアミド、またはポリ(アクリルアミド)、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、ポリジ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)、またはそれらの混合物の中から選択される、請求項7に記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記ポリマーマトリックスが、シリコーンハイドロゲルを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
前記半導性ナノ粒子が、次式の材料を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ:
(I)
式中:
Mは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、Ru、Os、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nd、Ta、Ti、Zr、Hf、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Csまたはそれらの混合物からなる群から選択され;
Qは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、Ru、Os、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nd、Ta、Ti、Zr、Hf、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Csまたはそれらの混合物からなる群から選択され;
Eは、O、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、I、またはそれらの混合物からなる群から選択され;
Aは、O、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、I、またはそれらの混合物からなる群から選択され;
x、y、z、およびwは、独立して0から5までの10進数であり;x、y、z、およびwは、同時に0に等しくなく;xおよびyは、同時に0に等しくなく;zおよびwは、同時に0に等しくない場合がある。
【請求項11】
前記半導性ナノ粒子が、次式の材料を含む、請求項10に記載のコンタクトレンズ:
(I)
式中:
Mは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、Ru、Os、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nd、Ta、Ti、Zr、Hf、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Csまたはそれらの混合物からなる群から選択され;
Qは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、Ru、Os、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nd、Ta、Ti、Zr、Hf、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Csまたはそれらの混合物からなる群から選択され;
Eは、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、I、またはそれらの混合物からなる群から選択され;
Aは、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、I、またはそれらの混合物からなる群から選択され;
x、y、z、およびwは、独立して0から5までの10進数であり;x、y、z、およびwは、同時に0に等しくなく;xおよびyは、同時に0に等しくなく;zおよびwは、同時に0に等しくない場合がある。
【請求項12】
前記半導性ナノ粒子が、CdS、ZnSe、CdSe/CdS、CdSeS/CdS、またはCdSeS/CdZnSナノ粒子から選択される、請求項10または請求項11に記載のコンタクトレンズ。
【請求項13】
前記半導性ナノ粒子が、ナノスフェア、ナノプレート、またはナノロッドである、請求項1~12のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項14】
前記半導性ナノ粒子が、コア/シェル粒子またはコア/クラウン粒子であり、ここで、前記コアは、シェルまたはクラウンとは異なる材料である、請求項1~13のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項15】
前記コンタクトレンズ中の半導性ナノ粒子の量が、前記コンタクトレンズの重量に基づいて、10ppm~10重量%である、請求項1~14のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項16】
前記半導性ナノ粒子が、有機層でキャップされるか、または無機マトリックス中にカプセル化される、請求項1~15のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項17】
前記コンタクトレンズの前記吸光度が、
・350nm~500nmの範囲内の最も高い波長の極大吸光度であって、ここで、前記極大値は、波長λmaxに対する吸光度値Amaxを有する、極大吸光度、
・波長λ0.9に対する0.9Amaxの値であって、ここで、λ0.9は、λmaxより大きい、0.9Amaxの値;
・波長λ0.5に対する0.5Amaxの値であって、ここで、λ0.5は、λ0.9より大きい、0.5Amaxの値;を有し
ここで、|λ0.5-λ0.9|は、15nm未満である、請求項1~16のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項18】
コンタクトレンズを製造するための重合性組成物であって、
a.少なくとも1つのモノマーと;
b.前記モノマーの重合を開始するための少なくとも1つの触媒と;
c.前記モノマー中に分散された吸収性半導性ナノ粒子と、を含み、
ここで、前記コンタクトレンズの層を通る吸光度が、350nmからλcutの範囲の各光波長に対して0.5より高く、λcutは、可視範囲内、好ましくは400nm~480nmの範囲内であり、前記層は、50μm~250μmの範囲の厚さを有する、重合性組成物。
【請求項19】
請求項1~17のいずれか一項に記載のコンタクトレンズを製造するためのプロセスであって、
a.モノマーを提供するステップと;
b.前記モノマー内に分散可能な粉末の形態で、または前記モノマー内に分散可能な液体中の吸収性半導性ナノ粒子の分散液の形態で、前記吸収性半導性ナノ粒子を提供するステップと;
c.前記モノマーの重合を開始するための触媒を提供するステップと;
d.前記モノマー、前記吸収性半導性ナノ粒子、および前記触媒を混合して、重合性組成物を得るステップと;
e.前記重合性組成物を硬化させるステップと、を含む、プロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズの分野に関し、特に、特定の光吸収特性を有する半導性ナノ粒子を含むコンタクトレンズに関する。本開示はまた、そのようなコンタクトレンズを製造するための重合性液体組成物およびそのようなコンタクトレンズを製造するためのプロセスにも関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの目に届く光には、約380~780nmの波長範囲の可視光、ならびに紫外線範囲(約280~380nmのUV-AおよびUV-B光)および赤外線範囲(約780~1400nmの近IR光)の光を含む非可視光が含まれる。
【0003】
UV光は、ヒトの目にとって、有害であることが知られている。特に、眼の老化を誘導し、初期の白内障または紫外線角膜障害などのより深刻な疾患につながり得る。
【0004】
高エネルギー可視光(HEV)としても知られる青色光は、380~500nmの青紫帯域の可視光に相当する。テレビ、ラップトップ、タブレット、およびスマートフォンなどのデジタルデバイスならびに蛍光灯、LED照明から発せられる青色光に長時間さらされることにより、青色光は、網膜に到達する可能性があるため有害である。いくつかの特定の範囲の青色光は、光網膜炎;デジタルの眼精疲労、または、かすみ目などのコンピュータビジョン症候群、集中力の低下、乾燥して炎症を起こした目、頭痛、首および背中の疼痛;概日リズムの乱れ;メラニン生成の減少;加齢性黄斑変性症;緑内障;網膜変性疾患;乳がんおよび前立腺がん;糖尿病;心疾患;肥満およびうつ病を引き起こすことが示されている。約410~440nmの範囲の青色光は、特に有害であると考えられている。
【0005】
UV光および青色光による損傷は、コンタクトレンズに適切な光吸収剤を組み込むことにより防止され得る。通常、いくつかの添加剤が使用され、各吸収剤は、限られた波長範囲において効果的である。
【0006】
光吸収性コンタクトレンズを調製するための既知の方法は、バルク液体配合物中に(すなわち、重合前に)UV吸収剤ポリマーを添加することからなる。一般に、この方法によって得られたレンズは、重合中および/または老化時の光吸収剤の分解により、望ましくない黄変が発生しやすい。
【0007】
レンズの黄変は、美容上の理由から、またレンズ装用者の色知覚に影響を与え、最終的にはレンズの透過率を低下し得るため、望ましくない。
【0008】
したがって、光吸収剤を含むコンタクトレンズを必要とし、光吸収剤は、重合中に影響を受けず、高エネルギー放射線から目を保護し、色知覚を最適化できる明確な吸光度スペクトルを提供する。
【0009】
出願人は、ポリマーマトリックス中に分散された半導性ナノ粒子を含むコンタクトレンズによってこの必要性が満たされ得ることを見出した。
【発明の概要】
【0010】



本発明は、
a.少なくとも1つのポリマーマトリックスと;
b.ポリマーマトリックス中に分散された吸収性半導性ナノ粒子と、を含む、コンタクトレンズに関し;
本コンタクトレンズの層を通る吸光度は、350nmからλcutの範囲の各光波長に対して0.5より高く、λcutは、可視範囲内、好ましくは400nm~480nmの範囲内であり、この層は、50μm~250μmの範囲の厚さを有する。
【0011】
一実施形態では、本コンタクトレンズの層を通る吸光度は、350nmからλcutの範囲の各光波長に対して0.5より高く、λcutは、可視範囲内、好ましくは400nm~480nmの範囲内であり、この層は、150μmの厚さを有する。一実施形態では、ポリマーマトリックスは、モノマーの重合を開始するための少なくとも1つの触媒の存在下での少なくとも1つのモノマーの重合によって得られる。一実施形態では、ポリマーマトリックスは、成形ポリマーである。一実施形態では、ポリマーマトリックスは、柔軟な材料であり、これにより、コンタクトレンズがソフトコンタクトレンズであるようになる。一実施形態では、コンタクトレンズは、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する:
-20x10-11~150x10-11(cm/秒)の範囲のO透過率(ml O/mlxmmHg);
-20μm~500μmの範囲である平均中心厚;
-5mm~20mmの範囲の直径;および/または
-5mm~15mmの範囲のベースカーブ;
【0012】
一実施形態では、ポリマーマトリックスは、アクリレートポリマー、ビニル系ポリマー、ポリオキシエチレンポリオール、ポリビニルカーボネート、ポリビニルカルバメート、またはポリオキサゾロンを含む。一実施形態では、アクリレートポリマーは、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート、ポリN-ジメチルアクリルアミド、ポリ(グリセロールメタクリレート)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリテトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(メタ)アクリルアミド、またはポリ(アクリルアミド)、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、ポリジ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)、またはそれらの混合物の中から選択される。一実施形態では、ポリマーマトリックスはシリコーンハイドロゲルを含む。一実施形態では、半導性ナノ粒子は、式M(I)の材料を含み、ここで:Mは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、Ru、Os、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nd、Ta、Ti、Zr、Hf、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Csまたはそれらの混合物からなる群から選択され;Qは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、Ru、Os、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nd、Ta、Ti、Zr、Hf、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Csまたはそれらの混合物からなる群から選択され;Eは、O、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、I、またはそれらの混合物からなる群から選択され;Aは、O、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、I、またはそれら混合物からなる群から選択され;x、y、z、およびwは、独立して0から5までの10進数である;x、y、z、およびwは、同時に0に等しくなく;xおよびyは、同時に0に等しくなく;zおよびwは、同時に0に等しくない場合がある。一実施形態では、半導性ナノ粒子は、式M(I)の材料を含み、ここで:Mは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、Ru、Os、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nd、Ta、Ti、Zr、Hf、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Csまたはそれらの混合物からなる群から選択され;Qは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、Ru、Os、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nd、Ta、Ti、Zr、Hf、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Csまたはそれらの混合物からなる群から選択され;Eは、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、I、またはそれらの混合物からなる群から選択され;Aは、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、I、またはそれら混合物からなる群から選択され;x、y、z、およびwは、独立して0から5までの10進数である;x、y、z、およびwは、同時に0に等しくなく;xおよびyは、同時に0に等しくなく;zおよびwは、同時に0に等しくない場合がある。一実施形態では、半導性ナノ粒子は、CdS、ZnSe、CdSe/CdS、CdSeS/CdS、またはCdSeS/CdZnSナノ粒子の中から選択される。一実施形態では、半導性ナノ粒子は、ナノスフェア、ナノプレート、またはナノロッドである。一実施形態では、半導性ナノ粒子は、コア/シェル粒子またはコア/クラウン粒子であり、ここで、コアは、シェルまたはクラウンとは異なる材料である。一実施形態では、コンタクトレンズ中の半導性ナノ粒子の量は、コンタクトレンズの重量に基づいて、10ppm~10重量%である。一実施形態では、半導性ナノ粒子は、有機層でキャップされるか、または無機マトリックス中にカプセル化される。一実施形態では、コンタクトレンズの吸光度は、
・350nm~500nmの範囲内の最も高い波長の極大吸光度であって、ここで、極大値は、波長λmaxに対する吸光度値Amaxを有する、極大吸光度、
・波長λ0.9に対する0.9Amaxの値であって、ここで、λ0.9は、λmaxより大きい、0.9Amaxの値;
・波長λ0.5に対する0.5Amaxの値であって、ここで、λ0.5は、λ0.9より大きい、0.5Amaxの値;を有し
ここで、|λ0.5-λ0.9|は、15nm未満である。
【0013】
本発明はまた、コンタクトレンズを製造するための重合性組成物であって、本組成物は、
a.少なくとも1つのモノマーと;
b.モノマーの重合を開始するための少なくとも1つの触媒と;
c.モノマー中に分散された吸収性半導性ナノ粒子と、を含み、
ここで、本コンタクトレンズの層を通る吸光度は、350nmからλcutの範囲の各光波長に対して0.5より高く、λcutは、可視範囲内、好ましくは400nm~480nmの範囲内であり、この層は、50μm~250μmの範囲の厚さを有する。
【0014】
本発明はまた、本発明によるコンタクトレンズを製造するためのプロセスにも関し、本プロセスは、
a.モノマーを提供するステップと;
b.このモノマー内に分散可能な粉末の形態で、またはこのモノマー内に分散可能な液体中の吸収性半導性ナノ粒子の分散液の形態で、吸収性半導性ナノ粒子を提供するステップと;
c.このモノマーの重合を開始するための触媒を提供するステップと;
d.このモノマー、吸収性半導性ナノ粒子、および触媒を混合して、重合性組成物を得るステップと;
e.重合性組成物を硬化させるステップと、を含む。
【0015】
定義
本発明において、以下の用語は、以下の意味を有する:
-「吸光度」は、比I/Iの十進対数であり、Iは、サンプルに入射する光の強度であり、Iは、サンプルを透過した光の強度である。この開示では、吸光度は、厚さ150マイクロメートルのサンプルについて測定される。吸光度は、350nm~780nmのUVおよび可視範囲の波長で測定される。
-「ベースカーブ」とは、コンタクトレンズの裏側の半径を指す。これは、角膜中央の輪郭に一致するように設計されたコンタクトレンズの主要カーブである。これは、コンタクトレンズが装用者の目にどの程度良好に位置するかを定義するため、装用者の目の曲率に対応する必要がある。コンタクトレンズがどの程度湾曲しているかベースカーブが最も高いコンタクトレンズ、最も平坦なコンタクトレンズを表す。
-「中心厚」とは、コンタクトレンズの幾何学的中心における厚さを指す。中心厚は、コンタクトレンズのO透過性および安定性の両方を決定する。例えば、薄いコンタクトレンズは、高いO透過性を有し、これにより、多くのOが角膜に到達する。
-「コア/クラウン」とは、中心のナノ粒子:コアが、コア:クラウンの周囲に配置された材料のバンドによって囲まれているヘテロ構造を指す。
-「コア/シェル」とは、中心のナノ粒子:コアが、コア:シェル上に配置された材料の層によって埋め込まれているヘテロ構造を指す。2つの連続したシェルを重ねて、これによりコア/シェル/シェルのヘテロ構造を得られ得る。コアおよびシェルは、同じ形状を有していてもよく、例えば、コアは、ナノスフェアであり、シェルは、本質的に一定の厚さの層であり、これにより球形のコア/シェルナノ粒子が生じる。コアおよびシェルは、異なる形状を有し得る。例えば、ドット(ナノスフェア、ナノキューブ、または任意の他のナノクラスター)がコアとして提供され、シェルは、コアの周りで横方向に成長し、これにより、ナノプレートの形状を有するが、ナノプレートの内側にドットを含むヘテロ構造が得られ、後者は、その後ドットインプレートと呼ばれる。いくつかの実施形態では、コアおよびシェルは、異なる組成を有する。他の実施形態では、組成は、コアからシェルまで連続的に変化する:コアとシェルの間に正確な境界はないが、コアの中心の特性は、シェルの外側境界の特性とは異なる。
-「親水性」とは、水に対して親和性を有する物質、例えばモノマーまたはポリマーを指す。親水性化合物は、水に対する親和性を有し、通常は、帯電しているか、または水を引き付ける極性部分または極性基を有する。親水性ポリマーは、水に可溶性である必要はない。
-「ナノメートルサイズ」とは、閉じ込めによって量子効果が現れる物質のサイズを指す。半導性ナノ粒子の場合、ナノメートルサイズは、電子/正孔ペアの平均ボーア半径で定義する必要がある。閉じ込めは、物体の少なくとも一次元のサイズを20nm未満、好ましくは15nm未満、より好ましくは10nm未満にするのに効果的である。少なくとも一次元のサイズが5nm未満の場合、より強力な閉じ込めが得られる。
-「ナノ粒子」とは、その寸法の少なくとも1つにおいて100nm未満のサイズを有する粒子を指す。ナノスフェアの場合、直径は、100nm未満である必要がある。ナノプレートの場合、厚さは、100nm未満である必要がある。ナノロッドの場合、直径は、100nm未満である必要がある。
-「ナノプレート」は、2D形状のナノ粒子を指し、ナノプレートの最小寸法は、ナノプレートの最大寸法よりも、少なくとも1.5、少なくとも2、少なくとも2.5、少なくとも3、少なくとも3.5、少なくとも4、少なくとも4.5、少なくとも5、少なくとも5.5、少なくとも6、少なくとも6.5、少なくとも7、少なくとも7.5、少なくとも8、少なくとも8.5、少なくとも9、少なくとも9.5または少なくとも10の係数(アスペクト比)分小さい。
-「矢状深さ」とは、コンタクトレンズの垂直深さ、すなわち、レンズの中心から縁が周囲を囲む平面までのコンタクトレンズ全体の深さを指す。
-「半導性ナノ粒子」とは、電子産業において知られている半導性材料に対応する電子構造を有するが、ナノメートルサイズを有する材料で作られた粒子を指す。半導性材料は、その特殊な電子構造により、ハイパス吸収材料として動作する。実際、バンドギャップよりエネルギーの高い波長を有する光は、半導性材料に吸収される可能性があり、これにより、電子/正孔ペア、励起子(これらは、後に材料内で再結合して熱を放散するか、光を放出する)、またはその両方が生成される。逆に、バンドギャップよりもエネルギーの低い波長を有する光は、吸収できない:半導性材料は、これらの波長に対して透明である。巨視的な半導性材料では、一般に可視光は吸収されるが、近/中赤外光は、吸収されない。半導性粒子がナノメートルサイズを有する場合、閉じ込め、すなわち形状およびナノメートルサイズが、量子力学の法則に従って電子構造を支配し、光の吸収は、紫外線範囲、または紫外線および高エネルギー可視光に限定され得る。本開示の範囲内では、半導性ナノ粒子は、閾値未満の波長を有する光を吸収し、この閾値は、350nm~800nmの範囲にある。
-「シリコーン含有モノマー」とは、少なくとも2つの[-Si-O-]繰り返し単位を含むモノマーを指す。好ましくは、総Siおよび付着したOは、シリコーン含有モノマー中に、シリコーン含有モノマーの総分子量の20重量パーセントを超える量、より好ましくは30重量パーセントを超える量で存在する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、
a.少なくとも1つのポリマーマトリックスと;
b.ポリマーマトリックス中に分散された吸収性半導性ナノ粒子と、を含む、コンタクトレンズに関する。
【0017】
本コンタクトレンズの層を通る吸光度は、350nmからλcutの範囲の各光波長に対して0.5より高く、λcutは、可視範囲内、好ましくは400nm~480nmの範囲内であり、この層は、50μm~250μmの範囲の厚さを有する。
【0018】
好ましくは、本コンタクトレンズの層を通る吸光度は、350nmからλcutの範囲の各光波長に対して0.5より高く、λcutは、可視範囲内、好ましくは400nm~480nmの範囲内であり、この層は、150μmの厚さを有する。
【0019】
本開示では、「コンタクトレンズの層」とは、コンタクトレンズのスライスを指し、スライスは、コンタクトレンズを厚さに切断することによって得られる。したがって、50μm~250μmの範囲のコンタクトレンズの層の厚さは、コンタクトレンズのスライスの厚さに関係する。
【0020】
吸光度は、分光測光法により測定される。
【0021】
コンタクトレンズの吸収特性は、ポリマーマトリックスの内部に含まれる吸収性半導性ナノ粒子によって提供される。換言すれば、本明細書の半導性ナノ粒子は、350nmからλcutの範囲の各光波長に対して0.5より高い吸光度を呈し、λcutは、可視領域、好ましくは400nm~480nmの範囲にあり、このような吸収性半導性ナノ粒子を含むコンタクトレンズも、厚さ150μmの層を介して吸収度を呈する。
【0022】
有利なことに、本発明のコンタクトレンズは、薄い厚さを有するハイパスフィルターとして動作し、高エネルギーの波長、すなわち短波長に対して、吸光度が高い。逆に、エネルギーの低い波長、すなわち長波長に対して、吸光度が低い。高吸光度および低吸光度の両方のドメイン間の遷移は、350nmからλcutの範囲の各光波長について、吸光度が0.5より高い、好ましくは1、より好ましくは1.5の波長λcutによって定義され得る。
【0023】
コンタクトレンズ中の半導性ナノ粒子の量は、コンタクトレンズの総重量に基づいて、10ppm~10重量%、特に10ppm~5重量%、特に10ppm~1重量%、特に20ppm~0.5重量%、より特に25ppm~0.25重量%であってもよい。本開示において、半導性ナノ粒子をキャップするために使用される有機材料、または半導性ナノ粒子をカプセル化するために使用される材料は、半導性ナノ粒子の量には含まれない。明確にするために、光学活性凝集体が、周囲の鉱物マトリックスの70重量%に埋め込まれた30重量%の半導性ナノ粒子によって形成されている場合、1重量%の凝集体を含むコンタクトレンズは、全体として、コンタクトレンズの総重量に基づいて、0.3重量%の半導性ナノ粒子を含むことになる。
【0024】
この実施形態は、次のように配合物化することもできる:ポリマーマトリックス中の半導性ナノ粒子の量は、ポリマーマトリックスの総重量に基づいて、10ppm~10重量%、特に10ppm~1重量%、特に20ppm~0.5重量%、より特に25ppm~0.25重量%であってよい。本開示において、半導性ナノ粒子をキャップするために使用される有機材料、または半導性ナノ粒子をカプセル化するために使用される材料は、半導性ナノ粒子の量には含まれない。明確にするために、光学活性凝集体が、周囲の鉱物マトリックスの70重量%に埋め込まれた30重量%の半導性ナノ粒子によって形成されている場合、1重量%の凝集体を含むコンタクトレンズは、全体として、コンタクトレンズの総重量に基づいて、0.3重量%の半導性ナノ粒子を含むことになる。
【0025】
一実施形態では、コンタクトレンズ中のポリマーマトリックスの量は、コンタクトレンズの総重量に基づいて、90重量%~99.99重量%、特に95重量%~99.99重量%、より特に99重量%~99.5重量%であってよい。
【0026】
一実施形態によれば、コンタクトレンズは、20x10-11~150x10-11(cm/s)(ml O/mlxmmHg)、50x10-11~120x10-11(cm/s)(ml O/mlxmmHg)の範囲の酸素透過率Dkを有する。酸素透過率は、ISO9913-1規格に従って測定した。酸素透過率は、酸素分子を拡散によって目に到達させるレンズの能力を表すコンタクトレンズのパラメータである。ソフトコンタクトレンズの場合、レンズの厚さおよびレンズの材質に応じる。
【0027】
一実施形態によれば、コンタクトレンズは、20μm~500μm、30μm~300μm、好ましくは50μm~250μm、より好ましくは80μm~180μmの範囲の平均中心厚を有する。特に、長時間装用を目的としたコンタクトレンズは、30μm~100μmの範囲の平均中心厚を有する必要がある。コンタクトレンズは、十分な酸素透過率を可能にするのに十分な薄さである必要がある。
【0028】
一実施形態によれば、コンタクトレンズは、100μm~500μm、より好ましくは150μm~250μmの範囲の矢状深さを有する。
【0029】
一実施形態によれば、コンタクトレンズは、5mm~20mm、特に13mm~15mmの範囲の直径を有する。
【0030】
一実施形態によれば、コンタクトレンズは、5mm~15mm、特に8mm~10mm、特に8mm~9mmの範囲のベースカーブを有する。
【0031】
一実施形態によれば、コンタクトレンズは、20%~75%、好ましくは25%~60%、より好ましくは30%~45%の範囲の含水率を有する。
【0032】
一実施形態によれば、コンタクトレンズは、少なくとも約25%、または少なくとも約30%、または少なくとも約35%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、またはそれ以上の含水率を有する。低い含水率を有するコンタクトレンズは、装用感が良好でない。
【0033】
一実施形態によれば、コンタクトレンズは、球形、非球形、二焦点、多焦点、またはトーリックである。
【0034】
一実施形態によれば、コンタクトレンズは、治療用コンタクトレンズであり、すなわち、眼科的補正用のコンタクトレンズ、または例えば眼科的補正を提供しないカラーレンズなどの美容用コンタクトレンズである。
【0035】
ポリマーマトリックス
コンタクトレンズに好適であるポリマーは、様々な化学クラスに分類され得る。
【0036】
一実施形態によれば、ポリマーマトリックスは、モノマーの重合を開始するための少なくとも1つの触媒の存在下において、少なくとも1つのモノマーの重合によって得られる。
【0037】
一実施形態によれば、ポリマーマトリックスは、成形ポリマーである。
【0038】
一実施形態によれば、ポリマーマトリックスは、親水性ポリマーである。
【0039】
一実施形態によれば、ポリマーマトリックスは、柔軟な材料であり、これにより、コンタクトレンズがソフトコンタクトレンズであるようになる。
【0040】
一実施形態によれば、ポリマーマトリックスは、アクリレートポリマー、ビニル系ポリマー、ポリオキシエチレンポリオール、ポリビニルカーボネート、ポリビニルカルバメート、ポリオキサゾロン、またはそれらの混合物を含む。
【0041】
この実施形態の特定の構成では、アクリレートポリマーは、以下から選択される;HEMA(ポリヒドロキシエチルメタクリレート)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PEGMA(ポリ(エチレングリコール)メタクリレート))、PDMA(ポリN-ジメチルアクリルアミド)、ポリ(グリセロールメタクリレート)、EGDMA(ポリエチレングリコールジメタクリレート)、TEGDMA(ポリテトラエチレングリコールジメタクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(メタ)アクリルアミド、またはポリ(アクリルアミド)、PEGA(ポリ(エチレングリコール)アクリレート)、DEGEEA(ポリジ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート)、NGPD(ネオペンチルグリコールプロポキシレートジアクリレート)、PEGDA(ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート)、PETA(ポリ(ペンタエリスリトールテトラアクリレート))、またはそれらの混合物。
【0042】
この実施形態の特定の構成では、ビニル系ポリマーは、N-PVP(N-ポリビニルポリピロリドン)、ポリ(N-ビニルラクタム)、ポリ(N-ビニル-N-メチルアセトアミド)、ポリ(N-ビニル-N-エチルアセトアミド)、ポリ(N-ビニル-N-エチルホルムアミド)、ポリ(N-ビニルホルムアミド)の中から選択される。
【0043】
ポリビニルカルバメートの例としては、TPVC(トリス-(トリメチルシロキシシリル)プロピルビニルカルバメート)、NCVE(N-カルボキシビニルエステル)、PBVC(ポリ-(ジメチルシロキシ)ジ-(シリルブタノール)ビス-(ビニルカルバメート))が挙げられる。
【0044】
この実施形態の特定の構成では、ポリオキシエチレンポリオールは、重合性二重結合を含む官能基で置換されている末端ヒドロキシル基のうちの1つ以上を有する。例としては、ポリエチレングリコール、エトキシル化アルキルグルコシド、およびエトキシル化ビスフェノールAが挙げられ、これらは、イソシアナトエチルメタクリレート、メタクリル酸無水物、メタクリロイルクロリド、ビニルベンゾイルクロリドなどの1モル当量以上の末端キャッピング基と反応させて、カルバメート基またはエステル基などの連結部分を介してポリエチレンポリオールに結合した1つ以上の末端重合性オレフィン基を有するポリエチレンポリオールを製造する。
【0045】
より好ましい親水性ポリマーとしては、DMA(N-ジメチルアクリルアミド)、HEMA、グリセロールメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N-ビニルピロリドン、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸およびアクリル酸とDMAとの重合から生成されるポリマーが挙げられる。
【0046】
一実施形態によれば、ポリマーマトリックスは、シリコーンハイドロゲルを含む。ハイドロゲルは、平衡状態の水を含む水和架橋ポリマー系である。ハイドロゲルは典型的には、酸素透過性であり、生体適合性であるため、コンタクトレンズを製造するための材料の選択肢となる。シリコーンハイドロゲルは、従来のハイドロゲルよりも高いO透過性を有しており、特に長時間装用のコンタクトレンズを製造するのに好適である。
【0047】
本実施形態では、シリコーンハイドロゲルは、シリコーン含有モノマーの重合により得られる。
【0048】
特定の構成では、シリコーン含有モノマーは、以下の式のうちの1つを有し得る:
【化1】
式中、R51は、HまたはCHであり、qは、1または2であり、各qについて、R52、R53およびR54は、独立してアルキルまたは芳香族、好ましくはエチル、メチル、ベンジル、フェニル、または1~100の繰り返しSi-O単位を含む一価のシロキサン鎖であり、pは、1~10であり、r=(3-q)であり、Xは、OまたはNR55であり、ここで、R55は、Hまたは炭素数1~4の一価のアルキル基であり、aは、0または1であり、
Lは、好ましくは2~5個の炭素を含む二価の連結基であり、任意により、エーテル基またはヒドロキシル基、例えばポリエチレングリコール鎖を含んでもよい;または
【化2】
式中、b=0~100、好ましくは8~10であり、R58は、エチレン性不飽和部分を含む一価の基であり、好ましくは、スチリル、ビニル、またはメタクリレート部分、より好ましくはメタクリレート部分を含む一価の基であり;各R59は、独立して一価のアルキル基またはアリール基であり、これらは、アルコール、アミン、ケトン、カルボン酸またはエーテル基、好ましくは非置換の一価アルキル基またはアリール基、より好ましくはメチル基でさらに置換されていてもよく;R60は、1価のアルキル基、またはアリール基であり、これらは、アルコール、アミン、ケトン、カルボン酸またはエーテル基、好ましくは非置換の一価アルキル基またはアリール基、好ましくはヘテロ原子を含み得るC1-10脂肪族基または芳香族基、より好ましくはC3-8アルキル基、最も好ましくは、ブチル基、特にsec-ブチル基でさらに置換されていてもよい。
【0049】
この実施形態の好ましい構成では、シリコーンハイドロゲルは、式IIの少なくとも1つのモノマーおよび式IIIの少なくとも1つのモノマーを含む混合物の重合から得られる。シリコーンハイドロゲルにおける式IIおよび/または式IIIのシリコーン含有モノマーを使用することにより、ハイドロゲルのヤング率が低下し、これにより、これらがソフトコンタクトレンズの製造に特に好適であるものとなる。特に、これにより装用者の快適性が改善される。
【0050】
一実施形態では、シリコーン含有モノマーは、ビニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、またはスチリル官能基などの重合性官能基を含む。
【0051】
一実施形態では、シリコーン含有モノマーは、以下の中から選択される;メタクリルオキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、メタクリルオキシプロピルペンタメチルジシロキサン、メチルジ(トリメチルシロキシ)メタクリルオキシメチルシラン、メチルジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールエチルメタクリレートモノメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、ペンタメチルジシロキサニルメチルメタクリレート、(3-メタクリルオキシ-2ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ))メチルシラン、直鎖モノアルキル末端ポリジメチルシロキサン(mPDMS)、3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、w-ビスメタクリルオキシ-プロピルポリジメチルシロキサン、1,3-ビス[4-(ビニルオキシカルボニルオキシ)ブト-1-イル]テトラメチルイシロキサン3-(ビニルオキシカルボニルチオ)プロピル-[トリス(トリメチルシロキシシラン])、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]ロピルアリルカルバメート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]ロピルビニルカルバメート;トリメチルシリルエチルビニルカーボネート、トリメチルシリルメチルビニルカーボネート、ヒドロキシアルキルアミン官能性シリコーン含有モノマー。
【0052】
mPDMSベースのシリコーンハイドロゲルに関して、そのようなシリコーンハイドロゲルは、シリコーンハイドロゲルが作られるモノマーの総重量に基づいて、約2重量%~70重量%のmPDMS、好ましくは、4重量%~50重量%のmPDMS、より好ましくは、8重量%~40重量%のmPDMSを含む。シリコーンハイドロゲル中のこれらの量のmPDMSは、シリコーンハイドロゲルのヤング率を低下させ、ソフトコンタクトレンズを製造するのに特に好適のものとなる。
【0053】
一実施形態では、シリコーンハイドロゲルは、少なくとも1つのシリコーン含有モノマーと少なくとも1つの親水性シリコーン非含有モノマーとを含む混合物の重合から得られる。
【0054】
この実施形態では、少なくとも1つの親水性シリコーン非含有モノマーは、以下の中から選択される:mPDMS、メタクリルオキシプロピルトリス-(トリメチルシロキシ)シラン、メチルメタクリレート、HEMA、DMA、2-ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールメタクリレート、エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、メタクリロニトリル、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピル-1-メタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、メタクリル酸、N-ビニル-N-メチルアセトアミド(VMA)、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミド、N-2-ヒドロキシエチルビニルカルバメート、N-カルボキシ-b-アラニンN-ビニルエステル。
【0055】
本実施形態では、全シリコーン非含有モノマーは、混合物の総重量に基づいて、20重量%~75重量%、または35重量%~65重量%、または40重量%~60重量%であり得る。
【0056】
一実施形態では、ポリマーマトリックスは、従来の割合で添加剤をさらに含んでもよい。これらの添加剤としては、抗酸化剤、UV光吸収剤、光安定剤、黄変防止剤、接着促進剤、染料、フォトクロミック剤、顔料、レオロジー調整剤、滑剤、架橋剤、光開始剤、香料、およびpH調整剤などの安定剤が挙げられる。それらは重合の有効性を低下させること、またはコンタクトレンズの光学特性を劣化させることをするべきではない。
【0057】
ポリマーマトリックスはまた、色バランス調整剤を含んでもよい。このような添加剤は、コンタクトレンズの残留色を減少させることを目的としている。典型的には、染料および/または顔料が着色剤として使用される。これらの着色剤は、青色の補色を吸収するため、明度の低下を犠牲にして色の少ないコンタクトレンズが得られる。実際、コンタクトレンズは、わずかに灰色に見える、すなわち着色されていない。
【0058】
吸収性半導性ナノ粒子
材料は、様々な組成および構造を有し得る。鉱物材料の中では、一部、例えば、金属などは、導電性である。一部は、酸化シリコーンまたは酸化スズなど、電気絶縁性である。この開示において特に興味深いのは、電子産業において周知である半導性材料で作られた材料である。半導性材料は、巨視的サイズを有してもよい。半導性材料がナノメートルサイズを有する場合、その電子的特性および光学的特性が変化する。
【0059】
吸光度
本開示では、半導性ナノ粒子は、それを含むコンタクトレンズに特に興味深い光吸収特性をもたらす。特に、半導性ナノ粒子の組成および構造を適切に選択することにより、吸収された光の範囲(高エネルギー)と透過光の範囲(低エネルギー)との間で急激な遷移を有する光吸収体、したがってコンタクトレンズが設計され得る。半導性ナノ粒子は、閾値未満の波長を有する光を吸収し、この閾値は、350nm~800nmの範囲であり、そのため、半導性ナノ粒子を含むコンタクトレンズは、同じ閾値未満の波長を有する光を吸収する。
【0060】
図1.1は、350nmから780nm:A(λ)の光の波長と対応させて、半導性ナノ粒子を含むコンタクトレンズの一般的な吸光度曲線を示す。吸光度曲線は、3つのゾーンを示す。低波長領域、すなわちUV光および高エネルギー可視光では、吸光度は高く、かつ/またはほぼ一定であり、平均吸光度Aを有する第1のプラトーPを画定する。第1のプラトーPの後、吸光度は、急激に減少し、Aの10分の1の値Aに達する;A=A/10。したがって、減少ゾーンDが画定される。プラトーPと減少ゾーンDとの間の限界により、遷移の波長λcutが画定される。減少ゾーンDの後、吸光度は、可視光の赤色端、すなわち780nmまで広がる第2のプラトーPで減少し、かつ/または安定し得る。
【0061】
減少ゾーンDの幅は、一般に100nm未満、好ましくは50nm未満、より好ましくは40nm未満、さらに好ましくは30nm未満である。
【0062】
吸光度曲線は常にこの一般的な形状を有するが、詳細は、使用される材料の性質によって異なり、λcutの正確な決定は、困難であり得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、図1.1に示すとおり、吸光度曲線は、PおよびDの限界において、明らかな最大値を示す。この実施形態では、λcutは、次式によって定義することができ、ここで、λcutは、減少ゾーンDにある。
【0064】
【数1】
【0065】
この実施形態では、λcutは、極大値に関する次式によって代替的に定義されてもよい:
【0066】
【数2】
【0067】
他の実施形態では、図1.2に示すとおり、吸光度曲線は、急激に減少する前にゆっくりと単調減少する。この実施形態では、λcutは、減少ゾーンにおいて吸光度の減少が顕著になるλの最低値によって定義され得る。例えば、以下である:
【0068】
【数3】
【0069】
上で提唱したλcutの様々な測定により、異なるが近い値が得られる。本開示では、λcutの値は、±5nmの不確実性を伴う四捨五入された値として考慮される必要がある。
【0070】
λcutの値は、半導性ナノ粒子の組成、形状、および構造を適切に選択することによって、紫外光または可視光の範囲内で選択され得る。
【0071】
コンタクトレンズの吸光度は、吸収性半導性ナノ粒子を含むコンタクトレンズの150μm厚の層(すなわち、コンタクトレンズのスライス)上で測定される。一実施形態では、吸光度は、350nmからλcutの範囲の各光波長に対して、0.5より高く、好ましくは1、より好ましくは1.5である。λcutは、可視範囲にあってもよく、好ましくは400nm~500nm、400nm~460nm、400nm~430nm、460nm~500nm、または460nm~480nmの範囲にある。
【0072】
一実施形態では、コンタクトレンズの吸光度は、
・350nm~500nmの範囲内の最も高い波長の極大吸光度であって、ここで、極大値は、波長λmaxに対する吸光度値Amaxを有する、極大吸光度、
・波長λ0.9に対する0.9Amaxの値であって、ここで、λ0.9は、λmaxより大きい、0.9Amaxの値;
・波長λ0.5に対する0.5Amaxの値であって、ここで、λ0.5は、λ0.9より大きい、0.5Amaxの値;を有し
ここで、|λ0.5-λ0.9|は、15nm未満である。
【0073】
有利なことに、吸収特性を有するコンタクトレンズは、吸収光の範囲(λcut未満)と透過光の範囲(λcutを超える)との間で非常に鋭い遷移を呈する。
【0074】
好ましい構成では、|λ0.5-λ0.9|は、10nm未満、または5nm未満である。
【0075】
一実施形態では、コンタクトレンズの吸光度は、波長λ0.1に対して0.1Amaxの値を有し、λ0.1は、λ0.9より大きい;ここで、|λ0.1-λ0.9|は、30nm未満、好ましくは20nm未満、より好ましくは10nm未満である。
【0076】
コンタクトレンズは、特定の光学特性を有する必要がある。特に、コンタクトレンズは、透明であるものとする。透明とは、2つの特性を意味する。第1に、コンタクトレンズによる光散乱は低くなければならず、ASTMD1003-00による標準ヘーズ測定で測定して、典型的には1%未満、好ましくは0.8%未満、さらに好ましくは0.5%未満であるものとする。第2に、コンタクトレンズの装用者がコンタクトレンズを通して見たときに物体を認識できるという意味で、コンタクトレンズを通して見える物体の形状は、変更されていないものとする。本開示において、透明性は、可視光の吸収とは関係がない。換言すれば、コンタクトレンズは、透明であっても着色されていてもよい。
【0077】
本開示では、コンタクトレンズは、上で説明した吸収性半導性ナノ粒子を含む。したがって、コンタクトレンズは、光の吸収度、特に吸収性半導性ナノ粒子と同じ光の吸収度を示す。コンタクトレンズの吸光度は、半導性ナノ粒子を含む150μm厚のサンプルに対して定義される。
【0078】
この場合、コンタクトレンズは、ハイパスフィルターとして動作する:高エネルギーの波長、すなわち短波長では吸光度が高い。逆に、エネルギーの低い波長、すなわち長波長に対して、吸光度は低い。高吸光度および低吸光度の両方のドメイン間の遷移は、350nmからλcutの範囲の各光波長について、吸光度が0.5より高い、好ましくは1、より好ましくは1.5の波長λcutによって定義され得る。
【0079】
半導性ナノ粒子を適切に選択することにより、λcutは、紫外可視範囲、すなわち350nm~780nmで、選択され得る。一実施形態では、λcutは、可視範囲内、すなわち380nm~780nmである。
【0080】
特定の実施形態では、λcutは、可視範囲の青色部分、すなわち400nm~480nmであり、これにより、青色光の減衰が可能になる。車のヘッドランプから発せられる青色光中では、強く散乱する青色光がますます多くなっているため、このようなコンタクトレンズは、夜間の運転者に特に好適である。このようなコンタクトレンズは、ディスプレイから放射される青色光が、とりわけ概日リズムの変化および加齢関連黄斑変性症など、様々なトラブルの原因であると現在疑われているため、デジタルデバイス、すなわちコンピュータ、スマートフォン、より一般的にはデジタルディスプレイを備えたデバイスの集中的なユーザーにも特に好適である。
【0081】
別の特定の実施形態では、λcutは、可視範囲の黄緑色部分、すなわち480nm~600nmであり、これにより、青色光および黄色光の減衰が可能になる。このようなコンタクトレンズは、通常、日光の中心緑色スペクトルに非常に敏感である高齢者に特に好適である。このようなコンタクトレンズは、色覚異常者にも特に好適である:緑色と赤色との感度ピークの間のλcut、例えば約580nmを適切に選択することにより、色の曖昧さが回復され得る。
【0082】
組成物
一実施形態では、半導性ナノ粒子は、次式の材料を含む:
(I)
式中、Mは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、Ru、Os、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nd、Ta、Ti、Zr、Hf、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Csまたはそれらの混合物からなる群から選択され;Qは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、Ru、Os、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nd、Ta、Ti、Zr、Hf、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Csまたはそれらの混合物からなる群から選択され;Eは、O、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、I、またはそれらの混合物からなる群から選択され;Aは、O、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、I、またはそれら混合物からなる群から選択され;x、y、z、およびwは、独立して0から5までの10進数である;x、y、z、およびwは、同時に0に等しくなく;xおよびyは、同時に0に等しくなく;zおよびwは、同時に0に等しくない場合がある。
【0083】
特に、半導性ナノ粒子は、式MxEyの材料を含んでもよい;式中、Mは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Al、Ga、In、Si、Ge、Pb、Sbまたはそれらの混合物であり;Eは、O、S、Se、Te、N、P、Asまたはそれらの混合物であり;xとyは、独立して0から5までの10進数であるが、xおよびyが同時に0になることはない。
【0084】
この実施形態の特定の構成では、半導性ナノ粒子は、次式の材料を含む:
(I)
式中、Mは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、Ru、Os、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nd、Ta、Ti、Zr、Hf、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Csまたはそれらの混合物からなる群から選択され;Qは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、Ru、Os、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nd、Ta、Ti、Zr、Hf、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Csまたはそれらの混合物からなる群から選択され;Eは、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、I、またはそれらの混合物からなる群から選択され;Aは、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、I、またはそれら混合物からなる群から選択され;x、y、z、およびwは、独立して0から5までの10進数であり;x、y、z、およびwは、同時に0に等しくなく;xおよびyは、同時に0に等しくなく;zおよびwは、同時に0に等しくない場合がある。これらの組成物は、有利なことに、酸化物組成物よりも鋭いカットオフをもたらす。
【0085】
特定の実施形態では、半導性ナノ粒子は、以下からなる群から選択される材料を含む;CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、HgO、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、GeS、GeSe、SnS、SnSe、CuInS、CuInSe、AgInS、AgInSe、CuS、CuS、AgS、AgSe、AgTe、FeS、FeS、InP、Cd、Zn、CdO、ZnO、FeO、Fe、Fe、Al、TiO、MgO、MgS、MgSe、MgTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、TlN、TlP、TlAs、TlSb、MoS、PdS、Pd4S、WS、CsPbCl、PbBr、CsPbBr、CHNHPbI、CHNHPbCl、CHNHPbBr、CsPbI、FAPbBr(式中、FAは、ホルムアミジニウムを表す)、またはそれらの混合物。
【0086】
この実施形態の特定の構成では、半導性ナノ粒子は、以下からなる群から選択される材料を含む;CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、GeS、GeSe、SnS、SnSe、CuInS、CuInSe、AgInS、AgInSe、CuS、CuS、AgS、AgSe、AgTe、FeS、FeS、InP、Cd、Zn、MgS、MgSe、MgTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、TlN、TlP、TlAs、TlSb、MoS、PdS、Pd4S、WS、CsPbCl、PbBr、CsPbBr、CHNHPbI、CHNHPbCl、CHNHPbBr、CsPbI、FAPbBr(式中、FAは、ホルムアミジニウムを表す)、またはそれらの混合物。
【0087】
この実施形態の好ましい構成では、半導性ナノ粒子は、CdSまたはZnSeを含む。
【0088】
この実施形態の好ましい構成では、半導性ナノ粒子は、CdS、ZnSe、CdSe/CdS、CdSeS/CdS、またはCdSeS/CdZnSナノ粒子の中から選択される。
【0089】
この実施形態の好ましい構成では、半導性ナノ粒子は、ZnSeナノスフェアまたはZnSeナノプレートである。
【0090】
一実施形態では、半導性ナノ粒子は、TiO、ZnO、またはCeOナノ粒子ではない。実際に、これらの酸化物ナノ粒子は、350nmからλcut(λcutは、可視範囲にある)の範囲の各光波長に対して0.5より高い吸光度を呈さない。実際に、そのような酸化物のλcutfは、本明細書で定義される可視範囲内になく、吸収光と透過光との間の遷移は、コンタクトレンズへの応用には十分鋭くない。
【0091】
形状
本開示では、半導性ナノ粒子は、ナノメートルサイズを呈する限り、異なる形状を有してもよく、これが、ナノ粒子内に創出される励起子の閉じ込めをもたらす。
【0092】
半導性ナノ粒子は、三次元でナノメートルサイズを有し得、これにより、すべての空間三次元で、励起子を閉じ込めることができる。このようなナノ粒子は、例えば、図2に示すとおり、ナノドット1(または量子ドット)としても知られるナノキューブまたはナノスフェアである。
【0093】
半導性ナノ粒子は、二次元ではナノメートルのサイズを有し得、三次元は、それより大きくなり得:励起子は、2つの空間次元に閉じ込められる。このようなナノ粒子は、例えば、ナノロッド、ナノワイヤ、またはナノリングである。このようなナノ粒子は、1Dナノ粒子と呼ばれ得る。
【0094】
半導性ナノ粒子は、1つの次元ではナノメートルのサイズを有し得、他の2つの次元は、それより大きくなり得:励起子は、1つの空間次元のみに閉じ込められる。このようなナノ粒子は、例えば、図2に示すようなナノプレート2(ナノプレートレットとも呼ばれる)、ナノシート、ナノリボン、またはナノディスクである。このようなナノ粒子は、2Dナノ粒子と呼ばれ得る。
【0095】
一実施形態によれば、半導性ナノ粒子は、少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の半導性ナノプレートを含む。
【0096】
一実施形態によれば、半導性ナノ粒子は、少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の半導性ナノロッドを含む。
【0097】
半導性粒子の正確な形状によって、閉じ込め特性;次に、半導性粒子の組成、特にバンドギャップに応じた電子的および光学的特性、次にλcutが定義される。一次元でナノメートルサイズを有するナノ粒子、特にナノプレートは、他の形状を有するナノ粒子と比較して、より急激な減少ゾーンを示すことも観察されている。実際、ナノ粒子のナノメートルサイズが平均値付近で変動することにより、減少ゾーンの幅が拡大する。ナノメートルサイズが一次元のみ、すなわちナノプレートの場合、原子層の厳密な数によって制御される場合、厚さの変動は、ほぼゼロとなり、吸収状態と非吸収状態との間の遷移は、非常に急激である。これにより、特に効果的な光フィルターが得られる。さらに、半導電性粒子は、有機光吸収剤が分解される条件に耐えることができる鉱物材料である。
【0098】
構造
一実施形態では、半導性ナノ粒子は、ホモ構造である。ホモ構造とは、ナノ粒子が均質であり、その全体積において同じ局所組成を有することを意味する。換言すれば、このような半導性ナノ粒子は、「コア/シェル」または「コア/クラウン」ナノ粒子とは対照的に、コアナノ粒子であり、すなわち、コアとは異なる材料で作られたシェルまたはクラウンを含まない。これは、ナノ粒子にシェルまたはクラウンを追加することにより、光の吸収/透過領域間の遷移が急激でなくなり得るため、有利である。
【0099】
代替的実施形態では、半導性ナノ粒子は、ヘテロ構造である。ヘテロ構造とは、ナノ粒子がいくつかのサブボリュームから構成され、各サブボリュームが、隣接するサブボリュームとは異なる組成を有することを意味する。特定の実施形態では、すべてのサブボリュームは、異なるパラメータ、すなわち元素組成および化学量論を有する、上で開示された式(I)によって定義される組成を有する。
【0100】
ヘテロ構造の例は、図2に示すようなコア/シェルナノ粒子であり、コアは、上記で開示された任意の形状ナノスフェア11または44、ナノプレート33を有する。シェルは、コア、すなわちナノスフェア12、ナノプレート34または45を全体的または部分的に覆う層である。コア/シェルヘテロ構造の特定の例は、コアといくつかの連続したシェル、すなわちナノスフェア12および13、ナノプレート34および35を含む多層構造である。便宜上、これらの多層ヘテロ構造を、以後、コア/シェルと呼ぶ。コアおよびシェルは、同じ形状-例えば、球12中の球11-または、そうでない-例えば、プレート45中のドット44を有し得る。
【0101】
ヘテロ構造の別の例は、図2に示すようなコア/クラウンナノ粒子であり、コアは、上で開示された任意の形状を有する。クラウン23は、コア22の周囲に配置された材料のバンドであり、ここでは、ナノプレートである。このヘテロ構造は、コアがナノプレートであり、クラウンがナノプレートの端に配置されている場合に特に有用である。
【0102】
図2には、一方のコアと他方のシェルまたはクラウンとの間の明確な境界を示す。ヘテロ構造には、コアからシェル/クラウンまで組成が連続的に変化する構造も含まれ:コアとシェル/クラウンとの間に正確な境界はないが、コアの中心内の特性は、シェル/クラウンの外側境界の特性とは異なる。
【0103】
有利な実施形態では、半導性ナノ粒子は、500nm未満、特に300nm未満、理想的には200nm未満または100nm未満の最大寸法を有する。小さいサイズを有する半導性ナノ粒子は、異なる屈折率を有する材料中に分散したときに、光散乱を引き起こすことはない。
【0104】
前の実施形態の特定の構成では、球形半導性ナノ粒子は、1nm~50nm、好ましくは2nm~25nm、より好ましくは2nm~10nm、さらにより好ましくは4nm~8nmの範囲の平均直径を有する。
【0105】
前述の実施形態の特定の構成では、半導性ナノ粒子は、0.1nm~20nm、好ましくは0.5nm~10nm、より好ましくは0.5nm~2.5nmの範囲の平均厚、5nm~100nm、好ましくは10nm~50nm、より好ましくは10nm~30nmの範囲の平均幅、および/または5nm~100nm、好ましくは10nm~50nm、より好ましくは10nm~30nmの範囲の平均長を有する。
【0106】
本開示の実施例に開示されているように、表1(行7および8)に記載のZnSeナノスフェアおよびZnSeナノプレートの波長λcutは、リガンド交換後400nm~480nmの範囲である。


以下の表1には、本開示での使用に好適である様々な半導性ナノ粒子を開示する。
【表1】
【0107】
一実施形態では、半導性ナノ粒子は、有機層、無機層、またはそれらの混合物でキャップされ、かつ/または無機マトリックス中にカプセル化される。
【0108】
一実施形態では、半導性ナノ粒子は、有機化合物または無機化合物(キャッピング化合物と呼ばれる)でキャッピングされ、有機化合物または無機化合物は、各ナノ粒子の表面に有機層または無機層を形成する。キャッピングとは、有機化合物が半導性ナノ粒子の表面に吸着または吸収されることを意味する。キャッピング化合物は、いくつかの利点を提供する。特に、キャッピング剤は、分散剤として動作し得、これにより、重合性組成物中または重合中の半導性ナノ粒子の凝集が回避される。さらに、キャッピング剤は、ナノ粒子の境界条件を変更するため、半導性ナノ粒子の光学特性に影響を与える可能性があり:λcutは、キャッピング化合物の選択によって調整され得る。
【0109】
好適なキャッピング化合物は、任意の種類の分子間相互作用による半導性ナノ粒子の表面に対して親和性を有する少なくとも1つの化学部分Mを含むリガンドである。
【0110】
特に、Mは、半導性ナノ粒子の表面に存在する金属元素に対して親和性を有し得る。Mは、チオール、ジチオール、イミダゾール、カテコール、ピリジン、ピロール、チオフェン、チアゾール、ピラジン、カルボン酸またはカルボン酸塩、ナフチリジン、ホスフィン、ホスフィンオキシド、フェノール、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アミンまたは芳香族アミンであり得る。
【0111】
あるいは、Mは、半導性ナノ粒子の表面に存在するO、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、Iの群から選択される非金属元素に対する親和性を有し得る。
は、イミダゾール、ピリジン、ピロール、チアゾール、ピラジン、ナフチリジン、ホスフィン、ホスフィンオキシド、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アミンまたは芳香族アミンであり得る。
【0112】
リガンドは、同一または異なるいくつかの化学部分Mを含み得る。リガンドは、ポリマー骨格に沿った保留基またはポリマー骨格内の繰り返し基として、同一または異なる化学部分Mを有するポリマーであってもよい。
【0113】
好適な無機キャッピング化合物の例は、S2-、HS、Se2-、Te2-、OH-、BF 、PF 、Cl、Br、I、AsSe、Sb、SbTe、SbSe、Asまたはそれらの混合物などの無機リガンドである。
【0114】
図5A~Bに示される実施形態では、半導性ナノ粒子が、コンタクトレンズ内に均一に分散される。
【0115】
図5C~Hに示される実施形態では、半導性ナノ粒子がコンタクトレンズ内の特定の位置に分散される。この実施形態の特定の構成では、ナノ粒子は、実質的にコンタクトレンズの平均中心に分散される(図5C~D)、すなわち、ナノ粒子は、コンタクトレンズの平均中心からコンタクトレンズの半径の少なくとも50%までの領域内に位置する。別の構成では、ナノ粒子は、コンタクトレンズの周囲に位置し(図5E~F)、リングを形成する。別の構成では、ナノ粒子は、ポリマーマトリックス中の複数の同心リング中に分散される(図5G~H)。
【0116】
一実施形態では、半導性ナノ粒子は、マトリックス内にカプセル化され、これによりカプセルが形成される。カプセル化とは、半導性ナノ粒子がカプセル化材料内に分散され、これにより、カプセル化材料が半導性ナノ粒子の表面全体を覆うことを意味する。換言すれば、カプセル化材料は、半導性ナノ粒子の周囲に障壁を形成する。このような障壁は、いくつかの利点を有する。特に、半導性ナノ粒子が、湿気、酸化剤などの化学物質から保護され得る。さらに、媒体中に分散できない半導性ナノ粒子は、媒体との適合性が良好な材料内にカプセル化されてもよく、障壁は、相溶化剤として動作する。最後に、カプセル化された半導性ナノ粒子は、溶媒中の分散液ではなく、媒体中に分散可能な粉末の形態にすることができ、それによって現在のプロセスでの取り扱いが容易になる。
【0117】
カプセル化材料は、有機物、特に有機ポリマーであってもよい。好適な有機ポリマーは、ポリアクリレート;ポリメタクリレート;ポリアクリルアミド;ポリアミド;ポリエステル;ポリエーテル;ポリオレフィン;多糖類;ポリウレタン(またはポリカルバメート)、ポリスチレン;ポリアクリロニトリルブタジネスチレン(ABS);ポリカーボネート;ポリ(スチレンアクリロニトリル);ビニルポリマー、例えば、ポリ塩化ビニル;ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール;ポリ(p-フェニレンオキシド);ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエチレンイミン;ポリフェニルスルホン;ポリ(アクリロニトリルスチレンアクリレート);ポリエポキシド、ポリチオフェン、ポリピロール;ポリアニリン;ポリアリールエーテルケトン;ポリフラン;ポリイミド;ポリイミダゾール;ポリエーテルイミド;ポリケトン;ポリヌクレオチド;ポリスチレンスルホン酸塩;ポリエーテルイミン;ポリアミド酸;またはそれらの任意の組み合わせおよび/または誘導体および/またはコポリマーである。
【0118】
カプセル化材料は、鉱物、特に鉱物酸化物または鉱物酸化物の混合物であってもよい。好適な鉱物酸化物は、SiO、Al、TiO、ZrO、FeO、ZnO、MgO、SnO、NbO5、CeO、BeO、IrO、CaO、Sc、NaO、BaO、KO、TeO、MnO、B、GeO、As、TaO5、LiO、SrO、Y、HfO、MoO、TcO7、ReO、CoO4、OsO、RhO、Rh、CdO、HgO、TlO、Ga、In、Bi、Sb、PoO、SeO、CsO、La、Pr6O11、Nd、La、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Gd、またはそれらの混合物である。好ましい鉱物カプセル化材料は、SiO、AlおよびZnOである。特に、Znを含むナノ粒子は、ZnOまたはSiOによってカプセル化され得、Cdを含むナノ粒子は、SiO、AlまたはSiOとAlとの混合物によってカプセル化され得る。
【0119】
有利な実施形態では、カプセルは、500nm未満、特に300nm未満、理想的には200nm未満の最大寸法を有するナノ粒子である。小さいサイズを有するカプセルは、異なる屈折率を有する材料中に分散した場合も、光散乱を誘導しない。
【0120】
本開示によるカプセル中の半導性ナノ粒子の量は、カプセルの総重量に基づいて、1.0~90重量%、特に2.5~50重量%、より特に3.0~25重量%であってよい。
【0121】
本開示では、半導性ナノ粒子は、光吸収剤である。本開示において、半導性ナノ粒子による波長λの光の吸光度は、以下のように定義される。波長λの光は、半導性ナノ粒子を含む2ミリメートル厚のサンプルに向けられる。向けられた光の強度は、Iである。サンプルを透過した波長λの光の強度Iが測定される。波長λの光の吸収は、比I/Iの十進対数として定義される。吸光度1は、10個の光子のうち9個がサンプルによって吸収されることを意味する。吸光度0.3は、2つの光子のうち1つがサンプルによって吸収されることを意味する。その電子構造により、半導性ナノ粒子は、ハイパスフィルターとして動作する:吸光度は、高エネルギーの波長、すなわち、短波長では高い。逆に、エネルギーの低い波長、すなわち長波長に対して、吸光度は低い。高吸光度および低吸光度の両方のドメイン間の遷移は、上で定義した波長λcutによって定義され得る。
【0122】
半導性ナノ粒子を適切に選択することにより、λcutは、紫外可視範囲、すなわち350nm~780nmで、選択され得る。一実施形態では、λcutは、可視範囲内、すなわち380nm~780nmである。特定の実施形態では、λcutは、可視範囲の青色部分、すなわち400nm~480nmであり、これにより、青色光の減衰が可能になる。別の特定の実施形態では、λcutは、可視範囲の黄緑色部分、すなわち480nm~600nmであり、これにより、青色光および黄色光の減衰が可能になる。
【0123】
一実施形態では、半導性ナノ粒子は、ポリマーマトリックス中に均一に分散されている。すなわち、各ナノ粒子は、その最も近い隣接するナノ粒子から少なくとも5nm、好ましくは10nm、より好ましくは20nm、さらにより好ましくは50nm、最も好ましくは100nm分離されている。換言すれば、半導性ナノ粒子は、ポリマーマトリックス中で凝集しない。有利なことに、粒子が遠くなるほど、拡散は少なくなる。
【0124】
一実施形態では、ポリマーマトリックスに含まれる半導性ナノ粒子は、同じ式(I)、形状および構造を有する。
【0125】
別の実施形態では、ポリマーマトリックス中に含まれる半導性ナノ粒子は、異なる式(I)および/または異なる形状および/または異なる構造を有する。この実施形態では、コンタクトレンズの吸光度は、ランベルトベールの法則によって教示されるように、各タイプの半導性ナノ粒子の吸光度を重ね合わせることによって調整され得る。
【0126】
この実施形態では、吸光度曲線の減少ゾーンは、図1.2に示すとおり、最初の減少、次に中間のプラトー、次に第2の減少という、より複雑になり得る。したがって、2つの減少ゾーンDおよびDは定義されてもよく、各減少ゾーンは、100nm未満、好ましくは50nm未満、より好ましくは40nm未満、さらに好ましくは30nm未満の幅を有する。上記に定義されたAに加えて、引き続き適用され、2つの連続した減少に対応する。
【0127】
2つを超える減少ゾーンを取得し、2つの減少ゾーンを有する実施形態と同様に定義することができる。
【0128】
図5は、ポリマーマトリックス51中に分散された量子ドット1を含む本発明のコンタクトレンズ5を示す。
【0129】
発光性半導性ナノ粒子
一実施形態では、半導性ナノ粒子は、発光性である。高エネルギー放射線が照射されたときに、ナノ粒子内に励起子が形成され、最終的には、半導性ナノ粒子のバンドギャップに対応するエネルギーの光子の放出によって緩和する。
【0130】
次いで、発光性半導性ナノ粒子を含むコンタクトレンズは、特定の光の放出が存在することによって認証され得る。
【0131】
異なる発光波長を有する発光性半導性ナノ粒子の混合物は、産業目的、顧客保証、またはレンズの識別番号の偽造のために、認証コードを提供するために使用できる可能性がある。
【0132】
理想的には、UV光吸収特性は、非発光性半導性ナノ粒子によってもたらされ、非発光性半導性ナノ粒子の重量と比較して、5重量%未満の発光性半導性ナノ粒子が認証目的で添加されてもよい。
【0133】
さらに、発光性半導性ナノ粒子は、色バランス調整剤(colour balancing agent)として使用され得る。この場合、半導性ナノ粒子によって吸収されるUV光の一部は、可視光、特に可視光の青紫範囲で放出され得、これにより、半導性ナノ粒子による青紫光の吸収によって誘導される黄変効果のバランスがとれる。
【0134】
重合性組成物
本発明はまた、コンタクトレンズを製造するための重合性組成物であって、
a.少なくとも1つのモノマーと;
b.モノマーの重合を開始するための少なくとも1つの触媒と;
c.モノマー中に分散された吸収性半導性ナノ粒子と、を含み、
ここで、本コンタクトレンズの層を通る吸光度は、350nmからλcutの範囲の各光波長に対して0.5より高く、λcutは、可視範囲内、好ましくは400nm~480nmの範囲内であり、この層は、50μm~250μmの範囲の厚さを有する。
【0135】
吸収性半導体は、上で説明したとおりである。
【0136】
好ましくは、本コンタクトレンズの層を通る吸光度は、350nmからλcutの範囲の各光波長に対して0.5より高く、λcutは、可視範囲内、好ましくは400nm~480nmの範囲内であり、この層は、150μmの厚さを有する。
【0137】
重合性組成物は、従来の割合で添加剤をさらに含んでもよい。これらの添加剤としては、抗酸化剤、UV光吸収剤、光安定剤、黄変防止剤、接着促進剤、染料、フォトクロミック剤、顔料、レオロジー調整剤、滑剤、架橋剤、光開始剤、香料、およびpH調整剤などの安定剤が挙げられる。それらは重合の有効性を低下させること、またはコンタクトレンズの光学特性を劣化させることをするべきではない。
【0138】
重合性組成物はまた、色バランス調整剤を含んでもよい。このような添加剤は、コンタクトレンズの残留色を減少させることを目的としている。典型的には、染料および/または顔料が着色剤として使用される。これらの着色剤は、青色の補色を吸収するため、明度の低下を犠牲にして色の少ない重合性組成物が得られる。実際に、重合性組成物はわずかに灰色に見える、すなわち着色されていない。
【0139】
有利な実施形態では、重合性組成物は、追加のUV光吸収剤を含まない。実際に、半導性ナノ粒子は、280nmからλCutの範囲の光波長に対して顕著な吸光度を示す。可視範囲でλcutを選択したときに、280nm~380nmの範囲のUV光全体が半導性ナノ粒子によって吸収され、重合性組成物中にそれ以上のUV光吸収剤が必要なくなる。
【0140】
重合性組成物は、重合が溶媒によって妨げられない限り、溶媒をさらに含んでもよい。溶媒は、水、アルコール、または水/アルコール混合物のような極性溶媒から選択することができ、好ましくはアルコール、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、tert-アミルアルコール、1-エチル-1-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、n-ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチルセロソルブ(モノエトキシエチレングリコール)、およびエチレングリコールである。
【0141】
一実施形態では、少なくとも1つのモノマーは、親水性モノマーである。
【0142】
一実施形態では、少なくとも1つのモノマーは、アクリレートモノマーである。
【0143】
一実施形態では、少なくとも1つのモノマーは、ビニル系モノマーである。
【0144】
これらの実施形態の特定の構成では、少なくとも1つのモノマーは、以下の中から選択される:HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)、MMA(メチルメタクリレート)、EGMA(エチレングリコールメタクリレートN-ジメチルアクリルアミド)、TEGDMA(テトラエチレングリコールジメタクリレート)、PEGA(ポリ(エチレングリコール)アクリレート)、DEGEEA(ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート)、NGPD(ネオペンチルグリコールプロポキシレートジアクリレート)、PEGDA(ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート)、PETA(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)、グリセロールメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N-ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸、アクリル酸、N-ビニルピロリドンN-ビニルラクタム(例えば、NVP)、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミド、ポリエチレングリコール、エトキシル化アルキルグルコシド、エトキシル化ビスフェノールA、ビニルカーボネート、トリス-(トリメチルシロキシシリル)プロピルビニルカルバメート、N-カルボキシビニルエステル、ジメチルシロキシ)ジ-(シリルブタノール)ビス-(ビニルカルバメート)、ポリオキサゾロン、シリコーン含有モノマー、またはそれらの混合物。
【0145】
好ましいモノマーとしては、DMA、HEMA、グリセロールメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N-ビニルピロリドン、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸とDMAが挙げられる。
【0146】
一実施形態では、少なくとも1つのモノマーは、上記のシリコーン含有モノマーである。
【0147】
一実施形態では、重合性組成物は、少なくとも2つのモノマー、すなわちシリコーン含有モノマーと少なくとも1つの親水性シリコーン非含有モノマーとを混合することによって得られる。特に、重合性組成物は、以下のうちの少なくとも1つを含むシリコーン含有モノマーと混合することによって得られる:mPDMS、メタクリルオキシプロピルトリス-(トリメチルシロキシ)シラン、メチルメタクリレート、HEMA、DMA、メタクリロニトリル、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピル-1-メタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、またはメタクリル酸。
【0148】
一実施形態では、重合性組成物中のモノマーの量は、組成物の理論上の乾燥抽出物に基づいて、20重量%~99重量%、特に50重量%~99重量%、より具体的には80重量%~98重量%、さらにより具体的には90重量%~97重量%であってよい。
【0149】
組成物の理論上の乾燥抽出物とは、重合中に放出されるすべての溶媒および揮発性部分が除去された組成物の重量を意味する。
【0150】
一実施形態では、重合を開始するための触媒の例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:フリーラジカル開始剤、例えばペルオキソジカーボネート、ペルオキシエステル、パーケタール;過酸化物、例えば過酸化ベンゾイル、メチルエチルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、アセチルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート;アゾ化合物、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸);有機スズ化合物、例えば塩化ジメチルスズ、塩化ジブチルスズ;ルイス酸、金属のカルボン酸塩、例えば、亜鉛、チタン、ジルコニウム、スズまたはマグネシウム、アルミニウムアセチルアセトネートAl(AcAc);4-ジメチルアミノピリジン;またはそれらの混合物。
【0151】
一実施形態では、触媒の量は、重合性組成物の理論上の乾燥抽出物に基づいて、0.1~5重量%、0.5~5.0重量%、0.75~2.5重量%、0.5~1.5重量%、2.5~4.5重量%、または3.0~4.0重量%である。
【0152】
本開示による半導性ナノ粒子の量は、組成物の理論上の乾燥抽出物に基づいて、10ppm~10重量%、特に10ppm~1重量%、特に20ppm~0.5重量%、より具体的には、25ppm~0.25重量%であり得る。本開示において、半導性ナノ粒子をキャップするために使用される有機材料、または半導性ナノ粒子をカプセル化するために使用される材料は、半導性ナノ粒子の量には含まれない。明確にするために、光学活性凝集体が、周囲の鉱物マトリックスの70重量%に埋め込まれた30重量%の半導性ナノ粒子によって形成されている場合、1重量%の凝集体を含むコンタクトレンズは、全体として、コンタクトレンズの総重量に基づいて、0.3重量%の半導性ナノ粒子を含むことになる。
【0153】
一実施形態では、重合性組成物は、例えば、ジアクリレート(またはジビニルエーテル)官能化エチレンオキシドオリゴマーまたはモノマー、例えば、トリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(TEGDMA)トリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル(TEGDVE)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(PEGMA)、ネオペンチルグリコールプロポキシレートジアクリレート(NGPD)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)および/またはトリメチレングリコールジメタクリレート(TMGDMA)など、少なくとも1つの架橋剤を含み得る。典型的には、架橋剤は、重合性シリコーンハイドロゲル組成物中に、重合性組成物中に比較的少ない総量で存在し、例えば、重合性組成物の理論上の乾燥抽出物に基づいて、0.1重量%~10重量%、または0.5重量%~5重量%、または0.75重量%~1.5重量%の範囲の量で存在する。
【0154】
コンタクトレンズを製造するためのプロセス
本発明はまた、上記で定義したコンタクトレンズを製造するためのプロセスにも関し、本プロセスは、
a.モノマーを提供するステップと;
b.このモノマー内に分散可能な粉末の形態で、またはこのモノマー内に分散可能な吸収性半導性ナノ粒子の液体分散液の形態で、吸収性半導性ナノ粒子を提供するステップと;
c.このモノマーの重合を開始するための触媒を提供するステップと;
d.このモノマー、吸収性半導性ナノ粒子、および触媒を混合して、重合性組成物を得るステップと;
e.重合性組成物を硬化させるステップと、を含む。
【0155】
第1のステップでは、モノマーが提供される。このモノマーは、ポリマーマトリックスを生成する。コンタクトレンズがいくつかのポリマーを含む場合、対応するモノマーは、混合物として、または別個の組成物として提供され得る。
【0156】
架橋剤が使用される場合、これは、モノマーと同時に提供される。
【0157】
第2のステップでは、半導性ナノ粒子が提供される。ポリマーマトリックス中、すなわち最初にモノマー、次いて、ポリマーへの適切な分散を確実に行うために、半導性ナノ粒子は、モノマー中に分散可能な粉末の形態であってもよい。あるいは、半導性ナノ粒子は、溶媒などの液体中に分散されてもよく、この液体は、モノマー内に分散可能である。
【0158】
第3のステップでは、触媒が提供される。
【0159】
第4のステップでは、モノマー、半導性ナノ粒子、および触媒を一緒に混合して、均一な重合性組成物を生成する。混合プロセスは、任意の順序で行い得る。いくつかの実施形態では、モノマーが触媒と混合されるとすぐに重合が開始される。この場合、触媒は、最後に添加される。いくつかの実施形態では、異なる化学機能を有する少なくとも2つのモノマーが共重合され、モノマーが触媒と混合されるとすぐに重合が開始される:この場合、1つのモノマーおよび触媒を含む組成物が調製され、その後、最後に他のモノマーと混合され得る。
【0160】
得られた重合性組成物は、保管され得る、または即時使用され得る。
【0161】
第5のステップでは、重合性組成物は、硬化される。
【0162】
一実施形態では、硬化ステップの前に、重合性組成物を型に流し込み、次いで重合させ得る。重合は、加熱、UV~可視光の放射、化学線、またはそれらの組み合わせによって誘導され得る:このステップは、硬化ステップとも呼ばれる。硬化させて離型後、コンタクトレンズが得られ、その光学表面は、型表面によって画定されており、その光学特性は、重合性組成物の組成に起因する。硬化条件は、よく知られており、欠陥のないレンズ、特に気泡およびレンズ体積内の屈折率の不均一性のないレンズを得ることができる。
【0163】
一実施形態では、コンタクトレンズは、液体重合性組成物を回転させる型内でコンタクトレンズが形成されるスピンキャスト、液体重合性組成物が特定の曲線の凹型(雌型)に注がれるドライキャスト、および背面型(雄)を雌型に圧縮してベースカーブを作成するか、または、重合性組成物のロッドを小部分に切断し、旋盤に置き、ダイヤモンドブレードによって切断してレンズを形成する旋盤切削によって形成される。スピンキャスト中、レンズの曲率は、型の形状、重合性組成物の量、およびスピン速度によって事前に決定される。ドライキャスト中、レンズの曲率は、型の曲率によって事前に決定される。
【0164】
以前の実施形態では、ナノ粒子は、上で開示したように、マトリックス中にキャップされ得るか、またはカプセル化され得る。
【0165】
様々な実施形態を説明し、図示してきたが、詳細な説明は、これに限定されるものとして解釈されるべきではない。当業者であれば、特許請求の範囲によって定義される本開示の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、実施形態に対して様々な修正を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0166】
図1】350nm~780nmの光の波長(線形スケール):A(λ)と対応させた半導性ナノ粒子を含むポリマーマトリックスの一般的な吸光度(対数スケール)およびλcutの決定原理を示す。
図2】半導性ナノ粒子の様々な形状(球およびプレート)および構造(ホモ構造、コア/シェル、コア/クラウン、プレート内のドット)の概略図である。
図3】ZnSeナノスフェアの第1の集団NP1(点線)、ZnSeナノスフェアの第2の集団NP2(半点線)、ZnSeナノスフェアの第3の集団NP3(黒色の実線)およびZnSeナノスフェアの第4の集団NP4(灰色の実線)の光波長(λ-nm単位)と対応させた吸光度曲線を示す。
図4】基準(半点線)、配合物1(灰色の点線)、配合物2(灰色の実線)、配合物3(黒色の点線)、および配合物4(黒色の実線)の光波長(λ-nm単位)と対応させた吸光度曲線を示す。
図5A】ポリマーマトリックス51中に分散された量子ドット1を含む、本発明の一実施形態によるコンタクトレンズ5の側面概略図を示す。
図5B】ポリマーマトリックス51中に分散された量子ドット1を含む、本発明の一実施形態によるコンタクトレンズ5の上面概略図を示す。
図5C】ポリマーマトリックス51中に分散され、コンタクトレンズの平均中心に局在化された量子ドット1を含む、本発明の一実施形態によるコンタクトレンズ5の側面概略図を示す。
図5D】ポリマーマトリックス51中に分散され、コンタクトレンズの平均中心(分散領域の境界を定めるための灰色のリング)に局在化された量子ドット1を含む、本発明の一実施形態によるコンタクトレンズ5の上面概略図を示す。
図5E】ポリマーマトリックス51中に分散され、コンタクトレンズの周囲に局在してリングを形成する量子ドット1を含む、本発明の一実施形態によるコンタクトレンズ5の側面概略図を示す。
図5F】ポリマーマトリックス51中に分散され、コンタクトレンズの周囲に局在してリングを形成する量子ドット1を含む、本発明の一実施形態によるコンタクトレンズ5の上面概略図を示す。
図5G】ポリマーマトリックス51中に分散され、同心リングに従ってコンタクトレンズ内に局在化された量子ドット1を含む、本発明の一実施形態によるコンタクトレンズ5の側面概略図を示す。
図5H】ポリマーマトリックス51中に分散され、同心リングに従ってコンタクトレンズ内に局在化された量子ドット1を含む、本発明の一実施形態によるコンタクトレンズ5の上面概略図を示す。
【0167】
実施例
本発明は、以下の実施例によってさらに説明する。
【0168】
実施例1:ZnSeナノスフェアを含む分散液の吸光度
式ZnSe(以下、NP1)で直径5.4±0.2nmの球の形状を有する半導性ナノ粒子は、当業者に知られている手順に従って調製され、New J.Chem.,2007,31,1843-1852で報告された。具体的な精製ステップには、アルキルアミンなどの有機リガンドの存在下において、選択的沈殿および再分散が含まれた。ZnSeナノスフェア(NP1)の単分散集団が、20%未満の変動係数で得られた。
【0169】
同様の実験を行って、それぞれ直径5.8±0.2nm(NP2)、6.4±0.2nm(NP3)、6.8±0.2nm(NP4)、および7.4±0.2nm(NP5)を有するZnSeナノスフェアを合成した。同じ精製ステップを使用して、変動係数が20%未満であるZnSeナノスフェアの単分散集団が得られた。
【0170】
ZnSeナノスフェアの第1の集団NP1(点線)、ZnSeナノスフェアの第2の集団NP2(半点線)、ZnSeナノスフェアの第3の集団NP3(黒色の実線)、およびZnSeナノスフェアの第4の集団NP4(灰色の実線)の吸光度曲線を、紫外可視の光波長と対応させて測定し、図3に示す。表2は、NP1~NP5について得られた結果をまとめたものである。
【0171】
ZnSeナノスフェアの直径が増加したときに、λmax値の増加が観察された。
【表2】
【0172】
実施例2:モノマー1の合成-PEGMA-DHLAのエステル化
モノマー1の合成は、二官能性線状モノマー単位、PEGMA単位(ポリ(エチレングリコール)メタクリレート、平均分子量360Da)とDL-チオクト酸を等しいモル比でカップリングすることによって行った。最初に、DL-チオクト酸(30mmol)を秤量して、丸底フラスコに入れた。次いで、フラスコを密閉し、窒素ガスを流し、システムを不活性環境に置いた。次いで、予め脱気した無水THF(テトラヒドロフラン、40mL)を丸底フラスコにゆっくりと注入し、その後PEGMA(29.5mmol)を滴下注入した。次いで、塩化ベンゾイル(29.7mmol)を滴下し、10分間放置して均質化した。別のバイアルに、DMAP(4-ジメチルアミノピリジン、7.4mmol)を秤量し、窒素を流し、脱気した無水THF(20mL)を加えることによって触媒サンプルを調製した。トリエチルアミン(57.4mmol)をDMAP/THF混合物に添加し、脱気させた。次に、触媒サンプルを丸底フラスコに一滴ずつ注入し、撹拌しながら2時間混合させる。次いで、サンプルを酢酸エチルで抽出し、水で数回洗浄し、MgSOで乾燥させ、次いで濃縮した。次いで、サンプルを一晩真空乾燥させ、使用するまで冷蔵庫に保管した。
【0173】
実施例3:モノマー2の合成-HEMA-DHLAのエステル化
モノマー2の合成は、二官能性直鎖モノマー単位であるHEMA(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)単位とDL-チオクト酸を等しいモル比でカップリングすることによって行った。最初に、DL-チオクト酸(30mmol)を秤量して、丸底フラスコに入れた。次いで、フラスコを密閉し、窒素ガスを流し、システムを不活性環境に置いた。次いで、予め脱気した無水THF(40mL)を丸底フラスコにゆっくりと注入し、その後2-ヒドロキシエチルメタクリレート(29.5mmol)を滴下注入した。次いで、塩化ベンゾイル(29.7mmol)を滴下し、10分間放置して均質化した。別のバイアルに、DMAP(4-ジメチルアミノピリジン、7.4mmol)を秤量し、窒素を流し、脱気した無水THF(20mL)を加えることによって触媒サンプルを調製した。トリエチルアミン(57.4mmol)をDMAP/THF混合物に添加し、窒素バブリングにより15分間脱気した。次に、触媒サンプルを丸底フラスコに一滴ずつ注入し、撹拌しながら2時間混合させる。次いで、サンプルを酢酸エチルで抽出し、水で数回洗浄し、MgSOで乾燥させ、次いで濃縮した。次いで、サンプルを一晩真空乾燥させ、使用するまで冷蔵庫に保管した。
【0174】
実施例4:ポリマー1の合成-PEGMA-DHLA+PEGMAのテロメリゼーション重合
ポリマー1の形成は、アゾ開始剤とチオールベースの連鎖移動剤を使用した従来のフリーラジカル重合を使用した単純なテロメリゼーション重合後に生じた。
【0175】
ポリマー1は、次の手順で合成した:モノマー1(実施例2において製造)を秤量し(5.8mmol)、トルエン(100mL)と共に丸底フラスコに加えた。PEGMA(メタクリル酸ポリエチレングリコール)を3-メルカプトプロピオン酸(120μL)と共にフラスコ(6mL)に添加した。サンプルを窒素バブリングにより45分間脱気し、アゾ開始剤AIBN(トルエン中0.2M-6mL)をサンプルに注入した。次いで、サンプルを窒素雰囲気下で一晩75℃まで加熱した。次いで、サンプルを室温まで冷却し、濃縮し、最小限のジクロロメタンに分散させ、冷ジエチルエーテル中に沈殿させた。次いで、ワックス状液体を収集し、一晩凍結乾燥させて、最終生成物を回収した。
【0176】
実施例5:ポリマー2の合成-HEMA-DHLA+HEMAのテロメリゼーション重合
ポリマー2の形成は、アゾ開始剤とチオールベースの連鎖移動剤を使用した従来のフリーラジカル重合を使用した単純なテロメリゼーション重合後に生じた。
【0177】
ポリマー2は、次の手順で合成した:モノマー2(実施例3において製造)を秤量し(5.8mmol)、トルエン(100mL)と共に丸底フラスコに加えた。2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を3-メルカプトプロピオン酸(120μL)と共にフラスコ(2.2mL)に添加した。サンプルを窒素バブリングにより45分間脱気し、アゾ開始剤AIBN(トルエン中0.2M-6mL)をシリンジで注入した。サンプルを窒素雰囲気下で一晩75℃まで加熱した。次いで、サンプルを室温まで冷却し、濃縮し、最小限のジクロロメタンに分散させ、冷ジエチルエーテル中に沈殿させた。次いで、ワックス状液体を収集し、一晩凍結乾燥させて、最終生成物を回収した。
【0178】
実施例6:半導性ナノ粒子-MPAリガンドの交換
実施例1のナノ粒子、典型的にはNP1を、8mLのMPA(3-メルカプトプロパン酸)と共に質量1%の濃度でトルエン中に分散させ、50℃で2時間インキュベートし、その後、遠心分離して固体沈殿物を収集した。次いで、沈殿物をDMF(9mL)に再懸濁し、塩基(すなわち、HO中水酸化アンモニウム30重量%、1mL)で還元し、超音波処理し、再び遠心分離した。沈殿物をエタノールで洗浄後、最終濃度1質量%で塩基性水(pH11)に分散させた。
【0179】
実施例7:半導性ナノ粒子-MPA+モノマー1
実施例6のナノ粒子、典型的にはNP1-MPAを、10mg/mLの濃度のモノマー1の濃縮水溶液と共に60℃で一晩インキュベートし、次いで濾過/濃縮し、10μMの濃度で、エタノールに再懸濁した。
【0180】
実施例8:半導性ナノ粒子-MPA+モノマー2
実施例6のナノ粒子、典型的にはNP1-MPAを、10mg/mLの濃度のモノマー2の濃縮水溶液と共に60℃で一晩インキュベートし、次いで濾過/濃縮し、10μMの濃度で、エタノールに再懸濁した。
【0181】
実施例9:半導性ナノ粒子-MPA+ポリマー1
実施例6のナノ粒子、典型的にはNP1-MPAを、10mg/mLの濃度のポリマー1(実施例4)の濃縮水溶液と共に60℃で一晩インキュベートし、次いで濾過/濃縮し、10μMの濃度で、エタノールに再懸濁した。
【0182】
実施例10:半導性ナノ粒子-MPA+ポリマー2
実施例6のナノ粒子、典型的にはNP1-MPAを、10mg/mLの濃度のポリマー2の濃縮水溶液と共に60℃で一晩インキュベートし、次いで濾過/濃縮し、10μMの濃度で、エタノールに再懸濁した。
【0183】
実施例11:半導性ナノ粒子-MPA上でのシリカの成長
実施例6のナノ粒子、典型的にはNP1-MPAを水/エタノール(20/80%v/v)の溶媒混合物で希釈し、ナノ粒子の濃度を0.5%w/wに設定した。制御された比率のNHOH(50mM)およびTEOS(オルトケイ酸テトラエチル)(10mM)を添加して、シリカの成長を開始させた。サンプルは、18時間撹拌し、混合させ、その後、いくつかの洗浄ステップにより単離させ、半導性ナノ粒子を含むシリカビーズを単離させた。
【0184】
実施例12:半導性ナノ粒子-シリカのアクリレート官能基化
実施例11のシリカビーズをアクリル酸と混合し、Dhimitruka et al.(Organic Letters,2006,Vol.8,No.1,p.47-50)に記載されているのと同じ技術と組み合わせた。シリカビーズの表面は、ビーズ:アクリル酸:トリエチルアミン:DMAP:塩化ベンゾイルの比をそれぞれ1:100:200:25:100として使用して、合成した。
【0185】
実施例13:半導性ナノ粒子-シリカのアクリレート官能基化
実施例11のシリカビーズを、特定の基で表面を修飾できるシラン化合物と混合した。典型的には、実施例11のシリカビーズを、10,000xモル比で、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートを用いてエタノール中に分散させた。この混合物を周囲温度で24時間混合させた後、数回のエタノール洗浄ステップにより単離し、メタクリレート官能基化シリカビーズを生成した。
【0186】
実施例14:半導性ナノ粒子の混合物-MPAおよびPVP
実施例6のナノ粒子、典型的にはNP4-MPAを、水中のPVPのドーパント混合物と混合した(10kDa、55kDaおよび360kDaの範囲の様々な分子量が使用された)。この実験では、半導性ナノ粒子の表面を取り囲むPVP(NP4-PVPと呼ばれる)が得られる。
【0187】
実施例15:レンズの配合
以下を使用して、いくつかの配合物が調製されている:
-半導性ナノ粒子非含有(基準);
-実施例7の半導性ナノ粒子(配合物1および2);
-実施例14のNP4-PVP(配合物3および4)。
【0188】
以下の表3には、5つの調製した配合物を列挙する。mMAP-PDMSは、モノメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサンを指し、MAP-PDMSは、メタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサンを指し、NVPは、N-ビニルピロリドンを指し、MMAは、メチルメタクリレートを指し、TEGDMAは、メタクリル酸トリエチレングリコールを指す。
【0189】
表3に列挙した成分を混合した後、各レンズ配合物は、室温で30分間、窒素によるパージを行った。次に、パージしたレンズ配合物を型に導入し、UV/可視光を使用して1分間硬化させた。
【0190】
脱型機を使用することによって、型を開けた。レンズをベースカーブ型に押しピンで押し込み、ベースカーブ型の半球体とフロントカーブ型の半球体とに分割する。レンズを載せたベースカーブ型の半球体を超音波デバイス内に置く。一定のエネルギー力により、乾燥状態のレンズが離型される。あるいは、浮かせて(すなわち、超音波を使用せずに有機溶媒に浸す)、レンズをベースカーブ型の半球体から取り外すこともできる。型から取り外されたレンズは、水、有機溶媒、または溶媒の混合物を使用して、少なくとも30分間抽出プロセスにさらす。最後に、レンズを、リン酸緩衝生理食塩水(pH約7.2)を含むレンズパッケージに包装し、120℃で約30~45分間オートクレーブ処理する。
【0191】
基準(半点線)、配合物1(灰色の点線)、配合物2(灰色の実線)、配合物3(黒色の点線)および配合物4(黒色の実線)の吸光度曲線を紫外可視領域の光の波長と対応させて測定し、図4に示す。


【表3】
図1.1】
図1.2】
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
【国際調査報告】