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特表2024-529511糖尿病関連腎臓病および糸球体疾患を処置するための方法
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  • 特表-糖尿病関連腎臓病および糸球体疾患を処置するための方法 図1
  • 特表-糖尿病関連腎臓病および糸球体疾患を処置するための方法 図2A-B
  • 特表-糖尿病関連腎臓病および糸球体疾患を処置するための方法 図2C
  • 特表-糖尿病関連腎臓病および糸球体疾患を処置するための方法 図3
  • 特表-糖尿病関連腎臓病および糸球体疾患を処置するための方法 図4
  • 特表-糖尿病関連腎臓病および糸球体疾患を処置するための方法 図5A
  • 特表-糖尿病関連腎臓病および糸球体疾患を処置するための方法 図5B
  • 特表-糖尿病関連腎臓病および糸球体疾患を処置するための方法 図5C
  • 特表-糖尿病関連腎臓病および糸球体疾患を処置するための方法 図5D
  • 特表-糖尿病関連腎臓病および糸球体疾患を処置するための方法 図6
  • 特表-糖尿病関連腎臓病および糸球体疾患を処置するための方法 図7
  • 特表-糖尿病関連腎臓病および糸球体疾患を処置するための方法 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】糖尿病関連腎臓病および糸球体疾患を処置するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240730BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20240730BHJP
   C07K 14/51 20060101ALN20240730BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20240730BHJP
   C07K 16/22 20060101ALN20240730BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240730BHJP
   C12N 15/19 20060101ALN20240730BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61P3/10
A61P13/12
A61K39/395 N
A61K47/60
A61K39/395 M
C07K14/51
C07K19/00
C07K16/22
C12N15/13
C12N15/19
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505519
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2022071139
(87)【国際公開番号】W WO2023006850
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】63/226,125
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/302,460
(32)【優先日】2022-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524037960
【氏名又は名称】ネフリス エッセエッレエッレ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フィオリーナ, パオロ
(72)【発明者】
【氏名】ダッディオ, フランチェスカ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA94
4C076BB13
4C076BB16
4C076CC17
4C076CC21
4C076CC41
4C076EE23
4C076EE59
4C076FF31
4C076FF68
4C084AA17
4C084DA39
4C084MA55
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA12
4C084NA14
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZC351
4C084ZC352
4C085AA14
4C085BB36
4C085BB41
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE05
4C085GG02
4C085GG04
4C085GG10
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045BA57
4H045CA40
4H045DA01
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
1型糖尿病もしくは2型糖尿病または糸球体疾患を有する対象における、腎損傷の発症または進行を遅延させるための方法、あるいは腎臓病を処置するための方法が、提供される。これらの方法は、NBL1活性を阻害可能な薬剤の有効量、詳細には、ヒトポドサイトのNBL1媒介性毒性を阻害可能な薬剤の有効量を、1型糖尿病もしくは2型糖尿病または糸球体疾患を有する対象に投与することを含む。一部の実施形態において、その薬剤はヒトNBL1に結合可能な抗体である.
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1型糖尿病もしくは2型糖尿病または糸球体疾患を有する対象における腎損傷の発症または進行を遅延させるための方法であって、
NBL1活性を阻害可能な薬剤の有効量を該対象に投与すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記薬剤がNBL1に結合可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薬剤がヒトNBL1に結合可能である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記薬剤が、ヒトNBL1に結合可能な、抗体または抗体の抗原結合フラグメントである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体または抗原結合フラグメントが3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRを含み、該3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRは、
a)配列番号3、8、および13ならびに配列番号18、23、および28(抗体E05);
b)配列番号33、38、および43ならびに配列番号48、53、および58(抗体H08);
c)配列番号63、68、および73ならびに配列番号78、83、および88(抗体F06);
d)配列番号93、98、および103ならびに配列番号108、113、および118(抗体A12);
e)配列番号123、128、および133ならびに配列番号138、143、および148(抗体G01);
f)配列番号153、158、および163ならびに配列番号168、173、および178(抗体E11);
g)配列番号183、188、および193ならびに配列番号198、203、および208(抗体B06);
h)配列番号213、218、および223ならびに配列番号228、233、および238(抗体D12);
i)配列番号243、248、および253ならびに配列番号258、263、および268(抗体H01);
j)配列番号273、278、および283ならびに配列番号288、293、および298(抗体C11);
k)配列番号303、308、および313ならびに配列番号318、323、および328(抗体E05);
l)配列番号333、338、および343ならびに配列番号348、353、および358(抗体F10);
m)配列番号363、368、および373ならびに配列番号378、383、および388(抗体G10);
n)配列番号393、398、および403ならびに配列番号408、413、および418(抗体E04);
o)配列番号423、428、および433ならびに配列番号438、443、および448(抗体E07);
p)配列番号453、458、および463ならびに配列番号468、473、および478(抗体E12);
q)配列番号483、488、および493ならびに配列番号498、503、および508(抗体D08);
r)配列番号513、518、および523ならびに配列番号528、533、および538(抗体E10);
s)配列番号543、548、および553ならびに配列番号558、563、および568(抗体D06);ならびに
t)配列番号573、578、および583ならびに配列番号588、593、および598(抗体E01)
から選択される配列を有するか、または
該選択されたCDR配列(a)~(t)とは各CDRにおける多くて2個の保存的アミノ酸置換により異なる配列を有する、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体または抗原結合フラグメントが、前記選択されたCDRと同一の配列を有する、3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRが、
b)配列番号33、38、および43ならびに配列番号48、53、および58(抗体H08);
d)配列番号93、98、および103ならびに配列番号108、113、および118(抗体A12);
g)配列番号183、188、および193ならびに配列番号198、203、および208(抗体B06);
n)配列番号393、398、および403ならびに配列番号408、413、および418(抗体E04);
s)配列番号543、548、および553ならびに配列番号558、563、および568(抗体D06);ならびに
t)配列番号573、578、および583ならびに配列番号588、593、および598(抗体E01)
から選択される配列を有するか、または
該選択されたCDR配列b)、d)、g)、n)、s)、およびt)とは各CDRにおける多くて2個の保存的アミノ酸置換により異なる配列を有する、
請求項5または請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体または抗原結合フラグメントが、前記選択されたCDRと同一の配列を有する、3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体フレームワーク領域がヒト抗体フレームワーク領域である、請求項4~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体が全長二価単一特異性モノクローナル抗体である、請求項4~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体がヒトIgG1重鎖定常領域、ヒトIgG2重鎖定常領域、またはヒトIgG4重鎖定常領域を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体がヒトIgG1定常領域を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体Fc領域が、少なくとも1つの型のFcレセプターへの抗体結合を減少させ、かつ/または補体結合を減少させる、操作された変異を有する、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法
【請求項14】
前記抗体がFabであり、必要に応じて該Fabはペグ化されている、請求項4~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体または抗原結合フラグメントがさらにカニクイザルNBL1に結合可能である、請求項4~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体または抗原結合フラグメントがさらにマウスNBL1に結合可能である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体または抗原結合フラグメントが100nM未満のヒトNBL1に対する結合親和性(K)を有する、請求項4~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体または抗原結合フラグメントが10nM未満のヒトNBL1に対する結合親和性(K)を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体または抗原結合フラグメントが5nM未満のヒトNBL1に対する結合親和性(K)を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記薬剤が骨形成タンパク質(BMP)またはその可溶性フラグメントを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記薬剤がヒトBMP-2の可溶性フラグメントを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記薬剤が、血清半減期を延長させる部分をさらに含む、請求項20または請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記半減期延長部分が抗体Fcドメインである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記半減期延長部分が、少なくとも1つの共有結合されたポリエチレングリコール(PEG)部分である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記薬剤がNBL1の二量体形成を阻害可能である、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記薬剤がNBL1発現を阻害可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記薬剤が非経口投与される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記薬剤が静脈内投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記薬剤が皮下投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記薬剤が少なくとも3か月間投与される、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記薬剤が少なくとも6か月間投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記薬剤が少なくとも12か月間投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記対象が上昇した処置前血漿NBL1レベルを有する、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記対象が1型糖尿病を有する、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記対象が2型糖尿病を有する、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記対象が糸球体疾患を有する、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記糸球体疾患を有する前記対象が1型糖尿病も2型糖尿病も有しない、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記糸球体疾患が、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、慢性糸球体症、遺伝性腎炎、および微小変化群からなる群より選択される、請求項36または請求項37に記載の方法。
【請求項39】
腎機能低下の発症を予防するかまたは腎機能低下を遅くする、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
1型糖尿病もしくは2型糖尿病または糸球体疾患を有する対象における糖尿病関連腎臓病(DKD)または糸球体疾患を処置する方法であって、
NBL1活性を阻害可能な薬剤の有効量を該対象に投与すること
を含む、方法。
【請求項41】
前記薬剤が、ヒトNBL1に結合可能な、抗体または抗体の抗原結合フラグメントである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
抗体または抗原結合フラグメントであって、該抗体は、NBL1に結合可能であり、ヒトポドサイトのNBL1誘発毒性を阻害可能である、抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項43】
前記抗体または抗原結合フラグメントが3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRを含み、該3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRは、
u)配列番号3、8、および13ならびに配列番号18、23、および28(抗体E05);
v)配列番号33、38、および43ならびに配列番号48、53、および58(抗体H08);
w)配列番号63、68、および73ならびに配列番号78、83、および88(抗体F06);
x)配列番号93、98、および103ならびに配列番号108、113、および118(抗体A12);
y)配列番号123、128、および133ならびに配列番号138、143、および148(抗体G01);
z)配列番号153、158、および163ならびに配列番号168、173、および178(抗体E11);
aa)配列番号183、188、および193ならびに配列番号198、203、および208(抗体B06);
bb)配列番号213、218、および223ならびに配列番号228、233、および238(抗体D12);
cc)配列番号243、248、および253ならびに配列番号258、263、および268(抗体H01);
dd)配列番号273、278、および283ならびに配列番号288、293、および298(抗体C11);
ee)配列番号303、308、および313ならびに配列番号318、323、および328(抗体E05);
ff)配列番号333、338、および343ならびに配列番号348、353、および358(抗体F10);
gg)配列番号363、368、および373ならびに配列番号378、383、および388(抗体G10);
hh)配列番号393、398、および403ならびに配列番号408、413、および418(抗体E04);
ii)配列番号423、428、および433ならびに配列番号438、443、および448(抗体E07);
jj)配列番号453、458、および463ならびに配列番号468、473、および478(抗体E12);
kk)配列番号483、488、および493ならびに配列番号498、503、および508(抗体D08);
ll)配列番号513、518、および523ならびに配列番号528、533、および538(抗体E10);
mm)配列番号543、548、および553ならびに配列番号558、563、および568(抗体D06);ならびに
nn)配列番号573、578、および583ならびに配列番号588、593、および598(抗体E01)
から選択される配列を有するか、または
該選択されたCDR配列(a)~(t)とは各CDRにおける多くて2個の保存的アミノ酸置換により異なる配列を有する、
請求項42に記載の抗体。
【請求項44】
前記選択されたCDRと同一の配列を有する、3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRを含む、請求項43に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項45】
前記3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRが、
b)配列番号33、38、および43ならびに配列番号48、53、および58(抗体H08);
d)配列番号93、98、および103ならびに配列番号108、113、および118(抗体A12);
g)配列番号183、188、および193ならびに配列番号198、203、および208(抗体B06);
n)配列番号393、398、および403ならびに配列番号408、413、および418(抗体E04);
s)配列番号543、548、および553ならびに配列番号558、563、および568(抗体D06);ならびに
t)配列番号573、578、および583ならびに配列番号588、593、および598(抗体E01)
から選択される配列を有するか、または
該選択されたCDR配列b)、d)、g)、n)、s)、およびt)とは各CDRにおける多くて2個の保存的アミノ酸置換により異なる配列を有する、
請求項43もしくは請求項44に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項46】
前記選択されたCDRと同一の配列を有する、3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRを含む、請求項45に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項47】
前記抗体フレームワーク領域がヒト抗体フレームワーク領域である、請求項43~46のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項48】
前記抗体が全長二価単一特異性モノクローナル抗体である、請求項43~47のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項49】
前記抗体がヒトIgG1重鎖定常領域、ヒトIgG2重鎖定常領域、またはヒトIgG4重鎖定常領域を含む。請求項48に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項50】
前記抗体がヒトIgG1定常領域を含む、請求項49に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項51】
前記抗体Fc領域が、FcRγへの抗体結合を減少させ、かつ/または補体結合を減少させる、操作された変異を有する、請求項48~50のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項52】
前記抗体がFabであり、必要に応じて該Fabはペグ化されている、請求項43~47のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項53】
さらにカニクイザルNBL1に結合可能である、請求項42~52のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項54】
さらにマウスNBL1に結合可能である、請求項53に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項55】
100nM未満のヒトNBL1に対する結合親和性(K)を有する、請求項42~54のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項56】
10nM未満のヒトNBL1に対する結合親和性(K)を有する、請求項55に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項57】
5nM未満のヒトNBL1に対する結合親和性(K)を有する、請求項55に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項58】
請求項42~57のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメント、および
薬学的に受容可能なキャリア
を含む、医薬組成物。
【請求項59】
非経口投与のために製剤化される、請求項58に記載の医薬組成物。
【請求項60】
静脈内投与のために製剤化される、請求項59に記載の医薬組成物。
【請求項61】
皮下投与のために製剤化される、請求項59に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.関連出願の相互参照)
本出願は、2021年7月27日に出願された米国特許仮出願第63/226,125号および2022年1月24日に出願された米国特許仮出願第63/302,460号の利益および優先権を主張し、これらの米国特許仮出願は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
(2.発明の背景)
1型糖尿病(T1D)および2型糖尿病(T2D)には、合わせると世界中で少なくとも3億4千7百万人が罹患しており、有病率は増加中である。糖尿病は、高血糖症と、患者の生活の質および寿命に大きく影響を与える合併症とによって特徴付けられ、社会に対して大きな経済的な負担を課す。米国糖尿病学会(American Diabetes Association)によって行われた研究は、2017年の米国における糖尿病の米国内の経済的負担を3,270億ドルと評価した。これは、この費用が最後に調べられた2012年における2,450億ドルから26%の増加を示す。
【0003】
T1DについてもT2Dについても、現在は治癒が存在しない。ほどんとの治療は、患者がその症状をある特定の程度に管理することを助けるが、糖尿病患者は依然として、複数の長期間にわたる健康上の合併症に直面する。これらの合併症のうちには腎損傷(kidney damage)があり、これは末期腎不全(ESRD)へと進行し得る。糖尿病は、2011年にすべての新規症例のうちの44%において腎不全の主要原因であった。糖尿病に関連する合併症(詳細には、腎臓病およびその進行)の有病率および重症度を考慮すると、糖尿病における腎臓病の発症および進行を遅延させる治療剤の必要性が、存在する。
【0004】
腎損傷はまた、他の病因も有する。糖尿病以外の障害によって引き起こされる腎臓病の発症および進行を遅延させる治療剤の必要性が、存在する。糸球体障害を処置する治療剤の必要性が、特に存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(3.発明の概要)
本開示の実験的実施例において詳述されるとおり、本発明者らは、神経芽細胞腫腫瘍形成抑制因子1(neuroblastoma suppressor of tumorgenicity 1)(NBL1)というタンパク質が、腎細胞(ポドサイトおよび尿細管細胞を含む)に対して直接的に毒性であることを発見した。その毒性作用は、腎BMPタンパク質の阻害を通じては媒介されない。本発明者らは、BMPが、腎細胞中では発現されず腎細胞によって分泌されないことを示す。さらに、本発明者らは、NBL1もまた腎細胞中で発現されないが、循環免疫細胞中で発現されることを発見した。NBL1をアンタゴニスト(sBMP2または抗NBL1モノクローナル抗体のいずれか)で中和すると、毒性をインビトロで防止する。最後に、本発明者らは、NBL1が1型糖尿病および2型糖尿病において上昇することを示す。したがって、NBL1の阻害は、特に1型糖尿病もしくは2型糖尿病を有する患者において、循環NBL1によって引き起こされる腎損傷の発症および進行を予防するための新規な治療アプローチである。NBL1の阻害はまた、NBL1によって損傷が媒介される非糖尿病性糸球体疾患を処置することにおいて有効である。
【0006】
したがって、第一の局面において、1型糖尿病もしくは2型糖尿病または糸球体疾患を有する対象における腎損傷の発症または進行を遅延させるための方法が、提供される。この方法は、NBL1活性を阻害可能な(詳細には、ヒトポドサイトに対するNBL1毒性を阻害可能な)薬剤の有効量をその対象に投与することを含む。一部の実施形態において、この方法は、腎機能低下の発症を予防するかまたは腎機能低下を遅くする.
【0007】
さらなる局面において、1型糖尿病もしくは2型糖尿病または糸球体疾患を有する対象における腎機能低下を遅くするための方法が、提供される。この方法は、NBL1活性を阻害可能な(詳細には、ヒトポドサイトに対するNBL1毒性を阻害可能な)薬剤の有効量をその対象に投与することを含む。
【0008】
なおさらなる局面において、1型糖尿病もしくは2型糖尿病または糸球体疾患を有する対象における糖尿病関連腎臓病(DKD)を処置するための方法が、提供される。この方法は、NBL1活性を阻害可能な(詳細には、ヒトポドサイトに対するNBL1毒性を阻害可能な)薬剤の有効量をその対象に投与することを含む。
【0009】
これらの方法の一部の実施形態において、その薬剤はNBL1に結合可能である。一部の実施形態において、その薬剤はヒトNBL1に結合可能である。
【0010】
一部の実施形態において、その薬剤は、ヒトNBL1に結合可能な、抗体または抗体の抗原結合フラグメントである。
【0011】
一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントは、3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRを含み、これらの3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRは、
a)配列番号3、8、および13ならびに配列番号18、23、および28(抗体E05);
b)配列番号33、38、および43ならびに配列番号48、53、および58(抗体H08);
c)配列番号63、68、および73ならびに配列番号78、83、および88(抗体F06);
d)配列番号93、98、および103ならびに配列番号108、113、および118(抗体A12);
e)配列番号123、128、および133ならびに配列番号138、143、および148(抗体G01);
f)配列番号153、158、および163ならびに配列番号168、173、および178(抗体E11);
g)配列番号183、188、および193ならびに配列番号198、203、および208(抗体B06);
h)配列番号213、218、および223ならびに配列番号228、233、および238(抗体D12);
i)配列番号243、248、および253ならびに配列番号258、263、および268(抗体H01);
j)配列番号273、278、および283ならびに配列番号288、293、および298(抗体C11);
k)配列番号303、308、および313ならびに配列番号318、323、および328(抗体E05);
l)配列番号333、338、および343ならびに配列番号348、353、および358(抗体F10);
m)配列番号363、368、および373ならびに配列番号378、383、および388(抗体G10);
n)配列番号393、398、および403ならびに配列番号408、413、および418(抗体E04);
o)配列番号423、428、および433ならびに配列番号438、443、および448(抗体E07);
p)配列番号453、458、および463ならびに配列番号468、473、および478(抗体E12);
q)配列番号483、488、および493ならびに配列番号498、503、および508(抗体D08);
r)配列番号513、518、および523ならびに配列番号528、533、および538(抗体E10);
s)配列番号543、548、および553ならびに配列番号558、563、および568(抗体D06);ならびに
t)配列番号573、578、および583ならびに配列番号588、593、および598(抗体E01)
から選択される配列を有するか、または
これらの選択されたCDR配列セット(a)~(t)とは各CDRにおける多くて2個の保存的アミノ酸変化により異なる配列を有する。
【0012】
これらの方法の一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントは、その選択されたCDRと同一の配列を有する、3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRを含む。一部の実施形態において、その3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRは、
b)配列番号33、38、および43ならびに配列番号48、53、および58(抗体H08);
d)配列番号93、98、および103ならびに配列番号108、113、および118(抗体A12);
g)配列番号183、188、および193ならびに配列番号198、203、および208(抗体B06);
n)配列番号393、398、および403ならびに配列番号408、413、および418(抗体E04);
s)配列番号543、548、および553ならびに配列番号558、563、および568(抗体D06);ならびに
t)配列番号573、578、および583ならびに配列番号588、593、および598(抗体E01)
から選択される配列を有するか、または
これらの選択されたCDR配列セットb)、d)、g)、n)、s)、およびt)とは各CDRにおける多くて2個の保存的アミノ酸変化により異なる配列を有する。
【0013】
一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントは、その選択されたCDRと同一の配列を有する、3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRを含む。
【0014】
一部の実施形態において、その抗体フレームワーク領域はヒト抗体フレームワーク領域である。
【0015】
一部の実施形態において、その抗体は全長二価単一特異性モノクローナル抗体である。一部の実施形態において、その抗体はヒトIgG1重鎖定常領域、ヒトIgG2重鎖定常領域、またはヒトIgG4重鎖定常領域を含む。一部の実施形態において、その抗体はヒトIgG1定常領域を含む。一部の実施形態において、その抗体Fc領域は、少なくとも1つの型のFcレセプターへの抗体結合を減少させ、かつ/または補体結合を減少させる、操作された変異を有する。一部の実施形態において、その抗体はFabであり、必要に応じてそのFabはペグ化されている。一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントはさらにカニクイザルNBL1に結合可能である。一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントはさらにマウスNBL1に結合可能である。
【0016】
一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントは100nM未満のヒトNBL1に対する結合親和性(K)を有する。一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントは10nM未満のヒトNBL1に対する結合親和性(K)を有する。一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントは5nM未満のヒトNBL1に対する結合親和性(K)を有する。一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントは1nM未満のヒトNBL1に対する結合親和性(K)を有する。
【0017】
一部の実施形態において、その薬剤は骨形成タンパク質(BMP)またはその可溶性フラグメントを含む。一部の実施形態において、その薬剤はヒトBMP-2の可溶性フラグメントを含む。一部の特定の実施形態において、その薬剤は、血清半減期を延長させる部分をさらに含む。一部の実施形態において、その半減期延長部分は抗体Fcドメインである。一部の実施形態において、その半減期延長部分は、少なくとも1つの共有結合されたポリエチレングリコール(PEG)部分である。
【0018】
一部の実施形態において、その薬剤はNBL1の二量体形成を阻害可能である。
【0019】
一部の実施形態において、その薬剤はNBL1発現を阻害可能である。
【0020】
一部の実施形態において、その薬剤は非経口投与される。一部の実施形態において、その薬剤は静脈内投与される。一部の実施形態において、その薬剤は皮下投与される。一部の実施形態において、その薬剤は少なくとも3か月間投与される。一部の実施形態において、その薬剤は少なくとも6か月間投与される。一部の実施形態において、その薬剤は少なくとも12か月間投与される。
【0021】
一部の実施形態において、その対象は、上昇した処置前血漿NBL1レベルを有する。一部の実施形態において、その対象は1型糖尿病を有する。一部の実施形態において、その対象は2型糖尿病を有する。一部の実施形態において、その対象は糸球体疾患を有する。一部の実施形態において、糸球体疾患を有するその対象は1型糖尿病も2型糖尿病も有しない。一部の実施形態において、その糸球体疾患は、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、慢性糸球体症、遺伝性腎炎、および微小変化群からなる群より選択される。
【0022】
別の局面において、NBL1に結合可能であり、ヒトポドサイトのNBL1誘発毒性を阻害可能である、抗体または抗原結合フラグメントが提供される。
【0023】
一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントは3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRを含み、これらの3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRは、
a)配列番号3、8、および13ならびに配列番号18、23、および28(抗体E05);
b)配列番号33、38、および43ならびに配列番号48、53、および58(抗体H08);
c)配列番号63、68、および73ならびに配列番号78、83、および88(抗体F06);
d)配列番号93、98、および103ならびに配列番号108、113、および118(抗体A12);
e)配列番号123、128、および133ならびに配列番号138、143、および148(抗体G01);
f)配列番号153、158、および163ならびに配列番号168、173、および178(抗体E11);
g)配列番号183、188、および193ならびに配列番号198、203、および208(抗体B06);
h)配列番号213、218、および223ならびに配列番号228、233、および238(抗体D12);
i)配列番号243、248、および253ならびに配列番号258、263、および268(抗体H01);
j)配列番号273、278、および283ならびに配列番号288、293、および298(抗体C11);
k)配列番号303、308、および313ならびに配列番号318、323、および328(抗体E05);
l)配列番号333、338、および343ならびに配列番号348、353、および358(抗体F10);
m)配列番号363、368、および373ならびに配列番号378、383、および388(抗体G10);
n)配列番号393、398、および403ならびに配列番号408、413、および418(抗体E04);
o)配列番号423、428、および433ならびに配列番号438、443、および448(抗体E07);
p)配列番号453、458、および463ならびに配列番号468、473、および478(抗体E12);
q)配列番号483、488、および493ならびに配列番号498、503、および508(抗体D08);
r)配列番号513、518、および523ならびに配列番号528、533、および538(抗体E10);
s)配列番号543、548、および553ならびに配列番号558、563、および568(抗体D06);ならびに
t)配列番号573、578、および583ならびに配列番号588、593、および598(抗体E01)
から選択される配列を有するか、または
(a)~(t)から選択されるCDR配列とは各CDRにおける多くて2個の保存的アミノ酸置換により異なる配列を有する。一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントは、これらの選択されたCDRセット(a)~(t)のうちの1つと同一の配列を有する、3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRを含む。
【0024】
一部の実施形態において、その3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRは、
b)配列番号33、38、および43ならびに配列番号48、53、および58(抗体H08);
d)配列番号93、98、および103ならびに配列番号108、113、および118(抗体A12);
g)配列番号183、188、および193ならびに配列番号198、203、および208(抗体B06);
n)配列番号393、398、および403ならびに配列番号408、413、および418(抗体E04);
s)配列番号543、548、および553ならびに配列番号558、563、および568(抗体D06);ならびに
t)配列番号573、578、および583ならびに配列番号588、593、および598(抗体E01)
から選択される配列を有するか、または
これらの選択されたCDR配列b)、d)、g)、n)、s)、およびt)とは各CDRにおける多くて2個の保存的アミノ酸置換により異なる配列を有する。一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントは、その選択されたCDRb)、d)、g)、n)、s)、またはt)と同一の配列を有する、3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRを含む。
【0025】
一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントのフレームワーク領域はヒト抗体フレームワーク領域である。
【0026】
一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントは全長二価単一特異性モノクローナル抗体である。一部の実施形態において、その抗体はヒトIgG1重鎖定常領域、ヒトIgG2重鎖定常領域、またはヒトIgG4重鎖定常領域を含む。一部の実施形態において、その抗体はヒトIgG1定常領域を含む。一部の実施形態において、その抗体Fc領域は、FcRγへの抗体結合を減少させ、かつ/または補体結合を減少させる、操作された変異を有する。
【0027】
一部の実施形態において、その抗原結合フラグメントはFabであり、必要に応じてそのFabはペグ化されている。
【0028】
一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントはさらにカニクイザルNBL1に結合可能である。一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントはさらにマウスNBL1に結合可能である。
【0029】
一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントは、100nM未満、10nM未満、5nM未満または1nM未満のヒトNBL1に対する結合親和性(K)を有する。
【0030】
別の局面において、医薬組成物が提供される。その組成物は、上記の抗NBL1抗体または抗原結合フラグメント、および薬学的に受容可能なキャリアを含む。一部の実施形態において、その組成物は非経口投与のために製剤化されている。一部の実施形態において、その組成物は静脈内投与のために製剤化されている。一部の実施形態において、その組成物は皮下投与のために製剤化されている。
【0031】
(4.図面のいくつかの図の簡単な説明)
本発明のこれらの特色(feature)、局面、および利点ならびに他の特色、局面、および利点は、以下の説明および添付の図面に関して、より良く理解されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1A図1Dは、ヒト腎細胞における細胞死分析を要約する棒グラフである。図1Aは、0.2μg/mlから2μg/mlまでの漸増用量の組換えヒトNBL1とともに培養したヒトポドサイト(HuPodo)に由来するデータを示す。図1Bは、2μg/mlの組換えヒトNBL1の存在下で培養したヒトメサンギウム細胞(HuMRC)に由来するデータを示す。図1Cは、2μg/mlの組換えヒトNBL1の存在下で培養したヒト腎尿細管細胞(HuK2)に由来するデータを示す。図1Dは、2μg/mlの組換えヒトNBL1の存在下で培養したコントロールのヒト臍帯静脈内皮細胞(Huvec)に由来するデータを示す。
【0033】
図2A-B】図2A図2Bは、2μg/mlのNBL1とともに培養したヒトポドサイト(図2A)または未処理のままにしたヒトポドサイト(図2B)に対して実施した、共焦点分析の代表的画像を示す。これらのポドサイトは、Apoptag(アポトーシスについてのマーカー)およびSynaptopodin(ポドサイトについてのマーカー)で染色した。図2Cは、ApoptagとSynaptopodinとについて二重陽性であるヒトポドサイト(SynApo)のパーセンテージを定量化する棒グラフである。この実験は、分化したヒトポドサイトのNBL1誘導性アポトーシスを示す(図2Bにおける矢印、図2Cにおいて定量化した)。
図2C】同上。
【0034】
図3図3は、未処理細胞と比較した場合の、2μg/mlのNBL1とともに培養したヒトポドサイトにおけるアポトーシス関連転写物レベルの変化を示す。
【0035】
図4図4は、ヒト免疫細胞および細胞株におけるNBL1 mRNAの発現を定量化する棒グラフである。mRNAレベルをβ-アクチンレベルに対して正規化した。
【0036】
図5A図5A図5Bは、フローサイトメトリー分析を使用して、T細胞および種々のT細胞セブセット(CD3T細胞、CD4T細胞およびCD8T細胞)ならびに骨髄系細胞(CD14)におけるNBL1タンパク質の高発現を示す。図5Aの左上のパネルは、単球(上のゲート)およびリンパ球(下のゲート)に対する物理的ゲーティングを示す。すべての分析は、健常なボランティアの血液サンプルから単離した末梢血単核球(PBMC)に対して実施した。図5C図5Dは、免疫組織化学によって種々のヒト組織におけるNBL1発現を調査するNBL1 Atlas研究の結果を示す。図5Cは、免疫組織化学技術によってNBL1の存在を示す種々の組織サンプルの画像を示す。図5Dは、腸組織および筋組織におけるNBL1タンパク質の高発現を示す棒グラフである。
図5B】同上。
図5C】同上。
図5D】同上。
【0037】
図6図6は、NBL1媒介性アポトーシスに対する可溶性BMP2の中和効果を示す。ヒトポドサイトは、NBL1(2μg/ml)の存在下、および可溶性BMP2(1μg/ml)の存在下/非存在下で、48時間培養した。
【0038】
図7図7A図7Bは、ELISAにより測定したNBL1血清レベルの上昇を示し、図7Aは、長期にわたる1型糖尿病を有する患者におけるレベル(T1D)、長期にわたる2型糖尿病を有する患者におけるレベル(T2D)、および非糖尿病対象におけるレベル(CTRL)を比較し、図7Bは、糖尿病関連腎臓病(DKD)のステージ2~3を有する患者におけるNBL1血清レベルを、DKDなしの患者と比較して示す。
【0039】
図8図8は、抗NBL1抗体(20μg/ml)または可溶性BMP2(1μg/ml)のいずれかの存在下および非存在下で、NBL1(2μg/ml)の存在下で培養したヒトポドサイトにおける細胞死を定量化する棒グラフである。最も左の棒は、培地単独中で、NBL1を含まず、抗体による処理もsBMPによる処理も行わずにインキュベートした細胞に由来するデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(5.発明の詳細な説明)
(5.1.定義)
別途に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0041】
用語「個体」と「対象」とは交換可能に使用され、用語「個体」および「対象」は、処置されるべき動物を指し、その動物としては、ヒト;非ヒト霊長類;齧歯類(ラットおよびマウスが挙げられる);ウシ;ウマ;ヒツジ;ネコ;ならびにイヌが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0042】
用語「患者」とはヒト対象を指す。
【0043】
用語「処置すること」、「処置」、およびそれらの文法上の変化形は、臨床分野において理解される最も広い意味で使用される。したがって、この用語は、疾患の治癒も完全寛解も必要とせず、なんらかの臨床的に望ましい薬理学的および/または生理学的効果を得ることを含む。本明細書において使用される場合、「糖尿病関連腎臓病(DKD)を処置すること」は、1型糖尿病もしくは2型糖尿病または糸球体障害を有する患者において腎損傷の発症を遅延させること、腎損傷に進行を遅延させること、および腎機能低下を遅くすることを明示的に含む。
【0044】
句「治療有効量」とは、疾患、状態、または障害を処置することのために哺乳動物対象もしくは他の対象に投与された場合に、処置が本明細書において定義されるように、その疾患、状態、または障害の処置をもたらすために十分な化合物の量を指す。その「治療有効量」を決定することは、当業者の範囲内にある。
【0045】
神経芽細胞腫腫瘍形成抑制因子1(NBL1)は、DAN(ディファレンシャルスクリーニングにより選択された、神経芽細胞腫において異常な遺伝子)遺伝子ファミリーの初期メンバーである。このDAN遺伝子ファミリーのメンバーは、発生中に発現され、骨形成タンパク質(BMP)アンタゴニストとして機能する。DANタンパク質は、BMPに結合し、そのBMPがBMPレセプターと相互作用することを防止する。神経芽細胞腫腫瘍形成抑制因子1(NBL1)(D1S1733E、DAN、DAND1、NB、およびNO3としても知られている)は、NCBI Gene ID:4681によって特定される。NCBI Gene ID:4681のタンパク質配列は、参照によって本明細書中に援用される。
【0046】
骨形成タンパク質(BMP)は、それが骨および軟骨の形成を誘導する能力によって元々は同定された一群の成長因子であり、現在は、身体全体にわたる組織構造を調整する、一群の中心的な形態形成シグナルを構成すると考えられている。ヒトBMP-2(BDA2、BMP2A、SSFSC、およびSSFSC1としても知られている)は、NCBI Gene ID:650によって特定される。NCBI Gene ID:650のタンパク質配列は、参照によって本明細書中に援用される。ヒトBMP-4(BMP2B、BMP2B1、MCOPS6、OFC11、およびZYMEとしても知られている)は、NCBI Gene ID:652によって特定される。NCBI Gene ID:652のタンパク質配列は、参照によって本明細書中に援用される。ヒトBMP-7(OP-1としても知られている)は、NCBI Gene ID:655によって特定される。NCBI Gene ID:655のタンパク質配列は、参照によって本明細書中に援用される。
【0047】
本明細書において使用される場合、用語「抗体」は、当該分野によって認識されるその最も広い意味を有し、したがって、すべての既知フォーマットを含む。この用語は、詳細には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体が挙げられる)、キメラ抗体、ヒト化抗体および完全ヒト抗体を含むが、それらに限定はされない。重鎖定常領域ドメインを含む抗体は、任意のクラス(IgG、IgE、IgM、IgD、およびIgAが挙げられる)ならびに任意のサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2が挙げられる)の抗体であり得る。抗体の「抗原結合フラグメント」は、由来する抗体の結合特徴(例えば、特異性、一価親和性または二価アビディティー)を保持する抗体フラグメント(および/または抗体フラグメントを含むポリペプチド)であり、当該分野によって認識されるその最も広い意味を有する。この用語は、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、scFv、(scFv)、シングルドメイン抗体(ラクダVHH形態およびサメVNAR形態が挙げられる)、ならびに抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体(F(ab)2、およびダイアボディが挙げられるが、それらに限定はされない)を含むが、それらに限定はされない。
【0048】
本明細書において使用される場合、「慢性腎臓病」(CKD)は、米国腎臓財団(National Kidney Foundation)KDOQIガイドラインにおいて帰せられている意味を有し、CKDのステージは、このNKF KDOQIガイドラインにおいて提示されているとおりに定義される。「末期腎不全(end stage kidney disease)」(ESKD)と「末期腎不全(end stage renal disease)」(ESRD)とは、本明細書において交換可能に使用され、米国腎臓財団KDOQIガイドラインにおいて帰せられている意味を有する。
【0049】
本開示において、「含む(comprise)」、「含むこと(comprising)」、「含むこと(containing)」、「有すること(having)」、「含む(挙げられる)(include)」、「含むこと(挙げられること)(including)」、およびそれらの言語の変化形は、米国特許法においてそれらに帰せられている意味を有し、明示的に記載されている成分の他に追加的成分の存在を許容する。
【0050】
具体的に記載されておらず文脈から明らかでもない限りは、本明細書において使用される場合、用語「または(もしくは、あるいは)(or)」は包括的であると理解される。
【0051】
具体的に記載されておらず文脈から明らかでもない限りは、本明細書において使用される場合、用語「ある(a)」、「ある(an)」、および「その(the)」は単数または複数であると理解される。
【0052】
本明細書において使用される場合、「保存的アミノ酸置換」は、元のかつ置換されたアミノ酸が類似の生化学的性質を有するか、または表45に示される置換の間でそれらの生化学的影響が同様に維持される、置換である。
【0053】
(5.2.実験結果の概要)
本開示における実験的実施例において詳述されるとおおり、本発明者らは、NBL1が腎細胞(ポドサイトおよび尿細管細胞を含む)に対して直接的に毒性であることを発見した。その毒性作用は、腎BMPタンパク質の阻害を通じては媒介されない。本発明者らは、BMPが、腎細胞中では発現されず腎細胞によって分泌されないことを示す。さらに、本発明者らは、NBL1もまた腎細胞中で発現されないが、循環免疫細胞中で発現されることを発見した。NBL1をアンタゴニストで中和すると、毒性を防止する。最後に、本発明者らは、NBL1が1型糖尿病および2型糖尿病において上昇することを示す。
【0054】
(5.3.腎損傷の発症または進行を遅延させる方法)
したがって、第一の局面において、1型糖尿病もしくは2型糖尿病を有する対象または1型糖尿病もしくは2型糖尿病のリスクがある対象あるいは糸球体疾患を有する対象または糸球体疾患を発症するリスクがある対象における、腎損傷の発症または進行を遅延させるための方法が、提示される。この方法は、NBL1活性を阻害可能な(詳細には、ヒトポドサイトのNBL1媒介性毒性を阻害可能な)薬剤の有効量をその対象に投与することを含む。
【0055】
種々の実施形態において、その方法は、腎血管、ポドサイト、腎尿細管細胞、または糸球体基底膜もしくは尿細管基底膜のうちの1つもしくは複数に対する損傷の発症または進行を遅延させる。一部の実施形態において、その方法は、糸球体基底膜および尿細管基底膜の肥厚、メサンギウム基質の増加、キンメルスティール・ウィルソン結節、微小動脈瘤、滲出性病変もしくは硝子変性病変、カプスラードロップまたは輸入細動脈硝子変性および輸出細動脈硝子変性の、発症または進行を遅延させる。
【0056】
一部の実施形態において、その対象は1型糖尿病を有する。一部の実施形態において、その対象は2型糖尿病を有する。一部の実施形態において、その対象は前糖尿病である。一部の実施形態において、その対象は、ヘモグロビンA1cレベルまたは血中ブドウ糖レベルによって測定された場合に前糖尿病ではないが、1型糖尿病または2型糖尿病のリスクがあり、上昇した血漿NBL1レベルを有する。
【0057】
一部の実施形態において、その対象は糸球体疾患を有する。特定の実施形態において、糸球体疾患を有するその対象は1型糖尿病も2型糖尿病も有しない。特定の実施形態において、その糸球体疾患は、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、慢性糸球体症、遺伝性腎炎、および微小変化群からなる群より選択される。
【0058】
一部の実施形態において、その対象は、1型糖尿病も2型糖尿病も前糖尿病も有しない正常対象よりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%高い処置前血漿NBL1レベルを有する。一部の実施形態において、その処置されるべき対象は、1型糖尿病も2型糖尿病も前糖尿病も有しない正常対象の少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍の高さの血漿NBL1レベルを有する。
【0059】
一部の実施形態において、その方法は、1型糖尿病もしくは2型糖尿病を有する対象におけるか、または前糖尿病である対象におけるか、あるいは1型糖尿病も2型糖尿病も前糖尿病も有しない正常対象と比較して上昇した血漿NBL1レベルを有する、1型糖尿病もしくは2型糖尿病のリスクがある対象における、循環遊離NBL1の利用可能性を効果的に減少させる。一部の実施形態において、その方法は、糸球体疾患を有する対象における、循環遊離NBL1の利用可能性を効果的に減少させる。特定の実施形態において、その方法は、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、慢性糸球体症、遺伝性腎炎、および微小変化群からなる群より選択される糸球体疾患を有する対象における、循環遊離NBL1の利用可能性を効果的に減少させる。
【0060】
一部の実施形態において、NBL1活性を阻害可能な薬剤はNBL1に結合可能である。一部の実施形態において、その結合はNBL1のN末端において生じる。一部の実施形態において、その結合はNBL1の機能的DANドメインにおいて生じる。一部の実施形態において、その結合はNBL1のC末端において生じる。一部の実施形態において、その結合は非共有である。一部の実施形態において、その結合は共有結合である。ある特定の共有結合の実施形態において、その阻害剤は、そのDANドメイン内のジスルフィド結合によってNBL1に結合する。
【0061】
一部の実施形態において、NBL1活性を阻害可能な薬剤は、NBL1の二量体形成を阻害可能である。
【0062】
一部の実施形態において、NBL1活性を阻害可能な薬剤は、2つのNBL1モノマー間における安定化水素結合の形成を防止する二量体形成阻害剤である。一部の実施形態において、その二量体形成阻害剤は、各モノマー内に環様構造(システインノットチーフとしても知られている)を形成する3つのジスルフィド結合のうちの少なくとも1つを破壊するか、またはF1とF2とを連結するジスルフィド結合(F1およびF2は、それぞれ、N末端から1番目のループであるフィンガー1、およびN末端から3番目のループであるフィンガー2である)を破壊する。
【0063】
(5.3.1.可溶性BMP阻害剤)
一部の実施形態において、NBL1活性を阻害可能な薬剤は、骨形成タンパク質(BMP)またはその可溶性NBL1結合フラグメントを含む。一部の実施形態において、そのBMPはBMP-2またはその可溶性NBL1結合フラグメントである。一部の実施形態において、そのBMPはBMP-4またはその可溶性NBL1結合フラグメントである。一部の実施形態において、そのBMPはBMP-7またはその可溶性NBL1結合フラグメントである。現在の好ましい実施形態において、そのBMPはヒトBMPまたはその可溶性NBL1結合フラグメントである。
【0064】
一部の実施形態において、NBL1を阻害可能な薬剤は、血清半減期を延長させる部分をさらに含む。
【0065】
一部の実施形態において、血清半減期を延長させる部分は、共有結合性化学的改変を通じて提供される。一部の実施形態において、血清半減期を延長させる部分は、少なくとも1つのポリエチレングリコール(PEG)部分である。一部の実施形態において、そのPEG部分は、その薬剤に永続的に結合されている。一部の実施形態において、そのPEG部分は、共有結合性化学的改変を通じて提供された遊離可能なキャリアである。特定の実施形態において、その薬剤は、ペグ化されたBMPまたはその可溶性NBL1結合フラグメントを含む。
【0066】
一部の実施形態において、血清半減期を延長させる部分は、抗体Fcドメインである。一部の実施形態において、そのFcドメインは、pH依存性IgG Fc-FcRn相互作用を最適化するように操作されている。特定の実施形態において、そのFcドメインは、YTE三重変異(M252Y/S254T/T256E)を有するように操作されている。特定の実施形態において、そのFcドメインは、M428L/N434S変異を有するように操作されている。特定の実施形態において、そのFcドメインは、BMPまたはその可溶性NBL1結合フラグメントにインフレームで融合されている。
【0067】
一部の実施形態において、血清半減期を延長させる部分は、血清アルブミン分子である。特定の実施形態において、血清半減期を延長させる部分は、BMPまたはその可溶性NBL1結合フラグメントにインフレームで融合された、ヒト血清アルブミン分子である。
【0068】
一部の実施形態において、血清半減期を延長させる部分は、Podustら、Protein Eng.Des.Sel.26(11):743~53(2013)(その開示は、その全体が参照により本明細書中に援用される)において記載されるとおり、薬剤に共有結合されたXTENタンパク質ポリマーである。
【0069】
(5.3.2.抗体およびその抗原結合フラグメント)
一部の実施形態において、NBL1活性を阻害可能な薬剤は、NBL1に結合可能で、NBL1活性を阻害可能で、詳細には、ヒトポドサイトのNBL1媒介性毒性を阻害可能な、抗体またはそのNBL1結合フラグメントである。好ましい実施形態において、その抗体または抗原結合抗体フラグメントは、ヒトNBL1に結合可能である。
【0070】
一部の実施形態において、その抗体またはその抗原結合フラグメントは、NBL1のN末端ドメイン内のエピトープに結合する。一部の実施形態において、その抗体またはその抗原結合フラグメントは、NBL1のDANドメイン内のエピトープに結合する。一部の実施形態において、その抗体またはその抗原結合フラグメントは、NBL1のC末端ドメイン内のエピトープに結合する。
【0071】
一部の実施形態において、その抗体またはその抗原結合フラグメントは、下記の表23~表44から選択される重鎖CDRおよび軽鎖CDR、または、それと比較して、10アミノ酸以下の欠失、挿入もしくは(表45において定義される)保存的アミノ酸置換を伴う、下記の表23~表44から選択される重鎖CDRおよび軽鎖CDRを含む。
【表45】
【0072】
一部の実施形態において、そのアミノ酸の欠失、挿入、または保存的置換は8個以下である。一部の実施形態において、そのアミノ酸の欠失、挿入、または保存的置換は6個以下である。一部の実施形態において、そのアミノ酸の欠失、挿入、または保存的置換は4個以下である。
【0073】
一部の実施形態において、その抗体またはその抗原結合フラグメントは、下記の表1~表22から選択される重鎖V領域および軽鎖V領域を含む。
【0074】
一部の実施形態において、その抗体またはその抗原結合フラグメントは、表23~表44から選択され、それと比較して、10アミノ酸以下の欠失、挿入、または(表45において定義される)保存的アミノ酸置換を伴う、重鎖CDRおよび軽鎖CDRを含む。一部の実施形態において、そのアミノ酸の欠失、挿入、または保存的置換は8個以下である。一部の実施形態において、そのアミノ酸の欠失、挿入、または保存的置換は6個以下である。一部の実施形態において、そのアミノ酸の欠失、挿入、または保存的置換は4個以下である。
【表A】
【表B】
【表C】
【表D】
【表E】
【表F】
【表G】
【表H】
【表I】
【表J】
【表K】
【表L】
【表M】
【表N】
【表O】
【表P】
【表Q】
【表R】
【表S】
【表T】
【表U】
【表V】
【0075】
一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントは、3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRを含み、この3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRは、
a)配列番号3、8、および13ならびに配列番号18、23、および28(抗体E05);
b)配列番号33、38、および43ならびに配列番号48、53、および58(抗体H08);
c)配列番号63、68、および73ならびに配列番号78、83、および88(抗体F06);
d)配列番号93、98、および103ならびに配列番号108、113、および118(抗体A12);
e)配列番号123、128、および133ならびに配列番号138、143、および148(抗体G01);
f)配列番号153、158、および163ならびに配列番号168、173、および178(抗体E11);
g)配列番号183、188、および193ならびに配列番号198、203、および208(抗体B06);
h)配列番号213、218、および223ならびに配列番号228、233、および238(抗体D12);
i)配列番号243、248、および253ならびに配列番号258、263、および268(抗体H01);
j)配列番号273、278、および283ならびに配列番号288、293、および298(抗体C11);
k)配列番号303、308、および313ならびに配列番号318、323、および328(抗体E05);
l)配列番号333、338、および343ならびに配列番号348、353、および358(抗体F10);
m)配列番号363、368、および373ならびに配列番号378、383、および388(抗体G10);
n)配列番号393、398、および403ならびに配列番号408、413、および418(抗体E04);
o)配列番号423、428、および433ならびに配列番号438、443、および448(抗体E07);
p)配列番号453、458、および463ならびに配列番号468、473、および478(抗体E12);
q)配列番号483、488、および493ならびに配列番号498、503、および508(抗体D08);
r)配列番号513、518、および523ならびに配列番号528、533、および538(抗体E10);
s)配列番号543、548、および553ならびに配列番号558、563、および568(抗体D06);ならびに
t)配列番号573、578、および583ならびに配列番号588、593、および598(抗体E01)
から選択される配列を有するか、または
これらの選択されたCDR配列(a)~(t)とは各CDRにおける多くて2個の保存的アミノ酸置換により異なる配列を有する。
【0076】
一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントは、その選択されたCDR(a)~(t)と同一の配列を有する、3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRを含む。一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントは、3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRを含み、その3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRは、各CDRにおける多くて2個の保存的アミノ酸置換によってかまたは各CDRにおける多くて1個の保存的アミノ酸置換によって、その選択されたCDR配列(a)~(t)とは異なる配列を有する。一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントは、3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRを含み、その3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRは、6個すべてのCDRにわたって合計6個の保存的アミノ酸変化、6個すべてのCDRにわたって合計5個の保存的アミノ酸置換、6個すべてのCDRにわたって合計4個の保存的アミノ酸置換、6個すべてのCDRにわたって合計3個の保存的アミノ酸置換、6個すべてのCDRにわたって合計2個の保存的アミノ酸置換、または6個すべてのCDRにわたって合計1個の保存的アミノ酸置換によって、その選択されたCDR配列(a)~(t)とは異なる配列を有する。
【0077】
一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントは、3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRを含み、その3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRは、
b)配列番号33、38、および43ならびに配列番号48、53、および58(抗体H08);
d)配列番号93、98、および103ならびに配列番号108、113、および118(抗体A12);
g)配列番号183、188、および193ならびに配列番号198、203、および208(抗体B06);
n)配列番号393、398、および403ならびに配列番号408、413、および418(抗体E04);
s)配列番号543、548、および553ならびに配列番号558、563、および568(抗体D06);ならびに
t)配列番号573、578、および583ならびに配列番号588、593、および598(抗体E01)
から選択される配列を有するか、または
これらの選択されたCDR配列b)、d)、g)、n)、s)、およびt)とは各CDRにおける多くて2個の保存的アミノ酸置換により異なる配列を有する。
【0078】
一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントは、その選択されたCDR(b)、(d)、(g)、(n)、(s)または(t)と同一の配列を有する、3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRを含む。一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントは、3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRを含み、その3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRは、各CDRにおける多くて2個の保存的アミノ酸置換によってかまたは各CDRにおける多くて1個の保存的アミノ酸置換によって、その選択されたCDR配列(b)、(d)、(g)、(n)、(s)もしくは(t)とは異なる配列を有する。一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントは、3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRを含み、その3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRは、6個すべてのCDRにわたって合計6個の保存的アミノ酸変化、6個すべてのCDRにわたって合計5個の保存的アミノ酸置換、6個すべてのCDRにわたって合計4個の保存的アミノ酸置換、6個すべてのCDRにわたって合計3個の保存的アミノ酸置換、6個すべてのCDRにわたって合計2個の保存的アミノ酸置換、または6個すべてのCDRにわたって合計1個の保存的アミノ酸置換によって、その選択されたCDR配列(b)、(d)、(g)、(n)、(s)もしくは(t)とは異なる配列を有する。
【0079】
一部の実施形態において、その抗体フレームワーク領域はヒト抗体フレームワーク領域である。一部の実施形態において、その抗体は全長二価単一特異性モノクローナル抗体である。一部の実施形態において、その抗体はヒトIgG1重鎖定常領域、ヒトIgG2重鎖定常領域、またはヒトIgG4重鎖定常領域を含む。一部の実施形態において、その抗体はヒトIgG1定常領域を含む。一部の実施形態において、その抗体Fc領域は、少なくともFcγレセプターへの抗体結合を減少させる、少なくとも1つの操作された変異を有する。一部の実施形態において、その変異はN297Aである。一部の実施形態において、その抗体Fc領域は、補体結合を減少させる、少なくとも1つの操作された変異を有する。一部の実施形態において、その変異はK322Aである。
【0080】
一部の実施形態において、その抗体はFabであり、必要に応じてそのFabはペグ化されている。
【0081】
一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントはさらにカニクイザルNBL1に結合可能である。一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントはさらにマウスNBL1に結合可能である。
【0082】
一部の実施形態において、その抗体はIgGモノクローナル抗体である。特定の実施形態において、その抗体はIgG1モノクローナル抗体またはIgG4モノクローナル抗体である。
【0083】
一部の実施形態において、その抗体はヒトモノクローナル抗体である。一部の実施形態において、その抗体はヒト化抗体である。一部の実施形態において、その抗体はキメラマウス-ヒト抗体である。一部の実施形態において、その薬剤は、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、scFv、Fd、またはダイアボディから選択される、NBL1結合抗原結合フラグメントを含む。
【0084】
一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントは100nM未満のヒトNBL1に対する結合親和性(K)を有する。一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントは10nM未満のヒトNBL1に対する結合親和性(K)を有する。一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントは5nM未満のヒトNBL1に対する結合親和性(K)を有する。一部の実施形態において、その抗体または抗原結合フラグメントは1nM未満のヒトNBL1に対する結合親和性(K)を有する。
特定の実施形態において、NBL1二量体形成阻害剤は抗体である。これらの実施形態の一部において、その抗体はモノクローナル抗体である。これらの実施形態の一部において、その抗体はポリクローナル抗体である。一部の実施形態において、その二量体形成阻害剤は、各NBL1モノマー由来の同義の(synonymous)β鎖のうちの少なくとも1本に結合する。
【0085】
(5.3.3.NBL1発現阻害剤)
一部の実施形態において、その薬剤はNBL1発現を阻害可能である。
【0086】
特定の実施形態において、その薬剤はNBL1遺伝子の転写を阻害する。特定の実施形態において、その薬剤はNBL1 mRNAの分解を引き起こす。特定の実施形態において、その薬剤はNBL1 mRNAの翻訳を阻害する。特定の実施形態において、その薬剤は、NBL1タンパク質を分解のための標的とする。
【0087】
特定の実施形態において、その薬剤はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。特定の実施形態において、その薬剤はRNA干渉を媒介する。特定のRNA干渉の実施形態において、その薬剤は、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)または低分子干渉RNA(siRNA)である。特定の実施形態において、その薬剤はマイクロRNA(miRNA)である。特定の実施形態において、その薬剤は配列特異的mRNAインターフェラーゼである。
【0088】
(5.4.腎機能低下を遅くする方法)
さらなる局面において、1型糖尿病もしくは2型糖尿病を有する対象または1型糖尿病もしくは2型糖尿病のリスクがある対象あるいは糸球体疾患を有する対象または糸球体疾患を発症するリスクがある対象における、腎機能低下を遅くするための方法が、提供される。この方法は、NBL1活性を阻害可能な薬剤の有効量をその対象に投与することを含む。種々の実施形態において、NBL1活性を阻害可能な薬剤は、上記の節5.3.1、5.3.2、または5.3.3に記載されている阻害剤である。
【0089】
一部の実施形態において、その方法は、微量アルブミン尿の進行を遅くするか、顕性アルブミン尿の進行を遅くするか、タンパク尿の進行を遅くするか、または糸球体濾過率(GFR)の減少を遅くする。
【0090】
一部の実施形態において、その方法は、進行性腎機能低下(PKFD)の発症を予防するか、または進行性腎機能低下(PKFD)を遅くする。一部の実施形態において、その薬剤は、PKFDに関連する少なくとも1つまたは複数の症状の進行を阻害する。一部の実施形態において、未処置コントロール群と比較したその対象の腎機能低下速度は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%減少される。
【0091】
一部の実施形態において、その方法は、末期腎不全(ESKD)の発症を予防するか、または末期腎不全(ESKD)への進行を遅くする。一部の実施形態において、その方法は、ESKDに関連する少なくとも1つまたは複数の症状の進行を阻害する。一部の実施形態において、その方法は、必要とされる透析への進行を阻害する。
【0092】
一部の実施形態において、その方法は、慢性腎臓病(CKD)のステージ1からステージ2へ、ステージ2からステージ3へ、ステージ3Aからステージ3Bへ、ステージ3Bからステージ4へ、ステージ4からステージ5への進行、または透析を伴わないステージ5から透析を伴うステージ5への進行を遅くする。
【0093】
一部の実施形態において、その対象は1型糖尿病を有する。一部の実施形態において、その対象は2型糖尿病を有する。一部の実施形態において、その対象は前糖尿病である。一部の実施形態において、その対象は、ヘモグロビンA1cレベルまたは血中ブドウ糖レベルによって測定された場合に前糖尿病ではないが、1型糖尿病または2型糖尿病のリスクがあり、上昇した血漿NBL1レベルを有する。一部の実施形態において、その対象は糸球体障害を有する。特定の実施形態において、その対象は糸球体障害を有し、1型糖尿病も2型糖尿病も有しない。特定の実施形態において、その糸球体障害は、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、慢性糸球体症、遺伝性腎炎、および微小変化群からなる群より選択される。
【0094】
一部の実施形態において、その方法は、1型糖尿病もしくは2型糖尿病を有する対象におけるか、または前糖尿病である対象におけるか、あるいは1型糖尿病も2型糖尿病も前糖尿病も有しない正常対象と比較して上昇した血漿NBL1レベルを有する、1型糖尿病もしくは2型糖尿病のリスクがある対象における、循環遊離NBL1の利用可能性を効果的に減少させる。一部の実施形態において、その方法は、糸球体疾患を有する対象における、循環遊離NBL1の利用可能性を効果的に減少させる。特定の実施形態において、その方法は、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、慢性糸球体症、遺伝性腎炎、および微小変化群からなる群より選択される糸球体疾患を有する対象における、循環遊離NBL1の利用可能性を効果的に減少させる。
【0095】
種々の実施形態において、その薬剤は、参照により本明細書中に援用される、上記の節5.3.1、5.3.2、または5.3.3に記載されている薬剤である。
【0096】
(5.5.糖尿病関連腎臓病または糸球体疾患を処置する方法)
さらなる局面において、1型糖尿病もしくは2型糖尿病を有する対象または糸球体疾患を有する対象における糖尿病関連腎臓病(DKD)を処置するための方法が、提示される。その方法は、NBL1活性を阻害可能な薬剤の有効量をその対象に投与することを含む。
【0097】
一部の実施形態において、その対象は、1型糖尿病または2型糖尿病を有し、糸球体肥大、糸球体硬化症、尿細管間質炎症(tubulointerstitial inflammation)、線維症、糸球体過剰濾過、進行性アルブミン尿、GFR低下、およびESKDのうちの1つまたは複数を有する。
【0098】
一部の実施形態において、その対象は糸球体疾患を有する。特定の実施形態において、その対象は、糸球体疾患を有し、1型糖尿病も2型糖尿病も有しない。特定の実施形態において、その糸球体障害は、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、慢性糸球体症、遺伝性腎炎、および微小変化群からなる群より選択される。
【0099】
種々の実施形態において、その薬剤は、参照により本明細書中に援用される、上記の節5.3.1、5.3.2、または5.3.3に記載されている薬剤である。
【0100】
(5.6.投与レジメン)
本明細書において記載される方法の一部の実施形態において、その薬剤は非経口投与される。特定の実施形態において、その薬剤は静脈内投与される。特定の実施形態において、その対象は透析中であり、その薬剤は静脈内投与される。特定の実施形態において、その薬剤は皮下投与される。
【0101】
一部の実施形態において、その薬剤は1回投与される。一部の実施形態において、その薬剤は1回よりも多く投与される。特定の実施形態において、その薬剤は少なくとも3か月間投与される。特定の実施形態において、その薬剤は少なくとも6か月間投与される。特定の実施形態において、その薬剤は少なくとも12か月間投与される。
【0102】
(5.7.抗体およびその医薬製剤)
別の局面において、NBL1に結合可能であり、ヒトポドサイトのNBL1誘発毒性を阻害可能である、抗体または抗原結合フラグメントが提供される。実施形態は、参照により本明細書中に援用される、上記の節5.3.2に記載されているすべての抗体および抗原結合フラグメントの実施形態を含む。
【0103】
さらなる局面において、医薬組成物が提供される。その医薬組成物は、本明細書において記載されている抗体または抗原結合フラグメント、および薬学的に受容可能なキャリアを含む。一部の実施形態において、その組成物は非経口投与のために製剤化されている。一部の実施形態において、その組成物は静脈内投与のために製剤化されている。一部の実施形態において、その組成物は皮下投与のために製剤化されている。
【0104】
(5.8.さらなる実施形態)
さらなる実施形態が、以下の番号の条項において示される。
1.1型糖尿病もしくは2型糖尿病または糸球体疾患を有する対象における腎損傷の発症または進行を遅延させるための方法であって、
NBL1活性を阻害可能な薬剤の有効量をその対象に投与すること
を含む、方法。
2.その薬剤がNBL1に結合可能である、条項1に記載の方法。
3.その薬剤が骨形成タンパク質(BMP)またはその可溶性フラグメントを含む、条項2に記載の方法。
4.その薬剤がヒトBMP-2の可溶性フラグメントを含む、条項3に記載の方法。
5.その薬剤が、血清半減期を延長させる部分をさらに含む、条項3または条項4に記載の方法。
6.その半減期延長部分が抗体Fcドメインである、条項5に記載の方法。
7.その半減期延長部分が、少なくとも1つの共有結合されたポリエチレングリコール(PEG)部分である、条項5に記載の方法。
8.その薬剤が抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、条項2に記載の方法。
9.その薬剤がNBL1の二量体形成を阻害可能である、条項2に記載の方法。
10.その薬剤がNBL1発現を阻害可能である、条項1に記載の方法。
11.その対象が1型糖尿病を有する、条項1~10のいずれか一条項に記載の方法。
12.その対象が2型糖尿病を有する、条項1~10のいずれか一条項に記載の方法。
13.その対象が糸球体疾患を有する、条項1~10のいずれか一条項に記載の方法。
14.糸球体疾患を有するその対象が1型糖尿病も2型糖尿病も有しない、条項13に記載の方法。
15.その糸球体疾患が、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、慢性糸球体症、遺伝性腎炎、および微小変化群からなる群より選択される、条項13または条項14に記載の方法。
16.その糸球体疾患が巣状分節性糸球体硬化症である、条項15に記載の方法。
17.その糸球体疾患が慢性糸球体症である、条項15に記載の方法。
18.その糸球体疾患が遺伝性腎炎である、条項15に記載の方法。
19.その糸球体疾患が微小変化群である、条項15に記載の方法。
20.腎機能低下の発症を予防するかまたは腎機能低下を遅くする、条項1~19のいずれか一条項に記載の方法。
21.1型糖尿病もしくは2型糖尿病または糸球体疾患を有する対象における腎機能低下を遅くする方法であって、
NBL1活性を阻害可能な薬剤の有効量をその対象に投与すること
を含む、方法。
22.進行性腎機能低下(PKFD)の発症を予防するかまたは進行性腎機能低下(PKFD)を遅くする、条項21に記載の方法。
23.末期腎不全(ESKD)の発症を予防するかまたは末期腎不全(ESKD)への進行を遅くする、条項21に記載の方法。
24.その薬剤がNBL1に結合可能である、条項21~23のいずれか一条項に記載の方法。
25.その薬剤が骨形成タンパク質(BMP)またはその可溶性フラグメントを含む、条項24に記載の方法。
26.その薬剤がヒトBMP-2の可溶性フラグメントを含む、条項25に記載の方法。
27.その薬剤が、血清半減期を延長させる部分をさらに含む、条項25または条項26に記載の方法。
28.その半減期延長部分が抗体Fcドメインである、条項27に記載の方法。
29.その半減期延長部分が、少なくとも1つの共有結合されたポリエチレングリコール(PEG)部分である、条項27に記載の方法。
30.その薬剤が抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、条項24に記載の方法。
31.その薬剤がNBL1の二量体形成を阻害可能である、条項24に記載の方法。
32.その薬剤がNBL1発現を阻害可能である、条項21~23のいずれか一条項に記載の方法。
33.その対象が1型糖尿病を有する、条項21~32のいずれか一条項に記載の方法。
34.その対象が2型糖尿病を有する、条項21~32のいずれか一条項に記載の方法。
35.その対象が糸球体疾患を有する、条項21~32のいずれか一条項に記載の方法。
36.糸球体疾患を有するその対象が1型糖尿病も2型糖尿病も有しない、条項35に記載の方法。
37.その糸球体疾患が、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS),慢性糸球体症,遺伝性腎炎,微小変化群からなる群より選択される、条項35または条項36に記載の方法。
38.その糸球体疾患が巣状分節性糸球体硬化症である、条項37に記載の方法。
39.その糸球体疾患が慢性糸球体症である、条項37に記載の方法。
40.その糸球体疾患が遺伝性腎炎である、条項37に記載の方法。
41.その糸球体疾患が微小変化群である、条項37に記載の方法。
42.1型糖尿病もしくは2型糖尿病または糸球体疾患を有する対象における糖尿病関連腎臓病(DKD)または糸球体疾患を処置する方法であって、
NBL1活性を阻害可能な薬剤の有効量をその対象に投与すること
を含む、方法。
43.その薬剤がNBL1に結合可能である、条項42に記載の方法。
44.その薬剤が骨形成タンパク質(BMP)またはその可溶性フラグメントを含む、条項43に記載の方法。
45.その薬剤がヒトBMP-2の可溶性フラグメントを含む、条項44に記載の方法。
46.その薬剤が、血清半減期を延長させる部分をさらに含む、条項44または条項45に記載の方法。
47.その半減期延長部分が抗体Fcドメインである、条項46に記載の方法。
48.その半減期延長部分が、少なくとも1つの共有結合されたポリエチレングリコール(PEG)部分である、条項46に記載の方法。
49.その薬剤が抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、条項43に記載の方法。
50.その薬剤がNBL1の二量体形成を阻害可能である、条項43に記載の方法。
51.その薬剤がNBL1発現を阻害可能である、条項42に記載の方法。
52.その対象が1型糖尿病を有する、条項42~51のいずれか一条項に記載の方法。
53.その対象が2型糖尿病を有する、条項42~51のいずれか一条項に記載の方法。
54.その対象が糸球体疾患を有する、条項42~51のいずれか一条項に記載の方法。
55.糸球体疾患を有するその対象が1型糖尿病も2型糖尿病も有しない、条項54に記載の方法。
56.その糸球体疾患が、巣状分節性糸球体硬化症,慢性糸球体症,遺伝性腎炎,微小変化群からなる群より選択される、条項54または条項55に記載の方法。
57.その糸球体疾患が巣状分節性糸球体硬化症である、条項56に記載の方法。
58.その糸球体疾患が慢性糸球体症である、条項56に記載の方法。
59.その糸球体疾患が遺伝性腎炎である、条項56に記載の方法。
60.その糸球体疾患が微小変化群である、条項56に記載の方法。
61.その薬剤が非経口投与される、条項1~60のいずれか一条項に記載の方法。
62.その薬剤が少なくとも3か月間投与される、条項1~61のいずれか一条項に記載の方法。
63.その薬剤が少なくとも6か月間投与される、条項62に記載の方法。
64.その薬剤が少なくとも12か月間投与される、条項63に記載の方法。
【実施例
【0105】
(6.実施例)
本開示を実行するための具体的な実施形態の例が、以下にある。これらの実施例は、例示目的のためだけに提供され、本開示の範囲をいかなる様式でも限定することは意図されない。使用される数(例えば、量、温度など)に関して精度を保証するための努力を行ったが、当然、いくらかの実験誤差および偏差が許容されるべきである。
【0106】
本開示の実施は、別途示されない限りは、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術、および薬理学の従来の方法を使用する。そのような技術は、本明細書において十分に説明されている。
【0107】
(6.1.実施例1.NBL1はポドサイトおよび腎尿細管細胞に対して直接的に毒性である)
上昇したDANタンパク質(Grem1、Grem2、Grem3、Cerberus,NBL1、SOST、およびUSG1)レベルは、成体腎臓における重篤な疾患状態と関連付けられている。Wenら、Biochimie、160:113~121(2019)。
【0108】
DANタンパク質の存在の増加が腎損傷に対して因果効果を有するかどうかを評価するために、本発明者らは、ヒトポドサイト(HuPodo)、ヒトメサンギウム細胞(HuHMRC)、およびヒト腎尿細管細胞(HuK2)を、ヒトNBL1の存在下または非存在下で、インビトロで48時間培養した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(Huvec)をコントロールとして使用した。ポドサイトを、NBL1(0.2μg/ml、1.0μg/ml、および2.0μg/ml)の濃度を増加させながら培養した。メサンギウム細胞および尿細管細胞を2μg/mlのNBL1中で培養した。ヒト臍帯静脈内皮細胞を0.2μg/ml、2μg/ml、および10μg/mlというNBL1の濃度を増加させながら培養した。
【0109】
図1A図1Dは、簡便性のために任意単位(AU)を使用して定量化した、細胞死分析データを要約する棒グラフである。それらの結果は、ヒトポドサイトのアポトーシス/死の増加を示し、メサンギウム細胞および尿細管細胞のアポトーシス/死の増加をより少ない程度に示し、これらのアポトーシス/死の増加は、培養培地に添加したNBL1の存在に直接的に相関した。細胞死は、NBL1で培養したヒト臍帯静脈内皮細胞(Huvec)においては、より高濃度であってさえも検出不能であった。
【0110】
図2A図2Bは、未処理のままにしたヒトポドサイト(図2A)または2μg/mlのNBL1とともに培養したヒトポドサイト(図2B)に対して実施した、共焦点分析の代表的画像を示し、これらは、SynaptopodinおよびApoptagで染色した。統合した画像を提示する。これらの顕微鏡写真は、ヒトポドサイトのNBL1誘導性アポトーシスの証拠を示す。矢印は、ApoptagおよびSynaptopodinの共局在を強調し、これらのApoptagおよびSynaptopodinはそれぞれアポトーシスについてのマーカーおよびポドサイトについてのマーカーである。この画像は、大部分のポドサイトがアポトーシスを起こしていることを強調する。図2Cは、NBL1の存在下/非存在下でのApoptagSynaptopodyn二重陽性ヒトポドサイトのパーセンテージを定量化する棒グラフ(n=3)である。この結果は、NBL1の存在下でのアポトーシス性分化したヒトポドサイトのレベル上昇を示す。
【0111】
図3は、2μg/mlのNBL1とともに培養したヒトポドサイトまたは未処理のままにしたヒトポドサイトのアポトーシス関連遺伝子のトランスクリプトーム解析を示す。このデータは、インビトロでNBL-1に曝露した際のアポトーシス関連遺伝子発現の有意な増加を示す。
【0112】
まとめると、これらの実験は、NBL1がポドサイトおよび腎尿細管細胞に対して直接的に毒性であり、NBL1への曝露はヒトポドサイトおよびヒト腎尿細管細胞のアポトーシスを引き起こすことを、示す。
【0113】
(6.2.実施例2.BMPタンパク質はインビトロで腎細胞中で発現されず腎細胞により分泌されない)
他のDANタンパク質と同様に、NBL1は骨形成タンパク質と相互作用することが知られている。Hungら、Biol.of Reprod.(2012)86(5):158、1~9。
【0114】
NBL1が腎臓内のBMPの阻害を通じてその毒性を発揮するかどうかを決定するために、本発明者らは、BMP2、BMP4およびBMP7がヒトポドサイト中でmRNAとして発現されたかどうかを分析した。本発明者らは、それらのBMPのうちのいずれかのいかなるmRNA発現も検出しなかった。次に、本発明者らは、BMP2、BMP4またはBMP7がポドサイトから上清中に分泌され、それにより自己分泌/傍分泌生存促進効果を可能にするかどうかを、評価した。本発明者らは、ヒトポドサイトの上清中のそれらのBMPのうちのいずれも検出せず、これにより、ポドサイトがインビトロでBMPを合成および分泌することが可能ではないことを確認した(データは示さない)。
【0115】
したがって、ポドサイトに対するNBL1の毒性はBMPの存在とは無関係である。NBL1のアポトーシス促進効果は、BMPの阻害によって媒介されない。
【0116】
(6.3.実施例3.NBL1は腎細胞中で発現されないが、循環免疫細胞、腸組織および筋組織中で発現される)
NBL1がポドサイトおよび腎尿細管細胞に対して直接的に毒性であることを決定したので、本発明者らは、RT-PCRを使用して発現をβアクチン発現に対して正規化して、多くのヒト細胞株(腎細胞株が挙げられる)中でのNBL1のmRNA発現を測定することによって、NBL1の生理学的起源を探索した。図4は、NBL1が腎臓由来細胞中で検出不能であったことを示す。NBL1は他の種々の細胞株においても検出不能であった。しかし、NBL1は、免疫細胞、例えば、CD14単球ならびにCD4T細胞およびCD8T細胞中で高度に発現された(図4を参照のこと)。
【0117】
健常なボランティアの血液サンプルから単離した末梢血単核球(PBMC)のフローサイトメトリーを使用するさらなる分析は、骨髄系(CD14)細胞ならびに種々のT細胞セブセット(CD3T細胞、CD4T細胞およびCD8T細胞)におけるNBL1タンパク質の高発現を確認した(図5A~5Bを参照のこと)。ヒトPBMCを、ミラノ(イタリア)のASST Sacco-FBFにて非糖尿病対象(n=5)から収集した8ml血液サンプルから、Lymphoprep(07801、Stem Cell Technologies、Cambridge、MA)を使用することにより精製し、その後、Biolegend(San Diego、CA)およびBD Biosciences(San Jose、CA)から入手した抗ヒトCD3(300330)、抗CD45(560178)、抗CD4(561030)、抗CD8(560774)、抗CD14(561707)を用いてフローサイトメトリー分析のために細胞を染色して、表面発現を定量化した。ウサギポリクローナル抗NBL1(Sigma、HPA007394)を使用し、その後にロバ抗ウサギAlexaFluor488抗体(ThermoFisher Scientific)を使用して、NBL1について染色した。BD FACS Celesta(BD Biosciences)を使用して、細胞を分析した。
【0118】
NBL1の発現をさらに探求するために、NBL1ヒト組織発現の網羅的免疫染色研究を実施した。この研究において、NBL1発現を、ヒト組織検体に対する免疫組織化学およびフローサイトメトリーによって検出した。NBL1免疫反応性を、目的の領域1つ当たりの総細胞中のNBL1陽性細胞のパーセンテージに基づいて半定量的にスコア付けした。そのスコア付けは以下のとおりであった:<10%、1+;10%~30%、2+;30%~50%、3+;50%~80%、4+、および>80%、5+。Pathology Unit(University of Parma)から入手した非糖尿病対象のホルマリン固定パラフィン包埋組織サンプルアーカイブを、NBL1免疫染色(抗NBL1一次抗体#HPA007394、Merck)のために使用した。各パネルのさらなる拡大図を右上の黒い四角の挿入図中に示しており、黒い矢印は陽性染色を強調している。元の倍率は20倍であり、スケールバーは100μmである(図5Cを参照のこと)。
【0119】
半定量的スコアを、以下のとおりの二重陽性細胞のパーセンテージの定量化に基づいて、T細胞(CD3NBL1)、B細胞(CD19NBL1)および単球(CD14NBL1)において検出されたNBL1発現にも適用した:<15%、1+;15%~45%、2+;45%~75%、3+;75%~90%、4+、および>90%、5+(図5Aを参照のこと)。
【0120】
ヒト細胞におけるNBL1タンパク質発現を示す半定量的スコアを、図5Dに提示する棒グラフにおいて示す。細胞組織化学について、n=3の別々のスライドにおいて算出したスコアの平均値を示す。フローサイトメトリーに関し、T細胞、B細胞および単球を示すスコアは、分析したn=5のサンプルにおいて得られた平均値を示す。(図5Dを参照のこと)。
【0121】
この研究の結果は、NBL1(これは腎臓中で発現されない)が、循環免疫細胞(特に、T細胞および単球)中、種々の腸組織および筋肉中で発現され、生殖組織、骨および骨髄中でより少なく発現されることを、示す。
【0122】
(6.4.実施例4.NBL1をアンタゴニストで中和すると、毒性を防止する)
NBL1がポドサイトおよび腎尿細管細胞に対して毒性であること、この毒性が直接媒介されること、ならびにNBL1が腎細胞中で局所的には産生されないが、その代わりに循環免疫細胞および他の非腎組織中で発現されることが示されたので、本発明者らは、NBL1が、腎細胞を損傷から保護するための直接的治療介入のために適切な標的であり得るかどうかを試験した。
【0123】
ヒトポドサイトを、NBL1(2μg/ml)の存在下で、1:1の比の可溶性BMP2の存在下または非存在下(NBL1:sBMP2=1:1)で、48時間培養した。細胞死をELISAによって検出した。可溶性BMP2とのインキュベーションは、NBL1の存在下で培養したヒトポドサイトが経験する細胞死効果を有意に減少させた。このことは、可溶性BMP2が、インビトロでヒトポドサイトに対するNBL1のアポトーシス促進効果を部分的に中和可能であることを示す。上記の実験についての結果を図6に示す。3つの独立した実験を二連で行った。データは平均±SEMとして示す。市販の抗NBL1ツール(tool)抗体(Sigma)は、より小さい効果を示した(データは示さない)。
【0124】
(6.5.実施例5.ヒト抗NBL1抗体発見作戦)
ナイーブヒトファージディスプレイライブラリーをパニングして、ヒトNBL1(UniProt ID P41271)に結合可能なFabを発見し、マウスNBL1(UniProt ID Q61477)および/またはカニクイザル(「cyno」)NBL1(UniProt ID A0A2K5WIY3)に対して潜在的種間交差反応性についてさらにスクリーニングした。上位25種のFabを発現ベクター中にクローニングし、全長ヒトIgG1抗体として発現させた。それらのIgG1フォーマット抗体の抗原結合をELISAによって試験し、EC50値を評価した。二十(20)種のIgG1抗体が、ELISAにおいてヒトNBL1、マウスNBL1、およびカニクイザル(cyno)NBL1に10ng/mLと100ng/mLとの間(約0pM~約600pM)のEC50で結合することが示された。
【0125】
上記の節5.3.2に示されている表は、これらの20種のIgG1抗体のVH配列およびVL配列を提示し、CDR配列を別に提示する。
【0126】
(6.6.実施例6.モノクローナル抗NBL1抗体はインビトロでヒトポドサイトのNBL1媒介性アポトーシスをレスキューする)
NBL1がポドサイトおよび腎尿細管細胞に対して直接的に毒性であること、ならびにその毒性がsBMP2(これはNBL1に特異的に結合可能である)を使用して防止され得ることが示されたので、本発明者らは、NBL1の存在下で培養したヒトポドサイトが経験する細胞死効果に対するモノクローナル抗NBL1抗体の効果を評価することを決めた。実施例6において作製したモノクローナル抗体のうち、本発明者らは、16種の抗体を試験し、インビボで培養したヒトポドサイトにおいてそれらが細胞死およびアポトーシスを防止する能力を評価した。
【0127】
ヒトポドサイトを、10%のFBSを補充しITS(1倍)を補充したRPMI中で培養した。ヒトNBL1組換えタンパク質をGenscript(Piscataway、NJ)から入手した。ファージディスプレイされたNBL1結合FabをヒトIgG1フォーマットにクローニングすることによって得たヒトモノクローナルNBL1抗体(上記実施例6)を、濃度20μg/mlにて試験した。
【0128】
それらのヒトポドサイトを、1:1の比(モノクローナル抗体(mAb):NBL1)のヒトNBL1(2μg/ml)の存在下/非存在下および本発明者らが作製した抗NBL1モノクローナル抗体(mAb)(20μg/ml)の存在下/非存在下で、48時間培養した。細胞溶解物を培養48時間で収集し、細胞死/アポトーシスを、ELISA(Roche Diagnostics GmbH、11544675001、Mannheim、Germany)を使用することにより評価した。細胞死の定量化を、未処理細胞に対して正規化した。
【0129】
本発明者らは、これらの新規に作製したモノクローナル抗体(mAb)の存在下でのインキュベーション後に、それらのモノクローナル抗体(mAb)のうちの多くがNBL1誘導性細胞死を種々の程度に防止/低減可能である(p<0.0001)ことを観察した。最も重要なことに、それらの16種のモノクローナル抗体(mAb)のうちの6種(YU1018-H08、YU1019-B06、YU1018-E01、YU1018-E04、YU1019-A12、YU1018-D06)は、NBL1で培養したヒトポドサイトが経験する細胞死効果を、ネガティブコントロール(最も左の棒、「培地」)のレベルまたはそれよりも低いレベルにまで低減可能であった。このことは、これらのモノクローナル抗体(mAb)がヒトポドサイトに対するNBL1のアポトーシス促進効果をインビトロで完全に中和可能であることを示し、これは、試験した抗体において、これらの抗体が、上昇した循環NBL1レベルを有する対象(T1Dを有するヒト対象およびT2Dを有するヒト対象が挙げられる)における糸球体疾患/腎臓病の進行を最も強力に低減可能であることをさらに示す。結果を図8に示す。
【0130】
同じ実験において、本発明者らは、可溶性BMP2(1μg/ml、1:1のBMP2:NBL1比)がNBL1の効果を中和する能力を試験した。図8に示すとおり、モノクローナル抗体(mAb)H08、B06、およびE01は、ヒトポドサイトに対するNBL1媒介性アポトーシス効果の減少がsBMP2よりも有意に強かった。このことは、ポドサイトをNBL1媒介性の毒性および損傷から保護することにおける抗NBL1抗体の有益な有効性を強調する。
【0131】
(6.7.実施例7.NBL1は1型糖尿病および2型糖尿病において上昇する)
NBL1が糖尿病における腎損傷に関与するかどうかを決定するために、NBL1血清レベルを、免疫標的化(immunotargeted)アッセイを使用して評価した。NBL1血清レベルを、長期にわたる1型糖尿病を有する患者(T1D、n=150)において測定し、非糖尿病対象(n=15)の血清において観察されたNBL1血清レベルと比較した。長期にわたる1型糖尿病を有する患者のNBL1血清レベルは、NBL1の有意な上昇を示した。非糖尿病対象におけるレベルに対する2型糖尿病を有する患者(T2D、n=70)におけるNBL1血清レベルの並行比較もまた、NBL1の有意な上昇を示した。結果を図7Aに示す。
【0132】
その後、T1DまたはT2Dを有し、糖尿病関連腎臓病(DKD)の診断も受けた患者を選択し、本発明者らは彼らのNBL1血清レベルを分析した。その分析は、ステージ2~3の慢性腎臓病(CKD)を有する患者(eGFR<60ml/min/m、n=60)が、非糖尿病対象と比較して3倍に上昇したNBL1血清レベルを有し、CKDなしの糖尿病患者と比較して2倍に上昇したNBL1血清レベルを有することを実証した(図7Bを参照のこと)。
【0133】
したがって、NBL1の阻害は、1型糖尿病または2型糖尿病を有する患者における腎損傷の発症および進行を予防するための新規な治療アプローチである。NBL1の阻害はまた、NBL1によって損傷が媒介される非糖尿病性糸球体疾患を処置することにおいて有効である。
【0134】
(7.等価物、および参照による援用)
本発明は好ましい実施形態および種々の選択的実施形態に関して特に示され記載されてきたが、形式および詳細の種々の変更が、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくそれらの実施形態において行われ得ることが、当業者によって理解される。
【0135】
本明細書内で引用されたすべての参考文献、発行された特許、および特許出願は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書により援用される。
図1
図2A-B】
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
【国際調査報告】