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特表2024-529512バッテリを加熱するための方法及びバッテリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】バッテリを加熱するための方法及びバッテリ
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/637 20140101AFI20240730BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240730BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240730BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20240730BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240730BHJP
【FI】
H01M10/637
H01M10/48 P
H01M10/615
H01M10/647
H01M10/625
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505522
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 EP2022070681
(87)【国際公開番号】W WO2023011949
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】102021004055.4
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス・ルバチェク
(72)【発明者】
【氏名】ハンゼン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】アンセルム・ミュールベルガー
【テーマコード(参考)】
5H030
5H031
【Fターム(参考)】
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
5H031AA09
(57)【要約】
本発明は、バッテリ個別セル(2.1~2.n)から構成されているバッテリ(1)を加熱するための方法に関し、バッテリ個別セル(2.1~2.n)の極(5、6)間には、半導体スイッチング素子((r)、(p)、(m)、(bp)、(bm))が配置されている。本発明は、バッテリ個別セル(2.1~2.n)が加熱のために半導体スイッチング素子((r)、(p)、(m)、(bp)、(bm))を介して短絡され、バッテリ個別セル(2.1~2.n)が短絡されている時間フェーズと、バッテリ個別セル(2.1~2.n)が短絡されていない時間フェーズとが交互に現れることを特徴とする。更に、本方法を実行するためのバッテリ(1)も示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ個別セル(2.1~2.n)から構成されているバッテリ(1)を加熱するための方法であって、前記バッテリ個別セル(2.1~2.n)の極(5、6)間には、半導体スイッチング素子((r)、(p)、(m)、(bp)、(bm))が配置されており、前記バッテリ個別セル(2.1~2.n)は、加熱のために、前記半導体スイッチング素子((r)、(p)、(m)、(bp)、(bm))を介して短絡されるものであり、前記バッテリ個別セル(2.1~2.n)が短絡されている時間フェーズと、前記バッテリ個別セル(2.1~2.n)が短絡されていない時間フェーズとが交互に現れる、前記方法において、
前記バッテリ個別セル(2.1~2.n)が短絡されている時間フェーズは、100ミリ秒までであり、前記バッテリ個別セル(2.1~2.n)が短絡されていない時間フェーズは、1~20秒の範囲であることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記バッテリ個別セルが短絡されていない時間フェーズは、5~15秒の範囲であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記バッテリ個別セル(2.1~2.n)が短絡されていない時間フェーズは、1番目の緩和時間のセクションと、それに続く2番目の充電時間のセクションとから成り、前記充電時間のセクションは、前記緩和時間のセクションより長く続くことを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
それぞれの前記半導体スイッチング素子((r)、(p)、(m)、(bp)、(bm))の電気抵抗は、前記半導体スイッチング素子にそれぞれ対応付けられている前記バッテリ個別セル(2.1~2.n)の内部抵抗よりも低くなるように選択されることを特徴とする、請求項1、2又は3記載の方法。
【請求項5】
少なくとも部分的に電気的に駆動される車両のためのトラクションバッテリとしてのバッテリ(1)であって、前記バッテリ(1)のバッテリ個別セル(2.1~2.n)の相互結線と、請求項1から4のいずれか一項記載の方法を実施するように設計されている制御部とを備え、前記バッテリ個別セル(2.1~2.n)のそれぞれには、3つの半導体スイッチング素子((r)、(p)、(m))が対応付けられており、前記3つの半導体スイッチング素子((r)、(p)、(m))は、極(5、6)を、選択的に又は共通して、隣接するバッテリ個別セル(2.1~2.n)の正のバスライン(3)、負のバスライン(4)又はそれぞれの別の極(6、5)に接続することができる、前記バッテリ(1)において、
前記半導体スイッチング素子((r)、(p)、(m)、(bp)、(bm))は、可撓性の導体フィルム(7)上に形成されていることを特徴とする、前記バッテリ(1)。
【請求項6】
前記正のバスライン(3)及び前記負のバスライン(4)には、それぞれの前記バッテリ個別セル(2.1~2.n)の前記半導体スイッチング素子((p)、(m))との接続部間において、それぞれ1つの別の半導体スイッチング素子((bp)、(bm))が配置されていることを特徴とする、請求項5記載のバッテリ(1)。
【請求項7】
前記バッテリ個別セル(2.1~2.n)は、相互に対向する側縁に配置されている電気的な極(5、6)を備えた角柱状のセルとして形成されており、隣接するバッテリ個別セル(2.1~2.n)の前記電気的な極(5、6)は、前記可撓性のフィルム(7)を介して接続されていることを特徴とする、請求項5又は6記載のバッテリ(1)。
【請求項8】
前記バッテリ個別セル(2.1~2.n)は、可撓性の導体フィルム(7)を介在させて積層化されていることを特徴とする、請求項7記載のバッテリ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に詳細に定義されているような、バッテリ個別セルから構成されているバッテリを加熱するための方法に関する。更に本発明は、上記方法を実施するために設計されているトラクションバッテリとして構成されているバッテリに関する。
【背景技術】
【0002】
今日では、少なくとも部分的に電気的に駆動される自動車においてバッテリが使用されることが多くなっている。大抵の場合、バッテリは多数のバッテリ個別セルから構成されており、例えばバッテリは、リチウムイオン技術によるバッテリ個別セルとして実現されている。その種のバッテリでは、良好に機能するために、ある程度の動作温度が必要になる。従って、その動作温度を著しく下回る非常に低い温度、例えば氷点を著しく下回る温度では、バッテリ個別セルの完全な性能を保証するために、それらバッテリ個別セルを加熱することが必要になる。現行の構造では、電気的なヒータが使用されており、そのようなヒータは、例えば、特許文献1に記載されている。そこでは、バッテリ個別セル間に加熱マットが挿入され、バッテリが電気的に加熱される。その場合、熱はバッテリのハウジングを介して、バッテリ内部に到達しなければならないので、全体として、このことは、バッテリを加熱するのに非常に多くの労力、時間、エネルギを要する。
【0003】
この種のバッテリに関する別の従来技術からは、例えばいわゆるセルバランシング、即ち、必要に応じて異なる強さで充電又は放電されるバッテリ個別セル間の充電均等化を行うために、相応のスイッチ、特に半導体スイッチを介してバッテリ個別セルを相互に接続することも公知である。この関係においては、例えば、特許文献2を参照することができ、又は同種の主題を有する特許文献3も参照することができる。
【0004】
特許文献4からは、バッテリ個別セルが時限的な短絡を介して加熱される、冒頭で述べたような方法が公知である。特許文献5には、原理的にはその種の方式が実現されると考えられる構造が記載されている。
別の従来技術については、更に特許文献6も参照できる。そこには、フィルム上の可撓性の導電素子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2019/137670A1
【特許文献2】EP2559094B1
【特許文献3】WO2019/214824A1
【特許文献4】US2007/0160900A1
【特許文献5】CN112531855A
【特許文献6】US201/0380697A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、公知の加熱マットの使用に比べて改善されている、バッテリ個別セルから構成されているバッテリを加熱するための方法を提供することである。更に、この方法に適したバッテリが提供されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、方法については、請求項1における特徴を備えた、本発明による方法によって解決される。有利な構成及び発展形態は、請求項1に従属する請求項から明らかになる。本方法の実施に適したバッテリは、請求項5に記載されている。ここでもまた、このバッテリの有利な構成及び発展形態は、請求項5に従属する請求項から明らかになる。
【0008】
バッテリ個別セルから構成されているバッテリを加熱するための本発明による方法は、上述の従来技術によるセルバランシングのための構造と同様に、バッテリ個別セルの極間に配置されている半導体スイッチング素子を利用するものである。本発明による方法では、バッテリ個別セルは、加熱のために、半導体スイッチング素子を介して短絡され、その際に、バッテリ個別セルが短絡されている時間フェーズと、バッテリ個別セルが短絡されていない時間フェーズとが交互に繰り返される。バッテリ個別セルの短絡によって、バッテリ個別セル自体に由来する電気的なエネルギが、バッテリ個別セル内に、とりわけその内部抵抗に熱を発生させる。このことは、バッテリ個別セルの加熱に熱を必要とする箇所、即ちバッテリ個別セル自体の内部に、最小限のエネルギで熱を発生させることができるという極めて重要な利点を有する。バッテリ個別セルのハウジングを介する熱伝導とは無関係に、また場合によっては行われる、冷媒からバッテリ個別セルへの熱伝達等とは無関係に、バッテリ個別セルの加熱は、その加熱を最終的に必要とする箇所に正確に作用する。従って、バッテリ個別セルを加熱するための本発明による方法は、極めて効率的であって、特にセルバランシングのために、いずれにしても半導体スイッチング素子が存在する場合には、最小限の追加コストで簡単に実現することができる。
【0009】
ここで、本発明によれば、バッテリ個別セルが短絡されている時間フェーズは、100ミリ秒までであり、バッテリ個別セルが短絡されていない時間フェーズは、10~20秒の範囲である。有利な発展形態によれば、バッテリ個別セルが短絡していない時間フェーズは、特に好適には5~15秒の範囲である。
【0010】
100ミリ秒までのこの比較的短い期間内で、既に、バッテリ個別セルの短絡によって、相当量の熱を生じさせることができる。続いて、短絡が休止され、それによって次にバッテリ個別セルが改めて短絡される。
【0011】
本発明による方法の極めて好適な発展形態によれば、更に、バッテリ個別セルが短絡していない時間フェーズは、1番目の緩和時間のセクションと、それに続く2番目の充電時間のセクションとから成り、この場合、充電時間のセクションは、緩和時間のセクションよりも長く続く。つまり、短絡していないバッテリ個別セルを用いるフェーズでは、電荷を再びバッテリ個別セルに均等に分配させることができる緩和時間のセクションがバッテリ個別セルに許可される。バッテリ個別セルが短絡していない後続のセクションでは、バッテリが充電されるので、加熱プロセスであるにもかかわらず、総じて、バッテリの充電状態は少なくとも劣化せず、それどころか場合によっては、バッテリ個別セルの充電によって、充電状態を更に高めることができる。
【0012】
本発明による方法の非常に好適な発展形態によれば、半導体スイッチング素子は、それら半導体スイッチング素子にそれぞれ対応付けられているバッテリ個別セルの内部抵抗よりも低い内部抵抗を有するように選択されており、その結果、電気抵抗に発生する熱の大部分は、半導体スイッチング素子の領域ではなく、バッテリ個別セルの内部に生じる。
【0013】
半導体スイッチング素子自体は、例えばサイリスタ、IGBT等の凡そ任意の種類のもので実現することができる。ここでは特にMOSFETの使用が望ましい。
【0014】
本発明によるバッテリは、少なくとも部分的に電気的に駆動される車両、例えばハイブリッド車両又はバッテリ電気車両のためのトラクションバッテリとして形成されている。このバッテリは、自身のバッテリ個別セルの相互結線と、上述の方法を実施するように設計されている制御部とを有する。
【0015】
つまり、その種のバッテリは、本方法を相応に実施するために、例えばMOSFETのような半導体スイッチを介する、バッテリ個別セルの適切な相互結線を有することができる。
【0016】
本発明によるバッテリでは、各バッテリ個別セルに3つの半導体スイッチング素子が対応付けられており、それらの半導体スイッチング素子は、各バッテリ個別セルの極を、選択的に又は共通して、正のバスライン、負のバスライン、又は隣接するバッテリ個別セルのそれぞれ他方の極に接続することができる。つまり、バッテリ個別セルは、3つの半導体スイッチング素子を有することができる。半導体スイッチング素子のうちの1つは、隣接するバッテリ個別セルの、逆の極性が与えられている隣接する極を相応に接続することができるので、総じて、バッテリ又はバッテリモジュール内において、バッテリ個別セルの直列接続を実現することができる。別の素子を介して、それぞれの正極を正のバスラインに接続することができ、またそれぞれの負極を負のバスラインに接続することができる。総じて、例えばバッテリ個別セルを充電及び放電するために、バッテリ個別セルを直列に接続することができる。それらの半導体スイッチング素子がバッテリ個別セルの直列接続のために開かれて、全ての正極が正のバスラインに接続され、また全ての負極が負のバスラインに接続されると、上述のような本発明による加熱を実施するために、バッテリ個別セルをそれぞれ短絡させることができる。
【0017】
本発明によれば、半導体スイッチング素子は可撓性の導体フィルム上に形成されている。半導体スイッチング素子が配置されているその種の可撓性の導体フィルムは、バッテリの全体構造に比較的容易に統合することができる省スペース構造である。
【0018】
本発明によるバッテリの更に非常に有利な構成によれば、正及び負のバスラインには、それぞれのバッテリ個別セルの半導体スイッチング素子との接続部間において、それぞれ1つの別の半導体スイッチング素子を配置することができる。これによって、例えば個々のバッテリ個別セルを全体の結合体から遮断することが可能であり、それによって、例えば欠陥のあるセルを橋絡することができる。更には、バッテリ個別セルのそれぞれに対応付けられている5つの半導体スイッチング素子とのその種の相互結線を介して、冒頭で述べた先行技術においても開示されているセルバランシング、即ちバッテリの個々のバッテリ個別セル間の充電均等化も相応に実施することができる。
【0019】
本発明によるバッテリの極めて好適な発展形態では、バッテリ個別セルが、相互に対向する側縁に配置されている電気的な極を備えた角柱状のセルとして形成されており、この場合、隣接するバッテリ個別セルの電気的な極は、可撓性の導体フィルムを介して半導体スイッチング素子に接続されている。その種の構造は、非常に簡潔で効率的であり、また可撓性の導体フィルムは、一方ではバッテリ個別セルの極を接続するために利用することができ、他方では、必要とされるスイッチング素子を可撓性の導体フィルムに直接的に統合することができる。
【0020】
特に、本発明によるバッテリの非常に有利な発展形態によれば、バッテリ個別セルが、可撓性の導体フィルムを介在させて積層されており、またバッテリモジュール又はバッテリに接続され、例えばハウジング又は端部プレート間にクランプされている。可撓性の導体フィルムは、この場合、実質的にZ字形にバッテリの面の間に延在することができるので、総じて、その構造のために付加的な構造空間はほとんど必要とされない。半導体スイッチング素子の領域において、特にバッテリを加熱するための短絡中に熱損失が生じる場合、それらの熱損失も、バッテリ個別セルの領域に直接的に発生し、しかもその内部には発生しないが、隣接するそれぞれ2つのバッテリ個別セル間には発生するので、その際に生じた損失熱も最終的にはバッテリの加熱に寄与することができる。
【0021】
本発明による方法、並びにその方法を実施するための本発明によるバッテリの別の有利な構成は、下記において図面を参照しながら詳細に説明する実施例からも明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による方法を実施するための、バッテリの第1の可能な実施形態の概略図を示す。
図2】本発明による方法の実施中の短い期間にわたる電圧及び電流のグラフを示す。
図3】付属の加熱のグラフを概略的に示す。
図4】方法の実施中の例示的なバッテリ個別セルの充電状態のグラフを概略的に示す。
図5a】複数の製造ステップでの、バッテリ個別セルとその結線の考えられる構造を示す。
図5b】複数の製造ステップでの、バッテリ個別セルとその結線の考えられる構造を示す。
図5c】複数の製造ステップでの、バッテリ個別セルとその結線の考えられる構造を示す。
図5d】複数の製造ステップでの、バッテリ個別セルとその結線の考えられる構造を示す。
図6図1と同様のバッテリの代替的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1には、例示的なバッテリ1の電気的な結線が概略的に図示されている。バッテリ1は、複数のバッテリ個別セル2.1~2.nから成り、バッテリ個別セル1それぞれの隣接する逆の極を、それぞれ1つの半導体スイッチ、例えばMOSFETを介して、スイッチング可能に接続することができる。それらの半導体スイッチには、参照符号(r)が付されている。更に、各バッテリ個別セル2.1~2.nのそれぞれの正極は、参照符号(p)が付された半導体スイッチ、例えばここでもまたMOSFETを介して正のバスライン3に接続されており、またそれぞれの負極は、半導体スイッチ(m)を介して負のバスライン4に接続されている。
【0024】
バッテリ1におけるバッテリ個別セル2.1~2.nの自己加熱には、バッテリ個別セル2.1~2.nそれぞれの内部抵抗を利用することができる。このために、3つの全ての半導体スイッチング素子(r)、(p)、(m)がスイッチオン状態にされ、それによって、バッテリ個別セル2.1~2.nの短絡が達成される。直列に接続されている、半導体スイッチング素子(r)、(p)、(m)の固有抵抗が、バッテリ個別セル2.1~2.nの内部抵抗よりも小さくなるように、それら半導体スイッチング素子(r)、(p)、(m)が選択されている場合、短絡によって生じた熱は、ほぼバッテリ個別セル2.1~2.nの内部抵抗のみで放散され、セルは、熱が必要とされる場所において直接的に加熱される。
【0025】
バッテリ1を充電及び放電するために、半導体スイッチ(p)及び(m)が相応にスイッチオフされ、その結果、半導体スイッチ(r)によって、バッテリ個別セル2.1~2.nの直列回路のみが維持される。
【0026】
バッテリ1を効率的に、しかし保護しながら加熱するために、それら2つの状態が切り替えられる。つまり、第1の時間フェーズでは、バッテリ個別セル2.1~2.nの短絡が常に生じ、その後、緩和のための期間が続く。短絡の期間は、とりわけ、1ミリ秒~100ミリ秒の間であってよく、また緩和の時間帯は、数秒、例えば1秒~5秒、特に約1.5秒であってもよい。図2の2つのグラフには、バッテリ個別セル2.1~2.nに、例えば50ミリ秒にわたって10Ωのオーダの非常に低い抵抗で負荷が掛けられている例示的な経過が示されている。その後、約1.5秒にわたる緩和が行われ、続いて、約7秒にわたり、バッテリ個別セル2.1~2.nの充電が行われる。これによって、図2のグラフによって表されている経過が生じる。左側のグラフは、時間tにわたるバッテリ個別セル2.1~2.nの電圧Uを表し、右側のグラフは、時間tにわたる電流Iを表している。ここでグラフ内では、放電、即ち最終的には短絡が実線で表されており、また充電が破線で表されている。電圧は、短絡時に、充電時の電圧に比べて僅かに降下し、続いて、緩和のフェーズにおいて、ほぼゼロに低下する。緩和後に、特に右側に示した電流・時間グラフに基づいてはっきりと見てとれるように、充電が一定の電流強度で行われるので、工程全体が新たに開始できるようになる前に、電圧は相応に上昇する。
【0027】
その結果、図3における時間tにわたる温度(T)グラフから見て取れるように、それぞれのバッテリ個別セル2.1~2.nが加熱される。短絡中に、その都度、バッテリ個別セル2.1~2.nの比較的強い加熱が生じるので、温度は実質的に段状に上昇し、後続の充電過程中は、温度も確かに上昇するが、短絡中の温度上昇に比べて最小限にしか上昇しない。図示された実施例では、温度が-30℃の開始温度から出発して、約40秒以内に約8K上昇しており、例えば40℃の動作温度まで更に加熱するには、ここでは時間の経過にわたり平均して温度が直線的に上昇する場合、約250秒の時間が必要になるであろう。つまり、本方法により、、数分以内に極めて低い温度から有意義な動作温度までバッテリ1を加熱することができる。
【0028】
この場合、電荷の挙動は、充電状態SOCにわたり時間が示されている図4のグラフから見て取れる。短絡の間は、主として表面電荷が消費されるので、ここでは実線で示された、表面における電荷状態の挙動が生じる。緩和中及び充電中に、それらの電荷は再び均等化され、それらはバッテリ1の個々の電極の内部から更に供給され、後続の短絡のために、再び表面領域において利用される。
【0029】
ここで図5に基づいて、特に図1に概略的に示唆されているようなバッテリ1を構造的に実現するための例示的な構造が相応に示されている。図5a~5dには、それぞれ、バッテリ個別セル2.1~2.nの積層時の種々の製造ステップが示されている。図5aには、バッテリ個別セルの内の第1のバッテリセル2.1が立体図で示されている。バッテリ個別セル2.1は、角柱状のハウジング内に配置されており、またその2つの端面において、接続ラグとして、いわゆる端子タブとして2つの極5、6を有している。続いて、図5bには、端子タブ6に相応に接続されており、且つ半導体スイッチング素子(p)、(m)、(r)、並びに場合によっては別の半導体スイッチング素子、導体路及び電子構成部材を含む、可撓性の導体フィルムが示されている。図5cに示されているように、この構造では、バッテリ個別セルの第2のバッテリ個別セル2.2が積層化され、ここでは、その端子タブ5、6が逆に配置されているので、端子タブ6が前方に向かって突出しており、端子タブ5が後方に向かって突出している。ここではもはや見て取ることはできない2つの後方の端子タブ6、5は、可撓性の導体フィルムをその間に挟んでおり、またそれらと相応に接触している。前部領域では、図5dから見て取れるように、別のバッテリ個別セル2.3が積層化される前に、図5cに示されているように、可撓性の導体フィルム7が再び折りたたまれ、その可撓性の導体フィルムを介して、上部のバッテリ個別セル2.2が後方へと案内されており、これによって、可撓性の導体フィルム7が、バッテリ個別セル2.2の端子タブ5と端子タブ6との間に挟み込まれ、この挟み込みは、上記の工程が再び繰り返される前に行われ、十分な数のバッテリ個別セル2.1~2.nによってバッテリの所望のサイズが実現されるまで、プロセスが再び繰り返される。
【0030】
図6には、バッテリ1の代替的な変形形態が示されている。ここでもまた、種々のバッテリ個別セル2.1~2.nが相応に構築されており、また図1に示したものと同様の相応の半導体スイッチが使用されている。ここでもまた、それらの半導体スイッチに参照符号(r)、(p)、(m)が、バッテリ個別セル2.1~2.nのそれぞれに付されている。バッテリ個別セル2.1~2.nのそれぞれに対するそれら3つの半導体スイッチング素子(p)、(r)、(m)に加えて、2つのバスライン3、4の領域においても、付加的な半導体スイッチング素子(bp)及び(bm)が配置されている。それらの半導体スイッチング素子(bp)、(bm)は、隣接するバッテリ個別セル2.1~2.nのそれぞれの分岐間に配置されているので、その半導体スイッチ(p)が正のバスライン3に接続されている点間には、スイッチング素子(bp)が配置されている。同等の構造が負のバスラインにおいても実現されており、そこでは、隣接するバッテリ個別セル2.1~2.nの半導体スイッチング素子(m)の各接続部間に半導体スイッチング素子(bm)が配置されている。
【0031】
この構造により、バッテリ個別セル2.1~2.nを加熱するための本発明による方法に加えて、バッテリ個別セル2.1~2.n間の充電均等化を更に実現することもできる。更に、例えば、バッテリ個別セル2.1~2.nのそれらの個別セルが欠陥を有している場合や、非常に低い電圧を有している場合、また極性が逆になっている場合等には、それら個別セルをバッテリ1から切り離すことが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-03-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ個別セル(2.1~2.n)から構成されているバッテリ(1)を加熱するための方法であって、前記バッテリ個別セル(2.1~2.n)の極(5、6)間には、半導体スイッチング素子((r)、(p)、(m)、(bp)、(bm))が配置されており、前記バッテリ個別セル(2.1~2.n)は、加熱のために、前記半導体スイッチング素子((r)、(p)、(m)、(bp)、(bm))を介して短絡されるものであり、前記バッテリ個別セル(2.1~2.n)が短絡されている時間フェーズと、前記バッテリ個別セル(2.1~2.n)が短絡されていない時間フェーズとが交互に現れる、前記方法において、
前記バッテリ個別セル(2.1~2.n)が短絡されている時間フェーズは、100ミリ秒までであり、前記バッテリ個別セル(2.1~2.n)が短絡されていない時間フェーズは、1~20秒の範囲であることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記バッテリ個別セルが短絡されていない時間フェーズは、5~15秒の範囲であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記バッテリ個別セル(2.1~2.n)が短絡されていない時間フェーズは、1番目の緩和時間のセクションと、それに続く2番目の充電時間のセクションとから成り、前記充電時間のセクションは、前記緩和時間のセクションより長く続くことを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
それぞれの前記半導体スイッチング素子((r)、(p)、(m)、(bp)、(bm))の電気抵抗は、前記半導体スイッチング素子にそれぞれ対応付けられている前記バッテリ個別セル(2.1~2.n)の内部抵抗よりも低くなるように選択されることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
少なくとも部分的に電気的に駆動される車両のためのトラクションバッテリとしてのバッテリ(1)であって、前記バッテリ(1)のバッテリ個別セル(2.1~2.n)の相互結線と、請求項1又は2記載の方法を実施するように設計されている制御部とを備え、前記バッテリ個別セル(2.1~2.n)のそれぞれには、3つの半導体スイッチング素子((r)、(p)、(m))が対応付けられており、前記3つの半導体スイッチング素子((r)、(p)、(m))は、極(5、6)を、選択的に又は共通して、隣接するバッテリ個別セル(2.1~2.n)の正のバスライン(3)、負のバスライン(4)又はそれぞれの別の極(6、5)に接続することができる、前記バッテリ(1)において、
前記半導体スイッチング素子((r)、(p)、(m)、(bp)、(bm))は、可撓性の導体フィルム(7)上に形成されていることを特徴とする、前記バッテリ(1)。
【請求項6】
前記正のバスライン(3)及び前記負のバスライン(4)には、それぞれの前記バッテリ個別セル(2.1~2.n)の前記半導体スイッチング素子((p)、(m))との接続部間において、それぞれ1つの別の半導体スイッチング素子((bp)、(bm))が配置されていることを特徴とする、請求項5記載のバッテリ(1)。
【請求項7】
前記バッテリ個別セル(2.1~2.n)は、相互に対向する側縁に配置されている電気的な極(5、6)を備えた角柱状のセルとして形成されており、隣接するバッテリ個別セル(2.1~2.n)の前記電気的な極(5、6)は、前記可撓性のフィルム(7)を介して接続されていることを特徴とする、請求項記載のバッテリ(1)。
【請求項8】
前記バッテリ個別セル(2.1~2.n)は、可撓性の導体フィルム(7)を介在させて積層化されていることを特徴とする、請求項7記載のバッテリ(1)。
【国際調査報告】