(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ラジアル磁束ダブルロータ機用ステータ、ラジアル磁束ダブルロータ機およびラジアル磁束ダブルロータ機用ステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/18 20060101AFI20240730BHJP
H02K 16/02 20060101ALI20240730BHJP
H02K 3/12 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H02K1/18 A
H02K16/02
H02K3/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506151
(86)(22)【出願日】2022-07-14
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 EP2022069784
(87)【国際公開番号】W WO2023006440
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】102021003942.4
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524038510
【氏名又は名称】ディープドライブ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ローゼン
(72)【発明者】
【氏名】ディーン ペトロフスキー
【テーマコード(参考)】
5H601
5H603
【Fターム(参考)】
5H601BB20
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD02
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601FF04
5H601GA02
5H601GA15
5H601GC25
5H601KK08
5H603BB09
5H603BB12
5H603CA05
5H603CB03
5H603CB18
5H603CC03
5H603CC07
5H603CC17
5H603CD22
5H603CE02
5H603CE05
5H603EE02
(57)【要約】
本発明は、ステータコアと、ステータコア内に配置された巻線であって、ステータのトルク支持のために自己支持しており、少なくとも1つの軸方向端部においてステータコアを超えて突出している巻線と、ステータコアから軸方向にオフセットして配置された支持装置であって、トルク支持のために少なくとも1つの軸方向端部において巻線と嵌合により係合するように設計された支持装置とを備えるラジアル磁束ダブルロータ機用ステータ、特に、ホイールハブモータ用のステータに関連する。本発明はさらに、対応するラジアル磁束ダブルロータ機、特にホイールハブ駆動用、およびラジアル磁束ダブルロータ機用のステータを製造する方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジアル磁束ダブルロータ機(10)用、特に、ホイールハブモータ用のステータ(1)であって、
ステータコア(2)と、
該ステータコア(2)内に配置され、前記ステータ(1)のトルク支持のために自己支持する設計の巻線(3)であって、少なくとも1つの軸方向端部(4)において前記ステータコア(2)を越えて突出する巻線(3)と、
前記ステータコア(2)に対して軸方向にオフセットして配置され、トルク支持のために前記少なくとも1つの軸方向端部(4)において前記巻線(3)と嵌合により係合するように設計された支持装置(5)とを備えるステータ(1)。
【請求項2】
前記巻線(3)は、ラジアル磁束ダブルロータ機(10)の運転中に前記ステータコア(2)に作用するトルクが、前記支持装置(5)上のねじり剛性の高い前記巻線(3)を介して、特に完全に支持され得るように、高いねじり剛性に設計されている請求項1に記載のステータ(1)。
【請求項3】
前記ステータコア(2)が、主として、半径方向の磁束を伝達するように設計されている請求項1または請求項2に記載のステータ(1)。
【請求項4】
前記ステータコア(2)が、該ステータコアの半径方向の全厚の30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満の半径方向のヨーク厚を有する請求項3に記載のステータ(1)。
【請求項5】
前記巻線(3)が、特に、バー構造体の形態で、一緒に接続された導体バー(6)から形成されている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のステータ(1)。
【請求項6】
前記巻線(3)が、螺旋状に配置された導体バー(6)の半径方向内側層(15)と、反対方向に螺旋状に配置された導体バー(6)の半径方向外側層(14)とを有する請求項5に記載のステータ(1)。
【請求項7】
前記巻線(3)の前記半径方向内側層および前記半径方向外側層が、それぞれ、個別の導体バー(6)の厚さを有する請求項6に記載のステータ(1)。
【請求項8】
前記導体バー(6)は、それぞれ、該導体バーの横断面が、該横断面の半径方向軸に対して前記導体バー(6)の全ての点において同じであるように、螺旋経路に従ってねじられている請求項6または請求項7に記載のステータ(1)。
【請求項9】
前記巻線(3)の同じ位相に関連する前記半径方向内側層および外側層の前記導体バー(6)が、前記導体バーの端部(16)において、特に、半径方向に配置された導体バー片(17)を介在させ、かつ/または一体接合接続によって、それぞれ一緒に接続されている請求項6から請求項8のいずれか1項に記載のステータ(1)。
【請求項10】
前記ステータコア(2)が、前記巻線の経路に従って螺旋状に延びるステータ溝(19,20)を有する積層されたステータコア(18)を備え、各前記導体バー(6)が、前記積層されたステータコア(18)の各ステータ溝(19,20)内に配置されている請求項6から請求項9のいずれか1項に記載のステータ(1)。
【請求項11】
前記積層されたステータコア(18)のステータ薄板(21,22)が、前記ステータ溝(19,20)を形成するために設けられた凹部を有する同一形状に形成され、前記ステータ溝(19,20)の前記螺旋経路が、互いにねじれた形態に前記ステータ薄板(21,22)を積層することによって提供される請求項10に記載のステータ(1)。
【請求項12】
前記積層されたステータコア(18)が、半径方向内側の前記ステータ溝(20)を有する内側部分パッケージ(23)と、半径方向外側の前記ステータ溝(19)を有する外側部分パッケージ(24)とを備え、
前記内側部分パッケージ(23)の前記ステータ薄板(22)が、それぞれ同じ形状に設計され、前記外側部分パッケージ(24)の前記ステータ薄板(21)が、それぞれ同じ形状に設計され、前記内側部分パッケージ(23)の前記ステータ薄板(22)と前記外側部分パッケージ(24)の前記ステータ薄板(21)とが互いに反対方向にねじられた形態で積層されている請求項11に記載のステータ(1)。
【請求項13】
前記ステータ薄板(21,22)が、前記ステータ溝(19,20)を形成するために設けられた凹部を有しそれぞれ異なる形状に形成され、前記ステータ溝(19,20)の前記螺旋経路が、各前記ステータ薄板(21,22)における前記凹部の異なる間隔によって提供されている請求項10に記載のステータ(1)。
【請求項14】
前記半径方向内側および前記半径方向外側のステータ溝(19,20)のための前記凹部が、それぞれ共通のステータ薄板(21,22)に一体的に形成され、前記半径方向内側および前記半径方向外側のステータ溝(19,20)の前記反対方向の螺旋経路が、前記ステータ薄板から前記ステータ薄板への内側および外側のステータ溝(19,20)の互いに対する連続的な変位により提供されている請求項13に記載のステータ(1)。
【請求項15】
前記ステータ薄板(21,22)が、直線状の、特に、打ち抜かれたエッジを有し、前記ステータ溝(19,20)のために設けられた前記凹部の幅(b)が、前記導体バー(6)の前記幅(d)よりも、前記経路の螺旋形状のピッチ(δ)および薄板の厚さ(t)によって予め定められた量だけ大きく、それによって、前記ステータ薄板の前記凹部間のオフセットによって縮小された前記ステータ溝(19,20)の隙間幅(a)が、前記導体バー(6)の前記幅(d)に実質的に対応する請求項11から請求項14のいずれか1項に記載のステータ(1)。
【請求項16】
それぞれ前記ステータ溝(19,20)によって掃引される角度(α)が、それぞれ前記導体バー(6)によって掃引される角度(β)よりも小さい請求項10から請求項15のいずれか1項に記載のステータ(1)。
【請求項17】
それぞれ前記導体バー(6)によって掃引される角度(β)に対する、それぞれ前記ステータ溝(19,20)によって掃引される角度(α)の比が、0.6から0.8の間、特に、0.6から0.75の間の範囲にある請求項16に記載のステータ(1)。
【請求項18】
前記支持装置(5)が、前記導体バー(6)の螺旋配列に対応し、該導体バー(6)と係合する支持溝(26)が設けられた支持部材(25)を有する請求項6から請求項17のいずれか1項に記載のステータ(1)。
【請求項19】
前記支持溝(26)が、少なくとも部分的に、前記ねじれた導体バー(6)の前記螺旋経路に沿い、特に、同様にねじれた経路を有する請求項8および請求項18に記載のステータ(1)。
【請求項20】
前記支持装置(5)が、前記導体バー(6)の前記半径方向内側層(15)と係合するための半径方向内側の支持部材(27)と、前記導体バー(6)の前記半径方向外側層(14)と係合するための半径方向外側の支持部材(28)とを備える請求項18または請求項19に記載のステータ(1)。
【請求項21】
特に、ホイールハブ駆動装置用のラジアル磁束ダブルロータ機(10)であって、
機械的に固定されたベース(11)と、
請求項1から請求項20のいずれか1項に記載のステータ(1)であって、前記支持装置(5)が、トルク支持のために前記巻線(3)の少なくとも1つの軸方向端部(4)と嵌合により係合し、かつ前記ベース(11)に支持されたステータ(1)と、
前記ステータコア(2)の半径方向内側に配置された第1ロータ(12)と、
前記ステータコア(2)の半径方向外側に配置された第2ロータ(13)と、
を備えるラジアル磁束ダブルロータ機(10)。
【請求項22】
前記支持装置(5)が、熱伝導性材料、特に金属、好ましくはアルミニウム合金を含み、前記ベース(11)が、前記ステータ(1)から、特に、前記巻線(3)から、前記支持装置(5)を経由して放散される熱を吸収するように設計されたヒートシンクを有する請求項21に記載のラジアル磁束ダブルロータ機(10)。
【請求項23】
所定数の磁極対が、前記第1ロータ(12)および前記第2ロータ(13)の両方に設けられ、それぞれ前記導体バー(6)によって掃引される角度(β)が、1磁極毎に導体ループを形成するように設計されている請求項21または請求項22に記載のラジアル磁束ダブルロータ機(10)。
【請求項24】
ラジアル磁束ダブルロータ機(10)用のステータ(1)、特に、請求項1から請求項20のいずれか1項に記載のステータ(1)の製造方法であって、
それぞれ螺旋を描く半径方向外側のステータ溝(19)と、それぞれ反対の巻き方向の螺旋を描く半径方向内側のステータ溝(20)とを有するステータコアを提供するステップと、
各前記導体バー(6)を前記内側および外側のステータ溝(19,20)を通る螺旋に従って挿入するステップと、
前記内側および外側のステータ溝に挿入された前記導体バーを、該導体バーの端部(16)において接続し、導体ループを形成するステップとを含む方法。
【請求項25】
前記ステータコア(2)を提供するステップが、積層されたステータコア(18)の製造を含み、前記ステータ溝(19,20)を形成するための凹部を有する各ステータ薄板(21,22)が、相互に対してねじれた態様で積層される請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記積層されたステータコア(18)が、内側部分パッケージ(23)と外側部分パッケージ(24)とを備え、前記内側部分パッケージ(23)の全てのステータ薄板(22)がそれぞれ同一形状を有するように設計され、前記外側部分パッケージ(24)の前記ステータ薄板(21)がそれぞれ同一形状を有するように設計され、前記内側のステータ溝を形成するための前記内側部分パッケージ(23)の前記ステータ薄板(22)および、前記外側のステータ溝を形成するための前記外側部分パッケージ(24)の前記ステータ薄板(21)が、相互に対して反対側にねじられた態様で積層されている請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記積層されたステータコア(18)が、複数の異なる形状のステータ薄板(21,22)を備え、前記内側および外側のステータ溝(19,20)のための凹部が、それぞれ、共通のステータ薄板(21,22)に一体化され、前記螺旋のピッチが、ステータ薄板からステータ薄板までの、前記内側および外側のステータ溝(19,20)の相互に対する連続的な変位により、特に、フレキシブルパンチあるいはレーザ切断プロセスによって実現される請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジアル磁束ダブルロータ機用、特に、ホイールハブモータ用のステータ、対応するラジアル磁束ダブルロータ機、特に、ホイールハブモータ、およびラジアル磁束ダブルロータ機用のステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1つのステータと、回転方向に連結された2つのロータとを備える電気機械、いわゆるダブルロータ機(ダブルロータに加えて、マルチロータ、デュアルロータなどとも呼ばれる。)は、ただ1つのロータを有する従来の電気機械に比べて、電気駆動装置のトルク密度および効率の両方を向上させることができる。これは、特にいわゆる「ヨークレス」設計においては、ステータに背面鉄が不要であり、その結果、磁気損失を大幅に低減できることによる。さらに、ロータが2つあることにより、界磁励磁磁石(永久磁石同期機PSMの場合)あるいは導体材料(誘導機IMまたは電気励磁同期機ESMの場合)に利用できるスペースが基本的に広くなる。空気間隙内の磁力線の向きに応じて、このような機械は、一方でアキシャル磁力線(回転軸に平行な磁力線、いわゆるアキシャル磁束機)と、他方でラジアル磁力線(空気間隙内の半径方向の磁力線、いわゆるラジアル磁束機)の2つのグループに分けることができる。
【0003】
アキシャル磁束ダブルロータ機は、例えば、特許文献ドイツ特許出願公開第102015226105号および特許文献ドイツ特許出願公開第102013206593号に開示されている。これらの機械は、高いトルクおよび出力密度を特徴とするが、非常に複雑な形状をステータコアにプレス加工または粉末冶金によって製作する必要があるため、製造コストがかかる。そのため、これまで、これらの機械は大量生産には至らず、レース、航空など、高い出力密度が要求されるニッチな分野でしか使用されていない。さらに、ステータ巻線の機械的な装着コンセプトは、ノイズの励起に関して相応のデメリットがある単歯巻線の使用を可能にするだけである。
【0004】
これに対して、ラジアル磁束ダブルロータ機の場合には、巻線および積層コアのために原理的に確立されかつ大量生産に適した製造方法を使用できる。しかし、この場合には、ステータコアにおいて発生するトルクを支持することに関して、主要かつほぼ未解決の技術的課題がある。内側および外側において回転する部品のため、積層されたステータコアは、通常の場合のように、固定されたハウジングに取り付けること(例えば、圧入、締結、あるいは接着)ができない。したがって、トルクは、積層されたステータコアまたはステータ巻線の軸方向両端に導かれ、そこで支持される。先行技術においては、この点に関して様々なアプローチが提案されているが、それらは全て、機能および/またはコストに関連して、かなりの不利を伴うものである。
【0005】
特許文献欧州特許第1879283号は、ステータ巻線をいわゆるヨーク巻線として設計する一つの方法を開示している。この場合には、環状の積層されたステータコアは、内径および外径に溝を有し、それらの間に接線方向に作用するバックアイアン(ステータヨークとも呼ばれる。)を有する。この場合には、各巻線ストランドの順方向導体とリターン導体は、半径方向に重なる溝にそれぞれ案内され、ヨークの周りに巻かれる。ステータヨークは、巻線ストランドの間において軸方向にアクセス可能であり、例えば、軸方向のねじ接続(例えば、特開2018-082600号公報に記載。)により、ハウジングに固定され得る。ねじの軸方向の圧力により、積層されたコアのねじり剛性および軸方向端部におけるトルク支持の両方を確保することができる。ロータ磁界のN極とS極とは互いに対向して配置される。この概念の欠点は、磁束を、ステータ溝間にあるリターンヨークを通して完全に伝搬しなければならないことである。一方では、このことは積層されたステータコアの重量の増加につながり、鉄損を大幅に増加させる。両ロータ磁束の磁力線は、積層されたステータコア内のバックアイアンを介して閉じられ、そこで鉄損を発生させる。さらに、ヨーク巻線の全ての個々のコイルは、巻線ヘッドの領域において並列または直列に相互接続されなければならず、その結果、トルク支持と設置スペースとの競合を招く。しかし、ヨークに巻かれた巻線は、積層されたステータコアの直接の機械的接触を許容する。
【0006】
一方が他方の上に半径方向に配置され同じ方向に延びる磁石の磁化方向と、溝内において一方が他方の上に延びる導体の電流供給方向とが同じであれば、大幅な重量および損失の削減を達成することができる。この場合には、ステータにおけるバックアイアンを省くことができ、分布巻きを有するいわゆる「ヨークレス」ダブルロータ機が作成される。磁力線はロータ上で閉じている。ステータ内のバックアイアンが不要であるため、その結果、このような機械においては重量および鉄損が非常に小さい。しかしながら、分布巻きは、トルク支持のための積層されたステータコアの直接の機械的な接触を許容しない。例えば、特許文献国際出願公開第2004/004098号には、分布巻きを有するヨークレスの実施形態が記載されている。
【0007】
また、いわゆる「ヨークレス」設計の場合には、ステータの歯の機械的接続のために薄いヨークを設けることが依然として有用であり得るが、これは電気磁気的な観点からは必ずしも必要ではない。したがって、「ヨークレス」という用語は、ステータに接線方向の磁束が存在しない電磁気的な磁束伝搬を指す。しかし、この場合には、巻線は、巻線ストランドの順方向導体と逆方向導体とが円周上に放射状に分配されて分布巻きを形成するため、ヨーク巻線として設計することはできない。このため、分布巻きの巻線ヘッドが生じ、積層されたコアへの軸方向のアクセスを妨げる。さらに、純粋に半径方向に磁束を運ぶため、軸方向の金属ねじ接続は使用できない。なぜなら、ねじ接続は、多くの磁束が連結された導体ループを形成し、付加電流の熱損失が大きいからである。
【0008】
軸方向支持については、例えば、特許文献ドイツ特許出願公開第102010055030号または特許文献米国特許公開第7557486号に記載されているように、トルク支持のための様々な補助設計が先行技術として提案されている。ここでの問題は、電気的および/または磁気的に導体である金属が磁束伝搬領域に突出することが許されないか、または非常に限られた範囲にしか突出できないことであり、これにより、材料の選択および形状設計が著しく制限される。これに対して、合成材料性の部品、接着剤および/または鋳造材料を磁束伝搬領域に使用することもできる。しかし、これらの材料では、温度安定性および機械的強度に関する厳しい要件を満たすことは非常に困難である。
【0009】
まとめると、ヨークレスのラジアル磁束ダブルロータ機のトルク支持については、先行技術では満足のいく解決策が見いだせていないということになる。これは、改善されるべき状況である。
【発明の概要】
【0010】
このような背景から、本発明の目的は、ラジアル磁束ダブルロータ機用の改良されたステータ、改良されたラジアル磁束ダブルロータ機、およびラジアル磁束ダブルロータ機用のステータの改良された製造方法を提供することである。
【0011】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴を有するステータによって、かつ/または請求項21の特徴を有するラジアル磁束ダブルロータ機によって、かつ/または請求項24の特徴を有する方法によって達成される。
【0012】
したがって、以下の手段が提供される。
- ステータコアと、ステータコア内に配置され、ステータのトルク支持のために自己支持する設計の巻線であって、少なくとも1つの軸方向端部においてステータコアを超えて突出する巻線と、ステータコアに対して軸方向にオフセットして配置され、トルク支持のために少なくとも1つの軸方向端部において巻線と嵌合により係合するように設計されている支持装置とを有するラジアル磁束ダブルロータ機用の、特に、ホイールハブモータ用のステータ。
【0013】
- 機械的に固定されたベースと、この発明に係るステータであって、トルク支持のための支持装置が巻線の少なくとも1つの軸方向端部と嵌合により係合し、ベースに支持されているステータと、ステータコアの半径方向内側に配置された第1ロータと、ステータコアの半径方向外側に配置された第2ロータとを備える、特に、ホイールハブモータ用のラジアル磁束ダブルロータ機。
【0014】
- ラジアル磁束ダブルロータ機用のステータ、特に、本発明に係るステータの製造方法であって、それぞれ螺旋を描く半径方向外側のステータ溝と、反対の巻き方向の螺旋を描く半径方向内側のステータ溝とを有するステータコアを提供するステップと、内側および外側のステータ溝を通して、螺旋に従って個別の導体バーを導入するステップと、内側および外側のステータ溝に導入された導体バーを、導体バーの端部において接続し導体ループを形成するステップとを含む製造方法。
【0015】
本発明の根底にある知見は、ラジアル磁束ダブルロータ機の巻線を、トルク支持のための動力伝達用に設計することができるということである。本発明の根底にある思想は、現在、ステータコアに配置された巻線をトルク支持のために自立あるいは自己支持(self-supporting)するように設計し、トルク支持のためにステータコアに対して軸方向にオフセットして配置された支持装置と嵌合により係合するようにすることである。
【0016】
巻線の自己支持設計とは、巻線が機械の軸回りのねじれに対して駆動トルクを支持するのに十分な剛性および抵抗力を有することを意味する。この自己支持型巻線は、磁束伝搬のために軟磁性ステータコアに埋め込まれている。これにより、ステータコア自体が機械の軸に対して固有のねじれ剛性を必要とせず、ステータコアを固定するための他の補助構造も必要ないという特別な利点が得られる。その代わり、トルクは、巻線によって特に完全に支持される。
【0017】
したがって、巻線に、電流を流すことに加えてトルクを支える支持機能が与えられ、巻線をステータコア外側の軸方向の一端に機械的に固定するという、ラジアル磁束ダブルロータ機の分野において、これまで知られていなかった、あるいは技術的に実現できなかった機能の統合が提供される。
【0018】
そのような巻線を製造するために、既存のステータコアに一体的に巻線を製造することが提案されている。このために、巻線の個々のバーは、半径方向内側および半径方向外側のステータ溝を通して、ステータ溝の螺旋に従って軸方向に挿入され、導体の端部において接続される。この場合には、溶接またははんだ付けによる一体に結合する接続が好ましい。したがって、巻線はステータコアに嵌合により接続される。
【0019】
ステータ溝またはそれによって描かれた螺旋の選択されたリード角(設定角度でもある。)は、導入された導体バーの接続によって導体ループが形成されることを保証する。機械における導体ループの角度は、中心軸に対して掃引され、各ロータの1つの磁極を取り囲む。このように、機能的な統合にもかかわらず、非常に少ない部品と比較的簡易な従来の接続技術とを用いて、かつ、したがって非常に少ない製造工程によって、ステータを非常に簡易に製造することができる。
【0020】
このように設計されたステータは、当業者に知られている様々な内側ロータおよび外側ロータを用いて、本発明に係る電気機械を構成することができる。これらのロータには、例えば、表面磁石および/または埋設磁石を有する永久磁石励磁ロータ、短絡ロータまたは電気励磁式ロータが含まれる。内側ロータおよび外側ロータに異なるロータバリエーションを有するハイブリッドバリエーションも提供することができる。ロータが軟磁性固体材料によって作られ、表面に永久磁石が実装されている場合に、特に有利な実施形態が提供される。この場合において説明される巻線のバリエーションの小さな上磁界スペクトル、および固体材料と磁石によって確保される空気間隙との間の距離により、ロータにおける渦電流による許容できないほどの大きな損失の発生を防止することができる。この実施形態において、比較的高い効率を有利な方法により達成することができ、ロータは依然として低コストで製造することができる。
【0021】
支持装置は、電気機械の静止部分としてのベースに、適切な方法によって堅固に接続される。考えられる1つの実施形態は、ねじのような力を加えて固定する手段のための開口、例えば、貫通孔をこの目的のために設ける。しかしながら、追加または代替として、嵌合による接続手段および/または一体的な接合接続を使用することももちろん考えられるであろう。
【0022】
特に、本発明は、ホイールハブモータ用、好ましくは自動車用に、特に有利な方法で使用され得る。本発明に係る構造は、機能の統合により、ラジアル磁束ダブルロータ機の質量を低減し、トルク密度を増加させることを可能にし、このことは、有利なことに、特にホイールハブモータにおいてバネ下質量の低減を意味する。さらに、本発明によれば、比較的短い軸方向長さを比較的大きな直径で実現することができ、このことは、トルク支持および設置スペースに関して、ホイール内部において、特に有利である。
【0023】
他方、本発明によれば、極めてコンパクトな設計にもかかわらず、特に、変速機なしで車両の車輪を直接駆動するのに十分な非常に高いトルクも可能である。このようにして、伝達損失が特に有利に回避され、さらに軽量化され、特に効率性の面で高い利益を得ることができる。
【0024】
さらに、この高トルクは、標準的な自動車用車輪の寸法内における取り付けサイズでは、すでに4桁の範囲、特に5000Nmを超えることが可能であり、したがって、標準的な道路用タイヤの許容限界の範囲にすでに達しており、後軸車輪ブレーキをホイールハブモータに置き換えることさえ可能である。したがって、ホイールハブモータとしての応用において、特別な相乗効果が可能である。
【0025】
また、開示された一態様は、変速機を介することなく駆動輪に結合される、本発明に係るラジアル磁束ダブルロータ機を備えた、特に自動車用の、車軸である。
【0026】
また、開示された一態様は、そのような車軸を有する自動車である。
【0027】
有利な実施形態および展開は、さらなる下位請求項、ならびに図面を参照した説明から明らかである。
【0028】
一実施形態によれば、巻線は、ラジアル磁束ダブルロータ機の動作中にステータコアに作用するトルクが、特に完全に、ねじり剛性の高い巻線を介して、支持部材に支持され得るような、ねじり剛性を有するように設計されている。このようにして、特に、ステータコアのための他の全ての形式の力の支持装置を有利に省略することができる。
【0029】
一実施形態によれば、ステータコアは、主に半径方向の磁束を伝搬するように設計されている。したがって、これはステータコアのいわゆる「ヨークレス」設計であり、特に、周方向または接線方向の磁束の伝搬を回避する。ステータコアにバックアイアンを設ける必要がないため、重量および鉄損を低減することができる。
【0030】
一実施形態によれば、ステータコアは、ステータコアの半径方向の全厚の30%未満、好ましくは20%未満、特に好ましくは10%未満である半径方向のヨーク厚を有する。いわゆる「ヨークレス」設計の場合には、ステータの歯の機械的接続がそれにもかかわらずこのように提供されるが、これは電磁気的に必要ではなく、その上で機能的に関連する磁束は発生しない。したがって、「ヨークレス」という用語は、特に、ステータコアの電磁気的な磁束の伝搬に関連する。
【0031】
一実施形態によれば、巻線は、特に、バー構造体のように互いに接続された導体バーから形成されている。特に、導体バーは、一体的に接合する方法、例えば、溶接またははんだ付けによって接続される得る。しかしながら、他の接続技術も考えられる。好ましくは、2本の導体バーが、導体バーの端部においてそれぞれ接続され、全ての導体バーが一緒になってバー構造体を形成する。導体バーによって形成されたバー構造体は、有利なことに、それ自体ねじり剛性が高く、ステータの中心軸回りのトルクを伝達するように設計される。さらに、導体バーは動力伝達に十分な太さを有するように設計されている。ホイールハブモータの場合には、導体バーの厚さは、例えば、数mmの範囲とすることができる。特に、導体バーは、数mmの辺長を有する四角い横断面形状を有していてもよい。
【0032】
一実施形態によれば、巻線は、螺旋状に配置された導体バーの半径方向内側層と、逆方向に螺旋状に配置された導体バーの半径方向外側層とを有する。このようにして、バー構造体は巻線によって構成され、高いねじり剛性を有する。内側層の導体バーと外側層の導体バーとは、それぞれ、巻き方向またはピッチが互いに反対となる螺旋を描く。ステータの中心軸に対して掃引される導体バーの始端と終端との間の螺旋の角度は、特に、ラジアル磁束ダブルロータ機におけるロータの磁極毎に1つの導体ループが形成されるように設計される。したがって、提供される掃引角度は、1回転の角度(2πまたは360°)と磁極対の数pの2倍との商から計算することができる。
【0033】
一実施形態によれば、巻線の半径方向内側層および半径方向外側層はそれぞれ、個々の導体バーの厚さを有する。すなわち、巻線の1つの相が、それぞれの場合に、個別の導体バーの横断面を有するように形成される。本発明によるこのような巻線設計は、特に、ラジアル磁束ダブルロータ機の特別な設計によって可能となり、その磁気対称性によって、そうでなければ導体に存在する表面への電流変位が防止される。このようにして、比較的厚い導体横断面が可能となり、横断面全体にわたって比較的均一な電流分布が達成される。例えば、導体バーの厚さは、数mmの範囲にすることができる。特に、導体バーは、一辺の長さが数mm、例えば、2mm~6mmの範囲、特に、3mm~5mmの範囲の四角形の横断面形状を有する棒であってもよい。他の横断面形状も同様に可能である。
【0034】
一実施形態によれば、導体バーは、導体バーの横断面が横断面の半径方向軸に対して導体の全ての点において同じであるように、螺旋経路に従ってそれぞれねじられる。これは、特に、導体バー、特に、非円形の導体バーの、ステータまたは機械の中心軸回りのねじれに関連する。螺旋形状の経路によって、導体バーは付加的に曲げられてもよい。内側層と外側層は交互に、すなわち、互いに対して回転し、ねじれ、場合によっては反対方向に曲げられた状態で配置されている。このようにして、機械的観点から、導体バーの方向は、ステータコアとの力伝達のためにステータコアの各点において理想的に方向づけられ、それによって、各導体バーがその長さにわたって均一に荷重を受ける。したがって、バー構造体において、導体は、接線方向の力を受けたときに、主に引張応力および圧縮応力を有利に吸収する。このようにして、導体バーの荷重ピークおよび変形が回避される。特に、機械的応力は、軸平行な直線状の導体を用いた設計と比較して、大幅に低減することができる。
【0035】
一実施形態によれば、巻線の同じ相に関連する半径方向内側層および外側層の導体バーは、導体バーの端部において、特に、半径方向に配置された導体バー片によって、かつ/または一体的に接合された接続によってそれぞれの場合互いに接続される。これにより、導体ループに加え、軸方向にアクセス可能な巻線の端部が固定されたときに、許容できないほど大きな変形および/または応力状態を引き起こすことなく、高いトルクを巻線によって吸収することができるように、ねじり剛性の高いバー構造体のような構造も形成される。したがって、巻線の自己支持設計は、追加の支持手段または部材なしに、巻線材料、例えば、銅のみによって可能になる。
【0036】
一実施形態によれば、ステータコアは、巻線の経路に対応する螺旋状に延びるステータ溝を有する積層されたステータコアを備え、個々の導体バーが積層されたステータコアの各ステータ溝に配置される。巻線またはそれを用いて形成された自己支持バー構造体は、このようにして積層されたステータコアに埋め込まれる。巻線の導体バーと同様に、ステータ溝も軸方向の位置に応じて接線方向の位置を変化させ、螺旋形状を形成する。位置の変化の方向は、導体バーに従う、すなわち、半径方向外側の溝および半径方向内側の溝の中心線も同様に、回転方向が反対である螺旋を描く。
【0037】
他の実施形態において、反対方向に螺旋状に延びる半径方向内側および外側のステータ溝を有する本発明に係るステータコアの形状を製造するための、当業者に公知の他の製造方法、特に、焼結方法などの付加的な製造方法も考えられる。
【0038】
一実施形態によれば、積層されたステータコアの各ステータ溝には、単一の導体バーが1本のみ配置される。巻線に関連して既に説明したように、内側および外側のステータ溝の導体バーは、機械の中心軸回りのねじりによって互いに螺旋状に交差し、内側層および外側層の導体の端部が互いに向かって案内される。導体バーは、導体バーの端部において、特に、半径方向に配置された導体バー片によって、かつ/または、例えば、溶接または半田付けによる一体的な接合接続によって、導通するように接続される。
【0039】
一実施形態によれば、内側層および外側層の導通するように接続された導体バーは、共に、波状の巻線ストランドを形成する。巻線ストランドは、当業者に知られている適切な相互接続によって、所望のまたは調整可能な数のストランドを有する回転磁界発生巻線を形成するように相互接続することができる。電圧保持ストランド巻数は、分子の溝数と、ストランド数と分子の並列分岐数との積と、の商によって直接決定される。有利には、並列分岐数は1に選択される。この場合、巻線の最も簡単な相互接続が得られる。
【0040】
一実施形態によれば、積層されたステータコアのステータ薄板は、ステータ溝を形成するために設けられた複数の凹部を有して、それぞれ同一形状に形成される。ステータ溝の螺旋経路は、ステータ薄板を互いに相対的にねじれた配置で積層することによって提供される。このようにして、積層されたステータコアは、並列に配置または積層される全てのステータ薄板に対して同じプレス金型を使用することができるので、非常に経済的な方法で製造することができる。したがって、2つの隣接するステータ薄板は、凹部が螺旋に対応して互いに重なって配置されるように、中心軸回りに所定の角度だけ互いにわずかに回転される。
【0041】
有利な実施形態によれば、積層されたステータコアは、半径方向内側のステータ溝を有する内側部分パッケージと、半径方向外側のステータ溝を有する外側部分パッケージとを備える。内側部分パッケージのステータ薄板はそれぞれ同じ形状を有して製造され、外側部分パッケージのステータ薄板はそれぞれ同じ形状を有して製造される。内側部分パッケージのステータ薄板と外側部分パッケージのステータ薄板は、互いに対して反対方向にねじられた状態で積層されている。このようにして、ステータ溝の逆方向の螺旋を、わずかな製造経費で実現することができる。それにもかかわらず、内側部分パッケージの全ての平行な、または積層されるステータ薄板に同じ打ち抜き金型を使用することができ、外側部分パッケージの全ての平行な、または積層されるステータ薄板に同じ金型を使用することができるので、非常に経済的な製造方法が依然として許容される。したがって、内側部分パッケージの2つの隣接するステータ薄板は、中心軸回りの所定の角度だけ第1方向に互いに向かってわずかにねじられ、外側部分パッケージの2つの隣接するステータ薄板は、中心軸回りの所定の角度だけ反対の第2方向に互いに向かってわずかにねじられる。このようにして、内側部分パッケージのステータ薄板の凹部と外側部分パッケージのステータ薄板の凹部とは、互いに反対方向に重なって配置され、これは、反対方向の螺旋経路に対応する。
【0042】
他の実施形態によれば、ステータ薄板は、ステータ溝を形成するために設けられる凹部をそれぞれ異ならせて形成される。ステータ溝の螺旋経路は、個々のステータ薄板における凹部間の異なる距離によって提供される。この点において、この場合、積層体内のステータ薄板の各位置に対して、個別に一致するステータ薄板の形状が製造され、これにより、個々の形状は積層体内において繰り返すこともできる。この場合、製造は、例えば、光切断プロセス、特に、プレス加工プロセスよりも形状の点で柔軟性があるレーザ光切断プロセスによって実現することができる。また、形状が可変のフレキシブルなプレス金型または非常に大量である場合には、異なるステータ薄板の形状ごとに、複数の個別のプレス金型を使用することももちろん考えられる。
【0043】
一展開によれば、半径方向内側および半径方向外側のステータ溝のための凹部が、それぞれ共通のステータ薄板に一体的に形成され、半径方向内側および半径方向外側のステータ溝の反対向きの螺旋経路は、ステータ薄板間の内側および外側ステータ溝の互いに対する連続変位によって提供される。この場合にも、積層体内のステータ薄板の各位置に対して、個別に一致するステータ薄板の形状が生成され、個々の形状は積層体内で繰り返すこともできる。この場合に、レーザ光切断などの柔軟な切断工程が製造に使用される。このようにして可能になる内側凹部と外側凹部の一体生産は、部品点数を有利に削減する。
【0044】
一実施形態によれば、ステータ薄板は、直線状の、特に、打ち抜かれたエッジを有する。ステータ溝のために設けられた凹部の幅は、ステータ溝の経路の螺旋形状のピッチおよびステータ薄板の板厚によって予め決まる量だけ、導体バーの幅よりも大きい。したがって、ステータ薄板の凹部間のオフセットによって減少したステータ溝の間隙幅または連続幅は、実質的に導体バーの幅に対応する。実際には、導体バーを挿入するために必要な隙間嵌めを提供するために、ステータ溝の連続した間隙幅は、導体バーの幅よりもわずかに大きく設けられている。したがって、ステータ溝のエッジは、それぞれの板厚を段差とする階段形状を描き、そこに導体バーが均等に支持される。このようにして、積層されたステータコアの全厚、あるいは積層されたステータコアに収容される導体バーの全長にわたって、トルク支持を均等に行うことが可能になる。
【0045】
一実施形態によれば、ステータ溝によってそれぞれ掃引される角度は、導体バーによってそれぞれ掃引される角度よりも小さい。掃引角度は、それぞれステータの中心軸回りの回転に関連する。掃引角度の違いは、導体バーが、ステータコアを軸方向に超えて突出しているために、ステータ溝もより長いことから生ずる。螺旋経路も同様に継続されるので、それによってより大きな掃引角度が生じる。この差は、ステータ溝への挿入後に導体バーの端部を接合、特に溶接するために、巻線の端部の十分なアクセス性を確保するために設けられている。さらに、これにより、巻線がステータコアに対して軸方向にオフセットした状態で支持装置またはその支持部材と係合することが可能になる。
【0046】
掃引角度の商、すなわち、ステータ溝によってそれぞれ掃引される角度と導体バーによってそれぞれ掃引される角度との比から、積層されたステータコアに対するいわゆる磁極被覆率を定義することができる。
【0047】
一実施形態によれば、ステータ溝の各々によって掃引される角度と導体バーの各々によって掃引される角度との比は、0.6と0.8との間、特に、0.6と0.75との間、好ましくは0.6と0.7との間の範囲にある。この比(磁極被覆率)は、この範囲において、電流熱によって生じる損失とトルク利用との間の最適を提供する。
【0048】
一実施形態によれば、支持装置は、導体バーの螺旋状配列に対応し、導体バーと係合する支持溝が設けられた支持部材を備える。このようにして、軸方向端部においてトルクを支持するために、支持部材における導体バーの嵌合による埋め込みが提供される。好ましくは、トルク支持が巻線のバー構造体全体にわたって均質または均一に伝達されるように、全ての導体バーと係合する。
【0049】
トルクを伝達するために、支持部材は、ラジアル磁束ダブルロータ機の機械的に固定されたベースに結合されてもよい。この目的のために、1つの可能な実施形態は、ねじのような力による固定手段の貫通孔を提供するが、もちろん嵌合による接続手段または一体接合による接続も実現可能であろう。
【0050】
一実施形態によれば、支持溝は、少なくとも部分的に、ねじれた導体バーの螺旋経路に沿う。特に、支持溝は、導体バーと同様にねじられた経路を有する。例えば、支持部材は、実質的に環状であり、半径方向に向けられ導体バーの経路に対応する凹部を内周および/または外周に有する。
【0051】
一実施形態によれば、支持装置は、導体バーの半径方向内側層と係合するための半径方向内側の支持部材と、導体バーの半径方向外側層と係合するための半径方向外側の支持部材とを有する。この実施形態においては、支持部材は環状であってもよく、内側支持部材は、その外周に半径方向内側の導体バーを嵌合により受容するための導体バーの内側層の経路に対応する溝または歯を有し、外側支持部材は、その内周に半径方向外側の導体バーを嵌合により受容するために、導体バーの外側層の経路に対応する溝または歯を有する。特に、溝または歯は、それぞれの螺旋経路に沿っている。凹溝が内周または外周に配置されることにより、機械加工のために容易にアクセス可能であり、これにより支持部材を簡易に製造することができる。
【0052】
ラジアル磁束ダブルロータ機の一実施形態によれば、支持部材はベースに固定され、それによって、電気機械の静止部にトルクを案内する。このために、支持部材は、機械のベース、例えば、ハウジングに個別に取り付けられてもよい。代替的または追加的に、内側支持部材および外側支持部材は、一緒に固定されてもよい。
【0053】
ステータの一実施形態によれば、支持装置は、熱伝導性材料、特に金属、好ましくはアルミニウム合金を含む。特に、両方の支持部材がそのような材料を含んでいてもよい。これにより、高い機械的強度に加えて、支持装置を介した巻線からの熱放散も可能となる。
【0054】
熱伝導性材料を含む支持装置を備えた対応するラジアル磁束ダブルロータ機の一実施形態によれば、ベースはさらに、ステータから、特に巻線から支持装置を介して放散される熱を吸収するように設計されたヒートシンクを備えている。その結果、支持装置は高い機械的強度を有し、同時にヒートシンクへの巻線の良好な熱的接続を保証する。例えば、機械のハウジングがヒートシンクとして機能してもよい。代替的または追加的に、支持装置、好ましくは内側および外側の支持部材は、機械の能動的に冷却されるヒートシンクと熱的に接触させられていてもよい。このようにして、巻線または導体バーにおいて発生する電流熱損失を効果的に排除することができる。
【0055】
ラジアル磁束ダブルロータ機の一実施形態によれば、所定数の磁極対が、第1ロータおよび第2ロータの両方に設けられている。各導体バーによって掃引される角度は、ロータの磁極ごとに導体ループを形成するように設計されている。したがって、提供されるべき掃引角度は、1回転の角度(2πまたは360°)と、磁極対の数pの2倍との商から計算することができる。
【0056】
製造方法の一実施形態によれば、ステータコアの提供は、積層されたステータコアの製造を含み、ステータ溝を形成するための凹部を有する個々のステータ薄板が、互いに相対的にねじられた態様で積層される。このようにして、並列または積層される全てのステータ薄板に対して同じ金型を使用することができるので、積層されたステータコアを非常に経済的な方法で製造することができる。したがって、隣接する2つのステータ薄板は、中心軸回りに所定の角度だけ互いにわずかに回転させられ、凹部が螺旋経路に対応して互いに重なり合うように配置される。個々のステータ薄板は、有利には、電磁鋼板から個々の薄板をプレス加工またはレーザ切断することによって、このような形状に製造される。
【0057】
本方法の他の展開によれば、積層されたステータコアは内側部分パッケージと外側部分パッケージとを備え、内側部分パッケージの全てのステータ薄板はそれぞれ同じ形状となるように設計され、外側部分パッケージの全てのステータ薄板はそれぞれ同じ形状となるように設計され、内側ステータ溝を形成するための内側部分パッケージのステータ薄板と外側ステータ溝を形成するための外側部分パッケージのステータ薄板とは、互いに対して反対回りにねじられた態様で積層される。この場合には、内側部分パッケージおよび外側部分パッケージの全ての薄板が同じ形状に設計されるので、製造方法を非常に経済的にすることができる。したがって、内側積層体の平行なまたは積層される内側部分パッケージの全てのステータ薄板に対して同じ金型を使用することができ、平行なまたは積層される外側部分パッケージの全てのステータ薄板に対して同じ金型を使用することができる。内側部分パッケージの2つの隣接するステータ薄板は、中心軸回りに第1方向に所定の角度だけ互いにわずかに回転させられ、外側部分パッケージの2つの隣接するステータ薄板は、中心軸回りに第2方向に所定の角度だけ互いにわずかに回転させられる。このようにして、内側部分パッケージのステータ薄板の凹部と外側部分パッケージのステータ薄板の凹部とは、反対向きの螺旋経路に対応して互いに反対向きに重なって配置される。このようにして、ステータ溝の反対向きの螺旋は、少ない製造経費で製造することができる。
【0058】
本方法の他の実施形態によれば、積層されたステータコアは、複数の異なる形状のステータ薄板を有し、内側および外側ステータ溝用の凹部はそれぞれ共通のステータ薄板に一体に設けられ、螺旋のピッチは、特に、フレキシブルなプレス加工またはレーザ光切断工程を用いて、ステータ薄板毎の内側および外側ステータ溝の相対的な連続変位によって実現される。内側および外側ステータ溝は、単一のステータ薄板(薄板)に一体化され、ステータ溝の螺旋経路は、例えば、フレキシブルなプレス加工またはレーザ光切断工程による個々の薄板の切断工程において、凹部を相対的に連続的に移動させることによって達成される。これは、より少ない部品がより少ない製造工程を意味し、このようにして製造されたステータ薄板またはステータコア全体がより大きな機械的強度を有するという利点を有する。
【0059】
他の実施形態において、本方法は、トルク支持のために、少なくとも1つの軸方向端部において導体バーの端部に嵌合により係合するように設計された支持装置を提供するステップと、ステータコアに対して軸方向にオフセットして配置された位置において、支持装置を少なくとも1つの軸方向端部において導体バーの端部に嵌合により係合させるステップとをさらに含む。
【0060】
一態様によれば、このようにして製造されたステータは、さらに、機械的に固定可能なベースと、トルク支持のために少なくとも1つの軸方向端部において巻線に嵌合により係合するように設計された支持装置とを提供するステップと、支持装置をベースに固定するステップとを含むラジアル磁束ダブルロータ機の製造方法を実行するために使用することができる。
【0061】
上記の実施形態およびさらなる展開は、役に立つのであれば、任意の方法で互いに組み合わせることができる。特に、ステータの全ての特徴は、ステータの製造方法に転用可能であり、その逆も同様である。さらに、ステータの全ての特徴は、対応するラジアル磁束ダブルロータ機、そのようなラジアル磁束ダブルロータ機を備えた車軸および/またはそのような車軸を備えた車両に転用することができる。
【0062】
本発明の更なる可能な実施形態、更なる発展および実施は、例示された実施形態を参照して説明されたか、または以下に説明される本発明の特徴の非明示的な組み合わせも含む。特に、この点に関して、当業者であれば、本発明のそれぞれの基本的な形態に対する改良または補完として、個々の態様を追加することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
本発明は、図面の模式図に示された例示的な実施形態を援用して、以下に、より詳細に説明される。
【
図2】ラジアル磁束ダブルロータ機の概略縦断面図である。
【
図3】一実施形態に係るステータの分解斜視図である。
【
図4】一実施形態に係るラジアル磁束ダブルロータ機の分解斜視図である。
【
図5】さらなる実施形態に係るラジアル磁束ダブルロータ機の分解斜視図である。
【
図6】
図5のラジアル磁束ダブルロータ機を組み立てられた状態で示す斜視図である。
【
図7】さらに別の実施形態に係るラジアル磁束ダブルロータ機の斜視縦断面図である。
【
図8】積層されたステータコアの分解斜視図である。
【
図12】負荷がかかった巻線のFEMシミュレーションを示す斜視図である;
【
図13】直線設計された導体バーを有する比較例としての巻線の負荷時のFEMシミュレーションを示す斜視図である。
【
図14】ステータの製造方法を示すフローチャートである。
【0064】
図面の添付図は、本発明の実施形態のさらなる理解を提供することを意図している。それらは、実施形態を例示し、本発明の原理および概念を説明するために、本明細書と併せて使用される。他の実施形態および前記利点の多くは、図面を参照することにより明らかになるであろう。図面の部材は、必ずしも相互に対して縮尺通りに示されていない。
【0065】
図面の図において、同種および機能的に同一の部材、特徴および構成要素および同一の態様で作用する特徴および部材には、特に断りのない限り、同一の参照符号が付されている。
【発明を実施するための形態】
【0066】
図1は、ステータ1の模式的な縦断面を示している。
これは、ラジアル磁束ダブルロータ機10(この点に関して
図2参照。)、特に、ホイールハブモータ用のステータ1の概略図である。ステータは、ステータコア2、巻線3、および支持装置5を備えている。ステータコア2、巻線3および支持装置5は、図示された中心軸M回りに回転対称となるように設計されている。
【0067】
巻線3は、ステータ1のトルク支持のために自己支持しており、少なくとも一方の軸方向端部4においてステータコア2を越えて突出している。支持装置5は、ステータコア2に対して軸方向にオフセットして配置され、トルク支持のために少なくとも一方の軸方向端部4において巻線3に嵌合により接続されている。このようにして、ラジアル磁束ダブルロータ機10の運転中にステータコア2に存在するトルクは、自己支持型巻線3によって支持装置5において支持され得る。
【0068】
巻線は、電気抵抗の低い導体材料、好ましくは銅を含んでいる。ステータコア2は、好ましくは、磁束伝搬のための軟磁性材料によって作られている。支持装置は、好ましくは、熱伝導性材料、例えば、アルミニウム合金を含んでいる。もちろん、巻線3は、電気的に絶縁されている。
【0069】
図2は、ラジアル磁束ダブルロータ機10の模式的な縦断面を示している。
これもまた、純粋に例示的な概略図である。したがって、ラジアル磁束ダブルロータ機10は、
図1に示すステータ1に加えて、機械的に固定されたベース11、第1ロータ12および第2ロータ13を備える。ステータコア2、巻線3、支持装置5、ベース11、第1ロータ12および第2ロータ13も同様に、図示の中心軸M回りに回転対称となるように設計されている。
【0070】
巻線3は、ステータ1のトルク支持のために自己支持しており、少なくとも一方の軸方向端部4においてステータコア2を越えて突出し、支持装置5を介してベース11に支持されている。支持装置5は、ステータコア2に対して軸方向にオフセットして配置され、トルク支持のために少なくとも一方の軸方向端部4において巻線3に嵌合により接続されている。この場合も、支持装置5は、トルクが支持装置5を介してベース11に支持されるように、ベースに固定されている。
【0071】
第1ロータ12は、ステータコア2の半径方向内側に配置され、第2ロータ13は、ステータコア2の半径方向外側に配置される。ベース11は、例えば、機械のハウジングとして設計することができ、この場合には、純粋に例示的な態様において、2つの脚部7,8を有するL字形構造からなる。図は網羅的なものとして理解されるものではなく、むしろベースはさらなる構成要素および/または構造部分を備えていてもよい。第1脚部7は実質的に半径方向に延び、第2脚部8は中心軸Mから最も離れた位置において実質的に軸方向に延びている。
【0072】
純粋に模式的に、支持装置5は、径方向に延びる単一部品として示されているが、複数の部品で、および/または巻線3と嵌合により係合するように構成された、他の形状によって提供されてもよい。図示された巻線3とベース11との重なりは、純粋に図示された概略図によるものであり、直接の接続を意味するものではない。巻線3は、好ましくは、トルク支持のために支持装置5を介してベース11に接続される。
【0073】
図3は、一実施形態に係るステータ1の分解斜視図である。
ステータ1は、巻線3、ステータコア2および支持装置5を備え、この場合には、これらの構成要素の有利な例示的な設計が、より詳細に透視図法により示されている。
【0074】
巻線3は、バー構造体の態様で一緒に接続された複数の導体バー6を有する内側層および外側層から構成されている。内側層および外側層の導体バー6は、互いに逆方向に螺旋状に配置され、導体バーの端部において、内側層および外側層を接続する半径方向の導体片17に一体に結合されている。
【0075】
内側層および外側層の厚さは、それぞれ導体バー6の厚さに対応している。すなわち、巻線3が、導体ループを形成し、比較的大きな横断面を有する単一の導体層によって、それぞれの導体バー6の形態で形成されている。
【0076】
複数の導体バーによって形成されたバー構造体によって、巻線は、ねじり剛性が高く、かつ、それによって、トルク支持のために自己支持している。
【0077】
したがって、複数の導体バー6は、波状の巻線ストランドを形成し、例えば、デルタ結線、スター結線等のような、当業者に知られ、したがってこれ以上説明しない適当な相互接続手段によって相互接続され、任意の数のストランドを有する回転磁界発生巻線を形成することができる。
【0078】
図示の実施形態においては、ステータコア2および支持装置5はそれぞれ、一例として、2つの部品から構成されている。ステータ1の組立のために、巻線3、ステータコア2および支持装置5は、互いに入れ子式に配置される。組立後、構成部品は、共通の中心軸Mに沿って互いに同軸に整列される。ここでは例として2つの部品からなる支持装置5は、他の構成部品に対して軸方向にオフセットして配置され、ステータ1の最も内側および最も外側の構成部品を形成している。これは、内側リングおよび外側リングであり、それぞれ導体バーと嵌合により係合するための溝を有するように設計されている。
【0079】
ステータコア2は、ここでは例として2部品であり、
図8を参照してより詳細に説明される、互いに対して螺旋状に回転させられた2つの積層されたステータコア18によって形成されている。
【0080】
他の実施形態においては、ステータコア2および支持装置5は、それぞれ単一部品または2つより多い部品によって設計されてもよい。
【0081】
図4は、一実施形態に係るラジアル磁束ダブルロータ機10の分解斜視図である。
ラジアル磁束ダブルロータ機10は、ステータ1の構成部品に加えて、第1ロータ12と、第2ロータ13と、ベース11とを備える。第1ロータ12は、ステータコア2の半径方向内側に、第2ロータ12は半径方向外側に配置される。ロータ12,13は、好ましくは、軟磁性固体材料から製造され、ステータコアに面するそれぞれの面に磁極として永久磁石、いわゆる表面磁石が固定されている。他の実施形態においては、当業者に知られている他のロータ、例えば、埋設磁石、短絡ロータ、または電気的に励磁されるロータを使用することも可能である。
【0082】
この場合には、ベース11は、明確性を向上させるために単に模式的に示されている。
図2の説明において既に述べたように、ベース11は、支持装置5に取り付けられた状態で固定される。ベース11は、基準システム、例えば、車軸の支持部に対して機械的に固定される。
【0083】
図5は、他の実施形態に係るラジアル磁束ダブルロータ機10の分解斜視図である。
この場合には、ラジアル磁束ダブルロータ機10は、
図3および
図4を参照して説明したものと実質的に同じ構成部品を有する。ステータコア2、巻線3、第1ロータ12および第2ロータ13が、図の左側に組み立てられた状態で示されている。
【0084】
右側に示されている支持装置5も2部品に形成されており、それぞれ環状の内側支持部材27および外側支持部材28の構成が異なる。支持部材27,28は、この場合には、支持溝26を備えている。これらの溝は、巻線3の導体バー6と係合するために、外側支持部材28の内周および内側支持部材27の外周に設けられている。
【0085】
このため、支持溝26は、巻線3の導体バー6と係合できるように、導体バーの螺旋経路またはそのピッチに従って軸方向に角度を付けるように設計されている。
【0086】
支持部材27,28は、好ましくは導電性金属、特に好ましくはアルミニウム合金から製造されている。支持部材27,28の2部品設計により、製造時に支持溝26に機械的または機械加工処理のために容易にアクセスすることができる。
【0087】
内側支持部材27および外側支持部材28は、それぞれ、ベース11に固定するための複数の孔9を周方向に備える。この場合には、一例として、孔9はボルトのピッチ円に沿って円周上に均等に配置されている。個々の孔9は、支持部材の本体のやや外側に位置し、支持部材27,28は、したがって、それぞれ巻線から離れる方向に向いた円周上に星形を形成する。もちろん、孔9の他の分布も可能であり、ベース11への接続のための他の種類の締結手段も考えられる。
【0088】
図6は、
図5によるラジアル磁束ダブルロータ機10を取り付けられた状態の斜視図である。
支持装置5は、例えば、ベース11としての機械ハウジング(図示せず)に孔9によって締結され、それによって、ラジアル磁束ダブルロータ機10の機械的に固定された部分にトルクを伝達する。このようにして、ラジアル磁束ダブルロータ機10が発生するトルクを効果的に支持することができる。支持装置5の固定は、対応する固定手段(図示せず)、例えば、ねじによって行われる。
【0089】
巻線3の導体バー6は、ステータコア2および第1ロータ12および第2ロータ13の外側まで軸方向の両側に延びている。径方向内側層および外側層の螺旋状に配置された導体バー6は、ステータコア2の外側においてそれぞれ一緒に接続されている。
【0090】
この場合には、支持部材27,28は、巻線3の導体バー6と係合した状態で示されている。導体バー6が、各支持溝26内に配置され、全ての導体バーが支持装置に嵌合により結合されていることがわかる。したがって、巻線3を介して支持されたトルクは、支持装置5を介して、孔9に固定されたベース11に支持され得る。
【0091】
図7は、他の実施形態に係るラジアル磁束ダブルロータ機10の縦断面斜視図である。
本実施形態は、
図4によるラジアル磁束ダブルロータ機10を組み立てたものに実質的に対応し、その構成部品については、以下においてさらに詳しく説明する。
【0092】
ステータコア2は、内側部分パッケージ23と外側部分パッケージ24とを有する。部分パッケージ23,24は、第1ロータ12と第2ロータ13との間に環状に延びている。断面図に基づいて、部分パッケージ23,24の内部に延びる導体バー6の内側層15および外側層14を見ることも可能である。
【0093】
図示されたラジアル磁束ダブルロータ機10は、いわゆる「ヨークレス」設計であり、ヨークは、2つの歯の間において、機能的に関連する磁束内に存在しない。したがって、ステータヨーク30が導体バー6の間に延びているが、単に積層されたステータコア18を機械的に保持する役割を果たすだけである。半径方向のヨーク厚はそれに対応して薄く設計することができ、図示の実施形態では、一例として、半径方向のステータ全厚の約10%である。さらに、比較的小さいヨーク厚により、ヨーク内の望ましくない漏れ磁束が低減される。他の実施形態においては、半径方向のヨーク厚は、この目的のために、半径方向のステータ全厚の30%未満、好ましくは20%未満、特に好ましくは10%未満とすることができる。
【0094】
支持装置5は、内側支持部材27と外側支持部材28とを有する。この場合には、支持部材27,28が、ステータ5およびロータ12,13に対して軸方向にオフセットして配置されていることが明らかにわかる。さらに、支持部材27,28と内側層15および外側層14の導体バー6との嵌合による係合の少なくとも断面を見ることができる。
【0095】
この場合には、内側層15および外側層14の導体バー6が、半径方向に配置された導体バー片17によって導体バーの端部16において接続されていることが明確に分かる。この接続は、好ましくは、例えば、レーザ溶接による一体的な接合接続として製造される。
【0096】
さらに、ロータ12,13の表面の磁石も断面においてみることができる。第1ロータ12は、その外周面に、複数の永久磁石を有する。第2ロータ13は、その内周面に、複数の永久磁石を有する。
【0097】
特に有利な実施形態は、ロータが軟磁性固体材料によって構成され、表面実装された永久磁石を有して製造される場合に提供される。この設計においては、ロータを非常にコスト効率よく製造することができ、高い効率を達成することができる。
【0098】
図8は、ステータコア2の積層されたステータコア18を示す分解斜視図である。
ステータコア2の積層されたステータコア18は、既に述べたように、内側部分パッケージ23と外側部分パッケージ24とを有する。これは、互いに対して反対方向に回転されるステータ溝19の製造を、互いに対して回転された態様で積層され、同じ位置に凹部が設けられた同じ内側ステータ薄板22および外側ステータ薄板21を用いて単純化するのに役立つ。
【0099】
他の実施形態においては、ステータ薄板は、異なる配置の凹部を有する複数の異なるように形状されたステータ薄板が提供され、かつ、ステータ溝を形成するのに必要な順序で積層されるように、一部品に製造することもできる。さらに他の実施形態においては、例えば、付加的に製造することができる完全に一体のステータコア2を有することも考えられる。
【0100】
図示された2部品の構成においては、外側部分パッケージ24の内径は内側部分パッケージ23の外径とほぼ同じである。これにより、内側部分パッケージ23を外側部分パッケージ24内に同軸に配置することができる。
【0101】
部分パッケージ23,24は、個々の環状のステータ薄板21,22の1つを他の上に積層して構成されている。外側部分パッケージ24のステータ薄板21は、外側ステータ溝19を形成するために、外周に分布する凹部を有するように製造される。内側部分パッケージ23のステータ薄板22は、内側ステータ溝20を形成するために、内周に分布する凹部を有するように製造される。例えば、これらのステータ薄板をプレス加工によって製造することは、エッジ品質および非常に低い製造コストのためには有利である。
【0102】
内側ステータ溝20および外側ステータ溝19は、同じピッチで互いに反対方向に延びる螺旋を描き、ステータ溝の指示された掃引角度αによって特徴づけられる。ステータ溝の掃引角度αは、中心軸Mに対するステータコア2の軸方向一側とステータコア2の軸方向他側との同じステータ溝の位置がなす角度から定義することができる。
【0103】
この場合には、ステータ溝19,20は、一例として、狭まった開口を有する矩形の凹部を有するT溝として設計されている。これらは、特に、矩形断面を有する導体バーを嵌合により受け入れるために設けられている。もちろん、凹部またはステータ溝の形状は、導体の形状に適合させることができる。また、この目的のために、他の断面形状も考えられる。
【0104】
図9は、ステータ溝19,20の概略縦断面図である。
積層されたステータコア18内のステータ溝19,20の使用可能なまたは連続した間隙幅aは、ステータコア2内に収容される導体バー6の幅に、実質的に等しい。
【0105】
ステータ薄板21,22は、直線状の、特に打ち抜かれたエッジを有する。薄板の互いに対するオフセットにより、ステータ溝19,20のために設けられた凹部の幅bは、経路の螺旋形状のピッチδと薄板の厚さtとによって予め決められた量だけ、導体バー6の幅dよりも大きい。
【0106】
図9においては、導体バー6がステータ溝19,20内に破線で模式的に描かれており、ステータ溝19,20の連続した間隙幅aは、隙間嵌めを提供するために導体バー6の幅dよりもわずかに大きく、ステータ薄板21,22の凹部の幅bは、間隙幅aよりもかなり大きい。
【0107】
直線状の、例えば、打ち抜かれた薄板のエッジの場合には、板厚tおよび溝経路のピッチの設定角度δは、凹部の幅bと溝内の使用可能な通路の間隙幅aとの間の差に顕著な影響を与える要因である。この差は、一方ではピッチ角を、他方では積層されたコアの階段状の段差を補正しなければならないために生じる。
【0108】
限りなく薄い板の限界の場合、すなわち導体バーのピッチ角δを純粋に考慮した場合の凹部の幅bの最小サイズは、以下の通りである。
b=1/cos(δ)*d
一方では実際の板厚を補正し、他方では導体バーの挿入を可能にする隙間嵌めを提供するために、凹部の幅bは実際にはさらに大きくなるように設けられる。
【0109】
図9に示される凹部の幅bは、ステータ薄板の凹部間のオフセットによって減少するステータ溝19,20の間隙幅aが、ステータ溝に挿入される導体バー6の幅dと所定の隙間嵌めを形成するように寸法決めされているが、それでも接触は、積層されたステータコアと巻線との間において均一な動力伝達またはトルク支持のために役立つのを提供するのに十分な密接である。このような寸法設定は、特に、一方では各ステータ薄板が同等の高いエッジ品質で形成され、同等のオフセットで回転され、他方では個々の導体バー6のみが各ステータ溝19,20内に配置され、その寸法が一定であるという事実によって可能となる。
【0110】
特に、図示された実施形態においては、導体バー6は、数mm、例えば、2mmから6mmの範囲、特に、3mmから5mmの範囲の縁の長さまたは幅を有する長方形横断面のバーである。好ましくは、5mm×3mmの矩形横断面形状であってもよい。
【0111】
図10は、巻線3の斜視図である。
巻線3は、中心軸Mに沿って螺旋状に延びる導体バー6によって構成されている。この目的のために、導体バー6は、対応するように交差して配置されるだけでなく、螺旋経路に従って互いにねじられている。
【0112】
導体バー6の掃引角度βは、中心軸Mに対する導体バー6の始端と終端との間の角度を特定する。導体バー6の螺旋のピッチはステータ溝19,20の螺旋のピッチと等しいが、導体バー6はステータ溝よりも長いので、それぞれの掃引角度α,βの比は、幾何学的条件を特徴付けるように形成することができ、これは磁極被覆度とも称される。ラジアル磁束ダブルロータ機の磁気損失とトルク利用との間の最適を提供するために、この比(磁極被覆度)は、好ましくは0.6と0.75との間の範囲である。
【0113】
この場合も同様に、導体バー6の半径方向の内側層15および外側層14の対向する回転およびねじれを見ることができる。このねじれは、導体バーの中心を通る半径方向の線に対する断面が、2.5D形状としても定義されるように、導体バー上のどの点でも常に同じになるように構成されている。したがって、内側層15および外側層14の導体バーの端部は、一方が他方の上に同じ向きで配置される。したがって、半径方向の内側層15および外側層14の導体バー6は、この場合には、導体バー6に溶接される半径方向に延びる導体バー片17によって、簡単な方法で導通するように接続することができる。
【0114】
ここで示された巻線は、個別に製造されるのではなく、
図13でより詳細に説明されるように、常にステータコア2と組み合わせて製造されることに留意されたい。
【0115】
図11は、巻線3の側面図である。
この図においては、図示された透視図において中心軸Mの領域で整列している螺旋経路の各点における導体バーの正確な半径方向の向きをはっきりと確認することができる。導体バーの端部16はそれぞれ、半径方向内側層15と半径方向外側層14との間の接続点を形成する。
【0116】
図示の実施形態においては、巻線は、一例として、合計12個の接続接点31を有する。三相接続の場合、好ましくは、三相動作が提供される。しかしながら、巻線は、任意の数の回転磁界発生巻線を形成するために、当業者に公知の方法によって、他の相互接続に適合させることができる。
【0117】
図12は、負荷がかかった巻線3のFEMシミュレーションを示す斜視図である。
シミュレーションのために若干の簡略化を行ったが、これは基本的に
図10に示した巻線形状である。図示されたスケールは、巻線内の応力に関するものであり、例えば、導体バー6の横断面形状が5mm×3mmの矩形である場合には、0MPaから30MPaのスケールとなる。
【0118】
この例においては、導体バーの端部は、導体バーの掃引角度β>0によって規定され、すなわち、螺旋状に配置および形成されるか、または対応してねじれた態様で成形される。支持装置が係合する軸方向端部においては、太い矢印で示すように、対応する寸法のラジアル磁束ダブルロータ機10の最大トルクが描かれており、例えば、導体バー6の横断面形状が5mm×3mmの矩形の場合には、最大トルクは約5000Nmとなり得る。
【0119】
螺旋形状により、巻線内の応力は非常に均等に分布していることがわかる。誇張されているにもかかわらず、変形はほとんど見られない。この設計により、応力のピーク、ひいては変形を大幅に低減することができる。
【0120】
バー構造体のような構造により、軸方向にアクセス可能な巻線端部を固定する際に、許容できないほど大きな変形および/または応力状態を引き起こすことなく、高いトルクを、巻線3によって自己支持式に吸収することができる。これは、特に、バー構造体の導体バー6が接線方向の力を受けたときに、引張応力および圧縮応力を主に吸収するという事実による。
【0121】
軸に平行な直線状の導体を用いた設計と比較して、機械的応力を大幅に低減することができる。
【0122】
図13は、直線設計の比較モデルの斜視図であり、荷重を受けた導体バー6の軸方向経路を示している。
図12と比較すると、導体バーの直線設計と軸方向経路とにより、
図12の左側に応力経路が集中し、
図13の右側に、大きな変形を伴う局所的に高い応力による導体バーの大きな変形が発生していることがわかる。ここでは、
図12と同じ応力スケールと同じ変形の誇張が設定されており、構造配置の違いがねじり剛性に及ぼす影響を示している。
【0123】
図14は、ステータ1の製造方法のフローチャートである。
この方法は、各々が螺旋を描く半径方向外側のステータ溝19と、各々が巻き方向が反対の螺旋を描く半径方向内側のステータ溝20とを有するステータコア2を提供する第1ステップS1を含む。他のステップS2は、内外のステータ溝19,20を通る螺旋に沿った個々の導体バー6の挿入に関する。導体バーは、特に、軸方向に挿入される。さらに、導体ループを形成するために、内外のステータ溝に挿入された導体バー6を導体バー端部16において接続するステップS3が設けられている。
【0124】
以上、本発明を好ましい実施形態を参照して十分に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0125】
1 ステータ
2 ステータコア
3 巻線
4 軸方向端部
5 支持装置
6 導体バー
7 第1脚部
8 第2脚部
9 孔
10 ラジアル磁束ダブルロータ機
11 ベース
12 第1ロータ
13 第2ロータ
14 径方向外側層
15 径方向内側層
16 導体バー端部
17 導体バー片
18 積層されたステータコア
19,20 ステータ溝
21,22 ステータ薄板
23 内側部分パッケージ
24 外側部分パッケージ
25 支持部材
26 支持溝
27 内側支持部材
28 外側支持部材
29 永久磁石
α ステータ溝の掃引角度
β 導体バーの掃引角度
δ ピッチ
a 間隙幅
b 凹部の幅
d 導体バーの幅
M 中心軸
t 板厚
【国際調査報告】