(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】リウマチ性疾患を治療するための薬剤の調製のためのSE-DR親和性ペプチドの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20240730BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20240730BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20240730BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240730BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240730BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240730BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240730BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240730BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240730BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240730BHJP
A61K 31/42 20060101ALI20240730BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240730BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P29/00 101
A61P31/06 ZNA
A61P31/20
A61P19/02
A61P17/06
A61P37/02
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 N
A61K31/519
A61K31/42
A61P1/04
C07K14/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506157
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 CN2022117495
(87)【国際公開番号】W WO2023006125
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】202110873116.6
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524039768
【氏名又は名称】河北菲尼斯生物技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HEBEI FITNESS BIOTECHNOLOGY CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【氏名又は名称】藤野 香子
(72)【発明者】
【氏名】劉超
(72)【発明者】
【氏名】黄麗晶
(72)【発明者】
【氏名】李晨輝
(72)【発明者】
【氏名】姜召紅
(72)【発明者】
【氏名】汪飛
(72)【発明者】
【氏名】王紅権
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA19
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4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、結核陽性である及び/又はB型肝炎を併発しているリウマチ患者のリウマチ性疾患を治療するための薬剤の調製のためのSE-DR(共有エピトープを含むHLA-DR分子)親和性ペプチドの使用を提供する。本発明は、リウマチ性疾患を有する患者の薬剤の選択肢が限られているという問題を解決する。また、本発明は、SE-DR親和性ペプチドと、非抗原特異的抗リウマチ薬とを含む医薬組成物、及び種々の型のリウマチ性疾患の治療のための薬剤の調製のためのそれの使用を提供する。その医薬組成物は、リウマチ性疾患の完全な制御のために、リウマチ性疾患の進行を速やかに阻害でき、薬剤の漸減又は中止後も持続的な寛解を達成できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結核陽性である及び/又はB型肝炎を併発しているリウマチ患者のリウマチ性疾患を治療するための薬剤の調製のためのSE-DR親和性ペプチドの使用であって、
前記SE-DR親和性ペプチドは、エピトープを共有するHLA-DR分子に結合するペプチドであり、好ましくは、共有するエピトープはHLA-DRのβ鎖の70~74の位置にあるQK/RRAAを含む5アミノ酸モチーフであり、
前記SE-DR親和性ペプチドは、疾患に関連する自己抗原と前記HLA-DR分子との結合を競合的に阻害するが、生体内で乱れた免疫微小環境を整え、免疫バランスを回復させる役割を果たすが、広範な免疫抑制作用がなく、感染症及び腫瘍を誘発する危険性が無いことを特徴とする使用。
【請求項2】
SE-DRに結合する前記SE-DR親和性ペプチドのコア配列は、P1~P9に対応するコアアミノ酸を含み、
P1部位は疎水性側鎖を有するアミノ酸及び類似の特性を有する希少又は非天然アミノ酸であり、P4部位は非極性、極性及び非荷電、極性及び負荷電アミノ酸及び類似の特性を有する希少又は非天然アミノ酸であり、好ましくは、SE-DRに結合される前記SE-DR親和性ペプチドのコア配列中の対応する前記P1部位は、Tyr(Y)、Phe(F)、Trp(W)、Leu(L)、Ile(I)、Met(M)、Val(V)又はAla(A)のうちから選択され、前記P4部位は、Met(M)、Ala(A)、Val(V)、Ile(I)、Leu(L)、Asp(D)、Glu(E)、Gln(Q)、Ser(S)又はCitのうちから選択され、より好ましくは、SE-DRに結合される前記SE-DR親和性ペプチドのコア配列中の対応する前記P1部位は、Tyr(Y)、Phe(F)又はTrp(W)から選択され、前記P4部位は、Met(M)、Leu(L)、Asp(D)、Glu(E)又はCitから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
SE-DRに結合される前記SE-DR親和性ペプチドのコア配列中の対応するP6部位は、短い側鎖を有するアミノ酸であり、類似の特性を有する希少又は非天然アミノ酸であり、P9部位は、中程度から短い側鎖を有するアミノ酸であり、類似の特性を有する希少又は非天然アミノ酸であり、好ましくは、SE-DRに結合される前記SE-DR親和性ペプチドのコア配列中の対応する前記P6部位は、Ala(A)、Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)又はAsn(N)から選択され、前記P9部位は、Ala(A)、Gly(G)、Leu(L)又はMet(M)から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記SE-DR親和性ペプチドは、FXGEQGXXGE、又はFXGEXAXXGEのアミノ酸配列を含み、配列中のXはP、K、Q、A又はGから選択され、好ましくは、XはA又はGから選択され、より好ましくは、前記SE-DR親和性ペプチドはFNS007(FKGEQAGAGE)であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記SE-DR親和性ペプチドは、YXKQXTXXLAのアミノ酸配列を含み、配列中のXはV、A、G、N、L又はKから選択され、好ましくは、XはA又はGから選択され、より好ましくは、前記SE-DR親和性ペプチドのアミノ酸配列は、PKYVKQNTLKLAT、PGYVKQGTLGLAT、YVKQNTLKLA、YVAQNTLKLA、YAKQATLKLA、又はYAKQATLALAから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記SE-DR親和性ペプチドは、IWYIXCFXCEXHXXLのアミノ酸配列を含み、配列中のXはA、G、M、T、V、N、Q又はSから選択され、好ましくは、XはA又はGから選択され、より好ましくは、前記SE-DR親和性ペプチドのアミノ酸配列は、IWYINCFGCETHAML、IWYIQCFGCETHAML、IWYISCFGCETHAML、IWYITCFGCETHAML、IWYINCFACETHAML、又はIWYINCFVCETHAMLから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記SE-DR親和性ペプチドは、RSFXLAXSXXGVGのアミノ酸配列を含み、配列中のXはA、G、T、S又はEから選択され、好ましくは、XはA又はGから選択され、より好ましくは、前記SE-DR親和性ペプチドのアミノ酸配列は、RSFTLASSETGVG、RSFALASSETGVG、RSFTAASSETGVG、RSFTLDSSETGVG、RSFTLAASETGVG、RSFTLASSATGVG、RSFTLASSEAGVG、又はRSFTLDSSETGVGから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記SE-DR親和性ペプチドは、SAVXLCitXSXXGVRのアミノ酸配列を含み、配列中のXはA、G、R、S、V又はPから選択され、好ましくは、前記SE-DR親和性ペプチドのアミノ酸配列は、SAVRLCitSSVPGVR、SAVELCitSSVPGVR、SAVDLCitSSVPGVR、SAVGLCitSSVPGVR、SAVRLCitFSVPGVR、SAVRLCitSSVEGVR、SAVRLCitSSVKGVR、SAVRLCitSSVWGVR、SAVRLCitWSVPGVR、SAVRLCitSSVRGVR、SAVRLCitKSVPGVR、SAVALCitSSVPGVR、又はSAVRLCitRSVPGVRであり、代替的に、前記SE-DR親和性ペプチドは、GVYXTCitXSXXCitLCitのアミノ酸配列を含み、配列中のXはA、G又はVから選択され、好ましくは、XはA又はGから選択され、より好ましくは、前記SE-DR親和性ペプチドのアミノ酸配列は、GVYATCitSSAVCitLCitであり、代替的に、前記SE-DR親和性ペプチドは、QDXNCitXNXXKNSのアミノ酸配列を含み、配列中のXはA、G、F、I、K又はLから選択され、好ましくは、XはA又はGから選択され、より好ましくは、前記SE-DR親和性ペプチドのアミノ酸配列は、QDFTNCitANKLKNSであり、代替的に、前記SE-DR親和性ペプチドは、VVLLVATXGCitXRXXSAYQDKのアミノ酸配列を含み、配列中のXはA、G、E、V又はNから選択され、好ましくは、XはA又はGから選択され、より好ましくは、前記SE-DR親和性ペプチドのアミノ酸配列は、VVLLVATEGCitVRVNSAYQDKであることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
前記SE-DR親和性ペプチドのアミノ酸配列は、MGPKGRTVIIEQSWGSPKVTK、MGPKGRTVIIEQSLGSPKVTK、SIDLKDKKYKNIGAKLVQDVANNTNEEA、SIDLKDKKYKNIGAKLVQLVANNTNEEA、QYMCitADQAAGGLR、LTQCitGSVLR、WYNCitCHAAN、VETCitDGQVI、又はVCitLCitSSVESTCitGRSCitPAPPPACitGLTから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
前記リウマチ性疾患は、関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、未分化脊椎関節症、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症又は膠原病から選択されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
リウマチ性疾患の治療のための医薬組成物であって、
SE-DR親和性ペプチドと、非抗原特異的抗リウマチ薬と、薬学的に許容可能な担体とを含み、
前記SE-DR親和性ペプチドは、エピトープを共有するHLA-DR分子に結合するペプチドセグメントであり、好ましくは、共有するエピトープはHLA-DRのβ鎖の70~74の位置にあるQK/RRAAを含む5アミノ酸モチーフであり、
前記SE-DR親和性ペプチドは、疾患に関連する自己抗原ペプチドとHLA-DR分子との結合を競合的に阻害し、生体内で乱れた免疫微小環境を整え、免疫バランスを回復させる役割を果たし、リウマチ性疾患の進行を速やかに阻害し、薬剤の中止後も持続的な寛解を達成することを特徴とする、医薬組成物。
【請求項12】
SE-DRに結合される前記SE-DR親和性ペプチドのコア配列は、P1~P9に対応するコアアミノ酸を含み、
P1部位は疎水性側鎖を有するアミノ酸であり、同様の特性を有する希少アミノ酸又は非天然アミノ酸であり、好ましくは、SE-DRに結合される前記SE-DR親和性ペプチドのコア配列中の対応する前記P1部位は、Tyr(Y)、Phe(F)、Trp(W)、Leu(L)、Ile(I)、Met(M)、Val(V)又はAla(A)から選択され、
P4部位は、非極性、極性で荷電していない、極性で負に荷電したアミノ酸、及び類似の特性を有する希少又は非天然アミノ酸であり、好ましくは、SE-DRに結合される前記SE-DR親和性ペプチドのコア配列中の対応する前記P4部位は、Met(M)、Ala(A)、Val(V)、Ile(I)、Leu(L)、Asp(D)、Glu(E)、Gln(Q)又はSer(S)から選択され、
SE-DRに結合される前記SE-DR親和性ペプチドのコア配列中の対応するP6部位は、短い側鎖を含むアミノ酸及び類似の特性を有する希少又は非天然アミノ酸であり、P9部位は、中程度から短い側鎖を含むアミノ酸及び類似の特性を有する希少又は非天然アミノ酸であり、好ましくは、SE-DRに結合される前記SE-DR親和性ペプチドのコア配列中の対応する前記P6部位は、Ala(A)、Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)又はAsn(N)から選択され、前記P9部位は、Ala(A)、Gly(G)、Leu(L)又はMet(M)から選択され、
前記非抗原特異的抗リウマチ薬は、サイトカインを標的とする薬物、B細胞を標的とする薬物、T細胞を標的とする薬物、キナーゼを標的とする薬物、従来の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)又はグルココルチコイド薬物から1つ以上選択され、好ましくは、腫瘍壊死因子(TNF)阻害剤、IL-6阻害剤、IL-1阻害剤、IL-17阻害剤、RANKL阻害剤、T細胞共刺激シグナル阻害剤、CD20阻害剤、CD22阻害剤、BLyS及びAPRIL阻害剤、BAFF阻害剤、JAK阻害剤、BTK阻害剤、Syk阻害剤、IRAK4阻害剤、p38阻害剤、又は低分子免疫抑制剤から1つ以上選択され、より好ましくは、アダリムマブ、トシリズマブ、アナキンラ、トファシチニブ、アバタセプト、リツキシマブ、又はそれらのバイオシミラー若しくはジェネリック医薬品、メトトレキサート、又はレフルノミドから1つ以上選択されることを特徴とする、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記SE-DR親和性ペプチドは、FXGEQGXXGE又はFXGEXAXXGEのアミノ酸配列を含み、配列中のXはK、Q、A又はGから選択され、好ましくは、XはA又はGから選択され、より好ましくは、前記SE-DR親和性ペプチドはFNS007(FKGEQAGAGE)であり、代替的に、前記SE-DR親和性ペプチドのアミノ酸配列は、MGPKGRTVIIEQSWGSPKVTK、MGPKGRTVIIEQSLGSPKVTK、SIDLKDKKYKNIGAKLVQDVANNTNEEA、SIDLKDKKYKNIGAKLVQLVANNTNEEA、QYMCitADQAAGGLR、LTQCitGSVLR、WYNCitCHAAN、VETCitDGQVI、又はVCitLCitSSVESTCitGRSCitPAPPPACitGLTから選択されることを特徴とする、請求項11又は12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記薬学的に許容可能な担体は、結合剤、界面活性剤、可溶化剤、安定剤、滑沢剤、湿潤剤及び/又は希釈剤を含み、前記医薬組成物の剤形は、カプセル剤、錠剤、ピル剤、液剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、フィルムコーティング錠剤、沈降剤、ロゼンジ剤、舌下剤、咀嚼剤、バッカル剤、ペースト剤、シロップ剤、懸濁剤、エリキシル剤、乳剤、塗布剤、軟膏剤、貼付剤、湿布剤、経皮吸収型製剤、ローション剤、吸入剤、エアロゾル剤、注射剤又は坐剤であることを特徴とする、請求項11~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
経口投与、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、脳内投与、鼻腔内投与、肺内投与、動脈内投与、関節内投与、皮内投与、硝子体内投与、骨髄内注入、腹腔内投与、髄腔内投与又は経皮投与の種々の経路による投与に適することを特徴とする、請求項11~14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記リウマチ性疾患は、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、未分化脊椎関節症、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、膠原病、クローン病、及び潰瘍性大腸炎から選択され、好ましくは、前記リウマチ性疾患に罹患している患者は、結核陽性又は結核陰性であり、前記リウマチ性疾患に罹患している患者は、B型肝炎を併発している又は併発していないことを特徴とする、請求項11~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願のクロスリファレンス)
本願は、2021年7月30日に出願された中国出願番号第202110873116.6号の利益を主張する。中国出願番号第202110873116.6号は、本明細書の全体に参照として組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明はバイオ医薬品の分野に属し、特に結核陽性である及び/又はB型肝炎を併発しているリウマチ患者のリウマチ性疾患を治療するための薬剤の調製におけるSE-DR親和性ペプチドの使用に関する。さらに、本発明は、SE-DR親和性ペプチドと非抗原特異的抗リウマチ薬とを含む医薬組成物、及び種々のタイプのリウマチ性疾患を治療するための薬剤の調製におけるその使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
リウマチ性疾患は、関節痛と風及び寒さへの恐怖とを主症状とする極めて一般的な臨床症候群の一群である。リウマチとは、リウマチ性疾患の略称であり、一般に骨、関節、筋肉及びその周囲の滑液包、腱、筋膜、血管、神経等の軟部組織に影響を及ぼす大きな疾患群を指す。関節リウマチ(RA)は、最も一般的なリウマチ性疾患の1つである。関節リウマチは、びらん性滑膜炎を特徴とする慢性の全身性自己免疫性疾患であり、関節軟骨や骨の破壊を引き起こし、関節の変形や最終的には障害をもたらす。標準的な治療を受けていない患者の3年障害率は75%と高く、若年及び中年層の労働力喪失の大きな原因の1つとなっている。患者の平均寿命は健康な人よりも3~10年短く、そのため「不死がん」と呼ばれている。この疾患は、深刻な社会的及び経済的問題を引き起こしている。発症初期はまだ働くことができるが、10年後には50%の患者が労働能力を失い、15年後には67%に達する。関節リウマチは、海外では「5D」、すなわち病気、うつ病、障害、死、借金を引き起こし得ると言われている。世界における関節リウマチの有病率は0.5~1%であり、中国では約0.3%であり、患者数は約500万人である。中国における女性患者の発症年齢ピークは35~44歳であり、男性患者のピークは55~64歳であり、年齢と共に罹患率は上昇する。それは女性に多く、女性と男性との比は2:1~3:1である。
【0004】
リウマチ性疾患の病態は非常に複雑である。環境因子又は遺伝因子の影響下において、感受性のある集団の病原性抗原は自然免疫系を活性化し、抗原は抗原提示細胞(APC)によって提示され、T細胞を活性化する。T細胞の活性化には、2つの独立したシグナルによる共刺激が必要である。第1のシグナルは、「ヒト白血球抗原(HLA)-抗原ペプチド-T細胞受容体(TCR)」の3分子複合体の形成であり、HLA及び抗原ペプチドは、まずに分子複合体を形成し、次にTCRと会合して三分子複合体を形成する。第2のシグナルは、T細胞表面のCD28とAPC細胞表面のCD80/86との結合である。活性化されたT細胞は、さらにB細胞を活性化することができ、これらの活性化されたT細胞及びB細胞は、末梢循環に入り、病原性抗原と類似した構造をもつ自己抗原を含む病変部位に到達する。自己抗原は病原性抗原として機能するため、T細胞及びB細胞等を持続的に活性化し、炎症性サイトカイン、ケモカイン及びコラゲナーゼを大量に分泌し、滑膜の過形成、パンヌス形成及び持続的な炎症を促進し、最終的には骨破壊を引き起こす。Tリンパ球は関節リウマチの発症、持続及び再発に重要な役割を果たしている。特に、活性化T細胞からヘルパーT細胞への分化は、関節リウマチの病態及び治療薬の研究においてますます重要な役割を果たしている。この分野では、Th17細胞及びTreg細胞のレベルの変化が研究の焦点となっている。
【0005】
現在、リウマチ性疾患(特にRA)の治療薬は、その開発時期及びメカニズムから4つの世代に分けられる。第1世代は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)であり、第2世代はグルココルチコイド(GC)であり、第3世代は疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)であり、第4世代はTNF-α阻害剤に代表される生物学的製剤である。第4世代のリウマチ性疾患治療薬には、TNF-α阻害剤、IL-1拮抗剤、IL-6拮抗剤、JAK3阻害剤、T細胞阻害剤及びB細胞阻害剤等があり、現在、日米欧で最大97%の市場を占めている。しかし、リウマチ性疾患(特にRA)の治療薬として臨床で一般的に使用されている薬剤は、安全性及び有効性の面で大きな欠点がある。
【0006】
現在、一般的なNSAID、GC、DMARD及び生物学的製剤には、安全性に問題があり、臨床応用にはある程度の限界がある。臨床において推奨されている第1選択薬であるメトトレキサートのラットにおける半数致死量は43mg/kgであり、その主な毒性は骨髄抑制及び消化管毒性である。臨床における第2選択薬の1つであるエタネルセプトの前臨床毒性は主に結核潜伏感染として現れ、臨床毒性は主に免疫疾患及び重篤な感染症を誘発し、また癌の発生率を増大させる。アバタセプトの発癌に関する前臨床安全性試験では、投与群のマウスの約50%がリンパ腫で死亡し、乳癌の発生率も増大した。臨床試験においても、アバタセプトは感染症を悪化させ、癌のリスクを高めることが証明されている。ほとんどの生物学的製剤(TNF阻害剤等)には、腫瘍及び感染症の危険性を示すブラックボックス警告がFDAから出されているため、患者には投与前にツベルクリン反応及びB型肝炎関連検査を受けることが求められている。ツベルクリン陽性の患者には、結核治療後に生物学的製剤を投与し、ツベルクリン検査が陰性であっても生物学的製剤投与中は活動性結核に注意する。B型肝炎合併患者に対しては、HBcAg陽性患者がリツキシマブ療法を開始するとき、又は標的合成DMARD療法を開始するときに、予防的抗ウイルス療法を行うべきである。HBcAb陽性/HBcAg陰性患者は、非リツキシマブ生物学的製剤又は標的合成DMARD療法を開始するときに、注意深くモニターすべきである。従って、結核陽性患者又はB型肝炎合併患者にとっては、薬剤の選択肢が限られ、投薬リスクが高まるという問題がある。
【0007】
また、現在、異なるレジメン及び異なる基準の一般的な臨床薬剤を用いた2年間の治療後の経過観察では、寛解率は世界で40%程度にしか達せず、半数近くの患者は効果的なコントロールができない。中国では、RA患者の臨床的寛解率は治療後に異なる臨床基準で追跡調査した場合、わずか8.6~25.2%である。かなりの数の患者が、現在の治療法では臨床的寛解及び疾患のコントロールを達成できていない。
【0008】
リウマチ性疾患(特にRA)を緩和することができる既存の臨床薬剤の安全性の問題の共通の理由は、「標的に対する特異性の不十分さ」に帰することができる。NSAID、GC及びDMARDは、幅広い免疫抑制作用を有するが疾患に関連するリンパ球を特異的に阻害することはできない。生物学的製剤及び新規低分子薬剤はRAの標的薬であるが、そのほとんどはRAの病態の下流にあるサイトカイン及びキナーゼを対象としている。上記の因子を阻害する一方で、TNF-αを阻害した後に結核感染及び腫瘍の発生率を増大させる等の副作用をもたらす。アバタセプトは、RA発症の最も上流にあるT細胞の活性化に有効である。その安全性は、TNF-α阻害剤及びDMARDよりも優れているが、その標的は疾患特異的なT細胞ではなく、広範なT細胞の活性化であるため、免疫不全を引き起こし、さらに治療中に重篤な感染症及び癌の発生率を増大させるおそれがある。従って、疾患特異的な標的を標的とするRA治療薬の開発は、既存薬の安全性の問題を解決する主要な道である。
【0009】
SE-DR親和性ペプチド(FNS007等)は、中国において独自に開発された革新的な薬剤であり、Tリンパ球に直接作用し、リウマチ性疾患(特にRA)治療のための第5世代の薬剤と考えられ得る。SE-DR親和性ペプチドは、リウマチ性疾患関連抗原ペプチドと主要組織適合性複合体分子との結合を競合的に阻害することにより、その役割を果たし、リウマチ性疾患関連抗原を介した特異的T細胞活性化の最初のシグナルである3分子複合体「HLA-抗原ペプチド-Tリンパ球受容体(TCR)」の形成を阻害することができる。この抗原特異的治療薬は、リウマチ性疾患(特にRA)の治療目的を達成するために、疾患特異的自己反応性T細胞の活性化及び増殖を阻害し、T細胞の分化及び下流サイトカインの分泌を変化させることができる。「抗原特異的治療」は、SE-DR親和性ペプチドのメカニズムの主要な特徴である。SE-DR親和性ペプチドは、RAn主要な自己抗原エピトープを改変したペプチドリガンドであり、RAの発生及び発症の特異的な段階に作用し、RAに関連する種々の抗原ペプチドとHLA分子との結合を阻害することができ、患者の乱れた免疫微小環境を制御する。炎症細胞を減少させ、炎症抑制細胞を増加させることにより、免疫寛容を回復させ、長期的な改善により疾患の進行を完全に防ぐことが期待される。リウマチ性疾患の治療におけるSE-DR親和性ペプチド(例えばFNS007)のメカニズムは、抗リウマチ薬の将来の発展方向を示していると言える。
【0010】
FNS007は、河北フィットネスバイオテクノロジー有限公司が開発した新規クラス1.1医薬品であり、臨床研究段階に入り、現在、第1相臨床研究段階にある。本発明は、同社によるSE-DR親和性ペプチド(特にFNS007)の新規適応について、既存のリウマチ性疾患治療薬の安全性及び有効性の面での欠点を標的として鋭意研究したものである。従って、本発明の目的は、結核陽性である及び/又はB型肝炎合併リウマチ患者におけるリウマチ性疾患の治療薬の調製におけるSE-DR親和性ペプチドの使用を提供することである。本発明の他の目的は、SE-DR親和性ペプチドと非抗原性抗リウマチ薬とを含む医薬組成物、及び各種リウマチ性疾患の治療薬の調製におけるその使用を提供することである。
【発明の概要】
【0011】
既存のリウマチ性疾患治療薬では、臨床上の安全性及び有効性のバランスをどのようにとるかが重要である。投与量を一定の範囲内で増やすことは、薬の有効性を高め、寛解率を向上させ得るが、同時に副作用の発生率を高めることにもなり得る。リウマチ性疾患の治療薬としてより多くの疾患特異的な薬剤、及び薬剤の使用における関連するリスクを見つけることは、既存の薬剤の不十分な寛解率の問題を解決し、中国のリウマチ性疾患患者の治療受容を満たすための主要な道であり、新しい試みである。
【0012】
抗原特的治療は、リウマチ性疾患に対する上記の薬剤の臨床的欠陥を解決するための新規のアイデアである。既存の非抗原特異的治療薬(TNF-α阻害剤等)は、現在、ある程度の効果を上げているが、自己抗原に対する寛容をいかに回復させるかが自己免疫疾患治療の鍵であり、より特異的な標的を用いることで、感染症等の薬剤の毒性を軽減することも可能となる。従って、抗原特異的治療又は非抗原特異的治療との併用が、リウマチ性疾患の治療における新たなトレンドとなっている。
【0013】
本発明の目的を達成するために、以下の技術提案が提供される。
【0014】
第1の態様において、本発明は、SE-DR親和性ペプチドの使用を提供し、SE-DR親和性ペプチドとは、エピトープを共有するHLA DR分子に結合するペプチドセグメントを意味し、結核陽性である及び/又はB型肝炎を併発しているリウマチ患者におけるリウマチ性疾患の治療のための医薬の調製において使用される。好ましくは、共有エピトープは、HLA-DRβ鎖の70~74の位置にQK/RRAAを有する5アミノ酸モチーフである。SE-DR親和性ペプチドは、リウマチ性疾患に関連する抗原ペプチドとHLA-DR分子との結合を競合的に阻害する役割を果たすが、広範な免疫抑制作用がなく、感染症や腫瘍を誘発する危険性も無い。
【0015】
代替的に、上記使用において、SE-DRに結合されるSE-DR親和性ペプチドのコア配列は、P1~P9に対応するコアアミノ酸を含み、P1部位は疎水性側鎖を有するアミノ酸及び類似の特性を有する希少又は非天然アミノ酸であり、P4部位は非極性、極性及び非荷電、極性及び負荷電アミノ酸及び類似の特性を有する希少又は非天然アミノ酸である。
【0016】
好ましくは、SE-DRに結合されるSE-DR親和性ペプチドのコア配列中の対応するP1部位は、Tyr(Y)、Phe(F)、Trp(W)、Leu(L)、Ile(I)、Met(M)、Val(V)又はAla(A)のうちから選択され、P4部位は、Met(M)、Ala(A)、Val(V)、Ile(I)、Leu(L)、Asp(D)、Glu(E)、Gln(Q)、Ser(S)又はCitのうちから選択される。
【0017】
より好ましくは、SE-DRに結合されるSE-DR親和性ペプチドのコア配列中の対応するP1部位は、Tyr(Y)、Phe(F)又はTrp(W)から選択され、P4部位は、Met(M)、Leu(L)、Asp(D)、Glu(E)又はCitから選択される。
【0018】
代替的に、上記使用において、SE-DRに結合されるSE-DR親和性ペプチドのコア配列中の対応するP6部位は、短い側鎖を有するアミノ酸であり、類似の特性を有する希少又は非天然アミノ酸であり、P9部位は、中程度から短い側鎖を有するアミノ酸であり、類似の特性を有する希少又は非天然アミノ酸である。
【0019】
好ましくは、SE-DRに結合されるSE-DR親和性ペプチドのコア配列中の対応するP6部位は、Ala(A)、Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)又はAsn(N)から選択され、P9部位は、Ala(A)、Gly(G)、Leu(L)又はMet(M)から選択される。
【0020】
代替的に、上記使用において、SE-DR親和性ペプチドは、以下のアミノ酸配列を含む:FXGEQGXXGE、又はFXGEXAXXGE、ここでXはP、K、Q、A又はGから選択される。
【0021】
好ましくは、XはA又はGから選択される。より好ましくは、SE-DR親和性ペプチドはFNS007(FKGEQAGAGE)である。
【0022】
代替的に、上記使用において、SE-DR親和性ペプチドは、以下のアミノ酸配列を含む:YXKQXTXXLA、ここでXはV、A、G、N、L又はKから選択される。
【0023】
好ましくは、XはA又はGから選択される。より好ましくは、SE-DR親和性ペプチドのアミノ酸配列は、PKYVKQNTLKLAT、PGYVKQGTLGLAT、YVKQNTLKLA、YVAQNTLKLA、YAKQATLKLA、又はYAKQATLALAからなる群から選択される。
【0024】
代替的に、上記使用において、SE-DR親和性ペプチドは、以下のアミノ酸配列を含む:IWYIXCFXCEXHXXL、ここでXはA、G、M、T、V、N、Q又はSから選択される。
【0025】
好ましくは、XはA又はGから選択される。より好ましくは、SE-DR親和性ペプチドのアミノ酸配列は、IWYINCFGCETHAML、IWYIQCFGCETHAML、IWYISCFGCETHAML、IWYITCFGCETHAML、IWYINCFACETHAML、又はIWYINCFVCETHAMLから選択される。
【0026】
代替的に、上記使用において、SE-DR親和性ペプチドは以下のアミノ酸配列を含む:RSFXLAXSXXGVG、ここでXはA、G、T、S又はEから選択される。
【0027】
好ましくは、XはA又はGから選択される。より好ましくは、SE-DR親和性ペプチドのアミノ酸配列は、RSFTLASSETGVG、RSFALASSETGVG、RSFTAASSETGVG、RSFTLDSSETGVG、RSFTLAASETGVG、RSFTLASSATGVG、RSFTLASSEAGVG、又はRSFTLDSSETGVGから選択される。
【0028】
代替的に、上記使用において、SE-DR親和性ペプチドは以下のアミノ酸配列を含む:SAVXLCitXSXXGVR、ここでXはA、G、R、S、V又はPから選択される。
【0029】
好ましくは、SE-DR親和性ペプチドのアミノ酸配列は、SAVRLCitSSVPGVR、SAVELCitSSVPGVR、SAVDLCitSSVPGVR、SAVGLCitSSVPGVR、SAVRLCitFSVPGVR、SAVRLCitSSVEGVR、SAVRLCitSSVKGVR、SAVRLCitSSVWGVR、SAVRLCitWSVPGVR、SAVRLCitSSVRGVR、SAVRLCitKSVPGVR、SAVALCitSSVPGVR、又はSAVRLCitRSVPGVRである。
【0030】
代替的に、SE-DR親和性ペプチドは、以下のアミノ酸配列を含む:GVYXTCitXSXXCitLCit、ここでXはA、G又はVから選択される。好ましくは、XはA又はGから選択される。より好ましくは、SE-DR親和性ペプチドのアミノ酸配列は、GVYATCitSSAVCitLCitである。
【0031】
代替的に、SE-DR親和性ペプチドは、以下のアミノ酸配列を含む:QDXNCitXNXXKNS、ここでXはA、G、F、I、K又はLから選択される。好ましくは、XはA又はGから選択される。より好ましくは、SE-DR親和性ペプチドのアミノ酸配列は、QDFTNCitANKLKNSである。
【0032】
代替的に、SE-DR親和性ペプチドは、以下のアミノ酸配列を含む:VVLLVATXGCitXRXXSAYQDK、ここでXはA、G、E、V又はNから選択される。好ましくは、XはA又はGから選択される。より好ましくは、SE-DR親和性ペプチドのアミノ酸配列は、VVLLVATEGCitVRVNSAYQDKである。
【0033】
代替的に、上記使用において、SE-DR親和性ペプチドのアミノ酸配列は、MGPKGRTVIIEQSWGSPKVTK、MGPKGRTVIIEQSLGSPKVTK、SIDLKDKKYKNIGAKLVQDVANNTNEEA、SIDLKDKKYKNIGAKLVQLVANNTNEEA、QYMCitADQAAGGLR、LTQCitGSVLR、WYNCitCHAAN、VETCitDGQVI、又はVCitLCitSSVESTCitGRSCitPAPPPACitGLTから選択される。
【0034】
代替的に、上記使用において、リウマチ性疾患は、関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、未分化脊椎関節症、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症又は膠原病から選択される。
【0035】
第2の態様において、本発明は、SE-DR親和性ペプチド及び非抗原特異的抗リウマチ薬、並びに薬学的に許容可能な担体を含む、リウマチ性疾患の治療のための医薬組成物を提供する。好ましくは、SE-DR親和性ペプチドと非抗原特異的抗リウマチ薬との重量比は、50:1~1:50の範囲であり、より好ましくは、重量比は、20:1~1:20、15:1~1:15、10:1~1:10、5:1~1:5、4:1~1:4、3:1~1:3又は2:1~1:2から選択でき、具体的な投与量比は、選択された非抗原特異的抗リウマチ薬の種類に関連し、臨床医によって決定され得る。SE-DR親和性ペプチドとは、エピトープを共有するHLA-DR分子に結合するペプチドセグメントを指し、好ましくは、共有エピトープはHLA-DRのアミノ酸配列位置70~74にあるペプチドセグメントを指し、全てQK/RRAA配列を発現する。SE-DR親和性ペプチドは、リウマチ性疾患に関連する抗原ペプチドとHLA-DR分子との結合を競合的に阻害し、生体内で乱れた免疫微小環境を整え、免疫バランスを回復させる役割を果たす。本医薬組成物は、リウマチ性疾患の進行を速やかに遅延させ、薬剤の漸減又は中止後も持続的な寛解を達成する。
【0036】
代替的に、上記医薬組成物において、SE-DRに結合されるSE-DR親和性ペプチドのコア配列は、P1~P9に対応するコアアミノ酸を含み、P1部位は疎水性側鎖を有するアミノ酸であり、同様の特性を有する希少アミノ酸又は非天然アミノ酸である。
【0037】
好ましくは、SE-DRに結合されるSE-DR親和性ペプチドのコア配列中の対応するP1部位は、Tyr(Y)、Phe(F)、Trp(W)、Leu(L)、Ile(I)、Met(M)、Val(V)又はAla(A)から選択され、P4部位は、非極性、極性で荷電していない、極性で負に荷電したアミノ酸、及び類似の特性を有する希少又は非天然アミノ酸である。好ましくは、SE-DRに結合されるSE-DR親和性ペプチドのコア配列中の対応するP4部位は、Met(M)、Ala(A)、Val(V)、Ile(I)、Leu(L)、Asp(D)、Glu(E)、Gln(Q)又はSer(S)から選択される。SE-DRに結合されるSE-DR親和性ペプチドのコア配列中の対応するP6部位は、短い側鎖を含むアミノ酸及び類似の特性を有する希少又は非天然アミノ酸であり、P9部位は、中程度から短い側鎖を含むアミノ酸及び類似の特性を有する希少又は非天然アミノ酸である。好ましくは、SE-DRに結合されるSE-DR親和性ペプチドのコア配列中の対応するP6部位は、Ala(A)、Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)又はAsn(N)から選択され、P9部位は、Ala(A)、Gly(G)、Leu(L)又はMet(M)から選択される。
【0038】
非抗原特異的抗リウマチ薬は、サイトカインを標的とする薬物、B細胞を標的とする薬物、T細胞を標的とする薬物、JAKキナーゼを標的とする薬物、従来の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)又はグルココルチコイド薬物から1つ以上選択される。
【0039】
好ましくは、非抗原特異的抗リウマチ薬は、腫瘍壊死因子(TNF)阻害剤、IL-6阻害剤、IL-1阻害剤、IL-17阻害剤、RANKL阻害剤、T細胞共刺激シグナル阻害剤、CD20阻害剤、CD22阻害剤、BLyS及びAPRIL阻害剤、BAFF阻害剤、JAK阻害剤、BTK阻害剤、Syk阻害剤、IRAK4阻害剤、p38阻害剤、又は低分子免疫抑制剤から1つ以上選択される。
【0040】
より好ましくは、非抗原特異的抗リウマチ性疾患治療薬は、アダリムマブ、トシリズマブ、アナキンラ、トファシチニブ、アバタセプト、リツキシマブ、又はそれらのバイオシミラー若しくはジェネリック医薬品、メトトレキサート、又はレフルノミドから1つ以上選択される。
【0041】
代替的に、上記薬組成物において、SE-DR親和性ペプチドは、以下のアミノ酸配列を含む:FXGEQGXXGE又はFXGEXAXXGE、ここでXはK、Q、A又はGから選択される。好ましくは、XはA又はGから選択される。より好ましくは、SE-DR親和性ペプチドはFNS007(FKGEQAGAGE)である。
【0042】
代替的に、SE-DR親和性ペプチドのアミノ酸配列は、MGPKGRTVIIEQSWGSPKVTK、MGPKGRTVIIEQSLGSPKVTK、SIDLKDKKYKNIGAKLVQDVANNTNEEA、SIDLKDKKYKNIGAKLVQLVANNTNEEA、QYMCitADQAAGGLR、LTQCitGSVLR、WYNCitCHAAN、VETCitDGQVI、又はVCitLCitSSVESTCitGRSCitPAPPPACitGLTから選択される。
【0043】
代替的に、上記医薬組成物において、薬学的に許容可能な担体は、結合剤、界面活性剤、可溶化剤、安定剤、滑沢剤、湿潤剤及び/又は希釈剤を含む。医薬組成物の剤形は、カプセル剤、錠剤、ピル剤、液剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、フィルムコーティング錠剤、沈降剤、ロゼンジ剤、舌下剤、咀嚼剤、バッカル剤、ペースト剤、シロップ剤、懸濁剤、エリキシル剤、乳剤、塗布剤、軟膏剤、貼付剤、湿布剤、経皮吸収型製剤、ローション剤、吸入剤、エアロゾル剤、注射剤又は坐剤である。
【0044】
代替的に、上記医薬組成物において、医薬組成物は、経口投与、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、脳内投与、鼻腔内投与、肺内投与、動脈内投与、関節内投与、皮内投与、硝子体内投与、骨髄内注入、腹腔内投与、髄腔内投与又は経皮投与等の種々の経路による投与に適する。
【0045】
代替的に、上記医薬組成物において、リウマチ性疾患は、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、未分化脊椎関節症、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、膠原病、クローン病、及び潰瘍性大腸炎から選択される。
【0046】
好ましくは、リウマチ性疾患に罹患している患者は、結核陽性又は結核陰性であり、リウマチ性疾患に罹患している患者は、B型肝炎を併発している又は併発していない。
【0047】
先行技術と比較して、本発明は以下の有益な効果を有する:
(1)抗原特異的薬剤であるSE-DR親和性ペプチド(特にFNS007)が、健常人、健常なカニクイザル及び健常なラットの免疫系に有意な影響を与えないことを初めて発見した。
(2)SE-DR親和性ペプチド(特にFNS007)が、アダリムマブと比較して、結核菌潜伏感染II型コラーゲン誘発関節炎モデル(CIA)ラットにおける結核の発症を有意に抑制することを初めて発見した。
(3)B型慢性肝炎に感染したII型コラーゲン誘発関節炎モデルマウス(CIA)において、SE-DR親和性ペプチド(特にFNS007)がアバタセプトと比較してB型肝炎の活性化率を有意に低下させることを初めて発見した。
(4)CIAラットにおいて、抗原特異的薬剤(特にFNS007、APL20)と非抗原特異的薬剤(アダリムマブ、アバタセプト又はメトトレキサート等)とを併用することで、疾患の進行を速やかに遅延させることができ、アダリムマブ、アバタセプト又はメトトレキサート等を単独で用いるよりも安全で、特に薬剤の漸減又は中止後も寛解が持続することを初めて発見した。
(5)抗原特異的薬剤(FNS007、APL20等)を他の非抗原特異的薬剤と併用することにより、関節リウマチを完全にコントロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】実施例9に示す実験のCIAラットモデルにおける投与中の各時点での炎症スコアのグラフである。
【
図2】実施例9に示す実験のCIAラットモデルにおける薬物中止中の各時点での炎症スコアのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
具体的な実施例を参照して以下に本発明をさらに説明する。本明細書に記載される具体的な実施例は、単に本発明を例示するものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されるべきである。
【0050】
実施例に具体的な技術又は条件が明記されていない場合は、当該分野の文献又は製品仕様書に記載されている技術又は条件に従うものとする。用いられる試薬又は器具のメーカーが明記されていない場合、これらの試薬又は器具は、全て通常のルートで購入できる従来品である。
【0051】
以下の実施例における実験方法は、特に指定が無い限り、全て従来の方法である。以下の実施例で用いられた試験材料は、特に指定が無い限り、全て市販のものである。
【0052】
本発明において、用いられるポリペプチドは、河北フィットネスバイオテクノロジー有限公司が固相合成法により合成し、高速液体クロマトグラフィーを用いて精製したものである。このポリペプチドの質量分析による解析の結果、ポリぺプチドの配列は正しく、純度は95%以上であった。
【0053】
第I部:SE-DR親和性ペプチドのインビトロ試験結果
SE-DR分子は、RAの病因に直接関連する。SE-DR分子は、II型コラーゲン(CII)、ヒートショックプロテイン60(Hsp60)、軟骨糖タンパク質(HCgp-39)等のRA関連自己抗原をインビボで提示し、さらに自己反応性T細胞を活性化させ、関節リウマチの発生を引き起こす。関節リウマチの治療戦略として重要なのは、自己抗原ペプチドによる自己反応性T細胞の活性化を競合阻害によって阻止することである。現在、主な考え方は、自己抗原ペプチドを改変して、自己抗原の結合を阻害するだけでなく、自己反応性T細胞を活性化しないようにすることであり、このためには、改変されたペプチドリガンドがSE-DRに対して所定の親和性を有するだけでなく、T細胞の活性化の抑制を示すことが必要である。以上の原理に基づき、我々は一連の改変ペプチドリガンドを設計及び合成し、SE-DRに対する親和性及びRA患者の末梢血T細胞に対する活性化能をスクリーニングした。具体的なステップ及び結果を実施例1及び2に示す。
【0054】
実施例1:ポリペプチド親和性の決定
反応系のセットアップ:96ウェルプレートに200μLの反応系を構成し、各ウェルに500nMのHLA-DR1、25nMの蛍光標識ポリペプチド、及び200μMから5倍で5回系列希釈した試験ポリペプチドを含有させた。品質管理ウェルとして、最後のウェルには試験ポリペプチドを入れなかった。品質管理ウェルでは、遊離ポリペプチドシグナルを測定するために、MHCII分子を含まない蛍光標識ポリペプチドを用いた。反応系はpH7.4であった。使用前にプロテアーゼ阻害剤カクテルを加え、37℃で30分間インキュベートした。蛍光変更度を読み取った。遊離標識ポリペプチドの平均値をFP_freeとし、競合ペプチドを含まないウェルの値をFP_no_compとした。他のウェルの相対結合率は、式=(FP_サンプル-FP_free)/(FP_no_comp-FP_free)に従って算出した。相対結合率と試験ポリペプチドの濃度を用いて曲線をプロットし、カーブフィッティングによりIC50値を算出した。
【0055】
SE-DR結合ポリペプチド及び非結合ポリペプチドのアミノ酸特性を総合的に考慮すると、P1、P4、P6及びP9がポリペプチドとSE-DRとの親和性に影響を与える重要なアミノ酸であることが特定され得る。中でも、P1は疎水性の側鎖を有するアミノ酸であり、類似の性質を有する希少又は非天然アミノ酸であり;P4部位は非極性、極性及び非電荷、極性及び負電荷を有するアミノ酸であり、類似の性質を有する希少又は非天然アミノ酸であり;P6部位は短い側鎖を有するアミノ酸であり、類似の性質を有する希少又は非天然アミノ酸であり;P9部位は中程度から短い側鎖を有するアミノ酸であり、類似の性質を有する希少又は非天然アミノ酸である。
【0056】
【表1】
(なお、表中のP1~P9はポリペプチドのHLA-DRへの結合部位を示す。ポリペプチドAPL36及びAPL37は特殊であるため、結合部位は示していない。)
【0057】
【表2】
(なお、表中のP1~P9はポリペプチドのHLA-DRへの結合部位を示す。)
【0058】
実施例2:PBMC刺激試験
15mLの遠心チューブに3mLのフィコールを加え、4mLの血液サンプルをフィコールの表面に滴下した。チューブを18~20℃、400gで30~40分間遠心した。上層の血漿をパスツールピペットで吸引し、PBMC層(約2mL)を吸引し、少なくとも3容量(6mL)のPBSで予め満たされた14mL遠心チューブに加えた。混合物を静かに再懸濁した。チューブを18~20℃、10分間で60~100gで遠心した。遠心後、上清をパスツールピペットで除去し、得られた細胞塊を6~8mLのPBSに懸濁し、18~20℃、60~100℃で10分間遠心し、上清を除去した。細胞を適量の1640完全培地に再懸濁し、細胞計数の後、1×106細胞/mlに希釈した。希釈した細胞懸濁液を96ウェルプレートに加えた。陽性コントロールであるアロステリックペプチドを100μlの細胞培養液に加え、最終濃度が10μg/mlになるようにした。この混合液に1640完全培地を200μlまで補充した。培養5日後、上清を吸引し、3000rpmで5分間遠心分離し、上清中のIL-6レベルをELISAにより検出した。
【0059】
【0060】
実施例1及び2を通じて、SE-DR親和性ペプチドのいくつかについて動物レベルでの薬力学的試験を行った。
【0061】
第II部:SE-DR親和性ペプチドの薬力学的結果
1.SE-DR親和性ペプチドは、CIAラットの疾患の進行を有意に抑制することができ、CIAラットの末梢血T細胞のTh2細胞及びTreg細胞への分化を促進した(実施例3)
コラーゲン誘発関節炎(CIA)モデルは、II型ウシコラーゲン(CII)と不完全フロイントアジュバント(IFA)を用いて調製したエマルジョンを雌のルイスラットの尾頭に皮内注射することにより確立した。モデル確立後、ラットの四肢の形態学的変化を毎日調べた。炎症スコアが1のとき、罹患ラットをモデル群、SE-DR親和性ペプチド群(それぞれFNS007(APL2)、APL7、APL9、APL20、ALP21、ALP37を投与)、自己抗原ペプチド群(すなわちII型コラーゲンCII263‐272)及び無関係ペプチド群に無作為に分けた。モデル群を除き、ポリペプチドの投与量は全て0.2mmolとした。コントロール群も設定し、1日おきに1回、15日間連続で尾静脈に注射した。有効性の解析には、ラットを登録した日から1日おきに1回、投与が終わるまで炎症スコアの曲線下面積(AUC)を用いた。さらに、投与終了後144時間に眼窩角静脈から血液を採取し、末梢血単核球中のヘルパーT細胞(Th1、Th2、Th17)及びT制御細胞(Treg)の割合をフローサイトメトリーにより測定した。
【0062】
その結果、SE-DR親和性ペプチド(FNS007(APL2)、APL7、APL9、APL20、ALP21、ALP37)を144時間反復投与したラットの末梢血におけるT細胞のサブタイプの割合の変化に及ぼす影響を表4に示す。コントロール群と比較すると、モデル群ではTh1細胞及びTh17細胞の割合、Th1/Th2細胞の割合が有意に増加し(p<0.05、p<0.01)、Th2細胞及びTreg細胞の割合は有意に減少した(p<0.05、p<0.01)。モデル群と比較して、SE-DR親和性ペプチド投与群では、Th1細胞及びTh17細胞の割合が有意に減少し(p<0.05、p<0.01)、Th2細胞及びTreg細胞の割合が有意に増加した(p<0.05、p<0.01)。その結果を表4に示す。結論として、SE-DR親和性ペプチドは、CIAラットにおいて、末梢血T細胞の炎症性Th1及びTh2細胞から抗炎症性Th2及びTreg細胞への分化を促進した。
【0063】
【表4】
注:コントロール群と比較した場合
#P<0.05、
##P<0.01;モデル群と比較した場合
*P<0.05、
**P<0.01。
【0064】
2.結核陽性RA患者におけるSE-DR親和性ペプチドの試験結果
2.1:SE-DR親和性ペプチドは正常の免疫機能を阻害しない
SE-DR親和性ペプチドは、自己抗原認識に関連するT細胞の活性化のみを阻害し、外来感染から身体を守る正常な免疫系には影響を与えないため、感染症及び腫瘍のリスクが無く、結核陽性のリウマチ患者にも使用可能である。従って、本発明は、結核陽性のRA患者に対する新規治療薬を提供することができ、抗リウマチ生物学的製剤がこのタイプのRA患者に使用できないという問題を解決できる。
【0065】
研究により、SE-DR親和性ペプチドは、健常人、健常なサル及び健常なラットの免疫系を有意に変化させないことが示されており、SE-DR親和性ペプチドが生体の正常な免疫機能を妨げず、生体の防御能力を低下させず、感染症及び腫瘍のリスクが無いことが示唆される。特に以下の実施例4~実施例6を参照されたい。
【0066】
実施例4
SDラットを用いて、SE-DR親和性ペプチドを1か月間連続投与した後のラットの免疫指標に及ぼす影響を調べた。SE-DR親和性ペプチドを6つの投与群(FNS007(APL2)、APL7、APL9、APL20、ALP21、ALP37)に分け、コントロール群も設定し、各群雌雄10匹ずつ、1日1回、4週間投与した。投与終了後、血清中の抗FNS007抗体、血清中の各種免疫グロブリン、血清中の補体、末梢血Tリンパ球、血清中のサイトカインについて解析した。
【0067】
その結果、SE-DR親和性ペプチド投与後は、コントロール群と比較して、全ての免疫指標に有意な変化が見られなかったことから、SE-DR親和性ペプチドは健常なラットの免疫系に影響を与えないことが示唆された。表5は、SE-DR親和性ペプチドが健常ラットの免疫細胞に及ぼす影響の結果を示す。
【0068】
【0069】
実施例5
カニクイザルを用いて、SE-DR親和性ペプチドを1か月間連続投与した後のカニクイザルの免疫指標に及び影響を検討した。SE-DR親和性ペプチドの投与スキームは、6つの投与群(FNS007(APL2)、APL7、APL9、APL20、ALP21、ALP37)に分け、コントロール群も設定し、各群雄3匹、雌3匹とし、1日1回、4週間連続投与した。投与終了後、血清中の抗FNS007抗体、他の血清型のイムノグロブリン、血清中の補体、末梢血Tリンパ球、血清中のサイトカイン等の免疫指標を観察した。
【0070】
その結果、投与後、全ての免疫指標においてコントロール群と比較して、有意な変化は観察されず、SE-DR親和性ペプチドが健常なサルの免疫系に影響を及ぼさないことが示された。表6に、SE-DR親和性ペプチドが健常なサルの免疫細胞に及ぼす影響を示す。
【0071】
【0072】
実施例6
SE-DR親和性ペプチドの単回投与がヒトの免疫指標に及ぼす影響について、健常人ボランティアを対象に検討した。用いたSE-DR親和性ペプチドはFNS007であり、投与方法は、3つの用量群(5、10及び20mg/case)に分け、プラセボコントロール群も設定した。投与後、異なる血清型の免疫グロブリン、末梢血Tリンパ球、血清中のサイトカイン等を観察した。その結果、投与後、プラセボ群及び投与前のベースライン値と比較して、全ての免疫指標に有意な変化は観察されず、SE-DR親和性ペプチドが健常人の免疫系に影響を与えないことが示された。表7にSE-DR親和性ペプチドが健常人の免疫細胞に及ぼす影響を示す。
【0073】
【0074】
2.2:SE-DR親和性ペプチドは結核感染を誘発するリスクが無い
さらに、SE-DR親和性ペプチドと生物学的製剤との間の感染誘導の差異を比較するために、本研究において結核に潜伏感染したCIAモデルラットを用い、アダリムマブ及びSE-DR親和性ペプチドによる関節炎治療中の結核発症率を比較した。その結果、アダリムマブ及びSE-DR親和性ペプチドは共に、CIAラットに対して良好な治療効果を示したが、アダリムマブは治療中に結核の再発を誘発する傾向があり、結核の発生率は60%と高かった。一方、モデル群及びSE-DR親和性ペプチド群では、結核の再発は認められなかった。以上のように、SE-DR親和性ペプチドは、関節リウマチに対して良好な治療効果を有し、結核感染率を上昇させず、結核陽性のRA患者に対しても安全であることが期待される。詳細は実施例7を参照されたい。
【0075】
実施例7
潜伏感染モデルの確立:雌ルイスラットに5×103CFU(コロニー形成単位)のErdman株を静脈内感染させた。ラットの肺及び脾臓組織中の結核菌(MTB)量は、感染後4週間で1×104以上に達した。この時点で、抗結核薬であるイソニアジド(0.1g/L)及びリファンピシン(15g/L)を飲料水に4週間添加した。ラットの肺及び脾臓からの結核菌培養は、薬剤中止2週間後に陰性となり、潜伏結核感染モデルの確立に成功したことが示唆された。
【0076】
上記の潜伏結核感染雌ルイスラットを用いて、潜伏結核感染CIAモデルを確立した。方法:潜伏結核感染ラットにウシCII及びIFAを配合した乳剤(コラーゲン100μg含有)を尾頭に皮内注射して免疫した。7日後、ラットに同じ方法で1回ブーストした。ラットの四肢の形態学的変化を毎日調べた。炎症スコアを1とし、モデル群、SE-DR親和性ペプチド群(FNS007(APL2)、APL7、APL9、APL20、ALP21、ALP37、0.2mmol)、アダリムマブ1mg/kg群にラットを無作為に分け、各群10匹とした。他の8匹の潜伏感染ラットは、モデル確立の対象とせず、コントロール群とした。モデル群及びコントロール群にPBSを投与した。各群のラットに対応する薬剤を5ml/kgの容量で尾静脈注射し、1日おきに1回、21日間連続投与した。投与後22日目にラットを犠牲にした。投与中、各群のラットの四肢の炎症スコアを評価し、犠牲時にラットの肺及び脾臓のMTB培養を検出した。
【0077】
モデル確立後、コントロール群と比較して、モデルラットの炎症スコアは有意に増加した。病態の全過程における薬剤の指標への影響を反映し、薬剤の総合的な効果を評価するために、炎症スコアの曲線下面積(AUC)を統計学的に解析した。その結果、モデル群と比較して、SE-DR親和性ペプチド群及びアダリムマブ群は、罹患ラットの炎症スコアを有意に低下させることができた(P<0.01)。犠牲の時点で、コントロール群、モデル群及びSE-DR親和性ペプチド群のラットの肺及び脾臓からの結核菌培養は全て陰性であったが、アダリムマブ群では、肺及び脾臓からの結核菌培養は6/10匹で陽性であった。また、アダリムマブ群では、投与中に立毛及び活動性低下等の明らかな毒性症状が認められたが、SE-DR親和性ペプチド投与後のラットの状態は良好であった。以上の結果から、SE-DR親和性ペプチドはラットにおける結核の再発リスクを増加させず、その安全性はアダリムマブよりも優れていることが示唆された。結果を表8に示す。
【0078】
【表8】
注:コントロール群と比較した場合
#P<0.05、
##P<0.01;モデル群と比較した場合
*P<0.05、
**P<0.01。
【0079】
2.3:SE-DR親和性ペプチドはB型肝炎(HBV)感染の誘発のリスクが無い
さらに、SE-DR親和性ペプチドと生物学的製剤との間の感染誘導における差異を比較するために、本研究ではB型慢性肝炎感染モデルであるCIAマウスを用い、アバタセプト及びSE-DR親和性ペプチドによる関節炎治療中のマウスにおけるB型肝炎の活性化を比較した。
【0080】
その結果、アバタセプト及びSE-DR親和性ペプチドは共に、CIAマウスに対して良好な治療効果を示したが、アバタセプトは投与期間中にB型肝炎を活性化する傾向があり、50%のマウスでALT値が100IU/mlに上昇した。一方、SE-DR親和性ペプチド群、モデル群及びコントロール群では、ALT値に有意差は認められなかった。このことから、SE-DR親和性ペプチドは、関節リウマチ治療中にB型肝炎の活性化率を上昇させることなく、B型肝炎に感染したRA患者にも安全に使用できることが期待される。詳細は、実施例8を参照されたい。
【0081】
実施例8
マウスにおけるB型慢性肝炎モデルの確立:DBA/1マウスにRaav8-1.3HBV(1×1012vg/mL)を尾静脈に注射し、HBV慢性B型肝炎モデルを確立した。
【0082】
B型慢性肝炎に感染したDBA/1マウスを用いて、B型慢性肝炎感染CIAモデルを確立した。方法:マウスにRaav8-1.3HBV(1×1012vg/mL)を尾静脈に注射した2日後に、ウシCII及びCFA(100μgのコラーゲンを含む)の乳剤をマウスの尾頭に皮内注射して免疫した。21日後、ウシCII及びIFAにより調製した乳剤(100μgのコラーゲンを含む)をマウスの腹腔内に1回注射してブーストした。その後、毎日マウスの四肢の形態学的変化を調べ、炎症スコア1で治療群に無作為に割り当てた。罹患マウスをモデル群、SE-DR親和性ペプチド群(FNS007(APL2)、APL7、APL9、APL20、ALP21、ALP37をそれぞれ50μmol投与)、アバタセプト群(100μg)に無作為に分け、各群12匹とした。また、B型肝炎潜伏感染マウス10匹はモデル確立に供せず、コントロール群とした。モデル群及びコントロール群には、PBSを投与した。各群のマウスに対応する薬剤を10ml/kgの量で尾静脈注射し、1日おきに1回、27日間連日投与した。投与後28日目にマウスを犠牲にした。投与中、各群のマウスの四肢の炎症スコアを評価した。ブースター免疫の日(尾静脈注射から22日後)及び犠牲時に、マウスのウイルス注射及び肝機能に関する血清学的指標を検出した。
【0083】
マウスのモデル確立後、コントロール群と比較して、モデルマウスの炎症スコアは有意に上昇した。全経過における薬物の指標への影響を反映し、薬物の総合的な効果を評価するため、炎症スコアの曲線下面積(AUC)を統計的に解析した。その結果、モデル群と比較して、SE-DR親和性ペプチド群とアバタセプト群は罹患マウスの炎暑スコアを有意に低下させることができた(P<0.01)。
【0084】
B型肝炎ウイルスの評価では、ブースター免疫時、すなわち尾静脈注射から22日後に全てのマウスでHBsAg、HBe抗原及びHBV DNAが検出され、ALT及びASTの平均値はそれぞれ45及び65U/Lであった。B型肝炎の慢性感染モデルの確立に成功したことが示唆された。犠牲となった時点で、コントロール群、モデル群及びSE-DR親和性ペプチド群のマウスの肝機能に関する血清学的指標は、ブースター免疫時と同様であったが、アバタセプト投与群のマウスの肝機能に関する血清学的指標は、有意に上昇し、50%のマウスでALT値が100IU/mlを超えるまで上昇したことから、マウスにおけるB型肝炎の活性化のリスクが大幅に上昇したことが示唆された。さらに、アバタセプト投与中は、立毛及び活動性の低下等の明らかな毒性症状が認められたが、SE-DR親和性ペプチド投与後のマウスの状態は良好であった。これらの結果は、SE-DR親和性ペプチドがマウスのB型肝炎活性化のリスクを増加させず、その安全性がアバタセプトよりも優れていることを示唆している。最終サンプリング時の各指標の結果は表9を参照されたい。
【0085】
【表9】
注:コントロール群と比較した場合
#P<0.05、
##P<0.01;モデル群と比較した場合
*P<0.05、
**P<0.01。
【0086】
3.RA患者に対する併用投与の試験結果
抗原特異的治療及び非抗原特異的治療の併用は、リウマチ治療の将来の方向性である。一方、非抗原特異的治療は、抗原特異的治療を促進し、臨床症状(炎症等)を早期に制御することができ、他方で、抗原特異的薬剤の免疫調節効果により、免疫寛容を再構築し、疾患を完全に制御できる。
【0087】
この理論を検証するために、本研究ではCIAモデルを用いて、SE-DR親和性ペプチド(抗原特異的治療薬)と、アダリムマブ/アバタセプト/メトトレキサート(非抗原特異的治療薬)の併用療法を検討し、SE-DR親和性ペプチド、アダリムマブ、アバタセプト又はメトトレキサート単独との差異を比較した。その結果、SE-DR親和性ペプチドとアダリムマブとの併用療法、SE-DR親和性ペプチドとアバタセプトとの併用療法及びSE-DR親和性ペプチドとメトトレキサートとの併用療法は、SE-DR親和性ペプチド単独療法と比較して、ラットの炎症反応を速やかに抑制できることが示された。
【0088】
アダリムマブ、アバタセプト又はメトトレキサート単独投与と比較して、併用群はより有効で且つ安全であった。SE-DR親和性ペプチド群及び併用群では、投与中止後も治療効果が維持されたが、アダリムマブ群、アバタセプト群又はメトトレキサート群では、投与中止後に炎症スコアが上昇した。このことからSE-DR親和性ペプチドと非抗原特異的治療薬(アダリムマブ/アバタセプト/メトトレキサート等)を併用することにより、臨床的寛解率を大幅に向上でき、薬剤中止後も寛解を持続できるため、薬剤の漸減や中止を実現できることが示唆された。詳細は実施例9、10及び11を参照されたい。
【0089】
実施例9
CIAモデルの確立のために雌のルイスラットを用いた。方法:ラットにウシCII及びIFAにより調製した乳剤を尾頭に皮内注射して免疫した。7日後、同様の方法で1回ブーストした。その後、ラットの四肢の形態学的変化を毎日調べた。モデル群、SE-DR親和性ペプチド群(FNS007、0.2mmol)、アダリムマブ群(1mg/kg)、併用療法群(FNS0070.2mmol+アダリムマブ1mg/kg)の3群に無作為に分け、各群10匹とした。別の雌ルイスラット8匹は、モデル確立の対象外とし、コントロール群とした。モデル群及びコントロール群ともにPBSを投与した。各群のラットに対応する薬剤を5mL/kgの量で尾静脈内注射し、1日おきに1回、21日間連日投与した。投与中(1日おきに1回)、各群のラットの四肢の炎症スコアを評価し、投与中の炎症スコアの曲線下面積(AUC)を算出した。投与中止中も各群のラットの四肢の炎症スコアを断続的に評価し(1日おきに1回)、投与中止後22日目にラットを犠牲にした。組織傷害評価のため、足関節のHE染色を行った。具体的な採点基準は以下の通りである:0=正常な滑膜組織;1=滑膜過形成及び炎症性細胞浸潤;2=パンヌス形成及び軟骨浸食;3=軟骨下骨浸食を伴う軟骨の大部分破壊;4=関節の完全性の喪失、アンキローシス。
【0090】
その結果、CIAラットモデルにおいて、FNS007単独群と比較して、FNS007及びアダリムマブの併用群は、ラットの炎症反応を速やかに抑制できることが示された。このことは、投与開始1周目の炎症スコアがFNS007単独群と比較して、併用群で低下し、炎症スコアのAUCが14.26から11.93に低下したことで実証された。この2群間に有意差があった(P<0.05)。併用療法群の炎症スコアAUCは全投与期間中に有意に減少し、炎症スコアは46.17から35.88に減少した。これら2群間には有意差があった(P<0.05)。さらに、アダリムマブと比較して、併用療法群の有効性はより顕著であり(炎症スコアは54.51から35.88へ、統計学的差あり、p<0.05)、ラットの感染症発生率は減少し、ラットの立毛及び鼻出血の症状は有意に改善した。同時に、21日目に投与を中止し、その後21日間の観察機関を設けた。投与中止中、FNS007群及び併用療法群は、治療効果を維持できたが、アダリムマブ群は治療効果を維持できず、このことは投与中止時と比較して炎症スコアが有意に上昇したことからも明らかであった(P<0.01)。その結果を表10、
図1及び2に示す。
【0091】
【表10】
注:コントロール群と比較した場合
#P<0.05、
##P<0.01;モデル群と比較した場合
*P<0.05、
**P<0.01。
【0092】
実施例10
CIAモデルの確立に雄のDBAマウスを用いた。方法:ウシCII及びCFA(100μgのコラーゲンを含む)の乳剤を尾頭に皮内注射することによりマウスを免疫した。21日後、ウシCII及びIFA(100μgのコラーゲンを含む)の乳剤を腹腔内に注射し、マウスを1回ブーストした。その後、マウスの四肢の形態学的変化を毎日観察し、炎症スコアが1の時点で治療群に無作為に分けた。罹患マウスをモデル群、SE-DR親和性ペプチド群(FNS007、0.2mmol)、アバタセプト群(5mg/kg)、併用療法群(FNS007、0.2mmol+アバタセプト、5mg/kg)の3群に無作為に分け、各群12匹とした。別の雌DBA/1マウス10匹はモデル確立の対象とせず、コントロール群とした。モデル群及びコントロール群ともにPBSを投与した。各群のマウスに対応する薬剤を10mL/kgの量で尾静脈注射し、1日おきに1回、28日間連日投与し、その後28日間回復させた。投与中(1日おきに1回)に各群のマウスの四肢の炎症スコアを評価し、投与中の炎症スコアの曲線下面積(AUC)を算出した。投与中止中も各群のラットの四肢の炎症スコアを継続的に評価し(1日おきに1回)、投与中止後28日目にラットを犠牲にした。組織傷害評価のために、足関節のHE染色を行った。具体的な採点基準は以下の通りである:0=正常な滑膜組織;1=滑膜過形成及び炎症性細胞浸潤;2=パンヌス形成及び軟骨浸食;3=軟骨下骨浸食を伴う軟骨の大部分破壊;4=関節の完全性の喪失、アンキローシス。
【0093】
その結果、CIAマウスモデルにおいて、FNS007単独群と比較して、FNS007とアバタセプトとの併用療法群は、マウスの炎症反応を速やかに抑制できることが示された。このことは、投与中の最初の10日間において、FNS007単独群と比較して、併用療法群の炎症スコアが低下し、炎症スコアのAUCが25.64から18.11に低下したことで実証された。両群間に有意差が認められた(p<0.05)。併用療法群の炎症スコアAUCは、全投与期間において90.23から75.87に有意に減少し、両群間に有意差が認められた(P<0.05)。また、アバタセプト群と比較して、併用療法群の有効性はより顕著であり(炎症スコアAUCは89.16から75.87に減少、統計学的差あり、p<0.05)、マウスの感染発生率は低下し、立毛及び鼻出血の症状は有意に改善した。同時に、28日目に投与を中止し、その後28日間の観察機関を設けた。投与中止中、FNS007群及び併用療法群は治療効果を維持できたが、アバタセプト群は治療効果を維持できず、このことは投与中止時と比較して炎症スコアが有意に上昇したことからも明らかであった(P<0.01)。その結果を表11に示す。
【0094】
【表11】
注:コントロール群と比較した場合
#P<0.05、
##P<0.01;モデル群と比較した場合
*P<0.05、
**P<0.01。
【0095】
実施例11
CIAモデルの確立のために雌ルイスラットを用いた。方法:ウシCII及びIFAで調製した乳剤を尾頭に皮内注射して免疫した。7日後、ラットに対して同一の方法により1回ブーストした。その後、ラットの四肢の形態学的変化を毎日観察し、炎症スコアが1のラットを無作為に治療群に割り振った。罹患ラットを無作為に3つの群、すなわちモデル群、SE-DR親和性ペプチド群(APL20、0.2mmol)、メトトレキサート群(0.5mg/kg)、及び併用療法群(APL20、0.2mmol+メトトレキサート、0.5mg/kg)に無作為に分け、各群10匹とした。別の8匹の雌ルイスラットは、モデル確立の対象とせず、コントロール群とした。モデル群及びコントロール群にPBSを投与した。各群におけるラットに対応する薬剤を5mL/kgの用量で尾頭に注射して投与し、メトトレキサートは週2回、その他の薬剤は1日おきに1回、21日間連日投与し、その後21日間回復させた。各群のラットの四肢の炎症スコアを投与中(1日おきに1回)に評価し、投与中の炎症スコアの曲線下面積(AUC)を算出した。投与中止中も各群のラットの四肢の炎症スコアを継続的に評価し(1日おきに1回)、投与中止後22日目にラットを犠牲にした。組織傷害評価のため、足関節のHE染色を行った。具体的な採点基準は以下の通りである:0=正常な滑膜組織;1=滑膜過形成及び炎症性細胞浸潤;2=パンヌス形成及び軟骨浸食;3=軟骨下骨浸食を伴う軟骨の大部分破壊;4=関節の完全性の喪失、アンキローシス。
【0096】
その結果、CIAラットモデルにおいて、APL20単独群と比較して、APL20及びメトトレキサートの併用療法群は、ラットの炎症反応を速やかに抑制できることが示された。このことは、投与中の最初の週において、FNS007単独群と比較して、併用療法群では炎症スコアが低下し、炎症スコアAUCが14.93から12.06に低下したことで実証された。両群間には有意差があった(P<0.05)。併用療法群の炎症スコアAUCは全投与期間中48.69から37.59に有意に減少し、両群間に有意差が認められた(P<0.05)。また、メトトレキサートと比較して、併用療法群の有効性はより顕著であり(炎症スコアAUCは67.69から37.59に減少し、統計学的差、p<0.05)、ラットの立毛及び鼻出血の症状は有意に改善され、動物の死亡率は減少した。同時に、21日目に投与を中止し、その後21日間の観察機関を設けた。投与中止中、APL20群及び併用療法群は治療効果を維持できたが、メトトレキサート群は治療効果を維持できなかった。このことは、投与中止時に比べて炎症スコアが有意に上昇したことからも明らかであった(P<0.01)。結果を表12に示す。
【0097】
【表12】
注:コントロール群と比較した場合
#P<0.05、
##P<0.01;モデル群と比較した場合
*P<0.05、
**P<0.01。
【0098】
以上のように、SE-DR親和性ペプチド及び非抗原特異的治療薬(アダリムマブ/アバタセプト/メトトレキサート等)を併用することにより、臨床的寛解率を大幅に向上させることができ、薬剤中止後も寛解を持続でき、薬剤の漸減又は中止を達成することができる。従って、本発明は、臨床的寛解率を大幅に改善することができ、薬剤の漸減又は中止が期待できる新規な医薬組成物を提供することができる。
【0099】
本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明において様々な修正及び変形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内であれば、そのような修正及び変形を含むことを意図している。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-03-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項14
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項14】
前記薬学的に許容可能な担体は、結合剤、界面活性剤、可溶化剤、安定剤、滑沢剤、湿潤剤及び/又は希釈剤を含み、前記医薬組成物の剤形は、カプセル剤、錠剤、ピル剤、液剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、フィルムコーティング錠剤、沈降剤、ロゼンジ剤、舌下剤、咀嚼剤、バッカル剤、ペースト剤、シロップ剤、懸濁剤、エリキシル剤、乳剤、塗布剤、軟膏剤、貼付剤、湿布剤、経皮吸収型製剤、ローション剤、吸入剤、エアロゾル剤、注射剤又は坐剤であることを特徴とする、請求項1
1に記載の医薬組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項15
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項15】
経口投与、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、脳内投与、鼻腔内投与、肺内投与、動脈内投与、関節内投与、皮内投与、硝子体内投与、骨髄内注入、腹腔内投与、髄腔内投与又は経皮投与の種々の経路による投与に適することを特徴とする、請求項1
1に記載の医薬組成物。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項16
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項16】
前記リウマチ性疾患は、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、未分化脊椎関節症、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、膠原病、クローン病、及び潰瘍性大腸炎から選択され、好ましくは、前記リウマチ性疾患に罹患している患者は、結核陽性又は結核陰性であり、前記リウマチ性疾患に罹患している患者は、B型肝炎を併発している又は併発していないことを特徴とする、請求項1
1に記載の医薬組成物。
【国際調査報告】