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特表2024-529524患者の急性低血圧エピソード事象を適応的に検出する方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】患者の急性低血圧エピソード事象を適応的に検出する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/022 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
A61B5/022 400L
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506229
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 JP2022030116
(87)【国際公開番号】W WO2023017793
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】10202108729V
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ソー ニ ニ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ チャールズ チ ヒン
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA08
4C017AA12
4C017AA14
4C017BC14
4C017BD06
4C017CC06
4C017FF08
(57)【要約】
本開示は、患者の急性低血圧エピソード(AHE)事象を適応的に検出するための方法及び装置を提供し、方法は、プロセッサによって、患者に関する信号を処理して、患者の少なくとも1つの平均動脈圧(MAP)閾値を決定すること(101)と、プロセッサによって、少なくとも1つのMAP閾値に基づいて患者のAHE事象を検出すること(102)と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の急性低血圧エピソード(AHE)事象を適応的に検出する方法であって、
プロセッサによって、前記患者に関する信号を処理して、前記患者の少なくとも1つの平均動脈圧(MAP)閾値を決定することと、
前記プロセッサによって、前記少なくとも1つのMAP閾値に基づいて、前記患者のAHE事象を検出することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記患者の前記少なくとも1つの平均動脈圧(MAP)閾値を決定するために前記信号を前記プロセッサによって処理する前記ステップは、
前記信号のベースラインからの前記信号の少なくとも1つの変動を決定すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロセッサによって、前記患者の前記AHE事象を検出する前記ステップは、
前記信号の1又は複数のMAP値を前記少なくとも1つのMAP閾値と比較すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プロセッサによって、前記患者の前記AHE事象を検出する前記ステップは、
前記1又は複数のMAP値に関連する持続時間が事前構成された閾値持続時間よりも長いかどうかを判定すること
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記プロセッサによって、前記患者の前記AHE事象を検出する前記ステップは、
前記少なくとも1つのMAP閾値が第1の事前構成されたMAP閾値よりも低いかどうかを判定すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記プロセッサによって、前記患者の前記AHE事象を検出する前記ステップは、
前記信号のベースラインの平均MAP値が第2の事前構成されたMAP閾値よりも低いかどうかを判定すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記プロセッサによって、前記患者の前記1又は複数のAHE事象を検出する前記ステップは、
前記少なくとも1つのMAP閾値及び前記信号に基づいて、前記患者の前記AHE事象の発症及び持続時間を検出すること
を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記患者の前記AHE事象の前記発症及び前記持続時間、並びに前記AHE事象に関連する1又は複数のMAP値をデータベースに記憶すること
を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
MAP波形を受信することを更に含み、前記信号は、前記MAP波形を含む、
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの臨床データを受信することを更に含み、前記少なくとも1つの臨床データは、血液成分、尿成分、血行動態波形データ、人口統計データ、併存疾患データ、血圧、中心静脈圧、フレイルスコア、及び周術期管理データのうちの少なくとも1つを含み、前記信号は、前記少なくとも1つの臨床データを含む、
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記プロセッサによって、前記少なくとも1つのMAP閾値及び前記信号に基づいて、前記患者の後続のAHE事象の予測を決定すること
を更に含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
時間フレームに関する入力を受信することを更に含み、前記予測は、前記時間フレーム内の前記患者の前記後続のAHE事象の発生の予測を含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記プロセッサによって、前記患者の前記後続のAHE事象の前記予測を決定する前記ステップは、
前記後続のAHE事象のMAP値を決定することを含み、前記MAP値は、前記後続のAHE事象の重症度レベルに関する、
請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記信号内の少なくとも1つの特徴を抽出することを更に含み、前記後続のAHE事象の前記予測の前記決定は、前記信号の前記少なくとも1つの特徴に基づく、
請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記プロセッサによって、前記患者の前記後続のAHEの前記予測を決定する前記ステップは、
複数の患者に関する複数の信号から抽出された前記少なくとも1つの特徴に基づいて2つ以上の予測を決定することと、
前記複数の信号から抽出された前記少なくとも1つの特徴に基づいて前記複数の患者の後続のAHE事象の最適な予測を決定するために前記2つ以上の予測を比較することであって、前記最適な予測は、前記2つ以上の予測のうちの1つ又は組み合わせであり、前記患者の前記後続のAHEの前記予測は、前記複数の患者の前記後続のAHE事象の前記最適な予測に基づく、ことと、
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
患者の急性低血圧エピソード(AHE)事象を適応的に検出するための装置であって、
少なくとも1つのプロセッサと、
コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリと、を備え、
前記少なくとも1つのメモリ及び前記コンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサとともに、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法を前記装置に少なくとも実施させるように構成される、
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には、患者の急性低血圧エピソード(AHE)事象を適応的に検出するための方法及び装置に関するが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
低血圧は、心臓循環障害の徴候である。深刻な低血圧は、手術を受けている患者及び危篤状態の患者においてよく見られる。主要な外科的処置を受けている患者では、一般に全身麻酔に伴って術中の低血圧が起こる。それはまた、術後の有害な合併症にも関連する。
【0003】
急性低血圧エピソード(AHE)事象の持続時間及び重症度は、臓器低灌流及び機能不全に関連する患者にとって重大な事象であり、不可逆的ショックをもたらし得る。それは、死亡に至る可能性のある経路の始まりを表す。
【0004】
AHE事象は、効果的かつ迅速な介入を必要とする。換言すれば、AHE事象は、低血圧値が既に発生した後に、反応的に処置されなければならない。適時に検出された場合、適切な介入は、患者に対するリスクを著しく低下させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
今日まで、手術室又は集中治療室の監視システムは、数値及び波形の血圧データを処理し、リアルタイムで連続的に表示することを可能にしている。しかしながら、AHE事象の管理は、主に、低血圧値が既に生じた後の昇圧薬及び流体による反応性処置から構成される。特に、臨床医は、患者のAHE事象を検出するために絶対血圧(例えば、平均動脈圧(MAP))閾値又は短期血圧変化に反応し、深刻な又は持続的な低血圧事象を回避するために患者を反応的に治療する。しかしながら、低血圧値は、典型的には、血行力学的不安定性のプロセスの後期に、すなわち、全体的な心血管動態が既に著しく変化しており、代償機構が消耗されているときに生じる。
【0006】
更に、AHE事象が臨床的に明らかになる前にAHE事象を予測することは、臨床医がその事象を先制的に治療することを可能にし、それによって低血圧の持続時間及び重症度を低減する。ここで、AHE事象は、機械学習アルゴリズム及び血圧の厳密な閾値(例えば、MAP)を使用して、血圧波形に基づいて、それが起こる前に数分のスケールで予測することができる。しかしながら、心血管生理機能は高度に相互依存しており、複雑なネットワーク内で機能し、各個々の患者内の補償機構によって影響を受けるため、単一の厳密な血圧閾値を使用して異なる患者の複雑な心血管系を分析することは困難である。
【0007】
したがって、AHE事象の早期特定、又は臨床的に明らかになる前の患者のAHE事象の予測のために、各患者に対して個人化されたMAP閾値を提供する必要がある。これにより、臨床医は、先制処置戦略を適用し、患者のAHE事象の発生、持続時間、及び重症度を低減させることが可能になる。
【0008】
本明細書では、上記の問題のうちの1又は複数に対処する、患者のAHE事象を適応的に検出するためのデバイス及び方法の実施形態が開示される。
【0009】
更に、他の望ましい特徴及び特性は、添付の図面及び本開示のこの背景と併せて、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様では、本開示は、患者の急性低血圧エピソード(AHE)事象を適応的に検出するための方法であって、プロセッサによって、患者に関する信号を処理して、患者の少なくとも1つの平均動脈圧(MAP)閾値を決定することと、プロセッサによって、少なくとも1つのMAP閾値に基づいて患者のAHE事象を検出することと、を含む方法を提供する。
【0011】
第2の態様では、本開示は、少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリと、を備える、患者のAHE事象を適応的に検出するための装置を提供し、少なくとも1つのメモリ及びコンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサを用いて、装置に少なくとも、第1の態様による方法を実施させるように構成される。
【0012】
開示される実施形態の更なる利益及び利点は、明細書及び図面から明らかになるであろう。利益及び/又は利点は、明細書及び図面の種々の実施形態及び特徴によって個別に得ることができ、かかる利益及び/又は利点のうちの1又は複数を得るために全てが提供される必要はない。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、上記の問題のうちの1又は複数に対処する、患者のAHE事象を適応的に検出するためのデバイス及び方法を提供することが可能である。
【0014】
添付の図面は、同様の参照番号が別々の図を通して同一又は機能的に類似の要素を指し、以下の詳細な説明とともに本明細書に組み込まれ、その一部を形成し、非限定的な例としてのみ、種々の実施形態を示し、本実施形態による種々の原理及び利点を説明する役割を果たす。
【0015】
本発明の実施形態は、単なる例として、図面と併せて、以下に記載される説明から、当業者により良く理解され、容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の種々の実施形態による、患者の急性低血圧エピソード(AHE)事象を適応的に検出するための方法を示すフローチャートを示す。
【0017】
図2】本開示の種々の実施形態による、患者のAHE事象を適応的に検出するための装置を示すブロック図を示す。
【0018】
図3】本開示の一実施形態による、信号ソース301と、患者の平均動脈圧(MAP)閾値を決定するための個人化AHE定義モジュール304とを示すブロック図300を示す。
【0019】
図4】本開示の一実施形態による患者のMAP閾値を決定する方法の一部を示すフローチャートである。
【0020】
図5】本開示の一実施形態による、患者のMAP閾値を決定するために使用される2状態モデルの2状態モデルの2つの異なる状態sを示す、時間tに対する平均θのグラフを示す。
【0021】
図6A】本開示の一実施形態による、MAP波形及び処理されたMAP波形をそれぞれ示す。
【0022】
図6B】本開示の一実施形態による、MAP波形及び処理されたMAP波形をそれぞれ示す。
【0023】
図7】本開示の一実施形態による、処理されたMAP波形及び個人化されたAHEパラメータを示す。
【0024】
図8】本開示の一実施形態による患者のMAP閾値を決定する方法の他の一部を示すフローチャートである。
【0025】
図9A】本開示の種々の実施形態による、種々のMAP波形及びその中で検出されるAHE事象を示す。
【0026】
図9B】本開示の種々の実施形態による、種々のMAP波形及びその中で検出されるAHE事象を示す。
【0027】
図10A】本開示の種々の実施形態による、種々のMAP波形及びその中で検出されるAHE事象を示す。
【0028】
図10B】本開示の種々の実施形態による、種々のMAP波形及びその中で検出されるAHE事象を示す。
【0029】
図10C】本開示の種々の実施形態による、種々のMAP波形及びその中で検出されるAHE事象を示す。
図11A】本開示の種々の実施形態による、種々のMAP波形及びその中で検出されるAHE事象を示す。
【0030】
図11B】本開示の種々の実施形態による、種々のMAP波形及びその中で検出されるAHE事象を示す。
【0031】
図11C】本開示の種々の実施形態による、種々のMAP波形及びその中で検出されるAHE事象を示す。
図12A】本開示の種々の実施形態による、種々のMAP波形及びその中で検出されるAHE事象を示す。
【0032】
図12B】本開示の種々の実施形態による、種々のMAP波形及びその中で検出されるAHE事象を示す。
【0033】
図12C】本開示の種々の実施形態による、種々のMAP波形及びその中で検出されるAHE事象を示す。
図13A】本開示の種々の実施形態による、種々のMAP波形及びその中で検出されるAHE事象を示す。
【0034】
図13B】本開示の種々の実施形態による、種々のMAP波形及びその中で検出されるAHE事象を示す。
【0035】
図13C】本開示の種々の実施形態による、種々のMAP波形及びその中で検出されるAHE事象を示す。
【0036】
図13D】本開示の種々の実施形態による、種々のMAP波形及びその中で検出されるAHE事象を示す。
【0037】
図14】本開示の一実施形態による、患者のAHE事象を適応的に検出及び予測するための低血圧予測モジュールのブロック図を示す。
【0038】
図15】本開示の一実施形態による、患者のAHE事象の予測を決定するために信号を前処理し、信号の特徴を抽出する方法の一部を示すフローチャートを示す。
【0039】
図16】本開示の一実施形態による、患者のAHE事象を適応的に検出及び予測するために使用されるスタッキングアンサンブルモデルベースの予測モデリングエンジン1601の入力及び出力を示すブロック図1600を示す。
【0040】
図17A】本開示の種々の実施形態による、患者のAHE事象を適応的に検出及び予測するために使用される種々の入力データを示す。
【0041】
図17B】本開示の一実施形態による、患者のAHE事象を適応的に検出及び予測するための入力として使用されるMAP波形を示す。
【0042】
図18】本開示の一実施形態によるモデル訓練に用いられる複数の患者に関する信号から抽出された特徴を示す。
【0043】
図19】本開示の一実施形態による、患者のAHE事象を適応的に検出及び予測するために使用される信号内の少なくとも1つの特徴を抽出するプロセスを示す図を示す。
【0044】
図20】本開示の一実施形態による、患者のAHE事象を検出及び予測するための装置を示すブロック図を示す。
【0045】
図21】本開示の一実施形態による、患者のAHE事象を検出及び予測するためのプロセスを示すフロー図を示す。
【0046】
図22図1の方法を実行し、図2の装置を実装するために使用するのに適した例示的なコンピューティングデバイスの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
(用語の説明)
患者-患者は、自宅にいるユーザ又は人であってもよく、例えば救急車又は医療装備車両を介して病院、例えば事故及び救急科に送られるか、又は現在入院しており、自身の平均動脈圧(MAP)閾値が決定されること、自身のMAP閾値に基づいてAHE事象が適応的に検出されること、並びにその後のAHE事象が予測されることを必要とする。
【0048】
信号-信号は、収縮期血圧(BPSys又はSBP)、心拍数(HR)、呼吸数(RESP)、MAP、拡張期血圧(BPDia又はDBP)、脈圧(PP)、血中酸素飽和度(SPO)、並びに、例えば、集中治療室(ICU)、救急科(ED)で行われる機器又は測定、作業療法(OT)によって行われる入力、患者監視ユニット(PMU)、及び/又は周術期部門からの患者データ、救急車又は医療装備車両、病棟からのデータ、及び/又は電子医療記録(EMR)から記憶又は受信される他の臨床データなどの血行動態データの1つ又は組み合わせであり得る。かかるデータは、患者から直接的又は間接的に侵襲的又は非侵襲的に取得することができる。以下の種々の実施形態では、MAPデータ又はMAP値は、患者のAHEの検出及び予測のための信号として使用される。本方法及び装置は、他の血行動態又は臨床データを使用して、類似結果を達成するように構成され得ることを理解されたい。
【0049】
平均動脈圧(MAP)閾値-MAP閾値は、患者のAHE事象を検出するために、患者に関するMAP波形の値と比較するために使用される。従来、60mmHg又は65mmHgの固定MAP閾値が定義され、任意の患者のMAP波形が、30分の期間内の時間の90%において、その固定MAP閾値より低いMAP値を有する場合、AHE事象が検出される。対照的に、以下の種々の実施形態は、個人化されたMAP閾値に基づいて、異なる患者のための個人化されたAHE定義を提供する。換言すれば、それぞれの個人化されたAHE事象の検出のために、異なる患者に対して異なるMAP閾値が定義される。MAP閾値は、それぞれのベースライン及びそれら自体のMAP波形の変動を使用して計算される。かかるMAP閾値(複数可)は、MAP波形ベースラインからオフセットされたMAP値であり、オフセット量は、患者のMAP波形の変動に依存する。他の決定要因に従って、患者のMAP波形が閾値(複数可)と交差するとき、すなわち、患者のMAPが1つの状態から別の状態に切り替わったとき、例えば、制御外(OOC)状態から制御内又はベースライン状態に切り替わったとき、又はその逆のときに、個人化されたAHEが検出される。
【0050】
ベースライン-信号のベースラインは、値、導出された値(例えば、平均値又は複数の値の平均値)、残りの値に対して比較するために使用される信号の点又は部分、信号の測定値又は部分を指し、患者に対する信号及びMAP閾値(複数可)の偏差を判定することができる。一例では、ベースラインは、信号の第1の部分、例えば、信号の最初の数秒、数分、及び数時間以内の値又は測定値から直接取られるか、又は導出される。別の例では、信号のベースラインは、信号の値、点、又は部分に、かかる値、点、又は部分における類似測定値を連続的に検出すると自動的に、あるいはオペレータ又は分析者によって手動で、設定することができる。以下の種々の処理及び計算において、ベースラインは、ベースライン測定値又はθと称されることがある。
【0051】
変動-信号の変動は、信号の値又は測定値の分散を指す。以下の種々の処理及び計算において、変動はvar(z)と称される。
【0052】
特徴-特徴は、信号、典型的には信号のサンプル又はセグメント化された部分の属性に関する。かかる特徴は、特徴データによって計算及び表現され、他の信号と比較されて、それらが同様の特徴、属性、又は特徴データを示すかどうかを判定することができる。特徴の例は、最大パワー、平均パワー、最小パワー、最大頻度、平均頻度、中央頻度、最小頻度、セグメント化されたデータの最大、セグメント化されたデータの平均、セグメント化されたデータの最小、セグメント化されたデータの分散、セグメント化されたデータの歪度、セグメント化されたデータの尖度、セグメント化されたデータのRMS値などを含む。一例では、患者のAHE事象の発生の予測は、患者に関する特徴データを、AHEを有する/有しない他の患者の特徴データと比較することによって決定され得る。
【0053】
本発明の実施形態は、単なる例として、図面を参照して説明される。図面における同様の参照番号及び文字は、同様の要素又は同等物を指す。
【0054】
以下の説明の一部の部分は、コンピュータメモリ内のデータに対する動作のアルゴリズム及び機能的又は記号的表現に関して明示的又は暗示的に提示される。これらのアルゴリズム的記述及び機能的又は記号的表現は、データ処理技術の当業者によって、彼らの作業の内容を他の当業者に最も効果的に伝えるために使用される手段である。アルゴリズムは、本明細書では、概して、所望の結果をもたらす自己矛盾のない一連のステップであると考えられる。これらのステップは、記憶、転送、結合、比較、及びその他の操作が可能な電気信号、磁気信号、又は光信号などの物理量の物理的操作を必要とするものである。
【0055】
特に明記しない限り、以下から明らかなように、本明細書を通して、「受信する」、「計算する」、「決定する」、「更新する」、「生成する」、「初期化する」、「出力する」、「受信する」、「取り出す」、「識別する」、「分散させる」、「認証する」などの用語を利用する説明は、コンピュータシステム内の物理量として表されるデータを操作し、コンピュータシステム又は他の情報記憶、伝送、若しくは表示デバイス内の物理量として同様に表される他のデータに変換する、コンピュータシステム又は同様の電子デバイスのアクション及びプロセスを指すことが理解されよう。
【0056】
本明細書はまた、方法の動作を実施するための装置を開示する。かかる装置は、必要とされる目的のために特別に構築されてもよく、又はコンピュータ内に記憶されたコンピュータプログラムによって選択的にアクティブ化若しくは再構成されるコンピュータ若しくは他のデバイスを備えてもよい。本明細書に提示されるアルゴリズム及び表示は、任意の特定のコンピュータ又は他の装置に本質的に関連しない。本明細書の教示によるプログラムとともに、種々の機械を使用することができる。代替的に、必要とされる方法ステップを実施するためのより特化された装置の構築が適切であり得る。コンピュータの構造は、以下の説明から明らかになるであろう。
【0057】
加えて、本明細書はまた、本明細書に記載される方法の個々のステップがコンピュータコードによって実施され得ることが当業者に明らかであるという点で、コンピュータプログラムを暗示的に開示する。コンピュータプログラムは、任意の特定のプログラム言語及びその実装形態に限定されることを意図していない。種々のプログラミング言語及びそのコーディングが、本明細書に含まれる本開示の教示を実装するために使用され得ることが理解されよう。更に、コンピュータプログラムは、任意の特定の制御フローに限定されることを意図していない。本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、異なる制御フローを使用することができる、コンピュータプログラムの多くの他の変形形態がある。
【0058】
更に、コンピュータプログラムのステップのうちの1又は複数は、順次ではなく並列に実施され得る。かかるコンピュータプログラムは、任意のコンピュータ可読媒体上に記憶され得る。コンピュータ可読媒体は、磁気ディスク若しくは光ディスク、メモリチップ、又はコンピュータとインターフェースするのに適した他の記憶デバイスなどの記憶デバイスを含み得る。コンピュータ可読媒体はまた、インターネットシステムにおいて例示されるようなハードワイヤード媒体、又はGSMモバイル電話システムにおいて例示されるような無線媒体を含み得る。コンピュータプログラムは、かかるコンピュータにロードされて実行されると、好ましい方法のステップを実装する装置を効果的にもたらす。
【0059】
(例示的な実施形態)
【0060】
本開示の種々の実施形態は、患者のAHE事象を適応的に検出するための方法及び装置に関する。
【0061】
従来、AHE事象の予測は、30分の時間フレーム内の時間の90%における60mmHg以下のMAP値に対するAHEの定義に基づいている。60mmHgのこの固定された厳密な閾値は、全ての患者に適用される。また、予測モデルは、ニューラルネットワークを用いた二項分類又はロジスティック回帰、教師あり学習などの二項クラスモデルに基づいている。
【0062】
最近、このアルゴリズムは、EV1000及びHemosphere臨床モニタリングプラットフォーム(Edwards Lifesciences社製)の特徴として開発された。特に、0~100の範囲の低血圧予測指数(GPI)値が20秒毎に計算され、モニタ上に表示される。HPI値は、少なくとも1分間65mmHg未満のMAP値であると定義される低血圧事象を患者が発症する確率を表す。HPI値が85を超えると、可聴警報が作動する。
【0063】
従来の及び既存のAHE検出ソリューションに関して特定されてきた2つの主な問題、すなわち、1)個々の患者を考慮しない単一のMAP閾値、例えば60mmHg又は65mmHgに基づく低血圧の従来の定義の使用、2)所定の発症時間におけるAHEの発生の確率及びyes/no情報のみを提供するための予測システムにおける二項分類又はロジスティック回帰の使用が存在する。
【0064】
特に、第1の問題の記述に関して、一部の人々は、90mmHgの収縮期で良好に生活し、他の人々は、100mmHg以下の収縮期で低血圧であり、一方、アテローム性動脈硬化症及び高血圧を有する高齢者は、例えば、120mmHgの収縮期で低血圧であり得る。高血圧の病歴を有する患者については、40mmHgを超えるMAPの減少は、例え圧力がなお60mmHgを超えていても、低血圧と見なされる。しかし、高血圧患者又は高齢者は、より高いMAPレベルを必要とする。
【0065】
更に、MAPは次の式(1)に基づいて計算される。
【数1】
ここで、DBPは拡張期血圧、SBPは収縮期血圧である。MAPは臓器灌流の指標であることに留意されたい。MAPの臨界値は臓器毎に異なるため、全ての臓器の適切な灌流を保証する最小MAPは存在しない。
【0066】
自己調節閾値は、臓器間及び個体間で異なる。MAPを増加させ、標的MAPを取得するために、流体(静脈還流の減少を伴うショック状態において)及び昇圧薬が必要とされる。高い標的MAP値は、より高い負荷の昇圧薬を必要とし、過度の動脈全身性血管収縮を誘発する可能性があり、これは臓器虚血を誘発する可能性がある。重要なことに、個々の患者は、MAPの特定のベースラインを有しており、それらは、同じ群の下で考慮されるべきではない。これは、欧州集中治療医学会(European Society of Intensive Care Medicine)によって更に支持されており、彼らは、ショックを処置する際の血圧標的を個別化することについての彼らの最新のコンセンサスについての新たな記述を提供している。
【0067】
第2の問題の記述に関して、既存の予測モデルは、患者のAHE事象の発生のyes/no情報を提供するのみであり、AHE事象の重症度レベル、又はMAP値に基づいて深刻若しくは持続性低血圧を判定するための他の重要なパラメータに言及しておらず、臨床医は、短期的な血圧変化のための絶対血圧閾値にしか反応することができない。
【0068】
したがって、現在のモデルを改善し、新しい低血圧予測モデルを開発するために、MAP閾値に対するAHEの個人化された定義、及び連続血行動態波形データとの統合を提供することによって、患者のAHE事象を適応的に検出する必要がある。
【0069】
本開示は、以下の種々の実施形態において、患者のMAP波形上の患者固有又は個人化されたAHEを定義し、患者固有又は個人化されたMAP閾値に基づいて患者のAHE事象を検出するための方法、又は方法を実施するように構成された検出モジュールを備える装置を説明する。
【0070】
有利には、本開示は、昇圧のより高い負荷を防止することができる最適な標的MAP閾値を得るために、MAP値の変動に基づいて低血圧の個人化された定義を提供する。本開示はまた、後続のAHE事象の潜在的な発生並びにAHE事象又は低血圧の重症度のレベルを決定するための方法を実施するように構成されたマルチレベル予測モジュールを含む方法及び装置を提供する。
【0071】
本開示はまた、以下の種々の実施形態において、患者のMAP波形上の患者固有の又は個人化されたAHEに基づいて、患者の後続のAHE事象の短期から長期への予測を決定するための方法、及び方法を実施するように構成されたマルチレベル予測モジュールを備える装置を説明する。これにより、5分~2時間前に低血圧の予測を提供することができ、異なるケア設定のための先制処置において有益であり得る短期、中期から長期の予測がカバーされる。
【0072】
本開示は、患者の状態を監視するために、術中管理、集中治療、及び術後ケアの設定(回復病棟)において適用できる患者のAHE事象を適応的に検出するための方法及び装置を更に提供する。かかる方法及び装置は、日常的に患者モニタユニットからの血行動態データを利用するため、それらは、既存のヘルスケアユニット及び設定に後付けすることができ、ひいては、血行動態又は他の臨床データを取得するためのいかなる特別かつ追加のハードウェアデバイスも要求しない。全体として、本開示に記載される患者のAHE事象を適応的に検出するための方法及び装置は、従来のAHE事象検出システムにおける上述の問題を解決することができる。
【0073】
図1は、本開示の種々の実施形態による、患者の急性低血圧エピソード(AHE)事象を適応的に検出する方法を示すフローチャート100を示している。ステップ101において、患者に関する信号をプロセッサによって処理して、患者に関する少なくとも1つのMAP閾値を決定するステップが実行される。ステップ102において、プロセッサによって、少なくとも1つのMAP閾値に基づいて患者のAHE事象を検出するステップが実行される。
【0074】
図2は、本開示の種々の実施形態による、患者のAHE事象を適応的に検出するための装置202を示すブロック図200を示している。一実装形態では、装置202は、概して、少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリと、を備える物理デバイスとして説明され得る。少なくとも1つのメモリ及びコンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサとともに、物理デバイスに図1に記載された動作を実施させるように構成される。
【0075】
一実装形態では、装置202は、ソース201から、例えば、集中治療室(ICU)、救急科(ED)で行われる機器又は測定、作業療法(OT)によるデータ入力、患者監視ユニット(PMU)、及び/又は周術期部門からのデータ、救急車又は医療装備車両、病棟、及び/又は電子医療記録(EMR)からのデータから、MAP波形及び他の臨床データなどの信号を受信することができる。装置202は、患者の少なくとも1つのMAP閾値を決定し、信号に基づいて個人化されたAHEを定義するように構成された個人化AHE定義モジュール204と、信号に基づいて患者の後続のAHE事象の予測を決定するように構成された低血圧エピソード予測モジュール206とを備える。
【0076】
一実装形態では、個人化AHE定義モジュール204は、患者のMAP波形を入力として受信し、AHE事象の発症、AHE事象の持続時間、及び入力に基づくかかる検出に使用される個人化MAP閾値を含む、患者のAHE事象の検出を出力するように構成される。一実施形態では、低血圧エピソード予測モジュール206は、MAP波形及び他の臨床データを受信し、入力に基づいてAHE事象発生の予測並びにAHE事象の重症度レベルを出力するように構成される。
【0077】
装置202は、ソース201からの信号及び/又は個人化AHE定義モジュール204及び低血圧エピソード予測モジュール206の入力及び出力を、医師、医療スタッフ、又は分析者などの装置202のオペレータへのユーザインターフェース211に表示するように構成された監視モジュール210を更に備えることができる。オペレータはまた、ユーザインターフェース211と対話し、監視モジュール210を介して装置202にデータを入力することができる。監視モジュール210が装置202の一部であることが図2に示されているが、監視モジュール210は、スタンドアロンデバイス又は別のデバイスの一部であり得、接続を通して装置202と通信していることを理解されたい。かかる接続は、有線、無線(例えば、NFC通信、Bluetoothなどを介して)、又はネットワーク(例えば、インターネット)を経由してもよい。
【0078】
装置は、ソース201からの信号、並びに個人化AHE定義モジュール204及び低血圧エピソード予測モジュール206の入力及び出力を記憶するための、装置202によってアクセス可能なデータストレージ208を備えることができる。図2には、データストレージが装置202の一部であることが示されているが、データストレージ208は、装置202の一部を形成しなくてもよく、接続を介して装置と通信することを理解されたい。かかる接続は、有線、無線(例えば、NFC通信、Bluetoothなどを介して)、又はネットワーク(例えば、インターネット)を経由して、又はクラウドサーバ接続を経由してもよい。別の実装形態では、モジュール204、206、210及び信号ソース201の各々は、その入力/出力データ及び信号を記憶するためのそれ自体のデータストレージを備え得る。
【0079】
図3は、本開示の一実施形態による、信号ソース301と、患者の平均動脈圧(MAP)閾値を決定するための個人化AHE定義モジュール304とを示すブロック図300を示している。
【0080】
信号ソース301は、患者監視ユニット313(例えば、患者のベッドサイドモニタ)、侵襲的血圧監視デバイス314(例えば、動脈管血圧監視デバイス、中心静脈圧監視デバイス)、及び非侵襲的又は低侵襲的血圧監視デバイス315(例えば、CNSystemsによる連続血圧監視システム)のうちの1つ又は組み合わせを含むデバイスを使用して患者から測定された又は患者に対して伝導された患者の連続MAP波形のソースである。ソース301は、デバイスの信号及び測定値を記憶するように構成されたデータストレージを更に備えることができる。一実装形態では、データストレージ311は、個人化AHE定義モジュール304に含まれ得る。
【0081】
一実装形態では、個人化AHE定義モジュール304は、概して、少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリと、を備える物理デバイスの一部として説明され得る。少なくとも1つのメモリ及びコンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサとともに、物理デバイス又は部品に、ソース301から信号を受信させ、ステップ321~324における動作を実施させるように構成される。特に、個人化AHE定義モジュール304は、ステップ321において、信号ソース301から直接、及び/又はデータストレージ311を介して、患者に関するMAP波形データを受信するステップを実行するように構成され得る。モジュール304は、ステップ322において、信号を前処理し、信号内の欠損値を充填するなどの信号を処理するステップと、ステップ323において、変化点理論を使用して関連する活動検出を開始するステップと、ステップ324において、患者のMAP閾値を決定し、AHE事象の発症及び持続時間を含む、患者のAHE事象の検出を提供するステップと、を行うように更に構成され得る。患者のMAP閾値並びに検出されたAHE発症及び持続時間に関するデータは、ソース311のデータストレージ311に伝送することができる。
【0082】
図4は、本開示の一実施形態による、患者のMAP閾値を決定する方法の一部を示すフローチャートを示している。ステップ401において、前処理されたMAP波形又は時系列データを取得するステップが実行される。ステップ402において、ベースライン状態時点を設定するステップが実行される。一例では、ベースライン状態時点は、データが、制御内状態としてのベースラインと制御外状態としての生理学的変化との組み合わせにおける2つの分布を有する2状態モデルであると仮定することによって設定される。ステップ403では、制御内状態及び制御外状態の平均及び標準偏差を計算するステップが実行される。ステップ404において、MAP時系列データの指数加重移動平均(EWMA)統計量及びEWMA統計量分散を計算するステップが実行される。ステップ405において、MAP時系列データの制御下限及び制御上限を計算するステップが実行される。ステップ406において、計算された制御限界を使用してベースラインからの状態変化があるかどうかを判定するステップが実行される。次に、プロセスは、図8に示す方法の別の部分に進むことができる。
【0083】
前処理されたMAP波形又は時系列データにおけるベースライン状態時点を設定するために、2状態モデルが最初に考慮され、データは、2つの正規分布、すなわち、平均θ及び(共)分散Σを有する正規分布と、平均θ及び(共)分散Σを有する第2の正規分布との組み合わせとしてモデリングされる。
【0084】
図5は、本開示の一実施形態による、患者のMAP閾値を決定するために使用される2状態モデルの2つの異なる状態sを示す、時間tに対する平均θのグラフを示している。この例示的な実施形態では、図5において、τの前の時間t(t=1,…,τ)及びτの後の時間t(t=t+1,…,n)における測定値θ及びθをそれぞれ使用して、2つの状態、すなわち制御内又はベースライン状態及び制御外(OOC)状態が示されており、現在の状態値sは、式(2)を使用して要約することができる。
【数2】
【0085】
平均観測値
及び現在の観測値xは、以下の式を使用して計算することができる。
【数3】
【数4】
ここで、ε~N(0,Σ)は、共分散Σを有する平均ゼロ正規分布に従う。
【0086】
MAP波形又は時系列データの平滑化されたバージョンであるEWMA統計量zは、式(5)を使用して計算することができる。
【数5】
【0087】
の各値は、現在の観測値xとEWMA統計量の前の値との加重平均である。簡単にするために、開始値zは、(t=0における)ベースライン測定値θに等しくなるように設定される。したがって、式(5)は、以下のように書くこともできる。
【数6】
ここで、0<λ<1は、数波形又は時系列データを前処理するために本開示の装置の分析者又はユーザによって選択される一定の平滑化パラメータである。λが小さい場合、データに対してより多くの平滑化効果がもたらされ、λが大きい場合、データに対してより少ない平滑化効果がもたらされる。
【0088】
図6A及び図6Bは、本開示の一実施形態によるMAP波形601及び平滑化されたMAP波形602をそれぞれ示している。平滑化されたMAP波形602は、EWMA統計量並びに式(5)及び(6)によるMAP波形601の処理からもたらされ得る。
【0089】
EWMA統計量分散var(z)は、EQMA統計量zの分散であり、白色雑音の下では、以下の式(7)に基づいて計算することができる。
【数7】
【0090】
制御上限及び制御下限(UCL/LCL)は、以下の式を使用して、ベースラインからのEWMA統計量z偏差に基づいて定義される。
【数8】
ここで、tはt分布からの限界値である。
【0091】
2状態モデルを使用して、任意の時間におけるzが、式(8)から計算された制御限界を超える/下回る場合、ベースラインからの変動があると判定され、プロセスは、そのベースライン領域から状態を変化させたと見なされる。
【0092】
変化状態又は変動が検出された場合、未知のパラメータτ、すなわち状態変化が起こった変化点(時点)を推定するために、正確にいつ変化が起こったかを計算するステップが実行される。ゼロ交差法は、τを推定するために利用することができる複数の方法のうちの1つである。「ゼロ交差」法に基づいて、プロセスがθと交差する最後の時点がτの推定値である。
【0093】
図7は、本開示の一実施形態による、処理されたMAP波形700及び個人化されたAHEパラメータを示している。一例では、処理されたMAP波形は、上に示される2状態モデル及び式(2)~(8)を使用して導出され、図7に示すように、ベースライン領域、ベースライン測定値θ、EWMA統計量z(すなわち、処理されたMAP波形)、EWMA統計量分散var(z)(すなわち、MAP波形の分散)、UCL、LCL、制御外(OOC)領域、及び推定されたτなどの派生物が、処理において取得される。
【0094】
この実施形態では、処理されたMAP波形700の最初の60分は、MAP波形700のベースライン領域として決定され、ベースライン、すなわち、この場合のベースライン測定値θは、87.53mmHgのベースライン領域のMAP値の平均である。
【0095】
UCL及びLCLは、MAP波形700のベースライン及び変動に基づいて算出される。この場合、変動は、波形700の周囲のグレー領域に示すように、MAP波形700のEWMA統計量分散var(z)に基づいて決定される。OOC領域は、OOC領域1及び領域2のように、MAP値がUCLより高い、又はLCLより低い領域にそれぞれ設定される。
【0096】
ベースライン状態からOCC状態に状態シフトする各推定時点は、処理されたMAP波形がθと交差した最後の時点を参照することによって、「ゼロ交差」方法を使用して決定することができる。この実施形態では、OOC領域1及びOOC領域2への変化が起こった推定変化点は、それぞれτ及びτ、すなわち、おおよそ340分及び480分の点である。
【0097】
図8は、本開示の一実施形態による、患者のMAP閾値を決定する方法の別の部分を示すフローチャートを示している。一例では、制御内状態から制御外状態への状態変化がステップ406で検出された後、変化点又は複数の変化点を検出して変化(複数可)の開始を判定するステップ801が、ゼロ交差法を使用して正確に行われる。ステップ802は、処理された信号(EWMA統計量)の検出されたOOC領域(複数可)がLCLよりも低い値を有するかどうかを判定するステップである。値がLCLよりも小さい場合、ステップ804が実行され、そうでない場合、ステップ803が実行される。ステップ803は、処理された信号(EWMA統計量)の検出されたOOC領域(複数可)がUCLよりも高い値を有するかどうか、UCLが事前構成された閾値よりも低いかどうか、この場合、事前構成された閾値は75mmHgであるかどうか、及びベースラインの平均値が事前構成された閾値よりも低いかどうか、この場合、事前構成された閾値は65mmHgであるかどうかを判定するステップである。3つの条件の全てが満たされる場合、ステップ804が実行され、そうでない場合、ステップ805が実行される。
【0098】
ステップ804において、制御限界、すなわちOOC領域を超える処理された信号(EWMA統計量)の持続時間の各々を識別するステップは、事前構成された持続時間よりも長く、この場合、事前構成された持続時間は15分である(ステップ806)。持続時間が事前構成された持続時間よりも長い場合、ステップ807が実行され、そうでない場合、ステップ805が実行される。
【0099】
ステップ805において、個人化されたAHEが検出されないことが決定される。ステップ807は、EWMA統計量の検出された変化、AHEの発症、AHEの持続時間、及び個人化されたAHE値、すなわち患者に対して定義されたMAP閾値に基づいて、個人化されたAHEのパラメータを宣言するステップである。続いて、患者のAHE事象の検出が、個人化されたAHE/MAP閾値に基づいて実行される。
【0100】
以下の種々の実施形態は、図8のフローチャート800のステップ及び上記のその付随する説明を使用して、MAP波形評価、個人化されたAHE定義、及びAHE事象検出を示している。しかしながら、それは多くの実装形態のうちの1つにすぎないことが、当業者(複数可)によって理解される。異なるタイプの信号(例えば、HR及びSPO)及び異なる基準を有するステップを使用して、異なる患者に対する個人化されたAHE定義を決定することができる。
【0101】
図9Aは、従来の単一閾値法を使用して検出されたAHEを有する処理されたMAP波形901を示し、図9Bは、本開示の一実施形態による処理されたMAP波形901の個人化されたAHEパラメータを示している。図9Aにおいて、AHEは、MAPデータが60mmHgの固定MAP閾値よりも低くなったときに検出される。図9Bは、同じ処理されたMAP波形901の最初の60分におけるベースライン領域と、ベースライン及び処理されたMAP波形901の変動に基づいて計算されたUCL/LCLとを示している。UCLは、75mmHgの事前構成された閾値よりも低く、ベースラインの平均値は、65mmHgの事前構成された閾値よりも高いことに留意されたい。
【0102】
点903~907などの少数の状態変化点が検出される。特に、点905は、LCLよりも低いMAP値を有するという基準を満たし、状態の持続時間は、15分の事前構成された閾値持続時間よりも長く続いていた。したがって、患者のための個人化されたAHEは、MAPにおける67.41mmHg(LCL)の点905で定義される。2つのAHE事象は、個人化されたAHEに基づいて、それぞれ点905~906と点906~907との間の領域で検出され、AHE事象の発症(点905、907)及び持続時間などのそれらのAHEパラメータが宣言され、記録される。この実施形態では、個人化されたAHEは、従来の単一の閾値よりも早く検出された。これは、臨床医がAHEのために患者を管理するためのより多くの時間を提供することができる。
【0103】
図10Aは、図9Bと同一である、患者の処理されたMAP波形1001及び個人化されたAHEパラメータを示している。図10Bは、処理されたMAP波形1001のサブサンプル1002を示している。その部分の最初の15分における新しいベースライン領域が決定され、UCL/LCLが、新しいベースライン及びそのサブサンプル内のMAP値の変動に基づいて計算される。LCLを超えて制御内状態からOOC状態へ状態変化することはない。点1008~1011などの、UCLを超えた制御内状態とOOC状態との間の少数の状態変化点が、波形1002において検出される。しかしながら、UCLは、75mmHgの事前構成された閾値よりも高く、ベースラインの平均値は、65mmHgの事前構成された閾値よりも高いことに留意されたい。いずれの状態変化点も、図8で設定された基準を満たさない。したがって、個人化されたAHEは検出されなかった。
【0104】
図10Cは、病院の事故及び救急科に到着する前に事故のために大量の血液が失われ、既に低血圧エピソード、例えばAHE1を有する患者に関する処理されたMAP波形1003の個人化されたAHEパラメータを示している。図10Cは、処理されたMAP波形1003の最初の60分におけるベースライン領域と、ベースライン及び処理されたMAP波形1003の変動に基づいて計算されたUCL/LCLとを示している。UCLは、75mmHgの事前構成された閾値よりも低く、ベースラインの平均値は、65mmHgの事前構成された閾値よりも低いことに留意されたい。
【0105】
MAP波形1003では、点1005~1007のように3つの状態変化点が検出される。特に、点1005は、UCLよりも高いMAP値、65mmHg未満のベースラインの平均MAP、及び15分の事前構成された閾値持続時間よりも長く持続した状態の持続時間を有する基準を満たす。したがって、患者のための個人化されたAHEは、MAPにおける64.9mmHg(LCL)の点1005で定義される。AHE事象は、個人化されたAHEに基づいて点1006~1007の間の領域で検出され、AHE事象の発症(点1006)及び持続時間などのそれらのAHEパラメータが宣言され、記録される。この実施形態では、個人化されたAHEは、別の低血圧エピソード、例えばAHE2よりも早く検出された。
【0106】
図11Aは、一実施形態による患者の処理されたMAP波形1101の個人化されたAHEパラメータを示している。図11Aは、処理されたMAP波形1101の最初の60分におけるベースライン領域と、ベースライン及び処理されたMAP波形1101の変動に基づいて計算されたUCL/LCLとを示している。UCLは、75mmHgの事前構成された閾値よりも高く、ベースラインの平均値は、65mmHgの事前構成された閾値よりも高いことに留意されたい。
【0107】
MAP波形1101では、点1104~1106のように3つの状態変化点が検出される。特に、点1106は、LCLよりも低いMAP値と、15分の事前構成された閾値持続時間よりも長い持続時間とを有するという基準を満たす。したがって、患者のための個人化されたAHEは、MAPにおける71.63mmHg(LCL)の点1106で定義される。
【0108】
図11Bは、処理されたMAP波形1101のサブサンプル1102を示している。その部分の最初の15分における新しいベースライン領域が決定され、UCL/LCLが、新しいベースライン及びそのサブサンプル内のMAP値の変動に基づいて計算される。UCLは、75mmHgの事前構成された閾値よりも高く、ベースラインの平均値は、65mmHgの事前構成された閾値よりも高いことに留意されたい。UCLを超えた制御内状態からOOC状態への状態変化点は、基準を満たさない点1107で検出される。LCLを超える制御内状態からOOC状態への状態変化は検出されない。したがって、個人化されたAHEは検出されなかった。
【0109】
図11Cは、病院の事故及び救急科に到着する前に事故のために大量の血液が失われており、既に低血圧エピソードを有する患者に関する処理されたMAP波形1103の個人化されたAHEパラメータを示している。図11Cは、処理されたMAP波形1103の最初の60分におけるベースライン領域と、ベースライン及び処理されたMAP波形1103の変動に基づいて計算されたUCL/LCLとを示している。UCLは、75mmHgの事前構成された閾値よりも低く、ベースラインの平均値は、65mmHgの事前構成された閾値よりも低いことに留意されたい。
【0110】
制御内状態からUCLを超えたOOC状態への状態変化点は、MAP波形1003の点1108で検出される。具体的には、点1108は、UCLよりも高いMAP値を有し、ベースラインの平均MAPが65mmHg未満であり、状態が持続した持続時間が15分の事前構成された閾値持続時間よりも長いという基準を満たす。したがって、患者のための個人化されたAHEは、MAPにおける64.9mmHg(UCL)の点1108で定義される。この実施形態では、個人化されたAHEは、従来の方法よりも早い時点で検出された。
【0111】
図12Aは、一実施形態による患者の処理されたMAP波形1201の個人化されたAHEパラメータを示している。図12Aは、処理されたMAP波形1201の最初の60分におけるベースライン領域と、ベースライン及び処理されたMAP波形1201の変動に基づいて計算されたUCL/LCLとを示している。UCLは、75mmHgの事前構成された閾値よりも高く、ベースラインの平均値は、65mmHgの事前構成された閾値よりも高いことに留意されたい。
【0112】
点1204~1209などの少数の状態変化点がMAP波形1201において検出される。特に、点1209は、LCLよりも低いMAP値と、15分の事前構成された閾値持続時間よりも長い持続時間とを有するという基準を満たす。したがって、患者のための個人化されたAHEは、MAPにおける65.65mmHg(LCL)の点1106で定義される。
【0113】
図12Bは、処理されたMAP波形1201のサブサンプル1202を示している。その部分の最初の15分における新しいベースライン領域が決定され、UCL/LCLが、新しいベースライン及びそのサブサンプル内のMAP値の変動に基づいて計算される。UCLは、75mmHgの事前構成された閾値よりも高く、ベースラインの平均値は、65mmHgの事前構成された閾値よりも高いことに留意されたい。6つの状態変化点1210~1215が検出されるが、それらのいずれも図8で設定された基準を満たさない。例えば、点1210は、LCLよりも低いMAP値を有するが、15分の事前構成された持続時間よりも長くは続かない。したがって、図12Bからは個人化されたAHEは検出されなかった。
【0114】
図12Cは、病院の事故及び救急科に到着する前に事故のために大量の血液が失われており、既に低血圧エピソードを有する患者に関する処理されたMAP波形1203の個人化されたAHEパラメータを示している。図12Cは、処理されたMAP波形1203の最初の60分におけるベースライン領域と、ベースライン及び処理されたMAP波形1203の変動に基づいて計算されたUCL/LCLとを示している。UCLは、75mmHgの事前構成された閾値よりも低く、ベースラインの平均値は、65mmHgの事前構成された閾値よりも低いことに留意されたい。
【0115】
UCLを超えた制御内状態からOOC状態への顕著な状態変化点は、MAP波形1203の点1216で検出される。特に、点1216は、UCLよりも高いMAP値と、15分の事前構成された閾値持続時間よりも長く持続した状態の持続時間とを有するという基準を満たす。したがって、患者のための個人化されたAHEは、MAPにおける65.65mmHg(UCL)の点1216で定義される。この実施形態では、個人化されたAHEは、従来の方法よりも早い時点で検出された。
【0116】
図13A図13Dは、AHE事象のない患者の4つの例示的なMAP波形を示している。AHEは、図8のフローチャート800及びその付随する説明のステップに基づいて、4つの例示的MAP波形の全てにおいて検出されなかった。
【0117】
図14は、本開示の一実施形態による、患者のAHE事象を適応的に検出及び予測するための低血圧予測モジュール1404のブロック図を示している。一実装形態では、低血圧予測モジュール1404は、概して、少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリと、を備える物理デバイスの一部として説明され得る。少なくとも1つのメモリ及びコンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサとともに、物理デバイス又は部品に、モデル訓練のための動作ステップ1405~1407及び訓練されたモデルに基づく新規患者の管理のための動作ステップ1408~1409を実施させるように構成される。
【0118】
データストレージ1401は、波形データ及び他の臨床データ1403などの新規患者に関する信号を受信するように構成され、低血圧エピソード予測モジュール1401によってアクセス可能である。加えて、かかるデータストレージ1401はまた、低血圧エピソード予測モジュールと個人化AHE定義モジュール1402との間で共有されてもよい。その中に記憶されたデータは、個人化AHE定義モジュールによって使用されて、個人化されたAHEを決定し、データ内のAHE事象を検出することができる。個人化されたAHE及び他のパラメータは、データストレージに記録され、所望によりその出力を生成するために低血圧予測モジュール1404によって使用されてもよい。
【0119】
モデル訓練のために、低血圧予測モジュール1404は、ステップ1405において、複数の患者(例えば、既存の患者)に関する血圧波形及び他の臨床データなどの信号を取得するステップと、ステップ1406において、既存の患者に関する波形データ及び臨床データの前処理及び特徴抽出を実施するソフトウェアアルゴリズムを実行するステップと、ステップ1407において、波形データ及び臨床データの抽出された特徴及び対応する特徴データセット(以下、「訓練データセット」又は「試験データセット」と称する)に基づいて予測モデルを生成するステップと、を実行するように構成される。
【0120】
例えば、個人化されたAHEが決定されたばかりの新規患者の後に新規患者を管理するために、低血圧予測モジュールは、ステップ1409において、新規患者に関する受信された波形データ及び他の臨床データ1403の前処理及び特徴抽出を実施するソフトウェアアルゴリズムを実行するステップと、次いで、ステップ1407において生成された予測モデルを使用して新規患者の信号1403からの抽出された特徴及び特徴データ(以下、「新たなデータセット」と称する)が分類され、新規患者の後続のAHE事象の予測を決定するAHE予測分類器を実行するステップと、を実行するように構成される。
【0121】
ブロック1410に示すように、新規患者のその後のAHE事象の発生の予測、並びにAHE事象のその重症度レベルを決定することができる。
【0122】
低血圧予測モジュール1404は、新規患者の信号1403、低血圧予測モジュール1404の入力及び出力を、医師、医療スタッフ又は分析者などの装置202のオペレータへのユーザインターフェース1411に表示するように構成することができる。オペレータはまた、ユーザインターフェース1411と対話し、低血圧予測モジュール1404又はモジュール1404に関連する他のモジュールにデータを入力することができる。一実装形態では、ユーザインターフェース1411は、低血圧予測モジュール1404に統合された、又はそれとは別個の監視モジュール(図示せず)上に表示されるように構成されるが、接続を介して低血圧予測モデル1404と通信する。かかる接続は、有線、無線(例えば、NFC通信、Bluetoothなどを介して)、ネットワーク(例えば、インターネット)、又は両方のモジュールが通信する別のデバイスを経由してもよい。
【0123】
本開示の種々の実施形態では、低血圧予測モジュールという用語は、予測モデリングエンジンとして説明されてもよく、互換的に使用される。
【0124】
図15は、本開示の一実施形態による、患者のAHE事象の予測を決定するために信号を前処理し、信号の特徴を抽出する方法の一部を示すフローチャートを示している。
【0125】
一例では、高忠実度の血行動態波形データ、及びHR、SBP、DBP、MAP、PP、SPO2%などの他の臨床データが受信される。例えば、既存の患者の少なくともMAP波形は、その波形データがデータベース又はクラウドに記憶される。これらの記憶された患者データは、ICUに滞在中又は手術のための手術中にAHEの経験を有していたか、又は有していなかった。他の波形データ及び臨床データも受信することができる。血行動態波形データは、125Hz周波数又は1分に1回若しくは1秒に1回などの他のサンプリングレートでサンプリングされる。
【0126】
モデル訓練のために使用される複数の検査患者又はAHE事象の予測のための新規患者の血行動態データ及び他の臨床データなどの入力データを受信し、管理した後、ステップ1501において、フィルタリング、平滑化、及び補間を使用して、入力データ(例えば、連続波形データ)の前処理が実行される。一例では、ベースラインを除去し、極端なデータ値を排除し、平滑化し、線形補間によって欠落した値を埋めることによって、ノイズのある入力データを前処理した。
【0127】
前処理されたデータは、次いで、ステップ1502においてセグメント化プロセスを経る。一例では、重なりのない10秒のウィンドウサイズを有するスライディングウィンドウ方法が適用される。
【0128】
次に、ステップ1503において、セグメント化されたデータに対して非線形及び線形特徴抽出の処理が実施される。一例では、セグメント化された波形データから時間依存特徴が抽出される。これらの特徴は、最大パワー、平均パワー、最小パワー、最大周波数、平均周波数、中央周波数、最小周波数、セグメント化されたデータの最大、セグメント化されたデータの平均、セグメント化されたデータの最小、セグメント化されたデータの分散、セグメント化されたデータの歪度、セグメント化されたデータの尖度、セグメント化されたデータのRMS値、セグメント化されたデータの1回目の自己回帰、セグメント化されたデータの傾き符号変化、セグメント化されたデータのゼロ交差、ラグ1からラグ5の自己相関、0%分位、25%分位、50%分位、75%分位、100%分位である。
【0129】
その後、抽出された特徴及び対応する特徴データは、更なる処理のために、予測モデリングエンジン、例えば、図16の予測モデリングエンジン1601に送信される。
【0130】
図16は、本開示の一実施形態による、患者のAHE事象を適応的に検出及び予測するために使用されるスタッキングアンサンブルモデルベースの予測モデリングエンジン1601の入力及び出力を示すブロック図1600を示している。
【0131】
スタッキングアンサンブルモデルベースの予測モデリングエンジン1601は、1602に示すように、セグメントウィンドウWから抽出された特徴、及び複数の患者(例えば、検査患者又は既存の患者)に関する他の臨床データを受信し得る。予測モデリングエンジン1601はまた、時間フレーム内の新規患者のAHE事象の発生が予測される、時間フレーム又は決定時間ウィンドウなどのユーザインターフェースからの入力を受信してもよい。時間フレームは、3~30分などの短期間又は時間ウィンドウ、あるいは3時間~3日などの長期間又は時間ウィンドウを指すことができ、予測モデリングエンジン1601は、それに応じて、時間フレーム又は決定時間ウィンドウ内で発生するAHE事象の予測を提供する。入力1602、1603を用いて、予測モデリングエンジン1601は、新規患者のAHE事象の発生の予測並びにAHE事象の重症度レベルを決定し、予測をユーザインターフェースに出力する。
【0132】
図17Aは、本開示の種々の実施形態による、患者のAHE事象を適応的に検出及び予測するために使用される種々の入力データを示している。図17Bは、本開示の一実施形態による、患者のAHE事象を適応的に検出及び予測するための入力として使用されるMAP波形を示している。この実施形態では、MAP波形データは、AHEの病歴を有する患者に関する。
【0133】
図18は、本開示の一実施形態による、モデル訓練に使用される複数の患者に関する信号から抽出された特徴を示している。複数の信号のうちの2つの信号1802、1804が示されており、そのうちの1つはAHEの病歴を有する患者Pに関連し、もう1つはAHEの病歴を有さない患者Pに関連する。各信号は、複数のセグメントウィンドウW~Wに従って前処理及びセグメント化され、セグメントウィンドウW~Wの各々における信号の特徴及び対応する特徴データが抽出される。P及びPに関連する信号から抽出された特徴に対応するデータは、表1803、1805に示されている。
【0134】
図19は、本開示の一実施形態による、患者のAHE事象を適応的に検出及び予測するために使用される信号内の少なくとも1つの特徴を抽出するプロセスを示す図を示している。本実施形態では、患者に関する信号の入力を受け付ける。入力は、患者のAHE事象を予測するために、患者の過去の記録されたデータ1911並びに標的時間フレーム1912を更に含み得る。過去に記録されたデータは、複数のセグメントウィンドウW~Wに従ってセグメント化することができ、セグメントウィンドウW~Wの各々からの特徴が計算されて、表1908に示されるような特徴データが生成される。かかる特徴データは、次いで、モデル訓練及び/又はAHE事象予測のために使用される。
【0135】
図20は、本開示の一実施形態による、患者のAHE事象を検出及び予測するための装置2000を示すブロック図を示している。装置2000は、特徴抽出モジュール(図示せず)又はアルゴリズムから時間依存特徴/特徴データを受信するように構成され、かかる特徴は、抽出された非線形及び線形特徴波形データを含み、特徴データは、血液検査、尿検査などの検査室報告からのデータ、人口統計及び併存疾患データなどの臨床データ、BPの履歴、フレイルスコアなどの周術期管理データを含む。入力データはまた、新規患者のAHE事象の発生の予測が決定される時間フレーム(短期又は長期)の入力を含んでもよい。
【0136】
装置2000は、これらの特徴のうちの少なくとも1つに基づいて展開された予測モデルを生成するように更に構成される。特に、予測モデルは、スタッキングアンサンブル法を適用することによってAHE発生の予測を生成し、予測の生成において、AHEのマルチレベルの逐次多重分類(又はマルチクラス分類)を適用して、高い性能を獲得し、学習及びモデル訓練の過剰適合を回避する。例えば、第1のレベルでは、少なくとも1つの抽出された特徴に基づく2つ以上の予測が、ランダムフォレスト、勾配ブースティング、単純ベイズ、一般化線形モデルなどの複数の基本分類器2022(分類器1,2,…n)を使用して決定される。同時に、この手法は、本発明者らの分類アルゴリズムに限定されず、SVM、KNN、ニューラルネットワークなどの分類器の種々の設計に適応可能である。
【0137】
第2のレベルでは、2つ以上の予測の比較を実行して、最適な予測(予測のいずれか1つ又はそれらの組み合わせに基づく)、又は複数の基本分類器の中の最適な予測モデル(それらの組み合わせのいずれか1つ)を決定し、これは、せいぜい、検査患者の最も後続のAHE事象を正確に検出することができる。次いで、かかる最適予測モデルは、新規患者の後続のAHEの予測を決定するために適用される。一例では、多数決手法がメタ分類器として使用され、それは本発明者らの分類アルゴリズムに限定されず、ロジスティック回帰、ニューラルネットワーク、Xgboostなどの分類器の他の設計に適応可能である。
【0138】
装置は、患者のその後のAHE事象の発生の予測、例えば、yes/no出力又は発生の確率(%)、及び所定の時間フレーム内のAHEの発症を生成するように更に構成される。更に、後続のAHE事象のMAP値又はMAP値範囲も決定される。このMAP値又は値範囲は、後続のAHE事象の重症度レベルに対応する。例えば、装置2000は、MAP値及び所望により患者の個人化されたAHE/MAP閾値(複数可)に対応する患者の後続のAHE事象の重症度レベルを生成するように更に構成される。一例では、本装置は、4つの重症度レベル、すなわち、50mmHg以下の予測MAP値に対するレベル1重症度(L1)、50mmHg~65mmHgの予測MAP値に対するレベル2重症度(L2)、65mmHg~75mmHgの予測MAP値に対するレベル3重症度(L3)、及び75mmHgを上回る予測MAP値に対するレベル4重症度(L4)を判定するように構成される。
【0139】
図21は、本開示の一実施形態による、患者のAHE事象を検出及び予測するためのプロセスを示すフロー図を示している。この実施形態では、患者のAHE事象の発生の予測は、最初に、ステージ1において、又はステージ1モデル2111によって決定され、その後、AHE事象のMAP値及び重症度レベルの予測が、ステージ2において、又はステージ2モデル2112によって決定される。この実施形態では、ステージ1モデル及びステージ2モデルの両方は、逐次マルチレベル分類を採用し、複数の分類器を使用して、最初に、それらの各々において予測を生成し、次いで、メタ分類器を使用して、生成された予測を比較し、最終予測結果2103を生成する際に使用するための最適予測モデル(本明細書では、以降、それぞれ、「ステージ1モデル」及び「ステージ2モデル」と称される)を決定する。
【0140】
複数の患者(患者1,2,…n)の抽出された特徴及び他の臨床データを含む訓練データセット2101が、ステージ1モデル2111内の複数の分類器(分類器1,2,…n)の各々に入力され、次いで、メタ分類器に入力されて、所定の決定時間ウィンドウ内のAHE事象の発生の予測結果2122が決定される。本実施形態では、単純に「yes」又は「no」の予測結果を出力する。
【0141】
ステップ2123において、AHE事象の発生の予測結果が「no」であるかどうかがチェックされ、ステップ2121が実行される。ステップ2121において、所定の決定時間ウィンドウにおけるAHEの予測される発生が宣言される。AHE事象の発生の予測結果が「yes」である場合、ステージ2モデル2112が適用されて、AHE事象のMAP値の予測結果2124と、予測されたMAP値に基づくAHE事象の重症度レベルとが決定される。次いで、ステップ2125において、所定の決定時間ウィンドウにおけるAHE事象の予測される重症度が宣言される。
【0142】
図22は、以下でコンピュータシステム2200と交換可能に称される例示的なコンピューティングデバイス2200を示し、1又は複数のかかるコンピューティングデバイス2200を使用して、図1の方法を実行することができる。例示的なコンピューティングデバイス2200は、図2に示される装置200を実装するために使用され得る。コンピューティングデバイス2200の以下の説明は、例としてのみ提供され、限定することを意図するものではない。
【0143】
図22に示すように、例示的なコンピューティングデバイス2200は、ソフトウェアルーチンを実行するためのプロセッサ2204を含む。明確にするためにシングルプロセッサが示されているが、コンピューティングデバイス2200は、マルチプロセッサシステムを含むこともできる。プロセッサ2204は、コンピューティングデバイス2200の他の構成要素と通信するための通信インフラストラクチャ2206に接続される。通信インフラストラクチャ2206は、例えば、通信バス、クロスバー、又はネットワークを含み得る。
【0144】
コンピューティングデバイス2200は、ランダムアクセスメモリ(RAM)などのメインメモリ2208と、二次メモリ2210とを更に含む。二次メモリ2210は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ又はハイブリッドドライブであり得るストレージドライブ2212、及び/又は磁気ドライブ、光ディスクドライブ、ソリッドステートストレージドライブ(例えば、USBフラッシュドライブ、フラッシュメモリデバイス、ソリッドステートドライブ又はメモリカード)などを含んでもよいリムーバブルストレージドライブ2214を含んでもよい。リムーバブルストレージドライブ2214は、周知の方法でリムーバブル記憶媒体2218から読み出し、かつ/又はそれに書き込む。リムーバブル記憶媒体2218は、揮発性メモリドライブ2214によって読み出され、書き込まれる磁気、光学ディスク、非リムーバブル記憶媒体などを含み得る。当業者(複数可)には理解されるように、リムーバブル記憶媒体2218は、コンピュータ実行可能プログラムコード命令及び/又はデータを記憶したコンピュータ可読記憶媒体を含む。
【0145】
代替的な実装形態では、二次メモリ2210は、追加的又は代替的に、コンピュータプログラム又は他の命令がコンピューティングデバイス2200にロードされることを可能にするための他の同様の手段を含み得る。かかる手段は、例えば、リムーバブルストレージユニット2222及びインターフェース2220を含み得る。リムーバブルストレージユニット2222及びインターフェース2220の例には、プログラムカートリッジ及びカートリッジインターフェース(ビデオゲームコンソールデバイスに見られるものなど)、リムーバブルメモリチップ(EPROM又はPROMなど)及び関連するソケット、リムーバブルソリッドステートストレージドライブ(USBフラッシュドライブ、フラッシュメモリデバイス、ソリッドステートドライブ又はメモリカードなど)、並びにソフトウェア及びデータをリムーバブルストレージユニット2222からコンピュータシステム2200に転送することを可能にする他のリムーバブルストレージユニット2222及びインターフェース2220が含まれる。
【0146】
コンピューティングデバイス2200はまた、少なくとも1つの通信インターフェース2224を含む。通信インターフェース2224は、ソフトウェア及びデータが通信経路2226を介してコンピューティングデバイス2200と外部デバイスとの間で転送されることを可能にする。本発明の種々の実施形態では、通信インターフェース2224は、データが、コンピューティングデバイス2200と、パブリックデータ又はプライベートデータ通信ネットワークなどのデータ通信ネットワークとの間で転送されることを可能にする。通信インターフェース2224は、異なるコンピューティングデバイス間でデータを交換するために使用され得、かかるコンピューティングデバイス2200は、相互接続されたコンピュータネットワークの一部を形成する。通信インターフェース2224の例としては、モデム、ネットワークインターフェース(イーサネットカードなど)、通信ポート(シリアル、パラレル、プリンタ、GPIB、IEEE 1394、RJ45など)、関連回路を有するアンテナなどを挙げることができる。通信インターフェース2224は、有線であってもよいし、無線であってもよい。通信インターフェース2224を介して転送されるソフトウェア及びデータは、通信インターフェース2224によって受信されることが可能な電子信号、電磁信号、光信号、又は他の信号であり得る信号の形態である。これらの信号は、通信経路2226を介して通信インターフェースに提供される。
【0147】
図22に示すように、コンピューティングデバイス2200は、関連するディスプレイ2230に画像をレンダリングするための動作を実施するディスプレイインターフェース2202と、関連するスピーカ(複数可)2234を介してオーディオコンテンツを再生するための動作を実施するオーディオインターフェース2232とを更に含む。
【0148】
本明細書で使用する「コンピュータプログラム製品」という用語は、部分的に、リムーバブル記憶媒体2218、リムーバブルストレージユニット2222、ストレージドライブ2212にインストールされたハードディスク、又は通信経路2226(無線リンク又はケーブル)を介して通信インターフェース2224にソフトウェアを搬送するキャリア波を指すことがある。コンピュータ可読記憶媒体は、実行及び/又は処理のために、記録された命令及び/又はデータをコンピューティングデバイス2200に提供する任意の非一時的な不揮発性有形記憶媒体を指す。かかる記憶媒体の例には、かかるデバイスがコンピューティングデバイス2200の内部にあるか外部にあるかにかかわらず、磁気、CD-ROM、DVD、ブルーレイディスク、ハードディスクドライブ、ROM又はIC、ソリッドステートストレージドライブ(USBフラッシュドライブ、フラッシュメモリデバイス、ソリッドステートドライブ又はメモリカードなど)、ハイブリッドドライブ、光磁気ディスク、又はPCカードなどのコンピュータ可読カードなどが含まれる。コンピューティングデバイス2200へのソフトウェア、アプリケーションプログラム、命令、及び/又はデータの提供にも関与し得る一時的又は非有形のコンピュータ可読伝送媒体の例は、無線又は赤外線伝送チャネル、並びに別のコンピュータ又はネットワーク化されたデバイスへのネットワーク接続、及び電子メール伝送及びウェブサイトなどに記録された情報を含むインターネット又はイントラネットを含む。
【0149】
コンピュータプログラム(コンピュータプログラムコードとも称される)は、メインメモリ2208及び/又は二次メモリ2210に記憶される。コンピュータプログラムは、通信インターフェース2224を介して受信することもできる。かかるコンピュータプログラムは、実行されると、コンピューティングデバイス2200が本明細書で論じられる実施形態の1又は複数の特徴を実施することを可能にする。種々の実施形態では、コンピュータプログラムは、実行されると、プロセッサ1207が上述の実施形態の特徴を実施することを可能にする。したがって、かかるコンピュータプログラムは、コンピュータシステム2200のコントローラを表す。
【0150】
ソフトウェアは、コンピュータプログラム製品に記憶され、リムーバブルストレージドライブ2214、ストレージドライブ2212、又はインターフェース2220を使用して、コンピューティングデバイス2200にロードされ得る。コンピュータプログラム製品は、非一時的コンピュータ可読媒体であってもよい。代替的に、コンピュータプログラム製品は、通信経路2226を介してコンピュータシステム2200にダウンロードされてもよい。ソフトウェアは、プロセッサ2204によって実行されると、コンピューティングデバイス2200に、図1に示される方法を実行するために必要な動作を実施させる。
【0151】
図22の実施形態は、装置200の動作及び構造を説明するための単なる例として提示されていることを理解されたい。したがって、一部の実施形態では、コンピューティングデバイス2200の1又は複数の特徴が省略されてもよい。また、一部の実施形態では、コンピューティングデバイス2200の1又は複数の特徴を一緒に組み合わせることができる。加えて、一部の実施形態では、コンピューティングデバイス2200の1又は複数の特徴は、1又は複数の構成要素部分に分割され得る。
【0152】
当業者であれば、広範に記載された本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示された本発明に対して多数の変形及び/又は修正を行うことができることを理解するであろう。したがって、本実施形態は、あらゆる点で例示的であり、限定的ではないと考えられるべきである。
【0153】
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
(付記1)
患者の急性低血圧エピソード(AHE)事象を適応的に検出する方法であって、
プロセッサによって、前記患者に関する信号を処理して、前記患者の少なくとも1つの平均動脈圧(MAP)閾値を決定することと、
前記プロセッサによって、前記少なくとも1つのMAP閾値に基づいて、前記患者のAHE事象を検出することと、
を含む、方法。
(付記2)
前記患者の前記少なくとも1つの平均動脈圧(MAP)閾値を決定するために前記信号を前記プロセッサによって処理する前記ステップは、
前記信号のベースラインからの前記信号の少なくとも1つの変動を決定すること
を含む、付記1に記載の方法。
(付記3)
前記プロセッサによって、前記患者の前記AHE事象を検出する前記ステップは、
前記信号の1又は複数のMAP値を前記少なくとも1つのMAP閾値と比較すること
を含む、付記1に記載の方法。
(付記4)
前記プロセッサによって、前記患者の前記AHE事象を検出する前記ステップは、
前記1又は複数のMAP値に関連する持続時間が事前構成された閾値持続時間よりも長いかどうかを判定すること
を含む、付記3に記載の方法。
(付記5)
前記プロセッサによって、前記患者の前記AHE事象を検出する前記ステップは、
前記少なくとも1つのMAP閾値が第1の事前構成されたMAP閾値よりも低いかどうかを判定すること
を含む、付記1に記載の方法。
(付記6)
前記プロセッサによって、前記患者の前記AHE事象を検出する前記ステップは、
前記信号のベースラインの平均MAP値が第2の事前構成されたMAP閾値よりも低いかどうかを判定すること
を含む、付記1に記載の方法。
(付記7)
前記プロセッサによって、前記患者の前記1又は複数のAHE事象を検出する前記ステップは、
前記少なくとも1つのMAP閾値及び前記信号に基づいて、前記患者の前記AHE事象の発症及び持続時間を検出すること
を含む、先行する付記のいずれか一項に記載の方法。
(付記8)
前記患者の前記AHE事象の前記発症及び前記持続時間、並びに前記AHE事象に関連する1又は複数のMAP値をデータベースに記憶すること
を更に含む、付記7に記載の方法。
(付記9)
MAP波形を受信することを更に含み、前記信号は、前記MAP波形を含む、
先行する付記のいずれか一項に記載の方法。
(付記10)
少なくとも1つの臨床データを受信することを更に含み、前記少なくとも1つの臨床データは、血液成分、尿成分、血行動態波形データ、人口統計データ、併存疾患データ、血圧、中心静脈圧、フレイルスコア、及び周術期管理データのうちの少なくとも1つを含み、前記信号は、前記少なくとも1つの臨床データを含む、
先行する付記のいずれか一項に記載の方法。
(付記11)
前記プロセッサによって、前記少なくとも1つのMAP閾値及び前記信号に基づいて、前記患者の後続のAHE事象の予測を決定すること
を更に含む、先行する付記のいずれか一項に記載の方法。
(付記12)
時間フレームに関する入力を受信することを更に含み、前記予測は、前記時間フレーム内の前記患者の前記後続のAHE事象の発生の予測を含む、
付記11に記載の方法。
(付記13)
前記プロセッサによって、前記患者の前記後続のAHE事象の前記予測を決定する前記ステップは、
前記後続のAHE事象のMAP値を決定することを含み、前記MAP値は、前記後続のAHE事象の重症度レベルに関する、
付記11に記載の方法。
(付記14)
前記信号内の少なくとも1つの特徴を抽出することを更に含み、前記後続のAHE事象の前記予測の前記決定は、前記信号の前記少なくとも1つの特徴に基づく、
付記11から13のいずれか一項に記載の方法。
(付記15)
前記プロセッサによって、前記患者の前記後続のAHEの前記予測を決定する前記ステップは、
複数の患者に関する複数の信号から抽出された前記少なくとも1つの特徴に基づいて2つ以上の予測を決定することと、
前記複数の信号から抽出された前記少なくとも1つの特徴に基づいて前記複数の患者の後続のAHE事象の最適な予測を決定するために前記2つ以上の予測を比較することであって、前記最適な予測は、前記2つ以上の予測のうちの1つ又は組み合わせであり、前記患者の前記後続のAHEの前記予測は、前記複数の患者の前記後続のAHE事象の前記最適な予測に基づく、ことと、
を含む、付記14に記載の方法。
(付記16)
患者の急性低血圧エピソード(AHE)事象を適応的に検出するための装置であって、
少なくとも1つのプロセッサと、
コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリと、を備え、
前記少なくとも1つのメモリ及び前記コンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサとともに、付記1から15のいずれか一項に記載の方法を前記装置に少なくとも実施させるように構成される、
装置。
【0154】
本出願は、2021年8月10日に出願されたシンガポール国特許出願第10202108729V号を基礎とする優先権を主張し、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0155】
100 フローチャート
200 ブロック図
201 ソース
202 装置
204 個人化AHE定義モジュール
206 低血圧エピソード予測モジュール
208 データストレージ
210 監視モジュール
211 ユーザインターフェース
300 ブロック図
301 信号ソース
304 個人化AHE定義モジュール
311 データストレージ
313 患者監視ユニット
314 侵襲的血圧監視デバイス
315 非侵襲的又は低侵襲的血圧監視デバイス
601 MAP波形
602 平滑化されたMAP波形
700 処理されたMAP波形
800 フローチャート
901 処理されたMAP波形
1001 処理されたMAP波形
1002 処理されたMAP波形1001のサブサンプル
1003 処理されたMAP波形
1101 処理されたMAP波形
1102 処理されたMAP波形1101のサブサンプル
1103 処理されたMAP波形
1201 処理されたMAP波形
1202 処理されたMAP波形1201のサブサンプル
1203 処理されたMAP波形
1401 データストレージ
1402 個人化AHE定義モジュール
1403 他の臨床データ
1404 低血圧予測モジュール
1411 ユーザインターフェース
1600 ブロック図
1601 予測モデリングエンジン
1602,1603 入力
1802,1804 信号
1803,1805 テーブル
1908 テーブル
2000 装置
2001 予測モデリングモジュールへの入力データ
2002 予測モデリングモジュール
2003 予測モデルの出力
2101 訓練データセット
2102 スタッキングアンサンブルモデル
2103 最終予測結果
2111 ステージ1モデル
2112 ステージ2モデル
2200 コンピューティングデバイス
2202 ディスプレイインターフェース
2204 プロセッサ
2206 通信インフラストラクチャ
2208 メインメモリ
2210 二次メモリ
2212 ストレージドライブ
2214 リムーバブルストレージドライブ
2218 リムーバブル記憶媒体
2220 インターフェース
2222 リムーバブルストレージユニット
2224 通信インターフェース
2226 通信経路
2230 ディスプレイ
2232 オーディオインターフェース
2234 スピーカ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図13D
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19
図20
図21
図22
【手続補正書】
【提出日】2024-01-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の急性低血圧エピソード(AHE)事象を適応的に検出する方法であって、
プロセッサによって、前記患者に関する信号を処理して、前記患者の少なくとも1つの平均動脈圧(MAP)閾値を決定することと、
前記プロセッサによって、前記少なくとも1つのMAP閾値に基づいて、前記患者のAHE事象を検出することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記患者の前記少なくとも1つのMP閾値を決定するために前記信号を前記プロセッサによって処理することは、
前記信号のベースラインからの前記信号の少なくとも1つの変動を決定すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロセッサによって、前記患者の前記AHE事象を検出することは、
前記信号の1又は複数のMAP値を前記少なくとも1つのMAP閾値と比較すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プロセッサによって、前記患者の前記AHE事象を検出することは、
前記1又は複数のMAP値に関連する持続時間が事前構成された閾値持続時間よりも長いかどうかを判定すること
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記プロセッサによって、前記患者の前記AHE事象を検出することは、
前記少なくとも1つのMAP閾値が第1の事前構成されたMAP閾値よりも低いかどうかを判定すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記プロセッサによって、前記患者の前記AHE事象を検出することは、
前記信号のベースラインの平均MAP値が第2の事前構成されたMAP閾値よりも低いかどうかを判定すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記プロセッサによって、前記患者の前記1又は複数のAHE事象を検出することは、
前記少なくとも1つのMAP閾値及び前記信号に基づいて、前記患者の前記AHE事象の発症及び持続時間を検出すること
を含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記患者の前記AHE事象の前記発症及び前記持続時間、並びに前記AHE事象に関連する1又は複数のMAP値をデータベースに記憶すること
を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
MAP波形を受信することを更に含み、前記信号は、前記MAP波形を含む、
請求項に記載の方法。
【請求項10】
患者の急性低血圧エピソード(AHE)事象を適応的に検出するための装置であって、
少なくとも1つのプロセッサと、
コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリと、を備え、
前記少なくとも1つのメモリ及び前記コンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサとともに、請求項1からのいずれか一項に記載の方法を前記装置に少なくとも実施させるように構成される、
装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
図5】本開示の一実施形態による、患者のMAP閾値を決定するために使用される2状態モデルの2つの異なる状態sを示す、時間tに対する平均θのグラフを示す。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0081
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0081】
一実装形態では、個人化AHE定義モジュール304は、概して、少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリと、を備える物理デバイスの一部として説明され得る。少なくとも1つのメモリ及びコンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサとともに、物理デバイス又は部品に、ソース301から信号を受信させ、ステップ321~324における動作を実施させるように構成される。特に、個人化AHE定義モジュール304は、ステップ321において、信号ソース301から直接、及び/又はデータストレージ311を介して、患者に関するMAP波形データを受信するステップを実行するように構成され得る。モジュール304は、ステップ322において、信号を前処理し、信号内の欠損値を充填するなどの信号を処理するステップと、ステップ323において、変化点理論を使用して関連する活動検出を開始するステップと、ステップ324において、患者のMAP閾値を決定し、AHE事象の発症及び持続時間を含む、患者のAHE事象の検出を提供するステップと、を行うように更に構成され得る。患者のMAP閾値並びに検出されたAHE発症及び持続時間に関するデータは、ソース301のデータストレージ311に伝送することができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0118
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0118】
データストレージ1401は、波形データ及び他の臨床データ1403などの新規患者に関する信号を受信するように構成され、低血圧予測モジュール1404によってアクセス可能である。加えて、かかるデータストレージ1401はまた、低血圧予測モジュール1404と個人化AHE定義モジュール1402との間で共有されてもよい。その中に記憶されたデータは、個人化AHE定義モジュール1402によって使用されて、個人化されたAHEを決定し、データ内のAHE事象を検出することができる。個人化されたAHE及び他のパラメータは、データストレージに記録され、所望によりその出力を生成するために低血圧予測モジュール1404によって使用されてもよい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0122
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0122】
低血圧予測モジュール1404は、新規患者の信号1403、低血圧予測モジュール1404の入力及び出力を、医師、医療スタッフ又は分析者などの装置202のオペレータへのユーザインターフェース1411に表示するように構成することができる。オペレータはまた、ユーザインターフェース1411と対話し、低血圧予測モジュール1404又はモジュール1404に関連する他のモジュールにデータを入力することができる。一実装形態では、ユーザインターフェース1411は、低血圧予測モジュール1404に統合された、又はそれとは別個の監視モジュール(図示せず)上に表示されるように構成されるが、接続を介して低血圧予測モジュール1404と通信する。かかる接続は、有線、無線(例えば、NFC通信、Bluetoothなどを介して)、ネットワーク(例えば、インターネット)、又は両方のモジュールが通信する別のデバイスを経由してもよい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0142
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0142】
図22は、以下でコンピュータシステム2200と交換可能に称される例示的なコンピューティングデバイス2200を示し、1又は複数のかかるコンピューティングデバイス2200を使用して、図1の方法を実行することができる。例示的なコンピューティングデバイス2200は、図2に示される装置202を実装するために使用され得る。コンピューティングデバイス2200の以下の説明は、例としてのみ提供され、限定することを意図するものではない。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0149
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0149】
コンピュータプログラム(コンピュータプログラムコードとも称される)は、メインメモリ2208及び/又は二次メモリ2210に記憶される。コンピュータプログラムは、通信インターフェース2224を介して受信することもできる。かかるコンピュータプログラムは、実行されると、コンピューティングデバイス2200が本明細書で論じられる実施形態の1又は複数の特徴を実施することを可能にする。種々の実施形態では、コンピュータプログラムは、実行されると、プロセッサ2204が上述の実施形態の特徴を実施することを可能にする。したがって、かかるコンピュータプログラムは、コンピュータシステム2200のコントローラを表す。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0151
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0151】
図22の実施形態は、装置202の動作及び構造を説明するための単なる例として提示されていることを理解されたい。したがって、一部の実施形態では、コンピューティングデバイス2200の1又は複数の特徴が省略されてもよい。また、一部の実施形態では、コンピューティングデバイス2200の1又は複数の特徴を一緒に組み合わせることができる。加えて、一部の実施形態では、コンピューティングデバイス2200の1又は複数の特徴は、1又は複数の構成要素部分に分割され得る。
【手続補正9】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2
【手続補正10】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図17A
【補正方法】変更
【補正の内容】
図17A
【国際調査報告】