(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】湿気バリアを有するスペーサー
(51)【国際特許分類】
E06B 3/663 20060101AFI20240730BHJP
E06B 3/67 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
E06B3/663 B
E06B3/663 F
E06B3/67 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506527
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2022072974
(87)【国際公開番号】W WO2023025634
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン-ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン カレ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ハーゲン
(72)【発明者】
【氏名】バルター シュライバー
【テーマコード(参考)】
2E016
【Fターム(参考)】
2E016BA01
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC02
2E016EA02
2E016FA01
(57)【要約】
少なくとも以下を有する、遮断ガラスユニット用スペーサー(I):
- 下記を有する、ポリマー性中空プロファイル(1):
- 第1側壁(2.1)、及び第1側壁(2.1)と平行に配置されている第2側壁(2.2)であって、グレージング内部壁(3)が、側壁(2.1,2.2)を互いに接続している、第1側壁(2.1)、及び第2側壁(2.2);
- グレージング内部壁(3)と実質的に平行に配置されており、側壁(2.1、2.2)を互いに接続している、外側壁(5);
- 側壁(2.1,2.2)、グレージング内部壁(3)、及び外側壁(5)によって囲まれている、キャビティ(8)、
- ポリマー性中空プロファイル(1)の第1側壁(2.1)、外側壁(5)、及び第2側壁(2.2)上にある、湿気バリア(20)、
ここで、湿気バリア(20)が、
- 第1バリア層(21)、及び直接隣接している第2バリア層(22)を少なくとも有しており、これらが両方とも原子層堆積法(ALD)を介して堆積されたものであり、
- 第1バリア層(21)、及び第2バリア層(22)が、それぞれ、最大15nmの厚さを有し、
- 第1バリア層(21)、及び第2バリア層(22)が、互いに独立して、窒化物、酸化物、硫化物、又はフッ化物化合物に基づいている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下を有する、遮断ガラスユニット用スペーサー(I):
- 下記を有する、ポリマー性中空プロファイル(1):
- 第1側壁(2.1)、及び前記第1側壁(2.1)と平行に配置されている第2側壁(2.2)であって、グレージング内部壁(3)が、前記側壁(2.1,2.2)を互いに接続している、第1側壁(2.1)、及び第2側壁(2.2);
- 前記グレージング内部壁(3)と実質的に平行に配置されており、前記側壁(2.1、2.2)を互いに接続している、外側壁(5);
- 前記側壁(2.1,2.2)、前記グレージング内部壁(3)、及び前記外側壁(5)によって囲まれている、キャビティ(8)、
- 前記ポリマー性中空プロファイル(1)の前記第1側壁(2.1)、前記外側壁(5)、及び前記第2側壁(2.2)上にある、湿気バリア(20)、
ここで、前記湿気バリア(20)が、
- 第1バリア層(21)、及び直接隣接している第2バリア層(22)を少なくとも有しており、これらが両方とも原子層堆積法(ALD)を介して堆積されたものであり、
- 前記第1バリア層(21)、及び前記第2バリア層(22)が、それぞれ、最大15nmの厚さを有し、
- 前記第1バリア層(21)、及び前記第2バリア層(22)が、互いに独立して、窒化物、酸化物、硫化物、又はフッ化物化合物に基づいている。
【請求項2】
前記第1バリア層(21)が、前記ポリマー性中空プロファイル(1)に直接適用されている、請求項1に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
【請求項3】
前記湿気バリア(20)が、前記ポリマー性中空プロファイル(1)に、接着剤(19)を介してフィルムの形態で取り付けられており、前記湿気バリア(20)が、少なくとも1つのポリマー性層(31)を有し、好ましくは少なくとも2つのポリマー性層(31、32)を有する、請求項1に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
【請求項4】
前記湿気バリア(20)が、元素金属に基づくバリア層を有しない、請求項1~3のいずれか1項に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
【請求項5】
前記ポリマー性層(31)が、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、一軸配向ポリプロピレン、二軸配向ポリプロピレン、一軸配向ポリエチレンテレフタレート、二軸配向ポリエチレンテレフタレートを含み、好ましくは前記ポリマーのいずれかに基づいている、請求項3又は請求項4に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
【請求項6】
前記ポリマー性層(31)、又は全てのポリマー性層(31、32)が、5μm~50μm、好ましくは10μm~35μm、特に好ましくは12μm~25μmの厚さを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
【請求項7】
前記湿気バリア(20)が、エチレンビニルアルコール(EVOH)でできているポリマー性層を含まない、請求項1~6のいずれか1項に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
【請求項8】
前記湿気バリア(20)が、少なくとも3つのバリア層(21、22、23)、好ましくは少なくとも4つのバリア層(21、22、23、24)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
【請求項9】
全てのバリア層(21、22、23、24)が、原子層堆積法を介して堆積されたものであり、かつ互いに独立に、窒化物、酸化物、硫化物、又はフッ化物化合物に基づいている、請求項1~8のいずれか1項に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
【請求項10】
第3バリア層(23)、及び第4バリア層(24)が、互いに直接隣接している、請求項8又は請求項9に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
【請求項11】
バリア層(21、22、23、24)が、前記中空プロファイル(1)の、前記キャビティ(8)とは反対側を向いている面上において外側層として露出している、請求項1~10のいずれか1項に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
【請求項12】
全てのバリア層(21、22、23、24)の厚さの合計が、50nm未満、好ましくは40nm未満、特に好ましくは30nm未満である、請求項1~11のいずれか1項に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
【請求項13】
前記バリア層(21、22、23、24)の厚さが、10nm未満、好ましくは1nm~9nm、特に好ましくは2nm~8nm、非常に特に好ましくは3nm~7nmである、請求項1~12のいずれか1項に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
【請求項14】
遮断ガラスユニット(II)であって、第1ペイン(13)、第2ペイン(14)、及び前記第1ペイン(13)と前記第2ペイン(14)との間に周縁的に配置されている請求項1~13のいずれか1項に記載のスペーサー(I)を、少なくとも有し、
- 前記第1ペイン(13)が、前記第1側壁(2.1)に1次シール材(17)によって取り付けられており、
- 前記第2ペイン(14)が、前記第2側壁(2.2)に1次シール材(17)によって取り付けられており、
- 内側ペイン間空間(15)が、前記グレージング内部壁(3)、前記第1ペイン(13)、及び前記第2ペイン(14)によって区画されており、
- 外側ペイン間空間(16)が、前記外側壁(5)上に据えつけられている前記湿気バリア(20)によって、かつ前記第1ペイン(13)、及び前記第2ペイン(14)によって区画されており、
- 2次シーラント(18)が、前記外側ペイン間空間(16)内に配置されており、前記2次シーラント(18)が、前記湿気バリア(20)と接触している、
遮断ガラスユニット(II)。
【請求項15】
請求項14に記載の遮断ガラスユニット(II)の、建築物の内部グレージング、建築物の外部グレージング、及び/又はファサードグレージングとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮断ガラスユニット用スペーサー、遮断ガラスユニット、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
遮断(絶縁)グレージングは一般に、ガラス又はポリマー性材料でできている少なくとも2つのペインを含む。ペインは、スペーサーによって画定されているガス又は真空空間によって、互いに分離されている。遮断ガラスの熱遮断能力は、単一グレージングのものよりも著しく高く、三重グレージング内において、又は特殊コーティングを有するものにおいては、さらにより向上しうるし、改善されうる。例えば、銀を含有するコーティングは、赤外線の透過の減少を可能にし、このようにして冬季の建築物の冷却を軽減させる。
【0003】
ガラスの性質及び構造に加えて、遮断グレージングのさらなる構成要素も、非常に重要である。封止、及びとりわけスペーサーは、遮断グレージングの品質に大きく影響する。遮断グレージングでは、周方向スペーサーが、2つのガラスペインの間に固定され、それによって、ガスが充填されているか、又は空気が充填されている内側ペイン間空間が作り出され、これは湿気の侵入に対して封止される。
【0004】
遮断グレージングの熱遮断特性は、縁部コンポジットの領域、特にはスペーサーの領域における熱伝導性によって大きく影響される。金属性スペーサーの場合、金属の高い熱伝導性により、ガラスの縁部において熱橋が形成される。一方では、この熱橋は、遮断グレージングの縁部領域における熱損失につながり、他方では、高い空気湿度及び低い外部温度により、スペーサーの領域における内側ペイン上での凝縮水の形成につながる。これらの問題を解決するために、熱的に最適化された、いわゆる「ウォームエッジ」システムが用いられるようになってきており、これにおいて、スペーサーは、熱伝導性が比較的低い材料、特にはプラスチックからなる。
【0005】
特に、プラスチック本体に基づくスペーサーは、内側ペイン間空間からのガス充填の損失、及び内側ペイン間空間内への湿気の侵入を防止するため、又はこれらをありうる限り防止するために、追加の封止を必要とする。このための一つの可能性は、例えばアルミニウム、又はステンレス鋼でできている薄い金属性フィルムの適用である。純粋な金属性フィルムの欠点は、材料コストが高いこと、及び金属の熱伝導性が高いことである。スペーサーは、遮断グレージングの縁部コンポジットの一部であるため、スペーサーを通る熱伝導をありうる限り低くすることが求められ、それによって、熱橋の形成を防ぐ。
【0006】
改善された結果は、例えば国際公開第2013/104507号において開示されているように、金属性層及びポリマー性層の両方を含む多層フィルムの使用によって達成される。ここでは、複数の金属性層又はセラミック層が、好ましくは用いられ、これらはポリマー性層と交互に配置され、それによって、低い熱伝導性と同時に特に良好な封止性を得る。層は、好ましくは蒸着によって作り出される。
【0007】
この目的のために、欧州特許出願公開第2719533号明細書は、2次シーラントに面している面上に、SiOx又はAlOyの薄い接着剤層を有するフィルムを備えたスペーサーを開示している。この層は、様々な方法を介して適用されてよく、例えば真空プロセス(スパッタリング、蒸着、若しくはプラズマCVD)などにおいて、又は反応性気相プロセス(プラズマCVD、又はALD)などによって、適用されてよい。薄い接着剤層とは別に、フィルムは、実質的にポリマー性層を含み、これは、湿気封止機能を担っている。方向づけられたEVOH層は、特には、湿気に対するバリア層として機能する。さらに、2つのポリマー性層の間にさらなる金属酸化物層を取り付けることも開示されている。EVOH層の1つの欠点は、市販のPET層に比べて比較的コストが高いことである。
【0008】
ポリマー性基材上に薄層を作り出す方法としてのALDの使用は、例えば、欧州特許第1629543号明細書において開示されている。特に、電子部品を、酸素気密の様式において、厚さ100nmまでの個別の層を用いて、包装しうる方法が開示されている。さらに、国際公開第03008110号には、厚さ100nmまでの無機層を有機ポリマーに適用することが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
金属、金属酸化物、又は特定のポリマーでできているバリア層は、多層フィルムの密封性にとって決め手となる。高い密封性、及び同時に低い熱伝導性を得るために、金属又は金属酸化物でできている複数の層が、通常用いられる。バリア層の数、及び厚さを減らすことは、材料支出、ひいてはコスト支出をありうる限り低く抑えるために望ましいことである。
【0010】
本発明の目的は、上述の欠点を有しない、改良されたスペーサーを提供し、改良された遮断ガラスユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、本発明によれば、独立請求項1に記載の遮断ガラスユニット用スペーサーによって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項から明らかになる。
【0012】
本発明による遮断ガラスユニット、及びその使用は、さらなる独立請求項から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明によるスペーサーのありうる実施形態の透視断面図を示す。
【
図2】
図2は、本発明によるスペーサーの湿気バリアのありうる実施形態の断面図を示す。
【
図3】
図3は、本発明によるスペーサーの湿気バリアのありうる実施形態の断面図を示す。
【
図4】
図4は、本発明によるスペーサーの湿気バリアのありうる実施形態の断面図を示す。
【
図5】
図5は、本発明によるスペーサーの湿気バリアのありうる実施形態の断面図を示す。
【
図6】
図6は、本発明によるスペーサーの湿気バリアのありうる実施形態の断面図を示す。
【
図7】
図7は、本発明による遮断ガラスユニットのありうる実施形態の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
遮断ガラスユニット用の本発明によるスペーサーは、第1側壁、それに平行に配置されている第2側壁、グレージング内部壁、外側壁、及びキャビティ(空洞)を有する、少なくとも1つのポリマー性中空プロファイルを有する。キャビティは、側壁、グレージング内部壁、及び外側壁によって囲まれている。グレージング内部壁は、ここでは側壁に対して実質的に垂直に配置されており、第1側壁を第2側壁に接続している。側壁は、遮断ガラスユニットの外側ペインが取り付けられている、中空プロファイルの壁である。グレージング内部壁は、完成した遮断ガラスユニット内に設置した後、内側ペイン間空間に面している中空プロファイルの壁である。外側壁は、グレージング内部壁と実質的に平行に配置されており、第1側壁を第2側壁に接続する。完成した遮断ガラスユニット内に設置した後、外側壁は外側ペイン間空間に面している。
【0015】
スペーサーは、ポリマー性中空プロファイルの外側壁、第1側壁、及び第2側壁上に湿気バリアをさらに有する。湿気バリアは、内側ペイン間空間を、湿気の侵入に対して封止し、内側ペイン間空間内に含まれるガスの損失を防止する。湿気バリアは、少なくとも1つの第1バリア層、及び1つの第2バリア層を有し、両者は原子層堆積法によって堆積される。第1バリア層及び第2バリア層は、互いに直接隣接している、すなわちそれらは互いに直接接触している。したがって、さらなる層、例えば接着剤層、又はポリマー性材料でできている層などは、第1バリア層と第2バリア層との間には、存在しない。第1バリア層及び第2バリア層はそれぞれ、最大15nmの厚さを有する。直接隣接している2つの層から形成される「二重層」としての実施形態の結果、個別の層が比較的薄いにもかかわらず、湿気の侵入に関して驚くほど良好なバリア効果が達成される。第1バリア層及び第2バリア層は、互いに独立して、窒化物、酸化物、硫化物、又はフッ化物化合物に基づいている。これらの材料は、ALD(原子層堆積法)を介して、特には高密度な層として用いられうる。元素金属層と比較して、これらの材料は低い熱伝導性によって区別され、これは、スペーサーの熱遮断性について有利である。湿気バリアは、さらなる層、例えばバリア層、ポリマー性層、又は接着剤層などを含みうる。
【0016】
層が、材料に「基づいて」形成されている、又は材料に「基づく」場合、その層は、任意の不純物又はドーピングに加えて、この材料、特には実質的にこの材料から、主に構成される。材料の割合は、50wt%超、好ましくは70wt%超、特に好ましくは90wt%超、非常に特に好ましくは95wt%超である。
【0017】
ALD(原子層堆積法)は、原子単層まで薄い層を分離する方法である。堆積される材料の成分(原子)は、化学的な形態でキャリアガス(いわゆる前駆体及び反応体)に結合する。特定の前駆体が、コーティングされる表面に化学的に付着し、そこで薄い層、通常は単層が、表面に付着する。その後、反応チャンバーは空にされ、反応物質で充填される。所定の温度で、結合した前駆体と反応物質との反応が起こり、それによって、所望の化合物の層が、コーティングされる表面上に形成される。そして、反応生成物は吸い上げられ、プロセスは、前駆体を反応チャンバー内に再び導入することによって、最初から再び始まる。このようにして、個別の層が、所望の層厚を得るまで、連続して適用される。個別の分離工程の間、反応チャンバーは、不活性ガス、例えばアルゴンで、パージされうる。ALDの特徴は、部分反応の自己限定的な性質である:反応物質及び前駆体は、それら自身と、又はそれら自身のリガンドと反応せず、これは、部分反応の層成長を、任意の時間の長さ、及び任意のガス量に対して、最大1単層までに制限する。したがって、正確に調整された層厚を有する、非常に高密度な層が作り出されうる。ガスは反応チャンバー内で均一に分散するので、対象物は、それらの幾何学的形状に関係なく、任意のベアリング表面を除けば、完全にコーティングされる。適切な前駆体及び反応物質は、当業者に知られており、例えば、M. Leskela及び M. Ritalaの、Journal de Physique IV、vol.9、837-852(1999)における「ALD precursor chemistry:Evolution and future challenges」、又は国際公開第03008110号、及びそれらに示された文献において、記載されている。
【0018】
好ましい実施形態では、第1バリア層及び/又は第2バリア層は、窒化物バリア層である。窒化物ALDコーティングの生成には、アンモニア(NH3)を、例えば、反応物質などとして用いうる。適切な前駆体は、対応するハロゲン化物、例えば金属ハロゲン化物などである。好ましい窒化物は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、鉄、コバルト、ニッケル、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ケイ素、及びスズの、窒化物である。これらの窒化物は、ALDを介して良好に堆積されうる。特に好ましいのは、ホウ素、ケイ素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、及びアルミニウム、並びにそれらの混合物の、窒化物である。これらの窒化物を含むバリア層は、特に高い漏れ耐性を有する。窒化物は、化学量論的、亜化学量論的、又は超化学量論的に形成されうる。窒化物は、好ましくは化学量論的に形成され、これは原子層堆積法による単層の堆積によるものでありうる。例えば、Si3N4、TiN、ZrN、HfN、AlNが好ましい。
【0019】
さらに好ましい実施形態では、第1バリア層及び/又は第2バリア層は、酸化バリア層である。金属酸化物でできているALDコーティングを作り出すために、適切な前駆体は、例えば、一方では対応するメチル金属化合物又は対応する金属塩化物であり、他方で、反応物質としては、水蒸気又はオゾンである。好ましい酸化物は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、及びビスマスの酸化物である。アルミニウム、クロム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、及びそれらの混合物の酸化物が特に好ましい。酸化物は、化学量論的、亜化学量論的、又は超化学量論的に形成されうる。酸化物は、好ましくは化学量論的に形成され、これは原子層堆積法による単層の堆積によるものでありうる。例えば、Al2O3、Cr2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、HfO2、又はAl2TiO5が好ましい。
【0020】
さらに好ましい実施形態では、第1バリア層及び/又は第2バリア層は、硫化バリア層である。硫化ALDコーティングを作り出すために、硫化水素(H2S)を、例えば、反応物質として用いうる。適切な前駆体は、対応するハロゲン化物、例えば金属ハロゲン化物などである。好ましい硫化物は、チタン、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、スズ、及びビスマスのものである。特に好ましいのは、鉄、及びコバルトの硫化物である。硫化物は、化学量論的、亜化学量論的、又は超化学量論的でありうる。硫化物は、好ましくは化学量論的に形成され、これは、原子層堆積法による単層の堆積によるものでありうる。
【0021】
さらに好ましい実施形態では、第1バリア層及び/又は第2バリア層は、フッ化物バリア層である。好ましいのは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、及びアルミニウムのフッ化物である。特に好ましいのは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムのフッ化物である。フッ化物は、化学量論的、亜化学量論的又は超化学量論的に形成されうる。フッ化物は、好ましくは化学量論的に形成され、これは、原子層堆積法による単層の堆積によるものでありうる。
【0022】
さらに好ましい実施形態では、第1バリア層は、ポリマー性中空プロファイルに直接適用される。直接適用とは、第1バリア層が、ポリマー性中空プロファイル上で、ALDに直接適用され、それによって、接着剤層、又はポリマー性層が、そこに配置されないことを意味する。溶媒、又はプラズマ活性化などによる、ポリマー性中空プロファイルの前処理がありうる。しかしながら、接着剤層は、直接適用の場合、提供されない。第2バリア層は、第1バリア層に直接隣接して配置される。ALDの援助をもってコーティングを適用させる大きな利点は、複雑な形状も、高密度に定義された層で、均一にコーティングされることである。好ましくは、ポリマー性層は、ポリマー性中空プロファイルに適用されず、それによって、この場合、湿気バリアは、バリア層のみを有し、これは、好ましくは全てALDを介して適用される。
【0023】
さらに好ましい実施形態では、フィルムの形態である湿気バリアは、接着剤を介してポリマー性中空プロファイルに取り付けられる。この場合、湿気バリアは、バリア層が適用される、少なくとも1つのポリマー性層を有する。ALDを介したバリア層によるフィルムのコーティングは、ポリマー性中空プロファイルの作製とは独立して行われる。これは、フィルムを交換することによって、異なる要件を有するスペーサーの作製の、柔軟な対応を可能にする。好ましくは、湿気バリアは、非気体接着剤によってポリマー性中空プロファイルに接着される。湿気バリアとポリマー性中空プロファイルとの間の長さ範囲における差は、熱応力につながりうる。接着剤を介して湿気バリアを取り付けることによって、任意の応力が、接着剤の弾性を介して吸収されうる。適切な接着剤は、熱可塑性接着剤であるが、反応性接着剤、例えば多成分接着剤などでもある。好ましくは、熱可塑性ポリウレタン、又はポリメタクリレートが、接着剤として用いられる。これは、試験において特に適していることが証明されている。
【0024】
湿気バリアは、好ましくは少なくとも2つのポリマー性層、好ましくは正確に2つ、3つ、又は4つのポリマー性層、特に好ましくは2つ又は3つのポリマー性層を有する。ポリマー性層は、まずキャリア材料として、かつバリア層間の中間層として機能する。
【0025】
さらに好ましい実施形態では、湿気バリアは、元素金属に基づくバリア層を有しない。好ましくは、湿気バリアは、窒化物、酸化物、硫化物、又はフッ化物化合物に基づく無機バリア層のみを有する。一方で、元素金属は、比較的高い熱伝導性を有し、これはスペーサーの熱遮断特性にとって不利である。
【0026】
さらに好ましい実施形態において、ポリマー性層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、一軸配向ポリプロピレン(oPP)、二軸配向ポリプロピレン(boPP)、一軸配向ポリエチレンテレフタレート(oPET)、二軸配向ポリエチレンテレフタレート(boPET)を含む。好ましくは、ポリマー性層、又は各ポリマー性層は、それぞれの場合において、言及されたポリマーのうちの1種に基づいて形成される。言及されたポリマーは、ALDによるコーティングに特に適しており、遮断グレージングのスペーサー用フィルムとして適している。ポリマー性層は、特に好ましくはPET、oPP、boPP、oPET、又はboPETを含み、これらはALDにより特に良好にコーティングされうるし、バリア層に対する良好な接着特性を有しうる。一軸配向ポリプロピレン、及び一軸配向ポリエチレンテレフタレートは、一方向において延伸される。boPP及びboPETでできているフィルムは、縦方向において、かつ横方向において延伸される。延伸により、フィルムは、元のフィルムよりも耐性が高くなる。
【0027】
さらに好ましい実施形態では、ポリマー性層又は全てのポリマー性層は、5μm~50μm、好ましくは10μm~35μm、特に好ましくは12μm~25μmの厚さを有する。これらの領域において、個別の層を、良好に加工しうるし、コスト効率的に得うる。
【0028】
さらに好ましい実施形態では、湿気バリアは、エチレンビニルアルコール(EVOH)に基づくポリマー性層を含まない。EVOH層自体は、湿気バリア層として機能するが、比較的コストがかかり、層の厚さによっては、無機バリア層よりも密度が低い。本発明による湿気バリアの利点は、バリア層が特に薄く設計されていることであり、それにもかかわらず、これは、高い密封性を提供するので、追加のバリアとしてEVOH層は必要ない。
【0029】
さらに好ましい実施形態では、湿気バリアは、少なくとも3つのバリア層、好ましくは少なくとも4つのバリア層、さらに好ましくは少なくとも5つのバリア層又は少なくとも6つのバリア層を含む。湿気バリアは、好ましくは、正確に3、4、5、又は6つのバリア層を含む。薄いバリア層の比較的多い数は、密封性において著しい改善につながる一方で、バリア層の厚さにおける増加は、密封性においてわずかな改善しかもたらさないことが示されている。
【0030】
好ましくは、全てのバリア層は、原子層堆積法によって堆積され、窒化物、酸化物、硫化物、又はフッ化物化合物に、互いに独立して基づいている。バリア層の作製に対してALDを用いるので、多くの薄い層を用いてよい。湿気バリアを作製するために単一方法を用いることは、さらに作製工程を単純化する。
【0031】
代替的な好ましい実施形態において、従来の方法、例えばCVD(化学蒸着)又はPVD(物理蒸着)などが、湿気バリアのさらなる層を作り出すために用いられる。
【0032】
さらに好ましい実施形態では、第3バリア層及び第4バリア層が、互いに直接隣接している。二重バリア層としての実施形態は、密封性を改善するのに特に効果的であることが証明されている。したがって、この実施形態における湿気バリアは、少なくとも2つの二重バリア層を含む。さらに好ましくは、湿気バリアは、4つ超のバリア層、例えば5つ、6つ、7つ、又は8つのバリア層などを含む。好ましくは、バリア層はそれぞれ、2つのバリア層が常に互いに直接隣接しているように、配置される。
【0033】
湿気バリアにおける層のありうる好ましい順序は、以下の通りである:
第1バリア層-第2バリア層-第3バリア層-第4バリア層;この場合、ポリマー性層は存在しないが、バリア層は、ポリマー性中空プロファイル上に直接配置されており、好ましくは全てALDによって堆積される。
【0034】
湿気バリアにおける層の別の好ましい順序は、以下の通りである:
第1バリア層-第2バリア層-第1ポリマー性層-第3バリア層-第4バリア層-第2ポリマー性層;この湿気バリアは、片側がコーティングされた2つのポリマー性層の積層によって(この場合、接着剤結合層が、第1ポリマー性層と第3バリア層との間に配置されるであろう)、又は代替的には、両側がコーティングされたポリマー性層をさらなるポリマー性層に接着剤結合することによって(この場合、例えば、接着剤結合層が、第4バリア層と第2ポリマー性層との間に配置されるであろう)、作製されうる。
【0035】
コーティング又は非コーティングフィルムを、湿気バリアに接着的に結合するための接着剤結合層は、好ましくは1μm~8μm、より好ましくは2μm~6μmの厚さを有する。これにより、確実な接着剤結合が保証される。
【0036】
さらに好ましい実施形態では、バリア層は、キャビティとは反対側を向いている中空プロファイルの面上で、外側層として露出している。「露出」という用語は、バリア層がキャビティではなく外部環境に面していることを意味する。完成した遮断グレージング内では、外側層は、外側壁の領域において2次シーラントと、又は側壁の領域において1次シーラントと直接接触している。無機バリア層は、ポリマー性材料と比較して、シーラントに対して、実質的に改善された接着性を有する。したがって、本発明によるバリア層が、外側層として配置される場合、有利である。
【0037】
好ましい実施形態において、外側層は、ALDを介して堆積された本発明によるバリア層であり、酸化ケイ素(SiOx)に基づくか、又はSiOxからなる。SiOxは、2次シーラントの材料に対して特に良好な接着性を有し、低い熱伝導性を有し、これは、スペーサーの熱遮断特性をさらに向上させる。
【0038】
好ましい実施形態において、外側層は、ALDを介して堆積された本発明によるバリア層であり、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、又は鉄の酸化物に基づいている。これらの金属酸化物は、隣接するシーラントに対する特に良好な接着性によって区別される。クロム酸化物又はチタン酸化物の外側層では、驚くほど良好な結果が得られた。
【0039】
直接隣接している2つのバリア層は、本発明に従って異なる組成を有する。これは、2つの直接隣接するバリア層が、2つの異なる化合物に基づくことを意味する。2つの異なる材料の実施形態は、同じ材料でできている2つの層と比較して、改良された封止をもたらす。
【0040】
さらに好ましい実施形態では、全てのバリア層の厚さは、それぞれの場合において、10nm未満、好ましくは1nm~9nm、特に好ましくは2nm~8nm、非常に特に好ましくは3nm~7nmである。このような薄い層の適用は、材料を節約し、ALDを介した堆積のおかげで優れた密封性を有する。
【0041】
さらに好ましい実施形態では、全てのバリア層の厚さの合計は、50nm未満、好ましくは40nm未満、特に好ましくは30nm未満である。特に高密度なバリア層のおかげで、遮断グレージング用スペーサーとしての要件を満たすために必要な合計の厚みはわずかである。
【0042】
湿気バリアは、好ましくはスペーサーの長手方向において連続的に配置されており、それによって、湿気は、遮断グレージング内の周縁スペーサーフレーム全体に沿って内側ペイン間空間内に侵入できなくなる。
【0043】
湿気バリアが、好ましくは、グレージング内部壁に隣接する2つの側壁の領域において湿気バリアが存在しないように、適用される。側壁までの外側壁全体に取り付けることにより、スペーサーの特に良好な封止性が達成される。湿気バリアが無いままである側壁上の領域の利点は、設置状態での光学的外観の改善にある。グレージング内部壁に隣接する湿気バリアの場合、これは完成した遮断ガラスユニット内において見える。これは美観上好ましくないと認められることがある。湿気バリアが無いままである領域の高さは、好ましくは1mm~3mmである。この実施形態では、完成した遮断ガラスユニット内の湿気バリアは見えない。
【0044】
代替的な好ましい実施形態では、湿気バリアは側壁全体に取り付けられる。随意に、湿気バリアは、追加的にグレージング内部壁上に配置されうる。このようにしてスペーサーの封止性はさらに向上する。
【0045】
本発明によるスペーサーのキャビティは、中実で形成されたスペーサーと比較して重量の軽減につながり、さらなる構成要素、例えば乾燥剤などを受け入れるために利用可能である。
【0046】
第1側壁及び第2側壁は、スペーサーが設置されるときに、遮断グレージングの外側ペインの据え付けが行われる、スペーサーの側面を表す。第1側壁及び第2側壁は、互いに平行に延在する。
【0047】
中空プロファイルの外側壁は、グレージング内部壁とは反対側にある壁であり、遮断グレージングユニットの内部(内側ペイン間空間)とは反対側に、外側ペイン間空間の方向に向いている。外側壁は、好ましくは側壁に対して実質的に垂直に延在する。平面状の外側壁は、その全経路において側壁に対して垂直(グレージング内部壁に対して平行)であり、スペーサーと側壁との間の封止表面が最大化され、比較的単純な成形により作製工程が容易になるという利点を有する。
【0048】
本発明によるスペーサーの好ましい実施形態では、側壁に最も近い外側壁の部分は、外側壁に対して30°~60°の角度α(アルファ)で側壁の方向に傾斜している。この実施形態は、ポリマー性中空プロファイルの安定性を向上させる。好ましくは、側壁に最も近い部分は、45°の角度α(アルファ)で傾斜している。この場合、スペーサーの安定性がさらに向上する。角度をつけた配置は、湿気バリアの接着剤結合を改善する。
【0049】
本発明によるスペーサーの好ましい実施形態において、ポリマー性中空プロファイルは実質的に均一な壁厚dを有する。壁厚dは、好ましくは0.5mm~2mmの範囲内にある。この範囲では、スペーサーは特に強固である。
【0050】
本発明によるスペーサーの好ましい実施形態において、中空プロファイルは、バイオベースポリマー、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PET-G)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリアミド-6,6、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、アクリル酸エステル・スチレン・アクリロニトリル(ASA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン・ポリカーボネート(ABS/PC)、スチレン・アクリロニトリル(SAN)、PET/PC、PBT/PC、又はこれらのコポリマーを含む。特に好ましい実施形態では、中空プロファイルは、実質的に、列挙したポリマーのうちの1種からなる。
【0051】
ポリマー性中空プロファイルは、好ましくはガラス繊維強化をされる。ポリマー性中空プロファイル中のガラス繊維含有量の選択を通じて、ポリマー性中空プロファイルの熱膨張係数を変化させてよく、調整してよい。中空プロファイル及び湿気バリアの熱膨張係数を調整することによって、異なる材料間の温度誘起応力及び湿気バリアの剥がれを回避しうる。ポリマー性中空プロファイルは、好ましくは20wt%~50wt%、特に好ましくは30wt%~40wt%のガラス繊維含有量を有する。同時に、ポリマー性中空プロファイル中のガラス繊維含有量は、強度及び安定性を向上させる。ガラス繊維強化スペーサーは、一般に剛性の高いスペーサーであり、これは、遮断ガラスユニット用スペーサーフレームの組み立ての際に、個別の直線ピースから、一緒に差し込まれ、又は一緒に溶接される。ここで、接続点は、シーラントで個別に封止されるはずであり、それによって、スペーサーフレームの最適な封止性を確保する。本発明によるスペーサーは、湿気バリアの高い安定性及びシーラントに対する特に良好な接着性により、特に良好に加工されうる。
【0052】
代替的な好ましい実施形態では、中空プロファイルはガラス繊維を含有しない。ガラス繊維の存在は、スペーサーの熱遮断特性を悪化させ、スペーサーを硬く脆くする。ガラス繊維を含まない中空プロファイルは、比較的良好に曲げられうるし、その場合、接続点の封止は省略される。曲げる際、スペーサーは特定の機械的負荷にさらされる。特にスペーサーフレームのコーナー部では、湿気バリアが、非常に延伸する。湿気バリアを有する、本発明によるスペーサーの構造はまた、遮断ガラスユニットの封止性を損なうことなくスペーサーの曲げを可能にする。
【0053】
さらに好ましい実施形態では、ポリマー性中空プロファイルは発泡ポリマーからなる。この場合、発泡剤は、ポリマー性中空プロファイルの作製の際に添加される。発泡スペーサーの例は、国際公開第2016139180号に開示されている。発泡される実施形態は、ポリマー性中空プロファイルを通る熱伝導性の低減をもたらし、中実のポリマー性中空プロファイルと比較して材料及び重量の節約をもたらす。
【0054】
好ましい実施形態では、グレージング内部壁は少なくとも1つの穿孔を有する。好ましくは、複数の穿孔がグレージング内部壁内に形成される。穿孔の総数は、遮断ガラスユニットのサイズに依存する。グレージング内部壁内の穿孔は、中空空間を遮断ガラスユニットの内側ペイン間空間に接続し、それによって両者間のガス交換を可能にする。これは、キャビティ内に位置する乾燥剤による空気中の湿気の吸収を可能にし、このようにして、ペインの曇りを防止する。穿孔は、好ましくはスロットとして、特に好ましくは幅0.2mm、長さ2mmのスロットとして設計される。スロットは、乾燥剤がキャビティから内側ペイン間空間内に侵入することなく、最適な空気交換を保証する。中空プロファイルの作製後、穿孔が、グレージング内部壁内に単に打ち抜かれうるし、又は切削されうる。穿孔は、好ましくは、グレージング内部壁内に熱間穿孔される。
【0055】
代替的な好ましい実施形態では、グレージング内部壁の材料は、多孔質であるか、又は拡散に対して開いているプラスチックで具現化されており、それによって、穿孔は必要なくなる。
【0056】
ポリマー性中空プロファイルは、好ましくは、グレージング内部壁に沿って、5mm~55mm、好ましくは10mm~20mmの幅を有する。本発明の意味において、幅は、側壁間に延在する寸法である。幅は、互いに反対側を向いている、2つの側壁の表面間の距離である。遮断ガラスユニットのペイン間の距離は、グレージング内部壁の幅の選択を通じて決定される。グレージング内部壁の正確な寸法は、遮断ガラスユニットの寸法及び望ましいペイン間空間サイズに依存する。
【0057】
中空プロファイルは、好ましくは、側壁に沿って5mm~15mm、特に好ましくは6mm~10mmの高さを有する。この高さ範囲では、スペーサーは有利な安定性を有するが、その他に有利には、遮断ガラスユニット内で目立たない。さらに、スペーサーのキャビティは、適切な量の乾燥剤を受け入れるのに有利な大きさを有する。スペーサーの高さは、互いに反対側を向いている、外側壁の表面とグレージング内部壁の表面との間の距離である。
【0058】
キャビティは、好ましくは乾燥剤、好ましくはシリカゲル、モレキュラーシーブス、CaCl2、Na2SO4、活性炭、ケイ酸塩、ベントナイト、ゼオライト、及び/又はそれらの混合物を含む。
【0059】
本発明による構造のおかげで、スペーサーは、ペイン間空間からのガスの拡散に対して、かつペイン間空間内への湿気の拡散に対して、良好な封止性を提供する。本発明によるスペーサーは、好ましくは、試験規格EN1279Parts2+3を満たす。
【0060】
本発明はさらに、少なくとも第1ペイン、第2ペイン、第1ペインと第2ペインとの間に配置されている本発明による周方向スペーサー、内側ペイン間空間、及び外側ペイン間空間を有する、遮断ガラスユニットを有する。本発明によるスペーサーは、周方向スペーサーフレームを形成するように配置されている。第1ペインは、1次シーラントによってスペーサーの第1側壁に取り付けられ、第2ペインは、1次シーラントによって第2側壁に取り付けられる。これは、第1シーラントが、第1側壁と第1ペインとの間、かつ第2側壁と第2ペインとの間に配置されていることを意味する。第1ペイン及び第2ペインは、平行に、好ましくは一致して配置されている。したがって、2つのペインの縁部は、好ましくは縁部領域において面一に配置されており、すなわちそれらは同じ高さに位置する。内側ペイン間空間は、第1ペイン及び第2ペイン、並びにグレージング内部壁によって区画されている。外側ペイン間空間は、第1ペイン、第2ペイン、及びスペーサーの外側壁上の湿気バリアによって区画されている空間として定義される。外側ペイン間空間は、少なくとも部分的に2次シーラントで充填され、ここで、2次シーラントは湿気バリアと直接接触している。2次シーラントは、遮断ガラスユニットの機械的安定性に寄与し、縁部コンポジットに作用する気候負荷の一部を吸収する。
【0061】
本発明による遮断ガラスユニットの好ましい実施形態では、1次シーラントは、ポリマー性中空プロファイルと湿気バリアとの間の移行部を覆い、それによって、遮断ガラスユニットの特に良好な封止性が達成される。このようにして、スペーサーのキャビティ内への湿気の拡散は、湿気バリアがプラスチックに隣接する位置で減少する(界面拡散が減少する)。
【0062】
本発明による遮断ガラスユニットのさらに好ましい実施形態では、2次シーラントは、外側壁の中央領域に2次シーラントが存在しないように、第1ペイン及び第2ペインに沿って適用される。中央領域は、第1ペイン及び第2ペインに隣接している、外側壁の2つの外側領域とは対照的に、2つの外側ペインに関して中央に配置されている領域を示す。このようにして、遮断ガラスユニットの良好な安定化が達成され、同時に2次シーラントの材料コストが節約される。同時に、この配置は、外側ペインに隣接している外側領域において、外側壁に2本の2次シーラントを適用することによって容易に作製されうる。
【0063】
さらに好ましい実施形態では、2次シーラントは、外側ペイン間空間全体が2次シーラントで完全に充填されるように適用される。これは、遮断ガラスユニットの最大限の安定化をもたらす。
【0064】
2次シーラントは、好ましくはポリマー又はシラン変性ポリマー、特に好ましくは有機ポリサルファイド、シリコーン、ホットメルト、ポリウレタン、室温架橋型(RTV)シリコーンゴム、過酸化物架橋型シリコーンゴム、及び/又は付加架橋型シリコーンゴムを含む。これらのシーラントは、特に良好な安定化効果を有する。本発明によるスペーサーを用いると、優れた接着結果が、慣用の2次シーラント上の全スペクトルに対する接着剤層のおかげで、達成された。
【0065】
1次シーラントは、好ましくはポリイソブチレンを含む。ポリイソブチレンは、架橋型又は非架橋型ポリイソブチレンでありうる。
【0066】
遮断ガラスユニットの第1ペイン及び第2ペインは、好ましくはガラス、セラミック、及び/又はポリマー、特に好ましくは石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、ポリメチルメタクリレート、又はポリカーボネートを含む。
【0067】
第1ペイン及び第2ペインは、2mm~50mm、好ましくは3mm~16mmの厚さを有し、2つのペインはまた、異なる厚さを有しうる。
【0068】
本発明による遮断ガラスユニットの好ましい実施形態では、スペーサーフレームは、本発明による1つ以上のスペーサーからなる。例えば、完全なフレームを形成するように曲げられている、本発明によるスペーサーでありうる。また、1つ以上のプラグコネクターを介して互いに連結している、本発明による複数のスペーサーでありうる。プラグコネクターは、長手方向コネクター又はコーナーコネクターとして設計されうる。このようなコーナーコネクターは、例えば、マイターカットを提供されている2つのスペーサーが接している、封止を有するプラスチック成形部品として設計されうる。
【0069】
原理的には、遮断ガラスユニットの多種多様な幾何学的形状、例えば、長方形、台形、及び丸みを帯びた形状がありうる。丸みを帯びた幾何学的形状を作り出すために、本発明によるスペーサーは、例えば、加熱状態で曲げられうる。
【0070】
さらなる実施形態では、遮断グレージングは2つ超のペインを有する。この場合、スペーサーは、例えば、少なくとも1つのさらなるペインが配置されている、溝を含みうる。複数のペインを積層ガラスペインとしても形成しうる。
【0071】
本発明によるスペーサーに関する記載は、本発明による遮断ガラスユニットにも同様に適用される。同様に、本発明による遮断ガラスユニットに関する記載は、本発明によるスペーサーにも適用されうる。
【0072】
本発明はさらに、本発明による遮断ガラスユニットの、建築物の内部グレージング、建築物の外部グレージング、及び/又はファサードグレージングとしての使用を含む。
【0073】
本発明の様々な実施形態は、個別に又は任意の組み合わせで実施されうる。特に、上述した特徴、及び以下に説明する特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、指定された組み合わせだけでなく、他の組み合わせ又は単独でも用いられうる。
【0074】
以下、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。図面は、純粋に概略的な表現であり、縮尺に忠実ではない。これらは、本発明を何ら制限するものではない。図において:
図1は、本発明によるスペーサーのありうる実施形態の透視断面図を示し、
図2は、本発明によるスペーサーの湿気バリアのありうる実施形態の断面図を示し、
図3は、本発明によるスペーサーの湿気バリアのありうる実施形態の断面図を示し、
図4は、本発明によるスペーサーの湿気バリアのありうる実施形態の断面図を示し、
図5は、本発明によるスペーサーの湿気バリアのありうる実施形態の断面図を示し、
図6は、本発明によるスペーサーの湿気バリアのありうる実施形態の断面図を示し、かつ、
図7は、本発明による遮断ガラスユニットのありうる実施形態の断面図を示す。
【0075】
図1は、本発明によるありうるスペーサーIの断面図を示す。スペーサーは、第1側壁2.1、それと平行に延在している側壁2.2、グレージング内部壁3、及び外側壁5を有する、ポリマー性中空プロファイル1を有する。グレージング内部壁3は、側壁2.1及び側壁2.2に対して垂直に延在しており、2つの側壁を接続している。外側壁5は、グレージング内部壁3の反対側にあり、2つの側壁2.1と側壁2.2とを接続している。外側壁5は、側壁2.1及び側壁2.2に対して実質的に垂直に延在している。しかしながら、側壁2.1及び側壁2.2に最も近い外側壁5の部分5.1及び部分5.2は、側壁2.1及び側壁2.2の方向において、外側壁5に対して約45°の角度α(アルファ)で傾斜している。角度をつけた幾何学的形状は、中空プロファイル1の安定性を向上させ、湿気バリア20との比較的良好な接着剤結合を可能にする。中空プロファイル1は、20wt%のガラス繊維を含むポリプロピレンから実質的になる、ポリマー性中空プロファイルである。中空プロファイルの壁厚は1mmである。壁厚は、実質的にいずれの場所でも同じである。これにより、中空プロファイルの安定性が向上し、物品が簡素化される。中空プロファイル1は、例えば、6.5mmの高さh、及び15.5mmの幅を有する。外側壁5、グレージング内部壁3、並びに2つの側壁2.1及び側壁2.2は、キャビティ8を囲んでいる。湿気バリア20が、外側壁5、並びに第1側壁2.1の一部及び第2側壁2.2の一部上に、配置されている。グレージング内部壁3に隣接している第1側壁2.1及び第2側壁2.2の領域には、湿気バリア20がないままである。グレージング内部壁3から測定すると、これは幅1.9mmのストリップであり、これはあいているままである。湿気バリア20は、例えば、ポリメタクリレート接着剤を用いてポリマー性中空プロファイル1に固定されうる。適切な湿気バリア20は、例えば、
図2、及び
図4~
図7に示す実施形態である。代替的には、湿気バリア20をまた、ポリマー性中空プロファイル上に直接堆積させうる。この場合、例えば、
図3に示す湿気バリア20が適切である。湿気バリア20は、好ましくは側壁2.1及び側壁2.2全体上に配置されている;なぜなら、これは、原子層堆積法による直接コーティングの場合に特に容易に作り出されうる。キャビティ8は、乾燥剤11を受け入れうる。穿孔12は、遮断ガラスユニット内の内側ペイン間空間への接続を生成し、グレージング内部壁3内に形成されている。そして、乾燥剤11は、グレージング内部壁3内の穿孔12を介して内側ペイン間空間15から湿気を吸収しうる(
図7参照)。
【0076】
図2は、本発明によるスペーサーIの湿気バリア20の断面図を示す。湿気バリア20は、ポリマー性層31、第1バリア層21、及び第2バリア層22を有する。ポリマー性層31は、厚さ12μmのPET層である。次に、厚さ9nmである酸化チタン層21を、原子層堆積法(ALD)を介して堆積し、厚さ9nmである酸化アルミニウム層22も同様に原子層堆積法(ALD)を介して直接堆積した。2つのバリア層21及びバリア層22は、異なる材料に基づいており、これは、湿気バリア20の密封性にとって特に有利であることが証明されている。薄いバリア層21及びバリア層22にもかかわらず、湿気バリア20は良好な密封性を有する。フィルムの水蒸気透過性の決定に対応する測定が行われたところ、厚さ12μmのPETフィルムに約80nmのアルミニウム層をCVDによってコーティングしたものと比較して、このバリア層が全体的に比較的厚いにもかかわらず、WVTR(水蒸気透過率)が大幅に改善された。どちらの値も同じ条件で測定された。このように、ALDによる2つの薄い酸化バリア層の適用は、より厚い金属性バリア層と比較して、大幅な改善が見られる。さらに、2つの薄い酸化物層を通した熱伝導は、比較的厚い金属性バリア層を介した熱伝導よりも低く、これは、金属性バリア層を含まない本発明によるスペーサーの熱遮断特性を改善する。湿気バリア20は、好ましくは、ポリマー性層31がポリマー性中空プロファイル1の外側壁5を向くように適用される。その後、湿気バリアは、外側壁5に、例えばアクリレート接着剤を介して、取り付けられる。この場合、酸化アルミニウムでできている第2バリア層22は外側層であり、完成した遮断ガラスユニット内では、外側ペイン間空間に面しており、2次シーラントと直接接触している。酸化アルミニウム層は、通常の2次シーラントに対して良好な接着性を有するので、この配置は有利である。このようにして、遮断ガラスユニットの長期安定性がさらに改善される。
【0077】
図3は、本発明によるスペーサーIのさらなる湿気バリア20の断面図を示す。図示の湿気バリア20は、バリア層のみを有し、これらはALDを介して適用される。この場合、酸化ケイ素でできている第1バリア層21が、ALDを介してポリマー性中空プロファイル1に直接適用される。これに、酸化クロムでできている第2バリア層22が直接続く。さらに、酸化ケイ素の層23及び酸化クロムの層24が、再び配置されている。この場合、外側層は、酸化クロムでできている第4バリア層24であり、これは、2次シーラント材料との良好な接着性を有する。全ての層の厚さは7nmであり、バリア層の総厚は30nm未満となる。これは、特に材料を節約した実施形態であり、封止性は、いくつかの薄いかつ特には高密度なバリア層の配置によって提供される。
【0078】
図4は、本発明によるスペーサーIのさらなる湿気バリア20の断面図を示す。スペーサーの外側壁5への固定は、有利には接着剤を介して達成される。湿気バリア20は、2つのポリマー性層31、32を有し、第1ポリマー性層31は厚さ12μmのPET層であり、第2ポリマー性層32は厚さ12μmのoPET層である。oPET層は、外側ペイン間空間の方向においてさらに配置されているポリマー性層である。この層は、スペーサーの加工の際、例えば曲げる際など、比較的高い負荷を受ける。したがって、特に耐性のある配向フィルムが、スペーサーの機械的耐荷重性を向上させるために、ここでは用いられている。第1ポリマー性層31は、ALDを介して、窒化チタン(5nm)でできている第2バリア層22、及び窒化ケイ素(5nm)でできている第1バリア層21で、コーティングされている。第4バリア層24は、酸化ケイ素(5nm)でできており、第3バリア層23は、酸化アルミニウム(5nm)でできている。湿気バリア20は、2つのコーティングされたポリマー性層の積層によって作製されうる。この場合、図面には示されていない接着剤結合層を、第1ポリマー性層31と第3バリア層23との間に、配置しうる。2つのポリマー性層及び合計4つのバリア層のおかげで、湿気バリアは特に効率的に内側ペイン間空間内への水の拡散を防止する。特に、バリア層を「二重層」として配置すること、すなわち、それぞれの場合に、2つのバリア層が、互いに直接隣接することが有利であることが証明されている。
【0079】
図5は、本発明によるスペーサーIの湿気バリア20の断面図を示す。湿気バリア20は、2つのポリマー性層31及びポリマー性層32を有し、各層は、厚さ12μmのoPP(一軸配向ポリプロピレン)からなる。両方のoPP層は、露出面上にそれぞれ2つのバリア層で、かつ接着剤結合層40に面している内側面上に1つのバリア層で、両面コーティングされている。第1バリア層21、第3バリア層23、第4バリア層24、及び第6バリア層26は、それぞれ厚さ4nmの酸化ケイ素層であり、第2バリア層22、及び第5バリア層25は、それぞれ厚さ4nmの酸化ジルコニウム層である。複数の層があるため、この湿気バリアは特に高密度である。外側層21及び外側層26は、酸化ケイ素層であり、2次シーラントと非常によく接着する。湿気バリアの対称構造により、このフィルムは、ポリウレタン接着剤でできている厚さ3μmの結合層40を介して、2つの両面コーティングされたoPP層を接着剤結合することによって作製されうる。
【0080】
図6は、本発明による湿気バリア20のさらなる実施形態の断面図を示す。この湿気バリアは、3つのポリマー性層31、32及び33、並びに合計6つのバリア層21、22、23、24、25及び26を有する。この6つのバリア層は、3つのブロック内に配置されており、層21及び層22、層23及び層24、並びに層25及び層26は、それぞれ、ALDを介して互いに直接蒸着されている。二重バリア層として配置することが特に有利であることが証明されている。第1ポリマー性層31は、厚さ12μmのPET層であり、第2ポリマー性層32は、厚さ12μmのPET層であり、第3ポリマー性層33は、厚さ16μmのboPP層である。第1バリア層21及び第3バリア層23は、それぞれ厚さ5nmの酸化チタン層である。第2バリア層22及び第4バリア層24は、それぞれ酸化アルミニウム層(5nm)である。第5バリア層25は、厚さ5nmの酸化ケイ素層(5nm)であり、外側層として提供されているバリア層26は、酸化クロム層(5nm)であり、2次シーラントとの接着性を向上させている。
【0081】
図7は、
図1に示すスペーサーIを有する本発明による遮断ガラスユニットIIの縁部領域の断面図を示す。第1ペイン13は、1次シーラント17によってスペーサーIの第1側壁2.1に接続されており、第2ペイン14は、1次シーラント17によって第2側壁2.2に取り付けられている。1次シーラント17は、本質的に架橋型ポリイソブチレンである。内側ペイン間空間15は、第1ペイン13と第2ペイン14との間に位置し、本発明によるスペーサーIのグレージング内部壁3によって区画されている。内側ペイン間空間15は空気で充填されているか、又は不活性ガスで、例えばアルゴンなどで、充填されている。キャビティ8は、乾燥剤11、例えばモレキュラーシーブなどで、充填されている。キャビティ8は、グレージング内部壁3内の穿孔24を介して内側ペイン間空間15に接続されている。グレージング内部壁3内の穿孔24を通して、ガス交換がキャビティ8と内側ペイン間空間15との間で行われ、乾燥剤11は、内側ペイン間空間15から空気中の湿気を吸収する。第1ペイン13及び第2ペイン14は、側壁2.1及び側壁2.2を越えて突出しており、それによって、外側ペイン間空間16が作り出され、これは、第1ペイン13と第2ペイン14との間に位置し、スペーサーIの湿気バリア20で外側壁5によって区画される。外側ペイン間空間16は、2次シーラント18で充填されている。例における2次シーラント18は、ポリサルファイドである。ポリサルファイドは、縁部コンポジットに作用する力を特によく吸収し、このようにして、遮断ガラスユニットIIの高い安定性に寄与する。本発明によるスペーサーの接着剤層に対するポリサルファイドの接着性は優れている。第1ペイン13及び第2ペイン14は、厚さ3mmのソーダ石灰ガラスからなる。
【符号の説明】
【0082】
I スペーサー
II 遮断ガラスユニット
1 中空プロファイル
2.1 第1側壁
2.2 第2側壁
3 グレージング内部壁
5 外側壁
5.1、5.2 外側壁のうち側壁に最も近い部分
8 キャビティ
11 乾燥剤
12 グレージング内部壁内の穿孔
13 第1ペイン
14 第2ペイン
15 内側ペイン間空間
16 外側ペイン間空間
17 1次シーラント
18 2次シーラント
20 湿気バリア
21 第1バリア層
22 第2バリア層
23 第3バリア層
24 第4バリア層
25 第5バリア層
26 第6バリア層
31 (第1)ポリマー性層
32 第2ポリマー性層
33 第3ポリマー性層
40 内部接着剤結合層
【手続補正書】
【提出日】2024-02-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0081
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0081】
図7は、
図1に示すスペーサーIを有する本発明による遮断ガラスユニットIIの縁部領域の断面図を示す。第1ペイン13は、1次シーラント17によってスペーサーIの第1側壁2.1に接続されており、第2ペイン14は、1次シーラント17によって第2側壁2.2に取り付けられている。1次シーラント17は、本質的に架橋型ポリイソブチレンである。内側ペイン間空間15は、第1ペイン13と第2ペイン14との間に位置し、本発明によるスペーサーIのグレージング内部壁3によって区画されている。内側ペイン間空間15は空気で充填されているか、又は不活性ガスで、例えばアルゴンなどで、充填されている。キャビティ8は、乾燥剤11、例えばモレキュラーシーブなどで、充填されている。キャビティ8は、グレージング内部壁3内の穿孔24を介して内側ペイン間空間15に接続されている。グレージング内部壁3内の穿孔24を通して、ガス交換がキャビティ8と内側ペイン間空間15との間で行われ、乾燥剤11は、内側ペイン間空間15から空気中の湿気を吸収する。第1ペイン13及び第2ペイン14は、側壁2.1及び側壁2.2を越えて突出しており、それによって、外側ペイン間空間16が作り出され、これは、第1ペイン13と第2ペイン14との間に位置し、スペーサーIの湿気バリア20で外側壁5によって区画される。外側ペイン間空間16は、2次シーラント18で充填されている。例における2次シーラント18は、ポリサルファイドである。ポリサルファイドは、縁部コンポジットに作用する力を特によく吸収し、このようにして、遮断ガラスユニットIIの高い安定性に寄与する。本発明によるスペーサーの接着剤層に対するポリサルファイドの接着性は優れている。第1ペイン13及び第2ペイン14は、厚さ3mmのソーダ石灰ガラスからなる。
本開示は、下記の態様を含む。
<態様1>
少なくとも以下を有する、遮断ガラスユニット用スペーサー(I):
- 下記を有する、ポリマー性中空プロファイル(1):
- 第1側壁(2.1)、及び第2側壁(2.2)であって、前記第2側壁(2.2)が、前記第1側壁(2.1)と平行に配置されており、グレージング内部壁(3)が、前記側壁(2.1,2.2)を互いに接続している、第1側壁(2.1)、及び第2側壁(2.2);
- 前記グレージング内部壁(3)と実質的に平行に配置されており、前記側壁(2.1、2.2)を互いに接続している、外側壁(5);
- 前記側壁(2.1,2.2)、前記グレージング内部壁(3)、及び前記外側壁(5)によって囲まれている、キャビティ(8)、
- 前記ポリマー中空プロファイル(1)の前記第1側壁(2.1)、前記外側壁(5)、及び前記第2側壁(2.2)上にある、湿気バリア(20)、
ここで、前記湿気バリア(20)が、
- 第1バリア層(21)、及び直接隣接している第2バリア層(22)であって、両方が原子層堆積法(ALD)を介して堆積された、第1バリア層(21)、及び直接隣接している第2バリア層(22)を少なくとも有し、
- 前記第1バリア層(21)、及び前記第2バリア層(22)が、それぞれ、最大15nmの厚さを有し、
- 前記第1バリア層(21)、及び前記第2バリア層(22)が、互いに独立して、窒化物、酸化物、硫化物、又はフッ化物化合物に基づいている。
<態様2>
前記第1バリア層(21)が、前記ポリマー性中空プロファイル(1)に直接適用されている、態様1に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
<態様3>
前記湿気バリア(20)が、前記ポリマー性中空プロファイル(1)に、接着剤(19)を介してフィルムの形態で取り付けられており、前記湿気バリア(20)が、少なくとも1つのポリマー性層(31)を有し、好ましくは少なくとも2つのポリマー性層(31、32)を有する、態様1に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
<態様4>
前記湿気バリア(20)が、元素金属に基づくバリア層を有しない、態様1~3に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
<態様5>
前記ポリマー性層(31)が、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、一軸配向ポリプロピレン、二軸配向ポリプロピレン、一軸配向ポリエチレンテレフタレート、二軸配向ポリエチレンテレフタレートを含み、好ましくは前記ポリマーのいずれかに基づいている、態様3又は態様4に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
<態様6>
前記ポリマー性層(31)、又は全てのポリマー性層(31、32)が、5μm~50μm、好ましくは10μm~35μm、特に好ましくは12μm~25μmの厚さを有する、態様1~5に記載の遮断されたガラスユニット用スペーサー(I)。
<態様7>
前記湿気バリア(20)が、エチレンビニルアルコール(EVOH)でできているポリマー性層を含まない、態様1~6に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
<態様8>
前記湿気バリア(20)が、少なくとも3つのバリア層(21、22、23)、好ましくは少なくとも4つのバリア層(21、22、23、24)を含む、態様1~7に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
<態様9>
全てのバリア層(21、22、23、24)が、原子層堆積法を介して堆積され、窒化物、酸化物、硫化物、又はフッ化物化合物に、互いに独立して基づいている、態様1~8に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
<態様10>
第3バリア層(23)、及び第4バリア層(24)が、互いに直接隣接している、態様8又は態様9に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
<態様11>
バリア層(21、22、23、24)が、前記中空プロファイル(1)の、前記キャビティ(8)とは反対側を向いている面上において外側層として露出している、態様1~10に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
<態様12>
全てのバリア層(21、22、23、24)の厚さの合計が、50nm未満、好ましくは40nm未満、特に好ましくは30nm未満である、態様1~11に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
<態様13>
前記バリア層(21、22、23、24)の厚さが、10nm未満、好ましくは1nm~9nm、特に好ましくは2nm~8nm、非常に特に好ましくは3nm~7nmである、態様1~12に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
<態様14>
遮断ガラスユニット(II)であって、第1ペイン(13)、第2ペイン(14)、及び前記第1ペイン(13)と前記第2ペイン(14)との間に周縁的に配置されている態様1~13に記載のスペーサー(I)を、少なくとも有し、
- 前記第1ペイン(13)が、前記第1側壁(2.1)に1次シール材(17)によって取り付けられており、
- 前記第2ペイン(14)が、前記第2側壁(2.2)に1次シール材(17)によって取り付けられており、
- 内側ペイン間空間(15)が、前記グレージング内部壁(3)、前記第1ペイン(13)、及び前記第2ペイン(14)によって区画されており、
- 外側ペイン間空間(16)が、前記外側壁(5)上に据えつけられている前記湿気バリア(20)によって、かつ前記第1ペイン(13)、及び前記第2ペイン(14)によって区画されており、
- 2次シーラント(18)が、前記外側ペイン間空間(16)内に配置されており、前記2次シーラント(18)が、前記湿気バリア(20)と接触している、
遮断ガラスユニット(II)。
<態様15>
態様14に記載の遮断グレージングユニット(II)の、建築物の内部グレージング、建築物の外部グレージング、及び/又はファサードグレージングとしての使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下を有する、遮断ガラスユニット用スペーサー(I):
- 下記を有する、ポリマー性中空プロファイル(1):
- 第1側壁(2.1)、及び前記第1側壁(2.1)と平行に配置されている第2側壁(2.2)であって、グレージング内部壁(3)が、前記側壁(2.1,2.2)を互いに接続している、第1側壁(2.1)、及び第2側壁(2.2);
- 前記グレージング内部壁(3)と実質的に平行に配置されており、前記側壁(2.1、2.2)を互いに接続している、外側壁(5);
- 前記側壁(2.1,2.2)、前記グレージング内部壁(3)、及び前記外側壁(5)によって囲まれている、キャビティ(8)、
- 前記ポリマー性中空プロファイル(1)の前記第1側壁(2.1)、前記外側壁(5)、及び前記第2側壁(2.2)上にある、湿気バリア(20)、
ここで、前記湿気バリア(20)が、
- 第1バリア層(21)、及び直接隣接している第2バリア層(22)を少なくとも有しており、これらが両方とも原子層堆積法(ALD)を介して堆積されたものであり、
- 前記第1バリア層(21)、及び前記第2バリア層(22)が、それぞれ、最大15nmの厚さを有し、
- 前記第1バリア層(21)、及び前記第2バリア層(22)が、互いに独立して、窒化物、酸化物、硫化物、又はフッ化物化合物に基づいている。
【請求項2】
前記第1バリア層(21)が、前記ポリマー性中空プロファイル(1)に直接適用されている、請求項1に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
【請求項3】
前記湿気バリア(20)が、前記ポリマー性中空プロファイル(1)に、接着剤(19)を介してフィルムの形態で取り付けられており、前記湿気バリア(20)が、少なくとも1つのポリマー性層(31)を有し、好ましくは少なくとも2つのポリマー性層(31、32)を有する、請求項1に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
【請求項4】
前記湿気バリア(20)が、元素金属に基づくバリア層を有しない、請求項1~3のいずれか1項に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
【請求項5】
前記ポリマー性層(31)が、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、一軸配向ポリプロピレン、二軸配向ポリプロピレン、一軸配向ポリエチレンテレフタレート、二軸配向ポリエチレンテレフタレートを含み、好ましくは前記ポリマーのいずれかに基づいている、請求項
3に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
【請求項6】
前記ポリマー性層(31)、又は全てのポリマー性層(31、32)が、5μm~50μm、好ましくは10μm~35μm、特に好ましくは12μm~25μmの厚さを有する、
請求項3又は請求項5に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
【請求項7】
前記湿気バリア(20)が、エチレンビニルアルコール(EVOH)でできているポリマー性層を含まない、
請求項1~3のいずれか1項又は請求項5に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
【請求項8】
前記湿気バリア(20)が、少なくとも3つのバリア層(21、22、23)、好ましくは少なくとも4つのバリア層(21、22、23、24)を含む、
請求項1~3のいずれか1項又は請求項5に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
【請求項9】
全てのバリア層(21、22、23、24)が、原子層堆積法を介して堆積されたものであり、かつ互いに独立に、窒化物、酸化物、硫化物、又はフッ化物化合物に基づいている、
請求項1~3のいずれか1項又は請求項5に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
【請求項10】
第3バリア層(23)、及び第4バリア層(24)が、互いに直接隣接している、請求項
8に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
【請求項11】
バリア層(21、22、23、24)が、前記中空プロファイル(1)の、前記キャビティ(8)とは反対側を向いている面上において外側層として露出している、
請求項1~3のいずれか1項又は請求項5に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
【請求項12】
全てのバリア層(21、22、23、24)の厚さの合計が、50nm未満、好ましくは40nm未満、特に好ましくは30nm未満である、
請求項1~3のいずれか1項又は請求項5に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
【請求項13】
前記バリア層(21、22、23、24)の厚さが、10nm未満、好ましくは1nm~9nm、特に好ましくは2nm~8nm、非常に特に好ましくは3nm~7nmである、
請求項1~3のいずれか1項又は請求項5に記載の遮断ガラスユニット用スペーサー(I)。
【請求項14】
遮断ガラスユニット(II)であって、第1ペイン(13)、第2ペイン(14)、及び前記第1ペイン(13)と前記第2ペイン(14)との間に周縁的に配置されている
請求項1~3のいずれか1項又は請求項5に記載のスペーサー(I)を、少なくとも有し、
- 前記第1ペイン(13)が、前記第1側壁(2.1)に1次シール材(17)によって取り付けられており、
- 前記第2ペイン(14)が、前記第2側壁(2.2)に1次シール材(17)によって取り付けられており、
- 内側ペイン間空間(15)が、前記グレージング内部壁(3)、前記第1ペイン(13)、及び前記第2ペイン(14)によって区画されており、
- 外側ペイン間空間(16)が、前記外側壁(5)上に据えつけられている前記湿気バリア(20)によって、かつ前記第1ペイン(13)、及び前記第2ペイン(14)によって区画されており、
- 2次シーラント(18)が、前記外側ペイン間空間(16)内に配置されており、前記2次シーラント(18)が、前記湿気バリア(20)と接触している、
遮断ガラスユニット(II)。
【請求項15】
請求項14に記載の遮断ガラスユニット(II)の、建築物の内部グレージング、建築物の外部グレージング、及び/又はファサードグレージングとしての使用。
【国際調査報告】