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特表2024-529531モノポーラプレートの接着結合による黒鉛バイポーラプレートの製造方法、並びにモノポーラプレートを備えるバイポーラプレート及び燃料電池セル又はレドックスフロー電池
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  • 特表-モノポーラプレートの接着結合による黒鉛バイポーラプレートの製造方法、並びにモノポーラプレートを備えるバイポーラプレート及び燃料電池セル又はレドックスフロー電池 図1
  • 特表-モノポーラプレートの接着結合による黒鉛バイポーラプレートの製造方法、並びにモノポーラプレートを備えるバイポーラプレート及び燃料電池セル又はレドックスフロー電池 図2
  • 特表-モノポーラプレートの接着結合による黒鉛バイポーラプレートの製造方法、並びにモノポーラプレートを備えるバイポーラプレート及び燃料電池セル又はレドックスフロー電池 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】モノポーラプレートの接着結合による黒鉛バイポーラプレートの製造方法、並びにモノポーラプレートを備えるバイポーラプレート及び燃料電池セル又はレドックスフロー電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0213 20160101AFI20240730BHJP
   H01M 8/0228 20160101ALI20240730BHJP
   H01M 8/0284 20160101ALI20240730BHJP
   H01M 8/18 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H01M8/0213
H01M8/0228
H01M8/0284
H01M8/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506567
(86)(22)【出願日】2021-08-03
(85)【翻訳文提出日】2024-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2021071691
(87)【国際公開番号】W WO2023011710
(87)【国際公開日】2023-02-09
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523060943
【氏名又は名称】シュンク コーレンシュトッフテクニック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】フーアマン, ハウケ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィトゥカ, ドミニク
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA12
5H126BB10
5H126DD02
5H126DD14
5H126EE02
5H126GG06
5H126GG18
5H126HH02
5H126JJ08
5H126JJ10
(57)【要約】
燃料電池セル(21)又はフロー電池のための黒鉛バイポーラプレート(1)の製造方法について記載する。一対の黒鉛モノポーラプレート(3)が提供される。モノポーラプレート(3)同士は、モノポーラプレート(3)の対向接触面(7)に沿って相互に結合される。結合は、1K-エポキシ樹脂(9)を使用して行われる。1K-エポキシ樹脂(9)の特性及び/又はプロセスパラメータは、当該付与方法に特別に適合され得る。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池セル(21)又はフロー電池のための黒鉛バイポーラプレート(1)を製造する方法であって、
一対の黒鉛モノポーラプレート(3)を提供することと、
前記モノポーラプレート(3)の対向接触面(7)に沿って、前記モノポーラプレート(3)同士を結合させることと、を含み、
1K-エポキシ樹脂(9)を結合のために使用することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、少なくとも200℃の限界温度までの温度に損傷することなく耐えるように適合され、
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、結合の間に少なくとも200℃に加熱される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モノポーラプレート(3)が、結合の間に、前記1K-エポキシ樹脂(9)の前記限界温度未満の温度に焼き戻される、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、少なくとも200℃の温度で1分未満に硬化するように適合される、
請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、少なくとも50℃の活性化温度を有するように適合される、
請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、少なくとも100℃のガラス転移温度を有するように適合される、
請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、少なくとも5時間のポットライフ及び/又は0℃~50℃の間の潜在性を有するように適合される、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、接触面(7)としての役割を果たす前記モノポーラプレート(3)の表面(5)に局所的に付与され、そしてこの表面(5)上で自立的に安定した状態を維持するように適合される、
請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記1K-エポキシ樹脂(9)が構造的に粘稠性であるように適合される、
請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、ディスペンサ(15)によって、前記モノポーラプレート(3)の前記接触面(7)のうちの1つに局所的に制限されてビード(11)として付与され、次いで、前記モノポーラプレート(3)同士は、それらの対向接触面(7)で一緒にプレスされる、
請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記接触面(7)同士の間に200μm未満のギャップ幅(s)が得られるように、前記モノポーラプレート(3)同士が、それらの対向接触面(7)と共に形成され、一緒にプレスされる、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、50μmより大きい直径を有する充填剤を含まない、
請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、前記燃料電池セル(21)又はフロー電池で使用される触媒に影響を与える触媒毒を実質的に含まず、かつ/又は
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、前記燃料電池セル(21)又はフロー電池に使用される材料の腐食を促進する物質、又は膜分解を促進する物質を実質的に含まず、かつ/又は
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、前記燃料電池セル(21)又はフロー電池においてプロトン伝導性を低下させる物質を実質的に含まず、かつ/又は
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、1.5mmを超える拡散距離及び25℃~90℃の範囲の温度で、少なくとも0.003mol/sの酸素透過度を有し、かつ/又は
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、90℃で少なくとも500時間、0.5mMの硫酸、グリサンチン(Glysantin)、及び脱イオン水に対して耐性である、
請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
対向接触面(7)に沿って、1K-エポキシ樹脂(9)によって相互に結合された一対の黒鉛モノポーラプレート(3)を含む、
燃料電池セル(21)又はフロー電池のためのバイポーラプレート(1)。
【請求項15】
請求項14に記載のバイポーラプレート(1)を有する、特に少なくとも1つの燃料電池セル(21)又はフロー電池を有するエネルギー貯蔵アセンブリ(19)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば燃料電池セル又はフロー電池に使用される黒鉛バイポーラプレートの製造方法に関する。本発明はさらに、バイポーラプレート、及びそのようなバイポーラプレートを有するエネルギー貯蔵アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
バイポーラプレートは、燃料電池セルのためにいくつかの異なる作業を実行するよう意図されており、積み重ねられて燃料電池セルシステムのコアを形成する。一方で、バイポーラプレートは、隣り合う燃料電池セル同士を相互接続するよう、すなわち、1つのセルのアノードを隣り合うセルのカソードと物理的かつ電気的に接続するよう意図されている。他方で、バイポーラプレートの表面を横切って燃料電池セル内の反応空間に向けてガスが分配可能であるべきであり、すなわち、バイポーラプレートは、反応ガスを反応区画に運ぶべきである。
【0003】
このために、バイポーラプレートは、概して、流れプロファイル(いわゆる流れ場)を両側に有しており、流れプロファイルとは、キャスト成形及び/又は形成、すなわち、例えばフライス加工又は刻印され得るものであって、その一方の側では水素が流れ、他方の側では空気又は酸素が供給される。バイポーラプレートはまた、一般に、水蒸気の除去、又は熱エネルギー及び電気エネルギーの放出も制御する。さらに、バイポーラプレートはまた、必要に応じて、隣り合ったセル同士の間でガスを分離し、外部に対してシールし、かつ冷却もすべきである。
【0004】
バイポーラプレートに課されるこれらの要求を満たすことができるように、バイポーラプレートは、一般に、反応ガスが供給又は排出され得るチャネルの内部構造を有している。製造環境においてそのような内部チャネル構造を形成することができるように、バイポーラプレートは、通常、2つの別個のモノポーラプレートから構成されている。所望のチャネル構造は、組み立てられた状態で向かい合いバイポーラプレートを形成するモノポーラプレートの片面又は両面に、例えばキャスト成形又は形成によって、例えば細長いくぼみの形態で容易に形成され得る。そして、2つのモノポーラプレートは、個々のモノポーラプレートに形成されたチャネル構造によって所望の内部チャネルがそれらのモノポーラプレート同士の間に形成されるように、機械的に相互に接合されてもよい。
【0005】
さらなる要件を満たすために、バイポーラプレートは、黒鉛材料から作製することが有利であり得ると認識されている。例えば、そのような黒鉛材料は、例えばポリマー材料などのマトリックスに埋め込まれかつ/又は一緒にプレスされた、多数の小さな黒鉛粒子からなってもよい。黒鉛材料は、とりわけ、高い導電性、高い熱伝導性、概して燃料電池セルに使用される化学物質に対する良好な耐薬品性、十分に高い機械的耐荷重性など、バイポーラプレートに有利な特性を有する。
【0006】
しかし、2つの黒鉛モノポーラプレートを機械的に結合してバイポーラプレートを形成することは、特に燃料電池セルで使用される場合にバイポーラプレートに課される要求を考慮すると、単純な作業ではないと認識されている。2つのモノポーラプレート間の接続は、例えば、十分な機械的強度を有し、燃料電池セル内の熱的条件及び化学的条件に耐え得るべきであり、一方で、例えばプロセスガスが望まない箇所から漏れる可能性がないように2つのモノポーラプレートを十分にしっかりと相互に接続すべきであり、他方で、例えば燃料電池セル内の化学プロセスが妨げられないように、例えば酸素に対する十分なガス透過性を有すべきである。さらに、2つのモノポーラプレートを機械的に接続して、単純で信頼性がありかつ/又は費用効果の高いプロセスによって、バイポーラプレートを製造することが可能であるべきである。
【0007】
従来、黒鉛モノポーラプレート同士は、それらを機械的に結合させてバイポーラプレートにするために、多くの場合、相互に接着剤で貼り合わせられる。このために、2K-エポキシ樹脂(すなわち、2成分エポキシ樹脂)、シアノアクリレート又はシリコーンポリマーをベースとする接着剤が使用される。
【0008】
従来法で結合されたバイポーラプレートは、使用に際しては燃料電池セルに課される要求をほとんど満たしているが、特に製造プロセスには欠点があると認識されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、黒鉛バイポーラプレートを製造する改善された方法が必要とされ得る。特に、一方で、使用に際して燃料電池セル又はフロー電池に課される要求を満たすバイポーラプレートであって、他方で、単純で信頼性がありかつ/又は費用効果の高いプロセスによって実現され得るバイポーラプレートの製造方法が必要とされ得る。適切に製造可能なバイポーラプレート、及び、燃料電池セル又はフロー電池の形態の、バイポーラプレートを備えたエネルギー貯蔵アセンブリも必要とされ得る。
【0010】
そのような必要性は、独立請求項の主題によって満たされ得る。有利な実施形態は、従属請求項に定義され、以下の記載で説明され、図面に示されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、燃料電池セル又はフロー電池のための黒鉛バイポーラプレートを製造する方法であって、以下のプロセス工程、すなわち(i)一対の黒鉛モノポーラプレートを提供する工程、及び(ii)前記モノポーラプレートの対向接触面に沿って、前記モノポーラプレート同士を結合させる工程を含む方法に関する。結合は、1K-エポキシ樹脂を使用して行われる。
【0012】
本発明の第2の態様は、対向接触面に沿って1K-エポキシ樹脂により相互に結合された一対の黒鉛モノポーラプレートを備えた、燃料電池セル又はフロー電池のためのバイポーラプレートに関する。
【0013】
本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様の実施形態によるバイポーラプレートを有する特に少なくとも1つの燃料電池セル又はフロー電池を有するエネルギー貯蔵アセンブリに関する。
【0014】
本発明の範囲を決して限定するものではないが、本発明の実施形態に関する考案や想定される特徴は、とりわけ、下記の考案及び知見に基づいていると考えられてもよい。
【0015】
簡潔かつ大まかに要約すると、本明細書に記載した考案の理論的根拠は、以前の先入観とは対照的に、黒鉛バイポーラプレートが、1K-エポキシ樹脂(すなわち1成分エポキシ樹脂)をベースとする接着剤を使用して、燃料電池セル又はフロー電池において付与するのに適した手段で有利に結合され得るという驚くべき所見にある。1K-エポキシ樹脂が、一方でバイポーラプレートの製造中に、他方でバイポーラプレートのその後の使用中に存在する条件に適切に適合される場合、驚くべきことに、特別に適合されたこのような1K-エポキシ樹脂によるモノポーラプレートの結合は、このために従来から使用されている接着剤との結合よりも、多くの点で優れている可能性のあることが認識されている。1K-エポキシ樹脂は、バイポーラプレートを形成するのに十分な機械的強度で2つのモノポーラプレートを相互に接合させることと、バイポーラプレート内の領域を適切にシールするためのシール材、又はバイポーラプレートの環境に対するシール材としての役割を果たすこととの両方に適合され得る。このために、1K-エポキシ樹脂の特性は、特に、例えば燃料電池セル内部で使用するために、十分な化学的耐性、気密性及び機械的弾性であるように適合されるべきである。
【0016】
本明細書で提案される方法及び製品の実施形態のできる限りの詳細を以下に説明する。
【0017】
既に上述したように、黒鉛材料で作製されたバイポーラプレートは、燃料電池セル又はフロー電池で使用される場合に大きな利点を提供し得る。
【0018】
炭素含有材料として、黒鉛は、多くの用途に有利な特性を提供する。例えば、バイポーラプレートに使用される場合、黒鉛は、高い熱弾性及び伝導性並びに十分に高い機械的強度と共に、非常に高い導電性を提供する。バイポーラプレートを形成するには、とりわけ、黒鉛粒子がポリマーマトリックスに埋め込まれた黒鉛含有材料が使用される。黒鉛粒子は、所望の電気的及び/又は熱的及び/又は機械的な特性を材料に与える。ポリマーマトリックスは、とりわけ、機械的に複数の黒鉛粒子を一緒に保持し、当該成分における負荷を伝達する役割を果たす。ポリマーマトリックスは、例えば、エポキシ樹脂を含有してもよい。このように、黒鉛粒子は充填剤として作用し、ポリマーマトリックスは一種の結合剤として作用する。黒鉛粒子及びポリマーに加えて、当該材料混合物はまた、他の成分、例えばカーボンブラック、他の結合剤又は同様の形態の他の成分も含有してもよい。有利には、黒鉛含有材料は、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、さらには少なくとも80%の黒鉛含有量を有してもよい。パーセンテージは、体積を指し得る。当該材料は、黒鉛含有量が高いため、とりわけ非常に良好な導電性を提供し得、このことは、バイポーラプレートを形成するために使用される場合に特に有利である。黒鉛含有材料の例及び想定される特性は、とりわけ、本出願人の先の特許出願PCT/EP2020/078489に記載されている。そこに記載されている黒鉛含有材料が、モノポーラプレートについて本明細書に記載されている方法の実施形態で使用されてもよい。先の特許出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
2つのモノポーラプレートからバイポーラプレートを組み立てることによりそれらのモノポーラプレートを機械的に相互に接合させるために、既知の特性からそのような作業に理想的であると思われる接着剤が、これまで使用されてきた。とりわけ、2K-エポキシ樹脂、シアノアクリレート又はシリコーンポリマーをベースとした十分な機械的強度を有する接着剤が使用されている。そのような接着剤系は、例えば、熱的に、吸湿的に、又はUV照射によって活性化され得る。
【0020】
2K-エポキシ樹脂は、処理する直前に一緒に混合される2つの成分から構成される。そして、2つの成分は互いに化学的に反応し、接着剤を硬化させる。2K-エポキシ樹脂は、規定の手段で処理され得る接着剤であって、硬化後に非常に高い強度を実現する接着剤として知られている。さらに、2K-エポキシ樹脂は、その化学的特性から、モノポーラプレートを結合するための接着剤として適切であると思われる。シアノアクリレート又はシリコーンポリマーをベースとする接着剤にも同じことが当てはまる。
【0021】
しかし、従来から使用されている前述の接着剤では、それらの作業性に関する欠点が多くの場合問題となることが認められている。例えば、このような接着剤は、多くの場合ポットライフが短いため、短時間しか貯蔵できず、迅速に処理しなければならない。さらに、そのような接着剤は、硬化するのに比較的長い時間を要する場合がある。従来から使用されている接着剤を処理する場合、一般に狭いプロセスウィンドウに接着しなければならず、これにより作業性が制限される可能性がある。とりわけ、接着剤の2つの成分の化学反応は、著しい量の熱エネルギーを放出し、これにより接着剤がかなり加熱され、そのため、例えば過剰量の接着剤が偶発的に一緒に混合されると、過熱又は火災の危険さえも引き起こす可能性がある。さらに、前述の接着剤は、多くの場合で粘性が低く、そのため安定性が低い。その上、そのような接着剤は付与するのが困難な場合がある。前述の接着剤の中には、例えば充填剤として触媒毒を含有するものさえあり、触媒毒は、例えば燃料電池セルに使用される触媒を損傷する可能性がある。前述の接着剤の中にはまた、最終強度が低く、特に凝集性及び/又は接着性が不十分なものがある。したがって、これまで利用されてきた接着剤の使用は、高いプロセスコストにつながる可能性があり、かつ/又は、例えば、厳密な貯蔵温度及び/又は処理温度の維持、日光の回避などを含む、入念なプロセスインフラが必要となる可能性がある。
【0022】
原則として、1K-エポキシ樹脂をベースとする接着剤は、古くから知られている。1K-エポキシ樹脂では、すべての成分が付与前に既に混合されており、単一の容器に入れられている。室温では、この混合物は化学的に不活性であるか、又は非常にゆっくりと(潜在的に)しか架橋しない。したがって、別の成分との混合によって活性化は実現しない。むしろ、活性化は、活性化エネルギーを導入することに実現される。活性化エネルギーは、概して、熱的に、すなわち熱を加えることによって導入される。その厳密な化学組成に応じて、1K-エポキシ樹脂は、一般に、活性化温度を超えるまで加熱されなければならない。この活性化温度を超えると、概して発熱化学反応が始まり、これは一方で接着剤を硬化させ、他方でさらなる熱エネルギーを放出させる。
【0023】
これまでの長年の先入観として、1K-エポキシ樹脂をベースとする接着剤は、例えばそれらの作業性に関しては一定の利点を有しているものの、特定の他の特性のため、特定の用途にしか適していないと思われてきた。例えば、そのような接着剤は、車両の組立てにおいて、例えば1mmを超える相当なギャップ幅にわたって構成物同士を相互に結合させるために使用される。そのような結合プロセスの間、広く用いられている温度は、通常、結合する構成物の材料のために比較的低い状態で維持されなければならず、これは、従来の1K-エポキシ樹脂を用いることによって、概して遅いその発熱反応により保証され得る。前記接着剤は、通常、硬化に比較的長い時間を要することが容認されている。
【0024】
特に、これまで、1K-エポキシ樹脂をベースとする接着剤は、モノポーラプレートを結合してバイポーラプレートを形成するのに適した特性、又はさらには有利な特性を有していないと考えられてきた。代わりに、そのような接着剤の概して遅い硬化は、バイポーラプレートの生産にとって大きな欠点であると考えられてきた。
【0025】
そのような先入観とは対照的に、1K-エポキシ樹脂をベースとする接着剤は、その化学組成が、したがってその物理的特性が適切に適合される場合、及び/又は、その接着剤の処理中にプロセスパラメータが適切に適合される場合、モノポーラプレートの結合における使用に完全に適し、さらに有利でさえあり得ると現在認識されている。特に、このような接着剤は、黒鉛含有材料をベースとするモノポーラプレート同士を相互に結合させるのに非常に適している可能性があると認識されており、これは、その接着剤が、このような結合プロセスにおいて有利に使用され得る物理的特性を有しているためである。
【0026】
特に、1K-エポキシ樹脂の化学組成は、比較的高い温度に耐えるように適合され得ると認識されている。このような高温では、1K-エポキシ樹脂は比較的迅速に反応し、そのため硬化することができる。しかし、1K-エポキシ樹脂を過度に加熱すべきではなく、それは、過度に加熱すれば、その後に起こるより激しい発熱反応のために、通常、非常に急速なさらなる温度上昇が樹脂内で起こり、その結果、従来の付与方法では、通常は樹脂に熱損傷を生じさせる数百℃の温度に達しかねないと以前は考えられていた。
【0027】
しかし、下記でより詳細に説明するように、モノポーラプレート同士を結合させるための本明細書に記載の付与方法では、これらのモノポーラプレートの物理的特性、特に熱的特性を用いて、熱エネルギーを迅速に散逸させて樹脂の過度な加熱を防ぎ得るという利点が得られる。
【0028】
一実施形態によれば、1K-エポキシ樹脂は、損傷することなく、少なくとも200℃の限界温度までの温度に耐えるように適合される。さらに、1K-エポキシ樹脂は、結合プロセス中に少なくとも200℃に加熱される。
【0029】
実際、1K-エポキシ樹脂をベースとする接着剤は、概して、高温に耐えるようにこれまで設計されていなかった。代わりに、従来の1K-エポキシ樹脂の組成は、通常、接着剤の他の特性に関して最適化されており、その結果、1K-エポキシ樹脂は多くの場合、180℃未満の温度で、さらには160℃未満の温度で熱損傷により劣化し始める。しかしこれは、それまでにより高い温度が他の理由で避けられていなければならないので、1K-エポキシ樹脂の多くの以前の用途分野においては二次的に関連することであり得る。
【0030】
しかし、本明細書に記載のようにモノポーラプレートを結合するために1K-エポキシ樹脂を使用する場合、特に黒鉛モノポーラプレートが問題を起こすことなく高温に耐え得るため、より高い温度が許容され得る。
【0031】
したがって、1K-エポキシ樹脂の組成を改良して、1K-エポキシ樹脂が著しく熱分解することなく、より高い温度に耐えられるようにすることが有利であることが分かった。特に、樹脂の組成は、損傷することなく限界温度までの温度に耐え得るように適合されるべきである。この限界温度は、好ましくは少なくとも200℃、より好ましくは少なくとも210℃、さらには少なくとも220℃であるべきである。エポキシ樹脂の耐熱性は、様々な形で影響を受け得る。エポキシ樹脂の温度挙動に影響を及ぼすように、例えば、鎖に沿って芳香族又は脂肪族の構造を有する様々なアミン硬化剤を使用してもよい。芳香族アミンは、固体硬化剤として作用し、溶融し非常に潜在的であるので、ここでは好ましい。第三級アミン、ルイス酸及びルイス塩基、ジシアンジアミン、ポリオール(例えばフェノール)又はジメチルアミノメチルフェノールなどの触媒、及び/又は、尿素及びイミダゾールなどの促進剤の使用もまた、エポキシ樹脂の温度挙動に影響を及ぼし得る。
【0032】
そして、結合の間に、1K-エポキシ樹脂は、少なくとも200℃、好ましくは少なくとも210℃、さらには少なくとも220℃の温度まで加熱されてもよい。このために、例えば、モノポーラプレートの一方又は好ましくは両方を適切に加熱してもよく、その結果、これらのモノポーラプレートの間の樹脂が間接的に加熱される。この加熱により、樹脂がその活性化温度より高くなって、硬化をもたらす化学反応が引き起こされ得る。これらの化学反応は、低温よりも高温で著しく速くなるため、記載したプロセス温度の上昇により、概して低い温度で従来の1K-エポキシ樹脂を硬化させる従来の場合よりも、硬化プロセスが著しく速くなり得る。
【0033】
しかし、1K-エポキシ樹脂が、その樹脂内で起こる発熱反応のために硬化中に過度に高温になることを避ける必要がある。特に、1K-エポキシ樹脂内の温度が、不可逆的な損傷が起こり得る限界温度を超えることを避ける必要がある。
【0034】
このために、より具体的な実施形態によれば、モノポーラプレートは、1K-エポキシ樹脂の限界温度未満の温度に、結合の間に焼き戻されてもよい。
【0035】
言い換えれば、モノポーラプレートは、エポキシ樹脂をその活性化温度又はそれ以上に最初に加熱するためだけでなく、エポキシ樹脂から過剰な熱エネルギーを散逸させるためにも使用されてもよい。黒鉛モノポーラプレートは、概して、非常に良好な熱伝導性を有しているので、特に、接着剤層の厚さが200μm未満、好ましくは150μm未満であり、付与される接着剤の量が0.4g/m未満である場合、隣り合う1K-エポキシ樹脂から熱エネルギーを迅速かつ効率的に散逸させるために使用されてもよい。特に、モノポーラプレートは、その温度及び隣り合うエポキシ樹脂の温度が限界温度未満で維持されることによってエポキシ樹脂に著しい熱損傷がないように、焼き戻し又は冷却されてもよい。
【0036】
一実施形態によれば、1K-エポキシ樹脂は、少なくとも200℃の温度で1分未満、好ましくは30秒未満で硬化するように適合されてもよい。
【0037】
言い換えれば、1K-エポキシ樹脂の組成は、一方で比較的高いプロセス温度に耐え、他方でそのような高いプロセス温度で非常に迅速に硬化するように、最適化されてもよい。例えば、耐熱性1K-エポキシ樹脂は、220℃のプロセス温度で、30秒以内又はさらにわずか20秒以内に、完全に又は大部分が硬化され得ることが認められている。
【0038】
接着剤として使用される1K-エポキシ樹脂のこのように急速な硬化は、接着剤が迅速に付与され得るだけでなく、その後非常に迅速に硬化し得るので、黒鉛バイポーラプレートの工業生産において非常に有利に働き得る。このことにより、例えば、バイポーラプレートを製造するときに非常に迅速なサイクル時間が可能になり得る。
【0039】
一実施形態によれば、1K-エポキシ樹脂は、活性化温度が少なくとも50℃、好ましくは少なくとも70℃、又はさらには少なくとも90℃であるように適合されてもよい。
【0040】
言い換えれば、1K-エポキシ樹脂の化学組成は、その活性化温度がバイポーラプレートの製造中の代表的な周囲温度をはるかに超えるように選択されてもよい。活性化温度は、例えば、使用される1つ又は複数の硬化剤の種類に影響され得る。例えば、融点が高い芳香族アミンは、概して反応開始温度も高い。潜在触媒もまた、使用されてもよい。イミダゾール類では、例えば、86℃~250℃の違いが想定される。概して、触媒/硬化剤は、溶融相で存在する場合に化学的に活性であるにすぎない。
【0041】
このことは、いかなる有意な硬化反応も起こすことなく、当該1K-エポキシ樹脂は、周囲温度で非常に長い時間貯蔵され得ることを意味する。言い換えれば、当該1K-エポキシ樹脂のポットライフは、非常に長い可能性がある。例えば、有利には、何時間も、数日又はさらには数週間、当該1K-エポキシ樹脂を使用可能な状態に維持しておくことができる。例えば硬化性樹脂の残留物によって生じる、樹脂の付与に使用される道具の汚染又は損傷さえも、最小限に抑えられ得る。
【0042】
一実施形態によれば、1K-エポキシ樹脂は、ガラス転移温度が少なくとも100℃、好ましくは少なくとも110℃、さらには少なくとも125℃であるように適合される。
【0043】
ガラス転移温度は、ガラス変態温度と呼ばれることもあり、固体のガラス又は固体のポリマーがゴム状から粘稠状態に変化する温度を指す。バイポーラプレートに使用される1K-エポキシ樹脂を、ガラス転移温度が比較的高くなるように適合させることにより、モノポーラプレート同士を一緒に保持する接着剤が、常に十分強固な状態を確実に維持することが可能であり、かつ、動作中の燃料電池セル内のバイポーラプレートでは多くの場合、前記接着剤が、概して90℃までの温度で既にゴム状又は粘稠状になることが起こり得るが、これを確実に回避することが可能である。このことにより、結合されたバイポーラプレートが、確実に、通常の動作温度で常に十分な強度を保つことが可能になる。ガラス転移温度は、一般に、結合密度、及び硬化ネットワークの個々の結合の強度によって、おおむね決定される。高い結合強度をもたらす多くの活性結合を有する短分子及び小分子が、ここでは一般に好ましい。したがって、いくつかの官能基を有する芳香族化合物は、通常、ガラス転移温度Tgが高くなる。
【0044】
一実施形態によれば、1K-エポキシ樹脂は、ポットライフが少なくとも5時間、かつ/又は潜在性が0℃~50℃の間であるように適合される。
【0045】
ここでの潜在性とは、樹脂と硬化剤との間の反応が無視できるほど遅いことを意味する。一般に、潜在性は、本質的に温度によって決定される。潜在性は、特に硬化剤及び触媒の選択に影響され得る。大まかに言えば、硬化剤/触媒の融点が高いほど、系はより潜在的である。しかし、個々の構成要素の結合力の強度も、ここではある役割を担う。反応性結合が容易に開く場合、分子はより化学的に活性であり、より速く反応する。
【0046】
一実施形態によれば、1K-エポキシ樹脂は、接触面としての役割を果たすモノポーラプレートの表面に局所的に付与され、そしてこの表面上で自立的に安定した状態を維持するように適合される。
【0047】
言い換えれば、1K-エポキシ樹脂は、流動性又は粘性を有するように適合され、その結果、1K-エポキシ樹脂はモノポーラプレートの1つの結合面に局所的に付与されてもよく、その後にモノポーラプレートを横断して流れることはない。代わりに、重力以外の力が加えられない限り、付与された樹脂は形状を変化させるべきではなく、すなわち、表面上で自立的に安定した状態で維持されるべきである。したがって、モノポーラプレートは、それに局所的に付与された樹脂と一緒に移動されてもよく、移動の間に樹脂が流れ出ることはない。特に、モノポーラプレートは、例えば、樹脂が局所的に付与される装置から、モノポーラプレートが別のモノポーラプレートと一緒にプレスされる装置に移動されてもよい。1K-エポキシ樹脂のレオロジ及び/又は自立安定性は、様々な要因に影響され得る。例えば、粘性は、充填剤(揺変剤)又は希釈剤に著しく影響され得る。この希釈剤は、反応性であってもよいし、又は化学的に不活性であってもよく、通常、脂肪族を有し、そのため非常に可動的な鎖を有する。この点で希釈剤は、芳香族結合の摺動を促進する潤滑剤に匹敵する。
【0048】
特に、一実施形態によれば、1K-エポキシ樹脂は、構造的に粘稠性であるように適合されてもよい。
【0049】
剪断減粘性とも呼ばれる構造的粘性は、高い剪断力で粘性の低下を示す流体の特性である。本明細書に記載のエポキシ樹脂に関して、構造的に粘稠性である特性とは、大きな剪断力が作用しない限り当該樹脂が高い粘性を有しており、そのため非常に安定であることを意味する。したがって、樹脂は、モノポーラプレートに局所的に付与された後、力がほとんど存在しない状態で維持され、そのモノポーラプレートと共に移動されてもよく、続いて、そのモノポーラプレートを別のモノポーラプレートと一緒にプレスすることによって強い剪断力が前記樹脂に加えられる。樹脂は次いで、この強い剪断力により一時的に薄くなり、モノポーラプレートの表面を横切って流れ、2つのモノポーラプレートの間のより広い領域にわたって広がり得る。
【0050】
一実施形態によれば、1K-エポキシ樹脂は、モノポーラプレートの接触面の1つに、ディスペンサによってビードとして局所的に付与されてもよい。次いで、モノポーラプレート同士は、それらの対向接触面で一緒にプレスされてもよい。
【0051】
言い換えれば、当該樹脂は、第2のモノポーラプレートに結合される1つのモノポーラプレートの表面の領域に、ディスペンサによって局所的に付与されてもよい。ディスペンサは噴霧装置と同様に機能してもよく、付与された樹脂は、好ましくは構造的に粘稠性であるその特性のために噴霧中は比較的流動性であり、そして前記表面上で、力を加えられることがなければ安定状態を維持する。しかし、「ディスペンサ」という用語は、ここでは広く解釈されるべきであり、噴霧装置に限定されず、任意の装置、特に印刷装置及び/又は付与装置を含んでもよく、その助けを借りて粘稠性流体が、表面に局所的に、すなわち、例えば点、線、又は領域に制限して付与されてもよい。
【0052】
一方又は両方のモノポーラプレートの接触面に樹脂を付与した後、それらを一緒にして互いにプレスしてもよい。樹脂は接触面に沿って広がり、接触面に強く接着し得る。
【0053】
より具体的な実施形態によれば、対向接触面を有するモノポーラプレート同士は、200μm未満、好ましくは150μm未満、又は100μm未満、又はさらには60μm未満のギャップ幅が接触面同士の間に得られるように形成され、一緒にプレスされてもよい。
【0054】
言い換えれば、その2つのモノポーラプレートは、少なくともそれらの接触面で互いに補完するように構成されてもよく、その結果、それらのモノポーラプレートが一緒にプレスされたとき、接触面同士は互いに非常に近くなる。接触面同士の間の直交距離は、ギャップ幅に相当し、可能な限り小さくすべきである。ギャップ幅が200μm未満であるということは、とりわけ、2つのモノポーラプレートの間に少量のエポキシ樹脂しか存在せず、この樹脂が広い領域にわたってモノポーラプレートと接触していることを意味する。例えば、接触面積当たりのエポキシ樹脂の質量は、0.4g/m未満で維持されてもよい。したがって、硬化中に樹脂で発生した熱は、広い領域にわたり、それ故に効率的にモノポーラプレートに伝達され、モノポーラプレートを通って散逸され、これによって過度の発熱が生じることが避けられ得る。
【0055】
一実施形態によれば、1K-エポキシ樹脂は、50μmを超える直径を有する充填剤を含まなくてもよい。
【0056】
従来の1K-エポキシ樹脂は、多くの場合、樹脂の流動挙動、粘性、及び/又は熱挙動に影響を及ぼすために使用され得る小粒子又は中空体の形態の充填剤を有する。しかし、モノポーラプレートを結合するための本明細書に記載の付与方法では、1K-エポキシ樹脂の従来の代表的な付与方法とは対照的に、非常に狭いギャップ幅が目標とされるため、充填剤を含まないか又はせいぜい小径の充填剤を含む樹脂を使用することが好ましい。特に、当該プロセスにおいて2つのモノポーラプレートが結合され力が加えられる場合には、変形性を示す充填剤が、場合によっては使用されてもよい。
【0057】
一実施形態によれば、1K-エポキシ樹脂は、例えば燃料電池セル又はフロー電池のためのバイポーラプレートに使用する場合に検討すべき条件又は要件を考慮に入れて、特定の構造的特性及び/又は機能的特性に関して特に適合されてもよい。特に、1K-エポキシ樹脂は、燃料電池セルで使用される触媒に影響を与える触媒毒を実質的に含まないものであり得る。あるいは、又は加えて、1K-エポキシ樹脂は、燃料電池セルで使用される材料の腐食を促進する物質、又は膜分解を促進する物質を実質的に含まないものであり得る。あるいは、又は加えて、1K-エポキシ樹脂は、燃料電池セルにおけるプロトン伝導性を低下させる物質を実質的に含まないものであり得る。あるいは、又は加えて、1K-エポキシ樹脂は、1.5mmを超える拡散距離及び25℃~90℃の範囲の温度で、少なくとも0.003mol/sの酸素透過度を有し得る。あるいは、又は加えて、1K-エポキシ樹脂は、95℃で1000時間にわたって、0.5mMの硫酸、グリサンチン(Glysantin)、及び脱イオン水に対して耐性であり得る。
【0058】
燃料電池セル又はフロー電池では、そこで生じる化学反応を支援するために、通常、触媒が使用される。しかし、そのような触媒の効果は、触媒毒と呼ばれる特定の他の物質によって阻害され得る。したがって、バイポーラプレートを含み、燃料電池セル又はフロー電池のいかなる場所においても、有意な量の触媒毒が決して循環しないことが重要であり得る。「触媒毒を実質的に含まない」又は「有意な量の触媒毒」とは、本明細書では、1K-エポキシ樹脂内の触媒毒の任意量が、多くても、その触媒毒が燃料電池セル又はフロー電池の機能性に有意な悪影響を及ぼさない程度であることを意味すると理解され得る。有機材料、例えば遊離シロキサン、フタレート、アミド、又は同様の物質は、燃料電池セル又はフロー電池における触媒毒として作用し得る。1K-エポキシ樹脂におけるそれぞれの濃度は、可能であれば、50ppm未満、好ましくは30ppm未満であるべきである。半揮発性有機材料の全濃度は、好ましくは300ppm未満、より好ましくは100ppm未満であるべきである。アルコールなどの揮発性及び/又は可燃性の有機材料の濃度は、好ましくは10ppm未満、より好ましくは5ppm未満であるべきである。そのような濃度は、例えば、ジクロロメタン(Dichloromethane:DCM)/メタノール抽出(MSQS)、EPA 8270D、TBCを用いたガスクロマトグラフィー/質量分析(Gas Chromatography:GC/Mass Spectrometry:MS)などの測定方法で測定され得る。塩化物などのアニオンも、触媒毒として作用し得る。それらの含有量は、例えば、APHA 4110BのIon Chromatography with Chemical Suppression of Eluent Conductivity、NIOSH 6011、APHA 4110Bなどの測定方法によって測定した場合、好ましくは10ppm未満、より好ましくは5ppm未満であるべきである。
【0059】
さらに、燃料電池セル又はフロー電池の特性が、その中に設けられた膜の腐食又は分解に起因して経時的に劣化することを防ぐべきである。したがって、1K-エポキシ樹脂がこの点において悪影響を及ぼす物質を決して含有することがないように、1K-エポキシ樹脂にも注意を払うべきである。例えば、いわゆるフェントン金属は、可能な限り避けるべきである。そのような物質としては、例えば、鉄、銅、クロム、ニッケル、及びチタンが挙げられる。当該樹脂におけるそれらの濃度は、例えば誘導結合プラズマ/原子発光分光法(Inductively Coupled Plasma/Atomic Emission Spectroscopy:ICP/AES)、EPA 3050Bなどの測定方法で測定した場合、可能な限り30ppm未満、より好ましくは10ppm未満で維持されるべきである。
【0060】
燃料電池セルにおけるプロトン伝導性も、高い状態で維持されるべきである。したがって、1K-エポキシ樹脂は、このようなプロトン伝導性を低下させる物質をできるだけ少なく、できるだけ少量で含有すべきである。そのような物質としては、アルミニウム、ヒ素、バリウム、ビスマス、カドミウム、コバルト、リチウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、鉛、アンチモン、セレン、スズ、バナジウム、亜鉛、ジルコニウム、カルシウム、ナトリウム、及び硫黄が挙げられるが、これらに限定されない。言及した最後の3つの物質を除いて、これらの物質のそれぞれは、可能であれば、樹脂において30ppmを超えない、好ましくは10ppmを超えない濃度で存在し、これらのすべての物質の全濃度が、例えばICP/AES、EPA 3050Bで測定した場合、可能な限り300ppm未満、好ましくは100ppm未満で維持されるべきである。言及した最後の3つの物質のそれぞれは、例えばPRC 7100207、EPA 3050Bで測定した場合、好ましくは300ppm未満、より好ましくは100ppm未満を維持した濃度で存在すべきである。
【0061】
酸素は燃料電池セル又はフロー電池の内部の様々な化学反応に必要であり、とりわけ酸素は、バイポーラプレートを通って循環もされなければならないので、1K-エポキシ樹脂の酸素透過度もまた、そのような循環を妨げないように十分に低くなければならない。特に、エポキシ樹脂によって生成されシールとして作用する結合部を、酸素は通過することができないか、又は最大でも無視できる程度で通過すべきである。したがって、1K-エポキシ樹脂の特性は、特に酸素の通過に関して、ほとんど気密であるように適合されるべきである。このために、エポキシ樹脂内の酸素透過度は、例えば1.5mmを超える距離にわたって、0.006mol/s未満、好ましくは0.003mol/s未満であるべきである。このことは、燃料電池セル又はフロー電池が概して動作する温度範囲、すなわち、例えば25℃~90℃の間で適用されるべきである。
【0062】
さらに、燃料電池セル又はフロー電池の中で、1K-エポキシ樹脂は、概してそこに存在する化学物質、例えば硫酸、グリサンチン(Glysantin)及び脱イオン水と接触する可能性があるため、代表的な動作温度で十分に長い期間、例えば少なくとも500時間又はさらには少なくとも1000時間、それら化学物質に対して耐性であるべきである。
【0063】
本発明の第2の態様によるバイポーラプレートの実施形態は、本明細書に記載の製造方法の実施形態を用いて製造されてもよい。したがって、それらのモノポーラプレート間の結合に使用される1K-エポキシ樹脂接着剤は、方法の記載における上記の特性を有し得る。
【0064】
本発明の第3の態様によるエネルギー貯蔵アセンブリは、本明細書に記載の1つ又は複数のバイポーラプレートを備えてもよい。バイポーラプレートを層状にしてスタックを形成してもよい。バイポーラプレートに加えて、電極、膜などのさらなる構成物、及び/又は、電解質などのさらなる物質が、エネルギー貯蔵アセンブリに収容されてもよい。
【0065】
本発明の実施形態の想定される特徴及び利点については、部分的には、バイポーラプレートを製造する方法を一般に参照し、部分的には、この方法に従って生産されるバイポーラプレート、及びこの方法で使用される1K-エポキシ樹脂を参照して、本明細書に記載されることに留意されたい。当業者は、個々の実施形態について記載された特徴が、他の実施形態に類似した適切な方法で移行、適合及び/又は交換されて、本発明のさらなる実施形態、及び場合によっては相乗効果に到達し得ることを認識するであろう。
【0066】
本発明の有利な実施形態は、添付の図面を参照して下記でさらに説明するが、図面も説明も、決して本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】本発明の一実施形態による方法におけるモノポーラプレートの平面図である。
図2】本発明の一実施形態による方法におけるモノポーラプレートの断面図である。
図3】本発明の一実施形態による方法におけるモノポーラプレートの別の断面図である。
図4】本発明の一実施形態による燃料電池セルを備えたエネルギー貯蔵アセンブリを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図面は概要にすぎず、縮尺通りではない。異なる図面における同一の参照符号は、同一の、又は同様に作用する特徴部を示している。
【0069】
図1は、燃料電池セル用のバイポーラプレートを生産するために使用されるモノポーラプレート3の表面5の非常に簡略化された平面図を示す。完成したバイポーラプレートでは、表面5は、反対側にある同様又は同一の幾何学的形状の別のモノポーラプレートに面する。表面5には、複数の領域13が存在する。これらの領域13内では、チャネル状構造が、例えばくぼみの形態で表面5に設けられており(明確にするために図示していない)、表面5を横切って延在している。狭い線状接触面7は、各領域13の周囲に沿って、又は隣り合う領域13同士の間を通っている。各領域13は、この接触面7の区域によって完全に囲まれている。
【0070】
図2の断面に示すように、バイポーラプレート1が製造される方法において、ディスペンサ15を使用し、モノポーラプレート3の表面5に、接触領域7に沿って1K-エポキシ樹脂9が最初に付与される。ディスペンサ15は、噴霧装置と同様の設計であってもよく、モノポーラプレート3の表面5に平行な方向に、ディスペンサ15とモノポーラプレート3とを相対的に移動させることによって、接触面7に沿ってビード11の形態で1K-エポキシ樹脂9を連続的に付与してもよい。1K-エポキシ樹脂9は比較的強靭であり、好ましくは構造的に粘稠性であるため、ビード11は、例えば数ミリメートルの限定された幅、及び、例えば0.5を超える高いアスペクト比(幅に対する高さの比率)で付与されてもよい。1K-エポキシ樹脂9は、好ましくは十分自立的に安定しており、付与された後に1K-エポキシ樹脂9のビード11がモノポーラプレート3の表面5を横断して流れずに、その形状、特にその幅を保つ。
【0071】
続いて、図3に示すように、エポキシ樹脂9が提供されたモノポーラプレート3が、別のモノポーラプレート3と一緒にスタッキングされる。次いで、そのスタックは、熱プレス装置17の中に置かれる。そこでは、スタッキングされたモノポーラプレート3に両側から圧力が付与されて、それらを一緒にプレスする。加えられた力、特に結果として生じる剪断力により、構造的に粘稠性である1K-エポキシ樹脂が表面5を横切って流れる。すなわち、樹脂で覆われる接触面7の範囲が増加すると同時に、樹脂層の高さが減少する。2つのモノポーラプレート3は、好ましくは、残りのギャップ幅sが150μm未満、例えばわずか50μm以下となる程度まで、互いに向かってプレスされる。
【0072】
これと同時に、又はこれに続いて、熱プレス装置17を使用して、2つのモノポーラプレート3を、例えば200℃以上の高温に加熱する。概して90℃~130℃の間の温度では、この場合に使用される1K-エポキシ樹脂はその活性化温度に達し、その結果、1K-エポキシ樹脂内で発熱硬化反応が生じ始める。このプロセスで放出された熱エネルギーは、加熱プロセスを支援する。しかし、熱プレス装置17は、例えばその熱特性により、及び/又はさらに能動的な温度制御により、モノポーラプレート3が、特にそれらの間にある1K-エポキシ樹脂9が決して熱くなりすぎないように、すなわち、特に1K-エポキシ樹脂が損傷を受ける可能性がある限界温度より決して熱くならないように、設計され動作するようになっている。熱プレス装置17の熱特性としては、例えば、その熱慣性、熱容量、熱伝導性などが挙げられる。加熱アセンブリに加えて、熱プレス装置17は、場合によっては、その熱挙動を能動的に制御又は調整することができるように、冷却アセンブリ及び/又はセンサも備えてもよい。黒鉛モノポーラプレート3は概して非常に高い熱伝導性であるために、硬化中に1K-エポキシ樹脂9において放出された熱エネルギーは非常に効率的に散逸され、そのため過熱が防がれ得る。
【0073】
硬化後、1K-エポキシ樹脂9により、一方で、2つのモノポーラパネル3の機械的に非常に弾性のある結合が確保される。他方で、1K-エポキシ樹脂9は、領域13のそれぞれの周囲に一種のシールを形成する。
【0074】
本明細書に記載の黒鉛バイポーラプレート1を製造する目的で使用される1K-エポキシ樹脂9の特性は、様々な手段で、この目的に特別に適合される。例えば、1K-エポキシ樹脂9は、損傷することなく少なくとも200℃の高温に耐え、そのような高いプロセス温度で、例えば30秒以内に非常に迅速に硬化すべきである。このような促進硬化プロセスにより、バイポーラプレート1の生産において、非常に急速な製造、すなわち迅速なサイクル時間が可能になる。1K-エポキシ樹脂9はまた、通常の周囲温度で非常に長い時間、すなわち例えば2週間を超えて貯蔵及び処理されるように、例えば90℃を超える比較的高い活性化温度を有すべきである。さらに、1K-エポキシ樹脂9は、燃料電池セル内の代表的な動作温度で、固体でかつ安定な状態を維持するように、例えば120℃を超える比較的高いガラス転移温度を有すべきである。
【0075】
接着剤、特に1K-エポキシ樹脂の特性に影響を及ぼす手段は広く知られており、専門家は一般に、用途に関する限界及び対象条件を知っていれば、その用途に適切に適合した接着剤を混合することができることに留意されたい。例えば、Edward M.Petrieによる教科書「Epoxy Adhesive Formulations」、McGraw Hill Professional社出版、2005年、ISBN 0071589082、同9780071589086、及び、Sina Ebnesajjadによる教科書「Handbook of Adhesives and Surface Preparation:Technology,Applications and Manufacturing」、Plastics Design Library、William Andrew社出版、2010年、ISBN 1437744621、同9781437744620に記載されている当分野の広範な背景知識を、専門家は有している。
【0076】
想定される多くのもののうちの1つにすぎないが、本明細書に記載の製造方法において使用されてもよい1K-エポキシ樹脂の組成物を下記に挙げる。例示的なエポキシ樹脂は、50~60%の樹脂成分及び40~50%の充填剤からなる。樹脂成分は、以下のように構成されてもよい。
【0077】
-平均分子量分布が700を超えない10~30%のエピクロロヒドリン樹脂(すなわち、平均MW<=700)
【0078】
-10~30%のホルムアルデヒド、1-クロロ,2,3-エポキシプロパン及びフェノールを用いたオリゴマー反応生成物
【0079】
-5~10%の4,4’-イソプロピリデンジフェノール、1-クロロ-2,3-エポキシプロパンを用いたオリゴマー反応生成物
【0080】
-1~5%の4,4’-イソプロピリデンジフェノール、1-クロロ-2,3-エポキシプロパンを用いたオリゴマー反応生成物、[(デメチルアミノ)メチル]フェノール及びピペラジンを用いた反応生成物
【0081】
充填剤は、95~100%のケイ酸マグネシウム及び0~5%の他の金属酸化物から構成されてもよい。
【0082】
本明細書に記載の様式で製造されたバイポーラプレート1は、例えば、図4に概略的に示すように、エネルギー貯蔵アセンブリ19の燃料電池セル21で使用されてもよい。エネルギー貯蔵アセンブリ19としての役割を果たす燃料電池セルシステム23のセルスタックでは、バイポーラプレート1によって、隣り合う燃料電池セル21が互いに分離され、互いに電気的に接続され、燃料が供給され得る。
【0083】
最後に、「有する(having)」、「備える/含む(comprising)」などの用語は、他の要素又は工程を排除するものではなく、「1つの(one)」又は「1つの(a)」などの用語は、複数を排除するものではないことに留意されたい。上記の実施形態のうちの1つを参照して記載されている特徴又は工程は、上記の他の実施形態の他の特徴又は工程と組み合わせて使用されてもよいことに、さらに留意されたい。特許請求の範囲における参照符号は、限定事項と見なされるべきではない。
【符号の説明】
【0084】
1 バイポーラプレート
3 モノポーラプレート
5 モノポーラプレートの表面
7 モノポーラプレートの接触面
9 1K-エポキシ樹脂
11 ビード
13 領域
15 ディスペンサ
17 熱プレス装置
19 エネルギー貯蔵アセンブリ
21 燃料電池セル
23 燃料電池セルシステム
s モノポーラプレート間のギャップ幅
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-05-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池セル(21)又はフロー電池のための黒鉛バイポーラプレート(1)を製造する方法であって、
一対の黒鉛モノポーラプレート(3)を提供することと、
前記モノポーラプレート(3)の対向接触面(7)に沿って、前記モノポーラプレート(3)同士を結合させることと、を含み、
1K-エポキシ樹脂(9)を結合のために使用し、
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、少なくとも50℃の活性化温度を有するように適合されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、少なくとも200℃の限界温度までの温度に損傷することなく耐えるように適合され、
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、結合の間に少なくとも200℃に加熱される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モノポーラプレート(3)が、結合の間に、前記1K-エポキシ樹脂(9)の前記限界温度未満の温度に焼き戻される、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、少なくとも200℃の温度で1分未満に硬化するように適合される、
請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、活性化温度を超えて加熱されることで、溶融相においてのみ化学的に活性になる固化剤および/または触媒を含む、
請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、少なくとも100℃のガラス転移温度を有するように適合される、
請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、少なくとも5時間のポットライフ及び/又は0℃~50℃の間の潜在性を有するように適合される、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、接触面(7)としての役割を果たす前記モノポーラプレート(3)の表面(5)に局所的に付与され、そしてこの表面(5)上で自立的に安定した状態を維持するように適合される、
請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記1K-エポキシ樹脂(9)が構造的に粘稠性であるように適合される、
請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、ディスペンサ(15)によって、前記モノポーラプレート(3)の前記接触面(7)のうちの1つに局所的に制限されてビード(11)として付与され、次いで、前記モノポーラプレート(3)同士は、それらの対向接触面(7)で一緒にプレスされる、
請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記接触面(7)同士の間に200μm未満のギャップ幅(s)が得られるように、前記モノポーラプレート(3)同士が、それらの対向接触面(7)と共に形成され、一緒にプレスされる、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、50μmより大きい直径を有する充填剤を含まない、
請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、前記燃料電池セル(21)又はフロー電池で使用される触媒に影響を与える触媒毒を実質的に含まず、かつ/又は
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、前記燃料電池セル(21)又はフロー電池に使用される材料の腐食を促進する物質、又は膜分解を促進する物質を実質的に含まず、かつ/又は
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、前記燃料電池セル(21)又はフロー電池においてプロトン伝導性を低下させる物質を実質的に含まず、かつ/又は
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、1.5mmを超える拡散距離及び25℃~90℃の範囲の温度で、少なくとも0.003mol/sの酸素透過度を有し、かつ/又は
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、90℃で少なくとも500時間、0.5mMの硫酸、グリサンチン(glysantin)、及び脱イオン水に対して耐性である、
請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
対向接触面(7)に沿って、1K-エポキシ樹脂(9)によって相互に結合された一対の黒鉛モノポーラプレート(3)を含み、
前記1K-エポキシ樹脂(9)が、少なくとも50℃の活性化温度を有するように適合される、
燃料電池セル(21)又はフロー電池のためのバイポーラプレート(1)。
【請求項15】
請求項14に記載のバイポーラプレート(1)を有する、特に少なくとも1つの燃料電池セル(21)又はフロー電池を有するエネルギー貯蔵アセンブリ(19)。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本発明の第1の態様は、燃料電池セル又はフロー電池のための黒鉛バイポーラプレートを製造する方法であって、以下のプロセス工程、すなわち(i)一対の黒鉛モノポーラプレートを提供する工程、及び(ii)前記モノポーラプレートの対向接触面に沿って、前記モノポーラプレート同士を結合させる工程を含む方法に関する。結合は、1K-エポキシ樹脂を使用して行われ、1K-エポキシ樹脂は、少なくとも50℃の活性化温度を有するよう適合される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明の第2の態様は、対向接触面に沿って1K-エポキシ樹脂により相互に結合された一対の黒鉛モノポーラプレートを備え、1K-エポキシ樹脂は、少なくとも50℃の活性化温度を有するよう適合された、燃料電池セル又はフロー電池のためのバイポーラプレートに関する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
K-エポキシ樹脂は、活性化温度が少なくとも50℃、好ましくは少なくとも70℃、又はさらには少なくとも90℃であるように適合される
【国際調査報告】