(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ERBBおよびBTK阻害剤の新規な医薬塩および多形形態
(51)【国際特許分類】
C07D 403/12 20060101AFI20240730BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240730BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240730BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240730BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240730BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240730BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C07D403/12
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/06
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P37/02
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/506
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506641
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 CN2022109065
(87)【国際公開番号】W WO2023011358
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/110048
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518099859
【氏名又は名称】ディザル(ジァンスー)ファーマシューティカル・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジュン-チェン
(72)【発明者】
【氏名】ジアン,ジャナン
(72)【発明者】
【氏名】グオ,チンハイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,シー-イン
(72)【発明者】
【氏名】ゼン,チンベイ
(72)【発明者】
【氏名】ツイ,ホンチュン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,チェンファン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,シャオリン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA961
4C084ZB051
4C084ZB081
4C084ZB151
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC42
4C086GA07
4C086GA14
4C086GA15
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA96
4C086ZB05
4C086ZB08
4C086ZB15
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
ErbB(例えば、EGFRまたはHer2)および/またはBTK、特にErbBの変異形態、および/またはBTKに対して阻害活性を有する(R)-N-(5-((4-((5-クロロ-4-フルオロ-2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)-2-(3-(ジメチルアミノ)ピロリジン-1-イル)-4-メトキシフェニル)アクリルアミド(化合物I)の新規な医薬塩および多形形態を開示する。本明細書では、化合物Iの医薬塩および多形形態の調製のためのプロセス、ならびにErbBまたはBTKの阻害における化合物Iのそのような医薬塩および多形形態の使用をさらに開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(R)-N-(5-((4-((5-クロロ-4-フルオロ-2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)-2-(3-(ジメチルアミノ)ピロリジン-1-イル)-4-メトキシフェニル)アクリルアミド(化合物I)またはその薬学的に許容される塩の結晶形態。
【請求項2】
化合物Iの形態Aである、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項3】
11.62±0.20、12.48±0.20、17.34±0.20、および20.04±0.20度の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折(XRPD)パターンを有する、請求項2に記載の結晶形態。
【請求項4】
以下:10.68±0.20、11.11±0.20、16.02±0.20、20.79±0.20、23.71±0.20、および24.64±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する、請求項2に記載の結晶形態。
【請求項5】
10.68±0.20、11.11±0.20、11.62±0.20、12.48±0.20、16.02±0.20、17.34±0.20、20.04±0.20、20.79±0.20、23.71±0.20、および24.64±0.20度の2θにピークを含むXRPDパターンを有する、請求項2に記載の結晶形態。
【請求項6】
以下:5.95±0.20、14.96±0.20、22.01±0.20、および27.60±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する、請求項5に記載の結晶形態。
【請求項7】
5.95±0.20、10.68±0.20、11.11±0.20、11.62±0.20、12.48±0.20、14.96±0.20、16.02±0.20、17.34±0.20、20.04±0.20、20.79±0.20、22.01±0.20、23.71±0.20、24.64±0.20、および27.60±0.20度の2θにピークを含むXRPDパターンを有する、請求項2に記載の結晶形態。
【請求項8】
実質的に表7に示されるようなXRPDパターンを有する、請求項2に記載の結晶形態。
【請求項9】
実質的に
図1に示されるようなXRPDパターンを有する、請求項2に記載の結晶形態。
【請求項10】
約178.6℃で脱溶媒和の開始、および約179.6℃でピークを有する吸熱を含むDSCサーモグラムを有する、請求項2に記載の結晶形態。
【請求項11】
約38℃から約160℃に加熱すると約0.23%の質量損失を示すTGAサーモグラムを有する、請求項2に記載の結晶形態。
【請求項12】
図3と実質的に類似したTGAサーモグラムを有する、請求項2に記載の結晶形態。
【請求項13】
図2と実質的に類似したDSCサーモグラムを有する、請求項2に記載の結晶形態。
【請求項14】
図4と実質的に類似したDVS蒸気収着グラムを有する、請求項2に記載の結晶形態。
【請求項15】
化合物Iの形態Bである、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項16】
9.39±0.20、18.86±0.20、19.50±0.20、および20.06±0.20度の2θにピークを含むXRPDパターンを有する、請求項15に記載の結晶形態。
【請求項17】
以下:10.59±0.20、18.16±0.20、18.56±0.20、26.30±0.20、33.71±0.20、および34.81±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する、請求項15に記載の結晶形態。
【請求項18】
9.39±0.20、10.59±0.20、18.16±0.20、18.56±0.20、18.86±0.20、19.50±0.20、20.06±0.20、26.30±0.20、33.71±0.20、および34.81±0.20度の2θにピークを含むXRPDパターンを有する、請求項15に記載の結晶形態。
【請求項19】
以下:22.07±0.20、22.91±0.20、23.68±0.20、および24.00±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する、請求項18に記載の結晶形態。
【請求項20】
9.39±0.20、10.59±0.20、18.16±0.20、18.56±0.20、18.86±0.20、19.50±0.20、20.06±0.20、22.07±0.20、22.91±0.20、23.68±0.20、24.00±0.20、26.30±0.20、33.71±0.20、および34.81±0.20度の2θにピークを含むXRPDパターンを有する、請求項15に記載の結晶形態。
【請求項21】
実質的に表8に示されるようなXRPDパターンを有する、請求項15に記載の結晶形態。
【請求項22】
実質的に
図5に示されるようなXRPDパターンを有する、請求項15に記載の結晶形態。
【請求項23】
約194.8℃で脱溶媒和の開始、および約195.7℃でピークを有する吸熱を含むDSCサーモグラムを有する、請求項15に記載の結晶形態。
【請求項24】
約38℃から約178℃に加熱すると0.17%未満の質量損失を示すTGAサーモグラムを有する、請求項15に記載の結晶形態。
【請求項25】
図7と実質的に類似したTGAサーモグラムを有する、請求項15に記載の結晶形態。
【請求項26】
図6と実質的に類似したDSCサーモグラムを有する、請求項15に記載の結晶形態。
【請求項27】
図8と実質的に類似したDVS蒸気収着グラムを有する、請求項15に記載の結晶形態。
【請求項28】
化合物Iの薬学的に許容される塩の結晶形態であり、任意選択で、薬学的に許容される塩は、塩酸塩、L-(+)-酒石酸塩、フマル酸塩、硫酸塩、およびマレイン酸塩から選択される、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項29】
化合物Iの塩酸塩の結晶形態である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項30】
9.35±0.20、17.21±0.20、18.21±0.20、19.79±0.20、および21.17±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する、請求項29に記載の結晶形態。
【請求項31】
以下:9.05±0.20、19.54±0.20、21.17±0.20、21.51±0.20、26.24±0.20、および30.64±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する、請求項30に記載の結晶形態。
【請求項32】
9.05±0.20、9.35±0.20、17.21±0.20、18.21±0.20、19.54±0.20、19.79±0.20、21.17±0.20、21.51±0.20、26.24±0.20、および30.64±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する、請求項29に記載の結晶形態。
【請求項33】
以下:7.30±0.20、14.85±0.20、20.91±0.20、23.25±0.20、および27.43±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する、請求項32に記載の結晶形態。
【請求項34】
7.30±0.20、9.05±0.20、9.35±0.20、14.85±0.20、17.21±0.20、18.21±0.20、19.54±0.20、19.79±0.20、20.91±0.20、21.17±0.20、21.51±0.20、23.25±0.20、26.24±0.20、27.43±0.20、および30.64±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する、請求項29に記載の結晶形態。
【請求項35】
実質的に表16に示されるようなXRPDパターンを有する、請求項29に記載の結晶形態。
【請求項36】
実質的に
図13に示されるようなXRPDパターンを有する、請求項29に記載の結晶形態。
【請求項37】
約207.8℃で脱溶媒和の開始、および約212.1℃でピークを有する吸熱を含むDSCサーモグラムを有する、請求項29に記載の結晶形態。
【請求項38】
約175℃に加熱すると約0.76%の質量損失を示すTGAサーモグラムを有する、請求項29に記載の結晶形態。
【請求項39】
図20と実質的に類似したTGA/DSCサーモグラムを有する、請求項29に記載の結晶形態。
【請求項40】
図23と実質的に類似したDVS蒸気収着グラムを有する、請求項29に記載の結晶形態。
【請求項41】
化合物I L-(+)-酒石酸塩の結晶形態である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項42】
化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIの結晶形態である、請求項41に記載の結晶形態。
【請求項43】
5.34±0.20、5.38±0.20、10.50±0.20、10.92±0.20、および16.37±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する、請求項42に記載の結晶形態。
【請求項44】
以下:11.84±0.20、15.05±0.20、17.86±0.20、18.52±0.20、および18.99±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する、請求項43に記載の結晶形態。
【請求項45】
5.34±0.20、5.38±0.20、10.50±0.20、10.92±0.20、11.84±0.20、15.05±0.20、16.37±0.20、17.86±0.20、18.52±0.20、および18.99±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する、請求項42に記載の結晶形態。
【請求項46】
以下:7.29±0.20、14.40±0.20、22.02±0.20、および23.96±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する、請求項45に記載の結晶形態。
【請求項47】
5.34±0.20、5.38±0.20、7.29±0.20、10.50±0.20、10.92±0.20、11.84±0.20、14.40±0.20、15.05±0.20、16.37±0.20、17.86±0.20、18.52±0.20、18.99±0.20、22.02±0.20、および23.96±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する、請求項42に記載の結晶形態。
【請求項48】
実質的に表17に示されるようなXRPDパターンを有する、請求項42に記載の結晶形態。
【請求項49】
実質的に
図9に示されるようなXRPDパターンを有する、請求項42に記載の結晶形態。
【請求項50】
約207.8℃で脱溶媒和の開始、および約212.1℃でピークを有する吸熱を含むDSCサーモグラムを有する、請求項42に記載の結晶形態。
【請求項51】
約175℃に加熱すると約0.76%の質量損失を示すTGAサーモグラムを有する、請求項42に記載の結晶形態。
【請求項52】
図15と実質的に類似したTGA/DSCサーモグラムを有する、請求項42に記載の結晶形態。
【請求項53】
化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIIである、請求項41に記載の結晶形態。
【請求項54】
10.02±0.20、18.03±0.20、19.89±0.20、21.15±0.20、および21.26±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する、請求項53に記載の結晶形態。
【請求項55】
以下:12.70±0.20、13.76±0.20、16.80±0.20、20.92±0.20、および22.82±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する、請求項54に記載の結晶形態。
【請求項56】
10.02±0.20、12.70±0.20、13.76±0.20、16.80±0.20、18.03±0.20、19.89±0.20、20.92±0.20、21.15±0.20、21.26±0.20、および22.82±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する、請求項53に記載の結晶形態。
【請求項57】
以下:7.95±0.20、15.91±0.20、23.44±0.20、25.55±0.20、および29.99±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する、請求項56に記載の結晶形態。
【請求項58】
7.95±0.20、10.02±0.20、12.70±0.20、13.76±0.20、15.91±0.20、16.80±0.20、18.03±0.20、19.89±0.20、20.92±0.20、21.15±0.20、21.26±0.20、22.82±0.20、23.44±0.20、25.55±0.20、および29.99±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する、請求項53に記載の結晶形態。
【請求項59】
実質的に表21に示されるようなXRPDパターンを有する、請求項53に記載の結晶形態。
【請求項60】
実質的に
図14に示されるようなXRPDパターンを有する、請求項53に記載の結晶形態。
【請求項61】
約137.2℃で脱溶媒和の開始、および約140.4℃でピークを有する吸熱を含むDSCサーモグラムを有する、請求項53に記載の結晶形態。
【請求項62】
約100℃に加熱すると約3.59%の質量損失を示すTGAサーモグラムを有する、請求項53に記載の結晶形態。
【請求項63】
図16と実質的に類似したTGA/DSCサーモグラムを有する、請求項53に記載の結晶形態。
【請求項64】
図21と実質的に類似したDVS蒸気収着グラムを有する、請求項53に記載の結晶形態。
【請求項65】
化合物Iフマル酸塩の結晶形態である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項66】
11.92±0.20、13.71±0.20、19.54±0.20、20.15±0.20、および24.21±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する、請求項65に記載の結晶形態。
【請求項67】
以下:13.08±0.20、15.79±0.20、18.86±0.20、20.63±0.20、および22.14±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する、請求項66に記載の結晶形態。
【請求項68】
11.92±0.20、13.08±0.20、13.71±0.20、15.79±0.20、19.54±0.20、20.15±0.20、18.86±0.20、20.63±0.20、22.14±0.20、および24.21±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する、請求項65に記載の結晶形態。
【請求項69】
以下:11.63±0.20、12.33±0.20、17.23±0.20、18.52±0.20、および23.79±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する、請求項68に記載の結晶形態。
【請求項70】
11.63±0.20、11.92±0.20、12.33±0.20、13.08±0.20、13.71±0.20、15.79±0.20、17.23±0.20、18.52±0.20、18.86±0.20、19.54±0.20、20.15±0.20、20.63±0.20、22.14±0.20、23.79±0.20、および24.21±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する、請求項65に記載の結晶形態。
【請求項71】
実質的に表18に示されるようなXRPDパターンを有する、請求項65に記載の結晶形態。
【請求項72】
実質的に
図10に示されるようなXRPDパターンを有する、請求項65に記載の結晶形態。
【請求項73】
約48.9℃で脱溶媒和の開始、および約68.3℃でピークを有する吸熱を含むDSCサーモグラムを有する、請求項65に記載の結晶形態。
【請求項74】
約132.79℃で脱溶媒和の開始、および約141.78℃でピークを有する後の吸熱をさらに含むDSCサーモグラムを有する、請求項73に記載の結晶形態。
【請求項75】
約55℃に加熱すると約2.86%の質量損失を示すTGAサーモグラムを有する、請求項65に記載の結晶形態。
【請求項76】
約55℃から約140℃に加熱すると約2.42%の質量損失を示すTGAサーモグラムを有する、請求項65に記載の結晶形態。
【請求項77】
図17と実質的に類似したTGA/DSCサーモグラムを有する、請求項65に記載の結晶形態。
【請求項78】
図22と実質的に類似したDVS蒸気収着グラムを有する、請求項65に記載の結晶形態。
【請求項79】
化合物I硫酸塩の結晶形態である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項80】
6.00±0.20、12.16±0.20、17.37±0.20、18.19±0.20、および20.51±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する、請求項79に記載の結晶形態。
【請求項81】
以下:7.54±0.20、17.16±0.20、19.52±0.20、および22.65±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する、請求項80に記載の結晶形態。
【請求項82】
6.00±0.20、7.54±0.20、12.16±0.20、17.16±0.20、17.37±0.20、18.19±0.20、19.52±0.20、20.51±0.20、および22.65±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する、請求項79に記載の結晶形態。
【請求項83】
以下:14.90±0.20、22.02±0.20、24.86±0.20、および25.73±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する、請求項79に記載の結晶形態。
【請求項84】
6.00±0.20、7.54±0.20、12.16±0.20、14.90±0.20、17.16±0.20、17.37±0.20、18.19±0.20、19.52±0.20、20.51±0.20、22.02±0.20、22.65±0.20、24.86±0.20、および25.73±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する、請求項83に記載の結晶形態。
【請求項85】
実質的に表19に示されるようなXRPDパターンを有する、請求項79に記載の結晶形態。
【請求項86】
実質的に
図11に示されるようなXRPDパターンを有する、請求項79に記載の結晶形態。
【請求項87】
約181.2℃で脱溶媒和の開始、および約195.9℃でピークを有する吸熱を含むDSCサーモグラムを有する、請求項79に記載の結晶形態。
【請求項88】
約210.6℃で後の脱溶媒和の開始、および約226.0℃でピークを有する吸熱をさらに含むDSCサーモグラムを有する、請求項87に記載の結晶形態。
【請求項89】
約120℃に加熱すると約4.85%の質量損失を示すTGAサーモグラムを有する、請求項79に記載の結晶形態。
【請求項90】
図18と実質的に類似したTGA/DSCサーモグラムを有する、請求項79に記載の結晶形態。
【請求項91】
化合物Iマレイン酸塩の結晶形態である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項92】
11.94±0.20、15.64±0.20、16.10±0.20、20.98±0.20、および22.65±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する、請求項91に記載の結晶形態。
【請求項93】
以下:4.90±0.20、7.45±0.20、24.27±0.20、および25.67±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する、請求項92に記載の結晶形態。
【請求項94】
4.90±0.20、7.45±0.20、11.94±0.20、15.64±0.20、16.10±0.20、20.98±0.20、22.65±0.20、24.27±0.20、および25.67±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する、請求項91に記載の結晶形態。
【請求項95】
以下:9.57±0.20、12.74±0.20、13.19±0.20、および18.46±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する、請求項94に記載の結晶形態。
【請求項96】
4.90±0.20、7.45±0.20、9.57±0.20、11.94±0.20、12.74±0.20、13.19±0.20、15.64±0.20、16.10±0.20、18.46±0.20、20.98±0.20、22.65±0.20、24.27±0.20度、および25.67±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する、請求項91に記載の結晶形態。
【請求項97】
実質的に表20に示されるようなXRPDパターンを有する、請求項91に記載の結晶形態。
【請求項98】
実質的に
図12に示されるようなXRPDパターンを有する、請求項91に記載の結晶形態。
【請求項99】
約64.6℃で脱溶媒和の開始、および約75.7℃でピークを有する吸熱を含むDSCサーモグラムを有する、請求項91に記載の結晶形態。
【請求項100】
約137.3℃で後の脱溶媒和の開始、および約140.4℃でピークを有する吸熱をさらに含むDSCサーモグラムを有する、請求項99に記載の結晶形態。
【請求項101】
約100℃に加熱すると約3.59%の質量損失を示すTGAサーモグラムを有する、請求項91に記載の結晶形態。
【請求項102】
図19と実質的に類似したTGA/DSCサーモグラムを有する、請求項91に記載の結晶形態。
【請求項103】
請求項1から102のいずれかに記載の結晶形態であって、実質的に純粋な多形である、結晶形態。
【請求項104】
式(I)の化合物:
【化1】
(式中、
n=1または2であり;
Xは塩酸、メタンスルホン酸、硫酸、リン酸、L-(+)-酒石酸、フマル酸、クエン酸、コハク酸、L-リンゴ酸またはマレイン酸である)。
【請求項105】
請求項1から103のいずれか一項に記載の1つまたは複数の結晶形態と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項106】
ErbBまたはBTKを阻害するための医薬として使用するための、請求項1から103のいずれか一項に記載の結晶形態、請求項104に記載の化合物、または請求項105に記載の医薬組成物。
【請求項107】
請求項1から103のいずれか一項に記載の1つまたは複数の結晶形態、請求項104に記載の化合物、または請求項105に記載の医薬組成物を使用することによって、ErbBまたはBTKを阻害する方法。
【請求項108】
対象におけるErbB関連疾患またはBTK関連疾患を処置する方法であって、有効量の請求項1から103のいずれか一項に記載の1つまたは複数の結晶形態、請求項104に記載の化合物、または請求項105に記載の医薬組成物を対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項109】
ErbB関連疾患が、がんである、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
BTK関連疾患が、がんまたは自己免疫疾患である、請求項108に記載の方法。
【請求項111】
がんが、リンパ腫または白血病である、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
自己免疫疾患が、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、またはシェーグレン症候群である、請求項110に記載の方法。
【請求項113】
対象が、ヒトなどの温血動物である、請求項108に記載の方法。
【請求項114】
ErbBが、EGFRまたはHer2であり、好ましくは変異体EGFRまたは変異体Her2である、請求項108から113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項115】
変異体EGFRが、EGFR D761_E762insEAFQ、EGFR A763_Y764insHH、EGFR M766_A767instAI、EGFR A767_V769dupASV、EGFR A767_S768insTLA、EGFR S768_D770 dupSVD、EGFR S768_V769insVAS、EGFR S768_V769insAWT、EGFR V769_D770insASV、EGFR V769_D770insGV、EGFR V769_D770insCV、EGFR V769_D770insDNV、EGFR V769_D770insGSV、EGFR V769_D770insGVV、EGFR V769_D770insMASVD、EGFR D770_N771insSVD、EGFR D770_N771insNPG、EGFR D770_N771insAPW、EGFR D770_N771insD、EGFR D770_N771insDG、EGFR D770_N771insG、EGFR D770_N771insGL、EGFR D770_N771insN、EGFR D770_N771insNPH、EGFR D770_N771insSVP、EGFR D770_N771insSVQ、EGFR D770_N771insMATP、EGFR delD770insGY、EGFR N771_P772insH、EGFR N771_P772insN、EGFR N771_H773dupNPH、EGFR delN771insGY、EGFR delN771insGF、EGFR P772_H773insPR、EGFR P772_H773insYNP、EGFR P772_H773insX、EGFR P772_H773insDPH、EGFR P772_H773insDNP、EGFR P772_H773insQV、EGFR P772_H773insTPH、EGFR P772_H773insN、EGFR P772_H773insV、EGFR H773_V774insNPH、EGFR H773_V774insH、EGFR H773_V774insPH、EGFR H773_V774insGNPH、EGFR H773_V774dupHV、EGFR H773_V774insG、EGFR H773_V774insGH、EGFR V774_C775insHV、EGFRエクソン19欠失、EGFR L858R、EGFR T790M、EGFR L858R/T790M、EGFRエクソン19欠失/T790M、EGFR S768I、EGFR G719S、EGFR G719A、EGFR G719C、EGFR E709A/G719S、EGFR E709A/G719A、EGFR E709A/G719C、およびEGFR L861Qから選択される、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
変異体Her2が、Her2 A775_G776insYVMA、Her2 delG776insVC、Her2 V777_G778insCG、およびHer2 P780_Y781insGSPからなる群から選択される、請求項114に記載の方法。
【請求項117】
第2の治療剤、好ましくは抗腫瘍剤と組み合わせた、請求項104に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、エステル、水和物、溶媒和物もしくは立体異性体。
【請求項118】
第2の治療剤、好ましくは抗腫瘍剤と組み合わせた、請求項1から103のいずれか一項に記載の結晶形態、または請求項104に記載の化合物。
【請求項119】
第2の活性成分をさらに含む、請求項105に記載の医薬組成物。
【請求項120】
化合物Iの薬学的に許容される塩の結晶の製造のためのプロセスであって、化合物Iをアセトンまたはエタノール溶液に溶解し、対応する酸をアセトンまたはエタノール溶液に加え、該溶液を放置して結晶化し、化合物Iの薬学的に許容される塩の結晶を単離することにより、薬学的に許容される塩が、塩酸塩、L-(+)-酒石酸塩、フマル酸塩、硫酸塩、およびマレイン酸塩から選択される、プロセス。
【請求項121】
化合物Iを調製するためのプロセスであって、(i)アクリルアミド試薬と、式(7)の化合物:
【化2】
を接触させるステップ、および
(ii)ステップ(i)で得られた混合物に塩基試薬を加えて、化合物Iを形成するステップを含む、プロセス。
【請求項122】
アクリルアミド試薬が、塩化アクリロイル、アクリル酸、3-クロロプロピオン酸、および塩化3-クロロプロピオニルからなる群から選択される、請求項121に記載のプロセス。
【請求項123】
アクリルアミド試薬が、塩化3-クロロプロピオニルである、請求項122に記載のプロセス。
【請求項124】
塩基試薬が、N,N,-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、DBU、K
2CO
3、KOH、KHCO
3、LiOH、NaOH、Na
2CO
3、NaHCO
3からなる群から選択される、請求項121から123のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項125】
塩基試薬が、NaOHである、請求項124に記載のプロセス。
【請求項126】
(iii)パラジウム触媒の存在下で有機溶媒と、式(6)の化合物:
【化3】
を接触させることによって、式(7)の化合物を調製するステップをさらに含む、請求項121から125のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項127】
有機溶媒がテトラヒドロフランである、請求項126に記載のプロセス。
【請求項128】
(iv)塩基および有機溶媒の存在下で、式(5)の構造を有する化合物:
【化4】
を、式(10)または式(11)の化合物:
【化5】
と接触させることによって、式(6)の化合物を調製するステップをさらに含む、請求項126から127のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項129】
塩基が、K
2CO
3および/またはN,N-ジイソプロピルエチルアミンであり、有機溶媒がアセトニトリルである、請求項128に記載のプロセス。
【請求項130】
(v)有機溶媒および有機酸の存在下で、式(3)の化合物:
【化6】
を式(4)の化合物:
【化7】
と接触させることによって式(5)の化合物を調製するステップをさらに含む、請求項128から129のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項131】
有機溶媒がイソプロパノールであり、有機酸がトリフルオロ酢酸である、請求項130に記載のプロセス。
【請求項132】
(vi)有機溶媒および有機塩基の存在下で、式(1)の化合物または式(1)の化合物の塩:
【化8】
を、式(8)の化合物:
【化9】
と、接触させることによって式(3)の化合物を調製するステップ;ならびに
(vii)ステップ(vi)で得られた混合物を、NH
4Cl水溶液の添加により結晶化するステップ
をさらに含む、請求項130から131のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項133】
式(1)の化合物の塩が、式(1)の化合物の塩酸塩、メタンスルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、L-リンゴ酸塩、L-(+)-酒石酸塩からなる群から選択される、請求項132に記載のプロセス。
【請求項134】
有機溶媒がイソプロパノールであり、有機塩基がN,N,-ジイソプロピルエチルアミンである、請求項132に記載のプロセス。
【請求項135】
式(3)の化合物を調製するためのプロセスであって、(i)有機溶媒および有機塩基の存在下で、式(1)の化合物または式(1)の化合物の塩:
【化10】
を、式(8)の化合物:
【化11】
と接触させるステップ;ならびに
(ii)ステップ(i)で得られた混合物を、NH
4Cl水溶液の添加により結晶化するステップ
を含む、プロセス。
【請求項136】
式(1)の化合物の塩が、式(1)の化合物の塩酸塩、メタンスルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、L-リンゴ酸塩、L-(+)-酒石酸塩からなる群から選択される、請求項135に記載のプロセス。
【請求項137】
有機溶媒がイソプロパノールであり、有機塩基がN,N,-ジイソプロピルエチルアミンである、請求項135に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]
[0002]本開示は、((R)-N-(5-((4-((5-クロロ-4-フルオロ-2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)-2-(3-(ジメチルアミノ)ピロリジン-1-イル)-4-メトキシフェニル)アクリルアミド(以下、「化合物I」と称し、以下に示す構造を有する))の新規な医薬塩:
【0002】
【0003】
化合物Iまたは医薬塩の結晶多形、それを含む組成物、その製造プロセスおよび使用に関する。
【背景技術】
【0004】
[0003]
[0004]ErbBファミリー受容体チロシンキナーゼは、それらのチロシンリン酸化残基でのリン酸化事象を介して二次メッセージングエフェクターを活性化することによって、細胞の外側由来のシグナルをその内側へ伝達するように作用する。これらのシグナルによって、増殖、炭水化物利用、タンパク質合成、血管新生、細胞成長、および細胞生存が含まれる多様な細胞プロセスが調節される。ErbBファミリーシグナル伝達の脱制御は、増殖、浸潤、転移、血管新生、および腫瘍細胞生存を変調させ、肺がん、頭頸部がん、および乳がんなどの多くのヒトがんに関連している場合がある。EGFRおよびHER2などの種々のErbB受容体は、がんなどの障害に関連していることが実証されている。EGFRおよびHER2のさまざまな変異は、ある特定のがんのタイプ、またはWT EGFRもしくはHER2の既存の薬物に対する非応答性/耐性に関連していることも証明されている。
【0005】
[0005]ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)は、細胞質チロシンキナーゼのSRC関連ファミリーのメンバーであり、主にB細胞で発現し、リンパ系、造血系および血液系に分布している。BTKは、B細胞の発生、活性化、および生存に必要な、B細胞のB細胞受容体シグナル伝達経路において重要な役割を果たしている。したがって、BTK阻害剤は、慢性リンパ性白血病(CLL)および非ホジキンリンパ腫(NHL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)など、BCRシグナル伝達に依存するB細胞悪性腫瘍を処置することを目的として開発されてきた。BTKは、マクロファージ活性化と炎症誘発性サイトカインの産生を調節する、Toll様受容体シグナル伝達の促進にも関与していると示唆されてきた。いくつかの研究で、下流カスケードのトランス活性化を媒介する、BTKシグナル伝達経路とTLRシグナル伝達経路の間のクロストークが実証されてきた。さらに、BTKは免疫の調節において重要な役割を果たすことが見出されている。BTKは、B細胞悪性腫瘍、炎症の処置、および自己免疫疾患の処置における魅力的な標的となっている。
【0006】
[0006]結晶多形は、同じ化合物の異なる結晶形態である。異なる結晶多形は、格子内の分子の充填が異なるため、異なる結晶構造を有する場合がある。これにより、結晶の対称性および/または単位胞パラメータが異なることとなり、結晶または粉末のX線回折特徴などの物理的特性に直接影響する。例えば、異なる多形は、一般に、異なる角度セットで回折し、異なる強度値を与える。したがって、粉末X線回折を使用すると、再現可能であり信頼性の高い方法で、異なる多形、または複数の多形を含む固体形態を同定することができる。
【0007】
[0007]結晶多形形態は、製薬産業、および特に好適な剤形の開発に携わる人々にとって興味深いものである。原薬の結晶形態が異なれば、融点、溶解度、溶解速度、光学的および機械的特性、蒸気圧、吸湿性、粒子形状、密度、および流動性などの物理的特性が異なる場合がある。これらの特性は、化合物を医薬品として加工および/または製造する能力に直接影響を与える可能性がある。異なる結晶形態は、異なる安定性および生物学的利用能を示す場合もある。例えば、臨床研究または安定性研究中に多形形態が一定に保たれていない場合、使用または研究された正確な剤形をロット間で比較できない場合がある。したがって、医薬品の最も安定な結晶形態は、多くの場合、別の結晶形態への変換の可能性が最小限であること、およびその化学的安定性がより高いことに基づいて、薬物開発中に選択される。存在する不純物が望ましくない毒性効果を引き起こすことがあるため、化合物が臨床研究または市販製品に使用される場合、選択された多形形態を有する化合物を高純度で製造するプロセスを有することも望ましい。ある特定の多形形態は、熱力学的安定性が向上し得るか、高純度で大量に、より容易に製造し得るので、医薬製剤に含めるのに好適である。ある特定の多形は、異なる格子エネルギーによる吸湿傾向の欠如、溶解性の改善、および溶解速度の向上などの、他の有利な物理的特性を示す場合がある。医薬品の品質、安全性、および有効性を確保するには、安定で再現可能に製造され、好ましい物理化学的特性を有する結晶形態を選択することが重要である。
【0008】
[0008]WO2019149164A1(その開示はその全体が本明細書に組み込まれる)において、我々は、強力なErbB/BTK選択的阻害剤として証明されている、(R)-N-(5-((4-((5-クロロ-4-フルオロ-2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)-2-(3-(ジメチルアミノ)ピロリジン-1-イル)-4-メトキシフェニル)アクリルアミド(化合物I)を含む種々のErbB/BTK選択的阻害剤を記載した。医薬組成物または剤形のさらなる開発のために、この化合物またはその医薬塩の結晶多形形態を同定することは興味深い。
【0009】
[0009]当技術分野で公知の化合物Iの合成方法は、化合物Iの大規模製造、特に商業規模の製造には好適ではない。大規模に運用でき、既知の方法と比較して1つまたは複数の利点、例として、化合物の純度の改善、化合物の単離の改善、収率の向上、コストの削減、薬学的出発材料、中間体、および製品の規制要件への準拠の改善を提供することができる、改善されたプロセスが必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
[0010]
【課題を解決するための手段】
【0011】
[0011]一態様では、本開示は、化合物Iの新規な医薬塩を提供する。
[0012]いくつかの実施形態では、本明細書で提供される化合物Iの医薬塩は、以下:化合物Iの塩酸塩、メタンスルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、L-リンゴ酸塩、L-(+)-酒石酸塩、および塩酸塩から選択される。ある特定の実施形態では、化合物Iの医薬塩は、化合物Iの塩酸塩、L-(+)-酒石酸塩、フマル酸塩、硫酸塩、およびマレイン酸塩である。ある特定の実施形態では、化合物Iの医薬塩は、非晶質形態である。ある特定の実施形態では、化合物Iの医薬塩は、結晶形態である。ある特定の実施形態では、化合物Iの医薬塩は、結晶形態の化合物Iの塩酸塩、L-(+)-酒石酸塩、フマル酸塩、硫酸塩、およびマレイン酸塩である。
【0012】
[0013]別の態様では、本開示はまた、化合物Iの結晶形態またはその薬学的に許容される塩を提供する。
[0014]いくつかの実施形態では、結晶形態は、化合物Iの形態A、化合物Iの形態B、化合物Iの塩酸塩、L-(+)-酒石酸塩、フマル酸塩、硫酸塩、またはマレイン酸塩の結晶形態である。
【0013】
[0015]別の態様では、本開示は、それぞれが本明細書に開示される化合物Iの1つもしくは複数の医薬塩または結晶形態を含む医薬組成物を提供する。
[0016]別の態様では、本開示は、対象におけるErbB関連疾患またはBTK関連疾患を処置する方法であって、ErbB関連疾患またはBTK関連疾患の処置を必要とする対象に、治療有効量の化合物Iの医薬塩もしくは結晶形態、または本明細書で提供される医薬組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0014】
[0017]さらに別の態様では、本開示は、ErbBもしくはBTKの阻害における、またはErbBもしくはBTKを阻害するための医薬の製造における、本明細書で提供される化合物Iの医薬塩もしくは結晶形態、または医薬組成物の使用を提供する。
【0015】
[0018]さらなる態様では、本開示は、化合物Iの医薬塩または結晶形態の製造のためのプロセスも提供する。
[0019]さらなる態様では、本開示はまた、化合物Iを数十キログラムスケールで高収率で調製するプロセスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
[0020]
【
図1】[0021]化合物Iの遊離塩基の結晶形態AのXRPDデータである。
【
図2】[0022]化合物Iの遊離塩基の結晶形態AのDSCデータである。
【
図3】[0023]化合物Iの遊離塩基の結晶形態AのTGAデータである。
【
図4】[0024]化合物Iの遊離塩基の結晶形態AのDVSデータである。
【
図5】[0025]化合物Iの遊離塩基の結晶形態BのXRPDデータである。
【
図6】[0026]化合物Iの遊離塩基の結晶形態BのDSCデータである。
【
図7】[0027]化合物Iの遊離塩基の結晶形態BのTGAデータである。
【
図8】[0028]化合物Iの遊離塩基の結晶形態BのDVSデータである。
【
図9】[0029]化合物Iの(+)-L-酒石酸塩(パターンI)のXRPDデータである。
【
図10】[0030]化合物Iのフマル酸塩のXRPDデータである。
【
図11】[0031]化合物Iの硫酸塩のXRPDデータである。
【
図12】[0032]化合物Iのマレイン酸塩のXRPDデータである。
【
図13】[0033]化合物Iの塩酸塩のXRPDデータである。
【
図14】[0034]化合物Iの(+)-L-酒石酸塩(パターンII)のXRPDデータである。
【
図15】[0035]化合物Iの(+)-L-酒石酸塩(パターンI、アセトン中で調製)のTGA/DSCオーバーレイデータである。
【
図16】[0036]化合物Iの(+)-L-酒石酸塩(パターンII、エタノール中で調製)のTGA/DSCオーバーレイデータである。
【
図17】[0037]化合物Iのフマル酸塩(エタノール中で調製)のTGA/DSCオーバーレイデータである。
【
図18】[0038]化合物Iの硫酸塩のTGA/DSCオーバーレイデータである。
【
図19】[0039]化合物Iのマレイン酸塩のTGA/DSCオーバーレイデータである。
【
図20】[0040]化合物Iの塩酸塩のTGA/DSCオーバーレイデータである。
【
図21】[0041]化合物I-(+)-L-酒石酸塩(パターンII)の結晶形態のDVSデータである。
【
図22】[0042]化合物I-フマル酸塩の結晶形態のDVSデータである。
【
図23】[0043]化合物I-塩酸塩の結晶形態のDVSデータである。
【
図24】[0044]ジェットミリング前後の化合物I-形態BのXRPDプロファイルである。
【
図25】[0045]粉砕前後の化合物I-形態BのXRPDプロファイルである。
【
図26】[0046]ジェットミリング前後の化合物I-形態BのDSCプロファイルである。
【
図27】[0047]2~8℃で20日間保存した後の化合物I-形態BのXRPDプロファイルである。
【
図28】[0048]2~8℃で20日間保存した後の化合物I-形態BのDSCプロファイルである。
【
図29】[0049]化合物I-フマル酸塩比(1:1)を決定するための
1H NMRである。
【
図30】[0050]化合物I-マレイン酸塩比(1:1)を決定するための
1H NMRである。
【
図31】[0051]化合物I-酒石酸塩(パターンI)比(1:1)を決定するための
1H NMRである。
【
図32】[0052]化合物I-酒石酸塩(パターンII)比(1:1)を決定するための
1H NMRである。
【
図33】[0053]化合物Iの単結晶X線回折ORTEPである。
【
図34】[0054]pH1.2における化合物Iの200mg錠剤の溶解プロファイルである。
【
図35】[0055]pH4.5における化合物Iの200mg錠剤の溶解プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[0056]
[0057]さらに詳細に考察する前に、以下の用語を定義する。
[0058]定義
[0059]別段の定義がない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、以下の用語は以下の意味を有することを意図している。
【0018】
[0060]本明細書および特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」などは、その内容に別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「化合物(a compound)」への言及は、単一の化合物と複数の異なる化合物の両方を含む。
【0019】
[0061]本明細書で使用される「約」という用語は、引用された値が絶対的なものとして解釈されるべきではなく、上述のような測定誤差、バッチ間変動および/または装置間変動も考慮されるべきであることを示すことを意図している。本出願で測定誤差または変動の範囲が指定されている場合を除き(例えば、XRPDの回折角2θの場合、測定誤差は±0.2°であり、結晶多形融解の吸熱の測定誤差は±0.01~10℃、DSCにおける結晶多形脱水/脱溶媒和の吸熱の測定誤差は±0.01~20℃であり、TGAにおける測定誤差は±5~20℃である)、「約」という用語は、例えば、範囲を含む、温度、時間、量、および濃度などの数値指定の前に使用される場合、±10%、±5%、または±1%ほど変動し得る近似値を示す。
【0020】
[0062]本明細書で使用される場合、「阻害剤」とは、標的タンパク質またはポリペプチドの活性もしくは発現を阻害することなどにより、標的タンパク質またはポリペプチドの生物学的機能を阻害する能力を有する化合物または薬剤を指す。したがって、「阻害剤」という用語は、標的タンパク質またはポリペプチドの生物学的役割との関係で定義される。本明細書におけるいくつかの阻害剤は、標的と特異的に相互作用する(例えば、標的に結合する)が、標的タンパク質またはポリペプチドのシグナルトランスダクション経路の他のメンバーと相互作用することによって標的タンパク質またはポリペプチドの生物学的活性を阻害する化合物もまた、特にこの定義内に含まれる。阻害剤によって阻害される生物学的活性の非限定的な例としては、腫瘍の発症、成長、もしくは広がり、または自己免疫疾患に現れる望ましくない免疫応答に関連するものが挙げられる。本明細書で使用される場合、生物学的に活性な薬剤に適用される「選択的阻害」または「選択的に阻害する」とは、標的との直接的または間接的な相互作用を介して、オフターゲットシグナル伝達活性と比較して標的シグナル伝達活性を選択的に低下させる薬剤の能力を指す。例えば、野生型EGFR/Her2よりも変異体EGFR/Her2を選択的に阻害する化合物は、野生型EGFR/Her2アイソフォームに対する化合物の活性と比較して、変異体EGFR/Her2に対して少なくとも約2×の活性を有する(例えば、少なくとも約3×、約5×、約10×、約20×、約50×、または約100×)。
【0021】
[0063]本発明で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わず、合理的な利益/リスク比に見合う、ヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに好適な、それらの化合物、材料、組成物および/または剤形を指す。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される化合物、材料、組成物、および/または剤形は、動物、より具体的にはヒトでの使用に関して規制機関(米国食品医薬品局、中国国家食品薬品監督管理局、または欧州医薬品庁など)によって承認されているか、または一般に認められている薬局方(米国薬局方、中国薬局方、欧州薬局方など)に列挙されているものを指す。
【0022】
[0064]本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」または「医薬塩」は、既存の酸性部分(例えば、カルボキシルなど)または塩基部分(例えば、アミン、アルカリなど)をその塩形態に変換することによって親化合物が修飾されている、本開示の化合物の誘導体を指す。多くの場合、本開示の化合物は、アミノ、アルカリおよび/もしくはカルボキシル基またはそれらに類似した基の存在により、酸付加塩および/または塩基塩を形成することができる。「薬学的に許容される塩」には、典型的には、生物学的にまたは別様に望ましくないものではない、親化合物の生物学的有効性および特性を保持する酸付加塩または塩基塩が含まれる。薬学的に許容される塩は、当技術分野において周知である。例えば、Berge et al.は、J.Pharmaceutical Sciences(1977)66:1-19に薬学的に許容される塩を詳細に記載している。本明細書で提供される化合物の薬学的に許容される塩には、好適な無機酸および有機酸ならびに無機塩基および有機塩基から誘導される塩が含まれる。薬学的に許容される非毒性の酸付加塩の例は、無機酸、例として塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸、または有機酸、例として、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、乳酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、マロン酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、酒石酸、コハク酸、もしくはメタンスルホン酸を用いて、またはイオン交換などの当技術分野で使用される他の方法を使用することにより形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ベシル酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。いくつかの実施形態では、塩を誘導することができる有機酸としては、例えば、メタンスルホン酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、コハク酸、L-リンゴ酸、L-(+)-酒石酸などが挙げられる。特定の実施形態では、薬学的に許容される塩は、塩酸塩、メタンスルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、L-リンゴ酸塩、およびL-(+)-酒石酸塩である。
【0023】
[0065]本明細書で使用される場合、「多形形態」、「多形」または「結晶形態」という用語は、構成原子、分子、またはイオンが、高度に規則的な化学構造を有する、規則的に配置された繰り返しの三次元パターンに充填されている、固体を指す。特に、化合物またはその塩は、1つまたは複数の結晶形態で生成される場合がある。異なる結晶形態は、XRPDパターン(例えば、種々の回折角(2θ)でのX線回折ピークの位置および/またはピーク強度)、示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムの吸熱によって示される融点の開始(および水和形態の脱水の開始)、熱重量分析(TGA)、固相1H核磁気共鳴(NMR)スペクトル、水溶解度、高強度光条件、物理的および化学的保存安定性、ならびに当技術分野で公知の他の測定値によって特徴付けることができる。
【0024】
[0066]「XRPDパターン」は、実験的に観察されたディフラクトグラムまたはそこから導出されるパラメータを指し、x軸に回折角(2θ)、y軸にピーク強度として表されるピーク位置を有するx-yグラフとして示される。このパターン内のピークは、結晶固体形態を特徴付けるために使用することができる。
【0025】
[0067]本明細書で使用される「ピーク位置」という用語は、粉末X線回折実験で測定および観察されたX線反射位置を指す。ピークの位置は単位胞の寸法に直接関係する。それぞれのピーク位置によって同定されるピークは、本明細書に開示される化合物Iの種々の多形形態の回折パターンから抽出されたものである。
【0026】
[0068]「ピーク強度」という用語は、所定のX線粉末回折パターン内の相対シグナル強度を指す。相対ピーク強度に影響を与える可能性のある要因は、試料の厚さおよび優先配向(すなわち、結晶粒子がランダムに分布していない)である。
【0027】
[0069]あらゆるデータ測定と同様に、XRPDデータにばらつきがある。ピーク強度は試料調製の影響を特に受けやすいため(例えば、粒径、含水量、溶媒含有量、および優先配向効果が感度に影響を与える)、異なる条件下で調製された同じ材料の試料はわずかに異なるパターンを生成する可能性があり;このばらつきは通常、回折角のばらつきよりも大きくなるので、データは多くの場合、ピークの強度を含めるのではなく、ピークの回折角のみで表される。回折角のばらつきも、試料前処理に影響を受けやすい場合がある。ばらつきの他の原因は、機器のパラメータと生のX線データの処理から生じる:異なるX線装置は異なるパラメータを使用して動作し、これらは、同じ固体形態からわずかに異なるXRPDパターンを引き起こすことがあり、同様に、異なるソフトウェアパッケージはX線データを異なる方法で処理するため、これもばらつきにつながる。これらおよび他のばらつきの源は、製薬分野の当業者には公知である。このようなばらつきの源により、XRPDの回折角の測定誤差はおよそ2θ(±0.2°)であり、図のXRPDパターンを検討する場合および本明細書に含まれる表に含まれるデータを読み取る場合には、このような程度の測定誤差を考慮する必要がある。
【0028】
[0070]DSCでは、温度の上昇に伴う固体試料と適切な参照との間の熱エネルギーの差を測定する。DSCサーモグラムは、典型的には試料が加熱されるときの吸熱(エネルギーの取り込みを示す)およびまた発熱(エネルギーの放出を示す)によって特徴付けられる。当業者はまた、特定の化合物のDSCサーモグラムで観察される値または値の範囲が、異なる純度のバッチ間で変動を示すことを理解する。DSC分析が行われる加熱速度(すなわち、スキャン速度)、DSC開始温度の定義および決定方法、使用される較正標準、機器の較正、および相対湿度(RH)、ならびに試料の化学純度に応じて、本開示の化合物によって示される吸熱は変動する可能性があり(結晶多形融解の場合、吸熱は±0.01~10℃、および多形脱水/脱溶媒和の場合吸熱は±0.01~20℃)、本明細書含まれるDSCデータを考慮する際には、そのような変動の程度を考慮する必要がある。さらに明確にするために、異なるバッチで調製された1つの化合物はDSCサーモグラムに変動を示す場合があるが、変動のあるこれらのDSCサーモグラムは、依然として互いに「実質的に類似している」と考える必要がある。いかなる所与の例でも、観察される吸熱はまた機器ごとに異なる場合がある;しかし、機器が同様に較正されていれば、一般的には本明細書において定義された範囲内になる。さらに、調製された化合物中の残留溶媒の除去によっても、DSC開始温度およびピーク温度が変化する場合があることが理解されるであろう。
【0029】
[0071]TGAは、試験片を空気中または窒素などの制御された雰囲気中で加熱するときに試験片の重量の変化を記録する試験手順である。熱重量曲線(サーモグラム)は、溶媒および水分の含有量、ならびに材料の熱安定性に関する情報を提供する。TGAサーモグラムは、DSCと類似した変動(約±5~20℃の測定誤差)を示すため、当業者であれば、TGAサーモグラムの実質的な同一性を判断する際に測定誤差を考慮すべきであることを認識する。
【0030】
[0072]本開示の「化合物」は、溶媒和形態および非溶媒和形態、例えば、水和形態、固体形態などで存在することができ、本開示は、そのような溶媒和形態および非溶媒和形態すべてを包含することを意図していることが理解されるべきである。本開示の「化合物」は、薬学的に許容される塩またはエステルの形態で存在し得ることが、さらに理解されるべきである。
【0031】
[0073]特に明記しない限り、「ErbB」または「野生型ErbB」は、正常なErbBファミリーメンバーを指す。一態様では、本開示は、ErbBファミリーキナーゼ(例えば、EGFR、Her2、Her3および/またはHer4)の阻害化合物を提供する。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、ErbBファミリーキナーゼの野生型(WT)および変異形態の両方を阻害することができる。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、対応するWT ErbBファミリーキナーゼと比較して、ErbBファミリーキナーゼの少なくとも1つの変異の選択的阻害剤である。
【0032】
[0074]本明細書で使用される場合、「変異」という用語は、標的タンパク質に対する任意の変異を指し、「変異体」または「変異形態」は、前記変異を含有するタンパク質を指す。ErbBの変異の例としては、EGFRにおけるEGFR D761_E762insEAFQ、EGFR A763_Y764insHH、EGFR M766_A767instAI、EGFR A767_V769dupASV、EGFR A767_S768insTLA、EGFR S768_D770 dupSVD、EGFR S768_V769insVAS、EGFR S768_V769insAWT、EGFR V769_D770insASV、EGFR V769_D770insGV、EGFR V769_D770insCV、EGFR V769_D770insDNV、EGFR V769_D770insGSV、EGFR V769_D770insGVV、EGFR V769_D770insMASVD、EGFR D770_N771insSVD、EGFR D770_N771insNPG、EGFR D770_N771insAPW、EGFR D770_N771insD、EGFR D770_N771insDG、EGFR D770_N771insG、EGFR D770_N771insGL、EGFR D770_N771insN、EGFR D770_N771insNPH、EGFR D770_N771insSVP、EGFR D770_N771insSVQ、EGFR D770_N771insMATP、EGFR delD770insGY、EGFR N771_P772insH、EGFR N771_P772insN、EGFR N771_H773dupNPH、EGFR delN771insGY、EGFR delN771insGF、EGFR P772_H773insPR、EGFR P772_H773insYNP、EGFR P772_H773insX、EGFR P772_H773insDPH、EGFR P772_H773insDNP、EGFR P772_H773insQV、EGFR P772_H773insTPH、EGFR P772_H773insN、EGFR P772_H773insV、EGFR H773_V774insNPH、EGFR H773_V774insH、EGFR H773_V774insPH、EGFR H773_V774insGNPH、EGFR H773_V774dupHV、EGFR H773_V774insG、EGFR H773_V774insGH、EGFR V774_C775insHV、EGFRエクソン19欠失、EGFR L858R、EGFR T790M、EGFR L858R/T790M、EGFRエクソン19欠失/T790M、EGFR S768I、EGFR G719S、EGFR G719A、EGFR G719C、EGFR E709A/G719S、EGFR E709A/G719A、EGFR E709A/G719C、EGFR L861Qなど;およびHer2におけるHer2 A775_G776insYVMA、Her2 delG776insVC、Her2 V777_G778insCG、Her2 P780_Y781insGSPなどが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、WT EGFRと比較して、EGFRの少なくとも1つの変異の選択的阻害剤である。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、WT Her2と比較して、Her2の少なくとも1つの変異の選択的阻害剤である。いくつかの実施形態では、EGFRの少なくとも1つの変異は点変異(例えば、L858R、T790M)である。いくつかの実施形態では、EGFRの少なくとも1つの変異は欠失変異(例えば、delE746-A750)である。いくつかの実施形態では、EGFRの少なくとも1つの変異は挿入変異である(例えば、EGFRエクソン20V769_D770insASV、エクソン20H773_V774insNPH)。いくつかの実施形態では、EGFRの少なくとも1つの変異は活性化変異(例えば、L858R、G719S、またはdelE746-A750)である。いくつかの実施形態では、EGFRの少なくとも1つの変異は薬物耐性変異(例えば、エクソン20_T790M)である。いくつかの実施形態では、EGFRの少なくとも1つの変異はT790Mである。いくつかの実施形態では、提供される化合物は、T790M/L858R共変異を選択的に阻害し、WT EGFR阻害に関しては温存的である。
【0033】
[0075]本明細書で使用される場合、WT EGFR/Her2の阻害と比較して使用する「選択的に阻害する」という用語は、本明細書に記載される少なくとも1つのアッセイ(例えば、生化学的アッセイまたは細胞アッセイ)において、提供される化合物が、EGFR/Her2の少なくとも1つの変異(すなわち、少なくとも1つの点変異、少なくとも1つの欠失変異、少なくとも1つの挿入変異、少なくとも1つの活性化変異、少なくとも1つの耐性変異、または少なくとも1つの欠失変異と少なくとも1つの点変異の組み合わせ)の阻害剤としてより強力であることを意味する。いくつかの実施形態では、「選択的に阻害する」という用語は、WT EGFR/Her2阻害と比較して使用される場合、提供される化合物が、WT EGFR/Her2と比較して、本明細書に定義および記載されるEGFR/Her2の少なくとも1つの変異の阻害剤として、少なくとも100倍、少なくとも50倍、少なくとも45倍、少なくとも40倍、少なくとも35倍、少なくとも30倍、少なくとも25倍、少なくとも20倍、少なくとも15倍、少なくとも10倍、少なくとも5倍、少なくとも4倍、少なくとも3倍、少なくとも2倍、少なくとも1.5倍、または少なくとも1.25倍強力であることを意味する。いくつかの実施形態では、「選択的に阻害する」という用語は、WT EGFR/Her2阻害と比較して使用される場合、提供される化合物が、WT EGFR/Her2と比較して、本明細書に定義および記載されるEGFR/Her2の少なくとも1つの変異の阻害剤として、最大1500倍、最大1200倍、最大1000倍、最大800倍、最大600倍、最大400倍、最大200倍、最大100倍、最大50倍、最大10倍強力であることを意味する。本明細書で使用する場合、「WT EGFR/Her2に関して温存的」という用語は、上記および本明細書で定義および記載したEGFR/Her2の少なくとも1つの変異の前記選択的阻害剤が、本明細書に記載の少なくとも1つのアッセイ(例えば、実施例で詳細に記載した生化学的または細胞性)の検出上限内で、WT EGFR/Her2を阻害することができないことを意味する。いくつかの実施形態では、「WT EGFR/Her2に関して温存的」という用語は、提供される化合物が少なくとも10μM、少なくとも9μM、少なくとも8μM、少なくとも7μM、少なくとも6μM、少なくとも5μM、少なくとも3μM、少なくとも2μM、または少なくとも1μMのIC50でWT EGFR/Her2を阻害することを意味する。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、0.1~1000nM、好ましくは、0.1~600nM、1~600nM、0.1~500nM、1~500nM、0.1~400nM、1~400nM、0.1~300nM、1~300nM、0.1~200nM、1~200nM、0.1~100nM、1~100nM、0.1~80nM、0.1~50nM、0.1~40nM、0.1~30nM、0.1~20nM、0.1~10nM、または0.1~5nM、より好ましくは0.1~20nM、0.1~10nM、または0.1~5nMのIC50値でWT EGFR/Her2および/または変異体EGFR/Her2のリン酸化を阻害する。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、1~1000nM、好ましくは1~800nM、1~600nM、1~500nM、1~400nM、1~300nM、1~300nM、1~200nM、1~100nM、1~80nM、1~60nM、1~40nM、1~20nM、または1~10nM、より好ましくは1~300nM、1~200nM、1~100nM、1~80nM、1~60nM、1~40nM、1~20nM、または1~10nMのGI50値でWT EGFR/Her2および/または変異体EGFR/Her2保有細胞の増殖を阻害する。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、1~1000nM、1000nM超、2000nM超、または3000nM超、好ましくは1~800nM、1~600nM、1~500nM、1~400nM、1~300nM、1~300nM、1~200nM、1~100nM、1~80nM、1~60nM、1~40nM、1~20nM、または1~10nM、より好ましくは1~300nM、1~200nM、1~100nM、1~80nM、1~60nM、1~40nM、1~20nM、または1~10nMのGI50値でBTK保有細胞の増殖を阻害する。いくつかの実施形態では、EGFR/Her2変異体に対する化合物のIC50および/またはGI50は、野生型EGFR/Her2に対する化合物のIC50および/またはGI50よりも、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、好ましくは10倍、20倍、30倍、50倍、または100倍高い。
【0034】
[0076]「医薬組成物」という用語は、本明細書に記載の化合物Iの1つまたは複数の生理学的/薬学的に許容される塩、または化合物Iもしくはその塩の多形と、生理学的/薬学的に許容される希釈剤、賦形剤または担体などの他の化学成分との混合物を指す。医薬組成物の目的は、対象への化合物の投与を容易にすることである。
【0035】
[0077]本明細書で使用する場合、「持続放出性形態」という用語は、医薬組成物からの活性薬剤の放出であって、対象、主に対象の胃腸管内で、長期間にわたって(徐放)、またはある特定の場所で(制御放出)、生体吸収に利用可能になるようなものを指す。
【0036】
[0078]本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、本明細書で提供される化合物を、ある場所、体液、組織、器官(内部もしくは外部)、または身体の一部から別の場所、体液、組織、器官、または身体の一部に運ぶまたは輸送することに関与する、液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化材料などの薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを指す。薬学的に許容される担体は、過剰な毒性または有害作用を伴わずに動物の組織に接触させるために使用することができるビヒクル、希釈剤、賦形剤、または他の材料であり得る。薬学的に許容される担体の非限定的な例としては、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;粉末状トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオバターおよび座薬ワックス;ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油などの油;ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;等張生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの非毒性の適合性潤滑剤;着色剤;放出剤;コーティング剤;甘味料、香味料、芳香剤;防腐剤;酸化防止剤;イオン交換体;アルミナ;ステアリン酸アルミニウム;レシチン;d-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000サクシネートなどの自己乳化型薬物送達システム(SEDDS);Tweenまたは他の類似のポリマー送達マトリックスなどの医薬剤形に使用される界面活性剤;ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質;グリシン;ソルビン酸;ソルビン酸カリウム;飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物;水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、および亜鉛塩などの塩または電解質;コロイダルシリカ;三ケイ酸マグネシウム;ポリビニルピロリドン;セルロース系物質;ポリアクリレート;ワックス;およびポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマーが挙げられる。α-、β-、およびγ-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン、または2-および3-ヒドロキシプロピル-シクロデキストリンを含むヒドロキシアルキルシクロデキストリンなどの化学修飾誘導体、または他の可溶化誘導体も、本明細書に記載の化合物の送達を増強するために使用することができる。本開示で使用することができる薬学的に許容される担体には、参照により本明細書に組み込まれる、「Remington Pharmaceutical Sciences」 Mack Pub.Co.,New Jersey(1991)、において開示されるような、当技術分野で一般的に公知のものが含まれる。
【0037】
[0079]本明細書で使用される場合、開示された化合物の「投与」は、本明細書で考察されるような任意の好適な製剤または投与経路を使用した、本明細書に記載される化合物、またはそのプロドラッグもしくは他の薬学的に許容される誘導体の対象への送達を包含する。
【0038】
[0080]「有効量」または「治療有効量」という用語は、対象における任意の障害もしくは疾患の症状および/または根底にある原因を予防、処置、軽減および/または改善するのに十分な、本明細書に記載の化合物もしくは医薬組成物の量、または標的細胞に対して所望の効果、例えば細胞遊走の減少を生み出すのに十分な薬剤の量を指す。一実施形態では、「治療有効量」は、疾患の症状を軽減または排除するのに十分な量である。別の実施形態では、治療有効量は、疾患自体を克服するのに十分な量である。ある特定の実施形態では、「治療有効量」は、検出可能ながん細胞の死滅または成長もしくは広がりの阻害、腫瘍のサイズまたは数の減少;またはがんのレベル、段階、進行もしくは重症度の他の尺度、に有効な量である。治療有効量は、対象および処置される状態、対象の体重および年齢、状態の重症度、選択される特定の組成物または賦形剤、従うべき投薬レジメン、投与のタイミング、投与の方式などに応じて変化し、これらはすべて、当業者であれば容易に決定することができる。完全な治療効果は必ずしも1回用量の投与で発生するとは限らず、一連の用量の投与後にのみ発生する場合もある。具体的な用量は、例えば、選択された特定の化合物、対象の種およびその年齢/既存の健康状態または健康状態のリスク、従うべき投薬レジメン、疾患の重症度、他の薬剤と組み合わせて投与されるかどうか、投与のタイミング、投与される組織、およびそれが運ばれる物理的送達システムに応じて変化する。したがって、治療有効量を、1回または複数回の投与で投与することができる。例えば、限定されないが、がんの治療との関係において、薬剤の治療有効量は、患者におけるがんの1つまたは複数の症状を緩和、改善、一時緩和、または排除する薬剤の量を指す。
【0039】
[0081]本明細書で使用される場合、「BTKに関連する疾患」または「BTK関連疾患」という用語は、その発症もしくは進行またはその両方がBTKのゲノム変化もしくは変異、発現もしくは活性に関連している疾患を指す。
【0040】
[0082]本明細書で使用される場合、「ErbBに関連する疾患」または「ErbB関連疾患」という用語は、その発症もしくは進行またはその両方がErbB(EGFRおよびHer2を含む)のゲノム変化もしくは変異、発現または活性に関連している疾患を指す。「ErbBに関連する疾患」の例としては、「EGFRに関連する疾患」または「Her2に関連する疾患」が挙げられる。「EGFRに関連する疾患」もしくは「EGFR関連疾患」または「Her2に関連する疾患」もしくは「Her2関連疾患」という用語は、その発症もしくは進行またはその両方が、場合によってはEGFRまたはHer2のゲノム変化もしくは変異、発現または活性に関連している疾患を指す。例としては、免疫関連疾患、増殖性疾患、がん、およびその他の疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
[0083]本明細書で使用される場合、「処置する」、「処置」、および「処置すること」という用語は、本明細書に記載の疾患もしくは障害、またはその1つもしくは複数の症状を逆転させ、緩和し、その発症を遅延させ、またはその進行を阻害することを指す。いくつかの実施形態では、処置は、1つまたは複数の症状が発症した後に施してもよい。他の実施形態では、症状がなくても処置を施すことができる。例えば、処置は、症状の発症前に(例えば、症状の病歴に照らして、および/または遺伝的もしくは他の感受性因子に照らして)感受性の高い個体に施すことができる。症状が解消した後、例えばその再発を防止または遅延させるために、処置を継続してもよい。
【0042】
[0084]本明細書で使用される場合、「抗がん剤」、「抗腫瘍剤」または「化学療法剤」は、腫瘍性状態の処置に有用な任意の薬剤を指す。抗がん剤の1つのクラスには、化学療法剤が含まれる。「化学療法」とは、静脈内、経口、筋肉内、腹腔内、膀胱内、皮下、経皮、頬側、もしくは吸入、または座薬の形態を含む種々の方法によるがん患者への1つまたは複数の化学療法薬および/または他の薬剤の投与を意味する。
【0043】
[0085]投与が企図される「対象」という用語には、ヒト(すなわち、あらゆる年齢群の男性または女性、例えば、小児対象(例えば、乳児、小児、青年)または成人対象(例えば、若年成人、中年成人、または高齢成人))、および/または他の霊長類(例えば、カニクイザル、アカゲザル);哺乳動物、例えばウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、ハムスター、マウス、ネコ、および/またはイヌなどの商業的に関連する哺乳動物;および/または鳥類、例えばニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、および/または七面鳥などの商業的に関連する鳥類が含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
[0086]化合物I
[0087]WO2019149164A1に記載されている、化合物((R)-N-(5-((4-((5-クロロ-4-フルオロ-2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)-2-(3-(ジメチルアミノ)ピロリジン-1-イル)-4-メトキシフェニル)アクリルアミド(化合物I)は、強力なErbB阻害剤およびBTK阻害剤であり、以下の構造:
【0045】
【0046】
を有する。
[0088]本明細書では、化合物Iの新規な医薬塩、化合物Iの結晶多形もしくは本開示の医薬塩、その組成物、それらの製造方法、およびErbBもしくはBTKの阻害、対象のErbB関連疾患もしくはBTK関連疾患の処置などのそれらの使用を提供する。
【0047】
[0089]化合物Iの医薬塩
[0090]一態様では、本開示は、化合物Iの新規な医薬塩を提供する。
[0091]いくつかの実施形態では、本明細書で提供される化合物Iの医薬塩は、以下:化合物Iの塩酸塩、メタンスルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、L-リンゴ酸塩、L-(+)-酒石酸塩、および塩酸塩から選択される。
【0048】
[0092]いくつかの実施形態では、化合物Iの医薬塩は、式(I):の構造を有する化合物である。
【0049】
【0050】
(式中、n=1または2であり;
Xは塩酸、L-(+)-酒石酸、フマル酸、硫酸、またはマレイン酸である)
[0093]ある特定の実施形態では、化合物Iの医薬塩は、結晶形態の化合物Iの塩酸塩、L-(+)-酒石酸塩、フマル酸塩、硫酸塩、およびマレイン酸塩である。ある特定の実施形態では、化合物Iの医薬塩は、一塩である。ある特定の実施形態では、化合物Iの医薬塩は、非晶質形態である。ある特定の実施形態では、化合物Iの医薬塩は、結晶形態である。ある特定の実施形態では、化合物Iの医薬塩は、結晶形態の化合物Iの塩酸塩、L-(+)-酒石酸塩、フマル酸塩、硫酸塩、およびマレイン酸塩である。
【0051】
[0094]結晶形態の特性評価
[0095]一態様では、本開示は、化合物Iまたはその薬学的に許容される塩のいくつかの多形結晶形態を提供する。
【0052】
[0096]化合物Iまたはその塩の結晶形態
[0097]一態様では、本開示は、化合物Iの結晶形態、特に化合物Iの遊離塩基形態Aまたは形態Bを提供する。別の態様では、本開示は、化合物Iの薬学的に許容される塩の結晶形態、特に、化合物Iの塩酸塩の結晶形態、化合物IのL-(+)-酒石酸塩の結晶形態、化合物Iのフマル酸塩の結晶形態、化合物Iの硫酸塩の結晶形態、または化合物Iのマレイン酸塩の結晶形態を提供する。
【0053】
[0098]1.遊離形態A
[0099]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Aである化合物Iの結晶形態(遊離塩基)が開示される。
【0054】
[0100]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Aは、11.62±0.20、12.48±0.20、17.34±0.20、および20.04±0.20度の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折(XRPD)パターンを有する。
【0055】
[0101]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Aは、以下:10.68±0.20、11.11±0.20、16.02±0.20、20.79±0.20、23.71±0.20、および24.64±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する。
【0056】
[0102]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Aは、10.68±0.20、11.11±0.20、11.62±0.20、12.48±0.20、16.02±0.20、17.34±0.20、20.04±0.20、20.79±0.20、23.71±0.20、および24.64±0.20度の2θにピークを含むXRPDパターンを有する。
【0057】
[0103]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Aは、以下:5.95±0.20、14.96±0.20、22.01±0.20、および27.60±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する。
【0058】
[0104]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Aは、5.95±0.20、10.68±0.20、11.11±0.20、11.62±0.20、12.48±0.20、14.96±0.20、16.02±0.20、17.34±0.20、20.04±0.20、20.79±0.20、22.01±0.20、23.71±0.20、24.64±0.20、および27.60±0.20度の2θにピークを含むXRPDパターンを有する。
【0059】
[0105]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Aは、実質的に表7に示されるようなXRPDパターンを有する。
[0106]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Aは、実質的に
図1に示されるようなXRPDパターンを有する。
【0060】
[0107]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Aは、約178.6℃で脱溶媒和の開始、および約179.6℃でピークを有する吸熱を含むDSCサーモグラムを有する。
[0108]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Aは、
図2と実質的に類似したDSCサーモグラムを有する。
【0061】
[0109]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Aは、約38℃から約160℃に加熱すると約0.23%の質量損失を示すTGAサーモグラムを有する。
[0110]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Aは、
図3と実質的に類似したTGAサーモグラムを有する。
【0062】
[0111]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Aは、
図4と実質的に類似したDVS蒸気収着グラムを有する。
[0112]2.遊離形態B
[0113]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Bである化合物Iの結晶形態(遊離塩基)が開示される。
【0063】
[0114]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Bは、9.39±0.20、18.86±0.20、19.50±0.20、および20.06±0.20度の2θにピークを含むXRPDパターンを有する。
【0064】
[0115]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Bは、以下:10.59±0.20、18.16±0.20、18.56±0.20、26.30±0.20、33.71±0.20、および34.81±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する。
【0065】
[0116]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Bは、9.39±0.20、10.59±0.20、18.16±0.20、18.56±0.20、18.86±0.20、19.50±0.20、20.06±0.20、26.30±0.20、33.71±0.20、および34.81±0.20度の2θにピークを含むXRPDパターンを有する。
【0066】
[0117]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Bは、以下:22.07±0.20、22.91±0.20、23.68±0.20、および24.00±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する。
【0067】
[0118]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Bは、9.39±0.20、10.59±0.20、18.16±0.20、18.56±0.20、18.86±0.20、19.50±0.20、20.06±0.20、22.07±0.20、22.91±0.20、23.68±0.20、24.00±0.20、26.30±0.20、33.71±0.20、および34.81±0.20度の2θにピークを含むXRPDパターンを有する。
【0068】
[0119]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Bは、実質的に表8に示されるようなXRPDパターンを有する。
[0120]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Bは、実質的に
図5に示されるようなXRPDパターンを有する。
【0069】
[0121]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Bは、約194.8℃で脱溶媒和の開始、および約196.7℃でピークを有する吸熱を含むDSCサーモグラムを有する。
[0122]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Bは、
図6と実質的に類似したDSCサーモグラムを有する。
【0070】
[0123]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Bは、約38℃から約178℃に加熱すると0.17%未満の質量損失を示すTGAサーモグラムを有する。
[0124]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Bは、
図7と実質的に類似したTGAサーモグラムを有する。
【0071】
[0125]いくつかの実施形態では、化合物Iの形態Bは、
図8と実質的に類似したDVS蒸気収着グラムを有する。
[0126]3.化合物I塩酸塩の結晶形態
[0127]いくつかの実施形態では、化合物I塩酸塩の結晶形態である、化合物Iの薬学的に許容される塩の結晶形態が開示される。
【0072】
[0128]いくつかの実施形態では、化合物I塩酸塩の結晶形態は、9.35±0.20、17.21±0.20、18.21±0.20、19.79±0.20、および21.17±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する。
【0073】
[0129]いくつかの実施形態では、化合物I塩酸塩の結晶形態は、以下:9.05±0.20、19.54±0.20、21.17±0.20、21.51±0.20、26.24±0.20、および30.64±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する。
【0074】
[0130]いくつかの実施形態では、化合物I塩酸塩の結晶形態は、9.05±0.20、9.35±0.20、17.21±0.20、18.21±0.20、19.54±0.20、19.79±0.20、21.17±0.20、21.51±0.20、26.24±0.20、および30.64±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する。
【0075】
[0131]いくつかの実施形態では、化合物I塩酸塩の結晶形態は、以下:7.30±0.20、14.85±0.20、20.91±0.20、23.25±0.20、および27.43±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する。
【0076】
[0132]いくつかの実施形態では、化合物I塩酸塩の結晶形態は、7.30±0.20、9.05±0.20、9.35±0.20、14.85±0.20、17.21±0.20、18.21±0.20、19.54±0.20、19.79±0.20、20.91±0.20、21.17±0.20、21.51±0.20、23.25±0.20、26.24±0.20、27.43±0.20、および30.64±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する。
【0077】
[0133]いくつかの実施形態では、化合物I塩酸塩の結晶形態は、実質的に表16に示されるようなXRPDパターンを有する。
[0134]いくつかの実施形態では、化合物I塩酸塩の結晶形態は、実質的に
図13に示されるようなXRPDパターンを有する。
【0078】
[0135]いくつかの実施形態では、化合物I塩酸塩の結晶形態は、約207.8℃で脱溶媒和の開始、および約212.1℃でピークを有する吸熱を含むDSCサーモグラムを有する。
【0079】
[0136]いくつかの実施形態では、化合物I塩酸塩の結晶形態は、約175℃に加熱すると約0.76%の質量損失を示すTGAサーモグラムを有する。
[0137]いくつかの実施形態では、化合物I塩酸塩の結晶形態は、
図20と実質的に類似したTGA/DSCサーモグラムを有する。
【0080】
[0138]いくつかの実施形態では、化合物I塩酸塩の結晶形態は、
図23と実質的に類似したDVS蒸気収着グラムを有する。
[0140]4.化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIの結晶形態
[0141]いくつかの実施形態では、化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIの結晶形態である、化合物Iの薬学的に許容される塩の結晶形態が開示される。
【0081】
[0142]いくつかの実施形態では、化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIの結晶形態は、5.34±0.20、5.38±0.20、10.50±0.20、10.92±0.20、および16.37±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する。
【0082】
[0143]いくつかの実施形態では、化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIの結晶形態は、以下:11.84±0.20、15.05±0.20、17.86±0.20、18.52±0.20、および18.99±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する。
【0083】
[0144]いくつかの実施形態では、化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIの結晶形態は、5.34±0.20、5.38±0.20、10.50±0.20、10.92±0.20、11.84±0.20、15.05±0.20、16.37±0.20、17.86±0.20、18.52±0.20、および18.99±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する。
【0084】
[0145]いくつかの実施形態では、化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIの結晶形態は、以下:7.29±0.20、14.40±0.20、22.02±0.20、および23.96±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する。
【0085】
[0146]いくつかの実施形態では、化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIの結晶形態は、5.34±0.20、5.38±0.20、7.29±0.20、10.50±0.20、10.92±0.20、11.84±0.20、14.40±0.20、15.05±0.20、16.37±0.20、17.86±0.20、18.52±0.20、18.99±0.20、22.02±0.20、および23.96±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する。
【0086】
[0147]いくつかの実施形態では、化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIの結晶形態は、実質的に表17に示されるようなXRPDパターンを有する。
[0148]いくつかの実施形態では、化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIの結晶形態は、実質的に
図9に示されるようなXRPDパターンを有する。
【0087】
[0149]いくつかの実施形態では、化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIの結晶形態は、約207.8℃で脱溶媒和の開始、および約212.1℃でピークを有する吸熱を含むDSCサーモグラムを有する。
【0088】
[0150]いくつかの実施形態では、化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIの結晶形態は、約175℃に加熱すると約0.76%の質量損失を示すTGAサーモグラムを有する。
【0089】
[0151]いくつかの実施形態では、化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIの結晶形態は、実質的に
図15と類似したTGAサーモグラムを有する。
[0152]5.化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIIの結晶形態
[0153]いくつかの実施形態では、化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIIの結晶形態である、化合物Iの薬学的に許容される塩の結晶形態が開示される。
【0090】
[0154]いくつかの実施形態では、化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIIの結晶形態は、10.02±0.20、18.03±0.20、19.89±0.20、21.15±0.20、および21.26±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する。
【0091】
[0155]いくつかの実施形態では、化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIIの結晶形態は、以下:12.70±0.20、13.76±0.20、16.80±0.20、20.92±0.20、および22.82±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する。
【0092】
[0156]いくつかの実施形態では、化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIIの結晶形態は、10.02±0.20、12.70±0.20、13.76±0.20、16.80±0.20、18.03±0.20、19.89±0.20、20.92±0.20、21.15±0.20、21.26±0.20、および22.82±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する。
【0093】
[0157]いくつかの実施形態では、化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIIの結晶形態は、以下:7.95±0.20、15.91±0.20、23.44±0.20、25.55±0.20、および29.99±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する。
【0094】
[0158]いくつかの実施形態では、化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIIの結晶形態は、7.95±0.20、10.02±0.20、12.70±0.20、13.76±0.20、15.91±0.20、16.80±0.20、18.03±0.20、19.89±0.20、20.92±0.20、21.15±0.20、21.26±0.20、22.82±0.20、23.44±0.20、25.55±0.20、および29.99±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する。
【0095】
[0159]いくつかの実施形態では、化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIIの結晶形態は、実質的に表21に示されるようなXRPDパターンを有する。
[0160]いくつかの実施形態では、化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIIの結晶形態は、実質的に
図14に示されるようなXRPDパターンを有する。
【0096】
[0161]いくつかの実施形態では、化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIIの結晶形態は、約137.2℃で脱溶媒和の開始、および約140.4℃でピークを有する吸熱を含むDSCサーモグラムを有する。
【0097】
[0162]いくつかの実施形態では、化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIIの結晶形態は、約100℃に加熱すると約3.59%の質量損失を示すTGAサーモグラムを有する。
【0098】
[0163]いくつかの実施形態では、化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIIの結晶形態は、
図16と実質的に類似したTGA/DSCサーモグラムを有する。
[0164]いくつかの実施形態では、化合物I L-(+)-酒石酸塩パターンIIの結晶形態は、
図21と実質的に類似したDVS蒸気収着グラムを有する。
【0099】
[0165]6.化合物Iフマル酸塩の結晶形態
[0166]いくつかの実施形態では、化合物Iフマル酸塩の結晶形態である、化合物Iの薬学的に許容される塩の結晶形態が開示される。
【0100】
[0167]いくつかの実施形態では、化合物Iフマル酸塩の結晶形態は、11.92±0.20、13.71±0.20、19.54±0.20、20.15±0.20、および24.21±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する。
【0101】
[0168]いくつかの実施形態では、化合物Iフマル酸塩の結晶形態は、以下:13.08±0.20、15.79±0.20、18.86±0.20、20.63±0.20、および22.14±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する。
【0102】
[0169]いくつかの実施形態では、化合物Iフマル酸塩の結晶形態は、11.92±0.20、13.08±0.20、13.71±0.20、15.79±0.20、19.54±0.20、20.15±0.20、18.86±0.20、20.63±0.20、22.14±0.20、および24.21±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する。
【0103】
[0170]いくつかの実施形態では、化合物Iフマル酸塩の結晶形態は、以下:11.63±0.20、12.33±0.20、17.23±0.20、18.52±0.20、および23.79±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する。
【0104】
[0171]いくつかの実施形態では、化合物Iフマル酸塩の結晶形態は、11.63±0.20、11.92±0.20、12.33±0.20、13.08±0.20、13.71±0.20、15.79±0.20、17.23±0.20、18.52±0.20、18.86±0.20、19.54±0.20、20.15±0.20、20.63±0.20、22.14±0.20、23.79±0.20、および24.21±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する。
【0105】
[0172]いくつかの実施形態では、化合物Iフマル酸塩の結晶形態は、実質的に表18に示されるようなXRPDパターンを有する。
[0173]いくつかの実施形態では、化合物Iフマル酸塩の結晶形態は、実質的に
図10に示されるようなXRPDパターンを有する。
【0106】
[0174]いくつかの実施形態では、化合物Iフマル酸塩の結晶形態は、約48.9℃で脱溶媒和の開始、および約68.3℃でピークを有する吸熱を含むDSCサーモグラムを有する。
【0107】
[0175]いくつかの実施形態では、化合物Iフマル酸塩の結晶形態は、約132.79℃で脱溶媒和の開始、および約141.78℃でピークを有する後の吸熱をさらに含むDSCサーモグラムを有する。
【0108】
[0176]いくつかの実施形態では、化合物Iフマル酸塩の結晶形態は、約55℃に加熱すると約2.86%の質量損失を示すTGAサーモグラムを有する。
[0177]いくつかの実施形態では、化合物Iフマル酸塩の結晶形態は、約55℃から約140℃に加熱すると約2.42%の質量損失を示すTGAサーモグラムを有する。
【0109】
[0178]いくつかの実施形態では、化合物Iフマル酸塩の結晶形態は、
図17と実質的に類似したTGA/DSCサーモグラムを有する。
[0179]いくつかの実施形態では、化合物Iフマル酸塩の結晶形態は、
図22と実質的に類似したDVS蒸気収着グラムを有する。
【0110】
[0180]7.化合物I硫酸塩の結晶形態
[0181]いくつかの実施形態では、化合物I硫酸塩の結晶形態である、化合物Iの薬学的に許容される塩の結晶形態が開示される。
【0111】
[0182]いくつかの実施形態では、化合物I硫酸塩の結晶形態は、6.00±0.20、12.16±0.20、17.37±0.20、18.19±0.20、および20.51±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する。
【0112】
[0183]いくつかの実施形態では、化合物I硫酸塩の結晶形態は、以下:7.54±0.20、17.16±0.20、19.52±0.20、および22.65±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する。
【0113】
[0184]いくつかの実施形態では、化合物I硫酸塩の結晶形態は、6.00±0.20、7.54±0.20、12.16±0.20、17.16±0.20、17.37±0.20、18.19±0.20、19.52±0.20、20.51±0.20、および22.65±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する。
【0114】
[0185]いくつかの実施形態では、化合物I硫酸塩の結晶形態は、以下:14.90±0.20、22.02±0.20、24.86±0.20、および25.73±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する。
【0115】
[0186]いくつかの実施形態では、化合物I硫酸塩の結晶形態は、6.00±0.20、7.54±0.20、12.16±0.20、14.90±0.20、17.16±0.20、17.37±0.20、18.19±0.20、19.52±0.20、20.51±0.20、22.02±0.20、22.65±0.20、24.86±0.20、および25.73±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する。
【0116】
[0187]いくつかの実施形態では、化合物I硫酸塩の結晶形態は、実質的に表19に示されるようなXRPDパターンを有する。
[0188]いくつかの実施形態では、化合物I硫酸塩の結晶形態は、実質的に
図11に示されるようなXRPDパターンを有する。
【0117】
[0189]いくつかの実施形態では、化合物I硫酸塩の結晶形態は、約181.2℃で脱溶媒和の開始、および約195.9℃でピークを有する吸熱を含むDSCサーモグラムを有する。
【0118】
[0190]いくつかの実施形態では、化合物I硫酸塩の結晶形態は、約210.6℃で後の脱溶媒和の開始、および約226.0℃でピークを有する吸熱をさらに含むDSCサーモグラムを有する。
【0119】
[0191]いくつかの実施形態では、化合物I硫酸塩の結晶形態は、約120℃に加熱すると約4.85%の質量損失を示すTGAサーモグラムを有する。
[0192]いくつかの実施形態では、化合物I硫酸塩の結晶形態は、実質的に
図18と実質的に類似したTGAサーモグラムを有する。
【0120】
[0193]8.化合物Iマレイン酸塩の結晶形態
[0194]いくつかの実施形態では、化合物Iマレイン酸塩の結晶形態である、化合物Iの薬学的に許容される塩の結晶形態が開示される。
【0121】
[0195]いくつかの実施形態では、化合物Iマレイン酸塩の結晶形態は、11.94±0.20、15.64±0.20、16.10±0.20、20.98±0.20、および22.65±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する。
【0122】
[0196]いくつかの実施形態では、化合物Iマレイン酸塩の結晶形態は、以下:4.90±0.20、7.45±0.20、24.27±0.20、および25.67±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する。
【0123】
[0197]いくつかの実施形態では、化合物Iマレイン酸塩の結晶形態は、4.90±0.20、7.45±0.20、11.94±0.20、15.64±0.20、16.10±0.20、20.98±0.20、22.65±0.20、24.27±0.20、および25.67±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する。
【0124】
[0198]いくつかの実施形態では、化合物Iマレイン酸塩の結晶形態は、以下:9.57±0.20、12.74±0.20、13.19±0.20、および18.46±0.20度から選択される2θに少なくとも1つ、2つ、3つまたはそれ以上のピークをさらに含むXRPDパターンを有する。
【0125】
[0199]いくつかの実施形態では、化合物Iマレイン酸塩の結晶形態は、4.90±0.20、7.45±0.20、9.57±0.20、11.94±0.20、12.74±0.20、13.19±0.20、15.64±0.20、16.10±0.20、18.46±0.20、20.98±0.20、22.65±0.20、24.27±0.20、および25.67±0.20度の2θでのピークを含むXRPDパターンを有する。
【0126】
[0200]いくつかの実施形態では、化合物Iマレイン酸塩の結晶形態は、実質的に表20に示されるようなXRPDパターンを有する。
[0201]いくつかの実施形態では、化合物Iマレイン酸塩の結晶形態は、実質的に
図12に示されるようなXRPDパターンを有する。
【0127】
[0202]いくつかの実施形態では、化合物Iマレイン酸塩の結晶形態は、約64.6℃で脱溶媒和の開始、および約75.7℃でピークを有する吸熱を含むDSCサーモグラムを有する。
【0128】
[0203]いくつかの実施形態では、化合物Iマレイン酸塩の結晶形態は、約137.3℃で後の脱溶媒和の開始、および約140.4℃でピークを有する吸熱をさらに含むDSCサーモグラムを有する。
【0129】
[0204]いくつかの実施形態では、化合物Iマレイン酸塩の結晶形態は、約100℃に加熱すると約3.59%の質量損失を示すTGAサーモグラムを有する。
[0205]いくつかの実施形態では、化合物Iマレイン酸塩の結晶形態は、実質的に
図19と類似したTGAサーモグラムを有する。
【0130】
[0206]本明細書において結晶形態が言及される場合、結晶化度は、好都合には約60%超、より好都合には約80%超、より好都合には約90%超、およびより好都合には約95%超である。最も好都合には、結晶化度は約98%超である。
【0131】
[0207]いくつかの実施形態では、本開示の多形形態は、好ましくは実質的に純粋であり、これは、各多形形態が、化合物の他の多形形態を含む、任意の1つの見かけの不純物を、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、好ましくは1重量%以下含むことを意味する。ある特定の実施形態では、本開示の「実質的に純粋な」多形形態は、90%を超える、95%を超える、98%を超える、またはさらには99%を超える純度を有する。
【0132】
[0208]いくつかの実施形態では、本開示の多形形態は、混合物中に一緒に存在してもよい。本開示の多形形態の混合物は、混合物中に存在する多形形態のそれぞれに特徴的なXRPDピークを有することになる。例えば、2つの多形形態の混合物は、実質的に純粋な多形形態に対応するX線粉末回折パターンの畳み込みであるXRPDパターンを有することになる。
【0133】
[0209]調製のためのプロセス
[0210]本明細書では、化合物Iの薬学的に許容される塩ならびに多形形態、およびその薬学的に許容される塩の調製のためのプロセスをさらに提供する。
【0134】
[0211]本開示の医薬塩および多形形態は、当技術分野で公知の方法によって調製することができる。いくつかの実施形態では、化合物Iの薬学的に許容される塩の結晶は、化合物Iをアセトンまたはエタノール溶液に溶解し、対応する酸をアセトンまたはエタノール溶液に加え、溶液を放置して結晶化し、化合物Iの薬学的に許容される塩の結晶を単離することによって調製し、薬学的に許容される塩は、塩酸塩、L-(+)-酒石酸塩、フマル酸塩、硫酸塩、およびマレイン酸塩から選択される。しかし、これらは、本開示の医薬塩および多形形態の調製方法を決して限定するものではない。
【0135】
[0212]本明細書ではさらに、化合物Iを数十キログラムスケールで高い生成物収率で調製するプロセスを提供する。
[0213]数十キログラムスケールで化合物Iを調製するためのプロセスは、以下のスキームに要約される:
【0136】
【0137】
[0214]上記のスキームに要約された改善プロセスは、数十キログラムスケールで高収率で化合物Iを製造するのに好適であることが示された。特に:
(i)プロセスにおいて式(7)の化合物を単離する必要はない。
(ii)式(9)の化合物が選択され、式(3)の化合物を製造するために使用され、これにより、式(3)の化合物の収率が著しく増加する;いくつかの実施形態では、式(3)の化合物の収率は、WO2019149164A1に開示された方法と比較して29%増加する;および
(iii)このプロセスは、式(6)の構造を有する化合物から化合物Iまでの特定の合成経路を採用し、これにより、化合物Iの生成物収率が著しく増加する。いくつかの実施形態では、化合物Iの収率は、WO2019149164A1に開示された方法と比較して74%増加する。
【0138】
[0215]いくつかの実施形態では、化合物Iを調製するためのプロセスは、(i)アクリルアミド試薬と、式(7)の化合物:
【0139】
【0140】
を接触させるステップ、
および(ii)ステップ(i)で得られた混合物に塩基試薬を加えて、化合物Iを形成するステップを含む。いくつかの実施形態では、アクリルアミド試薬は、塩化アクリロイル、アクリル酸、3-クロロプロピオン酸、および塩化3-クロロプロピオニルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、アクリルアミド試薬は、塩化3-クロロプロピオニルである。いくつかの実施形態では、塩基試薬は、N,N,-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、DBU、K2CO3、KOH、KHCO3、LiOH、NaOH、Na2CO3、NaHCO3からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、塩基試薬はNaOHである。
【0141】
[0216]いくつかの実施形態では、化合物Iを調製するためのプロセスは、(iii)パラジウム触媒の存在下で有機溶媒と、式(6)の化合物:
【0142】
【0143】
を接触させることによって、式(7)の化合物を調製するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、有機溶媒はテトラヒドロフランである。いくつかの実施形態では、ステップ(iii)で得られた式(7)の化合物は単離せず、ステップ(i)で直接使用する。
【0144】
[0217]いくつかの実施形態では、化合物Iを調製するためのプロセスは、(iv)塩基および有機溶媒の存在下で、式(5)の化合物:
【0145】
【0146】
を、式(10)または式(11)の化合物:
【0147】
【0148】
と接触させることによって、式(6)の化合物を調製するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、塩基はK2CO3および/またはN,N-ジイソプロピルエチルアミンであり、有機溶媒はアセトニトリルである。
【0149】
[0218]いくつかの実施形態では、化合物Iを調製するためのプロセスは、(v)式(3)の化合物
【0150】
【0151】
を、有機溶媒および有機酸の存在下で、式(4)の化合物:
【0152】
【0153】
と接触させることによって式(5)の化合物を調製するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、有機溶媒はイソプロパノールであり、有機酸はトリフルオロ酢酸である。
【0154】
[0219]いくつかの実施形態では、化合物Iを調製するためのプロセスは、(vi)有機溶媒および有機塩基の存在下で、式(1)の化合物または式(1)の化合物の塩:
【0155】
【0156】
を、式(8)の化合物:
【0157】
【0158】
と、接触させることによって式(3)の化合物を調製するステップ;ならびに
(vii)ステップ(vi)で得られた混合物を、NH4Cl水溶液の添加により結晶化するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、式(1)の化合物の塩は、式(1)の化合物の塩酸塩、メタンスルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、L-リンゴ酸塩、L-(+)-酒石酸塩からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、有機溶媒はイソプロパノールであり、有機塩基はN,N,-ジイソプロピルエチルアミンである。
【0159】
[0220]さらに、本明細書では、(i)有機溶媒および有機塩基の存在下で、式(1)の化合物または式(1)の化合物の塩:
【0160】
【0161】
を、式(8)の化合物:
【0162】
【0163】
と、接触させるステップ;ならびに
(ii)ステップ(i)で得られた混合物を、NH4Cl水溶液の添加により結晶化するステップを含む、式(3)の化合物を調製するためのプロセスを提供する。いくつかの実施形態では、式(1)の化合物の塩は、式(1)の化合物の塩酸塩、メタンスルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、L-リンゴ酸塩、L-(+)-酒石酸塩からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、有機溶媒はイソプロパノールであり、有機塩基はN,N,-ジイソプロピルエチルアミンである。
【0164】
[0221]本明細書では、化合物Iの形態Bを調製するための再結晶プロセスであって、化合物Iをアセトン/H2O溶液に溶解し、その溶液に形態B結晶種を加え、溶液を放置して結晶化し、化合物Iの形態Bを単離する、ステップを含む、再結晶プロセスをさらに提供する。
【0165】
[0222]医薬組成物
[0223]一態様では、本開示はまた、1つもしくは複数の上述のような結晶多形形態および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物も提供する。
【0166】
[0224]薬学的に許容される担体は、製薬分野において周知の方法で調製することができる、当技術分野における従来の薬用担体である。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、医薬組成物の調製のために薬学的に許容される担体と混合することができる。
【0167】
[0225]薬学的に許容される担体として機能することができる材料のいくつかの例としては(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖;(2)トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;(4)粉末状トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)カカオバターおよび座薬ワックスなどの賦形剤;(9)ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油などの油;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチル、ラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張生理食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコールおよびプロパンアルコールなどのアルコール;(20)リン酸緩衝液;および(21)医薬製剤に使用される他の非毒性適合性物質、アセトンなどが挙げられる。
【0168】
[0226]医薬組成物は、生理学的条件に近似させるのに必要とされる薬学的に許容される補助物質、例としてpH調整剤および緩衝剤、毒性調整剤など、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含有してもよい。
【0169】
[0227]医薬組成物の形態は、投与経路、疾患の程度、または投与されるべき用量を含むがこれらに限定されない、複数の基準に依存する。
[0228]医薬組成物は、経口、経鼻、直腸、経皮、静脈内、または筋肉内投与用に製剤化することができる。所望の投与経路に従って、医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒、サシェ剤、カシェ剤、ロゼンジ、懸濁液、エマルション、溶液、シロップ、エアロゾル(固体としてまたは液体媒体で)、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、パッチ、吸入薬、または座薬の形態で製剤化することができる。
【0170】
[0229]医薬組成物は、当技術分野において公知の手順を使用することにより、患者への投与後に活性成分の迅速放出、持続放出、または遅延放出を提供するように製剤化してもよい。いくつかの実施形態では、医薬組成物は持続放出形態で製剤化される。いくつかの実施形態では、長期間は、約1時間~24時間、2時間~12時間、3時間~8時間、4時間~6時間、1日~2日またはそれ以上であり得る。ある特定の実施形態では、長期間は、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、または少なくとも約24時間である。医薬組成物は、錠剤の形態で製剤化することができる。例えば、活性薬剤の放出速度は、胃腸液中での活性薬剤の錠剤または丸剤からの溶解と後続のpHに依存しない拡散によって制御され得るだけでなく、錠剤の崩壊および浸食の物理プロセスによっても影響を受ける可能性がある。いくつかの実施形態では、以下に開示されているようなポリマー材料、すなわち「Medical Applications of Controlled Release」、Langer and Wise(編)、CRC Pres.、Boca Raton、Florida(1974);「Controlled Drug Bioavailability」、Drug Product Design and Performance、Smolen and Ball(編)、Wiley、New York(1984);Ranger and Peppas、1983年、J Macromol.Sci.Rev.Macromol Chem.23:61を、持続放出のために使用することができる;Levyら、1985、Science 228:190;Duringら、1989、Ann.Neurol.25:351;Howardら、1989,J.Neurosurg.71:105も参照のこと。上記の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0171】
[0230]ある特定の実施形態では、医薬組成物は、約0.0001mg~約5000mgの本開示の化合物を含む(例えば、0.0001mg~約10mg、約0.001mg~約10mg、約0.01mg~約10mg、約0.1mg~約10mg、約1mg~約10mg、約5mg~約10mg、約5mg~約20mg、約5mg~約30mg、約5mg~約40mg、約5mg~約50mg、約10mg~約100mg、約20mg~約100mg、約30mg~約100mg、約40mg~約100mg、約50mg~約100mg、約50mg~約200mg、約50mg~約300mg、約50mg~約400mg、約50mg~約500mg、約100mg~約200mg、約100mg~約300mg、約100mg~約400mg、約100mg~約500mg、約200mg~約500mg、約300mg~約500mg、約400mg~約500mg、約500mg~約1000mg、約600mg~約1000mg、約700mg~約1000mg、約800mg~約1000mg、約900mg~約1000mg、約1000mg~約2000mg、約2000mg~約3000mg、約3000mg~約4000mg、または約4000mg~約5000mg)。1日当たりの対象当たりの好適な投与量は、約5mg~約500mg、好ましくは約5mg~約50mg、約50mg~約100mg、または約50mg~約500mgであり得る。
【0172】
[0231]ある特定の実施形態では、医薬組成物は、各投与量が約0.0001mg~約10mg、約0.001mg~約10mg、約0.01mg~約10mg、約0.1mg~約10mg、約1mg~約10mg、約5mg~約10mg、約5mg~約20mg、約5mg~約30mg、約5mg~約40mg、約5mg~約50mg、約10mg~約100mg、約20mg~約100mg、約30mg~約100mg、約40mg~約100mg、約50mg~約100mg、約50mg~約200mg、約50mg~約300mg、約50mg~約400mg、約50mg~約500mg、約100mg~約200mg、約100mg~約300mg、約100mg~約400mg、約100mg~約500mg、約200mg~約500mg、約300mg~約500mg、約400mg~約500mg、約500mg~約1000mg、約600mg~約1000mg、約700mg~約1000mg、約800mg~約1000mg、約900mg~約1000mg、約1000mg~約2000mg、約2000mg~約3000mg、約3000mg~約4000mg、または約4000mg~約5000mgの本開示の化合物を含有する単位剤形で製剤化することができる。「単位剤形」という用語は、ヒト対象および他の哺乳動物用の単位投与量として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位は、好適な医薬担体と共同して、所望の治療効果を生み出すように計算された所定量の活性材料を含有する。
【0173】
[0232]いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本開示の1つまたは複数の医薬塩および/または多形を第1の活性成分として含み、さらに第2の活性成分を含む。第2の活性成分は、当技術分野で公知の抗がん剤、例えば、細胞シグナル伝達阻害剤、細胞シグナル伝達阻害剤、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、免疫療法剤、有糸分裂阻害剤、抗ホルモン剤、化学療法薬、EGFR阻害剤、CTLA-4阻害剤、MEK阻害剤、PD-L1阻害剤、OX40アゴニスト、などであり得る。がんまたは腫瘍を処置するための抗がん剤の代表的な例としては、ソラフェニブ、スニチニブ、ダサチニブ、ボリノスタット、テムシロリムス、エベロリムス、パゾパニブ、トラスツズマブ、アド-トラスツズマブ、エムタンシン、ペルツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ラニビズマブ、ペガプタニブ、パニツムマブ、トレメリムマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、イピリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、クリゾチニブ、ルキソリチニブ、パクリタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、タモキシフェン、ラロキシフェン、シクロホスファミド、クロマブシル、カルムスチン、メトトレキセート、フルオロウラシル、アクチノマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、アントラサイクリン、ブレオマイシン、マイトマイシン-C、イリノテカン、トポテカン、テニポシド、インターロイキン、インターフェロン、などを挙げてもよいが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、第2の活性薬剤は、ベバシズマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、イピリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、クリゾチニブのうちの1つまたは複数である。
【0174】
[0233]処置のための使用および方法
[0234]一態様では、本明細書で提供される結晶形態、医薬塩、または医薬組成物は、ErbB(例えば、EGFR、Her2、Her3もしくはHer4)またはBTKを阻害するための医薬として使用するためのものである。別の態様では、本開示は、ErbBまたはBTKに関連する疾患を処置するための医薬の製造における、本開示の結晶形態、医薬塩、または医薬組成物の使用を提供する。
【0175】
[0235]一態様では、本開示は、本明細書で提供される1つもしくは複数の結晶形態、医薬塩、または医薬組成物を使用することによって、ErbBまたはBTKを阻害する方法を提供する。
【0176】
[0236]別の態様では、本開示はまた、本明細書で提供される1つまたは複数の結晶形態、医薬塩、または医薬組成物を使用することによって、ErbBまたはBTKを阻害する方法を提供する。
【0177】
[0237]さらに別の態様では、本開示は、対象におけるErbB(例えば、EGFRまたはHer2、特にErbB変異体を含む)、関連疾患またはBTK関連疾患を処置する方法であって、本明細書で提供される1つもしくは複数の結晶形態、医薬塩、または医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0178】
[0238]いくつかの実施形態では、対象はヒトなどの温血動物である。
[0239]いくつかの実施形態では、ErbB関連疾患またはBTK関連疾患は、がん、自己免疫疾患、または炎症である。いくつかの実施形態では、ErbB関連疾患は、がんである。ある特定の実施形態では、ErbB関連疾患は、変異体ErbBに関連する疾患である。いくつかの実施形態では、変異体ErbBは、変異体EGFRである。いくつかの実施形態では、変異体ErbBは、変異体Her2である。ある特定の実施形態では、ErbBに関連する疾患は、がんを含む、変異体ErbBに関連する疾患である。いくつかの実施形態では、BTK関連疾患はがんまたは自己免疫疾患である。
【0179】
[0240]いくつかの実施形態では、がんとしては、白血病、膠芽腫、黒色腫、軟骨肉腫、胆管癌、骨肉腫、リンパ腫、肺がん、腺腫、骨髄腫、肝細胞癌、副腎皮質癌、膵臓がん、乳がん、膀胱がん、前立腺がん、肝がん、胃がん、大腸がん、結腸直腸がん、卵巣がん、子宮頸がん、脳がん、食道がん、骨がん、精巣がん、皮膚がん、腎がん、中皮腫、神経芽細胞腫、甲状腺がん、頭頸部がん、食道がん、眼がん、前立腺がん、鼻咽頭がん、または口腔がんが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、がんは、肺がん、乳がん、卵巣がん、膀胱がん、または神経芽細胞腫である。いくつかの実施形態では、がんは、肺がん(例えば、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、腺癌、扁平上皮肺がん、および大細胞肺がん)である。いくつかの実施形態では、がんは、リンパ腫または白血病である。いくつかの実施形態では、がんは、転移性肺がんである。いくつかの実施形態では、がんは、1つまたは複数のErbB変異(例えば、EGFRもしくはHer2の点変異、欠失変異、挿入変異、活性化変異、または薬剤耐性変異)を有するがんである。いくつかの実施形態では、自己免疫疾患は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、またはシェーグレン症候群である。
【0180】
[0241]いくつかの実施形態では、ErbBは、EGFRまたはHer2であり、好ましくは変異体EGFRまたは変異体Her2である。いくつかの実施形態では、変異体EGFRは、EGFR D761_E762insEAFQ、EGFR A763_Y764insHH、EGFR M766_A767instAI、EGFR A767_V769dupASV、EGFR A767_S768insTLA、EGFR S768_D770 dupSVD、EGFR S768_V769insVAS、EGFR S768_V769insAWT、EGFR V769_D770insASV、EGFR V769_D770insGV、EGFR V769_D770insCV、EGFR V769_D770insDNV、EGFR V769_D770insGSV、EGFR V769_D770insGVV、EGFR V769_D770insMASVD、EGFR D770_N771insSVD、EGFR D770_N771insNPG、EGFR D770_N771insAPW、EGFR D770_N771insD、EGFR D770_N771insDG、EGFR D770_N771insG、EGFR D770_N771insGL、EGFR D770_N771insN、EGFR D770_N771insNPH、EGFR D770_N771insSVP、EGFR D770_N771insSVQ、EGFR D770_N771insMATP、EGFR delD770insGY、EGFR N771_P772insH、EGFR N771_P772insN、EGFR N771_H773dupNPH、EGFR delN771insGY、EGFR delN771insGF、EGFR P772_H773insPR、EGFR P772_H773insYNP、EGFR P772_H773insX、EGFR P772_H773insDPH、EGFR P772_H773insDNP、EGFR P772_H773insQV、EGFR P772_H773insTPH、EGFR P772_H773insN、EGFR P772_H773insV、EGFR H773_V774insNPH、EGFR H773_V774insH、EGFR H773_V774insPH、EGFR H773_V774insGNPH、EGFR H773_V774dupHV、EGFR H773_V774insG、EGFR H773_V774insGH、EGFR V774_C775insHV、EGFRエクソン19欠失、EGFR L858R、EGFR T790M、EGFR L858R/T790M、EGFRエクソン19欠失/T790M、EGFR S768I、EGFR G719S、EGFR G719A、EGFR G719C、EGFR E709A/G719S、EGFR E709A/G719A、EGFR E709A/G719C、およびEGFR L861Qから選択される。いくつかの実施形態では、変異体Her2は、Her2 A775_G776insYVMA、Her2 delG776insVC、Her2 V777_G778insCG、およびHer2 P780_Y781insGSPからなる群から選択される。
【0181】
[0242]本開示における結晶形態、医薬塩、または医薬組成物は、哺乳動物、特にヒトにおけるErbB/BTK(発現または活性)に関連する疾患もしくは状態のいずれかの発症もしくは進行の予防または処置に使用することができる。いくつかの実施形態では、本開示における結晶形態、医薬塩、または医薬組成物は、哺乳動物、特にヒトにおける変異体ErbBに関連する疾患もしくは状態のいずれかの発症もしくは進行の予防または処置に使用することができる。このような状況において、本開示は、本開示の化合物または医薬組成物単独により、または他の成分(例えば、第2の活性成分、例えば、抗がん剤)と組み合わせて処置するのに好適な患者をスクリーニングする方法も提供する。この方法は、患者からの腫瘍試料を配列決定すること、および患者におけるErbB(例えば、EGFRもしくはHer2)またはBTKの蓄積を検出すること、あるいは患者におけるErbB(例えば、EGFRもしくはHer2)の変異状態またはBTKを検出することを含む。
【0182】
[0243]いくつかの実施形態では、本明細書で提供される1つまたは複数の結晶形態、医薬塩、または医薬組成物は、非経口経路または非経口以外の経路を介して投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される1つまたは複数の結晶形態、医薬塩、または医薬組成物は、経口、経腸、頬側、経鼻、鼻腔内、経粘膜、表皮、経皮、皮膚、眼科的、肺、舌下、直腸、膣、局所、皮下、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、または胸骨内投与される。
【0183】
[0244]本明細書で提供される結晶形態または医薬塩は、純粋な形態で、または本開示の医薬組成物の形態で投与することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される1つもしくは複数の結晶形態、医薬塩、または医薬組成物は、第2の活性成分、好ましくは抗がん剤と組み合わせて使用する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される結晶形態、医薬塩、または医薬組成物は、第2の活性成分(例えば、当技術分野において公知の1つまたは複数の抗がん剤)と組み合わせて、同時にまたは逐次的に、必要とする対象に投与することができる。いくつかの実施形態では、投与は、1日1回、1日2回、1日3回、または2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、週に1回行われる。
【0184】
[0245]いくつかの実施形態では、本明細書で提供される1つまたは複数の結晶形態、医薬塩、または医薬組成物は、経口投与される。経口投与の場合、所望の目的を達成する任意の用量が適切である。いくつかの実施形態では、好適な1日投与量は、約0.001~5000mg、好ましくは0.1mg~5gの間、より好ましくは5mg~1gの間、より好ましくは10mg~500mgの間であり、投与は1日1回、1日2回、1日3回、毎日、または週に3~5日行われる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される1つまたは複数の化合物、その薬学的に許容される塩、エステル、水和物、溶媒和物もしくは立体異性体、または医薬組成物の用量は、1日当たり約0.0001mg、好ましくは0.001mg、0.01mg、0.1mg、1mg、10mg、50mg、100mg、200mg、250mg、500mg、750mg、1000mg、2000mg、3000mg、4000mg、または最大約5000mgの範囲である。
【実施例】
【0185】
[0246]
[0247]以下の略語は、以下に記載する定義を有する:
【0186】
【0187】
【0188】
[0248]明確にするために、以下の表は、考察される各化合物に関して本出願全体を通じて交換可能に使用される化合物識別子、化学名、および構造を要約したものである。
【0189】
【0190】
【0191】
実施例1
[0249]分析方法
[0250]1H NMR分析
[0251]1H NMRは、自動サンプラー(B-ACS120)を備えたBruker AVANCE III、Bruker Ultrashield 400、またはBruker Advance 300を使用して実行した。
【0192】
[0252]X線粉末回折(XRPD)
[0253]固体試料を、D8 advanceまたはD2 X線回折計(Bruker)を使用して検査した。このシステムにはLynxEye検出器が装備されていた。試料は、0.02° 2θステップで3~40° 2θで走査した。管電圧および電流は、それぞれ40KVおよび40mA(D8 ADVANCE)、30KVおよび10mAであった。
【0193】
[0254]偏光顕微鏡分析(PLM)
[0255]PLM分析は、偏光顕微鏡ECLIPSE LV100POL(Nikon、JP)を用いて行った。試料をスライドガラス上に置き、シダー油を分散させ、好適な倍率で観察する。
【0194】
[0256]熱重量分析(TGA)
[0257]TGAは、TGA Q5000IR、Q500、Discovery TGA55(TA Instruments、US)またはMettler Toledo TGA2で実行した。試料を、タールを塗ったアルミニウム製オープンパンに入れ、自動的に秤量して、TGA炉に挿入した。試料を、10℃/分で最終温度まで加熱した。
【0195】
[0258]示差走査熱量計(DSC)
[0259]DSC分析は、DSC Q2000、Q200、Discovery DSC250(TA Instruments、US)またはMettler Toledo DSC3+を用いて行った。秤量した試料をDSCピンホールパンに入れ、重量を正確に記録した。試料を、10℃/分で最終温度まで加熱した。
【0196】
[0260]動的水分収着分析(DVS)
[0261]DVSは、DVS Advantage-1またはIntrinsic(SMS、UK)を使用して決定した。試料は、ステップモードで全サイクル10~90%の標的RHで試験した。分析は、10%RHずつ増加して実行した。平衡:60分 RH(%)測定ポイント:最初のサイクル:0、10、20、30、40、50、60、70、80、90。2回目のサイクル:90、80、70、60、50、40、30、20、10、0。
【0197】
実施例2
[0262](R)-N-(5-((4-((5-クロロ-4-フルオロ-2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)-2-(3-(ジメチルアミノ)ピロリジン-1-イル)-4-メトキシフェニル)アクリルアミド(化合物I遊離塩基)の調製のための手順
【0198】
【0199】
[0263]化合物(2)の調製のための手順
[0264]THF(200mL)中のメチル2-アミノ-4-クロロ-5-フルオロベンゾエート(1)(12.0g、58.9mmol)の溶液に、0~5℃でCH3MgBr(99mL、エーテル中3M、294.7mmol)を加えた。混合物を、12~17℃で1.5時間撹拌した。NH4Cl水溶液(100mL)を加えて反応混合物をクエンチし、次にEtOAc(3×100mL)で抽出した。有機層をブライン(3×100mL)で洗浄し、減圧下で濃縮して、化合物(2)(11.5g、96%)を淡黄色の油として得た。
【0200】
[0265]LCMS:10-80CD_7MIN_220&254クロマトグラフィー(XBrige Shield RP18 2.1×50mm)においてRt=3.283分、MS(ESI)m/z 186.1 [M-OH]+。
【0201】
[0266]1H NMR (CDCl3, 400MHz): δ (ppm) 6.90 (d, J=10.8 Hz, 1H), 6.62 (d, J=6.8 Hz, 1H), 1.63 (s, 6H).
[0267]13C NMR (d6-DMSO, 101 MHz) δ (ppm) 149.7, 147.4, 144.3, 131.3, 131.2, 116.9, 116.7, 115.7, 113.6, 113.4, 71.6, 28.7.
[0268]化合物(3)の調製のための手順
[0269]イソプロパノール(200mL)中の化合物(2)(11.5g、56.5mmol)およびDIEA(14.6g、112.9mmol)の溶液に、2,4-ジクロロピリミジン(10.1g、67.8mmol)を加えた。得られた黄色の混合物を、90℃で60時間加熱した。反応混合物を真空濃縮して粗生成物を得、これをシリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(石油エーテル中30~43%EtOAc)で精製して、化合物(3)(12.0g、67%)を白色の固体として得た。
【0202】
[0270]LCMS:5-95AB_220&254.lcmクロマトグラフィー(Xtimate C18 2.1×30mm)におけるtR=0.850分、MS(ESI) m/z=315.9[M+H]+。
【0203】
[0271]1H NMR (CDCl3, 400MHz): δ (ppm) 9.17 (br s, 1H), 8.15 (d, J=5.6 Hz, 1H), 7.95 (d, J=6.8 Hz, 1H), 7.12 (d, J=10.0 Hz, 1H), 6.58 (d, J=6.0 Hz, 1H), 2.35 (s, 1H), 1.65 (s, 6H).
[0272]13C NMR (d6-DMSO, 101 MHz) δ (ppm) 161.9, 159.4, 157.8, 155.2, 152.8, 142.7, 132.8, 132.7, 126.6, 117.4, 117.2, 114.6, 114.4, 105.3, 71.7, 29.7.
[0273]化合物(5)の調製のための手順
[0274]nBuOH(160mL)中の化合物(3)(12.0g、38.0mmol)および4-フルオロ-2-メトキシ-5-ニトロアニリン(4)(7.44g、40.0mmol)の溶液に、TFA(16mL)を加えた。得られたオレンジ色の混合物を、50℃で15時間加熱した。反応混合物はオレンジ色から淡黄色に変化し、固体が沈殿し、さらに300mgの4-フルオロ-2-メトキシ-5-ニトロアニリンを加え、反応混合物を50℃でさらに4時間加熱した。反応混合物を濾過し、濾過ケーキをEtOAc/石油エーテル=1/1(25mL×3)およびEtOAc(25mL×3)で洗浄し、次に真空中で乾燥させて、化合物(5)(15.2g、86%)を灰色の固体として得た。
【0204】
[0275]LCMS:5-95AB_220&254.lcmクロマトグラフィー(Xtimate C18 2.1×30mm)におけるtR=0.776分、MS(ESI) m/z=466.0[M+H]+。
【0205】
[0276]1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ (ppm) 8.52 (d, J=8.0 Hz, 1H), 7.96 (d, J=6.8 Hz, 1H), 7.84 (d, J=7.2 Hz, 1H), 7.32 (d, J=10.8 Hz, 1H), 7.20 (d, J=12.8 Hz, 1H), 6.47 (d, J=6.8 Hz, 1H), 4.00 (s, 3H), 1.59 (s, 6H).
[0277]13C NMR (d6-DMSO, 101 MHz) δ (ppm) 161.6, 156.2, 153.7, 152.6, 143.9, 143.5, 131.0, 128.6, 128.1, 121.9, 117.3, 117.1, 114.6, 114.4, 102.1, 101.9, 100.0, 71.5, 57.5, 29.9.
[0278]化合物(6)の調製のための手順
[0279]DMSO(50mL)中の化合物(5)(5.0g、10.7mmol)およびK2CO3(5.9g、42.9mmol)の溶液に、(R)-N,N-ジメチルピロリジン-3-アミン(2.6g、HCl塩、14.0mmol)を加えた。得られた混合物を50℃で12時間撹拌すると、色が淡黄色から濃黄色に変化した。反応混合物を撹拌しながら氷水(500mL)に注ぐと、黄色の固体が沈殿した。沈殿した固体を濾過により収集し、次にCH2Cl2(500mL)に溶解し、無水Na2SO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮して、化合物(6)(5.6g、93%)を黄色の固体として得た。
【0206】
[0280]LCMS:5-95AB_220&254.lcmクロマトグラフィー(MKRP-18e25~2mm)においてRt=0.676分、MS(ESI) m/z=560.1[M+H]+。
【0207】
[0281]1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ (ppm) 9.00 (s, 1H), 8.91 (s, 1H), 8.09 (d, J=5.8 Hz, 1H), 7.93 (d, J=7.0 Hz, 1H), 7.19 (s, 1H), 7.11 (d, J=10.5 Hz, 1H), 6.31 (s, 1H), 6.18 (d, J=5.8 Hz, 1H), 5.31 (s, 1H), 3.94 (s, 3H), 3.55 (td, J=10.1, 6.4 Hz, 1H), 3.31-3.39 (m, 1H), 3.10-3.22 (m, 2H), 2.81 (br s, 1H), 2.30 (s, 6H), 2.15-2.25 (m, 1H), 1.83-1.98 (m, 1H), 1.67 (s, 6H).
[0282]13C NMR (d6-DMSO, 101 MHz) δ (ppm) 159.0, 158.9, 155.7, 154.9, 152.5, 150.1, 140.4, 137.7, 133.7, 127.4, 122.8, 119.8, 117.6, 116.0, 115.8, 112.9, 112.7, 97.0, 96.5, 71.0, 63.7, 55.0, 48.4, 42.8, 28.5.
[0283]化合物(7)の調製のための手順
[0274]EtOAc(100mL)およびTHF(50mL)中の化合物(6)(5.6g、10.0mmol)の溶液に、Pd/C(1.2g)を加えた。得られた混合物をH2で3回パージおよび脱気し、次にH2(水素バルーン、15Psi)下、11~18℃で16時間撹拌した。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮して、化合物(7)(5.0g、94%)を淡黄色の固体として得た。
【0208】
[0285]LCMS:5-95AB_1.5分_220&254クロマトグラフィー(MK RP18e25~2mm)においてRt=0.660分、MS(ESI) m/z=530.1[M+H]+。
【0209】
[0286]1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ (ppm) 8.80 (s, 1H), 8.15 (d, J=7.3 Hz, 1H), 8.04 (d, J=5.5 Hz, 1H), 7.87 (s, 1H), 7.43 (s, 1H), 7.09 (d, J=10.5 Hz, 1H), 6.67 (s, 1H), 6.06 (d, J=5.5 Hz, 1H), 3.82 (s, 3H), 3.24 - 3.13 (m, 2H), 3.07 - 2.96 (m, 2H), 2.91 - 2.83 (m, 1H), 2.28 (s, 6H), 2.18 - 2.08 (m, 1H), 1.90 - 1.85 (m, 1H), 1.66 (s, 6H).
[0287]13C NMR (d6-DMSO, 101 MHz) δ (ppm) 160.1, 156.8, 153.7, 151.3, 142.3, 139.1, 135.4, 134.9, 131.4, 124.2, 123.9, 117.2, 117.0, 114.1, 113.9, 110.0, 103.5, 97.5, 72.1, 64.9, 56.3, 54.5, 49.8, 29.6, 28.6.
[0288]化合物Iの調製のための手順
[0289]ステップ1:CH2Cl2(150mL)中の化合物(7)(5.0g、9.43mmol)の溶液に、氷水浴中で塩化3-クロロプロパノイル(1.3g、10.37mmol)を加えた。得られた混合物を0~5℃で30分間撹拌した(未溶解油がほとんど沈殿しなかった)。反応混合物を飽和NaHCO3(50mL)に注ぎ、12~17℃で2時間撹拌し、CH2Cl2(150mL×2)で抽出した。合わせた有機層をNa2SO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮して粗残渣を得て、これをシリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2中の3%MeOH)によって精製して、淡黄色の固体(3.4g、収率58%)を得た。
【0210】
[0290]LCMS:10-80AB_4分_220&254クロマトグラフィー(Xtimate C18 2.1×30mm)においてRt=1.547分、MS(ESI) m/z=620.0[M+H]+。
【0211】
[0291]1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ (ppm) 9.58 (s, 1H), 9.31 (s, 1H), 8.56 (br s, 1H), 8.10 (d, J=5.8 Hz, 1H), 7.62 - 7.45 (m, 2H), 7.15 (d, J=10.5 Hz, 1H), 6.76 (s, 1H), 6.34 (d, J=5.8 Hz, 1H), 3.90 (t, J=6.3 Hz, 2H), 3.86 (s, 3H), 3.16 - 3.03 (m, 4H), 2.90 (br s, 3H), 2.32 (br s, 6H), 2.19 (br dd, J=6.3, 12.3 Hz, 1H), 1.98 (br s, 1H), 1.75 - 1.68 (m, 6H).
[0292]ステップ2:CH3CN(70mL)のステップ1からの黄色の固体(3.4g、5.48mmol)の溶液に、TEA(2.2g、21.92mmol)を加えた。得られた混合物を、80℃で12時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮して約35mLのCH3CNを除去し、次に500mLのH2Oに注ぎ、さらに30分間撹拌した。混合物を濾過し、フィルターケーキを収集し、次に凍結乾燥させて、表題生成物化合物I(2.64g、82%)を白色の固体として得た。
【0212】
[0293]LCMS:10-80AB_4分_220&254クロマトグラフィー(Xtimate C18 2.1×30mm)においてRt=1.471分、MS(ESI) m/z=584.0[M+H]+。
【0213】
[0294]1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ (ppm) 9.67 (s, 1H), 9.44 (s, 1H), 8.55 (br s, 1H), 8.10 (d, J=6.0 Hz, 1H), 7.52 (br d, J=7.0 Hz, 1H), 7.48 (s, 1H), 7.15 (d, J=10.8 Hz, 1H), 6.76 (s, 1H), 6.42 - 6.28 (m, 3H), 5.82 - 5.75 (m, 1H), 5.66 (br s, 1H), 3.86 (s, 3H), 3.14 - 3.02 (m, 4H), 2.96 - 2.86 (m, 1H), 2.30 (s, 6H), 2.23 - 2.12 (m, 1H), 2.00 - 1.90 (m, 1H), 1.73 (s, 6H).
[0295]13C NMR (d6-DMSO, 101 MHz) δ (ppm) 163.5, 160.5, 159.9, 156.8, 153.5, 151.1, 149.9, 141.5, 138.5, 135.0, 132.0, 125.7, 123.7, 123.4, 119.9, 117.9, 117.2, 117.0, 114.0, 113.8, 99.5, 97.5, 72.2, 65.2, 55.6, 49.3, 43.9, 29.6.
実施例3
[0296](R)-N-(5-((4-((5-クロロ-4-フルオロ-2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)-2-(3-(ジメチルアミノ)ピロリジン-1-イル)-4-メトキシフェニル)アクリルアミド(化合物I遊離塩基)の製造プロセスのスケールアップ
[0297]化合物(3)の調製のための手順
【0214】
【0215】
[0298]イソプロパノール(249.5kg)、DIPEA(118.6kg)および化合物(8)(78.1kg)を反応器内に充填した。化合物(9)(62.8kg)を、最後にN2保護下で充填した。混合物を78℃(75~82℃)に調整し、反応が完了したとみなされるまで18時間撹拌した。反応混合物を25℃に調整し、15wt%NH4Cl水溶液(1093kg)を滴下して充填した。得られた混合物を25℃で3時間撹拌し、濾過した。ケーキを精製水(95.0kg×2)で洗浄し、次にウェットケーキをIPA(252.2kg)中で60℃にて4時間スラリー化した。スラリー混合物を15℃に調整し、3時間撹拌した。次に、スラリー混合物を濾過し、ウェットケーキをIPA(100kg)で洗浄した。ウェットケーキを45℃で20時間乾燥させ、67.06kgの化合物(3)を、アッセイにより、HPLC純度99.4%、単離収率79.2%で得た。1H NMR (DMSO-d6, 400MHz), 1.47 (6H, s), 6.03 (1H, s), 6.74~6.76 (1H, d), 7.45~7.48 (1H, d), 7.90-7.92 (1H, d), 8.16~8.18 (1H, d), 9.87 (1H,s).
[0299]化合物(5)の調製のための手順
【0216】
【0217】
[0300]THF(189kg)、化合物(3)(62.9kg)および化合物(4)(39.1kg)を反応器に充填し、25℃で撹拌し、TFA(10.8kg)を2時間かけて滴下して充填した。反応系を50~60℃に調整し、反応が完了したとみなされるまで24~28時間撹拌した。反応系を20~30℃に調整し、2~4時間撹拌し、次に濾過した。ウェットケーキをIPA(154kg)で洗浄し、45℃で27時間乾燥させた。94.22kgの化合物(5)を、アッセイにより、HPLC純度99.3%、単離収率93.4%で得た。1H NMR (DMSO-d6, 400MHz), 1.47 (6H, s), 3.95 (3H, s), 6.66~6.68 (1H, d), 7.38~7.41 (1H, d), 7.46・7.49 (1H, d), 7.67~7.69 (1H, d), 8.12~8.13 (1H, d), 8.37~8.39 (1H, d), 10.16 (1H, s), 10.80 (1H, s).
[0301]化合物(6)の調製のための手順
【0218】
【0219】
[0302]アセトニトリル(328kg)、K2CO3(50.4kg)、化合物(11)(44.8kg)およびDIPEA(140kg)を15~25℃で反応器に充填し、化合物(5)(アッセイ補正後82.0kg)を反応器に充填した。反応系を75~82℃に調整し、反応が完了したとみなされるまで20~30時間撹拌した。反応混合物を35~45℃に調整した。精製水(492kg)を反応混合物に滴加し、4~6時間撹拌した。反応混合物を15~25℃に調整し、3~5時間撹拌し、濾過した。ウェットケーキをACN/H2O(148kg)およびH2O(164kg)で洗浄した。H2O(576kg)を反応器に充填し、続いてウェットケーキを充填した。混合物を15~25℃で4時間撹拌し、濾過した。ウェットケーキをH2O(164kg)およびACN(148kg)で洗浄した。ウェットケーキを45℃で20時間乾燥させた。88.91kgの化合物(6)を、アッセイにより、HPLC純度99.8%、単離収率89.2%で得た。1H NMR (DMSO-d6, 400MHz), 1.65 (6H,s), 1.72~1.82 (1H, m), 2.07~2.19 (1H,m), 2.32~2.50 (6H,m), 2.66~2.75 (1H,m), 3.06~3.15 (2H,m), 3.19~3.23 (1H,m), 3.32~3.46 (1H,m), 3.88 (1H,s), 6.12~6.13 (1H,d), 6.17 (1H,s), 6.50 (1H,s), 7.29~7.32 (1,d), 7.93(1H,s), 7.99~8.00 (1H,s), 8.08~8.10 (1H,d), 8.18 (1H,s), 9.62 (1H,s).
[0303]化合物Iの調製のための手順
【0220】
【0221】
[0304]化合物(6)(86.0kg)および5%Pt/C(3.3kg、乾燥)を含むTHF(855.4kg)を反応器内に充填した。反応系の水素圧力は0.550~0.688MPa(0.5~0.7MPa)に調製し、反応系の温度は50℃(45~55℃)に調整した。また、反応が完了したとみなされるまで、反応系を24時間(20~30時間)撹拌した。温度を-10℃(-15~0℃)に調整した。化合物(7)の溶液を濾過して別の反応器に移した。ケーキをTHF(386kg)ですすいだ。
【0222】
[0305]精製水(176kg)を反応器に充填し、THF(416kg)中の塩化3-クロロプロピオニル(20.2kg)を-15~0℃で2時間以上滴下して充填した。反応が完了したとみなされるまで、混合物を-15~0℃で3時間(2~4時間)撹拌した。温度を20℃(15~25℃)に調整し、3.5wt%水酸化ナトリウム溶液(709kg)を20℃(15~25℃)で滴下して充填し、反応が完了したとみなされるまで、4時間(3~6時間)撹拌した。得られた混合物を1時間保持し、水層を分離した。有機相を20%NaCl水溶液(592kg)で2回洗浄した。有機溶液をシリカゲル(235kg)で濾過し、シリカゲルパッドをTHF(2695kg)で洗浄した。溶液を340~350Lまで濃縮し、合計2回アセトン(1008kg)と交換した。アセトン(448kg)を系に充填し、残留THFを≦5.0%に制御するためにIPC試料を採取した。
【0223】
[0306]精製水(95kg)を反応器に充填し、温度を56℃(52~59℃)に調整し、反応系を2時間撹拌して透明な溶液にした。精製水(103kg)を3時間かけて充填し、溶液を40~44℃に冷却した。種晶(68g)を溶液に充填し、14~18時間撹拌した。精製水(1118kg)を40~44℃で一定流量で滴下して充填した。混合物を40~44℃で2~6時間撹拌し、4時間で15~25℃に調整し、4時間(2~6時間)撹拌し、次に濾過し、乾燥させて、76.71kgの固体の化合物Iを、アッセイ98.9%により、HPLC純度99.63%で、収率84.5%で得た。
1H NMR (DMSO-d
6, 400MHz), 1.49 (6H,s), 1.70~1.71 (1H,m), 2.08 (1H,m), 2.15 (6H,s), 2.64~2.68 (1H,m), 3.14~3.19 (3H,m), 3.32~3.34 (1H,m), 3.78 (3H,s), 5.65~5.68 (1H,m), 6.04~6.06 (1H,d), 6.13~6.18 (2H,m), 6.45~6.52 (2H,m), 7.27~7.30 (1H,d), 7.59 (1H,s), 7.81 (1H,s), 7.94~7.96 (1H, d), 8.13~8.15 (1H,d), 9.24 (1H, s), 9.57 (1H,s).
[0307]化合物Iの再結晶化
[0308]粗化合物I(56.3kg)およびアセトン/精製水(743.2kg、9/1(v/v))を、反応器に加えた。反応器を48℃~55℃に加熱して透明な溶液を得、精製水(190kg)を1~3時間で反応器に加えた。温度は38℃~42℃に調整した。種晶(0.3kg)を38℃~42℃で充填し、16時間撹拌した。精製水(997kg)を38℃~42℃にて6~8時間で反応器に滴下して充填し、4時間撹拌した。反応系を3時間で20~25℃に調整し、4時間撹拌した。次に、反応系を濾過し、アセトン/精製水(103kg、2v/3v)で2回洗浄した。ウェットケーキを45℃で20時間乾燥させた。54.58kgの化合物Iを、アッセイ99.8%により、HPLC純度99.83%、単離収率96.7%で得た。
1H NMR (DMSO-d
6, 400MHz), 1.50 (6H,s), 1.71 (1H, m), 2.07 (1H, m), 2.15 (6H, s), 2.66 (1H, m), 3.14 (1H), 3.19 (2H), 3.38 (1H, m), 3.79 (3H,s), 5.67 (1H, dd, J=10.0,2.0Hz), 6.06 (1H, d, J=5.6Hz), 6.15 (1H), 6.20 (1H), 6.50 (1H), 6.52 (1H), 7.29 (1H, d, J=10.8Hz), 7.61 (1H,s), 7.85 (1H, s), 7.96 (1H, d, J=5.6Hz), 8.16 (1H,d, J=7.6Hz), 9.27 (1H, s), 9.60(1H,s).
[0309]化合物Iの単結晶X線回折ORTEPを
図33に示した。
【0224】
実施例4
[0310]化合物Iの単結晶の調製
[0311]化合物I(6mg)を3mLガラスバイアル中の1.5mLのMeOHに加えて、不飽和溶液を得た。この不飽和溶液を室温で3日間ゆっくりと蒸発させることにより、X線回折に好適な単結晶を得ることに成功した。
【0225】
[0312]結晶データ
【0226】
【0227】
[0313]データ収集
【0228】
【0229】
[0314]精密化
【0230】
【0231】
[0315]形態Aおよび形態Bの相互変換研究
[0316]競合スラリー実験を行って、形態Aおよび形態Bの相対安定性を評価した。相互変換研究は、以下の表1に列挙されている単一溶媒および二成分溶媒を使用して、室温および50℃で実行した。約80mg(50℃では100mg)の形態Aおよび形態B(1:1、w/w)を、試料バイアル(8mL)内に秤量し、次に3mL(50℃では2mL)の溶媒を各バイアルに加えた。得られた懸濁液を室温および50℃で7日間撹拌し続け、その後、指定された時間に濾過した。湿った固体および乾燥した固体をXRPDで分析した(45℃の真空オーブン内で乾燥)。
【0232】
【0233】
[0318]結果を表2および表3に要約した。試験した溶媒系では形態Bが優勢であり、室温(24~27℃)での水分活性は0.15未満であった。純水を除くすべての試験した溶媒系において、50℃では形態Bは形態Aよりも安定であった。純粋な形態Aおよび形態Bは、乾燥プロセス(50℃、真空)の間、少なくとも2日間は安定であった。形態Aと形態Bの混合物の場合、乾燥プロセス中に形態Aが形態Bに変換された。
【0234】
【0235】
【0236】
[0321]形態Aおよび形態Bの水分活性研究
[0322]形態Aおよび形態Bの安定性に対する水の影響を研究するために、異なる水分活性を有する系におけるスラリー実験を行った。結果を表5および表6に列挙した。形態Aまたは形態Bを、異なる水分活性系に別々に懸濁した(表4)。約20mgの形態Aまたは形態Bを、室温で7日間、3mLのアセトンと水の混合物に懸濁した。残留固体を濾過し、真空オーブン内で45℃にて8~24時間乾燥させた。乾燥固体は、XRPDによって特徴付けた。
【0237】
【0238】
【0239】
【0240】
[0326]形態Bの保存における安定性
[0327]XRPD(
図27)およびDSCプロファイル(
図28)は、2~8℃で少なくとも20日間保存した後、形態Bについて観察される形態変化がないことを示した。
【0241】
[0328]形態Bのミリング研究
[0329]粉砕およびジェットミリングを行った。約10mgの形態Bを乳鉢に加え、乳棒で1分間および2分間粉砕した。500mgスケールで形態Bのジェットミリングを実行した。粉砕およびミリングの前後の試料を、XRPDによって分析した。
【0242】
[0330]機器:ジェットミル(装置番号:PPD-OAJ-1)
[0331]供給速度:手動
[0332]供給圧:0.3~0.6MPa
[0333]ミリング1圧力:0.4~0.8MPa
[0334]ミリング2圧力:0.4~0.8MPa
[0335]粉砕およびジェットミリングを行って、粉砕プロセスにおける形態Bの物理的安定性を試験した。粉砕後(
図25)、ジェットミリング(
図24)後に得られた固体のXRPD結果、およびジェットミリング後のDSCプロファイル(
図26)に示されるように、結晶化度は、粉砕後に低下したが、形態Bの結晶形態は、ミリングおよび粉砕後も変化しなかった。
【0243】
[0336]多形形態の調製
[0337]遊離塩基化合物Iの結晶形態Aの調製のための手順
[0338]化合物I遊離塩基粗製物(30g)を70~75℃でエタノール(210mL)、イソプロパノール(60mL)および水(13mL)に溶解して、透明な溶液を得た。温度を60~65℃に調整し、次に化合物I-形態A結晶種(0.06g、0.2%w/w)を加え、60~65℃で少なくとも1時間撹拌した。混合物を50~55℃に冷却し、2~3時間撹拌し、次に10~20℃に冷却し、濾過した。ウェットケーキを、エタノール/イソプロパノールの混合物で洗浄した。ウェットケーキを40~50℃で少なくとも24時間乾燥させて、結晶性化合物I-形態A(13.6g、収率45%)を得た。
【0244】
[0339]遊離塩基化合物Iの結晶形態AのXRPDデータを、
図1および表7に示す。
【0245】
【0246】
[0341]遊離塩基化合物Iの結晶形態AのDSCデータを
図2に示す。遊離塩基化合物Iの結晶形態AのDSCプロファイルは、開始温度約178.63℃、ピーク温度約179.64℃、関連エンタルピー104.20J/gの吸熱転移を示す。
【0247】
[0342]遊離塩基化合物Iの結晶形態AのTGAデータを
図3に示す。化合物I-マレイン酸塩のTGAプロファイルは、温度が160.00℃に達する前に約0.232%の重量損失を示す。
【0248】
[0343]遊離塩基化合物Iの結晶形態AのDVSデータを
図4に示す。
[0344]遊離塩基化合物Iの結晶形態Bの調製のための手順
[0345]方法1
[0346]化合物I-形態A(4g)およびエタノール(40mL)を反応器に充填し、撹拌を続けた。混合物を70℃に加熱し、固体が完全に溶解するまで撹拌した。溶液を0.1℃/分の速度で60℃に冷却した。化合物I-形態Bの種晶(0.02g、0.5%w/w)を溶液に加えた。種晶育成のために、溶液を60℃で70~80分間保持した。懸濁液を0.1℃/分で5℃に冷却し、5℃で一晩保持した。懸濁液を濾過し、フィルターケーキをオーブン内で5時間(50℃、真空)乾燥させて、結晶性化合物I-形態Bを得た(収率約80%)。
【0249】
[0347]方法2.
[0348]粗API(15kg)を48~55℃でアセトン/精製水(258L、9/1、v/v)に溶解して透明な溶液とした。水(51L)を48~55℃で加えた。混合物を1時間以内に38~42℃に調整した。化合物I-形態B結晶種(0.08kg、0.005、w/w)を38~42℃で充填し、少なくとも14時間撹拌した。水(268L)を38~42℃で滴下して充填し、少なくとも2時間撹拌した。混合物を20~25℃に冷却し、少なくとも2時間撹拌した。混合物を濾過し、ケーキをアセトン/精製水の混合物で洗浄した。ウェットケーキを45~50℃で少なくとも16時間乾燥させて、結晶性化合物I-形態B(14.1kg、収率94%)を得た。
【0250】
[0349]遊離塩基化合物Iの結晶形態BのXRPDデータを
図5および表8に示す。
【0251】
【0252】
[0351]遊離塩基化合物Iの結晶形態BのDSCデータを
図6に示す。遊離塩基化合物Iの結晶形態AのDSCプロファイルは、開始温度約194.84℃、ピーク温度約195.74℃、関連エンタルピー111.60J/gの吸熱転移を示す。
【0253】
[0352]遊離塩基化合物Iの結晶形態BのTGAデータを
図7に示す。化合物I-マレイン酸塩のTGAプロファイルは、温度が177.60℃に達する前に約0.166%の重量損失を示す。
【0254】
[0353]遊離塩基化合物Iの結晶形態BのDVSデータを
図8に示す。
[0354]形態Aおよび形態Bの物理的特性
【0255】
【0256】
【0257】
【0258】
[0358]形態Aおよび形態Bのインビトロ細胞ベースのアッセイ
【0259】
【0260】
[0360]形態Aおよび形態BのラットおよびイヌのPK研究
【0261】
【0262】
【0263】
実施例5
[0363]医薬塩の調製および化合物Iの塩のスクリーニング
[0364]異なる酸を用いた化合物Iを調製するための基本手順
[0365]50mgの化合物Iを2mLバイアルに秤量し、次に900μLのアセトンをバイアルに加えた。アセトンで(×10倍)希釈した対イオン酸(1.1当量)を、バイアルに加えた。バイアルをサーモミキサー上に置き、50℃に18時間加熱し、次に、バイアルを25℃に冷却した。25℃で1時間保持した後、懸濁液中の固体を遠心分離により単離し、真空オーブン内で30℃にて3時間乾燥させた。乾燥固体を、XRPDによって特徴付けた。上記で得られた乾燥固体をイソプロパノール中で25℃にて72時間再スラリー化に供した。懸濁液中の固体を遠心分離により単離し、真空オーブン内で30℃にて一晩乾燥させた。乾燥固体を、XRPD、TGA、およびDSCによって再度特徴付けた。
【0264】
【0265】
[0367]5.1:(R)-N-(5-((4-((5-クロロ-4-フルオロ-2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)-2-(3-(ジメチルアミノ)ピロリジン-1-イル)-4-メトキシフェニル)アクリルアミド塩酸塩(化合物I-塩酸塩)の調製
[0368]塩酸塩(アセトン溶液中での調製)
[0369]1800mgの化合物Iを、60℃で20.0mLのアセトンに懸濁した。60℃で1時間保つ。1.1当量塩酸のアセトン溶液(6.76mL、0.5mol/L)を懸濁液に滴加した。懸濁液を60℃で3時間保った。次に、懸濁液を25℃に冷却し、25℃で20時間保った。懸濁液を漏斗で濾過し、ウェットケーキを0.5mLのアセトンで洗浄した。湿った固体を真空オーブン内で30℃にて72時間乾燥させた。乾燥したオフホワイトの固体(1623.3mg、収率83.4%)が得られた。乾燥固体を、XRPD、TGA、DSC、およびDVSによって特徴付けた。塩酸塩の化合物Iに対する塩比は、IC試験によって決定した。測定された塩化物含有量は、1:1の塩比での理論上の塩化物含有量が5.72%であるのに対し、5.78%であった。
【0266】
[0370]化合物I-塩酸塩の結晶形態のXRPDデータを
図13および表16に示す。
【0267】
【0268】
[0372]化合物I-塩酸塩の結晶形態のTGAデータを
図20に示す。化合物I-塩酸塩のTGAプロファイルは、温度が175℃に達する前に約0.759%の重量損失を示す。
【0269】
[0373]化合物I-塩酸塩の結晶形態のDSCデータを
図20に示す。化合物I-塩酸塩の結晶形態のDSCプロファイルは、開始温度約207.77℃、ピーク温度約212.14℃、関連エンタルピー75.60J/gの吸熱転移を示す。
【0270】
[0374]化合物I-塩酸塩の結晶形態のDVSデータを
図23に示す。
[0375]5.2:(R)-N-(5-((4-((5-クロロ-4-フルオロ-2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)-2-(3-(ジメチルアミノ)ピロリジン-1-イル)-4-メトキシフェニル)アクリルアミドL-(+)-酒石酸塩(化合物I-L-(+)-酒石酸塩、パターンI)の調製
[0376]50mgの化合物Iを2mLバイアルに秤量し、次に900μLのアセトンをバイアルに加えた。アセトンで(×10倍)希釈したL-(+)-酒石酸(1.1当量)を、バイアルに加えた。バイアルをサーモミキサー上に置き、50℃に18時間加熱し、次に、バイアルを25℃に冷却した。25℃で1時間保持した後、懸濁液中の固体を遠心分離により単離し、真空オーブン内で30℃にて3時間乾燥させた。乾燥固体を、XRPDによって特徴付けた。上記で得られた乾燥固体をイソプロパノール中で25℃にて72時間再スラリー化に供した。懸濁液中の固体を遠心分離により単離し、真空オーブン内で30℃にて一晩乾燥させた。乾燥固体を、XRPD、TGA、およびDSCによって再度特徴付けた。
【0271】
[0377]化合物I-L-(+)-酒石酸塩(パターンI)の結晶形態の
1H-NMRデータを、
図31に示す。
[0378]化合物I-L-(+)-酒石酸塩(パターンI)の結晶形態のXRPDデータを、
図9および表17に示す。
【0272】
【0273】
[0380]化合物I-L-(+)-酒石酸塩(パターンI)の結晶形態のTGAデータを、
図15に示す。化合物I-L-(+)-酒石酸塩(パターンI)のTGAプロファイルは、温度が100℃に達する前に約2.52%の重量損失を示す。
【0274】
[0381]化合物I-L-(+)-酒石酸塩(パターンI)の結晶形態のDSCデータを、
図15に示す。
[0382]化合物Iの(+)-L-酒石酸塩(パターンI、アセトン中で調製)の結晶形態のDSCプロファイルは、開始温度約36.91℃、ピーク温度約56.29℃、関連エンタルピー44.43J/gの最初の吸熱転移、および開始温度約136.73℃、ピーク温度約140.18℃、関連エンタルピー19.53J/gの2回目の吸熱転移を示す。
【0275】
[0383]5.3:(R)-N-(5-((4-((5-クロロ-4-フルオロ-2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)-2-(3-(ジメチルアミノ)ピロリジン-1-イル)-4-メトキシフェニル)アクリルアミドフマル酸塩(化合物I-フマル酸塩)の調製
[0384]フマル酸塩(アセトン溶液中での調製)
[0385]1800mgの化合物Iを、60℃で25.0mLのアセトンに懸濁した。60℃で1時間保つ。フマル酸固体(392.3mg、1.1当量)を懸濁液に加えた。懸濁液を60℃で3時間保った。次に、懸濁液を25℃に冷却し、25℃で20時間保った。約5mgの種晶を溶液に加えた。溶液を25℃で42時間保った。懸濁液を漏斗で濾過し、ウェットケーキを0.5mLのアセトンで洗浄した。湿った固体を真空オーブン内で30℃にて72時間乾燥させた。乾燥した淡黄色の固体(1588.8mg、収率71.7%)が得られた。乾燥固体を、XRPD、TGA、DSC、およびDVSによって特徴付けた。
【0276】
[0386]フマル酸塩(エタノール溶液中での調製)
[0387]300mgの化合物Iを、60℃で5.0mLのアセトンに懸濁した。懸濁液を60℃で1時間保った。1.1当量フマル酸のエタノール溶液(1.7mL、0.33mol/L)を懸濁液に滴加した。懸濁液を60℃で3時間保った。次に、懸濁液を25℃に冷却し、25℃で20時間保った。懸濁液を漏斗で濾過し、ウェットケーキを0.5mLのエタノールで洗浄した。湿った固体を真空オーブン内で30℃にて72時間乾燥させた。乾燥したオフホワイトの固体(284.7mg、収率76.2%)が固体として得られた。1H-NMRにより決定された塩比=1.0:1.0(化合物I:フマル酸)。乾燥固体を、XRPD、TGA、DSC、およびDVSによって特徴付けた。
【0277】
[0388]化合物I-フマル酸塩の結晶形態の
1H-NMRデータを、
図29に示す。
[0389]化合物I-フマル酸塩の結晶のXRPDデータを
図10および表18に示す。
【0278】
【0279】
[0391]化合物I-フマル酸塩の結晶形態のTGAデータを、
図17に示す。化合物I-フマル酸塩のTGAプロファイルは、温度が55℃に達する前に約2.857%の重量損失を示し、55~140℃の温度範囲の間でさらに約2.424%の重量損失を示す。
【0280】
[0392]化合物I-フマル酸塩の結晶形態のDSCデータを、
図17に示す。化合物I-フマル酸塩の結晶形態のDSCプロファイルは、開始温度約48.86℃、ピーク温度約68.34℃、関連エンタルピー28.63J/gの吸熱転移、および開始温度約132.79℃、ピーク温度約141.78℃、関連エンタルピー27.78J/gの後の吸熱転移を示す。
【0281】
[0393]化合物I-フマル酸塩の結晶形態のDVSデータを、
図22に示す。
[0394]5.4:(R)-N-(5-((4-((5-クロロ-4-フルオロ-2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)-2-(3-(ジメチルアミノ)ピロリジン-1-イル)-4-メトキシフェニル)アクリルアミド硫酸塩(化合物I-硫酸塩)の調製
[0395]50mgの化合物Iを2mLバイアルに秤量し、次に900μLのアセトンをバイアルに加えた。アセトンで(×10倍)希釈した硫酸(1.1当量)を、バイアルに加えた。バイアルをサーモミキサー上に置き、50℃に18時間加熱し、次に、バイアルを25℃に冷却した。25℃で1時間保持した後、懸濁液中の固体を遠心分離により単離し、真空オーブン内で30℃にて3時間乾燥させた。乾燥固体を、XRPDによって特徴付けた。上記で得られた乾燥固体をイソプロパノール中で25℃にて72時間再スラリー化に供した。懸濁液中の固体を遠心分離により単離し、真空オーブン内で30℃にて一晩乾燥させた。乾燥固体を、XRPD、TGA、およびDSCによって再度特徴付けた。
【0282】
[0396]化合物I-硫酸塩の結晶形態のXRPDデータを
図11および表19に示す。
【0283】
【0284】
[0398]化合物I-硫酸塩の結晶形態のTGAデータを、
図18に示す。化合物I-硫酸塩のTGAプロファイルは、温度が120℃に達する前に約4.85%の重量損失を示す。
【0285】
[0399]化合物I-硫酸塩の結晶形態のDSCデータを、
図18に示す。化合物I-硫酸塩の結晶形態のDSCプロファイルは、開始温度約181.24℃、ピーク温度約195.93℃、関連エンタルピー11.87J/gの吸熱転移、および開始温度約210.59℃、ピーク温度約226.02℃、関連エンタルピー26.76J/gの後の吸熱転移を示す。
【0286】
[0400]5.5:(R)-N-(5-((4-((5-クロロ-4-フルオロ-2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)-2-(3-(ジメチルアミノ)ピロリジン-1-イル)-4-メトキシフェニル)アクリルアミドマレイン酸塩(化合物I-マレイン酸塩)の調製
[0401]50mgの化合物Iを2mLバイアルに秤量し、次に900μLのアセトンをバイアルに加えた。アセトンで(×10倍)希釈したマレイン酸(1.1当量)を、バイアルに加えた。バイアルをサーモミキサー上に置き、50℃に18時間加熱し、次に、バイアルを25℃に冷却した。25℃で1時間保持した後、懸濁液中の固体を遠心分離により単離し、真空オーブン内で30℃にて3時間乾燥させた。乾燥固体を、XRPDによって特徴付けた。上記で得られた乾燥固体をイソプロパノール中で25℃にて72時間再スラリー化に供した。懸濁液中の固体を遠心分離により単離し、真空オーブン内で30℃にて一晩乾燥させた。乾燥固体を、XRPD、TGA、およびDSCによって再度特徴付けた。
【0287】
[0402]化合物I-マレイン酸塩の結晶形態の
1H-NMRデータを、
図30に示す。
[0403]化合物I-マレイン酸塩の結晶形態のXRPDデータを
図12および表20に示す。
【0288】
【0289】
[0405]化合物I-マレイン酸塩の結晶形態のTGAデータを、
図19に示す。化合物I-マレイン酸塩のTGAプロファイルは、温度が100℃に達する前に約5.25%の重量損失を示す。
【0290】
[0406]化合物I-マレイン酸塩の結晶形態のDSCデータを、
図19に示す。
[0407]5.6:(R)-N-(5-((4-((5-クロロ-4-フルオロ-2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-2-イル)アミノ)-2-(3-(ジメチルアミノ)ピロリジン-1-イル)-4-メトキシフェニル)アクリルアミド酒石酸塩(化合物I-(+)-L-酒石酸塩、パターンII)の調製
[0408]L-(+)-酒石酸塩(パターンII、エタノール溶液中での調製)
[0409]300mgの化合物Iを、60℃で5.0mLのアセトンに懸濁した。懸濁液を60℃で1時間保った。1.1当量L-(+)-酒石酸のエタノール溶液(1.10mL、0.5mol/L)を懸濁液に滴加した。懸濁液を60℃で3時間保った。次に、懸濁液を25℃に冷却し、25℃で20時間保った。懸濁液を漏斗で濾過し、ウェットケーキを0.5mLのエタノールで洗浄した。湿った固体を真空オーブン内で30℃にて72時間乾燥させた。乾燥したオフホワイトの固体(303.0mg、収率78.0%)が得られた。
1H-NMRにより決定された塩比=1.0:1.0(化合物I:L-(+)-酒石酸塩)。乾燥固体を、XRPD、TGA、DSC、およびDVSによって特徴付けた。
【0291】
[0410]化合物I-L-(+)-酒石酸塩(パターンII)の結晶形態の
1H-NMRデータを、
図32に示す。
[0411]化合物I-L-(+)-酒石酸塩(パターンII)の結晶形態のXRPDデータを
図14および表21に示す。
【0292】
【0293】
[0413]化合物I-L-(+)-酒石酸塩(パターンII)の結晶形態のTGAデータを、
図16に示す。化合物I-L-(+)-酒石酸塩(パターンII)のTGAプロファイルは、温度が100℃に達する前に約3.587%の重量損失を示す。
【0294】
[0414]化合物I-L-(+)-酒石酸塩(パターンII)の結晶形態のDSCデータを、
図16に示す。化合物I-L-(+)-酒石酸塩(パターンII)の結晶形態のDSCプロファイルは、開始温度約64.62℃、ピーク温度約75.67℃、関連エンタルピー34.23J/gの吸熱転移、および開始温度約137.25℃、ピーク温度約140.39℃、関連エンタルピー17.53J/gの後の吸熱転移を示す。
【0295】
[0415]生体関連媒体における異なる化合物I塩の溶解度およびpH値
【0296】
【0297】
実施例6
[0416]化合物I、遊離塩基、形態B、錠剤(200mg)の溶解
[0417]化合物I(遊離塩基、形態B)錠剤は、ミリング処理条件(D50=0.8μmおよびD
90=3.3μm)および非ミリング処理条件(D
50=34.1μmおよびD
90=117.0μm)の両方を使用して製造した。異なるpH(1.2および4.5)での溶解プロファイルを、
図34および
図35に要約する。pH1.2では、85%超の化合物Iが15分で放出された。本開示の多形は、溶解速度の向上を示すことが分かる。
【0298】
[0418]錠剤は、以下の製造プロセスに従って製造した。
[0419]製剤には、希釈剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、流動促進剤およびコーティング材料が含まれていた。好ましい賦形剤は、微結晶セルロースラクトース、ラクトース一水和物、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムであった。コーティング材料はOpadry(登録商標)であった。微結晶セルロースの含有量は10%~70%、好ましくは20%~38%であり;ラクトース一水和物の含有量は15%~75%、好ましくは25%~40%であり;クロスカルメロースナトリウムの含有量は1%~18%、好ましくは2%~10%であり;ヒドロキシプロピルセルロースの含有量は1%~15%、好ましくは2%~8%であり;ステアリン酸マグネシウムおよびコロイド状二酸化ケイ素の含有量は0.25%~5%、好ましくは0.5%~3%であり;コーティング重量増加は1.5%~8%、好ましくは2%~5%であった。
【0299】
[0420]錠剤の製造
[0421]化合物I(遊離塩基、形態B)、ラクトース一水和物、コロイド状二酸化ケイ素、微結晶セルロース、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロースおよびステアリン酸マグネシウムの式量を秤量した。ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロースおよびコロイド状二酸化ケイ素を一緒にスクリーンに通した。化合物I、ラクトース一水和物、クロスカルメロースナトリウム、微結晶セルロースおよびステアリン酸マグネシウムをスクリーンに通した。顆粒外相(微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム)を除く、スクリーニングされた賦形剤を高剪断湿式造粒ボウルに充填し、ブレンドした。精製水をブレンド粉末に噴霧した。必要に応じて、追加の精製水を噴霧した。湿った材料は噴霧後も粒状化し続けた。湿った材料をスクリーンに通してして充填した。上記の材料を流動床に充填して乾燥させ、乾燥プロセスを乾燥減量によって監視した。乾燥顆粒をスクリーンに通してして充填した。ミリング処理顆粒、追加のクロスカルメロースナトリウムおよび微結晶セルロースをビンブレンダーに充填し、ブレンドした。次に、ステアリン酸マグネシウムをビンブレンダーに充填した。潤滑された混合物を圧縮して錠剤にした。
【0300】
[0422]錠剤のコーティング
[0423]12%(w/w)Opadry(登録商標)懸濁液を調製した。排気温度が約40~50℃に達するまでコア錠剤を予熱し、その後コーティングを開始した。コーティング重量増加が標的範囲に達するまで、コーティング溶液を噴霧した。噴霧終了後加熱を止め、コーティング錠剤を乾燥させて取り出した。
【0301】
【国際調査報告】