(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】筋肉及びCNSにおける遺伝子発現のためのハイブリッドプロモーター
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20240730BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240730BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240730BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20240730BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20240730BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240730BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240730BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240730BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240730BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240730BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240730BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240730BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240730BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20240730BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20240730BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20240730BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240730BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C12N15/113 Z
C12N15/09 Z ZNA
C12N15/864 100Z
C12N15/86 Z
C12N15/85 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K48/00
A61K35/12
A61K35/76
A61K31/7088
A61P21/04
A61P43/00 105
A61P25/00
A61P25/02
A61P21/00
A61P5/14
A61P3/00
A61P25/14
A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506767
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-01
(86)【国際出願番号】 EP2022072028
(87)【国際公開番号】W WO2023012313
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】503197304
【氏名又は名称】ジェネトン
(71)【出願人】
【識別番号】503119487
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・デヴリ・ヴァル・デソンヌ
(71)【出願人】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンスティチュート、ナシオナル、ドゥ、ラ、サンテ、エ、ドゥ、ラ、ルシェルシュ、メディカル
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DELA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジュセッペ・ロンツィッティ
(72)【発明者】
【氏名】ポーリーヌ・ヴィダル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA13
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4C087ZB11
4C087ZB21
4C087ZC06
4C087ZC21
(57)【要約】
本発明は、新規のハイブリッドプロモーターに関する。本発明は、前記ハイブリッドプロモーターを含有する発現カセット及びベクターに更に関する。これらハイブリッドプロモーターを実行する方法、特に遺伝子療法の方法もまた本明細書で開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに作動可能に連結された:
(i)1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー;
(ii)第1の筋肉選択的プロモーター、これは、CK6プロモーター又はその機能性変異体である;並びに
(iii)第2の筋肉選択的プロモーター、これは、spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、Acta1プロモーター、MCKプロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体からなる群において選択され、前記第2の筋肉選択的プロモーターは好ましくはspC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、Acta1プロモーター又はその機能性変異体であり、前記第2の筋肉選択的プロモーターは好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体である
を含む、核酸分子。
【請求項2】
第1の筋肉選択的プロモーターが、第2の筋肉選択的プロモーターの上流5'末端に位置する、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
5'から3'までこの順序で:
- 1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー;
- CK6プロモーター又はその機能性変異体である第1の筋肉選択的プロモーター;並びに
- 第2の筋肉選択的プロモーター、これは、好ましくはspC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、Acta1プロモーター又はその機能性変異体であり、第2の筋肉選択的エンハンサーは好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体である
を含む、請求項1又は2に記載の核酸分子。
【請求項4】
CK6プロモーターが、配列番号7若しくは配列番号35、好ましくは配列番号7に示されている配列、又は配列番号7若しくは配列番号35、好ましくは配列番号7と少なくとも80%同一の配列を有する機能性変異体からなる、請求項1から3のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項5】
第2の筋肉選択的プロモーターが、
- 配列番号4、5若しくは6、好ましくは配列番号6に示されている配列、又は配列番号4、5若しくは6、好ましくは配列番号6と少なくとも80%同一の配列を有する機能性変異体からなるspC5-12プロモーター;
- 配列番号33若しくは配列番号34、好ましくは配列番号33に示されている配列、又は配列番号33若しくは配列番号34、好ましくは配列番号33と少なくとも80%同一の配列を有する機能性変異体からなるCK8プロモーター;
- 配列番号7若しくは配列番号35、好ましくは配列番号7に示されている配列、又は配列番号7若しくは配列番号35、好ましくは配列番号7と少なくとも80%同一の配列を有する機能性変異体からなるCK6プロモーター;或いは
- 配列番号37に示されている配列、又は配列番号37と少なくとも80%同一の配列を有する機能性変異体からなるActa1プロモーター
である、請求項1から4のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項6】
肝臓選択的エンハンサーが、配列番号1、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42及び配列番号43からなる群において選択される配列、配列番号1、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27及び配列番号28から選択される配列のうちのいずれか1つと80%の同一性を有する機能性変異体を含む若しくはからなる;又は
- 複数の肝臓選択的エンハンサーが、配列番号1、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42及び配列番号43からなる群において選択される配列、配列番号1、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42及び配列番号43から選択される配列のうちのいずれか1つと80%の同一性を有する機能性変異体を含む又はからなる少なくとも1つの肝臓選択的エンハンサーを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項7】
複数の肝臓選択的エンハンサーのすべての肝臓選択的エンハンサーが同じ配列を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項8】
複数の肝臓選択的エンハンサーが、少なくとも2つの肝臓選択的エンハンサーを含み、複数の肝臓選択的エンハンサーが好ましくは3つの肝臓選択的エンハンサーを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項9】
肝臓選択的エンハンサーの配列が配列番号1からなるか、又は配列番号1と少なくとも80%同一の配列を有する機能性変異体である、請求項1から8のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項10】
核酸分子が、配列番号29、配列番号30、配列番号44、配列番号45若しくは配列番号46からなるか、又は配列番号30、配列番号44、配列番号45若しくは配列番号46と少なくとも80%同一の配列を有する機能性変異体である、請求項1から9のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項11】
目的の導入遺伝子に作動可能に連結された、請求項1から10のいずれか一項に記載の核酸分子を含む、発現カセット。
【請求項12】
特に前記ベクターがプラスミド又はウイルスベクターであり、前記ベクターが好ましくはアデノ-随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項11に記載の発現カセットを含むベクター。
【請求項13】
請求項11に記載の発現カセット又は請求項12に記載のベクターを含む、単離した組換え細胞。
【請求項14】
医薬として使用するための、請求項11に記載の発現カセット、請求項12に記載のベクター、又は請求項13に記載の細胞。
【請求項15】
神経筋障害が、好ましくは、筋ジストロフィー(例えば、筋緊張性ジストロフィー(スタイナート病)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、眼咽頭筋ジストロフィー、遠位筋ジストロフィー、エメリードレフュス型筋ジストロフィー、運動ニューロン疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(乳児進行性脊髄性筋萎縮症(1型、ウェルドニッヒホフマン病)、中間型脊髄性筋萎縮症(2型)、若年性脊髄性筋萎縮症(3型、クーゲルベルクウェランダー病)、成人脊髄性筋萎縮症(4型))、球脊髄性筋萎縮症(ケネディー病))、炎症性ミオパシー(例えば、多発性筋炎皮膚筋炎、封入体筋炎)、神経筋接合部の疾患(例えば、重症筋無力症、ランバートイートン(筋無力症)症候群、先天性筋無力症候群)、末梢神経の疾患(例えば、シャルコーマリートゥース病、フリードライヒ運動失調症、デジェリンソッタス病)、筋肉の代謝性疾患(例えば、ホスホリラーゼ欠損症(マックアードル病)、酸性マルターゼ欠損症(ポンペ病)、ホスホフルクトキナーゼ欠損症(垂井病)、脱分枝酵素欠損症(コリ病又はフォーブズ病)、ミトコンドリアミオパシー、カルニチン欠損症、カルニチンパルミチルトランスフェラーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸キナーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸ムターゼ欠損症、乳酸デヒドロゲナーゼ欠損症、ミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症)、内分泌異常によるミオパシー(例えば、甲状腺機能亢進性ミオパシー、甲状腺機能低下性ミオパシー)、及び他のミオパシー(例えば、先天性ミオトニー、先天性パラミオトニア、セントラルコア病、ネマリンミオパシー、筋細管ミオパシー、周期性四肢麻痺)からなる群から選択される、神経筋障害の処置に使用するための、請求項11に記載の発現カセット、請求項12に記載のベクター、又は請求項13に記載の細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋肉及びCNSにおける遺伝子発現を推進するためのハイブリッドプロモーターに関する。本発明は、前記ハイブリッドプロモーターを含有する発現カセット及びベクターに更に関する。これらハイブリッドプロモーターを実行する方法、特に遺伝子療法の方法もまた本明細書で開示されている。
【背景技術】
【0002】
筋肉と中枢神経系(CNS)の同時標的を必要とする神経筋障害は、in vivoベースの遺伝子療法に対する主な難題の1つを代表するものである。特に、それらを2つの組織へと効率的に変換するのに必要とされる高用量のベクターは、肝臓に毒性を誘発する可能性が高い。しかし、所望の標的組織における不十分な導入遺伝子発現及び抗導入遺伝子免疫は、依然として多くの疾患のための遺伝子療法の成功を達成する上で大きなハードルとなっている。したがって、目的の細胞への導入遺伝子の強い発現を、ただし、ベクターの潜在的毒性とベクターに対する免疫応答との両方を阻止するために、低用量のベクターで提供する必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2020/208032
【特許文献2】WO2009/130208
【特許文献3】特許出願EP17306448.6
【特許文献4】特許出願EP17306447.8
【特許文献5】EP18305399
【特許文献6】WO2019/193119
【特許文献7】WO2020/200499
【特許文献8】WO2022053630
【特許文献9】WO2020/216861
【特許文献10】WO2022/003211
【特許文献11】WO2021/219762
【特許文献12】WO2005/118792
【特許文献13】出願PCT/2017/072942
【特許文献14】出願PCT/EP2017/072945
【特許文献15】出願PCT/EP2017/072944
【特許文献16】EP18306088
【特許文献17】WO2018162748
【特許文献18】WO2018046772
【特許文献19】WO2018046774
【特許文献20】WO2018046775
【特許文献21】WO2015158924
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Carrieriら、2012年、Nature 491巻: 454~7頁
【非特許文献2】Zucchelliら、2015年、RNA Biol、12巻(8号):771~9頁
【非特許文献3】Indrieriら、2016年、Sci Rep、6巻: 27315頁
【非特許文献4】Chuahら、Molecule Therapy、2014年、22巻、9号、1605~1613頁
【非特許文献5】Wangら、Gene Therapy、15巻、1489~1499頁(2008年)
【非特許文献6】Lingら、2016年7月18日、Hum Gene Ther Methods.
【非特許文献7】Vercauterenら、2016年、Mol. Ther.、24巻(6号)、1042頁
【非特許文献8】Rosarioら、2016年、Mol Ther Methods Clin Dev. 3、16026頁
【非特許文献9】McCartyら、Gene Therapy、2003年
【非特許文献10】Wu Z.ら、Mol Ther.、2010年、18巻(1号): 80~86頁
【非特許文献11】Lai Y.ら、Mol Ther.、2010年、18巻(1号): 75~79頁
【非特許文献12】Wang Y.ら、Hum Gene Ther Methods、2012年、23巻(4号): 225~33頁
【非特許文献13】「Remington's Pharmaceutical Sciences」、E. W. Martin
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)はin vivo遺伝子療法のために選択されるベクターである。AAV遺伝子療法において使用されている導入遺伝子発現カセットは異なる要素、例えば、標的細胞内の目的の遺伝子の発現の有効性及び特異性のモジュレーションを可能にするエンハンサー及びプロモーターを含んでもよい。構成的プロモーター、例えば、CMV又はCAGは強い発現を誘発するが、組織特異性を欠き、導入遺伝子に対する免疫応答を推進する可能性が高い。
【0006】
ここで、発明者らは、筋肉及びCNSにおける特異的な強い発現を可能にし、肝臓を標的とすることを減少させ、これによって免疫性/有毒性応答の危険性を減少させるハイブリッドプロモーターの同定について記載する。よって本発明のハイブリッドプロモーターは、投与されるベクターの用量を減少させる、又は同等の用量でより強い発現を得ることを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、肝臓を標的とすることなく、筋肉/CNS特異性を有する新規のハイブリッドプロモーターを実行する遺伝子操作戦略を提供する。これらのハイブリッドプロモーターは神経筋疾患の遺伝子療法に使用することができる。これら新規のハイブリッドプロモーターは、1種又は複数の肝臓選択的エンハンサーを、2種の筋肉選択的プロモーターと組み合わせて使用することに基づく。特定の実施形態では、新規ハイブリッドプロモーターは以下の組合せに基づく:(i)1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー、(ii)CK6プロモーター又はその機能性変異体である第1の筋肉特異的エンハンサー、及び(iii)第2の筋肉選択的プロモーター、これはspC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体からなる群において選択され、この第2の筋肉選択的プロモーターは好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体である。
【0008】
驚くことに、このようなハイブリッドプロモーターは、肝臓を標的とすることなく、筋肉及び脊髄において導入遺伝子の強い発現をもたらすことが本明細書で示されている。
【0009】
WO2020/208032は、1種又は複数の肝臓選択的エンハンサーと融合した場合の、筋肉選択的プロモーターの導入遺伝子発現の改善について記載している。驚くことに、同じ発現カセット内の肝臓選択的エンハンサーと、第1の筋肉選択的プロモーター及び第2の筋肉選択的プロモーターとの組合せは、以下と比較した場合、相乗効果をもたらすことが本明細書で示されている:
- 肝臓選択的エンハンサーと、第1の筋肉選択的プロモーターとの組合せから生成される発現;及び
- 肝臓選択的エンハンサーと、第2の筋肉選択的プロモーターとの組合せから生成される発現。
【0010】
したがって、本発明の第1の態様は、互いに作動可能に連結された以下の転写調節エレメントを含む核酸分子に関する:
(i)1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー;
(ii)第1の筋肉選択的プロモーター、これはCK6プロモーター又はその機能性変異体である;並びに
(iii)第2の筋肉選択的プロモーター、これはspC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、Acta1プロモーター、MCKプロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体からなる群において選択され、第2の筋肉選択的プロモーターは、好ましくはspC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、Acta1プロモーター又はその機能性変異体であり、第2の筋肉選択的プロモーターは、より好ましくはspC5-12プロモーター、CK6プロモーター又はその機能性変異体であり、第2の筋肉選択的プロモーターは更により好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体である。
【0011】
特定の実施形態では、核酸分子は、5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 1種若しくは複数の肝臓選択的エンハンサー、第1の筋肉選択的プロモーター、及び第2の筋肉選択的プロモーター;
又は
- 1種若しくは複数の肝臓選択的エンハンサー、第2の筋肉選択的プロモーター、及び第1の筋肉選択的プロモーター。
【0012】
特定の実施形態では、第1の筋肉選択的プロモーター(すなわちCK6又はその機能性変異体)は、第2の筋肉選択的プロモーターの上流5'末端に位置する。より特定の実施形態では、CK6プロモーター又はその機能性変異体は、spc5.12プロモーター又はその機能性変異体の上流5'末端に位置する。より特定の実施形態では、CK6プロモーター又はその機能性変異体は、CK8プロモーター又はその機能性変異体の上流5'末端に位置する。より特定の実施形態では、CK6プロモーター又はその機能性変異体は、第2のCK6プロモーター又はその機能性変異体の上流5'末端に位置する。より特定の実施形態では、CK6プロモーター又はその機能性変異体はActa1プロモーター又はその機能性変異体の上流5'末端に位置する。
【0013】
特定の実施形態では、核酸分子は5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー、
- CK6プロモーター又はその機能性変異体、及び
- spC5-12プロモーター若しくはその機能性変異体;CK8プロモーター若しくはその機能性変異体;CK6プロモーター若しくはその機能性変異体;又はActa1プロモーター若しくはその機能性変異体。
【0014】
特定の実施形態では、核酸分子は、5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー
- CK6プロモーター又はその機能性変異体、及び
- spC5-12プロモーター又はその機能性変異体。
【0015】
更に特定の実施形態では、CK6プロモーターは、配列番号7若しくは配列番号35、好ましくは配列番号7に示されている配列、又は配列番号7若しくは配列番号35と、好ましくは配列番号7と少なくとも80%同一、例えば、配列番号7若しくは配列番号35と、好ましくは配列番号7と、少なくとも85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは更に少なくとも99%同一の配列を有する機能性変異体からなる。
【0016】
更に特定の実施形態では、spC5-12プロモーターは、配列番号4、5若しくは6に示されている配列、又は配列番号4、5若しくは6と少なくとも80%同一、例えば、配列番号4、5若しくは6と少なくとも85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは更に少なくとも99%同一の配列を有する機能性変異体からなる。好ましくは、spC5-12プロモーターは、配列番号6に示されている配列、又は配列番号6と少なくとも80%同一、例えば、配列番号6と少なくとも85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは更に少なくとも99%同一の配列を有する機能性変異体からなる。
【0017】
更に特定の実施形態では、CK8プロモーターは、配列番号33若しくは34に示されている配列、又は配列番号33若しくは34と少なくとも80%同一、例えば、配列番号33若しくは34と、少なくとも85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは更に少なくとも99%同一の配列を有する機能性変異体からなる。好ましくは、CK8プロモーターは、配列番号33に示されている配列、又は配列番号33と少なくとも80%同一、例えば、配列番号33と少なくとも85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは更に少なくとも99%同一の配列を有する機能性変異体からなる。
【0018】
更に特定の実施形態では、Acta1プロモーターは、配列番号37に示されている配列、又は配列番号37と少なくとも80%同一、例えば、配列番号37と少なくとも85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは更に少なくとも99%同一の配列を有する機能性変異体からなる。
【0019】
更に特定の実施形態では、核酸分子は、筋肉選択的プロモーターに作動可能に連結された1つの肝臓選択的エンハンサーを含む。別の実施形態では、核酸分子は、筋肉選択的プロモーターに作動可能に連結された複数の肝臓選択的エンハンサーを含む。特定の実施形態では、複数の肝臓選択的エンハンサーは少なくとも2つの肝臓選択的エンハンサーを含む。更なる実施形態では、複数の肝臓選択的エンハンサーは3つの肝臓選択的エンハンサーを含む。特定の実施形態では、核酸分子は、1、2又は3つの肝臓選択的エンハンサーを含み、より具体的には3つの肝臓選択的エンハンサーを含む。特定の実施形態では、複数の肝臓選択的エンハンサーのすべての肝臓選択的エンハンサーは同じ配列を有する。特定の実施形態では、複数の肝臓選択的エンハンサーは同じ配列を有する3つの肝臓選択的エンハンサーを含む。更に特定の実施形態では、複数の肝臓選択的エンハンサーは、同じ配列を有する3つの肝臓選択的エンハンサーを含み、前記配列は、配列番号1を含む又はからなる。
【0020】
好ましくは、肝臓選択的エンハンサーは、配列番号1、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42及び配列番号43からなる群において選択される配列、又は配列番号1、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42及び配列番号43から選択される配列のうちのいずれか1つと80%の同一性、例えば、少なくとも85%、特に少なくとも90%、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは更に少なくとも99%の同一性を有する機能性変異体を含む若しくはからなる;又は
- 複数の肝臓選択的エンハンサーは、配列番号1、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42及び配列番号43からなる群において選択される配列、又は配列番号1、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42及び配列番号43から選択される配列のうちのいずれか1つと80%の同一性、例えば少なくとも85%、特に少なくとも90%、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは更に少なくとも99%の同一性を有する機能性変異体を含む若しくはからなる少なくとも1つの肝臓選択的エンハンサーを含む
【0021】
好ましい実施形態では、肝臓選択的エンハンサーの配列は、配列番号1、又は配列番号1と少なくとも80%同一、例えば、少なくとも85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは更に少なくとも99%配列番号1と同一の配列を有する機能性変異体を含む若しくはからなる。より好ましい実施形態では、複数の肝臓選択的エンハンサーは、配列番号1の3回の繰返し、又は配列番号1と少なくとも80%同一、例えば、配列番号1と少なくとも85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは更に少なくとも99%同一の配列を有する機能性変異体の3回の繰返しからなる。
【0022】
特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、配列番号29、配列番号30、配列番号44、配列番号45若しくは配列番号46からなる、又は配列番号29、配列番号30、配列番号44、配列番号45若しくは配列番号46と少なくとも80%同一、例えば、少なくとも85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは更に少なくとも99%同一の配列を有する機能性変異体である。
【0023】
本発明のハイブリッドプロモーターは、目的の導入遺伝子に作動可能に連結されていてもよい。したがって、本発明は、目的の導入遺伝子に作動可能に連結された、本明細書に記載されている核酸分子を含む発現カセットに更に関する。
【0024】
本発明は、上記の発現カセットを含むベクターに更に関する。特定の実施形態では、ベクターはプラスミドベクターである。別の実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。代表的なウイルスベクターとしては、限定なしで、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター及びパルボウイルスベクター、例えば、AAVベクターが挙げられる。特定の実施形態では、ウイルスベクターはAAVベクター、例えば、AAV8又はAAV9カプシドを含むAAVベクターである。
【0025】
本発明はまた、本発明による核酸構築物又は発現カセット又はベクターを含む単離した組換え細胞に関する。
【0026】
本発明は、薬学的に許容される担体、本発明のベクター又は単離した細胞を含む医薬組成物に更に関する。
【0027】
更に、本発明はまた、医薬として使用するための、本明細書に開示されている発現カセット、ベクター又は単離した細胞に関する。本態様では、発現カセット、ベクター又は単離した細胞に含まれる目的の導入遺伝子は治療用導入遺伝子である。
【0028】
本発明は、遺伝子療法において使用するための、本明細書に開示されている発現カセット、ベクター又は単離した細胞に更に関する。
【0029】
別の態様では、本発明は、神経筋障害の処置に使用するための、本明細書に開示されている発現カセット、ベクター又は単離した細胞に関する。
【0030】
特に、神経筋障害は、筋ジストロフィー(例えば、筋緊張性ジストロフィー(スタイナート病)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、眼咽頭筋ジストロフィー、遠位筋ジストロフィー、エメリードレフュス型筋ジストロフィー、運動ニューロン疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(乳児進行性脊髄性筋萎縮症(1型、ウェルドニッヒホフマン病)、中間型脊髄性筋萎縮症(2型)、若年性脊髄性筋萎縮症(3型、クーゲルベルクウェランダー病)、成人脊髄性筋萎縮症(4型))、球脊髄性筋萎縮症(ケネディー病)、炎症性ミオパシー(例えば、多発性筋炎皮膚筋炎、封入体筋炎)、神経筋接合部の疾患(例えば、重症筋無力症、ランバートイートン(筋無力症)症候群、先天性筋無力症候群)、末梢神経の疾患(例えば、シャルコーマリートゥース病、フリードライヒ運動失調症、デジェリンソッタス病)、筋肉の代謝性疾患(例えば、ホスホリラーゼ欠損症(マックアードル病)、酸性マルターゼ欠損症(ポンペ病)、ホスホフルクトキナーゼ欠損症(垂井病)、脱分枝酵素欠損症(コリ病又はフォーブズ病)、ミトコンドリアミオパシー、カルニチン欠損症、カルニチンパルミチルトランスフェラーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸キナーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸ムターゼ欠損症、乳酸デヒドロゲナーゼ欠損症、ミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症)、内分泌異常によるミオパシー(例えば、甲状腺機能亢進性ミオパシー、甲状腺機能低下性ミオパシー)、及び他のミオパシー(例えば、先天性ミオトニー、先天性パラミオトニア、セントラルコア病、ネマリンミオパシー、筋細管ミオパシー、周期性四肢麻痺)からなる群から選択することができる。
【0031】
更に特定の実施形態では、疾患はコリ病であり、目的の導入遺伝子は、GDE、例えば、短縮形態のGDEである。別の特定の実施形態では、疾患はポンペ病である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】(A)エンハンサー/プロモーターの組合せ(P1~P5)の概略的表示である。
【
図2】in vivoプロトコールのスキームである。マウスには、0日において、P1、P3又はP4の転写制御下でネズミ分泌アルカリホスファターゼ(mSeAP)をコードしているAAVベクターを注入し、ベクター注射から1カ月後に屠殺した。
【
図3】エンハンサー/プロモーター(P1、P3又はP4)の異なる組合せを保持するAAVベクターはin vivoで類似の形質導入の有効性を有する。注入したマウス組織からDNAを抽出し、肝臓及び大腿四頭筋におけるqPCRにより形質導入効率を定量化した。データは細胞1個当たりのベクターゲノムコピー数(VGCN)として表現されている。
【
図4】A)肝臓、B)筋肉(心臓、横隔膜、大腿四頭筋及び三頭筋)及びC)脊髄におけるmSEAPの発現である。データは、組織において定量化された、mSeAPの全タンパク質に対する比として表現されている。統計分析はANOVAで実施した。*=p<0.05対PBS。
【
図5】in vivoプロトコールのスキームである。マウスには、0日において、P1~P5の転写制御下で酸-α-グルコシダーゼ(GAA)をコードしているAAVベクターを注入し、ベクター注射から1カ月後に屠殺した。
【
図6】エンハンサー/プロモーター(P1~P5)の異なる組合せを保持するAAVベクターはin vivoで類似の形質導入の有効性を有する。注入したマウス組織からDNAを抽出し、形質導入効率を心臓においてqPCRにより定量化した。データは細胞1個当たりのベクターゲノムコピー数(VGCN)として表現されている。
【
図7】心臓におけるGAAの発現A)、定量化B)、ウエスタンブロット法C)である。データは、心臓において定量化した、GAAの全タンパク質に対する比として表現されている。統計分析をANOVAで実施した。*=p<0.05対PBS。
【
図8】四頭筋におけるGAAの発現A)、定量化B)、ウエスタンブロット法C)である。データは、四頭筋において定量化した、GAAの全タンパク質に対する比として表現されている。統計分析をANOVAで実施した。*=p<0.05対PBS。
【
図9】(A)エンハンサー/プロモーターの組合せ(P1~P3)の概略的表示である。(B)in vivoプロトコールのスキームである。マウスには、0日において、P1~P3の転写制御下で酸-α-グルコシダーゼ(GAA)をコードしているAAVベクターを注入し、ベクター注射から1カ月後に屠殺した。
【
図10】(A)心臓におけるベクターゲノムコピー数(VGCN)である。心臓(B~C)及び四頭筋(D~E)における、ウエスタンブロット法で定量化したGAA発現である。データは、心臓及び四頭筋において定量化した、GAAのビンキュリンに対する比として表現されている。統計分析をANOVAで実施した。*=p<0.05対PBS。
【
図11】(A)エンハンサー/プロモーターの組合せ(P1~P4)の概略的表示である。(B)in vivoプロトコールのスキームである。マウスには、0日において、P1~P4の転写制御下で酸-α-グルコシダーゼ(GAA)をコードしているAAVベクターを注入し、ベクター注射から1カ月後に屠殺した。
【
図12】(A)心臓におけるベクターゲノムコピー数(VGCN)である。ウエスタンブロット法で定量化した、四頭筋におけるGAA発現である(B)。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義
本発明の文脈で、「転写調節エレメント」とは、組織又は細胞内での導入遺伝子の発現を推進又は増強することができるDNA配列である。
【0034】
本発明の文脈で、「肝臓選択的エンハンサー」という表現は、天然又は合成の肝臓選択的エンハンサーを含む。加えて、「筋肉選択的プロモーター」という表現は、天然又は合成の筋肉選択的プロモーターを含む。
【0035】
本発明によると、組織選択性とは、転写調節エレメントが、所与の組織、又は一連の組織における前記転写調節エレメントに作動可能に連結された遺伝子の発現を、別の組織における発現と比較して、優先的に推進する(プロモーターの場合)又は増強する(エンハンサーの場合)ことを意味する。この「組織選択性」の定義は、組織選択的転写調節エレメント(例えば、筋肉選択的プロモーター)がある程度漏出する可能性を排除しない。「漏出する」、「漏出すること」又はその逸脱とは、筋肉選択的プロモーターが、前記プロモーターに作動可能に連結された導入遺伝子の別の組織への発現を、より低い発現レベルではあるが、推進又は増加させる可能性を意味する。例えば、筋肉選択的プロモーターが肝臓組織内で漏出し得るとは、このプロモーターにより推進される発現が、肝臓組織内よりも、筋肉組織内でより高いことを意味する。或いは、組織選択的転写調節エレメントは、「組織特異的な」転写調節エレメントであってよく、この転写調節エレメントは、所定の組織、又は一連の組織における発現を、優先的な方式で推進又は増強するだけでなく、この調節エレメントは、他の組織での発現を推進又は増強しない、又はわずかしか推進又は増強しないことを意味する。
【0036】
「肝臓選択的エンハンサー」という表現は、肝臓における導入遺伝子の発現を増強するのに特に有効なエンハンサーを表す。例えば、Chuaらは、肝臓選択的転写のモジュールの同定を可能にするゲノム全般のin silico法について記載している(Chuaら、2014 Molecular Therapy、22巻、9号、1605~1613頁)。特に、肝臓-特異的エンハンサーはChuaらにおいて定義されている通りである。特に、肝臓選択的エンハンサーは高発現の肝臓特異的プロモーターに関連するcis-調節モジュールである。特に、肝臓特異的エンハンサーは、強力な肝細胞特異的表現に関連する進化上保存された転写因子結合部位モチーフのクラスターを含有するcis-調節モジュールである。
【0037】
本発明によると、「目的の導入遺伝子」とは、RNA又はタンパク質生成物をコードし、探究された目的のため細胞へと導入され得、適当な条件下で発現することが可能なポリヌクレオチド配列を指す。目的の導入遺伝子は、目的の生成物、例えば、目的の治療用又は診断用生成物をコードすることができる。特定の実施形態では、目的の導入遺伝子は、治療用導入遺伝子、すなわち目的の治療用製品をコードする導入遺伝子である。治療用導入遺伝子は、所望の治療結果をもたらすように、特に、前記治療用の導入遺伝子の発現が必要とされる細胞、組織又は器官への前記治療用導入遺伝子の発現を達成するために選択及び使用される。療法は、前記タンパク質を発現しない細胞にタンパク質を発現させることによる、変異型のタンパク質を発現する細胞にタンパク質を発現させることによる、タンパク質が発現される標的細胞に対して毒性を持つタンパク質を発現させることによる(例えば、がん細胞等の望ましくない細胞を死滅させるために使用される戦略)、遺伝子抑制若しくはエキソンスキッピングを誘発させるアンチセンスRNAを発現させることによる、又はその目的がタンパク質の発現を抑制することである、shRNA若しくはマイクロRNA等のサイレンシングRNAを発現させることによる方式を含むいくつかの方式で達成することができる。目的の導入遺伝子はまた、標的のゲノム操作のためのヌクレアーゼ、例えば、CRISPR関連タンパク質9(Cas9)エンドヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ又は転写活性因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)をコードすることができる。目的の導入遺伝子はまた、CRISPR/Cas9システムと一緒に使用するためのガイドRNA又は一連のガイドRNAであってもよいし、又はあらかじめ記載されているようなヌクレアーゼと共に、標的とするゲノム操作戦略において使用するための補正マトリックスであってもよい。目的の他の導入遺伝子としては、限定なしで、合成の長いノンコーディングRNA(SINEUP;Carrieriら、2012年、Nature 491巻: 454~7頁;Zucchelliら、2015年、RNA Biol、12巻(8号):771~9頁;Indrieriら、2016年、Sci Rep、6巻: 27315頁)及び人工ミクロRNAが挙げられる。本発明の実施に有用な、目的の他の特異的導入遺伝子は以下に記載されている。
【0038】
一般的に「作動可能に連結された」とは、核酸配列が別の核酸配列と機能的な関係になるように配置され、これによって各核酸配列がその意図した機能を発揮できるようにすることを意味する。作動可能に連結された2つの配列は、互いに直接融合していても、又はリンカー配列を介して結合していてもよい。
【0039】
「機能性変異体」という用語は、目的の核酸分子の「機能的誘導体」、「断片」、「アナログ」、又は「ホモログ」を指し、これらは前記目的の核酸分子の生物活性を少なくとも部分的に保持する。機能性変異体は目的の核酸分子の活性の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である活性を有することができる。例えば、目的の筋肉選択的プロモーターの機能性変異体は、前記筋肉選択的プロモーターの活性の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の活性を有する変異体であり、この活性は筋肉内の特定の導入遺伝子の転写を増強させる能力に相当する。
【0040】
「同一」という用語及びそれから派生する語は、2個の核酸分子の間の配列同一性を指す。比較した2つの配列の両方におけるある位置が同じ塩基で占有されていた場合、分子はその位置で同一である。2つの配列の間の同一性のパーセントは、2つの配列で共有している一致する位置の数を、比較した位置の数で割ったもの×100という関数である。例えば、2つの配列において、10の位置のうちの6つが一致した場合、2つの配列は60%同一である。一般的に、最大同一性が得られるように2つの配列がアラインされている場合、比較は行われる。当業者に公知の様々なバイオインフォーマティックスツール、例えば、BLAST又はFASTA等を使用して、核酸配列をアラインすることができる。
【0041】
本発明によると、「処置」という用語は、治癒的、軽減又は予防的効果を含む。したがって、治療的及び予防的処置は、障害の症状の改善、又は特定の障害を発症する危険性を防止すること、さもなければ減少させることを含む。処置は、疾患の進行及び/又はその症状の1種若しくは複数を遅延、減速又は逆転するために投与することができる。「予防的」という用語は、特定の状態の重症度又は開始を減少させると考えることができる。「予防的」とはまた、以前に特定の状態であると診断された患者において、その状態の再発を阻止することを含む。「治療的」とはまた、既存の状態の重症度の減少を指すこともできる。「治療量」とは、障害を患っている患者に投与した場合、障害の症状に定性的又は定量的減少を引き起こすのに十分な量を意味する。
【0042】
本発明の文脈で処置される対象とは、動物であり、特に哺乳動物であり、より具体的にはヒト対象である。特定の実施形態では、前記哺乳動物は、乳児又は成人対象、例えば、本明細書に記載されているヒト乳児又はヒト成人であってよい。
【0043】
「治療的関心対象の細胞」又は「治療的関心対象の組織」とは、本明細書では、治療用導入遺伝子の発現が障害の処置に対して有用である主な細胞又は組織を意味する。本発明において、目的の組織は筋肉組織及び/又はCNS組織である。
【0044】
他に定義されない限り、本明細書で使用されているすべての技術用語及び科学用語は、本出願が属する技術分野の当業者により共通して理解されている意味と同じ意味を有する。
【0045】
ハイブリッドプロモーター
本発明の発明者らは、肝臓を標的とすることを減少させ、遺伝子療法ベクターのサイズ制約、例えば、AAVベクターのサイズ制約に適合しながら、筋肉及びCNSにおける遺伝子療法の有効性を増加させるため、本明細書で「ハイブリッドプロモーター」とも呼ばれる転写調節エレメントの組合せを設計した。
【0046】
本発明の核酸分子は、互いに作動可能に連結された以下の転写調節エレメントを含む:1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー及び2種の筋肉特異的プロモーター。
【0047】
特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、互いに作動可能に連結された以下の転写調節エレメントを含む:
(i)1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー;
(ii)第1の筋肉選択的プロモーター、これはCK6プロモーター又はその機能性変異体である;並びに
(iii)第2の筋肉選択的プロモーター、これはspC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体からなる群において選択され、この第2の筋肉選択的プロモーターは好ましくはspC5-12プロモーター若しくはCK6プロモーター、又はその機能性変異体であり、この第2の筋肉選択的プロモーターはより好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体である。
【0048】
肝臓選択的エンハンサー又は複数の肝臓選択的エンハンサーは、当業者に公知の肝臓選択的エンハンサーから選択することができる。特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、1種の、及び1種のみの肝臓選択的エンハンサーを含む。本実施形態では、肝臓選択的エンハンサーのサイズは、10~500ヌクレオチド、例えば、10~175ヌクレオチド、特に40~100ヌクレオチド、特に50~80ヌクレオチド、より特には70~75ヌクレオチドであってよい。別の実施形態では、複数の肝臓選択的エンハンサーが導入される場合、複数の肝臓選択的エンハンサーの組合せのサイズは、10~500ヌクレオチド、例えば、40~400ヌクレオチド、特に70~250ヌクレオチドであってよい。好ましい実施形態では、肝臓選択的エンハンサー又は複数の肝臓選択的エンハンサーに相当する配列のサイズは50~450pbの長さを有する。特定の実施形態では、肝臓選択的エンハンサー又は複数の肝臓選択的エンハンサーに相当する配列のサイズは、少なくとも50pb、例えば、少なくとも100pb、少なくとも150pb、少なくとも200pb又は少なくとも250pbの長さを有する。特定の実施形態では、肝臓選択的エンハンサーは、肝細胞において選択的に発現する遺伝子のcisに位置する自然発生のエンハンサーである。更に特定の実施形態では、肝臓選択的エンハンサーは人工の肝臓選択的エンハンサーであってもよい。
【0049】
本発明の実施に有用な例示的人工の肝臓選択的エンハンサーとしては、限定なしで、Chuahら、Molecule Therapy、2014年、22巻、9号、1605頁に開示されたもの、特に、HS-CRM1(配列番号:16)、HS-CRM2(配列番号17)、HS-CRM3(配列番号18)、HS-CRM4(配列番号19)、HS-CRM5(配列番号20)、HS-CRM6(配列番号21)、HS-CRM7(配列番号22)、HS-CRM8(配列番号1)、HS-CRM9(配列番号23)、HS-CRM10(配列番号24)、HS-CRM11(配列番号25)、HS-CRM12(配列番号26)、HS-CRM13(配列番号27)及びHS-CRM14(配列番号28)からのものが挙げられる。特定の実施形態では、肝臓選択的エンハンサーは、HS-CRM1、HS-CRM2、HS-CRM3、HS-CRM5、HS-CRM6、HS-CRM7、HS-CRM8、HS-CRM9、HS-CRM10、HS-CRM11、HS-CRM13及びHS-CRM14からなる群において選択され得る。更に特定の実施形態では、肝臓選択的エンハンサーは、HS-CRM2、HS-CRM7、HS-CRM8、HS-CRM11、HS-CRM13及びHS-CRM14からなる群において選択され得る。
【0050】
本発明の実施に有用な他の例示的肝臓選択的エンハンサーは、アポリポタンパク質Eエンハンサー(配列番号39に示されているApoE-エンハンサー配列)を含む。
【0051】
特定の実施形態では、肝臓選択的エンハンサーは配列番号39からなるApo-Eエンハンサー、又は肝臓選択的エンハンサー活性を有する配列番号39の機能性変異体である。別の実施形態では、肝臓選択的エンハンサーは配列番号39と少なくとも80%同一、例えば、配列番号39と少なくとも85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は更に少なくとも99%同一のApo-Eエンハンサーの機能性変異体であり、前記機能性変異体は肝臓選択的エンハンサー活性を有する。
【0052】
本発明の実施に有用な他の例示的肝臓選択的エンハンサーは、エンハンサーA3(配列番号40)、エンハンサーF(配列番号41)、エンハンサーS1(配列番号42)及びエンハンサーS2(配列番号43)を含み、これらはWO2009/130208に記載されている(WO2009/130208、30ページの表IIIを参照せよ)。
【0053】
特定の実施形態では、肝臓選択的エンハンサーはApoH遺伝子の発現(ゲノムの位置配列:chr17:61597650-61598200)を調節するエンハンサーA3である。特定の実施形態では、肝臓選択的エンハンサーは、配列番号40からなるエンハンサーA3、又は肝臓選択的エンハンサー活性を有する配列番号40の機能性変異体である。別の実施形態では、肝臓選択的エンハンサーは、配列番号40と少なくとも80%同一、例えば、少なくとも85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には、配列番号40と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は更に少なくとも99%同一のエンハンサーA3の機能性変異体であり、ここで前記機能性変異体は肝臓選択的エンハンサー活性を有する。
【0054】
特定の実施形態では、肝臓選択的エンハンサーは、FGA遺伝子(ゲノムの位置配列:chr4:155869502-155869575)の発現を調節するエンハンサーFである。特定の実施形態では、肝臓選択的エンハンサーは、配列番号41からなるエンハンサーF、又は肝臓選択的エンハンサー活性を有する配列番号41の機能性変異体である。別の実施形態では、肝臓選択的エンハンサーは、配列番号41と少なくとも80%同一、例えば、配列番号41と少なくとも85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は更に少なくとも99%同一のエンハンサーFの機能性変異体であり、前記機能性変異体は肝臓選択的エンハンサー活性を有する。
【0055】
特定の実施形態では、肝臓選択的エンハンサーは、セルピンA1遺伝子(ゲノムの位置配列:chr14:93891375-93891462)の発現を調節するエンハンサーS1である。特定の実施形態では、肝臓選択的エンハンサーは、配列番号42からなるエンハンサーS1、又は肝臓選択的エンハンサー活性を有する配列番号42の機能性変異体である。別の実施形態では、肝臓選択的エンハンサーは、配列番号42と少なくとも80%同一、例えば、配列番号42と少なくとも85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は更に少なくとも99%同一のエンハンサーS1の機能性変異体であり、前記機能性変異体は肝臓選択的エンハンサー活性を有する。
【0056】
特定の実施形態では、肝臓選択的エンハンサーは、セルピンA1遺伝子(ゲノムの位置配列:chr14:93897160-93897200)の発現を調節するエンハンサーS2である。特定の実施形態では、肝臓選択的エンハンサーは、配列番号43からなるエンハンサーS2、又は肝臓選択的エンハンサー活性を有する配列番号43の機能性変異体である。別の実施形態では、肝臓選択的エンハンサーは、配列番号43と少なくとも80%同一、例えば、配列番号43と少なくとも85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は更に少なくとも99%同一のエンハンサーS1の機能性変異体であり、前記機能性変異体は肝臓選択的エンハンサー活性を有する。
【0057】
特定の実施形態では、肝臓選択的エンハンサーは、ApoEエンハンサー、エンハンサーA3(配列番号40)、エンハンサーF(配列番号41)、エンハンサーS1(配列番号42)、エンハンサーS2(配列番号43)、HS-CRM1、HS-CRM2、HS-CRM3、HS-CRM5、HS-CRM6、HS-CRM7、HS-CRM8、HS-CRM9、HS-CRM10、HS-CRM11、HS-CRM13及びHS-CRM14からなる群において選択される。
【0058】
特定の実施形態では、肝臓選択的エンハンサーは、ApoEエンハンサー、エンハンサーA3(配列番号40)、エンハンサーF(配列番号41)、エンハンサーS1(配列番号42)、エンハンサーS2(配列番号43)、及びHS-CRM8からなる群において選択される。
【0059】
特定の実施形態では、肝臓選択的エンハンサーは、ApoEエンハンサー及びHS-CRM8からなる群において選択される。
【0060】
特定の実施形態では、肝臓選択的エンハンサーはHS-CRM8である。
【0061】
特定の実施形態では、肝臓選択的エンハンサーは、配列番号1からなるHS-CRM8エンハンサー、又は肝臓選択的エンハンサー活性を有する配列番号1の機能性変異体である。別の実施形態では、肝臓選択的エンハンサーは、配列番号1と少なくとも80%同一、例えば、配列番号1と少なくとも85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は更に少なくとも99%同一のHS-CRM8エンハンサーの機能性変異体であり、前記機能性変異体は肝臓選択的エンハンサー活性を有する。複数の肝臓選択的エンハンサーの場合、前記エンハンサーは、直接融合していてもよいし、又はリンカー(同じ又は異なるリンカー)により分離されていてもよい。直接的融合とは、エンハンサーの第1のヌクレオチドが、上流のエンハンサーの最後のヌクレオチドの直後に続くことを意味する。リンカーを介して連結する場合、ヌクレオチド配列が、上流のエンハンサーの最後のヌクレオチドと、それに続く下流のエンハンサーの第1のヌクレオチドとの間に存在する。例えば、リンカーの長さは、1~50ヌクレオチドの間、例えば、1~40ヌクレオチド、例えば、1~30ヌクレオチド、例えば、1~20ヌクレオチド、例えば、1~10ヌクレオチドで構成されていてもよい。本発明では、核酸分子の設計は、上述されたサイズの制約を考慮に入れることができ、したがって、このようなリンカーは、もしある場合には、短いことが好ましい。代表的な短いリンカーは、15ヌクレオチド未満、特に14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3未満又は2ヌクレオチド未満、例えば、1ヌクレオチドのリンカーからなる核酸配列を含む。特定の実施形態では、リンカーは制限酵素認識部位である。特定の実施形態では、リンカーはAAGCTTである。
【0062】
特定の実施形態では、核酸分子は、複数の肝臓選択的エンハンサー、すなわち少なくとも2つの肝臓選択的エンハンサー又は少なくとも3つの肝臓選択的エンハンサーを含む。肝臓選択的エンハンサーの数は、その発現が本発明の核酸分子により制御される導入遺伝子のサイズに応じて、当業者により決定することができる。特定の実施形態では、複数の肝臓選択的エンハンサーは、少なくとも2つの肝臓選択的エンハンサー及び最大でも10の肝臓選択的エンハンサーを含む。特定の実施形態では、複数の肝臓選択的エンハンサーは、少なくとも2つの肝臓選択的エンハンサー及び最大でも6つの肝臓選択的エンハンサーを含む。更に別の実施形態では、複数の肝臓選択的エンハンサーは2つの肝臓選択的エンハンサーを含む。更なる実施形態では、複数の肝臓選択的エンハンサーは3つの肝臓選択的エンハンサーを含む。更なる実施形態では、複数の肝臓選択的エンハンサーは4つの肝臓選択的エンハンサーを含む。更に別の実施形態では、複数の肝臓選択的エンハンサーは5つの肝臓選択的エンハンサーを含む。特定の実施形態では、核酸分子は、1、2又は3つの肝臓選択的エンハンサー、より特には1つ又は3つの肝臓選択的エンハンサーを含む。特定の実施形態では、複数の肝臓選択的エンハンサーのすべての肝臓選択的エンハンサーは、同じ配列を有する。特定の実施形態では、複数の肝臓選択的エンハンサーのうちの少なくとも2つの肝臓選択的エンハンサーは異なる配列を有する。
【0063】
特定の実施形態では、核酸分子は、配列番号42からなるS1エンハンサー、又は上記のような、肝臓選択的エンハンサー活性を有する配列番号42の機能性変異体の1回、2回、3回、4回又は5回の繰返しを含む。
【0064】
特定の実施形態では、核酸分子は、配列番号43からなるS2エンハンサー、又は上記のような、肝臓選択的エンハンサー活性を有する配列番号43の機能性変異体の1回、2回、3回、4回又は5回の繰返しを含む。
【0065】
特定の実施形態では、核酸分子は、配列番号41からなるエンハンサーF、又は上記のような、肝臓選択的エンハンサー活性を有する配列番号41の機能性変異体の1回、2回、3回、4回又は5回の繰返しを含む。特定の実施形態では、核酸分子は、配列番号41からなるエンハンサーF、又は上記のような、肝臓選択的エンハンサー活性を有する配列番号41の機能性変異体の3回の繰返しを含む。
【0066】
特定の実施形態では、複数の肝臓選択的エンハンサーのすべての肝臓選択的エンハンサーは同じ配列を有する。好ましい実施形態では、複数の肝臓選択的エンハンサーのすべての肝臓選択的エンハンサーは、同じ配列を有し、この配列は、配列番号1の配列、又は上記のような、肝臓選択的エンハンサー活性を有する配列番号1の機能性変異体である。
【0067】
特定の実施形態では、核酸分子は、配列番号1からなるHS-CRM8エンハンサー、又は上記のような、肝臓選択的エンハンサー活性を有する配列番号1の機能性変異体の1回、2回、3回、4回又は5回の繰返しを含む。特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、配列番号1からなるHS-CRM8エンハンサー、又は肝臓選択的エンハンサー活性を有する配列番号1の機能性変異体の3回の繰返しを含む。別の実施形態では、本発明の核酸分子は、配列番号1と少なくとも80%同一、例えば、配列番号1と少なくとも85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は更に少なくとも99%同一のHS-CRM8エンハンサーの機能性変異体の3回の繰返しを含み、前記機能性変異体は肝臓選択的エンハンサー活性を有する。前記肝臓選択的エンハンサー活性は、Chuaら(Chuaら、2014 Molecular Therapy、22巻、9号、1605~1613頁)に記載されている通り決定することができる。
【0068】
特定の実施形態では、複数の肝臓選択的エンハンサーに相当する配列は、配列番号2若しくは配列番号3、又は配列番号2若しくは3と少なくとも80%同一、例えば、配列番号2若しくは3と少なくとも85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は更に少なくとも99%同一の機能性変異体である。配列番号2及び配列番号3は、配列番号1のHS-CRM8エンハンサーの3回の繰返しを含む。
【0069】
加えて、ただし任意選択で、核酸分子は、更なる肝臓選択的エンハンサー又は更なる複数の肝臓選択的エンハンサーを含んでもよい。本実施形態によると、核酸分子は5'から3'までこの順序で以下を含んでもよい:
- 第1の肝臓選択的エンハンサー又は複数の第1の肝臓選択的エンハンサー、例えば、2又は3つの肝臓選択的エンハンサー;
- 上で定義されたような第1の筋肉選択的プロモーター(すなわちCK6プロモーター又はその機能性変異体);
- 第2の肝臓選択的エンハンサー又は複数の第2の肝臓選択的エンハンサー、例えば、2又は3つの肝臓選択的エンハンサー;及び
上で定義されたような第2の筋肉選択的プロモーター。
【0070】
本実施形態の別の変異体によると、核酸分子は5'から3'までこの順序で以下を含んでもよい:
- 第1の肝臓選択的エンハンサー又は複数の第1の肝臓選択的エンハンサー、例えば、2又は3つの肝臓選択的エンハンサー;
- 上で定義されたような第2の筋肉選択的プロモーター(すなわち、spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体からなる群から選択される筋肉選択的プロモーター、好ましくはspC5-12又はその機能性変異体);
- 第2の肝臓選択的エンハンサー又は複数の第2の肝臓選択的エンハンサー、例えば、2又は3つの肝臓選択的エンハンサー;並びに
- 上で定義されたような第1の筋肉選択的プロモーター(すなわちCK6プロモーター又はその機能性変異体)。
【0071】
本実施形態によると、第1の肝臓選択的エンハンサー又は複数の肝臓選択的エンハンサー及び第2の肝臓選択的エンハンサー又は複数の肝臓選択的エンハンサーは、上記のような肝臓選択的エンハンサー又は複数の肝臓選択的エンハンサーのいずれかであってよい。
【0072】
特定の実施形態では、核酸分子は5'から3'までこの順序で以下を含んでもよい:
- 第1の肝臓選択的エンハンサー又は複数の第1の肝臓選択的エンハンサー、この肝臓選択的エンハンサーは、ApoEエンハンサー(配列番号39)、エンハンサーA3(配列番号40)、エンハンサーF(配列番号41)、エンハンサーS1(配列番号42)、エンハンサーS2(配列番号43)、HS-CRM1(配列番号16)、HS-CRM2(配列番号17)、HS-CRM3(配列番号18)、HS-CRM4(配列番号19)、HS-CRM5(配列番号20)、HS-CRM6(配列番号21)、HS-CRM7(配列番号22)、HS-CRM8(配列番号1)、HS-CRM9(配列番号23)、HS-CRM10(配列番号24)、HS-CRM11(配列番号25)、HS-CRM12(配列番号26)、HS-CRM13(配列番号27)及びHS-CRM14(配列番号28)、特にHS-CRM8(配列番号1)から選択される;
- 筋肉選択的プロモーター、これはCK6プロモーター又はその機能性変異体である;
- 第2の肝臓選択的エンハンサー又は複数の第2の肝臓選択的エンハンサー、この肝臓選択的エンハンサーはApoEエンハンサー(配列番号39)、エンハンサーA3(配列番号40)、エンハンサーF(配列番号41)、エンハンサーS1(配列番号42)、エンハンサーS2(配列番号43)、HS-CRM1(配列番号16)、HS-CRM2(配列番号17)、HS-CRM3(配列番号18)、HS-CRM4(配列番号19)、HS-CRM5(配列番号20)、HS-CRM6(配列番号21)、HS-CRM7(配列番号22)、HS-CRM8(配列番号1)、HS-CRM9(配列番号23)、HS-CRM10(配列番号24)、HS-CRM11(配列番号25)、HS-CRM12(配列番号26)、HS-CRM13(配列番号27)及びHS-CRM14(配列番号28)、特にHS-CRM8(配列番号1)から選択される;並びに
- 以下からなる群から選択される筋肉選択的プロモーター:spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体、好ましくはspC5-12又はその機能性変異体。
【0073】
本実施形態の別の変異体によると、核酸分子は5'から3'までこの順序で以下を含んでもよい:
- 第1の肝臓選択的エンハンサー又は複数の第1の肝臓選択的エンハンサー、この肝臓選択的エンハンサーはApoEエンハンサー(配列番号39)、エンハンサーA3(配列番号40)、エンハンサーF(配列番号41)、エンハンサーS1(配列番号42)、エンハンサーS2(配列番号43)、HS-CRM1(配列番号16)、HS-CRM2(配列番号17)、HS-CRM3(配列番号18)、HS-CRM4(配列番号19)、HS-CRM5(配列番号20)、HS-CRM6(配列番号21)、HS-CRM7(配列番号22)、HS-CRM8(配列番号1)、HS-CRM9(配列番号23)、HS-CRM10(配列番号24)、HS-CRM11(配列番号25)、HS-CRM12(配列番号26)、HS-CRM13(配列番号27)及びHS-CRM14(配列番号28)、特にHS-CRM8(配列番号1)から選択される;
- 以下からなる群において選択される筋肉選択的プロモーター:spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体、好ましくはspC5-12又はその機能性変異体;
- 第2の肝臓選択的エンハンサー又は複数の第2の肝臓選択的エンハンサー、この肝臓選択的エンハンサーは、ApoEエンハンサー(配列番号39)、エンハンサーA3(配列番号40)、エンハンサーF(配列番号41)、エンハンサーS1(配列番号42)、エンハンサーS2(配列番号43)、HS-CRM1(配列番号16)、HS-CRM2(配列番号17)、HS-CRM3(配列番号18)、HS-CRM4(配列番号19)、HS-CRM5(配列番号20)、HS-CRM6(配列番号21)、HS-CRM7(配列番号22)、HS-CRM8(配列番号1)、HS-CRM9(配列番号23)、HS-CRM10(配列番号24)、HS-CRM11(配列番号25)、HS-CRM12(配列番号26)、HS-CRM13(配列番号27)及びHS-CRM14(配列番号28)、特にHS-CRM8(配列番号1)から選択される;並びに
- 筋肉選択的プロモーター、これはCK6プロモーター又はその機能性変異体である。
【0074】
特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、互いに作動可能に連結された以下の転写調節エレメントを含む:
(i)配列番号39のApo-Eエンハンサー又はその機能性変異体;
(ii)第1の筋肉選択的プロモーター、これはCK6プロモーター又はその機能性変異体である;並びに
(iii)第2の筋肉選択的プロモーター、これは、spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体からなる群において選択され、この第2の筋肉選択的プロモーターは好ましくはspC5-12プロモーター、CK6プロモーター又はその機能性変異体であり、この第2の筋肉選択的プロモーターはより好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体である。
【0075】
特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、5'から3'までこの順序で、互いに作動可能に連結された以下の転写調節エレメントを含む:
(i)配列番号39のApo-Eエンハンサー又はその機能性変異体;
(ii)第1の筋肉選択的プロモーター、これはCK6プロモーター又はその機能性変異体である;並びに
(iii)第2の筋肉選択的プロモーター、これは、spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体からなる群において選択され、この第2の筋肉選択的プロモーターは好ましくはspC5-12プロモーター、CK6プロモーター又はその機能性変異体であり、この第2の筋肉選択的プロモーターはより好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体である。
【0076】
特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、5'から3'までこの順序で、互いに作動可能に連結された以下の転写調節エレメントを含む:
(i)配列番号39のApo-Eエンハンサー又はその機能性変異体;
(ii)第1の筋肉選択的プロモーター、これは配列番号7のCK6プロモーター又はその機能性変異体である;及び
(iii)第2の筋肉選択的プロモーター、これは配列番号4、5又は6、特に配列番号6に示されている配列のspC5-12プロモーター又はその機能性変異体である。
【0077】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、好ましくは5'から3'までこの順序で、互いに作動可能に連結された以下の転写調節エレメントを含む:
(i)配列番号40のエンハンサーA3又はその機能性変異体;
(ii)第1の筋肉選択的プロモーター、これはCK6プロモーター又はその機能性変異体である;並びに
(iii)第2の筋肉選択的プロモーター、これはspC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体からなる群において選択され、この第2の筋肉選択的プロモーターは好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体である。
【0078】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、好ましくは5'から3'までこの順序で、互いに作動可能に連結された以下の転写調節エレメントを含む:
(i)配列番号40のエンハンサーA3又はその機能性変異体;
(ii)第1の筋肉選択的プロモーター、これは配列番号7のCK6プロモーター又はその機能性変異体である;及び
(iii)第2の筋肉選択的プロモーター、これは配列番号4、5若しくは6、特に配列番号6に示されている配列のspC5-12プロモーター、又はその機能性変異体である。
【0079】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、好ましくは5'から3'までこの順序で、互いに作動可能に連結された以下の転写調節エレメントを含む:
(i)配列番号41のエンハンサーF又はその機能性変異体;
(ii)第1の筋肉選択的プロモーター、これはCK6プロモーター又はその機能性変異体である;並びに
(iii)第2の筋肉選択的プロモーター、これは、spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体からなる群において選択され、この第2の筋肉選択的プロモーターは好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体である。
【0080】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、好ましくは5'から3'までこの順序で、互いに作動可能に連結された以下の転写調節エレメントを含む:
(i)配列番号41のエンハンサーF又はその機能性変異体;
(ii)第1の筋肉選択的プロモーター、これは配列番号7のCK6プロモーター又はその機能性変異体である;及び
(iii)第2の筋肉選択的プロモーター、これは配列番号4、5若しくは6、特に配列番号6に示されている配列のspC5-12プロモーター、又はその機能性変異体である。
【0081】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、好ましくは5'から3'までこの順序で、互いに作動可能に連結された以下の転写調節エレメントを含む:
- 配列番号41のエンハンサーFの1回、2回、3回、4回若しくは5回の繰返しからなる複数の第1の肝臓選択的エンハンサー、又は上記のような、活性を有するその機能性変異体肝臓選択的エンハンサー;
- (ii)第1の筋肉選択的プロモーター、これはCK6プロモーター又はその機能性変異体である;並びに
- (iii)第2の筋肉選択的プロモーター、これは、spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体からなる群において選択され、この第2の筋肉選択的プロモーターは好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体であり、好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体である。
【0082】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、好ましくは5'から3'までこの順序で、互いに作動可能に連結された以下の転写調節エレメントを含む:
- 配列番号41のエンハンサーFの3回の繰返しからなる複数の第1の肝臓選択的エンハンサー、又は上記のような、肝臓選択的エンハンサー活性を有するその機能性変異体;
- (ii)第1の筋肉選択的プロモーター、これはCK6プロモーター又はその機能性変異体である;並びに
- (iii)第2の筋肉選択的プロモーター、これは、spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体からなる群において選択され、この第2の筋肉選択的プロモーターは好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体であり、好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体である。
【0083】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、好ましくは5'から3'までこの順序で、互いに作動可能に連結された以下の転写調節エレメントを含む:
(i)配列番号42のエンハンサーS1又はその機能性変異体;
(ii)第1の筋肉選択的プロモーター、これはCK6プロモーター又はその機能性変異体である;並びに
(iii)第2の筋肉選択的プロモーター、これは、spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、Acta1プロモーター、MCKプロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体からなる群において選択され、この第2の筋肉選択的プロモーターは好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体である。
【0084】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、好ましくは5'から3'までこの順序で、互いに作動可能に連結された以下の転写調節エレメントを含む:
(i)配列番号42のエンハンサーS1又はその機能性変異体;
(ii)第1の筋肉選択的プロモーター、これは配列番号7のCK6プロモーター又はその機能性変異体である;及び
(iii)第2の筋肉選択的プロモーター、これは配列番号4、5又は6、特に配列番号6に示されている配列のspC5-12プロモーター又はその機能性変異体である。
【0085】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、好ましくは5'から3'までこの順序で、互いに作動可能に連結された以下の転写調節エレメントを含む:
- 配列番号42のエンハンサーS1の1回、2回、3回、4回若しくは5回の繰返しからなる複数の第1の肝臓選択的エンハンサー、又は上記のような、肝臓選択的エンハンサー活性を有するその機能性変異体;
- (ii)第1の筋肉選択的プロモーター、これはCK6プロモーター又はその機能性変異体である;並びに
- (iii)第2の筋肉選択的プロモーター、これは、spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体からなる群において選択され、この第2の筋肉選択的プロモーターは好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体であり、好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体である。
【0086】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、好ましくは5'から3'までこの順序で、互いに作動可能に連結された以下の転写調節エレメントを含む:
(i)配列番号43のエンハンサーS2又はその機能性変異体;
(ii)第1の筋肉選択的プロモーター、これはCK6プロモーター又はその機能性変異体である;並びに
(iii)第2の筋肉選択的プロモーター、これは、spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体からなる群において選択され、この第2の筋肉選択的プロモーターは好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体である。
【0087】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、好ましくは5'から3'までこの順序で、互いに作動可能に連結された以下の転写調節エレメントを含む:
(i)配列番号43のエンハンサーS2又はその機能性変異体;
(ii)第1の筋肉選択的プロモーター、これは配列番号7のCK6プロモーター又はその機能性変異体である;及び
(iii)第2の筋肉選択的プロモーター、これは配列番号4、5又は6、特に配列番号6に示されている配列のspC5-12プロモーター又はその機能性変異体である。
【0088】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、好ましくは5'から3'までこの順序で、互いに作動可能に連結された以下の転写調節エレメントを含む:
- 配列番号43のエンハンサーS2の1回、2回、3回、4回若しくは5回の繰返しからなる複数の第1の肝臓選択的エンハンサー、又は上記のような、活性を有するその機能性変異体肝臓選択的エンハンサー;
- (ii)第1の筋肉選択的プロモーター、これはCK6プロモーター又はその機能性変異体である;並びに
- (iii)第2の筋肉選択的プロモーター、これは、spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体からなる群において選択され、この第2の筋肉選択的プロモーターは好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体、好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体である。
【0089】
特定の実施形態では、核酸分子は5'から3'までこの順序で以下を含んでもよい:
- 配列番号1に示されているようなHS-CRM8エンハンサーの1回、2回、3回、4回若しくは5回の繰返しからなる複数の第1の肝臓選択的エンハンサー、又は上記のような、肝臓選択的エンハンサー活性を有するその機能性変異体;
- 第1の筋肉選択的プロモーター、これはCK6プロモーター又はその機能性変異体である;
- 配列番号1に示されているようなHS-CRM8エンハンサーの1回、2回、3回、4回若しくは5回の繰返しからなる複数の第2の肝臓選択的エンハンサー、又は上記のような、肝臓選択的エンハンサー活性を有するその機能性変異体;並びに
- 以下からなる群において選択される筋肉選択的プロモーター:spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体、好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体。
【0090】
特定の実施形態では、核酸分子は5'から3'までこの順序で以下を含んでもよい:
- 配列番号1に示されているようなHS-CRM8エンハンサーの1回、2回、3回、4回若しくは5回の繰返しからなる複数の第1の肝臓選択的エンハンサー、又は上記のような、肝臓選択的エンハンサー活性を有するその機能性変異体;
- 以下からなる群において選択される筋肉選択的プロモーター:spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体、好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体;
- 配列番号1に示されているようなHS-CRM8エンハンサーの1回、2回、3回、4回若しくは5回の繰返しからなる複数の第2の肝臓選択的エンハンサー、又は上記のような、肝臓選択的エンハンサー活性を有するその機能性変異体;並びに
- 筋肉選択的プロモーター、これはCK6プロモーター又はその機能性変異体である。
【0091】
更に特定の実施形態では、核酸分子は5'から3'までこの順序で以下を含んでもよい:
- 配列番号1に示されているようなHS-CRM8エンハンサーの3回の繰返しからなる複数の第1の肝臓選択的エンハンサー、又は上記のような、肝臓選択的エンハンサー活性を有するその機能性変異体;
- 筋肉選択的プロモーター、これはCK6プロモーター又はその機能性変異体である;
- 配列番号1に示されているようなHS-CRM8エンハンサーの3回の繰返しからなる複数の第2の肝臓選択的エンハンサー、又は上記のような、肝臓選択的エンハンサー活性を有するその機能性変異体;並びに
- 以下からなる群において選択される筋肉選択的プロモーター:spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体、好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体。
【0092】
特定の実施形態では、核酸分子は5'から3'までこの順序で以下を含んでもよい:
- 配列番号1に示されているようなHS-CRM8エンハンサーの3回の繰返しからなる複数の第1の肝臓選択的エンハンサー、又は上記のような、肝臓選択的エンハンサー活性を有するその機能性変異体;
- 以下からなる群において選択される筋肉選択的プロモーター:spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体、好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体;
- 配列番号1に示されているようなHS-CRM8エンハンサーの3回の繰返しからなる複数の第2の肝臓選択的エンハンサー、又は上記のような、肝臓選択的エンハンサー活性を有するその機能性変異体;並びに
- 筋肉選択的プロモーター、これはCK6プロモーター又はその機能性変異体である。
【0093】
特定の実施形態では、CK6プロモーター又はその機能性変異体の配列は以下から選択される:
- 配列番号7に示されている配列からなる配列;
- 配列番号7と比較して、最大でも10の過剰ヌクレオチド又は最大でも10の欠損ヌクレオチドを有する機能的断片、前記断片は筋肉選択的プロモーター活性を有する;
- 配列番号7に示されている配列の機能性変異体である配列、これは、配列番号7と少なくとも80%同一、例えば、配列番号7と少なくとも85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は更に少なくとも99%同一の配列からなる。
【0094】
CK6の「機能性変異体」とは、CK6プロモーターの生物活性を少なくとも部分的に保持する変異体を意味する。機能性変異体は、CK6プロモーターの活性の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である活性を有することができる。例えば、CK6プロモーターの機能性変異体は、CK6プロモーターの活性の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の活性を有する変異体であり、この活性は筋肉内で特定の導入遺伝子の転写を増強させるCK6の能力に相当する。特定の実施形態ではCK6プロモーターの配列は、配列番号7若しくは配列番号35、又は配列番号7若しくは配列番号35と少なくとも80%同一、例えば、配列番号7若しくは配列番号35と少なくとも85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は更に少なくとも99%同一の配列を有するその機能性変異体からなる。
【0095】
特定の実施形態では、第2の筋肉選択的プロモーターは合成プロモーターC5.12(spC5.12、代わりに本明細書では「C5.12」と呼ぶ)、例えば、配列番号4、5若しくは6に示されているspC5.12又はWangら、Gene Therapy、15巻、1489~1499頁(2008年)において開示されたspC5.12プロモーターである。特定の実施形態では、spC5-12プロモーター又はその機能性変異体の配列は以下から選択される:
- 配列番号4、5又は6に示されている配列、特に配列番号6に示されている配列からなる配列;
- 配列番号4、5又は6と比較して、特に配列番号6と比較して、最大でも10の過剰ヌクレオチド又は最大でも10の欠損ヌクレオチドを有する機能的断片、前記断片は筋肉選択的プロモーター活性を有する;
- 配列番号4、5又は6に示されている配列、特に配列番号6に示されている配列の機能性変異体である配列、これは、配列番号4、5又は6のうちのいずれか1つ、特に配列番号6と少なくとも80%同一、例えば、配列番号4、5又は6のうちのいずれか1つ、特に配列番号6と少なくとも85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は更に少なくとも99%同一の配列からなる。
【0096】
spC5-12の「機能性変異体」とは、spC5-12プロモーターの生物活性を少なくとも部分的に保持する変異体を意味する。機能性変異体は、spC5-12プロモーターの活性の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である活性を有することができる。例えば、spC5-12プロモーターの機能性変異体は、spC5-12プロモーターの活性の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の活性を有する変異体であり、この活性は筋肉内の特定の導入遺伝子の転写を増強させるspC5-12の能力に相当する。
【0097】
特定の実施形態では、第2の筋肉選択的プロモーターはCK8プロモーターである。特定の実施形態では、CK8プロモーター又はその機能性変異体の配列は以下から選択される:
- 配列番号33に示されている配列からなる配列;
- 配列番号33と比較して、最大でも10の過剰ヌクレオチド又は最大でも10の欠損ヌクレオチドを有する機能的断片、前記断片は筋肉選択的プロモーター活性を有する;
- 配列番号33に示されている配列の機能性変異体である配列、これは、配列番号33と少なくとも80%同一、例えば、配列番号33と少なくとも85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は更に少なくとも99%同一の配列からなる。
【0098】
CK8の「機能性変異体」とは、CK8プロモーターの生物活性を少なくとも部分的に保持する変異体を意味する。機能性変異体は、CK8プロモーターの活性の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である活性を有することができる。例えば、CK8プロモーターの機能性変異体は、CK8プロモーターの活性の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の活性を有する変異体であり、この活性は筋肉内の特定の導入遺伝子の転写を増強させるCK8の能力に相当する。特定の実施形態では、CK8プロモーターの配列は、配列番号33若しくは配列番号34、又は配列番号33若しくは配列番号34と少なくとも80%同一、例えば、配列番号33若しくは配列番号34と少なくとも85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は更に少なくとも99%同一である配列を有するその機能性変異体からなる。
【0099】
特定の実施形態では、第2の筋肉選択的プロモーターはMCKプロモーターである。特定の実施形態では、MCKプロモーター又はその機能性変異体の配列は以下から選択される:
- 配列番号36に示されている配列からなる配列;
- 配列番号36と比較して、最大でも10の過剰ヌクレオチド又は最大でも10の欠損ヌクレオチドを有する機能的断片、前記断片は筋肉選択的プロモーター活性を有する;
- 配列番号36に示されている配列の機能性変異体である配列、この配列は、配列番号36と少なくとも80%同一、例えば、配列番号36と少なくとも85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は更に少なくとも99%同一の配列からなる。
【0100】
MCKの「機能性変異体」とは、MCKプロモーターの生物活性を少なくとも部分的に保持する変異体を意味する。機能性変異体は、MCKプロモーターの活性の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である活性を有することができる。例えば、MCKプロモーターの機能性変異体は、MCKプロモーターの活性の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である活性を有する変異体であり、この活性は、筋肉内の特定の導入遺伝子の転写を増強させるMCKの能力に相当する。
【0101】
特定の実施形態では、第2の筋肉選択的プロモーターはActa1プロモーターである。特定の実施形態では、Acta1プロモーター又はその機能性変異体の配列は以下から選択される:
- 配列番号37に示されている配列からなる配列;
- 配列番号37と比較して、最大でも10の過剰ヌクレオチド又は最大でも10の欠損ヌクレオチドを有する機能的断片、前記断片は筋肉選択的プロモーター活性を有する;
- 配列番号37に示されている配列の機能性変異体である配列、この配列は、配列番号37と少なくとも80%同一、例えば、少なくとも配列番号37と85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は更に少なくとも99%同一の配列からなる。
【0102】
Acta1の「機能性変異体」とは、Acta1プロモーターの生物活性を少なくとも部分的に保持する変異体を意味する。機能性変異体は、Acta1プロモーターの活性の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である活性を有することができる。例えば、Acta1プロモーターの機能性変異体は、Acta1プロモーターの活性の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の活性を有する変異体であり、この活性は筋肉内の特定の導入遺伝子の転写を増強させるActa1の能力に相当する。
【0103】
特定の実施形態では、第2の筋肉選択的プロモーターはデスミンプロモーターである。特定の実施形態では、デスミンプロモーター又はその機能性変異体の配列は以下から選択される:
- 配列番号38に示されている配列からなる配列;
- 配列番号38と比較して最大でも10の過剰ヌクレオチド又は最大でも10の欠損ヌクレオチドを有する機能的断片、前記断片は筋肉選択的プロモーター活性を有する;
- 配列番号38に示されている配列の機能性変異体である配列、この配列は、配列番号38と少なくとも80%同一、例えば、配列番号38と少なくとも85%同一、特に少なくとも90%同一、より具体的には少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は更に少なくとも99%同一である配列からなる。
【0104】
デスミンの「機能性変異体」とは、デスミンプロモーターの生物活性を少なくとも部分的に保持する変異体を意味する。機能性変異体は、デスミンプロモーターの活性の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である活性を有することができる。例えば、デスミンプロモーターの機能性変異体は、デスミンプロモーターの活性の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である活性を有する変異体であり、この活性は筋肉内の特定の導入遺伝子の転写を増強させるデスミンの能力に相当する。
【0105】
本発明の文脈で、本発明の核酸分子に導入される転写調節エレメント(すなわち(i)肝臓選択的エンハンサー又は複数のエンハンサー;(ii)任意選択の更なる肝臓選択的エンハンサー又は複数のエンハンサー;(iv)第1の筋肉選択的プロモーター(すなわちCK6プロモーター);及び(v)第2の筋肉選択的プロモーター、好ましくはspC5-12プロモーター)は、直接融合されていても、又はリンカーを介して結合していてもよい。
【0106】
特定の実施形態では、本発明の核酸分子は以下を含む:(i)リンカーを介して、特に配列ACTAGT又はCGCGCCのリンカーを介して(ii)CK6プロモーター又はその機能性変異体に連結している、上記のような1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー;このCK6プロモーターは、リンカーを介して、特に配列TTAATGACCC(配列番号8)又はTTCCのリンカーを介して連結している(iii)第2のプロモーター、この第2のプロモーターは以下からなる群において選択される:spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体、好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体。
【0107】
好ましくは、本発明の核酸分子は以下を含む:(i)リンカーを介して、特に配列CGCGCCのリンカーを介して(ii)CK6プロモーター又はその機能性変異体に連結している、上記のような1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー、;このCK6プロモーターは、リンカーを介して、特に配列TTCCのリンカーを介して連結している(iii)第2のプロモーター、この第2のプロモーターは以下からなる群において選択される:spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体、好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体。
【0108】
例えば、CK6プロモーターに直接融合した1つの肝臓選択的エンハンサーの場合、直接的融合とは、CK6プロモーターの第1のヌクレオチドが、肝臓選択的エンハンサーの最後のヌクレオチドの直後に続くことを意味する。加えて、CK6プロモーターに直接融合した複数の肝臓選択的エンハンサーを用いた設計の場合、直接的融合とは、CK6プロモーターの第1のヌクレオチドが、最も3'側の肝臓選択的エンハンサーの最後のヌクレオチドの直後に続くことを意味する。
【0109】
例えば、spC5-12プロモーターに直接融合した1つの肝臓選択的エンハンサーの場合、直接的融合とは、spC5-12プロモーターの第1のヌクレオチドが肝臓選択的エンハンサーの最後のヌクレオチドの直後に続くことを意味する。加えて、spC5-12プロモーターに直接融合した複数の肝臓選択的エンハンサーを用いた設計の場合、直接的融合とは、spC5-12プロモーターの第1のヌクレオチドが最も3'側の肝臓選択的エンハンサーの最後のヌクレオチドの直後に続くことを意味する。
【0110】
リンカーを介した2つの転写調節エレメントの連結の場合、ヌクレオチド配列は、
- 第1の転写調節エレメントの最後のヌクレオチドと、
- 第2の転写調節エレメントの第1のヌクレオチド
との間に存在する。
【0111】
例えば、リンカーを介した肝臓選択的エンハンサーとCK6プロモーターとの連結の場合、ヌクレオチド配列は、
- 肝臓選択的エンハンサーの最後のヌクレオチドと、
- CK6プロモーターの第1のヌクレオチド
との間に存在する。
【0112】
例えば、リンカーを介した肝臓選択的エンハンサーとspC5-12プロモーターとの連結の場合、ヌクレオチド配列は、
- 肝臓選択的エンハンサーの最後のヌクレオチドと、
- spC5-12プロモーターの第1のヌクレオチド
との間に存在する。
【0113】
別の例によると、リンカーを介した複数の肝臓選択的エンハンサーとCK6プロモーターとの連結の場合、ヌクレオチド配列は、
- 最も3'側の肝臓選択的エンハンサーの最後のヌクレオチドと、
- CK6プロモーターの第1のヌクレオチド
との間に存在する。
【0114】
別の例によると、リンカーを介した複数の肝臓選択的エンハンサーとspC5-12プロモーターとの連結の場合、ヌクレオチド配列は、
- 最も3'側の肝臓選択的エンハンサーの最後のヌクレオチドと、
- spC5-12プロモーターの第1のヌクレオチド
との間に存在する。
【0115】
エンハンサー又は複数のエンハンサーと、第1のプロモーターとの間のリンカーの長さは、1ヌクレオチド~1500ヌクレオチドの間、例えば、1ヌクレオチド~1000ヌクレオチド(例えば101、300、500又は1000ヌクレオチド)、例えば、1ヌクレオチド~500ヌクレオチド、例えば、1ヌクレオチド~300ヌクレオチド、例えば、1ヌクレオチド~100ヌクレオチド、例えば、1ヌクレオチド~50ヌクレオチド、例えば、1ヌクレオチド~40ヌクレオチド、例えば、1ヌクレオチド~30ヌクレオチド、例えば、1ヌクレオチド~20ヌクレオチド、例えば、1ヌクレオチド~10ヌクレオチドで構成されていてもよい。本発明では、核の分子の設計は、ベクター、特にAAVベクターのサイズ制約を考慮に入れることができ、したがってこのようなリンカーは、もしある場合には、短いことが好ましい。代表的な短いリンカーは、15ヌクレオチド未満、特に14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3ヌクレオチド未満又は2ヌクレオチド未満からなる核酸配列、例えば、1ヌクレオチドのリンカーを含む。
【0116】
特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 上記のような1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー;
- CK6プロモーター又はその機能性変異体;並びに
- 以下からなる群において選択される筋肉選択的プロモーター:spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体、好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体。
【0117】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 上記のような1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー;
- 以下からなる群において選択される筋肉選択的プロモーター:spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体、好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体;並びに
- CK6プロモーター又はその機能性変異体。
【0118】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 上記のような1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー;
- 以下からなる群において選択される筋肉選択的プロモーター:CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体;並びに
- CK6プロモーター又はその機能性変異体。
【0119】
特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 上記のような1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー;
- CK6プロモーター又はその機能性変異体;
- 上記のような1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー;並びに
- 以下からなる群において選択される筋肉選択的プロモーター:spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター及びその機能性変異体、好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体。
【0120】
本実施形態の特定の変形例によると、本発明の核酸分子は、配列番号31に示されている配列、又は配列番号31と少なくとも80%同一、例えば、配列番号31と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは更に少なくとも99%同一の配列を有するその機能性変異体からなる。
【0121】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 上記のような1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー;
- 以下からなる群において選択される筋肉選択的プロモーター(c):spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体、好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体;
- 上記のような1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー;並びに
- CK6プロモーター又はその機能性変異体。
【0122】
特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- CK6プロモーター又はその機能性変異体;
- 上記のような1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー;並びに
- 以下からなる群において選択される筋肉選択的プロモーター(c):spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体、好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体。
【0123】
本実施形態の特定の変形例によると、本発明の核酸分子は、配列番号32に示されている配列、又は配列番号32と少なくとも80%同一、例えば、配列番号32と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは更に少なくとも99%同一の配列を有するその機能性変異体からなる。
【0124】
特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 以下からなる群において選択される筋肉選択的プロモーター:spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体、好ましくはspC5-12プロモーター又はその機能性変異体;
- 上記のような1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー;並びに
- CK6プロモーター又はその機能性変異体。
【0125】
特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 1つの肝臓選択的エンハンサー、特に配列番号1に示されているようなHS-CRM8エンハンサー、又はその機能性変異体;
- CK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体;並びに
- 以下からなる群において選択される筋肉選択的プロモーター:spC5-12 CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体、好ましくはspC5-12プロモーター、特に配列番号4、5若しくは6に示されているような、特に配列番号6に示されているようなspC5-12プロモーター、又はその機能性変異体。
【0126】
特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 1つの肝臓選択的エンハンサー、特に配列番号1に示されているようなHS-CRM8エンハンサー、又はその機能性変異体;
- 以下からなる群において選択される筋肉選択的プロモーター:spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体、好ましくはspC5-12プロモーター、特に配列番号4、5若しくは6に示されているような、特に配列番号6に示されているようなspC5-12プロモーター、又はその機能性変異体;並びに
- CK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体。
【0127】
特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 1つの肝臓選択的エンハンサー、特に配列番号1に示されているようなHS-CRM8エンハンサー、又はその機能性変異体;
- 以下からなる群において選択される筋肉選択的プロモーター:CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体;並びに
- CK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体。
【0128】
特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 2つの肝臓選択的エンハンサー、特に配列番号1に示されているようなHS-CRM8エンハンサーの2回の繰返し、又はその機能性変異体;
- CK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター又は機能性変異体;並びに
- 以下からなる群において選択される筋肉選択的プロモーター:spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体、好ましくはspC5-12プロモーター、特に配列番号4、5若しくは6に示されているような、特に配列番号6に示されているようなspC5-12プロモーター、又はその機能性変異体。
【0129】
特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 2つの肝臓選択的エンハンサー、特に配列番号1に示されているようなHS-CRM8エンハンサーの2回の繰返し、又はその機能性変異体;
- 以下からなる群において選択される筋肉選択的プロモーター:spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体、好ましくはspC5-12プロモーター、特に配列番号4、5若しくは6に示されているような、特に配列番号6に示されているようなspC5-12プロモーター、又はその機能性変異体;並びに
- CK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体。
【0130】
特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 2つの肝臓選択的エンハンサー、特に配列番号1に示されているようなHS-CRM8エンハンサーの2回の繰返し、又はその機能性変異体;
- 以下からなる群において選択される筋肉選択的プロモーター:CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体;並びに
- CK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体。
【0131】
特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 3つの肝臓選択的エンハンサー、特に配列番号1に示されているようなHS-CRM8エンハンサーの3回の繰返し、又はその機能性変異体;
- CK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター又はその機能性変異体;並びに
- 以下からなる群において選択される筋肉選択的プロモーター:spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体、好ましくはspC5-12プロモーター、特に配列番号4、5若しくは6に示されているような、特に配列番号6に示されているようなspC5-12プロモーター、又はその機能性変異体。
【0132】
特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 3つの肝臓選択的エンハンサー、特に配列番号1に示されているようなHS-CRM8エンハンサーの3回の繰返し、又はその機能性変異体;
- CK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体;並びに
- spC5-12プロモーター、特に配列番号4、5若しくは6に示されているような、特に配列番号6に示されているようなspC5-12プロモーター、又はその機能性変異体。
【0133】
本実施形態の特定の変異体によると、本発明の核酸分子は、配列番号29に示されている配列、又は配列番号29と少なくとも80%同一、例えば、配列番号29と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは更に少なくとも99%同一の配列を有するその機能性変異体からなる。
【0134】
別の特定の変異体によると、本発明の核酸分子は、配列番号30に示されている配列、又は配列番号30と少なくとも80%同一、例えば、配列番号30と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは更に少なくとも99%同一の配列を有するその機能性変異体からなる。
【0135】
特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 3つの肝臓選択的エンハンサー、特に配列番号1に示されているようなHS-CRM8エンハンサーの3回の繰返し、又はその機能性変異体;
- 以下からなる群において選択される筋肉選択的プロモーター:spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体、好ましくはspC5-12プロモーター、特に配列番号4、5若しくは6に示されているような、特に配列番号6に示されているようなspC5-12プロモーター、又はその機能性変異体;並びに
- CK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体。
【0136】
特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 3つの肝臓選択的エンハンサー、特に配列番号1に示されているようなHS-CRM8エンハンサーの3回の繰返し、又はその機能性変異体;
- 以下からなる群において選択される筋肉選択的プロモーター:CK6プロモーター、CK8プロモーター、MCKプロモーター、Acta1プロモーター、デスミンプロモーター、及びその機能性変異体;並びに
- CK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体。
【0137】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 上記のような1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー;
- CK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体;並びに
- spC5-12プロモーター、特に配列番号4、5若しくは6に示されているような、特に配列番号6に示されているようなspC5-12プロモーター、又はその機能性変異体。
【0138】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー、この肝臓選択的エンハンサーは以下からなる群において選択される:ApoEエンハンサー、エンハンサーA3(配列番号40)、エンハンサーF(配列番号41)、エンハンサーS1(配列番号42)、エンハンサーS2(配列番号43)、HS-CRM1、HS-CRM2、HS-CRM3、HS-CRM5、HS-CRM6、HS-CRM7、HS-CRM8、HS-CRM9、HS-CRM10、HS-CRM11、HS-CRM13及びHS-CRM14、好ましくはこの肝臓選択的エンハンサーは、ApoEエンハンサー、エンハンサーA3(配列番号40)、エンハンサーF(配列番号41)、エンハンサーS1(配列番号42)、エンハンサーS2(配列番号43)、及びHS-CRM8からなる群において選択される;
- CK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体;並びに
- spC5-12プロモーター、特に配列番号4、5若しくは6に示されているような、特に配列番号6に示されているようなspC5-12プロモーター、又はその機能性変異体。
【0139】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー、この肝臓選択的エンハンサーはHS-CRM8である、
- CK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体;及び
- spC5-12プロモーター、特に配列番号4、5若しくは6に示されているような、特に配列番号6に示されているようなspC5-12プロモーター、又はその機能性変異体。
【0140】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 3つの肝臓選択的エンハンサー、特に配列番号1に示されているようなHS-CRM8エンハンサーの3回の繰返し、又はその機能性変異体;
- CK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体;及び
- spC5-12プロモーター、特に配列番号4、5若しくは6に示されているような、特に配列番号6に示されているようなspC5-12プロモーター、又はその機能性変異体。
【0141】
特定の変異体によると、本発明の核酸分子は、配列番号30に示されている配列、又は配列番号30と少なくとも80%同一、例えば、配列番号30と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは更に少なくとも99%同一の配列を有するその機能性変異体からなる。配列番号30の配列は、互いに作動可能に連結された以下を含む:HS-CRM8エンハンサーの3回の繰返し、配列番号7のCK6プロモーター、及び配列番号6のspC5-12プロモーター。
【0142】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 上記のような1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー;
- CK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体;及び
- CK8プロモーター、特に配列番号33若しくは配列番号34に示されているようなCK8プロモーター、又はその機能性変異体。
【0143】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー、この肝臓選択的エンハンサーは以下からなる群において選択される:ApoEエンハンサー、エンハンサーA3(配列番号40)、エンハンサーF(配列番号41)、エンハンサーS1(配列番号42)、エンハンサーS2(配列番号43)、HS-CRM1、HS-CRM2、HS-CRM3、HS-CRM5、HS-CRM6、HS-CRM7、HS-CRM8、HS-CRM9、HS-CRM10、HS-CRM11、HS-CRM13及びHS-CRM14、好ましくはこの肝臓選択的エンハンサーは以下からなる群において選択される:ApoEエンハンサー、エンハンサーA3(配列番号40)、エンハンサーF(配列番号41)、エンハンサーS1(配列番号42)、エンハンサーS2(配列番号43)、及びHS-CRM8;
- CK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体;並びに
- CK8プロモーター、特に配列番号33若しくは配列番号34に示されているようなCK8プロモーター、又はその機能性変異体。
【0144】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー、この肝臓選択的エンハンサーはHS-CRM8である、
- CK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体;及び
- CK8プロモーター、特に配列番号33若しくは配列番号34に示されているようなCK8プロモーター、又はその機能性変異体。
【0145】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 3つの肝臓選択的エンハンサー、特に配列番号1に示されているようなHS-CRM8エンハンサーの3回の繰返し、又はその機能性変異体;
- CK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体;及び
- CK8プロモーター、特に配列番号33若しくは配列番号34に示されているようなCK8プロモーター又はその機能性変異体。
【0146】
特定の変異体によると、本発明の核酸分子は、配列番号44に示されている配列、又は配列番号44と少なくとも80%同一、例えば、配列番号44と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは更に少なくとも99%同一の配列を有するその機能性変異体からなる。配列番号44の配列は、互いに作動可能に連結された以下を含む:HS-CRM8エンハンサーの3回の繰返し、配列番号7のCK6プロモーター及び配列番号33のCK8プロモーター。
【0147】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 上記のような1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー;
- 第1のCK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体;及び
- 第2のCK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体。
【0148】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー、この肝臓選択的エンハンサーは以下からなる群において選択される:ApoEエンハンサー、エンハンサーA3(配列番号40)、エンハンサーF(配列番号41)、エンハンサーS1(配列番号42)、エンハンサーS2(配列番号43)、HS-CRM1、HS-CRM2、HS-CRM3、HS-CRM5、HS-CRM6、HS-CRM7、HS-CRM8、HS-CRM9、HS-CRM10、HS-CRM11、HS-CRM13及びHS-CRM14、好ましくはこの肝臓選択的エンハンサーは、ApoEエンハンサー、エンハンサーA3(配列番号40)、エンハンサーF(配列番号41)、エンハンサーS1(配列番号42)、エンハンサーS2(配列番号43)、及びHS-CRM8からなる群において選択される;
- 第1のCK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体;並びに
- 第2のCK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体。
【0149】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー、この肝臓選択的エンハンサーはHS-CRM8である、
- 第1のCK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体;及び
- 第2のCK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体。
【0150】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 3つの肝臓選択的エンハンサー、特に配列番号1に示されているようなHS-CRM8エンハンサーの3回の繰返し、又はその機能性変異体;
- 第1のCK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体;及び
- 第2のCK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体。
【0151】
特定の変形例によると、本発明の核酸分子は、配列番号45に示されている配列、又は配列番号45と少なくとも80%同一、例えば、配列番号45と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは更に少なくとも99%同一の配列を有するその機能性変異体からなる。配列番号45の配列は、互いに作動可能に連結された以下を含む:HS-CRM8エンハンサーの3回の繰返し、配列番号7の第1のCK6プロモーター及び配列番号7の第2のCK6プロモーター。
【0152】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 上記のような1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー;
- CK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体;及び
- Acta1プロモーター、特に配列番号37に示されているようなActa1プロモーター、又はその機能性変異体。
【0153】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー、この肝臓選択的エンハンサーは以下からなる群において選択される:ApoEエンハンサー、エンハンサーA3(配列番号40)、エンハンサーF(配列番号41)、エンハンサーS1(配列番号42)、エンハンサーS2(配列番号43)、HS-CRM1、HS-CRM2、HS-CRM3、HS-CRM5、HS-CRM6、HS-CRM7、HS-CRM8、HS-CRM9、HS-CRM10、HS-CRM11、HS-CRM13及びHS-CRM14、好ましくはこの肝臓選択的エンハンサーは、ApoEエンハンサー、エンハンサーA3(配列番号40)、エンハンサーF(配列番号41)、エンハンサーS1(配列番号42)、エンハンサーS2(配列番号43)、及びHS-CRM8以下からなる群において選択される;
- CK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体;並びに
- Acta1プロモーター、特に配列番号37に示されているようなActa1プロモーター、又はその機能性変異体。
【0154】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 1種又は複数の肝臓選択的エンハンサー、この肝臓選択的エンハンサーはHS-CRM8であり、
- CK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体;及び
- Acta1プロモーター、特に配列番号37に示されているようなActa1プロモーター、又はその機能性変異体。
【0155】
別の特定の実施形態では、本発明の核酸分子は、特に5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 3つの肝臓選択的エンハンサー、特に配列番号1に示されているようなHS-CRM8エンハンサーの3回の繰返し、又はその機能性変異体;
- CK6プロモーター、特に配列番号7に示されているようなCK6プロモーター、又はその機能性変異体;及び
- Acta1プロモーター、特に配列番号37に示されているようなActa1プロモーター、又はその機能性変異体。
【0156】
特定の変異体によると、本発明の核酸分子は、配列番号46に示されている配列、又は配列番号46と少なくとも80%同一、例えば、配列番号46と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは更に少なくとも99%同一の配列を有するその機能性変異体からなる。配列番号46の配列は、互いに作動可能に連結された以下を含む:HS-CRM8エンハンサーの3回の繰返し、配列番号7のCK6プロモーター及び配列番号37のActa1プロモーター。
【0157】
本明細書で具体的に開示されている本発明の核酸分子のすべての実施形態において、前記核酸分子は、2つの転写調節エレメントの間に位置するリンカーを含み得る。
【0158】
更に、本明細書で具体的に開示されている本発明の核酸分子のすべての実施形態において、前記核酸分子は、複数の肝臓選択的エンハンサー中の2つの肝臓選択的エンハンサーの間に位置するリンカーを含み得る。例えば、2つの肝臓選択的エンハンサーで作られた複数の肝臓選択的エンハンサーを含む一実施形態では、リンカーは、これら2つの肝臓選択的エンハンサーの間に位置していても、いなくてもよい。加えて、複数の肝臓選択的エンハンサーが3つの肝臓選択的エンハンサーを含む一実施形態では、リンカーは、第1と第2の肝臓選択的エンハンサーとの間、及び/又は第2と第3の肝臓選択的エンハンサーとの間に含まれていてもよい。例えば、複数の肝臓選択的エンハンサーは3つの肝臓選択的エンハンサーを含む一実施形態では、リンカーは、第1と第2の肝臓選択的エンハンサーとの間に位置し、いかなるリンカーも、第2と第3の肝臓選択的エンハンサーとの間には位置しない。別の変化形において、3つの肝臓選択的エンハンサーを用いた一実施形態では、いかなるリンカーも第1と第2の肝臓選択的エンハンサーとの間に位置せず、リンカーは第2の肝臓選択的エンハンサーと第3の肝臓選択的エンハンサーとの間に位置する。
【0159】
発現カセット
本発明の核酸分子は、目的の導入遺伝子の目的の組織への発現をもたらすように設計された発現カセットに導入することができる。
【0160】
よって、本発明の発現カセットは、上記の核酸分子、及び目的の導入遺伝子を含む。
【0161】
発現カセットは、目的の組織ではないある特定の組織内でのその発現を低減又は抑制することにより、目的のタンパク質、例えば、目的の導入遺伝子によってコードされている治療タンパク質に対するmRNAコーディングを安定化させることにより、目的の治療用導入遺伝子の発現を更に制御することが可能な少なくとも1つの更なる調節配列を含んでもよい。これらの配列は、例えば、サイレンサー(例えば、組織特異的サイレンサー)、ミクロRNA標的配列、イントロン及びポリアデニル化シグナルを含む。
【0162】
特定の実施形態では、本発明の発現カセットは、5'から3'までこの順序で以下を含む:
- 本発明の核酸分子;
- 目的の導入遺伝子;及び
- ポリアデニル化シグナル。
【0163】
本実施形態の特定の変形例では、イントロンは、本発明の核酸分子と目的の導入遺伝子との間に導入することができる。或いは、イントロンは、目的の導入遺伝子内に位置してもよい。特定の実施形態では、イントロンは、SV40イントロン、例えば、配列番号9からなるSV40イントロンであってよい。特定の実施形態では、核酸構築物は、ヒトベータグロビンb2(又はHBB2)イントロン、例えば、配列番号10又は配列番号11のHBB2イントロン;凝固因子IX(FIX)イントロン、例えば、配列番号12又は配列番号13のFIXイントロン;又はニワトリベータ-グロビンイントロン、例えば、配列番号14又は配列番号15のニワトリベータグロビンイントロンを含む。
【0164】
当然のことながら、本明細書に開示されている教示及び分子生物学及び遺伝子療法の分野の一般的知識から、当業者であれば、発現カセットに組み込まれた目的の導入遺伝子のサイズに従い、エンハンサーの数、エンハンサーのサイズ、プロモーターのサイズ、リンカーのサイズ、及び任意の他の要素、例えば、更なるエンハンサー及びイントロンを選択し、適応させることができる。
【0165】
目的の導入遺伝子は、上のセクション「定義」中に記載されているような任意の導入遺伝子であってよい。加えて、目的の特異的な例示的導入遺伝子は、以下の表中で提供され、これらの中で導入遺伝子は、これらが処置することができる神経筋障害のファミリーにより再編成されている:
【0166】
筋ジストロフィー
【0167】
【0168】
【0169】
先天性筋ジストロフィー
【0170】
【0171】
先天性ミオパシー
【0172】
【0173】
遠位型ミオパシー
【0174】
【0175】
他のミオパシー
【0176】
【0177】
筋緊張症候群
【0178】
【0179】
イオンチャネル筋肉疾患
【0180】
【0181】
悪性高熱
【0182】
【0183】
代謝性ミオパシー
【0184】
【0185】
遺伝性心臓ミオパシー
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
先天性筋無力症候群
【0190】
【0191】
運動ニューロン疾患
【0192】
【0193】
【0194】
遺伝性運動感覚性ニューロパシー
【0195】
【0196】
【0197】
遺伝性対麻痺
【0198】
【0199】
【0200】
他の神経筋障害
【0201】
【0202】
特定の実施形態では、目的の導入遺伝子は以下である:α-L-イズロニダーゼ、酸-α-グルコシダーゼ(GAA)、グリコーゲン枝切り酵素(GDE)若しくは短縮形態のGDE、G6P、アルファ-サルコグリカン(SGCA)、ジストロフィン若しくはその短縮形態;又はSMN1。
【0203】
特定の実施形態では、導入遺伝子は最大でも3500bpの長さを有する。
【0204】
ベクター、細胞及び医薬組成物
本発明の発現カセットは、ベクターに導入することができる。よって、本発明はまた、上記の発現カセットを含むベクターに関する。本発明に使用されているベクターは、RNA/タンパク質発現に適した、特に遺伝子療法に適したベクターである。
【0205】
一実施形態では、ベクターはプラスミドベクターである。
【0206】
別の実施形態では、ベクターは非ウイルスベクター、例えば、本発明の発現カセットを含有するナノ粒子、脂質ナノ粒子(LNP)又はリポソームである。
【0207】
別の実施形態では、ベクターは、標的細胞のゲノム内で本発明の発現カセットの組込みを可能にするトランスポゾン、例えば、機能亢進性Sleeping Beauty(SB100X)トランスポゾンシステム(Matesら、2009年)に基づくシステムである。
【0208】
更なる実施形態では、目的の導入遺伝子は、標的のゲノム操作のための有用な修復マトリックス、例えば、上記のようなエンドヌクレアーゼと共に、遺伝子の補正に適した修復マトリックスである。より特には、ベクターは、相同性駆動組込みのために、目的の遺伝子と相同性のアームを含有する修復マトリックスを含む。
【0209】
別の実施形態では、ベクターは、筋肉及び/又はCNSを標的とした遺伝子療法に適したウイルスベクターである。この場合、当技術分野で周知のような、効率的なウイルスベクターを生成するのに適した更なる配列を本発明の発現カセットに加える。特定の実施形態では、ウイルスベクターは組込みウイルスから誘導される。特に、ウイルスベクターは、アデノウイルス、レトロウイルス又はレンチウイルス(例えば、統合欠損レンチウイルス)から誘導されてもよい。特定の実施形態では、レンチウイルスは、目的の細胞/組織、例えば、筋肉細胞を標的とすることを可能にするエンベロープを有する偽型レンチウイルスである(特許出願EP17306448.6及びEP17306447.8に記載)。ウイルスベクターがレトロウイルス又はレンチウイルスから誘導される場合、更なる配列は、発現カセットの側面にあるレトロウイルス又はレンチウイルスLTR配列である。別の特定の実施形態では、ウイルスベクターは、パルボウイルスベクター、例えば、AAVベクター、例えば、筋肉及び/又はCNSの形質導入に適したAAVベクターである。この実施形態では、更なる配列は、発現カセットの側面にあるAAV ITR配列である。
【0210】
好ましい実施形態では、ベクターはAAVベクターである。ヒトパルボウイルスアデノ随伴ウイルス(AAV)は、潜在的感染症を確立するために感染細胞のゲノムに組み込まれることが可能な、複製が元来不完全なディペンドウイルス属である。組込みが、ヒトゲノムにおいてAAVS1と呼ばれる染色体19(19q13.3-qter)に位置する特異的な部位に生じるため、最後の特性は哺乳動物のウイルス中でも独特であるように見える。
【0211】
したがって、AAVベクターは、ヒト遺伝子療法に対する潜在的なベクターとしてかなりの関心を集めている。中でも、ウイルスの好ましい特性は、任意のヒト疾患との関連性の欠如、分裂細胞と非分裂細胞の両方に感染するその能力、及び感染し得る異なる組織から誘導される広範囲の細胞株である。
【0212】
ヒト又はヒト以外の霊長類(NHP)から単離した及び十分に特徴付けられた血清タイプのAAVの中でも、ヒト血清タイプ2は、遺伝子移動ベクターとして開発された最初のAAVである。現在使用されている他のAAV血清タイプとしては、AAV-1、AAV-2変異体(例えば、Lingら、2016年7月18日、Hum Gene Ther Methods.で開示された、Y44+500+730F+T491V変化を有する操作されたカプシドを含む四重変異体カプシド最適化AAV-2)、-3及びAAV-3変異体(例えば、Vercauterenら、2016年、Mol. Ther.、24巻(6号)、1042頁に開示された、2つのアミノ酸変化、S663V+T492Vを有する操作されたAAV3カプシドを含む、AAV3-ST変異体)、-3B及びAAV-3B変異体、-4、-5、-6及びAAV-6変異体(例えば、Rosarioら、2016年、Mol Ther Methods Clin Dev. 3、16026頁に開示された、三重変異AAV6カプシドY731F/Y705F/T492V形態を含むAAV6変異体)、-7、-8、-9、-2G9、-10、例えば、cy10及び-rh10、-rh74、-rh74-9等、EP18305399に開示されているもの(例えば、EP18305399の実施例に記載されているHybrid Cap rh74-9血清タイプ;rh74-9血清タイプはまた本明細書で「-rh74-9」、「AAVrh74-9」又は「AAV-rh74-9」とも呼ばれている)、EP18305399に開示されている-9-rh74(例えば、EP18305399の実施例に記載されているHybrid Cap 9-rh74血清タイプ;-9-rh74血清タイプはまた本明細書で「-9-rh74」、「AAV9-rh74」、「AAV-9-rh74」、又は「rh74-AAV9」とも呼ばれている)、-dj、Anc80、LK03、AAV2i8、ブタAAV血清タイプ、例えば、AAVpo4及びAAVpo6、並びにAAV血清タイプのチロシン、リジン及びセリンカプシド変異体等が挙げられる。加えて、他の非天然の、操作された変異体及びキメラのAAVもまた有用となり得る。
【0213】
AAVウイルスは、従来の分子の生物学技術を使用して操作することができ、これによって、核酸配列の細胞特異的な送達に対して、免疫原性を最小限に抑えることに対して、安定性及び粒子寿命を調整することに対して、効率的な分解に対して、核への正確な送達に対して、これらの粒子を最適化することが可能となる。
【0214】
ベクター中の組立てに望ましいAAV断片として、vp1、vp2、vp3及び超可変領域を含むcapタンパク質、rep78、rep68、rep52、及びrep40を含むrepタンパク質、並びにこれらのタンパク質をコードしている配列が挙げられる。これらの断片は、様々なベクターシステム及び宿主細胞において容易に利用することができる。
【0215】
Repタンパク質を欠くAAVベースの組換えベクターは、低い有効性で宿主のゲノムに組み込まれ、標的細胞内で数年間持続することができる安定した環状エピソームとして主に存在する。
【0216】
AAV天然の血清タイプを使用する代わりに、本発明の文脈で、限定なしで、非自然発生のカプシドタンパク質を有するAAVを含む、人工AAV血清タイプを使用することができる。このような人工カプシドは、選択されたAAV配列(例えば、vp1カプシドタンパク質の断片)を、異なる選択されたAAV血清タイプ、同じAAV血清タイプの非隣接部分、非AAVウイルス源、又は非ウイルス源から得ることができる異種配列と組み合わせて使用する任意の適切な技術により生成することができる。人工AAV血清タイプは、限定なしで、キメラAAVカプシド、組換えAAVカプシド、又は「ヒト化」AAVカプシドであってよい。
【0217】
本発明の文脈では、AAVベクターは、目的の標的細胞、すなわち筋肉細胞及びCNS細胞を変換することが可能なAAVカプシドを含む。「CNS」とは、脳及び脊髄のすべての細胞及び組織を意味する。よって、この用語は、これらに限定されないが、神経細胞、グリア細胞、アストロサイト、脳脊髄液(CSF)、間隙空間、骨、軟骨等を含む。
【0218】
特定の実施形態によると、AAVベクターは、AAV-1、-2、AAV-2変異体(例えば、Lingら、2016年7月18日、HumGene Ther Methodsで開示された、Y44+500+730F+T491V変化を有する操作されたカプシドを含む四重変異体カプシド最適化AAV-2[プリント前Epub])、-3及びAAV-3変異体(例えば、Vercauterenら、2016年、Mol. Ther.、24巻(6号)、1042頁に開示された、2つのアミノ酸変化、S663V+T492Vを有する操作されたAAV3カプシドを含む、AAV3-ST変異体)、-3B及びAAV-3B変異体、-4、-5、-6及びAAV-6変異体(例えば、Rosarioら、2016年、Mol Ther Methods Clin Dev.3、16026頁に開示された、三重変異AAV6カプシドY731F/Y705F/T492V形態を含むAAV6変異体)、-7、-8、-9、-2G9、-10、例えば、-cy10及び-rh10、-rh39、-rh43、-rh74、-rh74-9、-dj、Anc80、LK03、AAV.PHP、AAV2i8、ブタAAV、例えば、AAVpo4及びAAVpo6、並びにAAV血清タイプのチロシン、リシン及びセリンカプシド変異体等を含む群から選択される。特定の実施形態では、AAVベクターは、AAV8、AAV9、AAVrh74、AAVrh74-9、又はAAV2i8血清タイプ(すなわちAAVベクターは、AAV8、AAV9、AAVrh74、AAVrh74-9又はAAV2i8血清タイプのカプシドを有する)のベクターである。更に特定の実施形態では、AAVベクターは偽型ベクターであり、すなわちそのゲノム及びカプシドは、異なる血清タイプのAAVから誘導される。例えば、偽型AAVベクターは、そのゲノムが上述のAAV血清タイプの1つ、特にAAV2血清タイプから誘導され、そのカプシドが別の血清タイプから誘導されたベクターであってよい。例えば、偽型ベクターのゲノムは、AAV8、AAV9、AAVrh74、AAVrh74-9、又はAAV2i8血清タイプから誘導されたカプシドを有していてもよく、そのゲノムは、異なる血清タイプから誘導されてもよい。特定の実施形態では、AAVベクターは、AAV8、AAV9、AAVrh74又はAAVrh74-9血清タイプのカプシド、特にAAV8又はAAV9血清タイプのカプシド、より具体的にはAAV8血清タイプのカプシドを有する。
【0219】
別の実施形態では、カプシドは改変されたカプシドである。本発明の文脈で、「改変されたカプシド」とは、キメラカプシド又は1種若しくは複数の野生型AAV VPカプシドタンパク質から誘導された1種若しくは複数の変異体VPカプシドタンパク質を含むカプシドであってよい。
【0220】
特定の実施形態では、AAVベクターは、キメラベクター、すなわちそのカプシドは、少なくとも2種の異なるAAV血清タイプから誘導されたVPカプシドタンパク質を含むか、又は少なくとも2種のAAV血清タイプから誘導されたVPタンパク質領域若しくはドメインを合わせた少なくとも1種のキメラVPタンパク質を含む。例えば、キメラAAVベクターは、AAV8カプシド配列と、AAV8血清タイプとは異なる一連のAAV血清タイプ、例えば、具体的に上述されたもののいずれかとの組合せから誘導することができる。
【0221】
別の実施形態では、改変されたカプシドは、エラーが発生しやすいPCR及び/又はペプチド挿入により挿入されたカプシド改変からも誘導することができる(例えば、Bartelら、2011年に記載の通り)。加えて、カプシド変異体は、単一のアミノ酸変化、例えば、チロシン変異体(例えば、Zhongら、2008年に記載の通り)を含むことができる。特定の実施形態では、AAVベクターのカプシドは、WO2019/193119又はWO2020/200499又はWO2022053630に記載されているような、AAV血清タイプ9(AAV9)とAAV血清タイプ74(AAVrh74)カプシドタンパク質との間のペプチド修飾ハイブリッド、例えば、P1ペプチドで修飾された、AAV9-rh74ハイブリッドカプシド又はAAVrh74-9ハイブリッドカプシドである。特定の実施形態では、AAVのカプシドは、WO2019/193119に記載されているようなAAV9-rh74カプシド、WO2020/200499に記載されているようなAAV9-rh74-P1カプシド、又はWO2022053630に記載されているようなAAV9-rh74-HB-P1カプシドである。
【0222】
更なる実施形態では、AAVベクターは、WO2020/216861に記載されているようなAAVベクター又はWO2022/003211に記載されているようなAAVベクターである。特に、AAVベクターは、WO2020/216861に記載されているような変異体AAV2カプシド、又はWO2022/003211に記載されているようなAAV8とAAV2/13との間のハイブリッドカプシドを有してもよい。
【0223】
更なる実施形態では、AAVベクターはブタAAV血清タイプ1(AAVpo1)カプシド野生型又はWO2021/219762に記載されているようなA1ペプチドで修飾されている(AAVpo1-A1)を含む。
【0224】
加えて、AAVベクターのゲノムは、一本鎖又は自己相補的二本鎖ゲノムのいずれかであってよい(McCartyら、Gene Therapy、2003年)。自己相補的二本鎖AAVベクターは、AAV末端反復のうちの1つから末端解離部位を欠失させることにより生成される。その複製ゲノムが野生型AAVゲノムの半分の長さを有するこれらの改変されたベクターは、DNAダイマーをパッケージする傾向を有する。好ましい実施形態では、本発明の実施に導入されるAAVベクターは、一本鎖ゲノムを有し、更に好ましくは、AAV8、AAV9、AAVrh74、AAVrh74-9、又はAAV2i8カプシド、特にAAV8、AAV9、AAVrh74又はAAVrh74-9カプシド、例えば、AAV8又はAAV9カプシド、より特にはAAV8カプシドを含む。当技術分野で公知の通り、追加の適切な配列を、機能的ウイルスベクターを得るために、本発明の核酸構築物の中に導入することができる。適切な配列はAAV ITRを含む。
【0225】
当然のことながら、本発明の核酸配列及び本発明の発現カセットを設計する上で、当業者は、前記構築物を細胞又は器官に送達するために使用されるベクターのサイズ限界に配慮することに留意している。特に、上記で注意喚起したように、ベクターがAAVベクターである場合、AAVベクターの主要な限定は、各AAV血清タイプにより変動し得るその積載容量であるが、これは親のウイルスゲノムのサイズの周辺に限定されると考えられることを当業者は承知している。例えば、5kbは、AAV8カプシドに普通パッケージされると考えられる最大サイズである。(Wu Z.ら、Mol Ther.、2010年、18巻(1号): 80~86頁; Lai Y.ら、Mol Ther.、2010年、18巻(1号): 75~79頁; Wang Y.ら、Hum Gene Ther Methods、2012年、23巻(4号): 225~33頁)。したがって、当業者は、AAV5'-及び3'-ITRをコードする配列を含む生成した核酸配列が、好ましくは導入されるAAVベクターの積載容量の110%を超えない、特に好ましくは5.5kbを超えないように、本発明の核酸構築物の成分を選択するよう本発明を実施する上で留意している。
【0226】
本発明はまた本発明の核酸配列又は本発明の発現カセットを用いて変換される単離した細胞、例えば筋肉細胞又はCNS細胞に関する。本発明の単離した細胞は、目的の組織又は前記対象の血流への注入を介してそれを必要とする対象に送達され得る。特定の実施形態では、本発明は、本発明の核酸分子又は発現カセットを、処置される対象の単離した細胞に導入するステップ、及び核酸又は発現カセットが導入された前記細胞をこの対象に戻すステップを含む。
【0227】
本発明はまた、本発明の核酸分子、ベクター又は単離した細胞を含む医薬組成物を提供する。このような組成物は、治療有効量の本発明の核酸配列、ベクター又は単離した細胞、及び薬学的に許容される担体を含む。「薬学的に許容される」という用語は、連邦の監督官庁又は州政府により承認されていること、或いは動物、及びヒトにおける使用に対して、米国若しくは欧州薬局方又は他の一般的に認められている薬局方に列挙されていることを意味する。「担体」という用語は、希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指し、これらと一緒に治療薬が投与される。このような薬学的担体は、滅菌液体、例えば、水及び油、例えば、石油、動物、植物若しくは合成起源のものを含めた、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等である。生理食塩水及び水性ブドウ糖及びグリセロール溶液もまた、特に注射溶液用の液体担体として利用することができる。適切な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥した脱脂乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール等が挙げられる。
【0228】
組成物はまた、所望する場合、微量な湿潤化剤又は乳化剤、又はpH緩衝剤を含有することができる。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、持続放出製剤等の形態を取ることができる。経口製剤は、標準的な担体、例えば、医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等を含むことができる。適切な薬学的担体の例は、E. W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。このような組成物は、対象への適切な投与のための形態を提供するために、好ましくは精製された形態の治療有効量の治療薬を、適切な量の担体と一緒に含有することになる。特定の実施形態では、本発明の核酸配列、発現カセット、ベクター又は単離した細胞は、リン酸緩衝食塩水を含み、0.25%ヒト血清アルブミンを補充した組成物に製剤化される。別の特定の実施形態では、本発明のベクターは、リンガー乳酸及び非イオン性界面活性剤、例えば、プルロニックF68を、全組成物の0.01~0.0001質量%の最終濃度、例えば、0.001質量%の濃度で含む組成物に製剤化される。製剤は、血清アルブミン、特にヒト血清アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミンを0.25%で更に含むことができる。貯蔵又は投与のいずれかに対して他の適当な製剤は、当技術分野で公知であり、特にWO2005/118792又はAllayら、2011年から公知である。
【0229】
好ましい実施形態では、組成物は、ヒトへの静脈内又は筋肉内投与、好ましくは静脈内投与に適応した医薬組成物として、所定の手順に従い製剤化される。通常、静脈内投与用組成物は、滅菌の等張性水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、組成物はまた、可溶化剤及び注入部位の疼痛を和らげるための局所麻酔剤、例えば、リグノカインを含んでもよい。
【0230】
一実施形態では、本発明の核酸配列、発現カセット又はベクターは、ベシクル、特にリポソームで送達することができる。更に別の実施形態では、本発明の核酸配列、発現カセット又はベクターは、制御放出性システムで送達することができる。
【0231】
使用方法
本発明のおかげで、目的の導入遺伝子を、筋肉及びCNS細胞内に発現させることができる。
【0232】
本発明の核酸分子、発現カセット又はベクターは、遺伝子を筋肉内に及び/又はCNS細胞内に発現させるために使用することができる。したがって、本発明は、目的の導入遺伝子を筋肉細胞又はCNS細胞内で発現させるための方法であって、本発明の発現カセットが細胞に導入され、目的の導入遺伝子が発現される方法を提供する。方法は、目的の導入遺伝子を筋肉又はCNS細胞内で発現させるためのin vitro、ex vivo又はin vivoの方法であってよい。
【0233】
特定の態様では、本発明は、目的の導入遺伝子を細胞内で発現させるためのex-vivoの方法に使用するための、本発明の核酸分子、発現カセット又はベクターであって、本発明の発現カセットが細胞に導入されて、目的の導入遺伝子が発現する、核酸分子、発現カセット又はベクターに関する。
【0234】
本発明の核酸分子、発現カセット又はベクターはまた、遺伝子療法に対して使用することもできる。したがって、一態様では、本発明は、医薬として使用するための、上記のような核酸分子、発現カセット、ベクター、単離した細胞又は医薬組成物に関する。よって、一態様では、本発明は、療法、具体的には遺伝子療法において使用するための、本明細書に開示されている核酸分子、発現カセット又はベクターに関する。同様に、本発明の単離した細胞は、療法、具体的には細胞療法に使用することができる。
【0235】
別の態様では、本発明は、神経筋障害を処置するための方法において使用するための、上記載のような核酸分子、発現カセット、ベクター、単離した細胞又は医薬組成物に関する。
【0236】
更なる態様では、本発明は、神経筋障害の処置に使用するための医薬の製造のための、上記のような核酸分子、発現カセット、ベクター、単離した細胞又は医薬組成物の使用に関する。
【0237】
別の態様では、本発明は、神経筋障害の処置のための方法であって、本明細書に記載されている治療有効量の核酸分子、発現カセット、ベクター、単離した細胞又は医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法に関する。
【0238】
神経筋障害は特に遺伝性又は後天性障害、例えば、遺伝性又は後天性神経筋疾患である。当然のことながら、治療的関心対象の組織への発現を推進する治療用導入遺伝子及びプロモーターは、処置すべき障害を考慮して選択されることになる。
【0239】
「神経筋障害」という用語は、直接的(随意筋の病態である)、又は間接的(神経又は神経筋接合部の病態である)のいずれかにより、筋肉が機能することを障害する疾患及び病気を包含する。例示的な神経筋障害としては、限定なしで、筋ジストロフィー(例えば、筋緊張性ジストロフィー(スタイナート病)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、眼咽頭筋ジストロフィー、遠位筋ジストロフィー、エメリードレフュス型筋ジストロフィー)、運動ニューロン疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(乳児進行性脊髄性筋萎縮症(1型、ウェルドニッヒホフマン病)、中間型脊髄性筋萎縮症(2型)、若年性脊髄性筋萎縮症(3型、クーゲルベルクウェランダー病)、成人脊髄性筋萎縮症(4型))、球脊髄性筋萎縮症(ケネディー病))、炎症性ミオパシー(例えば、多発性筋炎皮膚筋炎、封入体筋炎)、神経筋接合部の疾患(例えば、重症筋無力症、ランバートイートン(筋無力症)症候群、先天性筋無力症候群)、末梢神経の疾患(例えば、シャルコーマリートゥース病、フリードライヒ運動失調症、デジェリンソッタス病)、筋肉の代謝性疾患(例えば、ホスホリラーゼ欠損症(マックアードル病)、酸性マルターゼ欠損症(ポンペ病)、ホスホフルクトキナーゼ欠損症(垂井病)、脱分枝酵素欠損症(コリ病又はフォーブズ病)、ミトコンドリアミオパシー、カルニチン欠損症、カルニチンパルミチルトランスフェラーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸キナーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸ムターゼ欠損症、乳酸デヒドロゲナーゼ欠損症、ミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症)、内分泌異常によるミオパシー(例えば、甲状腺機能亢進性ミオパシー、甲状腺機能低下性ミオパシー)、及び他のミオパシー(例えば、先天性ミオトニー、先天性パラミオトニア、セントラルコア病、ネマリンミオパシー、筋細管ミオパシー、周期性四肢麻痺)が挙げられる。本実施形態では、本発明の核酸配列は、肝臓選択的、筋肉選択的及び/又はニューロン選択的転写調節エレメント、例えば、肝臓選択的及び筋肉選択的転写調節エレメント、肝臓選択的及びニューロン選択的転写調節エレメント、並びに肝臓選択的、筋肉選択的及びニューロン選択的転写調節エレメントを含む。
【0240】
特定の実施形態では、障害はグリコーゲン蓄積症である。「グリコーゲン蓄積症」という表現は、グリコーゲンの合成及び分解を担う酵素が関与する遺伝性代謝障害の群を表す。より特定の実施形態では、グリコーゲン蓄積症は、GSDI(フォンギールケ病)、GSDII(ポンペ病)、GSDIII(コリ病)、GSDIV、GSDV、GSDVI、GSDVII、GSDVIII又は心臓の致死性先天性グリコーゲン蓄積症であってよい。より特には、グリコーゲン蓄積症は、GSDI、GSDII及びGSDIIIからなる群、更により特にはGSDII及びGSDIIIからなる群において選択される。更により特定の実施形態では、グリコーゲン蓄積症はGSDIIである。特に、本発明の核酸分子は、GAA欠乏状態、又はグリコーゲンの蓄積に関連する他の状態、例えば、GSDI(フォンギールケ病)、GSDII(ポンペ病)、GSDIII(コリ病)、GSDIV、GSDV、GSDVI、GSDVII、GSDVIII及び心臓の致死性先天性グリコーゲン蓄積症、より具体的にはGSDI、GSDII又はGSDIII、更により特にはGSDII及びGSDIIIを処置するための遺伝子療法において有用であってよい。更に特定の実施形態では、障害はポンペ病であり、治療用導入遺伝子は、酸性アルファ-グルコシダーゼ(GAA)又はその変異体をコードしている遺伝子である。GAAのこのような変異体は、特にこれら全体において参照により本明細書に組み込まれる、出願PCT/2017/072942、PCT/EP2017/072945及びPCT/EP2017/072944に開示されている。本実施形態では、本発明の核酸配列は、肝臓選択的、筋肉選択的及び/又はニューロン選択的転写調節エレメント、例えば、肝臓選択的及び筋肉選択的転写調節エレメント、肝臓選択的及びニューロン選択的転写調節エレメント、筋肉選択的及びニューロン選択的転写調節エレメント、並びに肝臓選択的、筋肉選択的及びニューロン選択的転写調節エレメントを含む。特定の実施形態では、障害は、乳児発症型ポンペ病(IOPD)又は遅発型ポンペ病(LOPD)である。好ましくは、障害はIOPDである。
【0241】
当業者は、遺伝子療法によるこれら及び他の障害の処置に有用な目的の導入遺伝子を認識している。例えば、治療用導入遺伝子は、MPSIに対してはリソソーム酵素α-L-イズロニダーゼ[IDUA(アルファ-L-イズロニダーゼ)]であり、ポンペ病に対しては酸性-α-グルコシダーゼ(GAA)であり、コリ病(GSDIII)に対してはグリコーゲン脱分枝酵素(GDE)又は短縮形態のGDE(短縮形態のGDE、又は小型GDEとも呼ばれる)であり、GSDIに対してはG6Pであり、LGMD2Dに対してはアルファ-サルコグリカン(SGCA)であり、DMDに対してはジストロフィン又はその短縮形態であり、SMAに対してはSMN1である。目的の導入遺伝子はまた、欠損したタンパク質又は所与のタンパク質の発現を抑制するRNAを提供する以外の他の治療薬特性を提供する導入遺伝子であってもよい。例えば、目的の導入遺伝子としては、限定なしで、筋力を増加させることができる導入遺伝子を挙げることもできる。
【0242】
特定の疾患に対して、本発明のハイブリッドプロモーターに作動可能に連結され得る目的の治療用導入遺伝子の具体例は、以下に提供されている。
【0243】
特定の実施形態では、疾患はコリ病であり、目的の導入遺伝子GDE又は短縮形態のGDEをコードする。本発明での使用に適した短縮形態のGDEとしては、限定なしで、EP18306088に記載されているものを挙げることができる。代わりに、本発明は、GDEを発現するための二重AAVベクターシステム、例えば、WO2018162748で開示された二重AAVベクターシステムに使用される。本実施形態では、本発明のベクターは、5'と3'の間のAAV ITR、すなわち、本発明の核酸分子の制御下で、GDEのN末端部分をコードする最初の核酸配列を含む二重AAVベクターシステムの最初のAAVベクターに対応することができる。
【0244】
別の特定の実施形態では、疾患はポンペ病であり、目的の導入遺伝子は、酸性-α-グルコシダーゼ(GAA)、又は改変GAAをコードする。本発明での使用に適した改変GAAとしては、限定なしで、WO2018046772、WO2018046774及びWO2018046775で開示されたものが挙げられる。
【0245】
更に特定の実施形態では、障害は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、筋細管ミオパシー、脊髄性筋萎縮症、肢帯筋ジストロフィー2I、2A、2B、2C又は2D型及び筋緊張性ジストロフィー1型から選択される。
【0246】
本発明のベクターの投与方法として、これらに限定されないが、WO2015158924に記載されているような皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、局所領域投与、及び経口経路が挙げられる。特定の実施形態では、投与は静脈内又は筋肉内経路を介する。本発明のベクターは、任意の好都合な経路、例えば点滴又はボーラス注射により、上皮又は皮膚粘膜の内壁(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸管粘膜等)を介した吸収により投与することができ、他の生物活性物質と一緒に投与することができる。投与は全身性又は局所的であることができる。
【0247】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物を、処置を必要とする領域、例えば、肝臓又は筋肉に局所的に投与することが望ましいこともある。これは、例えば、インプラントの手段により達成することができ、前記インプラントは、シアラスティック膜等の膜、又は繊維を含めた、多孔質、無孔質、又はゼラチン状の材料である。
【0248】
処置すべき障害の処置において有効である本発明のベクターの量は、標準的な臨床技術で決定することができる。加えて、in vivo及び/又はin vitroアッセイを任意選択で利用して、最適な用量範囲を予測するのを助けることもできる。製剤に利用されるべき正確な用量はまた、投与経路、及び疾患の重症度に依存することになり、医師の判断及び各患者の状況に従い決定されるべきである。それを必要とする対象に投与される本発明のベクターの用量は、限定なしで、投与経路、処置する特定の疾患、対象の年齢又は治療効果を得るのに必要な発現のレベルを含むいくつかの因子に基づき変動することになる。当業者は、当分野のその知識に基づき、これらの因子及びその他に基づき必要とされる用量範囲を容易に決定することができる。AAVベクターを対象に投与することを含む処置の場合、ベクターの典型的な用量は、体重1キログラム当たり少なくとも1×108のベクターゲノム(vg/kg)、例えば、少なくとも1×109vg/kg、少なくとも1×1010vg/kg、少なくとも1×1011vg/kg、少なくとも1×1012vg/kg、少なくとも1×1013vg/kg、少なくとも1×1014vg/kg又は少なくとも1×1015vg/kgである。
【0249】
特定の実施形態では、本発明のベクターは、遺伝子療法に使用されている典型的な用量より低い用量で投与されてもよい。特に、それを必要とする対象にAAVベクターを投与することを含む処置において、ベクターは、上記の典型的な用量の2分の1以下の用量、特に遺伝子療法で通常使用されている典型的なAAV用量の3分の1以下、4分の1以下、5分の1以下、6分の1以下、7分の1以下、8分の1以下、9分の1以下、10分の1以下、11分の1以下、12分の1以下、13分の1以下、14分の1以下、15分の1以下、16分の1以下、17分の1以下、18分の1以下、19分の1以下、20分の1以下、21分の1以下、22分の1以下、23分の1以下、24分の1以下、25分の1以下、26分の1以下、27分の1以下、28分の1以下、29分の1以下、30分の1以下、31分の1以下、32分の1以下、33分の1以下、34分の1以下、35分の1以下、36分の1以下、37分の1以下、38分の1以下、39分の1以下、40分の1以下、41分の1以下、42分の1以下、43分の1以下、44分の1以下、45分の1以下、46分の1以下、47分の1以下、48分の1以下、49分の1以下、又は更に少なくとも50分の1以下の用量で投与されてもよい。
【実施例】
【0250】
材料及び方法
AAVベクターの生成
この実験で使用したAAVベクターは、アデノウイルスフリーのHEK293細胞の一時的形質移入の方法を使用して生成され、Aktaにより精製された。qPCRを使用して、AAVベクターストックの力価を決定した。本実験で使用したすべてのベクター調製物は使用前に互いに比較して階層化した。AAVゲノムをアニールしたITR SEQ上での、又はコドン最適化hGAA導入遺伝子配列に対するqPCRに対して使用したプライマー:フォワード:5'-agatacgccggacattggactg-3';リバース、5'-agatacgccggacattggactg-3'。
【0251】
in vivo実験
マウスの実験は、動物の飼育及び実験に関するフランス及び欧州の法律に従い(2010/63/EU)実施され、地元の組織倫理委員会により承認された。野生型雄のC57BL/6マウスをCharles River Laboratories社から購入した。Gaaノックアウトマウス(Gaa-/-)をThe Jackson Laboratory社(B6;129-Gaatm1Rabn/J、ストック番号004154、6neo)から購入した。これらのマウスはもともとRabenらによって生成されたものであった。95匹のLittermateの雄マウスを使用した。これらは影響を受けた(Gaa-/-)又は健康(Gaa+/+)のいずれかであった。AAVベクターは、0.2mLの量を、尾静脈を介して成体マウスに送達した。注射から1カ月後、マウスを屠殺して、血液及び組織を採取した。マウス実験群は、過去の実験において生成されたデータに基づきn=4のサイズにした。分析したすべての試料及び動物はデータに含まれ、あらゆる異常値は除外した。
【0252】
GAA活性アッセイ
急速冷凍した組織をUltraPure DNase-及びRNaseフリー蒸留水(Thermo Fisher Scientific社)中でホモジナイズした。組織を秤量し、ホモジナイズし、10,000gで10分間遠心分離して、上澄み液を収集した。適切に希釈された10μLの試料(血漿又は組織ホモジネート)及び20μLの基質、4-メチルウンベリフェロン(4MU)a-D-グルコシドを使用して、ブラック96-ウェルプレート(PerkinElmer社)内に、酵素反応を設定した。反応混合物を37℃で1時間インキュベートし、次いで150μLの炭酸ナトリウム緩衝液(pH10.5)を添加することにより反応を停止した。検量線(0~2,500pmol/mLの4MU)を使用して、EnSpire Alphaプレートリーダー(PerkinElmer社)を449nm(発光)及び360nm(励起)において使用して、個々の反応混合物から放出された蛍光4MUを測定した。浄化した上澄み液のタンパク質濃度をBCA(Thermo Fisher Scientific社)で定量化した。組織内のGAA活性を計算するため、放出された4MU濃度を試料タンパク質濃度で割り、タンパク質1ミリグラム又は血清1ミリリットル当たりの毎時ナノモルとして活性を報告した。
【0253】
ウエスタンブロット分析
マウス血漿に対するウエスタンブロット法を、蒸留水で1:4に希釈した試料において実施した。マウス組織のホモジネートを、GAA活性に対して示されている通り調製した。BCAタンパク質アッセイ(Thermo Fisher Scientific社)を使用して、タンパク質濃度を決定した。SDS-PAGE電気泳動を4%~12%ポリアクリルアミドゲル中で実施した。移動した後、膜をOdyssey緩衝液(LI-COR Biosciences社)で遮断し、抗GAA抗体(ウサギモノクローナル、クローンEPR4716(2)、Abcam社)及び抗Gapdh(ウサギポリクローナル、PA1-988、Thermo Fisher Scientific社)と共にインキュベートした。膜を洗浄し、適当な二次抗体(LI-COR Biosciences社)と共にインキュベートし、Odyssey画像化システム(LI-COR Biosciences社)で視覚化した。ウエスタンブロット法の定量化に対して、ImageJ又はImage Studio Lite4.0のいずれかを使用した。いずれかのGapdh帯域を使用して、マウス組織中のhGAAタンパク質帯域の定量化を正規化した。血漿中のhGAAタンパク質帯域の定量化は、マウス血漿中の抗hGAA抗体により検出された非特異性帯域を使用して(ローディングコントロールとして使用)正規化した。
【0254】
抗GAA及び抗カプシド抗体検出
抗hGAAIgG捕捉アッセイは、2mg/mLのrhGAAをコーティングしたMaxisorp 96-ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific社)内で実施した。IgG検量線は、ウェルに二回反復で直接コーティングした(1mg/mLから0.15mg/mLまで)市販のマウス組換えIgGs(Sigma-Aldrich社)の連続1~2希釈により作製した。2%BSAを含有する10mM PBS(pH7.4)中で適切に希釈された血漿試料を二回反復で分析した。HRP-コンジュゲート抗マウスIgG抗体(ヒトads-HRP、Southern Biotech社)を二次抗体として使用した。プレートを、OPD基質(o-フェニレンジアミンジヒドロクロリド、Sigma社)に曝露した。H2SO4の3M溶液で反応を停止し、マイクロプレートリーダー(ENSPIRE、PerkinElmer社、Waltham、USA)を使用して、光学密度(OD)測定を492nmで行った。検量線に対して、抗AAV IgG濃度を決定した。
【0255】
mSeAP定量化
急速冷凍した組織は、UltraPure DNase-及びRNaseフリーの蒸留水(Thermo Fisher Scientific社)中でホモジナイズした。組織を秤量し、ホモジナイズし、10,000gで10分間遠心分離して、上澄み液を収集した。Life Tech社T1015 mseapキットを使用して、酵素反応を設定した。手短に、10μLの加熱した試料(血漿又は組織ホモジネート)を10μLのアッセイ緩衝液と共に5分間インキュベートし、次いで10μLの反応物緩衝液と共に20分間インキュベートした。検量線(0~6ng/μLのmSEAP)を使用して、個々の反応混合物から放出された発光を、EnSpireアルファプレートリーダー(PerkinElmer社)を用いて測定した。浄化した上澄み液のタンパク質濃度をBCA(Thermo Fisher Scientific社)で定量化した。組織におけるmSeAP発現を計算するため。
【0256】
ベクターゲノムコピー番号分析
Nucleo Mag Pathogen(Macherey-Nagel社、France)を使用して組織のホモジネートからDNAを抽出し、定量化した。500ngのDNA、プライマー、及びITR上に又はコドン最適化hGAA上にアニールしたプローブ(フォワード、5'-agatacgccggacattggactg-3';リバース、5'-agatacgccggacattggactg-3';プローブ、5'-gtgtggtcctcttgggagc-3')、及びマウスチチンを基準遺伝子(フォワード:5'-aaaacgagcagtgacgtgagc-3';リバース:5'-ttcagtcatgctgctagcgc-3';プローブ、5'-tgcacggaagcgtctcgtctcagt-3')として使用して、ベクターゲノムコピー番号をqPCRで決定した。qPCRはTaqMan法を使用して実施した。
【0257】
統計分析
本発明の原稿に示されているすべてのデータは平均値±SDとして報告されている。サンプリングした単位の数nは、これに基づき統計が報告され、in vivo実験に対する単一のマウスである(1匹のマウスがn=1)。GraphPad Prism7.0ソフトウエアを使用して、統計的分析を行った。Shapiro-Wilk試験を使用して、異なる測定(血漿中の抗hGAA IgGの量、血漿及び組織中のhGAAタンパク質の発現、組織中のGAA酵素活性)から得たデータの正常な分布を評価した。統計試験は、2つの群の比較に対しては独立スチューデントt検定を使用し、2つより多くの群の比較に対しては一元配置ANOVAとTukeyのポストホックを使用した。パラメトリック試験で分析したすべてのデータセットに対して、アルファ=0.05。すべての統計試験は両側性で実施した。p<0.05は有意であると考えられた。各データセットに対して実施した統計分析は図の説明文に示されている。すべての数字に対して、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001、#p<0.05、##p<0.01、###p<0.001、####p<0.0001。
【0258】
結果
図1Aには、偏在性CAGプロモーター(「P1」と呼ぶ)及び4つの異なる組合せ(i)H3エンハンサーとspC5-12プロモーター(P2)、(ii)H3エンハンサーとCK6プロモーター(P3)、(iii)H3エンハンサーと、CK6プロモーターと、spC5-12プロモーター(P4)、及び(iv)CK6プロモーターとspC5-12プロモーター(P5)が表されている。H3エンハンサーはHS-CRM8エンハンサーの3つの繰返しに相当する。P4の配列は配列番号30に示されている通りである。
【0259】
図2には、in vivoプロトコールが記載されている。週齢6週のC57BL/6野生型(WT)マウスに、P1、P3又はP4の転写制御下でネズミ分泌アルカリホスファターゼ(mSeAP)をコードしている、4E11 vg/マウスのAAV-MTベクター(AAV9-rh74-P1ベクター)を静脈内注射した。注射から1カ月後、マウスを屠殺し、組織を分析した。
【0260】
図3は、肝臓及び四頭筋内の細胞1個当たりの導入遺伝子のコピー数を表している。データは、両方の組織とも3つのAAVベクターにより類似の有効性で変換されたことを示している。
【0261】
図4は、ベクターを注入したマウスの肝臓、4つの異なる筋肉(心臓、ダイヤフラム、四頭筋及び三頭筋)及び脊髄において測定されたmSEAP活性を示している。異なる筋肉及び脊髄において、P1及びP4制御下でmSEAPを発現するAAV-MTベクターを用いた形質導入後、改善されたmSEAP活性が観察された。P1(偏在性プロモーター)のみが肝臓においてmSEAPを発現した。
【0262】
図5は、in vivoプロトコールについて記載している。週齢6週のC57BL/6野生型(WT)マウスには、P1~P5の転写制御下で最適化されたヒトGAAコドン(hGAAco)をコードしている5E10 vg/マウスのAAV-MT(AAV9-rh74-P1)ベクターを静脈内注射した。注射から1カ月後、マウスを屠殺し、組織を分析した。
【0263】
図6は、屠殺時に心臓組織から抽出したDNAからのチチン定量化により正常化したベクターゲノムコピー数(VGCN)を報告するものである。VGCNは各グループによって有意に異ならなかった。
【0264】
図7は、P1~P5の転写制御下でGAAをコードしているベクターを注入したマウスからの心臓で測定されたGAAに相当する。
図7Aは、酵素アッセイで測定され、全タンパク質で正規化されたGAA活性を表している。
図7B及び
図7Cは、ウエスタンブロットアッセイによるGAA定量化に相当する。
図7Bは、
図7Cから得たビンキュリン強度の帯域により正規化されたGAA強度の帯域を示している。これら2つの方法を用いて、GAAは、他の群と比較して、ベクターP4(H3-CK6-C512)を注入したマウスにおいてより多く発現した。
【0265】
図8は、P1~P5の転写制御下でGAAをコードしているベクターを注入したマウスからの四頭筋において測定したGAAに相当する。
図8Aは、酵素アッセイで測定し、全タンパク質で正規化されたGAA活性を表している。
図8B及び
図8Cは、ウエスタンブロットアッセイによるGAA定量化に相当する。
図8Bは、
図8Cから得たビンキュリン強度の帯域で正規化されたGAA強度の帯域の定量化を示している。これら2つの方法を用いて、GAAは、他の群と比較して、ベクターP4(H3-CK6-C512)を注入したマウスにおいてより多く発現した。
【0266】
図9Aには、H3エンハンサーの3つの異なる組合せ、及び575bpのリンカーが表されている(P1):リンカーの非作用を示すための陰性対照として使用した。P2はH3エンハンサー;P1に使用したリンカーで構成される。P3は、H3エンハンサー、CK6及びspC5-12プロモーターに相当する。これは陽性対照として使用した。P3の配列は配列番号30に示されている通りである。
図11Bは、in vivoプロトコールについて記載している。週齢6週のC57BL/6野生型(WT)マウスには、P1~P3の転写制御下で最適化されたヒトGAAコドン(hGAAco)をコードしている1E11vg/マウスのAAV-MT(AAV9-rh74-P1)ベクターを静脈内注射した。注射から1カ月後、マウスを屠殺し、組織を分析した。
【0267】
図10Aでは、屠殺時に心臓組織から抽出したDNAからチチン定量化で正規化したベクターゲノムコピー数(VGCN)が報告されている。VGCNは各グループにより有意に異ならなかった。
図10B~10Eは、P1~P3の転写制御下でGAAをコードしているベクターを注入したマウスからの心臓(B~C)及び四頭筋(D~E)において、ウエスタンブロット法で測定したGAAに相当する。
図10B及び
図10Dは、
図10C及び120から得たビンキュリン強度の帯域で正規化されたGAA強度の帯域の定量化を示している。GAAは、他の群と比較して、ベクターP3(H3-CK6-C512)を注入したマウスにおいてより多く発現した。これらの結果は、H3-CK6-spC5-12組合せの相乗効果が、H3とspC5-12との間の距離の増加によるものではなく、H3とspC5-12との間のCK6プロモーターの添加によるものであることを実証している。
【0268】
図11Aでは、(i)H3エンハンサー、CK6プロモーター及びspC5-12プロモーター(P1)、(ii)H3エンハンサー、CK6プロモーター及びActa1プロモーター(P2)、(iii)H3エンハンサー、CK6プロモーター及びCK6プロモーター(P3)、(iv)H3エンハンサー、CK6プロモーター及びCK8プロモーター(P4)の4つの異なる組合せが表されている。H3エンハンサーはHS-CRM8エンハンサーの3つの繰返しに相当する。P1の配列は配列番号30に示されている通りである。
図11Bはin vivoプロトコールについて記載している。週齢6週のC57BL/6野生型(WT)マウスには、P1~P4の転写制御下で最適化されたヒトGAAコドン(hGAAco)をコードしている3.8E11vg/マウスのAAV-MT(AAV9-rh74-P1)ベクターを静脈内注射した。注射から1カ月後、マウスを屠殺し、組織を分析した。
【0269】
図12Aでは、屠殺時に心臓組織から抽出したDNAからのチチン定量化により正規化されたベクターゲノムコピー数(VGCN)が報告されている。VGCNは各グループにより有意に異ならなかった。
図12Bは、P1~P4の転写制御下でGAAをコードしているベクターを注入したマウスからの四頭筋において、ウエスタンブロット法により測定されたGAAに相当する。結果は、P1(H3-CK6-C5.12)、P2(H3-CK6-Acta1)又はP3(H3-CK6-CK8)を使用した場合、類似のレベルのGAA発現が得られることを示している。P4(H3-CK6-CK6)はまた、P1と比較して、更により強い発現を示しているように見えるという点で非常に効率的である。よって、前記結果は、spC5.12が、筋肉における導入遺伝子発現のレベルに影響を与えることなく、他の筋肉特異的プロモーターにより置き換えられ得ることを示している。
【0270】
これらのデータは、驚くことに、肝臓選択的エンハンサー(H3)と、2つの筋肉選択的プロモーター(CK6+第2の筋肉プロモーター)の組合せが、肝臓を標的とすることなく、筋肉及び脊髄(類似の発現と比較して、強い偏在性プロモーター)におけるタンパク質の発現を大きく改善することを示唆している。
【配列表】
【国際調査報告】