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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】アノード材料
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/133 20100101AFI20240730BHJP
   C01B 32/205 20170101ALI20240730BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240730BHJP
【FI】
H01M4/133
C01B32/205
H01M4/587
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506777
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 EP2022071992
(87)【国際公開番号】W WO2023012294
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】102021120322.8
(32)【優先日】2021-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514194886
【氏名又は名称】エスジーエル・カーボン・エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イヴァーノ・ガルビアーティ
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト・ビアンコリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・クライン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・スラヘタ
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA02
4G146AB02
4G146AC01A
4G146AC01B
4G146AC22A
4G146AC22B
4G146AC30A
4G146AC30B
4G146AD23
4G146AD25
4G146BA22
4G146BA27
4G146BC03
4G146BC04
4G146BC07
4G146BC33A
4G146BC33B
4G146BC36A
4G146BC36B
4G146CB02
4G146CB09
4G146CB26
5H050AA02
5H050BA17
5H050CB08
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA05
5H050GA10
5H050GA26
5H050HA00
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA10
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本開示は、アノード材料、アノード材料を含む電極、電極を含む電池、アノード材料を製造する方法、及びアノード材料の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素粒子を含むリチウムイオン電池のためのアノード材料であって、前記アノード材料が、金属シート上に圧縮されて、高密度且つ濡れの速いアノード材料層を形成することができ、前記アノード材料層が、g/cmでの密度ρ、及び、以下の式(I)
=x×(ρ-1,0)+x×e(x3×(ρ-1,7)) (I)
によって記載される、秒での濡れ時間tを有し、
式中、ρは、金属シート上に圧縮されたアノード材料の密度であり、xは50から158の間であり、xは3から150の間であり、xは13から45の間である、アノード材料。
【請求項2】
前記炭素粒子が黒鉛を含む、請求項1に記載のアノード材料。
【請求項3】
前記アノード材料の全官能基の合計が、10μmol/g以下である、請求項1又は2に記載のアノード材料。
【請求項4】
前記アノード材料が、0.85~1.0の、円形度に関する分布の体積の50%に関する分布(s50)を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項5】
前記アノードが、0.95から1の、円形度に関する分布の体積の99%に関する分布(s99)を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項6】
1.0~2.2の、タップ1500/タップ30のタップ密度の比を有する、請求項1に記載のアノード材料。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のアノード材料を含む電極。
【請求項8】
請求項7に記載の電極を少なくとも1つ含む電池。
【請求項9】
a)黒鉛化可能な炭素質材料及び/又は黒鉛材料、並びに黒鉛化可能な有機バインダーを提供する工程と、
b)0.05から0.8のコークス/ピッチの比を使用することによって、工程a)の材料を混合する工程と、
c)最大950℃まで加熱して炭化材料を得る工程と、
d)工程c)の炭化材料を3100℃まで加熱して黒鉛化材料を得る工程と、
e)工程d)の粉体を黒鉛化可能な有機炭素質添加剤と混合する工程と、
f)工程e)の混合物を800℃から1100℃の間の温度に加熱する工程と
を含む、請求項1に記載のアノード材料を製造する方法。
【請求項10】
工程b)の後、b1)固体を形成する工程を行い、工程d)の後、d1)粉砕する工程を行う、請求項9に記載のアノード材料を製造する方法。
【請求項11】
自動車用のリチウムイオン電池のための、請求項1から6のいずれか一項に記載のアノード材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アノード材料、アノード材料を含む電極、電極を含む電池、アノード材料を製造する方法、及びアノード材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、例えば、現在最大250Wh/kgまでの、化学的及び電気化学的エネルギー貯蔵システムの最も高いエネルギー密度を有する充電式エネルギー貯蔵システム(二次電池)である。リチウムイオン電池は、主にノートパソコン、コンピューター、又は携帯電話等の携帯電子機器の分野において、電気駆動の自転車又は自動車等の輸送手段の分野において使用される。
【0003】
エレクトロモビリティに関して、車両の範囲を増大するために、携帯電子機器に関して、1回の電池充電での駆動時間を延ばすために、リチウムイオン電池のより高いエネルギー密度が必要である。
【0004】
現在のリチウムイオン電池は、例えば電気自動車の許容される充電時間を達成するための、充電の高速要件を満たすことができない。急速充電中の性能を限定する要因の1つは、セルの生産中の電極と電解質との濡れ性が低いことであると認識される。自動車において必要とされるエネルギー密度及び出力密度のエネルギー目標を最大化するために必要とされる電極密度の増大に伴って、電極と電解質との濡れ性は更に低下する。カソードのために使用される材料と比較して、黒鉛アノード材料は特に、主に電極プレスプロセスから引き起こされる機械的変形のために、電極パッケージの増大に伴う濡れ性の低下から影響を受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本開示の目的は、上述の先行技術の不利点を克服する、又は少なくとも軽減する、アノード材料、生産の方法、及び使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、黒鉛微粒子の圧密化が濡れ性にどのように影響するかを調査し、驚いたことに、タップ密度(タップされた密度とも呼ばれる)及び粒径分布などの周知の物理的パラメーターを適切に選択することによって、濡れ密度を好適に調節することができることを見出した。タップされた密度は、当技術分野で周知のパラメーターであり、粉体試料を含有する容器を機械的にタップした後に獲得される増大したバルク密度を説明する。この発見によって、炭素粒子を含むリチウムイオン電池のためのアノード材料であって、アノード材料が、金属シート上に圧縮されて、高密度且つ濡れの速いアノード材料層を形成することができ、アノード材料層が、密度ρ(g/cmで)、及び、以下の式(I)
=x×(ρ-1,0)+x×e(x3×(ρ-1,7)) (I)
によって記載される濡れ時間t(sで)を有し、
式中、
ρは、金属シート上に圧縮されたアノード材料の密度であり、
は50から158の間であり、xは3から150の間であり、xは13から45の間である、アノード材料を提供することが可能になる。
【0007】
これは、係数x、x、及びxは、以下の単位
・x[s cm/g]
・x[s]
・x[s cm/g]
を有しなければならないことを意味する。
【0008】
上述の式は、圧縮されたアノード材料の密度との関連で濡れ性(より具体的には濡れの速度)を説明する。好ましくは、金属シート上に圧縮されたアノード材料の密度ρ(g/cmで)は、約1.35から1.9の間、より具体的には1.4から1.85、より具体的には1.45から1.8、特に1.5から1.75である。これらの密度に関して、濡れ時間t(sで)は、約50から約600秒までの範囲であり、下記で更に説明されるように標準化された条件及び電解質溶液を使用して決定される。
【0009】
アノード材料は、金属シート上にカレンダー加工することによって圧縮されて、目標の密度を達成する。濡れ性の測定は下記に説明される。アノード材料の濡れ性は、電池の全体的な品質のために重要である。電池の生産プロセス中、電極材料は、電解質によって濡れている。電極材料の濡れ時間が非常に長い場合、電極材料は、非常に不均一であり、機械時間、及びしたがって、生産時間は望ましくなく高い。
【0010】
いくつかの実施形態において、炭素粒子は、黒鉛を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、アノード材料の全官能基の合計は、10μmol/g以下、好ましくは5.5μmol/g~0.05μmol/gの間、より好ましくは1μmol/g~0.05μmol/gの間である。
【0012】
全官能基の合計は、材料表面に付着されるすべての酸性及びアルカリ化学官能基の代数学的合計であると定義される。全官能基の合計は、10μmol/gを上回ると副反応が増大し、界面が低減されるため、10μmol/g以下である。電池の可逆容量より多い副反応がある場合、より大きい量の固体電解質界面の形成のために、低減される。
【0013】
いくつかの実施形態において、アノード材料は、0.85~1.0、好ましくは0.85から0.90の、円形度に関する分布の体積の50%に関する分布(s50)を有する。0.85を下回ると、材料のタップ密度は低下する。圧縮によって達成され得る極大電極密度を限定するため、過度に低いタップ密度は一般に望ましくない。更に、界面が低減され、したがって、望まれない副反応が増大する。
【0014】
いくつかの実施形態において、アノード材料は、0.95から1の、円形度に関する分布の体積の99%に関する分布(s99)を有する。
【0015】
いくつかの実施形態において、アノード材料は粉体形態である、即ち、粒状材料である。
【0016】
いくつかの実施形態において、アノード材料は、1.0~2.2の、好ましくは1.0~1.8の、より好ましくは1.2から1.6の、タップ1500/タップ30のタップ密度の比を有する。タップ密度の比が1.0を下回る場合、電極の特性を低減する電極材料のパッケージは最適ではない。不良なパッケージは、タップ密度を低くし、電極層の高密度化に悪影響を及ぼす。
【0017】
望ましい濡れ性を有する黒鉛を選択する及び/又は調製するための手段は、特に限定されない。本開示によれば、空間形成に影響する黒鉛パラメーターを調査して、更なる実施形態を特定してもよいことが認識されるであろう。例えば、当業者であれば、粒径(分布)及びタッピング密度を調査することができる。好適な粒径分布を有する黒鉛を選択する/調製するための手段は、当技術分野で周知であり、特に限定されない。例えば、より小さい又はより大きい黒鉛粒子、及びより広い又はより狭い粒径分布をもたらす条件下、粒子を粉砕することができる。黒鉛粉体をサイズ画分で選別し、サイズ画分を組み合わせ直して望ましい粒径分布を得ることも可能である。目標のタップ密度を達成するための手段も、当技術分野で周知であり、特に限定されない。タップ密度(例えば、1500回タンプ後のタップ密度)は、とりわけ採用される黒鉛のサイズ及び形状因子に依存することになり、ほとんどの商用の黒鉛材料に関して十分に分類されているパラメーターである。したがって、当業者にとって、好適な材料を選択することに支障はない。
【0018】
本開示はまた、アノード材料を含む電極に関する。
【0019】
本開示はまた、前述の電極のうちの少なくとも1つを含む電池に関する。
【0020】
本開示は更に、
a)黒鉛化可能な炭素質材料及び/又は黒鉛材料、並びに黒鉛化可能な有機バインダーを提供する工程と、
b)ピッチを用意する工程と、
c)0.05から0.8、好ましくは0.15から0.7の間のコークス/ピッチの(wt.-)比を使用することによって、工程a)の材料を混合する工程と、
d)最大950℃まで加熱して炭化材料を得る工程と、
e)工程e)の炭化材料を3100℃まで加熱して黒鉛化材料を得る工程と、
f)工程g)の粉体を黒鉛化可能な有機炭素質添加剤と混合する工程と、
g)工程h)の混合物を800℃から1100℃の間の温度に加熱する工程と
を含む、アノード材料を製造する方法に関する。
【0021】
黒鉛化可能な炭素質材料は、特に限定されず、特に、ヘリウムによって測定されるその真密度が、低くとも2.05g/cm、且つ高くとも2.18g/cmであるように、通常又はニードルタイプのコークスとすることができる。
【0022】
黒鉛化可能な有機炭素質添加剤は特に限定されず、黒鉛化可能である、且つ/又は800℃から1100℃の間の温度で炭化することができる有機材料とすることができる。好適な例としては、任意の種類の石油又は植物由来ポリマー、例えば、ピッチ、タール、ビチューメン又はアスファルト、エポキシ樹脂、ポリスチレン、フェノール樹脂、ポリウレタン、及びポリビニルアルコールが挙げられる。
【0023】
工程f)について、黒鉛化可能な有機炭素質添加剤は好ましくは、工程g)の粉体との関連で0.5から10wt%の間の、より好ましくは3から10wt%の範囲の量で加えられる。
【0024】
いくつかの実施形態において、工程b)の後、b1)固体を形成する工程を行うことができ、工程d)の後、d1)粉砕する工程を行うことができる。
【0025】
本開示はまた、自動車用のリチウムイオン電池のためのアノードの使用に関する。
【0026】
本開示は、以下において説明される図を参照して例証される。図は例証のみを目的とし、特許請求の範囲を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】標準的な黒鉛アノード材料を示すSEM(走査型電子顕微鏡)の画像である。それは比較例1による材料を示す。
図2】本開示による黒鉛アノード材料を示すSEM(走査型電子顕微鏡)の画像である。それは実施例1による材料を示す。
図3】本開示による黒鉛アノード材料を示すSEM(走査型電子顕微鏡)の画像である。それは実施例2による材料を示す。
図4】実施例1及び実施例2及び比較例1の材料を用いて達成される濡れ時間を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示は、以下において説明される実施形態を参照して例証される。実施形態は例証のみを目的とし、特許請求の範囲を限定しない。
【0029】
測定
以下の測定方法は(必要に応じて:例示的に)、上述の説明に、及び(ここでも必要に応じて)下記の実施例に適用される。
【0030】
官能基
Bohm滴定法(DIN ISO11352に基づいて)によって官能基を決定した。決定のために使用される溶液はすべて、0.001mol/lの濃度を有した。
【0031】
塩基性官能基の決定:
数グラム、例えば5グラムの試料を200mlのHClの希釈液中に24時間滴下した。その後、3×20mlを取り分け、希釈したNaOHで滴定した。
【0032】
酸性官能基の決定:
数グラム、例えば5グラムの試料を200mlの苛性アルカリ溶液(NaOH、NaCO、NaHCOの希釈液)中に24時間滴下した。その後、20又は30mlの希釈したHCl溶液を加えた。最後に、溶液を希釈したNaOHで滴定した。
【0033】
タップ密度
Granutools(商標)によるGranupac装置を適応させて、タップ密度を測定した。粉体を厳密な自動初期化プロセス(rigorous automated initialization process)とともに金属管に載置する。その後、粉体床の上部に軽量の中空のシリンダーを載置して、充填動力学プロセス(packing dynamics process)中、粉体/空気界面を平坦に保つ。
【0034】
粉体試料を含有する管は、AZの固定された高さまで上昇したのであり、自由落下を実行する。自由落下の高さは、AZ=1mmに固定される。各タップ後、粉体床の高さhを自動的に測定する。
【0035】
D10値、D50値、D90値、及びD99値
アノード材料の粒径分布の測定は、特に限定されず、レーザー回折粒径分布分析器、即ち、体積基準での粒径分布を提供する装置を使用して測定することができる。したがって、D10値は、得られる粒径分布の小さい直径側から出発して、粒子の累積体積が10vol%に達する点での粒径である。D50値、D90値、及びD99値は、同様に定義される。
【0036】
円形度、S50値及びS99値
粒子の円形度は、Sympatec社、ドイツからのRODOS乾式分散器を有する測定装置QICPICで、動画像分析によって測定されてもよい。測定方法は、ISO13322-2:2021を遵守するべきである。複数のそれぞれの円形度を有する複数の粒子に関して、得られる円形度分布のS50値及びS99値は、上に定義されるとおりである。
【0037】
濡れ時間の測定
1.試料の調製
コーティングされたシート材料の円形のディスクを打ち抜くことによって、密度測定のための試料を得た。
2.黒鉛アノード材料層の密度の決定
円形のディスク上のアノード材料層の厚さを測定すること、厚さからアノード材料層の体積を算出すること、ディスクを秤量すること、黒鉛アノード材料層の質量を得るために円形の金属シートの質量を引き算すること、及び次いで、黒鉛アノード材料層の質量を黒鉛アノード材料層の体積によって除算することによって、円形のディスク上のアノード材料の密度を決定した。
3.濡れ時間の決定
円形のディスクのアノード材料層の中心に、(炭酸ビニルの添加剤0.5wt%を有する、1MのLiPF、炭酸エチレン(EC)/炭酸エチルメチル(EMC)(3/7vol.比))の液滴を載置することによって、濡れ時間を決定し、次いで、アノード材料層に全部の液滴が添合されるまでの時間を決定した。
【0038】
液滴は1μlの体積を有し、投与装置を使用して毎分1μlの流量で、疎水化された鈍端カニューレを有するシリンジから供給した。シリンジは垂直に配置した。円形のディスクを台の上に載置した。カニューレにぶら下がっている液滴がアノード材料層の表面に触れるまで、円形のディスクの載った台を、制御された形で持ち上げた。次いで、台を下方に素早く少し動かした。黒鉛アノード材料層上に液滴が載っている段階からアノード材料層に全部の液滴が添合されるまでの時間(秒[s]で)は、本明細書において濡れ時間と考えられる。層の表面に反射が観察されなくなった場合に、アノード材料層に全部の液滴が添合されたと考えられる。
【0039】
金属シート上の黒鉛アノード材料のカレンダー加工層の調製
カルボキシメチルセルロース(CMC)の水系溶液に黒鉛粉体を加えた。この分散体に、バインダーとしてスチレン-ブタジエンゴム(SBR)ポリマーを加える。割合:黒鉛/CMC/SBR=98/1/1wt%で成分を加えて、最終の分散体(スラリー)を得る。実験室コーティング機KTF-S20412(Werner Mathis AG社)を使用して銅ホイルにスラリーをコーティングすることによって電極を調製した。コーティング後、電極を乾燥させ、次いで、電極材料層における望ましい最終密度に達するために、実験室カレンダーCA9(Sumet Systems GmbH社)を使用してカレンダー加工することによって圧縮した。
【実施例1】
【0040】
0.44のピッチ/コークスの比でピッチとコークスとを混合して均一のグリーン塊状物を得る。選択されるコークスは、ヘリウムによって測定されるその真密度が2.149g/cmであるように、ニードルタイプである。
【0041】
グリーン塊状物を固体形態に成形し、次いで、得られたブロックを800~950℃で焼いた。次いで、焼成したブロックを、少なくとも2750℃の、しかし3100℃以下の温度で黒鉛化した。室温に冷却した後、黒鉛化材料を破砕し、微細な粉体材料に粉砕して、D50(10から20μmの間の50%)を達成した。
【0042】
機械的混合装置を用いて、0.1から10%の間の固体の黒鉛化可能な有機炭素質添加剤と、微細な粉末化材料とを混合した。微細な黒鉛粉体と添加剤との混合物を800℃から1100℃の間の温度で数時間加熱した。
【0043】
全官能基の合計は、検出限界を下回る。
タップ密度比 タップ1500/タップ30:1.12、
円形度 (S99)=0.95、及び(S50)=0.86
【実施例2】
【0044】
0.8のピッチ/コークス比でピッチとコークスとを混合して均一のグリーン塊状物を得る。選択されるコークスは、ヘリウムによって測定されるその真密度が2.149g/cmであるように、ニードルコークスである。グリーン塊状物を800~950℃で焼き、その後、少なくとも2750℃の、しかし3100℃以下の温度で黒鉛化し、次いで、室温に冷却した。
【0045】
タップ密度比 タップ1500/タップ30:1.21、
円形度 (S99)=0.96、及び(S50)=0.88
【0046】
比較例1
ピッチ/コークス比0.42でピッチとコークスとを混合して均一のグリーン塊状物を得る。選択されるコークスは、ヘリウムによって測定される真密度が2.07である通常のコークスである。グリーン塊状物を固体形態に成形し、次いで、得られたブロックを800~950℃で焼いた。次いで、焼成したブロックを、少なくとも2750℃の、しかし3100℃以下の温度で黒鉛化した。室温に冷却した後、黒鉛化材料を破砕し、微細な粉体材料に成形して、10から20μmの間のD50を達成した。
【0047】
全官能基の合計は、3.13μmol/gである。
タップ密度比 タップ1500/タップ30:1.18、
円形度 (S99)=0.95、及び(S50)=0.87
【0048】
図4から明白であるように、濡れ性(濡れ速度)に関して、実施例1及び実施例2は比較例1を凌ぐ。図4に示されるデータの回帰分析から式(I)を導出した。回帰の傾きは、図4において3本の実線によって表される。実施例1のデータの回帰分析から式(I)を導出した。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】