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特表2024-529545非天然核酸リガンド、及びこれの用途、並びにこれを有効成分として含む癌の予防または治療のための薬学的組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】非天然核酸リガンド、及びこれの用途、並びにこれを有効成分として含む癌の予防または治療のための薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20240730BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
A61P35/00 ZNA
A61P35/02
A61K31/7088
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506938
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 KR2022011718
(87)【国際公開番号】W WO2023014192
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】10-2021-0104105
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522435595
【氏名又は名称】インターオリゴ・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】INTEROLIGO CORPORATION
【住所又は居所原語表記】A-F902,66,Beolmal-ro,Dongan-gu,Anyang-si,Gyeonggi-do 14058,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジュンファン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョンウク
(72)【発明者】
【氏名】パク,ハンスル
(72)【発明者】
【氏名】イ,セナ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
本開示の一側面は、ヒト血清アルブミン(Human Serum Albumin;HSA)に結合する新規非天然核酸リガンドとその用途に関するものであり、このような新規核酸リガンドは配列番号8(CAGG6CGAGC6G6ACGCG6G6G6GACC)[ここで、前記6と表示された部分は5‐[N‐(1‐ナフチルメチル)カルボキサミド‐2'‐デオキシウリジン(Nap‐dU]の核酸配列を含むものであり得る。
一方、本開示の一側面は、ヒト血清アルブミンに結合する新規非天然核酸リガンドを有効成分として含む、癌の治療のための薬学的組成物に関するものである。このような薬学的組成物は、癌の治療に対して優れた効果を奏する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト血清アルブミン(HSA)に結合する非天然核酸リガンドであって、配列番号8(CAGG6CGAGC6G6ACGCG6G6G6GACC)の核酸配列を含むものである[ここで、前記6と表示された部分は5‐[N‐(1‐ナフチルメチル)カルボキサミド‐2'‐デオキシウリジン(Nap‐dU)]、非天然核酸リガンド。
【請求項2】
配列番号1~8から選択された核酸配列を有するものである、請求項1に記載の非天然核酸リガンド。
【請求項3】
ヒト血清アルブミン(HSA)に結合する非天然核酸リガンド、またはこれの薬学的に許容可能な塩を含む癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項4】
前記非天然核酸リガンドが配列番号8(CAGG6CGAGC6G6ACGCG6G6G6GACC)の核酸配列を含むものであり[ここで、前記6と表示された部分は5‐[N‐(1‐ナフチルメチル)カルボキサミド‐2'‐デオキシウリジン(Nap‐dU)]、前記組成物は一つ以上の前記非天然核酸リガンドを含む、請求項3に記載の癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項5】
前記配列番号8の核酸配列を含む非天然核酸リガンドは、配列番号1~8から選択された核酸配列を有するものである、請求項4に記載の癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項6】
前記癌は原発性または転移性癌である、
請求項3に記載の癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項7】
これを必要とする対象体に静脈内、筋肉内、動脈内、腹腔内、鼻内、膣内、膀胱内、皮内、経皮内、局所、または、皮下投与されるものである、請求項3に記載の癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項8】
前記薬学的組成物は癌組織の外科的切除後に投与されるものである、請求項3に記載の癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項9】
前記癌は乳癌、膵臓癌、肺癌、大腸癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸部癌、膀胱癌、小腸癌、精巣癌、甲状腺癌、肝臓癌、尿路上皮細胞癌、胆嚢胆道癌、皮膚癌、胃癌、脳腫瘍、腎臓癌及び急性骨髄性白血病であるものである、
請求項3に記載の癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規非天然核酸リガンド、及びこれの用途と、これを有効成分として含む、癌の予防及び治療のための薬学的組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
世界保健機関(WHO)によると、癌は世界的な4大非感染性疾患に属する。約一千万件の新たな発病ケースが毎年発生しており、全体死亡原因の約12%を占め、三番目に多い死亡原因となっている。
【0003】
特に、膵臓は、胃や十二指腸、小腸、肝臓、胆嚢など多くの臓器に囲まれているため、癌の早期発見が困難なだけでなく、自覚症状を伴わず、進行が非常に早く、他の臓器への転移を引き起こすなどの性質を有するため、他の癌と比較して予後が非常に悪い癌である。部位別の癌の死亡率統計によると、膵臓癌が、5年相対生存率が最も低い。15~20%の膵臓癌患者は根治可能と見て手術を受けるが、手術を受けない患者の大部分は局所進行、または転移していると判断される。膵臓癌患者に対する治療オプションは非常に制限されており、化学療法に対する耐性がかなり高いという問題点がある。膵臓癌は他の臓器への転移が生じやすいという特性を有するので、早期に膵臓癌を検出して治療を行う必要がある。そのため、膵臓癌を標的として早期診断を容易にしたり、積極的治療を可能にしたりする新たな治療的アプローチ方法を開発する必要がある。
【0004】
また、乳癌は、女性にとって毎年40,000人以上の死亡の原因となる最もありふれた悪性腫瘍であり、生涯において9人の女性のうちの1人が乳癌に罹患し、乳癌の患者数も毎年約15%ずつ増加する傾向にある。韓国では1995年の女性癌患者のうち、約11.9%を乳癌が占めており、子宮頸がんと胃癌に続き三番目に多い癌となり、胃癌、肝臓癌、子宮癌、肺癌に続き五番目に死亡率が高い癌であり、その頻度は毎年増加傾向にある。早期診断が非常に重要だが、既に知られている多くの抗癌治療剤での治療にもかかわらず、癌が早く進行したり、転移したり、または危険な癌腫の場合、生存率が大幅に向上できずにいるのが現状である。
【0005】
特に、乳癌のうち三重陰性乳癌(triple negative breast cancer;TNBC)は、乳癌の証例の10~20%を占める。三重陰性乳癌は、エストロゲン受容体(ER)及びプロゲステロン受容体(PR)の発現がなく、ヒト上皮増殖因子受容体2型(HER‐2)が過発現しないか、HER‐2の増幅がない腫瘍と定義され、免疫組織化学を通じて診断される乳癌腫瘍の異種群である。三重陰性乳癌は、多くの化学療法薬品に対する速やかな耐性と適切な標的不足による攻撃的臨床挙動と不良予後を特徴とする。TNBC患者は他の類型の乳癌と比較して全般的に予後が悪く、早期に遠隔臓器で再発する確率と死亡率が高い。現在、利用可能な承認された標的療法はない。パクリタキセル及びこれの半合成誘導体などの、古典的な微小管標的化薬品(MTD)は乳癌新生物の臨床調節において相当な成功を果たした。アントラサイクリン系及びタキサン系の化学療法は、三重陰性乳癌に対する標準療法である。しかし、結局は、ほとんどの三重陰性乳癌患者の初期療法に対する一時的反応後、薬品耐性、腫瘍の再発、及び/または転移が発生する。従って、原発性または転移性三重陰性乳癌を優れた効能で治療したり、三重陰性乳癌から他の臓器(特に肺)への転移を効果的に抑制したりする薬品を開発するのは非常に難しかった。三重陰性乳癌治療に対してより持続的な反応を達成する革新的で、より効果的な治療的アプローチ方法を至急開発する必要がある。
【0006】
そのほかに、肺癌、大腸癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸部癌、膀胱癌、小腸癌、精巣癌、甲状腺癌、肝臓癌、尿路上皮細胞癌、胆嚢胆道癌、皮膚癌、胃癌、脳腫瘍、腎臓癌及び急性骨髄性白血病などの癌も世界的に非常によく見られるタイプの癌であり、これら癌の診断及び治療にも新たな治療アプローチ方法が常に求められている。
【0007】
一方、本発明者は、新規アプタマー(核酸リガンド)を、SELEXを通じて発掘し、最適化した。これを通じて作り出した非天然核酸リガンドが、治療が特に難しくて予後が良くない、膵臓癌と三重陰性乳癌に優れた標的治療効果(静脈/腹腔内投与を通じた原発性及び転移性癌の治療)を有することを確認した。
【0008】
よって、本発明は、既存の治療剤に対する新たな代案を提示しており、新規のアプタマーを含む医薬品を用いて様々な癌腫に対する治療効果を期待することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
(特許文献1)韓国公開特許第2019‐0126356号
(特許文献2)米国登録特許第8,969,318号
【非特許文献】
【0010】
(非特許文献1)Zhang et al., Recent Advances in Aptamer Discovery and Applications, Molecules 2019, 24, 941
(非特許文献2)Zhou, J.;Rossi, J. Aptamers as Targeted Therapeutics:Current Potential and Challenges. Nat. Rev. Drug Discovery 2017, 16, 181‐202.
(非特許文献3)Dougan, H.;Lyster, D. M.;Vo, C. V.;Stafford, A.;Weitz, J. I.;Hobbs, J. B. Extending the Lifetime of Anticoagulant Oligodeoxynucleotide Aptamers in Blood. Nucl. Med. Biol. 2000, 27, 289‐297.
(非特許文献4)Povsic, T. J., et al. Pre‐existing anti‐PEG antibodies are associated with severe immediate allergic reactions to pegnivacogin, a PEGylated aptamer. J ALLERGY CLIN IMMUNOL, 2016, 138(6), 1712
(非特許文献5)M. M. Soldevilla, H. Villanueva, F. Pastor, Aptamers:A Feasible Technology in Cancer Immunotherapy, Journal of Immunology Research, vol. 2016, 2016
【発明の概要】
【技術的課題】
【0011】
本発明者は、新たな核酸リガンドを発見し、これの多様な癌腫における治療効果を確認して本開示を完成した。
【0012】
既存のSELEX法とこれを用いて開発されたアプタマーは、長期間の研究にも克服し難い限界を示し、そのためアプタマーを用いた治療剤の提供が難しかった。実際、成功裏に開発された事例も、マクジェン以来15年間一件もなかった。
【0013】
本開示は、新規核酸リガンドとその用途、及びこれを有効成分として含む、癌の治療のための薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0014】
本開示は、体内安定性及び抗癌効果の優れた薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0015】
具体的に、本開示は血漿タンパク質(例:アルブミン)に結合する核酸リガンドであり、血中に投与されると、血漿中のアルブミンタンパク質と結合し、これにより体内ヌクレアーゼによる分解や腎臓排泄を回避して癌組織に到達することができる。続いて、癌組織に到達した後には、エンドサイトーシスなどの経路によって細胞内に入って、意図する治療効果等を発揮することができる。このように、本開示の一実態様による核酸リガンドは、従来のアプタマーが有する生体内不安定性、速やかな腎クリアランス、及び細胞内への伝達不可などの問題を解決するものである。
【技術的解決方法】
【0016】
1. 本開示の一実態様は、ヒト血清アルブミン(HSA)に結合する非天然核酸リガンドであり、配列番号8(CAGG6CGAGC6G6ACGCG6G6G6GACC)の核酸配列を含むものであり[ここで、前記6と表示された部分は5‐[N‐(1‐ナフチルメチル)カルボキサミド‐2'‐デオキシウリジン(Nap‐dU)]、非天然核酸リガンドに関するものであってもよい。
【0017】
2. 一実態様において、前記非天然核酸リガンドは、配列番号1~8から選択された核酸配列を有し得る。
【0018】
3. 本開示の一実態様は、ヒト血清アルブミン(HSA)に結合する非天然核酸リガンド、またはこれの薬学的に許容可能な塩を含む癌の予防または治療のための薬学的組成物として、前記非天然核酸リガンドが配列番号8(CAGG6CGAGC6G6ACGCG6G6G6GACC)の核酸配列を含むもの[ここでの前記6と表示された部分は、5‐[N‐(1‐ナフチルメチル)カルボキサミド‐2'‐デオキシウリジン(Nap‐dU)である]に関するものであってもよい。
【0019】
4. 一実態様において、前記組成物は、一つ以上の前記非天然核酸リガンドを含み得る。
【0020】
5. 一実態様において、前記配列番号8の核酸配列を含む非天然核酸リガンドは、配列番号1~8から選択された核酸配列を有し得る。
【0021】
6. 一実態様において、前記癌は、原発性または転移性癌であってもよい。
【0022】
7. 一実態様において、前記癌は、乳癌、膵臓癌、肺癌、大腸癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸部癌、膀胱癌、小腸癌、精巣癌、甲状腺癌、肝臓癌、尿路上皮細胞癌、胆嚢胆道癌、皮膚癌、胃癌、脳腫瘍、腎臓癌及び急性骨髄性白血病であってもよい。
【0023】
8. 一実態様において、前記乳癌は、三重陰性乳癌であってもよい。
【0024】
9. 一実態様において、前記癌は、膵臓癌であってもよい。
【0025】
10. 一実態様において、前記薬学的組成物は、これを必要とする対象体に静脈内、筋肉内、動脈内、腹腔内、鼻内、膣内、膀胱内、皮内、経皮内、局所、または、皮下投与されてもよい。
【0026】
11. 一実態様において、前記薬学的組成物は、癌組織の外科的切除後に投与されてもよい。
【0027】
12. 本開示の一実態様は、本開示の一実施態様によるヒト血清アルブミン(HSA)に結合する非天然核酸リガンド、または、これの薬学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物を、これを必要とする対象体に投与する段階を含む、癌の予防または治療方法に関するものであってもよい。
【発明の効果】
【0028】
本開示の一実施態様による新規核酸リガンドは、単一の核酸リガンドとしてターゲットに対して優れた特異的結合親和性を示すことができる。
【0029】
一実施態様による新規核酸リガンドは、薬品として体内に投与する場合、血漿タンパク質に特異的に結合して優れた生体内安定性、緩やかな腎クリアランス、及びエンドサイトーシスなどの経路に細胞内に伝達可能という効果を奏することができる。新規核酸リガンドは、このような特性により治療的ターゲットに依存的な疾病に対する優れた治療効果を奏することができ、実際に臨床に適用される薬品として活用可能である。
【0030】
一実施態様による新規核酸リガンドは、生体内安定性、または緩やかな腎クリアランスを達成するために、製造後、他の巨大分子(例:PEG)とともに用いなくても良いので、このような分子が核酸リガンドの構造に影響を与えたり、所望のターゲットに対する親和性または特異性を減少させたりする問題を排除することができる。これにより、核酸リガンドは、実験で確認された優れた治療的有効性を臨床に適用される薬品としてもそのまま維持することができる。
【0031】
一実施態様による新規核酸リガンドは、相対的に短い配列長さ(例:約20個~約100個、好ましくは約25個~約75個のオリゴヌクレオチド配列)を有し、他の物質とともに用いられなくても良い。これにより、大量生産工程で配置ごとに核酸リガンドの品質または性能が異なる問題が発生せず、品質管理が容易で、大量生産後に薬品として用いるための純度及び合成収率を満たす効果を奏する。結果的に、一実施態様による新規核酸リガンドは、自動合成機のみを用いて効率的に大量生産することができる。
【0032】
一実施態様による新規核酸リガンドは、タンパク質の3次元構造に結合することができ、このような結合によって、達成しようとする優れた治療的効果を奏することができる。
【0033】
本開示の一実施態様による薬学的組成物は、血漿タンパク質に特異的結合親和性を有する新規核酸リガンドを含み、様々な癌に対して効果的かつ優れた予防または治療をすることができる。
【0034】
一実施態様による薬学的組成物は、非経口投与(例えば、静脈投与または腹腔内投与)され、原発性または転移性癌、または腫瘍の成長を効果的に抑制することができる。
【0035】
一実施態様による薬学的組成物は、外科的切除後、転移性癌または腫瘍の生長を抑制したり、癌または腫瘍の転移を効果的に抑制したりすることができる。
【0036】
一実施態様による薬学的組成物は、非経口投与(例えば、静脈投与または腹腔内投与)され、原発性または転移性TNBC、または、膵臓癌に対して効果的かつ優れた予防または治療をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、一実施態様により核酸ライブラリープール(pool)のヒト血清アルブミンに対するフィルター結合アッセイ(Filter binding assay)を通した結合力測定実験の結果図面(図1A)及び結果分析グラフ(図1B)を示す。
図2a図2aは、一実施態様により核酸ライブラリークローン(Clone)(クローン1~5)のヒト血清アルブミンに対するフィルター結合アッセイを通した結合力測定実験の結果図面(A)及び結果分析グラフ(B)を示す。
図2b図2bは、一実施態様により核酸ライブラリークローン(クローン6~11)のヒト血清アルブミンに対するELISA Kd assayを通した結合力の測定結果を示す。
図3図3は、本開示の核酸ライブラリープール及びクローンから、ヒト血清アルブミンに対する結合力の優れた全長核酸リガンドに選別された核酸リガンド(AL007)に対して最適化を行った、AL001(図3のA)、AL002(図3のB)、AL003(図3のC)、AL004(図3のD)、AL005(図3のE)、及びAL006(図3のF)の予測される二次構造を示す。
図4図4は、本開示の全長または最適化された核酸リガンド(AL002、AL003、AL005、AL006、及びAL007)のヒト血清アルブミンに対する結合力測定(ELISA Kd assay)の結果を示す。
図5図5は、膵臓癌細胞株(Miapaca‐2)を用いた本開示の核酸リガンド(AL006)のin vitro抗癌効能の実験結果を示す。
図6図6は膵臓癌動物モデルを用いた本開示の核酸リガンド(AL006)のin vivo抗癌効能の実験計画を示す。
図7図7は、膵臓癌動物モデルを用いた本開示の核酸リガンド(AL006)のin vivo抗癌効能の実験結果を示す。具体的には、図7のAは、陰性または陽性対照薬品の投与群(PBSまたはゲムシタビン)と、AL006投与群の相対的な腫瘍の大きさを測定して倍数変化で表現したグラフで、図7のBは、実際の腫瘍組織を確認した写真である。
図8図8は、膵臓癌の動物モデルを用いた本開示の核酸リガンド(AL006)のin vivo抗癌効能実験を行った後、薬品投与による生体内の毒性有無(心臓(図8A)、脾臓(図8B)、肝臓(図8C)、肺(図8D)、腎臓(図8E))を確認した実験結果を示す。
図9図9は、膵臓癌の動物モデルを用いた本開示の核酸リガンド(AL006)のin vivo抗癌効能実験を行った後、薬品投与による生体内の毒性有無(白血球(図9A)、赤血球(図9B)、血小板(図9C)、AST(図9D)、ALT(図9E))を確認した実験結果を示す。
図10図10は、一実施態様による核酸リガンドAL006を含む薬学組成物の三重陰性乳癌モデル(TNBCマウスモデル)の、抗癌効能を評価する実験の概括を図式化した図面である。
図11図11は、三重陰性乳癌モデル(TNBCマウスモデル)の一実施態様による核酸リガンドAL006を含む薬学組成物の抗癌効能を確認するために用量別に投与した後、腫瘍の大きさを測定した実験結果を示す。
図12図12は、三重陰性乳癌の同所移植動物モデルでヒト血清アルブミン標的核酸リガンドを低用量処理して腫瘍抑制効能を確認した実験結果を示す。
図13図13は、三重陰性乳癌の同所移植動物モデルでヒト血清アルブミン標的核酸リガンドを高用量処理し、腫瘍抑制効能を確認した実験結果を示す。陽性対照群としてゲムシタビン(1mg)、陰性対照群としてHer2標的核酸リガンド(300ug)を用いた。
【発明の実施のための最善の形態】
【0038】
本文書に記載された多様な実施様態または実施例は、本開示の技術的思想を明確に説明するための目的で例示されたものであり、これを特定の実施形態で限定するためのものではない。本開示の技術的思想は、本文書に記載された各実施様態または実施例の多様な変更(modifications)、均等物(equivalents)、代替物(alternatives)及び各実施様態または実施例の全部または一部から選択的に組み合わせられた実施様態または実施例を含む。また、本開示の技術的思想の権利範囲は、以下に提示される多様な実施様態または実施例や、これに関する具体的説明に限定されない。
【0039】
技術的または科学的な用語を含む本文書で用いられる用語は、異なって定義されない限り、本開示が属する技術分野で通常の知識を有する者に一般に理解される意味を有し得る。一般に用いられる辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有すると解釈されるべきで、本開示で明白に定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されない。
【0040】
本文書で用いられる単数形の表現は、文脈上異なって意味しない限り複数形の意味を含み得、これは請求項に記載された単数形の表現にも同様に適用される。
【0041】
本文書で用いられる「第1」、「第2」、または「最初」、「二番目」等の表現は、文脈上異なって意味しない限り、複数の対象を指すときに、ある対象を他の対象と区分するために用いられ、当該対象間の順序または重要度を限定するものではない。
【0042】
本文書で用いられる「A、B、及びC」、「A、B、またはC」、「A、B、及び/またはC」、または「A、B、及びCの少なくとも一つ」、「A、B、または、Cの少なくとも一つ」、「A、B、及び/またはCの少なくとも一つ」、「A、B、及びCのうちから選択された少なくとも一つ」、「A、B、または、Cのうちから選択された少なくとも一つ」、「A、B、及び/またはCのうちから選択された少なくとも一つ」等の表現は、それぞれ羅列された項目、または羅列された項目の可能な限り全ての組み合わせを意味し得る。例えば、「A及びBのうちから選択された少なくとも一つ」は、(1)A、(2)Aの少なくとも一つ、(3)B、(4)Bの少なくとも一つ、(5)Aの少なくとも一つ及びBの少なくとも一つ、(6)Aの少なくとも一つ及びB、(7)Bの少なくとも一つ及びA、(8)A及びBをいずれも指すことができる。
【0043】
本開示で用いられる用語「略」、または「概ね」は、技術分野の熟練した技術者に広く知られているとおり、それぞれの値に対する通常の誤差範囲を示し得る。これは本明細書に記載された数値または範囲の脈絡で、一実施様態で言及されるか、または請求された数値または範囲の±20%、±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、または±1%であることを意味し得る。
【0044】
本開示で用いられる用語「アプタマー」は、ただ一つのターゲットに対する特異的結合親和性を有するオリゴヌクレオチドを意味する。
【0045】
本開示で用いられる用語「SELEX」、「SELEX技術」、「SELEX法」、「SELEX工程」は、相互交換的に用いられ得、望ましい方法(例:タンパク質に結合)によってターゲットと相互作用する核酸を選別する過程と、選別された核酸を増幅する過程を組み合わせた方法を意味し得る。このようなSELEX法は、標的分子に高い特異性で結合することができる核酸分子を選別するための試験管内(in vitro)法であり、米国特許第5,475,096号(「Nucleic Acid Ligands」)と米国特許第5,270,163号(WO 91/19813号、「Nucleic Acid Ligands」)に記載されている。
【0046】
本開示は、一実態様において、従来は存在不可能であるとされていた新たな部類(class)の核酸化合物である、新規非天然核酸リガンドに関するものである。
【0047】
本開示で用いられる用語「新規核酸リガンド」、「核酸リガンド」、「非天然核酸リガンド」、「新規非天然核酸リガンド」は、互いに相互交換的に用いられる。
【0048】
本開示で用いられる用語「非天然」は、自然界では発生しないことを意味し、このような側面から、本開示の一実施例による新規核酸リガンドは、標的に結合される公知の生理学的機能を有する核酸でなくてもよい。
【0049】
一実態様において、新規核酸リガンドは、血漿タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)に対して特異的結合親和性を有し得る。
【0050】
本開示で用いられる用語「特異的結合親和性」は、核酸リガンドが混合物またはサンプル内に存在するターゲットではない他の構成要素、または成分に結合することより、一般にはるかに高い親和度でそのターゲットに結合することを意味し得る。
【0051】
一実態様において、ターゲットは3次元構造を有するものであってもよい。一実態様において、ターゲットは、ワトソン/クリック型塩基対の形成または3重ヘリックス結合(triple helix binding)に主に依存するメカニズムを通じて核酸と結合するポリヌクレオチドは含まない。
【0052】
一実態様において、新規核酸リガンドは、ターゲットと3次元的に結合したり、ターゲットの3次元的構造を認識したり、または、自ら3次元的構造を形成してターゲットと相互作用したりすることができる。新規核酸リガンドはターゲットと結合したり、ターゲットの3次元的構造を認識したり、または、ターゲットと相互作用してそれぞれのターゲットの特性を調節したりすることができる。例えば、一実施態様による新規核酸リガンドは、ターゲットタンパク質に結合してタンパク質の活性を阻害したり、シグナル伝達経路を遮断したり、シグナル伝達経路の下流のタンパク質の活性を抑制したりすることがある。
【0053】
本開示で用いられる、用語「結合」、または「相互作用」は、生理条件下で、例えば、パイスタッキング(pi‐stacking)、静電気的相互作用、疎水性相互作用、イオン性相互作用、及び/または水素結合相互作用などによる、二つの分子間の会合(association)を意味し得る(例:核酸リガンドとターゲット間の安定した会合)。
【0054】
本開示で用いられる用語「調節」は、ターゲットの機能的特性、生物学的活性、及び/または生物学的機作(または経路)を変化させることを意味し得る。例えば、ターゲットの特性、活性、及び/または機作を上方調節したり(例:活性化または刺激させる場合)、下方調節したり(例:阻害または抑制する場合)、または、それ以外に変化させたりすることもできる。例えば、ターゲットが細胞の場合、調節される細胞の特性は細胞生存率、細胞増殖、遺伝子の発現、細胞形態学、細胞活性化、リン酸化、カルシウム動員(mobilization)、脱顆粒化、細胞移動、及び/または細胞分化があり得る。
【0055】
一実態様において、新規核酸リガンドは、約100個以下のヌクレオチドからなってもよい。具体的には、新規核酸リガンドは、100個以下、90個以下、80個以下、70個以下、60個以下、50個以下、40個以下、または、30個以下のヌクレオチドからなるものであってもよい。一実態様において、新規核酸リガンドは10個~105個、10個~100個、15個~95個、15個~90個、20個~85個、20個~80個、25個~75個、25個~70個、25個~65個、または、25個~60個のヌクレオチドからなってもよい。
【0056】
一実態様において、前記新規核酸リガンドは、配列番号8(CAGG6CGAGC6G6ACGCG6G6G6GACC)の核酸配列を含むもの[ここで、前記6と表示された部分は5‐[N‐(1‐ナフチルメチル)カルボキサミド‐2'‐デオキシウリジン(Nap‐dU)]であってもよく、具体的には、配列番号1~8からなる群から選択されたいずれか一つの核酸配列であってもよい。
【0057】
一実態様において、ヌクレオチドは、DNAヌクレオチド、RNAヌクレオチド、これらの変形したヌクレオチド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよい。
【0058】
変形したヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの5'方向、3'方向、またはオリゴヌクレオチド配列内に位置する任意のヌクレオチドの少なくとも一つに連結され得、好ましくはオリゴヌクレオチドの5'方向に連結される。
【0059】
本開示で用いられる「変形したヌクレオチド」は、天然発生ヌクレオチド(A、G、T/U、及びC)の類似体、置換体またはエステルを意味し得、通常の技術者が簡単に用いることができる変形ヌクレオチドを包括する広範囲な概念を意味し得る。例えば、変形したヌクレオチドはC‐5位置での置換を有するか(例:C‐5変形したピリミジン)ヌクレオチドを構成する糖類(リボースまたはデオキシリボース)が変形するか、または、このような変形をいずれも有するヌクレオチドを意味してもよい。
【0060】
一実態様において、C‐5変形したピリミジンは、C‐5変形したアミノカルボニルピリミジンを意味し得、例えば、5‐(N‐ベンジルカルボキシアミド)‐2'‐デオキシウリジン(Bz‐dU)、5‐(N‐イソブチルカルボキシアミド)‐2'‐デオキシウリジン(iBu‐dU)、5‐(N‐フェネチルカルボキシアミド)‐2'‐デオキシウリジン(Pe‐dU)、5‐(N‐チオフェニルメチルカルボキシアミド)‐2'‐デオキシウリジン(Th‐dU)、5‐(N‐[2‐(1H‐インドール‐3イル)エチル]カルボキシアミド)‐2'‐デオキシウリジン(Trp‐dU)、5‐(N‐[1‐(3‐トリメチルアンモニウム)プロピル]カルボキシアミド)‐2'‐デオキシウリジンクロリド、5‐(N‐ナフチルメチルカルボキシアミド)‐2'‐デオキシウリジン(Nap‐dU)、5‐(N‐[1‐(2、3‐ジヒドロキシプロピル)]カルボキシアミド)‐2'‐デオキシウリジン)、5‐(N‐ベンジルカルボキシアミド)‐2'‐デオキシシチジン(Bz‐dC)、5‐(N‐イソブチルカルボキシアミド)‐2'‐デオキシシチジン(iBu‐dC)、5‐(N‐フェネチルカルボキシアミド)‐2'‐デオキシシチジン(Pe‐dC)、5‐(N‐チオフェニルメチルカルボキシアミド)‐2'‐デオキシシチジン(Th‐dC)、5‐(N‐[2‐(1H‐インドール‐3イル)エチル]カルボキシアミド)‐2'‐デオキシシチジン(Trp‐dC)、5‐(N‐[1‐(3‐トリメチルアンモニウム)プロピル]カルボキシアミド)‐2'‐デオキシシチジンクロリド、5‐(N‐ナフチルメチルカルボキシアミド)‐2'‐デオキシシチジン(Nap‐dC)、及び/または5‐(N‐[1‐(2、3‐ジヒドロキシプロピル)]カルボキシアミド)‐2'‐デオキシシチジンを含み得るが、これに制限されない。
【0061】
一実態様において、リボース糖(Ribose sugar)の2'位置変形を有する変形したヌクレオチドは、2'‐デオキシ‐2'‐フルオロウリジン(Uf)、2'‐デオキシ‐2'‐フルオロシチジン(Cf)、2'‐ヒドロキシアデノシン(Ar)、2'‐メトキシアデノシン(Am)、2'‐メトキシグアノシン(Gm)を含み得るが、これに制限されない。
【0062】
一実態様において、C‐5変形及びリボース糖(Ribose sugar)の2'位置変形をいずれも有する変形したヌクレオチドは、5‐(N‐ベンジルカルボキシアミド)‐2'‐O‐メチルウリジン、5‐(N‐ベンジルカルボキシアミド)‐2'‐フルオロウリジン、5‐(N‐イソブチルカルボキシアミド)‐2'‐O‐メチルウリジン、5‐(N‐イソブチルカルボキシアミド)‐2'‐フルオロウリジン、5‐(N‐[2‐(1H‐インドール‐3イル)エチル]カルボキシアミド)‐2'‐O‐メチルウリジン、5‐(N‐[2‐(1H‐インドール‐3イル)エチル]カルボキシアミド)‐2'‐O‐フルオロウリジン、5‐(N‐ナフチルメチルカルボキシアミド)‐2'‐O‐メチルウリジン、5‐(N‐ナフチルメチルカルボキシアミド)‐2'‐フルオロウリジン、5‐(N‐[1‐(2、3‐ジヒドロキシプロピル)]カルボキシアミド)‐2'‐O‐メチルウリジン、及び/または5‐(N‐[1‐(2、3‐ジヒドロキシプロピル)]カルボキシアミド)‐2'‐O‐フルオロウリジンを含み得るが、これに制限されない。
【0063】
一実態様において、C‐5変形及びリボース糖(Ribose sugar)の2'位置変形をいずれも有する変形したヌクレオチドは、5‐(N‐ベンジルカルボキシアミド)‐2'‐O‐メチルシチジン、5‐(N‐ベンジルカルボキシアミド)‐2'‐フルオロシチジン、5‐(N‐イソブチルカルボキシアミド)‐2'‐O‐メチルシチジン、5‐(N‐イソブチルカルボキシアミド)‐2'‐フルオロシチジン、5‐(N‐[2‐(1H‐インドール‐3イル)エチル]カルボキシアミド)‐2'‐O‐メチルシチジン、5‐(N‐[2‐(1H‐インドール‐3イル)エチル]カルボキシアミド)‐2'‐O‐フルオロシチジン、5‐(N‐ナフチルメチルカルボキシアミド)‐2'‐O‐メチルシチジン、5‐(N‐ナフチルメチルカルボキシアミド)‐2'‐フルオロシチジン、5‐(N‐[1‐(2、3‐ジヒドロキシプロピル)]カルボキシアミド)‐2'‐O‐メチルシチジン、及び/または5‐(N‐[1‐(2、3‐ジヒドロキシプロピル)]カルボキシアミド)‐2'‐O‐フルオロシチジンを含み得るが、これに制限されない。
【0064】
一実態様において、変形したヌクレオチドは5‐(N‐ベンジルカルボキシアミド)‐2'‐デオキシウリジン(Bz‐dU)、または5‐(N‐ナフチルメチルカルボキシアミド)‐2'‐デオキシウリジン(Nap‐dU)であってもよく、これにより新規核酸リガンドをなすヌクレオチドの少なくとも一つはこのような変形したヌクレオチドであってもよい。
【0065】
一実態様において、新規核酸リガンドは、配列番号1~配列番号8からなる群から選択された一つの核酸配列からなるものであってもよい。
【0066】
一実態様において、新規核酸リガンドは、一本鎖RNA、二本鎖RNA、一本鎖DNA及び二本鎖DNAからなる群から選択されたものであってもよい。
【0067】
一実態様において、新規核酸リガンドは、必要に応じて5'末端前方または3'末端後方にビオチン(biotin)を結合して用いられてもよい。
【0068】
一実態様において、新規核酸リガンドは、必要に応じて5'末端前方または3'末端後方に蛍光物質(例:FAM、VIC、HEX、BHQ‐1、Cy5、Cy3、Rodamine、またはTexas Redなど)を結合して用いられてもよい。
【0069】
変形ヌクレオチドがオリゴヌクレオチドの3'方向に連結される場合、変形ヌクレオチドの3'方向にidT(inverted dT)、LNA(locked nucleic acid)、PEGまたは2'OMeNu(2'‐Methoxy Nucleosides)をさらに結合させることができる。
【0070】
変形ヌクレオチドの3'方向にidT、LNA、PEGまたは2'OMeNuをさらに結合させることによって、ヌクレアーゼの攻撃からオリゴヌクレオチドの3'末端を保護することができ、これによってオリゴヌクレオチドが体内で分解(degradation)されるスピードを下げ、変形ヌクレオチドがより長い間オリゴヌクレオチドに結合されているようにして、変形ヌクレオチドの抗癌効能を増加させることができる。
【0071】
オリゴヌクレオチドと変形ヌクレオチドを連結するための一方法は、前述したオリゴヌクレオチドの5'末端及び3'末端の少なくとも一つに、前述した変形ヌクレオチドを結合させる段階を含み得る。
【0072】
本開示のオリゴヌクレオチド配列に含まれたそれぞれの核酸ヌクレオチドは、変形ヌクレオチドに置換され得、オリゴヌクレオチド配列はその配列内に1個以上の変形ヌクレオチドを含み得る。
【0073】
本開示のオリゴヌクレオチドは、血漿タンパク質に対する特異的結合親和性を有する核酸リガンドであってもよい。また、本開示の核酸リガンドは癌の治療効果を奏し得る。本開示の核酸リガンドは表1に示されたものであってもよい。表1の核酸塩基配列で6と示された部分は、5‐[N‐(1‐ナフチルメチル)カルボキサミド‐2'‐デオキシウリジン(Nap‐dU)を意味する。また、下記の核酸リガンドはDNAで構成され、デオキシリボース基盤の核酸からなり、具体的にGは、2'‐デオキシグアノシン(2'‐deoxyGuanosine)、Cは2'‐デオキシシチジン(2'‐deoxyCytidine)、Aは2'‐デオキシアデノシン(2'‐deoxyadenosine)、及びTはチミジン(Thymidine)を意味する。
【0074】
【表1】
【0075】
また、本開示は、前述したオリゴヌクレオチド、核酸リガンドまたは、その薬学的に許容可能な塩を含む癌の治療のための薬学的組成物を提供する。オリゴヌクレオチドまたは核酸リガンドは、前述した通りである。一実態様において、薬学的組成物は薬品伝達組成物であってもよい。
【0076】
本開示の一実施例による薬学的組成物において、新規核酸リガンドは、エンドサイトーシスなどの経路によって治療的ターゲットが存在する癌細胞内に伝達され得る。ここで、前記新規核酸リガンドは、薬学的組成物が投与される対象体の体内に存在する血漿タンパク質に結合し得る。これにより、新規核酸リガンドを含む薬学的組成物は、優れた生体内安定性及び緩やかな腎クリアランス(優れた体内残留時間)を示すことができ、新規核酸リガンドは癌組織に到達した後、前記エンドサイトーシスなどの経路によって癌細胞内に入ることができる。
【0077】
本開示で用いられる用語「対象体」は、ターゲットまたはその作用により誘発される疾患、または病気を有したり疾患または病気を発症したりし得るヒトを含む哺乳類、例えば、霊長類、マウス、ラット(rat)、ハムスター、ウサギ、馬、羊、豚、ヤギ、牛、犬または猫であってもよく、これに制限されないが、好ましくはヒトであってもよい。
【0078】
本開示で用いられる用語「エンドサイトーシス(endocytosis;内包作用)」は、細胞が細胞膜外部の物質を細胞膜内部に運ぶ細胞作用を指す。エンドサイトーシスは、外部物質を細胞膜で取り囲んで細胞内へ入れた後、細胞内に小胞を形成して取り込んだ物質を分解した後、再利用したり、外部に排出したりすることができる。エンドサイトーシスは、活性化方法や関与するタンパク質の種類によって、マクロピノサイトーシス、クラスリン(clathrin)タンパク質が関与する受容体媒介内包作用、カベオラ(caveolae)内包作用などに区分され得る。
【0079】
一実態様において、薬学的組成物は血漿タンパク質をさらに含み得る。この場合、薬学的組成物は血漿タンパク質と新規核酸リガンドが結合された形態や新規核酸リガンド単独の形態であってもよく、前記血漿タンパク質は治療対象の体外に存在するタンパク質であってもよい。
【0080】
本開示の一実施例による薬学的組成物において、新規核酸リガンドは、マクロピノサイトーシス経路によって治療的ターゲットが存在する癌細胞内に伝達され得る。
【0081】
本開示で用いられる用語「マクロピノサイトーシス(macropinocytosis)」は、エンドサイトーシスのうちの一種であり、細胞骨格タンパク質であるアクチンによって細胞膜が細胞外部に突出して再び収縮する過程中に小袋が形成され得、形成された小袋が細胞内に入って分離され、約0.2μm~5μmの直径を有する小胞(マクロピノソーム)を形成し得る。
【0082】
マクロピノサイトーシスは、最近注目されている腫瘍代謝の一翼を担う。マクロピノサイトーシスを通じて腫瘍細胞の速やかな成長に必要な栄養分(例えば、グルタミン、アルブミンなど)を癌細胞内に供給して代謝に用いることができる。即ち、マクロピノサイトーシスによって形成された小胞内には細胞外液、細胞外分子などが含まれ得る。
【0083】
一実態様において、核酸リガンドは、血漿タンパク質と結合することによって、マクロピノサイトーシスによって細胞内に伝達される効率が高くなり得る。即ち、血漿タンパク質と結合された核酸リガンドは、血漿タンパク質と結合していない核酸リガンドと比べて細胞内に伝達される効果が優れ得る。
【0084】
本開示の一実施態様による核酸リガンドは、エンドサイトーシスの多様なメカニズムを通じて細胞質内に伝達され得る。癌細胞の急激な増殖に必要な必須栄養分を供給する主な経路として注目されているマクロピノサイトーシスだけでなく、その他のエンドサイトーシス経路が核酸リガンドの伝達に関与し得る。
【0085】
本開示で用いられる用語「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的なメリット/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量の水準は患者の体重、性別、年齢、健康状態、重症度、適応症、薬品の活性、薬品に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比、治療期間、同時に用いられる薬品を含む要素、及びその他の医学分野で周知の要素によって決定され得る。
【0086】
本開示は、前述した薬学的組成物を含む薬品伝達デバイスを提供する。
【0087】
一側面では、前記薬学的組成物、薬品伝達組成物または薬品伝達デバイスを投与及び/または外科的に移植することによって、癌を治療/または予防する方法が提供される。また別の側面では、前記薬学的組成物、薬品伝達組成物または薬品伝達デバイスを投与及び/または外科的に移植することによって、原発性癌の再増殖を予防する方法が提供される。また別の側面では、前記薬学的組成物、薬品伝達組成物または薬品伝達デバイスを投与及び/または外科的に移植することによって、癌の再発及び/または転移を予防する方法が提供される。特定の実施様態において、前記方法は、癌または腫瘍の外科的切除後の前記薬学的組成物、薬品伝達組成物または薬品伝達デバイスを投与及び/または移植することを追加で含む。特定の実施様態では、前記方法は、癌または腫瘍の切除部位に前記薬学的組成物、薬品伝達組成物または薬品伝達デバイスを移植することを追加で含む。
【0088】
癌の治療のための薬学的組成物、薬品伝達組成物または薬品伝達デバイスに含まれるオリゴヌクレオチド、核酸リガンド、またはこれの薬学的に許容可能な塩の含量は、癌の予防または治療に効果を奏し得る含量であり、対象の状態及び/または疾患の重症度により適宜調節され得る。
【0089】
本開示で用いられる用語「薬学的に許容可能な」は、ある物質が薬学的組成物の有効成分の作用と相互作用しない無毒性であることを意味し得、例えば、各国の管理機関によって承認されたか、各国の薬局方で列挙されたものを意味し得る。本開示で用いられる用語「薬学的に許容可能な塩」は、イオン性結合を含有し、化合物を対象体に投与するのに適した酸または塩基と反応させて通常生産された生成物を意味し得る。
【0090】
一実態様において、薬学的組成物は、個別の治療剤として投与されるか、他の治療剤と併用投与され得、他の治療剤と併用投与される場合、順次または同時に投与されてもよく、単一または多重投与されてもよい。本開示の薬学的組成物の投与時には、副作用なしに最小限の量で最大効果が得られる量を投与することが重要であり、これは当業者によって容易に決定され得る。
【0091】
さらに、本開示は、前述した癌の治療のための薬学的組成物の製造方法を提供する。
【0092】
本開示の薬学的組成物製造方法は、前述した核酸リガンドが分散した分散液を製造する段階を含む。
【0093】
一実態様において、核酸リガンドが分散した分散液は、核酸リガンドを薬学的に許容可能な担体、希薄剤、及び/または賦形剤と混合させて製造することができる。本開示の「薬学的に許容可能な担体、希薄剤、及び/または賦形剤」は、アメリカ食品医薬品局(FDA)でヒトに用いられてもよいものとして承認された任意の補助剤、担体、賦形剤、滑沢剤、甘味剤、希薄剤、保存剤、染料/着色剤、香味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張化剤、溶媒、界面活性剤または乳化剤を制限なく含む。例示的な薬学的に許容可能な担体は、ラクトース、グルコース及びスクロースなどの糖;コーンスターチ及びジャガイモ澱粉などのデンプン;セルロース及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及びセルロースアセテート;トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバター、ワックス、動物及び植物性脂肪、パラフィン、シリコン、ベントナイト、ケイ酸、酸化亜鉛;ピーナッツオイル、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油などのオイル;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;水;等張食塩水;点滴液;エチルアルコール;リン酸塩緩衝液(例えば、PBS);及び薬剤学的剤形に用いられる任意の他の和合性物質を含むが、これに制限されない。
【0094】
本開示は、一実態様において、一実態様による新規リガンドを、これを必要とする対象体に薬学的に有効な量で投与する段階を含む、癌を予防または治療する方法に関するものであってもよい。
【0095】
本開示は、一実態様において、癌を予防または治療するための薬剤製造のための一実施例による新規核酸リガンドの用途に関するものであってもよい。
【0096】
本開示は、一実態様において、癌の予防または治療に用いるための一実施例による新規核酸リガンドに関するものであってもよい。
【0097】
本開示の薬剤学的組成物、用途、治療方法に記載された事項は、互いに矛盾しない限り同一に適用され得る。
【0098】
本開示は、前述した実施様態及び後述する実施例を通じてより一層明確になるはずである。以下では、本開示の添付の表を参照して記述される実施例を通じ、該業界の通常の技術者が容易に理解して実現することができるように詳細に説明する。しかし、これら実施例は、本開示を例示的に説明するためのものであり、本開示の範囲はこれら実施例に限定されない。
【0099】
本開示の一実態様による核酸リガンドを得るために下記の実施例を行った。
【0100】
[実施例1]新規核酸リガンドの選別
SELEX技術を用いてヒト血清アルブミン(HSA;Abcam、英国、製品名:Recombinant human serum albumin Protein(His tag)、カタログナンバー:ab217817)に結合する核酸リガンドを得た。具体的な新規核酸リガンドの選別方法は、下記に記載する。
【0101】
1.SELEXのためのライブラリーの製作
核酸ライブラリーの鋳型は、ビオチンが含まれた5'末端プライマーの結合部位と、3'末端プライマーの結合部位、中央部に40個の連続的な任意の配列で[Biotin‐GCTGGTGGTGTGGCTG‐N(40)‐CAGGCAGACGGTCACTCA](配列番号9)構成されている。このような核酸ライブラリーの鋳型は、DNA自動合成機を用いて合成した(トライリンク、米国)。
【0102】
変形ヌクレオチド5‐[N‐(1‐ナフチルメチル)カルボキサミド‐2'‐デオキシウリジン(5‐[N‐(1‐naphthylmethyl)carboxamide]‐2'‐deoxyuridine;NapdU)が含まれた核酸ライブラリーを製作するために次の通り行った。ストレプトアビジンタンパク質で表面改質された500μlの(サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国)レジンと5MのNaCl溶液に溶けている核酸ライブラリーを1時間反応させ、ビオチンが結合されているライブラリーをレジンに固定した。変形ヌクレオチドが含まれた二本鎖DNAを製造するために、5'primerとdNTP(dATP、dGTP、dCTP、Nap‐dUTP)、KOD XLDNA polymerase、Tris HCL(pH7.8)、1X KOD bufferを混合したbufferを、70℃で2時間反応させた。この過程で生産された二本鎖DNAに20mMのNaOHを入れて一本鎖に分離した後、分離した上澄み液をNeutralization buffer(700mMのHCL、180mMのHEPES、0.45%のTween20)溶液で中和した。中和したライブラリーはAmicon ultra‐15(メルクミリポア、米国)を用いて濃縮した後、UV分光光度計で定量した。
【0103】
2.ヒト血清アルブミン特異的な核酸ライブラリープール(pool)選抜
SELEX用のヒト血清アルブミンは、ヒスチジンタグ(6x His‐tag)が含まれたタンパク質を用いた。タンパク質のHis‐tagが結合する磁性ビーズ(magnetic bead)のDynabead(サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国)と、バッファSB18(40mMのHEPES、102mMのNaCl、5mMのKCl、5mMのMgCl2、0.05%のTween20;以下同一)に溶けているヒト血清アルブミン組換えタンパク質を25℃、1200rpm、30分間反応させた後、磁石を用いてバッファSB18で3回洗浄し、ビーズに固定されたヒト血清アルブミンを準備した。
【0104】
ライブラリープール(pool)の三次構造の形成を誘導するため、95℃から37℃まで温度を下げて反応させた。非特異的結合を防止するために前記反応液にタンパク質競争緩衝液(1uMのプロトロンビン、1uMのカゼイン)を混合し、ヒト血清アルブミンが固定されている磁性ビーズとサーモミキサーで37℃、1200rpm、1時間反応させた。磁石を用いて上澄み液を除去した後、バッファSB18を添加して5回洗浄し、2mMのNaOH溶液を用いてターゲットタンパク質に結合した核酸ライブラリープール(pool)を回収した後、8mMのHCl溶液で中和した。
【0105】
中和した核酸ライブラリーにqPCR buffer[5'プライマー(GAGTGACCGTCTGCCTG)(配列番号:10)、3'プライマー(Biotin‐GCTGGTGGTGTGGCTG)(配列番号:11)、1X KOD buffer、KOD XL DNA polymerase、dNTP]を混合した後、96℃で15秒、55℃で10秒、及び68℃で30分の条件で1サイクル(cycle)、そして、96℃で15秒、72℃で1分の条件で20サイクルを繰り返し、二本鎖オリゴDNAを製造した。
【0106】
二本鎖オリゴDNAを、ストレプトアビジン磁性ビーズ(サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国;以下同一)と常温で反応させて固定し、20mMのNaOH溶液を添加してanti‐sense鎖を除去した。磁性ビーズに固定されているsense鎖を鋳型として、前記ライブラリー製造と同一の方法でライブラリープール(pool)を合成し、次のラウンドに用いた。前記SELEXラウンドは計8回繰り返し行った。
【0107】
3. 核酸ライブラリープール(pool)のヒト血清アルブミンに対する結合力測定:フィルター結合アッセイ(Filter binding assay)
ヒト血清アルブミンに結合する核酸ライブラリープール(pool)の結合力を測定するためにフィルター結合アッセイを行った。
【0108】
まず6回目のラウンドと8回目のラウンドの核酸ライブラリープール(pool)にqPCR buffer[5'プライマー(GAGTGACCGTCTGCCTG)(配列番号:10)、3'プライマー(Biotin‐GCTGGTGGTGTGGCTG)(配列番号:11)、1X KOD buffer、KOD XL DNA polymerase、dNTP]を混合し、96℃で15秒及び72℃で1分の条件で20サイクル繰り返して二本鎖オリゴDNAを製造した。二本鎖オリゴDNAをストレプトアビジン磁性ビーズと常温で反応させて固定し、20mMのNaOH溶液を添加してanti‐sense鎖を除去した。Anti‐senseが除去された磁性ビーズをバッファSB17(40mMのHEPES、102mMのNaCl、5mMのKCl、5mMのMgCl2、1mMのEDTA、及び0.05%(v/v)のTween 20;以下同一)を用いて2回洗浄した後、16mMのNaClを用いて1回洗浄した。洗浄が完了した磁性ビーズとsense結合体に5'primerとdNTP(dATP、dGTP、dCTP、Nap‐dUTP)、KOD XL DNA polymerase、Tris HCL(pH7.8)、1X KOD bufferを添加し、68℃で1時間反応させて変形核酸が含まれた核酸ライブラリープール(pool)を製造した。最後に20mMのNaOHを添加してanti‐sense鎖を回収し、80mMのHClで中和した。
【0109】
中和した核酸ライブラリープール(pool)1pmoleとα‐32P ATP、TdT、及びNEBufferTM 4(New England Biolabs、米国)を混合した後、37℃で30分間反応させて核酸ライブラリープール(pool)の末端をα‐32P ATPと標識した。その後、70℃で10分間処理してTdT酵素を不活性化させた。標識された核酸ライブラリープール(pool)は、Micro spin G50 column(GEヘルスケア、米国)を用いて精製し、ベータカウンター機器を用いて定量した。
【0110】
定量値を基準に、20000cpmの核酸ライブラリープール(pool)を95℃から37℃まで1℃ごとに10秒ずつ反応させ、三次構造の形成を誘導した。構造が安定化した核酸ライブラリープール(pool)とバッファSB18を用いて段階希釈させたヒト血清アルブミンを37℃で30分間反応させ、ゾルバックスレジン(zorbax resin;アジレント、米国)を添加して5分間さらに反応させた。反応が完了したサンプルをMultiScreen‐HV Filter plate(メルクミリポア、米国)に移した後、真空で溶液を除去し、フィルターを通過できなかったサンプルはバッファSB18で洗浄した。真空でバッファSB18を除去した後、フィルタプレートをイメージプレートに16時間露出させ、FLA‐5100(富士フイルム、日本)でイメージを定量化した。フィルター結合アッセイを通じて得られた値はシグマプロット11という分析ソフトウェアを用いて分析し、陰性対照群として、SELEXを行っていない核酸ライブラリープール(pool)であるNap libraryを用いた。
【0111】
図1は、核酸ライブラリープール(pool)のヒト血清アルブミンに対する結合力をフィルター結合アッセイ方法で測定した結果である。図1によると、6回目及び8回目のラウンドの核酸ライブラリープール(pool)のいずれも、ヒト血清タンパク質に対する結合力が確認され、陰性対照群であるNap libraryは結合力を確認できなかった。
【0112】
4.核酸ライブラリープール(pool)の塩基配列の分析
フィルター結合アッセイを通じて結合力が確認された核酸ライブラリープール(pool)のサンプルを、5'プライマー(GAGTGACCGTCTGCCTG)(配列番号:10)と3'プライマー(GCTGGTGGTGTGGCTG)(配列番号:12)を用いてPCR過程を通じて増幅し、TOPO TA Cloning kitを用いてクローニングしてE. coli TOP10細胞に形質転換させた。形質転換されたE. coliの単一コロニーからプラスミドを抽出し、RCA(rolling circle amplification)キット(エンジノミクス、韓国)を用いて増幅した。増幅されたRCAサンプルは、BigDye terminator cycle sequencing kit(サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国)と毛細血管電気泳動法で塩基配列分析(ソルジェント、韓国)を実施した。塩基配列分析が完了した核酸配列は、当社製作のソフトウェアを用いて分析し、発現頻度が多い配列を選抜した。
【0113】
塩基配列を分析した結果選抜された全長核酸リガンドは、表2に記載されたクローン1、クローン2、クローン3、クローン4、クローン5であり、表2に記載された核酸塩基配列の6と示された部分は、5‐[N‐(1‐ナフチルメチル)カルボキサミド‐2'‐デオキシウリジン(Nap‐dU)を意味する。
【0114】
【表2】
【0115】
*全長リガンドは太字及び下線処理した。
【0116】
**全長リガンドであるクローン1、クローン2、クローン3、クローン4、クローン5に対するフィルター結合アッセイの結果は、図2aの通りである。
【0117】
***全長リガンドのうち、クローン2(AL007)を最適化(truncation)した配列はAL001、AL002、AL003、AL004、AL005、AL006である。
【0118】
[実施例2]クローン核酸リガンドの合成及び結合力測定
2‐1. フィルター結合アッセイ
前記記載された塩基配列分析を通じて選抜された核酸配列に対し、塩基配列分析に用いられた二本鎖DNAを鋳型として、5'プライマー(GAGTGACCGTCTGCCTG)(配列番号:10)と3'プライマー(GCTGGTGGTGTGGCTG)(配列番号:12)を用いてPCR過程を通じてクローン核酸リガンドを合成した。前述したフィルター結合アッセイと同一の方法でクローン核酸リガンドのターゲットタンパク質に対する結合力を測定した。
【0119】
図2aは、核酸ライブラリークローンのヒト血清アルブミンに対する結合力をフィルター結合アッセイ方法で測定した結果である。図2aによると、クローン1、クローン2、クローン3、クローン5のヒト血清タンパク質に対する結合力が確認され、陰性対照群であるNap libraryは結合力を確認できなかった。
【0120】
結合力が確認された4つのクローンのうち、結合力が最も優れたクローン2をオリジナルの全長核酸リガンド(Full length sequence)として最適化のための切断(truncation)過程を行った。結果は下記に記述する。
【0121】
2‐2. ビーズ基盤のELISA結合アッセイ(Bead based ELISA binding assay)
前記記載された塩基配列分析を通じて選抜された核酸配列に対し、塩基配列分析に用いられた二本鎖DNAを鋳型として、5'プライマー(GAGTGACCGTCTGCCTG)(配列番号:10)と3'プライマー(GCTGGTGGTGTGGCTG)(配列番号:12)を用いてPCR過程を通じてクローン核酸リガンドを合成した。
【0122】
PCR過程を通じてビオチンが標識された核酸リガンドの三次構造の形成を誘導するために、95℃から37℃まで1℃ごとに10秒ずつ徐々に温度を下げて反応させた。準備された核酸リガンドと、200nMから5倍ずつ段階希釈したヒト血清アルブミンを37℃で30分間結合させた後、ヒスチジンプルダウンビーズ(サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国)を入れて30分間25℃で反応させた。磁石を用いて上澄み液を除去した後、バッファSB18で3回洗浄し、1:10,000に薄めたストレプトアビジン‐ホースラディッシュ酸化酵素(streptavidin‐horseradish peroxidase;HRP)の試薬を添加して25℃で30分間反応させた。再び磁石を用いて上澄み液を除去した後、バッファSB18で3回洗浄して化学発光溶液ECL Kit(エルピス、韓国)を反応させた。蛍光値を測定するために磁石を用いて上澄み液を分離し、白のプレートに移してGlomaxプレート測定機(プロメガ、米国)のルミネッセンスプロトコル(luminescence protocol)を用いた。測定された結果値はシグマプロット11という分析ソフトウェアを用いて分析した。
【0123】
図2bは、核酸ライブラリークローンのヒト血清アルブミンに対する結合力を、ビーズ基盤のELISA結合アッセイで測定した結果である。図2bによると、クローン6、クローン7、クローン8、クローン9、クローン10のヒト血清タンパク質に対する結合力が確認された。
【0124】
[実施例3]全長核酸リガンドの最適化(Truncation)
クローン2の最適化過程は、次の通りである。まず、全長核酸リガンドの2D構造の予測にはエムフォールド(Mfold)ウェブサーバを用い、これを基に全長核酸リガンドの両末端から長さを縮め、最短の最適化された核酸リガンドを導き出した。全長核酸リガンド(太字及び下線)と、最適化された核酸リガンドは、表1に記載されたAL001、AL002、AL003、AL004、AL005、AL006、AL007であり、AL001、AL002、AL003、AL004、AL005、AL006の予測構造は図3に示した。前記AL001~AL007に対する計算及び測定分子量は下記表3に整理した。
【0125】
【表3】
【0126】
[実施例4]最適化された核酸リガンドのヒト血清アルブミンに対する結合力測定:ビーズ基盤ELISA結合アッセイ(Bead based ELISA binding assay)
最適化された核酸リガンドのヒト血清アルブミンに対する結合力を確認するためにビーズ基盤ELISA結合アッセイを行った。
【0127】
核酸リガンドは、Mermade 12またはMermade 48(バイオオートメーション、米国)を用いて合成した。合成工程は3'末端から5'末端に行い、Deblocking→Coupling→Capping→Oxidationを一つのサイクルとして、一つのヌクレオチドごとに順次合成した。
【0128】
合成が完了した核酸リガンドは、Biotin‐11‐UTP、TdT、及びTdT反応溶液(pierce、米国)を混合した後、37℃で30分間反応させて核酸リガンドの末端をビオチンで標識した。その後、EDTAを処理してTdT酵素を不活性化させた。
【0129】
ビオチンが標識された核酸リガンドの三次構造の形成を誘導するために、95℃から37℃まで1℃ごとに10秒ずつ徐々に温度を下げて反応させた。準備された核酸リガンドと200nMから4.65倍ずつ段階希釈したヒト血清アルブミンを37℃で30分間結合させた後、ヒスチジンプルダウンビーズ(サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国)を入れて30分間25℃で反応させた。磁石を用いて上澄み液を除去した後、バッファSB18で3回洗浄して1:10,000に薄めたストレプトアビジン‐ホースラディッシュ酸化酵素(streptavidin‐horseradish peroxidase;HRP)の試薬を添加し、25℃で30分間反応させた。再び磁石を用いて上澄み液を除去した後、バッファSB18で3回洗浄して化学発光溶液ECL Kit(エルピス、韓国)を反応させた。蛍光値を測定するために磁石を用いて上澄み液を分離し、白のプレートに移してGlomaxプレート測定機(プロメガ、米国)のルミネッセンスプロトコル(luminescence protocol)を用いた。測定された結果値はシグマプロット11という分析ソフトウェアを用いて分析した。
【0130】
図4は、全長核酸リガンドであるAL007と、最適化された核酸リガンドであるAL002、AL003、AL005、AL006のヒト血清タンパク質に対する結合力アッセイ結果である。核酸リガンドとタンパク質間の親和力を示すKd(dissociation constant)値はそれぞれ、AL002:20.72nM、AL003:2.24nM、AL005:14.7nM、AL006:19.02nM、AL007:124.18nMである。
【0131】
[実施例5]ヒト血清アルブミン標的核酸リガンドのin vitro効能実験
5‐1. 細胞培養
膵臓癌細胞株のMiapaca‐2は、ATCC(米国)から分譲を受けて実験に用い、10%のFBSと1%の抗生剤が含まれたDMEM培地を用いて、37℃、5%CO条件のインキュベーターで培養した。継代培養は細胞が培養容器の80%以上に増殖した際に行った。その方法は次の通りである。PBSで洗浄した細胞に0.05%のトリプシン‐EDTAを添加して3分間反応させ、新たな培地を添加してトリプシンを不活性化させる。遠心分離機を用いて細胞を得た後、新しい培養容器に1:6の比率で薄めて培養した。すべての細胞は、マイコプラズマの汚染の有無を、kit(バイオマックス、韓国)を用いてPCR方法で確認し、汚染が検出されていない細胞のみを用いて実験を進めた。
【0132】
5‐2. 核酸リガンドの細胞成長阻害効果を確認
前記記載された方法で培養された細胞を96‐well培養容器の各wellに1X10個ずつ分株して16時間培養した。培養容器に付着された細胞の培地をFBSとグルタミンが含まれていないDMEM培地に交替し、16時間再び培養してマクロピノサイトーシスを活性化した。その後、事前にウシ血清アルブミン(Bovine serum albumin、BSA;Sigma、米国)と30分間結合させた、最適化された核酸リガンドAL006を処理して24時間培養し、各wellにWST(ドンインLS、韓国)の試薬を10μlずつ添加して2時間培養して生成されたホルマザンをGlomaxプレート測定機(プロメガ、韓国)の吸光度測定プロトコルで測定した。本実験では、ウシ血清アルブミンを陰性対照群として用いた。
【0133】
図5は、最適化された核酸リガンドAL006の膵臓癌細胞株Miapaca‐2に対する細胞成長阻害効果(抗癌効能)結果である。図5によると、最適化された核酸リガンドAL006の場合、細胞成長阻害効果が濃度依存的に有意味に減少し、核酸リガンドを処理していない陰性対照群であるウシ血清アルブミンの場合、阻害効果が微々たることを確認した。
【0134】
[実施例6]膵臓癌の異種移植動物モデルを用いた核酸リガンドを含む薬学組成物のin vivo抗癌効能実験
6‐1. 動物モデルの準備
雄マウスのBalb/c‐nu(5週齢)は、ORIENT BIO(ソンナム、韓国)から購入し、すべての動物実験はソウル大学動物実験倫理委員会(Institutional Animal Care and Use Committee、IACUC)の規定に従って行われた。
【0135】
5‐1項に記載した方法で培養されたMiapaca‐2細胞株(1X10cell)と、100μlのマトリゲル混合物(1XPBS:マトリゲル=50:50vol.)を混合し、準備された雄マウスであるBalb/c‐nuの右わき腹(right flank)に皮下注射した。皮下注射した細胞が増殖して30mmサイズの腫瘍が形成された時、陽性対照群薬品(ゲムシタビン)と最適化された核酸リガンドAL006をそれぞれ静脈注射して腫瘍抑制効能を比較した。
【0136】
6‐2. 膵臓癌の異種移植動物モデルでヒト血清アルブミン標的核酸リガンドの腫瘍抑制効能を確認
各実験グループの実験動物数は5匹であった。ゲムシタビン(1mg)は3日に1回、計5回繰り返し投与し(Day0、3、6、9、12)、最適化された核酸リガンドAL006(50μg)は2日に1回、計7回繰り返し投与(Day0、2、4、6、8、10、12)した。腫瘍の大きさは[1/2x最長直径x最短直径]の計算法を用いて2日ごとに測定した(図6参照)。
【0137】
腫瘍抑制効能結果(抗癌効能)は図7の通りであり、陽性対照群であるゲムシタビン薬品と比べて最適化された核酸リガンドAL006は、極めて優れた腫瘍抑制効果を奏した。
【0138】
6‐3. 膵臓癌の異種移植動物モデルにおけるヒト血清アルブミン標的核酸リガンドの生体内安定性
実験薬品の投与が終わった後、犠牲にしたマウスの臓器摘出及び重さの測定を行い、血液を分析して薬品投与による毒性の有無を確認した。
【0139】
生体内安定性試験の結果は、図8図9の通りである。陽性対照群薬品であるゲムシタビン投与群は、脾臓が肥大化して肝臓の重さが減少する副作用が確認されたが、最適化された核酸リガンドAL006投与群は、肝臓と脾臓を含む心臓、肺、腎臓などに副作用がないことを確認した。
【0140】
特に、肝臓の損傷指標であるASTとALTを測定した結果、陽性対照群薬品であるゲムシタビン投与群の肝臓の数値が増加したことを確認し、白血球と血小板数値が減少する副作用が見られた。最適化された核酸リガンドであるAL006投与群の場合、肝臓の損傷指標と白血球、血小板、赤血球に異常数値は見られなかった。
【0141】
[実施例7]ヒト血清アルブミン標的核酸リガンドの三重陰性乳癌同所移植の動物モデルにおける効能実験
乳癌、特に三重陰性乳癌に対する抗癌効能を評価するにあたっては、どのようなin‐vivo実験モデルを選択して用いるかが重要である。人体内の免疫学的及び生理学的作用は複雑に作用するので、動物における非臨床実験の結果がヒトへの抗癌効能として信頼性を有するためには、ヒトの体内環境と類似のモデルを用いることが必要なためである。特に、三重陰性乳癌(TNBC)の場合、侵襲性、転移性及び再発性があり、早期に遠隔臓器で再発する確率と死亡率が高いので、モデルの選定がより一層重要となり得る。
【0142】
現在利用可能な前臨床自発転移性TNBCの同所マウスモデル(preclinical spontaneously metastatic TNBC orthotopic murine model)には、免疫不全ヒトMDA‐モデルMB‐231と、免疫適格マウスのモデル4T1が存在する。ここで、ヒト由来の癌細胞である、細胞株MDA‐MB‐231の場合、マウスに対する移植は異種移植に該当するため、NOD/SCID(Non Obese Diabetic‐Severe Combined Immunodeficiency)マウス、またはヌード(nude)マウスを用いらなければならないという限界がある。このような点で、異種移植された癌細胞(xenografted cancer cell)は宿主がヒトではないので、基本的にマウス実験のように侵襲的または攻撃的ではない。従って、一般に異種移植を行う際はマトリゲルを用いるが、これはヒト由来の癌細胞がマウス体内で十分に生着がなされないためである。MDA‐MB‐231モデルはヒトの細胞株をマウスに移植する異種移植モデルなので、4T1、CT26、MC38、B16F10等のマウス細胞のように、マウス内で早く育たない。侵襲性/攻撃性(Aggressive)が相対的に低いので、マウスモデルでも転移があまり発生せず、異種移植で用いなければならないNOD/SCIDマウス、またはヌードマウスの場合、免疫細胞が一部または全て存在しないため、免疫体系が除去されるか正しく作動しないので、ヒトへの抗癌効能として信頼するには限界があり得、特にTNBCのような侵襲性及び転移性癌の場合、癌発生と抗癌機作を十分に実現して評価できないため限界が存在し得る。また、癌転移のメカニズムで免疫細胞が寄与する部分もあるので、免疫不全マウスを用いらざるを得ないMDA‐MB‐231モデルは、4T1モデルと比べてTNBCに対する効能を評価するのに限界があるため、正しい評価結果を導き出すのが難しい。これに対し、本実験では、4T1のマウスモデルを用いて原発性TNBCと転移性TNBC(即ち、他の臓器への癌の転移、または外科的手術除去後にも他の臓器で発生する転移性癌)に対する本発明の核酸リガンドの予防または治療効果を評価しようとした。即ち、4T1のマウスモデルはマウスの脂肪パッド(4th Fat pad)に4T1腫瘍細胞を注入した後に育った原発腫瘍を標的治療するための原発性TNBCモデルであるのみならず、転移性乳癌モデルであり、前記のように育った原発腫瘍を外科的に完全に除去すれば、残存する腫瘍細胞が異なる臓器、特に肺に自発的転移され、乳癌の自発的転移モデルが生まれる。このとき、4T1細胞にルシフェラーゼレポーター遺伝子(Luciferase reporter gene)がタグ(tagging)された細胞を用いると、注入した腫瘍細胞をルシフェリン(Luciferin)及び生物発光イメージングシステム(IVIS)を用いて多様な視点からイメージングできるので、抗癌剤による原発腫瘍の治療効果及び乳癌の転移の治療効果を観察できる有用なモデルである。
【0143】
7‐1. 細胞培養
4T‐1 Lu2三重陰性乳癌の細胞株は、ATCC(米国)から分譲を受けて実験に用い、ATCC modified RPMI‐1640(サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国)に10%のFBS、1%の抗生剤を入れた培地を用いて培養した。継代培養方法は5‐1項に記載した方法と同一である。
【0144】
7‐2. 動物モデルの準備
雌マウスBalb/c(7週齢)は、ORIENT BIO(ソンナム、韓国)から購入し、すべての動物実験は成均館大学動物実験倫理委員会(Institutional Animal Care and Use Committee、IACUC)の規定に従って行われた。
【0145】
7‐1項に記載された方法で培養された4T‐1 Lu2細胞株(5X10cell)を1X PBS(Hyclone)溶液30μlで薄め、準備されたBalb/c雌マウスの脂肪パッド(4th fat pad)に注射した。注射した細胞が増殖して60mmサイズの腫瘍が形成された時、腫瘍切除ないし未切除群に分けて陽性対照群薬品(ゲムシタビン)と、陰性対照群薬品(HER2標的核酸リガンド;配列番号23)、及び最適化された核酸リガンドAL006をそれぞれ腹腔注射(Intraperitoneal injection、IP)して腫瘍の抑制効能を比較した。
【0146】
7‐3. 転移及び再発抑制効能の確認
7‐3‐1. 腫瘍未切除動物モデルにおける転移及び再発抑制効能の確認
各実験群の動物数は5匹であった。陽性対照群薬品であるゲムシタビン(1mg)と試験薬品である最適化された核酸リガンドAL006(30μg、100μg、300μg)は、2日に1回、計6回(Day0、2、4、6、8)注射した。腫瘍の大きさは[腫瘍の長軸x(腫瘍の短軸)x0.5]の計算法を用いて2日ごとに測定した。
【0147】
腫瘍未切除実験における腫瘍抑制効能の確認結果は図11の通りである。薬品未処理群と比較して最適化された核酸リガンドAL006は、用量が増加するほど極めて優れた腫瘍抑制効果を奏した。特に、最適化された核酸リガンドAL006の300μg処理群は、陽性対照群薬品であるゲムシタビン処理群より腫瘍抑制効能が高いことが確認された。
【0148】
7‐3‐2. 腫瘍切除動物モデルにおける転移及び再発抑制効能を確認
腫瘍切除動物モデルの場合、注射した細胞が増殖して60mmサイズの腫瘍が形成された時、腫瘍を手術的に除去した。陽性対照群薬品であるゲムシタビン(1mg)と陰性対照群であるHer2標的核酸リガンド(300μg)、及び試験薬品である最適化された核酸リガンドAL006(30μg、300μg、600μg)は、低用量を投与(30μg)する場合、2日に1回、計6回(Day0、2、4、6、8)注射し、高用量を投与(300μg、600μg)する場合、2日に1回、計15回(Day0、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28)腹腔内注射した。
【0149】
転移及び再発抑制効能を確認するために、薬品投与後、約7日の間隔で50日が経過するまで、実験動物用の蛍光イメージ分析機(Animal in‐vivo imaging analyzer、IVIS Spectrum;以下IVIS)で撮影した。実験動物は一匹当り150mg/kgの濃度でルシフェリンを注射し、10分反応後、IVIS撮影を行った。
【0150】
低用量投与群の転移及び再発抑制効果の結果は図12の通りである。薬品未処理群は、腫瘍切除後、39日目に全て斃死したが、最適化された核酸リガンドAL006を30μg投与した実験群は53日目まで一部個体が生存した。
【0151】
最適化された核酸リガンドAL006の腫瘍の転移及び再発抑制効果を比較するために、高用量投与群(300μg、600μg)と陽性対照群(ゲムシタビン1mg)、陰性対照群(Her2標的核酸リガンド300μg)を追加し、結果は図13の通りである。薬品未処理群と陽性対照群(ゲムシタビン1mg)、陰性対照群(Her2標的核酸リガンド300μg)の場合、腫瘍切除後、42日目に全て斃死した。最適化された核酸リガンドAL006の高用量投与群の場合、73日目まで一部個体が生存し、IVIS結果、転移及び再発は確認されなかった。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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【国際調査報告】