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特表2024-529546高い経口バイオアベイラビリティーを有するJAK阻害剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】高い経口バイオアベイラビリティーを有するJAK阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20240730BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P37/02
A61P17/00
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P1/00
A61P21/00
A61P25/00
A61P11/00
A61P27/02
A61P17/06
A61P9/00
A61K9/20
A61K9/16
A61K9/48
A61K9/08
A61K9/10
A61K31/505
A61P43/00 111
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507080
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 CN2022108488
(87)【国際公開番号】W WO2023011301
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】202110901146.3
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522167375
【氏名又は名称】特科▲羅▼生物科技(成都)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】方 文奎
(72)【発明者】
【氏名】李 冠群
(72)【発明者】
【氏名】蔡 雨▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】潘 翔
(72)【発明者】
【氏名】朱 文浩
(72)【発明者】
【氏名】汪 ▲楊▼
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲増▼全
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA16
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC09
4C076CC10
4C076CC11
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC18
4C076CC29
4C086AA01
4C086AA10
4C086BC42
4C086GA07
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA52
4C086NA11
4C086ZA02
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB05
4C086ZB07
4C086ZB15
4C086ZC02
(57)【要約】
本発明は、高い経口バイオアベイラビリティーを有するJAK阻害剤を提供する。前記JAK阻害剤は、下記式I化合物、又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、水和物、溶媒和物、及び薬学的に許容される塩を活性成分として含むことを特徴とする。本発明に係る高い経口バイオアベイラビリティーを有するJAK阻害剤は、従来のJAK阻害剤の経口バイオアベイラビリティーが低いという欠陥を解決することができ、化合物をさらに修飾することによって、このような1種又は複数種類の小分子化合物の物理化学的特性を変えることで、このような化合物の生体内細胞吸収特性を向上させ、薬物のバイオアベイラビリティーを大幅に高めることができ、また、このような化合物薬物の新しい投与方式及び使用を可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高い経口バイオアベイラビリティーを有するJAK阻害剤であって、下記式I化合物、又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、水和物、溶媒和物、及び薬学的に許容される塩を活性成分として含む、ことを特徴とするJAK阻害剤。
【化19】
(ここで、
は、C又はNであり、
は、
【化20】
又は
【化21】
から選択され、ここで、Rは、ハロゲン又はシアノから選択され、
は、非置換の、又はハロゲン、C~Cアルキル、ヒドロキシ、C~Cヒドロキシアルキル、アミノ、アミド、及びC~Cアルキルアミドのうちの少なくとも1つで任意に置換された5員又は6員アリール又はヘテロアリールから選択される。)
【請求項2】
前記Rは、フルオロ又はシアノから選択される、請求項1に記載のJAK阻害剤。
【請求項3】
前記5員又は6員アリール又はヘテロアリールは、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラジニル、又はピリダジニルから選択される、請求項1に記載のJAK阻害剤。
【請求項4】
前記C~Cアルキルは、メチル、エチル、又はプロピルであり、前記C~Cヒドロキシアルキルは、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、又はヒドロキシプロピルであり、前記C~Cアルキルアミドは、メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、エチルホルムアミド、又はメチルアセトアミドである、請求項1に記載のJAK阻害剤。
【請求項5】
前記Rは、以下の基から選択されるいずれか1つである、請求項1に記載のJAK阻害剤。
【化22】
【請求項6】
自己免疫疾患、及び関連する炎症性皮膚疾患を予防又は治療するための薬物の製造における、式(I)化合物、又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、水和物、溶媒和物、及び薬学的に許容される塩の使用。
【請求項7】
前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、皮膚筋炎、強直性脊椎炎、多発性硬化症、ベーチェット病、Covid-19重度肺炎、ライター症候群、及びブドウ膜炎から選択されるうちの少なくとも1種である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記関連する炎症性皮膚疾患は、乾癬、自己免疫関連血管炎、強皮症、皮膚筋炎、腸疾患性端皮膚炎、化膿性汗腺炎、扁平苔癬、白斑、皮膚エリテマトーデス、及び硬化性萎縮性苔癬から選択されるうちの少なくとも1種である、請求項6に記載の使用。
【請求項9】
前記薬物は経口投与薬物である、請求項6に記載の使用。
【請求項10】
前記経口投与薬物は、錠剤、丸剤、顆粒剤、カプセル剤、トローチ剤、又は液剤である、請求項9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【関連申請への相互参照】
【0001】
本願は、2021年8月6日に出願された、出願番号が202110901146.3の中国特許出願の優先権を主張しており、その全内容は引用により本明細に組み込まれている。
【技術分野】
【0002】
本発明は、小分子化合物の分野に関し、具体的には、自己免疫疾患又は関連する炎症性皮膚疾患を予防又は治療するのに有用であり、特に経口投与の場合に明らかな優位性を有する高い経口バイオアベイラビリティーを有するJAK阻害剤に関する。
【背景技術】
【0003】
ファイザー社のJAK3阻害剤であるtofacitinib及びIncyte社のJAK1/JAK2阻害剤であるruxolitinibが発売されて以来、JAK阻害剤は、すでにアレルギー反応と自己免疫関連の炎症性疾患、骨髄増殖性疾患(MPD:Myeloproliferative diseases)、移植片対宿主疾患(GVHD:graft-versus-host disease)などの疾患を治療する重要な治療手段と薬物開発方向になってきた。
【0004】
現在、世界で8種類のJAK阻害剤が経口又は外用でヒト疾患を治療することが承認されている。JAKファミリーのメンバーには構造上非常に近似し、機能が分化するとともに重複する4種類のサブタイプが存在するため、従来のJAK阻害剤は、ほどんと、JAK1、JAK2及びJAK3サブタイプに効率的な阻害を示した。このようなJAK阻害剤は、臨床応用において、治療効果が良くない又は明らかな副作用があるなどの問題に遭遇し、例えば、市販許可された複数の経口JAK阻害剤の長期使用後の安全リスク(癌と感染)が次第に暴露され、FDAはJAK市販薬物に対して安全性ブラックボックス警告を提出した。
【0005】
現在、JAK阻害剤には、以下の解決しなければならない課題が存在する。1)pan-JAK阻害剤は3種類以上のJAK亜型を阻害するため、特にJAK2を阻害することで貧血や凝血障害を引き起こし、非悪性の炎症性疾患の経口治療の将来性が楽観的ではない。2)JAK1やTyK2などの1~2種類のJAKサブタイプを阻害することは、より安全性が高いはずであるが、特異性が存在するので阻害剤効果が十分ではない。3)1~2種類のJAKサブタイプを阻害するJAK阻害剤は、バイオアベイラビリティーが十分に高くなく、経口による系統的な治療ができず、その臨床応用を極めて制限している。4)Tyk2とJAK1サブタイプを同時に高い特異性で阻害する小分子化合物は比較的に少なく、このような化合物の自己免疫性疾患への臨床応用データは乏しい。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、前記の従来技術の欠陥を解決し、高活性、高選択性及び高い経口バイオアベイラビリティーを有するJAK阻害剤を提供することである。
【0007】
具体的には、本発明者らは、既存のJAK阻害剤が外用塗布投与に適用可能であることを見出し、このようなJAK阻害剤薬物は、炎症性皮膚疾患モデル動物において、受動的/能動的に吸収されることにより皮膚の局所病変組織に導入され、炎症を制御し、炎症性皮膚疾患を治療し、優れた治療効果を示す。しかしながら、このような小分子JAK阻害剤は、経口バイオアベイラビリティーが極めて低いので、経口薬としての更なる開発には適さない。
【0008】
経口バイオアベイラビリティーが低いという欠陥を解決するために、本発明は、化合物をさらに修飾することによって、このような1種又は複数種類の小分子化合物の物理化学的特性を変えることで、このような化合物の生体内細胞吸収特性を向上させ、薬物のバイオアベイラビリティーを大幅に高めることができ、また、このような化合物薬物の新しい投与方式及び使用を可能にする。そのため、生体外と生体内の細胞レベルでJAKキナーゼを強く阻害するJAK阻害剤を用いて関連疾患を治療するための臨床使用手段を増加させ、新薬の研究開発分野で満たされていない臨床ニーズに応えるための重要な革新性手段である。本発明はまた、上記の知見に基づいて完成されるものである。
【0009】
上記の目的を達成させるために、一態様では、本発明は、下記式I化合物、又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、水和物、溶媒和物、及び薬学的に許容される塩を活性成分として含むことを特徴とする高い経口バイオアベイラビリティーを有するJAK阻害剤を提供する。
【0010】
【化1】
ここで、
は、C又はNであり、

【化2】
又は
【化3】
から選択され、ここで、Rは、ハロゲン又はシアノから選択され、
は、非置換の、又はハロゲン、C~Cアルキル、ヒドロキシ、C~Cヒドロキシアルキル、アミノ、アミド、及びC~Cアルキルアミドのうちの少なくとも1つで任意に置換された5員又は6員アリール又はヘテロアリールから選択される。
【0011】
本発明の一実施形態では、前記Rは、フルオロ又はシアノから選択される。
【0012】
本発明の一実施形態では、前記5員又は6員アリール又はヘテロアリールは、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラジニル、又はピリダジニルから選択される。
【0013】
本発明の一実施形態では、前記C~Cアルキルは、メチル、エチル、又はプロピルであり、前記C~Cヒドロキシアルキルは、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、又はヒドロキシプロピルであり、前記C~Cアルキルアミドは、メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、エチルホルムアミド、又はメチルアセトアミドである。
【0014】
本発明の一実施形態では、前記Rは、以下の基から選択されるいずれか1種である。
【化4】
【0015】
別の態様では、本発明はまた、自己免疫疾患、及び関連する炎症性皮膚疾患を予防又は治療するための薬物の製造における、前記の式(I)化合物、又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、水和物、溶媒和物、及び薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0016】
発明の一実施形態では、前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、皮膚筋炎、強直性脊椎炎、多発性硬化症、ベーチェット病、Covid-19重度肺炎、ライター症候群、及びブドウ膜炎から選択される少なくとも1種である。
【0017】
本発明の一実施形態では、前記関連する炎症性皮膚疾患は、乾癬、自己免疫関連血管炎、強皮症、皮膚筋炎、腸疾患性端皮膚炎、化膿性汗腺炎、扁平苔癬、白斑、皮膚エリテマトーデス、及び硬化性萎縮性苔癬から選択される少なくとも1種である。
【0018】
本発明の一実施形態では、前記薬物は、経口投与薬物である。
【0019】
本発明の一実施形態では、前記経口投与薬物は、錠剤、丸剤、顆粒剤、カプセル剤、トローチ剤、又は液剤である。
【0020】
本発明の作用及び効果は以下の通りである。
【0021】
本発明に係る高い経口バイオアベイラビリティーを有するJAK阻害剤は、従来のJAK阻害剤の経口バイオアベイラビリティーが低いという欠陥を解決することができ、化合物をさらに修飾することによって、このような1種又は複数種類の小分子化合物の物理化学的特性を変えることで、このような化合物の生体内細胞吸収特性を向上させ、薬物のバイオアベイラビリティーを大幅に高めることができ、また、このような化合物薬物の新しい投与方式及び使用を可能にする。
【0022】
具体的には、本発明のJAK阻害剤は、加水分解代謝性基を増加させて化合物の極性を低下させ、水溶性を向上させることにより、原薬の半減期を遅らせ、原薬のクリアランスを遅らせ、原薬の血中濃度を上昇させることにより、原薬のバイオアベイラビリティーを著しく向上させ、このような高効率なJAK阻害剤を経口投与不能から経口投与可能にし、薬物の使用経路を増加させ、薬物の治療適応性をその分向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書に記載された具体的な実施形態は、本発明を説明及び解釈するためにのみ使用され、本発明を限定するために使用されるものではない。
本明細書で開示される範囲の端点及び任意の値は、正確な範囲又は値に限定されず、これらの範囲又は値に近い値を含むと理解されるべきである。数値範囲の場合、各範囲の端点値の間、各範囲の端点値と個々のポイント値の間、及び個々のポイント値の間は、互いに組み合わされて1つ又は複数の新しい数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲は、本明細書で具体的に開示されるものとみなされるべきである。
【0024】
本発明を詳細に説明する前に、本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明するために過ぎず、本発明の範囲を限定することは意図されず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲のみによって限定されることが理解されるべきである。本明細書に記載された本発明をより完全に理解するために、以下の用語が使用され、以下に定義される。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明の当業者によって理解されるものと同じ意味を有する。
【0025】
一態様では、本発明は、下記式I化合物、又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、水和物、溶媒和物、及び薬学的に許容される塩を活性成分として含む、ことを特徴とする高い経口バイオアベイラビリティーを有するJAK阻害剤を提供する。
【化5】
(ここで、
1は、C又はNであり、

【化6】
又は
【化7】
から選択され、R4は、ハロゲン(例えば、フルオロ、塩素又は臭素、特にフルオロ)又はシアノから選択され、
は、非置換の、又はハロゲン、C~Cアルキル、ヒドロキシ、C~Cヒドロキシアルキル、アミノ、アミド、及びC~Cアルキルアミドのうちの少なくとも1つで任意に置換された5員又は6員アリール又はヘテロアリールから選択される。)
【0026】
本発明では、前記非置換の、又は置換基で置換れた5員又は6員アリール又はヘテロアリールは、当該分野に知られている各種の5員又は6員アリール又はヘテロアリールであってもよい。また、前記ヘテロアリールでは、そのヘテロ原子は、当業者に知られているように、N、O又はSなどのヘテロ原子であってもよいが、好ましくはN原子であり、その数は、例えば、1個、2個又は3個であってもよい。本発明の1つの好適な実施形態では、前記5員又は6員アリール又はヘテロアリールは、例えば、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラジニル、又はピリダジニルから選択されてもよいが、これに限定されない。
【0027】
上記の置換基に関しては、前記C~Cアルキルは、例えば、メチル、エチル、又はプロピルであってもよく、前記C~Cヒドロキシアルキルは、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、又はヒドロキシプロピルであってもよく、前記C~Cアルキルアミドは、例えば、メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、エチルホルムアミド、又はメチルアセトアミドであってもいが、これらに限定されない。
【0028】
さらに、本発明の更に好ましい実施形態では、前記Rは、以下の基から選択されるいずれか1種であってもよい。
【化8】
【0029】
本明細書で使用されるように、「薬学的に許容される」という用語は、本発明の化合物の生物学的活性又は性質に影響を及ぼさず、かつ比較的無毒である物質、すなわち、当該物質は、好ましくない生物学的反応を引き起こすことなく、又は組成物に含まれる任意の成分と好ましくない方法で相互作用することなく、個体に適用することができる物質を意味する。本発明において、「薬学的に許容される塩」は、無機塩及び有機塩を含んでもよく、ここで、前記有機塩は、アンモニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、銅、アルミニウム、亜鉛、バリウム又は第4級アンモニウム塩を含んでもよく、前記無機塩は、アルギニン、t-ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、イミダゾール、リジン、メチルアミン、ピリジン、ピリジンカルボキシレート、ピペラジン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリメチルアミン又はウレア塩を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0030】
別の態様では、本発明はまた、自己免疫疾患、及び関連する炎症性皮膚疾患を予防又は治療するための薬物の製造における、上記の式(I)化合物、又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、水和物、溶媒和物、及び薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0031】
本明細書で使用されるように、「治療」という用語は、特定の疾患、障害、及び/又は病症の1つ又は複数の症状又は特徴の発生を部分的又は完全に軽減、改善、緩和、阻害、遅延すること、発作遅延、重症度低減、及び/又は発生率の減少という所望の効果を達成する治療計画に従って、治療薬を投与することを意味する、いくつかの実施形態では、治療計画に従った治療薬の投与は、所望の効果の達成に関連する。この治療は、関連する疾患、障害及び/又は病症を示さない被験者、及び/又は疾患、障害及び/又は病症の初期徴候のみを示す被験者を対象とすることができる。代替的に又は追加的に、このような治療は、関連する疾患、障害、及び/又は病症の1つ又は複数の決定された徴候を示す被験者を対象とすることができる。いくつかの実施形態では、治療は、関連する疾患、障害、及び/又は病症に罹患していると診断された被験者を対象とすることができる。いくつかの実施形態では、治療は、関連する疾患、障害、及び/又は病症の発症のリスク増大に統計的に関連する1つ又は複数の感受性因子を有することが知られている被験者を対象とすることができる。
【0032】
本発明によれば、上記の使用で製造された薬物は、有効量の本発明の式(I)化合物、及び薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤を含んでもよい。
【0033】
本明細書で使用されるように、「有効量」、「治療有効量」、又は「薬学的有効量」という用語は、いずれかの薬物治療に適用可能な合理的な利益/リスク比で、治療の被験者に治療効果を与える治療薬の量を意味する。このような治療効果は、客観的(すなわち、あるテスト又はマーカーによって測定され得る)又は主観的(すなわち、被験者が指示を与えたり、効果を感じたりする)であってもよい。いくつかの実施形態では、「治療有効量」とは、例えば、疾患に関連する症状を改善し、疾患の発症を予防又は遅延させ、及び/又は、疾患の症状の重症度又は頻度を軽減することによって、関連する疾患又は病症を効果的に治療、改善又は予防し(例えば、発症を遅延させる)、及び/又は検出可能な治療又は予防効果を示す治療薬又は組成物の量を意味する。
【0034】
当業者であれば、投与される前記式(I)化合物の治療有効量は、被験者及び疾患の性質や重症度、被験者の身体状態、治療計画(例えば、第2治療薬を使用するか否か)、及び選択される投与経路に応じて変化することを認識する。適切な用量は、当業者が容易に決定することができる。また、当該薬物の個体投与量の最適な量及び時間は、治療される病態の性質及び程度、投与の形態、経路及び位置、並びに治療される特定の被験者の年齢及び病態から決定され、医師は最終的に適切な投与量を決定する。この用量は、必要に応じて複数回繰り返すことができる。副作用が発生した場合、用量及び/又は頻度は、通常の臨床試験に基づいて変更又は減少することができる。
【0035】
本発明において、「薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤」とは、関連する政府当局によってヒト又は家畜への使用を許容することが許可されている任意のアジュバント、担体、賦形剤、助流剤、甘味増強剤、希釈剤、防腐剤、染料/着色剤、矯味剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁助剤、安定化剤、等張剤、溶剤又は乳化剤などを含むが、これらに限定されない。
【0036】
本発明によれば、さらに、本発明の使用で製造される薬物は、本発明の式(I)化合物を有効成分として含んでもよいのに加えて、自己免疫疾患及び免疫関連する炎症性皮膚疾患の予防又は治療に有用な他の薬剤を別の有効成分として含んでもよい。前記薬剤の例には、ビタミンD誘導体、ビタミンA誘導体、糖質コルチコイド、カルシニューリン阻害剤や非ステロイド系抗炎症剤などが挙げられるが、これらに限定されない。前記薬剤が複数の有効成分を含む場合、医師の判断により、各有効成分を同時に、順次、あるいは別々に投与することができる。
【0037】
また、本発明の式(I)化合物は、経口、経皮、皮下、鼻内、静脈内、筋内、鞘内、領域又は局所(例えば粘膜)などの様々な経路で患者に投与することができる。任意の状況における最適な投与経路は、被験者及び疾患の性質や重症度、ならびに被験者の身体状態などに依存する。本発明の一実施形態では、本発明の式(I)化合物で製造された薬物は経口投与が可能である。この場合、前記経口投与される薬物は、錠剤、丸薬、顆粒剤、カプセル剤、トローチ剤、又は液剤であってもよい。
【0038】
本発明者の研究により、本発明の式(I)化合物又はそれで製造された医物は、(特に経口投与された場合でも)JAK関連自己免疫疾患及び関連する炎症性皮膚疾患の予防又は治療に使用される場合、優れた効果を果たすことができる。具体的には、前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、皮膚筋炎、強直性脊椎炎、多発性硬化症、ベーチェット病、Covid-19重度肺炎、ライター症候群、ブドウ膜炎などから選択される。前記関連する炎症性皮膚疾患は、乾癬、自己免疫関連血管炎、強皮症、皮膚筋炎、腸性末端皮膚炎、化膿性汗腺炎、扁平苔癬、白斑、皮膚エリテマトーデス、及び萎縮性硬化性苔癬などから選択される。
【0039】
以下、本発明の特定の化合物の効果について、実施例を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0040】
[化合物1の一般的な合成方法(TDM-181055)]
【化9】
【0041】
ステップ1:化合物1(TDM-181055)の製造((S)-(2,2-ジフルオロ-N-(5-(2-(((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)ピリジン-2-イル)シクロプロパン-1-カルボキサミド)ピバル酸メチル)
【0042】
化合物1a(500mg、1.346mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(15mL)溶液に炭酸カリウム(372mg、2.692 mmol)及び化合物1b(608mg、4.039mmol)を加え、混合物をアルゴンガスで複数回パージし、40℃に加熱し、一晩撹拌した。その後、混合物を減圧下で濃縮して、残留物に水を加え、固体を濾過して収集し、固体をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン: 10%メタノールのジクロロメタン=0~30%)により精製し、黄色固体として生成物(TDM-181055、化合物1、19.8mg、収率3%)を得た。LCMS [M+1]+ =486.2。
【0043】
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 9.60 (s, 1H), 9.24 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 8.63 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 8.55 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 7.93 (s, 1H), 7.63 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.56 (s, 1H), 7.41 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 6.03 - 5.92 (m, 2H), 3.83 (s, 3H), 3.04 (s, 1H), 2.17 - 1.88 (m, 2H), 1.10 (s, 9H)。
【実施例2】
【0044】
[化合物2の一般的な合成方法(TDM-181065)]
【化10】
【0045】
ステップ1:化合物2(TDM-181065)の製造(((1-(3-シアノフェニル)-N-(4-(2-(((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)フェニル)メチル)スルホンアミド)ピバル酸メチル)
【0046】
化合物 2a(150mg、0.337mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(10mL)溶液に炭酸セシウム(219.4mg、0.673mmol)を加え、反応液を50℃に升温して1時間撹拌した。室温に自然冷却し、その後、化合物 2b(122.2mg、0.505mmol)を加え、反応液を室温で10分間撹拌した。LCMS [M+H]=560により検出した結果、反応が完全に行われた。後処理:反応液を水70mLに注入し、水相を酢酸エチルEA(3*150mL)で3回抽出し、有機相を併せて、飽和食塩で水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、吸引濾過し、濾液を乾燥し、得た粗品をカラムに通して精製し[00溶離液:(D/M=10:1)/DCM=0~15%]、黄色固体として表題化合物(TDM-181065、化合物2、60mg、収率31.8%)を得た。LCMS [M+1]+ =560.2。
【0047】
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 9.54 (s, 1H), 8.51 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 8.18 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.94 - 7.86 (m, 3H), 7.79 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.63 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 7.58 (s, 1H), 7.50 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.31 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 5.63 (s, 2H), 4.86 (s, 2H), 3.84 (s, 3H), 1.17 (s, 9H)。
【実施例3】
【0048】
[化合物3の一般的な合成方法(TDM-181058)]
【化11】
【0049】
実施例2と同様な方法によって、黄色固体として化合物(TDM-181058、化合物3、90.5mg、収率41.13%)を得た。LCMS [M+1]+ =553.3。
【0050】
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 9.53 (s, 1H), 8.51 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 8.18 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.91 (s, 1H), 7.57 (s, 1H), 7.53 - 7.41 (m, 3H), 7.27 (ddd, J = 17.1, 11.2, 3.5 Hz, 4H), 5.60 (s, 2H), 4.79 (s, 2H), 3.83 (s, 3H), 1.17 (s, 9H)。
【実施例4】
【0051】
[化合物4の一般的な合成方法(TDM-181059)]
【化12】
【0052】
実施例2と同様な方法によって、略白色固体(TDM-181059、化合物4、67mg、収率23%)を得た。LCMS [M+1]+ =566.3。
【0053】
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 9.81 (s, 1H), 8.62 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 8.32 (d, J = 7.4 Hz, 2H), 8.09 (t, J = 5.6 Hz, 1H), 7.71 (d, J = 6.6 Hz, 2H), 7.51 (d, J = 5.2 Hz, 3H), 7.32 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 5.74 (d, J = 10.4 Hz, 2H), 3.28 - 3.18 (m, 2H), 2.55 - 2.52 (m, 1H), 2.37 (s, 3H), 2.03 (dt, J = 13.3, 6.6 Hz, 1H), 1.87 (s, 1H), 1.19 - 1.06 (m, 12H)。
【実施例5】
【0054】
[化合物5の一般的な合成方法(TDM-181060)]
【化13】
【0055】
実施例2と同様な方法によって、略白色固体(TDM-181060、化合物5、89.4mg、収率22%)を得た。LCMS [M+1]+ =552.2。
【0056】
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 10.00 (s, 1H), 8.65 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 8.41 - 8.24 (m, 3H), 7.92 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 7.83 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 7.59 - 7.37 (m, 3H), 5.75 (d, J = 10.4 Hz, 2H), 3.31 - 3.24 (m, 2H), 2.52 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 2.13 - 1.78 (m, 2H), 1.19 - 1.06 (m, 12H)。
【比較例1】
【0057】
[比較例1:化合物6(TDM-180935)の一般的な合成方法]
【化14】
【0058】
ステップ1:化合物6(TDM-180935)の製造
【0059】
室温で化合物6a(80mg, 0.299mmol)である4-(6-アミノピリジン-3-イル)-N-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリミジン-2-アミンのN,N-ジメチルホルムアミド(5mL)溶液にN,N--ジイソプロピルエチルアミン(72.9mg、0.564mmol)を加え、混合物を5分間撹拌し、その後、o-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(170mg、0.449mmol)及び化合物6b(54mg、0.449mmol)である(S)-2,2-ジフルオロシクロプロパン-1-カルボン酸を加えた。混合物を90℃に加熱し、16時間撹拌した。混合物を減圧濃縮して溶媒の一部を除去し、残留物に水を加え、その後、溶液を酢酸エチル(60mL*3)で抽出した。有機層を飽和食塩水(50mL*5)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾液を減圧濃縮し、残留物をギ酸で分取精製し、黄色固体として化合物である(S)-2,2-ジフルオロ-N-(5-(2-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)ピリジン-2-イル)シクロプロパン-1-ホルムアミド(化合物6、21.6mg、収率19.5%)を得た。LCMS [M+1] = 372.1。
【0060】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.29 (s, 1H), 9.54 (s, 1H), 9.11 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 8.51 (dd, J = 14.3, 6.9 Hz, 2H), 8.22 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.93 (s, 1H), 7.54 (s, 1H), 7.34 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 3.83 (s, 3H), 3.04 (dd, J = 22.4, 9.9 Hz, 1H), 2.05 (dt, J = 11.8, 8.0 Hz, 2H)。
【比較例2】
【0061】
[比較例2:化合物7の一般的な合成方法(TDM-180958)]
【化15】
【0062】
ステップ1:化合物7c(3-シシアノベンジルアミノチオカルバメート)の製造
【0063】
化合物7a(1.78g、9.08mmol)の乙醇(13mL)溶液に化合物 7b (690mg、9.08mmol)を加え、反応液を80℃に昇温し、1時間撹拌し、LCMS[M+H]+ =192により検出した結果、反応が完全に行われた。後処理:反応液を乾固まで濃縮させ、白色の表題化合物(化合物3c、1.7g、収率97.7%)を得た。LCMS [M+1]+ =192。
【0064】
ステップ2:化合物7d((3-シアノフェニル)メタンスルホニルクロリド)の製造
【0065】
N-クロロスクシンイミド(4.85g、36.32mmol)のアセトニトリル(20mL)溶液に2N の塩酸溶液(2.5mL)及び化合物 7c(1.74g、9.08mmol)を加え、反応液を室温で30分間撹拌した。後処理:反応完了後、アセトニトリルを濃縮して除去し、水(15mL)を加えて、白色固体を析出させ、濾過し、固体をオイルポンプで乾燥し、白色の表題化合物(化合物7d、1.776g、収率90.7%)を得た。
【0066】
ステップ3:化合物7(TDM-180958)の製造
【0067】
化合物 7e(500mg、1.878mmol)の無水ピリジン(20mL)溶液に化合物7d(1g、4.64mmol)を加え、反応液を80℃に昇温し、30分間反応させ、LCMS[M+H] = 446により検出した結果、反応が完全に行われた。後処理:反応液を乾固まで濃縮させ、粗品をカラム[00溶離剤: (D:M=10:1)/DCM= 0~50%]に通し、粗品をDCM/MeOH=30/1でスラリー化し、黄色固体を得て、次に、分取型HPLCにより精製し、黄色の表題化合物である1-(3-シアノフェニル)-N-(4-(2-(((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)フェニル)メタンスルホンアミド(化合物7、155.4 mg、収率18.6%)を得た。
【0068】
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 10.27 (s, 1H), 9.46 (s, 1H), 8.46 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 8.12 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.93 (s, 1H), 7.84 (dt, J = 7.2, 1.6 Hz, 1H), 7.71 (s, 1H), 7.61 (ddd, J = 17.3, 10.8, 4.8 Hz, 3H), 7.32 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.24 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 4.71 (s, 2H), 3.85 (s, 3H)。LCMS[M+H]+ = 446。
【比較例3】
【0069】
[比較例3:化合物8の一般的な合成方法(TDM-180945)]
【化16】
【0070】
ステップ1:化合物8(TDM-180945)の製造
【0071】
室温で化合物8a(60mg、0.225mmol)のピリジン(5mL)溶液に化合物8b(65.8mg、0.315mmol)を加え、混合物を70℃に加熱し、6h撹拌した。その後、混合物を減圧下で濃縮して、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン:10%メタノール含有ジクロロメタン=70:30)及びギ酸で分取精製し、黄色の表題固体化合物8、TDM-180945、すなわち1-(3-フルオロフェニル)-N-(4-(2-(((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)フェニル)メタンスルホンアミド(26.1mg、収率19.8%)を得た。
【0072】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ10.25 (s, 1H), 9.45 (s, 1H), 8.45 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 8.12 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.93 (s, 1H), 7.56 (s, 1H), 7.40 (dd, J = 14.3, 7.6 Hz, 1H), 7.32 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.26 - 7.15 (m, 2H), 7.11 (d, J = 7.3 Hz, 2H), 4.63 (s, 2H), 3.84 (s, 3H)。LCMS [M+1]+ = 439.2。
【比較例4】
【0073】
[比較例4:化合物9の一般的な合成方法(TDM-180977)]
【化17】
【0074】
ステップ1:化合物9b(4-アミノ-N-エチル-2-メチルベンサミド)の製造
【0075】
化合物9a(1.8g、11.91mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(80mL)溶液にo-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(5.4g、14.289mmol)及びN,N--ジイソプロピルエチルアミン(3.8g、29.775mmol)を加え、混合物を5分間撹拌し、その後、エチルアミンのテトラヒドロフラン(2M)(9mL、18mmol)溶液を加え、混合物を室温で一晩撹拌した。混合物を減圧濃縮して溶媒の一部を除去し、残留物に水を加え、酢酸エチル(100mL*3)で抽出し、有機相を併せて、水(150mL*3)及び飽和食塩水(150mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾液を減圧濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=0%-50%)により精製し、黄色油状の表題化合物(化合物9b、1.32g、収率62.2%)を得た。LCMS [M+1]+=179。
【0076】
ステップ2:化合物9((S)-4-((4-(4-(4-(2,2-ジフルオロシクロプロパン-1-カルボキサミド)フェニル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-エチル-2-メチルベンサミド)の製造
【0077】
化合物9c(80mg、0.258mmol)のn-ブタノール(8mL)溶液に化合物9b(92mg、0.517mmol)及びp-トルエンスルホン酸一水和物(98mg、0.517mmol)を加えた。得た混合物を110℃に加熱し、3時間撹拌した。反応終了後、混合物を減圧下で濃縮して、残留物を分取型HPLC(ギ酸)により精製し、白色固体として表題化合物TDM-180977(化合物9、19.4mg、収率13.3%)を得た。LCMS[M+H]+=425.2。
【0078】
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ10.70 (s, 1H), 9.72 (s, 1H), 8.54 (d, J = 5.3 Hz, 1H), 8.18 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 8.08 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.81 - 7.67 (m, 4H), 7.40 (d, J = 5.3 Hz, 1H), 7.32 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 3.28 - 3.17 (m, 2H), 2.86 (ddd, J = 13.6, 10.8, 8.1 Hz, 1H), 2.37 (s, 3H), 2.14-1.93 (m, 2H), 1.11 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。
【比較例5】
【0079】
[化合物10の一般的な合成方法(TDM-180972)]
【化18】
【0080】
ステップ1:化合物10c(4-(2-クロロピリミジン-4-イル)アニリン)の製造
【0081】
三口フラスコに化合物10a(2g、9.129mmol)、化合物10b(1.36g、9.129mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(527g、0.45mmol)、炭酸カリウム(2.5g、18.258mmol)、ジオキサン(20mL)、及び水(20mL)を加え、窒素ガスで複数回置換し、その後、混合物を80℃に加熱し、45分間撹拌した。反応終了後、反応物を減圧濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル= 0-60%)により精製し、淡黄色固体の表題化合物(化合物10c、394mg、収率21%)を得た。LCMS [M+1]+=206。
【0082】
ステップ2:化合物10e((S)-N-(4-(2-クロロピリミジン-4-イル)フェニル)-2,2-ジフルオロシクロプロパン-1-カルボキサミド)の製造
【0083】
三口フラスコに化合物10c(300mg、1.459mmol)及び化合物10d(187mg、1.531mmol)を加え、混合物を窒素ガスで複数回置換し、その後、0℃でピリジン(10mL)及びオキシ塩化リン(335.6mg、2.189 mmol)を加えた。混合物を室温で1h撹拌し、その後、減圧濃縮し、残留物を酢酸エチル(30mL*3)で抽出し、有機層を併せて、水(50mL*3)及び飽和食塩水(50mL*2)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾液を減圧濃縮させ、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル= 0-12%)により精製し、黄色固体の表題化合物(化合物10e、327.7mg、収率72.5%)を得た。LCMS[M+H]+=310。
【0084】
ステップ3:化合物1((S)-4-((4-(4-(4-(2,2-ジフルオロシクロプロパン-1-カルボキサミド)フェニル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-エチルベンサミド)の製造
【0085】
化合物10e(80mg、0.258mmol)のn-ブタノール(8mL)溶液に化合物1f(85mg、0.517mmol)及びp-トルエンスルホン酸一水和物(98mg、0.517mmol)を加えた。得た混合物を110℃に加熱し、3時間撹拌した。反応終了後、混合物を減圧下で濃縮して、残留物を分取型HPLC(ギ酸)により精製し、黄色固体の表題化合物TDM-180972(化合物10、19.7mg、収率17.5%)を得た。LCMS[M+H]+=438.2。
【0086】
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 10.70 (s, 1H), 9.91 (s, 1H), 8.57 (d, J = 5.3 Hz, 1H), 8.28 (t, J = 5.5 Hz, 1H), 8.19 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.92 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 7.83 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 7.78 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.44 (d, J = 5.3 Hz, 1H), 3.28 (dt, J = 12.7, 6.4 Hz, 2H), 2.86 (ddd, J = 13.6, 10.8, 8.0 Hz, 1H), 2.12 - 1.94 (m, 2H), 1.13 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。
【0087】
[ラット経口PK生物学的説明]
【0088】
本発明の実施例の化合物1~5が、類似の構造を有する化合物6~10と比較して経口バイオアベイラビリティーが著しく向上しているか否かを検証するために、合成された化合物1~10を、約6~8週間のSprague Dawley(SD)ラット(体重約250~300g)の体内において、単回経口投与の薬物動態(PK)試験を行い、化合物1~10のPKパラメータを比較する。簡単に言うと、化合物は溶媒(DMA:30%Solutol HS 15:Saline=10:10:80(v/v/v))中で透明な溶液製剤を1mg/mLの濃度で配合し、各化合物はラット3匹(n=3)を用いて1回の口腔内投与(5mg/kg)で投与された。投与前及び投与後0.25、0.5、1、2、4、8、12、24時間に各ラットから鎖骨下静脈経由で約150μLの全血を採取し、EDTA-K2を含むEppendorfチューブに採取し、続いて100μLの全血を採取し、300μLのシアノメタン(ACN)を含むEppendorfチューブに加え、混合後に血漿を遠心分離し、試料が溶血していないことを確認した後、血漿試料を氷点下90から氷点下60度の冷蔵庫で保存し、LC-MS/MSにより試料中の薬物濃度を分析した。すべての経口PK試験において、ラットはいずれの試験化合物に対しても副作用を認めなかった。
【0089】
血漿試料中の化合物濃度はLC-MS/MSシステム(API4000:LC-MS-MS-001)で測定分析し、試料10μLと標準品を含むACN100μLを混合した後、水110μLを加えて振とう混合し、最後に混合溶液2μLをLC-MS/MSシステムに注射した。
【0090】
試験結果を以下に示す。
1)比較例1化合物:Cmax=116ng/mL、AUC0-t=891ng・h/mL。さらに実施例1の化合物に合成すると、Cmax=668ng/mL、AUC0-t=1670ng・h/mLである。
2)比較例2化合物:Cmax=20.2ng/mL、AUC0-t=47.4ng・h/mL。さらに実施例2の化合物に合成されると、Cmax=791ng/mL、AUC0-t=1580ng・h/mLである。
3)比較例3化合物:Cmax=85.5ng/mL、AUC0-t=381ng・h/mL。さらに実施例3の化合物に合成されると、Cmax=1860ng/mL、AUC0-t=2890ng・h/mLである。
4)比較例4化合物:Cmax=5.02ng/mL、AUC0-t=30.7ng・h/mL。さらに実施例4の化合物に合成されると、Cmax=635ng/mL、AUC0-t=3090ng・h/mLである。
5)比較例5化合物:Cmax=16.5ng/mL、AUC0-t=141ng・h/mL。さらに実施例5の化合物に合成されると、Cmax=689ng/mL、AUC0-t=2710ng・h/mLである。
【0091】
ラット経口PK生物学的データによると、さらに合成した後、化合物の系暴露が大幅に増加し、血漿薬物濃度のピーク値が原薬より5~120倍、AUCが2~100倍増加し、本発明の実施例の化合物の経口バイオアベイラビリティーが明らかに向上し、同時にボディクリアランス率が明らかに低下したことが証明された。
【0092】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施例における具体的な詳細に限定されるものではなく、本発明の技術的発想の範囲内において、本発明の技術的解決手段は、本発明の保護範囲に属する様々な簡単な変形を施すことができる。
【0093】
なお、上記の具体的な実施形態に記載された各具体的な技術的特徴は、矛盾しない限り、任意の適切な方法で組み合わせてもよく、不必要な重複を避けるために、本発明は種々の可能な組み合わせの方法については別途説明しない。
【0094】
さらに、本発明の様々な異なる実施形態は、本発明の構想に反しない限り、任意に組み合わせてもよく、本発明の開示された内容と同様にみなされる。
【国際調査報告】