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特表2024-529553ステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペースト及びその製造方法、銅マンガンニッケルコバルトろう材並びに使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペースト及びその製造方法、銅マンガンニッケルコバルトろう材並びに使用
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/30 20060101AFI20240730BHJP
   C22C 30/02 20060101ALI20240730BHJP
   B23K 35/22 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B23K35/30 310C
C22C30/02
B23K35/22 310B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508001
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 CN2021135209
(87)【国際公開番号】W WO2023015784
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】202110925461.X
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517301232
【氏名又は名称】鄭州机械研究所有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】龍 偉民
(72)【発明者】
【氏名】鍾 素娟
(72)【発明者】
【氏名】黄 俊蘭
(72)【発明者】
【氏名】裴 ▲イン▼崟
(72)【発明者】
【氏名】張 冠星
(72)【発明者】
【氏名】薛 行雁
(72)【発明者】
【氏名】聶 孟杰
(72)【発明者】
【氏名】李 文彬
(57)【要約】
ステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストを開示し、主に水、ケイ酸ナトリウム、ナノシリカ及び銅基ろう材からなり、前記ろう材ペーストの原料は、銅基ろう材 70~80重量部、ナノシリカ 3~5重量部、水酸化ナトリウム 1~3重量部、水 10~15重量部からなる。このろう材ペーストは、水、ケイ酸ナトリウム、ナノシリカを含有するペーストであり、ろう付時に高温脱水して薄膜を形成し、ナノシリカが三次元網目構造を構築することができ、巨大な表面積及び極めて高い活性を有し、薄膜の強度及び高温耐性を強化し、耐高温薄膜を形成する。該薄膜は空気を遮断し、被ろう付表面、溶融ろう材が酸化されないように保護し、大気雰囲気でステンレス鋼のフラックスフリーろう付を実現する。同時に、ナノシリカ粒子がろう付継目にピン止めされ、ステンレス鋼継手の強度を強化するのに役立つ。さらにろう材ペーストの製造方法、使用及び銅マンガンニッケルコバルトろう材を開示している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストであって、
主に水、ケイ酸ナトリウム、ナノシリカ及び銅基ろう材からなり、前記ろう材ペーストの原料は、銅基ろう材 70~80重量部、ナノシリカ 3~5重量部、水酸化ナトリウム 1~3重量部、水 10~15重量部からなり、前記銅基ろう材の成分が、Mn 26.0~30.0質量%、Ni 26.0~30.0質量%、Co 4.0~6.0質量%、B 0.1~0.5質量%、Li 0.1~0.6質量%、Na 0.1~0.2質量%、K 0.01~0.3質量%、残量のCuからなる、
ことを特徴とするステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペースト。
【請求項2】
前記ろう材ペーストの原料は、銅基ろう材 74~80重量部、ナノシリカ 3~5重量部、水酸化ナトリウム 1~3重量部、水 12~15重量部からなる、
ことを特徴とする請求項1に記載のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペースト。
【請求項3】
前記銅基ろう材の成分が、Mn 28.0~30.0質量%、Ni 28.0~30.0質量%、Co 4.0~6.0質量%、B 0.3~0.5質量%、Li 0.4~0.6質量%、Na 0.1~0.2質量%、K 0.15~0.3質量%、残量のCuからなる、
ことを特徴とする請求項2に記載のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペースト。
【請求項4】
前記ナノシリカの粒度が30~50nmである、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペースト。
【請求項5】
成分が、Mn 26.0~30.0質量%、Ni 26.0~30.0質量%、Co 4.0~6.0質量%、B 0.1~0.5質量%、Li 0.1~0.6質量%、Na 0.1~0.2質量%、K 0.01~0.3質量%、残量のCuからなる、
ことを特徴とするステンレス鋼ろう付用の銅マンガンニッケルコバルトろう材。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの製造方法であって、
水酸化ナトリウムと水とをアルカリ水溶液とするステップ1)と、
ステップ1)で得られたアルカリ水溶液とナノシリカとを常圧以上の条件下で反応させて懸濁液を得るステップ2)と、
懸濁液と銅基ろう材粉末を混合して均一なペーストにし、ろう材ペーストを得るステップ3)と、を含む、
ことを特徴とするステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの製造方法。
【請求項7】
ステップ2)において、前記常圧以上の条件とは蒸気圧力が0.3~0.5MPaであることをいう、
ことを特徴とする請求項6に記載のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの製造方法。
【請求項8】
ステップ2)において、前記反応の時間が3.0~5.0hである、
ことを特徴とする請求項7に記載のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの製造方法。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの誘導ろう付ステンレス鋼における使用。
【請求項10】
大気雰囲気で、フラックスフリーでステンレス鋼をろう付接合する、
ことを特徴とする請求項9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろう材の技術分野に属し、具体的には、ステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペースト及びその製造方法、銅マンガンニッケルコバルトろう材並びに使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス鋼は、高温性能及び耐食性能に優れ、熱交換器管路の製造に広く使用されている。近年、ステンレス鋼熱交換器は、冶金、化学工業、エネルギー、交通、軽工業、食品などの産業分野で一般的に使用される熱交換装置となっている。ろう付は、ステンレス鋼熱交換器管路の製造における重要な部分であり、熱交換器の耐用年数を決定する。人々の生活の質の向上に伴い、ステンレス鋼熱交換器の溶接品質に対する要求はますます高くなっている。ステンレス鋼熱交換器の溶接品質は、使用されるろう材に大幅に依存する。
【0003】
航空工業に広く使用されているH1CuNi30-2-0.2(Ni 27~30、Si 1.5~2.0、B 0.2、Cu 残量)、溶融温度領域が1080~1200℃、動作温度が600℃に達し(鄒喜、「ろう付」、高温銅基ろう材)、高温性能が良く、コストが低く、ステンレス鋼との相溶性が良いという利点を有し、保護雰囲気炉内のステンレス鋼のろう付のためによく使用される。しかしながら、従来のH1CuNi30-2-0.2ろう材は、自己ろう付性を有しておらず、雰囲気炉中でステンレス鋼をろう付する場合に、ろう付温度が1000℃より低いと、ステンレス鋼表面の緻密な酸化膜が除去されにくく、温度が1000℃より高いと、ステンレス鋼結晶粒が成長し、いずれもステンレス鋼の溶接品質に影響を与えて、コストが高くなる。H1CuNi30-2-0.2銅基ろう材は、ろう材を採用して大気雰囲気でステンレス鋼をろう付する場合に、良い継手を得ることができるが、ろう材のほとんどにフッ化物が含まれ、ろう付の際に揮発しやすく、環境を汚染し、人の健康を危険にさらす。残留ろう材残渣は、腐食性が強く、ステンレス鋼管路を腐食しやすく、漏れを引き起こし、ステンレス鋼熱交換器の耐用年数に影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ステンレス鋼のフラックスフリーろう付を大気雰囲気で実現し、継手強度を向上させることができるステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストを提供することにある。
【0005】
本発明の第2の目的は、上記ステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明の第3の目的は、ステンレス鋼ろう付用の銅マンガンニッケルコバルトろう材を提供することにある。
【0007】
本発明の第4の目的は、上記ろう材ペーストの誘導ろう付ステンレス鋼における使用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストは以下の技術的手段を採用する。
【0009】
ステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストは、主に水、ケイ酸ナトリウム、ナノシリカ及び銅基ろう材からなり、前記ろう材ペーストの原料は、銅基ろう材 70~80重量部、ナノシリカ 3~5重量部、水酸化ナトリウム 1~3重量部、水 10~15重量部からなり、前記銅基ろう材の成分が、Mn 26.0~30.0質量%、Ni 26.0~30.0質量%、Co 4.0~6.0質量%、B 0.1~0.5質量%、Li 0.1~0.6質量%、Na 0.1~0.2質量%、K 0.01~0.3質量%、残量のCuからなる。
【0010】
本発明のろう材ペーストは、水、ケイ酸ナトリウム、ナノシリカを含有するペーストであり、ろう付時に高温脱水して薄膜を形成し、ナノシリカが三次元網目構造を構築することができ、巨大な表面積及び極めて高い活性を有し、薄膜の強度及び高温耐性を強化し、耐高温薄膜を形成する。該薄膜は空気を遮断し、被ろう付表面、溶融ろう材が酸化されないように保護し、大気雰囲気でステンレス鋼のフラックスフリーろう付を実現する。同時に、ナノシリカ粒子がろう付継目にピン止めされ、ステンレス鋼継手の強度を強化するのに役立つ。
【0011】
本発明において、上記の改良された銅基ろう材は、H1CuNi30-2-0.2ろう材を基に、Mn、Coを添加し、Cuを下げることで、ろう材溶融温度を930~970℃の間とし、ろう付温度を下げることができる。同時に、ろう材に一定量のB、Li元素を添加し、ろう材は自己ろう付性能を有する。これは、B、Liが、Crなどのステンレス鋼表面の酸化物を還元可能にし、還元生成物の融点がろう付温度よりも低く、母材及び溶融ろう材の表面に液体薄膜として浮遊して保護するためである。しかし、B酸化物の粘度が大きいため、ろう材の広がりを妨げる。このため、さらに微量のNa、K元素を添加し、Na、K酸化物の粘度が小さく、還元生成物の粘度を低減することができ、脱膜の濡れ及びろう材の広がりを促進し、ろう材の自己ろう付性能を強化する。
【0012】
ステンレス鋼継手の強度を強化するために、好ましくは、前記ろう材ペーストの原料は、銅基ろう材 74~80重量部、ナノシリカ 3~5重量部、水酸化ナトリウム 1~3重量部、水 12~15重量部からなる。さらに好ましくは、前記銅基ろう材の成分が、Mn 28.0~30.0質量%、Ni 28.0~30.0質量%、Co 4.0~6.0質量%、B 0.3~0.5質量%、Li 0.4~0.6質量%、Na 0.1~0.2質量%、K 0.15~0.3質量%、残量のCuからなる。
【0013】
好ましくは、前記ナノシリカの粒度が30~50nmである。
【0014】
本発明のステンレス鋼ろう付用銅マンガンニッケルコバルトろう材は以下の技術的手段を採用する。
【0015】
ステンレス鋼ろう付用の銅マンガンニッケルコバルトろう材は、成分が、Mn 26.0~30.0質量%、Ni 26.0~30.0質量%、Co 4.0~6.0質量%、B 0.1~0.5質量%、Li 0.1~0.6質量%、Na 0.1~0.2質量%、K 0.01~0.3質量%、残量のCuからなる。
【0016】
本発明のステンレス鋼ろう付用銅マンガンニッケルコバルトろう材は、H1CuNi30-2-0.2ろう材に比べ、ろう付温度が低く(ステンレス鋼結晶粒の成長を抑制するのに有利である)、濡れ広がり能力が強く、従来のマッチングのためのフラックスの使用状況に対して、フラックスの使用量を低減するか又はフラックスを使用しないことが可能である。
【0017】
好ましくは、ステンレス鋼ろう付用の銅マンガンニッケルコバルトろう材は、成分が、Mn 28.0~30.0質量%、Ni 28.0~30.0質量%、Co 4.0~6.0質量%、B 0.3~0.5質量%、Li 0.4~0.6質量%、Na 0.1~0.2質量%、K 0.15~0.3質量%、残量のCuからなる。
【0018】
本発明のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの製造方法は以下の技術的手段を採用する。
【0019】
ステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの製造方法は以下のステップを含む。
1)水酸化ナトリウムと水とをアルカリ水溶液とする。
2)ステップ1)で得られたアルカリ水溶液とナノシリカとを常圧以上の条件下で反応させて懸濁液を得る。
3)懸濁液と銅基ろう材粉末を混合して均一なペーストにし、ろう材ペーストを得る。
【0020】
本発明のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの製造方法は、製造プロセスが簡単で、得られたろう材ペーストの安定性が高く、ステンレス鋼ろう付のろう付効果を効果的に改善することができる。
【0021】
好ましくは、ステップ2)において、前記常圧以上の条件とは蒸気圧力が0.3~0.5MPaである。前記反応時間が3.0~5.0hである。
【0022】
ろう材ペーストの使用の技術的手段は、ろう材ペーストの誘導ろう付ステンレス鋼における使用である。
【0023】
好ましくは、使用の時に、大気雰囲気で、フラックスフリーでステンレス鋼をろう付接合する。
【0024】
ステンレス鋼をろう付接合する時に、前記ろう材ペーストを使用し、フラックスを含まず、大気雰囲気でステンレス鋼の迅速な誘導ろう付を実現することができ、環境を汚染せず、環境にやさしい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明のろう材ペーストを製造する模式図である。
図2】従来のH1CuNi30-2-0.2ろう材の大気雰囲気でフラックスフリー広がり性能試験を行った場合の広がり形態である。
図3】本発明の実施例5で得られたろう材ペーストの大気雰囲気でフラックスフリー広がり性能試験を行った場合の広がり形態である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明において、ナノシリカと水酸化ナトリウムとの反応は、SiO+2NaOH=NaSiO+HOである。
【0027】
反応時に、ナノシリカの量を相対的に過剰にし、水酸化ナトリウムと反応してナノシリカの一部を消費し、他の一部が液体中に残留して懸濁液を形成する。この懸濁液を高温脱水して薄膜層を形成し、余分なナノシリカが三次元網目構造であり、巨大な表面積及び極めて高い活性を有し、薄膜の強度及び高温耐性を強化し、耐高温薄膜を形成する。この薄膜は空気を遮断し、被ろう付表面、溶融ろう材が酸化されないように保護する。ナノシリカ粒子がろう付継目にピン止めされ、ステンレス鋼継手の強度を強化するのに役立つ。
【0028】
要約すると、上記懸濁液は、粘液を脱水して形成された薄膜の高温耐性を強化することができる一方、ナノシリカがろう付継目にピン止めされ、継手の強度を強化することができる。
【0029】
さらに銅基ろう材の改良に合わせることにより、ステンレス鋼の大気雰囲気におけるフラックスフリー迅速な誘導ろう付をより良好に実現することができ、高強度継手を得ることができる。
【0030】
1.本発明のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの製造方法の具体的な実施例
(実施例1)
本実施例のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの製造方法は、用いられる原料の組成が、銅基ろう材粉末 70重量部、ナノシリカ 3重量部、水酸化ナトリウム 3重量部、脱イオン水 10重量部であり、銅基ろう材粉末中の各成分が、Mn 26.0質量%、Ni 26.0質量%、Co 4.0質量%、B 0.1質量%、Li 0.1質量%、Na 0.1質量%、K 0.01質量%、残量のCuである。
【0031】
各成分を割合で秤量し、まず水酸化ナトリウムを脱イオン水に溶解し、アルカリ水溶液を形成して使用に備えるステップ(1)と、
ナノシリカ(30~50nm)をステップ(1)のアルカリ水溶液に加え、高圧反応釜に入れ、0.3MPaの蒸気圧力で3.0h反応して、懸濁液(透明ゲル状液体+少量のシリカ)を形成するステップ(2)であって、反応過程の模式図を図1に示すステップ(2)と、
ステップ(2)の懸濁液に銅基ろう材粉末を加え、混合して撹拌し均一なペーストにし、ろう材ペーストを得るステップ(3)と、で製造する。
【0032】
(実施例2)
本実施例のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの製造方法は、用いられる原料の組成が、銅基ろう材粉末 72重量部、ナノシリカ 4重量部、水酸化ナトリウム 2重量部、脱イオン水 11重量部であり、銅基ろう材粉末中の各成分が、Mn 27.0質量%、Ni 27.0質量%、Co 5.0質量%、B 0.2質量%、Li 0.2質量%、Na 0.1質量%、K 0.1質量%、残量のCuである。
【0033】
具体的な製造方法が、ステップ(2)において、蒸気圧力が0.4MPaで、反応時間が4.0hであること以外は、実施例1とほぼ同様である。
【0034】
(実施例3)
本実施例のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの製造方法は、用いられる原料の組成が、銅基ろう材粉末 74重量部、ナノシリカ 5重量部、水酸化ナトリウム 1重量部、脱イオン水 12重量部である。銅基ろう材粉末中の各成分は、Mn 28.0質量%、Ni 28.0質量%、Co 6.0質量%、B 0.3質量%、Li 0.4質量%、Na 0.2質量%、K 0.15質量%、残量のCuである。
【0035】
具体的な製造方法が、ステップ(2)において、蒸気圧力が0.5MPaで、反応時間が5.0hであること以外は、実施例1とほぼ同様である。
【0036】
(実施例4)
本実施例のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの製造方法は、用いられる原料の組成が、銅基ろう材粉末 76重量部、ナノシリカ 3重量部、水酸化ナトリウム 3重量部、脱イオン水 14重量部である。銅基ろう材粉末中の各成分は、Mn 29.0質量%、Ni 29.0質量%、Co 4.0質量%、B 0.4質量%、Li 0.5質量%、Na 0.1質量%、K 0.2質量%、残量のCuである。具体的な製造方法は実施例1と同様である。
【0037】
(実施例5)
本実施例のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの製造方法は、用いられる原料の組成が、銅基ろう材粉末 80重量部、ナノシリカ 5重量部、水酸化ナトリウム 2重量部、脱イオン水 15重量部である。銅基ろう材粉末中の各成分は、Mn 30.0質量%、Ni 30.0質量%、Co 5.0質量%、B 0.5質量%、Li 0.6質量%、Na 0.2質量%、K 0.3質量%、残量のCuである。具体的な製造方法は実施例1と同様である。
【0038】
本発明のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの製造方法の他の実施例において、ステップ(3)において、0.3~0.5MPaの圧力下で3.0~5.0h反応させ、例えば0.5MPaで3.0h反応させるか、又は0.4MPaで5.0h反応させ、反応効果は実施例1とほぼ同様である。
【0039】
2.本発明のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの具体的な実施例は、上記実施例1~5の製造方法で得られたろう材ペーストにそれぞれ対応するものであり、ここでは詳細に説明しない。
【0040】
3.本発明のステンレス鋼ろう付用の銅マンガンニッケルコバルトろう材の具体的な実施例は、上記実施例1~5の銅基ろう材にそれぞれ対応するものであり、ここでは詳細に説明しない。
【0041】
4.実験例 ろう材ペーストの使用説明
(実験例1)
H1CuNi30-2-0.2ろう材及び実施例5のろう材ペーストを用いて、304ステンレス鋼板(長さ40mm×幅40mm×厚さ3mm)にフラックスフリー広がり性能試験を行い、大気雰囲気で、1000℃まで急速に誘導加熱し、2つの継手の濡れ広がり形態を比較し、試験結果を図2及び図3に示した。
【0042】
図2及び図3から分かるように、H1CuNi30-2-0.2ろう材は、鋼板に広がることなく、ほぼ完全に酸化されているのに対し、実施例5のろう材ペーストは鋼板に広がって濡れ、濡れ性能が良好であった。
【0043】
(実験例2)
本実験例の目的は、異なるろう材のろう付継手のせん断強さを比較することにあり、試験母材は、厚さが3mm、幅が20mm、長さが80mmのステンレス鋼板であり、まずH1CuNi30-2-0.2ろう材を用いて304ステンレス鋼板のガス雰囲気ろう付を行い(ガス雰囲気ろう付温度を1170℃~1200℃の間に維持する必要がある)、次いでそれぞれ実施例1~5のろう材ペーストを用いて大気雰囲気で304ステンレス鋼板のフラックスフリー誘導ろう付を行い(ろう付温度を1050℃~1100℃とする)、6種類の継手を標準せん断試料に加工して(GB/T11364-2008の規定に準じる)、継手のせん断強さを試験し比較し、結果を表1に示した。
【0044】
【表1】
【0045】
表1から分かるように、実施例1~5のろう材ペーストのろう付継目のせん断強さの平均値はいずれも、H1CuNi30-2-0.2のろう付継目のせん断強さの平均値よりも高く、継手の高い強さを示した。
【0046】
(付記)
(付記1)
ステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストであって、
主に水、ケイ酸ナトリウム、ナノシリカ及び銅基ろう材からなり、前記ろう材ペーストの原料は、銅基ろう材 70~80重量部、ナノシリカ 3~5重量部、水酸化ナトリウム 1~3重量部、水 10~15重量部からなり、前記銅基ろう材の成分が、Mn 26.0~30.0質量%、Ni 26.0~30.0質量%、Co 4.0~6.0質量%、B 0.1~0.5質量%、Li 0.1~0.6質量%、Na 0.1~0.2質量%、K 0.01~0.3質量%、残量のCuからなる、
ことを特徴とするステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペースト。
【0047】
(付記2)
前記ろう材ペーストの原料は、銅基ろう材 74~80重量部、ナノシリカ 3~5重量部、水酸化ナトリウム 1~3重量部、水 12~15重量部からなる、
ことを特徴とする付記1に記載のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペースト。
【0048】
(付記3)
前記銅基ろう材の成分が、Mn 28.0~30.0質量%、Ni 28.0~30.0質量%、Co 4.0~6.0質量%、B 0.3~0.5質量%、Li 0.4~0.6質量%、Na 0.1~0.2質量%、K 0.15~0.3質量%、残量のCuからなる、
ことを特徴とする付記2に記載のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペースト。
【0049】
(付記4)
前記ナノシリカの粒度が30~50nmである、
ことを特徴とする付記1~3のいずれか一つに記載のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペースト。
【0050】
(付記5)
成分が、Mn 26.0~30.0質量%、Ni 26.0~30.0質量%、Co 4.0~6.0質量%、B 0.1~0.5質量%、Li 0.1~0.6質量%、Na 0.1~0.2質量%、K 0.01~0.3質量%、残量のCuからなる、
ことを特徴とするステンレス鋼ろう付用の銅マンガンニッケルコバルトろう材。
【0051】
(付記6)
付記1~4のいずれか一つに記載のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの製造方法であって、
水酸化ナトリウムと水とをアルカリ水溶液とするステップ1)と、
ステップ1)で得られたアルカリ水溶液とナノシリカとを常圧以上の条件下で反応させて懸濁液を得るステップ2)と、
懸濁液と銅基ろう材粉末を混合して均一なペーストにし、ろう材ペーストを得るステップ3)と、を含む、
ことを特徴とするステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの製造方法。
【0052】
(付記7)
ステップ2)において、前記常圧以上の条件とは蒸気圧力が0.3~0.5MPaであることをいう、
ことを特徴とする付記6に記載のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの製造方法。
【0053】
(付記8)
ステップ2)において、前記反応の時間が3.0~5.0hである、
ことを特徴とする付記7に記載のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの製造方法。
【0054】
(付記9)
付記1~4のいずれか一つに記載のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの誘導ろう付ステンレス鋼における使用。
【0055】
(付記10)
大気雰囲気で、フラックスフリーでステンレス鋼をろう付接合する、
ことを特徴とする付記9に記載の使用。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-02-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストであって、
主に水、ケイ酸ナトリウム、ナノシリカ及び銅基ろう材からなり、前記ろう材ペーストの原料は、銅基ろう材 70~80重量部、ナノシリカ 3~5重量部、水酸化ナトリウム 1~3重量部、水 10~15重量部からなり、前記銅基ろう材の成分が、Mn 26.0~30.0質量%、Ni 26.0~30.0質量%、Co 4.0~6.0質量%、B 0.1~0.5質量%、Li 0.1~0.6質量%、Na 0.1~0.2質量%、K 0.01~0.3質量%、残量のCuからなる、
ことを特徴とするステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペースト。
【請求項2】
前記ろう材ペーストの原料は、銅基ろう材 74~80重量部、ナノシリカ 3~5重量部、水酸化ナトリウム 1~3重量部、水 12~15重量部からなる、
ことを特徴とする請求項1に記載のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペースト。
【請求項3】
前記銅基ろう材の成分が、Mn 28.0~30.0質量%、Ni 28.0~30.0質量%、Co 4.0~6.0質量%、B 0.3~0.5質量%、Li 0.4~0.6質量%、Na 0.1~0.2質量%、K 0.15~0.3質量%、残量のCuからなる、
ことを特徴とする請求項2に記載のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペースト。
【請求項4】
前記ナノシリカの粒度が30~50nmである、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペースト。
【請求項5】
成分が、Mn 26.0~30.0質量%、Ni 26.0~30.0質量%、Co 4.0~6.0質量%、B 0.1~0.5質量%、Li 0.1~0.6質量%、Na 0.1~0.2質量%、K 0.01~0.3質量%、残量のCuからなる、
ことを特徴とするステンレス鋼ろう付用の銅マンガンニッケルコバルトろう材。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの製造方法であって、
水酸化ナトリウムと水とをアルカリ水溶液とするステップ1)と、
ステップ1)で得られたアルカリ水溶液とナノシリカとを常圧以上の条件下で反応させて懸濁液を得るステップ2)と、
懸濁液と銅基ろう材粉末を混合して均一なペーストにし、ろう材ペーストを得るステップ3)と、を含む、
ことを特徴とするステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの製造方法。
【請求項7】
ステップ2)において、前記常圧以上の条件とは蒸気圧力が0.3~0.5MPaであることをいう、
ことを特徴とする請求項6に記載のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの製造方法。
【請求項8】
ステップ2)において、前記反応の時間が3.0~5.0hである、
ことを特徴とする請求項7に記載のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの製造方法。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載のステンレス鋼フラックスフリーろう付用のろう材ペーストの誘導ろう付ステンレス鋼における使用。
【請求項10】
大気雰囲気で、フラックスフリーでステンレス鋼をろう付接合する、
ことを特徴とする請求項9に記載の使用。
【国際調査報告】