(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】NMOSD予測または再発モニタリングのためのバイオマーカーおよびその用途
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240730BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/50 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508077
(86)(22)【出願日】2022-08-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 CN2022110898
(87)【国際公開番号】W WO2023016416
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】202110911380.4
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520411803
【氏名又は名称】首都医科大学附属北京天壇医院
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】施 福東
(72)【発明者】
【氏名】金 薇娜
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲シン▼▲ディ▼
(72)【発明者】
【氏名】田 徳財
(72)【発明者】
【氏名】魏 常娟
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045AA25
2G045BA13
2G045BB03
2G045CA25
2G045CA26
2G045DA36
2G045FA34
2G045FA36
2G045FB06
(57)【要約】
本発明は、NMOSD予測または再発モニタリングのためのバイオマーカーおよびその用途を開示し、生物医学の技術分野に属する。バイオマーカーは、APOE、SRGN、NACA、HABP2、BLVRB、PRG4、S100A8、S100A9、TRAP5、IGFBP5、ST13、FST、LTF、CFHR3、CALD1、PRDX1、PRDX4、PRDX5、GRB2、PLXNB2、TIMP1、TOLLIP、DUSP3、MTPN、ARHGDIB、Wdr44、DBI、HSPB1、THBS1、MAPRE2、FLNA、RAB11A、SRI、IGLL1、TLN1、CD59、FGA、CXCL10、CXCL12、PDGFA、CCL5のうちのいずれか1つまたは2つまたは複数である。該バイオマーカーは、視神経脊髄炎スペクトラム障害の予測または再発モニタリングのための試薬またはキットの調製に使用され、視神経脊髄炎スペクトラム障害に罹患している被験者のリスクを予測したり、患者または被験者の視神経脊髄炎スペクトラム障害の再発確率をモニタリングしたりすることができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視神経脊髄炎スペクトラム障害の予測または再発モニタリングのキットの調製における、生物学的サンプル中のバイオマーカーのレベルを決定するための試薬の用途であって、
前記バイオマーカーは、APOE、SRGN、NACA、HABP2、BLVRB、PRG4、S100A8、S100A9、TRAP5、IGFBP5、ST13、FST、LTF、CFHR3、CALD1、PRDX1、PRDX4、PRDX5、GRB2、PLXNB2、TIMP1、TOLLIP、DUSP3、MTPN、ARHGDIB、Wdr44、DBI、HSPB1、THBS1、MAPRE2、FLNA、RAB11A、SRI、IGLL1、TLN1、CD59、FGA、CXCL10、CXCL12、PDGFA、CCL5のうちのいずれか1つまたは2つまたは複数である、ことを特徴とする用途。
【請求項2】
前記バイオマーカーは、APOE、SRGN、CD59、HABP2、PRG4、FGA、S100A8、LTF、CXCL10、CXCL12、CFHR3のうちのいずれか1つまたは2つまたは複数である、ことを特徴とする請求項1に記載の用途。
【請求項3】
前記バイオマーカーは、APOE、SRGN、CD59、HABP2、PRG4、FGA、S100A8、LTF、CXCL10、CXCL12、CFHR3のうちのいずれか2つまたは3つである、ことを特徴とする請求項2に記載の用途。
【請求項4】
前記バイオマーカーは、APOE/FGA、APOE/CXCL10、APOE/CXCL12、APOE/S100A8、APOE/CFHL3、APOE/CD59、SRGN/PRG4、SRGN/HABP2、SRGN/FGA、SRGN/CXCL10、SRGN/CXCL12、SRGN/S100A8、SRGN/CFHL3、SRGN/LTF、PRG4/HABP2、PRG4/FGA、PRG4/CXCL10、PRG4/CXCL12、PRG4/S100A8、PRG4/CFHL3、PRG4/LTF、HABP2/FGA、HABP2/CXCL10、HABP2/CXCL12、HABP2/S100A8、HABP2/CFHL3、HABP2/LTF、FGA/CXCL10、FGA/CXCL12、FGA/S100A8、FGA/CFHL3、FGA/LTF、FGA/CD59、CXCL10/CXCL12、CXCL10/S100A8、CXCL10/CFHL3、CXCL10/LTF、CXCL12/S100A8、CXCL12/LTF、S100A8/CFHL3、S100A8/LTF、CFHL3/LTF、CFHL3/CD59、SRGN/FGA/HABP2、S100A8/CFHL3/CXCL10、S100A8/CFHL3/CXCL12、PRG4/CFHL3/S100A8、CXCL10/CFHL3/FGAのうちのいずれか1つまたは2つまたは複数の組み合わせである、ことを特徴とする請求項3に記載の用途。
【請求項5】
前記バイオマーカーは、APOE/CXCL10、APOE/S100A8、SRGN/CFHL3、PRG4/CFHL3、HABP2/CFHL3、FGA/CXCL10、FGA/CXCL12、FGA/S100A8、FGA/CFHL3、FGA/CD59、CXCL10/CXCL12、CXCL10/S100A8、CXCL10/CFHL3、CXCL12/S100A8、CXCL12/LTF、S100A8/CFHL3、CFHL3/LTF、CFHL3/CD59、S100A8/CFHL3/CXCL10、S100A8/CFHL3/CXCL12、PRG4/CFHL3/S100A8、CXCL10/CFHL3/FGAのうちのいずれか1つである、ことを特徴とする請求項4に記載の用途。
【請求項6】
前記キットは、被験者体内の各バイオマーカーのレベルを決定するための検出剤を含み、前記検出剤は、DIAモードを含むプロテオミクス技術により前記生物学的サンプル中のバイオマーカーのレベルを定量的に測定し、具体的に、
1)スペクトルライブラリの構築:スペクトルライブラリがサンプルのすべての検出可能な生物学的サンプルの非冗長の高品質なペプチド断片情報を、後続のデータ分析のペプチド断片同定テンプレートとして収集するステップと、
2)DIAモードでの被測定生物学的サンプルデータの取得:高分解能質量分析を用いて、断片質量数と保持時間上で各ペプチド断片のイオン特性を同時に収集するステップと、
3)データ分析:Spectronautソフトウエアを用いて、ステップ2)で収集されたスペクトルのデコンボリューションを行い、被測定生物学的サンプル中の各タンパク質の定量的測定の効果的な分析を実現するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の用途。
【請求項7】
前記スペクトルライブラリは、目的の生物学的サンプルのDDA検出によって収集されたデータを用いて構築される、ことを特徴とする請求項6に記載の用途。
【請求項8】
前記生物学的サンプルは、全血、血清または血漿中のエクソソームであり、好ましくは末梢血漿またはアストロサイト由来のエクソソームタンパク質である、ことを特徴とする請求項6に記載の用途。
【請求項9】
前記キットは、生物学的サンプル中のエクソソームタンパク質を抽出するための抽出剤、および生物学的サンプルを処理するための前処理剤をさらに含む、ことを特徴とする請求項8に記載の用途。
【請求項10】
前記キットは、予後5年以内の被験者の視神経脊髄炎スペクトラム障害の発症リスクをモニタリングするために使用され、前記被験者は哺乳動物、好ましくは人である、ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、7、8または9に記載の用途。
【請求項11】
視神経脊髄炎スペクトラム障害の予測または再発モニタリングのキットであって、
被験者体内のバイオマーカーのレベルを決定するための検出剤、生物学的サンプル中のエクソソームタンパク質を抽出するための抽出剤、生物学的サンプルを処理するための前処理剤および緩衝剤を含む、ことを特徴とする視神経脊髄炎スペクトラム障害の予測または再発モニタリングのキット。
【請求項12】
視神経脊髄炎スペクトラム障害の予測または再発モニタリングためのシステムであって、
被験者から提供された生物学的サンプル中の各バイオマーカーのレベルを検出し、正常または基準発現レベルと比較して、比較結果をシステム操作者にフィードバックする、ことを特徴とする視神経脊髄炎スペクトラム障害の予測または再発モニタリングためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NMOSD予後および再発を予測するためのバイオマーカーに関し、生物医学の技術分野に属し、具体的にNMOSD予測または再発モニタリングのためのバイオマーカーおよびその用途に関する。
【0002】
本出願は、以下の中国特許出願の優先権を主張する。
【0003】
出願日:2021年8月10日
出願番号:202110911380.4
発明の名称:NMOSD予測または再発モニタリングのためのバイオマーカーおよびその用途
【背景技術】
【0004】
視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)は、中枢神経系の免疫性脱髄疾患であり、主に視神経と脊髄が同時または連続して侵される急性または亜急性の脱髄病変である。NMOSDが独立した疾患なのか、多発性硬化症(multiple sclerosis、MS)の一変種なのかは長い間議論されてきた。2004年にLennonらによって視神経脊髄炎疾患(neuromyelitis optica、NMO)患者の血清中でアクアポリン4(aquaporin-4、AQP4)に対する抗体が発見されて以来、NMOSDはMSとは異なる独立した疾患として、体液性免疫を中心とした中枢神経系の自己免疫疾患であることが広く認識されている。そのメカニズムは、感作されたBリンパ球が発生した特異的な抗体と補体が結合して、アストロサイト表面のAQP4を沈着・破壊する同時に、マクロファージ、好酸球等の自然免疫細胞が走化し滲出して炎症因子を分泌し、ミエリン鞘の喪失、軸索や脳組織の壊死を引き起こすというものである。主な臨床症状は視神経炎と急性横断性脊髄炎であり、単発の場合または多発の場合があり、その間隔は、数週間、数ヵ月、あるいは数年になる場合がある。小規模な臨床研究や専門家のコンセンサスに基づいて推奨されている治療法(グルココルチコイド、ガンマグロブリン、アザチオプリン、リツキシマブなど)があるが、NMOSDに対する大規模なサンプル無作為化二重盲検比較臨床試験が不足するため、現在までにNMOSDに対する最適な治療法はない。
【0005】
臨床症状の不均一性、再発後の神経学的障害の重症度、治療反応のばらつきのため、NMOSDの発症、再発、進行に関する信頼性が高く感度の高いバイオマーカーの開発が急務である。血清中のAQP4抗体(AQP4-IgG)の検出は、血清陽性NMOSDの診断を支持することができる。しかし、AQP4-IgG値が疾患活動性、重症度、治療に対する反応性、または長期結果と相関するかどうかはまだ明らかではない。さらに、血清陰性NMOSD患者のバイオマーカーはまだ特定されておらず、検証されていない。したがって、NMOSDの予後と再発の予測に使用できるバイオマーカーの確立と検証は、大きな期待が寄せられている。
【0006】
シングルオミクスのデータ解析は、通常にある特徴的な生化学的指標とある疾患との関連を説明するために用いられるが、その中の複雑な因果関係を説明することはできない。技術の進歩により「オミクスの時代」が到来して、われらがさまざまな分子レベルのデータや情報を収集し統合することを可能になった。これらのマルチオミクスデータの統合は、何千ものタンパク質(プロテオミクス)、遺伝子(ゲノミクス)、RNA(トランスクリプトミクス)、代謝物(メタボロミクス)を同時に研究できることを意味する。人工知能は、複雑な生物学的システムに新たな洞察を与え、あらゆる分子レベル間の相互作用のネットワークを明らかにする。このアプローチは、複数の分子レベルでの実験データを計算モデルと組み合わせ、システム全体を処理して、診断、予後、治療的価値のデータ同定を容易にする。
【0007】
バイオマーカーは、NMOSDの病態生理学的プロセスを示唆し、NMOSDのリスクを予測する価値があり、臨床診断と治療の基礎となることができる。しかし、NMOSDの病態や疾患の進行に対して高い予測価値を持つバイオマーカーは認められておらず、臨床的なニーズを満たすことができない。したがって、疾患の発症、進行、予後を迅速かつ正確に予測できる生物学的マーカーの探索は、重要な臨床応用の見通しがある。同時に、組織学的手法によって得られたデータ情報を臨床情報と統合することがNMOSDの病態学的過程をよりよく理解し、NMOSDに対する新たな介入標的を見出すことに役立つことにより、NMOSD患者の臨床管理を改善することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の技術的問題を解決するために、NMOSD予測または再発モニタリングのためのバイオマーカーおよびその用途を提供し、該バイオマーカーは、NMOSDの病態生理のより深い理解に寄与し、診断および予後の新たな機会を提供して、NMOSD患者に対する臨床サービスを改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術目的を達成するために、本発明は、視神経脊髄炎スペクトラム障害の予測または再発モニタリングのキットの調製における、生物学的サンプル中のバイオマーカーのレベルを決定するための試薬の用途を開示し、前記バイオマーカーは、APOE、SRGN、NACA、HABP2、BLVRB、PRG4、S100A8、S100A9、TRAP5、IGFBP5、ST13、FST、LTF、CFHR3、CALD1、PRDX1、PRDX4、PRDX5、GRB2、PLXNB2、TIMP1、TOLLIP、DUSP3、MTPN、ARHGDIB、Wdr44、DBI、HSPB1、THBS1、MAPRE2、FLNA、RAB11A、SRI、IGLL1、TLN1、CD59、FGA、CXCL10、CXCL12、PDGFA、CCL5のうちのいずれか1つまたは2つまたは複数である。
【0010】
さらに、前記バイオマーカーは、APOE、SRGN、CD59、HABP2、PRG4、FGA、S100A8、LTF、CXCL10、CXCL12、CFHR3のうちのいずれか1つまたは2つまたは複数である。
【0011】
さらに、前記バイオマーカーは、APOE、SRGN、CD59、HABP2、PRG4、FGA、S100A8、LTF、CXCL10、CXCL12、CFHR3のうちのいずれか2つまたは3つである。
【0012】
さらに、前記バイオマーカーは、APOE/FGA、APOE/CXCL10、APOE/CXCL12、APOE/S100A8、APOE/CFHL3、APOE/CD59、SRGN/PRG4、SRGN/HABP2、SRGN/FGA、SRGN/CXCL10、SRGN/CXCL12、SRGN/S100A8、SRGN/CFHL3、SRGN/LTF、PRG4/HABP2、PRG4/FGA、PRG4/CXCL10、PRG4/CXCL12、PRG4/S100A8、PRG4/CFHL3、PRG4/LTF、HABP2/FGA、HABP2/CXCL10、HABP2/CXCL12、HABP2/S100A8、HABP2/CFHL3、HABP2/LTF、FGA/CXCL10、FGA/CXCL12、FGA/S100A8、FGA/CFHL3、FGA/LTF、FGA/CD59、CXCL10/CXCL12、CXCL10/S100A8、CXCL10/CFHL3、CXCL10/LTF、CXCL12/S100A8、CXCL12/LTF、S100A8/CFHL3、S100A8/LTF、CFHL3/LTF、CFHL3/CD59、SRGN/FGA/HABP2、S100A8/CFHL3/CXCL10、S100A8/CFHL3/CXCL12、PRG4/CFHL3/S100A8、CXCL10/CFHL3/FGAのうちのいずれか1つまたは2つまたは複数の組み合わせである。
【0013】
さらに、前記バイオマーカーは、APOE/CXCL10、APOE/S100A8、SRGN/CFHL3、PRG4/CFHL3、HABP2/CFHL3、FGA/CXCL10、FGA/CXCL12、FGA/S100A8、FGA/CFHL3、FGA/CD59、CXCL10/CXCL12、CXCL10/S100A8、CXCL10/CFHL3、CXCL12/S100A8、CXCL12/LTF、S100A8/CFHL3、CFHL3/LTF、CFHL3/CD59、S100A8/CFHL3/CXCL10、S100A8/CFHL3/CXCL12、PRG4/CFHL3/S100A8、CXCL10/CFHL3/FGAのうちのいずれか1つである。
【0014】
さらに、前記キットは、被験者体内の各バイオマーカーのレベルを決定するための検出剤を含む。
【0015】
さらに、前記検出剤は、DIAモードを含むプロテオミクス技術により、前記生物学的サンプル中のバイオマーカーのレベルを定量的に測定し、具体的に以下のステップを含む。
【0016】
1)スペクトルライブラリの構築:スペクトルライブラリは、サンプルのすべての検出可能な生物学的サンプルの非冗長の高品質なペプチド断片情報を後続のデータ分析のペプチド断片同定テンプレートとして収集するステップであって、ここでの高品質なペプチド断片情報は、ペプチド断片スペクトルピーク特性を記述する断片のイオン強度および保持時間を含む、ステップとである。
【0017】
2)DIAモードでの被測定生物学的サンプルデータの取得:高分解能質量分析を用いて、断片質量数と保持時間上で各ペプチド断片のイオン特性を同時に収集するステップである。単一イオンを抽出してフラグメント化分析する従来の方法と比較して、DIAモードで、質量分析は、広い親イオンウィンドウの取得を循環し、複数のペプチド断片のイオンを同時にフラグメント化するように設定された分析方法である。サンプル中のすべての検出可能なタンパク質スペクトルピーク情報を完全に収集することにより、多数のサンプルを高い再現性で分析することが可能である。
【0018】
3)データ分析:Spectronautソフトウエアを用いて、ステップ2)で収集されたスペクトルのデコンボリューションを行い、被測定生物学的サンプル中の各タンパク質の定量的測定の分析を効果的に実現するステップである。
【0019】
さらに、前記スペクトルライブラリは、目的の生物学的サンプルのDDA検出によって収集されたデータから構築される。
【0020】
さらに、前記生物学的サンプルは、全血、血清または血漿中のエクソソームであり、好ましくは末梢血漿またはアストロサイト由来のエクソソームタンパク質である。
【0021】
さらに、前記キットは、生物学的サンプル中のエクソソームタンパク質を抽出するための抽出剤をさらに含む。
【0022】
さらに、前記キットは、生物学的サンプルを処理するための前処理剤をさらに含む。
【0023】
さらに、前記バイオマーカーのレベルは、バイオマーカーのタンパク質またはmRNAレベルである。
【0024】
さらに、前記キットは、予後5年(好ましくは1年)以内の被験者の視神経脊髄炎スペクトラム障害の発症リスクをモニタリングするために使用される。
【0025】
さらに、前記被験者は、哺乳動物、好ましくは人である。
【0026】
本発明の第2の目的は、視神経脊髄炎スペクトラム障害の予測または再発モニタリングのキットであって、被験者体内のバイオマーカーのレベルを決定するための検出剤、生物学的サンプル中のエクソソームタンパク質を抽出するための抽出剤、生物学的サンプルを処理するための前処理剤および緩衝剤を含む視神経脊髄炎スペクトラム障害の予測または再発モニタリングのキットを提供する。
【0027】
本発明の第3の目的は、視神経脊髄炎スペクトラム障害の予測または再発モニタリングのシステムであって、被験者から提供された生物学的サンプル中の各バイオマーカーのレベルを検出し、正常または基準発現レベルと比較して、比較結果をシステム操作者にフィードバックするために使用される視神経脊髄炎スペクトラム障害の予測または再発モニタリングためのシステムを提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の実施例が提供する技術的解決策は、先行技術と比較して以下の利点を有する。
【0029】
1、本発明は、NMOSD予測または再発モニタリングのためのバイオマーカーおよびその用途を提供し、これらのバイオマーカーにより視神経脊髄炎スペクトラム障害の予測または再発モニタリングのための試薬またはキットを調製して、視神経脊髄炎スペクトラム障害に罹患している被験者のリスクを予測したり、患者または被験者の視神経脊髄炎スペクトラム障害の5年以内の再発確率をモニタリングしたりすることができる。
【0030】
2、本発明が提供するバイオマーカー群は、NMOSDの病態生理のより深い理解に寄与し、診断および予後に新たな機会を提供して、NMOSD患者の臨床サービスを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
ここでの添付図面は、本明細書の一部として本明細書に組み込まれ、本発明に従った実施例を示し、本発明の原理を解釈するために本明細書と併せて使用される。
【0032】
本発明の実施例または先行技術における技術的解決策をより明確に説明するために、実施例または先行技術の説明において使用される必要のある添付図面を以下に簡単に説明するが、明らかに、当業者であれば、創造的な労働をすることなく、これらの添付図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【
図1】実施例におけるNTA粒子トレーサーを用いたエクソソーム試験図である。
【
図2】実施例におけるエクソソームのTEMを示す図である。
【
図3】実施例におけるwestern blotを用いたエクソソーム特異的タンパク質の検査結果を示す概略図である。
【
図4】NMOSD患者および健康者の末梢血漿およびアストロサイト由来のエクソソームプロテオミクス同定における、本発明により設計された41種のバイオマーカーの差異発現結果を示す図である。
【
図5】実施例における酵素結合免疫吸着アッセイを用いてスクリーニングされた差異発現タンパク質を示す図である。
【
図6】実施例におけるタンパク質濃度とNMOSD急性期臨床障害程度との相関を示す図である。
【
図7】各組み合わせバイオマーカー群のROC曲線を示す図である。
【
図8】各組み合わせバイオマーカー群のROC曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の上記目的、特徴および利点をより明確に理解できるように、以下、本発明の実施形態をさらに説明する。なお、互いに矛盾しない限り、本発明の実施例および実施例中の特徴を互いに組み合わせることができることに留意されたい。
【0034】
用語解釈
本明細書で使用される「視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)」という用語は、視神経および脊髄が同時または連続して侵される急性または亜急性の脱髄病変として主に現れる中枢神経系の免疫性脱髄疾患である。
【0035】
本明細書で使用されるバイオマーカーとは、システム、器官、組織、細胞およびサブセル構造または機能の変化または変更可能性を示す生化学的指標である。疾患の診断、疾患病期分類の決定、または標的集団における新薬または新治療法の安全性および有効性の評価などの目的で使用される。
【0036】
本明細書で使用される「診断」および類似の用語は特定疾患の同定を指す。
【0037】
本明細書で使用される「予測」および関連用語は特定病症(例えば、視神経脊髄炎スペクトラム障害)の起こりうる結果についての記述を指す。「モニタリング」という用語は、視神経脊髄炎スペクトラム障害を発症するリスクのある被験者を指す。該被験者は、視神経脊髄炎スペクトラム障害と診断されていない患者であるが、様々な臨床または医学的評価によって視神経脊髄炎スペクトラム障害を発症するリスクのある患者を指す。
【0038】
本明細書で使用される「サンプル」、「生物学的サンプル」、「試験サンプル」、「見本」、「被験者からのサンプル」および「患者サンプル」は互換的に使用され、血液、組織、尿、血清、血漿、羊水、脳脊髄液、胎盤細胞または組織、内皮細胞、白血球または単球のサンプルであり得る。本明細書で論じたある方法、または本分野で公知の他の方法で患者からサンプルを直接取得し、または(例えば、濾過、蒸留、抽出、濃縮、遠心分離、妨害成分の不活性化および試薬添加などによって)サンプルの特性を変えるためにサンプルを前処理することができる。
【0039】
本発明に関与する41種のタンパク質の情報は以下の表1に示される。
【0040】
【0041】
表1においてCFHR3とCFHL3は同じタンパク質を指す。
【0042】
以下の説明では、本発明を十分に理解するために多くの詳細を説明したが、本発明は、ここで記載した以外の他の方法で実施することもでき、明らかに、明細書における実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、すべての実施例ではない。
【0043】
<実施例1>
実験対象および材料:
1、実験対象
本研究は、2018年10月から2019年11月までに首都医科大学付属北京天壇病院に入院した患者を対象とした。
【0044】
そのうち、上記NMOSD患者の臨床診断は以下の通りである。
【0045】
(1)発症年齢は18歳から80歳の間に位置し、
(2)NMOSD患者は、2015年Wingerchuk NMOSD診断基準に従って明確に診断され、
(3)血中AQP4抗体が陽性であり、
(4)今回は急性エピソードであり:(a)視神経炎、横断性脊髄炎、急性脳損傷などの神経症状が新たに発症した、または著しく悪化した場合である(すなわち、患者が症状発症から7日以内に受診しなければならない)。(b)新たに発症した症状が少なくとも48時間持続し、他の臨床的要因(例えば、発熱、感染症、傷害、併用薬の副作用)に起因するものであってはならない。(c)新たに発症した症状は、臨床医によって確認された感覚、運動、視覚過敏の障害の客観的な臨床徴候と一致していなければならない。(d)発作性症状の1回の発作症状(例えば、強直性痙攣)は、急性エピソードとはみなされない。(e)臨床検査に有意な変化がなく、疲労、気分の変化、膀胱/便意または失禁の感覚症状は、急性エピソードの存在を決定するには不十分である。
【0046】
臨床情報は、一般的な患者基本情報および臨床的特徴、Kurtzke’s Expanded Disability Status Scale(EDSS)スコア、血液および脳脊髄液関連指標、急性期の治療計画を含む。
【0047】
フォローアップ資料は、発症時、発症3ヵ月後、6ヵ月後、1年後のEDSSスコア、再発回数、血液および生化学的指標、画像データ、および寛解期の治療計画を含む。
【0048】
2、サンプル収集
NMOSD患者および健康対照群のサンプル収集および保存過程は以下のとおりである。
【0049】
(1)血漿収集:末梢血を抗凝固剤EDTAまたはヘパリンを含む紫色のチューブに収集し、サンプル収集後30min以内に3000rpm、10min、2~8℃で遠心分離した。上層血漿を収集し、-80℃で一括保存する。サンプルの凍結融解の繰り返しを避ける。注:溶血や粒子の存在を避けるため、サンプルは十分に遠心分離すること。
【0050】
(2)末梢血漿中のエクソソームの抽出:免疫吸着アッセイにより、血漿からアストロサイト由来のエクソソームを以下のように抽出する。
【0051】
(2.1)具体的に以下のように磁性ビーズに抗体をコーティングする。
【0052】
(2.11)アストロサイト表面グルタミン酸トランスポーター抗体(EAAT2-IgG)を100ug採取し、限外濾過チューブに加え、繰り返し洗浄する。
【0053】
(2.12)最終濃度が10mMであるビチオン(Biotin)をIgGに8~10uL加え、室温で1~2時間静置する。
【0054】
(2.13)IgG-Biotinをすべて磁気ビーズに加え、室温で360°シェーカーに入れ2時間揺動させる。
【0055】
(2.14)抗体結合後の磁気ビーズ(IgG-Beads)を上下に20回転倒させ、マグネットラックに載せ、1min静置して上清を吸引し、1mLのPBSを加え、該ステップを3回繰り返した後、1mLの0.1%PBSA(PBSをBSAに溶解して形成された混合液)を加える。
【0056】
(2.15)2mgのBeads:6uL 10mM Biotinの比で10mMのBiotinを適量加え、室温で2時間Vortexシェイクする。
【0057】
(2.2)具体的に以下のようにエクソソームを抽出する。
【0058】
(2.21)サンプルを取り出し、プロテアーゼインヒビター(PIC)を適量加える。
(2.22)2000G、4℃、15minで遠心分離して上清を取り、14000G、4℃、30minで遠心分離して上清を取る。
【0059】
(2.23)500uLの上清液を100uLのIgG-Beadsに加え、4℃、360°で20時間回転させる。
【0060】
(2.3)具体的に以下のようにエクソソームを溶出する。
【0061】
(2.31)IgG-Beads結合後のサンプルに70uLの0.1Mグリシン(pH=3.0)を加え、室温で15分間シェイクする。
【0062】
(2.32)マグネットラックに入れ、1min静置し、上清を残し、上清に5uLの1mM Tris(pH=7.0)を加え、該ステップを1回繰り返す。
【0063】
(2.4)具体的にエクソソームの定量および特性評価を以下のように行う。
【0064】
(2.41)NTA粒子トレーサーを用いて、結果が
図1に示され、
図1と併せて分かるように、大部分のEAAT2高発現の細胞外小胞の直径が100~150nm間、すなわちエクソソームの標準粒子径範囲内に位置する。
【0065】
(2.42)TEM走査を用いて、具体的な形態を
図2に示し、
図2と併せて分かるように、血漿中のアストロサイト由来のエクソソームはカップ状、あるいは二重円盤状の粒子であり、直径が約100 nmである。
【0066】
(2.43)Western blotでエクソソーム特異的タンパク質を検出し、結果が
図3に示され、
図3と併せて分かるように、EAAT2を発現するエクソソームタンパク質ライセートはCD63タンパク質標準位置に陽性バンドを有する。
【0067】
(3)エクソソームタンパク質の抽出は、具体的に以下のステップを含む。
【0068】
(3.1)エクソソームサンプルにSDSフリーライセート、終濃度EDTA含有の1×Cocktailを加え、氷上で5分間静置した後、終濃度10mMのDTTを加える。
【0069】
(3.2)氷浴上で2分間超音波処理し、25,000G、4℃で15分間遠心分離し、上清を取る。
【0070】
(3.3)終濃度10mMのDTTを加え、56℃の水浴で1時間静置する。
【0071】
(3.4)終濃度55mMのIAMを加え、暗室で45min静置する。
【0072】
(3.5)25000G、4℃で15min遠心分離し、上清を取り、上清液をタンパク質液とする。
【0073】
<実施例2>
プロテオミクス技術を用いて、生物学的サンプル中のタンパク質発現レベルを定量的に測定し、差異発現タンパク質をスクリーニングする。
【0074】
1.質量分析は具体的に以下のステップを含む。
【0075】
1)プロテアーゼ加水分解法:各試料のタンパク質溶液100μgを取り、タンパク質:酵素=40:1の比率で、2.5μgのTrypsin酵素を加え、37℃で4時間加水分解する。StrataXカラムで最後酵素産物を脱塩し、真空で脱水する。
【0076】
2)High pH RP法:すべての検体中の等量ペプチド断片をそれぞれA(5% ACN, pH=9.8)で希釈した後、試料注入し、島津LC-20AD液体クロマトグラフィーを用いて、5μmの4.6×250mm Gemini C18カラム液体クロマトグラフィーで液体分析を行う。流速1mL/minでのグラジエント溶出:5%の移動相B(95% ACN,pH=9.8)を10分間、5%~35%の移動相Bを40min、35%~95%の移動相Bを1min、移動相Bを3min、5%の移動相Bを10min保持する。214nmの波長で溶出ピークを監視し、1分ごとに1セットずつ採取し、クロマトグラフィーの溶出ピークプロットと合わせて10ポーションとし、低温で乾燥させる。
【0077】
3)DDAライブラリ構築とDIA定量検出(Nano-LC-MS/MS):抽出したペプチド断片をA(2%ACN、0.1%FA)で再溶解し、20,000Gで10分間遠心分離し、上清を除去してサンプリングする。分離はUltiMate 3000 UHPLCで行う。試料をtrapカラムに送液して濃縮・脱塩した後、自家製C18カラム(直径150μmのC18カラム、カラム径1.8μm、カラム長約35cm)に直列に接続し、0~5分(CAN, 98%, FA, 0.1%)の高効率グラジエントを用いて500nL/分の速度で分離し、5~120分以内に、B型流体の流量は5%から25%に増加し、120~160分以内に、B型流体の流量は25%から35%に増加し、160-170分以内に、B型流体の流量は35%から80%に増加し、170-175分以内に、B型流体の流量は80%であり、175-180分以内に、B型流体の流量は5%である。ナノリットルの流体分離端子を質量分析計に直接接続し、以下のパラメータに従って測定する。
【0078】
4)DDAライブラリ構築検出:液相法で抽出したペプチド断片をnanoESIイオン源でイオン化し、タンデム質量分析計Q-Exactive HF X(Thermo Fisher Scientific, San Jose, CA)に供給してDDA検出を行う。主なパラメータ設定は、イオン源の電圧を1.9kVに設定し、一次質量分析スキャンは質量電荷比350~1500の範囲で質量分析計のスキャンを行い、分解能を120,000に設定し、最大イオン注入時間(MIT)を100msとし、二次質量分析のマススペクトルフラグメント化はHCDで行い、フラグメンテーションのエネルギーはNCE28とし、分解能は30,000、最大イオン注入時間は100msとし、最大注入時間は100 ms、パワー排除は30秒とした。2次マススペクトルの初期m/z値は100であり、2回目のフラグメンテーションでは、2+から6+まで5E4以上のピーク強度を持つ20強のマトリックスを選択する。AGCは、第1段階で3E64の最も強いマトリックスに設定される。AGCは1E6,2E5に設定される。
【0079】
5)DIA質量分析検出:液相法で分離したペプチド断片をnanoESIイオン源でイオン化し、タンデム質量分析計Q-Exactive HF X(Thermo Fisher Scientific、San Jose、CA)に供給し、DIA(Data Independent Acquisition)モードとする。主なパラメータ設定は、イオン源の電圧を1.9 kVに設定し、1-400-1,250m/zの質量分析スキャンを行い、分解能を120,000に設定し、最大のイオン注入時点は50msであり、400~1,250m/zを45のウィンドウに分割し、それぞれ連続的にウィンドウを開いて取得する。フラグメント化方法はHCDであり、最大イオン注入時間(MIT)は自動モードとし、フラグメントがOrbitrapで検出され、その分解能は30,000であり、フラグメント化エネルギは22.5、2527.5、AGCは1E6である。
【0080】
6)データ分析:Spectronautソフトウエアを用いて、上記ステップで収集されたスペクトルを分析して被測定生物学的サンプル中の各タンパク質の定量的測定を実現する。スクリーニングされた差異発現タンパク質は以下の表2に示される。
【0081】
【0082】
表2から分かるように、末梢血漿とアストロサイト由来のエクソソームプロテオミクスでは、19種の上昇タンパク質と22種の降下タンパク質が同定され、その倍数変化>2、P<0.05である。
【0083】
図4も、NMOSD患者および健康者の末梢血漿およびアストロサイト由来のエクソソームプロテオミクス同定における41種のバイオマーカーの差異発現結果を可視化したものである。
【0084】
<実施例3>
ELISA技術を用いた差異発現タンパク質の定量的検証
本実施例では、高い特異性と感度を有する酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)技術を用いて、上記表2に列挙したタンパク質を検証し、各タンパク質は対応するELISAキットを使用する。
図5を得、
図5から分かるように、NMOSD患者血漿中のAPOE、SRGN、CD59、HABP2、PRG4、FGA、S100A8、LTF、CXCL10、CXCL12、CFHR3などの各タンパク質濃度は、健康対照血漿中のタンパク質濃度よりも有意に高い。これは、上記プロテオミクス技術を用いた体外定量的測定結果と一致している。これは、生物学的サンプルのいずれか1つまたは2つまたは複数のタンパク質の含有量を決定し、正常含有量と比較することにより、疾患予測または疾患の再発確率をモニタリングすることができる。
【0085】
本実施例では、上記タンパク質濃度とNMOSD急性期臨床障害程度をさらに研究し、具体的に、患者血漿中の各バイオマーカー含有量とEDSSスコアの相関を検討することにより、
図6を得、
図6から分かるように、SRGN、FGA、PRG4、CXCL12、S100A8タンパク質濃度の上昇は、NMOSD急性期臨床障害程度の進展を促進するが、CD59タンパク質はNMOSD急性期において保護的な役割を果たす。
【0086】
<実施例4>
各タンパク質組み合わせによるNMOSD再発性の予測
APOE、SRGN、CD59、HABP2、PRG4、FGA、S100A8、LTF、CXCL10、CXCL12、CFHR3などの各タンパク質を任意に組み合わせてROC分析を行い、分析結果が以下の表3および表4に示される。
【0087】
【0088】
【0089】
いくつかの組み合せのROC曲線は
図7、
図8に示される。上記表3、表4および
図7、
図8と併せて分かるように、本発明を用いて設計された複合バイオマーカー群は、NMOSD疾患の予測精度が比較的高く、臨床治療の基礎を提供する。
【0090】
<実施例5>
本発明は、上記41種のバイオマーカーのキットをさらに開示し、被験者体内のバイオマーカーのレベルを決定するための検出剤、生物学的サンプル中のエクソソームタンパク質を抽出するための抽出剤、生物学的サンプルを処理するための前処理剤および緩衝剤を含む。ここで、前記検出剤はプロテオミクス技術により前記生物学的サンプル中のバイオマーカーのレベルを定量的に測定することができ、前記抽出剤、前処理剤および緩衝剤などはすべて実施例1および2に記載されている。
【0091】
<実施例6>
本発明は、視神経脊髄炎スペクトラム障害の予測または再発をモニタリングするためのシステムをさらに開示し、前記システムは上記キットを含み、前記システムは、被験者が提供する生物学的サンプル中の各バイオマーカーのレベルを検出し、正常または基準発現レベルと比較し、比較結果をシステム操作者にフィードバックするために使用される。
【0092】
要約すると、本発明で設計されたNMOSD予測または再発モニタリングのためのバイオマーカーは、視神経脊髄炎スペクトラム障害の予測または再発モニタリングのための試薬またはキットを調製可能であり、視神経脊髄炎スペクトラム障害に罹患している被験者のリスクを予測したり、患者または被験者の視神経脊髄炎スペクトラム障害の再発確率をモニタリングしたりすることができる。NMOSDの病態生理のより深い理解に寄与し、診断および予後に新たな機会を提供することにより、NMOSD患者の臨床サービスを改善することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視神経脊髄炎スペクトラム障害の予測または再発モニタリングのキットの調製における、生物学的サンプル中のバイオマーカーのレベルを決定するための試薬の用途であって、
前記バイオマーカーは、APOE、SRGN、NACA、HABP2、BLVRB、PRG4、S100A8、S100A9、TRAP5、IGFBP5、ST13、FST、LTF、CFHR3、CALD1、PRDX1、PRDX4、PRDX5、GRB2、PLXNB2、TIMP1、TOLLIP、DUSP3、MTPN、ARHGDIB、Wdr44、DBI、HSPB1、THBS1、MAPRE2、FLNA、RAB11A、SRI、IGLL1、TLN1、CD59、FGA、CXCL10、CXCL12、PDGFA、CCL5のうちのいずれか1つまたは2つまたは複数である、ことを特徴とする用途。
【請求項2】
前記バイオマーカーは、APOE、SRGN、CD59、HABP2、PRG4、FGA、S100A8、LTF、CXCL10、CXCL12、CFHR3のうちのいずれか1つまたは2つまたは複数である、ことを特徴とする請求項1に記載の用途。
【請求項3】
前記バイオマーカーは、APOE、SRGN、CD59、HABP2、PRG4、FGA、S100A8、LTF、CXCL10、CXCL12、CFHR3のうちのいずれか2つまたは3つである、ことを特徴とする請求項2に記載の用途。
【請求項4】
前記バイオマーカーは、APOE/FGA、APOE/CXCL10、APOE/CXCL12、APOE/S100A8、APOE/CFHL3、APOE/CD59、SRGN/PRG4、SRGN/HABP2、SRGN/FGA、SRGN/CXCL10、SRGN/CXCL12、SRGN/S100A8、SRGN/CFHL3、SRGN/LTF、PRG4/HABP2、PRG4/FGA、PRG4/CXCL10、PRG4/CXCL12、PRG4/S100A8、PRG4/CFHL3、PRG4/LTF、HABP2/FGA、HABP2/CXCL10、HABP2/CXCL12、HABP2/S100A8、HABP2/CFHL3、HABP2/LTF、FGA/CXCL10、FGA/CXCL12、FGA/S100A8、FGA/CFHL3、FGA/LTF、FGA/CD59、CXCL10/CXCL12、CXCL10/S100A8、CXCL10/CFHL3、CXCL10/LTF、CXCL12/S100A8、CXCL12/LTF、S100A8/CFHL3、S100A8/LTF、CFHL3/LTF、CFHL3/CD59、SRGN/FGA/HABP2、S100A8/CFHL3/CXCL10、S100A8/CFHL3/CXCL12、PRG4/CFHL3/S100A8、CXCL10/CFHL3/FGAのうちのいずれか1つまたは2つまたは複数の組み合わせである、ことを特徴とする請求項3に記載の用途。
【請求項5】
前記バイオマーカーは、APOE/CXCL10、APOE/S100A8、SRGN/CFHL3、PRG4/CFHL3、HABP2/CFHL3、FGA/CXCL10、FGA/CXCL12、FGA/S100A8、FGA/CFHL3、FGA/CD59、CXCL10/CXCL12、CXCL10/S100A8、CXCL10/CFHL3、CXCL12/S100A8、CXCL12/LTF、S100A8/CFHL3、CFHL3/LTF、CFHL3/CD59、S100A8/CFHL3/CXCL10、S100A8/CFHL3/CXCL12、PRG4/CFHL3/S100A8、CXCL10/CFHL3/FGAのうちのいずれか1つである、ことを特徴とする請求項4に記載の用途。
【請求項6】
前記キットは、被験者体内の各バイオマーカーのレベルを決定するための検出剤を含み、前記検出剤は、DIAモードを含むプロテオミクス技術により前記生物学的サンプル中のバイオマーカーのレベルを定量的に測定し、具体的に、
1)スペクトルライブラリの構築:スペクトルライブラリがサンプルのすべての検出可能な生物学的サンプルの非冗長の高品質なペプチド断片情報を、後続のデータ分析のペプチド断片同定テンプレートとして収集するステップと、
2)DIAモードでの被測定生物学的サンプルデータの取得:高分解能質量分析を用いて、断片質量数と保持時間上で各ペプチド断片のイオン特性を同時に収集するステップと、
3)データ分析:Spectronautソフトウエアを用いて、ステップ2)で収集されたスペクトルのデコンボリューションを行い、被測定生物学的サンプル中の各タンパク質の定量的測定の効果的な分析を実現するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の用途。
【請求項7】
前記スペクトルライブラリは、目的の生物学的サンプルのDDA検出によって収集されたデータを用いて構築される、ことを特徴とする請求項6に記載の用途。
【請求項8】
前記生物学的サンプルは、全血、血清または血漿中のエクソソームであり、好ましくは末梢血漿またはアストロサイト由来のエクソソームタンパク質である、ことを特徴とする請求項6に記載の用途。
【請求項9】
前記キットは、生物学的サンプル中のエクソソームタンパク質を抽出するための抽出剤、および生物学的サンプルを処理するための前処理剤をさらに含む、ことを特徴とする請求項8に記載の用途。
【請求項10】
前記キットは、予後5年以内の被験者の視神経脊髄炎スペクトラム障害の発症リスクをモニタリングするために使用され、前記被験者は哺乳動物、好ましくは人である、ことを特徴とする請求項
1~5のいずれか1項に記載の用途。
【請求項11】
視神経脊髄炎スペクトラム障害の予測または再発モニタリングのキットであって、
被験者体内のバイオマーカーのレベルを決定するための検出剤、生物学的サンプル中のエクソソームタンパク質を抽出するための抽出剤、生物学的サンプルを処理するための前処理剤および緩衝剤を含む、ことを特徴とする視神経脊髄炎スペクトラム障害の予測または再発モニタリングのキット。
【請求項12】
視神経脊髄炎スペクトラム障害の予測または再発モニタリングためのシステムであって、
被験者から提供された生物学的サンプル中の各バイオマーカーのレベルを検出し、正常または基準発現レベルと比較して、比較結果をシステム操作者にフィードバックする、ことを特徴とする視神経脊髄炎スペクトラム障害の予測または再発モニタリングためのシステム。
【国際調査報告】