(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】酸化アルミニウム及び酸化セリウムの組成物
(51)【国際特許分類】
C01F 17/235 20200101AFI20240730BHJP
B01J 35/63 20240101ALI20240730BHJP
B01J 35/77 20240101ALI20240730BHJP
B01J 23/10 20060101ALI20240730BHJP
B01J 35/61 20240101ALI20240730BHJP
B01J 32/00 20060101ALI20240730BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240730BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20240730BHJP
B01J 37/03 20060101ALI20240730BHJP
C01F 7/14 20220101ALI20240730BHJP
【FI】
C01F17/235
B01J35/63
B01J35/77
B01J23/10 M
B01J35/61
B01J32/00
B01J37/08
B01J37/02 101A
B01J37/03 Z
C01F7/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529863
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2022070837
(87)【国際公開番号】W WO2023006686
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘルナンデス、ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤグリデレ、オグザン
(72)【発明者】
【氏名】ハール、バージニア
(72)【発明者】
【氏名】イフラ、サイモン
【テーマコード(参考)】
4G076
4G169
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AB07
4G076AB08
4G076BA11
4G076BA43
4G076BC10
4G076BD01
4G076BD02
4G076CA02
4G076CA26
4G076CA27
4G076CA28
4G076CA33
4G076DA01
4G169AA01
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169AA12
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA05A
4G169BA07A
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BB10A
4G169BB10C
4G169BC01A
4G169BC02A
4G169BC02C
4G169BC08A
4G169BC42A
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC69A
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC75A
4G169CA03
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EA02Y
4G169EB18Y
4G169EC02X
4G169EC02Y
4G169EC03X
4G169EC03Y
4G169EC06X
4G169EC06Y
4G169EC07X
4G169EC07Y
4G169EC08X
4G169EC08Y
4G169EC21X
4G169EC21Y
4G169ED06
4G169FA01
4G169FB08
4G169FB09
4G169FB14
4G169FB16
4G169FB30
4G169FB78
4G169FC02
4G169FC07
4G169FC08
4G169FC09
4G169ZA01A
(57)【要約】
本発明は、1種の組成物に関する。
前記組成物は、以下の通りであり、
- 酸化物状態でのAl及びCeをベースとした組成物C1;または
- 酸化物状態でのAl、Ce及びLaをベースとした組成物C2
該組成物は、以下の割合を有し、
- CeO2の割合が5.0 wt% ~ 35.0 wt%であり;
- La2O3(組成物C2のみ)の割合が0.1 wt% ~ 6.0 wt%であり;
- 残部がAl2O3であること
及び、該組成物は、特定の多孔度プロファイル及び以下の性質を示す。
- 空気中1100℃で5時間焼成した後の結晶子の平均サイズ(D1100℃-5hと表記)は、45.0 nm未満であり;
- 空気中900℃で2時間焼成した後の結晶子の平均サイズ(D900℃-2hと表記)は、25.0 nm未満であり;
- 結晶子の平均サイズの増加△Dは、30.0 nm未満であり、 △Dは、式 △D = D1100℃-5h - D900℃-2h で計算され、
前記結晶子の平均サイズは、XRDによって、酸化セリウムに対応し、一般的に28.0°~ 30.0°の2θに存在する立方晶相の回折ピーク[111]から得られること
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種の組成物であって、該組成物は、
- 酸化物状態でのAl及びCeをベースとした組成物C1;または
- 酸化物状態でのAl、Ce及びLaをベースとした組成物C2
であり、
該組成物は、以下の割合:
- CeO
2の割合が5.0 wt% ~ 35.0 wt%であり;
- La
2O
3(組成物C2のみ)の割合が0.1 wt% ~ 6.0 wt%であり;
- 残部がAl
2O
3であること
を有し、
該組成物は、以下の多孔度プロファイル:
- サイズが5 nm ~ 100 nmの細孔の容積(PV
5~100 nmと表記)は、
CeO
2の割合が5.0 wt% ~ 15.0 wt%の場合、0.90 mL/g未満であり;
CeO
2の割合が15.0 wt%(該値を含まず) ~ 22.0 wt%の場合、0.85 mL/g未満であり;
CeO
2の割合が22.0 wt%(該値を含まず) ~ 35.0 wt%の場合、0.70 mL/g未満であり;
- サイズが5 nm ~ 1000 nmの細孔の容積(PV
5~1000 nmと表記)は、1.30 mL/g未満であり;
- サイズが100 nm ~ 1000 nmの細孔の容積(PV
100~1000 nmと表記)は、厳密に0.10 mL/gより大きく;
前記細孔の容積は、水銀ポロシメトリー技術によって測定されること
を示し、
及び
該組成物は、以下の性質:
- 空気中1100℃で5時間焼成した後の結晶子の平均サイズ(D
1100℃-5hと表記)は、45.0 nm未満であり;
- 空気中900℃で2時間焼成した後の結晶子の平均サイズ(D
900℃-2hと表記)は、25.0 nm未満であり;
- 結晶子の平均サイズの増加△Dは、30.0 nm未満であり、△Dは、式 △D = D
1100℃-5h - D
900℃-2h で計算され、
前記結晶子の平均サイズは、XRDによって、酸化セリウムに対応し、一般的に28.0°~ 30.0°の2θに存在する立方晶相の回折ピーク[111]から得られること
を示す、
組成物。
【請求項2】
Ce及びAlの酸化物からなる(組成物C1)またはCe、Al及びLaの酸化物からなる(組成物C2)、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
CeO
2の割合が、5.0 wt% ~ 30.0 wt%である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
CeO
2の割合が、15.0 wt% ~ 25.0 wt%である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
CeO
2の割合が、
- 6.0 wt% ~ 10.0 wt%;または
- 10.0 wt% ~ 14.0 wt%;または
- 18.0 wt% ~ 22.0 wt%
である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
CeO
2とAl
2O
3の割合が、
- CeO
2:6.0 wt% ~ 10.0 wt%;Al
2O
3:90.0 wt% ~ 94.0 wt%;または
- CeO
2:10.0 wt% ~ 14.0 wt%;Al
2O
3:86.0 wt% ~ 90.0 wt%;または
- CeO
2:18.0 wt% ~ 22.0 wt%;Al
2O
3:78.0 wt% ~ 82.0 wt%
である、請求項1または2に記載の組成物C1。
【請求項7】
Al
2O
3の割合が、
組成物C1の場合、65.0 wt% ~ 95.0 wt%;
組成物C2の場合、59.0 wt% ~ 94.9 wt%
である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
アルミナをベースとした結晶相を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
酸化セリウムをベースとした結晶相を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記酸化セリウムをベースとした結晶相が、純粋なCeO
2またはランタンを含有するCeO
2(組成物C2の場合)に相当する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
D
1100℃-5hが、40.0 nm未満である、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
D
900℃-2hが、20.0 nm未満、より好ましくは16.0 nm未満である、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
△Dが、25.0 nm未満である、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
D
1100℃-5hが、最小8.0 nmである、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
D
900℃-2hが、最小5.0 nmである、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
PV
5~100 nmは、
- CeO
2の割合が5.0 wt% ~ 15.0 wt%の場合、0.85 mL/g未満であり;
- CeO
2の割合が15.0 wt%(該値を含まず) ~ 22.0 wt%の場合、0.80 mL/g未満であり;
- CeO
2の割合が22.0 wt%(該値を含まず) ~ 35.0 wt%の場合、0.65 mL/g未満である、
前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
PV
5~100 nmは、
- CeO
2の割合が5.0 wt% ~ 15.0 wt%の場合、0.82 mL/g未満であり;
- CeO
2の割合が15.0 wt%(該値を含まず) ~ 22.0 wt%の場合、0.75 mL/g未満である、
前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
PV
5~1000 nmが、1.20 mL/g未満である、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
PV
5~1000 nmが、1.10 mL/g未満である、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
PV
5~1000 nmが、1.00 mL/g未満である、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
PV
5~100 nmは、
- CeO
2の割合が5.0 wt% ~ 15.0 wt%の場合、0.40 mL/gより大きく;
- CeO
2の割合が15.0 wt%(該値を含まず)~ 22.0 wt%の場合、0.35 mL/gより大きく;
- CeO
2の割合が22.0 wt%(該値を含まず)~ 35.0 wt%の場合、0.30 mL/gより大きい、
前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
PV
5~100 nmは、
- CeO
2の割合が5.0 wt% ~ 15.0 wt%の場合、0.45 mL/gより大きく;
- CeO
2の割合が15.0 wt%(該値を含まず)~ 22.0 wt%の場合、0.40 mL/gより大きく;
- CeO
2の割合が22.0 wt%(該値を含まず)~ 35.0 wt%の場合、0.35 mL/gより大きい、
前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
PV
5~1000 nmが、0.70 mL/gより大きい、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
PV
5~1000 nmが、0.75 mL/gより大きい、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
次の多孔度プロファイル:
- サイズが5 nm ~ 100 nmの細孔の容積(PV
5~100 nmと表記)は、
CeO
2の割合が5.0 wt% ~ 15.0 wt%の場合、0.40 mL/g ~ 0.90 mL/gであり;
CeO
2の割合が15.0 wt%(該値を含まず) ~ 22.0 wt%の場合、0.35 mL/g ~0.85 mL/gであり;
CeO
2の割合が22.0 wt%(該値を含まず) ~ 35.0 wt%の場合、0.30 mL/g ~ 0.70 mL/gであること;
- サイズが5 nm ~ 1000 nmの細孔の容積(PV
5~1000 nmと表記)は、0.70 mL/g~ 1.3 mL/gであること
を示す、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
80 m
2/g ~ 300 m
2/g、より具体的には90 m
2/g ~ 200 m
2/gのBET比表面積を示す、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
空気中1100℃で5時間焼成した後、40 m
2/gより大きく、好ましくは45 m
2/gより大きいBET比表面積を示す、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
空気中1100℃で5時間焼成した後、40 m
2/g ~ 110 m
2/g、好ましくは45 m
2/g~ 110 m
2/gのBET比表面積を示す、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
空気中1100℃で5時間焼成した後、厳密に、82.35×(Al
2O
3)+11.157 m
2/g未満のBET比表面積を示し、(Al
2O
3)が該組成物におけるAl
2O
3の割合(wt%)に相当する、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
空気中1200℃で5時間焼成した後に、25 m
2/g ~ 60 m
2/gのBET比表面積を示す、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
2.50 mL/g以下、またはさらに2.00 mL/g以下の細孔総容積(TPV)を示し、前記細孔総容積が、水銀ポロシメトリー技術によって測定される、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
空気中900℃で2時間焼成した後、N
2ポロシメトリーによって測定される厳密に0.97×(Al
2O
3)+0.0647 mL/g未満の細孔総容積を示し、(Al
2O
3)が、前記組成物におけるAl
2O
3の割合(wt%)に相当する、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
0.20 g/cm
3 ~ 0.50 g/cm
3の容積密度を示す、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項34】
0.25 g/cm
3 ~ 0.40 g/cm
3の容積密度を示す、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項35】
ナトリウムの含有量が、0.50 wt%以下またはさらに0.15 wt%以下であり、該ナトリウムの含有量が、前記組成物の総重量に対するNa
20の重量として表される、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項36】
ナトリウムの含有量が、50 ppm以上であり、該ナトリウムの含有量が、前記組成物の総重量に対するNa
20の重量として表される、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項37】
硫酸塩の含有量が、1.00 wt%以下、またはさらに0.50 wt%以下、またさらには0.25 wt%以下であり、該硫酸塩の含有量が、前記組成物の総重量に対するSO
4の重量として表される、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項38】
硫酸塩の含有量が、50 ppm以上であり、該硫酸塩の含有量が、前記組成物の総重量に対するSO
4の重量として表される、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項39】
1種の触媒組成物であって、
(i)請求項1~38のいずれか1項に記載の組成物;及び
(ii)任意に、少なくとも1種の本発明の組成物以外の無機物質;及び/または;
(iii)任意に、少なくとも1種の白金族金属(PGM)
を含む、触媒組成物。
【請求項40】
1種の触媒組成物であって、
(i)請求項1~38のいずれか1項に記載の組成物;及び
(ii)少なくとも1種の本発明の組成物以外の無機物質;及び
(iii)任意に、少なくとも1種の白金族金属(PGM)
を含む、請求項39に記載の触媒組成物。
【請求項41】
1種の触媒組成物であって、
(i)請求項1~38のいずれか1項に記載の組成物;及び
(ii)少なくとも1種の本発明の組成物以外の無機物質;及び
(iii)少なくとも1種の白金族金属(PGM)
を含む、請求項39に記載の触媒組成物。
【請求項42】
前記無機物質が、ゼオライト;アルミナ系物質;セリア系物質;ジルコニア系物質;セリウムとジルコニウムの酸化物を含む混合酸化物;アルミニウム、セリウム及びジルコニウムの酸化物を含む混合酸化物;及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項39~41のいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項43】
前記PGMが、Pt、Pd、Rh、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項39~42のいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項44】
少なくとも1種の、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選択される元素も含む、請求項39~43のいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項45】
車両排気の浄化に使用される触媒の調製における、請求項1~38のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項46】
触媒コンバータの調製における、請求項39~44のいずれか1項に記載の触媒組成物の使用。
【請求項47】
請求項1~38のいずれか1項に記載の組成物を調製するためのプロセスであって、該プロセスは、以下の工程:
(a)工程(a)の終了時に、酸化物当量で表される反応混合物中のアルミニウム濃度が0.5 wt% ~ 4.0 wt%になるように、以下を、最初にpH 0.5~4.0または0.5~3.5の硫酸アルミニウム水溶液を含むタンクに攪拌しながら導入し;
(a1)アルミン酸ナトリウム水溶液を、該反応混合物のpHが8.0~10.0、またはさらに8.5~9.5になるまで導入し;
(a2)または、同時に、(i)硫酸アルミニウム水溶液及び(ii)アルミン酸ナトリウム水溶液を、該反応混合物のpHが6.5~10.0、またはさらに7.0~8.0または8.5~9.5になるまで導入し;
(b)硫酸アルミニウム水溶液及びアルミン酸ナトリウム水溶液の同時導入の後に、その導入速度は、該反応混合物の平均pHが工程(a)の目標pH範囲内に維持されるような速度であり;
工程(a)及び工程(b)での該反応混合物の温度が50℃~70℃であり;
(c)工程(b)の終了時に、任意に、該反応混合物のpHを7.5~10.5、またはさらに8.0~9.5または9.5~10.5の値に調整し;
(d)前記反応混合物を濾過し、回収された固体を洗浄し;
(e)少なくとも1種のセリウムの塩を工程(d)の終了時に得られた固体に接触させ;
(f)工程(e)の終了時に得られた分散液を乾燥させ;
(g)工程(f)から得られた固体を空気中で焼成する
を含み、
及び
該プロセスは、以下のこと:
- 組成物C1及び組成物C2の場合、少なくとも1種のセリウムの塩を工程(e)で添加し、また工程(d)の前に添加してもよく;工程(e)で添加されるセリウムの塩の割合αは、20%~80%、好ましくは50%~80%であり;αは、次の式 α = 工程(e)での添加量/セリウムの総添加量×100で計算され;
- 組成物C2の場合、少なくとも1種のランタンの塩を工程(d)の前または工程(f)で添加し;また
- 工程(d)の後及び工程(e)の前に、前記固体は、機械的にまたは超音波で処理されても、サイズが実質的に減少しない
を特徴とする、
プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年7月30日付けの欧州出願Nr 21315134.3の優先権を主張し、本願内容の全ては、あらゆる目的のため、参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、高温で焼成した後でも大きい比表面積と低い結晶子サイズを維持する特定の多孔度プロファイルを有する、酸化アルミニウム、酸化セリウム、及び任意に酸化ランタンの組成物に関する。本発明は、前記組成物を含む触媒組成物及び該組成物の使用にも関する。
【0002】
車両排気を浄化するための触媒は、現在、世界中のほとんどの地域 (欧州、米国、日本、中国、韓国、インド等) で施行されている汚染物質規制を満たすために、ほぼ必須となっている。触媒の機能は、CO、未燃粒子状物質(煤等)、未燃炭化水素(HC)、窒素酸化物NO及びNO2(NOxと呼ばれる)等、健康と環境に有害な汚染物質を除去することである。
【0003】
現在、規制は、益々厳しくなり、近い将来さらに厳しくなると予想されている。欧州のEuro 7、米国のSULEV 20、または中国のChina 6bを参照されたい。現在、実際の状況での排出ガスも欧州と同様に、RDE制限(Real Driving Emission)で規制されており、触媒は様々な運転状況で効率的である必要があるため、新たな課題が追加されている。その結果、効率的な触媒が益々多く求められている。
【0004】
TWC触媒
ガソリン車の場合、排出ガスの制御は、炭化水素、CO、及びNOxの量を同時に削減できる、いわゆる"三元"触媒(TWC)を使用して実現される。天然ガス車は、エンジンが化学量論モードで動作している場合、一般的にTWC触媒に依存し得る。しかし、ガソリン エンジンと同じ課題が予想される。また、空燃比がより広いと予想され、そのためにはより大きな酸素貯蔵能力(OSC)が必要になる。
【0005】
GPF
いくつかの地域では、ガソリン車にもガソリン微粒子フィルター(GPF)が装備されている。GPFの機能は、特にガソリン直噴エンジン技術から排出される粒子状物質の放出を減らすことであるが、これに限定されない。GPFは、フィルター上にコーティングされ、追加の酸素需要を促進し、粒子状物質を燃焼させるために増強されたOSCを有するTWC触媒をベースにしている。従って、改良されたOSCを示す触媒が一般的に必要とされている。
【0006】
DOC及びDPF
ディーゼル エンジンの場合、ディーゼル酸化触媒(DOC)等のいくつかの触媒を使用して、COやHCだけでなく、ある程度の粒子状物質やNOxの酸化機能も制御できる。現在、ディーゼル エンジンには一般的にディーゼル粒子フィルター(DPF)が取り付けられている。DPFの機能は、粒子状物質を濾過して燃焼させることである。従って、酸化機能はDOCとDPFにとって重要であり、DPF再生中の煤の酸化による熱ストレス後に酸化機能を維持することが重要である。ディーゼル エンジンのNOx排出は、NOxとNH3の反応を通じてNOxが削減される選択的触媒還元(SCR)触媒によって、またはリーンNOxトラップ(LNT)または部分NOx吸収材(PNA)でのNOxトラップまたは吸着によって制御される。どちらの場合も、NOxを効率的に除去するために、酸化機能が必要である。
【技術課題】
【0007】
上記に開示された触媒はまた、全ての場合(SCRを除く)において、白金族金属(またはPGM)としても知られる少なくとも1種の貴金属(例えば、Pt、Pd及びRh)の存在を必要とする。Rh及びPdは一般的にPtよりも高価であるため、現在ではPtがより一般的に使用される傾向にある。PGMは価格が高いため、触媒中のその含有量を最小限に抑えることが一般的に要求される。PGM、特にPdと Ptは、アルミナの表面に分散され、酸化セリウムによって安定化されることが知られている。
【0008】
上記に開示された触媒は全て、アルミナを含み、これは、PGM (TWC、GPF、DOC、DPF、LNT、PNA)を分散させるために使用されるか、SCR触媒(例えば、一般的にゼオライト系、または酸化チタンと結合した酸化バナジウム)と混合される。これらは全て、セリア系物質も含み、これは、酸素貯蔵能力(OSC)を提供するか、または酸化を補助する。アルミナ及びセリア系物質の両方には熱安定性が要求される。
【0009】
従って、少なくとも1種のPGMを含有する触媒の調製に使用することができ、OSCを示し、かつ、触媒中に存在するPGMを安定化させることができる耐熱性アルミナ系の支持体が必要とされている。本願の文脈において、"耐熱性"という用語は、高温での熱処理後に大きい比表面積及び/または小さい粒径を維持することができる支持体を特徴付けるために使用される。支持体の熱安定性を特徴付ける単純で共通の方法として、空気中で高温焼成した後の比表面積を測定する。別の方法として、X線回折(XRD)によって同じ処理後の粒子の粒径を測定する。"高温"という表現は、使用される触媒の性質に依存する。一般的に、焼成温度は、ディーゼル触媒(DOC、DPF、LNT、またはSCR等)の場合では最大約900℃であり、ガソリンまたは天然ガス触媒(TWCまたはGPF等)の場合では最大約1100℃、ときにはさらに1200℃である。
【0010】
また、ガスの良好な拡散を可能にするために、大きい細孔容積を有する無機物質、特に1000 nm未満の大きい細孔容積を有する無機物質は有用であり、これにより、汚染物質の高い変換が促進される。これは、実際の運転状況や、車両が高いガス流量で高速走行している場合に非常に関係する。しかし、細孔容積が大きすぎると、無機物質の密度が減少する傾向があり、触媒の調製中に何らかの困難が生じる可能性がある。触媒の調製では、一般的に、無機物質からなる触媒組成物の懸濁液を基板またはモノリスの上にコーティングする。当然のことながら、低粘度を示す高濃度の懸濁液を使用することが調製にはより都合がよい。従って、容易に取り扱うことができ、高濃度かつ低粘度の懸濁液の調製に使用できる耐熱性支持体も必要とされている。結果として、多孔度を妥協して、触媒効率と触媒調製との間にバランスをとる。
【0011】
本発明の組成物は、これらの技術的課題を解決することを目的とする。
【背景技術】
【0012】
WO 12067654には、アルミニウムとセリウムの酸化物、またはアルミニウムとジルコニウムの酸化物、またはアルミニウム、セリウム及びジルコニウムの酸化物、並びに任意に、遷移金属、希土類、及びこれらの混合物から選択される1種または複数種のドーパント酸化物を含む多孔度無機複合酸化物が開示されている。請求項1のような組成物が開示されていない。
【発明の簡単な説明】
【0013】
本発明は、請求項1~38のいずれか1項に記載の組成物に関する。該組成物は、2つの主要な実施形態C1またはC2による:
- 酸化物状態でのAl及びCeをベースとした組成物C1;
- 酸化物状態でのAl、Ce及びLaをベースとした組成物C2。
該組成物は、以下の割合を有し:
- CeO2の割合が5.0 wt% ~ 35.0 wt%であり;
- La2O3(組成物C2のみ)の割合が0.1 wt% ~ 6.0 wt%であり;
- 残部がAl2O3であること。
該組成物は、以下の多孔度プロファイルを示す:
- サイズが5 nm~100 nmの細孔の容積(PV5~100 nmと表記)は、
CeO2の割合が5.0 wt% ~ 15.0 wt%の場合、0.90 mL/g未満、より具体的には0.85 mL/g未満、さらに具体的には0.82 mL/g未満であり;
CeO2の割合が15.0 wt%(該値を含まず) ~ 22.0 wt%の場合、0.85 mL/g未満、より具体的には0.80 mL/g未満、さらに具体的には0.75 mL/g未満であり;
CeO2の割合が22.0 wt%(該値を含まず) ~ 35.0 wt%の場合、0.70 mL/g未満、より具体的には0.65 mL/g未満であり;
- サイズが5 nm~1000 nmの細孔の容積(PV5~1000 nmと表記)は、1.30 mL/g未満、より具体的には1.20 mL/g未満、さらに具体的には1.10 mL/g未満、または1.00 mL/g未満であり;
- サイズが100 nm~1000 nmの細孔の容積(PV100~1000 nmと表記)は、厳密に0.10 mL/gより大きく;
前記細孔の容積は、水銀ポロシメトリー技術によって測定されること。
また、該組成物は、以下の性質を示す:
- 空気中1100℃で5時間焼成した後の結晶子の平均サイズ(D1100℃-5hと表記)は、45.0 nm未満、好ましくは40.0 nm未満であり;
- 空気中900℃で2時間焼成した後の結晶子の平均サイズ(D900℃-2hと表記)は、25.0 nm未満、好ましくは20.0 nm未満、さらに好ましくは16.0 nm未満であり;
- 結晶子の平均サイズの増加△Dは、30.0 nm未満、好ましくは25.0 nm未満であり、△Dは、式 △D = D1100℃-5h - D900℃-2h で計算され;
前記結晶子の平均サイズは、XRDによって、酸化セリウムに対応し、一般的に28.0°~30.0°の2θに存在する立方晶相の回折ピーク[111]から得られること。
【0014】
本発明は、請求項39~44のいずれか1項に規定される触媒組成物、請求項45に規定される組成物の使用、及び請求項46に規定される触媒組成物の使用にも関する。本発明は、請求項47に規定される組成物を調製する方法に関する。
【0015】
ここで、これらの全てをより詳細に規定する。
【発明の説明】
【0016】
本特許出願で特定されているように、明細書の続きについて、特に断りのない限り、与えられた値の範囲には、限界の値が含まれる。また、特定されているように、焼成は空気中で行われる。なお、"厳密に0.10 mL/gを超える"とは、次の数学記号">0.10 mL/g"を指し、0.10 mL/gの値を除くことを意味する。
【0017】
"wt%"は、重量での%を示す。
【0018】
本発明において、用語"粒子"は、一次粒子から形成された凝集体を意味する。粒径は、レーザー粒径分析装置により得られた容積分の粒度分布から測定される。粒度分布は、パラメータD10、D50及びD90によって特徴付けられる。これらのパラメータは、レーザー回折による測定分野において通常の意味を有する。Dxは、容積分の粒度分布について測定された値を表し、粒子のx%が、Dxの値以下のサイズを有する。従って、D50は、分布の中央値に相当する。D90は、粒子の90%がD90未満のサイズに相当する。D10は、粒子の10%がD10未満のサイズに相当する。前記測定は、一般的に、粒子の水中分散液について行われる。
【0019】
本発明において、希土類元素とは、イットリウムを含む族の元素及び周期表の原子番号57~71の元素を意味する。
【0020】
本願における多孔度データは、水銀ポロシメトリー技術または窒素ポロシメトリー技術(TPV*について)を用いて得られる。両方の技術により、細孔容積(V)を細孔直径(D)の関数として規定することができる。
【0021】
水銀ポロシメトリー技術については、粉末針入度計を備えた超小型自動細孔9520機械をメーカーの説明書に従って使用してもよい。ASTM D 4284-07の手順に従ってもよい。これらのデータで、5 nm~100 nmのサイズを有する細孔の容積(PV5~100 nmと表記)、5 nm~1000 nmのサイズを有する細孔の容積(PV5~1000 nmと表記)、100 nm~1000 nmのサイズを有する細孔の容積(PV100~1000 nmと表記)、及び細孔総容積(TPVと表記)を測定することができる。
【0022】
窒素ポロシメトリー技術については、Micromeritics社のTristar 3020を使用してもよい。これらのデータで、空気中900℃で2時間焼成した後の組成物の細孔総容積(TPV*と表記)を測定することができる。
【0023】
用語"比表面積"は、Brunauer-Emmett-Teller法による窒素吸着によって測定されるBET比表面積を意味する。該方法は、"アメリカ化学会誌、60,309(1938) "に記載された。標準ASTM D3663-03の推奨に従ってもよい。別途記載がない限り、所定の温度及び時間での焼成は、示された時間にわたる定常温度段階での空気中での焼成に相当する。
【0024】
さらに、前記ように、前記組成物における前記溶液の濃度または元素Al、Ce、及びLa(存在する場合)の割合は、酸化物当量の重量パーセントとして与えられる。従って、これらの濃度または割合の計算には、以下の酸化物が保持される:Alの場合はAl2O3、Ceの場合はCeO2、Laの場合はLa2O3。例えば、アルミニウム濃度が2.0 wt%の硫酸アルミニウム水溶液は、2.0 wt%のAl2O3当量を含有する溶液に相当する。同様に、92.0 wt%のAl及び8.0 wt%のCeを含有する組成物は、92.0 wt%のAl2O3及び8.0 wt%のCeO2に相当する。
【0025】
前記組成物は、酸化物状態でのAl及びCeをベースとし(組成物C1)、または酸化物状態でのAl、Ce及びLaをベースとする(組成物C2)。一実施形態によれば、組成物C1は、Ce及びAlの酸化物からなる。別の実施形態によれば、組成物C2は、Ce、Al及びLaの酸化物からなる。
【0026】
まず、前記組成物は、その構成成分の割合によって規定される。それらの割合は、該組成物の総重量に対する重量によって与えられる。従って、組成物C1及びC2について、CeO2の割合は、5.0 wt% ~ 35.0 wt%、または5.0 wt% ~ 30.0 wt%、またはさらに6.0 wt% ~ 25.0 wt%である。該割合は、10.0 wt% ~ 25.0 wt%、またはさらに15.0 wt% ~ 25.0 wt%であってもよい。該割合はまた、以下の割合であってもよい:
- 6.0 wt% ~ 10.0 wt%;または
- 10.0 wt% ~ 14.0 wt%;または
- 18.0 wt% ~ 22.0 wt%。
【0027】
CeO2の割合は、20.0 wt%未満であってもよい。
【0028】
組成物C2について、Laの割合は、0.1 wt% ~ 6.0 wt%、またはさらに0.5 wt% ~6.0 wt%、またはさらに1.0 wt% ~ 5.0 wt%である。該割合は、該組成物の総重量に対するLa2O3の重量として表される。
【0029】
Al2O3の割合は、100%に対する残部に相当する。Al2O3は、前記組成物の主成分である。組成物C1の場合、Al2O3の割合は、65.0 wt% ~ 95.0 wt%である。組成物C2の場合、Al2O3の割合は、59.0 wt% ~ 94.9 wt%である。
【0030】
組成物C1の場合、CeO2とAl2O3の割合は、以下の通りである:
- CeO2:6.0 wt% ~ 10.0 wt%;Al2O3:90.0 wt% ~ 94.0 wt%;または
- CeO2:10.0 wt% ~ 14.0 wt%;Al2O3:86.0 wt% ~ 90.0 wt%;または
- CeO2:18.0 wt% ~ 22.0 wt%;Al2O3:78.0 wt% ~ 82.0 wt%。
【0031】
次いで、前記組成物はまた、物理化学的性質、特に、多孔度及びセリアの結晶子サイズの間の良好な妥協によって規定される。細孔容積(PV5~100 nm及びPV5~1000 nm)は、触媒またはウォッシュコートの調製を容易にするために制限されるが、高温での焼成した後でもセリアの結晶子サイズは低いままである。さらに、細孔容積(PV5~100 nm及びPV5~1000 nm)は、セリアの分散を促進し、高温で焼成した後も組成物の熱安定性を確保するために、最小値より大きくてもよい。
【0032】
従って、前記組成物は、次の多孔度プロファイルによって特徴付けられる:
- サイズが5 nm~100 nmの細孔の容積(PV5~100 nmと表記)は、
CeO2の割合が5.0 wt% ~ 15.0 wt%の場合、0.90 mL/g未満、より具体的には0.85 mL/g未満、さらに具体的には0.82 mL/g未満であり;
CeO2の割合が15.0 wt%(該値を含まず) ~ 22.0 wt%の場合、0.85 mL/g未満、より具体的には0.80 mL/g未満、さらに具体的には0.75 mL/g未満であり;
CeO2の割合が22.0 wt%(該値を含まず) ~ 35.0 wt%の場合、0.70 mL/g未満、より具体的には0.65 mL/g未満であり;
- サイズが5 nm~1000 nmの細孔の容積(PV5~1000 nmと表記)は、1.30 mL/g未満、より具体的には1.20 mL/g未満、さらに具体的には1.10 mL/g未満または1.00 mL/g未満であり;
- サイズが100 nm~1000 nmの細孔の容積(PV100~1000 nmと表記)は、厳密に0.10 mL/gより大きい。
【0033】
PV5~100 nmはまた、次の通りであってもよい:
- CeO2の割合が5.0 wt% ~ 15.0 wt%の場合、0.40 mL/gより大きく、より具体的には0.45 mL/gより大きく;
- CeO2の割合が15.0 wt%(該値を含まず)~ 22.0 wt%の場合、0.35 mL/gより大きく、より具体的には0.40 mL/gより大きく;
- CeO2の割合が22.0 wt%(該値を含まず)~ 35.0 wt%の場合、0.30 mL/gより大きく、より具体的には0.35 mL/gより大きい。
【0034】
PV5~1000 nmはまた、0.70 mL/gより大きく、より具体的には0.75 mL/gより大きくてもよい。
【0035】
PV100~1000 nmは、厳密に0.10 mL/gより大きい(> 0.10 mL/g)。
【0036】
本発明はまた、次の多孔度プロファイルを示す組成物に関する。
- サイズが5 nm~100 nmの細孔の容積(PV5~100 nmと表記)は、
CeO2の割合が5.0 wt% ~ 15.0 wt%の場合、0.40 mL/g ~ 0.90 mL/gであり;
CeO2の割合が15.0 wt%(該値を含まず) ~ 22.0 wt%の場合、0.35 mL/g ~0.85 mL/gであり;
CeO2の割合が22.0 wt%(該値を含まず) ~ 35.0 wt%の場合、0.30 mL/g ~ 0.70 mL/gであること;
- サイズが5 nm~1000 nmの細孔の容積(PV5~1000 nmと表記)は、0.70 mL/g ~1.30 mL/gであること;
- サイズが100 nm~1000 nmの細孔の容積(PV100~1000 nmと表記)は、厳密に0.10 mL/gより大きいこと。
【0037】
さらに、前記組成物は、大きい比表面積を示し得る。これは、80 m2/g ~ 300 m2/g、より具体的には90 m2/g ~ 200 m2/gのBET比表面積を有し得る。該比表面積は、100 m2/g以上であってもよい。また、該比表面積は、100 m2/g ~ 200 m2/gであってもよい。
【0038】
さらに、前記組成物は、高い熱安定性を有する。これは、空気中1100℃で5時間焼成した後、40 m2/gより大きく、好ましくは45 m2/gより大きいBET比表面積を有する。該比表面積は、40 m2/g ~ 110 m2/g、好ましくは45 m2/g ~ 110 m2/gであってもよい。また、該比表面積は、厳密に、82.35×(Al2O3)+11.157 m2/g未満であってもよい。ここで、(Al2O3)が該組成物におけるAl2O3の割合(wt%)に相当する。一例として、Al2O3の割合が80.0 wt%の場合、計算により、82.35×80.0%+11.157=77.037 m2/gの値になる。
【0039】
また、前記組成物は、空気中1200℃で5時間焼成した後に、BET比表面積が25 m2/g ~ 60 m2/gであってもよい。
【0040】
前記組成物は、一般的に、細孔総容積(TPV)が0.70 mL/gより大きい。有利には、該細孔総容積は、最小0.80 mL/g、またはさらに最小0.90 mL/gであってもよい。一般的に、該細孔総容積は、2.50 mL/g以下、またはさらに2.00 mL/g以下である。
【0041】
また、前記組成物は、空気中900℃で2時間焼成した後、N2ポロシメトリーによって測定される、厳密に0.97×(Al2O3)+0.0647 mL/g未満の細孔総容積(TPV*と表記)を示し得る。ここで、(Al2O3)が該組成物におけるAl2O3の割合(wt%)に相当する。一例として、Al2O3の割合が80.0 wt%の場合、計算により、0.97×80.0%+0.0647=0.8407 mL/gの値になる。
【0042】
前記組成物の容積密度(ABD)は、0.20 g/cm3 ~ 0.50 g/cm3、より具体的には0.25 g/cm3 ~ 0.40 g/cm3であり得る。粉末の容積密度は、該粉末が占める容積に対する一定量の粉末の重量に相当する。
ABD (g/mL) = (粉末の質量(g)) / (粉末の容積(mL))
【0043】
前記容積密度は、以下に説明する方法で測定することができる。まず、飲み口なしの計量シリンダー(約25 mL)の容積を精確に計測する。これを行うために、空の計量シリンダーの重量を計測する(風袋T)。次に、縁を超えないように、蒸留水を計量シリンダーの縁まで注ぐ(半月板なし)注ぐ。蒸留水で充満された計量シリンダーの重量を計測する(M)。従って、計量シリンダーに含まれる水の質量は、以下の通りである。
E = M - T
【0044】
計量シリンダーの較正容積は、V計量シリンダー = E/(測定温度での水の密度)に等しい。水の密度は、例えば、測定温度が20℃の場合、0.99983 g/mLに等しい。
【0045】
漏斗を用いて、粉末状の組成物を空の乾燥した計量シリンダーに該シリンダーの縁に達するまで慎重に注ぐ。ヘラで余分な粉末を平らにして除去する。充填中、該粉末を圧縮したり、または突き固めたりしてはならない。そして、該粉末を含む計量シリンダーの重量を計測する。
容積密度(g/mL)=(アルミナ粉末の入った計量シリンダーの質量-風袋T (g))/(V計量シリンダー)(mL))
【0046】
前記組成物のD50は、2.0 μm ~ 80.0 μmであり得る。そのD90は、150.0 μm以下、より具体的には100.0 μm以下であり得る。そのD10は、1.0 μm以上であり得る。
【0047】
留意されたいことに、前記組成物は結晶性である。これは、X線回折によって実証され得る。前記組成物は、アルミナをベースとした結晶相を含む。このような相は、δ相、θ相、γ相、またはこれらの相のうちの少なくとも2種の混合であり得る。
【0048】
好ましいことに、組成物C2は、ランタン及びアルミニウムを含む相のXRD回折パターン、特に、LaAlO3相またはLaAl11O18相のいずれも含まない。前記2つの相は、回折データの国際センター:ICDD 01-070-4111及びICDD 00-033-0699をそれぞれ参照して同定し得る。
【0049】
また、前記組成物は、酸化セリウムをベースとした結晶相を含む。この相は、純粋なCeO2またはランタンを含有するCeO2に相当し得る。この相は、28.0°~30.0°の回折線2θを示す。
【0050】
28.0~30.0°の2θに存在する酸化セリウムに相当する立方晶相の回折ピーク[111]から、結晶子の平均サイズを測定することができる。前記組成物は、実際に以下を示す:
- 空気中1100℃で5時間焼成した後の結晶子の平均サイズ(D1100℃-5hと表記)は、45.0 nm未満、好ましくは40.0 nm未満であり;
- 空気中900℃で2時間焼成した後の結晶子の平均サイズ(D900℃-2hと表記)は、25.0 nm未満、好ましくは20.0 nm未満、さらに好ましくは16.0 nm未満であり;
- 結晶子の平均サイズの増加△Dは、30.0 nm未満、好ましくは25.0 nm未満であり、△Dは、式 △D = D1100℃-5h - D900℃-2h で計算され、
前記結晶子の平均サイズは、XRDによって、酸化セリウムに対応し、一般的に28.0°~ 30.0°の2θに存在する立方晶相の回折ピーク[111]から得られる。
【0051】
平均サイズD1100℃-5hは、一般的に最小8.0 nmである。同様に、平均サイズD900℃-2hは、一般的に最小5.0 nmである。
【0052】
結晶子Dの平均サイズは、X線回折により測定される。これは、28.0°~ 30.0°の回折線の幅2θからシェラー方程式を用いて計算された干渉性領域のサイズに相当する。シェラー方程式によると、Dは式(I)から得られる。
【数1】
D :平均結晶子サイズ;
K :形状係数(0.9);
λ(ラムダ):入射ビームの波長(CuKαl光源の場合、λ=1.5406オングストローム);B :最大強度(ラジアン)の半値で測定された線幅の拡大
θ:ブラッグ角(ラジアン)
【0053】
通常、機器による拡大を考慮してBを測定する。式(II)では、機器による拡大はB
instrである。また、
【数2】
D:平均結晶子サイズ;
k:形状係数(0.9);
λ(ラムダ):入射ビームの波長(CuKαl光源の場合、λ=1.5406オングストローム);
B
obs:回折ピーク(ラジアン)の半値における全幅;
B
instr:機器の線幅の拡大(ラジアン);
θ:ブラッグ角(ラジアン)。
B
instrは、使用機器及び2θ(シータ)角に依存する。
【0054】
D50及びD90は、レーザー粒径分析装置により容積分の粒度分布から測定され、該測定は、粒子の水中分散液について実施される。
【0055】
D10は、通常、最小0.5 μmである。
【0056】
また、前記組成物は、いくつかの残留成分を含み得る。前記組成物は、残留ナトリウムを含み得る。残留ナトリウムの含有量は、0.50 wt%以下、またはさらに0.15 wt%以下であってもよい。ナトリウムの含有量は、50 ppm以上であってもよい。該含有量は、50 ppm ~ 900 ppm、またはさらに100 ppm ~ 800 ppmであってもよい。該含有量は、前記組成物の総重量に対するNa20の重量として表される。従って、残留ナトリウム含有量が0.15 wt%の組成物の場合、100 gの前記組成物あたりに、0.15 gのNa20が存在すると考えられる。該濃度範囲におけるナトリウム含有量の測定方法は、当業者に知られている。例えば、前記組成物を酸性条件下で温浸させることができ、該温浸は任意に、マイクロ波によって促進され、該組成物が完全に溶解したら、誘導結合プラズマ分光法技術によって酸性溶液を滴定する。
【0057】
前記組成物は、残留硫酸塩を含み得る。残留硫酸塩の含有量は、1.00 wt%以下、またはさらに0.50 wt%以下、またはさらに0.25 wt%以下であってもよい。硫酸塩の含有量は、50 ppm以上であってもよい。該含有量は、100 ppm ~ 2500 ppmまたはさらに400 ppm ~ 1000 ppmであってもよい。該含有量は、前記組成物の総重量に対する硫酸塩の重量として表される。従って、硫酸残量が0.50 wt%の組成物の場合、100 gの前記組成物あたりに、0.50 gのSO4が存在すると考えられる。該濃度範囲における硫酸含有量の測定方法は、当業者に知られている。例えば、前記ナトリウム滴定と同様の方法を適用することができる。
【0058】
前記組成物は、ナトリウム及び硫酸塩以外の不純物、例えば、ケイ素、チタンまたは鉄をベースとした不純物を含有し得る。各不純物の割合は、一般的に0.10 wt%未満、またはさらに0.05 wt%未満である。
【0059】
本組成物の使用
本発明の組成物は、触媒の分野、特に、自動車の排気ガスを浄化するために使用される触媒の調製に使用してもよい。本発明の組成物は、自動車の排気ガスを処理するための触媒コンバータの調製に使用してもよい。前記触媒コンバータは、前記組成物から調製され、支持体上に堆積された少なくとも1種の触媒活性コーティング層を含む。前記触媒コンバータの役割は、化学反応によって、排気ガスの特定の汚染物質、特に一酸化炭素、未燃炭化水素及び窒素酸化物を環境への害が少ない生成物に変換することである。
【0060】
また、本発明の組成物は、触媒組成物の調製に使用してもよい。触媒組成物は、一般的に、以下を含む:
(i) 本発明の組成物;及び
(ii) 任意に、少なくとも1種の本発明の組成物以外の無機物質;及び/または
(iii) 任意に、少なくとも1種の白金族金属(PGM)。
【0061】
一実施形態によれば、前記触媒組成物は、以下を含む:
(i) 本発明の組成物;及び
(ii) 少なくとも1種の本発明の組成物以外の無機物質;及び
(iii) 任意に、少なくとも1種の白金族金属(PGM)。
【0062】
別の実施形態によれば、前記触媒組成物は、以下を含む:
(i) 本発明の組成物;及び
(ii) 少なくとも1種の本発明の組成物以外の無機物質;及び
(iii) 少なくとも1種の白金族金属(PGM)。
【0063】
本発明の組成物以外の無機物質は、ゼオライト;アルミナ系物質;セリア系物質;ジルコニア系物質;セリウムとジルコニウムの酸化物を含む混合酸化物;アルミニウム、セリウム及びジルコニウムの酸化物を含む混合酸化物;及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0064】
前記無機物質は、ゼオライトであってもよい。前記ゼオライトは、AEI、AFT、AFV、AFX、AVL、CHA、DDR、EAB、EEI、ERI、IFY、IRN、KFI、LEV、LTA、LTN、MER、MWF、NPT、PAU、RHO、RTE、RTH、SAS、SAT、SAV、SFW、TSC、UFI、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。前記ゼオライトは、Cu、Fe、Ce、及びこれらの組み合わせ等の少なくとも1種の触媒金属とイオン交換されてもよい。
【0065】
前記無機物質は、セリア系物質であってもよい。前記セリア系物質は、酸化セリウム、セリウムとセリウム以外の少なくとも1種の希土類元素との混合酸化物、及びセリウムと少なくとも1種のアルカリ土類元素との複合酸化物からなる群から選択されてもよい。前記希土類元素またはアルカリ土類元素の割合は、通常、1.0 wt% ~ 30.0 wt%であり、該割合は、セリア系物質の全体に対する酸化物として表される。セリア系物質の例は、次の参照文献:EP 1435338 B1、US 8,435,919、EP 3218307 B1、及びEP 1435338に見出すことができる。
【0066】
前記無機物質は、アルミナ系物質であってもよい。前記アルミナ系物質は、アルミナ; ケイ素、ジルコニウム、希土類金属、アルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物によって安定化されたアルミナ;アルミニウム水和物;及びこれらの組み合わせからなる群より選択されてもよい。より具体的には、前記アルミナ系物質は、アルミナ、または酸化ランタンによって安定化されたアルミナであってもよい。安定化元素の割合は、通常、1.0 wt% ~ 10.0 wt%であり、該割合は、アルミナ系物質の全体に対する酸化物として表される。アルミナ系物質の例は、次の参照文献:US 2017/0129781及びUS 4,301,037に見出すことができる。
【0067】
前記無機物質は、ジルコニア系物質であってもよい。前記ジルコニア系物質は、ジルコニア及びイットリウム、ランタン、プラセオジム、セリウムからなる群から選択される元素の少なくとも1種の酸化物によって安定化されたジルコニア、 及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。ジルコニア系物質の例は、次の参照文献:EP 1735242 B1、EP 1729883 B1、及びEP 2646370 B1に見出すことができる。
【0068】
前記無機物質は、セリウム及びジルコニウムの酸化物を含む混合酸化物であってもよい。前記セリウム及びジルコニウムの酸化物を含む混合酸化物は、 セリウムとジルコニウムの混合酸化物、及びセリウム、ジルコニウム、及びセリウム以外の少なくとも1種の希土類元素の混合酸化物からなる群から選択されてもよい。セリウム及びジルコニウムの酸化物を含む混合酸化物の例は、次の参照文献:EP 1527018 B1、EP 3009403 B1、EP 0863846 B1、EP 2454196 B1、EP 1603667 B1、及びWO 2016037059に見出すことができる。
【0069】
前記無機物質は、アルミニウム、セリウム及びジルコニウムの酸化物を含む混合酸化物であってもよい。前記アルミニウム、セリウム及びジルコニウムの酸化物を含む混合酸化物は、アルミニウム、セリウム及びジルコニウムの混合酸化物、及びアルミニウム、セリウム、ジルコニウム、及びセリウム以外の少なくとも1つの希土類元素の混合酸化物からなる群から選択されてもよい。このような混合酸化物の例は、次の参照文献:WO 2018/115436、US 2013/0336864、及びUS 2013/0017947に見出すことができる。
【0070】
前記白金族金属(PGM)は、周期表第VIII族から選択された元素である。該白金族金属は、より具体的には、Pt、Pd、Rh、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよく、通常はそれらから選択される。
【0071】
前記触媒組成物は、当業者に知られている当該分野における通常の技術によって調製される。例えば、前記触媒組成物の調製プロセスは、以下の工程を含む:(a)本発明の組成物及び本発明の組成物以外の無機物質を含有する水性媒体中に懸濁液を調製する工程、(b)工程(a)の懸濁液を湿式粉砕する工程、(c)任意に、該懸濁液を少なくとも1種のPGMの水溶液に接触させる工程、(d)得られた懸濁液を、支持体、例えば、モノリスまたはフィルター上に塗布する工程、及び(e)空気中で乾燥及び/または焼成する工程。代替として、前記プロセスには、工程(c)が含まれず、工程(a)の前に、前記PGMを初期湿潤含浸法等の任意の公知の技術によって本発明の組成物に導入する。
【0072】
前記プロセスによる触媒組成物の調製例は、EP 2969191の実施例1に相当する。即ち、標準的な初期湿潤技術を使用して、本発明の組成物をPd硝酸塩溶液で含浸させる。Pd含浸粉末を脱イオン水に入れ、硝酸Pt溶液を添加する。酸を添加してpHを4に下げた後、スラリーを粉砕し、粉砕したスラリーを乾燥させ、空気中450℃で2時間焼成する。別の調製例は、EP 3281697の実施例1に記載されている。
【0073】
また、前記触媒組成物は、少なくとも1種の、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選択される元素を含み得る。該元素は、通常、酸化物の状態である。該元素は、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属であってもよい。また、該元素は、マグネシウム、バリウム、またはストロンチウム等のアルカリ土類金属であってもよい。該元素は、前記触媒組成物中に異なる形態で存在し得る。
- 一実施形態によれば、これは、本発明の組成物に存在し、例えば、その上に含浸されている。含浸プロセスの一例は、以下の工程を含む:(a)本発明の組成物を、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩と接触させる工程、(b)該混合物を乾燥させる工程、及び(c)任意に、前記乾燥した混合物を空気中で焼成する工程。調製の一例は、US 9,611,774 B2の実施例1に相当する。即ち、本発明の組成物を酢酸バリウム溶液で含浸させ、該混合物を110℃で乾燥させ、そして、720℃で2時間焼成する。
- 他の実施形態によれば、これは、本発明の組成物以外の無機物質に存在し得る。典型的には、これは、アルミナ系物質またはセリア系物質中に存在する。
【0074】
以下、触媒組成物の非限定的な例を示す。
- TWCまたはGPF触媒として使用され得る触媒組成物は、本発明の組成物;少なくとも1種のセリウム、ジルコニウム、及び少なくとも1種の希土類元素の混合酸化物;少なくとも1種のアルミナ;少なくとも1種のPGM(例えば、白金、パラジウム、及びロジウムの組み合わせ)を含む。
- TWCまたはGPF触媒として使用され得る触媒組成物は、本発明の組成物;少なくとも1種のアルミニウム、セリウム、ジルコニウム、及び少なくとも1種のセリウム以外の希土類元素の混合酸化物;少なくとも1種のアルミナ; 少なくとも1種のPGM(例えば、パラジウムとロジウムの組み合わせ)を含む。
- TWCまたはGPF触媒として使用され得る触媒組成物は、本発明の組成物;少なくとも1種のセリウム、ジルコニウム、及び少なくとも1種の希土類元素の混合酸化物;少なくとも1種のPGM(例えば、パラジウムとロジウムの組み合わせ)を含む。
- DOCとして使用され得る触媒組成物は、本発明の組成物;少なくとも1種のアルミナ;少なくとも1種のゼオライト;少なくとも1種のPGM(例えば、白金とパラジウムの組み合わせ)を含む。
- DOCとして使用され得る触媒組成物は、本発明の組成物;少なくとも1種のゼオライト;少なくとも1種のPGM(例えば、白金とパラジウムの組み合わせ)を含む。
- DPFとして使用され得る触媒組成物は、本発明の組成物;少なくとも1種のアルミナ;少なくとも1種のPGM(例えば、白金)を含む。
- SCRとして使用され得る触媒組成物は、本発明の組成物;少なくとも1種の酸化銅または酸化鉄を含むゼオライト;ベーマイトを含む。
- LNTとして使用され得る触媒組成物は、本発明の組成物;少なくとも1種のセリウムとバリウムの複合酸化物;少なくとも1種のアルミナ;少なくとも1種のPGM(例えば、白金とパラジウムの組み合わせ)を含む。
- LNTとして使用され得る触媒組成物は、本発明の組成物;少なくとも1種のセリウムとバリウムの複合酸化物;少なくとも1種のPGM(例えば白金とパラジウムの組み合わせ)を含む。
【0075】
調製プロセス
本発明はまた、本発明の組成物を調製するためのプロセスに関する。該プロセスは、以下の工程を含む:
(a)工程(a)の終了時に、酸化物当量で表される反応混合物中のアルミニウム濃度が0.5 wt% ~ 4.0 wt%になるように、以下を、最初にpH0.5~4.0または0.5~3.5の硫酸アルミニウム水溶液を含むタンクに攪拌しながら導入し:
(a1)アルミン酸ナトリウム水溶液を、該反応混合物のpHが8.0~10.0、またはさらに8.5~9.5になるまで導入し;
(a2)または、同時に、(i)硫酸アルミニウム水溶液及び(ii)アルミン酸ナトリウム水溶液を、該反応混合物のpHが6.5~10.0、またはさらに7.0~8.0または8.5~9.5になるまで導入し;
(b)硫酸アルミニウム水溶液及びアルミン酸ナトリウム水溶液の同時導入の後に、その導入速度は、該反応混合物の平均pHが工程(a)の目標pH範囲内に維持されるような速度であり;
工程(a)及び工程(b)での該反応混合物の温度が50℃~70℃であり;
(c)工程(b)の終了時に、任意に、該反応混合物のpHを7.5~10.5、またはさらに8.0~9.5または9.5~10.5の値に調整し;
(d)前記反応混合物を濾過し、回収された固体を洗浄し;
(e)少なくとも1種のセリウムの塩を工程(d)の終了時に得られた固体に接触させ;
(f)工程(e)の終了時に得られた分散液を乾燥させ;
(g)工程(f)から得られた固体を空気中で焼成する。
該プロセスは、以下のことを特徴とする:
- 組成物C1及び組成物C2の場合、少なくとも1種のセリウムの塩を工程(e)で添加し、また工程(d)の前に添加してもよく;工程(e)で添加されるセリウムの塩の割合αは、20%~80%、好ましくは50%~80%であり;αは、次の式 α = 工程(e)での添加量/セリウムの総添加量×100で計算され;
- 組成物C2の場合、少なくとも1種のランタンの塩を工程(d)の前または工程(f)で添加し;また
- 工程(d)の後及び工程(e)の前に、前記固体は、機械的にまたは超音波で処理されても、サイズが実質的に減少しない。
【0076】
最初にタンク内に存在する酸性水溶液の調製
タンクに最初に含まれる酸性水溶液は、硫酸アルミニウムを含み、そのpHが0.5~4.0またはさらに0.5~3.5である。
【0077】
以下で工程(e)に関して開示されるように、少なくとも1種のセリウムの塩は、工程(e)で、工程(d)の終了時に得られた固体と接触させることによって添加され、また、前記タンク内に最初に存在する酸性水溶液中にも存在し得る。その場合、最初にタンクに含まれる酸性水溶液は、硫酸アルミニウム及び少なくとも1種のセリウムの塩を含み、そのpHが0.5~4.0またはさらに0.5~3.5である。
【0078】
好ましくは、酸化物当量で表される、最初にタンクに含まれる酸性溶液中のアルミニウム濃度は、0.01 wt% ~ 2.0 wt%、またはさらに0.01 wt% ~ 1.0 wt%または0.10 wt% ~ 1.0 wt%である。
【0079】
最初にタンクに含まれる酸性水溶液は、1つの実施例に開示された酸性水溶液であってもよい。例えば、前記酸性水溶液は、pH2.5の、かつ、酸化物当量(Al2O3)で表されるアルミニウム濃度が0.13 wt%である硫酸アルミニウム及び硝酸セリウム(III)からなる溶液であってもよい。
【0080】
工程(a)
工程(a)では、工程(a)の終了時に、酸化物当量で表される反応混合物中のアルミニウム濃度が0.5 wt% ~ 4.0 wt%になるように、以下を、最初にpH0.5~4.0またはさらに0.5~3.5の硫酸アルミニウムの酸性水溶液を含むタンクに攪拌しながら導入する工程:
(a1)アルミン酸ナトリウム水溶液を、反応混合物のpHが8.0~10.0、またはさらに8.5~9.5になるまで導入し、または、
(a2) (i)硫酸アルミニウム水溶液及び(ii)アルミン酸ナトリウム水溶液を、反応混合物のpHが6.5~10.0、またはさらに7.0~8.0または8.5~9.5になるまで同時に導入する;
【0081】
工程(a)は、2つの実施形態(a1)または(a2)に従って行われる。実施形態(a1)によれば、アルミン酸ナトリウム水溶液を撹拌しながら導入する。
【0082】
実施形態(a2)によれば、(i)硫酸アルミニウム水溶液及び(ii)アルミン酸ナトリウム水溶液を撹拌しながら同時に導入する。
【0083】
好ましくは、前記アルミン酸ナトリウム水溶液は、析出したアルミナを含まない。好ましくは、該アルミン酸ナトリウムのNa20/Al2O3比が、1.20以上、例えば、1.20~1.40である。
【0084】
前記アルミン酸ナトリウム水溶液のアルミニウム濃度は、15.0 wt% ~ 35.0 wt%、より具体的には15.0 wt% ~ 30.0 wt%、またはさらに20.0 wt% ~ 30.0 wt%であってもよい。前記硫酸アルミニウム水溶液のアルミニウム濃度は、1.0 wt% ~ 15.0 wt%、より具体的には5.0 wt% ~ 10.0 wt%であってもよい。
【0085】
工程(a)の終了後、酸化物当量で表される反応混合物のアルミニウム濃度は、0.5 wt% ~ 4.0 wt%である。該アルミニウム濃度は、より具体的には1.7 wt% ~ 2.0 wt%であってもよい。該アルミニウム濃度は、1つの実施例に開示された通りであってもよい。
【0086】
工程(a)では、前記溶液の導入時間は、通常、2分間~30分間である。
【0087】
工程(a)では、アルミン酸ナトリウム水溶液の導入は、反応混合物のpHを上昇させる効果がある。特に、実施形態(a1)では、アルミン酸ナトリウム水溶液は、例えば、少なくとも1つの導入カニューレを介して、反応媒体に直接導入されてもよい。特に、実施形態(a2)では、前記2つの溶液は、例えば、少なくとも2つの導入カニューレを介して、反応媒体に直接導入されてもよい。
【0088】
これら2つの実施形態(a1)及び(a2)では、前記溶液は、好ましくは、反応器のよく攪拌されたゾーン、例えば、攪拌ロータに近いゾーンに導入され、これにより、反応混合物中に導入された溶液は効率的に混合される。実施形態(a2)では、溶液が少なくとも2つの導入カニューレを介して導入されるときに、反応混合物中に2つの溶液を導入する注入点が分配される。これにより、該溶液が効率的に混合物中で希釈される。従って、例えば、反応混合物への該溶液の注入点が直径方向に対向するように、2つのカニューレをタンク内に配置してもよい。
【0089】
工程(b)
工程(b)では、硫酸アルミニウム水溶液及びアルミン酸ナトリウム水溶液を同時に導入する。溶液の導入速度は、反応混合物の平均pHが工程(a)での目標pH範囲内に維持するように調整される。従って、平均pHの目標値は、以下の通りである。
- 工程(a)において実施形態(a1)に従った場合、8.0~10.0、またはさらに8.5~9.5
- 工程(a)において実施形態(a2)に従った場合、6.5~10.0、またはさらに7.0~8.0または8.5~9.5
【0090】
用語"平均pH"は、工程(b)の間に連続的に記録される反応混合物のpH値の算術平均を意味する。
【0091】
好ましくは、アルミン酸ナトリウム水溶液は、反応混合物の平均pHが目標値と等しくなるように調整された流量で硫酸アルミニウム水溶液と同時に導入される。pHを調整するためのアルミン酸ナトリウム水溶液の流量は、工程(b)の過程で変動し得る。
【0092】
2つの溶液の導入時間は、10分間~2時間、またはさらに30分間~90分間であってもよい。溶液の導入流量または2つの溶液の導入流量は、一定であってもよい。
【0093】
工程(a)及び工程(b)の反応混合物の温度は、50℃~70℃である。これを行うために、溶液導入を開始する前、工程(a)においてタンクに最初に含まれる溶液を予め加熱してもよい。また、工程(a)及び工程(b)において、タンク内に導入される溶液を予め加熱しておいてもよい。
【0094】
工程(c)
工程(c)では、任意に、塩基性水溶液または酸性水溶液を添加することによって、反応混合物のpHを7.5~10.5、またはさらに8.0~9.0または9.0~10.0の値に調整する。
【0095】
pHを調整するために用いられる酸性水溶液は、鉱酸の水溶液、例えば硫酸、塩酸、または硝酸の水溶液からなるものであってもよい。また、前記酸性水溶液は、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の酸性アルミニウム塩の水溶液からなるものであってもよい。
【0096】
pHを調整するために用いられる塩基性水溶液は、ミネラル塩基の水溶液、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはアンモニア水からなるものであってもよい。また、前記塩基性水溶液は、アルミン酸ナトリウム等の塩基性アルミニウム塩の水溶液からなるものであってもよい。好ましくは、アルミン酸ナトリウム水溶液を用いる。
【0097】
好ましくは、pHは、
(C1)目標pHに達するまでの硫酸水溶液の導入及びアルミン酸ナトリウム水溶液の導入の継続;または
(C2)目標pHに達するまでのアルミン酸ナトリウム水溶液の導入及び硫酸アルミニウム水溶液の導入の継続
を停止することによって調整する。
【0098】
一実施形態によれば、硫酸アルミニウム水溶液の導入は停止され、アルミン酸ナトリウム水溶液の導入は、7.5~10.5、またはさらに8.0~9.5または9.5~10.5の目標pHに到達するまで継続される。工程(c)の持続時間は、変化し得る。該持続時間は、5分間~30分間であってもよい。
【0099】
工程(d)
工程(d)では、反応混合物を濾過する。前記反応混合物は、一般的にスラリーの形態である。フィルター上に回収された固体を水で洗浄する。これを行うために、最低温度50℃の温水を使用してもよい。
【0100】
工程(d)の後及び工程(e)の前に、固体は、機械的または超音波で処理されても、そのサイズは実質的に減少しない。一実施形態によれば、"サイズの実質的な減少"という表現は、工程(d)後のサイズD50と工程(e)の前のサイズD50との間の絶対値の差が5.0 μm未満、より好ましくは2.0 μm未満であることを意味する。知られているように、機械的処理(ミリング等)または超音波処理は、固体のサイズに影響を及ぼし、固体のサイズを実質的に減少させる効果がある。これに対して、固体またはその分散体を搬送または圧送することは、このような実質的な減少を伴わない。
【0101】
工程(e)
工程(e)では、工程(d)の終了時に得られた固体に少なくとも1種のセリウムの塩を接触させる。前記固体の水性分散液にセリウムの塩を簡便に添加する。
【0102】
前記セリウムの塩は、塩化セリウム、酢酸セリウム、及び硝酸セリウムからなる群から選択してもよい。好ましくは、前記セリウムの塩は、Ce(III)の塩である。前記セリウムの塩は、硝酸セリウム(III)または酢酸セリウム(III)であってもよい。
【0103】
また、工程(d)の前にセリウムの塩を添加してもよい。例えば、タンク内に最初に存在する酸性水溶液(前記を参照)中にセリウムの塩が存在していてもよい。また、これを工程(a)または工程(b)において、例えば硫酸アルミニウムを含有する溶液に添加してもよい。
【0104】
工程(e)で添加されるセリウムの塩の割合αは、20%~80%、好ましくは30%~80%、さらに好ましくは50%~80%である。αは、次の式:α = 工程(e)での添加量 / セリウムの総添加量 × 100で算出される。αは、1つの実施例に開示された通りであってもよい。
【0105】
組成物C2については、工程(d)の前に、または工程(e)において、工程(d)の終了時に得られた固体またはその分散液に少なくとも1種のランタンの塩を添加してもよい。
【0106】
セリウムの塩及びランタンの塩は、存在すれば、水溶液の状態で簡便に導入される。使用され得るランタンの塩としては、例えば、硝酸ランタンが挙げられる。
【0107】
工程(f)
工程(f)では、工程(e)からの分散液を乾燥させる。
【0108】
好ましくは、工程(f)では、工程(e)からの分散液を噴霧・乾燥する。噴霧乾燥の利点として、粒子に制御された粒度分布を与える。また、この乾燥方法によれば、生産効率が良好である。これは、分散液を、チャンバ内を循環する高温ガスの流れ(例えば、熱風の流れ)における液滴のミストとして噴霧する。噴霧の質は、液滴のサイズ分布、ひいては乾燥粒子のサイズ分布を制御する。前記噴霧は、公知の任意の噴霧器を使用して行うことができる。噴霧装置は、主にタービン及びノズルの2種類がある。本プロセスにおいて実施され得る様々な噴霧技術に関しては、特に、"噴霧乾燥"と題されたマスターズによる標準マニュアル(第2版、1976年、ジョージ・ゴドウィン発行、ロンドン)を参照してもよい。当業者が変更できる動作パラメータは、特に次の通りである:噴霧器に入る分散液の流量及び温度、高温ガスの流量、圧力、湿度、及び温度。ガスの入口温度は、一般的に100℃~800℃であり、ガスの出口温度は、一般的に80℃~150℃である。
【0109】
工程(f)の終了時に回収された粉末のD50は、一般的に2.0 μm ~ 80.0 μmである。このサイズは、噴霧器を出る液滴のサイズ分布に関連される。噴霧器の蒸発能力は、一般的に、チャンバのサイズに関連される。従って、実験規模(Buchi B 290)では、D50は2.0 μm ~ 15.0 μmであってもよい。より大規模では、D50は15.0 μm ~ 80.0 μmであってもよい。
【0110】
工程(q)
工程(g)では、工程(f)から得られた固形物を空気中で焼成する。前記焼成の目的は、前の工程で添加された成分を酸化物に変換し、組成物の結晶化度を高めることである。焼成温度は、一般的に500℃~1000℃、より具体的には800℃~1000℃である。焼成時間は、一般的に1時間~10時間である。
【0111】
焼成温度が高すぎると、比表面積と平均結晶子サイズの両方に影響を与えることを念頭に置き、前記成分を酸化物に変換し、組成物の結晶化度を高めるために、焼成温度と焼成時間のバランスを調整する必要がある。実施例の1つに挙げた焼成条件は、非常に良好なバランスを提供するので使用してもよい。
【0112】
2つの工程(f)及び(g)を同じ装置内で実施し、工程(e)から得られた分散液に乾燥と焼成の両方を行うための熱処理を施すことが考えられる。
【0113】
好ましくは、工程(g)の終了時(即ち、焼成の終了時)回収される組成物のD50は、一般的に2.0 μm ~ 80.0 μmである。そのD90は、一般的に150.0 μm以下、より具体的には100.0 μm以下である。
【0114】
第2の実施形態によれば、工程(g)の終了時、D50は、15.0 μm ~ 80.0 μm、またはさらに20.0 μm ~ 60.0 μmであってもよい。D90は、40.0 μm ~ 150.0 μm、またはさらに50.0 μm ~ 100.0 μmであってもよい。該実施形態は、むしろ、工程(e)がより大規模で実行されるときに実行されてもよい。
【0115】
また、本プロセスは、前工程で得られた固体を粉砕して固体の粒径を調整する最終工程を含んでもよい。ナイフミル、エアジェットミル、ハンマーミル、またはボールミルを使用してもよい。好ましくは、粉砕物のD50は、一般的に2.0 μm ~ 15.0 μmである。そのD90は、20.0 μm ~ 60.0 μm、またはさらに25.0 μm ~ 50.0 μmであってもよい。
【0116】
本発明の組成物は、粉末状態である。
【0117】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示は、用語を不明確にし得る程度に、本願明細書と矛盾する場合には、本明細書が優先されるものとする。
【実施例】
【0118】
比表面積の測定
本明細書の続きにおいて、用語"比表面積"は、窒素吸着によって、アメリカ化学会誌、60,309(1938)に記載されているBrunauer-Emmett-Teller法から確立された標準ASTM D 3663-03に従って測定されるBET比表面積を意味する。比表面積は、例えば、Micromeritics社のTristar II 3020機械を使用してメーカーの取扱い説明書に従って自動的に測定される。試料を真空下、250℃で90分間(例えば、50 mmHgの圧力に達するまで)前処理する。該処理により、表面の物理的に吸着された揮発性種(例えばH20等)を除去することができる。
【0119】
水銀(Hgポロシメトリー)による多孔度の測定
該測定は、水銀圧入装置を用いて行われる。この場合、粉末針入度計を備えた超小型自動細孔IV 9520機械を使用し、メーカーの取扱い説明書に従った。次のパラメータを使用した:使用した針入度計:3.2 ml (Micromeritics基準:針入度計タイプNo. 8);毛細管容積:0.412 ml;最大圧力("ヘッド圧"):4.68 psi;接触角:130°;水銀の表面張力:485ダイン/cm;水銀の密度:13.5335 g/ml。測定開始時に、試料に50 mmHgの真空を5分間印加する。平衡時間は、次の通りである:低圧範囲(1.3 psi~ 30 psi):20秒間;高圧範囲(30 psi ~ 60 000 psi):20秒間。測定前に、試料を200℃で120分間処理し、表面の物理的に吸着された揮発性種(例えばH20等)を除去する。該測定から細孔容積を推定し得る。
【0120】
N
2
ポロシメトリーによる多孔度の測定
窒素多孔度の測定は、Micromeritics社のTristar II 3020装置を使用し、メーカーのガイドラインに従って行った。Harkins-Jura則を利用したBarett、Joyner、及びHalenda (BJH)の方法を使用した。結果の分析は、脱着曲線上で行われる。物理的に吸着された揮発性種は、測定前に除去される。
【0121】
X線回折
銅光源(CuKαl、λ=1.5406オングストローム) を備えたX線回折装置X'Pert Proを使用した。
【0122】
粒径(D10、D50、及びD90)の測定
粒度測定を行うには、Malvern Mastersizer 2000または3000のレーザー回折粒度分析装置(該装置に関する詳細は、https://www.malvernpanalytical. com/fr/products/product-range/mastersizer-range/mastersizer-30に掲載されている)を使用する。該レーザー回折の技術では、レーザービームが分散粒子の試料を通過する間に散乱された光の強度が測定される。レーザービームは、試料を透過し、散乱光の強度は、角度の関数として測定される。次いで、回折強度を分析し、Mie散乱理論を利用して粒径を計算する。該測定により、容積をベースとしたサイズ分布を得ることができ、そこからパラメータD10、D50及びD90を推定する。
【0123】
本発明の組成物の調製のさらなる詳細は、以下の例示的な実施例で見出されるであろう。実施例1~3では、本発明の方法に従って、最初に硫酸アルミニウム及び硝酸セリウム(III)の酸性水溶液を充填した反応器を用いて本組成物を調製した。(e)工程では、残りの硝酸セリウム(III)を導入した。比較例4では、最初にタンク内に存在する酸性溶液中に硝酸セリウム(III)を全て導入した。続いて、本発明の実施形態(a1)を行った。
【0124】
実施例1:Al
2
O
3
(92.0%)及びα=50%のCeO
2
(8.0 wt%)を含む組成物
攪拌された反応器に112.1 kgの脱イオン水を導入し、65℃に加熱する。この温度を工程(a)から工程(c)にわたって維持する。56.23 kgの硫酸アルミニウム溶液(アルミナ(Al2O3)濃度:8.3 wt%)、2.44 kgの硝酸セリウム(III)溶液(セリア(CeO2)濃度:29.0 wt%)、及び860 gの脱イオン水からなる酸性水溶液の混合物を調製する。
【0125】
最初にタンクに含まれる酸性水溶液の調製
1.9 kgの酸混合物を、撹拌ロータに近い導入カニューレを介して392.9 gの溶液/分の流量で導入する。導入終了時、反応器内のpHは約2.5であり、酸化物として表されるアルミニウム濃度は0.13 wt%(Al2O3)である。その後、該酸混合物の導入を停止する。
【0126】
工程(a)では、酸混合物を1.113 kgの溶液/分の流量で、同時に、アルミン酸ナトリウム溶液(アルミナ (Al2O3)濃度:24.9 wt%、Na2O/Al2O3モル比:1.27)を1.255 kgの溶液/分の流量で、攪拌ロータに近い第2の導入カニューレを介して、pH 9.0に達するまで導入する。該反応混合物の酸化物当量で表されるアルミニウム濃度は、1.93%である。
【0127】
工程(b)では、pHが9.0に維持されるようにアルミン酸ナトリウム溶液を調整しながら、酸性溶液の導入速度を1.113 kgの溶液/分に維持する。該工程は、46分間持続する。
【0128】
工程(c)では、酸混合物の導入を停止し、327 gの溶液/分の流量でアルミン酸ナトリウム溶液の添加をpH 10.3に達するまで継続する。該アルミン酸ナトリウム溶液の添加を停止する。
【0129】
工程(d)では、反応スラリーを真空フィルター上に注入する。濾過終了時に、ケーキを65℃の脱イオン水で洗浄する。
【0130】
工程(e)では、前記ケーキを脱イオン水に再分散させて、酸化物(Al2O3)濃度が約9 wt%の懸濁液を得る。酸化物(CeO2)濃度が29.0 wt%の硝酸セリウム溶液を調製する。該溶液を攪拌しながら、工程(e)から得られた懸濁液に添加し、8.0 wt%のCeO2/(CeO2+Al2O3)質量比を得る。
【0131】
工程(f)では、工程(e)から得られた懸濁液を噴霧・乾燥して乾燥粉末を得る。
【0132】
工程(g)では、噴霧・乾燥された粉末を850℃で2時間焼成する(昇温速度:3℃/分) 。
【0133】
実施例2: Al
2
O
3
(88.0%)及びα=33%のCeO
2
(12.0 wt%)を含む組成物
攪拌された反応器に108 kgの脱イオン水を導入し、65℃に加熱する。この温度を工程(a)から工程(c)にわたって維持する。53.88 kgの硫酸アルミニウム溶液(アルミナ(Al2O3)濃度:8.3 wt%)、4.88 kgの硝酸セリウム(III)溶液(セリア(CeO2)濃度:29.0 wt%)、及び6.46 kgの脱イオン水からなる酸混合物を調製する。
【0134】
最初にタンクに含まれる酸性水溶液の調製
1.96 kgの酸混合物を、撹拌ロータに近い導入カニューレを介して392.9 gの溶液/分の流量で導入する。導入終了時、反応器内のpHは約2.5であり、酸化物として表されるアルミニウム濃度は0.12 wt%(Al2O3)である。その後、該酸混合物の導入を停止する。
【0135】
工程(a)では、酸混合物を1.223 kgの溶液/分の流量で、同時に、アルミン酸ナトリウム溶液(アルミナ (Al2O3)濃度:24.9 wt%、Na2O/Al2O3モル比:1.27)を1.203 kgの溶液/分の流量で、攪拌ロータに近い第2の導入カニューレを介して、pH 9.0に達するまで導入する。該反応混合物の酸化物当量で表されるアルミニウム濃度は、1.88%である。
【0136】
工程(b)では、pHが9.0に維持されるようにアルミン酸ナトリウム溶液を調整しながら、酸性溶液の導入速度を1.223 kgの溶液/分に維持する。該工程は、46分間持続する。
【0137】
工程(c)では、酸混合物の導入を停止し、313 gの溶液/分の流量でアルミン酸ナトリウム溶液の添加をpH 10.3に達するまで継続する。該アルミン酸ナトリウム溶液の添加を停止する。
【0138】
工程(d)では、反応スラリーを真空フィルター上に注入する。濾過終了時に、ケーキを65℃の脱イオン水で洗浄する。
【0139】
工程(e)では、前記ケーキを脱イオン水に再分散させて、酸化物(Al2O3)濃度が約9 wt%の懸濁液を得る。酸化物(CeO2)濃度が29.0 wt%の硝酸セリウム(III)溶液を調製する。該溶液を攪拌しながら、工程(e)から得られた懸濁液に添加し、Ce0/(CeO2+ Al2O3)質量比が12 wt%の目的組成物を得る。
【0140】
工程(f)では、工程(e)から得られた懸濁液を噴霧・乾燥して乾燥粉末を得る。
【0141】
工程(g)では、噴霧・乾燥された粉末を850℃で2時間焼成する(昇温速度:3℃/分)。
【0142】
実施例3:Al
2
O
3
(80.0%)及びα=60%のCeO
2
(20.0 wt%)を含む組成物
攪拌された反応器に108 kgの脱イオン水を導入し、65℃に加熱する。この温度を工程(a)から工程(c)にわたって維持する。53.88 kgの硫酸アルミニウム溶液(アルミナ(Al2O3)濃度:8.3 wt%)、4.88 kgの硝酸セリウム溶液(セリア(CeO2)濃度:29.0 wt%)、及び6.46 kgの脱イオン水からなる酸混合物を調製する。
【0143】
最初にタンクに含まれる酸性水溶液の調製
1.96 kgの酸混合物を、撹拌ロータに近い導入カニューレを介して392.9 gの溶液/分の流量で導入する。導入終了時、反応器内のpHは約2.5であり、酸化物として表されるアルミニウム濃度は0.12 wt%(Al2O3)である。その後、該酸混合物の導入を停止する。
【0144】
工程(a)では、酸混合物を1.223 kgの溶液/分の流量で、同時に、アルミン酸ナトリウム溶液(アルミナ (Al2O3)濃度:24.9 wt%、Na2O/Al2O3モル比:1.27)を1.203 kgの溶液/分の流量で、攪拌ロータに近い第2の導入カニューレを介して、pH 9.0に達するまで導入する。該反応混合物の酸化物当量で表されるアルミニウム濃度は、1.88%である。
【0145】
工程(b)では、pHが9.0に維持されるようにアルミン酸ナトリウム溶液を調整しながら、酸性溶液の導入速度を1.223 kgの溶液/分に維持する。該工程は、46分間持続する。
【0146】
工程(c)では、酸混合物の導入を停止し、313 gの溶液/分の流量でアルミン酸ナトリウム溶液の添加をpH 10.3に達するまで継続する。該アルミン酸ナトリウム溶液の添加を停止する。
【0147】
工程(d)では、反応スラリーを真空フィルター上に注入する。濾過終了時に、ケーキを65℃の脱イオン水で洗浄する。
【0148】
工程(e)では、前記ケーキを脱イオン水に再分散させて、酸化物(Al2O3)濃度が約9 wt%の懸濁液を得る。酸化物(CeO2)濃度が29 wt%の硝酸セリウム溶液を調製する。該溶液を攪拌しながら、工程(e)から得られた懸濁液に添加し、Ce02/(CeO2+Al2O3)質量比が20 wt%の目的組成物を得る。
【0149】
工程(f)では、工程(e)から得られた懸濁液を噴霧・乾燥して乾燥粉末を得る。
【0150】
工程(g)では、噴霧・乾燥された粉末を850℃で2時間焼成する(昇温速度:3℃/分)。
【0151】
実施例4(比較):Al
2
O
3
(80.0%)及びα=0%(工程(e)にセリウムを添加せず)のCeCO
2
(20.0 wt%)を含む組成物
撹拌された反応器に97.6 kgの脱イオン水を導入し、65℃に加熱する。この温度を工程(a)から工程(c)にわたって維持する。46.86 kgの硫酸アルミニウム溶液(アルミナ(Al2O3)濃度:8.3 wt%)、12.21 kgの硝酸セリウム溶液(セリア(CeO2)濃度:29.0 wt%)、及び23.28 kgの脱イオン水からなる酸混合物を調製する。
【0152】
最初にタンクに含まれる酸性水溶液の調製
1.96 kgの酸混合物を、撹拌ロータに近い導入カニューレを介して392.9 gの溶液/分の流量で導入する。導入終了時、反応器内のpHは約2.5であり、アルミナ濃度は、0.09 wt%アルミナ(Al2O3)である。その後、該酸混合物の導入を停止する。
【0153】
工程(a)では、酸混合物を1.554 kgの溶液/分の流量で、同時に、アルミン酸ナトリウム溶液(アルミナ (Al2O3)濃度:24.9 wt%、Na2O/Al2O3モル比:1.27)を1.046 kgの溶液/分の流量で、攪拌ロータに近い第2の導入カニューレを介して、pH 9.0に達するまで導入する。該反応混合物の酸化物当量で表されるアルミニウム濃度は、1.75%である。
【0154】
工程(b)では、pHが9.0に維持されるようにアルミン酸ナトリウム溶液を調整しながら、酸性溶液の導入速度を1.554 kgの溶液/分に維持する。該工程は、46分間持続する。
【0155】
工程(c)では、酸混合物の導入を停止し、272 gの溶液/分の流量でアルミン酸ナトリウム溶液の添加をpH 10.3に達するまで継続する。該アルミン酸ナトリウム溶液の添加を停止する。
【0156】
工程(d)では、反応スラリーを真空フィルター上に注入する。濾過終了時に、ケーキを65℃の脱イオン水で洗浄する。
【0157】
工程(e)では、前記ケーキを脱イオン水に再分散させて、酸化物(Al2O3)濃度が約9 wt%の懸濁液を得る。該工程では、セリウムが添加されない。
【0158】
工程(f)では、工程(e)から得られた懸濁液を噴霧・乾燥して乾燥粉末を得る。
【0159】
工程(g)では、噴霧・乾燥された粉末を850℃で2時間焼成する(昇温速度:3℃/分)。
【0160】
表1
TPV
*:900℃で2時間焼成した後にN
2ポロシメトリーで測定した細孔総容積
明らかに、本発明のプロセスにより、900℃及び1100℃で低い結晶子サイズの組成物を得ることができる。
【国際調査報告】