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特表2024-529568積層造形傾斜複合材移行継手を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-07
(54)【発明の名称】積層造形傾斜複合材移行継手を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/38 20210101AFI20240731BHJP
   B21C 37/00 20060101ALI20240731BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240731BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20240731BHJP
   B22F 10/64 20210101ALI20240731BHJP
   B22F 7/00 20060101ALI20240731BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20240731BHJP
   B23K 26/34 20140101ALI20240731BHJP
   B23K 26/32 20140101ALI20240731BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240731BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240731BHJP
   B22F 3/15 20060101ALI20240731BHJP
   B22F 10/34 20210101ALI20240731BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20240731BHJP
   C22C 1/04 20230101ALI20240731BHJP
   C22C 1/08 20060101ALI20240731BHJP
   C22C 1/00 20230101ALI20240731BHJP
   B22F 3/11 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B22F10/38
B21C37/00 B
B22F1/00 S
B22F10/28
B22F10/64
B22F7/00 Z
B23K26/21 Z
B23K26/34
B23K26/32
B33Y10/00
B33Y80/00
B22F3/15
B22F10/34
C22C33/02 101
C22C33/02 B
C22C1/04 B
C22C1/08 C
C22C1/00 S
B22F3/11
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570626
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(85)【翻訳文提出日】2023-01-16
(86)【国際出願番号】 US2021035855
(87)【国際公開番号】W WO2021247970
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】62/704,965
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502347102
【氏名又は名称】ウエストバージニア ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】WEST VIRGINIA UNIVERSITY
(71)【出願人】
【識別番号】594176833
【氏名又は名称】ユナイテッド ステイツ デパートメント オブ エナージィ
【氏名又は名称原語表記】United States Department of Energy
(71)【出願人】
【識別番号】522451355
【氏名又は名称】カーペンター テクノロジー コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【上記1名の代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(72)【発明者】
【氏名】リウ、シンポー
(72)【発明者】
【氏名】フォン、チーリー
(72)【発明者】
【氏名】ワン、イェンリー
(72)【発明者】
【氏名】ノヴォトナク、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】チエン、ハイヤン
【テーマコード(参考)】
4E168
4K018
【Fターム(参考)】
4E168BA35
4E168BA81
4E168BA86
4K018AA07
4K018AA10
4K018AA24
4K018BA04
4K018BA13
4K018EA11
4K018JA01
4K018KA07
4K018KA32
4K018KA63
(57)【要約】
【課題】傾斜複合材移行継手を製造する方法。
【解決手段】
積層造形傾斜複合材移行継手(AM-GCTJ)(300)の製造方法は、第1の合金A(100)から格子又は格子パターン(101)を準備することを含んでおり、格子又は格子パターン(101)は、格子又は格子パターン(101)内に細孔(110)を含む。格子パターンを、第1の端部から第2の端部まで構築するが、第2の端部よりも第1の端部で高密度であり、格子又は格子パターンの細孔寸法を増大させること及び/又は密度を減少させることによって密度を漸減させる。格子又は格子パターンの第2の端部に第2の合金B(200)粉末を添加する。第1の端部に向かって第2の合金B(200)粉末を充填する。AM-GCTJ(300)において第1の合金A(100)と第2の合金B(200)粉末との複合材を形成する。複合材を熱間静水圧プレス(HIP)に付して複合材を緻密化する。第2の合金B(200)は、AM-GCTJ(300)の第1の端部から第2の端部まで濃度が漸変する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形傾斜複合材移行継手(AM-GCTJ)(300)を製造する方法であって、当該方法が、
第1の合金A(100)から格子又は格子パターン(101)を準備するステップであって、格子又は格子パターン(101)が、格子又は格子パターン内に細孔(110)を含む、ステップと、
格子又は格子パターンの第1の端部から第2の端部まで格子又は格子パターン(101)を構築するステップであって、格子又は格子パターン(101)が、第2の端部よりも第1の端部でより緻密な密度を有し、格子又は格子パターン(101)が、第1の端部から第2の端部まで細孔寸法を増大させること及び格子又は格子パターン(101)を積層造形しながら格子又は格子パターン(101)の密度を減少させることの少なくとも1つによって密度を漸減する、ステップと
格子又は格子パターン(101)の第1の端部に第2の合金B(200)粉末を添加するステップと、
格子又は格子パターン(101)の第1の端部から第2の端部に向かって第2の合金B(200)粉末を充填するステップと、
AM-GCTJ(300)において第1の合金A(100)と第2の合金B(200)粉末との複合材を形成するステップと
前記複合材を熱間静水圧プレス(HIP)に付して緻密化するステップと
を含んでおり、第2の合金B(200)粉末が、AM-GCTJ(300)の第1の端部から第2の端部まで漸変する濃度を有する、方法。
【請求項2】
前記準備するステップが、選択的レーザー溶融(SLM)又は選択的レーザー焼結(SLS)の少なくとも1つによって前記格子又は格子パターン(101)を準備することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記充填するステップが、第2の合金Bを振動させて、前記格子又は格子パターン(101)の第1の端部から第2の端部に向かって落下させることを含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記準備するステップが、前記格子又は格子パターン(101)を第1の端部から第2の端部まで付加的に構築することによって、前記格子又は格子パターン(101)を準備することを含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記細孔(110)が、直径約数十マイクロメートル乃至サブミリメートルの範囲内の細孔寸法を有する、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】

格子又は格子パターン(101)の第2の端部に向かって第2の合金B(200)粉末を振動させるステップが、第2の合金B(200)粉末を超音波振動させるステップを含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
第2の合金B(200)粉末が、格子又は格子パターン(101)の第2の端部での約0%の濃度から格子又は格子パターン(101)の第1の端部での約100%の濃度まで漸変する、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
第1の合金A(100)がオーステナイト系ステンレス鋼を含み、第2の合金B(200)がクリープ強度強化フェライト鋼を含む、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
第1の合金A(100)がクリープ強度強化フェライト鋼を含み、第2の合金B(200)がオーステナイト系ステンレス鋼を含む、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
第1の合金A(100)がクリープ強度強化フェライト鋼を含み、第2の合金B(200)が超合金を含む、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
積層造形傾斜移行継手(AM-GCTJ)(300)であって、
第1の合金A(100)と、
第2の合金B(200)と、
移行継手(300)であって、移行継手(300)の第1の端部により高い濃度の第1の合金A(100)が配置され、移行継手(300)の第2の端部により高い濃度の第2の合金B(200)が配置される、移行継手(300)と、
移行継手の第1の端部と移行継手の第2の端部との間に配置された第1の合金A(100)と第2の合金B(200)との傾斜複合材移行部であって、第1の合金A(100)と第2の合金B(200)との傾斜複合材移行部が、移行継手の第1の端部から移行継手の第2の端部までの第1の合金Aと第2の合金Bとの傾斜移行を含む、第1の合金A(100)と第2の合金B(200)との傾斜複合材移行部と
を備える、積層造形傾斜移行継手(AM-GCTJ)(300)。
【請求項12】
第1の合金A(100)が移行継手の第1の端部で溶接されるように構成され、第2の合金B(200)が移行継手の第2の端部で溶接されるように構成される、請求項11に記載の積層造形傾斜移行継手(AM-GCTJ)(300)。
【請求項13】
移行継手の第1の端部から移行継手の第2の端部までの第1の合金Aと第2の合金Bとの傾斜移行が、第2の端部での第2の合金B約0%から第1の端部での第2の合金B約100%である、請求項11又は請求項12に記載の積層造形傾斜移行継手(AM-GCTJ)(300)。
【請求項14】
第1の合金A(100)がクリープ強度強化フェライト鋼を含み、第2の合金B(200)がオーステナイト系ステンレス鋼を含む、請求項11乃至請求項13のいずれか1項に記載の積層造形傾斜移行継手(AM-GCTJ)(300)。
【請求項15】
第1の合金A(100)がクリープ強度強化フェライト鋼を含み、第2の合金B(200)が超合金を含む、請求項11乃至請求項13のいずれか1項に記載の積層造形傾斜移行継手(AM-GCTJ)(300)。
【請求項16】
第1の合金A(100)と第2の合金B(200)との混合物を含む積層造形傾斜移行継手(AM-GCTJ)(300)であって、
第1の合金A(100)が、第1の合金A(100)の密度が漸変する格子又は格子パターン(101)を含み、格子又は格子パターン(101)が第1の端部及び第2の端部を有し、格子又は格子パターン(101)が1以上の細孔を含んでいて、1以上の細孔が約数十ミクロン乃至約サブミリメートルの範囲内の細孔径を有し、
格子又は格子パターン(101)が第2の端部で格子又は格子パターン(101)の第1の端部よりも緻密な密度を有していて、第2の端部から第1の端部まで細孔寸法を増大させること及び第2の端部から第1の端部まで層を付加的に構築するにつれて格子又は格子パターン(101)の密度を減少させることの少なくともいずれかによって体積比で0%から100%まで格子又は格子パターン(101)の密度が漸変し、
第2の合金B(200)が、格子又は格子パターン(101)の第2の端部に添加されて格子又は格子パターン(101)を有する複合材を形成し、複合材が、AM-GCTJの第2の端部での約0%合金BからAM-GCTJの第1の端部での約100%合金Bまでの合金Bの濃度を有する、積層造形傾斜移行継手(AM-GCTJ)(300)。
【請求項17】
第1の合金A(100)がクリープ強度強化フェライト鋼を含み、第2の合金B(200)がオーステナイト系ステンレス鋼を含む、請求項16に記載の積層造形傾斜移行継手(AM-GCTJ)(300)。
【請求項18】
第1の合金A(100)がクリープ強度強化フェライト鋼を含み、第2の合金B(200)が超合金を含む、請求項16に記載の積層造形傾斜移行継手(AM-GCTJ)(300)。
【請求項19】
第1の合金A(100)が移行継手の第1の端部で溶接されるように構成され、第2の合金B(200)が移行継手の第2の端部で溶接されるように構成される、請求項16乃至請求項18のいずれか1項に記載の積層造形傾斜移行継手(AM-GCTJ)(300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国連邦政府の支援研究に関する声明
本発明は、米国エネルギー省によって授与された契約DE-FE0031819に基づく米国政府の支援のもとになされたものである。米国政府は本発明に関して一定の権利を有する。
【0002】
本願は、2020年6月4日付けで出願された米国特許仮出願第62/704965号に基づく優先権を主張する。米国特許仮出願第62/704965号の開示内容は、援用によって本特許出願の内容の一部をなす。
【0003】
本開示は、積層造形された傾斜複合材移行継手に関する。特に、本開示は、異種金属溶接のための積層造形傾斜複合材移行継手に関する。さらなる態様では、本開示は、先進超々臨界圧(A-USC:advanced ultra-supercritical)発電プラントにおける異種金属溶接のためのの積層造形傾斜複合材移行継手に関する。さらに、本開示は、積層造形傾斜複合材移行継手(AM-GCTJ:additively manufactured-graded composite transition joint)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0004】
2001年以降、米国エネルギー省(DOE)の石炭火力プログラムの一環として、国立エネルギー技術研究所(NETL)は、先進超々臨界圧(A-USC)ボイラ及びタービンシステムにおける次世代材料の特定及び開発のための「超々臨界圧ボイラシステム用先端材料の開発(Development of Advanced Materials for Ultra-supercritical Boiler Systems)」と題する研究プログラムを立ち上げている。これらのボイラ及びタービンシステムにおいて、それぞれ約760℃(1400°F)及び約35MPa(5000psi)の目標蒸気温度及び圧力で、一部のボイラ及びタービンシステムに比べて、二酸化炭素(CO)を含むすべての排出量を約20%削減できる。
【0005】
石炭火力A-USCシステムの課題は、材料及び製造技術の分野にある。ボイラの重要な材料部品として、過熱器管は過酷な使用条件に暴露され、燃焼側の石炭灰による腐食/侵食(エロージョン)、蒸気側の酸化及び剥離、クリープ強度、熱疲労強度並びに溶接性に関する厳格な要件を満たす必要がある。DOEのA-USCプログラムでは、合金740H及び合金282がA-USCシステムの部品のための候補として特定されている。したがって、これらのシステムの用途及び成功のために、特に異種金属溶接(DMW)における材料のための、是認できる製造及び溶接プロセスが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0308773号明細書
【発明の概要】
【0007】
以下に挙げるすべての態様、具体例及び特徴は、技術的に可能な方法で組合せることができる。
【0008】
本開示の一態様は、積層造形傾斜複合材移行継手(AM-GCTJ)を製造する方法であって、当該方法が、第1の合金Aから格子又は格子パターンを準備するステップであって、格子又は格子パターンが格子又は格子パターン内に細孔を含む、ステップと、格子又は格子パターンの第1の端部から第2の端部まで格子又は格子パターンを構築するステップであって、格子又は格子パターンが、第2の端部よりも第1の端部でより緻密な密度を有し、第1の端部から第2の端部まで細孔寸法を増大させること及び格子又は格子パターンを積層造形しながら格子又は格子パターンの密度を減少させることの少なくともいずれかによって格子又は格子パターンの密度が漸減する、ステップと、格子又は格子パターンの第1の端部に第2の合金B粉末を添加するステップと、格子又は格子パターンの第2の端部に向かって第2の合金B粉末を充填するステップと、AM-GCTJにおいて第1の合金Aと第2の合金B粉末との複合材を形成するステップと、複合材を高温静水圧プレス(HIP)に付して複合材を緻密化するステップとを含んでおり、第2の合金B粉末が、AM-GCTJの第1の端部から第2の端部まで漸変する濃度を有する、方法を提供する。
【0009】
本開示の別の態様は、前記態様を包含し、準備するステップが、選択的レーザー溶融(SLM)又は選択的レーザー焼結(SLS)の少なくとも1つによって格子又は格子パターンを準備することを含む。
【0010】
本開示の別の態様は、前記いずれかの態様を包含し、充填するステップが、第2の合金Bを振動させて、格子又は格子パターンの第1の端部から第2の端部に向かって落下させることを含む。
【0011】
本開示の別の態様は、前記いずれかの態様を包含し、準備するステップが、第1の端部から第2の端部まで格子又は格子パターンを積層造形することによって、格子又は格子パターンを準備することを含む。
【0012】
本開示の別の態様は、前記いずれかの態様を包含し、細孔が、直径約数十マイクロメートル乃至サブミリメートルの範囲内の細孔寸法を有する。
【0013】
本開示の別の態様は、前記いずれかの態様を包含し、格子又は格子パターンの第2の端部に向かって第2の合金B粉末を振動させることが、第2の合金B粉末を超音波振動させることを含む。
【0014】
本開示の別の態様は、前記いずれかの態様を包含し、第2の合金B粉末が、格子又は格子パターンの第2の端部での約0%から格子又は格子パターンの第1の端部での約100%まで漸変する。
【0015】
本開示の別の態様は、前記いずれかの態様を包含し、第1の合金Aがオーステナイト系ステンレス鋼を含み、第2の合金Bがクリープ強度強化フェライト鋼を含む。
【0016】
本開示の別の態様は、前記いずれかの態様を包含し、第1の合金Aがクリープ強度強化フェライト鋼及びオーステナイト系ステンレス鋼を含み、第2の合金Bがオーステナイト系ステンレス鋼を含む。
【0017】
本開示の別の態様は、前記いずれかの態様を包含し、第1の合金Aがクリープ強度強化フェライト鋼及びオーステナイト系ステンレス鋼を含み、第2の合金Bが超合金を含む。
【0018】
本開示の一態様は、第1の合金Aと、第2の合金Bと、移行継手であって、移行継手の第1の端部により高い濃度の第1の合金Aが配置され、移行継手の第2の端部により高い濃度の第2の合金Bが配置される移行継手と、移行継手の第1の端部と移行継手の第2の端部との間に配置された傾斜複合材移行部材であって、第1の合金Aと第2の合金Bとの傾斜複合材移行部が、移行継手の第1の端部から移行継手の第2の端部までの第1の合金Aと第2の合金Bとの傾斜移行を含む、傾斜複合材移行部材とを備える、積層造形傾斜移行継手(AM-GCTJ)を提供する。
【0019】
本開示の別の態様は、前記態様を包含し、第1の合金Aが移行継手の第1の端部で溶接されるように構成され、第2の合金Bが移行継手の第2の端部で溶接されるように構成される。
【0020】
本開示の別の態様は、前記いずれかの態様を包含し、移行継手の第1の端部から移行継手の第2の端部まで第1の合金Aと第2の合金Bとの傾斜移行が、第2の端部での第2の合金B約0%から第1の端部での第2の合金B約100%である。
【0021】
本開示の別の態様は、前記いずれかの態様を包含し、第1の合金がクリープ強度強化フェライト鋼及びオーステナイト系ステンレス鋼を含み、第2の合金がオーステナイト系ステンレス鋼を含む。
【0022】
本開示の別の態様は、前記いずれかの態様を包含し、第1の合金がクリープ強度強化フェライト鋼及びオーステナイト系ステンレス鋼を含み、第2の合金が超合金を含む。
【0023】
本開示の一態様は、第1の合金Aと第2の合金Bとの混合物を含む積層造形傾斜移行継手(AM-GCTJ)を提供するが、第1の合金Aが、密度の漸変する格子又は格子パターンを含み、格子又は格子パターンが第1の端部及び第2の端部を有し、格子又は格子パターンが1以上の細孔を含み、1以上の細孔が約数十マイクロメートル乃至約サブミリメートルの範囲内の細孔径を有し、格子又は格子パターンが第2の端部で格子又は格子パターンの第1の端部よりも緻密な密度を有していて、第2の端部から第1の端部まで細孔寸法を増大させること及び第2の端部から第1の端部まで層を積層造形するにつれて格子又は格子パターンの密度を減少させることの少なくともいずれかによって体積比で0%から100%まで格子又は格子パターンの密度が漸変し、第2の合金Bが格子又は格子パターンの第2の端部に添加されて格子又は格子パターンを有する複合材を形成し、複合材が、AM-GCTJの第2の端部からAM-GCTJの第1の端部まで0%合金Bから100%合金Bへと滑らかに傾斜移行する。
【0024】
本開示の別の態様は、前記態様を包含し、第1の合金Aがクリープ強度強化フェライト鋼及びオーステナイト系ステンレス鋼を含み、第2の合金Bがオーステナイト系ステンレス鋼を含む。
【0025】
本開示の別の態様は、前記いずれかの態様を包含し、第1の合金Aがクリープ強度強化フェライト鋼及びオーステナイト系ステンレス鋼、第2の合金Bが超合金を含む。
【0026】
本開示の別の態様は、前記いずれかの態様を包含し、第1の合金Aが移行継手の第1の端部で溶接されるように構成され、第2の合金Bが移行継手の第2の端部で溶接されるように構成される。
【0027】
この発明の概要の欄に記載した態様も含めて、本開示に記載した2以上の態様を組合せて、本明細書に具体的に記載されていない実施形態としてもよい。
【0028】
1以上の実施形態の詳細を、添付の図面及び以下の説明に記載する。その他の特徴、目的及び利点は、発明の詳細な説明、図面並びに特許請求の範囲から明らかになろう。
【0029】
本開示の上記その他の特徴については、本開示の様々な実施形態について記載する添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができよう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本開示の一実施形態に係るA-USC発電プラント部品の概略図である。
図2】本開示の一実施形態に係るA-USCヘッダの斜視図である。
図3図3Aは、本開示の一実施形態に係る異種金属溶接部(DMW)の溶融境界又はボンド部割れ及び熱影響部(HAZ)損傷の概略図を示し、図3Bは、本開示の一実施形態に係るDMWにおける炭素欠乏に関連する溶融境界又はボンド部付近での局所的クリープ損傷の顕微鏡図を示す。
図4】本開示の一実施形態に係る傾斜複合材移行継手を積層造形するための、本開示の一実施形態に係る方法の概略流れ図を示す。
図5】本開示の一実施形態に係る移行継手設計のための統合計算溶接工学(ICWE:Integrated Computational Weld Engineering)モデルで採用される熱負荷サイクルのグラフを示す。
図6】本開示の一実施形態に係る、グレード91鋼とSS316とのHDMWにおける2通りのAM-GCTJ設計のICWEシミュレーション結果のグラフを示す。
図7】本開示の一実施形態に係る、A-USC発電プラントのヘッダにAM-GCTJを使用した例の斜視図を示す。
図8】本開示の一実施形態に係る、格子又は格子パターンの様々な例示的かつ非限定的な構成の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
まず、本開示の主題を明確に説明するため、積層造形傾斜複合材移行継手に関連する特性、性質及び構成要素について言及・説明する際に、ある用語を選択する必要がある。できるだけ、当技術分野で一般的な用語を、その通常の意味と一致するように用いる。別途記載しない限り、かかる用語は、本願の文脈及び添付の特許請求の範囲と一致する広義に解釈すべきである。ある構成要素を幾つかの異なる又は重複する用語を用いて言及することが多々あることは当業者には自明であろう。本明細書において、単一の部材として記載したものであっても、別の文脈では複数の構成要素からなるものとして記載することもある。或いは、本明細書のある箇所で複数の構成要素を含むものとして記載したものであっても、別の箇所では単一の部材として記載することもある。
【0032】
本明細書で用いる用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、開示内容を限定するものではない。本明細書において、単数形で記載したものであっても、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。本明細書において、「含む」及び/又は「備える」という用語は、記載した特徴、整数、ステップ、操作、構成要素及び/又は部品が存在することを示し、他の1以上の特徴、整数、ステップ、操作、構成要素、部品及び/又はこれらの群の存在又は追加を除外するものではない。「任意」又は「適宜」という用語は、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいこと或いはその用語に続いて記載された部品又は構成要素が存在しても存在しなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象又は状況が起こる場合と起こらない場合並びにその部品又は構成要素が存在する場合と存在しない場合とを包含する。
【0033】
ある構成要素又は層が別の構成要素又は層に「配置」、「係合」、「接続」又は「結合」しているという場合、その別の構成要素又は層に直接、配置、係合、接続又は結合していてもよいし、或いは介在する構成要素又は層が存在していてもよい。対照的に、ある構成要素が別の構成要素又は層に「直接配置」、「直接係合」、「直接接続」又は「直接結合」しているという場合、介在する要素又は層は存在しない。構成要素間の関係について説明するための他の用語(例えば、「~の間」と「直接間」、「隣接」と「直接隣接」など)も同様に解釈される。本明細書で用いる「及び/又は」という用語は、記載されたもの1以上の任意及びすべての組合せを包含する。
【0034】
堅牢な異種金属溶接(DMW)によって、先進超々臨界圧(A-USC)システムを実現することができる。堅牢なDMWは、既存のA-USC発電プラントの改造及び改修にも使用でき、その強化に資することができる。再生可能エネルギーが手頃な価格になって電力網に組み込まれるようになったため、電力業界は化石石炭及び天然ガス発電プラントを、再生可能エネルギーと共に柔軟な運転モードで運転できるように改造及び改修する必要性に迫られる可能性がある。柔軟な運転モードによって、再生可能エネルギー源に固有の断続的で不安定な発電を使用できるようになる。既存の化石燃料発電プラントでサイクル運転条件が増加すると、DMWにおいて破損が起こりかねない。サイクル運転は、DMWを応力条件におく。ある種のサイクル運転では、応力条件がクリープ優勢応力から熱クリープ疲労優勢に移行することがある。DMWの溶融境界又はボンド部で弱化したミクロ組織は、溶融境界又はボンド部で融合した2種類の異なる材料の熱膨張率(CTE)の不一致に起因する高い繰返し応力に暴露される可能性がある。その結果、DMWの耐用年数及び性能が低下しかねない。
【0035】
そこで、本開示の一実施形態では、傾斜機能複合材移行継手は積層造形プロセスで形成される。本開示の一実施形態では、積層造形された異種金属溶接部(DMW)は、傾斜複合材移行継手を提供することができる。本開示の一実施形態に係る傾斜複合材移行継手は、DMWにおける組成上の物性要件を満すことができる。本開示の一実施形態に係る組成上の物性要件としては、限定されるものではないが、室温及び高温強度、耐クリープ性及び耐食性が挙げられる。さらに、本開示の一実施形態では、傾斜複合材移行継手は、積層造形された異種金属溶接部の両側の間でCTEの移行による応力集中を低減することができる。したがって、本開示の態様の一実施形態では、積層造形された異種金属溶接部は、DMWの割れ耐性及び熱クリープ疲労(TCF)耐性を向上させる。
【0036】
A-USCシステムでは、有益な組成上の物性要件に鑑みて、部材に超合金を使用することができる。本開示の一実施形態では、超合金として、限定されるものではないが、ニッケル(Ni)基超合金、鉄(Fe)基超合金、コバルト(Co)基超合金又はそれらの組合せを挙げることができる。さらに、A-USC材料は、オーステナイト系ステンレス鋼(ASS)、クリープ強度強化フェライト鋼(CSEFS)を、単独で或いはそれらの組合せ又は他の材料との組合せとして含むことができる。これらの材料は、A-USC構造のDMWの温度及び耐食性の要件に応じて、様々なDMW領域に設けることができる。その結果、材料間のDMWは、CTEの差による悪影響を軽減し、強化A-USCの設計、開発及び製造に資する可能性がある。
【0037】
例えば、本開示の実施形態を限定するものではないが、合金鋼の平均線CTEは約70°F~約1100°Fの温度域において約16.2μ/℃(9μ/°F)のオーダーであり、オーステナイト系ステンレス鋼は約34.2μ/℃(19μ/°F)である。室温から約595℃(1100°F)まで温度が変化すると、約0.1%の熱歪みが生じ、約150MPaの範囲内の熱応力が発生するが、これは典型的な許容運転応力の量よりも格段に高い値である。熱応力は時間経過とともに(数か月又は数年で)緩和されると予想されるので、約595℃(1100°F)の定常運転条件下でのDMW性能における印加応力に比べると、二次的な役割しか果たさず(クリープ優勢)、このことは過去数十年間にわたって化石発電プラントの慣例であった。一方、熱サイクル運転条件下では、かかる熱歪みは、緩和される前に生成及び蓄積し続ける。かなりの熱歪みの蓄積及び損傷は、熱クリープ疲労(TCF)に関連するサイクル運転下でより大きな役割を果たし、DMWの早期破損につながる可能性がある。したがって、DMW継手の熱応力は、増大したサイクル運転モード下での化石エネルギープラントの安全運転に新たな課題をもたらす。将来の運用のためDMWにおける熱応力を理解及び管理することによって、DMWの新規設置及び耐用年数増加を促進し得る。
【0038】
DMWの溶融境界又はボンド部をまたがる組成変化をなくすことによって、DMW破損を防ぐことができる。
【0039】
ニッケル基溶加材を含むDMWにおいて、クリープ及び/又はクリープ疲労割れによる破損は炭化物の形態に起因する。ステンレス鋼溶加材を含むDMWは、溶融境界又はボンド部近傍のいオーステナイト粒界に沿って形成される可能性のあるクリープ及び/又はクリープ疲労割れによる破損を呈する。
【0040】
本開示の実施形態は、傾斜(又は漸変)複合材移行継手(GCTJ)部材の製造方法を提供する。一実施形態では、GCTJは、GCTJによって接続される部品の金属の異なる特性(異なる物性及び熱特性など)に傾斜特性が適合する場合の異種金属の接続及び接合に用いることができる。別の実施形態では、GCTJは、化石発電プラントの増大するサイクル運転条件下での従来の異種金属溶接部(DMW)の早期破損の問題を費用効果的に解決することができる。
【0041】
積層造形GCTJ(AM-GCTJ)は、本開示の一実施形態では、次世代の先進超々臨界圧(A-USC)発電プラントに適している可能性がある。ある実施形態では、AM-GCTJは、既存の化石発電プラントにおける従来のDMWの改造又は交換による強化のために設けることができる。この改造又は交換により、サイクリングモードで当初の設計寿命を超えて安全かつ経済的な運転が可能となることがある。
【0042】
例えば、超合金とのクリープ強度強化フェライト鋼(CSEFS)又はオーステナイト系ステンレス鋼(ASS)を含む異種金属の溶接は、次世代A-USCシステムに用途を見出すことができる2種類の重要なDMWである。
【0043】
ある非限定的で例示的な実施形態では、オーステナイト系ステンレス鋼(ASS)は18%Cr-8%Niに基づくものである。本開示の一実施形態では、ASSとして、限定されるものではないが、Super304H又はSanicro25、及びそれらの均等物を挙げられる。
【0044】
別の非限定的な実施形態では、マルテンサイト鋼又はスーパーフェライト鋼としても知られるCSEFSとして、限定されるものではないが、グレード91鋼及びグレード92鋼が挙げられる。さらに、超合金として、限定されるものではないが、Ni基、Fe基及び/又はCo基超合金が挙げられる。
【0045】
積層造形傾斜複合材移行継手(AM-GCTJ)
A-USCシステムにおいて、DMWは、限定されるものではないが、CSEFS(一実施形態ではグレード91/92)とASS(一実施形態ではSuper304H)のような異種材料から形成されたシステムの特徴間に設けることができる。図1及び図2において、管10はヘッダ20に、最終段の過熱器/再熱器の入口に配置し得るニップル溶接部30で接続される。過熱器の設計条件は、本開示の非限定的な実施形態では、約387bar/640℃である。DMW寸法は、本開示の非限定的な実施形態では、約40mmの外径(OD)及び約8mmの厚さを有する。Ni基超合金(一実施形態では740H又はH0282)とASS(一実施形態ではSanicro25)のDMWは、最終段過熱器/再熱器出口におけるニップル溶接部30でのヘッダー20と管10とのものとし得る。過熱器の設計条件は、約387bar/670℃である。DMW寸法は外径(OD)約44mm及び厚さ約10mmとし得る。
【0046】
潜在的に望ましくないDMW特性は、本開示の一実施形態では、積層造形傾斜複合材移行継手(AM-GCTJ)300によって軽減し得る。本開示の一実施形態に係るAM-GCTJ300の一態様を図4に示す。
【0047】
溶接したままの状態でのDMWの溶融境界又はボンド部をまたいでのミクロ組織の変化は、急激な化学濃度勾配によることがある。図3Aは、グレード91鋼とNi基溶加材との間の熱影響部(HAZ)を示す。図3Bは、DMW溶融境界又はボンド部でのクリープ及び/又はクリープ疲労割れ破損を示す。クリープ及び/又はクリープ疲労割れは、DMWの異種合金間の溶融境界又はボンド部及びHAZに沿って発生することがある。クリープ及び/又はクリープ疲労割れは、CTEの不一致に起因する残留応力、外部応力及び熱応力の少なくとも1つに起因する可能性がる。CTEの不一致による熱応力は顕著なことがある。破損はHAZの損傷を伴うことがある。
【0048】
図4は、積層造形傾斜複合材移行部材(AM-GCTJ)300を形成するための積層造形プロセスを示す。最初に、積層造形傾斜複合材移行部材(AM-GCTP)が形成される。AM-GCTP300は、第1の合金(合金A)100及び第2の合金(合金B)200を含む。GCTPは、その構造に沿って、合金A100と合金B200の混合物が徐々に勾配変化して形成される。合金A100と合金B200の混合物の組成は、第1の端部での100%合金A100から第2の端部での100%合金B200であり、それらの端部間の領域では、第1の端部の実質的に全部合金B200から第2の端部の全部合金A100まで制御された濃度で移行する。したがって、合金A100及び合金B200は、合金A100と合金B200の混合物を含む意図的に構成された複合材料をなす。ただし、混合物は、これらの端部間に適宜他の添加物を含んでいてもよい。
【0049】
複合材における合金A100及び合金B200の移行、具体的には合金A100と合金B200の比率又は濃度は、AM-GCTPの第1の端部からAM-GCTPの第2の端部まで漸変する。濃度の漸変は、CTEの差に起因するような、DMWの化学的性状及び熱応力の急激な変化を軽減及び低減するためのものである。
【0050】
AM-GCTPを形成した後、AM-GCTPを、図1及び図2に示すような、2つの構造部材の間に配置し、それらに溶接して、AM-GCTJ300を形成してもよい。ある実施形態では、AM-GCTJ300は、DMWにおけるNi基超合金とCSEFSの間に形成できる。同様に、AM-GCTJ300は、DMWにおけるASSとCSEFSの間に形成することもできる。
【0051】
AM-GCTJ300の端部は、AM-GCTJを溶接すべき構造部材の材料と実質的に同様の化学的性状を有するので、2つの構造部材とAM-GCTJ300とをつなぐ溶接は、基本的に、CTEの一致を含めて、化学的性状の一致又は適合する2つの材料間で行われる。この同種材料の溶接により、DMWの溶融境界又はボンド部での化学組成変化及びCTEの不一致に起因する熱応力などの、DMWの早期破損を引き起こす要因を排除できる。
【0052】
別の実施形態は、AM-GCTJ300を製造するため積層造形(AM)プロセスによってAM-GCTPを製造することを含む。図4Aを参照すると、第1のプロセスステップは、合金A100から格子又は格子パターン101を形成することを含む。(本開示の一実施形態に係る、例示的かつ非限定的な格子又は格子パターン101を示す図8も参照されたい)。例示的な実施形態では、合金A100は、限定されるものではないが、ASSを含む。格子又は格子パターン101は合金A100から積層造形プロセスで製造できる。かかる積層造形プロセスとして、限定されるものではないが、選択的レーザー溶融(SLM)及び選択的レーザー焼結(SLS)のうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0053】
合金A100から形成された格子又は格子パターン101は細孔110を含む。格子又は格子パターン101の細孔110の寸法は変更することができる。細孔110の断面寸法は、約数十マイクロメートル乃至約サブミリメートルの範囲内とすることができる。格子又は格子パターン101は、格子又は格子パターンの第1の端部で緻密に形成し、格子又は格子パターン101の第2の端部で低密度に形成し得る。密度又は濃度は、体積比として表すことができる。密度/体積比は、格子又は格子パターン101の体積比を約0%から約100%まで漸減させる。この格子又は格子パターン101の体積比の漸減は、格子又は格子パターン101の上端に向かって積層造形する際に、細孔110の寸法を増大させること及び格子又は格子パターン101の密度を減少させることの少なくとも1つによって達成することができる。
【0054】
積層造形プロセスによって格子又は格子パターン101を形成した後、格子又は格子パターン101に合金B200粉末を供給することができる。合金B200粉末には、限定されるものではないが、グレード91鋼粉末が含まれる。合金B200粉末の供給は、格子又は格子パターン101の第1の端部、すなわち合金A100の密度の低い端部である(図4B)。合金B200粉末は、限定されるものではないが、鋼粉末(例えばグレード91鋼粉末)を含む。合金B200粉末を添加した後、格子又は格子パターン100に超音波エネルギーを印加して、格子又は格子パターン100内部に合金B200粉末を充填してもよく、充填は合金B200粉末を振動させることを含む。超音波エネルギーは、合金B200粉末を超音波振動させて、格子又は格子パターン101の細孔110を通して、格子又は格子パターン101の合金A100の最も密度が高い端部に向かって落下(振盪)させることによって、合金B200粉末を充填することができる。
【0055】
次に、合金A100及び合金B200を有する格子又は格子パターンは、熱間静水圧プレス(HIP)に付すことができる。HIP処理(図4C)は、格子又は格子パターン101内の合金A100及び合金B200を緻密化するために行われる。HIP処理は、格子又は格子パターンの合金A100及び合金B200の約100%密度を達成し、複合材を形成することができる。HIP処理の後、格子又は格子パターンにおける合金A100と合金B200の傾斜複合材移行は、格子又は格子パターン101の第1の端部から格子又は格子パターン101の第2の端部まで達成される。本開示の一実施形態に係る傾斜複合材移行部は、、格子又は格子パターン101の第1の端部から第2の端部まで約0~100%の合金A100から合金B200である。
【0056】
オークリッジ国立研究所(ORNL)の統合計算溶接工学(ICWE)モデリングツールをAM-GCTJ300の設計に使用できる。ICWEは、異種金属溶接(DMW)の運転条件での熱サイクル負荷によって引き起こされる熱応力の評価に役立てることができる。AM-GCTJ300の幾つかの利点を、実施例と共に以下にまとめる。例示的で非限定的な用途は、ステンレス鋼316に対してグレード91鋼から形成されたDMWを有する配管システムを溶接及び準備することであった(図5参照)。2本の管を接合するためにDMWを備えた配管システムの直線部分を使用したが、管の外径(OD)は約5.1mm(2インチ)であり、管の肉厚は約0.95mm(3/8インチ)であった(化石発電プラントでよくみられる寸法)。シミュレーションに用いた熱サイクル負荷プロファイルを図6に示す。温度は周囲温度から約2時間で約650℃の運転温度まで上昇させた。次に、モデリングシステムを運転温度に7日間保持した後、2時間で周囲温度まで冷却した。このような熱負荷サイクルモデリングを繰返して、運転をシミュレートし、熱サイクル負荷の累積的影響を計算した。
【0057】
図8は、例示的で非限定的な格子又は格子パターン101を示す。合金Aの格子100及び細孔101は、任意の構成、寸法、断面及び寸法で供することができ、密度及び細孔寸法は本明細書に記載したように供される。したがって、格子又は格子パターン101の第2の端部よりも第1の端部で緻密であるとともに、第1の端部から第2の端部まで細孔寸法を増加させること及び格子又は格子パターン101を積層造形しながら格子又は格子パターン101の密度を減少させることの少なくとも1つによって密度が漸減する限り、合金Aの格子又は格子100及び細孔101の構成、寸法、断面及び寸法は種々変更し得る。
【0058】
なお、傾斜移行継手(GTJ)は、大量生産に容易に拡張し得る様々な製造技術で製造することができる。従来のGTJ技術と比較して、本開示の一実施形態に係るAM-GCTJ300アプローチは、幾つかの技術的効果を有する。
【0059】
本開示の一実施形態に係るAM-GCTJ300は、合金A100及び合金B200の特徴(熱特性及び物性など)を保持する複合材料を生じる。従来のGTJ技術では、ワイヤ又は粉末のいずれかを用いて、合金A100と合金B200を一緒に溶融して移行継手を層毎に構築する。
2種類の異種合金を異なる比率で溶融及び混合することは、時間及び資源集約的であり、複雑で不規則なミクロ組織を生じるおそれがあり、予測できないミクロ組織並びに未知又は予測できない特性(熱特性及び物性など)を有することがある。このような予測不可能なミクロ組織の例として、グレード91と304Hを50/50比で溶融すると、ミクロ組織安定性及び高温性能が不確かで潜在的な凝固欠陥の問題をもつ「新」材料を生じる。
【0060】
さらに、本開示の一実施形態では、合金A及び合金B200は、従来の溶接法とは対照的に、一緒に溶融しない。本開示によれば、合金A100と合金B200は、固相HIPプロセスによって一体に結合する。固相HIPプロセス(HIP処理)は、合金A100と合金B200の「複合」材料を形成する。したがって、合金A100と合金B200のHIP処理された複合材料は、溶融「新」A+B合金のような金属学的複雑さを持ち込まない。
【0061】
適切な熱処理の後、AM-GCTJ300は、合金A100及び合金B200と同様の特性を含む2つの構造部材間の中間接続として使用できる。必要に応じて、DMWの両端で融接を行ってもよい。例えば、合金A100及び合金B200と同様の特性を含む2つの構造部材間の境界或いは溶融境界又はボンド部に融接を行ってもよく、CTEの不一致のようなDMWの溶融境界又はボンド部で発生していた従前の問題は解消される。
【0062】
本開示の一実施形態で得られる追加の技術的効果として、合金A100と合金B200との間の滑らかな移行が得られる。滑らかな移行は漸変であり、CTEの不一致に関連する問題が低減及び軽減される。CTEの不一致が低減すると、サイクル運転中を含め、ターボ機械部品の耐用年数が向上する可能性がある。
【0063】
本実施形態の別の技術的効果は、プロセス及び溶接がDMW組成の制御を強化できることである。さらに、本開示の一実施形態では、格子及び格子パターン101の積層造形を含むプロセスは、他の溶接プロセスでは実現できない様々なDMW形状を達成できるようになる。したがって、本開示の一実施形態では、A-USCシステムに必要とされる大量のGTJの生産に際して、スケールアップの問題が軽減される。さらに、既存のフリートの耐用年数の延長を、本開示の一実施形態に係るAM-GCTJ300によって実現することができる。
【0064】
本実施形態は、先進超々臨界圧発電プラントにおける異種金属溶接のためのの積層造形傾斜複合材移行継手を提供する。本開示の別の実施形態では、積層造形傾斜複合材移行継手(「AM-GCTJ300」)の製造方法が提供される。
【0065】
以上、先進超々臨界圧(A-USC)発電プラント及び関連合金を参照して本発明について説明してきた。ただし、本開示の一態様では、本技術的思想及び実施形態をその他の異種金属溶接(DMW)にも使用できる。さらに本発明のさらなる態様では、本技術的思想及び実施形態を、発電プラント以外の他の用途又は産業にも使用し得る。
【0066】
本開示の以上の教示内容に照らして、本明細書に記載された実施例及び実施形態の数多くの修正及び変形が可能であることは、当業者には明らかであろう。開示された実施例及び実施形態は専ら例示を目的として紹介したものである。他の代替的な実施形態は、本明細書に開示した特徴の一部又はすべてを含むことができる。したがって、かかる修正及び代替的な実施形態は、すべて、本発明の技術的範囲に即する。
【0067】
さらに、数値の範囲に関する開示は、上下限を含めて、その範囲内のあらゆる数値の開示である。
【0068】
本発明の技術的思想から逸脱せずに、本明細書に記載された数々の実施形態に変更を加えることができることは当業者には明らかであろう。従って、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって規定される本発明の技術的思想及び技術的範囲に属する修正を包含するものである。
【符号の説明】
【0069】
100 第1の合金
101 格子又は格子パターン
110 細孔
200 第2の合金
300 積層造形傾斜複合材移行継手
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】