(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-07
(54)【発明の名称】非ヒト動物用の皮膚病学の首輪
(51)【国際特許分類】
A61D 7/00 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
A61D7/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505549
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2022070213
(87)【国際公開番号】W WO2023006510
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524038901
【氏名又は名称】バイオイベリカ エセ.ア.ウ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】セガーラ ロペス,セルヒ
(72)【発明者】
【氏名】ラモス モティルバ,エレナ
(72)【発明者】
【氏名】ヒルベント フェルナンデス,ハウメ
(72)【発明者】
【氏名】ベラスコ フランコ,アルフォンソ
(72)【発明者】
【氏名】ビルベルト,アルノー
(72)【発明者】
【氏名】ルクレール,ソフィー
(57)【要約】
本発明は、ポリマーマトリックスおよびスフィンゴミエリンを含む脂質抽出物を含む、非ヒト動物用、好ましくはコンパニオンアニマル用の首輪に関する。また、医薬品として使用するための首輪、特にアジュバントとして使用するための首輪、およびアトピー性皮膚炎またはアレルギー性皮膚炎の治療または予防に使用するための首輪、ならびに皮膚の完全性をアトピー性皮膚炎またはアレルギー性皮膚炎中または後に回復すること、皮膚の保湿性および柔軟性の増加、皮膚の再生の促進、または皮膚のかゆみの軽減に使用するための首輪にも言及する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックスおよび脂質抽出物を含む非ヒト動物用首輪であって、前記脂質抽出物がスフィンゴミエリンを含むことを特徴とする首輪。
【請求項2】
前記ポリマーマトリックスが熱可塑性ポリウレタンである、請求項1に記載の首輪。
【請求項3】
前記脂質抽出物が、前記脂質抽出物の総重量に対して少なくとも30重量%のスフィンゴミエリンを含む、請求項1または2に記載の首輪。
【請求項4】
前記脂質抽出物が、前記脂質抽出物の総重量に対して30重量%~70重量%のスフィンゴミエリン、前記脂質抽出物の総重量に対して1重量%~15重量%のセラミド、前記脂質抽出物の総重量に対して0.5重量%未満のスルファチド、前記脂質抽出物の総重量に対して0.5重量%未満のガングリオシド、前記脂質抽出物の総重量に対して20重量%~58重量%のリン脂質、および前記脂質抽出物の総重量に対して0.5重量%~10重量%の中性脂質が含まれ、ならびに前記脂質抽出物成分のパーセンテージの合計は100%に等しい、請求項3に記載の首輪。
【請求項5】
前記脂質抽出物が、前記脂質抽出物の総重量に対して45重量%~65重量%のスフィンゴミエリン、前記脂質抽出物の総重量に対して2重量%~6重量%のセラミド、前記脂質抽出物の総重量に対して0.2重量%未満のスルファチド、前記脂質抽出物の総重量に対して0.2重量%未満のガングリオシド、前記脂質抽出物の総重量に対して25重量%~45重量%のリン脂質、および前記脂質抽出物の総重量に対して0.5重量%~4.5重量%の中性脂質が含まれ、ならびに前記脂質抽出物成分のパーセンテージの合計は100%に等しい、請求項4に記載の首輪。
【請求項6】
前記脂質抽出物が、前記脂質抽出物の総重量に対して50重量%~59重量%のスフィンゴミエリン、前記脂質抽出物の総重量に対して3.5重量%~5.2重量%のセラミド、前記脂質抽出物の総重量に対して0.05重量%未満のスルファチド、前記脂質抽出物の総重量に対して0.05重量%未満のガングリオシド、前記脂質抽出物の総重量に対して32重量%~44重量%のリン脂質、および前記脂質抽出物の総重量に対して1重量%~3重量%の中性脂質が含まれ、ならびに前記脂質抽出物成分のパーセンテージの合計は100%に等しい、請求項5に記載の首輪。
【請求項7】
前記脂質抽出物がウシまたはブタである、請求項1~6のいずれか1項に記載の首輪。
【請求項8】
前記脂質抽出物がウシまたはブタの気管由来である、請求項7に記載の首輪。
【請求項9】
前記首輪の重量に対して2重量%~5重量%の前記脂質抽出物を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の首輪。
【請求項10】
前記首輪の重量に対して2.5重量%の前記脂質抽出物を含む、請求項9に記載の首輪。
【請求項11】
医薬品として使用するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の首輪。
【請求項12】
アジュバントとして使用するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の首輪。
【請求項13】
非ヒト動物のアトピー性皮膚炎またはアレルギー性皮膚炎の治療または予防において使用するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の首輪。
【請求項14】
非ヒト動物において、皮膚の完全性をアトピー性皮膚炎またはアレルギー性皮膚炎中または後に回復すること、皮膚の保湿性および柔軟性の増加、皮膚のかゆみの軽減、または皮膚の再生の促進に使用するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の首輪。
【請求項15】
前記首輪が前記動物の首に8週間保持されることによって、前記脂質抽出物が前記非ヒト動物の体上に放出されることを特徴とする、請求項11~14のいずれか1項に記載の使用のための首輪。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スフィンゴミエリンを含む脂質抽出物を組み込んだ、非ヒト動物用の首輪に関する。また、医薬品として使用するための首輪、特にアジュバントとして使用するための首輪、およびアトピー性皮膚炎またはアレルギー性皮膚炎の治療または予防に使用するための首輪、ならびに皮膚の完全性をアトピー性皮膚炎またはアレルギー性皮膚炎中または後に回復すること、皮膚の保湿性および柔軟性の増加、皮膚の再生の促進、または皮膚のかゆみの軽減に使用するための首輪にも言及する。
【背景技術】
【0002】
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う鱗状の皮疹を特徴とする慢性炎症性皮膚疾患である。アトピー性皮膚炎は、遺伝的要因、バリア機能の欠陥、環境要因、皮膚感染症への感受性、およびいくつかの免疫学的要因の相互作用によって生じる多因子疾患である。
【0003】
アトピー性皮膚炎はコンパニオンアニマルでは極めて一般的な疾患である。イヌには犬種的素因があることから、遺伝的要因が非常に重要であると考えられる。イヌで最も一般的な徴候は、絶えず掻いたり、舐めたり、擦ったりすることによる皮膚のかゆみの存在である。
【0004】
ステロイド、抗ヒスタミン剤、抗生物質は、アトピー性皮膚炎の治療によく処方される。これらの薬剤を長期間使用すると、好ましくない副作用が生じることがある。そのため、効果的でしかも、コンパニオンアニマルおよび治療を行う人間の両方にとって、快適な代替治療およびその投与経路を見つける必要がある。
【0005】
局所経路はコンパニオンアニマルのアトピー性皮膚炎の治療に使用され、このタイプの投与にはピペットでの局所用溶液(スポットオン溶液)の投与が含まれる。
【0006】
M. Blaskovic et al. (Vet. J. 199, 39-43 (2014))は、多価不飽和脂肪酸とエッセンシャルオイルを含むスポットオン製剤のアトピー性皮膚炎のイヌへの使用について開示している。この製品は週1回、8週間投与される。
【0007】
R. Marsella et al. (BMC Vet. Res. 16, 92 (2020))は、アトピー性皮膚炎のイヌに対するAtopivet Spot-on製品の使用について開示している。この製品はピペットに入った局所用溶液で、スフィンゴ脂質とグリコサミノグリカンを含んでいる。週2回、8週間、ピペット1本分を、ペットの耳介、腋窩、前後肢の指間部、鼠径部、胸、背のそれぞれの部位に1滴ずつ投与する。
【0008】
スポットオン治療の際、8本または16本のピペットを使用する必要があるため、製品が高価になる。また、ペットの体の様々な患部に、頻繁に製品を適用しなければならないことは、イヌと飼い主の両方にとって不便であることを強調することが重要である。
【0009】
したがって、アトピー性皮膚炎に対する活性物質の投与について、スポットオンピペットに代わる、効果的で、適用が容易で、費用対効果が高く、および毎週定期的に適用する必要がなく、活性物質を経時的に放出する局所経路が求められている。
【0010】
コンパニオンアニマル用の首輪は、抗寄生虫治療薬を局所的に投与するために広く使用されている(例えば、特許GB2316871Bを参照)が、アトピー性皮膚炎の活性物質を投与するために使用することは、今日まで開示されていない。
【0011】
殺虫首輪が有効であっても、アトピー性皮膚炎の活性物質を含む首輪が有効であることは明らかではない。首輪からの有効物質の放出が不十分であったり、病変部に到達するまで動物の全身に有効物質がほとんど行き渡らなかったりといった問題が起こる可能性は否定できない。
【発明の概要】
【0012】
本発明者らは、以下に定義する本発明の首輪が新規であり、脂肪培地中での脂質抽出物の適切なin vitro動態学的放出パターンを示し、非ヒト動物、好ましくはコンパニオンアニマルにおいて、アトピー性皮膚炎によって引き起こされる病変の4週間および8週間での有意な減少をもたらし、皮膚のかゆみを4週間および8週間で有意に減少させることを見出した。そのため、アトピー性皮膚炎またはアレルギー性皮膚炎の治療または予防、ならびに非ヒト動物、好ましくはコンパニオンアニマルにおける、皮膚の完全性をアトピー性皮膚炎またはアレルギー性皮膚炎中または後に回復すること、皮膚の保湿性および柔軟性の増加、皮膚のかゆみの減少、または皮膚の再生の促進に使用することができる。
【0013】
このように、本発明は、ポリマーマトリックスおよび脂質抽出物を含み、脂質抽出物がスフィンゴミエリンを含む、非ヒト動物、好ましくはコンパニオンアニマル用の首輪に関する。
【0014】
好ましい実施形態において、本発明は、先に定義した首輪に関し、脂質抽出物は、非ヒト動物、好ましくはコンパニオンアニマルの体内に放出されるのに適している。
【0015】
別の好ましい実施形態において、本発明は、先に定義した首輪に関し、ポリマーマトリックスは、TPUとしても知られる熱可塑性ポリウレタンである。
【0016】
別の好ましい実施形態において、本発明は、先に定義した首輪に関し、脂質抽出物は、脂質抽出物の総重量に対して少なくとも30重量%のスフィンゴミエリンを含む。
【0017】
別の好ましい実施形態において、本発明は、先に定義した首輪に関し、脂質抽出物は、脂質抽出物の総重量に対して少なくとも45重量%のスフィンゴミエリンを含み、より好ましくは、脂質抽出物の総重量に対して少なくとも50重量%のスフィンゴミエリンを含む。
【0018】
別の好ましい実施形態において、本発明は、先に定義した首輪に関し、脂質抽出物は、脂質抽出物の総重量に対して30重量%~70重量%のスフィンゴミエリン、脂質抽出物の総重量に対して1重量%~15重量%のセラミド、脂質抽出物の総重量に対して0.5重量%未満のスルファチド、脂質抽出物の総重量に対して0.5重量%未満のガングリオシド、脂質抽出物の総重量に対して20重量%~58重量%のリン脂質、および脂質抽出物の総重量に対して0.5重量%~10重量%の中性脂質が含まれ、ならびに脂質抽出物成分のパーセンテージの合計は100%に等しい。
【0019】
より好ましい実施形態において、本発明は、先に定義した首輪に関し、脂質抽出物は、脂質抽出物の総重量に対して45重量%~65重量%のスフィンゴミエリン、脂質抽出物の総重量に対して2重量%~6重量%のセラミド、脂質抽出物の総重量に対して0.2重量%未満のスルファチド、脂質抽出物の総重量に対して0.2重量%未満のガングリオシド、脂質抽出物の総重量に対して25重量%~45重量%のリン脂質、および脂質抽出物の総重量に対して0.5重量%~4.5重量%の中性脂質が含まれ、ならびに脂質抽出物成分のパーセンテージの合計は100%に等しい。
【0020】
別の好ましい実施形態において、本発明は、先に定義した首輪に関し、脂質抽出物は、脂質抽出物の総重量に対して50重量%~59重量%のスフィンゴミエリン、脂質抽出物の総重量に対して3.5重量%~5.2重量%のセラミド、脂質抽出物の総重量に対して0.05重量%未満のスルファチド、脂質抽出物の総重量に対して0.05重量%のガングリオシド、脂質抽出物の総重量に対して32重量%~44重量%のリン脂質、および脂質抽出物の総重量に対して1重量%~3重量%の中性脂質が含まれ、ならびに脂質抽出物成分のパーセンテージの合計は100%に等しい。
【0021】
スフィンゴミエリンのグループには、ジヒドロスフィンゴミエリンも含まれる。セラミドのグループには、セラミド、ジヒドロセラミド、グルコシルセラミド、およびラクトシルセラミドが含まれる。リン脂質には例えば、ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルセリン、ホスファチジルコリンプラズマロゲン、およびリゾホスファチジルエタノールアミン形質転換体が含まれる。中性脂質には例えば、ジアシルグリセロール、およびトリアシルグリセロールが含まれる。脂質抽出物は、スルファチドの含有量が非常に低く、通常0.5%未満、好ましくは0.05%未満、より好ましくは0.01%未満である。また、ガングリオシド(GM1、GM2、GM3、GD1)の含有量も非常に低く、通常0.5%未満、好ましくは0.05%未満、より好ましくは0.01%未満である。実際、使用したスルファチドおよびガングリオシドの測定方法では、0.006mg/gのスルファチドおよび0.009mg/gのガングリオシドを検出することが可能であるが、以下に定義し、本発明で使用した3つのバッチの脂質抽出物では、スルファチドおよびガングリオシドの量は検出されなかった。
【0022】
別の好ましい実施形態において、本発明は、先に定義した首輪に関し、脂質抽出物は動物起源であり、好ましくはウシまたはブタであり、より好ましくはブタの腸粘膜由来またはウシもしくはブタの気管由来であり、さらに好ましくは、脂質抽出物はウシの気管由来である。
【0023】
別の好ましい実施形態において、本発明は、先に定義した首輪に関し、首輪は首輪の重量に対して2重量%~5重量%の脂質抽出物を含み、好ましくは首輪の重量に対して2重量%~3重量%の脂質抽出物を含み、より好ましくは首輪の重量に対して2.5重量%の脂質抽出物を含む。
【0024】
別の好ましい実施形態において、本発明は、先に定義した首輪に関し、ポリマーマトリックスおよび脂質抽出物は、首輪中に、ポリマーマトリックス対脂質抽出物の重量比が30:1~29:1の間で構成されるように存在し、より好ましくは、その比は29.8:1または29.5:1である。
【0025】
別の好ましい実施形態において、本発明は先に定義した首輪に関し、首輪は皮膚病学の首輪である。
【0026】
本発明はまた、先に定義した、以下の工程を含む首輪の作製方法に関する:
1)ポリマーマトリックスを加熱する;
2)可塑剤と安定剤とを含む混合物を工程1)のポリマーマトリックスに加える;
3)工程2)の混合物を冷却する;
4)脂質抽出物を加える;および
5)工程4)で得られた混合物を首輪の形に成形する。
【0027】
別の実施形態において、本発明は、先に定義した首輪を作製するための方法に関し、ポリマーマトリックスは熱可塑性ポリウレタン(TPU)であり、好ましくは90℃~95℃の間の温度に加熱される。
【0028】
別の実施態様において、本発明は、先に定義した首輪を作製するための方法に関し、可塑剤はエチルヘキシルジフェニルホスフェートであり、安定剤はC7-9-アルキル3-(3、5-ジ-トランス-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートと、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-(n)-ドデシルフェノール異性体と、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートと、メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートとの混合物である。
【0029】
別の実施形態において、本発明は、先に定義した首輪を得るための方法に関し、工程2)において香料が加えられ、好ましくは香料がラベンダー油である。
【0030】
別の実施形態において、本発明は、先に定義した首輪を得るための方法に関し、工程3)において、工程2)の混合物を室温まで冷却する。
【0031】
別の実施形態において、本発明は、先に定義した首輪を得るための方法に関し、工程1)、2)、3)および4)が撹拌下で実施される。
【0032】
別の実施形態において、本発明は、先に定義した首輪を得るための方法に関し、工程4)から得られた混合物は、首輪の形状に射出成形される。異なる長さの首輪、例えば35cmまたは75cmの首輪を得ることができる。
【0033】
別の実施形態において、本発明は、先に定義した首輪を得るための方法に関し、工程4で黒色酸化鉄などの染料が加えられる。
【0034】
別の実施形態において、本発明は、先に定義した首輪を得るための方法に関し、ポリマーマトリックスおよび脂質抽出物は、30:1~29:1の間で構成されるポリマーマトリックス対脂質抽出物の重量比で首輪中に存在し、より好ましくは、その比は29.8:1または29.5:1である。
【0035】
本発明はまた、医薬品として使用するための、先に定義した首輪に関する。
【0036】
本発明はまた、動物用健康製品として使用するための、先に定義した首輪に関する。
【0037】
本発明の首輪が動物用健康製品として使用される場合、その首輪は、非ヒト動物の疾病または疾患の診断、予防、治療、緩和または治癒を目的とするものであることが理解されるであろう。
【0038】
本発明はまた、アジュバントとして使用するための、先に定義した首輪に関する。
【0039】
本発明の首輪がアジュバントとして使用される場合、脂質抽出物を含む首輪は、主薬の作用を補完または増強することが理解されるであろう。
【0040】
本発明はまた、非ヒト動物、好ましくはコンパニオンアニマルにおける、アトピー性皮膚炎またはアレルギー性皮膚炎の治療または予防に使用する、先に定義した首輪に関する。
【0041】
同様に、本発明はまた、非ヒト動物、好ましくはコンパニオンアニマルにおける、アトピー性皮膚炎またはアレルギー性皮膚炎の治療または予防のための医薬の製造のための、先に定義した首輪の使用に関する。
【0042】
同様に、本発明はまた、非ヒト動物、好ましくはコンパニオンアニマルにおける、アトピー性皮膚炎またはアレルギー性皮膚炎を治療または予防する方法であって、先に定義した首輪を動物の首に着けることを含む方法に関する。
【0043】
本発明はまた、非ヒト動物、好ましくはコンパニオンアニマルにおける、皮膚の完全性をアトピー性皮膚炎またはアレルギー性皮膚炎中または後に回復すること、皮膚の保湿性および柔軟性の増加、皮膚のかゆみの軽減、または皮膚の再生の促進のために使用する、先に定義した首輪に関する。
【0044】
同様に、本発明はまた、非ヒト動物、好ましくはコンパニオンアニマルにおける、皮膚の完全性をアトピー性皮膚炎またはアレルギー性皮膚炎中または後に回復すること、皮膚の保湿性および柔軟性の増加、皮膚のかゆみの軽減、または皮膚の再生の促進のための、先に定義した首輪の使用に関する。
【0045】
別の実施形態では、本発明は、先に定義したいずれかの使用のための首輪に関し、首輪が動物の首に8週間保持されることによって、脂質抽出物が非ヒト動物の体上に放出されることを特徴とする。
【0046】
本発明を通じて、「動物」という用語は、「非ヒト動物」、好ましくは「コンパニオンアニマル」を指す。例としては、とりわけ、イヌおよびネコが含まれる。好ましくは、本発明に関する動物はイヌである。
【0047】
本発明はまた、先に定義した首輪の形態の動物用健康製品に関する。
【0048】
本発明の首輪の脂質抽出物は、例えばブタの腸粘膜、ウシまたはブタの気管などの哺乳動物の組織から抽出法によって得ることができる。好ましくは、ウシの気管から得ることができる。当該気管は、一旦破砕された後、水性媒体中で(タンパク質分解酵素、好ましくはスブチリシンを用いて)、好ましくは50℃~60℃の間の温度で酵素消化に供され、固体残渣とエマルジョンが残る。その後、好ましくは80℃~90℃の間の温度でデカンテーションし、固形残渣を廃棄し、真空蒸発により水を除去したエマルジョンについてプロセスを継続する。次に、蒸発により得られた濃縮物をアセトン中に、好ましくは30℃の温度で再懸濁し、珪藻土を加え、濾過し、不溶性画分をアルコール中に、好ましくはメタノール中に、50℃の温度で再懸濁する。次に、これを濾過し、固体画分を廃棄し、液体画分についてプロセスを継続する。その後、濃縮物が得られるまで液体画分からメタノールを部分的に除去し、次にこれをアセトンで沈殿させる。液体画分をデカンテーションして除去した後、得られた固体画分を、必要であればアセトンで数回洗浄し、各洗浄後に上清を捨てて固体画分を保持し、これを真空乾燥させる。次に、これを粉砕し、ふるいにかける。この固形画分がスフィンゴミエリンを含む脂質抽出物を構成し、本発明の首輪に使用される。この方法に従って、脂質抽出物の様々なバッチを得ることができ、それらの組成は互いに異なることができる(例えば、表1において、脂質抽出物の総重量に対する各成分の重量%で表した3つのバッチの組成を参照、脂質抽出物成分のパーセンテージの合計は100%に等しい)。
【0049】
【0050】
バッチごとの組成のばらつきを考慮すると、得られた脂質抽出物は、表2に示す化合物のグループを含有する。
【0051】
【0052】
好ましくは、得られた脂質抽出物は、表3に示す化合物のグループを含有する。
【0053】
【0054】
より好ましくは、得られた脂質抽出物は、表4に示す化合物のグループを含有する。
【0055】
【0056】
本発明で使用する脂質抽出物はスフィンゴミエリンを含み、スルファチドやガングリオシドを実質的に含まないことに留意すべきである。例えば、表1の脂質抽出物の3つのバッチでは、スルファチドおよびガングリオシドの量は検出されなかった。
【0057】
この首輪には、とりわけ次のような利点がある:
- 8日、15日および22日での放出(実施例3を参照)を伴うin vitro試験でわかるように、脂肪培地(コンパニオンアニマルの皮膚由来の皮脂に相当する)中の脂質抽出物の効果的な時間的放出を可能にする。
【0058】
- アトピー性皮膚炎のイヌについて有効性が示されており、4週間後と8週間後に病変とかゆみが有意に減少(p<0.05)している(実施例4を参照)。
【0059】
- 治療中期(4週間後)においてすでに、病変の減少とかゆみの減少の両方において、非常に優れた効果を示している。事実、CADESI(Canine Atopic Dermatitis Extent and Severity Index)(病変)(43%;p<0.05)およびPICAD(Pruritus Index for Canine Atopic Dermatitis)(かゆみ)(52.3%;p<0.05)において、0週間後~4週間後で有意な減少が観察された。PVAS指数(かゆみ)でも0週間後~2週間後(25.8%)、1週間後~2週間後まで(20.6%)において有意な減少(p<0.05)が観察された。対照的に、Atopivet Spot-onピペット(R. Marsella et al., BMC Vet. Res. 16, 92 (2020))では、CADESIの減少は4週間でわずか5.1%であり、統計的に有意ではなく、よってPVAS指数から、4週間後において効果は見られなかった。したがって、アトピー性皮膚炎に対して首輪は、Atopivet Spot-onよりも早く働くといえる。
【0060】
- 首輪を効果的にするために、脂質抽出物とグリコサミノグリカンと組み合わせる必要がない一方で、Atopivet Spot-onピペットでは、スフィンゴ脂質がグリコサミノグリカンと組み合わされていなければならない。
【0061】
- 治療の実施が簡単で快適である。必要とされるのは、コンパニオンアニマルの首に首輪を装着し、2ヵ月後に外すことのみである。Spot-onピペット、クリーム、またはジェルの場合、毎回病変を探し、ピペットからの溶液、クリーム、またはジェルを病変に適用する必要がある。
【0062】
- 製品の投与頻度が減る。首輪は2ヶ月に1回着用するが、例えばSpot-onピペットの場合、週1回を8週間、またはAtopivet Spot-onピペットのように週2回を8週間(合計16回)適用する。
【0063】
- Spot-onピペットよりも費用対効果が高く、コンパニオンアニマルの介護者の負担が軽減される。例えば、Atopivet Spot-onピペットと比較すると、毎月のコストは約50%節約できる。
【0064】
- 首輪を着ける前も後も、ペットに特別なケアが必要ない。一方、Spot-onピペットの場合は、皮膚から製品を落とさないように、各適用前に、およびピペットを適用した直後以外に、ペットを洗うことが推奨される。
【0065】
本明細書および特許請求の範囲を通じて、「~を含む(comprises)」という語およびその変形は、他の技術的特徴、添加剤、成分または工程を除外することを意図するものではない。したがって、「~を含む(comprises)」という用語は、「~単独からなる(consists solely of)」の場合および「~から本質的になる(consists essentially of)」の場合も含むものと理解されたい。
【0066】
当業者にとって、本発明の他の目的、利点、および特徴は、本発明の説明および実施形態の両方から部分的に推測することができる。以下の実施例および図は、説明のために提供されるものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】in vitro試験における、脂質抽出物の経日的放出パーセンテージを示す。
【
図2】CADESIを用いた病変部の平均スコアで、治療開始時、4週後、8週後を示す。
【
図3】PICADを用いたかゆみの程度の平均スコアで、治療開始時、4週間後、8週間後を示す。
【
図4】イヌの飼い主によるPVAS指数を用いたかゆみの程度の平均スコアで、治療開始時、治療1週間後、2週間後を示す。
【実施例】
【0068】
以下の実施例は説明のためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0069】
実施例1:長さ35cmの首輪の作製
9.76gの熱可塑性ポリウレタン(TPU)を、90℃~95℃の温度に予熱された反応器内に、撹拌下で導入した。ポリマーが前記温度に達したら、2.62gのエチルヘキシルジフェニルホスフェート可塑剤、0.0655gの、C7-9-アルキル3-(3,5-ジ-トランス-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-(n)-ドデシルフェノール異性体、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートおよびメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートの安定剤の混合物、ならびに0.1965gのラベンダー油を徐々に加えた。撹拌は、前記混合物がポリマーに完全に取り込まれるまで続けた。次に、得られた混合物を室温まで冷却し、常に撹拌を維持した。その後、0.33gの脂質抽出物を加え(表4の組成を参照)、得られた混合物を(黒酸化鉄を用いて)染色し、均質化した。反応器を排液し、最後に得られた混合物を型内で射出成形した。得られた首輪は、首輪の重量に対して2.5重量%の脂質抽出物を含んでいた。
【0070】
実施例2:長さ75cmの首輪の作製
35cmの首輪について説明したものと同じ方法を繰り返したが、本例の場合、19.67gの熱可塑性ポリウレタン、0.66gの脂質抽出物、5.28gのジフェニルリン酸エチルヘキシル可塑剤、0.132gのC7-9-アルキル3-(3,5-ジ-トランス-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-(n)-ドデシルフェノール異性体、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートおよびメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートの安定剤の混合物、および0.396gのラベンダー油を使用した。得られた首輪は、首輪の重量に対して2.5重量%の脂質抽出物を含んでいた。
【0071】
実施例3:脂質抽出物の放出に関するin vitro試験
この試験の目的は、家畜の皮膚からの皮脂の代表的なものと考えられる脂肪培地中で、脂質抽出物が首輪からどれだけの量、どれだけの時間放出されるかをin vitroで評価することであった。
【0072】
材料と方法
この試験は、実施例1に従って得られた、脂質抽出物を2.5重量%含む3つの首輪の実験室バッチを用いて行われた。
【0073】
3つの首輪を断片化し、それぞれの首輪の断片をトリグリセリドの混合物からなる脂肪培地に浸し、マグネチックスターラーで振とうした。それぞれの首輪の断片を、分析開始時、8日後、15日後、22日後の各時点で採取した。これらの各時点で、同じ実験室分析が行われた:ガスクロマトグラフィーによるパルミチン酸メチル(脂質抽出物の成分)の定量である。これにより、3つの首輪のそれぞれに残存する脂質抽出物の含有量を測定し、3つの首輪の平均値を算出することができた。放出のパーセンテージはこの値で測定された。
【0074】
結果
得られた結果は以下の表5にまとめられている:
【0075】
【0076】
図1には、経時的な脂質抽出物の放出パーセンテージも示されている。
【0077】
観察されるように、22日後の脂質抽出物の放出パーセンテージは、トリグリセリドの混合物で21%であった。それゆえこの試験で、脂肪培地中での脂質抽出物の良好な放出動態が示された。
【0078】
実施例4:アトピー性皮膚炎のイヌにおける有効性と安全性のin vivo試験
この試験の目的は、アトピー性皮膚炎のイヌ患者の管理における首輪適用の効果を測定することであり、製品適用の安全性、病変の範囲と重症度、およびかゆみに対する効果を評価した。
【0079】
材料と方法
この試験は、非季節性アトピー性皮膚炎と確定診断され、他の重大な併発疾患のない、犬種、性別、年齢の異なる12頭のイヌを含み、イヌの大きさに応じて、実施例1または実施例2の首輪を首に装着した。
【0080】
治療開始からの治療および経過観察の合計期間は8週間であった。獣医師によるコントロール訪問は、飼い主による週1回のかゆみ評価(Pruritus Visual Analog Scale - PVAS)に加え、2つのスコア(Canine Atopic Dermatitis Extent and Severity Index - CADESI)-4、およびPruritus Index for Canine Atopic Dermatitis - PICAD)を用いて、治療開始時(0週間後)、4週間後、8週間後に実施した。
【0081】
CADESIは、体の様々な部位(耳介、脇の下、前脚と後脚、肘のくぼみ、手根球と掌球、脇腹、鼠径部、下腹部、会陰部、尾の腹側近位部)の様々な病変(紅斑、苔癬化、脱毛/すりむき)をスコア化することを可能にした。
【0082】
PICADは、体の様々な部位のかゆみを、以下の頻度や強さを観察することでスコア化することを可能にした:耳を掻く/振る、頭を掻く/擦る、体幹や脇の下を掻く/擦る/舐める、腹部を掻く/擦る/舐める、前足を舐める/噛む、後足を舐める/噛む、脚を舐める/噛む、および肛門性器部を擦る/舐める/噛む。
【0083】
PVAS指数は、イヌの飼い主により観察されたかゆみをスコア化することを可能にした。飼い主が週1回、ペットが示すかゆみの程度を0~10の尺度で評価し、0はかゆみがなく、10は我慢できないかゆみである。
【0084】
結果
首輪を8週間適用しても安全と見られ、関連する副作用の発現には至らなかった。
【0085】
CADESIでは、0週間後~4週間後での有意な減少(43%;p<0.05)に加え、0週間後~8週間後での有意な減少(48.6%;p<0.05)が観察された(
図2参照)。
【0086】
PICADでは、0週間後~4週間後での有意な減少(52.3%;p<0.05)、0週間後~8週間後での有意な減少(43.2%;p<0.05)が観察された(
図3参照)。
【0087】
PVAS指数において、0週間後~2週間後(25.8%)、1週間後~2週間後(20.6%)での有意な減少(p<0.05)が観察された(
図4参照)。
【国際調査報告】