(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-07
(54)【発明の名称】触媒再生中にプラント設備を運転するための方法
(51)【国際特許分類】
C10G 2/00 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
C10G2/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024506542
(86)(22)【出願日】2022-08-01
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2022071585
(87)【国際公開番号】W WO2023012121
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521538103
【氏名又は名称】ベロシス テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VELOCYS TECHNOLOGIES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】デシュムク スミトラ アール.
(72)【発明者】
【氏名】グレーガー イバン フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ハリス ロジャー アレン
(72)【発明者】
【氏名】ミトヴァ エリツァ エー.
(72)【発明者】
【氏名】レヴィネス ステファン クロード
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA01
4H129BA12
4H129BB07
4H129BC46
4H129KA15
4H129KC24X
4H129NA45
4H129NA46
(57)【要約】
本発明は、プラント設備で触媒再生を実行する方法であって、バッテリーリミット内で運転するユニット領域をプラント設備に提供するステップであって、ユニット領域のバッテリーリミットは、供給材料を受け入れるように構成されている、前記提供するステップと;供給材料をバッテリーリミット内に受け入れ、供給材料を複数の反応器トレイン内の複数の並列流路に通してプラント設備のユニット領域内に流すステップであって、各反応器トレインは少なくとも1つの反応器を備え;各反応器トレインの少なくとも1つの反応器には触媒が充填されている;前記流すステップと;分離ステップにおいて、複数の並列流路の全てではなく少なくとも1つを分離して、少なくとも1つの分離された反応器トレインと残りのオンライン反応器トレインを提供するステップと;再生ステップにおいて、少なくとも1つの分離された反応器トレインの少なくとも1つの反応器内で触媒を再生するステップ;とを含み;再生ステップ中、バッテリーリミットから供給され、プラント設備での処理のために受け入れられる複数の並列流路を通って流れる供給材料は、分離ステップの前及び分離ステップ中にほぼ一定である、前記方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒再生中にプラント設備を運転するための方法であって、
バッテリーリミット内で運転するユニット領域をプラント設備に提供するステップであって、
前記ユニット領域の前記バッテリーリミットは、供給材料を受け入れるように構成されている、前記提供するステップと;
前記供給材料を前記バッテリーリミット内に受け入れ、前記供給材料を複数の反応器トレイン内の複数の並列流路に通して前記プラント設備の前記ユニット領域内に流すステップであって、
各反応器トレインは少なくとも1つの反応器を備え;
各反応器トレインの少なくとも1つの反応器には触媒が充填されている;前記流すステップと;
分離ステップにおいて、前記複数の並列流路の全てではなく少なくとも1つを分離して、少なくとも1つの分離された反応器トレインと残りのオンライン反応器トレインを提供するステップと;
再生ステップにおいて、前記少なくとも1つの分離された反応器トレインの前記少なくとも1つの反応器内で前記触媒を再生するステップ;とを含み;
前記再生ステップ中、前記供給材料は前記残りのオンライン反応器トレインの前記並列流路を通って流れ;
前記バッテリーリミットから供給され、前記プラント設備での処理のために受け入れられる、前記複数の並列流路を通って流れる供給材料の体積は、前記分離ステップの前及び前記分離ステップ中にほぼ一定である、前記方法。
【請求項2】
供給材料が混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
供給材料がガスである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの反応器が、微細構造反応器又はマイクロチャネル反応器である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
各反応器がマイクロチャネル反応器である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
反応器トレインの数が、少なくとも2つ、又は少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、又は少なくとも5つである、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
反応器トレインが、少なくとも1つの反応器、又は少なくとも2つの反応器、又は少なくとも3つの反応器、又は少なくとも4つの反応器を備える、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの反応器が、Fischer-Tropsch反応器である、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
複数の並列流路を通って流れる供給材料が、バッテリーリミットから供給され、プラント設備での処理のために受け入れられ、前記供給材料の体積が、分離ステップの前及び分離ステップ中に、10%を超えて、7%を超えて、5%を超えて変化しない、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
供給材料が、一酸化炭素及び水素を含む、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
供給材料が、バイオマス及び/又は都市廃棄物若しくは固形廃棄物をガス化することによって生成される、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
触媒の再生を、分離された反応器トレイン内でインサイチュにて行う、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの分離された反応器トレインが、約3日~約14日、又は約4日~約12日、又は約5日~約10日の期間、オフラインであり、前記少なくとも1つの分離された反応器トレインが、約7日の期間、オフラインである、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
触媒が、金属系触媒、例えばコバルト又は鉄含有触媒などのFischer-Tropsch触媒である、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
供給原料のフレアリング及び/又は上流ユニットのターンダウンがない、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
プラント設備のユニット領域が、Fischer-Tropschアイランドである、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
触媒再生中に、化学的又は生化学的な請求項1~16のいずれかに記載の方法を実行するためのプラント設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント設備、例えば、より広いプラント内のFischer-Tropsch反応器又はFischer-Tropsch反応器アイランド(island)内で触媒再生を実行する方法に関する。本発明は、そのような方法を実行するプラント設備にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
Fischer-Tropsch(FT)法は、一酸化炭素と水素から燃料を生成するために広く使用されており、以下の等式:
(2n+1)H2+nCO→CnH2n+2+nH2O
で表すことができる。
【0003】
この反応は高度に発熱性であり、上昇した温度(典型的には少なくとも180℃、例えば200℃又はそれ以上)及び圧力(例えば少なくとも10bar)条件下で、Fischer-Tropsch触媒、典型的にはコバルト系触媒により触媒される。生成物混合物が得られ、nは、典型的には10~120の範囲を包含する。生成物混合物における軽ガス(例えばメタン)の選択性、すなわちメタン(n=1)の割合を最小限にすること、並びにC5及びより高級な(n≧5)パラフィンに対する選択性を最大化する、典型的には85%又はそれ超のレベルにすることが望ましい。一酸化炭素の変換を最大化することも望ましい。
【0004】
水素及び一酸化炭素の供給原料は、通常、合成ガス又は合成ガスを含むガス混合物である。
【0005】
合成ガスは、上昇した温度、例えば、約700℃又はそれ以上にて炭素質材料をガス化することにより生成することができる。炭素質材料は、ガス化して合成ガスを生成できるいかなる炭素含有材料も含み得る。炭素質材料は、バイオマス(例えば、植物又は動物性物質、生分解性廃棄物など)、食料資源(例えば、トウモロコシ、ダイズなどといった)、及び/又は非食料資源、例えば石炭(例えば、低品位石炭、高品位石炭、精炭など)、油(例えば、原油、重油、タールサンドオイル、シェールオイルなど)、固形廃棄物(例えば、都市固形廃棄物、有害廃棄物)、ごみ固形燃料(RDF,refuse derived fuel)、タイヤ、石油コークス、ごみ、生ごみ、バイオガス、下水汚泥、動物の排泄物、農業廃棄物(例えば、コーンストーバー、スイッチグラス、刈草)、建築廃材、プラスチック材料(例えば、プラスチック廃棄物)、綿繰り機廃棄物、それらの2つ又は3つ以上の混合物などを含み得る。
【0006】
或いは、合成ガスは、天然若しくは埋立地ガス、又は嫌気性消化プロセスにより生成されるガスの改質によるような他の手段により生成することができる。また合成ガスは、水素供給源として電気分解を使用したCO2改質(例えばいわゆる「電力からの燃料」プロセス("electricity-to-fuels" process))によっても生成することができる。
【0007】
前述したように生成された合成ガス(以下、新たな合成ガスと呼ばれる)は、Fischer-Tropsch触媒を供給するための調製において、水蒸気改質(例えば、メタンを、水蒸気メタン改質(SMR,steam methane reforming)触媒の存在下で水蒸気と反応させる、水蒸気メタン改質(SMR)反応);部分的酸化;オートサーマル改質;二酸化炭素改質;又はそれらの2つ若しくは3つ以上の組合せにより、H2対COのモル比を調整するように処理することができる。
【0008】
新たな合成ガスにおけるH2対COのモル比は、望ましくは約1.6:1~約2.2:1、又は約1.8:1~約2.10:1、又は約1.95:1~約2.05:1の範囲である。
【0009】
新たな合成ガスは、H2及びCOを同様に含有するリサイクルテールガス(例えばリサイクルFTテールガス)と任意に組み合わせて、反応物混合物を形成することができる。テールガス(tail gas)は、H2及びCOを任意に含んでもよく、H2対COのモル比は、約0.5:1~約2:1、又は約0.6:1~約1.8:1、又は約0.7:1~約1.2:1の範囲である。
【0010】
組み合わせたFT合成ガス供給物(リサイクルテールガスと組み合わせた、新たな合成ガスを含む)は、望ましくはH2及びCOを、約1.4:1~約2.1:1、又は約1.7:1~約2.0:1、又は約1.7:1~約1.9:1の範囲のモル比で含む。
【0011】
リサイクルテールガスが使用される場合、反応物混合物を形成するために使用される新たな合成ガス対リサイクルテールガスの体積比は、例えば約1:1~約20:1、又は約1:1~約10:1、又は約1:1~約6:1、又は約1:1~約4:1、又は約3:2~約7:3の範囲、又は約2:1であり得る。
【0012】
Fischer-Tropsch反応中、触媒は徐々に劣化し、その有効性は低下し、許容できる一酸化炭素変換率を維持するために、徐々に温度を上昇させる必要がある。この触媒の劣化により触媒の有効性が低下するため、活性損失を補い、許容される一酸化炭素の変換率を維持するには、温度を徐々に上昇させる必要がある。これは、Steynberg et al. “Fischer-Tropsch catalyst deactivation in commercial microchannel reactor operation” Catalysis Today 299 (2018) pp10-13、に記載されている。
【0013】
最終的には、触媒を再生させることは、その有効性を回復するために必要になる。触媒をインサイチュ(in situ)で再生させることは公知である。
【0014】
固定床反応器、スラリーバブリング-カラム反応器(SBCR,slurry bubble-column reactors)及び微細構造反応器及びマイクロチャネル(microchannel)反応器を含む、いくつかの異なる反応器タイプが、Fischer-Tropsch合成の実行に関して公知である(Rytter et al, “Deactivation and Regeneration of Commercial Type Fischer-Tropsch Co-Catalysts - A Mini-Review” Catalysts 2015, 5, pp 478-499 at pp 482-483)。
【0015】
マイクロチャネル反応器は、本出願人の名義で国際公開2016/201218(A)号パンフレットにおいて開示されており、これは参照として組み込まれ、LeViness et al “Velocys Fischer-Tropsch Synthesis Technology - New Advances on State-of-the-Art” Top Catal 2014 57 pp518-525においても同様に開示されている。そのような反応器は、熱交換表面積のマイクロチャネル(したがって触媒)体積に対する比が高いために、きわめて有効な熱除去が実行可能であるという具体的な利点を有する。
【0016】
微細構造反応器は、例えば、米国特許出願公開第2018207607号明細書、米国特許第8122909号明細書、米国特許第7745667号明細書に開示されている。
【0017】
出願人名義の国際公開第2016/201218(A)号パンフレットは、従来の反応器又はマイクロチャネル反応器のいずれかにおいて、停止した合成ガスプロセスを再開する方法を開示している。このプロセスには、反応器トレイン(reactor trains)に流入する(及び反応器から流出する)合成ガスの流れを一定期間停止するステップが含まれる。
【0018】
発熱反応から熱を除去する方法、特に共通の冷却システムを使用して複数の反応トレインから熱を除去する方法が、出願人の名義で米国特許出願公開第2016107962号に記載されている。
【0019】
上で引用した従来技術では、再生中に流量の低減によりプラント設備において低下がある。これにより、プラント設備全体の効率が低下する。
【0020】
したがって、プラントの運転効率を最大化し、当技術分野において従来の方法に別様に伴う触媒再生期間中の排出物への悪影響を排除する、プラント設備における触媒再生のための改善された、より環境に優しく、最適化された方法を提供する必要性が依然として存在する。
【0021】
過熱水蒸気などの熱交換流体を使用したインサイチュでの触媒の再生は、出願人の名義による発明の同時係属出願国際公開第2020249529号パンフレットに開示されている。
【0022】
本発明による方法は、プロセス流量がほぼ一定のままであり、低減させる必要がないため、当技術分野の従来の方法と比較して、より効率的で、費用効果が高く、無駄を削減する。これは、プラントを運転するためにプロセス流量を低減する必要があり、それによってプラントの効率が低下し、炭素排出量が増加し、費用が増加する従来の方法よりも有利である。
【0023】
本発明は、反応器及び/又は反応器トレインの再生中に処理できない供給原料をフレア(flare)する必要性及び/又は上流のガス化ユニットプロセスをターンダウン(turndown)させる必要性を最小限に抑えるか、又は回避するようにFischer-Tropschアイランドなどのプラント設備を構成することであって、これにより、従来技術の以前の例と比較して、プラント全体の効率が改善され、炭素排出量が削減される、プラント設備を構成することに関する。
【0024】
したがって、本発明は、プロセス、及び前記プロセスを運転させることができるプラント設備であって、触媒の再生が反応器の全体的な生産能力を不当に妨害せず、さまざまな運転条件下でプロセスを容易かつ効率的に適合させることができる、プロセス、及び前記プロセスを運転させることができるプラント設備に関する。
【0025】
従来、触媒再生を必要とする反応器を備える設備の運転では、典型的には、上流ユニットを一定の能力に保ちながら、合成ガスなどの処理できない供給原料をフレアする。しかし、供給原料のフレアリングは運転設備の排出プロファイルに悪影響を及ぼし、排出許可違反を引き起こす場合がある。
【0026】
或いは、従来の運転設備では、触媒の再生を促進するために上流ユニットの能力をターンダウンさせ、それによって必要とされ得るフレアリングの量を削減することがある。しかし、設備の上流ユニットをターンダウンさせると、設備の生産能力が低下し、ターンダウン時に運転するユニットの効率が損なわれるため、望ましくない。
【0027】
予備の反応器を設置するという別の代替案は、この選択肢の資本集約的な性質のため、ほとんど実践されない。
【0028】
したがって、供給原料のフレアリング(flaring)及び/又は上流ユニットのターンダウンを回避し、プラント設備が触媒再生モードにあるときに利用可能な合成ガスを全量利用するプロセスを提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】国際公開2016/201218(A)号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2018207607号明細書
【特許文献3】米国特許第8122909号明細書
【特許文献4】米国特許第7745667号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2016107962号
【特許文献6】国際公開第2020249529号パンフレット
【非特許文献】
【0030】
【非特許文献1】Steynberg et al. “Fischer-Tropsch catalyst deactivation in commercial microchannel reactor operation” Catalysis Today 299 (2018) pp10-13
【非特許文献2】(Rytter et al, “Deactivation and Regeneration of Commercial Type Fischer-Tropsch Co-Catalysts - A Mini-Review”Catalysts 2015, 5, pp 478-499 at pp 482-483)
【非特許文献3】LeViness et al “Velocys Fischer-Tropsch Synthesis Technology - New Advances on State-of-the-Art” Top Catal 2014 57 pp518-525
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
したがって、本発明の目的は、触媒再生中に供給原料をフレアする必要性及び/又は上流ユニットの能力をターンダウンさせる必要性を低減又は排除し、それによって、それに伴う排出及び設備投資(CAPEX)への悪影響を低減する方法を提供することである。したがって、本発明は、プラント設備、例えばFischer-Tropsch(FT)アイランドにおける触媒再生のための改善された、より環境に優しい、最適化された方法を提供することを目的とする。
【0032】
本発明のさらなる目的は、プラント設備、例えばFischer-Tropschアイランドの構成を最適化し、有用な生成物、例えば合成燃料の製造を、例えば、通常運転モードと再生運転モードの間など、運転モードに関係なく、ほぼ一定のレベルに維持できるようにすることである。したがって、本発明の目的は、そのような設備で実行することができるプロセスにも関する。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明の第1の態様によれば、触媒再生中にプラント設備を運転するための方法であって、
バッテリーリミット内で運転するユニット領域をプラント設備に提供するステップであって、
ユニット領域のバッテリーリミットは、供給材料を受け入れるように構成されている、前記提供するステップと;
供給材料をバッテリーリミット内に受け入れ、供給材料を複数の反応器トレイン内の複数の並列流路に通してプラント設備のユニット領域内に流すステップであって、
各反応器トレインは少なくとも1つの反応器を備え;
各反応器トレインの少なくとも1つの反応器には触媒が充填されている;前記流すステップと;
分離ステップにおいて、複数の並列流路の全てではなく少なくとも1つを分離して、少なくとも1つの分離された反応器トレインと残りのオンライン反応器トレインを提供するステップと;
再生ステップにおいて、少なくとも1つの分離された反応器トレインの少なくとも1つの反応器内で触媒を再生するステップ;とを含み;
再生ステップ中、供給材料は残りのオンライン反応器トレインの並列流路を通って流れ;
バッテリーリミットから供給され、プラント設備での処理のために受け入れられる複数の並列流路を通って流れる供給材料の体積は、分離ステップの前及び分離ステップ中にほぼ一定である、前記方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
複数の反応器トレインは、何らかの構成で配置された、複数の別々の異なる反応器、任意にマイクロチャネル反応器又は微細構造反応器を含んでもよい。複数の並列流路は、それぞれがユニット運転を実行する複数のモジュール式反応器を備える個々の反応器トレインであると解釈することができる。
【0035】
少なくとも1つの反応器は、微細構造反応器又はマイクロチャネル反応器であってもよい。各反応器は、微細構造反応器又はマイクロチャネル反応器であってもよい。
【0036】
供給材料は、混合物であってもよい。供給材料は、ガスであってもよい。供給材料は、ガス混合物であってもよい。
【0037】
したがって、複数の並列流路を通って流れる供給材料は、各反応器トレインに少なくとも1つの反応器を備える複数の反応器トレインを通って流れることになる。
【0038】
供給材料は、バイオマス及び/又は都市廃棄物若しくは固形廃棄物生成物をガス化することにより生成してもよく、その後に改質してもよい。好ましくは、供給材料は、ガス混合物である。埋立地ガス又は天然ガスなどの他の供給原料は、前もってガス化せずに直接改質してもよい。
【0039】
本発明者らは、本発明のマルチトレイン、モジュール式アプローチにより、プラント設備、例えば反応器がFT反応器である場合はFTアイランドが、プラントの運転効率を最大化し、当技術分野において従来の方法に別様に伴う触媒再生期間中の排出物への悪影響を排除することができることを見出した。したがって、本発明の配置は、生産を最大化するために運転を最適化しながら、プラント設備で触媒再生を実行するための、より環境に配慮した、より環境に優しい方法を提供する。
【0040】
本発明のアプローチは、例えば単一のガス化トレインが存在する液体設備への少量の供給に特に役立つ場合がある。
【0041】
一般に、ガス化トレインへの供給のターンダウンは難題であり、例えば床材料の流動化又は床温度の均一性など、いくつかの複雑な問題を引き起こす可能性がある。
【0042】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明による配置、例えばマルチトレイン構成により、プラント設備がプロセス及び運転条件の変化するニーズに効果的に適合することが可能になり、同時に、合成ガスの取り込み及び液体燃料製造の設計能がほぼ維持されることを見出した。
【0043】
これは、増加した熱負荷に対処する反応器の能力により、触媒再生中の合成ガス処理能力を維持するために必要な変化に応じて、リサイクル対供給比及び運転温度などの運転パラメータを調整することによって達成することができる。従来の設備の場合、例えば、トレインごとに大型及び/又は単一の反応器が使用される場合、そのようなアプローチは非現実的であるか、予備トレインの設置に関連した多額の設備投資(CAPEX)ペナルティを伴うことになる。
【0044】
従来の反応器は、例えば、固定床反応器、連続撹拌槽型反応器、スラリー気泡塔反応器、又は循環流動床反応器を任意に含んでもよい。本発明による反応器は、好ましくは微細構造反応器又はマイクロチャネル反応器である。
【0045】
「マイクロチャネル」は、10mm以下、好ましくは2mm以下、かつ1μmを超える(好ましくは10μmを超える)、少なくとも1つの内部寸法(壁から壁まで、触媒を含まない)を有するチャネルであり、いくつかの実施形態では、50~500μm;好ましくは、マイクロチャネルは、少なくとも10mm、好ましくは少なくとも200mmの、長さについてのこれらの寸法内に留まる。いくつかの実施形態では、長さは50~1000mmの範囲であり、いくつかの実施形態では、長さは100~600mmの範囲である。マイクロチャネルは、少なくとも1つの出口とは異なる少なくとも1つの入口の存在によっても定義される。マイクロチャネルは、ゼオライト又はメソポーラス材料を通る単なるチャネルではない。マイクロチャネルの長さは、このマイクロチャネルを通る流れの方向に対応する。マイクロチャネルの高さ及び幅は、マイクロチャネルを通る流れの方向に対して実質的に垂直である。マイクロチャネルが、2つの主表面(例えば、積み重なった及び結合されたシートによって形成された表面)を有する積層デバイスの場合、高さは主表面から主表面までの距離であり、幅は高さに対して垂直である。マイクロチャネルは任意に直線又は実質的に直線であってもよく、これはマイクロチャネルを通って遮るもののない真っ直ぐな線を引くことができることを意味する(「遮るものがない」とは微粒子充填前を意味する)。典型的には、デバイスは、共通のヘッダー及び共通のフッターを共有する複数のマイクロチャネルを備える。一部のデバイスは単一のヘッダー及び単一のフッターを有するが;マイクロチャネルデバイスは、複数のヘッダー及び複数のフッターを有してもよい。
【0046】
マイクロチャネル反応器は、10mm以下、好ましくは2mm以下(いくつかの実施形態では約1mm以下)、かつ100nmを超える(好ましくは1μmを超える)、いくつかの実施形態では50~500μmである、少なくとも1つの寸法(壁から壁まで、触媒を含まない)を有する少なくとも1つの反応チャネルの存在を特徴とする。触媒を含有するチャネルが、反応チャネルである。より一般的には、反応チャネルは、反応が起こるチャネルである。マイクロチャネル装置も同様に特徴付けられるが、ただし、触媒含有反応チャネルを必要としない。高さと幅は両方とも、反応器を通る反応物の流れの方向に対して実質的に垂直である。マイクロチャネルの側面は、反応チャネル壁によって画定される。これらの壁は、硬質材料、例えばセラミック、鋼などの鉄系合金、又はモネルなどのNi、Co、又はFe系超合金で、好ましくは作製される。反応チャネルの壁の材料の選択は、反応器が意図する反応に依存し得る。反応チャンバの壁は、耐久性があり、良好な熱伝導性を有するステンレス鋼又はInconel(商標)で任意に構成してもよい。典型的には、反応チャネル壁は、マイクロチャネル装置の主要な構造的支持を提供する材料で形成される。マイクロチャネル装置は、公知の方法によって作製することができ、交互配置プレート(「シム」としても知られる)を積層することによって任意に作製してもよく、好ましくは、反応チャネル用に設計されたシムが、熱交換用に設計されたシムと交互配置される。一部のマイクロチャネル装置は、デバイス内に積層された少なくとも10層(又は少なくとも100層)を含み、これらの層のそれぞれは、少なくとも10チャネル(又は少なくとも100チャネル)を含有している;デバイスは、より少ないチャネルを備えた他の層を任意に含有してもよい。
【0047】
微細構造反応器は、化学反応が起こる閉じ込めの程度に関して同様に特徴付けることができ、10mm以下の少なくとも1つの寸法(壁から壁まで、触媒は含まない)を有する少なくとも1つの反応ゾーンの存在によって特徴付けられる。触媒を含有するゾーンが、反応ゾーンである。より一般的には、反応ゾーンは、反応が起こるゾーンである。微細構造装置も同様に特徴付けられるが、ただし、触媒含有反応ゾーンを必要としない。
【0048】
したがって、「微細構造」反応器は、少なくとも1つの寸法(壁から壁まで、触媒は含まない)が10mm以下の反応ゾーンで化学反応が起こる閉じ込め空間反応器として解釈される。微細構造反応器は、マイクロチャネル反応器と同様に特徴付けることができる。
【0049】
以下の説明では、「マイクロチャネル反応器」及び「マイクロチャネル」という用語は、例示及び説明の目的で使用されるが、微細構造反応器も特に本発明の範囲内にあることを理解すべきである。
【0050】
したがって、本発明は、運転要因に柔軟に対応するプロセスを提供し、また、生産能力に悪影響を与えることなく、より環境に有益なプロセスを提供する。プロセスの柔軟性により、本発明によるプロセスは、当技術のプロセスと比較して、より信頼性が高く、供給比を最適化することができる。
【0051】
供給材料は、水素及び一酸化炭素を任意に含んでもよい。好ましくは、供給材料は合成ガスであるか、合成ガスを含む。
【0052】
合成ガスという用語は、水素及び一酸化炭素を主に含むガスを意味すると解釈されるべきである。二酸化炭素、窒素、アルゴン、水、メタン、タール、酸性ガス、高分子量炭化水素、油、揮発性金属、炭、リン、ハロゲン化物、及び灰などの他の成分も、存在してもよい。存在する汚染物質及び不純物の濃度は、プロセスの段階及び炭素質供給原料源に依存する。生成された原料合成ガス中に存在する炭素質材料、例えばCH4及びN2などの不活性ガスは、後続の各ステップにわたって引き続き存在することが予想され、明示的に言及されない場合があることを理解すべきである。
【0053】
合成ガスは、バイオマス及び/又は都市廃棄物若しくは固形廃棄物生成物をガス化することにより任意に生成してもよく、その後に改質してもよい。埋立地ガス又は天然ガスなどの他の供給原料は、前もってガス化せずに直接改質してもよい。
【0054】
マイクロチャネル反応器では、我々の同時係属出願である国際公開第2020249529号パンフレットに開示されているように、触媒をインサイチュで再生することができる。
【0055】
ユニット領域は、バッテリーリミット(battery limits)内で運転する。本発明によるユニット領域のバッテリーリミットは、供給材料を受け入れるように構成されている。受け入れた供給材料は、下流処理用の製品を処理及び供給するために使用してもよい。ユニット領域は、例えば、Fischer-Tropsch領域又はFischer-Tropschアイランドであってもよい。下流プロセスは、例えば、アップグレード及び/又は保存のための重質FT液(HFTL,heavy FT liquid)及び軽質FT液(LFTL,light FT liquid)の液体炭化水素製品であり得る。
【0056】
ユニット領域、例えばFTアイランド内の反応器トレインの数は、任意に、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つであってもよい。一実施形態では、ユニット領域内に2つの反応器トレインが存在する。代替的実施形態では、ユニット領域内に3つの反応器トレインが存在する。
【0057】
各反応器トレイン内の反応器、例えばマイクロチャネル反応器の数は、任意に、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つであってもよい。一実施形態では、各反応器トレインに2つの反応器が存在する。別の実施形態では、各反応器トレインに3つの反応器が存在する。
【0058】
ユニット領域内の各反応器トレインに存在する反応器の数は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0059】
本発明による反応器トレインという用語は、一組の並列反応器、例えば並列マイクロチャネル反応器であると解釈することができる。
【0060】
反応器のサイズ及び構成は、合理的な資本投資で全体の生産量を最大化するために、供給処理用に選択される反応器の総数(反応器トレインの数×各トレインのマイクロチャネル反応器の数)に基づいて調整する。
【0061】
この発明のアプローチによれば、反応器トレイン(それぞれ最低1つの反応器を有する)の数を複数に増加させることにより、利用可能なすべての合成ガスを常に処理するためのユニット領域、例えばFT領域の可用性及び能力が向上し、したがって、設備からの生産量が増加する。他方では、反応器トレインの数が増えると、より多くの(小型の)装置が必要になるという点でコストが増加するが、再生装置に関連するコストが削減され、再生装置はまた、より有効利用される。プラント設備内のユニット領域で処理される供給材料の量に応じて、供給材料の最大限の取り込みを確保し、最適化された生成物の収量を確保するために、反応器トレインの数及び反応器トレインごとの反応器の数が最適化されている。
【0062】
複数の反応器トレインに設置された反応器(各反応器トレインに少なくとも1つとして配置されている)は、高発熱反応及び/又は高吸熱反応、例えばFischer-Tropsch合成及びメタノール合成に適切であり得る。
【0063】
一実施形態では、反応器、例えばマイクロチャネル反応器(反応器トレイン内に少なくとも1つとして配置される)は、少なくとも1つのFischer-Tropsch反応器であってもよい。Fischer-Tropsch反応器は、Fischer-Tropschマイクロチャネル反応器であってもよい。並列流路は、1つ又は2以上のFischer-Tropsch反応器の複数のチャネルを通って流れることができる。
【0064】
プラント設備は、XTL(供給原料液化(feed to liquid))設備であってもよい。XTL設備は、例えば、廃棄物液化設備、バイオマス液化設備、ガス液化設備、及び/又は電気からの燃料(electricity to fuel)設備であり得る。ユニット領域は、合成ユニットであると解釈されてもよい。ユニット領域は、例えば、Fischer-Tropsch領域又はFischer-Tropschアイランドであってもよい。Fischer-Tropsch領域又はFischer-Tropschアイランドは、例えば合成ガスを取り入れて炭化水素製品を提供してもよい。
【0065】
Fischer-Tropsch合成に関する実施形態によれば、供給材料(例えば、一酸化炭素及び水素を含む合成ガス)は、Fischer-Tropsch反応器、好ましくはFischer-Tropschマイクロチャネル反応器に供給される。Fischer-Tropsch反応器は、供給材料の一酸化炭素及び水素の少なくとも一部を、主に直鎖状炭化水素に変換することができる。
【0066】
合成ガスの液体炭化水素への変換は、触媒の存在下で行われる。鎖長の分布は、使用する触媒の特性及び運転条件に依存する。
【0067】
Fischer-Tropsch反応は発熱性が高く、反応温度をほぼ一定に保つために除去する必要がある熱を放出する。触媒床内の局所的な高温は、FT触媒及び製品の製造に悪影響を与えることが見出されている。したがって、最高の触媒活性及び最長の触媒寿命を達成するには、熱を効率的に伝達して最適かつ均一な温度を維持する必要がある。
【0068】
温度を設定する1つの方法は、循環冷却水と併用されるFT反応器に付随する水蒸気ドラムの圧力を変えることによるものである。冷却水を循環させることは、反応中に発生する熱による温度上昇を制御するのに役立つ。
【0069】
Fischer-Tropschアイランド(FTアイランド)は、FT反応器の形態であり、この反応器は、同じ共通の供給原料リザーバから供給される複数の異なる反応器トレインを有し、各反応器トレインは、1又は2以上のマイクロチャネル反応器を備える。
【0070】
FT合成の運転温度は、約125~350℃、約150~300℃、約170~250℃、約180~240℃であってもよい。低温FT技術の場合、好ましくは、運転温度は約180℃~240℃である。
【0071】
FT合成で得ることができる生成物、例えば前記炭化水素は、重質FT液(HFTL)、軽質FT液(LFTL)、FTプロセス水、ナフサ、及び不活性物質並びに非凝縮軽質炭化水素、典型的にはC1-C4からなるテールガスを含んでもよい。C1-C4範囲の軽質炭化水素からなるテールガスの一部は、リサイクルすることができる。
【0072】
各反応器トレインの少なくとも1つの反応器は、触媒を含む。少なくとも1つの反応器には触媒が充填されている。各反応器は、触媒を含んでもよい。
【0073】
触媒は、例えば、金属又は支持体との複合金属触媒であり得る。好ましくは、触媒は金属系触媒、例えばコバルト又は鉄含有触媒などのFischer-Tropsch触媒である。Fischer-Tropsch触媒は、プロセスマイクロチャネル内に適合する任意のサイズ及び幾何学的構成を有してもよい。
【0074】
好ましくは、触媒は多孔質支持体上に配置される。支持体は、例えばシリカ及び/又はチタニアから作製してもよい。
【0075】
触媒は、任意に、約1~約1000μm(ミクロン)、又は約10~約750μm、又は約25~約500μmの中央粒径を有する粒子状固体(例えば、ペレット、粉末、繊維など)の形態であってもよい。中央粒径は、任意に、50~約500μm、又は約100~約500μm、又は約125~約400μm、又は約170~約300μmの範囲であってもよい。一実施形態では、触媒は粒子状固体の固定床の形態であってもよい。
【0076】
最終的には、触媒を再生させることは、その有効性を回復するために必要になる。
【0077】
触媒の再生中、本発明の方法は、分離ステップにおいて、再生される必要がある触媒を含む反応器を備える反応器トレインを、設備の残りの部分から分離する。その結果、いくつかの反応器を備える少なくとも1つの反応器トレインが、触媒再生中に分離されるか又は「オフライン」になる。
【0078】
少なくとも1つの分離された反応器トレインは、任意に、約3日~約14日、又は約4日~約12日、又は約5日~約10日の期間、オフラインであってもよい。少なくとも1つの分離された反応器トレインは、任意に、約7日の期間、オフラインであってもよい。
【0079】
触媒再生には数日かかる場合があり、したがって対応するマイクロチャネル反応器が長期間オフラインになるため、生成物収量の減少を最小限に抑えるために、プラント設備がフル又はフルに近い能力で運転できることが必須である。
【0080】
したがって、少なくとも1つの分離されたマイクロチャネル反応器は、例えば我々の同時係属出願国際公開第2020249529号パンフレットに開示されているように、インサイチュで触媒の再生を受けてもよい。
【0081】
本発明によるプラント設備のモジュール式の性質は、従来のプラント設備と比較して、触媒再生のための優れた構成を有利に提供する。モジュール式の性質により、触媒再生を必要とする反応器を備えた反応器トレインを分離する可能性を有する本発明の設備の可用性が提供され、一方、残りのオンライン反応器トレインはほとんど影響を受けないままで、運転条件を調整することで追加の処理負担を引き受けて、これにより、プロセス全体の柔軟性及び信頼性が向上する。
【0082】
従来の反応器はモジュール式ではなく、従来の設備をモジュール化することは複雑になる。したがって、各反応器トレインの分離では、合成ガス変換率の線形減少、又は上流合成ガス生産の線形減少が予測され、したがって全体の生産能力が低下することが予想される。
【0083】
例えば、通常の運転では2つの反応器トレインがオンラインになっている場合、触媒の再生中はオンラインになっている残りの反応器トレインは1つだけになる。その結果、当業者であれば、その結果生じる生産能力及び合成ガス変換率は、50%の能力に低下すると予想するであろう。さらなる非限定的な例として、通常の運転では4つの反応器トレインがオンラインである場合、典型的には、触媒再生中は3つの反応器トレインだけがオンラインである。この状況では、当業者であれば、生産能力/合成ガス変換率の4分の1(25%)が失われると予想するであろう。
【0084】
この生産能力の損失を補うために、従来の設備は、運転条件の変化に対応して入ってくるガス混合物供給に対処するために、非常にコストがかかるが、再生中、又はシステム停止中にのみ配置される別々の完全な反応器トレインを備える場合がある。
【0085】
本発明者らは、驚くべきことに、マイクロチャネル及び/又はマルチトレインアプローチの使用により、設備の全体的な生産能力に影響を与えることなく触媒の再生が可能になる方法が提供され、外部の運転設備の設置を必要とせずに運転条件の変化に適応する方法が提供されることを見出した。
【0086】
複数の並列流路の少なくとも1つを分離すること、したがって少なくとも1つの反応器トレインを分離することにより、前記分離された並列流路を通る供給材料の流れが制限される。その結果、別様に既に前記流路を通って流れたであろう供給材料に加えて、前記流路を通って流れていたであろう供給材料が、代わりに残りの分離されていない流路を通って流れる。したがって、分離ステップの前及び分離ステップ中に複数の並列流路を通って流れる供給材料はほぼ一定である。
【0087】
供給材料は、上流の供給ガス生成ユニットから受け取ることができる。上流供給ガス生成ユニットは、例えばガス化ユニットであってもよい。
【0088】
分離ステップの前及び分離ステップ中にほぼ一定である供給材料は、オンラインである反応器トレイン及び反応器、任意にマイクロチャネル反応器の数とは無関係であり得る。
【0089】
「ほぼ一定」という用語は、分離ステップの前及び分離ステップ中に複数の並列流路を通って流れる供給材料(上流の供給ガス生成ユニットから受けた)の体積が10%を超えて、好ましくは7%を超えて、より好ましくは5%を超えて変化しないことを意味する。
【0090】
したがって、異なる運転モード間の供給材料(上流の供給ガス生成ユニットから受け入れる)がほぼ一定である結果、運転モードに関係なく、生産量をほぼ一定のレベルに維持することができる。
【0091】
「一定レベル」という用語は、通常モードと再生モードの間の生産量の差が10%未満、7%未満、5%未満であると解釈することができる。
【0092】
したがって、本発明による方法は、例えば通常の運転中及び触媒再生中の両方において、プラント設備の処理能力の最大限の利用を常に保証する。したがって、このプロセスにより、プラント全体の効率が向上し、供給原料から有用な生成物への変換が最大化され、排出量が削減され、費用が削減される。
【0093】
配置内の1つのトレインに予期しない機械的問題が発生した場合、本発明によるアプローチによって、有利には、利用可能な供給原料又は供給材料のすべてを処理し続ける柔軟性が可能になり、それによってプラント設備の信頼性が高まる。
【0094】
本発明の方法によって、ガス化中に供給原料をフレアするか又は上流ユニットの能力をターンダウンさせる必要性が回避されるか又は低減することが見出された。所望の触媒再生プロセスは、従来使用されているようなフレアリング又はターンダウンを必要とせずに達成することができる。
【0095】
したがって、本発明による方法は、供給原料のフレアリング及び/又は上流ユニットのターンダウンを含まなくてもよい。
【0096】
「上流ユニット」という用語は、プラント設備内のFT反応器(FTアイランド)に先行するユニットを意味する。これらの上流ユニットは、例えば、ガス化アイランド、水性ガスシフト反応器、及び合成ガスが有用な生成物に変換される触媒含有プロセスチャネルに入る前に、合成ガスを調製及び精製するために使用される他のユニットを含んでもよい。
【0097】
従来のプロセスでは、1又は2以上の反応器トレインが使用されておらず、プロセス能力が低下する触媒再生段階中に、触媒を含有するプロセスチャネルに供給される合成ガスの量を、低減させる必要が時にはある。これは以下のいずれか;過剰な供給原料ガスがシステムから放出されて燃焼する供給原料のフレアリング、又は、合成ガスを生成するユニット、例えばガス化アイランドのスイッチを効果的に切って、プロセスチャネルに供給される供給原料ガスを停止するか又はその量を削減する、上流ユニットのターンダウン、のいずれかによって達成することができる。これらのプロセスはいずれも環境に優しくなく、プラント効率の大幅な低下の一因になる。
【0098】
したがって、本発明による方法は、当技術分野の従来の方法と比較して経済的な利点を提供する。例えば、ターンダウンが必要となり、したがって生産損失が発生する従来の設備と比較して、触媒再生中の供給材料、任意にガス混合物、(例えば、合成ガス)の可用性に応じて、リサイクル対供給比及び運転温度などの運転パラメータを調整することで、生産が維持される。
【0099】
分離ステップの前及び分離ステップ中に複数の並列流路を通って流れる供給材料(上流の供給ガス生成ユニットから受け入れた)の体積がほぼ一定である結果、ユニット領域装置を損傷したり危険な暴走反応を引き起こしたりすることなく、ユニット領域が(流路の分離から生じる)余剰の供給材料に対処することができることが重要である。これは、反応器内で高い発熱反応が起こっている場合に特に重要である。
【0100】
例えば、モジュラー反応器がFischer-Tropsch反応器、好ましくはFischer-Tropschマイクロチャネル反応器であり、供給材料が合成ガスである場合、触媒再生中に残りのオンライン反応器を通って流れるために利用できる合成ガスの余剰は、ユニット領域内で変換される供給材料が一定に保たれるため、反応器内での熱放出の増加につながる。
【0101】
反応器トレインあたり(したがって、マイクロチャネル反応器あたり)の合成ガス供給体積の増加、及びその結果としての熱負荷の増加に対処できる能力は、本発明の方法におけるマイクロチャネル反応器の実施によるものである。マイクロチャネル反応器は、従来の反応器と比較して、熱及び物質移動能力が強化されている。したがって、本発明によるマイクロチャネルの使用は、制御されない発熱反応、熱暴走反応、及び望ましくない大量のメタン生成のリスクを最小限に抑える。
【0102】
ガス流の温度は、反応器、好ましくはマイクロチャネル反応器の熱交換チャネルを通って流れる熱交換流体によって任意に制御してもよい。好ましくは、熱交換流体は循環冷却水である。
【0103】
従来の設備、例えば従来の管型反応器を運転する場合、当業者は、そのような構成が熱負荷の増加(触媒再生中に処理される追加の供給ガスからの発熱の増加に起因する)に対処できるとは予想しないであろう。むしろ、従来の設備では、効果のない熱除去による温度上昇により制御不能な暴走反応が起こる可能性があるため、合成ガス変換率の増加及び熱放出の高まりは危険であると考えられる。したがって、従来の反応器は、本発明の方法で提案される運転条件の変化に安全に対応することができないであろう。
【0104】
従来の設備におけるこの問題に対する1つのアプローチは、熱の除去速度が熱の生成速度と適切なペースを保つことができるように、体積生産性を制限することであった。これは、当技術分野で一般的に使用されている従来の固定床反応器の背後にある原理である。さらに、触媒再生中の条件の変化に対応するために、これらの従来の反応器では、典型的に、供給原料のフレアリング、上流のガス化システムのターンダウン、又は別々の完全なトレインの設置を伴うが、これらはすべてコストがかかり、望ましくないものである。
【0105】
或いは、マイクロチャネル反応器など、より効果的に熱を除去することができる反応器設計を使用することで、局所的な反応温度をプロセス目標値の数度以内に維持しながら、体積生産性を向上させることができる。これにより、経済的目標を達成するのに十分な高い生産率で、設置された反応器のサブセットを柔軟に利用できるようになる。
【0106】
本発明の発明者らは、そのようなプロセス及び構成が触媒再生中に動的柔軟性を提供することを見出した。
【0107】
したがって、本発明による方法は、内部リサイクルがある場合とない場合で、処理の柔軟性を備えて、すべての利用可能な合成ガス及び/又は生成される合成ガスに適応する能力を有する。したがって、本発明の方法は、触媒の再生プロセスにおいて新たな合成ガスの処理負荷が変動するため、内部リサイクル(すなわちテールガスリサイクルあり)と内部リサイクルなしとの間の移行の動力学に対処する能力を有する。
【0108】
本発明のモジュール式アプローチは、マイクロチャネル反応器の個々のモジュールが触媒の再生を必要とするときに、反応器トレイン(それぞれが触媒を含む少なくとも1つの反応器を備える)の分離によるダウンタイムを最小限に抑えるのに役立つ。対照的に、従来の固定床システムでは、反応器の変更又は修理に対応するために、予備の別々の完全なトレイン又はシステムの停止若しくはターンダウンが必要である。
【0109】
その結果、予期された(例えば、触媒の再生)又は予期されない(例えば、設備内での移動)運転中断の場合、本発明による方法によって連続運転が可能になり、したがって、予期された又は予期されない中断による悪影響を受けない場合がある。
【0110】
好ましくは、この方法は、性質を問わず供給材料(例えば合成ガス)が、複数の並列流路を通ってプラント設備(例えばFischer-Tropschアイランド)に連続的に供給される連続プロセスである。
【0111】
触媒の再生が完了した後、本発明による方法は、効率的かつ柔軟に、以前に分離された流路を通る供給材料の流れを再開するように適合する。分離された反応器トレインは、プラント設備に統合して戻すことができる。
【0112】
誤解を避けるために、触媒再生を実行するプロセスに関するすべての特徴は、必要に応じて、触媒再生を実行するためのプラント設備に任意に適用してもよく、またその逆も同様である。
[実施例]
【0113】
新たな合成ガスは、上流のガス化アイランドから得られ(具体的な新たな合成ガス速度については実施例を参照のこと)、それぞれが少なくとも1つのマイクロチャネル反応器を備える複数の反応器トレインを含むFischer-Tropsch領域に供給された。利用可能な合成ガスの処理能力及び設備からの全体的な生産量への影響を評価するために、設置されたマイクロチャネル反応器の複数の構成を考慮した。
【0114】
実施例1及び表1では、反応器トレインごとに1つのマイクロチャネル反応器の設置を考慮し、通常運転と、設置されたトレインのうちの1つが再生(再生モード)にある場合との間の設備全体の生産への影響を示している。
【0115】
実施例2及び表2では、反応器トレインごとに2つのマイクロチャネル反応器の設置を考慮し、通常運転と、設置されたトレインのうちの1つが再生(再生モード)にある場合との間の設備全体の生産への影響を示している。
【0116】
実施例2及び表3では、反応器トレインあたり3つのマイクロチャネル反応器を設置する選択肢についての同様の評価を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0117】
表1~3に示したトレインの最大数で表される構成の設備セットアップをそれぞれ
図1~3に示す。
【0118】
これらの実施例では、トレイン2が再生中に単一の分離されたトレインとして示されているが、代わりに(又は同様に)再生中に他のトレインが分離される場合があること;また、反応器トレインの数、トレインごとの反応器の数、及び再生中に分離されている反応器及び/又は反応器トレインの位置及び/又は量の構成は、本発明に従って変更することができることは、明らかである。
【0119】
実施例2で想定される合成ガス供給量は、実施例1の供給量のおよそ5倍である。したがって、供給ガス量のこの増加を処理するには、追加の反応器及び/又は反応器トレインが必要であることは当業者には明らかであろう。したがって、反応器トレインの数が不釣り合いに少ない構成(例えば、反応器が2つ)は、実施例2の表2及び表3には提示されていない。
【0120】
表1~3に報告されているデータの目的のため、60日ごとの各反応器トレインの周期的な再生は、例えば、反応性窒素種による可逆的被毒の影響、及び非反応性炭素の蓄積及び軽度の酸化などの通常の不活性化メカニズムによる影響を回復させると考えられる。報告された生産数は、2年間にわたる反応器トレインの平均運転温度に基づいている。
【0121】
触媒再生中、1反応器トレイン(触媒再生が行われる場所)内のすべてのマイクロチャネル反応器が7日間オフラインになると想定される。
【0122】
再生中、触媒はワックス除去、酸化、及び還元(WROR,wax removal, oxidation and reduction)ステップからなる再生プロセスを受け、各ステップで反応器内の触媒床の加熱及び冷却が必要である。
【0123】
再生の準備では、オフライン反応器の温度をおよそ170℃まで下げて合成ガスを停止し、その後合成ガスを遮断して反応器トレインを分離する。再生が予定されている反応器トレインを分離するのに成功すると、再生が準備される。分離された反応器トレインは、加熱を開始する前に水素でパージして、ワックス除去ステップのための環境を確立する。必要な高温保持が完了すると、反応器トレインを、酸化ステップに適切な移行温度まで冷却する。酸化ステップでは、トレイン内の反応器を窒素でパージして、酸素の目標レベルが徐々に確立され、加熱を開始する。必要な高温保持が完了すると、反応器トレインを、還元ステップに適切な移行温度まで冷却する。還元ステップでは、トレイン内の反応器を窒素でパージして、目標の水素環境が確立され、加熱を開始する。必要な高温保持が完了すると、反応器トレインを、合成ガスの再導入ステップに適切な移行温度まで冷却する。
【0124】
再生ステップが完了すると、合成ガスの流れを再開させ、分離された反応器トレインをプラント設備に統合して戻す。
【0125】
実施例全体を通じて使用される「ターンダウン」という用語は、理論的に予想されるターンダウン、例えば、当業者が従来の反応器について予想する結果として解釈されるべきである。
【0126】
実施例全体を通じて使用される「実際の」という用語は、本発明によるプロセス及び/又はプラント設備が利用される場合、触媒再生モード(1つの反応器トレインがオフラインである場合)と通常の運転モードとの間の実際の生産量の差として解釈されるべきである。
【0127】
再生中の生産デルタという用語は、通常運転時の生産レベルと、通常運転時の生産レベルに対する1つのトレインが再生中の場合の生産レベルの差として推定される生産における損失の尺度として解釈される。
【実施例】
【0128】
新たな合成ガスは、上流のガス化アイランドから460kmol/時間の速度で得られ(H2:COモル比2.00、不活性物質およそ8mol%)、それぞれが少なくとも1つのマイクロチャネル反応器を備える複数の反応器トレインを含むFischer-Tropsch領域に供給された。残りのプロセスは、上述のとおりである。
【0129】
表1は、利用可能な合成ガス供給物を処理するためにユニット領域内に1~4の反応器トレイン(それぞれ1つのマイクロチャネル反応器を備えた)を設置した結果を示す。1つのマイクロチャネル反応器の1つの反応器トレインの場合を除くすべての場合において、ユニット領域は、通常運転モードと再生モードの両方で、利用可能な新たな合成ガス供給の100%を受け入れることができる。
【表1】
【0130】
1つのマイクロチャネル反応器の反応器トレインが1つしかない場合、1つの反応器トレインが再生のためにオフラインになったとき、合成ガスを受け入れるための利用可能な反応器トレインが存在しない。その結果、上流ユニットを停止するか、ガスを100%フレアさせる必要がある。したがって、1つのマイクロチャネル反応器の1つの反応器トレインの場合は、本発明の実施形態ではない。
【0131】
それぞれ1つのマイクロチャネル反応器を備えた2つの反応器トレインの場合、1つの反応器トレインが再生のためにオフラインになると、従来の設備で予想されるターンダウンは1/2又は50%になる。従来の設備、例えば固定床反応器又はスラリー気泡塔反応器では、触媒再生は、典型的には利用可能な合成ガスの摂取量を削減するために上流ユニットのターンダウンを伴う。これは、従来の設備では、別様に追加の反応熱負荷によって発生し、潜在的に不安定な運転及び製品選択性の低下につながる可能性のある温度上昇を制御するために必要である。有利には、本発明による反応器構成のモジュール式の性質により、上流ユニットから入手可能な合成ガスの利用を最大化するための設計の柔軟性が可能になる。したがって、本発明のアプローチを使用する場合、利用可能な追加の供給物は、(マイクロチャネル反応器の強化された熱除去能力により)オンラインの残りの1つの(設置された2つのうちの)トレインによって受け入れられ、実際の生産量の減少はおよそ25%に過ぎないことが見出されている。
【0132】
さらに、第3のトレインを追加すると、本発明によるアプローチを使用してターンダウン予想と比較して増加した生産レベルを維持できるため、再生中の生産デルタは約2%に減少する。さらに第4のトレインを追加すると、再生中の生産デルタは、1%未満に減少するが、時間平均生産量はわずかにしか改善しないため、必要な投資価値が減少する。実際には、運転モードに関係なく、生産量を一定レベル又はほぼ一定レベルに維持することは可能であるが(例えば、再生中の生産デルタが1%未満)、利用可能な合成ガスの100%を処理する能力に基づくと、10%未満又は5%未満の生産差はおそらく許容されるであろう。
【実施例】
【0133】
上流のガス化アイランドから2236kmol/時間の速度で得られた新たな合成ガスは(H2:COモル比2.00、不活性物質およそ8mol%)、それぞれが複数のマイクロチャネル反応器を備える複数の反応器トレインを含むFischer-Tropsch領域に供給された。残りのプロセスは、上述のとおりである。
【0134】
表2は、前記量の合成ガス供給を処理しながら3~6の反応器トレイン(それぞれ2つのマイクロチャネル反応器を備えた)を設置した結果を示す。3つ以上の設置された反応器トレイン(それぞれ2つのマイクロチャネル反応器を備えた)の配置により、通常の運転中及び再生モード中に利用可能な新たな合成ガス負荷を100%受け入れることができる。
【0135】
表3は、表2に例示したものと同じ量の合成ガス供給を処理しながら、3~5の反応器トレイン(それぞれに3つのマイクロチャネル反応器を備えた)を設置した結果を示す。この場合も同様に、3つ以上の設置された反応器トレイン(それぞれ3つのマイクロチャネル反応器を備えた)の配置により、通常の運転中及び再生モード中に利用可能な新たな合成ガス負荷を100%受け入れることができる。表3に示すように、各反応器トレインに追加のマイクロチャネル反応器を含めることで(トレインごとに2つの反応器が設置されている表2に表す場合と比較して)、再生中の生産デルタが減少する。
【0136】
それぞれ2つのマイクロチャネル反応器を備えた4つの反応器トレインの場合、1つの反応器トレインが再生のためにオフラインになると、従来の設備で予想されるターンダウンは1/4又は25%になる。従来の設備、例えば固定床反応器又はスラリー気泡塔反応器では、触媒再生は、典型的には利用可能な合成ガスの摂取量を削減するために上流ユニットのターンダウンを伴う。これは、従来の設備では、別様に追加の反応熱負荷によって発生し、潜在的に不安定な運転及び製品選択性の低下につながる可能性のある温度上昇を制御するために必要である。有利には、本発明による反応器構成のモジュール式の性質により、上流ユニットから入手可能な合成ガスの利用を最大化するための設計の柔軟性が可能になる。したがって、本発明のアプローチを使用する場合、利用可能な追加の供給物は、(マイクロチャネル反応器の強化された熱除去能力により)オンラインの残りの3つの(設置された4つのうちの)トレインによって受け入れられ、実際の生産量の減少は約7%に過ぎないことが見出されている。
【0137】
さらに、反応器トレインの数が増加するにつれて、本発明によるアプローチを使用してターンダウン予想と比較して増加した生産レベルを維持できるため、再生中の生産デルタは減少する。
【0138】
運転モードに関係なく、生産量をほぼ一定レベルに維持することは可能であるが(例えば、再生中の生産量のデルタが1%未満)、利用可能な合成ガスの100%を処理する能力に基づくと、10%未満又は5%未満の生産差は、実際に許容されてもよい。
【0139】
【0140】
表2と表3を比較するとわかるように、再生中の生産デルタ(すなわち、通常運転モードと再生動作モードの間の生産量の差)は、反応器トレインあたりのマイクロチャネル反応器の数が増加するにつれて、より急速に減少する。さらに、反応器トレインの数が増加するにつれて、本発明による配置により増加した生産レベルを維持できるため、再生中の生産デルタは減少する。これを、
図4に例示する。
【0141】
再生プロセスの継続時間が長くなり、頻度が高くなるほど、本発明によるプロセスの利点はより重要になる。典型的には、触媒が非活性化すると、変換率を維持するために反応器の運転温度が上昇する。運転温度が高くなると、好ましい製品の生産量が低下する。再生により触媒の活性が改善し、非活性化の影響を回復することができるため、触媒をより高い活性状態に維持して好ましい生成物の生産量を最大化するには、高い再生頻度が望ましい場合がある。このような場合、触媒の状態に関係なく目標速度で生産を維持できることは、設備からの製品の価値を最大化するために有益である。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒再生中にプラント設備を運転するための方法であって、
バッテリーリミット内で運転するユニット領域をプラント設備に提供するステップであって、
前記ユニット領域の前記バッテリーリミットは、供給材料を受け入れるように構成されている、前記提供するステップと;
前記供給材料を前記バッテリーリミット内に受け入れ、前記供給材料を複数の反応器トレイン内の複数の並列流路に通して前記プラント設備の前記ユニット領域内に流すステップであって、
各反応器トレインは少なくとも1つの反応器を備え;
各反応器トレインの少なくとも1つの反応器には触媒が充填されている;前記流すステップと;
分離ステップにおいて、前記複数の並列流路の全てではなく少なくとも1つを分離して、少なくとも1つの分離された反応器トレインと残りのオンライン反応器トレインを提供するステップと;
再生ステップにおいて、前記少なくとも1つの分離された反応器トレインの前記少なくとも1つの反応器内で前記触媒を再生するステップ;とを含み;
前記再生ステップ中、前記供給材料は前記残りのオンライン反応器トレインの前記並列流路を通って流れ;
前記バッテリーリミットから供給され、前記プラント設備での処理のために受け入れられる、前記複数の並列流路を通って流れる供給材料の体積は、前記分離ステップの前及び前記分離ステップ中に
10%を超えないように変動し、ほぼ一定である、前記方法。
【請求項2】
供給材料が混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
供給材料がガスである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの反応器が、微細構造反応器又はマイクロチャネル反応器である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
各反応器がマイクロチャネル反応器である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
反応器トレインの数が、少なくとも2つ、又は少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、又は少なくとも5つである、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
複数の反応器トレインが
、少なくとも2つの反応器、又は少なくとも3つの反応器、又は少なくとも4つの反応器を備える、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの反応器が、Fischer-Tropsch反応器である、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
複数の並列流路を通って流れる供給材料
の体積が
、分離ステップの前及び分離ステップ中に
、7%を超えて、
又は5%を超えて変化しない、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
供給材料が、一酸化炭素及び水素を含む、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
供給材料が、バイオマス及び/又は都市廃棄物若しくは固形廃棄物をガス化することによって生成される
合成ガスである、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
触媒の再生を、分離された反応器トレイン内でインサイチュにて行う、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの分離された反応器トレインが、約3日~約14日、又は約4日~約12日、又は約5日~約10日の期間、オフラインで
ある、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの分離された反応器トレインが、約7日の期間、オフラインである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
触媒が、金属系触媒、例えばコバルト又は鉄含有触
媒である、請求項1~
14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
金属系触媒が、Fischer-Tropsch触媒である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
供給原料のフレアリング及び/又は上流ユニットのターンダウンがない、請求項1~
16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
プラント設備のユニット領域が、Fischer-Tropschアイランドである、請求項1~
17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
触媒再生中に、化学的又は生化学的な請求項1~
18のいずれかに記載の方法を実行するためのプラント設備。
【国際調査報告】