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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】撮像装置及び撮像方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/78 20230101AFI20240801BHJP
【FI】
H04N25/78
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550132
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2022-08-24
(86)【国際出願番号】 CN2022107201
(87)【国際公開番号】W WO2024016287
(87)【国際公開日】2024-01-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516180667
【氏名又は名称】北京小米移動軟件有限公司
【氏名又は名称原語表記】Beijing Xiaomi Mobile Software Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.018, Floor 8, Building 6, Yard 33, Middle Xierqi Road, Haidian District, Beijing 100085, China
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】山下 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 篤
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024CX11
5C024CX43
5C024GX03
5C024GX18
5C024GY31
5C024HX17
5C024HX23
(57)【要約】
入射光に応答して電荷を蓄積するフォトダイオード(121)であって、アノードが基準電位に接続されたフォトダイオード(121)と、入力端子がフォトダイオード(121)のカソードと接続された第1のトランジスタ(125)と、一端が基準電位に接続され、他端が第2のトランジスタ(123)を通じて第1のトランジスタ(125)の入力端子に接続された第1のキャパシタと、を含む画素と、第2のトランジスタ(123)がオン状態において、第1のトランジスタ(125)の出力端子から出力される第1の出力信号を第1のゲインで増幅し、第1のトランジスタ(125)の出力端子から出力される第2の出力信号を第1のゲインよりも低い第2のゲインで増幅する第1の増幅器(141)と、第1の増幅器(141)で増幅された信号をデジタル信号に変換する変換器(142)と、変換器(142)で変換されるデジタル信号であって、第1の出力信号に対応する第1のデジタル信号が飽和しない場合、第1のデジタル信号を使用し、第1のデジタル信号が飽和する場合、第2の出力信号に対応する第2のデジタル信号を選択して出力する制御回路(150)と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光に応答して電荷を蓄積するフォトダイオードであって、アノードが基準電位に接続されたフォトダイオードと、入力端子が前記フォトダイオードのカソードと接続された第1のトランジスタと、一端が基準電位に接続され、他端が第2のトランジスタを通じて前記第1のトランジスタの入力端子に接続された第1のキャパシタと、を含む画素と、
前記第2のトランジスタがオン状態において、前記第1のトランジスタの出力端子から出力される第1の出力信号を第1のゲインで増幅し、前記第1のトランジスタの出力端子から出力される第2の出力信号を前記第1のゲインよりも低い第2のゲインで増幅する第1の増幅器と、
前記第1の増幅器で増幅された信号をデジタル信号に変換する変換器と、
前記変換器で変換されるデジタル信号であって、前記第1の出力信号に対応する第1のデジタル信号が飽和しない場合、前記第1のデジタル信号を使用し、前記第1のデジタル信号が飽和する場合、前記第2の出力信号に対応する第2のデジタル信号を選択して出力する制御回路と、
を含む撮像装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記フォトダイオードに入射する光量に対して、前記制御回路から出力されるデジタル信号の値を略単調連続増加させるように、前記変換器から出力されるデジタル信号を増幅する第2の増幅器を含む、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記第2のトランジスタがオフ状態において前記変換器で変換されるオフデジタル信号が飽和しない場合、前記オフデジタル信号を使用し、前記オフデジタル信号が飽和する場合、前記第1のデジタル信号または前記第2のデジタル信号のうちの少なくともいずれかを使用して出力する、
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第1の増幅器は、前記第2のトランジスタがオフ状態において、前記第1のトランジスタの出力端子から出力される第3の出力信号を第3のゲインで増幅し、前記第1のトランジスタの出力端子から出力される第4の出力信号を前記第3のゲインよりも高い第4のゲインで増幅し、
前記制御回路は、前記変換器から出力される、前記第3の出力信号に対応する第3のデジタル信号と、前記第4の出力信号に対応する第4のデジタル信号と、のうちの少なくともいずれかを前記オフデジタル信号として使用して出力する、
請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
一端が基準電位に接続され、他端が第3のトランジスタを通じて前記第1のトランジスタの入力端子に接続されるキャパシタであって、前記第1のキャパシタのキャパシタンスよりも小さいキャパシタンスを有する、前記第1のキャパシタと電気的に並列に設けられた第2のキャパシタをさらに含み、
前記第1のキャパシタは、前記第2のトランジスタ及び前記第3のトランジスタを通じて前記第1のトランジスタの入力端子に接続された、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項6】
入射光に応答して電荷を蓄積するフォトダイオードであって、アノードが基準電位に接続されたフォトダイオードと、入力端子が前記フォトダイオードのカソードと接続された第1のトランジスタと、一端が基準電位に接続され、他端が第2のトランジスタを通じて前記第1のトランジスタの入力端子に接続された第1のキャパシタと、を含む画素を備える撮像装置に含まれるプロセッサが実行する制御方法であって、
前記第2のトランジスタがオン状態において、前記第1のトランジスタの出力端子から出力される第1の出力信号を第1のゲインで増幅し、前記第1のトランジスタの出力端子から出力される第2の出力信号を前記第1のゲインよりも低い第2のゲインで増幅する増幅ステップと、
前記増幅ステップで増幅された信号をデジタル信号に変換する変換ステップと、
前記変換ステップにおいて変換されるデジタル信号であって、前記第1の出力信号に対応する第1のデジタル信号が飽和しない場合、前記第1のデジタル信号を使用し、前記第1のデジタル信号が飽和する場合、前記第2の出力信号に対応する第2のデジタル信号を選択して出力する制御ステップと、を含む、
撮像方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の撮像装置を備える、
端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像装置及び撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラに代表される固体撮像素子をもちいた撮像装置において、画面内の入力ダイナミックレンジが従来の撮像素子の許す範囲よりも大きい被写体を撮影するために、高ダイナミックレンジイメージング(High Dynamic Range Imaging)と呼ばれる技術がある。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/099423号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシステムは、フォトダイオードからあふれてきた電荷を画素内に設けたキャパシタに集めて保持する。当該システムでは、入力ダイナミックレンジはフォトダイオードの静電容量で決まるところ、当該キャパシタにフォトダイオードの飽和電荷を超えた信号量を蓄積できるため、入力ダイナミックレンジを広げることができる。
【0005】
しかし、特許文献1に記載のシステムでは、当該キャパシタが接続されていない画素変換ゲインが高い状態で画素から出力される信号と、当該キャパシタが接続された画素変換ゲインが低い状態で画素から出力される信号とをアナログデジタル変換してデジタル信号を得ている。この場合、高い画素変換ゲインにおける信号の量子化幅と、低い画素変換ゲインにおける信号の量子化幅との比が大きくなる。そうすると、当該システムでは、この大きい量子化幅の違いによって、その境目に等高線状のアーティファクトが生じるという問題が生じる。
【0006】
そこで、本開示は、アーティファクトの発生を抑制する撮像装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る撮像装置は、入射光に応答して電荷を蓄積するフォトダイオードであって、アノードが基準電位に接続されたフォトダイオードと、入力端子が前記フォトダイオードのカソードと接続された第1のトランジスタと、一端が基準電位に接続され、他端が第2のトランジスタを通じて前記第1のトランジスタの入力端子に接続された第1のキャパシタと、を含む画素と、前記第2のトランジスタがオン状態において、前記第1のトランジスタの出力端子から出力される第1の出力信号を第1のゲインで増幅し、前記第1のトランジスタの出力端子から出力される第2の出力信号を前記第1のゲインよりも低い第2のゲインで増幅する第1の増幅器と、前記第1の増幅器で増幅された信号をデジタル信号に変換する変換器と、前記変換器で変換されるデジタル信号であって、前記第1の出力信号に対応する第1のデジタル信号が飽和しない場合、前記第1のデジタル信号を使用し、前記第1のデジタル信号が飽和する場合、前記第2の出力信号に対応する第2のデジタル信号を選択して出力する制御回路と、を含む。
【0008】
本開示の一態様に係る撮像方法は、入射光に応答して電荷を蓄積するフォトダイオードであって、アノードが基準電位に接続されたフォトダイオードと、入力端子が前記フォトダイオードのカソードと接続された第1のトランジスタと、一端が基準電位に接続され、他端が第2のトランジスタを通じて前記第1のトランジスタの入力端子に接続された第1のキャパシタと、を含む画素を備える撮像装置に含まれるプロセッサが実行する制御方法であって、前記第2のトランジスタがオン状態において、前記第1のトランジスタの出力端子から出力される第1の出力信号を第1のゲインで増幅し、前記第1のトランジスタの出力端子から出力される第2の出力信号を前記第1のゲインよりも低い第2のゲインで増幅する増幅ステップと、前記増幅ステップで増幅された信号をデジタル信号に変換する変換ステップと、前記変換ステップにおいて変換されるデジタル信号であって、前記第1の出力信号に対応する第1のデジタル信号が飽和しない場合、前記第1のデジタル信号を使用し、前記第1のデジタル信号が飽和する場合、前記第2の出力信号に対応する第2のデジタル信号を選択して出力する制御ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、アーティファクトの発生を抑制する撮像装置及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る撮像装置の構成を説明するための模式図である。
図2】画素からデジタル信号処理部にかけて信号が転送される状況を説明するためのブロック図である。
図3】キャパシタが接続されていない状態での特性を示すグラフである。
図4】キャパシタが接続されていない状態からキャパシタが接続される状態にかけての特性を示すグラフである。
図5】比較例に係る撮像装置における特性を示すグラフである。
図6】第1の実施形態に係る撮像装置における特性を示すグラフである。
図7】第1の実施形態に係る撮像装置の動作タイミングを示す図である。
図8】第2の実施形態に係る画素の構成を説明するための模式図である。
図9】第2の実施形態におけるキャパシタが接続されていない状態から2つのキャパシタが接続される状態にかけての特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の好適な実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する各実施形態は、あくまで、本開示を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本開示を限定的に解釈させるものではない。また、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する場合がある。
===第1の実施形態===
【0012】
図1を参照して、撮像装置である撮像装置100の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係る撮像装置100の構成を説明するための模式図である。なお、本開示の撮像装置は、デジタルカメラ、及びカメラ機能が搭載されたスマートフォン、タブレット、パソコン等の端末に適用される。
【0013】
図1に示すように、撮像装置100は、例えば、CMOSイメージセンサなどであって、制御回路110と、画素120と、信号線130と、読み出し回路140と、デジタル信号処理部150とを含む。
【0014】
制御回路110は、例えば画素120を駆動させる回路である。制御回路110は、例えば、画素120から読み出したデータを外部に出力する。
【0015】
画素120は、例えば、制御回路110から出力される制御信号に基づき、撮像装置100上の映像に相当する光信号を蓄積する。なお、画素120は、制御回路110から出力される制御信号に替えて、自ら制御信号を生成してもよい。撮像装置100には、複数の画素120が含まれ、複数の画素120が二次元配列されている。
【0016】
信号線130は、例えば、画素120から読み出された信号を伝送する導線である。信号線130は、例えば、複数の画素120の列方向(図1のY方向)に沿って設けられる。
【0017】
読み出し回路140は、信号線130を通じて複数の画素120から読み出されたアナログ信号が伝送される。読み出し回路140は、複数の画素120から読み出されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0018】
デジタル信号処理部150は、例えば、読み出し回路140から出力されるデジタル信号を処理して、データバスを通じて処理した信号をプロセッサやメモリなどに伝送する。
【0019】
なお、デジタル信号処理部150は、図1に示す配置構成に限定されず、例えば、撮像装置100にデジタル信号処理部150が含まれず、後段のプロセッサ(不図示)にデジタル信号処理部150が含まれていてもよい。換言すると、本開示におけるデジタル信号処理部150が配置される位置(電気的な接続関係)は限定されない。
【0020】
次に、図2を参照して、画素120からデジタル信号処理部150にかけて信号が転送される状況を説明する。図2は、画素120からデジタル信号処理部150にかけて信号が転送される状況を説明するためのブロック図である。
【0021】
まず、画素120について説明する。図2に示すように、画素120は、例えば、フォトダイオード121と、トランジスタ122~126と、キャパシタ127と、FDノード128とを含む。なお、画素120では、例えば、トランジスタ125のゲートに接続されるFD(Floating Diffusion)ノード128を含む。FDノード128は、例えば所定のキャパシタンスを有する。また、便宜上、それぞれのトランジスタにおける、ソースまたはドレインとなる端子を、入力端子または出力端子という。
【0022】
フォトダイオード121は、例えば、入射光に対応して電荷を蓄積するダイオードである。フォトダイオード121は、例えば、アノードが基準電位に接続され、カソードがトランジスタ122を通じてFDノード128に接続される。トランジスタ122は、例えば、ゲートに入力される制御信号TXが入力されるとオン状態となる。
【0023】
FDノード128は、例えば、トランジスタ123及びトランジスタ124を通じて電源Vddに接続される。トランジスタ123は、例えば、ゲートに制御信号GSが入力されるとオン状態となる。トランジスタ124は、例えば、ゲートに入力される制御信号RESETが入力されるとオン状態となる。
【0024】
キャパシタ127は、例えば、フォトダイオード121の飽和電荷を超えた電荷を蓄積するためのキャパシタである。撮像装置100は、キャパシタ127を用いることによって、フォトダイオード121の静電容量で決定される入力ダイナミックレンジを広げることができる。キャパシタ127は、例えば、一端が基準電位に接続され、他端がトランジスタ123とトランジスタ124とが直列に接続されるノードに接続される。換言すると、キャパシタ127の他端はトランジスタ123の入力端子に接続される。すなわち、キャパシタ127は、例えば、トランジスタ123がオン状態において、蓄積された電荷をFDノード128に転送する。
【0025】
トランジスタ125は、例えば、ゲート端子がFDノード128に接続され、入力端子が電源Vddに接続され、出力端子がトランジスタ126を通じて信号線130に接続される。トランジスタ126は、例えば、ゲートに入力される制御信号SELが入力されるとオン状態となる。
【0026】
次に、読み出し回路140について説明する。図2に示すように、読み出し回路140は、例えば、アンプ141と、アナログデジタル変換器142と、ラインメモリ143とを含む。なお、図2ではアンプ141の負荷を定電流源144として例示する。
【0027】
アンプ141は、例えば、所定のタイミングに応じたゲインで、画素120から出力される信号を増幅するアンプである。アンプ141は、例えば、第1のタイミングでトランジスタ125の出力端子から出力される出力信号を第1のゲインで増幅し、第1のタイミングと連続する第2のタイミングでトランジスタ125の出力端子から出力される出力信号を第1のゲインとは異なる第2のゲインで増幅してもよい。
【0028】
アナログデジタル変換器142は、例えば、フルスケールレンジ(以下、「FSR」という。)電圧をV_FSRとした場合、アンプ141から出力されるLL(Lower Limit)~LL+V_FSRのアナログ信号をデジタル信号に変換する。例えばアナログ信号として電子を蓄積する場合、アナログ電圧は、光量が増えるとともに減少する。そこで、以下では、アナログデジタル変換器142において、LLに対応するデジタル信号の値となる場合を、「デジタル信号が飽和する場合」として説明する。また、例えばアナログ信号として正孔を蓄積する場合、アナログ電圧は、光量が増えるとともに増加する。そのため、この場合、LL+FSRに対応するデジタル信号の値となる場合を、「デジタル信号が飽和する場合」という。いずれの場合もAD変換器のデジタル信号は一般的に最大値を出力する(たとえば10bitAD変換器の場合は1023)。
【0029】
また、本実施形態の説明において、アンプ141を独立したブロックとして記載しているが、本実施形態の理解を容易にするためであって、これに限定されない。アンプ141は、例えば、アンプとアナログデジタル変換器とが回路的に組み合わせられることによって、アンプの機能とアナログデジタル変換器の機能とを有していてもよい。ここで、アンプ141の役割は、画素120から出力された信号線130における信号の電圧振幅の、FSRに対する比率を変更することである。すなわち、アンプ141は、例えば、多くのアナログデジタル変換器で行われているような参照電圧を増減させることによって、上記の比率を変更させる機能を有するアンプであってもよい。
【0030】
ラインメモリ143は、例えば、アナログデジタル変換器142から出力されるデジタル信号を保持する。ラインメモリ143は、例えば、ラッチ、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などで構成される。ラインメモリ143は、例えば、ラインメモリ143a~143dで構成されていてもよい。読み出し回路140では、所定のタイミングに応じてデジタル信号を保持させるラインメモリが選択される。
【0031】
なお、読み出し回路140は、例えば、予め定められたタイミングに応じて選択されるラインメモリ143からデジタル信号をデジタル信号処理部150に転送する。
【0032】
次に、デジタル信号処理部150について説明する。図2に示すように、デジタル信号処理部150は、例えば、減算器151と、デジタルアンプ152と、セレクタ153とを含む。
【0033】
減算器151は、例えば、ラインメモリ143から伝送される複数のデジタル信号それぞれを減算する。例えば、減算器151は、例えば、減算器151aと、減算器151bとを含む。減算器151aは、例えば、ラインメモリ143cの値からラインメモリ143aの値を減算する。減算器151bは、例えば、ラインメモリ143dの値からラインメモリ143bの値を減算する。
【0034】
デジタルアンプ152は、例えば、減算器151で減算されたデジタル信号を所定のゲインで増幅する。例えば、デジタルアンプ152は、デジタルアンプ152aと、デジタルアンプ152bとを含んでいてもよい。デジタルアンプ152aは、減算器151aで減算されたデジタル信号が入力される。デジタルアンプ152bは、減算器151bで減算されたデジタル信号が入力される。
【0035】
セレクタ153は、例えば、デジタルアンプ152a及びデジタルアンプ152bから出力されるデジタル信号のうちのいずれかを選択する。セレクタ153は、選択したデジタル信号を出力ノード160に出力する。
【0036】
具体的には、セレクタ153は、例えば、フォトダイオード121に入射する光量に対してデジタル信号処理部150から出力されるデジタル信号の値を略単調連続増加させるように、デジタルアンプ152において増幅された二種類のデジタル信号のうちのいずれかのデジタル信号を選択する。
【0037】
次に、図3図4を参照して、第1の実施形態においてアーティファクトの発生を抑制可能な仕組みについて説明する。図3は、キャパシタ127が接続されていない状態(トランジスタ123がオフ状態)での特性を示すグラフである。図4は、キャパシタ127が接続されていない状態からキャパシタ127が接続される状態(トランジスタ123がオン状態)にかけての特性を示すグラフである。図3及び図4では、横軸が画素120に入射する光量を示し、縦軸がデジタル信号処理部150から出力されるデジタル信号の大きさを示す。
【0038】
図3を参照して、キャパシタ127が接続されていない状態において、特性が略単調連続増加するように調整される様子について説明する。以下、トランジスタ123がオン状態でキャパシタ127が接続されていない状態を「高い画素変換ゲインの状態」という。
【0039】
ここで、「画素変換ゲイン」とは、例えば、フォトダイオード121で生成された所定の電荷に対する画素出力(信号線130)における電圧の比を言う。
【0040】
具体的には、トランジスタ123がオン状態では、フォトダイオード121で生成された電荷q0は、トランジスタ123がオフ状態のFDノード128の容量(たとえば1C)とキャパシタ127の容量(例えば50C)の合計容量(例えば51C)で、トランジスタ125のゲートにおいて電圧に変換されて信号線130に出力される(トランジスタの125の入出力電圧ゲインを1倍と仮定すると、たとえばV=q0/51C)。キャパシタ127の容量の値を大きく設計することで、電荷に対する信号振幅を低くすることができる。このため、トランジスタ123のオン状態を「低い画素変換ゲインの状態」という。
【0041】
一方、トランジスタ123がオフ状態では、FDノード128の合計容量はオン状態に比べて小さく(たとえば1C)、フォトダイオード121で生成される電荷q0は、トランジスタ123がオン状態に比べて大きな信号振幅を生む(トランジスタの125の入出力電圧ゲインを1倍と仮定すると、たとえばV=q0/1C)。このため、トランジスタ123のオフ状態を「高い画素変換ゲインの状態」という。
【0042】
図3(A)では、例えば、実線L11がアンプ141のゲインがゲインG11のときの特性を示し、実線L12がアンプ141のゲインがゲインG12のときの特性を示す。以下では、一例として、ゲインG11はゲインG12よりも大きいゲインとする。
【0043】
図3(A)に示すように、光量範囲R11において、同一の光量につき二種類の出力が存在する。さらに、光量範囲R12において、ゲインG11からゲインG12に切り替わる光量In11で、デジタル信号処理部150から出力されるデジタル信号の大きさが略単調連続増加していない。
【0044】
そこで、図3(B)に示すように、デジタルアンプ152において、特性が略単調連続増加するように、実線L12に対応するデジタル信号を増幅させる。ここで、略単調連続増加とは、例えば、画素120に入射する光量の増加に対して、デジタル信号処理部150から出力される連続するデジタル信号の大きさが略比例するように増加することをいう。なお、略単調連続増加には、例えば、図3(B)に示すように、画素120に入射する光量(横軸)の増加に対して、デジタル信号処理部150から出力される連続するデジタル信号の大きさ(縦軸)が略比例するように段階的に増加する傾向を示すものも含まれる。デジタルアンプ152の増幅係数は、例えばゲインG1とゲインG2との比に応じて予め設定されていてもよく、また、キャリブレーションによって微調整されてもよい。
【0045】
なお、ゲインが低い方のゲインG12で増幅したデジタル信号をデジタルアンプ152で増幅したとき、増幅後のデジタル信号の最大値が許容値(例えば、10bitの場合に1023)を超える場合、デジタルアンプ152において所定の減衰係数を乗算してもよい。これにより、デジタルアンプ152から出力されるデジタル信号を許容値に収めることができる。
【0046】
ここで、セレクタ153は、例えば、ゲインが高い方のゲインG11で増幅したデジタル信号が飽和せずに存在する場合、当該デジタル信号を選択する。一方、セレクタ153は、例えば、当該デジタル信号が飽和する場合、ゲインが低い方のゲインG12で増幅したデジタル信号を選択する。具体的には、セレクタ153は、例えば、飽和値が1024である場合、900(以下、「閾値」という)を超えたとき、ゲインG12で増幅したデジタル信号を選択してもよい。セレクタ153には、例えば、画素のばらつきや信号のノイズを含むガードバンドに基づいて、閾値が設定されていてもよい。
【0047】
次に、図4を参照して、キャパシタ127が接続されている状態(トランジスタ123がОN状態)において、特性が略単調連続増加するように調整される様子について説明する。上述したように、トランジスタ123がオン状態でキャパシタ127が接続されている状態を「低い画素変換ゲインの状態」という。
【0048】
図4(A)では、例えば、実線L21が図3(B)に示す実線L11と実線L12とを合成した特性を示し、実線L22がアンプ141のゲインがゲインG21のときの特性を示す、実線L23がアンプ141のゲインがゲインG22のときの特性を示す。例えば、ゲインG21はゲインG22よりも大きいゲインである。
【0049】
図4(A)に示すように、光量範囲R21において、同一の光量につき3種類の出力が存在する。さらに、光量範囲R22では、高い画素変換ゲインから低い画素変換ゲインに切り替わる光量In21において、また、ゲインG21からゲインG22に切り替わる光量In22において、デジタル信号処理部150から出力されるデジタル信号の大きさが略単調連続増加していない。
【0050】
そこで、図4(B)に示すように、デジタルアンプ152において、特性が略単調連続増加するように、デジタル信号が増幅される。この場合のデジタルアンプ152の増幅係数は、例えば、高い画素変換ゲインと低い画素変換ゲインとの比、ゲインG21とゲインG22との比に応じて予め設定されていてもよく、また、キャリブレーションによって微調整されてもよい。
【0051】
具体的には、図4(A)における光量範囲T22における低い画素変換ゲインの信号に対しては、高い画素変換ゲインと低い画素変換ゲインとの比(以下、「画素変換ゲイン比」という。)を、デジタルアンプ152で乗算することで、実線L21と実線L23とが略単調連続増加する。さらに、実線L22に対応するデジタル信号に対しては、画素変換ゲイン比と、ゲインG21とゲインG22との比(以下、「電圧ゲイン比」という。)とを乗算することで、図4(B)に示すように実線L21~L23が略単調連続増加する。
【0052】
ここで、セレクタ153は、実線L21に対応するデジタル信号が飽和せずに存在する場合、当該デジタル信号を選択する。一方、セレクタ153は、例えば、当該デジタル信号が飽和する場合、低い画素変換ゲインにおけるゲインが高い方のゲインG21で増幅したデジタル信号を選択する。そして、セレクタ153は、例えば、ゲインG21で増幅したデジタル信号が飽和する場合、ゲインが低い方のゲインG22で増幅したデジタル信号を選択する。
【0053】
次に、上述した図3及び図4に示すアーティファクトの発生を抑制する仕組みについて、以下に示す数式を用いて詳しく説明する。
【0054】
以下では、高い画素変換ゲインをG_pix_highとし、低い画素変換ゲインをG_pix_lowとし、アンプ141における高い方のゲインをG_vol_highとし、アンプ141における低い方のゲインをG_vol_lowとし、キャパシタ127を含む画素120の最大飽和電荷数をQ_satとし、アナログデジタル変換器142の量子化ステップ数をNとして説明する。
【0055】
また、以下では、比較例に係る撮像装置についても簡単に説明しつつ、第1の実施形態に係る撮像装置100においてアーティファクトが抑制されることを説明する。
【0056】
比較例に係る撮像装置は、アンプ141においてゲインを切り替えずに一通りとする(例えば、特許文献1のシステム)。まず、図5を参照して、比較例に係る撮像装置においてアーティファクトが発生し得ることについて説明する。図5は、比較例に係る撮像装置における特性を示すグラフである。図5では、横軸が画素に入射する光量を示し、縦軸がデジタル信号処理部から出力されるデジタル信号の大きさを示す。
【0057】
高い画素変換ゲインの状態から低い画素変換ゲインの状態に切り替わる、図5に示す光量範囲R31における高い画素変換ゲイン側での量子化幅は式(1)で求められる。
【0058】
量子化幅(Q11)= Qsat * (G_pix_low/G_pix_high) * (1/N) ・・・ (1)
【0059】
また、図5に示す光量範囲R31における低い画素変換ゲイン側での量子化幅は式(2)で求められる。
【0060】
量子化幅(Q12)= Qsat*(1/N) ・・・ (2)
【0061】
よって、高い画素変換ゲイン側の量子化幅(Q11)と、低い画素変換ゲイン側の量子化幅(Q12)との比は式(3)で求められる。
【0062】
量子化幅の比(Q12/Q11)= G_pix_high/G_pix_low ・・・ (3)
【0063】
式(3)によると、例えば、G_pix_highを「1」、 G_pix_lowを「1/50」とし、キャパシタ127のキャパシタンスによるダイナミックレンジ拡大を50倍に設計したとすると、量子化幅の比は50倍となるため、アーティファクトが発生する。
【0064】
次に、図6を参照して、比較例に係る撮像装置と比較して、第1の実施形態における撮像装置100において量子化幅の比が改善されることについて説明する。図6は、第1の実施形態に係る撮像装置100における特性を示すグラフである。図6では、横軸が画素に入射する光量を示し、縦軸がデジタル信号処理部150から出力されるデジタル信号の大きさを示す。
【0065】
高い画素変換ゲインの状態から低い画素変換ゲインの状態に切り替わる、図6に示す光量範囲R41における高い画素変換ゲイン側での量子化幅は式(4)で求められる。
【0066】
量子化幅(Q21)= Qsat * (G_pix_low/G_pix_high) * (1/N) ・・・ (4)
【0067】
また、図6に示す光量範囲R41における低い画素変換ゲイン側での量子化幅(Q21)は式(5)で求められる。なお、式(5)は、低い画素変換ゲイン側のアンプ141のゲインが低い方の場合の量子化幅(Q22)が求められる式である。
【0068】
量子化幅(Q22)= Qsat*(G_read_low/G_read_high) *(1/N) ・・・ (5)
【0069】
よって、高い画素変換ゲイン側の量子化幅(Q21)と、低い画素変換ゲイン側のアンプ141のゲインが低い場合の量子化幅(Q22)との比は式(6)で求められる。
【0070】
量子化幅の比(Q22/Q21)=
(G_pix_high/G_pix_low)/(G_read_high/G_read_low) ・・・ (6)
【0071】
式(6)によると、例えば、アンプ141における、低い方のゲインを「G_read_low=1倍」とし、高い方のゲインを「G_read_high=8倍」とした場合、第1の実施形態における撮像装置100の量子化幅の比は6.25倍となる。
【0072】
すなわち、比較例に係る撮像装置では量子化幅の比が50倍であったところ、第1の実施形態における撮像装置100では量子化幅の比を6.25倍まで低下させることができる。よって、撮像装置100ではアーティファクトが抑制される。
【0073】
なお、比較例に係る撮像装置において、量子化幅の比を50倍から6.25倍に低下させる場合、アナログデジタル変換器142における量子化ステップ数を8倍(ここでは8N)にしなければならない。すなわち、低い画素変換ゲインの状態でのデジタル変換において、3bit多いアナログデジタル変換器142を別途用意する必要がある。これにより、アナログデジタル変換器142における変換時間が増加する。特に、シングルスロープ型などのTime to Digial Converter型のアナログデジタル変換器では、デジタル変換に要する時間が8倍になり、このような設計は現実的ではない。この点、第1の実施形態における撮像装置100では、デジタル変換の回数が増える(例えば、図4における実線L22に相当する変換が増える)ものの、デジタル変換の一回当たりの時間を抑制できる。すなわち、撮像装置100では、より短い時間でデジタル変換を実行することができる。
<<動作>>
【0074】
次に、図7を参照して、撮像装置100の動作について説明する。図7は、第1の実施形態に係る撮像装置100の動作タイミングを示す図である。図7では、撮像装置100において、高い画素変換ゲインにおいて低いゲインと高いゲインの二通りでデジタル変換され、低い画素変換ゲインにおいて低いゲインと高いゲインの二通りでデジタル変換される場合の動作を示す。
【0075】
まず、時刻t701において、撮像装置100は、トランジスタ122,123,124をON状態にして、フォトダイオード121、キャパシタ127、FDノード128をリセットする。リセットした後、全てのトランジスタをOFF状態にして、信号の蓄積を開始する。
【0076】
時刻702において、画素120から信号を読み出す場合、トランジスタ126をON状態にして、画素120を信号線130に接続する。
【0077】
まず、トランジスタ123がOFF状態(高い画素変換ゲインの状態)において、アンプ141を高いゲインに設定して、リセット状態のFDノード128の電位を、アンプ141を通じてアナログデジタル変換器142でデジタル信号に変換する。変換されたデジタル信号をラインメモリ143aに記憶する。
【0078】
次に、時刻703において、撮像装置100は、例えば、アンプ141を低いゲインに設定して、リセット状態のFDノード128の電位を、アンプ141を通じてアナログデジタル変換器142でデジタル信号に変換する。変換されたデジタル信号をラインメモリ143bに記憶する。
【0079】
次に、時刻704において、撮像装置100は、例えば、トランジスタ122をON状態として、フォトダイオード121からFDノード128に電荷を転送する。
【0080】
次に、時刻705において、撮像装置100は、例えば、アンプ141を高いゲインに設定して、高い画素変換ゲインの状態で読み出されたフォトダイオード121の信号に応じたFDノード128の電位を、アンプ141を通じてアナログデジタル変換器142でデジタル信号に変換する。変換されたデジタル信号をラインメモリ143cに記憶する。
【0081】
次に、時刻706において、撮像装置100は、例えば、アンプ141を低いゲインに設定して、高い画素変換ゲインの状態で読み出されたフォトダイオード121の信号に応じたFDノード128の電位を、アンプ141を通じてアナログデジタル変換器142でデジタル信号に変換する。変換されたデジタル信号をラインメモリ143dに記憶する。
【0082】
そして、時刻707以降において、撮像装置100は、例えば、ラインメモリ143a~143dから順次転送される信号(四種類の信号)を処理する。
【0083】
具体的には、読み出し回路140は、画素120ごとに、ラインメモリ143cに記憶されているデジタル値からラインメモリ143aに記憶されているデジタル値を減算する。これにより、高い画素変換ゲインにおけるアンプ141の高いゲインでのデジタル信号であって、リセット状態で生じるバラツキを除去したデジタル信号をデジタルアンプ152aに入力できる。
【0084】
同様に、読み出し回路140は、ラインメモリ143dに記憶されているデジタル値からラインメモリ143bに記憶されているデジタル値を減算する。これにより、高い画素変換ゲインにおけるアンプ141の低いゲインでのデジタル信号であって、リセット状態で生じるバラツキを除去したデジタル信号をデジタルアンプ152bに入力できる。
【0085】
そして、デジタル信号処理部150のセレクタ153は、デジタルアンプ152aから出力されるデジタル信号と、デジタルアンプ152bから出力されるデジタル信号とのうちいずれかを選択して、フォトダイオード121に入射する光量に対してデジタル信号処理部150から出力されるデジタル信号の値を略単調連続増加させる。これにより、図3の実線L11とL12とを合成した特性を得られる。
【0086】
次に、時刻707以降で具体的に示すように、撮像装置100は、例えば、トランジスタ123がON状態(低い画素変換ゲインの状態)において、デジタル信号処理部150から出力されるデジタル信号値を略単調連続増加させる。
【0087】
まず、時刻707において、撮像装置100は、例えば、トランジスタ123をON状態として、フォトダイオード121からトランジスタ125に電荷を転送する。
【0088】
時刻708において、撮像装置100は、例えば、アンプ141を高いゲインに設定して、低い画素変換ゲインの状態で読み出されたフォトダイオード121の信号に応じたFDノード128の電位を、アンプ141を通じてアナログデジタル変換器142でデジタル信号に変換する。変換されたデジタル信号をラインメモリ143cに記憶する。
【0089】
次に、時刻709において、アンプ141を低いゲインに設定して、低い画素変換ゲインの状態で読み出されたフォトダイオード121の信号に応じたFDノード128の電位を、アンプ141を通じてアナログデジタル変換器142でデジタル信号に変換する。変換されたデジタル信号をラインメモリ143dに記憶する。
【0090】
次に、時刻710において、トランジスタ122、トランジスタ123、トランジスタ124をON状態にして、フォトダイオード121、キャパシタ127、FDノード128をリセットする。リセットした後、全てのトランジスタをOFF状態にして、信号の蓄積を開始する。
【0091】
次に、時刻711において、トランジスタ123がOFF状態(高い画素変換ゲインの状態)において、アンプ141を高いゲインに設定して、リセット状態のFDノード128の電位を、アンプ141を通じてアナログデジタル変換器142でデジタル信号に変換する。変換されたデジタル信号をラインメモリ143aに記憶する。
【0092】
次に、時刻712において、撮像装置100は、例えば、アンプ141を低いゲインに設定して、リセット状態のFDノード128の電位を、アンプ141を通じてアナログデジタル変換器142でデジタル信号に変換する。変換されたデジタル信号をラインメモリ143bに記憶する。
【0093】
そして、時刻713以降において、撮像装置100は、例えば、ラインメモリ143a~143dから順次転送される信号(四種類の信号)を処理する。
【0094】
具体的には、読み出し回路140は、画素120ごとに、ラインメモリ143cに記憶されているデジタル値からラインメモリ143aに記憶されているデジタル値を減算する。これにより、低い画素変換ゲインにおけるアンプ141の高いゲインでのデジタル信号であって、リセット状態で生じるバラツキを除去したデジタル信号をデジタルアンプ152aに入力できる。
【0095】
同様に、読み出し回路140は、ラインメモリ143dに記憶されているデジタル値からラインメモリ143bに記憶されているデジタル値を減算する。これにより、低い画素変換ゲインにおけるアンプ141の低いゲインでのデジタル信号であって、リセット状態で生じるバラツキを除去したデジタル信号をデジタルアンプ152bに入力できる。
【0096】
そして、デジタル信号処理部150のセレクタ153は、デジタルアンプ152aから出力されるデジタル信号と、デジタルアンプ152bから出力されるデジタル信号とのうちいずれかを選択して、フォトダイオード121に入射する光量に対してデジタル信号処理部150から出力されるデジタル信号の値を略単調連続増加させる。これにより、図4の実線L22とL23とを合成した特性を得られる。
【0097】
以上より、撮像装置100は、図4に示す実線L21、L22、L23を合成した特性を得ることができる。
<<第1の変形例>>
【0098】
上記において、セレクタ153は、ゲインが高い方のゲインG11で増幅したデジタル信号が飽和せずに存在する場合には当該デジタル信号を選択し、当該デジタル信号が飽和する場合にはゲインが低い方のゲインG12で増幅したデジタル信号を選択することとして説明したが、これに限定されない。
【0099】
例えば、セレクタ153は、ゲインが高い方のゲインG11で増幅したデジタル信号が飽和する近傍において、ゲインG11で増幅したデジタル信号と、ゲインG12で増幅したデジタル信号とを合成してもよい。ここで、デジタル信号が飽和する近傍とは、例えば、デジタル変換におけるbit数に対応するデジタル値(例えば10bitでデジタル値が1023)における80%(例えばデジタル値が800)であってもよい。
【0100】
なお、第1の変形例において、セレクタ153は、例えば、複数の信号を加算する加算器の機能を有していればよい。具体的には、セレクタ153は、例えば、ゲインG11で増幅したデジタル信号及びゲインG12で増幅したデジタル信号のそれぞれに係数(例えば、0~1)である重みを掛け合わせて、合成した信号を出力する。
【0101】
例えば、セレクタ153は、ゲインG11で増幅したデジタル信号が飽和に近づくほど、ゲインG11で増幅したデジタル信号に対するゲインG12で増幅したデジタル信号の重みを大きくして信号を合成してもよい。
【0102】
第1の変形例によると、画素変換ゲインの状態が切り替わるタイミングにおける量子化幅の変化をより抑制できるため、アーティファクトをより抑制することができる。
<<第2の変形例>>
【0103】
上記において、撮像装置100は、画素120の画素列に対して一系統のアンプ141及びアナログデジタル変換器142を有するように説明したが、これに限定されない。
【0104】
例えば、撮像装置100は、一系統のアンプ141及びアナログデジタル変換器142とは異なる系統のアンプ及びアナログデジタル変換器を有していてもよい。この場合、一系統のアンプ141及びアナログデジタル変換器142から第1のタイミングにおいてゲインG11で増幅したデジタル信号を出力し、異なる系統のアンプ及びアナログデジタル変換器から同じ第1のタイミングにおいてゲインG12で増幅したデジタル信号を出力してもよい。すなわち、撮像装置100は、図7に示すような、アンプ141を高いゲインに設定した場合のデジタル信号と、アンプ141を低いゲインに設定した場合のデジタル信号とを異なるタイミング(例えば、連続するタイミング)でラインメモリ143に記憶することに替えて、それぞれのデジタル信号を同じタイミングでラインメモリ143に記憶することができる。ここで、同じタイミングとは、重なり合うタイミングに加えて、例えば数クロック以内のようにわずかにずれるタイミングを含む。
【0105】
第2の変形例によると、より短い時間でアーティファクトを抑制することができる。
<<第3の変形例>>
【0106】
また、撮像装置100は、FDノード128に現れる、高い画素変換ゲインの状態での信号と、低い画素変換ゲインの状態での信号とを、アナログデジタル変換器142からデジタル信号として出力する方法につき、例えば、所定のbitごと(例えば10bitごと)に独立して出力してもよい。また、高い画素変換ゲインの状態での信号と、低い画素変換ゲインの状態での信号とを合成して、合成した信号をアナログデジタル変換器142から所定のbit(例えば12bit~16bit)の信号としてまとめて出力してもよい。この場合、量子化幅がQsat*(G_read_low/G_read_high) *(1/N)程度に収まるように、所定のbitが設定されることが望ましい。
【0107】
第3の変形例によると、より短い時間でアーティファクトを抑制することができる。
===第2実施形態===
【0108】
図8図9を参照して、第2実施形態に係る撮像装置200について説明する。撮像装置200では、撮像装置100において、画素120が入力ダイナミックレンジを広げるためのキャパシタとしてキャパシタ127のみを有するとして説明したが、これに限定されない。撮像装置200は、例えば、撮像装置100のキャパシタ127に加えて、それぞれが並列接続される複数のキャパシタを有する。これにより、撮像装置100と比較してアーティファクトをより抑制することができる。以下では、撮像装置100と異なる構成要素についてのみ説明することとし、撮像装置100と同様の構成要素についてはその説明を省略する。
【0109】
図8を参照して、撮像装置200における複数のキャパシタを有する画素220の構成について説明する。図8は、第2実施形態に係る画素220の構成を説明するための模式図である。なお、図8では、一例として、キャパシタ127に加えてキャパシタ222を並列に接続した構成を示す。
【0110】
図8に示すように、画素220は、例えば、画素120に対して、トランジスタ221及びキャパシタ222をさらに含む。
【0111】
キャパシタ222は、例えば、フォトダイオード121の飽和電荷を超えた電荷を蓄積するためのキャパシタである。キャパシタ222は、例えば、一端が基準電位(例えばグランド)に接続され、他端がトランジスタ221を通じてトランジスタ125の入力端子に接続される。キャパシタ222は、例えば、キャパシタ127のキャパシタンスよりも小さいキャパシタンスを有することが望ましい。ここで、キャパシタ127は、トランジスタ123及びトランジスタ221を通じてトランジスタ125の入力端子に接続される。
【0112】
次に、図9を参照して、撮像装置200が、画素220の構成によって、撮像装置100と比較してアーティファクトを抑制できる仕組みについて説明する。図9は、三種類の画素変換ゲインに対して、アンプ141による二種類のゲインで信号を増幅したことによって得られる特性を模式的に示したグラフである。
【0113】
図9に示すように、撮像装置200は、トランジスタ221がオフ状態(高い画素変換ゲインの状態であって、図9のG_pix_high)において、トランジスタ125から出力される出力信号を、アンプ141(不図示)において高いゲイン(図9のG_read_high)と低いゲイン(図9のG_read_low)のそれぞれで増幅する。図9では、それぞれのゲインで増幅されたアナログ信号がアナログデジタル変換器142(不図示)で変換されたデジタル信号の特性を特性T11と特性T12とで示す。
【0114】
また、撮像装置200は、トランジスタ221がオン状態(中間の画素変換ゲインの状態であって、図9のG_pix_mid)においてトランジスタ125から出力される出力信号を、アンプ141において、高いゲイン(図9のG_read_high)と低いゲイン(図9のG_read_low)のそれぞれで増幅する。図9では、それぞれのゲインで増幅されたアナログ信号がアナログデジタル変換器142で変換されたデジタル信号の特性を特性T21と特性T22とで示す。
【0115】
また、撮像装置200は、トランジスタ221及びトランジスタ123がオン状態(低い画素変換ゲインの状態であって、図9のG_pix_low)において、トランジスタ125から出力される出力信号を、アンプ141において高いゲイン(図9のG_read_high)と低いゲイン(図9のG_read_low)のそれぞれで増幅する。図9では、それぞれのゲインで増幅されたアナログ信号がアナログデジタル変換器142で変換されたデジタル信号の特性を特性T31と特性T32とで示す。
【0116】
撮像装置200では、同一の画素変換ゲインの状態における異なるゲインで増幅された特性と、これと異なる画素変換ゲインの状態における所定のゲインで増幅された特性とを合成する。具体的には、撮像装置200では、例えば、セレクタ153(不図示)において、高い画素変換ゲインの状態における特性T11及び特性T12の特性を示すデジタル信号と、中間の画素変換ゲインにおける高いゲインの特性T21の特性を示すデジタル信号とを合成する。また、撮像装置200では、例えば、セレクタ153(不図示)において、低い画素変換ゲインの状態における特性T31及び特性T32の特性を示すデジタル信号と、中間の画素変換ゲインの状態における低いゲインの特性T22の特性を示すデジタル信号とを合成する。
【0117】
さらに言うと、例えば、セレクタ153は、高い画素変換ゲインの状態におけるデジタル信号の特性が飽和に近づくほど、中間の画素変換ゲインの状態における高いゲインで増幅したデジタル信号の重みを大きくして信号を合成してもよい(より多くのデジタル信号を合成してもよい)。
【0118】
これにより、撮像装置200は、撮像装置100よりもよりアーティファクトを抑制することができる。さらに言うと、撮像装置200は、撮像装置100と比較して、例えば二枚の元データしか得られない場合、撮像装置100では三枚のデータが作成されてしまうところ、二枚のデータによってアーティファクトを抑制することができるため、処理するデータ量を減らすことができる。
===まとめ===
【0119】
第1の実施形態に係る撮像装置100は、入射光に応答して電荷を蓄積するフォトダイオードであって、アノードが基準電位に接続されたフォトダイオード121と、入力端子(例えばベース)がフォトダイオード121のカソードと接続されたトランジスタ125(第1のトランジスタ)と、一端が基準電位に接続され、他端がトランジスタ123(第2のトランジスタ)を通じてトランジスタ125(第1のトランジスタ)の入力端子(例えばゲート)に接続されたキャパシタ127(第1のキャパシタ)と、を含む画素120と、トランジスタ123(第2のトランジスタ)がオン状態において、トランジスタ125(第1のトランジスタ)の出力端子(例えばドレイン又はソース)から出力される第1の出力信号を第1のゲインで増幅し、トランジスタ125(第1のトランジスタ)の出力端子(例えばドレイン又はソース)から出力される第2の出力信号を第1のゲインよりも低い第2のゲインで増幅するアンプ141(第1の増幅器)と、アンプ141(第1の増幅器)で増幅された信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器142(変換器)と、アナログデジタル変換器142(変換器)で変換されるデジタル信号であって、第1の出力信号に対応する第1のデジタル信号が飽和しない場合、第1のデジタル信号を使用し、第1のデジタル信号が飽和する場合、第2の出力信号に対応する第2のデジタル信号を選択して出力するデジタル信号処理部150(制御回路)と、を含む。これにより、入力ダイナミックレンジを広げるためのキャパシタを有する撮像装置において、画素変換ゲインの切り替わりにより生じるアーティファクトの発生を抑制することができる。
【0120】
また、第1の実施形態に係る撮像装置100のデジタル信号処理部150(制御回路)は、フォトダイオード121に入射する光量に対して、デジタル信号処理部150(制御回路)から出力されるデジタル信号の値を略単調連続増加させるように、アナログデジタル変換器142(変換器)から出力されるデジタル信号を増幅するデジタルアンプ152(第2の増幅器)を含む。これにより、画素変換ゲインの切り替わりにより生じるアーティファクトの発生を抑制することができる。
【0121】
また、第1の実施形態に係る撮像装置100のデジタル信号処理部150(制御回路)は、トランジスタ123(第2のトランジスタ)がオフ状態においてアナログデジタル変換器142(変換器)で変換されるデジタル信号(オフデジタル信号)が飽和しない場合、当該デジタル信号(以下、オフデジタル信号という)を使用し、オフデジタル信号が飽和する場合、第1のデジタル信号または第2のデジタル信号のうちの少なくともいずれかを使用して出力する。これにより、画素変換ゲインの切り替わりにより生じるアーティファクトの発生を抑制することができる。
【0122】
また、第1の実施形態に係る撮像装置100のアンプ141(第1の増幅器)は、トランジスタ123(第2のトランジスタ)がオフ状態において、トランジスタ125(第1のトランジスタ)の出力端子(例えばドレイン又はソース)から出力される第3の出力信号を第3のゲインで増幅し、トランジスタ125(第1のトランジスタ)の出力端子(例えばドレイン又はソース)から出力される第4の出力信号を第3のゲインよりも高い第4のゲインで増幅し、デジタル信号処理部150(制御回路)は、アナログデジタル変換器142(変換器)から出力される、第3の出力信号に対応する第3のデジタル信号と、第4の出力信号に対応する第4のデジタル信号と、のうちの少なくともいずれかを上記のオフデジタル信号として使用して出力する。これにより、画素変換ゲインの切り替わりにより生じるアーティファクトの発生をより抑制することができる。
【0123】
また、第2の本実施形態に係る撮像装置200は、一端が基準電位に接続され、他端がトランジスタ221(第3のトランジスタ)を通じてトランジスタ125(第1のトランジスタ)の入力端子(例えばゲート)に接続されるキャパシタであって、キャパシタ127(第1のキャパシタ)のキャパシタンスよりも小さいキャパシタンスを有する、キャパシタ127(第1のキャパシタ)と電気的に並列に設けられたキャパシタ222(第2のキャパシタ)をさらに含み、キャパシタ127(第1のキャパシタ)は、トランジスタ123(第2のトランジスタ)及びトランジスタ221(第3のトランジスタ)を通じてトランジスタ125(第1のトランジスタ)の入力端子(例えばゲート)に接続された。これにより、より少ない情報処理量で、画素変換ゲインの切り替わりにより生じるアーティファクトの発生をより抑制することができる。
【0124】
以上説明した各実施形態は、本開示の理解を容易にするためのものであり、本開示を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0125】
100、200…撮像装置、110…制御回路、120…画素、121…フォトダイオード、122~126…トランジスタ、127…キャパシタ、128…FDノード、130…信号線、140…読み出し回路、141…アンプ、142…アナログデジタル変換器、143…ラインメモリ、150…デジタル信号処理部、151…減算器、152…デジタルアンプ、153…セレクタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-09-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項7
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の撮像装置を備える、
端末。
【国際調査報告】