(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】ニコチン移行部を含むエアロゾル吸入器
(51)【国際特許分類】
A24F 40/05 20200101AFI20240801BHJP
A24F 40/30 20200101ALI20240801BHJP
A24F 40/10 20200101ALI20240801BHJP
A24F 40/42 20200101ALI20240801BHJP
A24B 15/167 20200101ALI20240801BHJP
A24B 15/24 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
A24F40/05
A24F40/30
A24F40/10
A24F40/42
A24B15/167
A24B15/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568579
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 KR2022008917
(87)【国際公開番号】W WO2023022352
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0109832
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519217032
【氏名又は名称】ケーティー アンド ジー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、ヨン ミ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ミ ジェオン
(72)【発明者】
【氏名】ジェオウン、エウン ミ
(72)【発明者】
【氏名】シン、ジュン ウォン
【テーマコード(参考)】
4B043
4B162
【Fターム(参考)】
4B043BB08
4B043BB22
4B043BC18
4B043BC24
4B043BC25
4B043BC28
4B162AA06
4B162AA30
4B162AB14
4B162AC16
4B162AC27
4B162AC50
(57)【要約】
ニコチン移行部を含むエアロゾル吸入器であって、前記ニコチン移行部は、ニコチン含有溶液及び推進体が充填された第1の容器、及び第1の容器と連結されて第1の容器内の液相に充填される第2の容器を含み、前記推進体は第1の容器内で液相及び気相に存在するエアロゾル吸入器を提供する。前記ニコチン移行部は、ニコチン移行量を予測し、実際のニコチン移行量が当該予測値から大きく逸脱しないように調節を可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチン移行部を含むエアロゾル吸入器であって、
前記ニコチン移行部は、
ニコチン含有溶液及び推進体が充填された第1の容器;及び
前記第1の容器と連結されて第1の容器内の液相に充填される第2の容器を含み、
前記推進体は、第1の容器内で液相及び気相に存在する、エアロゾル吸入器。
【請求項2】
前記推進体は、21℃で60psig~100psigの蒸気圧力を有する物質である、請求項1に記載のエアロゾル吸入器。
【請求項3】
前記第1の容器でニコチン含有溶液は、推進体の総重量を基準として1重量%~10重量%が充填される、請求項1に記載のエアロゾル吸入器。
【請求項4】
前記第1の容器でニコチン含有溶液と液相推進体を含む液相の体積は、第1の容器内の体積を基準として85体積%以下である、請求項1に記載のエアロゾル吸入器。
【請求項5】
第1の容器にニコチン含有溶液及び推進体を充填し、第2の容器に液相を充填する直前に、気相推進体は推進体の総重量を基準として5重量%以下である、請求項1に記載のエアロゾル吸入器。
【請求項6】
第2の容器は第1の容器内の液相で充填され、内部が完全に充填された後に第1の容器と分離される、請求項1から5のいずれか一項に記載のエアロゾル吸入器。
【請求項7】
前記第2の容器は、第1の容器内の液相の充填量によって内部空間が収縮及び弛緩される、請求項1に記載のエアロゾル吸入器。
【請求項8】
前記エアロゾル吸入器は、エアロゾル発生部をさらに含み、
前記エアロゾル発生部は、第1の容器と分離された第2の容器と連結され、第2の容器に充填された液相を供給され、液相が全て消耗されるまでエアロゾルを発生させる、請求項6に記載のエアロゾル吸入器。
【請求項9】
前記第2の容器に充填された液相は、エアロゾル発生部を介して発生したエアロゾルが5パフ~15パフにより全て消耗されることができる量である、請求項8に記載のエアロゾル吸入器。
【請求項10】
前記第2の容器に充填された液相が全て消耗されると、第2の容器はエアロゾル発生部と分離され、第1の容器と連結されて第1の容器内の液相に充填され、
前記液相の充填と消耗の繰り返し過程は、第1の容器で液相の体積が第1の容器内部の体積を基準として15体積%以下であれば中断される、請求項8に記載のエアロゾル吸入器。
【請求項11】
前記第1の容器の液相は、充填が中断されるまで第2の容器を15回~25回充填することができる量である、請求項10に記載のエアロゾル吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニコチン移行部を含むエアロゾル吸入器に関する。
【0002】
本出願は、2021年8月20日付け韓国特許出願第10-2021-0109832号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容を本明細書の一部として含む。
【背景技術】
【0003】
ニコチン溶液が含有された液相を加熱して蒸気化し、蒸気化したエアロゾルを吸入する電子タバコをはじめとした吸入装置が開発されている。多くの使用者が開発された吸入装置を通じて喫煙をしており、吸入装置を利用する使用者の数が増加している趨勢である。関連分野において、従来の喫煙物品を改善して燃焼や加熱ではない方式でニコチン関連物質をエアロゾル化する新しいタイプのエアロゾル吸入器が開発されている。例えば、大韓民国登録特許公報第10-125797号は、非加熱型タバコ香味吸引器を開示している。
【0004】
推進体は、ニコチン供給源のニコチン関連物質またはニコチン関連物質と有機酸物質が反応して生成されたエアロゾルなどを使用者の口腔に運搬する物質で、推進体を活用した吸入器は非加熱式、非電子式で作動することができ、構造が簡単で、バッテリーを使用しないなどの様々な利点がある。推進体を活用して、ニコチン液相媒質を人体に吸入しようとするとき、ニコチンを各パフ毎に適量を伝達する技術が重要になり得る。
【0005】
推進体を使う吸入器の場合、推進体により殆どの挙動が定まることができるが、装置(特に、バルブ構造)を用いてその速度や圧力、流量を調節することが難しい。したがって、当該技術分野では、エアロゾル内のニコチン移行量を調節する方法に関する研究が続けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10-2001-0080091号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
推進体を用いたエアロゾル吸入器において、前記問題点を解決するために、本発明はニコチン移行量を予測し、実際のニコチン移行量が当該予測値から大きく逸脱しないように調節することができるニコチン移行部を含むエアロゾル吸入器を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1側面によれば、
本発明は、ニコチン移行部を含むエアロゾル吸入器であって、前記ニコチン移行部は、ニコチン含有溶液及び推進体が充填された第1の容器、及び第1の容器と連結されて第1の容器内の液相に充填される第2の容器を含み、前記推進体は、第1の容器内で液相及び気相に存在するエアロゾル吸入器を提供する。
【0009】
本発明の一具体例において、前記推進体は、21℃で60psig~100psigの蒸気圧力を有する物質である。
【0010】
本発明の一具体例において、前記第1の容器でニコチン含有溶液は、推進体の総重量を基準として1重量%~10重量%が充填される。
【0011】
本発明の一具体例において、前記第1の容器でニコチン含有溶液と液相推進体を含む液相の体積は、第1の容器内部の体積を基準として85体積%以下である。
【0012】
本発明の一具体例において、第1の容器にニコチン含有溶液及び推進体を充填し、第2の容器に液相を充填する直前に、気相推進体は推進体の総重量を基準として5重量%以下である。
【0013】
本発明の一具体例において、前記第2の容器は第1の容器内の液相で充填され、内部が完全に充填された後に第1の容器と分離される。
【0014】
本発明の一具体例において、前記第2の容器は、第1の容器内の液相の充填量によって内部空間が収縮及び弛緩される。
【0015】
本発明の一具体例において、前記エアロゾル吸入器はエアロゾル発生部をさらに含み、前記エアロゾル発生部は、第1の容器と分離された第2の容器と連結され、第2の容器に充填された液相を供給され、液相が全て消耗されるまでエアロゾルを発生させる。
【0016】
本発明の一具体例において、前記第2の容器に充填された液相は、エアロゾル発生部を介して発生したエアロゾルが5パフ~15パフにより全て消耗されることができる量である。
【0017】
本発明の一具体例において、前記第2の容器に充填された液相が全て消耗されると、第2の容器はエアロゾル発生部と分離され、第1の容器と連結されて第1の容器内の液相に充填され、前記液相の充填と消耗の繰り返し過程は、第1の容器で液相の体積が第1の容器内部の体積を基準として15体積%以下であれば中断される。
【0018】
本発明の一具体例において、前記第1の容器の液相は、充填が中断されるまで第2の容器を15回~25回充填することができる量である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一具体例に係るエアロゾル吸入器は、後述するニコチン移行部を含むことによって、使用者がエアロゾル吸入器を使用する毎にニコチン移行量が大きく変化する問題を解決し、エアロゾル吸入器を全て使用するまでニコチン移行量の変化を5%以内に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一具体例に係るニコチン移行部の構造を概略的に示す図である。
【
図2】本発明の一具体例に係るニコチン移行部を含むエアロゾル吸入器の構造を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施例を例示的な図面を通じて詳細に説明する。各図面の構成要素に参照符号を付加するにおいて、同一の構成要素については、他の図面上に表示されても可能な限り同一の符号を有するようにしていることに留意されたい。なお、実施例を説明するにおいて、関連する公知の構成又は機能に関する具体的な説明が実施例の理解を妨げると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
【0022】
また、実施例の構成要素を説明するにおいて、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使用することができる。このような用語はその構成要素を他の構成要素と区別するためのものであるだけで、その用語により当該構成要素の本質や順番または順序などが限定されない。ある構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」または「接続」されると記載されている場合、その構成要素はその他の構成要素に直接連結されるか、または接続されることはできるが、各構成要素間にまた他の構成要素が「連結」、「結合」または「接続」されることもできると理解されなければならない。
【0023】
いずれかの実施例に含まれた構成要素と、共通の機能を含む構成要素は、他の実施例において同一の名称を使用して説明することにする。反対となる記載がない以上、いずれかの実施例に記載した説明は他の実施例にも適用されることができ、重複する範囲で具体的な説明は省略することにする。
【0024】
本発明は、ニコチン移行部を含むエアロゾル吸入器に関し、ニコチンの効果的な移行のために推進体を使う吸入器においてニコチン移行部を介してニコチンを均一に移行することができるエアロゾル吸入器を提供しようとする。本明細書において使用する用語「エアロゾル吸入器」とは、後述するニコチン含有溶液をエアロゾル化させ、使用者の口を介して使用者の肺内に伝達する装置をいう。
【0025】
本発明の一具体例に係るエアロゾル吸入器は、ニコチン移行部を備え、前記ニコチン移行部は、ニコチン含有溶液及び推進体が充填された第1の容器、及び第1の容器と連結されて第1の容器内の液相に充填される第2の容器を含む。
【0026】
本明細書において使用する用語「ニコチン含有溶液」とは、一定水準のニコチンを含有する液相をいい、ニコチンを除く液相を構成する成分はアルコール、香料成分等で、当該技術分野において通常用いられる物質を用いることができる。前記ニコチンは、ニコチン、ニコチン塩、ニコチンアルカロイド、ニコチン誘導体などを含むニコチン関連物質の形態で供給することができ、ニコチン含有溶液中に多量含有されたアルコールで効果的に分散することができる。前記アルコールは、当該技術分野において通常用いられるものであれば特に制限されないが、本発明の一具体例によれば、1価アルコール、2価アルコール、3価アルコール及びこれらの組み合わせからなる群より選択され、前記1価アルコールはエタノールであり、前記2価アルコールであるグリコールまたはグリコールエーテルは、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びこれらの組み合わせからなる群より選択され、前記3価アルコールはグリセロールである。ニコチン含有溶液に含まれるニコチンの総重量は、当技術分野の基準及び製品の規格によって調節されることができるが、本発明の一具体例によれば、ニコチン含有溶液でのニコチンの濃度は、1重量%~10重量%、具体的には1.5重量%~8重量%、より具体的には2重量%~6重量%である。前記ニコチンの濃度範囲内で発生するエアロゾルは、使用者の満足感を高めることができる。
【0027】
推進体は、ニコチン含有溶液から発生したエアロゾルを使用者の口腔に運搬する役割を果たし、基本的に身体に副作用のない化合物が用いられる。推進体は、第1の容器内の圧力で液相及び気相に存在し、液体推進体はニコチン含有溶液と均一に混合され、第2の容器に第1の容器内の液相を充填するときに第1の容器内の残余分と均一な組成の液相が第2の容器に充填される。推進体は、第1の容器内で液相及び気相に分離するために一定の水準の蒸気圧力を有する物質から選択することができ、このような物質は、ニコチン含有溶液との親和性が少なければ、その後にエアロゾルを発生させる際に推進体本来の機能性が維持されることができる。本発明の一具体例によれば、前記推進体は、21℃で60psig~100psig、具体的には65psig~95psig、より具体的には70psig~90psigの蒸気圧力を有する物質である。推進体が前記範囲より低い蒸気圧力を有する場合、エアロゾルを運搬する機能が低下することができ、推進体が前記範囲より高い蒸気圧力を有する場合、一定の水準以上に液化させるには過度の圧力が要求される。本発明の一具体例によれば、前記推進体はフッ素化されたアルカンであり、具体的にはフッ素化されたエタン、フッ素化されたプロパンまたはフッ素化されたブタンであり、より具体的には1,1,1,2-テトラフルオロエタンまたは1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパンである。吸入用推進体などの具体的な条件は、米国薬局方(USP)の基準に従うことができる。
【0028】
第1の容器内に充填されるニコチン含有溶液と推進体の割合は、第2の容器に液相が充填されたときにニコチン含有溶液と推進体がそれぞれの機能性を維持できるように調節することができる。本発明の一具体例によれば、前記第1の容器でニコチン含有溶液は、推進体の総重量を基準として1重量%~10重量%、具体的には1重量%~7重量%、より具体的には1重量%~4重量%が充填される。ニコチン含有溶液の含有量が前記範囲より低い場合、エアロゾル吸入器の使用時に一回パフに供給されるニコチンの含有量が不足することがあり、ニコチン含有溶液の含有量が前記範囲より高い場合、推進体の含有量が不足してニコチンの移行が効果的に進行しないことがある。
【0029】
常温で気体である推進体を完全に液化するためには、第1の容器に過度の圧力が要求され、外部の衝撃により第1の容器がより容易に損傷して内部の液相が漏れる可能性があるため、第1の容器内の液相は一定水準を超えないように管理することが好ましい。本発明の一具体例によれば、前記第1の容器でニコチン含有溶液と液相推進体を含む液相の体積は、第1の容器内部の体積を基準として85体積%以下、具体的には83体積%以下、より具体的には81体積%以下である。前記第1の容器で充填された液相の体積が85体積%を超える場合、前述のように液相の漏れ問題が発生する可能性があり、最初の気相の体積が小さく、第2の容器の充填による気相の体積変化率が多きため、液相の均一な組成形成における安定性が低下することができる。第2の容器に液相が充填されることにより、第1の容器内の液相の体積は次第に減少するので、前述した液相の体積への上限は、最初に第1の容器にニコチン含有溶液及び推進体が充填されるときに重要に適用され得る。
【0030】
充填された推進体のうち、実際に第2の容器に充填されて利用可能な液相推進体の割合を高め、第1の容器が不必要に大きくなることを防止するためには、第1の容器にニコチン含有溶液及び推進体を充填し、第2の容器に液相を充填する直前(すなわち、第1の容器の液相と気相が動的平衡をなした状態)、第1の容器の液相の体積が一定程度を超えるようにすることが好ましい。本発明の一具体例によれば、第1の容器にニコチン含有溶液及び推進体を充填し、第2の容器に液相を充填する直前、第1の容器の液相の体積は第1の容器の内部体積を基準として50体積%以上、具体的に55体積%以上、より具体的に60体積%以上である。前記第1の容器の液相の体積が50体積%未満の場合、前述のように充填した推進体の活用性が著しく落ちることがある。
【0031】
第1の容器は、容器内に充填された推進体が液相及び気相に分離できるように大気圧より高い圧力で加圧される。液体推進体は第2の容器に充填されてエアロゾルの運搬において直接的な役割を果たすので、充填直後に第1の容器は、液体推進体が気相推進体と比較して多量に存在できるように加圧される。気相推進体は最終的に第1の容器に残留し、第1の容器の液相を第2の容器に充填する際に推進力を提供し、後述する組成に対する計算式で予測可能な水準に第1の容器が挙動することができる程度であれば十分であり、前述した第1の容器の液相の体積割合の範囲を考慮して調節することができる。本発明の一具体例によれば、第1の容器にニコチン含有溶液及び推進体を充填し、第2の容器に液相を充填する直前(すなわち、第1の容器の液相と気相が動的平衡をなした状態)に気相推進体は、推進体の総重量を基準として5重量%以下、具体的には3重量%以下、より具体的には1重量%以下である。前記気相推進体が5重量%を超える場合、第2の容器に充填される液相推進体の含有量が少なくなり、推進体の投入によるエアロゾル運搬に対する機能性が低下する。
【0032】
第1の容器の液相の組成は、理想気体の状態方程式により予測することができる。推進体と共に充填されるニコチン含有溶液は常温で液相に存在するため、常温で気相に存在する推進体に比べて蒸気圧力が著しく低い。また、推進体はニコチン含有溶液と親和性が低いため、推進体の蒸気圧力により予測される第1の容器の液相の組成は実際の測定値と乖離感が大きくない。ニコチン含有溶液の組成は、第1の容器の圧力によって大きく変化しないので、液相推進体の量を計算することによって、第1の容器の液相の組成を把握することができる。まず、気相推進体の体積は、下記計算式1から計算することができる。
【0033】
【0034】
ここで、Vvは気相推進体の体積(ml)であり、mは推進体の充填量(g)であり、Vは第1の容器の容量(ml)であり、Vl2はニコチン含有溶液の体積(ml)であり、ρlは液相推進体の密度(KG/m3)であり、Mは推進体の分子量(g/mol)であり、Psatは飽和蒸気圧(atm)であり、Rは気体定数0.082(atm/mol・K)であり、Tは温度(K)である。
【0035】
前記で計算された気相推進体の体積に基づいて、液相推進体の体積は下記計算式2から計算することができる。
【0036】
【0037】
ここで、V、Vl2及びVvは前記計算式1で定義したものと同じであり、Vlは液相推進体の体積(ml)である。
【0038】
前記で計算された液相推進体の体積に基づいて、液相推進体の質量は下記計算式3から計算することができる。
【0039】
【0040】
ここで、ρl及びVlは前記計算式1及び2で定義したものと同じであり、mlは液相推進体の質量(g)である。
【0041】
前記で計算された液相推進体の質量に基づいて、第1の容器の液相質量は下記計算式4から計算することができる。
【0042】
【0043】
ここで、mlは前記計算式3で定義したものと同じであり、ml2はニコチン含有溶液の質量(g)であり、ml3は第1の容器の液相質量(g)である。
【0044】
以下実施例を通じて確認されるように、第2の容器に20回程度充填する間、第2の容器内のニコチンの量は大きく変化しないという点を考慮すると、本発明の一具体例に係るエアロゾル吸入器は液相の組成変更を通じてニコチン移行量を自由に設計することができる。前述した設計条件は、エアロゾル吸入器が実際の具現時に予測された範囲内で助ける。
【0045】
本明細書は、本発明の一具体例に係るエアロゾル吸入器をより具体的に説明するために、
図1及び
図2を提供する。
図1は、本発明の一具体例に係るニコチン移行部の構造を概略的に示す図であり、
図2は、本発明の一具体例に係るニコチン移行部を含むエアロゾル吸入器の構造を概略的に示す図で、当該構造は1つの例示的な構造に過ぎず、本発明はこれに限定されない。
【0046】
図1に示すように、ニコチン移行部100は第1の容器10と第2の容器20とを含み、第1の容器10と第2の容器20は連結部11により連結される。前記第1の容器10は、ニコチン含有溶液及び推進体で充填され、第1の容器10の内部に液相と気相が動的平衡をなした後に、連結部11が開放されて連結部11を介して液相が第2の容器20に移動し、第2の容器20は第1の容器内の液相に充填される。第2の容器20の内部が完全に充填された後、連結部11が閉鎖されて第2の容器20は第1の容器10と分離される。前記連結部11の開放及び閉鎖手段は、バルブ、栓など当該技術分野において一般的に知られている手段を適宜適用することができる。
【0047】
本発明の一具体例によれば、前記第2の容器20は、第1の容器内の液相を充填するときに、第2の容器内部の空気などが第1の容器10に流入しないように第1の容器内の液相の充填量によって内部空間が収縮及び弛緩する。前記内部空間の収縮及び弛緩は、容器自体が収縮及び弛緩することができ、
図1に示すように、容器自体が固定された形態であれば、収縮/弛緩手段30などにより行うことができる。
図1における収縮/弛緩手段30は、下方に移動して第2の容器20の内部空間を弛緩させることによって、第1の容器内の液相を第2の容器20に充填し、上方に移動して第2の容器(20)の内部空間を収縮させることによって、第2の容器(20)に充填された液相を放出する。第2の容器20で充填された液相の放出は、後述するエアロゾル発生部50と連結された移送管40を介して行うことができる。第2の容器20に液相が充填されるときには、第1の容器と第2の容器の連結部11が開放され、第2の容器と移送管の連結部21が閉鎖される。逆に、第2の容器20に液相が放出されるときには、第1の容器と第2の容器の連結部11が閉鎖され、第2の容器と移送管の連結部21が開放される。
図1と同様に、前記収縮/弛緩手段30が下方に移動しながら、気相Aではなく液相Bのみを第2の容器20に充填することができる。
【0048】
図2に示すように、エアロゾル吸入器200はエアロゾル発生部50をさらに含む。前記エアロゾル発生部50は、第1の容器10と分離された第2の容器20と連結されて第2の容器に充填された液相を供給され、液相が全て消耗するまでエアロゾルを発生させる。前述のように、エアロゾル発生部50は、移送管40を介して第2の容器20と繋がることができ、第2の容器と移送管の連結部21の開放または閉鎖により第2の容器と連結または分離することができる。
【0049】
前記第2の容器20は、使用者が一タイムに使用するのに適した程度の液相を含むことができる。本発明の一具体例によれば、前記第2の容器20に充填された液相は、エアロゾル発生部を介して発生したエアロゾルが5パフ~15パフ、具体的には7パフ~14パフ、より具体的には8パフ~12パフによって全て消耗されることができる量である。前記範囲は、当該技術分野において使用者が一タイムに使用する規格に近い。
【0050】
前記第2の容器20に充填された液相が全て消耗されると、第2の容器20はエアロゾル発生部50と分離され、第1の容器10と連結されて第1の容器内の液相に充填される。前記第2の容器20で液相の充填と消耗は数回から数十回繰り返されることがある。しかし、第1の容器10内の液相が全て消耗されるまで、持続的に第2の容器20に液相を充填すれば、第1の容器10内の液相が全て消耗される際において第2の容器20に充填された液相は液相の組成において、前述した理想気体の状態方程式により計算した予想値と有意に差が生じることがある。したがって、第1の容器10内の液相が定められた基準以下まで消耗されると、第2の容器20の充填を中断することが好ましい。本発明の一具体例によれば、前記液相の充填と消耗の繰り返し過程は、第1の容器で液相の体積が第1の容器内部の体積を基準として15体積%以下、具体的には13体積%以下、より具体的には11体積%以下であれば中断される。前記範囲内で第2の容器20に充填を中断することによって、充填する毎にニコチン移行量の変化が大きくないように調節が可能である。本発明の一具体例によれば、前記第1の容器の液相は、充填が中断される前まで第2の容器を15回~25回充填することができる量である。前記範囲内に第1の容器の液相の量を調節することがエアロゾル吸入器の活用性の側面で好ましい。
【0051】
実施例
19mlの円筒形キャニスター(直径が約21mmであり、高さが約53mmである)に、18.679gの1,1,1,2-テトラフルオロエタン(Xiamen Juda Chemical & Equipment社製)及び0.321gのニコチン含有液相を充填した後、キャニスターを密閉した。前記ニコチン含有液相は、13.5mgのニコチン(JHchemical社製)をエタノール(Sigma-Aldrich社製)とグリセロール(SK社製)の混合液(3:1重量比)に混合して製造した。密閉されたキャニスター内部の液相と気相が動的平衡をなした後、0.8gの液相を抽出して模造タバコ貯蔵所に充填した。
【0052】
模造タバコ貯蔵所に充填された液相を吸入して完全に消耗した後、再び液相と気相が動的平衡をなした密閉されたキャニスターから0.8gの液相(10パフ~12パフに分けて吸入できる量)を抽出して模造タバコの貯蔵所に二番目に充填した。前述した過程に従って模造タバコに総20回を充填した後、各充填毎に円筒形キャニスター(表1)及び抽出された液相(表2)成分を分析し、下記表1及び2に示した。参考までに、初期キャニスター内の液相体積は81体積%であり、20回充填後のキャニスター内の液相体積は11体積%である。
【表1】
【表2】
【0053】
前記表1及び2によれば、模造タバコ貯蔵所の充填回数の増加に伴い、液相中のより含有量の高い液相推進体の量がより速く減少し、これにより抽出された液相の組成も推進体量が減少し、ニコチン含有液相量が増加することを確認した。それにもかかわらず、最初に抽出された液相の組成と20回目に抽出された液相の組成でニコチン含有量を比較すると、最初の0.571mgから20回の0.596mgに0.025mg(約4.4%)増加する水準に過ぎず、このようにニコチン移行部の設計時、ニコチン移行量の変化が5%以内で定量吸入が可能である。
【0054】
以上のように実施例が限定された実施例と図面によって説明されたが、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば前記の記載から様々な修正及び変形が可能である。例えば、説明された記述が説明された方法と異なる順序で実行されるか、及び/又は説明されたシステム、構造、装置、回路などの構成要素が説明された方法と異なる形態で結合または組み合わせるか、または他の構成要素あるいは均等物によって代替若しくは置換されても、適切な結果が達成され得る。
【符号の説明】
【0055】
10:第1の容器
11:第1の容器と第2の容器の連結部
20:第2の容器
21: 第2の容器と移送管の連結部
30:(第2の容器の内部空間に対する)収縮/弛緩手段
40:移送管
50:エアロゾル発生部
100:ニコチン移行部
200:エアロゾル吸入器
A:気相
B:液相
【国際調査報告】