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特表2024-529607プレス工具及びプレスプレートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】プレス工具及びプレスプレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/06 20060101AFI20240801BHJP
   B21D 37/20 20060101ALI20240801BHJP
   B30B 9/00 20060101ALI20240801BHJP
   B30B 15/02 20060101ALI20240801BHJP
   B30B 3/00 20060101ALI20240801BHJP
   B30B 5/04 20060101ALI20240801BHJP
   B44B 5/02 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B30B15/06 Z
B21D37/20 A
B30B9/00 B
B30B15/02 B
B30B3/00 B
B30B5/04
B44B5/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575917
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2022079757
(87)【国際公開番号】W WO2023078731
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】102021128738.3
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102022125374.0
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515352870
【氏名又は名称】フェック ライニッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】アーリ カウク
(72)【発明者】
【氏名】トルステン ハーゲドルン
(72)【発明者】
【氏名】ベルトルト テーレン
【テーマコード(参考)】
4E050
4E088
4E090
【Fターム(参考)】
4E050JA01
4E050JA03
4E050JB09
4E050JB10
4E050JC02
4E050JD03
4E088EA10
4E090AA01
4E090AB01
4E090DA01
4E090HA10
(57)【要約】
本発明は、プレス面(2)を備えた、工作物を製造するためのプレス工具に関する。このプレス工具は、ベース構造体(10)と、表面(31)上に配置されたプレス面(2)を形成する少なくとも2つのセラミック層(11、12)とを含み、複数のセラミック層(11、12)のうちの第1セラミック層(11)は第1の光沢度を有し、第2セラミック層(12)は第1セラミック層(11)の第1の光沢度とは異なる第2の光沢度を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作物を製造するためのプレス工具であって、
プレス面(2)と、
表面(31)を備えたベース構造体(10)と、
前記表面(31)上に配置され、前記プレス面(2)を形成する少なくとも2つのセラミック層(11、12)であって、第1セラミック層(11)は第1の光沢度を有し、第2セラミック層(12)は前記第1セラミック層(11)の前記第1の光沢度とは異なる第2の光沢度を有する、工作物を製造するためのプレス工具。
【請求項2】
前記プレス工具は材料ボード(8)を製造するためのプレスプレート(1)である、請求項1に記載のプレス工具。
【請求項3】
前記プレス工具の前記ベース構造体(10)は、金属、特にステンレス鋼からなる支持構造体(14)を有する、請求項1又は2に記載のプレス工具。
【請求項4】
前記プレス面(2)は、隆起部(4)と凹み部(3)の構造を有し、前記ベース構造体(10)は支持構造体(14)上に設けられた構造化された表面(31)を有しており、
少なくとも2つの、特に金属製のベース構造層(15)が前記支持構造体(14)上に設けられ、前記ベース構造層(15)は、少なくとも部分的に互いに重なり合って配置され、前記ベース構造体(10)の前記構造化された表面(31)を形成する、請求項1~3の何れか一項に記載のプレス工具。
【請求項5】
前記第1セラミック層(11)又は前記第2セラミック層(12)は、前記ベース構造体(10)の構造化された表面(31)に部分的にのみ塗布され、前記構造化された表面(31)のリリーフ層構造(16)を形成する、請求項1~4の何れか一項に記載のプレス工具。
【請求項6】
前記第1セラミック層(11)と前記第2セラミック層(12)は、それぞれ前記ベース構造体(10)の構造化された表面(31)に部分的にのみ塗布されている、請求項1~4の何れか一項に記載のプレス工具。
【請求項7】
前記第2セラミック層(12)は少なくとも部分的に前記第1セラミック層(11)上に配置されている、請求項1~6の何れか一項に記載のプレス工具。
【請求項8】
前記第1セラミック層(11)又は前記第2セラミック層(12)は、少なくともレーザー加工領域(17)でレーザーを用いて加工されている、請求項1~7の何れか一項に記載のプレス工具。
【請求項9】
前記第2セラミック層(12)内に、前記ベース構造体(10)の方向に見て前記第1セラミック層(11)まで達する開口部(5)が設けられている、請求項7に記載のプレス工具。
【請求項10】
前記開口部(5)は、塗布された前記第2セラミック層(12)の後続加工によって作製された切り込み(6)である、請求項9に記載のプレス工具。
【請求項11】
前記後続加工はレーザー加工である、請求項10に記載のプレス工具。
【請求項12】
前記ベース構造体(10)のプレス側(7)に配置された金属層(15)の少なくとも1つは、ニッケル層又はニッケル含有金属層である、請求項1~11の何れか一項に記載のプレス工具。
【請求項13】
前記ベース構造体(10)の構造化された表面(31)は、付加製造法によって少なくとも部分的に3次元リリーフ層構造(16)で製造される、請求項1~12の何れか一項に記載のプレス工具。
【請求項14】
前記ベース構造体(10)の構造化された表面(31)は、電気化学的プロセス、機械的プロセス又はレーザー加工プロセスによって少なくとも部分的に3次元形状に製造される、請求項1~12の何れか一項に記載のプレス工具。
【請求項15】
前記第2セラミック層(12)は、前記ベース構造体(10)の構造化された表面(31)を完全に覆って、第2の厚み(19)を有し、
前記第1セラミック層(11)は第1の厚み(18)を有し、
前記第1の厚み(18)と前記第2の厚み(19)とは、前記第1セラミック層(11)と前記第2セラミック層(12)の異なる光沢度を得るために異なる層厚を有し、特に両セラミック層(11、12)が同じセラミック材料からなる、請求項1~14の何れか一項に記載のプレス工具。
【請求項16】
両セラミック層(11、12)のセラミック材料は、前記第1セラミック層(11)と前記第2セラミック層(12)との異なる光沢度を得るために異なっており、特に、前記第2セラミック層(12)の厚み(19)は前記第1セラミック層(11)の厚み(18)に等しい、請求項1~14の何れか一項に記載のプレス工具。
【請求項17】
前記少なくとも2つのセラミック層(11、12)のセラミック材料は、二ホウ化ハフニウム、二ホウ化モリブデン、二ホウ化タンタル、二ホウ化チタン、二ホウ化タングステン、二ホウ化バナジウム、二ホウ化ジルコニウム、又はこれらのセラミック材料の混合物である、請求項1~16の何れか一項に記載のプレス工具。
【請求項18】
請求項1~17の何れか一項に記載のプレス工具の製造方法であって、以下の方法ステップ、即ち、
前記ベース構造体(10)のための支持構造体(14)を準備するステップと、
前記ベース構造体(10)を構成するために前記支持構造体(14)に少なくとも2つのベース構造層(15)を塗布するステップと、
前記支持構造体(14)上に構造化された表面(31)を作製するステップと、
前記ベース構造体(10)の前記構造化された表面(31)に前記第1セラミック層(11)を塗布するステップと、
構造化された表面(10)及び/又は塗布された前記第1セラミック層(11)上に前記第2セラミック層(12)を塗布するステップと、を含むプレス工具の製造方法。
【請求項19】
前記ベース構造体(10)の前記構造化された表面(31)に部分マスク(32)を塗布するステップと、
前記部分マスクを施した前記構造化された表面(31)に前記第1セラミック層(11)を塗布するステップと、
前記部分マスク(32)を除去して、前記第1セラミック層(11)が前記構造化された表面(31)上に部分的にのみ配置されているようにするステップと、
部分的に塗布された前記第1セラミック層(11)と前記ベース構造体(10)の前記構造化された表面(31)上に前記第2セラミック層(12)を全面的に塗布するステップと、を含む請求項18に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項20】
前記ベース構造体(10)の前記構造化された表面(31)に前記第1セラミック層(11)を全面的に塗布するステップと、
前記第1セラミック層(11)に部分マスク(32)を塗布するステップと、
前記部分マスク(32)を施した前記第1セラミック層(11)上に前記第2セラミック層を塗布するステップと、を含む請求項18に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項21】
前記部分マスク(32)を除去して、前記第1セラミック層(11)が前記構造化された表面(31)上に部分的にのみ配置されているようにするステップを含む、請求項20に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項22】
金属層(34)、クロム層、ニッケル層、又はニッケル含有金属層が、前記部分マスク(32)として塗布される、請求項19~21の何れか一項に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項23】
前記部分マスク(32)が機能層(35)として前記プレス工具上に残る、請求項22に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項24】
対応するセラミック層(11、12)又はマスク(32)の所定の光沢度を得るために、対応する塗布されたセラミック層(11、12)又はマスク(32)を後処理するステップを含む、請求項18~24の何れか一項に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項25】
前記少なくとも2つのセラミック層(11、12)を表面マグネトロンスパッタリング被覆装置(33)によって塗布するステップを含み、
前記少なくとも2つのセラミック層(11、12)の部分的な製造が、前記表面マグネトロンスパッタリング被覆装置(33)を適切に制御することによって実施される、請求項18~24の何れか一項に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項26】
プレスプレート(1)を搬送装置(21)上で搬送するステップと、
加工チャンバー(24)に続く第1ロック(22)を開くステップと、
前記プレスプレート(1)を前記表面マグネトロンスパッタリング被覆装置(33)の前記加工チャンバー(24)内に搬入するステップと、
前記第1ロック(22)を閉じるステップと、
真空ポンプ(29)によって前記加工チャンバー(24)内を真空にするステップと、
マグネトロン(36)によって1つ以上のセラミック層(11、12)を塗布するステップと、
前記加工チャンバー(24)に続く前記第1ロック(22)を開くステップと、
前記第1ロック(22)を通して前記プレスプレート(1)を前記表面マグネトロンスパッタリング被覆装置(33)の前記加工チャンバー(24)から搬出するステップと、を含む、請求項25に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項27】
プリチャンバーロック(26)を備えた真空プリチャンバー(25)を通して前記プレスプレート(1)を搬送する追加ステップを含み、
前記真空プリチャンバー(25)は搬送方向に見て前記加工チャンバー(24)の上流側に位置し、
前記真空プリチャンバー(25)は真空ポンプ(30)によって、大気圧と、前記加工チャンバー(25)内でセラミック層(11、12)を塗布する際の加工圧との間にある圧力レベルにもたらされ、この加工圧は特に10-3Pa以下、好ましくは10-6Paである、請求項26に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項28】
追加ステップ、即ち、
プリチャンバーロック(26)を備えた真空プリチャンバー(25)を通して前記プレスプレート(1)を搬送し、この真空プリチャンバー(25)は搬送方向に見て前記加工チャンバー(24)の上流側に位置し、
前記真空プリチャンバー(25)は真空ポンプ(30)によって、大気圧と、前記加工チャンバー(25)内でセラミック層(11、12)を塗布する際の加工圧との間にある圧力レベルにもたらし、この加工圧は特に10-3Pa以下、好ましくは10-6Paであるステップと、
ポストチャンバーロック(28)を備えた真空ポストチャンバー(27)を通して前記プレスプレート(1)を搬送し、この真空ポストチャンバー(27)は搬送方向に見て前記加工チャンバー(24)の下流側に位置し、
前記真空ポストチャンバー(27)は真空ポンプ(30)によって、大気圧と加工圧との間にある圧力レベルにもたらすステップと、を含む、請求項26に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項29】
材料ボードの製造のための、請求項1~17の何れか一項に記載のプレス工具の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス面を有するプレス工具、及びプレス工具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレスプレート、エンドレスベルト、エンボスローラなどの形態のプレス工具は、特に木工産業において、例えば家具や、ラミネート又はパネルなどの材料ボード、即ち一般に工作物の製造に使用される。工作物はプレス工具のプレス面でプレスされて、工作物にプレス面に対応する表面が与えられる。
【0003】
材料ボード、例えば木質系材料ボードは、家具産業や内装仕上げ用、例えばラミネートフローリング用に必要とされる。材料ボードは、MDF(中密度繊維板)又はHDF(高密度繊維板)製の芯材を有し、その芯材の少なくとも片面には、例えば(視覚的)装飾層や保護層(オーバーレイ層)など、様々な材料層が形成されている。
【0004】
製造された材料ボードの反りを避けるため、このような材料ボードは通常、両面に同じ数の材料層が設けられている。材料ボードの個々の層(芯材、材料層など)を互いに結合するため、これらはプレス機で特殊なプレス工具、特にプレスプレート又はエンドレスベルトを使用して互いにプレスされる。その際に材料ボードの表面刻印も行われる。通常はホットプレスを用いて、熱の作用プラスチック材料を融合させることによって、熱硬化性樹脂、例えばメラミン樹脂の様々な材料層を芯材の表面と結合する。
【0005】
この場合、装飾層が、材料ボードの模様と色彩を決定する。一方、所望の表面構造は、適切なプレス工具を使用することによって達成することができる。例えば木やタイルの装飾を装飾層(装飾紙)に印刷したり、それぞれの使用目的に応じて芸術的にデザインされた模様や色彩の装飾層を使用したりできる。その際に、上面又は下面に印刷されたオーバーレイ層も使用できる。
【0006】
実物どおりの再現を改善するために、プレス工具は、特に木材、タイル又は天然石の装飾を有する材料ボードの場合、装飾層と完全に一致するように設計されて、所望の表面構造のネガティブ画像を形成する表面構造を備える。したがってプレス工具は、例えば木の表面の葉脈を模倣する3Dプロファイル(奥行構造)を備えて、例えば材料ボードの装飾層にそのような木の表面の外観を与えることができる。
【0007】
材料ボード若しくはラミネートの一致した表面刻印、即ち装飾層とラミネートのプレス面の構造に必要な正確な一致を達成するためには、プレス工具の製造に高い品質基準が要求される。特にプレスプレート又はエンドレスベルトは、プレスプレート及び好ましくはプレスパッドで覆われたショートサイクルプレス機で上型及び下型として使用され、或いはエンドレスベルトの場合にはダブルベルトプレスで使用されて、材料ボードの刻印と加熱が同時に行われる。その結果、材料ボードの装飾層及び/又はオーバーレイ層の熱硬化性樹脂が最初に溶融されて、プレス工具のプレス面の構造に対応する表面構造が外側の材料層に導入され、続く硬化により構造化された材料層が材料ボードの芯材と結合される。
【0008】
特許文献1は、エンボス型の構造化されたプレス面を加工する方法を開示している。第1のクロム層を全面に施した表面上に、所定の領域で少なくとも1つの別のクロム層が配置される。両クロム層の光沢度は異なる。プレス面によって、光沢度が異なる構造を有する表面を持つ材料ボードとして形成された工作物を製造することができる。このプレス工具の製造は、クロム層の使用と複数のマスキング工程及び洗浄工程により、環境に比較的有害である。
【0009】
特許文献2には、樹脂を含浸させた紙から装飾ラミネートを製造するための平坦なプレス面の製造方法が開示されている。この目的のために、平坦なプレス面に所望の仕上げを施し、平坦な表面から不純物を除去し、この平坦な表面に二ホウ化ハフニウム、二ホウ化モリブデン、二ホウ化タンタル、二ホウ化チタン、二ホウ化タングステン、二ホウ化バナジウム、二ホウ化ジルコニウム又はこれらの物質の混合物が、表面マグネトロンスパッタリング被覆装置で、少なくとも2000HVのビッカース硬さに被覆され、そのために平坦な表面と表面マグネトロンスパッタリング被覆装置のスパッタリングヘッドとを、平坦なプレス面内に27.78℃以下の熱勾配を生じさせるのに十分な走査速度で相対的に動かす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2009/062488(A2)号
【特許文献2】米国特許第6190514(B1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、特定の領域で光沢度が異なるプレス面を有するプレス工具を、製造が比較的環境に優しい方法で提供することである。
更に、より容易な再現性をより低コストで保証するプレス工具の製造法を示すものとする。
【0012】
更に、工作物、表面構造が異なる構造、例えば粗大構造と微細構造を有し、任意の程度のディテールと品質を有する、特に材料ボードを製造するためのプレス工具を提供するものとする。
【0013】
本発明のその他の課題は、本出願の開示内容から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題は、プレス面と、ベース構造体と、表面上に互いに重なり合って配置されてプレス面を形成する少なくとも2つのセラミック層とを有し、それらのうち一方のセラミック層は、ある光沢度を有する全面セラミック層であり、他方のセラミック層は、全面セラミック層の光沢度とは異なる別の光沢度を有する部分セラミック層である、工作物を製造するためのプレス工具によって解決される。
【0015】
本発明によるプレス工具は、例えばエンドレスベルト又はエンボスローラである。好ましくは、本発明によるプレス工具はプレスプレートである。
【0016】
プレス面は、例えば平滑であるが、構造化されたプレス面として設計することもできる。特に、プレス面は隆起部と凹み部からなる構造を有することができ、ベース構造体は、プレス面の構造に対応して構造化された表面を有することができ、或いはプレス面が層、特にセラミック層を更に塗布することによってその3次元形状から逸脱する。
【0017】
本発明の別の態様は、本発明によるプレス工具の製造方法であって、
ベース構造体のための支持構造体を準備するステップと、
ベース構造体を構成するために支持構造体に少なくとも2つのベース構造層を塗布するステップと、
支持構造体上に構造化された表面を作製するステップと、
ベース構造体の表面に第1セラミック層を塗布するステップと、
構造化された表面及び/又は塗布された第1セラミック層上に第2セラミック層を塗布するステップと、を含む。
【0018】
したがって、本発明によるプレス工具は、変形例によれば場合により構造化されたプレス面として形成されたプレス面に対応して構造化された表面を有するベース構造体を含むことができる。ベース構造体は、例えば冒頭に例として挙げた特許文献1から知られているように、互いに重なり合って配置されてベース構造体の表面を作製する複数の部分金属層を含む。
【0019】
しかしながら、比較的硬いプレス面を得るために、本発明によれば、この表面はクロム層ではなく、セラミック層が施される。セラミックスも同様に比較的硬く設計することができ、例えば少なくとも2000HVのビッカース硬さを有することができる。セラミック層の適切なセラミック材料は、例えば二ホウ化ハフニウム、二ホウ化モリブデン、二ホウ化タンタル、二ホウ化チタン、二ホウ化タングステン、二ホウ化バナジウム、二ホウ化ジルコニウム、又はこれらのセラミック材料の混合物である。セラミック層の塗布若しくは被覆は、クロム層の塗布若しくは被覆と比較して著しく環境に優しい。
【0020】
更に、本発明によるプレス工具は、少なくとも2つの互いに重なり合って配置されたセラミック層、好ましくは正確に2つの互いに重なり合って配置されたセラミック層を含むことができる。一方のセラミック層は部分セラミック層であり、他方のセラミック層は全面セラミック層であることができる。本発明によれば、全面セラミック層の光沢度は部分セラミック層の光沢度とは異なることできるため、プレス面は異なる領域で異なる光沢度を有し、それによりプレスプレートによって製造された工作物の表面も、同様にそれぞれの領域に対応して異なる光沢度を有することができる。その結果、プレス面でプレスされて生じる工作物の品質を改善することができる。工作物は、例えば材料ボード、特にラミネート又はパネルである。
【0021】
特に、ベース構造体に新たにセラミック層を施すために、摩耗又は損傷したセラミック層をベース構造体から比較的容易に除去することも可能である。そのため、摩耗又は損傷したプレス工具を比較的高いコスト効率で修理することができる。
【0022】
セラミック層の塗布は、例えば表面マグネトロンスパッタリング被覆装置を用いて行うことができる。
【0023】
両セラミック層の厚みは、好ましくは1μmから2μmの範囲である。
【0024】
全面セラミック層と部分セラミック層の異なる光沢度を得るために、好ましくは全面セラミック層の厚みは部分セラミック層の厚みとは異なっている。即ち、それぞれのセラミック層の光沢度を、それらの厚みによって調整することが可能である。この場合、両セラミック層は、好ましくは同じセラミック材料からなり、このことは本発明によるプレス工具の製造コストに好影響を与えることができる。プレスプレートを製造する際に、セラミック層の必要な厚みは、例えば表面マグネトロンスパッタリング被覆装置を適切に制御することによって達成できる。
【0025】
両セラミック層の光沢度は、部分セラミック層と全面セラミック層に対して異なるセラミック材料を使用することによっても調整することができる。それゆえ、本発明によるプレスプレートの変形例によれば、全面セラミック層と部分セラミック層の異なる光沢度を得るために、両セラミック層のセラミック材料は異なることができる。この場合は、特に全面セラミック層の厚みは部分セラミック層の厚みに等しい。
【0026】
好ましくは、部分セラミック層は、全面セラミック層とベース構造体の表面との間に配置されている。この本発明によるプレスプレートの実施形態は、例えば、
ベース構造体の表面に部分マスクを塗布し、
マスクを施した表面上でマスクによって覆われていない領域にセラミック層を塗布し、
マスクを除去して、構造化された表面上に部分セラミック層が配置されているようにし、
部分セラミック層に完全なセラミック層を塗布することによって製造できる。
【0027】
しかし、部分セラミック層は、例えば表面マグネトロンスパッタリング被覆装置を適切に制御することによっても製造することができる。
【0028】
このプレス工具の変形例によれば、部分セラミック層上に全面セラミック層が塗布されているので、比較的平滑なプレス面を比較的簡単に製造することができる。しかしながらこの場合、全面セラミック層は、その下にある部分セラミック層の光沢度を完全に覆わないような性状でなければならない。特にこの場合、全面セラミック層は部分セラミック層よりも薄い。即ち、全面セラミック層の厚みは部分セラミック層の厚みよりも小さい。
【0029】
しかしまた、本発明によるプレス工具は、全面セラミック層が部分セラミック層とベース構造体の構造化された表面との間に配置されるように、即ち、全面セラミック層上に部分セラミック層が塗布されるように設計することもできる。この本発明によるプレス工具の実施形態は、例えば、
ベース構造体の表面に全面セラミック層を塗布し、
全面セラミック層に部分マスクを塗布し、
マスクを施した全面セラミック層上でマスクによって覆われていない領域にセラミック層を塗布し、
マスクを除去して、全面セラミック層上に部分セラミック層が配置されているようにすることによって製造できる。
【0030】
しかしまた、部分セラミック層は、例えば表面マグネトロンスパッタリング被覆装置を適切に制御することによっても製造することができる。
【0031】
それぞれのセラミック層の所定の光沢度を得るために、部分セラミック層と全面セラミック層の光沢度は、対応して塗布されたセラミック層の後処理によって達成することもできる。後処理は、例えば対応するセラミック層の研磨又はレーザー処理を含むことができる。
【0032】
本発明によるプレス工具の実施形態によれば、ベース構造体の表面は異なる領域で異なる光沢度を有することができ、これらの光沢度は、特に全面セラミック層と部分セラミック層の光沢度とは異なる。ベース構造体の表面の異なる光沢度の調整は、例えばレーザーを用いて行うことができ、或いは互いに重なり合って配置された複数の層からなるベース構造体の場合は、国際公開第2009/062488(A2)号(特許文献1)により公知である。
【0033】
本発明によれば、プレス工具は、工作物、特に家具産業用の材料ボード又はラミネートフローリングパネルを製造するために使用することができる。プレス工具は、プレス機で材料ボードをプレスする際にプレスされる材料ボードと直接接触し、これに面するプレス面を有する。
【0034】
プレス工具は、表面を備えた支持構造体を有する。この表面は、平面的又は3次元的に形成されてよい。表面は、好適にはクロム、銅、ステンレス鋼、ニッケル、スズ、金属合金などの金属表面で作ることができる。この表面上に、プレス面を形成するセラミック層が配置されている。第1セラミック層は第1の光沢度を有し、第2セラミック層は第2の光沢度を有する。この場合、光沢度は、プレス面の材料特性、層構造、一方又は両方のセラミック層の表面構造、或いはそれらの下に位置するベース構造体の表面によって決定できる。第1セラミック層の第1の光沢度は、第2の光沢度とは異なる。これにより、特に耐久性のある表面を作製することが可能であり、それにもかかわらず表面は実物の外観、特に木の外観をリアルに模倣するように設計することができる。
【0035】
好適には、プレス工具は、材料ボードを製造するためのプレスプレートである。材料ボードは、家具産業やラミネートフローリングパネルに使用される。プレスプレートを使用する場合の利点は、家具産業や床材産業の既存のプレス装置で使用できることである。
【0036】
別の実施例では、プレス工具の基本構造は、金属製、特にステンレス鋼製の支持構造体を有することができる。金属製の支持構造体は、プレスされる材料ボードにプレス圧が均等に分布することを保証し、耐摩耗性を有する。
【0037】
好適には、プレス面は、隆起部と凹み部からなる構造を有し、ベース構造体は、支持構造体上に設けられた構造化された表面を有することができ、支持構造体上には少なくとも2つの、少なくとも部分的に互いに重なり合って配置された、特に金属製のベース構造層が設けられていて、ベース構造体の構造化された表面を作製する。これらのベース構造層は、平面的に、又は付加製造法により3次元形態で塗布することができる。付加製造法は、例えばインクジェット印刷、3Dプリント、焼結、リソグラフィ、ラッカー塗装、UV硬化インク又はアクリレートによる印刷であることができる。ここで特に有利なのは、ベース構造層の中間層に対して、より安価な材料と、より迅速で精度の低い塗布方法を使用できる点である。これにより、高い表面品質で、よりコスト効率の高いプレス面の製造が可能になる。
【0038】
更に、第1セラミック層又は第2セラミック層を、ベース構造体の構造化された表面に部分的にのみ塗布して、構造化された表面のリリーフ層構造を形成できると有用であり得る。これにより、リリーフ層構造を更に微細に構造化できると同時に、セラミック層の耐久性を高め、及び/又は特殊な視覚的効果を達成することが可能になる。
【0039】
更に、第1セラミック層と第2セラミック層は、それぞれベース構造体の構造化された表面に部分的にのみ塗布されているようにすることができる。これにより、リリーフ層構造を更に微細に構造化できると同時に、セラミック層の耐久性を高め、及び/又は特殊な視覚的効果、例えば部分的に塗布された領域における異なる光沢度又は艶消し度を達成することができる。
【0040】
発展形態において、第2セラミック層を少なくとも部分的に第1セラミック層上に配置することができる。このようにすると異なる表面特性と異なる構造を有する領域が生じることができる。これはまた、リリーフ層構造の形成に寄与することができる。
【0041】
好適には、第1セラミック層又は第2セラミック層は、少なくともレーザー加工領域でレーザーを用いて加工することができる。レーザー加工は、光沢度、艶消し度、及び構造の変化、又はプレス面の上に位置する層の切り込みを生じさせることができる。
【0042】
第2セラミック層内に、ベース構造体の方向に見て第1セラミック層まで達する開口部を設けることができる。そのためプレス面を観察すると、少なくとも2つの異なる外観又は異なる構造の領域が生じる。
【0043】
好適には、開口部は、塗布された第2セラミック層の後続加工によって作製された切り込みであることができる。ここで可能な加工工程は、フライス加工、レーザー照射、マスキング、UV硬化塗料によるマスキング、アルカリ又は酸を用いた除去若しくはエッチング又はクラッキングであることができる。例えば除去には、過酸化水素を含む水酸化ナトリウム溶液を除去に使用することができる。これらの切り込みにより、全面に塗布することが可能になり、その下に位置する層を可視化し、又は視覚的効果を持たせることが可能になる。
【0044】
更に、後続加工がレーザー加工であると、有用であり得る。この場合の利点は、レーザー加工は層の深い箇所でも非常に精密で微細な加工可能にすることである。
【0045】
本発明の別の可能な実施形態では、ベース構造体のプレス側に配置された金属層の少なくとも1つは、ニッケル層又はニッケル含有金属層であることができる。プレス側でその上に第1セラミック層及び/又は第2セラミック層を配置することができる。第1セラミック層と第2セラミック層との間に、金属層、ニッケル層、又はニッケル含有金属層を追加配置することができる。これらの金属層は、結合層としての機能を持つ別の層をもたらすことを可能にする。
【0046】
別の可能な実施形態では、ベース構造体の構造化された表面は、付加製造法によって少なくとも部分的に3次元リリーフ層構造で製造される。付加製造法は、例えばインクジェット印刷、3Dプリント、焼結、リソグラフィ、ラッカー塗装、UV硬化インク又はアクリレートによる印刷であることができる。このような製造法により、小ロットサイズと、家具産業で個々の構造に対する要望を実現することが可能になる。
【0047】
上記の代替として、ベース構造体の構造化された表面は、電気化学的、機械的、又はレーザー加工法を用いて、少なくとも部分的に3次元形状に製造することができる。この場合、例えば従来技術により知られているマスキング及びエッチングプロセス、又は電気化学的クロムめっきプロセスを使用することができる。ここで、実証済みの方法を、本発明による改良と共にプレス工具で使用することができ、それにより用途の多様性を高めることができる。
【0048】
第2セラミック層は、任意選択でベース構造体(10)の構造化された表面を全面的に覆うことができ、好ましくは0.001mm~2mmの厚みを有しており、第1セラミック層は好適にはこれとは異なる厚みを、好適には0.001mm~2mmの範囲の厚みを有する。層厚が異なる結果として、第1セラミック層と第2セラミック層の構造は異なり、ひいては光沢度も異なり、特に両セラミック層は同じセラミック材料からなることができる。異なる層厚は、視覚的効果を達成するために使用することができる。
【0049】
上記の代替として、第1セラミック層と第2セラミック層の異なる光沢度を得るために、両セラミック層のセラミック材料も異なることができ、特に第2セラミック層の厚みは第1セラミック層の厚みと等しくてもよい。異なるセラミック層を使用することにより、天然素材を実物どおりに模倣するための視覚及び組み合わせの可能性が更に高まる。
【0050】
セラミック層のセラミック材料として、例えば以下の材料を使用できる。二ホウ化ハフニウム、二ホウ化モリブデン、二ホウ化タンタル、二ホウ化チタン、二ホウ化タングステン、二ホウ化バナジウム、二ホウ化ジルコニウム、又はこれらのセラミック材料の混合物。これらの材料の利点は耐久性と硬さであり、これらはプレス工具のプレス特性の向上につながる。
【0051】
本発明によるプレス工具の実施形態は、例えば、
ベース構造体のための支持構造体を準備し、
ベース構造体を構成するために支持構造体に少なくとも2つのベース構造層を塗布し、
支持構造体上に構造化された表面を作製し、
ベース構造体の表面に第1セラミック層を塗布し、
構造化された表面及び/又は塗布された第1セラミック層上に第2セラミック層を塗布することによって製造できる。
【0052】
そうすることによって、特に耐久性のある表面を形成でき、それにもかかわらず表面が実物の外観、特に木の外観をリアルに模倣するように造形することができる。
【0053】
別の有利な発展形態において、本方法は、
ベース構造体の構造化された表面に部分マスクを塗布するステップと、
マスクを施した構造化された表面に第1セラミック層を塗布するステップと、
マスクを除去して、構造化された表面上に第1セラミック層が部分的にのみ配置されているようにするステップと、
部分的に塗布された第1セラミック層とベース構造体の構造化された表面に第2セラミック層を全面的に塗布するステップと、を含む。
【0054】
この場合の利点は、プレス工具上の個々の領域が、異なる視覚的特性、例えば光沢度を有することができ、それにもかかわらず製造は単純で、マスキング法はその効果が実証されていることである。
【0055】
代替的な実施形態では、本方法は、
ベース構造体の構造化された表面に第1セラミック層を全面的に塗布するステップと、
第1セラミック層に部分マスクを塗布するステップと、
マスクを施した第1セラミック層上に第2セラミック層を塗布するステップと、を含む。
【0056】
この場合に有利な点は、プレス工具上の個々の領域が、異なる視覚特性、例えば光沢度を有することができ、プレス工具の全体的なリリーフ構造にも寄与することである。
【0057】
任意選択で、マスクを除去して、構造化された表面上に第1セラミック層が部分的にのみ配置されているようにすることができる。
【0058】
別の任意選択による方法の実施形態では、マスクとして金属層、クロム層、ニッケル層又はニッケル含有金属層を塗布することができる。
【0059】
この場合、有利なことに、マスクは機能層としてプレス工具上に留まることができる。
【0060】
本発明による方法は、後処理のステップによって補完することができ、それぞれ塗布されたセラミック層又はマスクを処理して、対応するセラミック層又はマスクに所定の光沢度を与えることができる。
【0061】
一実施形態では、セラミック層の塗布は表面マグネトロンスパッタリング被覆装置によって行うことができ、表面マグネトロンスパッタリング被覆装置を適切に制御することによってセラミック層の部分的製造が行われる。これにより、セラミック層の首尾一貫した、層厚を正確に制御又は調整可能な塗布が保証される。
【0062】
本発明による方法を発展させて、追加的に以下のステップを実施できる。
プレスプレートを搬送装置上で搬送するステップ、
加工チャンバーに続く第1ロックを開くステップ、
プレスプレートを表面マグネトロンスパッタリング被覆装置の加工チャンバー内に搬入するステップ、
第1ロックを閉じるステップ、
真空ポンプによって加工チャンバー内を真空にするステップ、
マグネトロンによって1つ以上のセラミック層を塗布するステップ、
加工チャンバーに続く第1ロックを開くステップ、
第1ロックを通してプレスプレートを表面マグネトロンスパッタリング被覆装置の加工チャンバーから搬出するステップ。
【0063】
この有利な発展形態により、プレス工具のコスト効率の高い製造が実現可能である。
【0064】
本発明による方法は、以下の追加ステップ、即ち、
プリチャンバーロックを備えた真空プリチャンバーを通してプレスプレートを搬送し、この真空プリチャンバーは搬送方向に見て加工チャンバーの上流側に位置しており、真空プリチャンバーは真空ポンプによって、大気圧と、加工チャンバー内でセラミック層を塗布する際の加工圧との間にある圧力レベルにもたらされ、この加工圧は特に10-5mbar以下、好ましくは10-8mbarであるステップを含むことができる。
【0065】
この有利なプロセス改善により、エネルギー効率の高いコーティングが実現する。
【0066】
代替的に本発明による方法は追加ステップ、即ち、
プリチャンバーロックを備えた真空プリチャンバーを通してプレスプレートを搬送し、この真空プリチャンバーは搬送方向に見て加工チャンバーの上流側に位置しており、真空プリチャンバーは真空ポンプによって、大気圧と、加工チャンバー内でセラミック層を塗布する際の加工圧との間にある圧力レベルにもたらされ、この加工圧は特に10-5mbar以下、好ましくは10-8mbarであるステップと、
ポストチャンバーロックを備えた真空ポストチャンバーを通してプレスプレートを搬送し、この真空ポストチャンバーは搬送方向に見て加工チャンバーの下流側に位置しており、真空ポストチャンバーは真空ポンプによって、大気圧と加工圧との間にある圧力レベルにもたらされるステップと、を含むことができる。有利なことに、このようにして最適化された加工が、真空生成のために少量のエネルギーを使用して可能になる。
【0067】
本発明の別の態様は、本発明によるプレス工具を、材料ボード、特に家具産業用又はラミネートフローリングパネル用の材料ボードを製造するために使用することである。有利なことに、本発明によるプレス工具で、摩耗の少ない材料ボード、特に家具産業用又はラミネートフローリングパネル用の材料ボードを大量に製造することができる。
【0068】
本発明の実施例を、添付の概略図に例示的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1図1はプレス面を備えたプレスプレートの斜視図である。
図2図2はプレスプレート部分の側面断面図である。
図3A-3C】図3A-3Cは製造中のプレスプレートの中間段階を示す図である。
図4図4は代替実施形態のプレスプレート部分の側面断面図である。
図5図5は別の代替実施形態のプレスプレート部分の側面断面図である。
図6図6は閉じたプレス機におけるプレス工程中のプレスプレートとラミネートの側面断面図である。
図7図7は表面マグネトロンスパッタリング被覆装置の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図1は、本実施例の場合はプレスプレート1として設計されたプレス工具の斜視図である。プレスプレート1は、プレス面2を含んでいる。プレス側3は、プレス機でプレス工程中にプレスプレート1がラミネートに面している側である。
【0071】
図2はプレスプレート部分の側面断面図である。
【0072】
プレス面2は平滑に形成されてもよいが、本実施例の場合は、隆起部4と凹み部3からなる構造を含んでいる。
【0073】
プレス面2の構造は、特に天然素材、本実施例の場合は木材に対応している。
【0074】
プレス面2は、ベース構造体10の複数のベース構造層15上に配置されている。ベース構造体10は、ベース構造層15に加えて、支持構造体も含む。
【0075】
第1セラミック層11は、本実施例ではベース構造体10上に部分的に配置されており、第2セラミック層12はベース構造体10の表面31と第1セラミック層11を全面的に覆っている。
【0076】
プレスプレート1により、工作物、例えば材料ボード、例えばラミネートをプレス加工によって製造することができる。プレス加工後、工作物は、プレス面2の構造に対応して構造化された表面を有する。
【0077】
プレスプレート1は、本実施例の場合は図3Aに示す、プレス面2の構造に対応して構造化された表面31を備えたベース構造体10を含んでいる。
【0078】
プレスプレート1は、本実施例の場合はベース構造体10の構造化された表面31上に配置された部分セラミック層11と、この部分セラミック層11上に配置されてプレス面2を形成する全面セラミック層12とを含む。
【0079】
ベース構造体10は本実施例の場合は金属製である。
【0080】
本実施例の場合、プレスプレート1は、ベース支持体、特に例えば金属製の支持構造体14を備え、その上にベース構造体10が配置されている。
【0081】
本実施例の場合、ベース構造体10は、互いに重なり合って位置する複数のベース構造層15を含んでいる。ベース構造層15は、好ましくはニッケル製であり、少なくとも一部は部分的に設計されていて、セラミック層11、12と共にリリーフ層構造16を形成する。
【0082】
ベース構造体10を作製するために、例えば構造化されたプレス面2の構造に対応する画像データに応じて、ベース構造層15に詳細には図示しないマスクを少なくとも1回塗布して領域を覆い、続いてこのマスクで覆われていない領域に別のベース構造層15を塗布する。これをベース構造体10ができるまで繰り返す。ベース構造体10は、特にプレス面2の構造に応じて、即ち隆起部4と凹み部5に対応する画像データに応じて作製され、そのためにこれらの画像データに応じてマスク及びベース構造層15が、例えば電気メッキ又は化学的方法により順次塗布される。
【0083】
続いて本実施例の場合、ベース構造体10の構造化された表面31に図3Bに示すマスク32を塗布して、ベース構造体10の構造化された表面31を部分的に覆う。
【0084】
続いて本実施例の場合、表面マグネトロンスパッタリング被覆装置33を用いて、ベース構造体10の構造化された表面31のマスク32で覆われていない領域にセラミック層を塗布する。続いてマスク32を除去すると、ベース構造体10の構造化された表面31のマスク32で覆われていない領域のみがセラミック層で覆われて、部分セラミック層11が生じる。図3Cを参照されたい。表面マグネトロンスパッタリング被覆装置33を適切に制御することにより、部分セラミック層11は所定の厚みが与えられ、それによって所定の光沢度を得る。
【0085】
続いて本実施例の場合、表面マグネトロンスパッタリング被覆装置33を用いて、部分セラミック層11上に全面セラミック層12を塗布する。全面セラミック層12の光沢度を調整するために、全面セラミック層12は、表面マグネトロンスパッタリング被覆装置33によって制御されて所定の厚みを得る。
【0086】
本実施例の場合、両セラミック層11、12は、同じセラミック材料、例えば二ホウ化ハフニウム、二ホウ化モリブデン、二ホウ化タンタル、二ホウ化チタン、二ホウ化タングステン、二ホウ化バナジウム、二ホウ化ジルコニウム、又はこれらのセラミック材料の混合物からなる。
【0087】
セラミック層11、12が異なる光沢度を持つために、本実施例の場合、両セラミック層の厚みが異なる。特に全面セラミック層12は部分セラミック層11よりも薄く、特に両セラミック層11、12は同じセラミック材料からなる。
【0088】
両セラミック層11、12の厚みは、好ましくは1μm~2μmの範囲である。
【0089】
セラミック層は、好ましくは少なくとも2000HVのビッカース硬さを有する。
【0090】
セラミック層11、12の異なる光沢度を調整するために、これらは異なるセラミック材料を有することもできる。
【0091】
セラミック層11、12の光沢度を調整するために、研磨やレーザー処理などの後処理を施すこともできる。
【0092】
最初にベース構造体10の構造化された表面31に全面セラミック層12を施し、その上に部分セラミック層11を塗布することも可能である。
【0093】
表面マグネトロンスパッタリング被覆装置33を適切に制御することにより、部分セラミック層11を作製することも可能である。
【0094】
図4は、代替実施形態のプレスプレートの側面断面図を示す。第1セラミック層11と第2セラミック層12は、それぞれベース構造体10の構造化された表面31に部分的にのみ塗布されている。ベース構造層15は、他の実施例と同様に金属、特にニッケルからなることができるが、他の材料、例えばプラスチックやセラミックからなることもできる。ベース構造層15は、公知の付加製造法又は除去製造法を用いて作製できる。
【0095】
この実施例の別の有利な発展形態では、第1セラミック層11上に第2セラミック層12を少なくとも部分的に配置することができる。
【0096】
第1セラミック層11又は第2セラミック層12は、少なくともレーザー加工領域17においてレーザーを用いて加工することもできる。レーザーによる加工は、特にセラミック層の光沢度、反射特性、艶消し度又は構造に影響を与え、それによって製造されるラミネートにこれらの構造的特性をポジティブとして転写するために用いることができる。
【0097】
図4による別の実施例では、第2セラミック層12はベース構造体10の構造化された表面31を全面的に覆うことができて、第2の厚み19を有し、第1セラミック層11は第1の厚み18を有する。この場合、第1セラミック層11と第2セラミック層12の異なる光沢度を得るために、第1の厚み18と第2の厚み19は異なる層厚を有することができ、特に両セラミック層11、12は、同じセラミック材料からなることができる。
【0098】
本発明のすべての実施例におけるセラミック層11、12のセラミック材料は、例えば二ホウ化ハフニウム、二ホウ化モリブデン、二ホウ化タンタル、二ホウ化チタン、二ホウ化タングステン、二ホウ化バナジウム、二ホウ化ジルコニウム、又はこれらのセラミック材料の混合物からなることができる。
【0099】
図4による別の実施例では、第1セラミック層11と第2セラミック層12の異なる光沢度を得るために、2つのセラミック層11、12のセラミック材料は異なっていてもよく、特に第2セラミック層12の厚み19は第1セラミック層11の厚み18と等しい。
【0100】
両セラミック層11、12の厚みは、好ましくは1μmから2mmの範囲である。
【0101】
重なり領域13では、両セラミック層を少なくとも部分的に互いに重なり合って配置することができる。
【0102】
図5は、別の代替実施形態のプレスプレート部分の側面断面図を示しており、両セラミック層11、12は少なくとも部分的に互いに重なり合って配置されている。プレス工具のプレス側7に配置された第2セラミック層12は少なくとも1つの開口部5を有しており、そこで第1セラミック層が表面に現れ、若しくは表面に向かった窓のように切り込み6を開く。その作製は、セラミック層12を塗布する際にマスク32を使用して後からマスク32を除去するか、又は化学的方法で、例えば水酸化ナトリウム溶液を用いて第2セラミック層12の一部を除去することによって行うことができる。
【0103】
その他の点では、ベース構造体は図2及び図3又は図4の実施例に基づいている。
【0104】
図6は、閉じたプレス機におけるプレス工程中のプレスプレートとラミネートの側面断面図を示している。プレス機20、例えばショートサイクルプレス機において、プレスパッド9の上にプレス工具、特にプレスプレート1が置かれている。プレス機20の部分が閉じた図示のプレス工程の間、ラミネート8、特に家具産業又はフローリングパネル用の材料ボードが、温度及び圧力の作用下で溶融し、凹み部3と隆起部4を備えたプレス面2のネガティブ形状が、ラミネート8においてポジティブとして再現される。
【0105】
図7は、表面マグネトロンスパッタリング被覆装置33の側面断面図を示している。
【0106】
この実施例では、マルチチャンバー装置を有する表面マグネトロンスパッタリング被覆装置33が示されている。しかしながら、代替として1つの加工チャンバー24のみを有し、別のチャンバーを持たないシングルチャンバー装置も可能である。
【0107】
プレス工具、特にプレスプレート1は、プリチャンバーロック26が開くと搬送装置21によって真空プリチャンバー25に導入される。プリチャンバーロック26が閉じられ、真空ポンプ30が真空プリチャンバー25内の圧力を、例えば10-2mbar以下、好ましくは10-5mbarまで下げる。その間、ロック22は閉じていて、加工チャンバー内は加工圧になっている。続いてロック22が開き、加工チャンバー24と真空プリチャンバー25の間で圧力が調和する。これによりシングルチャンバー装置に比べてエネルギーを節約し、サイクル時間を得ることができる。プレス工具が加工チャンバー24内に搬送される。ロック22及び23が閉じ、真空ポンプ29によって加工チャンバー内が真空にされる。加工圧は10-3Pa(10-5mbar)以下、好適には10-6Pa(10-8mbar)である。加工工程の終了後、プレス工具は開いたロック23を通って真空チャンバー内に搬送される。そこは、ポストチャンバーロックが開く前は、真空プリチャンバーと同等の圧力レベルにある。真空プリチャンバーと真空ポストチャンバーは、バルブ付きの真空ラインを介して互いに接続することができ、それによって表面マグネトロンスパッタリング被覆装置33の連続運転においてサイクル変更時に真空プリチャンバーと真空ポストチャンバーとの間で真空を交換して、真空ポンプ30の運転のためのエネルギーを節約することができる。本発明のすべての実施例に対して、表面マグネトロンスパッタリング被覆装置の代わりに、他のPVDコーティング装置、PVDスパッタリング装置、マグネトロンスパッタリング装置又は同様の装置を使用することも可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 プレスプレート
2 プレス面
3 凹み部
4 隆起部
5 開口部
6 切り込み
7 プレス側
8 材料ボード
9 プレスパッド
10 ベース構造体
11 セラミック層
12 セラミック層
13 重なり領域
14 支持構造体
15 ベース構造層
16 リリーフ層構造
17 レーザー加工領域
18 厚み(第1セラミック層)
19 厚み(第2セラミック層)
20 プレス機
21 搬送装置
22 ロック
23 ロック
24 加工チャンバー
25 真空プリチャンバー
26 プリチャンバーロック
27 真空ポストチャンバー
28 ポストチャンバーロック
29 真空ポンプ
30 真空ポンプ
31 表面(ベース構造体10の)
32 マスク
33 表面マグネトロンスパッタリング被覆装置
34 金属層
3 5機能層
36 マグネトロン
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作物を製造するためのプレス工具であって、
プレス面(2)と、
表面(31)を備えたベース構造体(10)と、
前記表面(31)上に配置され、前記プレス面(2)を形成する少なくとも2つのセラミック層(11、12)であって、第1セラミック層(11)は第1の光沢度を有し、第2セラミック層(12)は前記第1セラミック層(11)の前記第1の光沢度とは異なる第2の光沢度を有する、工作物を製造するためのプレス工具。
【請求項2】
前記プレス工具は材料ボード(8)を製造するためのプレスプレート(1)である、請求項1に記載のプレス工具。
【請求項3】
前記プレス工具の前記ベース構造体(10)は、金属、特にステンレス鋼からなる支持構造体(14)を有する、請求項1又は2に記載のプレス工具。
【請求項4】
前記プレス面(2)は、隆起部(4)と凹み部(3)の構造を有し、前記ベース構造体(10)は支持構造体(14)上に設けられた構造化された表面(31)を有しており、
少なくとも2つの、特に金属製のベース構造層(15)が前記支持構造体(14)上に設けられ、前記ベース構造層(15)は、少なくとも部分的に互いに重なり合って配置され、前記ベース構造体(10)の前記構造化された表面(31)を形成する、請求項1又は2に記載のプレス工具。
【請求項5】
前記第1セラミック層(11)又は前記第2セラミック層(12)は、前記ベース構造体(10)の構造化された表面(31)に部分的にのみ塗布され、前記構造化された表面(31)のリリーフ層構造(16)を形成する、請求項1又は2に記載のプレス工具。
【請求項6】
前記第1セラミック層(11)と前記第2セラミック層(12)は、それぞれ前記ベース構造体(10)の構造化された表面(31)に部分的にのみ塗布されている、請求項1又は2に記載のプレス工具。
【請求項7】
前記第2セラミック層(12)は少なくとも部分的に前記第1セラミック層(11)上に配置されている、請求項1又は2に記載のプレス工具。
【請求項8】
前記第1セラミック層(11)又は前記第2セラミック層(12)は、少なくともレーザー加工領域(17)でレーザーを用いて加工されている、請求項1又は2に記載のプレス工具。
【請求項9】
前記第2セラミック層(12)内に、前記ベース構造体(10)の方向に見て前記第1セラミック層(11)まで達する開口部(5)が設けられている、請求項7に記載のプレス工具。
【請求項10】
前記開口部(5)は、塗布された前記第2セラミック層(12)の後続加工によって作製された切り込み(6)である、請求項9に記載のプレス工具。
【請求項11】
前記後続加工はレーザー加工である、請求項10に記載のプレス工具。
【請求項12】
前記ベース構造体(10)のプレス側(7)に配置された金属層(15)の少なくとも1つは、ニッケル層又はニッケル含有金属層である、請求項1又は2に記載のプレス工具。
【請求項13】
前記ベース構造体(10)の構造化された表面(31)は、付加製造法によって少なくとも部分的に3次元リリーフ層構造(16)で製造される、請求項1又は2に記載のプレス工具。
【請求項14】
前記ベース構造体(10)の構造化された表面(31)は、電気化学的プロセス、機械的プロセス又はレーザー加工プロセスによって少なくとも部分的に3次元形状に製造される、請求項1又は2に記載のプレス工具。
【請求項15】
前記第2セラミック層(12)は、前記ベース構造体(10)の構造化された表面(31)を完全に覆って、第2の厚み(19)を有し、
前記第1セラミック層(11)は第1の厚み(18)を有し、
前記第1の厚み(18)と前記第2の厚み(19)とは、前記第1セラミック層(11)と前記第2セラミック層(12)の異なる光沢度を得るために異なる層厚を有し、特に両セラミック層(11、12)が同じセラミック材料からなる、請求項1又は2に記載のプレス工具。
【請求項16】
両セラミック層(11、12)のセラミック材料は、前記第1セラミック層(11)と前記第2セラミック層(12)との異なる光沢度を得るために異なっており、特に、前記第2セラミック層(12)の厚み(19)は前記第1セラミック層(11)の厚み(18)に等しい、請求項1又は2に記載のプレス工具。
【請求項17】
前記少なくとも2つのセラミック層(11、12)のセラミック材料は、二ホウ化ハフニウム、二ホウ化モリブデン、二ホウ化タンタル、二ホウ化チタン、二ホウ化タングステン、二ホウ化バナジウム、二ホウ化ジルコニウム、又はこれらのセラミック材料の混合物である、請求項1又は2に記載のプレス工具。
【請求項18】
請求項1又は2に記載のプレス工具の製造方法であって、以下の方法ステップ、即ち、
前記ベース構造体(10)のための支持構造体(14)を準備するステップと、
前記ベース構造体(10)を構成するために前記支持構造体(14)に少なくとも2つのベース構造層(15)を塗布するステップと、
前記支持構造体(14)上に構造化された表面(31)を作製するステップと、
前記ベース構造体(10)の前記構造化された表面(31)に前記第1セラミック層(11)を塗布するステップと、
前記構造化された表面(31)及び/又は塗布された前記第1セラミック層(11)上に前記第2セラミック層(12)を塗布するステップと、を含むプレス工具の製造方法。
【請求項19】
前記ベース構造体(10)の前記構造化された表面(31)に部分マスク(32)を塗布するステップと、
前記部分マスクを施した前記構造化された表面(31)に前記第1セラミック層(11)を塗布するステップと、
前記部分マスク(32)を除去して、前記第1セラミック層(11)が前記構造化された表面(31)上に部分的にのみ配置されているようにするステップと、
部分的に塗布された前記第1セラミック層(11)と前記ベース構造体(10)の前記構造化された表面(31)上に前記第2セラミック層(12)を全面的に塗布するステップと、を含む請求項18に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項20】
前記ベース構造体(10)の前記構造化された表面(31)に前記第1セラミック層(11)を全面的に塗布するステップと、
前記第1セラミック層(11)に部分マスク(32)を塗布するステップと、
前記部分マスク(32)を施した前記第1セラミック層(11)上に前記第2セラミック層を塗布するステップと、を含む請求項18に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項21】
前記部分マスク(32)を除去して、前記第1セラミック層(11)が前記構造化された表面(31)上に部分的にのみ配置されているようにするステップを含む、請求項20に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項22】
金属層(34)、クロム層、ニッケル層、又はニッケル含有金属層が、前記部分マスク(32)として塗布される、請求項19に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項23】
前記部分マスク(32)が機能層(35)として前記プレス工具上に残る、請求項22に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項24】
対応するセラミック層(11、12)又はマスク(32)の所定の光沢度を得るために、対応する塗布されたセラミック層(11、12)又は部分マスク(32)を後処理するステップを含む、請求項18に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項25】
前記少なくとも2つのセラミック層(11、12)を表面マグネトロンスパッタリング被覆装置(33)によって塗布するステップを含み、
前記少なくとも2つのセラミック層(11、12)の部分的な製造が、前記表面マグネトロンスパッタリング被覆装置(33)を適切に制御することによって実施される、請求項18に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項26】
プレスプレート(1)を搬送装置(21)上で搬送するステップと、
加工チャンバー(24)に続く第1ロック(22)を開くステップと、
前記プレスプレート(1)を前記表面マグネトロンスパッタリング被覆装置(33)の前記加工チャンバー(24)内に搬入するステップと、
前記第1ロック(22)を閉じるステップと、
真空ポンプ(29)によって前記加工チャンバー(24)内を真空にするステップと、
マグネトロン(36)によって1つ以上のセラミック層(11、12)を塗布するステップと、
前記加工チャンバー(24)に続く前記第1ロック(22)を開くステップと、
前記第1ロック(22)を通して前記プレスプレート(1)を前記表面マグネトロンスパッタリング被覆装置(33)の前記加工チャンバー(24)から搬出するステップと、を含む、請求項25に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項27】
プリチャンバーロック(26)を備えた真空プリチャンバー(25)を通して前記プレスプレート(1)を搬送する追加ステップを含み、
前記真空プリチャンバー(25)は搬送方向に見て前記加工チャンバー(24)の上流側に位置し、
前記真空プリチャンバー(25)は真空ポンプ(30)によって、大気圧と、前記加工チャンバー(24)内でセラミック層(11、12)を塗布する際の加工圧との間にある圧力レベルにもたらされ、この加工圧は特に10-3Pa以下、好ましくは10-6Paである、請求項26に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項28】
追加ステップ、即ち、
プリチャンバーロック(26)を備えた真空プリチャンバー(25)を通して前記プレスプレート(1)を搬送し、この真空プリチャンバー(25)は搬送方向に見て前記加工チャンバー(24)の上流側に位置し、
前記真空プリチャンバー(25)は真空ポンプ(30)によって、大気圧と、前記加工チャンバー(25)内でセラミック層(11、12)を塗布する際の加工圧との間にある圧力レベルにもたらし、この加工圧は特に10-3Pa以下、好ましくは10-6Paであるステップと、
ポストチャンバーロック(28)を備えた真空ポストチャンバー(27)を通して前記プレスプレート(1)を搬送し、この真空ポストチャンバー(27)は搬送方向に見て前記加工チャンバー(24)の下流側に位置し、
前記真空ポストチャンバー(27)は真空ポンプ(30)によって、大気圧と加工圧との間にある圧力レベルにもたらすステップと、を含む、請求項26に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項29】
材料ボードの製造のための、請求項1又は2に記載のプレス工具の使用。
【国際調査報告】