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特表2024-529608プレス工具及びプレスプレートの製造方法
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  • 特表-プレス工具及びプレスプレートの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-08
(54)【発明の名称】プレス工具及びプレスプレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/06 20060101AFI20240801BHJP
   B21D 37/20 20060101ALI20240801BHJP
   B30B 15/02 20060101ALI20240801BHJP
   B30B 9/00 20060101ALI20240801BHJP
   B30B 3/00 20060101ALI20240801BHJP
   B30B 5/04 20060101ALI20240801BHJP
   B44B 5/02 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B30B15/06 Z
B21D37/20 A
B30B15/02 B
B30B9/00 B
B30B3/00 B
B30B5/04
B44B5/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575969
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2022079756
(87)【国際公開番号】W WO2023078730
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】102021128738.3
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515352870
【氏名又は名称】フェック ライニッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】アーリ カウク
(72)【発明者】
【氏名】トルステン ハーゲドルン
(72)【発明者】
【氏名】ベルトルト テーレン
【テーマコード(参考)】
4E050
4E088
4E090
【Fターム(参考)】
4E050JA02
4E050JA03
4E050JB09
4E050JB10
4E050JC02
4E050JD03
4E088EA10
4E090HA10
(57)【要約】
本発明は、プレス面(2)を備えた、工作物を製造するためのプレス工具に関する。プレス工具は、ベース構造体(10)と、表面(31)上に互いに重なり合って配置されてプレス面(2)を形成する少なくとも2つのセラミック層(11、12)とを含み、一方のセラミック層は、ある光沢度を有する全面セラミック層(12)であり、他方のセラミック層は、全面セラミック層(12)の光沢度とは異なる別の光沢度を有する部分セラミック層(11)である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作物を製造するためのプレス工具であって、
プレス面(2)と、
表面(31)を備えたベース構造体(10)と、
表面(31)上に互いに重なり合って配置され、前記プレス面(2)を形成する少なくとも2つのセラミック層(11、12)であって、一方のセラミック層はある光沢度を有する全面セラミック層(12)であり、他方のセラミック層は全面セラミック層(12)の光沢度とは異なる別の光沢度を有する部分セラミック層(11)である、少なくとも2つのセラミック層(11、12)と、
を備えるプレス工具。
【請求項2】
前記プレス面(2)は隆起部(4)と凹み部(3)とからなる構造を有し、
前記ベース構造体(10)は、前記プレス面(2)の構造に対応して構造化された表面(31)を有し、特に、前記ベース構造体(12)は、互いに重なり合って配置され、前記ベース構造体(10)の前記構造化された表面(31)を形成する複数の部分金属層(15)を含む、請求項1に記載のプレス工具。
【請求項3】
前記全面セラミック層(12)の厚みは、前記全面セラミック層(12)と前記部分セラミック層(11)の異なる光沢度を得るために、前記部分セラミック層(11)の厚みとは異なり、
特に、2つのセラミック層(11、12)は同じセラミック材料からなる、請求項1又は2に記載のプレス工具。
【請求項4】
両セラミック層(11、12)のセラミック材料は、前記全面セラミック層(12)と前記部分セラミック層(11)の異なる光沢度を得るために、異なっており、
特に、前記全面セラミック層(12)の厚みは前記部分セラミック層(11)の厚みに等しい、請求項1又は2に記載のプレス工具。
【請求項5】
前記部分セラミック層(11)は、前記全面セラミック層(12)と前記ベース構造体(10)の構造化された表面(31)との間に配置されているか、又は前記全面セラミック層(12)上に配置されている、請求項1~4の何れか一項に記載のプレス工具。
【請求項6】
前記少なくとも2つのセラミック層(11、12)の厚みは1μm~2μmの範囲であり、及び/又は前記少なくとも2つのセラミック層(11、12)のセラミック材料は、二ホウ化ハフニウム、二ホウ化モリブデン、二ホウ化タンタル、二ホウ化チタン、二ホウ化タングステン、二ホウ化バナジウム、二ホウ化ジルコニウム、又はこれらのセラミック材料の混合物である、請求項1~5の何れか一項に記載のプレス工具。
【請求項7】
前記ベース構造体(10)の構造化された表面(31)は、異なる領域で異なる光沢度を有し、特に、これらの光沢度は前記全面セラミック層(12)と前記部分セラミック層(11)の光沢度とは異なる、請求項1~6の何れか一項に記載のプレス工具。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載のプレス工具の製造方法であって、
前記ベース構造体(10)を準備するステップと、
前記少なくとも2つのセラミック層(11、12)の一方を前記ベース構造体(10)の構造化された表面(31)に塗布するステップと、
前記構造化された表面(10)に塗布された一方のセラミック層上に前記少なくとも2つのセラミック層(11、12)の他方を塗布するステップと、を含み、
前記少なくとも2つのセラミック層(11、12)の光沢度は異なる、プレス工具の製造方法。
【請求項9】
前記ベース構造体(10)の前記表面(31)に部分マスクを塗布するステップと、
前記部分マスクを施した構造化された表面(31)上で前記部分マスクによって覆われていない領域にセラミック層を塗布するステップと、
前記部分マスクを除去して、前記構造化された表面(31)上に前記部分セラミック層(11)が配置されるようにするステップと、
前記部分セラミック層(11)上に前記全面セラミック層(12)を塗布するステップと、を含む、請求項8に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項10】
前記ベース構造体(10)の前記表面(31)に前記全面セラミック層(12)を塗布するステップと、
前記全面セラミック層(12)に部分マスクを塗布するステップと、
前記部分マスクによって覆われていない領域で、前記部分マスクを施した前記全面セラミック層(12)上にセラミック層を塗布するステップと、
前記部分マスクを除去して、前記全面セラミック層(12)上に前記部分セラミック層(11)が配置されるようにするステップと、
を含む、請求項8に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項11】
対応するセラミック層の所定の光沢度を得るために、対応する塗布されたセラミック層を後処理するステップを含む、請求項8~10の何れか一項に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項12】
前記少なくとも2つのセラミック層(11、12)を表面マグネトロンスパッタリング被覆装置(33)によって塗布するステップを含み、
特に、前記表面マグネトロンスパッタリング被覆装置(33)を適切に制御することによって前記部分セラミック層(11)を製造する、請求項8~11の何れか一項に記載のプレス工具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス面を有するプレス工具、及びプレス工具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレスプレート、エンドレスベルト、エンボスローラなどの形態のプレス工具は、特に、木工産業において、例えば家具、ラミネート、パネルなど、即ち一般に工作物の製造に使用される。工作物はプレス工具のプレス面でプレスされ、工作物はプレス面に対応する表面を付与される。
【0003】
特許文献1は、エンボス型の構造を有するプレス面を加工する方法を開示している。第1のクロム層を全面に施した表面上に、所定の領域で少なくとも1つの別のクロム層が配置される。両クロム層の光沢度は異なる。プレス面によって、光沢度が異なる構造を有する表面を持つ材料ボードとして形成された工作物を製造することができる。このプレス工具の製造はクロム層を使用するため、環境に比較的有害である。
【0004】
特許文献2には、樹脂を含浸させた紙から装飾ラミネートを製造するための平坦なプレス面の製造方法が開示されている。この目的のために、平坦なプレス面に所望の仕上げを施し、平坦な表面から不純物を除去し、この平坦な表面に二ホウ化ハフニウム、二ホウ化モリブデン、二ホウ化タンタル、二ホウ化チタン、二ホウ化タングステン、二ホウ化バナジウム、二ホウ化ジルコニウム又はこれらの物質の混合物が、表面マグネトロンスパッタリング被覆装置で、少なくとも2000HVのビッカース硬さに被覆され、そのために平坦な表面と表面マグネトロンスパッタリング被覆装置のスパッタリングヘッドとを、平坦なプレス面内に27.78℃以下の熱勾配を生じさせるのに十分な走査速度で相対的に動かす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2009/062488(A2)号
【特許文献2】米国特許第6190514(B1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、特定の領域で光沢度が異なるプレス面を有するプレス工具を、製造が比較的環境に優しい方法で提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、プレス面と、ベース構造体と、表面上に互いに重なり合って配置されてプレス面を形成する少なくとも2つのセラミック層とを有し、それらのうち一方のセラミック層は、ある光沢度を有する全面セラミック層であり、他方のセラミック層は、全面セラミック層の光沢度とは異なる別の光沢度を有する部分セラミック層である、工作物を製造するためのプレス工具によって解決される。
【0008】
本発明によるプレス工具は、例えばエンドレスベルト又はエンボスローラである。好ましくは、本発明によるプレス工具はプレスプレートである。
【0009】
プレス面は、例えば平滑であるが、構造化されたプレス面として設計することもできる。特に、プレス面は隆起部と凹み部からなる構造を有することができ、ベース構造体は、プレス面の構造に対応して構造化された表面を有することができる。
【0010】
本発明の別の態様は、本発明によるプレス工具の製造方法であって、
ベース構造体を準備するステップと、
一方のセラミック層をベース構造体の表面に塗布するステップと、
構造化された表面に塗布されたセラミック層に他方のセラミック層を塗布するステップと、を含み、両セラミック層の光沢度が異なる。
【0011】
したがって、本発明によるプレス工具は、変形例によれば場合により構造化されたプレス面として形成されたプレス面に対応して構造化された表面を有するベース構造体を含む。ベース構造体は、例えば冒頭に例として挙げた特許文献1から知られているように、互いに重なり合って配置されてベース構造体の表面を形成する複数の部分金属層を含むことができる。
【0012】
しかしながら、比較的硬いプレス面を得るために、本発明によれば、この表面はクロム層ではなく、セラミック層が施される。セラミックスも同様に比較的硬く設計することができ、例えば少なくとも2000HVのビッカース硬さを有することができる。セラミック層の適切なセラミック材料は、例えば二ホウ化ハフニウム、二ホウ化モリブデン、二ホウ化タンタル、二ホウ化チタン、二ホウ化タングステン、二ホウ化バナジウム、二ホウ化ジルコニウム、又はこれらのセラミック材料の混合物である。セラミック層の塗布若しくは被覆は、クロム層の塗布若しくは被覆と比較して著しく環境に優しい。
【0013】
更に、本発明によるプレス工具は、少なくとも2つの互いに重なり合って配置されたセラミック層、好ましくは正確に2つの互いに重なり合って配置されたセラミック層を含む。一方のセラミック層は部分セラミック層であり、他方のセラミック層は全面セラミック層である。本発明によれば、全面セラミック層の光沢度と部分セラミック層の光沢度が異なることにより、プレス面は異なる領域で異なる光沢度を有し、それによりプレスプレートによって製造された工作物の表面も、同様にそれぞれの領域に対応して異なる光沢度を有する。その結果、プレス面でプレスされて生じる工作物の品質を改善することができる。工作物は、例えば材料ボード、特に、ラミネート又はパネルである。
【0014】
特に、ベース構造体に新たにセラミック層を施すために、摩耗又は損傷したセラミック層をベース構造体から比較的容易に除去することも可能である。そのため、摩耗又は損傷したプレス工具を比較的高いコスト効率で修理することができる。
【0015】
セラミック層の塗布は、例えば表面マグネトロンスパッタリング被覆装置を用いて行うことができる。
【0016】
両セラミック層の厚みは、好ましくは1μmから2μmの範囲である。
【0017】
全面セラミック層と部分セラミック層の異なる光沢度を得るために、好ましくは全面セラミック層の厚みは部分セラミック層の厚みとは異なっている。即ち、それぞれのセラミック層の光沢度を、それらの厚みによって調整することが可能である。この場合、両セラミック層は、好ましくは同じセラミック材料からなり、このことは本発明によるプレス工具の製造コストに好影響を与えることができる。プレスプレートを製造する際に、セラミック層の必要な厚みは、例えば表面マグネトロンスパッタリング被覆装置を適切に制御することによって達成できる。
【0018】
両セラミック層の光沢度は、部分セラミック層と全面セラミック層に対して異なるセラミック材料を使用することによっても調整することができる。それゆえ、本発明によるプレスプレートの変形例によれば、全面セラミック層と部分セラミック層の異なる光沢度を得るために、両セラミック層のセラミック材料は異なることができる。この場合は、特に、全面セラミック層の厚みは部分セラミック層の厚みに等しい。
【0019】
好ましくは、部分セラミック層は、全面セラミック層とベース構造体の表面との間に配置されている。この本発明によるプレスプレートの実施形態は、例えば、
ベース構造体の表面に部分マスクを塗布し、
マスクを施した表面上でマスクによって覆われていない領域にセラミック層を塗布し、
マスクを除去して、構造化された表面上に部分セラミック層が配置されているようにし、
部分セラミック層に完全なセラミック層を塗布することによって製造できる。
【0020】
しかし、部分セラミック層は、例えば表面マグネトロンスパッタリング被覆装置を適切に制御することによっても製造することができる。
【0021】
このプレス工具の変形例によれば、部分セラミック層上に全面セラミック層が塗布されているので、比較的平滑なプレス面を比較的簡単に製造することができる。しかしながらこの場合、全面セラミック層は、その下にある部分セラミック層の光沢度を完全に覆わないような性状でなければならない。特にこの場合、全面セラミック層は部分セラミック層よりも薄い。即ち、全面セラミック層の厚みは部分セラミック層の厚みよりも小さい。
【0022】
しかしまた、本発明によるプレス工具は、全面セラミック層が部分セラミック層とベース構造体の構造化された表面との間に配置されるように、即ち、全面セラミック層上に部分セラミック層が塗布されるように設計することもできる。この本発明によるプレス工具の実施形態は、例えば、
ベース構造体の表面に全面セラミック層を塗布し、
全面セラミック層に部分マスクを塗布し、
マスクを施した全面セラミック層上でマスクによって覆われていない領域にセラミック層を塗布し、
マスクを除去して、全面セラミック層上に部分セラミック層が配置されているようにすることによって製造できる。
【0023】
しかしまた、部分セラミック層は、例えば表面マグネトロンスパッタリング被覆装置を適切に制御することによっても製造することができる。
【0024】
それぞれのセラミック層の所定の光沢度を得るために、部分セラミック層と全面セラミック層の光沢度は、対応して塗布されたセラミック層の後処理によって達成することもできる。後処理は、例えば対応するセラミック層の研磨又はレーザー処理を含むことができる。
【0025】
本発明によるプレス工具の実施形態によれば、ベース構造体の表面は異なる領域で異なる光沢度を有することができ、これらの光沢度は、特に、全面セラミック層と部分セラミック層の光沢度とは異なる。ベース構造体の表面の異なる光沢度の調整は、例えばレーザーを用いて行うことができ、或いは互いに重なり合って配置された複数の層からなるベース構造体の場合は、国際公開第2009/062488(A2)号(特許文献1)により公知である。
【0026】
本発明の実施例を、添付の概略図に例示的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1はプレス面を備えたプレスプレートの斜視図である。
図2図2はプレスプレート部分の側面断面図である。
図3A-3C】図3A-3Cは製造中のプレスプレートの中間段階を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本実施例の場合はプレスプレートとして設計されたプレス工具の斜視図である。プレスプレートは、プレス面2を含んでいる。図2はプレスプレート部分の側面断面図である。
【0029】
プレス面2は平滑に形成されてもよいが、本実施例の場合は、隆起部4と凹み部3からなる構造を含んでいる。
【0030】
プレス面2の構造は、特に、天然素材、本実施例の場合は木材に対応している。
【0031】
プレスプレート1により、工作物、例えば材料ボード、例えばラミネートをプレス加工によって製造することができる。プレス加工後、工作物は、プレス面2の構造に対応して構造化された表面を有する。
【0032】
プレスプレート1は、本実施例の場合は図3Aに示す、プレス面2の構造に対応して構造化された表面31を備えたベース構造体10を含んでいる。
【0033】
プレスプレート1は、本実施例の場合はベース構造体10の構造化された表面31上に配置された部分セラミック層11と、この部分セラミック層11上に配置されてプレス面2を形成する全面セラミック層12とを含む。
【0034】
ベース構造体10は本実施例の場合は金属製である。
【0035】
プレスプレート1は、本実施例の場合はベース支持体、特に、例えば金属製のベース支持プレート14を含んでおり、その上にベース構造体10が配置されている。
【0036】
本実施例の場合、ベース構造体10は互いに重なり合って位置する複数の金属層15を含んでいる。金属層15は、好ましくはニッケル製であり、少なくとも一部は部分的に設計されている。
【0037】
ベース構造体10を作製するために、例えば構造化されたプレス面2の構造に対応する画像データに応じて、金属層15に詳細には図示しないマスクを少なくとも1回塗布して領域を覆い、続いてこのマスクによって覆われていない領域に別の金属層15を塗布する。これをベース構造体10ができるまで繰り返す。ベース構造体10は、特に、プレス面2の構造に応じて、即ち隆起部4と凹み部5に対応する画像データに応じて作製され、そのためにこれらの画像データに応じてマスク及び金属層15が、例えば電気めっき又は化学的方法により順次塗布される。
【0038】
続いて本実施例の場合、ベース構造体10の構造化された表面31に図3Bに示すマスク32を塗布して、ベース構造体10の構造化された表面31を部分的に覆う。
【0039】
続いて本実施例の場合、表面マグネトロンスパッタリング被覆装置33を用いて、ベース構造体10の構造化された表面31のマスク32で覆われていない領域にセラミック層を塗布する。続いてマスク32を除去すると、ベース構造体10の構造化された表面31のマスク32で覆われていない領域のみがセラミック層で覆われて、部分セラミック層11が生じる。図3cを参照されたい。表面マグネトロンスパッタリング被覆装置33を適切に制御することにより、部分セラミック層11は所定の厚みが与えられ、それによって所定の光沢度を得る。
【0040】
続いて本実施例の場合、表面マグネトロンスパッタリング被覆装置33を用いて、部分セラミック層11上に全面セラミック層12を塗布する。全面セラミック層12の光沢度を調整するために、全面セラミック層12は、表面マグネトロンスパッタリング被覆装置33によって制御されて所定の厚みを得る。
【0041】
本実施例の場合、両セラミック層11、12は、同じセラミック材料、例えば二ホウ化ハフニウム、二ホウ化モリブデン、二ホウ化タンタル、二ホウ化チタン、二ホウ化タングステン、二ホウ化バナジウム、二ホウ化ジルコニウム、又はこれらのセラミック材料の混合物からなる。
【0042】
セラミック層11、12が異なる光沢度を持つために、本実施例の場合、両セラミック層の厚みが異なる。特に、全面セラミック層12は部分セラミック層11よりも薄く、特に両セラミック層11、12は同じセラミック材料からなる。
【0043】
両セラミック層11、12の厚みは、好ましくは1μm~2μmの範囲である。
【0044】
セラミック層は、好ましくは少なくとも2000HVのビッカース硬さを有する。
【0045】
セラミック層11、12の異なる光沢度を調整するために、これらは異なるセラミック材料を有することもできる。
【0046】
セラミック層11、12の光沢度を調整するために、研磨やレーザー処理などの後処理を施すこともできる。
【0047】
最初にベース構造体10の構造化された表面31に全面セラミック層12を施し、その上に部分セラミック層11を塗布することも可能である。
【0048】
表面マグネトロンスパッタリング被覆装置33を適切に制御することにより、部分セラミック層11を作製することも可能である。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
【手続補正書】
【提出日】2024-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作物を製造するためのプレス工具であって、
プレス面(2)と、
表面(31)を備えたベース構造体(10)と、
表面(31)上に互いに重なり合って配置され、前記プレス面(2)を形成する少なくとも2つのセラミック層(11、12)であって、一方のセラミック層はある光沢度を有する全面セラミック層(12)であり、他方のセラミック層は全面セラミック層(12)の光沢度とは異なる別の光沢度を有する部分セラミック層(11)である、少なくとも2つのセラミック層(11、12)と、
を備えるプレス工具。
【請求項2】
前記プレス面(2)は隆起部(4)と凹み部(3)とからなる構造を有し、
前記ベース構造体(10)は、前記プレス面(2)の構造に対応して構造化された表面(31)を有し、特に、前記ベース構造体(10)は、互いに重なり合って配置され、前記ベース構造体(10)の前記構造化された表面(31)を形成する複数の部分金属層(15)を含む、請求項1に記載のプレス工具。
【請求項3】
前記全面セラミック層(12)の厚みは、前記全面セラミック層(12)と前記部分セラミック層(11)の異なる光沢度を得るために、前記部分セラミック層(11)の厚みとは異なり、
特に、2つのセラミック層(11、12)は同じセラミック材料からなる、請求項1又は2に記載のプレス工具。
【請求項4】
両セラミック層(11、12)のセラミック材料は、前記全面セラミック層(12)と前記部分セラミック層(11)の異なる光沢度を得るために、異なっており、
特に、前記全面セラミック層(12)の厚みは前記部分セラミック層(11)の厚みに等しい、請求項1又は2に記載のプレス工具。
【請求項5】
前記部分セラミック層(11)は、前記全面セラミック層(12)と前記ベース構造体(10)の構造化された表面(31)との間に配置されているか、又は前記全面セラミック層(12)上に配置されている、請求項1又は2に記載のプレス工具。
【請求項6】
前記少なくとも2つのセラミック層(11、12)の厚みは1μm~2μmの範囲であり、及び/又は前記少なくとも2つのセラミック層(11、12)のセラミック材料は、二ホウ化ハフニウム、二ホウ化モリブデン、二ホウ化タンタル、二ホウ化チタン、二ホウ化タングステン、二ホウ化バナジウム、二ホウ化ジルコニウム、又はこれらのセラミック材料の混合物である、請求項1又は2に記載のプレス工具。
【請求項7】
前記ベース構造体(10)の構造化された表面(31)は、異なる領域で異なる光沢度を有し、特に、これらの光沢度は前記全面セラミック層(12)と前記部分セラミック層(11)の光沢度とは異なる、請求項1又は2に記載のプレス工具。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のプレス工具の製造方法であって、
前記ベース構造体(10)を準備するステップと、
前記少なくとも2つのセラミック層(11、12)の一方を前記ベース構造体(10)の構造化された表面(31)に塗布するステップと、
前記構造化された表面(31)に塗布された一方のセラミック層上に前記少なくとも2つのセラミック層(11、12)の他方を塗布するステップと、を含み、
前記少なくとも2つのセラミック層(11、12)の光沢度は異なる、プレス工具の製造方法。
【請求項9】
前記ベース構造体(10)の前記表面(31)に部分マスクを塗布するステップと、
前記部分マスクを施した構造化された表面(31)上で前記部分マスクによって覆われていない領域にセラミック層を塗布するステップと、
前記部分マスクを除去して、前記構造化された表面(31)上に前記部分セラミック層(11)が配置されるようにするステップと、
前記部分セラミック層(11)上に前記全面セラミック層(12)を塗布するステップと、を含む、請求項8に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項10】
前記ベース構造体(10)の前記表面(31)に前記全面セラミック層(12)を塗布するステップと、
前記全面セラミック層(12)に部分マスクを塗布するステップと、
前記部分マスクによって覆われていない領域で、前記部分マスクを施した前記全面セラミック層(12)上にセラミック層を塗布するステップと、
前記部分マスクを除去して、前記全面セラミック層(12)上に前記部分セラミック層(11)が配置されるようにするステップと、
を含む、請求項8に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項11】
対応するセラミック層の所定の光沢度を得るために、対応する塗布されたセラミック層を後処理するステップを含む、請求項に記載のプレス工具の製造方法。
【請求項12】
前記少なくとも2つのセラミック層(11、12)を表面マグネトロンスパッタリング被覆装置(33)によって塗布するステップを含み、
特に、前記表面マグネトロンスパッタリング被覆装置(33)を適切に制御することによって前記部分セラミック層(11)を製造する、請求項に記載のプレス工具の製造方法。
【国際調査報告】